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冠動脈疾患へのPCI、FFRガイド下vs.IVUSガイド下/Lancet

 血管造影に基づく冠血流予備量比(FFR)ガイド下で血行再建の決定やステント最適化を行う包括的な経皮的冠動脈インターベンション(PCI)戦略は、血管内超音波(IVUS)ガイド下PCIと比較して、12ヵ月時の死亡、心筋梗塞または再血行再建術の複合アウトカムに関して非劣性が認められたことを、中国・the Second Affiliated Hospital of Zhejiang University School of MedicineのXinyang Hu氏らが、同国22施設で実施した医師主導の無作為化非盲検非劣性試験「FLAVOUR II試験」の結果で報告した。FFRガイド下での血行再建術の決定またはIVUSを用いたステント留置の最適化は、血管造影のみを用いたPCIと比較し優れた臨床的アウトカムが得られるが、血行再建の判断とステント最適化の両方を単一の手法で行った場合の臨床アウトカムの差は依然として不明であった。著者は、「今回の結果は、FFRガイド下PCIの役割と適応に関して、今後のガイドラインに影響を与えることになるだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年3月30日号掲載の報告。1年後の死亡・心筋梗塞・再血行再建術の複合を比較 研究グループは、虚血性心疾患の疑いがあり、冠動脈造影で2.5mm以上の心外膜冠動脈に50%以上の狭窄が認められる18歳以上の患者を、血管造影によるFFRガイド下PCI群またはIVUSガイド下PCI群に1対1の割合で無作為に割り付けた。割り付けはWebベースのプログラムを用いて行い、試験実施施設および糖尿病の有無で層別化した。 両群とも、事前に規定されたPCI基準とPCI至適目標に基づいて、血行再建術の決定とステント留置の最適化が行われた。 主要アウトカムは、ITT集団における12ヵ月時点の死亡、心筋梗塞または再血行再建術の複合とし、非劣性マージンは累積発生率の群間差(絶対差)が2.5%ポイントとした。FFRガイド下はIVUSガイド下に対して非劣性 2020年5月29日~2023年9月20日に1,872例が登録された。このうち33例が同意撤回または医師の判断で登録中止となり、923例がFFRガイド下PCI群に、916例がIVUSガイド下PCI群に無作為化された。患者背景は、年齢中央値66.0歳(四分位範囲[IQR]:58.0~72.0)、男性1,248例(67.9%)、女性591例(32.1%)などであった。 FFRガイド下PCI群では標的血管990本中688本(69.5%)、IVUSガイド下PCI群では標的血管984本中797本(81.0%)で血行再建術が実施された。 追跡期間中央値12ヵ月(IQR:12~12)において、主要アウトカムのイベントは、FFRガイド下PCI群で56例、IVUSガイド下PCI群54例で確認され(6.3%vs.6.0%、絶対群間差:0.2%[片側97.5%信頼区間[CI]上限:2.4]、ハザード比[HR]:1.04[95%CI:0.71~1.51])であり、FFRガイド下PCIのIVUSガイド下PCIに対する非劣性が認められた(非劣性のp=0.022)。 全死因死亡率は、FFRガイド下PCI群1.8%、IVUSガイド下PCI群1.3%であり、群間差は確認されなかった(絶対群間差:0.4%[95%CI:-0.7~1.6]、HR:1.34[0.63~2.83]、p=0.45)。狭心症の再発率も両群とも低く、それぞれ923例中26例(2.8%)、916例中35例(3.8%)であった。

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iPS細胞移植、パーキンソン病患者の脳内でドパミン産生を確認/京大

 京都大学医学部附属病院と京都大学iPS細胞研究所とが連携して実施した、パーキンソン病患者を対象に、iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞を脳内の被殻に両側移植する第I/II相臨床試験において、iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞は生着し、ドパミンを産生することが確認され、腫瘍形成などの重篤な有害事象は認められなかった。本結果により、パーキンソン病に対する安全性と臨床的有益性が示唆された。本結果はNature誌オンライン版2025年4月16日号に掲載された。 パーキンソン病では、中脳黒質のドパミン神経細胞が減少し、それによって動作緩慢、筋強剛、静止時振戦を特徴とする運動症候群を発症する。薬物療法は、初期の段階では運動症状を効果的に緩和するが、長期経過により運動合併症や薬剤誘発性ジスキネジア(不随意運動)など対応が困難な問題が生じる。そのため、失われたドパミン神経細胞を補充する細胞治療が代替治療法として検討されてきた。欧米では、ヒト中絶胎児の脳を移植する治験が行われてきたが、倫理的問題や安定した供給の困難さが指摘されてきた。 京都大学iPS細胞研究所の高橋 淳氏らの研究グループは、これまでにヒトiPS細胞からドパミン神経細胞を誘導する方法を開発し、サルのパーキンソン病モデルにおいて脳内でドパミンを産生し、運動症状を改善することを確認してきた。 2018年8月より開始した本試験「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験」では、50~69歳の7例のパーキンソン病患者を対象に、iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞を脳内の被殻に両側移植した。主要評価項目は安全性および有害事象の発生とし、副次評価項目は運動症状の変化およびドパミン産生として、24ヵ月にわたって観察した。3例の患者は低用量移植(片側半球当たり2.1~2.6×106個の細胞)を受け、4例の患者は高用量移植(片側半球当たり5.3~5.5×106個)を受けた。安全性の評価は7例、有効性の評価は1例がCOVID-19感染のため6例で行われた。 主な結果は以下のとおり。・重篤な有害事象は発生しなかった。軽度~中等度の有害事象は73件発生した。・治療上の調整が必要でない限り、患者の抗パーキンソン病治療薬の投与量は維持されたが、その結果ジスキネジアが増加した。・MRIによる評価では、移植組織の異常増殖は認められなかった。・国際パーキンソン病・運動障害学会統一パーキンソン病評価尺度(MDS-UPDRS)パートIIIによる評価において、OFFスコアの改善が6例中4例、ONスコアの改善が5例に認められた。6例全体の平均変化量は、OFFスコアが-9.5(-20.4%)、ONスコアが-4.3(-35.7%)であった。・ホーエン・ヤールの重症度分類では4例の患者が改善した。・18F-DOPA PETでは、被殻のドパミン取り込み(Ki値)が平均44.7%増加し、高用量移植群でより顕著に認められた。 本結果は、iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞のパーキンソン病患者への移植が安全かつ有効である可能性を示した初の報告となる。著者らは「将来的には、細胞移植と遺伝子治療、薬物療法、リハビリテーションを組み合わせることで、有効性を高める戦略が考えられる。さらに、iPS細胞を用いた自家移植も有望な選択肢となる可能性がある」とまとめている。

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臓器の生物学的老化の加速は疾患リスクに影響する

 臓器の生物学的年齢(臓器年齢)は人によって異なり、臓器の老化の加速により、その臓器だけでなく、他の臓器に関連した疾患のリスクも予測できる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のMika Kivimaki氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Digital Health」3月号に掲載された。 Kivimaki氏らは、特定の臓器年齢の加速は、1)その臓器の疾患リスクを高めるのか、2)他の臓器に関連する加齢関連疾患や、それらの疾患の同時発症のリスクも高めるのか、を検討した。対象は、35年以上にわたり1万人以上の英国成人を追跡したホワイトホールII研究のデータから抽出した、45〜69歳の6,235人とした。対象者の血漿プロテオームの解析により9つの臓器(心臓、血管、肝臓、免疫系、膵臓、腎臓、肺、腸、脳)の年齢を推定し、同年代の人の臓器年齢との差を算出した。その後、対象者を平均19.8年間追跡し、45種類の加齢関連疾患とマルチモビディティ(多疾患併存)の発症について調査した。 年齢、性別、人種、解析対象外の臓器における年齢差を調整して解析した結果、臓器年齢の差が大きい人では、30種類の疾患のリスクが高いことが明らかになった。また、6種類の疾患は、それぞれが関連する特定の臓器の生物学的老化の加速とのみ関連していた。具体的には、臓器年齢の差が1標準偏差増加するごとに、肝臓では肝不全リスクが2.13倍、心臓では拡張型心筋症リスクが1.65倍、慢性心不全リスクが1.52倍に、肺では肺がんリスクが1.29倍に、免疫系では無顆粒球症が1.27倍、リンパ節転移リスクが1.23倍の上昇を示した。さらに、臓器年齢の差が大きいほど、複数の臓器に関連した疾患が同時に発症するリスクも上昇を示し、臓器年齢の差が1標準偏差増加するごとに同リスクは、動脈で2.03倍、腎臓で1.78倍、心臓と脳で1.52倍、膵臓で1.43倍、肺で1.37倍、免疫系で1.36倍、肝臓で1.30倍に上昇していた。 意外なことに、認知症のリスクが最も高かったのは、脳ではなく免疫系の生物学的老化の加速が見られた人だった。研究グループは、「この結果は、重度の感染症にかかりやすい人は老年期に認知症になるリスクも高いという、これまでの研究結果を裏付けるものだ」と述べている。また、「この研究結果は、炎症プロセスが神経変性疾患の発症に重要な役割を果たしている可能性があることを示唆するものだ」との見方も示している。 研究グループは、「この研究は、臓器特異的な血液検査が早期の疾患リスクの特定に役立つ可能性があることを浮き彫りにしている」と述べている。Kivimaki氏は、「このような検査により、将来的には、特定の臓器に対する適切なケアが必要かどうかのアドバイスや、特定の疾患を発症するリスクが高い可能性があるとの早期警告を提供できる可能性がある」と話している。

