サイト内検索|page:272

検索結果 合計:35138件 表示位置:5421 - 5440

5421.

STEMI合併心原性ショックの治療に一筋の光!? DanGer Shock Trial【臨床留学通信 from NY】第60回

第60回:STEMI合併心原性ショックの治療に一筋の光!? DanGer Shock Trial毎年恒例の米国心臓病学会の学術集会ACC(American College of Cardiology)が開催されたため、4月上旬にアトランタに行ってまいりました。私が筆頭著者となった研究2つを含む、7つのAbstractの発表となりました。また、留学している循環器医の方々に現地で会うことができました。昨今の物価高騰などから、ニューヨークからの参加とはいえ、参加費、飛行機、宿泊代等々を含めると1,500ドル(22.5万円相当)の出費となり、なかなか大変です。幸い今回はプログラムがサポートしてくれそうなので、払い戻しの最終許可が下りるのを待っているところです。今回のACCの目玉はDanGer Shock Trialです1)。Impella補助循環用ポンプカテーテル(Impella CP)というデバイスを用いてST上昇型心筋梗塞(STEMI)に合併した心原性ショックを治療すると、標準治療群に比べて、半年の時点で有意に死亡率を低下させるというものでした(45.8% vs. 58.5%、HR:0.74[95%信頼区間[CI]:0.55~0.99])。360人の患者を対象とし、Trialを試行するまで登録に10年ほど要したようです。患者さんは収縮期血圧100mmHg以下または昇圧薬使用、乳酸値2.5mmol/L以上、左室駆出率45%以下となっており、来院時昏睡状態や右室収縮不全は除外されたようです。標準治療群は、デバイスを使いたければECMOが推奨されていたようです。標準治療群で58%という高い死亡率のSTEMIによる心原性ショックですが、このトライアルのどおりに死亡率が下げられるならすごいことです。われわれInterventionalistは、この条件にマッチした患者にImpella CPを施行しないといけないということにもなりますが、Imeplla CPは管理をしっかりしないと、下肢虚血、出血、溶血などのトラブルも多く、気を付けないといけません。実際にこのトライアルでも合併症は多く出ていました。トライアルをするようなところですら多いので、実際のリアルワールドはどうなのか気になるところで、そこが次のステップだと思います。Column日米の研修医の先生たちと。今回発表となった先生方との共同研究を紹介します。1つはSGLT2阻害薬の人種による効果の違いを述べたもの。こちらは近々論文として提出予定です。Kani R, Kuno T, et al. Racial and Regional Differences in Efficacy of Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitors on Cardiorenal Outcomes: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. J Am Coll Cardiol. 2024 Apr, 83 (13_Supplement) 2456.もう1つはImpellaとIABPの比較をNon AMI心原性ショックについて述べたもの。本結果はImepllaのほうが悪いというものでしたが、DanGer Shock TrialはSTEMIを対象としているので対象患者が異なるのと、もちろん観察研究の限界もあるかと思います。こちらはJAHAにもオンライン掲載予定です。Watanabe A, Kuno T, et al. Percutaneous Microaxial Ventricular Assist Device vs. Intra-Aortic Balloon Pump for Non-Acute Myocardial Infarction Cardiogenic Shock. J Am Coll Cardiol. 2024 Apr, 83 (13_Supplement) 454.参考1)Moller JE, et al. Microaxial Flow Pump or Standard Care in Infarct-Related Cardiogenic Shock. 2024 Apr 18;390(15):1382-1393.

5422.

第96回 『脳外科医 竹田くん』が再びSNSをにぎわす

『脳外科医 竹田くん』とはSNSの世界には、「文春砲」ならぬ「ガレソ砲」というものがあります。これは「滝沢ガレソ」という有名インフルエンサーが曝露した記事が、SNSで間違いなくバズるためです。『週刊文春』ほどのインパクトがあることから、「ガレソ砲」と呼ばれています。皆さんは『脳外科医 竹田くん』という漫画についてご存じでしょうか。今回『週刊現代』の記事を発端としてガレソがこれに反応したわけですが、そもそも事実無根である可能性があるため、ここではその詳細や真偽については触れません。これはもともと、未熟な手術技術によりさまざまな医療事故を起こす脳神経外科医である竹田くんの診療風景を描いたWEB漫画として始まりました。始まってすぐに、あまりの具体性から現実の医療過誤が題材にされていることがわかりました。絵柄と内容のミスマッチさから、ホラー度がアップしています。医道審議会の役割は?繰り返しますが、このコラムでは『脳外科医 竹田くん』はフィクションと明記しておきます。ただ、もし現実の世界で医療過誤を繰り返す医師が本当にいたとするなら、これを防ぐことはできるのでしょうか?1つは医道審議会がストッパーになるということです。同会では、平成14年(2002年)に「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」というガイドライン1)を取りまとめています。過去の事例に鑑みると、性犯罪などで有罪判決が下った場合には、医業停止以上の処分が下されるものと考えられます。最終的な決定者は厚生労働大臣の名義ですが、医道分科会の意見がほぼ反映される形となります。罰金刑以上に処せられた医師の個人情報は、法務省から厚労省に提供されていますが、限りなく黒に近い医療過誤リピーターであっても、実際には医道審議会で強い処分が下せないのが現状のようです。画像を拡大する過去に医療過誤を繰り返した人は、その後も医療過誤を起こすリスクがあります。あまりにも経歴が謎の医師の場合、前の職場で一体何があったのかくらいは、調べてもよいのかもしれません。医療安全においては「個人を責めない職場文化」というものが重要視されます。現在の風潮では、至極当然のことだと思います。しかし、問題のある医療従事者の情報がトレースされず眠ってしまうことから、次の医療事故を生んでしまうという副作用も併せ飲まないといけません。『脳外科医 竹田くん』という漫画は、実は「病院における医療安全とは何か」という大きな命題をわれわれに投げかけているのかもしれません。参考文献・参考サイト1)医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について

5423.

入院患者の死亡率、患者と医師の性別で異なる

 医師の性別と患者の性別の組み合わせによって臨床転帰は異なるのだろうか。東京大学の宮脇 敦士氏らが、米国で内科的疾患で入院した患者を男女に分け、医師の性別と臨床転帰の関連を調べたところ、女性医師による治療のほうが死亡率および再入院率が低く、女性医師による治療のベネフィットは男性患者よりも女性患者で大きいことが示唆された。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2024年4月23日号に掲載。 本研究は、米国で2016~19年に入院し、病院総合診療医の治療を受けたメディケア有料サービス受給者から無作為に抽出したサンプルを用いた後ろ向き観察研究で、主要評価項目は30日死亡率および再入院率とした。 主な結果は以下のとおり。・女性患者45万8,108例中14万2,465例(31.1%)、男性患者31万8,819例中9万7,500例(30.6%)が女性医師による治療を受けていた。・女性患者も男性患者も、女性医師による治療を受けた患者のほうが死亡率が低かった。・女性医師による治療を受けることのベネフィットは、男性患者より女性患者が大きかった(差分の差分:-0.16パーセントポイント[pp]、95%信頼区間[CI]:-0.42~0.10pp)。・女性患者では、女性医師と男性医師による差は大きく、臨床的に意味のあるものだった(調整死亡率:8.15% vs.8.38%、平均限界効果[AME]:-0.24pp、95%CI:-0.41~-0.07pp)。・男性患者では、女性医師と男性医師の差はなく(10.15% vs.10.23%、AME:-0.08pp、95%CI:-0.29~0.14pp)、再入院率についても同様だった。 著者らは本研究の限界として、若年集団には本結果を一般化できない可能性を挙げている。

5424.

