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1型DM、週1回insulin icodec vs.1日1回インスリン デグルデク/Lancet

 1型糖尿病の成人患者において、週1回投与のinsulin icodec(icodec)は26週時の糖化ヘモグロビン値(HbA1c)低下に関して、1日1回投与のインスリン デグルデクに対し非劣性であることが認められたが、臨床的に重大な低血糖または重症低血糖の合併が有意に高率であった。英国・Royal Surrey Foundation TrustのDavid Russell-Jones氏らが、12ヵ国の99施設で実施された52週間の無作為化非盲検第IIIa相試験「ONWARDS 6試験」の結果を報告した。著者は、「1型糖尿病の特性を考慮すると、基礎インスリン注射を毎日から週1回に変更することは困難な可能性があるが、持続血糖モニタリングのデータとリアルワールド研究のさらなる解析により、icodec週1回投与の低血糖リスク軽減のための投与量調節に関する洞察が得られる可能性はある」とまとめている。Lancet誌2023年10月17日号掲載の報告。1型糖尿病患者約600例を無作為化 研究グループは、インスリン治療歴が1年以上でHbA1c値が10.0%未満の1型糖尿病成人患者を、icodec週1回皮下投与群(icodec群)またはインスリン デグルデク1日1回皮下投与群(デグルデク群)に、1対1の割合に無作為に割り付けた。両群とも、インスリン アスパルト(1日2回以上、食直前皮下投与)との併用下で、52週間(icodecの最終投与は51週目)投与した。なお、本試験は、スクリーニング期間2週間、治療期間52週間(主要評価期間26週間、安全性延長期間26週間)、追跡期間5週間で構成された。 主要エンドポイントは、26週時におけるベースラインからのHbA1cの変化量で、無作為化されたすべての患者を解析対象とし、非劣性マージンを両群の差の95%信頼区間(CI)の上限が0.3%未満とした。 2021年4月30日~10月15日に655例がスクリーニングされ、このうち582例がicodec群(290例)またはデグルデク群(292例)に割り付けられた。全例が1回以上試験薬の投与を受け、有効性および安全性の解析対象集団となった。26週時点で血糖コントロール改善は同等だが、臨床的に重大な低血糖はicodecで多い icodec群およびデグルデク群のHbA1c値は、ベースラインでそれぞれ7.59%、7.63%から、26週時には推定平均変化量として0.47%、0.51%低下した。推定平均変化量の群間差は0.05%(95%CI:-0.13~0.23)であり、icodec群のデグルデク群に対する非劣性が確認された(p=0.0065)。 ベースラインから26週時までの臨床的に重大な低血糖(54mg/dL未満)または重症低血糖の発生頻度は、icodec群19.9件/人年、デグルデク群10.4件/人年で、icodec群が統計学的に有意に高かった(推定率比:1.9、95%CI:1.5~2.3、p<0.0001)。57週時の評価においても、icodec群ではデグルデク群と比較し臨床的に重大な低血糖または重症低血糖の発生頻度が統計学的に有意に高かった(17.0件/人年vs. 9.2件/人年、推定率比:1.8、95%CI:1.5~2.2、p<0.0001)。 重篤な有害事象は、icodec群で24例(8%)に39件、デグルデク群で20例(7%)に25件報告された。icodec群で頭蓋内出血による死亡が1例認められたが、icodecとの関連性は低いと判断された。

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関節形成術の感染予防、バンコマイシン追加は有効か/NEJM

 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の保菌が確認されていない関節形成術を受ける患者において、セファゾリンによる標準的な周術期抗菌薬予防投与にバンコマイシンを追加しても手術部位感染予防効果は改善しないことが示された。オーストラリア・モナシュ大学のTrisha N. Peel氏らが、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Australian Surgical Antibiotic Prophylaxis trial:ASAP試験」の結果を報告した。現行ガイドラインでは、関節形成術における感染予防としてセファゾリンや第2世代セファロスポリン系抗菌薬の投与が推奨されているが、MRSAやメチシリン耐性表皮ブドウ球菌の感染は予防できない恐れがある。バンコマイシンの追加で手術部位感染が減少する可能性があるが、有効性および安全性は不明であった。NEJM誌2023年10月19日号掲載の報告。術後90日以内の手術部位感染の発生を評価 研究グループは、関節形成術を受ける18歳以上の患者で、MRSAの感染/コロニー形成が証明されていない、またはその疑いがない患者を、セファゾリンによる標準的な周術期抗菌薬予防投与に加えて、バンコマイシン1.5g(体重50kg未満の患者では1g)を静脈内投与する群(バンコマイシン群)または生理食塩水を投与する群(プラセボ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 有効性の主要アウトカムは、術後90日以内のすべての手術部位感染(表層切開創、深部切開創および臓器/体腔感染)の発生。安全性アウトカムは、急性腎障害、抗菌薬に対する過敏反応、180日死亡などであった。 2019年1月15日~2021年10月29日に4,239例が無作為化された(新型コロナウイルス感染症の流行により手術が長期にわたり中断されたため、計画された4,450例の98.0%に当たる4,362例が登録された時点で試験終了となった)。 4,239例中、割り付けられて手術を受けた4,113例(膝関節形成術2,233例、股関節形成術1,850例、肩関節形成術30例)が修正ITT集団に組み入れられた。バンコマイシン上乗せの有効性は認められず、膝関節形成術ではむしろ感染が増加 修正ITT集団4,113例において、手術部位感染はバンコマイシン群で2,044例中91例(4.5%)、プラセボ群で2,069例中72例(3.5%)に発生し、相対リスクは1.28(95%信頼区間[CI]:0.94~1.73、p=0.11)であった。 膝関節形成術における手術部位感染の発生率は、バンコマイシン群5.7%(63/1,109例)、プラセボ群3.7%(42/1,124例)、相対リスクは1.52(95%CI:1.04~2.23)であった。一方、股関節形成術における手術部位感染の発生率はそれぞれ3.0%(28/920例)、3.1%(29/930例)、相対リスクは0.98(95%CI:0.59~1.63)であった。 有害事象は、バンコマイシン群で2,010例中35例(1.7%)、プラセボ群で2,030例中35例(1.7%)に発現した。過敏反応はそれぞれ24例(1.2%)、11例(0.5%)(相対リスク2.20、95%CI:1.08~4.49)、急性腎障害は42例(2.1%)および74例(3.6%)(相対リスク0.57、95%CI:0.39~0.83)に認められた。

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第183回 肺炎球菌ワクチン、接種率向上のため専門家が政府に訴えていること

