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生後6ヵ月からCOVID-19ワクチン接種推奨を提言/日本小児科学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第8波が到来しつつある今、第7波で起こった小児へのCOVID-19感染の増加、重症化や今冬のインフルエンザの同時流行を憂慮し、日本小児科学会(会長:岡明[埼玉県立小児医療センター])の予防接種・感染症対策委員会は、同学会のホームページで「生後6ヵ月以上5歳未満の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」を発表した。 これは先に示した「5~17歳の小児におけるワクチンの有益性」も考慮したうえで、メリット(発症予防)がデメリット(副反応など)を上回ると判断し、生後6ヵ月以上5歳未満の小児でも推奨したもの。 なお、厚生労働省では乳幼児(生後6ヵ月~4歳)の接種は「努力義務」としている。生後6ヵ月以上5歳未満の小児でも接種の方がメリットある 同学会ではワクチン推奨の考え方の要旨として以下4点にまとめている。1)小児患者数の急増に伴い、以前は少数であった重症例と死亡例が増加している。2)成人と比較して小児の呼吸不全例は比較的まれだが、オミクロン株流行以降は小児に特有な疾患であるクループ症候群、熱性けいれんを合併する児が増加し、また、脳症、心筋炎などの重症例も報告されている。3)生後6ヵ月以上5歳未満の小児におけるワクチンの有効性は、オミクロン株BA.2流行期における発症予防効果について生後6ヵ月~23ヵ月児で75.8%、24ヵ月児で71.8%と報告されている。流行株によっては有効性が低下する可能性はあるが、これまでの他の年齢におけるワクチンの有効性の知見からは、重症化予防効果は発症予防効果を上回ることが期待される。4)生後6ヵ月以上5歳未満の小児におけるワクチンの安全性については、治験で観察された有害事象はプラセボ群と同等で、その後の米国における調査でも重篤な有害事象はまれと報告されている。なお、接種後数日以内に胸痛、息切れ(呼吸困難)、動悸、浮腫などの心筋炎・心膜炎を疑う症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診し、新型コロナワクチンを受けたことを伝えるよう指導すること。

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BA.4/5対応2価ワクチン後、年齢別の副反応発生状況/CDC

 12歳以上における、ファイザー社およびモデルナ社の2価ワクチンによるブースター接種後の安全性データを、米国疾病予防管理センター(CDC)のAnne M. Hause氏らがMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)11月4日号に報告した。 米国食品医薬品局(FDA)は2022年8月31日に、12歳以上へのBNT162b2(ファイザー)および18歳以上へのmRNA-1273(モデルナ)COVID-19ワクチンの2価製剤を承認。これらのワクチンにはSARS-CoV-2のオリジナル株およびBA.4/BA.5のスパイクタンパク質をコード化したmRNAが含まれる。10月23日までの間に、約2,260万回の2価ブースターワクチンが投与されている。今回、同期間中の2価ワクチン接種者における、v-safe(スマートフォンを用いたアクティブサーベイランスシステム。接種後1週間の局所および全身反応と健康への影響が報告される)およびVAERS(CDCとFDAが管理する、ワクチン接種後の有害事象をモニタリングするパッシブサーベイランスシステム)に報告された事象および健康影響評価のレビューが行われた。 v-safeにおける主な結果は以下のとおり。・期間中に計21万1,959人の12歳以上のv-safe登録者が、年齢に応じた2価ワクチン投与を受けた。・12~17歳が1,464人(0.7%)、18~49歳が6万8,592人(32.4%)、50~64歳が5万9,209人(27.9%)、65歳以上が8万2,694人(39.0%)だった。・4回目接種者(9万6,241人;45.4%)または5回目接種者(10万6,423人;50.2%)が多くを占めた。・12万2,953人(58.0%)がファイザー社、8万9,065人(42.0%)がモデルナ社の2価ワクチン投与を受けていた。・登録者の1/3以上(8万4,450人;39.8%)が、少なくとも1つの他のワクチンの同時接種を受けたと報告した。8万3,005人(98.3%)がインフルエンザワクチンを接種していた。・投与後1週間での局所反応の報告頻度は、全体で60.8%、12~17歳で68.7%、18~49歳で72.9%、50~64歳で62.0%、65歳以上で49.7%だった。・投与後1週間での全身反応の報告頻度は、全体で54.8%、12~17歳で59.8%、18~49歳で67.9%、50~64歳で55.2%、65歳以上で43.5%だった。・多く報告された副反応は、注射部位の痛み(45.0~70.5%)、倦怠感(30.0~53.1%)、頭痛(19.7~42.8%)、筋肉痛(20.3~41.3%)、発熱(10.2~26.3%)だった。 VAERSにおける主な結果は以下のとおり。・期間中に2価ワクチン投与を受けた12歳以上から、5,542件(ファイザー社:2,928件、モデルナ社:2,615件)の有害事象に関する報告を受けた。・報告者の年齢中央値は60(12~101)歳で、64.2%が女性。939件(16.9%)の報告で、少なくとも1つの他のワクチンが同時接種されており、うち最も多かったのはインフルエンザワクチンだった(90.7%)。・ワクチン接種の過誤に関連する事象(製品の誤投与や用量間違いなど)が1,913件(34.5%)報告され、うち225件(11.8%)で健康上の有害事象が発生していた。・全体の95.5%(ファイザー社:2,762件[94.3%]、モデルナ社:2,530件[96.8%])が非重篤に分類された。※VAERSレポートでは、入院、入院期間の延長、致命的な疾患、後遺症、先天性異常、または死亡のいずれかが報告された場合、重篤と分類。・重篤と分類された報告は251件(4.5%)。ファイザー社:166件(5.7%)、モデルナ社:85件(3.3%)だった。うち5件は心筋炎、4件は心膜炎、20件はCOVID-19で、心筋炎を報告した人の年齢は12~78歳、心膜炎は46~78歳だった。・死亡は36件報告され、年齢中央値は71(46~98)歳。本レポート作成時点で十分な情報が得られたのは4件で、死因には心停止、認知症、転移前立腺がん、および心筋梗塞が含まれていた。CDCでは引き続き残りの死亡者の医療情報を収集している。 著者らは、本結果がBA.1対応の2価ブースターワクチンの承認前臨床試験の安全性データおよび1価ブースター投与後に報告された安全性データとおおむね一致しており、COVID-19による健康への影響より頻度は低く、深刻度も低いとしている。

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医療者も実は…?糖尿病のスティグマを見直す/日糖協の活動

