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既治療のHER2変異陽性NSCLC、zongertinibは有益/NEJM

 既治療のHER2変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、経口不可逆的HER2選択的チロシンキナーゼ阻害薬zongertinibは臨床的有益性を示し有害事象は主に低Gradeであったことが、米国・University of Texas M.D. Anderson Cancer CenterのJohn V. Heymach氏らBeamion LUNG-1 Investigatorsによる第Ib相試験の結果で報告された。HER2変異陽性NSCLC患者には、革新的な経口標的療法が求められている。zongertinibは第Ia相試験で進行または転移を有するHER2異常を認める固形がん患者への有効性が示されていた。NEJM誌オンライン版2025年4月28日号掲載の報告。複数コホートで用量探索および安全性・有効性を評価 第Ia/Ib試験はヒト初回投与試験で、現在も進行中である。進行または転移を有するHER2異常を認める固形がん患者(Ia相)および進行または転移を有するHER2変異陽性NSCLC患者(Ib相)を登録した複数コホートでzongertinibの用量探索および安全性・有効性が評価された。 本論ではIb相から既治療の患者が登録された3つのコホートにおけるzongertinibの主要解析の結果が報告された。3コホートは、チロシンキナーゼドメイン(TKD)変異陽性NSCLC患者(コホート1)、TKD変異陽性かつHER2標的抗体薬物複合体による治療歴のあるNSCLC患者(コホート5)、非TKD変異陽性NSCLC患者(探索的コホート3)である。 コホート1の患者は、zongertinib 1日1回120mgまたは240mgで投与を開始し、コホート3および5の患者は、同240mgで投与を開始した。コホート1の用量選択の中間解析の結果を受けて、その後は全コホートが120mgの投与を受けた。 主要評価項目は、盲検下独立中央判定で評価(コホート1、5)または治験担当医師判定で評価(コホート3)した奏効率(ORR)であった。副次評価項目は、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間などであった。zongertinib 1日1回120mg投与群の71%で奏効 2023年3月8日~2024年11月29日に、オーストラリア、欧州、アジア、米国の74施設で、コホート1は132例、コホート5は39例、コホート3は25例の患者が治療を受けた。 データカットオフ(2024年11月29日)時点で、コホート1では計75例がzongertinib 1日1回120mgの投与を受けており、そのうち奏効を示したのは53例で(ORR:71%[95%信頼区間[CI]:60~80]、p<0.001)、DOR中央値は14.1ヵ月(95%CI:6.9~未到達)であった。Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は13例(17%)に発現した。 コホート5(31例)では、ORRは48%(95%CI:32~65)であった。Grade3以上のTRAEは1例(3%)に発現した。 コホート3(20例)では、ORRは30%(95%CI:15~52)であった。Grade3以上のTRAEは5例(25%)に発現した。 全3コホートにおいて、薬剤性間質性肺疾患の発現は報告されなかった。

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中等度早産児へのカフェイン投与継続、入院期間を短縮するか/JAMA

 中等度早産児(在胎期間29週0日~33週6日で出生)に対するカフェイン投与の継続は、プラセボ投与と比較して入院期間の短縮には至らなかったことが、米国・アラバマ大学バーミングハム校のWaldemar A. Carlo氏らEunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development Neonatal Research Networkによる無作為化試験「MoCHA試験」の結果で示された。中等度早産児に最も多くみられる疾患の1つに未熟児無呼吸発作がある。カフェインなどのメチルキサンチン製剤が非常に有効だが副作用が生じる可能性があり、必要以上に投与を継続すべきではないとされる。2024年に発表されたメタ解析では、早産児へのカフェイン中止戦略の有益性と有害性に関するデータは限定的であることが示され、カフェイン投与の短期的および長期的な影響のさらなる評価が求められていた。JAMA誌オンライン版2025年4月28日号掲載の報告。無作為化後の退院までの期間を評価 研究グループは、2019年2月~2022年12月に米国の29病院で、カフェイン療法の延長が入院期間を短縮するかを評価する無作為化試験を行った。対象は、在胎期間29週0日~33週6日で出生し、(1)無作為時の月経後年齢が33週0日~35週6日、(2)カフェイン投与を受けており投与中止の計画があり、(3)120mL/kg/日以上の経口栄養および/または経管栄養を受けている新生児とした。 対象児は退院後28日まで、経口カフェインクエン酸塩(10mg/kg/日)投与を受ける群またはプラセボ投与を受ける群に無作為に割り付けられ、追跡評価を受けた(フォローアップ完了は2023年3月20日)。 主要アウトカムは、無作為化後の退院までの期間。副次アウトカムは、生理的発達(無呼吸発作が連続5日間なく、完全経口栄養を受けており、少なくとも48時間保育器から出ている)までの日数、退院時の月経後年齢、あらゆる要因による再入院およびあらゆる疾患による受診、安全性アウトカム、死亡などであった。補正後群間差中央値0日、生理的発達までの日数も短縮せず 事前に規定された無益性閾値の検出に必要とされた被験者登録は878例であったが、計827例(在胎期間中央値31週、女児414例[51%])が無作為化(カフェイン群416例、プラセボ群411例)された時点で登録は早期に中止された。 無作為化から退院までの入院日数は、カフェイン群18.0日(四分位範囲[IQR]:10~30)、プラセボ群16.5日(10~27)で群間差はなく(補正後群間差中央値:0日[95%信頼区間[CI]:-1.7~1.7])、また生理的発達までの日数も差は認められなかった(14.0日vs.15.0日、補正後群間差中央値:-1日[95%CI:-2.4~0.4])。 カフェイン群の新生児は無呼吸発作消失までの期間が短縮したが(6.0日vs.10.0日、補正後群間差中央値:-2.7日[95%CI:-3.4~-2.0])、完全経口栄養を受けるようになるまでの期間は同程度であった(7.5日vs.6.0日、0日[-0.1~0.1])。再入院および疾患による受診は両群で差はなかった。 有害事象については、両群間で統計学的有意差は認められなかった。

