サイト内検索|page:507

検索結果 合計:35161件 表示位置:10121 - 10140

10121.

ウパダシチニブ、体軸性脊椎関節炎の症状を改善/Lancet

 活動性のX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎の治療において、ヤヌスキナーゼ阻害薬ウパダシチニブはプラセボと比較して、疾患の徴候と症状を有意に改善し、有害事象の発生率は同程度であることが、米国・オレゴン健康科学大学のAtul Deodhar氏らが実施した「SELECT-AXIS 2試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年7月30日号で報告された。23ヵ国の無作為化第III相試験 SELECT-AXIS 2試験は、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎の治療におけるウパダシチニブの有効性と安全性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年11月~2021年5月の期間に、日本を含む23ヵ国113施設で参加者の登録が行われた(AbbVieの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、臨床的に活動性の、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎と診断され、国際脊椎関節炎評価学会(Assessment of Spondyloarthritis International Society:ASAS)の2009年の分類基準を満たし、仙腸関節のMRIで活動性の炎症の徴候が1つ以上認められるか、高感度C反応性蛋白が正常上限値(2.87mg/L)を超えている、あるいはこれら双方がみられる患者であった。強直性脊椎炎の改訂ニューヨーク基準のX線基準を満たす患者は除外された。 被験者は、ウパダシチニブ(15mg、1日1回、経口)またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、二重盲検下に52週間の投与を受けた。その後、プラセボ群を含む全例に、非盲検下でウパダシチニブ(15mg、1日1回、経口)を52週間投与する継続試験が行われた。 今回の解析の主要エンドポイントは、14週の時点でASAS40(ASAS基準でベースラインから40%の改善)を達成した患者の割合とされた。解析は、最大の解析対象集団(無作為割り付けの対象となり、試験薬の投与を少なくとも1回受けた全患者)で実施された。14週時ASAS40達成割合:45% vs.23% 313例(平均年齢42.1歳、女性59%、平均症状持続期間9.1年、平均診断後経過期間4.4年)が登録され、ウパダシチニブ群に156例、プラセボ群に157例が割り付けられた。295例(94%)(ウパダシチニブ群145例、プラセボ群150例)が14週間の投与を完遂した。 14週時にASAS40を達成した患者の割合は、ウパダシチニブ群が45%(70/156例)と、プラセボ群の23%(35/157例)に比べ有意に優れた(群間差:22%、95%信頼区間[CI]:12~32、p<0.0001)。 また、14週時のASAS20(p<0.0001)、ASAS PR(部分寛解)(p=0.0035)、BASDAI50(Bath Ankylosing Spondylitis Disease Activity Indexのベースラインから50%以上の改善)(p=0.0001)も、ウパダシチニブ群で有意に良好であった。 さらに、14週時の全背部痛(p=0.0004)、夜間背部痛(p=0.0001)、BASFI(Bath Ankylosing Spondylitis Functional Index)(p<0.0001)、ASQoL(Ankylosing Spondylitis Quality of Lifeスコア)(p<0.0001)なども、ウパダシチニブ群で有意に改善した。 14週時の有害事象の発生率は両群で同程度であり、ウパダシチニブ群が48%(75/156例)、プラセボ群は46%(72/157例)であった。重篤な有害事象は、ウパダシチニブ群が3%(4例)、プラセボ群は1%(2例)で発現し、試験薬の投与中止の原因となった有害事象も、それぞれ3%(4例)および1%(2例)で認められた。 重篤な感染症は、ウパダシチニブ群が1%(2/156例)、プラセボ群は1%(1/157例)で発現し、帯状疱疹もそれぞれ1%(2例)および1%(1例)でみられた。好中球減少の発生率は、それぞれ3%(5例)および0%だった。また、ウパダシチニブ群では、日和見感染症や悪性腫瘍、主要有害心血管イベント、静脈血栓塞栓症、死亡の報告はなかった。 著者は、「これらの知見は、ウパダシチニブが活動性のX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎の新たな治療選択肢となる可能性を支持するものである」としている。

10122.

