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英語で「慎重かつ前向きに」は?【1分★医療英語】第117回

第117回 英語で「慎重かつ前向きに」は?《例文1》 Let's prepare for the worst and hope for the best.(最悪の事態に備えて準備して、最善を祈りましょう)《例文2》He always has a glass-half-full mentality and never pessimistic.(彼は常に「コップが半分満たされている」という精神でいて、決して悲観的にならない)《解説》“cautiously optimistic”は英語の頻用表現です。“optimistic”は前向き、楽観的という意味で、“pessimistic”(悲観的)の対語です。医療現場では気軽に楽観的な言葉を掛けられない深刻な状況もありますが、「そんな状況でも患者さんを励ましたい」という場面で使うことができます。“cautiously”と前置きすることで、「医師として最大限に慎重に対応はしているが、そのうえで前向きに希望を持って臨みたい」という気持ちを伝えることができます。類似表現として、例文に示した“prepare for the worst and hope for the best”も同じような状況・意図で使われます。英語表現では楽観的・悲観的という性格を、“glass-half-full mentality” or “glass-half-empty mentality”と呼ぶことがあります。これは、水が半分入ったコップを見たときに、楽観的な人は「コップは半分まで満ちている」と言い、悲観的な人は「コップは半分まで空になっている」と言う、という逸話に由来します。講師紹介

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第201回 ペニスも休んでばかりだと錆び付くらしい

ペニスも休んでばかりだと錆び付くらしいあくまでもマウスの話なのですが、勃起すればするほど勃起を助ける線維芽細胞を増やし、勃起機能の維持に貢献するようです1)。マウスでもヒトでも線維芽細胞はペニスを占める最も多い細胞ですが2)、線維芽細胞は均質(homogeneous)でおとなしい(static)細胞とかつてはみなされていたこともあって、これまであまり研究されてきませんでした。しかし実は動きがあって個性豊かなことがわかってきており、今回Science誌に掲載された新たな研究では、これまで蔑ろにされてきた線維芽細胞が担うこれまで知られていなかった勃起での役割がマウス実験で示されました。スウェーデンのカロリンスカ研究所が発見したその役割とは、ペニスの勃起の原動力である血流の調節作用です。研究によると、海綿体の線維芽細胞は血管収縮に携わる神経伝達物質ノルアドレナリンをせっせと回収することでペニスの血管を収縮ではなく拡張へと誘い、ペニスの勃起を支えます。それゆえ線維芽細胞の数が多いペニスほど勃起に必要な血管拡張に長け、勃起すればするほど線維芽細胞は増えるとわかりました。一方、老化は線維芽細胞を減らしてペニスの血流を滞らせます。マウスやヒトを含むどの哺乳類の勃起も形態や細胞の配置などさまざまな点でよく似ています。ただし、ヒトのペニスはほかの哺乳類と違って骨がありません。その特徴を鑑みると血流調節はヒトの勃起にはおそらくなおさら重要かもしれません2)。上述したとおり老化マウスのペニスの線維芽細胞は少なく、血流低下を示しました。そのことから察するに、ヒトのペニスが老化で勃起しにくくなることは線維芽細胞の減少を一因とするかもしれません。そうであるなら、スポーツジムに定期的に通って筋肉を鍛えて体調を整えるのと同じように、性生活などでの定期的な勃起は線維芽細胞を増やして勃起不能を防ぐ効果がありそうです。今回の研究で判明した線維芽細胞の新たな一面は勃起不全の新たな治療の開発にも役立つでしょう。目下の勃起不全治療の主流は、シルデナフィルやタダラフィルなどのホスホジエステラーゼ阻害薬で一酸化窒素の効果を高めて海綿体血管平滑筋細胞の弛緩を促すことですが、多ければ30%の患者はそうしても勃起機能を回復できません。そのような既存の治療が手に負えない患者にはノッチ(Notch)阻害が有効かもしれません。今回の研究によると勃起の繰り返しはノッチ(Notch)伝達を抑制し、ノッチが活性化したままだと逆に線維芽細胞が減ってペニスの血流が減りました。そしてノッチ伝達の阻止こそ線維芽細胞を増やしてペニスの血流を増やす働きを担うとわかりました。よってノッチ阻害薬による勃起不全治療は今後検討の価値がありそうです3)。また、線維芽細胞のノルアドレナリン回収に携わる輸送体SLC6A2の発現を増やすことや、移植や何らかの刺激によって線維芽細胞を増やすことなども勃起不全の治療手段となりえそうです3)。参考1)Guimaraes EL, et al. Science. 2024;383:eade8064.2)Fibroblasts in the penis are more important for erectile function than previously thought / Eurekalert3)Ryu JK, et al. Science. 2024;383:588-589.

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鳥取救急に関する「ニュース批評」で批判的に取り上げた当事者が真相を語る