レビー小体型認知症における抗コリン負荷と長期認知機能低下との関連

 トルコ・University of Health SciencesのCemile Ozsurekci氏らは、レビー小体型認知症(DLB)患者における1年間のフォローアップ期間中の抗コリン負荷(ACB)と認知機能変化との関連を調査するため、コホート研究を実施した。Clinical Neuropharmacology誌2024年3・4月号の報告。 対象には、DLBと診断され、tertiary geriatric outpatient clinicに入院した患者を含めた。認知機能、機能的パフォーマンス、栄養状態の評価は、ベースライン時、フォローアップ期間中の6ヵ月目、12ヵ月目に評価した。ACBを評価し、ACB≧1とACB=0に層別化した。 主な結果は以下のとおり。・研究には、DLB患者112例(平均年齢:79.3±6.8歳、女性の割合:50.9%)を含めた。・対象患者の平均投薬数は5.1±4、多剤併用患者の割合は56.9%、抗コリン負荷が認められた患者の割合は55.2%であった。・ACB≧1群は、ACB=0群よりも、ベースライン時の手段的日常生活活動(IADL)スコアが低かった(p=0.014)。・Barthel指数とIADLスコアは、ACB≧1群では経時的な反復測定により有意な減少が認められたが、ACB=0群ではIADLスコアの減少のみが認められた(各々、p<0.001)。・認知機能スコアおよびミニメンタルステート検査(MMSE)スコアのサブドメインについては、両群間で有意な差は認められなかった。・従属変数の反復測定により、ACB≧1群のオリエンテーションサブドメインの時間経過による有意な悪化が認められた(p=0.001)。・多変量回帰モデルでは、ACBスコアは認知機能障害および機能障害に有意な影響を及ぼさないことが示唆された。 著者らは「DLB患者に対する抗コリン薬の使用は、機能状態や認知機能に悪影響を及ぼし、潜在的に罹患率を増加させる可能性があるため、慎重な評価が求められる」としている。

5425.

NSCLC術前補助療法、ニボルマブ+relatlimabの生存ベネフィットは?(NEOpredict-Lung)/Nat Med

 複数の免疫チェックポイント分子を阻害する治療法は、免疫抵抗性の克服の観点から注目されている。抗PD-1抗体ニボルマブと抗LAG-3抗体relatlimabの併用療法は、悪性黒色腫においてニボルマブ単剤療法と比較して、無増悪生存期間の改善が認められたことが報告されている1)。また、この結果をもとに米国食品医薬品局(FDA)の承認を取得している。切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の術前補助療法においてもニボルマブ+relatlimab併用療法の有用性が検討されており、全例で手術の施行が可能であったほか、1年無病生存(DFS)率が93%、1年全生存(OS)率が100%と有用性を示唆する結果が報告された。本研究結果は、ドイツ・エッセン大学病院のMartin Schuler氏らにより、Nature Medicine誌オンライン版2024年4月30日号で報告された。試験デザイン:海外第II相無作為化非盲検比較試験対象:未治療の切除可能なStageIB、II、IIIA(UICC第8版に基づく)のNSCLC患者60例試験群:ニボルマブ(240mg)+relatlimab(80mg)を2週ごと2回→手術→標準治療(併用群、30例)対照群:ニボルマブ(240mg)を2週ごと2回→手術→標準治療(単独群、30例)評価項目:[主要評価項目]術前療法後43日以内の手術施行[副次評価項目]RECIST1.1に基づく術前の奏効率(ORR)、病理学的奏効(MPR)、R0切除率、1年DFS率、1年OS率、安全性など 主な結果は以下のとおり。・全例が術前療法後43日以内に手術を受け、R0切除率は併用群90%、単独群100%であった。・術前のORRは併用群27%、単独群10%であった。・MPR率は併用群30%、単独群27%であり、病理学的完全奏効率はそれぞれ17%、13%であった。・1年DFS率は併用群93%、単独群89%であった。・1年OS率は併用群100%、単独群93%であった。・MPRが得られた患者は、末梢血においてCD8陽性T細胞、CD8陽性Granzyme B陽性エフェクターT細胞が増加した。・併用群でMPRが得られた患者では、CD24、CXCL1、CXCL14、IL8、MIF、ISG15といった顆粒球や単球、マクロファージに関連する遺伝子発現が抑制されていたが、単独群でMPRが得られた患者ではこれらの所見は確認されなかった。・Grade3以上の試験治療下における有害事象は併用群13%、単独群10%に発現した。

5426.

「リンパ浮腫診療ガイドライン 2024年版」発行、改訂点は?

 2018年の第3版発行から6年ぶりに、第4版となる「リンパ浮腫診療ガイドライン 2024年版」が3月に改訂された。CQが2つ新設されるなど、新たなエビデンスを踏まえてアップデートされた今版のポイントについて、日本リンパ浮腫学会ガイドライン委員会委員長の北村 薫氏(アムクリニック)に話を聞いた。リンパ浮腫診療ガイドラインに新設された2つのCQ  今回のリンパ浮腫診療ガイドライン改訂では、「実臨床でよくある質問」という観点から、2つのCQが新設された。1つ目はCQ4の「続発性リンパ浮腫発症リスクのある部位に行う美容的処置(レーザー、脱毛、美容目的の脂肪吸引など)は有害(あるいは禁忌)か?」で、禁忌とする科学的根拠はないとしたが、熱傷や皮膚トラブルに注意する必要があるため、皮膚に侵襲を来しうる美容目的の処置は、有害事象の発生リスクが高いとしている(Limited-suggestive;可能性あり)。 リンパ浮腫診療ガイドラインに新設された2つ目のCQは、CQ23の「鍼灸治療を行った場合、行わなかった場合と比べてリンパ浮腫は軽減するか?」。関係する論文5編の検討から、リンパ浮腫に対する鍼灸治療の効果について、一貫した根拠がないだけでなく、血腫などの合併症を伴うことがあるため、患肢への鍼灸治療は勧められないとされた(グレードD:実践しないよう推奨する)。リンパ浮腫診療ガイドライン2024年版で推奨グレードが変更されたのは そのほか、リンパ浮腫診療ガイドライン2024年版では、治療法についていくつか推奨グレードの変更がある。まず標準治療としての弾性着衣については、上肢における有用性を示すエビデンスがさらに充実したことから、B(実践するよう推奨する)からA(積極的に推奨する)に変更された(CQ12)。 複数のエアセルの圧差によってリンパの流れを誘導する間欠的空気圧迫療法については、ここ数年で有効なリンパルートを選択的にドレナージする新型IPCが開発された。単独で奏効したという速報結果が出たため、圧迫や用手的リンパドレナージとの併用に関して上下肢ともにC2(推奨できない)からC1(行うことを考慮してもよい)に上がっており、医療機器として今年度内に承認予定である。これについて北村氏は、「一気呵成に使用するには時期尚早で、市販後調査による臨床結果によっては再度グレードが変更される可能性も踏まえて、今後の臨床研究を注視したい」と話した(CQ15)。 手術療法の中ではリンパ管静脈吻合術(LVA)が、依然エビデンスレベルが高い報告は少ないながら、有効性を示す報告の蓄積によりC2からC1に上がっている(CQ17)。しかしながら適応についてはいまだ確立しておらず、現場での考え方として北村氏は、「複合的治療に難渋する症例、蜂窩織炎を繰り返す症例などで検討するのが妥当ではないか」とした。リンパ浮腫診療ガイドラインで推奨度評価なしでも実施されるSLD 北村氏がリンパ浮腫の問題に取り組み始めた当初は「俺の手術では腫れない」と公言する外科医も多かったという。「合併症ではなく後遺症なので、一定の割合で発生するものと認識して管理をしてほしい」と話す。そのためには、上肢や下肢の決まった場所の周径を治療前に計測しておくことが重要。術後も定期的に記録していくと、自分で小さな変化に気づくことができる。とくに婦人科領域では両側下肢に発症することも少なくないので左右差を論じる意味がなく、両側を計測しておく必要がある。 リンパ浮腫指導管理と圧迫療法が2008年に保険収載されて以来、現在では何らかの指導や治療を行う施設が増えたものの、その内容は必ずしも一貫していない。北村氏は、「とくに患者や家族が自分で行うシンプルリンパドレナージ(SLD)の扱いについては注意してほしい」と指摘。リンパ浮腫診療ガイドラインで予防・治療ともに「SLDは上肢・下肢ともに有効性を示す科学的根拠がないか乏しいため勧められない(C2、下肢予防では推奨度評価なし)とされているにも関わらず、実臨床では少なからず取り入れられているのが現状という。「何かできることはないかと聞かれたときに答えやすいという側面があると思うが、本気で実施すれば患者の負担は大きく、にも関わらず有効性を示すエビデンスはない」として、「あくまで治療の基本は圧迫療法であり、予防指導では体重管理や運動指導などエビデンスのある項目を優先することが大切」と話した。

5427.

