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リアルワールドにおける統合失調症ケアの実際と改善ポイント

 統合失調症患者の臨床転帰を改善するためには、日常診療における治療パターンを理解することが重要なステップとなる。フランス・エクス=マルセイユ大学のGuillaume Fond氏らは、リアルワールドにおける抗精神病薬で治療されている統合失調症患者の長期マネジメントを明らかにするため、本研究を実施した。その結果、統合失調症患者に対するケアにおいて、今後優先すべき事項が浮き彫りとなった。とくに、50歳以上の患者に対する代謝系疾患の予防や18~34歳の患者に対する自殺予防など、特定の集団にさらに焦点を当てる必要がある。また、抗精神病薬の治療継続率は依然として低く、精神科入院率も高いままであることを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年7月21日号の報告。 2012~17年に3回以上の抗精神病薬処方を行った成人統合失調症患者を国民健康データシステムより抽出した。主要評価項目は、実際の処方パターン、患者の特徴、医療利用、併存疾患、死亡率とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者45万6,003例のうち、経口抗精神病薬が96%、第1世代抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)が17.5%、第2世代抗精神病薬LAIが16.1%に処方されていた。・治療開始24ヵ月後の治療継続率は、経口抗精神病薬で23.9%、第1世代抗精神病薬LAIで11.5%、第2世代抗精神病薬LAIで20.8%であった。・治療継続期間の中央値は、経口抗精神病薬で5.0ヵ月、第1世代抗精神病薬LAIで3.3ヵ月、第2世代抗精神病薬LAIで6.1ヵ月であった。・全体として、抗不安薬併用が62.1%、抗うつ薬併用が45.7%、抗けいれん薬併用が28.5%でみられ、これらの薬剤の併用は、女性および50歳以上の患者でより多かった。・脂質異常症は最も頻度の高い代謝系併存疾患であったが(16.2%)、脂質モニタリングは不十分であった。・代謝系併存疾患は、女性でより頻繁に認められた。・標準化患者死亡率は、2013~15年の間は高いままであり(フランス一般集団の3.3~3.7倍)、平均余命は、男性で17年、女性で8年短縮されていた。・主な死亡原因は、がん(20.2%)と心血管疾患(17.2%)であり、18~34歳の死亡の25.4%は自殺であった。

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医師のSNS利用、診療に関する情報収集に使っているのは?/1,000人アンケート

 パソコンやスマートフォンの電源を入れて初めに起動するアプリについて、最近では、メールではなくFacebookやX(旧:Twitter)などのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)からという人も多い。私たちの生活に浸透したSNSについて、医師はどのSNSツールを、どのように使っているのか、会員医師1,000人にアンケート調査を行った。アンケートは、8月11日にCareNet.comのWEBアンケートシステムで全年代、全診療科に対して実施した。また、2019年にも同様のアンケートを実施していることから、今回の結果と比較した。医師のSNS利用、Threads、TikTokは不人気? 質問1で会員医師に「SNSの利用状況」を6つの代表的なツール別 (Facebook、X、Instagram、YouTube、Threads、TikTok)に聞いたところ、「書き込み/投稿している」SNSツールはX(154人)、Facebook(130人)、Instagram(118人)の順で多かった。また、「閲覧のみ」のSNSツールはYouTube(706人)、X(341人)、Facebook(333人)の順で多かった。そのほか「利用している」の「書き込み/投稿」「閲覧」を合わせたものではYouTube、X、Facebookの順で多かった。SNSツールでTikTok、新たに登場したThreadsは約90%の会員医師が利用していなかった。 質問2で「診療に関する情報を集める目的で使っているSNS」について会員医師に聞いたところ(複数回答)、利用していない(550人)が一番多かったが、使用されているSNSツールではYouTube(272人)が一番多く、次にX(201人)、Facebook(107人)と続いた。 質問3で「診療に関する情報を集める目的で最も使っているSNS」を会員医師に聞いたところ(単回答)、「利用していない」(575人)が一番多かったが、使用されているSNSツールではYouTube(186人)が一番多く、次にX(152人)、Facebook(56人)と続いた。 年代別の調査について20・30代の会員医師(n=335)では、「書き込み/投稿している」SNSツールはX(85人)、Instagram(73人)、Facebook(43人)の順で多かった。また、「閲覧のみ」のSNSツールはYouTube(258人)、X(158人)、Facebook(154人)の順で多かった。 40代の会員医師(n=209)では、「書き込み/投稿している」SNSツールはX(25人)、YouTube(25人)と同率で、次にFacebook(24人)の順で多かった。また、「閲覧のみ」のSNSツールはYouTube(145人)、Instagram(68人)、X(56人)の順で多かった。 50代の会員医師(n=240)では、「書き込み/投稿している」SNSツールはFacebook(25人)、YouTube(21人)、X(19人)の順で多かった。また、「閲覧のみ」のSNSツールはYouTube(171人)、Facebook(67人)、X(66人)の順で多かった。 60代以上の会員医師(n=216)では、「書き込み/投稿している」SNSツールはFacebook(26人)、YouTube(23人)、Instagram(15人)の順で多かった。また、「閲覧のみ」のSNSツールはYouTube(132人)、Facebook(46人)、X(44人)の順で多かった。若い医師のSNS利用、Instagramが多い 前回2019年の調査との比較で4つのSNSツール(Facebook、X、Instagram、YouTube)の利用状況では、「書き込み/投稿している」SNSツールで今回伸びていたのはX、Instagram、YouTubeでの3ツールで、「閲覧のみ」ではFacebook、X、Instagram の3ツールで伸びていた。「利用していない」は全部のSNSツールで減少していた。 年齢別でみると、20・30代の会員医師では「書き込み/投稿している」SNSツールでXとInstagramが約2倍近く伸びていた。40代の会員医師ではほぼ前回と同じようなSNS利用状況だった。50代の会員医師では「書き込み/投稿している」SNSツールでXが約2倍、YouTubeが約8倍の伸びをみせていた。60代以上の会員医師では「書き込み/投稿している」SNSツールでInstagramが約2倍近い伸びをみせていた。 「診療で最も使用するSNS」では、前回に比べInstagramが大きく伸びていた(2.0%→26.0%)。また、「使用しない」はほとんど変化がなかった(57.0%→57.5%)。 最後に自由記入で会員医師に「よく使うSNSとその理由、診療で役立つアカウント、注目している医療者などのSNSに関するエピソード」について聞いたところ、以下のような意見があった。【SNSに肯定的な会員医師のご意見】・SNSでは簡潔にまとめられていることが多く、保存しやすい〔整形外科〕・コロナ後遺症、補聴器などで役立つコンテンツが多い〔耳鼻咽喉科〕・SNS上の海外医師の外科手術動画は勉強になる〔脳神経外科〕・患者の考え方や理解に役立つ〔小児科〕【SNSに否定的な会員医師のご意見】・信頼性に不安があるので、SNSからは専門的な情報は得ていない〔内科〕・SNSそのものを利用していない〔血液内科〕・SNSの発信は誤った情報が多い〔臨床研修医〕・SNSに興味がない〔眼科〕【会員医師が参考しているSNSサイトやアカウント】・YouTubeで平島 修氏の「フィジカルクラブちゃんねる」をみている〔脳神経外科〕・YouTubeは専門領域でも勉強になる配信をされていることが多く、「心電図マイスターチャンネル」はよく利用している〔循環器内科〕・ヒロ医師ブログ初心者(Xアカウント:@doctor_hhm)をフォロー〔消化器内科〕・YouTubeの「メンズNs」は患者さんに説明するのに平易な言葉で解説してくれるのでみている〔膠原病・リウマチ科〕アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。SNSの利用状況

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ER+/HER2-乳がん、Ki-67と21遺伝子再発スコアの関連

 エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)乳がんにおいて、21遺伝子再発スコア(RS)高値とKi-67高値はどちらも予後不良因子であるが、これらのバイオマーカーによる違いが指摘されている。今回、韓国・Hallym UniversityのJanghee Lee氏らは、ER+/HER2-乳がん患者におけるKi-67とRSとの関連、Ki-67と無再発生存期間(RFS)との関連を調べた。その結果、Ki-67とRSに中等度の相関が観察され、RSの低い患者においてKi-67高発現がsecondary endocrine resistanceリスク上昇と関連していた。JAMA Network Open誌2023年8月30日号に掲載。化学療法なしの低リスクER+/HER2-乳がん患者でKi-67高値が再発と関連 本コホート研究は、韓国の2つの病院で2010年3月~2020年12月に21遺伝子RS検査を受け、ER+/HER2-乳がんの治療を受けた女性を対象とした。Ki-67とRFSとの関連はCox比例ハザード回帰モデル、Ki-67とsecondary endocrine resistanceとの関連はバイナリロジスティック回帰モデルを用いて検討した。Ki-67は20%以上を高発現、RS 25以下を低リスクとした。secondary endocrine resistanceは、術後内分泌療法開始2年以降の再発および5年の術後内分泌療法終了後1年以内の再発と定義した。 ER+/HER2-乳がん患者におけるKi-67とRSとの関連を調べた主な結果は以下のとおり。・対象患者2,295例(平均年齢:49.8歳、標準偏差:9.3歳)のうち、1,948例(84.9%)が低リスク、1,425例(62.1%)がKi-67低発現であった。追跡期間中央値は40ヵ月(範囲:0~140ヵ月)。・RSとKi-67は中等度の相関を示した(R=0.455、p<0.001)。・Ki-67低発現患者のうち94.1%は低リスクだったが、Ki-67高発現患者では低リスクは69.8%だった。・低リスク患者では、Ki-67によってRFSが有意に異なっていた(低値98.5% vs.高値96.5%、p=0.002)。・化学療法なしの低リスク患者1,807例では、Ki-67高値が再発と独立して関連していた(ハザード比:2.51、95%信頼区間[CI]:1.27~4.96、p=0.008)。・3年以降の再発率はKi-67によって有意に差があった(低値98.7% vs.高値95.7%、p=0.003)が、3年以内の再発率は変わらなかった(低値99.3% vs.高値99.3%、p=0.90)。・Ki-67は、化学療法なしの低リスク患者におけるsecondary endocrine resistanceと関連していた(オッズ比:2.49、95%CI:1.13~5.50、p=0.02)。

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心筋梗塞による心原性ショック、VA-ECMO vs.薬剤単独/Lancet

 梗塞関連心原性ショックの患者において、静脈動脈-体外式膜型人工肺(Venoarterial extracorporeal membrane oxygenation:VA-ECMO)は薬物療法単独と比較して30日死亡率が低下せず、重大出血および血管合併症を増加することが、ドイツ・Institut fur HerzinfarktforschungのUwe Zeymer氏らによるメタ解析の結果で示された。VA-ECMOをめぐっては、無作為化試験による確たるエビデンスが不足しているにもかかわらず、心原性ショックの患者への使用が増加傾向にある。先行研究の3試験では、生存ベネフィットの検出力が不十分であった。今回示されたメタ解析の結果を踏まえて著者は、「梗塞関連心原性ショックの患者にVA-ECMOを適応するのか、慎重に検討すべきであることが確認された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年8月25日号掲載の報告。VA-ECMOの早期ルーチン使用vs.至適薬物療法単独をメタ解析で評価 研究グループは、MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Embaseおよび臨床試験レジストリを2023年6月12日まで検索し、梗塞関連心原性ショックの患者に対し、VA-ECMOの早期ルーチン使用と、至適薬物療法単独を比較した無作為化試験を特定した。そのうち、入院無作為化時点から30日時点の全死因死亡の報告があり、試験責任医師らの協力(患者個人データの提出など)が得られた試験を解析対象とした。 主要アウトカムのオッズ比(OR)は、ロジスティック回帰モデルを用いてプール化した。VA-ECMO群の重大出血は2.44倍、末梢虚血性血管合併症は3.53倍に 4試験(被験者数567例、VA-ECMO群284例vs.対照群283例)が特定され、解析を行った。被験者の年齢中央値は64歳(四分位範囲[IQR]:57~71)、男性81%(458/566例)、約3分の2(68%[364/538例])がST上昇型心筋梗塞で、約3分の2(67%[381/567例]が、無作為化前に心肺機能蘇生を受けていた。 全体として、VA-ECMOの早期使用で、30日死亡率の有意な低下は認められなかった(OR:0.93、95%信頼区間[CI]:0.66~1.29)。合併症発生率は、VA-ECMO群が対照群に比べ、重大出血(OR:2.44、95%CI:1.55~3.84)、末梢虚血性血管合併症(3.53、1.70~7.34)について高率だった。 事前に規定したサブグループ解析の結果も一貫しており、VA-ECMOに関するベネフィットは何も示されなかった(交互作用のp≧0.079)。

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OCTガイド下PCI、標的血管不全を低減せず/NEJM

 複雑な冠動脈病変などに対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)について、光干渉断層撮影(OCT)ガイド下の施行は血管造影ガイド下の施行と比較し、最小ステント面積は大きかったが、2年時点での標的血管不全が発生した患者の割合については両群間で差はみられなかった。米国・Cardiovascular Research FoundationのZiad A Ali氏らが、国際多施設共同にて2,487例を対象に行った前向き無作為化単盲検試験の結果を報告した。OCTガイド下でPCIを施行した後の臨床アウトカムに関するデータは、血管造影ガイド下のPCIと比べて限定的だった。NEJM誌オンライン版2023年8月27日号の報告。18ヵ国、80ヵ所の医療機関で無作為化試験 研究グループは、18ヵ国80ヵ所の医療機関を通じて、薬物治療中の糖尿病患者または複雑な冠動脈病変を有する患者を無作為に2群に割り付け、OCTガイド下PCIまたは血管造影ガイド下PCIを実施した。血管造影ガイド下PCIに割り付けられた患者にも、最終的には盲検下でOCTが行われた。 主要有効性エンドポイントは2つで、OCTで評価したPCI後の最小ステント面積と、2年後の標的血管不全(心疾患死亡、標的血管心筋梗塞、または虚血による標的血管血行再建術の複合イベントで定義)だった。安全性についても評価した。2年以内の標的血管不全の発生、OCT群7.4%、血管造影群8.2% 被験者数は計2,487例で、OCTガイド下PCI(OCT群)1,233例、血管造影ガイド下PCI(血管造影群)1,254例だった。 PCI後の最小ステント面積は、OCT群5.72±2.04mm2、血管造影群5.36±1.87mm2(平均群間差:0.36mm2、95%信頼区間[CI]:0.21~0.51、p<0.001)でOCT群が有意に大きかった。 2年以内の標的血管不全の発生は、OCT群88例、血管造影群99例で有意差はなかった(Kaplan-Meier法による推定値はそれぞれ7.4%および8.2%、ハザード比[HR]:0.90、95%CI:0.67~1.19、p=0.45)。 OCT関連有害事象は、OCT群1例、血管造影群2例で発生した。2年以内のステント血栓症は、OCT群6例(0.5%)、血管造影群17例(1.4%)で発生した。

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喫煙者/喫煙既往歴者でスパイロメトリー測定値がCOPD基準を満たさないTEPS群の中で呼吸器症状有群(FEV1/FVC<0.7かつCAT≧10)は臨床の視点からCOPD重症化予備群として対応すべき?―(解説:島田俊夫氏)

