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出産後の母親へのオピオイド処方、乳児の短期有害アウトカムに関連なし/BMJ

 カナダ・サニーブルック保健科学センターのJonathan S. Zipursky氏らは、出産後の母親へのオピオイド処方が、児の有害アウトカムの短期的リスクを増加させるかどうかを検討する住民ベースコホート研究を行い、両者間に関連はないことを明らかにした。北米では、ほとんどの母親が出産後に母乳で育児を開始する。乳児の呼吸器系または中枢神経系の抑制を引き起こすと予想されない量ではあるが、すべてのオピオイドは母乳へ移行する。母乳で育てられた乳児のオピオイド毒性に関する報告が散見されているが、母乳中のオピオイドを大量摂取したためと考えられていた。BMJ誌2023年3月15日号掲載の報告。出産後7日以内のオピオイド処方と乳児の30日以内有害アウトカムを検討 研究グループは、ICES MOMBABY(カナダ・オンタリオ州の全出生児とその母親の98%以上を特定可能)、Narcotics Monitoring Systemなどの各種データベースを用い、2012年9月1日~2020年3月31日の期間にオンタリオ州の病院で出産し7日以内に生存退院した母子86万5,691組を特定し、退院後7日以内にオピオイドが処方された母親とその児(処方群)、ならびに処方群の母親と年齢、出産年、分娩様式などを傾向スコアマッチング法で適合させた、オピオイドが処方されなかった母親とその児(非処方群)について解析した。 主要アウトカムは、指標日(オピオイド処方群は処方日、非処方群は処方群とマッチさせた模擬的な日付)から30日以内の乳児の入院、副次アウトカムは同期間の乳児の救急外来受診、すべての外傷による入院、新生児集中治療室(ICU)への入室、蘇生または呼吸補助を伴う入院、全死因死亡とした。解析には、Cox比例ハザード回帰モデルを使用した。死亡を含む有害アウトカムに有意差なし オピオイド処方群8万5,675例(オピオイドを処方された母親8万5,852例の99.8%)と、非処方群8万5,675例が解析対象となった。 30日以内に入院した乳児は、オピオイド処方群で2,962例(3.5%)、非処方群で3,038例(3.5%)であり、オピオイド処方群の乳児は非処方群の乳児と比較して指標日から30日以内に入院する可能性は高くなかった(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.93~1.03)。 指標日から30日以内の救急外来受診は、オピオイド処方群9,053例(10.6%)、非処方群8,714例(10.2%)で、オピオイド処方群がやや高かったが(HR:1.04、95%CI:1.01~1.08)、その他の乳児の有害アウトカムに差は確認されず、また、乳児死亡は報告されなかった。 結果を踏まえて著者は、「特定の母親への出産後の短期オピオイド使用に注意を払うことを支持するが、臨床医と両親は不安を抱く必要はなく、乳児への有害リスクは低い」と述べている。

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ChatGPTは英会話の練習に使えるか?【Dr. 中島の 新・徒然草】(469)

四百六十九の段 ChatGPTは英会話の練習に使えるか?ふと思いついて、対話型AI(人工知能)であるChatGPTに英会話練習のお相手をしてもらいました。結果から言うと、かなりうまくいきました。英会話力というのは、人によってさまざまだと思います。私自身は、言いたいことが出て来ず、「うーん、うーん」と苦しむことが多々あります。本来なら人を相手に会話練習を重ねるべきですが、なかなか時間が取れません。で、PCの画面とキーボードを使ってChatGPTと対話してみたのです。つまり「話す聴く」の代わりに「書く読む」で英会話上達を図ったらどうなるのか?それが今回のテーマです。聞くところによると、洋画字幕翻訳家の戸田 奈津子さんは英会話上達法を尋ねられて、「とにかく書くこと」という趣旨のことをおっしゃっていたとか。また今上天皇も英国留学中に日記を毎日書くことによって、英会話上達を図ったということを、著書『テムズとともに』の中で述べておられます。日本人は読み書きが得意なので、外国語を学ぶときに「書く」ということを手掛かりにするのが良いのかもしれません。で、ChatGPTとの英語のやりとり、以下、日本語訳を紹介します。中島「どこで生まれたわけ?」ChatGPT「私はAIなので出生地というものは存在しません。ただ、私を開発したOpenAI社は米国のサンフランシスコにあります」なるほど、なるほど。中島「ということは日本語よりも英語を使うほうが快適なのかな?」ChatGPT「私は多言語に対応しています。しかし、英語での開発が最も進んでいるので、ほかの言語よりも正確でわかりやすい表現ができるかもしれません」正しくしゃべろうとしているせいか、やや回りくどいですな。中島「英語の能力向上のためにチャットに付き合ってくれないかな」ChatGPT「喜んでお手伝いいたします。何か取り上げたいトピックスはありますか?」来た、来た、来たーっ!やはり聴くより読むほうが簡単だし、話すよりも書くほうが楽です。瞬発力が要らないせいでしょうね。中島「幸せについて議論しようか」ChatGPT「それは興味深いテーマですね。幸せの何について議論したいですか?」中島「どうすれば幸せになれるか、かな。一般的には金持ちになればなるほど幸せになれると思われがちだけど、不幸な金持ちもたくさんいるしね」ChatGPT「それは素晴らしい指摘です。確かに経済的安定性や物質的所有は重要な要素ではありますが……」以下、ChatGPTは幸せについての持論を延々と述べ始めました。やはり長い英文を読むのは苦痛ですね。なので、「以後、40ワード以下で答えてくれ」と指示しました。すると、「大変失礼しました。では要点だけ回答します」と簡潔に答えてくれます。でも、それは最初だけで、すぐに長い答えになりがち。この点は我慢するしかなさそうです。とはいえ、ChatGPTを使った英会話練習にはいくつかの利点がありました。相手が人間ではないので、気をつかう必要がない。何度繰り返して尋ねても気を悪くせずに答えてくれる。いつでも思いついた時に開始できる。いつでも中断・終了することができる。途中でスマホを使って表現を調べていても忍耐強く待っていてくれる。これらは些末ではありますが重要なことだと思います。最後に“Talk you later.”と結んでチャットを終えましたが、相手からは“Talk to you later.”と返ってきました。考えてみればtalkは自動詞なので、toが必要なわけですね。今まで“Talk to you later.”と言われた時のtoを聴き落としていました。勉強になります。ということでChatGPTを使った英会話練習。自分の表現力を鍛えるには大変有効な気がします。画面上のやり取りを声に出して読むのもいいかもしれません。英語でのチャットに疲れた頭で1句春分の 談笑相手は AIぞ

