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心臓移植後の生存率、心停止ドナー心は脳死ドナー心に非劣性/NEJM

 心停止後に体外非虚血性灌流を用いて蘇生させた心臓の移植は、脳死後冷保存された心臓を用いた標準移植と比較して、移植後6ヵ月時のリスク補正後生存率に関して非劣性であることが示された。米国・デューク大学医療センターのJacob N. Schroder氏らが多施設共同無作為化比較試験の結果を報告した。心停止ドナーから得られた心臓の移植の有効性と安全性を、脳死ドナーから得られた心臓の移植と比較したデータには限りがあった。NEJM誌2023年6月8日号掲載の報告。移植用臓器灌流保存装置で保存した心停止ドナーの心臓を移植 研究グループは、米国内15ヵ所の移植センターの待機リストに載っていた成人の心臓移植候補者を、心停止群と脳死群に3対1の割合で無作為に割り付けた。心停止群では、UNOS(United Network for Organ Sharing)の優先順位に従い、心停止ドナーからの心臓または脳死ドナーからの心臓のどちらか先に適合するほうを移植できることとし、脳死群では脳死ドナーからの心臓のみを移植した。脳死ドナーからの心臓は、脳死後に従来の冷却浸漬保存法で保存され、心停止ドナーからの心臓は心停止後に移植用臓器灌流保存装置(Organ Care System Heart、TransMedics製)を用いて保存された。 主要有効性エンドポイントは、as-treated集団におけるリスク補正後の移植後6ヵ月時生存率とし、心停止群と脳死群を比較した。主要安全性エンドポイントは、移植後30日時点の移植心臓に関連する重篤な有害事象とした。6ヵ月時生存率、心停止ドナーの心臓移植群94%、脳死ドナーの心臓移植群90% 2019年12月~2020年11月に、計297例が心停止群(226例)または脳死群(71例)に割り付けられた。全体で180例が移植を受け、割り付けにかかわらず心停止ドナーの心臓移植例が90例、脳死ドナーの心臓移植例が90例であった。このうち、それぞれ80例および86例、計166例がas-treated解析に組み込まれた。 as-treated集団におけるリスク補正後6ヵ月時生存率は、心停止ドナーの心臓移植群で94%(95%信頼区間[CI]:88~99)、脳死ドナーの心臓移植群で90%(84~97)、両群の最小二乗平均差は-3ポイント(90%CI:-10~3、非劣性のp<0.001、非劣性マージン20ポイント)であった。 移植後30日時点における移植心臓に関連する重篤な有害事象の発現頻度(患者1例当たりの平均件数)に、両群で実質的な差はなかった。

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DMR(変性性僧帽弁閉鎖不全症)に対するMitraClipのリアルワールドデータ(解説:上妻謙氏)

 重症僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する経カテーテル僧帽弁クリップ術(MitraClip)は、低侵襲で僧帽弁の逆流を制御する心不全治療として定着してきた。本論文は、STS/ACC TVTレジストリーという世界を代表する米国の国家データベースの結果をまとめたリアルワールドデータである1)。 MRは、弁尖または腱索、乳頭筋の器質的異常によって生じる一次性MR(器質性MR)と、左室や左房の拡大または機能不全に伴って生じる二次性MR(機能性MR)に大別される。一次性MRのうち弁尖や腱索、乳頭筋などの変性によるdegenerative MRの症例の成績をまとめている。2014年1月から2022年6月まで、6万883例にMitraClip術が施行された。このうち1万9,088例が今回の解析対象となった。STS-PROMスコアで僧帽弁形成術の高リスクとされる8点以上の症例が21.9%、2~8点の中等度リスクが68%で、低リスクは10%のみであった。NYHA III度以上の重症心不全が78%を占め、年齢の中央値も82歳と高齢であった。弁尖の逸脱が8割を超えており、弁尖のフレイルも6割以上で認められた。 結果として、30日後のMRが中等度以下に低下して成功と定義される症例が89%であった。この成功率は2014年の81.5%から2022年の92.2%と大きく向上している。MRの残存の基準をもっと厳しくした場合の成功率は、軽度以下のMRかつ僧帽弁圧較差10mmHg未満の症例の割合は2014年44.6%から71.7%とさらに大きく向上した。臨床的アウトカムは、入院中死亡率1.1%、脳卒中0.6%、緊急手術や治療が必要になった症例が1.1%であった。弁尖からクリップが外れてしまうsingle leaflet device attachment(SLDA)とデバイスの塞栓症が本手術の主要な合併症であるが、こちらはそれぞれ0.9%と0.08%の低頻度であった。30日死亡率は2.7%、脳卒中1.2%、再治療0.97%で、NYHA III/IV度の重症心不全は30日の時点で15.8%まで低下した。 1年の臨床的アウトカムは、死亡率15.4%、再治療3.4%、心不全入院9.3%であった。MR低減の成功が得られた患者は、成功しなかった患者と比べて1年死亡率14.0% vs.26.7%、心不全入院率8.4% vs.16.9%、再治療2.1% vs.13.5%と明らかに予後が良好であった。とくに軽度以下の残存MRで僧帽弁圧較差5mmHg以下の症例が、最も予後が良好であった(1年死亡率11.4%)。外科手術リスクの高い患者はMitraClipを行っても死亡率や心不全入院率が高かった。 このスタディ結果は、MitraClipを用いた変性性MRに対する治療がリアルワールドで安全性と有効性が良好であることを示している。機能性MRに対してはCOAPT試験で、適切な時期に治療すれば至適薬物治療に対し大きな有効性が示されてきたが2)、器質性MRについては薬物療法との比較データは今まで存在しない。今回の研究で、重症MRが残存してしまった症例では、成功例に対し予後が悪いことは、薬物療法との間接的な比較で示されている。 一方、器質性MRについては、外科手術との比較を行ったEVEREST II試験で外科手術に対しMitraClipは再治療の必要性が高く、外科手術が可能な患者においては外科手術が第1選択とされてきた3)。本研究は無作為化試験でないため、外科手術との直接比較はできないが、MRの減少に成功した症例における1年での再治療の率が2%しかないことは特筆に値する。そもそもMitraClipはすべてのMRの治療が可能なデバイスではなく、MRの吹いている場所、弁の形態、弁尖の長さ等で治療に適さない症例も多く存在する。適切な患者を選択し、適切な手技で治療を行えば、非常に有効で安全なデバイスであることが示されたといえる。心不全患者は外科手術がハイリスクであることが多く、想像以上に多くのMR患者が手術を受けずに心不全を繰り返していることが多いので、そういった患者に対する治療選択として、心不全患者を診療する医師は認識しておく必要がある。

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亭主を見張れ【Dr. 中島の 新・徒然草】(481)