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抗血小板薬併用療法のde-escalationの意味わかる?(解説:後藤信哉氏)

 最近、急性冠症候群に対するPCI後の抗血小板薬併用療法のde-escalationという言葉がしばしば使われる。筆者には初めから言葉に対して違和感があった。de-escalationだから、放置しておくとescalationしてしまうのを、escalationしない方向に向けようという意味だろうか? 急性冠症候群は致死的疾患である。心筋梗塞になることを予防する必要があった。抗血小板薬併用療法にて血栓イベントリスクを低減させる努力が続けられた。当初から、抗血小板薬併用療法の有効性・安全性は12ヵ月の試験にて検証された。抗血小板薬開発に詳しい読者ならご存じのように、抗血小板薬併用療法の期間延長を目指す試験も施行された。疾病として血栓イベントリスク低減を目指すことは間違っていないが、長期の抗血小板薬併用療法では重篤な出血イベントリスクも増えてしまう。そこで、方向を変えてde-escalationを目指すグループも生まれた。 本試験は12ヵ月が標準治療であった抗血小板薬併用療法を、最短1ヵ月のfull dose抗血小板薬併用療法+5ヵ月のチカグレロル単剤+6ヵ月のアスピリン単剤群と比較した。12ヵ月の適応を取得した抗血小板薬開発企業にとってはまさにde-escalationを強いられる。使用するデバイスはpaclitaxel-coated balloonsなので、de-escalationできるのは急性冠症候群一般でなくpaclitaxel-coated balloonsの症例のみとde-escalationの対象を限局できるのが、製薬企業の容認できる部分だろうか? 中国1国で施行したランダム化比較試験であり、「paclitaxel-coated balloons」で治療を受けた症例であれば、と限局した条件ではあるが、抗血小板薬併用療法は1ヵ月でよいことを示唆した点は評価できる。

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大阪府民の心が一つになった!【Dr. 中島の 新・徒然草】(576)

五百七十六の段 大阪府民の心が一つになった!2025年4月13日、ついに大阪万博が開幕しました。大阪では55年ぶりとなる万国博覧会です。この記念すべき日には、さまざまな関連イベントが行われ、その中でも注目されていたのが、航空自衛隊ブルーインパルスによる飛行でした。午前11時40分頃に関西空港を飛び立ち、大阪府の上空を1周するということを聞き、私たち夫婦も近所の見晴らしの良い場所まで出かけてみました。小雨の降るあいにくの天気にもかかわらず、すでに多くの家族連れが集まっており、歩道橋やビルの屋上、道路の脇まで人と車がビッシリ!「どこからこんなに人が来たんわけ?」と思うほど、辺りは善男善女であふれていました。みんな考えることは同じだったようですね。スマホでYouTubeの実況を見ながら、ブルーインパルスの登場を今か今かと待ちます。「今、関空を飛び立ったぞ」「3機は飛んだけど、あと3機はまだみたい」「先頭はもう大阪城に着いてしまうんじゃないか?」やきもきしていると、地上に残っていた3機が突然方向を変え、駐機場へ戻っていきました。続いて飛び立っていた3機も着陸し、結局、悪天候のため飛行は中止に。おそらく、単独での飛行は問題なくても、6機編隊によるアクロバット飛行はリスクが高いと判断されたのでしょう。中止の情報が知らされると、思わず「ざ〜んね〜ん!」とため息が……その瞬間、まさに大阪府民の心がひとつになったはず。さて、今回の万博は1970年以来の開催となります。私が小学生のときに体験したあの万博は、3月から9月までの半年間行われました。最初の頃の入場者数は1日10数万人程度でしたが、次第に増え、最終的には1日50万人を超える日もあったくらいです。「混雑もそのうち落ち着くだろう」と考えていた人たちの予想は外れ、終盤まで大混雑が続きました。私も2回ほど、会場に行きましたが、アメリカ館では「月の石」を見るために2時間待ち。  見た感想は「ただの石ころだ」というものでした。それでも当時は娯楽も限られていた時代なので、日本中が万博に熱狂していました。展示する側も気合いが入っていて、五重塔を模したパビリオンを建ててしまった企業まであったほどです。ウィキペディアで調べてみると、1年かけて建てた高さ86メートルの七重塔だったらしく、日本一高い東寺の五重塔よりも30メートルも高かったのだとか。その熱意とエネルギーには、ただただ驚かされます。今では当時の会場が「万博記念公園」や「ららぽーとEXPOCITY」として再開発され、その周囲には「万博外周道路」があります。この道路は1周5キロほどの大規模なものですが、今回の夢洲会場に設置された「大屋根リング」は1周2キロだそうです。この大屋根リングですが、当初、私は「直径2キロ、1周が6キロ。外周道路よりも大きい!」と勘違いして、ものすごく感動しました。実際にはそこまで大きくはなかったわけですね。写真で見ても1周2キロくらいのサイズ感なので、本当のサイズを知って妙に納得してしまいました。大屋根リングのほうも、勝手に感動されたり勝手に納得されたりで、さぞかし迷惑なことでしょう。今回の万博ですが、私自身は現地に行くかどうかはまだ決めていません。でも、もし行ったとしたら、個人的な楽しみよりも「本当に入場に2時間かかるのか」「退場に1時間かかるのか」「1杯4,000円の蕎麦とやらはどんな味なのか」「2億円かけたというトイレは一体どんな造りなのか」を体験して、ケアネット読者の皆さんに万博の実際をレポートしたいと思います。ということで最後に1句春雨の 幻となる インパルス

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第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会 会長インタビュー【Oncologyインタビュー】第49回

出演:和歌山県立医科大学 内科学第三講座(呼吸器内科・腫瘍内科)教授 山本 信之氏2025年5月17日より、第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会が開催される。総会のテーマは「最高のがんサポーティブケアを目指して beyond evidence」である。会長の和歌山県立医科大学山本信之氏に学術集会の見どころについて聞いた。参考第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会ホームページ

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発達障害と緩和ケア【非専門医のための緩和ケアTips】第98回

