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新規抗体薬物複合体DS-7300、小細胞肺がんを対象とした第II相試験開始/第一三共

 第一三共は2022年7月21日、DS-7300(B7-H3を標的とした抗体薬物複合体[ADC])について、前治療歴のある進展型小細胞肺がん患者を対象とした第II相臨床試験の最初の患者への投与を開始したと発表。 同試験は、化学療法による前治療歴のある進展型小細胞肺がん患者を対象に、同剤の有効性と安全性を評価するグローバル第II相臨床試験である。 主要評価項目は客観的奏効率で、副次評価項目には無増悪生存期間、奏効期間、全生存期間、病勢コントロール率、薬物動態、安全性などで、アジア、欧州および北米で約80例の患者を登録する予定だという。  DS-7300は、第一三共独自のリンカーを介して新規のトポイソメラーゼI阻害薬(DXd)を抗B7-H3 抗体に結合させた薬剤で、同社で臨床開発を進めている5つのDXd-ADCのうちの1つである。B7-H3は、小細胞肺がんを含むさまざまながん種において過剰発現しているタンパク質の一種で、がんの進行や予後の悪化に関係していると言われている。現在、がん治療を対象に承認されているB7-H3を標的とした治療薬はない。

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大豆と認知症の関連を日本人を対象に調査~JPHC研究

 国立がん研究センターがん対策研究所の村井 詩子氏らは、日本人における大豆製品、個々の大豆食品(納豆、みそ、豆腐)、イソフラボンの摂取量とその後の認知症リスクとの関連を調査した。その結果、大豆製品の総摂取量と認知症リスク低下との関連は認められなかったが、女性(とくに60歳未満)では、納豆の摂取量と認知症リスク低下との関連が認められたことを報告した。European Journal of Nutrition誌オンライン版2022年7月5日号の報告。豆製品の総摂取量と認知症リスク低下との関連は認められず 男性1万8,991人、女性2万2,456人を対象に人口ベースのプロスペクティブ研究を実施した。大豆製品およびイソフラボンの摂取量を算出するため、1995年と1998年の調査(対象者の年齢:45~74歳時点)で収集した検証済み食物摂取頻度質問票のデータを参照した。認知症は、2006~16年の要介護認定情報における認知症関連の日常生活障害により定義した。大豆製品、個々の大豆食品、イソフラボンの1日当たりの摂取量を算出して五分位で分類し、対象を5群に分けた。認知症予防に対する多変量ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、Cox比例ハザード回帰モデルを用いた。 大豆と認知症の関連について日本人を対象に調査した主な結果は以下のとおり。・大豆製品の総摂取量と認知症リスク低下との関連は、男女ともに認められなかった。・個々の大豆食品で分析すると、女性では、納豆の摂取量が多いと認知症リスクが低下する傾向が認められた(trend p=0.050)。・この関連を年齢別に分析すると、60歳未満の女性でより顕著であった。 【60歳未満】納豆の摂取量最高五分位と最低五分位の多変量HR:0.78(95%CI:0.59~1.04、trend p=0.020) 【60歳以上】同HR:0.90(95%CI:0.77~1.05、trend p=0.23)・男性では、大豆製品やイソフラボンの摂取量と認知症リスク低下との関連は認められなかった。

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不眠症治療薬、長期に有効・安全なのは?/Lancet

 不眠症治療薬のエスゾピクロンとレンボレキサントはいずれも有効性のプロファイルは良好であるが、エスゾピクロンは副作用発現例数が多く、レンボレキサントの安全性は結論に至っていないこと、またdoxepin、seltorexantおよびzaleplonは忍容性が良好であるが、有効性に関するデータは乏しく確固たる結論は得られていないことなどが、英国・オックスフォード大学のFranco De Crescenzo氏らが行ったシステマティック・レビューとネットワーク・メタ解析により示された。承認されている多くの薬剤は不眠症の急性期治療に有効であるが、忍容性が低いか長期の有効性に関する情報が得られておらず、メラトニン、ラメルテオンおよび未承認薬は全体的なベネフィットは示されなかった。著者は、「これらの結果は、エビデンスに基づく臨床診療に役立つと考えられる」とまとめている。Lancet誌2022年7月16日号掲載の報告。無作為化二重盲検比較試験154試験をネットワーク・メタ解析 研究グループは、Cochrane Central Register of Controlled Trials、MEDLINE、PubMed、Embase、PsycINFO、WHO International Clinical Trials Registry Platform、ClinicalTrials.govおよび規制当局のウェブサイトにて、2021年11月25日までに報告された不眠症治療薬の無作為化比較試験を検索し、特定の診断基準に基づいて不眠障害と診断された成人(18歳以上)患者を対象とした不眠症治療薬に関するプラセボまたは他の経口実薬単剤との比較試験について解析した。クラスター無作為化試験またはクロスオーバー試験、および二次性不眠症(精神疾患または身体的な併存疾患による不眠症、薬物またはアルコールなどの物質による不眠症)患者が含まれる試験は除外した。 個々の試験についてコクランバイアスリスクツールで評価するとともに、信頼性ネットワークメタ解析フレームワーク(CINeMA)を用いて、エビデンスの確実性を評価した。 主要評価項目は、有効性(患者評価による睡眠の質または睡眠指標による満足度)、治療中止(あらゆる理由で治療を中止した患者の割合)、忍容性(何らかの有害事象により中止した患者の割合)、安全性(少なくとも1件の有害事象を発現した患者数)で、いずれも急性期(投与4週間後、4週間後のデータがない場合は1~12週間のデータで4週間に近い時点)および長期(投与3ヵ月後の最長時点)の両方で評価した。ランダム効果モデルによるペアワイズおよびネットワーク・メタ解析を用い、要約オッズ比(OR)と標準化平均差(SMD)を算出した。 システマティック・レビューには170試験(36介入、4万7,950例)、ネットワーク・メタ解析には無作為化二重盲検比較試験154試験(30介入、4万4,089例)が組み込まれた。エスゾピクロンとレンボレキサントは有効性のプロファイルが良好 急性期治療に関しては、ベンゾジアゼピン系、doxylamine、エスゾピクロン、レンボレキサント、seltorexant、ゾルピデム、ゾピクロンがプラセボより有効であった(SMD範囲:0.36~0.83、CINeMAによるエビデンスの確実性は高~中)。ベンゾジアゼピン系、エスゾピクロン、ゾルピデムおよびゾピクロンは、メラトニン、ラメルテオン、およびzaleplonよりも有効であった(SMD:0.27~0.71、中~非常に低)。 中間作用型ベンゾジアゼピン、長時間作用型ベンゾジアゼピン、およびエスゾピクロンは、ラメルテオンよりもあらゆる原因による中止率が低かった(OR:0.72[95%CI:0.52~0.99、中]、OR:0.70[95%CI:0.51~0.95、中]、OR:0.71[95%CI:0.52~0.98、中])。 ゾピクロンとゾルピデムは、プラセボに比べて有害事象による脱落が多かった(ゾピクロンのOR:2.00[95%CI:1.28~3.13、非常に低]、ゾルピデムのOR:1.79[95%CI:1.25~2.50、中])。また、ゾピクロンはエスゾピクロン(OR:1.82[95%CI:1.01~3.33、低])、daridorexant(OR:3.45[95%CI:1.41~8.33、低])、およびスボレキサント(OR:3.13[95%CI:1.47~6.67、低])より脱落が多かった。 試験終了時の副作用発現例数は、ベンゾジアゼピン系、エスゾピクロン、ゾルピデム、ゾピクロンが、プラセボ、doxepin、seltorexant、zaleplonより多かった(OR範囲:1.27~2.78、高~非常に低)。 長期治療に関しては、エスゾピクロンとレンボレキサントはプラセボより有効で(エスゾピクロンのSMD:0.63[95%CI:0.36~0.90、非常に低]、レンボレキサントのSMD:0.41[95%CI:0.04~0.78、非常に低])、エスゾピクロンはラメルテオン(SMD:0.63[95%CI:0.16~1.10、非常に低])およびゾルピデム(SMD:0.60[95%CI:0.00~1.20、非常に低])より有効であった。 エスゾピクロンとゾルピデムは、ラメルテオンと比較してあらゆる原因による中止率が低かった(エスゾピクロンのOR:0.43[95%CI:0.20~0.93、非常に低]、ゾルピデムのOR:0.43[95%CI:0.19~0.95、非常に低])。しかし、ゾルピデムはプラセボに比べて副作用による脱落数が多かった(OR:2.00[95%CI:1.11~3.70、非常に低])。

