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術前化学療法とデュルバルマブの併用がNSCLCのpCRを改善(AEGEAN)/AZ

 英国アストラゼネカは2022年6月30日、第III相AEGEAN試験の良好な解析結果概要を発表した。同試験の中間解析において、切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対し、デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)と術前化学療法の併用療法は、術前化学療法単独と比較して、病理学的完全奏効(pCR)の統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示した。 さらに、主要な病理学的奏効(mPR)の統計学的に有意な改善も認められた。同試験は予定通り継続し、もうひとつの主要評価項目である無イベント生存期間(EFS)を評価する。 術前化学療法にデュルバルマブを追加した場合の安全性および忍容性は、既知のプロファイルと一貫しており、化学療法単独との比較で、手術可能な患者数の減少は認められなかった。 世界のNSCLC患者の最大30%が、根治目的の切除可能な早期段階で診断されるにもかかわらず、ステージIIの患者の5年生存率は56〜65%、ステージIIIでは24〜41%である。 今回得られたpCRデータは各国の規制当局と共有され、EFSの試験結果が得られ次第、学会で発表される予定である。

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生後3ヵ月からのアレルゲン性食物摂取、食物アレルギー抑制か/Lancet

 生後3ヵ月からの補完的なアレルゲン性食物の導入により、36ヵ月後の食物アレルギーの発生が抑制されることが、ノルウェー・オスロ大学病院のHavard Ove Skjerven氏らが一般集団を対象に実施した「PreventADALL試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年6月25日号で報告された。北欧2ヵ国3施設のクラスター無作為化試験 PreventADALLは、一般集団の幼児への早期食物導入と皮膚軟化剤の塗布により、食物アレルギーのリスクが低減するかの検証を目的とする2×2ファクトリアルデザインのクラスター無作為化試験。2015年4月14日~2017年4月11日の期間に、ノルウェーの2施設(オスロ大学病院、Ostfold病院トラスト)とスウェーデンの1施設(カロリンスカ大学病院)で参加者の登録が行われた(オスロ大学病院などの助成を受けた)。 出産前の18週の時点で、3施設の1つで超音波検査を受けた妊婦に試験への参加が呼び掛けられた。92の居住地域と8つの3ヵ月単位の時期をクラスターとし、各施設の産科病棟で、出生時に適格基準を満たした新生児が次の4つの群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。 (1)非介入群、(2)皮膚介入群(皮膚軟化剤と入浴剤・顔用クリームを、生後2週~<9ヵ月の期間に、いずれも週4回以上)、(3)食物介入群(生後3ヵ月から、補完食としてピーナツ、牛乳、小麦、卵を摂取)、(4)複合介入群(皮膚介入と食物介入の双方を行う)。 臨床評価を行う試験担当者は、4つの群の割り付け情報を知らされなかった。 主要アウトカムは、生後36ヵ月の時点での介入食物(ピーナツ、牛乳、小麦、卵)へのアレルギーとされた。安全上の懸念もなかった 女性2,697人による2,701回の妊娠で出生した2,397人の幼児が登録され、2,394人が解析に含まれた。非介入群が596人、皮膚介入群が574例、食物介入群が641人、複合介入群は583人であった。 44人(48件)が食物アレルギーと診断された。内訳は、非介入群が14人(2.3%)、皮膚介入群が17人(3.0%)、食物介入群が6人(0.9%)、複合介入群は7人(1.2%)であった。 ピーナツアレルギーと診断された小児は32人(非介入群10人、皮膚介入群13人、食物介入群4人、複合介入群5人)と最も多く、次いで卵アレルギーが12人(4人、3人、2人、3人)、牛乳アレルギーが4人(2人、1人、1人、0人)であり、小麦アレルギーは認めなかった。 食物アレルギーの発生率は、食物介入群が非食物介入群に比べて低かった(群間リスク差:-1.6%[95%信頼区間[CI]:-2.7~-0.5]、オッズ比[OR]:0.4[95%CI:0.2~0.8])。一方、食物アレルギーの発生に関して、皮膚介入群と非皮膚介入群には有意な差はなかった(0.4%[-0.6~1.5]、1.3[0.7~2.3])。また、ピーナツアレルギーの発生率は、食物介入群が非食物介入群よりも低かった(p=0.01)が、皮膚介入群と非皮膚介入群に差はなかった(p=0.39)。 1人の小児で食物アレルギーを予防するには、63人の小児へのアレルゲン性食物の曝露を要した。 介入に伴う安全上の懸念はみられなかった。生後6ヵ月時の母乳育児率は、4つの群で同程度であった(85.8~87.9%、p=0.40)。食物介入の導入による重篤なアレルギー反応は観察されず、食物を喉に詰まらせる事例もなかった。 著者は、「生後3ヵ月から、通常食に補完食としてアレルゲン性食物を導入すると、食物アレルギーの予防が可能であることを示唆する十分なエビデンスがあると考えられる」としている。

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ノババックスワクチンに心筋炎・心膜炎の注意喚起/使用上の注意改訂指示

 厚生労働省は7月8日、新型コロナウイルスに対するノババックス製新型コロナウイルスワクチン「組換えコロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン」(商品名:ヌバキソビッド筋注)について、使用上の注意に「重要な基本的注意」の項目を新設し、心筋炎・心膜炎に関して追記するよう改訂指示を発出した。 今回の改訂指示は、第81回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第6回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)(2022年7月8日開催)における審議結果などを踏まえたものとなる。 ワクチンの添付文書における改訂(新設)は以下のとおり。8. 重要な基本的注意心筋炎、心膜炎が報告されているため、被接種者又はその保護者に対しては、心筋炎、心膜炎が疑われる症状(胸痛、動悸、むくみ、呼吸困難、頻呼吸等)が認められた場合には、速やかに医師の診察を受けるよう事前に知らせること。

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抗うつ薬治療抵抗性うつ病に対する増強療法のブレクスピプラゾール最適用量~メタ解析

 ブレクスピプラゾールの増強は、治療抵抗性うつ病の効果的な治療戦略であるといわれているが、その最適な投与量はよくわかっていない。東京武蔵野病院の古川 由己氏らは、他の抗うつ薬の増強療法に用いるブレクスピプラゾールの最適な投与量について、検討を行った。その結果、抗うつ薬治療抵抗性うつ病患者に対する増強療法のブレクスピプラゾールは、1~2mgの用量で有効性、忍容性、受容性の最適なバランスが得られる可能性が示唆された。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2022年6月18日号の報告。 2021年9月16日までに公表された、1つ以上の抗うつ薬治療に反応しない18歳以上のうつ病患者を対象にブレクスピプラゾール増強療法を評価した二重盲検ランダム化プラセボ対照固定用量試験を、複数の電子データベースより検索した。アウトカムは、8週間(範囲:4~12週間)の有効性(治療反応の定義:うつ病重症度50%以上低下)、忍容性(副作用による脱落)、受容性(何らかの理由による脱落)とした。制限3次スプライン解析を用いて、メタ解析(ランダム効果、1段階用量効果)を実施した。 主な結果は以下のとおり。・6研究、1,671例が選択基準を満たした。・用量効果曲線は、約2mg(オッズ比[OR]:1.52、95%信頼区間[CI]:1.12~2.06)まで増加し、その後は3mg(OR:1.40、95%CI:0.95~2.08)まで減少傾向を示した。・用量忍容性曲線の形状は用量効果曲線と同様であり、用量受容性曲線の形状はより単調な増加傾向が認められたが、いずれも信頼帯は広かった。・本研究は該当試験数が少ないため、結果の信頼性が制限される。

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第108回 大規模通信障害を受け、医療機関に代替手段確保を呼び掛け/厚労省

