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ホルモン感受性前立腺がんに対するアビラテロン+プレドニゾロン+エンザルタミドの成績/ESMO2022

 転移のあるホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)に対して、アビラテロン+プレドニゾロン(AAP療法)にエンザルタミド(ENZ)を追加しても、全生存期間(OS)の改善はみられなかった。STAMPEDEプラットホームプロトコールの2つの無作為化第III相試験(AAP試験、AAP+ENZ試験)のメタ解析結果として、英国London's Global UniversityのGerhardt Attard氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO2022)で報告した。・対象:ADTによる標準治療を行うmHSPC患者・試験群: - ADT+AAP(アビラテロン1,000mg 1日1回+プレドニゾロン5mg 1日1回) [AAP試験 501例] - ADT+AAP+ENZ(160mg 1日1回)[AAP+ENZ試験 462例]・対照群:ADTのみ[AAP試験 502例、AAP+ENZ試験 454例]・主要評価項目:OS 主な結果は以下のとおり。・2011〜14年に1,003例の患者がAAPに(AAP試験)、2014〜16年に916例がAAP+ENZに無作為化された(AAP+ENZ試験)。・95.8ヵ月の追跡期間中央値において、ADT+AAPは対照群に対して有意にOSを改善していた(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.53〜0.73、p=1.6×10-9)。・71.7ヵ月の追跡期間中央値において、ADT+AAP+ENZは対照群に対して有意にOSを改善していた(HR:0.65、95%CI:0.55〜0.77、p=1.4×10-6)。・AAP試験とAAP+ENZ試験の治療効果に関する相互作用のHRは1.05(95%CI:0.83〜1.32、p=0.71)であり、試験間に差は認められなかった(I2 p=0.7)。・無増悪生存期間(PFS)についても両試験間の差は示されなかった。・倦怠感や高血圧などの有害事象、Grade3/4の有害事象については、対照群、ADT+AAP、ADT+AAP+ENZの順で発現頻度が高い傾向があった。 以上の結果からAttard氏は、「mHSPC患者に対して、APPにENZを組み合わせてもOSの改善はみられなかった。一方で、ADPにAPPを追加することでOSの改善効果は7年間維持することが確認された」とまとめた。

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NSCLC1次治療、sintilimab+anlotinibの有用性(SUNRISE)/ESMO2022

 転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次療法として、抗PD-1抗体薬sintilimabとマルチチロシンキナーゼ阻害薬anlotinibとの併用療法はプラチナ化学療法に比べて奏効率(ORR)や無増悪生存期間(PFS)を改善する可能性が示された。オープンラベル多施設共同無作為化第II相試験として実施されたSUNRISE試験の中間解析の結果として、中国上海交通大学のBaohui Han氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2022)で報告した。・対象: 未治療のドライバー変異陰性StageIV NSCLC患者・試験群:sintilimab 200mg(day1)+anlotinib 10mg(day1~14)3週ごと(43例)・対照群:プラチナダブレット化学療法3週ごと4~6サイクル(46例)・評価項目:[主要評価項目]ORR[副次評価項目]奏効期間(DoR)、PFS、全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・カットオフ時(2022年7月15日)の追跡期間中央値は13.1ヵ月であった。・ORRは試験群50%、対照群32.6%であった。・DoR中央値は、試験群16.3ヵ月、対照群6.2ヵ月であった。・PFS中央値は、試験群10.8ヵ月、対照群で5.7ヵ月であり、試験群は対照群に対して有意な改善を示していた(ハザード比:0.42、95%信頼区間:0.25〜0.74、p=0.002)。・Grade3/4の治療関連有害事象は、試験群で11.6%、対照群で43.5%に発現した。・試験群で発現頻度が多かった有害事象は甲状腺機能低下症、低ナトリウム血症、AST上昇で、試験中止は2例、有害事象で死亡は1例であった。 以上の結果を受け、Han氏は「今回の事前に計画された中間解析から、未治療のNSCLCの1次治療として、sintilimabとanlotinibの併用療法は有用な選択肢となる可能性がある」とまとめた。

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デュルバルマブ+化学療法、進行胆道がんに米国で承認/アストラゼネカ

 アストラゼネカは2022年9月12日、局所進行または転移のある胆道がん(BTC)の成人患者の治療薬として、デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)と化学療法(ゲムシタビン+シスプラチン)との併用療法が、米国で承認されたことを発表した。 米国食品医薬品局(FDA)による今回の承認は、転移のあるBTC患者685例を対象とした、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照国際多施設共同試験TOPAZ-1の結果に基づいている。 TOPAZ-1試験の中間解析では、デュルバルマブと化学療法の併用により、化学療法単独と比べて死亡リスクが20%低下することが示された(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.66〜0.97、p=0.021)。治療開始から2年後の生存率は、デュルバルマブと化学療法の併用療法で25%、化学療法単独で10%と推定された。結果は、PD-L1の発現状況や腫瘍の原発部位にかかわらず、事前に規定されたすべてのサブグループで一致していた。 米国では毎年約2万3千人がBTCと診断されている。BTCの患者の予後は不良で、5年生存率は約5〜15%である。

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4種類の血糖降下薬、メトホルミン併用時のHbA1c値への効果に差は?/NEJM

