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CKD-MBDガイドライン改訂に向けたデータの吟味/日本透析医学会

 日本透析医学会による慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の診療ガイドラインが発表されてから10年以上が経過し、これまでに多くのデータが蓄積されてきた。そのデータを吟味し、今後のガイドラインのアップデートにつなげる目的として、2023年6月16日、日本透析医学会学術集会・総会のシンポジウム1「CKD-MBDガイドライン改訂に必要なデータを吟味する」にて、8名の医師からその方向性に関する報告と提案があった。血液透析患者における血清リン、カルシウム濃度の目標値の上限 日本透析医学会の統計調査データによる観察研究の結果を基に、血液透析患者における血清リン、カルシウムの管理について、後藤 俊介氏(神戸大学医学部附属病院 腎臓内科 腎・血液浄化センター)から提案があった。同氏は、「血清リンの下限は3.5mg/dLのまま、上限は現状の6.0mg/dLよりも少し厳しく管理することが望ましい。血清カルシウムも下限は現状の8.4mg/dLは必要であり、上限については10.0mg/dLのままでよいか、より厳しくしていく必要があるか、さらなる検討が必要である」と述べた。CKD-MBDガイドラインが発表されてから多くのリン吸着薬が登場 2012年にCKD-MBDガイドラインが発表されてから多くのリン吸着薬が登場し、実臨床で使用されている。その多彩なリン吸着薬をどのように使い分けていくべきか、ネットワークメタ解析による結果を基に山田 俊輔氏(九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科)から提案があった。解析の結果、カルシウム含有リン吸着薬と比較して、塩酸セベラマーは総死亡リスクが有意に低下し、炭酸ランタンは冠動脈の石灰化が有意に低下した。心血管死亡リスクではリン吸着薬間で有意差は認められなかった。また、消化器症状のリスクは、ニコチン酸アミド、鉄含有リン吸着薬、塩酸セベラマー、炭酸ランタンの順で高くなっていた。この結果を踏まえて同氏は、エビデンスに基づいて薬剤を選択することはもちろん重要だが、日本人の特徴を考慮して、患者背景に即した自由な選択、個々の薬剤の特性を活かした選択を検討する必要があり、その参考指標を改訂時に公表できるよう準備を進めていくと述べた。インタクトPTH 240pg/mL以上で総死亡や心血管死亡リスクが上昇 わが国のPTHの管理目標値は、インタクトPTH60~240pg/mLと、海外と比較して厳格な設定となっている。ガイドラインの改訂に向けて、海外の基準値に合わせるべきか、より厳格な目標値を設定すべきか、日本透析医学会の統計調査データを基に、駒場 大峰氏(東海大学医学部 腎内分泌代謝内科)からPTHと生命予後、骨折リスクとの関連について報告があった。生命予後の観点ではインタクトPTH 240pg/mL以上で総死亡や心血管死亡リスクが上昇、インタクトPTHを下げ過ぎることによるこれらのリスクは確認されなかった。一方、骨折リスクは死亡リスクよりも頻度は高く、PTHが高くなるほど、あらゆる骨折と大腿骨近位部骨折のリスクが上昇していた。高齢や低栄養、女性においてその傾向が強く、「骨折防止の観点でもPTHの管理はthe lower, the better?」とコメント。新しいPTHの管理目標をどのように設定すべきか、同氏は「生命予後の観点ではPTHの管理目標値の上限は240pg/mLとなるかもしれないが、骨折防止の観点ではより厳格なPTHの管理を目指すべきかもしれない。また、患者の背景を考慮して、個々に検討する必要がある」と述べた。 CKD・透析患者の骨の評価では、骨代謝マーカーにも注目 腎機能低下に伴って大腿部骨折のリスク増加に関しては、多くの観察研究で報告されており、CKDや透析患者において骨の評価・管理は重要な要素である。骨の評価について、谷口 正智氏(福岡腎臓内科クリニック)から骨脆弱性と骨密度に加えて骨代謝マーカーであるアルカリフォスファターゼ(ALP)も一緒に評価すべきと提案があった。ALPと骨折リスクの相関性をみた報告によると、インタクトPTHを十分に抑えた状況でもALPが高いと大腿部頸部骨折のリスクが高くなっていることが報告されており1)、「ALPも骨の評価の予後規定因子として考えるべき」とコメント。一方、骨の管理に関してはPTH管理のポイントとして駒場氏の報告でもあった「the lower, the better?」を採用し、適切に管理したうえで骨粗鬆症治療薬の使用を考慮し、薬剤選択は標準治療に準じて検討するように提案された。今後に向けて、同氏は他領域の医師にも骨粗鬆症治療薬によるリスクを認識してもらえるようヒートマップを活用した薬剤別の表の作成や、骨密度上昇効果と骨折予防効果を明確に分けて、エビデンスレベルがどの程度まであるか示したプラクティスポイントを調整中であると述べた。腹膜透析におけるCKD-MBDによる死亡リスクとは 血液透析ではカルシウム、リン、PTHと死亡リスクに関する報告はあるものの、腹膜透析に限定した報告は存在しない。日本透析医学会の統計調査のデータベースを用いた前向きコホート研究の結果から、カルシウム、リン、PTHを可能な限り低めに保つことで全死亡や心血管死亡などのアウトカムの改善につながる可能性があることがわかった。この結果に対して、村島 美穂氏(名古屋市立大学病院 腎臓内科)は、「目標値の下限でコントロールすることを提案していきたい」とコメント。また、カルシミメティクスの投与に関して、残腎機能に注意を払う必要があると述べた。移植患者のCKD-MBDの管理とは 移植後のビスフォスフォネートや活性型ビタミンD製剤の効果、移植後を見据えた移植前のCKD-MBDの管理、移植後のCKD-MBDの管理について、河原崎 宏雄氏(帝京大学医学部附属溝口病院 第4内科)からシステマティック・レビューの紹介があった。同氏は、「ビスフォスフォネートでは骨折予防、活性型ビタミンD製剤ではPTH抑制に対して効果があるかもしれない。移植前のCKD-MBDでは、透析期間が長い、副甲状腺腫が大きい、シナカルセトの使用、移植前にカルシウムやPTHが高い場合には副甲状腺摘出術(PTx)を検討すること。そして、移植後のCKD-MBDでは高カルシウム血症に対してPTxやカルシミメティクスを検討すること」と述べた。CKD-MBDガイドラインに保存期における治療の開始時期 保存期CKDにおけるCKD-MBD治療の開始タイミングに関して、ガイドラインのClinical Questionに答えるための十分なエビデンスが存在しない状況にある。新しいCKD-MBDガイドラインの方向性について、藤井 直彦氏(兵庫県立西宮病院 腎臓内科)は、「保存期CKD患者における低カルシウム血症、高リン血症、高PTH血症のデータに注目し、CKD-MBD治療をどのタイミングで開始すればよいのか、アプローチ方法について検討中である」とコメント。保存期からカルシウム、リン、PTHを測定する目安をまとめたフローについても準備を進めていると述べた。小児におけるCKD-MBDの現状とは 日本透析医学会の統計調査データを基に小児腎不全患者におけるCKD-MBDの指標と成長、生命予後との関連について、今泉 貴広氏(名古屋大学医学部附属病院 腎臓内科)から報告があった。小児腎不全患者はPTHの増加に伴い成長が鈍化する傾向にあり、カルシウム、リン、PTHのいずれも生存との関連はなかった。同氏は、「現在、ガイドラインで設定されているインタクトPTHの目標値を覆す根拠は得られなかった」とコメント。さらなる追加解析について検討していく必要があると述べた。

