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急性心筋梗塞患者の予後は、所得に関連するのか? (解説:三浦伸一郎氏)

 急性心筋梗塞(AMI)は、急性期の早期治療として冠動脈に対する血行再建術の有効性のエビデンスが確立し、わが国においても広く普及してきた。2020年のわが国における死因の第1位は悪性新生物、第2位が心疾患であり、その41%が心不全、33%が虚血性心疾患(その15%がAMI)となっている1)。AMIによる死亡率は年々低下してきているが、その後、心不全へ移行する患者もいるため、今なお、重要な心疾患である。最近、「脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画」が発表され、心血管疾患に対する多くの計画が進行中である。  今回、Landon氏らは、JAMA誌に66歳以上の高齢者AMI患者における興味深い報告をした2)。高齢AMI患者の予後と所得との関連性について、米国、カナダ、イングランド、オランダ、イスラエル、台湾について分析している。AMI患者で高所得者のほうが低所得者よりも、経皮的冠動脈形成術を受けた割合が高く、30日死亡率や1年死亡率が低率であったというものであった。わが国のAMI発症後の早期治療は、確立しているが、院内死亡率は依然として5~10%であり、患者の所得により血行再建術を受ける割合や予後に差異があれば問題である。JAMA誌では、「国民皆保険と強固な社会セーフティーネットシステムがある国であっても、所得に基づく格差が存在することを示唆する」となっている。理由は、低所得者では喫煙率が高いこと、地理的条件にも関連する高度医療施設へのアクセスが悪いこと、他の併存疾患の多い可能性などが挙げられている。わが国では、高額療養費制度があり、所得に応じて一定の医療費が払い戻される制度があり、いまだに地域差はあるが救急医療が整備されつつある。また、AMIの好発年齢は、男性で60歳、女性で70歳程度であり、男女差や年齢層別化による検討、ST上昇型AMIと非ST上昇型AMIの差異の検討も必要であり、わが国がJAMA誌の報告と同様の結果となるかは、今後の課題である。

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紹介状の書き方、相手が快・不快と思う分かれ道【紹介状の傾向と対策】第6回

<あるある傾向>前医の診断の根拠がわからない<対策>診断根拠を明確に記載する。ただし、ポイントを押さえて簡潔に多忙な臨床業務の中で紹介状(診療情報提供書)の作成は負担の大きな業務の1つです。しかし、紹介状の不備は、依頼先(紹介先)の医師やスタッフに迷惑をかけるだけではなく、患者さんの不利益やトラブルにつながりかねません。このため、できる限り依頼先が困らない紹介状の作成を心がけたいものです。【紹介状全般に共通する留意点】(1)相手の読みやすさが基本(2)冒頭に紹介する目的を明示する(3)プロブレムと既往歴は漏れなく記載(4)入院経過は過不足なく、かつ簡潔に記載(5)診断根拠・診断経緯は適宜詳述(6)処方薬は継続の要否、中止の可否を明記(7)検査データ、画像データもきちんと引き継ぐ今回は上記の留意点(5)「診断根拠・診断経緯は適宜詳述」について解説します。読者の先生方と同様に、筆者も日々さまざまな疾患の患者紹介を受けます。いろんな医師の紹介状を読むなかで、本当にきちんとした紹介状だなと感服させられることがあります。感服させられるポイントの1つに、診断の経緯や根拠を的確に押さえて記載されていることが挙げられます。そして、そのような紹介状は、文面は長すぎず簡潔にまとめられています。つまり情報の取捨選択が適切で情報粒度が絶妙なのです。多くの臨床医は、紹介されてくる患者さんに付けられた病名を見たとき、「その診断はどうしてついたのだろうか」「その診断は本当にあっているのだろうか」という、確認のためではあるものの一種の疑念に似た思考が反射的に走るのではないかと思います。たとえば、リウマチ性多発筋痛症と診断され、ステロイド導入後にフォローのために紹介されてきた患者がいたとします。しかし、紹介状の傷病名を見て、まず頭に浮かぶのは、そのリウマチ性多発筋痛症の診断は本当に正しいのだろうか、その医師の診断を信じて良いのだろうかと一瞬考えてしまうのです。その時に知りたいのは、紹介医がどのような根拠からその診断を導いたかです。類似した症状や所見を示す疾患の可能性はどのように除外されたかが記載されていれば、疑う余地はありません。このように読んでいて気持ち良いと感じる紹介状は、読み手が抱くであろう疑問に答えるかのように、必要な情報を的確な順番に並べているのです。そのような紹介状は臨床医が最初に抱いた疑念に対し、納得感を与え、そして次の瞬間には紹介医への信頼ともいえる心地よい「快」の感情が生まれるのです。一方、リウマチ性多発筋痛症の診断名とステロイドの継続依頼だけが記載され、診断根拠が適当過ぎたらどうでしょうか。筆者なら、不明熱に対し適当にステロイドを入れてお茶を濁した可能性を勘ぐってしまいます。つまり不信感の「不快」の感情が生じてしまうのです。このように、紹介状はその文面1つで相手の医師の感情を「快」にも「不快」にも変えるのです。ただでさえ忙しい臨床の現場です。紹介先の医師には「快」を与えられる紹介状を書けるよう修練を積んでいきたいものです。

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木の実でアナフィラキシー、原因食物を確定する検査は?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第3回

木の実でアナフィラキシー、原因食物を確定する検査は?講師あいち小児保健医療総合センター 免疫・アレルギーセンターセンター長 兼 免疫・アレルギーセンター長伊藤 浩明 氏【今回の症例】2歳の男児。鶏卵アレルギーの既往があるが、現在は加熱卵4分の1個程度を摂取している。生まれて初めてクルミの入ったクッキーを食べ、15分後に口唇腫脹、顔から体幹に広がる紅斑、25分後に喘鳴と呼吸困難を生じたため救急外来を受診。アナフィラキシーとしてアドレナリン0.1mg筋肉注射、生食の点滴、抗ヒスタミン薬にて症状は消失し、念のために1泊入院した。原因食物を確定するために有用な特異的IgE検査はどれか?1.ω5-グリアジン2.Ara h 23.Jug r 14.Ana o 3本患児に対する今後の指導について正しいのはどれか?1.よりリスクの高いピーナッツも、念のため除去する2.クルミに加えて、ペカンナッツも除去する3.すべての木の実類を除去する4.治療のため、このクッキーをごく少量から食べ続ける

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コロナ5類移行後の院内感染対策の現状は?/医師1,000人アンケート

