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乳がんへのパルボシクリブの効果、PPI併用で損なわれる

 抗がん剤による消化器症状を緩和するためにプロトンポンプ阻害薬(PPI)が使用されているが、PPIの酸分泌抑制作用は経口抗がん剤のバイオアベイラビリティや臨床効果に悪影響を及ぼす。今回、韓国・Sungkyunkwan UniversityのJu-Eun Lee氏らによる進行乳がん患者を対象としたコホート研究の結果、パルボシクリブにPPIを併用した群では非併用群よりも無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が短いことが示された。この結果から、パルボシクリブにPPIを併用するとパルボシクリブの治療効果が損なわれる可能性が示唆された。JAMA Network Open誌2023年7月21日号に掲載。 本研究は、韓国の2016年11月1日~2021年7月31日の全国請求データを用いた後ろ向きコホート研究で、2017年11月1日~2020年7月31日にパルボシクリブを投与された乳がん女性を調べた。パルボシクリブとPPIの処方が33%以上重複した患者をPPI併用群、パルボシクリブ治療期間中に一度もPPIを投与されなかった患者を非併用群とし、1:3の傾向スコアマッチングにより患者を選択した。主要評価項目は臨床的PFSとOSで、Cox比例ハザード回帰を用いてPPI併用のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・マッチングされた1,310例(PPI併用群:344例、非併用群:966例)のうち、1,108例(84.6%)が50歳以上で、1,111例(84.8%)がレトロゾールとアナストロゾールによる治療(ホルモン感受性)、199例(15.2%)がフルベストラントによる治療(ホルモン抵抗性)を受けていた。・臨床的PFS中央値は、PPI併用群(25.3ヵ月、95%CI:19.6~33.0)が非併用群(39.8ヵ月、95%CI:34.9~NA)より短く(p<0.001)、HRは1.76(95%CI:1.46~2.13)であった。・OSについてもPPI併用群のほうが短かった(HR:2.71、95%CI:2.07~3.53)。・ホルモン感受性および抵抗性治療を受けている患者のどちらにおいても、PPI併用群の臨床的PFSおよびOSは不良であった。

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患者が作成に本格的に参画、『患者・市民のための膵がん診療ガイド』

 膵がんは年間の新規罹患者数4万4,500人(2022年予測)、20年間で約2倍と大きく増加しており、とくにアジア・日本での増加率が高い。がん種別にみた罹患者数は6位ながら死亡者数では4位、罹患者数と死亡者数の差が小さい、いわゆる「難治性がん」の代表とされる。 現在、乳がん、胃がん、大腸がんなどで患者向けガイドラインが刊行・改訂されているが、2023年5月には膵がんの『患者・市民のための膵がん診療ガイド 2023年版』(編集:日本膵臓学会)が刊行された。改訂は2019年以来4年ぶり、本版は第4版となる。7月には作成委員長である奥坂 拓志氏(国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科 科長)と、患者代表として作成に参画した眞島 喜幸氏(NPO法人 パンキャンジャパン 理事長)を講師に招いたメディアセミナーが開催された。 奥坂氏は「これまでの患者向けガイドラインは『医療者向けガイドラインを底本として、患者向けにわかりやすく解説し直す』という作成方法だった。2022年刊行の医療者向け『膵診療ガイドライン』と患者向けの本書は、双方の作成に患者・市民が参画しており、これまでとはまったく異なる方法で作成されたものだ」と解説。診療ガイドラインの評価・選定、作成支援を行うMinds(日本医療機能評価機構)は、ガイドライン作成への患者・市民参画を推奨しているが、日本では患者会活動が欧米ほど活発でないことなどが理由となって、本格的に患者・市民が作成に関わった診療ガイドラインはまだ数少ないという。 続けて登壇した眞島氏は「今回のガイドライン作成にあたっては、パンキャンジャパンが膵がんの患者会にアンケートを行い、必要とする情報を聞いた。すると、医療者が重視するカテゴリーと、患者が必要だと考える情報に差異があることがわかった」と説明した。たとえば「手術に関連した合併症」のカテゴリーは医療者の評価が高い一方で患者の評価は低く、反対に「ゲノム医療」は医療者の評価が低い一方で患者の評価が高い、といった差が出た。「支持療法」など、両者が一致して重視したカテゴリーもあった。 患者・市民4名で構成するガイドライングループで、アンケートの分析結果を踏まえた重み付けをしたうえで、医療者の評価と照らし合わせ、ガイドラインで取り上げるべきテーマを抽出していった。 結果として、治療の流れや最新治療の解説のほか、精神面の不安や医療者とのコミュニケーションに対するアドバイス、医療費や仕事との両立など、患者目線のトピックスが多く盛り込まれた。さらに患者・市民グループが執筆したコラム、用語集、薬剤名一覧なども付いた、情報を盛り込みながらも読みやすい1冊となっている。 奥坂氏は、医療者向けのメッセージとして「時間の限られた臨床の場では、患者さんへの説明やコミュニケーションが限定的になってしまうこともある。患者さん・ご家族に本書を薦めて理解の一助にしてもらうほか、診療に携わるほかの医療者にもぜひ推薦してほしい」とした。

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donanemab、早期アルツハイマー病の進行を抑制/JAMA

