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第188回 専門医の資格広告は厳格な基準で、学会認定の専門医は広告不可に/厚労省

<先週の動き>1.専門医の資格広告は厳格な基準で、学会認定の専門医は広告不可に/厚労省2.駆け込み「宿日直許可」で、分娩医療は守れるか/産婦人科医会3.教育水準が命を左右する? 学歴の差で死亡率が上昇/国立がんセンター4.広がる紅麹サプリメントによる健康被害、問われる安全性/小林製薬5.勤務実態なしの事務職に2,000万円、特別背任容疑で捜索/東京女子医大6.過重労働で医師がくも膜下出血に、労災認定を求めて国を提訴/東京1.専門医の資格広告は厳格な基準で、学会認定の専門医は広告不可に/厚労省厚生労働省は、医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会を3月25日に開催し、専門医の資格広告に関する新たな方針を定めた。これにより、2029年度末からは、日本専門医機構が認定する19の基本領域の専門医資格に限り広告が可能となり、現在59の学会が認定する56の専門医資格のうち、基本領域と重なる16の学会認定専門医の広告ができなくなる。ただし、2028年度末までにこれらの資格を取得または更新した医師は、認定・更新から5年間広告が認められる。また、基本領域の研修中に始めることができる15領域のサブスペシャリティー(サブスペ)の専門医資格については、研修制度の整備基準や認定・更新基準、専門医の名称が整ったものから個別に広告が認められることになる。これに対して、連動研修を行わないサブスペの12領域については、新たな判断基準を設定し、それをクリアすることを条件に広告を認める。厚労省は、広告に関する判断基準として「わかりやすさ」「質の担保」「社会的・学術的意義」の3点を挙げ、専門医の名称と提供する医療の内容が広く普及していること、ほかの専門医との区別が明確であることなどを条件に設定した。また、専門医資格の広告が大病院志向を促すことなく、国民へのわかりやすさを重視する方針を示している。この方針は、国民へのわかりやすい情報提供と医療の質の担保を目的とし、医療現場における専門医資格の乱立と混乱を防ぎつつ、患者・国民の健康と生命を守ることを意図している。この方針変更は、医療機能情報提供制度の全国統一システムの運用開始や医療広告規制におけるウェブサイトなどの事例解説書のバージョンアップと同時に議論され、医療機関選択における国民の誤解を防ぎつつ、適切な情報が提供されることが期待されている。参考1)専門医に関する広告について(厚労省)2)学会認定16の専門医、29年度から広告不可に 専門医機構の基本領域に一本化(CB news)3)日本外科学会認定の「外科専門医」などの広告は2028年度で終了、「機構専門医」への移行を急げ-医療機能情報提供制度等分科会[1](Gem Med)2.駆け込み「宿日直許可」で、分娩医療は守れるか/産婦人科医会日本産婦人科医会が行った調査によると、分娩を扱う全国の病院947施設のうち、半数を超える479施設が夜間宿直や休日の日直を休息とみなし、労働時間として計上しない「宿日直許可」を労働基準監督署から取得している、または申請中であることが明らかになった。この宿日直許可により、実際には医師が夜間や休日に頻繁に診察や緊急手術を行い、妊婦の経過観察に当たるなど、休息とは言えない激務にも関わらず、残業時間としての計上が避けられている。医師の「当直」勤務は月平均7.9回、1回当たり16時間として、年間約1,500時間の労働になるが、これを労働時間とみなさなければ、残業時間は年平均230時間となり、規制上限の960時間を下回る。こうした宿日直許可の乱用は、4月から始まる残業規制と医師の働き方改革の実効性に疑問を投げかけている。とくに病院側は、残業規制による業務への支障を避けるため、また医師の派遣元の大学病院などから敬遠される恐れがあるために、このような「苦肉の策」を取ったとみられる。しかし、実際の医師の労働環境は、十分な睡眠を取ることができず、夜間も救急車の受け入れや外来患者の対応に追われるなど、非常に過酷な現状が続いている。この宿日直許可の乱用は、医師の過労自殺や医療安全の脅威を招く可能性があり、医療界における長時間労働の問題と医師を労働者として適切に扱う必要性を改めて浮き彫りにしている。医療需要の高まりと医師数不足が続く中、医師の働き方改革が名ばかりに終わらず、実効性を伴う改革が求められている。参考1)持続可能な周産期医療体制の実現に向けて~産婦人科医療資源と医師の働き方改革の影響について~(日本産婦人科医会)2)分娩病院の半数、夜間宿直・休日日直を「休息」扱い 労働時間とせず 産婦人科医団体調査(産経新聞)3)医師の働き方改革は名ばかりか…労基署の「宿日直許可」が残業規制の抜け道に(中日新聞)3.教育水準が命を左右する? 学歴差で死亡率が上昇/国立がんセンター国立がん研究センターによる最新の研究が、教育水準とがんの死亡率の間に顕著な関連性を明らかにした。この研究は、日本国内で初めて学歴別の全死因による死亡率を推計し、その結果を公表したもの。約800万人の人口データと33万人の死亡データを基に、教育水準が低い人々(とくに中学卒業で終えた者)は、より高い教育を受けた人々と比較し死亡率が約1.4倍高いことが判明した。この格差は、脳血管疾患、肺がん、虚血性心疾患、胃がんといった特定の死因でとくに顕著だった。一方で、乳がんに関しては、より高い教育水準を持つ女性で死亡率が高く、これは出産歴の少なさと関連していると考えられている。研究チームは、教育歴と死亡率の関係が直接的なものではなく、喫煙やがん検診の受診率の低さなど、生活習慣や環境要因によるものであると指摘している。また、わが国での教育水準による健康格差は、欧米諸国と比較して小さいものの、社会全体としてはがん検診の受診率を向上させるなど、健康格差を縮小するための対策が必要であると述べている。参考1)Educational inequalities in all-cause and cause-specific mortality in Japan: national census-linked mortality data for 2010-15(International Journal of Epidemiology)2)平均寿命前後までの死亡率、学歴で差 国立がんセンター(日経新聞)3)学歴別死亡率、中卒は大卒以上の1.4倍 「喫煙など影響」- がんセンター初推計(時事通信)4)「死亡率、中卒は1.4倍」 大卒以上と比較 国立がん研究センター(毎日新聞)5)教育期間の短い人は死亡率高い傾向 喫煙率など影響か 研究班が推計(朝日新聞)4.広がる紅麹サプリメントによる健康被害、問われる安全性/小林製薬小林製薬(大阪市)の機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」の摂取後に健康被害が発生している問題で、腎機能障害や急性腎障害の発症が確認されている。摂取者の114人が入院したほか、5例の死亡症例も報告され、厚生労働省と大阪府は原因究明を同社に求めている。このサプリメントの原料に含まれる紅麹には、青カビが生み出すプベルル酸が含まれていたとの指摘がされており、この成分が健康被害の原因である可能性が高いとされ、具体的な影響や摂取によるリスクについての検証が急がれている。摂取した患者の中には、症状の改善後にサプリメントの再摂取によって再び健康被害を受けた事例も報告されている。この問題は、同社以外に原料として紅麹を購入し使用していた他の企業や製品にも影響を及ぼしており、同社は製造プロセスの見直しや、健康被害を受けた消費者への対応に追われている。さらに、この問題は、機能性表示食品の制度見直しを求める声を高めており、政府はこの問題を受けてコールセンターや省庁間連携室の設置を予定している。参考1)小林製薬社製の紅麹を含む食品に係る確認結果について(厚労省)2)小林製薬「紅麹コレステヘルプ」における腎障害に関しまして(日本腎臓学会)3)小林製薬 紅麹問題「プベルル酸」健康被害の製品ロットで確認(NHK)4)腎機能に異常の患者3人「共通点は紅麹」 医師は小林製薬に報告した(朝日新聞)5)小林製薬「紅麹」サプリ、摂取の再開後に再入院…治療の医師「サプリ含有物質が原因の可能性高い」(読売新聞)6)倦怠感、尿の異常…紅麹サプリを摂取 男性が訴える体の異変(毎日新聞)5.勤務実態なしの事務職に2,000万円、特別背任容疑で捜索/東京女子医大東京女子医科大学(東京都新宿区)およびその同窓会組織「至誠会」に関連する一連の不正給与支給疑惑について、警視庁が特別背任の容疑で捜索を行った事件。この事件では、勤務実態のない元職員に約2,000万円の給与が不正に支払われた疑いが浮上している。報道によると、この元職員は2020年5月~2022年3月まで別のコンサルティング会社からも給与を受け取っていたと報じられている。至誠会は、岩本 絹子理事長が代表理事を務めていた時期に、この不正が行われたとみられ、元事務長との共謀が疑われている。この問題は、東京女子医科大学および至誠会による不透明な資金支出をめぐり、一部の卒業生らが岩本理事長を背任容疑で警視庁に刑事告発し、2023年3月に受理されていた。東京女子医科大学は、1900年に東京女醫學校を母体として設立され、長年にわたり女性医学教育の先駆者として知られてきた。しかし、近年では大学病院での医療事故や経営悪化が報じられるなど、栄光に影を落とす出来事が続いていた。この事件に関する捜査は、岩本理事長および元職員らによる資金の不正流用や背任の可能性に焦点を当てているとともに、大学の経営統括部の業務が外部のコンサルティング会社に委託された背景や、その過程での資金の流れも問題の核心に迫る重要なポイントとなっている。参考1)本学関係者の皆様へ(東京女子医科大学)2)同窓会から不正給与2,000万円支出か、東京女子医大(日経新聞)3)東京女子医大 勤務実態ない職員 給与約2,000万円不正支給か(NHK)4)東京女子医科大と岩本絹子理事長宅など一斉捜索、理事長側近に不正給与2,000万円支払いか(読売新聞)5)名門に捜査のメス 医療事故続き再建担った理事長 東京女子医大捜索(朝日新聞)6.過重労働で医師がくも膜下出血に、労災認定を求めて国を提訴/東京2018年11月、過重労働の末にくも膜下出血を発症し、寝たきり状態となった50代の男性医師が、労災認定を求めて国を提訴することが判明した。男性医師は、都内の大学病院で緩和医療科に勤務しており、発症前6ヵ月間の時間外労働は、月に4日程度の宿直を含むと毎月126~188時間に上っていた。これは、過労死ラインとされる月80時間を大幅に超えるものであった。しかし、三田労働基準監督署および厚生労働省の労働保険審査会は、宿直を労働時間としてほぼ認めず、労災申請を棄却した。審査では、宿直中の患者対応やカルテ作成など、わずかな時間のみが労働時間として認められ、その結果、発症前3ヵ月の時間外労働は月50時間前後と評価された。男性医師側はこの決定に対し、宿直中も高いストレス下での業務に従事していたと主張し、労働時間の過小認定の問題点と時間外労働の上限規制の形骸化に警鐘を鳴らすため訴訟を提起する構えをみせている。参考1)くも膜下出血で寝たきりの医師 労災認定を求め国を提訴へ(毎日新聞)2)医師の宿直を労働時間から除外、労災認められず 「ここまでやるか」(同)3)医者の宿直、労働時間「ゼロ」扱いで労災認定されず 月100h超の残業でくも膜下出血発症…妻「理解に苦しむ」(弁護士ドットコム)