 5月8日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の位置付けが「5類感染症」に移行となったが、医療機関ではその前後の過渡期に、これまで継続してきたさまざまな院内感染対策の緩和について議論されていた。5類に移行して約1ヵ月経過し、新規コロナ感染者は全国的に増加傾向にあり、院内感染対策をどこまで緩和するか、今なお難しい判断が迫られている。 病床の有無やコロナ診療状況など条件の異なる医療機関において、院内感染対策の現状や、抱えている課題を把握するため、病院を20床以上、診療所を20床未満と定義し、病院522人、診療所502人の会員医師1,024人を対象に『病院・診療所別 新型コロナ5類移行後の院内感染対策アンケート』を5月30日に実施した。5類移行後、病院93%、診療所72%がコロナ診療している 「Q1. 勤務先の医療機関における、5類移行前後での新型コロナの診療状況」という設問では、「5類移行の前後で、いずれもコロナ診療を受け付けている」「5類移行前は受け付けていなかったが、移行後は受け付けている」「5類移行前は受け付けていたが、移行後は受け付けていない」「5類移行の前後で、いずれも受け付けていない」の4つの選択肢から最も当てはまるものを聞いた。 病院では、84%がいずれの時期もコロナ診療を受け付けており、9%が5類移行後に新たに受け付けるようになった。診療所では、56%がいずれの時期もコロナ診療を受け付けており、16%が移行後に新たに受け付けるようになった。なお本調査では、コロナ診療の割合の低い眼科、皮膚科、泌尿器科といった診療科も含まれている。コロナ5類移行後、PPE着用は感染症疑い患者の診察時のみが多数 「Q2. 個人防護具(PPE)の着用について」という設問では、「勤務中は常にPPEを着用している」「感染症疑いの患者の診察時のみPPEを着用している」「PPEを着用していない」の3つの選択肢から最も当てはまるものを聞いた。 コロナ診療している病院では、常にPPE着用している割合は12%で、79%が感染症疑いの患者の診察時のみ着用していた。コロナ診療している診療所でも、常にPPE着用している割合は12%で、64%が感染症疑いの患者の診察時のみ着用していた。コロナ診療をしていない医療機関でも、病院の49%、診療所の33%が感染症疑いの患者の診察時のみPPE着用し、診療所の5%が常に着用していると回答した。 「Q3. 診療中の手指消毒のタイミングについて」という設問では、「診療室や病室に入るとき」「1人の診察ごと」「処置や検査を行ったとき」のそれぞれの場合に対して、病院では約60%の医師がいずれの場合も手指消毒を行っているとした。診療所では、45%が「診療室や病室に入るとき」、約55%が「1人の診察ごと」「処置や検査を行ったとき」に手指消毒を行っていると回答した。コロナに罹患した職員の療養期間、病院と診療所で傾向の差 「Q4. 勤務先の医療機関での、コロナに罹患した医療従事者の療養期間は何日か」という設問では、医療機関の規模とコロナ診療の有無で、結果に若干の傾向の差が出た。最も慎重な結果だったのはコロナ診療している病院であり、4日以下が8%、5日が56%、7日が24%、8日以上が10%であった。コロナ診療していない病院では、4日以下が8%、5日が64%、7日が21%、8日以上が5%であった。 診療所はコロナ診療の有無にかかわらずほぼ同等で、コロナ診療している場合は、4日以下が13%、5日が63%、7日が17%、8日以上が2%。コロナ診療していない場合は、4日以下が17%、5日が62%、7日が16%、8日以上が3%であった。病院と比べて診療所のほうが、4日以下の割合が約2倍多くなっている一方で、7日、8日以上の割合は病院のほうが多かった。 「Q5. 入院予定患者に対する事前のコロナスクリーニング検査の実施状況について」という設問では、病院では、PCR検査を実施しているのが31%、抗原検査を実施しているのが27%、検査は行わず、事前に診察でコロナの診断を行っているのが9%、事前スクリーニング検査は実施していないとしたのが29%となり、結果が拮抗していた。コロナ院内感染が広がった際の責任の所在に課題感 「Q6. 院内の感染対策を緩和していくうえで、判断に迷っていること、難しいと感じること」という設問では、以下のような意見が挙げられ、新型コロナに対する人々の危機感の薄れとは裏腹に、医療機関がさまざまな課題を抱えていることが浮き彫りになった。患者がコロナ感染対策せずに来院する・ウイルス感染は依然として続いているのに、あたかも、なくなったかのごとく振る舞う患者が結構みられるようになった。(診療所・内科・60代)・マスクをしない患者さんがよく来るようになった。(診療所・皮膚科・40代)コロナ院内感染・クラスター・感染が広がった際の責任の所在。(病院・呼吸器外科・30代)検査・入院時に陰性でも、後に感染が判明することがある。(病院・糖尿病・代謝・内分泌内科・30代)・明らかにコロナ感染症だと思われる方の中には、検査を希望されない方が一定の割合で存在する。(診療所・内科・60代)・以前は患者負担なく検査できたのでやりやすかったが、今はそうではないので困る。(診療所・消化器内科・40代)動線・ゾーニング・現状は時間分離で診療を行っているが、一般患者さんとの分離が十分できている保証はない。(診療所・内科・70代以上)面会・新型コロナ感染者が1人でも院内に発生した場合に、面会制限をしたほうがいいのか、判断に困っています。(病院・内科・50代)PPE・どこまでPPEを緩めるか。(診療所・内科・50代)職員への対応・職員の同居人に発熱者が出ても新型コロナかどうか不明の場合の出勤調整の判断に迷う。(診療所・内科・60代)・咳嗽が残った従事者の勤務。(診療所・内科・60代)コロナ感染対策の基準がわかりづらい・適正な指針が見当たらない。(病院・消化器内科・50代)・高齢者が多いため緩和しにくい。(診療所・内科・50代)・最近また新型コロナウイルス感染患者が増えてきた。(病院・外科・40代)・コロナ以外にもインフルエンザや麻疹、結核などのルールアウトもしておらず、アウトブレイクに対して一抹の不安はある。(病院・麻酔科・50代)・地域・全国のコロナ患者の状況、ベッドがどれくらい埋まっているかの情報・統計が得られなくなり、院内の感染対策を緩めていい時期が不明瞭。(診療所・内科・50代)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。5類移行後の院内感染対策はどうしている?/医師1,000人アンケート なお、ケアネットライブでは『アフターコロナの院内感染対策・新ルール』を6月21日(水)20時からライブ配信する。聖路加国際病院 感染管理担当の坂本 史衣氏が、最新の知見を踏まえ、今後のコロナ院内感染対策で徹底すべきこと、緩和してもよいことなど、実践例を交えながら解説する。本講義はCareNet.com会員であれば無料で視聴できる。

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肝細胞がんへのアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用術後補助療法の患者報告アウトカム(IMbrave050)/ASCO2023

 肝細胞がん(HCC)に対するアテゾリズマブとベバシズマブの併用術後補助療法を評価するIMbrave050試験の探索的研究から、同レジメンは健康関連QOLや機能スコアに悪影響を及ぼさないことが示された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、近畿大学の工藤 正俊氏が発表したもの。 追跡期間17.4ヵ月において、IMbrave050試験の主要評価項目である無再発生存期間(RFS)は、対照群と比較してアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用群で有意に改善しており(ハザード比:0.72、95%信頼区間:0.56~0.93、p=0.012)、また、同併用療法の安全性についても既知の報告との一致していた。今回の発表は、患者報告アウトカム(PRO)に基づく追加解析である。・対象:切除または焼灼療法後の再発高リスクHCC患者(668例)・試験群:術後補助療法としてアテゾリズマブとベバシズマブを3週ごと12ヵ月または17サイクル投与(併用群、334例)・対照群:経過観察(観察群、334例)・評価項目:[主要評価項目]独立評価機関(IRF)評価のRFS[事前に設定された探索的PRO評価項目]全般的健康感(GHS)/QOL、身体・役割・感情・社会機能のベースラインからの変化(評価にはIL42-EORTC QLQ-C30が用いられた) 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、併用群、観察群とも93%超の患者において、IL42-EORTC QLQ-C30の実施が継続されていた。・ベースラインにおけるGHS/QOL、身体機能、役割機能、感情機能、社会機能の平均スコアは両群でほぼ等しく、いずれも一般集団に比べて高いスコアを示していた。・治療期間中17サイクルを通じ、併用群のGHS/QOL、身体機能、役割機能、感情機能、社会機能は維持され、どの時点においても臨床的に意味のある悪化は認められなかった。・ベースライン時から17サイクル目までの変化は両群とも同等であった。 発表者の工藤氏は、「アテゾリズマブとベバシズマブの併用は、再発高リスクHCCの術後補助療法の実臨床を変える治療選択肢となる可能性がある」と述べた。