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対するオミクロン株XBB.1.5対応ワクチンの接種が9月20日に開始され、1ヵ月超が経過した。首相官邸のHPで公開されている接種率は、10月17日時点で5.8%、65歳以上の高齢者のみで見ると15.2%。数字だけを見ればあまり高くないが、自治体のサイトでは予約に難渋する。もう90歳近い実家の両親も「11月上旬まで予約が入らなかった」とぼやいていた。その意味では今はそれほど高くない接種率も徐々に上昇してくるだろうと考えられる。一方、この時期からすでにインフルエンザも流行し、こちらのワクチンもなかなか予約が取りづらいという。そして今後のことを考えると、とくに65歳以上の高齢者では小児並みと言えばやや大げさになるが、ワクチン接種スケジュールが複雑になってくる可能性がある。まず、現在の新型コロナワクチンは、定期接種化に向けた議論がすでに始まっているが、高齢者については定期接種になる可能性が高い。また、先日、60歳以上の高齢者を対象としたRSウイルスワクチンが承認されたばかり。これも当然ながら今後は定期接種化が視野に入ってくるはずだ。つまり将来的に高齢者では既存の定期接種であるインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンにこれらも加えた4種類のワクチン接種が将来的に求められることを視野に入れておかねばならない。この中で比較的地味な存在が肺炎球菌ワクチンである。ここでは釈迦に説法だが、肺炎球菌は市中の細菌性肺炎の最大の起炎菌で血清型は約100種類、うち病原性がとりわけ高いのは主に8種類。肺炎球菌に感染すると、肺炎を発症するに留まらず、髄液や血液から肺炎球菌が検出される髄膜炎や菌血症を起こした侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)に至れば、死亡リスクが上昇する。IPDは感染症法上5類に分類されているが、全数把握対象となっており、国立感染症研究所感染症疫学センターによる2017年の感染症発生動向の集計では致命率は6.08%。成人(そのほとんどが高齢者)ではこれが19%との報告もある。新型コロナの最新の致命率が60代以下では0.1%未満、最も高い90代以上でも2.60%という現実を考えれば、明らかにIPDはよりタチが悪いとも言うことができるだろう。前述の同センターのデータでは、国内全体の人口10万人当たりのIPD報告数は2.467人だが、5歳未満の小児では9.369人、65歳以上の高齢者では5.341人と、この2つの年齢層で極端に高くなる。このため日本での肺炎球菌ワクチン接種は、2013年4月から生後2ヵ月以上5歳未満の小児(最大接種回数4回)、2014年10月から65歳の高齢者、60~64歳で基礎疾患がある人(接種回数1回)を対象に定期接種がスタートした。このうち65歳超の高齢者については、同年以降、経過措置として毎年70~100歳までの5歳刻みの年齢になる人を定期接種の対象者に加え、現在まで継続している。当初、小児への使用ワクチンは、7種類の血清型に対応した沈降7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7、商品名:プレベナー7)が用いられたが、その7ヵ月後には沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13、商品名:プレベナー13)に切り替わり、高齢者では23種類の血清型に対応した23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン(PPSV23、商品名:ニューモバックスNP)が用いられている。このほかには定期接種には用いられていないものの、沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15、商品名:バクニュバンス)がある。ちなみにワクチンマニアを自称する私の場合、任意接種でPCV13を接種済みである。しかし、とりわけ高齢者での接種率は芳しくない。2019~21年の接種率は13.7~15.8%。もっともこの接種率は、分母となる推計対象人口から過去に接種済みの人を除いていないため、実際の接種率よりは低めの数字と言われている。しかし、現実の接種率がこの2倍だとしても、高齢者のインフルエンザワクチン接種率50%超と比べて明らかに見劣りする。さらに付け加えれば、2022年度から接種勧奨が再開されたヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、その前年の2021年度の3回目接種の接種率ですら26.2%。つまり肺炎球菌ワクチンの接種率は、HPVワクチン並みに低いのが現状である。実際、定期接種開始時に定められた前述の高齢者向けの経過措置は当初5年間限定の予定だったが、2018年10月の厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会で、低接種率に対する懸念が寄せられ、2019年からさらに経過措置を5年間延長することが決定した。まさに現在の2023年度は延長された経過措置の最終年度に当たるが、それでもなお接種率が十分とは言えない。専門家が考える2つの理由東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授の舘田 一博氏は、低接種率の要因の1つとして接種対象者の仕組みが複雑であることを挙げる。「高齢者を対象にした肺炎球菌ワクチンの定期接種は、公的補助が生涯1回のみにもかかわらず、毎年65歳以上を起点に、70歳、75歳など5歳刻みの人が公費補助対象となるのは一般的には非常にわかりにくい。1回通知が来たくらいでは忘れる人もいるだろうし、それを逃すと次は5年後になると、高齢者では接種機会を事実上失ってしまうことにもなりかねない」この5年刻みという制度は、(1)肺炎球菌ワクチンの抗体価持続期間が5年前後(2)行政上の予算支出の最小化、が理由と言われる。このほかに低接種率の要因と考えられるのが法的位置付けだ。予防接種法で定める定期接種は、集団免疫獲得を念頭に法的な接種努力義務、自治体の勧奨、全額公費負担があるA類疾病、個人的な予防を重視し、接種の努力義務と自治体の勧奨(自治体によって行っている場合もあり)がなく、費用が一部公費補助のB類疾病がある。肺炎球菌ワクチンは後者で公的関与・支援が薄い。B類にはインフルエンザもあるが、こちらの場合は毎年流行する特性ゆえにメディアでの報道も含めて接種の呼びかけがあり、接種者の自己負担額は政令指定都市20都市でみると、おおむね1,500円前後(最低は京都市の75歳以上限定の1,000円、最高は横浜市、川崎市の2,300円)。これに対し、肺炎球菌はインフルエンザほど一般人には知られておらず、接種者の自己負担額も4,500円前後とインフルエンザワクチンの約3倍(最低は横浜市の3,000円、最高は仙台市の5,000円)。その意味で疾患・ワクチンの知名度と経済的負担で不利である。こうしたことを踏まえて日本感染症学会などの23学術団体で構成される予防接種推進専門協議会は2022年9月に厚生労働省健康局長宛に高齢者での肺炎球菌ワクチン接種に関して、努力義務や接種勧奨の要件を再検討するよう要望書を提出している。舘田氏は「これまで5歳刻みの接種対象者で10年実施しても接種率が十分とは言えない現状を鑑みれば、今後、経過措置を延長するとしても65歳以上の任意の時期に1回接種可能など、制度運営に柔軟性を持たせたほうが接種率向上につながりやすいだろう」との見解を示す。これらはいわば一般生活者目線で考えた低接種率の要因だが、医療従事者から見ても接種対象者が5年刻みはやや複雑である。さらに医師側からすると市販の肺炎球菌ワクチンが3種類ありながら、高齢者の定期接種での使用はPPSV23のみという点はわかりやすい反面、これまた柔軟性に欠けるとの指摘もある。たとえば高齢者よりも小児の受診者が多い開業医などではPCV13で在庫を統一できれば効率的だが、現状ではそうはいかない。結果として、これも低接種率に拍車をかけているとの声もある。この使用ワクチンの違いは、PPSV、PCVそれぞれの長所短所に起因している。現状のPPSVはPCVよりも対応血清型が多いが、免疫原性で見ると逆にPPSVよりもPCVのほうが高い。このため免疫細胞が未熟な小児では、PPSVで十分な免疫応答が得られず、PCVが用いられているという事情がある。さらに海外の高齢者向け肺炎球菌ワクチン接種プログラムでは、アメリカやイタリアのように最初にPCV13接種で高い抗体価を獲得後にPPSV23接種で広範囲な血清型に対する抗体を獲得する連続接種が推奨されている事例もある(このうちアメリカは連続接種の代替として日本未承認の20価PCVの接種も推奨)。この点について舘田氏は次のように語る。「PPSV23は対応血清型以外にも使用経験が長く、より安全性が確保されている利点はある。とはいえPCV13やPCV15でもIPDリスクが高い血清型は十分にカバーされ、両ワクチンに共通する血清型に対する抗体価はPCVのほうがやや高く、PCVはPPSVにはない免疫記憶効果もある。ただし、一部の国のように両者の連続接種を行えば、接種体制が複雑になる。これらを考慮すれば、高齢者の肺炎球菌ワクチンの定期接種では、まずは接種率の上昇を目標に、3種類のどれかを接種すれば良いとする運用のほうが妥当ではないか」冒頭で触れたように、今後、高齢者で使用できるワクチンの種類の増加は必至の情勢だ。前述したようにRSウイルスワクチンだけではなく、昨今は新たに使えるようになった帯状疱疹ワクチンに対する啓蒙も盛んに行われ、接種希望者に独自の助成をしている自治体もある。さらに新型コロナワクチンで利用されたメッセンジャーRNA技術の実用化で、これを利用した新たなワクチンの開発競争も激化してくる。舘田氏は「(製薬企業の)ビジネスの観点に単純に流されるのではなく、公衆衛生と公的予算の枠内でのコストパフォーマンスを念頭に、より厳密にどのワクチンが必要かつ優先されるか、という位置付けを国、学会、企業が真剣に考える時期が到来している」と語っている。その意味では、こと肺炎球菌ワクチンに関しては、行政上のコストパフォーマンスに基づく現状の接種体制が接種率向上の最大の阻害要因と言えるかもしれない。

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アジアの緩和ケアについて【非専門医のための緩和ケアTips】第62回

