サイト内検索|page:489

検索結果 合計:36061件 表示位置:9761 - 9780

9761.

サブスペフェロー面接本番!日本人カテーテル医の魅力をどう売り込むか【臨床留学通信 from NY】第44回

第44回:サブスペフェロー面接本番!日本人カテーテル医の魅力をどう売り込むかさて、今回はマサチューセッツ総合病院(MGH)の面接当日の様子を紹介します。フェローシップ申請サイトのERASが12月7日にオープンする前にさっさと決めてしまいたいという思いもあって、先行して行われるMGHの面接に全力で臨みました。オンライン面接となれば、普通は部屋を明るくして自分の印象を良くするものですが、私は家の中が騒々しいため、やむなく病院の当直室で、やや暗めの光の中で行いました。Program Director、Associate Program Directorと呼ばれる2人との同時面接で、開始時間は先方が空いてる時間帯をいくつか提示され、その中から選ぶ形でした。多くのかしこまった面接はコーディネーターにあたる方から連絡が来て、何人かの候補者と同時に面接をするのが普通なのですが、今回はそれと異なり私1人だけであり時間もフレキシブルでした。おそらく内部候補者でスポットが埋まらず、ERASがオープンする前では私以外に候補者がいなかったのでしょう。逆にこれを大きなチャンスと捉え、少し気楽に、誰かとの比較ではなく自分自身の今までの日本での経験や、なぜ米国に来たのかということ、これから先何をしたいかということを純粋に伝えればいいという風に考えました。レジデントや通常のフェローの場合は、「なぜ内科なの? なぜ循環器なの? 循環器の何がしたいの?」とかいう質問も多いですし、“What are your strength and weakness?” “Why our program?”といった質問もあります。しかし、フェローシップのサブスペシャルティともなると、そのような細かいことは聞かれません。また、もし初めて米国に来るために内科の面接を受けるならば、経験がないため英語力も見られているでしょう。私の英語も問題はないとは言えませんが、そこはいわゆる“Tell me about yourself.”に対して、事前に用意して繰り返し練習した内容をスラスラと伝えました。Zoomのため、カンペのようにいくつかのポイントをPCのキーボードの上に置いておき、たとえば“What questions do you have?”といったよくある質問にも、焦らずいくつか答えられるようにしておきました。もちろん「バケーションはどれくらいですか?」とか、「夜終わるの遅いんですか?」といった質問は禁忌です。日本国内の医師はほぼ面接は皆無、どこの病院に行っても基本はウェルカムであることから、こういった就職面接というのは日本語でもやっていないのにどうしたもんだ、という心境でしたが何とか乗り切りました。今回は循環器の中のサブスペシャルティのカテーテル治療であり、一般のフェローとは違ったスキル、かつ日本的な丁寧なカテーテル治療ができる、というのも魅力的に思わせるようにしました。いかに自分を売り込むか、魅力的な候補者か、プログラム側がその候補者を取った場合にどんなメリットがあるかを伝える必要があり、日本人にはなかなか難しいところとも言えます。おおむねプログラム側も通常は和やかな雰囲気にしてくれますので、雰囲気が良かったかどうかで出来は決まりませんが、日本でのカテーテル治療、臨床研究の経験を活かし、米国に来たのはさらなるアカデミックキャリアを築くため、という一本道を伝えきりました。面接を終えると、その直後はサンクスギビングで連絡は途絶え、その間は次の面接の準備をしていました。そしてついに、休み明けの月曜に、“I would like to offer you the position of the interventional cardiology fellowship at MGH beginning 7/2024”というメールが来た時は、4年半の米国での苦労が少し報われたような、張り詰めていた緊張も少し和らいだ気がしました。Column5~11歳を対象としたCOVID-19のワクチンの有効性を述べた論文が、JAMA Pediatrics誌に掲載されたため紹介させていただきます。本誌には昨年にも2本掲載され、今回3本目になります。Reviewerもしっかりしていて、いろいろ学ぶことができました。この論文について、米国のトップニュースメディアの1つであるABCからも取材を受けました。Watanabe A, Kuno T, et al. Assessment of Efficacy and Safety of mRNA COVID-19 Vaccines in Children Aged 5 to 11 Years: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Pediatr. 2023;e226243.ABC News:COVID-19 vaccines are safe and effective for kids, according to new data

9762.

映画「アバター」【私たちの心はどうやって生まれたの?(進化心理学)】Part 1

今回のキーワード社会脳進化的適応環境(EEA)プレゼント仮説ダンバー数クッキング仮説人間関係の量と質映画「アバター」の舞台は、近未来の地球からやや離れた惑星パンドラ。そこに侵略しようとする地球人と先住民族との戦いを描いています。CGによる実写を超えた大自然の映像美とシンプルなストーリーで、私たちは時間を忘れてその世界観にどっぷり浸かることができます。今回の記事では、この映画に登場する先住民族たち同士のやり取りを通して、私たち人類の心がどうやって生まれたのかという心の起源に迫ります。そして、進化心理学そのものについて解説します。私たちの心とは?主人公は、先住民族ナヴィの森の民の長であるジェイク。もともと人間でしたが、アバターに完全に乗り移ることによって先住民族の一員になり、地球人から村を守ろうとします。しかし、彼だけが裏切り者として地球人のターゲットになってしまっていたため、彼は森の民を守るために自分の家族だけを引き連れて、遠い海の民の村に身を潜めます。ここから、その後の3つのシーンを通して、私たちの心の本質を説明します。(1)助けるか迷う1つ目は、ジェイク一家が海の民の村にやってくるシーン。出迎えた海の民の長トノワリは、他の海の民たちが見守るなか、そして妻ロナルが拒む様子を見せるなか、ジェイクたちを受け入れるか一時迷います。そのわけは、個人的には同じ長として助けたいと思いつつ、助ければ自分の部族が危険にさらされる恐れがあったからでした。(2)気を遣う2つ目は、ジェイクの息子ロークがトノワリの息子アオノンからよそ者として馬鹿にされたことに腹を立てるシーン。ロークはアオノンについ手を出してしまいます。ロークは父親ジェイクから「相手は長の息子だぞ。トラブルを起こすな」と叱られます。ジェイクは海の民たちに気を遣っていたのでした。こうして、ロークはアオノンに渋々謝りに行きます。(3)かばう3つ目は、アオノンがロークを危険な海に無理やり連れ出すシーン。なんと、アオノンはロークを置いてけぼりにして、仕返しをします。ロークは1人で何とか危険を脱して夜遅くに帰ってきます。アオノンが父親トノワリから叱られるなか、ロークは「いや、自分が行きたいって頼んだんだ」とアオノンをかばうのです。不思議に思ったアオノンは「なんでかばったんだ?」とあとで聞きます。すると、ロークは「部族の長の息子の気持ちはよくわかるから」と答えて、2人は仲直りをするのです。このように、助けるか迷ったり、気を遣ったり、かばったりするのは、私たちがどこかで見たことがあるような、よくあるシーンです。彼らは地球とは違う惑星の、人類とは違う生物種族でありながら、その心は私たちとまったく同じように描かれています。この心のあり方とは、常に相手の気持ちを推し量り、周り(集団)とうまくやっていくことです。これは、社会脳と呼ばれています。私たちの心の進化を促した環境とは?この私たちの社会脳は、いつ生まれたのでしょうか? それは、まさにナヴィ族が生きているような部族社会をつくっていた原始の時代であったと考えられています。それは、どんな環境でしょうか? ナヴィ族を通して、その特徴を大きく3つ挙げてみましょう1)。(1)その日暮らしで助け合うナヴィ族の森の民も海の民も他の動物を狩ったり、木の実や海藻を採ったりするなどの狩猟採集生活をしています。しかし、これらの食料は、基本的に蓄えることができません。そのため、誰かの食料が尽きれば、部族の別の誰かの食料を分けてもらいます。1つ目の特徴は、その日暮らしで助け合うことです。周りにある資源は部族全員のもので、所有の概念がありません。人口密度が低いため、資源がなくなれば、部族全員で別の場所に移住します。もちろん、他の部族の縄張りを侵せば、争いに発展します。なお、獲物を捕まえる心理の進化の詳細ついては、ギャンブル脳として関連記事1をご覧ください。(2)みんな顔なじみでわかり合うジェイク一家を出迎えた時に集まった海の民の数は、100人程度でした。そして、ロークが行方不明になった時、トノワリの指示のもと、部族全員がすぐに結束して、みんなで捜索をしていました。部族全員がお互いのことをよく知っており、通じ合っています。2つ目の特徴は、みんな顔なじみでわかり合うことです。そのために、部族の規模はそれぞれの家族や親族を中心としてつながった100人程度の小規模な集団になります。なお、一致団結する心の進化の詳細については、同調の心理として関連記事2をご覧ください。(3)いつも死と隣り合うジェイクはロークに「トラブルを起こすな」と叱りました。しかし、もしもそうしなかったら海の民からひんしゅくを買って追い出されたでしょう。そして、他にどこの部族も入れてくれなければ、それは死を意味します。なぜなら、彼らは集団になって食べ物を分け合い、猛獣から自分や子供たちを守り合って、何とか助け合って生きているからです。また、ロークは危険な海に置いてけぼりにされて、危うくサメのような魚に食べられて死ぬところでした。ジェイクの娘のキリがてんかん発作を起こした時、治療のためにやっていたことは、ロナル(トノワリの妻)の祈祷だけでした。3つ目の特徴は、いつも死と隣り合うことです。仲間外れにされたら死を待つだけです。それだけでなく、そもそも医療が発展していないため、乳幼児の死亡率は高いです。その日暮らしであるため若くして死ぬことも珍しくなく、平均寿命も低いです。だからこそ、人口密度が低いのです。なお、いつも死と隣り合う心の進化の詳細については、不安の心理として関連記事3をご覧ください。私たちの心の進化を促したこのような環境は、進化的適応環境(EEA)と呼ばれています。この映画では、ナヴィ族を通して、実は原始の時代の人類の生活環境をわかりやすく描いています。言い換えれば、ナヴィ族の暮らす森や海は、私たち人類の心の進化を考えるうえで、うってつけのモデル環境であるといえます。次のページへ >>