DOAC投与中の心房細動患者への併用、ジルチアゼムvs. メトプロロール/JAMA

 アピキサバンまたはリバーロキサバンを投与中の65歳以上の心房細動患者において、ジルチアゼム併用はメトプロロール併用と比較して重篤な出血のリスクが高く、とくにジルチアゼムの投与量が120mg/日を超えるとさらにリスクが高まることを、米国・ヴァンダービルト大学のWayne A. Ray氏らが後ろ向きコホート研究の結果、報告した。心房細動患者に一般的に投与されるレートコントロール薬のジルチアゼムは、アピキサバンおよびリバーロキサバンの排泄を阻害し過剰な抗凝固作用を引き起こす可能性があることが示唆されていた。JAMA誌オンライン版2024年4月15日号掲載の報告。65歳以上の患者約20万例、ジルチアゼム併用vs.メトプロロール併用 研究グループは、米国メディケアプログラムのデータを用い、2012年1月1日~2020年11月29日に心房細動と診断されアピキサバンまたはリバーロキサバンの処方が開始された65歳以上のメディケア受給者で、アピキサバンまたはリバーロキサバンの投与中にジルチアゼムまたはメトプロロールが初めて処方された患者を対象とした。 処方翌日から365日間、または2020年11月30日、もしくはメディケア登録喪失、アピキサバンまたはリバーロキサバンならびにレートコントロール薬のいずれかの中止、他のレートコントロール薬または経口抗凝固薬の開始、のいずれか早い時点まで追跡した。 主要アウトカムは、出血関連入院および出血所見を伴う死亡の複合で、副次アウトカムは、虚血性脳卒中または全身性塞栓症、重大な虚血性または出血性イベント(虚血性脳卒中、全身性塞栓症、頭蓋内出血または致死的頭蓋外出血、出血所見を伴う死亡)、および出血所見を伴わない死亡とした。 オーバーラップ重み付け法を用いて共変量の差を調整し、ジルチアゼム併用群とメトプロロール併用群のアウトカムのハザード比(HR)および率差(RD)を算出した。データの解析期間は2023年8月~2024年2月であった。 研究期間中にアピキサバンまたはリバーロキサバンの処方が開始されたメディケア受給者は計20万4,155例であり、このうち5万3,275例でジルチアゼム、15万880例でメトプロロールによる治療が開始された。患者背景は平均年齢76.9歳(SD 7.0)、女性52.7%であった。ジルチアゼム併用群で重篤な出血のリスクが1.2倍 追跡期間中央値120日(四分位範囲[IQR]:59~281)・9万927人年において、主要アウトカムイベントは5,269例発生した(発生頻度は1,000人年当たり57.9)。内訳は、出血関連入院3,869例(1,000人年当たり42.6)、出血所見を伴う死亡が1,400例(同15.4)であった。 ジルチアゼム併用群はメトプロロール併用群と比較し、主要アウトカム(1,000人年当たりのRD:10.6[95%信頼区間[CI]:7.0~14.2]、HR:1.21[95%CI:1.13~1.29])、ならびに出血関連入院(8.2[5.1~11.4]、1.22[1.13~1.31])、および出血所見を伴う死亡(2.4[0.6~4.2]、1.19[1.05~1.34])の発生リスクが高かった。 ジルチアゼムの初回投与量が>120mg/日の場合における主要アウトカムのリスク(1,000人年当たりのRD:15.1[95%CI:10.2~20.1]、HR:1.29[1.19~1.39])は、低用量(6.7[2.0~11.4]、1.13[1.04~1.24])の場合より大きかった。 また、>120mg/日の用量では重大な虚血性または出血性イベントのリスクも増加したが(HR:1.14[95%CI:1.02~1.27])、虚血性脳卒中または全身性塞栓症、ならびに出血所見を伴わない死亡のリスクは、いずれの用量群でも有意な変化はみられなかった。ジルチアゼムの高用量群と低用量群を直接比較すると、主要アウトカムのHRは1.14(95%CI:1.02~1.26)であった。

5428.

後期早産期の出生前ステロイド、6歳以降の神経発達に影響なし/JAMA

 後期早産リスクを有する母親への出生前コルチコステロイド投与は、6歳以上の小児期の神経発達アウトカムに有害な影響を及ぼさない。米国・コロンビア大学のCynthia Gyamfi-Bannerman氏らが、2010~15年に国立小児保健発達研究所Maternal-Fetal Medicine Units(MFMU)ネットワークの17施設で実施された二重盲検プラセボ対照試験「Antenatal Late Preterm Steroids(ALPS)試験」に参加した母親から生まれた児に関する、前向き追跡試験の結果を報告した。ALPS試験は、妊娠34~36週における出生前のベタメタゾン投与が早産児の短期呼吸器合併症の発症率を有意に低下させることを明らかにし、米国における臨床実践を変えた。しかし、ベタメタゾン投与後に新生児低血糖症のリスクが増加することも認められており、長期的な神経発達アウトカムへの影響に関心が寄せられていた。JAMA誌オンライン版2024年4月24日号掲載の報告。後期早産期の出生前ステロイド投与を受けた母親から生まれた6歳以上の小児を調査 ALPS試験(以下、親試験)では、妊娠34週0日~36週5日で後期早産(36週6日までの出産)リスクの高い母親を、ベタメタゾン(12mg)群またはプラセボ群に割り付け筋肉内投与した(24時間経過後も出産しなかった場合は2回目を投与)。 本追跡試験では、2011~16年にMFMUネットワークの13施設のうち1施設に登録され、追跡試験に同意した母親から生まれた6歳以上の小児を適格として、2017年12月~2022年8月に登録し、前向きに調査した。 主要アウトカムは、Differential Ability Scales, 2nd Edition(DAS-II)の全般的概念化能力(General Conceptual Ability:GCA)スコアが85点未満(平均より1 SD低いことを示す)の子供の割合であった。副次アウトカムは、DAS-IIのクラスター(言語能力、非言語的推論能力、空間認識能力)スコア、粗大運動能力分類システム(Gross Motor Function Classification System:GMFCS)のレベル2以上の割合、対人応答性尺度(Social Responsiveness Scale:SRS)のtスコア65点超の割合、および子供の行動チェックリスト(Child Behavior Checklist:CBCL)のスコアとした。すべてのアウトカムで、ベタメタゾン群とプラセボ群で差はなし 親試験で無作為化された母親2,831例の出生児のうち、追跡試験に登録されたのは1,026例で、登録時の年齢中央値は7歳(四分位範囲[IQR]:6.6~7.6)であった。このうち、949例(ベタメタゾン群479例、プラセボ群470例)がDAS-IIの評価を完了した。母親の人種や年齢などの背景、新生児の特徴は、親試験で認められたように新生児低血糖症がベタメタゾン群で多かったことを除き、両群間で類似していた。 主要アウトカムのDAS-II GCAスコア85点未満の割合は、ベタメタゾン群17.1%(82/479例)、プラセボ群18.5%(87/470例)であり、差はなかった(補正後相対リスク:0.94、95%信頼区間[CI]:0.73~1.22)。また、いずれの副次アウトカムも差は認められなかった。 逆確率加重法を用いた事後感度分析、ならびに追跡不能となった小児も含めた感度分析においても、結果は同様であった。

5429.

長引く咳や痰、新型コロナ以外で増加傾向の疾患とは

 5月9日は「呼吸の日」。これに先駆け、インスメッドは罹患者数/死亡者数が増加傾向にある肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)に関するオンラインアンケート調査を実施した1)。その結果、肺NTM症について、「知っている」と回答したのは9.3%、「聞いたことがあるが、詳しくは知らない」は22.3%と、認知率の低さが浮き彫りになった。また、肺NTM症の症状として特徴的な咳や痰の症状を有していたにもかかわらず、全回答者の半数以上(608例)は医療機関を未受診と回答していた。その理由を尋ねたところ、79.9%が「病院に行くほどではないと思っている」と回答していたことも明らかになった。 本アンケートは、肺NTM症を含む感染症および呼吸器疾患に関する一般の意識や行動を把握することを目的に、現在もしくは過去に咳/痰の症状のある/あった30~70代の男女1,092例を対象に、疾患の理解度などの実態を調査したもの。肺NTM症の課題、疾患浸透率の低さか 肺NTM症とは原因菌である非結核性抗酸菌(nontuberculous mycobacteria:NTM)が肺に感染することにより発症する感染症で、土や水などの自然環境、台所や風呂場などの水回りの生活環境に常在菌として生息し、空気中に漂うNTMを吸い込むことにより感染する2)。今回、“感染症全般の感染源・原因となる可能性があるもので知っているもの”として、回答者の90%超が「人の飛沫(くしゃみ、咳など)」「ウイルス」と回答したのに対し、肺NTM症の要因となる「水(水道水など)」を挙げたのは35.3%に留まった。また、シャワーなどの水回りの掃除が肺NTM症予防には重要となるが、「水回りの掃除」を意識して行っている人は27.2%と少なかった。肺NTM症、肺結核の罹患者数をしのぐ勢いで増加 2014年の国内調査によると、人口10万人当たりの肺NTM症罹患率は2007年の全国調査と比較して約2.6倍も増加、現在では肺結核をしのぐ罹患者数となっている。肺NTM症の主な症状として、咳嗽、喀痰、血痰、倦怠感、体重減少などが挙げられるが、症状の強さや疾患の経過は患者によってさまざまといわれている。初期は無症状のことも多く、健康診断やほかの疾患の検査がきっかけとなって偶然にみつかるケース、無症状の場合にそのまま放置してしまうケースも少なくないという。また、厚生労働省の令和4年人口動態調査では、国内で肺NTM症による死亡者数が年間1,158例であったことが報告されており、罹患者数、死亡者数ともに増加の一途をたどっている深刻な疾患である。しかし、今回の調査結果によってその認知率の低さから、罹患率の高い中高年のやせ型女性を中心に啓発を行う必要があることも明らかになった。 肺NTM症と肺結核との大きな違いは、人から人へ感染しないといわれていること、前述のように、水などの自然環境、水回りなどの生活環境にいる菌を吸い込むことで感染する点である。それを踏まえた感染予防対策として、長谷川 直樹氏(慶應義塾大学医学部感染症学教室 教授)は「NTMは消毒薬にも強いという性質があり、生活環境から排除することは難しい。浴室や台所などは、日頃からなるべく清潔にすることを心掛け、排水溝だけでなく、シャワーヘッドやホースのぬめりを取り除き、よく乾燥させる。掃除の際はマスクを着用することも重要」とコメントしている。