第62回 アジアの緩和ケアについて今回は日常の臨床から離れ、海外に目を向けたいと思います。2023年10月にアジア全域の緩和ケアに関する国際学会が韓国で開催されます。国際学会と聞くとワクワクしますよね。今回はそんな国際的な緩和ケアの話題について、お話しします。今回の質問先日、メディアで海外の支援活動をしている医師が取り上げられていました。緩和ケア領域においても、こういった国際的な交流はあるのでしょうか?今回は、これまであまり触れてこなかった話題に関するご質問をいただきました。緩和ケアを通じた国際交流、期待で胸が膨らみますよね。実は、今私が最も関心があり、将来的に活躍の場を広げたいのが、この領域です。10月に韓国で開催される「第15回アジア太平洋ホスピス緩和ケア会議 APHC(Asia Pacific Hospice Palliative Care)2023」に参加します。これはアジアの各国が参加する、アジアで最大級の緩和ケアに関する国際学会です。とくに研究領域では、アジア各国の若手が今後の国際的な研究の取り組みを議論するなど、刺激的な場です。私が今回参加する目的は、各国で異なる緩和ケアの提供モデルを共有し、私たちの取り組む緩和ケアをより良くするアイデアを得るためです。私も10年以上緩和ケア領域に従事し、患者さんに必要なさまざまなことに取り組んできました。そして、「今後10年、さらに何に取り組んでいくかべきか」を考える時期にあります。まったく異なる環境で緩和ケアを実践している方と議論することが、知らず知らずのうちに自分がつくっていた“限界”を取っ払ってくれるのではないか、と期待しています。先日、私の病院にカンボジア出身の医師が見学に来たのですが、彼の話もいろいろ考えさせられました。カンボジアは内戦などがあり、医療体制はこの30年ほどでつくられたものです。緩和ケアなどの領域はまだ広がっておらず、緩和ケアを教え、広げる人材もこれから育てていく必要がある、という話でした。さらに数年前、インドネシアやフィリピンの医療従事者と話した際は、多くの島に人口が分布している地理的特性の中でどのように緩和ケアを提供するのか、というのが大きな問題となっていました。日本でも沖縄をはじめとした離島医療において議論されるテーマです。こうしてみると、日々の臨床から少し視野を広げ、アジア各国における緩和ケアが置かれた状況を考えることが、自分たちの強みと今後の伸び代を考える機会になるかもしれません。今回のTips今回のTipsアジアの一員としての日本を、緩和ケアを通じて意識してみるのも刺激になりますよ。

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新型コロナによる多臓器不全のメカニズム、iPS細胞由来オルガノイドで解明/阪大ほか

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染によって起きる特徴的な症状の1つとして全身の血管で血栓が形成され、多臓器不全につながることは知られていたが、そのメカニズムについては明らかではなかった。大阪大学ヒューマン・メタバース疾患研究拠点(WPI-PRIMe)の武部 貴則氏ほか、東京医科歯科大学、タケダ-CiRA共同研究プログラム(T-CiRA)、滋賀医科大学、名古屋大学の共同研究グループは、ヒトiPS細胞由来の血管オルガノイド※1を作成し、それを用いたin vitroおよびin vivo実験で、補体代替経路※2と呼ばれる分子経路群が血管炎や血栓の原因となりうることを発見した。さらに、補体代替経路を増幅するD因子に着目し、D因子を阻害する半減期延長型抗D因子抗体を用いることで、SARS-CoV-2感染モデルの血管炎症状の軽減に成功した。本研究結果は、Cell Stem Cell誌2023年10月5日号に掲載された。 COVID-19が重症化すると、免疫細胞や血小板が活性化し血栓の形成が促進され、サイトカインストームを引き起こす。研究グループは、SARS-CoV-2感染による血管炎、血栓形成が生じる過程の詳しいメカニズムを解明するため、SARS-CoV-2感染によって生じる血管炎に類似した症状を再現することが可能なヒトiPS細胞由来血管オルガノイドモデルを開発することに成功した。それを用いてin vitroおよびin vivoで実験を行った。 主な結果は以下のとおり。・オルガノイドを用いたin vitro感染実験による網羅的遺伝子発現解析や、重症患者の血液検体の網羅的タンパク質発現解析データなどから、補体代替経路が血管炎の症状が強い人でとくに上昇していることを認めた。・オルガノイドを事前に移植し、ヒトのSARS-CoV-2感染状態を模倣する血管を再構成した動物を用いて、補体代替経路を薬理学的に阻害することで、血管炎・血栓形成の症状を緩和できることを発見した。・上記の結果から、補体代替経路を阻害する薬剤があれば、血管炎の治療につながる可能性があると仮説を立て、補体代替経路の構成成分でもあるD因子に着目し、網内系に移行した抗体がリサイクルされる仕掛けを施した半減期延長型抗D因子抗体を用いて効果を評価した。・サルのSARS-CoV-2感染モデル試験を用いて、抗D因子抗体が血管炎に重要な経路を阻害することで、補体の活性化を抑制し、免疫反応を弱め、血管保護効果を示すことを実証した。 本研究では、SARS-CoV-2感染によって生じる血管炎の症状を再現するヒト血管オルガノイドによって再現した、新しい疾患モデルが確立された。これにより、SARS-CoV-2をはじめ血管に病変が出るさまざまなウイルスによる感染症の研究への有効活用が期待される。また、COVID-19重症患者データと感染症モデルを組み合わせることにより、補体代替経路を起点とする血管炎のメカニズムを解明した。本成果により、補体代替経路を指標とした診断技術の構築や、血管炎・血栓形成を予防する新たな治療薬の開発につながることが期待される。※1 オルガノイドとは、幹細胞の自己組織化能力を活用して創出される、臓器あるいは組織の特徴を有する立体組織のこと。※2 補体は、抗体が異物を捉えた後に、抗体の働きを補う役割をする。補体の活性化の経路にはいくつかあり、補体代替経路は抗体がまだ作られていない場合の緊急の経路と考えられている。

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早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブによるEFS改善、5年後も持続(KEYNOTE-522)/ESMO2023

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対して、術前および術後補助療法としてペムブロリズマブの追加を検討したKEYNOTE-522試験では、ペムブロリズマブ追加により病理学的完全奏効率(pCR)および無イベント生存期間(EFS)が有意かつ臨床的に意味のある改善を示したことがすでに報告されている。今回、第6回中間解析(追跡期間中央値63.1ヵ月)でのEFSを解析した結果、pCRの結果にかかわらず、術前化学療法単独と比べて臨床的に意味のあるEFS改善が持続していたことを、英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University LondonのPeter Schmid氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。全生存期間(OS)の追跡調査は進行中である。・対象:未治療の転移のないTNBC患者(AJCC/TNM分類でT1c N1-2またはT2-4 N0-2、ECOG PS 0/1)・試験群:術前に化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルを4サイクル後、ドキソルビシン/エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)、術後にペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)を9サイクルあるいは再発または許容できない毒性発現まで投与(ペムブロリズマブ群、784例)・対照群: 術前に化学療法(試験群と同様)+プラセボ、術後にプラセボを投与(プラセボ群、390例)・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、EFS[副次評価項目]pCR(ypT0 ypN0およびypT0/Tis)、OS、PD-L1陽性例におけるpCR・EFS・OS、安全性 主な結果は以下のとおり。・今回の解析(データカットオフ:2023年3月23日)において、EFSイベントがペムブロリズマブ群で18.5%、プラセボ群で27.7%に認められた(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.49~0.81)。5年EFS率はペムブロリズマブ群81.3%、プラセボ群72.3%だった。・ペムブロリズマブによるEFSベネフィットは、PD-L1発現やリンパ節転移の有無など、事前に規定したサブグループで一貫していた。・事前に規定された非ランダム化探索的解析におけるpCRの結果別の5年EFS率は、pCR例でペムブロリズマブ群92.2% vs.プラセボ群88.2%、非pCR例でペムブロリズマブ群62.6% vs.プラセボ群52.3%であった。・5年遠隔無増悪/遠隔無再発生存率は、ペムブロリズマブ群84.4%、プラセボ群76.8%であった(HR:0.64、95%CI:0.49~0.84)。 Schmid氏は「これらの結果は、ペムブロリズマブとプラチナを含む術前補助療法後、pCRの結果によらずペムブロリズマブによる術後補助療法を行うレジメンを、高リスク早期TNBC患者に対する標準治療としてさらに支持する」と述べた。