 2型糖尿病患者では、糖化ヘモグロビン(HbA1c)の目標値を維持するために、メトホルミンに加えいくつかの種類の血糖降下薬が投与されるが、その相対的有効性は明らかにされていない。米国・マサチューセッツ総合病院のDavid M. Nathan氏らGRADE Study Research Groupは、「GRADE研究」において、4種類の血糖降下薬の効果を比較し、これらの薬剤はいずれもメトホルミンとの併用でHbA1c値を低下させたが、その目標値の達成と維持においては、グラルギンとリラグルチドが他の2剤よりもわずかながら有意に有効性が高いことを確認した。研究の成果は、NEJM誌2022年9月22日号で報告された。米国の無作為化並行群間比較試験 GRADE研究は、2型糖尿病患者の治療における4種類の血糖降下薬の相対的有効性の評価を目的とする無作為化並行群間比較試験であり、2013年7月~2017年8月の期間に、米国の36施設で参加者の登録が行われた(米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所[NIDDK]などの助成を受けた)。 対象は、2型糖尿病の診断時の年齢が30歳以上(アメリカインディアンとアラスカ先住民は20歳以上)、糖尿病の罹病期間が10年以内で、500mg/日以上のメトホルミンによる治療を受けており、過去6ヵ月間に他の血糖降下薬を使用しておらず、HbA1c値が6.8~8.5%の患者であった。 被験者は、インスリン グラルギンU-100(以下、グラルギン)、スルホニル尿素薬グリメピリド、GLP-1受容体作動薬リラグルチド、DPP-4阻害薬シタグリプチンを投与する群に無作為に割り付けられた。全例がメトホルミンの投与を継続した。 代謝に関する主要アウトカムは、HbA1c値≧7.0%とされ、年4回の測定が行われた。代謝に関する副次アウトカムは、HbA1c値>7.5%であった。体重減少はリラグルチドで最も大きい 5,047例が登録され、グラルギン群に1,263例、グリメピリド群に1,254例、リラグルチド群に1,262例、シタグリプチン群に1,268例が割り付けられた。ベースラインの全体の平均(±SD)年齢は57.2±10.0歳、41.5%が60歳以上で、10ヵ所の退役軍人省医療センターの参加を反映して63.6%が男性であり、白人が65.7%、黒人が19.8%、ヒスパニック/ラテン系が18.6%含まれた。 それぞれの平均値は、糖尿病の罹病期間4.2±2.7年、メトホルミンの1日投与量1,994±205mg、BMI 34.3±6.8、HbA1c値7.5±0.5%であった。平均追跡期間は5.0年であり、85.8%が4年以上の追跡を受けた。 HbA1c値≧7.0%の累積発生割合には、4つの治療群で有意な差が認められた(全体的な群間差の検定のp<0.001)。すなわち、100人年当たりグラルギン群が26.5、リラグルチド群は26.1とほぼ同様であり、これらはグリメピリド群の30.4、シタグリプチン群の38.1に比べて低かった。これは、HbA1c値<7.0%の期間が、シタグリプチンに比べグラルギンとリラグルチドで約半年間長くなることを意味する。 また、HbA1c値>7.5%の発生割合に関しては、群間差に主要アウトカムと同様の傾向がみられ、100人年当たりグラルギン群が10.7、リラグルチド群は13.0であり、グリメピリド群の14.8、シタグリプチン群の17.5よりも低かった。 事前に規定された性別、年齢、人種/民族別のサブグループでは、主要アウトカムに関して4つの治療群で実質的な差はみられなかった。一方、ベースラインのHbA1c値が高かった(7.8~8.5%)患者では、HbA1c値<7.0%の維持または達成において、シタグリプチン群は他の3剤と比較して効果が低かった。 重症低血糖はまれだったが、グリメピリド群(2.2%)は、グラルギン群(1.3%、p=0.02)、リラグルチド群(1.0%、p≦0.001)、シタグリプチン群(0.7%、p≦0.001)に比べ有意に高頻度であった。消化器系の副作用の頻度は、リラグルチド群(43.7%)が他の治療群(グラルギン群35.7%、グリメピリド群33.7%、シタグリプチン群34.3%)に比べて高かった。また、4年間の平均体重減少はリラグルチド群(3.5kg減)とシタグリプチン群(2.0kg減)が、グラルギン群(0.61kg減)とグリメピリド群(0.73kg減)よりも大きかった。 著者は、「本試験で得られた重要な示唆は、たとえすべての治療が無料で提供される臨床試験であっても、HbA1cの目標値の維持は困難なことである。このデータは、2型糖尿病患者における長期的な血糖コントロールの、より効果的な介入の必要性を強調するものである」と指摘し、「これらの知見は、メトホルミンへの追加の薬剤を選択する際に、医療者と患者の共有意思決定の基礎となるだろう」としている。

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男性乳がんの予後予測因子

 毎年診断される乳がんのうち、男性が0.5~1%を占めている。今回、男性乳がんの予後予測因子について、米国・MedStar Georgetown University HospitalのOlutayo A. Sogunro氏らが後ろ向きチャートレビューを実施したところ、死亡リスクが高かったのは、高齢、糖尿病、心房細動、末期腎不全、PS 3、低分化腺がん、転移ありだった。なお、男性の乳がん患者では女性の乳がんと比べ、全生存率が低かった。Journal of Surgical Research誌オンライン版2022年9月28日号に掲載。 本研究は、2010~21年における男性乳がんの後ろ向きチャートレビューで、人口統計、併存疾患、がんの特性、再発、死亡を収集した。Cox比例ハザード回帰モデルを使用して予後因子を決定し、カプランマイヤー曲線を用いて生存率を評価した。 主な結果は以下のとおり。・男性乳がん患者47例が特定された。受診時の平均年齢は64.1歳、アフリカ系米国人28例(59.6%)、白人が14例(29.8%)だった。・大多数(89.4%)が浸潤性乳管がんで、T1が40.4%、T2が38.3%だった。3例(6.4%)が再発、8例(17%)が死亡した。・エンドポイントとして死亡率を用いると、死亡リスクが高かったのは、76.1歳以上(ハザード比:1.13、p=0.004)、糖尿病(同:5.45、p=0.023)、心房細動(同:8.0、p=0.009)、末期腎不全(同:6.47、p=0.023)、ECOG PS 3(同:7.92、p=0.024)、低分化腺がん(同:7.21、p=0.033)、転移あり(HR:30.94、p=0.015)だった。・3年全生存率は79.2%だった。