9763.

映画「アバター」【私たちの心はどうやって生まれたの?(進化心理学)】Part 2

私たちの心が進化したのはなんで原始の時代なの?それでは、私たちの進化的適応環境(EEA)がなぜ原始の時代なのでしょうか? その根拠を、大きく3つ挙げてみましょう。(1)脳の大きさの変化約700万年前に、人類がチンパンジーと共通の祖先から分かれて直立二足歩行をするようになりました。現在のチンパンジーやゴリラの平均脳容量が400~500mL程度であることから、初期の人類の脳の大きさもその程度であったと推定されています。そして、約200~300万年前から徐々に脳容量が増加していき、現在の1,400mLに達していることが遺跡から発掘された人骨の調査からわかっています2)。1つ目の根拠は、脳が大きくなったのが原始の時代だからです。ちなみに、人類が直立二足歩行になった原因として、プレゼント仮説が提唱されています2)。これは、人類が二足歩行をすることで、手が自由になり、得た食料を持ち歩けるようになり、とくにオスがメスにそれをプレゼントしていたという説です。そして、メスはそのお礼としてセックスをして、そのオスとの子供を育てていたという説です。これは、ジェンダーギャップ(性別役割分業)の起源です。この詳細については、関連記事4をご覧ください。(2)群れの大きさの変化それでは、なぜ脳が大きくなったのでしょうか? それは、群れが大きくなったからです。群れが大きくなるということは、それぞれのメンバーを見分けるだけでなく、自分とメンバーとの関係性、さらにはメンバー同士の関係性を覚えておく必要が出てきます。たとえば、誰と誰が親子か、誰と誰が仲良しか(または不仲か)、誰より誰が上か(または下か)など実は膨大です。さらに、群れの一員であり続けるためには、ジェイクやロークのように血縁が近くなくても周り(群れ)と仲を深めて信頼関係を築いていく必要もあります。つまり、量的にも質的にも群れで適応する能力が必要になります。2つ目の根拠は、群れが大きくなったのが原始の時代だからです。実際に、サルの野外実験では、ある子ザルの不安な鳴き声を録音してスピーカーで再生すると、その母親が瞬時にそのスピーカーのほうを見るだけでなく、他のメスザルたちが一斉にその子ザルの母親がどこにいるかを探していたという結果が得られました。まさに、海の民たちが、長のトノワリの動向を見守る状況に重なります。また、霊長類の脳(厳密には脳の中での大脳新皮質の比率)の大きさと群れの大きさには相関関係が見いだされています2)。たとえば、ゴリラは10~15頭、ニホンザルは10~100頭、チンパンジーは20~100頭です。この相関関係から、人間の群れの大きさは、約150人と割り出されています。これは、発見した学者の名前をとって、ダンバー数と呼ばれています。実際に、アフリカなどの文明化されていない未開の氏族(クラン)の平均人数は150人程度であり、一致しています3)。なお、脳が大きくなった原因は、群れが大きくなったことだけでなく、クッキング仮説も提唱されています2)。これは、火が使えるようになったことで、調理ができるようになり、消化に消費していたエネルギーが回るようになったという説です。(3)生活環境の変化それでは、なぜ群れが大きくなったのでしょうか? それは、地殻変動からアフリカの東側の森が草原になっていったからです。草原では、森のように木の実や獲物などが少なくなります。また、逃げ隠れできるところも少なくなるため、とくに子供はすぐに猛獣に狙われます。そのため、ジェイクが家族の絆を大切にしていたように、父親も子育てに参加して家族として一緒に暮らすようになったのでした。そして、家族を核とする血縁集団をどんどん大きくして、食料を分け合い、危険から身を守り合うようになったのでした。3つ目の根拠は、助け合う必要がある生活環境に変わったのが原始の時代だからです。ちなみに、森が草原になっていった時、チンパンジーやゴリラなどの他の霊長類はそこでは生き残れませんでした。そのわけは、彼らは人類のようにプレゼントを介してオスとメスが助け合うベースがもともとなかったからであると考えられます。なお、家族の起源の詳細については、関連記事5をご覧ください。進化心理学とは?私たちの心が進化したのが原始の時代であったのは、危険な草原で生き残り子孫を残すために、群れが大きくなり、結果的に脳が大きくなったからであることがわかりました。その産物が社会脳なのです。言い換えれば、たまたま地殻変動が起きて、危険な草原でも社会脳を進化させ生き残り子孫を残した種が、人類と名乗っているともいえます。逆にいえば、地殻変動が起きなければ、人類は、社会脳を進化させるチャンス(淘汰圧)がなく、現在になっても森の中でチンパンジーやゴリラの脅威を感じながら弱々しく細々と生きていただけかもしれません。このように、進化とは、世代を経ていくうちに、環境の変化に合わせて、遺伝子が変化するプロセスです。そして、進化心理学とは、その進化の視点で、心(脳)の成り立ちをとらえる学問です。なお、進化するには、何万年という長い歳月を必要とします。一方、農耕牧畜生活から始まる現代の文明社会は、たかだか1万数千年しか経っていません。この環境変化に進化が追いつくにはまだ期間が短いのです。つまり、私たちの心の原型は、原始の時代のとくに大きな群れをつくり狩猟採集生活をしていた約300万年の間に形作られたといえます。そして、私たちの心(脳)は、現代の文明社会ではなく、むしろ原始の時代の社会に適応しやすいと結論づけることができます。アバターとは?この映画に登場する地球人たちは、お金のことばかり考え、自然を破壊し、不老不死を手に入れようとしていました。まさに文明社会で生きる私たちの価値観が、皮肉を込めてあえて露悪的に描かれています。そんな文明社会で生きる私たちの人間関係は、SNSなども含めると150人(ダンバー数)をはるかに上回っています。この数の多さは明らかに脳のキャパオーバーです。その労力や時間のコストに限りがあることを考えると、量的に増えれば質的に落ちるのは必然です。つまり、不特定多数の誰かと浅く付き合ってしまう分、特定少数の誰かと深く付き合いにくくなってしまうということです。それは、たとえば、親友や恋人をつくりにくくなることです。そして、損得勘定(スペック)で相手を品定めしてしまうことです。まさに現代人の価値観です。この進化心理学の視点によって、私たちは人付き合いのあり方を見つめ直す必要があることに気付かされます。それは、先ほどにも触れたロークのように、自然とともに素朴に友情や恋愛を育むことでしょう。この映画「アバター」は、スクリーンを通して私たち自身がジェイクやロークたちの目になり心になることで、彼らになりきるだけでなく、原始の時代の私たち人類の心にもなりきることができるでしょう。そして、進化心理学とは、まさに「アバター」の目や心になって、原始社会に思いを馳せ、原始社会の私たちの心の原点に気付いていくことともいえるでしょう。なお、今回は、心(社会脳)の起源に迫りました。これを含む意識の起源については、関連記事6をご覧ください。1)「感情心理学・入門」P75:大平秀樹(編)、有斐閣アルマ、20102)「進化と人間行動」(第2版)P123、P109、P122、P135:長谷川寿一ほか、東京大学出版会、20223)「友達の数は何人?ダンバー数とつながりの進化心理学」P23:ロビン・ダンバー、インターシフト、2011<< 前のページへ■関連記事「カイジ」と「アカギ」(後編)【ギャンブル依存症とギャンブル脳】美女と野獣【実はモラハラしていた!? なぜされるの?どうすれば?(従う心理)】ウォーキングデッド【この世界観だからこそわかる!「コロナ不安」への処方せん】あなたには帰る家がある(後編)【なんで倦怠期は「ある」の?どうすればいいの?】Part 1カレには言えない私のケイカク【結婚をすっ飛ばして子供が欲しい!?そのメリットとリスクは?(生殖戦略)】Part 1インサイド・ヘッド(続編・その3)【意識はなんで「ある」の? だから自分がやったと思うんだ!】Part 1

9764.