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)と喫煙に関する研究は、これまで数多くの研究が行われている。しかしながら、スパイロメトリー測定値がCOPDの定義を満たさない対象者に関する研究はほとんどなく、治療法も確立されていない1,2)。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のWilliam McKleroy氏らによる多施設共同長期観察試験(SPIROMICS II試験)の結果が、JAMA誌2023年8月1日号に掲載された。 対象者はSPIROMICS I試験登録後5~7年に、対面受診を1回実施。呼吸器症状はCOPD Assessment Test(CAT、スコア範囲:0~40重症ほど高値)で評価した。TEPS(tobacco exposure and preserved spirometry)群は、これまでCOPD治験対象から除外されており、治療のエビデンスは確立されていない。本研究はTEPS群の自然経過に照準を絞った研究として行われた。TEPS群のスパイロメトリー測定は気管支拡張薬投与後のFEV1/FVC>0.70でCATスコア10≧を有症状群、10<を無症状群の2群に分類した。 研究対象は1,397例で内訳は226例が有症状TEPS群(平均年齢60.1歳、女性59%)、269例が無症状TEPS群(平均年齢63.1歳、女性50%)、459例が有症状COPD(平均年齢65.2歳、女性47%)、279例が無症状COPD(平均年齢67.8歳)、164例が非喫煙対照群から構成。呼吸器症状の増悪は4ヵ月ごとに電話で自己申告。 主要アウトカム:FEV1の低下。副次アウトカム:COPD発症、呼吸器症状増悪頻度、CT検査での気道壁肥厚、気腫肺。 追跡期間中央値5.76年でTEPS両群にCOPDの発生を認めたが、両群間に差はなかった。TEPS群は非喫煙対照群よりも有意にCOPDの発生率が高かった。一方でTEPS有症状群はTEPS無症状群に比べ、症状増悪率は有意に高かった(0.23 vs.0.08件/人・年、率比:2.38、95%CI:1.71~3.31[p<0.001])。論文へのコメント TEPS両群に対して禁煙は最優先で行うべき治療である。喫煙者でスパイロメトリー正常範囲の対象者は通常は治験対象から除外されていたために治療法は確立されていない。COPDの診断基準を満たさないTEPS群を症状有群と無群に分け、経時的に追跡の結果、TEPS各群共にCOPD発生の増加を認めたが、有/無症状群の比較ではCOPD発生率に差はなかった。しかし、呼吸器症状の増悪は有症状群が無症状群に比べ顕著に症状が増悪した。臨床の視点から症状増悪は軽視できず、有症状TEPS群はCOPD重症化予備群として治療を行い、適正治療確立は喫緊の課題である。 COPD予備群に対する気管支拡張剤、抗コリン剤、ステロイド剤らの使用法は確立していない。近頃、注目を集めているPRISm(preserved ratio impaired spirometry)はFEV1/FVC≧0.7かつ%FEV1(FEV1/FEV1予測値)<80%を満たす予後不良の病態である3,4)。この病態も含めてCOPD近縁疾患相互の絡み解明が必要と考える。

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鼻血(鼻出血)【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第6回

皆さんは鼻血が出たことはありますか? 60%程度の人が人生で一度は鼻血を経験するそうです1)。私は幼少期にしょっちゅう鼻血を出していましたので、3人に1人は鼻血を出したことがないというのは驚きでした。鼻血は、鼻をいじったり鼻をかんだりしたときの外傷でよく生じますが、何もしなくても出てくることがあります。私が鼻血を出したときは、親か先生から「鼻の根元を押さえ、天を仰ぎ、首の根本を押さえる」という指導を受けました。鼻血が後咽頭に流れ込み、口に血液の味が広がったのを今でも覚えています…。さて、この処置は現在では不適切とみなされています。なぜ、このような止め方が広まったのかは調べてみてもわかりませんでした。ご存じの方がいらっしゃったらぜひ教えてください。鼻血はいつ何時遭遇してもおかしくありません。たとえば「診療所の待合室でいきなり鼻血が出た患者に対処を求められる」などもあり得ます。私は内科の診療所で鼻血を診たことはありませんが、南のとある島の病院で経験した症例をもとに対処法を紹介します。ちなみに、耳鼻科を受診するには車で2時間の距離にある総合病院に行かなくてはならない施設でした。<症例>32歳男性受診2時間前にとくに誘因なく左の鼻から血が流れてきた。ティッシュを詰めたところ出血が止まったが、ティッシュを取り除いたら再出血した。それを3回繰り返したため受診。バイタル:特記事項なしティッシュを左鼻に詰めている。上記のような患者が受診した場合の対処法を順を追って確認しましょう。(1)ABC(気道、呼吸、循環)の確認鼻血で窒息やショック? と思う人もいらっしゃるかもしれません。確かに一般的な鼻血であれば窒息やショックになることはありませんが、出血源が動静脈奇形や動脈瘤である場合、大量出血により気道や循環が危機にさらされることがあり得ます2,3)。私も動静脈奇形で大量出血した一例を経験したことがありますが、明らかに出血量や勢いが通常の鼻血とは違いました。たとえるなら、通常の鼻血が「タラタラ」であれば、ショックや窒息を起こす鼻血は鼻から滝のように出血し、数分で膿盆からあふれるほどです。この場合、気道確保や特殊な処置が必要になるのですが、今回のテーマは一般的な鼻血についてですので割愛します。ただし、鼻血でも気道と循環の異常を来しうるということは知っておいてください。今回の症例は気道や循環に問題はありませんでした。(2)出血部位の特定出血部位が左か右か、前か後かを判断しましょう。鼻血の80~90%はキーゼルバッハ部位という血流が豊富な部位で生じます(図1)4)。キーゼルバッハ部位は、外鼻孔に指を入れた少し先の部分であり、内側(鼻中隔側)で触知することができる硬い隆起です。距離的にティッシュを詰めることは止血につながると思われますが、結局止血したとしてもティッシュだと乾燥してしまい、除去するときに固まった血液(かさぶた)がはがれて再出血する印象があるのでお勧めはしません。図1 鼻の内側今回の症例は左の鼻から出血していましたが、ティッシュを取り除いたら再出血してしまい、出血部位は同定できませんでした。もし出血部位がわからなくても、次の手技に進みましょう。圧倒的に前方出血が多いため、まずは前方出血に準じて対応するのがよいと考えます。出血部位がわからなくても、後述する圧迫止血やガーゼパッキングを施行して問題はありません。ちなみに、出血部位を正確に把握する必要があるのは焼却術など出血部位に対する処置を行うときです。狭い鼻腔内で出血部位を把握するにはスキルと経験が必要ですので、非専門医が必ずしも同定する必要はないでしょう。(3)圧迫止血の手法の確認患者さんが行った止血方法の確認をすることは非常に重要です。昨今は「鼻の根元を押さえ、天を仰ぎ、首の根本を押さえる」患者さんはさすがにもういませんが、鼻根部(鼻骨)を押さえてくる人(図2)はまれにいて、これは気を付けないと見落とすことがあります。鼻翼を指全体で覆うように挟みましょう(図3)。図2 誤った圧迫止血(鼻骨を押さえている)図3 正しい圧迫止血(鼻翼を指全体で押さえている)圧迫は15分間しっかりと行います。よくある鼻血が止まらない理由として、血が止まったのを確認したくて数分で圧迫を解除してしまう、圧迫を解除した後に鼻をかんでしまう、などがあります。この症例は5分程度で圧迫を解除していたので、15分ほど圧迫してもらったところ止血を得ました。鼻をかまないようにして、再出血した場合は再度圧迫を行い、それでも止まらない場合は受診するよう指導しました。(4)ガーゼパッキングでは、適切な圧迫方法で止血できない場合はどうしましょうか? その場合はガーゼパッキングを行います。私はT&Aマイナーエマージェンシーコースで種々の場所で指導するのですが、パッキングの方法や使用する薬剤は地域によって異なっています。ですので、今回は私が慣れているコメガーゼとアドレナリン外用液(商品名:ボスミン外用液0.1%)+軟膏(白色ワセリン)を使用した方法を紹介します。まずはコメガーゼを用意します。コメガーゼがなければ、ガーゼを図4のように切って作成する方法もあります。図4 コメガーゼの作り方(幅は3cmくらい)次に薬剤を作成します。ボスミン外用液0.1% 2mL+生理食塩水18mLを混ぜ、1万倍希釈アドレナリン液20mLを作成します。コメガーゼにそれを浸した後、防水シーツの上に置いて軟膏を塗ります。軟膏を塗る理由は、ガーゼパッキングをして時間が経った後、ガーゼが乾燥していると抜去するときにとても痛いからです。それではガーゼパッキングを開始しましょう。今回は鼻用攝子と鼻鏡を用いてガーゼを挿入する方法を説明します。まず、鼻鏡と鼻用攝子の持ち方を確認しましょう(図5)。図5 鼻鏡と鼻用攝子の持ち方画像を拡大する1枚目のガーゼを挿入していきます。図1のように鼻腔内は入り口が狭く、内腔は広いので、それをイメージしながらガーゼを挿入しましょう。今回はT&Aマイナーエマージェンシーコースの鼻模型を使用して解説します。まず、図6のように鼻孔を開きます。その際に左手の甲を患者の右頬に当てると固定しやすいです。図6 鼻腔を開く画像を拡大する次に、ガーゼを攝子で挟みましょう。鼻用攝子で2つ折の間を把持し、先端の余ったガーゼを折り返すことで攝子の先端がガーゼで覆われ、より粘膜損傷が起こりにくくなります(図7)。図7 攝子の先端をガーゼで覆う

