サイト内検索|page:424

検索結果 合計:35162件 表示位置:8461 - 8480

8461.

花より団子【Dr. 中島の 新・徒然草】(472)

四百七十二の段 花より団子新年度、新メンバー!どこでもそうでしょうが、ウチもようやく軌道に乗った感じです。さて、先日のこと。いきなり私を訪ねて、めまいの新患がやって来ました。残念ながら午後から出張があり診察したのはほかの先生。翌日にカルテで確認してみると、入院になっていました。30代の女性ですが、「髄液漏出症疑い」となっています。訪室してご本人にお話を伺うことに……中島「なんで私だったんですか?」患者「友達が同じような症状で、以前に中島先生に診てもらったって」その友達は半年ほど前に私が診て、髄液漏出症と診断していたみたいです。患者「彼女とそっくりだったんですよ、頭痛が」寝ていると1/10程度の頭痛が、起き上がると10/10になるそうです。病室でもベッドの上に座ったら頭が痛くなり、10秒もしたら寝てしまいました。まさしく髄液漏出症の症状です。患者「何でこんなことになってしまったんでしょうか?」以下、私なりの説明をしました。エビデンスはまったくなく、自分の経験と想像をもとにしたものです。が、まあ聞いてやってください。まず原因です。これはまさしく脳脊髄液、いわゆる髄液が漏れることによって起こります。私が思うに、漏れる場所は頚椎神経根のroot sleeveではないかと。そもそもroot sleeve(神経根の袖)というのも変な名称です。でも、その由来を知ると、これほどピッタリの呼び方もありません。長袖のワイシャツを着た人間を想像してみましょう。人間の胴体が脊髄そのものです。左右にのびた上肢が神経根。ワイシャツが脊髄を包む硬膜。そしてワイシャツと人間の間に水が貯まっていると想像してください。その水が硬膜と脊髄の間にある髄液です。で、長袖のワイシャツの袖口のボタンを留めていると水は漏れません。が、ボタンが留まっていないと袖口から水が漏れます。これが髄液漏出症の本態ではないでしょうか。私の勝手な想像ですが。髄液が漏れるメカニズムの次は、頭が痛くなるメカニズムです。これは金魚鉢の水の中に脳が浮かんでいると想像してください。金魚鉢の水が減ると、浮かんでいた脳が下に引っ張られて頭が痛くなるわけです。だから立つと頭痛がして、寝ると楽になる。そして朝は調子いいのに、昼から頭痛がひどくなるわけです。これが髄液漏出症による頭痛の正体ですね。じゃあ、何がキッカケで髄液がroot sleeveから漏れるのか?まず、まったくキッカケのない特発性のものもあります。が、よくよく聞くと、いろいろとキッカケらしいものがあったりするわけです。追突事故を食らった、遊園地でジェットコースターに乗った、手を勢いよく引っ張られた、重い荷物を持った、等々。頚を捻ったり手を引っ張られたりすることが、神経根に影響するのではないでしょうか。とくに追突事故の場合は、受傷後1ヵ月ほどで頭痛が出てきます。なので、事故との因果関係の有無で揉めがちです。これら頚の運動のほかに、急に痩せて髄液漏出症になった人も見たことがあります。神経根周囲の脂肪が減ってシールされなくなるのかもしれません。謎ですね。話をこの患者さんに戻します。中島「何か原因について思い当たることはありませんかね?」患者「いや、普通の社会人ですから、何もありませんよ」中島「たとえば、普段やりなれないスポーツをしたとか」患者「数日前にバレーボールをしたけど、そんなに真剣ではなかったです」久しぶりのバレーボールですか!この方にとっては真剣でなくても、結構激しい内容だったようです。中島「普段曲げない方向に頚を曲げたりしたのが原因かもしれませんね」患者「そう言われれば、そんな気もします」次に診断です。造影MRIとかRIシンチとかの画像診断もありますが、私はほとんどやっていません。やるのは交通事故で証拠を示す必要がある時くらいです。いつも病歴と身体所見だけで診断しています。立位や座位で頭痛が悪化し臥位で改善する、という病歴が典型的です。そのほか、湯船に浸かると頭痛が悪化する、という患者さんもいました。身体所見では以下のうちのいくつかをチェックしています。頚部の静脈を軽く圧迫するクエッケンシュテット試験で頭痛が改善する。上肢を指先に向かって引っ張る(下制)と、頭痛が悪化する。上肢を指先から肩に向かって押す(下制の逆運動)と、頭痛が改善する。上肢を挙上すると、頭痛が改善する。下制するとroot sleeveが開いて髄液が漏出するのかもしれません。挙上は下制の逆にあたる動きなので、髄液漏出が改善するのでしょうか。この患者さんの場合は、これら身体所見もピッタリ当てはまりました。なので、髄液漏出症で間違いないことと思います。最後に治療です。私の経験では30人中29人くらいは3ヵ月以内に自然に治りました。残る1人は難治性なので、ブラッドパッチをしている施設に紹介しています。自然に治るとはいえ、少しでも早く良くなりたいというのが人情です。私がお勧めしているのは、なるべくゴロゴロして暮らすというもの。ちょっと調子がいいからといって、散歩したらまた悪化します。家事は全部誰かに頼むこと。この患者さんの場合は、ご実家でゴロゴロすることに決めたようです。それと、痩せると発症するので、太ると早く治る気がします。root sleeve周辺の脂肪が増えて、シール効果が上がるのかもしれません。というわけで、半年前のカルテを確認してみました。この方のお友達にも、私は「よく食べるように」とアドバイスをしていたようです。でも、自分ではまったく記憶に残っていません。最近はいろいろと忘れてしまうことが多いですけど、ちょっと情けないですね。最後に1句漏れた水 花より団子で 治療する

8463.

第40回 「5類新型コロナ」の出勤停止は何日間?

意外にも政府は「5日間」を推す形にインフルエンザには、学校保健安全法において「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」という細かい規定があり、学校だけでなく、企業でもこれを用いて運用しているケースが多いと思います。新型コロナが「5類感染症」になった後、これまであった「療養期間はなしになる」という理解が広まっていますが、さすがにそれはないでしょう。たぶん。ゴホゴホ咳をして3日目で出勤されたら、いくら何でも迷惑というものですが、政府からは、どういうわけか「5日間」という提案がなされているようです。現在はまだ新型インフルエンザ等感染症のもとにあるため、感染症法に基づいて、症状がある人は7日間が経過し症状軽快から24時間経過した場合、無症状の人は5日目に検査キットで陰性が確認できたら6日目から解除可能、と定められています。有症状だと、インフルエンザより2日間長いくらい対応しないと、感染が広がりやすいという認識だったのです。それがどういうわけか、インフルエンザと同様「5日間」ということになりそうです。PCRで新型コロナ陽性が確定した後、感染性の新型コロナウイルスが検出されなくなるまでの期間は、オミクロン株で中央値5日間とされています1)。また、国立感染症研究所のデータでは10日を超えての感染リスクは低いとされています2)。7日間というのはちょうどこの間くらいの位置で、全員が感染させないというわけではない点に注意が必要です。発症後7日目には、幾何平均ウイルス力価が検出限界値を下回るというデータも直近示されており3)、CDCも現時点では療養期間は5日間としています。現状、いくらインフルエンザと同じ「5類感染症」に移行するとはいえ、同じようなウイルスだからということで5日間に短縮するとなると、それなりのリスクを抱えることになるかもしれません。学校保健安全法に明記される方針であり、近々厚労省から「5類」後の療養期間について正式な発表があるでしょう。医療機関で働く人の場合、感染の危険性にさらされるのは患者さんですから、個々の病院で検討されてもよいかもしれません。濃厚接触者の概念は新型コロナの濃厚接触者の自宅待機期間は5日間とされていました。しかしもはや、濃厚接触者かどうかなどあまり気にされていないムードになっていて、これについては「5類」化によって消失するのではないかと思います。濃厚に曝露した人は注意してください、くらいの文言になるかもしれません。参考文献・参考サイト1)Boucau J, et al. N Engl J Med. 2022;387:275-277.2)国立感染症研究所:SARS-CoV-2 オミクロン株感染による新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査(第6報):ウイルス学的・血清学的特徴3)国立感染症研究所:オミクロン系統感染者鼻咽頭検体中の感染性ウイルスの定量

8464.