CareNet.comに2月7日に掲載した記事「救急医を巡るパワハラ疑い、鳥取県立中央病院で起こったこととは」(ニュース批評 ざわつく水曜日)に対して、記事中で、批判的に取り上げた当人、鳥取県立中央病院 院長補佐/救急集中治療部長の小林誠人氏から記事に事実と異なる部分があると編集部に連絡があり、取材を行った。何が事実で何が誤りなのか?ニュースの当事者からの情報をお届けする。まず、パワハラについてです。鳥取県東部広域行政管理組合消防局から当院の医師、看護師の対応が「パワーハラスメントではないか」と調査依頼を受けたのは事実ですが、病院ではホットラインはすべて録音していますし、初療の対応は医療安全の観点から全部動画撮影しています。つまり、指摘されたことが事実か否か事後検証できます。それを検証すると、消防局の指摘は必ずしも事実ではありません。パワハラは疑い事例について専門委員会に判断を仰いでいる段階だからといって、消防局の指摘が間違いだとただす気持ちはありません。人間の記憶はあいまいで、そこにいろいろな感情や2次情報、3次情報が加わって書き換えられてしまうものですから、仕方ないことだと思っています。一方、一連の報道は誤りであるとはっきりと申し上げたい。具体的には、当院の職員の対応が「パワハラであった」と断定している部分です。事実は、パワハラの可能性があると考えられた事例について、裁定を仰ぐため鳥取県病院局のハラスメント防止委員会に上げた段階であるということです。院長はそれを記者会見で説明したのですが、すべての報道で明白なパワハラがあったかのごとく取り上げられています(※記事では訂正済み)。今お話ししている時点(2024年2月8日)で、委員会の裁定は下っていません。動画を見ると、若いスタッフが厳しく言っていたりするところがあり、それを受け取り側が…、というのがあったのでしょうが、それも救急活動をよくしたいという一心からです。私としては、改めて動画を見て、医師も救急隊も看護師も、患者を救うために救命のために協働しながら一生懸命やってるな、と純粋に感じました。しかし、専門委員会がパワハラと認定するのかどうか私にはわかりません。指示要請は受けていた。「応諾」しなかったが「拒否」はしていないもう1つの論点が、救急活動プロトコルと特定行為に関する指示要請についてです。ここでまず理解していただきたいのは、パワハラ問題と本件はまったく別の話だということです。私たちは病院に来る前と病院内と分けて考え業務を行っています。パワハラ問題は病院内の管轄で、責任者は院長です。一方、特定行為に関する指示要請は地域メディカルコントロール協議会の管轄です。救急救命士の活動を医師が担保するというのが救急救命士法の趣旨であり、当県の主管は鳥取県救急搬送高度化推進協議会、私たちは通称「県メディカルコントロール協議会」と言っています。この論点についての記事の大きな誤りは、われわれが「特定行為に関する指示要請を拒否した」と書かれている部分があることです。「特定行為に関する指示要請に応諾しなかった」というのが正しい表現になります(※記事では訂正済み)。「拒否」と「応諾しない」は大きく異なります。「拒否」は何かをお願いされたときに門前払いすることで、「特定行為の指示要請をかけていいですか?」という電話も受けませんということです。それはメディカルコントロール体制下で許されないことであり、私たちは一度も「拒否」はしていません。一方、「応諾しない」というのは、指示要請に対してイエスもノーも言わないということです。しかし、それでは電話をかけてきた救急救命士が困るので、私たちは「特定行為の指示要請」を救急救命士法上の「助言」や「指導」に切り替えて対応していました。「先生、心肺停止の傷病者です。この特定行為をしてもよろしいでしょうか?」という依頼に対して「いや、特定行為は許可できません。その状況であれば、代わりに何々をしてください」ということを伝えていました。これが当方が説明してきた真実、1次情報です。実際に録音も残っています。その前段階で「医学的観点からの責任もあり、当院ホットラインへの指示要請、及び検証医への検証は応諾いたしかねます」というメールを私が消防局に送っています。では、なぜ私がそのような対応をとったのか説明します。傷病者に医学的に不利益があるプロトコルでは医師として応諾できない鳥取県のメディカルコントロール協議会の救急活動プロトコルは何年も改訂されておらず、現在の救急の実態とそぐわない部分があります。プロトコルは、フローチャートと手順書がセットになっていますが、県のプロトコルには、フローチャートしかない部分が多々あります。また、その内容も、現在の医学的な知見に照らし、傷病者にとって不利益になる内容が含まれています。そのことについては関係者の間で異論はなく、現在、県メディカルコントロール協議会のプロトコル改訂作業が進められており、もうすぐ改訂版が出来上がる見込みです。では、改訂されるまでの間、不具合があるとわかっている、立て付けの悪いプロトコルを現場で使うべきかということになるわけですが、傷病者に対して不利益があることが明らかなプロトコルを使うことは医学的にあり得ません。このため、われわれの地域、東部地域メディカルコントロール協議会では、地域に見合った補完したプロトコルを救急救命士法の範囲内で運用していました。これは私たちの地域だけの特殊事例ではなく、全国どこの地域でも普通のことだと思います。ところが、先の県のプロトコル改訂作業と並行して進めていた地域のプロトコルの文書化が一時ストップしてしまって、改めて、どのプロトコルを運用するのかという議論になったのです。責任者である東部地域メディカルコントロール協議会の会長に判断を求めたところ、それまでの改訂・文書化作業は中断して、昔の県のプロトコルで運用するように、という指示が出ました。それでは問題があるので何度も確認しましたが、県のプロトコルでやりなさいという指示は変わりませんでした。なので、傷病者、県民にとって不利益になるので、私たちはそのような指示要請には応諾できません。受けますけれどもイエスとは言えません、とお伝えしたのです。わずか10日後に「応諾しない」方針を撤回した真の理由このような経緯で、あのメールは「応諾いたしかねる」という表現を使い、会長の許可ももらったうえで出しています。病院の許可は必要なく、そもそも病院ではなく地域メディカルコントロール協議会が主体となる事案です。組織構造の理解と事実関係の確認が不十分なままに、病院側への謝罪要求が行われたことで、話がややこしくなっているのです。記事にもありますように、10日後には「ホットラインの運用を通常通り再開する」と連絡し、実際にそうしました。しかし、これは報道されていませんが、私たちが判断を変えたわけではありません。会長の方が判断を変えられたのです。つまり従来から運用してきたプロトコルに戻すことになったので、私たちも応諾しない理由はなく、従来の通常対応に戻したということです。そこで、会長はなぜわずか10日で判断を覆し従来のプロトコルに戻すよう指示したのかという疑問が沸くでしょう。プロトコルの明文化、改訂作業と並行して、救急救命士のプロトコル違反および事故事案の検証を行っていました。その検証作業中に県のプロトコルの不具合が改めて認識され、露呈したことで従来から運用されてきた地域のプロトコルに戻されたのだと理解しています。実事案の情報提供は、患者個人情報の絡みもあり慎重にならざるを得なかったのですが、患者家族への説明、県メディカルコントロール協議会への報告も行われましたので、今回情報提供に至りました。今回は、事実確認が不十分なマスコミの報道で相当振り回されましたが、その間も、当院は変わらず救急応需率100%、ホットライン通話時間1分以内を維持し、例年以上に多くの救急車搬入を受け入れています。救命救急士も救急医も傷病者のため県民のために粛々と救命救急をやり続けています。現場ではとくに大きな問題は起こっていないのです。逆に、この問題が明るみに出たことで、プロトコルの改訂作業を含む当地域の救急体制の課題解決へ向けての動きが一気に進み始めました。その意味では良かったと思っています。しかしながら、一方的かつ出所が不明確な情報だけで県民の不安を煽る報道、メディア・スクラムによる医療への悪影響は誰も幸せにしないことを改めて痛感しました。なお、2月10日付で県病院局が、私が救命救急センター長を外れる人事を発令していますが、これは先を見据え、今回の件で露呈した当県、当地域の救急医療体制、各組織の問題、課題を解決し、整備していくためです。院長補佐、救急集中治療部長の任は変わらず、私の役目、仕事はこれまでとまったく変わるところはありません。ニュース批評 ざわつく水曜日「救急医を巡るパワハラ疑い、鳥取県立中央病院で起こったこととは」(2月7日配信、一部修正済み)

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学会のSNS発信はどうあるべき?JSMO2024でシンポジウム開催