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第177回 「令和の米騒動」と神戸・甲南医療センター専攻医自殺・労災認定で感じた共通する“病根”(前編)

中日ドラゴンズで「令和の米騒動」勃発こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。2週間ほど前から日本のプロ野球で話題となっている「令和の米騒動」をご存知でしょうか。2023年8月23日、夕刊フジが「中日ドラゴンズ・立浪和義監督が、試合前の食事会場にて白米を食べることを突如禁止した」という内容の記事を掲載したことに端を発し、ネットの世界を中心にあることないことが乱れ飛び、異様な盛り上がりをみせている“事件”です。あの江川 卓氏もこの騒動に関してコメントを寄せたほどです。夕刊フジの報道によれば、きっかけとなったのは2023年8月3日の阪神戦です。この日、立浪 和義監督によるトップダウンで、突如試合前のケータリングから炊飯器による白米の提供がなくなりました。理由は、細川 成也選手が夏場に入り調子が落ちてきたのを、立浪監督が「ご飯の食べ過ぎで動きが鈍くなったからだ」と考え、同選手に白米制限を命じたところ調子が上向いたためだそうです。それを根拠に、立浪監督は連敗中のチーム状態を改善するため全選手にも白米制限を課したのです(投手は1日で解禁、8月31日現在野手は白米制限を続行中とのこと)。ミスタードラゴンズと呼ばれた立浪氏が中日ドラゴンズの監督となり指揮を執り始めたのは昨シーズンから。昨年は66勝75敗2分で6年ぶりの最下位、今年も9月4日現在借金25、勝率3割9分3厘と歴史的な低迷を続けています。昨シーズン終了後の2022年10月には、NHK BSで『逃げるな 泥にまみれても~中日ドラゴンズ監督 立浪和義~』というタイトルのドキュメンタリーが放送されました。番組では、PL学園時代からスター選手だった立浪監督が、若手の気持ちや考えをうまく掴みきれない中、前近代的とも言える厳しい指導や采配をするもチームは低迷・迷走を続け、監督自身も悩み孤立していく姿が生々しく描かれていました。今回の「米騒動」も、昨年来の迷走がまだ続いている表れと言えそうです。甲南医療センターの男性専攻医自殺を労災認定一部では、立浪監督の試合後のコメントが選手に手厳し過ぎる点も話題となっています。8月10日の日本経済新聞のスポーツ面のコラム「悠々球論」で野球評論家の権藤 博氏は、「セ・リーグの最下位、中日の立浪和義監督について気になるのは、試合後のコメントだ。選手に『反省』を求めることがある。1軍の試合に出す選手はチーム内の競争を勝ち抜き、監督も『合格』と認めた選手のはず。それで負けたら仕方がない、と割り切り、反省は求めない方がいい」と書いています。「名選手、名監督にあらず」とは昔からよく言われてきた言葉ですが、昨今の“Z世代”の選手の登場は、スポーツの監督業にも新たな変革を求めているのかもしれません。さて、今回は神戸市東灘区の公益財団法人甲南会・甲南医療センターで勤務していた男性専攻医が昨年5月に自殺したことについて、西宮労働基準監督署(兵庫県)が「長時間労働で精神障害を発症したのが原因」として労災認定したニュースを取り上げます。専攻医の労災認定の背景には、「令和の米騒動」にも共通する、世代間断絶という“病根”も存在している気がしてなりません。「先輩医師と同等の業務量を割り当てられ、指示された学会発表の準備も重なり長時間労働に」男性専攻医の自殺について労災認定していたことが判明したのは8月17日で、読売新聞はじめ全国紙、NHKなどが一斉に報じました。読売新聞等の報道によれば、労災が認められたのは、神戸大医学部卒業後2020年4月からセンターで研修医として勤務し、2022年4月から消化器内科の専攻医として働いていた男性医師です。同年5月17日の退勤後、神戸市の自宅で亡くなっているのを訪ねた家族が見つけ、兵庫県警が自殺と断定したとのことです。26歳でした。労災が認定されたのは2023年6月5日付で、認定によると、男性医師の死亡直前1ヵ月の時間外労働は207時間50分で、3ヵ月平均でも月185時間を超えており、いずれも国が定める精神障害の労災認定基準(月160時間以上、3ヵ月平均100時間以上)を大幅に上回っていたとのことです。労基署は「専攻医になったばかりで先輩医師と同等の業務量を割り当てられ、指示された学会発表の準備も重なり、長時間労働となった」と判断、長時間労働で精神障害を発症したことが自殺の原因、と結論付けています。病院は「過重な労働をさせた認識はまったくない」と長時間労働の指示を全面否定労災認定が明らかになった8月17日、甲南医療センターの具 英成(ぐ・えいせい)院長は記者会見し、「病院として過重な労働をさせた認識はまったくない」と長時間労働の指示を全面否定しました。甲南医療センターでは、タイムカードで出退勤時間を記録していましたが、労働時間は医師の自己申告に基づいて管理していたとのことです。労基署が認定した労働時間は207時間に対し、男性医師が甲南医療センターに申告した死亡前月の時間外労働は30.5時間だったそうです。具院長は記者会見で、労基署の認定には労働にあたらない自主的な「自己研鑽」の時間が含まれているとの見方を示し、「見解に相違がある」と述べたとのことです。なお、労基署が認定した労働時間に基づき、公益財団法人甲南会が未払い残業代130万円を遺族に支払ったことも明らかにしました。ただ、長時間労働はあくまでも認めず、「『解決金』という考え方で支払った」としています。医師の働き方改革を前に労働時間を極力減らしておきたい病院具院長は「見解の相違」と語ったようですが、その背景には、医師人件費をできるだけ抑えたいという経営方針に加え、来年度から始まる医師の働き方改革を前に、労働時間を極力減らしておきたい病院側の強い意向も働いていたと考えられます。8月19日付の読売新聞は、甲南医療センターでは「残業を申請しにくい雰囲気があった」とする勤務医の証言を報じています。さらに、甲南医療センターでは2020年6月頃、職員向けに「時間外労働の削減」を求める通知があり、具院長から業務と自己研鑽の時間を明確に分けるよう指示があったとも書いています。また同紙は、「『残業は2時間まで』という暗黙のルールがあった」、「上司から『今は自己研さんの時期で、仕事ができないのに残業を申請するのはおかしい』と言われ、申請しなかった」など、勤務医の証言も報じています。自己研鑽名目で長時間労働を余儀なくされる医師来年から始まる医師の働き方改革で、残業時間の罰則付き上限が導入され、原則年960時間、研修医などで特別に認められた場合は年1,860時間となります。自己研鑽の時間は労働時間には含まれませんが、その解釈・運用については病院によって大きな差があるようです。今回の甲南医療センターの専攻医自殺、労災認定の報道をきっかけとして、自己研鑽名目で長時間労働を余儀なくされている医師の実態を多くのメディアが報じています。たとえば8月28日付の読売新聞は、「医師『自己研さん』で疲弊 業務外100時間…「残業ゼロ」扱い」というタイトルの記事を掲載、関西地方の病院に勤務する20歳代の女性研修医の「病院や患者のためにヘトヘトになるまで仕事をしているのに、全て自己研さん扱い」、「自己研さんという言葉がいいように使われ、まじめな医師ほど心身ともに追い込まれていく」といった現場の言葉を紹介しています。男性医師勤務当時、甲南医療センターに自己研鑽の基準を明文化した指針なし自己研鑽と労働の区別については、厚生労働省が2019年7月に通知でその考え方を示しています1)。この通知では、上司の指示に基づく学習や練習は労働にあたるとしています。また、研鑽の不実施について就業規則上の制裁等の不利益が課されており実施を余儀なくされている場合や、研鑽が業務上必須である場合、そして業務上必須でなくとも上司が明示・黙示の指示をして行わせる場合は労働時間に該当する、としています。この通知に則って、各医療機関が自己研鑽の基準を定めているわけですが、各紙報道等によれば、男性医師が勤務していた当時、甲南医療センターは自己研鑽の基準を明文化した指針はなく、男性医師が亡くなった約5ヵ月後の2022年10月に初めて示されたそうです。私も最近、病院の幹部クラスの医師を取材すると、「俺たちが若い頃は自己研鑽か労働かの区別もなく、残業代もなく遮二無二働いていた。それで腕を磨いたもんだ」といった言葉をよく聞きます。「働き方改革」とは真っ向から対立する意見ですが、甲南医療センターの経営幹部たちも、「医師の働き方改革」には表面的には賛成するポーズを示しながらも、そうした意識で若手医師たちを見ていたのかもしれません。中日ドラゴンズでは、世代間の断絶、上司の無理解、理不尽な押し付けはチームの成績低迷という目に見える形で表れました。しかし、病院ではそのしわ寄せは目に見える形ですぐには表れません。現場の医師や職員の疲弊を招き、それが医療事故につながる可能性もあります。しかし、たとえ事故が起こってもその責任を経営幹部が取ることは稀で、事故を起こした医師に責任を取らせて終わりとなってしまうケースは少なくありません。文春が甲南医療センターの自己研鑽の指針をすっぱ抜くところで、この甲南医療センターの自己研鑽の指針の詳しい内容については、8月21日付けの文春オンラインが「『院外持出厳禁』文書入手 病院が職員に配った「あれも業務外、これも自己研鑽」マニュアル」と題する記事で、詳細に報じています。指針には、「手術や処置等の予習や振り返りは自己研鑽」「(業務/自己研鑽は)最終的には上司が判断します」などの文言が並んでおり、自己研鑽名目で医師に長時間労働を強いる甲南医療センターの経営体質や幹部たちの本音がうかがい知れる内容となっています。(この項続く)参考1)「医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について」令和元年7月1日基発0701第9号/労働基準局長通知

