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医療者のためのわかりやすい医療訴訟

医療訴訟の予防法と対処法を会話形式でわかりやすく解説「医療訴訟」という言葉、医療者の方なら誰もが一度は耳にしたことがあるはずです。しかし、裁判所がどのような思考過程で事案を判断しているのかは、ご存じない方が多いかと思います。本書は、医療訴訟に関する法律や裁判所の考え方、そして実際の事案における争点と裁判所の判断を解説しています。さらに、医療訴訟に遭遇しないために日頃から留意すべきポイントと、遭遇した場合の対処法も記載しています。弁護士、医師、女子高生の3人が会話を繰り広げながら話を展開し、難解な法律用語の使用は極力避けているため、大変読みやすい内容となっています。医療者の方の万が一の場合に備えることができる1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    医療者のためのわかりやすい医療訴訟定価4,180円(税込)判型A5判・並製頁数416頁発行2020年4月著者粟野 公一郎(弁護士)、粟野 暢康(医師)

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考えがまとまらない【Dr. 中島の 新・徒然草】(488)

四百八十八の段 考えがまとまらない暑いですね。外に出る気がしません。毎日いるのは家か車か病院のどれか。ひたすらクーラーの効いたところで過ごしています。ただ、ベランダに干した洗濯物がよく乾くのだけは助かりますね。さて、先日来院した患者さんは30代の男性。主訴は頭痛、動悸、息切れ、微熱でした。これらの症状がひどいので会社を休んでいます。で、不明熱として当院の総合診療科に紹介されてきました。すでに前医で、レントゲンや心電図に加えて、膠原病スクリーニングや腫瘍マーカーを含む採血などがやり尽くされています。診断を付けるために私ができることなんか何も残っていません。なので、改めて病歴を確認しました。1ヵ月前に39度台の発熱が2~3日続いたそうです。それでコロナの検査をしたが、陰性でした。その後、熱は下がったのですが本調子になれません。仕事は現場の監督ですが、時には深夜近くに及びます。体がついていかないので、定時上がりの内勤に変えてもらいました。それでも倦怠感が続き、ついに休むに至ったとのこと。一番つらい症状は、体を動かした時の息切れと動悸。30代なのに走ったり階段を上ったりする気にはならないそうです。いくつかの医療機関を受診し、頻脈に対してβ遮断薬を処方されました。が、薬を飲んでも一向に良くなった気がしません。いろいろな医療機関を受診した後に、当院の総合診療科にたどり着きました。患者「仕事に戻りたいという気はあるんですけど、考えがまとまらなくて」中島「内勤の仕事に慣れていないのでしょうか?」患者「いや、前にも経験があるんで、そんなに難しい仕事ではないですね」中島「なるほど」患者「家でも物を考えるのが面倒になってしまって何もできないんですよ」息切れと動悸だけなら心臓や肺の疾患、もしくは貧血なども考えられます。でも考えがまとまらないという脳の症状もあるということは……ひょっとしてコロナ後遺症かも?確かにコロナ検査は陰性でした。しかし、検査の感度は70%しかありません。つまり、およそ3分の1のコロナは検査で見逃されるわけです。だから偽陰性だったのかも。そう考えると話の辻褄が合います。中島「もしかするとコロナ後遺症かもしれませんね。少し体調が良くなったとしても、あまり無理しないほうがいいですね」患者「会社のほうも休みにくくなってきたんで、そろそろ出勤したいんですよ」中島「内勤だったら何とかなりそうですか」患者「ええ」ということで「COVID-19後遺症:今後3ヵ月間の時間外勤務・出張を控えること」という診断書を作成しました。会社のほうはいいとして、もう1つの懸念が残っています。中島「家でゴロゴロすることを奥さんが許してくれるでしょうか」そう尋ねてみました。患者「理解してくれる……はずですけど」患者さんは目に見えて動揺しています。中島「お子さんは何歳でしたか?」患者「5歳と2歳です」中島「『育児で大変なのに、旦那は何もしてくれない』と奥さんに思われたりしませんかね」いくらご主人が会社で一生懸命働いているといっても、人というのは自分の目に入った情報だけで判断しがちです。患者「先生にそう言われると、だんだん心配になってきました」中島「まあ、そこはよく話し合って頑張ってください」第9波になってコロナ症例は増え続けています。その一方で、コロナ後遺症もよく目にするようになりました。若者にも軽症者にも起こるから厄介です。コロナをただの風邪と呼べるのは、もう少し先になりそうですね。最後に1句猛暑でも 頭の中は まだコロナ

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第56回 第一三共と塩野義のコロナワクチンに明暗

第一三共の新型コロナワクチンが承認Unsplashより使用7月31日の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会1)において、COVID-19に対する新たなワクチンとして、第一三共のmRNAワクチン「ダイチロナ筋注」の承認が認められました。同日審議された、塩野義製薬の組換えタンパクワクチンである「コブゴーズ筋注」は継続審議となり、実質的に認められなかった形となります。18歳以上への追加免疫に関する国内臨床試験で、従来株に対する中和抗体価の値が、対照群であったファイザー社製・モデルナ社製ワクチンの中和抗体価に対して同程度であることが確認され、中和抗体価の幾何平均上昇倍率で非劣性が確認されたことが決め手となりました。ダイチロナは従来株に対応したものですが、mRNAワクチンであるダイチロナについては変異ウイルスへの対応も期待されるところです。現在オミクロン株対応ワクチンがファイザー社・モデルナ社ともに流通しており、秋以降はXBB系統への対応ワクチンも登場する見込みです。塩野義製薬といえば、エンシトレルビル(ゾコーバ)が国内初のCOVID-19治療薬として承認されましたが、エビデンスの堅牢さが不十分で、実務的に手続きが煩雑であることも相まって、リアルワールドではあまり処方されていない現状があります。COVID-19の分野では、ここでワクチンにも塩野義の名を刻みたいところでしたが、今回は残念ながら承認が認められませんでした。抗体医薬ほどではないですが、新型コロナワクチンも栄枯盛衰が激しい分野で、アストラゼネカやジョンソン・エンド・ジョンソンのように表舞台から姿を消したワクチンもあります(図)。その中で燦然と輝くのがファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチンです。変異ウイルスにも対応するそのスピードは圧巻で、とにかくこの分野では強いです2)。図. 新型コロナワクチンの国内承認の流れ(筆者作成)mRNAワクチンはどのメーカーのものでも有効性が高いですが、ウイルスベクターワクチンや組み換えタンパクワクチンがこれを上回ることは現状難しいようです。塩野義製薬が開発しているワクチンは組み換えタンパクワクチンで、既存のワクチンが何らかの理由で接種できない人にも使用できるというメリットがありますが、有効性がmRNAワクチンレベルに到達しなければ、承認は難しいでしょう。国内ワクチンへの期待と課題国内のワクチン流通問題を解決するためには、日本の企業に頑張ってもらう必要があったのですが、コロナ禍から約1,200日で、ようやく承認といったところです。今後は、スピードが課題になりそうです。XBB系統については、すでにファイザー社・モデルナ社と契約済みであり、この速度で第一三共のワクチンを変異ウイルスに対応させることができるのかどうか。また国内流通という強みを生かせるかどうか。いずれにしても日本のワクチン施策の歴史的な一歩になったわけですから、今後に期待したいところです。参考文献・参考サイト1)厚生労働省 令和5年度第3回薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会2)厚生労働省 令和5年度第3回薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会 資料:新変異株対応のコロナワクチンの評価方針について

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日本人NSCLCへのICI、PPI使用者は化学療法の併用が必要か/京都府立医大ほか

