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ソトラシブ、KRAS p.G12C変異陽性進行膵がんに有望/NEJM

 ソトラシブは、治療歴のあるKRAS p.G12C変異陽性進行膵がん患者に対して抗腫瘍活性を示し、安全性プロファイルは良好であることを、米国・デューク大学医療センターのJohn H. Strickler氏らが、国際共同第I/II相単群非盲検試験「CodeBreaK 100試験」の結果、報告した。ソトラシブは、KRAS G12Cを特異的かつ不可逆的に阻害する低分子化合物で、米国において、少なくとも1回の全身性の治療歴があるKRAS p.G12C変異陽性で局所進行または転移を有する非小細胞肺がんの治療薬として2021年5月に迅速承認された。KRAS p.G12C変異は膵がんの約1~2%に認められるが、治療歴があるKRAS p.G12C変異陽性膵がん患者におけるソトラシブの安全性と有効性はこれまで明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2022年12月21日号掲載の報告。既治療患者を対象にソトラシブの安全性と有効性を検討 研究グループは、少なくとも1回の全身治療歴があるKRAS p.G12C変異陽性の局所進行または転移を有する膵がん成人患者(18歳以上)を対象に、安全性および副作用プロファイルを評価するとともに推奨用量を決定し(第I相試験)、第I相試験で推奨された用法用量(1日1回960mg経口投与)の有効性を評価した(第II相試験)。両試験相とも、増悪、許容できない副作用の発現または同意撤回等までソトラシブの投与を継続した。 本論では、第I相および第II相を併合したソトラシブの安全性および有効性の解析結果が報告されている。 有効性の主要評価項目は、RECIST 1.1に基づく盲検下独立中央画像判定機関(BICR)判定による客観的奏効率(ORR、完全奏効+部分奏効)であった。そのほか、奏効期間、客観的奏効までの期間、病勢コントロール率(客観的奏効+病勢安定)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性について評価された。ORR 21%、PFS 4ヵ月、OS 6.9ヵ月、治療関連有害事象発現率は42% 2019年7月3日~2021年1月25日の間に、7ヵ国25施設において計38例(第I相12例、第II相26例)が登録され、全例にソトラシブ960mgの1日1回経口投与が行われた。患者背景は、男性29例(76%)、年齢中央値65.5歳(範囲:45~81)、21例(55%)が初診時にIV期で、登録時、全例が転移性病変を有しており、治療歴は中央値で2ライン(範囲:1~8)であった。 38例中8例(21%、95%信頼区間[CI]:10~37)で、BICR判定による客観的奏効が確認された。8例全例ともに部分奏効で、完全奏効例はなかった。 PFS中央値は4.0ヵ月(95%CI:2.8~5.6)、追跡期間中央値16.8ヵ月(95%CI:9.5~評価不能)におけるOS中央値は6.9ヵ月(95%CI:5.0~9.1)であった。 治療関連有害事象は、全Gradeで16例(42%)に認められ、6例(16%)はGrade3であった。主なGrade3の治療関連有害事象は、下痢および疲労(各2例[5%])であった。Grade4以上、死亡または投与中止に至る治療関連有害事象は認められなかった。

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M4受容体選択的PAMのemraclidine、統合失調症に有望/Lancet

 新規開発中のemraclidineは、統合失調症に対し漸増レジメンなしで1日1回経口投与が可能な治療薬として有効であり、安全性および副作用プロファイルも良好であることが示された。米国・イェール大学のJohn H. Krystal氏らが、第Ib相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。emraclidineは、統合失調症治療薬として新規開発中の脳浸透性ムスカリンM4受容体選択的ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)である。今回の結果を踏まえて著者は、「統合失調症に対するemraclidineの有効性、安全性および忍容性を確認するため、さらなる研究が必要である」とまとめている。Lancet誌2022年12月17日号掲載の報告。2つのパートでemraclidineの安全性と忍容性を検証 試験は2つのパートで構成され、精神疾患簡易構造化面接法(M.I.N.I.)でDSM-5診断基準により統合失調症と診断され、スクリーニング時に錐体外路症状が正常から軽度と判定された18~50歳(パートA)または18~55歳(パートB)の患者を適格とした。 パートAは、米国の1施設にて症状が安定している統合失調症患者を5つのコホートに分け、emraclidineの5mg、10mg、20mgまたは30mgを1日1回投与、20mgを1日2回投与(40mg/日)、およびプラセボを段階的に投与して、emraclidineの安全性と忍容性を評価した。 パートBは、米国5施設にて無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施し、急性期の患者を、emraclidine 30mgを1日1回投与、または20mgを1日2回投与(パートAにおいて設定された用量)、またはプラセボ投与に1対1対1の割合で無作為に割り付け、6週間経口投与した。 主要評価項目は、安全性解析対象集団(emraclidineまたはプラセボを少なくとも1回投与された患者)における安全性および忍容性であった。30mgの1日1回投与、安全性および副作用プロファイルが良好 パートAでは、2019年9月23日〜2020年9月17日の期間に118例が適格性を評価され、49例が5つのコホートに無作為に割り付けられた。44例が試験を完遂し、36例がemraclidine、8例がプラセボの投与を受けた。emraclidineの投与により収縮期血圧および拡張期血圧がわずかながら上昇したが、いずれも臨床的な意義はなく、有害事象との関連もなかったことから、2つの高用量(30mg 1日1回投与および20mg 1日2回投与)がパートBの用量として選択された。 パートBでは、2020年10月12日〜2021年5月7日の期間に、148例が適格性を評価され、81例がemraclidine 30mg 1日1回群(27例)、20mg 1日2回群(27例)、またはプラセボ群(27例)に無作為化された。有害事象の発現率は、emraclidine 30mg 1日1回群52%(14/27例)、20mg 1日2回群56%(15/27例)、プラセボ群52%(14/27例)であり、臨床評価および体重変化も各群で類似していた。 主な有害事象は頭痛であった(emraclidine群28%[15/54例]、プラセボ群26%[7/27例])。emraclidine群で投与開始初期に、軽度で一過性の血圧および心拍数上昇が認められたが、経時的に低下し、6週時には臨床的に意義はないものと見なされた。

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2023年になりました!【Dr. 中島の 新・徒然草】(458)

四百五十八の段 2023年になりました!この新・徒然草でも毎年のように今年の目標、といったことを書いています。振り返ってみると、2017年や2018年には「とくに目標なし」と書いていました。2023年の今年は「積極的に目標なし」ということにしたいと思います。というのも、中田敦彦のYouTube大学に感化されたからです。実は、2022年12月10日と11日の動画の中で面白い本が紹介されていました。『限りある時間の使い方』(オリバー・バークマン著)です。この動画の中で中田は、オリバー・バークマンの言葉を引用しています。つまり、「目標を立てるな、やりたい事はすぐにやれ」ということです。そもそも現代に生きるわれわれは、2つの呪縛に囚われているのだとか。目標達成マインドと生産性マインドです。目標達成マインドというのは、どうしても目標を立てずにはいられない心のこと。たとえば、TOEICの点数とか体重とか。中田の場合だと、YouTubeの登録人数がそれにあたるそうです。300万人を達成したら次は400万人。400万人の次は500万人、とキリがありません。われわれだと仕事を片付けたり貯金をしたりすることなどでしょうか。今は忙しいしお金もない。でも、目標を達成したらビーチでのんびりしたいなあ。そういうのが典型的ですね。中田に言わせれば、それは駄目な発想。「今すぐビーチでのんびりしろ!」というのが正しいそうです。実際、定年になり、お金も出来たとしても、ビーチに行くには年を取り過ぎです。それに高齢者は町内会やら自らの病院受診で案外忙しい。であれば、今すぐビーチ!今……はちょっと寒そうなので、現実には今年の夏ですね。目標達成マインドのほかに、もう1つ解放されるべき呪縛があります。それが生産性マインドです。人間、無理に何か生産する必要はありません。楽しい事はすべて生産性が無い、趣味がお金を生んではならない!このように中田は言っています。たとえば鉄道模型を集める事。これは純粋に楽しい。その模型が何個になるまで楽しくない、ということはありません。鉄道模型を触っている今が楽しいわけです。つまり、目標も要らないし、生産性も考えなくてもいい。こういった何の意味もない事を直ちに始める。それが大切なわけです。とはいえ、「生産性のない楽しい事を今すぐやれ!」と急に言われても困りますよね。私もこれまで考えてこなかったので、すぐに思い付きません。せめて、生産性のない事に罪悪感を持つ必要もない、と考えるくらいでしょうか。というわけで、2023年は「生産性のない楽しい事」を探してみたいと思います。最後に1句年明けて 無駄で楽しい 事さがせ!

