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医師によるコロナのデマ情報、どう拡散された?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中、ソーシャルメディア(SNS)上で、ワクチン、治療法、マスクなどに関する誤った医療情報が広く拡散されたことが社会問題となった。このような誤情報の拡散には、一部の医師も関わっていたことが知られている。COVID-19の誤情報について、情報の種類や、利用されたオンラインプラットフォーム、誤情報を発信した医師の特徴を明らかにするために、米国・マサチューセッツ大学のSahana Sule氏らの研究チームが調査を行った。JAMA Network Open誌2023年8月15日号に掲載の報告。 本調査では、2021年1月1日~2022年5月1日の期間に米国在住の医師によって拡散されたCOVID-19の誤情報を特定するため、SNS(Twitter、Facebook、Instagram、Parler、YouTube)およびニュースソース(The New York Times、National Public Radio)の構造化検索を行った。誤情報を発信した医師の免許取得州と専門分野を特定し、フォロワー数やメッセージの質的内容分析を行い、記述統計を用いて定量化した。COVID-19の誤情報は、評価期間中の米国疾病予防管理センター(CDC)のガイダンスに裏付けされていない、またはそれに反する主張、CDCがカバーしていないトピックに関しては既存の科学的エビデンスに反する主張と定義した。 主な結果は以下のとおり。・評価期間中にCOVID-19の誤情報を伝えたことが確認された米国の医師は52人だった。うち50人は米国29州において医師免許を取得したことがあり、ほか2人は研究者だった。医師免許は1州以上で有効44人、無効3人、一時停止/取り消し4人、一部の州で停止/取り消し1人。専門は28分野にわたり、プライマリケアが最も多かった(18人、36%)。・16人(30.7%)が、America's Frontline Doctors※のような、誤った医療情報のプロパガンダを過去に行ったことがある団体に所属していた。・20人(38.5%)が5つ以上の異なるSNSに誤情報を投稿し、40人(76.9%)が5つ以上のオンラインプラットフォーム(ニュースなど)に登場した。最も利用されたSNSはTwitterで、37人(71.2%)が投稿していた。フォロワー数の中央値は6万7,400人(四分位範囲[IQR]:1万2,900~20万4,000人)。・誤情報は次の4カテゴリーに分類された:(1)ワクチンは安全ではない/効果がない、(2)マスクやソーシャルディスタンスはCOVID-19の感染リスクを減少させない、(3)臨床試験を終えていない/FDAの承認を受けていない薬剤を有効と主張する(イベルメクチン、ヒドロキシクロロキンなど)、(4)その他(国内外の政府や製薬企業に関連する陰謀論など)。・40人(76.9%)の医師は、4カテゴリーのうち1カテゴリー以上投稿していた。・カテゴリー別で投稿が多い順に、ワクチンに関する誤情報(42人、80.8%)、その他の誤情報(28人、53.8%)、薬剤に関する誤情報(27人、51.9%)。 本結果は、パンデミック中にさまざまな専門分野や地域の医師が誤情報の拡散という“インフォデミック”に加担したことを示唆している。研究チームが確認した限り、本研究はSNS上での医師によるCOVID-19誤情報の拡散に関する初めての研究だという。フェイクニュースを拡散することは、近年、医学の内外で利益を生む産業となっているという。医師による誤った情報の拡散に関連する潜在的な有害性の程度、これらの行動の動機、説明責任を向上するための法的・専門的手段を評価するために、さらなる研究が必要だと指摘している。※America's Frontline Doctorsは、遠隔医療サービスを実施し、主にCOVID-19に対するヒドロキシクロロキンとイベルメクチンを全国の患者に処方するために、1回の診察につき90ドルを請求し、少なくとも1,500万ドルの利益を得ている。このような団体は、パンデミックの公衆衛生上の危機、政治的分裂、社会的孤立という状況の中で、より声高に発言し、目立つようになっていた。

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各固形がんにおけるHER2低発現の割合は/Ann Oncol

 新たに定義されたカテゴリーであるHER2低発現(IHC 2+/ISH-またはIHC 1+)は、多くの固形がんで認められることが明らかになった。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのBurak Uzunparmak氏らによるAnnals of Oncology誌オンライン版2023年8月22日号掲載の報告より。 本研究では、進行または転移を有する固形がん患者4,701例を対象に、IHC法によるHER2発現状態を評価した。また乳房と胃/食道の原発および転移腫瘍のペアサンプルにおいて、IHC法およびISH法によるHER2発現状態を評価した。 主な結果は以下のとおり。・HER2発現(IHC 1~3+)は全体の半数(49.8%)で認められ、HER2低発現は多くのがん種で認められた:乳がん47.1%、胃/食道がん34.6%、唾液腺がん50.0%、肺がん46.9%、子宮内膜がん46.5%、尿路上皮がん46%、胆嚢がん45.5%。・乳がん629例、胃/食道がん25例における原発腫瘍と転移腫瘍のペアサンプルが評価された。・乳がん原発腫瘍でHER2陰性(IHC 0)の34.6%およびHER2低発現の38.1%が、転移腫瘍におけるHER2ステータスの不一致を示した。原発腫瘍でHER2陽性(IHC 3+および/またはISH+)の84.1%は転移腫瘍のHER2ステータスに変化がなかった。・サンプル数が少ないものの、胃/食道がん原発腫瘍でHER2陰性の95.2%は転移腫瘍のHER2ステータスに変化がなかった。・非乳がんおよび非胃/食道がんにおいて、HER2 IHC検査を受けた1,553例のNGSデータが解析され、ERBB2遺伝子増幅は117例(7.5%)で確認された。・ERBB2遺伝子増幅のない1,436例のうち、512例(35.7%)がIHC法でいずれかのレベルのHER2発現を示した。 著者らは、HER2低発現が腫瘍の種類を問わず頻繁に認められることが明らかになったとし、HER2低発現固形がん患者の多くがHER2標的治療から利益を得られる可能性があると結論付けた。

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LBBB+正常房室伝導の心不全、adaptive CRT vs.従来型CRT/Lancet

 左脚ブロックと正常房室伝導を有する心不全患者において、従来の心臓再同期療法(CRT)と比較し、左心室のみを刺激して自己の正常な右脚伝導と融合させる連続自動最適化(左心室同期刺激)のCRT(adaptive CRT)は、全死因死亡または非代償性心不全への治療介入の発生率を有意に低下させなかった。米国・クリーブランドクリニックのBruce L. Wilkoff氏らが、アジア、オーストラリア、欧州、北米の27ヵ国の227施設で実施された国際共同前向き単盲検無作為化試験「AdaptResponse試験」の結果を報告した。左脚ブロックと正常房室伝導を有する心不全患者において、adaptive CRTは従来の両室CRTより良好な結果をもたらす可能性があり行われた試験であったが、結果について著者は、「死亡率および心不全増悪はいずれのCRTでも低かったことから、本試験の患者集団は先行研究の患者集団よりCRTに対する反応が高いことが示唆される」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年8月24日号掲載の報告。全死因死亡または非代償性心不全に対する治療介入の複合アウトカムを評価 研究グループは、左室駆出率35%以下、至適薬物療法にもかかわらずNYHA心機能分類II~IVの心不全症状を有し、左脚ブロックでQRS時間が男性140ms以上、女性130ms以上、ベースラインのPR間隔が200ms以下、登録時に洞調律の成人患者を、adaptive CRT(左室単独同期刺激を与えるアルゴリズム)群、または従来の両室CRT群に、コンピュータによるブロック法を用いて1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 すべての患者は、CRTデバイスのプログラミングを受けたが、割り付けについては盲検化され、施設スタッフは盲検化されなかった。 主要アウトカムは、全死因死亡および非代償性心不全に対する治療介入の複合で、intention-to-treat集団で評価した。有害事象についてもintention-to-treat集団で収集、報告された。Adaptive CRTと従来型CRTで有意差なし 2014年8月5日~2019年1月31日の期間に、患者3,797例が登録され、このうち3,617例(95.3%)が無作為に割り付けられた(adaptive CRT群1,810例、従来型CRT群1,807例)。本試験は、2022年6月23日の第3回中間解析の結果が、事前に設定された無益性の境界を越えたため早期中止となった。 3,617例の患者背景は、平均(±SD)年齢64.9±11.0歳、女性1.568例(43.4%)、男性2,049例(56.6%)、追跡期間中央値は59.0ヵ月(四分位範囲[IQR]:45~72)であった。 主要アウトカムのイベントは、adaptive CRT群で1,810例中430例(Kaplan-Meier法による60ヵ月時点の発生率23.5%、95%信頼区間[CI]:21.3~25.5)、従来型CRT群で1,807例中470例(25.7%、23.5~27.8)に認められ、両群間に有意な差はなかった(ハザード比[HR]:0.89、95%CI:0.78~1.01、p=0.077)。 システム関連有害事象は、adaptive CRT群で1,810例中452例(25.0%)、従来型CRT群で1,807例中440例(24.3%)報告された。

