サイト内検索|page:263

検索結果 合計:36520件 表示位置:5241 - 5260

5241.

抜歯時の抗凝固療法に介入してDOACの休薬期間を適正化【うまくいく!処方提案プラクティス】第64回

 今回は、歯科治療に伴う直接経口抗凝固薬(DOAC)の休薬期間について、最新のガイドラインに基づいて介入した事例を紹介します。適切な周術期管理によって、経過は良好なままDOACの服用継続が実現しました。患者情報80歳、女性(施設入所中)基礎疾患認知症、統合失調症、心房細動(CHA2DS2-VAScスコア※:4点[年齢2点、女性1点、高血圧1点])※CHA2DS2-VAScスコア:範囲0~9点、点数が高いほど梗塞リスクが大きい処方内容1.アピキサバン錠2.5mg 2錠 分2 朝夕食後2.リスペリドン錠1mg 1錠 分1 夕食後3.トラゾドン錠25mg 1錠 分1 就寝前4.酪酸菌製剤錠 3錠 分3 毎食後本症例のポイントこの患者さんは歯科治療(単純抜歯1本)の予定があり、施設看護師より「訪問診療医から1週間のDOACの休薬指示が出たので抜薬の対応をしてほしい」と連絡がありました。しかし、抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン1)では、出血時の対応が可能な医療機関で行うことを前提に、DOAC単剤による抗凝固薬投与患者に対して、休薬下の抜歯よりもDOAC継続下で抜歯をすることが推奨されています。また、Steffelらの報告2)によると、DOACの周術期管理において、低出血リスク手術では24時間の休薬で十分とされています。アピキサバンの薬物動態データ3)では消失半減期が約12時間であることからも、7日間の休薬は過剰と考えられます。医師への提案と経過そこで、医療機関に電話で疑義照会し、看護師を介して医師に情報提供を行いました。まず、CHA2DS2-VAScスコアは4点で塞栓リスクが高く、認知症による活動性低下および向精神薬併用による鎮静作用もあるため、休薬により血栓リスクがさらに高まることが懸念されます。一方で出血リスクはあるものの、単純抜歯1本(低リスク処置)であり、抗血小板薬は非併用であることから、局所止血処置は可能と考えられることを伝えました。そのうえで、抜歯は病院ではなく診療所で行うことや、アピキサバンの血中濃度ピーク時(服用後3~3.5時間)3)に抜歯が行われて出血リスクがあることも懸念事項として伝えしました。医師からは、アピキサバンの半減期が約12時間である程度効果が残ることから、処置当日のみの休薬が妥当と判断されました。施設看護師にも変更内容について情報共有し、抜歯後の止血状況や口腔ケア時の出血状況で問題があれば相談するように伝えました。その後の経過を看護師と連携をとりながら確認したところ、抜歯時の出血は問題なく、血栓症状の発現もなく、術後の経過は良好なままDOACを服用継続できていました。本事例を通じて、(1)周術期管理における過剰な休薬の危険性、(2)エビデンスに基づく介入の重要性、(3)薬剤師による能動的な情報提供の意義を感じました。まとめ1.エビデンスに基づく評価:ガイドラインの適切な活用、患者個別のリスク評価、薬物動態データの考慮2.多職種連携の実践:医師との情報共有、歯科医師との連携、施設スタッフへの情報提供1)日本有病者歯科医療学会ほか編. 抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2020年版.学術社;2020.2)Steffel J, et al. Eur Heart J. 2018;39:1330-1393.3)エリキュース錠 医薬品インタビューフォーム(第13版)

5242.

水分摂取を増やすと肥満や腎結石以外にも有効な可能性

 1日の水分摂取量に関しては、公的な推奨がいくつかされているもののそれを裏付けるエビデンスは明確ではなく、水分摂取量を変更することによる利点は十分に確立されていない。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のNizar Hakam氏らが実施したシステマティックレビューの結果、エビデンスの質と量は限定的であるものの、少数の研究で1日の水分摂取量の増加が体重減少や腎結石予防に有益であることが示され、また、単一の研究では片頭痛予防、尿路感染症、糖尿病管理、低血圧に対する有益性が示唆された。JAMA Network Open誌2024年11月25日号掲載の報告。 2023年4月6日まで、PubMed、Web of Science、Embaseについて系統的文献検索を実施した。対象は、定義された量の水分を毎日摂取することが健康関連のアウトカムに与える影響を評価した研究とされた。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングされた1,464件のうち、1999~2023年に発表された18件(1%)が適格とされレビューに含まれた。うち15件(83%)は並行群間無作為化比較試験(RCT)、3件(16%)はクロスオーバー研究であった。・これらの研究における介入としては、4日間~5年間の決められた期間、毎日の水分摂取量を特定の量だけ変更することが推奨され(18件中17件が水分摂取量の増加、1件が水分摂取量の削減)、対照群には主に通常の水分摂取習慣を維持することが求められた。・主要評価項目には、体重減少、空腹時血糖値、頭痛、尿路感染症、腎結石などが含まれた。・10件の研究(55%)で1つ以上の肯定的な結果が報告され、8件の研究(44%)で否定的な結果が報告されていた。・水分摂取量の増加は、体重減少(対照群と比較し44~100%大きな体重減少)および腎結石イベントの減少(5年間にわたり参加者100人当たり15イベント減少)と関連していた。・体重減少に関しては、3件の過体重および肥満の成人対象のRCTにおいて、12週間~12ヵ月間食前に1,500mL/日の水を摂取したところ、対照群と比較して大きな体重減少がみられた。・腎結石に関しては、1件の健康成人対象のRCTおよび1件の特発性カルシウム結石の初回エピソードを有する患者対象のRCTにおいて、2,000mL/日の水分摂取量増加および尿量2,000mL/日を達成するための水分摂取量増加により、対照群と比較して結石および再発リスクが低下した。・個々の研究では、片頭痛予防、尿路感染症、糖尿病管理、低血圧に対する有益性が示唆された。 著者らは、水分摂取量が健康上のアウトカムに及ぼす影響を評価した臨床試験の数は限られていると指摘し、低コストで有害作用が少ないことを考慮すると、特定の条件下での有益性を評価するより十分にデザインされた研究が必要としている。

5243.

統合失調症患者における21の併存疾患を分析

 統合失調症とさまざまな健康アウトカムとの関連性を評価した包括的なアンブレラレビューは、これまでになかった。韓国・慶熙大学校のHyeri Lee氏らは、統合失調症に関連する併存疾患の健康アウトカムに関する既存のメタ解析をシステマティックにレビューし、エビデンスレベルの検証を行った。Molecular Psychiatry誌オンライン版2024年10月18日号の報告。 統合失調症患者における併存疾患の健康アウトカムを調査した観察研究のメタ解析のアンブレラレビューを実施した。2023年9月5日までに公表された対象研究を、PubMed/MEDLINE、EMBASE、ClinicalKey、Google Scholarより検索した。PRISMAガイドラインに従い、AMSTAR2を用いて、データ抽出および品質評価を行った。エビデンスの信頼性は、エビデンスの質により評価および分類した。リスク因子と保護因子の分析には、等価オッズ比(eRR)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・本アンブレラレビューには、19ヵ国、6,600万人超の参加者を対象とし、21の併存疾患の健康アウトカムを評価した88件の原著論文を含む9件のメタ解析を分析に含めた。・統合失調症患者は、以下の健康アウトカムとの有意な関連が認められた。【喘息】eRR:1.71、95%信頼区間[CI]:1.05〜2.78、エビデンスのクラスおよび質(CE):有意でない【慢性閉塞性肺疾患】eRR:1.73、95%CI:1.25〜2.37、CE:弱い【肺炎】eRR:2.63、95%CI:1.11〜6.23、CE:弱い【女性患者の乳がん】eRR:1.31、95%CI:1.04〜1.65、CE:弱い【心血管疾患】eRR:1.53、95%CI:1.12〜2.11、CE:弱い【脳卒中】eRR:1.71、95%CI:1.30〜2.25、CE:弱い【うっ血性心不全】eRR:1.81、95%CI:1.21〜2.69、CE:弱い【性機能障害】eRR:2.30、95%CI:1.75〜3.04、CE:弱い【骨折】eRR:1.63、95%CI:1.10〜2.40、CE:弱い【認知症】eRR:2.29、95%CI:1.19〜4.39、CE:弱い【乾癬】eRR:1.83、95%CI:1.18〜2.83、CE:弱い 著者らは「統合失調症患者は、呼吸器、心血管、性機能、神経、皮膚に関する健康アウトカムに対する広範な影響が認められており、統合的な治療アプローチの必要性が明らかとなった。主に、有意ではなく、エビデンスレベルが弱いことを考えると、本知見を強化するためにも、さらなる研究が求められる」としている。

5244.