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褐色細胞腫・パラガングリオーマ〔PPGL:pheochro mocytoma/paraganglioma〕

1 疾患概要褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGL)は副腎髄質または傍神経節のクロム親和性細胞から発生するカテコールアミン産生腫瘍で、前者を褐色細胞腫、後者をパラガングリオーマ、総称して「褐色細胞腫・パラガングリオーマ」と呼ぶ。カテコールアミン過剰分泌による症状と腫瘍性病変による症状がある。カテコラミン過剰により、動悸、頭痛などの症状、高血圧、糖代謝異常などの種々の代謝異常、心血管系合併症、さらには各種の緊急症(高血圧クリーゼ、たこつぼ型心筋症による心不全、腫瘍破裂によるショックなど)を呈することがある。すべてのPPGLは潜在的に悪性腫瘍の性格を有し、実際、約10〜15%は悪性・転移性を示す。それ故、早期の適切な診断と治療が極めて重要である。原則として日本内分泌学会「褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン2018」1)(図)に基づき、診断と治療を行う。図 褐色細胞腫・パラガングリオーマの診療アルゴリズム画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ PPGLを疑う所見カテコラミン過剰による頭痛、動悸、発汗、顔面蒼白、体重減少、悪心・嘔吐、心筋梗塞類似の胸痛、不整脈などの多彩な症状を示す。肥満はまれである。高血圧を約85%に認め、持続型、発作型、混合型があるが、特に発作性高血圧が特徴的である。持続型では治療抵抗性高血圧の原因となる。発作型では各種刺激(運動、ストレス、過食、排便、飲酒、腹部触診、メトクロプラミド[商品名:プリンペラン]静注など)で高血圧発作が誘発される(高血圧クリーゼ)。さらに、急性心不全、肺水腫、ショックなどを合併することもある。発作型の非発作時には、まったくの「無症候性」であることも少なくない。また、高血圧をまったく呈さない無症候性や、逆に起立性低血圧を示すこともある。副腎や後腹膜の偶発腫瘍として発見される例も多い。■ スクリーニングの対象PPGLは二次性高血圧の中でも頻度が少なく、希少疾患に位置付けられるため、全高血圧でのスクリーニングは、費用対効果の観点から現実的ではない。PPGLガイドラインでは、特に疑いの強いPPGL高リスク群(表)での積極的なスクリーニングを推奨している。表 PPGL高リスク群1)PPGLの家族歴ないし既往歴(MEN、Von Hippel-Lindau病など)のある例2)特定の条件下の高血圧(発作性、治療抵抗性、糖尿病合併、高血圧クリーゼなど)3)多彩な臨床症状(動悸、発汗、頭痛、胸痛など)4)副腎偶発腫特に近年、副腎偶発腫瘍、無症候例の頻度が増加しているため、慎重な鑑別診断が必須である。スクリーニング方法カテコールアミン過剰の評価に際しては、運動、ストレス、体位、食品、薬剤などの測定値に影響する要因を考慮する必要がある。まず、外来でも実施可能な血中カテコールアミン(CA)分画(正常上限の3倍以上)、随時尿中メタネフリン分画(メタネフリン、ノルメタネフリン)(正常上限の3倍以上または500ng/mg・Cr以上)の増加を確認する。メタネフリン、ノルメタネフリンはカテコールアミンの代謝産物であり、随時尿でも安定であるため、スクリーニングや発作型の診断に有用である。近年、海外で第1選択である血中遊離メタネフリン分画も実施可能となったが、海外とは測定法が異なるため注意を要する。機能診断法上記のスクリーニングが陽性の場合、24時間尿中カテコールアミン分画(≧正常上限の2倍以上)、24時間尿中総メタネフリン分画(正常上限の3倍以上)の増加を確認する。従来実施された誘発試験は著明な高血圧を来すため推奨されない。アドレナリン優位の腫瘍は褐色細胞腫、ノルアドレナリン優位の腫瘍はパラガングリオーマが多い。画像診断臨床的にPPGLが疑われる場合は腫瘍の局在、広がり、転移の有無に関する画像診断(CT、MRI)を行う。約90%は副腎原発で局在診断が容易であり、副腎偶発腫瘍としての発見も多い。約10%はPGLで時に局在診断が困難なため、CT、 MRI、123I-MIBGシンチグラフィなどの複数のモダリティーを組み合わせる。(1)CT副腎腫瘍確認の第1選択。造影剤使用はクリーゼ誘発の可能性があるため、わが国では原則禁忌であり、実施時には患者への説明・同意とフェントラミンの準備が必須となる。(2)MRI副腎皮質腫瘍との鑑別診断、頭頸部病変、転移性病変の診断に有用である。(3)123I-MIBGシンチグラフィ疾患特異性が高いが偽陰性、偽陽性がある。PGLや転移巣の診断にも有用である。ヨウ化カリウムによる甲状腺ブロックを行う。(4)18F-FDG PET多発性病変や転移巣検索に有用である。病理学的診断(1)良・悪性を鑑別する病理組織マーカーは未確立である。組織所見とカテコールアミン分泌パターンを組み合わせたスコアリング(GAPP)が悪性度と予後判定に有用とされる。(2)コハク酸脱水素酵素サブユニットB(SDHB)の免疫染色の欠如はSDHx遺伝子変異の存在を示唆する。遺伝子解析(1)PPGLの30~40%が遺伝性で、19種類の原因遺伝子が報告されている2)。(2)若年発症(35歳未満)、PGL、多発性、両側性、悪性では生殖細胞系列の遺伝子変異が示唆される2)。(3)SDHB遺伝子変異は遠隔転移が多いため悪性度評価の指標となる。(4)全患者において遺伝子変異の頻度と臨床的意義、遺伝子解析の利益と不利益の説明を行うことが推奨されるが、必須ではなく、[1]遺伝カウンセリング、[2]患者の自由意思による判断、[3]質の担保された解析施設での実施が重要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)過剰カテコールアミンを阻害する薬物治療と手術による腫瘍摘除が治療原則である。1)薬物治療α1遮断薬が第1選択で、効果不十分な場合、Ca拮抗薬を併用する。頻脈・頻脈性不整脈ではβ遮断薬を併用するが、α1遮断薬に先行しての単独投与は禁忌である。循環血漿量減少に対して、術前に高食塩食あるいは生理食塩水点滴を行う。α1遮断薬でのコントロール不十分な場合はカテコールアミン合成阻害薬メチロシン(商品名:デムサー)を使用する。2)外科的治療小さな褐色細胞腫では腹腔鏡下副腎摘除術、悪性度が高い例では開腹手術を施行する。潜在的に悪性であることを考慮して、腫瘍被膜の損傷に注意が必要である。家族性PPGLや対側副腎摘除後の症例では副腎部分切除術を検討する。悪性の可能性があるため、全例で少なくとも術後10年間、悪性度が高いと判断される高リスク群では生涯にわたる経過観察が推奨される。3)悪性PPGL131I-MIBG内照射、CVD化学療法、骨転移に対する外照射などの集学的治療を行う。治癒切除が困難でも、原発巣切除術による予後改善が期待される。■ 診断と治療のアルゴリズム上述の日本内分泌学会診療ガイドラインの診療アルゴリズム(図)を参照されたい。PPGL高リスク群で積極的にスクリーニングを行う。外来にて血中カテコラミン、随時尿中メタネフリン分画などを測定、疑いが強ければ、蓄尿でのCA分画と画像診断を行う。内分泌異常と画像所見が合理的に一致していれば、典型例での診断は容易である。無症候性、カテコールアミン産生能が低い例、腫瘍の局在を確認できない場合の診断は困難で、内分泌検査の反復、異なるモダリティーの画像診断の組み合わせが必要である。単発性病変であれば、α1ブロッカーによる適切な事前治療後、腫瘍摘出術を行う。術後、長期にわたり定期的に経過観察を要する。悪性・転移性の場合は、ガイドラインに準拠して集学的な治療を行う。診断と治療は専門医療施設での実施が推奨される。4 今後の展望今後解決すべき課題は以下の通りである。PPGL疾患概念の変遷:分類、神経内分泌腫瘍との関連診療アルゴリズムの改変診断基準の精緻化機能検査:遊離メタネフリン分画の位置付け画像検査:オクトレオチドスキャンの位置付け、68Ga-DOTATEシンチの応用遺伝子検査の臨床的適応頸部パラガングリオーマの診断と治療内科的治療:デムサの適応と治療効果核医学治療:123I-MIBG、ルテチウムオキソドトレオチド(商品名:ルタテラ)の適応と実態5 主たる診療科初回受診診療科は一般的に代謝・内分泌科、循環器内科、泌尿器科、腎臓内科など多岐にわたるが、以下の場合には専門医療施設への紹介が望ましい。(1)PPGLの家族歴・既往歴のある患者(2)高血圧クリーゼ、治療抵抗性高血圧、発作性高血圧などの患者(3)副腎偶発腫瘍で基礎疾患が不明な場合(4)PPGLの局所再発や遠隔転移のある悪性PPGL(5)遺伝子解析の実施を考慮する場合6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難治性副腎疾患プロジェクト(医療従事者向けのまとまった情報)1)成瀬光栄、他. 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業「褐色細胞腫の実態調査と診療指針の作成」研究班 平成22年度報告書.2010.2)Lenders JW、 et al. J Clin Endocrinol Metab. 2014;99:1915-1942.3)日本内分泌学会「悪性褐色細胞腫の実態調査と診療指針の作成」委員会(編).褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン2018.診断と治療社;2018.公開履歴初回2023年1月5日