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息切れの原因、TKIとの関連は?【見落とさない!がんの心毒性】第19回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別60代・女性主訴労作時息切れ現病歴5年前に発熱を契機に慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia: CML)と診断された。BCR::ABLチロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor: TKI)としてイマチニブの投与が行われたが、血球減少のため不耐と判断され、3年前にニロチニブに変更された。その後BCR::ABLコピー数が上昇傾向にあったため、2年前よりダサチニブに変更された。1ヵ月前より労作時息切れを自覚し、精査が行われた。現症血圧 124/72mmHg、脈拍数 96bpm 整、SpO2 98%(酸素投与なし)、結膜貧血なし、頚静脈怒張あり、心音I音正常範囲、II音亢進、III/IV音なし、収縮期心雑音(胸骨左縁第3肋間で最強)、呼吸音清、下腿浮腫軽度採血白血球数 3520/μL、ヘモグロビン量 10.2g/dL、血小板数 13.8万/μL、尿素窒素 12mg/dL、クレアチニン 0.60mg/dL、総ビリルビン 0.4mg/dL、AST 31U/L、ALT 30U/L、LDH 222U/L、ALP 250IU/L、CRP 0.08mg/dL、BNP 30.5pg/mL、Major BCR::ABL IS 0.0053%胸部X線心胸郭比 52%、両側肺門部陰影拡大、肺うっ血/浸潤影なし、胸水なし、心電図:洞調律、II誘導P波先鋭増高、II・III・aVF誘導で軽度ST低下、QTc=409ms(図1)画像を拡大する息切れ出現後の心電図(上段)では、1年前(下段)と比較しII誘導でP波の先鋭増高を認め、右房負荷が疑われる。心エコー心室壁運動異常なし、左室拡張末期径/収縮末期径 45/27mm、心室中隔/後壁厚 8/8mm、左室駆出率 71%、心嚢液貯留なし、軽度僧帽弁閉鎖不全症、中等度三尖弁閉鎖不全症、三尖弁逆流最大血流速 (圧較差)3.2m/s(40mmHg)、下大静脈径 22mm、呼吸性変動低下【問題】本患者の診療に関する下記の選択肢について、間違っているものはどれでしょうか? 2つ選んでください。a.第2世代BCR::ABL TKIの投薬前後には定期的な心電図検査が必要である。b.ダサチニブの投薬前後には心エコー評価が必要である。c.診断のため右心カテーテル検査を行う。d.心エコー所見を基に肺血管拡張薬を開始する。e.CMLの病勢コントロールが良好であることからダサチニブを同量で継続する。CMLの治療成績はBCR::ABL TKIの登場により大きく向上し、多くの症例で分子遺伝学的奏効が得られるようになりました。第2世代以降のBCR::ABL TKIでは第1世代のイマチニブと比較し高い治療効果が期待できますが、長期毒性はイマチニブより重篤なものが多く、副作用管理が重要になります。第2世代のダサチニブはとくに胸水貯留や肺高血圧症の発症頻度が高く、多数のキナーゼをoff-targetとして阻害することが有害事象の頻度が高い原因と推測されています1,5,6)。ダサチニブは、Tリンパ球、単球 / マクロファージによる血管周囲の炎症や、活性酸素によるアポトーシス、内皮障害などにより肺血管抵抗上昇を来すと考えられています4)。心エコーにより肺高血圧症が疑われる頻度はイマチニブでは0.5~2.7%であるのに対しダサチニブでは5~13.2%と大きな差があり7,8)、イマチニブには肺血管抵抗低下効果も観察されています9)。両薬剤による肺高血圧症の発症頻度の違いの理由として、ダサチニブではイマチニブと異なり、非受容体チロシンキナーゼファミリーの一つであるSrcの阻害作用が強いことが可能性として挙げられますが、ダサチニブはSrc阻害とは無関係に内皮細胞機能障害を引き起こすことも報告されており4)、同じBCR::ABL TKIであるダサチニブとイマチニブが肺血管に対して異なる反応を示すことに対する明確な機序は解明されていません。(図2)肺血管におけるダサチニブとイマチニブの対照的効果 10)画像を拡大するダサチニブによる肺高血圧症のリスク因子として、年齢、心肺合併症、TKI投薬期間、3次治療以降のダサチニブの使用などが挙げられます8,11)。とくにこれらに該当する患者に対しては遅滞なく心エコーを行い、肺高血圧症の早期発見に努める必要があります。(謝辞)本文の作成に際し、九州大学病院 血液・腫瘍・心血管内科 森 康雄先生に監修いただきました。1)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022;43:4229-4361.2)Humbert M, et al. Eur Heart J. 2022;43:3618-3731.3)日本循環器学会. 肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)4)Guignabert C, et al. J Clin Invest 2016;126:3207-3218.5)Jacobs JA, et al. Pulm Circ. 2022;12:e12075.6)Weatherald J, et al. Eur Respir J. 2020;56:2000279.7)Cortes JE, et al. J Clin Oncol. 2016;34:2333-2340.8)Minami M, et al. Br J Haematol. 2017;177:578-587.9)Hoeper MM, et al. Circulation. 2013;127:1128-1138.10)Ryan JJ. JACC Basic Transl Sci. 2016;1:684-686. 11)Jin W, et al. Front Cardiovasc Med. 2022;9:960531.講師紹介

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英語プレゼン、最初・途中・締めに使える便利フレーズ!【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第12回

英語プレゼン、最初・途中・締めに使える便利フレーズ!今回は、学会のプレゼンテーションで頻用する基本的なフレーズについておさらいしたいと思います。プレゼンテーションの冒頭に使えるフレーズ発表のスタンダードな始め方はこんな感じです。“Thank you for this great opportunity to present my research, entitled, XXX.”と、まずプレゼンテーションの機会にお礼を述べると同時に、タイトルを告げます。その後、こんな感じで自己紹介をします。“My name is Yuji Yamada, Assistant Professor at Icahn School of Medicine at Mount Sinai.”もちろん、逆に自己紹介から始めても構いません。これに続いて、“Introduction”からスタートする、というイメージです。「いやいや、こんな情報はすべて表紙のスライドに書いてあるよ。説明する必要もないでしょう」と考える方もいるかもしれません。実際、英語のプレゼンテーションでは、“Did you know that…?”“What if…?とプレゼンテーションを始め、人々にとって衝撃的な事実やデータを示したり、思考を促したりすることで、プレゼンテーションの冒頭から聴衆の関心を惹く、というスキルもよく用いられます。ただし、標準的な「型」が求められ、聞く人もそれを期待している学会発表では、前者の基本的なスタートのやり方が多いでしょう。新たなトピックを話し始めるときに使えるフレーズそれまで薬の有効性について話をしていて、その後に薬の有害事象について説明をしたいときには、こんなフレーズを用いて話題転換をすることができます。“Regarding adverse events, …”“In terms of adverse events, …”“With respect to adverse events, …”“As far as adverse events are concerned, …”これらは、いずれも「有害事象に関しては…」という意味合いのフレーズであり、どれを使っても構いません。こうしたフレーズを文章の冒頭に置くことで、次にどんなトピックを話し始めるのかをあらかじめ示すことができます。figureを見てもらいたいときに使えるフレーズスライドの中でもとくに“figure”に注目してもらいたい場合には、こんな言い方ができます。“As you can see in figure 1, …”(Figure 1でご覧いただけるように…)これは少し間接的な表現かもしれません。より直接的には“figure”を主語にしてこんな言い方もできるでしょう。“Figure 1 shows that…”(Figure 1は…を示しています)さらに、もっとFigure 1への関心を引き寄せたい場合には、こんな言い方もできます。“Let’s take a(closer)look at figure 1.”(Figure 1に注目してみましょう)“look”の前に“closer”のような形容詞を付ければ、さらに強調した表現にすることもできるでしょう。プレゼンテーションの締めくくりに使えるフレーズ“Conclusions”まで話が終わったら、いよいよプレゼンテーションは締めくくりです。締めくくりに使えるフレーズには、こんなものがあります。“This brings me to the end of my presentation.”(これで私のプレゼンテーションはおしまいです)“That covers everything I want to say today.”(それで今日言いたいことはすべてカバーしました)“That’s it.”のような言い方でも同様の意味を持ちますが、上で示したような言い方のほうがより丁寧でフォーマルな印象を与えると思います。また、その後に通常は質疑応答に移るので、こんな形で一言付け加え、質問を受け付けるとスムーズでしょう。“If you have any questions, I would be happy to answer them now.”(もしご質問がありましたら、今から喜んで返答させていただきます)なお、日本語のプレゼンテーションでは「ご静聴ありがとうございました」と締められることが一般的です。この対訳は、“Thank you for your attention.”になるでしょう。しかし、このフレーズは駅構内のアナウンスなどではよく用いられるものの、学会で用いられることはあまり一般的ではありません。「使ってはいけない」というわけではありませんが、いつもの日本語のプレゼンテーションの直訳でこのセリフを使う必要はありませんので、併せて覚えておくとよいでしょう。講師紹介

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第37回 ChatGPTがさらに進化、医師国試も解ける

医師国家試験も解けるChatGPT2023年3月14日にChatGPTの改良版である「GPT-4」について発表がありました。GPT-4とは、もともとのChatGPTの基盤として存在するGPT-3.5のバージョンアップと捉えてもらってよいです。ChatGPTについて何も知らんという人は、以下の記事を読んでください。それでもわからんという人は、とりあえず使ってみて慣れてみてください。面白いと思います。GPT-4で大きくコマースされているのは、司法試験の模擬試験において、受験者の上位10%のスコアで合格するレベルになったということです。さすがにこれは本当かいなと思ってしまいますが、GPT-3.5と比べて問題を解く不自然さが改善されているので、なんと言いますか、本当にナチュラルなAIになったなと感じます。医師国家試験の問題を入力してみるとわかりますが、ChatGPTの正答率は結構高いと思います。たまにちょいちょいおかしなことを言ってくることもありますが、おおむね正答にたどり着いていることのほうが多いです。例1:ヘルシンキ宣言について画像を拡大する(画像:ChatGPTより)例2:胸腔ドレーントラブル画像を拡大する(画像:ChatGPTより)「胸腔ドレーンを押し込んではいけない」理由は、胸腔内圧が上がるからではなく、肺そのものを損傷する可能性があるためですが、まあ正答を選んでいるので結果オーライです。言語レベルの性能が各段にアップしており、日本語でもやや違和感があったところが、GPT-4ではGPT-3.5の英語版を上回るほどのパフォーマンスであり、このまま進化し続けると、医学の世界でもトレンドになってくるんじゃないかと思います。ただ問題は、正しそうで正しくない文章、OpenAIの言うところの「幻覚(hallucination)のような文章」というのは、多いかなと思います。なので、騙されてしまう人が多くなってしまうかもしれません。リテラシーの高い人が使ったほうがよいでしょうね…。ChatGPTの登録ChatGPTの登録はこちら(https://openai.com/blog/chatgpt)です。別に業者でもなんでもありませんので、安心してください。GPT-4が使用できるChatGPT Plusプランを使う場合、月額20ドルになります。とりあえず登録しているんですが、続けるかどうかと問われると、どうでしょう。使い道が思いつかないなあ。医学論文のアイデアを出してくれて、何ならデータまでまとめてもらえると助かるんですが。その域に到達するのはまだまだ先か。いずれにしてもChatGPTだけで論文を作成するのは、現時点ではNGとされています。しかし、このまま成長していくと、人類はChatGPTに乗っ取られるんじゃないだろうか。ターミネーターの時代に描かれていたクーデターがやってきたりして…。

