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サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)レポート

レポーター紹介新年早々暗いニュースが続いた2024年であるが、毎年恒例のSan Antonio Breast Cancer Symposiumレポートをお送りする。2023年12月5日から12月9日まで5日間にわたり、SABCS2023がハイブリッド形式で実施された。COVID - 19が5類となりさまざまな制約がなくなったこともあってか、日本からも多くの乳がん専門医が参加していた。私も現地で参加、発表させていただいた。学会外での会議や勉強会なども以前と同様実施されていた。以前との違いは、会議なども基本はハイブリッドで行われるようになったことであろうか。集合形式は活発なディスカッションができるものの、どうしても都合がつかない場合もある。ハイブリッド形式が会議を最大限に充実させる形式なのかもしれない。SABCS2023では日常臨床にインパクトを与える、あるいは今後の治療開発において重要な試験がいくつも発表された。多くの演題の中から、転移乳がんに対する演題を4つ紹介する。MONARCH3試験MONARCH3試験は、閉経後ホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)転移乳がんの1次治療におけるアロマターゼ阻害薬へのアベマシクリブの有効性を評価した試験である。アベマシクリブの上乗せは無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に延長し、すでに実臨床では1次治療でも積極的に使用されている。今回は待望の全生存期間(OS)の結果が公表された。ITT集団におけるOS中央値は、アベマシクリブ群で66.8ヵ月、プラセボ群で53.7ヵ月(ハザード比[HR]:0.804、95%信頼区間[CI]:0.637~1.015、p=0.0664)であり、p値は有意水準である0.034を上回り統計学的有意差は証明されなかった。内臓転移を有するサブグループにおけるOS中央値は、アベマシクリブ群で63.7ヵ月、プラセボ群で48.8ヵ月(HR:0.758、95%CI:0.558~1.030、p=0.0757)であり、こちらも統計学的有意差は示されなかった。数値としてアベマシクリブ群でOSが有効である期待は残されるものの、有意差がつかなかったということはかなり大きな衝撃であった。なお、後治療としてパルボシクリブを実施した患者はアベマシクリブ群で8%、プラセボ群で25%であり、この差がOSにどの程度インパクトを与えたかは今後の詳細な解析に期待したい。この結果により、世界的に広く用いられているパルボシクリブ、アベマシクリブ、ribociclibのうち、1次治療におけるOSがポジティブなのはribociclibだけとなった。すなわち、日本で処方可能なパルボシクリブ、アベマシクリブはいずれもOSにおけるベネフィットを示せなかったことになる。ただ、だからといってCDK4/6阻害薬をより後ろの治療で用いるべきものになるかというと、そうではない。alpelisib、capivasertibなどSERDとの併用で用いられる別の機序の分子標的薬、あるいはPADA-1試験のような、1次治療、2次治療でCDK4/6阻害薬をbeyondで用いる戦略など、2次治療にCDK4/6阻害薬を“とっておく”と実施できなくなる治療/治療戦略が多数開発されている。現在行われている試験の多くもCDK4/6阻害薬を原則として1次治療で用いることが前提となっており、HR+HER2-転移乳がんの治療シークエンスを考えるうえで、1次治療におけるCDK4/6阻害薬の併用は変わらずスタンダードであると言えよう。INAVO120試験INAVO120試験はPIK3CA変異のあるHR+HER2-転移乳がんの2次治療において、フルベストラント+パルボシクリブによる治療にPI3K阻害薬であるinavolisibを併用することの有効性を評価した第III相試験である。本試験でPIK3CA変異はctDNAの中央判定もしくは各施設における組織/ctDNAの評価によって定義されていた。主要評価項目はPFSが設定された。325例がinavolisib群とプラセボ群に1:1に割り付けられた。両群間のバランスはよく、95%以上の症例で内臓転移を有した。主要評価項目のPFSはinavolisib群15.0ヵ月、プラセボ群7.3ヵ月(HR:0.43、95%CI:0.32~0.59、p<0.0001)とinavolisib群で有意に長かった。OSはHR:0.64、95%CI:0.43~0.97、p=0.0338とinavolisib群で良好な傾向を認めたが、中間解析に割り当てられた有意水準は超えなかった。G3以上の有害事象としては血小板減少(14.3% vs.4.3%)、口内炎(5.6% vs.0%)、貧血(6.2% vs.1.9%)、高血糖(5.6% vs.0%)、下痢(3.6% vs.16.0%)とinavolisib群で血液毒性、非血液毒性のいずれも増加した。 HR+HER2-乳がんの治療を考えるうえで、3剤併用療法が良いのか、2剤までの併用をシークエンスで使用していくのか、なかなか悩ましいところであるが、OSを延長する可能性が示されたことは大きなインパクトであった。これまでに実施された、あるいは現在進行中の2次治療以降の併用試験などの結果も踏まえた治療シークエンスの議論が必要であろう。また、残念ながら本剤は現在のところ国内では開発されていない。HER2CLIMB-02試験HER2CLIMB-02試験は、すでにHER2陽性(HER2+)転移乳がんの3次治療においてトラスツズマブ+カペシタビンとの併用の有効性が示されているtucatinibの、T-DM1との併用の有効性を検証した第III相試験である。トラスツズマブならびにタキサンによる治療歴のあるHER2+転移乳がん460例が、tucatinib群とプラセボ群に1:1に割り付けられた。主要評価項目はPFSであった。転移乳がんに対する前治療歴が1ラインの症例が64%、ペルツズマブの投与歴のある症例が約90%であった。主要評価項目のPFSはtucatinib群で9.5ヵ月、プラセボ群では7.4ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95、p=0.0163)とtucatinib群で有意に長かった。奏効割合は42.0% vs.36.1%とtucatinib群で良い傾向を認めた。tucatinibは脳転移に対する有効性が示されているが(HER2CLIMB試験)、本試験の脳転移を有する症例に対するPFSは7.8ヵ月vs.5.7ヵ月(HR:0.64、95%CI:0.46~0.89)とtucatinib群で良好な可能性が示された。OSはHR:1.23とtucatinib群で良い可能性は示されなかった。G3以上の有害事象の中で重要なものはAST増加(16.5% vs. 2.6%)、ALT増加(16.5% vs.2.6%)、倦怠感(6.1% vs.3.0%)、下痢(4.8% vs.0.9%)、悪心(3.5% vs.2.1%)などであった。tucatinibはT-DM1との併用における有効性を示したわけであるが、今後この試験結果を基にT-DM1+tucatinibがよりアップフロントに用いられるかというと疑問が残る。T-DXdの2次治療における有効性を証明したDESTINY Breast-03試験では、T-DXdのPFS中央値は28.8ヵ月である。試験間の比較で治療の優劣は付けられないが、かといってT-DXdよりもT-DM1+tucatinibを優先するのは難しい。今後はT-DXdによる治療歴のある患者に対するT-DM1+tucatinibのデータを創出することが必要であろう。JCOG1607試験JCOG1607 HERB TEA試験は、JCOGで行われた高齢者HER2+転移乳がん1次治療における、T-DM1のペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセル(HPD)療法への非劣性を検証した第III相試験である。不肖下村が、今回から新設されたRapid Fire Mini Oral Sessionで(なんとメイン会場で)発表させていただいた。本試験は、65歳以上の高齢者HER2+転移乳がんを対象に、OSを主要評価項目として実施された。250例の予定登録数で行われたが、148例が登録された時点で実施された1回目の中間解析で、OSハザード比の点推定値が非劣性マージンの1.35を超えたため無効中止となった。患者背景は両群間でバランスが取れており、年齢の中央値は71歳ならびに72歳、75歳以上が約35%を占めた。PS 0が75%、HR+が約半数、初発StageIVが65%、脳転移を有する症例はまれであり、内臓転移は65%に認められた。主要評価項目のOSは両群ともに中央値に到達しなかったが、HR:1.263、95%CI:0.677~2.357、p=0.95322とT-DM1のHPD療法に対する非劣性は示されなかった。PFSはHPD療法で15.6ヵ月、T-DM1で11.3ヵ月(HR:0.358、 95%CI:0.907~2.033、p=0.1236)とHPDで良い傾向を認めた。有害事象はG3以上がHPD療法で多く(56.8% vs.34.7%)、HPD療法では白血球減少(26.0% vs.0%)、好中球減少(30.1% vs. 0%)、倦怠感(21.6% vs.5.6%)、下痢(12.2% vs.0%)、食欲低下(10.8% vs.8.3%)が多く、T-DM1療法では血小板減少(0% vs.16.7%)、AST増加(0% vs.15.3%)、ALT増加(2.7% vs.16.7%)が多かった。本試験は高齢者に対するless toxicな治療の開発を期待して開始したが、高齢者においてもpivotal studyで示された標準治療を実施すべきという結論となった。一方、高齢者は年齢のみで定義される均一な集団ではなく、ASCOガイドラインなどで示されているように、高齢者機能評価などを適切に実施したうえで治療方針を決めていくことが重要である。今後より詳細な結果を発表していきたい。