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ARNi【心不全診療Up to Date】第4回

第4回 ARNiKey PointsARNi誕生までの長い歴史をプレイバック!ARNiの心不全患者に対するエビデンス総まとめ!ARNiの認知機能への影響は?はじめに第4回となる今回は、第1回で説明した“Fantastic Four”の1人に当たる、ARNiを取り上げる。第3回でSGLT2阻害薬の歴史を振り返ったが、実はこのARNiも彗星のごとく現れたのではなく、レニンの発見(1898年)から110年以上にわたる輝かしい一連の研究があってこその興味深い歴史がある。その歴史を簡単に振り返りつつ、この薬剤の作用機序、エビデンス、使用上の懸念点をまとめていきたい。ARNi開発の歴史:なぜ2つの薬剤の複合体である必要があるのか?ARNiとは、Angiotensin Receptor-Neprilysin inhibitorの略であり、アンジオテンシンII受容体とネプリライシンを阻害する新しいクラスの薬剤である。この薬剤を理解するには、心不全の病態において重要なシステムであるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)とナトリウム利尿ペプチド系(NPS)を理解することが重要である(図1)。アンジオテンシンII受容体は説明するまでもないと思われるが、ネプリライシン(NEP)はあまり馴染みのない先生もおられるのではないだろうか。画像を拡大するネプリライシンとは、さまざまな心保護作用のあるナトリウム利尿ペプチド(ANP、BNP、 CNP)をはじめ、ブラジキニン、アドレノメデュリン、サブスタンスP、アンジオテンシンIおよびII、エンドセリンなどのさまざまな血管作動性ペプチドを分解するエンドペプチダーゼ(酵素)のことである。その血管作動性ペプチドにはそれぞれに多様な作用があり、ネプリライシンを阻害することによるリスクとベネフィットがある(図2)。つまり、このNEP阻害によるリスクの部分(アンジオテンシンIIの上昇など)を補うために、アンジオテンシン受容体も合わせて阻害する必要があるというわけである。画像を拡大するそこでまずはACEとNEPの両方を阻害する薬剤が開発され1)、このクラスの薬剤の中で最も大規模な臨床試験が行われた薬剤がomapatrilatである。この薬剤の心不全への効果を比較検証した第III相試験OVERTURE(Omapatrilat Versus Enalapril Randomized Trial of Utility in Reducing Events)、高血圧への効果を比較検証したOCTAVE(Omapatrilat Cardiovascular Treatment Versus Enalapril)にて、それぞれ心血管死または入院(副次評価項目)、血圧をエナラプリルと比較して有意に減少させたが、血管性浮腫の発生率が有意に多いことが報告され、市場に出回ることはなかった。これはomapatrilatが複数のブラジキニンの分解に関与する酵素(ACE、アミノペプチダーゼP、NEP)を同時に阻害し、ブラジキニン濃度が上昇することが原因と考えられた。このような背景を受けて誕生したのが、血管性浮腫のリスクが低いARB(バルサルタン)とNEP阻害薬(サクビトリル)との複合体であるARNi(サクビトリルバルサルタン)である。この薬剤の慢性心不全(HFrEF)への効果をエナラプリル(慢性心不全治療薬のGold Standard)と比較検証した第III相試験がPARADIGM-HF (Prospective Comparison of ARNi With ACE Inhibitors to Determine Impact on Global Mortality and Morbidity in HF)2)である(図3、表1)。この試験は、明確な有効性と主要評価項目が達成されたことに基づき、早期終了となった。つまり、ARNiは、長らく新薬の登場がなかったHFrEF治療に大きな”PARADIGM SHIFT”を起こすきっかけとなった薬剤なのである。画像を拡大する画像を拡大するARNiの心不全患者に対するエビデンス総まとめARNiの心不全患者を対象とした主な臨床試験は表1のとおりで、実に多くの無作為化比較試験(RCT)が実施されてきた。2010年、まずARNiの心血管系疾患に対する有効性と安全性を検証する試験(proof-of-concept trial)が1,328例の高血圧患者を対象に行われた3)。その結果、バルサルタンと比較してARNiが有意に血圧を低下させ、咳や血管浮腫増加もなく、ARNiは安全かつ良好な忍容性を示した。その後301人のHFpEF患者を対象にARNiとバルサルタンを比較するRCTであるPARAMOUNT試験が実施された(表1)4)。主要評価項目である投与開始12週後のNT-proBNP低下量は、ARNi群で有意に大きかった。36週後の左室充満圧を反映する左房容積もARNiでより低下し、NYHA機能分類もARNiでより改善された。そして満を持してHFrEF患者を対象に実施された大規模RCTが、上記で述べたPARADIGM-HF試験である2)。この試験は、8,442例の症候性HFrEF患者が参加し、エナラプリルと比較して利尿薬やβ遮断薬、MR拮抗薬などの従来治療に追加したARNi群で主要評価項目である心血管死または心不全による入院だけでなく、全死亡、突然死(とくに非虚血性心筋症)も有意に減少させた(ハザード比:主要評価項目 0.80、全死亡 0.84、突然死 0.80)。本試験の結果を受け、2015年にARNiは米国および欧州で慢性心不全患者の死亡と入院リスクを低下させる薬剤として承認された。このPARADIGM-HF試験のサブ解析は50本以上論文化されており、ARNiのHFrEFへの有効性がさまざまな角度から証明されているが、1つ注意すべき点がある。それは、サブグループ解析にてNYHA機能分類 III~IV症状の患者で主要評価項目に対する有効性が認められなかった点である(交互作用に対するp値=0.03)。その後、NYHA機能分類IVの症状を有する進行性HFrEF患者を対象としたLIFE(LCZ696 in Advanced Heart Failure)試験において、統計的有意性は認められなかったものの、ARNi群では心不全イベント率が数値的に高く、進行性HF患者ではARNiが有効でない可能性をさらに高めることになった5)。この結果を受けて、米国心不全診療ガイドラインではARNiの使用がNYHA機能分類II~IIIの心不全患者にのみClass Iで推奨されている(文献6の [7.3.1. Renin-Angiotensin System Inhibition With ACEi or ARB or ARNi])。つまり、早期診断、早期治療がきわめて重要であり、too lateとなる前にARNiを心不全患者へ投与すべきということを示唆しているように思う。ではHFpEFに対するARNiの予後改善効果はどうか。そのことを検証した第III相試験が、PARAGON-HF(Prospective Comparison of ARNi With ARB Global Outcomes in HF With Preserved Ejection Fraction)である7)。本試験では、日本人を含む4,822例の症候性HFpEF患者を対象に、ARNiとバルサルタンとのHFpEFに対する有効性が比較検討された。その結果、ARNiはバルサルタンと比較して主要評価項目(心血管死または心不全による入院)を有意に減少させなかった(ハザード比:0.87、p値=0.06)。ただ、サブグループ解析において、女性とEF57%(中央値)以下の患者群については、ARNiの有効性が期待できる結果(交互作用に有意差あり)が報告され、大変話題となった。性差については、循環器領域でも大変重要なテーマとして現在もさまざまな研究が進行中である8,9)。EFについては、その後PARADIGM-HF試験と統合したプール解析によりさらに検証され、LVEFが正常値(約55%)以下の心不全症例でARNiが有用であることが報告された10)。これらの知見に基づき、FDA(米国食品医薬品局)は、ARNiのHFpEF(とくにEFが正常値以下の症例)を含めた慢性心不全患者への適応拡大を承認した(わが国でも承認済)。このPARAGON-HF試験のサブ解析も多数論文化されており、それらから自分自身の診療での経験も交えてHFpEFにおけるARNiの”Sweet Spot”をまとめてみた(図4)。とくに自分自身がHFpEF患者にARNiを処方していて一番喜ばれることの1つが息切れ改善効果である11)。最近労作時息切れの原因として、HFpEFを鑑別疾患にあげる重要性が叫ばれているが、BNP(NT-proBNP)がまだ上昇していない段階であっても、労作時には左室充満圧が上がり、息切れを発症することもあり、運動負荷検査をしないと診断が難しい症例も多く経験する。そのような症例は、だいたい高血圧を合併しており、もちろんすぐに運動負荷検査が施行できる施設が近くにある環境であればよいが、そうでなければ、ARNiは高血圧症にも使用できることもあり、今まで使用している降圧薬をARNiに変更もしくは追加するという選択肢もぜひご活用いただきたい。なお、ACE阻害薬から変更する場合は、上記で述べた血管浮腫のリスクがあることから、36時間以上間隔を空けるということには注意が必要である。それ以外にも興味深いRCTは多数あり、表1を参照されたい。画像を拡大するARNi使用上の懸念点ARNiは血管拡張作用が強く、それが心保護作用をもたらす理由の1つであるわけだが、その分血圧が下がりすぎることがあり、その点には注意が必要である。実際、PARADIGM-HF試験でも、スクリーニング時点で収縮期血圧が100未満の症例は除外されており、なおかつ試験開始後も血圧低下でARNiの減量が必要と判断された患者の割合が22%であったと報告されている12)。ただ、そのうち、36%は再度増量に成功したとのことであった。実臨床でも、少量(ARNi 50mg 2錠分2)から投与を開始し、その結果リバースリモデリングが得られ、心拍出量が増加し、血圧が上昇、そのおかげでさらにARNiが増量でき、さらにリバースリモデリングを得ることができたということも経験されるので、いったん減量しても、さらに増量できるタイミングを常に探るという姿勢はきわめて重要である。その他、腎機能障害、高カリウム血症もACE阻害薬より起こりにくいとはいえ13,14)、注意は必要であり、リスクのある症例では初回投与開始2~3週間後には腎機能や電解質、血圧等を確認した方が安全と考える。最後に、時々話題にあがるARNiの認知機能への懸念に関する最新の話題を提供して終わりたい。改めて図2を見ていただくと、アミロイドβの記載があるが、NEPは、アルツハイマー病の初期病因因子であるアミロイドβペプチド(Aβ)の責任分解酵素でもある。そのため、NEPを持続的に阻害する間にそれらが脳に蓄積し、認知障害を引き起こす、あるいは悪化させることが懸念されていた。その懸念を詳細に検証したPERSPECTIVE試験15)の初期結果が、昨年のヨーロッパ心臓病学会(ESC2022)にて発表された16)。本試験は、592例のEF40%以上の心不全患者を対象に、バルサルタン単独投与と比較してARNi長期投与の認知機能への影響を検証した最初のRCTである(平均年齢72歳)。主要評価項目であるベースラインから36ヵ月後までの認知機能(global cognitive composite score)の変化は両群間に差はなく(Diff. -0.0180、95%信頼区間[CI]:-0.1230~0.0870、p=0.74)、3年間のフォローアップ期間中、各時点で両群は互いに類似していた。主要な副次評価項目は、PETおよびMRIを用いて測定した脳内アミロイドβの沈着量の18ヵ月時および36ヵ月時のベースラインからの変化で、有意差はないものの、ARNi群の方がアミロイドβの沈着が少ない傾向があった(Diff. -0.0292、95%CI:0.0593~0.0010、p=0.058)。これは単なる偶然の産物かもしれない。ただ、全体としてNEP阻害がHFpEF患者の脳内のβアミロイド蓄積による認知障害リスクを高めるという証拠はなかったというのは間違いない。よって、認知機能障害を理由に心不全患者へのARNi投与を躊躇する必要はないと言えるであろう。1)Fournie-Zaluski MC, et.al. J Med Chem. 1994;37:1070-83.2)McMurray JJ, et.al. N Engl J Med. 2014;371:993-1004.3)Ruilope LM, et.al. Lancet. 2010;375:1255-66.4)Solomon SD, et.al. Lancet. 2012;380:1387-95.5)Mann DL, et.al. JAMA Cardiol. 2022;7:17-25.6)Heidenreich PA, et.al. Circulation. 2022;145:e895-e1032.7)Solomon SD, et.al. N Engl J Med. 2019;381:1609-1620.8)McMurray JJ, et.al. Circulation. 2020;141:338-351.9)Beale AL, et.al. Circulation. 2018;138:198-205.10)Solomon SD, et.al. Circulation. 2020;141:352-361.11)Jering K, et.al. JACC Heart Fail. 2021;9:386-397.12)Vardeny O, et.al. Eur J Heart Fail. 2016;18:1228-1234.13)Damman K, et.al. JACC Heart Fail. 2018;6:489-498.14)Desai AS, et.al. JAMA Cardiol. 2017 Jan 1;2:79-85.15)PERSPECTIVE試験(ClinicalTrials.gov)16)McMurray JJV, et al. PERSPECTIVE - Sacubitril/valsartan and cognitive function in HFmrEF and HFpEF. Hot Line Session 1, ESC Congress 2022, Barcelona, Spain, 26–29 August.

