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十代の肥満は若年成人期の腎臓病のリスク

 十代に肥満であることが、若年成人期の腎臓病発症リスク因子である可能性を示すデータが発表された。ヘブライ大学(イスラエル)のAvishai Tsur氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Pediatrics」に12月11日掲載された。BMIが基準範囲内ながら高値の場合も、リスク上昇が認められるという。 成人後の肥満が中高年期の慢性腎臓病(CKD)のリスク因子であることは知られている。CKDは腎不全のリスクであるだけでなく、心血管疾患のリスクも高めることから、早期発見と早期治療が必要とされる。しかし近年、小児や未成年の肥満が世界的に増加しているにもかかわらず、未成年の肥満がCKDのリスク因子なのか否かは明らかにされていない。そこでTsur氏らは、十代でのBMIと若年成人期(45歳未満)における初期のCKDとの関連をイスラエルの医療データを用いて検討した。 解析対象は、1975年以降に生まれ、16~20歳時点でのBMIの記録と、徴兵検査時の腎機能関連データがそろっている59万3,660人(ベースラインの平均年齢17.2±0.5歳、男性54.5%)。ベースライン時に腎臓病、アルブミン尿、高血圧、血糖異常の記録がある人は除外されている。肥満の有無と肥満の程度の判定は、米疾病対策センター(CDC)の基準に従い、年齢と性別が一致する集団でのパーセンタイルによって判定した。早期CKDは、推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2以上で、中程度から重度のアルブミン尿が見られるステージ1~2のCKDと定義した。 男性は13.4±5.5年、女性は13.4±5.6年の追跡で、1,963人(0.3%)が早期CKDを発症した。交絡因子を調整後、男性・女性ともに、BMIが正常高値のカテゴリーであっても、以下のように早期CKD発症ハザード比の有意な上昇が認められた。男性では正常高値BMIで1.8(95%信頼区間1.5~2.2)、過体重で4.0(同3.3~5.0)、軽度肥満で6.7(5.4~8.4)、重度肥満で9.4(6.6~13.5)。女性は正常高値BMIで1.4(1.2~1.6)、過体重で2.3(1.9~2.8)、軽度肥満で2.7(2.1~3.6)、重度肥満で4.3(2.8~6.5)。なお、追跡期間中に糖尿病や高血圧を発症した人を除外した解析でも、結果は同様だった。 論文の結論は、「十代後半のBMIが高いことと、若年成人期の早期CKDとの有意な関連が認められた。肥満による早期CKDのリスクは、BMI高値以外のリスク因子がない、一見すると健康そうな人でも上昇し、かつ肥満度がより高い場合によりハイリスクになるという関連があった。これらのデータは、BMIが高い未成年者の肥満を抑制し、腎臓病のリスク因子を管理することの重要性を強調するものと言える」と総括されている。 なお、研究グループによると、体重が過剰であることが、なぜ腎臓にダメージを与えるのかというメカニズムの詳細はまだ明らかにされておらず、現時点では高血圧やコレステロール値の上昇、肥満に関連するホルモン分泌の乱れなどの関与が原因として考えられているという。

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米国皮膚科学会がにきび治療ガイドラインを改訂

 米国皮膚科学会(AAD)が、2016年以来、改訂されていなかった尋常性ざ瘡(にきび)の治療ガイドラインを改訂し、「Journal of the American Academy of Dermatology(JAAD)」1月号に公表した。本ガイドラインの上席著者で、AADの尋常性ざ瘡ガイドラインワークグループの共同議長を務める米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院皮膚科のJohn Barbieri氏は、「今回のガイドラインには、新しい外用治療薬と経口治療薬に関する内容が含まれている」と述べている。 このガイドラインは、新たに実施したシステマティックレビューの結果を踏まえて2016年のガイドラインを改訂したもの。その主な内容として、エビデンスに基づく18項目の推奨事項と、にきびの管理に有益と考えられる実践(グッドプラクティス)に関する5つの声明が提示されている。 18項目の推奨事項のうち、「強い推奨」とされたのは7項目あり、その内容は以下の4点にまとめられる。・皮膚上のアクネ菌を抑制する効果がある外用過酸化ベンゾイルの使用。・毛穴の詰まりを改善し、炎症を軽減するためのアダパレン、トレチノイン、タザロテン、トリファロテンなどの外用レチノイドの使用。・細菌と炎症レベル低減のための外用抗菌薬、またはドキシサイクリンなどの経口抗菌薬の使用。・上記の全ての薬剤を必要に応じて併用すること。 また、グッドプラクティスに関する5つの声明は、以下の通りである。・にきびの管理には、それぞれの薬剤の作用機序を考慮した併用療法が推奨される。・経口抗菌薬の使い過ぎは薬剤耐性菌の出現や抗菌薬関連の合併症発生につながり得るため、限定的な使用にとどめるべきである。・経口抗菌薬は、過酸化ベンゾイルなどの他の局所療法薬と併用することで薬剤耐性菌出現のリスクを低減させることができる。・大きいにきびや結節がある患者に対しては、炎症と痛みを早く和らげるためにコルチコステロイドの注射療法が勧められる。・上記の外用薬や経口薬が奏効しない重症患者に対しては、イソトレチノインによる治療を検討する。 最後に、AADが「条件付き」とし、ケースバイケースで医師の判断に委ねた推奨事項として、以下のものがある。・治療薬の候補には、にきびを誘発している可能性があるホルモンを標的とするクラスコテロンクリームもある。また、経口避妊薬やスピロノラクトンなどのホルモン治療薬もホルモンバランスを原因とするにきびの治療に役立つ可能性がある。・サリチル酸クリームは毛穴の詰まりを解消し、皮膚の角質を除去する効果がある。・アゼライン酸クリームは、毛穴の詰まりを解消し、細菌を死滅させ、にきび跡のシミを薄くする効果が期待できる。・経口のミノサイクリンまたはサレサイクリンは、にきびに関連する皮膚の細菌と戦い、炎症を和らげる効果が期待できる。 このほかAADは、ケミカルピーリング、レーザー、光治療器、マイクロニードルなどによるにきび治療を推奨するには、裏付けとなるエビデンスが少な過ぎると述べている。また、食習慣の改善、ビタミンや植物性製品などの代替療法を支持するエビデンスも不足しているとしている。さらに、ブロードバンド光治療、強力パルス光治療、アダパレン0.3%ゲルの使用は非推奨とされた。 Barbieri氏はAADのニュースリリースの中で、「われわれは、にきび患者の抱える懸念に取り組み、最善の治療法を決めるために努力を重ねてきた結果、これまで以上に多くの選択肢を患者に提供することができた。これと同じくらい重要なこととして、皮膚科医は、これらの治療選択肢の全てにアクセスできるようにしておくべきだ」と述べている。

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第182回 診療報酬改定を答申、賃上げの実現を主眼とするも医療費抑制も視野に/中医協