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統合失調症の入院リスクと日照時間の関連性に対する建築環境の影響

 統合失調症と日照時間との関係を検討した研究では、関連性を明らかにすることができていない。要因の1つとして、統合失調症患者の日照時間に対する建築環境の影響が考えられる。中国・安徽医科大学のLi Liu氏らは、統合失調症と日照時間の関連性に対する建築環境の影響について調査を行った。その結果、さまざまな建築環境において、日照時間は統合失調症による入院リスクに影響を及ぼすことが明らかとなった。著者らは、「本結果は、特定の地域居住で脆弱性を有する患者の識別に役立ち、医療資源の合理的な割り当てや悪影響の適時な回避によって、統合失調症発症リスク低減のための助言を政策立案者が提供することを示唆するものである」と述べている。The Science of the Total Environment誌オンライン版2023年2月8日号の報告。 中国・合肥市の主要都市部において、2017~20年の毎日の統合失調症入院データおよび、それに対応する気象要因や環境汚染に関するデータを収集した。都市部における統合失調症入院期間での日照時間の影響を評価するため、分布ラグ非線形モデルと組み合わせた一般化加法モデルを用いた。さらに、建築物の密度や高さ、正規化植生指数、夜間の光が、統合失調症と日照時間の関連性に及ぼすさまざまな影響も調査した。 主な結果は以下のとおり。・不十分な日照時間(5.3時間未満)は、統合失調症による入院リスク増加と関連しており、最大相対リスクは、2.9時間での1.382(95%信頼区間:1.069~1.786)であった。・適切な日照時間は、統合失調症による入院リスク低下と関連が認められた。・サブグループ解析では、女性と高齢者において、とくに脆弱性が認められた。・日照時間が不十分な場合、建築物の密度が高く夜間の光が多いほど、統合失調症リスクに有意な好影響が認められた。・正規化植生指数が高いほど、また、建築物の高さが高いほど、統合失調症のリスク低下と関連が認められた。

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手術前後デュルバルマブ、非小細胞肺がんの無イベント生存を有意に延長(AEGEAN)/AZ

 アストラゼネカ社は2023年3月9日、第III相AEGEAN試験の中間解析の結果を発表した。切除可能な早期(IIA~IIIB期)非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とした同試験の中間解析において、術前での化学療法とデュルバルマブの併用および術後デュルバルマブ単剤治療は、術前化学療法単独と比較して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある無イベント生存期間(EFS)延長を示している。 病理学的完全奏効(pCR)および主要な病理学的奏効(MPR)の最終的な解析結果は、これまでに報告された中間解析における良好な結果と一致していた。同試験は、無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)を含む主要な副次評価項目を評価するため、予定通り継続する。 世界で肺がんと診断される患者は年間220万人と推定されており、その80〜85%がNSCLCと診断されている。NSCLCの約25〜30%が、根治が期待される切除可能な早期NSCLCと診断されるが、StageIIの5年生存率は56~65%、StageIIIaでは41%、StageIIIbでは24%にまで低下することから、依然として高いアンメットニーズが存在していることがうかがえる。 これらのデータは、近く開催される医学学会で発表され、世界の規制当局と共有される。

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EGFR-TKI抵抗性NSCLC、HER3-DXd最新データ(U31402-A-U102)/日本臨床腫瘍学会

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)抵抗性のEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、抗HER3抗体薬物複合体patritumab deruxtecan(HER3-DXd)を投与したU31402-A-U102試験について、最新の結果が報告された。2023年3月16日~18日に開催された第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で近畿大学病院の林 秀敏氏が発表した。 HER3はHERファミリーに属する受容体型チロシンキナーゼ(RTK)であり、ホモダイマーを形成することはできず、ヘテロダイマーを形成することにより、対となるRTKを活性化するとされている。主にHER2とヘテロダイマーを形成する1-3)。HER3は、NSCLCでは腫瘍組織の83%に発現し、転移や無再発生存期間(RFS)の短縮に関与していることが報告されている4)。また、EGFR-TKIに対する耐性を獲得すると、HER3の発現量が増加することも示されている5)。なお、抗HER3抗体薬物複合体HER3-DXdは、国内で製造販売承認を取得しているトラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)と同じリンカーとペイロードを用いた製剤である。 U31402-A-U102試験6)は、EGFR-TKIによる治療後に病勢進行が認められた進行・転移EGFR変異陽性NSCLC患者を対象とした第I相試験。用量漸増パートと用量拡大パートから構成されている。用量拡大パートでは、第II相試験の推奨用量となったHER3-DXd 5.6mg/kgが3週ごとに投与された(コホート3bを除く)。用量拡大パートは、コホート1~4で構成され、今回はコホート1と3aを統合し、2022年1月28日をデータカットオフ日として解析した結果が報告された。コホート1~3の主要評価項目はRECIST 1.1に基づく客観的奏効率(ORR)であった。各コホートの対象患者とレジメンは以下のとおり。・コホート1:EGFR変異陽性NSCLC(腺がん)、5.6mg/kgを3週ごと・コホート2:EGFR変異陽性(EGFR ex19del、L858R、L861Q、G719Xは除外)NSCLC(扁平上皮がん、非扁平上皮がん)、5.6mg/kgを3週ごと・コホート3a:EGFR変異陽性NSCLC(組織型は問わない。ただし、小細胞がんは除外)、5.6mg/kgを3週ごと・コホート3b:EGFR変異陽性NSCLC(組織型は問わない。ただし、小細胞がんは除外)、3.2~6.4mg/kgの用量で漸増投与・コホート4:EGFR変異陽性NSCLC(組織型は問わない。ただし、小細胞がんは除外)、5.6mg/kgを3週ごと(試験薬は商業生産施設で生産) 主な結果は以下のとおり。・解析対象患者は102例(日本人16例)で、投与期間中央値は5.5ヵ月(範囲:0.7~27.5)であった。前治療として第3世代EGFR-TKIとプラチナ療法の併用療法を受けた患者(前治療サブグループ)は78例(日本人10例)で、投与期間中央値は5.5ヵ月(範囲:0.7~27.5)であった。・主要評価項目のORRは、解析対象患者全体では40.2%(95%信頼区間[CI]:30.6~50.4)、奏効期間中央値は7.6ヵ月(95%CI:6.9~14.7)であった。前治療サブグループでは、ORRが41.0%(95%CI:30.0~52.7)、奏効期間中央値が11.2ヵ月(95%CI:7.0~推定不能)であった。・全生存期間(OS)中央値は、解析対象患者全体では15.8ヵ月(95%CI:10.8~21.5)、前治療サブグループでは16.2ヵ月(95%CI:11.2~21.9)であった。・無増悪生存期間(PFS)中央値は、解析対象患者全体では6.4ヵ月(95%CI:5.3~8.3)、前治療サブグループでは6.4ヵ月(95%CI:4.4~10.8)であった。・中枢神経系(CNS)転移のある患者(55例)におけるORRは36.4%(95%CI:23.8~50.4)、CNS転移のない患者(47例)では44.7%(95%CI:30.2~59.9)であった。・奏効と治療開始前のHER3の発現量には明確な関連はみられなかった。・Grade3以上の有害事象は76.5%、副作用は56.9%に認められた。重篤な有害事象は50.0%、重篤な副作用は19.6%に認められた。・副作用としての間質性肺疾患(ILD)は8例(7.8%)に認められた(Grade1/2が5例、Grade3が1例、Grade5が2例)。日本人集団では、16例中3例(18.8%)に認められた(Grade1/2が2例、Grade5が1例)。 林氏は「HER3-DXdは複数の前治療を有する進行・転移EGFR変異陽性NSCLC患者において有望な抗腫瘍活性を示した。抗腫瘍活性はHER3の発現量、CNS転移の有無、EGFR-TKI耐性の種類にかかわらず認められた。安全性解析の結果は過去の報告と同様で、管理可能かつ許容可能なプロファイルが確認された」とまとめた。なお、進行・転移EGFR変異陽性NSCLC患者を対象としたHER3-DXdの臨床試験として、第II相試験(HERTHENA-Lung01、NCT04619004)、第III相試験(HERTHENA-Lung02、NCT05338970)が進行中である。■参考文献1)Lyu H, et al. Acta Pharm Sin B. 2018;8:503-510.2)Haikala HM, et al. Clin Cancer Res. 2021;27:3528-3539.3)Tzahar E, et al. Mol Cell Biol. 1996;16:5276-5287.4)Scharpenseel H, et al. Sci Rep. 2019;9:7406.5)Yonesaka K, et al. Clin Cancer Res. 2022;28:390-403.6)U31402-A-U102試験(Clinical Trials.gov)

