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第99回 精巣にもすでにナノプラスチックが侵入

頸動脈だけではなかった以前、記事でも紹介したように、プラスチックの細片のうち、大きさが1μm~5mmのものをマイクロプラスチック、より小さくnm(ナノメートル)レベルのものをナノプラスチックと呼び、MNPs(Microplastics and Nanoplastics)と総称します。ペットボトル内にも存在することから、上記の頸動脈プラークへの侵入は衝撃的なニュースでした。私たち人類がどのようにしてプラスチックと向き合っていくのか、議論が必要になります。さて、MNPsはどこにでも存在することから、ヒトの生殖系に影響を与えるのではないかという話も当然出てくるわけです。イヌとヒトの精巣におけるマイクロプラスチックの頻度や組成を調べた研究が報告されました1)。この研究は、熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析計を使って、イヌの精巣47個とヒトの精巣23個に含まれる12種類のマイクロプラスチックを定量化したものです。残念ながら、いずれの精巣にもマイクロプラスチックの存在が明らかになりました。マイクロプラスチックの平均含有量はイヌ122.63μg/g、ヒト328.44μg/gという結果だったのです。ヒトとイヌの両者とも、主要なポリマータイプの割合は類似していて、最も多いのはポリエチレン(PE)でした。さらに、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレンテレフタラート(PET)のような特定のポリマーと精巣重量との間には負の相関が観察されました。共存か削減・撤廃かもしかすると、男性の生殖能力にもMNPsはすでに影響を及ぼし始めているのかもしれません。ただ、プラスチックというのは人類にとってすでに長い付き合いになっている物質ですから、実はもううまく共存できていて、そこまで悪影響がないという結論になるかもしれませんし、中長期的には削減・撤廃していかないとまずいという結論になるかもしれません。都市部では、管理がうまくできていないプラスチック廃棄物が多いほどMNPsが多いというデータもあり2)、取り組むことになるなら、人口が多い地域ほど優先的に、ということになります。ただ、利便性を捨てて多大なコストをかけるほどのメリットが人類にあるのかどうかも、まだはっきりしていません。参考文献・参考サイト1)Hu CJ, et al. Microplastic presence in dog and human testis and its potential association with sperm count and weights of testis and epididymis. Toxicol Sci. 2024 May 15:kfae060.2)Talang R, et al. Influencing factors of microplastic generation and microplastic contamination in urban freshwater. Heliyon. 2024 Apr 25;10(9):e30021.

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タンパク質摂取量とアルツハイマー病との関連

 医療技術の進歩に伴い、疾患の構造は、急性疾患からアルツハイマー病(AD)などの慢性疾患に移行しつつある。その結果、疾患の発症だけでなく、健康寿命への潜在的な影響についての評価の必要性が高まっている。味の素株式会社のKazuki Fujiwara氏らは、ADの障害調整生存年(AD-DALY)率とタンパク質摂取量との関連を、性別および年齢グループごとに評価した。Nutrients誌2024年4月19日号の報告。 1990〜2019年の世界の疾病負担研究および日本の国民健康・栄養調査の公開データより抽出した、60代および70代以上の男女の代表値を分析に使用した。AD-DALY率とタンパク質摂取量との関連性を評価するため、相関分析を行い、重回帰モデルを層別化した。さらに、層別重回帰モデルを用いて、タンパク質摂取量の変化に伴うAD-DALY率の変化をシミュレートした。 主な結果は以下のとおり。・AD-DALY率とタンパク質摂取量は、すべての性別および年齢グループにおいて、有意な負の相関を示した。・層別重回帰モデルでは、女性において、タンパク質摂取量の増加とAD-DALY率の低下との間に有意な関連が認められた。・シミュレートでは、タンパク質摂取量が1.5g/kg/日まで増加すると、AD-DALY率は2019年と比較し、5〜9%減少した。・しかし、動物および植物性タンパク質の摂取量とAD-DALY率との関連性は、性別および年齢グループにより異なることが示唆された。 著者らは、「平均タンパク質摂取量を推奨範囲内で増加させることにより、AD-DALY率を改善可能であることが示唆された」としている。

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島根県の呼吸器診療の未来を支えるクラウドファンディングを開始/島根大学

 島根大学医学部 呼吸器内科が中心となり「島根県の呼吸器診療の未来を支えるクラウドファンディング」を開始した。進む高齢化、不足する呼吸器専門医 島根は全国的にも高齢化が進んでいる県であり、令和4年の高齢化率は34.7%で全国第7位である1)。高齢者は免疫機能が低下していることもあり、感染症やがんなど呼吸器疾患の発症率も高い。それに対して、島根では全県的に呼吸器専門医が不足しており、地域によっては専門医がいないという深刻な状況だ。このまま地域の呼吸器専門医が不在の状態が続くと呼吸器診療体制が形成できず、早期診断、疾患予防の輪が広がらないとされる。 そのような中、島根大学医学部の呼吸器内科教授である礒部 威氏をプロジェクトリーダーとして、「呼吸器専門医の育成」「非専門医師の呼吸器疾患の知識向上」「一般の方むけの啓発」をサポートするクラウドファンディングがスタートした。難易度高い呼吸器専門メディカルスタッフの育成 高齢者は複数の慢性疾患を抱えていることが多い。高齢者が多い島根では「内科全般の知識を有する」呼吸器専門医の育成が重要な課題だ。また、呼吸器専門医の診療範囲は、感染症、がん、気管支喘息、睡眠時無呼吸症候群など多岐に及ぶ。専門性の維持・向上には、多くの専門資格の取得を目指してキャリアを積んでいく必要がある。 そのため、呼吸器専門医を目指すには、研修や学会への参加、自己研鑽が必要となる。医師の金銭的、時間的な負担は大きい。クラウドファンディングの資金で、県内の呼吸器研修医がアクセス可能なITを活用した講習会セミナーを開く予定だ。非専門医への呼吸器疾患を啓発して診療連携 呼吸器疾患は早期発見が重要となる。そのためには呼吸器専門医と非専門医の連携が重要である。非専門医の最新の呼吸器疾患の知識の補充は欠かせない。とはいえ、多忙な診療の中、専門外の知識を学習するのは容易ではない。クラウドファンディングで、非専門医が呼吸器疾患の情報をキャッチアップできるHPを作成する。呼吸器疾患の予防にカギとなる一般大衆の知識向上 呼吸器疾患は禁煙、ワクチン、検診など予防が効果的であり、一般大衆の疾患知識は予防に重要である。しかし、実際は呼吸器疾患やその予防について学ぶ機会はほとんどない。 また、高齢化が進む島根県においては、適正な医療を提供しQOLを向上するため「高齢者機能評価」の普及が重要である。 一般大衆の呼吸器疾患の予防医学や高齢者機能評価の必要性について知識を得る機会を増やすため、市民公開講座などの啓発活動もクラウドファンディングで集まった資金を使って積極的に行っていきたいという。・目標金額:400万円・資金使途:生涯教育支援費用、広報用HP作成、Zoom使用料 、啓発活動、事務局人件費・運営費、クラウドファンディング手数料 など

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前立腺全摘除術後放射線療法、ADTなしvs.短期ADT/Lancet

