サイト内検索|page:422

検索結果 合計:35667件 表示位置:8421 - 8440

8421.

スコアに基づくコロナ罹患後症状の定義を提案した論文報告(解説:寺田教彦氏)

 新型コロナウイルス感染症罹患後、数週間から数ヵ月にわたってさまざまな症状が続くことがあり、海外では「long COVID」や「postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection:PASC」、本邦では新型コロナウイルス感染症の罹患後症状と呼称されている。世界各国から報告されているが、この罹患後症状の明確な診断基準はなく、病態も判明しきってはいない。WHOは「post COVID-19 condition」について、新型コロナウイルス感染症に罹患した人で、罹患後3ヵ月以上経過しており、少なくとも2ヵ月以上症状が持続し、他の疾患による症状として説明がつかない状態を定義しており(詳細はWHO HP、Coronavirus disease (COVID-19): Post COVID-19 condition.[2023/06/18最終確認]を参照)、本邦の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版」でも引用されている。 このPASC(本研究同様、コロナ罹患後症状をこの文章ではPASCと記載する)は世界各地から報告されているが、有病率や認められる罹患後症状の頻度は地域差がある。筆者らはこの有病率の違いについて、過去の報告は個々の症状の頻度に焦点を当てている点、後ろ向き研究である点や、非感染者といった比較群が存在しない点が理由ではないかと提案し、本研究では前向きコホート研究の結果に基づいてPASCの疾患定義を作成し、PASCの調査を行っている。 さて、一般に疾患定義は、医師や研究者に疾患の理解や研究を進めるための基準を提供し、原因や病態の推定・把握、治療方法の開発に役立ち、疾患の発生率や流行の推移を追跡するなどの疫学調査を行う場合にも重要である。PASCの定義を作成するに当たって、病態について考えると、PASCは単一の病態で説明することができるのか、先行するCOVID-19により引き起こされる複数の異なる病態なのかはわかっていない。病態が複合的に関与する可能性を提案する論文では(1)持続感染、(2)Epstein-Barrウイルスやヒトヘルペスウイルス6などのような再活性化、(3)腸内細菌叢に対するSARS-CoV-2の影響、(4)自己免疫、(5)微小血管血栓症、(6)脳幹・迷走神経の機能障害といった病態を指摘している(Davis HE, et al. Nat Rev Microbiol. 2023;21:133-146.)。PASCの病態が単一ではない場合は、患者の表現型となる症状も複数のパターンがある可能性があり、治療法も個々の病態で異なるかもしれない。 本研究でも、PASCが複数の病態から構成される可能性は検討しており、PASCのサブグループについても記載があるが、今後の研究によっては、PASCの診断は単一のスコアリングで判断するのではなく、PASCのクラスターごとに診断基準を作成する必要が出てくる可能性がある。また、仮に、診断基準が1つでまとめられることとなったとしても、筆者も述べているように、今回提案された診断定義は、今後のさらなるデータを追加して改良を重ねてゆくことが求められるとともに、世界的な基準とする場合は外的妥当性を確認するための追加研究も必要となる。 最後に、本研究から得られたPASCの特徴についても確認してゆく。 PASC陽性者の特徴は過去の報告と同様の傾向で、オミクロン株以前が流行していた時期の罹患者がオミクロン株流行時期よりもPASCの割合は高く、COVID-19ワクチン接種非完了者のほうが完了者よりも高く、初回感染よりも再感染の患者で罹患率が高かった。また、急性期に入院している患者や、女性でPASC陽性の割合は高かった。 PASCは、オミクロン株ではデルタ株などよりも罹患後症状有病率は低下しているが、COVID-19患者が増えれば、PASCも増加することが懸念される。抗ウイルス薬がPASC予防に有効であることを示唆する後ろ向きコホート研究(Xie Y, et al. JAMA Intern Med. 2023;183:554-564., Xie Y, et al. BMJ. 2023;381:e074572.)も報告されつつあるが、抗ウイルス薬は高価であり、不確定な情報を参考に、COVID-19患者というだけでやみくもに処方するわけにもゆかないだろう。PASCのために困っている患者さんがいることも事実であり、病態解明が進み、より正確な罹患後有病率や罹患因子の把握、抗ウイルス薬のエビデンスが確立して、現在および未来の患者さんによりよいCOVID-19の治療が行われることを願っている。

8422.

英語で「コンサルしてもらっていいですか」は?【1分★医療英語】第87回

第87回 英語で「コンサルしてもらっていいですか」は? I think the cardiologist should be on board. Could you make a referral?(循環器医に関わってもらった方がよさそうですね。コンサルトしてもらえますか?)Okay, will do.(了解しました)《例文》医師I will make a referral to an ophthalmologist since your eyesight is worsening.(視力が低下しているので、眼科医に紹介しておきますね)患者Thank you so much.(ありがとうございます)《解説》病院内外において、他科紹介、またはコンサルトすることはしばしばあるかと思います。そんなときに使ってほしい表現が“make a referral”です。たとえば、上司から「〜科に他科紹介しておいてもらえる?」と言われた際には“Okay, I will make a referral to〜”と言うことで、「わかりました。〜科に紹介(コンサルト)しておきますね」と返答します。日本ではあまり大きな違いはないかもしれないのですが、英語ではコンサル“consultation”と他科紹介“referral”のニュアンスが微妙に異なり、“consultation”は一般的に入院患者でのコンサル、“referral”は外来での紹介で使用する場面が多い印象です。入院病棟での場面では“I will consult〜”で使用します。ちなみに、紹介状は“referral letter”といいます。講師紹介

8423.

高い抗菌活性を有する抗菌点耳薬「コムレクス耳科用液1.5%」【下平博士のDIノート】第124回

高い抗菌活性を有する抗菌点耳薬「コムレクス耳科用液1.5%」今回は、フルオロキノロン系抗菌耳科用製剤「レボフロキサシン耳科用液(商品名:コムレクス耳科用液1.5%、製造販売元:セオリアファーマ)」を紹介します。本剤は、久々に登場した抗菌点耳薬であり、外耳炎および中耳炎患者の治療選択肢が広がることが期待されています。<効能・効果>外耳炎および中耳炎の適応で、2023年3月27日に製造販売承認を取得し、6月8日より発売されています。適応菌種は、本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、肺炎桿菌、エンテロバクター属、セラチア属、インフルエンザ菌、緑膿菌、アシネトバクター属です。<用法・用量>通常、1回6~10滴を1日2回点耳し、点耳後は約10分間の耳浴を行います。なお、症状により適宜回数を増減します。<安全性>1~5%未満に認められた副作用は、耳真菌性外耳炎、回転性めまい、浮動性めまい、下痢、耳痛でした。なお、重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.細菌の複製に関わる酵素の働きを抑えることで、中耳炎や外耳炎の原因となる細菌を殺菌する点耳薬です。2.薬液の温度が低いとめまいを起こすことがあるので、使用する際はできるだけ体温に近い温度で使用してください。3.点耳するほうの耳を上にして、横向きに寝てください。耳たぶを後ろに引っぱるようにして、容器の先端が直接耳に触れないようにして薬液を滴下してください。点耳後は約10分間そのままの姿勢を維持して薬液を耳の中にとどめてください。<Shimo's eyes>抗菌点耳薬として、わが国では1992年に販売されたオフロキサシン耳科用液(商品名:タリビッド耳科用液0.3%など)が現在でも繁用されています。本剤の主成分であるレボフロキサシンは、経口薬、点滴静注薬、点眼薬が30年にわたって広く使用されていますが、これまで耳科用液は発売されていませんでした。レボフロキサシン経口薬の効能・効果には、初回承認時より外耳炎および中耳炎が含まれています。レボフロキサシンはラセミ体であるオフロキサシンの一方の光学活性体((S)-(-)体)であり、オフロキサシンの約2倍の抗菌活性を有します。本剤の濃度は1.5%であり、オフロキサシン耳科用液の5倍の有効成分を含有しています。国内第III相臨床試験における中耳および鼓膜の炎症の消退に基づく臨床効果の改善率は、本剤投与群で46.5%、プラセボ群で23.5%であり、プラセボ群に対する優越性が認められました。また、本試験における菌消失率は、本剤投与群で93.9%、プラセボ群で12.5%であり、本剤投与群で有意に高いという結果を示しました。副作用は、真菌性外耳炎、浮動性めまい、回転性めまい、下痢および滴下投与部位痛が各1.0%でした。4週間投与しても改善がみられない場合は、耐性菌が出現しないよう他剤への変更などの適切な処置が必要です。投薬時は耳浴の方法を、イラストなどを用いて説明するとよいでしょう。参考コムレクス耳科用液1.5%を使用する患者さんへ

8424.