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第81回 三重県でついに救急車有料化を導入!

photoACより使用三重県で救急搬送された後に「入院に至らなかった患者」に関して、1人当たり選定療養費7,700円を支払うことが決定されました。「選定療養費」は、本来、紹介状を持たずに外来受診する患者さんなどから、初診料・診察料等とは別に負担してもらう特別料金のことです。これをいわば救急車利用料として支払うよう制度化してしまうわけです。三重県松阪市で、2024年6月から本格稼働とのことです。この理由は、「軽症例の搬送が多いこと」に尽きます。三重県に限ったことではなく、「移動手段がないため」という理由で救急車を要請した患者さんがたまに搬送されてきますが、さすがにそれはやり過ぎちゃいますか、ということです。ひどい事例では、「寒くて公共交通機関の移動が大変だった」という理由で救急車を要請した事例を目の当たりにしたことがあります。市民から反対意見が出ると思われますが、三重県松阪市ではしっかりとデータを出していて、平日の昼間に救急搬送された患者のうち入院した患者さんが入院に至ったのは50.6%、休日・夜間ではたった37.1%であったと説明しています。ところで、知り合いのアメリカ人医師に聞いたところ、そもそもアメリカでは救急搬送に20万円くらいかかるのが普通だそうです。基本料金は約8~10万円で、救急救命士が同乗している場合は、料金が2倍くらいになり、搬送距離や酸素投与の有無によって、さらに値段が上がっていきます。そう考えると、選定療養費だけで済むとしても、そもそも日本の救急医療は恵まれ過ぎなのかもしれません。日本全体では、消防庁の「令和4年版 救急救助の現況」によると、全体の44.8%が軽症者とされています(図)1)。搬送者の61.9%は高齢者で、この割合は年々増加傾向にあります。画像を拡大する図. 傷病程度別の搬送人員構成比(参考資料1より引用)ちなみに、救急車有料化についてアンケートをしている団体がいくつかありますが、生命保険会社の調査では賛成がだいたい4割、反対が6割といったところです。これが医療従事者を対象にすると、(条件付きも含めて)賛成8割、反対2割という逆転現象がみられます。松阪市の事案を踏まえて、全国的に広がりをみせると思われますが、有料化に踏み切る自治体が増えてくると予想されます。参考文献・参考サイト1)総務庁消防庁 令和4年版 救急救助の現況

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第3章 実臨床の観点からの医師国家試験【国試のトリセツ】Introduction

Introduction医師国家試験は、医師法第9条に基づき、「臨床上必要な医学および公衆衛生に関して、医師として具有すべき知識および技能」が出題の対象となっており、これまでも卒前教育や医療を取り巻く状況および医療の進歩に合わせて改善・検討が繰り返し行われてきました。その結果、近年では「初期臨床研修において指導医の下で従事するのに必要な知識および技能を問う水準」「診療科に関わらずに総合的な鑑別診断や治療方針の選択に関する能力を問う内容」が重視されるようになりました。厚生労働省主導の医師国家試験改善検討部会の報告書によれば、「出題傾向として『臨床実地問題』に、より重点をおくこととする」と明記されています。従来の試験対策であった過去問ベースの学習方法が今後も根幹を貫くことには変わりはないでしょうが、それだけで十分と言えるかどうかについては疑念が残ります。今後は、これまでと同様、過去問演習が必須であることに加え、病院実習で見学・体感できるような臨床医の思考プロセスや医療現場の実際が重要視されるようになりつつあります。本章では、医師国家試験を実臨床の観点から眺めたときに、どのような考え方や背景知識が試験を解く上で有用になるかを考察します。(a)臨床医はどのような思考過程で意思決定をしているのか、(b)医療の現場は実際にはどのようなものかというように、臨床医の思考過程と実臨床のリアリティに関して医師国家試験を解く上で有用となりそうなものをpick upしています。§1 アセスメント医療現場に出ると「アセスメント」という言葉が飛び交うようになります。まず、臨床医の思考過程を考える上で、その基本となる「アセスメント」について、そもそも論から見直すことからはじめます(#25 アセスメントとは情報に意味を与えること)。アセスメントの定義を「情報に意味を与えること」とするならば、適切にアセスメントが成し遂げられるためには背景知識と情報の取捨選択が必要不可欠となります(#26 背景知識が評価基準を決める/#27 情報の取捨選択のセンスを身に付ける)。提示された症例情報に対して意味を与えるためには、そのために必要な背景知識が必須であるとも言い換えられます。ここでいう背景知識とは、解剖学・生理学・病態生理学・薬理学などに基づいた教科書的な医学知識や、医学的知見の集積であるevidenceを指します(#28 解剖と病態を想像する/#29 EBMを問題から汲み取る)。適切にアセスメントができるようになると、陰性所見にも注目できるようになり、さらに情報の解釈能力に奥行きをもたらします(#30 陰性所見に注目する)。拾い上げた患者情報と自分の中の知識ないしevidenceとを関連させる過程がアセスメントだと換言できます。したがって、適切にアセスメントが行われるには、症例情報の収集能力(病歴聴取、身体診察、検査所見)と知識(教科書的な知識、evidence)の両方の存在が必要条件となるのです。医学生が教科書的な知識を集積するのも、病院実習で病歴聴取や身体診察のトレーニングを行うのも、対象となる患者を適切に評価することを目的としているのです。アセスメントが重要だと指導医から繰り返し言われるのは何故でしょうか。その謎解きの結論が§1の中に隠されています。§2 診断推論患者を「よく」するためには、現時点で解決すべきproblemや課題を考えることからはじめます。そして、どのように問題を解決するかという計画を立案して、実行、効果判定を行うのが通常です。臨床医は、対象の問題が何であるかを明確にするために「診断」を下します。診断をすれば標準的な治療が定まるので、まずは診断をしようとするのが臨床医の一般的な思考の流れとなるのです。そこで§2の#31~38では具体的な診断推論を体系的に取り上げます(#31 診断のエントリーはパターン認識で捉える/#32 snap diagnosisでは以降の情報を確認目的に利用する/#33 似たような疾患はグループ化して拾い上げる/#34 症候論から鑑別疾患を挙げる/#35 semantic qualifierで鑑別リストを単純化させる/#36 緊急度はRed Flag Signで伝える/#37 二項対比で鑑別する/#38 診断を下すには定義が必要となる)。§3 decision making診断の次は治療です。実臨床では、あらゆる瞬間に意思決定を迫られますが、何を優先するのかを常に考えることが重要になります。仮に、治療法が複数あった場合には、どのように選択していくのかを決める基準が必要です(#39 優先度を考えてdecision makingを組み立てる)。さらに、日進月歩の勢いで医学知識が更新され続けるので、evidenceを絶えずupdateし続けることが問題解決能力の向上に繋がります(#40 知見のupdateを絶えず重ね続ける)。また、診断と治療だけでは患者を「よく」する条件として不十分です。すなわち、治療の効果判定を行い「治療が奏効した」と判断できてはじめて、一連の診療が機能し、患者が「よく」なるのです。効果判定で治療が効いていない場合には、自分の思考過程のどこに誤りがあるかを振り返らなければなりません(#41 治療効果判定の指標を設計する)。このように医師に求められる能力の1つに、意思決定〈decision making〉があります。その決断力を言語化して考察するのが§3のテーマとなっています。2018年現在の学部教育では「医師がどのような過程で意思決定を行っているのか」を体系的に学ぶ機会には恵まれにくいので、本書が何らかのヒントを提示できたら幸いです。§4 実臨床リアリティ第3章の§1、§2、§3は、臨床医の思考過程を要素ごとに分解して言語化をするという内容で、他方§4は臨床医を取り巻く環境、現実に照準を当てます。医師国家試験と実臨床の現場との間には大きな乖離が生じることがあります(#42 実臨床と資格試験との乖離を知る)。最も大きな違いは、医師国家試験はあらかじめ症例情報が提示されているのに対し、実臨床では自分で情報を拾い上げていかなければならない、という点です(#43 closed questionで疾患特異的な情報を引き出す)。他には、現場での時間感覚(#44 時間感覚をイメージする)、地域性が反映される疾患頻度(#45 疫学的な頻度を意識する)、そして診療が行われる場面設定の重要性(#46 置かれている状況を的確に把握する)をテーマにして、医療現場のtime、place、occasionについて見つめ直します。資格試験が合否を判定する目的を有している以上、客観的な唯一解を用意しなければなりません。しかし、実臨床には正解がなく、常に仮説と検証を繰り返しながら診療を進めていく不確実なものだという結論で第3章を締めくくっています(#47 臨床には正解がない)。医療現場の臨場感という切り口で、医師国家試験を解説するのが§4の共通項です。臨床実地問題の本文に含まれるニュアンス、行間を読むという点で極めて重要な考え方・視点が含まれていますので、想像力を働かせながら読み進めていきましょう。