発達障害と緩和ケア皆さんは発達障害について勉強したことはありますか? 精神科の先生以外は、専門的に勉強したことがある方は少ないかと思います。私も専門外ではありますが、緩和ケア領域では対応が難しい状況でしばしば議論になる分野ですので、この機会に少しご紹介します。今回の質問基幹病院から外来に紹介されたがん患者さんの紹介状に「発達障害の疑い」とありました。あまり詳しく勉強したことがない分野ですが、どのような点に注意が必要でしょうか?最初に、今回の議論の前提を共有しておきましょう。私自身、精神科の専門医ではなく、体系的に勉強した経験もありません。発達障害の医学的な正しい理解に当たっては、適切な文献や書籍を参照ください。私は緩和ケアの実践に当たって知っておくとよいこと、という観点から紹介します。発達障害は知的な能力の偏りが大きく、得意・不得意にばらつきが大きい、という特徴があります。特定の情報や感覚に集中し過ぎる、逆に気にし過ぎないといったことがあります。よくある例として、周囲から「空気が読めない」と評価されることがあります。「空気を読む」って、よく考えるとなかなか難しいことですよね。音情報としての相手の口調、映像情報として相手の表情をキャッチし、相手の社会的立場なども考慮して、どのように振る舞うべきかを決めなければなりません。でもこういうのって誰かが説明してくれるわけではありません。自分で多くの情報を処理して、適切に自分の行動に反映することが求められます。そして、こうしたことが苦手なことが多いのが、発達障害の特徴の1つです。さて、このような特徴が緩和ケアを提供するうえで、どのような問題となるのでしょうか? たとえば、痛みの評価で「一番痛かった時を10点とすると、今は何点ですか?」と尋ねることがよくあります。この質問に対して、「痛みを数字で表現なんてできません」って真顔で返答されることがあります。これは、「痛み」という自覚症状と「数字」という、まったく異なる情報を結び付けられないことから生じます。このような場合には、本人の表現しやすい方法で個別に痛みを評価する方法が必要です。たとえば、数字での表現が難しくても、「立ち上がる時に痛い」といった動作での表現ならばしやすいかもしれません。「痛みを数字に変換して、カルテに記載する」といった医療者目線だけでなく、患者さんの特性に合わせることでやり取りしやすくなります。ほかにも、発達障害の特性のある患者さんには、曖昧な言い方よりも具体的にはっきりと伝えたほうが良いことが多いようです。在宅療養を希望するかを知りたいとき、「これからどうしたいですか?」といった聞き方をすることが多いですよね。多くの場合、点滴などが減って、入院の治療が終了に近づいているような状況です。しかし、患者さんはこうした「暗黙の前提」を共有するのが苦手だったりします。そのため、「どうしたいって言われても、どうすれば良いか先生なのだから教えてください」といった反応があったりします。医療者の意図をくみ取れず、食い違いが生じているのですね。こういった場合、「来週に退院ができる病状になりそうなので、退院の準備について話をさせてください。たとえば、訪問診療など在宅医療の準備が必要かもしれません」といったように、具体的な話をすると伝わりやすくなります。最後に、発達障害を考える際の重要な点を紹介します。ここまで述べたように、発達障害を思わせる特性が強い患者さんがいても、必ずしも診断にこだわる必要はありません。また、本人が困っていなかったり、影響が許容範囲だったりするのであれば、あまり「発達障害」という用語を出す必要もないでしょう。最初に述べたように、空気を読むことの難しさは誰しもあるもので、あくまで程度の問題です。時としてレッテル貼りの弊害もあるので、発達障害という診断にこだわらないようにしましょう。患者さんとのコミュニケーションに違和感を持ったときに今回の話を思い出していただき、工夫してもらえたらと思います。今回のTips今回のTips発達障害の診断にこだわらず、緩和ケアを提供するうえで支障になる発達障害らしさに対して工夫しましょう。

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HBc抗体、単独陽性の解釈【1分間で学べる感染症】第24回

画像を拡大するTake home messageHBc抗体が単独で陽性である場合には、1)ウインドウ期、2)既感染(遠隔期)、3)慢性感染(潜伏HBV感染)、4)偽陽性の4つの可能性を考えよう。B型肝炎ウイルス(HBV)感染の血清学的マーカーのうち、単独のHBc抗体陽性に遭遇することがたびたびあります。一見解釈が難しそうに思えるこの結果ですが、次の4つのシナリオを考えることでしっかり理解することができます。1. ウインドウ期急性B型肝炎の回復過程で、HBs抗原が消失し、HBs抗体がまだ出現していない時期です。このHBs抗原の消失とHBs抗体の出現までの間は「ウインドウ期」と呼ばれ、HBc抗体のみ陽性となる可能性があります。この場合は、IgM型HBc抗体が陽性となることが多いです。2. 既感染(遠隔期)過去にHBVに感染し、時間の経過と共にHBs抗体が抗体価の低下によって陰性化する場合があり、HBc抗体のみが陽性となる状態です。とくに高齢者や免疫力が低下した人でみられることがあります。一度HBVに感染しているため、抗がん剤や免疫抑制薬の種類による再活性化のリスクを考慮し、HBV DNAの定期的モニタリングが推奨されます。3. 慢性感染(潜伏HBV感染)HBVに感染し、肝組織内に存在している状態です。HBs抗原が検出されない場合、通常のスクリーニングでは見逃されることがあります。HBV DNAが血清中で検出限界以下または低力価で検出されることがあります。慢性肝疾患や肝がんのリスクが増加する可能性があるため、長期的なフォローアップが必要です。4. 偽陽性近年の酵素免疫測定法(EIA)の精度向上により偽陽性率は低下していますが、自己免疫疾患での交差反応を中心に、一定の割合で発生することがあります。再検査、ほかのHBVを組み合わせることにより、次のステップにつなげることができます。以上、HBc抗体が単独陽性となった場合は、1)ウインドウ期、2)既感染(遠隔期)、3)慢性感染(潜伏HBV感染)、4)偽陽性の4つのうちのいずれかの可能性があります。患者のリスクを踏まえて適切に解釈できるよう心掛けましょう。1)Wang Q, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2017;2:123-134

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DNRを救急車で運んだの?【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第5回