熱中症【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第4回

今回は「熱中症」についてです。夏場では熱中症はCommonな疾患で、さまざまな原因によって生じます。地球温暖化も相まって、熱中症は気象の影響による死亡の中で最も多いという報告があり1)、すべてのかかりつけ医にとって必修の疾患と言えるでしょう。私も救命センターで働いていると、熱中症患者の搬送や受診が年々増えていることを実感しています。熱中症の診療を若手医師に教える機会は多いのですが、しばしば「言葉の定義や治療方法があやふやだな」と感じることがあります。これは自分が研修医のときに上級医に言われたことでもありますが、系統立てて熱中症を勉強した経験が少ないことが影響しているのではないかと思います。今回は熱中症の定義や臨床像を整理し、かかりつけ医が熱中症患者を診る際のポイントや対処法をお伝えし、さらに帰宅時に「暑い中で作業する時は水分をしっかり取ってね」と指導する「しっかり」がどの程度かを解説します。熱中症の診断熱中症の診断で重要なのは「病歴の聴取」です。熱中症以外の疾患を見落とさないために、どんな場所で何をしていたか、随伴症状がないか、など聞ける範囲でしっかりと聴取しましょう。私が以前経験した苦い症例を挙げます。公園で遊んでいた母親と2人の子供が救急外来を受診。トリアージには一言「熱中症」と記載があり、体温は3人とも37.5℃程度であった。救急外来が混雑しており、3人ともぐったりしていたため、すぐに冷たい点滴を施行した。子供はすぐに元気になったが、母親はガタガタ震え、体温は39℃になり、嘔吐し始めた。よくよく聞くと、公園に着いたあたりから母親は倦怠感を感じて木陰で休んでいたとのことで、実は胃腸炎であった。この母親は運動性(労作性)熱中症にアンカリング(先に与えられた数字や情報を基に検討を始めることにより、その後の意思決定に影響を及ぼすこと)され、病歴をしっかりと聴取できていませんでした。熱中症診断の難しさを再確認した反省症例です。なお、古典的(非労作性)熱中症では、認知症や意識障害などにより病歴聴取が困難なことが多く、高温の環境から離れられなかった理由(図1)をしっかりと調べる必要があります2)。図1 熱中症と鑑別が必要な疾患例画像を拡大する熱中症の治療古典的熱中症は死亡率が高く、ほとんどの症例が総合病院に搬送されるため、ここからは、一般外来でもよく出会う運動性熱中症を中心にお話しします。目の前に熱中症患者がいた場合、まず現場で対応できるかどうかの判断が求められます。つまり、総合病院に搬送すべきかどうかという判断です。III度熱中症でジャパン・コーマ・スケール(JCS)2以上(見当識障害があり場所、日付、周囲の状況が正確に言えない)であれば、すぐに総合病院に搬送すべきです。JCS2程度であっても急性腎不全や横紋筋融解症など早期加療が必要な疾患を合併する可能性は高くなります。I度熱中症とII度熱中症の違いは、JCS0かJCS1かの違い、つまり意識清明か、見当識障害はないがぼーっとしているかの違いです。両方とも高温の環境から涼しい環境に移し、経口補水液を摂取させることが重要な治療です。ただし、II度熱中症で加療を開始して30分経っても意識が清明にならない場合は総合病院への搬送を検討しましょう3)。I度熱中症でも失神した場合はしっかりと鑑別を行い、病院での検査が必要になることがあるため搬送を検討します。熱痙攣(こむら返り)が収まらない場合は痛みで満足に水分摂取ができないことがあり、その際も搬送を検討します。私は熱痙攣が治まらず満足な水分摂取が困難な場合、生理食塩水の点滴と除痛目的のアセトアミノフェンを投与します。脱水による急性腎不全を合併していることがあるためNSAIDsの使用は控えます。また、報告は限られますが、芍薬甘草湯は熱中症に伴うこむら返りに効果があるという報告があり、頑張って1包(2.5g)を服薬してもらっています4)。これらの処置により1時間ほどで症状が改善することがしばしばあります。基本的にII度熱中症までは体温中枢が働いていて深部体温の上昇は軽度であるため、体表面の冷却が推奨されます。一般外来や院外でできることは、うちわや扇風機を使用する氷嚢を頸部、腋下、鼠経に設置する(直接では凍傷を生じることがあるので、必要に応じて間にタオルなどをはさむ)体に霧吹きで水をかけるなどがあります。氷水のプールに全身を浸して冷却するという方法が最も効果的だという報告がありますが、実行できる設備が少ないので現実的ではありません5)。霧吹きにはよく冷えた水を入れたほうがよいと思われがちですが、実はこれはお勧めできません。霧吹きによる体温降下は、水が蒸発する際に周囲の熱を奪うことで体内の熱を空気中に逃がすことができます(気化熱)。よって、常温~温かい水を使用するのがベストです。熱中症のピットフォール熱中症診療で注意しなければならないのが横紋筋融解症です。国家試験などにも出るほどメジャーな疾患ですが、診断が難しい疾患の1つでもあります。適切に治療しないと電解質異常や腎不全などを合併する恐れがあるため、早期診断・加療が必要です。熱中症の後に横紋筋融解症を合併した場合、尿がコーラ色になることがあります。これはミオグロビン尿と言われ、赤血球が尿沈渣では陰性で、尿定性では陽性になるのが特徴です。しかし、横紋筋融解症でミオグロビン尿が発現するのは19%程度であまり高くはありません6)。そこで診断基準に多く使われるのがクレアチニンキナーゼ(CK)です。多くの文献では正常値の5倍(1,000U/L)超を診断基準にしています。5,000U/L以下であれば横紋筋融解症の発症率は低いとされていますが、遅れて上がってくることもあるため注意が必要です7,8)。これらを聞くと「結局どうすればいいの?」となると思います。I度・II度熱中症であれば基本的に重症の横紋筋融解症は合併しないため、患者全員を病院に搬送して血液検査を行うというのは現実的ではありません。横紋筋融解症の治療は水分摂取が第1であり、認知症や意識レベルが低下している患者など水分摂取に懸念がある場合は積極的に病院受診を促すべきと考えます。私は患者を自宅に帰すときには、尿が出ない、尿が黒くなるなどの症状が現れた場合はすぐに病院を受診するよう指導しています。熱中症の予防最後に熱中症の予防です。環境省は熱中症の予防として、涼しい服装日陰の利用日傘・帽子の使用水分摂取を推奨しています。私も熱中症の患者さんは、水分摂取が少ないなと感じます。私が熱中症になった方に「水分を取りましたか?」と聞くと、多くの人が「取っている」と答えますが、よくよく聞くと「暑い環境で5時間働いていたのにコーヒー牛乳500mLを1本だけ」だったという経験があり、その量はさまざまです。では、よく言われる「こまめな水分摂取」とはどの程度でしょうか? 私が探した範囲では日本語で具体的に水分摂取量を記載しているものは見つかりませんでしたが、米国CDCによると、暑い環境で作業するときは水を15~20分ごとに8ounces(240mLくらい)、1時間で1Lくらいが摂取の目安となっています。この際、糖分の多いジュースなどは控えてもらいます。スポーツドリンクも糖分が多いので長時間継続的に摂取することは勧められませんが、状況に応じて活用しましょう。気温や活動の負荷によって異なりますが、最低基準としてこちらを患者へ説明してはいかがでしょうか。今回は、熱中症の診断、治療、予防について紹介しました。熱中症はCommonな病気であり、しっかりと治療し、適切に予防することが重要です。これからさらに暑くなると熱中症患者さんが増えてくるため、復習になれば幸いです。先生自身の熱中症対策もお忘れなく!熱中症の基礎知識<発熱と高体温>発熱とは体温中枢による調整によって体温が上昇することを指し、高体温は体温中枢のコントロールが破綻してしまっている状態を指します。前者の代表は感染症であり、後者は熱中症や甲状腺機能亢進症などが挙げられます。前者による体温上昇であればアセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬は効果がありますが、後者は解熱鎮痛薬で体温低下は期待できず、原因を解除する必要があります9)。<運動性(労作性)熱中症と古典的(非労作性)熱中症>運動性熱中症とは読んで字のごとく、屋外や炎天下で活動して水分摂取が足りないときに生じます。数時間以内で急激に発症し、発汗と脱水が必ず伴います。一方、古典的熱中症とは、小児や高齢者が安静時であっても高温の環境に置かれたときに生じます。毎年夏になると親がパチンコに行き子供を車に放置して熱中症で亡くなる、高齢者がクーラーをつけずに自宅にいて熱中症で亡くなるというニュースを聞くと思います。これらが古典的熱中症で、体温が急速に上がった結果、中枢神経の機能が破綻して発症します。発汗がないのが特徴であり、高度の脱水を伴わないこともあります3)。運動性熱中症は、若年~中年に多いということもあり死亡率は低く、5%未満ですが、古典的熱中症は高齢者が多く、また室内で発生することが多いため発見が遅れることもあり、死亡率は約50%と非常に高いです10)。<重症度分類>熱中症の重症度分類であるI度、II度、III度は日本救急学会の定義であり、日本オリジナルの分類です。従来から言われている熱失神(Heat syncope)、熱痙攣(Heat cramp)、熱疲労(Heat exhaustion)、熱射病(Heat stroke)では重症度のイメージがつきにくいため作成されました(図2)。ちなみに、熱痙攣は痙攣発作のことではなくこむら返りのことを指し、熱失神は立ち眩み~失神を指します。図2 日本救急学会提唱の熱中症重症度分類画像を拡大する 1)Summary of Natural Hazard Statistics for 2017 in the United States2)Epstein Y, et al. NEJM;380:2449-2459.3)Glazer JL. Am Fam Physician. 2005;71:2133-2140.4)中永 士師明. 日本東洋医学雑誌. 2013;64:177-183.5)Ito C, et al. Acute Medicine & Surgery. 2021;8:e635.6)Melli G, et al. Medicine. 2005;84:377-385.7)Stahl K, et al. J Neurol. 2020;267:8778-8782.8)Giannoglou GD, et al. Eur J Intern Med. 2007;18:90-100.9)Stitt JT. Fed Proc. 1979;38:39-43.10)Bouchama A, et al. NEJM. 2002;346:1978-1988.

