サイト内検索|page:33

検索結果 合計:35608件 表示位置:641 - 660

641.

好中球2桁の患者が来院、まずすべきことは?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第18回

Q18 好中球2桁の患者が来院、まずすべきことは?免疫抑制薬の服用による汎血球減少で、好中球が2桁の患者さんが救急外来受診しました。その際、熱源検索における尿路感染症鑑別のコツがあれば教えてください。

642.

小児の便秘症【すぐに使える小児診療のヒント】第9回

小児の便秘症小児の腹痛の約9割は便秘が原因であるというのは比較的有名な話かもしれません。浣腸で一時的に腹痛が改善したとしても、「そうしなければ出ない」状態そのものを改善しないと子供のQOLに大きな影響を与えます。また、一見便が出ているようにみえても、実は「隠れ便秘」を見逃しているサインである場合もあります。症例4歳女児。夕食後から強い腹痛を訴えて眠れないため、23時に救急外来を受診した。腹壁は柔らかく、臍周囲に軽度の圧痛を認め、左下腹部に便塊を触知した。「うんちは毎日出ていますか」と尋ねると、母は「はい、ちゃんと出ています」と答えた。浣腸により大量の排便が得られると、腹痛は速やかに消失し、元気に帰宅した。「たかが便秘」と侮ることなかれ小児の便秘は決してまれではありません。乳幼児期から学童期まで、小児科診療で頻繁に遭遇する病態であり、離乳の開始・終了期、トイレットトレーニング期、就学開始などの生活環境の変化を契機に発症・増悪しやすいことが知られています。便秘は「排便が少ない」という状況だけではなく、排便時痛、硬便、漏便、排便困難など、排便にまつわる苦痛や異常があれば便秘症として治療が必要になります。小児の便秘症が進行しやすい背景には、下記のような2つの悪循環が関連しています。(1)痛みによる排便回避行動硬便や肛門裂創を経験した子供は、排便を避けようとし、脚を交差させる・肛門を締めるなどの「便を我慢する行動」をとります。その間に大腸で便がさらに硬化し、次の排便がより痛くなるという悪循環に陥ります。(2)直腸拡張に伴う便意消失長期間便が直腸に停滞すると直腸が拡張し、便意の感覚が弱くなります。その結果、ますます排便間隔が空き、便の硬化が進行します。診療では、まず「便秘の存在」を見逃さないことが重要です。一見、軟便やコロコロ便が頻回に出ている場合でも、実は肛門を塞ぐような便塊(便塞栓)が直腸にあり、その隙間から漏れ出ている可能性があります。また、鎖肛やHirschsprung病などの器質的疾患、内分泌疾患、心理社会的要因など、2次性便秘を示唆する所見がないかを問診・診察で丁寧に把握します。特別な原因が否定されれば、適切な治療で悪循環を断ち切ることが予後改善の鍵となります。「ちゃんと出ている」も人それぞれ排便状況の聴取では、「うんちは出ていますか?」という問いだけでは不十分です。下記のように、トイレにいるところが頭に思い描けるように詳細に聴取しましょう。週に何日、1日に何回出るのか(週に3日、毎日、1日2回…)1回量はどの程度か(小指の先程度の少量、便器いっぱいくらい大量…)どのような形状・固さなのか(カチカチ、コロコロ、バナナ、べちゃっとした…)排便にかかる時間や様子はどうか(30分こもる、顔を真っ赤にして、べそをかきながら…)保護者や本人が便秘をまったく認識していないことも珍しくありません。実際、「うちの子はずっと下痢気味で、漏らしてばかりで…」と受診したものの、実は慢性便秘症で便塞栓が形成され、漏便が続いていたというケースもあります。冒頭の症例も、表面的には浣腸によって腹痛が改善して問題が解決したようにみえますが、深夜でも面倒がらずに問診を深掘りすると、以下のようなやり取りがあったかもしれません。問診例うんちは毎日出ていますか?はい、ちゃんと出ています。形や固さはどうですか? バナナのような? それともコロコロの硬い便でしょうか?コロコロの硬い便がいくつか出ています。排便のときはどうですか? 踏ん張ってつらそうな様子はありますか?顔を真っ赤にして30分くらい格闘している日があります。そのせいか、最近トイレに行きたがりません。それは便秘の可能性が高いです。薬を使って排便しやすくしたほうがよいでしょう。毎日出ているのに便秘だなんて思ってもいませんでした。治療と専門医紹介のタイミング便秘症の治療は、便塞栓がある場合、まず直腸内に形成された便塞栓を完全に除去することから始まります。多くの児では直腸が拡張して大きな便塊が停滞しているため、この便塞栓が残ったままでは生活指導や薬物治療の効果が不十分です。浣腸や、場合によっては洗腸による便塞栓除去を確実に行い、直腸を「空の状態」に戻すことが治療の出発点となります。そしてその後、維持治療によって便を柔らかく保ち、再度便塞栓を作らせないことが重要です。維持治療では、排便習慣の確立や生活リズムの調整に加えて、モビコールや酸化マグネシウム、ピコスルファートなどの薬物療法を適切に継続し、慢性便秘症に戻らないようサポートします。治療を適切に行っても1~2ヵ月以内に「便秘でない状態」(痛みのない排便が週3回以上、漏便なし、QOL良好)に到達しない場合には、器質的疾患の評価や治療方針の再検討が必要です。また、治療が難渋することを示唆するYellow Flag(重度の便塞栓、反復する漏便、顕著な排便回避行動、心理社会的要因など)がある児では早期の専門医紹介が望まれます。なお、Red Flag(新生児期からの便秘、生後48時間以上の胎便排泄遅延、肛門奇形、著明な腹部膨満、神経学的異常など)を認める場合には、器質的疾患の可能性が高く、治療開始前であっても迅速な専門医紹介が推奨されます。保護者への説明保護者からは「薬を使うと癖になりませんか?」と相談されることがよくありますが、まずは「薬を使うことで規則正しい排便習慣をつける」ことが治療の目的であると説明し、安心して治療に臨めるようにします。また、生活指導では、落ち着いた朝の排便習慣づくりが重要であることも伝えられるとよいでしょう。1日の中でも、とくに朝は副交感神経から交感神経へ切り替わるタイミングです。しっかり朝食をとることで胃-結腸反射が働き、またその後ゆっくりと時間がとれれば、副交感神経優位で腸管蠕動が進み、排便につながります。しかし、朝の慌ただしさですぐに交感神経優位に切り替わってしまったり、「時間がない」状況でトイレを我慢してしまったりすると、排便のリズムが乱れ、便が腸に停滞する原因となり、便秘へとつながってしまいます。排便習慣は日々の生活に密接に関わり、慢性化すると子供のQOLに大きな影響を与えます。「隠れ便秘」を見逃さず、適切な問診・指導・治療につなげましょう。ひとことメモ:便秘と排尿トラブルの関係小児では、慢性便秘により直腸が便で拡張すると、膀胱が物理的に圧迫され、膀胱容量の減少や膀胱過活動が生じます。また、便を長く我慢する習慣は骨盤底筋の緊張を高め、排便だけでなく排尿時にも筋がうまく弛緩しなくなるため、残尿や尿意切迫、昼間尿失禁につながります。さらに、直腸に便が充満した状態では膀胱の完全排尿が妨げられて残尿が増えるため、反復性尿路感染症の原因にもなります。このように、直腸拡張による膀胱圧迫・膀胱機能変化・骨盤底筋の協調不全が同時に起こるため、排尿トラブルの評価時には必ず便秘の有無を確認する必要があります。便秘治療によって直腸が適正サイズに戻り、膀胱機能や骨盤底筋の協調が回復することで、夜尿・昼間尿失禁・尿意切迫などが改善することも多く、両者を一体として診療することが重要です。参考資料 1) 日本小児栄養消化器肝臓学会/日本小児消化管機能研究会編. 小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン2025年版. 診断と治療社;2025. 2) 十河剛. 子どもの便秘はこう診る!親子のやる気を引き出す小児消化器科医のアプローチ. 南山堂;2020. 3) 小児慢性機能性便秘症

643.

