サイト内検索|page:386

検索結果 合計:35155件 表示位置:7701 - 7720

7701.

solanezumab、前臨床期アルツハイマー病の進行を遅延せず/NEJM

 前臨床期のアルツハイマー病患者において、solanezumabはプラセボと比較し、約4.5年間で認知機能低下を遅延しなかった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のReisa A. Sperling氏らが、米国、日本、カナダおよびオーストラリアの67施設で実施した無作為化比較試験「Anti-Amyloid Treatment in Asymptomatic Alzheimer's Disease:A4試験」の結果を報告した。アルツハイマー病の異なる病期において、さまざまな形態のアミロイドを標的とするモノクローナル抗体の臨床試験が行われているが、結果はまちまちである。solanezumabは、可溶性のアミロイドβ単量体を標的としていた。NEJM誌オンライン版2023年7月17日号掲載の報告。solanezumab vs.プラセボで240週後の複合的認知機能尺度(PACC)スコアを比較 研究グループは、65~85歳で、臨床的認知症尺度(CDR)の全般的スコアが0(スコア範囲:0[認知機能障害なし]~3[重度認知症])、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが25以上(スコア範囲:0~30、スコアが低いほど認知機能の低下を示す)、ウエクスラー記憶検査の論理的記憶の遅延再生(LMDR)スコアが6~18(スコア範囲:0~25、スコアが低いほど思い出される詳細が少ない)、および18F-florbetapir PETで脳内にアミロイドを認める前臨床期アルツハイマー病を有する人を登録し、solanezumab(最大1,600mgを4週ごとに静脈内投与)群とプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、複合的認知機能尺度であるPreclinical Alzheimer Cognitive Composite(PACC)スコア(4種の認知機能検査のzスコアの合計、スコアが高いほど認知機能が良好)の240週後の変化であった。PACCスコアの変化量に有意差なし 適格基準を満たした1,169例が、solanezumab群(578例)およびプラセボ群(591例)に無作為化された。平均年齢は72歳、女性が約60%で、75%に認知症の家族歴があった。 240週時におけるPACCスコアのベースラインからの補正後平均変化量は、solanezumab群-1.43、プラセボ群-1.13、補正後平均群間差は-0.30(95%信頼区間[CI]:-0.82~0.22、p=0.26)であった。 脳アミロイドPET画像では、アミロイドはsolanezumab群で平均11.6センチロイド、プラセボ群で19.3センチロイド増加した。 浮腫を伴うアミロイド関連画像異常(ARIA)は各群とも1%未満であった。微小出血またはヘモジデリン沈着症を伴うARIAは、solanezumab群で29.2%、プラセボ群で32.8%に発現した。

7702.

秋接種、ファイザーとモデルナのXBB.1.5対応1価ワクチン購入合意/厚労省

 厚生労働省は7月28日、新型コロナワクチンの2023年秋開始接種に向けて、オミクロン株XBB対応1価ワクチンとして、ファイザーから2,000万回分、モデルナから500万回分を追加購入することについて、両社と合意したことを発表した。なお、必要に応じて追加購入することも合意している。 同日にファイザーが発表したプレスリリースによると、今回供給を予定しているのは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株XBB.1.5系統のスパイクタンパク質をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む1価ワクチンとなっている。本ワクチンは、同社が2023年7月7日に厚生労働省に承認事項一部変更申請を行っていた。 また、モデルナも同日に発表したプレスリリースにて、秋開始接種に使用するオミクロン株XBB.1.5系統に対応した新型コロナワクチンを供給するとしている。同社も2023年7月7日に厚生労働省に承認事項一部変更申請を行っていた。 両社ともに、XBB.1.5対応ワクチンについて薬事承認取得後に供給するとしている。

7703.

DPP-4阻害薬の副作用「類天疱瘡」、適切な処置の注意喚起/PMDA

 糖尿病治療薬DPP-4阻害薬やその配合剤の副作用として知られている類天疱瘡。DPP-4阻害薬服用後にこの副作用を疑う皮膚異常がみられたにもかかわらず、投与が継続され類天疱瘡の悪化を来し入院するケースが報告されているという。これに対して医薬品医療機器総合機構PMDAは7月27日に医薬品適正使用のお願いを発出した。DPP-4阻害薬の副作用として類天疱瘡は以前から添付文書に記載 PMDAは以下のように注意を呼びかけている。<DPP-4阻害薬による類天疱瘡への適切な処置について>DPP-4阻害薬の使用中に、そう痒を伴う浮腫性紅斑、水疱、びらん等が現れ、類天疱瘡の発現が疑われる場合には、速やかに皮膚科医と相談し、DPP-4阻害薬の投与を中止するなどの適切な処置を行うよう、注意をお願いいたします。【代表的な症例】70代・男性。シタグリプチン投与開始後、3~4ヵ月目に水疱出現、自然軽快を繰り返し、投与7ヵ月目に水疱が多発し全身に広がり、投与8ヵ月目にクリニック受診。内服薬および外用薬で治療したが改善せず、皮膚科を受診。水疱性類天疱瘡の診断となり、入院。治療により改善しプレドニゾロン減量のうえで、投与9ヵ月目に退院となったが、再度水疱が出現し、水疱形成増悪が確認され、再入院。プレドニゾロンを増量したが改善せず、血漿交換療法を施行。薬剤性の水疱性類天疱瘡が疑われ、シタグリプチンの投与を中止。プレドニゾロンを減量し、シタグリプチンの中止11日後、水疱性類天疱瘡は回復し、退院した。――― 類天疱瘡は、血液中に存在する皮膚の基底膜に対する自己抗体が自己抗原に反応して、皮膚を傷害し、皮膚に水ぶくれ(水疱)を作る病気1)。DPP-4阻害薬やその配合薬の各添付文書には以前から副作用として記され、日本糖尿病学会での演題にも上がるほど比較的認知度の高い副作用ではある。しかし、DPP-4阻害薬やその配合薬の副作用報告数は2018年(365件)をピークに右肩下がりではあるものの、2022年時点でもなお149件報告されている。<該当医薬品>アナグリプチン含有製剤(商品名:スイニー錠、メトアナ配合錠LD/HD)アログリプチン安息香酸塩含有製剤(ネシーナ錠、イニシンク配合錠、リオベル配合錠LD/HD)オマリグリプチン(マリゼブ錠)サキサグリプチン水和物(オングリザ錠)シタグリプチンリン酸塩水和物含有製剤(グラクティブ錠、ジャヌビア錠、スージャヌ配合錠)テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物含有製剤(テネリア錠/OD錠、カナリア配合錠)トレラグリプチンコハク酸塩(ザファテック錠)ビルダグリプチン含有製剤(エクア錠、エクメット配合錠LD/HD)リナグリプチン含有製剤(トラゼンタ錠、トラディアンス配合錠AP/BP)

7704.