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5~11歳へのファイザーワクチン、オミクロン株への有効性/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株(B.1.1.529)流行中における5~11歳へのmRNAワクチンBNT162b2(ファイザー製)の2回接種により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院リスクは低下したことが、シンガポール・シンガポール大学のSharon H. X. Tan氏らによる検討で示された。2021年11月初旬に初めて確認されて以来、オミクロン変異株は多くの国で急速に拡大し、デルタ変異株(B.1.617.2)に置き換わり、優勢株となっている。これまで、小児におけるオミクロン変異株に対するワクチンの有効性に関するデータは不足していた。NEJM誌オンライン版2022年7月20日号掲載の報告。2022年1月21日~4月8日における25万5,936例のデータを解析 研究グループは、オミクロン変異株が急速に拡大した2022年1月21日~4月8日におけるシンガポールの5~11歳の小児のデータを解析した。シンガポール保健省に報告され同省が保持している公式データに基づく解析である。 対象小児をワクチン未接種群、部分接種群(ワクチン1回目接種後1日以上、2回目接種後6日まで)、完全接種群(2回目接種後7日以上)に分け、報告されたすべてのSARS-CoV-2感染(PCR検査、迅速抗原検査、またはその両方で確認)、PCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染、およびCOVID-19関連入院の発生率を評価項目とし、ポアソン回帰法を用いて各評価項目の発生率比からワクチンの有効性を推定した。 解析対象集団は計25万5,936例で、このうち17万3,237例(67.7%)が完全接種群、3万656例(12.0%)が部分接種群、5万2,043例(20.3%)が未接種群であった。2回接種でCOVID-19関連入院に対する有効性は約83% 報告されたすべてのSARS-CoV-2感染、PCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染、およびCOVID-19関連入院の粗発生率(100万人日当たり)は、ワクチン未接群がそれぞれ3,303.5、473.8、および30.0、部分接種群では2,997.3、391.2、および19.1、完全接種群では2,770.3、111.8、および6.6例であった。 部分接種群のワクチン有効率は、すべてのSARS-CoV-2感染に対しては13.6%(95%信頼区間[CI]:11.7~15.5)、PCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染に対しては24.3%(19.5~28.9)、およびCOVID-19関連入院に対しては42.3%(24.9~55.7)であった。 完全接種群のワクチン有効率はそれぞれ36.8%(95%CI:35.3~38.2)、65.3%(62.0~68.3)、82.7%(74.8~88.2)であった。

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ゴルフ中に突然のめまい!VADに注意!!【知って得する!?医療略語】第16回

第16回 ゴルフ中に突然のめまい!VADに注意!!ゴルフがきっかけで脳梗塞になるなんてことがあるのですか?そうなんです。水泳のクロールやテニス、カイロプラクティスなども若年性脳梗塞を引き起こすことがありますよ。いずれも椎骨動脈解離(VAD:vertebral artery dissection)が原因です。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】VAD【日本語】椎骨動脈解離【英字】vertebral artery dissection【分野】脳神経【診療科】脳神経外科・救急【関連】椎骨動脈解離性動脈瘤 VADA:vertebral artery dissecting aneurysm実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。めまいの鑑別診断で見逃せない疾患の1つに椎骨動脈解離(VAD)があります。見逃すと脳幹梗塞や小脳梗塞、くも膜下出血に至ることもあります。そんなVADは、筆者の経験上、研修医の先生に質問しても、あまり認知されていない疾患ですが、救急外来でめまいの診療をしていると、VADは決して稀な疾患ではありません。しかし、VADという疾患の存在を知らなければ疑うこともできません。また、必ずしも一般的な頭部画像検査ではVADが診断出来るとは限らず、きちんと疑うことができなければ、それに応じたMRオーダーが出来ず、末梢性めまいと誤診してしまう可能性もあります。そこで、今回はVADについて、診断の観点からフォーカスしたいと思います。VADとはVADは脳動脈解離の1つです。脳動脈解離の発症頻度は、椎骨脳底動脈系:頸動脈系=3:1と椎骨脳底動脈系が高く、さらに椎骨脳底動脈系の解離の90%が椎骨動脈です。発症様式は、解離に伴う椎骨動脈内の狭窄で虚血を来す場合と、椎骨動脈の解離部分が瘤状化し椎骨動脈瘤を発症(椎骨動脈解離性動脈瘤)、それが破裂する出血性のものがあります。初期症状は後頸部痛や肩こりで、多くは片側ですが、解離が脳底動脈に及び、脳底動脈の解離であれば頸部痛が両側性になる可能性も十分あります。また、筆者の経験上は頸部痛や肩こりの程度はさまざまで頭重感程度の方もいます。ただ、普段は肩こりや頸部痛が無い人が、めまいで来院し、普段は経験していない肩こりや頸部痛、頭重感を呈している際には、VADの可能性を十分に想定します。VADの主な原因VADの病因は、特発性から外傷性(交通事故・頸椎骨折等)、スポーツ、血管炎、マルファン症候群の結合組織病などさまざまですが、頸部の捻転を伴う動作が発症契機として指摘されています。とくに頸部を急に捻る動きや過伸展を伴うスポーツ、たとえばゴルフや水泳のクロールやサーフィン、テニスやカイロプラクティスなどで症例報告があります。2020年にはくしゃみ直後の発症も報告されています。これは筆者の推測ですが、頸椎の横突孔を通過する椎骨動脈は、頸部の過伸展や捻転動作により、横突孔周囲の骨と強く接触し、ずり応力により血管壁が損傷し解離を来しやすいのではないかと推測しています。頸動脈系よりもVADが圧倒的に多いのは、椎骨動脈の解剖的な構造に由来するのではないかと考えています。VAD診断にはMRのVRFAやBPASが役立つVADの画像診断の上で留意したいのは、虚血発症のVADが必ずしも脳梗塞まで至っていないことがある点です。このため、発症して間もないVADを頭部単純CTでは診断できないのはもちろんですが、頭部MRIでも拡散強調画像で急性期脳梗塞病変を指摘できないことがあります。これは梗塞まで至っていない虚血状態の病態があることによります。そこで頭頸部MRAも併用しますが、椎骨動脈は先天的な左右差も多く、MRAで椎骨動脈が狭窄や途絶しかけているように見えても、椎骨動脈の低形成という場合も少なくありません。このときに参考になるのが、BPAS(basi-parallel anatomical scanning)です。BPASはMRAの撮影法の1つです。MRAが血管内の血流信号(≒血管内腔)を反映するのに対し、BPASは椎骨脳底動脈の外観を表示します。BPASとMRAで示される血管径に明らかな乖離があるとすれば、椎骨動脈に解離腔の存在を疑う、あるいは解離部分の瘤状化を疑う手がかりとして有用です。ただし、BPASで有用な情報を得られない症例も存在し、近年は新たな撮像方法として、可変フリップ角 (VRFA:variable refocusing flip angle)を利用したVRFA-3D-TSE法も登場し、より診断精度の向上が期待されます。しかし、どれほど診断機器が発達しても、まずは疾患を疑わなければ始まりません。VADの診断には病歴聴取がとても重要だと思います。急性のめまいの患者さんの診療においては、症状出現前に頸部の過伸展や捻転イベントがなかったか詳しく問診します。また、これまで経験のない片側の肩こりや頸部痛の有無も確認します。ただし、VADの全例に誘因や頸部痛・後頭部痛があるとは限りませんのでその点は注意が必要です。ですが、少なくとも問診や症状からVADを否定できず、検査前確率が高いと考える場合は、放射線技師と相談し、MRI撮影の依頼時にBPASやVRFAを検討いただくことをお薦めします。最後に筆者がヒヤッとした症例をご報告します。その患者さんはバレリーナで、バレエ中に首を過度に反らしたときに突然のめまいが出現しました。初期対応した医師の診断は、アナムネとCTで異常がないことを理由に良性発作性頭位めまい症(BPPV)と診断したようでしたが、帰宅後も症状持続に改善がなく、患者さんは翌日の内科外来を受診しました。発症状況からVADを否定できないと判断し、BPASも含めた頭部MRを実施したところ、椎骨動脈解離が見つかり緊急入院しました。VADは、受診後にくも膜下出血を来し心機能停止で再搬送されたケースも報告されています。めまいを訴える患者を末梢性めまいと結論付ける前に、中枢性めまいの可能性を慎重に否定する必要があります。なお、近年は脳動脈解離として頸動脈解離とVADが一括りに語られる傾向があり、筆者は少々違和感を持っています。同じ脳動脈解離でも、VADと頸動脈系では臨床像が異なるのがその理由で、現場の実務ではそれぞれの臨床像を知っておく必要があると考えています。1)戌亥 章平ほか. 臨床神経. 2020;60:573-580.2)沖山 幸一ほか. 脳卒中の外科. 2014;42:196-202.3)徳元 一樹ほか. 臨床神経. 2014;54:151-157.4)寺崎 修司ほか. 脳卒中. 1996;18巻:70-73.