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血管腫・血管奇形ガイドラインが5年ぶりに改訂

 第18回日本血管腫血管奇形学会学術集会(2022年9月16~17日)において、「血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン改訂について」(科研製薬共催)と題したセミナーが開催され、秋田班ガイドライン改訂統括委員長を務める新潟大学大学院小児外科学分野の木下 義晶氏が解説した。 今回のガイドラインは、第1版である「血管腫・血管奇形診療ガイドライン2013」、第2版である「血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017」に次いだ第3版となり、名称は「血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管奇形・リンパ管腫症診療ガイドライン2022」となる見込みという。本ガイドラインの作成は2020年から開始され、Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017に則して作成されている。 第2版では33個のクリニカルクエスチョン(CQ)が採用されていたが、本ガイドラインでは内容が拡充され38個のCQが採用される。そのうち、第2版から継続されたCQが20個、改訂されたCQが6個、第2版以前にはなく新たに設定されたCQが12個となる。約3分の1が新しいCQであり、とくに形成外科医により設定されたCQが多く増える見込みとなる。新しいCQの中には、リンパ管奇形に対する漢方薬の有効性に関する内容や乳児血管腫に対するプロプラノロールの使用時期に関する内容などが含まれる予定となる。また、前版からの大きな違いとして、一般向けのサマリーが各CQの解説文に追加され、患者にとってもわかりやすい言葉で記載され理解を促すことができるという。 現在はパブリックコメントの募集、ガイドラインの英文化を進めており、2022年中に公開が予定されている。

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日本人双極性障害外来患者への薬物治療に対する年齢や性別の影響~MUSUBI研究

 出産可能年齢の女性および高齢の双極性障害患者において、薬理学的治療に特別な注意を払う必要があるものの、現行のガイドラインでは明確に示されていない。とくに、出産可能年齢の女性双極性障害患者に対しては、薬物療法のリスクとベネフィットのバランスに懸念が高まる。獨協医科大学の川俣 安史氏らは、双極性障害外来患者への向精神薬処方に対する年齢および性別の影響について、調査を行った。その結果、若年女性に対するバルプロ酸とリチウムのリスクおよび安全性に関する情報が偏っている可能性が示唆され、これを修正するためのさらなる研究が求められることを報告した。また、高齢患者では、ラモトリギンよりもリチウムが処方されることが多く、高齢患者に対する薬物療法の選択においても、さらなる研究の必要性が示唆された。Annals of General Psychiatry誌2022年9月12日号の報告。 日本の精神科クリニックにおける双極性障害の多施設治療調査「MUSUBI研究」において、年齢、性別、薬物療法に関する詳細なデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・研究対象は、双極性障害外来患者3,106例。・39歳以下の若年女性に対して、バルプロ酸が25%に処方されていた。・すべての群と比較し、若年女性に対するバルプロ酸の処方頻度および1日の投与量に、有意な差は認められなかった。・バルプロ酸の処方頻度は、若年男性では有意に低く、中年男性ではより高かった。・リチウムの処方頻度は、若年女性で有意に低く、65歳以上の高齢男性および高齢女性でより高かった。・ラモトリギンの処方頻度は、若年男性および若年女性で有意に高く、高齢男性および高齢女性ではあまり高くなかった。・カルバマゼピンの処方頻度は、若年男性で有意に低く、高齢男性でより高かった。

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教育研修プログラムとして高く評価(解説:野間重孝氏)

 現在ヨード造影剤を用いた検査・治療手技は日常診療で欠かすことのできない存在となっている。その際問題になるのが造影剤による急性腎障害(CIN)であり、ヨード造影剤投与後72時間以内に血清クレアチニン値が前値より0.5mg/dL以上、または前値より25%以上上昇した場合と定義される。CINは院内発症の急性腎障害(AKI)の10~13%に及ぶと考えられ、多くのAKIが不可逆的であるのと同様にCINもその多くが不可逆的であり、その後の治療の大きな障壁となる。検査・治療に当たる医師は最大限の注意を払うことが求められ、裏付けとなる十分な知識・経験と技術が求められるところとなる。 本研究は非緊急冠動脈造影や経皮的冠動脈インターベンションを施行する心臓専門医に対して教育、造影剤投与量および血行力学的に誘導された輸液目標に対するコンピュータによる臨床的意志決定支援、監査とフィードバックを行い、介入前後の成績を比較検討したものである。この一連の報告は、研究というより教育・研修プログラムの効果判定とその報告と考えるべきで、その意味から今回の試みは成功だったと評価されると考えられる。 一連のプログラムの実施と評価にStepped Wedge Cluster Randomized Trial方式を用いたことは的を射ているといえる。この方法にはあまりなじみのない方が多いのではないかと思うので解説させていただくと、地域や施設などの1つのまとまり(この場合はある医師の集団)をクラスターとして、介入時期をランダム化し、介入時期をずらして全クラスターで介入を実施する試験デザインをいう。この方法では介入前後の比較はできるが非介入群vs.介入群の無作為比較はできないため、一般的な比較対照試験というより一種のコホート研究と考えるのが適当である。本試験で重要な点は患者を対象とした無作為試験を行うことなく、参加した全医師が指導プログラムを受講し、受講の効果に対する評価を受けたことである。こうした評価方法は私たちも何か重要な研修プログラムを組んで実施する場合、大いに参考にすべき事例だと考えられよう。 繰り返しになることを恐れずに述べると、本研究をCIN発症予防法の検証と捉える読み方は適当ではない。CINに対しては予防が重要であるが、さまざまな臨床研究が行われているものの、現時点での有効な予防法は、造影剤使用量を最小限にすることと、適切な輸液のみだからである。有効な治療薬は見いだされておらず、緊急の透析も効果がないことが知られている。そうした状況の中、検査・治療前の患者のリスクと病態の把握、造影剤使用時に中止すべき薬剤に対する注意などが重要であることは言うまでもない。 このような講習を受けて検査・治療に当たるアンジオグラファーは何を考えるだろうか。輸液量はチームの計画の問題であるが(パスで決められている場合が多い)、造影剤の使用量は一に掛かって施行医の技量と判断能力に掛かっていることに気付くはずである。それが実際の数字として目の前に提示されるのである。必ず新たな向上心が醸成されるはずである。こうしたプログラムに基づいて自覚を新たにした若手医師たちが育ってくれるとするならば、こんなに頼もしいことはない。本研究を教育・研修プログラムとその報告として高く評価するものである。

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潰瘍性大腸炎治療で経口投与可能なα4インテグリン阻害薬「カログラ錠120mg」【下平博士のDIノート】第107回