 現在、PD-L1高発現の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する初回治療の選択肢として、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)単剤療法、複合免疫療法が用いられている。しかし、その使い分けの方法は明らかになっていない。また、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、抗菌薬の使用歴があるNSCLC患者は、ICI単剤療法の効果が減弱する可能性が指摘されている1,2)。そこで、京都府立医科大学大学院の河内 勇人氏らは、ペムブロリズマブ単剤療法、複合免疫療法の効果と各薬剤の使用歴の関係について検討した。その結果、PPIの使用歴がある患者は、複合免疫療法の効果がペムブロリズマブ単剤療法と比較して良好であった。一方、PPIの使用歴がない場合は、治療効果に有意差は認められなかった。本研究結果は、JAMA Network Open誌2023年7月11日号で報告された。 国内13施設において、初回治療としてペムブロリズマブ単剤療法(単剤療法群)またはペムブロリズマブと化学療法の併用療法(併用療法群)を受けたPD-L1高発現(TPS≧50%)のNSCLC患者425例を後ろ向きに追跡し、治療開始時の薬剤使用歴(PPI、抗菌薬、ステロイド)を含む患者背景と治療効果の関連を検討した。単剤療法群と併用療法群の比較は、傾向スコアマッチングにより背景因子を揃えて行った。 主な結果は以下のとおり。・単剤療法群は271例(年齢中央値[範囲]:72歳[43~90]、男性:215例)併用療法群は154例(同:69歳[36~86]、男性:121例)が対象となった。・多変量解析の結果、単剤療法群においてPPI使用歴は、無増悪生存期間(PFS)の短縮に有意な関連があった(ハザード比[HR]:1.38、95%信頼区間[CI]:1.00~1.91、p=0.048)。一方、併用療法群では関連が認められなかった(同:0.83、0.48~1.45)。・多変量解析において、単剤療法群と併用療法群のいずれも、抗菌薬使用歴やステロイド使用歴とPFSには有意な関連が認められなかった。・PPI使用歴のある患者集団において、PFS中央値は単独療法群が5.7ヵ月であったのに対し、併用療法群は19.3ヵ月であり、併用療法群は単独療法群と比較してPFSが有意に改善した(HR:0.38、95%CI:0.20~0.72、p=0.002)。・同様に、全生存期間(OS)中央値は単独療法群が18.4ヵ月であったのに対し、併用療法群は未到達であり、併用療法群は単独療法群と比較してOSが有意に改善した(HR:0.43、95%CI:0.20~0.92、p=0.03)。・PPI使用歴のない患者集団において、PFS中央値は単独療法群が10.6ヵ月であったのに対し、併用療法群は18.8ヵ月であったが、併用療法群と単独療法群に有意差は認められなかった(HR:0.81、95%CI:0.56~1.17、p=0.26)。・同様に、OS中央値は単独療法群が29.9ヵ月であったのに対し、併用療法群は未到達であったが、併用療法群と単独療法群に有意差は認められなかった(HR:0.75、95%CI:0.48~1.18、p=0.21)。 著者らは、「PPIの使用歴が、PD-L1高発現のNSCLCに対するペムブロリズマブ単剤療法と複合免疫療法の治療選択の予測因子として、有用であるであることが示唆された。すなわち、いずれの治療選択肢も選択可能な患者では、PPIの使用歴がある場合、複合免疫療法が推奨される治療法であると考えられた」とまとめた。

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アフターコロナの今、「MR不要論」を考える

 COVID‐19の拡大後、MR数は減少傾向にあり、製薬企業の営業拠点の見直し等も急速に進んだ。アフターコロナにおいて、製薬企業担当者は本当に必要なのだろうか? この疑問について、医師・製薬企業・メディカルスタッフ、それぞれの立場から率直に語り合う機会が設けられた。2023年7月22日(土)、第10回日本糖尿病協会年次学術集会のEXPERT社員シンポジウムで語られた内容を抜粋して紹介する。MRの情報提供は医師に求められていないのか? 医療用医薬品の情報提供には、厳格な法規制があることはよく知られる。具体的に、競合品との比較データや症例紹介が不可となる場合が存在する。反面、臨床現場からは、同効薬の使い分けや効果を発揮しやすい症例像への情報ニーズは高い。そのため、医薬情報担当者であるMRは、自分たちの提供する情報と医療者が求める情報に「乖離がある」と認識しているようだ。2023年6月実施のMR1,407名を対象としたアンケート調査の結果では、「求めたい情報提供に乖離はありますか?」の回答結果は「乖離がある」(17%)、「やや乖離がある」(67%)と乖離を感じるMRが大半であり、「乖離はない」と回答したMRは17%だった。また「情報提供の障壁となっているものは何ですか?(複数回答)」という質問では「面会できない」(74%)が最多で、次いで「販売情報提供ガイドライン」(54%)が挙げられた。 では、実際に医療者側はどう思っているのだろうか? 実は、まったく同じ調査が医師626名を対象に行われている。結果、「情報提供の乖離」に関しては「乖離はない」(51%)が最多で、「情報提供の障壁」に関しても「障壁はない」(57%)が最も多かった。つまり、MRが思うほど、医師にとってMRとの面会価値は低くはないことになる。医療者側の考えるMRの価値とは シンポジウムに登壇した医師からは、コロナ禍で受動的な医局説明会や文献提供がなくなり、現在は能動的なWeb経由での情報収集やWeb講演会の聴講等にシフトしたが、依然「MRによる情報提供も必要」との意見があがった。 具体的に「企業担当者がいて助かったこと」について、医師およびメディカルスタッフのエピソードが紹介された。 医師が助かった例として、臨床現場で疑問が生じた際の迅速なメール対応や地域医療連携および会合のサポート、患者差別や疾患への偏見を減らすための疾患啓発活動が挙げられた。同様に、メディカルスタッフからは添付文書のニュアンスの確認や薬物相互作用に関する論文紹介、食事・運動療法に関する患者向けの資材提供や研修会の案内が役立ったとの声があがった。その一方で、「不快なMR」として、薬の販売に躍起になって情報提供がおろそかになっている場合やレスポンスが遅いケース、周辺知識の不足等が指摘された。MRはどう振る舞うべきか 製薬企業側の代表者も登壇し、今後目指す形として、アフターコロナは、リアル面会とオンライン面会を併用し、ITツールを活用しての情報提供を行うことや、医療従事者に寄り添った活動を心掛けること、とくに自己研鑽を行い、信頼をしてもらうように務めるべき、と発言した。糖尿病協会で行っているEXPERT社員認定制度やe-ラーニング、積極的な学会参加を通じて、医療従事者のニーズを把握し、デジタルを活用しながら、ありとあらゆる形で医療者との関係構築を目指すという。 アフターコロナもMRは忙しい医療従事者の情報ニーズを埋める役割を担うと期待されているようだ。 質問すると、さっと返事が返ってきて助かるという声がある一方、添付文書改訂を知らせにしか来ないとの声もある。MRが医療者に適切な情報を提供するには、疾患への深い知識が必須となる。「患者さんの声」を企業に伝えるためにMRが必要だという意見もあり、いずれにせよ薬剤の情報を熟知し説明できる能力こそが今後の評価軸となる。 アフターコロナのMRの在り方は、EXPERT社員認定などの形で底上げを図り、医療従事者の一員であると自覚し、何より自信を失わないことが重要であるようだ。

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認知機能維持に重要なのは?運動vs.睡眠

 身体活動と睡眠はともに認知機能低下や認知症の重要なリスク因子であるが、それらがどのように相互に作用しているかは十分に検討されていない。そこで、英国・University College LondonのMikaela Bloomberg氏らが、身体活動と睡眠時間の組み合わせと10年間の認知機能の推移の関連を調査した結果、高頻度・高強度の運動を行っていても、睡眠時間が短い場合では認知機能の低下が速かったことを明らかにした。The Lancet Healthy Longevity誌2023年7月号の報告。 研究グループは、2008年1月1日~2019年7月31日に2年ごとに追跡調査が実施された英国の老化に関する縦断的研究のデータ(English Longitudinal Study of Ageing)を分析した。対象は、ベースライン時に認知機能が正常な50歳以上の人で、追跡調査期間中に認知症の診断を報告した場合は除外された。身体活動量と夜間の睡眠時間は自己申告で聴取され、エピソード記憶評価や言語流暢性検査によって複合認知機能スコアが算出された。線形混合モデルを用いて、身体活動量(身体活動の頻度と強度から算出)、および睡眠時間(6時間未満、6~8時間、8時間超)と、認知機能低下の関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・解析には、ベースライン時の年齢が50~95歳であった8,958人が組み込まれた(追跡期間中央値10年[四分位範囲:2~10])。・ベースライン時の認知機能スコアの平均値は、身体活動量が多いグループのほうが身体活動量が少ないグループよりも良好で、睡眠時間が6~8時間のグループでは6時間未満および8時間超のグループよりも良好であった。身体活動量が多く睡眠時間が6~8時間のグループは、どの組み合わせのグループよりも良好な認知機能スコアを示した。・追跡調査の認知機能スコアでは、身体活動量が多く睡眠時間が6時間未満のグループは、身体活動量が多く睡眠時間が6~8時間のグループよりも認知機能低下の速度が速かった。・ベースライン時の年齢が50代および60代の身体活動量が多く睡眠時間が6時間未満のグループは、身体活動量が少なく睡眠時間が6時間未満のグループと同程度の低い認知機能スコアを示した。70歳以上の場合は有意ではなかった。 これらの結果より、研究グループは「高頻度・高強度の身体活動を行っていても、短い睡眠による急速な認知機能低下を改善するには不十分であった。身体活動への介入では、長期的な認知機能の維持のために睡眠習慣も考慮する必要がある」とまとめた。