第170回 キュウリ矯正ギプスが物語る、国内ジェネリック供給不足の原因

ついにそこまで“手を突っ込む”のかという印象がぬぐえない。厚生労働省(以下、厚労省)が7月31日に初会合を行う「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」(以下、検討会)のことだ。これは昨年8月からスタートした厚生労働省医政局が設置した「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」(座長:学習院大学経済学部教授・遠藤 久夫氏、以下、有識者検討会)の報告書で、後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品(以下、GE)業界の構造的な問題を話し合う場の設置が必要という内容が盛り込まれた結果である。すでに多くの医療関係者がご存じのように、2020年に福井県のGE企業・小林化工で製造した経口抗真菌薬の製造工程でベンゾジアゼピン系睡眠導入薬の成分が高用量で混入していることが確認され、死亡例を含む健康被害が発生した事件をきっかけに国内ではGEが供給不足という状態が2年以上も続いている。小林化工はGE企業としては中堅規模だったが、GE企業では大手でも自社以外に外部への委託製造があり、実は大手企業の製品でも“隠れ小林化工製品”のようなものがあり、この段階からGEの品薄が始まった。健康被害の原因は小林化工が製造手順に未記載の方法で医薬品を製造していたためで、その結果として業務停止命令に追い込まれた。しかし、事態はそれだけでは済まず、その後もGE企業ではこうした製造手順に基づかない製造や品質検査の不正が次々に明らかになり、国内最大手の日医工をはじめ複数社が業務停止命令を受け、さらなる供給不足状態に陥ったままだ。有識者検討会で問題として指摘されたのは、少量多品目製造と言われるGE企業自体が日本では190社もあることだった。要は「小規模多数社」で「少量多品目製造」を行っている、経済効率の低さだった。もともと薄利多売のGE企業の場合、企業活動を安定させるためには、大規模化が望ましいのは確かである。そこで有識者会議では新たにこのことを話し合う会議体の設置を提言した。実はこうした提言が官公庁から出されるのは初めてではないが、企業という民間ベースの話によりあからさまに踏み込む形での提言は、もともとは財務省主計局の十八番だった。主計局は旧大蔵省時代から、旧厚生省担当の主計官が講演などで国内の製薬業界や医薬品卸業界の企業再編を何度も唱え、それが業界紙に記事として掲載されると、読んだ企業関係者が「金目のことだけで勝手なことを言いやがって」と激怒する構図があった。かつて業界紙に身を置いた私も、先輩記者がそうした講演や主計官の個別インタビュー記事を執筆して自社媒体に掲載されると、その後1週間程度はあちこちの取材先で記事に対するボヤキを聞かされる“とばっちり”を食らった。ある時などはそうした記事が出た翌日に中堅製薬企業に取材に行ったところ、突如として取締役が目の前に現れ、「何なんだ、あの記事は!」と一方的に怒鳴り散らされ、「いやいや一つの意見ですから…」と言って無難に乗り切ろうとしたところ、今の時代ではありえないことではあるが、いきなり灰皿が飛んできたことがあった。一方、厚労省では時に同様のことが言及されることがあったが、最新の「医薬品産業ビジョン2021」などでは、GE企業の再編については、あえて言及を避けているかのような文言となっている。そんな厚労省がGE業界の構造について話し合う検討会の設置に踏み切るのだから、かなり危機感は強くなってきたのだろう。それもこれも厚労省自らがGE使用促進の旗振りをしていながら、供給不足になったことへの後ろめたさもあるのかもしれない。GE企業の在り方について議論をすること自体に私自身は反対ではない。むしろ大いに議論すべきだろうと思っている。ただ、それだけでは不十分とも考えている。置き去りになっている議論がいくつかあるからだ。この点で最も議論されているのが、スパイラル的に薬価が下がる現状の薬価制度の問題だが、今回はこの点の議論は棚上げにしておく。それはこれだけでおよそ本連載の2回分ぐらいの文字量になるからである。私個人として、今後、本格的議論が必要だと思っているのは、GEにどの程度の品質を求めるかである。一般的に日本のGEは高品質と言われる。この点を表すエピソードとして関係者の口から頻繁に飛び出すフレーズが「海外では製造工程で髪の毛程度が混入しても問題にならない」というもの。これはあくまで一番極端な例えである。先日、国外でヘルスケアビジネスに関わっている人が講演した内輪の勉強会に参加したが、その方はGEを例に挙げて「日本には高品質幻想がある」と語った。より具体的な例えとして「法的に求められている品質基準を90%とすると、海外のGE企業はこれをほんのちょっと超えるくらいを目指す。しかし、日本のGE企業は98%とか99%を目指しがち。確かに日本のGEの品質は高いが、日本を一歩出れば、求められているのは価格がすべて。これでは国際競争に勝てない」という趣旨の発言をしていた。これはまさにその通りである。こうした話は医薬品業界関係者からはよく聞く話だ。以前、ある外資系製薬企業の勤務経験者Aさんと話した時に、彼は本社のある国で、日本の文化を説明する時にきゅうり矯正ギプスを持参すると語っていた。これはきゅうりがまっすぐ実るようにするため、実が小さい時に被せる筒状のものである。Aさんは笑いながら、次のように語っていた。「多くの場合、このギブスを見せると、日本人以外は卑猥なことに使うんじゃないかと想像して薄笑いするんですよ。そこで種明かしをすると、『えええー、そんなことのために?』という反応を見せるんですよ。だって海外に行けば曲がったきゅうりを見ることはごく普通ですからね。日本人のこだわりはなかなか理解されないですよ」同じようなことは製薬だけでなく、医薬品卸でも耳にしたことがある。今から四半世紀前に自分が業界紙記者として医薬品卸担当をしていた頃のことだ。今でこそ医薬品卸では、ピッキングマシンなどを備えた大型物流センターが当たり前だが、当時はこれがなかなか進まなかった。その理由をある大手医薬品卸の物流担当者に尋ねたところ、その当時主流だったアメリカ製のピッキングマシンは日本では使えないとの答えが返ってきた。さらに突っ込むと、この担当者は「結局ね、アメリカ製のピッキングマシンは物流効率だけを考えているので、箱入りの医薬品だと箱の角が潰れることが結構あるんです。もちろん中身には影響はありませんし、アメリカでは医療機関もそんなことは気にしません。ですが、日本ではそうした中身には影響していないけど、箱の角が潰れているものを配送したら、『無礼者!』って怒鳴られちゃうんですよ」と話してくれた。別に国内外の考えの違いはどうでも良いと思う人もいるかもしれない。しかし、すでに国内のGE市場は飽和状態にあり、仮に大規模化を実現できても今度はそこで企業同士で過当競争となる。高品質を追求して高コストのまま、さらに過当競争をすれば、結果的に大規模化したGE企業同士が疲弊し、それが安定供給への不安へと転化しかねない。大規模化した分だけ、そのうちの1社に何かあった時の影響は甚大である。その意味では大規模化できたGE企業が国際競争力を有し、国内と同時に海外でも展開できることが理想である。だが、現状は日本の慣習・幻想がそれを難しくしている。そろそろそこからの脱却が必要ではないかと個人的にはかなり前から考えている。もっとも文化的背景を持つ慣習は短期間で変えることは容易ではない。こうしたものを変化させるために実は大きな効果を発揮するのが法規制の改正である。今回の検討会の議論がこうした慣習に基づく品質問題にどこまで踏み込めるのか? 正直、あまり期待はしていないのだが、そろそろその端緒くらいには立ってほしいものである。

7705.

NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(後編)【言葉は噂をするために生まれたの!?(統語機能)】

今回のキーワード意味記憶入れ子構造(ワーキングメモリー)前後関係エピソード記憶因果関係階層関係論理性概念化皆さんは、人類が言葉を単語ではなく複雑な文章にして話すように進化したのは噂をするためだったと聞いたら、どう思いますか? にわかには信じられないですよね。前回(中編)は、噂好きの心理の起源に迫りました。その起源とは、人類が原始の時代に集団の適応度を高めるために、フリーライダー(反社会性パーソナリティ)をあぶり出すことでした。今回は、この起源と実は関係している文法(統語機能)の起源に迫ってみましょう。どうやって文法は生まれたの?実際に、人類が言葉を単語ではなく複雑な文章にして話すように進化したのは噂をするためであったという仮説があります5)。どういうことでしょうか? ここから、文法(統語機能)の起源を3つの段階に分けて迫ってみましょう。なお、この文法がわかること(統語)に、発音ができること(発語)と言葉の意味がわかること(象徴)を合わせた3つの機能によって、私たちは言葉を流暢に話すことができます。発語と象徴の詳細については、関連記事8、関連記事9をご覧ください。(1)単文をつくる約700万年前に、チンパンジーと共通の祖先から人類は分岐したわけですが、当時から、鳴き声やしぐさによるサイン言語を使うことによって、簡単な文法でコミュニケーションをしていたことが考えられます。なぜなら、チンパンジーも鳴き声やしぐさによるサイン言語を使い、とくに鳴き声については2つまたは3つを組み合わせて発することで、たとえば服従的な挨拶をするなどのコミュニケーションをすることがわかっているからです6)。1つ目の段階は、単文をつくることです。単文とは、「主語+述語」のように、述語が1つだけの文です。そのためには、サイン言語による簡単な単語の意味を覚えている必要があります。これは、意味記憶の起源です。発達心理学的には、2歳から「パン ちょうだい」「わんわん いた」などの二語文を話します。3歳から「ママ ごはん つくる」「パパ おもちゃ とって」などの三語文になります。これらは、すべて単文です。(2)複文をつくる約300万年前に人類は部族をつくったわけですが、フリーライダーのあぶり出しのために、当時から徐々に「 『タロウがバナナを盗んだ』とパパが言ってた」「『ジロウがハナコを寝取った』とヨシコが言ってた」「『湖にライオンが来てる』とママが言ってた」などの噂をサイン言語によって伝えていたことが考えられます。主語の名前程度なら、発声の言い分けや聞き分けができていた可能性も考えられます。2つ目の段階は、複文をつくることです。複文とは、文のなかに文が入り込んでいる重複した文です。日本語で「~と言う」「~と聞いた」という伝聞表現であり、いわゆる英語の「that節」に当たります。専門的には、入れ子構造(階層構造、回帰的構造)などとも呼ばれます7,8)。これは、聴覚性のワーキングメモリーの起源です。なお、この詳細については、関連記事10の後半をご覧ください。発達心理学的には、相手の視点に立てるようになる3、4歳から「きょうあめって ママいってた」「パパがつくったごはん おいしくない」などの複文を話します。なお、相手の視点に立つことができないチンパンジーは複文をつくることができません9)。つまり、チンパンジーの知能は、人間の4歳を超えられないということです。なお、厳密には、相手の視点に立つ心理(心の理論)が始まる時期は、男児が4歳であるのに対して、女児は3歳で1歳早いです。この訳は、原始の時代の当時、男性たちが一緒に狩りに出かけて動き回っている間に、女性たちは1ヵ所にとどまって一緒に子育てをしていたからでしょう。この共同育児をスムーズにするためには、類人猿の毛づくろい(グルーミング)のような心地良さ(社会的報酬)が必要です5)。体毛を失っていった人類(とくに女性)が代わりにするようになったことが、挨拶やかけ声でお互いにリズムを取ったり、一緒に子守唄を歌ったりすることだったでしょう。さらに、「誰と誰がけんかした」「誰と誰が浮気した」などの噂話だったでしょう。そのために、男性よりも女性の方が心の理論がより早く発達するようになったと考えられます。だからこそ、現代でも、男性よりも女性の方が他愛のないおしゃべりを好み、噂好きであるという訳です。(3)文脈をつくる約20万年前に現生人類は、言葉の発音(発語)が明瞭にできるようになり、ようやく発音のバリエーションによって、あらゆることに名前をつけて世界を細かく分けることができるようになりました。さらに、この名付けとすでに進化していた入れ子構造(ワーキングメモリー)によって、いくつかのものごとの前後関係を細かくつなげて説明できるようになりました。3つ目の段階は、文脈をつくることです。文脈とは、接続詞による文と文の流れ(脈)であり、「誰が・いつ・どこで・誰と・何を・どのように」のように出来事(エピソード)がまとまっていることです。これは、エピソード記憶の起源です。発達心理学的には、4歳以降に「きょう〇〇したの。それでね○○もしたの、でもね○○だったの」などのように徐々に自分のお話(エピソードトーク)をするようになっていきます。このように、だんだん時系列でものごとを順番に考えることです。これは、時間感覚の起源です。現代に生きる私たちは、これを当たり前のようにしています。しかし、約20万年前よりも以前は、その瞬間を反射的に生きているだけで、ほとんど時間感覚はなかったでしょう。実際に、幼児が同じ話の本の読み聞かせを何度もねだるのは、親として辟易するわけですが、その訳は、幼児は大人のようにエピソード記憶の機能が完全ではないため、話の前後のつながりを覚えきれないからです。つまり、何度もねだるのは、エピソード記憶の機能を鍛えていると言えます。さらに、名付け+入れ子構造(ワーキングメモリー)によって、2つのものごとの因果関係や階層関係も説明できるようになりました。たとえば、「きょう〇〇したの、だってね○○だったから」と理由を認識することです。これは、論理性の起源です。また、「おててとあんよをあわせてからだ」「○○ちゃん(自分)とママとパパといっしょでかぞく」のように、分類し体系化することです。こうして、世界の仕組みをより理解できるようになりました。これは、概念化の起源です。なお、幼児が「なんで○○なの?」と質問攻めをする「なぜなぜ期」にも辟易しますが、これも因果関係や階層関係を知ることで概念化の機能(統語機能)を鍛えていると考えれば納得がいきます。ちなみに、1、2歳頃から「これなあに?」と質問攻めをする「なになに期」があるのは、冒頭で触れた言葉の3要素の1つである象徴機能を鍛えていると言えます。以上より、単文をつくる(意味記憶)、複文をつくる(ワーキングメモリー)、そして文脈をつくる(エピソード記憶)という心(脳)の進化の歴史を踏まえると、人類は噂をするために文法(統語機能)を進化させたという仮説に納得できるのではないでしょうか。5)ことばの起源 猿の毛づくろい、人のゴシップP8、P113:ロビン・ダンバー、青土社、20166)チンパンジーが390もの構文を使って会話をしていることが鳴き声5000回の録音から示唆される:GIGAZINE、20227)ヒトの心はどう進化したのかP220:鈴木光太郎、ちくま新書、20138)ひとのことばの起源と進化P52:池内正幸、開拓社、20109)こころと言葉P48:長谷川寿一、東京大学出版会、2008■関連記事NHK「おかあさんといっしょ」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 1伝記「ヘレン・ケラー」(前編)【何が奇跡なの? だから子どもは言葉を覚えていく!(象徴機能)】Part 1ペコロスの母に会いに行く【認知症】