第295回 「効果が乏しい医療」に新たに「腰痛症(神経障害性疼痛を除く)に対するプレガバリン」追加、近い将来査定の対象に

「神経障害性疼痛ではない腰痛には効かない」と国が判定こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、茨城県桜川市で有機農業を営む大学の先輩宅へ農作業の支援に行ってきました。筑波大学近くの公園で落ち葉を拾い集め、軽トラックに乗せて農園まで運び、腐葉土にする準備を行いました。落ち葉を竹製の手箕(てみ)で拾い集めるという単純な作業です。しかし、落ち葉を拾う時の中腰の姿勢はつらく、目一杯落ち葉を詰めたネットの袋は15~20kgほどの重さになります。中高年にとってこうした冬の屋外での農作業は、腰痛悪化やぎっくり腰再発などと隣合わせで、それなりのリスクを伴うものです。とは言え、参加者全員なんとか無事に20袋ばかりの落ち葉を拾い集めることができ、ご褒美に茨城・大洗沖で採れたアンコウの鍋をご馳走してもらいました。さて今回はプレガバリンの話題を取り上げます。厚生労働省は11月27日に開いた社会保障審議会医療保険部会で、「効果が乏しい医療」に神経障害性疼痛ではない「非神経障害性腰痛症」に対するプレガバリン(商品名:リリカなど)の処方を追加する案を出し、同部会は了承しました。また、医療費の適正化に向け、「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」を今後も探して評価を検討していく方針も示されました。とくに整形外科で多用されており、私もかつて「四十肩」の治療で、NSAIDsに追加する形で処方されたこともあるプレガバリンですが、「神経障害性疼痛ではない腰痛には効かない」と国が判定を下したわけで、現場の診療に少なからぬ影響が出そうです。「十分な効果があるというエビデンスがない医療といったものを保険対象から外すという見直しも図っていくべき」と医療保険部会「効果が乏しい医療」とは、2023年に策定された2024~29年度の第4期医療費適正化計画の中で「新たな目標の設定」として盛り込まれた「医療資源の効果的・効率的な活用」で挙げられた「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」のことを指します。同計画策定時、「効果が乏しい医療」としては「急性気道感染症・急性下痢症に対する抗菌薬処方」が挙げられていました。その後、医療保険部会では「無価値医療、すなわち効果があるというエビデンスが十分ない医療や、低価値医療、これは仮に効果があるというエビデンスがあったとしても、その効果が小さく、つまり十分な効果があるというエビデンスがない医療といったものを保険対象から外すという見直しも図っていくべき」といった意見が出され、さらなる探索・検討が行われてきました。その結果、今回、「腰痛症(神経障害性疼痛を除く)に対するプレガバリン」が新たに追加されることになったわけです。今後、効果が乏しい医薬品として都道府県が患者や医師への周知を行うことになります。2028年度診療報酬改定での取り扱いについて中医協で審議予定医療保険部会に出された厚労省の資料には、「プレガバリン(商品名 リリカ錠)の効果・効能は神経障害性疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛。薬理作用はカルシウムチャネルα2δ遮断薬。神経障害性疼痛では有効なケースもあるが、非神経障害性腰痛では効果が限定的。めまい・眠気などの副作用が比較的多い薬と一般的に言われている。先行研究では、腰痛に対するプレガバリン処方が効果が乏しい医療として指摘されている」とその理由が書かれています。この決定がすぐさま「保険診療での査定」につながるわけではありませんが、今後、関係学会と調整後、次々期、2028年度診療報酬改定での取り扱いについて中央社会保険医療協議会で審議が行われ、審議結果に即した診療報酬上の対応が決定されることになります。将来的には神経障害性疼痛ではない腰痛症には処方できなくなると考えられます。なお、医療費適正化計画基本方針は次のように変更されます(下線部追記)。第1 都道府県医療費適正化計画の作成に当たって指針となるべき基本的な事項一 全般的な事項(略)二 計画の内容に関する基本的事項1 (略)2  医療の効率的な提供の推進に関する目標に関する事項(1)~(2)(略)(3)急性気道感染症及び急性下痢症の患者に対する抗菌薬の処方、神経障害性疼痛を除く腰痛症の患者に対するプレガバリンの処方といった効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療や白内障手術及び化学療法の外来での実施状況などの医療資源の投入量に地域差がある医療については、個別の診療行為としては医師の判断に基づき必要な場合があることに留意しつつ、地域ごとに関係者が地域の実情を把握するとともに、医療資源の効果的かつ効率的な活用に向けて必要な取組について検討し、実施していくことが重要である。(略)プレガバリンの年間薬剤費は約60億円との推計、その半分の30億円が削減目標日経メディカルなどの報道によれば、プレガバリンの年間薬剤費は約60億円と推計されており、その半分の30億円が削減目標になる見込みだそうです。第4期医療費適正化計画(2024~29年度)では、急性気道感染症・急性下痢症に対する抗菌薬処方の適正化で約270億円、入院で行う白内障手術や化学療法の適正化で約106億円の削減を見込んでおり、プレガバリンの削減分はそれに加わる形となります。プレガバリンは、日本ではごく軽症の痛みに対しても多く処方されている薬です。神経障害性疼痛の薬となっていますが、そんなことお構いなく、整形外科などで漫然と投与されている印象です。私自身、近所の整形外科で「四十肩」に処方されたときは驚きました。「効くのかな」と思い数日飲んでみたのですが、顕著なふらつきが出て、怖くなって止めました。その後、「四十肩」は3ヵ月余りで自然と治りました。国は「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」を今後も探し出し、医療費適正化計画にも盛り込んでいく計画とのことですが、プレガバリンは、その副作用から転倒骨折や交通事故の危険性も高く、もっと早くに”適正化”が行われてしかるべきだった気がします。「効果が乏しい医療」のさらなる探索と検討に期待したいと思います。参考1)第4期医療費適正化計画における医療資源の効果的・効率的な活用について/厚生労働省

644.

長期QOL予測の共有に家族の抑うつ予防とチーム連携改善効果【論文から学ぶ看護の新常識】第44回(最終回)