ER+/HER2-乳がんへの術後タモキシフェン、閉経状態による長期有益性の違いとバイオマーカー

 エストロゲン受容体(ER)陽性/HER2陰性乳がん患者における術後内分泌療法の長期有益性は、閉経状態によって異なることが示唆された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のAnnelie Johansson氏らは、20年の追跡調査を完了しているSTO試験(stockholm tamoxifen randomized trial)の2次解析結果を、Journal of the National Cancer Institute誌オンライン版2024年12月4日号で報告した。 STO試験(STO-2、STO-3、STO-5)では、1976~97年に浸潤性乳がんと診断された 3,930例の女性が登録された。今回の2次解析では、2~5年間のタモキシフェン40mgの術後補助療法群または対照群(内分泌療法なし)に無作為に割り付けられた、ER陽性/HER2陰性乳がん患者1,242例(閉経前:381例、閉経後:861例)が対象。カプランマイヤー解析、多変量Cox比例ハザード回帰、時間依存性解析により、無遠隔再発期間(DRFI)を評価した。同試験では、標準的な腫瘍特性のほか、70遺伝子シグネチャーによる遺伝学的リスク(低リスク/高リスク)のデータが収集されている。 主な結果は以下のとおり。・閉経前の場合、リンパ節転移陰性(調整ハザード比[aHR]:0.46、95%信頼区間[CI]:0.24~0.87)、プロゲステロン受容体(PR)陽性(aHR:0.61、95%CI:0.41~0.91)、遺伝学的低リスク(aHR:0.47、95%CI:0.26~0.85)の患者で統計学的に有意なタモキシフェンの有益性が確認され、遺伝学的低リスク患者でのみ10年以上維持された。・閉経後の場合、低悪性度(aHR:0.55、95%CI:0.41~0.73)、リンパ節転移陰性(aHR:0.44、95%CI:0.30~0.64)、PR陽性(aHR:0.60、95%CI:0.44~0.80)、Ki-67低値(aHR:0.51、95%CI:0.38~0.68)、遺伝学的低リスク(aHR:0.53、95%CI:0.37~0.74)などすべての予後良好マーカーを有する患者で長期的有益性が示され、腫瘍サイズによる影響はみられなかった(≦20mmのaHR:0.55、95%CI:0.39~0.77、>20mmのaHR:0.64、95%CI:0.44~0.94)。・予後不良の腫瘍特性を持たない(clinical marker score=0)患者において、閉経前では5年までの早期の有益性が確認された一方、閉経後では少なくとも20年までの長期的有益性が示された。 著者らは、標準的な腫瘍特性では閉経前患者における術後内分泌療法の10年以降の有益性を予測できないため、長期的有益性の予測においては分子バイオマーカーが必要になる可能性があるとしている。

5245.

心筋梗塞へのコルヒチンは予後を改善するか/NEJM

 急性心筋梗塞患者の治療において、発症後すぐに抗炎症薬コルヒチンの投与を開始し、3年間継続しても、プラセボと比較して心血管アウトカム(心血管系の原因による死亡、心筋梗塞の再発、脳卒中、虚血による冠動脈の予期せぬ血行再建術の複合)の発生率は減少せず、その一方で3ヵ月後には炎症マーカーが有意に低下することが、カナダ・マクマスター大学のSanjit S. Jolly氏らCLEAR Investigatorsが実施した「CLEAR試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2024年11月17日号で報告された。14ヵ国の医師主導型無作為化プラセボ対照比較試験 CLEAR試験は、心筋梗塞発症後におけるコルヒチンとスピロノラクトンの心血管アウトカムの改善効果の評価を目的とする2×2ファクトリアルデザインの医師主導型無作為化プラセボ対照比較試験であり、2018年2月~2022年11月に14ヵ国104施設で患者を登録した(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成を受けた)。 心筋梗塞患者をコルヒチンまたはプラセボ、スピロノラクトンまたはプラセボの投与を受ける群に無作為に割り付けた。本論では、コルヒチンに関する結果が報告された。 有効性の主要アウトカムは、心血管系の原因による死亡、心筋梗塞の再発、脳卒中、虚血による冠動脈の予期せぬ血行再建術の複合とし、time-to-event解析を行った。主要アウトカムの個々の項目にも差はない 7,062例を登録し、コルヒチン群に3,528例、プラセボ群に3,534例を割り付けた。全体の平均年齢は61歳、女性が20.4%であった。9.0%が心筋梗塞の既往歴を有し、10.0%が経皮的冠動脈インターベンションを受けており、18.5%が糖尿病で、95.1%がST上昇型心筋梗塞(STEMI)、4.9%が非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)だった。 追跡期間中央値3年の時点で、主要アウトカムのイベントは、コルヒチン群が322例(9.1%)、プラセボ群は327例(9.3%)で発生し、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.85~1.16、p=0.93)。 主要アウトカムを構成する4つの項目にも差はなかった。心血管系の原因による死亡はコルヒチン群3.3% vs.プラセボ群3.2%(HR:1.03、95%CI 0.80~1.34)、心筋梗塞の再発は2.9% vs.3.1%(0.88、0.66~1.17)、脳卒中は1.4% vs.1.2%(1.15、0.72~1.84)、虚血による冠動脈の予期せぬ血行再建術は4.6% vs.4.7%(1.01、0.81~1.26)であった。重篤な有害事象に差はない、下痢が多かった 3ヵ月の時点におけるC反応性蛋白の最小二乗平均(ベースラインの値で補正)はコルヒチン群で低かった(2.98±0.19mg/L vs.4.27±0.19mg/L、群間差:-1.28mg/L、95%CI:-1.81~-0.75)。 有害事象(コルヒチン群31.9% vs.プラセボ群31.7%)および重篤な有害事象(6.7% vs.7.4%)の発生率は両群で同程度だった。また、下痢の頻度がコルヒチン群で高かった(10.2% vs.6.6%、p<0.001)が、重篤な感染症には差がなかった(2.5% vs.2.9%)。 著者は、「下痢の発生率の増加とC反応性蛋白の低下は予想どおりであり、本試験におけるコルヒチンの生物学的効果を支持するものであった」「最近のメタ解析では、コルヒチンによる心血管系以外の原因による死亡の名目上の増加が示されているが、本試験では逆にプラセボ群に比べて発生率が低かった(1.3% vs.1.9%、HR:0.68、95%CI:0.46~0.99)」としている。また、「本試験のデータが提示される前に、欧州心臓病学会は冠動脈アテローム硬化性疾患患者に対するコルヒチンの推奨をクラスIIbからクラスIIaに変更し、米国食品医薬品局は冠動脈疾患の治療薬として本薬を承認している」という。

5246.