第112回 世界の科学論文、中国が世界一に、日本は低落傾向明らかに/文科省

<先週の動き>1.世界の科学論文、中国が世界一に、日本は低落傾向明らかに/文科省2.コロナ検査キット、インターネットでの販売を審議/厚労省3.看護職員らの処遇改善、今年10月から/中医協4.マイナ保険証、追加負担引き下げ、10月から新たな加算へ/厚労省5.特定保健指導の見直し、アウトカム評価を導入へ6.海外で腎移植、臓器売買で入手か、術後に日本人が重篤に1.世界の科学論文活動、中国が世界一に、日本は低落傾向明らかに/文科省文部科学省の科学技術・学術政策研究所は、8月9日に日本の科学技術活動について、研究開発費、研究開発人材、高等教育と科学技術人材、研究開発のアウトプット、科学技術とイノベーションの5つのカテゴリー分類で評価した「科学技術指標」を公表した。これによると、日本の研究開発費、研究者数は主要国(日米独仏英中韓の7ヵ国)中第3位であるが、日本の論文数(分数カウント法)は世界第4位から第5位へ、注目度の高い論文数のうち引用上位1%に入るトップ論文数は第9位から第10位と低下し、いずれもインドに抜かれたことが明らかとなった。また、トップ1%補正論文数で中国が初めて米国を上回り、世界第1位となった。日本の博士号取得者数は2006年度をピークに減少傾向にあり、韓国、中国、米国では2000年度と最新年度で比較すると2倍以上になっていることと対照的な結果となっている。(参考)「科学技術指標2022」 [調査資料-318]論文被引用率、中国が世界1位に…日本は?(日刊工業新聞)中国、最上位論文数も世界一 日本の低落傾向続く―文科省(時事通信)中国、科学論文で世界一 「質」でも米抜き3冠(日経新聞)2.コロナ検査キット、インターネットでの販売を審議/厚労省厚生労働省は、8月10日に開催された新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードにおいて、新型コロナウイルスの抗原定性検査キットのOTC化について説明をした。これまで専門家から提言もあり、「医療現場への供給を優先することを前提にOTC化の検討を進める」として、具体的な検討を進めることとした。なお、キットのメーカーの在庫は8月1日時点で、約1.65億回分あり、自治体や医療機関、薬局に対して在庫に余裕のある製品への切り替えを依頼している。今後は、8月17日の厚生労働省の審議会において議論を進める見込み。(参考)抗原定性検査キットの確保などについて(新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード)コロナ抗原検査キットのネット販売、検討表明 厚労省(日経新聞)コロナ検査キットのネット販売、17日審議 厚労相表明(同)3.看護職員らの処遇改善、今年10月から/中医協厚生労働省は、8月10日に中医協総会を開催した。看護職員の賃金を引き上げる答申を行った。賃上げ対象となる病院の条件は、救急医療管理加算の届け出施設で、救急搬送を年200台以上受け入れる医療機関、あるいは三次救急病院。これらに勤務する看護師や助産師らが対象。詳しい内容は9月上旬に官報で告示される。(参考)個別改定項目について(中医協総会)看護職員処遇改善評価料を答申、10月開始(日経ヘルスケア)【看護職員処遇改善評価料】を答申、病院ごとの看護職員数・入院患者数に応じた点数を設定-中医協総会(2)(Gem Med)看護職員処遇改善評価料、最大で1日340点に 165通りの点数設定、中医協が答申(CB news)4.マイナ保険証、追加負担引き下げ、10月から新たな加算へ/厚労省厚生労働省は8月10日に中央社会保険医療協議会(中医協)の総会を開催し、マイナンバーカードを健康保険証に代用した患者に上乗せされてきた追加の医療費負担が、今年10月から引き下げられることとなった。逆に、マイナンバーカードの代わりに、従来の健康保険証を利用した際は自己負担が9円から12円に引き上げられる。(参考)マイナンバーカードの健康保険証 追加の医療費負担軽減へ(NHK)医療DXの推進で「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」を新設-10月改定(医事新報)現行の電子加算を廃止し、医療情報・システム基盤整備体制充実加算を新設(医療経営研究所)5.特定保健指導の見直し、アウトカム評価を導入へ厚生労働省の「第4期特定健診・特定保健指導の見直しに関する検討会」のワーキンググループは特定健診・特定保健指導の効率的・効果的な実施方法について、取りまとめを12日に公表した。この中で、特定保健指導の成果を重視したアウトカム評価の導入すべきであり、あわせてプロセス評価(保健指導実施の介入量の評価)も併用して評価するとした。また「見える化」の推進やICTを活用した特定保健指導の推進も行うとした。(参考)特定健診・特定保健指導の効率的・効果的な実施方法等について(議論のまとめ)特定保健指導の見直し、WGで取りまとめ アウトカム評価を導入(Medifax)6.海外で腎移植、臓器売買で入手か、術後に日本人が重篤に東京都内のNPO法人が海外での生体腎移植手術を仲介し、移植手術後に重篤な状態になっていたことが明らかとなった。ドナー(臓器提供者)は経済的困窮を抱えるウクライナ人で、他のルートから同様に移植手術を受けていたイスラエル人は死亡していた。このため当初は4人が腎移植を受ける予定だったが、残りの日本人への手術は中止された。日本国内の腎移植は家族が臓器提供を行わない場合は、待機期間が14年と長く、ドナー不足のため海外での移植を希望する患者も多く、今回は氷山の一角と言える。今後、海外での臓器売買に対する批判の高まりもあり、国内での臓器移植推進のために新たな方策が望まれる。(参考)海外での移植手術で臓器売買か、都内NPOが仲介…術後に日本人患者が重篤に(読売新聞)臓器売買疑惑のNPO「貧乏な人から買ったと言われる」…虚偽のドナー脳死証明書も用意(読売新聞)国内の腎移植は「14年待ち」、深刻なドナー不足…海外で移植希望する患者も(読売新聞)

10123.

急性期脳梗塞、血栓回収術単独療法の非劣性は確認されず/Lancet(解説:中川原譲二氏)

 脳主幹動脈閉塞に起因する急性期脳梗塞に対する血栓回収術単独療法の有効性については、静脈内アルテプラーゼ+血栓回収術(併用療法)と比較して、その非劣性は確認されず、単独療法による再灌流の成功率が有意に低いことが、Urs Fischerらのthe SWIFT DIRECT Collaboratorsによる無作為化非劣性試験によって示された。研究の詳細は、Fischer U, et al. Lancet. 2022;400:104-115.で報告された。多施設無作為化非盲検評価者盲検試験で検証 欧州とカナダで行われたこの多施設無作為化非盲検評価者盲検試験では、血栓回収術のデバイスとして、ソリティア ステント レトリーバーが用いられ、有効性の主要エンドポイントは、治療後90日の時点での修正Rankin scale(mRS)スコア0~2点の達成とされ、血栓回収術単独治療の併用療法に対する非劣性が評価された(Mantel-Haenszel リスク差の片側95%信頼区間[CI]の下限12%を非劣性マージンとした)。主な安全性評価項目は、すべての症候性頭蓋内出血とされた。血栓回収術単独療法の非劣性は確認されず 2017年11月29日から2021年5月7日までの間に、5,215例の患者がスクリーニングされ、423例がランダムに割り当てられた。そのうち408例(201例は血栓回収術単独療法、207例は併用療法)が、主要な有効性の分析に含まれた。血栓回収術単独療法に割り当てられた201例のうち114例(57%)が、併用療法に割り当てられた207例のうち135例(65%)が、治療後90日の時点でのmRSスコア0~2に達した (調整リスク差-7.3%、95%CI:-16.6~2.1、片側95%CIの下限-15.1%、-12%の非劣性マージンを超える)。症候性頭蓋内出血は、血栓回収術単独療法201例のうち5例(2%)、併用療法202例のうち7例 (3%)に発生した(リスク差-1.0%、95%CI:-4.8~2.7)。再灌流の成功率は、血栓回収術単独療法で少なかった(単独療法201例のうち182例(91%)vs.併用療法207例のうち199例(96%)、リスク差-5.1%、95%CI:-10.2~0.0、p=0.047)。血栓回収術前の血栓溶解療法の除外に利益なし 著者らの無作為化非劣性試験によって、脳主幹動脈閉塞に起因する急性期脳梗塞に対する血栓回収術単独療法の有効性については、静脈内アルテプラーゼ+血栓回収術(併用療法)と比較して、その非劣性は確認されず、単独療法による再灌流の成功率が有意に低いことが明確となった。以上より、適格患者に対して血栓回収術前の血栓溶解療法を除外することは、再灌流の成功率の低下につながることから、推奨されないと結論付けられた。 本試験と同時に報告されたTrevoデバイスを用いた「DIRECT-SAFE試験」(Mitchell PJ, et al. Lancet. 2022;400:116-125.)のサブグルーブ解析(アジア地域の患者)においても、同様の結果が認められ、著者であるPeter J. Mitchell氏は、「この試験で得られた付加的エビデンスは、血栓回収術前の血栓溶解療法を除外することによる利益を示すエビデンスはない(とくにアジア地域の患者で)との結論を支持するものである」としている。 これらの新たな知見は、今後の脳梗塞治療ガイドラインの改訂に際して、併用療法を標準治療として推奨するための有益な根拠になると考えられる。

10124.