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心原性ショックを伴う急性心筋梗塞、VA-ECMOの有用性は?/NEJM

 心原性ショックを伴う急性心筋梗塞で早期血行再建を行う患者において、体外式生命維持装置(ECLS)とも呼ばれる静脈動脈-体外式膜型人工肺(VA-ECMO)を用いた治療は、薬物治療のみと比較し30日全死因死亡リスクを低下せず、むしろ中等度または重度の出血や治療を要する虚血性末梢血管疾患のリスクを高めることが示された。ドイツ・ライプチヒ大学のHolger Thiele氏らが、ドイツとスロベニアで行われた医師主導の多施設共同無作為化非盲検試験「ECLS-SHOCK試験」の結果を報告した。死亡に対するECLSの有効性に関するエビデンスはないにもかかわらず、梗塞関連心原性ショックの治療におけるECLSの使用が増加していた。NEJM誌オンライン版2023年8月26日号掲載の報告。主要アウトカムは30日全死因死亡 研究グループは、心原性ショックを伴う急性心筋梗塞で、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)または冠動脈バイパス術(CABG)による早期の血行再建が予定されている18~80歳の患者を、ECLS+通常の薬物治療群(ECLS群)または通常の薬物治療のみの群(対照群)に、1対1の割合に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、30日全死因死亡、安全性評価項目は中等度または重度の出血(BARC出血基準のタイプ3~5)、脳卒中、外科的治療またはカテーテル治療を要する虚血性末梢血管疾患などで、intention-to-treat解析にて評価した。30日全死因死亡率はECLS群47.8% vs.対照群49.0%で有意差なし 2019年6月~2022年11月に、877例がスクリーニングを受け、420例が無作為に割り付けられた。このうち同意が得られなかった3例を除く417例(ECLS群209例、対照群208例)が解析対象となった。 30日全死因死亡は、ECLS群で209例中100例(47.8%)、対照群で208例中102例(49.0%)に認められ、相対リスクは0.98(95%信頼区間[CI]:0.80~1.19、p=0.81)で有意差は認められなかった。事前に規定したサブグループ解析および事後解析でも、同様の結果であった。 その他の副次アウトカムである機械的換気期間中央値は、ECLS群7日(四分位範囲[IQR]:4~12)、対照群5日(3~9)であった(群間差中央値:1日、95%CI:0~2)。 安全性については、中等度または重度の出血の発現率はECLS群23.4%、対照群9.6%(相対リスク:2.44、95%CI:1.50~3.95)、外科的治療またはカテーテル治療を要する虚血性末梢血管疾患はそれぞれ11.0%および3.8%(2.86、1.31~6.25)であった。

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第一三共のコロナワクチン、XBB.1.5対応を一変承認申請、2価は第III相で主要評価項目達成

 第一三共は9月6日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する同社が開発中の2価(起源株/オミクロン株BA.4-5)mRNAワクチン「DS-5670」について、追加免疫を対象とした国内での第III相臨床試験で、主要評価項目を達成したことを発表した。また、翌7日付のプレスリリースにて、DS-5670の12歳以上の追加免疫に対するオミクロン株XBB.1.5系統対応の1価mRNAワクチンについて、日本における製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったことも発表した。DS-5670については、「SARS-CoV-2による感染症の予防」の適応で、追加免疫を対象に起源株1価ワクチンとして2023年8月に製造販売承認を取得している。 DS-5670の2価ワクチンの第III相試験では、12歳以上の新型コロナワクチン初回免疫および追加免疫完了者を対象として、追加免疫の免疫原性および安全性が検討された。主要評価項目は、治験薬投与4週間後の血中抗SARS-CoV-2(オミクロン株BA.5)中和活性の幾何平均抗体価および免疫応答率だ。DS-5670の2価ワクチンは、国内承認済みのオミクロン株対応2価ワクチンを接種した対照群と比較して高い値を示し、統計学的に非劣性であることが検証された。安全性では臨床上の懸念は認められなかった。本試験の結果の詳細は、今後、学会や論文などを通じて公表される予定。 同社は9月7日に、DS-5670のXBB.1.5対応ワクチンの一変承認申請を行った。2023年9月開始の特例臨時接種に使用されるオミクロン株XBB.1系統を含有する1価ワクチンの年内供給開始を目指すとしている。DS-5670の研究開発は、日本医療研究開発機構(AMED)の「ワクチン開発推進事業」および厚生労働省の「ワクチン生産体制等緊急整備事業」の支援を受けて実施されている。

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Guardant360 CDx、HER2変異陽性NSCLCにおけるT‐DXdのコンパニオン診断として承認/ガーダントヘルスジャパン

 ガーダントヘルスジャパンは、がん化学療法後に増悪したHER2遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対するトラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ、以下 T-DXd)の適応判定補助を目的としたコンパニオン診断として、リキッドバイオプシー「Guardant360 CDx がん遺伝子パネル」(Guardant360 CDx)に対する製造販売承認事項一部変更承認を2023年8月28日付で厚生労働省から取得した。 HER2遺伝子変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)の70%を占める、非扁平上皮NSCLCの2〜4%に認められる。 Guardant360 CDxのT-DXdに対するコンパニオン診断の適応は、2022年8月に米国食品医薬品局によって承認されており、日本においても同様に承認されたもの。 Guardant360 CDxはコンパニオン診断薬として、ペムブロリズマブの適応となるMSI-High陽性固形がん患者、ニボルマブの適応となるMSI-High陽性直腸・結腸がん患者、ソトラシブの適応となるKRAS G12C陽性非小細胞肺がん患者にも承認されている。

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『響~小説家になる方法~』が面白い!【Dr. 中島の 新・徒然草】(493)