なぜジャンクフードを食べたくなる?おやつに意外な効果も?

 高脂肪・高糖質の食品には中毒性がある。高脂肪・高糖質の食事は、エネルギーの過剰摂取と体重増加をもたらすが、その根底にあるメカニズムは明らかになっていない。また、肥満が脳内ドパミン神経系の変化と関連することが知られているが、これらの変化が、「太りやすい体質にしているのか」「肥満に伴って2次的に生じるのか」「欧米型の食事に直接起因するのか」は解明されていない。そこで、ドイツ・マックスプランク代謝研究所のSharmili Edwin Thanarajah氏らは、正常体重の健康成人を対象に、通常の食事に加えて高脂肪・高糖質のヨーグルトまたは低脂肪・低糖質のヨーグルトを8週間摂取させる無作為化比較試験を実施した。その結果、高脂肪・高糖質のヨーグルトの摂取は、低脂肪食品への嗜好性を低下させたが、高脂肪・高糖質のミルクセーキに対する脳の反応を増加させた。さらに、食事とはまったく関係のない連合学習能力も向上させた。これらの変化は、体重や代謝パラメータとは関係がなかった。本研究結果は、Cell Metabolism誌4月4日号に掲載された。 正常体重の健康成人49人を通常の食事に加えて、高脂肪・高糖質のヨーグルト(高脂肪・高糖質群)または低脂肪・低糖質のヨーグルト(低脂肪・低糖質群)を摂取する群に無作為に割り付け、1日2回8週間摂取させた。ベースライン時と8週後において、BMIや空腹感、臨床検査値が評価された。また、脂肪や糖に対する嗜好性、ミルクセーキに対する脳の反応、食事とは関係のない連合学習能力などが評価された。脂肪に対する嗜好性は糖質の量を固定した4種の脂肪含有量(0%、3.1%、6.9%、15.6%)のプリン、糖に対する嗜好性は4種のスクロース添加量(0M、0.1M、0.56M、1.0M)のリンゴジュースで評価した。 主な結果は以下のとおり。・8週間後における体重や臨床検査値の変化について、高脂肪・高糖質群と低脂肪・低糖質群に有意差は認められなかった。・8週後において、高脂肪・高糖質群は低脂肪・低糖質群と比べて低脂肪の食品(脂肪0%のプリン)に対する嗜好性が有意に低下した(p=0.015)。・8週後において、高脂肪・高糖質群と低脂肪・低糖質群はいずれも低糖質の飲料に対する欲求がベースライン時と比べて低下し、両群間に有意差は認められなかった。・8週後において、高脂肪・高糖質群は低脂肪・低糖質群と比べて、ミルクセーキ提供の合図に対する神経反応が中脳、右背外側前頭前野、視床、両側後頭葉皮質において増加した。また、高脂肪・高糖質群はミルクセーキを飲んでいる際の神経反応が左の島皮質後部と右の島皮質中部・前部で増加した。・8週後において、食事とはまったく関係のない連合学習テスト(聴覚刺激と対応する視覚刺激を選択する)を実施したところ、高脂肪・高糖質群の腹内側前頭前野、腹側線条体、島皮質後部、海馬の神経反応が増加していた。 著者らは、「高脂肪・高糖質の食品を繰り返し摂取すると、等カロリーの低脂肪・低糖質食品を摂取した場合と比べて、体重や代謝パラメータに変化がないにもかかわらず、嗜好性の高い食品への反応が高まるように脳の神経回路が変化することが示された。肥満を抑制するためには、食環境を変えて高脂肪・高糖質の食品の摂取を減らすことが極めて重要と考えられる」とまとめた。

8465.

オレキシン受容体拮抗薬を使用している日本人不眠症患者の特徴

 日本におけるオレキシン受容体拮抗薬(ORA)の処方パターンに関して、臨床現場のリアルワールドデータを調査した研究はほとんどない。MSDの奥田 尚紀氏らは、日本の不眠症患者へのオレキシン受容体拮抗薬処方に関連する因子を特定する初の調査を実施し、睡眠薬による治療歴の有無により、オレキシン受容体拮抗薬処方に関連する因子は異なることを明らかにした。著者らは、「本調査結果は、オレキシン受容体拮抗薬を用いた適切な不眠症治療の指針となりうる可能性がある」としている。Drugs - Real World Outcomes誌オンライン版2023年3月3日号の報告。オレキシン受容体拮抗薬処方のオッズ比の高さと関連していた因子 対象は、2018年4月~2020年3月の間に、不眠症による1つ以上の睡眠薬の処方が12ヵ月以上継続していた20~74歳の外来患者。JMDC Claims Databaseより患者データを抽出した。睡眠薬の新規/非新規の使用(処方歴がない/ある)患者それぞれにおいてオレキシン受容体拮抗薬処方に関連する因子(患者の人口統計学的因子および精神医学的合併症)を特定するため、多変量ロジスティック回帰を用いた。 日本の不眠症患者へのオレキシン受容体拮抗薬処方に関連する因子を特定する調査の主な結果は以下のとおり。・睡眠薬の新規使用患者5万8,907例中、評価時点でオレキシン受容体拮抗薬が処方されていた患者は1万1,589例(19.7%)であった。・睡眠薬の新規使用患者において、オレキシン受容体拮抗薬処方のオッズ比(OR)の高さと関連していた因子は、男性(OR:1.17、95%信頼区間[CI]:1.12~1.22)、双極性障害の合併(OR:1.36、95%CI:1.20~1.55)であった。・睡眠薬の非新規(処方歴がある)患者8万8,611例中、評価時点でオレキシン受容体拮抗薬が処方されていた患者は1万5,504例(17.5%)であった。・睡眠薬の処方歴がある患者において、オレキシン受容体拮抗薬処方のORの高さと関連していた因子は、若年と以下の精神疾患の合併であった。 ●神経認知障害(OR:1.64、95%CI:1.15~2.35) ●物質使用障害(OR:1.19、95%CI:1.05~1.35) ●双極性障害(OR:1.14、95%CI:1.07~1.22) ●統合失調症スペクトラム障害(OR:1.07、95%CI:1.01~1.14) ●不安症(OR:1.05、95%CI:1.00~1.10)

8466.

ICI肺臓炎に対するプレドニゾロン6週間治療/日本臨床腫瘍学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による免疫関連肺臓炎(irP)に対するプレドニゾロン6週間漸減療法の効果が示された。第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)における、浜松医科大学の柄山 正人氏の発表。 irPはICIの重篤な有害事象(AE)であり、がん治療の経過にも大きく影響する。irPの標準治療は全身性ステロイドの投与だが、前向き試験は行われておらず、投与量・期間は明らかになっていない。そのような中、柄山氏らは、irPに対するプレドニゾロン6週間漸減療法の有効性と安全性を評価する前向き多施設単群第II相試験を行った。対象:ICI投与後にGrade2以上のirPを発症したがん患者(n=56)介入:プレドニゾロン 1mg/kg/日を投与、6週間で漸減評価項目:[主要評価項目]6週時の肺臓炎制御率[副次評価項目]12週時の肺臓炎制御率、肺臓炎再発率、安全性 主な結果は以下のとおり。・56例中51例が試験治療を完遂した。・対象の年齢は72歳、男性が85.3%、irPの重症度はGrade2が62.5%、Grade3が33.9%、Grade4が3.6%であった。・がん種は、肺がん67.9%、腎がん10.7%などであった。・6週時のirP制御率は91.1%(80.7〜96.2)であり、事前に設定した閾値(下限70%、上限85%)を上回った。・12週時のirP制御率は57.1%であった。・AE発現率は全Gradeで66%、Grade3/4では18%であった。 柄山氏は、irPに対するプレドニゾロン6週間漸減療法は有効かつ安全な治療選択肢であるとの結論を述べた。

8467.