5430.

TAVIとSAVRの比較試験をただちにやめてガイドラインを改訂すべき時である(解説:上妻謙氏)

 重症大動脈弁狭窄症(AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は、低侵襲かつ有効な治療のため世界中で外科手術(Surgical AVR=SAVR)との無作為化試験が行われ、手術高リスクのみならず低リスクの患者においても明確な安全性を示し、ほとんどすべての生体弁を植え込むAS単独手術患者に関して標準的な医療となった。そういった無作為化試験は、メーカー主導で行われたものが代表的な試験2つと医師主導で行われたものがいくつかあるが、本論文はドイツの38施設で行われた症候性重症ASを登録して行われた医師主導の試験である1)。 重症ASの基準は一般的なもので、STS-PROMスコアが中等度リスク以下の65歳以上のハートチームディスカッションで外科手術が可能な患者を対象としている。二尖弁と冠動脈疾患など合併手術が必要な患者や開胸術後などの患者が除外されているが、人工弁は術者に任されて自由に選択できるリアルワールドのプラクティスである。プライマリーエンドポイントは1年の全死亡と後遺症の残る脳卒中で、非劣性検定のデザインで、1年のイベント発生率が6.2%という過去の3つの臨床試験データに基づき、非劣性マージンがハザード比で1.14、検出力は80%で計算され、1,404例が必要とされた。また5年で非劣性が証明できた場合は優越性の検定を行うことになっている。 2017年5月から2022年9月まで5年以上かけて1,414例が登録され、ランダマイズされた。さらに無作為化されてから713例のSAVR群のうち100例が結局SAVRを受けず、とくに26例は同意を撤回、70例が患者の希望でTAVIへクロスオーバーし、それぞれ4例と12例であったTAVI群と比べて治療を全うできた症例がだいぶ少なくなり、侵襲の大きく異なる治療のランダマイズのためSAVR群においてその治療法の遂行に苦労したことが伺えるのは他の試験と同様であった。 したがって、ITT解析をメインとしており、TAVI群701例、SAVR群713例と均等だが、As-treated解析では752例と625例と大きく差がついた。患者の年齢の平均値は74歳で、STS-PROMスコアの中央値は1.8と低く、低リスク患者が多かったことが伺える。無作為化は年齢とSTS-PROMのスコアで層別に行われた。最近行われた試験のため、人工弁は現在使用されているものとほぼ同等のものが使用され、バルーン拡張型が6割であった。TAVIでは脳保護デバイスが5%で使用されていた。SAVRも部分開胸の低侵襲の手術が4割で行われ、suture less弁が16%で使用されていた。ICUの滞在もTAVIで中央値1日と短かったが、SAVRでも2日であった。 1年のプライマリーエンドポイントである死亡または脳卒中の発生率は、TAVI群5.4%、SAVR群10.0%と非劣性をp<0.001で達成した(HR:0.53)。優越性検定は5年まで待たないといけないが、数値的にはTAVIのほうがSAVRに比べ死亡率、脳卒中率とも明確に低い。他のイベントの頻度をみると、ペースメーカー植え込みが11.8%と6.7%、アクセスサイトの血管合併症が7.9%と0.7%とTAVIで多いが、新規発症の心房細動はSAVRで30.8%とTAVIの12.4%に比べてかなり高く、大出血・致死的出血は17.2% vs.4.3%でSAVRが圧倒的に多くなった。 本試験の特徴的なことは、COVID-19時代に行われたことによって医療アクセスが大きく制限され、死亡率が両群とも想定よりも高くなったことといえるだろう。医療アクセスが悪くなったことで、さまざまな心疾患の不調で死亡につながる事象が増えることを示していることは、働き方改革の実行によって医療アクセスが悪化することが予想されるわが国でも注目に値する。 このスタディ結果は、心臓外科手術が盛んなドイツであっても、他のTAVIに関する臨床試験と同様にSAVRに比べて安全性が劣ることがないことを証明しており、低リスク~中等度リスクの患者においてTAVIに対する安全性のエビデンスがより盤石となったといえる。すでに低リスク患者に対するTAVIとSAVRの無作為化試験は本試験以外に8つpublishされており、メタ解析を行うと全死亡、心臓死ともに有意にTAVIのほうが低いことが示されている2)。長期の耐久性においてもTAVI弁のほうが良い可能性すら示され、とくに弁口面積が大きく確保できるTAVI弁のほうが長期予後に有利なことすら示されつつある3)。ASに対する生体弁を使用する単独手術であれば、TAVIが可能な患者についてはTAVIを第1選択とすべき時代になった現在、このような臨床試験が繰り返されることは倫理的に許されない。すでにこの比較の決着はついている。まずは各国の診療ガイドラインをただちに変更すべきである。

5431.