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第119回 「加点による合格は賄賂」、東京医大入試裁判で文科省元局長に有罪判決

第7波の今の混乱は政治の責任こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。新型コロナウイルスのBA.5株が猛威を振るっています。ここにきて、政府は4回目のワクチン接種の促進、濃厚接触者の待機期間を7日間から5日間に短縮、抗原検査キットの無料配布など、新しい対策を続々と打ち出し始めています。しかし、どれも付け焼き刃的で、医療機関や保健所の業務の逼迫度合いは増すばかりです。第5波、第6波で問題となったことが再び繰り返されているわけで、もうこうなると明らかに政治の責任と言えるでしょう。第6波収束後に、風邪やインフルエンザと同様、健康で重症化しなさそうな人や自力で治そうと思う人は、検査は不要かつ医療機関を受診しなくてもいい、というルールに変えて国民に周知しておけば、今回の現場の混乱を多少は防げたはずです。あるいは、第4回目のワクチン接種を早めに進めておいたり、抗原検査キットを事前に国民に配布しておいたりすることもできたはずです。第6波収束後、感染症法上の扱いを「5類並み」に変更するチャンスも十分にあったと思います。しかし、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではないですが、参議院選挙を前にして、その検討を真剣に行わなかった岸田 文雄首相の責任は重いと言えます。感染症ですから患者が増えていること自体は仕方ありませんが、以前と同じように医療現場があたふたとしている状況を見ると、この2年余りのあいだ国は一体何をしていたんだ、と思います。私の周囲の“医療提供の仕組み”がわかった友人の中には、「重症化はほぼしないのだから、もし罹っても医療機関には行かず自力で治す。それが世のため」という人もいます。そもそも風邪やインフルエンザは、医療機関を受診しても療養期間がそう短くならない病気です。「熱っぽい時は医者へ」という日本人の固定観念自体も、今後変えて行く必要がありそうです。さて、今回は事件発覚から実に4年、先週やっと判決が出た、東京医大入試裁判について書いてみたいと思います。元局長に懲役2年6カ月、執行猶予5年の判決文部科学省の私立大学支援事業で東京医科大に便宜を図る見返りに、自分の息子を東京医科大に合格させてもらったとして、受託収賄罪に問われた同省の元科学技術・学術政策局長、佐野 太被告(62)ら4人の判決公判が7月20日、東京地裁でありました。東京地裁(西野 吾一裁判長)は「入試の公平性をないがしろにする甚だしい利益を収受した。賄賂に該当するのは明らか」として、佐野被告に懲役2年6ヵ月、執行猶予5年(求刑懲役2年6ヵ月)を言い渡しました。佐野被告の退職金の支払いが差し止められるなど社会的制裁も受けている点を考慮し、判決は執行猶予付となりました。一方、贈賄罪に問われた東京医科大元理事長の臼井 正彦被告(81)は懲役1年6ヵ月、執行猶予4年(同1年6ヵ月)、元学長の鈴木 衛被告(73)は懲役1年、執行猶予2年(同1年)、受託収賄ほう助罪などに問われた医療コンサルタント会社元役員、谷口 浩司被告(51)は懲役2年、執行猶予5年(同2年)としました。「私立大学研究ブランディング事業」の選定で便宜判決によると、佐野被告は官房長だった2017年5月、臼井被告から、独自色がある私大を支援する「私立大学研究ブランディング事業」の選定で便宜を図ってほしいと依頼され、医療コンサルタント会社元役員だった谷口被告を通して事業計画書の書き方などを助言。その謝礼として、臼井、鈴木両被告から、2018年2月に同大を受験した息子の試験結果に加点してもらい合格させてもらったとのことです。佐野被告は「不正をしてまで息子を合格させてもらおうと思ったことは一度もない」として無罪を主張。臼井、鈴木両被告らも起訴事実を否認していました。判決は、佐野被告と臼井被告が2017年5月に会食した際の音声データを基に、臼井被告が「来年は、絶対大丈夫だと思いますので」などと発言したと認定。佐野被告が、息子に加点などの優遇措置がとられることを認識した上で私大支援事業への助言などの依頼を受け、承諾したと判断しました。ちなみに東京医大は「私立大学研究ブランディング事業」の対象校に選ばれ、2017年度に3,500万円が交付されています。判決では「事業の公平性や補助金の適正な交付を妨げてはならないという職務に反した」と佐野被告を強く非難しています。「加点による合格は賄賂」と結論付ける公判では、不正に得点を加えた大学側の優遇措置が佐野被告への賄賂に当たるかどうかが争点でした。佐野被告の息子は、2018年2月に実施されたマークシート方式の1次試験(400点満点)で大学側から本来の得点に10点の加算を受けたことで、2次試験の小論文や面接を踏まえた最終順位が74位となり、75人の正規合格の枠に入り、合格しました。佐野被告側は公判で「加点がなくても補欠として合格でき、賄賂にはあたらない」と訴えていました。判決理由も「加点がなくても補欠合格していた」ことを認めていますが、「補欠合格は正規合格者の辞退という偶然の事情に左右される。早期に正規合格者の地位を得ることは、他の大学への高額な入学金の納付を避けられ、経済的な利益もある」と指摘。会食の録音データなども踏まえ、佐野被告は「加点などの優遇措置が講じられ、正規合格の地位を受ける可能性を認識していた」として、加点による合格が賄賂に当たると結論付けました。判決後、佐野被告は弁護人を通じ「不当な判決」などとコメントし、控訴する意向を示しました。医学部入試の透明性改善のきっかけとなった事件2018年7月に発覚したこの事件は、日本の医学部入試にも多大な影響を及ぼしました。当初は一般的な贈収賄事件として扱われていましたが、その後の東京医大の内部調査で、同大が行っていた点数操作が佐野被告の息子だけでなく、女性や3浪以上の男性にも一律に不利になるように行われていたことが判明、事件は一気に社会問題化しました。文科省は医学部医学科がある全国81大学の入学者選抜の過去6年間の実態を緊急調査し、2018年9月に2013年〜2018年度の男女別の合格率を公表しました。これらの調査結果と各大学へのヒアリングを基に、東京医大を含む10大学の医学部医学科においても「不適切である可能性が高い」選抜や「疑惑を招きかねない」選抜が行われていた事実が明らかになったのです。同省は2019年6月、「大学入学者選抜実施要項」を見直し、差別を禁止する具体的なルールを設定。各大学では受験生の名前や性別、年齢を伏せて合否を決めたり、女性面接官を増やしたりする対策がとられるようになりました。元受験生による集団訴訟も継続中実際、こうした対策の効果は大きく、本連載の「第94回 昨年の医学部入試で男女別合格率が逆転!医師が『An Unsuitable Job for a Woman』でなくなる日は本当に来るか」でも詳しく書いたように、国公私立81大学における2021年度の医学部入試での女性の平均合格率は13.60%と、男性の13.51%を上回り、データのある2013年度以降で初めて男女の合格率が逆転しています。もしこの事件が発覚しなかったら、女性や複数年浪人生への不当な差別がその後も続いていたと思うと、恐ろしいことです。ちなみに、文科省の調査で不適切入試が指摘された大学については、元受験生が損害賠償を求めて提訴する動きも広まりました。東京医大のほか昭和大や聖マリアンナ医科大などに対する集団訴訟が続いています。2022年5月には、東京地裁が順天堂大に対し、医学部で不合格となった元受験生の女性13人に計約805万円の支払いを命じる判決を言い渡しています。順大については判決が確定し、元受験生と大学側は和解しています。いくつかの集団訴訟はまだ続いており、佐野元被告も控訴する方針なので、今回の有罪判決もまだ確定しません。東京医大入試事件をきっかけに全国の医学部を揺るがせた不正入試の余波は、まだまだ収まりそうにありません。

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うつ病に対するACT介入~メタ解析

 急性期うつ病の治療において、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)の有効性が報告されている。しかし、ACTを個別、グループ、インターネットで効果的に提供する方法やこれらを組み合わせた提供方法については、よくわかっていない。中国・北京大学のYue Sun氏らは、ACTの最も効果的な提供方法を検討するため、ネットワークメタ解析を実施した。その結果、抑うつ症状に対するACT介入は、個別、グループ、インターネットのいずれにおいても効果的であることが示唆された。著者らは、ACTをさまざまな方法で提供することにより、多様な患者集団に対してACTを実践、普及することが容易になると報告している。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2022年6月25日号の報告。 2021年3月21日までに公表された関連研究を特定するため、2人のレビュアーが各種データベース(PubMed、Cochrane library、Embase、PsycINFO、CINAHL、CNKI、Wangfang)より検索した。ACTの相対的な有効性を評価し、さまざまな提供方法のランク付けを行うため、ペアワイズ法およびネットワークメタ解析を実施した。バイアスリスクやエビデンスの質(GRADE)などの一連の分析および評価を同時に行った。 主な結果は以下のとおり。・厳格なスクリーニングに基づき23研究(うつ病患者690例)を特定し、分析に含めた。・個別、グループ、インターネットおよびそれらの組み合わせによるACTの有効性には、統計学的に有意な差は認められなかった。・対照群と比較し、個別(標準化平均差[SMD]:-1.44、95%信頼区間[CI]:-2.11~-0.76、GRADE:低)、グループ(SMD:-1.34、95%CI:-1.91~-0.78、GRADE:中)、インターネット(SMD:-0.66、95%CI:-1.25~-0.06、GRADE:低)によるACTの提供では、最も大きな抑うつ症状改善効果が認められた。一方、グループと個別の組み合わせは、効果が低かった。・受容性(何らかの理由による脱落)については、すべての提供方法で統計学的に有意な差は認められなかった。・うつ病マネジメントのための電話および複合的なACT介入を検証するためには、さらなる研究が求められる。