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第26回 「5類」にして本当に皆さん診ますか?

高まる「5類」論何人か救急隊員の知り合いがいて、年末年始が大変だったという話で盛り上がっていたのですが、皆さん「5類」については懐疑的でした。「どこの医療機関でも診療可能」というのが「5類感染症」に変更するための主要な理由の1つになっていますが、病院にお勤めの皆さん、「5類だからどんどん診ます」と思うようになるでしょうか?そもそも総合病院クラスの医療機関は、ほとんどがすでに新型コロナを診療しています。院内クラスターが出ても、自院で診ています。ですから、大々的に「5類感染症」に変更したところで、入院を請け負う医療機関のキャパシティが増えるわけではないという懸念があります。過去のインフルエンザシーズンで、これほど高齢者施設クラスターが出ていたわけではありません。ワンフロアで何人かインフルエンザにかかったということはよくありましたが、施設全体で壊滅的な状況に陥る高齢者施設を見るのは、それだけ感染性が高いからだと理解しています。この感染症を、「5類になったことだし、じゃあどんどん入院させましょう」となると、診療する側としてはかなり躊躇してしまうのではないでしょうか。じゃんじゃん受け入れていたら、あっという間に院内クラスターが広まりそうです。非コロナで入院している人からすれば、勘弁してほしいところですよね。勘違いされている「応召義務」医師には応召義務があるので、新型コロナの診療を断れないという言説がありますが、誤りです。「正当な事由なく」という前提がある話であって、「新型コロナ疑い患者を隔離できる個室がない」というのは正当な事由に該当します。そのため、インフルエンザシーズンにおいても、大部屋しか空いていないときには発熱患者の搬送を断らざるを得ないこともありました。重症化率と致死率の誤謬そもそも重症化率や致死率の算出方法が異なるので、インフルエンザと新型コロナの比較が単純化できないことは、過去の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードでも述べられていることです。新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けに関して、アドバイザリーボードにおいて出された意見では以下のような見解もありました。「今の検査体制では、コロナは軽症者や無症状者も検査に誘導しているため、分母にごく軽症者が乗っているという問題もある。インフルは発熱し、かつ医療機関にアクセスしてきた患者数が分母となるため、無症状や軽症の人は受診せず、本来はコロナの分母とは乖離するはず。今回数字が寄ったのは偶然だろう。この数字を前提として話すこと自体が問題になるのではないか1)。」これは至極同感です。重症化率と致死率だけではなくて、医療リソースや社会的なインパクトも考慮しなければいけません。「5類感染症」になったとしても、私たちはそれを「5類」として診るのではなく、もはや「新型コロナ」として診ます。そのため、国民のマインドみたいなものが多少変わるかもしれませんが、医療機関として講じるべき対策はそう変わらないと思っていますし、キャパが何倍にも増えるというイメージは持っていません。「5類感染症」になることで、外来医療全体のキャパシティ底上げにはつながるかもしれませんが、入院を要する患者さんの数は、ほぼ感染者数で決まりますので、救急医療が逼迫している大きな病院にとっては、たいした影響はないように思われます。参考文献・参考サイト1)第112回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年12月28日). 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけに関してアドバイザリーボードにおいて出された意見

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コロナ死亡例、脳を含む広範囲に長期ウイルスが存在/Nature