第32回 起きたら麻痺、治療の選択肢は?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)脳梗塞の治療の選択肢と適応条件を理解しよう!2)Wake-up strokeのマネジメントを理解しよう!【症例】75歳男性。意識障害。普段であれば7時には起床するが、起きて来ないため奥さんが様子を見に行くと反応乏しく、救急要請。●来院時のバイタルサイン意識20/JCS血圧178/96mmHg脈拍89回/分(不整)呼吸20回/分SpO295%(RA)体温36.4℃瞳孔3.5/4 +/+右上下肢の麻痺を認める既往歴高血圧、脂質異常症内服薬定期内服薬なし脳卒中の現状脳卒中には大きく脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血が含まれますが、わが国で最も頻度が高いのは脳梗塞で全体の75%を占めます。この20年間で脳卒中診療は大きく変貌し、その中でも脳梗塞は血栓溶解療法、血栓回収療法の確立によって、症状、予後の劇的な改善を認める症例も珍しくありません。しかし、どちらの治療も時間的制限があるため、早期に脳梗塞を疑い、診断、治療へと繋げる必要があります。脳梗塞の治療の選択血栓溶解療法は、発症後4.5時間以内の脳梗塞が適応であるため、発症後明らかにそれ以上時間が経過している場合は適応外です。これに対し血栓回収療法は、当初発症6時間以内でしたが、いまでは16時間、24時間以内と適応症例の時間が延びています。もちろん、患者の基礎疾患やADLなども加味して治療を選択しますが、以前のように発症から4.5時間以内か否かではなく、血栓回収療法の適応があるか否かも判断できる必要があります。血栓回収療法の適応のある脳梗塞は、以前は内頸動脈や中大脳動脈などの主幹動脈閉塞で、DWI-ASPECTS≧6でしたが、最近では発症6時間以内であればASPECT3~5点の症例や後方循環系の脳梗塞にも拡大しています1-3)。詳細について本稿では割愛しますが、治療適応の症例が拡大傾向にあることを知り、可能な限り治療の選択肢を逃さぬようマネジメントする必要がありますWake-up stroke皆さん1日どれくらい寝ていますか? 8時間程度の睡眠時間を確保したいところですが、実際は6時間程度という方が多いのではないでしょうか。大多数の人が1日の約1/4~1/3を睡眠に費やしています。そのため、脳梗塞も就寝中に起きることは珍しくありません。睡眠中に脳卒中を発症し、起床時にその症状を初めて認識する状態を“wake-up stroke”と言います。Wake-up stroke症例は、血栓溶解療法や血栓回収療法の適応はないのでしょうか? 後者は前述の通り適応があることは理解できると思いますが、血栓溶解療法はどうでしょうか?Wake-up strokeの割合は、脳梗塞全体の14〜27%程度です4,5)。起床時からの症状で最終未発症時刻(最後に普段通りであった時間)が就寝前であれば、4.5時間以上の時間が経過しているため血栓溶解療法の適応はなしかというと、必ずしもそうとは限りません。朝方にトイレに行ったであろう物音を同居の家族が確認している、朝起きてこないため様子を見に行ったときには着替えた状態であったなど、発症からそれ程時間が経っていないことが示唆される場合もあります。このあたりを意識して病歴を確認するようにしましょう。また、最近ではMRI-DWI/FLAIR mismatchを利用し、血栓溶解療法の適応か否かを判断することもあります。MRIの拡散強調像(DWI)では脳梗塞発症30分〜1時間で高信号になりますが、FLAIRでは4〜6時間で陽性となります。この差を利用し、DWIで高信号であるもののFLAIRでは異常所見が確認できない場合には、発症から4.5時間以内と判断し、血栓溶解療法を考慮するわけです6)。冒頭の症例、就寝したのは22時前後のようですが、その後の経過は正確には把握できませんでした。奥さんの話では、トイレに行った音が聞こえたような…と曖昧な返答はあったものの、それのみでは発症時間は不明確ですよね。頭部CTでは特記異常所見を認めず、MRIを撮影し、血栓溶解療法を行うこととなりました。さいごに脳梗塞の治療はめまぐるしく進歩しています。脳卒中専門の施設では、脳梗塞の疑い症例に対して最先端の画像や人員を駆使して対応していることも多いとは思いますが、診療所や救急外来では限られた人数で並行して多くの患者さんを診ていることでしょう。医療者自身の対応の遅れによって、治療の選択を減らさないようにしましょう。1)日本脳卒中学会、ほか. 経皮経管的脳血栓回収用機器適正使用指針 第4版. 2020.2)Yoshimura S, et al. N Engl J Med. 2022;386:1303-1313.3)Xu J, et al. Stroke Vasc Neurol. 2023;8):1-3.4)Fink JN, et al. Stroke. 2002;33:988-993.5)Mackey J, et al. Neurology. 2011;76:1662-1667.6)日本脳卒中学会脳卒中医療向上・社会保険委員会静注血栓溶解療法指針改定部会. 静脈血栓溶解(rt-PA)療法適正治療指針 第3版.2019.

5433.

第211回  あの事件その後 女子医大は第三者委員会で調査開始へ、甲南医療センター研修医自殺事件は民事裁判で病院側が争う姿勢、東京医大入試裁判は贈賄側の控訴棄却

本連載で取り上げてきたいくつかの事件が矢継ぎ早に新たな展開こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ロサンゼルス・ドジャースの大谷 翔平選手の調子が上がってきました。1試合2本の本塁打が出た5月5日(現地時間)は、日本のテレビ各局も大騒ぎでした。そんな大谷フィーバーの中、今年、北海道日本ハムファイターズ(日ハムでは大谷選手の1年先輩)から米国に渡った上沢 直之投手が、4月28日にやっとメジャー昇格、ボストン・レッドソックスの一員となりました。5月2日のサンフランシスコ・ジャイアンツ戦、3日のミネソタ・ツインズ戦に中継ぎ登板し、ピッチクロック違反を取られるもののそこそこの投球を見せています(2試合で防御率2.25)。渡米前、「メジャーでは通用しないよ」と言われていた選手の活躍を見るのは楽しいものです。ニューヨーク・メッツ傘下3Aのシラキュース・メッツで悪戦苦闘する藤浪 晋太郎投手(現在、5試合連続失点で防御率14.09)とともに、上沢投手の今後にも注目したいと思います。さて、今回は、本連載で取り上げてきたいくつかの事件が連休前、矢継ぎ早に新たな展開を見せましたので、そのフォローをしておきたいと思います。警視庁が家宅捜索の東京女子医大、第三者委員会を設置し不正やガバナンス問題の有無を検証、学内では岩本理事長降ろしの動きもまず、「第207回 残された道はいよいよ身売りか廃校・学生募集停止か? ガバナンス崩壊、経営難の東京女子医大に警視庁が家宅捜索」で書いた東京女子医科大学(東京都新宿区)です。4月19日、同大は同窓会組織から勤務実態のない元職員に給与が不正に支払われていたとされる問題などを調べるため、第三者委員会を設置すると発表しました。弁護士4人で構成し、不正やガバナンス問題の有無なども検証、7月末にも報告をまとめる予定とのことです。4月25日付の朝日新聞は、「理事長不信、揺らぐ名門 特別背任容疑で捜索、東京女子医大」と題する記事を掲載、「同大病院で16年度に881人いた医師は22年度に645人と減少。22年度の病床稼働率は約5割で、3年前より約2割減った」と経営の苦境を伝えるとともに、「職員有志は岩本氏(岩本 絹子理事長)の辞任を求める署名活動をしており、大学側に提出する予定だ」と、岩本理事長降ろしの動きについても報じています。警視庁の捜査の行方とともに、第三者委員会がどのような報告を行うのか、病院経営はこの先大丈夫なのか、興味は尽きません。甲南医療センターの男性専攻医自殺の事件、病院側は「過重労働につながる事実は存在しない」として争う姿勢「第177回 『令和の米騒動』と神戸・甲南医療センター専攻医自殺・労災認定で感じた共通する“病根”(前編)」で書いた、公益財団法人甲南会・甲南医療センター(神戸市東灘区)の男性専攻医自殺の事件については4月22日、民事裁判が大阪地方裁判所で始まりました。NHKなどの報道によれば、病院側は「過重労働につながる事実は存在しない」などとして争う姿勢を示したとのことです。この事件、甲南医療センターで勤務していた男性専攻医(当時26歳)が2022年5月に自殺したことについて、2023年8月、西宮労働基準監督署(兵庫県)が「長時間労働で精神障害を発症したのが原因」として労災認定したことをマスコミが報道、表沙汰となりました。遺族は、男性専攻医が死亡した日までの1ヵ月の時間外労働が236時間に上るなど、心身の健康を損ねるおそれのある過重な働き方と知りながら病院側が業務を軽減するなどの対応を怠ったと主張、公益財団法人甲南会と法人の理事長で甲南医療センター院長も務める具 英成氏に約2億3,400万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。NHKなどの報道によれば、裁判で死亡した男性専攻医の母親は、「病院は息子が亡くなる前から労働基準監督署の指導を受け、ほかの医師が労働環境の改善を訴えていた」などと意見を述べたとのことです。これに対し病院側は、男性専攻医の労働について、「標準的かそれ以下の業務量で、過重労働につながる事実は一切存在しない」と主張。学会の準備などの自己研鑽についても、「病院にいる時間すべてが労働時間ではなく、自身で選択した研修に充てた時間は、労働と評価できない」として争う姿勢を示し、請求棄却を求めたとのことです。本連載の「第178回 『令和の米騒動』と神戸・甲南医療センター専攻医過労自殺・労災認定で感じた共通の“病根”(後編)多くの業務が自己研鑽扱いの同病院指針の中身」で書いたように、甲南医療センターでは「自らが術者である手術や処置等の予習や振り返りは自己研鑽」といった内容が盛り込まれた独自の「医師の時間外労働と自己研鑽についての指針」が運用されていました。診療や学会の準備などに追われる初期研修医や専攻医にとっては相当厳しいルールだったと言えます。今回の裁判では、自己研鑽の解釈や、労働との線引きが大きな争点になると思われます。その判決は、他の医療機関の医師の労務管理にも少なからぬ影響を及ぼしそうです。東京医大入試裁判、贈賄罪に問われた東京医科大元理事長らの控訴を棄却「第119回 『加点による合格は賄賂』、東京医大入試裁判で文科省元局長に有罪判決」などで取り上げてきた、東京医大入試裁判も進展がありました。私立大支援事業を巡る文部科学省汚職事件で、贈賄罪に問われた東京医科大元理事長、臼井 正彦被告(83)ら3人の控訴審判決が4月19日、東京高等裁判所であり、斉藤啓昭裁判長は3人を執行猶予付きの有罪とした一審・東京地裁判決を支持し、被告側の控訴をいずれも棄却しました。各紙報道によれば、被告側は上告する方針とのことです。2018年7月に発覚したこの事件は、その後の日本の医学部入試に多大な影響を及ぼしました。2022年7月の一審では、文部科学省の私立大学支援事業で東京医科大に便宜を図る見返りに、自分の息子を東京医科大に合格させてもらったとして、同省の元科学技術・学術政策局長、佐野 太被告(64)が受託収賄罪に問われ、懲役2年6ヵ月、執行猶予5年(求刑懲役2年6ヵ月)の判決が下りました。このとき、佐野被告の息子に対する入試の加点(2018年度の東京医大1次試験の点数に10点加点)や合格は贈賄にあたるとして、贈賄罪に問われたのが臼井被告らです。一審では同被告には懲役1年6ヵ月、執行猶予4年(同1年6ヵ月)、元学長の鈴木 衛被告は懲役1年、執行猶予2年(同1年)、受託収賄ほう助罪などに問われた医療コンサルタント会社元役員、谷口 浩司被告は懲役2年、執行猶予5年(同2年)が言い渡されました。今回の控訴審判決はこの3人のものです。なお、佐野被告も一審判決を不服として控訴しており、まもなく控訴審判決が出ることになります。臼井被告らの控訴棄却はその判決にも影響を及ぼすことは必至でしょう。なお、この東京医大入試事件、不正入試によって本来合格ラインにいたにもかかわらず不合格になった受験生を追加合格にする対応が取られたほか、女性らを入試で一律に不利に扱う不正があった東京医科大を2006~18年度に受験した女性らが大学に損害賠償を求める集団訴訟も起こされました。2023年5月の控訴審判決で東京高裁は、一審・東京地裁判決を一部変更し、本来合格だった4人を不合格としたことへの慰謝料を、一審の150万円から200万~300万円に増額。控訴した16人中15人に受験費用や慰謝料など計約2,085万円を支払うよう同大に命じています。ちなみに、10点加点され合格した佐野被告の息子はその後、東京医大に入学しています。彼は2021年3月に開かれた一審の公判では証人尋問に出廷、「加点がなくても合格していたにもかかわらず、裏口入学と言われ続けとても悔しい」と語ったそうです。入試が2018年ですから、順調に医学部を卒業していれば既に医師になっているはずです。