IL-6が新規診断2型糖尿病患者の肥満関連がんリスク予測に有用

 新たに2型糖尿病と診断された患者における肥満関連がんリスクの評価に、インターロイキン-6(IL-6)が有用だとする、ステノ糖尿病センター(デンマーク)のMathilde Dahlin Bennetsen氏らの研究結果が、欧州糖尿病学会(EASD 2024、9月9~13日、スペイン・マドリード)で発表された。 2型糖尿病は、肥満関連がんのリスク増大と関連のあることが知られている。この関連には、2型糖尿病と肥満の双方に共通するリスク因子である、軽度の慢性炎症が関与している可能性が想定されている。脂肪組織はIL-6や腫瘍壊死因子-α(TNF-α)などの炎症性サイトカインを放出しており、そのため肥満に伴い軽度の慢性炎症が生じ、これが発がんリスク上昇に寄与すると考えられている。IL-6とTNF-αはともに炎症の初期に産生が高まるサイトカインだが、これらとは別の炎症マーカーとして臨床では高感度C反応性タンパク質(hsCRP)が広く用いられている。hsCRPは直接的には発がんメカニズムに関与せずに、全身の炎症レベルを反映する。Bennetsen氏らは、これらの三つの異なる炎症マーカーが、新規診断2型糖尿病患者の肥満関連がんの予測バイオマーカーになり得るかを検討した。 デンマークで行われている2型糖尿病コホート研究の参加者のうち、診断から間もない患者9,010人を抽出し、がんの既往歴のある患者732人、および、共変量のデータが不足している1,809人などを除外し、6,466人(年齢中央値60.9歳〔四分位範囲52.0~68.0〕、女性40.5%)を解析対象とした。中央値8.8年の追跡期間中に327人が肥満関連がんを発症した。 年齢と性別を調整したモデル1では、IL-6のみが発がんと有意な関連が認められ(ハザード比〔HR〕1.19〔95%信頼区間1.07~1.31〕)、TNF-α(HR1.08〔同0.98~1.19〕)やhsCRP(HR1.08〔0.97~1.21〕)は有意な予測因子でなかった。IL-6は、モデル1の調整因子に糖尿病罹病期間、飲酒・運動習慣、ウエスト周囲長を追加したモデル2(HR1.18〔1.07~1.31〕)や、さらにモデル2にHbA1c、トリグリセライド、血糖降下薬・脂質低下薬の処方を追加して調整したモデル3でも(HR1.19〔1.07~1.32〕)、引き続き有意な予測因子として特定された。喫煙習慣が把握されていた4,335人での解析でも、IL-6が有意な予測因子であることが確認された。 モデル3の変数に基づく発がん予測において、IL-6を追加することによりC統計量は0.685から0.693へとわずかながら有意に上昇した。一方、TNF-αやhsCRPの追加では、予測能の有意な上昇が見られなかった。 以上の結果を基にBennetsen氏は、「新規診断2型糖尿病患者の中から、IL-6によって発がんリスクの高い個人を把握することで、より的を絞った効果的なモニタリングと早期発見が可能になり、早期介入と個別化治療を通してアウトカム改善につながるのではないか」と述べている。

5247.

硬膜下血腫の再発に有効な新たな治療法とは?

 転倒などにより頭部を打撲すると、特に高齢者の場合、脳の表面と脳を保護する膜である硬膜の間に血液が溜まって(血腫)危険な状態に陥る可能性がある。このような硬膜下血腫に対しては、通常は手術による治療が行われるが、8〜20%の患者では、再発して再手術が必要になる。こうした中、標準的な血腫除去術と脳の中硬膜動脈の塞栓術(遮断)を組み合わせた治療が血腫の進行や再発のリスク低下に有効であることを示したランダム化比較試験の結果が報告された。米ワイル・コーネル・メディスン脳血管外科および介入神経放射線学分野のJared Knopman氏らによるこの研究結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に11月20日掲載された。 Knopman氏は、「硬膜下血腫では、血腫を除去した後でも再発して再手術が必要になる可能性があるため、この結果が意味するところは大きい。特に、慢性硬膜下血腫がよく生じる高齢患者において再手術は困難を伴う」と話す。また、論文の筆頭著者である米バッファロー大学のJason Davies氏は、「よくあることだが、高齢患者がすでに抗凝固薬を服用している場合、慢性硬膜下血腫の再出血を防ぐのは特に難しい」と強調している。 Knopman氏らが今回の臨床試験で検討した治療法は、通常の血腫除去術に加え、「鼠径部などの血管から挿入したカテーテルを通じて液体塞栓物質のオニキスを中硬膜動脈に注入する方法(中硬膜動脈塞栓術)を併用するものだ。対象とされた症候性の亜急性または慢性硬膜下血腫患者400人は、この併用療法を受ける群(塞栓術群、197人)と、標準的な血腫除去術のみを受ける群(対照群、203人)にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、治療後90日以内に再手術を要した血腫の再発または進行とした。副次評価項目は、治療後90日時点での神経機能低下とし、mRS(修正ランキンスケール)により非劣性解析(リスク差のマージンは15パーセントポイント)で評価した。 再手術を要した血腫の再発または進行が生じた患者は、塞栓術群で8人(4.1%)、対照群で23人(11.3%)であり、塞栓術群で再発や進行のリスクが有意に低いことが明らかになった(相対リスク0.36、95%信頼区間0.11〜0.80、P=0.008)。神経機能の低下は、塞栓術群で11.9%、対照群で9.8%に発生したが、リスク差は2.1パーセントポイント(95%信頼区間-4.8~8.9)であり、塞栓術群と対照群の間に有意な差は認められなかった。 Knopman氏は、「オニキスを用いて中硬膜動脈を封鎖することが治療成績改善の鍵だった」と米ワイル・コーネル大学のニュースリリースで結論付けている。同氏はさらに、「本研究は、中硬膜動脈が硬膜下血腫の形成と再発に果たす役割を示しただけでなく、これまで何十年も知られず、治療もされていなかった脳の全く新しい側面を明らかにした」と述べている。 研究グループは現在、手術するほどのサイズではない慢性硬膜下血腫の患者の治療において、最初に中硬膜動脈塞栓術を実施することの有効性について検討しているところだという。Knopman氏は、「このような患者に早期に中硬膜動脈塞栓術を行えば、後に手術が必要となる患者数を減らせる可能性がある」と述べている。研究グループは、「中硬膜動脈塞栓術は今後10年で、脳神経外科医が行う最も一般的な手術になる可能性があるため、医療費を削減し、高齢患者集団の全体的な健康状態を改善する可能性がある」との見方を示している。

5248.

幼少期の教師との関係は子どもの学習や発達に影響する

 幼児期から小学3年生までにかけての子どもと教師の関係が良好であると、子どもの学習や発達に大きな利益をもたらす可能性のあることが、米オハイオ州立大学教育学・人間生態学准教授のArya Ansari氏らの研究で示された。Ansari氏は、「このような早期からのつながりは、学業成績だけでなく社会的および情緒的な発達や、教育の成功に重要な実行機能能力にも大きく影響する」と話している。この研究結果は、「Child Development」に11月20日掲載された。 Ansari氏らはこの研究で、2010~2011年に幼稚園児約1万4,370人を対象に開始された進行中の研究(Early Childhood Longitudinal Study)のデータを用いて、幼児期から小学3年生までにかけての子どもと教師との関係の質が、子どもの教育に及ぼす影響について検討した。この研究データには、5年生までの子どもの家庭および学校での経験に関するデータも含まれていたが、4・5年生時の子どもと教師との関係性についての報告がなかったため、今回の研究では3年生までの期間が対象とされた。子どもと教師との関係の質は、STRS(Student-Teacher Relationship Scale)の短縮版を用いて、親密さとコンフリクト(葛藤)の観点から評価し、両者の関係が子どもの学業成績、欠席率、実行機能、社会的行動の発達に与える影響を検討した。 その結果、幼稚園という早い段階で形成された子どもと教師との関係の質は、子どもの早期の学習と発達に大きなメリットをもたらす可能性のあることが明らかになった。また、両者の関係は低学年の期間を通じて重要であり、時間の経過とともに累積的な効果をもたらすことが確認された。全ての子どもが教師との親密な関係から利益を得ており、特に女子では、教師との関係においてコンフリクトや親密さに不足が認められた場合には、社会的に悪影響を受ける傾向のあることが示された。一方、男子はそのような影響を受けにくい傾向が認められた。 Ansari氏は、「この研究から得られた最も驚くべき知見は、子どもと教師の関係が、短期的にも長期的にも多様な集団で幅広いアウトカムに一貫して影響を及ぼすという点である」と、「Child Development」の発行元であるSociety for Research in Child Development(SRCD、児童発達研究学会)のニュースリリースの中で説明している。 Ansari氏は教師に対し、率直な意見を述べるように子どもを促し、彼らの話に積極的に耳を傾けるよう呼び掛けている。また、強い絆で結ばれた人間関係を築くために、教師は子どもの気持ちを認め、協力を促すべきであるとも付け加えている。なお、教師と子どもの絆は子どもたち一人一人の興味を育むことによって築かれることも、この研究で示された。 Ansari氏は、今回の研究結果について、「教師と子どもの関係のさまざまな側面がどのように学びを形成するのか、また、こうした関係が集団や環境によってどのように異なるのかを探る足掛かりとなるものだ」と話している。

5249.