四百八十一の段 亭主を見張れ雨が降ったりやんだりの天気が続いています。いつも梅雨ってのはこんな感じでしたかね。私が子供の頃は毎日のように雨が降っていたような気がするのですが。さて今回、来院されたのは80歳前後のご夫婦。最近になってご主人の認知症が進んできた、ということで近医から脳外科外来に紹介されてきました。なんでも、奥さんが私にかかっているらしいです。確かに顔は見たことがあるような気がするのですが、何の病気でどういう名前だったか、さっぱり思い出せません。認知症が進んできたのは私のほうかも?高齢のご夫婦の受診にありがちですが、お2人がそれぞれに好きなことを言い始めました。ご主人のほうは、よく睡眠中に歩き回ってしまうとのこと。患者「それが、○○病院の精神神経科で薬をもらったらピタリと止まったんですわ」中島「ほう、何という薬ですか」患者「うーん、わからん。持ってきたらよかった」この台詞をこれまでの人生でどれだけ聞かされたでしょうか。たぶん100回と1,000回の間ですね。奥さん「この人はね、寝ている時に叫び出して物を投げてくるんですよ」中島「それは大変ですね」奥さん「それが当たらないように布団や枕で間に衝立をしているんですけど、それを越えて物が降ってくるんです」中島「じゃあ、ご主人の近くに物を置かないようにしておけばいいのでは?」奥さん「それが……災害に備えて懐中電灯やら救急箱やらを枕元に置いているんですよ」近医からの診療情報提供書では「頭部MRIなどの検査をお願いします」とあります。適応はかなり疑問ですが、ひょっとしたら巨大な脳腫瘍が隠れているかもしれません。念のために撮影してみると、とくに問題はなさそうでした。問題なしとなると、こちらも強気に出ることができます。中島「誰がどうみても○○病院精神神経科の守備範囲じゃないですか」奥さん「○○病院にかかっているなんて知らんがな、そんなもん」中島「ご主人の行動はちゃんと把握しておかないと。浮気されてもわかりませんよ」奥さん「浮気って、この人が今までどんだけ浮気してきたか」そんなに色男には見えないご主人ですけど。奥さんは憤懣やるかたなし、といった感じでまくしたてはじめました。こうなったら終わりが見えなくなります。患者「20年前に引退したで」たぶん浮気のことなんでしょう。それにしても、60歳までは浮気していたってことになりますね。奥さん「もう腹が立つのも慣れましたわ」中島「奥さんが納得しているんなら実害はないかもしれんけど」奥さん「納得してるんじゃなくて諦めてるんです」中島「諦めているっていってもね、隠し子がいたり、相手の女が出てきて財産を持っていかれたりせんとも限りませんよ」アドバイスしているのか煽っているのか?中島「まずは奥さんが○○病院に一緒について行くのが第一です」奥さん「でも、クリニックの先生が『国立で診てもらえ』って」中島「いやいやいや。MRIで悪いところがないのだから、私にできることは何もありませんよ」その日は昼から出張の予定が入っていました。奥さん「でもこの人が物を投げつけてくるんですよ」中島「物が飛んでくるのが困るんだったら、別の部屋で寝たらどうですか?」奥さん「『国立で診てもらえ』ってクリニックの先生が……」中島「奥さんが○○病院に一緒に行かないと隠し子が出てきますよ」もう自分でも何を言っているのか意味不明になってきました。とにかく、奥さんの無限ループには私も無限ループで対抗です。ようやくのことで、ご夫婦にお引き取りいただきました。冷たい医者だと思われたかもしれません。でも、叫ぼうが物を投げようが、命には別条ないでしょう。思わぬ時間を取ってしまいましたが、何とか出張には間に合いました。それにしても「隠し子が出てきますよ」って。自分でも呆れるアドバイスでした。最後に1句梅雨なれど 亭主を見張れ ついていけ

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伝記「ヘレン・ケラー」(後編)【ということは特別なことをしたからといって変わらない!?(幼児教育ビジネス)】Part 1

今回のキーワード意図共有認知能力連合学習行動遺伝学非認知能力(社会情動的スキル)モンテッソーリ教育とくにまだ幼い子供のいるみなさんは、賢くさせるために何かしていますか? 幼児教室に通わせたり、知育動画を見させたり、ドリルを解かせたり…さらに、最近ますます注目されているモンテッソーリ教育を受けさせたり…ところで、その効果について考えたことはありますか? 効果はあるに決まっていると思い込んでいませんか? そして、やらせるだけで満足していませんか?今回は、前編で取り上げた象徴機能のメカニズムとその起源を踏まえて、子供を賢くさせるためには賢くさせようと特別なことをしないという逆説の訳を説明します。そして、幼児教育ビジネスの不都合な真実に迫ります。幼い子が言葉を覚えるために必要なことは?前編での象徴機能の発達のプロセスや進化の歴史を踏まえると、幼い子が言葉を覚えるために必要なことが見えてきます。それは、前編でキーワードとなった意図共有、つまり、心が通じ合うことです。そのためには、日常生活の中で出会ういろんな人との自由な相互作用が必要です。「water」と発したヘレン・ケラーのように、実際に触れたり味わったりすることも含めて、五感を総動員して、生活の一部として体験することです。つまり、言葉は、ただ話すために話すという目的そのものではなく、相手がいて楽しいから話す・そうしないと困るから話すという手段になっているということです。そして、インプットだけでなく、自由なアウトプット(意図共有)もすることで初めて身になるということです。特別な幼児教育とは?ヘレン・ケラーは、「見えない、聞こえない、話せない」という障害によって、サリバン先生による特別な教育が必要でした。発達障害の子供にも、療育という特別な教育が必要です。一方で、とくに障害がない子供についてはどうでしょうか?たとえば、難しい言葉や英単語を覚えたり、先取り学習を幼児教室、知育動画、ドリルなどで認知能力の特別なトレーニングをすることです。これらが特別であるためには、一般的な保育園での教育とは差別化される必要があります。しかし、実はこれらは、前編で紹介した連合学習、つまり構造化されたパターン学習にすぎません。その場で楽しくなるような工夫はある程度されてはいますが、日々の生活の中で必要になることがありません。逆に言えば、もし必要になるのであれば、日常生活の中で学べば良いだけの話で、特別にはなりません。そもそも、幼児教育での構造化されたパターン学習は、禁止行為などのルールの学習に限定されます。つまり、これは、「water」と発する前のヘレン・ケラーや、絵文字や一方的に要求するための手話を学んだだけのチンパンジーと同じ状況です。それでも、何かを学んだわけだから、それがその後に役に立つと考える方もいるでしょう。しかし、みなさんも薄々お気付きかも知れませんが、人間の脳は巧妙に進化していて、日常生活に必要ないものはどんどん忘れていくようになっています。実際の行動遺伝学の研究では、認知能力への親の取り組みの違い(家庭環境)の影響度は、幼児期には35%と、あるにはあるのですが、成人期になるにつれて20%と目減りしています。この詳細については、関連記事5をご覧ください。また、非認知能力(社会情動的スキル)が高まると唱える教育関係者もいます。しかし、これは、ヘックマンの研究(2000)を誤解したものです。この研究の対象となった幼児は、経済的な貧困層(幼児教育などの子育てが適切に行われていないネグレクトの可能性が高い家庭)に限定されています。一般的な家庭についてまで拡大解釈はできません。なお、ヘックマンの研究の詳細については、関連記事6をご覧ください。逆に、行動遺伝学の研究から、非認知能力への親の取り組みの違い(家庭環境)の影響度は、幼児期から成人期まで変わらずほぼ0%と推定できます。推定としたのは、非認知能力は、その評価のしにくさから、これ自体の行動遺伝学の研究が見当たらないため、代わりに最も近い概念である性格で置き換えたからです。それにしても、驚くべきことです。この詳細については、関連記事7をご覧ください。つまり、幼児期に特別な幼児教育として何かを、より早くやったからといって、より多くやったからといって、その効果は一時的で限定的でしかないわけです。特別な幼児教育と一般的な保育園の教育に最終的な違いがほとんどない点で、何かを学ぶ必要はもちろんありますが、それが特別な何かである必要はないわけです。少なくとも親子ともに楽しんでやっているのであればやる意味が見いだせます。しかし、将来的に意味があると盲信して親子ともに我慢してやっているのであれば、それは、時間とお金と労力の壮大な無駄使いであるばかりでなく、不幸を招いていると言えるでしょう。次のページへ >>

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伝記「ヘレン・ケラー」(後編)【ということは特別なことをしたからといって変わらない!?(幼児教育ビジネス)】Part 2

