サイト内検索|page:522

検索結果 合計:35155件 表示位置:10421 - 10440

10421.

筋肉量減少に、睡眠の満足感・夕食時刻・朝食の有無が関連/日本抗加齢医学会

 加齢とともに減少する筋肉量がどのような生活習慣と関連するのか、東海大学の増田 由美氏らが比較的健康な成人男子を調査し解析した結果、睡眠の満足感との有意な関連が示された。睡眠時間との関連は有意ではなかったという。さらに、60歳未満では20時までの夕食摂取、60歳以上では毎日の朝食摂取が筋肉量の維持に効果的であることが示唆された。第22回日本抗加齢医学会総会(6月17~19日)で発表した。筋肉量は睡眠障害の自覚レベルと飲酒に有意に関連 本研究の対象は、2014年4月1日~2020年6月30日に東海大学医学部付属東京病院で抗加齢ドックを受診した成人男性160名のうち、睡眠時無呼吸症、脳血管障害、肝機能障害の治療中の5名を除いた155名。In-bodyによる筋肉量、BMI、HDLコレステロール、LDLコレステロール、アディポネクチンを検査し、自記式質問票による睡眠時間(6時間未満/6時間以上)、睡眠障害の自覚レベル、喫煙習慣・飲酒習慣・運動習慣・朝食の有無、夕食開始時刻(18時以前/18~20時/20時以降)、入眠剤の服用の有無について、筋肉量との関係を相関分析および重回帰分析で検討した。さらに、60歳未満76名と60歳以上79名の2群に分け、各群において睡眠、朝食摂取、夕食時刻と筋肉量との関係を調べた。 筋肉量が睡眠などの生活習慣とどのように関連するのか調査し解析した主な結果は以下のとおり。・年齢、BMI、入眠剤の服用、喫煙習慣を調整した場合、睡眠障害の自覚レベル(睡眠の満足感)、飲酒が筋肉量と有意に関連していた。・60歳未満では、睡眠障害の自覚レベルが悪いほど、また夕食開始時刻が遅いほど、筋肉量が有意に減少した。・60歳以上では、睡眠障害の自覚レベルが悪いほど、また朝食を毎日摂取していない場合に筋肉量が有意に減少した。 増田氏は、本研究の結果から良質な睡眠による筋肉疲労の回復を示唆する可能性、睡眠の満足感が睡眠リズムの障害を反映している可能性を考察している。睡眠リズムの障害があると成長ホルモンの分泌低下や、グリア細胞の機能低下があることが報告されているという。なお本研究の限界として、横断研究であり、対象者数が少なく、運動強度を設定していないことなどを挙げている。

10422.

コロナの血栓塞栓症予防および抗凝固療法の診療指針Ver.4.0発刊/日本静脈学会

 6月13日に日本静脈学会は『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における血栓症予防および抗凝固療法の診療指針 Ver.4.0』を発刊した。今回の改訂点は、コロナに罹患した際の国内での血栓症の合併頻度や予防的抗凝固療法の実態を調査したCLOT-COVID研究のエビデンスが追加されたこと。また、今回より日本循環器学会が参加している。 本指針は、日本静脈学会、肺塞栓症研究会、日本血管外科学会、日本脈管学会の4学会合同で、出血リスクの高い日本人を考慮し、中等症II、重症例に限って選択的に保険適用のある低用量未分画ヘパリンを推奨するために、昨年1月にVer.1.0が発表された。

10423.

がんやコロナで使用されるマスタープロトコル試験、適切な報告の方法は/BMJ

 マスタープロトコル研究計画(master protocol research programs:MPRPs)は、複数の問いに答えるために1つの包括的な研究プロトコルに基づき複数のサブ試験を行う方法で、対象の特性(疾患、組織型、分子マーカーなど)や治療の種類・数に基づきバスケット試験、アンブレラ試験、プラットフォーム試験に分けられ、現在、主にがん(ALCHEMIST試験、NCI-MATCH試験など)や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(RECOVERY試験など)の研究に使用されている。MPRPは、さまざまな利点を有する一方で、複数のサブ試験についてプロトコルで詳細に指定された試験デザイン情報を1つの登録記録にまとめると、各サブ試験の解析集団や主要評価項目、試験終了日などの重要な記述の詳細が不明瞭化し、その全体像の迅速な把握が困難になるという問題が指摘されている。そこで、米国国立衛生研究所(NIH)のRebecca J. Williams氏らは、既存の優れた試験報告とは矛盾せずに、構造化された情報を用いてマスタープロトコル全体と各サブ試験のデザインを伝達するための、MPRPの適切な報告の仕方について検討した。研究の詳細は、BMJ誌2022年6月10日号に掲載された。ClinicalTrials.govの登録データを定性的に解析 本研究は、ClinicalTrials.govの試験登録のデータを用いた定性的な解析であり、マスタープロトコルの登録と結果の報告に特有の新たな問題点を記述し、ClinicalTrials.govを含む臨床試験データベースに、透明性や完全性が高く、時宜を得た報告を行うための支援の方法を提案する目的で行われた(米国国立生物工学情報センター[NCBI]などの助成を受けた)。 主要評価項目として、試験報告システムの確立された目標と、それに関連する実践の概要が記述され、MPRPの例と主な特徴について再検討された。また、1つのプロトコルにつき1つの試験というモデルに立脚する従来の臨床試験デザイン用に設計されたデータベースにMPRPを登録し、要約された結果を報告する際の課題が明らかにされた。サブ試験ごとの個別の登録記録を提案 報告の方法として、1つのMPRP全体を単一の記録に統合するのではなく、各サブ試験の意義を説明し、透明性と説明責任のよりよい支援を行うために、1つのMPRP内のサブ試験ごとに、個別の登録記録を使用することが提案された(例外の可能性も示すこと)。 論文では、サブ試験ごとに個別の登録記録を使用する方法により、各サブ試験の事前に規定されたデザインに関する明確かつ記述的で構造化された情報が得られ、各サブ試験終了後に結果を適宜報告できることを説明するために、複数の登録記録を用いた架空のMPRPの1例が図解されている。また、複数のサブ試験記録を用いて、MPRPをClinicalTrials.govに報告する際の主な検討事項が表にまとめられている。 残された課題としては、MPRPの登録と結果報告の調整法や、MPRP関連記録を特定するための支援の方法、世界各国の試験登録の統一の問題などが挙げられている。 著者は、「この研究では、ClinicalTrials.govへの報告に焦点が当てられているが、この方法は臨床試験の登録・結果報告データベース全般に応用が可能である。また、本論文は、関係者間において、この方法に関するさらなる議論を喚起することを意図し、MPRPの報告を改善する必要性への認識を高め、世界各地の臨床試験登録における協調の促進をも目的とする」としている。

10424.