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再発/転移乳がんへのHER3-DXd、HER2低発現/ゼロでの有効性と日本人での安全性~第I/II相試験サブ解析/日本臨床腫瘍学会

 HER3は乳がんの30~50%に発現しており、HER3を標的とした抗体薬物複合体(ADC)のpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)が開発されている。HER3陽性再発/転移乳がんに対する第I/II相U31402-A-J101試験において、本剤の有望な有効性と管理可能な安全性プロファイルを示したことはASCO2022で報告されている。今回、HER2ゼロ(IHC 0)とHER2低発現(IHC 1+、もしくはIHC 2+かつISH-)患者での探索的サブグループ解析と、日本人における安全性について、第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で愛知県がんセンターの岩田 広治氏が発表した。 本試験の対象は、HER3陽性の再発/転移乳がん(HR+/HER2-もしくはHR-/HER2-)182例。HER3-DXd(1.6、3.2、4.8、6.4、8.0mg/kg)を3週間ごとに静脈内投与し、dose expansion phaseでは4.8mg/kgまたは6.4mg/kgを投与した。有効性についてはHR(+/-)とHER2(低発現/ゼロ)によるサブグループ別に奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)などを評価し、安全性については実施国別(日本142例、米国40例)および用量別に解析した。 今回のサブグループ解析における主な結果は以下のとおり。・サブグループごとのORR、DOR中央値、PFS中央値(95%信頼区間)は以下のとおりで、多くの治療歴がある再発/転移乳がん患者に対して、HER2発現(低発現/ゼロ)にかかわらず有効性が示された。<HR+> HER2低発現(58例):36.2%、7.2ヵ月、5.8ヵ月(4.1~8.5) HER2ゼロ(39例):28.2%、7.0ヵ月、8.2ヵ月(5.8~9.1)<HR->  HER2低発現(29例):20.7%、4.1ヵ月、4.4ヵ月(2.6~5.6) HER2ゼロ(19例):26.3%、8.4ヵ月、8.4ヵ月(3.9~13.9)・有害事象は、間質性肺炎(ILD)が日本でのみ12例(8.5%)に認められた。Grade5が1例、それ以外の11例はGrade3以下だった。ILD以外の有害事象は日米で同様だった。 これらの結果について、岩田氏は「これらのデータは、再発/転移乳がん治療のオプションとして、またHER2+およびHER2低発現乳がんに対する他のADCを含む新たな治療とのシーケンスアプローチにおいて、HER3-DXdのさらなる研究を支持する」とまとめた。

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重症三尖弁逆流へのTEER、症状・QOLを改善/NEJM

 重症三尖弁逆流症患者に対する三尖弁経カテーテルedge-to-edge修復術(TEER)は安全で、重症度を改善し、生活の質(QOL)改善にも関連することが示された。米国・Abbott Northwestern HospitalのPaul Sorajja氏らが、350例の患者を対象に行った前向き無作為化比較試験の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2023年3月4日号で発表した(6日にアップデート)。欧米65ヵ所で被験者を募り無作為化試験、薬物療法と比較 研究グループは、米国、カナダ、欧州の65ヵ所の医療機関で重症の症候性三尖弁逆流症患者350例を登録し、1対1の割合で無作為に2群に割り付け、一方にはTEERを(175例)、もう一方には薬物療法(対照)を行った(175例)。 主要エンドポイントは、階層的複合アウトカムで、追跡1年時点の全死因死亡または三尖弁置換術、心不全による入院、カンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)スコア(範囲0~100、高スコアほどQOL良好を示す)で示されるQOL改善(スコアが15ポイント以上増加と定義)などだった。 三尖弁逆流症の重症度と安全性についても評価した。Finkelstein-Schoenfeld法でTEER群のWin比は1.48 被験者350例は、平均年齢78歳、女性54.9%だった。 主要エンドポイントは、TEER群がより良好であることを示すもので、Finkelstein-Schoenfeld法によるWin比は1.48だった(95%信頼区間[CI]:1.06~2.13、p=0.02)。死亡または三尖弁置換術、心不全による入院の発生率はいずれも、両群で差があるようにはみられなかった。 KCCQ・QOLスコアの平均変化幅は、対照群0.6±1.8ポイントに対し、TEER群では12.3±1.8ポイントで有意差が認められた(p<0.001)。 30日時点で、三尖弁逆流症の中等度以上の症状が認められなかった患者の割合は、対照群では4.8%だったのに対し、TEER群では87.0%だった(p<0.001)。 30日時点で重大有害事象が報告されなかったTEER群の患者の割合は98.3%であり、TEERは安全であることが認められた。

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二次性僧帽弁逆流へのTEER、5年間の評価/NEJM

 ガイドラインに基づく最大用量の薬物療法後も心不全と中等度~重度の二次性僧帽弁逆流症が認められる患者において、僧帽弁の経カテーテル的edge-to-edge修復術(TEER)は薬物療法単独と比較し、フォローアップ5年間での心不全による入院リスクを半減し、全死因死亡リスクも約30%低減した。米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学のGregg W. Stone氏らが、614例を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2023年3月5日号掲載の報告。米国とカナダ78ヵ所でTEER vs.薬物療法単独の無作為化比較試験 研究グループは、2012年12月27日~2017年6月23日に米国とカナダにある78ヵ所の医療機関を通じて、ガイドラインに基づく最大用量の薬物療法を実施後、心不全と中等度~重度の二次性僧帽弁逆流症が認められる患者614例を登録した。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはTEERを(デバイス群302例)、もう一方には薬物療法のみ(対照群312例)を行い追跡調査した。 主要有効性エンドポイントは、フォローアップ2年間の、心不全によるすべての入院だった。また、すべての心不全入院の年間発生率、全死因死亡年間発生率、死亡または心不全入院のリスク、および安全性、その他のアウトカムについて5年間評価した。心不全入院年間発生率のハザード比0.53 5年間の評価に基づく心不全入院年間発生率は、デバイス群33.1%、対照群57.2%だった(ハザード比[HR]:0.53、95%信頼区間[CI]:0.41~0.68)。5年間の全死因死亡率は、デバイス群57.3%、対照群67.2%だった(0.72、0.58~0.89)。 死亡または心不全入院の発生率は、デバイス群73.6%、対照群91.5%だった(HR:0.53、95%CI:0.44~0.64)。 デバイス特有の安全性イベント発生率は、5年間で1.4%(4/293例)報告され、全イベントが術後30日以内の発生だった。

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オールシングスマストパス~高齢者の抗うつ薬の選択についての研究の難しさ(解説:岡村毅氏)