実は変わってますよ! WHOの「がん疼痛ガイドライン」【非専門医のための緩和ケアTips】第33回

第33回 実は変わってますよ! WHOの「がん疼痛ガイドライン」今日は緩和ケアにおけるメジャートピックである、がん疼痛に対する鎮痛アプローチのお話です。皆さんはWHOの「がん疼痛ガイドライン」って、聞いたことがある方が多いのではないでしょうか?この中の「WHOラダー」は、実際の臨床に活用している方も多いと思います。実は最近このアプローチが大きく変わってきているので、一緒に学んでいきましょう。今日の質問がん疼痛における基本指針といえば、WHOラダーですよね。私も長年、ラダーに従って実践してきたのですが、最近、変更があったと聞きました。どういった点が変更されたんでしょうか?ご質問者のおっしゃる通り、WHOのがん疼痛治療が変更になりました。そして私たち、長年緩和ケアに関わってきた医療者にとって非常になじみ深かった、「WHOラダーの推奨」が削除されることになりました。え! と思われた方も多いかもしれませんので、その背景をお話ししていきましょう。1990年代から2000年代に緩和ケアを学んだ方は「がん疼痛といえばWHOラダー!」と教わったと思います。「がん疼痛を見たら、まずはNSAIDsを使用し、弱オピオイドを導入、その後は強オピオイドを用いる」というアプローチです。この「ステップを踏んでいく」のが、ラダー(梯子)の名称たるゆえんです。ただ、最初から強い痛みを訴えるがん患者さんに対し、ラダー通りに「手順を踏む」よりも、最初から強いオピオイドを使用したほうがよいのでは? というのは長く議論されていた点でした。そして、2019年にがん疼痛のWHOガイドラインが改定され、従来の「がん疼痛の5原則」から「ラダーに基づいて」の項目が削除され、4原則となりました。この変更はわれわれにとってどういった意味を持つのでしょうか? ここからは私見になりますが、「今まで以上に、個別の患者さんごとに、最適ながん疼痛への対応が求められる」のだと感じます。「ラダーに従えば、次は弱オピオイドなので、とりあえずそれで処方しよう」といった実践ではなく、痛みの程度や経過の予測を踏まえて、適切な介入が求められているのだと思います。緩和ケアに関わるほとんどの方が耳にしてきた「WHOのガイドライン」もこうして時代に合わせて改定されます。目の前の患者さんにベストの治療を提供するためにわれわれもアップデートしていく必要性を感じます。今回のTips今回のTipsWHOのがん疼痛への鎮痛アプローチが変更されています。これまで以上に個別の患者さんごとに、最適ながん疼痛への対応が求められるでしょう。

10126.

術前化学療法におけるHER2低発現乳がんの特徴

 術前化学療法におけるHER2低発現乳がんの臨床像、病理学的完全奏効(pCR)、予後について後ろ向きに評価したところ、ホルモン受容体(HR)の有無により臨床像や治療への奏効が異なることが示された。中国・鄭州大学人民病院のYingbo Shao氏らが、Annals of Surgical Oncology誌オンライン版2022年8月6日号で報告。HER2の発現がHR+乳がんにおける病理学的完全奏効の独立した予測因子 本研究では、2017年1月~2019年12月に術前化学療法を受けたHER2陰性乳がん患者314例をHER2低発現患者とHER2ゼロ患者の2群に分け、後ろ向きに評価した。 術前化学療法におけるHER2低発現乳がんの臨床像、病理学的完全奏効、予後について評価した主な結果は以下のとおり。・HR陽性(HR+)乳がん患者におけるHER2低発現患者の割合は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)における割合より高かった。・HR+乳がん患者において、HER2低発現患者はHER2ゼロ患者に比べてリンパ節転移が少なく(p=0.023)、Stageが早期だった(p=0.015)。ただし、TNBC患者においてはHER2低発現患者のStageが進行していた(p=0.028)。・病理学的完全奏効をypTis/0ypN0と定義した場合、コホート全体、HR+乳がん、TNBCで、HER2低発現患者とHER2ゼロ患者の病理学的完全奏効率に差はなかった。しかし、病理学的完全奏効をypT0ypN0と定義した場合の病理学的完全奏効率は、コホート全体(24.3% vs.36.4%、p=0.032)およびHR+患者(18.7% vs.32.1%、p=0.035)において、HER2低発現患者においてHER2ゼロ患者より有意に低かった。・多変量解析により、HER2の発現(低発現vs.ゼロ) が、HR+乳がんにおける病理学的完全奏効の独立した予測因子であることが示された(p=0.013)。・コホート全体、HR+乳がん、TNBCにおいて、HER2低発現患者と HER2ゼロ患者で、3年無病生存期間と全生存期間に統計学的有意差は認められなかった。

10127.

TROP2を標的としたADC(DS-1062)の非小細胞肺がんに対する第Ib相試験の結果を世界肺がん学会(WCLC2022)で発表/第一三共

 第一三共とアストラゼネカは、再発・進行非小細胞肺がん患者(NSCLC)を対象とした、TROP2に対する抗体薬物複合体(ADC)DS-1062(Dato-DXd)とペムブロリズマブの併用の第Ib相臨床試験TROPION-Lung02の中間解析データを世界肺学会(WCLC2022)で発表した。DS-1062関連と判定された間質性肺疾患は4例 同試験は、actionableな遺伝子変異のない再発・進行NSCLC約120例を対象に、DS-1062とペムブロリズマブの2剤併用療法と、DS-1062、ペムブロリズマブ、プラチナ製剤の3剤併用療法の安全性および有効性を評価するグローバル第Ib相臨床試験である。 DS-1062とペムブロリズマブの2剤併用群およびDS-1062、ペムブロリズマブ、プラチナ製剤の3剤併用群におけるGrade3以上の有害事象はそれぞれ40%と60%にみられた。また、DS-1062関連と判定された間質性肺疾患は4例で、内訳はGrade1が1例、Grade2が1例、Grade3が2例であった。 全患者集団における客観的奏効率(ORR)は、2剤併用群38例において37%、3剤併用群37例において41%であり、病勢コントロール率(DCR)は、両群ともに84%であった。また、前治療歴のない対象患者のORRは、2剤併用群(13例)で62%、3剤併用群(20例)で50%であり、DCRそれぞれ100%と90%であった。

10128.