7706.

英語プレゼン、数字の基本的な口語表現(4)単位の頻用表現【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第20回

英語プレゼン、数字の基本的な口語表現(4)単位の頻用表現英語で数字を表現する際に、「単位」の表現を学ぶことは欠かせません。薬剤量や検査値などを議論する時にはいろいろな単位が使われ、その伝達ミスは致命的になるからです。また、口語コミュニケーションでは、重要な単語や数字は「強調する(ストレスアクセント)」ために比較的ゆっくり、明確に発声されることが多く、聞き慣れない表現でも、音として聞き取りやすくなります。一方、単位の表現が強調されることはあまりなく、英語の聞き取りに不慣れな人には、とくに聞き取りが困難になります。また文脈から判断できないことも多いので、一般的な読み方を覚えることが重要です。1)薬剤投与量:mg、mg/kg、mg/m2薬剤投与量の一般的な単位は“mg”、“mg/kg”、“mg/m2”です。これらは日本語でも同様にアルファベットで記載されるため、視覚的には一目瞭然です。しかし、口語表現になると、その読み方に十分に慣れていない人も多いかもしれません。“mg”は普通に読むと“milligram”で日本語と同様ですが、発音には少し注意が必要です。発声の際は、[mil-i-gram]のように3音節で最初の音節が強調されます。また、第1音節は“L”、第3音節は“R”の音であるため、混同しないように意識的に発音する必要があります。“mg/kg”の“/”は“per”(パー)と発音されます。また、医療者同士の議論においては、“mg/kg”は“em gee per ke gee” (エム・ジー・パー・ケー・ジー)のように、そのままアルファベットで発音されることもよくあります。さらには、“meg per keg”(メグ・パー・ケグ)と発音されることもあります。個人的には、このような読み方は日本では聞いたことがなかったので、初めて聞いた時には驚きました。“m2”は“square meter”です。これは、省略されたり変則的になったりすることはまれで、そのまま読まれることが多い印象です。2)米国式vs.それ以外の世界各国:Imperial vs.Metric unit systems英語での単位の話で避けて通れないのが“Imperial unit system”です。米国の日常生活では、重量をオンス・ポンド、距離をインチ・フィートで表現する“Imperial system”が標準です。実はこの“Imperial system”は世界的にきわめてまれで、現在では米国、リベリア、ミャンマーの3ヵ国でしか使用されていないようです。米国の医療現場では、薬剤投与量などはすべて“Metric system”を使用するため、医療界全体で“Metric system”を使用することが一般的です。しかし、米国人には“Imperial system”のほうが直感的に理解できるため、医療者でも議論となると“Imperial system”が使われることがしばしばあります。学会発表などで自主的に使用すべきではありませんが、米国の発表者・質問者が使用した際にある程度理解できるとよいでしょう。十進法ではないこともあり、日本人には感覚的にわかりづらい単位です。講師紹介

7707.

7月28日 世界(日本)肝炎デー【今日は何の日?】

【7月28日 世界(日本)肝炎デー】〔由来〕世界的レベルでのウイルス性肝炎のまん延防止と患者・感染者に対する差別・偏見の解消や感染予防の推進を図ることを目的に2010年に世界保健機関(WHO)が定め、肝炎に関する啓発活動などの実施を提唱。わが国でもこれに倣い、「日本肝炎デー」を制定し、肝炎の病態や知識、予防、治療に係る正しい理解が進むよう普及・啓発を行うとともに、肝炎ウイルス検査の受診を促進している。関連コンテンツA型肝炎ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】B型肝炎(HB)ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】C型肝炎ウイルス検査ってなあに?慢性B型肝炎へのbepirovirsen、第IIb相試験結果/NEJM日本のウイルス肝炎診療に残された課題~今、全ての臨床医に求められること~

7709.

亜鉛補給でコロナ死亡率低下~メタ解析

 亜鉛の補給によって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の死亡リスクが有意に低下することが、米国・Patel College of Allopathic MedicineのSpencer Z. Rheingold氏らのメタ解析によって明らかになった。Cureus誌2023年6月10日号掲載の報告。 亜鉛は必須微量元素の1つで、炎症や感染症における免疫系の重要な調節因子であるとともに、直接的な抗ウイルス作用もあることが報告されている。COVID-19患者の予後を改善するために多くの研究グループが亜鉛補給に関する試験を実施しているが、その効果には議論の余地がある。そこで研究グループは、亜鉛を補給したCOVID-19患者と補給していないCOVID-19患者の死亡率と症状の関連についてメタ解析を行った。 2022年7~8月にPubMedline/Medline、Cochrane、Web of Science、CINAHL Completeを用いて、亜鉛補給とCOVID-19の関連を評価した試験を検索した。重複を除去した結果、1,215本の論文が検索され、これらの研究のうち5試験を死亡率のアウトカムの評価に、2試験を症状のアウトカムの評価に用いた。COVID-19患者の亜鉛摂取と死亡率や症状の関係を評価するために、リスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した。異質性はI2統計量を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・亜鉛を投与されたCOVID-19患者では、投与されなかったCOVID-19患者と比較して死亡リスクが有意に減少した(RR=0.63、95%CI:0.52~0.77、p=0.005)。・症状については、亜鉛を投与されたCOVID-19患者と、亜鉛を投与されなかった患者で差はなかった(RR=0.52、95%CI:0.00~2万4,315.42、p=0.578)。・亜鉛は広く入手可能であり、COVID-19患者の死亡リスクを低減する費用対効果の高い方法として有望な可能性がある。

7710.