8425.

第170回 糖尿病の細胞移植治療を米国が承認

死亡した人の膵臓から単離したランゲルハンス島を成分とする1型糖尿病の細胞治療Lantidra(donislecel-jujn)が専門家一堂の承認賛成から約2年の歳月を経て米国FDA承認に漕ぎ着けました1)。Lantidraの開発はさかのぼること20年ほど前の2004年に米国・イリノイ大学で始まり2)、同大学育ちの細胞治療研究会社CellTrans社に2016年に引き継がれ、締めて30例ばかりが参加した第I~III相試験の結果をよりどころにして今から3年前の2020年にFDAに承認申請されました。その申請の翌年2021年4月15日に米国FDAが招集した専門家17人のうち大半の12人がLantidraの効果は害を押して余りあると判断し3)、それから2年後の先週6月28日についに承認されました。Lantidraを使えるのは徹底的な治療や教育にも関わらず重度低血糖を繰り返すがためにHbA1c目標未達成の1型糖尿病患者に限られます。第I~III相試験もそのような1型糖尿病患者を募って実施されました。第I~III相試験では30例にLantidraが1~3回肝門脈に投与されました。残念ながら5例はインスリン不要になった日がありませんでしたが、大半の21例がインスリン要らずで1年以上を過ごしました。また、それら21例の約半数10例は5年を超えてインスリン不要な状態を保っており、移植細胞の10年間体内生存率は60%超と推定されています4)。幹細胞起源の治療の開発も進むFDAはシカゴにあるイリノイ大学病院の一画でLantidraを作ることを認可しています5)。Lantidraは死亡者の膵臓から作るゆえ供給は限定的になりそうです。一方、嚢胞性線維症治療薬で一時代を築いて今や屈指のバイオテクノロジー企業へと成長したVertex Pharmaceuticals社はよりあまねく供給しうる細胞治療を目指しており、先月末の米国糖尿病協会(ADA)年次総会で有望な第I/II相試験途中成績を披露しています。Vertex社の開発品はVX-880と呼ばれ、患者以外の他者の幹細胞(同種幹細胞)から作るインスリン生成島細胞を成分とします。第I/II相試験ではこれまでに1型糖尿病患者7例にVX-880が投与されています。そのうち1例は途中で同意を撤回して試験を離脱しましたが、残りの6例の体内には島細胞が定着してインスリンを生成しました。6例中2例は移植から1年が経過し、両者とも重度低血糖なしでHbA1c低下(7.0%未満に落ち着いているか元から差し引きで少なくとも1%減少)を達成し、さらにはインスリンに頼らず過ごせています6)。有望な成績を上げているVX-880ですがLantidraと同様の欠点もあります。それは免疫に排除されないようにするために免疫抑制薬がずっと必要ということです。そこでVertex社はさらに先を見据え、免疫抑制薬の継続が不要の細胞治療VX-264の開発も進めています。VX-264もVX-880と同様に同種幹細胞から作った島細胞を成分としますが、免疫が手出しできないようにする包みで覆うという一工夫が施されています。VX-264もVX-880と同様に第I/II相試験が進行中で、被験者の組み入れが行われています。およそ17例が組み入れられる予定です。参考1)FDA Approves First Cellular Therapy to Treat Patients with Type 1 Diabetes / PRNewswire2)Piemonti L, et al. Transpl Int. 2021;34:1182-1186. 3)Food and Drug Administration Center for Biologics Evaluation and Research Office of Tissues and Advanced Therapies Cellular, Tissue and Gene Therapies Advisory Committee Meeting April 15, 2021 69th Meeting Summary Minutes OPEN Session / FDA4)Cellular, Tissue, and Gene Therapies Advisory Committee April 15, 2021 Meeting Presentation- Clinical / FDA5)June 28, 2023 Approval Letter - LANTIDRA / FDA6)Vertex Presents Positive VX-880 Results From Ongoing Phase 1/2 Study in Type 1 Diabetes at the American Diabetes Association 83rd Scientific Sessions / BUSINESS WIRE

8426.

コロナ入院患者の他疾患発症、インフルと比較

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が重症化した人は、急性期後も心血管疾患、神経疾患、精神疾患、炎症性疾患や自己免疫疾患などを発症するリスクが高まり、Long COVIDとして問題になっている。しかし、それはほかの感染症と比較した場合にも、リスクが高いと言えるのだろうか? カナダ・トロント大学のKieran L Quinn氏らはカナダのオンタリオ州において、臨床データベースと医療行政データベースをリンクさせた集団ベースのコホート研究を実施し、研究結果はJAMA Internal Medicine誌オンライン版2023年6月20日号に掲載された。 2020年4月1日~2021年10月31日にCOVID-19で入院した全成人を試験群とし、「過去にインフルエンザで入院」「過去に敗血症で入院」した人を対照群とした。さらにパンデミック中に治療パターンや入院の閾値が変化した可能性を考慮するため「期間中に敗血症で入院」も対照群に加え、年齢、性別、過去5年内の肺炎による入院、COVID-19ワクチン接種状況などの交絡因子を調整した。 アウトカムは入院後1年以内の虚血性および非虚血性の脳血管障害、心血管障害、神経障害、関節リウマチ、精神疾患など、事前に規定した13疾患の新規発症だった。 主な結果は以下のとおり。・試験群として期間中のCOVID-19入院:2万6,499例、対照群として過去にインフルエンザで入院:1万7,516例、過去に敗血症で入院:28万2,473例、期間中に敗血症で入院:5万2,878例が登録された。年齢中央値75(四分位範囲[IQR]:63~85)歳、54%が女性だった。・COVID-19入院は、インフルエンザ入院と比較して、入院1年以内の静脈血栓塞栓症(VTE)の発症リスク上昇と関連していた(調整ハザード比:1.77、95%信頼区間:1.36~2.31)。しかし、インフルエンザまたは敗血症コホートと比較して、その他の規定された13疾患の発症リスクは上昇しなかった。 研究者らは「COVID-19入院後は、他疾患の発症リスクが高まると考えられるが、その程度はVTEを除けば他感染症と同じであった。このことは、COVID-19の急性期以降のアウトカムの多くは、SARS-CoV-2感染による直接的な結果ではなく、入院を必要とする重症の感染症に罹患したことに関連している可能性がある」としている。

8427.

他の睡眠薬からレンボレキサントへの切り替え効果~SLIM研究

 ほりこし心身クリニックの堀越 翔氏らは、他の睡眠薬からデュアルオレキシン受容体拮抗薬レンボレキサント(LEB)への切り替えによる有効性および安全性を評価するため、本研究を行った。その結果、他の睡眠薬からLEBに切り替えることで、ベンゾジアゼピン(BZD)、Z薬に関連するリスクが低下する可能性が示唆された。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2023年5月30日号の報告。 対象は2020年12月~2022年2月に、ほりこし心身クリニックを受診した不眠症患者61例。アテネ不眠症尺度(AIS)、エプワース眠気尺度(ESS)、Perceived Deficits Questionnaire-5 item(PDQ-5)を含む診療記録から得られた臨床データを分析した。切り替え前の睡眠薬には、BZD、Z薬、スボレキサント、ラメルテオン、ミルタザピン、トラゾドン、抗精神病薬を含めた。主要アウトカムは、LEBへの切り替え3ヵ月後のAISスコアの平均変化とした。副次的アウトカムは、LEBへの切り替え3ヵ月後のESSスコアおよびPDQ-5スコアの平均変化とした。また、切り替え前後のジアゼパム換算量の比較も行った。 主な結果は以下のとおり。・LEBへの切り替え後3ヵ月間、平均AISスコアの減少が認められた。 【1ヵ月後】-2.98±5.19(p<0.001) 【2ヵ月後】-3.20±5.64(p<0.001) 【3ヵ月後】-3.38±5.61(p<0.001)・平均ESSスコアは、切り替え3ヵ月間で有意な変化が認められなかった。 【1ヵ月後】-0.49±3.41(p=0.27) 【2ヵ月後】0.082±4.62(p=0.89) 【3ヵ月後】-0.64±4.80(p=0.30)・平均PDQ-5スコアは、切り替え3ヵ月間で有意な改善が認められた。 【1ヵ月後】-1.17±2.47(p=0.004) 【2ヵ月後】-1.05±2.97(p=0.029) 【3ヵ月後】-1.24±3.06(p=0.013)・総ジアゼパム換算量の有意な減少が観察された(ベースライン時:14.0±20.2、切り替え3ヵ月後:11.3±20.6、p<0.001)。

