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高血圧・CKD患者へのNSAIDs【日常診療アップグレード】第14回

高血圧・CKD患者へのNSAIDs問題63歳男性。50代から高血圧と慢性腎臓病(CKD)の治療のためACE阻害薬を内服中である。現在の血圧は120/70mmHgで安定している。4日前、畑の除草作業を行った。3日前から両肩と両上肢が痛くなり、市販の湿布薬を貼っているが効果はあまりない。健診で腎機能低下を指摘されたことはない。NSAIDsを7日間処方した。

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北海道大学 血液内科学教室【大学医局紹介~がん診療編】

豊嶋 崇徳 氏(教授)白鳥 聡一 氏(助教)杉村 駿介 氏(後期研修医)講座の基本情報医局独自の取り組み、医師の育成方針私たちの使命は、1人ひとりの患者さんの診療を大切にし、地域の医療を守りながら、同時に世界的な医療の発展に貢献するような高いレベルの臨床研究、基礎研究を推進していくことです。そのために、患者さんの味方として、心・人生を支える確固たる姿勢を持ち、同時に疾患を科学的に徹底して分析する姿勢を持ち、尊敬され感動を与える医師を育てたいと考えています。臨床研究にあたっては、北大の40床では世界に太刀打ちできません。そこでスケールメリットを生み出すために北日本血液研究会を設立し、500床以上の大規模な臨床研究を実施し、世界に対しエビデンスを創出しています。血液疾患ではほかの多くの疾患と異なり、診断・治療の大部分が血液内科医1人の双肩にかかってきます。責任重大ですが、患者さんとの強い信頼感、連帯感が生まれ、医師としての達成感、生きがいを強く感じることができます。 さらに最も高いレベルでの全身管理、トータルケア能力が要求され、臓器別診療の垣根を越えた総合内科医としての実力も身に付きます。 また分子標的療法、移植療法など、基礎研究の成果の臨床応用を目の当たりできるのも血液内科ならではです。明るく、自由度が高く、外に開かれ、1人ひとりのスタッフの夢を実現できるような“新生”血液内科を目指しています。若き情熱にあふれた皆様の教室への参加を心よりお待ちしています。力を入れている治療/研究テーマ当科では、基礎、臨床共に精力的に研究を行っています。臨床研究の分野では、「同種造血幹細胞移植」を主なテーマとして取り組んでおり、代表的な研究として、移植後の重篤な合併症である「移植片対宿主病(GVHD)」の新たな予防法を開発してきました。「移植後シクロホスファミド法」は、GVHDのリスクが高いHLA半合致移植(親子間移植等)における有効性が、当科を中心とした全国試験で証明され、国内のガイドラインで推奨されるに至り、現在では保険診療下で使用可能となりました。また「低用量抗ヒト胸腺細胞グロブリン法」も、当科を中心とした全国試験で高いGVHD予防効果が証明され、こちらもガイドラインへの掲載に至りました。さらに、同じく重篤な移植後合併症である「肝類洞閉塞症候群」に対し、当院の超音波センターとの共同研究で、超音波検査を用いて早期に診断する「HokUS-10スコアリングシステム」を開発しました。こちらのシステムも、国内のガイドライン、さらには最新の国際診断基準に掲載される等、国内外から高い評価を得ています。医局の魅力、医学生/初期研修医へのメッセージ当科では、同種造血幹細胞移植やキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法や治験等、最先端の血液内科診療に触れる環境が整っており、研究への高いモチベーションにつながっています。当科はフロンティア精神に溢れた教室で、これからも活気ある教室を目指して臨床、教育、研究を精力的に進めていきますので、興味のある方はいつでもご連絡をお待ちしています。カンファレンス風景入局した理由私が北海道大学病院血液内科に入局した理由は、学生時代に受講した臨床講義で血液内科に強い興味を持ち、全身管理を必要とする内科的診療に魅力を感じたからです。さらに、道内各都市に関連施設があるため、地域との強いネットワークが構築されており、地域医療に貢献する意義を実感できることも大きな動機となりました。現在学んでいること大学病院における最先端の医療技術や、地域医療でのリアルワールドな診療を通じて、血液内科疾患について幅広く学んでいます。これらの経験は、理論と実践を結びつける貴重な機会となり、医療の多様な側面を理解する助けとなっています。また、上級医からの指導を受けることで、最新の治療法や研究動向について常に学び、日々成長を実感しています。今後のキャリアプラン来年度からは院生として研究活動にも取り組む予定です。臨床と研究の両面から血液内科を学ぶことで深みのある医師を目指しています。将来的には、専門医としての知識を深め、教育や地域医療への貢献も視野に入れたキャリアを築いていきたいと考えています。北海道大学大学院医学研究院 内科系部門内科学分野血液内科学教室住所〒060-8638 北海道札幌市北区北15条西7丁目問い合わせ先s.shiratori@med.hokudai.ac.jp医局ホームページ北海道大学大学院医学研究院 内科系部門内科学分野血液内科学教室専門医取得実績のある学会日本内科学会日本血液学会日本造血・免疫細胞療法学会日本輸血・細胞治療学会日本検査血液学会日本血栓止血学会日本臨床検査医学会日本エイズ学会研修プログラムの特徴(1)同種造血幹細胞移植、CAR-T療法等、最先端の血液内科医療に携わることができます。(2)チームによる診療体制を組んでおり、常に上級医からの指導・サポートを受けることができます。(3)北海道全域に関連病院を有しており、幅広い血液内科診療を経験できます。

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tuberculosis(結核)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第13回

言葉の由来「結核」は英語で“tuberculosis”(トゥバキュロウスィス)といいます。この病名は、「小さな塊」や「結節」を意味するラテン語の“tuberculum”に、状態を表す接尾辞の“-osis”が合わさってできたものです。結核の感染部位に小さな結節や塊が形成されることから、この名前が付けられました。「結核」という病名が医学的に使用され始めたのは19世紀のことです。結核の病態は古代から知られており、ヒポクラテスなど古代の医師たちもこの病気について記述を残していますが、当時は原因がわからず「消耗病」といった名称で呼ばれていました。医学や解剖学の進展で、死亡者の肺に小さな瘤がみられることがわかり、19世紀半ばに“tuberculosis”という病名が付けられました。結核の原因となる細菌である“mycobacterium tuberculosis”は、1882年にドイツの細菌学者ロベルト・コッホによって発見され、この発見が結核の診断と治療に革命をもたらしました。なお、結核菌は太古の昔から存在しており、イスラエル沖から発掘された紀元前7,000年ごろの人骨から結核菌の遺伝子が検出されています。日本では、結核は弥生時代からあったといわれていますが、本格的に流行したのは江戸時代から明治時代で、スペイン風邪流行下の1920年ごろに死亡者数はピークを迎えました。一時期は国民の死亡原因の首位になり、「国民病」と恐れられていましたが、結核予防法の制定や隔離治療、BCGの予防接種の推進などにより死亡者数は減少に転じました。併せて覚えよう! 周辺単語粟粒結核miliary tuberculosis多剤耐性結核multidrug-resistant tuberculosis空気予防策airborne precaution潜在性結核感染症latent tuberculosis infection非結核性抗酸菌症nontuberculous mycobacterial infectionこの病気、英語で説明できますか?Tuberculosis is a contagious disease caused by Mycobacterium tuberculosis, primarily affecting the lungs. It spreads through the air and can be latent or active. Symptoms include a persistent cough, fever, and weight loss. Tuberculosis is treatable with antibiotics but remains a global health challenge.講師紹介

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毎日のナッツ摂取が認知症リスク低下と関連〜前向きコホート研究