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過去1年に転倒、骨折リスクがより高いのは男性?女性?

 転倒するとその後の骨折リスクが上昇することはよく知られている。今回、オーストラリア・Australian Catholic UniversityのLiesbeth Vandenput氏らが、日本のコホートを含む46の前向きコホートにおけるデータの国際的なメタ解析で、転倒歴とその後の骨折リスクとの関連、性別、年齢、追跡期間、骨密度との関連について評価した。その結果、男女とも骨密度にかかわらず、過去1年間の転倒歴が骨折リスクを上昇させ、また女性より男性のほうがリスクが高まることが示唆された。Osteoporosis International誌オンライン版2024年1月17日号に掲載。 本研究は、46の前向きコホートから得られた90万6,359人の男女(女性が66.9%)を対象とした。転倒歴は、43コホートでは過去1年間の転倒と定義され、残りの3コホートでは質問構成が異なっていた。転倒歴と骨折(すべての臨床的骨折、骨粗鬆症性骨折、主要骨粗鬆症性骨折、大腿骨近位部骨折)リスクとの関連は、各コホートで性別ごとにポアソン回帰モデルの拡張を用いて検討し、次いで重み付けベータ係数のランダム効果メタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・過去1年間の転倒は21.4%で報告された。910万2,207人年の追跡期間中に8万7,352件の臨床的骨折が発生し、うち1万9,509件は大腿骨近位部骨折であった。・転倒歴は、女性(ハザード比[HR]:1.42、95%信頼区間[CI]:1.33~1.51)と男性(HR:1.53、95%CI:1.41~1.67)のいずれにおいても、すべての臨床的骨折のリスク増加と有意に関連していた。骨粗鬆症性骨折、主要骨粗鬆症性骨折、大腿骨近位部骨折についてもHRは同程度であった。・転倒歴と骨折リスクとの関連は男女で有意に異なり、男性のほうが女性より予測値が高かった。たとえば、骨粗鬆症性骨折のHRは、男性が1.53(95%CI:1.27~1.84)、女性が1.32(95%CI:1.20~1.45)だった(交互作用のp=0.013)。・骨折リスクにおける転倒と骨密度との交互作用は認められなかった。・男女とも転倒歴が増えるごとに主要骨粗鬆症性骨折のリスクが増加した。

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うつ病や不安症などの診療におけるライブ双方向ビデオ治療~24週間のランダム化対照試験

 スマートフォンやその他のデバイスを用いて自宅から簡単にアクセス可能な双方向ライブビデオは、精神科治療における新たな医療アクセスになりつつある。しかし、実臨床現場では、その有効性を示すエビデンスが限られており、一部の国において保険診療による承認の妨げとなっている。慶應義塾大学の岸本 泰士郎氏らは、現在の主な通信手段となっているスマートフォンおよびその他のデバイスを用いた双方向ビデオのさまざまな精神疾患に対する長期治療の有効性を評価するため、実用的な大規模ランダム化比較試験を初めて実施した。その結果から、スマートフォンやその他のデバイスを用いた双方向ビデオによる治療は、実臨床における対面治療と比較し、劣っていないことが明らかとなった。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年12月15日号の報告。 亜急性期およびまたは維持期のうつ病、不安症、強迫症患者を対象に、双方向ビデを用いた治療と対面治療の有効性を比較するために24週間のランダム化対照試験を実施した。対象患者は、双方向ビデオ群(50%以上のビデオセッション)または対面群(100%対面セッション)にランダムに割り付けられ、公的医療保険が適用となる標準治療を実施した。主要アウトカムは、健康関連QOL尺度36-Item Short-Form Health Survey Mental Component Summa(SF-36 MCS)スコアとした。副次的アウトカムは、すべての原因による中止、作業同盟、有害事象、各疾患の重症度評価スケールを含めた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は199例。・双方向ビデオ群105例(うつ病:53例、不安症:34例、強迫症:18例)、対面群94例(うつ病:45例、不安症:32例、強迫症:17例)にランダムに割り付けられた。・24週間の治療後、双方向ビデオ群のSF-36 MCSスコアは、対面群と比較し、劣っていなかった(48.50 vs. 46.68、p<0.001)。・すべての原因による中止、治療効果、満足度など、ほとんどの副次的アウトカムにおいて、両群間に有意な差は認められなかった。 結果を踏まえ、著者らは「自宅から簡単にアクセス可能な最新の遠隔医療は、ヘルスケア診療の1つの手段として利用可能であろう」としている。