モンテッソーリ教育も効果ははっきりしない!?モンテッソーリ教育も、一般的な幼児教育とは差別化され、世の中で成功している有名人がこの教育を受けていたと喧伝されています。この教育の中身については割愛しますが、この効果については、世界的な論文誌Natureの姉妹紙npj Science of Learning(2017)のレビューにおいて、「モンテッソーリ教育の科学的根拠は弱い」と結論付けられています6-8)。よくよく考えると、提唱者のモンテッソーリ先生が活躍したのは、ヘレン・ケラーと同じ20世紀前半です。当時は、体罰が容認され、今と比べものにならないほど幼児教育が行き届いていませんでした。だからこそ、モンテッソーリ教育にも意味があったでしょう。ヘレン・ケラーだって裕福な家庭に生まれたからこそ、あそこまでの教育が受けられました。しかし、現代において、「特別」な幼児教育をしても、その効果が特別にはならなくなってきているということは、保育園をはじめとする幼児教育が十分に行き届いていることを意味します。つまり、近代だからこそ広まったモンテッソーリの理念は、現代で拡大解釈され、幼児教育ビジネスにいいように利用されてしまっていることになります。これが、幼児教育ビジネスの不都合な真実です。「奇跡の人」とは?タイトル「奇跡の人」(The Miracle Worker)とは、ヘレン・ケラーではなく、ヘレン・ケラーに学ぶ楽しさを気付かせたサリバン先生のことだったわけですが、幼児教育ビジネスの不都合な真実を知った今、私たちの誰もが日々の生活の中でその「奇跡」を無理なく起こせることがわかります。これが、冒頭で触れた「子供を賢くさせるためには賢くさせようと特別なことをしない」という逆説の訳です。親が日常生活の中で、できる範囲でほどほどに子供にかかわり、その自由なやり取りを親子で一緒に楽しむことだけで、十分に子供の豊かな発達を育むことができるとわかりました。この子育てのあり方によってこそ、私たちもサリバン先生と同じく「奇跡の人」になることができるのではないでしょうか?6)「モンテッソーリ教育」には本当に効果があるのか 専門家たちが追跡調査を実施:クーリエ・ジャポン、20237)【解説】モンテッソーリ教育とは?その効果は?早期教育の科学的根拠:Suzakuの研究所8)モンテッソーリ教育 科学的根拠のレビュー:Marshall C、npj Science of Learning<< 前のページへ■関連記事そして父になる(続編・その2)【子育ては厳しく? それとも自由に? その正解は?(科学的根拠に基づく教育(EBE))】Part 1そして父になる(続編・その1)【英才教育で親がハマる「罠」とは?(教育虐待)】Part 1ちびまる子ちゃん(続編)【その教室は社会の縮図? エリート教育の危うさとは?(社会適応能力)】Part 1

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第49回 カンファや論文執筆は自己研鑽か?

「医師の働き方改革」が近づくPhoto ACより使用2024年4月から始まる「医師の働き方改革」に備えて、多くの医療機関では労働時間の管理を徹底するようシフトしていると思います。私は、医師という職業はうまく時間で括るのは難しい職種だと認識しており、もう少し柔軟な側面を容認したほうがよいのではと感じていますが、世の中の動きはそれを許してくれないようです。どの病院でも議論の俎上に載るのが、カンファレンスや論文執筆は、業務か自己研鑽のどちらかということです。記憶に残っている人も多いと思いますが、2022年2月に岐阜県の病院で医師への残業代の未払いがあったと報道されました。論文執筆や学会の準備などで費やした時間外労働に対する手当が支給されていなかったというものでした。「上司の命令があるかどうか」が分水嶺この命題の結論は実はもう決まっていて、上司がそれを命令したかどうかがポイントになります。たとえば、専門医などの資格を取得するためにレポートをまとめたり、学会発表や論文投稿の準備をしたりする場合、上司の命令や指導が入っていれば業務だということです。しかし、資格取得や論文業績を病院のためと思ってやっている人はマイノリティで、自身のキャリアパスのためという人がほとんどではないでしょうか。私もどちらかといえば、学会発表や論文発表は自己研鑽だと思ってやってきた世代です。そのため、院内である程度足並みがそろっていないと、「働き方改革」が到来したときに「同じ業務なのに人によって労働時間のとらえ方が違う」ということが、いろいろとひずみを生む恐れがあります。1時間で論文を書き上げる人への手当よりも、10時間で同じ論文を書き上げる人に10倍の手当が渡るのは、不公平だという意見も出てくるかもしれません。神奈川労働局が示している「医療従事者の労働時間」が非常によくまとまっているので、以下に示します1)。所定労働時間外に行う医師の研鑽は、診療等の本来業務と直接の関連性なく、かつ、上司の明示・黙示の指示によらずに行われる限り、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しない。当該研鑽が、上司の明示・黙示の指示により行われるものである場合には、これが所定労働時間外に行われるものであっても、又は診療等の本来業務との直接の関連性なく行われるものであっても、一般的に労働時間に該当する。■論文執筆について上司や先輩である医師から論文作成等を奨励されている等の事情があっても、業務上必須ではない行為を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。ただし、研鑽の不実施について就業規則上の制裁等の不利益が課されているため、その実施を余儀なくされている場合や、研鑽が業務上必須である場合、業務上必須でなくとも上司が明示・黙示の指示をして行わせる場合は、当該研鑽が行われる時間については労働時間に該当する。上司や先輩である医師から奨励されている等の事情があっても、自由な意思に基づき研鑽が行われていると考えられる例としては、次のようなものが考えられる。勤務先の医療機関が主催する勉強会であるが、自由参加である学会等への参加・発表や論文投稿が勤務先の医療機関に割り当てられているが、医師個人への割当はない研究を本来業務とはしない医師が、院内の臨床データ等を利用し、院内で研究活動を行っているが、当該研究活動は、上司に命じられておらず、自主的に行っている■一般診療における新たな知識、技能の習得のための学習業務上必須ではない行為を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。ただし、診療の準備又は診療に伴う後処理として不可欠なものは、労働時間に該当する。■手技を向上させるための手術の見学上司や先輩である医師から奨励されている等の事情があったとしても、業務上必須ではない見学を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う場合、当該見学やそのための待機時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。ただし、見学中に診療を行った場合については、当該診療を行った時間は、労働時間に該当すると考えられ、また、見学中に診療を行うことが慣習化、常態化している場合については、見学の時間全てが労働時間に該当する。まとめ医師が極度に不足している地域では、「働き方改革」自体が実現不可能で、最初から形骸化しそうな雰囲気です。ほとんどの時間を何らかの形で拘束されて過ごしている医師にとっては、絵に描いた餅のような話なのかもしれません。しかし、「やらねばならぬ」改革ですから、ひとまず外堀から埋めて、私たち医師が働きやすい世界を作っていくしかないようです。参考文献・参考サイト1)医療従事者の労働時間について(神奈川労働局)

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転移乳がんへのADC後のADC投与、交差耐性の可能性/ASCO2023

 米国では転移を有するHR+/HER2-およびトリプルネガティブ(TN)乳がんにsacituzumab govitecan(SG)が、またHER2低発現乳がんにトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が承認され、複数の抗体薬物複合体(ADC)が適応となる患者が増えている。しかし、ADCは抗体標的やペイロードにより交差耐性の可能性があるため、最適な投与順序は不明である。今回、転移を有するHER2-乳がんに対して調査したところ、2剤目のADCに対して交差耐性を示す患者がいる一方、1剤目と抗体標的が異なる場合など、2剤目でも持続的な奏効を示す患者もいることがわかった。米国・Massachusetts General Hospital Cancer CenterのRachel Occhiogrosso Abelman氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で報告した。 本試験の対象は、HER2+を除いた転移を有する乳がんに対して ADCを2剤以上投与された患者とした。なおトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)はADCに含めていない。2剤目のADCにおける最初の病期再分類時もしくはその前に病勢進行(PD)となった場合に「交差耐性」と定義し、1剤目と2剤目の抗体標的およびペイロードの違いによる交差耐性を調べた。また、サブグループ別に各状況での無増悪生存期間(PFS)を調べた。 主な結果は以下のとおり。・2014年8月~2023年2月に193例にADCが投与され、うち35例が2剤以上投与されていた(HR+/HER2-:15例、TN:20例、HER2低発現:24例)。抗体標的の種類は、1剤目はHER2が8例、Trop2が26例、その他が1例で、2剤目はHER2が14例、Trop2が19例、その他は2例だった。ペイロードの種類は、1剤目は35例すべてがトポイソメラーゼ阻害薬、2剤目はトポイソメラーゼ阻害薬31例、微小管阻害薬とその他がそれぞれ2例だった。・交差耐性は、1剤目と2剤目が同じ抗体標的でペイロードが異なる場合は12例中8例(66.7%)、抗体標的もペイロードも異なる場合は19例中8例(42.1%)に認められた。・PFS中央値は、HR+/HER2-乳がんでは1剤目が6.9ヵ月、2剤目が2.4ヵ月(p=0.051)、TN乳がんでは1剤目が8.2ヵ月、2剤目が3.0ヵ月(p=0.004)と2剤目が短かった。・T-DXdとSGの投与順別のPFS中央値は、HR+/HER2-乳がんでは、SG→T-DXdの場合、SGが4.9ヵ月、T-DXdが2.8ヵ月、T-DXd→SGの場合、T-DXdが7.1ヵ月、SGが2.4ヵ月だった。TN乳がんでは、SG→T-DXdの場合、SGが9.1ヵ月、T-DXdが2.6ヵ月、T-DXd→SGの場合、T-DXdがNA、SGが2.2ヵ月だった。 Abelman氏は「最適なADC投与順序を導くために、これらの結果を検証して耐性機序を調べるさらなる研究が必要」と述べた。