潰瘍性大腸炎治療で経口投与可能なα4インテグリン阻害薬「カログラ錠120mg」今回は、α4インテグリン阻害薬「カロテグラストメチル錠(商品名:カログラ錠120mg、製造販売元:EAファーマ)」を紹介します。本剤は、経口投与可能な潰瘍性大腸炎治療薬であり、新たな寛解導入療法の選択肢として期待されています。<効能・効果>中等症の潰瘍性大腸炎(5-アミノサリチル酸製剤による治療で効果不十分な場合に限る)の適応で、2022年5月25日に薬価収載され、5月30日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはカロテグラストメチルとして1回960mg(8錠)を1日3回、食後に経口投与します。8週間投与しても、臨床症状や内視鏡所見などによる改善効果が得られない場合は、本剤の継続の可否も含めて治療法を再考します。なお、本剤と同一の機序を有する他剤において、進行性多巣性白質脳症(PML)の発現が報告されています。発現リスクを低減するため、投与期間は6ヵ月までとし、6ヵ月以内に寛解に至った場合はその時点で投与を終了します。本剤による治療を再度行う場合は、投与終了から8週間以上の間隔を空けます。<安全性>第II相試験および第III相試験の併合解析において、臨床検査値異常を含む副作用は、本剤投与群259例中48例(18.5%)で報告されました。主な副作用は、上咽頭炎5例(1.9%)、白血球数増加(4例)、頭痛、血中乳酸脱水素酵素増加各3例(1.2%)、腹部不快感、肝機能異常、発疹、関節痛、発熱各2例(0.8%)などでした。なお、重大な副作用として、進行性多巣性白質脳症(頻度不明)が設定されています。本剤投与中または投与終了後に意識障害、認知障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、言語障害などの症状が現れた場合は、MRIによる画像診断および脳脊髄液検査を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行います。<患者さんへの指導例>1.本剤は、過剰な免疫反応を抑えて腸管の炎症を抑えることで、潰瘍性大腸炎の症状を改善します。2.感染症にかかりやすくなったり悪化したりする場合があります。発熱、寒気、体がだるいなどの症状が現れた場合はご連絡ください。3.痙攣、意識の低下、意識の消失、しゃべりにくい、物忘れをする、手足の麻痺などの症状が現れた場合はご連絡ください。<Shimo's eyes>潰瘍性大腸炎は慢性の炎症性疾患であり、炎症が生じて症状が現れる「活動期」と症状が治まっている「寛解期」を繰り返すため、長期に渡る薬物療法が必要です。活動期の寛解導入治療として、軽症~中等症では経口5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤が第1選択薬として広く使用されていて、効果不十分の場合は局所製剤(坐剤、注腸剤)の併用や経口ステロイド薬が用いられます。難治例では血球成分除去療法や免疫抑制薬、抗体製剤(抗TNFα抗体製剤、抗α4β7インテグリン抗体製剤、抗IL-12/23p40抗体製剤など)、あるいはヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬などが選択されます。本剤は、世界初の経口投与可能なα4インテグリン阻害薬であり、α4β1インテグリン、α4β7インテグリンの双方に作用し、大腸粘膜の病変部位に認められる炎症性細胞の過度な集積・浸潤を抑制することで、潰瘍性大腸炎の症状を抑えます。5-ASA製剤による適切な治療を行っても疾患に起因する明らかな臨床症状が残る中等症の患者に投与されます。活動期の炎症を抑える寛解導入療法に用いられる薬剤であり、再燃を防ぐ維持療法としては使用できないことに注意が必要です。なお、本剤と他の免疫抑制薬の併用について臨床試験は実施されていないので併用を避ける必要があります。既存のインテグリン阻害薬としては、中等症~重症患者に使用される抗α4β7インテグリン抗体製剤のベドリズマブ点滴静注用(商品名:エンタイビオ)があります。点滴を受けることが負担となっている患者にとって、本剤は大きなメリットがあると考えられます。服薬指導では、本剤はリンパ球の遊走を阻害するため、感染症に対する免疫能に影響を及ぼす可能性があるので、感染症の兆候が現れたらすぐに連絡するように伝えましょう。1回8錠を1日3回、つまり1日24錠を服用しなければならないので、アドヒアランス低下にも注意が必要です。

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英語で「母乳と粉ミルク」は?【1分★医療英語】第48回

第48回 英語で「母乳と粉ミルク」は?How much do you breastfeed and formula feed?(母乳と人工乳の量はどのような感じですか?)Recently, I give my baby formula only.(最近は粉ミルクしか飲ませていません)《例文》医師Do you have any trouble breastfeeding?(何か母乳のトラブルなどの心配はありますか?)患者I feel like I do not produce enough breastmilk.(母乳の量が少ないような気がします)《解説》今回は小児患者さんにおける特有の表現をお伝えします。「母乳」と「人工乳(粉ミルク)」をそれぞれ“breastmilk”、“formula”というのですが、母乳、粉ミルクを与える行為のこと(母乳栄養/人工乳栄養)のことはそれぞれ“breastfeeding”、“formula feeding”と表現します。“breastfeeding”は一語ですが、“formula feeding”はなぜか2語です。“formula feeding”はほかにも“bottle-feeding”という言い方もあり、これは文字の通り「哺乳瓶」での“feeding”であり、「粉ミルクを与える行為一般」を指します。こちらに関してはなぜか“bottle”と“feeding”の間にハイフンを入れるのが一般的です(表記がそれぞれ違って混乱しますが、あまり気にしなくて大丈夫です)。“formula”という言葉はあまり日本人には馴染みがないので、とっさに言葉が出てこない際は“bottle-feeding”を使えば、問題なく患者さんに理解してもらえるかと思います。関連する用語として「授乳」は“lactation”で表現でき、《例文》 の「授乳に関して心配事はありますか?」であれば、“Do you have any concerns about breastfeeding / lactating?”と、両方の言い方が可能です。ちなみに米国では、一般に飲み物の量は“oz”(ounce)で表現します。日本で一般的な“ml”(milliliter)はあまり使われません。患者さんも“My baby drinks 3oz of formula every 2-3 hours.”「私の娘/息子は2~3時間ごとに粉ミルクを3オンス飲みます」といった言い方をしますので、“ml”に慣れている私は変換に困ることがよくあります。1ozはほぼ30mlですので、私はいつも頭の中で変換しながら会話しています。医療者の間では、輸液量の単位などでmlを使うので問題ありません。赤ちゃんのミルクに関する表現だけでも、さまざまなバリエーションがあって奥深いですね。講師紹介