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検診で寿命が延びるがんは?

 一般的に行われているがん検診により、寿命が延びるのかどうかは不明である。今回、ノルウェー・オスロ大学のMichael Bretthauer氏らが、乳がん検診のマンモグラフィ、大腸がん検診の大腸内視鏡検査・S状結腸鏡検査・便潜血検査、肺がん検診の肺CT検査、前立腺がん検診のPSA検査の6種類の検診について、検診を受けた群と受けなかった群で全生存率と推定寿命を比較した無作為化試験をメタ解析した結果、寿命が有意に増加したのはS状結腸鏡検査による大腸がん検診のみであったことがわかった。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2023年8月28日号に掲載。 一般的に使用されている上記の6種類のがん検診について、検診を受けた群と受けなかった群を9年以上追跡し、全死亡率および推定寿命を比較した無作為化試験の系統的レビューおよびメタ解析を実施した。論文の検索はMEDLINEおよびCochrane libraryデータベースで2022年10月12日まで実施した。検診を受けた群と受けなかった群でみられた生存期間の差を検診による寿命の増加とし、各検診による寿命の増加日数と95%信頼区間(CI)をメタ解析または単一の無作為化試験から算出した。 主な結果は以下のとおり。・計211万1,958人が対象となった。・追跡期間中央値は、CT検査、PSA検査、大腸内視鏡検査で10年、マンモグラフィで13年、S状結腸鏡検査、便潜血検査で15年であった。・検診で寿命に有意な増加がみられたのはS状結腸鏡検査のみであった(110日、95%CI:0~274日)。・マンモグラフィ(0日、95%CI:-190~237日)、PSA検査(37日、95%CI:-37~73日)、大腸内視鏡検査(37日、95%CI:-146~146日)、毎年または隔年の便潜血検査(0日、95%CI:-70.7~70.7日)、肺CT検査(107日、95%CI:-286~430日)において有意差はみられなかった。 著者らは「このメタ解析の結果から、現在のエビデンスでは、S状結腸鏡検査による大腸がん検診を除き、一般的ながん検診による寿命延長を証明できないことが示唆された」としている。

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双極性障害患者の原因別死亡率~メタ解析

 双極性障害は、早期死亡と関連しているといわれている。双極性障害患者におけるすべての原因による死亡および特定の死亡リスクに関しては、十分明らかになっておらず、これらを理解し、双極性障害患者の死亡を予防する戦略を考えるうえでも、さらに多くの研究が必要とされる。ブラジル・サンパウロ大学医学部のTais Boeira Biazus氏らは、一般集団と比較した双極性障害患者の死亡リスクを評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、双極性障害患者の早期死亡リスクは、自殺や不自然死によるものだけでなく、身体合併症とも関連していることが示唆された。著者らは、双極性障害患者の早期死亡率を改善するためには、自殺予防だけでなく、身体的な健康増進や身体合併症の予防も重要であるとしている。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年7月25日号の報告。 主要アウトカムは、すべての原因による死亡率とし、副次的アウトカムは、自殺、自然死、不自然死、特定の原因による死亡の割合とした。 主な結果は以下のとおり。・57件の研究(67万8,353例)をメタ解析に含めた。・双極性障害患者は、すべての原因による死亡率(RR:2.02、95%信頼区間[CI]:1.89~2.16、k=39)が高かった。・特定の原因による死亡率は、自殺(RR:11.69、95%CI:9.22~14.81、k=25)が最も高かった。・不自然死(RR:7.29、95%CI:6.41~8.28、k=17)および自然死(RR:1.90、95%CI:1.75~2.06、k=17)の死亡リスクも高かった。・分析された特定の自然死の中で、感染症による死亡(RR:4.38、95%CI:1.5~12.69、k=3)がより高かったが、研究数が少なく、限定的であった。・呼吸器疾患(RR:3.18、95%CI:2.55~3.96、k=6)、心血管疾患(RR:1.76、95%CI:1.53~2.01、k=27)、脳血管疾患(RR:1.57、95%CI:1.34~1.84、k=13)による死亡リスクも同様に高かった。・がんによる死亡リスク(RR:0.99、95%CI:0.88~1.11、k=16)に差は認められなかった。・サブグループ解析およびメタ回帰は、結果に影響を及ぼさなかった。

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記憶力に不安がある高齢者の運転はいかに危険か/長寿研ほか