四百九十三の段 『響~小説家になる方法~』が面白い!ついに9月になったわけですが、まだまだ暑いですね。ある外来患者さんの説では、日本は四季ではなく二季になってしまったとのこと。一応、春と秋はあるんだけど、それぞれ1ヵ月くらいだそうです。彼によると、秋は10月だけ。11月から3月までが冬。春は4月だけで、5月からは夏に突入し、この暑さは9月まで続くのだとか。妙に納得させられる春夏秋冬ですね。さて、これまでも、この欄では私が読んで面白かった漫画を紹介してきました。ちょっと触れただけのものから、熱く語ったものまで。とくに力の入ってしまったものとしては『ゴルゴ13』『約束のネバーランド』『僕の妻は感情がない』などでしょうか。で、今回はさらに力を入れて、新たな漫画を語りたいと思います。それは柳本 光晴氏による『響~小説家になる方法~』全13巻です。単行本は2015年から2019年まで発行され、累計200万部以上が売れ、映画化もされたというヒット作ですが、私は知りませんでした。この漫画、簡単に言えば、女子高生が小説家になるというストーリー。主人公は鮎喰 響(あぐい ひびき)という15歳の女の子です。子供の頃から本が好きで、大量に読んでいるうちに自分でも書き始めました。そして書いた小説を新人賞に送ったら、あれよあれよと大成功するという話です。ただし、単なるサクセスストーリーではありません。まず響という主人公が無茶苦茶なキャラクターで、決して自分の信念を曲げません。だから行き詰っている先輩作家の作品に対しても容赦なく「つまらない」と言います。ただ、それは相手を貶すために言うのではなく、単に本心を言っているに過ぎません。第3巻から引用してみましょう。「あなたは昔、天才だったでしょ。…(略)…芥川をとった5作目までは。6作目以降はただ同じ話の繰り返しだった。デジャブしか感じない文章。何一つ面白くなかった。小説家の仕事はただ日本語を並べることじゃないわよね。人の心を動かすのがあなたの仕事でしょう」周囲がハラハラするほどの直球です。で、言われたほうが怒り出すのかと思ったら、そうでもありませんでした。「お前の言う通り、オレに才能があったのはもう昔だ。今でも覚えてる。『花枯れ国朽ち』で芥川をとった時のやり遂げたって感覚。あの時からオレにはもう、世の中に対して言いたいことが特にないんだよ」そして響の書いた小説についてこう述べます。「若い才能を目の当たりにすると、嫌でも現実が見えちまう…面白かった。世界を感動させるのは、お前に任せるよ」この漫画の面白いところは、いろいろあると思います。主人公の天才ぶり、次に何をしでかすのかわからない破天荒ぶり、文壇や出版社など知らない世界を覗き見ること。でも私が最も魅かれたのは、小説を書くことに対する響の姿勢です。彼女は、賞を取ったとか売れたとかにはまったく興味がありません。自分の書いたものに対して目の前にいる読者がどんな感想を持ったのか、単にそれだけが大切なのです。だから、読んだうえで面白くなかったという感想は甘んじて受け入れますが、読まずに何か言われるのには我慢することができません。おそらく、響は作者の柳本 光晴氏の分身なのでしょう。われわれ医師も、症例数とかメディアの評価とかよりも、1人1人の患者さんからどのような評価を受けるか、それを大切にすべきなのかもしれません。興味を持った先生方がおられたら、ぜひこの漫画を読んでみてください。最後に1句秋暑し 漫画に教わる 生き方を

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熱傷の処置【漫画でわかる創傷治療のコツ】第12回

第12回 熱傷の処置《解説》今回は、熱傷の処置について解説します。熱傷の病態は、熱による皮膚の損傷とそれに続いて生じる炎症反応です。広範囲であれば全身性の炎症反応による多臓器障害を引き起こします。外来で処置できるものか、形成外科や皮膚科への紹介が必要なものか、さらに入院が必要なものか判断するのが重要です。ここでは主に外来で診ることができる範囲の熱傷について紹介します。熱傷深度と熱傷面積について判断できるようになりましょう!<熱傷の深度について>熱傷の深度の見極めにはUSA分類を用いるのが一般的です(図1)。深度によって局所の治療方法が変わります。主に症状や肉眼所見で推定しますが、精度の高い検査としてレーザードプラ血流計測法やビデオマイクロスコープが用いられたり、補助的な診断法として針刺法や抜毛法が用いられたりすることがあります。一般外来で診ることができるのは浅逹性II度熱傷までと考え、それ以上の深度の熱傷は形成外科や皮膚科へ紹介しましょう。図1画像を拡大するI度熱傷(EB)組織障害が表皮に留まり真皮に及ばないもの。局所の発赤、熱感、疼痛が主症状。→治療はステロイド軟膏(ワセリンのみ、創傷被覆材)による2~3日の経過で改善する。II度熱傷:真皮まで及ぶものを2つに分類浅逹性(SDB)-組織損傷が真皮の浅層に留まるもの。水疱形成がみられる。真皮深層の血流が保たれており、水疱基底部の真皮色調がピンク色や赤色を呈する(水疱は無理に破かないで!)。-真皮内の知覚神経受容体が刺激されるため極めて疼痛が強い。-毛根、汗腺、脂腺などの皮膚付属器が多数温存される。→治療は保存的治療(軟膏治療、創傷被覆材)で2週間以内にほとんど瘢痕を残さず上皮化する。深達性(DDB)-組織損傷が真皮の深層に至るもの。真皮の血行が障害されるため、水疱基底部は白色を呈する。-知覚神経受容体も損傷されるため、知覚は減退し疼痛も少ない。-皮膚付属器は温存されないことが多い。→上皮化までに3週間以上かかる。治療後に肥厚性瘢痕を形成する。→生命予後に影響を与える広範囲熱傷や機能障害が懸念される手や顔には手術を選択する。III度熱傷(DB)熱による損傷が皮膚全層に及ぶ。創面皮膚は乾燥、灰白色〜黄褐色を呈する。知覚は消失する。→上皮化は生じないため、極小範囲以外では壊死組織の切除と植皮(手術療法)が必要となる。<熱傷面積(%TBSA;%total body surface area)について>手掌法、9の法則(小児は5の法則)、Lund and Browderの法則があります(図2、3)。外来で簡易的にできるのは手掌法と9の法則(5の法則)でしょう。図2画像を拡大する図3画像を拡大する15%を超える場合の受け入れは皮膚科や形成外科など、熱傷の全身管理が可能な施設に依頼します。と言っても15%は外来で診ることができるギリギリの範囲です。実際は数%でも十分広範囲なので、近くに形成外科や皮膚科がある場合は早めに相談しましょう!熱傷深度、熱傷面積は受傷時の診断は経過によって変化していくことが多いため、毎回再度診断します。感染兆候、深度や面積の進行がある場合は、外科的なデブリードマンが必要になることもあるため、形成外科や皮膚科に紹介しましょう。<重症度について(予後指数)>どの施設で加療を行うかの基準としてBIやArtsの重症度判定があります。搬送医療機関の選定や治療方法の選択に必要です。BI:III度熱傷の体表に占める割合とII度熱傷の体表に占める割合を1/2にした数値との和で、目安として体表の15%以上がII度以上の熱傷を被ったら補液を伴う入院管理が必要。Artsの重症度判定:重症熱傷(熱傷センターなど熱傷専門施設のある総合病院に入院)-30%以上のII度熱傷-10%以上もしくは顔面、手足などの特殊部位のIII度熱傷-気道熱傷、広範囲軟部損傷、骨折などの合併症を伴う電撃傷中等度熱傷(形成外科のある一般総合病院に入院)-15~30%のII度熱傷-10%以下のIII度熱傷(顔、手足を除く)軽症熱傷(形成外科を有する外来治療施設を受診)-15%以下のII度熱傷-2%以下のIII度熱傷そのほか、皮膚科や形成外科に紹介すべき熱傷気道熱傷がある場合:気管内挿管と呼吸管理が必要なため、場合によっては救急や耳鼻科、皮膚科、形成外科のある総合病院へ紹介。体幹四肢の減張切開が必要:形成外科など専門医へ紹介。深度や面積を評価しデブリードマンが必要または感染の疑いがある:形成外科、皮膚科へ紹介。参考1)波利井 清紀ほか監修. 形成外科治療手技全書III 創傷外科. 克誠堂出版;2015.2)医療情報科学研究所編. 病気が見えるvol.14皮膚科第1版. メディックメディア;2020.3)日本熱傷学会編. 熱傷診療ガイドライン(改訂第3版).2021.