コロナ入院患者のヘパリンによる治療効果、重症度・BMIで差/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者において、治療量ヘパリン投与の効果にばらつきがあることが、カナダ・トロント総合病院のEwan C. Goligher氏らにより示された。治療効果の異質性(HTE)を3つの手法で評価した結果、入院時の重症度が低い人やBMI値が低い人では有益である可能性があるが、重症度が高い人やBMI値が高い人では有害となる可能性が高かったという。これまでに行われたCOVID-19入院患者を対象とした治療量ヘパリンに関する無作為化臨床試験(RCT)では相反する結果が示されており、個人間のHTEが原因ではないかとみなされていた。結果を踏まえて著者は、「RCTのデザインおよび解析では、HTEを考慮することが重要であることが示された」とまとめている。JAMA誌2023年4月4日号掲載の報告。治療効果の異質性を3つの手法で評価 研究グループは2020年4月~2021年1月に、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアで、COVID-19で入院した3,320例を登録し、治療量ヘパリン vs.通常ケアの薬物療法による血栓予防効果を比較した複数プラットフォーム適応型RCTについて、探索的解析を行った。また、治療量ヘパリンのHTEについて、(1)ベースライン特性の従来型サブグループ解析、(2)多変量アウトカム予測モデル(リスクベースのアプローチ)、(3)多変量因果フォレストモデル(効果ベースのアプローチ)の3つの方法で評価した。解析は、オリジナル試験と一貫したベイジアン統計を主として用いた。 主要アウトカムは、臓器支持療法を必要としない日数(入院中死亡は-1とし、退院まで生存した場合は、最大21日のうち心血管系・呼吸器系の臓器支援が不要だった日数)と、入院生存率だった。複数プラットフォームRCT集団では、治療量ヘパリンの効果認められず 治療量ヘパリン群と通常ケア群のベースラインの人口統計学的特性は似かよっており、年齢中央値は60歳、女性は38%、32%が非白人種、45%がヒスパニック系だった。 複数プラットフォームRCT集団では、治療量ヘパリンによる臓器支持療法を必要としない日数の増大は認められなかった(オッズ比[OR]の事後分布中央値:1.05、95%信用区間[CrI]:0.91~1.22)。 従来型サブグループ解析では、治療量ヘパリンの臓器支持療法を必要としない日数に対する効果は、ベースラインの臓器支持療法の必要性(OR中央値:重症0.85 vs.軽症1.30、OR差の事後確率99.8%)、性別(同:女性0.87 vs.男性1.16、96.4%)、BMI(30未満 vs.30以上、すべての比較において>90%)で差が認められた。 リスクベースの解析では、予後不良リスクが最も低い患者がヘパリンによる便益を得られる傾向が最も高く(最低十分位群:>1のORの事後確率92%)、予後不良リスクが最も高い患者がヘパリンによる害を受ける傾向が最も高かった(最高十分位群:<1のORの事後確率87%)。 効果ベースの解析では、害を受けるリスクが最も高い患者(治療効果の差に関するp=0.05)はBMI値が高く、ベースラインで臓器支持療法を要する可能性が高い傾向が認められた。

8468.

妊婦への2価RSVワクチン、乳児の重症下気道感染を予防/NEJM

 妊婦への2価RSV融合前F蛋白ベース(RSVpreF)ワクチン投与は、乳児において診察を要する重症の呼吸器合胞体ウイルス(RSV)関連下気道感染症に対し予防効果があり、安全性への懸念は示されなかった。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のBeate Kampmann氏らが、約7,400例の妊婦とその出生児を対象に行った第III相二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。これまで、同ワクチンの妊婦への投与の効果は不明であった。NEJM誌オンライン版2023年4月5日号掲載の報告。18ヵ国で49歳以下の健康な妊婦を対象に試験 研究グループは18ヵ国で、妊娠24~36週、49歳以下の健康な妊婦を対象に試験を行った。被験者を無作為に2群に割り付け、一方には2価RSVpreFワクチン(120μg)を、もう一方にはプラセボをいずれも単回筋肉内投与した。 有効性の主要エンドポイントは2つで、生後90日、120日、150日、180日以内の乳児における、診察を要した重症RSV関連下気道感染症と、診察を要したRSV関連下気道感染症だった。 ワクチンの有効性を示す信頼区間(CI)下限値(90日以内が99.5%CI値、それ以降は97.58%CI値)は20%超と規定した。有害事象発生率は両群で同等 2020年6月17日~2022年10月2日に7,392例の妊婦が無作為化され、そのうち7,358例(RSVpreFワクチン群3,682例、プラセボ群3,676例)が接種および評価を受けた。乳児についてはRSVpreFワクチン群3,570例とプラセボ群3,558例が組み込まれた。 本論は事前規定の中間解析の結果を示すもので、主要エンドポイントの1つに関して、ワクチンの有効性を示す基準が満たされた。 生後90日以内の、診察を要した重症RSV関連下気道感染症は、RSVpreFワクチン群の乳児で6件、プラセボ群では33件だった(ワクチン有効性:81.8%、99.5%CI:40.6~96.3)。同様に生後180日以内では19件と62件だった(ワクチン有効性:69.4%、97.58%CI:44.3~84.1)。 一方で、診察を要したRSV関連下気道感染症については、生後90日以内でRSVpreFワクチン群の乳児24件、プラセボ群56件が報告され(ワクチン有効性:57.1%、99.5%CI:14.7~79.8)、統計学的な有効性を示す基準を満たさなかった。 安全性に関連する兆候は、妊婦および生後24ヵ月までの乳幼児ともに認められなかった。ワクチン投与1ヵ月以内または生後1ヵ月以内に発生した有害事象の発生率は、RSVpreFワクチン群(妊婦13.8%、乳児37.1%)とプラセボ群(13.1%、34.5%)で同程度だった。

8469.

sotaterceptは新しい作用機序の肺動脈性肺高血圧症の新薬である(解説:原田和昌氏)

 BMP(bone morphogenetic protein)シグナルの機能喪失とTGF-β(transforming growth factor-β)シグナルの過剰が肺動脈性肺高血圧症(PAH:pulmonary arterial hypertension)を進行させると報告されている。アクチビンIIA型受容体(ACTR IIA)-Fcは、免疫グロブリン(Ig)G1のFc領域とアクチビンIIA型受容体の細胞外領域からなる遺伝子組み換え融合糖タンパク質であり、アクチビンA/BとGDF(growth differentiation factor)8、GDF11を中和(trap)する。 STELLAR試験においてドイツ・Hannover Medical SchoolのHoeperらは、PAHにおいてACTR IIA-Fc(sotatercept)によるアクチビンとGDFの阻害がTGF-βシグナルの抑制により、BMPシグナルとTGF-βシグナルのバランスを修復し、肺血管リモデリングを防ぐ効果があると仮定して検討を行った。安定用量の基礎治療を受けているWHO Group 2/3成人PAH患者163例を対象に、sotaterceptの3週に1回皮下注射の効果・安全性を検証する第III相二重盲検RCTを行った。 この試験の主要評価項目であるベースラインから24週時の6分間歩行距離(6MWD)は、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示した(差40.8m)。副次評価項目においては、9項目中8項目で統計学的な有意差が示された。これには複合的な評価項目の改善(6MWDの改善、NT-proBNP値の改善、かつWHO機能分類の改善またはWHO機能分類IIの維持と定義)を示した患者の割合や、死亡または最初の臨床的悪化イベントまでの時間などが含まれている。全般的な安全性プロファイルは第II相試験で確認された結果とほぼ一貫しており、鼻出血・めまい・毛細血管拡張・Hb値上昇・血小板減少・血圧上昇がより多く発生した。 増殖因子と増殖抑制因子の関係は自動車のアクセルとブレーキのような関係であるが、血小板にもPDGFのような正の増殖因子と、TGF-βという強力な増殖抑制因子が存在することが明らかとなった。その後、アクチビンやTGF-βII型受容体がクローニングされた。TGF-βには類似した物質が数多くあり、BMPやアクチビンはTGF-βスーパーファミリーに含まれる。1993年に宮園 浩平教授らはTGF-βII型受容体に類似したものの探索から6つのクローンを得たが、その1つがTGF-βI型受容体であった。また残りの受容体もアクチビンやBMP I型受容体であることが明らかとなり、TGF-βスーパーファミリーの受容体が系統的に明らかになった。 PAHにはすでに10薬がFDA承認されているが、なお予後不良な疾患である。sotaterceptは新しい作用機序の薬であり肺血管リモデリングの抑制が期待されている。エンドセリン受容体拮抗薬と並んで、日本人研究者による基礎研究の成果が実用化されようとしているよい一例である。