第32回 マスク緩和論を巡り再び世論分断

世論分断の波が再来3月13日からマスク着用は個人判断に委ねることを基本とする方針が示されました。コロナ禍も後半戦、あるいはもう9回表くらいでしょうか。そのあたりは誰にもわかりませんが、とにもかくにも緩和される方針になりました。ただし、医療機関、高齢者施設、通勤ラッシュ・混雑した場所ではマスク着用が推奨されています。厚生労働省は、上記の考え方を事務連絡「マスク着用の考え方の見直し等について(令和5年3月13日以降の取扱い)」として示しています1)。医学的な弱者に感染させてしまうリスクがあるため、きわめて妥当な推奨なのですが、これで世論がまた分断されているようです。コロナ禍で何度か見た風景がまた始まってしまった。卒業式のマスク問題なぜ再びマスク問題が過熱しているかというと、「卒業式でマスク着用どうする問題」が急浮上したからです。文部科学省は2023年2月10日、卒業式におけるマスクの取扱いについて、各都道府県の教育委員会等に通知を出しています2,3)。これによると、「児童生徒と教職員は式典全体を通じてマスクなし、来賓や保護者等はマスク着用を基本」として示しています。簡単に言えば、感染対策はゼロにしたくないけど、子供の思い出のためのマスク緩和はやむなしということですよね。さらに通知では、児童生徒と教職員は、入退場、式辞・祝辞等、卒業証書授与、送辞・答辞の場面を含めて、式典全体を通じてマスクなしを基本とする、としています。しかし、来賓や保護者等はマスクを着用し、座席間の距離を確保するとされています。またさらに、壇上で式辞や祝辞等を述べる場合に関しては、来賓はマスクなしを許可しています。そして、国歌・校歌等の斉唱や「6年間で楽しかったことー!」などの「呼びかけイベント」についてはマスク着用を求めています。こ、細かい…細かすぎる……!「5類」化なのに厳格化そもそも、マスクを巡ってここまで重箱の隅をつつくような議論が必要なのでしょうか。日本ってこれほどルールが必要でしたっけ。あるいは、コロナ禍がそうさせてしまったのか…。全国知事会は、加藤 勝信厚生労働大臣に対して「全部が個人の判断と言われても困る」と伝えています。この意見もわからなくもないのですが、もう大人ですから、当初提示されたように「個人の判断に委ねる」でいいんじゃないか、と私自身は思っています。各業界団体は、業種別にガイドラインの見直しを行う方針になっています。飲食店で中間管理職をやっている私の友人も、「仕事が増えた」と激オコでした。5月8日から「5類感染症」にするというのに、逆に細かい規定でがんじがらめになってしまう現象って、本末転倒な気もします。具体的な場面を挙げるとなると、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身 茂会長もおっしゃっていたように、100万の場面があるのでキリがありません。もちろん、具体的な場面例を通達してもよいですが、分断を生む火種になることは目に見えているので、国民に対しては「感染が流行しているので常識的なマスク着用を」程度の啓発で、押し通せばよかったのでは、とも感じます。参考文献・参考サイト1)厚生労働省:マスク着用の考え方の見直し等について(令和5年3月13日以降の取扱い)2)文部科学省:永岡文部科学大臣臨時会見(令和5年2月10日)【動画】3)文部科学省:卒業式におけるマスクの取扱いに関する基本的な考え方について(通知)(令和5年2月10日)

9765.

ペマフィブラートの非アルコール性脂肪性肝疾患への有効性、よく効く患者の特徴

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に対するペマフィブラート※の投与は、BMI に関係なく肝炎症および線維化のマーカーを改善し、なかでもBMI 25未満の患者のほうがBMI 30以上の患者と比較して効果が高いことが、篠崎内科クリニックの篠崎 聡氏らの研究で明らかになった。Clinical and experimental hepatology誌2022年12月8日号の報告。※ペマフィブラート(商品名:パルモディア)の効能・効果は「高脂血症(家族性を含む)」(2023年2月3日現在)。ペマフィブラート投与6ヵ月後の非アルコール性脂肪性肝疾患患者のALT値非アルコール性脂肪性肝疾患は、世界で最も一般的な慢性肝疾患であり、近年発症率が増加している。日本では2018年に登場した選択的ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-αモジュレーター(SPPARMα)であるペマフィブラートは、非アルコール性脂肪性肝疾患の改善が期待されている薬剤の1つである。本研究は、非アルコール性脂肪性肝疾患患者におけるペマフィブラート投与後の炎症および線維化改善の予測因子を特定する目的で行われた。 対象は、ペマフィブラートで6ヵ月以上治療された非糖尿病の非アルコール性脂肪性肝疾患患者71例。肝臓の炎症と線維化に関しては、それぞれアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値とMac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体(M2BPGi)値によって評価を行った。 非アルコール性脂肪性肝疾患患者におけるペマフィブラート投与後の炎症および線維化改善の予測因子を特定する研究の主な結果は以下のとおり。・ペマフィブラート投与6ヵ月後の非アルコール性脂肪性肝疾患患者のALT値およびM2BPGi値は、ベースラインと比較して、BMIに関係なく、有意な改善が認められた。・BMI 25未満であることは、肝炎症患者のALTを50%以上減少させる有意な正の予測因子であることが認められた。・BMI 25未満の群におけるALT値は、BMI 30以上の群と比較して有意な減少が認められた (p=0.034)。・BMI 25未満であること、および50歳以上であることは、肝線維化の減少を示すM2BPGiを20%以上減少させる有意な正の予測因子であることが認められた。・BMI 25未満の群におけるM2BPGi値は、BMI 30以上の群と比較して有意な減少が認められた(p=0.022)。

9766.

統合失調症はどの季節に生まれた子に多いかメタ解析

 冬季出生の子供は、統合失調症リスクが増加するといわれ、100年近く経過している。統合失調症リスクと冬季出生との関連性を示す観察研究に基づき、ビタミンD欠乏症や子宮内でのウイルス曝露などの統合失調症の潜在的な病因リスク因子に関する仮説が考えられている。米国・イェール大学のSamantha M. Coury氏らは、出生の季節と統合失調症リスクとの関連を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、誕生月のデータを使用した分析では、北半球で冬季出生の子供は統合失調症リスクが高く、夏~秋に出生した子供は統合失調症リスクが低いという季節的傾向が認められた。Schizophrenia Research誌オンライン版2023年1月20日号の報告。統合失調症リスクと季節性~冬季出生で有意に上昇 誕生月と統合失調症リスクとの関連を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。南北半球で層別化し、これらの関連をさらに調査した。 出生の季節と統合失調症リスクとの関連を調査した主な結果は以下のとおり。・メタ解析には、43件の研究(30の国と地域、統合失調症患者44万39例)を含めた。・冬季出生は、統合失調症リスクが、小さいながらも統計学的に有意な上昇と関連していた(オッズ比[OR]:1.05、95%信頼区間[CI]:1.03~1.07、p<0.0001)。また、夏季出生は、統合失調症リスクが、小さいながらも有意な低下と関連していた(OR:0.96、95%CI:0.94~0.98、p=0.0001)。・層別サブグループ解析では、出生の季節と統合失調症リスクとの有意な関係は、北半球と南半球で差は認められなかった。・誕生月のデータを使用した分析では、南半球ではなく北半球において統合失調症リスクの増加が冬季出生に関連し、夏~秋の出生では統合失調症リスクが減少するという明確な季節的傾向が示された。・誕生月と統合失調症リスクとの関連に対する潜在的な病因を明らかにするためには、さらなる研究が求められる。

9767.