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医療費に大きな影響を与える患者背景は?/慶應大ほか

 多疾患併存(マルチモビディティ)による経済的負担は、世界的な課題となっている。高額医療費患者における多疾患併存の寄与については不明な点が多いことから慶應義塾大学スポーツ医学研究センターの西田 優紀氏らの研究グループは、東京医科歯科大学、川崎医科大学、全国健康保険協会と共同して全国健康保険協会が提供する健康保険請求データを用いて横断研究を行い、日本人の医療費に大きな影響を与える多疾患併存パターンを解析した。その結果、上位10%の患者集団の95.6%で多疾患併存がみられたほか、高血圧症、糖尿病、脂質異常症を同時併発した患者が全集団の31.8%を占めることが判明した。PLoS One誌2023年9月28日の報告。男女で疾患傾向の違いも判明 横断研究として、2015年度に協会けんぽに加入していた18~65歳未満の被保険者1,698万9,029人の内、医療費が上位10%にあたる169万8,902人(高額医療費集団:医療費全体の約6割を占める)を解析対象とした。高額医療費集団に特徴的なマルチモビディティ・パターンの検討には潜在クラス分析の手法を用い、出現頻度の高い疾病コード(68病名)に基づいて30パターンに分類した。 主な結果は以下のとおり。・医療費が上位10%の集団では、95.6%がマルチモビディティに該当していた。・マルチモビディティ・パターン別の年間総医療費と1人当たりの年間医療費を確認したところ、糖尿病、高血圧症、脂質異常症を合併した広義のメタボリックシンドロームを含むパターンは7種類に分類され、それらの合計医療費は全体の約3割を占めていた。・1人当たりの医療費でみると、腎臓病のパターンが最も高額だった。・性別・年代別に30パターンの内訳を確認したところ、男性では30代でメタボリックシンドロームのパターンに分類される者の割合が20%を超え、その割合は50代以降では半数以上になっていた。・女性は40代までは周産期の疾患や月経前症候群などの女性特有のパターンの分類が半数近くを占めていたが、50代以降ではメタボリックシンドロームや運動器疾患のパターンに分類される患者が増えていた。

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EGFR変異陽性NSCLCに対するオシメルチニブへのラムシルマブ上乗せは有用か?(OSIRAM-1)/ESMO2023

 第1世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)とVEGF阻害薬ラムシルマブの併用はEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に有用であることが報告されているが、第3世代EGFR-TKIとの併用の有用性は明らかになっていない。そこで、第3世代EGFR-TKIのオシメルチニブとVEGF阻害薬ラムシルマブの併用療法の有用性を評価するOSIRAM-1試験が実施された。本試験の結果を北里大学病院/神奈川県立がんセンターの中原 善朗氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。試験デザイン:国内第II相無作為化比較試験対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19欠失変異、L858R変異)を有する進行NSCLC患者122例(症候性の脳転移を有する患者は除外)試験群:オシメルチニブ(80mg、1日1回)+ラムシルマブ(10mg/kg、隔週)を病勢進行または許容できない毒性の発現まで(併用群:59例)対照群:オシメルチニブ(同上)を病勢進行または許容できない毒性の発現まで(単独群:63例)層別化因子:性別、EGFR遺伝子変異の種類評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)に基づくPFS[副次評価項目]奏効率、安全性など 主な結果は以下のとおり。・2018年11月~2020年4月に122例の患者が組み入れられ、追跡期間中央値は36.0ヵ月であった。・BICRに基づくPFS中央値は併用群20.0ヵ月、単独群24.0ヵ月であり、有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.054、95%信頼区間[CI]:0.674~1.648、p=0.82)。・BICRに基づくPFSのサブグループ解析(post-hoc解析)において、75歳以上(HR:0.688、95%CI:0.250~1.895)、L858R変異(同:0.821、0.388~1.740)、脳転移あり(同:0.655、0.296~1.451)の集団で併用群が良好な傾向を示した。・併用群の治療期間中央値は、オシメルチニブが571日であったのに対し、ラムシルマブは140日であった。・Grade3以上の主な有害事象(いずれかの群で10%以上)は、CK上昇(併用群:1.7%、単独群:12.9%)、好中球数減少(それぞれ10.2%、3.2%)、高血圧(それぞれ16.9%、1.6%)であった。・血小板数減少(併用群:55.9%、単独群27.4%)、好中球数減少(それぞれ30.5%、25.8%)が併用群に多く認められ、ラムシルマブの治療中止に至った(血小板数減少による中止:14例、好中球数減少による中止:11例)。 本結果について、中原氏は「本試験において、オシメルチニブへのラムシルマブ上乗せの効果は認められなかったが、脳転移を有する患者においてPFSが改善する傾向がみられた。本試験ではラムシルマブ投与期間が想定よりかなり短く、併用療法による血小板数減少・好中球数減少に加え、新型コロナウイルス感染症のパンデミック期と重なったことで、隔週の来院が求められる併用群のラムシルマブ投与に悪影響が及んだ可能性がある」とまとめた。

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PSMA標的治療薬ルテチウム-177、タキサン未治療の転移を有する去勢抵抗性前立腺がんでrPFS改善(PSMAfore)/ESMO2023

 タキサン未治療でアンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)治療歴のある、前立腺特異的膜抗原(PSMA)陽性の転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者において、ルテチウム-177[177Lu]Lu-PSMA-617は別のARPIによる治療と比較して画像上の無増悪生存期間(rPFS)を改善し、良好な安全性プロファイルを示した。米国・メイヨー・クリニックのOliver Sartor氏が第III相PSMAfore試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。同試験については1次解析において主要評価項目(rPFS)の達成が報告されており(ハザード比[HR]:0.41、95%信頼区間[CI]:0.29~0.56、p<0.0001)、今回は2次解析結果となる。・対象:[68Ga]Ga-PSMA-11 PET/CTによるPSMA陽性、1種類の第2世代ARPIによる治療後に進行したタキサン未治療のmCRPC患者(ECOG PS 0~1) ・試験群:[177Lu]Lu-PSMA-617(7.4GBq±10%)を6週ごと6サイクル 234例・対照群:別のARPI(アビラテロンもしくはエンザルタミド) 234例※盲検下独立中央判定(BICR)評価によるX線所見の進行が認められた場合は試験群へのクロスオーバーが可能・評価項目:[主要評価項目]BICRによるrPFS[主要副次評価項目]RPSFTクロスオーバー調整解析による全生存期間(OS)[副次評価項目]PSA50、症候性骨関連事象(SSE)までの時間、健康関連QOL(HRQOL)、安全性など[探索的評価項目]奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)など 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の患者特性は、年齢中央値が試験群71歳vs.対照群72歳、ARPI治療歴はアビラテロンが50.9% vs.55.6%、PSA中央値18.4μg/L vs.14.9μg/Lで、その他の項目も両群でバランスがとれていた。・対照群においてX線所見の進行により治療中止となった146例中123例(84.2%)が試験群にクロスオーバーされた。・主要評価項目のBICRによるrPFS中央値は、試験群12.02ヵ月(95%CI:9.30~14.42)vs.対照群5.59ヵ月(95%CI:4.17~5.95)となり(HR:0.43、95%CI:0.33~0.54)、1次解析に引き続き達成された。・主要副次評価項目のRPSFT解析によるOS中央値は、試験群19.25ヵ月(95%CI:16.95~NE)vs.対照群19.55ヵ月(95%CI:14.95~NE)だった(HR:0.80、95%CI:0.48~1.33)。・ITT解析によるOS中央値は、試験群19.25ヵ月(95%CI:16.95~NE)vs.対照群19.71ヵ月(95%CI:17.81~NE)だった(HR:1.16、95%CI:0.83~1.64)。OSのデータ解析は引き続き行われる予定。・ORRは試験群50.7% vs.対照群14.9%、完全奏効は21.1% vs.2.7%。DOR中央値は13.63ヵ月(95%CI:11.56~NE)vs.対照群10.05ヵ月(95%CI:4.63~NE)だった。・PSA値について、ベースラインから50%以上の低下がみられたのは、試験群57.6% vs.対照群20.4%だった。・SSEまでの時間のHRは0.35(95%CI:0.22~0.57)、FACT-P QOL調査スコアのHRは0.59(95%CI:0.47~0.72)、BPI-SF疼痛強度スケールによる評価結果のHRは0.69(95%CI:0.56~0.85)だった。・Grade3以上の治療下で発現した有害事象(TEAE)は試験群33.9% vs.対照群43.1%で、多くみられたのは貧血(6.2% vs.6.0%)、口内乾燥(1.3% vs.0%)などだった。 Sartor氏は、クロスオーバー調整解析によるOSは[177Lu]Lu-PSMA-617群で良好な傾向がみられたもののITT解析によるOSではみられなかったことについて、84.2%という高いクロスオーバー率が関係している可能性があるとした。