 英国バイオバンクコホートのデータによる5万例以上の大規模コホート研究で、毎日のナッツ摂取と認知症リスク低下の関連が示された。スペイン・Universidad de Castilla-La ManchaのBruno Bizzozero-Peroni氏らは、成人におけるナッツ摂取と認知症リスクとの関係を分析した地域ベースのコホート研究結果を、GeroScience誌オンライン版2024年9月30日号に報告した。 本研究では、2007~12年(ベースライン)と2013~23年(フォローアップ)の英国バイオバンクコホートの参加者データが解析された。ナッツ摂取に関するベースライン情報は、Oxford WebQ24時間アンケートを使用して取得され、すべての原因による認知症(アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、血管性認知症など)の発症は、ベースライン時およびフォローアップ時に、自己申告による医学的診断、入院、または死亡記録を通じて評価された。なお、ベースライン時点で認知症を発症していた参加者は除外された。 ハザード回帰モデルを使用して、ナッツの摂取とすべての原因による認知症の発症リスクとの関連性を推定し、社会人口統計学的特徴、ライフスタイル、聴覚障害、自己評価による健康状態、慢性疾患の数により調整された。 主な結果は以下のとおり。・5万386人の参加者(平均年齢:56.5±7.7歳、女性:49.2%)が前向き解析に含まれ、すべての原因による認知症の発症率は2.8%(1,422件)であった。・平均7.1年の追跡調査後、ナッツをまったく摂取しなかった場合と比較して、毎日のナッツ摂取(>0~3つかみ以上)は、潜在的な交絡因子に関係なく、すべての原因による認知症リスクの12%低下と有意に関連していた(ハザード比:0.88、95%信頼区間:0.77~0.99)。・ナッツの摂取とハザード回帰モデルに含まれた共変量との間には、統計学的に有意な相互作用は観察されなかった。・層別分析では、1日当たり最大1つかみ(30g)のナッツの摂取と無塩ナッツの摂取が最も大きな保護効果と関連していた。

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アルツハイマー病における妄想観念と抑うつ症状との関連性

 妄想性思考は、精神神経症状の1つであり、アルツハイマー病の長期的な進行において頻繁にみられ、うつ病や興奮など他の精神神経症状と併発する。妄想性思考には、さまざまなタイプがあり、それぞれの妄想性思考と抑うつ症状の併発については、あまりよくわかっていない。東京慈恵会医科大学の永田 智行氏らは、アルツハイマー病における妄想性思考と抑うつ症状の併発パターンの仮説的メカニズムを検証するため、横断的研究を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌2024年号の報告。 アルツハイマー病患者421例を対象に、アルツハイマー病に対する臨床的抗精神病薬治療介入効果試験のデータを分析し、年齢、性別、人種、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコア、Neuropsychiatric Inventory(NPI)うつ病スコアを妄想性思考サブタイプの有無で比較した。妄想性思考には、被害妄想、物盗られ妄想、嫉妬妄想、見捨てられ妄想、幻の同居人妄想、カプグラ症候群、場所誤認妄想、テレビサイン妄想を含めた。次に、MMSEスコア15ポイント未満または15ポイント以上で層別化し、一次分析で有意差が認められた妄想性思考と抑うつ症状との関連性をさらに調査した。 主な結果は以下のとおり。・8つの妄想性思考のサブタイプのうち、被害妄想とカプグラ症候群は、うつ病スコアが高かった。・カプグラ症候群は、抑うつ症状に加え、全体的に認知機能低下の状態がより重度である可能性が示唆された。 著者らは「異なる妄想性思考における病因の違いを考慮し、アルツハイマー病患者に対する治療戦略の選択に役立てることが重要である」と結論付けている。

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1型糖尿病への週1回efsitora、HbA1cの改善でデグルデクに非劣性/Lancet

 成人1型糖尿病患者における糖化ヘモグロビン(HbA1c)値の改善に関して、insulin efsitora alfa(efsitora)の週1回投与はインスリン デグルデク(デグルデク)の1日1回投与に対し非劣性を示すものの、レベル2と3を合わせた低血糖とレベル3の重症低血糖の発生率が高いことが、米国・HealthPartners InstituteのRichard M. Bergenstal氏らが実施した「QWINT-5試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年9月21日号に掲載された。国際的な第III相無作為化非劣性試験 QWINT-5試験は、6ヵ国(アルゼンチン、日本、ポーランド、スロバキア、台湾、米国)の82施設で実施した52週間の第III相非盲検無作為化対照比較非劣性試験であり、2022年8月~2024年5月に参加者を登録した(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 HbA1c値が7.0~10.0%(53.0~85.8mmol/mol)の成人(年齢18歳以上)1型糖尿病で、スクリーニング前の少なくとも90日間、基礎および追加インスリンの1日複数回注射療法による治療歴を有する患者を対象とした。被験者を、基礎インスリンとしてefsitora(500単位/mL)またはデグルデク(100単位/mL)を皮下投与する群に無作為に割り付けた。両群とも追加インスリンとしてインスリン リスプロを併用投与した。 主要エンドポイントは、ベースラインから26週目までのHbA1c値の変化量とし、非劣性マージンは0.4%に設定した。重症低血糖の64%は最初の12週間に発生 692例を無作為化し、efsitora群に343例(平均年齢44.4歳、女性44%)、デグルデク群に349例(43.6歳、45%)を割り付けた。全例が少なくとも1回の試験薬の投与を受け、efsitora群の314例(92%)とデグルデク群の314例(90%)が予定の試験薬投与を完遂した。 平均HbA1c値は、efsitora群ではベースラインの7.88%から26週目には7.41%へ、デグルデク群では7.94%から7.36%へとそれぞれ低下した。この間の平均変化量は、efsitora群が-0.51%、デグルデク群は-0.56%(推定群間差:0.052%、95%信頼区間[CI]:-0.077~0.181、優越性のp=0.43)であり、非劣性マージン(0.4%)を満たしたことからデグルデク群に対するefsitora群の非劣性を確認した(非劣性のp<0.0001)。 0~52週目におけるレベル2(患者報告による自己測定の血糖値<54mg/dL)の低血糖と、レベル3(低血糖の治療のために他者の支援を必要とする精神的または身体的状態)の重症低血糖を合わせた曝露人年当たりの発生頻度は、デグルデク群が11.59件であったのに対し、efsitora群は14.03件と有意に高かった(推定率比:1.21、95%CI:1.04~1.41、p=0.016)。 また、0~52週目におけるレベル3の重症低血糖の発生率は、デグルデク群に比べefsitora群で高かった(10%[343例中35例で44件のイベント]vs.3%[349例中11例で13件のイベント])。efsitora群では、44件の重症低血糖のうち28件(64%)は試験期間の最初の12週間に発生した。重篤な有害事象が多い、注射部位反応はほとんどが軽度 試験治療下での有害事象は、efsitora群で247例(72%)、デグルデク群で234例(67%)に発生した。重篤な有害事象は、デグルデク群の24例(7%)に比べefsitora群は45例(13%)と発現頻度が高く、これはレベル3の重症低血糖が多かったためと考えられた。デグルデク群で1例が死亡したが、試験治療との関連はなかった。 糖尿病性ケトアシドーシスはデグルデク群で2例(1%)に発現した。注射部位反応は、efsitora群で9例(3%)に12件、デグルデク群で1例(<1%)に1件認め、efsitora群の11件は軽度、1件は中等度だった。注射部位反応による試験治療の中止はなかった。 著者は、「1型糖尿病患者において、efsitoraの週1回投与により低血糖のリスクを軽減しつつ有効性を維持するには、efsitoraの投与開始の評価と、基礎・追加インスリンの投与量の最適化についてさらに検討を進める必要がある」としている。

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切除可能胃・食道胃接合部がん、術前化学放射線療法の追加は有効か/NEJM