<先週の動き>1.大規模通信障害を受け、医療機関に代替手段確保を呼び掛け/厚労省2.コロナワクチン支援事業、期限を9月まで延長/厚労省3.テクノロジーの活用で、介護の生産性の向上あるか検証へ/厚労省4.診療報酬改定に加え、インフレが病院経営に直撃か/福祉医療機構5.電子処方箋発行にHPKIカードが必須、医薬関係者は早期取得を/厚労省1.大規模通信障害を受け、医療機関に代替手段確保を呼び掛け/厚労省2日に発生したKDDIの大規模な通信障害が長期化し、復旧まで3日ほどかかったことから、厚生労働省医政局は4日、全国の自治体ならびに医療機関に向けて、通信障害が発生した場合でも、診療などに影響が生じることがないよう平時から体制を整備していく必要性を呼び掛けた。医療施設における休日夜間の診療体制を維持するため、職員との連絡手段を確保すること患者からの電話を受信できるよう複数の通信手段を確保し、受信可能な電話番号をホームページに掲載するなどの体制を整備すること在宅医療や訪問看護などを実施している医療施設等において、当該医療施設等が利用している連絡手段が使用できない場合は、固定電話等の代替的な連絡先を患者等に伝えること特にリスクの高い在宅患者等について、患者等との連絡がとれない場合には、別の連絡手段を確保することや、頻回な訪問等による安否確認を行うこと以上を参考に、通信障害が発生した場合であっても診療を継続できるよう周知を求めている。(参考)通信障害時にも診療継続が可能となるよう、在宅患者への「代替的な連絡先」提示などの体制を確保せよ―厚労省(Gem Med)通信障害発生時における通信手段の確保について(厚労省)2.コロナワクチン支援事業、期限を9月まで延長/厚労省厚労省は6日、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業の期限を7月末までから9月末まで延長することを各都道府県に通知した。延長されたのは、「時間外・休日のワクチン接種会場への医療従事者派遣事業」「新型コロナウイルスワクチン接種体制支援事業」。病院への支援として、1日50回以上ワクチン接種を行った場合、1日当たり10万円が交付される。また、1日50回以上の接種を週1日以上達成する週が4週間以上ある場合、追加で医師1人1時間当たり7,550円などが交付される(集団接種会場への医療従事者派遣と同額)。診療所への支援としては、期間中に週100回以上の接種を4週間以上行った場合、達成した週における接種1回当たり2,000円を、同様に150回以上を4週間以上行った場合は1回当たり3,000円を交付する。この要件を満たさずとも、1日50回以上の接種を行った場合には、1日当たり定額で10万円が交付される。(参考)コロナワクチン接種推進に向けた補助(緊急包括支援事業)、期限を「9月」まで延長—厚労省(Gem Med)医療機関のワクチン接種、財政支援の期間延長 9月末まで、10月以降は今後判断(CB news)令和4年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施に当たっての取扱いについて(厚労省)3.テクノロジーの活用で、介護の生産性の向上あるか検証へ/厚労省厚労省は、持ち回り開催の社会保障審議会介護給付費分科会において、テクノロジーの活用により介護サービスの質の向上および業務効率化を推進していく観点から、実証研究の結果なども踏まえ、見直しを行うことを明らかにした。具体的には、見守り機器等を活用した夜間見守り、介護ロボットの活用などを実際に実証事業から得られたデータの分析を行い、次期介護報酬改定の検討に向けた、エビデンスの収集を行う。これらのテクノロジーの導入によって、ケアの質が適切に確保されているかどうか、介護職員の働き方や職場環境がどう改善したかなどについて10月以降に事後検討を行う。(参考)テクノロジー活用等による生産性向上の取組に係る効果検証について(厚労省)見守り機器活用など4つのテーマで効果実証へ 次期介護報酬改定の検討材料に、厚労省(CB news)4.診療報酬改定に加え、インフレが病院経営に直撃か/福祉医療機構福祉医療機構が2022年6月に行った病院経営動向調査の結果によると、一般病院における医業収益のDI(増加病院と減少病院の割合の差:%ポイント)は、前回調査から15%ポイント低下した。一方、医業費用のDIは前回調査から15%ポイント上昇、人件費増減のDIは前回調査から10%ポイント上昇しているなど、医療機関が診療報酬改定の影響だけでなく、物価高の影響を受けていることが明らかとなった。医療機関にとっては、電気代、水道代に加え、病院食の材料費の値上げが続いており、経営に対する影響が強まっていると考えられる。(参考)病院経営動向調査の概要(福祉医療機構)一般病院の医業収益、診療報酬改定で減収病院が多数に 福祉医療機構調査、改定直前の見込み下回るも費用増(CB news)コスト圧縮限界、病院給食明らかに赤字 物価高騰が委託先も直撃(同)5.電子処方箋発行にHPKIカードが必須、医薬関係者は早期取得を/厚労省厚労省は、ホームページに電子処方箋の概要案内を掲載した。電子処方箋の導入は2023年1月からで、複数の医療機関や薬局で直近に処方・調剤された情報の参照、それらを活用した重複投薬チェックなどができるようになる。患者はマイナンバーカードがなくとも、従来の健康保険証を利用して電子処方箋の発行を受けられるが、医療機関が発行するためには、医療機関において顔認証付きカードリーダーの準備が必要(オンライン資格確認の仕組みを活用するため)であり、日本医師会 電子認証センターでHPKIカードの発行手続きが必要となる。このため厚労省は、HPKIカードの早期取得を医師や薬剤師に働きかけると共に、医療機関側にオンライン資格確認のために顔認証付きカードリーダーの補助金を活用して整備を求めていく。なお、HPKIカードの申請には、申請書と住民票、身分証のコピー(運転免許証、マイナンバーカード)、医師・薬剤師免許のコピー、顔写真が必要だ。(参考)電子処方箋 概要案内【病院・診療所】(厚労省)オンライン資格確認導入に向けた準備作業の手引き(同)医師資格証(HPKIカード)新規お申込み(日本医師会 電子認証センター)電子処方箋導入補助金、1施設当たり7.7万-162.2万円 厚労省、HPKIの早期取得・オンライン資格確認導入促す(CB news)

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第51回 期待度数がわかれば簡単! クラメール連関係数の計算法【統計のそこが知りたい!】

第51回 期待度数がわかれば簡単! クラメール連関係数の計算法今回は、前回第50回で学んだ、クロス集計表の表側・表頭の2項目の関連性の強さを表す指標であるクラメール連関係数(Cramer's coefficient of association)の計算方法について解析します。■期待度数医師の所属する施設形態とある循環器疾患治療薬の処方の集計表(表1)において回答人数の横計と縦計を掛け、全回答人数で割った値を「期待度数」と言います。表1 事例の集計表■クラメール連関係数まず、表2のように期待度数の横%を算出します。表2 期待度数の横%期待度数の横%表はどの医師の所属施設の経営形態も全体と一致します。このような集計結果が得られた場合、医師の所属施設の経営形態と処方薬剤は「関連性がまったくない」と言え、クラメール連関係数は0となります。調査より得られたクロス集計表の回答人数を「実測度数」と言います。実測度数と期待度数の値を比べ、値が一致すればクラメール連関係数は0、値の差が大きくなるほどクラメール連関係数は大きくなると考えます。この考えに基づき、表3に示す式で各セルの値を計算します。表3 係数計算の一覧表 セルの値を合計して得られた値をカイ二乗値といいます。クラメール連関係数は“r”は、カイ二乗値を用いた次の計算式で求められます。※kはクロス集計表2項目のカテゴリー数で小さいほうの値(この事例の場合はどちらもカテゴリー数は3つなので3となります)上記の計算式に数値を代入することで、この場合のクラメール連関係数は、下記の通り求めることができます。クラメール連関係数はいくつ以上あれば関連性があるという統計学的基準はありません。クロス集計表を見る限り関連性があるように思えても、クラメール連関係数の値は大きな値を示さないことを考慮して、一般的には、“0.1”を境目にして「“0.1以上”であれば関連がある」と解釈します。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その1)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その2)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その3)

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創部の消毒【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q23

創部の消毒Q23症例とくに既往、アレルギー歴のない28歳男性、自宅でリンゴの皮剥きをしていた際に誤って左中指DIP腹側を切ってしまった。左中指DIP腹側に深さ3~4mm程度、長さ20mm程度の切創あり。明らかな神経障害や動脈性出血、腱損傷はなさそう。バイタルは安定しているが、止血をえられず、縫合処置が必要と判断される。外科医のいる二次救急病院に送るのもためらわれるため、自分で縫ってみる。非滅菌手袋もつけたし、指ブロックのうえ、創部を水道水でしっかり洗ったぞ。あとは…縫合前に消毒か?「看護師さん、ポビドンヨードある?」

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事例003 B001-3 生活習慣病管理の算定【斬らレセプト シーズン3】

解説2022年度の改定では、「B001-3 生活習慣病管理料」(以下「同管理料」)の算定を普及させようと算定要件に大きく4つの変更が加えられました。同管理料の根幹に係わる対象病名「脂質異常症、高血圧症並びに糖尿病」にかかる治療計画の作成とその説明、ならびに患者の同意が必要なことに変更はありません。1)多職種の実施について、医師が作成した治療計画に基づいて提供される患者への指導などは「看護師、薬剤師、管理栄養士等」がそれぞれの専門分野において実施することが可能とされました。例えば、服薬や栄養管理に係る指導や実施状況の把握は、医師自らが行わずに薬剤師や管理栄養士が行っても良いとなりました。「等」には、理学療法士や保健所の職員または他の保険医療機関の職員も含まれますが、算定されていない事例を見受けます。ご留意ください。2)糖尿病または高血圧症の患者について、管理方針を変更した場合にその理由と内容などを診療録に記載しなければならないことに変更はありませんが、その患者数を数えて行っていた定期的な記録と報告は必要なくなりました。3)薬剤料について、患者ごとに大きく異なっている実態が明らかとなったことを理由に、投薬に係る費用が同管理料の包括評価の対象から除かれました。同管理料に見合わず持ち出していた薬剤料が解消されます。旧点数からその分を除く改定となっています。4)情報通信機器を使用した再診時に実施した同管理料は算定できなくなりました。検査料が包括されており、定められた検査値を治療計画に記載することが求められているために「検査等を実施しなければ医学管理として成立しない管理料」と認定されたからです。医療職が患者の居宅に訪問して対面で総合的な治療管理などを行った場合は算定できます。薬剤料の出来高算定と多職種との連携が可能となったことは、医師の負担軽減に寄与しながら、きめの細かい疾患管理が可能となるものと考えられます。