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経口PNH治療薬ボイデヤ、C5阻害薬との併用で製造販売承認を取得/アレクシオン

 アレクシオンファーマは1月19日付のプレスリリースで、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療薬として、経口補体D因子阻害薬ボイデヤ(一般名:ダニコパン)の製造販売承認を取得したことを発表した。本剤の効能または効果は「発作性夜間ヘモグロビン尿症」であり、「補体(C5)阻害剤による適切な治療を行っても十分な効果が得られない場合に、補体(C5)阻害剤と併用して投与すること」としている1)。 PNHは、血管内溶血(IVH)として知られる血管内の赤血球破壊を主な病態とする重度の希少血液疾患であり、臓器障害や早期死亡に至る可能性がある2-4)。治療においては、C5阻害薬であるユルトミリス(一般名:ラブリズマブ)またはソリリス(同:エクリズマブ)が終末補体を抑制することで、症状および合併症を軽減し、患者の生存率に影響することが期待されている4-7)。しかし、C5阻害薬を投与中のPNH患者の約10~20%には、臨床的に問題となる血管外溶血(EVH)が顕在化し、持続的な貧血症状から定期的な輸血が必要となることがある2, 8-11)。ボイデヤは、このような特定のPNH患者のニーズに対応すべく、ユルトミリスまたはソリリスと併用投与する薬剤として開発されたファースト・イン・クラスの薬剤である。 今回の承認は、Lancet Haematology誌に掲載された、成人PNH患者を対象とした国際共同第III相試験「ALPHA試験」(検証的試験)から得られた肯定的な結果に基づく12)。 ALPHA試験において、臨床的に問題となるEVHを示す成人PNH患者※を対象に、ユルトミリスまたはソリリスにボイデヤを併用した際の有効性および安全性が評価された。その結果、プラセボ群と比較した投与12週時点のヘモグロビンのベースラインからの変化量という主要評価項目の達成のほか、輸血回避および慢性疾患治療の機能的評価-疲労(FACIT-Fatigueスケール)スコアの変化量を含む、主な副次評価項目を達成した。ボイデヤは概して良好な忍容性を示し、新たな安全性の懸念は示されなかった。本試験で最も多く報告された有害事象は、頭痛、悪心、関節痛および下痢だった12)。※ヘモグロビンが9.5g/dL以下かつ網状赤血球数が120×109/L以上と定義 大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学 招聘教授の西村 純一氏は、「ALPHA試験では、ボイデヤをユルトミリスまたはソリリスと併用投与することで、IVHを抑制しながらヘモグロビン値が改善され、輸血の必要性が軽減されました。今回の承認取得により、C5阻害薬を継続しながら、体へ負担のかかるEVH症状を呈する患者さんの転帰を改善することが期待されます」と述べている。 また、Alexion(米国)のマーク・デュノワイエ最高経営責任者(CEO)は、次のように述べている。「20年を超えるPNH研究により、この希少疾患を効果的に治療するうえでのC5阻害薬の役割が強固なものとなり、私たちはこの疾患を持つ患者さんのために引き続き革新を起こしてまいります。C5阻害薬へ追加投与されるボイデヤは、すでに確立されている治療を中断することなく、臨床的に問題となるEVHの影響を受けている患者さんのニーズに対応するという当社の決意を示しています。日本において、この症状を有するPNH患者さんに新たな進展をお届けできると期待しています」。 ボイデヤは、米国食品医薬品局よりブレークスルーセラピーの指定を、欧州医薬品庁よりPRIority MEdicines(PRIME)の指定を受けている。また、本剤は米国、欧州、日本において、PNHの治療薬として希少疾病用医薬品の指定を受けている。■参考文献1)電子添付文書「ボイデヤ錠50mg」2024年1月作成(第1版)2)Brodsky RA. Blood. 2014;124:2804-2811.3)Griffin M, et al. Haematologica. 2019;104:e94-e96.4)Hillmen P, et al. N Engl J Med. 2006;355:1233-1243.5)Lee JW, et al. Expert Rev Clin Pharmacol. 2022;15:851-861.6)Kulasekararaj AG, et al. Eur J Haematol. 2022;109:205-214.7)Kulasekararaj A, et al. Hemasphere. 2022;6(Suppl):706-707. 8)Kulasekararaj AG, et al. Presented at: European Hematology Association (EHA) Hybrid Congress. 8-11 Jun 2023; Frankfurt, Germany. Abs PB2056.9)Kulasekararaj AG, et al. Blood. 2019;133:540-549.10)Lee JW, et al. Blood. 2019;133:530-539.11)Roth A, et al. ECTH 2019. 2-4 Oct 2019; Glasgow, UK.12)Lee JW, et al. Lancet Haematol. 2023;10:e955-e965.

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NYHA分類II/III心不全への除細動の長期転帰、CRT-D vs.ICD/NEJM

 駆出率低下、QRS幅延長を認めるニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類II/III度の心不全患者は、植込み型除細動器(ICD)と比べて両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)の治療を受けたほうが、追跡期間中央値約14年時点においても、生存ベネフィットが維持されていたことが示された。カナダ・アルバータ大学のJohn L. Sapp氏らが、「Resynchronization-Defibrillation for Ambulatory Heart Failure Trial(RAFT)」の長期アウトカムの結果を報告した。RAFT試験では、CRT-D治療を受けた患者のほうがICD治療を患者と比べて、5年時点で、死亡率に関するベネフィットが大きかったことが示されていたが、長期生存へのCRT-D治療の効果は明らかになっていなかった。NEJM誌2024年1月18日号掲載の報告。RAFT試験参加の8施設被験者1,050例を長期追跡 RAFT試験では、NYHA心機能分類II/III度の心不全を有し、左室駆出率30%以下、内因性QRS幅120msec以上(またはペーシングQRS幅200msec以上)の患者が、ICD治療群とCRT-D治療群に無作為に割り付けられ追跡評価を受けた。試験登録は2009年に完了し、登録被験者1,798例について、平均追跡期間40±20ヵ月時点で、CRT-D治療群がICD治療群よりも死亡または心不全によるあらゆる入院(主要アウトカム)についてリスクが有意に低かったことが示された(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.64~0.87、p<0.001)。 研究グループは、RAFT試験に参加した施設のうち、被験者数が多かった8施設の患者(計1,050例[CRT-D治療群520例、ICD治療群530例])を対象に、長期アウトカムを評価した。主要アウトカムは全死因死亡で、副次アウトカムは全死因死亡、心移植、補助人工心臓の植え込みの複合とした。追跡期間中央値13.9年、死亡までの期間はCRT-D治療群で長い傾向 長期生存試験の被験者1,050例の追跡期間中央値は7.7年(四分位範囲[IQR]:3.9~12.8)で、生存患者の同中央値は13.9年(12.8~15.7)だった。 死亡は、CRT-D治療群520例中370例(71.2%)、ICD治療群530例中405例(76.4%)に発生した。死亡までの期間は、CRT-D治療群がICD治療群より長い傾向が認められた(加速係数:0.80、95%CI:0.69~0.92、p=0.002)。 副次アウトカムは、CRT-D治療群392例(75.4%)、ICD治療群412例(77.7%)の発生が報告された。

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軽症~中等症の新型コロナ、経口simnotrelvirの早期投与は?/NEJM