 切除可能な胃または食道胃接合部の腺がんの治療において、周術期化学療法単独と比較して、周術期化学療法に術前化学放射線療法を追加しても全生存期間および無増悪生存期間は改善せず、治療関連の毒性作用の発現は同程度であることが、オーストラリア・メルボルン大学のTrevor Leong氏らが実施したTOPGEAR試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2024年9月14日号で報告された。国際的な無作為化第II/III相試験の第III相の結果 TOPGEAR試験は、10ヵ国(オーストララシア、カナダ、欧州)の70施設で実施した無作為化第II/III相試験であり、2009年9月~2021年5月に参加者を登録した(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]などの助成を受けた)。第II相の結果はすでに公表されており、今回は第III相の最終結果が報告された。 執刀医が切除可能と判定したステージT3またはT4の胃・食道胃接合部腺がん患者を対象とした。被験者を、術前化学放射線療法+周術期化学療法を受ける群(術前化学放射線療法群)、または周術期化学療法のみを受ける群(対照群)に無作為化に割り付けた。 対照群は、術前と術後にエピルビシン+シスプラチン+フルオロウラシル(ECF)またはエピルビシン+シスプラチン+カペシタビン(ECX)の投与を3サイクル、あるいはフルオロウラシル+ロイコボリン+オキサリプラチン+ドセタキセル(FLOT)の投与を4サイクル受けた。 術前化学放射線療法群は、対照群の術前化学療法を1サイクル減らして術前化学放射線療法(放射線照射:45Gy/25回/5週、化学療法:フルオロウラシルまたはカペシタビン)を受け、引き続き対照群と同じ術後化学療法を受けた。 主要評価項目は全生存とし、副次エンドポイントは無増悪生存、病理学的完全奏効(グレード1a:遺残腫瘍0%)、毒性作用などであった。病理学的完全奏効率は良好 574例を登録し、術前化学放射線療法群に286例(平均年齢61歳、女性27%)、対照群に288例(60歳、27%)を割り付けた。全体の35%が食道胃接合部がんで、約61%が臨床的にリンパ節転移陽性であり、67%がECFまたはECXを、33%がFLOTを受けていた。手術を受けた患者における断端陰性(R0)の割合は、術前化学放射線療法群が92%、対照群は88%だった。 病理学的完全奏効率は、対照群が8%(18/225例)であったのに対し、術前化学放射線療法群は17%(36/214例)と良好であった(群間差:9%ポイント、95%信頼区間[CI]:2~15)。また、病理学的ステージT1またはT2へとダウンステージした腫瘍を有する患者の割合も、術前化学放射線療法群で高かった(32% vs.25%)。 追跡期間中央値67ヵ月の時点で、全生存期間中央値は、術前化学放射線療法群が46ヵ月、対照群は49ヵ月であり、両群間に有意な差を認めなかった(死亡のハザード比[HR]:1.05、95%CI:0.83~1.31)。3年全生存率はそれぞれ55%および58%、5年全生存率は44%および46%だった。 無増悪生存期間にも両群間に有意差はなく、術前化学放射線療法群が31ヵ月、対照群は32ヵ月であった(病勢進行または死亡のHR:0.98、95%CI:0.79~1.22)。3年無増悪生存率はそれぞれ47%および48%、5年無増悪生存率は40%および40%だった。術後化学療法を完遂した患者が有意に少なかった 主な毒性作用は、消化器毒性(術前化学放射線療法群28%、対照群25%)と血液毒性(46%、41%)で、両群間で頻度に大きな差はなかった。また、Grade3以上の毒性作用は術前化学放射線療法群で66%、対照群で61%に認めた。 Grade3以上の外科的合併症は、術前化学放射線療法群で18%、対照群で16%にみられた。30日以内の手術関連死は対照群で3例(1%)に、90日以内では術前化学放射線療法群で3例(1%)、対照群で6例(2%)に発生した。 著者は、「術前化学放射線療法の追加により、病理学的完全奏効率と腫瘍のダウンステージの割合が上昇したが、これは全生存期間や無増悪生存期間の改善には結びつかなかった」、また「周術期化学療法単独に比べ術前化学放射線療法+周術期化学療法は術後化学療法を完遂した患者の割合が低く(56% vs.66%、p=0.01)、これが潜在的な生存の改善効果を相殺した可能性がある」と述べ、「現時点では、切除可能な胃・食道胃接合部がんの術前・術後の管理における放射線療法の役割はほとんどないが、今後、事後解析で術前化学放射線療法が有効な患者サブグループを特定できれば、将来の臨床試験のデザインに役立つと考えられる」としている。

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冠動脈疾患診断後、禁煙で発作リスク半減も減煙では無効

 心臓病と診断された後に禁煙すると、心臓発作や心臓関連の死亡リスクが5年間で44%低下する可能性を示すデータが報告された。ただし、喫煙本数を減らしただけでは、この効果は期待できないという。ビシャ・クロード・ベルナール病院(フランス)のJules Mesnier氏らの研究の結果であり、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2024、8月30日~9月2日、英ロンドン)で発表された。 この研究では、安定冠動脈疾患患者の国際レジストリ(CLARIFY)のデータを用いて、冠動脈疾患患者の喫煙状況が、その後の心血管イベントリスクに与える影響が評価された。冠動脈疾患の診断から平均6.5年経過した患者3万2,378人を5年間追跡し、心血管死または心筋梗塞の発症で定義される主要心血管イベント(MACE)の発生率を検討した。登録時点で1万3,366人(41.3%)は喫煙歴がなく、1万4,973人(46.2%)は元喫煙者、4,039人(12.5%)は現喫煙者だった。冠動脈疾患診断時に喫煙していた元喫煙者のうち、72.8%は翌年までに禁煙していたが、27.2%は喫煙を継続していた。 冠動脈疾患の診断後に禁煙していた患者は、禁煙した時期にかかわらずイベントリスクが有意に低下していた。具体的には、喫煙を継続していた患者よりもMACE発生率が44%低かった(調整ハザード比〔aHR〕0.56〔95%信頼区間0.42~0.76〕)。一方、タバコの本数を減らしながらも喫煙を続けていた患者は、タバコの本数を変えずに喫煙を続けていた患者と、MACEリスクに有意差がなかった(aHR0.96〔同0.74~1.26〕)。また、喫煙期間が1年長くなるごとにMACEリスクが8%上昇するという関連が認められた(aHR1.08〔同1.04~1.12〕)。なお、禁煙した患者は前述のようにMACEリスクが急速かつ大幅に低下していたが、喫煙歴のない患者と同程度のリスクレベルには到達していなかった。 Mesnier氏は、「私は自分の患者に対してよく、『禁煙するのが遅すぎるということはないが、早ければ早いほど心血管疾患のリスクは低くなる。しかし、減煙では十分ではない』と話している」という。また、ESC発のリリースの中で、「心臓病の診断後1年以内に禁煙を成功させる重要性を強く伝え、患者をサポートする必要がある」と述べている。 一方、タバコを長年、吸い続けている人の中には、「今からでは禁煙しても遅すぎる」と考えている人が少なくないようだが、今回の研究ではそのような考え方が正しくないことも示された。この点についてMesnier氏は、「心臓病と診断された後での禁煙であっても、心筋梗塞や死亡という重大なリスクをほぼ半分に減らすことができる。この情報は、禁煙に踏み出せずにいる患者に向けた強力なメッセージとなるだろう」と語り、本研究の意義を強調している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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スマートマスクで呼気から健康状態をチェック

 実験段階にある「スマートマスク」によって、吐いた息からその人の健康状態をチェックできる可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。バイオセンサーが取り付けられたこのシンプルな紙製のマスクは、呼吸器疾患や腎臓病などさまざまな健康問題のモニタリングに使える可能性を秘めているという。米カリフォルニア工科大学(CalTech)医用工学教授のWei Gao氏らによるこの研究の詳細は、「Science」8月30日号に掲載された。 このマスクは、受動冷却システムにより人の呼気をマスク上で冷却して液体化し、リアルタイムでその分析を行う。この論文の筆頭著者でCalTechのWenzheng Heng氏によると、呼気の凝縮液には、溶解性のガスだけでなく、エアロゾルや飛沫の形で存在する揮発性ではない物質が含まれており、これらを疾患のマーカーとして検査することができるのだという。分析結果のデータは、ワイヤレスでスマートフォンやタブレット、コンピューターに転送される。Gao氏によると、このマスクは比較的低コストで製造でき、材料費はわずか1ドル程度だという。 このマスクの性能を確かめるために、Gao氏らは一連の実験を行った。そのうちの1つの実験では、このマスクを用いて喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)がある人の呼気を検査した。その結果、このマスクにより、両疾患における炎症マーカーである亜硝酸塩を正確に検出できることが確認された。また、別の実験では、血中アルコール濃度を検知するためにこのマスクを使用し、飲酒運転の現場での検査やアルコール摂取のモニタリングにも利用できることが示された。さらに3つ目の実験では、マスクによって腎臓病の指標となる呼気中のアンモニアガスの濃度を検知できるかが検証された。腎機能が低下すると、尿素などのタンパク質代謝の副産物が血液や唾液に蓄積し、呼気中のアンモニアガス濃度が高くなる。実験の結果、スマートマスクにより検知されたアンモニアガスの濃度から、血中の尿素濃度をかなり正確に知ることができることが確認された。 Gao氏は、「これらの初期の研究は、概念実証(PoC)段階のものだ。われわれはこの技術を拡大し、さまざまな健康状態に関連するマーカーを組み込みたいと考えている。これは、幅広い用途に使える全般的な健康状態のモニタリングのプラットフォームとして機能するマスクを作るための基礎となる」と説明している。 一方Heng氏は、CalTechのニュースリリースの中で、「このマスクは、呼吸器疾患や代謝性疾患の管理および精密医療における新たなパラダイムを象徴するものだ。なぜなら、毎日マスクをすることで呼気検体を簡単に得ることができ、さらに呼気中の化学分子をリアルタイムで分析できるからだ」と述べている。 なお、このマスクを着用した研究参加者は、呼吸器障害に苦しんでいる人も含めて、マスクが快適だと感じていたと研究グループは付け加えている。Gao氏は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以来、人々がマスクを使用する頻度は増えた。こうしたマスク使用の広がりを利用して、自宅やオフィスでリアルタイムで健康状態のフィードバックを得るための、個別化された遠隔モニタリングを実現できるはずだ。例えば、その情報を使って、治療の効果を評価することもできるかもしれない」と話している。