 早期症候性アルツハイマー病でアミロイドおよびタウ沈着の病理学的所見が認められる患者に対し、donanemabはプラセボと比較して、76週時点で評価した臨床的進行を有意に遅延させたことが示された。所見は、低・中タウ病理集団と低・中+高タウ病理集団で認められたという。米国・Eli Lilly and CompanyのJohn R. Sims氏らが、1,736例を対象に行われた国際多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III試験「TRAILBLAZER-ALZ 2試験」の結果を報告した。donanemabは、脳アミロイド斑を除去するよう設計された抗体医薬。JAMA誌オンライン版2023年7月17日号掲載の報告。4週ごとにdonanemabを72週間投与 TRAILBLAZER-ALZ 2試験は、8ヵ国277ヵ所の医療研究センター/病院で18ヵ月間にわたって行われた。早期症候性アルツハイマー病(軽度認知障害/軽度認知症)で、PET画像診断でアミロイドおよび低/中程度~高度のタウ病理学的所見が認められる1,736例を対象に、donanemabの有効性と有害事象を評価した。被験者は、2020年6月~2021年11月に登録された(最後の被験者がプライマリケアを受診したのは2023年4月)。 研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方にはdonanemabを(860例)、もう一方にはプラセボを(876例)、4週ごとに72週間静脈内投与した。donanemab群に割り付けられた患者は、推奨用量の基準を満たした場合は、盲検下のままプラセボ投与に切り替えられた。 主要アウトカムは、ベースラインから76週までの統合アルツハイマー病評価尺度(iADRS)スコア(範囲:0~144、スコアが低いほど認知障害が大きいことを示す)の変化。アウトカム(主要・副次・探索的)は、ゲート付き24項目で、副次アウトカムには、臨床的認知症重症度判定尺度(CDR-SB)スコア(範囲:0~18、高スコアほど認知障害が大きいことを示す)の各項目スコアの合計の変化も含まれた。統計学的検定は、多重比較のためのstudy-wise type I error rateを用い、有意水準α=0.05とし、低/中タウ病理集団のアウトカムについてはα=0.04を、高タウ病理集団を含めた統合集団については、α=0.01を割り当てた。iADRSスコア、CDR-SBスコアで進行遅延を確認 被験者1,736例(平均年齢73.0歳、女性996例[57.4%]、低/中タウ病理集団1,182例[68.1%]、高タウ病理集団552例[31.8%])が無作為化され、このうち1,320例(76%)が試験を完了した。 ゲート付き24項目アウトカムのうち、23項目でdonanemab群とプラセボ群に統計的有意差があった。76週時点のiADRSスコアの最小二乗平均(LSM)変化は、低/中タウ集団では、donanemab群-6.02(95%信頼区間[CI]:-7.01~-5.03)、プラセボ群-9.27(-10.23~-8.31)だった(群間差:3.25、95%CI:1.88~4.62、p<0.001)。低/中+高タウ集団(全体)では、donanemab群-10.2(95%CI:-11.22~-9.16)、プラセボ群-13.1(-14.10~-12.13)だった(群間差:2.92、95%CI:1.51~4.33、p<0.001)。 76週時点のCDR-SBスコアのLSM変化は、低/中タウ集団ではdonanemab群1.20(95%CI:1.00~1.41)、プラセボ群1.88(1.68~2.08)だった(群間差:-0.67、95%CI:-0.95~-0.40、p<0.001)。全体では、donanemab群1.72(95%CI:1.53~1.91)、プラセボ群2.42(95%CI:2.24~2.60)だった(群間差:-0.7、95%CI:-0.95~-0.45、p<0.001)。 画像所見で確認されたアミロイド関連の脳浮腫・滲出液の異常はdonanemab群205例(24.0%、症候性52例)、プラセボ群18例(2.1%、症候性0例)だった。注入関連反応は、donanemab群74例(8.7%)、プラセボ群4例(0.5%)で認められた。治療関連と考えられる死亡は、donanemab群の3例とプラセボ群の1例だった。

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RNA干渉薬zilebesiran、単回投与で24週間降圧持続/NEJM

 高血圧症患者に対する長時間作用型RNA干渉治療薬zilebesiranは、200mg以上の投与で、血清アンジオテンシノーゲン値と24時間自由行動下血圧の用量依存的な低下を24週まで持続したことが示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のAkshay S. Desai氏らが、107例を対象とした第I相試験の結果を報告した。アンジオテンシノーゲンは、アンジオテンシンペプチドの唯一の前駆体で、高血圧の発症機序に重要な役割を果たしている。zilebesiranは、肝臓でのアンジオテンシノーゲンの合成を阻害する長時間作用型RNA干渉治療薬として治験が進められている。NEJM誌2023年7月20日号掲載の報告。低塩食、高塩食での効果やイルベサルタンとの併用も検証 英国の4医療機関で行われた第I相試験で、高血圧症の成人患者を2対1の割合で無作為化し、一方の群にzilebesiranを用量漸増法で(10、25、50、100、200、400、800mg)、もう一方の群にはプラセボを、いずれも単回皮下投与し24週間追跡した(パートA試験)。また、低塩食(0.23g/日)または高塩食(5.75g/日)の状態下で、zilebesiran 800mgの有効性を評価した(パートB試験)。さらに、zilebesiran 800mgをイルベサルタンと同時に投与した場合の有効性も評価した(パートE試験)。 エンドポイントは、安全性、薬物動態・薬力学的特性、24時間自由行動下血圧モニタリングで測定した収縮期・拡張期血圧のベースラインからの変化などだった。高塩食の血圧への影響を弱め、イルベサルタンとの併用で効果増強 被験者107例のうち5例に、軽度や一過性の注射部位反応が認められた。医療的介入を要した低血圧、高カリウム血症、腎機能悪化の報告はなかった。 パートA試験では、zilebesiran投与群で血清アンジオテンシノーゲン値が低下し、その程度について投与量との相関関係が認められた(8週時点のr=-0.56、95%信頼区間[CI]:-0.69~-0.39)。 zilebesiran 200mg以上の単回投与は、8週までの収縮期血圧の低下(>10mmHg)および拡張期血圧の低下(>5mmHg)と関連し、これらの変化は日内変動の中で一貫しており、24週時点でも持続していた。 パートBの結果からはzilebesiranが高塩食の血圧への影響を弱めることが示唆され、パートEの結果ではzilebesiranのイルベサルタンとの併用による効果の増強が示唆された。

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医療系YouTuberが認定制に!【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第114回

皆さんの周りで医療系のYouTube配信をしている人はいますか? YouTuberとはどのくらいの登録者数がいる人を指すのかは不明ですが、医療者で医療系情報を発信する人は少なくないようです。YouTubeで配信をしてもなかなか収益につながることは難しいらしく、収益を得ながら継続して発信を行っている人は多くないのかもしれませんが、自分が思うことや世の中が求めていることを発信し、広めるには効果的なツールの1つであることには間違いないでしょう。今回、YouTubeを運営するGoogleが、医療情報の発信に関して、一定の規制を設けることを発表しました。グーグルが動画投稿サイト「YouTube」で、医療関連コンテンツの信頼性を高めるため、医師や看護師などの医療系ユーチューバーに「認定制度」を年内に導入する。申請して基準を満たせば、配信者は「信頼できる情報源」であることを表示できるようになる。一方で、信頼性が低い情報源の配信者に関しては、削除や表示されにくくする措置をとる。「GLP-1ダイエット」を宣伝する自由診療クリニックの医師は資格制度の対象外となる見通し。GLP-1ダイエットに関しては、学会や製薬企業が警告しているが、グーグルも不適切情報の氾濫に歯止めをかける方針だ。(2023年7月24日付 RISFAX)現在のところ、上記の認定制度の対象資格は「医師」「看護師」「心理カウンセラー」の3職種とされており、薬剤師は対象外となっています。認定を得るための申請条件は、全米医学アカデミー(NAM)や世界保健機関(WHO)の健康に関する情報共有の原則に従っていることの証明のほか、直近12ヵ月間の総再生数が2,000時間以上あるなどの厳しい基準をクリアする必要があります。認定にはその情報の正確さや信頼だけでなくチャンネルの人気も必要なようです。この取り組みにより、医療者がYouTubeからお墨付きをもらうことで、「信頼できる情報源」として情報を発信できるというメリットは大きいでしょう。健康や医療関連の情報を求めてYouTubeで検索するユーザーに対して、より信頼できる情報を届けやすくなるのではないでしょうか。今回、GLP-1受容体作動薬をダイエット目的で自費診療として用いる、いわゆる「GLP-1ダイエット」についてはGoogleも問題視していると明言していて、おそらくこの発表の要因の1つになったのでしょう。GLP-1受容体作動薬の適応外使用を促す医師については、ガイドラインやポリシーに則り、動画削除や表示を下位にする措置を取るとしています。全体をみると、この対策は医療分野だけというわけではありません。情報の正確性がとくに重要な政治、医療、科学情報などのトピックに関しては、信頼できる情報源から情報を検索しやすく、お勧めの動画として優先的に表示し、誤情報・フェイクニュースなどに対しては取り締まる対策を行うという大きな流れの1つであるようです。医療や健康関連の情報で疑問を持っている人や悩んでいる人が、インターネットで情報を検索するというケースは増加していると言われていますが、その情報は玉石混交です。また、医療情報はどんどん変わっていきます。患者さんがタイムリーかつ正確な情報を得られやすくなり、健康の向上や不安の解消に役立てばいいなと思います。