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インフルとの鑑別を更新、COVID-19診療の手引き8.0版/厚労省

 7月22日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第8.0版」を公開し、全国の自治体や関係機関に通知を行った。 今版の主な改訂点は以下の通り。第8版の主な改訂点【1 病原体・疫学】・(1)病原体、(3)国内発生状況、(4)海外発生状況の情報を更新【2 臨床像】・(1)臨床像を更新(とくにオミクロン株の知見、インフルエンザとの鑑別を更新)・(2)重症化リスク因子、(3)胸部画像所見、(4)合併症を更新・(5)小児例の特徴で小児の重症度、小児における家庭内感染率について更新・(5)小児例の特徴で「小児における死亡例」を追加・(6)妊婦例の特徴を更新【3 症例定義・診断・届出】・(1)症例定義を更新・(4)届出を更新【4 重症度分類とマネジメント】・(1)重症度分類、(2)軽症、(3)中等症II 呼吸不全あり、(4)重症の中のECMO、血液浄化療法、血栓症対策、図を更新・「高齢者における療養のあり方について」を追加・「医療提供体制と自宅療養について」を参考から追加【5 薬物療法】・(1)抗ウイルス薬のモルヌピラビルを更新・(2)中和抗体薬のソトロビマブ、カシリビマブ/イムデビマブを更新・(4)妊婦に対する薬物療法で「禁忌」を追加・(参考)の「日本国内で開発中の薬剤」を更新【6 院内感染対策】・序文、換気を(2)環境整備に統合し更新・(4)患者寝具類の洗濯を更新・(7)職員の健康管理を更新・(8)妊婦および新生児への対応を更新・【参考】感染予防策を実施する期間の表を追加【7 退院基準・解除基準】・(1)退院基準を更新

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ICI耐性の非小細胞肺がんに対するラムシルマブ+ペムブロリズマブの2次治療(Lung-MAP S1800A)/JCO

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)耐性となった進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、ラムシルマブとペムブロリズマブの併用による2次治療が有望な成績を示した。 進行NSCLCにおけるICI耐性後の2次治療は化学療法だけであり、今もなお大きなアンメットニーズが残っている。一方、ICIとVEGF阻害薬の併用は、複数のがん種で有望な結果が得られている。ドライバー変異のないICI耐性NSCLCの2次治療に、ICIであるペムブロリズマブとVEGF阻害薬であるラムシルマブの併用を化学療法と比較したLung-MAP S1800Aが行われた。結果は米国臨床がん学会年次集会(ASCO2022)で発表され、同時にJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。・対象:1ライン以上のPD-1/L1治療+プラチナベース化学療法(後治療または併用)を受け病勢進行したバイオマーカーの適合がないStage IVまたは再発NSCLC(ICI開始後84日以上かつ最終治療から1年以内に進行した症例)・試験薬群:ラムシルマブ+ペムブロリズマブ(RP群)3週ごと35サイクルまで投与 69例・対照薬群:治験担当医が選択した標準化学治療(ドセタキセル±ラムシルマブ、ゲムシタビン、メトレキセド、SOC群)67例・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]客観的奏効率(ORR)、奏効期間、治験医師評価の無増悪生存期間(PFS)、毒性など 主な結果は以下のとおり。・OS中央値はRP群で14.5か月、SOC群で11.6か月であり、RP群で有意に改善された(ハザード比[HR]0.69、80%信頼区間[CI]:0.51〜0.92、片側p=0.05)。・ほとんどのサブグループでRP群のOS改善が示された。・PFS中央値はRP群で4.5ヵ月、SOC群で5.2ヵ月であった(HR:0.86、80%CI:0.66〜1.14、片側p=0.25)・ORRはRP群で22%、SOC群で 28%であった(片側p=0.19)。・Grade3以上の治療関連有害事象は、RP群の42%、SOC群の60%で発現した。 ICIと化学療法による治療で進行したNSCLC患者に対し、ラムシルマブとペムブロリズマブの併用による2次治療は従来のSOCと比較して、OSの有意な改善が示され、安全性は両剤の既知の毒性と一致していた。

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原因不明の小児急性肝炎、英国44例の臨床像/NEJM

 2022年1月~3月に、英国・スコットランドの中部地域で小児の原因不明の急性肝炎が10例報告され、世界保健機関(WHO)は4月15日、Disease Outbreak Newsでこれに言及した。WHOはさらに、4月5日~5月26日までに33ヵ国で診断された同疾患の可能性例が少なくとも650例存在するとし、このうち222例(34.2%)は英国の症例であった。同国・Birmingham Women’s and Children’s NHS Foundation TrustのChayarani Kelgeri氏らは、今回、同施設に紹介された原因不明の急性肝炎44例の臨床像、疾患の経過、初期のアウトカムについて報告した。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2022年7月13日号に掲載された。3つのカテゴリーの臨床アウトカムを評価 研究グループは、2022年1月1日~4月11日の期間に、同施設に紹介された原因不明の急性肝炎の小児について後ろ向きに検討を行った。 対象は、年齢10歳以下で、英国健康安全保障庁(UKHSA)による確定例の定義(2022年1月1日以降に10歳以下の小児で発症し、A~E型肝炎ウイルスや代謝性・遺伝性・先天性・機械的な原因に起因しない肝炎で、血清アミノトランスフェラーゼ値>500 IU/L)を満たした急性肝炎の患児であった。 これらの患児の医療記録が精査され、人口統計学的特性や臨床的特徴のほか、肝生化学検査、血清検査、肝臓指向性およびその他のウイルスの分子検査の結果と共に、画像上のアウトカムと臨床アウトカムが記録された。 治療は、同施設の急性肝不全プロトコールに準拠して実施され、広域スペクトル抗菌薬、抗真菌薬、プロトンポンプ阻害薬、ビタミンKの投与などが行われた。 臨床アウトカムは、(1)病態の改善(ビリルビン値およびアミノトランスフェラーゼ値の持続的な低下と、血液凝固能の正常化)、(2)肝移植、(3)死亡の3つのカテゴリーについて評価が行われた。90%でヒトアデノウイルスを検出、14%で肝移植、死亡例はない 急性肝炎で紹介された50例のうち、44例(年齢中央値4歳[範囲:1~7]、女児24例[55%])が確定例の定義を満たす肝炎を有していた。このうち13例が同施設に転院し、残りの患児は地元の施設で治療を受けた。2022年1月~4月の同施設への原因不明の急性肝炎による入院数および原因不明の急性肝不全による肝移植数は、いずれも2012~21年における年間症例数よりも多かった。 医療記録が入手できた患児(80%)は全例が白人であった。受診の主な理由は黄疸(93%[41/44例])が最も多く、次いで嘔吐(54%[24例])、下痢(32%[14例])、白色便(30%[13例])、腹痛(27%[12例])、嗜眠(23%[10例])の順だった。 ヒトアデノウイルスの分子検査を受けた30例では、27例(90%)が陽性であった。サイトメガロウイルス(CMV)は全例が陰性で、エプスタイン-バーウイルス(EBV)のカプシド抗原は2例が陽性で、核抗原は1例が陽性だった。 腹部超音波検査では、胆嚢壁肥厚が45%(20例)、軽度肝腫大が27%(12例)、軽度脾腫が18%(8例)で認められた。 38例(86%)は自然回復した。残りの6例(14%)は肝機能が持続的に悪化して急性肝不全に進展し、全例が肝移植を受けた。この6例中5例は急速に進行性の脳症を来し、黄疸発生から脳症発現までの間隔は6~7日だった。死亡例はなかった。肝移植を受けた6例を含む全例が自宅退院した。 UKHSAは、血液と肝組織のメタゲノム解析を行い、アデノ随伴ウイルス2やヘルペスウイルスを検出した。これらの所見の重要性については、現在、さらなる評価が進められている。 著者は、「多くの患児でヒトアデノウイルスが分離されたが、この疾患の病因におけるその役割は確立されていない」としている。

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コロナ・インフルワクチン同時接種可、オミクロン株対応ワクチン秋以降に導入へ/厚労省