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ASCO2022 レポート 老年腫瘍

レポーター紹介ここ2年ほど、ASCOでは、「高齢者総合的機能評価+脆弱な部分をサポートする診療」の有用性を評価するランダム化比較試験が続けて発表され、老年腫瘍の領域を大いに盛り上げた。今年のASCOでは、老年腫瘍に関するpivotal studyは少なかったものの、その数および質は高まっているように思えた。その中から、老年腫瘍の観点から興味深い研究を抜粋して紹介する。PS:2または70歳以上の進行非小細胞肺がんに対するカルボプラチン併用療法とニボルマブ+イピリムマブのランダム化比較第III相試験(Energy-GFPC 06-2015: #90111))今回のASCOにて、CheckMate-227の長期フォローアップの結果が公表された2)。具体的には、PD-L1陽性の進行非小細胞肺がんに対してニボルマブ+イピリムマブを投与された集団は化学療法と比較して長期生存が認められた(5年OS:24%vs.14%)。しかし、CheckMate-227の対象集団はPS:0~1であり、75歳以上の高齢者は10%程度しか登録されていないため、いわゆる脆弱な集団において、ニボルマブ+イピリムマブが有用なのかはわかっていない。実は、セカンドライン以降のニボルマブにおいても同様のクリニカルクエスチョンがあり、欧州における承認条件として実施されたCheckMate-171という、PS:2および70歳以上の高齢者進行非小細胞肺がんを対象とした単群試験が行われており、2020年にEuropean Journal of Cancerにその結果が掲載されている(いずれの集団においてもニボルマブの忍容性が示された)3)。PS:2および70歳以上の高齢者のみを対象としているのは、いわゆる「脆弱な集団」でもニボルマブが有用か否か評価したかったようである。前置きが長くなってしまったが、今回のASCOにて、CheckMate-171のクリニカルクエスチョンと同様に、PS:2および70歳以上の高齢者を対象として、カルボプラチン併用療法とニボルマブ+イピリムマブの有効性を評価するランダム化比較試験の結果が発表された。主な適格規準は、IV期または術後再発の非小細胞肺がん、「70歳以上かつPS:0~1」または「年齢不問かつPS:2」、治療歴なし、driver mutationなしなど。登録した患者は、標準治療群(化学療法群)および試験治療群(ニボルマブ+イピリムマブ群)に1対1で割り付けられた。Primary endpointを全生存期間(overall survival:OS)として、化学療法群と比較して、ニボルマブ+イピリムマブ群が優越性を示すことができるかを検証するデザインであった。当初、予定登録患者数は242例であったが、PS:2の集団の予後が不良であったため、効果安全評価委員会の勧告にて登録が途中で中止されている。217例が登録され、不適格例1例を除く216例が解析対象となった。結果、化学療法群と比較して、ニボルマブ+イピリムマブ群の生存曲線は上回っていたものの、ハザード比[HR]は0.85(95%信頼区間[CI]:0.62~1.16、p=0.2978)と優越性を示すことはできなかった。サブグループ解析において、「年齢不問かつPS:2」では化学療法群が有効な傾向であり、「70歳以上かつPS:0~1」ではニボルマブ+イピリムマブ群の方が有効な傾向にあった。セカンドライン以降のニボルマブの有用性を評価したCheckMate-171でも、「年齢不問かつPS:2」と比較して「70歳以上かつPS:0~1」はOSが良好(MST:5.2ヵ月vs.10.0ヵ月)であり、「75歳以上かつPS:0~1」の集団にいたってはMSTが11.2ヵ月と最も良好であった。臨床試験に登録する高齢者は一般的な高齢者よりも元気である可能性はあるとはいえ、本試験においてもCheckMate-171と同様の傾向がみられたことから、やはり「PS:2」と「暦年齢で規定された高齢者」を1つの集団とするのは無理があるのかもしれない。日常診療と同じように、「脆弱な集団」は暦年齢以外で規定する必要がありそうである。70歳以上の乳がん患者に対する術後補助化学療法のランダム化比較試験(ASTER 70s trial: #5004))HER2陽性の高齢者乳がん患者に対する術後補助化学療法については、本邦で実施されたランダム化比較試験の結果が2020年のJCOに掲載されている(試験治療群であるトラスツズマブ+化学療法は、標準治療群であるトラスツズマブ単剤と比較して全生存期間において非劣性を示せなかった)5)。今回、フランスの臨床研究グループが、ER陽性、HER2陰性の高齢者乳がん患者に対する術後補助化学療法の有用性を評価するランダム化比較試験の結果を公表した。結果だけみるとnegative studyではあるが、本試験は高齢がん患者を対象とする臨床試験デザインとしてはモデルになりうると考えるため、ここで紹介する。主な適格規準は、70歳以上の乳がん術後患者、ER陽性、HER2陰性、術後補助化学療法を検討されているなど。遺伝子発現解析としてGenomic Grade Index(GGI)を用いられており、再発リスクが高いとされる集団(GGIがhighまたはequivocal)はランダム化比較試験に登録、再発リスクが低いとされる集団(GGIがlow)は前向き観察研究に登録された。ランダム化比較試験に登録した患者は、標準治療群(エストロゲン単独療法)と試験治療群(化学療法4コース後にエストロゲン単独療法)に1対1に割り付けられた。割付調整因子は、pN、施設、G8(高齢者における脆弱性のスクリーニングツール)。Primary endpointをOSとして、標準治療群と比較して、試験治療群の優越性を検証するデザインであった。Secondary endpointsは、乳がん特異的生存期間や無浸潤疾患生存期間などの一般的なものに加えて、健康関連QOL(QLQ C-30、ELD-14)、費用対効果などであった。前向き観察研究に登録した患者は、ET療法を5年以上実施することとしていた。1,089例の患者がランダム化比較試験に登録され、880例の患者が前向き観察研究に登録された(今回の発表では前向き観察研究の結果は示されなかった)。患者背景として、IADL(手段的日常生活動作)、Mini-Mental State Examination(認知機能)、Charlson Comorbidity Index(併存症)、Lee Index(推定余命)、G8などは両群で大きな差はなかった。結果、標準治療群に対して試験治療群はOSにおいて優越性を示すことができなかった(HR:0.79[95%CI:0.60~1.03、p=0.08])。Grade3以上の有害事象は試験治療群で明らかに多く、治療関連死亡は、標準治療群で1名、試験治療群で3名であった。本試験は、高齢がん患者を対象とする臨床試験のデザインとして興味深い。まず、割付調整因子にG8が含まれている。G8は8つの質問で患者自身の脆弱性を評価するツールであり、14点以下は脆弱の疑いがあると判断される。多くのがん種で、G8は高齢がん患者の予後因子であることが知られているが、G8を割付調整因子にしている高齢者試験は少ない。これは、他に有用な予後因子があるためG8を割付調整因子としていない場合もあるだろうが、G8を日常診療で使用していないため、これを割付調整因子とすることに抵抗がある場合もあるだろう。フランスは老年腫瘍学先進国であり、高齢者機能評価を日常的に行っているため、これを割付調整因子にすることに抵抗がなかった可能性がある。次に、背景因子として、G8、IADL(手段的日常生活動作)、Charlson Comorbidity Index(併存症)、居住状況、Lee Index(推定余命)、ポリファーマシーの有無、Mini-Mental State Examination(認知機能)などを評価している。日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は前4者を高齢者研究では実施することを推奨しているが6)、本試験ではさらに項目を追加している。データを収集することの負担とメリットのバランスは重要だが、フランスでは高齢者機能評価が日常的に行われているため、これらを収集することが過大な負担にならなかった可能性がある。最後に、健康関連QOLとして、高齢がん患者に特異的なEORTC ELD-14を評価している。EORTC ELD-14自体は14の質問に回答するのみだが、EORTC C-30とともに回答する必要があるため、合計44の質問に回答しなくてはならない。これを3ヵ月ごとに回答するというのは患者にとって負担であり、回答割合が低くなる可能性がある。また、これら全てに回答できる集団が果たして一般の高齢者を代表できるのかという疑問もある。とはいえ、高齢がん患者にとってはOSだけでなく健康関連QOLも重要であるため、データの回収割合なども含めて、今後の結果公表が待たれる。PD-L1≧50%の進行非小細胞肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬単剤と免疫チェックポイント阻害薬+化学療法の有効性に関するpooled analysis(#90007))進行非小細胞肺がんの1次治療において、化学療法(chemo群)、免疫チェックポイント阻害薬単剤(IO単剤群)、免疫チェックポイント阻害薬+化学療法(Chemo-IO群)を比較したランダム化比較試験のうち、PD-L1≧50%の集団のみを抜き出して解析したpooled analysisが公表された。ただし、FDAで承認されている薬剤に関する試験のみが対象である。PD-L1≧50%の進行非小細胞肺がん患者3,189例が解析対象とされた(chemo群:1,436例、IO単剤群:455例、Chemo-IO群:1,298例)。今回の発表では、IO単剤群とChemo-IO群を比較した結果が示された。OSの中央値は、Chemo-IO群で25.0ヵ月、IO単剤群で20.9ヵ月(HR:0.82、95%CI:0.62~1.08)、PFSの中央値は、9.6ヵ月vs.7.1ヵ月(HR:0.69、95%CI:0.55~0.87)であった。サブグループ解析において、75歳以上の集団のOSおよびPFSはIO単剤群で良好な傾向であった。対象試験が限定されていること、また、あくまでpooled analysisなのでOSで統計学的な有意差が出なかったことから、この試験の結果をもってIO単剤が標準治療になることはないと考えている。それよりも、老年腫瘍学的には、75歳以上のデータが公表されたことに意義がある。多くの論文では、65歳以上/未満のサブグループ解析しか掲載されてないため、70歳以上や75歳以上の、日常診療で困っている集団に対するデータが乏しいのである。今回、75歳以上の集団でIO単剤群が良好な傾向であった。しかし、75歳以上の集団は185例で1割程度と少ないため、この結果の解釈は注意が必要である。とはいえ、少しでもChemo-IOに不安を覚えるような脆弱な高齢者にIO単剤を勧める根拠にはなりそうである。参考1)Randomized phase III study of nivolumab and ipilimumab versus carboplatin-based doublet in first-line treatment of PS 2 or elderly (≧70 years) patients with advanced non-small cell lung cancer (Energy-GFPC 06-2015 study).2)Five-year survival outcomes with nivolumab (NIVO) plus ipilimumab (IPI) versus chemotherapy (chemo) as first-line (1L) treatment for metastatic non-small cell lung cancer (NSCLC): Results from CheckMate 227.3)Felip E, Ardizzoni A, Ciuleanu T, Cobo M, Laktionov K, Szilasi M, et al. CheckMate 171: A phase 2 trial of nivolumab in patients with previously treated advanced squamous non-small cell lung cancer, including ECOG PS 2 and elderly populations. European journal of cancer (Oxford, England : 1990). 2020;127:160-72.4)Final results from a phase III randomized clinical trial of adjuvant endocrine therapy ± chemotherapy in women ≧70 years old with ER+ HER2- breast cancer and a high genomic grade index: The Unicancer ASTER 70s trial.5)Sawaki M, Taira N, Uemura Y, Saito T, Baba S, Kobayashi K, et al. Randomized Controlled Trial of Trastuzumab With or Without Chemotherapy for HER2-Positive Early Breast Cancer in Older Patients. Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology. 2020:Jco20001846)JCOG高齢者研究委員会 推奨高齢者機能評価ツール7)Outcomes of anti–PD-(L)1 therapy with or without chemotherapy (chemo) for first-line (1L) treatment of advanced non–small cell lung cancer (NSCLC) with PD-L1 score ≥ 50%: FDA pooled analysis.