 日本の高齢ドライバーを対象とした横断研究の結果、客観的認知障害の有無にかかわらず、主観的な記憶力の心配(subjective memory concerns、以下「SMC」)や、SMCに加えて歩行速度低下を有する運動認知リスク症候群(motoric cognitive risk syndrome、以下「MCR」)を有する人では自動車衝突事故やヒヤリハットを経験する確率が有意に高かったことを、国立長寿医療研究センターの栗田 智史氏らの研究グループが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年8月25日号掲載の報告。 先行研究によって、MCRは処理速度や実行機能の低下などとの関連が報告されているが、MCRと自動車衝突事故との関連性に関する検討は十分ではない。簡便に実施できるMCR評価を行うことで衝突事故リスクに早期に気付くことができる可能性があるため、研究グループはMCR評価と衝突事故やヒヤリハットとの関連を検討した。 研究グループは、2015~18年に実施された同センターの大規模コホート研究(NCGG-SGS)のデータを用い、愛知県在住の65歳以上の高齢者の衝突事故やヒヤリハットの経験を調査した。運転しない人、認知障害がある人(ミニメンタルステート検査21点未満)、認知症の病歴のある人などは除外した。SMCは、老年期うつ病評価尺度(GDS)などを数種類の方法を用いて評価し、歩行速度低下は年齢や性別の平均値より-1.0SD以下とした。 参加者は、過去2年間の衝突事故と前年のヒヤリハットを対面で聴取され、(1)SMCも歩行速度低下も有さない群(対照群)、(2)SMCのみを有する群(SMC群)、(3)歩行速度低下のみを有する群(歩行速度低下群)、(4)MCRを有する群(MCR群)の4群に分けられた。ロジスティック回帰モデルを用いて、衝突事故またはヒヤリハットのオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を求めた。データは2023年2~3月に解析された。 主な結果は以下のとおり。・参加者1万2,475人の平均年齢は72.6(SD 5.2)歳で、56.9%が男性であった。・対照群は3,856人(30.9%)、SMC群は6,889人(55.2%)、歩行速度低下群は557人(4.5%)、MCR群は1,173人(9.4%)であった。・SMC群とMCR群では、衝突事故およびヒヤリハットの割合が他の群よりも多かった(調整標準化残差>1.96、p<0.001)。・ロジスティック回帰分析の結果、対照群と比べて、SMC群とMCR群では衝突事故が有意に多かった(【SMC群】補正後OR:1.48、95%CI:1.27~1.72、p<0.001、【MCR群】補正後OR:1.73、95%CI:1.39~2.16、p<0.001)。・同様に、SMC群とMCR群ではヒヤリハットも有意に多かった(【SMC群】補正後OR:2.07、95%CI:1.91~2.25、p<0.001、【MCR群】補正後OR:2.13、95%CI:1.85~2.45、p<0.001)。・MCR評価を客観的認知障害で層別化した結果、客観的認知障害の有無に関係なくSMC群とMCR群で有意に衝突事故とヒヤリハットが増加していた。・これらの結果は、高齢ドライバーの過失割合が半分以下の衝突事故を除外しても同様であった。 これらの結果より、研究グループは「これらの知見の一般化可能性を高め、外的妥当性を検証するためには、異なる環境におけるさらなる研究が必要である。これらの関連性のメカニズムも今後の研究の課題となる」とまとめた。

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CVD2次予防でのアスピリン、低所得国では不十分/JAMA

 アスピリンは、アテローム動脈硬化性心血管疾患(CVD)のイベントを減少させ、CVD既往例の死亡率を改善する効果的で安価な選択肢とされる。米国・セントルイス・ワシントン大学のSang Gune K. Yoo氏らは、CVDの2次予防においてアスピリンは世界的に十分に使用されておらず、とくに低所得国での使用が少ないことを明らかにした。研究の成果は、JAMA誌2023年8月22・29日合併号で報告された。51ヵ国の健康調査のデータを用いた横断研究 研究グループは、51の低・中・高所得国で2013~20年に実施された全国的な健康調査から収集した個々の参加者のデータを用いて横断研究を行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成を受けた)。 参加者は年齢40~69歳の非妊娠成人で、対象となった健康調査には自己申告によるCVD既往歴とアスピリン使用に関するデータが含まれた。国別の1人当たりの所得水準、地域、個々の参加者の社会経済的な人口統計学データに基づき、自己申告によるCVDの2次予防におけるアスピリンの使用状況を評価した。 12万4,505人が解析に含まれた。年齢中央値は52歳(四分位範囲[IQR]:45~59)で、50.5%(IQR:49.9~51.1)が女性、53.4%(95%信頼区間[CI]:52.0~54.8)が農村部に居住していた。1万589人(8.2%)が自己申告によるCVDの既往歴を有していた。使用率は40.3%、WHO目標値を下回る CVD既往例における2次予防のためのアスピリン使用率は40.3%(95%CI:37.6~43.0)であった。 所得別の2次予防のためのアスピリン使用率は、低所得国(7ヵ国)が16.6%(95%CI:12.4~21.9)、低中所得国(23ヵ国)が24.5%(20.8~28.6)、高中所得国(14ヵ国)が51.1%(48.2~54.0)、高所得国(7ヵ国)は65.0%(59.1~70.4)だった。 CVDの2次予防におけるアスピリン使用率の世界保健機関(WHO)の目標値(適格者の50%以上)を満たした国は、ベラルーシ、チェコ、英国(評価はイングランドで行われた調査データに基づく)、イラン、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、トルクメニスタン、米国であった。 CVD既往例では、若年より高齢、女性より男性、低学歴より高学歴、農村部より都市部居住者でアスピリンの使用率が高く、これらの個々の特性(年齢別、性別、学歴別、居住地別)では、所得が高い国ほど使用率が高くなる傾向を認めた。低所得国と比較して高所得国では、年齢別、性別、学歴別、居住地別の2次予防のためのアスピリン使用率が、相対的には2~5倍に達し、絶対的には20~60%大きかった。 著者は、「CVDを含む非感染性疾患による早期死亡を減少させるという目標を達成するには、国の保健政策と保健システムが、エビデンスに基づくアスピリンの使用を促進する方法を開発し、これを実践し、結果を評価する必要がある」としている。

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英語で「エビデンスがない」は?【1分★医療英語】第96回

第96回 英語で「エビデンスがない」は?The drug you are using does not seem to have any efficacy data in my disease. Why do you recommend it?(先生が使用している薬は私の病気での有効性のデータはないようですが、なぜそれを勧めるのですか?)The absence of evidence is not the evidence of absence.(エビデンスが存在しないことは、[有効性などの効果が]ないことの証明にはなりません)《例文1》 We do have anecdotal evidence in many patients that this drug works well.(われわれの経験的には、この薬はよく効きます)《例文2》That study data has many limitations and does not apply to your case.(その研究結果には多くの限界があり、あなたの病気には当てはまりません)《解説》正しく計画された臨床研究の結果(=エビデンス)に基づいて診療を行うことは現代の医療においては「常識」であり、“Evidence-based medicine (EBM)”という言葉は当たり前すぎて、米国の臨床の場ではあまり聞かれなくなりました。しかし、十分なエビデンスが存在しないことは多くあり、日常診療の多くの場面でエビデンスが十分にはない診療も行われていることは、皆さんもご存じのとおりです。会話例の医師のセリフ、“The absence of evidence is not the evidence of absence.”は語呂が良く、慣用句として重宝します(「ないこと」の証明にはnon-inferiority test[非劣性検定]などの特殊な検定が必要です)。2つの例文も、「エビデンス」がまだない診療を行う根拠として一般的なもので、患者さんへの説明によく使う表現です。講師紹介

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標的部位で持続的に放出される潰瘍性大腸炎薬「コレチメント錠9mg」【下平博士のDIノート】第128回