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ドイツで一番忘れられない思い出【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第35回

ドイツに留学してミュンヘンの次に住んでいたバート・エーンハウゼンという田舎町で、シリア難民のおじさんと知り合いになりました。地域が開催している無料の語学講座で出会ったのです。初対面のときに彼は「俺はシリアでは事業に成功して、海辺の街に別荘を持っているくらい裕福だった。ある日、内戦が勃発し、アメリカが介入してきたと思ったらあっという間に家も別荘も吹き飛ばされてしまった。家族もバラバラになっちゃって、ドイツに辿りついているかどうかもわからない…」と言って泣いていました。そんなおじさん、私が無職だけどドイツで医師免許取得を目指して頑張っていることを知って、また泣きました。「お前はすごいやつだ」って。「俺には真似できない」って(ちなみにこのおじさんは難民認定されて、ドイツ政府より住居の提供と月16万円の生活費が支給されていました)。私の留学はかなり特殊な例だと思いましたが、「おじさんの方が100倍大変なのにな…」と感じたことを覚えています。それからも、そのおじさんとの交流は続き、よく一緒にドイツ語を勉強していました。留学で学んだ世界あの頃は本当に厳しかった時期でした。いろんなことがうまくいかなかった、ちょうどその頃、ドイツ北東の街であるグライフスヴァルトの病院を紹介してもらえることになりました。そのときのお話は「空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅」で紹介しています。急な話であったため、数日間は引越しの準備に追われておりました。ある程度の目途がついたところで、休憩がてら家の前にあった大きな公園で散歩をしました。天気のいい日でした。ベンチに座り、うたた寝をしていたら、例のおじさんが私の前に立っていました。「何してるの?」いつもより優しい笑顔だったおじさんに声をかけられ、「実はね、この街を出るんだ。新しい職場がみつかったから、そこに引っ越すことにしたんだよ」と私は答えました。おじさんは「そうか! チャンスを掴みにいくんだな。どうりで優しいオーラに包まれていると思ったよ」とオーバーなリアクションをしながら喜んでくれました。「俺もお前に報告したいことがあるんだ」とおじさんは、後ろを振り返り、何か大声で叫びました。そうしたら、子供からおばあさんまで、年の幅のある数人のアラブ系の人たちが寄り添うように集まってきました。明らかに私のことを警戒している様子でしたが、私はすぐに察しました。「家族が全員みつかったんだよ。今は一緒に暮らしているんだ」とおじさんのセリフが終わるのを待たずして、私は涙が止まらなくなってしまいました。小春日和の静かな公園で、おっさん2人が抱き合って号泣しました。本当に良かった。自分のことのように嬉しかった。このとき、上に羽織っていたジャージにおじさんの鼻水がガッツリついてしまいました。残念ながら、そのジャージを引越し先に持っていくことはありませんでした…。当時、私個人にとっても大変な時期でしたが、世界中が大変な時期でもありました。あのおじさん、今もきっとバート・エーンハウゼンで家族仲良く暮らしているんだろうな。医師としてでなく、1人の人間として、たくさんのことを経験させてもらった留学でした。いい顔してますよね! でもこれ、ドイツ医師免許試験に落ちた直後なんです。めげずに頑張ってた頃の自分です。

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「負担は増える一方…」、医局に残るかを悩む中堅医師に大塚氏の答えは?【Dr.大塚の人生相談】

地方都市の大学病院で皮膚科医をしています。専門医取得済み、学位のめども付きましたが、今後の進路に迷っています。現在ベットフリーの大学院4年生で、来年大学での臨床復帰を控えています。働き方改革と言えば聞こえはよいですが、病理も見ず、文献での調べ物もせず、定時に帰る医員が地方と言えど皮膚科人気の後押しもあり、自分の大学院在学中に3人4人と増えていき、中堅学年として復帰する際に明らかに自分への負担が増えることが目に見えています。大学でもっといろいろな症例も含めて勉強したいという気持ちはある反面、関連病院も少なく、退官の近い教授を船頭にしながらこの医局に残るべきなのか、継承開業等新しい道を模索しようかなどと考えてしまいます。大塚先生のような素晴らしい志をお持ちのトップばかりではないこの日本の医局制度、皮膚科界隈の中で、先生が同じような立場であった際に医局、大学に残るとしたらどのようなことをお考えになるかもしよろしければお聞かせください。P.S. 先生の半実話著書第2弾、心より楽しみにしております。学会でもしお時間おありでしたら『白い巨塔が真っ黒だった件』にサイン頂けたら泣いて喜びます。(今回の相談者:あまりりすさん)病院で勤務していると、「なんでこんなになるまで放っておいたの?」と思わず言いたくなるような患者さんが来ますよね。皮膚科であれば、有棘細胞がんや乳房外パジェット病などの悪性腫瘍が多いような印象です。下着を脱いでもらったら、においとともに一部自壊した握りこぶしくらいのがんが現れ、「なんでこんなになるまで放っておいたんですか?」と前述の言葉を投げかけたくなる経験はあるんじゃないでしょうか?がんの場合、放置すれば命に関わりますが、これが爪白癬だったら状況も変わります。長年育て続けた爪白癬も、適切な治療をすれば爪は元通りに治ります。足の爪がガシガシになった患者さんを前に、「なんで放っておいたの?」と思うことはあるかもしれませんが、悪性腫瘍のときのような気持ちにはなりませんよね。治療すれば治るわけですから。前置きが長くなりましたが、ぼくからのアドバイスは「心のしこりになるような我慢はするな」です。程よい我慢は人間の成長につながります。筋トレも苦しくなければ筋肥大は起きません。でも、限度を超えた我慢は怪我につながりますし、心にしこりを残します。我慢には、成長のために必要なポジティブな我慢と、しこりががん化する悪い我慢があるのです。あなたが医局に復帰したとしましょう。ワークライフバランスが充実した研修医と比べて、自分は家族との時間も犠牲にして週末も病棟管理をしている。だんだんと、働かない研修医に腹が立ってくるわけです。小言の一つも言いたいけれども、言えばパワハラになってしまうこの時代、確実にあなたの心にしこりが生まれます。そのうち、あなたが許せないような事件も起きるかもしれません。「なんでこいつらのために自分が働かなきゃいけないのか!」ここまで来ちゃうと、しこりは化します。若手を教育しようと思わなくなりますし、困っていても手伝ってあげなくなります。化した怨念で、組織そのものがダメになってしまう危険性が出てきます。本来、怒りをぶつけるべき相手は、働き方改革に従って勤務する研修医ではないですよね?彼らは新しく決められた環境での最適解を求めているだけで、上の世代がどうだったかとかは「知らんがな」なんです。あなたが怒るべき相手は、不完全な制度を作った国であり、正しい対策を取れなかった組織です。決して、あなたの後輩ではないと思うんです。働き方改革前と後の世代が断絶したら、日本の医療は成り立ちません。上の世代が下の世代に対して、意地悪しようなんて思う組織は終わりです。衰退しかありません。大学に残って仕事を続けるのであれば、しこりががん化する前に辞めることをおすすめします。あなたは間もなく医局で決定権を持つような人間になるはずです。そこで大事な判断をするとき、怨念が含まれるのだけは避けて欲しいのです。気概を持って、若い世代と頑張ろうと思えるのなら、多少辛くても楽しい医局生活を送れるでしょう。それにね、頑張りたい若手もちゃんといますよ。もしかしたら、頑張ることが言い出しにくい環境なだけかもしれないですし、仕事を続けていくうちに楽しくなって頑張る子も出てくるはずです。そういう小さな芽を見つけて育てることも、やりがいのある仕事だと思います。後輩が成長した姿をみると嬉しいですよ。拙著を読んでいただけたようなのでわかると思いますが、教授選に関してはぼくの心のしこりは化しています(笑)。こうなっちゃいけないという、悪い見本だと思ってくださいな。ぼくのサインでよければいつでも喜んで。