 前立腺全摘除術後の前立腺床に対する放射線療法後に転移がみられることはまれであるが、放射線療法に6ヵ月のアンドロゲン除去療法(ADT)を追加しても、ADTを行わない場合と比較して無転移生存期間(MFS)は改善しないことが示された。英国・The Institute of Cancer ResearchのChris C. Parker氏らRADICALS investigatorsが、カナダ、デンマーク、アイルランド、英国の121施設で実施された無作為化非盲検試験「RADICALS-HD試験」の結果を報告した。これまで、中間および高リスクの限局性前立腺がんに対しては、放射線療法とともに術後補助療法として短期間のADTを行うとMFSが改善することが示されていたが、前立腺全摘除術後の放射線療法とADT併用の有用性は不明であった。Lancet誌オンライン版2024年5月16日号掲載の報告。RT単独とRT+ADT6ヵ月間でMFSを比較 RADICALS-HD試験は、前立腺がんに対する術後放射線療法と併用するADTの有効性を検証する国際第III相ランダム化比較試験である。 研究グループは、前立腺全摘除術後の放射線療法の適応があり、前立腺特異抗原(PSA)が5ng/mL未満で転移病変がなく書面による同意が得られた患者を、放射線療法(RT)単独群、RT+6ヵ月間のADT(短期ADT)併用群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。層別因子は、グリソンスコア、断端陽性、放射線療法の時期、予定された放射線療法のスケジュール、予定されたADTの種類であった。 ADTは、無作為化後2ヵ月以内に開始し、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アナログを、通常は月1回皮下投与が推奨された。加えて、GnRHアナログ初回投与の1週間前から抗アンドロゲン薬を3週間投与した。カナダ以外では、ビカルタミド単剤150mg連日経口投与、またはデガレリクス月1回皮下投与も許容された。 主要評価項目はMFSで、前立腺がんの遠隔転移またはあらゆる原因による死亡と定義し、無作為化の層別因子による層別log-rank検定により群間比較を行った(ITT解析)。 本試験は当初、RT単独群vs.短期ADT併用群vs.24ヵ月のADTを併用する長期ADT併用群の3群割り付け(1対1対1)、または、RT単独群vs.短期ADT併用群(1対1)と短期ADT併用群vs.長期ADT併用群(1対1)の2通りの2群割り付けのいずれかを選択するようになっていた。しかし、3群割り付けを選択した患者は少数であったことから、途中で2群比較の2試験として実施された(短期ADT併用群vs.長期ADT併用群の結果は別途報告)。最終的に、10年MFS率が80%から86%に増加(ハザード比[HR]:0.67)することに関する試験の検出力は80%(両側α値5%)であった。追跡期間中央値9.0年においてMFSに有意差なし 2007年11月22日~2015年6月29日に、計1,480例(年齢中央値66歳、四分位範囲[IQR]:61~69歳)がRT単独群(737例)または短期ADT併用群(743例)に割り付けられた。1,480例のうち、330例は当初の3群割り付けで無作為化された症例であった(3群割り付けでの長期ADT併用群の症例は解析から除外)。追跡調査は2021年12月31日に終了した。 追跡期間中央値9.0年(IQR:7.1~10.1)において、MFSイベントは計268例報告された(RT単独群142例、短期ADT併用群126例)。HRは0.886(95%信頼区間[CI]:0.688~1.140、p=0.35)であり、短期ADT併用によるMFSの改善は認められなかった。 10年MFS率は、RT単独群79.2%(95%CI:75.4~82.5)、短期ADT併用群80.4%(76.6~83.6)であった。 Grade3以上の有害事象の発現率は、RT単独群17%(121/737例)、短期ADT併用群14%(100/743例)であり、治療関連死は報告されなかった。

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超急性期脳卒中、救急車内での降圧治療は有効か?/NEJM

 急性期脳卒中が疑われる血圧高値の患者において、病院到着前に救急車内で降圧治療を行っても機能的アウトカムは改善しない。中国・同済大学のGang Li氏らが、同国51施設で実施した無作為化非盲検試験「INTERACT4試験」の結果を報告した。本試験では、病院到着後に対象患者の46.5%が脳出血と診断された。虚血性か出血性か病型判別前の急性期脳卒中の治療は困難で、救急車内の超早期血圧コントロールが、未診断の急性期脳卒中患者のアウトカムを改善するかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2024年5月16日号掲載の報告。発症後2時間以内、収縮期血圧150mmHg以上の脳卒中疑い患者を対象に試験 研究グループは、FASTスコア(顔[顔面下垂]、腕[上がらない]、言語[言葉が不明瞭]、時間[救急車を呼ぶまでの時間])が2以上(範囲:0~4、スコアが高いほど症状が強いことを示す)、収縮期血圧150mmHg以上、症状発現後2時間以内の急性期脳卒中が疑われる成人患者を、救急車内でただちに降圧治療を行う群(介入群)と、病院到着後に血圧管理を開始する群(通常ケア群)に、地域(中国の東部vs.西部)、年齢(65歳以上vs.65歳未満)、FASTスコア(3点以上vs.2点)を層別因子として無作為に割り付けた。 介入群では、救急車内でウラピジル25mgを1分間でボーラス投与し、収縮期血圧が130~140mmHgに低下しない場合は、5分後に1回のみ同用量を再投与した。 有効性の主要アウトカムは、無作為化後90日時点の修正Rankinスケールスコア(範囲:0[症状なし]~6[死亡])の分布で評価した機能的アウトカムで、ITT集団を解析対象とした。安全性アウトカムは、重篤な有害事象であった。降圧治療の開始、救急車内と病院到着後で全体では機能的アウトカムに差はなし 2020年3月20日~2023年8月31日に計2,425例が無作為化され、同意撤回等を除く2,404例(介入群1,205例、通常ケア群1,199例)がITT集団となった。 患者背景は、平均年齢70歳、発症から無作為化までの時間の中央値は61分(四分位範囲[IQR]:41~93)、無作為化時の平均血圧は178/98mmHgであった。病院到着後に画像検査で脳卒中と確定診断されたのは2,240例で、そのうち1,041例(46.5%)が脳出血(脳内出血1,029例、くも膜下出血12例)、計1,199例(53.5%)が脳梗塞(頭蓋外または頭蓋内のアテローム性または心塞栓症による脳梗塞907例、一過性脳虚血発作53例)であった。また、病院到着時の平均収縮期血圧は、介入群158mmHg、通常ケア群170mmHgであった。 無作為化後90日時点の修正Rankinスケールスコアの分布について、両群間に有意差は認められなかった(機能的アウトカム不良の調整共通オッズ比[OR]:1.00、95%信頼区間[CI]:0.87~1.15)。 サブグループ解析の結果では、機能的アウトカム不良の調整共通ORは脳出血患者では低く(0.75、95%CI:0.60~0.92)、脳梗塞患者では高かった(1.30、1.06~1.60)。ただし同解析は階層的統計解析計画には含まれていなかったため、著者は「これらの関連について結論付けることはできない」としている。 重篤な有害事象の発現率は、介入群27.5%、通常ケア群28.7%であり、両群で同程度であった。

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働き盛りに発症が多いIBDには社会の理解が必要/ヤンセン