幼児のいる親はコロナ重症化リスクが低い~300万人超の分析

 米国・Kaiser Permanente Northern California(KPNC)のMatthew D. Solomon氏らが、幼児と接する機会の有無が、成人のCOVID-19重症化リスクに影響するかどうかを、300万人超の大規模なリアルワールドデータで調査した。その結果、家に0~5歳の幼児がいる成人では、家に幼児がいない成人に比べて重症化率が有意に低いことが報告された。これまで、小児では、過去のSARS-CoV-2以外のコロナウイルスへの曝露による交差免疫が、COVID-19の重症化予防に寄与している可能性が示唆されている。そこで、5歳未満の幼児のいる成人ではウイルスへの曝露機会が増加することから、成人のSARS-CoV-2以外のコロナウイルスへの交差免疫の有無を小児との接触と推定して、コロナ重症化リスクを評価することにした。Proc Natl Acad Sci USA誌2022年8月16日号に掲載。幼児のいる成人に比べコロナによる入院率が子供不在群は有意に高かった 本調査の対象は、2019年2月1日~2021年1月31日にKPNCデータベースに登録されていて、2020年2月1日時点で18歳以上の成人312万6,427人。家に0~5歳(最年少の子の年齢)の幼児がいる成人(27万4,316人)を研究群とし、対照群を6~11歳の子供がいる成人(21万1,736人)、12~18歳の子供がいる成人(25万7,762人)、家に子供のいない成人(238万2,613人)とした。研究群と3つの対照群をそれぞれ1:1に割り付け、年齢・糖尿病や高血圧の有無・BMIなどのCOVID-19重症化リスク因子で調整した。主要評価項目は、PCR検査によるSARS-CoV-2感染の確認、COVID-19による入院、COVID-19によるICU利用で、フォローアップは2020年2月1日~2021年1月31日まで行われた。 幼児のいる成人のコロナ重症化リスクを評価した主な結果は以下のとおり。・各群の子供の年齢が上がるほど、成人の平均年齢は上昇し(幼児群:36.2歳、6~11歳群:41.4歳、12~18歳群:44.6歳、子供不在群:50.8歳)、高血圧と糖尿病の有病率も上昇した。BMIは各群で同程度であった。・コロナ重症化リスク因子による傾向分析において、幼児群に比べ、6~11歳群および12~18歳群のSARS-CoV-2感染率は高かった(6~11歳群の発生率比[IRR]:1.09、95%信頼区間[CI]:1.05~1.12、p<0.0001、12~18歳群のIRR:1.09、95%CI:1.05~1.13、p<0.0001)。一方、SARS-CoV-2陽性者の入院率およびCOVID-19によるICU利用率に有意差は認められなかった。・幼児群に比べ、子供不在群のSARS-CoV-2感染率は低かった(IRR:0.85、95%CI:0.83~0.87、p<0.0001)。一方、SARS-CoV-2陽性者の入院率およびICU利用率は有意に高かった(入院率のIRR:1.49、95%CI:1.29~1.73、p<0.0001、ICU利用率のIRR:1.76、95%CI:1.19~2.58、p=0.0043)。 Solomon氏らは、本調査の結果により、SARS-CoV-2以外のコロナウイルス曝露による交差免疫は、COVID-19の重症化を抑制する可能性があるとまとめている。

10129.

コロナ関連死リスク、BA.1株はデルタ株より低い/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡のリスクは、オミクロン変異株(BA.1)のほうがデルタ変異株(B.1.617.2)より低い。英国・Office for National StatisticsのIsobel L. Ward氏らが、後ろ向きコホート研究の結果を報告した。これまでに、オミクロン株のすべての系統(BA.1、BA.2、BA.3、BA.4、BA.5)はデルタ株より感染しやすいが、SARS-CoV-2検査陽性後28日以内の入院および死亡リスクは、オミクロン株のほうがデルタ株より低いことが示唆されていた。しかし、オミクロン株とデルタ株で、死亡診断書から特定されるCOVID-19関連死のリスクを比較した研究は不足していた。BMJ誌2022年8月2日号掲載の報告。死亡診断書で特定したCOVID-19関連死について解析 研究グループは2021年12月1日~30日の期間に、国民保健サービス(NHS)Test and Trace(Pillar 2)のPCR検査が陽性で、Lighthouse研究所における分析にてオミクロンBA.1またはデルタ株の感染が確定し、国家統計局(ONS)公衆衛生データ資産にリンクできた18~100歳の103万5,149例(2021年12月の検査陽性成人全体の約44%)を解析対象とした。 主要評価項目は、死亡診断書で特定されたCOVID-19関連死で、性別、年齢、ワクチン接種状況、感染歴、感染日、民族、貧困状態(複数の剥奪指標のランク)、世帯貧困、学位、キーワーカーの状況、出生国、主要言語、地域、障害、併存疾患で調整した死因別Cox比例ハザードモデル(COVID-19関連死以外の死亡は打ち切りとする)を用いて解析した。また、変異株と、性別、年齢、ワクチン接種状況、併存疾患との交互作用についても検討した。オミクロンBA.1によるCOVID-19関連死のリスクは、デルタ株より66%低下 潜在的な交絡因子を調整したCOVID-19関連死のリスクは、デルタ株と比較してオミクロンBA.1で66%低下した(ハザード比[HR]:0.34、95%信頼区間[CI]:0.25~0.46)。デルタ株と比較したオミクロン株のCOVID-19関連死リスクの低下は、18~59歳(死亡数:デルタ株46例vs.オミクロン株11例、HR:0.14[95%CI:0.07~0.27])において、70歳以上(113例vs.135例、0.44[0.32~0.61]、p<0.0001)より顕著であった。変異株と併存疾患数との間にリスク差は確認されなかった。 著者は、すべてのSARS-CoV-2感染者が対象ではないこと、病院での検査(NHS Pillar 1)でCOVID-19変異株を特定したデータを利用できず症例数が少ないことなどを研究の限界として挙げた上で、今回の結果は「デルタ株と比較してオミクロンBA.1では、入院に関して重症化リスクが低いことを示唆する以前の研究を裏付けるものである」と述べている。

10130.

早期パーキンソン病、α-シヌクレインに対するprasinezumabは効果なし/NEJM

 パーキンソン病の発症に重要な役割を担っているα-シヌクレインの凝集化を標的とするモノクローナル抗体prasinezumabは、プラセボと比較してパーキンソン病の進行に関して全般評価や画像評価に意味のある効果を示さず、注入に伴う反応(インフュージョンリアクション)が認められたことが、スイス・Roche Innovation Center BaselのGennaro Pagano氏らにより欧州および米国の57施設で実施された第II相無作為化比較試験「PASADENA試験」の結果、示された。prasinezumabは、α-シヌクレイン症のマウスモデルにおいて神経細胞内のα-シヌクレイン凝集体蓄積とシナプス減少を抑制し、第I相試験では健康成人およびパーキンソン病患者において脳への移行性と遊離血清α-シヌクレイン濃度のベースラインからの用量依存的な低下が示されていた。NEJM誌2022年8月4日号掲載の報告。prasinezumab 1,500mgまたは4,500mgの4週ごと投与をプラセボと比較 PASADENA試験の対象は、Hoehn-Yahr 重症度分類(1~5度、5度が最も重症)が1~2度で、パーキンソン病の症状に対する治療歴のない早期パーキンソン病患者である。モノアミン酸化酵素B[MAO-B]阻害薬の安定用量の投与を受けている患者は、登録可(MAO-B阻害薬を継続)とした。対象をprasinezumabの1,500mg群、4,500mg群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、4週ごとに52週間静脈内投与した。 主要評価項目は、運動障害疾患学会パーキンソン病統一スケール(MDS-UPDRS)のパートI~IIIの合計スコア(範囲:0~236、スコアが高いほど障害が大きい)の、ベースラインから52週までの変化量とした。 副次評価項目は、MDS-UPDRSパートI~IIIの各パートスコアのベースラインから52週までの変化量、123I-イオフルパンSPECTで評価した線条体結合比(striatal binding ratio:SBR)、モントリオール認知評価(MoCA)スコア、臨床全般印象度改善度(CGI-I)スコア、患者による全般印象度改善度(PGI-C)などとした。 計316例が登録され、プラセボ群105例、prasinezumab 1,500mg群105例、4,500mg群106例に割り付けられた。MDS-UPDRSスコアや線条体結合比の変化量に有意差なし ベースラインの平均MDS-UPDRSスコアは、プラセボ群32.0、1,500mg群31.5、4,500mg群30.8で、ベースラインから52週までの平均変化量(±SE)は、プラセボ群9.4±1.2、1,500mg群7.4±1.2(プラセボ群との差:-2.0、80%信頼区間[CI]:-4.2~0.2、p=0.24)、4,500mg群8.8±1.2(-0.6、-2.8~1.6、p=0.72)であった。 SBRのベースラインから52週までの変化量は、実薬群とプラセボ群との間に大きな差はなく、副次評価項目のほとんどが実薬群とプラセボ群とで類似していた。 有害事象の発現率はプラセボ群82.9%、1,500mg群93.3%、4,500mg群91.5%、重篤な有害事象の発現率はそれぞれ4.8%、6.7%、7.5%であった。インフュージョンリアクションはそれぞれ16.2%、19.0%、34.0%に認められた。