 従来のRCTの論文とはずいぶん違う印象だ。無常(All Things Must Pass)を感じたのは私だけだろうか。この論文、老年医学を専門とする研究者には、突っ込みどころ満載のように思える。とはいえ現実世界で大規模研究をすることは大変であることもわかっている。 順に説明していこう。2種類の抗うつ薬に反応しないものを治療抵抗性うつ病という。こういう場合、臨床的には「他の薬を追加する増強療法」(augmentation)か「他の種類の薬剤への変更」(switch)のどちらを選択するべきかというのは臨床的難問だ。これに対して、うつ病一般においてはSTAR*Dなどの大規模な研究が行われてきた。本研究はOPTIMUM研究と名付けられ、やはりNIH主導で大規模に行われた。 結果であるが、アリピプラゾールの増強療法が比較的優れた効果を示した。とはいえ、ステップ1で比較されているbupropionは本邦未承認であるから日本の臨床家への示唆はあまりない。なおステップ2で比較対象となっているのはリチウムの増強療法とノルトリプチリンへの変更であるが、これらは本邦でも使用できる。 以下は、この論文を批判的に眺めた感想である。 第1にプロトコルがまったく安定していない。途中までステップ2への直接参加が可能になっているが、途中から禁じられた。参加基準も当初PHQ-9で6点以上であったのが、途中から10点以上になっている。さまざまな横やりがあったことが推測される。 第2に参加者は普通に薬局で薬をもらっているので、増強(追加)されているのか変更されているのかがわかってしまう。単純化すると、前者は錠剤が1錠増えるし、後者は増えない。プラセボで良くなる高齢者が多いから、この点は重要だ。 第3に認知機能の検査は一応しているが(supplementaryの隅まで読んでようやく書いてあったが、これは最も重要な点ではないか?)、Short blessed testで10点以上はダメというあまりにも粗い基準だ。さまざまな認知機能の人が含まれているに違いない。 第4に脳梗塞に伴う治療抵抗性うつ病も含まれているはずだが、これはdepression-executive dysfunctionともいい、高齢期のうつ病の難問の一つである。生活障害が大きく、むしろ非薬物治療が効果的とされる。この群は何をやっても変わらないだろうが、期間中に良いデイケアに行き始めたら劇的に回復することだろう。この議論が抜け落ちている。 第5に、アウトカムは「健やかさ」(wellbeing)になっている。これは当事者団体の意見等を反映させたということである。「症状は外から見ると減ったようです、でも本人は苦しいです」というのでは意味がないのだから良いことともいえる。薬剤の効果を症状だけで見るのは「古い」医学者であり、リカバリーのようなより主観的なものが現在好まれる。しかし薬剤の効果をwellbeingで見ることは、拡大した医療化であり、危険をはらんでいると個人的には思っている。というのは、高齢者ではとくにそうだが、さまざまな出来事(人間関係、出会いと別れ、とくに死別、体調、他の疾患の状態など)によりwellbeingは大きく影響を受けるのだ。公平を期すために、この研究でも「社会参加」も測定されていることは述べておく。 第6に、結果的には、bupropion変更組とリチウム増強組では、きちんと定められた分量までいって寛解している者は10%もいないとのことであり、とても低いところで比較しているというのは否めまい。 第7に転倒が多い。対照がないので、高齢者とはそういうものだと言われればそれまでだが、良い結果の治療でも3人に1人は転倒しているし、最も悪い群は55%が転倒している。この研究は増強vs.変更を比較しているので、これを言ってしまうとちゃぶ台返しになってしまうが…「この人はうつ病で、薬で治すべし」という大前提がここでは間違っているんじゃないか。この際、漢方薬に変えて、生活も変えてみてはどうかと提案する(たとえば地域の集まりや運動に行くとか、それこそお寺に行ってみるとか)というのが日本の小慣れた臨床医の対応ではないだろうか。 第8に…これくらいでやめておこう。 僕らはRCTで少しでも科学的に妥当な知見を手に入れて、患者さんにより妥当な治療を提案し、結果的に多くの患者さんを幸せにしたいという根源的な欲求がある。しかし高齢者を対象にしたこの論文を読むと、さまざまな現実のノイズにより、非常に読みにくく、苦しい印象を受けた。RCT、メタアナリシス、さらにネットワークメタアナリシスに心躍らされた時代はもしかしたら、長い歴史の中のそよ風なのかもしれず(Times They Are A-Changin)、無常(All Things Must Pass)を感じる。一方で、批判だけするつもりはない。医療者の主観や勘に頼った時代に戻ってよいわけはない。なんか苦しいなあと思いながら、批判的に読み、そしてこのような大規模研究を苦しみながら遂行した仲間に最大の敬意を払いつつも、この知見が目の前の患者さんに適応できるかどうかを考え続けるしかないのではないか。 考えてみれば、この薬が一番いいですという単純な世界(うつ病ですか、じゃあエスシタロプラムかゾロフトでしょうみたいな)なら、医師なんていらないではないか。目の前の患者さんが、医療の対象にするべきことが何割で、医療が対象にしてはいけないことが何割かを判断する必要があるし、どの見方を採用するか(たとえば高齢者の抑うつ症状なら、感情障害、認知機能障害、脳血管障害といったさまざまな次元がある)を常に選択する必要がある。患者の高齢化に伴い、臨床はより頭を使う仕事になってきたように感じる。

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教育実習で発生したデータ改ざん事件【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第58回

第58回 教育実習で発生したデータ改ざん事件「教育実習中止、いますぐに君は教室を出ていきなさい!」自分が高校生時代に、化学の授業中に大声で響きわたった言葉です。今でも鮮烈に記憶に残る瞬間です。教職志望の学生が、在学中に教育の現場において学習指導法の実地練習のために教育活動を実際に経験することが教育実習です。教育職員免許状の授与を受けるためには、この教育実習が必須です。この教育実習生を「教生」と呼びます。国立大学の教員養成系では、国立大学附属学校で実習を行うことが通常です。自分は金沢大学教育学部附属高等学校の出身なので、教生による授業を多く受けてきました。教生による授業を教室の最後列で聴いていた、本来の高校教員が授業停止を宣言し、その教生は教室から退場させられました。実際には、叩き出されたという表現が適切でした。教生は茫然とした表情でした。彼は何をしでかしたのでしょうか。この化学の講義では、教生が化学実験を教室内で実際に行い、そのデータをもとに考えるという内容でした。中和滴定であったように記憶します。中和滴定とは、濃度が不明な酸(もしくは塩基)でも、中和反応を利用することで、その濃度を求めることができる方法です。濃度がわかっている水酸化ナトリウムとの中和点を測定することで、濃度がわからない硫酸の正しい濃度を求めるというのが中和滴定の具体例です。教生は生徒の前で行った実験で得られた生データを黒板に記していました。この生データをもとに計算をしてみるのですが、想定した通りの結果にはなりませんでした。「このデータを変えてみましょう」こう言って黒板に書かれた生データの数字を、想定される答えが算出されるであろう数値に書き換えたのです。その直後に彼の退場が宣告されました。退場した後に、化学教師は私たち生徒に、以下のように語りました。「実験で得られた生データを自分勝手に改ざんすることは絶対に許されない。データを書き換える者に化学を教える資格はない。附属高校の生徒は教生の犠牲になってはいけない、俺は君たちを守る」、正確な文言までは記憶しておりませんが、このような趣旨の内容であったことは間違いありません。この教生が、教育実習の単位を認定されたのか、不合格となったのか知る由もありません。しかし、この授業で実験に臨む研究者としてのあるべき姿を、私たち生徒が学んだことは事実です。もちろん、この教生に悪気はなかったと思います。張り切って実験の準備をして教育実習に臨み、生徒に中和滴定を教えようと一生懸命であったでしょう。しかし、実験で得られた生データを消して書き換えることは絶対に許されないのです。自分が学んだ高校の、化学の中原 吉晴先生の思い出です。厳しい先生でしたが多くを教えていただきました。中原先生は一流の研究者を創り出すことを自分の仕事と考え、生徒に接していたように思います。すでに鬼籍に入られた中原先生のご冥福をお祈りいたします。文部科学省のガイドラインで不正行為等の定義では、捏造(Fabrication)・改ざん(Falsification)・盗用(Plagiarism)の3つを特定不正行為として位置付けています。捏造は、存在しないデータや研究結果などの作成です。改ざんは、データや研究結果などの加工です。盗用は、他の研究者のアイデアや論文などの流用です。こういった不正行為を行うことは、自身のキャリアや学位を失うだけでは済みません。周囲の関係者に多大な負担をかけることはもちろん、大学や学術に対する社会の信頼を損ないます。自分が所属する滋賀医科大学においても、研究不正防止のために、教育で指導が繰り返し行われています。定期的に研究不正防止の講義受講が義務付けられています。自分にとっては、高校生の時に体験した教生退場から学んだことが大きなインパクトを持っています。研究不正防止という矮小化した問題を超えて、この事案から実験というものの意義を学ばせていただきました。近ごろ、高校生の頃の体験がフラッシュバックしてくることがよくあります。これが正常なのか加齢現象なのか不明です。過去の経験を思い出すというよりも、最近の経験のような新鮮さを伴って脳内に再現されるのです。不思議な現象です。

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第153回 閣議決定、法案提出でマイナ保険証への一本化と日本版CDC創設がいよいよ始動