第106回 コロナ受け入れ病院、専用病棟の開設は不要に/厚労省

<先週の動き>1.コロナ受け入れ病院、専用病棟の開設は不要に/厚労省2.アジアにも広がるサル痘、現時点では緊急事態に当たらず/WHO3.日本医師会長選、新会長は常任理事の松本 吉郎氏に4.相次ぐサイバー攻撃、今年3月に続きガイドライン再改定へ/厚労省5.医師不足の地域、新研修医制度の特別枠で対応を/厚労省6.手術動画提供で現金受け取り、さらに4病院で判明1.コロナ受け入れ病院、専用病棟の開設は不要に/厚労省厚生労働省は20日、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの提言をもとに、都道府県に対して事務連絡を発出した。これまで医療機関において、新型コロナウイルス感染患者を受け入れる場合は専用病棟の開設を求めていたが、今回の通知では、個室での療養を行えば、病棟全体のゾーニングは行わずともコロナ患者の受け入れが可能とした。(参考)コロナ患者の入院「専用病棟設けなくても可能」…厚労省、受け入れ拡大狙う(読売新聞)効果的かつ負担の少ない医療現場における感染対策について(厚労省)2.アジアにも広がるサル痘、現時点では緊急事態に当たらず/WHO世界保健機関(WHO)は23日、アフリカから欧州・北米と世界に広がっている動物由来のウイルス感染症「サル痘」について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当するかを検討する緊急委員会を開催した。PHEIC(Public Health Emergency of International Concern)とは「他の国々に公衆衛生上の危険をもたらすと認められ、緊急に国際的な調整が必要な事態が発生したとき」に宣言が出される。WHOのテドロス事務局長は25日、現時点では「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態には当たらない」と表明した。アジアにおいても韓国・台湾などで確認されているが、木原官房副長官は23日の記者会見で「注視する」とコメントしている。(参考)WHO 「サル痘」は緊急事態にはあたらずと発表(NHK)サル痘、緊急事態宣言せず=抑止へ集中対応を―WHO(時事通信)サル痘の流行について 現時点で分かっていること(忽那 賢志)(Yahoo!)3.日本医師会長選、新会長は常任理事の松本 吉郎氏に25日、中川 俊男氏の任期満了により、日本医師会の会長選が日医会館にて行われ、常任理事の松本 吉郎氏が副会長の松原 謙二氏を破り、新会長として選出された。任期は2年。副会長には大阪の茂松 茂人氏、東京の猪口 雄二氏、角田 徹氏がそれぞれ副会長として選出された。これまで新型コロナ対策やオンライン診療に対する規制緩和に批判的な意見もあり、医師会に対する信頼回復が求められる。(参考)第151回日本医師会定例代議員会 選挙結果報告(日本医師会)日本医師会の新会長に松本吉郎氏、埼玉の皮膚科形成外科医院の院長…中川会長は出馬見送る(読売新聞)日医会長選 新会長に松本吉郎氏 副会長に茂松氏、猪口氏、角田氏の3氏 副会長候補の今村氏は及ばず(ミクスonline)4.相次ぐサイバー攻撃、今年3月に続きガイドライン再改定へ/厚労省19日、徳島県鳴門市の「鳴門山上病院」がランサムウェア(身代金ウイルス)によるサイバー攻撃を受け、電子カルテへのアクセスが困難となり、20日から新規患者の受け入れを停止していた。幸いにもサイバー攻撃以前に行っていたバックアップから復旧したが、厚労省は、今回のような事件が相次ぐため、今年3月に改定した「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5.2版」を今年度内に再改定することとなった。また、日本医師会や関係団体が厚労省と協力して、サイバー攻撃に関する情報を収集・分析する新組織を年内に発足させることも明らかとなった。(参考)サイバー攻撃受けた徳島の病院、22日から通常診療 電子カルテ復旧(朝日新聞)医療界がサイバー攻撃対策で新組織 厚労省と協力、年内にも(産経新聞)医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.2版(厚労省)5.医師不足の地域、新研修医制度の特別枠で対応を/厚労省医道審議会・医師分科会の「医師専門研修部会」が22日に開催され、医師がきわめて不足している東北地域において、新専門医制度のシーリング枠外として「特別連携プログラム」という新たな仕組みの創設が検討された。具体的には、3年の研修期間のうち1年以上を「医師の不足度合がきわめて顕著な地域(医師充足率が70%未満)」で研修することを義務付けるほか、特別連携プログラムの専攻医には「地域医療講習の受講を免除する」などのインセンティブ付与などが提案されたが、参加した委員からは懸念が表明された。厚労省はあらためて部会で議論を行う見込み。(参考)「医師不足が極めて顕著な地域」(主に東北)で1年以上研修する新専門医研修の新たな仕組み検討―医師専門研修部会(Gem Med)令和4年度 第1回医道審議会医師分科会 医師専門研修部会 資料(厚労省)6.手術動画提供で現金受け取り、さらに4病院で判明医療機器メーカー「スター・ジャパン」が、全国の眼科医から学術目的として自社のレンズを使った手術動画の提供を受け、提供者に現金を支払っていた問題について、さらに4病院で新たに発覚した。今回明らかになったいずれの病院においても、医師側はあくまでも学術・教育目的として動画を提供していたが、メーカー側はレンズの売り上げを確保する目的で謝礼金を渡していたと見られる。(参考)“手術動画提供で現金”新たに4病院の医師が無断提供(NHK)眼科医の動画提供新たに4病院判明 メーカーから謝礼(産経新聞)

10425.

HER2陰性乳がん術後再発の2例、心機能回復困難なのはどっち?【見落とさない!がんの心毒性】第12回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》類似した患者特性と同種のがん薬物治療を受けたにも関わらず、極めて異なる心不全治療経過をたどったHER2陰性乳がん術後再発の2症例症例1年齢・性別50代・女性既往歴心疾患、糖尿病、脂質異常症なし生活歴喫煙歴なし治療歴/経過HER2陰性乳がん術後で初発手術時の補助化学療法実施はなし。5年間のホルモン療法完遂後。術後9年目に多発他臓器転移、リンパ節に再発。再発乳がんに対してCEF (シクロフォスファミド[Cyclophosphamide]+エピルビシン[Epirubicin]+フルオロウラシル[Fluorouracil])を約半年間かけて計8クール実施(エピルビシン総積算量 800mg/m2)。積算アントラサイクリン量から心毒性を懸念しCEFを終了した。CEF終了時の左室駆出率 (LVEF)70%台と左室機能低下は認めず。パクリタキセル(PAC)+ベバシズマブ治療に移行した約1年半後にLVEFが低下した心不全 (HFrEF) を発症。急性期は肺うっ血を呈し、LVEF 20%台まで左室機能は低下しており各種検査からがん治療関連性心機能障害 (CTRCD)と診断した。HFrEF発症後は急性心不全治療および心保護治療を開始。その後の経過は良好で比較的速やかな経過をたどり、心不全治療開始後約1年の時点でLVEF 60%台とほぼ正常に回復を示した (症例1経過図)。心不全発症後最高BNP値:485 pg/mL、心不全発症後最高トロポニンI(TnI)値:20 ng/mL。※経過中に虚血性心疾患の関与は除外した。症例1経過図画像を拡大する症例2年齢・性別50代・女性既往歴糖尿病、脂質異常症なし生活歴喫煙歴なし治療歴/経過HER2陰性乳がん術後で初発手術時の補助化学療法実施はなし。術後ホルモン療法治療中にリンパ節および他臓器転移での再発を確認。PAC+ベバシズマブ治療を導入。治療後1年4ヵ月でPD判定、CEF治療へ移行した。CEF移行時のLVEFは 70%台と左室機能は維持されていた。CEF治療移行後の約半年後にHFrEF発症 (エピルビシン[EPI]600 mg/m2).HFrEF診断時、LVEF 20%台と左室機能は高度に低下し、BNP 664と上昇。速やかに利尿剤、心保護治療の導入と拡充を開始したがBNPは更に増悪傾向を示し、経過中は一時的にピモベンダン併用も余儀なくされた。その後、BNPおよびトロポニンは徐々に回復傾向を示したが、長期間に渡りLVEFの回復は極めて緩慢で、LVEF 20%前後が長期に渡り遷延し心不全治療導入後の約2年経過後もLVEF 42%程度の回復にとどまった(症例2経過図)。心不全発症後最高BNP値:1014 pg/mL、心不全発症後最高TnI値:96 ng/mL。※経過中に虚血性心疾患の関与は除外した。症例2経過図画像を拡大する2症例の対比表画像を拡大する【問題】類似した患者特性を有し類似した薬物治療を受けた2症例にも関わらず、心不全治療後の心機能回復が極めて異なる転帰をたどった。その理由について、筆者が最も疑っている2つの理由はなにか?講師紹介

10426.

創部の洗浄【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q21

創部の洗浄Q21症例とくに既往のない28歳男性、左中指DIP腹側に深さ3~4mm程度、長さ20mm程度の切創あり。明らかな神経障害や動脈性出血、腱損傷はなさそう。バイタルは安定しているが、止血をえられず、縫合処置が必要と判断される。外科医のいる二次救急病院に送るのもためらわれるため、自分で縫ってみる。非滅菌手袋もつけたし、1%リドカインで皮線上皮下1回局注法で麻酔したぞ、よし、創部を洗おう。ここの夜間診療所には洗えるもの何かあったかな?

10427.