 ヤンセンファーマは、5月19日の「世界IBD(炎症性腸疾患)デー」に合わせIBD患者の就労上の課題、その解決に向けた取り組みの啓発にメディアセミナーを開催した。 IBDは小腸や大腸の粘膜に慢性炎症や潰瘍を引き起こす国の指定難病で、現在国内には患者が約29万人いると推定される。発症年齢のピークは男女ともに10代後半~30代前半で、治療と仕事の両立が患者にとっては課題となる。 メディアセミナーでは、専門医による治療と仕事の両立での課題、患者視点による就労上の問題や患者アンケ―トの結果、ヤンセンファーマが推進する「IBDはたらくプロジェクト」で行なったIBD患者の就労に関する調査結果などが講演された。IBD治療と仕事の両立に必要なのは社会のサポート 「IBD患者さんがはたらき続けるために」をテーマに小林 拓氏(北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター センター長)が、IBD疾患の概要や診療、働き世代の患者フォローについてレクチャーを行った。 IBDは消化管に起こる炎症疾患の総称を指すが、感染性や薬剤性などの特異性と、主にクローン病や潰瘍性大腸炎などの非特異性の2つに大別される。この非特異性の両疾患は社会的によく知られており、現在では継続的な治療と日常のケアで良い状態を維持することができるようになっている。 環境要因、遺伝的要因、腸内細菌、免疫応答の4つがIBDの要因として考えられ、その患者数は急激に増加しており、両疾患ともトータルで約29万人(400人に1人)近くの患者が推定されているほか、患者分布では、いわゆる働き盛り世代の30~40歳代に多いとされる。そのため、いかに仕事を続けつつ、治療継続ができる環境作りを社会が構築できるかが重要となる。 クローン病、潰瘍性大腸炎の共通症状として「下痢」「血便」「腹痛」があり、クローン病では「体重減少」「発熱」「肛門の異常」などの症状が、潰瘍性大腸炎では「便意切迫」「貧血」などの症状がみられ、患者としては隠しておきたい症状が並ぶ。そして、これらは寛解と再燃を繰り返しながら慢性の経過をたどるために、継続的な治療と定期的な通院が必要となる。再燃の原因は、個々の患者で異なり、その原因は現在も不明である。 治療では、炎症を抑えるステロイド、5-ASA製剤、生物学的製剤、JAK阻害薬、インテグリン阻害薬などの経口薬、注射薬などの薬物療法、消化管の狭窄を広げる内視鏡的バルーン拡張術、外科手術が行われ、クローン病では栄養療法も行われている。また、患者が日常生活で気を付けることとして、食事、適量のアルコール、妊娠・出産、仕事、運動などがあるが、とくに「たばこ」についてはクローン病で悪化、再燃する可能性があり、注意が必要されている。 患者の労働環境につき小林氏は、「職場に潰瘍性大腸炎と言えず悪化した例」「クローン病ゆえに進学・就職などができなかった例」「潰瘍性大腸炎の治療を中断して悪化、入院した例」「クローン病の発症で就業制限された例」「潰瘍性大腸炎で大腸を摘出し、その後のQOLに影響が出た例」と5つの症例を示した。症例で共通していることは、いずれも人生で重要なステージである10~20代でIBDを発症したことで、進学や就職に多大な影響が出ていることであり、社会的な疾患への理解の必要性を訴えた。 最後に小林氏は、「難病のある人の雇用管理マニュアル」から治療と仕事の両立について資料を示し、難病でも仕事を無理なく続けられている人は3割に過ぎず、7割の人は仕事が続けられないか、病気に配慮のない環境で働いていることを示すとともに、「IBDは適切な治療で寛解を維持できれば、仕事や生活で制限はないので、『通院ができる』などの環境作りをサポートしてもらいたい」と語り、レクチャー終えた。患者の約6割が就職・転職で困っている IBDネットワークの就労特任理事の仲島 雄大氏が「難病と就労の両立~当事者が話す、病気と付き合いながら働くということ」をテーマに、患者視点からIBD患者の悩みやアンケート結果などを説明した。 仲島氏は、病歴32年の潰瘍性大腸炎患者であり、自身の体験から患者は外面から難病と理解してもらえず困っていること、病状も寛解と再燃を繰り返すことが悩みであり、常に将来への不安がつきまとうなどと語った。同ネットワークが行った会員へのアンケ―ト(n=64)によると発症は20~29歳が1番多く、働き方は会社員が最多で、重労働に従事している人も1割いた。長く働き続けられる理由としては、「職場の配慮」が1番多く、スムーズに受診をさせてもらえる仕組みが重要だった。仲島氏は、「今後はこうした内容を含め小冊子を作成する予定」と展望を語った。 ヤンセンファーマの村崎 仁美氏(メディカルアフェアーズ本部)が、同社が行った「IBD患者さんの抱える就労における課題-調査結果より」について、概要を説明した。 アンケートは2023年11月に実施され、クローン病または潰瘍性大腸炎と診断され、薬物治療を受けつつ、フルタイムで働いている男女の患者200人に行われた。 「就職・転職活動中の苦労や困ったこと」では、55.9%の人が「苦労や困ったことがあった」と回答し、「困ったこと、悩んだこと」の中でも「病気のことを伝えるかどうか悩んだ」という事項が1番多かった。 「病状悪化(再燃)による仕事への影響」では、全体で「急な欠勤をした」が1番多く、「仕事のスケジュールを変更した」、「休職した」の順で多かった。とくに症状が中等症以上の人はこれらの比率が高かった。 「治療と仕事の両立」では、全体で70%の人ができていたが、症状が中等症以上の人では53.3%と比率は下がった。 「自分らしく働くために必要なこと」では、「周囲(社会)の理解」が49.0%、「行政による支援」が39.0%、「医師の支援」が18.5%の順で多かった。 「IBDであることを伝えるか」では、「職場の人に伝えている」が80.0%、「直属の上司」が43.5%、「とくに気にせず伝えている」が28.5%の順で多かった。

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人間の「脳内コンパス」の場所を特定か

 人間には、「脳内コンパス」ともいうべき、迷子にならないようにするための脳活動パターンがあることを突き止めたと、英バーミンガム大学心理学分野のBenjamin Griffiths氏らが報告した。Griffiths氏らは、空間の中での自分の位置を把握してナビゲートするために使用する体内のコンパスを人間の脳内で初めて特定したと話している。詳細は、「Nature Human Behaviour」に5月6日掲載された。この発見をきっかけに、アルツハイマー病やパーキンソン病といったナビゲーション機能や見当識がしばしば損なわれる疾患について解明が進む可能性がある。 Griffiths氏は、「自分が向かっている方向を把握することは非常に重要だ。自分がいる場所や向かっている方向に少しでも誤差があると悲惨なことになり得る」と言う。さらに同氏は、「鳥、ネズミ、コウモリなどの動物には、正しい方向に進むための神経回路があることが知られている。しかし、人間の脳が実世界でどのように対処しているのかについて分かっていることは驚くほど少ない」と話す。 人間の脳活動を追跡するためには、通常、被験者ができるだけ静止していることが求められる。しかし今回の研究では、52人の参加者を対象に、脳波(EEG)を測定する携帯型のデバイスとモーションキャプチャを使って、動き回る人々の脳波と頭部の動きを分析した。研究参加者は、頭部に携帯型EEGデバイスを装着した状態で、複数のコンピューターのモニターからの指示に応じて頭や目を動かし、その間の脳活動がEEGデバイスにより測定された。また、てんかんなどの脳の疾患のモニタリング目的で脳に電極を埋め込んだ別の10人の参加者にも同様の実験を実施した。 その結果、脳後部の中心領域できめ細かく調整された頭の方向に関する信号が確認された。また、その信号は、対象者が別の方角に頭を向ける直前に検出され、頭の向きの変化を予測できる特有のパターンを持っていることも明らかになった。Griffiths氏は、「これらの信号を読み取ることで、脳がどのようにナビゲーション情報を処理するのか、また、これらの信号が視覚的な目印など他の手がかりとどのように連動するのかに焦点を合わせることができる」と説明する。 また、Griffiths氏は、「われわれのアプローチは、これらの機能についての研究に新たな道を開くものであり、神経変性疾患の研究や、ロボット工学および人工知能(AI)におけるナビゲーション技術の改善にもつながる可能性がある」と付け加えている。 今後の研究についてGriffiths氏は、「今回の研究で得られた知見からさらに一歩進め、脳が時間をどのようにナビゲートしているのか、また、そのような脳の活動が記憶に関連しているのかどうかを解明することになるだろう」と話している。