 これまで新型コロナワクチンの接種は他のワクチン接種と13日以上の間隔を空けて実施することとされていたが、知見等の蓄積をふまえ、インフルエンザワクチンに関しては同時接種も可能とすることが、7月22日に開催された第33回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で了承された。同会ではそのほか、オミクロン株対応ワクチンの接種や4回目接種の対象者拡大等についても議論された。各社のコロナワクチンとインフルワクチン同時接種の有効性・安全性<同時接種の有効性>ファイザー社・アストラゼネカ社:2回目接種において、ファイザー社またはアストラゼネカ社ワクチン単独接種と比べ、新型コロナウイルス抗スパイクIgG抗体価は有意差がなかった。さらにファイザー社ワクチンとの同時接種においてインフルエンザの一部の株に対するHI抗体価の上昇がみられた。モデルナ社:追加接種において、インフルエンザワクチン単独またはモデルナ社ワクチン単独接種と比べて、インフルエンザHI抗体価、新型コロナウイルス抗スパイクIgG抗体価共に低下はなく、免疫干渉はないと報告された。武田社:初回接種において、インフルエンザワクチン単独接種と比べて、インフルエンザHI抗体価は同程度に上昇した。また、両ワクチンの同時接種による新型コロナウイルス感染症発症予防効果は87.5%と、武田社ワクチン単独接種の89.8%と同程度であった。<同時接種の安全性>ファイザー社・アストラゼネカ社:観察期間を通じた全身副反応報告割合は非同時接種群と比較して、同時接種群でも同程度であり、同時接種での安全性の懸念は認められなかった。モデルナ社:接種後21日間に報告された有害事象は同時接種群17.0%、モデルナ群14.4%、インフルエンザ群10.9%であり、同時接種での安全性の懸念は認められなかった。武田社:接種後21日以内に報告された有害事象は同時接種群18.4%、ノババックス群17.6%、インフルエンザ群:14.5%で同時接種により安全性の懸念が増すことはなかった。 米国ではインフルエンザワクチンを含めて、他のワクチンと新型コロナワクチンは同時接種可能とされており、2021年9月~2022年5月のデータにおけるmRNAワクチンの追加接種とインフルエンザワクチンの同時接種後7日間の全身反応の調整オッズ比は、mRNAワクチン追加接種の単独接種と比較し、ファイザー社ワクチンとの同時接種で1.08、モデルナ社ワクチンとの同時接種で1.11であったと報告されている。英国では2022年5月26日にインフルワクチンとコロナワクチンの同時接種は安全であるという基本方針が示されており、同会ではこれらの知見と諸外国の対応等考慮して、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンについては、間隔の規定を廃止し同時接種を認める一方、インフルエンザ以外のワクチンとの同時接種については、13日以上の間隔を開けることとし、引き続きエビデンスを収集しながら検討することとされた。 なお、委員からは同時接種を積極的に推奨するのか? という質問が上がり、厚労省では、積極的に推奨するということではなく、1つの選択肢として同時接種も可能となるという位置づけと回答した。「オミクロン株対応ワクチン」今秋以降に導入の方向で検討 ファイザー社およびモデルナ社では、「オミクロン株対応ワクチン」の開発を進めており、ともにオミクロン株(BA.1)の成分を含んだワクチンの臨床試験結果を発表し、BA.1に対する中和抗体価が従来ワクチンと比較して優越性を示したことが報告されている。FDAでは製造販売業者に対して、オミクロン株(BA.4/5)の成分を含む2価の追加接種用ワクチンを開発するよう、COVID-19ワクチンを改良することを検討するよう勧告しており、これにより、改良されたワクチンが2022年秋の初めから中頃に利用できるようになる可能性がある。 本邦でも「オミクロン株対応ワクチン」を予防接種に導入していく方向が了承され、「オミクロン株対応ワクチン」の構成(オミクロン株の成分のみを含んだ単価ワクチンとするか従来型ワクチンを含んだ2価ワクチンとするか、オミクロン株の構成亜系統[BA.1またはBA.4/5])について専門的に議論する場を設けることで一致した。 なお、厚労省では同日7月22日付けで「オミクロン株に対応した新型コロナワクチンの接種体制確保について」と題した事務連絡を発出し、「オミクロン株対応ワクチン接種は、少なくとも新型コロナウイルス感染症にかかった場合の重症化リスクが高い高齢者等を対象とすることが考えられるが、今後得られるデータや諸外国の動向等を踏まえて、高齢者等以外の者も対象とする可能性があるため、現時点では、初回接種を完了した全ての住民を対象に実施することも想定して準備を進める」ことを要請している。4回目接種対象者、医療従事者に拡大 3回目接種から4ヵ月以上経過した60歳以上において、オミクロン株流行期におけるファイザー社ワクチン4回目接種による感染予防効果は、4回目接種後22~28日後には約50%であったが、50~56日後には約9%である一方、重症化予防効果は4回目接種後36~42日後においても77%であったと報告されている。また18歳以上の医療従事者を対象とした前向き臨床研究では、オミクロン株流行下においてファイザー社またはモデルナ社ワクチン4回目接種の感染予防効果は、3回目接種と比較してそれぞれ30.0%および10.8%であり、発症予防効果についてはそれぞれ43.1%および31.4%であったとの未査読の研究報告がある。 これらいくつかの論文データからは、4回目接種の感染予防効果は限定的とのエビデンスに特段変わりはないものの、新規感染者が急速な増加傾向にあることから、重症化リスクの高い者が多数集まる医療機関・高齢者施設等において従事者を通じた集団感染が生じることを懸念し、60歳未満の医療機関・高齢者施設等の従事者に対する4回目接種を、予防接種法に基づく予防接種として位置付けることを了承した。 同時接種可能とすることおよび4回目接種対象者の拡大については、同日公開された「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(8.2版)」にも反映されている。

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何のために論文を書くのか! 知的好奇心にウットリ【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第50回

第50回 何のために論文を書くのか! 知的好奇心にウットリ『Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」』も第50回を迎えました。思いのほか多くの方々に目を通していただき嬉しいかぎりです。この連載の表向きの企画意図は、「論文を読む時、書く時、投稿する時に役立つ小ネタを紹介しながら綴る、論文をめぐるオリジナルエッセー」です。伏線としての小生の狙いは、「猫の素晴らしさ、猫と暮らすことの楽しさを伝える」です。今回は猫を封印して、「何のために論文を書くのか!」という究極の命題を考えてみます。人間には知的好奇心があります。物事に対して興味や関心を抱き、もっと深く知りたい、深く調べたいという根源的な感情が知的好奇心です。そして自分が知ったことを他の人に知ってもらいたい、共有したいという活動が論文化になります。卒業のため、学位取得のため、研究費獲得のため、昇進のため、少しでも高いインパクトファクターを得るため…現実の世界では論文を書かねばならない数々の理由があります。しかし、これらは些末で卑近なことがらであり、これを動機として論文を執筆する作業は苦痛となります。他の人々がいまだ知らない自分だけが知っている真実を知らしめたい。この純粋な感情を発露させる作業としての論文執筆はワクワクする楽しい作業となるでしょう。他から強制されるのではなく自由に自発的に行う活動が学問です。「リベラルアーツ」という言葉を聞いたことがあると思います。元来、人間を束縛から解放するための知識や、生きるための力を身につけるための手法を指します。欧米の教育では「リベラルアーツ」を大切にする伝統があります。古代ギリシアやローマの時代に始まる概念で、リベラルとは自由、つまり奴隷ではないという意味で、自らの意思で運命を切り開いていくことが許される自由人の教養を意味します。知的好奇心を満たすことを職業とできるのが学者です。学者を辞書で調べると、「学問の研究を仕事としている人。学問のある人。豊富な知識のある人」とあります。自分が学者という職業を初めて意識し、憧れをもった瞬間を明確に記憶しています。小学生の高学年ころでしょうか。ユーラシア大陸を東西に貫く交通路「シルクロード」の砂漠地域についてのNHKのドキュメンタリー番組を観た時です。それは、中国の史書に西域諸国の古代都市として記される楼蘭がかつて存在した場所を訪問する内容でした。番組に同行している日本人の考古学者(お名前は失念しております)が、現在は見渡すかぎりの砂漠となった場所で小さな石ころを1つ見つけ、それを拾い上げて目の前に運び眺める場面です。石器や彩色土器など先史時代の遺物の破片ではありません。どう見てもただの石ころです。それを見つめる初老の男性の眼差しと表情に、小学生の自分は大きな感動を得たのです。「これが学者だ!」と理解しました。「ウットリ」という言葉がまさにピッタリです。彼の瞳にはシルクロードを行き交う東西の人々や楼蘭の街の活気が見えているかのようでした。視覚だけでなく、雑踏の音、ラクダの匂い、古代には都市に隣接していたといわれる湖を渡る風、五感すべてを駆使して感じていることが伝わってきました。ただの石ころでさえこの様子ですから、正式な学術調査で遺品を発掘できればいかほどの感激なのかと、子供ながらに思ったことを覚えています。その後に、自分は井上 靖の『楼蘭』や『敦煌』といった一連の西域小説の代表作に魅了されていくことになるのです。半分は歴史書で半分は小説といった構成が小学生にも親しみやすく一気に読み通した記憶があります。「どんなものでも、その機能が発揮できる時が一番幸せなのだ」と言われます。ライオンは動物園の檻の中にいるよりも、アフリカの草原で獲物を追う時が一番活き活きとしています。鳥は空を滑空し大地を俯瞰する姿が一番美しいです。生き物だけではありません。煙を吐きながら客車や貨車を力強く牽引する蒸気機関車は生命を与えられたかのようです。人間にとって最高の機能を発揮できる場面は、意識があること、考えることができることです。真理を探求し知的好奇心を満たす作業は、人間の機能を最高に美しく発揮している場面といえます。この状態を説いた名言がデカルトの「われ思う故にわれ有り」なのかもしれません。ここまでパソコンに向かって原稿を打っていると、画面横のテーブルの上で愛猫が眠っていることに気づきました。これは猫が最高に機能を発揮している場面です。デカルト先生に負けないように自分も名言(迷言?)を述べてみます。「ネコ眠るゆえにネコなり」猫は封印したんちゃうんかい?