事例002 リフィル処方箋に係る処方箋料の留意事項(メリット・デメリット)【斬らレセプト シーズン3】

解説2022年度改定から導入された「リフィル処方箋」とは、「医師の処方に基づいた調剤薬局の薬剤師による服薬管理の下で、最大3回まで反復使用して長期にわたる処方が可能な処方箋」のことです。この処方箋で患者にとっては、通院回数が減るというメリットがあります。実質的には長期処方ですが、1回の使用当たり29日分以内であれば、院外処方箋料の長期減算の対象外となります。患者にとって通院回数が減るということは、対面による患者の医学管理も定期的に行えなくなるデメリットが生じます。患者には、おかしいなと感じたら躊躇せずに当院を受診されるように伝えておくことが肝要です。60日分を超える長期処方の受診が多い医療機関にはメリットがありますが、毎月受診を奨励されている医療機関が導入されると診察料と指導管理料の減収にもつながります。毎月の受診をしていただくためには、医学的な管理と服薬状況の確認の必要性を患者に適切に伝え、毎月の受診が必要であることを理解していただけるように、さらなる工夫が必要となるでしょう。リフィル処方箋の最大の特徴と言えるのは、「調剤薬局の薬剤師による服薬管理」です。調剤薬局の薬剤師は、2回目以降の調剤時に患者の状態を確認して、医師の診察が必要と判断したら、患者に受診を促さなければなりません。医療機関では調剤薬局薬剤師の判断に誠実に対応しなければなりません。また、リフィル処方箋では投与できる薬剤が制限されています。療養担当規則で投薬量の限度が定められている医薬品(麻薬、向精神薬や抗不安薬など)と湿布薬です。これらの薬剤をリフィル処方箋に含めていると病院の診療報酬からの相殺が考えられます。処方箋は2枚発行する必要があります。さらに、リフィル対応薬剤であっても、投薬期間が異なる複数の薬剤を処方された場合には、期間に応じた枚数のリフィル処方箋に分ける必要があることを申し添えます。

10428.

ASCO2022 レポート 消化器がん(上部・下部消化管)

レポーター紹介はじめに2022年6月3日~7日に、2022 ASCO Annual Meetingが開催された。世の中は徐々に渡航を緩和しつつあるが、残念ながら今年も日本からvirtualでの参加になってしまった。今年も消化管がん分野において標準治療を変える発表が複数報告されたが、その中でもとくに重要と考える発表をここで報告する。食道がん・胃がん昨年の2021 ASCO Annual Meetingでは、食道がん・胃がんにおいて免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性を検証する大規模臨床試験の結果が複数報告されたが、今年は大きな結果の報告は乏しかった。一方でClaudin18.2(CLDN18.2)に対するchimeric antigen receptor(CAR)T細胞の安全性・有効性の報告など、今後の治療開発につながる報告が行われており、これらを中心に報告を行う。CLDN18.2-redirected CAR T-cell therapy(CT041)Claudinは4つの膜貫通ドメインと2つの細胞外ループを持つ分子量23kDの小さな4回膜貫通タンパク質であり、隣り合う細胞の両側から細胞接着部位に集積し、タイトジャンクションの細胞膜密着構造と膜内のストランド構造を形成している。Claudin18.2は、胃腸腺がんの80%、膵臓がん、胆管がん、卵巣がん、肺がんでは60%と複数のがんで高発現しているとされている。抗Claudin18.2抗体薬であるzolbetuximab(IMAB362)が無作為化第II相試験(FAST試験)で無増悪生存期間(PFS)の有意な改善を認めており、現在国際共同第III相試験であるSPOTLITE試験が進行中である。CAR T細胞療法では、患者からT細胞を採取し、遺伝子医療の技術を用いてCAR(キメラ抗原受容体)と呼ばれる特殊なタンパク質を作り出すことができるようT細胞を改変する。そして厳重な品質管理の下で増幅し、リンパ球除去化学療法の後に患者に投与を行う。CT041(CLDN18.2-redirected CAR T-cell therapy)は免疫染色でCLDN18.2陽性(2+/3+を≧40%の腫瘍細胞で認める)の前治療歴のある進行胃がん症例に対して行われた第Ib/II相試験である。報告の時点で14例の症例が登録され、最も多いGrade3以上の有害事象はlymphodepletionに伴うリンパ球減少であったが、Dose limited toxicities(DLTs)となるものは存在しなかった。Cytokine release syndromeも認められたが、多くの症例はGrade1~2であり、許容されるものであった。有効性では奏効率(ORR)が57.1%、病勢制御率(DCR)が78.6%、PFS中央値が5.6ヵ月、全生存期間(OS)中央値が10.8ヵ月と、全例2つ以上の前治療を受けていることを考えると非常に有望な結果であり、現在第II相パートが進行中である。大腸がん今年のASCOにおける大腸がん分野の最大のトピックは、本邦から報告された切除不能・転移性大腸がんに対して、最適な1次治療を前向きに検証する第III相試験である、PARADIGM試験である。そのほか、StageII結腸がんの術後補助化学療法実施の要否を、血漿循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いて前向きに検証する無作為化第II相試験であるDYNAMIC試験と、米国のMemorial Sloan Kettering Cancer Center(MSKCC)が行ったミスマッチ修復異常を認める(dMMR/MSI-H)直腸がんに対する抗PD-1抗体の有効性の報告が、発表と同時にNew England Journal of Medicineにpublicationされた。今回はこれらの結果を報告する。PARADIGM試験切除不能転移再発大腸がんに対する1次治療の標準はFOLFOX/FOLFIRI等の化学療法と、抗EGFR抗体もしくはVEGF抗体であるベバシズマブの併用であり、生存期間中央値がおおよそ30ヵ月と報告されている。過去に行われた6つの無作為化試験の統合解析では、RAS野生型かつ左側大腸がん(下行結腸・S状結腸・直腸)症例には抗EGFR抗体薬の併用が、RAS変異型もしくはRAS野生型かつ右側大腸がん(盲腸・上行結腸・横行結腸)症例にはベバシズマブの併用が有意に優れていることが示されていたが1)、前向きの検証試験の報告は行われていなかった。PARADIGM試験は、周術期のオキサリプラチン(フッ化ピリミジン単剤は許容)を含む前治療のない切除不能転移再発大腸がんを対象に、mFOLFOX6+パニツムマブ(Pmab群)とmFOLFOX6+ベバシズマブ(Bmab群)を1対1に無作為化割り付けした第III相試験である。主要評価項目は左側大腸がん症例における全生存期間(OS)であり、それが有意であれば全症例で全生存期間を解析する計画であった。合計802例(Pmab群400例、Bmab群402例)が有効性の解析対象であり、そのうち左側大腸がん症例が312例、292例であった。左側大腸がん症例における、OS中央値はPmab群で37.9ヵ月、Bmab群で34.3ヵ月(ハザード比[HR]:0.82、p=0.03)と有意にPmab群が優れていたが、生存曲線は24ヵ月あたりまでほぼ重なっており、それ以降Pmab群が上回る結果であった。全症例におけるOS中央値はPmab群36.2ヵ月、Bmab群31.3ヵ月(HR:0.84、p=0.03)とPmab群が有意に優れた結果であった。また右側大腸がん症例の解析では、OS中央値がPmab群で20.2ヵ月、Bmab群で23.2ヵ月(HR:1.09)と治療成績に大きな差はないが、Pmab群のメリットが乏しく、過去の無作為化試験の統合解析と同様の結果であった。PFSは、左側大腸がん症例においてPmab群が中央値で13.7ヵ月、Bmab群が13.2ヵ月(HR:0.98)、全症例において中央値で12.9ヵ月、12.0ヵ月(1.01)と両群で差を認めない結果であった。一方、ORRは左側大腸がん症例においてPmab群が80.2%、Bmab群が68.6%、全症例において74.9%、67.3%であり、Depth of Response(DoR)もPmab群で優れていた。FIRE-3試験2)などと同様にORR、DoRの改善が結果的にOSの改善につながった可能性が考察できる。2次治療以降の化学療法実施割合も両群で差を認めなかった。これまでESMOガイドラインや本邦のガイドラインは、RAS野生型左側大腸がん症例は化学療法+抗EGFR抗体薬を推奨し、NCCNのガイドラインは前向き試験のデータがないことから化学療法+抗EGFR抗体薬、化学療法+ベバシズマブを併記していた。PARADIGM試験の結果でRAS野生型左側大腸がん症例には化学療法+抗EGFR抗体薬が第1選択であることが前向きに検証されたことで、切除不能転移再発大腸がんの1次治療における標準治療がようやく整理されたことになる。DYNAMIC試験StageII結腸がんは手術のみで80%治癒する対象であり、現在の臨床では臨床病理学的にhigh risk(T4、低分化がん、脈管侵襲など)とされる症例のみに術後補助化学療法が行われている。一方、治癒切除後のctDNA陽性症例はその後80%以上再発するとされており、この対象に対する術後補助化学療法の意義も臨床試験では証明されていない。DYNAMIC試験は治癒切除が行われたStageII症例を対象に、術後4週と7週にctDNAの検査を行い、ctDNA陽性であれば術後補助化学療法をctDNA陰性であれば経過観察を行う試験治療群と、臨床病理学的特徴によって術後補助化学療法の実施を決める標準治療群に2対1に無作為化割り付けを行う第II相試験である3)。主要評価項目は2年無再発生存(RFS)率である。合計455例が無作為化され、解析対象は試験治療群で294例、標準治療群で153例であった。両群ともにhigh riskの症例が40%であったが、実際に術後補助化学療法が行われた症例が試験治療群で15%、標準治療群で28%(p=0.0017)と試験治療群で有意に少なく、オキサリプラチンbasedの術後補助化学療法を行った症例の割合が試験治療群で62%、標準治療群で10%(p<0.0001)と試験治療群で有意に高い結果であった。これは、試験治療群で術後再発のリスクがより高い症例に、より強力な化学療法が実施されたことを意味している。最も再発リスクが高いとされるT4症例でも試験治療群で術後補助化学療法の実施が少なく、ctDNA陽性が従来の臨床病理学的な再発リスクとは独立している可能性が示唆された。主要評価項目である2年RFS率は、試験治療群で93.5%、標準治療群で92.4%と両群の差は+1.1%(95%CI:-4.1~6.2%)と信頼区間の下限が事前に設定した-8.5%を下回っており、試験治療群の非劣性が確認された。サブグループ解析では、T4症例における試験治療群の再発が少ない(HR:1.88)結果であった。試験治療群におけるctDNA陽性・陰性症例の比較では、2年RFS率がctDNA陽性群で86.4%、陰性群で94.7%(HR:1.83)と差が認められた一方で、ctDNAと臨床病理学的なhigh risk/low riskを組み合わせると、ctDNA陰性かつlow riskとctDNA陽性でHRが3.69、ctDNAとT stageを組み合わせると、ctDNA陰性かつT3とctDNA陽性でHRが2.62と、ctDNAと従来の臨床病理学的なriskを組み合わせることでさらに精度の高い再発予測が可能である可能性が示された。本試験により、StageII症例においてctDNA陽性・陰性によって術後補助化学療法の実施を決めることにより、術後補助化学療法の対象を減らしても治療成績が劣らないことが示された。一方でctDNA陽性症例に術後補助化学療法を行う意義、ctDNA陰性に術後補助化学療法を行わない意義はまだ検証されておらず、今後の前向き試験による検証結果が待たれる。ミスマッチ修復異常を認める(dMMR/MSI-H)直腸がんに対する抗PD-1抗体薬の有効性切除不能転移再発のdMMR/MSI-H大腸がんに対して抗PD-1抗体薬のペムブロリズマブがすでに1次治療の第1選択として確立しており4)、いくつかの少数例の検討では切除可能なdMMR/MSI-H大腸がんにも抗PD-1抗体薬の有効性が報告されている5)。局所進行直腸がんに対する標準治療は化学療法、放射線療法、手術の併用であるが、術後の直腸機能の低下が大きな問題であり、化学療法、放射線療法で完全奏効(cCR)に至った症例には、手術を行わず経過を見ていくWatch and Wait(W&W)が普及しつつある。dMMR/MSI-H直腸がんは直腸がんの5~10%(本邦の報告では2%程度)に認められる、まれな対象であるが、今回MSKCCが行っているStageII/IIIのdMMR/MSI-H直腸がんに対する抗PD-1抗体薬の有効性を見る第II相試験の結果が、試験の途中で報告された。試験治療として抗PD-1抗体薬であるdostarlimabを6ヵ月行った後に、画像と内視鏡でcCRと判定された症例にはW&Wを行い、遺残が認められた症例には化学放射線療法を実施し、それでも遺残がある症例には救済手術を行う計画であった。目標症例数は30例であったが、14例まで登録が行われ、全例が6ヵ月のdostarlimabでcCRと判定された。観察期間中央値は6.8ヵ月と短いが、現時点で再増大を認める症例は認めなかった6)。長期的な観察を行わなければPD-1抗体薬のみで治癒に至るかの結論は出ないが、臓器横断的にdMMR/MSI-H固形がんに検討すべき画期的な結果であり、発表と同時にNew England Journal of Medicineにpublicationされた。おわりに食道がん、胃がん、dMMR/MSI-H大腸がんの1次治療におけるICIの有効性が大規模臨床試験で検証され、標準治療としてすでに実臨床に組み込まれている。今後は、周術期治療における有効性の検証結果が報告されてくるものと思われ、またDYNAMIC試験のようなctDNAを用いた術後再発モニタリングは、大腸がんのみならず固形がん全般で主流になってくるものと考える。また、胃がんのような固形がんに対してCAR T細胞療法の有効性が示されるなど次の治療開発が進捗する兆しが認められ、今後の報告に期待したい。1)Arnold D, et al. Ann Oncol. 2017;28:1713-1729.2)Heinemann V, et al. Lancet Oncol. 2014;15:1065-1075.3)Tie J, et al. N Engl J Med. 2022 Jun 4. [Epub ahead of print]4)Andre T, et al. N Engl J Med. 2020;383:2207-2218.5)Chalabi M, et al. Nat Med. 2020;26:566-576.6)Cercek A, et al. N Engl J Med. 2022 Jun 5. [Epub ahead of print]