5~11歳児へのコロナワクチン、MIS-C低減/筑波大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック初期では、小児が感染しても、成人より軽い症状を呈する傾向があることが研究で示されていた。しかし、パンデミックの進行に伴い、呼吸不全、心筋炎、COVID-19 に続発する小児多系統炎症性症候群(MIS-C)など、重症化や合併症を発症するリスクがあることが新たに示唆されている。5~11歳の小児への新型コロナウイルスmRNAワクチンの有効性と安全性を評価するため、筑波大学附属病院 病院総合内科の渡邊 淳之氏らの研究グループにより、系統的レビューとメタ解析が行われた。本研究の結果、ワクチン接種により新型コロナ感染、入院およびMIS-Cなどのリスク低減が認められ、ワクチン接種による局所的な有害事象の発現率は高かったが、心筋炎を含む重篤な有害事象の発現頻度は低く、ほとんどの有害事象が数日以内に消失したことが明らかとなった。本研究は、JAMA Pediatrics誌オンライン版2023年1月23日号に掲載された。 本研究では、2022年9月29日までの小児におけるコロナワクチンの有効性または安全性を評価するすべての無作為化比較試験(RCT)および観察研究を、PubMedとEmbaseのデータベースから検索し、さらに、特定した論文の参考文献を含む2次資料を追加検索し、関連する論文を包括的に収集した。コロナワクチンについては、ファイザー製またはモデルナ製のmRNAワクチンに限定し、投与量を抽出した。主要評価項目は、症状の有無にかかわらないSARS-CoV-2感染、副次評価項目は、有症状のSARS-CoV-2感染、COVID-19関連疾患による入院、MIS-C、ワクチン接種による有害事象とした。有効性と安全性の評価項目の未調整/調整オッズ比を抽出し、ランダム効果モデルで統合した。有害事象については発現率の詳細を評価した。 主な結果は以下のとおり。・2件のRCT、15件の観察研究(コホート研究12件、ケースコントロール研究3件)の合計17件を解析した。ワクチン接種児1,093万5,541例(平均年齢または中央値:8.0~9.5歳、女性:46.0~55.9%)、ワクチン未接種児263万5,251例(同:7.0~9.5歳、女性:44.3~51.7%)であった。追跡期間の中央値は7~90日。・ワクチン2回接種児は未接種児と比較して、次の評価項目のリスク低下と関連していた。 -症状の有無にかかわらないSARS-CoV-2感染(オッズ比[OR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.35~0.64) -有症状のSARS-CoV-2感染(OR:0.53、95%CI:0.41~0.70) -COVID-19関連疾患による入院(OR:0.32、95%CI:0.15~0.68) -MIS-C(OR:0.05、95%CI:0.02~0.10)・ワクチン接種はプラセボと比較して、あらゆる有害事象のリスク上昇と有意に関連した(OR:1.92、95%CI:1.26~2.91)。日常生活を妨げる有害事象のリスク上昇との関連は非有意だった(OR:1.86、95%CI:0.39~8.94)。・ワクチン接種による有害事象について、ほとんどのワクチン接種児は、1回目の接種(5万5,949例中3万2,494例[86.3%、95%CI:74.1~93.3%])と2回目の接種(4万6,447例中2万8,135例[86.3%、95%CI:73.8~93.4%])で少なくとも1つの局所有害事象を経験した。接種児の約半数が全身性有害事象を発現した。・日常生活に支障を来す有害事象は、1回目の接種で4.9%(95%CI:3.1~7.7%)、2回目の接種で8.8%(95%CI:5.4~14.2%)確認された。・心筋炎は、1回目の接種で100万分の1.3(929万1,923例中12例)、2回目の接種で100万分の1.8(731万6,924例中13例)の確率で認められた。

9768.

転移を有する乳がんでタキサン再投与が有効な患者は?

 推奨される抗がん剤をすべて投与された転移乳がん患者において、全身状態が良好であるにもかかわらず病勢進行に苦しむ患者は少なくない。この状況で、タキサンなどの忍容性の高い抗がん剤の再投与が選択肢の1つになる場合がある。そこで、フランス・Centre Georges Francois Leclerc Cancer CenterのManon Reda氏らは、タキサン投与歴のある転移乳がん患者におけるタキサン再投与の有用性について検討した。その結果、とくにタキサンが乳がん経過の早期に効果を示した場合や病勢進行以外の理由で中止された場合に、タキサン再投与が現実的方法として支持された。Breast誌オンライン版2023年2月4日号に掲載。 本研究では、フランスのがんセンターの地域データベースから、2008~21年に転移を有するER+/HER2-またはトリプルネガティブ乳がんの診断・治療を受けた756例を後ろ向きに調べた。そのうち58例(7.8%)がタキサンを再投与されていた。臨床的特徴、奏効率、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を評価し、タキサン再投与を受けなかった患者と比較した。なお、以前のタキサン治療におけるPFSをPFS1、タキサン再投与におけるPFSをPFS2とし、PFS2/PFS1が1.3を超えた場合に治療ベネフィットがあるとした。 主な結果は以下のとおり。・タキサン再投与群は再投与を受けなかった患者群と比較して、有意に年齢が低く、全身状態も良好で、多くの治療を受けていた。・タキサン再投与群は再投与を受けなかった患者群と比較して、投与1回目の反応が良好で、病勢進行以外の理由による中止割合が高かった。・タキサン再投与群における客観的奏効率は27.6%、クリニカルベネフィット率は46.6%、PFS中央値は5.7ヵ月、OS中央値は11.6ヵ月だった。・タキサン再投与群のうち55.2%においてPFS2/PFS1比が1.3を超えた。

9769.

2cm以下末梢型NSCLC、縮小手術vs.肺葉切除術/NEJM

 腫瘍径2cm以下で病理学的に肺門・リンパ節転移陰性が確認された末梢型非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する縮小手術は、無病生存に関し、肺葉切除術に対し非劣性であることが示された。全生存は同等だった。腫瘍径が小さなNSCLCの検出率の上昇に伴い、肺葉切除から縮小手術へと再び関心が移っている中、米国・New York-Presbyterian病院のNasser Altorki氏らが、697例を対象に行った第III相多施設共同非劣性試験の結果で、NEJM誌2023年2月9日号で発表された。主要エンドポイントは無病生存、副次エンドポイントは全生存、再発など 研究グループは、2007年6月~2017年3月にかけて、臨床病期T1aN0(腫瘍径2cm以下)のNSCLC患者について、術中にリンパ節転移陰性を確認したうえで無作為に2群に割り付け、縮小手術または肺葉切除術をそれぞれ実施した。 主要エンドポイントは無病生存で、無作為化から疾患再発または全死因死亡までの期間と定義した。副次エンドポイントは、全生存、局所再発と全身再発、肺機能だった。5年全生存率、縮小手術群80%、肺葉切除術群79% 被験者数は697例、縮小手術を受けたのは340例、肺葉切除術は357例が受けた。 追跡期間中央値7年時点で、無病生存率について、縮小手術は肺葉切除術に対し非劣性を示した(疾患再発・死亡のハザード比[HR]:1.01、90%信頼区間[CI]:0.83~1.24)。全生存率も、縮小手術群と肺葉切除術群で同程度だった(死亡のHR:0.95、95%CI:0.72~1.26)。 5年無病生存率は、縮小手術群が63.6%(95%CI:57.9~68.8)、肺葉切除術群が64.1%(58.5~69.0)で、5年全生存率は、それぞれ80.3%(75.5~84.3)と78.9%(74.1~82.9)だった。 局所再発率と遠隔再発率は、両群間で大差はなかった。また、術後6ヵ月時点の予測1秒量比率のベースラインからの減少幅は、縮小手術群(-4.0、95%CI:-5.0~-2.0)より肺葉切除術群(-6.0、-8.0~-5.0)が2ポイント大きく、肺機能は縮小手術後のほうが良好であった。

9770.