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歩く速度が不整脈リスクと関連

 歩行速度が速い人は不整脈リスクが低いという関連のあることが報告された。英グラスゴー大学のJill Pell氏らの研究によるもので、詳細は「Heart」に4月15日掲載された。歩行速度で3群に分けて比較すると、最大43%のリスク差が認められたという。 これまで、身体活動が不整脈リスクを抑制し得ることは知られていたが、歩行速度と不整脈リスクとの関連についての知見は限られていた。Pell氏らはこの点について、英国で行われている一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを用いて検討した。 UKバイオバンクの参加者42万925人(平均年齢55.8±9.30歳、女性55.3%)を、自己申告に基づき、歩行速度が速い群(時速4マイル〔約6.4km〕超)40.7%、遅い群(時速3マイル〔約4.8km〕未満)6.6%、および、平均的な速度の群(時速3~4マイル)52.7%の3群に分類。中央値13.7年(四分位範囲12.8~14.4年)の追跡期間中に、全体で3万6,574人(8.7%)が不整脈を発症していた。 結果に影響を及ぼし得る交絡因子(年齢、性別、民族性、喫煙・飲酒・運動習慣、睡眠時間、野菜や果物・加工肉・赤肉の摂取量、握力など)を調整後、歩行速度が遅い群を基準として不整脈発症リスクを比較すると、歩行速度が平均的な群では35%(ハザード比〔HR〕0.65〔95%信頼区間0.62~0.68〕)、速い群では43%(HR0.57〔同0.54~0.60〕)、それぞれ有意にリスクが低いことが明らかになった。 不整脈の中でも脳梗塞につながる心房細動は、追跡期間中に2万3,526人が発症していた。この心房細動の罹患リスクも上記と同様の解析の結果、歩行速度が平均的な群では38%(HR0.62〔0.58~0.65〕)、速い群では46%(HR0.54〔0.50~0.57〕)、それぞれ有意にリスクが低かった。 次に、加速度計のデータにより歩行時間を把握できた8万773人を対象とする解析が行われた。この集団では中央値7.9年(四分位範囲7.4~8.5)の追跡期間中に4,177人が不整脈を発症していた。前記同様の交絡因子を調整後、高速での歩行の時間が長いこと(1標準偏差当たりHR0.93〔0.88~0.97〕)、および、平均的な速度での歩行の時間が長いこと(同HR0.95〔0.91~0.99〕)は、不整脈リスクの低さと有意な関連があった。一方で低速での歩行時間の長さは不整脈リスクと関連がなかった。 なお、サブグループ解析からは、女性、60歳未満、非肥満者、高血圧罹患者、2種類以上の慢性疾患罹患者で、歩行速度と不整脈リスクとの関連がより強く認められた。また、媒介分析からは、歩行速度と不整脈リスクとの関連の36.0%を、肥満や代謝・炎症(BMI、総コレステロール、収縮期血圧、HbA1c、C反応性蛋白)によって説明できることが分かった。 著者らは、「われわれの研究結果は、歩行速度と不整脈の関連性を示し、その関連に代謝因子と炎症因子が何らかの役割を果たしている可能性を示す、初のエビデンスである」と述べている。

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触覚フィードバックで軽度アトピー性皮膚炎患者における夜間掻痒が軽減

 軽度のアトピー性皮膚炎に対する触覚フィードバックは、患者の夜間掻痒を軽減させる非薬理学的介入として使用できる可能性があるという研究結果が、「JAMA Dermatology」に2月5日掲載された。 米ミシガン大学アナーバー校のAlbert F. Yang氏らは、単アーム2段階コホート試験を実施し、クローズドループ・触覚フィードバックを備えた人工知能(AI)対応ウェアラブルセンサーについて、軽症アトピー性皮膚炎の夜間掻痒症状に対する検出精度および軽減効果を検討した。試験には、中等度~重度の掻痒行動を自己申告した軽症アトピー性皮膚炎患者が対象者として登録された。手に装着したウェアラブルセンサーから送られる触覚フィードバックは、AIアルゴリズムによって夜間掻痒症状が検出されたときに発せられる。対象者は、まず検出機能のみ作動させたセンサーを7日間装着し、その後触覚フィードバックも作動させた状態でセンサーを7日間装着した。 対象者10人について、合計104回、831時間の夜間睡眠がモニタリングされた。追跡期間中に試験から脱落した対象者はいなかった。解析の結果、第2週目に触覚フィードバックを作動させると、1夜当たりの掻痒イベント平均回数が28%有意に減少し(45.6回対32.8回)、睡眠1時間当たりの掻痒平均時間に50%の有意差が認められた(15.8秒対7.9秒)。総睡眠時間の減少はなかった。 著者らは、「この技術は、全身治療の適応でない、あるいはステロイド外用薬の使用を希望しないが掻痒行動が多いと訴える軽症AD患者において、掻痒行動を減少させるための単独、あるいはより現実的には補助的な治療機器として役立つ可能性がある」と述べている。 なお複数の著者が、本研究の一部助成を行い、特許を出願中であるマルホ社と、1人の著者がアッヴィ社との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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バーミンガム股関節表面置換術で高レベルの身体活動を維持

 表面置換型人工股関節置換術の一種であるバーミンガム股関節表面置換術(BHR)を受けた患者では、人工股関節全置換術(THA)を受けた患者と同程度に、長期間にわたり高レベルの身体活動を維持できることが長期研究で明らかになった。米ワシントン大学医学部整形外科教授のRobert Barrack氏らによるこの研究結果は、「The Journal of Bone and Joint Surgery」に3月19日掲載された。 長年、熱心にスポーツを続けていると体に負担がかかり、股関節に痛みを伴う変形性関節症を発症することがある。THAはこうした症状に対する治療選択肢の一つだが、術後に高強度の運動や負荷の高い動きが制限されてしまうことが少なくない。そのため、若くて活動的な患者の間では、THAよりも、患者を競技レベルの運動に復帰させた実績のあるBHRが好まれることが多い。 THAでは、大腿骨頭を切除して人工の関節頭(ボール)を取り付けるとともに、骨盤側の関節窩を人工物(ソケット)に置き換える。これに対し、BHRでは、大腿骨頭の表面のみを削って人工物(キャップ)を被せ、関節窩に受け皿(ソケット)を設置する。この術式では、大腿骨の大部分を残せるため、股関節での自然な荷重伝達が保たれやすく、術後も高い活動レベルを維持できる可能性が高まる。 Barrack氏らは、2006年6月から2013年12月にかけてバーンズ・ジューイッシュ病院でBHRを受けた35歳から59歳の患者224人の長期転帰を分析した。その結果、手術から15年後の時点で、何らかの原因で股関節の再手術を必要としなかった患者の割合は96.0%、感染以外の理由による再手術を必要としなかった患者の割合は97.4%に上ると推定されることが明らかになった。また、THAを受けた患者を対照として患者報告アウトカムを比較したところ、BHR群とTHA群の間で全体的な活動性について有意な差は認められなかった。さらに、術後も活動的な状態を維持していた患者の割合は、両群で同等だったが、BHR群の方が「高度に活動的」である患者の割合が高い傾向が認められた。 Barrack氏は、「BHRを受けた患者は、術後5~10年後の時点でランニングやバスケットボールなどの高強度の運動に復帰していた患者の割合がTHA群の3倍に上っていた。驚くべきことに、ほぼ全員が術後平均14年を経てもアクティブな活動に従事している」とワシントン大学医学部のニュースリリースで述べている。 50歳のJason Cutterさんも、BHRを受けた1人だ。Cutterさんは、何年も前から生じていた股関節の痛みがアマチュアホッケー選手やアウトドアマンとしての活動に支障を来たし始めていると感じていたが、その原因は加齢やストレッチ不足、住宅リフォームの副業で着用していた重い工具ベルトによる負担だと考えていた。しかし、所属しているレクリエーションリーグの元プロアイスホッケー選手らに勧められて整形外科医の診察を受けた。その結果としてBHRを受けたCutterさんは、術後3カ月で氷上に戻り、ホッケーのプレーを再開できるようになったという。

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3枝病変へのFFRガイド下PCIは有効か/Lancet(解説:山地杏平氏)