10429.

2剤以上のTKI治療歴のある慢性期CML、asciminibの96週時点における効果(ASCEMBL)/ASCO2022

 2剤以上のTKI治療歴のある慢性期慢性骨髄性白血病(CML-CP)患者に対して、BCR-ABL特異的アロステリック阻害薬であるasciminibの効果や忍容性は、2年を超えても持続することが示された。米国・Georgia Cancer CenterのJorge E. Cortes氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。 2剤以上のTKI治療歴を有するCML-CP患者に対するasciminibの投与は、ボスチニブに比べて24週時点での分子遺伝学的大奏効(MMR)率が高いことが、オープンラベルの無作為化第III相ASCEMBL試験によって報告されている。今回は、重要な副次評価項目として設定されていた96週時点の結果について評価した。・対象:2剤以上のTKIによる治療歴を有するCML-CP患者(233例)・試験群:asciminib 40mg✕2/日を投与(157例)・対照群:ボスチニブ 500mg/日を投与(76例)・評価項目:[主要評価項目]24週時点におけるMMR率[重要な副次評価項目]96週時点におけるMMR率 主な結果は以下のとおり。・観察期間中央値2.3年の時点で、試験群の84例(53.5%)と対照群の15例(19.7%)で服薬が継続していた。服薬期間の中央値は試験群で23.7ヵ月、対照群では7.0ヵ月であり、試験群の7.0%、対照群の25.0%は有害事象(AE)により服薬中止となっていた。・96週時点のMMR率は試験群が37.6%、対照群が15.8%であり、両群間の差は21.7%で、試験群は対照群の2倍以上のMMR率を達成していた。・試験群と対照群のMMR率を経時的にみると、24週時点では25.5%と13.2%(差は12.2%)、48週時点では29.3%と13.2%(差は16.1%)であり、時間の経過に伴い試験群のMMR率は上昇し、対照群との差も広がっていた。・いずれのサブグループで解析しても、も96週時点のMMR率は試験群で高かった。・96週時点でBCR-ABL1ISが1%以下だった患者は、試験群で45.1%、対照群では19.4%であった。

10430.