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血液がん患者のICU退室後1年の生存率は21%

 集中治療室(ICU)に入室した血液がん(HM)患者の7日生存率は49%、12カ月生存率は21%であるという研究結果が、「Intensive Care Medicine」に3月11日掲載された。 トロント大学マウントサイナイ病院(カナダ)のLaveena Munshi氏らは、2018~2020年にICUに入室したHM患者を対象に、前向き観察研究を実施した。生存者は長期生存と機能的転帰について追跡された。 患者414人が登録され、そのうち急性白血病患者が51%、リンパ腫・多発性骨髄腫患者が38%、造血幹細胞移植(HCT)を受けた患者は40%であった。解析の結果、ICU入室の最も一般的な理由は、急性呼吸不全と敗血症であった(それぞれ50%、40%)。退室後7日時点に生存していた対象者(ICU生存者)は、49%であった。コホート全体の12カ月生存率は21%であった(ICU生存者では43%)。生存者のうち、中等度から重度のフレイルの有病率は、7日時点で42%、6カ月時点で14%、12カ月時点で8%であった。機能的自立指標の中央値は7日目で80であった。6カ月時点および12カ月時点の身体機能、疼痛、社会機能、メンタルヘルス、精神的ウェルビーイングは、年齢および性別でマッチさせた一般集団のスコアを下回っていた。12カ月生存率の低下は、フレイル、同種HCT、腎障害、ICU入室中の心臓合併症と関連していた。 著者らは、「重症疾患とがんの複雑な相互作用を鑑みると、重症疾患がHM/HCT患者の長期生存に影響を及ぼす可能性があることが示された」と述べている。

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セマグルチド投与で心不全患者の利尿薬必要量が減少

 心不全患者の体内には水分がたまりやすいため、過剰な水分を排出する作用のあるループ利尿薬がしばしば処方される。こうした中、画期的な肥満症治療薬であるセマグルチド(商品名ウゴービ)によって利尿薬の必要性を減らせる可能性のあることが、肥満を伴う収縮機能が保たれた心不全(HFpEF)患者を対象とした臨床試験のデータの解析で示された。米ジョンズ・ホプキンス大学医学部准教授のKavita Sharma氏らによるこの解析結果は、欧州心臓病学会(ESC)による欧州心不全学会(Heart failure 2024、5月11~14日、ポルトガル・リスボン)で発表され、「European Heart Journal」に5月13日掲載された。 ESCのニュースリリースによると、心不全の代表的なタイプの一つであるHFpEFでは、全身に血液を送り出す心臓のポンプ機能は正常に保たれているものの、筋肉が硬くなって広がりにくくなる。そのため、全身から心臓に血液が戻りにくくなり、全身が必要とする酸素を豊富に含んだ血液を送り出すことができなくなるという。 Sharma氏らは今回、肥満(BMI 30以上)だが糖尿病のないHFpEF患者529人を対象としたSTEP-HFpEF試験と、肥満で糖尿病のあるHFpEF患者616人を対象としたSTEP-HFpEF-DM試験の二つの臨床試験の参加者(計1,145人)のデータを統合して解析した。試験開始時点で利尿薬を使用していなかったのは220人で、223人がループ利尿薬以外の利尿薬、702人がループ利尿薬を使用していた。参加者は52週間にわたって週1回、セマグルチド2.4mgまたはプラセボを皮下注射する群にランダムに割り付けられていた。 その結果、セマグルチド群ではプラセボ群に比べて、心不全に関連した症状や身体的制限に関する標準的な評価尺度であるカンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS)の改善度が大きく、特に利尿薬使用患者で大きな改善が認められた(プラセボ群と比べたKCCQ-CSSの平均差は、利尿薬使用患者で+9.3、利尿薬非使用患者で+4.7)。また、試験開始時からの体重変化率はプラセボ群と比べてセマグルチド群で大きく、プラセボ群との差(平均)は、利尿薬非使用患者で-8.8%、ループ利尿薬の使用量が最も多かった患者で-6.9%であることが示された。 さらに、セマグルチドの使用は6分間歩行距離などの他の心不全の指標の改善にも関与している可能性が示されたほか、ループ利尿薬の使用量に大きな影響を及ぼすことが判明した。すなわち、試験期間中にプラセボ群ではループ利尿薬の使用量が平均で2.4%増加していたのに対し、セマグルチド群では平均で17%減少していたという。このほか、同試験では、利尿薬の使用状況によって分類したサブグループの全てにおいて、セマグルチド群ではプラセボ群と比べて重篤な有害事象が少ないことも示されたと、研究グループはESCのニュースリリースの中で述べている。 Sharma氏は全体的な結果として「利尿薬使用の有無にかかわりなく、HFpEF患者において、セマグルチドは症状や身体的制限を改善するとともに、体重をより減少させることが示された」と説明している。 さらにSharma氏は、セマグルチドを投与された患者では、プラセボを投与された患者と比べて、利尿薬の平均使用量が減少し、利尿薬の投与量が増加する可能性が低下し、利尿薬の投与量を減らす必要性が増加する可能性が示されたことに言及。「これらのパラメーターは、セマグルチドの疾患修飾作用と、この試験の対象者と同様の条件を満たす患者集団において、同薬が長期的な臨床アウトカムの改善に関連する可能性を示唆している」と述べている。

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食事前の10秒をください!?(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者この間、ネットを見ていたら「食事前の10秒だけください」と書かれている写真があって。医師 それで?(患者の話に興味を示す)患者 最後まで読んだら健康食品の広告で、食事前に飲むのに10秒もかからないって話みたいで。画 いわみせいじ痩せた人もいるって書いてあるし、今だけお得だからつい購入したのですが、全然、効果はなかったです…。医師 そうでしたか。せっかく食事前の10秒を使うなら、お金もかからずにもっと良い方法がありますよ!患者 それはどんな方法ですか?医師 食事前に、これから食べる食事を記録することです。食べた後ではなくてね。患者 なるほど。それなら、食べ過ぎないかもしれませんね。(納得した顔)ポイント食事前に食べる予定の食事を記録する習慣を作ることがダイエットにつながることを上手に説明します。Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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寄り道編(1)アドレナリン?エピネフリン?【臨床力に差がつく 医薬トリビア】第50回

※当コーナーは、宮川泰宏先生の著書「臨床力に差がつく 薬学トリビア」の内容を株式会社じほうより許諾をいただき、一部抜粋・改変して掲載しております。今回は、月刊薬事60巻9号「臨床ですぐに使える薬学トリビア」の内容と併せて一部抜粋・改変し、紹介します。寄り道編(1)アドレナリン?エピネフリン?Question2つの名称をもつアドレナリン(エピネフリン)。なぜ、2つの名称がつけられた?