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セマグルチドがタバコ使用障害リスクを下げる可能性

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)のセマグルチドが処方されている患者は、タバコ使用障害(tobacco use disorder;TUD)関連の受療行動が、他の糖尿病用薬が処方されている患者よりも少ないという研究結果が、「Annals of Internal Medicine」に7月30日掲載された。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部のWilliam Wang氏らが報告した。 2型糖尿病または肥満の治療のためにセマグルチドが処方されている患者で喫煙欲求が低下したとの報告があり、同薬のTUDに対する潜在的なメリットへの関心が高まっている。これを背景としてWang氏らは、米国における2017年12月~2023年3月の医療データベースを用いたエミュレーションターゲット研究を実施した。エミュレーションターゲット研究は、リアルワールドデータを用いて実際の臨床試験をエミュレート(模倣)する研究手法で、観察研究でありながら介入効果を予測し得る。 本研究では、血糖管理目的でセマグルチドと他の7種類の血糖降下薬(インスリン、メトホルミン、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン薬、およびセマグルチド以外のGLP-1RA)が新規に処方された患者群での7件の比較対象試験を模倣した。12カ月間の追跡中にTUD関連の受療行動(TUD診断のための受診、禁煙補助薬の処方、禁煙カウンセリングの実施)を、Cox比例ハザードモデルとカプランマイヤー法により解析した。データセットに含まれる患者数は22万2,942人で、このうちセマグルチドが新規処方されていたのは5,967人だった。 解析の結果、セマグルチドは他の糖尿病用薬と比較してTUD診断のための受診が有意に少なく、特にインスリンとの比較において最も差が大きかった(ハザード比〔HR〕0.68〔95%信頼区間0.63~0.74〕)。一方、セマグルチド以外のGLP-1RAとの比較では最も差が小さかったが、統計学的に有意だった(HR0.88〔同0.81~0.96〕)。また、セマグルチドは禁煙補助薬の処方および禁煙カウンセリングの実施件数の低下とも関連していた。肥満の診断の有無で層別化した場合、いずれにおいても同様の関連が示された。なお、7件の比較対象試験の多くで、処方開始から30日以内にこれらの発生率の乖離が認められた。 著者らは本研究の限界点として、出版バイアスや残余交絡の存在、およびBMIや喫煙行動、薬剤使用コンプライアンスに関する情報が欠如していることを挙げている。その上で、「新たにセマグルチドが処方された患者は、セマグルチド以外のGLP-1RAを含む他の糖尿病用薬が新規処方された患者と比較して、TUD関連の受療行動が少ないことが示された。 これは、セマグルチドが禁煙に有益であるとする仮説と一致した結果と言えるかもしれないが、研究手法の限界により確固たる結論には至らず、臨床医が禁煙を目的としてセマグルチドを適応外使用することを正当化するものではない」と総括。また同薬によるTUD治療の可能性を評価するための臨床試験の必要性を指摘している。

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世界初の眼球と部分顔面移植を受けた男性、1年後の状況は?

 世界で初めて眼球移植と部分的な顔面移植を受けた男性が、手術から1年以上が経過した現在も順調に回復していることを、米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン病院の医師らが報告した。同病院の顔面移植プログラムディレクターで形成外科部長でもあるEduardo Rodriguez氏らによるこの症例報告は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に9月9日掲載された。 この画期的な手術を受けたのは、米アーカンソー州出身の退役軍人であるAaron Jamesさん(46歳)だ。Jamesさんは、「新しい顔のおかげで、この1年で、他の人にとっては当たり前のことを楽しめるようになった。見知らぬ人にじろじろ見られることはなくなったし、再び固形物を味わい、楽しめるようになった。においを嗅ぐという単純な喜びも感じている。運転免許証に使われていた怪我をした顔の写真も新しいものに交換した」と話す。さらにJamesさんは、「私は、ほぼ普通の人間に戻って普通のことをしている。ただし、この1年が私の人生において最も変化のある年だったことは確かだ。私は二度目のチャンスという贈り物を与えられた。今では、一瞬一瞬を当たり前だとは思っていない」と言う。 Jamesさんは2021年6月、アーカンソー州で高圧線作業員として作業しているときに7,200Vの電圧が流れる電線に顔が触れて感電し、ひどい裂傷を負った。複数回の再建手術を受けた後も、Jamesさんの左目、鼻と唇全体、前歯、顎の骨は失われたままだった。 2023年5月、ランゴン・ヘルスの外科チームは、21時間に及ぶ手術で、1人のドナーから提供された左眼球と顔の一部をJamesさんに移植した。手術では視神経の一次的な接合が行われ、また、術後には従来の免疫抑制療法が実施された。 術後すぐに実施されたフルオレセイン血管造影検査(網膜や脈絡膜の血管の状態を調べる検査)で、眼球と網膜の血流が維持されていることが確認された。また、経過観察中に実施された光干渉断層撮影(OCT)では、網膜内層の萎縮とエリプソイドゾーン(Ellipsoid zone)の減弱や断裂が認められ、網膜電図検査では、移植眼球が光に反応していることが確認された。さらに、構造的および機能的MRIでは、移植された視覚経路の整合性が確認され、網膜への光刺激が視覚野の反応を引き起こす可能性が示された。しかし、移植から1年後(術後366日目)時点では、移植された眼球で光の感知、角膜の感覚、眼球運動は回復していなかった。 Jamesさんの移植手術には、幹細胞の注入によって左目の視神経の再生を促す試みも含まれていた。しかし、この試みはうまくいかず、視神経に生じた損傷により、眼球の回復とともに網膜組織の一部が失われてしまったという。 Rodriguez氏は、「過去1年間で見られたこれら初期段階の結果は有望であり、さらなる進歩と継続的な研究の基礎を築くものだ」と述べている。同氏は、「われわれは、眼球移植の研究を終えた。次は、眼球の視力を回復させる方法を解明するための研究が必要だ」と語る。一方、NYUランゴン神経科学研究所所長のPaul Glimcher氏は、今回の移植手術の成果を「偉業」として称え、「次に突破すべきは、移植プロセス中における神経細胞の保存だ。今回のケースで、移植後1年にわたって網膜の一部が生き残ったことは注目に値するが、今後は、眼球細胞の全てが移植後も生き残るようにすることが課題となる。視覚は主に脳の機能であり、眼球だけの機能ではないため、脳とのつながりを回復させることが基本要件となる」と述べている。 なお、Jamesさんの移植手術は、Rodriguez氏の下で行われた5回目の顔面移植であり、眼球移植としては世界初だったという。Jamesさんは、「患者第1号になれたことを光栄に思う。新しい目で見ることはできなくても、生活の質(QOL)は元に戻った。私が受けた移植手術は、将来の患者を助けるための一歩だということを私は理解している」と話している。

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SGLT2阻害薬は認知症の発症をも予防できるのか?(解説:住谷哲氏)