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海外番組「セサミストリート」【子供をバイリンガルにさせようとして落ちる「落とし穴」とは?(言語障害)】Part 1

今回のキーワード敏感期(臨界期)発音(発声)語彙(象徴)文法(統語)ダブルリミテッドバイリンガル(セミリンガル)生活言語能力(BICS)学習言語能力(CALP)言語理解IQ(VCI)「セサミストリート」と言えば、世界各国で放送されている幼児向けの英語の教育番組でしたね。シンボルキャラクターであるビッグバードをはじめ、たくさんのキャラクターが登場して、英語での日常会話のやり取りを見せてくれます。このような幼児向けの教育番組を語学教材として自分の子供に積極的に見せたり、幼いうちから英語教室に通わせるなど、なるべく英語に触れる環境にしていれば、子供がバイリンガルになるのではないかと私たちはつい期待してしまいます。実際は、どうなのでしょうか?実は、子供をバイリンガルにさせようとすると、ある「落とし穴」に落ちてしまう恐れがあります。それはいったい何でしょうか? 今回は、「セサミストリート」をヒントに、言語能力の本質に迫り、その答えである言語障害を説明します。なんで中学校からでは遅すぎるの?私たち親世代(1990年生まれ以前)のほとんどは、英語教育を中学校から受けました。そして、英語の読み書きについてはある程度できるものの、聞く・話すについては大変な苦労をしてきました。なぜなのでしょうか?そのヒントは、言葉の学習の敏感期です。敏感期とは、ある能力を発達させるための刺激に敏感な時期です。その時期を過ぎると、刺激に敏感ではなくなるため、その能力の発達が難しくなります。臨界期とも呼ばれますが、臨界期はある時を境に反応が急に落ちていくニュアンスが強いのに対して、敏感期はある時から反応が徐々に落ちていくニュアンスがあります。ただ、ほぼ同じ意味として使われることもあります。この記事では、敏感期を使用します。言葉の学習には、発音、語彙、文法の大きく3つがあります。これは、発声、象徴、統語という3つの言葉の機能に重なります。この言葉の3要素の詳細については、関連記事1をご覧ください。ここで、スペイン在住の中国系移民のスペイン語の習得状況の調査研究1)をご紹介します。この研究によると、3歳以降に移住した中国系移民は発音がスペイン人とは違ってきます。8歳以降に移住した場合はスペイン人ほど言い回しがうまくなくなり、12歳以降では文法の間違いも出てきて流暢ではなくなる結果となりました。つまり、それぞれの敏感期は、発音3歳まで、語彙8歳まで、文法12歳までということがわかります。これは、私たちが英語の学習を中学校(12歳)から始めたことで、読み書きは何とかできるものの、LとRなどの英語の発音の聞き分けや言い分け、英会話の聞き取りや話すことがなかなかスムーズにできないことを説明できます。つまり、英語教育が中学校からでは遅すぎる原因は、流暢に話す敏感期を過ぎてしまっているからです。なお、それぞれの敏感期が始まる時期については、発音は耳が聞こえるようになる生後まもなく、語彙は初語が出てくる1歳、文法は複文が出てくる4歳としました。発音の敏感期が3歳で終わることを考えると、3、4歳ごろは、脳の注力が語彙をメインとしつつ、発音から文法へと移行している時期と考えることができて、納得がいきます。また、語彙の敏感期が8歳で終わることを考えると、このころに基礎的な語彙(生活言語)から読み書きを通した抽象的な語彙(学習言語)へと脳の機能が移行すると考えることができます。ちなみに、この敏感期の段階的な移行は、音感の獲得のそれぞれの臨界期(敏感期)にも重なります。この詳細については、関連記事2をご覧ください。次のページへ >>

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海外番組「セサミストリート」【子供をバイリンガルにさせようとして落ちる「落とし穴」とは?(言語障害)】Part 2

なんで幼児期からでは早すぎるの?先ほどの臨界期の違いの研究から、遅くとも3歳から英語教育を始めればバイリンガルになるのでしょうか? 残念ながら、なかなかそうはならないようです。なぜでしょうか?そのヒントは、言葉の学習の許容量です。そもそも敏感期に違いがある原因は、脳がその限られた資源(許容量)の中で、発音→語彙→文法という順番で効率的にエネルギーを注ぐためであるからと考えられています。つまり、言葉の学習において、脳にはもともと許容限度があるからこそ、敏感期が存在すると言い換えられます。敏感期が脳の発達の時期によって時間的に役割分担をしていると考えれば、脳の部位によって空間的に役割分担をしているのが側性化・局在化です。これらは、脳活動の効率化という点では同じです。脳の側性化・局在化にちなんで、敏感期は「脳の時限化」と名付けることができるでしょう。ちなみに、逆に発音の敏感期が3歳を超えてしばらく続いてしまう幼児は、一見発音の聞き分けの能力がまだ残っていて外国語の発音の学習にはメリットがあるように思われますが、その分その後の語彙や文法の学習が遅れることがわかっています1)。この許容量を踏まえて、ここから英語教育が幼児期からでは早すぎる理由を、限定的にやる場合と本格的にやる場合に分けて、それぞれ説明しましょう。(1)英語教育が限定的な場合これは、最初に触れたように、幼児期から「セサミストリート」のような語学番組を毎日見せて、英語教室に週に何回か通わせることです。これが限定的である理由は、私たちの子供のほとんどは、両親とも日本人で日本に住み、日本語の幼保育園に通っているからです。この状況は、日常的には日本語だけが飛び交っており、自然に英語が耳に入ってくることはほとんどありません。この場合、英語の刺激は、日本語に比べて、せいぜい1、2割でしょう。すると、どうなるでしょうか?簡単に言うと、英語の刺激が母語の日本語に負けてしまいます。私たちの脳は、できるだけサボって楽をするように最適化されています。英語教材や英語教室などで英語の発音を一時的に覚えてはいても、日常的に使う必要に迫られることはなく、困らないので、記憶の学習があまり進まないのです。実際に、日本の大学生への調査研究1)において、週4時間以下の英語の学習を幼少期(3歳)から小学校までに開始したグループと、中学校(12歳)から開始したグループの発音の聞き分けテストでは、わずかな違いしかないことが判明しています。つまり、幼少期の英語教育が限定的な場合、発音を聞き分けられる効果も限定的になることがわかります。言葉の学習を胃の栄養吸収に例えるなら、幼少期の消化酵素の量(言語能力)には限界があるため、メインディッシュ(日本語)の吸収に専念して、添え物(英語)まで吸収が回らなくなってしまうというわけです。時間とお金と労力かけたわりに効果があまり期待できないことから、限定的な英語教育はやるにしても、英語に興味を持たせたり親子で楽しむためと割り切った方が良いことがわかります。(2)英語教育が本格的な場合これは、「セサミストリート」を毎日見せるだけでなく、親が子供と英語でも会話して、幼児期からインターナショナルプレスクールに通わせることです。もはや英語圏に住んでいるのと同じ状況です。この場合、英語の刺激は、日本語と同等になるでしょう。すると、どうなるでしょうか? 2つの可能性があります。1つは、期待通り、バイリンガルになります。まさに、帰国子女の人たちが日本語も英語も流暢に話す憧れのイメージです。ただし、実はこれはもともとその子の言語能力が高い場合に限られます。先ほどの胃の栄養吸収に例えるなら、メインディッシュが2つ(日本語と英語の両方)でも、消化酵素の量が多い(もともとの言語能力が高い)ため、2つとも消化吸収できてしまうことです。もう1つは、不本意ながら、ダブルリミテッドバイリンガルになります。ダブルリミテッドとは、二重に制限されているという意味です。両言語とも、日常生活で使う具体的で実用的な言葉(生活言語)は使いこなせるのですが、抽象的で概念的な言葉(学習言語)は使いこなせなくなります。つまり、生活言語能力(BICS)は習得しているのですが、学習言語能力(CALP)は習得していない状態です。そのため、読解力や作文力が低く、ものごとの仕組みやルールをよく理解できず、将来的に言葉を使いこなす仕事に就くことが難しくなります。以前は、母語も第2言語も中途半端(セミ)な状態から、セミリンガルと呼ばれていました。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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海外番組「セサミストリート」【子供をバイリンガルにさせようとして落ちる「落とし穴」とは?(言語障害)】Part 3