 近い将来、「糖尿病」という病名は使用されなくなるかもしれない。 日本糖尿病協会(以下、日糖協)は、都内開催のセミナーにて、「『糖尿病』という言葉を変える必要がある」と問題意識を明らかにした。現在、日糖協では「糖尿病にまつわる“ことば”を見直すプロジェクト」を推進しており、病名変更もその一環だ。 日糖協理事の山田 祐一郎氏(関西電力病院 副院長)は、「言葉を変える目的は、糖尿病に関するスティグマ(偏見)を減らすことにある。単なる言葉の入れ替えでは意味がない。医療従事者と糖尿病のある方とのコミュニケーションを変えることが重要だ」と述べた。 以下、セミナーの内容を記載する。医療従事者も実は…? スティグマの発生源 世間的に「食べ過ぎ」「長生きできない」などのイメージが先行しやすい糖尿病だが、糖尿病のある人とない人で、総エネルギー消費量や摂取量は、実は変わらない1)。また、治療を受けていれば、平均余命にも有意差はない2,3)。 しかし、高度経済成長期に糖尿病患者数100万人を突破した本邦では、先述のようなスティグマが世間に定着し、今なお存在し続けている。実際、2022年に発表されたデータでも、糖尿病のある人はスティグマを受けている4)ことが明らかになっている。 注目すべきは、スティグマの主な発生源として、家族、友人以外に、本来患者の支援者である医療従事者も含まれる5)ことだ。 日糖協理事長の清野裕氏(関西電力病院 総長)は、「医療従事者は“そんなつもりはないのに”、無意識にスティグマを付与している可能性がある」と述べる。 「今回のHbA1cが上昇している。何か食べ過ぎましたか?」 「あの人は糖尿病だから、全然言うことを聞かない」 といった発言が代表的だ。しかし、糖尿病のある人の生活状況はそれぞれ異なる。実行不可能な治療法を示していないか、悩みを正しく理解しているか、医療従事者も省みる必要があるという。さらに「糖尿病」という病名自体がスティグマとなる可能性もある。病名「糖尿病」への抵抗感や不快感 日糖協が糖尿病のある人に実施した「糖尿病の病名に関するアンケート」の調査結果によると、回答者1,087人のうち、9割が「糖尿病」という病名に何らかの抵抗感や不快感を抱いており、7割が治療を受ける際に病名に対する抵抗を感じている、という。さらに回答者の8割が「糖尿病」の病名変更を希望した。病名変更を希望した人の38.6%が「だらしない」など負のイメージや誤解を受けることを懸念しており、31.8%は「尿」という表記に違和感や羞恥心を抱いていた。さらに、6割が何らかの形で糖尿病を隠して生きていることも明らかになった。日糖協理事の津村 和大氏(川崎市立川崎病院 病態栄養治療部長)は、「糖尿病の治療や予後が大きく改善した現代では、病名の持つ負のイメージを払拭することも必要だ」と述べた。糖尿病にまつわる“ことば”の見直し すでに現在、日糖協では「糖尿病」の病名変更に関する議論が進んでいる。加えて「糖尿病患者→糖尿病のある人」「血糖コントロール→血糖マネジメント(管理)」など、使用すべき医療用語の再考も検討されている。背景として、「糖尿病のある人」には、海外ではpatientを使用せず、person with diabetesという表現を用いること、「血糖マネジメント(管理)」は、コントロールが「こちら(=医療従事者)の意思通りに動かす」意味合いが強いのに対し、英語圏ではcontrolからmanagementへと表現が変わっており、世界的にも主体的表現へ変化しつつあることが挙げられる。ただし、“ことば”を入れ替えるだけでは不十分で、より主体的に糖尿病に関わる意識が重要とされる。関連企業やメディアの参画で医療現場にもインパクトを 日糖協の活動は企業にも広がっており、賛同企業が間接的支援を行う「企業委員会」も立ち上げられた。製薬・医療機器製造・食品関連企業33社が参画中だ。企業の提供する情報量は膨大で、医療現場へのインパクトも大きいと推察される。代表幹事の小山 由起氏(住友ファーマ)、郷田 秀樹氏(ノボ ノルディスク ファーマ)からも、スティグマを理解するための企業研修や日本糖尿病協会年次学術集会での啓発活動などの取り組みが紹介された。今後は、企業作成物の改訂、とくに糖尿病のある人に向けた資料の表現に配慮していくという。言葉の見直しは、今後「日本糖尿病学会・日本糖尿病協会合同 アドボカシー活動」の中で協議され、数年以内の提言実現を目指すという。 われわれメディアも“ことば”を多く扱う。病名に対する関心の喚起は「社会を動かす力」になる。最後に、スティグマの存在を正しく理解し、適切な情報発信に努めることを自戒として記載したい。 糖尿病のある人にスティグマを負わせないために、病名も、私たち自身の意識も変えなければいけない。

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VTE既往妊産婦への低分子ヘパリン、体重補正中用量vs.固定低用量/Lancet

 静脈血栓塞栓症(VTE)既往のある女性において、分娩前~分娩後に体重で補正した中用量の低分子ヘパリン投与は、固定低用量の低分子ヘパリン投与と比べてVTE再発リスクを低減しないことが、オランダ・アムステルダム大学のIngrid M. Bistervels氏らが行った多施設共同非盲検無作為化試験「Highlow試験」の結果、示された。妊娠に関連したVTEは、母体の罹患および死亡の主要な原因であり、VTE既往女性では分娩前および分娩後に血栓予防が適応となる。しかし同期間中のVTE再発予防のための低分子ヘパリンの至適投与量は明らかでなかった。Lancet誌オンライン版2022年10月28日号掲載の報告。9ヵ国70病院で無作為化試験、妊娠14週~分娩後6週まで各用量を投与 Highlow試験は、9ヵ国(オランダ、フランス、アイルランド、ベルギー、ノルウェー、デンマーク、カナダ、米国、ロシア)の70病院から、VTE既往の妊娠中の女性を集めて行われた。客観的診断によるVTE既往のある18歳以上で、妊娠14週以下の女性を適格とした。 適格女性を、1対1の割合でウェブベースシステムと置換ブロック無作為化法にて、妊娠14週前に、体重補正した中用量の低分子ヘパリン投与(体重補正中用量)群または固定低用量の低分子ヘパリン投与(低用量)群に割り付け、分娩後6週まで1日1回皮下投与した。 主要有効性アウトカムは客観的診断のVTE(深部静脈血栓症、肺塞栓症または非典型的部位静脈血栓症など)で、独立した中央判定委員会で確認を行った。評価対象はintention-to-treat(ITT)集団(投与群に割り付けられたすべての女性など)とした。 主要安全性アウトカムは、分娩前、分娩後早期(分娩後24時間未満)を含む大出血、および分娩後後期大出血(分娩後24時間以上~6週間)で、割り付けられた治療の投与を少なくとも1回受け、投与の終了が確認されたすべての女性を評価対象とした。VTE再発に有意差なし、安全性も同等 2013年4月24日~2020年10月31日に、1,339例の妊娠中の女性がスクリーニングを受け、適格であった1,110例が、体重補正中用量群(555例)、低用量群(555例)に無作為に割り付けられた(ITT集団)。 VTEの発生は、体重補正中用量群11/555例(2%)、低用量群16/555例(3%)であった(相対リスク[RR]:0.69[95%信頼区間[CI]:0.32~1.47]、p=0.33)。 分娩前のVTE発生は、体重補正中用量群5/555例(1%)、低用量群5/555例(1%)であり、分娩後のVTE発生はそれぞれ6例(1%)、11例(2%)であった。 安全性解析集団(1,045例)における治療期間中の大出血は、体重補正中用量群23/520例(4%)、低用量群20/525例(4%)であった(RR:1.16[95%CI:0.65~2.09])。