第220回 インフルエンザ患者数が前週比2倍以上に増加、年内にも感染ピーク?/厚労省

<先週の動き>1.インフルエンザ患者数が前週比2倍以上に増加、年内にも感染ピーク?/厚労省2.2040年を見据えた新たな地域医療構想、在宅医療強化が必要/厚労省3.移植希望、複数医療機関に登録可能に、体制改革案を公表/厚労省4.医師の働き方改革でガイドラインを改正、時短計画見直しを強化/厚労省5.地方は分娩数減、都市部はコスト増で産科診療所の経営が悪化/日医総研6.担当医が画像診断報告書を見逃し、肺がん診断が1年遅れる医療過誤/神戸大1.インフルエンザ患者数が前週比2倍以上に増加、年内にも感染ピーク?/厚労省インフルエンザの流行が拡大している。厚生労働省によると、11月25日~12月1日の1週間における定点1医療機関当たりの患者報告数は4.86人と、前週の2倍以上に増加した。全国的な流行期に入ってから6週連続の増加で、患者数は2万4,027人に達した。都道府県別では、福岡県が11.43人と最も多く、ついで長野県(9.07人)、千葉県(8.18人)と続いている。専門家は、このペースで患者数が増加すると、年内にも感染のピークを迎える可能性があると指摘している。インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる感染症で、発熱、咳、のどの痛み、頭痛、関節痛、筋肉痛などの症状を引き起こす。感染経路は、咳やくしゃみなどの飛沫感染や、ウイルスが付着した手で口や鼻を触ることによる接触感染。厚労省では、手洗い、マスクの着用、咳エチケットなどの感染対策を呼びかけている。また、ワクチンの接種も有効な予防策となる。ワクチンは、接種してから効果が出るまでに約2週間かかるため、流行期前に接種することが推奨されている。参考1)インフルエンザの定点報告数が倍増 感染者数2万人超える(CB news)2)インフルエンザ 感染ピークはいつ?流行期入り後 患者増続く(NHK)2.2040年を見据えた新たな地域医療構想、在宅医療強化が必要/厚労省厚生労働省は、12月6日に「新たな地域医療構想等に関する検討会」を開き、2040年の高齢社会を見据えた新たな地域医療構想案について検討を行った。2040年頃に迎える高齢者人口のピークと医療ニーズの変化に対応するため、入院医療だけでなく在宅医療の強化や医療機関の機能分担を明確化し、地域完結型の医療体制構築を目指す内容となった。2040年には、85歳以上の高齢者が2020年比で42%増加すると予測され、都市部を中心として在宅医療の需要も62%増加する見込みとなっている。新たな構想では、各地域で将来の在宅医療需要を推計し、医療関係者と連携して必要な体制について検討を行っていく。具体的には、医療機関の機能を「急性期拠点機能」「高齢者救急・地域急性期機能」「在宅医療等連携機能」「専門等機能」の4つに分類し、地域での役割分担の明確化を行う。大学病院などには、医師の派遣や医療従事者育成といった広域的な機能を担うことも期待されており、行政は、地域ごとの医療ニーズを踏まえ、医療機関の機能強化を支援する。この構想は、2024年度補正予算案にも反映されており、医療機関の経営支援、医師不足地域への支援、医療DX推進などに1,311億円が計上されている。一方、財政制度等審議会は、医療費総額の伸びを抑制するため、診療報酬の適正化や医師偏在対策などを提言している。医療現場からは、介護ヘルパーなど在宅医療の担い手不足や、診療報酬改定による経営悪化を懸念する声も上がっており、新たな地域医療構想の実現には、医療費抑制と医療提供体制の充実を両立させることが課題となる。今回、討議されなかった医師偏在対策については来週、開催する会議で検討を行い、年末までに関係者の合意を得て、対策パッケージとして取りまとめたい考えだ。参考1)第14回 新たな地域医療構想等に関する検討会(厚労省)2)新たな地域医療構想、取りまとめ案を大筋了承 連携・再編・集約化を28年度までに協議(CB news)3)新「地域医療構想」案を公表 「在宅医療」対応強化など 厚労省(NHK)3.移植希望、複数医療機関に登録可能に、体制改革案を公表/厚労省厚生労働省は12月5日、脳死からの臓器移植の体制を抜本的に見直す改革案をまとめ、有識者委員会に提示した。改革案では、提供者(ドナー)家族への対応や移植希望者の選定、臓器搬送の調整など、これまで日本臓器移植ネットワーク(JOT)に集中していた業務を分割し、あっせん機関を複数化する。具体的には、ドナー家族への対応は地域ごとに新設する法人に移管し、JOTは移植希望者の選定や臓器搬送の調整などに専念する。また、移植希望者が登録できる医療機関を、現在の原則1ヵ所から複数ヵ所に拡大する。これにより、第1希望の医療機関が受け入れを断念した場合でも、他の医療機関で移植を受けられる可能性が高まる。さらに、知的障害などで意思表示が困難な人からの臓器提供についても、本人の意思を丁寧に推定した上で判断できるようにガイドラインを見直す予定。この改革案は、JOTの業務多忙化や人員不足による対応の遅れ、移植実施病院の受け入れ体制不足など、現在の臓器移植体制が抱える課題を解決することを目指している。厚労省は、今後、パブリックコメントなどを経てガイドラインを改正し、新たな体制を構築していく方針。参考1)第70回 厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会(厚労省)2)厚生労働省 脳死からの臓器移植 実施体制の大幅な見直し案示す(NHK)3)臓器あっせん、複数機関で 厚労省改革案 移植増狙い負担軽減(日経新聞)4)移植医療体制の抜本見直し案、厚労省臓器移植委が了承…移植希望者の複数施設登録を可能に(読売新聞)4.医師の働き方改革でガイドライン改正、時短計画見直しを強化/厚労省厚生労働省は、医師の労働時間短縮計画作成ガイドラインを一部改正し、11月28日に都道府県などに通知した。改正のポイントは、計画の年度途中における「年度暫定評価」と次年度開始後に行う「年度最終評価」の2段階評価を導入し、よりきめ細かく計画を見直すことができるようにした。今回の改正は、「医師の働き方改革を推進するための医療法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第49号)に基づくもの。同法では、時間外や休日の労働時間が年960時間を超え、特例水準を適用する医師が勤務する医療機関などに、医師の労働時間短縮計画の作成を義務付けている。ガイドラインでは、計画期間について5年を超えない範囲で設定することとし、4月を計画の開始月とした場合を例に、毎年の見直し方法を解説している。初年度は、第3四半期頃に「年度暫定評価」を実施し、計画の対象となる医師の時間外・休日労働時間数や、タスク・シフト/シェアによる労働時間の短縮に向けた取り組みについて実績を確認する。確認期間は4月からおおむね6~8ヵ月間とした。その結果に基づき、第4四半期頃に計画見直しを検討し、年度末までに2年目の計画の変更を行う。2年目以降は、前年度全体の「年度最終評価」を第1四半期頃に実施し、「年度暫定評価」と同様に実績を確認する。その結果に基づき、2年目の計画の見直しが必要かどうかを検討し、計画を見直す場合は6月末日までに計画の変更を行う。一連の見直しは毎年行い、特定労務管理対象機関は時間外・休日労働時間の実績などを記入する参考資料とともに計画を都道府県に提出する。それ以外の医療機関は医療機関等情報支援システム「G-MIS」に登録する。厚労省は、今回のガイドライン改正により、医療機関における医師の労働時間短縮に向けた取り組みが、より効果的に推進されることを期待している。参考1)医師労働時間短縮計画作成ガイドラインの一部改正について(厚労省2)医師の時短計画、2段階評価で毎年見直し タスクシフト・シェアの状況も確認 厚労省(CB news)5.地方は分娩数減、都市部はコスト増で産科診療所の経営が悪化/日医総研日本医師会総合政策研究機構は、全国の産科診療所の経営状況などを把握するため、9月にアンケート調査を実施した。その結果をワーキングペーパーとしてまとめ公表した。これによると、2023年度の産科診療所の経常利益率は3.0%で、前年度から0.4ポイント悪化し、赤字診療所の割合は42.4%と、前年度から0.5ポイント拡大したことが明らかとなった。調査は、日本産婦人科医会の会員の産婦人科と産科の診療所1,000ヵ所を対象に、ウェブ形式と紙の調査票で実施された。有効回答は449ヵ所(有効回答率44.9%)で、このうち医療法人の産科診療所は191ヵ所だった。2023年度の経常利益率を地域別にみると、大都市は2.9%、中都市は3.0%、小都市・町村は3.0%だった。前年度に比べ、中都市では1.1ポイント上昇したが、小都市・町村で2.8ポイント、大都市では1.5ポイント悪化した。都市部では物価高騰と賃上げなどによるコストの増加が経営悪化につながり、地方では分娩数の減少が経営を圧迫している現状が浮き彫りになった。回答施設の病床利用率は、平均5割を切っており、入院患者数が減少していることがわかる。しかし、24時間対応の医療スタッフを維持する必要があるため、人件費の削減が難しく、経営悪化に拍車をかけている。日医総研は、こうした状況が続けば、医療スタッフを維持するのが困難になり、分娩の取り扱いを止めざるを得ない診療所が増えるとして、国による支援を呼びかけている。参考1)産科診療所の特別調査(日医総研)2)産科診療所の4割超が経常赤字 日医総研 医業利益率は悪化(CB news)6.担当医が画像診断報告書を見逃し、肺がん診断が1年遅れる医療過誤/神戸大神戸大学医学部附属病院は12月6日、医師2人が患者のCT画像診断報告書に記載された肺がんの疑いを見落とし、診断が約1年遅れる医療過誤があったと発表した。患者は70代の女性で、2016年から心臓血管疾患の経過観察のため、同病院で定期的にCT検査を受けていた。2022年10月のCT検査で放射線科医が肺がんの疑いを指摘したが、当時の担当医は報告書の内容を確認しなかった。翌2023年10月にも同様の指摘がされたが、別の担当医もまた見落としていた。同年10月中旬、患者のかかりつけ医が診断報告書を確認し、肺がんの疑いに気付き、同病院の呼吸器内科に紹介したことで、肺がんの診断が確定した。しかし、発見時にはすでに進行がんの状態であり、完治が難しい状態になっていた。同病院は、早期に発見できていれば手術などの治療が可能だった可能性が高いことを認め、「患者とご家族に多大な苦痛をおかけしたことを反省し、謝罪申し上げる」と発表した。再発防止策として、同病院では、報告書の見落としを防ぐシステムの活用や、診療科ごとに診断リポートの重大な指摘を見逃さないよう確認する責任者を置くなどの対策を講じるとしている。参考1)画像診断レポートの確認不足による肺の確定診断及び治療の遅延について(神戸大)2)神戸大付属病院で医療ミス、肺がん疑いの患者CT検査結果の確認怠る…発見遅れ完治困難に(読売新聞)3)神戸大病院 肺がん疑いのCT画像報告書を主治医が見落とし 1年放置し「重大な影響」(神戸新聞)4)神戸大病院で肺がんの診断遅れるミス 疑い指摘を担当医2人が見逃す(朝日新聞)