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CAD患者へのスタチン、種類による長期アウトカムの差は?/BMJ

 冠動脈疾患(CAD)成人患者においてロスバスタチンvs.アトルバスタチンは、3年時点の全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中または冠動脈血行再建術の複合に関して有効性は同等であった。ロスバスタチンはアトルバスタチンと比較し、LDLコレステロール(LDL-C)値の低下に対して有効性が高かったが、糖尿病治療薬を必要とする糖尿病の新規発症および白内障手術のリスクが上昇した。韓国・延世大学校医科大学のYong-Joon Lee氏らが、韓国の病院12施設で実施した多施設共同無作為化非盲検試験「Low-Density Lipoprotein Cholesterol-Targeting Statin Therapy Versus Intensity-Based Statin Therapy in Patients With Coronary Artery Disease trial:LODESTAR試験」の2次解析結果を報告した。LDL-Cの低下作用はスタチンの種類によって異なり、冠動脈疾患患者におけるロスバスタチンとアトルバスタチンの長期的な有効性および安全性を直接比較した無作為化試験はほとんどなかった。BMJ誌2023年10月18日号掲載の報告。CAD患者4,400例をロスバスタチン群とアトルバスタチン群に無作為化 研究グループは2016年9月~2019年11月に、冠動脈疾患を有する19歳以上の患者4,400例を、2×2要因デザイン法を用いて、ロスバスタチン群(2,204例)またはアトルバスタチン群(2,196例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、3年時点の全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中・冠動脈血行再建術の複合で、副次アウトカムは安全性(糖尿病の新規発症、心不全による入院、深部静脈血栓症または肺塞栓症、末梢動脈疾患に対する血管内血行再建術、大動脈インターベンションまたは手術、末期腎不全、不耐容による試験薬の中止、白内障手術、および臨床検査値異常の複合)とした。3年時点の複合アウトカム、両群で同等 4,400例中4,341例(98.7%)が試験を完遂した。3年時点の試験薬の1日投与量(平均±SD)は、ロスバスタチン群17.1±5.2mg、アトルバスタチン群36.0±12.8mgであった(p<0.001)。 主要アウトカムの複合イベントは、ロスバスタチン群で189例(8.7%)、アトルバスタチン群で178例(8.2%)に確認され、ハザード比(HR)は1.06(95%信頼区間[CI]:0.86~1.30、p=0.58)であった。 投与期間中のLDLコレステロール値(平均±SD)は、ロスバスタチン群1.8±0.5mmol/L、アトルバスタチン群1.9±0.5mmol/Lであった(p<0.001)。 ロスバスタチン群はアトルバスタチン群と比較し、糖尿病治療薬の導入を要する糖尿病の新規発症率(7.2% vs.5.3%、HR:1.39[95%CI:1.03~1.87]、p=0.03)、ならびに白内障手術発生率(2.5% vs.1.5%、1.66[1.07~2.58]、p=0.02)が有意に高かった。その他の安全性エンドポイントは、両群で差は確認されなかった。

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IBSの2次治療、低用量アミトリプチリンが有用/Lancet

 プライマリケアにおける過敏性腸症候群(IBS)の2次治療として、低用量アミトリプチリンはプラセボと比較し、6ヵ月後のIBS重症度尺度(IBS Severity Scoring System:IBS-SSS)スコアが有意に低く、安全性および忍容性も良好であることが示された。英国・リーズ大学のAlexander C. Ford氏らが、英国のプライマリケア55施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Amitriptyline at Low-Dose and Titrated for Irritable Bowel Syndrome as Second-Line Treatment:ATLANTIS試験」の結果を報告した。IBS患者の多くはプライマリケアで管理されている。IBSに対する1次治療が無効であった場合、英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインでは2次治療として低用量の三環系抗うつ薬を考慮することが推奨されているが、プライマリケアにおける有効性は不明であり処方頻度は低い。Lancet誌オンライン版2023年10月16日号掲載の報告。1次治療後に症状持続のIBS患者をアミトリプチリン群とプラセボ群に無作為化 研究グループは、プライマリケアでIBS(サブタイプを問わずRome IV基準を満たす)と診断され、食事の改善、水溶性食物繊維、鎮痙薬、下剤、止瀉薬などの1次治療の効果が得られず、IBS-SSSスコアが75点以上の症状を有し、ヘモグロビン、白血球数、血小板数およびCRPが正常、抗組織トランスグルタミナーゼ抗体陰性、自殺念慮がない18歳以上の患者を、アミトリプチリン群とプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、6ヵ月間投与した。投与量は、1日1回(夜)10mgより開始し、症状や副作用に応じて3週間で1日最大30mgまで漸増した後、試験期間中は症状や副作用に応じて変更可とした。 主要アウトカムは、無作為化後6ヵ月時点のIBS症状(IBS-SSSで評価)で、ITT解析を実施した。安全性については、試験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者を対象として評価した。6ヵ月後のIBS重症度尺度スコアはアミトリプチリン群で有意に低値 2019年10月18日~2022年4月11日に、463例(平均年齢48.5±16.1歳、女性68%、男性32%)がアミトリプチリン群(232例)またはプラセボ群(231例)に無作為に割り付けられ、338例が試験を完遂した。 主要アウトカムである6ヵ月時点のIBS-SSS合計スコアにおいて、アミトリプチリン群はプラセボ群より有意に優れていた(群間差:-27.0点、95%信頼区間[CI]:-46.9~-7.1、p=0.0079)。 6ヵ月以内に投与中止に至った患者は、アミトリプチリン群46例(20%)(有害事象による投与中止は30例[13%])、プラセボ群59例(26%)(同20例[9%])であった。重篤な副作用は5例(アミトリプチリン群2例、プラセボ群3例)、試験薬と関連のない重篤な有害事象は5例(それぞれ4例、1例)報告された。

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高齢統合失調症患者における認知症発症の神経病理学的根拠

 統合失調症患者は、そうでない人よりも認知症発症リスクが高いことが、臨床研究で報告されている。しかし、過去の神経病理学的研究では、統合失調症患者におけるアルツハイマー病の発症率は対照群と差異がないことが示唆されている。これらの一貫性のない結果は、アルツハイマー病以外の認知症を包含したことが原因である可能性があるが、高齢統合失調症患者を対象とした現在の神経病理学的分類に基づく臨床病理学的研究は、ほとんど行われていなかった。名古屋大学の荒深 周生氏らは、高齢統合失調症患者における認知症発症の神経病理学的根拠を調査するため、本研究を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年9月14日号の報告。高齢統合失調症患者の認知症に2つのタイプ 高齢統合失調症患者32例を対象に、標準化された病理学的手法を用いて、システマティックに脳検査を実施した。認知症に関連する神経病変の重症度の分析には、標準化された半定量的評価法を用いた。神経病理学的基準を満たす患者を除外した後、認知症を発症した患者と発症しなかった患者の臨床病理学的変数を比較し、潜在的な差を特定しようと試みた。 高齢統合失調症患者における認知症発症の神経病理学的根拠を調査した主な結果は以下のとおり。・病理学的基準を満たした統合失調症患者は7例であり、その内訳は、アルツハイマー病3例、嗜銀顆粒性認知症(AGD)2例、レビー小体型認知症1例、AGD/進行性核上性麻痺(PSP)1例であった。・神経病理学的所見が認められなかった統合失調症患者25例のうち、10例は認知症に罹患していたが、残りの非認知症患者15例と比較し、臨床病理学的所見に差は認められなかった。 著者らは、「高齢統合失調症患者では、2つのタイプの認知症がみられる。すなわち、1つは神経変性疾患併発タイプ、もう1つは現在の分類に基づく病理学的基準を満たさないタイプ」であるとし、「高齢統合失調症患者における認知症発症の神経生物学的側面を理解するためには、認知症発症を従来の認知症関連神経病理の併存疾患として分析するだけでは不十分であり、さらなる臨床病理学的研究が必要である」とまとめている。