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TN乳がんのHER2発現状況、生検時期によって変動/ASCO2023

 HER2の発現状況は変動的であり、HER2低発現ではないIHC 0のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者が病勢進行時に生検を繰り返し行うことでHER2低発現となる可能性があることを、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、米国・マサチューセッツ総合病院のYael Bar氏が発表した。 第III相DESTINY-Breast04試験サブグループ解析において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)はTNBCを含むHER2低発現で転移を有する乳がん患者の無増悪生存期間と全生存期間を有意に改善した。しかし、T-DXdのFDA承認はHER2低発現であってTNBCではないため、HER2低発現かどうかを特定することは臨床的に重要である。 先行研究では、TNBCにおけるHER2発現状況は不均一で時間の経過とともに変動することが示唆されているが、TNBC患者がHER2低発現の結果を得るために繰り返し生検を受ける意義があるかどうかは不明である。そこで研究グループは、TNBC患者における生検の実施回数とHER2発現状況の相関、生検を繰り返して行う意義、生検時期によるHER2発現状況の変動の評価を行った。 研究グループは、2000~22年に単一施設で治療を受けたTNBC(ER/PR<10%、HER2陰性)患者512例のデータを後方視的に解析した。HER2の発現状況が不明または不確定の患者は除外された。HER2低発現は、IHCスコア1+またはIHCスコア2+かつISH-と定義された。生検は実施時期や実施方法に基づいて分類された。 患者の年齢中央値は52歳(範囲:25~97歳)、50歳以上が46%、ER低発現(1~10%)が13%、術前化学療法実施が54%であった。StageIが28%、StageIIが48%、StageIIIが14%、StageIVが8%、不明が1%で、生検の実施回数は1回が38%、2回が45%、3回が9%、4回が6%、5回以上が2%であった。 主な結果は以下のとおり。・生検の合計実施回数が増えるにつれて、HER2低発現の結果を少なくとも1回示した患者の割合が増加した。生検を計1回実施した患者では59%、計2回では73%、計3回と計4回では83%、計5回以上では100%であった。・以前の生検でHER2ゼロだった患者は、次の生検を受けるたびにその3分の1が新たにHER2低発現の結果を示した。・同一患者の異なるタイミングの生検を分析した結果、HER2ゼロ→HER2低発現、HER2低発現→HER2ゼロの変動が主に認められ、その変動の可能性は早期に実施した生検と転移が進んだ状態で実施した生検の間で最も大きかった。転移が進んだ状態の生検は、HER2ゼロ→HER2低発現となる割合が高かった。・術前化学療法の有無はHER2発現状況の変動に影響を与えなかった。 これらの結果より、Bar氏は「TNBC患者においてHER2発現状況は変動的であった。T-DXdの適応がない患者でも、生検を繰り返すことで新たにHER2低発現の結果を得られる可能性があるため、実施可能かつ安全であるのであれば検討してもよいと考える。また、何らかの理由で生検を行った場合は再検査を行うべきである」とまとめた。

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アルツハイマー病治療薬lecanemabの安全性・有効性~メタ解析

 アルツハイマー病に対するlecanemabの有効性および安全性を評価するため、中国・Shengjing Hospital of China Medical UniversityのYue Qiao氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。その結果、実臨床における意義は確立していないものの、lecanemabは、早期アルツハイマー病患者の認知機能、行動に対し有効性を示すことが報告された。Frontiers in Aging Neuroscience誌2023年5月5日号の報告。 2023年2月までに公表された軽度認知障害またはアルツハイマー病患者における認知機能低下に対するlecanemab治療を評価したランダム化対照比較試験を、PubMed、Embase、Web of Science、Cochraneより検索した。臨床的認知症重症度判定尺度(CDR-SB)、Alzheimer's Disease Composite Score(ADCOMS)、AD Assessment Scale-Cognitive Subscale(ADAS-Cog)、臨床的認知症尺度(CDR)、アミロイドPET SUVr、PETにおけるアミロイド負荷、有害事象リスクに関するアウトカムを収集した。 主な結果は以下のとおり。・アルツハイマー病患者3,108例(lecanemab群:1,695例、プラセボ群:1,413例)を含む4件のランダム化比較試験のデータを用いて、メタ解析を実施した。・ベースライン特性は、lecanemab群においてApoE 4ステータスおよびMMSEスコアの高さが認められた。その他の項目は、両群間で類似していた。・早期アルツハイマー病患者に対するlecanemab群の各アウトカムは、プラセボ群と比較し、以下のとおりであった。 ●CDR-SB(加重平均差[WMD]:-0.45、95%信頼区間[CI]:-0.64~-0.25、p<0.00001) ●ADCOMS(WMD:-0.05、95%CI:-0.07~-0.03、p<0.00001) ●ADAS-Cog(WMD:-1.11、95%CI:-1.64~-0.57、p<0.0001) ●アミロイドPET SUVr(WMD:-0.15、95%CI:-0.48~0.19、p=0.38) ●PETにおけるアミロイド負荷(WMD:-35.44、95%CI:-65.22~-5.67、p=0.02) ●有害事象(1つ以上のTEAEが認められた患者)(オッズ比[OR]:0.73、95%CI:0.25~2.15、p=0.57) ●ARIA-E(アミロイド関連画像異常-浮腫/浸出)(OR:8.95、95%CI:5.36~14.95、p<0.00001) ●ARIA-H(アミロイド関連画像異常-脳微小出血、脳出血、脳表ヘモジデリン沈着)(OR:2.00、95%CI:1.53~2.62、p<0.00001)

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研究機関でのハラスメント、影響を受けやすいのは?/JAMA