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日本人統合失調症患者における認知機能と社会機能との関係

 統合失調症患者の活動性低下、就労困難、予後不良には、社会機能障害が関連していると考えられる。統合失調症患者の社会機能には、注意力や処理速度などの認知機能が関連しているが、認知機能と社会機能との関連はあまりよくわかっていない。そのため、社会機能に影響を及ぼす因子を明らかにすることは、統合失調症の治療戦略を考えるうえで重要である。金沢医科大学の嶋田 貴充氏らは、統合失調症患者の社会機能に影響を及ぼす因子をレトロスペクティブに分析し、統合失調症患者の認知機能と社会機能との間に有意な相関が認められたことを報告した。Journal of Clinical Medicine Research誌2022年9月号の報告。 患者の背景、知能指数(IQ)スコア、統合失調症認知機能簡易評価尺度の日本語版(BACS-J)スコア、抗精神病薬の投与量、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)スコア、社会機能評価尺度の日本語版(SFS-J)の各サブスケールに影響を及ぼす因子を評価するため、単変量解析および多変量解析を用いた。ボンフェローニ補正を用いて、単変量解析の各因子との相関を評価した。多変量解析では、ステップワイズ法を用いて、独立変数を選択した。各モデルのサンプルサイズを考慮し、ステップワイズ法で抽出される変数を最大3つに設定した。また、SFS-Jサブスケールスコアと各因子の標準偏回帰係数(standard β)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者36例(平均年齢:57.8歳、平均罹病期間:34.8年、総入院期間:196.7ヵ月)のデータを分析した。・単変量解析では、7つのSFS-Jサブスケールとの有意な関連が認められた。多変量解析では、そのうち3つのみに有意な関連が認められた。・多変数モデルでは、BACS-Jの言語流暢性とSFS-Jのひきこもり、対人関係、就労との間に正の相関が認められた。・PANSSスコア、IQスコア、抗精神病薬の投与量には、SFS-Jサブスケールスコアとの明らかな関連は認められなかった。

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第134回 介護人材不足のツケは医療者に!?知っておきたい業界のリアル

 最近、医療・介護の人材不足に関連してさまざまなデータに触れる機会があった。その中であまりの介護人材不足に改めて愕然とした。2022年7月末現在の最新データによると、介護保険に伴う要介護(要支援)認定者数は697万1,000人。実に65歳以上の約19.0%、つまり高齢者の5人に1人は何らかの介護や介護予防が必要な状況である。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では65歳以上の高齢者は2042年のピーク時3,935万人まで増加の一途をたどる見込みで、当然ながら要介護(要支援)認定者数も当面は増加し続けることになる。そして実際の介護保険サービス利用者の現状と将来については、厚生労働省(以下、厚労省)が今年3月に社会保障審議会介護保険部会に提出した資料によると、2020年度の介護保険サービス利用者の実績値は509万人。将来の利用者は2025年度に577万人、2040年度に672万人と推計されている。この介護保険サービス利用者の将来予測に対して介護職員の必要数推計は、第8期介護保険事業計画策定時の試算で2025年度に約243万人、2040年度に約280万人。2019年度時点の介護職員実数が211万人なので、2025年時点で約32万人の不足となる。2025年度とはわずか3年後のことだ。もちろん厚労省の推計は、ある程度腰だめ的な側面もあるだろう。しかし、もはや“尻に火がつく”などというレベルを超えている。だが、厚労省が調査した最新版の「令和2年介護サービス施設・事業所調査の概況」を見ると、より深刻なことがわかる。介護老人福祉施設(いわゆる特養)の介護職員数を見ると、2019年度比で3,600人強増加はしている。ただし、2020年度の介護老人福祉施設数は8,306施設なので、概算すると1施設当たり平均で0.4人増。しかし、2019年度から72施設増なので、この点を加味すると、2019年度からある既存の介護老人福祉施設の平均では実質の人員増加はほぼゼロといっても過言ではない。さらに訪問介護で働く介護職員初任者研修修了者(旧ホームヘルパー2級)は、2020年度が21万7,049人だが、前年度の2019年度は23万3,322人で、1万6,000人以上も減少している。初任者研修は介護領域での入門資格で、この上位には介護福祉士実務者研修があるが、2020年度の訪問介護に従事する実務者研修修了者は2万8,100人と前年度比で約2,100人の増加に留まる。通所介護で働く介護職員はこの両年度間で微増に過ぎず、この初任者研修修了者の大幅な減少は単純な離職と考えるほか説明がつかない。これほど深刻な介護職の人手不足に対して厚労省が行っている主な取り組みを調べて列挙すると以下のようになる。介護に関する入門的研修実施人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度介護現場における多様な働き方導入モデル事業介護の仕事の魅力発信などによる普及啓発ちなみに一番上の入門的研修とは2018年にスタートした制度で、前述の初任者研修の一段階前のもので、この研修を修了すると初任者研修の一部が免除されるというものだ。だが、全体的に見てやや厳しい言い方となるが、どれも掛け声中心で介護人材確保の実効性には疑問符が付く。そもそも、介護が魅力的な仕事でなければ新たな人材確保は難しい。一応、厚労省の施策の最後にもそうしたものを意識した取り組みはあるが、前述の初任者研修修了者のかなりの減少を見れば、現実にはそうはなっていないのだろう。そんなこんなを聞こうとして、大学受験浪人時代からの友人にLINEで連絡を取ってみた。彼は介護福祉士の資格を有し、ほぼ一貫して介護業界で働いている。ちょうど今年の夏に有料老人ホームに転職したという話を聞いていたばかりだ。ところが彼からの一言目に「え?」となった。「ミスマッチで辞めたよ」と返ってきたからだ。勤務期間は3ヵ月に満たない。そんな彼の訴えを箇条書きにすると以下のようになる。「社則とか復唱するし、館内はゴキブリやねずみが頻発するし」「勿論、夜勤ありだよ。賞与は2ヵ月の話だったが、実際は1ヵ月ももらっていないと、現場の介護職員は言ってたよ」「夜勤の時は看護師はいない。ナースへのオンコールもなし。急変の時は地域の提携しているクリニックに上申はするけど」「夜勤は16時半〜9時半まで。朝食介助もして、居室にまた戻してと非人間的労働だわ」「3フロアなのに、2人夜勤だし。監視カメラあるし。でも、ずり落ちや転倒の事故は頻発だし」「自立の利用者で訴えが無視されていた人もいたよ」「(利用者の)朝食は7時半、夕食は5時15分には開始でおやつはなし」いやはや聞けば聞くほど暗澹とする内容ばかりだった。まあ、民営の有料老人ホームであるため、介護の質よりも経営効率が優先される悪質事例の典型だったのかもしれないが、それにしても酷すぎると感じるのは私の錯覚なのだろうか? 特養などで勤務する人などと話をしていてもやはり労働環境、介護の質に関する愚痴を聞かされることは少なくない。介護保険創設から20年が経過した今、厚労省も「科学的介護」という名称で介護の質的向上の取り組みはしている。だが、それだけに留まらず労働環境も含めた質担保に早急に取り組むべきではないだろうか? 医療に関しては驚くほど箸の上げ下げのようなところまで口を突っ込む割に、介護に対してはその点は緩いと傍目には映る。一応、前述の厚労省の取り組みを見ると、それっぽいものはあるものの、なんとも頼りない感じのものばかり。これでより多くの人材を確保しようなど土台無理な話である。そして介護保険創設は、それまで存在していた医療への過度な依存を軽減するのが大きな目的であったはず。だが、このままの質の担保が不十分な介護の付けを払わされるのは利用者と家族であり、また医療側である。

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統合失調症に対するアリピプラゾールの適切な投与量~メタ解析