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新型コロナ、2価ワクチンブースターの有効性は?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種について、オミクロンBA.4/5またはBA.1変異株対応2価ワクチンによるブースター接種(4回目接種)は、1価(起源株)ワクチン3回接種と比較して、50歳以上の成人におけるCOVID-19関連入院/死亡の低下と関連していたことを、デンマーク・Statens Serum InstitutのNiklas Worm Andersson氏らが報告した。また、BA.4/5対応2価ワクチンとBA.1対応2価ワクチンの直接比較では、ワクチンの有効性に有意差はなく、潜在的な違いは絶対数では非常に小さいことが示唆されたという。BMJ誌2023年7月25日号掲載の報告。北欧4ヵ国の50歳以上の成人を対象としたコホート研究 研究グループは北欧4ヵ国の住民登録、予防接種登録、患者登録などの各種データベースを用い、2020年12月27日から、解析データが入手できた直近日(デンマーク2023年4月10日、フィンランド4月7日、ノルウェー4月1日、スウェーデン2022年12月31日)までに、AZD1222(アストラゼネカ製)(プライマリ接種コースのみ)、BNT162b2(ファイザー製、1価:起源株)またはmRNA-1273(モデルナ製、1価:起源株)ワクチンを少なくとも3回(プライマリ接種コース2回、ブースター接種1回)接種した50歳(フィンランド60歳、ノルウェー65歳)以上を対象に解析した。 主要アウトカムは、COVID-19関連入院およびCOVID-19関連死である。4回目(2回目のブースター)としてオミクロンBA.4/5またはBA.1変異株対応2価ワクチン接種者と、4回目非接種者(3回接種)をマッチングさせ、それぞれKaplan-Meier推定法を用いてCOVID-19関連入院およびCOVID-19関連死の累積発生率を推定し、90日時点における相対的有効性(1-リスク比)および絶対リスク差を算出した。2価ワクチンのブースター接種者、1価ワクチン3回接種と比較して重症化が減少 4回目としてのBA.4/5対応2価ワクチン接種者は163万4,199例、BA.1対応2価ワクチン接種者は104万2,124例で、3回接種者とのマッチドペアはそれぞれ123万3,741組および93万2,846組であった。 4回目接種者は3回接種者と比較して、90日以内のCOVID-19関連入院およびCOVID-19関連死の累積発生率は非常に低かった。COVID-19関連入院に対する有効性および10万人当たりのリスク差は、BA.4/5対応2価ワクチンで67.8%(95%信頼区間[CI]:63.1~72.5)および-91.9(-152.4~-31.4)(イベント数289 vs.893件)、BA.1対応2価ワクチンで65.8%(95%CI:59.1~72.4)および-112.9(-179.6~-46.2)であった(イベント数332 vs.977件)。また、COVID-19関連死に対する有効性および10万人当たりのリスク差は、BA.4/5対応2価ワクチンで69.8%(95%CI:52.8~86.8)、-34.1(-40.1~-28.2)(イベント数93 vs.325件)、BA.1対応2価ワクチンで70.0%(95%CI:50.3~89.7)、-38.7(-65.4~-12.0)であった(イベント数86 vs.286件)。 4回目接種と3回接種の比較では、ワクチンの有効性は性別および年齢(70歳未満または70歳以上)により差はなく、ワクチン接種日から6ヵ月後まで緩やかに減少したが維持していた。 4回目接種に関してBA.4/5対応2価ワクチンをBA.1対応2価ワクチンと直接比較すると、有効性および10万人当たりのリスク差は、COVID-19関連入院(イベント数802 vs.932件)が-14.9%(95%CI:-62.3~32.4)および10.0(-14.4~34.4)、COVID-19関連死(イベント数229 vs.243件)が-40.7%(95%CI:-123.4~42.1)、8.1(-3.3~19.4)であった。この直接比較の結果は、性別および年齢(70歳未満または70歳以上)による層別化、あるいは追跡期間を6ヵ月まで延長した場合でも、同様であった。

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ナルコレプシータイプ1、経口OX2受容体作動薬の第II相試験データ/NEJM

 ナルコレプシータイプ1の患者において、経口オレキシン(OX)2受容体選択的作動薬のTAK-994はプラセボと比較して8週間にわたり眠気およびカタプレキシー(情動脱力発作)を大きく改善したが、肝毒性との関連が認められた。フランス・モンペリエ大学のYves Dauvilliers氏らが、北米、欧州およびアジアで実施された第II相無作為化二重盲検プラセボ対照用量設定試験の結果を報告した。ナルコレプシーは、日中の過度の眠気を特徴とするまれで慢性的な中枢神経系の過眠障害で、カタプレキシー、入眠時または出眠時幻覚、睡眠麻痺などを伴うことがある。ナルコレプシーはタイプ1とタイプ2に大別され、タイプ1は視床下部外側野に局在するオレキシン産生ニューロンの著しい欠乏によって引き起こされることが明らかになっていた。NEJM誌2023年7月27日号掲載の報告。平均睡眠潜時をプラセボと比較 研究グループは、睡眠障害国際分類第3版に基づきナルコレプシータイプ1と診断された18~65歳の患者を、TAK-994の30mg群、90mg群、180mg群またはプラセボ群に1対1対1対1の割合に無作為に割り付け、それぞれ1日2回経口投与した。 主要エンドポイントは、覚醒維持検査(Maintenance of Wakefulness Test:MWT)による平均睡眠潜時(入眠に要する時間)(範囲:0~40分、正常:20分以上)のベースラインから8週目までの変化量であった。副次エンドポイントはエプワース眠気尺度(Epworth Sleepiness Scale:ESS)スコア(範囲:0~24、正常:10未満、スコアが高いほど日中の眠気が強いことを示す)の変化量、1週間当たりのカタプレキシー発現頻度、および安全性とした。有効性は認められるも、肝毒性により早期中止 2021年1月16日~2021年9月9日に154例がスクリーニングを受け、うち73例が無作為化され少なくとも1回試験薬を投与された(30mg群17例、90mg群20例、180mg群19例、プラセボ群17例)。 本試験は、後述のように肝毒性が数例に認められたため早期中止となり、主要エンドポイントのデータが入手できたのは41例(56%)であった。 評価可能症例において、MWTによる平均睡眠潜時の8週目までの変化量(最小二乗平均値)は、30mg群23.9分、90mg群27.4分、180mg群32.6分、プラセボ群-2.5分で、プラセボ群との差(最小二乗平均差)はそれぞれ26.4分、29.9分、35.0分であった(すべての比較でp<0.001)。 ESSスコアの8週目までの変化量(最小二乗平均値)は、30mg群-12.2、90mg群-13.5、180mg群-15.1、プラセボ群-2.1で、プラセボ群との差(最小二乗平均差)はそれぞれ-10.1、-11.4、-13.0であった(すべての比較でp<0.001)。8週目のカタプレキシー発現頻度は30mg群0.27、90mg群1.14、180mg群0.88、プラセボ群5.83であった(プラセボに対する発生率比はそれぞれ0.05、0.20、0.15)。 TAK-994投与群56例中44例(79%)に有害事象が認められ、主なものは尿意切迫感または頻尿であった。また、5例でALT値またはAST値の臨床的に重要な上昇を認め、Hy's Law(ALT/ASTの正常値上限の3倍を超える上昇とビリルビンの正常値上限の2倍を超える上昇)の基準を満たす薬物性肝障害が3例認められた。

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国産初の新型コロナmRNAワクチンを追加免疫として承認、供給なし/第一三共