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転移乳がんへのカペシタビン、固定用量vs.標準用量(X-7/7)/ASCO2023

 転移を有する乳がん(MBC)患者を対象としたX-7/7試験において、カペシタビンの固定用量(1,500mg 1日2回 7日間投与後7日間休薬)は、体表面積に基づく用量(1,250mg/m2 1日2回 14日間投与後7日間休薬)と比較して、無増悪生存期間(PFS)や全生存期間(OS)に差はなく、手足症候群などの有害事象の発生率が低かったことを、米国・カンザス大学がんセンターのQamar J. Khan氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。 MBCは継続的な治療が必要となるため毒性の少ない治療が望まれているが、FDAに承認されているカペシタビンの用量では忍容性が低く、中止率が高いという懸念がある。そこで研究グループは、体表面積に関係なく固定用量のカペシタビンを投与した場合の有効性と安全性を、標準用量と比較するランダム化試験を実施した。・対象:内分泌療法または化学療法の治療歴のある転移を有する乳がんの女性(HER2+患者ではトラスツズマブを併用)・試験群(固定7/7群):カペシタビン1,500mg 1日2回 7日間投与→7日間休薬 80例・対照群(標準14/7群):カペシタビン1,250mg/m2 1日2回 14日間投与→7日間休薬 73例・評価項目[主要評価項目]3ヵ月PFS率[副次評価項目]PFS、OS、奏効率(ORR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2015年10月~2021年4月にMBC患者153例を固定7/7群と標準14/7群に1対1に無作為に割り付けた。ベースライン時の患者特性は同等で、年齢中央値60歳、内臓転移ありが44%、HR+HER2-が78%、HER2+が11%、トリプルネガティブが11%、化学療法の前治療歴なしが65%、測定可能な病変を有していたのは67%であった。・PFS中央値は、固定7/7群で8.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.4~11.6)、標準14/7群で12.1ヵ月(同:8.9~16.3)であった(p=0.98)。・固定7/7群および標準14/7群のPFS率はそれぞれ下記のとおりであった。 -3ヵ月PFS率:76%、76%、p=0.99 -6ヵ月PFS率:39%、50%、p=0.23 -24ヵ月PFS率:25%、23%、p=0.77 -36ヵ月PFS率:11%、0%、p=0.24・ORRは固定7/7群8.9%、標準14/7群19.6%であった(p=0.11)。・OS中央値は、固定7/7群19.8ヵ月(95%CI:12.9~28.3)、標準14/7群17.5ヵ月(同:12.5~34.0)であった(p=0.17)。・固定7/7群および標準14/7群のOS率はそれぞれ下記のとおりであった。 -3ヵ月OS率:94%、85%、p=0.16 -12ヵ月OS率:56%、63%、p=0.59 -24ヵ月OS率:30%、33%、p=0.85 -36ヵ月OS率:23%、23%、p=1.00 -48ヵ月OS率:17%、14%、p=0.82・Grade3~4の有害事象は、固定7/7群で11.3%、標準14/7群で27.4%に生じた(p=0.02)。Grade2~4の有害事象のうち、下痢は2.5%/20.5%(p=0.0008)、手足症候群は3.8%/15.1%(p=0.0019)、口内炎は0%/5.5%(p=0.0001)、好中球減少は21.3%/27.4%(p=0.68)であった。 これらの結果より、Khan氏は「MBCの治療で有効性を維持しながら毒性を最小化するために、カペシタビン1,500mg 1日2回 7日間投与後7日間休薬する固定用量は有用なオプションとなる可能性がある」とまとめた。

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医療ジャーナル査読者、コロナ流行で変化か/BMJ

 BMJ出版グループの医療ジャーナルについて、査読依頼と依頼同意に関するジェンダーおよび地域性の格差について調べたところ、女性への依頼率が低いことや、依頼同意率は編集者が女性の場合のほうが男性の場合よりも低いといった偏りがあることが示された。また、地域的に欧州に比べアジアやオセアニアへの査読依頼率が低く、高所得国に偏っていることも明らかになったという。スイス・ジュネーブ大学病院のKhaoula Ben Messaoud氏らが後ろ向きコホート研究の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「編集者は、偏りを減らしダイバーシティ(多様性)を改善するために、効果的な戦略を見つけて実行する必要があり、上位中所得国・低所得国からより多くの女性や研究者が査読に参加するよう、戦略の進捗状況を評価し続けなければならない」と述べている。BMJ誌2023年6月13日号掲載の報告。 新型コロナウイルス感染症の流行初期と後期において、査読依頼に対して性別や地域による偏りが発生したかを評価するため、BMJの19の専門医療ジャーナルと2つの総合医療ジャーナルの査読依頼状況を調査。 研究グループは、BMJ出版グループの19の専門医療ジャーナルと2つの総合医療ジャーナルを対象に後ろ向きコホート研究を行った。2018年1月1日~2021年5月31日に提出された原稿について、査読を依頼された査読者を調査。2022年2月28日まで追跡した。 主要アウトカムは、査読依頼への同意だった。査読依頼の85%が高所得国へ、48%が欧州、26%が北米に所属 査読を依頼された査読者は、合計25万7,025人で(女性の割合は38.6%[8万8,454/22万8,869人])、査読に同意したのは9万467人(35.2%)だった。 依頼を受けた査読者の大部分(84.7%、21万7,682人)は高所得国に属していた。地域別に多い順にみると、欧州(47.6%、12万2,414人)、北米(26.0%、6万6,931人)、アフリカ(10.0%、2万5,735人)、アジア(8.8%、2万2,693人)、オセアニア(6.3%、1万6,175人)、南アメリカ(1.2%、3,076人)となっていた。 査読依頼への同意に関する独立因子として、ジェンダー(男性と比較した女性のオッズ比[OR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.87~0.92)、地域性(欧州と比較したORは、南アメリカ:3.32[2.94~3.75]、アジア:2.89[2.73~3.06]、オセアニア:1.35[1.27~1.43]、アフリカ:0.35[0.33~0.37])、国の所得(高所得国と比較したORは、上位中所得国:0.47[0.45~0.49]、下位中所得国:5.12[4.67~5.61]、低所得国:4.66[3.79~5.73])が認められた。 また、同意に関する独立因子として、編集者のジェンダー(男性と比較した女性のOR:0.96、95%CI:0.93~0.99)、最終著者の所属地域(欧州と比較したORは、アジア:0.80[0.78~0.83]、オセアニア:0.89[0.85~0.94])、インパクトファクター(5未満に比べ10超のOR:1.78[1.27~2.50]、査読プロセスの種類(匿名に比べオープンのOR:0.52[0.35~0.77])が認められた。 この他、期間とCOVID-19関連トピック、査読者の性別に有意な相互作用はみられなかったが、期間とCOVID-19関連トピック、査読者の所属地域性に有意な相互作用が認められた(p<0.001)。