5250.

第80回 κ(カッパ)係数による一致度の評価とは?【統計のそこが知りたい!】

第80回 κ(カッパ)係数による一致度の評価とは?実際の臨床業務ではしばしば起こる事象として、病理診断や画像診断では診断医によって診断が異なる可能性があります。たとえば、IgA腎症の予後を推定するための組織学的分類は、本症の末期腎不全への進展の危険因子と考えられる腎生検組織所見を基に、わが国では、「IgA腎症診療指針 第2版」(日本腎臓学会)において、IgA腎症患者の予後は、メサンギウム細胞増殖と基質増加、糸球体の硬化、半月体の形成、ボウマン嚢との癒着、尿細管・間質病変、血管病変の程度から、以下の4群に分類されています(注:本指針は改訂され第3版が刊行されている)。1:予後良好群(透析療法に至る可能性がほとんどないもの)2:予後比較的良好群(透析療法に至る可能性が低いもの)3:予後比較的不良群(5年以上・20年以内に透析療法に移行する可能性があるもの)4:予後不良群(5年以内に透析療法に移行する可能性があるもの)同じ腎病理組織像をみても、医師Aは「比較的予後不良群」と診断し、医師Bは「比較的予後良好群」と診断するかもしれません。「比較的予後不良」と診断されれば、「5年以上・20年以内に透析に移行する可能性がある」ということですが、「比較的予後良好群」と診断された場合、「透析に至る可能性がかなり低い」ということになり、患者さんが受ける印象は大きく異なりますし、当然ながら治療方針も異なってくる可能性があります。理想的な病理組織分類、画像診断分類とは、正確に予後を予測する分類であることは当然ですが、誰が何度診断しても同じ診断が得られる分類であるべきです。カテゴリー変数(名義変数、順序変数)として表現される診断の一致度(reproducibility)を評価するために、よく利用される統計学的手法が「κ係数(kappa statistic)」です。■κ係数とはある現象を2人の観察者が観察した場合、この結果がどの程度一致しているかを表す統計量を「κ統計量」や「一致率」と言います。0~1までの値をとり、値が大きいほど一致度が高いといえます。一般に、κ係数は、以下のように判定されます。0.8を超える高い一致度0.6〜0.8かなりの一致度0.4〜0.6中等度の一致度0.4以下低い一致度κ係数≧0.6であれば、観察者間の一致度(reproducibility)が十分高いと判断されます。■κ係数の計算方法実際にκ係数を計算してみましょう。ここに40例の患者について、医師Aと医師Bの病理診断データがあるとします。両者のグレード分類は表1のようになりました。表1 医師AとBのグレード分類両者の一致度を調べるために、表2のようにクロス集計を行います。表2 医師AとBのクロス集計次に判別的中率を算出します。次に一致度をκ係数で調べます。判別的中率は「偶然による一致率」を勘案していない点で、「見かけ上の一致率(observed degree of agreement)」と言われています。κ係数は、判別的中率から見かけ上の一致率を除去したもので、偶然の一致率は次のように算出できます。表3に縦計をT1、T2、T3、T4、横計をY1、Y2、Y3、Y4、全度数をnとします。表2 医師AとBのクロス集計表3 偶然の一致率の集計縦計は、表2の縦計の数値(青枠内)を全体n=40で割った値が入ります(表3(1))。横計には、表2の横計の数値(緑枠)を全体n=40で割った値が入ります(表3(2))。(3)、(4)、(3)×(4)は、表2の数値を代入した算出した結果を示しています。κ係数を以下のように求めてみると、κ係数は高い値を示し、検定によるp値は0.000で、2人の病理医の一致度(reproducibility)は十分高いと評価されます。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第38回 変動係数とは?「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション13 カイ2乗検定

5252.