 第一三共は8月2日のプレスリリースにて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する起源株1価mRNAワクチン「ダイチロナ筋注」(DS-5670)について、「SARS-CoV-2による感染症の予防」を適応とした追加免疫における国内製造販売承認を取得したことを発表した。ダイチロナ筋注については、2023年1月に国内製造販売承認申請を行い、COVID-19に対する国産初のmRNAワクチンとして今回承認に至った。ダイチロナ筋注は、冷蔵(2~8度)での流通・保管が可能となるため、医療現場での利便性の向上が期待される。ダイチロナ筋注は追加接種に用いられる起源株対応1価のmRNAワクチン 今回承認となったダイチロナ筋注は、同社が見出した新規核酸送達技術を活用し、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合領域(RBD)を標的としたCOVID-19に対するmRNAワクチンだ。ダイチロナ筋注の研究開発は、XBB.1.5系統1価ワクチンの開発を含め、日本医療研究開発機構(AMED)の「ワクチン開発推進事業」および厚生労働省の「ワクチン生産体制等緊急整備事業」の支援を受けて実施している。 なお、2023年5月開始の現行の追加接種には、ファイザーおよびモデルナのオミクロン株BA.4/5対応2価のmRNAワクチンが使用されている。また、2023年9月から予定されている追加接種には、XBB.1.5系統を含有する1価のワクチンを用いる方針が厚生労働省より示されている。今回承認された第一三共のダイチロナ筋注は、追加接種に用いられる起源株対応1価のmRNAワクチンであることから、供給は予定していない。 同社は、XBB.1系統1価ワクチンに対応できるよう速やかに開発を進め、早ければ年内にXBB.1.5系統1価ワクチンを供給できるよう取り組むとしている。

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急性期統合失調症に対する長時間作用型注射剤抗精神病薬~メタ解析

 長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬は、統合失調症の再発予防効果が期待できるが、急性期患者においてもベネフィットをもたらす可能性がある。ドイツ・ミュンヘン工科大学のDongfang Wang氏らは、急性期統合失調症患者に対する第2世代抗精神病薬(SGA)のLAIに関するエビデンスのシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、急性期統合失調症に対し、SGA-LAIは効果的な治療選択肢であることを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2023年6月23日号の報告。 急性期統合失調症を対象にSGA-LAI(オランザピン、リスペリドン、パリペリドン、アリピプラゾール)とプラセボまたは経口抗精神病薬を比較したランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビュー、およびメタ解析を実施した。統合失調症の精神症状を主要アウトカムとし、有効性および忍容性の23項目のアウトカムを分析した。ランダム効果、ペアワイズメタ解析、サブグループ解析を行った。研究の質の評価には、Cochrane-Risk-of-Bias-Tool ver.1を用いた。 主な結果は以下のとおり。・分析には、66の研究、1万6,457例を含めた。・内訳は、SGA-LAIとプラセボを比較した研究は11件、SGA経口抗精神病薬とプラセボを比較した研究は54件、SGA-LAI(アリピプラゾール)と経口抗精神病薬を比較した研究が1件であった。・4種類のSGA-LAIは、プラセボと比較し、全体的な症状改善効果が認められた。 【オランザピン】標準化平均差(SMD):-0.66(95%信頼区間[CI]:-0.90~-0.43) 【アリピプラゾール】SMD:-0.64(95%CI:-0.80~-0.48) 【リスペリドン】SMD:-0.62(95%CI:-0.76~-0.48) 【パリペリドン】SMD:-0.42(95%CI:-0.53~-0.31)・SGA-LAIの副作用プロファイルは、経口剤で確認されている既知の副作用と同様であった。・プラセボと比較したサブグループ解析では、一部の副作用における経口剤とLAIとの顕著な違いは認められなかった。・LAIでは、一部の副作用が経口剤よりも低い可能性があるものの、間接的な比較であるため、今後の直接比較によるRCTが求められる。

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認知症予防の扉がこじ開けられつつある(解説:岡村毅氏)

 歴史的に眺めてみよう。20世紀にはアルツハイマー型認知症は臨床的にのみ診断され、死後に解剖されて初めて確定診断されていた。人類には何もできなかった。しかし21世紀に入り、生きているうちから診断するための技術が徐々に開発・実装された。2004年に米国で大規模画像プロジェクトADNIが始まり、脳内で何が起きているのかがわかってきた。死後脳に溜まっているアミロイドが、だんだんと溜まっていくさまが確認され、アミロイドカスケード仮説は、生体でも確認された。そして2011年の新しい診断基準で、PETや髄液検査による診断が可能になった。これにより、プレクリニカル期(症状がないが病理がある)、MCI期のアルツハイマー型認知症、そしてアルツハイマー型認知症という病期が確立した。 ようやく扉、そして鍵穴が見つかったのである。 一方で上記とはまったく別の話であるが、認知症の薬物治療は、ドネペジルが2007年から使用されている。言うまでもなくこれは対症療法薬であり、前頭葉を元気にして認知機能を向上させる薬剤である。決して悪い薬ではないが、「根本治療薬じゃない」という思いからずいぶん気軽に処方される一方で、徐脈(コリンを分解する酵素の邪魔をするのだから当然ですよね)や興奮(前頭葉を賦活するから当たり前ですよね)がしばしばあり、最近はすっかり評価を落としている。 さて、ADNIによりアミロイドの病理を止めることができれば根本的な治療薬が開発できるのではないかと考えることは自然であり、2010年代にはさまざまなアミロイド関連の薬剤が開発されてきた。大変な生みの苦しみがあったことは周知のとおりだが、ようやくエーザイが開発に成功した。ドネペジルを開発したのもエーザイであるから、常に最先端にいるという稀有な会社である。 とはいえエーザイもとてつもない苦労をしてきた。aducanumabは2つの試験(すなわちEMERGE試験とENGAGE試験)ではCDR-SBで有意差がなかったが、2つを合わせると高用量では有意差があった。紆余曲折があったが米国では条件付き承認された。鍵穴がこじ開けられたのだ。その後エーザイのlecanemabがClarity AD試験でCDR-SBで有意差があり、米国で承認された。扉が開いたと言えよう。なおCDRとは臨床的な認知症のステージ分類であり、その和(sum)がSBである。とても臨床的によく使う尺度だ。 イーライリリーは大変苦戦していた。期待されたsolanezumabはEXPEDITION試験でADAS-cogで有意差が得られず失敗に終わった。しかし捲土重来を期したdonanemabがTRAILBLAZER-ALZ試験でiADRSを改善した。それがこの論文である。なおiADRSとは判断のために作られた、いくつかの尺度を合わせたものである。PETの所見も有意であり、確かにアミロイドに当たっている。 個人的にはスタディ名が出現、関与、鮮やか、開拓者、遠征といったキラキラネームばかりでとても気になる。もはや略称ですらない…。 なお、アミロイドを排出することで起こるとされているアミロイド関連画像異常(ARIA)がこれらの薬の重大な有害事象であり、lecanemabでは12.6%に起きているがdonanemabでは24%と報告されている(ただし症状があったのは4分の1程度)。良薬口に苦し、であろう。 認知症予防の扉がこじ開けられつつあるが、今後はどのようなことが課題なのだろうか? まずは何といっても、いずれ出てくるであろうプレクリニカル期のスタディ結果が気になる。これまではなんだかんだ言っても、すでに認知症と診断された人が対象であった。症状はないがアミロイドの病理がある、という状態で投薬した場合どれほどの効果を得られるのだろうか? これが次の扉であることは明らかだ。 次に、今ある治療薬は血管内投与(点滴)である。経口薬はいつ出てくるのかも気になるところだ(すでに開発が進められているようだ)。 またARIAへの対応などから、遺伝子診断やMRIがある大きな施設でなければ安全に治療を受けられないため、医療提供体制が大きな課題である。スムーズにいくだろうか? 最後にきわめて臨床的な(とくに精神科的な)ことを指摘しておこう。第一に、いつ治療を終えるのかという点である。もう効果がないという状態になっても「税金を払っているのになぜ処方してくれないんだ!」という方やご家族は今もたまにおられる。第二に、早期診断を求めてきた人で、大変困っているようだが、アルツハイマー型認知症ですらない人への対応をどうするかである。先に述べたように、疾患修飾薬は限られた施設でしか対応できないため、効率だけ考えれば他の認知症等に割ける資源はもうない。とはいえ「あなたは新薬の対象外だからもう来ないでください」というのは倫理的ではなく、他の機関等との連携体制が必要だろう。

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動物咬傷(蛇)【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第5回