 3枝冠動脈疾患(3VD)患者に対し、FFR(冠血流予備量比)を用いたガイド下の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)を無作為に比較したFAME 3試験の5年追跡結果が報告されました。主要複合エンドポイント(全死亡、脳卒中、心筋梗塞)の5年発生率は、PCI群で16%、CABG群で14%と、統計学的に有意な差は認められませんでした(ハザード比[HR]:1.16、95%信頼区間[CI]:0.89~1.52)。全死亡率は両群ともに7%で同等でしたが、心筋梗塞の発生率はPCI群が8%、CABG群が5%と、PCI群で有意に高く(HR:1.57、95%CI:1.04~2.36)、さらに再血行再建の必要性もPCI群で16%、CABG群で8%と、PCI群で有意に多い結果でした(HR:2.02、95%CI:1.46~2.79)。 3枝病変に対する標準治療はCABGとされてきました。とくに、1990年代までのバルーン血管形成術の時代には、3枝病変にPCIが行われることはほとんどありませんでした。1990年代にベアメタルステントが導入された後も、依然として多くの症例ではCABGが選択されてきました。その後、第1世代薬剤溶出性ステントの登場により実施されたSYNTAX試験では、SYNTAXスコアによる層別解析において、中等度から高スコア(>22)の患者ではCABGが優れている一方、低スコア(≦22)であればPCIとCABGの成績は同等であることが示されました。 現行世代の薬剤溶出性ステントは、再狭窄やステント血栓症のリスクを低減しており、さらにFFRによる病変の機能的評価や薬物療法の最適化など、PCIに関連する技術は大きく進歩しています。これらを背景に、FAME 3試験にて最新のPCIを用いてCABGとの比較が行われましたが、1年時点でPCIはCABGと比較して非劣性は示されませんでした。しかしながら、今回の5年追跡結果は、最新のPCI戦略がCABGと同等の長期成績を示す可能性を示唆するものです。 また、日本のCREDO-Kyoto研究から、3枝病変を有する患者において、高齢者ではCABGが優れている一方、若年者ではPCIとCABGの長期成績が同等であることが報告されました。これらの知見を踏まえると、長期予後を考慮したうえで、高齢者でCABGが可能な場合はCABGが望ましい選択肢と考えられますが、若年患者においては、今回のFAME 3試験の5年結果を踏まえると、PCIを治療選択肢として積極的に検討する余地があると考えられます。

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線形回帰(重回帰)分析 その5【「実践的」臨床研究入門】第54回

重回帰分析の前提条件・留意点の検証と結果の記述前回は、重回帰分析におけるEZR(Eazy R)の操作手順と解析結果の解釈について仮想データ・セットを用いて説明しました。今回は、EZRを用いた重回帰分析の前提条件および留意点の検証方法を解説し、解析結果のまとめを示します。重回帰分析モデルの前提条件と留意点重回帰分析モデルには下記のようないくつかの前提条件(連載第52回参照)や留意点があります。前提条件線形性:目的変数と説明変数に線形性(直線的な関係)があること。⇒残差-予測値プロットで確認します。残差の正規性:残差(予測値と実測値の差)が正規分布に従うこと。⇒Q-Qプロットで確認します。留意点多重共線性:説明変数同士が強く相関していること。多重共線性があると、回帰係数の推定が不安定になる。⇒VIF(Variance Inflation Factor)の値で確認します。それでは、実際にEZRの下記の操作手順でこれらの前提条件や留意点を検証してみましょう(連載第53回参照)。仮想データ・セットの取り込み仮想データ・セットをダウンロードする※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。「ファイル」→「データのインポート」→「Excelのデータをインポート」重回帰分析の実行「統計解析」→「連続変数の解析」→「線形回帰(単回帰、重回帰)」の順でメニューバーを選択。ポップアップウィンドウにて、下図のように目的変数および説明変数を指定し、モデル名(例:「重回帰分析_GFR変化量」)を入力。オプションで「基本的診断プロットを表示する」にチェックを入れ、「OK」をクリック。基本的診断プロットによる前提条件の確認「基本的診断プロットを表示する」をチェックすると、4つのプロット(グラフ)が表示されます。ここでは、下記の2つのプロットの出力結果を解説します。残差-予測値プロット(Residuals vs.Fitted)y軸が残差(実測値-予測値)、x軸が重回帰分析モデルの予測値。残差が0を中心に特定のパターンを持たず、おおむねランダムに分布し、赤い平滑曲線が水平に近ければ、線形性が保たれていると考えられます。Q-Qプロット(Q-Q Residuals)残差が正規分布に従っていれば、プロット上の点は y=x の直線上にほぼ沿って並びます。重回帰分析結果で重回帰分析モデルの前提条件を確認EZRの出力ウィンドウには各説明変数のVIFが表示されます(下図)。VIF画像を拡大するいずれの説明変数のVIFも5未満(多重共線性がほとんどない)であることが確認できます。以上の検証から、この重回帰分析モデルの前提条件(線形性と残差の正規性)は満たしており、多重共線性の問題もほとんどないと考えられました。ここであらためて、GFR変化量(diff_eGFR5)を厳格低たんぱく食の遵守の有無(treat)で層別し、要約してみましょう(下図参照)。「統計解析」→「連続変数の解析」→「連続変数の要約」の順でメニューバーを選択。開いたポップアップウィンドウの変数(1つ以上選択)は「diff_eGFR5」を指定。さらに、層別変数のボタンをクリックし、ポップアップウィンドウの層別変数(1つ選択)で「treat」を指定。「OK」をクリックすると、EZRの出力ウィンドウに下に示した解析結果が表示されます。画像を拡大するそれでは、前回の重回帰分析結果の解釈も併せて、解析結果の記述を下記のようにまとめてみました。GFR変化量の推定平均値(SD)は、厳格低たんぱく食遵守群と非遵守群で、それぞれ-12.5(4.41)、-16.1(4.49)mL/分/1.73m2であった。重回帰分析結果から、GFR変化量には遵守群と非遵守群間で2.03(95%CI:1.61〜2.45)mL/分/1.73m2の差が認められた(連載第53回参照)。※SD:Standard deviation(標準偏差)、95%CI:95% confidence interval(95%信頼区間)

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疫学・自然経過―その1【脂肪肝のミカタ】第2回

疫学・自然経過―その1Q. MASLD由来の肝がんの実態は?腹部超音波検査で脂肪性肝疾患(SLD)と診断された虎の門病院の9,959例を、SLDの新規分類に基づいて肝発がん率を評価した。その結果、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)が0.05%/年、代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MetALD)が0.11%/年、アルコール関連肝疾患(ALD)が0.21%/年と、アルコール摂取量に伴い肝発がん率が増加することが確認された(図1)。(図1)腹部超音波検査でSLDと診断された患者のエタノール摂取量別累積肝発がん率画像を拡大するMASLDからの肝発がん率は決して高くはないが1,2)、本邦における対象は2,000万人以上とされ、将来的に肝がんの主な原因の一つになることが予測される。MASLD症例における肝発がんに影響する要因として、肝線維化進行度、高齢、2型糖尿病、肥満、エタノール摂取量などが挙げられる(表1)。とくに、肝線維化進行度は生命予後の予測に重要な因子とされる3-5)。これらの危険因子を組み合わせて、多くの対象の中から、危険なMASLD症例を絞り込むことが必要とされる。(表1) MASLD症例における肝がんの危険因子画像を拡大する1)Kawamura Y, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2016;14:597-605.2)Chen YT, et al. Am J Gastroenterol. 2024;119:2241-2250.3)Rinella ME, et al. Hepatology. 2023;77:1797-1835.4)European Association for the Study of the Liver (EASL) ・ European Association for the Study of Diabetes (EASD) ・ European Association for the Study of Obesity (EASO). J Hepatol. 2024;81:492-1542.5)日本消化器病学会・日本肝臓学会編. NAFLD/NASH診療ガイドライン2020. 南江堂.