標的部位で持続的に放出される潰瘍性大腸炎薬「コレチメント錠9mg」今回は、潰瘍性大腸炎治療薬「ブデソニド腸溶性徐放錠(商品名:コレチメント錠9mg、製造販売元:フェリング・ファーマ)」を紹介します。本剤は、標的部位の大腸にブデソニドが送達され、持続的に放出されるように設計されている1日1回服用の薬剤で、良好な治療効果や服薬アドヒアランスが期待されています。<効能・効果>活動期潰瘍性大腸炎(重症を除く)の適応で、2023年6月26日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはブデソニドとして9mgを1日1回朝経口投与します。投与開始8週間を目安に本剤の必要性を検討し、漫然と投与を継続しないように留意します。<安全性>2~5%未満に認められた副作用として潰瘍性大腸炎増悪があります。2%未満の副作用は、乳房膿瘍、感染性腸炎、乳腺炎、口腔ヘルペス、不眠症、睡眠障害、腹部膨満、口唇炎、ざ瘡、湿疹、蛋白尿、月経障害、末梢性浮腫、白血球数増加、尿中白血球陽性が報告されています。<患者さんへの指導例>本剤は、大腸に送られて持続的に炎症を鎮める潰瘍性大腸炎活動期の薬です。服薬時にかまないでください。生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)を接種する際には医師に相談してください。疲れを残さないよう十分な睡眠と規則正しい生活が重要です。消化の悪い繊維質の多い食品や脂肪分の多い食品、香辛料などを避けて、腸に優しい食事を心がけましょう。<Shimo's eyes>潰瘍性大腸炎は、活動期には下痢や血便、腹痛、発熱などを伴い、寛解と再燃を繰り返す炎症性腸疾患であり、わが国では指定難病に指定されています。潰瘍性大腸炎の活動期には、軽症~中等症では5-アミノサリチル酸製剤が広く用いられ、効果不十分な場合や重症例にはステロイド薬などが投与されます。ステロイド抵抗例ではタクロリムスや生物学的製剤、ヤヌスキナーゼ阻害薬などが使用されます。本剤の特徴は、MMX(Multi-Matrix System)技術を用いた薬物送達システムにあり、pH応答性コーティングにより有効成分であるブデソニドを含むマルチマトリックスを潰瘍性大腸炎の標的部位である大腸で送達し、親水性基剤と親油性基剤がゲル化することでブデソニドを持続的かつ広範囲に放出させます。また、本剤の有効成分であるブデソニドはグルココルチコイド受容体親和性が高いステロイド薬であり、局所的に高い抗炎症活性を有する一方、肝初回通過効果によって糖質コルチコイド活性の低い代謝物となるため、経口投与によるバイオアベイラビリティが低いと考えられ、全身に曝露される糖質コルチコイド活性の軽減が期待されるアンテドラッグ型のステロイドとなります。本剤は1日1回投与の経口薬であることから、良好な服薬利便性や服薬アドヒアランスも期待でき、海外では2023年3月現在、75以上の国または地域で承認されています。なお、本成分を有効成分とする既存の潰瘍性大腸炎治療薬には、直腸~S状結腸に薬剤を送達するブデソニド注腸フォーム(商品名:レクタブル2mg注腸フォーム)がありますが、本剤は大腸全体が作用部位となる点に違いがあります。本剤の主な副作用として、潰瘍性大腸炎の増悪が2~5%未満で報告されています。本剤はほかの経口ステロイド薬と同様に、誘発感染症、続発性副腎皮質機能不全、クッシング症候群、骨密度の減少、消化性潰瘍、糖尿病、白内障、緑内障、精神障害などの重篤な副作用に注意が必要です。本剤投与前に水痘または麻疹の既往歴や予防接種の有無を確認しましょう。製剤の特性を維持するために、本剤を分割したり、乳鉢で粉砕したりすることはできません。患者さんにもかんで服用しないように伝えましょう。潰瘍性大腸炎治療の新たな選択肢が増えることで、患者さんのQOL向上が期待されます。

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第179回 血液凝固タンパク質2つがコロナ感染後の脳の不調と関連

血液凝固タンパク質2つがコロナ感染後の脳の不調と関連疲労に加えて認知機能障害、いわゆる脳のもやもや(brain fog)が数ある新型コロナウイルス感染(COVID-19)罹患後症状(long COVID)の1つとしてよく知られています。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染して認知機能障害に見舞われる人とそうでない人を隔てる仕組みへの血液凝固タンパク質2つの寄与を示唆する大規模観察試験結果が報告されました1)。試験ではCOVID-19で入院した患者約2千例(1,837例)が追跡され、入院時のそれらタンパク質2つと感染から半年と1年時点での認知機能障害の関連が認められました。その1つはフィブリノゲンです。C反応性タンパク質(CRP)に比してフィブリノゲンが入院時に多かった患者は少なかった患者に比べて記憶や注意などの認知機能の客観的検査成績や主観評価が劣りました。もう1つはDダイマーで、CRPに比してDダイマーが多かった患者は認知機能の主観評価が劣りました。たとえばDダイマーが多かった患者の6ヵ月時点の認知機能主観評価C-PSQ(0~7点)の点数は約1.5点劣りました。また、Dダイマーが多かった患者は疲労や呼吸困難の訴えや仕事への差し障りをより多く報告しました。フィブリノゲンやDダイマーとCOVID-19の関連を示した報告は今回が初めてではありません。先立つ複数の試験でCOVID-19入院患者にそれらタンパク質の増加が血栓過剰とともに認められています2)。フィブリノゲンが多いことと認知機能障害や認知症の関連を示したCOVID-19流行前の報告もあり、フィブリノゲンは認知機能欠損と何はさておき関連するのかもしれません。一方、DダイマーはCOVID-19以外で認知機能障害との関連は示されておらず、SARS-CoV-2感染に特有の指標かもしれません。フィブリノゲンやDダイマーが認知機能障害を引き起こすとしてその仕組みがいくつか想定されています。フィブリノゲンは脳の血液循環を妨げる血栓を形成するのかもしれません。あるいは神経系の受容体と直接相互作用することも想定されます。Dダイマーは肺での血栓形成をより反映していると思われ、それが呼吸困難に寄与し、酸欠による脳の不具合をもたらすのかもしれません。今回の試験結果を解釈するうえでいくつか注意点があります。1つは変異株がぼこぼこ出現する前のコロナ流行初期に募った被験者を対象にしていることであり、変異株が優勢の現在の感染患者に今回の結果が当てはまるかどうかは不明です。また、ワクチン非接種の重症の入院患者を対象としていることも注意が必要です。感染症状が軽度だったlong COVID患者は多く、そういう患者は今回の試験の対象ではありません。フィブリノゲンやDダイマー、あるいはより大まかに血栓を標的とする治療のlong COVID予防の裏付けはほとんどありません。抗凝固薬が治療手段の1つとしてみなされていますが、決定的な試験結果はまだありません2)。それに抗凝固薬は出血などの副作用と隣り合わせでもあります。抗凝固薬の検討のために必要な前段階として、認知機能障害をSARS-CoV-2感染後に被った患者の脳を画像診断して脳虚血の兆候があるかどうかを調べることを著者は提案しています1)。もし脳虚血が見つかるようなら先行きが心配な患者の感染初期のころの抗凝固薬使用の試験を実施する価値はありそうです。参考1)Taquet M, et al. Nat Med. 2023 Aug 31. [Epub ahead of print] 2)Clotting proteins linked to Long Covid’s brain fog / Science

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不安で眠れない時はどうしたらいい?【医学生お悩み相談ラヂオ】第7回

動画解説第7回は、医学部6年生の女性からのお悩み。卒業試験が徐々に近づくにつれ、不安感が増して眠れなくなるとのこと。大学受験とはまた違った緊張感に苦しんでいる様子です。卒業試験、マッチングで失敗も成功も経験してきたえど先生のアドバイスには説得力があります。

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化療後の閉経前乳がんへのタモキシフェン+卵巣機能抑制、長期結果は(ASTRRA)