10131.

女性の果物や野菜の摂取とうつ病リスクとの関係

 特定の食品群がメンタルヘルスの改善に重要な役割を担う可能性を示唆するエビデンスが増えている。しかし、個々の食事の因子と抑うつ症状との関連を長期にわたる大規模コホートでフォローアップした調査は、これまでほとんどなかった。オーストラリア・マッコーリー大学のPutu Novi Arfirsta Dharmayani氏らは、Australian Longitudinal Study on Women's Healthのコホートより1973~78年に生まれた女性を対象に15年間のフォローアップを実施し、抑うつ症状に関連する果物および野菜の影響を調査した。その結果、果物および野菜の摂取量が多いほど、長期にわたる抑うつ症状リスク低下と関連することが示唆された。European Journal of Nutrition誌オンライン版2022年7月21日号の報告。 果物および野菜の摂取量の評価にはショートクエスチョンを用いた。抑うつ症状の定義は、10項目の抑うつ評価尺度(CES-D-10)でカットオフ値10以上とした。果物および野菜の摂取量に応じた抑うつ症状のオッズ比を推定するため、一般化推定方程式モデルによる多重代入法(Multiple Imputation)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の平均年齢27.6±1.45歳の女性4,241人を対象に、2003~18年に5回の調査を実施し、フォローアップを行った。・2サービング以上の果物および野菜の摂取量と抑うつ症状のオッズ比低下との間に、横断的な関連が認められた。・縦断的分析では、果物の摂取量4サービング以上の場合、1サービング以下と比較し、抑うつ症状のオッズ比が25%低下し(OR:0.75、95%CI:0.57~0.97、p=0.031)、野菜の摂取量5サービング以上の場合、1サービング以下と比較し、抑うつ症状のオッズ比が19%低下した(OR:0.81、95%CI:0.70~0.94、p=0.007)。

10132.

LDL-コレステロール:Still “The lower, the better!”(解説:平山篤志氏)

 1994年に発表された4S試験以来、スタチンによるLDL-コレステロール(LDL-C)の低下が心血管イベントを減少させることがすべての試験で示されてきた。ただ、その機序がスタチンのLDL-C低下作用だけによるものなのか? あるいは、抗炎症作用を含めたプレイオトロピック効果が加わることによるのか? 長い間の議論があった。2005年に発表されたIMPROVE-IT試験さらには2017年に発表されたFOURIER試験で、非スタチン製剤の追加投与でLDL-Cを低下させることでイベント減少効果が示され、LDL-C低下の効果から、“The Lower, The Better”という論文がNEJM誌に掲載された。 今回Lancet誌に掲載された韓国で行われたRACING試験は、ロスバスタチンの容量の差で生じるLDL-C低下の相違をエゼチミブの追加投与で補完することでイベントに差がでるかをみた試験であった。結果としてはLDL-C値が十分に両群で低下し(単剤群:67mg/dL、併用群:58mg/dL)イベントに差がなかった。言い換えれば、イベント低下には方法に関係なくLDL-Cを低下させることが重要であるという、“The Lower, The Better”を再確認した試験ということになる。ただ、これまでのすべての試験にはスタチンが基礎薬として組み込まれているので、スタチンのプレイオトロピック効果を否定するものではない。

10133.

第121回 「コロナ検査で陽性でも治療方針は変わらない」-NHK党・浜田氏に聞く(前編)