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第214回 岸田首相、初夏の山形・酒田へ。2024年度から制度テコ入れの地域医療連携推進法人に再び脚光

日本海総合病院と日本海ヘルスケアネットを視察こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。来週からはや6月、いよいよ夏本番です。新緑が映える6月の山は、紅葉の秋山よりも瑞々しく、1年の中で一番美しいと思います。初夏の山で私がとくに好きなのは、山形県の鳥海山です。6月の鳥海山は、それなりの装備が必要なため登山者もまだそれほど多くはなく、新緑と残雪の白のコントラストを存分に楽しむことができます。深田 久弥はその著書『日本百名山』で「名山と呼ばれるにはいろいろの見地があるが、山容秀麗という資格では、鳥海山は他に落ちない」と書くほどです。ただ、難点はあります。山が大きく、日帰りするには少々行程が長過ぎる点です。私も何度か登っているのですが、北西側の鉾立山荘から登る象潟口コースでは、スタート時間が遅かったこともあって頂上に辿り着けず、途中で敗退しています。来年あたりこのコースをリベンジしようかと考えているところです。さて、そんな鳥海山を眺望できる庄内平野に位置する山形県酒田市を、5月19日に岸田文雄首相が訪れました。目的は地方独立行政法人 山形県・酒田市病院機構 日本海総合病院の視察です。山形県の庄内地方では、日本海総合病院が中心となって、12の法人、1自治体で構成された地域医療連携推進法人・日本海ヘルスケアネットが組織され、様々な連携業務、共同事業を行っています。岸田首相は、日本海ヘルスケアネットの医療・介護連携の実際と共に、普及が遅々として進まず依然批判も多いマイナ保険証や電子処方箋が活用されている姿を自分の目で確かめるため、酒田を訪れたようです。「“連携推進法人”の制度普及に今後も努める」と言明日本海総合病院が中心となって運営されている日本海ヘルスケアネットは、人口減少が進む地方における地域医療連携推進法人の成功事例の一つです。また、複数の医療施設及び介護事業所が診療情報を共有する「ちょうかいネット」も医療DXの先駆けとして有名です。視察後の記者会見で岸田首相は、医療・介護の連携の強化、医療従事者の交流、職員の共同研修、医療機器の共同利用、医薬品の共同交渉、地域フォーミュラリ、「ちょうかいネット」といった日本海ヘルスケアのさまざまな取り組みについて言及した後、「患者の目線に立って、地域の医療提供体制が効率的で質の高いものになるよう、実効的な仕組みを構築していきたい」と述べるとともに、地域医療連携推進法人について、「今、全国で39法人、認定を受けています。そして、昨年、利用拡大を図る医療法の改正も行いました。あわせて、介護・福祉分野においても、類似の仕組みがあります。すなわち、社会福祉連携推進法人という21の法人が認定を受けている。これらを合わせて、普及に努めていきたい」と、“連携推進法人”の制度普及に今後も力を入れると語りました。今年の「骨太の方針」に4年連続で記述される可能性も地域医療連携推進法人については、本連載でも、「第168回 3年連続3回目、地域医療連携推進法人言及の背景」、「第138回 かかりつけ医制度の将来像」、「第69回 制度化4年目にして注目集める地域医療連携推進法人の可能性」などで度々取り上げて来ました。2017年4月に制度がスタートし、7年経ったわりには、現状39法人と数的には今ひとつですが、政府が毎年6月に公表する「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」において3年連続で地域医療連携推進法人が記述されたことからも、国(厚生労働省というより財務省)が医療・介護連携や機能分担の切り札になると今でも考えていることは間違いありません。今回、岸田首相が地域医療連携推進法人を実際に視察したことで、「医療・介護連携や機能分担の切り札」という位置付けはますます強固なものとなり、まもなく公表される「骨太の方針」にも4年連続で記述されるかもしれません。浜松医科大学と浜松医療センターとの連携など新しい動きもその地域医療連携推進法人ですが、各地で新しい動きもあります。今年3月には、静岡県浜松市が運営する浜松医療センターと国立大学法人の浜松医科大学が県西部の医療体制を充実させてより高度な医療を提供するため、地域医療連携推進法人を2025年4月に設立する計画が明らかになっています。大学病院本院が地域医療連携推進法人に参画するケースとしては、藤田医科大学(愛知県豊明市)が中心となってつくられた地域医療連携推進法人・尾三会(愛知県)、関西医科大学(大阪府枚方市)が中心となってつくられた地域医療連携推進法人・北河内メディカルネットワーク(大阪府)がありますが、お互いに基幹病院同士、しかも一方は国立大学法人というケースははじめてです。また、2025年4月に岐阜県で設立された地域医療連携推進法人・美濃国地域医療リンケージは、岐阜県笠松市で松波総合病院を経営する社会医療法人 蘇西厚生会、美濃市立美濃病院、一般社団法人 海津市医師会で構成されており、それぞれの所在地の医療圏が岐阜医療圏、中濃医療圏、西濃医療圏と異なっているのが大きな特徴です。その「理念」には「医療圏の垣根を越え、お互いに補完し合うことで、急速に進む少子高齢化の中で、安定性と持続性を併せもった効率的な医療提供体制を構築し、それぞれの地域住民の暮らしの安心を実現する」と書かれており、地方における広域の地域医療連携推進法人の可能性を探るユニークな試みとして注目を集めています。成功事例という“追い風”や制度変更による“使い勝手”の向上などで、今後、加速度的に増えていくかも2024年4月からは、医療法の一部が改正され、地域医療連携推進法人に個人立の医療機関も参加できるようになりました(それまでは医療法人など非営利法人に限られていました)。個人立が参加する場合は、従来は認められていた参加法人への出資、貸付はできなくなりますが、外部監査等が不要になったり、一部事務手続きが簡素化されたりするなど、“使い勝手”が良くなり、設立の敷居も低くなります。7年間で39法人とそれほど増えてこなかった地域医療連携推進法人ですが、各地での成功事例という“追い風”や制度変更による“使い勝手”の向上などによって、今後、加速度的に増えていくかもしれません。

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カリウム吸着薬の必要性を検討して薬剤性便秘を解消【うまくいく!処方提案プラクティス】第60回