GLP-1受容体作動薬・TAZ/PIPC、重大な副作用追加で添文改訂/厚労省

 厚生労働省は2023年2月14日、GLP-1受容体作動薬含有製剤およびGIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドの添付文書について、改訂を指示した。改訂内容は、『重要な基本的注意』の項への「胆石症、胆嚢炎、胆管炎または胆汁うっ滞性黄疸に関する注意」の追記(チルゼパチドは「急性胆道系疾患に関する注意」からの変更)、『重大な副作用』の項への「胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸」の追加である。本改訂は、GLP-1受容体作動薬含有製剤投与後に発生した「胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸」の国内症例の評価、GLP-1受容体作動薬と急性胆道系疾患との関連性を論じた公表文献の評価に基づくもの。なお、チルゼパチドについては関連する症例集積はないものの、GLP-1受容体に対するアゴニスト作用を有しており、GLP-1受容体作動薬と同様の副作用が生じる可能性が否定できないことから、使用上の注意の改訂が適切と判断された。『重要な基本的注意』が新設・変更<新設>リラグルチド(遺伝子組換え)、エキセナチド、リキシセナチド、デュラグルチド(遺伝子組換え)、セマグルチド(遺伝子組換え)、インスリン デグルデク(遺伝子組換え)/リラグルチド(遺伝子組換え)、インスリン グラルギン(遺伝子組換え)/リキシセナチド<変更>チルゼパチド 改訂後の添付文書において追加された記載、変更後の記載は以下のとおり。8. 重要な基本的注意 胆石症、胆嚢炎、胆管炎又は胆汁うっ滞性黄疸が発現するおそれがあるので、腹痛等の腹部症状がみられた場合には、必要に応じて画像検査等による原因精査を考慮するなど、適切に対応すること。『重大な副作用』が新設 該当医薬品は、リラグルチド(遺伝子組換え)、エキセナチド、リキシセナチド、デュラグルチド(遺伝子組換え)、セマグルチド(遺伝子組換え)、インスリン デグルデク(遺伝子組換え)/リラグルチド(遺伝子組換え)、インスリン グラルギン(遺伝子組換え)/リキシセナチド、チルゼパチド。 改訂後の添付文書において追加された記載は以下のとおり。11. 副作用11.1 重大な副作用胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸「急性胆道系疾患関連症例」*の国内症例の集積状況(1)13例[うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例8例](2)、(5)3例[うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例1例](3)4例[うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例1例](4)23例[うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例6例](6)、(7)1例[うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例0例](8)0例いずれも死亡例はなかった。(1)リラグルチド(遺伝子組換え)[販売名:ビクトーザ皮下注18mg](2)エキセナチド[販売名:バイエッタ皮下注5/10μgペン300、ビデュリオン皮下注用 2mgペン](3)リキシセナチド[販売名:リキスミア皮下注300μg](4)デュラグルチド(遺伝子組換え)[販売名:トルリシティ皮下注0.75mgアテオス](5)セマグルチド(遺伝子組換え)[販売名:オゼンピック皮下注0.25/0.5/1.0mgSD、同皮下注2mg、リベルサス錠3/7/14mg](6)インスリン デグルデク(遺伝子組換え)/リラグルチド(遺伝子組換え)[販売名:ゾルトファイ配合注フレックスタッチ](7)インスリン グラルギン(遺伝子組換え)/リキシセナチド[販売名:ソリクア配合注ソロスター](8)チルゼパチド[販売名:マンジャロ皮下注2.5/5/7.5/10/12.5/15mgアテオス]*:医薬品医療機器総合機構における副作用等報告データベースに登録された症例タゾバクタム・ピペラシリン水和物にも『重大な副作用』が新設 同日、タゾバクタム・ピペラシリン水和物の添付文書についても改訂が指示され、『重大な副作用』の項へ「血球貪食性リンパ組織球症(血球貪食症候群)」が追加された。改訂後の添付文書に追加された記載は以下のとおり。<旧記載要領>4. 副作用(1)重大な副作用(頻度不明)11)血球貪食性リンパ組織球症(血球貪食症候群)血球貪食性リンパ組織球症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、発熱、発疹、神経症状、脾腫、リンパ節腫脹、血球減少、LDH上昇、高フェリチン血症、高トリグリセリド血症、肝機能障害、血液凝固障害等の異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。<新記載要領>11. 副作用11.1 重大な副作用11.1.11 血球貪食性リンパ組織球症(血球貪食症候群)(頻度不明)発熱、発疹、神経症状、脾腫、リンパ節腫脹、血球減少、LDH上昇、高フェリチン血症、高トリグリセリド血症、肝機能障害、血液凝固障害等の異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。

9771.

北京では22年11月以降、新たな変異株は認められず/Lancet

 中国・北京市で2022年11月14日以降に流行している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、その大部分がBA.5.2とBF.7で、新たな変異株出現のエビデンスはないことを、中国・Beijing Center for Disease Prevention and Control(北京市疾病予防管理センター)のYang Pan氏らが報告した。約3,000件のSARS-CoV-2について完全ゲノムシークエンスを行い明らかにした。著者は、「今回のデータは北京市のみのものだが、人流の頻度および伝染力が強い系統が循環していたことから、結果は“中国の現状”とみなすことができる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年2月8日号掲載の報告。2022年採取のSARS-CoV-2をゲノム解析、系統発生学的・人口動態的分析を実施 研究グループは、本検討の背景について次のように述べている。「中国でのダイナミックな国家的ゼロCOVID戦略によって、2022年12月以前の北京市では、SARS-CoV-2の持続的局地的感染は起きていなかった。しかし、外来ケースは過去3年にわたり、たびたび検出されてきた。最近、中国ではCOVID-19症例が急増しており、SARS-CoV-2の新たな変異株出現が懸念されているが、北京市では3年の間、ウイルスゲノムの監視をルーチンに行ってきている。なお続くCOVID-19パンデミックへの世界的対応には、世界的に収集された最新のウイルスゲノムシークエンスをローカルデータのそれと比較した時空間解析が重要である」。 本検討では過去3年間にルーチンに採取が行われた、北京市で発生したSARS-CoV-2(国内症例・外来症例の両者をカバー)の呼吸器検体の中から、2022年1月~12月の収集サンプルを用い、その中から無作為に抽出して分析を行った。 次世代シークエンシングによりSARS-CoV-2をゲノム解析し、さらに質の高い完全シークエンスを用いて、系統発生学的・人口動態的分析を行った。11月14日以降の国内症例、90%がBA.5.2またはBF.7 2,994件の完全SARS-CoV-2ゲノムシークエンスが得られ、そのうち2,881件について質の高い完全シークエンスとさらなる分析を行った。加えて2022年11月14日~12月20日にかけて、413件の新たな検体(国内症例350、外来症例63)のシークエンシングを行った。 シークエンシングを行ったSARS-CoV-2ゲノムは、すべて123 PANGO系統に属しており、それ以外の持続的優勢株や新系統は見つからなかった。北京市では、現在SARS-CoV-2のBA.5.2とBF.7が主流で、11月14日以降の国内症例の90%(350例中315例)を占めており、11月14日以降に、BA.5.2とBF.7の株保有者数が増加していた。

9772.

医師のサイバー被害や対策、実際の状況は?/医師1,000人アンケート

 今年の4月からオンライン資格確認の導入(マイナンバーカードの保険証利用)が原則として義務付けられることが厚生労働省より発出されている1)。しかし、ランサムウェアのような診療を妨げるウイルス感染が問題になるなか、サイバーセキュリティーの観点からもオンライン上での個人情報管理に不安を抱える医師は一定数いるだろう。そこで今回、ケアネット会員のうち、20床未満の施設に所属する医師1,000人に「自施設のサイバーセキュリティー対策」に関するアンケートを実施した。最も実施しているのはウイルス対策ソフトのインストール 今回、サイバーセキュリティー対策として自施設で行っている項目を選択してもらった結果、上位3項目は「ウイルス対策ソフトのインストール」(574人)、「ソフトウェアの適時アップデート」(402人)、「電子機器のインターネットへの接続制限[電子カルテなど]」(383人)であった。ただし、最も実施している対策でもその割合は約半数であることも明らかになった。対策への年間負担額の中央値は5万円 続いて、上記の項目に対して負担している費用を質問したところ、費用負担者は約7割で、その中央値は5万円(範囲:1,000~3,500,000円)であることが明らかになった。100万円以上を負担していると回答したのは35人だったが、その回答者の多くは実際に被害を受けた人だった。なお、今回の調査によると、サイバー攻撃などの被害を受けたことがあるのは全体の3%で、「ランサムウェア」や「トロイの木馬」によるシステムの破壊被害などが挙げられた。万が一、実際に医療機関等がサイバー攻撃を受けたら… 令和4年3月に改定された『医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.2版』には、医療機関などがサイバー攻撃を受けた(疑い含む)場合などの際には、厚生労働省などの所管省庁への連絡など、必要な対応を行うほか、そのための体制を整備する必要があるため、被害を受けた場合は「医政局特定医薬品開発支援・医療情報担当参事官室」に相談する2)旨が記載されている(参照:6.10章)。アンケートの詳細は以下のページで公開中『サイバーセキュリティー対策、いくら払っている?』<アンケート概要>目的:各医療機関でのサイバーセキュリティー対策向上が喫緊の課題になっていることを踏まえ、病床数20床未満の施設における対策の実施状況、対策への意識を調査。対象:病床数20床未満のケアネット会員医師 1,000人調査日:2023年2月2日方法:インターネット

9773.