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人違いの秋【Dr. 中島の 新・徒然草】(500)

五百の段 人違いの秋先週金曜日に広島に行ってきました。国立病院総合医学会という学会があったからです。小雨は降ったものの暑くもなく寒くもない、ちょうどいい気候でした。午前中は「医療従事者の心理的安全を確保するための工夫」というタイトルでの講演。午後からは「若手医師フォーラム」のディスカッサントです。今回は若手医師フォーラムについてお話ししましょう。これは毎年恒例のもので、卒後10年以下の若手医師が症例報告や研究発表を英語で行います。合計で8演題ですが、採点による上位2名は表彰されて豪華副賞が授与されるというものでした。4名のディスカッサントに2つずつの演題が割り当てられており、それぞれが質問をして場を盛り上げるという仕組みです。例年はディスカッサントの専門を考慮して、私には脳外科かせいぜい神経内科といった関連領域の演題しか割り当てられなかったのですが、今年はランダムです。私には膠原病と感染症が割り当てられてしまい、学会前に大急ぎで勉強する羽目になりました。隣に座っていたディスカッサントの先生は、専門が肝臓であるにもかかわらず脳動脈瘤の研究が当たってしまい「私は適当なことしか聞けないので、中島先生も質問をお願いします」と頼まれてしまいました。皆さんそれぞれに苦労されたようです。私自身も、にわかにリウマトイド血管炎やアスペルギルス性感染性心内膜炎を勉強しなくてはなりません。幸い前日くらいに、いくつかの質問を準備することができてホッとしました。リウマトイド血管炎の発表をしたのは卒後4〜5年前後の先生でしたが、single-cell spatial transcriptome analysisを使った野心的な研究です。生まれて初めて耳にする実験方法ですが、一通り勉強してみると「世の中は進んでいるなあ」と感心させられました。自分がまったく知らない分野も、勉強してみると何かと興味深いものです。たまたまですが、演者の名字が私の同級生の名字と一緒だったので、セッションの後で「ひょっとしてお父さんは○井×彦先生?」と彼女に尋ねてみると「阪大生の時代からよく聞かれたんですが、そうではありません。私の父はサラリーマンです」という答えでした。先入観のせいか、顔なんかよく似ていたような気がしたのですが……さて、英語での発表というのは誰にとってもハードルの高いもので、非常に上手な演者もいれば、そうでない演者も混在していました。が、こういうことは挑戦することが大切だと思います。そして、たとえうまくいかなかったとしても、そのことを勉強のモチベーションにつなぐべきですね。かくいう私も久しぶりの英語でのやり取りを何とか無難にこなしたものの、やはり勉強の必要性を感じさせられました。新たに英語の勉強を再開しましたが、こういうのは目標が必要です。オンライン英会話とか、英検・TOEICの受験とか、何か目標を見つけなくてはなりません。何らかの本番を設定して、迫りくる恐怖に怯えながら勉強するか、思うようにいかなかった悔しさをバネに勉強するか、あるいは両方ともでしょうか。引き続き精進を重ねたいと思います。次回は自分自身が発表した「医療従事者の心理的安全を確保するための工夫」について述べたいと思います。最後に1句秋深し 知人の娘は 別の人

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第68回 「沢井製薬、おまえもか!」ジェネリック医薬品クライシス

沢井製薬でも不正Unsplashより使用沢井製薬は、テプレノンカプセル50mgに関する安全性確認を巡って検査不正があったことを発表しました。現場としては、「もう勘弁しておくんなせー」と叫びたいくらい、検査不正が続いています。平成22年の沢井製薬社内試験で、有効期限を超えた4年目の保存カプセルを使用した場合、十分にカプセルが溶けず、薬剤溶出が低下していることがわかりました。工場長が原因を明らかにするために薬の詰め替えを指示したところ、現場担当者はそれが正規の手法であると誤認したことがきっかけとなり、保存3年目のカプセルから内容を取り出して別カプセルに詰め替えて試験を行う、という承認外の手順で試験を進めることになってしまいました。■当社九州工場でのテプレノンカプセル50mg「サワイ」安定性モニタリングにおける不正に関する調査について(沢井製薬2023年10月23日発表リリースより)本件不適切試験は、2013年に実施された本件製品の安定性モニタリングにおける溶出試験で規格外(OOS)の結果が発生した際に、当時の九州工場の上層部において、GMP(医薬品の製造管理及び品質管理の基準)に基づく手続を怠ったことを契機として実施されました。すなわち、当時の上層部において、規格外(OOS)の結果を受けて、溶出性の低下の原因を調査するためにカプセルを詰め替えて試験を実施することを指示したものの、GMPに基づく正式な社内報告や原因究明・是正措置等を行うことなく、カプセルを詰め替えて実施した試験による規格内の結果をもって、当該溶出試験に関するGMP上の手続を終了していました。このような処理を受けて、本件製品の安定性モニタリングにおける溶出試験では、カプセルを詰め替えて実施した試験による規格内の結果をもって処理することが、上層部からの指示であると考えた試験担当者らにより、本件不適切試験が継続的に行われていました。また、管理職以上の上層部が、本件不適切試験の実施を指示し又はこれを黙認した事実は認められませんでしたが、監督体制の不備により、本件不適切試験が実施されていることを検出することができず、長年にわたり本件不適切試験が継続されていました。行政処分は未定ですが、これまでの他社の経緯を踏まえると、さらにジェネリック医薬品の流通懸念が起こることは間違いないと思われます。現在でも外来で「薬がありません」と疑義照会が来ることがしばしばありますが、こういったことが今後頻繁に起こるのではないかと考えるだけで、背筋がゾワゾワします。日本の医薬品流通が崩壊する普通のメーカーは、原材料や人件費高騰とともに商品を値上げすることが可能です。これはもう、資本主義の原点です。しかし、薬剤は国が薬価を決め、さらに年々下げてくるので、粗利を出す行為から逆行していることになります。今回の問題になったテプレノンは1カプセルの薬価わずか6.3円です。うまい棒の半額くらいです。利益が出ない薬剤の供給責任を負わされるメーカーのストレスもかなりものだろうと、察するに余りあるところです。供給がいつ良化するのか未定ですが、COVID-19やインフルエンザの流行で不足しているとされている鎮咳薬や去痰薬については、厚労省は増産に向けた設備支援を行うことを検討していると報道されています。ただ、医薬品の流通懸念はこれらの薬剤に限らず、全医薬品の約20%、ジェネリック医薬品の約30%が通常出荷されていない状況です。ジェネリック医薬品の品目数は増加し続けており、同一製造ラインで多品目の少量生産を行うことで、単一薬剤の製造能力に余裕がありません。そのため、ジェネリック医薬品メーカーが出荷制限・停止に陥っても、他メーカーがその穴を埋めることができず、限定出荷が連鎖的に起こる脆弱な構造になっています。メーカーの設備投資への下支えは重要で、支援の裾野が広がることに期待したいです。長期的には、収載品目数を減らし生産を効率化させ、非効率品目については生産可能な企業でまとめて生産するなどの弾力的措置を進めていく必要があると考えます。とまあ、これは教科書的な理想論なのですが…。実際のメーカーの現場は、「詰み」に近い状態にあり、「進むも地獄、退くも地獄」だと聞いています。誰か助けて!