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡者の体内には、呼吸器をはじめ非呼吸器、脳に至るまで広く長期に渡ってSARS-CoV-2が存在していることが、新たな研究で判明した。米国国立衛生研究所(NIH)のSydney R. Stein氏らによる本研究結果は、Nature誌オンライン版2022年12月14日号に掲載された。 COVID-19は、重症の感染時に多臓器不全を引き起こすことが知られており、一部の患者には罹患後症状と呼ばれる症状が長く続く。しかし、呼吸器以外の感染負荷やウイルスが消失するまでの時間、とくに脳においては十分に解明されていない。 研究者らは、COVID-19の感染後に死亡した44例の患者の完全剖検を行い、うち11例の患者の中枢神経系を広範囲に採取し、感染から症状発現後7ヵ月以上までの、脳を含む人体全体のSARS-CoV-2の分布、複製、細胞型特異性のマッピングと定量分析を行った。組織および症例間のSARS-CoV-2 RNAレベルを定量的、統計的に比較するために、呼吸器系および非呼吸器系組織の観点から結果を分析した。 死亡時の病日により剖検例を早期(14日以内:n=17)、中期(15~30日:n=13)、後期(31日以上:n=14)に分類し、後期の症例においてSARS-CoV-2 RNAが存在する場合を持続と定義した。 主な結果は以下のとおり。・2020年4月26日~2021年3月2日に44例の剖検を行った。検体はすべてCOVID-19に感染して死亡したワクチン未接種者のものだった。女性が30%、年齢中央値は62.5歳(四分位範囲[IQR]:47.3~71.0)、61.4%が3つ以上の併存疾患を有していた。PCR陽性は42例で死前、2例で死後に確認された。11例で脳のサンプリングが行われた。・発症から最終的な入院、その後の死亡までの中央値はそれぞれ6日(IQR:3~10)、18.5日(IQR:11.25~37.5)であった。死亡から剖検までの中央値は22.2時間(IQR:18.2~33.9)であった。・SARS-CoV-2 RNAは84の異なる解剖学的部位と体液で検出され、早期~後期のいずれも非呼吸器組織と比較して呼吸器組織で有意(p<0.0001)に高い値が検出された。 ・脳のサンプリングを受けた全症例において、中枢神経系組織からSARS-CoV-2 RNAが検出された(10/11例、検出不能を除く)。ここには、230日目の死亡例を含んだ後期症例のすべてが含まれ(5/6例、検出不能を除く)、脳におけるウイルスの持続性が確認された。高いウイルス負荷にもかかわらず、脳における病理組織学的変化はほとんど認められなかった。・SARS-CoV-2 RNAの持続性は、血漿では検出されなかったものの、すべての後期症例で複数の組織にわたって確認された。 研究者らは以下のように結果の要点をまとめている。・SARS-CoV-2は、重症のCOVID-19で死亡した患者を中心に体内に広く分布しており、感染初期には脳を含む複数の呼吸器・非呼吸器組織でウイルス複製が存在することが明らかになった。・SARS-CoV-2 RNAが全身に広く分布しているにもかかわらず、気道以外では炎症や直接的なウイルスの細胞病理はほとんど観察されなかった。・SARS-CoV-2は、一部の患者では感染初期に播種し、非呼吸器組織よりも呼吸器組織で有意に高いウイルス量を示した。他の研究により、心臓、リンパ節、小腸および副腎内のSARS-CoV-2 RNAの存在が報告されており、SARS-CoV-2がこれらの組織や脳を含む他の多くの組織に感染し複製する能力があることを決定的に証明するものである。・SARS-CoV-2 RNAが残存する場所としては呼吸器が最も一般的であったが、後期症例の50%以上は、心筋、頭頸部および胸部のリンパ節、坐骨神経、眼組織、そして硬膜を除く中枢神経系組織のすべての採取部位にもRNAが残存していた。注目すべきは、早期症例では呼吸器系組織と非呼吸器系組織でSARS-CoV-2 RNA量が100倍以上高かったにもかかわらず、後期症例ではこの差が非常に小さくなっていることである。非呼吸器組織におけるウイルス排除の効率悪化は、SARS-CoV-2によるウイルス性mRNAの細胞検出を変化させる能力、インターフェロンシグナルの妨害、ウイルスの抗原提示の妨害における組織特異的な差異に関係していると思われる。SARS-CoV-2が免疫を回避するメカニズムを理解することは、ウイルス排除を促進する将来の治療アプローチの指針に不可欠である。 さらに、本研究の限界として、対象が重度のCOVID-19で死亡した既往症を持つ中高年のワクチン未接種者であること、実施時期から現在および将来の変異株に一般化できない可能性があること、研究デザインが臨床所見をウイルスの持続性に帰するためのものではないことを挙げている。

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各抗うつ薬中断後の離脱症候群~WHO自発報告データベース

 各抗うつ薬中断に関連する離脱症候群や重度の副反応の危険因子に関する情報は、不足している。イタリア・ベローナ大学のChiara Gastaldon氏らは、抗うつ薬が他の薬剤と比較し、離脱症候群の報告増加と関連しているかを評価し、重度の副反応の危険因子について調査を行った。その結果、抗うつ薬は、他の薬剤よりも離脱症候群の報告が多かった。著者らは、各抗うつ薬により離脱症候群の傾向が異なることや重篤な離脱症候群を引き起こす可能性のある患者の特徴を理解したうえで、抗うつ薬の使用および中止を検討する必要があるとしている。Drug Safety誌2022年12月号の報告。 個別症例安全性報告を集めたWHOグローバルデータベースであるVigiBaseを用いて、症例/非症例ファーマコビジランス研究を実施した。抗うつ薬に関連する離脱症候群の報告について、不均衡分析(報告オッズ比[ROR]、ベイジアン情報コンポーネント[IC]の算出)を行った。ブプレノルフィンを対照薬とし、抗うつ薬の各クラス内(選択的セロトニン再取り込み阻害薬[SSRI]、三環系抗うつ薬、その他の抗うつ薬)で相互に比較した。有意な不均衡が報告された抗うつ薬は、臨床的優先度の観点よりランク付けした。重度の副反応と重度でない副反応を比較した。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬関連の離脱症候群の報告は、3万1,688件であった。・23種類の抗うつ薬について、不均衡な報告が検出された。・すべての他の薬剤と比較した抗うつ薬の推定RORは、以下のとおりであった。 ●抗うつ薬全体:14.26(95%信頼区間[CI]:14.08~14.45) ●SSRI:13.65(95%CI:13.41~13.90) ●三環系抗うつ薬:2.8(95%CI:2.59~3.02) ●その他の抗うつ薬:17.01(95%CI:16.73~17.29)・臨床的優先度ランキングに基づくと、パロキセチン、デュロキセチン、ベンラファキシン、desvenlafaxineで最も強い不均衡な報告が認められ、これらはブプレノルフィンと同程度であった。・離脱症候群の頻度および重症度と関連していた因子は、男性、思春期、多剤併用、抗うつ薬治療期間の長さであった(p<0.05)。

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若年発症2型DMは世界的な健康問題-30年で1.5倍超に/BMJ

 1990年以降、若年発症2型糖尿病は、世界的に増大している青少年・若年成人(15~39歳)の健康問題であり、とくに社会人口統計学的指標(SDI)低中・中の国で疾病負担は大きく、また30歳未満の女性で疾病負担が大きいことを、中国・ハルピン医科大学のJinchi Xie氏らが世界疾病負担研究2019(Global Burden of Disease Study 2019)のデータを解析し報告した。これまで若年発症2型糖尿病の世界的疾病負担や長期傾向、および性別やSDI分類別にみた違い、さらに国別の若年発症2型糖尿病寄与リスク因子の違いなどは調査されていなかった。BMJ誌2022年12月7日号掲載の報告。1990~2019年の204ヵ国15~39歳のデータを解析 研究グループは、青少年・若年成人(15~39歳)の2型糖尿病の世界的負担を推計するため、1990~2019年に204ヵ国の15~39歳が参加した世界疾病負担研究2019のデータを用いてシステマティックな解析を行った。 主要評価項目は、1990~2019年の15~39歳2型糖尿病者の年齢標準化罹患率、年齢標準化障害調整生存年(DALY)率、年齢標準化死亡率、および各リスク因子の寄与率(因子別寄与DALY÷総計DALYで算出)であった。罹患率、DALY率、死亡率とも有意に増加 1990~2019年に、青少年・若年成人の2型糖尿病の年齢標準化罹患率、年齢標準化DALY率は、有意に増加していた(p<0.001)。年齢標準化罹患率(10万人当たり)は、1990年の117.22(95%信頼区間[CI]:117.07~117.36)から2019年は183.36(183.21~183.51)に、年齢標準化DALY率は同106.34(106.20~106.48)から149.61(149.47~149.75)へとそれぞれ増加していた。年齢標準化死亡率は、同0.74(95%CI:0.72~0.75)から0.77(0.76~0.78)へとわずかだが有意に増加していた(p<0.001)。 SDIでグループ化した国別では、2019年では、SDI低中・中の国で年齢標準化罹患率、年齢標準化DALY率が最も高く、SDI低の国は年齢標準化罹患率が最も低い一方で年齢標準化死亡率が最も高かった。 性別では、30歳未満では女性が男性よりも概して死亡率とDALY率が高かった。30歳以上では、SDI低の国以外は男女差が逆転していた。 若年発症2型糖尿病DALYの主な寄与リスク因子は、すべてのSDI分類地域でBMI高値であった。その他のリスク因子の寄与率は地域によって異なっており、SDI高の国では、室外環境中の粒子状物質による大気汚染および喫煙の割合が高く、SDI低の国では、室内の固形燃料による大気汚染や果物が不足気味の食事の割合が高かった。 これらの結果を踏まえて著者は、「若年発症2型糖尿病の負担の軽減には体重管理が欠かせないが、この問題へのより効果的な対応には、各国で個別に政策を確立する必要がある」と述べている。