紫外線量と双極性障害リスクとの関係

 太陽光には、皮膚でのビタミンD生成を促す紫外線B(UVB)が含まれている。ビタミンDは、発育中から成人の脳機能にさまざまな影響を及ぼしている。しかし、多くの人々は、冬期にビタミンD生成を行ううえで十分なUVBを受けられない地域(北緯または南緯約40度以上)で生活を行っている。ドイツ・ドレスデン工科大学のMichael Bauer氏らは、世界の大規模サンプルを用いて、双極性障害の発症年齢とビタミンD生成に十分なUVBの閾値との関連性を調査した。その結果、UVBおよびビタミンDは、双極性障害発症に重大な影響を及ぼす可能性が示唆された。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年6月22日号の報告。 北半球または南半球の41ヵ国75の収集サイトより、双極I型障害患者6,972例のデータを収集した。ビタミンD生成に十分なUVBの閾値と発症年齢との関係を評価した(閾値を1ヵ月以上下回る場合、気分障害の家族歴、出生コホートを含む)。すべての係数は、p≦0.001で推定した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、70ヵ国582の地域で双極性障害を発症していた(平均発症年齢:25.6歳)。・ビタミンD生成に十分なUVBの閾値を1ヵ月以上下回っていた患者の割合は、34.0%であった。・UVBの閾値を1ヵ月以上下回っている地域の双極性障害患者は、発症年齢が1.66歳若かった。・本研究の限界として、患者のビタミンDレベル 、ライフスタイル、サプリメント使用に関するデータが欠如していた点が挙げられる。・双極性障害におけるUVBとビタミンDの影響については、さらなる研究が求められる。

7711.

オメガ3脂肪酸で心房細動リスクは増加する?しない?/JACC

 オメガ3脂肪酸の摂取が心房細動発症リスクを高めることを示唆する研究報告があるが、依然として議論の余地がある。今回、米国・Harvard T.H. Chan School of Public HealthのFrank Qian氏らが、世界的コンソーシアムにおける17の前向きコホート研究のデータを用いて、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の血中あるいは脂肪組織レベルと心房細動発症との関連を解析した結果、オメガ3脂肪酸の生体内レベルは心房細動発症リスクの増加に関連していなかった。本結果から、食事による習慣的なオメガ3脂肪酸の摂取は、心房細動発症リスクに関しては安全であることが示唆された。Journal of the American College of Cardiology誌2023年7月25日号に掲載。オメガ3脂肪酸と心房細動に関するベースラインデータを有する研究を解析 本研究では、血中または脂肪組織のオメガ3脂肪酸レベルと心房細動に関するベースラインデータを有する、世界的コンソーシアムの17の前向きコホート研究の参加者レベルのデータを用いた。各研究について、曝露、アウトカム、共変量、サブグループの定義を統一し、事前に規定された解析計画を用いてde novo解析を行った。 オメガ3脂肪酸レベルと心房細動リスクの関連を解析した主な結果は以下のとおり。・17コホートには北米、欧州、アジア、アフリカの 21ヵ国の5万4,799人が参加し、追跡期間中央値13.3年で7,720例の心房細動の発症が確認された。・多変量解析では、EPA値は心房細動の発症とは関連せず、五分位範囲でのハザード比(HR)は1.00(95%信頼区間[CI]:0.95~1.05)であった。・DPA、DHA、EPA+DHAのレベルが高い場合のHRは、それぞれ0.89(95%CI:0.83~0.95)、0.90(同:0.85~0.96)、0.93(同:0.87~0.99)で、心房細動リスクの低下と有意に関連していた。 今回の結果から、著者らは「心血管疾患患者や心血管疾患リスクが高い人々におけるサプリメントによる高用量のオメガ3脂肪酸摂取が、食事による習慣的な低用量のオメガ3脂肪酸摂取に必ずしも一般化できるわけではないことを示唆している」と結論している。

7712.

MIND食は認知症を予防せず/NEJM

 認知症の家族歴のある認知機能障害のない高齢者において、ベースラインから3年までの認知機能および脳MRIの変化は、MIND食(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)摂取群と軽度カロリー制限を伴う対照食摂取群で有意な差はなかった。米国・ラッシュ大学医療センターのLisa L. Barnes氏らが、米国国立老化研究所の助成を受けて実施した無作為化比較試験の結果を報告した。MIND食は、地中海食とDASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension:高血圧を防ぐ食事法)を混成(hybrid)させたもので、認知症リスク低下との関連が推定される食品を含むよう修正されている。観察研究から得られた知見では、食事パターンが認知機能低下の予防に効果がある可能性が示唆されているが、臨床試験のデータには限りがあった。NEJM誌オンライン版2023年7月18日号掲載の報告。3年後の認知機能と脳画像アウトカムを比較 研究グループは2017年1月~2018年4月に、シカゴおよびボストンの2施設において、アルツハイマー型認知症の家族歴があり、モントリオール認知機能検査(範囲:0~30、低いほど認知機能が低下していることを示す)のスコアが22以上、BMI値が25以上、MIND食スコア(研究者によって考案され脳の健康に不適切な食事を検出するためにデザインされた14項目の食事質問票に基づく、範囲:0~14、低いほど脳の健康に関して不適切であることを示す)が8以下の不十分な食生活をしている65歳以上の高齢者を登録し、軽度カロリー制限を伴うMIND食群、ならびに同様の軽度カロリー制限を伴う通常食(対照食)群に、1対1の割合で無作為に割り付け、3年間、食事療法を行った。全参加者は、割り付けられた食事の順守に関するカウンセリングと、減量を促進するための支援を受けた。 主要エンドポイントは、全体的な認知スコアおよび4つの認知機能ドメインの各スコアのベースラインからの変化とした。認知機能は、一般公開されている12種類の認知機能検査で評価した。各検査の素スコアは、ベースラインの平均値および標準偏差を用いてZスコアに変換し、得られたZスコアは全検査を平均して全体的な認知スコアを作成するとともに、4つのドメインの検査を平均してドメインスコアを作成した(スコアが高いほど認知能力が高いことを示す)。副次エンドポイントは、MRIで得られた脳特性(全脳容積、海馬容積など)の測定値ベースラインからの変化とした。MIND食と通常食で認知機能と脳画像転帰に有意差なし スクリーニングを受けた1,929例のうち604例が登録され、MIND食群301例、対照食群303例に割り付けられた。参加者の93.4%が試験を完遂した。 全体的な認知スコアは両群ともベースラインから3年時まで改善が認められ、3年時のベースラインからの変化(Zスコア)はMIND食群で0.205、対照食群で0.170であり、平均群間差は0.035(95%信頼区間[CI]:-0.022~0.092、p=0.23)であった。 MRIによる大脳白質高信号域、海馬容積、灰白質および白質容積の変化は、両群で同程度であった。

7713.