8428.

fruquintinib、難治転移大腸がんに有効/Lancet

 難治性の転移を有する大腸がんの治療において、VEGFR-1、2、3を標的とする経口チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)fruquintinibはプラセボと比較して、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が有意に長く、安全性も良好であることが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのArvind Dasari氏らが実施した「FRESCO-2試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年6月15日号で報告された。14ヵ国124施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 FRESCO-2試験は、日本を含む14ヵ国124施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年8月~2021年12月の期間に患者の登録が行われた(中国・HUTCHMEDの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上(日本は20歳以上)、組織学的または細胞学的に転移を有する大腸がんと診断され、現在承認されているすべての標準的な細胞障害性抗がん剤および標的薬による治療を受け、トリフルリジン・チピラシルまたはレゴラフェニブ、あるいはこれら双方による治療で病勢が進行または忍容性のない患者であった。 被験者は、最良の支持療法(BSC)に加え、fruquintinib(5mgカプセル)またはマッチさせたプラセボを、28日を1サイクルとして1~21日目に1日1回経口投与する群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、OS(無作為化から全死因死亡までの期間)であった。QOLデータの解析が進行中 691例が登録され、fruquintinib群に461例、プラセボ群に230例が割り付けられた。全体の年齢中央値は64歳(四分位範囲[IQR]:56~70)で、436例(63%)がRAS遺伝子変異を、495例(72%)が肝転移を有していた。全身療法による前治療のライン数中央値は4(IQR:3~6)であり、502例(73%)が3ライン以上の前治療を受けていた。 解析の結果、OS中央値は、プラセボ群の4.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.0~5.8)に対し、fruquintinib群は7.4ヵ月(6.7~8.2)と有意に延長した(ハザード比[HR]:0.66、95%CI:0.55~0.80、p<0.0001)。 また、PFSは、プラセボ群の1.8ヵ月(95%CI:1.8~1.9)に比べ、fruquintinib群は3.7ヵ月(3.5~3.8)であり、有意差が認められた(HR:0.32、95%CI:0.27~0.39、p<0.0001)。 客観的奏効率は、fruquintinib群が2%、プラセボ群は0%(p=0.059)と両群間に有意な差はなかったが、病勢コントロール率はそれぞれ56%、16%(p<0.0001)とfruquintinib群で有意に優れた。奏効期間中央値はそれぞれ10.7ヵ月、0ヵ月だった。 Grade3以上の有害事象は、fruquintinib群が63%(286/456例)、プラセボ群は50%(116/230例)で発現した。fruquintinib群で最も多かったGrade3以上の有害事象は、高血圧(14%)であり、次いで無力症(8%)、手足症候群(6%)であった。各群で1例ずつ治療関連死が認められ、fruquintinib群は腸管穿孔、プラセボ群は心停止によるものだった。 著者は、「現在、QOLデータの解析が進行中で、これによりこの患者集団におけるfruquintinibの臨床的有用性の確立がさらに進むと考えられる」としている。また、「2ライン以上の治療が無効であった患者に対する至適な逐次治療戦略を決定するにはさらなる研究を要する」と指摘している。

8429.

第154回 小児科の病床不足で医療現場が逼迫、感染症対策の重要性が明らかに

<先週の動き>1.小児科の病床不足で医療現場が逼迫、感染症対策の重要性が明らかに2.マイナンバーカードと健康保険証の一体化に向けて推進本部を設置/厚労省3.後期高齢者医療制度の支援金が過去最大の6.5兆円へ、現役世代の負担増/厚労省4.救急車出動件数の増加に対応 新たな運用方法とアラート導入へ/東京消防庁5.後発薬の政府目標見直し、薬剤師・薬局の役割を強化、パブリックコメント募集/厚労省6.全国で相次ぐコロナ検査の不正、悪質な事業者が検査件数を水増し1.小児科の病床不足で医療現場が逼迫、感染症対策の重要性が明らかに6月下旬、全国で小児科の病床がひっ迫し、小児の入院患者数が急増していることが報じられている。千葉市の中核病院の千葉市立海浜病院では、RSウイルス感染症に感染した子供の症状が悪化し、入院するケースが増加、病床の稼働率は9割前後のため、受け入れ制限を余儀なくされている。沖縄でも新型コロナウイルスの感染拡大により小児医療が限界に近付き、重点医療機関で休職する医療従事者が増加、病棟が逼迫している。医師会や県立病院の関係者は、医療現場が逼迫している状況を訴え、基礎疾患を持つ人々を守るために全体的な感染対策が必要であると呼びかけている。各地では、小児科の病床不足や医療現場の逼迫が深刻な課題であり、感染症対策の重要性が浮き彫りになっている。参考1)RSウイルス感染症 症状悪化で入院急増 小児科病床ひっ迫 千葉(NHK)2)小児科パンク寸前 コロナに加え、子の感染症が流行 沖縄 PICU満床 入院先見つからず(琉球新報)3)コロナ拡大で小児医療が限界間近に 重点病院の医療従事者565人も休職で現場が逼迫 県医師会、緊急会見で感染対策を呼び掛ける(同)2.マイナンバーカードと健康保険証の一体化に向けて推進本部を設置/厚労省加藤厚生労働大臣は、マイナンバーカード(マイナカード)と健康保険証の一体化について問題を解決するために、「オンライン資格確認利用推進本部」を設置することを明らかにした。情報登録の正確性や医療費の取り扱いなどの対策を進める予定で、高齢者施設の入所者にも対応することを検討する。また、厚生労働省はオンラインで資格確認するための推進本部を設置、迅速かつ正確なデータ登録やトラブル対応に取り組むことを発表した。マイナカードに関連するトラブルについて、政府は、デジタル庁と厚労省、総務省が共同して「マイナンバー情報総点検本部」を6月に設置し、秋までに全データの点検を行う予定。加藤大臣は国民の不安を解消し、安心してマイナカードを利用できる環境を整備すると述べている。参考1)第1回 マイナンバー情報総点検本部(デジタル庁)2)第1回 オンライン資格確認利用推進本部(厚労省)3)“保険証廃止を円滑に” 厚労相を本部長とする推進本部 設置(NHK)4)「オンライン資格確認利用推進本部」を設置へ マイナ保険証の利用環境の整備に向け 厚労省(CB news)3.後期高齢者医療制度の支援金が過去最大の6.5兆円へ、現役世代の負担増/厚労省厚生労働省は6月30日、2021年度の後期高齢者医療制度の財政状況を発表した。現役世代からの支援金は6兆5,266億円で過去最大となった。今後は、団塊の世代が後期高齢者になることから、医療費はさらに増える見通し。2021年度の後期高齢者への医療費支出は16兆6,129億円で、前年度比5.6%増加した。保険給付費は15兆8,079億円で3.1%増加。公費による支援金は収入の約半分を占めているが、国庫支出金は5兆3,354億円で1%減少。都道府県支出金は1兆3,530億円で2.8%増加し、市町村負担金は1兆2,830億円で1%増加。75歳以上の高齢者が支払う保険料は1兆3,893億円で、収入の8%程度を占めている。残りは現役世代の加入している健康保険組合や国民健康保険からの交付金で4割ほどを負担している。2022年5月末時点の75歳以上の被保険者は1,853万人で、5年前より170万人ほど増加している、今後はさらに高齢者人口の増加に伴い、現役世代の負担増が見込まれている。参考1)令和3年度後期高齢者医療制度(後期高齢者医療広域連合)の財政状況について(厚労省)2)後期高齢者医療、現役からの支援金最大、21年度6.5兆円(日経新聞)4.救急車出動件数の増加に対応 新たな運用方法とアラート導入へ/東京消防庁東京消防庁の救急車出動件数が、昨年の過去最多を超えるペースで増加していることが明らかとなった。増加要因としては、行動制限の緩和による外出増や熱中症などが挙げられる。その結果、救急車の到着が遅れる事態が発生しており、同庁は、緊急性の高い通報に迅速に対応するため、7月1日から新たな救急車の運用方法を導入すると発表した。新たな救急車運用では、重症対応救急小隊を設置し、緊急性の高い傷病者に優先的に対応する救急車を配置する予定。今年の救急出場件数は、6月25日時点で過去最多のペースで増加しており、同庁は適正な利用を呼びかけている。また、救急車逼迫アラートを導入し、状況を周知することで適切な利用を促す取り組みも行う予定。参考1)令和5年中の救急出場件数が過去最多を超えるペースで増加中!~救急車の適時・適切な利用をお願いします~(東京消防庁)2)「救急車逼迫アラート」開始 出動最多ペース、適正利用を-東京消防庁(時事通信)3)“救急車ひっ迫”ことしも過去最多の去年を超えるペースで増加 東京消防庁が「救急車の新たな運用」あすから開始(日テレ)5.後発薬の政府目標見直し、薬剤師・薬局の役割を強化、パブリックコメント募集/厚労省後発薬の政府目標を金額ベースで見直し、使用促進を図る方針と、薬剤師・薬局の役割を啓発するための「薬と健康の週間」実施が厚生労働省から発表され、後発医薬品の使用促進に関して、政府目標が2023年度中に見直されることが明らかになった。この新目標に基づき、各都道府県は第4期医療費適正化計画の目標を24年度中に設定する見込み。厚労省は、医薬品の迅速かつ安定した供給を基本としながら、有識者検討会の議論を踏まえ、目標を見直すことを決めた。後発薬の使用促進に関しては、各都道府県の80%以上の数量シェアを23年度末までに達成する目標が定められており、現在29道県が達成している。また、厚労省は、2024年度からの第4期医療費適正化計画に向けた基本方針の改正案について、パブリックオピニオンを募集している。改正案では、効果が乏しいとされる医療や地域差のある医療資源の投入に対して取り組みを進めるほか、後発医薬品の使用促進のために保険者などが差額通知を実施する支援、フォーミュラリに関する情報を医療関係者に周知する取り組みが追加されている。意見募集は7月4日まで行われ、中旬に告示する予定。参考1)第四期医療費適正化基本方針について(厚労省)2)後発薬の政府目標「金額ベース」に、年度内に見直し さらなる使用促進へ(CB news)3)後発医薬品の使用推進、薬剤師・薬局の役割を啓発-厚労省、10月に「薬と健康の週間」実施(同)4)医療費適正化の基本方針、7月中旬告示へ 厚労省、意見募集開始(同)5)医療費適正化に関する施策についての基本的な方針の全部を改正する件(案)に関する御意見の募集について(政府)6.全国で相次ぐコロナ検査の不正、悪質な事業者が検査件数を水増し新型コロナウイルスの感染拡大防止のため政府が行なった感染対策の一環で行われた無料検査事業を巡って不正を行う業者が問題となっているが、検査業者の内部関係者により不正の実態が明らかとなった。大阪府の委託先では、過去の検査事業で億単位の補助金を受け取ったとされ、不正の実態が産経新聞の報道で明るみにされた。大阪府内の無料検査場では2年間、無料のPCR検査や抗原検査を受けるために訪れた患者に対して行われていた。もともと検査場ではPCR検査は受検者の唾液を専用施設に送り、最短2日で結果を通知していた。典型的な不正な手口は、「PCR検査だけ受けた人が抗原検査も受けたと偽り、検査件数を水増し、補助金を申請する」ことだった。内部関係者は自分の検査場ではほとんどなかったとしながらも、別の検査場では不正が珍しくなかったと告白した。さらに、抗原検査では、現場で結果が判明する。申込書は府側に提出せず、1週間ごとに件数のみを報告していた。内部関係者によると、抗原検査の申込書にPCR検査を受けた人の情報を勝手に記入し、架空の抗原検査結果を報告していたという。府側の担当者も抗原検査は水増しの痕跡が残りにくいと明かしている。大阪府は不正に関する情報を受け、15事業者の立ち入り調査を行った結果、7事業者で補助金の不正申請が確認され、補助金42億円余りを不交付とし、約11億円の返還となった。同様の不正行為は東京都でも認められており、6月2日に11の事業者が都に総額約183億円の補助金を不正に請求していたと発表している。6月19日には、埼玉県の無料検査事業で抗原検査を実施したように装い、補助金をだまし取ったとして、詐欺容疑で社長ら2人が逮捕された。不正請求の総額は7千万円以上とみられており、県側は補助金の返還を求めている。参考1)コロナ無料検査の不正「当たり前」 公金食い物に…内部関係者が明かす水増しの実態(産経新聞)2)抗原検査やってないのに…新型コロナ検査補助金だまし取る、容疑の社長ら逮捕 不正請求の総額7千万円超か(埼玉新聞)