 手術および術前または術後化学療法後の閉経前エストロゲン受容体(ER)陽性乳がん患者に対する、タモキシフェン(TAM)+卵巣機能抑制(OFS)併用の有効性を検討するASTRRA試験について、追跡期間中央値8年の長期解析結果を、韓国・Asan Medical CenterのSoo Yeon Baek氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年8月22日号に報告した。 ASTRRA試験では、閉経前または化学療法後に卵巣機能が回復した45歳未満の女性1,483例が、5年間のTAM単独投与(TAM群)と、5年間のTAM投与と2年間のOFS併用(TAM+OFS群)に1:1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は無病生存期間(DFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)であった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値106.4ヵ月の時点で、TAM+OFS群ではDFSイベントの発生率が連続的に有意に減少した。・8年DFS率はTAM+OFS群で85.4%、TAM群で80.2%だった(ハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.51~0.87)。・OS率はTAM+OFS群で96.5%、TAM群で95.3%と高く、両群間で有意差はなかった(HR:0.78、95%CI:0.49~1.25)。 著者らはTAM+OFS併用による一貫性のあるDFSベネフィットが得られたとし、同患者集団に対するOFS追加を考慮すべきであることが示唆されたとまとめている。

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病院機能評価「医療安全」への対策強化で「カルテレビュー」導入へ

 最近では紙カルテ(診療録)から電子カルテへの普及が進み、病院のみならずクリニックでの導入も多くみられるようになった。また、国が推進するマイナンバーカードによる健康保険証には、個人のカルテ情報の搭載も予定され、いつでも、どこでも自分のカルテが読める時代が期待されている。そんなカルテは、医療事故などが発生した場合、真っ先に調査が行われる患者や患者遺族、医療機関などにとって事故と結果の因果関係を証明する大切な資料となるが、カルテの中身の記載については個々の医師の判断に任されている。 今般、日本医療機能評価機構は、「医療安全」の対策強化を目的に、病院機能評価の「カルテレビュー」の強化を行った。従来よりも多数の症例のカルテについてチェックをされることになる。本稿では特別寄稿として病院機能評価の受審を2022年に受けたばかりの井上 雅博氏(稲沢市民病院 内科)が、「カルテレビュー」への対応について述べる。医療事故で顕在化したカルテの不備 先日、兵庫県の神戸徳洲会病院で心臓カテーテル検査や治療後に複数の患者の死亡が発生し、第三者を交えた医療事故調査が決まりました。さらに神戸市が8月28日に、病院に対して行政指導を行いました。●参考記事カテーテル処置後死亡 神戸市“安全管理体制に複数の問題点”(NHK/7月28日)カテーテル治療後に死亡相次ぐ神戸徳洲会病院 市が行政指導へ カルテに記載なし、実質一人で業務か(神戸新聞/7月28日)神戸徳洲会病院への医療安全管理体制に関する行政指導の実施(神戸市/8月28日) 事故の報道で当初から問題とされていたのは、患者の急変などがあったにも関わらず、診療にあたっていた医師によるカルテ記載が十分ではないことでした。 事故露見のきっかけは、今年の1月から赴任した医師の施行したカテーテル手術後に、死亡事例や容体悪化した症例が多発していたにもかかわらず、病院側が再発防止や医療安全のために検証に取り組んでこなかったため、匿名による内部告発で発覚となりました。 カルテの記載は医師法24条1項には「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない」と定められているように義務となっています。残念ながら、この医師は毎日のカルテ記載を怠っていただけでなく、病状が急変して死亡された患者についても記載がなく、今回のような指導へとつながってしまいました。 患者安全の確立のためにも、診療にあたる医師による患者や家族への同意説明の内容や臨床経過についてはカルテへの記載が必須事項とされています。 医療事故が発生したときに問題となるのは、医療事故に遭われた患者の治療経過や処置など、具体的に行った医療の内容、さらには事故発生後の経過について記載が不十分であると、カルテ開示を求められた場合、患者側に医療不信を引き起こし医療訴訟につながるということです。 医療事故の解析や再発防止策の立案にカルテ記載は必要であることは言うまでもないですが、「説明と同意」が必須の時代に、十分な同意取得がないまま侵襲性の高い医療行為や手術が実施された場合、今回の事例のように、地方厚生局や自治体などの行政側からも指導が下されることになります。また、最近では、説明同意文書以外にも、インフォームドコンセントの取得時に医師や看護師からの説明を受けた患者や家族の理解度についてもカルテ記載に必要とされてきています。病院機能評価でもカルテ記載の内容を問う時代に 今年の4月から新たに日本病院機能評価機構による病院機能評価も新しいバージョン3.0が導入されました。従来はサーベイヤーが審査するのは当日に選ばれた病棟の退院患者の症例のカルテの中から、実際に1症例を外来から入院、手術や検査、そして退院など一連の流れを審査側に説明してチェックを受けていたものが、カルテの記載内容について「定常状態」を確認するため、ランダムに選ばれたカルテを5症例ほど連続して確認することになりました。 日本医療機能評価機構は、医療機関が質の高い医療を提供するのを支援するために1997年から全国の病院に対し医療機能評価を行っています。2023年7月時点で2,000病院が認定病院となっていますが、これは全国の病床の約4割を認定病院の病床が占めており、ほぼ急性期病院の大半が網羅されています。 この25年で、幾度ものバージョンアップを通して評価項目・評価方法の見直しを行ってきました。今回の新しいバージョンでは、全国の受審病院に対して、これまでのサーベイヤーの審査に際しては、カルテの記載が充実している先生のいわゆる「チャンピオンカルテ」を用意しておけば間に合っていたものが、すべての入院患者について「カルテ記載の充実」を求めていることです。 すでに大学病院や高度急性期病院では医師、看護師、薬剤師、栄養士、セラピストなど、多職種からなるチームで医療が行われています。新しいバージョンの病院機能評価では、これを一般病院に対して実践を求めることになりました。詳しくは病院機能評価機構の説明資料(新しい病院機能評価[3rdG:Ver.3.0]の運用開始について)を参照ください。 この中で、従来は大学病院など「一般病院3」だけで実施されてきた「カルテレビュー」が、機能評価を受審するすべての病院で実施されることになりました。 患者・家族への説明や同意文書の不備の有無のチェックだけではなく、複数のカルテ記載から診療・ケアの適切性、説明と同意の適切性、カルテ記載の定常状態などを確認するために、病院における日々の診療内容、患者・家族への説明についての理解度の評価など記載が求められます。 今までのように特定のカルテだけではなく、入院患者の全員について入院から退院までのカルテが審査対象とされるため、退院後2週間以内のサマリーの作成だけではなく、従来は、個別の医師のカルテ記載についてまではあまり立ち入っていなかったのを、病院側が診療録管理委員会などを通して監督・指導しなければならなくなっています。 さらにカルテレビューの導入に合わせて、バージョン3.0では、400床以上の【区分4】、200~399床【区分3】の病院では、医療安全・感染対策ラウンドが実施され、情報伝達エラーの防止策や医薬品の安全管理や誤認対策、ハイリスクな医療行為の実施にあたっての院内ルールの規定など、細かくチェックをするものとなっています。 これまでのような小手先での対策ではなく、医師が病院の全職員と共に医療安全のためにしっかりとした対策を講じていく必要が出てきたと思います。 病院機能評価は、救急体制充実加算や回復期リハビリテーション病棟入院料1の加算を受けるためには病院機能評価や第三者評価が条件となっているものが複数あり、避けて通れなくなっています(病院機能評価が影響する診療報酬や施設基準等について)。 医療機能評価を受審するにあたっては、病院側はカルテ記載をしっかりと医師に積極的に働きかける必要があり、新入職員の研修医や中途入職の医師に対してもカルテ記載について導入教育を行う必要が出てきていると思われます。 今年の4月から新バージョンの運用開始に伴い、大学病院以外でもカルテレビューが行われており、対策が急がれます。●参考資料機能種別版評価項目(3rdG:Ver.3.0)の機能種別と評価項目について3rdG:Ver.3.0の訪問審査当日の進行について病院機能評価が関連する診療報酬や制度等について

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