なんでダブルリミテッドバイリンガルになるの?それでは、なぜダブルリミテッドバイリンガルになるのでしょうか? 現時点で、ダブルリミテッドバイリンガルに関する個別のケースは、国際結婚で生まれた子供でよく見かけますが、大規模な調査研究は見当たりません。ただ、語学力を含む言語能力の本質を捉えると、やはりその原因は、もともとその子の言語能力が高くない場合です。この言語能力を、知能検査(WPPSI-IIIやWISC-V)における言語理解IQ(VCI)から、2つの場合に分けて考えてみましょう。(1)言語能力がとても低い場合1つ目は、言語能力がとても低い場合です。この目安は、言語理解IQが85以下です。このような子供は、統計上約15%います。彼らのほとんどが日本語だけの学習でも問題を抱えています。この状況で、英語の学習を掛け持ちすると、ほぼ確実にダブルリミテッドバイリンガルになるのは容易に想像できるでしょう。先ほどの胃の栄養吸収に例えるなら、消化酵素の量が少ない(もともとの言語能力が低い)ため、メインディッシュが1つ(日本語だけ)でも消化不良を起こしているのに、メインディッシュが2つ(日本語と英語の両方)になることで、2つともますます吸収できなくなってしまうというわけです。なお、もともと全般的な知的能力は保たれている(トータルIQ[FSIQ]は低くない)のに、母語の語彙が少なく文法がおかしい(言語理解IQが極端に低い)場合は、言語障害(言語症)と診断します。また、もともと母語の滑舌が悪い(発音がうまくできない)場合は、語音障害(語音症)と診断します。そして、これらには言語療法のトレーニングが行われます。このように、言語能力には個人差があることも受け止める必要があります。(2)言語能力が高くはない場合2つ目は、言語能力が高くはない場合です。この目安は、言語理解IQが85~100です。このような子供は、統計上約35%います。彼らは、一見、日本語の学習に問題はなさそうです。しかし、言語能力としては平均以下ですので、余力があるとは言えません。この状況で、英語の学習を掛け持ちすると、単純に発音・語彙・文法が2倍になるわけですから、生活言語能力を習得する時期が遅れます。その分、学習言語能力が始まる時期が遅れ、十分な学習言語が習得できなくなる恐れがあることも想像できるでしょう。さらにこの状況は、ダブルリミテッドバイリンガルだけでなく、学習障害も引き起こすリスクがあります。これは、発音の敏感期が遅れて終わる子供はその分、その後の語彙の学習が遅れるという、先ほど紹介した現象に通じます。ちなみに、この言葉の学習の量(生活言語能力)と質(学習言語能力)のトレードオフの関係は、絶対音感を身に付けると相対音感が損なわれるという音感のトレードオフにも通じます。この詳細については、関連記事2をご覧ください。先ほどの胃の栄養吸収に例えるなら、消化酵素の量が多くない(もともとの言語能力が高くない)ため、メインディッシュが1つ(日本語だけ)でようやく消化しているのに、メインディッシュが2つ(日本語と英語の両方)になることで、2つとも吸収できなくなってしまうというわけです。私たちは、「子供は語学の天才である」などと根拠のない語学ビジネスの宣伝に振り回されず、この事実をもっと深刻に受け止める必要があります。もちろん、子供のためによかれと思ってという親心や憧れはよくわかります。また、国際結婚で生まれた子供の言語環境がどうしても多言語になってしまう状況は致し方ないです。しかし、子供のもともとの言語能力を見極められない幼少期から、モノリンガルの日本人の両親が日本国内で英語教育をあえて本格的にやろうとするのは、時間とお金と労力がかかるばかりでなく、子供をダブルリミテッドバイリンガルという言語障害にさせてしまう危うさもあるというわけです。これが、子供をバイリンガルにさせようとして落ちる「落とし穴」なのです。1)英語学習は早いほど良いのかP71、P34、P140:バトラー後藤裕子、岩波新書、2015<< 前のページへ■関連記事NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(後編)【言葉は噂をするために生まれたの!?(統語機能)】NHK「おかあさんといっしょ」(後編)【絶対音感よりも○○!?才能よりも○○!?(幼児教育)】Part 1

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第61回 カンピロバクター流しそうめん

流しそうめんで食中毒Unsplashより使用石川県津幡町の山中にある飲食店「大滝観光流しそうめん」で、合計93人が食中毒になるという異例のニュースが話題になりました。原因菌はカンピロバクターです。カンピロバクターは低温に強く、冷蔵庫内でも長期間生存が可能です。十分に加熱調理しないと食中毒が起こりえるため、一時期流行した「低温調理」は、食中毒リスクを顔面で受け止める行為になります。さて、流しそうめんでなぜカンピロバクターの食中毒になるのか。そうめんに何か練り込まれていたのか、つゆが汚染されていたのか。いや、はたまた流れてくる水そのものか。今回は、流していた水が原因とされています。通常、上から流す水というのは水質検査後のきれいな水を使うべきですが、アウトドアで流しそうめんイベントを開催する場合、清流をそのまま使ってしまうことがあるそうです。清流と書くと、めちゃきれいな水じゃん、と思ってしまいますが、そうでもないようです。川の水は汚い?アウトドアが趣味の医師に、この件について聞いてみると、「沢の水は飲まないほうがいいっす」と断言していました。「動物の糞から出た微生物が存在する、『うんこ水』ですよ」とのことでした。そこまで言うか。私はインドアな人間なので、このリスクは比較的低いのですが、もしキャンプなどで沢の水を飲む場合、浄水器を使用、あるいは加熱処理をして水を浄化するといったひと手間が、カンピロバクターなどの食中毒のリスクを下げます。そのほか、井戸水、貯水槽水、湧き水にも食中毒のリスクがあります。今回提供された流しそうめんでは、流している水の源泉がかなり汚染されていたようです。年1回の水質検査が台風で行えず、そのまま流しそうめんの営業シーズンに突入してしまったとのこと。もちろん鶏肉にも注意教科書的な鶏肉にも、もちろん注意が必要です。農場の出荷段階では、生きた鶏のうち30%がカンピロバクターに汚染されているそうです。私たちは普段の食事において、平均して5回に1回、鶏肉を食べています。通常調理の場合、カンピロバクター感染率は家庭で0.2%程度ですが、生食や鶏レバーとなると、それが約2%となり、リスクは約10倍です。目の前の患者さんにどのような病態が起こっているのか、症状や検査データなどから筋道を立てることを「臨床推論」と言いますが、それよりもマクロな視点で流しそうめん食中毒の原因を探す「臨床推理」は、名探偵のようで興味深いですね。『ドクター・ハウス』を思い出しました。

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リアルワールドにおける統合失調症ケアの実際と改善ポイント

 統合失調症患者の臨床転帰を改善するためには、日常診療における治療パターンを理解することが重要なステップとなる。フランス・エクス=マルセイユ大学のGuillaume Fond氏らは、リアルワールドにおける抗精神病薬で治療されている統合失調症患者の長期マネジメントを明らかにするため、本研究を実施した。その結果、統合失調症患者に対するケアにおいて、今後優先すべき事項が浮き彫りとなった。とくに、50歳以上の患者に対する代謝系疾患の予防や18~34歳の患者に対する自殺予防など、特定の集団にさらに焦点を当てる必要がある。また、抗精神病薬の治療継続率は依然として低く、精神科入院率も高いままであることを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年7月21日号の報告。 2012~17年に3回以上の抗精神病薬処方を行った成人統合失調症患者を国民健康データシステムより抽出した。主要評価項目は、実際の処方パターン、患者の特徴、医療利用、併存疾患、死亡率とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者45万6,003例のうち、経口抗精神病薬が96%、第1世代抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)が17.5%、第2世代抗精神病薬LAIが16.1%に処方されていた。・治療開始24ヵ月後の治療継続率は、経口抗精神病薬で23.9%、第1世代抗精神病薬LAIで11.5%、第2世代抗精神病薬LAIで20.8%であった。・治療継続期間の中央値は、経口抗精神病薬で5.0ヵ月、第1世代抗精神病薬LAIで3.3ヵ月、第2世代抗精神病薬LAIで6.1ヵ月であった。・全体として、抗不安薬併用が62.1%、抗うつ薬併用が45.7%、抗けいれん薬併用が28.5%でみられ、これらの薬剤の併用は、女性および50歳以上の患者でより多かった。・脂質異常症は最も頻度の高い代謝系併存疾患であったが(16.2%)、脂質モニタリングは不十分であった。・代謝系併存疾患は、女性でより頻繁に認められた。・標準化患者死亡率は、2013~15年の間は高いままであり(フランス一般集団の3.3~3.7倍)、平均余命は、男性で17年、女性で8年短縮されていた。・主な死亡原因は、がん(20.2%)と心血管疾患(17.2%)であり、18~34歳の死亡の25.4%は自殺であった。