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外傷性急性硬膜下血腫、開頭術vs.減圧開頭術/NEJM

 外傷性急性硬膜下血腫の手術において、骨弁を還納する開頭術と還納しない減圧開頭術では、1年時点の障害およびQOLのアウトカムは同等だった。一方で、2週間以内の追加手術の発生率は開頭術群で高く、創部合併症の発生率は減圧開頭術群が高かった。英国・Addenbrooke's HospitalのPeter J. Hutchinson氏らが、11ヵ国40施設で行った無作為化比較試験の結果を報告した。外傷性急性硬膜下血腫の手術の選択肢である減圧開頭術は、頭蓋内圧亢進症を予防する可能性が示唆されているが、より良好なアウトカムと関連するかは明らかになっていなかった。NEJM誌2023年6月15日号掲載の報告。1年時点のGOSEで障害の程度を比較 研究グループは、外傷性急性硬膜下血腫の手術が予定されている患者を無作為に2群に割り付け、一方には開頭術を、もう一方には減圧開頭術を行った。試験対象の基準は、骨弁の前後径11cm以上とした。 主要アウトカムは、12ヵ月時点の拡張グラスゴー転帰尺度(GOSE、8ポイント尺度で、「死亡」~「上位の良好な回復[損傷関連の問題なし]」を評価)による分類だった。副次アウトカムは、6ヵ月時点のGOSE評価分類、EuroQol Groupの5領域5段階質問票(EQ-5D-5L)で評価したQOLなどだった。1年時点の障害程度は同等、2週間以内の追加頭蓋手術は開頭術群で高率 試験は2014年9月~2019年4月に、11ヵ国(英国、インド、カナダ、マレーシア、ドイツ、スペイン、米国、オーストラリア、ハンガリー、パキスタン、シンガポール)の40施設で行われ、3,566例がスクリーニングを受け、462例が試験に登録された。 解析に組み入れられたのは、開頭術群228例、減圧開頭術群222例。骨弁の前後径中央値は両群ともに13cm(四分位範囲:12~14)だった。 12ヵ月時点のGOSE分類の差に関する共通オッズ比(OR)は、0.85(95%信頼区間[CI]:0.60~1.18)と、両群で同等だった(p=0.32)。6ヵ月時点の結果も同様だった。 12ヵ月時点の死亡率は、開頭術群30.2%、減圧開頭術群32.2%。植物状態(vegetative state)は開頭術群2.3%、減圧開頭術群2.8%で、下位または上位の良好な回復は開頭術群25.6%、減圧開頭術群19.9%で認められた。 12ヵ月時点のEQ-5D-5Lスコアは、両群で同程度だった。 無作為化後2週間以内の頭蓋手術の追加実施は、開頭術群14.6%、減圧開頭術群6.9%、創部合併症は、開頭術群3.9%、減圧開頭術群12.2%でそれぞれ発生した。

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日本の統合失調症治療における向精神薬の併用~EGUIDEプロジェクト

 統合失調症のガイドラインでは、抗精神病薬の単剤療法が推奨されているが、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬で治療中の患者では、経口抗精神病薬が併用されることが少なくない。九州大学の鬼塚 俊明氏らは、LAIまたは経口の抗精神病薬で治療を行った日本の統合失調症患者を対象に、向精神薬の使用状況を詳細に調査した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2023年5月23日号の報告。 全国94施設が参加する「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」のデータを用いて、分析を行った。対象は、2016~20年に入院治療を行った後、退院した統合失調症患者2,518例。LAI群(263例)には、いずれかのLAI抗精神病薬で治療を行った患者を含み、非LAI群(2,255例)には、退院時に経口抗精神病薬を使用していた患者を含めた。 主な結果は以下のとおり。・LAI群は、非LAI群と比較し、抗精神病薬の多剤併用率、抗精神病薬の数、クロルプロマジン等価換算量が有意に高かった。・対照的に、LAI群は、非LAI群よりも睡眠薬および/または抗不安薬の併用率が低かった。 著者らは、「これらのリアルワールドの臨床結果を提示することで、とくにLAI群では抗精神病薬の併用を減らし、非LAI群では睡眠薬や抗不安薬の併用を減らすことにより、統合失調症治療において単剤療法を念頭に置くことを臨床医に対して奨励したい」としている。

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血小板数が少ない症例に血小板輸血は?(解説:後藤信哉氏)

 血小板数が5万を切ると出血性合併症は増える。自然出血も増えるかもしれない。そんな症例でも中心静脈にカテーテルを入れる必要がある場合はある。カテーテル挿入にエコーを利用するようになって、合併症リスクは減少している。カテーテル挿入は必要である。しかし、血小板数が低いときに、一時的にでも血小板輸血をするか? 日常臨床に直結した疑問である。この疑問に対してランダム化比較試験を行ったのが本研究である。 血小板数1~5万の症例を対象とした。中心静脈カテーテル挿入前に血小板輸血をする群としない群にランダムに振り分けた。カテーテルによるGrade2~4の出血を主要エンドポイントとした。血小板輸血をしても、出血リスクは事前に設定した非劣性マージンを超えなかった。 一般論として血小板減少に対して何も考えずに血小板輸血をするのは良くない。中心静脈カテーテル挿入が必要であってもエコー下にて施行すれば血小板輸血は必ずしも必要ない。日常臨床に役立つ試験結果である。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その8【「実践的」臨床研究入門】第33回