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再発難治CLL/SLL、zanubrutinib vs.イブルチニブ/NEJM

 再発または難治性の慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療において、第2世代のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるzanubrutinibは第1世代BTK阻害薬イブルチニブと比較して、無増悪生存期間が有意に優れ、心臓の有害事象が少ないことが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJennifer R. Brown氏らが実施した「ALPINE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年12月13日号で報告された。15ヵ国の無作為化第III相試験 ALPINE試験は、北米、欧州、アジア太平洋地域の15ヵ国113施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2018年11月~2020年12月の期間に患者の登録が行われた(BeiGeneの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、International Workshop on CLLの基準を満たすCLLまたはSLLと確定診断され、再発または1ライン以上の治療を受けた難治性の病変を有する患者であった。 被験者は、zanubrutinib(160mg、1日2回)またはイブルチニブ(420mg、1日1回)を投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。投与は、病勢進行または許容できない毒性の発現まで継続された。 主要評価項目である奏効は、事前に規定された中間解析で、zanubrutinib群がイブルチニブ群よりも有意に優れることが、すでに報告されている。今回は、主な副次評価項目である無増悪生存の評価が行われた。担当医と独立判定委員会で同程度の無増悪生存 652例が登録され、zanubrutinib群に327例、イブルチニブ群に325例が割り付けられた。年齢中央値はそれぞれ67歳(範囲35~90)および68歳(35~89)で、女性が34.9%および28.6%であった。前治療ライン数中央値は、それぞれ1(範囲:1~6)および1(1~12)だった。 追跡期間中央値29.6ヵ月の時点で、担当医評価による病勢進行または死亡は、zanubrutinib群が26.6%(87/327例)、イブルチニブ群は36.3%(118/325例)で発生し、無増悪生存はzanubrutinib群で有意に良好であった(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.49~0.86、p=0.002)。独立判定委員会の評価による無増悪生存も、同様の結果であった。 また、担当医評価による24ヵ月時の無増悪生存の割合は、zanubrutinib群が78.4%、イブルチニブ群は65.9%であった。無増悪生存期間中央値は、それぞれ未到達および34.2ヵ月(95%CI:33.3~評価不能)だった。 さらに、17p欠失またはTP53変異を伴う、あるいはこれら双方を有する患者では、zanubrutinib群はイブルチニブ群よりも無増悪生存が優れた(病勢進行または死亡の割合32.0%[24/75例]vs.48.0%[36/75例]、HR:0.53、95%CI:0.31~0.88)。これ以外の主なサブグループでも、無増悪生存は一貫してzanubrutinib群で良好であった。 奏効割合は、zanubrutinib群がイブルチニブ群よりも高かった(83.5% vs.74.2%)。データカットオフ時の死亡の割合はzanubrutinib群で低かったが(14.7%[48/327例]vs. 18.5%[60/325例]、死亡のHR:0.76、95%CI:0.51~1.11)、両群とも全生存期間中央値には未到達だった。 安全性プロファイルはzanubrutinib群がイブルチニブ群に比べ良好であった。重篤な有害事象の発現率はそれぞれ42.0%および50.0%で、このうち用量減量の原因となった有害事象は12.3%および17.0%、投与中止の原因となったのは15.4%および22.2%、死亡の原因となったのは10.2%および11.1%だった。 頻度の高いGrade3以上の有害事象は、好中球数減少(zanubrutinib群16.0% vs.イブルチニブ群13.9%)と高血圧(14.8% vs.11.1%)であった。心疾患は、zanubrutinib群で21.3%に発現したのに対し、イブルチニブ群では29.6%に認められ、このうち投与中止の原因となったのはそれぞれ1例(0.3%)および14例(4.3%)だった。新たな安全性シグナルは観察されなかった。 著者は、「生存に関する差を明らかにするには、さらに長期の追跡を要する」としている。

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生後6ヵ月以上へのBA.4/5対応ワクチン承認/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は12月8日、モデルナおよびファイザーのオミクロン株BA.4/5対応の新型コロナウイルス2価ワクチンについて、緊急使用許可(EUA)を修正し、生後6ヵ月以上の小児への使用を追加したことを発表した。 今回のEUA修正により、モデルナのBA.4/5対応2価ワクチン(mRNA-1273.222)は、生後6ヵ月~5歳の小児に対して、1価ワクチンの初回シリーズ(2回)を接種して2ヵ月後に、追加免疫として1回(10μg)の接種を行うことができる。 本ワクチンの承認は、同社の試験用2価ワクチン(起源株およびBA.1対応)の成人における追加接種に関する臨床試験から評価した免疫反応データに基づいている。また、17ヵ月~5歳で、1価ワクチンの初回シリーズ完了から6ヵ月以降に追加接種を行った56例と、18~25歳で、1価ワクチンの初回シリーズを受けた約300例を比較した試験では、ほぼ同程度の免疫反応が認められた。 安全性データは、同社の2価ワクチン(起源株およびBA.1対応)追加接種を評価した臨床試験、1価ワクチンの初回シリーズと追加接種を評価した臨床試験、および両ワクチンの市販後の安全性データに依拠している。1価のモデルナワクチン初回シリーズ接種から6ヵ月以降に1価ワクチンの追加接種を受けた生後6ヵ月~5歳の145例の臨床試験では、最も多く報告された副反応は、注射部位の痛み、発赤、腫脹、注射した腕や大腿部のリンパ節の腫脹/圧痛、発熱などであった。そのほかに報告された副反応は、生後17~36ヵ月では、神経過敏/泣く、眠気、食欲不振、生後37ヵ月~5歳では、疲労、頭痛、筋肉痛、関節痛、悪寒、悪心/嘔吐などであった。 一方、ファイザーのBA.4/5対応2価ワクチンは、生後6ヵ月~4歳の小児に対して、1価ワクチンの初回シリーズ(3回)をまだ開始していない、あるいは初回シリーズの3回目をまだ受けていない場合に限り、1価ワクチンを2回接種後、初回シリーズの3回目として3μg接種することができる。なお、1価ワクチンの初回シリーズを3回完了した生後6ヵ月~4歳の小児は、現時点ではBA.4/5対応2価ワクチンの接種対象とはならない。 また、今回のEUA修正に伴い、ファイザーの1価ワクチンは、生後6ヵ月~4歳の小児における、初回シリーズの3回目接種としての使用が認められなくなった。同社の1価ワクチンは、生後6ヵ月~4歳の小児における初回シリーズ(3回)の最初の2回分、5歳以上の初回シリーズとして2回分、および免疫不全のある5歳以上の初回シリーズとして3回分の投与は引き続き認められている。 本ワクチンの承認は、同社の生後6ヵ月~4歳、および16歳以上の1価ワクチンによる初回シリーズ、また、55歳以上の1価ワクチン初回シリーズと1回目の追加接種、2価ワクチン(起源株およびBA.1対応)の2回目の追加接種の有効性および安全性に関するこれまでの分析に基づいている。 なお、これらの小児に対する2価ワクチン接種の根拠となるデータは、追って1月に発表される予定。

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患者に伝えたいアナフィラキシー症状

患者さん、その症状はアナフィラキシー ですよ!アナフィラキシーとは「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性アレルギー症状が引き起こされ、生命に危険を与え得る過敏反応」のこと。以下のような症状を伴います。□紅潮□そう痒感□蕁麻疹□立毛□結膜の充血□流涙□口腔内腫脹□気道狭窄感□息切れ□嗄声(声がれ)□激しい咳・喘鳴□鼻閉・鼻汁・くしゃみ□腹痛□下痢□血圧低下□拍動性頭痛□浮動性めまい□嘔気・嘔吐□意識障害 □動悸・頻脈□嚥下障害◆こんな場合も要注意!• 蕁麻疹が出なくても、急に息切れや腹痛、血圧低下が起こればアナフィラキシーと診断されます。• 薬剤や食べ物で起こりますが、約半数の患者さんでは原因が特定できないことも。• 薬物投与などの数時間後に症状が起こる場合もあるので、治療によっては院内でしばらく待機する必要があります。出典:日本アレルギー学会. アナフィラキシーガイドライン監修:福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科 山中 克郎氏Copyright © 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.