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併存症のある患者での注意点~高齢者糖尿病診療ガイドライン2023/糖尿病学会

 5月11日~13日に城山ホテル鹿児島をメイン会場に第66回 日本糖尿病学会年次学術集会(会長:西尾 善彦氏[鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 糖尿病・内分泌内科学 教授])が「糖尿病学維新-つなぐ医療 拓く未来-」をテーマに開催された。 高齢者の糖尿病患者では、糖尿病とは別に併存症があるケースが多い。では、糖尿病以外の疾病もある高齢者の糖尿病患者の診療はどうあるべきであろう。 本稿では、「シンポジウム10 より良い高齢糖尿病ケアを目指して」より「高齢者糖尿病の合併症と併存症」(杉本 研氏 [川崎医科大学総合老年医学])の口演をお届けする。 2023年5月に『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2023』(以下「ガイドライン」と略す)が上梓され、今回の口演は、このガイドラインの内容を踏まえて構成されている。 今回のガイドラインの改訂では、合併症と併存症につき、「併存症」が独立して章立てされた。また、併存症の予防・管理が、健康寿命の延伸には重要となることが改めて確認され、引き続き、高齢の糖尿病患者の診療では、平均余命の減少と低血糖の高リスクをどのように防止するかが重要とされている。 とくに杉本氏は「高齢者の併存疾患で注意したいのが、動脈硬化性疾患であり、高齢者のADLとQOLを大きく損ない健康寿命などに影響を与える」と診療での注意点を強調した。 続いて先のガイドライン中で「高齢者の併存疾患」を取り上げ、重要なポイントを説明した。 なお、ガイドラインでは、「CQ」と「Q」に分けて、「CQ」は「推奨度(推奨グレード)を問う疑問として回答が可能な臨床的疑問」を、「Q」は「CQ以外の臨床的疑問(推奨グレードは付さない)」について記述している。■高齢者の糖尿病治療が認知機能などの低下抑制になるかは不明 CQ V-3「高齢者糖尿病における(厳格な)血糖コントロールは認知機能低下・認知症発症の抑制に有効か?」というCQでは「血糖コントロールが認知機能低下、認知症発症予防に有効であるかについては、結論が出ていない」(推奨グレードU:推奨するだけの明確根拠がない)、「糖尿病治療薬による治療が認知機能低下、認知症発症予防に有効であるかについては、結論が出ていない」(推奨グレードU)として研究の余地を残している。 Q V-4「高齢者糖尿病の高血糖はフレイル、サルコペニアの危険因子か?」というQでは「高齢者糖尿病または高血糖は、フレイル、サルコペニアの危険因子である」とされ、これについて杉本氏は「8つのメタ解析から糖尿病はフレイルの危険因子となり(オッズ比1.48)1)、サルコぺニアはBMI25以下で増加する」と説明した。 同様にQ V-5「高齢者糖尿病のHbA1c低値または低血糖はフレイル、サルコペニアの危険因子か?」というQでは「高齢者糖尿病のHbA1c低値または低血糖はフレイル、サルコぺニアに危険因子である」としている。 Q V-6「高齢者糖尿病における血糖コントロールは筋量や筋力の維持に有効か?」というQでは「高齢者糖尿病の血糖コントロールが筋量や筋力の維持に有効かは明らかではない」としている。ただ、HbA1cとサルコぺニアの関係では、いくつかの論文で弱い相関を示唆するものもあり、今後研究が待たれる。また、薬物治療の影響については、フレイルとSGLT2阻害薬との関係は「現状では『明らかでない』としか言えない」と杉本氏は説明した。 Q V-8「高齢者糖尿病の高血糖または低血糖は転倒の危険因子か?」というQでは「高齢者糖尿病の高血糖または低血糖は転倒の危険因子であり、インスリン使用者ではとくに注意を要する」と転倒への注意を記載している。 Q V-9「高齢者糖尿病における血糖コントロールは転倒の予防に有用か?」というQでは「高齢者糖尿病における血糖コントロール状態は転倒に影響するが、厳格な血糖コントロールの影響は明らかではない」、「高齢者糖尿病における血糖コントロールの改善が転倒の予防に有用であるかは不明である」と研究の余地を残している。■高齢者糖尿病の心不全の予防・改善に糖尿病治療薬は有効か 悪性腫瘍や心不全、multimorbidity(多疾患罹患)についても触れ、とくに心不全、multimorbidityでは次の3つのQについて説明を行った。 Q V-16「高齢者糖尿病において糖尿病治療薬は心不全の予防・改善に有効か?」というQでは、「高齢者糖尿病においてSGLT2阻害薬は心不全の予防・改善に有効な可能性がある」とする一方で「高齢者糖尿病においてDPP-4阻害薬が心不全リスクに及ぼす影響は明らかではない」と記載している。 そして、このQに関して杉本氏は、SGLT2阻害薬による心不全への影響は70歳以上でより良かったとする報告2)がある一方で、有意なBNPの低下がなかったとする報告もある3)ことを述べ、自験例としながらもSGLT2阻害薬で左室心筋重量係数(LVMI)の低下がみられたことを報告した。 Q V-18「高齢者糖尿病はmultimorbidityとなりやすいか?」というQでは、「高齢者糖尿病はmultimorbidityとなりやすい」と記載している。 また、Q V-19「高齢者糖尿病のmultimorbidityではどのような点に注意すべきか?」というQでは「高齢者糖尿病のmultimorbidityにどのような対応を行うべきかのエビデンスは不足しているが、低血糖に注意し、多職種で患者・家族の意思決定の支援をしながら目標を設定していくことが望ましい」と記載している。 今回のガイドラインを受け杉本氏は75歳以上では4つ以上の疾患の合併割合が多くなること、とくに認知症、腎機能不全、骨折が多くなることを指摘するとともに、「重症低血糖では、糖尿病治療薬もインスリンやSU薬など3剤以上の併用も多くなり、ポリファーマシーへの配慮も必要」と述べ、口演を終えた。■参考文献1)Hanlon P, et al. Lancet Healthy Longev. 2020 Dec;1:e106-e116.2)Martinez FA, et al. Circulation. 2020;141:100-111.3)Tamaki S, et al. Circ Heart Fail. 2021;14:e007048.

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高齢NSCLCのICI治療に化学療法の併用は必要か?(NEJ057)/ASCO2023