 米国・ミシガン大学のReshma Jagsi氏らは、医学アカデミアに従事する教員にまつわる職場ハラスメント、サイバーインシビリティ(ネット上での敬意を欠いた非礼な言動)、組織風土がどのように変化しているかを調べる検討を行った。その結果、セクシャルハラスメント、サイバーインシビリティ、ネガティブな組織風土が高率に、とりわけマイノリティ集団を対象として存在し、メンタルヘルスに影響をもたらしていることを報告した。著者は、「医学アカデミアには、労働力の活力を損なう虐待行為を助長する可能性がある文化が存在する。引き続き医学アカデミアの文化を変える努力が必要である」と述べている。JAMA誌2023年6月6日号掲載の報告。米国医学アカデミアの文化の変遷と教員メンタルヘルスとの関係性を調査 研究グループは、2006~2009年に国立衛生研究所(NIH)キャリア開発助成金を受けた米国医学アカデミアの教員について、2021年にサーベイを行い、回答を得られた830人(回答率64%)を対象に、医学アカデミアの文化と教員のメンタルヘルス、および両者の関係性を調べた。 多変数モデルを使用して、文化体験(組織風土、セクシャルハラスメント、サイバーインシビリティ)とメンタルヘルスとの関連性を調査。文化体験は、性別、人種・民族性(アジア人、医学界で過小評価されているグループ[アジア系または非ヒスパニック系白人以外の人種・民族として定義]、白人)、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア(LGBTQ+)別に比較した。 主要アウトカムは、3つの文化(組織風土、セクシャルハラスメント、サイバーインシビリティ)の影響とし、従前の開発ツールを用いて評価した。副次アウトカムはメンタルヘルスの評価で、5項目Mental Health Inventory(スコア範囲:0~100、高スコアほどメンタルヘルスは良好)を用いた。職場ハラスメント、サイバーインシビリティ、差別的組織風土の存在が明らかに 教員830人のうち、男性が422人、女性が385人、男女非分類2人、性別の特定なしが21人であった。また、169人がアジア人、66人が過小評価グループ、572人が白人と回答し、23人は人種・民族の回答がなかった。774人が、シスジェンダーおよびヘテロセクシャルと回答し、31人がLGBTQ+、25人が無回答だった。 女性は男性と比べてネガティブに一般的な組織風土を評価した(平均3.68[95%信頼区間[CI]:3.59~3.77]vs.3.96[3.88~4.04]、p<0.001)。多様性の風土評価は、性別(女性の平均3.72[3.64~3.80]vs.男性4.16[4.09~4.23]、p<0.001)、人種・民族性(アジア人の平均4.0[3.88~4.12]、過小評価グループ3.71[3.50~3.92]、白人3.96[3.90~4.02]、p=0.04)で有意に差があった。 また、女性は男性よりも、ジェンダーハラスメント(性差別な発言や粗暴な行為)を経験したとの回答が多かった(71.9%[95%CI:67.1~76.4]vs.44.9%[40.1~49.8]、p<0.001)。LGBTQ+回答者はシスジェンダーおよびヘテロセクシャル回答者と比べて、ソーシャルメディアを職業的に使用する場合、セクハラを受けたと報告する回答が多いようであった(13.3%[1.7~40.5]vs.2.5%[1.2~4.6]、p=0.01)。 多変量解析で、3つの文化とジェンダーは、メンタルヘルスの副次アウトカムと有意に関連していた。

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がん患者のVTE再発予防、DOAC vs.低分子ヘパリン/JAMA

 静脈血栓塞栓症(VTE)を有した成人がん患者のVTE再発予防に関して、追跡期間6ヵ月にわたり、直接経口抗凝固薬(DOAC)は低分子ヘパリン(LMWH)に対して非劣性であったことが、米国・ハーバード大学医学大学院のDeborah Schrag氏らによる検討で示された。著者は、「この結果は、がん患者のVTE再発予防に対してDOACの使用を支持するものである」とまとめている。VTEを有するがん患者のVTE再発予防にはLMWHの長期投与が推奨されており、DOACの有効性との比較は検討されていなかった。JAMA誌2023年6月2日号掲載の報告。VTEを呈したがん患者671例を対象に無作為化試験 研究グループは、VTEの再発予防と出血頻度に関して、DOACとLMWHの有効性を比較する非盲検非劣性無作為化試験を行った。米国のがん診療センター67施設で、臨床診断または画像診断でVTEが新規に認められた、がん(あらゆる浸潤性固形がん、リンパ腫、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病)患者671例を登録した。登録期間は2016年12月~2020年4月、最終フォローアップは2020年11月。 被験者は無作為に1対1の割合でDOAC群(335例)またはLMWH群(336例)に割り付けられ、6ヵ月間または死亡まで追跡を受けた。担当医と患者は、いずれのDOACまたはいずれのLMWH(もしくはフォンダパリヌクス)を選択可能であった。担当医は用量も選択可能であった。 主要アウトカムは、6ヵ月時点のVTE再発率。DOACのLMWHに対する非劣性は、割り付け治療を1回でも投与された無作為化集団で、DOACのLMWHに対する差の片側95%信頼区間(CI)の上限値が3%未満の場合と定義した。 副次アウトカムは、大出血など6つが事前に規定され、非劣性マージンは2.5%とされた。6ヵ月時点のVTE再発率、DOAC群6.1%、LMWH群8.8%で非劣性を確認 登録期間に671例が無作為化され、638例(95%)が試験を完了した(年齢中央値64歳、女性353例[55%])。投与を1回以上受けたのは、DOAC群330例、LMWH群308例であった。 VTE再発率は、DOAC群6.1%、LMWH群8.8%であり(群間差:-2.7%、片側95%CI:-100~0.7)、事前規定の非劣性基準を満たした。 6つの事前規定の副次アウトカムは、いずれも統計学的有意差が認められなかった。大出血の発生は、DOAC群5.2%、LMWH群5.6%であり(群間差:-0.4%、片側95%CI:-100~2.5)、非劣性基準を満たさなかった。 重篤な有害事象の発生は、DOAC群33.8%、LMWH群35.1%で報告された。最もよくみられた重篤な有害事象は、Grade3以上の貧血(DOAC群3.0%、LMWH群1.0%)と死亡(21.5%、18.4%)であった。

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第164回 ワクチン否定派がコロナワクチン接種に踏み切った、ある薬の功罪