転移尿路上皮がんに対するカボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法は有用である可能性(COSMIC 021)/ASCO 2022

 転移のある手術不能の尿路上皮がん(mUC)に対するカボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法の有効性と安全性の初期データが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)において米国・City of Hope Comprehensive Cancer CenterのSumanta Pal氏より報告された。 これは、前立腺がんや腎がん、肺がんなども対象にしたカボザンチニブ+アテゾリズマブ併用療法の国際共同の第I相b試験COSMIC-021の結果で、今回はmUCの3つのコホートの解析結果である。・対象:未治療のmUCである下記の3つのコホート コホート3:シスプラチン不適応の症例(30例:C3) コホート4:シスプラチンに適応の症例(30例:C4) コホート5:免疫チェックポイント阻害剤既治療でチロシンキナーゼ阻害剤未治療の症例(31例:C5)・介入:カボザンチニブ40mg/日連日+アテゾリズマブ1,200mg 3週ごと・評価項目: [主要評価項目]主治医判定による奏効率(ORR) [副次評価項目]安全性 [探索的評価項目]奏功期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・2021年11月時点での追跡期間中央値は、C3で27.9ヵ月、C4、C5でそれぞれ19.1ヵ月と32.9ヵ月であった。・ORRはC3で20%(CR3%を含む)、C4で30%(CR7%)、C5で10%(CRなし)であった。・DoR中央値は、C3で7.1ヵ月、C4で未到達、C5で4.1ヵ月であった。・PFS中央値は、C3で5.6ヵ月、C4で7.8ヵ月、C5で3.0ヵ月であった。・OS中央値は、C3で14.3ヵ月、C4で13.5ヵ月、C5で8.2ヵ月であった。・有害事象によるカボザンチニブの減量はC3で43%に、C4で27%に、C5では35%に認められた。同様にアテゾリズマブの投与延期は、それぞれ63%、40%、52%に認められた。・治療関連の有害事象で両剤とも投与中止となったのは、C3で13%、C4で17%、C5で19%であった。・Grade3以上の有害事象は、C3で63%に、C4で43%に、C5で45%に発現した。Grade3以上の全身倦怠感はC3で3%、C4で3%、C5で6%、有症候性肝炎はそれぞれ0%、7%、3%、膵炎は13%、10%、6%であった。

10431.

抗体陽性率95%でもオミクロン株流行/JAMA

 米国・疾病対策センター(CDC)のJefferson M. Jones氏らによる献血検体での調査の結果、感染由来およびワクチン由来を合わせた抗体陽性率は2021年12月には94.7%に達していたことがわかった。それにもかかわらず、2022年初めにオミクロン変異株の記録的なレベルの感染と再感染が報告された。これには、オミクロン変異株の感染性や免疫逃避変異の増加、ワクチンや感染による免疫の低下が関係している。著者らは「抗体陽性率が高い状況においても、変異株は広く感染を引き起こす能力があることから、感染からの防御を最大化するために追加接種を含めたワクチン接種は価値がある」としている。JAMA誌オンライン版2022年6月13日号のリサーチレターに掲載。 本研究では、米国の全50州、ワシントンD.C.、プエルトリコを含む66研究地域の16歳以上の献血者の血清について、総免疫グロブリンアッセイでスパイク抗体(感染由来)とヌクレオカプシド抗体(感染由来とワクチン由来の複合)を調べ、2021年12月の抗体陽性率および5月から12月までの変化を、年齢、性別、人種、民族、地域別に推定した。また、2021年1月~12月の感染由来の抗体陽性率の増加をワクチン接種率と比較した。ワクチン完全接種の定義は、mRNAワクチン2回以上接種もしくはヤンセン製ワクチン1回以上接種とした。 主な結果は以下のとおり。・2021年5月から12月までに、感染由来の抗体陽性率は20.2%(95%CI:19.9~20.6)から28.8%(同:28.4~29.2)に増加し、感染由来とワクチン由来を合わせた抗体陽性率は83.3%(同:82.9~83.7)から94.7%(同:94.5~94.9)に増加した。・2021年12月の感染由来の抗体陽性率は16~29歳で最も高く40.0%(同:38.9~41.0)だった。・2021年12月31日時点の各調査地域の18歳以上のワクチン完全接種率と2021年の1年間における感染由来の抗体陽性率の増加は逆相関を示した(傾き:-0.32、p<0.001)。感染由来の抗体陽性率の増加は、完全接種率が80%を超える地域では10.64%(同:10.62~10.66)であるのに対し、60%未満の地域では19.84%(同:19.82~19.86)と高かった。

10432.

脊髄性筋萎縮症、治療の進歩と新生児スクリーニング

 2022年6月20日、「マススクリーニングが変える脊髄性筋萎縮症(SMA)の未来」と題して、都医学研都民講座が開催され、齋藤 加代子氏(東京女子医科大学 ゲノム診療科 特任教授)から、SMAの概要と治療の進歩、新生児スクリーニングの必要性について、水野 朋子氏(東京医科歯科大学 小児科 助教)から、新生児スクリーニングの現状・課題について講演が行われた。小児科に求められる役割 SMAは、脊髄の運動神経細胞の変性により、全身の筋肉が萎縮し、筋力低下、嚥下障害、呼吸障害などを来す進行性の疾患である。病型は、胎児期に発症する0型、6ヵ月ごろまでに発症するI型、18ヵ月ごろまでに発症するII型、それ以降に発症するIII型、成人期に発症するIV型に分類される(0型とIV型はまれ)。I型は、最重症で進行が速く、気管切開と人工呼吸器なしでは2歳までに90%以上が死亡するとされている。II型は、成長に伴い脊柱変形や関節拘縮がみられるようになり、やがて車いすでの生活を余儀なくされる。比較的軽症なIII型であっても、X脚や外反足などの症状がみられ、転びやすくなり、多くの患者さんで車いすが必要となるケースが多いという。発症年齢は、大部分が小児期であり、生後2ヵ月前後までに20%、2歳未満までに82.7%、16歳未満までに97%が発症することが全国調査の結果から明らかになっており、齋藤氏は、「SMAでは、小児科が診断において重要な役割を担う」と述べた。進歩した治療、開始のタイミングがカギ SMAは、SMN1遺伝子の変異によって引き起こされることがわかっている。このSMNを標的とした薬剤の有効性が相次いで報告され、現在日本国内では3剤(ヌシネルセン、オナセムノゲン、リスジプラム)が使用可能となっている。ヌシネルセンは、アンチセンス核酸医薬(SMN1とよく似た構造を持つ遺伝子であるSMN2をスプライシング修飾)であり、全年齢に対して髄腔内投与が可能である。オナセムノゲンは、遺伝子治療薬(アデノ随伴ウイルスを利用してSMN遺伝子を導入)であり、2歳未満に対して静脈点滴、リスジプラムは、低分子薬(SMN2をスプライシング修飾)であり、生後2ヵ月以上に対して経口投与が可能な薬剤である。このうち、ヌシネルセンとオナセムノゲンは、未発症の投与が可能となっている。 SMAに対する治療効果は、治療を開始した時期と患者さんに残されている運動ニューロンの割合に依存するといわれており、治療は早ければ早いほど効果が高く、発症前における有効性も報告されている。一方で、症状が進んだ状態で投与しても効果が限定的ともいわれている。こういったことから「可能な限り早期に診断し、早期に治療を開始することが極めて重要、“Time is Neuron”だ」と齋藤氏は訴えた。早期発見、早期治療のため、新生児スクリーニングを SMAのI型は、発症後神経の変性が急激に進行するため、本来であれば、生後1週間以内に治療を開始することがベストだが、一般診療では、生後6ヵ月ごろ(運動ニューロンが急速に消失し、ほぼ残されていない状態)に診断されることが多いという。これは、SMAが希少疾患であるために、医療者であっても認識が低いことや、病初期は症状がわかりにくく、とくにII型やIII型は、呼吸障害がなく緩徐に進行するため経過観察になりやすいことなどが理由として挙げられる。こうしたことからも、「新生児スクリーニングを行い、早期発見を目指すことが重要である」と、水野氏は強調した。 新生児スクリーニングは、先天性の疾患を早期に発見し、早期管理・治療することで発症を防ぎ、正常な成長発達を獲得することを目的としている。現在、米国では新生児の95%がSMAの新生児スクリーニングを受け、治療が受けられるようになっているが、日本ではまだ一部の自治体しか実施できていないのが現状であるという。SMAの新生児スクリーニングを普及させるためには、現行のスクリーニング検査に組み込む必要があるため、各自治体や検査機関などへの協力依頼や、分娩施設への協力依頼、産科医、小児科医への周知と理解、検査費用の公費負担化、診断後のフォロー体制などの課題が挙げられている。これに対し、日本小児神経学会では、SMAの新生児スクリーニング検討ワーキンググループを立ち上げ、対策を講じている。 水野氏は、「SMAは、適切なスクリーニング検査や確定診断方法、目覚ましい進歩を遂げた治療法により、早期発見、早期治療が可能な環境が整いつつある。だからこそ、診断後の疾患・治療説明や遺伝カウンセリング、新生児スクリーニングの普及といった課題を各団体と協力して解決していくことが重要だ」と述べ、講演を締めくくった。