長期QOL予測の共有に家族の抑うつ予防とチーム連携改善効果集中治療室(ICU)での家族面談において、個別化された長期的な生活の質(QOL)予測を共有することは、1年後の家族の抑うつの増加を抑制し、医療者間の協働が改善する効果があることが示された。Lucy L Porter氏らの研究で、Intensive Care Medicine誌2025年3月号に掲載の報告を紹介する。集中治療室における長期QOL予測の共有:患者、家族、臨床医の経験と結果への影響―ランダム化比較試験研究チームは、個別化された長期的なQOL予測を共有することが、患者、家族、臨床医の経験と結果にどのような影響を与えるのかを評価することを目的に、ランダム化比較試験を実施した。オランダの2病院の成人ICU患者160例を通常ケア群(79例)または介入群(81例)に割り付けた。介入群では、ICUでの家族面談において、検証済み予測モデルに基づく「長期QOL予測」を共有した。主要評価項目は、共同意思決定(SDM)に関する患者および家族の経験(CollaboRATE、範囲:0~100)とし、家族面談から3日以内に評価した。副次評価項目には、ICU医療従事者の経験(Collaboration and Satisfaction about Care Decisions:CSACD、集中治療室での意思決定に関する倫理的風土の調査票[Ethical Decision-Making Climate Questionnaire:EDMCQ])、患者および家族の不安・抑うつ症状、ICU退室3ヵ月後・1年後の患者のQOLが含まれた。主な結果は以下の通り。患者および家族の経験において、両群間に有意差は認められなかった。CollaboRATEスコア中央値:介入群89(四分位範囲[IQR]:85〜100)vs.通常ケア群93(IQR:85〜100)、p=0.6。患者のアウトカムに差はなかったが、ICU退室1年後の時点において、通常ケア群の家族は抑うつ症状のより大きな増加を報告した(平均値:通常ケア群2.3 vs.介入群0.2、p=0.04)。ICU医療従事者の経験に関しては、介入後にCSACDスコアの改善が認められた(中央値:介入群40 vs.通常ケア群37、p=0.01)一方で、EDMCQには有意な変化は見られなかった。家族面談に個別化された長期QOL予測を取り入れることは、患者および家族の経験に対して測定可能な効果を示さなかった。しかしながら、家族の抑うつ症状およびICU医療従事者が実感する協働に対しては、肯定的な効果が認められた。ICUでの長期QOL予測を家族面談で共有する介入の有効性を評価した本研究は、集中治療後の患者の長期予後や後遺症(PICS)に対する家族の「備え」を支援するという点で、臨床現場の看護師にとって極めて重要な示唆を与えてくれます。ICUの生存率向上に伴い、短期的な救命だけでなく退院後のQOL確保が重要となる中、予測モデルに基づいた個別化された長期QOL予測を、会話ガイドやリーフレットと共に提供する本介入は、家族の長期的な精神衛生に明確な効果をもたらしました。具体的には、ICU退院後1年時点で通常ケア群では家族の抑うつ症状が増加したのに対し、介入群ではその増加が大幅に抑制されるという、統計的に有意な効果が示されました。これは医療者の楽観的になりがちな予測や、家族の長期的影響を過小評価しやすい背景に対し、客観的な予測情報が「現実的な期待」を醸成し、家族が予後に向けて精神的な準備ができた結果と解釈されます。また、本介入はICU医療従事者の職種間の協働とケア決定への満足度(CSACDスコア)も有意に向上させました。これは、客観的な長期予後情報を共有することで、多職種間でのケアや予後に関する目標設定が標準化され、チーム連携の強化につながったためと推察されます。一方、患者・家族の共同意思決定への満足度(CollaboRATEスコア)には有意差が見られなかった点は、両群とも高い満足度を示していたことによる「天井効果」の可能性が高いと考えられます。私たち看護師は日常の家族対応において、予後を尋ねられた際に「人によって異なります」と回答する場面も多いのではないでしょうか。もちろんその通りではありますが、家族の不安を高める可能性も否定できません。また、個々のスタッフが単独で正確な予後を説明することは、責任の重さからも困難です。今回の介入のようにリーフレット等を活用し、さらには学会などが予後に関するデータを積極的に公表して現場で活用できるようになれば、家族の抑うつ症状の予防、職種間協働の促進だけでなく、説明を行う医療者自身の心理的負担軽減にもつながる可能性があります。そうした環境が整うことで、私たちは患者さんとご家族の未来をより力強く支えていけるのではないでしょうか。本連載は今回で最終回となります。最新の知見を臨床現場にどう落とし込むか、そのヒントを皆様と共有できたことは大きな喜びでした。これまでの記事が、より良い看護の実践につながることを願っております。論文はこちらPorter LL, et al. Intensive Care Med. 2025;51(3):478-489.

645.

血圧変動が大きいと認知症リスクが高い?

 日本の国民健康保険データベースを用いた大規模な後ろ向きコホート研究において、血圧変動が大きいことは、降圧薬治療の有無にかかわらず認知症発症リスクの上昇と関連していたことが示された。この関連は、降圧薬の種類や処方数、服薬アドヒアランスを考慮しても認められた。佐藤 倫広氏(東北医科薬科大学)らが、本研究結果をHypertension Research誌オンライン版2025年11月10日号で報告した。 研究グループは、DeSCヘルスケアが提供する日本の国民健康保険データベースを用いて、5回の特定健診データ(血圧値含む)が得られ、死亡情報(資格喪失情報より特定)が取得可能であった50歳超の30万1,448例を解析対象とした。5回の特定健診における収縮期血圧の変動係数(SBP-CV)を用いて健診ごとの血圧変動を評価し、認知症発症リスク(抗認知症薬の新規処方を代替指標として定義)との関連を検討した。解析には死亡を競合リスクとしたFine-Grayモデルを用いて、ベースライン前365日以内の降圧薬処方の有無により未治療群と治療群に分けて評価した。治療群においては、降圧薬の種類や処方数、Medication Possession Rate(MPR)で評価した服薬アドヒアランスも調整して解析した。 主な結果は以下のとおり。・対象のうち男性の割合は38.6%、平均年齢は66.6歳であった。・追跡期間(平均:未治療群2.20年、治療群2.11年)中に、664例(未治療群366例、治療群298例)が認知症を発症した。競合リスクとしての死亡は未治療群1,254例、治療群1,115例に認められた。・SBP-CVの最高分位(第6分位)群は、治療の有無にかかわらず認知症リスクが最も高かった。一方で、第1~5分位では一定の傾向はみられなかった。・未治療群では、SBP-CV第6分位群(SBP-CV≧9.83%)は第1~5分位群と比較して、有意に認知症発症リスクが高かった(ハザード比[HR]:1.50、95%信頼区間[CI]:1.17~1.92)。・治療群では、降圧薬の種類や服薬アドヒアランスの調整後においても、SBP-CV第6分位群(SBP-CV≧10.67%)は第1~5分位群と比較して、有意に認知症発症リスクが高かった(HR:1.43、95%CI:1.09~1.89)。・層別解析の結果、治療群においてHbA1c値との有意な交互作用が認められ(交互作用のp=0.024)、HbA1cが6.5%以上の集団ではSBP-CV増大による認知症発症リスクの上昇が顕著であった(SBP-CV第6分位群の第1~5分位群に対するHR:2.84、95%CI:1.57~5.14)。・降圧薬の種類や処方数、服薬アドヒアランス不良(MPR 80%未満)による有意な交互作用は認められなかった。 著者らは「特定健診ごとの血圧変動が大きいこと(SBP-CV≧10%程度)は、降圧薬治療の有無にかかわらず認知症発症リスクの上昇と関連していた。降圧薬治療中の患者において、降圧薬の種類や処方数、アドヒアランスを考慮してもこの関連は維持され、とくに血糖コントロール不良例で顕著であった。認知症発症リスクを評価する上で、血圧変動のモニタリングが有用である可能性がある」とまとめている。

646.