DNRを救急車で運んだの?PointDNRは治療中止ではない。終末期医療の最終目標は、QOLの最大化。平易な言葉で理知的に共感的に話をしよう。適切な対症療法を知ろう。症例91歳男性。肺がんの多発転移がある終末期の方で、カルテには急変時DNRの方針と記載されている。ところが深夜、突如呼吸困難を訴えたため、慌てて家族が救急要請した。来院時、苦悶様の表情をみせるもののSpO2は97%(room air)だった。研修医が家族に説明するが、眠気のせいか、ついつい余計な言葉が出てしまう。「DNRってことは、何も治療を望まないんでしょ? こんな時間に救急車なんて呼んで、もし本物の呼吸不全だったら何を期待してたんですか? 大病院に来た以上、人工呼吸器につながれても文句はいえませんよ。かといって今回みたいな不定愁訴で来られるのもねぇ。なんにもやることがないんだから!」と、ここまでまくしたてたところで上級医につまみ出されてしまった。去り際に垣間見た奥さんの、その怒りやら哀しみやら悔しさやらがない交ぜになった表情ときたらもう…。おさえておきたい基本のアプローチDo Not Resuscitation(DNR)は治療中止ではない! DNRは意外と限定的な指示で、「心肺停止時に蘇生をするな」というものだ。ということはむしろ、心肺停止しない限りは昇圧薬から人工呼吸器、血液浄化法に至るまで、あらゆる医療を制限してはならないのだ。もしわれわれが自然に想像する終末期医療を表現したいなら、DNRではなくAllow Natural Death(AND)の語を用いるべきだろう。ANDとは、患者本人の意思を尊重しながら、医療チーム・患者・家族間の充分な話し合いを通じて、人生の最終段階における治療方針を具体的に計画することだ。それは単なる医療指示ではなく、患者のQuality of Life(QOL)を最大化するための人生設計なのである。落ちてはいけない・落ちたくないPitfalls「延命しますか? しませんか?」と最後通牒を患者・家族につきつけるのはダメ医療を提供する側だからこそ陥りやすい失敗ともいえるが、「延命治療を希望しますか? 希望しませんか?」などと、患者・家族に初っ端から治療の選択肢を突きつけてはならない。家族にしてみれば、まるで愛する身内に自分自身がとどめを刺すかどうかを決めるように強いられた心地にもなろう。患者は意識がないからといって、家族に選択を迫るなんて、恐ろしいことをしてはいないか? 「俺が親父の死を決めたら、遠くに住む姉貴が黙っているはずがない。俺が親父を殺すなんて、そんな責任追えないよぉ〜」と心中穏やかならぬ、明後日の方向を向いた葛藤を強いることになってしまうのだ。結果、余計な葛藤や恐怖心を抱かせ、得てして客観的にも不適切なケアを選択してしまいがちになる。家族が親の生死を決めるんじゃない。患者本人の希望を代弁するだけなのだ。徹頭徹尾忘れてはならないこと、それはANDの最終目標は患者のQOLの最大化だということだ。それさえ肝に銘じておけば、身体的な側面ばかりでなく、患者さんの心理的、社会的、精神的側面をも視野に入れた全人的ケアに思い至る。そして、治療選択よりも先にたずねるべきは、患者本人がどのような価値観で日々を過ごし、どのような死生観を抱いていたのかだということも自ずと明らかになろう。ANDを実践するからには、QOLを高めなければならないのだ。Point最終目標はQOLの最大化。ここから焦点をブレさせない「患者さんは現在、ショック状態にあり、昇圧剤および人工呼吸器を導入しなければ、予後は極めて厳しいといわざるを得ません」いきなりこんな説明をされても、家族は目を白黒させるばかりに違いない。情報提供の際は専門用語を避けて、できるだけ平易な言葉遣いで話すべきだ。また、人生の終末を目前に控えた患者・家族は、とにかく混乱している。恐怖、罪悪感、焦り、逃避反応などが入り組んだ複雑な心情に深く共感する姿勢も、人として大切なことだ。だが、同情するあまりにいつまでも話が進まないようでは口惜しい。実は、患者家族の満足度を高める方法としてエビデンスが示されているのは、意外にも理知的なアプローチなのだ。プロブレムを浮き彫りにするためにも、言葉は明確に、1つ1つの問題を解きほぐすように話し合おう。逆に、心情を慮り過ぎて言葉を濁したり、楽観的で誤った展望を抱かせたり、まして具体的な議論を避ける態度をとったりすると、かえって信頼を損なうことさえある。表現にも一工夫が必要だ。すがるような思いで病院にたどり着いた患者・家族に開口一番、「もはや手の施しようがありません」と言おうものなら地獄へ叩き落された心地さえしようというもの。何も根治を望んで来たわけではないのだから、「苦痛を和らげる方法なら、できることはまだありますよ」と、包括的ケアの余地があることを伝えられれば、どれだけ救いとなることだろう。以上のことを心がけて、初めて患者・家族との対話が始まるのだ。こちらにだって病状や治療方針など説明すべきことは山ほどあるのだが、終末期医療の目的がQOLの向上である以上、患者の信念や思いにしっかりと耳を傾けよう。もし、その過程で患者の嗜好を聞き出せたのならしめたもの。しかしそれも、「うわー、その考え方にはついていけないわ」などと邪推や偏見で拒絶してしまえば、それまでだ。患者の需要に応えられたときにQOLは高まる。むしろ理解と信頼関係を深める絶好の機会と捉えて、可能な限り患者本人の願いを実現するべく、家族との協力態勢を構築していこう。気持ちの整理がつくにつれ、受け入れがたい状況でも差し引きどうにか受容できるようになることもある。そうして徐々に歩み寄りつつ共通認識の形成を試みていこう。その積み重ねが、愛する人との静かな別れの時間を醸成し、ひいては別離から立ち直る助けともなるのだ。Point平易かつ明確な言葉で語り掛け、患者・家族の願いを見極めよう「DNRでしょ? ERでできることってないでしょ?」より穏やかな死の過程を実現させるためにも、是非とも対症療法の基本はおさえておこう。訴えに対してやみくもに薬剤投与と追加・増量を繰り返しているようでは、病因と戦っているのか副作用と戦っているのかわからなくなってしまうので、厳に慎みたい。その苦痛は身体的なものなのか、はたまた恐怖や不安など心理的な要因によるものなのか、包括的な視点できちんと原因を見極めるべきだ。対症療法は原則として非薬物的ケアから考慮する。もし薬剤を使用するなら、病因に対して適正に使用すること。また、患者さんの状態に合わせて、舌下錠やOD錠、座薬、貼付剤など適切な剤型を選択しよう。続くワンポイントレッスンと表で、使用頻度の高い薬剤などについてまとめてみた。ただし、終末期の薬物療法は概してエビデンスに乏しいため、あくまでも参考としていただけるとありがたい。表 終末期医療でよく使用する薬剤PointERでできることはたくさんある。適切な対症療法を学ぼうワンポイントレッスン呼吸困難呼吸困難は終末期の70%が経験するといわれている。自分では訴えられない患者も多いので、呼吸数や呼吸様式、聴診所見、SpO2などの客観的指標で評価したい。呼吸困難は不安などの心理的ストレスが誘因となることも多いため、まずは姿勢を変化させたり、軽い運動をしたり、扇風機で風を当てたりといった環境整備を試すとよいだろう。薬剤では、オピオイドに空気不足感を抑制する効果がある。経口モルヒネ30mg/日未満相当ならば安全に使用できる。もし不安に付随する症状であれば、ベンゾジアゼピンが著効する場合もある。口腔内分泌物口腔内の分泌物貯留による雑音は、終末期患者の23〜92%にみられる。実は患者本人にはほとんど害がないのだが、そのおぞましい不協和音は死のガラガラ(death rattle)とも呼ばれ、とくに家族の心理的苦痛となることが多い。まずは家族に対し、終末期に現れる自然な経過であることを前もって説明しておくことが重要だ。どうしても雑音を取り除く必要がある場合は、アトロピンの舌下滴下が分泌物抑制に著効することがある。ただし、すでに形成した分泌物には何の影響もないため、口腔内吸引および口腔内ケアも並行して実践しよう。せん妄せん妄も終末期患者の13〜88%に起こる頻発症状だ。ただし、30〜50%は感染症や排尿困難、疼痛などによる二次的なものである。まずは原因の検索とその除去に努めたい。薬剤投与が必要な場合は、ハロペリドールやリスペリドンなどの抗精神病薬を少量から使用するとよいだろう。睡眠障害睡眠障害はさまざまな要因が影響するため、慎重な評価と治療が不可欠である。まずは昼寝の制限や日中の運動、カフェインなどの刺激物を除去するといった環境の整備から取り掛かるべきだろう。また、睡眠に悪影響を及ぼす疼痛や呼吸困難などのコントロールも重要である。薬物は健忘、傾眠、リバウンドなどの副作用があるため、急性期に限定して使用する。一般的には非ベンゾジアゼピン系のエスゾピクロンやラメルテオンなどが推奨される。疼痛疼痛は終末期患者の50%が経験するといわれている。必ずしも身体的なものだけではなく、心理的、社会的、精神的苦痛の表出であることも多いため、常に包括的評価を心掛けるべきだ。このうち、身体的疼痛のみが薬物療法の適応であることに注意しよう。まずは潜在的な原因の検索から始め、その除去に努めよう。終末期の疼痛における環境整備やリハビリ、マッサージ、カウンセリングなどの効果は薬物療法に引けを取らないため、まずはこのような支持的療法から試みるとよいだろう。薬物療法の際は、軽度ならば非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェン、そうでなければオピオイドの使用を検討する。ちなみに、かの有名なWHOの三段階除痛ラダーは2018年の時点でガイドラインから削除されているから注意。現在では、患者ごとに詳細な評価を行ったうえで、痛みの強さに適した薬剤を選択することとなっている。たしかに、あの除痛ラダーだと、解釈次第ではNSAIDsと弱オピオイドに加えて強オピオイドといったようなポリファーマシーを招きかねない。末梢神経痛に対しては、プレガバリンやガバペンチン、デュロキセチンなどが候補にあがるだろう。勉強するための推奨文献日本集中治療医学会倫理委員会. 日集中医誌. 2017;24:210-215.Schlairet MC, Cohen RW. HEC Forum. 2013;25:161-171.Anderson RJ, et al. Palliat Med. 2019;33:926-941.Dy SM, et al. Med Clin North Am. 2017;101:1181-1196.Albert RH. Am Fam Physician. 2017;95:356-361.執筆

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日本循環器学会(JCS)学術集会まとめ

国内最大規模を誇る日本循環器学会(JCS)学術集会。ここでは、CareNet.comで配信された本学術集会に関する過去5年分のニュース記事を開催年度ごとにまとめて紹介します。関連コンテンツ心不全診療Up to Date診療科別2024年上半期注目論文5選(循環器内科編)診療科別2024年下半期注目論文5選(循環器内科編)Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」脂質異常症診療Q&A見落とさない!がんの心毒性臨床留学通信 from Boston

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第7回 コーヒーの淹れ方が心臓の健康を左右する?ディテールがモノを言うかもしれないという話