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10月4日 徒歩の日【今日は何の日?】

【10月4日 徒歩の日】〔由来〕徒歩の語呂合わせから日常生活で歩く習慣をつけ、健康になることを目的に宮崎県宮崎市の「徒歩を楽しむ会」(代表・貞原信義氏)が2004年に制定。関連コンテンツ歩行しづらいときの症状チェック【患者説明用スライド】原因不明の足の痛み、プライマリでPADを疑うポイントは?おすすめの運動は何ですか?【患者説明用スライド】高齢女性、1日4,400歩でも死亡率低下、強度は関連せず認知症予防に歩行時間が大きく寄与~日本人1万4千人のデータ

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第132回 エーザイのアルツハイマー病薬の第III相試験成功

エーザイのアルツハイマー病薬lecanemab(レカネマブ)が第III相試験(Clarity AD)で有望な認知機能低下抑制効果を示し、試験の主要目標やその他の副次目標一揃いを達成しました1,2)。lecanemabはアルツハイマー病の特徴として知られる脳のアミロイドβ(Aβ)病理の解消を目指すモノクローナル抗体です。-0.45点の意義Clarity AD という名称の同試験は2019年3月に始まり3)、早期アルツハイマー病患者1,795人が参加しています。lecanemabは2週間に1回静注され、18ヵ月時点の主要評価項目・CDR-SB点数上昇(悪化)をプラセボに比べて有意に抑制しました。CDR-SBは数ある認知症検査の1つで、もともとはアルツハイマー病の初めの病状を把握する検査として使われていましたが、10年ほど前の米国FDA方針以降臨床試験の転帰として受け入れられるようになっています4)。医師は患者自身、その介護者、家族からの情報や記憶や問題解決能力などの患者向け検査結果に基づいてCDR-SBの点数を計算します。CDR-SBの点数の幅は0~18点で、点数が高いほど病状が悪いことを意味します。そのCDR-SB得点の上昇をプラセボに比べて差し引きで0.45点、率にして27%減少させたことをエーザイは有意義(clinically meaningful)な結果であるとみなしました3)。一方、University College Londonの精神科医Rob Howard氏に言わせるとその差は小さすぎてプラセボとほとんど見分けが付きません5)。以前に同氏等は患者の日常に有意義な結果とみなすにはプラセボと少なくとも0.5かそれ以上の差が必要と主張していました5,6)。また、lecanemabが今回の第III相試験で示した認知機能低下の抑制を患者やその家族がどれほど実感したかはまだ判断不可能であり6)、そのためにはさらに情報が必要です。今後の追加情報はさておき、アナリストが成功水準とした率にして20~25%以上の対プラセボCDR-SB上昇抑制を上回る27%抑制をlecanemabは達成していますし、同剤が米国FDA承認を逃すというのはおよそありえなさそうです4)。影の立役者・北方の変異他のAβ標的抗体が軒並み難抗する中でlecanemabが大一番の第III相試験の成功にとうとう漕ぎ着けたのはなぜか? それは遡ること20年以上前に発表されたAβ前駆タンパク質変異の発見がだいぶ貢献しているようです。北方の(Arctic)国スウェーデンの人から見つかったその変異はアークティック変異(E693G)と呼ばれ、Aβのアミノ酸配列の22番目を変える変異であり、Aβ凝集(Aβプロトフィブリル)形成を促してアルツハイマー病を誘発します7)。Aβプロトフィブリルを除去するlecanemabは他でもないそのアークティック変異の発見者であるLars Lannfelt氏等が設立したスウェーデン拠点のBioArctic社とエーザイの共同研究によって誕生しました。lecanemabが認識するAβアミノ酸配列(エピトープ)は最初から16番目と、プロトフィブリルを形成したときの21~29番目領域です。その性質ゆえlecanemabは神経にどうやら有毒らしい可溶性Aβプロトフィブリルをより容易に優先して認識します3)。ライバルの足音lecanemabはClarity AD試験結果を含まない第II相試験結果を拠り所に取り急ぎの承認申請(Accelerated Approval)が米国FDAに提出されており、その審査結果は来年2023年1月6日までに判明します。取り急ぎではない不動の承認(traditional/full approval)を目指す申請も来年3月31日までになされる予定です。来月11月29日にはClarity AD試験結果の詳細がアルツハイマー病臨床試験会議(CTAD:Clinical Trials on Alzheimer‘s Disease)で発表されます。その会議ではRoche(ロシュ)の抗Aβ抗体gantenerumab(ガンテネルマブ)の第III相試験結果も発表され、さらに来年2023年中にはEli Lilly(イーライ・リリー)の抗Aβ抗体donanemabの大一番(ピボタル)試験結果も明らかになる見込みです4)。興味深いことに、lecanemabと同様にロシュのgantenerumabもアークティック変異を反映するAβアミノ酸22番目を含む領域を認識します。ただしlecanemabがAβプロトフィブリルに特異的なのに比べてgantenerumabはより非特異的であり、Aβ単量体にもより結合します8)。lecanemabの課題Clarity AD試験の被験者選択基準の1つは脳にアミロイド病変があることであり、その確認にはたいていPET撮影を必要とします。そういう画像診断の要件は同剤普及の足かせになるかもしれません4)。lecanemabの用法である隔週での静注も使用を諦める理由になるかもしれませんが、エーザイは投与がより容易なその皮下注射の臨床試験をすでに始めています1,2)。参考1)抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体「レカネマブ」について、1,795人の早期アルツハイマー病当事者様を対象としたグローバル大規模臨床第III相CLARITY AD検証試験において、統計学的に高度に有意な臨床症状の悪化抑制を示し、主要評価項目を達成 / エーザイ2)LECANEMAB CONFIRMATORY PHASE 3 CLARITY AD STUDY MET PRIMARY ENDPOINT, SHOWING HIGHLY STATISTICALLY SIGNIFICANT REDUCTION OF CLINICAL DECLINE IN LARGE GLOBAL CLINICAL STUDY OF 1,795 PARTICIPANTS WITH EARLY ALZHEIMER'S DISEASE / PRNewswire3)Topline Results of Clarity AD Conference for Media and Investors / Eisai4)Lecanemab can; now the wait for details begins / Evaluate5)Alzheimer’s drug slows mental decline in trial - but is it a breakthrough? / Nature6)Alzheimer’s drug results are promising - but not a major breakthrough / NewScientist7)Nilsberth C, et al. Nat Neurosci. 2001;4:887-93. 8)Science of the amyloid-b cascade and distinct mechanisms of action of lecanemab / BioArctic