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高齢ドライバーは本当に事故を起こしやすいか/筑波大

 超高齢社会になり、わが国では高齢ドライバーによる交通加害事故の報道を目にする機会は多い。加齢による認知機能や運動機能の低下が自動車の運転に影響することは論をまたないが、実際高齢者の自動車事故は、それ以外の年代の運転者と比較して多いのだろうか。筑波大学医学医療系の市川 政雄氏らの研究グループは、高齢者の運転免許返上の政策と社会的圧力について、運転者の年齢層別に自動車衝突事故(MVC)のリスクを比較分析してこの疑問を研究した。Journal of Epidemiology誌2023年10月7日の報告。 リスクの比較では、2016~20年に発生した交通事故総合分析センター(警察庁)のMVCの全国データを用い、免許運転者1人当たりの過失MVCの発生件数(MVC率)と、過失MVC1件当たりの致死傷者数と非致死傷者数を、過失運転者の性・年齢層別に検討。 主な結果は以下のとおり。・高齢運転者のMVC率は中高年運転者より高かったが、若年運転者より低かった。・高齢運転者のMVC事故率は中高年運転者より高く、若年運転者より低かった。・高齢運転者のMVC事故1件当たりの負傷者数は、他の年齢層運転者より多くなかった。・高齢運転者による死亡事故では、衝突された相手よりもむしろ運転者自身または同乗者が死亡する傾向にあった。・全体として、これら結果は男・女の運転者の間でほぼ一致していた。

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治療抵抗性統合失調症患者に対するクロザピン治療は早期開始すべきか

 クロザピンは、治療抵抗性統合失調症患者に対して有効性が証明されている唯一の抗精神病薬である。藤田医科大学の波多野 正和氏らは、クロザピン治療開始の遅延が長期アウトカムに及ぼす影響を評価する目的で、多施設共同レトロスペクティブコホート研究を実施した。その結果、長期治療中の精神科再入院を防ぐため、治療抵抗性統合失調症患者に対するクロザピン治療は早期に開始すべきであることが示唆された。BMC Psychiatry誌2023年9月15日号の報告。 対象は、2009年7月~2018年12月にクロザピン治療を開始した患者。統合失調症の診断からクロザピン治療開始までの期間に応じて、早期開始群(9年以内)、中期開始群(10~19年)、後期開始群(20年以上)の3群に分類した。エンドポイントは、3年以内の精神科再入院およびすべての原因によるクロザピン治療中止とした。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定には、Fine and Gray法またはCox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・3年以内の精神科再入院の発生率(累積発生関数)は、早期開始群32.3%、中期開始群29.7%、後期開始群62.2%であった。・後期開始群は、早期開始群よりも精神科再入院リスクが有意に高かった(HR:2.94、95%CI:1.01~8.55、p=0.016[Gray's test])。・早期開始群と中期開始群との間に、精神科再入院リスクの有意な差は認められなかった。・3年以内のすべての原因によるクロザピン治療中止の割合(カプランマイヤー法)は、早期開始群13.0%、中期開始群10.6%、後期開始群20.1%であった。・すべての原因によるクロザピン治療中止の割合は、各群間で有意な差は認められなかった。・後期開始群では、他の群よりも、身体疾患による死亡のためクロザピン治療が中止となった患者が多かった。

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死亡リスクを低下させる睡眠のとり方、睡眠時間よりも〇〇!?

 睡眠は健康と密接な関係があることが知られているが、研究の多くは睡眠時間に焦点が当てられており、睡眠の規則性と死亡リスクの関係は明らかになっていない。そこで、オーストラリア・Monash UniversityのDaniel P. Windred氏らの研究グループは、英国のUKバイオバンクの6万人超のデータを用いて、睡眠時間および睡眠の規則性と死亡リスクとの関連を検討した。その結果、睡眠時間と睡眠の規則性はいずれも全死亡リスクの予測因子であることが示されたが、睡眠の規則性のほうがより強い予測因子であった。Sleep誌オンライン版2023年9月21日号に掲載の報告。 本研究では、UKバイオバンクに登録された40~69歳のうち、手首に加速度センサーを7日間装着し、データが取得できた6万977人が対象となった。睡眠時間と睡眠の規則性は加速度センサーのデータを基に推定した。対象を睡眠時間と睡眠の規則性でそれぞれ五分位に分類し、第1五分位群(0~20パーセンタイル)に対する第2~5五分位群(20~40、40~60、60~80、80~100パーセンタイル)の全死亡、原因別死亡(がん、心代謝性疾患、その他)のリスクを検討した。Cox比例ハザードモデルを用い、最小限の調整をしたモデル(年齢、性別、民族で調整)と完全調整モデル(最小限の調整をしたモデルに身体活動レベルなどの10因子を追加して調整)の2つのモデルで解析した。 主な結果は以下のとおり。・本研究の対象となった6万977人の平均年齢は62.8歳、平均睡眠時間は6.77時間、平均追跡期間は6.30年であった。・追跡期間中の死亡数は1,859人であった(1,000人年当たり4.3人)。・睡眠の規則性の第2~5五分位群は、最小限の調整をしたモデルおよび完全調整モデルのすべての群で全死亡リスクが有意に低下した(20~48%低下)。・同様に、がん死亡リスク(16~39%低下)、心代謝性疾患による死亡リスク(22~57%低下)もすべての群で有意に低下し、その他の原因による死亡リスクも完全調整モデルの第2五分位群を除くすべての群で有意に低下した。・睡眠時間の第2~5五分位群も、同様にすべての群で全死亡リスクが有意に低下したが(18~31%低下)、がん死亡リスクとの関連はいずれの群でも認められなかった。・赤池情報量基準(AIC)に基づくモデル比較において、睡眠の規則性は睡眠時間よりも全死亡リスクの強い予測因子であった。 本研究結果について、著者らは「死亡リスクの予測において、睡眠時間が重要な役割を果たしていることが確認されたが、睡眠の規則性は睡眠時間よりも強い予測因子であることが明らかになった。睡眠の規則性を向上させるためには、睡眠時間を増やすことよりも、毎日の睡眠時間をそろえることのほうが現実的かもしれない」とまとめた。

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切除可能NSCLC、周術期ペムブロリズマブ上乗せでOS・EFS改善(KEYNOTE-671)/ESMO2023

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象としたKEYNOTE-671試験の第1回中間解析において、術前補助療法としてペムブロリズマブ+化学療法、術後補助療法としてペムブロリズマブを用いた場合、術前補助療法として化学療法を用いた場合と比較して、無イベント生存期間(EFS)が有意に改善したことが報告されている1)。今回、KEYNOTE-671試験の第2回中間解析の結果が、カナダ・McGill UniversityのJonathan Spicer氏により、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表され、EFSと全生存期間(OS)が有意に改善したことが示された。本試験の結果から、米国食品医薬品局(FDA)は2023年10月16日に切除可能なNSCLC患者に対する術前・術後補助療法としてペムブロリズマブの使用を承認したことを発表している2)。・試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検第III相試験・対象:切除可能なStageII、IIIA、IIIB(N2)のNSCLC患者(AJCC第8版に基づく)・試験群:ペムブロリズマブ200mg+化学療法(シスプラチン[75mg/m2]+ゲムシタビン[1,000mg/m2を各サイクル1、8日目]またはペメトレキセド[500mg/m2])を3週ごと最大4サイクル→手術→ペムブロリズマブ200mgを3週ごと最大13サイクル(ペムブロリズマブ群:397例)・対照群:プラセボ+化学療法(同上)を3週ごと最大4サイクル→手術→プラセボを3週ごと最大13サイクル(プラセボ群:400例)・評価項目:[主要評価項目]EFSおよびOS[副次評価項目]病理学的完全奏効(pCR)、病理学的奏効(mPR)など・解析計画:計2回の中間解析が事前規定され、今回の中間解析はEFSの最終解析とした。今回の解析におけるOSの有意水準は片側α=0.00543であった。・データカットオフ日:2023年7月10日 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は36.6ヵ月(範囲:18.8~62.0)であり、254例(31.9%)が死亡した。・OS中央値はプラセボ群が52.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:45.7~推定不能)であったのに対し、ペムブロリズマブ群では未到達(同:推定不能~推定不能)であり、ペムブロリズマブ群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.72、95%CI:0.56~0.93、片側p=0.00517)。・3年OS率はプラセボ群64.0%、ペムブロリズマブ群71.3%、4年OS率はそれぞれ51.5%、67.1%であった。・OSのサブグループ解析においてもペムブロリズマブ群が良好な傾向であったが、PD-L1発現状況別にみたOSのHR(95%CI)は、PD-L1(TPS)50%以上が0.55(0.33~0.92)、1~49%が0.69(0.44~1.07)、1%未満が0.91(0.63~1.32)であり、PD-L1発現が少ないほどペムブロリズマブ群のベネフィットは減少する傾向にあった。また、東アジア人集団のHR(95%CI)は1.05(0.64~1.73)、喫煙歴のない集団は1.00(0.41~2.46)であった。・EFS中央値はプラセボ群が18.3ヵ月(95%CI:14.8~22.1)であったのに対し、ペムブロリズマブ群では47.2ヵ月(同:32.9~推定不能)であり、第1回の中間解析に続き、ペムブロリズマブ群が有意に改善した(HR:0.59[95%CI:0.48~0.72])。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)はプラセボ群37.8%、ペムブロリズマブ群45.2%に認められ、治療中止に至ったTRAEはそれぞれ5.3%、13.6%、死亡に至ったTRAEはそれぞれ0.8%、1.0%に認められた。 本結果について、Spicer氏は「OSの有意な改善が認められ、新たな安全性シグナルは検出されなかったことから、本試験の周術期レジメンは切除可能なStageII、IIIA、IIIBのNSCLCに対する新たな標準治療となる」とまとめた。