コーヒーは多くの方にとって、朝の目覚めから仕事の合間の息抜きまで、幅広い場面で登場する身近な存在でしょう。健康への影響についてはさまざまな研究があり、「適量であれば体に良い」という話を耳にされたことがあるかもしれません。実際、コーヒーの摂取と2型糖尿病1)やパーキンソン病2)のリスク低下との関連を示した研究がこれまで報告されています。しかし、最近スウェーデンの大学の研究者が公表した研究3)によれば、ただコーヒーを飲むかどうかだけではなく、コーヒーの「淹れ方」にも注目する必要があるかもしれないということです。今回は、この研究の内容と結果をお伝えしたいと思います。フィルターの有無が生む意外な差今回ご紹介する研究では、いわゆる「悪玉」コレステロールであるLDLコレステロールの値を上昇させる可能性があるジテルペンがコーヒーに含まれる量を、職場や公共施設などに設置されているコーヒーマシンで抽出したコーヒーやドリップコーヒーなどを対象に測定しています。すると、紙フィルターを通すドリップ式と比べて、構造上フィルターの機能が弱いコーヒーマシンでは、ジテルペンが高い濃度で残る傾向がみられたのです。図. 各種コーヒー抽出液のジテルペン(カフェストール)含有量Orrje E, et al. Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2025 Feb 20. CC BY 4.0画像を拡大する以前から、トルコ式コーヒーやフレンチプレスなど「湯で煮出す」タイプ、あるいはフィルターを通さない抽出法ではジテルペンが多く含まれることが知られていました。これを踏まえ、一部の北欧諸国では「紙フィルターを用いてコーヒーを淹れる習慣」を推奨するガイドラインが示されています。実際、研究チームも「1日に何杯もコーヒーを飲む人が、紙フィルターを通さない淹れ方ばかりを選択すると、LDLを押し上げるリスクが高まるかもしれない」と指摘しています。日本人の日常にどう影響するのか日本ではコンビニやカフェ、自動販売機などから手軽にコーヒーを購入する機会が多いですが、これらがどのような抽出法かを常に意識する人は少ないかもしれません。とりわけ、職場にあるコーヒーメーカーで何杯も飲む方は、マシンが紙フィルターを使うドリップ方式なのか、それとも濃縮液をお湯で割るリキッド方式なのかなどを一度確認してみるのもよいかもしれません。研究では、リキッド方式のマシンではジテルペンが抑えられる傾向がある一方、抽出型のマシンではジテルペン濃度が高めになる可能性が示唆されています。また、エスプレッソのように短時間で高圧抽出する場合、特に高いジテルペン量が検出されたと報告されているため、日常的に何杯もエスプレッソまたはカフェラテなどを飲まれる方は注意が必要かもしれません。ただし、断定的に「エスプレッソは危険だ」とするものでもありません。実際の健康への影響がこの研究で測定されているわけではないため、一概に「どの淹れ方でどれほど健康リスクが高い」という話はできないからです。また、仮に健康リスクとの関連があったとしても、量も物をいうでしょう。しかし「フィルターをしっかり通したコーヒーの方が、余計なコレステロール上昇リスクを抑えやすい」という認識は持っていてもいいのかもしれません。コーヒーは香りや風味、リラックス効果など、多くの人を魅了する存在です。その一方で、こうした研究をきっかけに、淹れ方や飲み方にも少し目を向けてもいいのかもしれません。コーヒーに関する研究は無数にありますが、その淹れ方で分けると、研究結果が変わってくるのかもしれません。そうした視点は著者の私にもなかったので新しい発見で、体に良いイメージのあるコーヒーだからこそ、抽出法のようなディテールにも今後の研究で目を向けていく必要があるのでしょう。総じて、今回の研究結果だけをもとに「絶対に紙フィルターを使うべき」などと極端に捉える必要はないでしょう。あくまで自分の生活に合ったスタイルを保ちつつ、もしコーヒーをよく飲まれる方は適切なフィルターを選んだり、飲む頻度を一度見直してみたりしてもいいのかもしれません。今後さらに健康への直接的な影響を評価した研究が行われれば、この「淹れ方」による違いが実際問題どの程度の影響をもたらすのかが明確になるでしょう。いずれにせよ、同じコーヒーでも 「抽出方法の違い」が健康上の意味を持つかもしれないという鋭い視点は、コーヒーのみならずさまざまな食事、飲料にも応用が効きそうな話だったのではないでしょうか。 1) Huxley R, et al. Coffee, decaffeinated coffee, and tea consumption in relation to incident type 2 diabetes mellitus: a systematic review with meta-analysis. Arch Intern Med. 2009;169:2053-2063. 2) Zhang T, et al. Associations between different coffee types, neurodegenerative diseases, and related mortality: findings from a large prospective cohort study. Am J Clin Nutr. 2024;120:918-926. 3) Orrje E, et al. Cafestol and kahweol concentrations in workplace machine coffee compared with conventional brewing methods. Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2025 Feb 20. [Epub ahead of print] ■新着【大画像】/files/kiji/20250304132940-sns.png【サムネイル】/files/kiji/20250304133008.png

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若年性認知症患者、過去30年間で2倍超

 若年性のアルツハイマー病やその他の認知症(EOAD)は、患者本人だけでなくその家族にも大きな負担をもたらす。しかし、EOADの世界的な負担は、これまで十分に調査されていなかった。中国・Jinan University First Affiliated HospitalのZenghui Zhang氏らは、1990〜2021年の世界の疾病負担(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors:GBD)2021研究のデータを用いて、EOADの世界、地域、各国の負担を評価するため、本研究を実施した。European Journal of Neurology誌2025年3月号の報告。 GBD2021のデータより、40〜64歳の成人データを抽出した。主要アウトカムは、EOADの年齢調整罹患率、発生率、死亡率、障害調整生存年(DALY)、21地域および204ヵ国における年平均変化率(AAPC)とした。 主な結果は以下のとおり。・2021年のEOAD症例数は775万件(95%不確実性区間[UI]:5.82〜10.08)に達しており、1990年の367万件(95%UI:2.75〜4.76)から2倍超の増加が認められた。・年齢調整罹患率は、1990年は10万人当たり341.2人(95%UI:255.89〜442.79)であったが、2021年には363.5人へ増加しており、AAPCは0.26%であった(p<0.001)。・2021年のEOAD有病率は、女性(428万人、95%UI:3.24〜5.56)のほうが男性(346万人、95%UI:2.57〜4.52)よりも高かった。・2021年におけるEOADの死亡者数は0.07万人(95%UI:0.01〜0.23)、377万人(95%UI:1.69〜8.88)DALYであった。・さらに、106万人DALYは、喫煙、空腹時血糖値の上昇、高BMIに起因していた。 著者らは「40〜64歳におけるEOADの世界における症例数は、1990年から2021年にかけて、2倍超に増加している。この問題に対処するためにも、ターゲットを絞った戦略および介入が早急に求められる」と結論付けている。

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日本の男性乳がんの生存率、女性乳がんと比較~12府県のがん登録データ

 男性乳がんと女性乳がんの予後を比較した研究の結果は一貫しておらず、わが国において男性乳がんと女性乳がんの予後を大規模集団で比較した研究はほとんどない。今回、愛知県がんセンターのDaisy Sibale Mojoo氏らが12府県のがん登録データを用いて検討した結果、男女の乳がんの純生存率が同程度であることが示された。Cancer Science誌オンライン版2025年3月3日号に掲載。 本研究では、宮城県、山形県、栃木県、新潟県、福井県、愛知県、滋賀県、大阪府、鳥取県、山口県、長崎県、熊本県において1993~2011年に診断された乳がん18万1,540例(うち男性1,058例、0.6%)を解析した。5年および10年の純生存率(net survival:がん以外の死亡がなかったと仮定した場合の生存率)を推定し、性別、期間(1993〜97年、1998〜2002年、2003〜06年、2007〜11年)、年齢(50歳未満、50〜69歳、70〜99歳)、病期、組織型で層別化した。過剰ハザード比(EHR)は、期間、年齢、病期、組織型で調整した。これらの因子間の異質性の評価にはコクランのQ検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・男性乳がん全体の5年および10年純生存率推定値はそれぞれ90.7%(95%信頼区間[CI]:86.3~93.7)および83.7%(同:72.2~90.8)、女性乳がん全体ではそれぞれ88.3%(同:88.1~88.5)および79.1%(同:78.7~79.4)であった。・男性乳がんの生存は女性乳がんと同程度であり、EHRは5年生存で0.88(95%CI:0.70~1.09)、10年生存で0.86(同:0.69~1.07)であった。・異質性の分析では、これらの層において生存率に有意な性差は認められなかった。

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セフトリアキソンで腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症を治療できるか

 セフトリアキソン(CTRX)は尿路感染症における選択薬の1つであるが、他のβ-ラクタム系抗菌薬と比較して尿中排泄率が低いという欠点がある。わが国では2023年にセフォチアム(CTM)が不足したことから、尿路感染症に対するCTRXの需要が高まっている。今回、愛知医科大学の柴田 祐一氏らが、腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症に対するCTRXと他のβ-ラクタム系抗菌薬の有効性を比較したところ、30日全死亡率は同様であった。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2025年4月9日号に掲載。 本研究では、2014年7月~2024年2月に愛知医科大学病院で血液および尿培養で大腸菌、クレブシエラ属、プロテウス属が検出されたβラクタム系抗菌薬投与患者を後ろ向きに登録した。登録した計123例をCTRX群(CTRXを5日間以上投与)とその他のβ-ラクタム系群(アンピシリン、セファゾリン、CTM、またはセフォタキシムを5日間以上投与)に分け、年齢、チャールソン併存疾患指数、静脈内抗菌薬投与期間、経口抗菌薬への切り替え患者数、アルブミン値、白血球数、C反応性蛋白、体温、ICU入室必要について傾向スコアマッチングした。主要評価項目は、副作用、転帰、30日および90日時点の死亡率だった。 主な結果は以下のとおり。・傾向スコアマッチング後、各群26例が選出された。・30日全死亡率は両群とも3.8%であった。・再感染や腎盂腎炎による再入院は認められなかった。 著者らは「CTRX治療は腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症患者の予後に影響を与えなかった。尿中排泄率が低いという理由で尿路感染症に対するCTRXの使用を避ける必要はない」と考察している。