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腎細胞がんへのアテゾリズマブ術後補助療法の成績(IMmotion010)/ESMO2022

 腎細胞がん(RCC)に対するアテゾリズマブの術後療法の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で英国・The Royal Free London NHS Foundation TrustのAxel Bex氏から発表された。 これは、日本も参加した国際共同のプラセボ対照第III相のIMmotion010試験の結果である。・対象:完全切除術を受けた中間/高リスクの腎細胞がん・試験群:アテゾリズマブ1,200mg/日(Atz群:390例)・対照群:プラセボ(Pla群:388例)両群共に3週ごと16サイクルまたは1年間投与・評価項目[主要評価項目]主治医判定による無病生存期間(DFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、PD-L1状況別のDFS、無イベント生存期間(EFS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・対象は、T2 Grade4、T3a Grade3/4、T3b/c、T4、TXN+、M1などの再発リスクが中間以上の症例であった。淡明細胞型RCCで肉腫成分ありも対象であった。・症例背景に偏りはなく、PS0が約80%、T2/3aが64%、M1が14%で、PD-L1発現あり(IC1/2/3)が、60%であった。・データカットオフ(2022年5月)時の観察期間中央値は44.7ヵ月であった。・DFS中央値は、Atz群で57.2ヵ月、Pla群で49.5ヵ月、ハザード比(HR)は0.93(95%信頼区間[CI]:0.75~1.15)、p=0.4950と、両群間に有意差は認められなかった。24ヵ月DFS率は67%と65%だった。・事前に規定されたサブグループの解析では、女性と肉腫成分ありグループではAtz群が良好であった。・OS中央値は、両群共に未到達でHRは0.97(95%CI:0.67~1.42)であった。・PD-L1の発現状況別にDFSを検討したところ、IC0(免疫細胞における染色性が1%未満)ではHRが1.09(95%CI:0.77~1.53)、IC1(染色性1~5%)ではHRが0.92(95%CI:0.68~1.25)、IC2/3(染色性5%以上)ではHRが0.57(95%CI:0.29~1.15)と、発現が強いほどAtz群の効果は良好な傾向であった。・Atz群の主な有害事象はすべて既知のものであり、関節痛、皮膚障害、甲状腺機能低下、発熱などであった。治療関連のGrade3以上の有害事象はAtz群で14.1%にPla群で4.7%に発現し、有害事象による治療中止はAtz群で11.5%、Pla群で2.6%であった。両群共に治療関連死はなかった。

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コロナ2価ワクチンの安全性と免疫原性、1価と比較~第II/III相試験/NEJM

 オミクロン株対応2価ワクチン「mRNA-1273.214」(モデルナ製)は、単価ワクチンmRNA-1273よりオミクロン株に対する中和抗体反応が優れており、安全性に関する懸念は認められなかったことを、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のSpyros Chalkias氏らが、現在進行中の第II/III相試験の中間解析の結果、報告した。オミクロン株対応2価ワクチンmRNA-1273.214の追加接種の安全性および免疫原性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2022年9月16日号掲載の報告。3回接種済み成人約800例に、2価または単価ワクチンを追加接種 研究グループは、単価ワクチンmRNA-1273(起源株Wuhan-Hu-1のスパイクタンパク質をコードするmRNA)を2回接種(100μg)し、1回目の追加接種(50μg)を3ヵ月以上前に受けた成人を対象に、50μgの2価ワクチンmRNA-1273.214(mRNA-1273を25μg、オミクロン株B.1.1.529[BA.1]のスパイクタンパク質をコードするmRNAを25μg)を接種する群(パートG)と、50μgの単価ワクチンmRNA-1273を接種する群(パートF)に順次登録し、2回目の追加接種を行い、接種後28日時点のmRNA-1273.214の安全性、反応原性、免疫原性を評価した。 2022年2月18日~3月8日(パートF)および2022年3月8日~23日(パートG)の期間に819例が登録され、パートFで377例がmRNA-1273ワクチンの追加接種を、パートGで437例がmRNA-1273.214ワクチンの追加接種を受けた。1回目と2回目の追加接種の間隔の中央値は、mRNA-1273群134日、mRNA-1273.214群136日で類似していた。2価ワクチンは単価ワクチンと比較してオミクロン株に対する中和抗体価が上昇 SARS-CoV-2感染歴がない被験者において、オミクロン株BA.1系統に対する中和抗体価の幾何平均値は、mRNA-1273.214群2,372.4(95%信頼区間[CI]:2,070.6~2,718.2)、mRNA-1273群で1,473.5(同:1,270.8~1,708.4)であった。 また、オミクロン株BA.4/5系統に対する中和抗体価の幾何平均値は、mRNA-1273.214群で727.4(同:632.8~836.1)、mRNA-1273群で492.1(同:431.1~561.9)であり、mRNA-1273.214群はこれまでに流行した複数の変異株(アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株)に対しても結合抗体価が上昇した。 安全性および反応原性は、両ワクチンで類似していた。 ワクチンの有効性は評価されなかったが、探索的解析において、SARS-CoV-2感染がmRNA-1273.214群で11例、mRNA-1273群で9例に認められた。

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心不全未発症者、睡眠時無呼吸や質低下が心拡張機能障害と関連/兵庫医大