 今回は、治療評価がなされずに長期服用していたカリウム吸着薬の副作用と思われる便秘に着目し、中止することで解消した症例を紹介します。患者さんや施設スタッフの負担となっていることを聴取し、服薬契機や治療評価の時期などに注目してみると、現在の治療の必要性を考えやすくなります。薬剤師の視点で考えたことを整理して、医師と意見共有してみましょう。患者情報88歳、男性(施設入居)基礎疾患認知症、脳梗塞、糖尿病、胸部大動脈瘤、大腸がん術後介護度要介護4服薬管理施設職員が管理処方内容1.アスピリン・ランソプラゾール配合錠 1錠 分1 朝食後2.ビソプロロール錠0.625mg 2錠 分1 朝食後3.ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー20% 25g 分1 朝食後4.トラゾドン錠25mg 1錠 分1 朝食後5.シタグリプチンリン錠50mg 1錠 分1 朝食後6.酪酸菌配合錠 3錠 分3 毎食後7.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後8.ピコスルファートNa内用液0.75% 10mL 便秘時5〜15滴で調整本症例のポイントこの患者さんは、施設入居から間もなく硬便(ブリストル便形状スケール[BSFS]1〜2)と便秘症状が強くなり、酸化マグネシウムと頓用のピコスルファートを開始して2週間が経過しました。BSFS 2および排便頻度が2〜3日のため、ピコスルファート15滴で調整を続けていましたが、便秘解消がいまひとつで不穏症状も出現していました。介護スタッフから、服薬錠数が増えると介護抵抗なども強くなるので何かよい手立てはないか、と相談がありました。現状の服用薬剤から何か減らすことで工夫はできないかという点から、薬剤性便秘の可能性を探りました。そこで着目したのが、ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーでした。ポリスチレンスルホン酸Caは、腸内のカリウムイオンと本剤のカルシウムイオンを交換することで、カリウムを体外に排泄する薬剤(陽イオン交換樹脂)1)ですが、便秘の副作用が多く、重大な副作用として腸管穿孔の報告2)もあります。導入の経緯を診療情報提供書にさかのぼって調査すると、カリウム値が5.6mEq/Lと高カリウム血症を発症した際に、ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー50g 分2 朝夕食後の処方が開始となっていました。その3週間後の採血で3.5mEq/Lに低下したことから現在の量に減量となっていました。大腸がん術後でイレウスのリスクもあることと、認知症があることから便秘増悪でせん妄リスクもあることから排便コントロールは重要です。カリウム値をモニタリングしながらポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーを中止することで、服薬数も減らすことができ、排便コントロールも少なからずポジティブな効果になるのではないだろうかと考えました。医師への相談と経過医師に電話で、下剤調整後の現況を情報共有し、ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーによる弊害の可能性について相談しました。医師も、用量は少ないものの副作用報告として多いことを認識しており、中止しようと返答がありました。また、カリウム値については次回の診療で採血をしてフォローすることとなりました。指示を受けた翌日からポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーが中止となりました。患者さんは、中止して2日後には排便があり(BSFS 3、中等量)、その後も安定して0〜1日の排便(BSFS 2〜3、中等量)で安定して経過しています。さらに、その後のカリウム値の検査結果も4.0mEq/Lと基準値内で推移していました。便秘増悪には環境変化などさまざま要因がありますが、薬剤性のアプローチは薬剤師にとって大事なアクションの1つだと実感した事例です。1)ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー20% インタビューフォーム2)「消化器内視鏡」編集委員会編. 大腸疾患アトラスupdate. 東京医学社;2020. p232.

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日本人脳卒中患者では低体重ほど転帰不良/国立循環器病研究センター

 ボディマス指数(BMI)の高い人は、そうでない人に比べ、生活習慣病や心血管病の発症リスクが高い一方で、心血管病発症後の機能回復はむしろ良好であることが報告されている。脳卒中でも、肥満は発症リスク因子となるが、脳卒中発症後の転帰に関する研究結果は一貫していないことから、国立循環器病研究センターの三輪 佳織氏らの研究グループは、BMIが脳卒中後の転帰に影響があるか検証を行った。その結果、BMIが脳卒中病型ごとの転帰に影響を及ぼすことが判明し、とくにBMIが低い人では不良となることがわかった。この研究結果はInternational Journal of Stroke誌オンライン版2024年4月23日号に掲載された。高齢者の健康管理に役立つBMIの数値は 研究グループは、2006年1月~22年12月まで日本脳卒中データバンク(JSDB)に登録された急性期脳卒中例のうち入院時BMIが入力された症例を対象とした。BMIはWHO推奨のアジア人における定義に基づき、18.5未満を低体重、18.5~23.0未満を正常体重、23.0~25.0未満を過体重、25.0~30.0未満をI度肥満、30以上をII度肥満と分類した。脳卒中は、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血に分類し、さらに脳梗塞病型はTOAST分類を用いて、心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、その他の脳梗塞、原因不明脳梗塞に分類した。 評価項目である退院時の転帰(患者自立度)は、国際標準尺度である修正ランキンスケール(0[後遺障害なし]~6[死亡]の7段階の評価法)を用い、同尺度の5~6を転帰不良、0~2を転帰良好と定義した。これらを共変量で調整した後、混合効果ロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・急性期の脳卒中5万6,230例のうち、脳梗塞(4万3,668例、平均年齢74±12歳、男性61%)、脳出血(9,741例、平均年齢69±14歳、男性56%)、クモ膜下出血(2,821例、平均年齢63±15歳、男性33%)が今回の研究対象。・BMI18.5未満(低体重)は、脳梗塞と各病型(心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞)や脳出血における転帰不良のリスクを約1.4~2.3倍に高めた。・アテローム血栓性脳梗塞では、BMIと転帰不良にU字型の関連を認め、低体重と肥満はいずれも、転帰不良のリスクを高めた。・低体重は、とくに重症の脳梗塞や再灌流療法後における転帰不良と関連した。・BMI23.0~25.0(過体重)や80歳以上の高齢者におけるBMI25.0~30.0(I度肥満)のグループは、脳梗塞後の転帰不良リスクが9~17%低下し、“obesity paradox”を認めた。 研究グループは、今回の研究結果から「高齢者の体重管理の目標値としてBMI25を基準にすることが適切であり、BMIに基づく体重管理は脳卒中の発症予防および重症化予防の実現可能な対策といえる」と考察を行っている。

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単剤療法を開始する統合失調症患者のケアパターンと経口抗精神病薬切り替えコスト

 統合失調症において抗精神病薬は主要な治療法であるが、治療目標の達成や副作用を最小限にするため、疾患経過に伴って薬剤を変更する必要がある。実臨床における治療パターンや、切り替えを含む抗精神病薬の変更に関連する経済的な影響について、評価した研究は限られている。米国・OptumのRebecca Fee氏らは、経口抗精神病薬(OAM)の単剤療法を開始した統合失調症患者の治療パターンを調査し、抗精神病薬の切り替えに関連する医療資源利用およびコストを評価した。Journal of Managed Care & Specialty Pharmacy誌オンライン版2024年4月9日号の報告。 米国のメディケア・アドバンテージおよび民間医療保険に加入していて、2015~21年6月にOAMの単剤療法を開始(または6ヵ月以上経過した後に再開)した統合失調症患者(2件以上の請求データを有する成人患者)を対象とした。治療の時機および間隔を用いた請求データに基づくアルゴリズムにより、最長7年間にわたるOAM単剤療法開始患者の投与変更、とくに単剤療法の切り替えを特定した。最初のOAM単剤療法から次のOAM単剤療法へ切り替えた患者(切り替え群)を、臨床的および人口統計学的特徴に基づき、切り替えを行っていないOAM単剤療法開始患者(非切り替え群)とマッチさせた。切り替えに関連する医療資源利用および最初の切り替えの前後3ヵ月に発生したコストを、両群で比較した。 主な結果は以下のとおり。・OAM単剤療法を開始した患者6,425例中1,505例(23.4%)は、フォローアップ期間中に少なくとも1回、他のOAM単剤療法切り替えを経験していた。・最初の切り替えまでの平均時間は209±333日(中央値:67日)であり、フォローアップの人年当たりの切り替え率は0.65、最初の切り替えの56%はOAM開始から3ヵ月以内に行われていた。・OAM単剤療法を開始した患者のうち947例(14.7%)は、最初のOAM単剤療法切り替え患者あった。傾向スコアマッチング後、最初の切り替え群865例と非切り替え群865例がマッチされた。・非切り替え群と比較し、最初の切り替え群は、すべての原因による受診の平均回数、統合失調症関連の緊急受診および入院の平均回数が多く、1ヵ月当たりの入院日数は長かった。・統合失調症関連の平均コストは、患者1人当たり、切り替え群で1,252±2,602ドル、非切り替え群で402±2,027ドルであった(p<0.001)。 著者らは「OAM単剤療法を開始した統合失調症患者の約4分の1は最初のOAMの変更を行っており、その多くは最初のOAM切り替えから3ヵ月以内であった。また、切り替えを行った患者は、行わなかった患者と比較し、医療資源利用およびコストの増加が認められた」とまとめ、「本結果は、症状コントロールを効果的に維持し、忍容性のリスクを最小限にするOAM単剤療法を開始する重要性を強調するものであり、これによりOAM切り替えの必要性を最小限とし、過剰な医療資源の利用およびコストを削減することが可能である」としている。