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の成人患者において、simnotrelvir+リトナビルの早期投与(発症後72時間以内)は、明らかな安全性の懸念はなく、症状消失までの時間を短縮したことが、中国・中日友好医院のBin Cao氏らが1,208例を対象に行った第II/III相プラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果で示された。simnotrelvirは、中国で開発中の経口3-キモトリプシン様プロテアーゼ阻害薬で、in vitroでSARS-CoV-2に対する活性を示すことが見いだされ、第Ib相試験で有用である可能性が示されていた。NEJM誌2024年1月18日号掲載の報告。11のCOVID-19関連症状が2日連続で認められない状態までの時間を比較 研究グループは中国の研究施設35ヵ所において、発症後3日以内の軽症~中等症のCOVID-19患者1,208例を、simnotrelvir 750mg+リトナビル100mgを投与する群(603例)、プラセボを投与する群(605例)に無作為に割り付け、1日2回5日間投与した。 有効性の主要エンドポイントは、持続的なCOVID-19症状消失までの時間とし、11のCOVID-19関連症状が2日連続で認められない状態と定義した。安全性と、ウイルス量の変化についても評価した。 発症後72時間以内に試験薬かプラセボを投与した患者について、修正ITT解析を行った。持続的な症状消失まで約1.5日短縮、ウイルス量もより減少 持続的なCOVID-19症状消失までの時間中央値は、プラセボ群216.0時間(95%信頼区間[CI]:203.4~228.1)に対し、simnotrelvir群は180.1時間(162.1~201.6)と有意に短かった(群間差中央値:-35.8時間、95%CI:-60.1~-12.4、Peto-Prentice検定のp=0.006)。 投与5日目の時点で、ウイルス量のベースラインからの減少量も、simnotrelvir群がプラセボ群より大きかった(平均群間差:-1.51log10コピー/mL、95%CI:-1.79~-1.24)。 初回投与から29日目までの有害事象の発現率は、simnotrelvir群(29.0%)がプラセボ群(21.6%)より高率だった。ほとんどの有害事象は軽度~中等度だった。

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症候性の重症大動脈弁狭窄症に対する新しい非侵襲的超音波治療(NIUT)の可能性(解説:原田和昌氏)

 TAVIが開発されたおかげで、手術困難な高齢者の大動脈弁狭窄症も治療が可能となったが、それでも重症大動脈弁狭窄症を有する高齢者の16%程度は治療対象から外れるといわれている。したがって、併存症の多い寿命の限られた高齢の石灰化大動脈弁狭窄症に対する真に非侵襲的な治療の開発が求められている。 非侵襲的超音波治療(NIUT)は、超音波を集中させて正確な位置に当て、石灰化した大動脈弁尖を軟らかくして大動脈弁の動きを良くするものである。Valvosoftデバイス(Cardiawave社、ルバロワ・ペレ、フランス)はリアルタイムの超音波画像で位置決めをし、泌尿器科で使う体外衝撃波結石破砕治療よりも低いエネルギー密度の超音波パルスで治療を行うものであり、これを用いたNIUTの安全性と実現可能性(有効性ではない)を多施設共同、シングルアームで検証した。新しいデバイスの少数例のパイロット試験である。 対象は平均年齢83.5歳、STSスコア5.6%。術後30日で治療関連死は発生しなかった。重症イベント、脳血管のイベントは報告されなかった。脳MRIを用いた別の論文でもこれは確認されており、TAVI後よりも少なかった。処置関連重篤有害事象は、SpO2の一過性低下が1例、非重篤有害事象には治療中の痛み、不快感、一過性不整脈があった。6ヵ月後の生存率は72.5%で、その後188日目にもう1例が死亡したが、リスクプロフィールからは妥当な値と考えられた。 6ヵ月で平均大動脈弁口面積はベースラインの0.58cm2から0.64cm2に、平均圧較差は41.9mmHgから38.8mmHgに減少した。6ヵ月後のNYHAスコアは96%の患者で改善または安定し、KCCQスコアも改善した。外来で繰り返しできる治療であり、臨床的ニーズも高いことから、複数回治療のプロトコールなども検討した、真に有効性を証明できるさらなる検証を期待したい。

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第196回 「医師の働き方改革」本格実施直前、大学病院勤務医、教育・研究の「研鑽」は労働に該当と厚労省が通知で明示