先日、久しぶりに会った友人から次のように言われた。「半年ほど肩こりがひどかったんだけど、近くのクリニックに行って薬をもらって飲んだら、驚くほど良くなってさ。本当にびっくり。いつもお前(筆者)に『薬を不当に悪者にするな』と言われていたけど、その意味がよくわかった」ちなみにこの友人は大の医療機関嫌い、薬嫌いである。もちろんワクチンはもってのほかという人物である。ただし、余計なワクチン陰謀論にはまっていないことだけは唯一の救いでもある。約1年前に会った時は新型コロナウイルス感染症のワクチンも接種していなかったが、この肩こりが治ったのを機に新型コロナワクチンを接種したと聞いて驚いた。これほど人は変わるものかと思いながら話を聞いていると、彼が微妙に引っかかることを口にした。「その肩こりの薬がすごいのよ。気分もすっきりしてさ」嫌な予感がした。さりげなく、どのような薬を飲んでいるのかを尋ねてみると、ごそごそとカバンから取り出して見せてくれた。ああ、やっぱりか。2錠ほどすでに服用済みのシートには、はっきりと「デパス0.5mg」と印刷されていた。精神安定薬のデパスこと、エチゾラムという薬そのものに罪はないし、個人的にもまったく恨みつらみもない。しかし、本連載の読者にはもはや言うまでもなく、依存をはじめとする問題が少なくない薬である。「うん? どうした? なんかまずい薬?」友人は私の表情の変化に気付いてしまったらしい。私がとっさに「まあ、効果が強めの薬だからね。肩こりが治ったのなら、次の受診の時に先生と話して、薬を終わりにするのも選択肢の1つかな」と言ったのに対し、「うん、そのつもり。治ったのに薬を飲み続ける必要もないしね」とにっこり笑ったのを見て、少し安堵した。しかし、非医療従事者と医療の話をするのは本当に難しい。とりわけこの友人のように医療不信を根底に抱えた人だと余計に気を遣う。しかも、この薬がきっかけで、今まで拒否していた新型コロナワクチンの接種まで至ったならば、なおさらである。そんなこんなで久しぶりにNDBオープンデータを開いてみた。最新の令和2年度のレセプト情報によると、デパスの汎用規格である0.5mg錠の外来(院外)処方量は約2億5,334万錠。同データの精神神経用剤の分類では堂々の第1位である。この数字は年々減少してはいるが、ジェネリック品(以下、GE)で最も処方が多いエチゾラム錠0.5mg「トーワ」の外来(院外)処方量が約9,830万錠であり、先発品であるデパスはダブルスコアで上回っている。昨今のGE使用促進策、とくに後発医薬品調剤体制加算の影響で処方量の多い薬ほどGEに切り替えが進んでいる。GE登場から約半年で、数量ベースで先発品の約7割がGEに置き換わるというアメリカ市場に限りなく近い状況が日本でも珍しくなくなった。にもかかわらず、デパスについてはこの“有様”である。念のためNDBオープンデータをざっと眺めまわしてみたが、GE登場から10年以上経過してもなお、先発品の処方量が、同一規格で適応症も同じGEの最多処方量の銘柄を上回っているのはデパスと認知症治療薬のアリセプトD錠5mg(一般名・ドネペジル)くらいだ。実際、過去に私がデパスの依存性問題を取材した際、「この薬の場合、GEに切り替えようとしても服用者が拒否をしがち。『デパスという名前が入っていないと嫌』とまで言われる」という趣旨の話を複数の薬剤師から聞かされている。まさにこれこそ依存の極みと言っても過言ではないだろう。そしてNDBオープンデータの性別・年齢別の処方量を見ると、相変わらず70~80代前半にボリュームゾーンがある。ざっくり言えば、現役世代の頃に服用し始めた人が依存性のために止められず、キャリーオーバーしていると捉えるのが最も妥当な解釈だろう。しかし、肩こりを訴えた現役世代にポンとこの種の薬が処方されてしまう現象がいまだあることにはやや首をかしげざるを得ない。そんなこんなをつらつら思ってしまったのは、厚生労働省で6月12日に開催された「医薬品の販売制度等に関する検討会」での議論に関する報道を目にしたからである。報道によると、同検討会では若年者で増加しているOTC薬の鎮咳薬や総合感冒薬の濫用問題に関して、防止策としてこれらOTC薬の“小包装化”を厚生労働省が提案。これに賛同する医師側委員などと、家庭内常備薬として大包装販売を訴える販売者側が意見対立したというもの。厚生労働省の提案には一理あるが、改めてこのデパスの問題に遭遇し、データで現実を俯瞰すると、それと同時というか、むしろその前にやらなければならないことがあるのでは? と思うのだが。

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急速に進行する認知症(後編)【外来で役立つ!認知症Topics】第6回

急速に進行する認知症(後編)「うちの家族の認知症は進行が速いのでは?」と問われる付き添い家族の対応には、とくに注意して臨む。筆者が働く認知症専門のクリニックでよくある急速進行性認知症(RPD:Rapid Progressive Dementia)は、やはり基本的にアルツハイマー病(AD)やレビー小体型認知症(DLB)が多いようだ。こうした質問に対する説明では、次のようにお答えする。まず変わった治療や指導法をしているわけではないこと。また一言でADやDLBと言っても、進行速度などの臨床経過は多彩であること。そのうえで、処方薬の変更などの提案をする。しかし、時に難渋する例がある。それは、aducanumabやlecanemabなど新規薬の治験を行っている症例が、たまたまRPDだったと考えざるを得ないケースである。こちらが何を言おうと、ご家族としては治験薬に非があるという確固とした思いがある。筆者は経験的に、ADでは個人ごとにほぼ一定の進行速度があり、肺炎や大腿骨頸部骨折などの合併症がない限りは、速度はそうそう変わらないと思ってきた。つまり、固有の速さでほぼ直線的に落ちると考えていた。今回、RPDを論じるうえで、改めてADの臨床経過を確認してみた。まずあるレビュー論文によれば、認知機能の低下具合は、病初期はゆっくりと立ち上がり、その後ほぼ直線的に経過し終末期には水平に近づくことが示されていた1)。次に神経心理学所見のみならず、バイオマーカーの観点からも、ADの経過の多彩性を扱った論文があった。ここでは、「代償的なメカニズムも働くが、進行具合は遺伝子が強く規定している」と述べられていた2)。とすると、筆者の経験則は「当たらずとも遠からず」であろう。単純にADもしくはDLBで急速悪化する例では、その速度はプリオン病ほど速くはないが、半年ごとの神経心理学テストで、「えーっ、こんなに低下した?」と感じる。こういうケースは一定数あるし、そんな例にはこれという臨床的な特徴がないことが多いと思ってきた。それだけに低下速度は遺伝子により強く規定されているという報告には、なるほどと思う。そうはいっても、RPDのADには中等度から強度のアミロイドアンギオパチーが多いと述べられていた。このことは、血管障害が発生する危険性が高いと解釈される。なお有名なAPOE4遺伝子の保有との関りも述べられていたが、非RPDのものと変わらないとする報告が多く、なかには有意に少ないとする研究もあるとのことであった。ADに別の疾患を併発することで急速悪化することもADなどの変性疾患に別の疾患が加わることもある。上に述べた脳血管障害や硬膜下血腫の場合には、かなり急性(秒から週単位)に悪化する。麻痺や言語障害など目立った神経学的徴候があればわかりやすいが、必ずしもそうではない。また、せん妄など意識障害が前景に立つ場合も少なくない。こうした例では、せん妄の特徴である急性増悪と意識障害の変動への注目が重要である。次に、正常圧水頭症は、潜行性に失禁、歩行障害が現れてくる。その「いつの間にか」の進行ゆえに、ある程度長期に診ていると、逆に合併の出現には気付きにくくなることに要注意である。一方であまり有名でないが、よく経験するのが夏場の熱中症、あるいは脱水である。7月の梅雨明け頃から9月下旬にかけて、「このごろ急に認知症が悪化した」とご家族が申告される例は多い。主因は、当事者が暑いと感じにくくなっていて窓開けやエアコン使用など環境調整ができないこと、また高齢化とともに進行しがちな喉の渇きを感知しにくくなることによる水分摂取の低下である。典型的な熱中症ではない、比較的軽度な例が多いので、家族からは「認知症が最近になって悪化した」と訴えられやすい。なお初歩的かもしれないが、若い時からうつ病があった人では、老年期に至って新たなうつ病相が加わることがある。これが半年から1年も続くとRPDと思われるかもしれない。ごくまれながら、認知症に躁病が加重されることもあって、周囲はびっくりする。なお誤嚥性肺炎、複雑部分発作のようなてんかんもRPDに関与しうる。どのように悪化したかを聞き出すことが第一歩さて、これまでADやDLBとして加療してきた人が、RPDではないかと感じたり、家族から訴えられたりした時の対応が問題である。多くの家族は「悪化した、進んだ」という言い方をされるので、何がどのように悪いのかを聞き出すことが第一歩だろう。普通は記憶や理解力などの低下だろうが、たとえば正常圧水頭症が加わった場合なら、失禁や歩行障害という外から見て取れる変化なのかもしれない。次に治療法の変更は、本人や家族が安心されるという意味からもやってみる価値があるだろう。まずは薬物の変更、あるいは未使用ならデイサービス、デイケアも有効かもしれない。さらに大学病院の医師等への紹介という選択肢もある。それには、まずプリオン病など希少疾患の検索依頼の意味がある。またADのRPDかと思われるケースでは、認知症臨床に経験豊かな先生に診てもらうことは、患者・家族のみならず、非専門医の先生にとっても良いアドバイスが得られるだろう。参考1)Hermann P, et al. Rapidly progressive dementias - aetiologies, diagnosis and management. Nat Rev Neurol. 2022;18:363-376.2)Koval I, et al. AD Course Map charts Alzheimer’s disease progression. Sci Rep. 2021 13;11:8020.