 SGLT2阻害薬の慢性腎臓病や心不全合併2型糖尿病患者における臓器保護作用は確立している。また、最近ではSGLT2阻害薬が肝臓がんの発症を抑制するとの報告もなされている1)。がんと並んで高齢者糖尿病患者で問題になるのが認知症である。本論文では韓国の住民コホートデータベースを用いて、DPP-4阻害薬と比較してSGLT2阻害薬の投与が2型糖尿病患者の認知症発症を抑制するかどうかが検討された。 本研究は無作為化試験ではなく観察研究なので、残余交絡residual confoundingをいかに最小化するかが重要となる。筆者らはそのために、種々の統計学的手法(active comparator new user design、extensive propensity score matching、target trial emulationなど)を駆使して、現時点で可能な限りの補正を実施している。さらに陽性コントロールとして性器感染症、陰性コントロールとして白内障と変形性膝関節症とを用いて、結果の内的妥当性internal validityを担保している。 以上のように可能な限りの統計学的処理を実施した結果であるが、やはり残余交絡をゼロにできたわけではない。たとえば、コホートに組み入れられた時点での糖尿病罹病期間は不明である。糖尿病網膜症の有無を罹病期間のproxyとして代用しているようであるが、それで十分に調整されたとはいえない。次に、観察期間中の血糖管理状態についても不明である。3つ目に、それぞれの患者のフレイルについての情報が不明である。読者の先生方も日常臨床で経験されることが多いと思うが、筆者はフレイルが懸念される患者にはSGLT2阻害薬ではなくDPP-4阻害薬を投与することが多い。これは筆者に限ったことではなく、大規模な横断研究からも同様の処方傾向が報告されている2)。これが適応による交絡confounding by indicationである。つまり、それぞれの薬剤が選択投与された患者は最初から異なったpopulationであり、当然ながら予後も異なることになる。この交絡を回避する方法は無作為化しかない。 したがって非常に有望な結果ではあるが、認知症の発症予防目的でDPP-4阻害薬ではなくSGLT2阻害薬を積極的に投与するエビデンスとはならないだろう。やはり認知症の発症を主要評価項目としたRCTの実施が待たれる。現時点ではSGLT2阻害薬の投与が積極的に推奨される患者にSGLT2阻害薬を投与して、それによって認知症発症の抑制をも期待するのが妥当だろう。

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ウイングスーツは激突死のリスク【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第266回

ウイングスーツは激突死のリスク皆さん、「ウイングスーツ」をご存じでしょうか。ムササビみたいに滑空するスーツを着て、最終的にパラシュートで着地するものです。スリリングな映像が多く、危険と感じた人は多いでしょう。岩に当たったらどないすんねん、という。ベースジャンプ(BASE jump)は、地上にある建造物、崖などの高い所から、最終的にパラシュートを使って降下するスポーツの総称です。Bがビルディング、Aがアンテナ、Sがスパン(橋げた)、Eがアース(自然断崖)を表していて、飛行機から飛び降りるスカイダイビングと比べて、死亡リスクが高いといわれています。私は高所恐怖症なので、お金をもらってもベースジャンプはやりたくないです。Bouchat P, et al. BASE Jumping Fatalities Between 2007 and 2017: Main Causes of Fatal Events and Recommendations for Safety. Wilderness Environ Med. 2019 Dec;30(4):407-411.これは、2007~17年までの世界におけるベースジャンプの死亡者リストを収集し、その原因について調べた研究です。この論文の書き出しでは、まずベースジャンプは非常にリスクが高く、死亡者数が増加していると書かれています。SNSでもウイングスーツの動画をアップしたり、ありえない高さでパルクールしていたり、危ない映像はバズりやすいです。合計223件の死亡事故が記録されました。これは、1981~2006年の間の106件と比較して大幅な増加となっています。とくに、山岳環境での事故が著しく増加していました。問題は、223件の死亡事故のうち、197件は崖からのジャンプで、そのうちなんと137件がウイングスーツによる死亡だったのです。ガクブル…。ウイングスーツが流行して、それに伴い死亡者数も激増したということのようです。全死亡事故の96%が、何らかの激突による死亡でした。ガ…ガクブル。この論文では、SNSなどでよく見かける、「地面との近接飛行」が衝突のリスクをさらに高めていることが警告されています。ウイングスーツでのベースジャンプを行う前には、必ず飛行機からのスカイダイビングの経験を積むことが推奨されています。ウイングスーツを始めようと思っている読者の皆さん、ひたすらスカイダイビングを練習してから臨みましょう。

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第231回 某学会がレプリコンワクチンの安全性に懸念表明!?気になる内容は…

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のワクチンの特例臨時接種が今年3月末に終了したが、65歳以上の高齢者と60~64歳までの基礎疾患を有する人たちに対する定期接種が10月1日からスタートした。今回の定期接種はファイザー、モデルナ、第一三共のmRNAワクチン、ノババックス/武田薬品の組換えタンパクワクチン、Meiji Seikaファルマの次世代mRNAワクチンの5種類のワクチンが使用される。レプリコンワクチンの作用機序このうち巷で話題をさらっているのが、Meiji Seikaファルマの次世代mRNAワクチン「コスタイベ」である。これは通称レプリコンワクチンと称される。ウイルスのスパイクタンパク質とRNAを鋳型にRNAを複製する酵素であるレプリカーゼのmRNAを脂質ナノ粒子で包んだ自己増幅型mRNAワクチンである。これを筋肉注射すると、体内でレプリカーゼの働きによりウイルスのスパイクタンパク質のmRNAが多数複製され、それに応じて中和抗体も多数産生される。さらに、これまでよりも少量のmRNAを投与することで効率的に中和抗体が産生でき、かつ抗体価の持続期間も長いという仕組みである。端的に言えば、投与したmRNAが一時的に自己増幅(増殖ではない)するという新技術だ。さて、“これが巷で話題になっている”というのは、すでに多くの医療者がご存じのようにネガティブな意味でだ。主には「レプリコンワクチンは、接種した人の体内で増殖したmRNAが人やほかの動物に感染する危険性がある」という主張である。SNS隆盛の現在はとくにネガティブ情報は拡散されやすいが、こうした科学的に見て不可思議な説に医療系の国家資格を持つ人々も加担しているため、なんとも厄介である。学会がレプリコンワクチンを忌避!?そうした最中、日本看護倫理学会が「【緊急声明】 新型コロナウイルス感染症予防接種に導入されるレプリコンワクチンへの懸念 自分と周りの人々のために」を8月8日に公開した。ちなみに私自身は今回初めて同学会の存在を知ったが、「看護倫理の知を体系的に構築する」ことを目的に2008年に設立された学会とのこと。さて、その主張は主に5点である。1点目はコスタイベの主な治験実施国であるベトナムや、もともとMeijiがこのワクチンを導入したArcturus Therapeutics社が本社を置くアメリカでは承認されていないことに対する疑問であり、それゆえに安全性に懸念があるのではないかとの指摘だ。しかし、これ自体ははっきり言って揚げ足取りに近い。国情や規制当局の在り方によっても変わってくることだからである。ちなみに国外で米・Arcturus Therapeutics社は豪・CSL Seqirus社と開発提携しており、CSL社のホームページでは欧州連合で承認申請中と記載されている。また、Meiji側が9月末に行った記者会見では、ベトナムで承認準備、アメリカで承認申請に向けて準備が進むほか、数ヵ国で開発中である。そもそも新型コロナワクチンの場合、先行したファイザー、モデルナ両社の製品による接種が急速に進行したため、後発企業は被験者確保に苦労したことはよく知られている。こうした事情も併せて考えれば、日本が先行承認されたことは驚くに値しない。実はこの手の指摘は、今回の定期接種に用いられているノババックス/武田薬品の組換えタンパクワクチンの日本での緊急承認時も「ノババックスの本国であるアメリカでは承認されていない」とネガティブな方向性でSNS上では指摘されていた。しかし、当時すでにEUでは承認されており、後にアメリカでも承認されている。さて緊急声明の2点目は、このワクチンに関して最も多いネガティブ指摘である接種者から非接種者に感染(シェディング)するのではないかとの懸念があります」と言うもの。そもそもこの「シェディング」という用語自体は、以前からワクチンに懐疑的な人たちがSNS上で使っていたが、今回よく調べてみたところ、英語の「shed(発する、放つ)」の現在分詞らしい。声明では「望まない人にワクチンの成分が取り込まれてしまうという倫理的問題をはらんでいます」としているが、いやはやである。そもそも声明では「感染」という言葉を誤用している。感染とは微生物が生体内に侵入し、生体内で定着・増殖し、寄生した状態を指す。このワクチンも先行したファイザー、モデルナのワクチンも成分として封入されているmRNAは、新型コロナウイルスの表面にあるスパイクタンパクのみを生成する。これのみで医学的な定義の感染は起こりえない。しかも、元来、不安定で細胞内で分解されてしまうmRNAが、そのまま血中を流れて肺で呼気に混入してヒトから排出されるなど、もはやファンタジーの域である。それだったら、長年、麻疹や風疹で使われているウイルス本体を弱毒化した生ワクチンのほうがよっぽど危険であるし、生ワクチンではここで言うシェディングに相当するような現象が起きたことはあるが、大局的に問題になったことはない。極めて雑な例えをするが、この主張は私個人からすると「刺身を食べてしばらくしたら、その人の口から生きた小魚が継続的に飛び出すようになった」と言われるくらいナンセンスである。3点目は「人間の遺伝情報や遺伝機構に及ぼす影響、とくに後世への影響についての懸念が強く存在します」というもの。要は投与したmRNAがDNAそのものに影響を及ぼすのではないかとの主張である。この点はヒトでの逆転写酵素の有無に関連するものだが、厳密に言えばその可能性はゼロではない。しかし、率直に言って「あなたが明日死ぬ可能性はゼロではない」というレベルのものである。ちなみにここの項目ではスウェーデンで行われた培養細胞にファイザーのmRNAワクチンを曝露させたin vitroの実験でDNAへの逆転写が起こったとの論文を引用している。しかし、免疫応答も含め通常の生体内とは異なる条件で行われた実験であり、使用された細胞は高分化型ヒト肝由来細胞株 Huh-7。そもそもがん細胞由来の細胞株なら正常なDNA複製が行われるとは言えないはずで極めて特殊な条件で行われている。4点目は、そもそもファイザー、モデルナのmRNAワクチンですらリスクの説明が必ずしも十分ではないという指摘だが、これについてはさまざまな受け止めがあろうと思う。少なくとも私個人は、厚生労働省を筆頭に自治体も神経質なまでに情報発信をしていたとの認識である。5点目はレプリコンワクチンが定期接種に用いられることで、患者を守るとの至上命題で医療者を中心にワクチン接種に関する主体的な自己決定権が脅かされるとの懸念。正直、これもどちらかというと感情論であり、レプリコンワクチンに対する懸念とはやや別物ではないかと考える。いずれにせよ今回の声明は、ピッチャーがマウンドからいきなり外野スタンドに投球し始めたかのような違和感を覚えるもので、私個人は読み切るのに相当疲れた次第である。