cT1-2N0乳がんにおけるSLNB省略、5年RRFSで非劣性(BOOG2013-08)/SABCS2025

 乳房温存療法(乳房温存手術および全乳房照射)を受けるcT1-2N0乳がんにおけるセンチネルリンパ節生検(SLNB)の省略を検討したBOOG2013-08試験で、SLNB非施行群が5年領域無再発生存(RRFS)率においてSLNB施行群に非劣性を示した。オランダ・Maastricht University Medical CenterのMarjolein L. Smidt氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。 BOOG2013-08試験は、2015~22年にオランダの25施設で実施された多施設共同非劣性無作為化第III相試験である。・対象:乳房温存療法で治療予定のcT1-2N0の片側浸潤性乳がんの女性・試験群(非施行群):SLNB非施行・対照群(施行群):SLNB施行・評価項目:[主要評価項目]5年RRFS率(絶対差の両側95%信頼区間[CI]が5%未満の場合に非劣性と定義)[副次評価項目]局所再発率、対側乳がん発生率、遠隔転移・死亡、5年遠隔無再発生存期間(DDFS)率など 主な結果は以下のとおり。・計1,733例が登録され1,572例がPPS解析の対象となった(施行群:748例、非施行群:824例)。平均年齢は施行群61.6歳、非施行群61.4歳で、89%が50歳以上であった。82%がcT1で、82.8%が腫瘍グレード1/2であった。乳がんのサブタイプはHR+/HER2-が最も多かった。施行群におけるセンチネルリンパ節転移陰性は86.3%で、微小転移が6.0%、肉眼的転移が7.7%に検出された。術後療法については、なしが52%、化学療法が約12%、分子標的療法が4~5%、内分泌療法は約44%であった。・5年RRFS率は、施行群96.6%(95%CI:95.2~98.0)、非施行群94.2%(同:92.4~96.0)で、絶対差2.35%(同:0.06~4.72)で5%の非劣性マージンを超えず、ITT解析も同様であった。・5年領域再発(RR)率は、施行群0.6%(95%CI:0.0~1.1)、非施行群1.1%(同:0.4~2.0)であり、絶対差は0.5%(同:-0.3~1.7)であった。・5年DDFS率は、施行群96.0%(95%CI:94.4~97.6)、非施行群92.9%(同:90.9~94.9)であり、絶対差は3.3%であった。 Smidt氏は「本試験の対象患者のほとんどが50歳以上、HR+/HER2-、腫瘍グレード1/2のcT1乳がんであり、今回の結果はこの集団においてはSLNB省略が安全に考慮されうることを示唆している」とまとめ、さらに「この集団においては内分泌療法がSLNB省略の必要条件ではないようだ」と追加した。

647.

ベンゾジアゼピン系薬中止に対する障壁とその要因とは

 高齢者におけるベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZD)の中止では、さまざまな阻害要因が存在する。これら阻害因子を特定し、優先順位付けすることは、BZDを中止するための効率的な介入方法を作成するうえで不可欠である。ベルギー・Universite Catholique de LouvainのVladyslav Shapoval氏らは、高齢者におけるBZD中止の阻害因子およびBZDの減量または中止に対する意欲に関連する因子を特定するため、横断調査を実施した。Age and Ageing誌2025年11月28日号の報告。 対象は、欧州6ヵ国の医療機関から募集した睡眠障害の治療のためBZDを使用している65歳以上の高齢者。BZD中止の阻害因子は、行動の個人的および状況的決定要因を体系的に特定する理論的領域フレームワーク(TDF)に基づく27項目の質問票を用いて特定した。分析には、記述統計分析を用いた。患者のBZDの減量または中止への意欲に関連する因子の特定には、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・本研究の参加者183例のうち、医師の勧めがあればBZDを減量する意欲があると回答した患者は59.1%、中止する意欲があると回答した患者は42.7%であった。・参加者の半数は、中止が必要な理由を理解していた。・多くの参加者において、TDFの複数の領域において阻害因子が特定された。・阻害要因としては、BZDに対する「高い満足度」「副作用リスクが低い」と認識されていること、「対処スキルや中止能力が限られている」こと、「中止への不安」「医師やソーシャルネットワークからのサポート不足」などが挙げられた。・TDFの目標、感情、社会的影響といった領域のスコアが高いほど、BZDを減量する意欲が高いことが示された。・これらの領域に加え、強化、環境的背景、リソースも、中止する意欲が高いことと関連していた。 著者らは「本知見は、高齢者のBZD中止における期間と課題の両方を浮き彫りにしている。約半数の患者は、BZDを中止する意欲があるものの、効果的にBZD中止を行うためには、多くの行動領域にまたがる障壁に対処できる介入が求められる」とまとめている。

648.

心原性ショックへのlevosimendan、ECMO離脱を促進せず/JAMA

 静脈-動脈体外式膜型人工肺(VA-ECMO)による管理を受けている重篤だが可逆性の心原性ショック患者の治療において、強心血管拡張薬levosimendanの早期投与はプラセボと比較して、ECMO離脱までの時間を短縮せず、集中治療室(ICU)入室期間や60日死亡率に差はないが、心室性不整脈の頻度が高いことが、フランス・ソルボンヌ大学のAlain Combes氏らLEVOECMO Trial Group and the International ECMO Network(ECMONet)が実施した「LEVOECMO試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年12月1日号で報告された。フランスの無作為化プラセボ対照比較試験 LEVOECMO試験は、フランスの11ヵ所のICUで実施した研究者主導型の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2021年8月~2024年9月に参加者を募集した(フランス保健省などの助成を受けた)。 年齢18歳以上、急性心原性ショックを発症し、従来治療が不応で、VA-ECMO開始から48時間以内の患者を対象とした。 被験者を、levosimendan 0.15μg/kg/分(2時間後に0.20μg/kg/分に増量)またはプラセボの24時間持続注入を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、無作為化から30日以内におけるECMO離脱成功までの時間とした。ECMO離脱成功率:68.3%vs.68.3% 205例(年齢中央値58歳[四分位範囲[IQR]:50~67]、女性56例[27.3%])を登録し、101例をlevosimendan群、104例をプラセボ群に割り付けた。心原性ショックの主な病因は、開心術後(79例[38.5%])、急性心筋梗塞(56例[27.3%])、心筋炎(28例[13.7%])であった。無作為化の時点でのSOFAスコア中央値は12点(IQR:9~15)だった。投与量は、levosimendan群の93%、プラセボ群の96%で0.20±0.01μg/kg/分に増量した。 30日以内のECMO離脱成功は、levosimendan群の101例中69例(68.3%)、プラセボ群の104例中71例(68.3%)で達成し(リスク群間差:0.0%[95%信頼区間[CI]:-12.8~12.7]、部分分布ハザード比:1.02[95%CI:0.74~1.39])、両群間に有意な差を認めなかった(p=0.92)。 ECMO離脱成功の競合イベントであるECMO離脱失敗(離脱後30日以内における2回目のECMOの必要性、他の機械的循環補助デバイスの使用、心臓移植または死亡:15例[14.9%]vs.21例[20.2%]、p=0.32)およびECMO離脱前の死亡(15例[14.9%]vs.12例[11.5%]、p=0.47)にも、両群間に有意差はみられなかった。 また、ECMO使用期間中央値(levosimendan群5日[IQR:4~7]vs.プラセボ群6日[4~11]、p=0.53)、平均ICU入室期間(18日[SD 15]vs.19日[SD 15]、p=0.42)、60日死亡率(27.7%vs.25.0%、リスク群間差:2.7%、95%CI:-9.0~15.3、p=0.78)についても、両群間に有意な差はなかった。一方、60日以内の平均入院期間(28日[SD 18]vs.35日[SD 19]、リスク群間差:-7日、95%CI:-12~-2)は、プラセボ群で長かった。全般的な有害事象の頻度は同程度 薬剤関連の有害事象の発生率は両群で同程度であったが、心室性不整脈の頻度がlevosimendan群で高かった(18例[17.8%]vs.9例[8.7%]、絶対リスク群間差:9.2%、95%CI:0.4~18.1)。電気的除細動を要する心室性不整脈は、それぞれ4例(4.0%)および1例(1.0%)であった。 事前に規定されたサブグループ(開心術後、急性心筋梗塞、心筋炎、その他)のいずれにおいても、治療効果について両群間に差を認めなかった。 著者は、「これらの知見は、この患者集団におけるアウトカムの改善を目的とするlevosimendanの日常診療での使用を支持しない」「バイアスを最小化し、95%以上の患者で重大な血行動態の不安定化を伴わずに最大投与量に達したにもかかわらず、levosimendanは主要・副次エンドポイントに関して、またすべてのサブグループにおいて有益性の徴候を示さなかった」「ICU入室期間に差がないにもかかわらずプラセボ群で入院期間が長かったのは、levosimendan群で有意差はないものの死亡率(とくに試験開始後2週間以内)が高かったこと、プラセボ群で移植患者が多かったことなどによる可能性が考えられる」としている。

649.