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膵臓がん、FOLFIRINOXの術前補助療法の有効性を検証(NORPACT-1)/ASCO2023

 切除可能な膵臓がんに対するFOLFIRINOXの術前補助療法の有効性に疑問を投げかけられた。Knut Jorgen Labori氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表したNORPACT-1の試験の結果である。 切除可能膵臓がんの標準治療は、完全切除とその後の補助化学療法である。化学療法としてはFOLFIRINOXが多く使われる。一方、切除可能膵臓がんでは、術前補助化学療法のメリットも報告されている。Labori氏らは、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドの12の施設で、多施設無作為化第II相試験を行い、切除可能膵臓がんにおける、FOLFIRINOXの術前補助療法と標準治療である術後補助療法を比較している。対象:切除可能膵臓がん試験群:FOLFIRINOX4サイクル→手術→FOLFIRINOX8サイクル(ネオアジュバント群)対照群:手術→FOLFIRINOX12サイクル(アジュバント群)評価項目:全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・140例が無作為に割り付けられた(ネオアジュバント群:77例、アジュバント群:63例)。年齢中央値は66.5歳(四分位範囲[IQR]:59.72)、ECOG0は115例(82.1%)、1が25例(17.9%)だった。最終的にネオアジュバント群:63例、アジュバント群:56例が切除を受けた。・術後補助療法でのFOLFIRINOXの使用は、ネオアジュバント群では25%、アジュバント群では40%にとどまった。・R0切除率はネオアジュバント群56%、アジュバント群39%であった(p=0.076)。・N0切除率はネオアジュバント群29%、アジュバント群14%であった(p=0.060)。・OS中央値はネオアジュバント群25.1ヵ月、アジュバント群38.5ヵ月であった(HR:1.52、95%CI:0.94~2.46、p=0.096)。・18ヵ月後のOSはネオアジュバント群60%、アジュバント群73%だった(p=0.1)。・Grade3~5の有害事象はネオアジュバント群は57.5%、アジュバント群は40.4%に発現した。 FOLFIRINOXの術前補助療法は許容可能な安全性と切除実施率を示したものの、切除可能な膵臓がんに対するスタンダードとして支持される結果とはならなかった。

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認知度の低い重症筋無力症の啓発にむけて/アルジェニクスジャパン

 6月は「重症筋無力症」の啓発月間とされている。この疾患の社会的認知度を高めるために、アルジェニクスジャパンは、6月7日にメディア向けセミナーを都内で開催した。 セミナーでは、専門医による疾患解説のほか、医療者、患者、患者会、タレントの渡辺 満里奈氏によるトークセッションや同社が疾患啓発に制作したマンガ動画などが紹介された。同社は、全身型重症筋無力症治療薬の抗FcRn抗体フラグメント製剤エフガルチギモド アルファ(商品名:ウィフガート)を製造販売している。瞼が重い、手足に力が入らないはMGを疑ってみる はじめに重症筋無力症(MG)の疾患について、村井 弘之氏(国際医療福祉大学医学部 脳神経内科学 教授/国際医療福祉大学成田病院 脳神経内科 部長)が、MGの機序、疫学、症状、治療と課題について解説を行った。 MGは脳神経系に起きる自己免疫性疾患で、神経筋接合部が障害される。神経からの刺激を伝えるアセチルコリンが受容できなくなり、筋肉への信号が弱まることで、さまざまな症状を引き起こす。症状の機序は解明されているが、原因となるトリガーは現在も不明という。 わが国のMG患者数について、1973年の調査では1.35人/10万人だったものが、1987年には5.1人/10万人、2006年には11.8人/10万人、2018年には23.1人/10万人1)と年を経るごとに増加し、2023年では約4万人の患者が推定されている。 MGの態様は眼瞼型(20%)と全身型(80%)と大きく2つあり、自己抗体の種類では、アセチルコリン受容体抗体(80~85%)、MuSK(マスク)抗体(5%以下)、抗体陰性(10~15%)がある。また、胸腺の異常として胸腺腫が20~25%存在する。 MGの症状としては以下のようなものがあげられる。・瞼が下がる(眼瞼下垂)・ものが二重にみえる(複視)・手足に力が入らない・のみ込めない(嚥下力の低下)、むせる、噛む力がない・話しにくい、呂律が回らない、鼻声になる・身体が重い、だるい・重症化すると呼吸困難(クリーゼ) そして、これらは単一症状ではなく、時には複合症状として多彩な病態を示し、患者を苦しめる。そのほか、MGの特徴として症状に「日内変動」があり、朝と晩で体調が異なるために、周囲に理解されにくいという。 MGの治療について、以前は胸腺摘除とステロイド高用量療法、増悪の場合は免疫抑制薬が使用されることで本症の生命予後はかなり改善されるようになった。そして、現在では、ステロイドを初回から少量使用しつつ、免疫グロブリン/血漿交換などと並行して免疫抑制薬を使用し、難治性では分子標的薬を使用して症状を抑える治療が行われている2)。MG患者が被る社会的被害 次に村井氏はMG患者が被る社会的不利益に触れ、「患者は身体的障害だけではく、社会的障害にも直面している」と問題を提起した。MG患者は、疾患を持っているだけで、「就労困難」「共感を得られないことによる孤独と不安」「社会参加の機会損失による疎外感」「社会保障の貧しさ」「周囲の理解を得ることの困難」に遭遇するといった項目を示し、これらが相互に関連して患者の生活に影響を与えていると説明した。 実際、2017年に公開されたレポートでは、有職者のMG患者(n=680)の27.2%が失職を経験し、35.9%が収入減少を経験していた3)。診療で地域格差、医療格差が大きい 続いて医療者として村井氏、患者として野下 真歩氏(声優)、患者会として恒川 礼子氏(筋無力症患者会 理事長)、一般として渡辺 満里奈氏(タレント)によるトークセッションが行われた。 この中で患者からは寛解しない疾患である以上、増悪した場合の入院と自宅の往復が多々あり、スケジュールを立てるのが大変だという声があった。また、社会的にMGの認知度が低く、病態とも相まって、周りの人に理解されないのが残念との声が聞かれた。そのほか、病名が不安感を高めること、医療についても地域格差、医療格差が大きく、地域によってはいまだに初期からステロイド高用量の治療が行われていたりと均てん化が進んでいないと厳しい意見も聞かれた。これを受けて村井氏も「医療者が新しい治療薬などを知らないか、使いこなせていないことも問題。治療の選択肢が増えても困ることがないように、こうしたセミナーなどで啓発を行っていきたい。また、診断について、ダイレクトに脳神経内科にくる患者は少ない。症状から眼科、耳鼻咽喉科、脳神経外科などを経由して診断がつかずに脳神経内科にたどりつくケースも多く、医療側のMGへの覚知度を上げることも重要」と語った。 そのほか、医療者と患者のコミュニケーションについて、双方の病識に溝があること、患者側から病状の伝え方が難しいことなどが話題に上ったが、メーカなどが配布しているコミュニケーションツールや「MG症状ノート」の活用などで、短時間の診療でも上手に医療者に伝わるように工夫して欲しいと提案があり、セッションを終えた。 同社では、MGの啓発に今回マンガ動画を作成し、広くYouTubeで展開をしている。