 2024年2月22日(木)~24日(土)、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)が名古屋国際会議場とオンラインのハイブリッド形式で開催される。新薬開発や臨床課題に関する多くの演題が並ぶ中、一風変わったシンポジウムが企画されている。 テーマは「学会としてSNSをどう活用していくべきか」、昨年4月にJSMO広報渉外委員会の下部組織として「SNSワーキンググループ(SNS-WG)」が発足したことを契機に企画されたシンポジウムだ。SNS-WGは立候補制で、現在専攻医からがん薬物療法専門医まで、幅広い世代のJSMO会員メンバーが参加する。 SNS-WGの活動目的は下記のとおり。1)JSMO会員のSNS利用を活発にするための環境整備2)医学生・研修医や一般市民に向けた腫瘍内科・JSMOの認知度向上3)JSMOの国際化 今回のシンポジウムでは、SNS-WGの活動内容、米国臨床腫瘍学会(ASCO)、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)、国内でSNS活動を最も精力的に行っている学会の1つである日本循環器学会がSNSを活用するために行っている取り組みを共有し、今後のJSMOのSNS-WGが進むべき方向性やSNSの上手な使い方について討論する予定だという。SNS-WGメンバーのほか、X(旧Twitter)で長年医療情報の発信を続ける循環器内科医・岸 拓弥氏が、日本循環器学会と自身の取り組みを紹介する予定だ。JSMO2024では会場内での許可のない撮影は禁止されているが、本シンポジウムに限っては、スライドの撮影およびSNSへの投稿を自由としている。 SNS-WGのメンバーの1人である寺田 満雄氏(名古屋市立大学大学院 医学研究科 乳腺外科学分野/The University of Pittsburgh Medical Center)は、「海外と比べ、日本ではまだ腫瘍内科はマイナーな存在。SNSで医学生や研修医に向けて情報発信し、魅力を伝えて志望者を増やしたい」と語る。さらに「最大のイベントであるJSMO2024会期中にSNSでの発信を増やし、学術集会を盛り上げることも目指したい」と語る。さらに「国内での情報発信の基盤ができたあとは、ASCOやESMOのように発表スライドを撮影して即時にSNSに投稿、その場でディカッションが起きるような環境整備も進めたい」と今後の展望を語る。 学会のSNS活用においては、投稿が炎上する、といったリスクも指摘されるところだが、「海外学会を見ていると、情報公開、拡散は避けられない流れ。投稿規定を定め、リテラシーを高めて経験を重ねれば、不要なリスクは避けられるはず。日本のプレゼンスを高め、患者・市民参画(Patient and Public Involvement)を促進するためにSNSは欠かせない手段だと考えている」(寺田氏)。まずはSNSを使うJSMO会員を増やそうと、シンポジウムでは個人向けにSNSを使った上手な情報収集法、上手なセルフブランディングなどの話題も提供するという。 シンポジウムの詳細は以下のとおり。JSMO2024(名古屋国際会議場)委員会企画2(SNS-WGシンポジウム)2月22日(木)15:40~17:10Room 6(1号館3F 会議室131+132)【司会】後藤 知之氏(滋賀県立総合病院 腫瘍内科)【冒頭挨拶】武藤 学氏(京都大学大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学講座)【演者】山口 祐平氏(名古屋医療センター)上原 悠治氏(都立駒込病院 呼吸器内科) 岸 拓弥氏(国際医療福祉大学大学院医学研究科  循環器内科)【ディスカッサント】岸 拓弥氏(国際医療福祉大学大学院医学研究科  循環器内科)上原 悠治氏(都立駒込病院 呼吸器内科) 扇屋 大輔氏(東海大学医学部 内科学系 血液・腫瘍内科学)尾崎 由記範氏(がん研究会有明病院 乳腺内科)高見澤 重賢氏(NTT東日本関東病院 腫瘍内科)山口 祐平氏(名古屋医療センター) 学会はライブ配信のほか、3月1日(金)~29日(金)の期間にオンデマンド配信も行われる。

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ER陽性/HER2陽性乳がん、PR陽性vs.陰性で転帰の差は

 エストロゲン受容体(ER)陽性プロゲステロン受容体(PR)陽性HER2陽性(ER+/PR+/HER2+)乳がんとER+/PR-/HER2+乳がんは、異なる臨床病理学的特徴および生存転帰を示すことが示唆された。中国・Shaoxing Second HospitalのWu Ding氏らによるBreast Cancer誌オンライン版2024年1月17日号掲載の報告より。 本研究では、Shanghai Jiao Tong University Breast Cancer Data Baseと国立がん研究所のSEER(Surveillance、Epidemiology、and End Results)データベースを用いて分析。傾向スコア調整法により両サブタイプ間の患者特性のバランスが調整された。カプランマイヤー生存曲線により両サブタイプの無病生存期間(DFS)、乳がん特異的生存期間(BCSS)、全生存期間(OS)を推定したほか、多変量モデルを使用して閉経状態、病理学的分類(pN)、抗HER2療法および内分泌療法の有無についてサブグループ解析が行われた。 主な結果は以下のとおり。・ER+/PR+/HER2+乳がんは、とくに閉経後およびpN0の患者において、ER+/PR-/HER2+ 乳がんと比較して有意に良好なDFSおよびBCSSを示した。・抗HER2療法および内分泌療法後の生存転帰は両サブタイプで同様であった。・選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)治療を受けたER+/PR-/HER2+乳がん患者では、ER+/PR+/HER2+乳がん患者と比較して予後が有意に悪かった。 著者らは今回の結果を踏まえ、ホルモン受容体の状態と特定のモダリティについて考慮した個別の治療戦略を立てる必要があると結論付けている。

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キノコと認知症リスク~日本での研究

 キノコは、食物繊維やいくつかの抗酸化物質が豊富な食材である。このようなキノコの食事摂取が認知症リスクの低下と関連しているかは、不明である。筑波大学の青木 鐘子氏らは、キノコ摂取と認知機能障害リスクとの関連を調査した。その結果、日本人女性において、キノコの食事摂取が認知機能障害リスクの低下と関連していることが示唆された。The British Journal of Nutrition誌オンライン版2024年1月19日号の報告。 1985~99年に毎年実施されていた心血管リスク調査に参加した3つの地域に在住する40~64歳の地域住民3,750人を対象に、プロスペクティブ研究を実施した。認知症による障害が認められた事例を、1999~2020年に調査した。脳卒中の既往歴の有無にかかわらず、キノコの摂取量に応じた認知症発症数のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・3,739人を平均16.0年フォローアップ調査したところ、障害を伴う認知症を発症した人は670人であった。・女性では、キノコの摂取と認知症リスクの逆相関が認められた。この関連は、脳卒中の既往歴のない認知症に限定されていた。・女性における認知症発症の多変量HRは、キノコを摂取していなかった人と比較し、キノコの摂取量が0.1~14.9g/日で0.81(95%CI:0.62~1.06)、15.0g/日以上で0.56(0.42~0.75)であった(p for trend=0.003)。・脳卒中の既往歴のない認知症におけるハザード比は、キノコの摂取量が0.1~14.9g/日で0.66(95%CI:0.47~0.93)、15.0g/日以上で0.55(0.38~0.79)であった(p for trend=0.01)。・男性では、キノコの摂取と認知症リスクとの関連が認められなかった。