8470.

ACC2023で発表、新たな関係を築くには学会での交流が欠かせない【臨床留学通信 from NY】第46回

第46回:ACC2023で発表、新たな関係を築くには学会での交流が欠かせない前回コラムでも書かせていただきましたが、3月上旬にニューオーリンズでACC(米国心臓病学会)がありました。Moderated Poster Sessionという、電光掲示板のポスターセッションでの発表でした。海外学会でよくある“ポスター貼り逃げ”(海外学会の通常のポスターセッションでは、日本と違って、発表、質疑応答などはなく、ただ立っているのみです)とはいかず、決まった時間の発表、および質疑応答の対応が必要です。渡米5年目とはいえ、1度や2度自作のポスターを眺めただけではすらすらとは英語は出てこないため、ある程度のストーリーを作って何回かぶつぶつ呟いて練習しておく必要があります。アメリカあるあるですが、行きの飛行機が5時間遅れだったため、そこで入念に練習することができ、発表は事なきを得ました。奇しくも、座長は私と同じMontefiore Medical Centerの先生でした。発表後、周りからの質疑にも回答することでき、他の座長の先生から「想定質問があったの?」とお褒めの言葉(?)もいただきました。心臓カテーテル領域のTCTという学会のニュースサイトのインタービューも受け、こちらの記事で紹介されました。学会といえば、セッションを聞いて、夕方になったらせっかく訪れた現地の観光もしたいところですが、ここはresearch giantsとのコネクションをキープするため、偉い先生方のセッションに足繁く通います。普段メールでやり取りしているとはいえ、学会の都度の挨拶は欠かせません。フェローシップのマッチの前などは、むしろ「推薦状を書いてください」といったお願いをすることが多かったのですが、今回は晴れてご挨拶のみで済んだのも気が楽でした。また、2024年7月からマサチューセッツ総合病院のカテーテル治療フェローを開始しますが、そこのプログラムディレクターが、実はACC2023のチェアパーソンのDouglas Drachman先生でした。昨年Zoom面接を経たのみだったので、直接にご挨拶ができたのもよかったです。それ以外にも、新たにメールで繋がることができていたハーバード系の先生方とも、現地で会うことで、新しい研究プロジェクトの話もできたのは有意義でした(Nice to e-meet youからNice to meet you)。米国内や日本から参加される日本人の先生方と会って情報交換できるのも楽しいものです。最近はハイブリッドの学会に慣れてきたせいか、ほとんどセッションには参加せず、後でオンデマンドを聴くことが多いです。朝一のセッションに早く起きれなくて間に合わなくても、オンラインでLate breaking clinical trialを聴くこともできます。結局、学会は人に会い、勉強はセッションをその場もしくはオンデマンドで聞く、または同時発表で文献になっていればそれを逐一チェックという流れになりそうです。実のところフェローの給料で学会参加はかなり大変なのですが、今回は発表があったので、プログラムが1,500ドルのサポートをしてくれました。といっても学会参加費用400ドル、宿泊3泊500ドル(他より安い反面、学会会場まで歩いて30分…)、飛行機350ドル(直行便が高く経由便にしてこの価格)となり、Uber、食事込みで合計1,500~1,600ドルかかりました。日本の学会に参加するよりはかなり高いのがネック、参加するためにはお金の工面も必要です。Column今回は同僚フェローのポスター発表セッションも聴講することができました。アメリカ人は合理的なのか、実はリサーチや学会発表に興味がある人はほんの一握りで、30人以上いるフェローの中で参加したのは6人のみ。参加しても多くはフェローシップアプライ前など、履歴書の見栄えを良くしたいという理由であって、リサーチ自体に興味がある人はほとんどいません。実際にこのような学会で発表する人は、レジデントでこれから循環器フェローを狙う人、はたまた循環器フェロー中で、インターベンション、不整脈や重症心不全といったアドバンスドフェローを狙う人に限定されています。

8471.