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オンデキサの臨床的意義とDOAC投与中の患者に伝えておくべきこと/AZ

 アストラゼネカは国内初の直接作用型第Xa因子阻害剤中和剤オンデキサ静注用200mg(一般名:アンデキサネット アルファ[遺伝子組み換え]、以下:オンデキサ)を発売したことをうけ、2022年6月28日にメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、はじめに緒方 史子氏(アストラゼネカ 執行役員 循環器・腎・代謝/消化器 事業本部長)により同部門の新領域拡大と今後の展望について語られた。 AstraZeneca(英国)とアレクシオン・ファーマシューティカルズが統合したことで、今後多くのシナジーが期待されるが、今回発売されたオンデキサはその象徴的なものであると考えている。同部門では、あらゆる診療科に情報提供を行っているため、オンデキサの処方が想定される診療科だけでなく、直接作用型第Xa因子阻害剤を処方している診療科にも幅広く情報提供が可能である。オンデキサが必要な患者さんに届けられるよう、認知拡大や医療機関での採用活動に注力していきたいと述べた。オンデキサは国内初の直接作用型第Xa因子阻害剤中和剤 続いて、国立病院機構 九州医療センター 脳血管・神経内科 臨床研究センター 臨床研究推進部長 矢坂 正弘氏による国内初の直接作用型第Xa因子阻害剤中和剤における臨床的意義と今後の展望が語られた。 心房細動などにより心臓内でできた血栓が脳に詰まることで生じる脳卒中を心原性脳塞栓症という。心原性脳塞栓症は再発率が高いことから、発症リスクの高いCHADS2スコア1点以上の患者では、直接経口抗凝固薬(DOAC)の投与による予防治療が推奨されている1)。DOACは従来の抗凝固薬であるワルファリンに比べ脳梗塞予防効果は同等かそれ以上、大出血発症リスクは同等かそれ以下とされるが、時には生命を脅かす出血あるいは止血困難な出血に至ることもあるため、投与中は出血時の止血対応が重要となる。出血時の対応として中和剤が使用されるが、これまでDOACのうち中和剤があるのはダビガトランのみで、直接作用型第Xa因子に対する中和剤はなかった。今回発売されたオンデキサは、国内初の直接作用型第Xa因子阻害剤中和剤である。オンデキサ投与の有効性と安全性 オンデキサはヒト第Xa因子の遺伝子組換え改変デコイタンパク質で第Xa因子のデコイとして作用し、第Xa因子阻害剤に結合してこれらの抗凝固作用を中和する作用をもつ。 第Xa因子阻害剤(アピキサバン、リバーロキサバン、エドキサバン、エノキサパリン)投与中の第Xa因子活性抑制下で急性大出血を発現した患者を対象にした試験では、評価可能であった有効性解析集団のうちエノキサパリン投与例を除く全体集団324例において79.6%(95%信頼区間[CI]:74.8~83.9%)の患者でオンデキサによる有効な止血効果が得られた。正確な95%CIの下限値が50%を上回ったため、オンデキサによる止血効果が認められた2)。副作用の発現割合は11.9%(57/477例)であり、主な副作用は虚血性脳卒中1.5%(7例)、頭痛1.0%(5例)、脳血管発作、心筋梗塞、発熱、肺塞栓症が各0.8%(各4例)であった2)。DOAC投与中の患者に伝えておくべきこと 止血を適切に行うためには、患者さんが服薬中のDOACを特定しそれに対する中和剤を投与することが重要である。そのため、医療機関と調剤薬局が協力して、DOAC服薬の患者さんに対して、最新のお薬手帳や抗凝固薬のカードを持ち歩いてもらうことや、自身の病名や服薬中の薬剤を家族と共有してもらうことの重要性を伝えていく必要がある、と締めくくった。

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モデルナ2価ワクチン候補、BA.4およびBA.5に強力な中和抗体反応示す

 2022年6月22日、Moderna(米国)はオミクロン株に対する2価追加接種ワクチン候補mRNA-1273.214が第II/III相臨床試験において、すべての被験者でオミクロン株亜種BA.4およびBA.5に対する強力な中和抗体反応を示したことを発表した。 今回公表されたのは、初回接種ならびに1回追加接種が行われた被験者にmRNA-1273.214を50μg追加接種したデータである。発表された主な結果は以下のとおり。・mRNA-1273.214はBA.4/BA.5に対して、感染歴に関係なく、すべての被験者で試験開始前の5.4倍(95%信頼区間[CI]:5.0~5.9)、血清反応陰性被験者の小集団で6.3倍(95%CI:5.7~6.9)の中和抗体価を誘導した。・BA.4/BA.5に対する中和抗体価は、過去に報告されたBA.1に対する中和抗体価の約3分の1であった。・mRNA-1273.214の追加接種の1ヵ月後でも、BA.4/BA.5に対する中和幾何平均抗体価(GMT)は、全被験者で941(95%CI:826~1,071)、血清反応陰性被験者で727(95%CI:633~836)であった。※mRNA-1273(商品名:スパイクバックス筋注)を追加接種ワクチンとして3回目接種に用いる場合について検討した試験結果では、対BA.1では629(95%CI:526~751)、対デルタ株では828(95%CI:738~928)のGMTが誘導されている1)。 Modernaは今回得られたデータとこれまでのデータに基づき、今後数週間のうちに規制当局へmRNA-1273.214の承認申請を予定している。

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fazirsiran、進行性肝疾患の原因物質を強力に抑制/NEJM

 α1アンチトリプシン(AAT)欠乏症は、SERPINA1“Z”変異のホモ接合体(プロテイナーゼ阻害因子[PI]ZZ)に起因する。Zアレルは変異型ATT蛋白質(Z-AATと呼ばれる)を生成し、Z-AATは肝細胞に蓄積して進行性の肝疾患や線維症を引き起こす可能性があるという。RNA干渉治療薬fazirsiranは、血清中および肝内のZ-AAT濃度を強力に低下させるとともに、肝内封入体や肝酵素濃度の改善をもたらすことが、ドイツ・アーヘン工科大学病院のPavel Strnad氏らが実施したAROAAT-2002試験で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年6月25日号で報告された。3群でZ-AAT濃度を評価する第II相試験 AROAAT-2002は、ホモ接合型AAT欠乏症による肝疾患の患者におけるfazirsiranの安全性、薬力学および有効性の評価を目的とする多施設共同非盲検第II相試験であり、3ヵ国(オーストリア、ドイツ、英国)の4施設で、2019年12月19日~2020年10月28日の期間に行われた(米国Arrowhead Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 対象は、年齢18~75歳、PI ZZ遺伝子型を有し、スクリーニング時の局所病理所見に基づき肝線維化がMetavir病期分類のF1~F3(または他の分類でこれに相当するもの)の患者であった。 16例が3つのコホートに登録された。コホート1はfazirsiran 200mg(4例)、コホート2も同200mg(8例)、コホート1bは同100mg(4例)の投与を受けた。 主要エンドポイントは、肝内Z-AAT濃度のベースラインから24週(コホート1および1b)または48週(コホート2)までの変化とし、液体クロマトグラフィー タンデム質量分析法で測定された。肝内Z-AAT蓄積量が83.3%減少 全体(16例)の平均(±SD)年齢は52±14歳で、14例(88%)が男性であった。コホート1の2例が肝硬変(F4)、コホート1bの1例は線維化なし(F0)だった。 全例で、肝内Z-AATの蓄積量が減少した。平均肝内Z-AAT濃度は、ベースラインの61.25±36.39nmol/gから、24または48週時には9.24±9.57 nmol/gへと低下し、減少率中央値は-83.3%(95%信頼区間[CI]:-89.7~-76.4)であった。 また、血清Z-AAT濃度の最低値(6週時)のベースラインからの減少率は、fazirsiran 200mg群(コホート1、2)が-90±5%、同100mg群(コホート1b)は-87±6%で、52週時の血清Z-AAT濃度の減少率は、200mg群が100mg群よりも、わずかだが大きかった。 ベースラインのPAS-D(ジアスターゼ消化PAS[periodic acid-Schiff]染色)検査では、ほとんどの患者で肝内封入体の増加が認められ、平均スコアは7.4点(0~9点、点数が高いほど封入体が多い)であった。fazirsiran治療により、すべての患者で肝内封入体が減少し、24または48週時には平均スコアが2.3点に低下した(減少率69%)。 肝損傷のバイオマーカーも低下した。平均ALT値は、ベースラインではすべてのコホートが正常上限値(55単位/L)を超えていたが、16週時までにすべてのコホートが正常上限値を下回り、52週まで正常範囲内で推移した。AST値もALT値と同程度に低下した。また、平均γ-グルタミルトランスフェラーゼ値は、8例中4例(50%)がベースラインで正常上限値を超えていたが、52週時にはいずれも正常値となった。 線維化の改善(≧Stage1の低下)は、fazirsiran 200mg群(コホート1、2)の12例中7例(肝硬変の2例を含む)で達成され、同100mg群(コホート1b)の3例では改善は認められなかった。一方、コホート2の2例は48週までに線維化が進行した(いずれもF2からF3へ)が、2例ともPAS-D検査で肝内封入体のスコアが大幅に改善していた(ベースラインのそれぞれ9点と4点から、48週時に2例とも0点に)。 試験や薬剤の中止につながる有害事象は認められなかった。コホート1と2の4例で重篤な有害事象(ウイルス性心筋炎、憩室炎、呼吸困難、前庭神経炎)が発現したが、いずれも回復し、拡大試験でfazirsiran治療を継続した。 著者は、「すべての患者で肝内Z-AAT濃度が低下したにもかかわらず、この変異蛋白質濃度の低下は、治療開始から24または48週時における全例の線維化の退縮には結び付かなかった。最終的に、AAT欠乏症による肝疾患患者の治療目標および臨床的利益は、線維化の予防または退縮と考えられることから、fazirsiranの線維化に対する効果を確認するために、より多くの症例とより長い治療期間のプラセボ対照臨床試験を行う必要がある」としている。

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うつ病患者における抗うつ薬の継続と慢性疼痛発症率~日本でのレトロスペクティブコホート