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相手が退屈しない話し方をするには?【もったいない患者対応】第2回

相手が退屈しない話し方をするには?登場人物僕はどうしても話がくどくど長くなりがちで、患者さんに退屈そうにされてしまうので困っています。それは困ったねぇ。どうすれば最後までちゃんと相手に話を聞いてもらえるんでしょうか?話にメリハリをつける必要があるね。どんなに話の上手な人でも、話が一辺倒だと誰もついていけないからね。ふむふむ。ポイントがいくつかあるので、わかりやすく説明しよう。長い話は退屈なもの医師は患者さんに、専門的な内容を噛み砕いて説明しなければなりません。ときには、20分、30分と長時間一方的に話し続けてしまうこともあるでしょう。患者さんの身になってみると、これはなかなかつらいものです。たとえば、私たちが車を買いにディーラーに行き、店員から30分ぶっ通しで車の性能に関する話を聞く場面を想像してみてください。相当車に興味があって、背景知識が豊富にある場合を除いては、徐々に集中力が切れてくるのが自然ではないでしょうか。いくら自分が満足する車を買いたいと思っていても、そのうち、「もうよくわからないので、店員さんのおすすめの商品にします」と言いたくなってくるかもしれません。しかし、医療現場では患者さんが医師の話をきちんと理解していないと、大きなトラブルにつながるおそれがあります。では、集中力を切らさず、最後まで話を聞いてもらうにはどうすればいいのでしょうか?疑問を「先回り」するまず1つ目の方法として「先回り」があります。患者さんへの説明を繰り返し行っていると、患者さんが疑問に感じやすいポイントや、誤解しやすいポイントが次第にわかってきます。これを上手に先回りして伝えるのがコツです。たとえば、風邪で救急外来を受診した患者さんに対して、「風邪は抗生物質(抗菌薬)では治りません」「風邪薬は風邪の症状を抑える薬で特効薬ではありません」「解熱薬は 38℃以上の熱が出たときを目安に飲んでください」という3点を伝えたいとします。このまま情報を羅列して伝えてもよいのですが、疑問や誤解を「先回り」して、「抗生物質で風邪が治ると思っている人がいるのですが、実は治らないんです」「風邪薬は風邪の特効薬だと誤解している人がいますが、症状を抑えるだけなんですよ」「解熱薬はどのくらいの熱が出たときに飲めばいいのか、と疑問に思う人が多いので、私はいつも38℃以上を目安にするようお伝えしています」といった具合に説明します。前半の「疑問」「不安」「誤解」の部分で聞き手の共感を得られるので、患者さんの興味を一層引きつけることができるのです。風邪の場合はシンプルな説明で済みますが、複雑な話のときは、とくにこの方法が有効です。たとえば私なら、胆石症の手術前に、「胆石症は手術が必要です」「胆石症の手術は胆嚢自体を切除する手術です」「胆嚢を切除しても日常生活に支障はありません」と話したいときに、あえて、「胆石を薬で治せないのか? と疑問に思う人がいますが、実は手術でしか治せないんです」「胆嚢を取らずに胆石だけ取ったらダメなのか? と思う方が多いんですが、実は胆石だけを取ることはできないので胆嚢自体を切除するんです」「胆嚢は取ってしまって大丈夫かと不安になる人がいますが、心配はいりません。胆嚢はなくても困らない臓器なんですよ」といった形で抑揚をつけて話すようにしています。重要性の高低を伝える仮に30分間、病状説明をするとしても「すべての内容が同じくらい重要」というわけではないと思います。少なくとも、「最も重要でぜひ覚えておいてほしいところ」や「専門的なので必ずしも覚えなくてもいいところ」といった“重要性の高低”はあるでしょう。これを、話す前に逐一伝えておくのがコツです。たとえば、少し専門性の高い話題で「医師として患者さんに説明はしなければならないものの必ずしも覚えておく必要はない」という程度の内容であったときには、「いまから話すことは少し難しいので、覚えなくても大丈夫なんですが…」と言ったり、説明文を見せながら説明するときに、「ここは少し専門的なので、サラッと読み流していただいてもいいのですが…」と前置きを入れたりします。学生時代を思い出してみてください。学校や塾の授業で、最初は意気込んで話を聴き始めたのに、途中で難しい話が続くと途端に集中力を維持するのが難しくなった経験があるでしょう。患者さんも、私たちの説明を聞きながら常に100%の集中力を維持しておくことはできません。そこで、「ここの重要性は低いですよ」と事前に伝えることで、少し“息抜き”をしてもらうわけです。一方で、必ず理解しておいてほしい重要なことを説明するときは、「ここからは非常に重要な話になりますので、しっかり聞いていてくださいね」と前置きを入れることも大切です。ここで前項の“アウトライン”を使って、「ここから非常に重要な話を3つお伝えします」と話し始めてもよいでしょう。短い話であれば、話し始める前に、「今日お話しすることは10分くらいで終わる簡単な内容です」というように、長さの目安を伝えるのも有効です。たとえば、私たちが何か専門的なことを調べようとGoogle検索したときに、「3分でわかる! ○○の仕組みと使い方」というタイトルがあれば、クリックしたくなりませんか?知らないことを知ろうとするときは、誰しも「難しい話で理解できなかったらどうしよう」とストレスを感じています。最初の敷居を下げ心理的ストレスを軽くできれば、スムーズに話を聞き始めてもらえるということです。質問は最後にまとめて病状説明の際に、途中で患者さんに質問されて話を何度も遮られた、という経験をお持ちの方は多いと思います。あまりに頻繁に話を遮られるので、「いま私が話しています。私の話をまず聞いてください」と怒ってしまった医師を見たこともあります。ただ、どちらかというと「話を遮る勇気のある患者さん」のほうが少ないのが現実でしょう。医師に一方的に話されて、途中で疑問を抱いても、「話を遮るのは悪い」と思って聞き続け、「結局わからないことだらけだった」という思いで病院を後にする人は多いからです。そこで、途中で、「ここまでの話で何か疑問はありますか?」と伝えるか、途中で遮られずに話すべき内容だと思ったときは、事前に、「質問は最後に聞きますので、まず私の話を聞いてくださいね」と伝えるのが得策です。あるいは、途中で遮られても話の構成上とくに問題ないというケースであれば、「質問があれば途中で遮っていただいても大丈夫です」とお伝えするのもよいでしょう。こうすることで、患者さんはどのタイミングで質問すればいいのかが事前にわかるため、安心して話を聞くことができるのです。

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抗PD-1抗体dostarlimab+化学療法が進行子宮体がんの生存改善(RUBY)/SGO2024