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薬剤師の名札「姓のみ」「本名以外」の記載も可能に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第93回

薬局ではフルネームの名札をつけて業務を行っていると思いますが、名札の記載ルールが緩和され、「姓のみ」「本名以外」などの記載も可能になったことをご存じでしょうか。これまで名札がフルネーム表記だったのは、2009年の厚生労働省医薬食品局長通知で以下のように「資格+氏名」を記載した名札を付けることが求められていたためです。「薬剤師又は登録販売者には、氏名に加えて「薬剤師」又は「登録販売者」と記載した名札を付けさせるか、氏名を記載した名札に加えて薬剤師又は登録販売者の別を記載したバッジ等を付けさせることとし、一般従事者には、氏名のみを記載した名札又は氏名に加えて「一般従事者」と記載した名札を付けさせること。」6月27日の事務連絡により、上記に続いて以下の文言が追加されました。「なお、ストーカー被害やカスタマーハラスメントの防止等の観点から、薬局開設者が適切に判断し、薬剤師、登録販売者又は一般従事者が氏名に代わって、姓のみ又は氏名以外の呼称を記載した名札を付けることを認めても差し支えないこと。姓のみ又は氏名以外の呼称を記載することとする場合は、薬局開設者は、薬局の営業時間中に従事する薬剤師、登録販売者又は一般従事者の特定のため、名札への記載名について実名と照合できるよう把握及び管理すること。」昨今、ストーカー被害やカスタマーハラスメントが社会問題となっている中、薬局開設者の判断により、名札の氏名記載はフルネームでなくてもよいとされました。同日に公表されたQ&Aでは、「姓のみ」「氏名以外の呼称」を記載した名札を付けることを認め、氏名以外の呼称の例として「旧姓」「ビジネスネーム」など、社会通念上不適当でない呼称を用いることが可能と説明しています。なお、薬局開設者は、名札の記載名と実名を照合できるようにする必要があります。おそらく、資格+姓のみを記載する薬局が増えるのではないかと思いますが、薬局や薬剤師の業務の信頼性を担保するにはそれで十分なのではないでしょうか。フルネームではさらなる個人情報やプライベートな情報に到達される可能性もあります。私も危険を感じる場面に遭遇したことがありますし、親身に服薬指導していた患者さんが好意と勘違いしてストーカー化し、異動せざるを得なくなったという薬剤師の話も聞きます。そのような状況に陥ること自体も恐怖ですし、異動先でスタッフや患者さんと一から関係を構築しなければならないため、負担はかなり大きいものになります。ルールの緩和で薬剤師がより安全に働くことができるようになればいいなと思います。フルネームがわからないと資格確認検索システムで調べられない一方、名札にフルネームを記載しないことのデメリットとして、本当に薬剤師資格を有しているかどうかを患者さんが調べにくくなるという問題があります。厚生労働省が作成している薬剤師資格確認検索システムでは、フルネームを入力することで、厚生労働省に登録している薬剤師かどうかを調べることができます。登録年や行政処分に関する情報も調べることができるため、かかりつけ薬剤師を選ぶ際の参考になるかもしれません。この検索システムが存在する理由は、「薬剤師の情報を開示することで国民が享受できる利益」と「不開示とすることで保護される利益」を比較した場合、薬剤師でない者からの調剤を避けて国民の生命・健康の保護に寄与することができるという前者の利益のほうが上回るためです。医師や多くの国家資格でも同様に開示されています。「自称薬剤師」から調剤を受けたり薬を勧められたりすることなどあってはならないので、資格者かどうか確認するための方法は必要だと思います。しかし、登録年からおおまかな年齢を推測することができるため、個人情報により到達されやすくなりますし、検索結果に表示される性別を知られたくない薬剤師もいるかもしれません。この数年で状況は大きく変化していますので、薬剤師の個人情報を保護するために、表示項目や確認方法などの議論が必要な時代になってきているのかもしれません。

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英語で「便通がまだありません」は?【1分★医療英語】第38回

第38回 英語で「便通がまだありません」は?I have not had a bowel movement since surgery.(手術後、まだ便通がありません)I see. Let me give you some medications for that.(わかりました。お薬を出しておきますね)《例文1》医師Good morning. How is everything?(おはようございます。具合はいかがですか?)患者Overall everything is good, but I have not had a bowel movement.(全体的には良いのですが、まだ便通がありません)《例文2》Have you had a bowel movement?(お通じは出ましたか?)《解説》医療現場特有の会話の1つに、「便通」に関するものがあります。日常会話では基本的に出てくることの少ない話題ですので、とっさには出てきにくい表現だと思います。“have a bowel movement”で、「便通がある」という意味になります。婉曲的な表現ですが、とくに外科系の病棟では非常によく使われます。ポイントは「過去分詞の方が一般的である」ということです。“Did you have a bowel movement?”でも似た意味になりますが、過去形では「過去のある一時点」という基準点が含まれません。過去分詞を使うことよって、暗に「手術から現在」という時間範囲を限定しているのです。また、皆さんもご存じの通り、英語には“poo(p)”、“shit”、“crap”など、直接的に「便」を表す言葉がありますが、これらの表現はプロフェッショナルな場面においては不適切で、使うべきではありません。英語にもTPOがありますので、ぜひそのあたりにも気を遣いながら、英語を上達しましょう。講師紹介

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第122回 コロナは細胞間“トンネル”を伝って脳で広まるのかもしれない

すでによく知られている通り新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染は脳のもやもや(brain fog)や混乱などの種々の神経症状と関連し、どうやら脳に直接影響するらしく、感染者の死後脳からウイルスが検出されています。SARS-CoV-2は感染の取っ掛かりでACE2受容体に結合することが知られますが、ACE2受容体がおよそ非常に乏しい脳でSARS-CoV-2がどうやって広まるのかはよく分かっていません。フランスの研究者による新たな実験の結果、SARS-CoV-2は感染細胞から伸ばした細い管を伝ってACE2受容体なしでも別の細胞に乗り移りうることが示されました1)。いわばトンネルのようなその仕組みのおかげでSARS-CoV-2は脳内で広まるのかもしれません。同国のパスツール研究所のチームはACE2を発現する上皮細胞(Vero E6細胞)とACE2を欠く神経細胞(SH-SY5Y細胞)それぞれとSARS-CoV-2をまずは一緒にしてみました。すると予想通りSARS-CoV-2は上皮細胞には感染し、神経細胞には感染できませんでした。しかしSARS-CoV-2感染上皮細胞と神経細胞を一緒にしたところ神経細胞へのSARS-CoV-2の感染が認められました。とりわけ高性能の顕微鏡で観察したところ細胞間を繋ぐ細い管が見て取れ、細胞膜ナノチューブ(tunneling nanotube;TNT)と呼ばれるその管の中にSARS-CoV-2のタンパク質やRNAがありました。また、ウイルスRNAを量産する二重膜小胞も認められました。すなわちSARS-CoV-2は感染細胞にTNTを作らせ、TNTと連結したよその非感染細胞にTNTを伝ってまんまと侵入しうることが裏付けられました。TNTがウイルスの通り道になることを示したのは今回が初めてではありません。酸素不足や感染などで負荷がかかった細胞が伸ばしたTNTが別の細胞と繋がり、ウイルス粒子がその通路を介して細胞間を行き来しうることがこれまでの研究で示されています。たとえばインフルエンザウイルス、HIV、ヘルペスウイルスはTNTを使って己のゲノムを非感染細胞へ輸送可能であり、その経路であれば免疫や抗ウイルス薬は手出しできそうにありません。今回の研究でTNTはSARS-CoV-2結合の足場がない細胞への侵入ルートになりうることが示されましたが、足場がある細胞間のSARS-CoV-2伝播さえも促しているかもしれません。TNTを構成するアクチンの重合や脱重合は素早く、ウイルスは他の経路よりTNTを介した方がより早く広まれる可能性があるからです。今後の課題として動物やヒトの脳内でTNTを介したSARS-CoV-2細胞感染が存在するかどうかを検討する必要があります2,3)。もしヒトの脳内やその他の体内でTNTを介したSARS-CoV-2感染があるならウイルスの広まりを早くに封じて感染の重症化を防ぐのにTNT形成阻止薬が役立つかもしれません。今のところTNTに限って阻害する化合物は存在しませんがパスツール研究所のチームはその同定を目指して化合物の選別に取り組んでいます3)。参考1)Pepe A, et al. Sci Adv. 2022 Jul 22;8:eabo0171. 2)SARS-CoV-2 Could Use Nanotubes to Infect the Brain / TheScientist3)Coronavirus may enter the brain by building tiny tunnels from the nose / NewScientist