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静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(前編)【見落とさない!がんの心毒性】第23回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別30代・男性既往歴なし併存症健康診断で高血圧症、脂質異常症を指摘され経過観察喫煙歴なし現病歴発熱と咳嗽が出現し、かかりつけ医で吸入薬や経口ステロイド剤が処方されたが改善せず。腹痛が出現し、総合病院を紹介され受診した。胸部~骨盤部造影CTで右下葉に結節影と縦隔リンパ節腫大、肝臓に腫瘤影を認めた。肝生検の結果、原発性肺腺がんcT1cN3M1c(肝転移) stage IVB、ALK融合遺伝子陽性と診断した。右下肢の疼痛と浮腫があり下肢静脈エコーを実施したところ両側深部静脈血栓塞栓症(deep vein thrombosis:DVT)を認めた。肺がんに伴う咳嗽以外に呼吸器症状なし、胸部造影CTでも肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)は認めなかった。体重65kg、肝・腎機能問題なし、血圧132/84 mmHg、脈拍数82回/min。肺がんに対する一次治療としてアレクチニブの投与を開始した。画像所見を図1に、採血データを表1に示す。(図1)中枢性DVT診断時の画像所見画像を拡大する(表1)診断時の血液検査所見画像を拡大する【問題1】DVTに対し、どのような治療が考えられるか?【問題2】筆者が本症例でがん関連血栓塞栓症のリスクとして注目した患者背景は何か?第24回(VTEの治療継続で生じた問題点とその対応)に続く。1)Dou F, et al. Thromb Res. 2020;186:36-41.2)Al-Samkari H, et al. J Thorac Oncol. 2020;15:1497-1506.3)Wang HY, et al. ESMO Open. 2022;7:100742.4)Qian X, et al. Front Oncol. 2021;11:680191.講師紹介

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楽な手術記録の管理【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第27回

手術は医療行為ですので、当然、行った手術に対して公式の記録を残す必要があります。電子カルテもかなり普及しているので、電子カルテ上で管理することが一般的だと思います。ファイルメーカーで一括管理、プリントアウトしたものを電子カルテに取り込んでいる、なんて施設も多いと思います。しかし、手術の際は公式記録以外にも気付いたことや、次に手術で改善しておきたいことなどの公式記録には載せられないメモ書きのようなものも残しておきたいところです。ノートに書いている先生もおられますが、私はコピー用紙に殴り書きすることが多かったです。コピー用紙の束が増えていくのは頑張っている感が出て、悪い気はしないのですが、どこに何を書いたのかわからなくなって、見返すことが非常に困難になってしまいます。こういったメモは「読み返すことよりも、書くことで手術をもう1度振り返る機会として重要だ」と言われたこともありますが…「『そういえば、以前やった症例と似てるな』というときに、すぐに検索できれば便利なのにな」とつねづね思っておりました。そこで、私はノートアプリ“Goodnotes”を使用して手術メモを管理することにしました。Goodnotesでできる自分だけの手術記録の管理Goodnotes、使ってみるとメチャクチャ便利。手書きのスケッチを記録できるだけじゃなく、手術に関連して調べた内容をスクリーンショット(画面撮り)して貼り付けたり、術前検査の結果を写真に撮って貼り付けたりできるんです。書いたメモをPDFファイルに書き出してgoogleカレンダーに貼り付けておけば、「夏頃に同じような症例があったよな…」というシチュエーションの際にも即座に対応できます。また、スマホと同期させておけば、それこそ緊急手術時の隙間時間に、類似症例の復習ができるわけです。もうちょっと言えば、このGoodnotesは作成したノートのリンクを作ることができるので、手作りのカレンダーにリンクをバチバチ貼り付けて、タップしたらそのページに飛ぶようにしてみました。しかし、これはいったんネットを経由しないとリンク先に飛ぶことができず、逆に時間がかかるので断念しましたが…。そのほかGoodnotesは、PDFの取り込みができて、「投げ縄ツール」という機能を使えば、PDF書類の一部を切り取ってコピーすることができます。私はドイツにいく際に、所持していた教科書をすべてPDFファイルにしてありましたので、教科書の挿絵をバンバン切り取って貼り付けて、さらにそこへ書き込みをすることだってできてしまいます。普段の診療で使用しているメモの代用に、Goodnotesの使用を検討してみてはいかがでしょうか。

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第171回 新たな医療崩壊の兆しか?新潟・糸魚川総合病院の産科休止問題で浮かび上がる“医師の働き方改革”の暗黒面