 心不全未発症の段階において、睡眠時の無呼吸と質の低下がそれぞれ独立した左室拡張機能低下の重要な予測因子であることを、兵庫医科大学糖尿病内分泌・免疫内科学講座の大学院生の木俵 米一氏らの共同研究グループが前向き研究で解明した。これまで、心不全患者では睡眠に関する問題が多く、睡眠が心不全発症と関連する可能性が指摘されていたが、無呼吸、短時間、質の低下などの睡眠関連因子を定量的かつ同時に評価し、左室拡張機能障害の進行に対する影響を直接検討した研究は報告されていなかった。Journal of American Heart Association誌オンライン版2022年9月21日号掲載の報告。 対象は、同大学が実施する全学横断的プロジェクト研究事業「Hyogo Innovative Challenge(HIC)」の一環であるHyogo Sleep Cario-Autonomic Atherosclerosis (HSCAA)コホート研究に登録された患者のうち、心不全未発症の452例。平均34.7ヵ月(中央値25ヵ月)追跡を行い、睡眠時の無呼吸、睡眠の時間と質が心拡張機能障害の進行にどのように関連するのかを前向きに検討した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、452例中66例で心拡張機能低障害が進行した。・カプランマイヤー解析の結果、中~重症の睡眠時無呼吸を有する患者および睡眠中の体動が多く質が低下した患者では、これらの因子がない/軽度の患者に比べて将来の心拡張機能障害を来す割合が高かった(それぞれp<0.01)。・睡眠の時間については、心拡張機能との明らかな関連は認められなかった(p=0.27)。・これらの因子の影響を患者背景も含めて検討したCox比例ハザードモデルでは、中~重症の睡眠時無呼吸を有する患者(ハザード比[HR]:9.26、95%信頼区間[CI]:1.89~45.26、p<0.01)および質の低下した患者(同:1.85、同:1.01~3.39、p=0.04)は、将来の心拡張機能の低下と有意な関連を示しており、これらの関係は互いに独立していた。

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日本人高齢者の睡眠時間と認知症リスクとの関係~NISSINプロジェクト

 大阪公立大学の鵜川 重和氏らは、身体的および社会的に自立した日本人高齢者における毎日の睡眠時間と認知症発症リスク(高血圧、糖尿病、心血管疾患などの併存疾患の有無にかかわらず)との関連を調査するため、日本人の年齢別コホートを行った。その結果、日々の習慣的な睡眠時間は、将来の認知症発症リスクの予測因子であることが示唆された。Sleep Medicine誌オンライン版2022年9月3日号の報告。 64~65歳の日本人1,954人(男性:1,006人、女性:948人)を含むプロスペクティブコホート研究を実施した。1日の睡眠時間、症状、人口統計学的因子、ライフスタイル特性に関するデータは、ベースラインアンケート調査および健康診断調査(2000~05年)より収集した。認知症発症は、厚生労働省が提唱する全国標準化認知症尺度を用いて確認した。認知症発症のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、競合リスクモデルを用いた。死亡例も競合イベントとして扱った。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中央値は15.6年であり、その間に認知症を発症した人は260人であった。・併存疾患がなく、1日6~7.9時間の睡眠時間の人と比較し、認知症リスクが高かった人の特徴は以下のとおりであり、併存疾患と睡眠時間との間に有意な相関が認められた(いずれもp<0.001)。 ●1日の睡眠時間が6時間未満(HR:1.73、95%CI:1.04~2.88) ●併存疾患があり1日の睡眠時間が8時間未満(HR:1.98、95%CI:1.14~3.44) ●併存疾患があり1日の睡眠時間が8時間程度(HR:1.44、95%CI:1.03~2.00) ●併存疾患があり1日の睡眠時間が8時間以上(HR:2.09、95%CI:1.41~3.09)

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HIV感染と心血管疾患に関連はあるか/JAMA

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に関連した心血管疾患の有病率は増加しているが、そのメカニズムはまだ十分に理解されていないという。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのJonathan A. Hudson氏らは、HIV感染者と非感染者を高度な心血管画像法で比較した研究のデータを解析した。その結果、HIV感染者の画像ベースの心血管系病変に関する利用可能なデータの要約を提供することはできたものの、解析の対象となった研究は異質性が大きく、HIV感染率の高い低所得国のデータは含まれていないため、結果の解釈は限定的とならざるをえないことが示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年9月13日号に掲載された。感染の有無で心血管画像を比較した研究の系統的レビュー 研究グループは、HIV感染者と非感染者をCT冠動脈造影、心臓MR、PETを用いて比較検討した高度な心血管画像研究について系統的なレビューを行った(英国心臓財団の助成を受けた)。 3つのデータベース(MEDLINE、EMBASE、Global Health)とGoogle Scholarを用い、開設時から2022年2月11日までに発表された論文が検索された。「computed tomographic coronary angiography」「cardiac MR」「PET」「HIV」を検索語とし、これらの画像法で心血管の病理所見を評価した研究が対象となった。 主要アウトカムは、CT冠動脈造影で描出された中等度~重度(≧50%)の冠動脈狭窄、ガドリニウム遅延造影による心臓MRで描出された心筋線維症、PETによる血管と心筋の放射能濃度比とされた。ほとんどが北米と欧州の研究 45の論文が解析の対象となった。HIV感染者5,218例(平均年齢48.5歳)と非感染者2,414例(49.1歳)が解析に含まれた。16試験(5,107例)はCT冠動脈造影による評価を、16試験(1,698例)は心臓MR、10試験(681例)は血管PET、3試験(146例)はCT冠動脈造影と血管PETの双方による検討を行っていた。 45の研究のうち38件は高所得国(49%が米国)、7件は高中所得国で行われたもので、低所得国で実施された研究はなかった。横断研究が85%、前向きコホート研究が13%、無作為化臨床試験が2%だった。バイアスのリスクは、22%が低、47%が中、31%は高に分類された。 中等度~重度の冠動脈疾患の有病率の範囲は、HIV感染者が0~52%、非感染者は0~27%で、有病率比の範囲は0.33(95%信頼区間[CI]:0.01~15.90)~5.19(同:1.26~21.42)であった。この統合解析では、中等度の統計学的異質性(I2=62%、p=0.05)が認められた。 心筋線維症の有病率の範囲は、HIV感染者が5~84%、非感染者は0~68%で、有病率比の範囲は1.01(同:0.85~1.21)~17.35(同:1.10~274.28)であった。この統合解析では、高度の統計学的異質性(I2=88%、p<0.005)がみられた。 また、PETによる血管の放射能濃度比の、HIV感染者と非感染者の差の範囲は、0.06(同: 0.01~0.11)~0.37(同:0.02~0.72)だった。この統合解析では、中等度の異質性(I2=64%、p=0.07)が観察された。 著者は、「この研究により、HIV感染者における高度な心血管画像研究のほとんどが北米と欧州のHIV集団(世界のHIV感染者の6%にすぎない)を対象としていることが示され、サハラ以南のアフリカなどの感染率の高い地域のHIV集団への、得られた知見の一般化には限界があることが明らかとなった」としている。