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神経発達障害リスク、中等度/後期早産児で高い/BMJ

 正期産(在胎期間39週0日~40週6日)で出生した子供と比較して、中等度早産(同32週0日~33週6日)および後期早産(同34週0日~36週6日)で出生した子供は、有害な神経発達アウトカムのリスクが高く、このリスクは在胎週数32週から41週まで徐々に低下することが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のAyoub Mitha氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年1月24日号で報告された。スウェーデンの128万人の子供のコホート研究 本研究は、異なる在胎週数で出生した子供における長期的な神経発達アウトカムの評価を目的とするスウェーデンの全国規模のコホート研究である(スウェーデン・カロリンスカ研究所研究基金などの助成を受けた)。 解析には、Swedish Medical Birth Registerといくつかの全国的な登録システムのデータを用いた。対象は、1998~2012年に、在胎期間32週0日~41週6日の単胎の生児として出生し、先天奇形のない子供128万1,690人であった。 主要アウトカムは、16歳までに診断された運動障害、認知障害、てんかん発作、視覚障害、聴覚障害、およびあらゆる神経発達障害の複合であった。神経発達障害は1万人年当たり47.8人で発生 7,525人(0.6%)が在胎週数32~33週(中等度早産)、4万8,772人(3.8%)が同34~36週(後期早産)、25万7,591人(20.1%)が同37~38週(早期正期産)、71万3,952人(55.7%)が同39~40週(正期産)、25万3,850人(19.8%)が同41週(後期正期産)に出生した。 追跡期間中央値は13.1年(四分位範囲[IQR]:9.5~15.9)で、この間に7万5,311人(47.8人/1万人年)の子供が、少なくとも1回の神経発達障害の診断を受けた。内訳は、運動障害が5,899人(3.6人/1万人年)、認知障害が2万7,371人(17.0人/1万人年)、てんかん発作が1万1,870人(7.3人/1万人年)、視覚障害が1万9,700人(12.2人/1万人年)、聴覚障害が2万393人(12.6人/1万人年)であった。同胞比較解析でも、ほぼ同様の関連性 あらゆる神経発達障害の複合リスクは、正期産児と比較して、中等度早産児(ハザード比[HR]:1.73[95%信頼区間[CI]:1.60~1.87]、リスク群間差:4.75%[95%CI:3.88~5.60])および後期早産児(1.30[1.26~1.35]、2.03%[1.75~2.35])で高かった。 同様に、運動障害、認知障害、てんかん発作、視覚障害、聴覚障害、重度障害のリスクはいずれも、正期産児に比べ中等度早産児および後期早産児で高かった。 また、運動障害、認知障害、てんかん発作、視覚障害、聴覚障害、あらゆる神経発達障害の複合、重度障害のリスクはいずれも、在胎週数32週に出生した子供で最も高く、41週まで徐々に低下しており、正期産(在胎週数39~40週)と比較して早期正期産(同37~38週)の子供で高かった。 一方、同胞比較解析(34万9,108人)では、在胎週数とてんかん発作および聴覚障害には関連がなかったが、これらを除けば、在胎週数と神経発達障害の関連性は安定的に維持されていた。 著者は、「これらの早産児は、早産児全体の中でも大きな割合を占めるため、絶対リスクが小さくても過小評価すべきではない。今回の知見は、医療従事者と家族が中等度/後期早産児のリスク、フォローアップ、医療システム計画のより良い評価を行うのに役立つだろう」としている。

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四肢骨折の手術部位感染予防、最適な皮膚消毒薬は?/NEJM

 四肢骨折の手術部位感染予防における手術前の皮膚消毒では、閉鎖骨折の場合は、クロルヘキシジングルコン酸塩のアルコール溶液と比較して、ヨウ素ポバクリレックスのアルコール溶液は有効性が高い一方で、開放骨折ではこのような差はないことが、カナダ・マクマスター大学のSheila Sprague氏らが実施した「PREP-IT試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年2月1日号に掲載された。北米25病院のクラスター無作為化クロスオーバー試験 PREP-IT試験は、四肢骨折の手術部位の感染予防における手術前の皮膚消毒として、2種のアルコールベースの消毒薬の有効性と安全性の評価を目的とするクラスター無作為化クロスオーバー試験であり、米国とカナダの25の病院で行った(米国患者中心アウトカム研究所[PCORI]などの助成を受けた)。 参加施設を、0.7%ヨウ素ポバクリレックスの74%イソプロピルアルコール溶液を使用する群(ヨウ素群)、または2%クロルヘキシジングルコン酸塩の70%イソプロピルアルコール溶液を使用する群(クロルヘキシジン群)に無作為に割り付け、2ヵ月ごとにこれらの介入を入れ替えた。 対象は、年齢18歳以上の閉鎖骨折(下肢、骨盤)または開放骨折(上肢、下肢)の患者であった。 主要アウトカムは、手術部位感染(30日以内の皮膚表層切開創感染、90日以内の深層切開創感染または臓器/体腔感染)とした。閉鎖骨折では、ヨウ素群2.4%、クロルヘキシジン群3.3% 閉鎖骨折6,785例(平均[±SD]年齢53.9±20.3歳、女性51.1%)と、開放骨折1,700例(44.6±18.2歳、男性63.5%)を登録した。閉鎖骨折ではヨウ素群に3,360例、クロルヘキシジン群に3,425例、開放骨折ではそれぞれ854例、846例を割り付けた。 閉鎖骨折では、手術部位感染は、クロルヘキシジン群の108例(3.3%)に発生したのに対し、ヨウ素群は77例(2.4%)と有意に少なかった(オッズ比[OR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.55~1.00、p=0.049)。 一方、開放骨折では、手術部位感染は、ヨウ素群が54例(6.5%)、クロルヘキシジン群は60例(7.3%)で発生し、両群間に有意な差を認めなかった(OR:0.86、95%CI:0.58~1.27、p=0.45)。予定外の再手術、重篤な有害事象の頻度は同程度 副次アウトカムである1年以内の予定外の再手術(閉鎖骨折[ヨウ素群5.5% vs.クロルヘキシジン群5.9%、OR:0.96、95%CI:0.77~1.20]、開放骨折[16.1% vs.14.5%、1.16、0.87~1.54)の頻度は両群で同程度であった。また、1年以内の重篤な有害事象の頻度にも両群間に差はみられなかった。 著者は、「これらの知見により、米国では、手術前の皮膚消毒としてヨウ素ポバクリレックスのアルコール溶液を使用することで、数千例の閉鎖骨折患者の手術部位感染を予防する可能性が示唆されるが、開放骨折患者のアウトカムを改善する可能性は低い」とまとめ、「どちらの溶液の成分も、患者がアレルギー反応を示す可能性があるため、病院は両方の介入の在庫を保持し続ける必要がある」と指摘している。

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第181回 医療DXで未来が変わる、マイナ保険証の利用率が鍵に