<先週の動き>1.診療報酬改定を答申、賃上げの実現を主眼とするも医療費抑制も視野に/中医協2.「地域包括医療病棟」を新設、病床再編で高齢者救急患者の受け皿を開設/厚労省3.医療DXを診療報酬改定でさらに推進、マイナ保険証の普及促進で患者負担増/厚労省4. 医療機関の倒産件数は高水準のまま横ばい、負債総額は過去最大を記録/帝国データバンク5.リピーター医師、透析治療せずに患者が死亡、遺族が病院に訴え/大阪6.昇圧薬の補充遅延で患者が死亡、神戸徳洲会病院の安全体制問題が再び問題に/兵庫1.診療報酬改定を答申、賃上げの実現を主眼とするも医療費抑制も視野に/中医協厚生労働省は、2月14日に中央社会保険医療協議会(中医協)の総会を開き、2024年度の診療報酬改定について答申を行った。今回の診療報酬改定は、医療従事者の賃上げを進めつつ、医療費抑制という2つの目標を達成しようとする「メリハリ」のある内容を特徴としている。とくに生活習慣病に関する管理料の適正化が注目されている。これにより医療費の国費負担の一部抑制が図られたが、全体抑制額は200億円に止まり、医療費全体の増大傾向に対する根本的な解決には至っていないとする声もある。今回の改定により、医療従事者への賃上げが実施され、とくに40歳未満の勤務医や看護職員、薬剤師らの待遇改善が図られている。これには、外来・在宅ベースアップ評価料の新設や初診料、再診料の増額などが含まれている。しかし、生活習慣病に関する報酬の適正化には、糖尿病や高血圧、脂質異常症を特定疾患療養管理料の対象から除外するなどの措置が含まれ、これによりプライマリケアを提供する開業医の収入に影響が出る可能性がある。また、介護報酬の改定では、訪問介護の基本報酬が削減される一方で、介護職員の賃上げを目的とした加算の設定が行われた。しかし、小規模事業者からは報酬減による経営の危機やサービス提供能力の低下が懸念されている。精神科訪問看護に関しても、報酬の取得条件が厳格化され、不正や過剰請求への対策が強化された。参考1)中央社会保険医療協議会(第584回) 総会(厚労省)2)「めりはり」ある診療報酬改定、武見厚労相が総括 生活習慣病の管理料など適正化(CB news)3)開業医の改革道半ば 診療報酬改定 医療費の国費負担12兆円 200億円抑制、生活習慣病が軸(日経新聞)4)訪問介護 異例の報酬削減 小規模事業者、撤退の危機(東京新聞)2.「地域包括医療病棟」を新設、病床再編で高齢者救急患者の受け皿を開設/厚労省2024年度の診療報酬改定のうち、入院診療では、高齢者救急患者への対応強化を目的とした「地域包括医療病棟入院料」の新設が注目されている。厚生労働省は、以前から急性期一般入院料1(旧7対1病床)の病床削減が進まないことを問題視しており、急性期病床の削減のため急性期一般入院料1の平均在院日数を16日以内にすることで、病床の再編を病院に促している。厚労省は、後期高齢者が増加するのに合わせて、病気の治療に加えて、早期のリハビリや栄養管理で身体機能の低下を抑え、退院支援を行う目的で1日当たり3,050点の「地域包括医療病棟」を新たに設けた。看護配置は「10対1」で、リハビリテーションや栄養管理、口腔管理を含む包括的なサービス提供が施設基準の条件。地域包括医療病棟の要件としては、平均在院日数は21日以内、在宅復帰率が8割以上としているほか、特定機能病院や急性期充実体制加算を届け出ている高度急性期病院は算定できないなど制限も設けられている。地域包括医療病棟の新設で、急性期医療の機能分化を促進し、中小病院などに少なくない影響が及ぶ可能性があり、地域医療への影響が大きくなると予想されている。今回の改定により、地域包括医療病棟が高齢者救急の受け皿として機能強化されることが期待されているが、急性期医療の再編や地域医療提供体制の整備と連携が今後の課題となる。参考1)令和6年度診療報酬改定について(厚労省)2)厚労省 早期のリハビリで退院を支援する病棟新設を後押しへ(NHK)3)24年度改定 急性期の機能分化へ「地域包括医療病棟入院料」新設 中小病院など地域医療への影響大きく(ミクスオンライン)4)地域包括医療病棟入院料を新設 10対1看護配置、急性期一般入院料からの転換が進むか(日経メディカル)5)地域包括医療病棟入院料は3,050点 リハ・栄養・口腔連携加算80点、24年度改定(CB news)3.医療DXを診療報酬改定でさらに推進、マイナ保険証の普及促進で患者負担増/厚労省2024年度の診療報酬改定では、医療従事者の賃上げを支援し、医療のデジタル化(医療DX)を推進するための複数の措置が導入された。とくに、マイナンバーカードを活用した「マイナ保険証」の利用促進が後押しされ、救急搬送時の情報確認などに活用される方針だ。しかし、このデジタル化推進は患者の負担増につながり、障害者団体からは現行の健康保険証廃止に対する懸念の声が上がっている。新たに設けられる「医療DX推進体制整備加算」により、マイナ保険証や電子処方箋の利用を促進する医療機関に対して、初診時に80円、歯科で60円、調剤で40円が加算され、患者の自己負担が増加する。また、政府は、救急搬送時にマイナ保険証を用いることで、患者かかりつけ医や服薬歴などの情報を迅速に確認し、効率的な救命活動をする計画を立てている。一方で、障害者団体は、マイナ保険証の1本化により、支援が必要な障害者が置き去りにされる恐れがあると指摘し、現行の保険証も残すべきだと訴えている。政府は、現行の健康保険証を2024年12月に原則廃止し、マイナ保険証への完全移行を計画しており、利用率の向上に努めているが、現在の利用率は4.29%と低調。今回の改定で、医療DXの推進やマイナ保険証の普及に向けた取り組みが強化されるが、患者負担の増加や障害者の利便性の問題など、新たな課題も提起されている。参考1)マイナ保険証の利用促進なども後押し 診療報酬改定 患者は負担増に(朝日新聞)2)マイナ保険証、救急搬送時に活用へ 服薬歴など確認(日経新聞)3)マイナ保険証への一本化で障害者が置き去りに…「誰のためのデジタル化か」当事者団体が国会議員に訴え(東京新聞)4.医療機関の倒産件数は高水準のまま横ばい、負債総額は過去最大を記録/帝国データバンク2023年、医療機関の倒産件数は41件で、前年と同数だったが、負債総額は253億7,200万円と過去10年で最大となったことが、帝国データバンクの調査で明らかとなった。この負債総額の増加は、大きな負債を抱えていた「八千代病院」(八千代市)などを運営する医療法人社団心和会(負債132億円)と「東京プラス歯科矯正歯科」などを運営していた医療法人社団友伸會(負債37億円)の影響が大きい。倒産した医療機関のうち、「病院」が3件、「診療所」が23件、「歯科医院」が15件で、大部分が5億円未満の負債。帝国データバンクは、2024年も医療機関の倒産が高水準で推移すると予想しており、とくに診療所では経営者の高齢化や健康問題が影響し、過剰債務などを理由に法的整理を選択するケースが増える可能性を指摘している。参考1)病院などの「医療機関」、倒産が2年連続で40件超え 今後は診療所の動向に注目(ITmedia)2)帝国データバンク 2024年 1月報(帝国データバンク)5.リピーター医師、透析治療せずに患者が死亡、遺族が病院に訴え/大阪透析治療を受けていた90歳男性が、新型コロナウイルス感染で転院したにもかかわらず、必要な治療を受けられずに死亡した事件で、遺族が病院運営法人に約5,000万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。男性は、大阪府内のクリニックで週3回の透析治療を受けていたが、新型コロナウイルス陽性と診断された後、同系列の医誠会病院に転院した。転院後は抗ウイルス薬のみ投与され、透析治療は一切行われなかったとされている。数日後に男性は、窒息による低酸素脳症で死亡した。遺族は病院が透析治療可能であるとクリニックに返答し、クリニックが診療情報を引き継いだにもかかわらず治療が行われなかったと主張している。問題は、過去に赤穂市民病院で医療過誤を含む複数の医療事故に関与し、依願退職した後に医誠会病院へ転職した40代の男性医師が関与した可能性があり、この医師は患者の透析治療が必要であるにもかかわらず、適切な対応を怠ったとされている。遺族は、医師の初動対応の不備と病院の管理体制の欠如が死に直結したと主張し、医療法人「医誠会」に対し約5,000万円の損害賠償を求めている。この訴訟は、医療機関の責任と医師個人の過去の問題が患者の命にどのような影響を及ぼしたかという点で、病院側の安全体制の責任を問いかけている。遺族は、真実を求めるとともに、同様の悲劇が再発しないよう医療機関の体制改善を訴えている。参考1)腎不全で透析治療の男性 新型コロナ陽性で転院するも透析治療されず死亡 遺族が約5,000万円の賠償を求め病院側を提訴 大阪地裁(MBS)2)元市民病院脳外科医 転職先でも医療トラブル 透析治療せず患者死亡か(赤穂民報)6.昇圧薬の補充遅延で患者が死亡、神戸徳洲会病院の安全体制問題が再び問題に/兵庫神戸徳洲会病院(神戸市垂水区)で今年1月、心肺停止状態から回復した90代の男性患者が、昇圧薬が切れた直後に死亡していたことが判明した。報道によると、患者に投与していた昇圧薬が切れた直後、薬剤の補充が準備されておらず、必要な治療が提供されなかったため、薬が切れた直後に患者は亡くなった。病院側は「死期を早めた可能性がある」として家族に謝罪し、神戸市は医療安全体制に不備がなかったか調査を行っている。同院は、去年カテーテル治療後の患者死亡事案や適切な治療が行われず糖尿病患者が亡くなった事案が発覚しており、医療安全体制の問題で神戸市から行政指導を受けていた。今回の事案を受け、神戸市は改善命令を出す方針であり、病院は救急患者の受け入れを一時中止し、院内で原因調査と適切な対応を進めている。参考1)神戸徳洲会病院 投与の薬剤追加されず その後 患者死亡(NHK)2)薬剤の補充分なく、薬切れた直後に90歳代患者が死亡…神戸徳洲会病院「死期早めた可能性」(読売新聞)3)神戸徳洲会病院、薬剤の追加を怠り患者が死亡 警告音が鳴り、家族が訴えるも対応されず(神戸新聞)