マイナ保険証関連法案と日本版CDC法案を閣議決定こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。大きな盛り上がりを見せたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)ですが、この原稿を書いている段階ではまだ優勝は決まっていません。個人的に衝撃を受けたのは、3月15日(現地時間)、1次ラウンド・プールDの第4戦のプエルトリコ対ドミニカ共和国の戦いです。プエルトリコは9回にクローザー、エドウィン・ディアス投手を投入、3者連続三振に打ち取って見事勝利を収めました。しかし、ディアス投手はその直後、マウンド上で選手たちと喜び過ぎて右膝の膝蓋腱を断裂、今季絶望となってしまったのです(プエルトリコは準々決勝でメキシコに破れました)。ディアス投手はニューヨーク・メッツの”守護神”で一度聴いたら耳から離れない独特の登場曲・Narcoも有名です。昨シーズン終了後には救援投手では史上最高の5年1億200万ドル(約136億円)で契約延長したばかり。WBC出場がMLB選手にとってどれだけリスクがあるのかをまざまざと示す結果になってしまいました。今回のWBCには大谷 翔平投手やダルビッシュ 有投手などが参加していますが、今後はこうしたスター選手の出場が抑えられる可能性もありそうです。さて、今回は3月7日に政府が閣議決定した2つの法案について書いてみたいと思います。一つはマイナンバーカード関連、そしもう一つは日本版CDC、国立健康危機管理機構関連の法案です。2024年秋に健康保険証を廃止しマイナ保険証に一体化政府は3月7日、2024年秋に健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一体化する関連法改正案を閣議決定しました。カードを持たない人には保険証の代わりに「資格確認書」を健保組合などの保険者が発行します。ただ、有効期限が1年の更新制となるだけでなく、医療機関を受診する際は現行と同様、マイナ保険証に比べて窓口負担が重くなります。マイナンバーカードを保険証として使うマイナ保険証については、昨年10月、河野 太郎デジタル大臣が一本化を表明して以来、この連載でも「第132回 健康保険証のマイナンバーカードへの一体化が正式決定、『懸念』発言続く日医は『医療情報プラットフォーム』が怖い?」などで度々書いてきました。今年2月には全国保険医団体連合会(保団連)が「健康保険証を廃止する理由は一つもない」として、法案撤回を厚生労働大臣に求める動きもありました。しかし、この閣議決定によって、マイナ保険証の普及・定着が加速されると共に、マイナンバーカード取得の事実上の義務化もなされたことになります。マイナンバーの利用範囲拡大で気になるHPKIカードの今後関連法案は、健康保険法やマイナンバー法など13の法律の改正案からなり、国会では束ね法案としてまとめて審議されます。マイナンバーは、利用できる範囲が法律で社会保障と税、それに災害対策の3分野に限定されていますが、今回の改正案によって国家資格の手続きや自動車に関わる登録、外国人の行政手続きなどの分野にも範囲が広がるとしています。さらに、こうした分野について、すでに法律に規定されている事務に「準ずる事務」であれば、法律を改正しなくてもマイナンバーの利用が可能になるとのことです。「国家資格の手続き」で思い出したのは、「第146回 病院・診療所16施設、薬局138施設と低調な滑り出しの電子処方箋、岸田首相肝いりの医療DXに暗雲?」で書いたHPKIカードの存在です。電子処方箋の発行に必要とされるHPKIカードは、厚生労働省が所管する医師をはじめとする27個の医療分野の国家資格を証明するためのシステムです。電子処方箋を発行する医師・歯科医師、そして電子処方箋を調剤済みにする薬剤師ごとにHPKIカードによる電子署名が必要とされています。ただ、2022年12月末時点で取得しているのは医師の11%、薬局の薬剤師の7%に留まっており、1月26日から運用開始となった電子処方箋が低調なスタートになった一因として指摘されていました。素人考えですが、マイナンバーカードも国家資格の手続きに使えるとなれば、HPKIカードはもう必要ないのではないでしょうか。厚生労働省の意向を汲んでHPKIカード導入の旗振りをしてきた医療関係団体への配慮はもちろん必要ですが、このデジタル社会、あえて古い仕組みに拘泥する理由はありません。この際、医療現場での医療者の資格確認も、基本マイナンバーカードに一本化すべきだと思いますが、皆さんいかがでしょう。国立健康危機管理研究機構設置は2025年以降同じ日、医療関連の政策でもう一つ閣議決定されたのは、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、新たな専門家組織として「国立健康危機管理研究機構」を設立する新法案です。米国で感染症対策を中心的に担う疾病対策センター(CDC)をモデルとする国立健康危機管理研究機構については、この連載でも「第140回 次のパンデミックに備え感染症法等改正、そう言えば感染症の『司令塔機能』の議論はどうなった?」でも書きました。いよいよ法案ができ、実現に向けて動き出したというわけです。なお、設立するための国立健康危機管理研究機構法案のほか、現在の両組織の業務を引き継ぎ、新たな業務を加えるため、感染症法や新型インフルエンザ等対策特別措置法、地域保健法も改正するとのことです。国立健康危機管理研究機構はCDCをモデルに、感染研の基礎研究と、国立国際医療研究センターの臨床医療のそれぞれの機能を併せ持つ、感染症研究の拠点を目指すとしています。内閣官房に設置する内閣感染症危機管理統括庁(内閣官房に秋ごろ設置予定)の求めに応じ、政策決定に必要な知見を提供したり、治療薬などの研究開発力を強化したりするとのことです。設置は2025年度以降としています。科学的根拠に基づいて政府に物が言える日本版CDCにこの連載の140回を書いた時点では不明だった法人形態ですが、特別の法律により設立される法人(特殊法人)で、政府が全額出資する形となります。厚生労働大臣による広範な監督権限が付与される予定で、理事長・監事は厚労大臣が任命、副理事長・理事は厚労大臣の認可を得て理事長が任命することとなりました。新型コロナウイルス感染症のパンデミックで政策のご意見番として機能してきた「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」は、時として政府や厚労省が上手くコントロールできない状況もあったようです。そうした反省も踏まえての厚労省管轄の特殊法人と考えられます。しかし、新たに設立される国立健康危機管理研究機構では、逆に感染症対策において専門家を国がコントロールし過ぎたり、政府判断を追認するだけの専門家組織になってしまうのではないかという危険性も指摘されています。国の組織であっても、科学的根拠に基づいて政府にきちんと物が言えるような日本版CDCができることを願っています。

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日本におけるオミクロン期のコロナワクチンの有効性は?/長崎大

 長崎大学熱帯医学研究所の前田 遥氏らの多施設共同研究チームは、2021年7月1日より、日本国内における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン効果のサーベイランス「VERSUS(Vaccine Effectiveness Real-time Surveillance for SARS-CoV-2)」を実施している。オミクロン株BA.1/BA.2の流行期における新型コロナmRNAワクチンの効果についてVERSUSのデータを基に評価したところ、初回シリーズの接種により緩やかな予防効果が得られ、さらに、有症状感染を防ぐにはブースター接種がより効果的であったことが明らかとなった。本結果は、Expert Review of Vaccines誌オンライン版2023年3月8日号に掲載された。 本研究では、2022年1月1日~6月26日のオミクロン株BA.1/BA.2の流行期に、11県の医療機関14施設に、COVID-19の徴候または症状(発熱[37.5℃以上]、咳嗽、疲労、息切れ、筋肉痛、咽頭痛、鼻づまり、頭痛、下痢、味覚障害、嗅覚障害)があって受診した7,931例(16歳以上)が登録された。ワクチン効果を多施設共同test-negative case-control研究で評価した。初回シリーズ(1次接種)とブースター接種ともにmRNAワクチンのファイザーの1価ワクチン(BNT162b2)もしくはモデルナの1価ワクチン(mRNA-1273)について評価し、それ以外の新型コロナワクチン接種者は試験結果から除外した。 主な結果は以下のとおり。・サーベイランスに登録された7,931例のうち、検査陽性3,055例、検査陰性4,876例を解析対象とした。年齢中央値39歳(四分位範囲:27~53)、男性3,810例(48.0%)、基礎疾患のある人が1,628例(20.5%)、COVID-19罹患歴がある人が142例(1.8%)であった。・対象者のワクチン接種歴は、ワクチン未接種13.8%、1次接種60.1%、ブースター接種20.1%であった。65歳以上では、未接種5.8%、1次接種49.7%、ブースター接種34.8%であった。検査陽性者の割合は、未接種52.7%、1次接種42.2%、ブースター接種20.3%であった。・未接種と比較した1次接種のSARS-CoV-2有症状感染への効果は、16~64歳では、接種完了から90日以内で35.6%(95%信頼区間[CI]:19.0~48.8)、91~180日で32.3%(20.7~42.2)、180日超で33.6%(18.5~45.8)であった。・未接種と比較したブースター接種の効果は、16~64歳では、ブースター接種完了から90日以内で68.7%(95%CI:60.6~75.1)、91~180日で59.1%(37.5~73.3)であった。・65歳以上では、未接種と比較した1次接種の効果は31.2%(95%CI:-44.0~67.1)、ブースター接種では76.5%(46.7~89.7)に上昇した。・1次接種、ブースター接種ともに、mRNA-1273のほうがBNT162b2よりも効果が高かったが有意差はなかった。・1次接種(接種から180日超)と比較したブースター接種のSARS-CoV-2有症状感染への効果は、16~64歳では、接種から90日以内で52.9%(95%CI:41.0~62.5)、91~180日で38.5%(6.9~59.3)であった。・65歳以上では、1次接種と比較したブースター接種の効果は65.9%(95%CI:35.7~81.9)であった。 本結果について著者は、デルタ株流行期での日本における1次接種のSARS-CoV-2有症状感染への効果は、16~64歳では、接種完了から90日以内で91.8%(95%CI:80.3~96.6)、91~180日で86.4%(56.9~95.7)、65歳以上では90.3%(73.6~96.4)と非常に高かったが、オミクロン株流行時には1次接種の有効性はかなり低下しており、有症状感染を防ぐにはブースター接種が必要だと指摘している。