 薬理学の基本は、薬物の血中濃度と効果との関係であると考えられるが、多くの臨床医において、血中濃度測定の価値は疑問視されているのが現状である。そのため、治療基準用量の検討が、十分に行われていないことも少なくない。ドイツ・ハイデルベルク大学のXenia M. Hart氏らは、統合失調症および関連障害患者における脳内の受容体をターゲットとする抗精神病薬アリピプラゾールの血中濃度と臨床効果および副作用との関連を評価するため、プロトタイプメタ解析を実施した。その結果、ほとんどの患者において、アリピプラゾール10mgでの開始により血中および脳内の有効濃度に達することが示唆された。Psychopharmacology誌2022年11月号の報告。 アリピプラゾールの経口剤および注射剤についての関連文献をシステマティックに検索し、レビューを行った。3,373件の血中濃度データを収集し、薬物動態の影響を調査した。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たしたコホート研究は、53件であった。・経口剤の血中濃度に関する研究が29件、注射剤の血中濃度に関する研究が15件、PETによる研究が9件であった。・血中濃度、有効性、副作用との関連について、相反するエビデンスが報告されていた。・集団ベースのリファンレンス範囲は、神経画像データおよび個別の有効性に関する研究から知見とほぼ一致していた。・統合失調症および関連障害の治療に対するアリピプラゾールおよび活性代謝物の治療基準用量は、それぞれ120~270ng/mL、180~380ng/mLであることが示唆された。・アリピプラゾールの経口剤および長時間作用型注射剤の治療モニタリングには、個人差の大きさやCYP2D6遺伝子型が影響すると考えられる。・ほとんどの患者において、アリピプラゾール10mgでの開始により、血中および脳内の有効濃度に達し、代謝不全患者の場合には、5mg程度で十分である可能性が示唆された。

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新経口薬camizestrant、ER+進行乳がんでフルベストラントに対しPFS延長/AZ

 アストラゼネカは2022年11月8日、次世代経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であるcamizestrantが、進行乳がんに対して内分泌療法による治療歴があり、エストロゲン受容体(ER)陽性の局所進行または転移乳がんを有する閉経後の患者を対象に、フルベストラント500mgと比較して、75mgおよび150mgの両用量で主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)において、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示したと発表した。なお、camizestrantの忍容性は良好であり、安全性プロファイルは過去の試験で認められたものと一貫しており、新たな安全性上の懸念は確認されていない。 camizestrantは、強力で経口投与可能なSERDかつERへの完全拮抗薬であり、ER活性型変異を含む幅広い前臨床モデルで抗がん活性を示している。第I相臨床試験(SERENA-1試験)では、camizestrantの忍容性が良好であり、単剤療法またはCDK4/6阻害薬パルボシクリブとの併用療法として投与したときに有望な抗腫瘍プロファイルを有することが示されている。 今回結果が発表されたSERENA-2試験は、ER陽性HER2陰性の進行乳がん患者を対象に、複数の用量のcamizestrantをフルベストラントと比較して評価する、無作為化非盲検並行群間多施設共同第II相臨床試験。主要評価項目は、フルベストラント(500mg)との比較によるcamizestrant(75mg)のPFS、およびフルベストラントとの比較によるcamizestrant(150mg)のPFSであり、Response Evaluation Criteria In Solid Tumours(RECIST)ガイドライン第1.1版の定義に従い評価される。240例をcamizestrant群またはフルベストラント群に無作為に割り付け、病勢進行が認められるまで治療を実施した。副次評価項目は、24週目の安全性、客観的奏効率および臨床的ベネフィット率(CBR)など。本試験の詳しい結果は、今後の医学学会で発表される予定となっている。 また、1次治療中にESR1遺伝子変異が検出されたHR陽性の転移乳がん患者を対象にcamizestrantとCDK4/6阻害剤(パルボシクリブまたはアベマシクリブ)の併用療法を評価する検証的第III相臨床試験であるSERENA-6試験や、HR陽性の局所進行または転移乳がんへの1次治療におけるcamizestrantとパルボシクリブの併用療法を評価する第III相SERENA-4試験などが実施されており、SERENA-6試験の適応症は米国食品医薬品局(FDA)よりファストトラック指定を付与されている。

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フォシーガ、心不全に関する新たなエビデンスをAHA2022で発表/AZ

 アストラゼネカは2022年11月8日のプレスリリースで、第III相DELIVER試験において、フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)によって駆出率が軽度低下または保持された心不全患者の症状の負担感および健康関連の生活の質(QOL)を改善したと発表した。 第III相DELIVER試験の事前に規定された解析結果から、プラセボ群と比較して標準治療にフォシーガを追加した併用療法(フォシーガ群)で、症状負荷、身体的制限およびKCCQ平均スコアによる評価においてQOLが改善した。こちらは治療開始から1ヵ月という早期の治療ベネフィット達成となっていた。このベネフィットは8ヵ月時点でも維持されており、プラセボ群と比較して、総症状スコアで平均2.4点、身体的制限で1.9点、臨床サマリースコアで2.3点、全体サマリースコアで2.1点の改善が認められた(すべてp<0.001)。また、8ヵ月時において、プラセボ群と比較してフォシーガ群で大幅な悪化を示した患者さんは少なく、多くの患者さんで、評価したKCCQドメインすべてにおいて健康状態の改善を示し、スコアの軽度(5点以上)、中程度(10点以上)、大幅(15点以上)な増加が確認されている。第III相DELIVER試験におけるフォシーガの安全性および忍容性プロファイルはこれまでに報告されたプロファイルと一貫していた。 結果に関しては2022年米国心臓協会学術集会(AHA2022)で発表、Journal of the American College of Cardiology誌に掲載されている。

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高齢化率世界一の日本のコロナ禍超過死亡率が低いのは?/東京慈恵医大

 新型コロナウイルス感染症流行前の60歳平均余命が、コロナ禍超過死亡率と強く相関していたことを、東京慈恵会医科大学分子疫学研究部の浦島 充佳氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2022年10月19日掲載の報告。 新型コロナウイルス感染症は高齢者において死亡リスクがとくに高いため、世界一の高齢者大国である日本ではコロナの流行によって死亡率が高くなることが予想されていたが、実際には死亡率の増加が最も少ない国の1つである。本研究は、なぜ日本が超過死亡率を最も低く抑えることができたかを明らかにするため、コロナ流行以前(2016年など)における健康、幸福度、人口、経済などの50項目の指標と、コロナ流行中(2020年1月~2021年12月)の死亡率の変動との相関を調査した。 研究グループは、超過死亡率の判明している160ヵ国を人口の60歳以上が占める割合で4グループに分け、高齢者率が最も高い40ヵ国について、コロナ流行前の各国公表データとの関係を調査した。 主な結果は以下のとおり。・高齢者率が最も高いグループには欧米諸国、旧ソビエト連邦、東欧諸国、日本、韓国などの40ヵ国が含まれていた。総じて超過死亡率は高かったが、グループ内での開きがあり、超過死亡率がマイナスであった国は、ニュージーランド、オーストラリア、日本、ノルウェーの順であった。ロシアを含む旧ソビエト連邦や東欧諸国の超過死亡率は200を超えるなど桁違いに高かった。・50項目の指標で最も相関の強かった因子は「60歳の平均余命」で、相関係数は-0.91であった。・2番目は「2021年末までのワクチン2回接種率」で、相関係数は-0.82であった。・3番目は「国民1人当たりのGDP」で、相関係数は-0.78であった。国民1人当たりのGDPが大きい国では超過死亡率が低く、この傾向はスペイン風邪のときにも認められた。・上位3因子について多変量解析を行った結果、「60歳の平均余命」だけが有意で、他の「2021年末までのワクチン2回接種率」と「国民1人当たりのGDP」の有意性は失われた。よって、後者2因子は「60歳の平均余命」と超過死亡率との関係に対して交絡因子になっていると考えられる。・「30~70歳の心筋梗塞などの心血管疾患、脳卒中、がん、糖尿病、慢性呼吸器疾患で死亡する人口あたりの割合」は相関係数が0.90と極めて強い相関を示した。・「5歳未満の乳幼児死亡率」との強い相関は示されなかった。 同氏らは、「本調査の結果は、高齢時の長い平均余命が、質の高い医療システムとパンデミックを含む医療脅威からの回復力に関連していることを示唆している」とまとめた。