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便通異常症 慢性便秘(7)腸閉塞の検査【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q105

便通異常症 慢性便秘(7)腸閉塞の検査Q105診療応援に来ている近所のクリニックでのこと。S状結腸がん術後の56歳男性が、嘔吐と腹痛で受診した。腹部膨満があり、金属音も聞こえる。後方医療機関に搬送する前に、まず何の検査をしようか?

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閉経後早期乳がんへの術前内分泌療法、フルベストラントvs.フルベストラント+AI vs.AI/JAMA Oncol

 エストロゲン受容体(ER)陽性/ERBB2陰性の閉経後進行乳がん患者において、アナストロゾールへのフルベストラントの追加が生存率を改善させたことが報告されているが、早期乳がんにおける試験は行われていない。米国・Washington University School of MedicineのCynthia X. Ma氏らは、ER-rich/ERBB2陰性の閉経後早期乳がん患者における術前内分泌療法(NET)としてのフルベストラント単剤およびアナストロゾールとの併用療法が、アナストロゾール単剤療法に比べて優れるかどうかについて検討した第III相無作為化試験の結果を、JAMA Oncology誌オンライン版2024年1月18日号で報告した。 本試験はStageII~III、ER-rich(Allred score:6~8または>66%)/ERBB2陰性の閉経後乳がん患者が対象。アナストロゾール群(A群)、フルベストラント群(F群)、アナストロゾール+フルベストラント群(A+F群)に無作為に割り付けられ、それぞれ術前6ヵ月間の投与を受けた。 主要評価項目は内分泌感受性疾病率(ESDR)。副次評価項目は4週間のNET後のKi-67スコアの変化率(4週目のKi-67抑制効果)とされた。Ki-67スコアは4週目、および必要に応じて12週目に評価され、いずれかの時点で10%を超えた場合、術前化学療法または即時手術に切り替えられた。 主な結果は以下のとおり。・2014年2月~2018年11月までに、1,362例の女性患者(平均[SD]年齢:65.0[8.2]歳)が登録された。・評価可能な1,298例において、ESDRはA群18.7%(95%信頼区間[CI]:15.1~22.7)、F群22.8%(95%CI:18.9~27.1)、A+F群20.5%(95%CI:16.8~24.6)であった。・A群と比較して、フルベストラントを含むレジメンはどちらもESDRまたは4週目のKi-67抑制効果を有意に改善しなかった。・4週目または12週目でKi-67スコアが10%を超えた割合は、A群25.1%、F群24.2%、およびA+F群15.7%であった。・4週目または12週目でKi-67スコアが10%を超え、術前化学療法に切り替えた後、病理学的完全奏効(pCR)は167例中8例、residual cancer burden(RCB)-Iは167例中8例で確認された(pCR/RCB-I率:15.0%、95%CI:9.9~21.3)。・ベースラインのPAM50サブタイプについてデータが得られた753例(58%)において、Luminal Aは394例、Luminal Bは304例、non-Luminalは55例であった。・Luminal Bにおいて、A+F群はA群と比較して4週目のKi-67抑制効果が高かった(中央値[IQR]:-90.4%[-95.2~-81.9] vs.-76.7%[-89.0~-55.6]、p<0.001)。この傾向はLuminal Aではみられなかった。・non-Luminalの36例(65.5%)では、4週目または12週目のKi-67スコアが10%を超えていた。 著者らは今回の結果を受けて、ER-rich/ERBB2陰性の閉経後早期乳がん患者におけるNETとしての標準治療はアロマターゼ阻害薬で変更はないとしたうえで、探索的分析で明らかになったPAM50サブタイプによるNETへの反応の違いについてはさらなる検討が必要としている。

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休暇中に働く医師、燃え尽き症候群のリスク高い

 超過勤務が多くなりがちな医師は、燃え尽き症候群(バーンアウト)のリスクが高いという報告は数多い。また、労働者全般を対象とした研究では、休暇中に仕事を完全に切り離すことも重要であり、生産性を向上させ、精神的疲労を軽減させることが報告されている。医師における休暇の取得と休暇中の労働は、燃え尽き症候群や職業的充実感とどのように関連しているのか。米国医師会のChristine A. Sinsky氏らによる研究の結果がJAMA Network Open誌2024年1月2日号に掲載された。 研究者らは米国の医師を対象に、2020年11月20日~2021年3月23日に調査票による横断調査を実施した。データ解析は2023年3~7月に実施した。過去1年間に取得した休暇日数、休暇中に患者ケアおよびその他の専門的業務に費やした時間(1日当たり)、休暇中の電子カルテ(EHR)に来た業務のカバー率、休暇取得の障壁についての情報が収集された。バーンアウトはMaslach Burnout Index、職業的充実感はStanford Professional Fulfillment Indexを用いて測定した。 主な結果は以下のとおり。・休暇に関する調査に回答した米国人医師3,024人(年齢中央値50歳、男性62%)が対象となった。過去1年間に15日以下の休暇を取得した医師は59.6%で、うち6~15日が39.7%、5日以下が19.9%だった。年間15日以上の休暇を取得した医師の割合が高い診療科は麻酔科、放射線科で、最も低いのは救急科だった。・その一方で、70.4%の医師が休暇中に患者ケアに関連した業務を行った、と回答しており、うち休暇日1日当たり30分以下の勤務が37.3%、30~60分が18.3%、60~90 分が7.3%、90分以上が7.4%だった。・休暇中、「電子カルテの業務が完全にカバーされている」と報告した人は半数以下(49.1%)だった。・休暇取得にまつわる懸念として、「臨床をカバーしてくれる人を見付けること」「経済的な懸念」に対して「かなりある」「非常にある」(5段階の選択肢)との回答は、年間15日以上の休暇を取得する可能性の低下と関連していた。・「年間15日以上の休暇取得」「休暇中の電子カルテ業務の完全カバー」との回答は、バーンアウト率の低下と関連していた。・一方、休暇日1日当たり30分以上を患者ケアに関連した業務に費やすことは、バーンアウト率の上昇と関連していた。 著者らは「休暇の取得日数と、休暇中に患者関連の業務を行うことは、医師の燃え尽き症候群と関連していた。医師が適切に休暇を取得し、臨床責任をカバーできるシステムレベルの取り組みを行うことが、医師の業務負担を軽減させる可能性がある」としている。