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慢性期心不全患者への水分制限は不要!?(FRESH-UP)/ACC

 長らく議論されてきた心不全(HF)患者に対する水分制限に関するFRESH-UP試験の結果が、米国心臓学会議(ACC2025、3月29~31日)のScientific Sessionsで発表され、慢性期HF患者への水分制限はメリットが見いだせない可能性が示唆された。本研究は、Nature Medicine誌2025年3月30日号に同時掲載された。 なお、3月28日に発刊された日本循環器学会の『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』のCQ3「心不全患者における水分制限を推奨すべきか?」には、“代償期の心不全における1日水分摂取量1~1.5Lを目標とした水分制限を弱く推奨する(エビデンスレベルA[弱]、p.209)”と示された一方で、“FRESH-UP試験やそのほかの研究結果が公表された際には再検討が必要”とされていた。FRESH-UP試験の詳細結果 FRESH-UP試験と呼ばれる本研究は、オランダの医療センター7施設において軽度/中等度HF症状を呈する504例を1日の水分摂取量を1,500mLに制限する群(制限群、250例))と水分摂取に制限を設けない群(非制限群、254例)に割り付けて行われた多施設共同無作為化比較オープンラベル試験。主要評価項目は、カンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS)で評価した3ヵ月後の健康状態で、副次評価項目は口渇による苦痛(Thirst Distress Scale for patients with HF:TDS-HF)や安全性であった。 主な結果は以下のとおり。・対象者の平均年齢は69.2歳、男性は67.3%であった。・対象者の87.1%はNYHA心機能分類IIで、治療におけるループ利尿薬の服用率は51%、ベースライン時点のKCCQ-CSS中央値は77.0であった。・左室駆出率の平均値はいずれの群も約40%で、NT-proBNP値は、制限群が507.4ng/L、非制限群が430.0ng/Lであった。・制限群の1日平均水分摂取量1,480mLに対し非制限群は1,764mLと、制限群は有意に抑制されていた(p<0.001)。・3ヵ月時点のKCCQ-CSSによる健康状態について、ベースラインスコア調整後の平均差は2.17(95%信頼区間[CI]:-0.06~4.39、p=0.06)と、主要評価項目は達成されなかった。・TDS-HFは、制限群で有意に高くなった(18.6 vs.16.9)。・安全性について、6ヵ月時点での死亡率、HF入院、静注利尿薬の必要性、急性腎障害の発生においても、両群間で有意差は認められなかった。 HFに対する水分制限の有益性について、発表者のRoland RJ van Kimmenade氏は「主要評価項目や安全性に関する副次評価項目結果からも明らかなように、水分制限による影響や害を及ぼす兆候が発見されなかった」と述べ「安定しているHF患者では水分制限を必要としない」としている。

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TAVI生体弁比較、SAPIEN 3 vs.Myval/Lancet

 経カテーテル心臓弁(THV)を植え込む低侵襲の経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は、重症大動脈弁狭窄症および劣化した大動脈生体弁に対するガイドラインに基づいた治療法である。次々と新しいTAVI用THVプラットフォームが上市され臨床現場で使用されているが、その性能に関する短期データは少なく、長期データについては存在していない。デンマーク・オーフス大学病院のChristian Juhl Terkelsen氏らは、「最新のTHVは、現状で最良とされるTHVと比較すべき」として、SAPIEN 3 THVシリーズ(SAPIEN 3またはSAPIEN 3 Ultra、米国・Edwards Lifesciences製)とMyval THVシリーズ(MyvalまたはMyval Octacor、インド・Meril Life Sciences製)を直接比較する多施設共同全患者無作為化非劣性試験「COMPARE-TAVI 1試験」を実施。Myval THVはSAPIEN 3 THVに対して1年時の複合エンドポイント(死亡、脳卒中、中等症/重症の大動脈弁逆流症、または中等症/重症のTHVの血行動態悪化)に関して非劣性であったことを報告した。Lancet誌オンライン版2025年4月2日号掲載の報告。デンマークの3つの大学病院で被験者を募り試験 試験はデンマークの3つの大学病院で、18歳以上、TAVIが予定されており、SAPIEN 3 THVまたはMyval THVによる治療の対象であった患者を適格とし行われた。 被験者は、SAPIEN 3(29mm径)またはSAPIEN 3 Ultra(20mm、23mmまたは26mm径)THVを用いた治療を受けるSAPIEN 3 THV群、MyvalまたはMyval Octacor THV(20~32mm径)を用いた治療を受けるMyval THV群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 TAVI手術は、弁尖切開術を行う場合を除き、試験地の手術手順にて局所麻酔下で行われた。 主要エンドポイントは、Third Valve Academic Research Consortium(VARC-3)基準に基づく1年時点の死亡、脳卒中、中等症/重症の大動脈弁逆流症、または中等症/重症のTHVの血行動態悪化の複合とした。 無作為化された全患者をITT解析に包含し、割り付け治療を受けた全患者をper-protocol解析に包含した。予想イベント発生率は13%で、事前に規定した非劣性マージンは5.3%とした。主要エンドポイントの発生はSAPIEN 3 THV群13%、Myval THV群14% 2020年6月15日~2023年11月3日に1,031例が登録された。なお登録は、特許関連の法的手続きのため2回中断された。 1,031例のうち、517例がSAPIEN 3 THV群に、514例がMyval THV群に無作為化された。被験者の年齢中央値は81.6歳(四分位範囲[IQR]:77.6~85.0)、415例(40%)が女性、616例(60%)が男性であった。STSスコア中央値は2.3%(IQR:1.6~3.7)。1,031例のうち98例(10%)が二尖弁(すべてSievers分類タイプ1)を有し、40例(4%)がvalve-in-valve手術を受け、103例(10%)は急性または亜急性TAVIであった。無作為化から手術までの時間は中央値50分(IQR:31~1,313)。Myval THV群でXLサイズ弁(30.5mm、32mm径)の植え込みを受けたのは、507例のうち10例(2%)。THV径中央値は、SAPIEN 3 THV群(516例)26mm(IQR:23~26)、Myval THV群(514例)26mm(24.5~27.5)であった。 主要エンドポイントの発生は、SAPIEN 3 THV群67/517例(13%)、Myval THV群71/514例(14%)であった(群間リスク差:-0.9%[片側95%信頼区間上限:4.4%]、非劣性のp=0.019)。

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lepodisiran、400mg投与で半年後のLp(a)値を93.9%低下/NEJM

 開発中の長期持続型低分子干渉RNA(siRNA)薬lepodisiranについて、投与後60~180日に血清リポ蛋白(a)(Lp(a))値を低下したことが示された。米国・Cleveland Clinic Coordinating Center for Clinical ResearchのSteven E. Nissen氏らALPACA Trial Investigatorsが、第II相試験である国際多施設共同無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。Lp(a)値の上昇は、アテローム性心血管疾患と関連する。lepodisiranは、肝臓でのLp(a)の産生を標的とし、第I相試験では、最高試験用量608mgの単回投与が337日間にわたりLp(a)値を90%以上低下したことが示された。今回報告された第II相試験は、Lp(a)高値の集団でのlepodisiranのさらなる安全性を評価するとともに、Lp(a)値低下の大きさと期間を明らかにし、現在進行中の心血管アウトカムを評価する長期の第III相試験の用量と投与間隔の設定を目的として実施された。NEJM誌オンライン版2025年3月30日号掲載の報告。5つの用量群で60~180日におけるLp(a)値の低下率を評価 第II相試験は2022年11月11日~2023年4月17日に、アルゼンチン、中国、デンマーク、ドイツ、日本、メキシコ、オランダ、ルーマニア、スペインおよび米国の66施設で行われた。対象は、Lp(a)値175nmol/L以上で、スタチン、PCSK9阻害薬、その他のLp(a)値に影響を及ぼすことが知られる脂質異常症治療薬の投与を受けている場合は、スクリーニング前4週間以上にわたり投与量が安定していた40歳以上の成人であった。 研究グループは被験者を、次の5群に1対2対2対2対2の割合で割り付けた。すべてが皮下投与で、(1)ベースラインと180日時にlepodisiran 16mg(16mg群)、(2)同96mg(96mg群)、(3)同400mg(400mg・400mg群)、(4)ベースラインにlepodisiran 400mg、180日時にプラセボ(400mg・プラセボ群)、(5)ベースラインと180日時にプラセボ(プラセボ群)。主要解析では、ベースラインでlepodisiran 400mg投与を受けた(3)と(4)の2つの群のデータをまとめて(400mg統合群)分析した。 主要エンドポイントは、60~180日の血清Lp(a)値のベースラインからの時間平均低下率(lepodisiran群とプラセボ群の差[すなわちプラセボ補正後])であった。400mg投与で60~180日に93.9%ポイント低下、30~360日に88.5~94.8%ポイント低下 計320例が無作為化された。平均年齢は62.7歳、138例(43%)が女性、219例(68%)が心血管イベントの高リスク基準を満たしており、153例(48%)が冠動脈疾患既往、99例(31%)が心筋梗塞既往であった。血清Lp(a)中央値は253.9nmol/L、LDLコレステロール中央値は79.3mg/dL、アポリポ蛋白B値79.0mg/dL、また、併用薬はスタチンが236例(74%)、エゼチミブが105例(33%)、PCSK9阻害薬が19例(6%)であった。 60~180日の血清Lp(a)値のベースラインからの、血清Lp(a)値の時間平均低下率(プラセボ補正後)は、16mg群40.8%ポイント(95%信頼区間[CI]:-55.8~-20.6)、96mg群75.2%ポイント(-80.4~-68.5)、400mg統合群93.9%ポイント(-95.1~-92.5)であった。 30~360日のベースラインからの同低下率は、16mg群41.2%ポイント(95%CI:-55.4~-22.4)、96mg群77.2%ポイント(-81.8~-71.5)、400mg・400mg群94.8%ポイント(-95.9~-93.4)、400mg・プラセボ群88.5%ポイント(-90.8~-85.6)であった。 重篤な有害事象は35例で報告されたが、試験担当医師がlepodisiranまたはプラセボに関連したと判定した事例はなかった。概して軽度の注射部位反応が用量依存性に報告され、lepodisiranの最高投与量群(400mg・400mg群)の発現率12%(8/69例)が最高であった。