 75歳以上の非小細胞肺がん(NSCLC)患者における、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と化学療法の併用の有効性と安全性は明らかになっていない。そこで、日本国内の58施設における75歳以上の進行・再発NSCLC患者を対象とした後ろ向きコホート研究(NEJ057)が実施された。その結果、ICIと化学療法の併用はICI単剤と比較して、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を改善せず、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)の発現率を増加させた。本研究結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、植松 真生氏(がん・感染症センター 都立駒込病院)が発表した。・試験デザイン:多施設(58施設)後ろ向きコホート研究・対象:未治療の75歳以上の進行・再発NSCLC患者のうち、ICI+化学療法、ICI単剤、プラチナダブレット、単剤化学療法のいずれかで治療を開始した1,245例(初回治療に分子標的薬を使用した患者とEGFR・ALK遺伝子変異を有する患者は除外)・評価項目:レジメン別にみたOSとPFS、PD-L1発現状況別にみたOSとPFS(傾向スコアマッチングを実施)、安全性 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、年齢中央値78歳(範囲:75~95歳)、男性78%、ECOG PS 0または1が84%、PD-L1陰性(Tumor Proportion Score[TPS]1%未満)/低発現(TPS 1~49%)/高発現(TPS 50%以上)/不明がそれぞれ22%/31%/33%/14%であった。・レジメンの割合は、ICI+化学療法28%、ICI単剤34%、プラチナダブレット25%、単剤化学療法12%であった。・レジメン別にみたOS中央値は、ICI+化学療法群20.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:17.1~23.6)、ICI単剤群19.8ヵ月(95%CI:16.5~23.8)、プラチナダブレット群12.8ヵ月(95%CI:10.7~15.6)、単剤化学療法群9.5ヵ月(95%CI:7.4~13.4)であった。・レジメン別にみたPFS中央値は、ICI+化学療法群7.7ヵ月(95%CI:6.5~8.7)、ICI単剤群7.7ヵ月(95%CI:6.6~8.8)、プラチナダブレット群5.4ヵ月(95%CI:4.8~5.7)、単剤化学療法群3.4ヵ月(95%CI:2.6~4.0)であった。・傾向スコアマッチング後のPD-L1発現状況別にみたOSについて、ICI単剤群に対するICI+化学療法群のハザード比[HR]は、PD-L1陽性(TPS 1%以上)が0.98(95%CI:0.67~1.42)、PD-L1低発現(TPS 1~49%)が1.11(95%CI:0.65~1.91)、PD-L1高発現(TPS 50%以上)が0.92(95%CI:0.55~1.56)であり、いずれのサブグループにおいても有意差は認められなかった。・PD-L1発現状況別にみたPFSについて、ICI単剤群に対するICI+化学療法群のHRは、PD-L1陽性(TPS 1%以上)が0.92(95%CI:0.67~1.25)、PD-L1低発現(TPS 1~49%)が1.22(95%CI:0.71~1.91)、PD-L1高発現(TPS 50%以上)が0.86(95%CI:0.56~1.31)であり、いずれのサブグループにおいても有意差は認められなかった。・Grade3以上のirAEは、ICI+化学療法群24.3%(86例)、ICI単剤群17.9%(76例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.03)。・肺臓炎の発現率(全Grade)は、ICI+化学療法群23.4%(83例)、ICI単剤群15.6%(66例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.006)。・ステロイドを必要としたirAEは、ICI+化学療法群32.5%(115例)、ICI単剤群24.7%(105例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.02)。 植松氏は、「リアルワールドにおいて、ICIと化学療法の併用はICI単剤と比較して、高齢NSCLC患者の生存成績を改善せず、Grade3以上のirAEの発現率を増加させた。本結果から、PD-L1陽性の高齢NSCLC患者には、ICI単剤での投与が推奨される可能性がある」とまとめた。

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早期再発・難治性LBCL、axi-celでOS延長/NEJM

 早期再発または難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者に対し、axicabtagene ciloleucel(アキシカブタゲン シロルユーセル、axi-cel)療法による2次治療は、標準治療と比べて全生存期間(OS)を有意に延長したことが確認された。米国・テキサス大学M. D.アンダーソンがんセンターのJason R. Westin氏らが、359例を対象に行った第III相無作為化比較試験「ZUMA-7試験」の長期追跡評価(期間中央値47.2ヵ月時点)の結果を報告した。axi-celは、自家抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法製品で、ZUMA-7試験の主要アウトカムの解析において、無イベント生存(EFS)を有意に延長したことが示されており、長期アウトカムのデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2023年6月5日号掲載の報告。最初の患者無作為化後5年時点で分析 ZUMA-7試験は、早期再発(1次化学免疫療法後12ヵ月以内に再発)または難治性(1次治療に抵抗性)LBCLの18歳以上の患者を対象とし、1対1の割合で無作為に2群に割り付け、axi-cel療法または標準治療(化学免疫療法2~3サイクル、奏効が得られた患者には続けて高用量化学療法+自家幹細胞移植)を行い追跡評価した。 2018年1月25日~2019年10月4日に、被験者計359例がaxi-cel療法群(180例)または標準治療群(179例)に無作為化された。 主要アウトカムはEFSで、主な副次アウトカムは奏効とOSであった。 本論では、事前規定のOS解析(最初の患者を無作為化後5年時点で評価)の結果が報告されている。既報の主要アウトカムのEFSについては、axi-cel療法群が標準治療群よりも有意に優れたことが示され(ハザード比[HR]:0.40、層別化log-rank検定のp<0.001)、追跡期間中央値24.9ヵ月時点で、EFS期間中央値はaxi-cel療法群8.3ヵ月、標準治療群2.0ヵ月であり、同24ヵ月時点のEFS率はそれぞれ41%、16%だった。奏効が認められたのはaxi-cel療法群83%、標準治療群50%であり、完全奏効(CR)が認められたのは、それぞれ65%、32%だった。4年PFS率、標準治療群24%に対しaxi-cel療法群42% 追跡期間中央値47.2ヵ月(範囲:39.8~60.0)時点で、死亡はaxi-cel療法群82例、標準治療群95例で報告された。 OS中央値は、axi-cel療法群は未到達であり、標準治療群は31.1ヵ月だった。推定4年OS率は、それぞれ54.6%、46.0%で(死亡に関するHR:0.73、95%信頼区間[CI]:0.54~0.98、両側log-rank検定のp=0.03)、これらaxi-cel療法による生存の改善は、患者の74%で原発性難治性疾患やその他のハイリスク要因が認められたITT集団で観察された。 治験担当医評価による無増悪生存期間(PFS)中央値は、axi-cel療法群14.7ヵ月、標準治療群3.7ヵ月であり、推定4年PFS率はそれぞれ41.8%、24.4%だった(HR:0.51、95%CI:0.38~0.67)。 EFS主解析以降に、新たな治療関連死は発生しなかった。

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複数流産歴のある遺伝性血栓症女性への低分子ヘパリン、出生率を改善せず/Lancet

 2回以上の流産歴があり、遺伝性血栓性素因による特発性血栓症の確定診断を受けた女性に対し、低分子ヘパリン(LMWH)投与は生児出生率の増加に結び付かないことが示された。英国・ウォーリック大学のSiobhan Quenby氏らが、欧米5ヵ国の病院で行った国際非盲検無作為化対照試験「ALIFE2試験」の結果を報告した。抗凝固療法は、不育症および遺伝性血栓性素因を有する女性の流産回数と有害妊娠アウトカムを減らす可能性が示唆されており、研究グループは、同女性集団におけるLMWH vs.標準治療を評価した。結果を踏まえて著者は、「不育症および遺伝性血栓性素因を有する女性にLMWHの使用は推奨しない。また、不育症の女性に遺伝性血栓性素因のスクリーニングを行わないことを推奨する」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年6月1日号掲載の報告。妊娠7週目までに低用量LMWHを投与 ALIFE2試験は、英国(26病院)、オランダ(10)、米国(2)、ベルギー(1)、スロベニア(1)の40病院で被験者を募り、18~42歳で、流産歴2回以上、遺伝性血栓性素因による特発性血栓症の確定診断を受け、妊娠を試みている、もしくは妊娠7週目以前の女性を対象に行われた。 尿検査で妊娠を確認後、研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方には標準治療+低用量LMWH投与(LMWH群)、もう一方には標準治療のみ(標準治療群)を行った。LMWH投与は妊娠7週目までに開始し、妊娠終了まで継続した。 主要アウトカムは生児出生率で、データが入手可能な女性全員を対象に評価した。安全性アウトカムは、出血、血小板減少症、皮膚反応などで、無作為化の対象で安全性イベントを報告した全員について評価した。生児出生率、LMWH群72%、標準治療群71%で同等 2012年8月1日~2021年1月30日に、1万625例が適格性評価を受け、428例が試験登録され、うち妊娠が確認された326例が無作為化された(LMWH群164例、標準治療群162例)。 生児出生率は、LMWH群が72%(主要アウトカムデータを入手できた162例中116例)、標準治療群が71%(同158例中112例)だった(補正後オッズ比:1.08[95%信頼区間:0.65~1.78]、絶対群間リスク差:0.7%[同:-9.2~10.6])。 有害イベントは、LMWH群164例中39例(24%)、標準治療群162例中37例(23%)で報告された。