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肝線維化を伴うNASHへのresmetirom、52週での有用性/NEJM

 肝線維化を伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に対し、開発中のresmetiromの80mgおよび100mg投与はプラセボとの比較において、NASH消失および肝線維化ステージの1段階以上の改善に関して、優れていることが示された。米国・Pinnacle Clinical ResearchのStephen A. Harrison氏らが、第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験「MAESTRO-NASH試験」の結果を報告した。NASHは進行性の肝疾患で、現在までに承認された治療薬はない。resmetiromは、肝指向性の経口選択的甲状腺ホルモン受容体β作動薬で、先行する第IIおよび第III相試験で、成人NASHに対する有効性、安全性を支持するデータが示されていた。NEJM誌2024年2月8日号掲載の報告。52週時点の肝線維化の悪化のないNASH消失などを比較 MAESTRO-NASH試験は、肝生検でNASHと診断された肝線維化ステージ(F0:肝線維化なし~F4:肝硬変)F1B、F2、F3の成人患者を対象に、resmetiromの有効性と安全性を評価する第III相試験で現在も進行中である。被験者は、1日1回のresmetirom 80mgまたは同100mgもしくはプラセボを投与されるよう無作為に1対1対1の割合で3群に割り付けられ、追跡評価を受けた。 本報告は52週時点の結果を報告するものである。同時点の主要エンドポイントは2つで、肝線維化の進展を伴わないNASH消失(非アルコール性脂肪性肝疾患[NAFLD]活動性スコア[範囲:0~8、高スコアほど重症であることを示す]が2ポイント以上低下など)と、NAFLD活動性スコアの悪化を伴わない肝線維化ステージの1以上の改善(低下)であった。NASH消失や肝線維化ステージ1以上の改善はresmetirom群で約24~26% 主要解析には、被験者計966例が含まれた(resmetirom 80mg群は322例、100mg群323例、プラセボ群321例)。 肝線維化の進展を伴わないNASH消失を認めた被験者の割合は、プラセボ群9.7%に対して、80mg群25.9%、100mg群29.9%であった(プラセボ群と比較した両resmetirom群のp<0.001)。NAFLD活動性スコアの悪化を伴わない肝線維化ステージ1以上の改善が認められた被験者の割合は、プラセボ群14.2%に対して、80mg群24.2%、100mg群25.9%であった(同比較のp<0.001)。 LDLコレステロール値のベースラインから24週目までの変化量は、プラセボ群+0.1%に対し、80mg群-13.6%、100mg群-16.3%であった(同比較のp<0.001)。 安全性の評価では、プラセボ群と比べてresmetirom群で下痢(プラセボ群15.6%、resmetirom 80mg群27.0%、100mg群33.4%)と悪心(12.5%、22.0%、18.9%)の発現頻度が高かった。重篤な有害事象の発現率は、3群間で同程度であった(11.5%、10.9%、12.7%)。

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心房細動のない心房性疾患患者の潜因性脳卒中、アピキサバンの再発予防効果は?/JAMA

 心房細動を伴わない心房性心疾患の証拠がある、潜因性脳卒中(cryptogenic stroke)を呈した患者において、アピキサバンはアスピリンと比較して脳卒中再発リスクを有意に低下しなかった。米国・Weill Cornell MedicineのHooman Kamel氏らが「ARCADIA試験」の結果を報告した。心房性心疾患は、臨床的に明らかな心房細動を認めない場合において、脳卒中と関連することが示されている。心房細動への有益性が示されている抗凝固療法が、心房性疾患を有するが心房細動は有さない患者の脳卒中を予防するかどうかは不明であった。JAMA誌オンライン版2024年2月7日号掲載の報告。1,015例を対象に有効性(脳卒中再発予防)と安全性を評価 ARCADIA試験は、潜因性脳卒中および心房性心疾患の証拠(PTFV1>5,000μV、NT-ProBNP>250pg/mL、心エコーでの左房直径≧3cm/m2と定義)がある患者において、脳卒中の二次予防のための抗凝固療法と抗血小板療法を比較する第III相の多施設共同二重盲検無作為化試験。試験登録と追跡調査は2018年2月1日~2023年2月28日に行われ、National Institutes of Health StrokeNet and the Canadian Stroke Consortiumに参加する185施設から患者1,100例を登録し、そのうち1,015例が試験に参加した。 被験者は、1対1の割合でアピキサバン群(5mgまたは2.5mgを1日2回投与、507例)またはアスピリン群(81mgを1日1回投与、508例)に無作為化され追跡評価を受けた。無作為化の時点で被験者に心房細動の証拠はなかった。 主要有効性アウトカムは脳卒中の再発で、time-to-event解析にて評価した。無作為化後に心房細動と診断された患者を含む全被験者を対象とし、無作為化した各群に従って解析が行われた。主要安全性アウトカムは、症候性頭蓋内出血およびその他の大出血であった。平均追跡期間1.8年で試験は中止に 平均追跡期間1.8(SD 1.3)年で、事前に計画された中間解析後に試験は無益であるとして中止となった。 被験者1,015例の平均年齢は68.0(SD 11.0)歳、女性が54.3%であり、87.5%が追跡期間の調査を完了した。 脳卒中再発の発生は、アピキサバン群40例(年率4.4%)、アスピリン群40例(年率4.4%)であった(ハザード比[HR]:1.00、95%信頼区間[CI]:0.64~1.55)。 症候性頭蓋内出血はアピキサバン群では発生せず、アスピリン群で7例(年率1.1%)に発生した。その他の大出血の発生は、アピキサバン群5例(年率0.7%)、アスピリン群5例(年率0.8%)であった(HR:1.02、95%CI:0.29~3.52)。

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切除不能肺がんに対する新アプローチ、小規模試験で有望な結果

 局所進行性で切除不能な非小細胞性肺がん(NSCLC)患者に対しては、標準的な化学療法に加え、高線量の放射線をがんに対してピンポイントで照射できる体幹部定位放射線治療(SABR、SBRTとも呼ばれる)を行うことで、患者の生存率向上が望める可能性のあることが、28人のNSCLC患者を対象にした初期段階の小規模試験で明らかになった。 研究論文の共著者である、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)放射線腫瘍学分野のBeth Neilsen氏は、「われわれが得た結果は、化学療法と、患者の腫瘍の位置や形状の治療による変化などを考慮して照射方法などを再検討しながら行うSABRの併用は、患者にとって有益なことを示すものだ」と述べている。詳細は、「JAMA Oncology」に1月11日掲載された。 Neilsen氏らによると、切除不能なNSCLC患者はこれまで、標準的な放射線治療(6週間で30回の照射)と化学療法の併用で治療されてきたが、その生存率は低かったという。同氏らは、低線量の放射線治療を何十回も行う代わりに、高線量の放射線治療を少ない回数で行う方が、腫瘍の根絶と再発防止につながるのではないかと考えた。SABRで鍵となるのが、生存率を向上させつつ健康な組織へのダメージを最小限に抑える理想的な線量を見つけることであった。 そこでNeilsen氏らは、医学的理由や患者の希望で腫瘍の切除が不能なステージIIおよびIIIのNSCLC患者28人(年齢中央値70歳、男性57%)を対象に、化学療法との併用で実施するSABRの線量をどれだけ安全に上げることができるかについての検討を行った。対象者は、化学療法とともに、放射線治療として4Gy/回を10回受けた後に、低線量(総線量25Gy;5Gy×5回照射、10人)、中線量(総線量30Gy;6Gy×5回照射、9人)、高線量(総線量35Gy;7Gy×5回照射、9人)でのSABRを受けた。追跡期間中央値は18.2カ月だった。 その結果、有害事象としてグレード3以上の急性または遅発性の非血液毒性がそれぞれ11%(3人)と7%(2人)の患者に生じたが、中線量群にグレード3以上の有害事象が生じた患者はいなかった。2人が死亡したが、いずれも高線量群の患者だった。2年間の局所制御率は、低線量群、中線量群、および高線量群の順に、74.1%、85.7%、および100.0%であった。また、2年間の全生存率は同順で、30.0%、76.2%、55.6%であった。 研究グループは、「2年間の腫瘍再発率に関しては高線量群が最も良好ではあったが、一方で、この群では副作用がより深刻だった」と述べている。これに対して、中線量群で生じた副作用は、主に疲労感、食道や肺の炎症による咽頭痛や咳などで、重篤な副作用が生じた患者はいなかったという。 研究グループは、本研究は対象者の数が少なかったため、より大規模な研究を実施して長期間の追跡を行う必要があると述べている。それでも、論文の上席著者である、UCLA放射線腫瘍学分野のMichael Steinberg氏は、「この研究が、がん関連死の主因である肺がんの治療を改善するために取り組まれている努力に貢献することは間違いない。SABRと化学療法の統合は、安全性、有効性、患者の転帰の改善という点で有望な新しいアプローチを提供するだけでなく、より効果的で個別化された治療への道も切り開かれることになる」と述べている。