アスピリンでいいの?(解説:後藤信哉氏)

 骨折症例は肺塞栓症などの致死的静脈血栓リスクが高いと認識されている。欧米諸国では静脈血栓予防の標準治療は低分子ヘパリンである。皮下注射といえども注射と経口の差異は大きい。血栓イベント予防が目的であれば経口薬が好ましい。 静脈血栓予防におけるアスピリンの有効性については長年の議論がある。無効とも言いにくいが、抗凝固薬よりも有効性が乏しいと一般に理解されていると思う。しかし、本論文のintroductionに記載されているようにアスピリンと低分子ヘパリンとのしっかりしたランダム化比較試験が施行されてきてはいない。 エビデンスが明確でないのでランダム化比較試験をやって仮説を検証しようとの発想は欧米らしい。実臨床のうえでの低分子ヘパリンとアスピリンのランダム化比較試験を下半身の骨折症例を対象として施行した。有効性の1次エンドポイントは90日の時点での総死亡とした。 1万2,211例のランダム化比較試験の結果は無視できない。骨折症例は抗凝固薬による血栓予防という固定概念があるが、安価で安易なアスピリンでもよいのかもしれない。議論を起こしそうだが、1つの実験による科学的事実としては評価せざるを得ないと思う。

9775.

アルツハイマー病疾患修飾薬lecanemab、臨床医が知っておきたい現状と課題【外来で役立つ!認知症Topics】第2回

lecanemabの3つの課題日本におけるlecanemabの申請が発表された。これを受け、認知症の人やその家族、そして医療関係者はアルツハイマー病の疾患修飾薬に熱い視線を向けている。エーザイでは、7.5ヵ月の延長効果、27%の症状軽減を公式発表している。しかしマスコミなどでは、シミュレーションの数字を基に軽度認知障害(MCI)なら2年間も認知症へのコンバートが遅くなるなどと報道している。このように期待が先行し、現実を見えにくくしている面もある。そこで今回はこの薬剤に関し、実際的な3つの問題点について述べる。まず今後、薬価を下げるために考えられる方法論。次に、最大の副作用であるARIA。そして現時点での個人輸入の可能性とこれから医師が直面するであろう課題である。薬価、保険収載はどうなるか?価格に関しては、アメリカでは1人あたりの1年間分の薬価が350万円とされた。そこでマスコミが試算して、日本の場合には150万円くらいとの報道もあるが、これも根拠の薄い値段のようだ。それはさておき、わが国の認知症の人の3分の2を占めるアルツハイマー病患者、それを前駆期や初期に限ったとしても100万人台と思われる。これを考えた時、保険収載はそう容易ではないと思われる。そこでまずは、製造技術の革新や大量生産等により廉価になっていくことが期待される。また、抗アミロイドβ(Aβ)抗体薬の投与量が少なくても効果が今以上になれば安くなるはずだ。従来の抗体薬の効果が乏しかった原因として注目される説の1つに、血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)の通過率が低いからとするものがある。そこでBBB通過の効率を上げることが注目される。従来、抗アミロイド抗体のような巨大分子の輸送では受容体媒介移動(receptor-mediated transcytosis:RMT)過程の活用が有効と考えられ、RMT受容体に結合できるリコンビナント抗体が注目されてきた。これ以外にも、末梢で可溶性Aβを取り除いて、崩れた末梢・中枢間のAβ比を復元しようとする力を促し、脳に沈着をさせない、脳の沈着を除くという戦略1)もある。いずれも値下げにつながる可能性を持つものと期待される。重要な副作用のARIAとは?次に本剤が持つさまざまな副作用の中で最も怖いのが、小さな血管の浮腫や出血の「ARIA(amyloid-related imaging abnormalities)」である。アルツハイマー病患者の約半数はアミロイドアンギオパチーを有するとされる。こればアミロイドのプラークが血管壁の平滑筋に置き換わった病理変化である。さて本剤の治験のダブルブラインド期に、参加した1,800例のうち13例での死亡が報告されている。脳出血による死亡例は、このダブルブラインド相また実薬相を併せて3例ある。いずれも本剤との関係は疑われるが未確定であるとされる。抗Aβ抗体薬は、脳内のAβ沈着を標的に、選択性なく作用する。だからアミロイドアンギオパチーもターゲットになるのでARIAは不可避である。最近では、専門家によってはARIAという術語が正しくないと言われる。つまりこれは画像上の異常ではなく、これらの死亡例が物語るように、明らかな臨床症候だと述べている2)。なお治験においてARIAは、多くの場合、投与開始から3、4ヵ月までに発生した。だから投与からしばらくは、とくに厳重な注意が求められる。個人輸入への対応はどうする?さて、わが国における本剤の発売は、2023年末になるのではないかと噂される。しかし今すぐ欲しい人も多く、すでに承認されているアメリカから個人輸入したいという方もいる。これに関し、筆者が調べてみた限りでは、個人輸入は本剤に関しても可能なようだ。これまでと同様に個人の申請に基づき、一般的には輸入代行会社に申し込むことになる。こうした手続きは厚生労働省厚生局の管理下にあるが、これを仕入れて他者に売却するような行為はもちろん許されない。次に、仮に薬剤を仕入れたとしても、本剤は点滴投与するので、医療者の関わりが欠かせないだろう。つまり個人が当薬品を医療機関に持参して投与処置を依頼すると思われる。このような見込みを踏まえたとき、医師が直面する大きな課題が少なくない。まず当該者が、本剤の適応であるMCIか初期のアルツハイマー病の患者なのか否かである。そもそもアミロイドPETや脳脊髄液穿刺により、アルツハイマー病だとほぼ確定できるという診断が得られているかどうかが問われるはずだ。ところが、進行していても本剤を望む人は少なくない。こういう人にどう対応するかも大きな問題だ。こうした医療処置は自由診療になるので、保険診療との区別をどうするかという問題もある。さらにARIA をMRIにより追跡調査する方法に加えて、これらの副作用が生じた場合に、医師の責任がどこまで問われるかも懸念される。以上のように、lecanemabが仮に承認になり発売に至ったとしても、われわれ医療者に直接降りかかりそうな問題は多い。おそらく関連学会が中心になり、厚労省と共に具体的な決定を進めていくのだろう。しかしここには従来経験したことのない難問が山積している。参考1)松原悦朗. アルツハイマー病の分子メカニズムと治療戦略. 老年期認知症研究会誌. 2011;18:53-55.2)Piller C. Scientists tie third clinical trial death to experimental Alzheimer’s drug. Science. 2022 Dec 21.

9776.