検索式で研究デザインを限定する その3前回は、PubMedの「Filterサイドバー」(連載第31回参照)を利用して、検索式で「研究デザイン」を「観察研究」に限定する方法について説明しました。「Filterサイドバー」を用いる方法は簡便ですが、Publication typeが“Observational Study(観察研究)”であるという情報が付与されていない論文は、検索式から漏れてしまいます。そこで、今回は「観察研究フィルター」の検索式を紹介します。また、実際にわれわれのResearch Question(RQ)の関連研究レビューの検索式に「観察研究フィルター」の検索式を加えて、「Filterサイドバー」を使う方法と検索結果を比較してみたいと思います。Journal of the Medical Library Associationという医学図書館学についての専門学術誌があります。この雑誌に掲載された論文1)で、「研究デザイン」を「観察研究」に絞る、PubMed用の「観察研究フィルター」の検索式が紹介されています。ちなみにこの論文1)では、「観察研究フィルター」以外にも、「システマティックレビューフィルター」と「介入研究フィルター」のPubMedおよびEmbaseの検索式が提示されていますので、ご関心があれば参照してください。下記に、この論文1)で紹介されたPubMed用の「観察研究フィルター」検索式の例を示します。“Epidemiologic Studies”[mh] OR “case control”[tiab] OR “case-control”[tiab] OR ((case[tiab] OR cases[tiab]) AND (control[tiab] OR controls[tiab)) OR “cohort study”[tiab] OR “cohort analysis”[tiab] OR “follow up study”[tiab] OR “follow-up study”[tiab] OR “observational study”[tiab] OR longitudinal[tiab] OR retrospective[tiab] OR “cross sectional”[tiab] OR questionnaire[tiab] OR questionnaires[tiab] OR survey[tiab]それでは、Advance Search Builderを用いて(連載第27回参照)、われわれのRQの関連研究レビューのための検索式に、この「観察研究フィルター」検索式を加えてみましょう。検索結果は下記の表1のようになりました(本稿執筆2023年6月時点)。表1画像を拡大する前回解説した、「Filterサイドバー」の“article type”で“Observational Study(観察研究)”に絞り込んだ検索結果の10倍以上の文献数がヒットしました。この検索結果に、改めて「Filterサイドバー」を用いて“Observational Study(観察研究)”に限定すると、下記の表2のとおりとなり、前回ヒットした文献がすべて検索されました。表2画像を拡大するこのように、今回解説した「研究デザインフィルター」の検索式を用いた方が、「Filterサイドバー」を使うよりも、さらに網羅的な検索ができることがわかります。1)Avau B, et al. J Med Libr Assoc. 2021;109:599-608.

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第166回 医師、医学生にも“縁”深い刑法の改正、性犯罪厳罰化と「撮影罪」新設で思い出した滋賀医大生事件の今

大きく変わる刑法の性犯罪規定こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。MLBはロサンゼルス・エンゼルスの大谷 翔平選手が大変なことになっていますね。先週(6月12~18日)は打者では7試合で23打数10安打の打率4割3分5厘、6本塁打、12打点の成績でした。投手でも、やや不調を引きずりながらも1勝を挙げています(投げた日も降板後ホームランを放ちました)。故障者続出の割にエンゼルスも好調で、6月19日現在アメリカン・リーグの西地区2位。大谷の好調が続けば、ひょっとしたらワールドシリーズを目指すポストシーズン進出も夢ではないかもしれません。今を生きる歴史的人物がワールドシリーズに出場するとなると、もうそれは歴史的事件です。秋に米国取材でも入れようかと考え始めた今日この頃です。さて、先週も「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針)の閣議決定など、医療関係者にも関係する政治的な出来事がたくさんありました。今年の「骨太」については回を改めて書くこととし、今回は、医師や医学生も比較的“縁”深いと思われる、刑法の性犯罪規定の改正について書いてみたいと思います。「強制性交罪」「準強制性交罪」は一本化して「不同意性交罪」に性犯罪の成立要件を見直す刑法改正案などが6月16日、参院本会議において全会一致で可決、成立しました。「強制性交罪」、「準強制性交罪」は一本化して「不同意性交罪」と改め、処罰要件も大幅に見直されました。現在の「強制わいせつ罪」も「不同意わいせつ罪」に変わります。性犯罪に対し、的確かつ厳格に対処するのが狙いで、今夏にも施行されます。これまで、強制性交罪の成立には「被害者の抵抗を著しく困難にする程度の暴行や脅迫を用いること」が必要とされてきました。しかし、暴行や脅迫がなくても、恐怖などで体が動かない状態に陥ったり、レイプ・ドラッグなどで意識が不明瞭となり、抵抗できずに被害に遭ったりすることがありました。改正法では「不同意性交罪」の要件を「同意しない意思を形成、表明、もしくは全うすることが難しい状態」と定め、その要因となる8つの項目(「暴行・脅迫」「心身の障害」「アルコール・薬物の摂取」「意識が不明瞭」「拒絶するいとまを与えない」「恐怖や驚愕」「虐待」「経済的・社会的地位に基づく影響力」)を具体的に明示しました。つまり、同意のない性行為は厳しく処罰されることになったのです。被害を言い出しにくい性犯罪の特性を踏まえ、公訴時効は現在の強制性交罪で15年(現行10年)に延長されました。性的行為に関する意思決定ができるとみなす「性交同意年齢」も13歳から16歳に引き上げられます。ただし、被害者が13~15歳だった場合、加害者が処罰されるのは5歳差以上だった場合となります。「性的グルーミング」も処罰、「撮影罪」も新設今回の改正ではその他、わいせつ目的で16歳未満の人に繰り返し面会を要求する行為を処罰する規定も新たに設けられました。16歳未満の子どもを手なずける、いわゆる「性的グルーミング」を罰する罪です。また、性器や下着、性交の様子などを盗撮したり、画像や動画を他人に提供したりする行為を処罰するため「撮影罪」も新設されました。それぞれ3年以下の拘禁刑などの罰則が科されます。不特定多数の人に提供した場合は5年以下の拘禁刑などとなります。これまでは、軽犯罪法や都道府県ごとに定められている迷惑防止条例などによって処罰されていた盗撮行為が、国の法律で罰せられることになるわけです。なお、単に撮影するだけでなく、画像を提供したり、ネット上にアップしたり、提供のために保管したりする行為も処罰対象になります。今回の法改正は、性暴力被害者の声が国を動かし、法律を変えたと言われています。2019年、性暴力事件の無罪判決が相次いだことで被害者が立ち上がり、実態調査などを敢行、国に訴えてきたのです。「不同意性交等罪」への罪名変更や、性交同意年齢の条件付き引き上げは、被害者の声を反映させるかたちで行われました。元滋賀医大生は実刑判決も控訴、残りの2人は無罪を主張、卒業後国試を受けたとの噂もさて、医師や医学生による強制性交罪と言えば、昨年3月に起きた滋賀医大生による集団暴行事件が記憶に新しいところです。本連載の「第120回 滋賀医大生3人を強制性交で逮捕・起訴、“エリート”たちがいつまでたってもパーティーを止めない理由とは?」「第144回 滋賀医大生による集団暴行事件、主犯格の被告に懲役5年6ヵ月の実刑判決」でも詳しく書きましたが、その後について付記しておきましょう。滋賀医大・医学部6年生(当時)の3人が女子学生を集団で暴行、動画撮影も行っていたこの事件、主犯格の被告1人には、大津地裁は今年1月、強制性交罪の罪で懲役5年6ヵ月(求刑懲役8年)の実刑判決を言い渡しています。その後、この被告は判決を不服として、大阪高裁に控訴しています。残り2人の裁判はまだ結審していません。強制性交罪に問われている2人は今年3月の裁判で、無罪を主張したとのことです。京都新聞の報道によれば、被告の弁護人は「被害者が拒むような態度はなく、撮影された動画が拡散することを防ぐため(被害者が)事件化した」と主張したとのことです。この事件、改正刑法ならば「不同意」の定義が明示されたことに加え、「撮影罪」も新設されるので、罰し方は大きく異なってくると考えられます。今後なら相当な厳罰になるかもしれないところ、“古い規則”で罰しなければならない点は、法律というものの一つの限界と言えるでしょう。ところで、滋賀医大は、主犯格の被告の初公判後、被告を退学処分にしています。残る2人の被告については、「裁判の動向を踏まえた上で対処する」としましたが、事件時に6年生だったので、ひょっとしたら卒業してしまっているかもしれません。ネット上では、「卒業して医師国家試験も受けたらしい」との噂もあるようです。仮に国試を受けて合格し、医籍を登録していたとしたら、既に医療現場で働いていることになります。合格後、医籍登録を保留していることも考えられます(無罪を主張しているのでその可能性もあるでしょう)。もし、この2人が有罪となったら、医療職の行政処分についての答申を行う医道審議会は、医師になる前の罪を理由に、医師免許剥奪や停止の処分を行うことになるのでしょうか。あるいは、滋賀医大が卒業を取り消し、自動的に国試の受験資格はなかったという筋道になるのでしょうか。法律上の処分は、事件発生時の刑法の規定に則ることになるでしょうが、“医道”を審議する場では、その時々の最新の倫理観が優先されるべきだと思います。そういった意味でも、残る2人の裁判の行方が気になります。