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医師のSNS利用、診療に関する情報収集に使っているのは?/1,000人アンケート

 パソコンやスマートフォンの電源を入れて初めに起動するアプリについて、最近では、メールではなくFacebookやX(旧:Twitter)などのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)からという人も多い。私たちの生活に浸透したSNSについて、医師はどのSNSツールを、どのように使っているのか、会員医師1,000人にアンケート調査を行った。アンケートは、8月11日にCareNet.comのWEBアンケートシステムで全年代、全診療科に対して実施した。また、2019年にも同様のアンケートを実施していることから、今回の結果と比較した。医師のSNS利用、Threads、TikTokは不人気? 質問1で会員医師に「SNSの利用状況」を6つの代表的なツール別 (Facebook、X、Instagram、YouTube、Threads、TikTok)に聞いたところ、「書き込み/投稿している」SNSツールはX(154人)、Facebook(130人)、Instagram(118人)の順で多かった。また、「閲覧のみ」のSNSツールはYouTube(706人)、X(341人)、Facebook(333人)の順で多かった。そのほか「利用している」の「書き込み/投稿」「閲覧」を合わせたものではYouTube、X、Facebookの順で多かった。SNSツールでTikTok、新たに登場したThreadsは約90%の会員医師が利用していなかった。 質問2で「診療に関する情報を集める目的で使っているSNS」について会員医師に聞いたところ(複数回答)、利用していない(550人)が一番多かったが、使用されているSNSツールではYouTube(272人)が一番多く、次にX(201人)、Facebook(107人)と続いた。 質問3で「診療に関する情報を集める目的で最も使っているSNS」を会員医師に聞いたところ(単回答)、「利用していない」(575人)が一番多かったが、使用されているSNSツールではYouTube(186人)が一番多く、次にX(152人)、Facebook(56人)と続いた。 年代別の調査について20・30代の会員医師(n=335)では、「書き込み/投稿している」SNSツールはX(85人)、Instagram(73人)、Facebook(43人)の順で多かった。また、「閲覧のみ」のSNSツールはYouTube(258人)、X(158人)、Facebook(154人)の順で多かった。 40代の会員医師(n=209)では、「書き込み/投稿している」SNSツールはX(25人)、YouTube(25人)と同率で、次にFacebook(24人)の順で多かった。また、「閲覧のみ」のSNSツールはYouTube(145人)、Instagram(68人)、X(56人)の順で多かった。 50代の会員医師(n=240)では、「書き込み/投稿している」SNSツールはFacebook(25人)、YouTube(21人)、X(19人)の順で多かった。また、「閲覧のみ」のSNSツールはYouTube(171人)、Facebook(67人)、X(66人)の順で多かった。 60代以上の会員医師(n=216)では、「書き込み/投稿している」SNSツールはFacebook(26人)、YouTube(23人)、Instagram(15人)の順で多かった。また、「閲覧のみ」のSNSツールはYouTube(132人)、Facebook(46人)、X(44人)の順で多かった。若い医師のSNS利用、Instagramが多い 前回2019年の調査との比較で4つのSNSツール(Facebook、X、Instagram、YouTube)の利用状況では、「書き込み/投稿している」SNSツールで今回伸びていたのはX、Instagram、YouTubeでの3ツールで、「閲覧のみ」ではFacebook、X、Instagram の3ツールで伸びていた。「利用していない」は全部のSNSツールで減少していた。 年齢別でみると、20・30代の会員医師では「書き込み/投稿している」SNSツールでXとInstagramが約2倍近く伸びていた。40代の会員医師ではほぼ前回と同じようなSNS利用状況だった。50代の会員医師では「書き込み/投稿している」SNSツールでXが約2倍、YouTubeが約8倍の伸びをみせていた。60代以上の会員医師では「書き込み/投稿している」SNSツールでInstagramが約2倍近い伸びをみせていた。 「診療で最も使用するSNS」では、前回に比べInstagramが大きく伸びていた(2.0%→26.0%)。また、「使用しない」はほとんど変化がなかった(57.0%→57.5%)。 最後に自由記入で会員医師に「よく使うSNSとその理由、診療で役立つアカウント、注目している医療者などのSNSに関するエピソード」について聞いたところ、以下のような意見があった。【SNSに肯定的な会員医師のご意見】・SNSでは簡潔にまとめられていることが多く、保存しやすい〔整形外科〕・コロナ後遺症、補聴器などで役立つコンテンツが多い〔耳鼻咽喉科〕・SNS上の海外医師の外科手術動画は勉強になる〔脳神経外科〕・患者の考え方や理解に役立つ〔小児科〕【SNSに否定的な会員医師のご意見】・信頼性に不安があるので、SNSからは専門的な情報は得ていない〔内科〕・SNSそのものを利用していない〔血液内科〕・SNSの発信は誤った情報が多い〔臨床研修医〕・SNSに興味がない〔眼科〕【会員医師が参考しているSNSサイトやアカウント】・YouTubeで平島 修氏の「フィジカルクラブちゃんねる」をみている〔脳神経外科〕・YouTubeは専門領域でも勉強になる配信をされていることが多く、「心電図マイスターチャンネル」はよく利用している〔循環器内科〕・ヒロ医師ブログ初心者(Xアカウント:@doctor_hhm)をフォロー〔消化器内科〕・YouTubeの「メンズNs」は患者さんに説明するのに平易な言葉で解説してくれるのでみている〔膠原病・リウマチ科〕アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。SNSの利用状況

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ER+/HER2-乳がん、Ki-67と21遺伝子再発スコアの関連

 エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)乳がんにおいて、21遺伝子再発スコア(RS)高値とKi-67高値はどちらも予後不良因子であるが、これらのバイオマーカーによる違いが指摘されている。今回、韓国・Hallym UniversityのJanghee Lee氏らは、ER+/HER2-乳がん患者におけるKi-67とRSとの関連、Ki-67と無再発生存期間(RFS)との関連を調べた。その結果、Ki-67とRSに中等度の相関が観察され、RSの低い患者においてKi-67高発現がsecondary endocrine resistanceリスク上昇と関連していた。JAMA Network Open誌2023年8月30日号に掲載。化学療法なしの低リスクER+/HER2-乳がん患者でKi-67高値が再発と関連 本コホート研究は、韓国の2つの病院で2010年3月~2020年12月に21遺伝子RS検査を受け、ER+/HER2-乳がんの治療を受けた女性を対象とした。Ki-67とRFSとの関連はCox比例ハザード回帰モデル、Ki-67とsecondary endocrine resistanceとの関連はバイナリロジスティック回帰モデルを用いて検討した。Ki-67は20%以上を高発現、RS 25以下を低リスクとした。secondary endocrine resistanceは、術後内分泌療法開始2年以降の再発および5年の術後内分泌療法終了後1年以内の再発と定義した。 ER+/HER2-乳がん患者におけるKi-67とRSとの関連を調べた主な結果は以下のとおり。・対象患者2,295例(平均年齢:49.8歳、標準偏差:9.3歳)のうち、1,948例(84.9%)が低リスク、1,425例(62.1%)がKi-67低発現であった。追跡期間中央値は40ヵ月(範囲:0~140ヵ月)。・RSとKi-67は中等度の相関を示した(R=0.455、p<0.001)。・Ki-67低発現患者のうち94.1%は低リスクだったが、Ki-67高発現患者では低リスクは69.8%だった。・低リスク患者では、Ki-67によってRFSが有意に異なっていた(低値98.5% vs.高値96.5%、p=0.002)。・化学療法なしの低リスク患者1,807例では、Ki-67高値が再発と独立して関連していた(ハザード比:2.51、95%信頼区間[CI]:1.27~4.96、p=0.008)。・3年以降の再発率はKi-67によって有意に差があった(低値98.7% vs.高値95.7%、p=0.003)が、3年以内の再発率は変わらなかった(低値99.3% vs.高値99.3%、p=0.90)。・Ki-67は、化学療法なしの低リスク患者におけるsecondary endocrine resistanceと関連していた(オッズ比:2.49、95%CI:1.13~5.50、p=0.02)。