 うつ病と慢性疼痛との関連は、よく知られている。しかし、うつ病患者における抗うつ薬の治療継続およびアドヒアランスと慢性疼痛発症との関連は不明なままであった。これらの関連を明らかにするため、ヴィアトリス製薬のShingo Higa氏らは、日本国内のデータベースを用いたレトロスペクティブコホート研究を実施した。その結果、うつ病患者に対する6ヵ月以上の抗うつ薬の継続処方は、慢性疼痛発症を低減させる可能性があることが示唆された。Journal of clinical psychopharmacology誌2022年5-6月号の報告。慢性疼痛発症リスクは継続群のうつ病患者で有意に低かった 日本の保険請求データベースより、2014年4月~2020年3月に抗うつ薬を処方された成人うつ病患者のデータを抽出した。抗うつ薬の継続処方期間(継続群:6ヵ月以上、非継続群:6ヵ月未満)およびMPR(medication possession ratio、アドヒアランス良好群:80%以上、アドヒアランス不良群:80%未満)に応じて患者を分類した。アウトカムは、慢性疼痛発症とし、その定義は、3ヵ月超の鎮痛薬継続処方および抗うつ薬の継続処方中断後の疼痛関連診断とした。慢性疼痛発症リスクを、ペア群間で比較した。 うつ病患者における抗うつ薬の治療継続と慢性疼痛発症との関連を研究した主な結果は以下のとおり。・対象うつ病患者は、1,859例(継続群:406例、非継続群:1,453例およびアドヒアランス不良群:1,551例、アドヒアランス不良群:308例)であった。・重み付き回帰(standardized mortality ratio weighting)を介して交絡因子を調整した後、慢性疼痛発症リスクは、非継続群よりも、継続群のうつ病患者で有意に低かった(ハザード比:0.38、95%信頼区間:0.18~0.80、p=0.011)。・アドヒアランス良好群と不良群の間に、有意差は認められなかった。

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急性期虚血性脳卒中へのtenecteplase、標準治療となる可能性/Lancet

 カナダの標準的な血栓溶解療法の基準を満たす急性期虚血性脳卒中の患者において、tenecteplase静注療法は、修正Rankinスケール(mRS)で評価した身体機能に関してアルテプラーゼ静注療法に対し非劣性で、安全性にも差はなく、アルテプラーゼに代わる妥当な選択肢であることが、カナダ・カルガリー大学のBijoy K. Menon氏らが実施した「AcT試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年6月29日号に掲載された。カナダのレジストリ連動型無作為化対照比較試験 AcT試験は、急性期虚血性脳卒中における、血栓溶解療法による再灌流の達成に関して、tenecteplaseの標準治療に対する非劣性の検証を目的とする、医師主導の実践的なレジストリ連動型非盲検無作為化対照比較試験であり、2019年12月~2022年1月の期間に、カナダの22ヵ所の脳卒中施設で参加者の登録が行われた(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、後遺障害の原因となる神経障害を引き起こす虚血性脳卒中と診断され、症状発現から4.5時間以内に来院し、カナダのガイドラインで血栓溶解療法の適応となる患者であった。 被験者は、tenecteplase静注療法(0.25mg/kg、最大25mg)またはアルテプラーゼ静注療法(0.9mg/kg[0.09mgをボーラス投与後、残りの0.81mg/kgを60分で注入]、最大90mg)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、intention-to-treat(ITT)集団における治療後90~120日のmRSスコア0または1の患者の割合とされた。この達成割合の群間差の95%信頼区間(CI)下限値が-5%を超える場合に、非劣性と判定された。主要アウトカム:36.9% vs.34.8%、口舌血管性浮腫はまれ 1,577例(年齢中央値74歳[IQR:63~83]、女性755例[47.9%])がITT集団に含まれ、tenecteplase群が806例、アルテプラーゼ群は771例であった。全体の症状発現から無作為化までの期間中央値は2時間(IQR:1.5~3.0)だった。主要アウトカムの追跡期間中央値は97日(IQR:91~111)であった。 データカットオフ日(2022年1月21日)の時点で、治療後90~120日にmRS 0または1を達成した患者の割合は、tenecteplase群が36.9%(296/802例)、アルテプラーゼ群は34.8%(266/765例)で、両群間の補正前リスク差は2.1%(95%CI:-2.6~6.9)であり、事前に規定された非劣性の閾値を満たした。 効果の方向性はtenecteplase群で良好であったが、tenecteplase群の優越性はみられなかった(p=0.19)。副次アウトカムにも両群に差はなかった。また、事前に規定されたサブグループのすべてで、主要アウトカムに関して治療効果の異質性は観察されなかった。 安全性解析では、24時間以内の症候性頭蓋内出血の発現割合(tenecteplase群3.4%[27/800例]vs.アルテプラーゼ群3.2%[24/763例]、群間リスク差:0.2、95%CI:-1.5~2.0)や、治療開始から90日以内の死亡の割合(15.3%[122/796例]vs.15.4%[117/758例]、-0.1、-3.7~3.5)には、意義のある差は認められなかった。 口舌血管性浮腫(tenecteplase群1.1% vs.アルテプラーゼ群1.2%)や、輸血を要する頭蓋外出血(0.8% vs.0.8%)はまれであった。また、追跡期間中の画像検査で、頭蓋内出血はそれぞれ19.3%(154/800例)および20.6%(157/763例)でみられた。 著者は、「tenecteplaseは、アルテプラーゼに比べ投与法が容易で使い勝手がよく、安価となる可能性がある。この研究の結果は、これまでのエビデンスと合わせて、症状発現から4.5時間以内の急性期虚血性脳卒中における血栓溶解療法の世界標準をtenecteplase 0.25mg/kgに切り換える、説得力のある根拠となるものである」としている。

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「乳診療ガイドライン」4年ぶり全面改訂、ポイントは?/日本乳学会

 4年ぶりに乳診療ガイドラインが全面改訂され、第30回日本乳学会学術総会で「乳診療ガイドライン2022年版 改定のポイント」と題したプログラムが開催された。本稿では、乳診療ガイドライン2022年版の治療編(薬物療法、外科療法、放射線療法)の主な改訂点について紹介する。治療編全体における改訂点として、乳診療ガイドライン2022年版では冒頭に「総説」を追加。病気/サブタイプ別の治療方針のシェーマや各CQ/BQ/FRQの治療における位置付けを解説し、治療全体の流れを理解できる構成となっている。乳診療ガイドライン2022「薬物療法」の変更点 乳診療ガイドライン2022年版の「薬物療法」については遠山 竜也氏(名古屋市立大学)が登壇し、6つの新設CQを中心に解説。まず、早期乳がんに対するエスカレーション治療として、術後のアベマシクリブとS-1について、乳診療ガイドライン2022年版には2つのCQが新設された。アベマシクリブはmonarchE試験の結果から、ホルモン受容体陽性/HER2陰性で再発高リスクの患者に対する術後療法として「内分泌療法にアベマシクリブを2年間併用することを強く推奨」(CQ6)。S-1は現在承認申請中であるものの、POTENT試験の結果に基づき「内分泌療法にS-1を1年間併用することを強く推奨」した(CQ5)。両療法における“再発高リスク”の考え方についてはそれぞれ適格基準の表を乳診療ガイドライン2022年版では挿入したほか、総説でその位置づけを解説。遠山氏は「POTENT試験のほうが対象が広いので、そちらにしか該当しない症例にはS-1を、両基準に合致する症例は副作用のプロファイルや投与期間を考慮して使っていくことになるのではないか」と述べた。 周術期の免疫療法として、現在承認申請中ではあるが、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対するペムブロリズマブについても乳診療ガイドライン2022年版ではCQが新設された。KEYNOTE-522試験の結果に基づき、周術期TNBCに対して「ペムブロリズマブの投与を弱く推奨」している(CQ16)。“弱く”という表現になった理由について同氏は、有害事象があること、どのような患者に対して投与すべきかに充分なコンセンサスがないことを指摘。「今回は先取りして取り上げ、このような表現となっているが、承認されたときには改めてディスカッションが必要」とした。 閉経前のホルモン受容体陽性/HER2陰性転移・再発乳がんに対する1次治療としてのCDK4/6阻害薬について、今回の乳診療ガイドライン2022年版で初めてCQが設けられた。日本で承認済のパルボシクリブ・アベマシクリブについては閉経後患者対象の試験でPFS改善が報告されているが、リボシクリブについてのMONALEESA-7試験では閉経前の患者でPFSおよびOSが改善している。併用薬については、タモキシフェンとの併用群でQT延長がみられたことでFDA承認が見送られていることから、乳診療ガイドライン2022年版においても非ステロイド性アロマターゼ阻害薬との併用が推奨された(CQ18)。 その他、「残存病変に基づく治療選択」として、術後のカペシタビン(HER2陰性)とT-DM1(HER2陽性)について乳診療ガイドライン2022年版には2つのCQが新設されている(CQ10、CQ13)。乳診療ガイドライン2022年版「外科療法」の変更点 九冨 五郎氏(札幌医科大学)は外科療法における今回の乳診療ガイドライン2022年版改訂の目玉としてCQ2を挙げた。まずCQ2aでは、術前化学療法(NAC)前後の臨床的リンパ節転移陰性(cN0)乳がんに対する腋窩リンパ節郭清省略を目的としたセンチネルリンパ節生検について、2018年版では“弱く”推奨していたものを、乳診療ガイドライン2022年版では“強く”推奨に変更している。理由について同氏は、「新しい強力なデータが出たわけではないが、日常診療で9割近い先生が実施しているのなら、それはもう“強い”推奨ではないか、というボードでの議論を経て、変更している」と解説した。 臨床的リンパ節転移陽性(cN+)でNAC 後cN0の症例に対しては、今回の乳診療ガイドライン2022年版では新たにtailored axillary surgery (TAS)を行う場合について推奨を追加。「TASによる腋窩リンパ節郭清省略を行うことを弱く推奨」とされた(CQ2b)。九冨氏は、現在targeted axillary dissection (TAD)の妥当性を検討する前向き試験が国内で進行中であることに触れ、「こういったデータが出てくれば、またガイドラインの記述も変わってくる可能性がある」とした。 Stage IV乳がんに対する原発巣切除については、乳診療ガイドライン2022年版ではメタ解析の結果を考慮して「予後の改善を目的とした原発巣切除は行わないことを強く推奨(CQ4a)」としたほか、「局所制御を目的とした原発巣切除は行うことを弱く推奨(CQ4b)」とされた。 また、今後保険収載される可能性を考慮し、乳房再建法としての脂肪注入について乳診療ガイドライン2022年版では新規のFRQが追加された。「細心の注意のもとに行ってもよい」という記述となっている(FRQ6)。 2018年版で8つあったCQは乳診療ガイドライン2022年版では4つとなり、それぞれFRQやBQに変更して取り上げられている。例えば低リスクDCISに対する非切除の意義については、日本も含め現在複数の無作為化試験や観察研究が進行中であることから、乳診療ガイドライン2022年版ではFRQとして記述された(FRQ1)。九冨氏は外科領域では大規模な無作為化試験が組みづらくエビデンスレベルが低いのが現状としたうえで、日本での試験もいくつか進行中で、日本からの発信が増えていくことに期待したいと締めくくった。乳診療ガイドライン2022年版「放射線療法」の変更点 放射線療法における乳診療ガイドライン2022年版での改訂・新設事項は以下の通り。吉村 通央氏(京都大学)がそれぞれの根拠となったデータとともに解説した。改訂:CQ1 寡分割全乳房照射/CQ3 APBI/ CQ5 腋窩LN転移1~3個のPMRT新設:BQ7 腫瘍径大および断端陽性のPMRT/FRQ2 RNI or PMRTの寡分割照射/ FRQ6オリゴ転移に対するSBRT 寡分割全乳房照射については、メタアナリシスの結果、局所再発率や全生存率、整容性に有意差はなく、急性皮膚障害についてはむしろ寡分割で低下しており、乳診療ガイドライン2022年版では「50歳以上、T1-2、化学療法を行っていない」という3条件以外の患者、これまで記載のなかったDCIS症例に対しても、寡分割照射を強く推奨している(CQ1)。 APBIの治療成績については4年間で長期の報告が複数出ており、それらのメタアナリシス結果から、乳診療ガイドライン2022年版では若年ではない低リスク症例に十分な精度管理のもとで行うなどの条件付きで、非推奨から弱い推奨へ変更された(CQ3)。なお術中照射については、「全乳房照射より局所再発率が高いが全生存率には差がないことを説明した上で希望する患者に行うこと」とされた。 腋窩LN転移1~3個の患者に対するPMRTについては、EBCTCGや観察研究のメタアナリシスが行われている。それらを基に、ASCO/ASTRO/SSO PMRTガイドライン2016では、局所・領域再発率や乳がん死亡率を低下させるが、再発リスクの低い患者では害が益を上回る症例もあり、患者ごとに適応を決めるべきとされている。2018年版では、推奨の強さが合意に至らなかったが、乳診療ガイドライン2022年版では合意率は71%ではあったが「弱い推奨」に変更された。 リンパ節転移陰性で腫瘍径が大きい場合もしくは術後断端陽性の場合について、2018年版までは明記がなかったが、乳診療ガイドライン2022年版で初めて明記され、「PMRTを行うことが望ましい」とされた(BQ7)。 その他、2つのFRQが新設されている。1つ目は領域リンパ節照射あるいはPMRTにおける寡分割照射についてで、無作為化試験では治療効果・有害事象に有意差はなく、急性期皮膚炎は軽いことが報告されており、「エビデンスは十分ではないが総合的に検討して、行うことを考慮してもよい」とされた(FRQ2)。吉村氏は、新型コロナ流行の影響で、実際多くの施設でこの2年間は16回照射としていた状況があるとし、とくに有害事象は報告されていないと話した。 もう1つはオリゴ転移に対するSBRTについてで、無作為化第II相試験(SABR-COMET)の結果SBRTの追加で治療成績が良好との報告がある。同試験における乳がん症例は18%であることに注意が必要ではあるが、St Gallen2021でも80%以上のパネル医師がT2N1M1で根治を目指して局所治療を加えると回答している。そこで乳診療ガイドライン2022年版では、「症例を選択した上で考慮してもよい」とされている。ただし、今年のASCOで発表されたBR002試験の結果がネガティブだったことから、吉村氏は「今後の方向性に注意が必要」と指摘した。■関連記事POTENT試験の探索的解析結果、monarchEの適格基準でも検討