今回は蛇咬傷についてです。私は小さいころにアオダイショウの首根っこを捕まえてかまれたことがありますが、大した傷もなく、とくに何の治療もしませんでした。しかし、蛇にかまれた患者さんは傷に関して困っているのではなく、「毒蛇かもしれない」という恐怖を感じていることが多いように思います。今回は毒蛇かどうかを見分けるコツとその治療を紹介します。<症例>10歳代、男子関東の公園に遊びに行き、蛇が泳いでいるのを見つけた。追いかけて捕まえたら指をかまれた。蛇の種類がわからず、親が毒蛇の可能性を考えて救急外来を受診させた。アレルギー歴、既往歴、内服薬:特記事項なし右手の人差し指に擦過創あり(図1)図1 擦過創のような傷画像を拡大する画像を拡大するこの患者さんの対応について順を追って考えてみましょう。現在日本には60種類程度の蛇が存在していると言われています1)。データは少ないですが、蛇咬傷による入院で最も頻度が高いのがマムシ、次いでハブ、まれにヤマカガシです2)。よって、今回はマムシとハブを重点的に記載し、最後にヤマカガシに触れます。毒蛇かどうかの判断(1)蛇の種類を特定するマムシは北緯30度(鹿児島県の口之島)~46度(日本の最北端)に広く生息し、ハブは北緯24度~29度と沖縄周辺に生息しています2)。そのため、かまれた地域でマムシかハブか悩むことは少ないです。では、マムシorハブvs.そのほかの蛇を区別するにはどうしたらよいでしょうか? 蛇の模様は個体差が大きいので手っ取り早く見分けるとしたら頭の形です。毒蛇は三角形の頭をしていることが多いです。とっさのことですので難しいですが…。マムシ体に斑紋があり、頭が三角形に近い形をしている。ハブ 毒腺と毒をしぼり出す筋肉があるため、あごが張った三角形をしている。大部分のハブの背中には、黄色をベースにした黒の絣模様があるが種類によって異なる。図2 左:無毒の蛇、右:毒蛇の頭部の例最近ではスマートフォンを持っている人が多いため、写真に撮って持って来てくれるケースが多くなりました。今回の患者さんも動画を撮ってくれていました。少し画像が粗いですがアオダイショウとわかります(図3)。図3 患者さんが持ってきてくれた動画の一部(2)かみ傷を確認する動画があったので本症例は毒蛇でないことがわかるのですが、それだと話が終わってしまうので、動画や写真がなかったとしましょう。その場合、かみ傷を確認します。冒頭の図1の写真を見てもらいたいのですが、擦り傷のようなかみ傷が多数あります。マムシやハブにかまれた場合はこういった傷にはなりにくいです。というのも、マムシやハブなどの毒蛇は毒を体内に注入するための鋭い2本の歯を持っています(図4)。図4 左:マムシの歯、右:ハブの歯このためかみ傷は2つの小さな穴が空いたような傷になり、図1のような傷にはなりにくいです(図5)。よって、本症例は毒蛇にかまれた可能性は低いと考えます。図5 マムシやハブのかみ傷のイメージ報告によると、2つ穴のかみ傷が毒蛇咬傷を示唆する感度は100%、陽性的中率は89%で、図1のような擦過創の場合の毒蛇以外の咬傷を示唆する陽性的中率は100%とのことです3)。(3)腫れ具合を確認するかみ傷で毒蛇であるかどうかはだいたい判断できますが、腫れ具合がおかしいときは悩むことがあります。毒素が入った場合、通常の咬傷では考えられない急速な腫脹が広がり、水泡などが伴うことがあります(図6)。「指先をかまれて2時間ほどしたら手首も腫れてきた」というのは通常の咬傷では起き得ず、感染が生じるにしても早すぎるため違和感を持ちましょう。一説によると受傷後、3時間経っても腫脹が進展している場合は重傷化の可能性があるとされています4)。よって、かまれてすぐに受診した場合は外来で数時間フォローする必要があります。時間単位で腫脹が進展する場合は毒蛇にかまれた可能性を考えましょう。本症例は、診察などを合わせて受傷から2時間ほど経過をみましたがわずかな腫脹のみでした。やはり毒蛇にかまれた可能性は低いでしょう。図6 マムシのかみ傷(聖隷横浜病院 入江康仁先生のご厚意で画像をご提供いただきました)以上が毒蛇かどうかを見分けるコツでした。では、診療所でできる毒蛇と毒蛇以外の咬傷の治療方針の決定についてです。蛇咬傷の治療(1)毒蛇以外の場合基本的に、犬や猫による動物咬傷と治療は変わりません3)。まず洗浄してガーゼで保護します。そして、抗菌薬の予防投与や破傷風の予防接種を検討します。本症例は擦過創程度であり、洗浄後にガーゼで保護して帰宅としました。(2)毒蛇の場合毒蛇にかまれ、腫脹が存在する場合は基本的に入院の適応があります。というのも、蛇の毒素は急速に進行し、筋肉の破壊による横紋筋融解、コンパートメント症候群、毒素による血液凝固障害などさまざまな症状が出現し、ショックや急性腎不全など命が脅かされることがあります5)。なので、毒蛇にかまれて症状があると判断した場合は早急に高次医療機関に紹介しましょう。ただし、毒蛇にかまれてもほとんど症状がない患者さんがまれにいて、この場合が悩みます。私自身、「草刈り中に蛇に手をかまれ、持っていた鎌で蛇の首を切り落としたらマムシだった」という強者のおばあちゃんを診たことがあります。かみ傷は2つ穴で確かにマムシにかまれたと考えられるのですが、局所の腫脹はほとんどなく、採血も何も異常がありませんでした。蛇にかまれて毒が入ることを「Wet bite」、無毒の蛇や毒蛇にかまれても毒が入らなかったとき、つまり咬傷による傷害のみの場合を「Dry bite」と言います。毒蛇は一度毒を出すと元通りになるまで14日かかると報告があり、毒がないという毒蛇側の要因や、ほかにもさまざまな要因がかかわることで毒蛇にかまれても20%程度がDry biteになります6,7)。どのようにフォローすべきか悩ましいところですが、毒蛇にかまれてDry biteと判断された場合、12~24時間の経過観察が推奨されており、局所症状の有無にかかわらず入院し、24時間後に何も症状がないことを確認して退院することが推奨されています5,8)。結局のところDry biteは最終的に何もなければDry biteだったという診断になります。ただ、ほぼ無症状の人を入院させるハードルは高く、Dry biteと考えられる局所の軽度の炎症のみの人なら6時間の経過観察で進展がなければ帰宅でもよいという報告もありますが、議論の余地があるようです8)。私は毒蛇咬傷の経験は5例で、Dry biteは2例しか経験がなく、いずれも総合病院の救急外来で診察しました。受傷後2~3時間経っても咬傷部位に変化がなかったものの、リスクを説明して入院を勧めました。2例とも入院を希望しなかったため、腫脹の出現など異変がある場合はすぐに受診するように指導して、翌日外来でフォローしました。重症化した場合は、血清の投与、減張切開、集中治療などが必要になることがあり、もし診療所で診察する場合は可能であれば対応できる病院に紹介するのがよいと考えます。今回は蛇咬傷の治療を紹介しました。私は、蛇にかまれた人に、今後は見つけても近づかない、草むらに入るときは手袋や長ズボンで防御するよう指導しています。近年はペットショップで購入した毒蛇にかまれたなどの報告もあります11)。それらが逃げ出した可能性もあり得るので、やはりむやみに近づかないのが重要です。蛇に関する豆知識意外に危険なヤマカガシ:ヤマカガシは1〜1.5mほどの大きさで、水田、河川付近に生息しています。牙は後方に位置し、毒腺はその根元に開口しています(図6)。ヤマカガシ毒の作用は、ほぼ血液凝固促進作用のみであり、ハブやマムシ毒のように直接組織を損傷させることはないため、局所症状がなく診断は難しいです。症状は受傷後数時間して、強烈な頭痛とともに血栓を生じ、梗塞部位からの出血症状(脳出血、歯肉出血)が出現します。ただし、報告数は40年間で34件しかなく珍しい疾患です9)。図7に示すように歯が後ろにあるため、よほどしっかりとかみつかれないと毒は入りません。そのため、かまれても毒が入らないケースが多く、医療者も無毒と考えていることが多いようです。実は私も無毒だと思っていました…。外観の観察によって蛇の種類を特定しようにも、ヤマカガシは地域によって色が違い、個体差が大きいため難しいです10)。もし迷うようでしたらジャパンスネークセンターの毒蛇110番という連絡先がありますので相談することも1つの手です。図7 ヤマカガシ(毒牙は棒の先端に乗っている小さなとげ)中枢側を縛るべき?傷口から毒を吸い出す?:昔の映画で毒蛇にかまれた際に、中枢側(指先であれば前腕)を縛るシーンがよく出てきました。これは、血流に乗った毒が中枢側に行かないようにするために行われたそうですが、残念ながら有効性は証明されず現在は推奨されていません。同様に、傷口に口を付けて毒を吸い出す処置も昔は行われていましたが、これも効果がなく、口腔内は雑菌だらけで感染のリスクを上げるため現在では推奨されていません。現在のところ傷口の処置で推奨されているのは患部の安静です5)。1)鳥羽 通. 爬虫両棲類学会報. 2007;2007:182-203. 2)Yasunaga H, et al. Am J Trop Med Hyg. 2011;84:135-136.3)Savu AN, et al. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2021;9:e3778.4)辻本登志英ほか. 日本救急医学会雑誌. 2017;2:48-54.5)Ralph R, et al. BMJ. 2022;376:e057926.6)Pucca MB, et al. Toxins(Basel). 2020;12:668.7)Young BA, et al. BioScience. 2002;52:1121-1126.8)Naik BS. Toxicon. 2017;133:63-67. 9)抗毒素製剤の高品質化、及び抗毒素製剤を用いた治療体制に資する研究 [AMED阿戸班] ヤマカガシ10)ジャパン・スネークセンター 身近な毒ヘビ11)大野 裕ほか.日本臨床救急医学会雑誌. 2022;25:735-739.