今回は、「まとめる月曜日」の特別編として、「マイナ保険証」に焦点をあて、今後の展望や医療機関ができること、やるべき対応について、井上 雅博氏に寄稿いただきました。マイナ保険証とは政府は団塊の世代が、すべて75歳以上の後期高齢者になる2025年までに、それぞれの地域で地域包括ケアの充実や病床再編を進めています。さらに新型コロナウイルス感染拡大が収束した今、医療分野でのDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めようとしています。今後迎える超高齢社会で、労働人口の減少に伴う労働力不足に対応しつつ、医療・介護サービスの効率化と質の向上の実現を目指しています。これらの基盤整備推進を行う上で、医療・介護分野で患者情報やさまざまな医療情報を共有する仕組みを進化させることを目的として、電子カルテの共有サービスを2025年4月に開始することを決定しています。その鍵となるのがマイナンバーカードと保険証の機能を統合した「マイナ保険証」です。医療DX推進本部が目指すもの政府は、2022(令和4)年10月の閣議決定で、医療分野でのDXを通して、サービスの効率化・質の向上を実現する基盤整備を推進するため、内閣に医療DX推進本部を設置しました。合わせて医療DX推進本部が推進する施策として、(1)「全国医療情報プラットフォームの創設」、(2)「電子カルテ情報の標準化など」、(3)「診療報酬改定DX」の3つの柱が発表されました。この中で3番の「診療報酬改定DX」は、2年ごとの診療報酬改定で発生する電子カルテの更新作業の負担を軽減するデジタル人材の有効活用やシステム費用の低減を目指していますが、1番大切な項目は「全国医療情報プラットフォームの創設」であり、オンラインによる資格確認システムのネットワークの拡充を行い、レセプト・特定健診などの情報に加え、予防接種、電子処方箋情報、自治体検診情報、電子カルテの医療・介護全般にわたる情報について共有・交換できる全国的なプラットフォームを創設することを目指しています。厚生労働省は、「健康・医療・介護情報利活用検討会」の医療等情報利活用ワーキンググループにおいて、医療や介護情報共有のための「電子カルテ情報共有サービス」について議論を進めており、本格的な稼働は2025年4月からとなっています。このサービスにより、患者さんが自分の病態を把握し、医師からアドバイスを受けたり、患者さんが他院を受診する際に医療者に情報を共有する、救急搬送時に医療機関に情報を提供することが可能となるように、電子カルテベンダーに対しても具体的な技術解説書のほか、実現に向けた工程表なども公表されています。電子カルテの情報共有で、臨床現場が変化する2025年4月に「電子カルテ情報共有サービス」が立ち上がると、マイナ保険証を介して診療現場では、お薬手帳の処方の情報以外に健診データ、病名、アレルギー歴、感染症、紹介状、入院サマリーを含む「3文書6情報」が共有されるようになります。これらについて具体的に説明します。3文書には、[1]健康診断結果報告書[2]診療情報提供書[3]退院時サマリーが含まれており、他の医療機関で入院治療を行った場合、その治療内容なども把握できるようになります。また、6情報に含まれるのは、患者さんの(1)傷病名(2)アレルギー(3)感染症(4)薬剤禁忌(5)検査(救急、生活習慣病)(6)処方(処方は文書抽出のみ)です。これらの情報は、医療機関を受診した患者さんの同意があれば、マイナ保険証を介して24時間以内は患者さん情報が閲覧可能になり、他院での病名、処方内容などもすべて把握できるようになります。今後、紹介状の内容やお薬手帳の内容を基に診察していた一人一人の医師にとって、患者さんの予診や問診以外で得られる情報が増えることになり、自院で行う検査や処方について、共有情報に基づいて行うことが必須となります。もちろん、情報セキュリティについて、医療機関側には適切な情報管理や、医療情報システムの運用や安全管理が課せられることになります。このため医療機関が扱う個人情報保護については2023年5月に出された「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」に準拠した対応が、すべての医療機関に求められることになります。このガイドラインが対象とする医療機関とは、病院だけではなく、一般診療所、歯科診療所、助産所、薬局、訪問看護ステーション、介護事業者なども含まれており、病院の電子カルテだけではないため、すべての医療従事者にはこのガイドラインへの対応が求められます。なお、電子カルテ情報共有サービスを用いることが不可能な場合(相手先が電子カルテ情報共有サービスを導入していない場合)は、これまで通り紙運用となりますが、多くの連携医療機関を抱える基幹病院は基本的に「電子カルテ情報共有サービス」で対応することが予想されるため、診療所レベルでも対応が必要となるでしょう。退院サマリーの早期作成が求められるように一部の高度急性期病院(湘南鎌倉総合病院など)では、「患者の退院時に退院サマリーが完成してからでないと退院許可ができない」という方式をとっている医療機関もあると聞きますが、退院時に紹介状を作成して紹介先に受診をする場合は、今後はマイナ保険証を利用して「退院サマリー」の添付が可能となります。現在、退院患者の退院サマリーについて、退院後14日以内に記載された割合が9割以上あることが診療録管理体制加算1で求められており、診療録管理体制加算がDPC病院の要件であるため、多くの急性期病院では退院サマリーの2週間以内の完成が求められています。また、卒後臨床研修評価機構(略称:JCEP)の認定を受けた臨床研修指定病院においては、退院時サマリーの作成率は、退院後1週間以内100%を常に目指すことが必要とされています。高度急性期の医療機関では、退院時までのすべてのサマリー完成は困難だと考えます。しかし、退院後に他の医療機関に紹介受診となった場合、退院時サマリー添付は必須とはなってはいませんが、診療情報提供書を「電子カルテ情報共有サービス」に保存するタイミングが退院時であることを考えると、退院サマリーについても同様の運用が今後想定されます。このため、今まで以上に勤務医は入院時から退院を意識した退院サマリーの作成が必要になると考えられます(具体的な運用方法は「医療DXについて(その3)」を参照ください)。鍵となるのはマイナ保険証の利用率厚労省は、マイナンバーカードと健康保険証との一体化をデジタル庁とともに取り組んでいますが、マイナンバーカードを発行しただけでは利用できず、マイナンバーカードの健康保険証利用の申込みが必要となります。さらに前述の「電子カルテ情報共有サービス」を利用して医療の効率化を図るためには、マイナ保険証を持参してもらわなければならないため、発行数ではなく利用率を引き上げる政策が必要となりました。これらについて、厚労省は、医療機関や薬局への支援策の詳しい運用を関係団体などにマイナ保険証の利用促進に関する通知をしました。通知によれば、「現行の健康保険証の発行については、2024(令和6)年12月2日に終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行する、そして、マイナ保険証の利用促進のため、国が先頭に立って、医療機関・薬局、保険者、経済界が一丸となり、より多くの国民の皆様にマイナ保険証を利用し、メリットを実感してもらえるように、あらゆる手段を通じてマイナ保険証の利用促進を行っていく…」とあり、実際に利用率が上昇した医療機関には「支援金」が交付されるような仕組みまで創設しています。このほか、生活保護における医療扶助のオンライン資格確認の運用開始も今年の3月1日から開始されるなど、徐々に現場でも利用されるようなサービスの充実がはかられています。また、今年1月の能登半島地震では、マイナンバーカードを持参しなくても、本人の同意の下、薬剤情報・診療情報・特定健診など情報の閲覧が可能な措置(災害時モード)を実施することで、患者さんの薬剤情報などの閲覧により、診療に役立ったように具体的な事例でメリットを提示したり、ポスターを作成したり、啓発用の漫画を公開するなど、厚労省のプロモーションは強化されています。現在、マイナ保険証の利用率が全国で4~5%と低迷していますが、今年1~5月、6~11月の前半、後半でそれぞれ利用率の上昇率に対して2回の支援金が交付されるという前代未聞のキャンペーンが行われ、医療機関による患者さんへの働きかけが強化されると予想されます。今後、医療機関側に求められるマイナ保険証への対応はさまざまな場面で混乱する可能性もありますが、医療DXの対応で避けられない部分もあり、できるだけ政府の目指す21世紀型の医療・介護連携のために対応に乗り出すことが必要と思われます。参考1)マイナ保険証、利用増に応じて支援金 厚労省が詳しい運用を通知(CB news)2)マイナ保険証支援金セミナー&診療報酬のプチお知らせ[動画](厚労省)3)マイナ保険証利用促進のための医療機関等への補助等の支援策について(同)4)電子カルテ情報共有サービスにおける運用について(同)5)医療DXの推進に関する工程表について(同)6)医療扶助のオンライン資格確認(同)7)マイナンバーカードの保険証利用でみんなにいいことたくさん!!(同)8)電子カルテ情報共有サービス-医療機関等向け総合ポータル(社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険中央会)