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喘息の検査には時間帯や季節が影響する

 喘息の診断に用いられる気道可逆性検査の精度は、実施する時間帯、季節により異なる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。研究グループは、定期的な喘息検査は午前中に行う方が信頼性の高い結果を得られる可能性があるとしている。英ロイヤル・パプワース病院NHS財団トラストのBen Knox-Brown氏らによるこの研究結果は、「Thorax」に3月11日掲載された。 典型的な喘息の検査は、2段階のプロセスで行われると研究グループは説明する。まず、患者はチューブを通してできるだけ深く息を吸い、次にできるだけ強く、速く息を吐くように指示される。患者の肺の中を出入りする息は、肺機能を測定する装置であるスパイロメーターにより測定される。次に、患者は即効性の気管支拡張薬を吸入してから、同じ呼吸テストを行う。2回目の結果が1回目よりも良好である場合、つまり気管支拡張薬反応性が認められた場合は、テスト前にすでに気道が狭くなっていたことを意味し、患者が喘息であることが示唆される。 今回の研究でKnox-Brown氏らは、2016年1月1日から2023年12月31日の間に喘息の検査を受けた18歳以上の患者1,620人(平均年齢53.2歳、女性62%)のデータを後ろ向きに解析し、検査が行われた時間帯や季節と喘息の診断との関連を検討した。 その結果、午前8時30分から検査を開始した場合、開始時間が1時間遅くなるごとに、気管支拡張薬反応性を示すオッズが8%ずつ低下することが示唆された(オッズ比0.92、95%信頼区間0.88〜0.97)。検査する時間帯を午前と午後に分けて解析した場合でも同様の傾向が見られ、午後の方が気管支拡張薬反応性を示すオッズが低かった(同0.68、0.54~0.85)。季節別に見ると、秋に検査を受けた場合には冬に受けた場合と比べて気管支拡張薬反応性を示すオッズが33%低かった(同0.67、0.48〜0.92)。 研究グループは、喘息薬の効果が午後よりも午前の方が高いことは知られていたが、これらの結果には驚かされたという。Knox-Brown氏は、「喘息発作のリスクが昼と夜で違うことから、肺機能検査に対する反応にも違いがあると予想していたが、その大きさには驚かされた」と話す。同氏は、「この結果は重要な意味を持つ可能性がある。午前中に検査を行えば、午後に行うよりも患者の薬に対する反応をより確実に知ることができる。これは喘息などの診断を確定する際に重要だ」と英ケンブリッジ大学のニュースリリースの中で述べている。 論文の上席著者である、ケンブリッジ大学のAkhilesh Jha氏は、「この違いの背景には、複数の要因が関与している可能性が高い」と指摘する。同氏は、「われわれの体には体内時計と呼ばれる自然なリズムが備わっている。例えば、1日を通して、体内のさまざまなホルモンのレベルは上下するし、免疫システムの働きも異なる。これらの要因の全てが、人々が肺機能検査にどう反応するかに影響を与える可能性がある」と話す。 Jha氏は、このような体内時計による影響のエビデンスは、医学の他の分野でも認められていると指摘する。同氏は、「例えば、ワクチン接種を午前に受けるか午後に受けるかによって反応が異なることが知られている。われわれの研究結果は、この考えをさらに裏付けるものだ。一般的に行われている喘息の検査結果を解釈する際には、検査実施の時間帯や時期を考慮する必要があるのかもしれない」と述べている。

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医師からのメッセージ、AIが作成しても患者の満足度は高い

 患者は通常、診療所から届いたメッセージの作成者が誰であるかを知らされなければ、それが人工知能(AI)によって書かれたものであっても気にしないことが新たな研究で明らかになった。この研究によると、AIにより書かれたメッセージと医師により書かれたメッセージを見せられた患者は、AIのメッセージを好む傾向にあったが、全体的な満足度はどちらも高かったという。米デューク大学医学部のAnand Chowdhury氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に3月11日掲載された。 Chowdhury氏は、「どこの医療システムも、AIの使用を開示するかどうか、どのように開示するかという問題に取り組んでいる」と説明し、「透明性を保ちたいと思う一方で、患者を満足させたいという思いもある。もしAIについて開示したら、何を失うことになるのか。われわれはこの研究でそれを評価しようとした」と付け加えている。 この研究では、デューク大学医療システムの1,455人の患者を対象に、医師との電子メールでのやりとりにおけるAI使用について、患者の好みを評価した。メッセージは、1)定期的に使用している薬剤の処方依頼、2)薬剤の副作用に関する質問、3)画像検査でがんの可能性がある所見が見られた場合、を想定して作成された。人間のメッセージは、普段の患者とのコミュニケーションの取り方を反映した現実的な内容のものを医師チームが用意した。AIのメッセージはChatGPTが作成し、研究に参加した医師が回答内容の正確性を確認した。患者は、医師チームまたはAIが作成したメッセージに対する満足度を5段階で評価した。 その結果、患者は医師が作成したメッセージよりもAIが作成したメッセージを好む傾向にあり、満足度を5段階で評価したスコアはAIが作成したメッセージの方が平均0.30ポイント高いことが明らかになった。また、AIが作成したメッセージは有用性の評価でも0.28ポイント、患者に対する共感性の評価でも0.43ポイント高かった。研究グループによると、AIのメッセージは傾向として、医師のメッセージよりも長くて詳細で、より共感的な内容であったという。 しかし、メッセージがAIによるものであることを患者に開示した場合には満足度が低下し、満足度のスコアは、人間によるものであることを開示した場合と比較して0.13ポイント、開示しない場合と比べても0.09ポイント低かった。それでも、メッセージの作成者がAIか医師かに関わりなく、75%以上の患者が受け取ったメッセージに満足していた(AI:85.0%、医師:75.6%)。 こうした結果を受けて、論文の筆頭著者でデューク大学医学部のJoanna Cavalier氏は、「今回の研究では、AIが関与していることが開示された場合、患者の満足度はわずかに低くなるものの、AIが書いたメッセージの方がやや好まれることが示された」と述べている。 さらに、伝達されるメッセージの内容の深刻度は、それがAIにより作成されたと知らされた際の患者のメッセージに対する好意的な気持ちに影響を与えないことも明らかになった。研究グループは、「われわれは、例えば定期的に使用している薬剤の再処方など、それほど深刻でない内容であれば、患者はAIが作成したメッセージでも受け入れやすいとの仮説を立てていた。しかし、そのような相互作用は見られなかった」と説明している。言い換えれば、患者は、AIが作成した薬剤の再処方に関するメッセージと、画像検査でがんの可能性が示されたことに関するメッセージの双方に、同程度の満足度を示していた。 「こうした結果は、臨床医と電子機器を介してつながることで患者の満足度がより高くなることを示した研究という点で極めて重要だ」とChowdhury氏は言う。同氏は、「未処理のメールで受信トレイが一杯になると、医師はバーンアウト(燃え尽き症候群)の状態になりかねないため、医師の負担を軽減する自動化ツールの利用は非常に魅力的だ。これらの結果は、AIを活用することで医師のバーンアウトを軽減できる可能性があること、また、AIを使用する際に患者に適切な対応を取りながらその使用について伝えることに自信を与えてくれる」と述べている。