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日本人慢性片頭痛患者におけるフレマネズマブの有効性と安全性

 慢性片頭痛(CM)患者に対し、抗CGRPモノクローナル抗体製剤フレマネズマブによる治療は有効であり、効果発現が早く、忍容性が良好であることが臨床試験で示されている。近畿大学の西郷 和真氏らは、日本人CM患者におけるフレマネズマブの有効性および安全性を評価するため、2つの臨床試験(Japanese and Korean CM Phase 2b/3、HALO CM Phase 3)のサブグループ解析を実施した。著者らは、「サブグループ解析の限界にもかかわらず一貫した結果が得られており、日本人CM患者に対するフレマネズマブの有効性および忍容性が裏付けられた」と報告している。Journal of Pain Research誌2023年4月20日号の報告。 両試験では、適格基準を満たしたCM患者を、フレマネズマブ皮下投与月1回群、同3ヵ月に1回群、プラセボ群(4週間隔)にランダムに割り付けた(1:1:1)。主要エンドポイントは、初回投与から12週間における、1ヵ月(28日間)当たりの中等度~重度の頭痛日数のベースラインからの平均変化であった(最初の4週間:MMRM分析、12週間:ANCOVA分析)。副次エンドポイントには、薬物使用や障害など、有効性以外の項目も含まれた。 主な結果は以下のとおり。・日本人患者は、Japanese and Korean CM Phase 2b/3試験に479例、HALO CM Phase 3試験に109例が含まれていた。・両試験ともに、ベースラインおよび治療の特徴は、治療群間で類似していた。・ANCOVA分析による主要エンドポイントのサブグループ解析では、日本人CM患者に対するフレマネズマブ治療はプラセボよりも優れていることが実証された(両試験とも、フレマネズマブ3ヵ月に1回:p=0.0005、フレマネズマブ月1回:p=0.0002)。・MMRM分析では、フレマネズマブ治療の効果発現の早さが確認された。・副次エンドポイントの結果では、日本人CM患者に対するフレマネズマブ治療の有効性がさらに裏付けられた。・フレマネズマブは、最も一般的な有害事象である上咽頭炎および注射部位反応に対する忍容性が良好であった。

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HR+/HER2-転移乳がんへのSG、より長い追跡期間でも有用性持続(TROPiCS-02)/ASCO2023

 複数の治療歴があるHR+/HER2-転移乳がん患者に対して、sacituzumab govitecan(SG)を医師選択治療(TPC)と比較した第III相TROPiCS-02試験において、SGが無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善し、HER2低発現例においても改善がみられたことがすでに報告されている。今回、探索的解析として、より長い追跡期間(12.75ヵ月)におけるPFSとOS、さらにHER2低発現におけるPFSとOSの解析結果を、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのSara M. Tolaney氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。 本試験において、SGがPFSを有意に改善(ハザード比[HR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.53~0.83)したことはASCO2022で、OSについてはプロトコールでの最終解析である第2回中間解析の結果、有意に改善(HR:0.79、95%CI:0.65~0.96)したことがESMO2022で発表されている。また、HER2低発現例においてPFSが有意に改善(HR:0.58、95%CI:0.42~0.79)したこともESMO2022で発表されている。今回、探索的解析として、追跡期間を延長し解析した結果が発表された。・対象:転移または局所再発した切除不能のHR+/HER2-乳がんで、転移後に内分泌療法またはタキサンまたはCDK4/6阻害薬による治療歴が1ライン以上、化学療法による治療歴が2~4ラインの成人患者・試験群:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静注 272例・対照群:TPC(カペシタビン、ビノレルビン、ゲムシタビン、エリブリンから選択)271例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会によるPFS[副次評価項目]OS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、臨床的有用率(CBR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2022年12月1日)時点で、追跡期間中央値は12.75ヵ月となった。・PFS中央値はSG群5.5ヵ月、TPC群4.0ヵ月で、引き続きPFSの改善を示した(HR:0.65、95%CI:0.53~0.81、nominal p=0.0001)。・OS中央値はSG群14.5ヵ月、TPC群11.2ヵ月で、OSも引き続き改善を示した(HR:0.79、95%CI:0.65~0.95、nominal p=0.0133)。12ヵ月OS率は、SG群60.9%、TPC群47.1%、18ヵ月OS率はSG群39.2%、TPC群31.7%、24ヵ月OS率はSG群25.7%、TPC群21.1%であった。・HER2 IHC別のPFSは、HER2低発現(HR:0.60、95%CI:0.44~0.82)およびHER2ゼロ(HR:0.70、95%CI:0.51~0.98)ともSG群で有意に改善がみられた。・HER2 IHC別のOSは、HER2低発現(HR:0.75、95%CI:0.57~0.97)およびHER2ゼロ(HR:0.85、95%CI:0.63~1.14)ともSG群で改善がみられた。・ORR、CBRも引き続き改善を示し、DORは延長した。・延長された追跡期間に新たな安全性シグナルはみられなかった。 Tolaney氏は「本試験の追加された追跡期間においてもSGの有用性が持続したことにより、治療歴のある内分泌療法抵抗性のHR+/HER2-転移乳がんに対して、SGが重要で新たな治療であることがさらに補強された」と結論した。

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個別化がんワクチン+ペムブロリズマブ併用の結果に新たな期待/モデルナ・メルク

 Moderna(米国)とMerck(米国とカナダ以外ではMSD)は、2023年6月5日付のプレスリリースで、切除された高リスク悪性黒色腫患者に対する個別化がんワクチンmRNA-4157/V940と抗PD-1治療薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の併用療法について、ペムブロリズマブ単剤療法と比較して、遠隔転移または死亡のリスクを65%減少させたと発表。本結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で報告された。 なお、本試験の主要評価項目である無再発生存期間(RFS)については、2022年12月、mRNA-4157/V940とペムブロリズマブの併用治療で、ペムブロリズマブ単独と比較し再発または死亡のリスクが44%減少した、と発表されている。 試験概要と結果は以下のとおり。 無作為化非盲検第IIb相試験であるKEYNOTE-942試験には、StageIII/IVの悪性黒色腫患者157例が登録された。完全な外科的切除後、患者は無作為にmRNA-4157/V940(mRNA-4157[1mg]を合計9回筋肉内投与)とペムブロリズマブ(200mgを3週間ごとに最大18サイクル[約1年間])を併用する群と、ペムブロリズマブを約1年間単独で投与する群に、2:1で割り付けられ、再発または許容できない毒性が発現するまで治療が継続された。主要評価項目はRFSで、副次評価項目は遠隔転移のない生存期間(DMFS)と安全性である。 本研究の主要な副次評価項目であるDMFSについて、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示し、遠隔転移または死亡のリスクを65%減少させた(ハザード比[HR]:0.347、95%信頼区間[CI]:0.145~0.828、片側検定のp=0.0063)。 mRNA-4157/V940で観察された有害事象は、第I相試験で報告されたものと一致していた。また、ペムブロリズマブの安全性プロファイルは、以前に報告された試験で観察されたものと一致していた。治療に関連した重篤な有害事象は、mRNA-4157/V940とペムブロリズマブの併用群では25%、ペムブロリズマブ単独群では18%で認められた。すべてのグレードにおける主な有害事象は、疲労(60.6%)、注射部位疼痛(55.8%)、悪寒(50.0%)であった。 これに対し、Modernaの上級副社長兼がん治療開発責任者のKyle Holen氏は「遠隔転移や遠隔再発を来すと予後不良である。これらのデータは、ネオアンチゲン療法の可能性を広げる結果となった。他のがん種に対しても期待できるだろう」と述べた。 さらにMerckの上級副社長兼グローバル臨床開発担当のEric H. Rubin氏は「これらDMFSの結果は以前に第IIb相試験のRFSで観察されたデータに基づいており、今年後半にModernaと協力して第III相試験を開始することを楽しみにしている」と展望を語った。