デュピルマブ、6~11歳の気管支喘息の用法・用量追加/サノフィ

 サノフィは2025年12月22日、デュピルマブ(商品名:デュピクセント)について、6~11歳の小児の気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症または難治の患者に限る)に関し、製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。 本承認は、既存治療でコントロール不良の中等症から重症の喘息を有する6~11歳の小児を対象とした海外第III相試験「LIBERTY ASTHMA VOYAGE(EFC14153試験)」、EFC14153試験を完了した患者を対象に実施した海外第III相試験「LTS14424試験(main study)」、国内第III相試験「LTS14424試験(Japan substudy)」の結果などに基づくものである。 EFC14153試験において、2型炎症性喘息(呼気中一酸化窒素濃度[FeNO]:20ppb以上または好酸球数150/μL以上)集団の年間増悪発現率(回/人年)は、デュピルマブ群0.305、プラセボ群0.748であり、デュピルマブ群で有意な改善が認められた(p<0.0001)。 電子化された添付文書の改訂後の「効能又は効果」「用法及び用量」の記載は、以下のとおり(下線部が変更箇所)。4. 効能又は効果300mgペン、300mgシリンジ既存治療で効果不十分な下記皮膚疾患 ○アトピー性皮膚炎注) ○結節性痒疹 ○特発性の慢性蕁麻疹○気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)注)○慢性閉塞性肺疾患(既存治療で効果不十分な患者に限る)注)○鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)注)200mgペン、200mgシリンジ既存治療で効果不十分な下記皮膚疾患 ○アトピー性皮膚炎注) ○特発性の慢性蕁麻疹○気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)注)注)最適使用推進ガイドライン対象6. 用法及び用量(一部抜粋)〈気管支喘息〉通常、成人及び12歳以上の小児にはデュピルマブ(遺伝子組換え)として初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与する。通常、6歳以上12歳未満の小児にはデュピルマブ(遺伝子組換え)として体重に応じて以下を皮下投与する。 15kg以上30kg未満:1回300mgを4週間隔 30kg以上:1回200mgを2週間隔

650.

フィネレノン、慢性心不全の適応追加/バイエル

 バイエル薬品は、非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノン(商品名:ケレンディア)への慢性心不全の適応追加を2025年12月22日に取得したことを発表した。 本適応追加は、日本人を含むLVEF40%以上の心不全患者約6,000例を対象とした国際共同第III相臨床試験FINEARTS-HF1)に基づき承認された。同試験でフィネレノンは、主要評価項目である心血管死およびすべて(初回および再発)の心不全イベント(心不全による入院または緊急受診)の相対リスクを統計学的有意に16%減少させた(rate ratio:0.84[95%信頼区間:0.74~0.95、p=0.0072])。また、フィネレノンの忍容性は良好で、既知の安全性プロファイルと一貫していた。<適応追加後の「効能又は効果」「用法及び用量」>●効能又は効果・2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。・慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。●用法・用量<2型糖尿病を合併する慢性腎臓病>通常、成人にはフィネレノンとして以下の用量を1日1回経口投与する。eGFRが60mL/min/1.73m2以上:20mgeGFRが60mL/min/1.73m2未満:10mgから投与を開始し、血清カリウム値、eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に20mgへ増量する。<慢性心不全>通常、成人にはフィネレノンとして以下の用量を1日1回経口投与する。eGFRが60mL/min/1.73m2以上:20mgから投与を開始し、血清カリウム値、eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に40mgへ増量する。eGFRが25mL/min/1.73m2以上60mL/min/1.73m2未満:10mgから投与を開始し、血清カリウム値、eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に20mgへ増量する。

651.

アテゾリズマブ、胸腺がんに対する適応追加/中外

 中外製薬は2025年12月22日、アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)について、胸腺がんに対する適応追加の承認を取得したことを発表した。 本承認は、切除不能な胸腺がん患者48例を対象に、1次治療としてアテゾリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセルの有効性および安全性を評価した医師主導国内第II相試験「MARBLE試験」の成績に基づくものである。 本試験における主要評価項目の独立中央判定に基づく奏効割合は56.3%(95%信頼区間:41.2~70.5)であり、副次評価項目の無増悪生存期間の中央値は9.6ヵ月であった。 電子化された添付文書の改訂により追加された「効能又は効果」「用法及び用量」の記載は、以下のとおり。4. 効能又は効果(一部抜粋)〈テセントリク点滴静注1200mg〉 ○切除不能な胸腺6. 用法及び用量(一部抜粋)〈切除不能な胸腺〉カルボプラチン及びパクリタキセルとの併用において、通常、成人にはアテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回1,200mgを3週間間隔で点滴静注する。

652.

難治性下肢潰瘍治療の課題を解決するヒト羊膜製品/マイメディクス

 糖尿病患者数は全世界8億2,200万例に上り、日本国内でも約1,000万例に達している。東京医科大学形成外科学分野 松村 一氏は、「難治性足潰瘍治療の現状とアンメット・ニーズ」と題し講演した。約10%が切断に至る糖尿病性足潰瘍(DFU) 糖尿病合併症の1つであるDFUは血流障害と神経障害を背景に発症する。近年、患者数は増加し続けている。長期にわたるDFUは感染や組織障害を起こし足の切断に至る。生命予後も悪く、切断に至った場合の5年死亡率は全がんよりもさらに高い。従来はデブリードマン、オフローディング(免荷)、血行再建、感染制御などの治療が行われるが、約10%が切断に至り、治癒しても再発が多い。天然の組織増殖を促すヒト羊膜製品 そのような中、マイメディクスのヒト羊膜エピフィックスが保険償還されている。エピフィックスは難治性創傷(DFUおよび静脈うっ滞性潰瘍)の治療促進を目的としたヒト羊膜絨毛膜の同種移植片である。傷の大きさに合わせて製品を切り取り、清浄化した創面に貼付するという簡便な手技で使用できる。 ヒト羊膜は、胎児を包む膜であり、移植に用いても免疫学的に拒絶反応が起こりにくい免疫特権組織として知られている。エピフィックスには300種類以上の調整タンパク質が含まれる。慢性創傷ではタンパク質を壊すマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)が、MMPを阻害する組織プロテアーゼ阻害因子(TIMP)より優位となり治癒を妨げる。エピフィックスにはMMPを上回るTIMP(28対1以上)が含まれており、天然組成の組織増殖に適した環境を提供する。さらに、エピフィックスには幹細胞を創部へ誘導し、組織の再生と治癒を促進する働きもあるとされる。高い治癒効果、再発抑制、切断リスクの軽減を実現 従来の創傷治療デバイスが「傷を小さくする」ことを主眼としていたのに対し、エピフィックスは傷を完全に治すことができるという点が異なる。完全な創閉鎖は、感染リスクや再発リスクの軽減に直結し、下肢切断のリスクを減らす。海外データによれば、エピフィックスは難治性創傷の再発を低減し、9〜12ヵ月後も94%が完全治癒を維持している。また、小切断を10%、大切断を50%削減するという結果も発表されている。 エピフィックスの使用は、難治症例に限定されており、使用期間も定められている。また、使用する医師や施設の要件も設定されている。すでに日本国内で5,000シート以上が販売されているが、この有効性の高い治療をさらに普及させ、救肢できる患者を増やす努力が必要だ。そのためには形成外科以外の診療科医師への知識共有、そして患者側の認知度向上に向けた活動が必要、と松村氏は提言する。

653.