第156回 大阪急性期・総合医療センターがサイバー攻撃の報告書公表、VPNの脆弱性狙われ閉域網破られる、IDとパスワード使い回しで被害拡大

診療システムの全面復旧に73日間を要し、逸失利益十数億円以上こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は足慣らし山行で久しぶりに奥多摩に行って来ました。奥多摩湖から惣岳山、御前山、湯久保山を経て檜原村に下るコース。例年この時期、御前山周辺ではカタクリの花が開花して楽しませてくれるのですが、今年は時期が早いのか遅いのか、花の数が今ひとつでした。カタクリは発芽したときは1枚葉で、この状態が7〜8年続き、葉が2枚になって初めて開花します。そういえば、今年の御前山周辺は1枚葉が多かった印象です。来春、再び訪れてみようと思います。さて、今回は昨年10月31日に起きた地方独立行政法人 大阪府立病院機構・大阪急性期・総合医療センター(大阪市住吉区)でのランサムウエア(身代金要求型ウイルス)によるサイバー攻撃について再度書いてみたいと思います。ランサムウエアによるサイバー攻撃によって発生したシステム障害によって、診療の停止を長期間余儀なくされた同センターは3月28日、外部有識者による情報セキュリティインシデント調査委員会(委員長・猪俣 敦夫大阪大教授)の報告書を公表しました1)。委託先の給食事業者経由で病院サーバの認証情報が抜き取られ、病院内のシステムが攻撃を受けたことや、基幹システムのサーバの大部分がランサムウエアによって暗号化されてしまい、診療システムの全面復旧に73日間を要したことなど、被害の詳細が明らかになりました。報告書では、電子カルテを含む基幹システムが同じIDとパスワードを使い回す状態であったことが被害拡大を招いたとも指摘しています。被害総額は現在精査中としながらも「調査・復旧費用で数億円、診療制限に伴う逸失利益として十数億円以上を見込んでいる」としています。診療体制の完全復旧まで73日かかるこの事件については発生当初、本連載の「第135回 大阪急性期・総合医療センターにサイバー攻撃、『身代金受け取った』報道の町立半田病院の二の舞?」でも書きました。経緯を簡単に振り返っておきましょう。事件は2022年10月31日の早朝に発覚しました。午前6時40分ごろ、職員がサーバの障害に気づき、同8時半ごろ、業者の調査でランサムウエアの攻撃と判明しました。サーバ上の画面には英語で「すべてのファイルは暗号化された。復元したければ、指定のアドレスにメールを送りビットコインで支払え。金額はメールを送る時間で変わる」という文面と、データに対する「身代金」を要求するメッセージが表示されていました。同センターは「金銭を支払う考えはない」としてすぐに大阪府警に相談、同日夜に記者会見を行いました。同センターは、システム障害によって患者の電子カルテが閲覧できず、診療報酬の計算ができない状態に陥り、外来診療を中止、緊急以外の予定手術は延期となりました。電子カルテシステムを含む基幹システムが再稼働し、外来での電子カルテ運用が再開したのは約6週間後でした。病棟での電子カルテ運用の再開は12月、2023年1月11日に通常診療にかかわる部門システムが再開し、診療体制が完全復旧しました。ランサムウエア感染から実に2ヵ月以上、73日が経っていました。中核のサーバはすべて同じパスワードを使い回し報告書によれば、ウイルスは外部の給食事業者のVPN(仮想プライベートネットワーク)から侵入し、事業者側のサーバと常時接続されていたセンター側の給食管理用サーバに入り込んだとのことです。給食事業者のシステムは、配食数や食事内容を管理するもので、病院のネットワークや電子カルテシステムと常時つながっており、病院はこのネットワークを利用し、糖尿病などの患者の食事内容を事業者に伝えていました。さらに、電子カルテのシステムを構成する中核のサーバはすべて同じパスワードを使い回しており、ウイルス対策ソフトも導入されていませんでした。このためウイルスの侵入から、適切な対応がとられるまでの5時間弱の間に感染が急拡大し、約20台のサーバでデータが暗号化されてしまったとのことです。3月26日付の朝日新聞の報道によれば、電子カルテのシステムはNEC(日本電気)が構築したものでした。センター側から閉域網(外部のインターネットと完全に切り離された閉じられたネットワーク)であるとの説明を受けていた同社は「利便性などを考慮し、同じパスワードを使うことも可能だ」と提案、採用されていたとのことです。同紙によれば、NECは事件発覚後の昨年11月、同じ電子カルテを使う全国280の病院を調査しました。その結果、半数以上の病院で同様の使い回しが判明しました。その後、パスワードの変更やほかのセキュリティ対策を順次進めているとのことです。サイバー攻撃を受けた根本原因が「VPN装置の脆弱性を狙われ閉域網が破られた」という点は、一昨年10月の徳島県つるぎ町の町立半田病院(「第118回 ランサムウエア被害の徳島・半田病院報告書に見る、病院のセキュリティ対策のずさんさ」参照)とまったく同じです。ちなみに、給食事業者のVPN機器も町立半田病院と同じ製品で、この事業者もソフトウエアの更新を怠っていました。病院もセキュリティ意識を高く持ち組織的な取り組みが必要今回公表された75ページにも及ぶ報告書は、専門外の人間にはいささか読むのが大変です。ただ、幸いなことに7枚のスライドにまとめられた概要版も用意されているので、医療機関の経営者や幹部の方は、こちらには一度目を通しておいた方がいいと思われます。報告書では、サイバー攻撃を許してしまったセキュリティ上の課題を「技術的発生要因」 「組織的発生要因」「人的発生要因」に分けて分析、予防に向けた提案をしている点が参考になります。「技術的発生要因」については、外部接続(リモートメンテナンス)の管理不備と内部のセキュリティの脆弱性を指摘、「組織的発生要因」については、ガバナンスの欠如とベンダーとの契約に関するさまざまな問題を指摘しています。「人的発生要因」では、ベンダーに対してはシステムや機器を提供する専門家として、サイバーセキュリティの知識と経験向上に努めるべきと提案、病院に対してもセキュリティ意識を高く持ち、組織的にシステムや機器の導入および運用を心掛けた取り組みが必要だ、としています。「国はガイドラインや法整備、財源の確保など、その役割はますます重要」と提言さらに報告書は、国に対する要望もまとめています。そこでは、「国においては、ガイドラインや法整備、財源の確保など、その役割はますます重要」「国においては、医療機関へのサイバー攻撃を災害の一つとして捉え、その支援対策を充実させるなど、患者が安全安心に医療を受けられるよう、更なる取り組みの推進が必要」など、国が主導して医療機関のセキュリティ対策に取り組むべきだと要望しています。医療機関にとってセキュリティ対策は頭が痛い問題実際、医療機関にとってはセキュリティ対策の人材確保や、そのための予算確保はなかなか頭が痛い問題のようです。自民党の「医療分野のデジタルセキュリティ対策推進プロジェクトチーム」は3月28日に初会合を開き、医療機関のセキュリティ対策について、厚生労働省、日本医師会などにヒアリングを行いました。この席で日本医師会は提出資料で、医療機関が十分なセキュリティ対策をとれていない背景として、「医療関係者が教育を受けていない」「大部分の医療機関には専門家がいない」「対策の財源がない」と指摘、「必要となるセキュリティ対策にかかる費用は本来、国が全額負担すべき」と訴えています。厚労省、警察庁もサイバー攻撃対策に本腰町立半田病院、大阪急性期・総合医療センターなどのサイバー攻撃をきっかけとして、国側の動きも急となってきています。3月30日、厚生労働省は、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」の案を公表、パブリックコメントの募集を始めました2)。同ガイドラインはこれまで、本編と別冊で構成されていましたが、今回の改定では、概説、経営管理、企画管理、システム運用の計4編の構成に変更されています。たとえば、システム運用編には、パソコンやVPN機器などの脆弱性や、ランサムウエアによるサイバー攻撃などに関する対策が明記されており、バックアップデータを保存した記録媒体を、端末やサーバ装置、ネットワークから切り離して保管するといった対策を求める内容となっています。同ガイドラインは、4月28日までパブリックコメントを募集し、5月中旬に公表する予定です。警察庁もサイバー攻撃被害に関する情報収集を強化する方針です。4月6日に開かれた警察庁の有識者会議の報告書の提言を基に、4月7日付の日本経済新聞は「警察庁はインターネットで通報できる一元窓口を2023年度内にも設け、企業の申告を促す」と報じています。同記事によれば、「これまでは都道府県ごとに窓口を設けていたが通報は低調だった。被害状況は捜査や分析に向けた端緒で、必要に応じて国直轄の専門部隊にも共有する」とのことです。国がサイバー攻撃対策に本腰を入れ始めたのは好ましいことです。ただ、病院や診療所の現場の経営者たちが、国任せ、行政任せ、ベンダー任せのままでは、医療機関に対するサイバー攻撃はこれからも増え続けるでしょう。財源は国にお願いするにせよ、医療機関内でもITや情報セキュリティに詳しい専門人材を確保することは、もはや急務と言えるでしょう。参考1)情報セキュリティインシデント調査委員会報告書について/大阪急性期・総合医療センター2)「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版(案)」に関する御意見の募集について

8472.