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日本人の炭水化物摂取量と死亡リスクは男女で逆の関係に~J-MICC研究

 これまで、炭水化物や脂質の摂取量と死亡リスクの関連を検討した研究において、一貫した結果が得られていない。そこで、田村 高志氏(名古屋大学大学院医学系研究科予防医学分野 講師)らの研究グループは、日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)に参加した8万1,333人を対象として、炭水化物、脂質の摂取量と死亡との長期的な関連について検討した。その結果、日本人は男性では炭水化物の摂取量が少ないと死亡リスクが高くなり、女性では炭水化物の摂取量が多いと死亡リスクが高くなる傾向がみられた。本研究結果は、The Journal of Nutrition誌オンライン版2023年6月2日号に掲載された。日本人の炭水化物摂取、男性は摂取量が少ないと死亡リスクが有意に高い 35~69歳の男性3万4,893人、女性4万6,440人(それぞれBMI値[平均値]23.7、22.2)をベースライン時(2004~14年)から2017年末または2018年末まで追跡した。食事頻度質問票を用いて炭水化物、脂質、総エネルギー摂取量を推定した。総エネルギー摂取量に占める炭水化物、脂質の割合(炭水化物エネルギー比率、脂質エネルギー比率)別に死亡リスクを評価した。リスク評価において、多変量解析により調整ハザード比(aHR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 日本人の炭水化物、脂質の摂取量と死亡との長期的な関連について検討した主な結果は以下のとおり。・追跡期間(平均8.9年)中に、2,783人の死亡が確認された(男性1,838人、女性945人)。・男性では、炭水化物エネルギー比率が40%未満の群は、50%以上55%未満の群と比較して全死亡リスクが有意に高く(aHR:1.59、95%CI:1.19~2.12)、炭水化物エネルギー比率が低いと全死亡リスクが高くなる傾向がみられた(p for trend=0.002)。・追跡期間5年以上の女性では、炭水化物エネルギー比率が65%以上の群は、50%以上55%未満の群と比較して全死亡リスクが高い傾向にあり(HR:1.71、95%CI:0.93~3.13)、炭水化物エネルギー比率が高いと全死亡リスクが高くなる傾向がみられた(p for trend=0.005)。・男性では、脂質エネルギー比率が35%以上の群は、20%以上25%未満の群と比較してがん死亡リスクが高かった(HR:1.79、95%CI:1.11~2.90)。・女性では、脂質エネルギー比率と全死亡リスク、がん死亡リスクに逆相関の傾向がみられた(それぞれp for trend=0.054、0.058)。 著者らは、本研究結果について「男性では炭水化物の摂取量が少ない場合、女性では炭水化物の摂取量が多い場合、死亡リスクが高くなる傾向がみられた。炭水化物の摂取量が比較的多い日本人成人では、脂質の摂取量が多い女性の死亡リスクが低下する可能性がある」とまとめた。

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mCRPCの1次治療、エンザルタミド+talazoparibでrPFS改善/Lancet

 転移のある去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者の1次治療において、PARP阻害薬talazoparibとアンドロゲン受容体阻害薬エンザルタミドとの併用療法は、標準治療のエンザルタミド単独療法と比較し、臨床的に意味のある統計学的に有意な画像上の無増悪生存期間(rPFS)の改善をもたらしたことが示された。米国・ユタ大学のNeeraj Agarwal氏らが、26ヵ国(北米、欧州、イスラエル、南米、南アフリカ、アジア太平洋地域)の223施設で実施した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「TALAPRO-2試験」の結果を報告した。PARPとアンドロゲン受容体活性の両方を阻害することは、相同組換え修復(HRR)に関与するDNA損傷修復遺伝子変異の有無にかかわらず、抗腫瘍効果が得られる可能性があった。Lancet誌オンライン版2023年6月4日号掲載の報告。talazoparib+エンザルタミドvs.エンザルタミド単独、rPFSで有効性を比較検証 研究グループは、アンドロゲン除去療法中で無症候性または症状の軽い18歳以上(日本では20歳以上)で、ECOG PSが0/1、全身療法未治療のmCRPC患者を登録し、talazoparib(0.5mgを1日1回経口投与)+エンザルタミド(160mgを1日1回経口投与)群(talazoparib群)、またはプラセボ+エンザルタミド(同上)群(プラセボ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化は、HRR遺伝子変異の状態(欠損vs.非欠損または不明)、去勢感受性前立腺がんに対するドセタキセルまたは新規ホルモン療法(アビラテロンまたはorteronel)の治療歴(ありvs.なし)で層別化された。 また、無作為化前に、腫瘍組織または/および血液検体を採取し、HRR遺伝子変異について前向きに評価した。 主要評価項目は、intention-to-treat集団における盲検下独立中央判定(BICR)による画像上のrPFSで、安全性については少なくとも1回試験薬の投与を受けた全患者で評価した。rPFS中央値は、talazoparib併用群では未到達、プラセボ群では21.9ヵ月 2019年1月7日~2020年9月17日に、805例が登録され無作為化された(talazoparib群402例、プラセボ群403例)。全例で腫瘍組織検査が行われ、HRR遺伝子変異あり(HRR欠損)が169例(21%)、HRR遺伝子変異なしまたは不明が636例(79%)であった。 rPFSの追跡期間中央値は、talazoparib群24.9ヵ月(四分位範囲[IQR]:21.9~30.2)、プラセボ群24.6ヵ月(14.4~30.2)であった。予定された主要解析時点で、rPFS中央値はtalazoparib群未達(95%信頼区間[CI]:27.5ヵ月~未達)、プラセボ群21.9ヵ月(16.6~25.1)で、ハザード比(HR)は0.63(95%CI:0.51~0.78、p<0.0001)であり、talazoparib群で画像上の進行または死亡のリスクが37%低下した。 talazoparib群における主な治療関連有害事象は、貧血、好中球減少症、疲労であった。Grade3/4の有害事象は貧血(185/398例、46%)が最も多かったが、用量減量により改善し、貧血によりtalazoparibを中止した患者は398例中33例(8%)のみであった。治療に関連した死亡は、プラセボ群でのみ2例(<1%)報告された。 著者は、「最終的な全生存期間のデータと追加の長期安全性追跡調査により、HRR遺伝子変異の有無にかかわらないtalazoparib併用の臨床的有用性がさらに明確になるだろう」とまとめている。

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