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HPVワクチン接種プログラムの効果、社会経済的格差で異なるか?/BMJ

 以前の検討によってイングランドで観察されたヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種プログラムの高い予防効果は、その後12ヵ月間の追跡調査においても継続しており、とくにワクチンの定期接種を受けた女性では、社会経済的剥奪の程度5つの段階のすべてで子宮頸がんとグレード3の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN3)の発生率が大きく低下したが、剥奪の程度が最も高い地域の女性では低下の割合が最も低い状態にあることがわかった。一方で、子宮頸がんの罹患率は、ワクチン接種女性において、未接種の女性でみられる社会経済的剥奪の程度による勾配はみられなかったことが、英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のMilena Falcaro氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年5月15日号に掲載された。イングランド居住女性の観察研究 本研究は、2006年1月1日~2020年6月30日にイングランドに居住した20~64歳の女性を解析の対象とした住民ベースの観察研究である(Cancer Research UKの助成を受けた)。 イングランドでは、2008年にHPVワクチン接種が導入され、12~13歳の女児に定期接種が行われた。また、2008~10年には、より年長で19歳未満の集団を対象に接種の遅れを取り戻すためのキャッチアップ・キャンペーンが展開された。 2006年1月1日~2020年6月30日に、2万9,968例が子宮頸がんの診断を、33万5,228例がCIN3の診断を受けた。追加追跡期間の相対リスク減少率:子宮頸がん83.9%、CIN3は94.3% 12~13歳時にHPVワクチンの定期接種を受けた集団では、追加された12ヵ月間の追跡調査(2019年7月1日~2020年6月30日)における子宮頸がんおよびCIN3の補正後年齢調整罹患率に関して、ワクチン接種を受けなかった集団と比較した相対リスク減少率が、子宮頸がんで83.9%(95%信頼区間[CI]:63.8~92.8)、CIN3で94.3%(92.6~95.7)と大幅に低下していた。 また、2020年の半ばまでに、HPVワクチン接種により、687例(95%CI:556~819)の子宮頸がんと2万3,192例(2万2,163~2万4,220)のCIN3を予防したと推定された。 社会経済的剥奪の程度が最も強い地域に居住する女性では、ワクチン接種後の子宮頸がんおよびCIN3の割合は最も高いままであったが、剥奪の5段階すべてでこれらの割合は大幅に低下していた。健康格差の縮小をもたらす可能性も キャッチアップ・キャンペーンでワクチン接種を受けた女性のCIN3予防率は、社会経済的剥奪の程度が最も弱い地域に比べ最も強い地域で低く、16~18歳時に接種した女性では40.6%に対し29.6%、14~16歳時に接種した女性では72.8%に対し67.7%であった。 また、ワクチン接種を受けていない女性における子宮頸がんの罹患率には、社会経済的剥奪の程度が強い地域から弱い地域へと下方に向かう急峻な勾配を認めたのに対し、ワクチン接種を受けた女性では、もはやこのような勾配はみられなかった。 著者は、「本研究の知見は、十分に計画を立てて実行された公衆衛生介入は、健康状態を改善するだけでなく、健康格差の縮小ももたらす可能性があることを示している」としている。

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日本人結節性痒疹、ステロイド外用薬使用下のネモリズマブの有用性は?

 日本人の結節性痒疹患者におけるネモリズマブの長期投与の最適用量、有効性、安全性を評価した国内第II/III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果が報告された。本試験では、試験開始前のステロイド外用薬の継続下においてネモリズマブ30mg、60mgの有用性をプラセボと比較した。その結果、ネモリズマブ群で結節性痒疹のそう痒や皮膚症状の改善が認められた。東京医科歯科大学皮膚科の横関 博雄氏らNemolizumab-JP11 Study GroupがBritish Journal of Dermatology誌オンライン版2024年4月17日号で報告した。 本試験は、高用量ステロイド外用薬による治療を実施したにもかかわらず、中等度以上のそう痒(かゆみスコア3以上かつPeak Pruritus Numerical Rating Scale[PP-NRS]7以上)を有する13歳以上の日本人結節性痒疹患者を対象とした。対象患者を、ネモリズマブ30mg群(初回投与のみ60mg)、同60mg群(本邦承認外用量)またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、4週間ごとに16週間投与した。対象患者はいずれもステロイド外用薬を併用した。 有効性の主要評価項目は、投与開始16週後のPP-NRS週平均の変化率。有効性の副次評価項目は、そう痒、結節性痒疹の重症度、睡眠、QOLなどであった。なお、本試験は2020年12月に開始され、データ解析は2022年5月に行われた。16週の治療完了後、適格患者は52週の長期試験に組み込まれ追跡された。 主な結果は以下のとおり。・230例が対象となり、ネモリズマブ30mg群に77例、同60mg群に76例、プラセボ群に77例が割り付けられた。・投与開始16週後のベースラインからのPP-NRS週平均の変化率(最小二乗平均値)は、ネモリズマブ30mg群-61.1%、同60mg群-56.0%、プラセボ群-18.6%であった。・ネモリズマブ群とプラセボ群のPP-NRS週平均の変化率の群間差は、30mg併用群が-42.5%(95%信頼区間[CI]:-51.9~-33.1、p<0.0001)、60mg併用群が-37.4%(-46.7~-28.1、p<0.0001)であり、いずれも統計学的に有意な差が認められた。・ネモリズマブ群は、プラセボ群と比較して、結節性痒疹の重症度、睡眠、QOLの改善が大きかった。・ネモリズマブの忍容性は、両用量群とも良好であった。

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PPIとH2ブロッカーで頭痛リスク上昇か

 胸焼けを抑えるための薬を服用している人は、服用していない人に比べて片頭痛やその他の重度の頭痛のリスクが高い可能性のあることが、新たな研究で示唆された。このようなリスク上昇は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)、制酸薬など、検討した全ての種類の胃酸分泌抑制薬で認められたという。米メリーランド大学栄養学・食品科学部門のMargaret Slavin氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に4月24日掲載された。 Slavin氏は、「胃酸分泌抑制薬は幅広い用途で使用されている。この薬剤と片頭痛や重度の頭痛との潜在的な関連を考慮すると、今回の研究結果はさらなる調査実施の必要性を示したものだと言えるだろう」と述べる。同氏はさらに、「胃酸分泌抑制薬に関しては、しばしば過剰処方が指摘されている。また、PPIの長期使用により認知症リスクなど他のリスクが上昇する可能性を示唆する新たな研究結果も報告されている」と付け加えている。 胃酸が食道まで逆流する胃酸逆流は、食後や横になっているときに起こり、胸焼けや胃潰瘍を引き起こす。頻回な胃酸逆流は胃食道逆流症(GERD)の原因となり、それが食道がんにつながることもある。今回、Slavin氏らは、胃酸分泌抑制薬(PPI、H2ブロッカー、制酸薬)を使用している成人患者1万1,818人を対象に、胃酸分泌抑制薬の使用と片頭痛や重度の頭痛との関連を検討した。 胃酸分泌抑制薬使用者と非使用者での片頭痛や重度の頭痛の有病率は、PPIでそれぞれ25%と19%、H2ブロッカーで25%と20%、制酸薬で22%と20%であった。年齢や性別など頭痛に影響を及ぼす因子を調整して解析した結果、胃酸分泌抑制薬の使用者は非使用者に比べて、偏頭痛や重度の頭痛の発症リスクが有意に高いことが明らかになった。リスクは、PPI使用者で70%、H2ブロッカー使用者で40%、制酸薬使用者で30%の増加であった。 このような結果が示されたものの、Slavin氏は、この研究で対象としたのは処方薬のみであり、処方薬よりも薬効が低い傾向にある市販薬は対象としていない点を強調。その上で、「医師に相談することなく使用中の胃酸分泌抑制薬の服用を中止すべきではない」と主張している。同氏は、「胃酸の逆流とそれに付随する症状を抑えるために胃酸分泌抑制薬を必要とする人は数多く存在する。胃酸分泌抑制薬やサプリメントを使用していて、片頭痛や重度の頭痛に悩まされている人は、薬の服用を続けるべきかどうかを医師と相談する必要がある」と「Neurology」誌のニュースリリースの中で述べている。