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急性冠症候群における早期SGLT2阻害薬使用の効果

 SGLT2阻害薬は糖尿病治療だけでなく、現在では心不全(HF)や腎不全の治療にその活躍のフィールドを拡大している。HFの臨床転帰を改善することは、すでにさまざまなエビデンスが報告されているが、早期の急性冠症候群(ACS)ではエビデンスは限定的であった。この疑問に対し、国立循環器病研究センターの金岡 幸嗣朗氏らの研究グループは、入院中の急性冠症候群患者に対し、SGLT2阻害薬の早期使用と非SGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬の使用の関連を検討した結果を報告した。European Heart Journal-Cardiovascular Pharmacotherapy誌オンライン版2023年5月12日掲載。ACSへのSGLT2阻害薬の早期介入はイベント抑制につながる可能性 本研究は、レセプト情報・特定健診情報データベースを用いて後方視的コホート研究で行われた。対象は2014年4月~2021年3月までに20歳以上のACSで入院した患者。 主要アウトカムは、全死因死亡またはHF/ACS再入院の複合とした。1:1の傾向スコアマッチングを用いて、HF治療に応じて、非SGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬と比較した早期SGLT2阻害薬使用(入院後14日以下)の転帰との関連を明らかにした。 対象となった38万8,185例のうち、重度のHFを有する患者は11万5,612例、有さない患者は27万2,573例であった。 主な結果は以下のとおり。・SGLT2阻害薬非使用者と比較し、SGLT2阻害薬使用者は、主要アウトカムとのハザード比(HR)が、重症HF群で低かった(HR:0.83、95%信頼区間[CI]:0.76~0.91、p<0.001)・非症状HF群では有意差はなかった(HR:0.92、95%CI:0.82~1.03、p=0.16)・SGLT2阻害薬の使用は、DPP-4阻害薬と比較し、重症HFおよび糖尿病患者における転帰のリスクが低いことが示された(HR:0.83、95%CI:0.69~1.00、p=0.049) 以上の結果から金岡氏らの研究グループは、「早期ACS患者におけるSGLT2阻害薬の使用は、重症HF患者において主要転帰のリスクを低下させたが、重症HFではない患者ではその効果は不明だった。そのほか、HFあり群のうち、糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の開始は、わが国でよく用いられているDPP-4阻害薬の開始と比較しても、主要エンドポイントの減少と関連していた」と早期使用がイベント抑制につながる可能性を示唆した。

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コロナ外出自粛が高齢者の健康に及ぼした影響/日本抗加齢医学会

 新型コロナウイルス感染症流行時の外出自粛が機能年齢、酸化ストレスなどの抗加齢医学的指標に及ぼす影響について検討した結果、運動している自覚がある人であっても、実際には体重支持指数が低下して筋年齢が老化していたことを、草野 孝文氏(アエバ外科病院)が第23回日本抗加齢医学会総会で発表した。 調査対象は2006年6月1日~2022年12月31日にアンチエイジング・ドックを受診した413例(男性204例[平均年齢64.0±12.5歳]、女性209例[平均年齢66.4±13.5歳])で、2類感染症指定期間中に外出自粛を行っていた群と行っていなかった群の機能年齢や抗加齢的指標を比較解析した。抗加齢的指標は筋年齢、神経年齢、血管年齢、ホルモン年齢、骨年齢、遺伝子損傷度、酸化ストレス度であった。 主な結果は以下のとおり。・外出自粛群は33例(男性15例、女性18例)で、平均年齢は65歳であった。非自粛群に比べて基礎疾患は少ない傾向にあり、男女ともに運動習慣がない人は有意に少なかったが、男性では食生活の悪化がみられた。・外出自粛群では筋力評価の指標である体重支持指数が有意に低下し、とくに高齢者ほど低下していた。・筋年齢は非自粛群よりも有意に高かったが、血管年齢、神経年齢、ホルモン年齢、骨年齢では有意差はみられなかった。・遺伝子損傷度(尿中8-OHdG生成速度)、酸化ストレス度(尿中イソプラスタン生成速度、CoQ10酸化率)は高値を示した。・ストレス耐性の指標(DHEA-s/コルチゾール比[20以上が目標値])は高値であった。 これらの結果より、草野氏は「新型コロナ感染対策の外出自粛は体重支持指数を低下させ筋年齢を老化させた。外出自粛時の運動には主観と客観のずれがあり、大腿四頭筋の筋力量を増加させるスクワットや有酸素運動の正しい指導が必要である。また、食生活が悪化し、酸化ストレス度が増加していた。アンチエイジングや健康長寿のために、抗酸化的物質の食事指導の重要性が示唆される」とまとめた。

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辛い食物とアルツハイマー病関連の認知機能低下との関係

 アルツハイマー病または認知機能低下と辛い食物摂取や身体活動とは、関連があるといわれているが、その調査は十分に行われていない。韓国・順天郷大学校のJaeuk Hwang氏らは、身体活動の緩和効果の条件下における辛い食物とアルツハイマー病関連の記憶力低下または全体的な認知機能低下との関連を調査した。その結果、辛い食物摂取は、アルツハイマー病関連の認知機能低下(エピソード記憶)の予測因子であり、とくに身体活動量の低い高齢者では悪化する可能性があることを報告した。Scientific Reports誌2023年5月16日号の報告。 対象は、認知症でない高齢者196人。対象者の辛い食物摂取、アルツハイマー病関連の記憶および全体的な認知機能、身体活動などを含む包括的な食事と臨床評価に関するデータを収集した。辛さは、「辛くない(対照)」「少し辛い」「非常に辛い」の3段階に層別化し、独立変数として分析に用いた。辛さのレベルと認知機能との関連を評価するため、重回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・辛さレベル別の割合は、「辛くない」93人、「少し辛い」58人、「非常に辛い」45人であった。・高レベルの辛さは、対照群と比較し、記憶力低下(β=-0.167、p<0.001)または全体的な認知機能低下(β=-0.122、p=0.027)と有意な関連が認められたが、記憶力以外では認められなかった。・6つの変数(年齢、性別、アポリポ蛋白Eε4対立遺伝子陽性率、血管リスクスコア、BMI、身体活動)を追加し、辛さレベルと記憶または全体的な認知機能との関連を緩和する効果を調査するため、重回帰分析を繰り返した。・身体活動には、高レベルの辛さと記憶(β=0.209、p=0.029)または全体的な認知機能(β=0.336、p=0.001)の影響に対する緩和効果が検出された。・サブグループ解析では、高レベルの辛さと記憶(β=-0.254、p<0.001)および全体的な認知機能(β=-0.222、p=0.002)の低下との関連は、身体活動量の低い高齢者でみられるものの、身体活動量の多い高齢者では認められなかった。