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発熱に対する解熱薬と身体冷却、死亡リスクに影響するか/BMJ

 成人発熱患者に対する治療(解熱薬、身体冷却)は、死亡や重篤な有害事象のリスクに影響しないことが、スウェーデン・ルンド大学のJohan Holgersson氏らが実施したシステマティック・レビューとメタ解析で示された。これまでの試験は特定の患者群あるいは特定の発熱治療に焦点を当てたもので、統計学的な検出力に限界があり、発熱患者における発熱治療のリスクとベネフィットは不明であった。BMJ誌2022年7月12日号掲載の報告。42試験、約5,000例についてメタ解析、サブグループ解析および逐次解析を実施 研究グループは、CENTRAL、BIOSIS、CINAHL、MEDLINE、Embase、LILACS、Scopus、Web of Science Core Collectionを検索し、2021年7月2日までに発表された、あらゆる原因による発熱成人患者の無作為化試験(発熱に対する治療と、プラセボ/偽治療の有無にかかわらず治療なしを比較した試験)を特定した。 著者2人が独立して研究の選択、データ抽出、バイアスリスクの評価を行った。主要評価項目は全死因死亡および重篤な有害事象、副次評価項目はQOLおよび非重篤な有害事象とした。メタ解析、サブグループ解析および逐次解析によりデータを統合し、GRADEアプローチを用いてエビデンスを評価した。 計42試験、5,140例が解析に組み込まれた。42試験の内訳は、解熱薬(計11種類)を評価した試験が23件、身体冷却11件、解熱薬と身体冷却の併用8件であった。発熱治療は死亡リスクや重篤な有害事象のリスクに影響しない可能性 5,140例のうち、3,007例が重症、1,892例が非重症、3,277例が感染性発熱、1,139例が非感染性発熱の患者であった。 すべての試験でバイアスリスクが高いと評価された。メタ解析および逐次解析の結果、発熱に対する治療が死亡リスク(リスク比:1.04、95%CI:0.90~1.19、I2=0%、p=0.62、16試験、エビデンスの確実性:高)、および重篤な有害事象のリスク(リスク比:1.02、95%CI:0.89~1.17、I2=0%、p=0.78、16試験、エビデンスの確実性:高)を低下させるという仮説は棄却されることが示された。 QOLに関して評価した1試験では、発熱治療と対照介入との間に有意差は確認されなかった。 メタ解析および逐次解析により、発熱治療が非重篤な有害事象のリスクを低下させるという仮説は立証も棄却もできなかった(リスク比:0.92、95%CI:0.67~1.25、I2=66.5%、p=0.58、4試験、エビデンスの確実性:非常に低い)。

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男女間で異なる不安症状と食物依存症との関連

 不安は、さまざまなケースでみられる症状であり、摂食障害や肥満とも関連しているといわれている。ドイツ・ライプチヒ大学のFelix S. Hussenoeder氏らは、不安症状と食物依存症との関係を分析し、これらの関連性の評価および性差について検討を行った。その結果、食物依存症には、性別やその他の社会人口統計学的因子と関係なく、不安症状に対する長期的な影響が確認された。また、女性における不安症状は、その後の食物依存症に影響を及ぼす可能性が示唆された。このことから著者らは、食物依存症に対する介入は、男女ともに不安症状の軽減につながる可能性があるものの、不安症状に対する介入は、女性の場合のみで、食物依存症の軽減につながることを報告した。Frontiers in Psychiatry誌2022年6月14日号の報告。 人口ベースのLIFE-Adult-Study(1,474例)のデータを用いて、ベースライン時および初回フォローアップ時における不安症状と食物依存症との関連を分析した。不安症状の評価には一般化不安障害質問票(GAD-7)、食物依存症の評価にはYale食物依存症尺度(YFAS)を用いた。不安症状と食物依存症との関連を評価するため、男女の参加者を含む複数グループにおける潜在交差遅延パネルモデルを用いた。年齢、婚姻状況、社会経済的地位、ソーシャルサポートを調整した。 主な結果は以下のとおり。・不安症状および食物依存症は、男女ともに経時的な安定が認められた。 【不安症状】女性:β=0.50、p≦0.001、男性:β=0.59、p≦0.001 【食物依存症】女性:β=0.37、p≦0.001、男性:β=0.58、p≦0.001・女性において、ベースライン時の不安症状と初回フォローアップ時の食物依存症との有意な関連が認められたが(β=0.25、p≦0.001)、男性では認められなかった(β=0.04、p=0.10)。・ベースライン時の食物依存症と初回フォローアップ時の不安症状については、女性(β=0.23、p≦0.001)および男性(β=0.21、p≦0.001)において有意な関連が確認された。

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急性期脳梗塞、血栓回収前の血栓溶解療法は必要か/Lancet

 発症から4.5時間以内の脳主幹動脈閉塞に起因する急性期虚血性脳卒中の治療において、直接的な機械的血栓回収術は経静脈的血栓溶解療法を施行後に機械的血栓回収術を行う標準治療(ブリッジング療法)と比較して、有効性(機能的自立)に関して非劣性は達成されず、症候性脳出血や死亡のリスクには差がないことが、オーストラリア・メルボルン大学のPeter J. Mitchell氏らが実施した「DIRECT-SAFE試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌2022年7月9日号で報告された。4ヵ国の無作為化非劣性試験 DIRECT-SAFEは、エンドポイント盲検下に行われた非盲検無作為化非劣性試験であり、2018年6月~2021年7月の期間に、4ヵ国(オーストラリア、ニュージーランド、中国、ベトナム)の25ヵ所の急性期病院で参加者の登録が行われた(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]と米国Strykerの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、発症から4.5時間以内で、非造影CTで小~中程度の大きさの早期の虚血性変化が認められ、CTまたはMR血管造影で頭蓋内内頸動脈、中大脳動脈(M1またはM2)、脳底動脈の閉塞が確認された患者であった。 被験者は、病院到着から90分以内に、機械的血栓回収術単独または標準的なブリッジング療法(経静脈的血栓溶解療法+機械的血栓回収術)を受ける群に無作為に割り付けられた。ブリッジング療法群では、各施設の標準的な経静脈的血栓溶解療法(アルテプラーゼまたはテネクテプラーゼ)を受けたのち、Trevoデバイス(米国Stryker Neurovascular製)を用いた標準的な機械的血栓回収術が行われた。 アウトカムの評価者は治療割り付け情報を知らされず、治療医と患者には知らされた。 有効性の主要エンドポイントは機能的自立とされ、治療後90日の時点での修正Rankin尺度(mRS)スコア0~2点の達成またはベースライン時の機能への回復と定義された。非劣性マージンは-0.1とされ、主要エンドポイント達成率の群間差の両側95%信頼区間(CI)下限値が-0.1より大きい場合に非劣性と判定された。アジア人ではブリッジング療法が有意に優れる 293例が登録され、機械的血栓回収術群に146例、ブリッジング療法群に147例が割り付けられた。全体の年齢中央値は68歳(IQR:61~78)で、166例(57%)が男性であった。NIHSSスコア中央値は両群とも15点で、ブリッジング療法群の入院から血栓溶解療法開始までの時間中央値は64分(IQR:47~87)だった。 また、無作為化から動脈穿刺までの時間中央値は、機械的血栓回収術群が29分(IQR:19~47)、ブリッジング療法群は42分(29~59)であり、動脈穿刺から再灌流達成までの時間中央値は両群とも60分以内(機械的血栓回収術群55.5分[IQR:26.0~88.5]、ブリッジング療法群44.5分[27.0~70.0])だった。 90日時の機能的自立は、intention-to-treat集団では機械的血栓回収術群が146例中80例(55%)、ブリッジング療法群は147例中89例(61%)で達成され(群間リスク差:-0.051、両側95%CI:-0.160~0.059)、per-protocol集団ではそれぞれ145例中79例(54%)および143例中88例(62%)で達成された(群間リスク差:-0.062、両側95%CI:-0.173~0.049)。したがって、機能的自立に関して、機械的血栓回収術群のブリッジング療法群に対する非劣性は確認されなかった。 安全性のアウトカムの発現は両群で同程度であり、症候性脳出血は機械的血栓回収術群が146例中2例(1%)、ブリッジング療法群は147例中1例(1%)でみられ(補正後オッズ比[OR]:1.70、95%CI:0.22~13.04)、死亡はそれぞれ146例中22例(15%)および147例中24例(16%)で認められた(補正後OR:0.92、95%CI:0.46~1.84)。また、再灌流成功率(mTICI分類2b~3)およびmRS 0~1点の達成率にも、両群間に差はなかった。 事前に規定されたサブグループ解析では、アジア地域(中国、ベトナム)の患者で、主要エンドポイントの達成率がブリッジング療法群で有意に優れた(機械的血栓回収術群34%[67例中23例]vs.ブリッジング療法群57%[69例中39例]、補正後OR:0.42、95%CI:0.21~0.86、p=0.017)。このような効果は、非アジア地域では認められず(1.35、0.65~2.8)、交互作用が確認された(pinteraction=0.024)。 著者は、「この試験で得られた付加的エビデンスは、血栓回収術前の血栓溶解療法を除外することによる利益を示すエビデンスはない(とくにアジア地域の患者で)との結論を支持するものである」とし、「これらの知見は、標準治療としてのブリッジング療法の推奨に関して、ガイドライン策定の際に有益な情報をもたらすと考えられる」と指摘している。