10433.

日本人双極性障害外来患者の3年間の臨床アウトカムに影響を及ぼす要因~MUSUBI研究

 双極性障害患者の長期的な臨床アウトカムの予測因子に関するエビデンスは限られている。獨協医科大学の菅原 典夫氏らは、日本の精神科クリニックにおける双極性障害の多施設治療調査「MUSUBI研究」に参加した双極性障害患者を対象に、3年間の臨床アウトカムに影響を及ぼす予測因子を特定しようと試みた。その結果、フォローアップ期間中に持続的な寛解が得られる患者は少なく、臨床アウトカムに個々の人口統計学的および臨床的特徴が影響を及ぼしていることが示唆された。Journal of Psychiatric Research誌2022年7月号の報告。双極性障害の外来患者1,647例を対象にした研究 MUSUBI研究は、実臨床における双極性障害患者を調査するための自然主義的な多施設共同研究である。本研究では、2016年、2017年、2019年に登録された双極性障害の外来患者1,647例を対象に、ベースライン時、1年後および3年後のデータを抽出し評価を行った。臨床アウトカムとして、フォローアップ期間中における1年間のうつおよび躁症状の存在、53週以上の持続的な寛解を評価した。 MUSUBI研究に参加した双極性障害患者を対象に3年間の臨床アウトカムに影響を及ぼす予測因子を特定しようと試みた主な結果は以下のとおり。・3年間の評価期間中に持続的な寛解が得られた患者では、ベースライン時のパーソナリティ障害の診断および持続的な寛解期間と有意な関連が認められた。・フォローアップ期間中における1年間にうつ症状が認められた患者では、ベースライン時の仕事の状態、機能の全体的評定(GAF)尺度、自殺念慮、持続的な寛解期間と有意な関連が認められた。・3年間の評価期間中、持続的な寛解が得られた患者は318例(19.3%)、寛解に到達しなかった患者は782例(47.5%)であった。

10434.

6~17歳におけるAZ製ワクチンの安全性と免疫原性/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンChAdOx1 nCoV-19(AZD1222、アストラゼネカ製)は、6~17歳の小児において忍容性と免疫原性が高く、成人を対象とした第III相試験で示された高い有効性と関連する抗体濃度と同程度の抗体を誘導することができ、安全性に関する懸念は認められなかった。英国・チャーチル病院のGrace Li氏らが、英国の4施設で実施した第II相単盲検無作為化比較試験「COV006試験」の結果を報告した。COVID-19ワクチンについては、小児および若年者への接種を推奨している国もあるが、18歳未満におけるCOVID-19ワクチンの免疫反応に関するデータは成人と比較して十分ではなかった。Lancet誌オンライン版2022年6月11日号掲載の報告。2回目接種4週後と12週後(実際は16週後)の2群を設定 研究グループは、慢性呼吸器疾患および検査で確認されたCOVID-19の既往がなく、莢膜B群髄膜炎菌ワクチン(対照)未接種の6~17歳の健康小児を、AZD1222(ウイルス粒子量5×1010)を28日間隔、対照ワクチンを28日間隔、AZD1222を84日間隔、対照ワクチンを84日間隔でそれぞれ2回接種する群に、4対1対4対1の割合で無作為に割り付け筋肉内投与した。 参加者は年齢で層別化され、12~17歳群が6~11歳群より先に登録された。試験期間中に30歳未満へのAZD1222接種制限が導入されたため、28日間隔群に割り付けられた12~17歳の参加者のみが、計画された間隔(28日目)でAZD1222接種を受けた。残りの参加者は112日目に2回目の接種を受けた。 主要評価項目は、安全性解析対象集団(試験薬を少なくとも1回投与されたすべての参加者)における安全性と忍容性であった。副次評価項目は免疫原性で、ベースラインでSARS-CoV-2(ヌクレオカプシドタンパク質)血清陰性者およびワクチン2回接種者を対象に評価した。 2021年2月15日~4月2日の間に、262例がAZD1222群(211例[28日間隔群105例、84日間隔群106例])または対照群(51例[26例、25例])に割り付けられた(12~17歳150例[57%]、6~11歳112例[43%]、英国のワクチン接種方針の変更により予定人数に達する前に低年齢層の募集を終了)。AZD1222の若年層28日間隔群の1例が、初回接種前に同意を取り下げた。2回目接種後抗体価、6~11歳16週後>12~17歳16週後>12~17歳4週後の順で高い AZD1222群において、局所性および全身性の特定有害事象(solicited adverse event)は、初回接種後7日目までで210例中169例(80%)に、2回目接種後で193例中146例(76%)に認められた。 AZD1222接種に関連する重篤な有害事象は、データカットオフ日(2021年10月28日)までに報告されなかった。また、いずれかの接種後28日までの非特定有害事象の発現頻度は40%(83/210例、計128件)であった。 AZD1222の6~11歳群で、初回接種後1日目のGrade4の発熱(40.2℃)が1例報告されたが、24時間以内に消失した。AZD1222接種あるいは対照ワクチン接種でよくみられた有害事象は、疼痛および圧痛であった。 全参加者262例中20例(8%)は血清データを入手できず、血清データのある242例中14例(6%)はベースライン時に血清陽性であった。AZD1222群のベースライン時血清陰性者において、2回目接種後28日目の抗SARS-CoV-2 IgG抗体濃度および中和抗体濃度(IC50)(いずれも幾何平均値)は、投与間隔が長い(112日)12~17歳群ではそれぞれ73,371 AU/mL[95%CI:58,685~91,733]および299[95%CI:230~390])であり、投与間隔が短い(28日)12~17歳群(それぞれ4万3,280 AU/mL[95%CI:3万5,852~5万2,246]および150[95%CI:116~194])と比較して高かった。 2回目接種後の液性免疫応答は同じ投与間隔が長い(112日)群でも、6~11歳群が12~17歳群より高かった(幾何平均比:抗SARS-CoV-2 IgG抗体1.48[95%CI:1.07~2.07]、中和抗体2.96[95%CI:1.89~4.62])。また、細胞性免疫応答(IFN-γ ELISpot法)は、すべての年齢群および間隔群においてAZD1222の1回目接種後にピークに達し、2回目接種後もベースラインより高く維持された。

10435.