SGLT2阻害薬の投与により自己免疫性リウマチ性疾患の発症が抑制される?(解説:住谷哲氏)

 糖尿病合併症に慢性炎症が深く関与していることはよく知られている。そこで、慢性炎症を抑制する作用のある血糖降下薬があれば、それを選択するのが合併症予防のためには有用と考えられる。SGLT2阻害薬が糖尿病合併症である腎症や心不全の予後を改善することは現在ではほぼ確立しているが、その想定されているメカニズムの1つにSGLT2阻害薬の抗炎症作用がある1)。慢性炎症の持続が自己免疫性リウマチ性疾患の発症につながるのかは不明であるが、著者らはSGLT2阻害薬の抗炎症作用に着目して、SGLT2阻害薬の投与が自己免疫性リウマチ性疾患の発症抑制と関連するか否かをSU薬を対照として検討した。 韓国の医療データベースを用いた後方視的コホート研究であり、ICD-10のコーディングで自己免疫性リウマチ性疾患に含まれたのは、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、乾癬性関節炎(psoriatic arthritis)、脊椎関節炎(spondyloarthritis)、SLE、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、全身性硬化症(systemic sclerosis)、リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica)、混合性結合組織病(mixed connective tissue disease)、皮膚筋炎/多発筋炎(dermatomyositis/polymyositis)、結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa)である。結果は、SGLT2阻害薬の投与はSU薬の投与と比較して自己免疫性リウマチ性疾患発症の減少と関連しており、そのハザード比は0.89(95%信頼区間:0.81~0.98)であった。有意な減少ではあるが、絶対数でみると100,000人・年当たりの発症がSU薬58.41人からSGLT2阻害薬51.90人と6.50人の減少である。 自己免疫性リウマチ性疾患の発症率そのものが低いので、結果は有意な減少であるが臨床的に意味のある数字とは思われない。したがって、血糖降下薬を選択する際に自己免疫性リウマチ性疾患の発症を抑制する目的で、SU薬ではなくSGLT2阻害薬を選択する正当性はないだろう。むしろ著者らがDiscussionで述べているように、自己免疫性リウマチ性疾患を合併する2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の免疫調節作用の有用性を検討する方向の研究が進むことを期待したい。

654.

ロジスティック回帰分析 その1【「実践的」臨床研究入門】第60回

ロジスティック回帰モデルの基本的な考え方今回からは、ロジスティック回帰を用いた多変量解析について解説します。以前説明した線形回帰(重回帰)ではアウトカム指標は連続変数でしたが、ロジスティック回帰ではアウトカム指標が2値のカテゴリ変数の場合に適用されます(連載第50回参照)。それでは、下記に示したわれわれのResearch Ques-tion(RQ)を題材にして、ロジスティック回帰の実際について考えてみます(連載第49回参照)。P(対象):慢性腎臓病(CKD)患者E(要因):厳格低たんぱく食の遵守ありC(対照):厳格低たんぱく食の遵守なしO(アウトカム):1)末期腎不全(透析導入)、2)糸球体濾過量(GFR)低下速度交絡因子:年齢、性別、糖尿病の有無、血圧、eGFR、蛋白尿定量、血清アルブミン値、ヘモグロビン値これまで厳格低たんぱく食の遵守というEと、末期腎不全、GFR低下速度というOとの関連について、それぞれ生存時間分析、線形回帰(重回帰)分析を用いた多変量解析で交絡因子を調整して検討しました。今回は、Eである厳格低たんぱく食の遵守の有無(2値のカテゴリ変数)をアウトカム指標におき、ロジスティック回帰を用いて交絡因子として挙げた種々の患者背景要因を調整したうえで、Eという診療パターンが「起こりやすい」患者特性について検討します。ロジスティック回帰モデルの考え方として、まずオッズについて説明します。オッズとは「ある事象が起こる確率と起こらない確率の比」で表される指標です。今回の題材では、Aという事象、「厳格低たんぱく食の遵守あり」が起こる確率をp(A)とすると、Aという事象が起こらない、すなわち「厳格低たんぱく食の遵守なし」である確率は1-p(A)で表されます。したがって、事象Aのオッズはという数式で表されます。p(A)の取りうる範囲は確率ですので0から1までの値であり、1を超えたり負の値になったりすることはありません。ここでp(A)を目的変数として、複数の説明変数からこれを推測することを考えます。たとえば説明変数として連続変数xをおき、xの値が変動するとp(A)になる確率が大きくなったり小さくなったりする関係があるとします。たとえば、年齢という連続変数が大きくなる、高齢になるほど、p(A)、すなわち「厳格低たんぱく食の遵守あり」の確率が低くなる、というような関係です。ある目的変数を複数の説明変数によって推測する、ということを線形回帰(重回帰)分析ですでに説明しました(連載第50回参照)。上記の重回帰式yの取りうる範囲は-∞から∞です。しかし今回この左辺に置きたいのはAという事象が起こる確率p(A)であり、その取りうる範囲は0から1までの値であり、左辺と右辺の取りうる範囲が揃いません。そこで、先ほど説明したオッズの出番です。事象Aのオッズはであり、p(A)の取りうる範囲は0から1でしたので、数式から事象Aであるオッズの取りうる値は0から∞になります。しかし、重回帰式yの取りうる範囲は-∞から∞ですので、まだ左辺と右辺の取りうる範囲は一致しません。そこでさらに、オッズの自然対数をとるロジット変換を行い、事象Aのロジットを求めると下記の数式になります。ロジット変換を行うと、その取りうる範囲は-∞から∞となります。このロジットを目的変数として左辺に置き、右辺に重回帰式を当てはめることにより、下記の数式で示すように、ようやく左辺と右辺で取りうる範囲が揃います。この数式がロジスティック回帰モデルの基本形です。左辺は事象Aが起こる確率p(A)のロジット(対数オッズ)を示します。右辺は切片aと複数の説明変数xiのそれぞれの回帰係数biの項の総和と残差eで表されます。この数式を用いて、重回帰分析と同様に複数の独立変数と2値のカテゴリ変数である目的変数との関連を検討することが、ロジスティック回帰分析を用いた多変量解析の基本的な考え方です。

655.

異物除去(12):指輪【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q156

異物除去(12):指輪Q15684歳女性。高血圧症や糖尿病、慢性腎臓病で診療所にかかりつけであった。腰椎圧迫骨折後にADL低下があり、訪問診療開始となっている。定期の訪問診療時に、指輪がキツくなってきて抜けないから抜いてほしいと依頼があった。指に明らかな虚血所見や外傷はない。訪問診療バッグには一般的な診察道具が入っている。使えそうなものを探したが、糸状のものはなかった。ほかに手持ちのものや一般家庭にあるもので何か使えるものはないだろうか。

657.