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ED治療薬、心臓病の薬との組み合わせは危険な場合も

 心疾患の治療目的で硝酸薬を使用中の男性が、バイアグラ(一般名シルデナフィルクエン酸塩)やシアリス(一般名タダラフィル)といった勃起障害(ED)治療薬を併用すると、死亡リスクや心筋梗塞、心不全などのリスクが高まる可能性が、新たな研究で示された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のDaniel Peter Andersson氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American College of Cardiology」1月23日号に掲載された。Andersson氏は「医師が、心血管疾患のある男性からED治療薬の処方を求められることが増えつつある」とした上で、「硝酸薬を使用している患者がED治療薬を併用することで、ネガティブな健康アウトカムのリスクが高まる可能性がある」と警鐘を鳴らしている。 バイアグラやシアリスなどのED治療薬はPDE5阻害薬と呼ばれ、動脈を広げて陰茎への血流を増加させる働きがある。また、硝酸薬にも血管を拡張する作用があり、狭心症による胸痛の治療や心不全の症状を緩和するために使用される。 PDE5阻害薬と硝酸薬はいずれも血圧低下の原因となり得るため、ガイドラインでは、これらを併用すべきではないとの推奨が示されている。それにもかかわらず、実際にはPDE5阻害薬と硝酸薬の両方が処方されている患者の数は増加しつつある。しかし、これらを併用した場合にどのような影響があるのかについてのリアルワールド(実臨床)のデータはほとんどない。 Andersson氏らは、2006年から2013年の間に心筋梗塞を発症するか血行再建術を受け、硝酸薬が最大18カ月の間隔を空けて2回以上処方されていた18歳以上の患者6万1,487人(平均年齢69.5±12.2歳)を選び出し、その医療記録を分析した。硝酸薬の2回目の処方前6カ月間にPDE5阻害薬が処方されていた患者は除外された。対象者のうち5,710人(9%)にはED治療薬としてPDE5阻害薬も処方されていた。追跡期間中央値は5.9年だった。 解析の結果、硝酸薬とPDE5阻害薬の両方が処方されていた男性では、硝酸薬のみが処方されていた男性に比べて、全死亡リスクが39%、心血管疾患による死亡リスクが34%、心血管疾患以外の原因による死亡リスクが40%、心筋梗塞リスクが72%、心不全リスクが67%、冠動脈血行再建術を受けるリスクが95%、主要心血管イベントの発生リスクが70%高いことが示された。ただし、硝酸薬とPDE5阻害薬の両方が処方された男性でも、PDE5阻害薬の使用開始から28日以内では、死亡や心筋梗塞、心不全といったイベントの発生数は少なく、即時性の高いリスクは低~中程度であることが示されたとAndersson氏らは説明している。 Andersson氏は、「われわれの目標は、硝酸薬による治療を受けている患者にPDE5阻害薬を処方する前に、患者中心の視点で慎重に考慮する必要性を明確に示すことだ」と米国心臓病学会(ACC)のニュースリリースで述べている。その上で、「ED治療薬が心血管疾患のある男性に与える影響は現時点では不明瞭だが、今回の結果は、この影響に関するさらなる研究を正当化するものだ」としている。 一方、米ベイラー大学心臓病学教授のGlenn Levine氏は付随論評で「体調管理が行き届いている軽度の狭心症の男性であれば、ED治療薬はそれなりに安全だ。しかし、硝酸薬の継続的な処方が必要な状態でED治療薬を併用するのは、賢明とは言えない」との見解を示している。同氏は、「EDと冠動脈疾患の組み合わせは高頻度に見られる不幸な組み合わせだ。しかし、適切な予防策とケアを行うことで、これらは何年にもわたって共存できる」と述べている。

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職場でのウェルネスプログラムは効果なし?

 多くの企業が、従業員に向けてマインドフルネス、ライフコーチング、睡眠の質の改善、その他多くの問題に焦点を当てた無料のウェルネスプログラムの利用を推奨している。しかし、このようなプログラムの中でウェルビーイングの向上に寄与するのはたった1種類に過ぎなかったことが、4万6,000人以上の英国人労働者を対象にした調査結果の解析から明らかになった。英オックスフォード大学のウェルビーイング・リサーチ・センターのWilliam Fleming氏によるこの研究結果は、「Industrial Relations Journal」に1月10日掲載された。 この研究は、Britain's Healthiest Workplace(BHW)調査の2017年と2018年のデータに基づくもの。BHW調査には、2014年から2018年の間に総計で233企業の従業員4万6,336人が参加し、繰り返し調査に回答していた。調査では、仕事の満足度やストレスレベルなどとともに、帰属意識や会社からのサポートレベル、トレーニングを受ける機会についても問われていた。Fleming氏は、個人レベルのウェルビーイングに対する介入の効果を、介入への参加者と非参加者の間で比較した。介入は、マインドフルネス、レジリエンス、ストレスマネジメント、リラクゼーションクラス、ウェルビーイングアプリなどで、その数は約90種類に及んだ。 その結果、チャリティーやボランティアプログラムを除いて、従業員のウェルビーイングは、個人レベルのメンタルヘルスへの介入プログラムに参加しているかいないかにかかわらず、変化していないことが明らかになった。また、マインドフルネスやレジリエンス/ストレスマネジメントなどの介入は、ウェルビーイングに悪影響を与え得ることも示唆された。ただしこの結果は、こうした介入にはもともとメンタルヘルスのレベルが低下している人の参加が多いため、意図した効果が得られなかった可能性もあると考えられた。 こうした結果についてFleming氏は、「得られた結果は、個人レベルでのウェルビーイングに対する介入の広がりと正当性に挑戦状を突きつけるものだ」と話す。また同氏は、「これらの結果が物議を醸す内容であることは承知している。しかし、企業が本当に従業員の気分を改善したいのであれば、スケジュール、給与、人事考課などの労働条件を改善するのが最善の策なのかもしれない。従業員がマインドフルネスアプリや睡眠プログラム、ウェルビーイングアプリを利用したいと思うこと自体は何も悪くない。しかし、企業が従業員のウェルビーイング増進を望むのであれば、働き方に関する改革が必要だ」とNew York Times紙に語った。 米スプリングヘルス社の共同設立者で米イェール大学の心理学分野のAdam Chekroud氏は、「この研究で、職場において実施されているウェルネスプログラムの効果が全面的に否定されたのは、信憑性の高くない介入に焦点を当てているからだ」と述べ、今回の研究結果に対して否定的な見解を示している。スプリングヘルス社は、従業員を、メンタルヘルスを高めるための心理療法やオンライン薬物療法に結び付けるプラットフォームを運営している。同氏によると、スプリングヘルス社による2022年の研究では、同社のサービスを利用した1,132人の米国人労働者のほとんどが抑うつの軽減を実感したほか、欠勤日数の減少や、職場の生産性に関する自己申告の上昇も確認されたという。 一方で、英国のメンタルヘルス財団で研究・応用学習の責任者を務め、世界保健機関(WHO)や英イングランド公衆衛生局(PHE)に対してメンタルヘルス向上を目指す取り組みについて助言を行っているDavid Crepaz-Keay氏は、「この研究結果は、従業員支援の有効性を一貫して示唆してきた、これまでの多くの研究よりも確実に強固だ」と述べ、Fleming氏を支持する立場を明示している。