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新型コロナウイルス感染症は妊婦で重症化しやすく、早産と帝王切開のリスクを上げる(解説:前田裕斗氏)

 新型コロナウイルス感染症と妊婦の関係性について、これまで(1)一般女性と比較して妊娠中にとくに罹患しやすいということはない(2)罹患した場合は一般女性よりも重症化しやすい(3)罹患した場合、妊娠合併症(帝王切開や早産など)が増える などの可能性が報告されている。なお、上記は母体についての影響の話であり新生児については記載していない。 このうち、(2)と(3)については複数の中小規模の研究があるものの、研究組み入れ基準が症状ではなく入院時PCR陽性が条件である、同時期のコホートを比較対象とした研究は少なかった。今回の研究では、同時期の妊娠していない新型コロナウイルス感染者と比べた感染妊婦の重症化リスク、および感染妊婦の中でも重症化しやすい要因、そして非感染妊婦と比較して妊娠合併症が増えるかどうかについて検討している。 結果としては、非妊娠女性の感染者と比較して妊婦では入院リスクが2.65倍、ICU/CCUへの入院リスクが5.46倍という結果となった。また、年齢・高血圧既往・妊娠後期の感染がこれらのリスクと相関していた。妊娠合併症について、新型コロナウイルス感染は早産・帝王切開リスクと有意に相関したが、妊娠高血圧腎症、死産のリスクとは相関を認めなかった。 本研究の強みは適切な比較対象集団を置いていること、ほとんどが症状のある妊婦を対象としているため臨床現場の感覚に即したものであること、2021年末までの出産を対象としておりデルタ株の影響を見たコホートであることである。一方、現在主流のオミクロン株についてのデータは今後の報告が待たれる。また、人種について、本研究ではアジア人妊婦の重症化リスク、ICU/CCU入院リスクが共に有意に高く出ているが、これはカナダにおける結果であり、人種によって受けられる医療サービスが違うこと、それに関する要因が考慮できていないことなどから、人種についての結果は慎重な解釈が必要だろう。 妊婦や、妊娠を希望する方への適切な情報提供は感染流行下においては非常に重要であり、その点で非常に価値の高い論文である。日本では同様の研究はほぼ報告されていないが、1件、全国的なアンケート調査で重症化に関わる要因を聞いたものがある1)。この研究でもやはり妊娠後期または産後の感染が重症化と相関したと報告され、日本においても本研究の結果は適応可能と考えてよいだろう。現在3回目のワクチン接種は妊婦においても当然勧められるが、高齢者などと同様4回目以降の接種や、今後妊娠時にワクチン接種を行ったほうがよいかどうかについてはオミクロン株の影響の結果報告が待たれる。

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「後継者採用」という甘い誘いに乗ったら…【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第41回

第41回 「後継者採用」という甘い誘いに乗ったら…漫画・イラスト:かたぎりもとこ「後継者採用」というキーワードをご存じですか?企業経営者の年齢が上がっている昨今、「後継者を採用によって広く募ろう」というこの言葉をメディアで見掛けることが増えています。医療機関も例外ではありません。診療所の院長が高齢になっているのに後継者が見つからず、「まずは従業員として雇用して、その後お互いに問題がなければ承継する」という取り組みが多く行われています。採用される側からすれば、まずは従業員として経験を積んだうえで経営を任せてもらえるのですから、将来開業したい人・経営したい人にとって魅力的なプランです。しかし、“うまい話”には必ず落とし穴があるものです。後継者採用のよくある条件は、「5年後を目処に後継者に譲りたいが、それまでは従業員として働いてほしい」というものです。採用される医師側は「5年働いたら、無償で診療所を譲り受けられる」と考え、現院長に気に入られようと頑張ったり、相場より低い給料で甘んじて働いたりします。しかし、そこに次のような落とし穴が待っています。5年経っても、なかなか後継の話が具体化しない引き継ぎたい意向を伝えると、「あと3年待ってほしい」と先延ばしされる引き継ぎたい意向を伝えると、高額な譲渡額を言い渡される現院長側の事情としてよくあるのは下記のようなものです。採用当初は「5年で引退する」と決めていたものの、実際にそのタイミングになってみると踏ん切りがつかないこれまで引き継ぐ意向のなかった息子・娘が、急に引き継ぎたいと言ってきた医業承継の仲介会社から営業を受けて話を聞くと、3,000万円の売値がつくことがわかって欲が出た「後継者採用」にはこのような落とし穴があることを知ったうえで、基本合意書を締結し、「言った言わない」になることを防ぐ約束事は書面で取り交わし、お互いの本気度を確認するお金の問題(売値の価格目線)を事前に確認するといったトラブル予防策を取りながら、話を進めるとよいでしょう。

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第116回 読者の声に応えてタブーに迫る!諸派のコロナ対策、その言い分を比較