8430.

心臓死ドナー心を用いた心臓移植成績(解説:許俊鋭氏)

 本論文で示されたRCT臨床試験は、TransMedics社のポータブル体外循環臓器保存システム(Organ Care System:OCS)を使用して保存した、心臓死ドナー心を用いた心移植(DCD群)の脳死ドナー心移植(DBD群)に対する非劣性を、多施設非盲検ランダム化比較試験で証明することを目的として実施された。DCD群(80例)とDBD群(86例)のリスク調整後の6ヵ月生存率(94% vs.90%)の比較で、DCD群の非劣性が証明された。また、心移植30日の時点での患者1人当たりの心移植グラフトに関連する重篤な有害事象数は2群間で差はなかった。 心臓移植成績の向上により世界的に心臓移植の需要は増加しており、ドナー心の提供拡大は世界共通の喫緊の課題である。日本における2022年1月時点の心移植希望登録者数920名に対して2022年の年間心移植数は79件(8.6%)にすぎず、Status 1の移植待機期間は1,769日(4.8年)と長期間に及ぶ。OCSはDBDドナー心の長時間保存を可能とし、従来の保存限界とされていた4時間を大幅に延長(最長17時間の報告有)させ、ドナー心の長距離移送を可能としたのみならず、マージナルドナー心の使用可能性を拡大した。さらに本試験で報告されたように、OCSを温虚血時間の長いDCD心移植に使用することで、英国・Royal Papworth病院の報告では移植率を48%増加させた(Messer S, et al. J Heart Lung Transplant. 2020;39:1463-1475.)。一方、今日のDCDドナーからのドナー心採取においては、ドナー心の生命維持装置の中止(withdrawal of life support therapy:WLST)が必要で、WLSTが法的に日本で容認されるか否かが、日本におけるDCDドナー心を用いた心移植導入の今後の課題である(小野稔. 移植. 2023;58:1-10)

8433.

真性多血症の治療薬に革新的な新技術/ファーマエッセンシアジャパン

 真性多血症(PV)の治療薬ロペグインターフェロンアルファ-2b(商品名:ベスレミ)の発売に合わせ、ファーマエッセンシアジャパンは「真性多血症の治療における新たな選択肢」と題して、都内でメディアセミナーを開催した。 ロペグインターフェロンアルファ-2bは、真性多血症の治療薬(既存治療が効果不十分または不適当な場合に限る)としては初のインターフェロン製剤であり、2023年年3月27日に製造販売承認を取得、5月24日に薬価収載、6月1日より販売を開始している。 セミナーでは、同社の概要や今後の展開のほか、同社のコアテクノロジーである“部位選択的モノペグ化技術”の概要の説明のほか、専門医による真性多血症のレクチャーが行われた。真性多血症の治療薬に部位選択的モノペグ化技術 真性多血症は、骨髄増殖性腫瘍の1種で、骨髄の造血幹細胞の異常により、赤血球が過剰に産生される希少な血液疾患。真性多血症の治療では、血栓症を予防することが一番の目標とされている。血栓症の予防は、瀉血や抗血小板療法、細胞減少療法、分子標的治療薬などによりヘマトクリット値をコントロールすることで、長足の進歩を遂げてきた。しかしその一方で、真性多血症の症状のコントロールや疾患進行の阻止などで、依然としてアンメット・メディカル・ニーズは存在し、今回の治療薬がその隙間を埋めるものと期待されている。 今回のロペグインターフェロンアルファ-2bに使われている、“部位選択的モノペグ化技術”は、タンパク質分子内の特定のアミノ酸を、ポリエチレングリコール(PEG)という高分子化合物によって、選択的に修飾できるようにした革新的な技術で、このペグ化を行ったタンパク質医薬品は体内における分解が抑制され、半減期の延長と長時間にわたる効果の持続につながりうる、薬物動態/薬力学的特性を示すことができるようになる。 同社代表取締役社長の米津 克也氏は、今後、白血病などの血液疾患治療薬への展開を目指すと期待を寄せている。真性多血症の患者数は年間約800人程度だが推定患者数は倍 基調講演として「真性多血症治療の新たな地平」をテーマに桐戸 敬太氏(山梨大学医学部血液・腫瘍内科 教授)が、真性多血症の診療やロペグインターフェロンアルファ-2bへの期待を説明した。 真性多血症とは、造血幹細胞に生じた異常で骨髄系細胞が過剰増殖する骨髄増殖性腫瘍(MPN)の1種とされている。その症状として、頭痛、めまい、サイトカインに起因する倦怠感、かゆみや微熱が挙げられる。 真性多血症の患者数は、年間約800人程度(血液学会疾患登録データ)が発症する疾患であることがわかっているが、推定患者数はこの倍の約1,500人と予想されている。発症年齢としては60代が一番多いが、若年でも多くの患者がいる。 真性多血症の合併症としては、大きく以下の3つがある。1)短期的には血栓・出血の発生により心筋梗塞や深部静脈血栓などが発生する。その合併率は4~8.5%とされている。2)長期的には骨髄線維症や白血病への移行がある。5~10年で10%が骨髄線維症に進展し、さらに10年で10~20%が急性白血病に移行する。参考までに生存率は、5年生存率で92.4%、10年生存率で83.8%との報告があり、死亡原因では白血病への移行が一番多い。3)全身のかゆみ、倦怠感、食欲低下、脇腹の痛み、寝汗などの全身症候とそれに伴う生活の質(QOL)の低下により日常生活に支障を及ぼす。 そして、現行の真性多血症治療のゴールは血栓・出血の合併を防ぐこととされている。具体的な治療としては、瀉血、アスピリン投与、細胞減少療法などが各病態のステージによって行われ、患者には全身症候を軽減し、QOLを回復し、白血病や骨髄線維症への進行を止める治療が行われている。 また、同氏は、真性多血症患者が望む治療についてアンケート結果を示し、「疾患の進行を遅らせること」「血栓の予防」「病状の改善」の希望が多いことを挙げた。従来は進行抑制の治療薬は存在せず、患者の治療への思いと現実の治療にギャップがあることをうかがわせた。 最後に今回発売されたロペグインターフェロンアルファ-2bの可能性について触れ、本治療薬のIII相試験である“PROUD-PV study”の結果を示し、薬剤の使用により悪性の変異細胞が減少していること、国内試験の29例でも同様の結果がみられたことを報告した。また、安全性についても重篤な副作用はなかったことを報告し、レクチャーを終えた。

8434.