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10月4日 徒歩の日【今日は何の日?】

【10月4日 徒歩の日】〔由来〕「と(10)four(4)」(徒歩)の語呂合わせから、日常生活で歩く習慣を付け、健康になることを目的に、「徒歩を楽しむ会」(宮崎県宮崎市)が2004(平成16)年に制定。関連コンテンツ週どのくらい身体を動かすと良い?[高齢者編]【患者説明用スライド】週どのくらい身体を動かすと良い?[成人編]【患者説明用スライド】身体活動の指標、時間ではなく歩数でもOK?高齢者の身体活動量、推奨値を変更/厚労省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」歩行を守るために気付いてほしい脚の異常/日本フットケア・足病医学会

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食欲不振には六君子湯?【漢方カンファレンス】第10回

食欲不振には六君子湯?以下の症例で考えられる処方をお答えください。(経過の項の「???」にあてはまる漢方薬を考えてみましょう)【今回の症例】80代男性主訴食欲不振既往慢性腎不全、前立腺肥大症病歴X-1年5月、胃がんで腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した。術後から食欲不振があり体重が減少した。吻合部狭窄などの合併症はない。7月と12月に食欲不振と脱水症で入院加療を行った。X年1月、当科を紹介受診した。現症身長172cm、体重48kg(BMI 16.2kg/m2、術前と比べ-20kg)。体温35.6℃、血圧92/62mmHg、脈拍67回/分 整、呼吸数20回/分。身体所見に特記すべき異常はない。経過初診時「???」3包 分3を処方。(解答は本ページ下部をチェック!)1週間後漢方薬を内服してから、よく眠れるようになった。3週間後「少し元気が出てきた感じ、食べるご飯の量が増えた」2ヵ月後毎日形のある便が出るようになった。体重:50kg(+2kg)。3ヵ月後食事がおいしくなった。5ヵ月後疲れにくくなった。散歩ができるようになった。体重:52kg(+2kg)。問診・診察漢方医は以下に示す漢方診療のポイントに基づいて、今回の症例を以下のように考えます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?(冷えがあるか、温まると症状は改善するか、倦怠感は強いか、など)(2)虚実はどうか(症状の程度、脈・腹の力)(3)気血水の異常を考える(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む【問診】寒がりですか? 暑がりですか?体の冷えを自覚しますか?寒がりです。お腹と腰周りが冷えます。入浴では長くお湯に浸かるのが好きですか?冷房は好きですか?お風呂は長風呂です。冷房は嫌いです。飲み物は温かい物と冷たい物のどちらを好みますか?のどは渇きませんか?1日どれくらい飲み物を摂っていますか?温かいお茶を好んで飲んでいます。のどは渇かず、1日1.0L程度です。<ほかの随伴症状を確認>疲れやすいですか?横になりたいほどの倦怠感はありますか?すぐに疲れてしまいますが、横になりたいほどではありません。食欲はありますか?胃の調子はどうですか?食事が美味しくなく、無理して少しだけ食べています。胃もたれもします。昼食後に眠くなりませんか?昼ご飯を食べた後は眠くなって昼寝をすることが多いです。尿は1日に何回出ますか? 夜間尿はありますか?便秘・下痢はありませんか? 便の臭いは強いですか?尿は1日6~7回で、夜間尿は2~3回出ます。便は2日に1回で、軟便です。便の臭いは強くありません。唾液が多くありませんか?唾液が口のなかにすぐにたまります。夜も寝ていてよだれが垂れることがあります。【診察】顔色はやや不良。脈診では沈、やや弱であった。また、舌は薄い舌苔が中等量あり、腹診では腹力は軟弱、心窩部に抵抗と冷感を認めた。四肢に冷え、浮腫は認めない。カンファレンス今回は、胃がん術後から続く食欲不振のため漢方治療目的で紹介になった症例ですね。問診では、寒がり、冷えの自覚がある、長風呂で温かい飲み物を好むなどから、冷えがある「陰証」です。さらに脈が沈でやや弱、腹力も軟弱ということから闘病反応が乏しい「虚証」と考えます。ここまでの「陰陽」・「虚実」の判断はよいですね。胃がん術後により「陰証・虚証」になり、冷えや倦怠感が生じたと考えてよさそうですね。では六病位ではどうですか?陰証であることはわかりますが、六病位は判断が難しいですね。陰証はなかなかクリアカットに病位を特定できない場合も多いよ。ここでは陰証で太陰病から少陰病くらいであるとおおまかに考えよう。次の気血水の異常を考えてみると漢方薬の選択のヒントになるよ。本症例では食欲不振や倦怠感などといった自覚症状が問題だね。活気がある、やる気があるという言葉のように、漢方では目に見えない生体エネルギーを「気」とよぶんだ。「気」が量的に不足した病態を「気虚」とよぶよ(本ページ下部の「今回のポイント」の項参照)。本症例は倦怠感や食欲不振に加えて、「昼食後に眠くなって昼寝をする」ことから気虚と考えてよさそうですね。本症例では気虚が目立ちますね。ただし、陰証で冷えがあることも大切なポイントです。食欲不振に対して頻用される六君子湯(りっくんしとう)も気虚に用いる漢方薬ですが、温める作用はありません。「食欲不振や胃腸疾患に六君子湯ばかり用いれば、失敗は少ないが漢方臨床の技量が上達しにくい」と教わりました。六病位に話を戻そう。太陰病は、腹部を中心に冷えがあり消化器症状が目立つこと、少陰病は、全身に冷えがあり、横になりたいほどの倦怠感が特徴だよ。今回の症例では、疲れやすいという訴えはあるものの、横になりたいほどの倦怠感はなく、冷えが腹部に限局していることから、少陰病までは至ってないと推測したよ。ただし、実際の臨床では、陰証では病位の判断が難しいことが多く、冷えや倦怠感の程度で患者の反応をみながら、漢方薬の調整を行うことが多いんだ。冷えの程度に応じた漢方薬のさじ加減も漢方治療の特徴ですね。興味深いです。最後に唾液に関して質問しているのはなぜですか?唾液が多いことは、体の水分バランスの異常である水毒(すいどく、第9回「今回のポイント」の項参照)により生じると考えることができます。また、水毒以外にも内臓の冷えが原因で唾液が増加する場合があります。ここでも冷えが関連するのですね!それでは本症例をまとめます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?寒がり、冷えの自覚、疲れやすい温かい飲み物を好む脈:沈→陰証(太陰病~少陰病)(2)虚実はどうか脈:やや弱、腹力:軟弱→虚証(3)気血水の異常を考える食欲不振、疲れやすい→気虚軟便、(唾液が多い)→水毒?(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む食欲不振、胃もたれ、心窩部の冷感、唾液が多い解答・解説【解答】以上から本症例は、人参湯(にんじんとう)を用いて治療しました。【解説】人参湯は人参(にんじん)・乾姜(かんきょう)・甘草(かんぞう)・白朮(びゃくじゅつ)で構成される漢方薬です。人参・甘草・白朮に茯苓(ぶくりょう)が加わると気虚の基本である四君子湯(しくんしとう)になります。人参湯は、乾姜(ショウガを蒸して乾燥させたもの)で内臓を中心に温め、気を補う作用をもった漢方薬になります。人参湯は六病位では太陰病、気血水の異常では気虚に対する漢方薬です。人参湯証の特徴的な腹部所見(図)に、心窩部が自覚的につかえた感じがある、あるいは押すと痛みや抵抗を伴う場合があり、これを心下痞鞕(しんかひこう)とよびます。また、腹部の触診で他部位と比べ、心窩部に冷感が伴うこともあります。さらに、人参湯証には、気虚による食欲不振、倦怠感などに加え、内臓の冷えから生じる胸やけ、胃もたれ、下痢などの消化器症状や唾液が多いなどがみられます。人参湯は切れ味が鋭く使用に習熟すべき漢方薬で、気虚に加え、冷えを伴う場合には六君子湯でなく人参湯を用いるべきです。さらに冷えが強い場合には、附子(ぶし)を加えます。人参湯に附子を加えた処方を附子理中湯(ぶしりちゅうとう)とよびます。人参湯は、気虚に対して鑑別すべき漢方薬(表1)です。本症例でも、人参湯を示唆する腹診所見である心下痞鞕と心窩部の冷感を認めています。ほかに陰証で倦怠感がある場合に用いる漢方薬には、真武湯があります(第2回参照)。真武湯は少陰病・水毒に用いる漢方薬です。ほかの鑑別点として、人参湯は尿量が保たれる傾向(尿自利[にょうじり])があり、真武湯では尿量が少ない傾向(尿不利[にょうふり]、第9回参照)があります。どちらも重要な陰証の漢方薬なので、比較しながら覚えておきましょう(表2)。真武湯の倦怠感は気虚でなく少陰病であること、冷えて水が貯留する状態(水毒)によって生じると考えるとよいでしょう。さらに冷えと倦怠感が強い場合には、第7回に登場した茯苓四逆湯(ぶくりょうしぎゃくとう)(エキス剤では人参湯+真武湯で代用)を用います。また、茯苓四逆湯を用いるような非常につらい倦怠感を「煩躁(はんそう)」といいます。今回のポイント「気虚」の解説漢方では、患者の陰陽・虚実を把握するとともに、もう1つのパラメーターである「気・血・水の変調」として病気を捉えます。気・血・水は、生命活動を支えるために必要な生体内を循環する要素です。身体を巡る液体成分は血と水ですが、気は目に見えない、形がない、生命活動を営む根源的なエネルギーです。気の異常のなかでも、気の量的な不足、または作用力の不足を気虚といいます。気虚の主な症状としては、倦怠感、疲れやすい、食欲がない、風邪をひきやすいなどが挙げられます。また、食事により少ないエネルギーが消化管に集中してしまうことで生じる「食後の眠気」は気虚に特徴的な症状です。気虚の治療は、弱った胃腸を丈夫にする作用のある漢方薬を使うことが多く、気虚に対する基本となる漢方薬が四君子湯です。四君子湯は、茯苓、人参、白朮、甘草の4つの生薬で構成されます。気虚に頻用する漢方薬には六君子湯や補中益気湯がありますが、温める作用はなく、気虚と冷えがある場合は人参湯の適応です(表1)。