5434.

デュルバルマブ+化学療法、進行胆道がん患者の3年OS率を2倍に改善/AZ

 アストラゼネカは2024年4月23日付のプレスリリースで、第III相TOPAZ-1試験の最新の探索的結果にて、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)と標準治療である化学療法の併用療法により、進行胆道がん患者において3年経過時点の臨床的に意義のある長期の全生存期間(OS)ベネフィットが示されたことを発表した。 本結果は、進行胆道がんにおける第III相無作為化国際多施設共同試験で報告された最も長期にわたるOSの追跡調査結果であり、4月18日に2024年胆管がん財団会議(米国、ユタ州ソルトレークシティ)で発表された。 3年経過時点(追跡期間中央値41.3ヵ月)で、デュルバルマブ+化学療法の併用療法は化学療法単独と比較して、死亡リスクを26%低下させたことが示された(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.63~0.87)。OSの中央値は、併用療法の12.9ヵ月に対し、化学療法単独では11.3ヵ月。デュルバルマブを含むレジメンでは、3年経過時点で生存した患者の割合は、化学療法単独の2倍以上だった(14.6% vs.6.9%)。 TOPAZ-1試験においては、予定されていた中間解析で、2021年10月に主要評価項目であるOSの延長を達成し、併用療法は化学療法単独と比較して死亡リスクを20%低下させたことが示された(HR:0.80、95%CI:0.66~0.97、両側p値=0.021、本中間解析の統計的有意水準=0.03)。 デュルバルマブ+化学療法の併用療法の忍容性は引き続き良好であり、より長期間の追跡調査で新たな安全性上の懸念は認められなかった。デュルバルマブ+化学療法併用群の15.4%に治療関連の重篤な有害事象がみられたのに対し、化学療法単独群では17.3%であった。 韓国・ソウル国立大学病院の内科腫瘍専門医およびソウル国立大学医学部の教授で、本試験の治験責任医師であるDo-Youn Oh氏は次のように述べている。「TOPAZ-1試験の最新データでは、デュルバルマブと化学療法併用群において3年経過時点で化学療法単独群と比較して2倍の進行胆道がん患者が生存しており、これまで予後が悪かったこの疾患において、とくに意義ある進歩を示している。これらの結果は、この深刻な疾患の患者に対する標準治療としての、この免疫療法に基づく併用療法の長期的なベネフィットを裏付けている。」

5435.

統合失調症における服薬アドヒアランスと自傷暴力行為との関係~12年間コホート研究

 服薬アドヒアランスは、十分な治療効果を得るために重要である。しかし、服薬アドヒアランス不良と自傷行為との関連性については、あまり知られていない。中国・四川大学のChuanlong Zuo氏らは、外来統合失調症患者において服薬アドヒアランス不良が自傷暴力行為に及ぼす影響、およびこの関連性が用量依存的な関係を示すかを評価するため、本研究を実施した。BMC Medicine誌2024年3月25日号の報告。 中国西部の地域在住統合失調症患者29万2,667例を対象としたコホート研究を実施した。服薬アドヒアランスの指標として定期服薬の割合(PRM)を用いた。PRMは、フォローアップ期間中における抗精神病薬の定期的な服薬回数を投与期間で割り、算出した。服薬アドヒアランス不良と自傷暴力行為との関係の評価では、服薬アドヒランスは閾値0.8PRMの2値変数として指定し、用量依存的な関係の評価では、服薬アドヒアランスは5つのカテゴリと連続変数として指定した。交絡因子の制御および生存分析には、逆確率重み付けおよび混合効果Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・最終分析対象患者は、18万5,800例(平均年齢:47.49±14.55歳、女性の割合:53.6%)であった。・服薬アドヒアランス不良と自傷暴力行為との関係では、服薬アドヒアランス不良群(PRM<0.8)は、良好群(PRM≧0.8)と比較し、自殺リスクが低く(ハザード比[HR]:0.527、95%信頼区間[CI]:0.447~0.620)、非自殺的自傷行為(NSSI)リスクが高く(HR:1.229、95%CI:1.088~1.388)、自殺企図リスクが有意ではなかった。・用量依存的な関係の評価では、服薬アドヒアランスが最も低い群(PRM<0.2)は、自殺企図リスクの増加(HR:1.614、95%CI:1.412~1.845)、NSSIリスクの増加(HR:1.873、95%CI:1.649~2.126)、自殺リスクの減少(HR:0.593、95%CI:0.490~0.719)との関連が認められた。・他の服薬アドヒアランス不良群は、3つの自傷暴力行為すべてのリスクが低かった。・連続変数による服薬アドヒアランスと3つの結果との関係は、分類別の服薬アドヒアランスでの結果と一致していた。 著者らは、「服薬アドヒアランスは、自殺企図やNSSIリスク増加と関連していないことから、服薬アドヒアランスの改善は、完全な自殺予防につながるわけではないことが示唆された。さらに、中等度のアドヒアランスを有する患者では、自殺企図やNSSIの発生率が低かった」とし、「服薬アドヒアランスをより詳細に観察していく必要性だけでなく、服薬アドヒアランスが良好な統合失調症患者においても、自殺企図により注意を払う必要性がある」とまとめている。

5436.