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日本人の認知症タイプ別死亡リスクと死因

 近年の認知症に対する医療および長期ケアの環境変化は、疾患の予後を改善している可能性がある。そのため、認知症の予後に関する情報は、更新する必要があると考えられる。そこで、医薬基盤・健康・栄養研究所の小野 玲氏らは、日本における認知症のサブタイプ別の死亡率、死因、予後関連因子を調査するため、クリニックベースのコホート研究を実施した。その結果、日本における認知症サブタイプ別の死亡リスクや死因の重要な違いが明らかとなった。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年2月6日号の報告。 国立長寿医療研究センターの予防老年学研究部におけるもの忘れ外来受診者の予後調査研究(NCGG-STORIES)で収集した患者の臨床および予後データを分析した。2010年7月~2018年9月に当センターもの忘れ外来を受診した患者またはその近親者を対象に、郵便調査で死亡状況の確認を行った。対象患者3,229例を6つの認知機能タイプ(認知機能正常[NC]、軽度認知障害[MCI]、アルツハイマー病[AD]、血管性認知症、レビー小体型認知症[DLB]、前頭側頭型認知症)に分類した。認知機能タイプ別の死亡率を比較するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・NC群と比較し、すべての認知症サブタイプおよびMCI群の死亡率は高かった(ハザードリスク:2.61~5.20)。・最も多かった死因は肺炎であり、次いでがんであった。・MCI、AD、DLB群における予後因子は、高齢、男性、認知機能低下であり、アポリポ蛋白Eℇ4対立遺伝子との関連は認められなかった。・本調査により、認知症のサブタイプ別に死亡リスクと死因の違いが認められたことから、今後の高度な認知症ケア計画や政策立案に役立つことが望まれる。

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ペムブロリズマブの去勢抵抗性前立腺がんおよびEGFR陽性非小細胞がんの第III相試験/MSD

 Merck社は2023年2月28日、第III相試験KEYNOTE-641およびKEYNOTE-789の最新情報を公開。転移のある去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)において、ペムブロリズマブとエンザルタミドおよびアンドロゲン除去療法(ADT)との併用を評価する第III相KEYNOTE-641試験については、独立データモニタリング委員会の勧告に基づき中止する。中間解析において、ペムブロリズマブとエンザルタミドおよびADTの併用療法では、プラセボ+エンザルタミドおよびADTと比較して、2つの主要評価項目である画像上の無増悪生存期間(rPFS)または全生存期間(OS)の改善が確認されず、OSについては事前に設定した無益性の境界(futility boundary)を超えた。 また、オシメルチニブを含むEGFR‐TK治療後に進行した転移を有するEGFR変異陽性の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の治療においてペムブロリズマブとペメトレキセドおよびプラチナ製剤による化学療法の併用療法を評価する第III相KEYNOTE-789試験について、2つの主要評価項目のうちOSを達成しなかったことを発表した。同試験の最終解析で、ペムブロリズマブ+ペメトレキセドおよびプラチナ製剤による化学療法を受けた患者では、ペメトレキセドおよびプラチナ製剤による化学療法のみを受けた患者と比較してOSの改善がみられたが、事前に設定した統計学的有意性の基準を満たさなかった。もう1つの主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)について、この前に実施した中間解析でペムブロリズマブ群では化学療法単独群と比較して改善がみられたが、統計学的有意性の基準を満たさなかった。 KEYNOTE-641試験およびKEYNOTE-789試験においてペムブロリズマブの安全性プロファイルはこれまでの試験で認められているものと一貫しており、新たな安全性の懸念は特定されなかった。

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高齢者へのDOAC、本当に減量・中止すべき患者とは/日本循環器学会

 高齢者の心房細動治療において、つい抗凝固薬を減量してしまいがちだが、それは本当に正しいのだろうか。今回、小田倉 弘典氏(土橋内科医院)が『心房細動抗凝固薬(アブレーションを望まない高齢のPAFなど)』と題し、第87回日本循環器学会学術集会のセッション「クリニックで選択されるべき循環器治療薬~Beyond guideline~」にて、高齢者心房細動の薬物療法における注意点を発表した。 小田倉氏はまず、以下の高齢者の症例を提示し、実際に直接経口抗凝固薬(DOAC)を処方するかどうか、またその際に減量するか否かについて問題提起した。高齢者へのDOAC減量と出血リスクの管理<症例>●年齢・性別:82歳・男性、体重:64kg、クレアチニンクリアランス(CCr):52 mL/min(血清クレアチニン[Cr]:1.0mg/dL)●主訴:ある日、脈をとったら不整で、心電図で心房細動と診断された。●服用歴:降圧薬、認知症治療薬、前立腺肥大症治療薬など6種類●患者背景:要介護2。トイレ歩行は可能だが受診時は車いす。転倒歴あり。長男夫婦と3人暮らしだが、日中は1人のことが多い。●CHADS2スコア:3点、HAS-BLEDスコア:1点 上記の高齢者の症例について、「DOAC各薬剤の添付文書にある減量基準、たとえば、アピキサバンは(1)80歳以上、(2)60kg以下、(3)Cr 1.5mg/dL以上のうち2つ以上が、エドキサバンは(1)60kg以下、(2)CCr 15~50、(3)P糖蛋白阻害薬服用のうち1つ以上が該当する場合にそれに当たるが、いずれにも該当していないので、この患者の場合、該当項目を見る限りでは処方可能であり、減量する必要もない」とコメント。 しかし、実際には高齢というだけでDOACの減量基準を満たさずとも減量する例が散見される。クリニックの患者が主体となった日本の高齢者心房細動に対する抗凝固薬療法に関する2つの試験からもその状況が見て取れる。・ANAFIEレジストリ1):3万2,275例(平均年齢81.5歳[85歳以上が26.1%]、経口抗凝固薬の服用:92.4%、ワルファリンTTR :75.5%、発作性心房細動:42%、認知症:7.8%[通院・在宅患者])ではunder-doseが16.8%、未承認低用量が3.7%。 ・GENERAL研究2):5,717例(平均年齢73.9歳、経口抗凝固薬の服用:100%、フレイル[要介護]:12.1%、認知症治療薬の併用:5.9%)ではunder-doseが27.3%。 では、実臨床で高齢者(75歳以上)に対しDOACをunder-doseする理由とは何か。35.8%でunder-doseを認め、脳卒中/全身性塞栓症が有意に多かったXAPASS study3)の結果によると「処方医は通常用量による出血リスクを最も懸念し、続いて高齢、腎機能低下を意識していた。一方、低体重や併用薬剤を選んだ者は少なかった」とコメント。 ところが、75歳以上の日本人で非弁膜症性心房細動患者を対象としたJ-ELD AF試験4)によれば、アピキサバン5mg/日(低用量)群と同薬10mg/日(通常用量)群に割り付け、脳卒中または全身性塞栓症、入院を要する出血について評価したところ、いずれの発生率も有意差が得られなかった。ただし、サブ解析で出血イベントの発生とアピキサバンの血中濃度の関係性を調べたところ、低用量群では血中濃度が高い(トラフ中央値:86ng/dL)群で出血性イベントが有意に多かった。その原因は明らかではないが、「減量基準以外のunknown factorsの存在が示唆される」と同氏は指摘した。DOAC減量基準を満たした患者の出血リスクに注力を これらの報告を踏まえ、同氏は「DOACの減量基準に該当しなければ用量を守り、減量基準を満たす患者は減量したうえで、いかに出血の関連リスクを減らせるかを考えることが重要」と述べ、「その関連リスクはDOAC減量基準やHAS-BLEDスコアに記載がないものにも注意を払う必要があり、改善可能なソフトプロブレム(上記unknown factorsにおおむね相当)と改善困難なハードプロブレムに分類できる。前者にはポリファーマシー(抗凝固薬と併用注意の薬剤を確認)、フレイル(転倒頻度や低体重を考慮)、認知症(服薬アドヒアランスを確認)、高血圧(外来での血圧130/80mmHg目標)が該当し、後者には腎機能低下や出血の既往があるだろう。後者では低用量投与を前提とし、2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン5)に従い、腎機能チェックの採血をCCr<60mL/minの患者では少なくともXヵ月(X=CCr/10)に1回実施すれば、リスク回避につながる」と対策を講じた。DOACの中止を考えるタイミング また、とくに高齢者ではDOAC中止を考える場面は多いが、具体的には以下が挙げられた。・出血したとき →出血の制御ができないような大腸憩室炎、蜂窩織炎などの既往歴がある場合 →生活面に支障を来すような重い後遺症が残る可能性のある場合・出血以外の副作用が出たとき・腎機能が低下してきたとき・アドヒアランス不良のとき・フレイル(要介護度)が進行した(寝たきりになった)とき 最後に同氏は「併存疾患の有無や身体機能レベルが個々で大きく異なるにもかかわらず、そもそも高齢者を1つのカテゴリーとして捉えることは不可能であり、多様な視点からのカテゴライズが必要となる。言うならば、“科学”と“生活”の両面からのアプローチが必要なのであり、それにはゴールはないため、考え続けることが重要である」と締めくくった。