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第266回 プラスチックを食べて増えうる細菌が患者から見つかった

プラスチックを食べて増えうる細菌が患者から見つかった縫合糸、ステント、創傷被覆、植込み型の機器などで使われるプラスチックの類いを分解する酵素を有し、どうやらそれを食べて増えるらしい細菌が患者の検体から見つかりました1,2)。人の身体に直接触れるプラスチックの中で、ポリカプロラクトン(PCL)は生分解性であることや生体と相性がよいことなどの取り柄ゆえに医療で多く使われるようになっています。プラスチックを分解する能力を身につけた細菌がプラスチック廃棄地の土壌、海水、下水汚泥、埋立地、プラスチックを食べる虫の腸などの環境中から見つかっています3)。それらの細菌はプラスチックに構造が似たクチンなどの天然ポリマーの分解にあたる既存の酵素を応用して、PCLやポリエチレンテレフタラート(PET)などのプラスチックを分解する能力を身につけたようです。しかし、医療でまみえる細菌の酵素のプラスチック分解能がこれまで検討されたことはありません。カテーテル、人工呼吸器、植込み型の機器に細菌が定着することや、それらの細菌による感染症は病院の大きな悩みの種です。もし病原体が植込み型の機器を分解するなら、それら機器は損なわれ、細菌はより根づき、生じうる感染症の治療を一層困難にしそうです。もっというと、プラスチックを分解しうる病原体がプラスチックからの炭素を使って増え、より深刻な感染症を引き起こしうるかもしれません。そのような懸念を背景にして、英国ロンドンのブルネル大学のRonan McCarthy氏が率いるチームはヒトの病原性細菌のゲノムを検索し、プラスチック分解に携わることが知られる遺伝子の相同物を探してみました。すると、ある患者の傷口から単離されたPA-W23という識別名の緑膿菌がPCLを分解しうることが示され、Pap1という酵素がその働きを担うことが判明しました。試しに大腸菌にPap1遺伝子を導入したところ、PA-W23と同様にPCLを分解できるようになりました。なんとPA-W23はPCLの分解からの炭素のみで増殖可能でした。それに、プラスチックの分解能がその毒性強化に一役買うらしいことも示されました。細菌が作るねばねばの防御膜であるバイオフィルムは抗菌薬を効き難くし、感染症の治療を困難にします。PCLがあるとPA-W23はバイオフィルムをより多く生成しました。また、PCLの植え込みがあるとPA-W23の毒性が増すことが昆虫(Galleria mellonella larvae)の検討で確認されています。緑膿菌は病院での抗菌薬耐性感染の主因の1つで、世界保健機関(WHO)が新たな治療を最も必要とすると位置付けている病原体の1つです2)。緑膿菌はカテーテル関連尿路感染症(CA-UTI)や人工呼吸器関連肺炎(VAP)の多くを引き起こします。CA-UTIとVAPはどちらもプラスチックを含む機器の使用と関連します。今回の研究で確認されたのはPCLの分解のみですが、ことはPCLだけにとどまらないようで、他のプラスチックへの影響も心配です。すでに研究チームは他の病原体のPap1に似た酵素の兆し(signs)を把握しています。今やプラスチックが医療に深く浸透していることを踏まえるに、院内に居座りうる細菌のプラスチック分解能の識別は今後の重要な検討課題であろうと著者は言っています1)。 参考 1) Howard SA, et al. Cell Rep. 2025 May 5. [Epub ahead of print] 2) 'Superbug' found to digest medical plastic / Brunel University of London 3) Ru J, et al. Front Microbiol. 2020;11:442.

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中年患者へのスタチン使用、白内障リスク上昇

 近年、スタチンの使用が白内障の発症に影響を及ぼす可能性が示唆されている1)。そこで、日本人におけるスタチン使用と白内障の発症との関連性について、日本大学薬学部のKazuhiro Kawabe氏らが検討し、中年層でのスタチン使用が白内障リスクを約1.5倍高めることを明らかにした。Scientific Reports誌2025年4月19日号掲載の報告。 研究者らは、日本人の健康診断および保険請求データベースの2005年1月1日~2017年12月31日に記録されたデータを用いて後ろ向きコホート研究を実施。健康診断データの脂質異常症117万8,560例のうち72万4,200例をスタチン非使用群とスタチン使用群(新規使用)に分類し、未調整/年齢・性別による調整/多変量調整のハザード比(HR)を算出してCox比例ハザード回帰分析を行った。主要評価項目はスタチンの使用と白内障リスクの関連性を評価。副次評価項目として、使用されたスタチンの力価や特徴、スタチンごとの白内障リスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・集団の平均年齢は、スタチン使用群が51.7歳、スタチン非使用群が45.6歳だった。 ・平均追跡期間は使用群で1.3年、非使用群で3.2年だった。 ・スタチン非使用群と比較し、スタチン使用群では白内障の発症リスク上昇との関連が認められた(調整HR:1.56、95%信頼区間:1.43~1.70)。 ・白内障の粗発生率はスタチン非使用群で1,000人年当たり2.4だったのに対し、スタチン使用群では低力価スタチンの場合は8.8、高力価スタチンの場合は8.7であった。 ・白内障発症リスクをスタチンの力価でみると、高力価スタチンはHR:1.61(同:1.44~1.79)、低力価スタチンはHR:1.48(同:1.30~1.70)と、高力価スタチンのほうが発症リスクはやや高かった。 ・脂溶性スタチンおよび水溶性スタチンのHRは、それぞれ1.56(同:1.39~1.75)と1.56(同:1.38~1.75)であった。 ・フルバスタチンとシンバスタチンを除くすべてのスタチン使用群において、白内障発症リスクが上昇した(アトルバスタチン:1.73[同:1.48~2.03]、ロスバスタチン:1.52[同:1.32~1.74]、ピタバスタチン:1.35[同:1.12~1.64]、プラバスタチン:1.67[同:1.36~2.06])。

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チルゼパチド72週の投与で体重が5%以上減少/リリー・田辺三菱