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自転車通勤で糖尿病リスクに関連する慢性炎症が軽減

 自転車や徒歩で通勤している人は、2型糖尿病などのリスクと関連のある、全身の慢性炎症が軽減されていることを示すデータが報告された。ただし、有意な影響は、少なくとも45分以上の“アクティブな通勤”をしている人に限り観察されたという。東フィンランド大学のSara Allaouat氏らの研究によるもので、詳細は「European Journal of Public Health」に12月8日掲載された。 組織のダメージの治癒過程や感染症抑止のための反応として生じる短期間の炎症は、生体にとって正常なものであり欠かせない。しかし、何らかの原因で全身性の異常な炎症が続いている場合、がんや2型糖尿病、心臓病などのさまざまな疾患のリスクが上昇することが知られている。 全身の炎症反応の指標の一つに高感度C反応性タンパク質(hs-CRP)があるが、このhs-CRPは適度な運動によって低下することが、以前の研究で明らかになっている。しかし、通勤での運動とhs-CRPの関連はよく分かっていない。Allaouat氏らはこの点について、フィンランドの一般住民対象疫学研究(FINRISK)のデータを用いた横断的な解析によって検討した。 解析対象は6,208人の成人(平均年齢44±11歳、女性53.6%、BMI26±4、hs-CRP2.02±4.32mg/L)。通勤を徒歩または自転車で行っている場合を“アクティブな通勤”と定義し、それらによらず自動車や公共交通機関を利用して通勤している群を基準として、hs-CRPの値を比較した。解析に際しては、年齢や性別、喫煙・飲酒習慣、職業上の身体活動量、婚姻状況、教育歴、世帯収入など、結果に影響を及ぼし得る因子を交絡因子として調整した。 解析の結果、アクティブな通勤を毎日45分以上行っている群(全体の7.7%)は、非アクティブな通勤者群(同34.8%)に比べてhs-CRPが有意に低いことが分かった〔-16.8%(95%信頼区間-25.6~-7.0)〕。また、アクティブな通勤時間が15~29分の群(24.9%)もhs-CRPが有意に低値だった〔-7.4%(-14.1~-0.2)〕。一方、アクティブな通勤時間が15分未満の群(20.8%)、および、30~44分の群(11.7%)のhs-CRPは、非アクティブ群と有意差がなかった。 次に、交絡因子としてBMI、心血管疾患や糖尿病の既往、前記以外の生活習慣(余暇時間の身体活動量や野菜・果物・肉・魚の摂取量)、大気汚染レベル、季節性などを追加した解析を施行。アクティブな通勤時間が45分以上の群では、それらのいずれの解析でも、非アクティブな通勤者群との差の有意性は保たれていた。それに対してアクティブな通勤時間が15~29分の群では、それらのいずれの解析でも有意性が消失していた。 なお、性別の解析では、女性についてはアクティブな通勤を毎日45分以上行っている群と非アクティブな通勤者群とで、hs-CRPの群間差がより顕著だった〔−23.1%(−33.6~−10.9)〕。それに対して男性では群間差が非有意となった〔−4.4%(−19.7〜13.8)〕。 Allaouat氏らはこれらの結果に基づき、「アクティブな通勤は公衆衛生上のメリットをもたらす可能性がある。さらに、自家用車やバスを使わずに通勤することは、地球にとって良いことであり、気候変動の緩和につながるのではないか」と述べている。また、女性でのみ有意な結果であったことに関連して、「女性は男性よりも頻繁にアクティブな通勤を行っていることを反映している可能性があり、さらに、そのような女性は余暇時間にも身体活動を積極的に行っていてBMIが低いという傾向が認められた」との考察を付け加えている。

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第198回 被災地・能登半島でのコロナ感染増、その裏側にあった光景の一端