高齢者糖尿病診療ガイドライン2023、薬物療法のエビデンス増え7年ぶりに改訂

 日本老年医学会・日本糖尿病学会の合同編集である『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』が5月に発刊された。2017年時にはなかった高齢者糖尿病における認知症、サルコペニア、併存疾患、糖尿病治療薬などのエビデンスが集積したことで7年ぶりの改訂に至った。今回、日本老年医学会の編集委員を務めた荒木 厚氏(東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科)に『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』の改訂点について話を聞いた。 高齢者糖尿病とは、「65歳以上の糖尿病」と定義されるが、医学的な観点や治療、介護上でとくに注意すべき糖尿病高齢者として「75歳以上の高齢者と、身体機能や認知機能の低下がある65~74歳の糖尿病」と、より具体的な定義付けもなされている。高齢者糖尿病診療ガイドライン2023の改訂ポイント6点 日本老年医学会、日本糖尿病学会の両学会は上記のような高齢者糖尿病患者における「低血糖による弊害」「認知症などの併存疾患の影響」などの課題解決のために2015年に合同委員会を設立、その2年後に高齢者糖尿病診療ガイドライン2017年版を発刊した。当時は治療薬のエビデンスなどが乏しかったが、国内外の新しいエビデンスが集積したこと、新薬が登場したこと、そして併存疾患に対する対策や治療目的が明確になったことから、今回6年ぶりの発刊となった。そのような背景のある『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』について、荒木氏は改訂ポイント6点を示した。<注目すべき6つのポイント>1)2017年時点では得られていなかった認知症、フレイル、サルコペニア、悪性腫瘍、心不全などの併存疾患やmultimorbidityに関するエビデンスが記載されている、Question・CQ(Clinical Question)に反映2)血糖コントロール目標を設定するためのカテゴリー分類を行うことができる認知・生活機能質問票(DASC-21)を掲載[p.228付録3]3)運動療法が糖尿病のみならず認知機能やフレイルにも良い影響を与える4)薬物療法ではSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の心血管疾患や腎イベントに対するリスク低減効果に関するエビデンスも集積5)2型糖尿病患者の注射のアドヒアランス低下の対策として、インスリン治療の単純化を記載6)社会サポート制度の活用 このほか、「高齢者糖尿病患者の背景・特徴については第I章に、治療については第IX章p.151~170に掲載されているので一読してほしい」とし、「治療の基本的な内容は『糖尿病治療ガイド2022-2023』にのっとっているので、両書を併せて読むことが理解につながる」とも話した。インスリン治療の単純化はアドヒアランス向上だけでなく、低血糖を減らす 高齢者の場合、腎・肝機能低下による薬剤の排泄・代謝遅延から有害事象を来しやすい。そのため低血糖をはじめ、これまで注意点が強調されることが多かった。一方で、高齢者糖尿病ではポリファーマシーになりやすく、さらに認知機能障害のため服薬アドヒアランスの低下を来しやすい。そのため減薬だけでなく、複雑な処方をシンプルにする“治療の単純化”を行うことが必要になる。2型糖尿病のインスリン治療においても注射のアドヒアランス低下の対策としてインスリン治療の単純化を行う研究が行われている。 これについて同氏は「たとえば、インスリン注射を1日複数回注射している2型糖尿病患者の場合、メトホルミン、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬などを追加することでインスリン投与回数を1日1回の持効型インスリンのみにすることが治療の単純化となる。このインスリン治療の単純化は、注射回数を1回にしても血糖コントロールは変わらない、もしくは改善し、インスリンの単位数が減ることで低血糖が減ることも報告されてきているため、インスリン治療の単純化は低血糖回避という観点からも有用であると考える。また、複数回のインスリン注射を週1回のGLP-1受容体作動薬やインスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤に変更にすることも治療の単純化となり、低血糖を減らすことが可能となる」とコメント。「これは高齢者のインスリン治療法の大きな進歩」だとも述べ、また、「絶食の不要な経口のGLP-1受容体作動薬において種々の製剤が開発中であり、今後のインスリン治療の単純化にも役立つ可能性がある」ともコメントした。高齢者糖尿病診療ガイドラインにSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬のCQ追加SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は心・腎イベントに関するCQが『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』に新たに盛り込まれた。―――CQ IX-2:高齢者糖尿病でSGLT2阻害薬は心血管イベントを抑制する可能性がある【推奨グレードB】。CQ IX-3:高齢者糖尿病でSGLT2阻害薬は複合腎イベントを抑制する可能性がある【推奨グレードB】。CQ X-1:高齢者糖尿病でGLP-1受容体作動薬は心血管イベントを抑制する【推奨グレードA】。CQ X-2:高齢者糖尿病でGLP-1受容体作動薬は複合腎イベントを抑制する可能性がある【推奨グレードB】。――― これについて「高齢者糖尿病においてもSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬の使用は心・腎イベントのリスクや心不全による再入院リスクを低減させるエビデンスがあり、additional benefitがあることが明らかになった。したがって、この両剤はこれらの心・腎に対するベネフィットと副作用のリスクのバランスを考慮しながら使用する必要がある」と同氏はコメントした。高齢者糖尿病診療ガイドライン2023でマルチコンポーネント運動を推奨 高齢者糖尿病でも若年者同様に運動療法は推奨され、血糖コントロールのみならず脂質異常症、高血圧、生命予後などの改善に有効とされ、『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』でも推奨されている。また、糖尿病のない患者と比べ筋量が減少しやすいため、サルコペニア予防としても重要な位置付けにある。今回、有酸素運動・レジスタンス運動・バランス運動・ストレッチングを組み合わせたマルチコンポーネント運動も推奨されている。ただし、高齢者糖尿病患者が行う際には、年齢や合併症、併存疾患、生活スタイルに合わせることがポイントである。 最後に同氏は、地域社会で高齢者糖尿病患者を支えることが今後より一層求められる時代になることから、『社会サポート制度』(p.217)についても言及し、「認知症然り、糖尿病でも地域で生活を続けていけるように、各自治体で高齢者糖尿病のQOLに寄り添うサービスが設けられている場合がある。たとえば、デイケア、通いの場、訪問看護、訪問栄養指導、訪問薬剤指導がそうであるが、そのようなサービスの存在に踏み込んだことも、本改訂での大きな特徴とも言える」と話した。

8435.

日本人反復性片頭痛に対するフレマネズマブの有用性

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体であるフレマネズマブは、多くの第II相および第III相試験において片頭痛患者に対する有効性および忍容性が確認されている。近畿大学の西郷 和真氏らは、反復性片頭痛(EM)患者を対象とした国際共同第III相試験(HALO EM試験)および日本と韓国で実施された第IIb/III相試験のサブグループ解析を実施し、日本人EM患者におけるフレマネズマブの有効性および安全性を評価した。その結果、フレマネズマブは、日本人EM患者にとって効果的かつ忍容性の高い予防薬であることが確認された。Journal of Pain Research誌2023年5月18日号の報告。 両試験共に、適格基準を満たした患者をベースライン時にフレマネズマブ月1回投与群、フレマネズマブ四半期1回投与群、プラセボ群に1:1:1でランダムに割り付けた。主要エンドポイントは、初回投与12週間後における28日間当たりの平均片頭痛日数のベースラインからの平均変化とした。副次的エンドポイントは、障害や薬物使用などを含むその他の有効性の評価とした。 主な結果は以下のとおり。・日本人EM患者は、HALO EM試験で75例、日韓第IIb/III相試験で301例が含まれた。ベースライン時の治療特性は、両試験で類似していた。・主要エンドポイントのANCOVA分析では、フレマネズマブ月1回投与群および四半期1回投与群のいずれにおいても、プラセボ群と比較し、28日間当たりの平均片頭痛日数の有意な減少が認められた。・最初の4週間における主要エンドポイントのMMRM分析においても、同様の結果が認められ、フレマネズマブの効果発現の早さが示唆された。・副次的エンドポイント分析においても、主要エンドポイントの分析を裏付けていた。・フレマネズマブは、忍容性が高く、日本人EM患者での新たな安全性上の懸念は認められなかった。

8436.