産科医不足で糸魚川総合病院が出産取り扱いを休止こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。MLBのトレード期限である8月1日(現地時間)を前に、大谷 翔平選手のトレードに関する報道が過熱しています。そんな中、7月19日、MLBの藤浪 晋太郎投手の電撃トレードが発表されました。オークランド・アスレチックスからボルチモア・オリオールズへ、アメリカンリーグ西地区最下位から同リーグ東地区首位のチームへ……。藤浪投手は開幕当初、暴投と四球続きで、早々のマイナー降格なども噂されていただけに、日本の多くの野球ファンも驚いたことでしょう。先発から中継ぎに転向してからは制球力も付いて、四球の数も格段に減っていました。大谷選手もまだ実現していないポストシーズン出場、そしてワールドシリーズの可能性も出てきました。日本でもNHK BSが生で放送した4月のデビュー戦では、祈るように観戦していたお母様の姿が印象的でしたが、ワールドシリーズでもその姿を見ることになるかもしれません。悪球に懲りずに使い続けてきたアスレチックスの投手コーチのお陰ですね。いやあ、世の中何があるかわからない、と感じた藤浪のトレードでした。さて今回は、7月16日付の朝日新聞が報じた、新潟県糸魚川市にあるJA新潟厚生連・糸魚川総合病院の出産取り扱い休止について書いてみたいと思います。同病院には市内で唯一の産婦人科がありますが、常勤の産婦人科医が1人になってしまったため休止を余儀なくされています。市内の妊婦は、健診や出産のために約50キロ離れた富山県黒部市か、新潟県上越市の病院まで行かなければならなくなりました。「産婦人科の態勢確保に苦労している」富山大病院が医師派遣を取りやめいったい、なぜそのような事態となってしまったのか。朝日新聞は、「大学病院『働き方改革』余波」と書いています。糸魚川総合病院は富山大病院の関連病院で、約30人の医師のうち約20人が同大病院からの派遣だそうです。同紙によれば、「3月末、産婦人科にいた常勤医2人のうち1人が定年退職し、もう1人が富山大病院に戻り、派遣は中止された。糸魚川総合病院と市が再考を求めても、富山大の方針は変わらなかった。独自に手を尽くしたが、産婦人科の常勤医は1人しか確保できなかった」とのことです。同紙は引き上げた当の富山大病院も、産婦人科の態勢確保に苦労していると書いています。富山大は朝日新聞の取材に対し、「地域医療の安全性、働き方改革など、多方面から検討した苦渋の決断です」と文書で回答したとのことです。臨床研修制度スタート時と同じように医師引き上げが加速の予感本連載でも、「第159回 働き方改革まであと1年、大学病院の医師約3割が年960時間超の残業見込み。危惧される派遣先からの医師引き揚げ」で、全国医学部長病院長会議が全国の81大学病院の医師の勤務実態を調査した結果を紹介、医師の労働時間の短縮が教育・研究に与える影響の大きさについて書きました。さらに、「宿日直許可」の取得が3割で得られず、今後、大学病院は自院のみならず、医師をアルバイトなどで派遣している病院についても、しっかりと労働時間のマネジメントを行わないとそれこそ大学病院自体の診療や研究に大きな影響が出る、と指摘しました。そして、「臨床研修制度が始まったとき大学の医師引き揚げが問題となったが、同じようなことが全国で起きる可能性はある」というある民間病院院長の言葉を紹介しました。糸魚川総合病院のケースは、大学病院の態勢維持のため、医師引き上げが現実のものとなり始め、地域の病院において医療崩壊が既に始まっていることの表れと言えます。マイナ保険証と同様、国民に周知されず進められる医師の働き方改革来年2024年4月から始まる医師の働き方改革では、医師の休日・時間外労働が原則年960時間までとなります。地域医療に貢献する病院などは年1,860時間までとする特例が設けられます(2035年度末まで)。こうした激変緩和措置に加え、労働基準監督署による宿日直許可の緩和要請など、表向きはさまざまな対策が取られていることになっています。しかし、制度実施まで8カ月あまりとなってのこのドタバタ振りは、なにやら現在の“マイナ保険証騒動”と同じような、大混乱を予感させます。長年に渡って準備をしてきたはずの大学病院ですら切羽詰まった状況にあり、さらに「医師の働き方改革」の存在など何も知らない(知らされてこなかった)地域住民の医療アクセスが突然悪くなって不便になるという事態は、一度国民が騒ぎだしたら、大きな政治問題となりそうです。「コロナでも大変だったのに、なんでコロナが収まったのに医療が受けづらくなっているんだ」というわけです。三位一体どころか三すくみの改革に厚生労働省は現在、2040年の医療提供体制の構築に向けて、地域医療構想、医師・医療従事者の働き方改革、医師偏在対策を「三位一体」で推進していこうと、さまざまな改革を進めています。この三位一体改革は、2019年4月の社会保障審議会医療部会で厚労省が示したもので、その後、厚労省の官僚はことあるごとに講演等で、三位一体改革の重要性を説いてきました。ちなみに2040年は高齢化人口がピークを迎えるとともに、生産年齢人口(働き手)が急減していく年です。この三位一体改革をぶち上げてから4年が経ちました。コロナ禍があったとはいえ、働き方改革の準備を進めることで逆に医師偏在が進み、地域医療構想どころではなくなってきている現状は、三位一体どころか、三すくみの状態と言えそうです。混乱、混迷はこれからもっと深まっていくことでしょう。

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アルコール摂取、大腸がんリスクが上がる量・頻度は?

 過度なアルコール摂取は大腸がん発症のリスクを増加させる可能性があることが示唆されているが、摂取量や腫瘍部位による差を検討した韓国の試験結果がJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年6月14日号に掲載された。 この研究では、若年で発症する大腸がん(50歳未満で診断)のリスク要因を特定するため、1日のアルコール摂取量と早期発症大腸がんの関連性を調査した。2009年1月1日~2019年12月31日の韓国の国民健康保険サービスのデータを使用し、20~49歳の566万6,576例を対象に分析を行った。 1日の飲酒量を下記のように定義し、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて調整ハザード比(aHR)と95%信頼区間(CI)を推定した。・非飲酒者:男性0g、女性0g・軽度飲酒者(基準):男性10g未満、女性10g未満・中程度飲酒者:男性10~30g未満、女性10~20g未満・多量飲酒者:男性30g以上、女性20g以上 主な結果は以下のとおり。・566万6,576例中、非飲酒者が41.6%、軽度飲酒者が28.0%、中程度飲酒者が20.4%、多量飲酒者が9.9%だった。・追跡期間中に8,314例の早期大腸がんの発症があった。中程度飲酒者および多量飲酒者は、軽度飲酒者と比較して早期大腸がんのリスクが高いことが示された(中程度のaHR:1.09、95%CI:1.02~1.16、多量のaHR:1.20、95%CI:1.11~1.29)。・腫瘍部位別のサブグループ解析では、遠位大腸がんではアルコール用量と正の相関関係が認められたが、近位結腸がんでは認められなかった。・飲酒頻度と早期大腸がんリスクにも有意な関連があり、非飲酒者と比較して1~2日/週で7%、3~4日/週で14%、5日/週以上で27%リスクが増加した。・ 研究者らは「過度のアルコール摂取が50歳未満での大腸がん発症のリスク増加に関連していることが示された。このことは効果的な介入を通じて若年者の過度の飲酒に対処することの重要性と、高リスク者に合わせたがん検診の必要性を強調している。アルコール摂取量など修正可能な危険因子を特定することで、若年層における大腸がん発症の予防戦略を開発できるだろう」としている。