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の報告数が再び増加し始めている。2024年第5週(1月29日~2月4日)の全国定点当たりの報告数は16.15人。前週より1.22人増加し、2023年第46週(11月13日〜11月19日)の1.95人以降は増加の一途をたどっている。2022年11月から2023年2月末ぐらいまでの第8波当時を定点換算するとピーク時が30人前後、同じく2023年7~10月にかけての第9波が20人超なので、それと比べればまだマシとも言えるかもしれない。もっとも第9波以降は完全に定点観測に移行しており、検査を受けていない「隠れコロナ」の存在も考慮しなければならない。都道府県別で見ると、前週比で報告数が減少したのは6県のみ。逆に第9波レベルの定点当たり20人に到達しているのは9県で、最多は石川県の24.52人。いまだ先が見えない大地震被災地の能登半島地域も含めた石川県がこの状況というのは「泣きっ面に蜂」である。まさにこの2024年第5週は、私が輪島市門前町で活動していた日本薬剤師会の災害派遣ボランティアに同行していた時期でもあり、目にしたのはある断面に過ぎないが、確かに新型コロナ流行の兆しがあった。なんせ現地到着直後に飛び込んで来た最初の災害処方箋が新型コロナ治療薬のエンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)だったくらいだ。この時は輪島市門前総合支所に据え置かれていたモバイルファーマシー周辺にいた薬剤師たちが、やや緊張を帯びた表情になったことを覚えている。そのうちの1人が「あれ?患者同意書は?」と口にした。緊急承認薬でもあるエンシトレルビルでは、製造販売元の塩野義製薬が用意している患者同意説明文書1)を使用し、患者・代理人の自署が必要で、処方医は同意書原本の保管とともに、患者・代理人への写しの交付が定められている。結局、その場は災害という非常時でもあり、まずは医師の処方箋に従った調剤・配達を優先することで収まった。ちなみに塩野義製薬の広報部によると、「処方に当たって同意文書の取得・保管を必ず求めており、そのことを医療機関にもお伝えしている」とのことである。配達先に指定されたのは避難所となっていた中学校体育館。前回の連載で触れたCO2濃度を測定した場所である。この時は配達直前にここのCO2濃度測定の依頼があったため、配達と測定を兼ねて3班(1班は3人)で向かった。中学校到着後、メンバーの1人が配った個人防護具(PPE)の手袋を装着して体育館に入った。管理者に来訪目的と患者名を告げると、館内の半ガラス張りの教室のようなところに案内された。中に3つほどベッドが設けられ、感染症患者の隔離室として使用されていた。廊下で患者対応する薬剤師1人が決められ、薄いピンクのPPEのエプロンを着用して入室。ガラス越しに眺めると、処方されたのは高齢女性のようで、薬剤師が中腰で話しかけ、女性はベッドから立ち上がって後方のロッカーから取り出した束を薬剤師に差し出した。すぐに服用薬との相互作用チェックだとわかった。エンシトレルビルはご存じのように併用禁忌、併用注意の薬が多い。10分弱で出てきた当該薬剤師に話を聞くと、お薬手帳がなく、保有薬の確認で問題なしと判断したとのこと。同日夕刻、モバイルファーマシーの前に突っ立っていると、今度は目の前の調整本部から2人分のエンシトレルビルの災害処方箋が舞い込んできた。ところがモバイルファーマシー内のエンシトレルビル在庫は1人分のみ。ということで、その場にいた薬剤師の1人が庁舎内に駆け込み、事情を話してまだ6人分の在庫があったモルヌピラビル(同:ラゲブリオ)に切り替えてもらうことになった。ちなみに災害処方箋に記載された患者は女性2人で、うち1人が40代。厳密に言えば、基礎疾患がなければモルヌピラビルは適応とはならない。災害処方箋上はその点は不明だったようだ。これも非常時ではやむなしなのだろう。結局、この2人分のモルヌピラビルの配達にも同行した。薬剤師3人を乗せた車は、外浦と呼ばれる能登半島の日本海沿岸のあちこちがひび割れた道路を10分ほど進み、そこから山間部に入った。ナビに患者宅の住所は登録済みだったが、周囲は山林だらけで人家は見当たらない。運転していた薬剤師が「たぶん次を右折ですがね」と言ったところで、未舗装の道が見えた。目指す患者宅はその突き当りにあった。ナビがなければ到底見つけられないようなポツンと一軒家である。われわれが到着すると、突如、中型犬が駆け寄ってきて吠え始めた。車内で「うわー、放し飼いだよ」と戸惑いのつぶやきが漏れる。さすがにすぐに車から降りることはできない。皆が犬の吠えに気付いて、飼い主であろう患者・家族が出てくることを期待したが、2分ほど経過しても出てくる様子はなかった。1人が車内から携帯で患者宅に電話をかけながら、残る薬剤師2人と私が意を決して降車した。犬は吠えながら3人のうち、もっとも大柄な男性薬剤師のほうに駆けてきた。彼が「この子、多分怖がってますよ。尻尾下がってますもん」と言いながら、中腰で撫で始めると、急に彼の内股に頭をこすりつけ始めた。ほぼ時を同じくして患者宅からマスクをした高齢男性が出てきて、犬はそちらに走って行った。薬剤師2人が薬を渡しながら高齢男性に服薬指導の内容を伝え、一件落着。だが、帰りの車中では「あのお父さん(高齢男性)、家庭内感染してしまうのでは?」との懸念の声が漏れていた。結局、この日3人分の処方が出たこともあり、モバイルファーマシー用に石川県薬剤師会を通じてエンシトレルビル、モルヌピラビルが追加発注となった。翌日は前日のこともあり、薬剤師たちのなかでも新型コロナ治療薬の処方が急増することに対する警戒感が高まっていたが、午後までまったく動きなし。これでこの日は撤収かと思いきや、撤収時間の間際にモバイルファーマシーにモルヌピラビルの災害処方箋1枚が調整本部から手渡しで届けられた。今回同行した薬剤師に声を掛けると、昨日届けたポツンと一軒家の高齢男性への処方だった。悪い予感は不幸にも的中してしまった。再び車を走らせる。その車中で薬剤師3人が1日2回のモルヌピラビルをどのように服用してもらうかをやり取りしていた。感染症である以上、早めの服用開始が望ましいということで、3人とも男性には配達直後にまず1回分を服用することを指導する点で一致した。ただし、すでに時間は夕刻なので、問題は2回目をいつ服用してもらうか。そこで上がったのは2回目を就寝前とするか、夜中にたまたま目を覚ました時とするかだ。1人が「モルヌピラビルの血中半減期は何時間だっけ?」と言い出し、これに呼応してスマホで検索し始めたもう1人が「約2.7時間ですね」と答え、就寝前と指導することに。この時、私はある言葉を思い出した。この災害処方箋を届けに来た看護師がモバイルファーマシー内の薬剤師に「この患者さん、昨日モルヌピラビルが届けられたお宅の人で、朝にご家族に処方されたものを1回分服用したそうです」と伝えていたことだ。バタバタしたやり取りだったため、もしかしてこの情報はモバイルファーマシー内で調剤した薬剤師から配達に向かう薬剤師に伝えられていないかもしれないと思った。非医療従事者の自分が口を出すのは気が引けたが、黙っているのはもっとまずいと思い、口にした。一同、「えっ?」となり、私は「念のため患者さん宅で確認してみては?」とやや逃げを打った。現場での情報伝達の漏れはこうした何気ないところで起こるものなのだと、あらためて思い知った。そして再び前日の患者宅に到着。予定調和のごとく、犬が吠えながらお出ましになった。昨日のこともあるので、誰も怖がることなく降車。犬は後ろ足立ちになりながら、私の腰辺りで前足をガリガリ。それを撫でながら薬剤師の後に続いた。玄関先には高齢女性が姿を現した。昨日薬を渡した男性の奥さんらしい。対する薬剤師も同行チームの紅一点の女性薬剤師。彼女が高齢男性の服用状況を尋ねると、やはり朝に発熱に気付き奥さんの服用薬を1回分飲んでいたことがわかった。高齢女性が配達された薬袋を手にしながら「このお父さんの分から1回分もらわなきゃね」と笑った。その後、軽い身の上話をし始め、「こんな遠い一軒家までわざわざ来てくれてありがとう」と言いながら、女性薬剤師の手を何度も握っていた。目はやや涙ぐんでいた。被災により断水も続き、通常の生活がままならない中、山奥の一軒家で新型コロナ感染が発覚してどれだけ心細かったろう。配達が終わった女性薬剤師は「本当はハグしてあげたかったな」と漏らした。感染防御上、それは叶わない。2024年第5週の石川県定点当たりの新型コロナ報告数24.52人。その数字の裏側にあった光景の一端はこんな感じだった。参考1)SHIONOGI:患者同意説明文書

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女性診療の疾患と薬がよくわかる ウィメンズヘルスケアのための薬の使い方

女性診療の知りたかった知識が満載!「月刊薬事」66巻2号(2024年1月臨時増刊号)女性診療では、女性特有の生理やホルモンの変化と症状に合わせたホルモン剤の使い方や、妊娠中や授乳中の薬の影響など特別な知識が必要なため、「むずかしそう」というイメージが強いのではないでしょうか。本書では、近年注目が高まっているウィメンズヘルスケアの視点から、外来治療を行う婦人科疾患から救急・入院治療が必要な疾患、さらに妊娠・授乳中の薬物療法、不妊治療の薬における注意点などについて、薬物治療とセルフケアを中心に解説します。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する 女性診療の疾患と薬がよくわかる ウィメンズヘルスケアのための薬の使い方定価4,400円(税込)判型B5判頁数316頁発行2024年1月編集柴田 綾子ご購入はこちらご購入はこちら

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中間期乳がん、生殖細胞系列遺伝子変異と関連/JAMA Oncol