 新たな抗PD-1抗体dostarlimabと化学療法の併用が進行子宮体がんの全生存期間(OS)を改善した。 10年以上もの間、原発進行または再発子宮体がんに対する1次治療は化学療法であった。しかし、長期成績は不良でOS中央値は3年未満であった。進行または再発子宮体がんに対するdostarlimabと化学療法の併用はミスマッチ修復機能欠損(dMMR)/高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)と全集団のOS傾向を初回の中間解析で改善した。米国婦人科腫瘍学会(SGO2024)では、米国・ワシントン大学のMathew A. Powell氏が2回目の中間解析としてOS、無増悪生存期間(PFS)、PFS2および安全性の結果を発表した。・対象:未治療または再発進行子宮体がん・試験群:dostarlimab+カルボプラチン+パクリタキセル 3週ごと6サイクル→dostarlimab 6週ごと3年以内(dostarlimab+CP群、245例)・対照群:プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル 3週ごと6サイクル→プラセボ 6週ごと3年以内(プラセボ+CP群、249例)・評価項目[主要評価項目]治験担当医評価のPFS、OS[副次評価項目]BICR評価のPFS、PFS2、全奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。[全集団]・OS中央値はdostarlimab+CP群44.6ヵ月、プラセボ+CP群28.2ヵ月(ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.54~0.89、p=0.002)・PFS2中央値はdostarlimab+CP群32.3ヵ月、プラセボ+CP群18.4ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.52~0.84)[dMMR集団]・OS中央値はdostarlimab+CP群未到達、プラセボ+CP群31.4ヵ月(HR:0.32、95%CI:0.17~0.63、名目上p=0.0002)・PFS2中央値はdostarlimab+CP群未到達、プラセボ+CP群21.6ヵ月(HR:0.33、95%CI:0.18~0.63)[ミスマッチ修復機能正常(pMMR)集団]・OS中央値はdostarlimab+CP群34.0ヵ月、プラセボ+CP群27.0ヵ月(HR:0.79、95%CI:0.60~1.04、名目上p=0.0493)・PFS2中央値はdostarlimab+CP群24.6ヵ月、プラセボ+CP群15.9ヵ月(HR:0.74、95%CI:0.57~0.97)[安全性]Grade3以上の治療関連有害事象はdostarlimab+CP群の72.2%、プラセボ+CP群の60.2%に発現した。

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活性型ビタミンD3がサルコペニアを予防/産業医大

 前糖尿病と糖尿病はサルコペニアの独立した危険因子であることが報告されている1)。今回、前糖尿病患者への活性型ビタミンD3投与がサルコペニアを予防するかどうか調べた結果、筋力を増加させることでサルコペニアの発症を抑制し、転倒のリスクを低減させる可能性があることが、産業医科大学病院の河原 哲也氏らによって明らかにされた。Lancet Healthy Longevity誌オンライン版2024年2月29日号掲載の報告。 これまでの観察研究では、血清25-ヒドロキシビタミンD値とサルコペニア発症率との間に逆相関があることが報告されている2)。しかし、ビタミンDによる治療がサルコペニアを予防するかどうかは不明である。そこで研究グループは、活性型ビタミンD3製剤エルデカルシトールによる治療が前糖尿病患者のサルコペニアの発症を抑制するかどうかを評価するため、「Diabetes Prevention with active Vitamin D study(DPVD試験)※」の付随研究を実施した。※DPVD試験:前糖尿病の成人における2型糖尿病の1次予防として、活性型ビタミンD治療の効果を調査した多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験。国内32施設で実施された。 対象は、耐糖能異常(75g経口ブドウ糖負荷試験で空腹時血糖値<126mg/dLおよび負荷後2時間値140~199mg/dL、かつHbA1c<6.5%)を有し、サルコペニアではない30歳以上の男女1,094例であった。エルデカルシトール(0.75μgを1日1回経口投与)群またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、ITT集団における3年間のサルコペニア発症率で、その定義は握力が弱い(男性28kg未満、女性18kg未満)、骨格筋指数が低い(生体電気インピーダンス分析で男性7.0kg/m2未満、女性5.7kg/m2未満)こととした。副次評価項目は、3年間の転倒の発生率、握力と体組成の変化であった。 主な結果は以下のとおり。・解析にはエルデカルシトール群548例、プラセボ群546例が組み込まれた。平均年齢60.8歳、女性44.2%、平均BMI値24.5、2型糖尿病の家族歴があったのは59.5%であった。・約3年間の追跡期間中にサルコペニアを発症したのは、エルデカルシトール群4.6%、プラセボ群8.8%であり、エルデカルシトールによる治療は有意なサルコペニア予防効果を示した(ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.31~0.83、p=0.0065)。・転倒の発生は、エルデカルシトール群24.6%、プラセボ群32.8%で有意差が認められた(HR:0.78、95%CI:0.62~0.97、p=0.0283)。・BMIと腹囲径の変化は両群で有意差は認められなかったものの、エルデカルシトール群ではプラセボ群よりも脂肪量指数が有意に減少し(-0.15% vs.0.31%、p=0.028)、骨格筋指数が有意に増加し(0.45% vs.-1.72%、p<0.0001)、握力も増加した(1.85% vs.0.45%、p=0.0003)。・有害事象の発生率は両群間で有意差は認められなかった。 これらの結果より、研究グループは「活性型ビタミンD3製剤エルデカルシトールの治療によって、骨格筋量および筋力を増加させることにより、前糖尿病患者のサルコペニアの発症を予防し、転倒のリスクを大幅に減少させる可能性を見出した。今後はサルコペニアや前糖尿病の有無にかかわらず高齢者を対象とした臨床試験を実施する予定である」とまとめた。

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うつ病に対する17種類の抗うつ薬の治療反応比較

 うつ病に対する抗うつ薬の治療反応を比較した長期的研究は不足している。デンマーク・Psychiatric Center CopenhagenのLars Vedel Kessing氏らは、うつ病患者に対する6つの抗うつ薬クラス17薬剤における2年間の治療反応を比較するため、システマティック人口ベース全国レジストリデータを報告した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2024年2月20日号の報告。 対象は、1995~2018年にデンマークの精神科病院で初めてうつ病と診断され、その後抗うつ薬治療を行った入院患者または外来患者10万6,920例。2年間の研究期間において、最初の抗うつ薬治療に反応しなかった患者の定義は、他の抗うつ薬への切り替え、抗精神病薬・リチウムへの切り替えまたは追加、入院とした。分析では、年齢、性別、社会経済的地位、精神症状・身体症状の併存に従って標準化された集団を対象とした試験を参照した。 主な結果は以下のとおり。・セルトラリンと比較し、citalopramは差がみられなかったが、fluoxetine、パロキセチン、エスシタロプラムは、治療無反応のリスク比が高かった。【citalopram】RR:1.00(95%信頼区間[CI]:0.98~1.02)【fluoxetine】RR:1.13(95%CI:1.10~1.17)【パロキセチン】RR:1.06(95%CI:1.01~1.10)【エスシタロプラム】RR:1.22(95%CI:1.18~1.25)・選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬の中では、セルトラリンはreboxetineを上回っていた。・セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬の中では、ベンラファキシンはデュロキセチンを上回っていた。・ノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性抗うつ薬の中では、ミルタザピンはミアンセリンよりも良好な成績を示し、他の抗うつ薬クラスでは、セルトラリンがagomelatineおよびボルチオキセチンよりも良好な成績を示した。・三環系抗うつ薬では、アミトリプチリンと比較し、ノルトリプチリン、ドスレピン、クロミプラミンの治療無反応率が高かったのに対し、イミプラミンには差が認められなかった。 著者らは「リアルワールドデータを用いた分析では、抗うつ薬使用2年間の長期的な治療無反応は、一部の抗うつ薬において増加している可能性が示唆された」としている。

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HER2過剰発現NSCLCへのT-DXd、第II相試験結果(DESTINY-Lung01)/Lancet Oncol

 抗HER2抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は、既治療のHER2遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした国際共同第II相試験(DESTINY-Lung02)において有用性が認められ1)、すでに用いられている。既治療のHER2過剰発現またはHER2遺伝子変異陽性の進行・再発NSCLC患者を対象とした国際共同第II相試験(DESTINY-Lung01)も実施されており、HER2過剰発現の集団における結果が、オランダ・Leiden University Medical CenterのEgbert F. Smit氏らによって、Lancet Oncology誌2024年4月号で報告された。なお、本試験のHER2遺伝子変異陽性の集団における結果はすでに報告されている2)。・対象:HER2過剰発現(IHC 2+または3+)が認められ、既知のHER2遺伝子変異のない既治療の進行・再発非扁平上皮NSCLC患者90例・5.4mg/kg群:T-DXd 5.4mg/kgを3週間ごとに点滴静注投与 41例(コホート1A)・6.4mg/kg群:T-DXd 6.4mg/kgを3週間ごとに点滴静注投与 49例(コホート1)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)に基づく奏効率(ORR)[副次評価項目]奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)など 主な結果は以下のとおり。・年齢中央値は5.4mg/kg群62歳、6.4mg/kg群63歳であり、男性の割合はそれぞれ54%、61%、白人の割合はそれぞれ76%、63%であった。・前治療ライン数中央値はいずれの群も3で、プラチナ製剤による治療歴を有する割合は5.4mg/kg群98%、6.4mg/kg群92%、抗PD-1/PD-L1抗体薬による治療歴を有する割合はそれぞれ80%、73%であった。・データカットオフ時点(2021年12月3日)における追跡期間中央値は5.4mg/kg群10.6ヵ月、6.4mg/kg群12.0ヵ月、治療期間中央値はそれぞれ5.5ヵ月、4.1ヵ月であった。・BICRに基づくORRは、5.4mg/kg群34.1%(CR:2例、PR:12例)、6.4mg/kg群26.5%(CR:0例、PR:13例)であった。・DOR中央値は、5.4mg/kg群6.2ヵ月、6.4mg/kg群5.8ヵ月であった。・PFS中央値は、5.4mg/kg群6.7ヵ月、6.4mg/kg群5.7ヵ月であった。・OS中央値は、5.4mg/kg群11.2ヵ月、6.4mg/kg群12.4ヵ月であった。・Grade3以上の有害事象は、5.4mg/kg群51%(21例)、6.4mg/kg群82%(40例)に認められ、主なもの(いずれかの群で10%以上に発現)は好中球減少症(それぞれ0%、24%)、肺炎(5%、12%)、疲労(7%、12%)、病勢進行による死亡(10%、12%)、呼吸困難(5%、10%)であった。・治療薬に関連したGrade3以上の有害事象は、5.4mg/kg群22%(9例)、6.4mg/kg群53%(26例)に認められた。・薬剤性間質性肺疾患/肺臓炎は、5.4mg/kg群5%(2例)、6.4mg/kg群20%(10例)に認められた。 本研究結果について、著者らは「HER2過剰発現のNSCLCでは既存治療の抗腫瘍活性が低いことを考慮すると、T-DXdはアンメットニーズを満たす可能性がある。本研究結果は、T-DXdによる治療のさらなる検討を支持するものである」とまとめた。