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心筋梗塞による心原性ショック、VA-ECMO vs.薬剤単独/Lancet

 梗塞関連心原性ショックの患者において、静脈動脈-体外式膜型人工肺(Venoarterial extracorporeal membrane oxygenation:VA-ECMO)は薬物療法単独と比較して30日死亡率が低下せず、重大出血および血管合併症を増加することが、ドイツ・Institut fur HerzinfarktforschungのUwe Zeymer氏らによるメタ解析の結果で示された。VA-ECMOをめぐっては、無作為化試験による確たるエビデンスが不足しているにもかかわらず、心原性ショックの患者への使用が増加傾向にある。先行研究の3試験では、生存ベネフィットの検出力が不十分であった。今回示されたメタ解析の結果を踏まえて著者は、「梗塞関連心原性ショックの患者にVA-ECMOを適応するのか、慎重に検討すべきであることが確認された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年8月25日号掲載の報告。VA-ECMOの早期ルーチン使用vs.至適薬物療法単独をメタ解析で評価 研究グループは、MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Embaseおよび臨床試験レジストリを2023年6月12日まで検索し、梗塞関連心原性ショックの患者に対し、VA-ECMOの早期ルーチン使用と、至適薬物療法単独を比較した無作為化試験を特定した。そのうち、入院無作為化時点から30日時点の全死因死亡の報告があり、試験責任医師らの協力(患者個人データの提出など)が得られた試験を解析対象とした。 主要アウトカムのオッズ比(OR)は、ロジスティック回帰モデルを用いてプール化した。VA-ECMO群の重大出血は2.44倍、末梢虚血性血管合併症は3.53倍に 4試験(被験者数567例、VA-ECMO群284例vs.対照群283例)が特定され、解析を行った。被験者の年齢中央値は64歳(四分位範囲[IQR]:57~71)、男性81%(458/566例)、約3分の2(68%[364/538例])がST上昇型心筋梗塞で、約3分の2(67%[381/567例]が、無作為化前に心肺機能蘇生を受けていた。 全体として、VA-ECMOの早期使用で、30日死亡率の有意な低下は認められなかった(OR:0.93、95%信頼区間[CI]:0.66~1.29)。合併症発生率は、VA-ECMO群が対照群に比べ、重大出血(OR:2.44、95%CI:1.55~3.84)、末梢虚血性血管合併症(3.53、1.70~7.34)について高率だった。 事前に規定したサブグループ解析の結果も一貫しており、VA-ECMOに関するベネフィットは何も示されなかった(交互作用のp≧0.079)。

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OCTガイド下PCI、標的血管不全を低減せず/NEJM

 複雑な冠動脈病変などに対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)について、光干渉断層撮影(OCT)ガイド下の施行は血管造影ガイド下の施行と比較し、最小ステント面積は大きかったが、2年時点での標的血管不全が発生した患者の割合については両群間で差はみられなかった。米国・Cardiovascular Research FoundationのZiad A Ali氏らが、国際多施設共同にて2,487例を対象に行った前向き無作為化単盲検試験の結果を報告した。OCTガイド下でPCIを施行した後の臨床アウトカムに関するデータは、血管造影ガイド下のPCIと比べて限定的だった。NEJM誌オンライン版2023年8月27日号の報告。18ヵ国、80ヵ所の医療機関で無作為化試験 研究グループは、18ヵ国80ヵ所の医療機関を通じて、薬物治療中の糖尿病患者または複雑な冠動脈病変を有する患者を無作為に2群に割り付け、OCTガイド下PCIまたは血管造影ガイド下PCIを実施した。血管造影ガイド下PCIに割り付けられた患者にも、最終的には盲検下でOCTが行われた。 主要有効性エンドポイントは2つで、OCTで評価したPCI後の最小ステント面積と、2年後の標的血管不全(心疾患死亡、標的血管心筋梗塞、または虚血による標的血管血行再建術の複合イベントで定義)だった。安全性についても評価した。2年以内の標的血管不全の発生、OCT群7.4%、血管造影群8.2% 被験者数は計2,487例で、OCTガイド下PCI(OCT群)1,233例、血管造影ガイド下PCI(血管造影群)1,254例だった。 PCI後の最小ステント面積は、OCT群5.72±2.04mm2、血管造影群5.36±1.87mm2(平均群間差:0.36mm2、95%信頼区間[CI]:0.21~0.51、p<0.001)でOCT群が有意に大きかった。 2年以内の標的血管不全の発生は、OCT群88例、血管造影群99例で有意差はなかった(Kaplan-Meier法による推定値はそれぞれ7.4%および8.2%、ハザード比[HR]:0.90、95%CI:0.67~1.19、p=0.45)。 OCT関連有害事象は、OCT群1例、血管造影群2例で発生した。2年以内のステント血栓症は、OCT群6例(0.5%)、血管造影群17例(1.4%)で発生した。

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喫煙者/喫煙既往歴者でスパイロメトリー測定値がCOPD基準を満たさないTEPS群の中で呼吸器症状有群(FEV1/FVC<0.7かつCAT≧10)は臨床の視点からCOPD重症化予備群として対応すべき?―(解説:島田俊夫氏)

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)と喫煙に関する研究は、これまで数多くの研究が行われている。しかしながら、スパイロメトリー測定値がCOPDの定義を満たさない対象者に関する研究はほとんどなく、治療法も確立されていない1,2)。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のWilliam McKleroy氏らによる多施設共同長期観察試験(SPIROMICS II試験)の結果が、JAMA誌2023年8月1日号に掲載された。 対象者はSPIROMICS I試験登録後5~7年に、対面受診を1回実施。呼吸器症状はCOPD Assessment Test(CAT、スコア範囲:0~40重症ほど高値)で評価した。TEPS(tobacco exposure and preserved spirometry)群は、これまでCOPD治験対象から除外されており、治療のエビデンスは確立されていない。本研究はTEPS群の自然経過に照準を絞った研究として行われた。TEPS群のスパイロメトリー測定は気管支拡張薬投与後のFEV1/FVC>0.70でCATスコア10≧を有症状群、10<を無症状群の2群に分類した。 研究対象は1,397例で内訳は226例が有症状TEPS群(平均年齢60.1歳、女性59%)、269例が無症状TEPS群(平均年齢63.1歳、女性50%)、459例が有症状COPD(平均年齢65.2歳、女性47%)、279例が無症状COPD(平均年齢67.8歳)、164例が非喫煙対照群から構成。呼吸器症状の増悪は4ヵ月ごとに電話で自己申告。 主要アウトカム:FEV1の低下。副次アウトカム:COPD発症、呼吸器症状増悪頻度、CT検査での気道壁肥厚、気腫肺。 追跡期間中央値5.76年でTEPS両群にCOPDの発生を認めたが、両群間に差はなかった。TEPS群は非喫煙対照群よりも有意にCOPDの発生率が高かった。一方でTEPS有症状群はTEPS無症状群に比べ、症状増悪率は有意に高かった(0.23 vs.0.08件/人・年、率比:2.38、95%CI:1.71~3.31[p<0.001])。論文へのコメント TEPS両群に対して禁煙は最優先で行うべき治療である。喫煙者でスパイロメトリー正常範囲の対象者は通常は治験対象から除外されていたために治療法は確立されていない。COPDの診断基準を満たさないTEPS群を症状有群と無群に分け、経時的に追跡の結果、TEPS各群共にCOPD発生の増加を認めたが、有/無症状群の比較ではCOPD発生率に差はなかった。しかし、呼吸器症状の増悪は有症状群が無症状群に比べ顕著に症状が増悪した。臨床の視点から症状増悪は軽視できず、有症状TEPS群はCOPD重症化予備群として治療を行い、適正治療確立は喫緊の課題である。 COPD予備群に対する気管支拡張剤、抗コリン剤、ステロイド剤らの使用法は確立していない。近頃、注目を集めているPRISm(preserved ratio impaired spirometry)はFEV1/FVC≧0.7かつ%FEV1(FEV1/FEV1予測値)<80%を満たす予後不良の病態である3,4)。この病態も含めてCOPD近縁疾患相互の絡み解明が必要と考える。