重度の円形脱毛症、MTX+低用量ステロイドで毛髪再生

 フランス・ルーアン大学病院およびフランス国立衛生医学研究所(INSERM)U1234のPascal Joly氏らは、円形脱毛症(AA)のうち重度とされる全頭型AAまたは汎発型AA患者を対象に、メトトレキサート(MTX)単剤とプラセボの比較、MTX単剤とMTX+低用量prednisoneの併用療法を比較する2段階の二重盲検無作為化比較試験を実施した。その結果、MTX単剤では主に部分的発毛が可能であったが、MTX+低用量prednisone併用療法は患者の最大31%で完全発毛が可能であった。著者らは、「これらの結果は、JAK阻害薬で最近報告された結果と同程度であるが、コストははるかに安価と考えられる」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年3月8日号掲載の報告。 研究グループは、治療効果が低いと報告されているAAの中でも最も重度とされる全頭型AAと汎発型AAについて、安価な治療法であるMTX単剤とMTX+低用量prednisoneの併用療法の有効性と忍容性を検討した。 試験は、8つの大学病院の皮膚科部門で2014年3月~2016年12月の期間に行われた。対象は、6ヵ月超の局所および全身性の治療にもかかわらず症状進行が認められる全頭型AAまたは汎発型AA成人患者。 対象患者は第1段階として、MTX(25g/週)単剤群またはプラセボ群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。6ヵ月時点の評価で25%以上の発毛が認められた患者は、12ヵ月間後まで1段階目で割り付けられた治療を継続した。発毛が25%未満であった患者は、第2段階としてMTX+prednisone(20mg/日を3ヵ月と15mg/日を3ヵ月)併用群またはMTX単剤群(MTX+プラセボ)に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、MTX単剤の開始から12ヵ月後の完全発毛またはほぼ完全発毛(Severity of Alopecia Tool[SALT]スコア10未満)であった。なお、主要エンドポイントの評価は、試験開始時からMTXが投与された患者に限定され、4人の国際的な専門家が写真を基に評価した。副次エンドポイントは、頭皮の50%を超える発毛、QOL、忍容性などであった。データ解析は、2018年10月~2019年6月に行われた。 主な結果は以下のとおり。・合計89例(女性50例、男性39例、平均年齢±標準偏差:38.6±14.3歳、全頭型AA:1例、汎発型AA:88例)が、MTX単剤群(45例)またはプラセボ群(44例)に無作為に割り付けられた。・12ヵ月時点で、完全またはほぼ完全発毛が観察されたのは、MTX単剤群1例、プラセボ群0例であった。MTX(6または12ヵ月)+prednisone併用群では35例中7例(20.0%、95%信頼区間[CI]:8.4~37.0)で観察され、このうちMTX(12ヵ月)+prednisone(6ヵ月)併用群では16例中5例(31.2%、95%CI:11.0~58.7)で観察された。・完全またはほぼ完全発毛が観察された患者は非反応患者と比べて、QOLの改善が認められた。・MTX投与を受けた患者において、疲労が7例(6.9%)、悪心が14例(13.7%)に認められ、2例が疲労と悪心で試験を中断した。重度の治療関連有害事象は観察されなかった。

8473.

オランザピンに食欲亢進・体重増加効果、肺がん・上部消化器がん患者で/JCO

 食欲減退は進行がん患者の30~80%にみられ、化学療法により悪化することがある。そこで、インド・Jawaharlal Institute of Postgraduate Medical Education and ResearchのLakshmi Sandhya氏らは、がん患者の化学療法に伴う消化器症状の改善に用いられるオランザピンについて、食欲亢進・体重増加効果を検討した。肺がん患者、上部消化器がん患者に対して、化学療法中に低用量のオランザピンを毎日投与することで、食欲亢進および体重増加が認められた。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年3月28日号に掲載された。オランザピン群は食欲改善が認められた患者の割合が有意に高率 18歳以上で、未治療の進行または転移を有する胃がん患者(68例)、肺がん患者(43例)、肝がん・膵がん・胆道がん患者(13例)計124例を対象とした。対象患者を化学療法とともに低用量オランザピン(2.5g/日)を投与する群(オランザピン群)またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付け、12週間投与した。両群とも、標準的な栄養評価と食事のアドバイスを受けた。主要評価項目は、5%以上の体重増加が認められた患者の割合と食欲改善であった。食欲については、VAS(visual analog scale)およびFAACT ACS(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy system of Quality-of-Life questionnaires Anorexia Cachexia subscale)で評価した。副次評価項目は、栄養状態の変化、QOL、化学療法の毒性であった。 オランザピンの食欲亢進・体重増加効果を検討した主な結果は以下のとおり。・対象患者124例(年齢中央値:55歳[範囲:18~78]、オランザピン群63例、プラセボ群61例)のうち、112例(オランザピン群58例、プラセボ群54例)が解析可能であった。・5%以上の体重増加が認められた患者の割合は、プラセボ群が9%(5/54例)であったのに対し、オランザピン群は60%(35/58例)であり、オランザピン群で有意に高率であった(p<0.001)。・VASに基づく食欲改善が認められた患者の割合は、プラセボ群が13%(7/54例)であったのに対し、オランザピン群は43%(25/58例)であり、オランザピン群で有意に高率であった(p<0.001)。・FAACT ACSに基づく食欲改善(37点以上)が認められた患者の割合は、プラセボ群が4%(2/54例)であったのに対し、オランザピン群は22%(13/58例)であり、オランザピン群で有意に高率であった(p=0.004)。・オランザピン群では、栄養状態、QOLが良好であり、化学毒性も少なかった。 著者らは、「低用量オランザピンは、未治療患者におけるがん化学療法中の食欲と体重を改善する、安価かつ忍容性の高い治療である。低用量オランザピンには、栄養状態の改善やQOLの改善、化学療法の毒性の低減といった副次的なベネフィットもみられた」とまとめた。

8474.

医師の働き方改革、いまだ2割強が基準超の時間外勤務/医師1,000人アンケート

 2024年4月から勤務医の時間外労働の上限が原則960時間となる、いわゆる「医師の働き方改革」がスタートするのを踏まえ、会員の勤務医1,000人を対象に働き方改革の制度の理解度、期待と不安、勤務先の対応策などについて聞くアンケートを実施した(2023年3月9日実施)。 直近1年間の勤務時間について、1日8時間・週40時間(=5日)勤務を基準とした場合の「当直を含む時間外労働時間の合計」を聞いたところ、「月45時間未満・年360時間以下(≒週7時間)」が42%、「月100時間未満・年960時間以下(≒週20時間)」が36%、「月100時間未満・年1,860時間以下(≒週40時間)」が13%、「週40時間を超える」が9%という結果となった。この割合は年代別(20、30、40、50代以上)、診療科別(外科・救急科とそれ以外の診療科)で比較しても大きな違いは見られなかった。 2019年にCareNet.comが行ったアンケートでも同じ質問をしたが、このときは時間外労働が週40時間を超える医師は全体の19%だったが、今回は22%と悪化した。今回のアンケートは対象を勤務医(勤務先病床数20床以上)に限定、外科・救急科に総数の5分の1を割り当てるなどやや条件が異なるものの、この4年間で時間外労働の削減があまり進んでいないことがうかがわれる結果となった。 長年の議論を経て、ようやく固まりつつある医師の働き方改革の各制度についての理解度を聞いたところ、改革の柱となる「時間外労働の上限規制」については「完全に理解している」「おおよそ理解している」の合計が53%と半数を超えたが、「宿日直の扱いと許可」では45%、「自己研鑽時間の扱い」では43%と医師本人の働き方に関する項目でも半数に届かず、「B/連携B、Cの特例水準」では39%、「今後のスケジュール」では37%に留まった。 「医師の働き方改革に期待していることや不安なこと」を選択式(3つまで)で聞いたところ、期待としては「サービス残業がなくなる」が28%、「プライベートの時間が増える」が26%で続いた。一方、不安としては「収入が減る」がダントツの37%、続いて「アルバイト・副業等が禁止される」23%、「サービス残業が増える」22%で、全体として期待よりも不安に関する項目に多くの票が集まった。 「派遣先勤務・アルバイト・副業等について、主たる勤務先に業務内容・勤務時間を届け出ているか」との設問では、43%が「届け出ている」と回答したが、「届け出ていない」との回答も23%にのぼり、働き方改革スタートまで1年となっても、勤務医の正確な勤務時間や業務内容の把握ができていない医療機関が相当数に上ることが予想される結果となった。 「主たる勤務先では、働き方改革に対して何らかの対策をとっているか」(複数回答)との設問には、「医師スタッフの増員(常勤・非常勤とも)」が20%、「宿日直勤務の許可・申請」が19%で全体の5分の1を占めたものの、最多は「何もしていない」の35%だった。 最後に自由記述で「医師の働き方改革に関する意見」を聞いたところ、数多くの回答が集まった。最も目に付いたのは時間外労働規制による給与減の不安に関するもので、20~30代の若手層を中心に「収入減が一番困る。忙しくてもいいから維持したい」(20代、臨床研修医)、「給与改定を望む。基本給が少なく時間外勤務の補填で必要な給与を確保していたので、かなり痛い」(40代、脳神経外科)、「医師に働き方改革は不要。労働時間を減らすのではなく、労働時間分の給料を出せ」(30代、放射線科)といった「労働時間に見合った報酬を支払うべき」との声が目立った。 そのほか、「従うしかない。主治医制も変わっていくのでは」(50代、外科)、「公立病院は昔のブラックな働き方が残っているが、徐々に改善されるだろう。反面、人員の確保や報酬の増加により経営が圧迫される懸念がある」(60代、内科)、「若手が権利ばかりを主張し、結局しわ寄せが管理者側に来てしまうだけの制度だと思う」(40代、消化器内科)といった、多様な意見が寄せられた。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。1年後に迫る医師の「働き方改革」、認知度と対策は?…会員1,000人アンケート

8475.