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ポジティブ思考トレーニングでうつ病リスクは軽減するか

 過去の記憶、未来の想像、今の状態と違う状態を考えるマインドワンダリング。とくにその頻度は、心理的ウェルビーイングに重要な役割を果たすといわれている。また、反復的なネガティブ思考は、うつ病の発症や持続のリスクと関連している。オランダ・フローニンゲン大学のMarlijn E. Besten氏らは、認知科学および実験臨床心理学の手法を組み合わせたマインドワンダリングによる反復的なネガティブ思考に対する影響を調査した。その結果、うつ病に対する脆弱性の根底にあるストレス誘発性のネガティブ思考は、ポジティブ空想により部分的に改善できる可能性があり、うつ病だけでなく不適応思考の特徴を有する疾患の治療に役立つ可能性があることを報告した。Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry誌オンライン版2023年6月16日号の報告。 対象は、ネガティブ思考およびうつ病に対する脆弱性が高い群42例、低い群40例。クロスオーバーデザインにて、ポジティブ空想1セッション、ストレス誘発1セッションの後、持続的注意課題(SART)を行った。介入前後の感情状態を測定した。 主な結果は以下のとおり。・ストレス誘発セッション後は、ネガティブ思考が増加したが、ポジティブ空想セッション後は、ポジティブ思考が増加し、ネガティブ思考が減少した。・ポジティブ空想セッション後は、ストレス誘発セッション後と比較し、仕事以外の思考、過去に関連した思考、ネガティブ思考が減少した。・ネガティブ思考を受け入れやすい人は、ストレスが少ない人と比較し、ポジティブ空想セッション後よりもストレス誘発セッション後に、タスク外の思考をより多く示した。・本研究の限界として、ベースライン測定が含まれていない点、SARTに自身の懸念事項を含めるとネガティブ要素につながる可能性がある点が挙げられる。

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XBB/XBB.1.5、ほかの変異株より再感染リスク高い

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の多様な変異の出現は、ワクチンと感染の両方による集団免疫を回避する能力の向上と関連している。米国・カリフォルニア大学バークレー校のJoseph A. Lewnard氏らの研究によると、現在主流となっているオミクロン株XBB/XBB.1.5系統は、ワクチン由来の免疫と感染由来の免疫とで回避傾向が異なり、同時期に流行しているほかの変異体と比較して、ワクチン接種回数が多い人ほど感染リスクや感染時の入院リスクが低減する一方で、過去に感染既往がある人はXBB/XBB.1.5への感染リスクが高いことが示された。Nature Communications誌2023年6月29日号に掲載の報告。 XBB/XBB.1.5系統は2023年1月下旬までに、ほかの変異体を追い抜き米国内で主流となった。本研究では、南カリフォルニアにおいて2022年12月1日~2023年2月23日の期間に、外来でSARS-CoV-2陽性と判定された3万1,739例のデータを解析した。これらの被験者において、XBB/XBB.1.5に感染した人と、ほかのBA.4/BA.5などに感染した人について、ワクチン接種歴と過去のSARS-CoV-2感染既往、および臨床転帰を比較した。 主な結果は以下のとおり。・XBB/XBB.1.5系統に感染していると推定された外来患者の割合は、2022年12月1日の時点で21.1%(45/213例)であったのが、2023年2月23日の時点で77.8%(49/63例)に増加した。全被験者3万1,739例のうち、XBB/XBB.1.5症例は9,869例、それ以外のBA.4/BA.5などの非XBB/XBB.1.5症例は2万1,870例だった。・COVID-19ワクチン接種回数と感染リスクの関連は、XBB/XBB.1.5症例は、非XBB/XBB.1.5症例と比較した調整オッズ比(OR)が、接種2回で10%(95%信頼区間[CI]:1~18)、3回で11%(3~19)、4回で13%(3~21)、5回以上で25%(15~34)低かった。・過去のSARS-CoV-2感染既往と感染リスクの関連は、XBB/XBB.1.5症例は、非XBB/XBB.1.5症例と比較した調整ORが、過去1回の感染既往で17%(95%CI:11~24)、過去2回以上の感染既往で40%(19~65)高かった。・COVID-19ワクチン接種回数と感染時の入院リスクとの関連は、XBB/XBB.1.5症例における検査陽性後30日間の入院予防効果の推定値が、接種2回で41%(95%CI:-44~76)、3回で54%(0~79)、4回で70%(30~87)であった。一方、非XBB/XBB.1.5症例では、接種2回で6%(-65~46)、3回で46%(7~69)、4回で48%(7~71)であり、XBB/XBB.1.5症例のほうが有意に予防効果が高かった。・過去のSARS-CoV-2感染既往と入院リスクの関連は、XBB/XBB.1.5症例および非XBB/XBB.1.5症例において同等であった。2回以上の感染既往の入院の調整ハザード比は、XBB/XBB.1.5症例で0.73(95%CI:0.17~3.15)、非XBB/XBB.1.5症例で0.72(0.26~2.01)。 著者らは本結果について、XBB/XBB.1.5系統は、オミクロン株以前の変異株を含む過去の感染によって引き起こされた免疫応答に対する回避能が、同時期に流行しているBA.5系統より優れているものの、ワクチン接種によって引き起こされる免疫応答に対してはより感受性が高く、過去の変異株とは異なる特徴を持っていると述べている。

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メルケル細胞がんの術後補助療法、ニボルマブが有望(ADMEC-O)/Lancet