「日本第一党」「こどもの党」「平和党」「天命党」「幸福実現党」「スマイル党」「核融合党」「沖縄の米軍基地を東京に引き取る党」「共和党」「ファーストの会」「日本改革党」「維新政党・新風」「参政党」「メタバース党」「自由共和党」「新党くにもり」以上は現在最も候補者が多いとされる参議院議員選挙の東京選挙区で、国政議席を持たない政党の立候補者が所属する「政党」である。ちなみに上記以外に『議席減らします党』『動物愛護党』『バレエ大好き党』『炭を全国で作る党』の標榜もあるが、これらの候補者はすべてNHK党公認である。ちなみに数行前で政党にカギカッコ(「」)をつけたのは、前回、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)対策で取り上げた政党は国政に議席を持ち政治資金規正法に基づく政党の定義を満たしているものがほとんどだが、上記の政党はそうではないからである。前回までに取り上げなかった政党、その理由さて前回の本連載後、「ほかの政党は取り上げないの?」という読者のお声を何件か頂戴した。実は国政に議席のない政党の政策も取り上げようと思ったことは何度かあるが、それをしなかった理由はいくつかある。まず、報道で「諸派」と表記されるこうした政党は、時にシングルイシューの政策であることが多く、医療にスポットを当てても取り上げようがないのが第1の理由である。そして第2の理由が私としては一番大きいのだが、これらの政党をすべて取り上げると、原稿の文字数が1万字超になる。これはインターネット上の記事、とくに一般向けではかなり「禁じ手」だ。おおむね一般の読者が読むに堪える文字数が3,000字程度だからである。それでなくとも私の記事は長めである。とくに一般向けに医療情報を発信しようとすると、丁寧な説明が必要になり、必然的に文字数が多くなる。たとえば、この連載ならば「ワクチンの発症予防効果は…」とスラっと書いても読者が誤読することはまずない。しかし、一般向けでは「ワクチンには感染予防効果と発症予防効果と重症化予防効果があり、感染予防効果とは…」と書かないと、高確率で「誤読」される。というか、極論を言えば、そこまで書いてもほぼ誤読される。こうした長い原稿を書くためか、最近では私がよく執筆する一般向けの情報サイトの編集者からは「とにかく短めに」と本音のお叱りを押し殺した哀願が多い。ちなみに私が丁寧に書こうとした結果、どれだけ記事が長くなるかは講談社が運営する情報サイト「現代ビジネス」の私の記事の一覧を見ていただけるとわかると思う。実際には1本の記事として書いたものの、その多くが編集者の苦心により2本以上に分けられている。その点、当サイトの担当編集者は何も嫌味を言わないので私にとってはありがたい存在である。というか、すでにこの時点で1,100文字を超えている(笑)。第3の理由は当サイトでは政治ネタはあまり読まれない傾向があるからであり、第4の理由には、私はどうしても職業病で与野党問わず酷評してしまうため、懲りずに読んでいただいている読者の一部を不快にさせてしまう可能性があるのだ。こうした数々の「タブー」を敢えて無視して今回はチャレンジしてみようと思う。そう思うのは、私も年齢を重ね、候補者を見る目が変わってきたせいもある。その変化の具体例として私は「泡沫候補」という言葉は使わない。すべての被選挙権を持つ国民は、立候補の権利があり、それに基づき政治主張をする自由がある、そして石をぶつけられかねない立候補者としてわが身を晒せる勇気を持てる人はそう多くはない、という当たり前の事実を人生の折り返し地点を超えて再確認したからである。これには選挙取材歴では日本一といっても良い友人のフリーライター・畠山 理仁(みちよし)氏の影響がある。彼の著書、「黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い」(集英社刊、第15回 開高健ノンフィクション賞受賞作)、「コロナ時代の選挙漫遊記」(集英社刊)は必読の名著といってよい。コロナ対策を掲げる7党の言い分今回、東京選挙区を取り上げたのは、やはり多種多様な候補がいるからである。宮城県出身である私が東京に出てきた頃、一番驚いたのは選挙時の候補者の多さである。若かりし頃は東京での選挙を「大ビックリ人間コンテスト」とすら呼んでいた。今は候補者に敬意を払い、「日本最大の政策博覧会」と言うようにしている。さて、そろそろ本題に移ろう。念のため言っておくと、冒頭の順番は東京都の選挙公報の掲載順となっている。まず、この中で政党のホームページ、選挙公報、政党作成のチラシ、配信動画などで新型コロナ対策を掲げているのは16党のうち7党である。これらを紹介しながら、かいつまんで批評を加えたいと思う。まず、天命党(代表:小畑 治彦氏)である。元東大阪市議の小畑氏が立ち上げた政党でヴィーガン食の良さを訴えることが政策主眼のようである。宗教チックに思われる名称のためか、小畑氏は「天命党は宗教政党ではない」と断言している。同党はInstagramを選挙活動に多用しており、そこから浮かぶ新型コロナ政策とは以下のようなものだ。新型コロンワクチンの接種は必要なしPCR検査は信頼性に疑問があるマスク着用は不要もちろんワクチン、検査、マスクはいずれも限界があるが、一定のリスク低減効果があることも科学的に提示されている。これ以上は言うまでもないだろう。次は幸福実現党(党首:釈 量子氏)である。ご存じのように同党は宗教団体「幸福の科学」(総裁:大川 隆法氏)の政治部門である。掲げている新型コロナ関連政策を要約すると以下の通りだ。コロナ発生源、中国の責任を追及コロナ起源の調査を行わず、発生源をうやむやにするWHOの責任を追及中国を利する「ワクチン外交」を自由主義国と共に阻止宗教心でコロナ禍を乗り越える自由の制限を伴う緊急事態宣言やまん延防止措置の発出は行わない政府の権限肥大化を防ぐため、コロナ禍を契機とした憲法の「緊急事態条項」新設に反対ワクチンのメリット、デメリットを提示したうえで接種は自由意思を最大限尊重事実上の強制接種につながる無料ワクチン接種を原則有料化感染症法の分類を5類相当とし医療機関へのアクセスを改善国産の新型コロナ治療薬の開発推進生物兵器や化学兵器に対抗する自衛隊部隊の強化ややわかりにくい政策のように思うかもしれないが、同党は「新型コロナは中国が開発した生物兵器」というスタンスをとっている。これが冒頭の3件と最後の1件の政策の根拠でもある。ちなみに生物兵器論に関しては、中国が中東呼吸器症候群(MERS)ウイルスや重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスを利用した生物兵器開発中に流出したウイルスが原因との説が一部で流布されたが、遺伝子配列の解析やウイルスがMERSやSARSよりも弱毒化していること(生物兵器として利用するなら強毒化させるのが当然という考えに基づく)などから否定的な見解が多い。私個人もその立場である。もっとも今後の対策を考えた場合、自然宿主などの原因に迫らねばならない。これまで世界保健機関(WHO)が中国で行うことができた調査は非常に制限の多いものであったことは知られている。その意味で中国でのより厳密な調査が必要ということでは同党のスタンスにも一定の理解はできる。ワクチン政策に関しては、個人の自由意思尊重に異論はないが、ワクチンによる感染拡大リスク極小化のための最大のネックは費用も含めたアクセスの問題であり、有料化するのは非現実的と考える。新型コロナの5類相当扱いについては過去にも触れているが、医療機関や高齢者施設でのクラスターが発生しやすいこのウイルスの特性を考えれば、最低限の条件として感染者の重症化リスクにかかわらず使用できる経口薬が上市されることである。その観点からすると、現状ですべての医療機関に新型コロナの診療を行えというのはやや酷であると感じる。国産治療薬については本連載で再三見解を述べているが、どの政治家も安易に考え過ぎである。それを実現したければ、赤字国債を今後20年ほど毎年数兆円発行して製薬企業の開発支援として提供するくらいの覚悟が必要である。核融合党(代表:桑島 康文氏)は今回取り上げる中では唯一、代表の桑島氏が医師である。選挙公報に記載の政策を列挙する。新型コロナの感染症法での5類相当引き下げ逆転写でDNAに取り込まれるmRNAワクチンの承認取り消し、廃止自粛、鎖国の廃止国産の複数株混合不活性化ワクチンの導入2番目の「逆転写でDNAに取り込まれる」は科学的にほぼゼロと言って良い、つまりはほぼ間違いと言って良いことはここの読者ならご存じのはず。ちなみに私個人は一般人の知人から時々この不安について尋ねられることがある。これを正確に細かく説明すると時間がかかるので、いつもはやや不正確ながら「マグロの刺身を食べて10年後にヒトからマグロになってしまった人が周りにいる?それがないのと同じこと」と話すようにしている。最後の不活性化ワクチンについては、選択肢を広げる意味ではありと思っているが、既存のワクチンほどの効果が得られるかという点は中国のシノバック社ワクチンのデータなどから疑問視している。共和党(棟梁:鳩山 友紀夫氏)は、政界では「宇宙人」とも評された旧民主党党首で元首相でもある鳩山 友紀夫氏(2013年に「由紀夫」から「友紀夫」に改名)が政界復帰をして立ち上げた政党である。党の政策をホームページで見てみると新型コロナに関しては以下の記載がある。「新型コロナウイルスは日本社会にすさまじいインパクトを与えた。この影響は新型コロナウイルスが終息しても終わりではない。グローバリズムの進展、地球温暖化や気候変動、モンスター台風などの自然災害、インターネットや遺伝子組み換えなどの現代技術の暴走の可能性など、巨大リスクへの本格的な大規模対策をおこなう」うーん、少なくとも何をやるのかは具体性に欠ける。失礼ながら鳩山氏は相変わらず「宇宙人」のままのようである。次にファーストの会(代表:荒木 千春氏)は、これまた有名な東京都知事・小池 百合子氏が創設した地域政党・都民ファーストの国政版である。代表の荒木氏は小池都知事の元秘書で、今回の出馬直前まで中野区選出の東京都議会議員だった。さて、その政策である。公衆衛生上の危機に対する司令塔機能の強化ワクチン追加接種促進検査、医療、宿泊療養体制の強化、自宅療養への支援子どもの往診体制の強化後遺症分析、サポート体制強化公的医療機関の機動的対応力の強化医療人材の偏在是正、育成の強化民間医療機関の公的役割を踏まえた連携体制の検証、協力確保策の強化危機時の検査キット、ワクチン、抗体薬、治療薬等の医療物資の開発、確保、承認、流通の迅速化国産ワクチン、治療薬の開発支援診療報酬引き上げ等によるオンライン診療の拡大DXによる保健所等の効率化東京、地域の実情に合わない国のコロナ対策の是正ざっと見渡す限り、前回紹介した国政政党の政策を重複なく寄せ集めた感があり、ほとんど目新しさはない。最後の政策に関しては、より細かく▽ワクチンの不合理な配分、緊急事態宣言のタイミング、特措法等の改正の遅れ、危機時の水際対策強化など地域の実情に応じた対応を促す▽国から自治体への権限・財源・人材の分権推進、近隣道府県など広域連携の推進、保健所など二重三重行政の解消、と記述があり、この辺が地域政党を出自とする同党らしさと言えなくもない。もっとも自治体と国との関係での改善点はもっと平易で詳しく記述すれば、もしかしたら説得力を増すのではないかと老婆心ながら思う。最近、とみにメディアへの露出が目立つのが参政党(共同代表:松田 学氏、赤尾 由美氏、吉野 敏明氏)。共同代表のうち吉野氏は歯科医師である。同党のホームページ上にある新型コロナ政策は以下の2点だ。感染症対策を軸とした危機管理体制と高度医療資源の機能的な再配分正しい感染症の知識を普及して「コロナ脳」から脱却、国民の行動制限やワクチンに頼らず、日常生活を早く正常化し、免疫力の強化と機動的な医療システム構築でコロナ禍を克服、自由と健康の両立を実現感染症対策での危機管理体制強化の必要性は論を待たないが、それを「軸」として高度医療資源配分も行うとなると、やや偏り過ぎではないだろうか。国内の死因のトップはがんであり、これに心臓疾患などが続くことを考えれば、高度医療資源配分ではこうした疾患のほうがむしろ「軸」としてはふさわしい。また、2番目の免疫力強化も健康食品のキャッチコピー感がある。免疫力を上げるというのは市中では良く使われるが、免疫の働きは未解明な点も多く「科学的にこうだ!」と言える部分はわずかである。その意味で政党としてこの文言を政策文に入れることにはかなりの違和感がある。さらに「国民の行動制限やワクチンに頼らず」との記述は、ワクチンに一定の役割を認めているかのようにも読めるが、同党候補者にはワクチンそのものに科学的に疑問符がつくような根拠で否定的な発言をする人が散見される。自由共和党(代表:青山 雅幸氏)は元立憲民主党の衆議院議員だった青山氏が創設した新党である。掲げる政策は以下の通りだ。5~11歳へのワクチン接種阻止、20歳以下のワクチン接種中止濃厚接触者や無症状者の隔離、アクリル板設置、常時マスク、幼稚園児へのマスク着用、まん延防止等重点措置/緊急事態宣言のすべてを撤廃PCR検査のCt値の適正化新型コロナの感染症法5類相当への引き下げワクチン接種で副反応を訴える人の救済憲法の「緊急事態条項」新設に反対一覧すればわかるが、既存の新型コロナ対策の多くに否定的である。青山氏の場合、Twitter上などでも以前からワクチンに対する不信感をあらわにしており、それが同党の政策にも直結しているようである。若年者では新型コロナが重症化しにくく、その一方で既存のワクチンに比べて新型コロナワクチンでは接種に伴う自覚症状のある副反応が少なくないため、若年者でのワクチン接種に否定的な意見が少なくないことは私自身も承知している。若年者の場合、本人のためというよりは周囲のためという側面が強くなることも否定はしないし、また現在の感染の主流であるオミクロン株では現行ワクチンの効果が減弱し、ブレイクスルー感染も少なくないのもまた事実である。もっともそれを言ってしまえば、現行の予防接種法に基づき定期接種に組み入れられている一部のワクチン、具体的には患者報告数の少ない日本脳炎なども接種の必要性はなしとなってしまう。私個人は感染症では個人に加え、地域・社会全体でのリスク低減を目指すという視点は必要であると考えており、自由共和党の考えには必ずしも賛同できない。また、青山氏は新型コロナワクチン接種後の長期的副反応を訴える人に配慮すべきという主張もTwitter上でよくつぶやいている。この点について言えば、総論では理解できるが、こうした主張の多くは、接種者本人のみの主張に過度に依存しており、科学的にはより厳密に考える必要がある。その意味で接種者の長期フォローアップは必要であるとは考えるが、現時点で海外の事例を見ても、一部の年齢層であってもワクチン接種を中止する必要がある兆候は見当たらない。以上が各政党の提示する政策に対する私見である。なお、政党としての主張にはないが、報道各社が候補者本人にアンケートを行っているのはよく知られている。NHKの参院選特設サイトでその結果を見ると、ここで登場しなかった候補者の考えもうかがえる。以下では冒頭で名前を取り上げた政党に限定して候補者の回答を紹介する。同サイトのQ3「新型コロナウイルス対策で、今、政府がより重点をおくべきは『感染拡大の防止』と『経済活動の回復』のどちらだと考えますか」では、今回取り上げた政党の候補者のうち「どちらかと言えば感染拡大防止」あるいは「感染拡大の防止」と回答したのが維新政党・新風(代表:魚谷 哲央氏)の候補者のみ。Q4「新型コロナウイルスは、入院の勧告や外出自粛の要請など強い措置がとれる感染症に指定されています。この扱いを維持すべきだと考えますか。季節性のインフルエンザと同じ扱いに変えるべきだと考えますか」では、「維持すべき」が平和党(代表:内藤 久遠氏)、「回答しない」がメタバース党(代表:後藤 輝樹氏)のみ。さてどうだったろう? もちろん、内容によっては読者が嫌悪感を覚える政策もあったと思う。しかし、実はこうした諸派と言われる政党のホームページで政策をつぶさに眺めると、他領域などでは「へーーー」と感心するものもなくはない。お時間のある方は目を通してみて欲しい。