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第70回 カイ二乗分布とは【統計のそこが知りたい!】

第70回 カイ二乗分布とはカイ二乗分布(chi-square distribution)は「母分散の区間推定」や「適合度の検定」、「独立性の検定」を行う際に使われます。カイ二乗分布は、t分布と同様、自由度によって形が異なる分布です。今回は論文でもよく目にするカイ二乗分布について解説します。■カイ二乗分布(χ2分布)とはカイ二乗分布(χ2分布)は、確率分布の一種で統計的検定にて最も広く利用されるものの1つです。フリードリヒ・ロベルト・ヘルメルト(1843~1917年・ドイツ)により発見され、カール・ピアソン(1857~1936年・イギリス)により命名されました。カイ二乗分布のグラフの形状はパラメーターである自由度fという値に依存し、fが大きいときはz分布(標準正規分布)に一致します。一方、fが小さくなるにつれてz分布に比べグラフの峰が左側に偏ります。図1に自由度f=5、f=10、f=20のカイ二乗分布を示します。図1 事例の分布図■カイ二乗分布の確率・パーセント点カイ二乗検定での有意差判定は、カイ二乗分布の上側確率、パーセント点を求めることによって行うことができます(図2)。カイ二乗分布の横軸の任意の値xを「パーセント点」と言います。パーセント点の上側の確率を「上側確率」と言います。図2 カイ二乗検定の有意差判定のしくみカイ二乗分布の確率は下記のExcel関数で簡単に求めることができます。それでは、図3で自由度5のカイ二乗分布における上側確率と下側確率をExcel関数で求めてみましょう。画像を拡大するカイ二乗分布の確率と同じようにパーセント点も下記のExcel関数で簡単に求めることができます。それでは、図4で自由度5のカイ二乗分布における上側確率0.05、下側確率0.05のパーセント点を求めてみましょう。図4 自由度5のパーセント点画像を拡大するカイ二乗分布を用いた検定に「カイ二乗検定」と言うのがあります。その代表的な検定は、「独立性のカイ二乗検定」と「適合度検定」です。次回は、カイ二乗分布と同様に統計的検定で広く利用されているF分布を解説します。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション13 カイ2乗検定第4回 ギモンを解決!一問一答質問24 カイ2乗検定とは?統計のそこが知りたい!第21回 カイ2乗検定とは? その1第22回 カイ2乗検定とは? その2 期待度数とカイ2乗値

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日本未承認の肺塞栓症へのカテーテル治療、t-PAより有効か?【臨床留学通信 from NY】第56回

第56回:肺塞栓症へのカテーテル治療、t-PAより有効か?現在私はMontefiore Medical Centerで3年目の循環器フェローとして働いていますが、同時にJacobi Medical Centerのカテーテル室もカバーし、心臓冠動脈カテーテル治療と、主に下肢血管等の末梢血管治療を行っています。2018年の渡米前まで心臓カテーテル治療を主に行っていましたが、さすがに5年も間が空いてしまったため、手先の感覚を戻すのに四苦八苦している日々です。末梢血管治療の中には肺塞栓症へのカテーテル治療が含まれています。ここは米国、BMIが高い人も多く、人種の特性によるのか血栓性が強いため、肺塞栓症を診療することは日常茶飯事です。日本では認可されていませんが1)、重症肺塞栓症に対して、米国で認可されている24Frの大口径デバイスでの血栓吸引(FlowTriever)2)、もしくはカテーテルによる超音波補助血栓溶解療法(EKOS)3)があります。そしてガイドライン上では、ショックバイタルの肺塞栓症例に関してt-PA(tissue plasminogen activator:血栓溶解療法)以外にカテーテル治療を考慮するということになっており、pulmonary embolism response team(PERT)との連携が重要とされています。多くの病院では外科手術的な血栓摘除術を行うことが難しいため、カテーテル治療医の判断となることが多いと思います。とはいうものの、BMI 50くらいの患者さんに、静脈とはいえ24Frの大きなカテーテルを挿入するのはそれなりに大変です。ショックバイタルもしくは心肺停止後にすでにt-PAが投与されていて、それでもショックバイタルが遷延したため、やむなく大口径デバイスを挿入して血栓吸引を施行することも場合によってはあります。ただし、実はこの領域は大規模なRCTがないため、はっきりと結論付けられてはいませんが、われわれが以前に行ったメタ解析においてはカテーテル治療の有用性が示唆されています4)。この領域の患者さんのアウトカム改善につながるような追加の研究ができないかと、日々模索中です。参考1)早期導入を要望する医療機器等に関する要望書 INDIGO Aspiration System2)Acute Pulmonary Embolism treated with Inari FlowTriever system in Hospital Santa Cruz Lisbon, Portugal. radcliffe cardiology. 2023 Jul 12.3)EKOS Endovascular System:Boston Scientific4)Ishisaka Y, Kuno T, et al. Comparison of interventions for intermediate to high-risk pulmonary embolism: A network meta-analysis. Catheter Cardiovasc Interv. 2023;102:249-265.

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事例041 コレクチム軟膏の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説2ヵ月以上湿疹の続く乳児をアトピー性皮膚炎と診断し、デルゴシチニブ(商品名:コレクチム)軟膏を処方したところ、C事由(医学的理由による不適当)が適用されて査定となりました。査定理由を調べるために添付文書を参照してカルテと照らし合わせました。用法および用量、関連する注意に記載されている範囲内で使用されていました。ここまでにおいて査定の理由が見当たりません。さらに読み進めると、「9.特定の背景を有する患者に関する注意」の「9.7小児等」に、「低出生体重児、新生児及び6か月未満の乳児を対象に、有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない」と記載がありました。言い換えると「6か月未満の乳児等には安全性が認められていない」ことが注意書きされていたのです。患者は6ヵ月未満の乳児です。使用月齢に達していないことを理由に査定となったことが推測できます。コンピュータ審査において添付文書の奥深くまで審査ロジックが組まれていることに驚きを禁じ得ませんでした。医師には、このことを伝え、調剤システムに使用月齢制限を登録して査定対策としました。