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自殺念慮の検出に有用な兆候は

 自殺の兆候を有するうつ病患者は、プライマリケアの臨床現場で見逃されることが少なくない。久留米大学の藤枝 恵氏らは、初診から6ヵ月間の中年期プライマリケア患者における自殺念慮を伴ううつ病の予測因子を調査した。その結果、起床時の疲労感、睡眠状態不良、職場の人間関係の問題は、プライマリケアにおける自殺念慮を伴ううつ病の予測因子である可能性が示唆された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2023年4月17日号の報告。 対象は、日本の内科クリニックを受診した35~64歳の新規患者。自己記入式アンケートと医師のアンケートを用いて、ベースライン特性を収集した。自殺念慮を伴ううつ病は、登録時および6ヵ月後にZungうつ病自己評価尺度(SDS)、気分プロフィール検査(POMS)を用いて評価した。自殺念慮を伴ううつ病の調整オッズ比(aOR)を算出するため、多重ロジスティック回帰分析を用いた。関連因子の感度、特異性、尤度比も算出した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者387例中13例(3.4%)が6ヵ月時点で自殺念慮を伴ううつ病であると評価された。・性別、年齢、関連因子で調整した後、統計学的に有意な自殺念慮を伴ううつ病のaORが認められた因子は以下のとおりであった。 ●1回/月以上の起床時の疲労感(aOR:7.90、95%CI:1.06~58.7) ●1回/週以上の起床時の疲労感(aOR:6.79、95%CI:1.02~45.1) ●睡眠状態の悪さ(aOR:8.19、95%CI:1.05~63.8) ●職場における人間関係の問題(aOR:4.24、95%CI:1.00~17.9)・本調査は、サンプルサイズが小さかったため、本結果を確認するためには、より多くのサンプルサイズを用いた研究が必要とされる。

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加糖飲料の多飲は2型DM患者の死亡・心血管病リスクを増加させるとの警鐘に耳を傾けよう!―(解説:島田俊夫氏)

 一般集団においての加糖飲料の過剰摂取が、がん、心血管病リスクおよび死亡を高めるとの報告も数多くみられる1)。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のLe Ma氏らが、2つの大規模前向きコホート試験、Nurses’ Health Study (女性看護師が対象:年齢30~55歳)とHealth Professionals Follow-up Study(男性医療従事者が対象:年齢40~75歳)の参加者中、ベースラインおよび追跡期間中に2型DMと診断された男女1万5,486例を対象に、飲料別摂取と死亡およびCVD(Coronary Vascular Disease:心血管病)アウトカムの関連を調査し、飲料摂取量については食品摂取頻度質問票を使って評価し、2~4年ごとに更新された情報を加味して解析を行った。 この研究は1次アウトカムを全死因死亡、2次アウトカムをCVD発症および死亡に設定していた。この研究成果の要約 加糖飲料の多飲が死亡リスクを増加させ、平均追跡期間18.5年で、CVDの発症は3,477例(22.3%)、死亡は7,638例(49.3%)と報告された。多変量調整後、各種飲料摂取量の5分類中、最高量群の最低量群に対する死亡のプール解析ハザード比(HR)は、加糖飲料に関しては、HRは1.20(95%CI:1.04~1.37)と増加した。他方、コーヒー、低脂肪乳に関しては摂取量とリスクは逆相関(死亡ハザード比の低下)が認められた。 2型DM確定後にコーヒーの摂取量増加者では非増加者に対して、全死因死亡の低下が観察された。同様の関連性が紅茶と低脂肪乳についてもみられた。 さらに、加糖飲料から人工甘味料入り飲料への変更で、全死因死亡とCVD死の有意な低下が認められた。加糖飲料、フルーツジュース、全脂肪乳からコーヒー、紅茶、真水への変更に関しても全死因死亡の低下が一貫して認められた。コメント 2型DM患者での加糖飲料の多飲は全死因死亡、CVD発症および死亡を増加させるため、甘さの誘惑に負けることなく、加糖飲料の摂取には細心の注意を払うことが命を守る最善の策であり、加糖飲料は極力避け、健康人においてさえもこの考えに従うことを勧めたい。 加糖飲料は2型DM患者においては高血糖を生じやすく、糖質の高い果物ジュースも同様の危険を有すると考えるべきです。人工甘味料に関しては安全性に関して今のところ砂糖に比べ約数百から数千倍の甘みがあるため、少量の使用で済むことを考慮すれば懸念は小さいと考えられるが、安全性が担保されているわけではない2)。さらに、カロリーゼロだということで大量に使用する場合の安全性には疑問点もあり、安易に飛びつくことは避けるべきと考える。 加糖飲料はCVDリスク、全死因死亡、がんリスクを高める事実を真摯に受け止め、加糖飲料の摂取を極力控えることが、2型DM患者はもちろん、健康人にとってもリスク軽減につながると考える。

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日本とドイツでみるLVADの手術数【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第26回

心臓移植が必要なくらい心機能が低下してしまった患者に対し、機械を用いて心臓機能の補助を行うことがあります。“Ventricular Assist Device”を略して「VAD(バド)」と呼ばれるものです。特に左室機能低下症例に対して用いられることが多く、LeftのVADで「LVAD(エルバド)」と呼ばれることがほとんどです(ちなみに右室の補助に用いる場合は「RVAD」です)。以前のLVADは本体が体の外にあって、ポンプがペコペコ動いているのが目視できました。しかし現在では、小さく高性能なモーターを用いて、体内にLVAD本体を植え込むことができるタイプのLVADが主流となってきています。このLVADの手術は、わが国では限られた施設でのみ扱うことが許されています。図 重症心不全に対する強力な治療〜LVAD(ウィキペディア「補助人工心臓」より引用)経皮的にコードを体外へ出して、バッテリーに繋ぎますドイツのLVADの手術数はペースメーカーの手術数超先日、循環器内科の先生と話しているときに、LVADについての話題となりました。「俺がいたドイツの病院、LVADの専門病棟があったよ。いや、ホンマよ、ホンマ。 ん? 数? え一っと…あんまり覚えてないけど…ペースメーカーくらいのノリでLVADのオペしてたで~」「え−!? 絶対盛ってますよね?」(ん~…まあ、ちょっと言い過ぎたような気がするな…)と気になったので、当時の同僚に問い合わせてみると、「LVADは年120例くらいで、心移植が80例くらいだよ」との返事が!ほら! 年120例、LVADのオペやってた!そもそもペースメーカーの手術が平均何例くらいのイメージがさっぱりわからないですけど、日本で120例くらいだと結構多いんじゃないですかね?このLVADは、手術自体も簡単ではないのですが、術後のフォローがとても大変です。強力な治療法であることは間違いないのですが、部位の感染や血液の凝固問題など、繊細な術後管理が必要とされ、それはもう、膨大なマンパワーが要求されるのです。ドイツでは、専門病棟を造って、うまく仕事を分担させることでペースメーカー並のLVAD症例を実現しているのです。

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6月14日 認知症予防の日【今日は何の日?】

【6月14日 認知症予防の日】〔由来〕アルツハイマー病を発見したアロイス・アルツハイマー博士の誕生日から日本認知症予防学会が制定。認知症予防の大切さを啓発している。関連コンテンツ急速に進行する認知症(1)【外来で役立つ!認知症Topics】高度アルツハイマー型認知症にも使用できるドネペジル貼付薬「アリドネパッチ27.5mg/55mg」【下平博士のDIノート】夜勤と認知症リスク~UK Biobankの縦断的研究認知機能低下の早期発見にアイトラッキングはどの程度有用かビタミンD不足で認知症リスク上昇~コホート研究

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第165回 NP制度化、かかりつけ医機能認定制……、開業医常任理事を4人増員し、とにかく反対し続ける日医に未来はあるのか?