 メルケル細胞がん(MCC)の完全切除後の補助療法として、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブは、補助療法を行わない観察群と比較して、無病生存(DFS)に関する絶対リスクを1年後に9%、2年後には10%低下し、新たな安全性シグナルは認められなかったことから、術後補助免疫療法は臨床的に実行可能と考えられることが、ドイツ・エッセン大学病院のJurgen C. Becker氏らが実施した「ADMEC-O試験」の中間解析で示唆された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年7月11日号に掲載された。ドイツとオランダの無作為化第II相試験 ADMEC-O試験は、ドイツとオランダの20の医療センターで実施された2群を比較する非盲検無作為化第II相試験であり、2014年10月~2020年8月に参加者を登録した(Bristol Myers Squibbの助成を受けた)。今回は、中間解析(データカットオフ日:2022年4月5日)の結果が報告された。 MCCと診断され、試験への登録前に外科的切除術または外科的切除術+根治的放射線治療を受け、全身状態が良好(ECOG PS 0/1)な患者が、術後補助療法としてニボルマブ480mg(4週ごと、1年間)の投与を受ける群、または補助療法なしで観察を行う群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は12ヵ月および24ヵ月の時点におけるDFSであり、副次評価項目は全生存(OS)と安全性であった。 179例(ニボルマブ群118例、観察群61例)を登録した。116例(65%)がStageIII/IV、122例(68%)が65歳以上、111例(62%)が男性だった。切除術後に放射線治療を受けた患者(50% vs.74%)は観察群で多かった。OSのデータは未成熟 追跡期間中央値24.3ヵ月(四分位範囲[IQR]:19.2~33.4)の時点で、両群ともDFS期間中央値には未到達であった(群間のハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.30~1.12、p=0.10)。1年DFS率はニボルマブ群85%、観察群77%、2年DFS率はそれぞれ84%、73%だった。ニボルマブを用いた術後補助療法により、DFSに関する絶対リスクが1年後に9%(95%CI:-2~20)、2年後には10%(-2~24)低下した。 死亡例はニボルマブ群が10例、症例数が半数の観察群は6例で、OSのデータは未成熟であり、結論を出すには不十分であった(OSの結果は最終解析で報告の予定)。 Grade3/4の有害事象は、ニボルマブ群が115例中48例(42%)、観察群は61例中7例(11%)で発現し、31%の差が認められた。 ニボルマブ群では、治療関連有害事象が85例(74%)で発現し、このうち23例(20%)がGrade3/4であった。免疫関連有害事象は70例(61%)でみられ、18例(16%)がGrade3/4だった。ニボルマブ投与中止の原因となった有害事象は25例(22%)で認められ、このうち17例(15%)が治療関連と判定され、6例(5%)はGrade3/4であった。治療関連死の報告はなかった。新たな安全性シグナルは認められなかった。 著者は、「データが十分ではないものの両群ともOS率は約95%であることから、ニボルマブによる術後の免疫療法は生存に明らかな悪影響を及ぼすことはないと示唆される。したがって、この中間解析におけるベネフィットとリスクのバランスを考慮すると、MCCの術後補助免疫療法は実行可能であり、再発リスクを抑制する効果を有すると考えられる」と結論している。

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脳出血患者の収縮期血圧を1時間以内に130~140mmHgにコントロールすると通常治療と比較して6ヵ月後の神経学的予後(modified Rankin Scale)が良い(解説:石川讓治氏)

 脳出血患者の急性期の血圧をどのようにコントロールすればよいのかという問題は、徐々に変化してきた。『脳卒中治療ガイドライン』の2009年版においては、「脳出血急性期の血圧は、収縮期血圧が180mmHg未満または平均血圧が130mmHg未満を維持することを目標に管理する」ことが推奨されていたが、2015年版では、「できるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満に降下させ、7日間維持することを考慮しても良い」となり、2021年版では、「脳出血急性期における血圧高値をできるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満へ降圧し、7日間維持することは妥当であり、その下限を110mmHg超に維持することを考慮しても良い」となった。 本研究において、低および中所得国(9ヵ国)で行われた多施設共同研究で、発症6時間以内の脳出血患者を対象に、(1)1時間以内の収縮期血圧(140mmHg未満を目標、130mmHgを下限)、(2)できるだけ早期の血糖(非糖尿病患者では6.1~7.8mmol/L、糖尿病患者では7.8~10.0mmol/L)、(3)1時間以内の体温(37.5度未満)、(4)ワルファリン内服患者においては1時間以内にINR1.5未満を目標に速やかにコントロールを行うことで、6ヵ月後に評価したmodified Rankin Scaleにおける神経学的予後が、通常治療よりも良好であったことが報告された。今回の研究の結果から、脳出血急性期の積極的な降圧を「考慮しても良い」や「妥当である」といった表現から、今後は積極的な推奨にするのかどうかが議論になると思われた。 本研究は低~中所得国で行われており、それぞれの国における通常治療がどうであったのかが不明であった。収縮期血圧を140mmHgにコントロールすることが、通常治療(ガイドライン)においてすでに妥当であるとされているわが国で同様の試験が施行された場合、同じ結果が得られるのかが疑問であった。また、本研究の血圧コントロールは130~140mmHgといった非常に狭い範囲で行われている。実臨床において、とくに高齢者では、収縮期血圧の変動を10mmHgの幅に維持することは容易ではないと思われた。本研究における実際の収縮期血圧は、論文のFigureにおいては、1時間後では150mmHg程度であり、約4時間後に140mmHg未満に達していたようである。

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遠隔血行動態モニタリングシステムは心不全患者のEFに関係なく入院を減少させ、QOLを改善する(解説:原田和昌氏)

 心不全患者のセルフケアは大きな問題である。心不全は高齢化の進行により増加し、多くの医療資源を必要とする。そのため、専門看護師が頻回に患者に電話連絡したり、心不全患者の各種パラメータを遠隔モニタリングしたりすることで、心不全の入院を防止したり、QOLを改善したり、死亡率を低下させたりすることが可能であるかという検討が以前より行われてきた。 遠隔モニタリングは何をモニタリングするか、侵襲的か非侵襲的か、どういったシステム構築でだれがモニタリングするか、警告値が出たときのアルゴリズムはどうするか、さらには警告値を見逃したり、発見が遅れたときの免責などが問題になる。したがって、遠隔モニタリング群がシステムとして、対照群よりも優れていることが臨床試験で証明されてガイドラインにて推奨され、各国の医療システムの償還の枠組みに載る、という手順を踏むことが必要となる。 肺動脈圧を持続的にモニタリングする遠隔血行動態モニタリングを用いたランダム化試験は、これまでにCHAMPION試験とGUIDE-HF試験の2つがある。前者は心不全入院歴のあるNYHAIII度の550例(EFは問わない)をランダム化し、6ヵ月で28%の入院の減少を得た。一方、後者は心不全入院歴のあるNT-proBNPが上昇したNYHAII~IV度の1,000例をランダム化したものであるが、HFrEF患者が中心であったとかCOVID-19などの関係もあり、はっきりした有効性を示すことができなかった。 MONITOR-HF試験は、オランダの25の施設が参加した非盲検無作為化試験であり、心不全入院歴のあるNYHAIII度の慢性心不全患者(EFは問わない)が、ARNIやSGLT2阻害薬を含む標準治療に加えて血行動態モニタリング(CardioMEMS-HFシステム、Abbott Laboratories)を行う群、または標準治療のみを受ける群(対照群)に無作為に割り付けられた。遠隔血行動態モニタリングは、QOLの実質的な改善をもたらし、心不全による入院を減少させた。 心不全の急性増悪は、臨床的うっ血すなわち徴候と症状の悪化の結果起こるが、徴候と症状が出現する前に血行動態的うっ血が出現すると考えられる。CardioMEMS-HFシステムはセンサーを肺動脈内に侵襲的に留置するシステムで、肺動脈圧を持続的にモニタリングすることで血行動態的うっ血を検出し、投薬量(主に利尿薬)の微調整によって心不全患者のうっ血状態の調整を行う。大事なのは、容量過多のときは利尿薬を増量するが、容量減少のときは利尿薬を減量する指示を適切に出すことである。さまざまな侵襲的、非侵襲的モニタリングシステムが開発されているが、最低でも利尿薬の微調整(増減)が可能な程度のクォリティが必要となる。 患者が間欠的にクイーンサイズ枕大の測定機器に寝転ぶと、測定された肺動脈圧が医療者のWEB画面に送信される。このデータを見て、投薬量の調整を患者に電話で指示するという仕組みである。論文には、「Clelandらによると、心不全を極めるにはうっ血を極めることである」とあるが、数多くの患者のWEB画面に対応する必要のある医療者の対応は、おそらくある程度決まったアルゴリズムに従うことになるであろう。 この研究は、今の時代において心不全診療における病院システムの負担を減らすためにもっと積極的にe-health、デジタル技術、遠隔モニタリングを活用することが必要であることを示すものである。しかし、どういったシステム構築でだれがモニタリングするか、異常値が出たときの指示のアルゴリズム、異常値を見逃したり、発見が遅れたときの法的問題などが、各国の医療システムに適応する際の共通の課題であると考えられる。