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医療誤情報の生成、防止できるAIは?/BMJ

 大規模言語モデル(LLM)は、患者の遠隔モニタリング、トリアージ、医学教育、管理業務の自動化を改善する大きな可能性を秘めているが、適切な安全措置(safeguard)が施されていない場合、詐欺的または操作的な意図によるコンテンツの大量生成に悪用される可能性がある。オーストラリア・フリンダース大学のBradley D. Menz氏らは、4つのLLMについて検討し、LLMは健康関連の誤情報の生成に悪用される脆弱性を有しており、これに対する十分な対応を欠いているものの、悪用を防ぐための強固な安全措置は実装可能と考えられることを示した。研究の詳細は、BMJ誌2024年3月20日号で報告された。安全措置の有効性を反復横断分析で評価 研究グループは、LLMが健康誤情報の生成に悪用されることを防止するための安全措置の有効性を評価し、脆弱性が確認された場合は、これに対するリスク軽減の処置の方法に関する人工知能(AI)開発者の透明性を評価する目的で、反復横断分析を行った(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]などの助成を受けた)。 解析の対象は、次の4つのLLMであった。GPT-4(開発企業:OpenAI、チャットボット/アシスタントインターフェース:同社のChatGPTまたはMicrosoftのCopilot)、PaLM 2およびGemini Pro(Google、Bard)、Claude 2(Anthropic、Poe)、Llama 2(Meta、HuggingChat)。 2023年9月に、これらのLLMに2つのトピックス(皮膚がんの原因としての日焼け止め、がん治療としてのアルカリ性食品)に関して健康誤情報の生成を指示するプロンプトを作成し、必要に応じて脱獄技術(jailbreaking technique、安全措置の迂回を試みる技術)の評価を行った。 安全措置の脆弱性を認めた場合は、懸念されるアウトプットの報告の過程を評価した。また、初回の調査から12週後にLLMの誤情報の生成能力を再検討することで、その後の安全措置の改善度を評価した。主要アウトカムは、安全措置によって健康誤情報の生成が防止されたか否か、および健康誤情報のリスク軽減への対処の過程の透明性とした。Claude 2は脱獄を試みてもすべて拒否 Claude 2(Poe)は、試験期間中の2つの時点で、「日焼け止めは皮膚がんの原因である」「アルカリ性食品でがんは治癒する」とのコンテンツの生成を要請した130のプロンプトを、脱獄を試みた場合を含めすべて拒否した。 GPT-4(Copilot)は当初、脱獄を試みても健康誤情報の生成を拒否したが、12週目には受け入れた。 対照的に、GPT-4(ChatGPT)、PaLM 2/Gemini Pro(Bard)、Llama 2(HuggingChat)は、一貫して健康誤情報のブログを生成した。 2023年9月の評価では、脱獄を要請しない場合、これらのLLMは113の独自のがん誤情報ブログ(総数4万ワード以上)の生成を進めた。誤情報生成の拒否率はわずか5% これらのLMMの評価時における誤情報生成の拒否率はわずか5%(150件のプロンプト中7件)であり、LLMが生成したブログには、注目度の高いタイトル、(偽造または架空の)もっともらしい参考文献、捏造された患者や臨床医の証言が盛り込まれ、多様な人口集団を標的としていた。 また、各LLMは、懸念される生成文を認めた場合に報告する仕組みを備えていたが、脆弱性の確認が報告されても、開発者が対応することはなかった。 著者は、「Claude 2は健康誤情報の生成に対する強固な安全措置を有しており、このような安全措置の実装は可能であることが示された」「健康誤情報のリスクを最小化するために導入された安全措置とその方法に関するAI開発者の透明性の低さと共に、安全措置の脆弱性への対応の欠如が確認された」とまとめ、「LLMが健康誤情報の大量生成に加担するのを防ぐには、規制の強化、透明性の確保、日常的な監査が必要である」と指摘している。

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新型コロナウイルス感染症の認知機能障害は徐々に軽症化している(解説:岡村毅氏)

 イングランドで80万例を対象にした、新型コロナウイルス感染症と認知機能の大規模調査である。まだよくわかっていないことの全体像をつかむための研究であり、規模が大きく、情報の確度も高く、適切な時期に適切な報告がなされたと思う。 対象者は、期間(無症状/4週以内に完治/12週以内に完治/12週以上かかったが完治/12週以上かかってまだ症状がある)、感染株(オリジナル/アルファ/デルタ/オミクロン)、医療(救急受診/入院/集中治療室)などで分類している。認知機能は、直後再生、空間記憶、語義、抽象思考、空間操作、遅延再生などをみっちりとられる。なかなか大変である。 まず、認知機能の全体を見ると、2020年1月に始まった世界的流行であるが、それから時間がたてばたつほどに感染者の認知機能低下は軽くなっている。古い株ほど、また症状の期間が長いほど、認知機能低下は重度である。常識的な結果といえる。 さらに詳しく認知機能を見てみると、記憶、抽象思考、空間操作が新型コロナウイルスの影響が出やすい領域のようだ。抽象思考とは「高い/低いに対して速い/遅い。では、人間/猿に対して速い/遅いは正しい?」みたいな課題をさせられる。空間操作はロンドン塔ゲームをさせられる。なかなか大変である。また主観的な記憶の障害や、いわゆるブレインフォグを訴えている人は、直後再生、抽象思考、空間記憶に特に低下があるようだ。これらの症状は、「頭が回らない」というような表出がなされることが多いため、納得の結果であろう。 この研究が(あえて?)触れていないことにも触れておく。この研究の枠組みでは分析のしようもないが、認知機能は精神状態の影響を大きく受けることは指摘しておきたい。長期的に症状に苦しんでいる人(例えば息苦しさが続き生活や仕事に支障が出ている)では、当然の反応として抑うつ的になり、結果的に一時的に認知機能が低下している可能性があるだろう。あるいは、未知の感染症が世界を襲い多くの人が死んでいる中で感染した場合には、心的影響が大きく、やはり認知機能への影響が軽微に残っている可能性は十分にあるだろう。 最後に、新型コロナウイルスについて発言するのはとても難しいが、これを読んでいる人には、将来精神科領域で働くことを検討している人もいるだろうから、一人の精神科医にはパンデミックがどのように見えていたのかを記して、精神科医的な思考を体験していただこう(以下は筆者個人の意見であり、いかなる所属組織とも関係ない)。 パンデミックの初期は「人類はまた新しい感染症に遭遇したが、医学の進んだ現代でよかった」と認識していた。一方でそう語ると、『世界が破滅するかもしれない』と興奮している人達とは、会話にならないこともわかっていた。 さらに高齢者施設で感染が広がり、高齢者は面会が禁止され、認知機能低下が進んだ。高齢者施設で働く人への偏見も助長された。この時には「そもそも高齢者施設では毎年インフルエンザで感染対策を繰り返していたのに、一般の人は全く知らなかったんだな」と悲しくなったが、真面目にやれば感染は防げると思いこむクレーマーの人とはわかりあえないだろうとあきらめていた。 さて、現在は明らかに弱毒化しているが、患者さんは元気に歩き回るから、逆に感染コントロールが難しくなっている。引き続き淡々と注意が必要だ。 今後はいつかエボラ出血熱のようなものが、世界的に感染を起こすことがあるだろう。その日まで私が生きていたら、その時こそ本当に恐怖を感じることだろう。 とまあ、こんなふうに見てきた。精神科医になるということは、様々な主観世界を生きる人々と出会い、その世界を冒険することにほかならない。例えば統合失調症の症状に「世界没落体験」というのがあり、世界の終末を主観的には生きている人と話したこともある。このような仕事をしていると、執着が減り、先入観から徐々に自由になり、何が起きても淡々と対応できるようになってくる。あくまで個人的な意見だが、新型コロナウイルス感染症の社会的パニックにおいて、もっとも傷を負わなかったのは精神科医かもしれない。