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治療抵抗性うつ病、psilocybin単回投与の有効性は/NEJM

 治療抵抗性うつ病治療への使用が検討されているpsilocybinについて、25mg単回投与は同1mg単回投与と比較して、3週時までのうつ病スコアが有意に低下したが、有害事象と関連していた。英国・COMPASS PathfinderのGuy M. Goodwin氏らが、欧州および北米の10ヵ国22施設で実施されたpsilocybinの第II相無作為化二重盲検用量設定試験の結果を報告した。NEJM誌2022年11月3日号掲載の報告。25mg vs.10mg vs.1mg単回投与の有効性/安全性を比較検証 研究グループは、2019年3月1日~2021年9月27日の期間に、臨床評価に基づき精神病性の特徴を伴わない大うつ病性障害のDSM-5診断基準を満たし、現在のうつ病エピソードに対してMGH-ATRQに基づく用量と治療期間(8週以上)による2~4回の適切な治療を行うも効果が不十分であった18歳以上の治療抵抗性うつ病患者を対象に、心理学的サポートに加えてpsilocybinの合成製剤であるCOMP360を25mg、10mgまたは1mg(対照)の単回投与を受ける群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、Montgomery-Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコア(範囲:0~60、スコアが高いほど重症度が高い)の、ベースラインから3週時までの変化量とし、25mg群と10mg群を1mg群と比較した。また、主な副次評価項目は、3週時の反応率(MADRS合計スコアがベースラインから50%以上低下[改善]した患者の割合)、3週時の寛解率(MADRS合計スコアが10以下の患者の割合)、12週時の反応持続率(3週時の反応が12週時まで持続した患者の割合)とした。 428例がスクリーニングされ、233例が無作為に割り付けられた(25mg群79例、10mg群75例、1mg群79例)。25mg単回投与、3週間でうつ病スコアが有意に低下 ベースラインの患者背景は3群で類似しており、MADRS合計スコア(平均値)は25mg群31.9、10mg群33.0、1mg群32.7であった。 主要評価項目であるベースラインから3週時までのMADRS合計スコア変化量(最小二乗平均値)は、25mg群:-12.0、10mg群:-7.9、1mg群:-5.4であり、群間差(vs.1mg群)は25mg群で-6.6(95%信頼区間[CI]:-10.2~-2.9、p<0.001)、10mg群で-2.5(-6.2~1.2、p=0.18)であった。 副次評価項目の反応率は25mg群37%、10mg群19%および1mg群18%で、オッズ比[OR](vs.1mg群)は25mg群2.9(95%CI:1.2~6.6)、10mg群1.2(0.5~3.0)、寛解率はそれぞれ29%、9%および8%(ORはそれぞれ4.8[95%CI:1.8~12.8]、1.2[0.4~3.9])、反応持続率は20%、5%および10%(オッズ比は2.2[95%CI:0.9~5.4]、0.7[95%CI:0.2~2.0])であった。 有害事象は25mg群66例(84%)、10mg群56例(75%)、1mg群57例(72%)に発現した。主な事象は頭痛、悪心、眩暈、疲労などであった。自殺念慮または自殺行為、自傷行為等の重篤な有害事象の発現率は、投与翌日(2日目)から3週時までが25mg群5%、10mg群5%、1mg群0%、3週以降12週までがそれぞれ5%、4%、1%であった。 著者は、研究の限界として実薬対照ではないこと、民族的に多様な被験者集団ではないこと、臨床的に自殺リスクが高い患者は除外されたことなどを挙げた上で、「治療抵抗性うつ病患者に対するpsilocybinの有効性および安全性を明らかにするためには、既存の治療法との比較を含めた、より大規模で長期的な臨床試験が必要である」とまとめている。

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アスピリン潰瘍出血、ピロリ除菌での予防は一時的?/Lancet

 Helicobacter pylori(H. pylori)除菌は、アスピリンによる消化性潰瘍出血に対する1次予防効果があるものの、その効果は長期間持続しない可能性があることが、英国・ノッティンガム大学のChris Hawkey氏らが英国のプライマリケア診療所1,208施設で日常的に収集された臨床データを用いて実施した、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Helicobacter Eradication Aspirin Trial:HEAT試験」の結果、明らかとなった。アスピリンによる消化性潰瘍は、H. pylori感染と関連していることが知られていた。Lancet誌2022年11月5日号掲載の報告。H. pylori陽性者約5,300例を除菌群とプラセボ群に無作為化 HEAT試験の対象は、アスピリン(1日325mg以下、過去1年で28日分の処方を4回以上)の投与を受けている60歳以上の高齢者で、スクリーニング時にH. pylori C13尿素呼気試験が陽性の患者であった。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)または胃保護薬の投与を受けていた患者は、除外された。 適格患者を、H. pylori除菌群(ランソプラゾール30mg、クラリスロマイシン500mg、メトロニダゾール400mgを1日2回7日間投与)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、試験終了(2020年6月30日)、同意撤回または死亡まで追跡調査した。試験期間中、患者、担当医師および医療従事者、リサーチナース、試験チーム、判定委員会および解析チームは、治療の割り付けに関して盲検化された。追跡調査は、プライマリケアおよび2次医療施設における電子データを用いて実施された。 主要評価項目は、definite/probable消化性潰瘍出血による入院または死亡までの時間とし、intention-to-treat集団を対象にCox比例ハザードモデルを用いて解析した。 2012年9月14日~2017年11月22日の期間に、計3万166例がH. pyloriの呼気検査を受けた。陽性者は5,367例で、このうち5,352例が無作為化された(除菌群2,677例、プラセボ群2,675例)。追跡期間中央値は、5.0年(四分位範囲[IQR]:3.9~6.4)であった。消化性潰瘍出血による入院/死亡、最初の2.5年未満は除菌群で65%低下 主要評価項目の解析の結果、Schoenfeld検定で比例ハザード性の仮定からの有意な逸脱(p=0.0068)が認められた。すなわち、Kaplan-Meier生存曲線が治療群間で早期に分離したが、その差が時間の経過と共に減少した。そこで、無作為化後2.5年未満と2.5年以降に分けて解析した結果、主要評価項目のイベント発生率は2.5年未満において、対照群と比較し除菌群で有意に低下した。definite/probable消化性潰瘍出血と判定されたエピソードは、除菌群6件(1,000人年当たり0.92[95%信頼区間[CI]:0.41~2.04])vs.対照群17件(2.61[1.62~4.19])だった(ハザード比[HR]:0.35[95%CI:0.14~0.89]、p=0.028)。 この有益性は、死亡の競合リスクで補正後も維持されたが(p=0.028)、追跡期間が長期になると消失した(無作為化後2.5年以降でのHR:1.31[95%CI:0.55~3.11]、p=0.54)。 有害事象は5,307例から報告され、最も多かった有害事象は味覚障害(787例)であった。

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妊娠高血圧症候群と長期的な児への影響(解説:三戸麻子氏)