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083)爪まわりの処置でありがちなこと【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第83回 爪まわりの処置でありがちなことゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆皮膚科の相談で多い足トラブルの1つに、陥入爪や巻き爪があります。足の指、とくに体重を支えたり、地面を蹴ったりする動作で負担のかかる親指の爪は、なにかとトラブルが起こりがち。もともと爪自体はたいして巻いていなくても、切り方を誤ることで、爪の角が皮膚に食い込み、腫れや痛みを生じるケースが多々あります。痛みをとるために、患者さん自身が(よかれと思って)角をどんどん短く切り込んでしまっているパターンがよくあるのですが、爪の角は四角く伸ばして、外に突き出させる、いわゆる「スクエアカット」が正しい切り方。陥入爪が起こる理由を説明したのち、正しい爪の切り方、伸ばし方などを指導し、テーピングなどで経過をみていきますが、食い込みがひどく肉芽を形成している場合は、いったん食い込みの元となっている爪のわきを、部分的に切除してしまいます。腫れて痛みのある部分を処置することになるので、無痛という訳にはいきませんが、爪自体に感覚はないため、深追いしなければ麻酔をしなくても意外とすんなり処置できます。手足の指の局所麻酔は、とくに麻酔の注射の方が痛かったりするので、(私自身もやりましたが、薬液が入ってくる瞬間がかなりの激痛です…)その旨を説明し、「痛かったら言ってくださいね~」と声をかけながら、食い込みの部分だけ爪をカットします。取り除いた爪の欠片をみると、肉芽の奥で爪がトゲのような形になっており(爪棘)、本人は角を丸く切り落としているつもりでも、実は切れていなかった、ということがよくわかります。爪の角は伸ばす、そしてみえるように出しておく。やっかいな爪トラブルですが、処置で食い込みが解除されれば、1週間ほどで落ちつくことがほとんどです。爪回り、とくに陥入爪の処置についてでした~。それでは、また次の連載で。

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英語で「中止する」は?【1分★医療英語】第90回

第90回 英語で「中止する」は?Let’s dc diuretics.(利尿薬を中止しましょう)Got it.(了解です)《例文1》看護師Can we dc the urinary catheter?(尿カテーテルを中止してもよいですか?)医師Yes, you may.(いいですよ)《例文2》医師Let me dc this order.(この指示は中止します)看護師Sounds good.(わかりました)《解説》医療現場でよく使われる「~を中止する」という表現は、“DisContinue”の単語の頭文字をとって“DC(dc)”という言い方をします。もちろん“discontinue”とフルで言ってもいいのですが、忙しい現場における便利な省略形として「ディーシー」が好まれています。「何かを中止するとき」であればいつでも使えるので、知っておくと非常に便利な表現です。フォーマルな学会などでは使いませんが、日常臨床の中ではバンバン使って大丈夫です。ただし、医療現場独特の表現なので、医療従事者間だけで使ったほうがいいでしょう。講師紹介

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ChatGPT活用術総論【医療者のためのAI活用術】第1回