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鼻血(鼻出血)【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第6回

皆さんは鼻血が出たことはありますか? 60%程度の人が人生で一度は鼻血を経験するそうです1)。私は幼少期にしょっちゅう鼻血を出していましたので、3人に1人は鼻血を出したことがないというのは驚きでした。鼻血は、鼻をいじったり鼻をかんだりしたときの外傷でよく生じますが、何もしなくても出てくることがあります。私が鼻血を出したときは、親か先生から「鼻の根元を押さえ、天を仰ぎ、首の根本を押さえる」という指導を受けました。鼻血が後咽頭に流れ込み、口に血液の味が広がったのを今でも覚えています…。さて、この処置は現在では不適切とみなされています。なぜ、このような止め方が広まったのかは調べてみてもわかりませんでした。ご存じの方がいらっしゃったらぜひ教えてください。鼻血はいつ何時遭遇してもおかしくありません。たとえば「診療所の待合室でいきなり鼻血が出た患者に対処を求められる」などもあり得ます。私は内科の診療所で鼻血を診たことはありませんが、南のとある島の病院で経験した症例をもとに対処法を紹介します。ちなみに、耳鼻科を受診するには車で2時間の距離にある総合病院に行かなくてはならない施設でした。<症例>32歳男性受診2時間前にとくに誘因なく左の鼻から血が流れてきた。ティッシュを詰めたところ出血が止まったが、ティッシュを取り除いたら再出血した。それを3回繰り返したため受診。バイタル:特記事項なしティッシュを左鼻に詰めている。上記のような患者が受診した場合の対処法を順を追って確認しましょう。(1)ABC(気道、呼吸、循環)の確認鼻血で窒息やショック? と思う人もいらっしゃるかもしれません。確かに一般的な鼻血であれば窒息やショックになることはありませんが、出血源が動静脈奇形や動脈瘤である場合、大量出血により気道や循環が危機にさらされることがあり得ます2,3)。私も動静脈奇形で大量出血した一例を経験したことがありますが、明らかに出血量や勢いが通常の鼻血とは違いました。たとえるなら、通常の鼻血が「タラタラ」であれば、ショックや窒息を起こす鼻血は鼻から滝のように出血し、数分で膿盆からあふれるほどです。この場合、気道確保や特殊な処置が必要になるのですが、今回のテーマは一般的な鼻血についてですので割愛します。ただし、鼻血でも気道と循環の異常を来しうるということは知っておいてください。今回の症例は気道や循環に問題はありませんでした。(2)出血部位の特定出血部位が左か右か、前か後かを判断しましょう。鼻血の80~90%はキーゼルバッハ部位という血流が豊富な部位で生じます(図1)4)。キーゼルバッハ部位は、外鼻孔に指を入れた少し先の部分であり、内側(鼻中隔側)で触知することができる硬い隆起です。距離的にティッシュを詰めることは止血につながると思われますが、結局止血したとしてもティッシュだと乾燥してしまい、除去するときに固まった血液(かさぶた)がはがれて再出血する印象があるのでお勧めはしません。図1 鼻の内側今回の症例は左の鼻から出血していましたが、ティッシュを取り除いたら再出血してしまい、出血部位は同定できませんでした。もし出血部位がわからなくても、次の手技に進みましょう。圧倒的に前方出血が多いため、まずは前方出血に準じて対応するのがよいと考えます。出血部位がわからなくても、後述する圧迫止血やガーゼパッキングを施行して問題はありません。ちなみに、出血部位を正確に把握する必要があるのは焼却術など出血部位に対する処置を行うときです。狭い鼻腔内で出血部位を把握するにはスキルと経験が必要ですので、非専門医が必ずしも同定する必要はないでしょう。(3)圧迫止血の手法の確認患者さんが行った止血方法の確認をすることは非常に重要です。昨今は「鼻の根元を押さえ、天を仰ぎ、首の根本を押さえる」患者さんはさすがにもういませんが、鼻根部(鼻骨)を押さえてくる人(図2)はまれにいて、これは気を付けないと見落とすことがあります。鼻翼を指全体で覆うように挟みましょう(図3)。図2 誤った圧迫止血(鼻骨を押さえている)図3 正しい圧迫止血(鼻翼を指全体で押さえている)圧迫は15分間しっかりと行います。よくある鼻血が止まらない理由として、血が止まったのを確認したくて数分で圧迫を解除してしまう、圧迫を解除した後に鼻をかんでしまう、などがあります。この症例は5分程度で圧迫を解除していたので、15分ほど圧迫してもらったところ止血を得ました。鼻をかまないようにして、再出血した場合は再度圧迫を行い、それでも止まらない場合は受診するよう指導しました。(4)ガーゼパッキングでは、適切な圧迫方法で止血できない場合はどうしましょうか? その場合はガーゼパッキングを行います。私はT&Aマイナーエマージェンシーコースで種々の場所で指導するのですが、パッキングの方法や使用する薬剤は地域によって異なっています。ですので、今回は私が慣れているコメガーゼとアドレナリン外用液(商品名:ボスミン外用液0.1%)+軟膏(白色ワセリン)を使用した方法を紹介します。まずはコメガーゼを用意します。コメガーゼがなければ、ガーゼを図4のように切って作成する方法もあります。図4 コメガーゼの作り方(幅は3cmくらい)次に薬剤を作成します。ボスミン外用液0.1% 2mL+生理食塩水18mLを混ぜ、1万倍希釈アドレナリン液20mLを作成します。コメガーゼにそれを浸した後、防水シーツの上に置いて軟膏を塗ります。軟膏を塗る理由は、ガーゼパッキングをして時間が経った後、ガーゼが乾燥していると抜去するときにとても痛いからです。それではガーゼパッキングを開始しましょう。今回は鼻用攝子と鼻鏡を用いてガーゼを挿入する方法を説明します。まず、鼻鏡と鼻用攝子の持ち方を確認しましょう(図5)。図5 鼻鏡と鼻用攝子の持ち方画像を拡大する1枚目のガーゼを挿入していきます。図1のように鼻腔内は入り口が狭く、内腔は広いので、それをイメージしながらガーゼを挿入しましょう。今回はT&Aマイナーエマージェンシーコースの鼻模型を使用して解説します。まず、図6のように鼻孔を開きます。その際に左手の甲を患者の右頬に当てると固定しやすいです。図6 鼻腔を開く画像を拡大する次に、ガーゼを攝子で挟みましょう。鼻用攝子で2つ折の間を把持し、先端の余ったガーゼを折り返すことで攝子の先端がガーゼで覆われ、より粘膜損傷が起こりにくくなります(図7)。図7 攝子の先端をガーゼで覆う

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