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ドイツで医療活動を行うために医師の資格を証明するもの【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第21回

前回の記事で書いた通り、ドイツで医療活動を行うには、まず前提としてヨーロッパ言語共通参考枠(CEFR)のドイツ語のB2に合格しておく必要があります。そして、B2合格後に、ヨーロッパ連合(EU)外の医学部を卒業した医師が、ドイツで医療活動を行うには2つの方法があります。1つはドイツで医師免許を取得すること。もう1つは期間限定の医療活動許可証を取得することです。ドイツ国内では前者の医師免許のことを“Approbation”、後者の期間限定の医療活動許可証のことを“Berufserlaubnis”と呼んでいます。医療活動許可証は、医師免許を取るまでの救済処置のような位置付けで、州によっては採用していないところもあります。大体2年間限定であることが多く、「この2年の間に医師免許を取りなさいよ」と言うことです。発行基準は割と曖昧です。基本的にはちゃんとした試験を課して、合格の後に発行されるのですが、州によっては偉い先生の一筆があれば融通がきいたりすることもあるようです。これまたすべての州で同じというわけではないのですが、ほとんどの州ではBerufserlaubnisを取得するために専門用語試験(Fachsprachpruefung)に合格する必要があります。これは模擬患者を加えたOSCE形式の面接試験です。実際に病院で本物の患者に協力してもらって身体診察まで行う州もあるそうです。日本の医学部卒でも落とされるケースもあるApprobation取得のためにはさらに“Kenntnispruefung”という知識試験に合格する必要があります。知識試験と言ってもドイツ語の口頭試問ですので、かなりドイツ語コミュニケーション力が必要とされます。担当教官の専門についての諮問となるので「この担当者は専門が〇〇だから、この内容を勉強しておけ」などと言った情報がネット上で飛び交っています。図 ドイツで医療を行うための段階と必要な免許このKenntnispruefungは非常に難関な試験となりますが、「ドイツの医学部卒業と同程度の医学教育を受けてきた」ことが証明できれば免除されます。背景には医学部のない国でお金で医師免許取った人たちがドイツに来て、ドイツで医療活動を行っていることが問題になったからだそうです。免除申請のためには出身大学で受けたカリキュラムや初期研修の内容などを書いた正式書類を英語またはドイツ語で提出する必要があります。日本の大学医学部を卒業していても落とされる可能性がありますので、書類提出には慎重を期する必要があります。いくつかポイントがありまして、「内科全般を研修している」や「精神科の実習をしっかり行っている」などをしっかりアピールした内容にする必要があります。次回は“Fachsprachpruefung”の内容についてまとめてみたいと思います。

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英語で「皮下注射」は?【1分★医療英語】第61回

第61回 英語で「皮下注射」は?Insulin is administered by subcutaneous injection.(インスリンは皮下注射します)Oh no… I'm scared of needles.(えぇ、針が怖いです…)《例文1》How to make subcutaneous injections less painful?(どうすれば、皮下注射の痛みを軽減できますか?)《例文2》What are the best subcutaneous injection sites?(どの部位に皮下注射するのがよいですか?)《解説》医療者であれば毎日のように使っている用語ですね。皮下注射は“subcutaneous”(略語:SQあるいはSub Q)、筋肉注射は“intramuscular injection”(同:IM)と言います。皮下注射の場合、手順について、パンフレット等を見せながら実演することも多いかと思います。《例文》のように、患者さんから質問が出ることがありますので、回答の準備や、“abdomen”(腹部)、“upper arms”(上腕)、“thighs”(太もも)、“buttocks”(臀部)等の身体の部位を示す単語も、一緒に覚えておくとよいでしょう。加えて、“self-monitoring of blood glucose”(血糖値自己測定)の説明をする機会も多くあります。テクニカルな方法(手技)だけでなく、“motivational interview”(患者さんに治療への理解を促し、やる気を引き出す面談)等のコミュニケーションスキルを用い、「何のためにインスリン注射や血糖値測定が必要なのか」という十分な説明が必要です。たとえば、次のようなフレーズを使ってみましょう。“I understand your fear and concerns.”(不安なのはわかります)“However, self-monitoring helps protect you by allowing them to immediately confirm acute hypoglycemia or hyperglycemia.”(ただ、自己測定によって、急な血糖の上昇や低下がすぐにわかり、対処することができるんですよ)講師紹介

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第142回 帚木蓬生氏の新作『花散る里の病棟』を読んで医師という仕事について考える

九州で四代百年続く「医家」の物語こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。2023年が始まりました。年始年末は愛知の実家に帰っていたのですが、帰省する直前の年末、セ・リーグのY軍本社で働く(選手ではありません)知人と、パ・リーグのS軍本社で働く知人(同)を呼んで、その他野球好きを交えての野球飲みを行いました。いろいろ興味深い話ばかりだった中、特に話題となったのは、日本ハムからソフトバンクに移籍した近藤 健介選手の年俸(1年あたりだと村上 宗隆選手の方が安い)の妥当性と、オリックスからMLBのレッドソックスに移籍した吉田 正尚選手は活躍できるか、そしてマスコットキャラクターたちの年俸についてでした。ちなみに、一部のマスコットキャラクターは、この年末も各地のディナーショーに引っ張りだこだったようです。最後に、来年の各リーグの優勝チームを予想して飲み会を終えたのですが、Y軍、S軍両者とも自軍を優勝候補にせず、最後に「まじか」と思った次第です。さて、今回は年末に読んだある本を紹介します。それは、帚木 蓬生(ははきぎ ほうせい)氏の『花散る里の病棟』(新潮社、2022年刊)です。九州で四代百年続く「医家」のそれぞれの世代の医師の医療に携わる姿を短編で描きながら、全体を通して読むと日本の医療の歴史が浮かび上がってくるという、とても凝ったつくりの短編集です。4代目がパンデミックに遭遇し至る結論とはご存知の方も多いと思いますが、帚木氏は福岡で精神科のクリニックも営む医師兼作家です。本の帯には「この小説では、時代と人の営みを凝縮しようと試みました。こうした小説は1、2年では書けず、やはり10年かかったという重みを感じます」という著者の言葉があります。本書は短編集で、小説新潮に2012〜2021年まで連載した短編10作品が収められています。登場する医師は、1代目公立病院副院長を経て野北医院を開業、蛔虫治療で評判を取り「虫医者」と呼ばれる2代目軍医としてルソン島の兵站病院で従事、戦後は町立病院や山あいの診療所に勤務3代目市立病院勤務を経て内科医院を開業、老健施設も開設し高齢者医療に注力4代目米国で糖尿病治療の最先端を学び、帰国して市立病院で肥満症外科手術を手掛ける――の4人です。それぞれの時代の医師が、その時代、その時代の医療問題に真摯に取り組む姿が描かれています。最後の短編、「パンデミック」は開業医である3代目と、勤務医の4代目が新型コロナウイルス感染症の感染拡大の中、それぞれの現場で奮闘する姿が描かれています。最後の場面で4代目はある”結論”に至ります。その“結論”は、現役の医師である帚木氏だからこそ書けることであり、一連の連作で読者(そして日本の医師たち)に伝えたかったことではないかと思いました。さまざまな立場・診療科の医師が登場する「風花病棟」もお薦め帚木氏の作品で本書と同類とも言える短編集に『風花病棟』(新潮社、2009年刊)があります。こちらには、さまざまな立場・診療科の医師が登場します。イソミタール・インタビュー(短時間麻酔薬で半眠状態に置き、被験者の本音を聞き出す手法)を行った精神科医と被検者、乳がんを患い抗がん剤治療を受ける女性医師、田舎の父親の診療所を継がず都会で働く眼科医、治療費を払えない婦人科患者に遭遇する後期研修中の女性医師、古希を迎えクリニックを閉院する医師など、そこに描かれている等身大の医師の姿は、とかくヒーローとして描きがちな医療ドラマに辟易している医師(や一般の人)の共感を呼ぶのではないでしょうか。限りなくノンフィクションに近く、事件の記録的な側面も強い作品ところで、帚木氏の作品で私が個人的に好きなのは、『悲素』(新潮社、2015年刊)、『沙林 偽りの王国』(新潮社、2021年刊)などの実際の事件を題材にした小説です。この2作はそれぞれ、和歌山毒物カレー事件、松本サリン事件・地下鉄サリン事件の実像について、限りなくノンフィクションに近い手法で、医学的観点から全体像をわかりやすく解き明かした小説です。どちらも主人公は化学物質中毒症研究の第一人者である九州大学医学部衛生学教室の沢井 直尚教授(架空の人物です)。「報告書」ではなく、あえて「小説」というスタイルを取っているため、沢井教授の考えや主観がダイレクトに伝わってきます。ちなみに、沢井教授のモデルとなったのは神経内科医で中毒学が専門の井上 尚英・九州大名誉教授です。井上名誉教授は、和歌山毒物カレー事件、松本サリン事件・地下鉄サリン事件などで被害者の症状分析などを行い、捜査や裁判に関わった人物です。帚木氏は、井上名誉教授への取材や論文、裁判記録などに基づいて、この2作を完成させています。小説ではありますが、事実に基づいた記述は説得力もあり、事件の記録的な側面も強い貴重な作品だと言えるでしょう。以上、冬休みも終わってしまいましたが、今後の休暇の読書の助けになるよう、帚木氏のいくつかの作品を紹介しました。