 日本イーライリリーと田辺三菱製薬は、4月11日に発売された持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド[皮下注アテオス])について、プレスセミナーを開催した。プレスセミナーでは、肥満症の基礎情報や肥満症の要因、社会的課題とともに、チルゼパチドの臨床試験であるSURMOUNT-J試験の概要が説明された。肥満症治療は薬物治療・外科治療という新しいアプローチに 「複合的な要因からなる慢性疾患『肥満症』のアンメットニーズ」をテーマに、脇 裕典氏(秋田大学大学院医学系研究科 代謝・内分泌内科学講座 教授)が、肥満症の病態や関係する諸課題について説明した。 過体重およびBMI25以上の肥満者は、全世界で約25億人、わが国では約2,800万人と推計され、成人男性のとくに40~50代で割合が高く、最近では小児の肥満も増加している。 肥満の問題としては、BMI30以上40未満の人では、BMI23以上25未満を基準(ハザード比=1)としたときの全死因の死亡リスクが男性1.36および女性1.37という男女別のコホート研究もある1)。また、肥満はメタボリックドミノの上流に位置し、将来的に慢性腎臓病や糖尿病など重大な健康障害を来すとされている。 肥満および肥満症の要因としては、遺伝的、生理的、環境などさまざまな要因が複合的に関与しているにもかかわらず「自己管理の問題」と考えられがちで、肥満・肥満症のある人は、職場や教育現場のみならず、医療現場においても「スティグマ(偏見や差別)」に直面することがある。また、肥満者自身が自分自身の責任と考えてしまう「セルフ・スティグマ」も指摘されている。 肥満症の定義は、肥満(BMIが25以上)かつ、(1)肥満による耐糖能異常、脂質異常症、高血圧などの11種の健康障害(合併症)が1つ以上ある、または(2)健康障害を起こしやすい内臓脂肪蓄積がある場合に肥満症と診断される。わが国の肥満症の特徴として内臓脂肪蓄積型の肥満が多く、BMIが高値でなくても肥満関連健康障害を伴いやすいという。 肥満症治療の目的は、「減量により健康障害・健康障害リスクを改善し、QOLの改善につなげること」であり、治療では、減量目標を設定し、食事・運動・行動療法を行ったうえで3~6ヵ月を目安に各治療成果を評価する。そして、減量目標が未達成の場合に肥満症治療食の強化や薬物療法、外科療法の導入を考慮するとガイドラインでは明記されている。 ただ、課題としてLook AHEAD研究から集中的な生活習慣介入で短期的に減量しても、長期的に減量した体重を維持できたのは半数未満で、元の体重より増加した例も認められたことから、生活習慣の改善のみで減量した体重を維持するのは困難であることが示唆されている2)。 これは、食欲抑制作用の低下により、満腹感が低下した結果、食欲が亢進すること、基礎代謝が低下し、エネルギー消費量が減少することが指摘され、生活習慣への介入だけでは不十分な可能性もある。 最後にまとめとして、脇氏は「肥満症治療の目標は、減量ではなく、肥満に関連する健康障害の改善とそのリスクの低減であり、QOLの改善である。新たな治療選択肢の登場によって肥満症治療はアプローチや支援を見直すときを迎えている」と従来の治療介入だけではない肥満症治療の選択肢を語り、説明を終えた。72週時点のチルゼパチド投与群は体重が5%以上減少 「第III相臨床試験結果からみる持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド」登場の肥満症市場における意義」をテーマに門脇 孝氏(虎の門病院 院長)が、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドの特徴、作用機序、SURMOUNT-J試験の概要について説明を行った。 チルゼパチドは、2024年12月27日に国内製造販売承認を取得し、2025年4月11日に発売された。対象者は、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られないBMI27以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害(高血圧、脂質異常症など)を有する者またはBMI35以上の者。 用法・用量について成人では、週1回10mgを維持用量とし、皮下注射する。ただし、週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回10mgに増量する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回10mgで効果不十分な場合は、4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量できる。ただし、最大用量は週1回15mgまでとなっている。 この作用機序は、中枢神経系における食欲調節と脂肪細胞における脂質などの代謝亢進により、体重減少作用を示すとされている。 今回の適応承認のために行われたSURMOUNT-J試験は、2型糖尿病を有しない日本人肥満症患者を対象としたプラセボ対照、二重盲検比較試験。主要評価項目は投与72週時点のベースラインからの体重減少であり、チルゼパチド10mg/15mgを週1回投与したときのプラセボ投与に対する優越性を検討した。 対象者は、BMIが27以上35未満で2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する患者、またはBMIが35以上で1つ以上の肥満に関連する健康障害を有する患者225例。 その結果、主要評価項目である体重ベースラインから投与72週時までの変化率および投与72週時点の体重について5%以上減少していた患者の割合は、チルゼパチド10mg群および15mg群において、プラセボ群に対し優越性が検証された。投与後72週時の体重のベースラインからの平均変化率は、プラセボ群1.7%減(n=75)に対して、チルゼパチド10mg群17.8%減(n=73)、15mg群22.7%減(n=77)だった。 副次評価項目である投与72週時点の体重が7%以上、10%以上、15%以上、または20%以上減少した患者の割合は、いずれのチルゼパチド群でもプラセボ群と比較し、有意に高かった。 また、ベースラインから投与72週時点のBMIの変化量では、チルゼパチド10mg群では-5.8、15mg群では-7.7、プラセボ群では-0.6だった。そのほか、“Impact of Weight on Quality of Life-Lite Clinical Trials Version”(肥満に関連する生活の質を評価するために開発された20項目)では、チルゼパチド10mg群、15mg群のいずれもプラセボ群と比較し、改善していた。 安全性に関しては、ほかのGLP-1受容体作動薬と同様に、便秘、発熱、悪心、下痢、嘔吐、食欲減退など、主な有害事象は消化器系の症状であった。試験中に確認されたすべての有害事象の割合は、プラセボ群69.3%(n=75)に対し、チルゼパチド10mg群83.6%(n=73)、15mg群85.7%(n=77)であり、死亡などの重篤なものは報告されなかった。

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PTSDの迅速なスクリーニングと評価のための言語的特徴〜メタ解析