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サル痘感染拡大、4~6月に感染した528例の特徴/NEJM

 2022年4月以降、欧米を中心にサル痘感染が広がっている。7月23日にはWHOが緊急事態を宣言し、日本でも7月25日に感染者が確認された。今回、英国・Queen Mary University of LondonのJohn P. Thornhill氏らの国際共同研究グループ(SHARE-net Clinical Group)が、2022年4月27日~6月24日に16ヵ国43施設でPCR検査によりサル痘と確認・診断された528例について、症状、臨床経過、転帰を調査した結果を報告した。NEJM誌オンライン版2022年7月22日号に掲載。<感染者の背景>98%がゲイもしくはバイセクシュアルの男性で、75%が白人、41%がヒト免疫不全ウイルス(HIV)陽性、年齢中央値は38歳だった。検査を受けた377例中109例(29%)で性感染症を併存していた。精液を分析した32例中29例にサル痘ウイルスDNAが検出された。<感染経路>95%が性行為による感染と考えられた。<症状>95%に発疹/皮膚病変がみられ、その部位は肛門性器が73%、顔が25%、体幹/手足が55%だった。皮膚病変以外の所見として、発熱(62%)、リンパ節腫脹(56%)、倦怠感(41%)、筋肉痛(31%)、頭痛(27%)、咽頭炎(21%)などがみられた。<潜伏期間>曝露歴が明らかな23例において、潜伏期間中央値は7日(範囲:3〜20日)であった。<入院目的>疼痛管理(主に肛門の激痛)21例、軟部組織感染18例、咽頭炎(経口摂取制限)5例、眼病変2例、急性腎障害2例、心筋炎2例、感染制御目的13例であった。<転帰>死亡例は報告されていない。

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第109回 サル痘にWHOが緊急事態宣言、国内ではワクチンなどの対策を検討/厚労省

<先週の動き>1.サル痘にWHOが緊急事態宣言、国内ではワクチンなどの対策を検討/厚労省2.放火事件やわいせつ事件で、医師11名、歯科医6名に行政処分/厚労省3.岸田首相に日本医師会長が面会、新型コロナウイルス「第7波」に、休日診療の充実を4.新型コロナウイルス、感染症患者の入院診療加算は9月末まで延長/厚労省5.新型コロナウイルスワクチン接種、医療者・介護従事者にも4回目の接種を承認/厚労省6.薬剤師の過剰を懸念、薬学部の新設を2025年以降は抑制/文科省1.サル痘にWHOが緊急事態宣言、国内ではワクチンなどの対策を検討/厚労省世界保健機関(WHO)は、7月23日に動物由来のウイルス感染症「サル痘」について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言をした。アフリカ以外の欧米諸国でも感染が急速に広がっており、各国に対して、感染対策の強化を促す目的。日本国内での感染者はまだ確認されていないが、政府は海外での感染拡大を受けて、ワクチンや治療薬の配備や医療機関での受け入れ態勢について検討を開始しており、発症予防効果があるとされている天然痘のワクチンの承認についても、今月29日に専門家部会で検討する。(参考)感染拡大のサル痘にWHOが「緊急事態」を宣言 71ヵ国で1万人超(朝日新聞)WHO、サル痘に緊急事態宣言 感染拡大防止へ対策強化(日経新聞)「サル痘」に備え 薬やワクチンなど整備進める 厚労省(NHK)2.放火事件やわいせつ事件で、医師11名、歯科医6名に行政処分/厚労省厚生労働省は、7月21日に医道審議会医道分科会の答申を受けて、刑事事件で有罪が確定したとして、医師11人と歯科医師6人に対して免許取り消しや業務停止などの行政処分を行うこととした。発効は8月4日。このうち免許取り消しとなったのは、自身のクリニックに放火して非現住建造物等放火罪で有罪が確定した小児科医が1名、業務停止で3年となったのは女性宅に侵入してわいせつな行為をした福岡市の医師が含まれている。(参考)医師と歯科医17人処分 放火やわいせつ行為など 厚労省(時事通信)放火や準強制わいせつ 17人を医師免許取り消しなどの処分 厚労省(朝日新聞)3.岸田首相に日本医師会長が面会、新型コロナウイルス「第7波」に、休日診療の充実を日本医師会の松本吉郎会長は、首相官邸において岸田総理に面会し、新型コロナウイルスの第7波の感染拡大に対応するため会談を行った。発熱外来の患者増に対応するために、希望する患者に対して検査キットを配布し、自主検査の態勢の構築を説明し、協力を要請した。さらに、週末などに対応できる医療機関を増やすことを求めた。(参考)首相 日本医師会長と面会 休日診療の発熱外来増など協力求める(NHK)首相、抗原検査キットの配布意向説明 日医会長と面会(日経新聞)希望者への検査キット配布に協力する意向を伝える(日本医師会)4.新型コロナウイルス、感染症患者の入院診療加算は9月末まで延長/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染拡大により、新規感染者数が全国的に上昇している中、必要な医療提供体制を確保していくため、臨時の診療報酬の加算のうち、感染患者の初診で行う入院診療加算(250点)について、7月末までであった臨時措置を9月30日まで延長するとした。また、新型コロナウイルス感染症に罹患して自宅療養や宿泊療養中の患者を、医師が電話などを用いて、診療を行った場合も同様に147点の算定を引き続き、9月30日まで認めるとした。(参考)新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その72)(厚労省)5.新型コロナウイルスワクチン接種、医療者・介護従事者にも4回目の接種を承認/厚労省厚生労働省は7月22日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において新型コロナウイルスの4回目のワクチン接種を医療・介護従事者にも拡大することを了承した。これによって、7月22日から接種可能となる。また、この秋以降の、新型コロナワクチンについては、ファイザー社およびモデルナ社が開発中のオミクロン株対応の改良型を導入し臨時接種を行うこととした。また、インフルエンザワクチンとの同時接種も可能とすることとした。(参考)ワクチン4回目接種の対象拡大 医療・介護従事者600万人にも(毎日新聞)今秋以降の接種、オミクロン株対応の改良型導入へ…インフルワクチンと同時接種も了承(読売新聞)新型コロナワクチンの接種について(第33回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会)6.薬剤師の過剰を懸念、薬学部の新設を2025年以降は抑制/文科省文部科学省は7月22日、大学の6年制薬学部の新設について、2025年度から新設や定員増を原則として認めない方針を決めた。これは平成15年度から平成20 年度にかけて28学部が増加し、最近も平成30年度に1学部(公立)、令和2年度に2学部(私立)、令和3年度に2学部(公立1、私立1)が新設されており、入学定員は、平成20年度に1万2,170人と最大となり、その後、令和3年度には1万1,797人若干減少している。一方、私立大学の薬学部の入学定員充足率、志願倍率、入学志願者数は減少傾向が続いており、入学定員充足率が80%以下となる私立大学は、約3割に達している状況や、私立大学の卒業生の標準修業年限内の国家試験合格率(令和2年度)が、18~85%までばらつきがあるものの中央値57%と低迷していることなどを鑑みて、今後、質の高い薬剤師を養成するためには、6年制の薬学部の新設や定員の増加を原則として認めない方針をまとめた。(参考)薬学部新設、抑制へ 供給過剰を危惧 25年度以降(毎日新聞)“薬剤師過剰” 薬学部の新設・定員増抑制へ 文科省専門家会議(NHK)6年制課程における薬学部教育の質保証に関するとりまとめ(案)(薬学部教育の質保証専門小委員会)

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