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国内初HIV曝露前予防(PrEP)適応取得、その意義と残された課題/ギリアド

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、2030年までにHIV流行を終結するという目標を発表しているが、日本のHIV流行対策は世界に比べ後れを取っている状況だ。 ギリアド・サイエンシズ(以下、ギリアド)は2024年8月28日付のプレスリリースで、HIV-1感染症の曝露前予防(以下、PrEP;Pre-Exposure Prophylaxis)としてツルバダ配合錠(一般名:エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩)(以下、ツルバダ)が一部変更承認を取得したと発表した。これによりツルバダは、日本で唯一のHIV-1感染症に対する治療と予防の両方の承認を取得した薬剤となった。 9月25日に行われたギリアド開催のメディアセミナーでは、「PrEP承認がもたらすHIV/AIDSの新展開」をテーマとした議論が交わされた。HIV感染予防の新たなステップ:PrEPとは PrEPとは、HIV未感染の高リスク者が感染リスク軽減のために抗HIV薬を予防的に内服することで、99%以上の感染予防が可能(アドヒアランスが良好な場合)1)といわれている。 ギリアドは、これまでもHIV/AIDS啓発活動コンソーシアム「HIV/AIDS GAP6」※としてHIV流行終結に向けた活動を続けており、今回、HIV治療薬としては既承認であったツルバダのPrEPに対する一部変更承認を取得した。海外におけるツルバダのPrEPとしての適応は、2012年の米国に始まり、欧州、中国を含むアジア諸国でも既に承認されている。※HIV/AIDS GAP6:2021年12月に設立された、ギリアドおよび6つのHIVサポート団体(ぷれいす東京、JaNP+、はばたき福祉事業団、akta、community center ZEL、魅惑的倶楽部)によるコンソーシアム。HIV流行の終結をゴールに活動を続けている。PrEP適応追加承認取得は、正しい知識の普及として大きな意義を持つ メディアセミナーでは、岡 慎一氏(国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター 名誉センター長)から、PrEPとしての適応追加承認取得の意義が語られた。 ツルバダをPrEPとして服用する方法には、1日1回1錠を内服する「デイリーPrEP」と、リスク行為の前後で内服する「オンデマンドPrEP」があり、今回承認となったのはデイリーPrEPのみである。PrEP適応には処方開始前の評価(HIV検査、性感染症検査など)および定期的なフォローアップ検査2)が必要で、PrEP処方と検査をパッケージとして行うことが重要だと、同氏は解説した。 またPrEPにより、新規HIV感染者が80%減少したという欧州の報告3)が紹介された。 岡氏は、「HIV感染者が抗HIV薬の服用によりU=U※を維持し、HIV感染ハイリスク者がPrEPを徹底すれば、10年程度で新規HIV感染者はゼロにできる」とHIV流行終結に向けて期待を寄せ、「今後PrEPの認知を広げ、正確な情報を普及させるためにも、今回の薬事承認は大きな意義がある」と述べた。※U=U:「Undetectable=Untransmittable」の略。血液中のHIV量が検出感度未満で抑えられていれば、性行為による他者への感染を起こさないこと。PrEPの適応追加承認は大きな一歩、ただし課題も残る セミナーのパネルディスカッションでは、「HIV/AIDS GAP6」の各メンバー6人と岡氏による、PrEPの重要性と課題についての議論が交わされた。 HIV/AIDS GAP6は、HIV流行終結達成へ向け、差別・偏見の解消、予防、検査、治療における課題を解決すべく活動を続けており、そのうちの1つとして「HIV流行の終結に向けた要望書」を提出するなど、国内におけるPrEP承認へ尽力してきた。今回、PrEPの適応追加承認が得られた現時点での各メンバーによるPrEPの意義と期待が語られた。 JaNP+代表理事の高久 陽介氏は、「HIVに限らず感染症においては、感染予防行動が重要であり、PrEPという新たな予防策が増えたことはとても大きな意義がある。また、HIVに関しては正しい知識の普及がまだ進んでいないため、偏見や差別をなくためのきっかけの1つとしても期待したい」と語った。 また、魅惑的倶楽部理事長の鈴木 恵子氏は、「セックスコミュニケーションの過程で感染予防が難しい場合もあり、とくに女性において自分の意思を主張することができない状況は多い。自主的に行えるHIV感染予防の選択肢として、PrEPが果たす役割は大きいだろう」と付け加えた。 しかし、今回承認となったツルバダのPrEP適応については、保険適用外となることが決定している。 このPrEPに残された課題について、ぷれいす東京代表の生島 嗣氏は「現状の金額※では、1日1錠の服用を継続的に行っていくことが難しい。そのため、海外輸入などの不適切な使用が横行する危険性がある。PrEPを持続可能性のある選択肢とするための方法を話し合っていきたい」と語った。 最後に岡氏は、「今回の適応追加承認で、公にPrEPの情報発信ができるようになり、PrEPを日本に定着させるための土壌ができた。今後、PrEPを必要とする人々へ届けるためのスキームを作っていくために、引き続き議論の必要がある」と締めくくった。※ツルバダの薬価:2,442.4円/錠、1日1錠処方の場合、30日で73,260円。

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やりがい?ワークライフバランス?若手医師が専攻領域を選んだ理由・変更した理由