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状と言語的特徴との関連を調査し、言語的特徴がPTSDの迅速なスクリーニングや評価を行ううえで信頼できる指標として利用可能かを判断するため、中国・上海中医薬大学のZhenyuan Yu氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2025年3月31日号の報告。 2024年8月までに公表されたPTSDと言語的特徴との関連を調査した研究をPubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Science、Ovidデータベースより包括的に検索し、参考文献の後方トラッキングにより補強した。 主な結果は以下のとおり。・12件の観察研究、累積サンプルサイズ5,706例を分析に含めた。・言語調査や単語数(LIWC)、手動コーディング、機械学習技術などさまざまな言語分析ツールを用いた研究が行われていた。・メタ解析により、PTSD症状と有意な正の相関が認められた言語的特徴は、次のとおりであった。【死亡関連の単語】オッズ比(OR):1.32、95%信頼区間(CI):1.10〜1.59、I2=79.4%、p=0.004【ネガティブな感情の単語】OR:1.21、95%CI:1.11〜1.32、I2=30.5%、p<0.001【怒りに関する単語】OR:1.14、95%CI:1.11〜1.17、I2=0.0%、p<0.001【単語数】OR:1.20、95%CI:1.09〜1.31、I2=11.2%、p<0.001・さらに、身体に関連する単語は、PTSDの過覚醒症状、侵入症状、回避症状と正の相関が認められた。【過覚醒症状】OR:1.26、95%CI:1.15〜1.37、I2=0.0%、p<0.001【侵入症状】OR:1.40、95%CI:1.16〜1.68、I2=0.0%、p<0.001【回避症状】OR:1.29、95%CI:1.21〜1.37、I2=0.0%、p<0.001・死亡関連の単語および単語数は、PTSDの侵入症状と正の相関が認められた。【死亡関連の単語】OR:1.16、95%CI:1.08〜1.25、I2=0.0%、p<0.001【単語数】OR:1.18、95%CI:1.10〜1.27、I2=0.0%、p<0.001・悲壮感、不安、ポジティブな感情、一人称による表現、感覚、認知関連の単語とPTSD症状との間には、相関は認められなかった。 著者らは「PTSDの迅速なスクリーニングや評価に対し、死亡関連、怒り、ネガティブ、身体に関する単語および単語数は、信頼できる指標である可能性が示唆された。ただし、さまざまな文化的背景、性別、トラウマなどとPTSD症状との関係を調査するさらなる研究が必要である」と結論付けている。

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ノータッチ静脈採取法、CABGの静脈グラフト閉塞を改善/BMJ

 冠動脈バイパス術(CABG)のグラフト採取において、従来法とは異なりノータッチ静脈採取法(no-touch vein harvesting technique)は、静脈の外膜と血管周囲組織を温存し、vasa vasorum(脈管の脈管)の完全性と内皮機能を保持する。そのため、内皮傷害が最小限に抑えられ、炎症反応が軽減されてグラフトの開存性が向上すると指摘されている。中国医学科学院・北京協和医学院のMeice Tian氏らは、「PATENCY試験」の3年間の追跡調査により、従来法と比較して大伏在静脈のノータッチ静脈採取法はCABGにおける静脈グラフトの閉塞を有意に軽減し、患者アウトカムを改善することを示した。研究の成果は、BMJ誌2025年4月30日号に掲載された。中国の無作為化試験の3年延長試験 PATENCY試験は、CABGにおけるノータッチ静脈採取法の3年間のアウトカムの評価を目的とする無作為化試験であり、2017年4月~2019年6月に中国の7ヵ所の心臓外科施設で患者を登録した(National High Level Hospital Clinical Research Fundingなどの助成を受けた)。今回は、3年間の延長試験の結果を報告した。 年齢18歳以上で、CABGを受ける患者2,655例(平均[±SD]年齢61±8歳、女性22%、糖尿病36%、3枝病変88.4%、左主幹部病変31.7%)を対象とした。被験者を、CABG施行中に大伏在静脈からのグラフト採取法としてノータッチ静脈採取法を行う群(1,337例)、または従来法によるグラフト採取を行う群(1,318例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、CABG後3年の時点における静脈グラフトの閉塞(CT血管造影で評価)とした。グラフトおよび患者レベルとも閉塞率が有意に良好 術後3年間に、全体の2,621例(99.4%)が臨床的なフォローアップを完了し、2,281例(86.5%)が予定されていたCT血管造影を受けた。 術後3年時のグラフトレベルの静脈グラフト閉塞の割合は、従来法群が9.0%(175/1,953グラフト)であったのに対しノータッチ静脈採取法群は5.7%(114/1,988グラフト)と有意に良好であった(オッズ比[OR]:0.62[95%信頼区間[CI]:0.48~0.80]、絶対群間リスク差:-3.2%[95%CI:-5.0~-1.4]、p<0.001)。 また、全2,655例のITT解析でも、3年後の静脈グラフト閉塞の割合は従来法群に比べノータッチ静脈採取法群で低かった(6.1%vs.9.3%、OR:0.63[95%CI:0.51~0.81]、絶対群間リスク差:-3.1%[95%CI:-4.9~-1.4]、p<0.001)。 3年後の患者レベルの静脈グラフト閉塞の割合は、従来法群の13.3%(152/1,141例)に比べノータッチ静脈採取法群は9.2%(105/1,140例)と有意差を認めた(OR:0.66[95%CI:0.51~0.86]、絶対群間リスク差:-4.11[95%CI:-6.70~-1.52]、p=0.002)。創部の皮膚感覚低下、滲出、浮腫が多い 3年後の臨床アウトカムは、非致死的心筋梗塞(ノータッチ静脈採取法群1.2%vs.従来法群2.7%、p=0.01)、再血行再建術(1.1%vs.2.2%、p=0.03)、狭心症の再発(6.2%vs.8.4%、p=0.03)、心臓関連の原因による再入院(7.1%vs.10.2%、p=0.004)の発生率がノータッチ静脈採取法群で良好であった。一方、全死因死亡(3.8%vs.3.4%、p=0.49)、心臓死(2.6%vs.2.4%、p=0.83)、脳卒中(3.7%vs.3.3%、p=0.55)の発生率には両群間に差はなかった。 退院前の脚創部合併症については、皮膚の感覚低下(23.2%vs.17.8%、p<0.001)、滲出(4.3%vs.1.9%、p<0.001)、浮腫(19.0%vs.12.9%、p<0.001)の頻度がノータッチ静脈採取法群で高かった。壊死、コンパートメント症候群などの重度合併症は発現しなかった。また、3ヵ月の時点で未治癒の脚創傷への外科的介入(10.3%vs.4.3%、p<0.001)はノータッチ静脈採取法群で多かったが、12ヵ月時には追加的外科治療の割合は両群で同程度となった。 著者は、「これらの結果により、ノータッチ静脈採取法は長期間にわたってグラフトの開存性を維持し、心筋梗塞や再血行再建術の発生を抑制することで患者アウトカムの改善をもたらすことが示された」としている。

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肝線維化を有するMASH、週1回セマグルチドが有効/NEJM