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喫煙歴があっても食習慣次第で肺気腫リスクが低下

 現喫煙者や元喫煙者など、肺気腫のリスクが高い人であっても、植物性食品中心の食習慣によって、その罹患リスクが抑制される可能性を示唆するデータが報告された。米ネブラスカ大学医療センターのMariah Jackson氏らの研究によるもので、詳細は「Chronic Obstructive Pulmonary Diseases : Journal of the COPD Foundation」3月発行号に掲載された。 肺気腫は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の一種で、血液中の二酸化炭素と酸素の交換が行われる肺胞の構造が破壊されて、呼吸機能が不可逆的に低下する病気。原因は主に喫煙であり、肺気腫の進行抑制には禁煙が必須だが、禁煙治療の成功率は高いとは言えない。一方で、植物性食品中心の食習慣が、呼吸器疾患の病状に対して潜在的な保護効果をもたらす可能性が報告されている。Jackson氏らはこのような背景の下、食習慣と肺気腫リスクの関連の有無を検討した。 この研究は、若年成人の冠動脈疾患リスクを探索する目的で実施された、米国での多施設共同前向きコホート研究(CARDIA研究)のデータを用いた二次分析として行われた。CARDIA研究の参加者は18~30歳で、30年間追跡されている。研究参加者5,515人から、追跡開始後20年目までに、自己申告に基づく喫煙習慣(現喫煙または元喫煙)が確認されなかった人や、食習慣に関する調査に回答していなかった人などを除外し、1,351人(平均年齢25.5±3.5歳、女性58.4%)を解析対象とした。 追跡開始25年目に行ったCT検査で、175人(13.0%)に肺気腫が確認された。食習慣の質を評価するスコア(APDQS)の五分位に基づき、植物性食品中心の食習慣らしさで全体を5群に分類して肺気腫の罹患者率を比較すると、スコアの第5五分位群(最も植物性食品中心の食習慣である上位20%)は4.5%であるのに対して、第1五分位群(最も植物性食品中心の食習慣でない下位20%)は25.4%だった。 肺気腫の罹患リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種、BMI、累積喫煙量、摂取エネルギー量、教育歴など)を調整後、第5五分位群は第1五分位群に比べて肺気腫罹患のオッズ比(OR)が56%低かった〔OR0.44(95%信頼区間0.19~0.99)、傾向性P=0.008〕。また、APDQSスコアが1標準偏差高いごとにオッズ比は34%低下していた。つまり、食事に占める野菜や果物の割合が高いほど、肺気腫のリスクは低かった。 Jackson氏は、「われわれの研究結果は、食習慣と喘息の罹患リスクとの関連を示した先行研究の結果と一致している。喫煙歴のある人の慢性肺疾患リスクを抑制しようとする場合、食事などの修正可能な因子が極めて重要なポイントとなる」と話している。また同氏は、「食習慣を健康的なものに改善することが、慢性肺疾患に罹患しながらも禁煙が困難な状況にある人の一助となるのではないか。さらなる研究が必要ではあるが、将来的には公衆衛生関連のガイドラインなどで、特に子どもや若年者に対する食事の推奨事項として、これらの情報を提供できる可能性がある」と付け加えている。

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小児期の運動不足が若年成人期の心肥大と関連

 子どもの頃の運動量と若年成人期の心臓の大きさとの間に有意な関連があり、運動不足だった子どもは成人後に心肥大が見られるとする研究結果が報告された。東フィンランド大学のAndrew Agbaje氏の研究によるもので、詳細は「European Journal of Preventive Cardiology」に5月7日掲載された。 心肥大とは心臓のサイズや重量が過度に増大した状態であり、成人の心肥大は心血管疾患や早期死亡といったイベントのリスクを高める。小児期にはそのようなイベントの発生は少ないものの、心肥大自体は後年のリスク上昇につながる可能性がある。一方、成人では適度な運動が心血管の健康増進に役立つことが広く認識されている。しかし、小児期の運動習慣が心臓の形態に与える影響についてはよく分かっていない。これらを背景としてAgbaje氏は、子どもの運動習慣が、その後の心臓の形態や機能に及ぼす影響について、縦断的に検討した。 この研究は、英国の子どもとその親を対象に行われている出生コホート研究(ALSPAC)のデータを用いた二次分析として行われた。平均年齢11.75±0.24歳の子ども1,682人(女児62.7%)を約13年間にわたって追跡。日常の運動量は、11歳、15歳、24歳の時点で加速度計を4~7日間、身に着けて生活してもらい把握した。心臓の形態と機能については、17歳、24歳の時点で行った心エコー検査により、左室心筋重量係数(LVMI)や左室拡張能などを評価した。 研究参加者全体の座位行動時間を平均すると、ベースライン(11歳時点)が6時間だったものが、24歳時点では9時間となり、13年間で3時間増加していた。またLVMIは、17歳から24歳の7年間で平均3g/m2.7上昇していた。 運動量とLVMIの変化との関連性を解析した結果、小児期からの座位行動の累積時間の長さは、性別や肥満の有無、血圧レベルにかかわらず、LVMIの上昇幅が最大40%増えることと関連していた。その反対に、小児期からの軽強度運動の累積時間の長さは、LVMIの上昇幅が最大49%減ることと関連していた。また、軽強度運動の累積時間が長いと、左室拡張能などの指標も良好だった。なお、小児期からの中~高強度運動の累積時間が長いことは、LVMIの上昇幅が最大5%増えることと関連していたが、これは運動負荷に伴う生理的な変化と考えられるという。 Agbaje氏は、「子どもの頃の座位行動が成人後の健康上の脅威となるという報告が増えてきており、それらの知見を真剣に受け止める必要がある」と述べている。一方で同氏は、「軽強度運動は座位行動の弊害を打ち消す効果的な手段だ。毎日3~4時間の軽強度運動を続けるということは、それほど困難なことではない」と解説。子ども向きの軽強度運動の具体的な例として、外遊び、犬の世話、おつかい、徒歩または自転車での通学、公園の散歩、ガーデニングなどのほかに、バスケットボール、サッカー、ゴルフ、フリスビーといった競技性の高くないカジュアルなスポーツなどが該当するとのことだ。

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