能登半島地震、県内外の2次避難所に移ったのは避難者全体の17%にとどまるこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。能登半島地震から3週間が過ぎました。先週のこの連載では、被災者の地元外にある1.5次や2次避難所への移動が本格化してきたと書きましたが、1月22日付の日本経済新聞は、「進まぬ2次避難」というタイトルの記事で、「21日時点の県のまとめによると、県内外の2次避難所に移っているのは2,607人。徐々に増えているものの、避難者全体の17%にとどまる」と書いています。県などは2次避難所として約3万人分の受け入れ先を用意しているそうです。環境が整った避難所が用意されているのに移ろうとしない主な理由は、長年暮らした土地を離れたくない被災者が少なくない(高齢であればあるほど)のようです。テレビの報道でも、復旧の目処がまったく立たないのに、「ここを離れたくない」と語る被災者が多いことに驚きます。災害関連死を防ぐことは重要ですが、被災者の土地への強い愛着を無視しての移動要請は逆に大きなストレスの原因ともなります。被災地ではとても難しい選択が迫られているようです。「教育・研究のみならず、これらに不可欠な準備・後処理や直接関連性のある研鑽は労働時間」さて、今回は1月15日に厚生労働省が、医師の研鑽に係る労働時間に関する通知を一部改正しましたので、それについて書いてみたいと思います。今回の通知では、大学の附属病院等に勤務する教育・研究を本来業務とする医師について、教育・研究のみならず、これらに不可欠な準備・後処理や、直接関連性のある研鑽は、労働時間に含まれるとの見解が明示されました。「医師の働き方改革」の本格実施を直前に控えた昨年は、医師の教育や研究に携わる時間が労働時間に当たるかどうかの議論があちこちで沸き起こりました。神戸市の公益財団法人甲南会・甲南医療センターで勤務していた男性専攻医が昨年5月に自殺したことについて西宮労働基準監督署が労災認定した件や、名古屋大学病院が勤務医の時間外の教育・研究活動を労働ではない自己研鑽として原則扱っていた件などは、全国ニュースとなり、厚生労働省にも早急な対応が求められていました。「医師本人と上司の間で円滑なコミュニケーションを取り、理解の一致のために十分な確認を行うこと」1月15日に厚生労働省労働基準局監督課長名で発出された通知「『医師等の宿日直許可基準及び医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方についての運用に当たっての留意事項について』の一部改正について」1)によれば、今回の改正は「解釈の明確化を図ったものであり、これまでの労働基準法の取扱いを変更するものではない」と説明、その上で、新たな「留意事項」2)で、大学病院に勤務し、診療のほかに教育・研究も本来の業務としている医師については、教育・研究に直接関連性のある研鑽は労働時間に該当すると明示しました。また、2019年に通知と同時に出された「医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について」3)に記述された「診療等の本来業務」について、大学病院の勤務医は「等」の中に教育・研究が含まれるとの見解を示しました。なお、大学病院の医師は研鑽と本来業務の明確な区分が困難な場合が多いことが考えられるため、研鑽の実施に当たっては、医師本人と上司の間で円滑なコミュニケーションを取り、双方の理解の一致のために十分な確認を行うことに特に留意する必要がある、としています。教育・研究活動を自己研鑽として原則扱っていた名古屋大学病院今回の通知改正のインパクトは、大学病院の勤務医に限って、教育・研究活動は本来業務として扱うことが明確化されたことでしょう。昨年11月、朝日新聞の報道等によって、名古屋大学病院が勤務医の時間外における教育・研究活動を、労働ではない自己研鑽として原則扱っていることが問題となりましたが、全国の大学病院における教育・研究に対する曖昧な取り扱いに、一定の方向性を示したものと言えます。2023年11月20日付の朝日新聞の報道によれば、名古屋大学病院では、病院に導入された勤怠管理システムにおいて、勤務時間内の行為はすべて業務として扱う一方、時間外の診療・教育・研究については業務か自己研鑽かを判断するための「区分表」をつくって、2022年11月から適用していたとのことです。たとえば、診療のうち、手術や患者対応は業務として認めていましたが、手術の練習、新薬の情報収集は自己研鑽としていました。一方で、教育と研究については、この時点では「大学院生・学部生への指導」「入試関係業務」「外部資金による研究業務」などが業務として認められており、また、休日の学会出席も業務として認められていたとのことです。しかし、こうした取り扱いをしたことで2022年11月~2023年3月、職員への時間外手当の支払いは月3,000万円ほど増えたそうです。朝日新聞によれば、2023年4月に名大病院は、このまま推移すれば「病院経営が立ちゆかなくなる」として時間外労働を減らす方針を打ち出し、勤怠管理システムの区分表から教育と研究に関する項目をすべて削除、業務とするには、上司の許可を得た上で、「その他」項目からしか申請できない仕様に変えたとのことです。教育と研究は自己研鑽に区分しておきながら論文数増加を要請していた名大こうした対応が朝日新聞等の記事になってしまったのには、また別の事情もからんでいたようです。私が同大の関係者から聞いた話では、勤怠管理システムの区分表から教育と研究に関する項目をすべて削除した直後、同病院の臨床研究中核病院(名古屋大学病院は全国に15ある臨床研究中核病院の一つです)の責任者から、医師宛に「論文数が減っているからもっと研究して論文を書くように」という趣旨のメールが届いたのだそうです。「勤怠システムで教育と研究は自己研鑽に区分しておきながら、もっと論文を書けとは何事か!と怒った誰かが新聞社にタレ混んだのではないでしょうか」とその人は話していました。専攻医が過労自殺した甲南医療センターは院長らが書類送検今回の通知は、教育・研究を本来業務として行う大学病院の勤務医の業務を対象とするもので、医局から派遣されて働く市中病院の勤務医は対象ではありません。そのため、市中病院では、自己研鑽か労働時間かの区分けについて、より実態に即した対応が求められることになります。本連載の「第177回 「令和の米騒動」と神戸・甲南医療センター専攻医自殺・労災認定で感じた共通する“病根”(前編)」、「第178回 同(後編)」で書いた専攻医が過労自殺した甲南医療センターについて、西宮労働基準監督署は12月19日、同センターを運営する公益財団法人甲南会と具 英成院長(代表理事・同法人の代表理事でもあります)、上司にあたる医師1人を、労働基準法違反容疑で神戸地検に書類送検しています。送検容疑は昨年4月、労使協定で定めた上限の95時間を超え、少なくとも113時間56分の時間外労働を専攻医にさせたというものです。各紙報道によれば、労基署はこの時間を「病院側の指揮命令下にあったと確実に認定できる時間」としているとのことです。なお、書類送検したことについて、武見 敬三厚生労働大臣は12月22日の閣議後会見で、「悪質な労基法違反は厳正に対処する」と述べています。自己研鑽か労働かの区分けは、病院がどこまで医師の人件費増に耐えられるかという経営の問題でもあります。2024年の診療報酬改定では、プラス部分の中に「40歳未満の勤務医師の賃上げに資する措置分」が含まれていると厚生労働省の文書に明記されていますが、医師の働き方改革の本格実施を前に、大学病院においても市中病院においても、経営の舵取りは今まで以上に難しくなりそうです。参考1)基監発0115第2号 令和6年1月15日/厚生労働省2)基監発0701第1号 令和元年7月1日、改正基監発0115第2号 令和6年1月15日/厚生労働省3)基発0701第9号 令和元年7月1日/厚生労働省

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コロナワクチンとインフルワクチンで異なる、接種を躊躇する理由とは?

 米国・ハーバード大学T.H. Chan公衆衛生大学院のGillian K. SteelFisher氏らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症ワクチンとインフルエンザワクチンに対して、人々の有効性や安全性の捉え方、接種の意向、躊躇する理由などについて調査した。その結果、有効性については両ワクチンとも40%の人が非常に効果的だと考える一方で、インフルワクチンのほうがコロナワクチンに比べて安全性への信頼度が高く、同様に接種の意向も高いことが示された。JAMA Network Open誌2023年12月21日号Research Letterでの報告。 本調査は2023年7月7~16日に、米国の18歳以上の成人の確率に基づくサンプルを対象にアンケート調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。・調査に招待された3,232人のうち、1,430人(44%)がアンケートに回答した。・ほぼ同数の割合が、ワクチン接種が重篤な症状や入院を防ぐのに非常に効果的であると回答した。コロナワクチン42% vs.インフルワクチン40%。・ワクチンの安全性については、コロナワクチンと比べてインフルワクチンは非常に安全だと思っている割合が高かった。コロナワクチン41% vs.インフルワクチン55%。・今シーズンにワクチンを接種する可能性が非常に高いと答えた割合も、コロナワクチンと比べてインフルワクチンのほうが多かった。コロナワクチン36% vs.インフルワクチン49%。・50歳以上(659人)に限っても、全年代と同様の傾向がみられた。・ワクチン接種を躊躇する人において、コロナワクチンとインフルワクチンで懸念する理由が異なっていた。・コロナワクチンを懸念する理由として最も多い順に、より多くの研究をしてほしい(60%)、ワクチンの安全性への懸念がある(51%)、政府機関によるワクチンの推進を信頼していない(45%)、ワクチンが予防に非常に有効だと思わない(40%)、ワクチンよりも感染して自然免疫を得たい(38%)、ワクチンの製薬企業を信頼していない(38%)が挙げられた。・インフルワクチンを懸念する理由として最も多い順に、ワクチンよりも感染して自然免疫を得たい(37%)、人々があまりにも多くのワクチンを接種することを期待されていると感じる(30%)、政府機関によるワクチンの推進を信頼していない(27%)、ワクチンが予防に非常に有効だと思わない(27%)、感染しても重症になると考えていない(27%)、ワクチンの安全性への懸念がある(25%)が挙げられた。 人々がインフルワクチンよりも新型コロナワクチンの接種に、より消極的であることが示された。著者は本結果を踏まえて、医療者がワクチンに関する情報提供などの患者とのコミュニケーションにおいて、同時接種が提案される際はより人気のあるインフルワクチンを先に始めたり、両ワクチンの安全性と有効性について一貫したメッセージを提供したりすることを勧めている。今シーズン以降のワクチンの普及を促進するためには、医療者やコミュニケーターが公衆の意見の微妙な違いに対応することが不可欠だとしている。