 妊娠高血圧症候群は母児ともにadverse pregnancy outcomeの合併が多く、死亡率も高い代表的な妊娠合併症である。その影響は周産期のみならず出産後長期的な健康にも及び、妊娠高血圧症候群に罹患した女性では、将来高血圧や糖尿病などの生活習慣病や脳心血管病のリスクが高い。またその児においても、メタボリック症候群や免疫系の異常、精神神経疾患のリスクが高いことが報告されている。しかし児の出生後長期的な全死亡についてはほとんど報告がなかった。 本研究によると、妊娠高血圧症候群、なかでも重症妊娠高血圧腎症、HELLP症候群、子癇は、児の出生後長期的な全死亡と関連が認められ、その原因として心血管系疾患や消化器系疾患などが挙げられた。胎内で母体の妊娠高血圧症候群に曝露することが、児のそれらの疾患や死亡とどのように関連するか、詳細な機序は明らかではない。しかし何かしらの関連があるのは確かであると思われる。 妊娠高血圧症候群と将来の脳心血管病のリスク因子は重なる部分が多い。また長期間にわたる縦断的な研究が少ないことなどから、妊娠高血圧症候群が独立して脳心血管病のリスクとなるのか否か、また児への影響は依然として不明な部分も多い。今後は、それらの詳細な機序の解明と、妊娠前または出産後の介入によって、将来の疾病の発症を抑えることができるかどうかのエビデンスが待たれるところである。

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「知らんけど」の謎【Dr. 中島の 新・徒然草】(451)

四百五十一の段 「知らんけど」の謎だんだん寒くなってきました。11月というのは秋だと思っていましたが、もう立派な冬ですね。ところで、今年の新語・流行語大賞候補の1つが「知らんけど」だとか。「オミクロン株」「キーウ」「メタバース」などとともに、30語の中に入っています。関西発の言葉ですが、全国的に使われ始めたということかもしれません。確かに、「知らんけど」はよく使います。3日に1回くらいは言ってるかな。でも関西以外で正しく使われているのでしょうか。いささかの疑問がありますね。なので、自分自身の感覚を説明したいと思います。よくある誤解として、「知らんけど」は責任逃れだ、という説があります。でも決して無責任で言っているわけではありません。100%の確信があるとは言えないけど、80%くらいの自信はある時に使います。また、似た響きの言葉に「知らんがな」というのがありますが、これはまったく別。「知らんがな」は「そもそも興味がない」という意味です。話を「知らんけど」に戻します。「知らんけど」を決してシリアスな場面で使わないようにしましょう。万一、使ってしまったら責任逃れにしか聞こえません。たとえば大臣が国会答弁で「我が国といたしましては国民の生命、身体、財産を守るために最善を尽くす所存であります……知らんけど」と言ったりしたらクビになることでしょう。また、病状説明で「現在、重症感染症に罹患しておられますが、抗菌薬で回復するものと信じています……知らんけど」などと言うと大変なことになります。「つい言ってみた」ということのないように注意しておきましょう。さらにネットで調べてみると、私自身も知らなかった詳細な情報が飛び交っています。関西では「なんでやねん!」と「知らんけど」は双璧だ。→ いやいや、使用頻度からもインパクトからも、前者の存在感のほうが大きいです。「そうなん?」と言われたら「知らんけど」と返してしまい、「結局知らんのかい!」と締めくくられる。→ これは高度過ぎますね、かなり練習しないと使えません。ムチャクチャ詳しく説明したあとで「知らんけど」ってボケるのが正しい使い方やぞ。→ そうそう! 無意識にこういう使い方をしています。まあ言葉というのは生き物なので、全国区になったら使い方も変わってしまうかもしれません。それはそれで楽しむことにいたしましょう。最後に1句霜月は ホントは冬だ 知らんけど

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真性多血症(真性赤血球増加症)〔PV:polycythemia vera〕

1 疾患概要■ 定義真性多血症(PV)は、造血幹細胞レベルで生じる遺伝子変異により汎血球増加、特に赤血球数の著増を来す骨髄増殖性腫瘍である。■ 疫学発症率は人口10万あたり年間約2人、発症年齢中央値は65歳、男女比は約1.5:1である。■ 病因エリスロポエチン(Epo)、トロンボポエチン、顆粒球コロニー刺激因子などのサイトカインのシグナル伝達に必須なJAK2の変異により、これらレセプターの下流のシグナル伝達経路が恒常的に活性化して生じる。JAK2変異は95%以上の例に検出されるが、それ以外に、TET2、DNMT3などのエピゲノム関連分子の変異がそれぞれ10~20%、5~10%にみられる。■ 症状頭痛、頭重感、赤ら顔(深紅色の口唇、鼻尖)、発熱、体重減少、倦怠感、掻痒、骨痛などがみられる。皮膚掻痒感は入浴後に悪化することが多い。血小板増加例では、四肢末端に非対称性の灼熱感を伴う発赤腫脹を来す肢端紅痛症がみられる。触知可能な脾腫が15~20%に認められる。■ 分類血栓症の発症リスクに応じて、低リスク群(年齢60未満、かつ血栓症の既往がない)と高リスク群(年齢60歳以上、血栓症の既往の、いずれか、あるいは両方を認める)に分類する。■ 予後生命予後は比較的良好であり、10年総生存率は約85%である。10年の血栓症を生じない生存率、出血を伴わない生存率は、それぞれ約90%である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)多血、骨髄生検所見、JAK2変異の大基準のうち3項目以上、あるいは大基準の多血と骨髄生検所見に加え、小基準である血清Epo値が低値を示すときにPVと診断する。多血はPVを最初に疑う所見である。PVの診断基準では、Hb値が男性>16.5g/dL、女性>16.0g/dL、ヘマトクリット(Ht)値が男性>49%、女性>48%、もしくは循環赤血球量が予測値の25%を超えて増加している場合を多血とする。赤血球数のみならず、PVでは好中球、血小板数も増加することが多い。PVの骨髄生検所見は過形成であり、赤芽球系、顆粒球系、巨核球系細胞の3系統の細胞の増生がみられる。ただし、3系統の細胞数の比は正常と比べてほぼ同等である。巨核球の分化障害も認めない。線維化はあってもごく軽度である。JAK2変異はPVの95%以上の例に認められる。大部分はV617F変異であり、少数例はexon12の変異を示す。大多数のPVにJAK2変異を認めるため、その存在はPV診断に有用であるものの、JAK2変異はPVに特有ではなく、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症の約50%の例にも検出されることに留意が必要である。つまり、JAK2変異を認めない場合のPV診断は慎重に進めるべきであるが、逆にJAK2変異を認めた場合、PV、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症のいずれかであると言ってよい。ただし、JAK2変異の存在だけでPVとは診断できない。血清Epoは低値を示すことが多い。PV診断においてEpo値の低下の特異度は高いものの、感度は中等度である。つまり、血清Epo値が低い場合はPVである可能性が高いが、Epoが高いからといってPVを否定できるわけではない。鑑別すべき主な疾患は、相対性赤血球増加症と2次性赤血球増加症である。相対性赤血球増加症は、循環赤血球量の増大は認めないものの、脱水などによりHt値やHb値が上昇している場合をいう。嘔吐、下痢などの有無、利尿薬の服薬状況の確認が必要である。相対性赤血球増加症に分類されるストレス多血症は、中年の男性に好発し、喫煙者に多い。赤血球数やHb値、Ht値の上昇を認めるが、白血球数や血小板数は正常であり、脾腫も認めない。また、血清Epo値は上昇していることが多い。2次性赤血球増加症は、血清Epo濃度の上昇により生じる赤血球数の増加である。低酸素(高地や慢性閉塞性肺疾患、右左シャントを伴う心疾患など)が続くと、反応性に腎臓からのEpo産生が増加して、また腫瘍性にEpoが産生されると赤血球数増加を来す。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)生命予後は良好であり、治療の基本は血栓症の予防である(図)図 血栓症リスクに基づくPVの治療方針画像を拡大するはじめに心血管系合併症の危険因子(喫煙、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症など)の評価を行い、該当する場合は禁煙指導、生活習慣の改善、生活習慣病の治療を行う。増加している赤血球体積を減少させるため、原則として全例に瀉血療法を行う。ヘマトクリット値0.45未満を目標に、血圧、脈拍などの循環動態をみながら1回200~400mLの瀉血を月に1~2度のペースで行う。高齢者や心血管障害を有する例では、循環動態の急激な変化がないように、少量(100~200mL)、頻回の瀉血が望ましい。また、瀉血後に同量の補液を行うと、血行動態の変化を抑えられるだけでなく、ヘマトクリット値が希釈により低下することも期待される。これに加えて、出血や消化器潰瘍症状などの禁忌がなければ低用量アスピリン(商品名:バイアスピリン)投与により血栓症の予防をはかる。血小板数の増加がある場合、von Willebrand 因子(vWF)活性が低下していることがあり(後天性のvWF症候群)、アスピリン投与により出血を来す可能性がある。そのためvWFが30%以下の場合にはアスピリンの投与は行わない。上記に加えて、血栓症の高リスク群(年齢60歳以上、あるいは血栓症の既往がある場合)では、細胞減少療法を行う。細胞減少療法の第1選択薬はヒドロキシカルバミド(同:ハイドレア)、またはロペグインターフェロンα-2b(同:ベスレミ)である。ヒドロキシカルバミドの必要量は症例により大きく異なるため、少量から開始し、Ht<0.45となるように調節する。ロペグインターフェロンα-2bは100μgを開始用量とし、2週間に1回皮下注を行う。増量は50μgずつ行い、最大用量は500μgである。自己注射も可能である。個々の患者に応じた最大量のヒドロキシカルバミドを投与してもHt値0.45以下、白血球数10,000/μL以下、血小板数40万/μL以下にコントロールできない場合をヒドロキシカルバミド抵抗性と、ヒドロキシカルバミド投与によりHb<10g/dL、好中球数<1,000/μL、血小板数<10万/μLと血球減少が生じる場合、あるいはヒドロキシカルバミドによる下肢潰瘍などのためにヒドロキシカルバミド治療が継続できない場合を「ヒドロキシカルバミド不耐容」と呼ぶ。ヒドロキシカルバミド治療を開始された患者の20~40%はヒドロキシカルバミド抵抗性/不耐容となる。このような場合は、JAK1/2阻害剤であるルキソリチニブ(同:ジャカビ)投与により、血球数のコントロールのみならず、血栓症の減少も期待できる。1回10mgを開始用量とし、1日2回経口投与する。最大用量は1回25mg(1日50mg)である。真性多血症の3~6%は2次性の骨髄線維症へと、数%の例は急性骨髄性白血病へと病型進展する。治療が一定であるにもかかわらず経過中に血球数が減少する場合や、末梢血に芽球が出現する場合は、骨髄線維症、急性白血病への移行を疑い、骨髄生検を行う。4 今後の展望PVの生命予後は比較的良好なものの、約10~20%の例が血栓症、出血を合併する。現在用いられている血栓症のリスク分類は、細胞減少療法の適応を決めるためのものであり、標準的な治療法が選択された患者における血栓症、出血の発症リスクが明らかになることが望まれる。またロペグインターフェロンα-2bやルキソリチニブ治療により、一部の症例ではJAK2V617F allele burdenの減少が認められる。JAK2V617F allele burdenが治療前値と較べ50%以上減少した症例は、そうでない症例と較べ主要血栓症、出血、骨髄線維症や急性骨髄性白血病への進展、死亡を認めない生存率が良好であることが報告されており、血栓症の予防のみならず、腫瘍量の減少を目指す治療戦略が現実的になりつつある。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。1)日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン2024年版(第3.1版). 金原出版;2024.2)Harrison et al. WHO Classification of Tumours of Haematolopoetic and Lymphoid Tissues 5th edition. WHO;2022. p.p40-43.公開履歴初回2022年11月10日更新2025年6月30日