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喫煙で男性型脱毛症リスク1.8倍、重症化も

 喫煙は、多くの場合、ニコチンを含むタバコを娯楽として摂取することを指し、男性型脱毛症(AGA)の発症および悪化の危険因子であると考えられている。その関連の程度を調べたメタアナリシスの結果が発表された。カナダ・Mediprobe ResearchのAditya K. Gupta氏らによる本研究の結果はJournal of cosmetic dermatology誌オンライン版2024 年1月4日号に掲載された。 研究者らは2023年8月4日、PubMedで「hair loss(脱毛)、alopecia(脱毛症)、bald(頭髪のない)、androgenetic alopecia(男性型脱毛症)」「tobacco(タバコ)、nicotine(ニコチン)、tobacco smoking(喫煙)」の用語で当てはまる研究を検索、その結果2003~21年に発表された8件の研究が同定された。全研究が観察研究で、症例対照または横断研究であり、対象は男性の現在喫煙者と過去に喫煙経験がある人だった。得られたデータから、男性AGAの発症と重症化(軽度:ステージI-IIIから重度:ステージIV-VII)における喫煙状態(喫煙vs.非喫煙)と喫煙強度(喫煙減少vs.喫煙増加)の影響についてメタ解析を行い、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・喫煙経験のある男性は喫煙経験のない男性に比べ、AGAを発症する率が有意に高かった(OR:1.82、95%CI:1.55~2.14)。・1日10本以上喫煙する男性は、1日10本未満の喫煙する男性に比べ、AGA発症する率が有意に高かった(OR:1.96、95%CI:1.17~3.29)。・AGA男性では、喫煙経験のある男性は喫煙経験のない男性に比べ、疾患進行のオッズが有意に高かった(OR:1.27、95%CI:1.01~1.60)。喫煙強度と疾患進行の間には有意な関連は認められなかった。 著者らは、「男性型脱毛症の患者には、喫煙が及ぼす悪影響について教育する必要があるだろう」としている。

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がんの企業治験で分散型臨床試験を使用開始/アムジェン・MICIN・聖マリアンナ医大

 アムジェン、MICIN、および聖マリアンナ医科大学病院は、アムジェンが聖マリアンナ医科大学病院で実施するがんの企業治験において、分散型臨床試験(Decentralized Clinical Trial:DCT)のプラットフォーム使用を開始した。DCTプラットフォームはMICIN社が提供する「MiROHA(ミロハ)」である。 同取り組みの対象となるアムジェンの企業治験は、発現頻度が低いバイオマーカーを対象としたものである。患者数が少なく、スクリーニングでの脱落率も高いことが予想されているため、より多くの患者からインフォームド・コンセント(IC)を取得し、患者組み入れを促進する必要がある。 同治験では、治験実施医療機関と関連病院をMiROHAを使用してオンラインでつなぐことによって、遠隔でICを実施する。患者は治験実施医療機関を直接受診することなく、紹介元の病院にいながら治験の説明を受けることができる。 DCTを活用した治験は、居住地域にかかわらず、適切な患者が治験の情報を知り、治験に参加できるようになる可能性がある。さらに、治験登録が速く進み、有効な薬剤をいち早く患者に届けられると期待される。

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FoundationOne CDx、BRCA変異陽性の去勢抵抗性前立腺がんに対するコンパニオン診断として承認/中外

 中外製薬は2024年2月5日、遺伝子変異解析プログラム「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」(FoundationOne)について、ファイザーのPARP阻害薬タラゾパリブ(商品名:ターゼナ)のBRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がんに対するコンパニオン診断として厚生労働省より承認を取得したと発表。 FoundationOneは、今回の承認で8つのがん種(非小細胞肺がん、悪性黒色腫、乳がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がん、胆道がん、固形がん)、計25薬剤に対するコンパニオン診断機能を保有することになった。

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双極性障害患者における摂食障害の有病率

 摂食障害と双極性障害は症状が類似しており、摂食行動や感情制御に根付いた特定の類似点が認められる。摂食障害と双極性障害の併存に関する研究は増えているものの、両疾患の同時進行に関する科学的データは十分に体系化されていない。ロシア・V.M. Bekhterev National Medical Research Center for Psychiatry and NeurologyのYana V. Yakovleva氏らは、双極I型およびII型障害患者におけるさまざまなタイプの摂食障害の有病率について、性別および両疾患の同時進行の臨床的特徴を考慮したうえで、スコーピングレビューを実施した。Consortium Psychiatricum誌2023年7月10日号の報告。 スコーピングレビューのためのPRISMAガイドラインに従い分析を行った。研究の検索にはMEDLINEデータベースを用いた。双極性障害および摂食障害と診断された患者に焦点を当てた研究を分析に含めた。摂食障害および双極性障害の診断の検証には、DSM-IV、DSM-5またはICD-10を用いた。レビュー結果の要約には、記述的分析法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、41件の研究を含めた。・双極性障害患者における摂食障害の生涯有病率は2.2~31.1%、摂食障害患者における双極性障害の有病率は11.3~68.1%であった。・双極II型障害および女性において、摂食障害の有病率が高かった。・双極性障害患者における摂食障害の併存は、気分障害の早期発症、抑うつエピソードの増加、自殺企図、強迫症および不安症、依存症、各種代謝障害の併存率の増加と関連が認められた。 著者らは、「研究結果により違いがあるものの、摂食障害と双極性障害の併存率は非常に高いことが示唆された。双極性障害患者における摂食障害のスクリーニングまたはその逆のスクリーニングは、正確な診断や最も効果的な治療法を選択するうえで重要である」とし、「性別に応じた、さまざまな摂食障害と双極性障害との併存パターンについては、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。

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チョコレートを食べると脳機能が改善【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第251回

チョコレートを食べると脳機能が改善photoACより使用バレンタインデーが近づいてきました。コロナ禍になってから、飲み会とかこういう行事とか鳴りを潜めているように思います。私は、チョコレートなんてもう数年、誰からももらっていないです。いや、ひがんでいるわけではないです。さて、チョコレートの消費量とノーベル賞の相関関係が示された研究が2012年に発表され、話題になりました1)。しかしながら、いろいろなリミテーションがある研究だと指摘され、当時喧々囂々と議論されました。Sasaki A, et al. Cacao Polyphenol-Rich Dark Chocolate Intake Contributes to Efficient Brain Activity during Cognitive Tasks: A Randomized, Single-Blinded, Crossover, and Dose-Comparison fMRI Study. Nutrients. 2023 Dec 21;16(1):41.この研究は、機能的MRI(fMRI)を用いて、認知テスト中の脳機能改善に対するダークチョコレート摂取の効果を検討するという、珍しいランダム化単盲検クロスオーバー用量比較試験です。26人の健康な成人被験者が、低濃度(211.7mg)または高濃度(635mg)のカカオポリフェノール入りのダークチョコレート(25g)を摂取しました。いやー、美味しそう。摂取後25分、摂取後50分の2回、fMRIを用いて実行機能に関連するテスト中の脳活動を分析しました。チョコレート摂取と脳活動測定セッションの間に、左背外側前頭前皮質と左下頭頂小葉における有意な交互作用が観察され、ダークチョコレートを1回摂取することで、継続的かつ努力的な課題中の脳機能効率の向上に寄与することが示されました。これまでも、チョコレートと脳機能の関係はさまざまな研究で検証されています。今回はカカオポリフェノール入りのダークチョコレートでしたが、カカオフラバノール2)は血圧も低下させる作用があるとされています。こちらは、森永製菓がイチオシしている成分でもあります。1)Messerli FH. Chocolate consumption, cognitive function, and Nobel laureates. N Engl J Med. 2012 Oct 18;367(16):1562-1564.2)Tsukamoto H, et al. Flavanol-rich cocoa consumption enhances exercise-induced executive function improvements in humans. Nutrition. 2018 Feb;46:90-96.