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CareNetパス利用規約

[アカウント登録]をクリックすることで、CareNetパス利用規約並びに当社の個人情報保護方針および個人情報保護規定(https://www.carenet.com/info/personal.html 参照)が適用されることに同意するものとします。CareNetパス利用規約CareNetパス利用規約(以下「本規約」といいます)は、株式会社ケアネット(以下「当社」 といいます)が提供する「CareNetパス」サービスおよびこれに関連するサービス(以下「本サービス」といいます)のご利用に際し、適用されます。本サービスのご利用前によくお読み頂き、同意のうえ、ご利用ください。第1条(本規約、本サービスの目的等)1.本規約は、本サービスの提供条件について、当社とサービス利用者との間の権利義務を定めることを目的とします。サービス利用者は、当社所定の登録手続において、本規約に同意するものとします。サービス利用者は、本サービスをご利用いただくことを以って、本規約に同意したものとみなされるものとし、本規約が改訂された場合も同様とします。2.本サービスは、当社およびサービス関連事業者(以下に定義します。当社およびサービス関連事業者を総称して「サービス提供者」といいます)が提供する情報提供サービスを利用する際に要求される認証について、CareNet.com会員IDによる認証連携サービス CareNetパスを通じて、サービス利用者の情報提供サービスへのアクセスの容易性・利便性を高めることを主な目的としています。3.サービス提供者が提供する情報提供サービスに対する責任は、これを提供する事業者が負います。また、これを提供する事業者が定める利用規約その他の条件が適用されることがあります。4.サービス利用者は、CareNetパス利用、ならびに情報提供サービスの利用および解析のため、サービス利用者の登録情報、ユーザー情報がサービス提供者により取得され、利用されることに同意します。これらの情報は、情報提供サービスの提供(サービス利用者が利用する情報提供サービス中に特定の医療関係者にしか提供できない情報が含まれるため、その確認のために使用されます)、情報提供サービスの品質向上、サービス提供者による解析・分析、その他サービス利用者から個別に同意を取得している目的のために利用します。なお、これらの情報が個人情報保護法に定める個人情報に該当する場合、サービス提供者は常に同法およびその下位法令に従い、取り扱いを行うものとします。第2条(定義)本規約において使用する以下の用語は、各々以下に定める意味を有するものとします。(1)「サービス利用者」とは、本サービスを利用する自然人をいい、医療関係者(医師・看護師・薬剤師など)及び医薬関係者をいいます。(2)「ユーザー」とは、当社所定のユーザー登録手続を経て、当社がユーザー登録および本サービスの利用を承認した者をいいます。(3)「CareNet.com会員ID」は、当社の提供するサービスへの利用登録時に、また新規登録の場合には本サービスの利用の登録時にサービス利用者が設定したメールアドレスまたは会員識別用の固有の文字列をいいます。(4)「メールサービス」とは、本サービスの一環として当社がサービス利用者に対して、電子メールを用いて、サービスの広告、宣伝をお送りすることです。(5)「登録情報」とは、サービス利用者が当社の提供するサービスへの利用登録(更新登録を含む)時に、また新規登録の場合には本サービスの利用の登録時に、当社に提供を行った氏名、メールアドレス、勤務先、勤務先所在地、診療科、職種等の情報のことです。(6)「ユーザー情報」とは、情報提供サービスの利用状況(ログイン・連携解除日時)、メールサービスの利用履歴、その他ユーザーの本サービスの利用内容、利用履歴のことです。本サービスに関するCookie等の情報を含みます。(7)「MDB」とは、株式会社日本アルトマークの運営する日本全国の医療施設や薬局・薬店およびそこに従事する医療従事者の情報を内容とするメディカルデータベースをいいます(MDBに関するご案内、お問い合わせは下記のWebサイトをご覧ください。https://www.ultmarc.co.jp/mdb/index.html(8)「サービス関連事業者」とは、本サービスの登録・サインインにより提供されるサービスの運営事業者、株式会社日本アルトマーク、MDB会員のことです。第3条(サービス利用者の資格・認証・責任等)1.当社は、ユーザー登録を希望する者が以下の各号のいずれかの事由に該当すると判断した場合に、登録を拒否することがあります。またその理由について一切開示義務を負いません。(1)登録情報につき事実と異なる内容があった場合(2)暴力団、暴力団員、右翼団体、反社会的勢力その他これに準ずる者(以下「反社会的勢力等」といいます)または関与者(3)過去当社との契約に違反した者またはその関係者(4)過去本サービスの登録抹消を受けた者(5)本サービスの提供が適当でない者と当社が判断した場合2.本サービスはサービス利用者の本人認証のため、CareNet.com登録会員情報にて本人確認手続きを行います。サービス提供内容は、本人認証の状況により変わる場合があります。3.サービス利用者は、CareNet.com会員IDを第三者に知られないようにサービス利用者の責任において十分注意して管理するものとします。またパスワードは、生年月日、電話番号など他人に推測されやすいものを避けて設定し、定期的に変更するものとします。サービス利用者のCareNet.com会員IDおよびパスワードの管理不十分、使用上の過誤、第三者の使用等によって生じた損害に関する責任はサービス利用者が負うものとし、当社は一切の責任を負いません。4.サービス利用者は、CareNet.com会員IDおよびパスワードについて、以下の各号に掲げる行為を行ってはならないものとします。(1)CareNet.com会員IDおよびパスワードを第三者に利用させ、または貸与、譲渡、名義変更、売買等行うこと(2)他のサービス利用者のIDまたはパスワードを利用する行為その他第三者に成りすます行為を行うこと。サービス利用者のIDおよびパスワードが入力された上で、本サービスのご利用がなされた場合、当社は、本サービスのご利用がサービス利用者ご本人によりなされたものであるとみなします。5.サービス利用者は、本サービスの利用にあたり、以下の各号のいずれかに該当する行為または該当するおそれがある行為をしてはなりません。(1)本規約に違反する行為(2)法令または公序良俗に違反する行為(3)サービス利用者が所属する業界団体の内部規則等に違反する行為(4)複数のユーザー登録を行うこと(5)本サービスのネットワークまたはシステム等に過度な負荷をかける行為、当社のネットワークまたはシステム等に不正にアクセスする、または不正なアクセスを試みる行為その他本サービスの運営を妨害するおそれのある行為(6)第三者に不利益、不快感を与える行為その他不適切な行為(7)前各号の行為を直接または間接に惹起し、または容易にする行為第4条(通知)1.本サービスの利用に関して、当社はサービス利用者に対し、メール等で通知を送信することができます。2.サービス利用者が通知を受け取れないこと等により、当社からの指示や警告を見落とした場合、当社は責任を一切負わないものとします。第5条(登録情報の変更等) サービス利用者は、当社所定の方法で当社に通知することにより、サービス提供者の情報提供サービスとの連携を解除することができます。第6条(登録抹消) サービス利用者が以下の各事由の一に定める事由に該当する恐れがある場合、当社は、サービス利用者に通知することなく利用停止または登録抹消することができます。(1)本規約に反する場合(2)登録情報が事実と異なる場合(3)その他当社が必要と判断した場合第7条(個人情報の取扱い)1.サービス利用者は以下に同意するものとします。(1)サービス利用者の個人情報について、本規約に特段の定めがある場合を除き、当社の個人情報保護方針および個人情報保護規定の定めにより取り扱うこと。(https://www.carenet.com/info/personal.html 参照)(2)当社が登録情報、ユーザー情報を取得すること。サービス関連事業者もまた登録情報、ユーザー情報を取得する、提供を受ける、または当社と共同利用することがあること。(3)当社がメールサービスを行うこと(4)当社が本サービス上で、サービス利用者に応じた広告、宣伝を行うこと(5)当社が、登録情報、ユーザー情報をサービス関連事業者に対して、提供すること2.サービス利用者がメールサービスの停止を希望する場合、所定の手続きにおいて、配信停止を申込するものとします。サービス利用者の停止申し込みの処理を当社が完了した時点で有効とし、その後のメールサービスを停止します。3.当社は、登録情報、ユーザー情報を、個人を識別できない形での統計情報として、利用することがあります。4.当社は、登録情報、ユーザー情報を、個人情報保護法に従い、同法上の匿名加工情報とした上で、第三者に提供することがあります。第8条(サービスの停止) 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