脾膿瘍の鑑別診断【1分間で学べる感染症】第16回

画像を拡大するTake home message脾膿瘍には、血行性感染と腹腔内からの直接波及の機序の2つがあることを理解しよう。脾膿瘍に加えて黄色ブドウ球菌や連鎖球菌の菌血症を見たら、感染性心内膜炎の可能性を念頭に置こう。リスクに応じて、ほかの起因菌も幅広く考慮しよう。皆さんは脾膿瘍(ひのうよう)を経験したことがありますか。頻度は高くないものの、非常に重要な疾患の1つです。以下、一緒に見ていきましょう。1)血行性感染感染性心内膜炎などの感染症から、脾臓に播種して膿瘍を形成するケースです。黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などが頻度として高いですが、血液培養からこれらの菌が検出され、かつ画像検査で脾膿瘍が確認された場合には、積極的に感染性心内膜炎の精査を行うことが推奨されます。脾臓は腎臓と同様に遠隔転移巣として膿瘍を形成しやすい臓器であることが知られています。経胸壁心エコー、場合によっては経食道心エコーでの精査を検討します。2)腹腔内からの直接波及腹腔内からの感染では、腹膜炎などから直接波及するケースがあり、病原微生物として腸内細菌科細菌、腸球菌、腹腔内嫌気性菌などを考慮します。機序を考えれば複数菌による感染の可能性があることも容易に想像できるでしょう。とくにクレブシエラは高い病原性を持つ菌株が東アジアを中心に報告されており、侵襲性感染を引き起こすことがあるので注意が必要です。教科書的には糖尿病患者の肝膿瘍が有名ですが、脾膿瘍の報告もあり、念頭に置いておく必要があります。まれな病原微生物としては、猫の引っかきによるバルトネラ感染、白血病患者などに多い好中球減少症における肝脾カンジダ症(慢性播種性カンジダ症)などが知られています。この肝脾カンジダ症はフルコナゾールを含めたアゾール系抗真菌薬の予防内服の普及により現在は報告がきわめて少なくなりましたが、予防的抗真菌薬に耐性のカンジダも近年増加傾向であり、視野に入れておく必要があります。日本ではまれであるものの、東南アジアや北オーストラリアではBurkholderia pseudomalleiというブドウ糖非発酵菌が問題になることがあります。この菌による感染症を類鼻疽(るいびそ、英名:メリオイドーシス)と呼びます。これらの流行地域では、「原因不明の脾膿瘍を見たらメリオイドーシスを疑え」と医学生や研修医でも教えられるほど重要な疾患です。頻度は高くないものの、脾膿瘍は診断と治療が遅れると致死率が高い疾患です。皆さんもぜひ、脾膿瘍の成因と病原微生物を頭に入れておきましょう。1)Radcliffe C, et al. Open Forum Infect Dis. 2022;9:ofac085.2)Lee MC, et al. Can J Infect Dis Med Microbiol. 2018:8610657.3)Lee WS, et al. Yonsei Med J. 2011;52:288-92. 4)Guo RF, et al. Infect Dis Rep. 2015;7:5791.

5253.

事例013 不整脈に処方したカルベジロールで査定【斬らレセプト シーズン4】

解説事例では、不整脈の患者に処方をしたカルベジロール錠に対して、A事由(医学的に適応と認められないもの)が適用されて査定になりました。従来、「不整脈」の病名にて保険請求が可能であったと記憶していたために、添付文書などを参照してみました。効能・効果には、「不整脈」の直接の記載はないものの、「頻脈性心房細動」には適応があると記載されていました。『不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン』(日本循環器学会/日本不整脈心電学会)を参照すると、「不整脈」の主な症状には「徐脈」「頻脈」「調律異常」があり、それぞれ治療内容が異なると記載されていました。したがって、「不整脈」のみでは「効果・効能」を満たしていることの説明に不十分と判断されA事由が適用されたものと推測ができました。コンピュータ審査が厳しくなるにつれ、添付文書に沿った傷病名の記載が査定防止の重要な鍵となります。査定対策として、処方時に注意喚起を表示させるように処方チェックシステムを改修し、医師には添付文書に沿った傷病名を記載いただくか、医学的必要性のコメントを入力していただくようにお願いしました。なお、カルベジロールは、投与する錠剤の力価によって適応病名が異なりますのでご留意ください。

5254.

がん診断後の禁煙、6ヵ月内のスタートで予後改善

 喫煙・禁煙ががんの罹患や予後に関連するとの報告は多いが、がん診断後の禁煙治療の開始時期は予後にどの程度関連するのかについて検討した、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのPaul M. Cinciripini氏らによる研究がJAMA Oncology誌オンライン版2024年10月31日号に掲載された。 研究者らは、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターのたばこ研究・治療プログラムの参加者を対象とした前向きコホート研究を行った。参加者は、がん診断後に6~8回の個別カウンセリングと10~12週間の薬物療法からなる禁煙治療を受けた。禁煙治療開始から3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月後に自己申告により禁煙の継続を報告した。がん診断から禁煙治療登録までの期間(6ヵ月以内、6ヵ月~5年、5年以上)に基づいて3つのサブグループに分けて解析を行った。治療は2006年1月1日~2022年3月3日、データ分析は2023年9月~24年5月に実施された。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、当時喫煙しており、がん診断後に禁煙治療を受けた患者4,526例(女性2,254例[49.8%]、年齢中央値55[SD 47~62]歳)で、がん種で多かったのは乳がん(17.5%)、肺がん(17.3%)、頭頸部がん(13.0%)、血液がん(8.3%)だった。追跡期間中央値は7.9(SD 3.3~11.8)年だった。・禁煙継続率は、3ヵ月時点で42%(1,900/4,526例)、6ヵ月時点で40%(1,811/4,526例)、9ヵ月時点で36%(1,635/4,526例)であった。・3ヵ月時点の禁煙者は喫煙者(=禁煙に失敗)と比較して、5年および10年時点での生存率が改善した(65%対61%、77%対73%)。・全コホートの生存率の最低百分位数は56%であったため、生存期間中央値は推定できなかった。75パーセンタイルでの生存期間を推定すると、死亡までの期間は、3ヵ月時点の喫煙者では4.4年だったのに対し、禁煙者では5.7年だった。・3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月時点のいずれでも、禁煙者は15年間の生存率が上昇した(3ヵ月時点の調整ハザード比[aHR]:0.75[95%信頼区間[CI]:0.67~0.83]、6ヵ月時点のaHR:0.79[95%CI:0.71~0.88]、9ヵ月時点のaHR:0.85[95%CI:0.76~0.95])。・診断から禁煙治療開始までの期間と生存転帰との関連では、診断から6ヵ月以内に開始した患者では、3ヵ月後の禁煙の有無が5年および10年時点での生存率の改善と関連していた(それぞれ61%対71%、52%対58%)。この有益性は15年まで持続した。同様の関連性は診断から6ヵ月~5年内に開始した患者でも観察されたがその有益性は減少し、5年以上経過して開始した患者では有意な関連性は認められなかった。 著者らは、「治療開始から3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月時点の禁煙継続が、生存率の改善と関連していた。がん診断後早期に禁煙治療を開始することも重要で、6ヵ月以内に治療を開始した患者では生存率が最も良好であった」とし、がん診断後早期にエビデンスに基づく禁煙治療を開始し、継続することの重要性を強調した。

5255.

自殺念慮を伴ううつ病は治療抵抗性へつながるのか

 治療抵抗性うつ病は、自殺行動と関連している。自殺リスクは、治療抵抗性うつ病の予測因子であるため、自殺念慮を有するうつ病患者は、将来治療抵抗性うつ病を発症する可能性が高まる。そのため、現在自殺念慮を有するうつ病患者では、治療抵抗性うつ病のリスク因子の早期特定が非常に重要となる。フランス・モンペリエ大学のBenedicte Nobile氏らは、現在自殺念慮を有するうつ病患者におけるうつ病の非寛解率および治療抵抗性うつ病のリスク因子の特定を試みた。また、ベースライン時の自殺念慮が、ベースライン時のうつ病重症度や6週間後のうつ病寛解率に及ぼす影響を評価した。Psychiatry Research誌2024年12月号の報告。 対象は、2つのフランス大規模プロスペクティブ自然主義的コホート研究(LUEUR研究、GENESE研究)より抽出した、うつ病成人外来患者(DSM-IV基準)。抗うつ薬の開始または切り替えから6週間、フォローアップを行った。現在自殺念慮を有する患者とそうでない患者の間で、社会人口統計学的および臨床的特徴、早期症状改善に違いがあるかを比較するため、ロジスティック回帰モデル(単変量、多変量)を用いた。抗うつ薬の開始または切り替えを行った患者は、それぞれ分析した。治療抵抗性うつ病の定義は、抗うつ薬変更後6週間でうつ病が寛解しなかった場合とした。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬の切り替えを行った患者における非寛解の主な予測因子は、2週間目の不安症状の早期改善不良であった。・抗うつ薬治療開始患者におけるベースライン時の自殺念慮は、ベースライン時のうつ病重症度およびうつ病寛解率との関連が認められた。・ベースライン時のうつ病重症度だけでは、うつ病寛解率を説明することはできなかった。 著者らは「現在自殺念慮を有するうつ病患者では、不安症状および自殺念慮をターゲットとした特定の薬理学的および非薬理学的治療を行い、その効果を短期的に評価することで、うつ病寛解率を向上させる可能性が示唆された」としている。

5256.