第298回 日中の自然光で2型糖尿病患者の血糖値が改善

糖尿病患者の糖濃度をより落ち着かせる自然光の効果が、少人数の無作為化試験で示されました1)。24時間を一区切りとする周期(概日周期)に合わせた活動のおかげで、われわれ人間を含む光感受性生物は環境の変化に備えることができます。ヒトに生まれつき備わる周期性と代謝や病気の関連がこれまでの研究で明らかになっています。たとえば周期性を担う時計遺伝子の筋肉での発現の乱れやミトコンドリア代謝の周期性の欠如が、インスリン抵抗性の高齢男性や2型糖尿病(T2D)の培養筋肉組織に認められます。また、夜間交代勤務をする人、あるいは交代勤務を模した環境での試験の結果によると、明るい昼間と暗い夜間が交互に訪れる明暗周期にそぐわない振る舞いは代謝の不調と強く関連します。生物の概日周期は明暗周期ともっぱら同調します。とはいえ、近代的な生活習慣は一定の人工照明の下で8~9割の時間を室内で過ごすことを特徴としており、昼間に浴びる光量は不足気味な一方で日没後の夜間の光量は過剰です。昼間と夜間に浴びる光の量を変えることが代謝に影響します。一例として、T2D患者が朝に明るい人工の光を浴びると、仄かな光に比べて食後血糖やトリグリセライド値がより上昇しました。それに、昼間の室内での仕事時間に明るい人工照明を浴びることは、仄かな光を浴びることに比べて糖代謝や体温調節におおむね好ましい効果をもたらすことがインスリン抵抗性の高齢者が参加した試験で示されています。しかし、オランダのマーストリヒト大学の研究者らの調べによると、T2D患者が自然光を日中に室内で浴びることがもたらす糖の変動や24時間の代謝への効果を、設定環境の下で典型的な人工照明と比較した試験はこれまでありませんでした。そこで同大学のJan-Frieder Harmsen氏らはT2D患者13例を募ってクロスオーバー無作為化試験を実施し、昼間の室内の明かりが自然光の場合と人工照明の場合の代謝、概日周期の生理指標、糖濃度の違いを調べてみました。試験では大窓から自然光が入る部屋と窓のない人工照明のみの部屋を用意し、被験者にそのどちらでも4.5日間の日中(朝8時から夕方5時まで)を1ヵ月の間をおいて過ごしてもらいました。それらの間に被験者には糖濃度を絶えず常時測定する装置を身に着けてもらいました。ただし、3例の常時糖濃度(CGM)情報は技術的な問題により残念ながら不完全でした。それら3例を差し引いた残りの10例のCGMの記録を調べたところ、昼間に自然光を浴びていた4.5日間のCGMはおよそ半分(51%)のあいだ正常範囲(4.4~7.2mmol/L)にありました。一方、人工照明のときには半分に満たない43%のあいだCGMが正常範囲でした。また、自然光の期間は脂肪酸化(燃焼)が亢進していました1,2)。T2D患者が自然光をより長く浴びるとどうやら糖制御が改善するようです1)。自然光の取り柄の確立にはさらなる試験が必要ですが、自然光はT2D患者の代謝を上向かせるようであり、代謝疾患の治療を担いうると著者は言っています1)。自然光をより浴びることは、なんなら窓辺に座るだけで実現するわけで、誰でもタダで実行できるそんな手軽な方法で多くのT2D患者が助かるかもしれません3)。 参考 1) Harmsen JF, et al. Cell Metab. 2025 Dec 18. [Epub ahead of print] 2) An office with natural light could help keep blood sugar under control / Australian Science Media 3) Centre Sitting by a window may improve blood sugar levels for type 2 diabetes / NewScientist

658.

薬局に「傷病名」が共有される時代がすぐそこに!【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第162回

薬局を含む電子カルテの共有サービスが1年後に始まる予定です。いよいよ薬局に「傷病名」が共有される時代になりそうです。厚生労働省は2025年12月10日に開催した「第26回健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ」で、電子カルテ情報共有サービスについて、2026年度の冬ごろをめどに全国での運用開始を目指す方針を示した。進行中のモデル事業で複数の課題が明らかになり、それに対応する期間を想定してのスケジュールだ。(2025年12月15日付 日経メディカル)2022年5月に、自由民主党政務調査会より提言された「医療DX令和ビジョン2030」の中の三本の柱の1つとして電子カルテ情報共有サービスが掲げられました。政府は、日本の医療分野のデジタル化を推進する取り組みとして電子カルテ情報共有サービスを構築し、医療の効率化と情報共有の改善を目指しています。電子カルテ情報共有サービスは、全国の医療機関や薬局などで患者の電子カルテ情報を共有するための仕組みで、提供するサービスは次の4点です。1.診療情報提供書を電子で共有できるサービス(退院時サマリーについては診療情報提供書に添付)2.各種健診結果を医療保険者及び全国の医療機関等や本人等が閲覧できるサービス3.患者の6情報を全国の医療機関等や本人等が閲覧できるサービス4.患者サマリーを本人等が閲覧できるサービス具体的には、「3文書6情報」と呼ばれる情報の標準化が進められています。「診療情報提供文書」「退院時サマリー」「健康診断結果報告書」の3文書(文書情報)と、「傷病名」「感染症情報」「薬剤アレルギー等」「その他アレルギー等」「検査」「処方」の6情報です。これらの情報が患者の同意のもと、スムーズに共有されることで、医療の質の向上や継続性の確保が期待されています。電子カルテ情報共有サービスは、2025年度中の本格運用を目標に、一部の地区ではすでに試験運用が始まっています。この試験運用によって得られた課題をクリアした後の2026年の冬ごろに全国で運用を開始するとのことです。現在、薬局でも医療機関でも、DX加算が設けられており、DX化は加速しています。薬局においては、今も手計算で調剤報酬を計算している薬局はほぼないでしょう。一方、厚生労働省の令和5年(2023年)の調査によると、一般病院全体での電子カルテシステムの普及率は65.6%ですが、一般診療所では55.0%にとどまっています。さらに、2024年に日本医師会が実施した「診療所における医療DXに係る緊急調査」では、電子処方箋の導入率は14.5%と低迷しています。電子処方箋の導入率の低さを考慮すると、全国で展開されるのはもう少しあとになるのでは…という気もします。この電子カルテ情報共有サービスで「傷病名」が共有されるという情報に小躍りしそうになるのは私だけでしょうか。処方から病名を推察するというのが薬局薬剤師のある種の技術だったところもありますが、新しい時代が来るという予感がしますね! 検査結果などが共有されるというのは、医薬品の安全使用にとってはうれしい限りです。共有された後の薬局業務が楽しみです。

659.