先日の参議院選挙直前に各党の政策をやや斜に構えて紹介(第115回、第116回)したが、その際私が一番驚いたのはNHK党の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)対策だった。なんせ同党は党首の立花 孝志氏が「NHKをぶっ壊す!」と、いつもながらに標的のNHKの政見放送で叫ぶ強烈さが頭を離れず、どうしてもシングル・イシューの政党のイメージが強かった。その意味でこの公約を読んだ私は、半ば「鳩が豆鉄砲を食らった」ような状態だった。本連載記事では、「誰か新たなブレーンが入ったのだろうか?」と書いていたが、直後に政治界隈に詳しい知り合いから、「あれはたぶん浜田さんが作ったものじゃないか」という情報が入ってきた。同党は2019年参議院選挙の比例代表で初めて1議席を獲得し、立花氏が晴れて国会議員になったが、なんとその3ヵ月後、立花氏は参議院埼玉選挙区の補欠選挙に出馬するとして辞職。その結果、同党からは繰り上げ当選者が発生した。「浜田さん」とは、この時繰り上げ当選者となった浜田 聡氏である。浜田氏の同参議院議員選挙での個人得票は9,308票。参議院比例代表当選者では史上2番目に少ない得票で議員に就任した。その後は同党の政策調査会長に就任している。率直に言うと、私は浜田氏のことはまったくフォローしていなかったが、情報を得た後に調べると東京大学卒業後、京都大学医学部医学科に再受験で入学し、2011年卒業。政治家になる前は放射線科医として働いていたという。前述の政治界隈事情通から浜田氏のことを聞いた直後、同党が毎週金曜日に開催している定例記者会見への参加を模索していた。参議院選投開票の前週金曜日は東京を不在にしていたため、投開票2日前の会見に出席するつもりだった。ところがご存じのようにその前日、奈良県で安倍 晋三元首相が凶弾に倒れる事件があり、そちらへの対応でてんてこ舞になってしまった(一応、医療ジャーナリストを名乗りながらも国際紛争やテロもカバーしているため)。その最中、本連載の担当編集者から、なんと浜田氏から私宛に同党の政策を評価してもらえたことの謝辞メールが届いたことを知った。それによると今回の政策は昨年末の衆議院選挙最中に浜田氏が作成して発表したものを一部改変したもので、たまたま私が同党ホームページを見た時にはなかったのだろうとの説明が記されていた。謝辞メールには浜田氏のメールアドレスも記載してあったが、私は記者根性の一端でやっぱり直撃しようと7月22日の同党定例会見に向かい、そこで初めてこの件について質問した。これは同党が配信するyoutube動画(私の質問は49:38ぐらいから)でも配信されている。もっとも会見という時間の制約がある現場でもあったため、浜田氏の説明は極めて簡潔なもの。そこで改めてインタビューをお願いし、参議院議員会館で話を聞いた。今回と次回の2回に分けて報告したいと思う。NHK党・浜田氏×医療ジャーナリスト・村上氏今回の公約でマスク外しを提唱された背景を教えてください。(インタビューは屋内であるため、浜田氏も私もこの時はマスクを着用)マスク外しに関しては後藤厚労相の発言がありますが、それ以前から厚生労働省は「屋外やリスクの低い環境でマスクを外して良い」と言っていたはずです。しかし、ご存じの通り、現状で外を歩けばそうした人は全然いないと言っても良い状態です。その意味では政治の側からもリスクの低い屋外などで積極的にマスクを外していきましょうという主張があっていいはずです。過去に曲がりなりにも政治の立ち位置からそのような主張をしていたのは、私の知る限り、以前NHK党から参議院選挙に立候補し、その後、国民主権党を自ら設立した平塚 正幸さんぐらいでしょう。彼の主張は周囲から白眼視されていますし、私も若干そういう目で見ていたところはありますが。そうした観点で、公約を発表した昨年衆議院議員選挙時や先日の参議院選挙時は感染状況がかなり落ち着いていたこともあり、公約の中に入れました。炎天下の中、多くの人がマスクを外さず屋外を闊歩する状況を浜田さんはどのように分析されていますか?一度始めた習慣が定着し、マスクを外すという行動に至り難くなっているのではないでしょうか。日本人の特性と言って切って良いかはさまざまな意見があるでしょうが、個人的には良くも悪くも日本人らしいと考えています。政治家が呼びかけることで一般人の行動変容は起こるでしょうか?効果の程は、正直私もわかりかねます。呼びかけの主体が自民党である場合とわれわれNHK党である場合でもかなり状況が異なるとは思います。ただ、最大与党の自民党がそうした呼びかけをしないのなら、リスクの低い局面でのマスク外しをわれわれが主張をする意味はあると思っています。一方、NHK党は「検査の意義を考慮した上で、無駄な検査や害となりうる検査拡充に警鐘を鳴らす」とPCR検査などの検査拡充に異議を唱えています。多くの政党がむしろ検査拡充を訴える中で目を引きました。参議院選挙後に起きた現在の第7波の最中では検査拡充の持つ意味はやや異なってきますが、まず検査について一般の方々の誤解が多いと感じています。医療者の立場からすれば、検査とは必ず白黒がはっきりするものではなく、限界があるというのが当然の認識です。しかし、一般の方々の多くはそのことを知らないのだろうという印象を持っています。私は2011年に医学部を卒業していますが、学部では臨床教育移行時にどのような場合に検査をすべきかについて、いわゆる「ベイズの定理」に基づき、事前確率の高さを基準に検査をすべきとの教育を受けました。ところが最近の国会での議論を見てると、率直に言って医師免許を有する比較的高齢の国会議員の方々がそうしたことを十分に理解されていない点にやや危機感を覚えます。事前確率で絞り込むことなしに闇雲に検査件数を増やせば、間違った検査結果も必然的に増加します。近年の医学教育を受けた自分としては、この点は国政の場でしっかりと伝えていくべきだと思っています。他方、一部の地方首長はこの検査の限界を理解して発言されています。国会で同じ方向で議論が進めば良いと願い、公約に入れさせていただいたのが経緯です。先ほど、第7波突入を念頭に置いた次元の変化に触れましたが、では第7波下の検査のあり方についてはどのようにお考えですか?まず陽性者の受け入れ態勢を一旦脇に置いて考えると、自治体によっては時に検査陽性率90%超というケースも報告されている現在は、理論上から言えば検査件数がまったく足りないことになるので、検査を拡充したほうが良いという判断になるでしょう。しかし、受け入れ態勢を含めて考えるとかなり厄介です。現在主流のオミクロン株(BA.5)の感染では、基本的に自宅療養をすれば良い方がほとんどです。しかし、一般の方は陽性と判定されれば、ほとんどの方が不安を抱えます。その結果、軽症患者が医療機関の外来に殺到しているという悩ましい状況が今現在です。政府は抗原検査キットの無料配布政策まで打ち出しました。一般の方々は興味本位も含め自分の感染有無を知りたい方が多いでしょうし、その気持ちもわかります。その気持ちに配慮した上で行われている政策であることは理解できます。しかし、医師でもある自分の考えは、検査結果次第で治療方針が変わるならば検査の意味はありますが、新型コロナの場合は重症化リスクのある人を除けば、陽性が確定しても特別な治療があるわけではありません。これは検査によって治療方針がほとんど変わらない事例の典型例とも言えます。今回の幅広い層への抗原検査キットや無料検査所の拡大は、こうした医学的視点が反映されていない政策です。私自身はどちらかといえばやらないほうが良いのではと思っています。現在も診療に従事されているとのことですが、その現場で第7波の影響を感じることはありますか?私自身は、放射線科医なので新型コロナの肺炎に至った患者さんのCT画像を見ることはありますが、現状はそうした事例は必ずしも多くはありません。また、勤務先の病院は新型コロナ患者で逼迫しているという状況でもないです。ただ一方で、友人や恩師の医師のSNSの投稿やコメントでは、軽症患者が殺到して混乱に陥っていること、また保健所も大変な状況にあることは認識しています。そうした中で、当事者たちからそろそろ全数把握は止めて、入院患者に限定した患者数把握で良いのではないかとの意見が出ていることも承知しています。私自身もその通りだと考えています。その意味では新型コロナに関しては従来から感染症法上の5類扱いにすべきという意見があります。この論調はデルタ株などに比べ感染力が強いわりに重症化リスクは低いと言われているオミクロン株に入れ替わってから、一般人を中心に勢いを増し、一方でこの点に慎重な医療従事者との溝が深まっている印象も受けます。私自身は新型コロナを感染症法上の5類扱いにするか否かについて、あまり強いこだわりはありません。そもそも5類に分類されている感染症の中でも現実の臨床現場での対応には差がつけられているように感じています。新型コロナについても同様で今後のワクチン接種の進展などに応じてケースバイケースで少しずつ緩やかに設定を進めていけば良いのではないでしょうか。もっとも一般の方々からすると、この5類か否かという議論はある意味わかりやすさもあるのでしょうし、議論すること自体を私は否定しているわけではありません。印象論になってしまいますが、この件に関して、厚生労働省は保健所が過度な負担を抱えていることを認識しているにもかかわらず、あまり現状を動かしたがっていないように感じています。この認識に立つと、厚生労働省の対応は以前から少し不思議ですね。もっともこの点も厚生労働省自体が未曽有のコロナ禍でなかなか身動きがとりにくい状況なのかもしれないと推察しています。次回は日本版CDCや日本版ACIP、ナースプラクティショナー導入を提唱した経緯やワクチン政策などについて浜田氏の考えを取り上げる予定である。

10135.