 検診と検診の間にみつかる乳がんは中間期乳がんと呼ばれ、検診でみつかる乳がんより臨床病理学的特徴が悪く、予後も不良である。これまで中間期乳がんと生殖細胞系列遺伝子変異との関連は研究されていないことから、今回、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJuan Rodriguez氏らが中間期乳がんと検診発見乳がんの識別に生殖細胞系列タンパク質切断型変異体(PTV)を適用できるかどうか検討した。JAMA Oncology誌オンライン版2024年1月25日号に掲載。 この研究は、スウェーデンでマンモグラフィ検査を受けている40~76歳の女性で、2001年1月~2016年1月に乳がんと診断された全女性と、年齢をマッチさせた対照を対象としたもの。乳がん患者については2021年まで生存について追跡し、34の乳がん感受性遺伝子の生殖細胞系列PTVをターゲットシークエンシングにより解析した。 主な結果は以下のとおり。・乳がん患者4,121例(中間期乳がん:1,229例、検診発見乳がん:2,892例)はすべて女性で、平均年齢は55.5歳(SD:7.1歳)であった。対照は5,631人であった。・中間期乳がんの患者は検診発見乳がん患者より、5つの主要遺伝子(ATM、BRCA1、BRCA2、CHEK2、PALB2)にPTVを保有する可能性が高く(オッズ比[OR]:1.48、95%信頼区間[CI]:1.06~2.05)、主にBRCA1/2、PALB2の変異と関連していた。・乳がん家族歴を持つ女性は、これら5つの遺伝子のいずれかにPTVを保有していると、検診発見乳がんと比較して中間期乳がんリスクが相乗的に増加した(OR:3.95、95%CI:1.97~7.92)。・中間期乳がんの診断を受けた場合、これら5つの遺伝子のいずれかにPTVを保有する患者はいずれの遺伝子も持たない患者に比べて生存率が有意に低い(ハザード比:2.04、95%CI:1.06~3.92)ことが、10年乳がん特異的生存率から明らかになった。・これらの関連はすべて、以前の検診で乳腺密度が低かった中間期乳がん患者でより顕著であった。 著者らは「本研究の結果は、乳がんの治療だけでなく、死亡率低下を目的とした将来の検診プログラムの最適化にも有用だろう」としている。

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高齢統合失調症患者の死亡リスクに対する薬物療法の影響

 人口の高齢化に伴い、統合失調症の罹患においても高齢者の有病率が増加しており、これまで以上に薬剤選択の重要性が増している。現在、高齢統合失調症患者に関するエビデンスが不足していることから、台湾・Far Eastern Memorial HospitalのJia-Ru Li氏らは、向精神薬の使用量および累積投与量が高齢統合失調症患者のすべての原因および原因別の死亡リスクに及ぼす影響を調査するため、コホート研究を実施した。Pharmaceuticals (Basel, Switzerland)誌2024年1月8日号の報告。 対象は、統合失調症と診断された高齢者6,433例。5年間のフォローアップ調査を実施した。抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、鎮痛薬/睡眠薬の用量(低用量群、中用量群、高用量群)に関連する死亡リスクを、各用量群と投与なし群とで比較を行った。各用量群におけるすべての原因による死亡率および特定の原因による死亡率を比較するため、Cox回帰を生存分析に用いた。特定の向精神薬の投与量を変数とし、それに応じて共変量を調整した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬の低用量群および中用量群は、抗精神病薬を投与されていない群と比較し、生存率が高かった。・抗精神病薬の中用量群は、心血管疾患による死亡リスクの低下が認められた。・同様に、抗うつ薬の低用量群および中用量群は、生存率が高かった。・鎮痛薬/睡眠薬では、低用量群で死亡リスクが低下していた。 著者らは「高齢統合失調症患者における抗精神病薬の低/中用量での使用は、すべての原因による死亡リスク低下と関連しており、適切な薬剤選択と抗精神病薬投与の重要性が示唆された。高齢統合失調症患者における治療の複雑さに対処するため、多剤併用の慎重な管理や患者ごとの薬物治療戦略が求められる」としている。

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コロナ感染拡大への祝日の影響、東京と大阪で大きな差

 祝日は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の伝播に影響を及ぼしたのだろうか。京都大学のJiaying Qiao氏らが2020~21年の4都道府県のデータを数理モデルで検討したところ、祝日にCOVID-19伝播が増強したこと、またその影響は都道府県によって異なり、大阪で最も大きく東京で最も小さかったことが示唆された。Epidemiology and Health誌オンライン版2024年1月22日号に掲載。 本研究では、2020年2月15日~2021年9月30日における北海道、東京、愛知、大阪の4都道府県におけるCOVID-19発症と流動性のデータを収集し、祝日の感染頻度の増加を評価した。推定された実効再生産数と、調整前後の流動性、祝日、非常事態宣言を関連付けるモデルを作成した。必須の入力変数として祝日を含めた最も適合性の高いモデルを、祝日がない場合の有効再生産数の反事実を計算するために使用した。 主な結果は以下のとおり。・祝日における実効再生産数の増加率(平均)は、北海道5.71%、東京3.19%、愛知4.84%、大阪24.82%だった。・祝日の影響で増加した感染者数の合計は、北海道580例(95%信頼区間:213~954)、東京2,209例(同:1,230~3,201)、愛知1,086例(同:478~1,686)、大阪5,211例(同:4,554~5,867)だった。 著者らは「今後、適切な公衆衛生および社会対策を立案するうえで、祝日を考慮することが重要であることが明らかとなった」と結論している。

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ニボルマブ、切除不能な進行・再発上皮系皮膚悪性腫瘍の効能追加承認/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル マイヤーズ スクイブは2024年2月9日、小野薬品が、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍に対する効能又は効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表。 今回の承認は、慶應義塾大学病院主導の下、根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍患者を対象に、ニボルマブの有効性および安全性を検討した医師主導治験(NMSC-PD1試験:KCTR-D014)の結果に基づいたもの。 同試験における中央判定奏効率は19.4%(6/31例、95%信頼区間:7.5〜37.5)を示し、主要評価項目を達成した。同試験におけるニボルマブの安全性プロファイルは、既報と同様であった。

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ジャディアンス、慢性腎臓病で国内製造販売承認(一部変更)取得/ベーリンガーインゲルハイム

 日本ベーリンガーインゲルハイムおよび日本イーライリリーは2024年2月9日付のプレスリリースで、SGLT2阻害薬ジャディアンス錠10mg(一般名:エンパグリフロジン)について、日本ベーリンガーインゲルハイムが、慢性腎臓病に対する効能・効果*および用法・用量に係る医薬品製造販売承認事項一部変更承認を、厚生労働省より取得したことを発表した。 慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)は、腎障害を示す所見や腎機能の低下が慢性的に持続する疾患である。死亡や心筋梗塞、脳卒中、心不全などの心血管疾患のリスクファクターであり、進行すると末期腎不全に至り、透析療法や腎移植術が必要となることもある。慢性腎臓病の治療目的は、腎機能の低下を抑え末期腎不全への進行を遅らせること、および心血管疾患の発症を予防することである。 今回の製造販売承認(一部変更)は、慢性腎臓病患者におけるSGLT2阻害薬の臨床試験としては大規模・広範囲の臨床試験であり、糖尿病の有無やアルブミン尿の有無を問わず、日常診療でよくみられる6,609例(うち日本人612例)の慢性腎臓病患者を対象としたEMPA-KIDNEY第III相臨床試験のデータから得られた結果に基づく。同試験では、エンパグリフロジンの投与により、主要評価項目である慢性腎臓病の進行または心血管死のリスクがプラセボ投与群に比べて28%低下し、統計学的有意差が認められた(ハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.64~0.82、p<0.000001)。また、慢性腎臓病患者を対象としたSGLT2阻害薬の臨床試験としては初めて、試験計画書で事前規定された主な検証的副次評価項目の1つであるすべての入院を有意に減少(14%)した試験となった (HR:0.86、95%CI:0.78~0.95、p=0.0025)。同試験における重篤な有害事象の発現割合は、プラセボ投与群で35.3%、エンパグリフロジン群で32.9%であった。 今回の承認により、ジャディアンス錠10mgは、2型糖尿病、慢性心不全*、慢性腎臓病*の3つの適応症を有することになった。両社は、慢性腎臓病患者の新たな治療選択肢を提供し、より幅広い治療に貢献できるものと考えている、としている。*慢性腎臓病もしくは慢性心不全に対する効能・効果は、それぞれ「慢性腎臓病(ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く)」および「慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)」。

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