コロナによる医療中断で回避可能な入院リスク増/BMJ

  英国・リバプール大学のMark A. Green氏らは、同国7つの住民ベース縦断研究のコホートデータを解析し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行中に医療へのアクセスが中断された人は、回避可能な入院をより多く経験していたとみられることを報告した。COVID-19流行中に医療サービスや治療へのアクセスがどの程度中断したかは、幅広い研究によって明らかとなっているが、この中断と健康への悪影響との関連を評価する研究が求められていた。著者は、「今回の調査結果は、パンデミックの短期的・長期的影響への対応や、将来のパンデミック時の治療・処置体制確保のために、医療投資を増やす必要性を浮き彫りにしている」と述べている。BMJ誌2023年7月19日号掲載の報告。英国の7つの縦断研究からコホートデータを解析 研究グループは、UK Longitudinal Linkage Collaborationを利用して、イングランドのNHS Digitalの電子健康記録とリンクした住民ベースの縦断研究コホートデータを、2020年3月1日~2022年8月25日の期間について入手した。 主要アウトカムは回避可能な入院で、適切なプライマリケア診療で入院を防ぐことができる状態(ambulatory care sensitive condition:ACSC)や急性増悪で入院の可能性はあるが入院を最小限にするためにプライマリケアで治療を試みるべき状態(emergency urgent care sensitive condition)での緊急入院と定義し、医療へのアクセスとの関連を解析した。新型コロナ流行で医療中断を経験した人は、回避可能な入院のリスクが高い 計9,742例(縦断コホートのサンプル構造で調整した加重割合35%)が、COVID-19流行中に何らかの形で医療へのアクセスが中断されたと自己報告した。 アクセスが中断された人は、あらゆるACSC(オッズ比[OR]:1.80、95%CI:1.39~2.34)、急性のACSC(2.01、1.39~2.92)、慢性のACSC(1.80、1.31~2.48)による入院のリスクが高かった。プライマリケア医または外来受診(予約済み)および手術、がん治療などの処置へのアクセスが中断された経験のある人は、回避可能な入院の指標と正の関連が認められた。 なお、著者は、観察研究であり因果関係は説明できないこと、COVID-19流行前の医療へのアクセスの困難さに関するデータがないことなどを研究の限界として挙げている。

7714.

トランスジェンダーの自殺に関する疫学研究(解説:岡村毅氏)

 トランスジェンダーはいまや政治の最前線になってしまった。プーチン大統領はウクライナ侵略を西側の悪魔主義(ここにはトランスジェンダーも含まれる)との戦いだと規定しようとしている1)。米国では、民主党・都市部がトランスジェンダーに寛容、共和党・非都市部が非寛容と分断してしまった2)。英国でも、スコットランドが性別変更を容易にする方向に動いたが、イングランドが止めようとしている3)。日本では反共産主義と奇妙に融合した一教団が政界に隠れた影響力を保ち続け、トランスジェンダー等に反対してきたとされている4)。 このコラムでは特定の政治的な立場はとらず、精神科医として、トランスジェンダーの人の自殺と死亡率の論文を解説する。なおトランスジェンダーとは、生下時の生物学的性と、性自認が一致しない(トランス)人を指し、反対語はシスジェンダーである。高校の科学でトランスとかシスとか習ったのを覚えている人もいるだろう。 国民全員の医療データを解析できるデンマークからの報告である。トランスジェンダーの人をどうやって同定したのかというと、国民番号の下1桁の偶数奇数で性別がわかるのだ。これを「変更している人」がトランスジェンダーなのだ。逆に法的に性別を変更していない人は、この解析からは漏れている。加えて、精神科医療の登録データ、国内患者の登録データも国民番号とつながっている。したがってICD-10でF64 性同一性障害等と診断された人もすべて含まれている。 自殺企図は病院のデータベースからもってきている(したがって病院に搬送されていないものは漏れている)。自殺による死亡は死因統計からもってきている。 まずトランスジェンダーの人は時代とともに増加している。そしてトランスジェンダーの人の自殺企図は非トランスジェンダーの人より高い(全体では7.7倍)。しかし80年代、90年代、00年代、10年代でみると11.2、7.2、8.1、6.6倍と低下傾向ではある。死亡率は、自殺による死亡が3.5倍、それ以外は1.9倍である。両者合わせた死亡率は2.0倍だが、これも時代とともに2.2、2.4、2.1、1.7倍と低下傾向である。 以下は、あくまで私の個人的意見だ。 本人の世界を尊重し、希望を持って生きることを支援する、というのが精神科の本質的な仕事であるならば、トランスジェンダーの人の自殺企図や死亡率が高いことは精神科的には看過できない。政治的なことは置いておいて、合理的に守られるべきであろう。 また精神科の臨床においては、究極の内面世界が語られるので、社会的には開示していないがトランスジェンダーであるという人にも巡り合う。この論文では、性別変更、自殺企図での病院受診などに関与した人だけが同定されているが、社会の中でひそかに生きている人を含めると自殺リスクはもっと低いかもしれない(これは印象であり検証はできない)。 最後に精神科医としては「私たちが何者であるかは、私たちにもわからない」「私たちの人生は、私たちが何者であるかを探す旅である」「それは不安と隣り合わせだ」ともいえるので、トランスジェンダー反対が政治的な課題になっていることは、斜に構えた精神科医としては『不安な時代に、不安を減らすことを叫ぶことは政治活動戦略としては効果的だ』とみえる。なお本コラムでは、政府の使用や、ガイドラインも参考にして自死ではなく自殺を用いた。

7715.

研修医、学んだことは少なくて【Dr. 中島の 新・徒然草】(487)