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早期アルツハイマー病における多剤併用と身体能力との関係

 トルコ・University of Health SciencesのAysegul Akkan Suzan氏らは、早期アルツハイマー病患者の歩行を評価するために用いられる特定の身体能力測定と、多剤併用との関連を評価する目的で本研究を実施した。Current Medical Research and Opinion誌オンライン版2023年12月11日号の報告。 3次医療センターの認知症外来クリニックで横断的研究を実施した。1日当たり5剤以上の薬物治療を多剤併用の定義とし、対象患者から中等度~重度の認知症患者は除外した。身体的パフォーマンスステータスの評価には、通常歩行速度(UGS)、Timed Up & Go(TUG)テスト、椅子立ち上がりテスト(CSST)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者134例(女性の割合:67.9%、平均年齢:80.2±7.9歳)のうち、75例(56%)が多剤併用患者であった。・多剤併用患者はそうでない患者と比較し、身体的パフォーマンスが不良であった(UGS:p=0.005、TUG:p<0.001、CSST:p<0.001)。・多剤併用患者では、次のパラメーターが有意に高かった。 BMI(p=0.026) 高血圧(p=0.013) 糖尿病(p=0.018) 虚血性心疾患(p<0.001) 心房細動(p=0.030) うつ病(p=0.012) 甲状腺機能低下症(p=0.007)・多変量解析では、多剤併用と独立して関連していた因子は次のとおりであった。 UGSの遅さ(オッズ比[OR]:1.248、95%信頼区間[CI]:1.145~1.523、p=0.007) TUGの長さ(OR:1.410、95%CI:1.146~1.736、p=0.001) CSSTの長さ(OR:1.892、95%CI:1.389~2.578、p<0.001) 著者らは、「早期アルツハイマー病患者において、多剤併用と身体的パフォーマンス低下との関連が示唆された。高齢のアルツハイマー病患者における多剤併用および薬剤サブグループと身体的パフォーマンスとの関係を調査する、長期プロスペクティブ研究の実施が望まれる」としている。

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開発中の外用PDE4阻害薬、アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬に有望

 軽症~中等症アトピー性皮膚炎または尋常性乾癬患者において、開発中の外用PDE4阻害薬PF-07038124は、忍容性が良好で有効性に優れることが示された。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のLawrence F. Eichenfield氏らが海外第IIa相無作為化二重盲検比較試験の結果を報告した。アトピー性皮膚炎および尋常性乾癬は、外用治療薬についてアンメットニーズが存在する。外用PF-07038124は、オキサボロール骨格を有するPDE4阻害薬で、T細胞ベースアッセイにおいて免疫調節活性が確認されており、IL-4およびIL-13に対する阻害活性を有している。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年12月20日号掲載の報告。 試験は2020年12月21日~2021年8月18日に、4ヵ国の34施設で行われた(データ解析は2021年12月15日まで)。対象は、軽症~中等症アトピー性皮膚炎(病変が体表面積の5~20%)または尋常性乾癬(体表面積の5~15%)を有する18~70歳の患者とした。対象患者を1対1の割合で、PF-07038124(0.01%外用軟膏)群または溶媒群に無作為に割り付け、1日1回6週間塗布した。 主要エンドポイントは、アトピー性皮膚炎患者についてはEczema Area and Severity Index(EASI)総スコアのベースラインからの変化率、尋常性乾癬患者についてはPsoriasis Area and Severity Index(PASI)スコアのベースラインからの変化で、いずれも6週時点で評価した。安全性は、治療中に発現した有害事象や塗布部位の反応などを評価した。 主な結果は以下のとおり。・全体で104例が無作為化された(年齢[平均値±標準偏差]:43.0±15.4歳、女性:55例[52.9%]、アジア人:4例[3.8%]、黒人:13例[12.5%]、白人:87例[83.7%])。・内訳は、アトピー性皮膚炎患者70例、尋常性乾癬患者34例であった。・ベースラインの患者背景は、概してバランスが取れていた。・6週時点において、PF-07038124群は溶媒群と比較して、EASI総スコアのベースラインからの変化率(最小二乗平均値:-74.9% vs.-35.5%、群間差:-39.4%[90%信頼区間[CI]:-58.8~-20.1]、p<0.001)が有意に改善した。・同様に、PASIスコアのベースラインからの変化(-4.8 vs.0.1、群間差:-4.9[90%CI:-7.0~-2.8]、p<0.001)もPF-07038124群が有意に改善した。・治療中に有害事象が発現した患者数は、アトピー性皮膚炎患者の治療群間(PF-07038124群9例[25.0%]vs.溶媒群9例[26.5%])、尋常性乾癬患者の治療群間(3例[17.6%]vs.6例[35.3%])のいずれも同等であった。・PF-07038124の塗布部位反応は報告されなかった。

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PARP阻害薬タラゾパリブ、BRCA変異陽性乳がん、前立腺がんに承認/ファイザー

 ファイザーは2024年1月18日、PARP阻害薬タラゾパリブ(商品名:ターゼナ)について、同剤の単剤療法による「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳」、および同剤とエンザルタミドとの併用による「BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺」の治療薬として、国内における製造販売承認を取得した。  今回の承認は、乳がんについての海外第III相試験(EMBRACA試験)および国内第I相試験の結果等、前立腺がんについては国際共同第III相試験(TALAPRO-2試験の結果等に基づいている。 EMBRACA試験は、化学療法歴がある生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性の転移を有する乳がんを対象に、同剤と化学療法を比較する第III相非盲検無作為化並行2群多施設共同試験である。タラゾパリブ群は化学療法群と比較して、主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)の延長を示し、忍容性は良好であった。  TALAPRO-2試験は、全身治療歴がない転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(相同組換え修復遺伝子変異の有無を問わず)を対象に、同剤とエンザルタミドの併用を評価する第III相二重盲検無作為化プラセボ対照多施設共同試験である。同剤とエンザルタミド併用群は、エンザルタミド群と比較して、主要評価項目の画像診断に基づくPFSの延長を示した。

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ガイダンスに基づくオピオイド処方で死亡率が低減/BMJ

 オピオイド使用障害の患者では、「リスク軽減ガイダンス(Risk Mitigation Guidance; RMG)」に基づくオピオイド処方により、過剰摂取による死亡および全死因死亡の発生率が有意に低下し、違法薬物に代わる医薬品の提供は有望な介入策となる可能性があることが、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のAmanda Slaunwhite氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年1月10日号で報告された。カナダ・ブリティッシュコロンビア州の後ろ向きコホート研究 研究グループは、RMGに基づくオピオイド(モルヒネ)および精神刺激薬(デキストロアンフェタミン、メチルフェニデート)の処方が、薬物の過剰摂取と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)という公衆衛生上の二重の緊急事態下に、死亡と急性期治療のための受診に及ぼした影響を明らかにする目的で、住民ベースの後ろ向きコホート研究を行った(カナダ健康研究所[CIHR]などの助成を受けた)。 2020年3月27日~2021年8月31日に、カナダ・ブリティッシュコロンビア州で、RMG処方としてオピオイド(5,356例、年齢中央値38歳、女性36.4%)または精神刺激薬(1,061例、39歳、38.5%)の処方を受けたオピオイド使用障害または精神刺激薬使用障害の患者5,882例(535例が両方の処方を受けた)を解析に含めた。RMG精神刺激薬処方では予防効果はない 高次元傾向スコアマッチング法による解析では、RMGに基づく1日分以上のオピオイド処方を受けた患者(5,356例)は、同処方を受けていない対照群の患者(5,356例)と比較して、処方日から1週間以内の全死因死亡率(補正後ハザード比[HR]:0.39、95%信頼区間[CI]:0.25~0.60)および過剰摂取関連死亡率(0.45、0.27~0.75)が有意に低かった。 一方、RMGに基づく1日分以上の精神刺激薬処方を受けた患者(1,061例)と、同処方を受けていない対照群の患者(1,061例)の比較では、1週間以内の全死因死亡率(補正後HR:0.50、95%CI:0.20~1.23)および過剰摂取関連死亡率(0.53、0.18~1.56)の低下について、いずれも有意差を認めなかった。 また、RMGオピオイド処方による1週間以内の死亡の予防効果は、特定の週に処方された薬剤の日数が多いほど高くなった。RMGオピオイド処方を4日分以上受けた患者は、対照群と比較して、全死因死亡(補正後HR:0.09、95%CI:0.04~0.21)および過剰摂取関連死亡率(0.11、0.04~0.32)が有意に低下し、いずれも1日分以上の処方よりも優れた。RMG精神刺激薬処方は全原因による急性期受診を抑制 RMGオピオイド処方は、あらゆる要因による急性期治療のための受診(オッズ比[OR]:1.02、95%CI:0.95~1.09)および過剰摂取による急性期治療のための受診(1.09、0.93~1.27)のいずれにも有意な変化をもたらさなかった。 また、RMG精神刺激薬処方は、あらゆる要因による急性期受診(OR:0.82、95%CI:0.72~0.95)を有意に低下させたが、過剰摂取による急性期受診(0.88、0.63~1.23)には影響しなかった。 著者は、「RMG処方を受けた人々の多くは、不安定な住宅事情と貧困の割合が不釣り合いに高いことから、劣悪な健康状態への寄与が示されている重層的で複雑な社会的・経済的な不平等を経験していることが示唆される」としている。