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ER+/HER2-乳がんの術前ニボルマブ、pCRを有意に改善(CheckMate 7FL)/ESMO2023

 高リスクのER陽性(+)/HER2陰性(-)早期乳がん患者を対象とした第III相CheckMate 7FL試験の結果、術前化学療法および術後内分泌療法にニボルマブを上乗せすることで、病理学的完全奏効(pCR)率が有意に改善し、さらにPD-L1陽性集団ではより良好であったことを、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのSherene Loi氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。・対象:ER+/HER2-、T1c~2 cN1~2またはT3~4 cN0~2、Grade2(かつER 1~10%)またはGrade3(かつER≧1%)の新たに診断された乳がん患者 510例・試験群(ニボルマブ群):ニボルマブ(3週ごと)+パクリタキセル(毎週)→ニボルマブ+AC療法(隔週または3週ごと)→手術→ニボルマブ(4週ごと)+内分泌療法 257例・対照群(プラセボ群):プラセボ+パクリタキセル→プラセボ+AC療法→手術→プラセボ+内分泌療法 253例・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/is ypN0)[副次評価項目]PD-L1陽性集団のpCR、全体およびPD-L1陽性集団の腫瘍残存率(RCB)、安全性・層別化因子:PD-L1発現状況、Grade、腋窩リンパ節転移、AC療法の投与スケジュール 2022年4月に主要評価項目は修正ITT集団のpCR率のみに修正され、PD-L1陽性集団のpCR率は副次評価項目となった。今回がCheckMate 7FL試験結果の初報告で、全体およびPD-L1陽性集団のpCRとRCBが報告された。 主な結果は以下のとおり。・ニボルマブ群およびプラセボ群の年齢中央値は50歳/51歳、Grade3が98%/99%以上、StageIII期が46%/42%、PD-L1 IC≧1%が34%/33%、腋窩リンパ節転移陽性が80%/79%で、両群でバランスがとれていた。・修正ITT集団全体のpCR率は、ニボルマブ群24.5%、プラセボ群13.8%で、ニボルマブ群が有意に高かった(調整差10.5%[95%信頼区間[CI]:4.0~16.9]、オッズ比[OR]:2.05、p=0.0021)。・PD-L1陽性集団におけるpCR率は、ニボルマブ群44.3%、プラセボ群20.2%(調整差:24.1%[95%CI:10.7~37.5]、OR:3.11)であった。なお、PD-L1陰性集団では14.2%/10.7%であった。・リンパ節転移の有無、Stage、年齢、AC療法の治療スケジュールにかかわらずニボルマブ群のほうがpCR率は良好であった。・全体におけるRCB 0~1の割合は、ニボルマブ群30.7%、プラセボ群21.3%(調整差:9.2%[95%CI:2.0~16.5]、OR:1.65)であった。・PD-L1陽性集団におけるRCB 0~1の割合は、ニボルマブ群54.5%、プラセボ群26.2%(調整差:28.5%[95%CI:14.6~42.4]、OR:3.49)であった。・Grade3以上の治療関連有害事象は、ニボルマブ群35%、プラセボ群32%に発現し、安全性プロファイルは既報と一致していた。免疫介在性有害事象はニボルマブ群のほうが多かった。ニボルマブ群では死亡が2例(肺炎、肝炎)認められた。 これらの結果より、Loi氏は「高リスクのER+/HER2-早期乳がん患者の術前化学療法にニボルマブを追加することで、pCRは10.5%改善するとともにRCB 0~1率も9.2%改善した。この恩恵はPD-L1陽性集団でより大きかった。安全性プロファイルはこれまでと同様で、新たな有害事象は報告されなかった」としたうえで「バイオマーカーに関する追加データは今後の学会で発表する予定である」とまとめた。

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起立性低血圧ありの高血圧患者、厳格治療のベネフィットは?/JAMA

 ベースラインで起立性低血圧が認められる場合でも、厳格降圧治療が標準降圧治療と比べて心血管疾患(CVD)または全死因死亡リスクを低減し、また立位性低血圧の有無による治療効果の差はないことが、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのStephen P. Juraschek氏らによる検討で示された。起立性低血圧または立位性低血圧を有する成人において、厳格vs.標準降圧の有益性については懸念が続いていた。JAMA誌2023年10月17日号掲載の報告。CVDまたは全死因死亡リスクを比較 研究グループは、ベースラインで起立性低血圧または立位性低血圧を有する被験者におけるCVDまたは全死因死亡への降圧治療の影響を調べるため、血圧目標値がより低値の治療または積極的な治療と、血圧目標値が標準の治療またはプラセボによる治療を比較した。 2022年5月13日までのMEDLINE、EMBASE、CENTRALのデータベースを基に、起立性低血圧の評価を行い、薬物による厳格降圧治療(血圧目標値が厳格または積極的治療薬)を評価した無作為化試験を特定。PRISMAガイドラインに沿って被験者個人のデータを対象にメタ解析を行った。治療効果は、Cox比例ハザードモデルのシングルステージ・アプローチで評価した。 主要アウトカムは、CVDまたは全死因死亡。起立性低血圧は、座位から立位で収縮期血圧が20mmHg以上、拡張期血圧が10mmHg以上、いずれも低下する状態と定義した。立位性低血圧は、立位時の収縮期血圧110mmHg以下または拡張期血圧60mmHg以下と定義した。起立性低血圧有無にかかわらず、厳格降圧がCVDまたは全死因死亡リスクを低減 9試験(被験者総数2万9,235例)が解析に含まれ、追跡期間中央値は4年、平均年齢は69.0歳(SD 10.9)、女性は48%だった。ベースラインで起立性低血圧が認められたのは9%、立位性低血圧は5%だった。 厳格降圧治療は、ベースラインでの起立性低血圧の有無にかかわらず、CVDまたは全死因死亡リスクを同様に低下した(それぞれ、ハザード比[HR]:0.81[95%信頼区間[CI]:0.76~0.86]、0.83[0.70~1.00]、ベースライン起立性低血圧と治療の相互作用に関するp=0.68)。 立位性低血圧については、ベースラインで認められなかった被験者ではCVDまたは全死因死亡リスクの低下がみられたが(HR:0.80[95%CI:0.75~0.85])、認められた被験者では有意な低下はみられなかった(0.94[0.75~1.18])。ベースラインの立位性低血圧の有無による治療効果の差はみられなかった(ベースライン立位性低血圧と治療の相互作用に関するp=0.16)。

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