 中等度または重度の肝線維化を有する代謝機能障害関連脂肪肝炎(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis:MASH)の治療において、プラセボと比較してGLP-1受容体作動薬セマグルチドの週1回投与は、肝臓の組織学的アウトカムを改善するとともに、有意な体重減少をもたらすことが、米国・Virginia Commonwealth University School of MedicineのArun J. Sanyal氏らが実施したESSENCE試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年4月30日号で報告された。37ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 ESSENCE試験は、中等度~重度の肝線維化を有するMASHの治療におけるセマグルチドの有効性と安全性の評価を目的とする進行中の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2021年5月~2023年4月に日本を含む37ヵ国253施設で患者を登録した(Novo Nordiskの助成を受けた)。今回は、最初の800例に関する中間解析の結果を公表した。 年齢18歳以上、生検で確定したMASHで、ステージF2またはF3の肝線維化を有する患者を、セマグルチド(2.4mg)を週1回皮下投与する群またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。投与期間は240週とし、この中間解析は72週目に行った。 主要エンドポイントは、肝線維化の悪化を伴わない脂肪肝炎の消失、および脂肪肝炎の悪化を伴わない肝線維化の改善とした。脂肪肝炎の消失、肝線維化の改善とも有意に優れた セマグルチド群に534例、プラセボ群に266例を割り付けた。全体の平均(±SD)年齢は56.0(±11.6)歳で、女性が57.1%、白人が67.5%であった。平均BMIは34.6(±7.2)で、2型糖尿病患者が55.9%含まれた。肝線維化はステージF2が31.3%、ステージF3が68.8%だった。 72週の時点で、肝線維化の悪化を伴わない脂肪肝炎の消失の割合は、プラセボ群が34.3%であったのに対し、セマグルチド群は62.9%と有意に高かった(推定群間差:28.7%ポイント[95%信頼区間[CI]:21.1~36.2]、p<0.001)。 また、脂肪肝炎の悪化を伴わない肝線維化の改善を示した患者の割合は、プラセボ群の22.4%に比べ、セマグルチド群は36.8%であり有意に良好だった(推定群間差:14.4%ポイント[95%CI:7.5~21.3]、p<0.001)。消化器系有害事象の頻度が高い 副次エンドポイントの解析では、体重の変化量(セマグルチド群-10.5%vs.プラセボ群-2.0%、推定群間差:-8.5%ポイント[95%CI:-9.6~-7.4]、p<0.001)、および脂肪肝炎の消失と肝線維化の改善の両方を達成した患者の割合(32.7%vs.16.1%、16.5%ポイント[10.2~22.8]、p<0.001)が、セマグルチド群で有意に優れた。 一方、36-Item Short Form Health Survey(SF-36)の体の痛み(bodily pain)のベースラインから72週目までの平均変化量(0.9 vs.-0.5、推定群間差:1.3%ポイント[95%CI:0.0~2.7]、p=0.05)は、セマグルチド群で痛みの程度が低い傾向がみられたが、統計学的に有意な差を認めなかった(事前に、p<0.0045を満たす場合に有意差ありと判定することと定めたため)。 重篤な有害事象は、セマグルチド群で13.4%、プラセボ群でも13.4%に発現した。試験中止に至った有害事象は、それぞれ2.6%および3.3%に認めた。最も頻度の高い有害事象は両群とも消化器系のもので、悪心(36.2%vs.13.2%)、下痢(26.9%vs.12.2%)、便秘(22.2%vs.8.4%)、嘔吐(18.6%vs.5.6%)がセマグルチド群で多かった。 著者は、「MASHの生物学的特性に基づくと、脂肪肝炎が消失すると肝線維化が抑制されると予測され、線維化のステージが高いことは不良なアウトカムと関連するため、ステージの低下はとくに重要と考えられる」「本試験の知見と先行研究の結果を統合すると、ステージF2またはF3の肝線維化を有するMASHの治療におけるセマグルチドの有益性が支持される」「セマグルチドは肝硬変患者にも安全に使用できるが、肝硬変における有効性は確立していないため、MASH患者では肝硬変のスクリーニングを行って、それに応じた治療を行うことが重要である」としている。

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日常的なデジタル機器の使用は高齢者の脳の健康を守る?

 一般に、スマートフォンやタブレットなどのデジタル機器の使い過ぎは、脳に悪影響を及ぼすと考えられている。しかし実際には、その逆の可能性があるようだ。少なくともテクノロジー革命の始まりを経験した世代におけるデジタル機器の日常的な使用は、認知機能障害のリスクを58%低下させる可能性のあることが明らかになった。これは血圧低下や運動、脳トレのゲームによるリスクの低下度に匹敵するという。米テキサス大学オースティン校コンプリヘンシブ・メモリー・センターのJared Benge氏と米ベイラー大学心理学・神経科学分野のMichael Scullin氏によるこの研究結果は、「Nature Human Behaviour」に4月14日掲載された。 Benge氏らは今回、合計で約41万1,430人(試験開始時の平均年齢68.7歳、女性53.5%)が参加した57件の先行研究のデータを統合して解析した。同氏らは、「デジタルテクノロジーとの関わりを持った最初の世代である『デジタル先駆者』が、認知症のリスクが出てくる年齢に差し掛かっている」と指摘する。 例えば、1945年生まれの人は、請求書の支払いに小切手や現金を使い、調べ物には百科事典や図書館のカード目録を利用し、初めての場所を訪れる際には紙の地図に頼り、郵便局を通じた手書きの手紙のやり取りに数日を要していた。「こうした人たちが今や80代を迎えつつあり、クレジットカードによるネットショッピング、検索エンジンを使った情報入手、自動リマインダー付きのデジタルカレンダーによるスケジュール管理、車やスマートフォンに搭載されたGPSによるナビゲーション、メールやビデオ通話を通じた世界中の人との即座のコミュニケーションが当たり前の時代に生きている」と研究グループは述べている。 研究データを統合して解析した結果、日常的にデジタル機器を使用している人では認知機能低下のリスクが58%低く(オッズ比0.42、95%信頼区間0.35〜0.52)、認知機能低下のペースが26%緩やかなことが明らかになった(同0.74、0.66〜0.84)。研究グループによると、過去の研究では、認知症のリスクは、血圧を低下させることで13%、日常的な身体活動で35%、高い教育レベルで47〜62%、脳トレのゲームなど脳に刺激を与える余暇活動で31%低下する可能性のあることが示唆されているという。Benge氏らは、「一般的かつ自然な形でのデジタルテクノロジーの使用の結果として、『brain drain(デジタル機器を使い過ぎることで生じる脳の疲弊)』や『デジタル認知症』に至ることを示す、信頼できるエビデンスはなかった」と結論付けている。 研究グループは、デジタルテクノロジーが認知機能の低下をより緩徐にする理由として、次の3点を挙げている。1)デジタル機器が、思考力や問題解決スキルの強化を促している可能性、2)デジタルテクノロジーが、認知症予防に役立つとされる社会的なつながりを強化する、3)加齢に伴い脳が衰え始めても、デジタル機器が「デジタルの足場」となって日常生活を支え、より長く自立した生活を送るための助けとなる可能性。 ただし研究グループは、「高齢者の脳にとってテクノロジーが『常に良い』、あるいは『常に悪い』といった単純な答えは存在しない」と指摘。例えば、スクリーンタイムの増加とともに座位時間も増加すれば脳の健康に悪影響が及ぶ可能性や、ソーシャルメディアを通じて高齢者が誤った情報にさらされる可能性も考えられるとしている。 また、今回の解析結果は、あくまでも成人期にコンピューターやインターネット、スマートフォンといったデジタル機器に初めて触れた「デジタル先駆者」の中高年層を対象とした研究から得られたものである。そのため研究グループは、「子どもの頃からデジタルテクノロジーに触れてきた世代にもこの結果が当てはまるかどうか、また今後、一般的なデジタルテクノロジーのあり方が変化しても同じ結果が得られるかどうかについては不明」としている。

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気候変動はアレルギー性鼻炎を悪化させる?