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経口GLP-1受容体作動薬の処方された患者さんへの服薬指導【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第44回

■外来NGワード「朝食前に飲みなさい」(正しい服用法を説明しない)「たっぷり水を飲んで服用しなさい」(間違った説明をする)■解説代表的なインクレチンであるGLP-1は、小腸下部のL細胞から分泌され、膵β細胞でのインスリン分泌を促進し、膵α細胞でのグルカゴン分泌を抑制します。同時に中枢での摂食抑制ホルモンとしても機能します。これまでGLP-1受容体作動薬はペプチドであり、経口投与しても消化酵素によって分解されてしまい吸収されませんでした。そのため、主に注射薬として使われていました。しかし、経口セマグルチドのリベルサス(商品名)は、吸収促進剤であるサルカプロザートナトリウム(SNAC)を添加することで、胃からの吸収が可能となりました。これが国内初の経口GLP-1受容体作動薬です。この薬は胃内で主に吸収され、SNACがもつ局所でのpH緩衝作用によりセマグルチドの酵素的分解が抑制され、吸収が促進されます。また、SNACによってセマグルチドのモノマー化も促進される仕組みです。薬物動態解析によれば、経口投与後のセマグルチドの絶対的なバイオアベイラビリティは、約1%と推定されています。セマグルチドの吸収を高めるためには、空腹時にコップ半分(120mL以下)の水で服用する必要があります。また、経口セマグルチドの吸収には食事が影響を与えることが確認されています。そのため、服用後は少なくとも30分間は飲食や他の薬剤の経口摂取を避ける必要があります。経口セマグルチドの適応は「2型糖尿病」で、用法用量は「1日1回3mgから始め、4週間以上投与した後、1日1回7mgに増量する」ことが推奨されています。患者の状態により適宜増減させることも可能で、1日1回7mgを維持しても効果が不十分な場合は、1日1回14mgに増量することも考慮されています。服用は14mg錠を1錠摂取し、分割・粉砕・噛むことは避けなければなりません。さらに、湿気と光の影響を受けやすいので、服用直前に錠剤をシートから取り出す必要があります。また、ミシン目以外で切れないため、偶数日数で処方する際には、その点に留意する必要があります。患者さんの朝のルーチンに合わせ、服用後の30分間を有意義に過ごす工夫を一緒に考え、指導することが求められます。■患者さんとの会話でロールプレイ患者食事や運動に気を付けているんですが、血糖値がなかなか下がりません。医師それでは、この薬を試してみましょうか。患者どんな薬なんですか?医師これは小腸から出るGLP-1というホルモンを模倣した薬で、普通は注射薬なんですが、この薬は特別な薬で…。患者特別って?医師吸収を高めるために、特許技術が採用されているんですよ。ですから服用方法を守らないと、ほとんど吸収されません。患者えっ、そうなんですか。どんな風に服用したらいいんですか?医師朝のルーチンを教えてもらえますか?患者7時頃に起きて、顔を洗って7時20分頃にパンとコーヒーの朝食を済ませて…。医師なるほど。この薬は、空腹時に服用します。食べたり、飲んだりすると薬の吸収率が下がるので、コップ半分の水(120mL以下)で飲んで、30分経ってから飲み物を飲んだり、食事をしたり、他の薬を飲んだりすることができます。患者そうすると、薬を飲んですぐにコーヒーはだめですね。医師そうですね。この薬は主に胃で吸収されるのですが、1%くらいしか吸収されないとも言われています。是非、この薬の高める朝のルーチンにして頂けますか。患者はい。わかりました(嬉しそうな顔)。■医師へのお勧めの言葉「この薬は、空腹時に服用します。食べたり飲んだりすると薬の吸収率が下がるので、コップ半分の水(120mL以下)で飲んで、30分経ってから飲み物を飲んだり、食事をしたり、他の薬を飲んだりすることができます」 1)Buckley ST, et al. Sci Transl Med. 2018;10:eaar7047.2)Bækdal TA, et al. Diabetes Ther. 2021;12:1915-1927.

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トレンド・トーク:新たな治療薬の登場で、胃がん1次治療はどう変わる?(2)【消化器がんインタビュー】第14回

第14回 トレンド・トーク:新たな治療薬の登場で、胃がん1次治療はどう変わる?(2)出演:岐阜大学医学部附属 がんセンター 牧山 明資氏ニボルマブを含むレジメンが承認されたHER2陰性切除不能胃がんの1次治療。今後もペムブロリズマブ、抗CLDN18.2抗体zolbetuximabも選択肢として加わる可能性がある。HER2陰性胃がんの1次治療はどう変わっていくのか?3名のエキスパートに聞いた。

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英語で「(計画は)バッチリだね」は?【1分★医療英語】第114回

第114回 英語で「(計画は)バッチリだね」は?《例文1》That sounds like a plan to me!(私は良いと思います!)《例文2》We’ll meet here at 8 am tomorrow?(明日はここで午前8時に集合でしたっけ?)It sounds like a plan!(そうです!)《解説》今回紹介した“sounds like a plan”を、単語を追いかけて日本語に直訳してしまうと「計画のように聞こえる」となり、意味がよくわからなくなってしまいます。実際には、「その計画は良さそう!」「賛成!」と同意を示す表現です。“plan”の前に“good”や“great”を補うと、意味が見えやすくなるかもしれません。英語の口語表現の中で自然発生的に生まれてきたフレーズといわれており、聞いたことがないとわかりにくいかもしれませんが、米国にいると本当によく耳にするフレーズです。“Sounds good to me.”、“That works for me.”などと言ってもいいところですが、英語は繰り返しを好まない言語なので、同じ意味のフレーズを何通りも覚えておいて損はないでしょう。なお、例文のように、冒頭に“That”や“It”を付けて前に言われた内容を受けたり、最後に“to me”と付けて用いたりすることもできます。“Sounds good.”(いいですね)という表現は皆さんご存じだと思いますが、併せて“Sounds like a plan.”も使えれば、より「こなれた」英語になると思います。ぜひ、マスターしてください。講師紹介

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