不健康なプラントベース食では死亡、がん、CVDリスクが増大

 “健康的”なプラントベース食(植物由来の食品)の摂取が多いほど、死亡、がん、心血管疾患のリスクが低くなるが、“不健康”なプラントベース食ばかりではそれらのリスクがむしろ高くなることが、英国・クイーンズ大学ベルファストのAlysha S. Thompson氏らの研究により明らかになった。JAMA Network Open誌2023年3月28日号掲載の報告。 プラントベース食は、卵、乳製品、魚、肉を少量のみ摂取またはまったく摂取しないことを特徴とする食事で、環境と健康の両方の理由から世界中で人気となっている。しかし、プラントベース食の質と死亡や慢性疾患のリスクに関する総合的な評価は不十分であった。そこで研究グループは、健康的なプラントベース食と不健康なプラントベース食が、英国成人の死亡や主要な慢性疾患(心血管疾患、がん、骨折など)と関連しているかどうかを調査した。 調査は、UKバイオバンクの参加者を前向きに収集して行われた。2006~10年に40~69歳の参加者を募集して2021年まで追跡し、データの解析は2021年11月~2022年10月に行われた。主要アウトカムは、健康的/不健康なプラントベース食の順守の程度による、死亡率(全死因死亡および疾患特異的死亡)および心血管疾患(全イベント、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中)、がん(全がん、乳がん、前立腺がん、結腸直腸がん)、骨折(全部位、椎骨、股関節)の相対的危険度であった。 健康的なプラントベース食か不健康なプラントベース食かどうかは、1日最低2回の食事を、24時間の平均摂取量に基づいて17項目の食品群(全粒穀物、果物、野菜、ナッツ、植物性の代替食品、紅茶/コーヒー、フルーツジュース、精製穀物、ジャガイモ、砂糖入り飲料、お菓子/デザート、動物性脂肪、乳製品、卵、魚介類、肉、その他の動物性食品)のスコアで評価した。 主な結果は以下のとおり。・参加者12万6,394例(平均年齢56.1歳、女性55.9%、白人91.3%)を10.6~12.2年間追跡したところ、5,627例の死亡、6,890例の心血管疾患イベント、8,939例のがん、4,751例の骨折が発生した。・健康的なプラントベース食をより多く摂取していたのは、女性、低BMI、高齢、服薬/健康異常なし、低アルコール摂取、高学歴の人であった。・健康的なプラントベース食の順守率が最も高い四分位集団では、最も低い集団と比較して、全死因死亡、全がん、全心血管疾患のリスクが低かった(死亡のハザード比[HR]:0.84[95%信頼区間:0.78~0.91]、がんのHR:0.93[0.88~0.99]、心血管疾患のHR:0.92[0.86~0.99])。・同様に、健康的なプラントベース食の順守率が最も高い集団では、心筋梗塞および虚血性脳卒中のリスクも低かった(心筋梗塞のHR:0.86[0.78~0.95]、虚血性脳卒中のHR:0.84 [0.71~0.99])。・一方、不健康なプラントベース食を最も多く摂取していた集団では、全死因死亡、全がん、全心血管疾患のリスクが高かった(死亡のHR:1.23[1.14~1.32]、がんのHR:1.10[1.03~1.17]、心血管疾患のHR:1.21[1.05~1.20])。・同様に、不健康なプラントベース食を最もよく摂取していた集団では、心筋梗塞および虚血性脳卒中リスクも高かった(心筋梗塞のHR:1.23[0.95~1.33]、虚血性脳卒中のHR:1.17[1.06~1.29])。・健康的または不健康なプラントベース食と、出血性脳卒中、個別のがん種、骨折(全部位、部位別)には有意差はみられなかった。・砂糖入り飲料、スナック/デザート、精製穀物、ジャガイモ、フルーツジュースの摂取量が少ない健康的な食事がリスクの低下と関連していた。・これらは、性別、喫煙状況、BMI、社会経済的地位、多遺伝子リスクスコア(PRS)と関連はみられなかった。 上記の結果より、研究グループは「健康的なプラントベース食の摂取が、心血管疾患、がん、および死亡のリスクの低下と関連していた。健康的なプラントベース食をより多く摂取し、動物性食品の摂取を減らすことで、慢性疾患の危険因子や遺伝子素因に関係なく健康に有益である可能性がある」とまとめた。

8476.

アリピプラゾールの自律神経への影響、長時間作用型注射剤と経口剤の比較

 非定型抗精神病薬は、自律神経系(ANS)の活動にさまざまな影響を及ぼす。中でも、経口の抗精神病薬であるアリピプラゾールは、ANS機能不全と関連しているといわれている。長時間作用型注射剤(LAI)は統合失調症の主な治療オプションであるが、ANS活性に対するLAIと経口剤との違いは、これまでよくわかっていなかった。横浜市立大学の服部 早紀氏らは、統合失調症におけるアリピプラゾールの経口剤と月1回LAI(AOM)のANS活性への影響を比較検討した。その結果、AOMによる単剤治療は、経口アリピプラゾールと比較し、交感神経系などの副作用リスクが低いことを報告した。BMC Psychiatry誌2023年3月3日号の報告。 対象は、日本人統合失調症患者122例(入院患者:10例、外来患者112例、男性:51例、女性:71例、平均年齢[±SD]:43.2±13.5歳)。内訳は、経口アリピプラゾール単剤治療患者72例、AOM単剤治療患者50例であった。ANS活性の評価には、心拍変動パワースペクトル解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・経口アリピプラゾールで治療された患者は、AOMで治療された患者と比較し、交感神経活性の有意な減少が観察された。・重回帰分析では、アリピプラゾール製剤は、交感神経活性に有意な影響を及ぼすことが明らかとなった。・AOMは、経口アリピプラゾールよりも、交感神経系などの副作用リスクが低いことが示唆された。

8477.