中等症~重症クローン病、ウステキヌマブvs.アダリムマブ/Lancet

 生物学的製剤未使用の中等症~重症活動期クローン病患者に対する導入療法および維持療法として、ウステキヌマブ単剤療法とアダリムマブ単剤療法はいずれも高い有効性を示し、主要評価項目に両群で有意差はなかった。米国・マウントサイナイ医科大学のBruce E. Sands氏らが、18ヵ国121施設で実施した無作為化二重盲検並行群間比較第IIIb相試験「SEAVUE試験」の結果を報告した。ヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体ウステキヌマブと、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体アダリムマブは、いずれもクローン病の治療薬として承認されているが、どちらもプラセボ対照比較試験の結果に基づいており、患者への説明や医師の治療選択にとっては直接比較する実薬対照試験が必要であった。Lancet誌オンライン版2022年6月11日号掲載の報告。386例をウステキヌマブ群とアダリムマブ群に無作為化 研究グループは、生物学的製剤による治療歴のない18歳以上の中等症~重症活動期クローン病患者を、ウステキヌマブ群またはアダリムマブ群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。適格基準は、クローン病活動指数(CDAI)スコアが220~450点、生物学的製剤未使用で従来の治療が無効または不耐容(あるいは副腎皮質ステロイド依存性)、ベースラインの内視鏡評価で1つ以上の潰瘍を有する患者とした。 ウステキヌマブ群は、約6mg/kgを初日(Day 0)に静脈内投与し、その後56週まで8週に1回90mgを皮下投与した。また、アダリムマブ群は、初日に160mg、2週目に80mg、その後56週まで2週に1回40mgを皮下投与した。いずれも単剤投与とし、投与量は変更しないこととした。 主要評価項目は、無作為割り付けされた全患者(intention-to-treat集団)における52週時の臨床的寛解率(CDAIスコア<150を達成した患者の割合)であった。 2018年6月28日~2019年12月12日の間に、633例が適格性を評価され、386例がウステキヌマブ群(191例)またはアダリムマブ群(195例)に割り付けられた。52週時の臨床的寛解率はウステキヌマブ群65%、アダリムマブ群61% ウステキヌマブ群では191例中29例(15%)、アダリムマブ群では195例中46例(24%)が52週時までに治療を中止した。 52週時の臨床的寛解率は、ウステキヌマブ群65%(124/191例)、アダリムマブ群61%(119/195例)であり、両群間に有意差は認められなかった(群間差4%、95%信頼区間[CI]:-6~14、p=0.42)。 安全性については、両群ともこれまでの報告と一致していた。重篤な感染症は、ウステキヌマブ群で191例中4例(2%)、アダリムマブ群で195例中5例(3%)が報告された。試験開始後52週時までの死亡例はなかった。

10436.

第114回 コロナ治療薬の「緊急承認」、日米における決定的な違いとは

ほっとしたと言うのが正直なところだ。厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会は22日、塩野義製薬が製造販売を申請していた新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)治療薬候補で3CLプロテアーゼ阻害薬の「エンシトレルビル (商品名:ゾコーバ)」の緊急承認審議で当座の承認を見送ったというニュースについてである。従来の国内の新薬承認制度は、通常の承認に加え、条件付き早期承認制度、コロナ禍で何度も発動されてきた特例承認制度があったが、今年5月の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)改正で緊急承認制度が新設された。今回のエンシトレルビルはこの緊急承認制度を初めて利用したものだった。当初は今年2月に条件付き早期承認制度を使って承認申請が行われたが、緊急承認制度の新設に伴いこちらの制度適応に切り替えられた。この1件は週刊誌の記者などから、「塩野義の件は特例承認で対応できないのですか?」と聞かれることが多い。しかし、読者の皆さんもご存じかと思うが、結論から言えば「イエスでもあり、ノーでもある」が正解である。特例承認は薬機法第14 条の3の第1項で定めた(1)疾病のまん延防止等のために緊急の使用が必要、(2)当該医薬品の使用以外に適切な方法がない、(3)海外で販売等が認められている、の3要件を満たすことが条件となる。ちなみに(3)については、正式な製造承認ではない米食品医薬品局(FDA)の緊急使用許可(EUA)なども該当する。内資系製薬企業の多くにとって、特例承認制度は決定的に「不利」な部分がある。具体的には(3)だ。もしエンシトレルビルが日本に先んじて海外で何らかの形で承認されていれば、制度活用は可能である。しかし、日本より先に海外で承認を取れるようなパワー、具体的には海外で大規模臨床試験を迅速に実施できる体制がある内資系製薬企業は、かなりひいき目に見てようやく武田薬品が該当するくらいである。つまり内資系製薬企業にとって特例承認制度は「絵に描いた餅」である。では当初、塩野義製薬が目指した条件付き早期承認制度はどうか? これは以下の4条件すべてを満たすことが求められる。致死的疾患、進行が不可逆的で日常生活に著しい影響を及ぼす疾患、その他も含め総合的に評価して適応疾患が重篤既存の治療法、予防法または診断法がない、あるいは有効性、安全性、肉体的・精神的な患者負担の観点から、既存の治療法、予防法または診断法よりも医療上の有用性が優れている検証的臨床試験(すなわち第III相試験)が実施困難、実施可能でも患者数が少ないことなどで実施に相当期間を要する検証的臨床試験以外の臨床試験などの成績により、一定の有効性、安全性が示されている4条件を注意深く見ればわかるが、塩野義製薬によるエンシトレルビルに関する条件付き早期承認制度を通じた申請は、そもそもがかなりの拡大解釈、言ってしまえば「無理筋」である。まずこの制度が想定している疾患は、パンデミックを引き起こす感染症のような緊急性のある疾患よりはむしろ希少疾患であり、新型コロナは限りなくシロ(該当しない)に近いグレーである。しかも、新型コロナの経口治療薬は塩野義製薬による申請時点で、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)、ニルマトレルビル/リトナビル(同:パキロビッド)が存在している。そして何よりも決定的なのは本連載第101回でも触れたように、第IIb相臨床試験で有意なウイルス量の減少は認められたものの、総合的な臨床症状改善(12症状スコア)では有意差は認められていない。後者については重症化しにくいオミクロン株感染者、かつ重症化リスクの有無は関係無しで行われた試験であるため、それでも同株に特徴的な呼吸器症状部分だけでは有意差があった点を考慮すべきとの意見もあるが、それはやや我田引水である。その意味では新設された緊急承認制度は、ほぼFDAのEUAのようなもので少なくとも申請条件だけでみれば現在のエンシトレルビルにとっては好都合だ。まず特例承認制度で必須の海外での承認は不要である。既存の治療法などの有無についても、ご丁寧にも「対象患者の重症度や投与方法等が同一であっても、作用機序が異なる場合には、既承認薬が効果不十分である患者に対する有効性が期待できる可能性があるため、臨床的に必要であると判断できる場合がある」と厚生労働省の通知に記載されている。また、条件付き早期承認では第III相以前の試験で「一定の有効性、安全性が示される」ことが必須だが、緊急承認制度は安全性については条件付き早期承認制度と同基準であるものの、有効性は既存のデータや医学的知見から、合理的に推定できれば良い。ウイルス量の減少は確認されながら、臨床症状改善では有意差が認められたとは言い難い、現状「いまいち感」のエンシトレルビルにとってはまさに救世主的な制度だ。踏み込んで言えば、エンシトレルビルのためのような制度と言っても良い。しかし、冒頭で触れたように22日の審議では承認は先送りとなった。審議会では「今は流行が落ち着いているが、今後第7波や新たな変異株が登場する懸念もあるなかで、治療の選択肢を持っておくことは重要」「ウイルス量が減少すれば、実効再生産数が小さくなることが期待できる」と前向きなコメントがあった一方、「ウイルス量を減せても、臨床症状の改善は示されていないような曖昧な状況でこの薬を使うのはどうなのか」「経口薬は3つ目、プロテアーゼ阻害薬としても2つ目で緊急承認制度の要件を満たしていると言えるのか」と消極的な意見もあり、結論を得るに至らなかったという。私自身は今回の緊急承認制度について、日本になかったFDAのEUAとほぼ同等の緊急時に即した制度ができたという点では喜ばしいとは考えている。もっとも緊急承認制度とEUAは同じ仮免許でも抱えている社会背景が違う点では悩ましいとも考えている。というのも緊急承認制度は薬機法第14条の2の2の第1項で「その適正な使用の確保のために必要な条件及び2年を超えない範囲内の期限を付して」承認を与えることができるとし、この期限について同条第3項で「1年を超えない範囲内において延長することができる」と定めている。単純に言えば、2年以内、遅くとも3年未満で第III相臨床試験の結果を提出せよということだ。一見それほど高くないハードルにも思えそうだが、そうとは言い切れない。ファイザーの新型コロナワクチン(同:コミナティ)はアメリカを中心とする地域で、わずか4ヵ月程度で4万人を超える第III相試験の被検者を集めることができた。また、新型コロナパンデミック当初の2020年3月、FDAは抗マラリア薬のクロロキン、ヒドロキシクロロキンに新型コロナ治療薬としてのEUAを与えながら、わずか3ヵ月弱でそれを取り消している。大規模臨床試験の結果が短期間で得られたからである。しかし、日本の臨床試験環境はアメリカとはまったく違う。日本の製薬企業のパワーと日本の臨床試験に対する国民意識を考えれば、疾患の種類にかかわらず2年で第III相試験の結果を得るのはなかなか厳しいのではないだろうか。つまり日本では、緊急承認された治療薬は最悪2年前後の期間を目一杯現場で使用したうえで、最終的に「有効性は認められませんでした」という結果もありうる。しかも、過去に使われた薬剤費はかなりの部分を公的に負担する。その意味で実は緊急承認制度とは謳っていてもかなり慎重な議論が必要だろう。こうした懸念を持っているからこそ、今回の審議の結果を一定の安堵感を持って受け止めている。むしろこの薬については現在進行中と言われる試験結果を待ち、それがボジティブだった時に満を持して登場して欲しいと切に願う。