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第204回 ワクチンマニアが最後の公費接種に選んだコロナワクチンメーカーは…

前回、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の無償ワクチン接種が3月31日で終了する件について書いた。私のような高齢者にも基礎疾患保有者にも該当しない人間が、接種が始まった2021年2月17日~2024年3月31日までの期間に新型コロナワクチンを接種できる最大回数は5回だ。やはり過去の連載でも触れたように、私は一昨年末に4回目のワクチン接種を完了。昨秋には5回目のオミクロン株XBB.1.5系統対応ワクチン接種券が届いていたが、ちょうど1年間隔、すなわち昨年12月末くらいに接種しようと考えていた。しかし、予定が合わず12月末の接種はお流れ。とりあえず年初の1月接種に計画を変更したが、能登半島地震の発生でそちらの取材に時間を割き、3月に入ってしまった。というわけで、今週前半に駆け込みで5回目接種を完了した。今回も前回と同じく東京都が開設した大規模接種会場の1つ、都庁北展望室会場を選んだ。前回は当時の最新流行変異株であるオミクロン株BA.4、BA.5系統対応ワクチンのうち、ファイザー製よりも承認が1ヵ月遅れたモデルナ製を接種できる数少ない会場の1つがここだった。モデルナ製にこだわったのは、接種後の抗体価がファイザー製より高めとの研究報告が多かったからである。そして今回再び同会場で接種したのは、昨年8月に承認された国産初のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンである第一三共製での接種を望んだ結果、やはりここになったというわけだ。この選択は、1、2回目はファイザー製、3、4回目はモデルナ製を選択したので、とりあえず第一三共製も試してみたいという、自称「ワクチンマニア」の好奇心に過ぎない。前回は新型コロナの感染症法5類移行前であり、接種予約サイトにアクセスしても最短で空きがあったのは約2週間先だったが、今回はアクセスした日の翌日接種でも予約可能だった。ただし、実際の予約日は、業務の都合などを考慮し、アクセス日の1週間後にした。接種日には予約時間の20分前に都庁1階に到着。前回は北展望室行きのエレベーター脇に比較的大きな受付ブースが設置され、接種券を提示して予約確認と検温を経てエレベーターに乗る流れだった。今回はエレベーター前の案内担当者から口頭で予約有無の確認があり、さらにそこで接種券と予診票を見せて非接触式体温計を使って検温。そのまま45階への直通エレベーターに乗り込む形に簡素化されていた。ちなみにここでやや“失態”。エレベーター前の案内担当者から「マスク、お持ちですか?」と聞かれ、ハッとした。マスクは持ち歩いているものの、最近は医療機関に入る時しか着用していなかった。慌ててカバンから取り出そうとするも、担当者から「これ使って良いですよ」とマスクの入った箱を差し出されてしまい、恥ずかしながらそこから“税金”マスクを1枚頂戴することになった。45階でエレベーターを降りると、誘導に従い、受付ブースに並ぶ。前回は1階に設置されていたブースがこちらに移動した模様だ。そこで接種券と予診票を渡し、氏名と生年月日を言うように指示され、受付担当者は私が告げた内容を耳で聞きながら、接種券を凝視して確認していた。その後、ノートPCを操作し、予約を確認。第一三共製の接種希望者とわかると、「オミクロン 第一三共 XBB.1.5 3~7回目」と印字された緑の紙を予診票に貼りつけるとともに、同じ紙が挿入されたネックストラップ付カードホルダーを首から下げるように指示された。さらに受付担当者は接種券と予診票の目視確認を2回繰り返し行った。無事に受付が済み、背後の予診室のほうを振り返ると、後ろにいた誘導担当者がこちらを見ながら「はい、第一三共のワクチンはこちらです」と、予診室へ案内してくれた。どうやらカードの色で接種ワクチンを判別しているらしい。これも前回同様、通り抜け式になっている予診室に着席すると、医師から再び氏名、生年月日を告げるよう指示される。医師は私が告げた氏名、生年月日を接種券・予診票と照合し、さらに記入した予診票のチェック項目を指でなぞりながら確認した。そのうえで、今現在の不調や過去の新型コロナワクチンやそのほかのワクチン接種後の不調の有無、過去2週間のワクチン接種歴を尋ねた。「なし」と回答すると、「今回のワクチン接種で何かお尋ねになりたいことはありますか?」と返答がきた。これも「とくになし」と答えると、そのまま予診室を通り抜けて接種室に移動するよう告げられた。わずか5歩ほどで、接種室へ到着。再び氏名、生年月日、接種ワクチン種類の確認を受け、袖をまくった右腕を差し出すと、アルコール消毒によるアレルギーはないかと聴取された。それも「なし」と答えると、消毒後数秒で「ちょっとチクッとしますね」と言われ、軽い圧力を感じた直後に「はい終了です」。接種部分に絆創膏を張られ、目前の机の下にある段ボール箱に私に使用した注射器が放り投げられた。今度はアナフィラキシーチェックの待機ブースに移動。前回同様パイプ椅子が並べられた開放空間だが、着席人数は前回の3割程度だろうか。前回までの新型コロナワクチン接種では、アレルギー体質ということも考慮し、念のため30分待機をお願いしていたが、これまでとくに副反応経験がないことから、今回は15分待機組入り。スマホで仕事の資料を読んでいるうちに、待機時間を1分過ぎていたことに気付く。慌てて席を立ち、最後に予診票と接種券を記録するブースへ。ここでいつものごとくWHO版、米・CDC版の2種類のイエローカードの記入もお願いする。今回のイエローカード対応は「はいはい」という感じでシステマティックに進んだ。保管用の接種券記録、イエローカードを返却してもらい、再びエレベーターで1階に到着。時間を確認すると、展望室に向かった時から換算してわずか19分。なんとそんな短い時間だったかと驚いた。接種者の減少も影響しているだろうが、オペレーションも磨きがかかっていた感じだ。そして接種から丸1日以上経過しても接種部位の軽い圧痛以外は何の変化もなし。いつも通りか。しかし、今春以降、私が接種する場合は完全な自費。1回あたりセンベロ10回分以上かかるという野暮な算盤を弾いてしまう。痛い出費になるが、止むを得ないと考えるしかない。

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diabetes mellitus(糖尿病)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第2回

言葉の由来糖尿病は英語にすると“diabetes mellitus”で、「ダイアビーティス メリタス」のような発音になります。言葉の由来は、「サイフォン」を意味するギリシャ語の“diabetes”(eの表記はeにマクロンを付した文字)と「蜂蜜のように甘い」を意味するラテン語の“mellitus”(iの表記はIにマクロンを付した文字)が組み合わさってできたとされています。糖尿病の歴史は古く、最古の記録は紀元前1,500年頃にエジプトで糖尿病の記載と思われる文章が認められています。詳しく記載されたのは古代ギリシャ時代(紀元1世紀)で、患者が過剰に尿を排泄する様子を医師がサイフォン(水が細い管を通っていったん高い位置に上がった後、低い位置に下りる装置)に例えたことから、この“diabetes”が病名として定着したとされています。その後、1,600年代に英国のトーマス・ウィリス医師が糖尿病患者の尿が甘いことに気付き、ラテン語で蜂蜜のような甘さを意味する“mellitus”を付け加え、“diabetes mellitus”と名付けました。なお、インドや中国の古代文明でも糖尿病を示唆する記録が残っており、多くの文化圏で「甘い尿が出る状態」は認知されていたようです。日本では、1,800年代に欧米から“diabetes mellitus”という病名が持ち込まれ、当初は「蜜尿病」などと訳されていましたが、蜜の成分が糖であることが知られ、「糖尿病」という名称に統一されました。しかしながら最近では、「糖が尿に出ない患者も多く、症状を正確に表していない」「尿という言葉が不潔なイメージにつながり、誤解や偏見を生んでいる」といった理由で、英語をカタカナにした「ダイアベティス」などの新しい呼称に変更することが提案されています。併せて覚えよう! 周辺単語前糖尿病状態prediabetes高血糖hyperglycemia妊娠糖尿病gestational diabetes尿崩症diabetes insipidus糖尿glycosuriaこの病気、英語で説明できますか?Diabetes is a condition that occurs when blood sugar levels are too high. It develops when a pancreas doesn't make enough insulin or doesn't make any at all, or when the body doesn't respond properly to the effects of insulin.講師紹介