四百八十七の段 研修医、学んだことは少なくて梅雨が明けました。近畿地方の梅雨明けは7月20日で平年より1日遅いそうです。また、梅雨期間の降雨量は平年の122%と、多めの雨が降りました。で、毎日が猛暑。今日の午後に車に乗ろうとしたら温度が37度を表示しており、車内はサウナ風呂状態でした。外来通院の患者さんたちも「暑い、暑い」と、そればかりです。いよいよ熱中症の季節ですね。さて、先日は医師会の集まりがあり、昭和の思い出話に花が咲きました。とくに研修医時代のこと。ずっと病院に泊まっていたとか、医局に積み上げられていた弁当を勝手に食べていたとか。当時は昼夜問わず働いていましたが、不思議に楽しかったような気がします。研修医の裁量が大きかったのと、勤務時間やアルバイトのことをうるさく言われなかったからでしょう。3食とも病院で食べていると、必然的に排泄のほうも病院ですることになります。今でも覚えているのは男子トイレの個室。当時の若者のエネルギーを反映してか、大量の落書きがされていました。とくに記憶に刻み込まれているのが、壁に書いてあった短歌です。研修医 学んだことは少なくて 流したクソのみ 多かりき誰がひねったかわかりませんが、上手い!程よい下品さがいいですね。もし「あれはオレが作ったんだ」という人がいたら、ぜひ名乗り出てください。でも、この短歌。よく見ると文字数がちょっとおかしいですね。本当は「五七五七七」になるべきところ、「五七五七五」となっています。後者でもリズムはいいので、つい騙されてしまいました。「ただの字足らずだ」とも言えますが、2文字も足りないので説得力がありません。そこで生成AIのChatGPTに、この句を「五七五七七」に変えさせてみました。すると、出てきたのは期待外れのもの。研修医と 学び少なくても 流したクソ 多かりき身にし 成長の道歩む何を言ってるんですかね、こいつは。外し方が意味不明。これだと文字数は「六九六八十」になってしまいます。リズムが悪過ぎて、読み上げることすらできません。いつもながら使えん奴でした。今度は別の生成AIであるBingにやらせてみます。研修医 学ぶこと少なく 流したクソ 多かりきこっちも呆れるほど駄目ですね。文字数が「五九六五」で、もう無茶苦茶です。結局、最後は自分でやることになりました。研修医 学んだことは少ないが流したクソの 多さは負けぬ研修医 学んだことは少ないが流したクソの多さは負けぬもう1丁!研修医 流したものは 冷や汗と悔し涙と 大量の便研修医 流したものは 冷や汗と悔し涙と 大量の便私も大したことありませんでした、すみません。

7716.

リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップーP(対象)設定の要点と実際 その1【「実践的」臨床研究入門】第34回

今回からは、Research Question(RQ)を構成する、P(対象)、E(曝露要因)、C(比較対照)、O(アウトカム)、それぞれの要素をより具体的かつ明確なカタチに設定するための要点と実際について解説していきます。下記に、これまでにブラッシュアップしてきた、われわれのClinical Question(CQ)とRQ、PECOを再掲します。CQ:食事療法を遵守すると非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうかP(対象):非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病(CKD)患者E(曝露要因):食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の遵守C(比較対照):食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の非遵守O(アウトカム):1)末期腎不全(透析導入)、2)糸球体濾過量(GFR)低下速度「標的母集団」と「研究対象集団」、「解析対象集団」まず、Pを設定するうえでの最初のポイントとして、「標的母集団」と「研究対象集団」、「解析対象集団」の違いについて解説します。われわれのRQのPとなるCKDは、日本腎臓学会の診療ガイドライン1)で以下のように定義(抜粋)されています。(1)尿検査、画像診断、血液検査、病理などで腎障害の存在が明らかで、とくに蛋白尿の存在が重要(2)GFR<60mL/分/1.73m2(1)、(2)のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続する「標的母集団」とは自身のRQが対象とし、その研究結果を一般化しようとする集団全体です。上記の定義を用いることにより、このRQの「標的母集団」の概念を明確にし、Pの具体的な「組み入れ基準」をはっきり示すことができそうです。ただ、実際の「研究対象集団」というのは、「標的母集団」の一部をサンプリングして代用したものにすぎません。たとえば、われわれが行ったCKD患者の腎予後予測モデルの研究2)では、日本全国の腎臓内科のある17ヵ所の大規模病院から患者登録を行いました。その結果、この研究の「研究対象集団」は、腎臓内科に紹介されていないCKD患者を含んでいません。このような偏りを「選択バイアス」と言い、研究の「外的妥当性」を損なう原因になりえます。「外的妥当性」とは、得られた研究結果を行われた「研究対象集団」とは異なるサンプルや「セッティング」(「研究対象集団」のサンプリングが行われた場)にも当てはめることができるか、ということです(「一般化可能性」とも言います)。われわれは、本研究の結果は腎臓内科医がいない小規模病院やクリニックで診療されているCKD患者には適用することが難しい可能性を、研究の限界の1つとしてこの論文1)のディスカッションの項で述べました。「外的妥当性」に対し、「内的妥当性」という用語もありますが、こちらは研究の結論(研究結果からの推論)の「研究対象集団」での当てはまりのよさ、を表します。研究対象には「除外基準」を設定することが多くあります。前述の研究2)では、予後が大きく異なるであろう治療中の悪性腫瘍を併発している患者などは除外しました。本稿のRQでも関連研究レビューの結果から、ネフローゼ症候群はPから除外するとにしました(連載第11回参照)。また、研究参加への同意が撤回されたり、追跡が不能になった患者も除外されます。このように「研究対象集団」から除外基準に合致する患者だけでなく、種々の事由で除かれて、実際の解析に用いられたサンプルを「解析対象集団」と言います。ただ、「除外基準」をあまり多く設けすぎると、「標的母集団」、「研究対象集団」と「解析対象集団」の乖離が大きくなり、「外的妥当性」が低くなってしまいます。論文ではフローチャートなども用いて、これらを明確に区別して記述することが、観察研究の報告ガイドラインであるSTROBE声明3)でも推奨されています。フローチャートの具体例については引用文献2のFigure 1.もご参照ください。1)日本腎臓学会編集. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018. 東京医学社;2018.2)Hasegawa T, et al. Clin Exp Nephrol. 2019;23:189-198.3)von Elm E, et al. Lancet. 2007;370:1453-1457.

7717.

7月27日 ニキビケアの日【今日は何の日?】

【7月27日 ニキビケアの日】〔由来〕夏はとくにニキビのできやすい季節であることから「7(しっかりと)2(ニキビを)7(なくそう)」と読む語呂合わせからニキビケアを見直し、肌トラブルを無くす正しい手入れ方法の啓発を目的に株式会社ディーエイチシーが制定。関連コンテンツ尋常性ざ瘡女性の尋常性ざ瘡、スピロノラクトンが有効/BMJトランスジェンダー、ホルモン療法でにきび有病率が大きく上昇自撮り写真でのにきびの遠隔診断、対面診断とほぼ一致医療従事者、PPE着用時の皮膚病リスクと低減戦略

7718.

第55回 コロナ後遺症、どんな子供に多い?