「まずは金属除去」ではない? 金属アレルギー診療と管理の手引きを公開/日本アレルギー学会

 本邦では初となる金属アレルギーに特化した手引き『金属アレルギー診療と管理の手引き 2025』1)が、2025年9月26日に公開された。そこで、手引きの検討委員会の代表を務める矢上 晶子氏(藤田医科大学ばんたね病院 総合アレルギー科 教授)が、第74回日本アレルギー学会学術大会(10月24~26日)において、手引きの作成の背景と概要を紹介した。なお、手引きはアレルギーポータルの医療従事者向けページで公開されている。アレルギー疾患対策基本法の対象疾患に含まれない金属アレルギー 本邦では「アレルギー疾患対策基本法」が定められており、喘息やアトピー性皮膚炎などの6疾患が重点的な対象疾患となっている。しかし、現状では金属アレルギーは対象疾患に含まれていない。この理由について、矢上氏は「若年で発症し、後年に金属製材料を使用するときに苦慮する人がいる」「患者は複数の診療科を受診するが連携した診療体制が不十分」「患者数が未知」といった背景があったと述べる。そこで「厚生労働科学研究事業で、それらを補う情報をまとめたほうがよいのではないかということで研究が始まり、疫学調査結果や検査法などをまとめて、手引きを作成する方向となった」とのことだ。これらの研究成果を集約した『金属アレルギー診療と管理の手引き2025』には、診療の流れや検査・管理の要点、多診療科・多職種が連携した診療体制の構築の重要性などが記載されている。女性が多く、全身型の疑い例も少なくない 1章「総論」では、金属アレルギーの定義や本邦における金属アレルギーの実態調査結果、局所型・全身型金属アレルギーの概要が記されている。 「本邦の一般人を対象とした調査では、金属アレルギーの自覚者は女性が7割を占め、医療機関を受診しても検査を受けているのは3割にとどまっていた」と矢上氏は述べる。金属アレルギーは、局所型と全身型に分けられるが「全身型の疑いがある国民は少なくないのではないかということもわかってきた」とも指摘する。全身型では、食物、水、歯科金属などに含まれる金属が体内に入っていくことで、全身性の症状や手掌の症状、口唇炎などが発現するが、一般人を対象とした調査でも、局所型の症状の接触皮膚炎だけでなく、これらの症状が多く報告されていた。パッチテストとin vitro検査の現状 第2章「金属アレルギーの診断」では、問診で聞くべきことや各種検査の概要、金属負荷試験などの解説が記載されている。問診については、医科および歯科の問診票がそれぞれ掲載されているため、参考にされたい。 金属アレルギー診断のゴールドスタンダードはパッチテストであるが、現在保険収載されている試薬は「パッチテスト試薬金属:金属16種類(鳥居薬品)」と「パッチテストパネル:金属4種類(佐藤製薬)」に限られている。とくに臨床現場でのニーズが高い「チタン」の試薬は保険適用外であり、特定臨床研究などでしか実施できない現状がある。 研究班では、より範囲が広く精度の高いパッチテスト金属試薬シリーズの選定を目指し「新金属シリーズ」を作成した。その結果、保険適用外の金属についても陽性を示したが、チタンが陽性となったのは331例中1例であった。本検討の結果の詳細は、手引きに記載されている。なお、「新金属シリーズ」の試薬は保険適用外であるため、特定臨床研究などでのみ貼付可能であることを矢上氏は強調した。 血液検体を用いてアレルギー反応を評価するリンパ球刺激試験について、矢上氏は慎重な見解を示す。その理由として、検査会社によって実施件数に大きな差(年間数百件から数件)があり、使用される試薬も標準化されていないことを挙げた。手引きでは「現時点では、金属アレルギーの診断における日常診療で使用可能な十分な感度・特異度を備えた簡便で正確なin vitro検査はなく、今後の症例の集積と臨床的検討の継続が不可欠である」と結論付けている。薬剤の塗布方法やうがいの方法を記載 3章「金属アレルギーの治療」では、症状に対する具体的な治療方法が示されている。手引きの特徴として、矢上氏は薬剤の塗布方法やうがいの仕方まで具体的に記載していることを挙げ、医師・歯科医師のみならず、看護師や歯科衛生士にも活用してほしいと強調した。 全身型金属アレルギーとの関連が報告されている皮膚疾患の1つに掌蹠膿疱症がある。これについても、現在ではさまざまな治療薬が登場しており、手引きにも具体的な治療方法が記載されている。また、掌蹠膿疱症における歯科金属アレルギーの関与と金属除去の是非が議論されているが、これについて手引きの第1章では「歯性病巣の関与の可能性が否定された後に金属アレルギーを考慮する」と記載されている。これは『掌蹠膿疱症診療の手引き2022』2)において、歯性病巣の治療を優先することが推奨文として示されていることと一致する。また『掌蹠膿疱症性骨関節炎診療の手引き2022』3)でも歯科金属との関係が記載されているため、参考にされたい。金属を多く含む食品の一覧表も掲載 第4章「金属アレルギー患者に対する生活指導」では、パッチテストで陽性となった場合の対応について、具体的な指導内容が盛り込まれている。 金属アレルゲンとの経皮的な接触の回避のみで改善しない全身型金属アレルギーでは、食事の管理が重要となる場合もある。そこで、手引きではニッケル、コバルト、クロムといった主要なアレルゲンについて、これらを多く含む食品の一覧が掲載された。さらに、缶詰や調理器具の使用に関する注意点など、患者が日常生活で実践できるワンポイントアドバイスも記載されている。医科と歯科の連携がきわめて重要 第5章「金属アレルギーの診療の流れ」では、金属アレルギー診療・治療においてきわめて重要な「医科歯科連携」について解説されている。現状の課題として、矢上氏は「医師は歯科から患者の紹介を受けて歯科へと戻すが、その後の経過はフォローアップできていない」と指摘する。そのため、医科と歯科が連携したフォローアップ体制の構築が重要である。 その重要性について、矢上氏は実例を挙げて紹介した。皮膚科治療によって皮膚症状の改善が得られなかった掌蹠膿疱症の患者の例では、歯科で差し歯を交換したところ、皮膚症状が著明に軽快したという。この改善は金属除去によるものか、歯性病巣の治療によるものかは明らかではなかったとのことであるが、医科と歯科の連携の重要性が理解できる。 また、近年の研究では、パッチテストで金属試薬が陽性であっても、ただちに金属を除去するのではなく、まずは歯性病巣の治療を行うことで皮膚症状が改善する場合があることも報告されている4)。この知見に基づき、安易な金属除去を避けるためにも、医科と歯科が密に連携し、経過観察結果を共有する体制の構築が求められる。 手引きには、歯科金属アレルギーを疑う患者に対する診断・治療フローチャートが掲載されており、ここでも「パッチテストで金属試薬が陽性であっても、まずは歯性病巣への対応を基本とし、歯科金属の除去は可能な限り優先しない」と記載されている。まとめ 手引きの作成を通じて、これまでに見落とされてきた課題や、依然として解決されていない問題点が明らかになったという。それを踏まえ、矢上氏は「国民の多くの方が金属アレルギーに苦慮している一方で、受診しない人も多いと考えられる。そのため、関連学会や専門団体を通じて手引きの周知を行うことで、医療現場での活用を促進し、診療体制の発展に寄与することを期待している。そして、いずれはニッケルの使用などのさまざまな規制などに繋がっていくことを願っている」と講演を締めくくった。

660.

IgA腎症は0.5~1.0g/日の低レベル蛋白尿でも腎予後不良~メタ解析/慈恵医大

 IgA腎症における蛋白尿の臨床的意義を検討した系統的レビューおよびメタ解析の結果、0.5~1.0g/日の低レベル蛋白尿であっても腎予後不良と関連していたことを、東京慈恵会医科大学の山口 裕也氏らが明らかにした。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2025年12月12日号掲載の報告。 IgA腎症では、1.0g/日を超える顕性蛋白尿が腎予後不良と関連することが広く知られている。しかし近年のエビデンスでは、0.5~1.0g/日の低レベルの蛋白尿でも腎予後不良と関連することが示唆されている。そこで研究グループは、IgA腎症における低レベル蛋白尿と腎予後不良との関連を評価することを目的として、系統的レビューおよびメタ解析を実施した。 本研究では、PubMedおよびWeb of Scienceを検索し、IgA腎症患者における低レベル蛋白尿と腎機能障害(eGFR低下、腎不全、eGFRスロープなど)との関連を評価した研究を選定した。データはランダム効果メタ解析で統合した。 主な結果は以下のとおり。・23研究(1万5,289例)が対象となり、15研究がメタ解析に含まれた。・ベースライン時の蛋白尿が0.5~1.0g/日だった集団では、0.5g/日未満だった集団と比べて腎予後不良リスクが1.73倍上昇した(ハザード比[HR]:1.73、95%信頼区間[CI]:1.36~2.20、9件の研究)。・経時的蛋白尿(Time-Averaged Proteinuria:観察期間中に複数回測定された蛋白尿の平均値)が0.5~1.0g/日だった集団では、腎予後不良リスクが2.87倍上昇した(HR:2.87、95%CI:1.48~5.56、7件の研究)。・経時的蛋白尿が0.5~1.0g/日だった集団では、年間eGFRの低下速度も有意に速かった(平均差:-1.02mL/分/1.73m2/年、95%CI:-1.60~-0.45、4件の研究)。・サブグループ解析およびleave-one-out感度解析は、全体の結果と一致していた。 研究グループは「これらの結果は、蛋白尿を0.5g/日未満にコントロールすることを推奨する近年のガイドラインを支持するものである。IgA腎症においては、蛋白尿の長期的な抑制が重要な治療目標として考慮されるべきである」とまとめた。

検索結果 合計:35608件 表示位置:641 - 660