慢性疾患治療薬のサロゲートマーカーでの効果判定、エビデンスの強さは?/JAMA

 非腫瘍性慢性疾患の治療薬に関して、米国食品医薬品局(FDA)の承認を裏付ける臨床試験の主要エンドポイントとして使用された代替マーカー(サロゲートマーカー)の半数以上が、この代替マーカーを用いて評価した治療効果と臨床アウトカムとの関連を検討したメタ解析が公表されておらず、少なくとも1つのメタ解析を確認したサロゲートマーカーも、その多くが臨床アウトカムとの関連について高い強度のエビデンスを欠いていることが、米国・エモリー大学のJoshua D. Wallach氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年4月22日号で報告された。代替マーカーを用いた臨床試験のメタ解析を系統的に要約 研究グループは、非腫瘍性慢性疾患の治療薬に関して、代替マーカーを用いて評価した治療効果と臨床アウトカムとの関連性の強さを検討した臨床試験のメタ解析(メタ解析、系統的レビューとメタ解析、統合解析)から得られたエビデンスの要約を目的に系統的レビューを行った(Arnold Ventures to the Yale Collaboration for Regulatory Rigor, Integrity, and Transparency[CRRIT]の助成を受けた)。 解析には、FDAの成人代替エンドポイント表(FDA Adult Surrogate Endpoint Table)に掲載され、2023年3月19日の時点でMEDLINEに登録されていた文献から得た32の固有の非腫瘍性慢性疾患の臨床試験で、主要エンドポイントとして使用されていた37の代替マーカーのデータを用いた。 これらの慢性疾患と代替マーカーの組み合わせには、たとえばアルツハイマー病におけるアミロイドβ、喘息における呼気1秒量(FEV1)、慢性腎臓病(CKD)における血清クレアチニン値、HIV-1における血清HIV抗体などが含まれた。59%で、代替マーカーで評価した効果とアウトカムの関連を検討したメタ解析がない 21の慢性疾患の22(59%)の代替マーカーについては、適格なメタ解析が同定できなかった。一方、14の慢性疾患の15(41%)の代替マーカーについては、少なくとも1つのメタ解析を特定した。メタ解析の総数は54件で、1つの代替マーカー当たりのメタ解析数の中央値は2.5件(四分位範囲[IQR]:1.3~6.0)だった。 また、1つのメタ解析に含まれた試験数中央値は18.5件(IQR:12.0~43.0)、患者数中央値は9万56例(2万109~17万14)であった。高い強度のrまたはR2を示したのは17% 54件(14件[26%]は製薬企業による助成を受けた)のメタ解析では、代替マーカーと臨床アウトカムの109件の組み合わせについて報告していた。 このうち少なくとも1つの相関係数(r)または決定係数(R2)の報告が行われていたのは59件(54%)で、少なくとも1つのrまたはR2が高い強度(r≧0.85またはR2≧0.72)に分類されていたのは10件(17%)であった。 これに対し、残りの50件(46%)では、傾き(slope)、効果推定値(effect estimate)、メタ回帰分析(meta-regression analysis)の結果のみを報告しており、このうち少なくとも1つの統計学的に有意な結果を示したのは26件(52%)だった。 著者は、「これらの知見は、FDAによる慢性疾患治療薬の承認に使用される可能性のある代替エンドポイントを支持するエビデンスの要約を、一般に公開することの重要性を強調するものである」としている。

5437.

CAR-T細胞療法、CD7陽性造血器腫瘍のハプロ一致HSCTの橋渡しに有望/NEJM

 再発・難治性の造血器腫瘍患者の治療において、ハプロタイプ一致の同種造血幹細胞移植(HSCT)への橋渡しとしてのキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法は、安全かつ有効で寛解を達成し、有害事象は重篤だが可逆的であり、従来の同種HSCTが適応とならないCD7陽性腫瘍の患者に対して実行可能な治療法となる可能性があることが、中国・浙江大学医学院のYongxian Hu氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年4月25日号に掲載された。中国の新たな一体型治療戦略を評価する症例集積研究 本研究は、再発・難治性のCD7陽性白血病またはリンパ腫の患者を対象に、CD7 CAR-T細胞療法とハプロタイプが一致したHSCTを逐次的に施行する、新たな一体型(all-in-one)の治療戦略の評価を目的とする症例集積研究である(中国国家自然科学基金委員会[NSFC]などの助成を受けた)。 CAR-T細胞療法により、血液学的回復が不完全な完全寛解となった患者に対し、薬剤による骨髄破壊や移植片対宿主病(GVHD)の予防薬を投与せずに、ハプロタイプ一致HSCTを実施した。CAR-T細胞療法後全例で汎血球減少、HSCT後3例でGVHD 10例(急性骨髄性白血病7例、T細胞性急性リンパ芽球性白血病2例、T細胞性リンパ芽球性リンパ腫[IV A期]1例)を登録した。登録時の年齢中央値は56.5歳(範囲:13.7~72.5)、女性が6例(60%)で、前治療コース数中央値は9.5(範囲:4~15)であった。 CAR-T細胞療法後に10例すべてが、血液学的回復が不完全な完全寛解となった。サイトカイン放出症候群が9例(Grade1:5例、Grade2:4例)で発生したが、いずれも抑制に成功した。全例にGrade4の汎血球減少を認めた。 ハプロタイプ一致HSCT後13日目に、1例がStaphylococcus haemolyticus感染による敗血症性ショックと、ヒトヘルペスウイルス6感染による脳炎により死亡した。8例で完全ドナーキメリズムがみられ、1例で自己造血回復が得られた。また、3例でGrade2のHSCT関連急性GVHDが発生した。60%が微小残存病変陰性の完全寛解を維持 CAR-T細胞療法後の追跡期間中央値は15.1ヵ月(範囲:3.1~24.0)であった。データカットオフ日の時点で6例(60%)が微小残存病変陰性の完全寛解を維持し、2例はCD7陰性白血病を再発した。 1年全生存率の推定値は68%(95%信頼区間[CI]:43~100)であり、1年無病生存率の推定値は54%(29~100)だった。 著者は、「この統合的な治療戦略は、CAR-T細胞と移植片対白血病の可能性の両面から抗白血病効果を最大化し、従来の同種HSCTが不適応の再発・難治性CD7陽性腫瘍の患者に対して実行可能な治療法を提供するものである」としている。現在、より大規模なコホートにおいて、CD7 CAR-T細胞療法とハプロタイプ一致HSCTを逐次的に施行する第I相試験が進行中だという。

5438.

2024年の医師のコロナワクチン、接種する/しないの二極化進む/医師1,000人アンケート

 新型コロナワクチンの全額公費による接種は2024年3月31日で終了した。令和6年度(2024年度)は、秋冬期に自治体による定期接種が開始される。定期接種の対象となるのは65歳以上、および60~64歳で心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される人、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な人で、対象者の自己負担額は最大で7,000円となっている。なお、定期接種の対象者以外の希望者は、任意接種として全額自費で接種することとなり、2024年3月15日時点の厚生労働省の資料によると、接種費用はワクチン代1万1,600円程度と手技料3,740円で合計1万5,300円程度の見込みとなっている1)。この状況を踏まえ、医師のこれまでのコロナワクチン接種状況と、今後の接種意向を把握するため、主に内科系の会員医師1,011人を対象に『2024年度 医師のコロナワクチン接種に関するアンケート』を4月1日に実施した。 Q1では、コロナの診療に現在携わっているかについて聞いた。「診療している」が79%、「診療していない」が21%だった。年代別で「診療している」と答えた割合は、40代(86%)、60代(83%)、30代(81%)の順に多かった。診療科別では、血液内科(94%)、呼吸器内科(94%)、救急科(92%)、総合診療科(90%)、腎臓内科(88%)、神経内科(88%)、内科(85%)、小児科(83%)、消化器内科(81%)、糖尿病・代謝・内分泌内科(80%)、臨床研修医(80%)の順に多かった。年齢が低い医師ほど、コロナに感染した割合が高い Q2では、これまでの新型コロナの感染歴を聞いた。感染したことがある医師は全体の45%、感染したことがない/感染したかわからない医師は55%であった。感染したことがある医師は年齢が低いほど、感染した割合が高く、20代は60%、30代は55%、40代は51%、50代は44%、60代は35%、70代以上は24%だった。臨床数別では、病床数が多いほうが感染した医師の割合が高く、20床以上で感染したのは49%、0~19床では34%だった。また、コロナ診療状況別では、コロナを診療している医師では47%、診療していない医師では37%に感染歴があった。昨年は20~40代の接種率が50%弱 Q3では、2023年秋冬接種でのXBB.1.5対応ワクチンの接種状況を聞いた。全体では「接種した」が58%、「接種していない」が42%だった。年代別で「接種した」と答えた割合は、多い順に70代以上(77%)、60代(72%)、50代(61%)、20代(50%)となり、30代(45%)と40代(48%)は50%未満であった。コロナ診療状況別の接種率は、診療している医師は62%、診療していない医師は46%であった。前年の傾向を引き継ぎ、接種する人と接種しない人の二極化進む Q4では、2024年度にコロナワクチンを接種する予定かどうかを聞いた。全体では「接種する予定」が33%、「接種する予定はない」が41%、「わからない」が26%となった。年代別では、「接種する予定」と答えた割合が過半数となったのは70代以上(56%)のみで、ほかは多い順に60代(44%)、50代(31%)、40代(28%)、20代(28%)、30代(23%)であった。30代では「接種する予定はない」が54%となり過半数を占めた。2023年コロナワクチン接種状況別で、2023年に接種した人では「2024年度に接種する予定」が53%、「2024年度に接種する予定はない」が16%となった。対して、2023年に接種していない人では、「接種する予定」が6%、「接種する予定はない」が74%となり、今回のアンケートで最も顕著な差が認められ、医師のなかでもコロナワクチンを接種する人と接種しない人の二極化が進んでいることがわかった。 Q5では、自身が受ける2024年度のコロナワクチンの費用は、病院負担か自己負担のどちらになるか、これまでのインフルワクチンなどの対応を踏まえ推測を交えて聞いた。「おそらく全額病院負担」が22%、「おそらく一部自己負担」が22%、「おそらく全額自己負担」が23%、「わからない」が33%となり、全体的に均等な割合となった。2024年度にワクチンを接種する予定の人のうち「全額病院負担」35%、「一部自己負担」29%、「全額自己負担」16%だったのに対し、接種する予定はない人は「全額病院負担」12%、「一部自己負担」20%、「全額自己負担」30%であった。ワクチンの必要性や高額な治療薬について、患者にどう説明するか Q6の自由回答のコメントでは、新型コロナに関して現在困っていることや知りたい情報を聞いた。主な回答は以下のとおり。ワクチンについて・ワクチンで感染予防が成り立たないのは明白。ただし重症予防は十分成り立っていたと思うので、高齢者と持病多い人は無料で受けられるようにしてほしい(40代、循環器内科)・接種の必要性をよく質問されるが、正直な所、自分も勧めてよいのか迷っている(40代、小児科)・今後新たに使用可能となるワクチンの種類とその効果など(60代、内科)・公費負担が終了すると被接種者は減少すると思われるが、今後の流行予測は?(70代以上、内科)・医療従事者のワクチン接種費用について(50代、内科)治療薬について・抗ウイルス薬の値段が高い事の説明をどうするか(60代、内科)・コロナ治療薬の処方が減り、対症療法が増えると思う(70代以上、内科)・抗ウイルス薬の適応と思われる患者さんが、高額のため投薬拒否された時のことを考えると頭が痛い(50代、消化器内科)流行状況、院内対策などについて・現在の感染状況の情報発信が少なくなり、新型コロナ感染症に対する世間の認識が乏しくなり、感染増加を招いていること(40代、呼吸器内科)・感染対策の立場として、職場での接種をどうするか悩んでいる(40代、感染症内科)・発熱外来の体制に悩んでいる(30代、呼吸器内科)・後遺症に関する診断(40代、呼吸器内科)アンケート結果の詳細は以下のページで公開中。2024年度 医師のコロナワクチン接種に関するアンケート