規制改革推進会議答申書、ナース・プラクティショナーは結局調査止まりこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、久しぶりに茨城県桜川市で有機農業を営む大学の先輩宅へ農作業の支援に行ってきました。雨も止み暑さが和らいだ土曜、畑の草取りや玉ねぎの収穫などを手伝って来ました。先輩の話では、今年はグリーンピースや空豆、ニンニク、玉ねぎなどが例年になく豊作だったそうです。有機農法にこだわるあまり、貧相で虫食いの野菜が特徴の農園だったのですが、今年は直売所に置いても恥ずかしくない野菜ばかりで安心しました。「春が短く、早く夏が来たにもかかわらず、虫の出始めは例年並だったせいで、虫の被害が少なかったからではないか」と先輩は分析していました。温暖化の影響はこんなところにも出ているのでしょうか……。お土産に採れたての野菜をたくさんもらい、地球の未来について考えながら帰京しました。さて今回は、6月1日に政府の規制改革推進会議が公表した答申書、「転換期におけるイノベーション・成長の起点」1)の中の、とくに医療提供に関するパートについて考えてみたいと思います。「第162回 止められない人口減少に相変わらずのんきな病院経営者、医療関係団体(後編) 『看護師に処方権』『NP国家資格化』の行方は?」で多少の期待を込めて書いたナース・プラクティショナー(NP)ですが、結局は調査止まり、訪問看護ステーションでの配置可能薬拡大についても、実態調査を行ったうえで「必要な対応の検討を求める」方針となり、全体として尻すぼみの結果に終わりました。半ば予想されていたことですが、今回も日本医師会や日本薬剤師会などが強硬に反対したことが大きな理由です。現場の医師や薬剤師の仕事そのものにも大きなプラスになる改革だと思うのですが、未来のことを考えず、今ある既得権を守ろうとするその頑なさには、いつも”感心”してしまいます。「NP制度を導入する要望に対して様々な指摘があったことを適切に踏まえる」の一文答申の「医療・介護・感染症対策」の「医療関係職種間のタスク・シフト/シェア等」における医師、看護師間のタスクシェアについては、「医師、看護師が実際に果たしている役割や課題を令和6年度及び7年度に調査し、更なる医師、看護師間でのタスクシェアを推進するための措置について検討する」とされました。そして、「その際、限定された範囲で 診療行為の一部を実施可能な国家資格であるナース・プラクティショナー制度を導入する要望に対して様々な指摘があったことを適切に踏まえるものとする」との一文が入りました。「看護師が医師の包括的指示を受けて行い得る業務を明確化するため、現場のニーズを踏まえて、包括的指示の例を示す」ことや、「特定行為研修修了者の養成促進」「特定行為の運用状況と地域医療におけるニーズを現場の医師及び看護師等から把握し、特定行為の拡充について検討する」ことなども提言されました。訪問看護ステーションでの配置可能薬拡大も見送り日本薬剤師会が強く反対していた訪問看護ステーションでの配置可能薬拡大についても、「具体的にどのような地域にどの程度の頻度でどのような課題があるかについて現場の医師、薬剤師、看護師及び患者等に対して調査を行い、必要な対応を検討」とされ、具体案の提示にまで至りませんでした。ただ、24時間対応を謳いながら対応していない薬局に是正を求めるほか、それでも状況が改善しない場合は「訪問看護ステーションに必要な薬剤を配置することも含め必要な対応を検討する」としました。読みようによっては、「薬局も真面目にやらないと、制度化してしまうよ」と脅されたともとれます。医療・介護・感染症対策ワーキンググループで医師の佐々木 淳専門委員(医療法人社団悠翔会 理事長)の提案が、具体的で実効性がありそうだっただけに、この部分は今後動いて行く可能性も高そうです。答申前、日看協は厚労大臣に要望、日医など医療団体は反対の意見書ところで、規制改革推進会議の答申書が公表される10日前の5月22日、日本看護協会は「ナース・プラクティショナー(NP)制度の創設に関する検討」など、来年度の予算・政策に関する要望書を、加藤 勝信厚生労働大臣に提出しています2)。日看協は「特定行為研修制度では対応できない医療ニーズがあり、医師の指示が得られずに症状が悪化する利用者が少なくない」ことなどを踏まえ、NP制度化を改めて加藤厚労相に要望したわけですが、Medifax等の報道によれば、加藤厚労相は、NP制度の創設について、「離島やへき地など必要な場所はどこなのか、そしてそれらの地域の医療をどう支えるのか」との観点から、検討が必要との認識を示したとのことです。一方、NPの導入を阻止したい日本医師会は、5月24日、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会などとの連名で、「連携体制を強化することが第一に行われるべきことです。(中略)その点を改善しないまま、新たな資格により看護師が診断・処方をすれば解決するということはあり得ません」とする意見書3)を公表しています。意見書では、訪問看護師と医療機関との連絡体制を改めて確認するなど連携の強化をまず行うべきだと提言、在宅医療の分野で特定行為研修を推進する必要性も指摘しています。CBnewsマネジメントなどの報道によれば、日医の釜萢 敏常任理事は5月24日の定例記者会見で、「国によって医療の供給や提供体制は大きく異なる。NPの制度化が日本で本当に必要なのか慎重に検討する必要がある」と述べたとのことです。NPの必要性は「在宅医療」だけに留まるものではない日本ではNPは必要ない、医療現場で問題は何も起こっていない、やるなら特定行為研修の充実で十分だ、とする日医など医師、病院団体と、「医師の指示が得られず症状が悪化する利用者が少なくない」と主張し、NP制度化を要望する日看協。話はまったく噛み合わず、規制改革推進会議の答申も、一見日医寄りの内容となりました。しかし、「ナース・プラクティショナー制度を導入する要望に対して様々な指摘があったことを適切に踏まえるものとする」の一文が入ったことは、小さいながらも確実な前進と捉えることができそうです。日医側の意見書を読んでみると、なかなか苦しい言い訳だと感じます。「連携体制を強化することが第一」でそれが改善しないまま新たな資格をつくっても仕方がない、と主張していますが、そこを改善してこなかった、あるいはそこまで手が回らないのは一体誰なのか、という話です。現状、NPは「在宅医療」についての議論に留まっていますが、早晩、「医療」全体にも当てはまる話となっていくでしょう。日看協も厚労省に陳情するだけでなく、国民も巻き込んだPR作戦でも展開すれば局面も変わると思うのですが……。日本医師会常任理事4人増員の背景自分たちの既得権を壊しかねない規制改革案にとにかく反対し続ける日本医師会ですが、6月4日、新たに4人の常任理事を決定したと公表しました。立候補者が4人と定員と同数のため、6月25日に開催される第154回日本医師会定例代議員会では選挙は行われません。日本医師会の常任理事は現在10人。日本医師会の常任理事の14人への増員は3月26日の第153回臨時代議員会で承認され決定しました。「膨大かつ多様化する会務に対応できる有能な人材を、全国から発掘・登用し適材適所に配置する」ことが目的としています。この常任理事増員について、週刊ダイヤモンドの2023年6月3日号(医学部&医者特集号)に、「会長の座を巡って繰り返されるクーデター 医師会『役員大増員』の内情」というタイトルの、興味深い記事が掲載されています。その記事は、4人増員の最大の目的は、「4人を全国4地区に振り分けて、1人当り12都道府県を担当し、しっかりと会員増員や『医政活動』をやっていただく」(松本 吉郎会長の代議員会での言葉)ためと書いています。つまり、医師会員を増やし、自民党員を増やし、自民党議員とのつながりを強め、選挙における日医の力(集票力)を復活させるための常任理事増員というわけです。同記事はさらに、政権(自民党)と関係がうまく築けていない松本会長が「医政活動を強化しなければならないような状況に追い込まれているということだ。政権との太いパイプが築けていないからこそ、会員増強を図り国政選挙などで集票力を誇示しなければとの焦りのぞく」とも書いています。男性中心かつ診療所開業医のための利権団体同記事はまた、本連載の「第150回 かかりつけ医機能の確認めぐりひと悶着、制度化の芽も摘んだ日本医師会の執念」でも書いた、かかりつけ医機能の確認が「事実行為」か「行政行為」かをめぐってのひと悶着と、その結果、かかりつけ医機能の制度が骨抜きになってしまったことや、日医が発行する医学生向け情報誌のアンケートで、日医のイメージの5位が「開業医の利益のために活動している」であったことなどを挙げて、「日医がいま以上に『政治力』を発揮することを、医療全体、とりわけ現役の医師や、これから医師になろうとする医学生たちは望んでいるだろうか」とも書いています。先週、ある取材で地方の病院経営者に会ったのですが、「日医の新しい常任理事、4人とも診療所開業医だよ。これで診療所開業医のための利権団体という性格がこれまで以上に強まるね」と嘆いていました。人口減少、高齢社会という未来を見据えることなく、既得権とプライドに固執して制度の大胆な改革案に反対し続ける日本医師会に果たして未来はあるのでしょうか。ちなみに、増員された4人の常任理事は全員男性。現在の会長、副会長3人、常任理事14人中、女性は1人です。このあたりも時代に乗り遅れている気がします。「ズレてますから」と直言してくれる人間は、日医幹部の周りにいないのでしょうか。参考1)規制改革推進に関する答申~転換期におけるイノベーション・成長の起点~/内閣府2)令和6年度予算・政策に関する要望書/日本看護協会3)制改革推進会議医療・介護・感染症対策ワーキンググループにおけるナースプラクティショナー(NP)の議論について/日本医師会など

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患者情報から治療期間を評価して、漫然投与薬の中止を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第54回