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第118回 介護保険制度持続のため、負担と給付の見直しの議論開始

<先週の動き>1.介護保険制度持続のため、負担と給付の見直しの議論開始/厚労省2.医療人材確保のためにも働き方改革とデジタル化推進を/厚労省3.画期的な医薬品の早期の導入のために新しい薬価算定方式を/厚労省有識者会議4.かかりつけ医機能について議論開始/社会保障審議会5.大麻成分を含む医薬品の国内使用可能へ/厚労省6.イベルメクチン、コロナウイルス治療に有効性見出せず/興和1.介護保険制度持続のため、負担と給付の見直しの議論開始/厚労省厚生労働省は社会保障審議会介護保険部会を9月26日に開催し、介護保険制度における給付と負担についての本格的な議論に着手した。今年の6月に閣議決定された「骨太方針2022」には、持続可能な社会保障制度の構築するため、給付と負担のバランスの確保や、能力に応じた負担の在り方の検討などといった文言が盛り込まれており、介護保険サービスの利用者負担を原則2割とすることや、現役世代並み所得(3割負担)の判断基準の見直しを含んだ議論を行い、今年の12月までに取りまとめを行い、2024年の医療・介護報酬改定までに介護保険制度の改正を行う方針。(参考)給付と負担に関する指摘事項について(厚労省)「給付と負担」検討開始、介護保険部会 次期制度改正見据え(CB news)介護「給付と負担」見直し着手 2割負担の拡大など論点(日経新聞)2.医療人材確保のためにも働き方改革とデジタル化推進を/厚労省厚生労働省は9月30日に「医療介護総合確保促進会議」を開催した。2024年度から新たに第8次医療計画や介護保険事業計画が始まるのに合わせて、今後、団塊の世代が後期高齢者となり働き手が減少していく日本の人口構造の変化に対応して、地域医療構想の実現に向け、人材確保と構造改革のためには、医療のデジタル化の促進を行うことが求められる。年度内に総合確保方針の改正案をまとめ、2024年度の医療計画の策定などに向けて具体化を進める。(参考)第17回医療介護総合確保促進会議(厚労省)3.画期的な医薬品の早期の導入のために新しい薬価算定方式を/厚労省有識者会議厚生労働省は、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」を9月29日に開催した。この中で、物価高で不採算品目への配慮を求める意見が出されたほか、既存の医薬品では治療困難な領域の疾患に対して新たな治療手段を提供する革新的な医薬品や医療ニーズの高い医薬品の日本への早期導入を進めるためにも、欧米と比較して、日本の薬価が低く抑えられている現状を見直すために、イノベーションを評価できる新算定方式の導入を求める意見が再生医療イノベーションフォーラムから出された。(参考)有識者検討会 物価高で不採算品目への配慮求める声相次ぐ 日薬連、GE薬協に次いで卸連も(ミクスオンライン)医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会 資料(厚労省)4.かかりつけ医機能について議論開始/社会保障審議会厚生労働省は、9月29日に社会保障審議会の医療部会を開催した。これまで「第8次医療計画等に関する検討会」において、かかりつけ医機能の定義やかかりつけ医機能を発揮させるための具体的な仕組みなどについて、議論をしてきたが影響が大きいため、上位会議体である「社会保障審議会・医療部会」での話し合いを行うことになった。2024年に第8次医療計画が始まるのに合わせ、初回はフリートークで行われたが、財務省が検討を求めているかかりつけ医の登録制や、英国で採用されている「人頭払い」の導入には日本医師会などの委員が反対し、賛成意見はでなかったが、今後の動きに注目したい。(参考)第91回社会保障審議会医療部会「かかりつけ医機能について」(厚労省)「かかりつけ医機能」制度整備、法改正視野 社保審医療部会でも議論開始(CB news)かかりつけ医機能は医療部会で議論!「全国の医療機関での診療情報共有」でかかりつけ医は不要になるとの意見も-社保審・医療部会(Gem Med)5.大麻成分を含む医薬品の国内使用可能へ/厚労省厚生労働省は9月29日に厚生科学審議会の大麻規制検討小委員会を開催し、大麻取締法の改正に向けた方向性について取りまとめた。大麻所持者の検挙の増加などを踏まえ、これまでは罰則規定のなかった「使用罪」を新設するほか、医療用に大麻由来のカンナビジオールを含む難治性てんかんの治療薬の使用を解禁する方針を確認した。近年、日本を除く先進主要国では承認されており、現在国内でも臨床試験を実施している。(参考)第4回厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制検討小委員会大麻成分含む医薬品、国内使用に向け取締法改正へ 厚労省(産経新聞)大麻「使用罪」を新設=医療用解禁へ-取締法改正で骨子案・厚労省専門委(時事通信)6.イベルメクチン、コロナウイルス治療に有効性見出せず/興和興和株式会社は、9月26日、東京都内で記者会見を開き、軽症の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症を対象疾患として、抗寄生虫薬「イベルメクチン」の第III相臨床試験を進めていたが、今回の臨床試験の結果、主要評価項目において、統計的有意差が認めらず、開発を中止することを発表した。2021年7月から治験開始を発表、同年11月から今年の8月にかけ、日本とタイにおいて軽症患者1,030人を対象に二重盲検試験で実施していたが、投与開始4日前後で、37.5度以上の発熱や咽頭痛、筋肉痛などの症状は軽くなったが、統計的に有意差は認められなかった。一方、死亡例はなく、重症化例もほとんど認められず、安全性には問題はなかった。(参考)イベルメクチン「有効性見いだせず」 コロナ治療薬の臨床試験(朝日新聞)イベルメクチン コロナ治療薬の承認申請を断念 有効性見られず(NHK)興和 新型コロナウイルス感染症患者を対象とした「K-237」(イベルメクチン)の第III相臨床試験結果に関するお知らせ

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