非急性硬膜下血腫、中硬膜動脈塞栓術は有効か/NEJM

 症候性の非急性硬膜下血腫患者(多くが穿頭ドレナージを受けた)の治療において、通常治療と比較して中硬膜動脈塞栓術は、90日の時点での症状を伴う硬膜下血腫の再発または進行の発生率はほぼ同じだが、重篤な有害事象の頻度は有意に低いことが、中国・海軍軍医大学のJianmin Liu氏らMAGIC-MT Investigatorsが実施した「MAGIC-MT試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2024年11月21日号に掲載された。中国の医師主導型無作為化対照比較試験 MAGIC-MT試験は、中国の31施設で実施した医師主導の非盲検無作為化対照比較試験であり、2021年3月~2023年5月に患者を募集した(Shanghai Shenkang Hospital Development Centerなどの助成を受けた)。 年齢18歳以上、症候性の非急性硬膜下血腫でmass effectがみられ、日常的な活動性が自立している(修正Rankin尺度のスコアが0~2点)患者を対象とした。これらの患者を、外科医の裁量で穿頭ドレナージを行う群または非外科的治療を行う群に割り付け、次いで各群の患者を液体塞栓物質を用いた中硬膜動脈塞栓術を受ける群または通常治療を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。開頭術や緊急血腫除去を要する病態の患者は除外した。 主要アウトカムは、無作為化から90日以内における症候性の硬膜下血腫の再発または進行とした。副次アウトカムにも差はない 722例を登録し、塞栓術群に360例、通常治療群に362例を割り付けた。全体の年齢中央値は69歳(四分位範囲[IQR]:61~74)、596例(82.5%)が男性で、診断時に頭部外傷が379例(52.5%)で確認され、53例(7.3%)が抗血栓薬の投与を受けていた。また、565例(78.3%)が穿頭ドレナージを受け、塞栓術群では99.6%の患者が塞栓術後に穿頭ドレナージを受けた。 90日の時点での症候性硬膜下血腫の再発・進行の発生率は、塞栓術群が6.7%(24例)、通常治療群は9.9%(36例)と、両群間に有意な差を認めなかった(群間差:-3.3%ポイント、95%信頼区間[CI]:-7.4~0.8、p=0.10)。 副次アウトカムである90日後の修正Rankin尺度スコア中央値は、両群とも0点(IQR:0~1)であり、変化量の補正済み共通オッズ比は1.10(95%CI:0.82~1.46)であった。また、他の副次アウトカム(90日後の生活の質[EQ-5D-5Lスコア]、平均入院日数、再入院率、退院後のリハビリテーション病院受診、画像上の血腫の変化など)についても両群間に差はなかった。塞栓術関連合併症の発現率は0.8% 安全性の主要アウトカムである90日間に発生した重篤な有害事象(死亡を含む)の割合は、塞栓術群が通常治療群に比べ有意に少なかった(6.7%[24例]vs.11.6%[42例]、相対リスク:0.58、95%CI:0.34~0.98、p=0.02)。また、90日間の死亡率は、塞栓術群0.6%(2例)、通常治療群2.2%(8例)だった(相対リスク:0.27、95%CI:0.06~1.25)。 塞栓術群では、塞栓術関連合併症が3例(0.8%)で発現した(顔面神経麻痺1例、造影剤に対するアレルギー反応2例)。穿頭ドレナージ関連合併症の発生率は、塞栓術群2.5%(9例)、通常治療群1.1%(4例)だった(相対リスク:2.26、95%CI:0.69~7.40)。 著者は、「先行研究における中硬膜動脈塞栓術後の再発または進行の発生率は1.4~8.9%であり、通常治療は9.3~27.5%であるが、本研究では中硬膜動脈塞栓術群で発生率が有意に低いことは示されなかった」とまとめ、「穿頭ドレナージを再度行うか、レスキューとして行うかの判断は、各参加施設の医師の裁量に任され、治療医とコアラボラトリーのメンバーは試験群の割り当てを知っていたため、アウトカムの評価にバイアスが生じた可能性がある」としている。

5257.

新薬muvalaplin、心血管リスク患者のリポ蛋白(a)を大幅減少/JAMA

 心血管イベントのリスクが高く、リポ蛋白(a)濃度が上昇した患者において、プラセボと比較して経口低分子リポ蛋白(a)阻害薬muvalaplinは、12週間の投与でリポ蛋白(a)を大幅に減少させ、忍容性も良好であることが、オーストラリア・モナシュ大学のStephen J. Nicholls氏らが実施した「KRAKEN試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年11月18日号で報告された。国際的な無作為化プラセボ対照第II相試験 KRAKEN試験は、リポ蛋白(a)濃度が上昇した患者におけるmuvalaplinのリポ蛋白(a)抑制効果の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第II相試験であり、2022年12月~2023年11月に日本を含む8ヵ国43施設で患者の無作為化を行った(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 年齢40歳以上で心血管イベントのリスクが高く、リポ蛋白(a)濃度が175nmol/L以上の患者233例(年齢中央値66歳、女性33%)を対象とした。心血管リスクが高い状態は、冠動脈疾患、虚血性脳卒中または末梢動脈疾患の既往歴があるか、2型糖尿病、家族性高コレステロール血症を有する場合と定義した。 これらの患者を、muvalaplin 10mg/日(34例)、同60mg/日(64例)、同240mg/日(68例)、またはプラセボ(67例)を12週間経口投与する4つの群に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、12週の時点におけるリポ蛋白(a)のモル濃度のベースラインからのプラセボで補正した変化率とし、インタクトなリポ蛋白(a)の測定法と従来のアポリポ蛋白(a)ベースの測定法を用いて評価した。アポリポ蛋白Bも用量依存性に低下 インタクトなリポ蛋白(a)測定法では、プラセボ群と比較したmuvalaplin群のリポ蛋白(a)濃度のプラセボ群で補正した低下率は、10mg/日群で47.6%(95%信頼区間[CI]:35.1~57.7)、60mg/日群で81.7%(78.1~84.6)、240mg/日群で85.8%(83.1~88.0)であった。また、アポリポ蛋白(a)測定法による低下率は、それぞれ40.4%(28.3~50.5)、70.0%(65.0~74.2)、68.9%(63.8~73.3)だった。 副次エンドポイントであるアポリポ蛋白Bのベースラインから12週までの変化率は、プラセボ群に比べ用量依存性に低下し、muvalaplin 10mg群で8.9%(95%CI:-2.2~18.8)、60mg群で13.1%(4.4~20.9)、240mg群で16.1%(7.8~23.7)の低下率であった。 高感度C反応性蛋白については、muvalaplinの3つ用量群のいずれにおいてもプラセボ群と比較して有意な変化はみられなかった。安全性、忍容性に関する懸念は認めなかった 安全性および忍容性に関する懸念は、muvalaplinのいずれの用量にも認めなかった。試験期間中の治療関連有害事象の発現は3つの用量で同程度(49.2~52.9%)、重篤な有害事象は3用量とも6%未満(2.9~5.9%)であり、試験薬の投与中止に至った有害事象は240mg/日群で6例(8.8%)にみられた。 いずれかの用量群で少なくとも5%の患者に発現した治療関連有害事象は、下痢、悪心、インフルエンザ、背部痛、筋肉痛、貧血などであった。 著者は、「市販のリポ蛋白(a)測定法では、muvalaplinと結合したアポリポ蛋白(a)や遊離アポリポ蛋白(a)に加えて、インタクトなリポ蛋白(a)粒子中のアポリポ蛋白Bと結合したアポリポ蛋白(a)を測定するため、muvalaplinのような薬剤によるリポ蛋白(a)の低下の程度を過小評価する可能性があるが、インタクトなリポ蛋白(a)測定法は臨床では使用できず、まだ広く評価されていない」「muvalaplinが臨床イベントを減少させ、心血管疾患の予防において役割を果たすかについては、今後の研究が必要である」としている。

5258.