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第197回 医療支援チームを「よそ者」扱い!?思い知る被災者支援の難しさ

能登半島地震の発生から1ヵ月以上が経過した。私は先日、ようやく被災地の輪島市門前町に足を踏み入れた。日本薬剤師会のある派遣チームに同行取材させてもらったのである。能登半島内の被災自治体にはほとんど宿泊施設はなく、私は2日連続、午前4時に起床して金沢駅からJR七尾線の始発に乗り込み、彼らの宿泊先近くの羽咋市で合流して輪島市門前町に通った。羽咋市から輪島市門前町までの道路は、ほかの地域と比べるとマシと言われているらしいが、それでも実際はかなりの悪路だった。路面はあちこちでひび割れ、とくに構造力学上は脆弱となることが避けられない橋の袂(これでも大学は理工学部土木工学科出身である)の多くが損傷していた。もちろん応急処置は施されているが、この状況で油断して走行すれば、橋の通過時に車体底部を擦るか、タイヤパンクの危険性がある。さらに応急処置だけで片側通行に制限した崖崩れ箇所もあちこちにある。迂回路も使いながら、羽咋市から輪島市門前町まで通常の2倍の2時間弱を要した。輪島市と聞くと、能登半島に縁もゆかりもない人の多くは、地震後の火災で焼失した輪島朝市を思い浮かべるだろうが、門前町は輪島朝市から直線距離で南西に約17km離れている。もともとは鳳珠郡門前町という独立した自治体だったが、平成の大合併で輪島市に吸収された。多くの人にとって輪島市門前町は耳で聞くだけならば馴染みはないだろうが、実はこの町に関係する日本人は少なくない。仏教の単一宗派としては、国内最大の寺院数を誇る禅宗の曹洞宗の大本山・總持寺があるからだ。正確に説明すると、現在の大本山としての總持寺は横浜市鶴見区にあるが、これは明治期に現・輪島市門前町から移転してきたもの。このため現在も門前町にある總持寺は、「總持寺祖院」と呼ばれている。さて前置きが長くなったが、これには理由がある。私がこの町に行けそうだとわかったことを複数の石川県出身者に伝えると、皆から異口同音に「門前町の人に輪島市とか、輪島市門前町とか言わないほうが良いよ」と聞かされたからだ。平成の大合併で輪島市に吸収されたとはいえ、1300年代から続く歴史ある總持寺祖院のお膝元出身という自負が地元の人にはあるから、ということらしい。また、避難所集約や災害関連死防止などの観点から、災害派遣医療チーム(DMAT)が門前町の一部避難所住民に対し、合併前の輪島市域の避難所への移動を提案し、強く拒絶されたという情報も同行させてもらったチームの前任メンバーの報告として耳にしていた。現地に赴くと、表面上はそうした確執は見えてこなかった。しかし、現地の保健医療調整本部のミーティング中に外で待機していると、初期DMATと地元住民の間で起きた軋轢の後処理が懸案事項の一つになっているという趣旨の話が漏れ聞こえてきた。この急性期から慢性期への移行と派遣チームによる医療支援から地元医療機関への移行という双方の医療の移行が重なるこの時期にだ。ちなみに私が行った時に同調整本部を統括していたのは日本医師会災害医療チーム(JMAT)だった。このため同行チームのメンバーも避難所ではかなり気を遣っていた。この点は私が同行していたチームのリーダーが東日本大震災の支援などにも参加経験がある猛者だったことも大きく影響していたと思う。「ある避難所のCO2濃度が高い疑いがあるので調査して欲しい」という、医療支援チームの依頼を受け、その避難所に赴いたときもそうだった。避難所である体育館入口からCO2測定器を手にした薬剤師が入ると、測定器の数字はいきなり1,390ppmから始まり、一番奥の談話スペースまで行くと2,000ppmを超えてしまったのだ。避難所の住民や管理者によると、一定の換気はしているとのこと。ただ、外気温の低さで長時間の換気が難しいこと、地震の影響で体育館2階の窓枠の一部が歪んで窓が開かなくなっていること、窓近傍の壁の亀裂状況が読めないことなどもあり、頻繁な換気はできていないとのことだった。同行したチームメンバーの薬剤師たちは、この状況でほかの換気方法がないかを思案するものの妙案は出ず、結局、管理者に数字を伝え、換気を心掛けるよう伝えるに留まった。これはリーダーが「あまり上から目線でモノを申せば、反発されるだけ」とメンバーに伝えたからだ。この翌日、撤収時間の間際に特定の避難所から一気に9枚もの災害処方箋が送信されてくる事態にも遭遇した。ちなみにこの避難所の訪問を計画していたJMATの要請で、この日は薬剤師メンバー1人がJMATに同行していた。この時期、門前町で日本薬剤師会の支援チームが対応していた災害処方箋枚数は1日十数枚程度。その半分以上に当たる災害処方箋が一度に回ってきたのだから、薬剤師メンバーたちはびっくり。この直後から活動拠点としていた輪島市門前総合支所に据え置かれていたモバイルファーマシー周辺は、数多くの薬剤師が処方箋の確認や薬袋作成などに当たり、急に慌ただしくなった。その理由は同行から戻ってきた薬剤師の口から語られた。どうやらこの避難所は医療支援チームとの積極的な接触を拒んでいたらしい。向かったJMATの医師も事前に電話連絡をしたが、やんわりと訪問を断られていたとのこと。しかし、この医師はそのまま訪問し、たまたま食事中だった高齢者の食事介助などを手伝ったことをきっかけに避難所に詰めていた看護師などの態度が急変化。避難所内の高齢者の診察に漕ぎ着け、その結果、大量の災害処方箋が発行される事態になったという。この話を聞いて、私は「ああ、そういうことだったのか」とようやく合点がいった。実は前日、この避難所の避難者に発行された災害処方箋に基づく胃腸炎治療薬の配達があり、たまたま私もチームの薬剤師に同行していた。配達時に薬剤師が避難所入口にいた高齢男性陣に薬を届けに来たことを伝えると、患者本人を入口まで呼び出してくれた。入口で薬を渡し、服薬指導を行ってミッションコンプリート。しかし、私はある事が気になっていた。当初、入口にいた男性陣は単なる雑談をしていたのだと私は考えていたが、それにしては入口の左右に複数のパイプ椅子が向かい合うように配置され、すべての席に高齢男性が座っていたことが引っ掛かっていたのだ。その薬剤師の報告を聞くに、あの入口は医療支援チームも含めたよそ者をブロックするためだったようだ。これは想像に過ぎないが初期のDMATがこの地の被災者に進言したことは、おそらく医学的には正しかったろうと思う。しかし、発災から今もまだ断水が続くような輪島市のインフラ状況や体力的にやれることが限られる高齢者の多さ、地元への愛着などを考えると、それが適切だったのか?この体験に改めて被災地支援の難しさを思い知るとともに、あの避難所は今どうなっているのだろうと、東京に戻ってから少なくとも1日1回は思い出している。

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