第148回 相変わらず自己犠牲と滅私奉公で医療を行うコトー、日本の医療提供体制の“汚点”を描く映画『Dr.コトー診療所』

1980年の『ヒポクラテスたち』は古過ぎる?こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。3月に開かれるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に出場する全20チームのメンバーが発表されました。開催国で連覇を目指す米国や、2大会ぶりの優勝を狙うドミニカ共和国などが、MLBのスター選手を多く揃えたチームを編成しており、今までにない盛り上がりを見せそうです。とくに米国は、MVPを3回受賞しているエンジェルスのマイク・トラウト選手がキャプテンを務め、通算197勝のドジャースのクレイトン・カーショウ投手や、昨シーズンMVPのカーディナルスのポール・ゴールドシュミット選手、MLB史上最高の三塁手と称されるカーディナルスのノーラン・アレナド選手など、人気も実績もある選手たちが顔を揃えています。これまでWBCといえば、米国は二線級、三線級の選手でお茶を濁してきた印象です。野球を世界的なスポーツにしたいというMLBの強い思惑の表れでしょうか。ちなみに、組み合わせ的には主催国とスポンサーを反映して米国と日本が有利な組み合わせになっているようです。これと対照的なのがアメリカンフットボールのNFLです。2月12日(現地時間)にアリゾナ州グレンデールで第57回スーパーボウルが開かれたのですが、昨年に引き続きNHK BSでの放送は今年もありませんでした(カンザスシティ・チーフスが優勝)。予算削減が著しいNHKにおいて大谷人気の余波(MLB放送にお金を使い過ぎた)とも言えそうです。NFLはもう日本ではテレビ放送されないかもしれません(日本テレビが深夜のダイジェスト番組で頑張ってはいますが…)。さて、今回はお正月に観た医療映画、吉岡 秀隆主演の『Dr.コトー診療所』(監督:中江 功)について書いてみたいと思います。年末にこの連載で、亡くなった大森 一樹監督の『ヒポクラテスたち』を紹介しました(「第141回 医師免許を持った映画監督、大森一樹氏を偲ぶ。青春映画の名作『ヒポクラテスたち』を今観て思うこと」参照)。すると友人から「大森監督を偲ぶのはいいが、さすがに1980年の映画は古過ぎるのでは」との意見をもらいました。というわけで、最新の医療映画『Dr.コトー診療所』を観てみようと思ったわけです。2003年7月からフジテレビ系列で放映された医療ドラマご存じのように、『Dr.コトー診療所』は2003年7月からフジテレビ系列で放映された医療ドラマです。原作は2000年から『週刊ヤングサンデー』(小学館)で連載された山田 貴敏による同タイトルの漫画です。沖縄県八重山列島にあるとされる架空の島、志木那島(しきなじま)を舞台に、吉岡演じる主人公・五島 健助の医師としての成長や、島の人々との交流、離島医療の現実などを、島の大自然とともに描いたドラマはヒットし、その後何作かの単発作品をはさみ、2006年10月からは第2期のドラマも放映されました。主人公のモデルは、鹿児島県の下甑島(しもこしきしま)にある下甑手打診療所で40年近く離島医療に携わってきた医師・瀬戸上 健二郎氏であることは周知の事実です。瀬戸上氏は2016年には日本医師会 赤ひげ大賞も受賞されています。「全員救う!」と叫び、次々と人々を救っていくコトー第2期のドラマから16年という長いブランクを経て、昨年末の2022年12月公開された映画『Dr.コトー診療所』では、やはりコトー(白髪の中年医師になっています)が島唯一人の医師として島の医療を支えています。そこに、かつてのコトーのように東京から研修医の織田 判斗(King & Princeの高橋 海人、意外と好演)がやって来ます。映画は、かつてコトーに憧れ、医師になるべく島から東京の医大に進学した原 剛洋(富岡 涼)の現在とともに、過疎高齢化が進む島の医療の脆弱さを描きます。並行して中年となったコトー自身が抱える、ある深刻な問題も明らかとなります。そんな中、島に大型台風が上陸、甚大な被害が発生し、診療所には多数のケガ人や患者が運び込まれます。野戦病院と化した診療所でコトーは、「全員救う!」と叫び、強靭な精神力と卓越した技術で次々と人々を救っていきます。一方、着任して離島の医療システムや労働環境の不備を指摘していた判斗は、「そんなの無理だ」と弱音を吐きつつも、スーパーマンのように治療を行うコトーの活躍を目の当たりにして…。現代の医療問題も盛り込んでいるようには見える確かに、コトーはじめ、かつての登場人物たちがオリジナルキャストで出演し、その年月を感じさせる演出は見ごたえがあります。しかし、今作るべき医療映画として、このストーリーはどうなのでしょう。判斗が離島医療(僻地医療)のシステムを批判したり、市の役人が近隣諸島の医療機関の統廃合の話を持ってきたりして、現代の医療問題も盛り込んでいるようには見えます。しかし、最後にコトーが圧倒的なパフォーマンスを発揮してさまざまな問題を解決してしまっては、元も子もありません。今、作られる医療映画として、日本の離島医療、僻地医療が抱える問題に対するメッセージもしっかり盛り込むべきだったのではないでしょうか。ただのヒーロー医師映画では、『ヒポクラテスたち』のように40年後にも観る価値があるかどうか微妙です。もはや“赤ひげ”の時代ではない私自身も記者時代、北海道や岩手、宮城などの僻地医療の現場を取材して回ったのですが、そこで感じたのは、一人の医師の自己犠牲の上で成り立たせてきた僻地医療の限界です。僻地といえども、医師の自己犠牲ではなく、“システム”によって、医師が疲弊しない医療提供の仕組みを作っていくべきでしょう。そうした指摘は、ドラマ『Dr.コトー診療所』が放映されるよりずっと以前からなされていましたが、こと僻地医療、離島医療については医療提供体制のシステム整備が遅々として進んでいないのが現状です。ドラマ放映から20年近く経っても、映画の中でコトーは自己犠牲と滅私奉公で医療を行っていました。その姿は、日本の医療提供体制のある意味“汚点”と言ってもいいと思います。1965年に公開された黒澤 明監督の映画『赤ひげ』は、日本人が理想とする医師の姿を描いた作品で、今観てもいろいろ考えさせられる作品です。しかし、コロナ禍を経て、この国の医療提供体制や医師の働き方に批判が向けられる今、自己犠牲を厭わず、ひたすら頑張るヒーロー医師はたとえ映画の中であっても不要でしょう。もはや“赤ひげ”の時代ではないのです。

9777.

乾癬の発症にPCSK9が関与か

 脂質異常症の治療薬として用いられているPCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)阻害薬について、乾癬予防に使用できる可能性が指摘された。英国・マンチェスター大学のSizheng Steven Zhao氏らによる1万2,116例の乾癬患者を対象としたメンデルランダム化解析において、乾癬の発症へのPCSK9の関与が示唆された。脂質経路は乾癬の発症に関与しており、スタチンなどの一部の脂質低下薬は疾患修飾の特性を有すると考えられている。しかし大規模集団での研究はほとんど実施されておらず、従来の観察研究の結果に基づく因果関係の解釈は、交絡因子の存在により限界があった。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年1月25日号掲載の報告。 研究グループは、脂質低下薬と乾癬発症リスクとの因果関係を調べるため、2022年8月~10月に、2標本のメンデルランダム化解析を行った。検討には、2つのバイオバンク(UKバイオバンク[英国]およびFinnGen[フィンランド])を用いた乾癬に関するゲノムワイド関連研究(GWAS)、およびGlobal Lipids Genetics ConsortiumからのLDL値が含まれた。 LDL値をバイオマーカーとして用い、HMG-CoA還元酵素(スタチンの標的)、Niemann-Pick C1-like 1(NPC1L1、エゼチミブの標的)、PCSK9(アリロクマブなどの標的)の遺伝的阻害(HMG-CoA還元酵素、NPC1L1、PCSK9の阻害を代替する遺伝子変異を抽出)を行い、乾癬発症リスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・1万2,116例の乾癬患者のデータと、LDL測定値が得られた約130万人のデータを基に解析した。・PCSK9の遺伝的阻害は、乾癬発症リスク低下と関連した(LDL値の1標準偏差減少ごとのオッズ比[OR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.55~0.88、p=0.003)。・上記の関連は、FinnGenでも同様であった(OR:0.71、95%CI:0.57~0.88、p=0.002)。・感度分析において、遺伝子変異の多面作用(pleiotropy)または遺伝的交絡によるバイアスは認められなかった。・HMG-CoA還元酵素、NPC1L1の遺伝的阻害は、乾癬発症リスクとの関連が認められなかった。

9778.

免疫便潜血検査陽性と認知症との関連

 免疫便潜血検査(FIT)は、大腸がん(CRC)のスクリーニングに広く用いられているが、CRC以外の疾患の場合でもFIT陽性になることがある。韓国・ソウル大学のYu Kyung Jun氏らは、FIT陽性結果と認知症発症との関連を調査した。その結果、FIT陽性は、とくに65歳未満の人で認知症リスクの増加と関連が認められた。著者らは、FIT陽性者で悪性腫瘍が認められない場合、臨床医は認知症の可能性を考慮すべきであるとまとめている。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年1月12日号の報告。 韓国国民健康保険公団のデータベースを用いて、FIT陽性者の特定を行った。 主な結果は以下のとおり。・すべての原因による認知症の発症率は、FIT陽性者のほうが陰性者よりも高かった(p<0.0001)。・FIT陽性者は、陰性者と比較し、アルツハイマー病(p<0.0001)および血管性認知症(p=0.0002)のリスクが高かった。・FIT陽性者におけるすべての原因による認知症(p<0.0001)またはアルツハイマー病(p=0.0002)のリスクは、65歳以上の人よりも65歳未満の人で高かった。

9779.

女児の運動有能感に効果的なのは?

 児童期の発達にとって重要とされる外遊びは、とくに女児において運動有能感を向上させ、自発的な身体活動を促進する可能性があることが、神戸大学大学院保健学研究科のRyo Goto氏らによる研究で明らかになった。Children誌2023年1月10日号の報告。 児童期の外遊びは年々減少傾向にある。運動有能感の向上は、外遊びやスポーツクラブなどでの身体活動を促進するが、運動有能感と外遊びとの関係はわかっていなかった。今回、児童における運動有能感の向上と外遊びとの関係を調査し、男女間で差があるかどうかを調べる目的で横断研究が行われた。 筆者らは、兵庫県神戸市の公立小学校2校に在籍する4~6年生の児童288人(9~12歳、女児134人)を対象に、独自のアンケートを使用して外遊びの評価を行った。アンケートでは、平日ごとの外遊びの時間を児童らに報告してもらい、1時間以上、3回外で遊んだ場合を「高」と分類した。運動有能感は、岡澤 祥訓氏らによる自己記入式の質問票(1996年)の12項目5段階のリッカート尺度で評価した。年齢、性別、BMI、スクリーンタイム、スポーツクラブへの参加、友人の数で調整した後、ロジスティック回帰分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・運動有能感が良好な児童は、外遊び「高」に分類される可能性が有意に高かった(粗オッズ比[OR]:1.04、95%信頼区間[CI]:1.00~1.08、調整後OR:1.04、95%CI:1.00~1.08、ともにp<0.05)。・性別による層別化分析では、運動有能感が良好な女児は、外遊び「高」と分類される可能性が有意に高かった(粗オッズ比:1.08、95%CI:1.01~1.15、p<0.05、調整後OR:1.09、95%CI:1.02~1.17、p<0.01)。

9780.