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院外心停止患者への市民による心肺蘇生、AED使用で生存が2倍以上に/日本循環器学会

 院外心停止(OHCA)患者の予後を改善するためには、市民による質の高い心肺蘇生法(CPR)と自動体外式除細動器(AED)の即時使用率をさらに高める必要がある。総務省消防庁は、1994年に市民を対象としたCPRの認定講習会を全国で開始し、2019年には受講者が年間約200万人に及び、認定者数は増加傾向にある。しかし、市民のCPR普及率やOHCA患者の生存率に及ぼす影響については十分に検討されていなかった。そのため、虎の門病院の山口 徹雄氏らの研究グループは、市民介入によるCPRと、患者の1ヵ月後の転帰との関連を評価した。本結果は、3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1にて、山口氏が発表した。なお本研究はResuscitation誌2024年2月号に掲載された1)。 本研究では、総務省消防庁が2005年より開始した国内のOHCAレジストリであるAll Japan Utstein Registry Dataを用いた。2005~20年に登録されたOHCA患者35万8,025例から、市民が居合わせた心室細動または無脈性心室頻拍の初期リズムがショック適応の患者7万3,387例を抽出し、心肺蘇生講習会認定者数と全国の市民によるCPR実施率との関連をポアソン分布とコクラン・アーミテージ検定による傾向検定により解析した。市民が実施したCPRを、胸骨圧迫のみ、胸骨圧迫と人工呼吸、胸骨圧迫と人工呼吸とAEDの使用で分類し、転帰との関連について多変量混合ロジスティック回帰分析を用いて評価した。主要評価項目は1ヵ月後の神経学的に良好な生存、副次評価項目は病院到着前の蘇生と1ヵ月後の生存とした。 主な結果は以下のとおり。・CPR講座の累積認定者数は、2005年の993万327人から直線的に増加し、2020年には3,493万8,322人であった(年間増加率:1.03、p<0.001)。これは15歳以上の日本人の32.3%を占める。・OHCA患者は、2005年では1万7,414例(年齢中央値 75歳[IQR 64~84])だったが、2020年には2万4,291例(80歳[IQR 70~87])に増加、高齢化していた。・居合わせた市民(バイスタンダー)による心肺停止患者へのCPR実施率は、2005年の40.63%から2020年には56.79%へと一貫して増加していた(傾向のp<0.001)。・2005~20年の初期リズムがショック適応のOHCA患者7万3,387例のうち、CPRを受けたのは4万1,678例(56.8%)であった。・CPRを受けた患者4万1,678例のうち、胸骨圧迫は98.28%、人工呼吸は22.81%、AEDの使用は8.41%の症例に施行された。・臨床転帰について市民によるCPR実施(CRP+)群とCPRを実施しなかった(CRP-)群を比較すると、以下のすべてにおいてCPR+群のほうが転帰が良好であった。 -神経学的に良好な1ヵ月後の生存率は、CPR+群:25.54% vs.CPR-群:15.5%(p<0.001)。 -1ヵ月後の生存率は、35.30% vs.26.47%(p<0.001)。 -1ヵ月後の生存者のうち神経学的に良好な者の比率は、72.36% vs.58.74%(p<0.001)。 -病院到着前の蘇生率は、35.42% vs.27.01%(p<0.001)。・市民のCPRのエンゲージメントが高いほど、患者の神経学的に良好な1ヵ月後の生存率が高いことが示された。CRP+群のエンゲージメント分類別に、CRP-群と比較した転帰は以下のとおり。 -胸骨圧迫のみ オッズ比(OR):1.24(95%信頼区間[CI]:1.02~1.51、p=0.029)。 -胸骨圧迫+人工呼吸 OR:1.33(95%CI:1.08~1.62、p=0.006)。 -胸骨圧迫+AED OR:2.27(95%CI:1.83~2.83、p<0.001)。 -胸骨圧迫+人工呼吸+AED OR:2.15(95%CI:1.70~2.73、p<0.001)。 本研究により、CPRの市民への普及率は着実に増加しており、OHCA患者に対して市民のCPR実施はCPRをしなかった場合と比較して、患者の1ヵ月後転帰を有意に改善していたことが示された。山口氏は発表の最後に、CPR教育が普及しているデンマークと日本を比較し、日本では市民によるCPR実施率57%、全OHCA患者の1ヵ月後の生存率9.7%に対して、デンマークでは市民によるCPR実施率77%で、全OHCA患者の1ヵ月後の生存率が16%に及ぶことを挙げ、日本でさらにCPR実施率を上げるためには、デンマークのように学校でのCPR講習の義務化、および自動車運転免許更新でのCPR講習の義務化が効果的ではないかと指摘した。また、8.4%に留まっているAED使用率を上げるには、AEDの設置場所や使用法を確認するためのスマートフォン用アプリ2,3)の使用や、諸外国で使用されているドローンを用いたAEDの配送システムの導入を推奨した。

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日本での大腸がん手術の転帰、月~木曜日vs.金曜日

 英国での大規模な後ろ向き研究で、待機的手術における30日以内の死亡リスクが月曜日で最も低く、週末に向けて増加することが報告されている1)。平日(月~金曜日)の間でもこのように差が見られる「weekday effect」については、まだ議論の余地がある。今回、広島大学の今岡 洸輝氏らは、StageI~III大腸がんの待機的手術を対象とした多施設共同後ろ向き解析を実施し、手術の曜日と短期アウトカムの関連を検討した。その結果、手術を金曜日に受けた患者は金曜日以外に受けた患者より術後合併症の発生率が高く、術後入院期間も長いことがわかった。Journal of Surgical Research誌2024年4月号に掲載。 本研究は、広島臨床腫瘍外科研究グループに属する15施設において、2017年1月~2019年12月に大腸がんの原発巣切除術を受けた2,574例を対象に解析した。手術日により金曜日と金曜日以外(月~木曜日)の2群に分け、傾向スコアマッチング後、30日死亡率と術後アウトカムを比較した。 主な結果は以下のとおり。・手術曜日は金曜日が368例、金曜日以外が2,206例で、全死亡率は0.04%(1例)であった。・結腸がん患者(1,685例)において、患者・腫瘍・手術の特性による傾向スコアマッチング後、金曜日のほうが手術時間はわずかに延長し、出血量はわずかに多かったが、臨床的に意味のある差はなかった。・直腸がん患者(889例)において、傾向スコアマッチング後、金曜日のほうが術後合併症(Clavien-Dind分類IIIa以上)の発生率・消化器系合併症の発生率が高く、術後入院期間が長かった。 著者らは「この結果はより高度な技術とスキルを必要とする大腸がん手術の曜日決定に役立つ可能性がる」とまとめた。

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ファセンラ、小児の難治性気管支喘息で製造販売承認(一部変更)取得/AZ

 アストラゼネカは、2024年3月26日付のプレスリリースで、ファセンラ皮下注30mg/10mg*シリンジ(一般名:ベンラリズマブ[遺伝子組換え])が、既存治療によっても喘息症状をコントロールできない、6歳以上の小児の難治の気管支喘息患者に対する治療薬として、日本で製造販売承認を取得したと発表した。*ファセンラ皮下注10mgシリンジの発売時期は未定 ファセンラは、ヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体製剤で、好酸球の表面に発現するインターロイキン-5受容体αに直接結合し、増強された抗体依存性細胞傷害活性によって好酸球を直接的に除去する。 既存治療によっても喘息症状をコントロールできない、小児の難治の気管支喘息患者に対する治療の新たな選択肢として、本剤は貢献できる薬剤になりうると期待される。

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初発統合失調症の脳ネットワークに対するアリピプラゾールの影響

 アリピプラゾールは、初発統合失調症患者のいくつかの脳内ネットワーク間の機能接続を調節し、臨床症状の改善に影響を及ぼす。しかし、統合失調症患者の広範な脳内ネットワーク間の異常接続に対するアリピプラゾールの作用は、依然として不明である。中国・首都医科大学のSitong Feng氏らは、大規模な脳内ネットワークの機能接続に対するアリピプラゾール12週間投与の影響を調査するため、縦断的研究を実施した。Journal of Psychiatric Research誌2024年3月号の報告。 対象は、初回エピソード時に薬物治療未実施の統合失調症患者45例および健康対照者45例。ベースライン時およびアリピプラゾール投与12週間後、安静時の磁気共鳴機能画像法(fMRI)データを収集した。統合失調症患者は、12週間治療後の臨床症状改善に応じて、治療反応群と非治療反応群に分類した。機能接続は、7つの大規模な脳内ネットワークに対し評価した。さらに、大規模な脳内ネットワークの機能接続変化と臨床症状との関連を調査するため、相関分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時、統合失調症患者は、健康対照者と比較し、広範な脳内ネットワークの機能接続の減少が認められた。・12週間のアリピプラゾール投与により、臨床症状の改善と関連し、治療反応群の皮質下ネットワーク、デフォルトモードネットワーク、その他の脳内ネットワークの持続的な機能接続の減少を抑制した。 著者らは「本発見は、統合失調症患者の大規模な脳内ネットワークにおける機能接続に対するアリピプラゾールの作用を明らかにしており、統合失調症における症状改善の理解に、新たな洞察を与える可能性がある」としている。