 アレルギー性鼻炎を持つ人にとって、春は、涙目、鼻づまり、絶え間ないくしゃみなどの症状に悩まされる季節だが、近年の地球温暖化はこのようなアレルギー性鼻炎を悪化させる可能性があるようだ。新たな研究で、気候変動が進むにつれ、花粉アレルギーのシーズンはいっそう長くなり、アレルギー性鼻炎の症状もより重症化することが予想された。米ジョージ・ワシントン大学医学部のAlisha Pershad氏らによるこの研究結果は、「The Laryngoscope」に4月9日掲載された。 気候変動が健康にもたらす悪影響は、世界的な問題として深刻化している。地球温暖化は炎症性上気道疾患、中でもアレルギー性鼻炎に影響を与えることが示されており、耳鼻咽喉科領域での影響は特に顕著である。このことを踏まえてPershad氏らは、データベースから選出した30件の研究結果のレビューを実施し、気候変動が世界の成人および小児におけるアレルギー性鼻炎にどのような影響を与え得るかを調査した。 30件の研究のうち16件では、気候変動に関連する花粉シーズンの延長と花粉濃度の上昇のいずれか、またはその両方について報告されていた。このうち、米国で実施された研究では、花粉シーズンが最大19日間長くなり、花粉の年間飛散量は16〜40%増加すると予測されていた。 本研究で判明したその他の主な結果は以下の通りである。・ブタクサは、二酸化炭素などの温室効果ガスの影響が大きい都市部では成長と開花が速く、より多くの花粉を生産する傾向にある。・花粉の飛散量の増加に伴い、アレルギー性鼻炎の症例も増加する。・花粉の飛散量の増加に伴い、アレルギー性鼻炎の症状も重くなる。・医師は花粉シーズンに変化が生じていることと、それがアレルギー性鼻炎の増加につながっていることに気付いている。 Pershad氏らは、「アレルギー性鼻炎は不快で煩わしい症状に過ぎないと思われがちだが、実際には医療資源に深刻な負担をかけており、気候変動が進むにつれてその負担は大きくなるばかりだ」と指摘する。同氏らは、具体的な負担額は年間34億ドル(1ドル140円換算で4340億円)に上り、そのほとんどは、処方薬と外来診療にかかる費用だと説明した上で、「医療専門家には十分に理解されていないかもしれないが、この増加傾向にある疾患の経済的負担は過小評価できるものではない」と述べている。 Pershad氏は、「医師は、アレルギー性鼻炎が患者の転帰に与える影響を直接目にする立場にあり、気候変動の激化に合わせて診療を適応させることができる。地域住民から信頼される立場にある者として、医師は最前線での経験を活かし、気候危機への取り組みにおいて意義ある変化を訴えるべきだ」と述べている。

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外遊びやスポーツで子どもの運動能力が向上

 家の外で遊んで時間を過ごしたり、さまざまなスポーツ活動に参加したりしている子どもは運動能力が高く、特に複数のスポーツを行っている場合にその関連が顕著であることが報告された。ユヴァスキュラ大学(フィンランド)のNanne-Mari Luukkainen氏らの研究の結果であり、詳細は「Journal of Sports Sciences」に2月1日掲載された。女児に限れば平日に1日30分強、屋外で過ごすことも、スポーツ実施の有無にかかわらず、運動能力の高さと有意な関連が認められるという。 論文の筆頭著者であるLuukkainen氏は、この研究結果を、「幼少期に2種類以上のスポーツ活動に参加していることは、その後の学齢期における運動能力向上の予測因子である」と総括。また、「この結果に基づき、体育教師やコーチは、子どもたちの発達における組織的なスポーツ活動と非組織的な身体活動の双方の重要性を認識し、それらの活動への参加を奨励する必要がある」と提言している。 この研究では2015~2016年に、フィンランド国内の人口の分布を考慮し特定した24地域から募集された、3~8歳の子ども627人(平均年齢5.5±1.1歳、女児51.0%)を3年間追跡。子どもたちが6~11歳になった時点で運動能力を評価し、ベースライン時における「屋外で過ごす時間」および「組織化されたスポーツへの参加の有無」との関連性を検討した。なお、組織化されたスポーツへの参加の有無は、スポーツ関連団体やクラブ活動に参加しているか否かで判断した。 解析の結果、複数の組織化されたスポーツに参加している子どもは、3年後の運動能力が有意に高いことが明らかになった。性別に見ると、女児については、横跳び、移動スキル、ボール等のコントロールスキル(object control skills;OCS)、基本的動作スキルという、評価した4項目全てと有意な関連があり、男児についてはOCSを除く3項目で有意な関連が認められた。単一の組織化されたスポーツに参加していることも、女児の横跳びとOCSという2項目と有意な関連が認められた(男児では非有意)。 また、屋外で過ごす時間の長さは、女児の横跳び、OCS、基本的動作スキルの高さと有意に関連していた。例えば、平日の屋外で過ごす時間が30~60分であっても、30分未満の子どもとの間に、3年後のスキルの有意差が観察された。ただし、男児ではこのような関連が見られなかった。女児でのみこの関連が有意である理由として著者らは、男児は総じて屋外で過ごす時間が長いのに対して、女児は屋外で過ごす子どもとそうでない子どもの差が大きいためではないかとの考察を述べている。 Luukkainen氏らは、「これまでにも、屋外で過ごす時間と多様な身体活動が、子どもたちの運動能力の発達に良い影響を与える可能性が報告されていた。われわれの研究結果も、そのような先行研究の結果と一致している」と述べている。

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起立性高血圧に厳格降圧治療は有効か?/BMJ(解説:桑島巖氏)

 「起立性低血圧」は臨床上よく耳にする疾患だが、「起立性高血圧」という言葉は、ほとんどの医師にはなじみがない言葉であろう。起立性低血圧を疑い、外来で座位と立位の血圧を測定する場合や、tilting test(傾斜テスト)を実施する医師にとっては、起立性高血圧はしばしば遭遇する現象である。この現象が身体に有害であるか否かは不明であるため、あえて“現象”という言葉で表現する。 本論文は、その起立性高血圧現象が高血圧治療によって軽減するか否かをメタ解析し、厳格に高血圧治療を行っている群のほうが、非厳格治療群よりも起立性高血圧現象が少なかったという結論である。 tilting testを行うと、起立性低血圧例では、一過性上昇後収縮期血圧が10-20mmHg以上下降し、気分不快や意識消失を呈する。一方、ほとんどの正常人では、起立時一過性に血圧が上昇するが、その後数分以内に起立前と同じ血圧レベルで推移する。 外来診療でも、座位に続いて立位で血圧を測定すると、血圧はほとんど変わりないか、あるいは若干上昇するのが正常パターンである。立位時の一過性上昇は、“立つ”という身体の動きが交感神経を一過性に賦活させるという生理的現象である。 高齢者や動脈硬化疾患を有する例ではこの起立直後の血圧上昇反応は顕著であるが、その場合は血管の柔軟性(resilience)が低下しているためである。本論文では、16.7%に起立性高血圧が見られたとしているが、このメタ解析対象にはSPRINT研究のように高齢者で高リスク症例を対象とする試験が含まれているためと考えられる。 いずれにしても、積極的治療を行っている群のほうが非積極的治療群よりも起立時血圧上昇も抑えるというのは当然の結果であろう。

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