10438.

脳腫瘍診療ガイドライン 小児脳腫瘍編 2022年版

小児脳腫瘍編として代表的な6腫瘍型を収載!2019年版に収載されたSEGAを含め、代表的な6腫瘍型を収載した。小児がん領域では、脳腫瘍は白血病に次いで2番目に発症頻度が高く、最も予後不良である。また、腫瘍型によって生物学的悪性度や好発年齢・好発部位、治療反応性に大きく異なることから、小児脳腫瘍の適切な治療法に関する情報提供を目的として作成された。関連学会、患者団体にもご協力いただき、脳腫瘍診療に臨む医療者に役立つ内容となっている。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    脳腫瘍診療ガイドライン 小児脳腫瘍編 2022年版定価4,400円(税込)判型B5判頁数272頁・図数:10枚・カラー図数:1枚発行2022年5月編集日本脳腫瘍学会監修日本脳神経外科学会電子版でご購入の場合はこちら

10439.

NSCLCに対するペムブロリズマブ術後補助療法の第III相試験サブグループ解析(KEYNOTE-091/PEARLS)/ASCO2022

 KEYNOTE-091試験(EORTC-1416-LCG/ETOP-8-15-PEARLS)のサブグループ解析から、ペムブロリズマブの非小細胞肺がん(NSCLC)の術後補助療法は、術式や腫瘍サイズ、リンパ節転移や術前補助療法などを問わずに有用であることが示された。英国・The Royal Marsden NHS Foundation TrustのMary E.R. O'Brien氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。 KEYNOTE-091試験は、Stage IB~IIIAの切除後NSCLCに対する術後補助療法としてのペムブロリズマブの有用性を評価した無作為化第III相試験である。中間解析においてPD-L1の発現状態に関わらず無病生存期間(DFS)を有意に延長した一方、TPS≧50%集団では有意な差を認めなかったことがプレスリリースで発表されている。今回は、術式、がんの状態、術前補助療法の有無などのサブグループ解析とともに具体的な結果も示されている。・対象:(TMN第7班による)Stage IB(≧4cm)からStage IIIAの完全切除NSCLC(1,117例)・試験群:外科的切除後にペムブロリズマブ200mg 3週ごと18回まで投与(590例)・対照群:治療薬と同様のスケジュールでプラセボを投与(587例)[主要評価項目]全集団のDFS、PD-L1 TPS≧50%のDFS[副次評価項目]PD-L1 TPS≧1%のDFS、全集団、PD-L1 TPS≧50%、≧1%の全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・全体集団DFS中央値は、ペムブロリズマブ群53.6ヵ月、プラセボ群42.0ヵ月、18ヵ月DFSはそれぞれ73.4%と64.3%であった(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.63~0.91、p=0.0014)。・PD-L1 TPS≧50%のDFS中央値はペムブロリズマブ群、プラセボ群とも未到達、18ヵ月DFSはそれぞれ71.7%と70.2%であった(HR:0.82、95%CI:0.57~01.18、p=0.14)。・全集団のOS中央値はペムブロリズマブ群、プラセボ群とも未到達、18ヵ月OSはそれぞれ91.7%と91.3%であった(HR:0.87 、95%CI:0.67~1.15、p=0.17)。・DFSのサブグループ解析では、術後補助療法なし、術後補助療法がカルボプラチン+パクリタキセルの集団を除き、術式タイプ、pNステータス、腫瘍サイズなど一貫してペムブロリズマブ群で良好な傾向が認められていた。 著者のO'Brien氏はポスター発表の中で、全集団の有効性と安全性の結果は、Stage IB(≧4cm)からStage IIIAに対するペムブロリズマブの術後補助療法のベネフィットを支持するものだと結んでいる。

10440.

トリフルリジン・チピラシル+ベバシズマブとトリフルリジン・チピラシル単剤の比較/ASCO2022

 転移のある大腸がん(mCRC)に対するトリフルリジン・チピラシルと抗VEGF抗体ベバシズマブの併用療法(FTD/TPI+BEV)は、トリフルリジン・チピラシル単剤療法(FTD/TPI)に比べて優れた有用性を認めるが、好中球減少症のリスクが高いことがメタ解析の結果から示された。国立がん研究センター東病院の吉野 孝之氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。トリフルリジン・チピラシルの併用療法は単剤療法に比べて良好な結果 トリフルリジン・チピラシル単剤療法は、難治性のmCRCに対する標準治療として広く普及している。一方で、トリフルリジン・チピラシルと抗VEGF抗体ベバシズマブの併用療法については、難治性mCRC患者を対象とした第I相および第II相試験においてその有用性と忍容性が示されている。しかし、トリフルリジン・チピラシル単剤療法とトリフルリジン・チピラシルと抗VEGF抗体ベバシズマブの併用療法を直接した臨床研究はほとんどない。本検討では、MEDLINE、EMBASE、Cochrane Libraryから検索した875文献から、PRISMフローチャートを用いて29の文献(RCT:5文献、非RCT:11文献、前向き観察研究:10文献を含む)を抽出してメタ解析を行い、両治療法の有効性と安全性について評価した。・対象:トリフルリジン・チピラシル単剤療法またはトリフルリジン・チピラシルと抗VEGF抗体ベバシズマブの併用療法が投与されたmCRC 患者、1万285例・試験群:トリフルリジン・チピラシルと抗VEGF抗体ベバシズマブの併用療法・対照群:トリフルリジン・チピラシル単剤療法・評価項目:病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、有害事象(AE)など トリフルリジン・チピラシル単剤療法とトリフルリジン・チピラシルと抗VEGF抗体ベバシズマブの併用療法の有効性と安全性について評価した主な結果は以下のとおり。・有効性の情報がプールされたデータ解析からは、試験群は対照群に比べて良好なDCR、PFS、OSの結果が示されていた。・両群の有効性について比較した唯一のRCT(第II相EudraCT試験:n=93)において、試験群と対照群のDCRはそれぞれ67%、51%で、リスク比(RR)は1.32(95%信頼区間[CI]:0.94~1.86、p=0.11)であった。・PFS中央値はそれぞれ4.6ヵ月と2.6ヵ月で、ハザード比(HR)は0.45(95%CI:0.29~0.72、p=0.0015)であった。・OSの中央値はそれぞれ9.4ヵ月と6.7ヵ月で、HRは0.55(95%CI:0.32~0.94、p=0.03)であった。・安全性の情報の事後解析からは、試験群と対照群でGrade3以上の発熱性好中球減少症(7% vs.3%)、無力症/倦怠感(4% vs.4%)、下痢(6% vs.2%)、悪心(5% vs.1%)、および嘔吐(3% vs.1%)の発現率は同程度だったが、Grade3以上の好中球減少症に関しては、対照群に比べて試験群で発現頻度が高かった(43% vs.29%)。また、AEによる中止率は、両群間で差は認められなかった。

検索結果 合計:35155件 表示位置:10421 - 10440