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第172回 地域枠離脱者には専門医資格を取らせないように!「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」が今年も提言

「不同意離脱者については、 専門医資格の認定・更新を行わないよう働きかけるべき」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。トレードの話題で持ちきりだったMLBの大谷 翔平選手ですが、オーナーの強い意向もあり、ロサンゼルス・エンジェルスはプレーオフ進出を目指して戦う方針が決定、今シーズンはエンジェルスを離れないことが決まりした。まずはひと安心です。しかし、その後、トロント・ブルージェイズ戦で2連敗と、なかなか厳しい状況ではあります。トレードは、チーム側(オーナー、GM)が選手の行き先の決定権を握っています。これに対し、FA(フリーエージェント)となれば選手がチームを選べるようになります。今回の決定で、大谷選手については、シーズンオフ、FA権取得後に争奪戦が本格化することになります。「大谷とポストシーズンへ」という方針を明確に打ち出したエンジェルスは、その争奪戦においても、少しだけアドバンテージを取れたかもしれません。そもそもFAは、経営者側が選手を縛ってきた状況を改善すべく、1970年代半ばにできた制度だそうです。ただ、FA権取得までに選手は6年のメジャー在籍が必要なため、取得時にはすでに最盛期を過ぎてしまっているケースも少なくないなど、課題もあるようです。さて、今回は「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」が7月26日に取りまとめ公表した、医師不足や地域間偏在の解消に向けた国への提言について書いてみたいと思います。同提言では、地域枠都道府県が不同意と認定した不同意離脱者については、専門医資格の認定・更新を行わないよう、国が日本専門医機構に働きかけるべきだとしました。地域枠で医学部に入学したにもかかわらず、入学後、あるいは卒業後に地域枠を外れる医師への対応を巡って、議論が本格化しそうな気配です。医師少数県12県でつくる「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」医師少数県12県(青森、岩手、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、長野、静岡、宮崎)でつくる「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」(会長・達増 拓也岩手県知事)は26日、山梨県の八ヶ岳山麓で会合を開き、医師不足や地域間偏在の解消に向け、国への提言をまとめ、厚生労働省と文部科学省に提出しました1)。同会は2020年に設立された組織で、毎年同趣旨の提言を行っています。今年の提言では、地域医療の現状について「我が国の地域医療の現場では医師の絶対数の不足や地域間・診療科間の偏在等が極めて顕著となり、いわば『地域医療崩壊』の危機的状況にある」、「『医師の働き方改革』が、医師不足地域において医師の確保が図られないまま推進された場合、医療機関においては診療体制の縮小を余儀なくされ、救急医療や周産期医療の提供が困難になるなど、地域医療提供体制に多大な影響が生じることが懸念される」として、「医学部の大幅定員増や医学部新設」「医師の地域偏在解消に向けた臨床研修制度の見直し」「医師の地域偏在解消に向けた実効性を伴う専門研修の仕組みの創設」などを求めました。注目されたのは、「実効性を伴う専門研修の仕組みの創設」の中で、「専門医制度における地域枠離脱防止策」について改めて言及している点です。特に医学部地域枠の不同意離脱者に関する提言は3年連続となります。今年は具体的には、日本専門医機構において、地域枠都道府県との不同意離脱者に対し、専門医資格の認定及び更新を行わないよう、改めて国から働きかけること。地域枠からの離脱について、不同意と認定することで都道府県が法的な責任を負うことのないよう、同意/不同意の基準を明確に示すなど、国の積極的な関与により、実効性のある仕組みを整備すること。という内容でした。つまり、地域枠離脱者で、奨学金等を出している都道府県が離脱を不同意と認定した場合は、専門医資格の認定及び更新を行わないようにしろ、ということです。「法的な責任」とは、専門医の資格が取れなかったことなどを理由に医師側から訴えられたとしても、都道府県は罪とならないような仕組みにしてくれ、ということです。日本専門医機構のペナルティはペンディング中地域枠からの離脱について、専門医を取らせないようにするという日本専門医機構のペナルティは2021年度にスタートし、制度として定着していくかに見えました。しかし、「法的拘束力がない」といった指摘がなされ、現在、そのペナルティは科されていないようです。7月27日付のMEDIFAXは、「地域枠医師について、(専門医)機構は2022年秋まで、ホームページで以下のように記載していた。『都道府県と同意されないまま、当該医師が地域枠として課せられた従事要件を履行せず専門研修を修了した場合、原則、機構は当該医師を専門医として不認定とする』。しかし、『県が同意しなければ専門医認定が取得できないのか』といった疑問の声が上がり、機構はいったん記載を取りやめた。機構は現在、地域枠医師の専門医認定について、『統一的見解』をまとめる方向で検討している」と書いています。地域枠の当該県で働くという誓約書に法的な拘束力はあるか?地域枠の医師は、医師免許を得た後、概ね9年間、当該都道府県内の地域で医師として働くことになっています。奨学金を借りることもセットになっており、9年働いたら返済が免除される、というのが一般的な条件です(自治体ではなく、大学が実施している地域枠もあります)。地域枠から途中で離脱する場合、この奨学金を利子付きで返済することになるのは契約違反なので当然と言えますが、今、とくに問題とされているのは「9年間、地域枠の当該県で働く」という誓約書の法的な拘束力です。医療問題に詳しい弁護士の井上 清成氏は、2022年12月7日発信の医療ガバナンス学会発行のメールマガジン「Vol.22248 地域枠からの『不同意」離脱の運用を改善すべき」の中でこの問題を取り上げ、「入学後の誓約書(又は同意書)が無ければもちろんのこと、そのような誓約書等があったとしても、将来の就労義務の法的拘束力は、甚だ疑問だということになろう。つまり、学生や研修医に法的義務を課すことには疑問符がついているので、よく『道義的責任がある』と言われるようである。ここで注意しておきたいことは、往々にして『道義的責任がある』と言われていることは、『法的責任がない』と言うことと同義だ」と書き、日本専門医機構のペナルティについて、「単に『道義的責任』があると言うだけで『専門医の認定』という権利を剥奪するのは、医師の人権ないし権利への侵害と言いうるように考えられる」と書いています。離脱者は現在、年間数人というレベルもアカハラ、パワハラの存在も厚生労働省の調べによれば、地域枠の離脱者には、2012年頃までは、地域枠学生全体の10%以上で推移、2010年度は95人(全体の12%)にも上っていました。その後は低下に転じ、現在は年間数人というレベルのようです。離脱者の数が少なくなってきた一方で、離脱表明者に対する大学等からのアカハラ、パワハラの存在なども報道されており、「不当な人身拘束から医師を守れ」というような、地域枠離脱希望者の人権擁護の立場からの論調も見受けられます。しかし、一方で、「地域医療に従事してもらいたい」と税金を使って地域枠をつくったのに、辞められてしまう都道府県側もたまったものではありません。「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」が毎年この問題を取り上げる気持ちも理解できます。一般入試より入りやすいというメリットを享受し医学部に入りながら、合格したら「地域枠辞めたいです」では、「道義的責任」を持ち出したくもなります。これまでとは違った角度から地域枠制度の見直しを不同意離脱者に対するさまざまなペナルティ(専門医を取らせないことに加え、医師臨床研修費補助金の減額等)は確かに再考の余地があるとは思います。しかし、一方で、もう少し離脱希望者を減らす工夫をできないものでしょうか。MLB選手のFAまでメジャー6年という年数ですら長いと言われています。大学や初期研修における総合診療やプライマリ・ケアの教育を強化することで即戦力を早く育て、同時に勤務年限を9年よりも短くする、あるいは生涯積算で9年(若い時5年、残りは65歳までに積算2〜3年とか)にするなど、これまでとは違った角度、視点から、地域枠の仕組みを見直してみることも必要だと思います。参考1)医師不足や地域間偏在の根本的な解消に向けた実効性のある施策の実施を求める提言/地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会