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医師以外の医療従事者による厳格降圧、地域住民のCVDを低減/Lancet

 高血圧患者における心血管疾患の予防では、医師以外の地域医療従事者による厳格降圧治療は標準降圧治療と比較して、降圧効果が高く、心血管疾患や死亡の抑制に有効であることが、米国・Tulane University School of Public Health and Tropical MedicineのJiang He氏らが実施した「CRHCP試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年3月2日号で報告された。中国の326村落でクラスター無作為化試験 CRHCPは、中国の非盲検エンドポイント盲検化クラスター無作為化試験であり、2018年5月~11月にクラスターとして326の村落が登録された(中国科学技術部などの助成を受けた)。 対象は、年齢40歳以上、未治療の場合は収縮期血圧≧140mmHgまたは拡張期血圧≧90mmHgの患者、心血管疾患のリスクが高い場合や、降圧治療を受けている場合は、収縮期血圧≧130mmHg、拡張期血圧≧80mmHgの患者であった。 326の村落は、非医師の地域医療従事者が厳格降圧治療を行う群(163村落)、または標準降圧治療を行う群(163村落)に無作為に割り付けられた。 厳格降圧群では、訓練を受けた非医師の地域医療従事者が、プライマリケア医の指導の下で、収縮期血圧<130mmHg、拡張期血圧<80mmHgの達成を目標に、簡略な段階的治療プロトコルに従って降圧治療を開始し、薬剤の用量を漸増した。また、降圧薬を割引または無料で提供したり、生活様式の改善や家庭での血圧測定、服薬アドヒアランスなどについて指導を行った。 標準降圧群では、非医師の地域医療従事者は標準的な血圧測定の訓練を受けたが、プロトコルに基づく血圧管理の訓練は受けず、非医師の地域医療従事者またはプライマリケア医が標準治療を行った。 有効性の主要アウトカムは、36ヵ月の時点における心筋梗塞、脳卒中、入院を要する心不全、心血管疾患による死亡の複合とされた。重篤な有害事象は少ないが、低血圧の発生が増加 3万3,995例が登録され、厳格降圧群が1万7,407例、標準降圧群は1万6,588例であった。ベースラインの全体の平均年齢は63.0歳で、61.3%が女性であり、20.9%が自己申告による心血管疾患の既往歴を有しており、57.6%が降圧薬の投与を受けていた。 厳格降圧群では、収縮期血圧がベースラインの平均157.0mmHgから36ヵ月後には126.1mmHgへ低下し、拡張期血圧は87.9mmHgから73.1mmHgへと低下した。また、標準降圧群では、それぞれ155.4mmHgから147.6mmHgへ、87.2mmHgから82.3mmHgへと低下した。 36ヵ月の時点における降圧の正味の群間差は、収縮期血圧が-23.1mmHg(95%信頼区間[CI]:-24.4~-21.9)、拡張期血圧は-9.9mmHg(95%CI:-10.6~-9.3)であり、いずれも厳格降圧群で降圧効果が有意に優れた(いずれも、p<0.0001)。使用された降圧薬の種類の数は、平均で厳格降圧群が3.1種、標準降圧群は1.1種だった。 主要アウトカムの年間発生率は、厳格降圧群が1.62%と、標準降圧群の2.40%に比べて有意に低かった(ハザード比[HR]:0.67、95%CI:0.61~0.73、p<0.0001)。サブグループ解析では、主要アウトカムのリスク低下は年齢や性別、学歴、ベースラインの降圧薬使用の有無、心血管疾患リスクの高さにかかわらず、一貫して厳格降圧群で優れた。 副次アウトカムも厳格降圧群で良好であり、心筋梗塞(厳格降圧群0.2%/年vs.標準降圧群0.3%/年、HR:0.77[95%CI:0.60~0.98]、p=0.037)、脳卒中(1.3% vs.1.9%、0.66[0.60~0.73]、p<0.0001)、心不全(0.1% vs.0.2%、0.58[0.42~0.81]、p=0.0016)、心血管疾患による死亡(0.4% vs.0.6%、0.70[0.58~0.83]、p<0.0001)、全死因死亡(1.4% vs.1.6%、0.85[0.76~0.95]、p=0.0037)の発生率は、いずれも厳格降圧群で低かった。 重篤な有害事象は、厳格降圧群が21.1%、標準降圧群は24.1%で発生した(リスク比:0.88[95%CI:0.84~0.91]、p<0.0001)。低血圧の発生率は、厳格降圧群が標準降圧群に比べて高かった(1.75% vs.0.89%、1.96[1.62~2.39]、p<0.0001)。 著者は、「この医師以外の地域医療従事者の主導による戦略は、中国の農村部などの医療資源が乏しい環境において血圧関連の心血管疾患や全死因死亡を減少させるために、その規模の拡大が可能と考えられる」としている。

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CAD患者のLDL-C 50~70mg/dL目標の治療 、高強度スタチンに非劣性/JAMA

 冠動脈疾患(CAD)患者の治療において、LDLコレステロール(LDL-C)の目標値を50~70mg/dLとする目標達成に向けた治療(treat-to-target)は高強度スタチン療法に対し、3年の時点での死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合に関して非劣性であり、これら4つの構成要素の個々の発生率には差がないことが、韓国・延世大学のSung-Jin Hong氏らが実施したLODESTAR試験で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年3月6日号に掲載された。韓国の無作為化非劣性試験 LODESTAR試験は、韓国の12施設が参加した医師主導の非盲検無作為化非劣性試験であり、2016年9月~2019年11月の期間に患者の登録が行われた(Samjin Pharmaceuticalなどの助成を受けた)。 CAD(安定虚血性心疾患または急性冠症候群[不安定狭心症、急性心筋梗塞])患者が、LDL-C値50~70mg/dLを目標とするtreat-to-target治療を受ける群、またはロスバスタチン20mgあるいはアトルバスタチン40mgによる高強度スタチン療法を受ける群に、無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、3年の時点での死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合であり、非劣性マージンは3.0%とされた。treat-to-target戦略の適合性を支持する新たなエビデンス 4,400例(平均年齢65.1[SD 9.9]歳、女性27.9%)が登録され、2つの群に2,200例ずつが割り付けられた。4,341例(98.7%)が3年の追跡を完了した。ベースラインの平均LDL-C値は、treat-to-target群が86(SD 33)mg/dL、高強度スタチン群は87(SD 31)mg/dLであった。 高強度スタチン療法は、treat-to-target群では1年目に患者の53%、2年目に55%、3年目に56%が受けており、高強度スタチン群ではそれぞれ93%、91%、89%が受けていた。 試験期間中の平均LDL-C値は、treat-to-target群が69.1(SD 17.8)mg/dL、高強度スタチン群は68.4(SD 20.1)mg/dLであり、両群間に有意な差はなかった(p=0.21)。 3年時の主要エンドポイントの発生率は、treat-to-target群が8.1%(177例)、高強度スタチン群は8.7%(190例)で、絶対群間差は-0.6%(片側97.5%信頼区間[CI]:-∞~1.1)であり、treat-to-target群の高強度スタチン群に対する非劣性が示された。 死亡(treat-to-target群2.5% vs.高強度スタチン群2.5%、絶対群間差:<0.1%[95%CI:-0.9~0.9]、p=0.99)、心筋梗塞(1.6% vs.1.2%、0.4[-0.3~1.1]、p=0.23)、脳卒中(0.8% vs.1.3%、-0.5[-1.1~0.1]、p=0.13)、冠動脈血行再建術(5.2% vs.5.3%、-0.1[-1.4~1.2]、p=0.89)の発生率は、いずれも両群間に有意な差は認められなかった。 著者は、「これらの知見は、スタチン治療における薬物反応の個人差を考慮した個別化治療を可能にする、treat-to-target戦略の適合性を支持する新たなエビデンスをもたらすものである」としている。

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