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出生率は世界的に低下、2100年までの予測/Lancet

 世界的に出生率が低下しており、2021年は、半数以上の国・地域で人口置換水準値を下回っていたこと、2000年以降の傾向として出生率の下がり方には大きな不均一性がみられ、最低出生率が観察された後にわずかでも回復した国はごく少数であり、人口置換水準値へと回復した国はなかったことが示された。さらには、世界中の出生数の分布が変化しており、とりわけ低所得国が占める割合が増加していたという。米国・ワシントン大学のSimon I. Hay氏らGBD 2021 Fertility and Forecasting Collaboratorsが解析結果を報告した。今回の結果を踏まえて著者らは、「出生率は、将来的に世界中で低下し続け、出生促進政策の実施が成功したとしても低いままとなるだろう。これらの変化は、高所得国における高齢化の進展と労働力の減少に加え、すでに最貧地域で出生率が増加していることで、広範囲にわたる経済的および社会的な影響をもたらすだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年3月20日号掲載の報告。GBD 2021のデータを用いて解析 研究グループは、8,709国年の人口動態登録と標本登録、1,455件の調査と国勢調査、および150のその他の情報源から得られたデータを統合し、混合効果回帰モデルおよび時空間ガウス過程回帰モデルを用いて、10歳から54歳までの5歳ごとの年齢別出生率(ASFR)を算出し、ASFRより合計特殊出生率(TFR)を推計するとともに、ASFRと年齢別の女性人口を掛けて出生数を算出した。 保健指標評価研究所(IHME)の予測モデルを用いて2100年までの将来の出生率を予測するとともに、参照シナリオと政策に依存する重要な代替シナリオに基づいて、2100年までの出生率指標を予測した。出生率は1950年以降、すべての国・地域で低下 1950~2021年に、世界のTFRは4.84(95%不確定区間[UI]:4.63~5.06)から2.23(2.09~2.38)へ減少した。世界の年間出生数は、2016年に1億4,200万人(95%UI:137~147)とピークに達した後、2021年には1億2,900万人(121~138)まで減少した。 出生率は1950年以降すべての国・地域で低下し、2021年にTFRが2.1(人口置換水準出生率)を上回ったのは94の国・地域(46.1%)であった。この94の中には、サハラ以南のアフリカ46ヵ国中44ヵ国が含まれ、2021年の出生数の割合が最も多いsuper-region(29.2%、95%UI:28.7~29.6)であった。 1950~2021年に、推定出生率の最低値が人口置換水準を下回った47の国・地域では、その後1年以上出生率が上昇したが、人口置換水準以上に回復したのは3つの国・地域のみであった。TFR予想、2050年に1.83、2100年に1.59 将来にわたって出生率は世界的に低下を続け、参照シナリオでは世界全体のTFRは2050年に1.83(95%UI:1.59~2.08)、2100年に1.59(95%UI:1.25~1.96)と予測された。出生率が人口置換水準を上回る国・地域は、2050年には49(24.0%)、2100年にはわずか6(2.9%)と予測され、この6ヵ国・地域のうち3ヵ国・地域は2021年の世界銀行の定義する低所得グループに含まれ、すべてがサハラ以南のアフリカのGBD super-regionに位置していた。 出生数の割合は、サハラ以南のアフリカで2050年には41.3%(95%UI:39.6~43.1)、2100年には54.3%(47.1~59.5)と、世界の半数以上を占めると予測された。出生数の割合は、他の6つのsuper-regionのほとんどは2021年から2100年の間に減少すると予測され、たとえば、南アジアでは2021年24.8%(95%UI:23.7~25.8)から2050年16.7%(14.3~19.1)、2100年7.1%(4.4~10.1)に減少するが、北アフリカ、中東、および高所得のsuper-regionでは緩やかに増加すると予測された。 代替複合シナリオの予測では、教育と避妊に関するSDGs目標の達成と出生促進政策の実施により、世界のTFRが2050年には1.65(95%UI:1.40~1.92)、2100年には1.62(1.35~1.95)になることが示唆された。

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高齢者への2価コロナワクチン、脳卒中リスクは?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するファイザー製またはモデルナ製のいずれかの2価ワクチンを接種後に脳卒中を発症した65歳以上の米国メディケア受給者において、接種直後(1~21日間)に脳卒中リスクが有意に上昇したことを示すエビデンスは確認されなかった。米国食品医薬品局(FDA)のYun Lu氏らが、自己対照ケースシリーズ研究の結果を報告した。2023年1月、米国疾病予防管理センター(CDC)とFDAは、ファイザー製の「BNT162b2」(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)を接種した65歳以上の高齢者における虚血性脳卒中に関する安全性の懸念を指摘していた。JAMA誌2024年3月19日号掲載の報告。2価コロナワクチン接種後に脳卒中を発症した65歳以上約1万例を検証 研究グループは、BNT162b2(ファイザー製)またはmRNA-1273.222(モデルナ製)いずれかの2価コロナワクチン接種後に脳卒中を経験した65歳以上のメディケア受給者1万1,001例を含む、自己対照ケースシリーズ研究を行った。本研究の期間は2022年8月31日~2023年2月4日である。 主として着目したのは2価コロナワクチン後の脳卒中であったが、高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンにも着目し、(1)いずれかの2価コロナワクチンを接種、(2)いずれかの2価コロナワクチンと同日に高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンを接種、(3)高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンを接種した場合における脳卒中リスク(非出血性脳卒中、一過性脳虚血発作、非出血性脳卒中または一過性脳虚血発作の複合アウトカム、または出血性脳卒中)を、ワクチン接種後1~21日または22~42日のリスクウィンドウと、43~90日の対照ウィンドウとの間で比較した。 脳卒中リスクについて、主要解析として2価コロナワクチン接種と、副次解析として高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンとの関連を評価した。製品によらず2価コロナワクチン接種直後の脳卒中リスク上昇は認めず いずれかの2価コロナワクチンを接種したメディケア受給者は、539万7,278例であった(年齢中央値74歳[四分位範囲[IQR]:70~80]、女性56%)。BNT162b2接種者は317万3,426例、mRNA-1273.222接種者は222万3,852例。 いずれかのワクチン接種後に脳卒中を発症した1万1,001例において、製品の違い、リスクウィンドウ(1~21日または22~42日)と対照ウィンドウとの比較評価で、非出血性脳卒中、一過性脳虚血発作、非出血性脳卒中または一過性脳虚血発作の複合、または出血性脳卒中との間に、統計学的に有意な関連は認められなかった(発生率比[IRR]の範囲:0.72~1.12)。高用量/アジュバント付加型インフルエンザワクチン併用接種者で有意な関連 いずれかのワクチン+高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンの併用接種後に脳卒中を発症した4,596例では、BNT162b2の場合、接種後22~42日のリスクウィンドウで、ワクチン接種と非出血性脳卒中との間に統計学的に有意な関連が認められた(IRR:1.20[95%信頼区間[CI]:1.01~1.42]、接種10万回当たりのリスク差:3.13[95%CI:0.05~6.22])。mRNA-1273.222の場合、接種後1~21日のリスクウィンドウで、ワクチン接種と一過性脳虚血発作との間に統計学的に有意な関連が認められた(IRR:1.35[95%CI:1.06~1.74]、接種10万回当たりのリスク差:3.33[95%CI:0.46~6.20])。 また、高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチン接種後に脳卒中を発症した2万1,345例において、接種後22~42日のリスクウィンドウで、ワクチン接種と非出血性脳卒中との間に有意な関連が確認された(IRR:1.09[95%CI:1.02~1.17]、接種10万回当たりのリスク差:1.65[95%CI:0.43~2.87])。

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麻疹ワクチン不足、定期接種を最優先に/日医

 日本医師会常任理事の釜萢 敏氏が、2024年3月27日の定例記者会見で、現在の麻疹(はしか)の流行状況について報告した。 麻疹の届け出は、2019年は744例、2020年は10例、2021年は6例、2022年は6例、2023年は28例であったが、本年は3月17日までに20例あり、海外から持ち込まれる麻疹の感染者が着実に増えてきているという認識を示した。そのような中で、麻疹含有ワクチンの接種を希望する人が増え、それによって定期接種のMR(麻疹風疹混合)ワクチンが入手できないという懸念が寄せられているという。 そのような状況を踏まえて、定期接種(第1期、第2期)を最優先で行い、ワクチンは例年の接種実績に応じた数を適切に発注するように呼びかけるとともに、日本医師会として今後のワクチンの需要と供給を注視していくとまとめた。

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