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適量の飲酒、非飲酒より死亡率低い?~女性コホート

 女性の中年期のアルコール摂取量と全死亡率およびがん死亡率の関連について、オーストラリア・メルボルン大学のYi Yang氏らが持続的仮説的介入で検討した結果、全死亡率はまったくアルコールを摂取していなかった場合よりもある程度の量(エタノール30g/日以下)を摂取していたほうが低くなっていた可能性が示唆された。一方、がん死亡率では明らかではなかった。American Journal of Epidemiology誌オンライン版2023年7月24日号に掲載。飲酒量が30g/日以下の場合は全死亡率およびがん死亡率のリスクが低い 本研究は、1996~2016年に定期的に収集されたAustralian Longitudinal Study on Women's Health 1946~51年出生コホートのデータを用いた。ベースライン時に女性をさまざまな飲酒量(エタノール0~30g/日超、または30g/日超の場合は20g/日以下に減量)に割り付け、飲酒量を継続した場合の全死亡率およびがん死亡率を推定した。 飲酒量と全死亡率およびがん死亡率を推定した主な結果は以下のとおり。・全死亡率およびがん死亡率の累積リスクは、それぞれ5.6%(1万118人を20年間追跡)および2.9%(18年間追跡)であった。・ベースラインの飲酒量がエタノール30g/日以下の場合、まったく飲酒していない場合に比べて、全死亡率およびがん死亡率のリスクが低く、30g/日を超えると高くなった。・介入を継続していた場合、全死亡率については上記と同様の関係が観察されたが、がん死亡率については飲酒量がエタノール30g/日以下でみられた負の相関と30g/日超でみられた正の相関は明らかではなかった。

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乾癬・湿疹の重症度、なぜ患者と医師で認識が異なるか

 乾癬や湿疹を有する患者と医師の間で、重症度の認識の違いとその要因を調べた結果、認識の不一致は46.3%に認められた。医師は視覚的な客観的尺度を重視したのに対し、患者は疾患の身体的、機能的、感情的な影響を重視したことが要因として示された。また、これらが患者のレジリエンス(回復力)、自己効力感、否定的な社会的比較と関連していること、医師は重症疾患に遭遇する頻度が高いため、軽症例を過小評価してしまう可能性も示唆された。シンガポール・National University Healthcare SystemのValencia Long氏らが患者と医師1,053組を対象とした横断研究を実施し、以上の結果が示された。著者は、「本研究により明らかになった患者と医師の認識の不一致の要因が、認識の不一致を小さくするための認知行動的介入の潜在的なターゲットになる」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年7月12日号掲載の報告。 患者の重症度に関して、患者と医師で認識の不一致がみられることがある。この現象は、重症度評価の不一致(discordant severity grading:DSG)と称され、患者と医師の関係性を妨げ、フラストレーションの原因にもなる。 研究グループは、DSGに関連する認識、行動、疾患的要因を明らかにするため、定性的研究で理論モデルを導き出した。その後、構造方程式モデリング(structural equation modeling:SEM)を用いた定量的研究にて同モデルを検証した。対象患者と医師の収集は、便宜的標本抽出法を用いて2021年10月~2022年9月の期間に行った。3ヵ月以上にわたり乾癬または湿疹を有する18~99歳の患者を抽出した。データ解析は2022年10月~2023年5月に行った。 アウトカムは、患者と医師それぞれが評価した全般的重症度(NRS[numerical rating scale]:0~10、高スコアほど重症度が高い)の差で、医師の認識より患者の認識が2ポイント以上高い場合は「正の不一致」、2ポイント以上低い場合は「負の不一致」と定義した。また、SEMを用いて要因解析を行い、事前に特定した患者、医師および疾患因子と重症度の差との関連性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象患者は1,053例(平均年齢43.5歳[標準偏差17.5]、男性579例[55.0%])。湿疹が802例(76.2%)、乾癬が251例(23.8%)であった。・解析に含まれた医師は44例(男性20例[45.5%]、31~40歳が24例[54.5%]、シニアレジデントもしくはフェローが20例、コンサルタントまたは主治医が14例)で、医師1人当たりの患者数中央値は5例(四分位範囲:2~18)であった。・患者と医師のペア1,053組のうち、487組(46.3%)で不一致が認められた(正の不一致447組[42.4%]、負の不一致40組[3.8%])。・患者と医師の評価の一致は不良であった(級内相関係数[ICC]:0.27)。・SEMを用いた要因解析により、正の不一致は、症状発現の大きさ(標準偏回帰係数β=0.12、p=0.02)、QOL低下の大きさ(β=0.31、p<0.001)と関連していた。患者や医師の人口統計学的背景との関連は認められなかった。・QOL低下が大きいほど、回復力およびスタビリティ(安定性)の低下(β=-0.23、p<0.001)、否定的な社会的比較の増大(β=0.45、p<0.001)、自己効力感の低下(β=-0.11、p=0.02)、疾患の周期性の増大(β=0.47、p<0.001)、慢性化の見込みの増大(β=0.18、p<0.001)との関連が認められた。・モデルの適合度は良好であった(Tucker-Lewis:0.94、Root Mean Square Error of Approximation[RMSEA]:0.034)。

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地域枠出身の研修医の臨床能力は低いのか

 医師の偏在を解消するために医学部で地域枠の導入が進んでいる。2021年度には入学者全体の18.7%が地域枠学生となっている。その一方で、入学試験での成績は一般枠入学者に比べ、地域枠入学者で低い傾向にあることが知られ、入学後の学習能力や臨床能力の差異について懸念が示されてきた。 これら懸念事項について福井 翔氏(杏林大学 総合医療学)、西崎 祐史氏(順天堂大学 医学教育研究室)、徳田 安春氏(群星沖縄臨床研修センター)らの研究チームは、日本全国の臨床研修医(postgraduate year[PGY]-1およびPGY-2)を対象に実施した基本的臨床能力評価試験(GM-ITE:General Medicine In-Training Examination)の結果と、研修教育環境に関するアンケート結果を用いて、地域枠卒業生のGM-ITEスコアの特徴を調査した。約6,000人の研修医の臨床能力研究からわかったこと 本研究は2020年度のGM-ITE試験に参加した全国593施設から6,097人を対象とした横断研究。内訳は地域枠卒業生(1,119人)と一般枠卒業生(4,978人)。 結果は以下のとおり。・ 地域枠卒業生と一般枠卒業生のGM-ITEスコアの平均値(標準偏差)は、それぞれ29.4(5.2)点、29.0(5.4)点と地域枠卒業生のほうがわずかに高かった。・学習時間や常時受け持ち入院患者数、病院の基本情報などの研修環境因子で調整したマルチレベル分析を実施した結果、地域枠卒業生とGM-ITEスコアとの間に有意な関連は認められなかった(β係数[95%信頼区間]:0.20[-0.16~0.56];p=0.27)。・地域枠出身者か否かと研修医の基本的臨床能力(GM-ITEスコア)については、臨床的および統計学的に有意な差がないと結論付けられる。 これらの結果を受けて、福井氏らの研究チームは、下記のように今回の結果を分析している。 本研究は、医師国家試験の合格率が地域枠卒業生では一般枠卒業生と同等、ないしはわずかに高いという過去の研究結果に加え、臨床研修医の基本的臨床能力についても一般枠出身者と同等であることを日本全国大規模データで初めて明らかにした。この結果は地域枠入学者の学習能力および、基本的臨床能力の懸念を軽減するものであり、今後の医師育成を検討する上で重要な基礎資料と成りうる。 地域枠出身者の医学部入学時の試験点数は低い傾向であるものの、卒後臨床研修における基本的臨床能力の評価指標であるGM-ITEの結果において、地域枠出身者のスコアが一般枠出身者と比較して差がなかったことについては、いくつかの要因が寄与していることが推測できる。たとえば、奨学金サポートが医学部在籍時の学習時間の確保に繋がっている可能性、地域医療現場で求められる総合的な知識やスキルを意欲的に習得している可能性、総合的な臨床能力の開発が臨床研修の到達目標およびGM-ITEの評価項目に合致している可能性などが挙げられる。また、大学入学時の地域枠選抜では、学科の試験結果のみならず、高校での評定、面接、小論文などが重視され評価されることが多いため、医師を志す上で大切なコミュニケーション能力、共感力、モチベーションなどの学力だけでは評価できない重要な資質が備わった人材が選定されている可能性がある。このような大学入学時の選抜方法の違いが医学部入学後や臨床研修における学習態度に好影響を与えている可能性も考えられる。 そして、本研究の課題として「あくまでGM-ITEスコアに基づいた臨床能力と地域枠出身者の関連を検討した研究であり、いくつかの限界点がある。たとえば、地域枠制度の詳細な内容(奨学金や診療科制限など)についてのデータは収集しておらず評価できていない点、医学部卒業時点での医学知識や臨床能力のベースラインを測定していないため、臨床能力の変化について着目した解析が実施できていない点」などを挙げている。