MMR正常を含む進行・再発子宮体がん、dostarlimab追加でPFS延長(RUBY)/NEJM

 原発性の進行または再発子宮体がんの治療において、標準化学療法+免疫チェックポイント阻害薬dostarlimabの併用は、標準化学療法単独と比較して、2年後の無増悪生存率が有意に高く、安全性プロファイルは個々の薬剤の既知のものと全般的に一致することが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のMansoor R. Mirza氏らが実施した「RUBY試験」で示された。研究結果は、NEJM誌オンライン版2023年3月27日号で報告された。19ヵ国113施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 RUBY試験は、19ヵ国113施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年7月18日~2021年2月23日に患者のスクリーニングが行われた(GSKの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、原発性のStageIII/IVまたは初回再発の子宮体がんの患者が、カルボプラチン+パクリタキセルによる標準化学療法に加え、dostarlimab(500mg)またはプラセボを3週ごとに6サイクル静脈内投与した後、dostarlimab(1,000mg)またはプラセボを単独で6週ごとに最長3年間投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、担当医判定(RECIST ver1.1に基づく)による無増悪生存と、全生存であった。全生存率も、dMMR-MSI-H集団、全患者集団の双方で良好 494例が登録され、dostarlimab群に245例(年齢中央値64歳[四分位範囲[IQR]:41~81])、プラセボ群に249例(65歳[28~85])が割り付けられた。118例(23.9%)がミスマッチ修復機能欠損型(dMMR)の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の腫瘍であり、dostarlimab群に53例(61歳[45~81])、プラセボ群に65例(66歳[39~85])が含まれた。 dMMR-MSI-H集団では、24ヵ月の時点における推定無増悪生存率は、dostarlimab群が61.4%(95%信頼区間[CI]:46.3~73.4)と、プラセボ群の15.7%(7.2~27.0)に比べ有意に優れた(ハザード比[HR]:0.28、95%CI:0.16~0.50、p<0.001)。 全患者集団における24ヵ月時の推定無増悪生存率は、dostarlimab群が36.1%(95%CI:29.3~42.9)であり、プラセボ群の18.1%(13.0~23.9)よりも有意に良好だった(HR:0.64、95%CI:0.51~0.80、p<0.001)。 また、dMMR-MSI-H集団の24ヵ月時の全生存率は、dostarlimab群が83.3%(95%CI:66.8~92.0)、プラセボ群は58.7%(43.4~71.2)であり、dostarlimab群で優れた(HR:0.30、95%CI:0.13~0.70)。 全患者集団の24ヵ月時の全生存率は、dostarlimab群が71.3%(95%CI:64.5~77.1)、プラセボ群は56.0%(48.9~62.5)と、dostarlimab群で高かった(HR:0.64、95%CI:0.46~0.87、p=0.0021)が、中止基準の有意水準(p=0.00177)は満たさなかった。 試験期間中に発現または悪化した有害事象のうち最も頻度が高かったのは、悪心(dostarlimab群53.9%、プラセボ群45.9%)、脱毛(53.5%、50.0%)、倦怠感(51.9%、54.5%)であった。Grade3以上の有害事象(70.5%、59.8%)、重篤な有害事象(37.8%、27.6%)の頻度は、プラセボ群よりもdostarlimab群で約10ポイント高かった。 著者は、「MMRとMSIの状態の検査は、子宮体がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の使用の可能性について、予後因子と効果予測因子の双方で考慮されるため重要であり、本研究では、dMMR-MSI-H集団においてdostarlimab群で良好な無増悪生存率が得られた」と指摘している。

8478.

BA.4/5対応2価ワクチン、初回接種での使用を申請/ファイザー

 ファイザーとビオンテックは4月11日付のプレスリリースにて、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の2価ワクチン「コミナティRTU筋注(起源株/オミクロン株BA.4-5)」について、生後6ヵ月~4歳における初回免疫と追加免疫、および5歳以上における初回免疫での使用を可能とするための承認事項の一部変更を厚生労働省に申請したことを発表した。 本剤は現在、国内において5歳以上の追加免疫での使用のみ承認されている。なお、米国においては、5歳以上の追加免疫での使用に加え、2022年12月8日に生後6ヵ月~4歳における初回免疫の3回目としての使用が、2023年3月15日には同年齢層における1回の追加免疫(初回免疫を1価ワクチンで3回接種完了した者が対象)が米国食品医薬品局(FDA)より承認されている。

8479.

スタチンのプレイオトロピック効果はあるの?(解説:平山篤志氏)

 4S試験以来スタチンによる心血管イベント抑制効果が明らかにされ、さらに追加解析でスタチンにはLDL-コレステロール(LDL-C)低下効果に加えて、抗炎症、抗酸化などのプレイオトロピック効果があると示唆されてきた。このような背景から機序の異なるLDL-C低下薬であるエゼチミブやPCSK-9阻害薬を用いた大規模臨床試験では、スタチンに追加することでLDL-Cを低下させる効果で有効性が示されてきた。 しかし、今回のベムペド酸(bempedoic acid)を用いたCLEAR Outcome試験では、対象がスタチン不耐性の患者であるためコントロール群にはスタチンが使用されていない。にもかかわらず、ベムペド酸治療群で、有意なLDL-Cと高感度CRPの低下とともに心血管イベントを有意に減少した。このことは、スタチン不耐性の患者でも使用可能な薬剤が示されたことだけでなく、スタチンのプレイオトロピック効果についても疑問を投げかけたことになる。 では、なぜ高LDL-Cが炎症を引き起こすのか? LDL-Cを低下させることで炎症が抑制されるのか?については、近年、血管内視鏡で大動脈の自然プラーク破綻を観察した小松らの研究から、プラーク内で生成されたコレステロール結晶が自然破綻した後に全身で炎症を惹起する可能性が注目されている。今後展開される多くの研究により解明されるであろう。 米国心臓病学会(ACC)で発表されたとき、ベムペド酸にエゼチミブを加えることでさらなるイベント抑止効果が得られたのではないか?という質問が出された。すでにエゼチミブ単独でイベント低下効果が示されている(EWTOPIA75)ことから、予測される結果であるが、FDAが試験での使用を認めなかったとのことであった。今後、実臨床ではエゼチミブの併用で多用されるであろう。ただ、ベムペド酸が高尿酸血症や痛風の頻度を上げることには注意が必要である。

8480.

第108回薬剤師国家試験合格率は69%、最下位の大学は29%【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第108回

第108回薬剤師国家試験が2月18~19日に全国10都道府県で実施され、3月22日に合格発表が行われました。厚生労働省は22日、第108回薬剤師国家試験について、合格者数は前年から▲5人の9,602人、合格率も例年並みの69%だったと発表した。新卒に限った合格率は84.86%(7,254人)で、こちらも例年並み。合格率の低い私立大薬学部で、新卒と既卒を合わせた合格率の最下位は青森大の29.21%、次いで下から姫路獨協大30.97%、第一薬科大36.36%、奥羽大39.18%、千葉科学大42.55%の順だった。(2023年3月23日付 RISFAX)新しく薬剤師になった人は9,602人で、昨年度とほぼ同様の結果でした。ここ10年ほどは、国家試験の合格率が話題になることが多かったような気がします。2013年度にあたる第99回において合格率60%という全薬剤師が震撼する数字をたたき出して以降、2015年度の第101回から5回連続で70%台という厳しい数字で推移し、2019年度の第105回以降は70%を下回っています。今回の合格率も69%で、60%台という数字も見慣れてしまいました。おそらく、環境の変化や何か具体的にテコ入れがされることがない限り、今後もこのくらいの数字で推移するのだろうと想像します。2006年度に薬剤師を養成する薬学部は4年制から6年制になりました。この前後から6年制薬学部の新設が相次ぎ、2006年度は66大学67学部でしたが、2021年度には77大学79学部に増え、入学する学生も大幅に増えました。2006年度に入学した1年生が国家試験受験資格を得る6年生になるのが最速で2012年度ですから、6年制への移行・新設薬学部の増加と、薬剤師国家試験の合格率の低迷が関連していると思われます。文部科学省は、これまでも定員充足率や国家試験合格率が低い私立大学を問題視しており、改善を促してきました。また、厚生労働省の推計によると、2020年に約32万人だった薬剤師数は、25年後の2045年には最大で約45万人となり、供給過多になると予測されています。2022年8月には、文部科学省が2025年以降の6年制薬学部の新設・定員増を規制する方針を明らかにしており、早ければ2022年度中に大学設置認可基準を改定すると言われていましたので、近いうちに何らかの発表がなされるのではないかと思います。6年制への移行や新設薬学部の大幅増、薬剤師国家試験の合格率の変化などさまざまなことがあった10年でしたが、これからまた新しいフェーズが始まるのかもしれません。

検索結果 合計:35162件 表示位置:8461 - 8480