臨床試験で有意差なし、本当に効果なし?/JAMA

 無作為化臨床試験の多くは統計学的に有意でない結果をもたらすが、このような知見は一般的な統計学的枠組みで解釈することは困難とされる。スイス・ジュネーブ大学のThomas Perneger氏らは、尤度比を適用することで、有意でない主要アウトカムの結果のうち、効果なしとする帰無仮説を支持するエビデンスの強度と、事前に規定された有効であるとする対立仮説を支持するエビデンスの強度を推定した。その結果、対立仮説(尤度比<1)が支持されたのは8.9%に過ぎず、91.1%では帰無仮説(尤度比>1)が支持された。研究の成果は、JAMA誌2023年6月20日発行号に掲載された。2021年の有意でないアウトカム169件の横断研究 研究チームは、2021年に主要医学ジャーナル6誌(JAMA、New England Journal of Medicine[NEJM]、PLoS Medicine、BMJ、Lancet、Annals of Internal Medicine)に掲載された無作為化臨床試験の論文130件の、統計学的に有意でない主要アウトカムの結果169件について横断研究を行った。 これら169件の結果について、効果なしとする帰無仮説と、試験プロトコールに記載された有効性の仮説(対立仮説)の尤度比を算出した。また、ベイズの定理を用いて治療が有効でない事後確率を計算した。 尤度比は、これらの仮説に対する支持を定量化するもので、>1の場合は帰無仮説を、<1の場合は対立仮説を支持し、たとえば尤度比5はそのデータが対立仮説の5倍の強度で帰無仮説を支持することを意味する。尤度比10は「強いエビデンス」、100は「決定的なエビデンス」であり、尤度比100以上の場合は一般的な事前信念(prior belief)のレベルでは特定の対立仮説ではなく、帰無仮説が真である事後確率が高いことを示唆する。約7割で強い、約5割で決定的な帰無仮説のエビデンス 130件の論文のうち掲載数が最も多かったジャーナルはJAMA(41件[31.5%])で、次いでNEJM(26件[20.0%])であった。105件(80.8%)は2群の比較試験で、62件(47.7%)は化学物質(薬剤、栄養補助食品、バイオ医薬品、ワクチン)、52件(40.0%)は薬物以外の介入(デバイス、手術、診断法、行動介入など)に関する試験であり、49件(37.7%)は通常治療との比較、45件(34.6%)はactive controlとの、36件(27.7%)はプラセボ/シャムとの比較だった。 解析の結果、有意でない主要アウトカム169件のうち、15件(8.9%)は有効であるとする対立仮説(尤度比<1)を支持し、154件(91.1%)は効果なしの帰無仮説(尤度比>1)を支持した。117件(69.2%)では尤度比が10(強いエビデンス)を超え、88件(52.1%)では100(決定的なエビデンス)を、50件(29.6%)では1,000を上回った。 一方、尤度比とp値との間には弱い相関しかなかった(Spearman相関係数 r=0.16、p=0.45)。また、信頼区間(CI)内に対立仮説の有効性のパラメータが含まれたのは39件(23.1%)で、残り130件(76.9%)では含まれていなかった。95%CI内に両仮説のパラメータの値が含まれる場合の尤度比は0.2~6.2の範囲であり、含まれない場合の範囲は3.0~10146だった。 著者は、「多くの統計学的に有意でない臨床試験の結果は、新たな治療法は効果がないという決定的なエビデンスを示している」と結論し、「主要アウトカムの差に統計学的有意差がない場合は、尤度比を報告することで、臨床試験の解釈が改善される可能性がある」と指摘している。

8437.

急性脳梗塞の血栓除去術、術前ビタミンK拮抗薬は出血リスク?/JAMA

 急性期脳梗塞で血管内血栓除去術(EVT)を受けた患者では、術前のビタミンK拮抗薬(VKA)の使用と術後の症候性頭蓋内出血(sICH)には関連がないが、国際標準比(INR)が1.7を超えるサブグループではVKAの使用はsICH発生のリスクを高めることが、米国・デューク大学医学大学院のBrian Mac Grory氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年6月20日号で報告された。米国594病院の後ろ向きコホート研究 研究グループは、EVTを受ける脳梗塞患者における術前のVKAの使用とアウトカムとの関連を明らかにする目的で、後ろ向きコホート研究を行った(ARAMIS registry[Daiichi Sankyo、Genentech、Janssenの助成で運営]の支援を受けた)。 解析には、米国心臓協会(AHA)のGet With the Guidelines-Stroke(GWTG-Stroke) Programの2015年10月~2020年3月のデータを用いた。対象は、米国の594の病院に入院し、最終健常確認時刻から6時間以内にEVTの施行が選択された大血管閉塞による急性期脳梗塞患者であった。VKA以外の抗凝固薬や抗凝固薬の併用療法を受けた患者は除外した。 主要エンドポイントはsICHの発生であり、病院到着前7日以内のVKAの使用の有無別に評価した。5つの副次エンドポイントにも有意差なし 3万2,715例(年齢中央値72歳[四分位範囲[IQR]:60~82]、女性50.7%)が登録された。このうち3,087例(9.4%)(INR中央値:1.5[IQR:1.2~1.9])が病院到着前にVKAを使用しており、2万9,628例(90.6%)(1.1[1.0~1.1])は使用していなかった。 sICHの発生率は、VKA使用群6.8%(211/3,087例)、非使用群6.4%(1,904/2万9,628例)であり、両群間に有意な差は認められなかった(補正後オッズ比[OR]:1.12[95%信頼区間[CI]:0.94~1.35]、補正後リスク差:0.69%[95%CI:-0.39~1.77])。 また、次の5つの副次エンドポイントにも有意差はみられなかった。(1)36時間以内の生命を脅かす重篤な全身性出血(VKA使用群1.2% vs.非使用群1.0%)、(2)その他の重篤な合併症(5.1% vs.5.0%)、(3)再灌流療法の合併症(12.8% vs.12.2%)、(4)院内死亡(16.2% vs.13.1%)、(5)院内死亡またはホスピスへの転院(27.1% vs.20.6%)。 入院時INRが記録された2,415例のうち、1,585例はINRが1.7以下(INR中央値:1.3[IQR:1.1~1.5])、830例は1.7以上(2.1[IQR:1.9~2.5])であった。sICHのサブグループ解析では、INR 1.7以上の830例におけるsICHの発生率は、VKA使用群が8.3%と、非使用群の6.4%に比べ有意に高率であった(補正後OR:1.88[95%CI:1.33~2.65]、補正後リスク差:4.03%[95%CI:1.53~6.53])のに対し、1.7以下の1,585例では、それぞれ6.7%、6.4%であり、両群間に有意差はなかった(1.24[0.87~1.76]、1.13%[95%CI:-0.79~3.04])。 著者は、「本研究では、EVTを受けることが決まった患者のみを対象としており(EVTを受ける可能性があり、VKA治療を受けている患者全体ではない)、そのため指標イベントバイアス(index event bias)や合流点バイアス(collider bias)が生じる可能性がある。したがって、試験デザインによるバイアスの影響を受けやすく、解釈には注意を要する」としている。

8438.

よくわかる睡眠時無呼吸の診かた,考えかた

睡眠時無呼吸の知識を系統立ててやさしく解説、正しく理解し実践力に繋がる入門書睡眠時無呼吸の知識を、最新のガイドライン・エビデンスを踏まえて解説。Part1から順番に通読すれば、基礎となる確固たる土台ができあがり、その上により深い知識を身に付けられるように工夫されています。すでに診療やケアに携わっている医療者の方については、気になるPartから読み進めても構いません。曖昧であった知識がクリアに整理され、実践に使えるものに進化するでしょう。睡眠時無呼吸の対応に自信がつく、頼れる1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    よくわかる睡眠時無呼吸の診かた,考えかた定価6,050円(税込)判型A5判頁数332頁発行2023年6月著者富田 康弘電子版でご購入の場合はこちら

8439.