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PEACEを受講しよう【非専門医のための緩和ケアTips】第39回

第39回 PEACEを受講しよう緩和ケアが広がるにつれて専門誌や書籍も増え、独学でも学びやすくなりました。一方で、緩和ケアは個別性が高かったりコミュニケーションの要素が多かったり、書籍だけでは学べない部分も多くあります。今回は、そうした部分が学べる研修会をご紹介します。今日の質問緩和ケアについて学ぶには、何をすればいいでしょうか? 緩和ケアの連携は地域の実情によって異なる部分も多く、そういった面を学ぶのは本だけでは難しく感じます。ご質問いただいた方の着眼点は素晴らしいですね。おっしゃるとおり、地域の医療機関同士の連携や、在宅療養への移行などの際には地域ごとに事情が異なります。こうした座学では学びにくい領域って、どのように学べばよいのでしょうか? そんな方にお薦めなのが、今回ご紹介する「PEACE」という研修会です。PEACEの正式名称は、「がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会(Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment for Continuous medical Education)」と長いため、PEACEの略称や単に「緩和ケア研修会」と呼ばれています。この研修会は、厚生労働省の委託事業として日本緩和医療学会と日本サイコオンコロジー学会がコンテンツを作成しています。事前学習としてE-learningを受講し、グループワークを含む集合研修に1日参加する、というのがその内容。対象は「がん等の診療に携わるすべての医師・歯科医師、緩和ケアに従事するその他の医療従事者」です。E-learning緩和ケア概論/全人的苦痛と包括的アセスメント/がん疼痛/呼吸困難/消化器症状/気持ちのつらさ/せん妄/コミュニケーション/療養場所の選択と地域連携/ACP、看取りのケア、家族・遺族のケアが必修コンテンツです。集合研修コミュニケーションのロールプレイ/全人的苦痛や症状緩和に関するケーススタディ/療養場所の選択と地域連携に関するケーススタディ/患者を支える仕組みについてのレクチャーといった、一人では学びにくいテーマのグループワークが中心です。がん拠点病院では、年に1回以上PEACEを開催することが施設要件になっているため、どの地域でも受講可能です。開催スケジュールは各都道府県の担当部署のサイトに公開されており、「都道府県名+緩和ケア講習会」などで検索すれば出てきます。地域の基幹病院の緩和ケアに関わる医療者と一緒に学ぶことは、連携構築の上での大きな機会となるでしょう。新型コロナの影響で集合研修をオンラインで開催するケースもあり、遠方でも参加しやすくなっています。少し注意が必要なのが内容の「レベル感」です。あくまでも基本的な緩和ケアについて学ぶ研修会であり、受講者の多くが初期研修医を含めた若手です。ベテランの方からすると少し簡単に感じられるかもしれません。一人では学べないことを学び、顔の見える関係をつくるための貴重な機会として、ぜひPEACEを活用してみてください。今回のTips今回のTips地域のがん拠点病院で開催されているPEACEを受講してみましょう。PEACEプロジェクトホームページ/日本緩和医療学会

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第19回 マイナ保険証、みんな誤解している?