蒸留酒、ワイン、ビール、最も悪い生活習慣に関係するのはどれ?

 好きな酒の種類が、その人の生活習慣を知る手がかりになる可能性を示す研究結果が報告された。ビール好きの人は、ワインや蒸留酒などを好む人と比べて不健康な生活習慣を送っている人が多いことが明らかになったという。米テュレーン大学医学部研修医プログラムのMadeline Novack氏らによるこの研究結果は、米国肝臓学会議年次学術集会(AASLD 2024、11月15~19日、米サンディエゴ)で発表され、「Nutrients」に11月13日掲載された。 Novack氏は、「米国では、アルコールの過剰摂取が肝硬変の主な要因となっている。また、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)も急増している」と話す。同氏はまた、「これらの肝疾患は併存することも多く、管理や予防には生活習慣の改善が重要だ。そのためには、飲酒と栄養不良の関係について理解することから始める必要がある」とAASLDのニュースリリースの中で述べている。 Novack氏らは今回の研究で、飲酒習慣がある1,917人の米国成人(平均年齢46.8±0.8歳、男性56.5%)の全国調査データを分析した。調査の回答者は、食習慣に関する詳細な質問に答えていた。 調査では、回答者の38.9%がビールのみ、21.8%がワインのみ、18.2%が蒸留酒/カクテルのみ、21.0%が複数種類の酒を飲むと回答していた。また、飲んでいる酒の種類にかかわらず、飲酒習慣のある人で食事の質の評価指標である健康食指数(HEI、100点満点)で、十分に健康的な食生活と見なされる80点を達成している人はいなかった。 ビールのみを飲む人は、ワイン、または蒸留酒/カクテルのみを飲む人、複数種類の酒を飲む人と比べて、世帯収入と食事の質が低く、身体活動量が少なく、喫煙者が多い傾向が認められた。具体的には、ビールのみを飲む人では、貧困ラインの閾値を下回る人の割合が高く(12.7%、ワインのみ飲む人5.7%、蒸留酒/カクテルのみ飲む人9.6%、複数種類の酒を飲む人6.0%、以下、同順で記載)、HEIが低く(49.3点、55.1点、52.8点、52.6点)、喫煙者の割合が高く(27.8%、10.0%、19.9%、15.3%)、身体活動量が十分な人の割合が少なかった(42.2%、59.8%、46.1%、59.3%)。さらに、ビールのみを飲む人は、1日当たりの総カロリー摂取量が最も多かった。 Novack氏は、ビールのみを飲む人に多く認められた、食事の質の低さ、身体活動量の少なさ、喫煙といった生活習慣要因は、すでに過度の飲酒習慣があり、肝疾患の発症リスクがある人の健康に大きな影響を与える可能性があることを指摘している。 またNovack氏は、飲む酒の種類によってどんな食品を食べるかが決まる傾向があることも、食事の違いを生んでいる可能性があるとの見方を示している。その例として、ビールは食物繊維が少なく炭水化物が多い食品や、加工肉などとともに飲まれがちである一方で、ワインは肉や野菜、乳製品と一緒に飲む場合が多いことを同氏は指摘している。また、食品の種類によって特定のアルコール飲料を飲みたくなることも、要因の一つとして考えられると同氏は付け加えている。例えば、揚げ物や塩分の多い食べ物は、ワインや蒸留酒よりもビールを飲みたい気持ちにさせる可能性が高いとしている。

5259.

早発卵巣不全は自己免疫疾患と関連

 早発卵巣不全(POI)と診断された女性で、重度の自己免疫疾患の有病率が上昇するという研究結果が、「Human Reproduction」に9月25日掲載された。 オウル大学病院(フィンランド)のSusanna M. Savukoski氏らは、1988~2017年に自然発症のPOIと診断された女性3,972人と一般女性対照群1万5,708人を対象として、集団ベースの登録研究を行い、POI診断前後の重症自己免疫疾患との関連を検討した。 解析の結果、POIの女性における1つ以上の重度の自己免疫疾患の有病率は5.6%であった。POI女性は対照群と比較して、基準日以前に、多腺性自己免疫症候群、アジソン病、血管炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、サルコイドーシス、炎症性腸疾患(IBD)、甲状腺機能亢進症を含む、複数の特異的な自己免疫疾患の有病率が高かった。1型糖尿病または強直性脊椎炎の有病率に、差は見られなかった。POI診断後の最初の3年間に重度の自己免疫疾患と初めて診断される標準化罹患比は2.8であったが、12年後には1.3に減少した。 著者らは、「この研究結果は、POIの発症機序に自己免疫機構が重要な役割を果たしているという仮説を補強するものである」と述べている。

5260.

麻疹ワクチン、接種率の世界的な低下により罹患者が増加

 麻疹ワクチン接種率の低下により、2022年から2023年にかけて、世界中で麻疹罹患者が20%増加し、2023年には1030万人以上がこの予防可能な病気を発症したことが、世界保健機関(WHO)と米疾病対策センター(CDC)が共同で実施した研究により明らかになった。この研究の詳細は、「Morbidity and Mortality Weekly Report」11月14日号に掲載された。 CDC所長のMandy Cohen氏は、「麻疹罹患者が世界中で増加しており、人命と健康が危険にさらされている。麻疹ワクチンはウイルスに対する最善の予防策であり、ワクチン接種の普及拡大に向けた取り組みに引き続き投資する必要がある」とCDCのニュースリリースで述べている。 一方、WHOのテドロス事務局長(Tedros Adhanom Ghebreyesus)は、「麻疹ワクチンは過去50年間で、他のどのワクチンよりも多くの命を救ってきた。さらに多くの命を救い、この致死的なウイルスが最も影響を受けやすい人に害を及ぼすのを阻止するためには、居住地を問わず、全ての人がワクチンを接種できるように投資しなければならない」と話している。 WHOとCDCによると、2023年には2220万人の子どもが2回接種の麻疹ワクチンの1回目さえ受けていなかったという。これは、2022年から2%(47万2,000人)の増加であった。2023年の世界全体での子どもの麻疹ワクチンの1回目接種率は83%であったが、2回目を接種したのはわずか74%であった。保健当局は、麻疹のアウトブレイクを防ぐために、麻疹ワクチン接種率を95%以上に維持することを推奨している。また、CDCは、麻疹ウイルスに感染した人がウイルスに対する免疫を保持していない場合、周囲の人の最大90%にウイルスが広がる可能性があるとしている。 麻疹のアウトブレイクが報告された国は、2022年の36カ国から2023年には58%増加の57カ国となった。57カ国中27カ国(47%)はアフリカであった。2023年の麻疹罹患者(1034万1,000人)は、2000年(3694万人)と比べると72%減少していたが、2022年(罹患者864万5,000人)からは20%増加していた。一方、麻疹による2023年の死者数(10万7,500人、主に5歳未満)は、2020年(死亡者80万人)からは87%、2022年(11万6,800人)からは8%減少していた。WHOとCDCは、2022年と比べて2023年に死亡者がわずかに減少したのは、子どもが麻疹に罹患しても、医療環境が整っていて死亡する可能性が低い地域で最大の感染拡大が起きたことが主な理由だと述べている。CDCによると、米国では、2024年の11月21日時点で、すでに31州とワシントンDCで麻疹のアウトブレイクが16回発生し、280症例が報告されている。2023年には、わずか4回のアウトブレイクしか発生していなかった。 麻疹の症状には、高熱、咳、結膜炎、鼻水、口内の白い斑点(コプリック斑)、頭からつま先まで広がる発疹などがある。WHOは、乳幼児は肺炎や脳の腫れなど、麻疹による重篤な合併症のリスクが最も高いとしている。なお、麻疹のワクチン接種率は、新型コロナウイルス感染症パンデミック中に世界的に低下し、2008年以来最低の水準に達した。

検索結果 合計:36520件 表示位置:5241 - 5260