 今回は、長期服用薬の治療期間を疑問に思い、患者情報を収集し直して漫然投与となりがちな薬剤の必要性を再考した症例を紹介します。副作用などの問題がなくても、治療の適応があるのかどうかを定期的に考える機会は必要です。急性疾患で処方された薬剤がいつまで必要なのか、慢性疾患であれば処方時点と現在で治療内容が妥当であるのか否かを、薬剤師の視点で評価しましょう。患者情報85歳、女性(施設入居)基礎疾患アルツハイマー型認知症介護度要介護2服薬管理施設職員が管理処方内容1.カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム錠30mg 3錠 分3 毎食後2.トラネキサム酸錠250mg 3錠 分3 毎食後3.五苓散エキス顆粒 3包 分3 毎食後4.クエン酸第一鉄ナトリウム錠50mg 3錠 分3 毎食後本症例のポイントこの患者さんは半年前の施設入居時から上記の処方薬を服用していました。処方監査を実施していた薬剤師が、採血結果もなく、病歴も認知症のみなのになぜ止血剤および鉄剤を飲んでいるのか不明であったため、基礎疾患や治療経過を収集する治療計画(Care plan)を立案しました。当然、出血既往があると予測はつきますし、そのための貧血治療と考えるのが妥当ですが、いつ・どこの・どの程度の出血なのか明確でないことに違和感がありました。担当薬剤師へ情報を引き継ぎ、担当薬剤師が施設訪問時に看護師と入居前に入院していた病院の看護サマリーと診療情報提供書を確認しました。すると、繰り返す転倒から慢性硬膜下血腫が生じ、1年前に穿頭血腫ドレナージ術を施行していたことがわかりました。術後の再出血予防および血腫サイズの縮小などを目的に現行の治療薬が処方され、クエン酸第一鉄もそのときの採血結果をもとに追加されていました。そこで現在の主治医が外科医であることから現行薬の必要性を相談することにしました。医師への相談と経過主治医に電話で、長期的に現行薬を服用していて服薬アドヒアランスは維持されていることを伝えたうえで、病歴の聴取、今後の脳外科受診などの予定について確認しました。また、今後の治療方針も確認しました。主治医は病歴を把握していたものの、現行薬を今後どうするかについては保留中だったそうで、前回の術後頭部CT画像の確認から現行薬の必要性はないだろうという返答がありました。また、貧血治療も採血予定(Hb、フェリチン、TIBC、MCVなど)を組んだので、そこで鉄剤の中止を検討するとのことでした。最後に医師より、長期服用薬の評価は緊急性がなければ後回しになってしまうことが多いので、こういうアシストはとても助かるとお礼がありました。患者さんは現在も施設で転倒もなく、出血イベントも起きずに生活しています。鉄剤もその後の採血結果で異常所見はなく、治療は終了となりました。薬が終了したことで本人の服薬負担も看護師の与薬負担も減らすことができました。このように、病歴確認と見直しを行い、漫然投与となりがちな薬剤について今一度治療の適応があるのかどうか考える機会は必要です。治療継続の必要可否について確認する薬剤師のアプローチも多剤併用を予防するポジティブアクションに繋がると実感しました。

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末梢性めまいで“最も頻度の高い”良性発作性頭位めまい症、BPPV診療ガイドライン改訂

 『良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療ガイドライン』の初版が2009年に発刊されて以来、15年ぶりとなる改訂が行われた。今回、BPPV診療ガイドラインの作成委員長を務めた今井 貴夫氏(ベルランド総合病院)に専門医が押さえておくべきClinical Question(CQ)やBPPV診療ガイドラインでは触れられていない一般内科医が良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo)を疑う際に役立つ方法などについて話を聞いた。BPPVは末梢性めまいのなかで最も頻度が高い疾患 BPPVは末梢性めまいのなかで最も頻度が高い疾患である。治療法は確立しており予後は良好であるが、日常動作によって強いめまいが発現したり、症状が週単位で持続したりする点で患者を不安に追い込むことがある。また、BPPVはCa代謝の異常により耳石器の耳石膜から耳石がはがれやすくなって症状が出現することから、加齢(50代~)、骨粗鬆症のようなCa代謝異常が生じる疾患への罹患、高血圧、高脂血症、喫煙、肥満、脳卒中、片頭痛などの既往により好発するため、さまざまな診療科の医師による理解が必要になる。 よって、BPPV診療ガイドラインは耳鼻咽喉科や神経内科などめまいを扱う医療者向けにMinds診療ガイドライン作成マニュアルに準拠し作成されているが、BPPVの疫学(p.20)や鑑別診断(p.25~27)はぜひ多くの医師に一読いただきたい。 以下、BPPV診療ガイドラインの治療に関する全10項目のCQを示す。―――CQ1:後半規管型BPPVに耳石置換法は有効か?CQ2:後半規管型BPPVに対する耳石置換術中に乳突部バイブレーションを併用すると効果が高いか?CQ3:後半規管型BPPVに対する耳石置換法後に頭部の運動制限を行うと効果が高いか?CQ4:外側半規管型BPPV(半規管結石症)に耳石置換法は有効か?CQ5:外側半規管型BPPV(クプラ結石症)に耳石置換法は有効か?CQ6:BPPVは自然治癒するので経過観察のみでもよいか?CQ7:BPPV発症のリスクファクターは?CQ8:BPPVの再発率と再発防止法は?CQ9:BPPVに半規管遮断術は有効か?CQ10:BPPVに薬物治療は有効か?――― 今回、今井氏は「めまい診療を行う医師にはCQ5とCQ8に目を通して欲しい」と述べており、その理由として「両者に共通するのは、諸外国では積極的に行われているにもかかわらず日本ではまだ実績が少ない治療法という点」と話した。「たとえば、CQ8のBPPVの再発防止については、ビタミンDとカルシウム摂取が有効であると報告されているが、国内でのエビデンスがないため推奨度は低く設定された。次回のBPPV診療ガイドライン改訂までにエビデンスが得られ、推奨度が高くなることを期待する」とも話した。BPPVと鑑別すべきめまいを伴う疾患 めまいを伴う疾患はBPPVのほか、脳卒中やメニエール病をはじめ、前庭神経炎、めまいを伴う突発性難聴、起立性調節障害、起立性低血圧が挙げられる。とくに起立性低血圧はBPPVの34%で合併しており鑑別が困難であるので注意したい。なお、めまいの訴えが初回で単発性の場合、高血圧・心疾患・糖尿病が既往にある患者では脳卒中も鑑別診断に挙げるべきである。BPPVを疑う鍵は「めまいが5分以内で治まる」か否か BPPVの確定診断のためには特異的な“眼振”を確認することが必要であるので、フレンツェル眼鏡や赤外線CCDカメラといった特殊機材を有している施設でしか診断できないが、同氏は「BPPV診療ガイドラインには掲載されていないが、非専門医でもBPPVを疑うことは可能」とコメントしている。「眼振が確認できない施設では、われわれが開発した採点システム1)を用いて患者の症状をスコア化し、合計2点以上であればBPPVを疑って専門医に紹介して欲しい」と説明した。 本採点システムを開発するにあたり、同氏らは大阪大学医学部附属病院の耳鼻咽喉科およびその関連病院のめまい患者571例を対象に共通の問診を行い、χ2検定を実施。BPPV患者とそれ以外の患者で答えに有意差のあった問診項目を10個抽出した。同氏はこれについて「10個の項目に0~10点を付け、患者の答えから求めた合計点によりBPPVか否かを判断した際、感度、特異度の和が最も高くなるように点数を決定し、0点の項目を除外すると最終的に4項目に絞ることができた。なかでも“めまいが5分以内で治まる”は点数が2点と高く、BPPV診断で最も重要な問診項目であることも示された」と説明した。なお、本採点システムによる BPPVの診断の感度は81%、特異度は69%だった。 以下より、そのツールを基にケアネットで作成した患者向けスライドをダウンロードできるので、非専門医の方にはぜひ利用して欲しい。『良性発作性頭位めまい症の判別ツール』(患者向け説明スライド) なお、CareNeTVでは『ガイドラインから学ぶ良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療のポイント』を配信中。話術でも定評のある新井 基洋氏(横浜市立みなと赤十字病院めまい平衡神経科 部長)が改訂BPPV診療ガイドラインを基に豊富な写真・イラストや動画を用いて解説している。

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