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直腸がんへのネオアジュバント強化、長期フォローアップでも有用性示す(PRODIGE 23)/ASCO2023

 局所進行直腸がん患者において、標準治療である術前化学放射線療法よりも前にmFOLFIRINOXによる化学療法を強化することで無病生存期間(DFS)が有意に改善されることを報告した第III相PRODIGE 23試験。米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)では本試験の7年の長期フォローアップの結果を、フランス・ロレーヌがん研究センターのThierry Conroy氏が報告した。・対象:T3またはT4の直腸腺がん患者、18~75歳、PS1以上・試験群(術前化学療法群):mFOLFIRINOXによる6サイクル・3ヵ月の化学療法→化学放射線療法→直腸間膜全切除(TME)→mFOLFOXによる4サイクル・3ヵ月の補助化学療法・対照群(標準治療群):化学放射線療法→TME→mFOLFOXによる8サイクル・6ヵ月の補助化学療法・評価項目:[主要評価項目]DFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、無転移生存期間(MFS)、安全性、QOLなど 主な結果は以下のとおり。・2012年6月~2017年6月に35の参加施設から461例が登録され、標準治療群230例と術前化学療法群231例に割り付けられた。年齢中央値61.5歳、66.3%が男性だった。・今回の解析における追跡期間中央値は82.2ヵ月で、標準治療群56例、術前化学療法群42例の死亡が報告された。・7年時点における局所再発の累積発生率は標準治療群8.1% vs.術前化学療法5.3%、転移率は標準治療群27.7% vs.術前化学療法群18.4%と、術前化学療法群が良好だった。・2次がんの発生率は標準治療群4.8%に対し、術前化学療法群は19.4%と高かった。すべてが固形がんで血液腫瘍は含まれなかった。・7年時点におけるDFSは標準治療群62.5%(95%信頼区間[CI]:55.6~68.6)vs.術前化学療法群67.6%(95%CI:60.7~73.6)、MFSは同65.4%(95%CI:58.7~71.3)vs.73.6%(95%CI:67.0~79.2)、OSは同76.1%(95%CI:69.8~81.3)vs.81.9%(95%CI:75.8~86.7)と、いずれも術前化学療法群が優れていた。 Conroy氏は「mFOLFIRINOXの術前化学療法の強化によって、7年の長期フォローアップにおいてもDFS、OSを含むすべてのアウトカムが有意に改善していた。この治療戦略は局所進行直腸がんにおける最良の治療の1つと考えるべきだ」とした。

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円形脱毛症の母親の出生児が抱えるリスクとは?

 韓国・延世大学校のJu Yeong Lee氏らが実施した後ろ向き出生コホート研究において、円形脱毛症(AA)を有する母親から出生した児は、AAに関連する併存疾患リスクが高いことが示された。母親のAAと児の自己免疫疾患や炎症性疾患、アトピー性疾患、甲状腺機能低下症、精神疾患の発症に関連がみられ、著者は「臨床医や保護者は、これらの疾患が発生する可能性を認識しておく必要がある」と述べている。AAは自己免疫疾患や精神疾患と関連することが知られているが、AAを有する母親の児に関する長期アウトカムの調査は不足していた。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年5月24日号掲載の報告。 研究グループは、韓国の全国健康保険サービス(Nationwide Health Insurance Service)のデータベースと、出生登録データベースを用いて後ろ向き出生コホート研究を実施した。 対象は、2003~15年にAA(ICD-10コードL63に基づく)を診断名として3回以上受診した母親から出生したすべての児6万7,364例(AA群)と、AAと診断されていない母親から出生した児(対照群)67万3,640例であった(1対10の割合で、出生年、性別、保険の種類、所得レベル、居住地をマッチング)。 対象児について出生から2020年12月31日まで追跡し、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、甲状腺疾患、精神疾患の発症※と母親のAAとの関連について、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて評価した(共変量:出生年、年齢、保険の種類、所得レベル、居住地、母親の年齢、分娩形態、母親のアトピー性皮膚炎の既往歴、自己免疫疾患の既往歴)。解析は、2022年7月~2023年1月に行った。※:AA、全頭型脱毛症/汎発型脱毛症(AT/AU)、白斑、乾癬、炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ(RA)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、バセドウ病、橋本病、注意欠如・多動症(ADHD)、気分障害、不安症の発症。 主な結果は以下のとおり。・AA群は対照群と比較して、以下の発症リスクが有意に高かった。 -AA(調整ハザード比[aHR]:2.08、95%信頼区間[CI]:1.88~2.30) -AT/AU(同:1.57、1.18~2.08) -白斑(同:1.47、1.32~1.63) -アトピー性疾患(同:1.07、1.06~1.09) -甲状腺機能低下症(同:1.14、1.03~1.25) -精神疾患(同:1.15、1.11~1.20)・AA群のうち、AT/AUを有する母親から生まれた児5,088例は、AT/AU(aHR:2.98、95%CI:1.48~6.00)および精神疾患(同:1.27、1.12~1.44)の発症リスクが高かった。