統合失調症患者の肥満治療~システマティックレビュー

 統合失調症の病態および抗精神病薬の使用は、臨床的に有意な体重増加や、それに伴う死亡リスクの増加と関連している。FDA、EMA、MHRAなどから承認されている減量薬が利用可能であるにもかかわらず、現在の精神医学ガイドラインでは適応外の代替が推奨されており、これは肥満に関する精神医学以外のガイドラインの内容とも異なっている。英国・Royal Oldham HospitalのKenn Lee氏らは、統合失調症および精神病における抗精神病薬誘発性の体重増加および肥満の治療に対する、承認済み減量薬の有効性の評価を行った。その結果、いくつかの承認済み減量薬のうち、リラグルチドのエビデンスが最も強力であることが示唆された。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2022年7月14日号の報告。 ヒトを対象に、抗精神病薬誘発性の体重増加および肥満の治療に対する承認済み減量薬の有効性を評価した研究を、Medline、EMBASE、PsycINFO、Cochrane Libraryのデータベースより検索した。 主な結果は以下のとおり。・3件のRCT(リラグルチド:2件、naltrexone-bupropion配合剤:1件)、未公表の非盲検試験1件(naltrexone-bupropion配合剤)、観察研究7件(リラグルチド:5件、セマグルチド:1件、複数の減量薬:1件)が特定された。・リラグルチドはメタ解析において、体重、BMI、胴囲、HbA1c、コレステロール、LDLの有意な改善が認められた。・naltrexone-bupropion配合剤のエビデンスに一貫性は認められず、setmelanotideおよび神経刺激薬の詳細な研究は行われていなかった。

10136.

外科医の手術経験数に男女格差/岐阜大

 外科医不足が深刻化しているなか、外科医に占める女性の割合は増加している。しかし、指導的立場にある女性は極端に少ないとされる。 大阪医科薬科大学の河野 恵美子氏、東京大学の野村 幸世氏、岐阜大学の吉田 和弘氏らの研究グループは、女性外科医の手術修練に着目。日本の外科医の手術の95%以上が収録されているNational Clinical Databaseを用いて、6術式(胆嚢摘出術・虫垂切除術・幽門側胃切除術・結腸右半切除術・低位前方切除術・膵頭十二指腸切除術)における外科医1人あたりの執刀数を男女間で比較した。 その結果、全ての術式で女性外科医は男性外科医より執刀数が少ないことが判明した。格差は手術難易度が高いほど顕著であり、経験年数の増大とともに拡大する傾向にあった。 今回の研究で、研究者は「女性も一定以上の手術手技を獲得し、指導的立場で日本の外科診療を担っていくことが本来のあるべき姿。本研究結果が外科におけるジェンダー平等と女性のエンパワーメントの実現につながることを期待している」とコメントしている。 この研究成果はJAMA Surgery誌2022年7月27日号にオンライン掲載された。

10137.

医療者のブレークスルー感染率、3回vs.4回接種

 オミクロン株流行下において、感染予防の観点から医療従事者に対する4回目接種を行うメリットは実際あったのか? イスラエルでのオミクロン株感染ピーク時に、3回目接種済みと4回目接種済みの医療従事者におけるブレークスルー感染率が比較された。イスラエル・Clalit Health ServicesのMatan J. Cohen氏らによるJAMA Network Open誌オンライン版2022年8月2日号掲載の報告より。ブレークスルー感染予防に医療従事者の4回目ワクチン接種は有効 本研究は、イスラエルにおけるオミクロン株感染者が急増し、医療従事者に対する4回目接種が開始された2022年1月に実施された。対象はイスラエルの11病院で働く医療従事者のうち、2021年9月30日までにファイザー社ワクチン3回目を接種し、2022年1月2日時点で新型コロナウイルス感染歴のない者。4回目接種後7日以上が経過した者(4回目接種群)と、4回目未接種者(3回目接種群)を比較し、新型コロナウイルス感染症の感染予防効果を分析した。感染の有無はPCR検査結果で判定され、検査は発症者または曝露者に対して実施された。 3回目接種済みと4回目接種済みの医療従事者におけるブレークスルー感染率を比較した主な結果は以下の通り。・計2万9,611例のイスラエル人医療従事者(女性:65%、平均[SD]年齢:44[12]歳)が2021年9月30日までに3回目接種を受けていた。・このうち2022年1月に4回目接種を受け、接種後1週間までに感染のなかった5,331例(18%)が4回目接種群、それ以外の2万4,280例が3回目接種群とされた(4回目接種後1週間以内に感染した188例も3回目接種群に組み入れられた)。・接種後30日間における全体のブレークスルー感染率は、4回目接種群では7%(368例)、3回目接種群では20%(4,802例)だった(粗リスク比:0.35、95%信頼区間[CI]:0.32~0.39)。・3回目のワクチン接種日によるマッチング解析の結果(リスク比:0.61、95%CI:0.54~0.71)および時間依存のCox比例ハザード回帰モデルの結果(調整ハザード比:0.56、95%CI:0.50~0.63)において、4回目接種群で同様のブレークスルー感染率の減少がみられた。・両群とも、重篤な疾患や死亡は発生していない。 著者らは、4回目のワクチン接種は医療従事者のブレークスルー感染予防に有効であり、パンデミック時の医療システムの機能維持に貢献したことが示唆されたとまとめている。

10138.