(1)はじめに大量の言語データを学習し、自然な形式でユーザーの問い合わせや相談に応じる対話型AI「ChatGPT」が今年、大ブレイクしています。その高機能性と誰でも無料で使える利便性から、多くのユーザーに支持され、2022年11月の公開からわずか2ヵ月で、全世界の月間アクティブユーザーが1億人を超えました。さまざまなメディアで頻繁に取り上げられ、仕事での活用術も特集されています。ChatGPTはOpenAIによって開発されましたが、他にもMicrosoftはAI搭載の「新しいBing」、Googleは「Bard」といったサービスを提供し始め、多くの大手IT企業が生成AIの開発に注力しています。医療業界でも、さまざまな試みがなされています。2023年2月に公表された論文では、ChatGPTが米国医師国家試験(USMLE)の合格基準値に近い結果を達成したと発表され、医療業界に衝撃を与えました1)。さらに、日本のAI研究の第一人者、東京大学の松尾 豊教授は「医療に特化した学習を行えば、医療専用のChatGPTを創り出すことが可能だ」「ほとんどすべてのホワイトカラー職に2~3年以内に何らかの影響が及ぶ」と述べており2)、医療者にとっても近い将来、大きな影響があることが予想されています。このような状況に対し、医療者はどのように対応すべきでしょうか。ChatGPTにまったく触れずに生活する、という選択も1つかもしれません。しかしながら、他の業界で既に日常業務に広く活用されている状況を鑑みると、医療分野においても、AIは電子カルテのように日常業務に不可欠なツールとなる可能性が十分にあります。今後の時代は、この技術を適切に活用し、変化に対応する能力が求められていると言えます。本連載では、医療者がChatGPTを始めとする生成AIを効果的に活用し、業務の効率化や学会発表、論文執筆などの学術活動をサポートする方法について提案していきます。(2)ChatGPTの仕組みChatGPTのGPTは「Generative Pre-trained Transformer」の略で、翻訳すると「生成可能な事前学習済み変換器」となります。入力された言葉に対して事前に学習した言葉をもとに「最も確率の高い言葉」を続ける、というのがChatGPTなどの基盤となる大規模言語モデルの基本的な仕組みです。たとえば、「むかしむかし」と言われたら「あるところに」という言葉が続くといったもので、これを繰り返すことにより長い文章を生成します。つまり、新しい文章を1から生み出しているというよりも、これまでに学習した内容から「もっともらしい文章を作成するのが得意」だということが言えます。(3)ChatGPTを使う時の注意点ChatGPTに関してネガティブなニュースも報道されていることから、ChatGPTの使用に抵抗感がある方もいらっしゃるかもしれません。まずは、使う時の注意点を熟知しておくことで、トラブルを避けることができます。1)ChatGPTの使用が禁止されている場合があるChatGPTをはじめとした生成AIに関して、使用を禁止している大学や企業、学会、学術誌があります。これは、入力したデータに含まれる個人情報や企業の機密情報が収集されている可能性や、作成した文章が盗用にあたる懸念があるためです。使用する際には、所属する大学や医療機関、学術誌の使用方針があるかどうかを確認しておきましょう。また、使用する際には患者さんの個人情報などを入力しないように注意が必要です。2)日本語より英語の方が高精度ChatGPTは多言語に対応しており、日本語で質問をすれば日本語で、英語で質問をすれば英語で回答が返ってきます。また、日本語で質問をした場合でも「英語で出力してください」と指示すれば英語で出力することもできます。ChatGPTで使用している大規模言語モデルの基となる学習データは、日本語よりも英語の方が圧倒的に多いため、英語で文章の生成を依頼し、英語で出力した結果を日本語に翻訳する方がより良い回答を得られるかもしれません。3)最新の情報を知らないChatGPTは2021年9月までのデータを学習し、それを元に回答しているため、2021年10月以降の情報は答えることができません。例えば、「現在の日本の総理大臣は誰ですか?」と質問をすると、「菅義偉です」と、2021年9月時点での回答が返ってきます(図1)※。(図1)ChatGPTは2021年9月までの情報で回答※有料版でβ版の機能としてBingによるブラウジング機能を使用することや、Chrome拡張機能「WebChatGPT」を使用することにより、Webの最新情報を収集して回答するようになります。(4)ChatGPTの向き・不向き上記のChatGPT使用の注意点を踏まえて、ChatGPTに向いている作業と向いていない作業を表1にまとめています。文脈や背景に応じて、文章を作成したり要約したりする作業は得意ですが、検索サイトのようにキーワード検索を行うことは苦手です。また、2021年10月以降の情報は学習しておらず、生成した文章には引用元の記載がなく事実確認が困難であることから、最新の情報検索や正しい知識の確認の目的での使用は向いていません。何か新しいアイデアを考えたり、キャッチコピーを考えたりするようなクリエイティブな作業には向いており、ChatGPTに上手く指示を送ることで有効活用できます。(表1)ChatGPTの向き・不向き1)Kung TH, et al. PLOS Digit Health. 2023;2:e000019.2)松尾研究. 「AIの進化と日本の戦略」.(2023年6月24日参照)

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第173回 コロナと戦えるT細胞が風邪のお陰で育まれうることの初の裏付け

ウイルスが体内の細胞の1つに感染すると病原体駆逐に携わるヒト白血球抗原(HLA)遺伝子のタンパク質がその細胞表面にウイルスタンパク質の切れ端を提示して免疫系に通知します。その通知を受け、病原体を認識して記憶しうるT細胞が感染細胞を殺してウイルスが複製できないようにします。HLA遺伝子群の顔ぶれはすこぶる多彩で、その多くはどれかのウイルスへの免疫反応の強さの個人差に寄与しています。たとえばHLA-B遺伝子の1つは感染したヒト免疫不全ウイルス(HIV)が体内で極わずかなままで発症しない人にも認められ、かたや別の種類のHLA-B遺伝子を有する人では正反対にHIV感染後速やかにAIDSを発症します。HIV感染の経過との関連のように新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の経過と関連するHLA遺伝子があるかもしれません。そこで米国・カリフォルニア大学の免疫遺伝研究者Jill Hollenbach氏が率いるチームは骨髄ドナー登録のおかげでHLAの種類が検査ですでに判明している3万例弱に協力を仰ぎ、SARS-CoV-2感染の経過とHLAの関連を調査しました。被験者の携帯機器にダウンロードしてもらったアプリを使って情報を集めたところSARS-CoV-2ワクチン普及前の2021年4月30日までに白人被験者の約1,400例がSARS-CoV-2に感染しており、その1割ほどの136例は無症状で済んでいました。HLA遺伝子情報と照らし合わせたところ、それら136例の5人に1人(20%)はHLA-B*15:01として知られるHLA-B遺伝子変異を有していました1)。一方、発症した人のHLA-B*15:01保有率は10人に1人に満たない9%でした。続いて、それら被験者とは別の米国とオーストラリアの被験者の血液検体を使ってHLA-B*15:01と発症予防を関連付ける仕組みの解明が試みられました。それら血液検体は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行前に集められました。それにも関わらずHLA-B*15:01保有者の血液検体の75%のT細胞はSARS-CoV-2スパイクタンパク質の一部NQK-Q8を認識しました。どうやらHLA-B*15:01保有者のT細胞はSARS-CoV-2の情報を知らされていないのにSARS-CoV-2と戦う準備ができているようなのです。それはなぜか。SARS-CoV-2が広まる前から馴染みの季節性コロナウイルス感染の経験がその理由の一端を担っているようです。風邪ウイルスとしても知られる季節性コロナウイルスのスパイクタンパク質はNQK-Q8とほぼ同一のペプチド配列NQK-A8を含みます。HLA-B*15:01保有者のT細胞はそのNQK-A8にも強力に反応しました。HLA-B*15:01保有者のT細胞は季節性コロナウイルスによる風邪の経験を糧に鍛えられ、SARS-CoV-2を含むほかの見知らぬコロナウイルスをも相手できる免疫を備えたのかもしれません。見知らぬSARS-CoV-2も相手しうるT細胞が季節性コロナウイルスとの先立つ交戦を経て生み出されうることを裏付けた初めての成果となったと免疫学の研究者などは述べています2)。今後の研究課題として、HLA-B*15:01がSARS-CoV-2への免疫反応を底上げする仕組みを調べる必要があります。その仕組みの解明は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新たな予防ワクチンや治療手段の開発に役立ちそうです3)。参考1)Augusto DG, et al. Nature. 2023 Jul 19. [Epub ahead of print]2)One in five people who contract the COVID-19 virus don’t get sick. A gene variant may explain why / Science3)Gene Mutation May Explain Why Some Don’t Get Sick from COVID-19 / UC San Francisco

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