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がん遺伝子検査、よく受けるがん種・人種は?/JAMA

 米国・スタンフォード大学のAllison W. Kurian氏らは、2013~19年に同国カリフォルニア州とジョージア州でがんと診断された患者のうち、生殖細胞系列遺伝子検査を受けた患者の割合が6.8%とごくわずかであり、非ヒスパニック系白人に比べ、黒人、ヒスパニック系、アジア系の患者ではより低いことを示した。同検査は遺伝性のがんリスクを明らかにし、遺伝学的な標的治療を可能にすることで、がん患者の生存率を向上させるが、米国ではどのくらいの患者が受けているかは、これまで知られていなかった。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年6月5日号で報告された。SEERレジストリを用いた米国2州の観察研究 研究グループは、Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)レジストリのデータを用いて、カリフォルニア州とジョージア州でがんの診断を受けた年齢20歳以上の患者を対象に、生殖細胞系列遺伝子検査の実施状況とその結果を調査する目的で観察研究を行った(米国国立がん研究所[NCI]などの助成を受けた)。 主要アウトカムは、がんの診断から2年以内の生殖細胞系列遺伝子検査の実施であった。がんリスクの上昇と関連するバリアント(病原性バリアント)およびがんリスクとの関連が知られていないバリアント(不確実なバリアント)を含む、各遺伝子のシークエンシングの結果を評価した。 遺伝子は、乳がんや卵巣がん、消化器がん、その他のがんなどの主要ながんとの関連、および診療ガイドラインが生殖細胞系列遺伝子検査を推奨しているか否かによって分類された。検査実施率、全体6.8%、大腸がん5.6%、肺がん0.3% 2013年1月1日~2019年3月31日の期間に、2州でがんと診断された136万9,602例のうち、生殖細胞系列遺伝子検査を受けていたのは9万3,052例(6.8%、95%信頼区間[CI]:6.8~6.8)であった。 同検査を受けた患者の割合は、がん種によってばらつきがみられ、男性乳がんが50.0%と最も高く、次いで卵巣がん38.6%、女性乳がん26.0%、多重がん7.5%、子宮体がん6.4%、膵がん5.6%、大腸がん5.6%、前立腺がん1.1%、肺がん0.3%の順であった。 ロジスティック回帰モデルによる解析では、男性乳がん、卵巣がん、女性乳がんの患者のうち検査を受けた患者の割合は、非ヒスパニック系白人が31%(95%CI:30~31)であったのに対し、他の人種・民族では低く、黒人25%(24~25)、ヒスパニック系23%(23~23)、アジア系22%(21~22)であった(χ2検定のp<0.001)。 病原性バリアントの67.5~94.9%は、診療ガイドラインで検査が推奨されている遺伝子で同定され、68.3~83.8%は、診断されたがん種と関連する遺伝子で同定された。 著者は、「遺伝子検査の実施率は経時的に上昇したが、2021年においても、診療ガイドラインで推奨されている卵巣、男性乳房、膵臓などの特定のがん種については100%を大幅に下回っていた。生殖細胞系列の遺伝子のがんスクリーニング、予防的手術、標的治療により生存率が向上することは臨床試験で実証されていることから、生殖細胞系列遺伝子検査の実施率の低さが、がん死亡率の上昇に寄与している可能性がある」と指摘している。

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腎細胞がん1次治療のペムブロリズマブ+アキシチニブ、5年超追跡でも生存改善を維持(KEYNOTE-426)/ASCO2023 

 進行/再発の淡明細胞型腎細胞がん(RCC)に対する1次治療としてのペムブロリズマブとアキシチニブの併用療法は、5年間以上の追跡結果においても有用性が確認できた。米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、米国・Vanderbilt-Ingram Cancer CenterのBrian I. Rini氏が発表したKEYNOTE-426試験の結果である。 KEYNOTE-426は国際共同非盲検第III相試験であり、ペムブロリズマブとアキシチニブによるRCCの有意な生存延長を報告している。今回は60ヵ月以上の追跡期間(中央値67.2ヵ月)の最終結果報告となる。・対象:未治療の局所進行もしくは転移を有するRCC・試験群:ペムブロリズマブ3週ごと最長35サイクル(2年間)投与+アキシチニブ連日投与(PemAxi群:432例)・対照群:スニチニブ4週投与2週休薬(Suni群:429例)・評価項目:[主要評価項目]ITT集団の全生存期間(OS)および盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]BICRによるITT集団の全奏効率(ORR)、BICRによる奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・PFS中央値は、PemAxi群で15.7ヵ月、Suni群で11.1ヵ月、ハザード比(HR)は0.69(95%信頼区間[CI]:0.59~0.81)とPemAxi群の優越性は保たれており、60ヵ月PFS率は、PemAxi群18.3%、Suni群7.3%であった。・ORRはPemAxi群60.6%、Suni群39.6%であった。・OS中央値は、PemAxi群で47.2ヵ月、Suni群で40.8ヵ月、HRは0.84(95%CI:0.71~0.99)で、60ヵ月OS率は、PemAxi群41.9%、Suni群37.1%であった。・全症例の約70%を占めるintermediate riskとpoor riskグループにおける、PFSのHRは0.68(95%CI:0.56~0.82)、OSのHRは0.76(95%CI:0.62~0.93)と、PemAxi群が良好な結果であった。・後治療として抗PD-1/L1抗体の投与を受けたのは、PemAxi群の27%、Suni群の80%、抗VEGF薬の投与を受けたのは、それぞれ87%と72%であった。・これら後治療の影響を調整してOS解析を実施したところ、OS中央値はPemAxi群38.8ヵ月、Suni群25.3ヵ月、HRは0.67(95%CI:0.52~0.84)となった。・PemAxi群でペムブロリズマブの35サイクルを完遂できた割合は27.8%で、完遂例はfavorable risk群と肉腫様腎細胞がんに多く、遠隔転移2ヵ所以上の群では少なかった。・同完遂例におけるPemAxi群のPFS中央値は37.4ヵ月、OS中央値は未到達と良好な結果だった。 演者は「5年を越える長期のフォローアップデータでも、これまでの報告と同様に、ペムブロリズマブ+アキシチニブ併用療法が標準治療であることを支持し続けている」と述べた。

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心房細動の脳梗塞後、抗凝固療法開始は早いほうがよい?(解説:後藤信哉氏)

 心房細動症例の脳卒中リスクは洞調律例よりも高いとされる。しかし、脳梗塞急性期の抗凝固療法では梗塞巣からの出血が心配である。DOAC時代になって、ワルファリンの時代よりも抗凝固療法に対する心理的ハードルは低下した。心房細動があり、脳梗塞を経験した症例での早期(48時間以内)と晩期(6~7日後)のDOAC療法による30日以内の脳梗塞・全身性塞栓症・大出血・症候性頭蓋内出血の発現リスクをランダムに比較した。 本研究は、実臨床を反映したシンプルな仮説検証試験である。実臨床の中で、シンプルな仮説検証を繰り返しながら医療の質をシステム的に改善するアプローチとして価値のある研究である。 本研究はSwiss National Science Foundationなどによる助成研究である。日本でも公的資金により、CROなどを使用せずに、シンプルに仮説検証研究を安価に施行できるようになるとよいと思う。

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産後7日以内のオピオイド処方は乳児の短期予後に悪影響なし(解説:前田裕斗氏)