第166回 「有給休暇を取得、理由は必要か?」健康問題を抱える人に立ちはだかる壁

国が少子化対策の一環として打ち出した不妊治療の保険適用が2022年4月にスタートして1年以上が経過した。これまで全額自己負担だった人工授精、体外受精、顕微授精は一部条件付きで保険適用となり、従来は1回あたり人工授精で平均約3万円、体外受精では平均約50万円だった医療費が原則3割負担となった。少なくとも、これまで経済的負担の重さゆえに不妊治療をためらっていた人にとってはかなりの福音のはずだろう。実際、不妊治療を行う医療機関ではかなり通院者が増えたとの話も聞く。不妊・不育で悩む人をサポートするセルフサポートグループ「NPO法人 Fine」が2022年7~10月に不妊治療・不育治療を受けている人、あるいはこれから受ける人を対象に実施した「保険適用後の不妊治療に関するアンケート2022」(回答者1,988人)を読むと、その傾向の一端が見えてくる。アンケートでは保険適用になって『良くなった』と感じた回答者は65%、逆に『悪くなった』と感じた回答者が73%で、前者では経済的な負担軽減、後者では医療機関の混雑を回答の主な理由として挙げている。実際、回答者全体に尋ねた診療の待ち時間に関しては、「少し増えた」が36%、「すごく増えた」が27%、「変化はない」が35%とやはり全体としては受診者が増えていることをうかがわせる。また、同アンケートの結果では今受けたい治療を受けられているかとの設問に対しては、半数以上の56%が「はい」と回答しているのに対し、「わからない」が23%、「いいえ」が21%。ちなみに「はい」との回答は年齢が上昇するにつれて低下する。この理由は今回の保険適用で、体外受精と顕微授精での43歳という年齢制限がおそらく起因すると考えられる。賛否という二項対立では語り切れない結果だが、まだ揺らん期ともいえる時期なのでやむを得ない現状とも理解できる。しかし、少なくとも保険適用により経済的負担が軽減され、一部の人にとってはかなりハードルが下がったことや、これに関する報道で不妊治療に関する認知が広まったことなども考え併せれば、社会全体としては一歩前進したのではないかと個人的には考えている。私はこの問題に接すると常に思い出すエピソードがある。それは過去に一般誌で不妊治療特集の一部を担当した際に取材した男性の話だ。この男性は夫婦で不妊治療に取り組んで無事に子供を授かった人だったが、その際の通院の件について次のようなことを言っていた。今も残るメモにある彼の発言を一部不適切な表現を含むかもしれないが、そのまま以下に記す。「何が大変って、通院の理由を職場に説明する時ですよ。上司に『病院に行くので休みます』と言うと、『お前どうした? 何か具合でも悪いのか』と聞かれるんですよ。上司には悪気がなく、むしろ心配して聞いてくれているのはわかりますよ。でも『不妊治療のためです』とはなかなか言いにくいじゃないですか。ざっくり言えば下(シモ)の話ですしね。でもうちの妻のほうがもっと大変だったろうとは思います。妻にも『会社にどう説明した?』と聞きましたが、『うまい事何とかごまかした』と言ってましたよ」不妊治療の場合、排卵日というやや不確定な要素があるため、慢性疾患のような規則的な通院とはいかない。体外受精や顕微授精となると、女性の場合は数日間連続の通院となることもある。職場への説明に対する心理的ハードルは決して低くないはずであり、上司への説明はことさら厄介だろうと想像する。私自身、7年間という短い期間ながら会社員経験で仕えた直接の上司は3人いるが、それぞれの個性は異なり、今考えても話してもよいと思える話題の範囲はこの3人ではかなり異なる。前述のFineのアンケート結果を見ても、保険適用になって「良くなった」と感じている人のうち「仕事と両立しやすくなった」との回答はわずか4%にとどまることを考えれば、やはり対職場では気苦労はあるのだろう。そんな最中、ウィメンズヘルスを中核とする製薬企業オルガノン(本社:米国・ニュージャージー州)の日本法人が主催したワークショップを見学する機会を得た。これは6月が世界不妊啓発月間であることを受けて、2回に分けて行われたもので、1回目は20~30代の社会人が健康課題と向き合える会社制度・環境などについて、2回目は企業人事、組織運営の担当者が健康課題を持つ社員が働きやすい職場環境を実現するための企業対応を話し合ったものだ。私はこのうち2回目を聴講した。会場で話していたのはオルガノン、日本オラクル、東日本電信電話、ライフネット生命保険のいずれも人事・キャリア担当者だ。この4人の議論の中でも私が注目したのはライフネット生命保険の担当者から紹介された同社の特別休暇制度だった。同社には2016年に創設された特別休暇制度として、家族やパートナーの看病などに使える「ナイチンゲール休暇」(3日間)、不妊治療などの通院を目的とした「エフ休暇」(8日間)、さらに2019年度に創設された特定の疾患に罹患した際のナイチンゲールファンド休暇」(10日間)、がんなどの療養と業務の両立支援を目的とした「ダブルエール休暇」(12日間)など、労働基準法に定められた年次有給休暇以外にも多様な休暇制度があるとのこと。私も今回初めてこのことを知って驚いたが、それ以上に頷いたのがこれらの制度を使う際にはまず上司に相談するのではなく、人事担当者に相談するという点だった。このことはごく当たり前のことと思う人もいるだろう。しかし、働く者の多くはどうしても「休暇申請はまず上司に」との固定観念がある。そして過去の私に限らず多くの企業勤務者にとっては、「上司との相性」という壁も常に存在する。この点から考えれば、ライフネット生命保険のようにこれら特別休暇制度の利用時にまず人事が窓口になるならば、ワンクッションが置けてありがたいと思う人は少なくないはずだ。とりわけ法的に定められた年次有給休暇とは異なるこうした休暇制度はあっても取りにくいことはしばしばある。今回私が参加する前に開かれた第1回のワークショップのまとめを事前に目にしたが、その中には「上司が男性の場合、生理休暇が取りにくく、普通の有休として申請」との発言があり、さもありなんと思ったほどである。ただ、そうした状況もちょっとした人事制度の運用の仕方で様変わりすることもある。ただ、前近代的な慣習はまだまだ健在なのも事実だ。実際、このワークショップで日本オラクルの担当者が「私より上の世代にはまだまだ『理由がなければ有休を取得しちゃいけない』という考えがあって…」と発言した際には会場が爆笑の渦に包まれた。私もこれには内心で「休みたいと思ったから有休を取るんであって、『休みたい』こそが理由だろう」と突っ込んでしまった。余談だが、私は会社員1年目に年次有給休暇の10日間を一気に取得した。この時、上司は許可したものの、人事担当の責任者が上司のところに飛んできて「新人社員が有給休暇をすべて消化して、しかも一気に取るなんて前例がない」と言っていたのを耳にし、「は?」と思ったことがある。さて話を戻すが、この不妊治療に関連して厚生労働省が「仕事と不妊治療の両立支援のために」というパンフレットを発刊している。この中に「『仕事と不妊治療の両立支援について』企業アンケート調査結果」として、「貴社では、不妊治療を行っている従業員がいますか」で「はい」が13%、「貴社では、不妊治療を行っている従業員が受けられる支援制度や取組を行っていますか」で「はい」が9%との数字が紹介されている。後者については現状がそうなのだろうと思うが、前者に関して、理由を告げずに治療に取り組んでいる人がいることは容易に想像でき、私は氷山の一角と解釈している。そしてこのことは今回の不妊治療に限らず、すべての健康問題にも言えることだろう。私自身の周囲ですら勤務先に告げずに慢性疾患、それもいわゆる難病の治療に取り組んでいる人を複数知っている。ワークショップでは一瞬、「休む理由が言いやすい会社が良いのか? それとも理由を言わずに休める会社が良いのか?」という言葉も出てきたが、これは健康問題を抱える人にとっては実は深刻な話だ。しかし、これは2項対立ではなく本来は2項両立のはずである。この点は純利益の追求が最大の目的である企業の経営者からすると悩ましい問題かもしれない。それでもなお私はやや厳しい言い方にはなるが、健康問題を抱える人が休暇を取得することに難色を示す経営者には「危機感に欠けている」と言わざるを得ない。よく言われる「少子高齢化」は、ともすると高齢化のほうばかりに目が行きがちだが、実は少子化もかなり深刻である。国立社会保障・人口問題研究所が公表した最新の日本の将来人口推計では、15~64歳のいわゆる現役人口は、2020年時点からの比較で、2025年には約200万人、2040年には約1,300万人も減少する。これまでなんとなく確保できていた社員を頭数上ですら確保できなくなる日がもう目の前に迫っているのだ。そもそも一見健康そうに見える若年世代にも健康上の問題を抱える人は少なくない。やや古いデータになるが、厚生労働省の2007年労働者健康状況調査によれば、男女とも20~30代では2割前後が何らかの持病を抱えている。その意味では企業が従業員の健康問題への支援策を整備することは、もはや喫緊の課題と言ってよいだろう。今回の不妊治療のワークショップでは、かなり先進的な企業事例を耳にしたが、その分だけ私個人は逆に日本全体に漂うライフワークバランスの欠如ぶりのほうに今改めて意識がいってしまっている。この構造のまま日本社会が突き進めば、その先に待っているのはどのような姿だろうか? どの道を行ってもあまり良い姿は想像できない。強いて浮かぶとするならば、水圧に負けて爆縮した潜水艇タイタン、あるいはタイタンが目指した先にあった深海に錆びついて鎮座する豪華客船タイタニック号のいずれかぐらいだ。

8440.

卵アレルギーが不安…、離乳食開始へのアドバイスは?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第4回

卵アレルギーが不安…、離乳食開始へのアドバイスは?講師長野県立病院機構 長野県立こども病院 小児アレルギーセンター長伊藤 靖典 氏【今回の症例】生後4ヵ月の女児。母乳栄養。アトピー性皮膚炎はない。乳幼児健診にて、食物アレルギーが心配なので、鶏卵の摂取をどのように進めたらよいかを相談された。鶏卵摂取の進め方の指導として適切なのはどれか?1.生後4ヵ月でプリックテストや特異的IgE抗体検査を実施し、陽性の場合は除去指導を行う2.生後5~6ヵ月ごろから、卵黄から摂取を開始させる3.リスクが高いので鶏卵は1歳を過ぎてから摂取するように指導する4.食物経口負荷試験にて確認する

検索結果 合計:35667件 表示位置:8421 - 8440