DXにはマイナ保険証の普及が不可欠「DX」って書くと何かカッコイイですよね。これは「デジタルトランスフォーメーション」のことで、要はデジタル化で仕事を効率化すること、をナウい感じで言ってみただけです。知っておくと、かなりナウいです。現在の紙ベースの健康保険証を2024年秋に廃止して、マイナ保険証に一本化する見込みですが(表)、「マイナンバーカードから個人情報が漏洩する!」と一部SNSでは炎上の様相を呈しています。どうも、マイナンバーカードもマイナ保険証も、誤解している人が多いようです。表. マイナンバーカードの運用予定マイナ保険証は2023年4月から始まる「医療機関におけるオンライン資格確認の導入原則義務化」の流れを受けて登場したものです。もちろん、現在使っている紙やカードの保険証もしばらく使えますが、保険証の運用はなかなかアナログになり、マイナ保険証でない場合手入力になってしまいます。2つのシステムが並列すると、DX化と真逆にいきますから、紙やカードの保険証はエイヤっと廃止されることになります。もちろん、オンライン資格確認の導入原則義務化は、「原則」ですから、医療機関の任意です。システムを導入しなくても、医療機関に不利益や罰則はありません。サイバー攻撃の事件もあって、オンラインに自院をつなげてしまうことに慎重な病院もあります。さて、マイナ保険証に関する誤解についてみていきましょう。マイナ保険証の誤解マイナ保険証として使うマイナンバーカードを落としたら、診療情報が全部漏れてしまうという恐怖を持っている人がいます。ICチップには、そもそも所得や健康などの情報は入っていません。マイナンバーカードに書かれてあるものと同じ情報だけしか入っていません。この点は免許証などと同じなので、マイナ保険証にしたからといって個人情報が上乗せでマイナンバーカードに追加されていくわけではありません。中央データベースがハッキングされたら、個人情報が全部漏れるという噂もありました。学校の生徒の個人情報のように、1ヵ所にまとめて個人情報が掲載されているわけではなく、分散管理しているので、ハッキングされても基本的に大丈夫のようです。マイナ保険証を銀行と紐付けすると、税金や資産が国に把握されるのではないかという不安を持っている人がいます。しかしこれも大丈夫です。すでに、税務署は個人の資産を全部把握していますので(笑)。確定申告もしやすくなりますし、マイナンバーカードに紐付けしていったほうがよいです。診療情報や薬剤情報をデータベースで管理して、処方箋を電子化する「電子処方箋」は、このマイナンバーカードにかかわるDXの皮切りになる制度です。私たち医療従事者の仕事が減る仕組みの1つですから、デジタル庁には頑張っていただきたいところです。

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近年の米国うつ病有病率―2015~20年調査

 うつ病は一般的に認められる精神疾患だが、致死的な状態を引き起こす可能性がある。COVID-19パンデミックによるうつ病問題の深刻化が、いくつかのデータで示されている。米国・ニューヨーク市立大学のRenee D. Goodwin氏らは、米国におけるCOVID-19パンデミックがメンタルヘルスへ及ぼす影響に対し包括的に対処するため、パンデミック前のうつ病有病率の定量化を試みた。その結果、2015~19年にかけて、うつ病治療件数が相応に増加していないにもかかわらず、うつ病患者の増加が認められており、2020年には過去1年間のうつ病患者数が米国人の10人に1人、青年および若年成人では5人に1人にまで増加していることが明らかとなった。結果を踏まえ著者らは、このメンタルヘルスに関する危機的状況に対処するため、エビデンスに基づく予防や介入、多面的な公衆衛生キャンペーンなどの対策が早急に必要であろうと述べている。American Journal of Preventive Medicine誌2022年11月号の報告。 12歳以上の米国人を対象とした代表的な研究である、薬物使用と健康に関する全国調査(National Survey on Drug Use and Health)の2015~20年のデータを用いて分析を行った。2015~19年における過去1年間のうつ病有病率および介助が必要なうつ病患者数を推定するため、ロバスト標準誤差(SE)を用いたポアソン回帰により時間傾向を評価した。2020年の点推定を算出したが、データの収集法が異なるため、統計傾向分析には含めないこととした。 主な結果は以下のとおり。・2020年において、過去1年間のうつ病エピソードを経験していた12歳以上の米国人は、9.2±0.31%であった。・うつ病の年齢分布は、18~25歳の若年成人(17.2±0.78%)が最も多く、次いで12~17歳の青年(16.9±0.84%)であった。・うつ病の有病率は、性別、人種/民族、収入状況、教育歴のほぼすべてのグループにおいて増加が認められたが、青年および若年成人においては最も急速に増加していた。・35歳以上のうつ病有病率は変化が認められておらず、全研究期間を通じて介助が必要なうつ病有病率は低いままであった。

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乳がんの再発恐怖を認知行動療法アプリが軽減/名古屋市⽴⼤学ほか

 患者⾃⾝で認知⾏動療法を実施できるスマートフォンアプリを⽤いることで、乳がん患者の再発に対する恐怖が軽減したことを、名古屋市⽴⼤学⼤学院精神・認知・⾏動医学分野の明智 ⿓男氏らの共同研究グループが発表した。スマートフォンのアプリを用いることで通院などの負担を⼤きく軽減でき、場所や時間を選ばずに苦痛を和らげるための医療を受けられるようになることが期待される。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版11月2日掲載の報告。 先⾏研究において、問題解決療法アプリ「解決アプリ」と⾏動活性化療法アプリ「元気アプリ」(下欄参照)を京都⼤学、国立精神・神経医療研究センターが共同で開発し、乳がん患者の再発に対する恐怖を和らげる可能性があることが⼩規模の臨床試験で⽰されていた。本研究では、乳がん患者を、通常の治療に加えて上記2つのアプリを使⽤する群と使⽤しない群に無作為に割り付け、8週後に再発に対する恐怖が和らぐかどうかを検討した。 参加対象は20~49歳の女性で、⼿術後1年以上再発のない乳がん患者。主要評価項目は8週までの再発恐怖で、副次的評価項目は24週までの抑うつと心理的ニード(⼼理的側⾯に関するケアの必要性)、外傷後成長などであった。 主な結果は以下のとおり。・447例が研究に参加し、アプリ使⽤群223例とアプリを使⽤しない群224例に割り付けられた。年齢の中央値は45歳で、約半数はフルタイムで就労していた。・アプリを使用しない群に比べ、アプリ使⽤群では、開始から4週時点で再発に対する恐怖が統計学的に有意に下がり、その効果は8週時点においても継続した(p<0.001)。8週と24週における再発恐怖に差はみられなかったことから、その効果は24週時点も継続している可能性がある。・抑うつと⼼理的ニードもアプリ使用群では有意に改善し、24週まで継続した(それぞれp<0.05)。外傷後成長では有意差はみられなかった。・⼀部の参加者に聞き取り調査を⾏った結果、副作⽤はみられなかった。 研究グループは、「分散型臨床試験という新たな研究基盤を開発して研究を行った結果、多くのフルタイムで就労されている方に参加いただくことができた。これは、がんの治療のみならず、患者さんの生活の質の向上に必要な支持療法を受けながら、仕事も両立させることを可能とすることを意味する。今後、分散型臨床試験の基盤を広く社会に実装していくことで、患者さんの負担を、体力的な側面のみならず、時間的にも経済的にも軽減しながら、支持療法の開発を加速することが可能である」とコメントした。―――――――――――――――――――<解決アプリ>7つのセッション(1つの導入セッション、4つの問題解決療法の5段階を学習するセッション、1つのトレーニングセッション、1つのエピローグセッション)から構成される。最短で4週間で完了でき、各セッションに要する時間は30分程度。患者の日常生活上の問題を分類し、具体的に達成可能な目標を定め、解決策をブレインストーミングし、解決策のメリットとデメリットを比較して、最終的に実際にやってみたい解決策を選ぶ方法を習得していく。<元気アプリ>2セッション(行わなくなった行動に気づき再挑戦するセッションと新たな行動に挑戦するセッション)から構成される。終了までに最短で2週間、標準で8週間を要する。各セッションに要する時間は週30分程度。「行動が変われば気分も変わる」という原理に基づき、喜びや達成感のある活動をすることの重要性についての学習を行い、やめてしまった楽しい活動や今までやったことのない楽しそう/新しそうな活動を実際にやってみて、その結果を評価するということを繰り返す。―――――――――――――――――――

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