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がんの緩和ケア、放射線・神経ブロック治療普及のセミナー開催

 働くがん患者を企業と一緒に支援する厚生労働省の取り組み「がん対策推進 企業アクション」は、6月28日、「がん治療における緩和ケア」をテーマとしたメディア向けセミナーを開催した。これは、6月9日に厚生労働省が医療者への啓蒙と一般患者への説明用として、がんにおける緩和ケアを説明する資料1)を作成し、都道府県衛生主管部(局)、がん診療連携拠点病院等の病院長、日本医師会を通じて広報をはじめたことを受けたもの。資料は、心理的・精神的ケアを含めて診断時から緩和ケアが受けられること、痛みへの対応としてオピオイド等の使用だけでなく放射線治療や神経ブロック等の活用を促すこと、が主な内容となっている。 セミナーの冒頭では、がん対策推進 企業アクション議長の中川 恵一氏(東京大学 総合放射線腫瘍学講座 特任教授)が「日本国内では年間100万人ががんに罹患し、38万人が命を落としている。その3分の1は働く世代であり、この年代にも緩和ケアは重要なテーマ。日本はこの分野において遅れが目立つ」と述べた。「これまで、日本では治すことが最優先され、癒すという観点が後手になりがちだった。緩和ケアも進行がんの終末期患者を中心に行われてきたが、2006年に制定されたがん対策基本法に基づき、あらゆる種類・進行状態のがん患者に提供するよう医療者への働きかけを進めており、今回の資料作成もその一環だ」と説明した。加えて、「がんの疼痛緩和の基本はオピオイド等の処方だが、それが効かない場合には放射線治療や神経ブロックが有効であり、その周知や実施を進めることが患者のQOLの維持・改善のために必要だ」とした。 その後、沖縄徳洲会病院の服部 政治氏(疼痛治療科統括 部長)が「がん疼痛治療の現状」と題した講演を行った。服部氏が積極的に行っている疼痛緩和目的の神経ブロックは、全国の実施回数が年間300回と非常に少ない水準に留まっている。服部氏は「がんの疼痛には鎮痛薬の内服や皮下注、手術・放射線治療、そして神経ブロック療法・脊髄鎮痛法がある。治療初期は鎮痛薬、それが効かなくなったら放射線、最後に神経ブロックと直線的に各手法が提供されているのが現状」と説明した。そして、「疼痛緩和のためモルヒネを大量投与されているケースにおいて神経ブロックを行うことで痛みを軽減させ、モルヒネの投与量を10分の1程度まで減らせることが複数のデータで示されている。神経ブロックを施術したことで終末期患者が在宅診療に切り替えられた例もあるが、オピオイドの投与量は一気には減らせないため、大量投与になる前の初期から、複数の緩和ケアの手法を組み合わせて提供することが有効だ」と説明した。そして、現状の課題として「20年ほど前まで一般的だった神経ブロック・脊髄鎮痛法が行われなくなった結果、施術できる医師、研修できる施設が減っている。鎮痛薬に偏った日本における緩和ケアの課題感を共有し、人材育成を進めることが重要だ」と強調した。

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新型コロナ、2m超でも感染した事例のリスク因子/BMJ

 英国・UK Health Security AgencyのDaphne Duval氏らは、システマティック・レビューの結果、レストラン、公共交通機関、職場、合唱会場といった屋内環境において2m以上離れていても新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染(airborne transmission)が生じる可能性があり、感染に寄与する可能性がある要因として不十分な換気が特定されたことを報告した。SARS-CoV-2感染リスクは、感染者に近接したとき(2m未満)に最も高くなる傾向があり、スーパースプレッダーでは2m超でも感染する可能性が示唆されていたが、詳しいことは不明であった。著者は、「今回の結果は、屋内環境での感染予防対策、とくに十分な換気の必要性を強調するものである」とまとめている。BMJ誌2022年6月29日号掲載の報告。2020年1月1日~2022年1月19日の18研究についてシステマティック・レビュー 研究グループは、まずComberらによるシステマティック・レビューに含まれる研究のうち2020年1月1日~7月27日に発表された研究をスクリーニングし、次にMedline、Embase、medRxiv、Arxiv、WHO COVID-19 Research Databaseを用いて2020年7月27日~2022年1月19日に発表された研究を検索し、適格基準を満たした研究についてWeb of ScienceおよびCocitesで引用分析を行った。 適格基準は、屋内環境(非医療環境)下で2mを超えた距離でもSARS-CoV-2に感染した事例について報告した観察研究とし、濃厚接触または媒介物が主な感染経路と考えられる観察研究(家庭内感染など)は除外した。 Rayyan Systemsを用いて2人の評価者が独立してスクリーニングし、ほぼ完全に一致した研究について1人の評価者がデータ抽出を行い、もう1人がチェックした。 主要評価項目は、2mを超えるSARS-CoV-2感染、およびその感染に影響を及ぼした要因とした。組み込まれた研究の方法論的な質は10問で構成される品質チェックリストを用いて厳格に評価し、エビデンスの確実性はGRADE(Grading of Recommendations、Assessment、Development、Evaluation)を用いて評価した。また、設定ごとにNarrative synthesisを行った。 18件の研究(関連する報告は22報)が解析に組み込まれた(方法論的質が「高」3件、「中」5件、「低」10件)。「換気不十分」「一方向気流」「大声で歌う・話す」のうち1つ以上でリスク大 18件のうち、16件の研究では感染イベントの一部あるいはすべてで、2mを超えてSARS-CoV-2感染が発生した可能性があり、2件は不明であった(GRADE:確実性が非常に低い)。 16件の研究において、換気不十分(確実性が非常に低い)、一方向の空気の流れ(確実性が非常に低い)、大声で歌う・話すなどエアロゾルの放出が増加する活動(確実性が非常に低い)のうち、1つ以上の要因により2mを超える距離でも感染する可能性が高まるようであった。 13件の研究において主要症例は、無症状、症状発現前または感染時の発症前後であるものが報告された。 なお、組み込まれた研究の中には、感染調査が十分実施されていたものもあるが、研究デザインに起因するバイアスリスクが残っており、感染経路を十分評価するために必要なレベルの詳細な情報が必ずしも提供されていなかった。

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