スウェーデンの大規模研究Unsplashより使用小児におけるCOVID-19は、多系統炎症性症候群(MIS-C/PIMS)を除くと、成人ほど医学的な影響は大きくないため、感染症としては比較的軽視されています。そのため、新型コロナワクチン接種率は非常に低いところでプラトーに達しています。最新のデータによると、2回目まで接種した児は23.4%、3回目の接種を受けている児はわずか9.8%です1)。さて、スウェーデンの集団ベース研究において、小児におけるCOVID-19罹患後症状(後遺症)が評価されました2)。この研究は、スウェーデンの2つの地域に居住する6~17歳の小児を対象とし、2020年1月31日~2022年2月9日のCOVID-19の症例を組み入れました。後遺症は、感染後28日以上経過してから発生したものとしました。合計16万2,383人の小児(男児8万1,789人、女児8万594人)が感染を経験し、本コホートに登録されました。平均年齢は12.0±3.5歳で、入院に至った症例はわずか529例(0.3%)でした。日本においても小児のCOVID-19入院のみならず、後遺症で入院に至ることは非常にまれですよね。性別・年齢・親の教育水準などで差結果、後遺症と診断されたのは、326例(0.2%)だけでした。女児における後遺症の発生率は男児よりも高いことが示されました(100人年あたり0.19[95%信頼区間[CI]:0.16~0.22]vs.0.12[95%CI:0.10~0.14])。また、6~11歳より12~17歳のほうが後遺症の発生率は高いという結果でした(12~17歳:100人年あたり0.19[95%CI:0.17~0.22]vs.6~11歳:0.11[95%CI:0.09~0.14])。さらに、当然ではありますが、入院COVID-19例のほうが非入院例よりも後遺症は多かったようです(100人年あたり1.25[95%CI:0.62~2.23]vs.0.15[95%CI:0.13~0.17])。興味深いことに後遺症の発生は親の教育水準によって異なっていました。初等教育卒業水準と比べて高等教育卒業水準のほうが、後遺症が多かったのです(高等教育卒業水準:100人年あたり0.15[95%CI:0.13~0.18]vs.初等教育卒業水準:0.10[95%CI:0.04~0.19])。そして、両親のいずれかが後遺症と診断された場合、児の後遺症発生が5倍多いことが示されました(100人年あたり0.70[95%CI:0.49~0.97]vs.0.14[95%CI:0.13~0.16])。教育水準が高い集団は医療アクセスが速やかなので、後遺症の診断につながりやすいという側面もあります。また、自身の後遺症の経験から子供の長引く症状に対して懸念を抱く両親が多いためと考えられます。考察では遺伝的影響もありうると書かれています。参考文献・参考サイト1)新型コロナワクチンについて(首相官邸)2)Bygdell M, et al. Incidence and Characteristics in Children with Post-COVID-19 Condition in Sweden. JAMA Netw Open. 2023 Jul 3;6(7):e2324246.

7719.

コロナ再感染、高齢者よりも若年層で増加

 新型コロナウイルス感染症の流行が長期にわたり、再感染者も増えている。コロナ再感染は基礎体力が劣り、基礎疾患を持つ人が多い高齢者に多いのではと考えられるが、実際には若年・中年層の増加率が高齢者よりも高いことが明らかになった。米国疾病管理予防センター(CDC)が実施した研究結果は、Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)誌2023年6月23日号に掲載された。コロナ再感染の割合の絶対的増加は18〜49歳で最も高い CDCは2021年9月5日~2022年12月31日に、米国の18の管轄区域から報告された18歳以上の成人のCOVID-19全症例、入院、死亡に占めるコロナ再感染の割合を調査し、5つの期間(デルタおよびオミクロン[BA.1、BA.2、BA.4/BA.5、BQ.1/BQ.1.1]がそれぞれ優勢だった期間)と年齢層別に解析した。 コロナ再感染の割合を調査した主な結果は以下のとおり。・期間中に278万4,548例のコロナ再感染が報告され、同集団および期間に報告された全症例(2,194万3,686例)の12.7%を占めた。・18~49歳が人口に占める割合は54%だが、この期間のコロナ再感染者の66.8%を占めた。50~64歳は21.2%、65歳以上は11.9%であった。・全症例に占めるコロナ再感染の割合は、2.7%(デルタ期)から28.8%(オミクロンBQ.1/BQ.1.1期、以後期間はすべてデルタ期→オミクロンBQ.1/BQ.1.1期)に大幅に増加した。COVID-19関連入院(1.9%→17.0%)および死亡(1.2%→12.3%)に占めるコロナ再感染の割合も大幅に増加した。・コロナ再感染の割合の絶対的増加は18〜49歳で最も高く(3.0%→34.4%)、50~64歳は2.1%→29.0%、65歳以上は2.0%→18.9%だった。・COVID-19の全症例、入院、および死亡のうちコロナ再感染の割合は、50歳以上と比較して、18~49歳では期間を通じて一貫して高かった。・コロナ感染間隔の中央値は269~411日であり、BA.4/BA.5期間の開始時に急減した。 レポートはこの期間のコロナ再感染およびそれに伴う入院と死亡の割合が若年層で高い理由として、初感染の累積発生率が高いこと、ワクチン接種開始の時期が遅いこと、ワクチン接種率が低いこと、曝露リスクが高いこと、初感染の重症度が低いために生存バイアスがかかっている可能性、など複数の要因が考えられるとしている。

7720.

抗精神病薬誘発性メタボリックシンドローム~ナラティブレビュー

 重篤な精神疾患である統合失調症は、世界の障害の主な原因トップ10の1つであり、人口の約1%に影響を及ぼす。統合失調症に対する最良の治療選択肢として、抗精神病薬治療が挙げられるが、抗精神病薬治療では脂質異常症を含むメタボリックシンドロームリスクが増加する。実際に、統合失調症患者は、一般集団と比較し、メタボリックシンドロームリスクが高いといわれている。カナダ・マニトバ大学のPelumi Samuel Akinola氏らは、抗精神病薬誘発性メタボリックシンドロームの有病率、メカニズムおよび対処法について、まとめて報告した。Metabolic Syndrome and Related Disorders誌オンライン版2023年6月22日号の報告。 本研究は、ナラティブレビューとして実施した。PubMedを用いて電子データベースMedlineを検索し、抗精神病薬を使用した成人集団におけるメタボリックシンドロームの有病率および対処法を調査した研究を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬で治療されている患者におけるメタボリックシンドロームの有病率は、37~63%の範囲であった。・抗精神病薬の影響には、体重増加、腹囲の増加、脂質異常症、インスリン抵抗性2型糖尿病、高血圧などが含まれた。・メタボリックシンドローム発症を促進する薬剤として、クロザピン、オランザピンが報告されている。・メタボリックシンドローム患者では、代謝系副作用リスクの低い抗精神病薬(ルラシドン、lumateperone、ziprasidone、アリピプラゾールなど)を優先して用いる必要がある。・抗精神病薬誘発性メタボリックシンドロームに対する非薬物療法として、有酸素運動、食事カウンセリングが有効であることが確認されている。・このような患者の体重増加に対して有効性が確認された薬物療法は、ほとんどなかった。・抗精神病薬誘発性メタボリックシンドロームは、リスクを早期に認識し、注意深くモニタリングすることが求められる。・メタボリックシンドロームまたは関連症状に対する1次および2次予防は、抗精神病薬使用患者の死亡リスクの減少に役立つ可能性がある。

検索結果 合計:35155件 表示位置:7701 - 7720