 産後の疼痛に対するオピオイド利用は、母乳に移行することで乳児に鎮静や呼吸抑制などの有害事象を及ぼす可能性があり、これまでにいくつかの報告がなされていた。一方、母乳に移行する量はごく少量であることがわかっており、本当に母体のオピオイド利用が乳児に対して有害事象をもたらすのか、短期的影響について確かめたのが本論文である。 出産後7日以内のオピオイド処方と、乳児の30日以内の有害事象の関係が検討された。結果として、主要アウトカムである再入院率に差は認められず、オピオイド処方群で救急受診は有意に高かったものの、乳児への有害事象はいずれについても両群で差を認めなかったことから、母体へのオピオイド処方は乳児に明らかな有害事象をもたらさないと結論付けられた。 研究手法は傾向スコアマッチングを用いた後ろ向きコホート研究であり、サイズも十分大きく、マッチング後の両群のバランスも取れていることから、今回計測されたTable 1に記載がある因子に関するバイアスは除けている。結果に信頼性のある研究ではあるが、本論文のDiscussionにもあるように、カナダ・オンタリオ州ではオピオイド(コデイン)が一般に購入できるとのことで、非オピオイド群でのオピオイド使用が実際には含まれていた可能性があり、他国で同様の研究が求められる。 日本では産後の疼痛にオピオイドを処方することはまずなく、処方のハードルも高いため本研究の結果を適用する機会は少ない。しかし、今回の研究結果から示されたように、オピオイドの処方が乳児に悪影響を及ぼさないのであれば、今後、日本でも産後疼痛の切り札としてオピオイドを使用する日が来るかもしれない。産科の臨床現場で誰しも一度は経験したことがあるような、疼痛が強く離床が全く進まない、育児技術の習得が大幅に遅れる例、特に喘息などでNSAIDが利用できない患者に対してオピオイドはよい適応となるだろう。

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英語で「今日はどうされましたか」は?【1分★医療英語】第85回

第85回 英語で「今日はどうされましたか」は?How can I help you today?(今日はどうされましたか?)I have a chest pain.(胸が痛いです)《類似表現》What brings you here today?What can I do for you today?(今日はどうされましたか?)《解説》問診では、日本語では「今日はどうされましたか?」というオープンクエスチョンで始める場合が多いと思いますが、意外と英語で言うのは難しいかもしれません。親しい間柄の人に「どうしたの?」と聞く場合は、“What happened?”、“What is the problem?”、“What’s the matter with you?”といったフレーズがよく知られていますが、これらは「何があったの?」といったニュアンスの砕けた表現であり、医師と患者さんの会話で使うのは避けるべきです。また“Why are you here today?”(なぜあなたはここにいるのですか?)という表現も、間接的に「来るべきではなかった」という意味になってしまうためNGです。その代わりに、“How can I help you today?”、“How may I help you today?”といった表現や、類似表現として挙げたような、“What brings you here today?”、“What can I do for you today?”という表現を使うことによって、スムーズに問診をスタートさせることができるでしょう。講師紹介

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わが国初の原発性手掌多汗症治療薬「アポハイドローション20%」【下平博士のDIノート】第123回

わが国初の原発性手掌多汗症治療薬「アポハイドローション20%」今回は、原発性手掌多汗症治療薬「オキシブチニン塩酸塩ローション(商品名:アポハイドローション20%、製造販売元:久光)」を紹介します。本剤はわが国初の原発性手掌多汗症の適応を有する治療薬であり、いわゆる「手汗」を抑制することで、QOLの向上や労働生産性の改善が期待されています。<効能・効果>原発性手掌多汗症の適応で、2023年3月27日に製造販売承認を取得し、6月1日より発売されています。本剤は抗コリン作用を有するため、閉塞隅角緑内障の患者、前立腺肥大など排尿障害のある患者、重篤な心疾患のある患者、腸閉塞または麻痺性イレウスのある患者、重症筋無力症の患者は禁忌となっています。<用法・用量>1日1回、就寝前に適量を両手掌全体に塗布します。1回の塗布量は、両手掌に対しポンプ5押し分が目安です。本剤は可燃性であるため、保存および使用の際には火気を避けます。<安全性>第III相比較試験において、下記の副作用が認められました。1~5%未満適用部位皮膚炎、適用部位そう痒感、適用部位湿疹、皮脂欠乏症、口渇0.1~1%未満適用部位紅斑、皮膚剥脱、口角口唇炎、尿中ブドウ糖陽性なお、重大な副作用として、血小板減少、麻痺性イレウス、尿閉(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、手のひらの皮膚から吸収され、エクリン汗腺の受容体をブロックすることで、発汗を抑えます。2.1日1回、就寝前にポンプ5押し分を目安として、両手の手のひら全体に塗布してください。3.起床後、手を洗うまでの間は、眼や塗布部位以外に触れないようにしてください。もし塗布時に眼に入った場合は、刺激や散瞳作用があるため、直ちに水で洗い流してください。4.眼の調節障害やめまい、眠気が現れることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作を行う際には注意してください。5.消化管運動が低下する恐れがあるので、消化器症状が現れた場合は使用を中止し、医療機関を受診してください。6.妊婦または妊娠している可能性のある人は医師に相談してください。<Shimo's eyes>本剤は、わが国初の原発性手掌多汗症に適応を有する薬剤です。原発性局所多汗症は、頭部・顔面、手掌、足底、腋窩に温熱や精神的負荷の有無に関わらず、日常生活に支障を来すほどの大量の発汗が生じる状態で、そのうち手掌部に発現するものが原発性手掌多汗症です。国内における原発性手掌多汗症の有病率は5.33%で、学習効率や労働生産性の低下、精神的苦痛、対人関係への悪影響など、患者のQOLが低下することがあります。「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023年改訂版」において、原発性手掌多汗症に対する第1選択の治療法は、20%~50%塩化アルミニウム外用療法および水道水イオントフォレーシス療法とされています。しかし、塩化アルミニウム外用薬は保険適用外であり、イオントフォレーシスは患者自身による機器購入または機器を有する医療機関への通院が必要です。本剤の有効成分であるオキシブチニン塩酸塩は、エクリン汗腺に発現するムスカリンM3受容体に対して抗コリン作用を有することにより、抑汗作用を示します。本剤の代謝物であるN-デスエチルオキシブチニン(N-Desethyloxybutynin:DEO)も臨床効果に関与することが示唆されています。なお、オキシブチニン塩酸塩は、頻尿治療薬のポラキスやネオキシテープと同じ成分です。12歳以上の原発性手掌多汗症患者284例を対象にした国内第III相比較試験において、投与4週後に発汗量が50%以上改善した患者の割合は、プラセボ群と比較して本剤群で有意に高いことが認められました。本剤塗布から手を洗うまでの行動制限を可能な限り少なくするため、日中の塗布を避け、1日1回就寝前に塗布します。万一、塗布時に眼に入った場合は、散瞳作用および眼刺激性があることから、直ちに水で洗い流します。また、発汗を抑制するため、気温や湿度が高い場所や運動時などでも汗が出ず、体温が上がる恐れがあるため、熱中症対策も指導しましょう。なお、なお、1回の塗布量のポンプ5押し分は約0.5mLに相当し、最初の空打ち分を差し引くと、1本で約7日分に相当します。手掌多汗症の患者のQOL低下はアトピー性皮膚炎やざ瘡よりも大きいという報告もあります。保険適用の治療選択肢が増えることは朗報です。関連サイトHamm H, et al. Dermatology. 2006;212:343-353.

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