早期パーキンソン病へのcinpanemab、進行抑制効果は認められず/NEJM

 早期パーキンソン病患者へのcinpanemabはプラセボと比較して、52週時点の疾患進行の臨床指標および脳SPECT画像の変化への効果について差は認められなかった。カナダ・トロント大学のAnthony E. Lang氏らが、357例の患者を対象に行った第II相の多施設共同二重盲検無作為化試験の結果を報告した。パーキンソン病の病因において、α-シヌクレイン凝集は重要な役割を果たしているとされることから、α-シヌクレインと結合するヒト由来モノクローナル抗体cinpanemabは、新たなパーキンソン病の疾患修飾治療薬として評価が行われていた。NEJM誌2022年8月4日号掲載の報告。cinpanemabを3用量、52週間投与 研究グループは、早期パーキンソン病患者を無作為に2対1対2対2の割合で割り付け、プラセボ(対照)、cinpanemab 250mg、同1,250mg、同3,500mgをそれぞれ4週ごとに52週間、点滴静注した。その後、最長112週目まで、用量を盲検化し実薬を投与した。 主要エンドポイントは、運動障害疾患学会・改訂版パーキンソン病統一スケール(MDS-UPDRS)総スコア(範囲:0~236、高スコアほどパーキンソン病症状が進行)のベースラインから52週および72週の変化とした。副次エンドポイントは、MDS-UPDRSサブスケールスコア、ドパミントランスポーター単光子放射型断層撮影(DaT-SPECT)で評価した線条体結合などだった。MDS-UPDRSスコア、DaT-SPECT画像の変化もプラセボと同等 登録被験者357例のうち、対照群は100例、cinpanemab 250mg群は55例、1,250mg群は102例、3,500mg群は100例だった。試験は72週時点で行われた中間解析後、有効性の欠如により中止された。 MDS-UPDRSスコアの52週までの変化は、対照群10.8ポイント、250mg群10.5ポイント、1,250mg群11.3ポイント、3,500mg群10.9ポイントだった。対照群との補正後平均差はそれぞれ-0.3ポイント(p=0.90)、0.5ポイント(p=0.80)、0.1ポイント(p=0.97)だった。 試験開始から72週までcinpanemabを投与した患者と、52週以降にcinpanemabを投与した患者の統合群の、72週時点で評価したMDS-UPDRSスコアの補正後平均差は、250mg群-0.9ポイント(95%信頼区間[CI]:-5.6~3.8)、1,250mg群0.6ポイント(-3.3~4.4)、3,500mg群-0.8ポイント(-4.6~3.0)だった。 副次エンドポイントの結果も、主要エンドポイントと類似していた。52週時点のDaT-SPECT画像は、対照群とすべてのcinpanemab群で差は認められなかった。 cinpanemab群で認められた頻度の高い有害事象は、頭痛、鼻咽頭炎、転倒だった。

10139.

新型コロナ入院患者へのバリシチニブ、死亡低減効果は?/Lancet

 英国・オックスフォード大学のPeter W. Horby氏ら「RECOVERY試験」共同研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者に対する経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬バリシチニブの死亡リスク低減効果は約13%と、これまでに発表されたJAK阻害薬の無作為化比較試験8件のメタ解析によるリスク低減効果(約43%)よりも小さかったことを報告した。また、RECOVERY試験を含めたメタ解析の結果、JAK阻害薬(主にバリシチニブ)によるCOVID-19入院患者の死亡低減効果は約20%であったことも報告した。Lancet誌2022年7月30日号掲載の報告。バリシチニブを最大10日投与し、28日死亡率を通常治療のみと比較 研究グループは、COVID-19で英国内の病院に入院した患者を1対1の割合で無作為に2群に分け、一方には通常の治療のみを、もう一方には通常の治療に加え、バリシチニブ(4mg/日、経口投与)の10日間投与、または退院までのいずれか短い期間の投与を行った。主要アウトカムは、intention-to-treat(ITT)集団における28日死亡率だった。 また、同試験結果と、COVID-19入院患者を対象に行ったバリシチニブまたはその他JAK阻害薬の無作為化比較試験について、メタ解析を行った。RECOVERY試験を含む9試験のメタ解析で死亡を20%低減 2021年2月2日~12月29日にかけて、1万852例が試験に登録され、うち8,156例が無作為化を受けた。無作為化の時点で、コルチコステロイドを95%が服用、またトシリズマブを23%(24時間以内の使用予定者を含むとさらに9%追加)が服用していた。 全体で、無作為化後28日以内の死亡は、通常治療群14%(546/4,008例)に対しバリシチニブ群12%(514/4,148例)だった(年齢補正後率比:0.87、95%信頼区間[CI]:0.77~0.99、p=0.028)。 一方で、これまでに発表されたJAK阻害薬の無作為化比較試験8件(被験者総数3,732例、死亡425例)のメタ解析の結果では、JAK阻害薬による死亡低減率は43%(率比:0.57、95%CI:0.45~0.72)で、RECOVERY試験の結果(死亡を13%低減)に比べると減少は大きかった。 それら8試験とRECOVERY試験を統合した9試験のメタ解析(被験者総数1万1,888例、死亡1,485例)の結果、通常治療のみと比べたJAK阻害薬の死亡低減率は20%だった(率比:0.80、95%CI:0.72~0.89、p<0.0001)。 なお、RECOVERY試験において、COVID-19に関連のない死亡または感染症、および血栓症やその他の安全性に関わるアウトカムの顕著に過剰な発生は認められなかった。

10140.

第6回 市販の抗原検査キット陽性をどう扱う?

ついに抗原検査キットがネット解禁へ以前からドラッグストアで購入できた抗原検査キットは、ご存じのように抗原定性検査を指します。「体外診断用」と記載されたものが、厚労省が承認しているキット(図)で、未承認のキットは「研究用」と記載されています。参考文献・参考サイト厚生労働省 新型コロナウイルス感染症の体外診断用医薬品(検査キット)の承認情報厚生労働省 医療用抗原検査キットの取扱薬局リスト(令和4年8月9日18:00時点)画像を拡大する図. 薬事承認を受けた抗原検査キット(筆者作成)厚労省が承認した抗原検査キットを無料配布し始めている自治体もあります。それでもなお、品薄の状況であることから、政府はついにネットでの販売を解禁する方向へ舵を切るようです。抗原検査キット陽性でCOVID-19と確定してもよいか?承認された「体外診断用」の抗原検査キットを用いた場合、COVID-19と自己診断して療養することが可能です。ネットで登録できるシステムを各自治体が立ち上げています。ただ、ネット通販などで手に入る「研究用」の抗原検査キットを用いて診断しても、登録できない仕組みになっています。抗原検査キットでCOVID-19と自己診断する場合、虚偽の報告があると、とくにお金にかかわる部分でトラブルになるかもしれません。それゆえ、あまり手続きを簡略化し過ぎると、それはそれでまずい。そのため、一部の自治体は、かなり厳格に判定しています。たとえば以下のような条件です。有症状検査結果がわかる画像を添付本体に油性マジック等で氏名と検査日を記入(検査キット本体に直接記入)薬事承認された医療用抗原検査キットを利用されていること医師のオンライン面談後、登録とはいえ、医師のオンライン面談と登録がもはや難しい自治体もあり、自己登録システムでスピーディーに承認している自治体もあります。問題は、自己登録に不備がある場合、それをいちいち「検査に不備があります」と指摘して差し戻す作業自体が、結局行政の仕事量を増やすことにつながりかねないということです。東京都では、Googleフォームを通した申請になるため、ある程度ネットに慣れた人でないと登録は難しいかもしれません。また、1日3,000件までの申請しか受理していないため、これが今後の主たる手続きになるわけではなさそうです。このスキームには、陽性を装うことで何か詐欺に悪用できるような「コスパ」がそこまでないと思うので、甘めに判定してもそんなに金銭トラブルは多くないと予想されますが…果たして。ちなみに、市販の抗原検査キット陽性ということで発熱外来を受診した場合、それが未承認の「研究用」のキットであれば、医療機関でPCR検査や抗原定量検査を再度実施すべきと個人的に考えます。

検索結果 合計:35161件 表示位置:10121 - 10140