胆道がんのアンメットニーズ充足へ、デュルバルマブ適応追加/AZ

 アストラゼネカは、抗PD-L1抗体デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が2022年12月23日に「治癒切除不能な胆道」「切除不能な肝細胞」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺」を適応症とした承認を取得したことを受け、「進行胆道がん治療におけるイミフィンジの役割とは~免疫チェックポイント阻害剤による胆道がん治療の変革~」をテーマとして、2023年2月7日にメディアセミナーを開催した。 胆道がんの1年間の罹患数は2万2,201例(2018年)、死亡数は1万7,773例(2020年)と報告されている1)。一般的に、胆道がんは予後不良であり、手術による切除例や切除不能例を含めた胆道がん全体での5年生存率は、20~30%とされている1)。多くの場合、胆道がんは進行期になってから診断され、遠隔転移が認められてから診断される割合は全体の4割に上るという報告もある2)。また、遠隔転移のある場合、1年生存率は14~16%と非常に予後が悪いことも報告されている3)。このように、胆道がんはアンメットメディカルニーズの高いがんといえる。 セミナーの前半では、アストラゼネカが実施した「胆道がん患者調査」の結果4)について、調査を監修した古瀬 純司氏(神奈川県立がんセンター総長)が解説した。セミナーの後半では、古瀬氏が「胆道がんに対する治療選択と薬物療法」をテーマとして、胆道がんの薬物治療の変遷や、治癒切除不能な胆道がん患者を対象にデュルバルマブの有用性を検証した国際共同第III相試験「TOPAZ-1試験」を中心に解説した。胆道がんの認知度向上が早期発見・支援には重要 アストラゼネカは、胆道がん患者の診断~治療の過程での経験や治療に伴う生活の変化を明らかにすることを目的として、全国の胆道がん患者203例を対象にアンケート調査を実施した4)。 胆道がんの年間罹患数は2万2,201例(2018年)と報告されているが1)、胆道がん患者調査では、胆道がん患者の80%は診断される前に胆道がんを知らなかったという。このように胆道がんの認知度が低いこと、胆道がんには特徴的な症状が乏しいことから、「体調の変化があって自ら受診した」ことで診断がついた患者の割合は34%にとどまった。実際に、診断される前の症状として多く挙げられたものは、「みぞおちや右わき腹の痛み(36%)」「食欲不振(34%)」「体重減少(33%)」であり、いずれも胆道がんに特徴的な症状ではなかった。胆道がんに多いとされる「黄疸」を挙げた割合は25%であった。また、体調の変化があってから1週間以内に受診した患者の割合は25%にとどまり、1週間以上経過してから受診した理由として「重大な病気だとは思わなかった(52%)」「普段の生活に影響がない程度だった(45%)」が多く挙げられ、早期診断の難しさを反映する結果であった。 早期診断に向けて、古瀬氏は「胆道がんに多い黄疸の症状に気付いたらすぐに受診してほしい。消化器症状が出たときには胃の異常を疑うだけでなく、患者が『膵臓がん、胆道がんはないでしょうか』と医師に聞くくらい、胆道がんの認知を向上させたい」と語った。 胆道がんの認知度の低さは、早期発見の障壁となるだけでなく、患者が病気について周囲に知らせることや治療についての困りごとの相談の障壁にもなる。胆道がん患者調査において、胆道がんと診断されたことを身近な人に知らせることの障壁となった理由として多く挙げられたものは、「相手が胆道がんという病気をあまり知らなかった(35%)」「胆道がんがどのような疾患か説明するのが難しかった(28%)」「相手に説明できるほど自分自身が胆道がんについて理解できていなかった(26%)」であり、認知度の低さに関する理由が上位を占めた。 古瀬氏は、本調査結果についての結論を以下のとおりまとめた。・胆道がんは初期症状や特有の症状に乏しく、受診につながりにくいため早期発見の取り組みが必要である。・セカンドオピニオン、治療内容について、患者はとくに情報を求めている。・治療のみならず、日常生活の変化を支える情報提供・サポート体制が必要である。・胆道がんの認知度の低さが、患者の周囲への打ち明けにくさにつながるため、疾患の認知度向上が重要である。デュルバルマブが胆道がん1次治療の新たな選択肢に 本邦の胆道診療ガイドラインおよび肝内胆管ガイドラインでは、切除不能胆道がん、切除不能肝内胆管がんに対する1次治療の薬物療法として、「ゲムシタビン+シスプラチン併用療法」「ゲムシタビン+S-1併用療法」「ゲムシタビン+シスプラチン+S-1併用療法」が推奨されている5,6)。2019年以降、免疫チェックポイント阻害薬・がんゲノム医療の時代となってきたが、これまで胆道がんにおける免疫チェックポイント阻害薬は、2次治療以降の位置付けであった。そこで、新たな1次治療の開発が行われており、その1つが治癒切除不能な胆道がん患者を対象にデュルバルマブの有用性を検証した、国際共同第III相試験「TOPAZ-1試験」である。デュルバルマブは、本試験の結果をもとに「治癒切除不能な胆道」を適応症とした承認を取得している。 TOPAZ-1試験7-9)は、治癒切除不能な胆道がん患者685例を対象に、1次治療として「デュルバルマブ+ゲムシタビン+シスプラチン(デュルバルマブ+GC群)」または「プラセボ+ゲムシタビン+シスプラチン(プラセボ+GC群)」に1:1に無作為に割り付け、3週間間隔で最大8サイクル投与し、その後デュルバルマブまたはプラセボを4週間間隔で、疾患進行または許容できない毒性が認められるまで投与した試験である。主要評価項目は全生存期間(OS)、主要な副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)であった。その他の副次評価項目として、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)などが評価された。 有効性について、中間解析時においてデュルバルマブ+GC群はプラセボ+GC群に比べて、OSが有意に延長し、優越性が検証された(OS中央値:12.8ヵ月vs.11.5ヵ月、ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.66~0.97、p=0.021[両側有意水準0.0300])。24ヵ月時点の全生存率は、デュルバルマブ+GC群24.9%、プラセボ+GC群10.4%であった。ORRはそれぞれ26.7%、18.7%であり、デュルバルマブ+GC群が有意に高率であった(オッズ比:1.60、95%CI:1.11~2.31、p=0.011)。奏効が認められた患者のDoR中央値はそれぞれ6.4ヵ月、6.2ヵ月であった。12ヵ月以上奏効が持続した患者の割合はそれぞれ26.1%、15.0%であった。 安全性に関して、Grade3または4の有害事象の発現率はそれぞれ73.7%、79.2%であった。この結果について、古瀬氏は「デュルバルマブ上乗せにより懸念される有害事象はなかった」と述べた。ただし、「免疫チェックポイント阻害薬に共通することとして、免疫介在性有害事象が認められる。一つひとつの事象の頻度は高くないが、注意が必要である」とも述べた。 米国のNCCNガイドライン第5版には、すでに「デュルバルマブ+GC療法」が切除不能な胆道がんに対するpreferred regimensの1つとして記載されており10)、古瀬氏は「本邦のガイドラインも改訂作業に入っており、遠からず掲載されるだろう」と語った。■参考文献1)公益財団法人がん研究振興財団. がんの統計20222)九州大学病院がんセンター. 九州大学病院のがん診療 胆道がん3)大阪国際がんセンター. 胆のう・肝外胆管がん4)アストラゼネカの「胆道がん患者調査」で判明、胆道がんの認知度の低さが周囲に病気を知らせることや困りごとを相談するハードルになっている5)日本肝胆膵外科学会、胆道診療ガイドライン作成委員会編. エビデンスに基づいた胆道診療ガイドライン 改訂第3版. 医学図書出版;2019.6)日本肝研究会編. 肝内胆管診療ガイドライン 2021年版. 金原出版;2020.7)承認時評価資料:Imfinzi社内資料(一次治療の進行胆道患者を対象とした国際共同第III相試験[TOPAZ-1試験]、2021)8)承認時評価資料:Imfinzi社内資料(一次治療の進行胆道患者を対象とした国際共同第III相試験[TOPAZ-1試験]:日本人集団、2021)9)Oh DY, et al. NEJM Evid. 2022;1:1-11.10)National Comprehensive Cancer Network. NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology Hepatobiliary Cancers Version 5, 2022

検索結果 合計:36061件 表示位置:9761 - 9780