 医師の総数は増加をしている中、外科などの一部診療科の増加が乏しいことに対して、どのような対策が考えられるか。9月20日に開催された厚生労働省の「第6回医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」では、これらの課題を考えるうえでの参考資料として、厚生労働科学特別研究「日本専門医機構における医師専門研修シーリングによる医師偏在対策の効果検証」から、「現在の基本領域を選択した理由」や「希望していた基本領域を選択しなかった理由」について聞いた専攻医へのアンケート結果が示された。本稿では、その内容の一部を紹介する。 同研究では、2020~23年度に19基本領域の専門研修プログラムに登録した専攻医3万6,427人を対象に、2024年2月27日~2024年3月22日にWEB形式によるアンケート調査を実施した。有効回答数は1万5,857件で、有効回答率は46.3%であった。基本領域を選んだ理由は“やりがい”が最も多いが、領域による違いも 現在の専門研修プログラムの基本領域を選択した理由としては、全体でみると「やりがいを感じるから」(62.6%)が最も多く、次いで「将来にわたって専門性を維持しやすいから」(36.6%)となったが、選択した基本領域によって、その選択理由は異なっていた。「やりがいを感じるから」が理由として最も多かった領域が多数を占めたが、小児科(86.0%)、産婦人科(81.5%)、外科(77.7%)、脳神経外科(75.8%)ではこの割合がとくに高かった。 皮膚科(52.7%)、放射線科(61.9%)、麻酔科(59.7%)、病理(53.4%)、臨床検査(51.0%)、リハビリテーション科(62.8%)では「ワークライフバランスの確保ができるから」が最も多く、総合診療科では「総合的な診療能力を獲得しやすいと思ったから」(63.9%)、耳鼻咽喉科は「手技が多いから」(53.5%)、眼科は「将来にわたって専門性を維持しやすいから」(52.8%)が最も多かった。希望していた基本領域を選択しなかった理由は 希望していた基本領域を選択しなかった理由としては、全体でみると「将来的に専門性を維持しづらいから」が17.2%で最も多く、次いで「仕事の内容が想像と違ったから」(14.9%)、「ワークライフバランスの確保が難しいから」(14.8%)であった(n=1,118)。各領域ごとの回答上位3つは以下の通り。内科:ワークライフバランスの確保が難しいから(27.0%)、仕事の内容が想像と違ったから(16.9%)、専門医が取得しづらいから(16.9%)小児科:ワークライフバランスの確保が難しいから(24.2%)、その他(22.6%)、医師が不足していて過酷なイメージがあるから(16.1%)皮膚科:定員が厳しいから/採用試験で受からなかったから(34.5%)、専門医が取得しづらいから(16.1%)、医師が過剰であり競争が激しいイメージがあるから(12.6%)精神科:定員が厳しいから/採用試験で受からなかったから(25.9%)、医師が過剰であり競争が激しいイメージがあるから(24.1%)、仕事の内容が想像と違ったから/その他(17.2%)外科:ワークライフバランスの確保が難しいから(33.9%)、将来的に専門性を維持しづらいから(24.8%)、医師が不足していて過酷なイメージがあるから(21.1%)整形外科:仕事の内容が想像と違ったから(28.2%)、適性・才能がないから/医師が過剰であり競争が激しいイメージがあるから(15.4%)産婦人科:訴訟リスクが大きいから/その他(22.0%)、医師が不足していて過酷なイメージがあるから(17.1%)眼科:定員が厳しいから/採用試験で受からなかったから(33.3%)、医師が過剰であり競争が激しいイメージがあるから(17.5%)、その他(12.7%)泌尿器科:その他(17.2%)、適性・才能がないから/継続したキャリアプランが見えづらいから(13.8%)脳神経外科:ワークライフバランスの確保が難しいから(41.4%)、将来的に専門性を維持しづらいから/医師が不足していて過酷なイメージがあるから(27.6%)放射線科:専門領域の将来性に不安を感じたから/その他(23.1%)、仕事の内容が想像と違ったから/開業しにくいから(15.4%)麻酔科:その他(18.3%)、将来的に専門性を維持しづらいから/開業しにくいから(15.0%)救急科:将来的に専門性を維持しづらいから(27.7%)、仕事の内容が想像と違ったから(22.9%)、継続したキャリアプランが見えづらいから(18.1%)形成外科:定員が厳しいから/採用試験で受からなかったから(25.3%)、その他(17.7%)、ワークライフバランスの確保が難しいから(12.7%)リハビリテーション科:将来的に専門性を維持しづらいから(30.0%)、やりがいを感じないから/継続したキャリアプランが見えづらいから(26.7%)総合診療:将来的に専門性を維持しづらいから(39.8%)、継続したキャリアプランが見えづらいから(20.5%)、仕事の内容が想像と違ったから(17.0%)※回答数が20人以下の耳鼻咽喉科、病理、臨床検査の結果は割愛

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Impellaの高齢者における安全性・有効性~J-PVADレジストリより/日本心臓病学会

 補助循環用ポンプカテーテルImpella(インペラ)は、左室機能を補助するための経カテーテル的補助人工心臓(PVAD:percutaneous ventricular assist device)で、唯一、国内承認されているものだ。2017年の承認から7年が経過し、国内の高齢者への安全性や有効性が徐々に明らかになってきている。今回、樋口 亮介氏 (榊原記念病院 循環器内科)が「心原性ショックを合併した後期高齢者におけるImpellaの成績:J-PVADレジストリからの検討」と題し、9月27~29日に仙台で開催された第72回日本心臓病学会学術集会の高齢化社会における循環器診療に関するシンポジウムで発表した。Impella挿入患者のPVAD関連合併症の多くは高齢者と非高齢者で同等 今回の結果によると、高齢者におけるImpellaの安全プロファイルは非高齢者と比較して概ね同等であり、短期予後は不良であるものの受容可能な結果であった。なお、本発表内容はCirculation Report誌2024年10月29日号オンライン版に掲載された。 樋口氏らは日本におけるImpellaの全例登録研究であるJ-PVADレジストリに登録された2020年2月~2022年12月までにImpellaを挿入した患者のうち75歳以上を高齢者とし、非高齢者のデータと比較・解析した。主要評価項目は30日死亡で、副次評価項目はPVAD関連合併症(輸血を要する出血、心タンポナーデ、脳卒中、溶血、下肢虚血、急性腎障害、敗血症、治療を要する血管合併症)であった。 Impellaを挿入した高齢患者のJ-PVADレジストリデータを非高齢者と比較・解析した主な結果は以下のとおり。・解析対象者5,718例のうち75歳以上の高齢者は1,807例(31.6%)で、年齢中央値は80歳(四分位:77~83)であった。・解析対象の高齢者の特徴は、体格指数(BMI)が小さい、急性冠症候群が多い、心筋炎が少ないなどが挙げられた。・高齢者では肝腎機能に関連するT-BilやCreが高く、Alb値が低かった一方で、院外心停止(OHCA)の発生、ECMO併用は少なかった。・30日死亡は高齢者が非高齢者よりも多く認められ(38.9% vs.32.5%)、ハザード比(HR)は1.29(95%信頼区間:1.18~1.41、p<0.0001)であった。また、75〜79歳、80~84歳、85歳以上の3群の間では30日死亡に差はみられなかった。・PVAD関連合併症の多くは高齢者と非高齢者で同等であったが、心タンポナーデ(3.5% vs.1.8%)、下肢虚血(5.6% vs.3.5%)にて、わずかな差を認めた。・多変量解析の結果、75歳以上、BMI、心筋炎、不整脈の既往、ショックの重症度、肝腎障害、合併症としての下肢虚血がImpella挿入後の死亡と関連していた。・研究限界は、PVADを選択しなかった患者データが含まれていない、高齢者特異的パラメータが含まれていない、フォローアップ期間が限定的、イベント判定委員会の設置がなかったなどであった。 本研究を振り返り、同氏は「75歳以上であることはHRをみるとネガティブな因子であるが、死亡率の増加は受容可能な程度。高齢者の中でも補助循環装置を使用することで予後が見込める背景の患者を臨床医が見極め、その上でPVADを使用した結果ではないか」と説明した。また、世界的に心原性ショックを合併した高齢者やECMOを使用する高齢者が増加していることを受け、「暦年齢だけではなく、フレイル、サルコペニア、マルチモビディティなどの高齢者要素を含んだ包括的評価が心原性ショックを合併する高齢者に対して必要」ともコメントした。

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