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統合失調症患者の味覚障害

 精神疾患患者では、味覚障害が認められることが少なくない。これまでの研究では、統合失調症患者において症状とグルタミン酸ナトリウム(MSG)の味覚障害との間に関連がある可能性が示唆されている。ポーランド・Pomeranian Medical UniversityのMichal Wronski氏らは、MSGの味覚レベルが症状の重症度と関連しているかを検討した。Brain Sciences誌2022年11月9日号の報告。 対象は、妄想型統合失調症と診断(ISD-10)された患者200例。MSGまたは水を含む3つの液体サンプルを舌下投与することにより、MSG検出閾値を評価した。MSGのサンプルには、サンプルごとに異なる濃度を用いた。被験者に、どのサンプルがMSGを含有しているかを示してもらい、味の強さや不快感(快適、不快、どちらでもない)を評価させた。 主な結果は以下のとおり。・味覚の平均強度と症状の数との間に、有意な負の相関が認められた。・統合失調症患者でみられる味覚障害の症状が味覚機能の欠損なのか、精神症状としての味覚に対する幻覚症状なのかを判断するために、臨床医は味覚障害を報告する患者をモニタリングする必要がある。

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性への関心と健康や寿命は関係があるのか/国内前向き研究

 性的関心が薄れることは、健康や寿命に関係するのであろうか。山形大学の櫻田 香氏らの研究グループは、性的関心の欠如と全死因死亡率との関連性について、山形県における前向き観察研究を行った。この研究は、山形県内の40歳以上の被験者2万969人を対象に行ったもので、性的関心を持たなかった男性では、全死亡率およびがん死亡率が有意に上昇した。PLoS One誌2022年12月14日号の報告。性的関心がない男性では全死亡率およびがん死亡率が有意に上昇 山形県内の年次健康診断に参加した40歳以上の被験者2万969人(男性8,558人、女性1万2,411人)を対象。性的興味は自己報告式の質問紙で評価した。性的関心と全死亡、心血管疾患死亡、がん死亡の増加との関連をCox比例ハザードモデルにより検討。 性的関心が健康や寿命に関係するかを研究した主な結果は以下のとおり。・追跡期間中(中央値:7.1年)、503人が死亡した(心血管疾患死亡:67人、がん死亡:162人)。・カプランマイヤー解析の結果、性的関心がない男性では、全死亡率(p<0.0001)およびがん死亡率(p<0.05)が有意に上昇した。・年齢、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、飲酒状況、BMI、教育、配偶者の有無、笑いの頻度、心理的苦痛を調整したCox比例ハザードモデル解析では、性的関心がない男性では、性的関心がある男性より全死亡のリスクが有意に高かった(ハザード比:1.69、95%信頼区間:1.17~2.44)。

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脱毛治療での栄養サプリ使用は、安全・有効か?

 脱毛治療のための栄養補助食品使用および食事介入は広く行われているが、安全性・有効性は不明のままである。米国・タフツ大学のLara Drake氏らはシステマティック・レビューの結果、脱毛治療における栄養補助食品使用は患者に利益をもたらす可能性があり、有害事象は報告されていないが、それらレジメンは当局の監視下にないことから、それぞれの試験デザインの条件下で安全性・有効性は解釈すべきものであるとの見解を示した。その上で、「医師は、脱毛患者にこれら治療の潜在的なリスクと利点を十分に説明して、共同意思決定をしなければならない」と述べている。また、今後の検討として、実薬比較による大規模な無作為化試験が求められると提言している。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年11月30日号掲載の報告。 研究グループは、ベースラインで栄養不足が既知ではない患者の脱毛治療における、すべての食事および栄養介入の所見を、システマティック・レビューで評価し見解をまとめた。 MEDLINE、Embase、CINAHLのデータベースを、創刊~2021年10月20日まで検索。英語で執筆され、脱毛症または脱毛を有するベースラインで栄養不足が既知ではない患者における食事・栄養介入調査の、オリジナルな所見を報告している論文を特定した。 試験の質を、Oxford Centre for Evidence Based Medicine基準で評価。注目したアウトカムは、客観的および主観的に評価した疾患経過であった。データの評価は2022年1月3日~11日に行った。 主な結果は以下のとおり。・データベースの検索で、参照リストからの11論文を加えた6,347論文の引用が得られた。総計30論文(17本が無作為化臨床試験[RCT]、11本が臨床研究[non-RCT]2本がケースシリーズスタディ)が包含された。包含基準を満たした食事ベースの介入試験はなかった。・最も質の高いエビデンスを有する栄養介入の試験では、Viviscal、Nourkrin、Nutrafol、Lamdapil、Pantogar、カプサイシンとイソフラボン、抗酸化物質を含むオメガ3と6、リンゴの栄養補助食品、シャクヤクの総グルコシド、複合グリチルリチン・タブレット、亜鉛、トコトリエノール、パンプキンシードオイルの潜在的ベネフィットが示された。・キムチとチョングクジャン、ビタミンD3、およびForti5は、疾患経過の改善に関するエビデンスの質は低かった。・有害作用は、評価を受けたすべての治療でまれで軽症であった。

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コロナ重症例への治療、長期アウトカムは?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重篤例への6つの治療(免疫調整薬治療、回復者血漿療法、抗血小板療法、抗凝固療法、抗ウイルス薬治療、コルチコステロイド治療)の検証が行われている「REMAP-CAP試験」から、事前規定の長期(180日)アウトカムの解析結果が、オーストラリア・メルボルン大学のAlisa M. Higgins氏ら同研究グループによって報告された。同試験の既報の主要アウトカム(短期21日)の報告では、IL-6阻害薬(免疫調整薬)にベネフィットがある一方、抗ウイルス薬、anakinra(免疫調整薬)、回復者血漿(免疫グロブリン)、抗凝固療法、抗血小板療法にはベネフィットがないことが示されていた。JAMA誌オンライン版2022年12月16日号掲載の報告。6つの治療について、180日目までの生存を解析 REMAP-CAP試験は、パンデミック/非パンデミックでの重度の肺炎患者に対する複数の治療を評価する国際多施設共同無作為化プラットフォーム試験で現在も進行中である。本論で報告されたCOVID-19重篤例への6つの治療の、事前に規定された2次解析には、14ヵ国197地点で2020年3月9日~2021年6月22日に4,869例のCOVID-19重篤成人患者が登録された。最終180日フォローアップは、2022年3月2日に完了した。 被験者は、6つの治療のうちの1つ以上の介入に無作為に割り付けられた(免疫調整薬治療群2,274例、回復者血漿療法群2,011例、抗血小板療法群1,557例、抗凝固療法群1,033例、抗ウイルス薬治療726例、コルチコステロイド治療401例)。 2次解析の主なアウトカムは、180日目までの生存で、ベイズ区分指数モデルを用いて解析した。ハザード比(HR)が1未満は生存の改善(優越性)を示し、1超は生存の悪化(有害)を示すものとした。無益性は、アウトカムでの相対的な改善が20%未満で、HRが0.83超で示される場合とした。6ヵ月生存改善の確率、IL-6阻害薬99.9%超、抗血小板療法95% 無作為化を受けた4,869例(平均年齢59.3歳、女性1,537例[32.1%])において、4,107例(84.3%)がバイタル情報を有し、2,590例(63.1%)が180日時点で生存していた。 IL-6阻害薬は、対照と比較した6ヵ月生存改善の確率が99.9%超であった(補正後HR:0.74、95%信用区間[CrI]:0.61~0.90)。抗血小板療法は、同95%であった(0.85、0.71~1.03)。 一方、試験定義の統計的な無益性(HR>0.83)の確率が高かったのは、抗凝固療法(確率99.9%、補正後HR:1.13[95%CrI:0.93~1.42])、回復者血漿療法(99.2%、0.99[0.86~1.14])、ロピナビル・リトナビル配合剤(抗ウイルス薬)(96.6%、1.06[0.82~1.38])で、有害である確率が高かったのはヒドロキシクロロキン(免疫調整薬)(96.9、1.51[0.98~2.29])、ロピナビル・リトナビル配合剤+ヒドロキシクロロキン(96.8、1.61[0.97~2.67])。コルチコステロイドは、早期に試験中止となり規定の統計解析要件を満たさなかったが、さまざまな投与戦略が用いられたヒドロコルチゾンの6ヵ月生存改善の確率は57.1~61.6%であった。 著者は、「全体的に、既報の短期の結果を踏まえて、当初の院内治療の効果は、ほとんどの治療で6ヵ月間変わらなかったことが示された」とまとめている。

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