5439.

「バーチャル・バイオプシー」で非侵襲的な皮膚病変の生検が可能に?

 がんの可能性が疑われるほくろや皮膚病変のある人の多くは、生検に出す組織を採取するため、メスやかみそりによる切除に耐えなくてはならない。しかし近い将来、非侵襲的な「バーチャル・バイオプシー」と呼ばれる方法によって皮膚組織をスキャンするだけで、そこにがん細胞が含まれているかどうかを見極められるようになる可能性のあることが、米スタンフォード大学構造生物学准教授のAdam de la Zerda氏らの研究で示唆された。この研究結果は、「Science Advances」4月10日号に掲載された。 論文の共著者で同大学皮膚科学准教授のKavita Sarin氏は、「この手法は臨床現場における皮膚病変や皮膚疾患の診断やモニタリングのあり方を変える可能性を秘めている」と同大学のニュースリリースの中で述べている。 生検では通常、採取された組織を薄くスライスし、細胞のパターンや形、構造を強調する薬品で処理する。このようなスライドの作成には多大な労力を要するだけでなく、生検組織に不可逆的なダメージを与える。例えば、生検組織を一方向にスライスしてしまうと、別の方向にスライスして観察することはできない。 今回報告された新しい方法には、通常、眼科医が目の奥を検査するために使用する光干渉断層撮影(OCT)を他の臓器にも使えるようにした技術が用いられている。この新しい検査方法では、まず、レーザーの光波が人体組織からどのように跳ね返るかを測定する。これは、音波を使って臓器を可視化する超音波検査の仕組みと同様だという。このようにして得られた2次元の画像を、訓練済みの人工ニューラルネットワークに処理させることで、病理組織学的診断で得られるようなH&E(ヘマトキシリン・エオジン)染色を行った組織標本の特徴を持つ画像が生成される。 論文の上席著者であるde la Zerda氏は、「われわれは、多くの疾患の診断で用いられている標準的な病理スライド画像の代わりとなり得るOCT画像を作っただけでなく、スキャンの解像度を大幅に向上させ、他の方法では見ることが極めて困難な情報を得られるようにした」と話す。同氏は続けて、「われわれは画像の質を徐々に向上させ、組織のより細部まで見えるようにした。そのようにして生成されたOCT画像は、何を表示できるかという点で、病理スライドにかなり近いものになった」と言う。実際、スタンフォード大学の3人の皮膚科医にOCT画像と病理スライドをランダムに組み合わせて見せたところ、どちらを使っても同程度の精度で細胞構造を捉えることができたという。 この新技術があれば、皮膚科医は患者の皮膚にできた異常な斑点が、その後、増殖したり変化したりするかどうかを見極めてから対処する必要がなくなるとde la Zerda氏は説明する。同氏は、「医師が診察室でOCTカメラを取り出し、患者の皮膚にある一つ一つのほくろの中の細胞を画像化できる可能性を想像してみてほしい」と話す。 さらにこのOCTの技術は、がんの手術にも同様の利点をもたらす可能性がある。研究グループは、乳がん患者の約20%で初回手術ではがんを完全に取り除くことができず、2回目の手術が必要になることを指摘。手術室で生成されるOCT画像は医師が見逃したがん細胞を検出するため、追加の手術を回避するのに役立つ可能性があるとしている。

5440.

心房細動の再発に歯周病が関与?

 心房細動のアブレーション治療後の再発に、歯周病が関与していることを示唆するデータが報告された。アブレーション治療のみを受けた人に比べて、歯周病の治療も受けた人では、心房細動の再発が61%少なかったという。広島大学保健管理センターの宮内俊介氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に4月10日掲載された。同氏は、「歯周病の適切な管理は心房細動の予後を改善する可能性があり、その恩恵を受ける人が世界中に多数存在しているのではないか」と述べている。 心房細動は不整脈の一種で、自覚症状として動悸やめまいなどを生じることがある。ただしより重要なのは、心臓の中に血液の塊(血栓)が形成されやすくなるために、その血栓が脳の動脈に運ばれて脳梗塞が起きてしまうリスクが高い点にある。このタイプの脳梗塞は梗塞の範囲が広いことが多く、重症になりやすい。人口の高齢化を背景に心房細動が増加しており、米国では2030年までに患者数が1200万人以上に達すると予測されている。心房細動に対する治療としては、不規則な心拍を引き起こす原因となっている箇所を焼灼する、血管カテーテルを用いたアブレーション治療という手法が普及してきている。 一方、口の中の健康状態が全身の健康状態と関連のあることが知られている。しかしこれまでのところ、歯周病が心房細動のリスク因子の一つとは認識されていない。宮内氏らはこの点について、前向き非無作為化試験により検討した。研究参加者は、アブレーション治療を受けた心房細動患者288人。このうち97人が、アブレーション治療後に歯周病の治療も受けることに同意していた。 アブレーション治療から507±256日の追跡で、70人(24%)が心房細動を再発した。交絡因子を調整後、歯周病の治療を受けた患者群はアブレーション治療のみを受けた患者群に比べて、心房細動の再発リスクが約6割低いことが明らかになった〔ハザード比(HR)0.393(95%信頼区間0.215~0.719)〕。また、心房細動を再発した群は再発しなかった群に比べて、歯周病の重症度が高かった〔炎症のある歯周組織の面積(PISA)が456.8±403.5対277.7±259.0mm2(P=0.001)〕。 この結果について宮内氏は、「歯周病治療が心房細動の再発リスクを大きく下げる可能性が示されたことに驚いた」と語っている。米国心臓協会(AHA)によると、「炎症が起きている歯周組織から、細菌が血液中に侵入して全身に慢性的な炎症が生じる。その結果、2型糖尿病リスクが高まるとともに、心臓や脳の血管の炎症を介して動脈硬化が進行し、心臓発作や脳卒中の発症に至る可能性がある」という。ただし、心房細動のリスクに影響が生じるメカニズムは不明であり、宮内氏らはその点の解明のための研究を進めていることを、AHA発のリリースの中で述べている。また研究者らは、「心房細動の患者に対して歯周病の検査と治療を受けることを推奨すべきだ」と提案している。

検索結果 合計:35138件 表示位置:5421 - 5440