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摂食障害の薬物療法に関するWFSBPガイドライン2023

 摂食障害の薬物療法に関する世界生物学的精神医学会連合(WFSBP)のガイドライン2023では、診断および精神薬理学的進歩、エビデンスレベル、推奨度などの評価に関して、最新の推奨内容に更新されている。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのHubertus Himmerich氏らは、本ガイドラインの更新内容のレビューを行った。The World Journal of Biological Psychiatry誌オンライン版2023年4月24日号の報告。摂食障害の薬物療法に関するガイドラインで神経性過食症にトピラマート推奨 摂食障害のWFSBPタスクフォースは、関連文献をレビューし、エビデンスレベルおよび推奨度のランク付けを行った。 摂食障害の薬物療法に関するガイドラインの更新内容のレビューを行った主な結果は以下のとおり。・神経性やせ症に関しては、利用可能なエビデンスが体重増加に限定されており、精神病理に対するオランザピンの影響もあまり明確ではないことから、オランザピンに対する推奨度は限定的であった。 【神経性やせ症】オランザピン(エビデンスレベル:A、推奨度:2)・神経性過食症に関しては、現在のエビデンスにおいてfluoxetineおよびトピラマートが推奨された。 【神経性過食症】fluoxetine(エビデンスレベル:A、推奨度:1) 【神経性過食症】トピラマート(エビデンスレベル:A、推奨度:1)・過食性障害に関しては、リスデキサンフェタミンおよびトピラマートが推奨された。 【過食性障害】リスデキサンフェタミン(エビデンスレベル:A、推奨度:1) 【過食性障害】トピラマート(エビデンスレベル:A、推奨度:1)・回避・制限性食物摂取症(ARFID)、異食症、反芻症/反芻性障害に対する薬物療法のエビデンスは、非常に限られていた。・オランザピンやトピラマートは、これらのエビデンスがあるにもかかわらず、摂食障害での使用に関していずれの医薬品規制当局からも承認を取得していない。

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未治療の早期NSCLC、定位放射線+ニボルマブが有効/Lancet

 未治療の早期非小細胞肺がん(NSCLC)およびリンパ節転移陰性の孤立性肺実質再発NSCLC患者の治療において、定位放射線治療(SABR)+ニボルマブの併用(I-SABR)はSABR単独と比較して、4年無イベント生存率が有意に優れ、毒性は忍容可能であることが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJoe Y. Chang氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年7月18日号に掲載された。テキサス州3病院の無作為化第II相試験 本研究は、米国テキサス州の3つの病院で実施された非盲検無作為化第II相試験であり、2017年6月~2022年3月の期間に参加者の無作為化が行われた(Bristol-Myers SquibbとMDアンダーソンがんセンターの提携機関などの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、未治療の早期NSCLC(American Joint Committee on Cancer[AJCC]第8版の病期分類でStageI~II[N0M0])、または孤立性の肺実質再発NSCLC(根治手術または化学放射線療法の施行前にTanyNanyM0)で、全身状態が良好(ECOG PSスコア0~2)な患者であった。 被験者を、I-SABRまたはSABRを受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。I-SABR群では、ニボルマブ(480mg)を4週ごとに静脈内投与した。 主要評価項目は、4年無イベント生存率であった。イベントは、局所、領域、遠隔での再発、2次原発性肺がん、死亡とされた。PP集団とITT集団の双方で良好な結果 無作為化の対象となったのは156例(intention-to-treat[ITT]集団)で、割り付けた治療を実際に受けたのは141例(per-protocol[PP]集団)であった。PP集団では66例(年齢中央値72歳[四分位範囲[IQR]:66~75]、女性70%)がI-SABR群、75例(年齢中央値72歳[IQR:66~78]、女性55%)がSABR群だった。 フォローアップ期間中央値33ヵ月の時点でのPP集団における4年無イベント生存率は、SABR群が53%(95%信頼区間[CI]:42~67)であったのに対し、I-SABR群は77%(66~91)と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.38、95%CI:0.19~0.75、p=0.0056)。また、ITT集団でも同様の結果が示された(HR:0.42、95%CI:0.22~0.80、p=0.0080)。 SABR群では、Grade2の有害事象を3例(4%)に認めたのみで、Grade3以上の有害事象は発現しなかった。一方、I-SABR群では、10例(15%)でニボルマブに関連するGrade3の免疫関連有害事象(疲労2例、甲状腺機能亢進症1例など)を認めたが、Grade3の肺臓炎はなく、Grade4以上の毒性の発現もなかった。 著者は、「SABRへの免疫療法の追加により、治療歴のない早期NSCLCおよび孤立性肺実質再発NSCLC患者の転帰が改善することが示唆され、I-SABRはこれらの患者における治療選択肢となる可能性がある。本試験の結果は、現在進行中の第III相試験の重要な先例となるだろう」としている。

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動脈硬化疾患の1次予防に積極的な脂質管理の幅が広がった(解説:平山篤志氏)

 脂質低下療法にスタチンが広く用いられるが、筋肉痛などの副作用を訴える場合があり、スタチン不耐性と呼ばれ使用できない患者がいて、脂質への介入がなされていない場合がある。心血管疾患の既往のある患者の2次予防では、エゼチミブあるいはPCSK9阻害薬を使用してでも脂質低下が行われる。しかし、1次予防の動脈硬化疾患発症リスクの高い対象、たとえば糖尿病患者では脂質低下療法が行われていないことが多く、さらにスタチン不耐性では放置されていることが多い。 本論文は副作用でスタチンを服用できないスタチン不耐性患者を対象に、ベムペド酸(bempedoic acid)を投与したアウトカム試験、CLEAR試験のサブ解析である。CLEAR試験は心血管疾患の既往のある2次予防患者と既往のないハイリスクの1次予防患者を対象としており、ベムペド酸投与によりプラセボと比較してLDL-コレステロールと高感度CRPを有意に低下させ、4ポイントMACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、脳卒中、血行再建術)を有意に減少させることを示した。あらかじめ規定されていたサブ解析でも、2次予防だけでなく1次予防でもベムペド酸の有効性が示されていたが、今回は1次予防患者の詳細な結果が報告されている。 CLEAR試験にエントリーされたうちの心血管イベントの既往のない患者4,206例で、計算されたリスクスコアが高い、冠動脈の石灰化が著明、糖尿病がある、などの動脈硬化疾患のリスクが高い対象である。平均LDL-Cが142.2mg/dLで、糖尿病患者が3分の2近く含まれていた。LDL-Cと高感度CRPの低下とともに、心血管イベントの有意な抑制がベムペド酸投与により示された。また、その低下効果も本試験より大であった。この対象群ではNNTが42~44と十分な有効性があった。 実臨床で、どうしても1次予防になると患者教育も難しく、また、副作用の懸念があると脂質低下に逡巡するが、この結果はハイリスク症例、とくに糖尿病患者に積極的な介入が必要であることを痛感させる。ただ、残念ながら、わが国では動脈硬化疾患の発生リスクが低いこと、エビデンスがないことから、どうしても脂質低下療法に消極的になる傾向がある。健康寿命の重要性が叫ばれる今日、目の前にいる患者が10年、20年先に健康でいられるようにするには、今から積極的な介入が必要なのかもしれない。ベムペド酸はそのための1つの武器となりえるかもしれない。

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