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産後VTE予防のエノキサパリン、より高リスク例へ限定可能?/JAMA

 妊娠に関連した静脈血栓塞栓症(VTE)予防のためのヘパリン(エノキサパリン)ベースのプロトコルに、より選択的なリスク層別化アプローチを追加することで、産後VTEが増加することなく血腫が減少したことを、米国・アラバマ大学のMacie L. Champion氏らが報告した。著者らのアラバマ大学では、2016年に米国産科婦人科学会のガイドラインに基づく妊娠関連VTE予防プロトコルを導入したが、血腫の発生確率が2倍以上となり(補正後オッズ比[aOR]:2.34)、VTEは減少しなかったため、2021年に、より選択的なリスク層別化アプローチを取り入れたという。JAMA誌オンライン版2024年6月27日号掲載の報告。標準的リスク層別化と、より選択的な産後VTE化学的予防で比較 研究グループは、ヘパリンベースの産科学的血栓予防プロトコル(エノキサパリンプロトコル)に対する、より選択的なリスク層別化アプローチのアウトカムを後ろ向き観察研究で評価した。 対象は米国南東部の3次医療センター1施設で、2016年1月1日~2018年12月31日に出産した患者(オリジナルプロトコル群)および2021年12月1日~2023年5月31日に出産した患者(選択的プロトコル群)計1万7,489例。妊娠期間中にVTEまたはVTE高リスクのために外来で抗凝固療法を受けていた患者は除外した。対象患者は、標準的リスク層別化と、より選択的な産後VTE化学的予防のプロトコルによる治療を受けた。 主要アウトカムは、出産後6週までの血腫の臨床的診断。副次アウトカムは、出産後6週までのVTEの新規診断とした。群間のベースライン特性とアウトカムを比較し、オリジナルプロトコル群を参照群として主要および副次アウトカムのaORを95%信頼区間(CI)とともに推算した。エノキサパリン投与は減少したが、VTEは増加せず血腫が減少 試験対象1万7,489例のうち、オリジナルプロトコル群は1万2,430例(71%)、選択的プロトコル群は5,029例(29%)であった。選択的プロトコル群のほうが、年齢が高く(28.5歳vs.27.7歳)、政府管掌保険の加入者が少なく(59% vs.65%)、BMIが高値で(31 vs.30)、アスピリン使用者が多く(23% vs.18%)、妊娠高血圧腎症の診断率が高かった(21% vs.16%)(すべてのp<0.001)。 エノキサパリンを投与された患者は、選択的プロトコル群(410例、8%)がオリジナルプロトコル群(1,968例、16%)と比較して少なく、選択的プロトコル群のほうが、あらゆる血腫が減少した(0.3% vs.0.7%、aOR:0.38[95%CI:0.21~0.67])。これは、主に表在性血腫の大幅な減少(0.3% vs.0.6%、aOR:0.43[95%CI:0.24~0.75])がみられたことによるものであった。 選択的プロトコル群はオリジナルプロトコル群と比較して、VTE(0.0008%[4例]vs.0.0014%[17例]、aOR:0.40[95%CI:0.12~1.36])あるいは種類別にみたVTE(深部VTE、肺血栓塞栓症、その他のVTE)について、有意な増加はみられなかった。

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腎移植後の抗体関連型拒絶反応、抗CD38抗体felzartamabが有望/NEJM

 移植腎廃絶の主な原因である抗体関連型拒絶反応を呈した患者において、抗CD38モノクローナル抗体felzartamabは、許容可能な安全性および副作用プロファイルを示した。オーストリア・ウィーン医科大学のKatharina A. Mayer氏らが第II相二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。先行研究で、移植腎障害を引き起こす同種抗体とナチュラルキラー(NK)細胞を抑制するため、CD38を標的とすることが治療選択肢となる可能性が示唆されていた。NEJM誌2024年7月11日号掲載の報告。felzartamab(16mg/kg体重)を6ヵ月間で9回静脈内投与 研究グループは移植後180日以上経過後に抗体関連型拒絶反応を呈した患者を、felzartamab(16mg/kg体重)を9回静脈内投与する群またはプラセボを投与する群に割り付け、6ヵ月間投与し、その後6ヵ月間観察した。 主要アウトカムは、felzartamabの安全性および副作用プロファイル。重要な副次アウトカムは、24週および52週時点の腎生検の結果、ドナー特異的抗体値、末梢血NK細胞数、ドナー由来無細胞DNA値とした。重篤な有害事象はfelzartamab群1例vs.プラセボ群4例 2021年10月~2023年3月にウィーン医科大学とシャリテー-ベルリン医科大学で、腎移植を受け抗体関連型拒絶反応を呈した患者22例が無作為化された(各群11例)。移植を受けてから試験組み込みまでの期間中央値は9年(四分位範囲:5~18)であった。両群の特性は、年齢中央値(felzartamab群33歳、プラセボ群46歳)、eGFR中央値(60mL/分/1.73m2 vs.36mL/分/1.73m2)を除き、概してバランスは取れていた。 felzartamab群の8例で、軽度または中等度の注入に伴う反応がみられた。 重篤な有害事象は、felzartamab群1例とプラセボ群4例に発現。移植腎の廃絶がプラセボ群の1例で発現した。 24週および52週時点で腎生検を受けたのは、felzartamab群11例、プラセボ群10例であった。 24週時点で、形態学的な抗体関連型拒絶反応の消失が認められた割合は、felzartamab群(9/11例[82%])のほうがプラセボ群(2/10例[20%])よりも高く、その差は62%ポイント(95%信頼区間[CI]:19~100)であり、リスク比は0.23(95%CI:0.06~0.83)であった。 24週時点で、微小血管炎症スコアの中央値は、felzartamab群がプラセボ群よりも低く(0 vs.2.5)、平均群間差は-1.95(95%CI:-2.97~-0.92)だった。また、抗体関連型拒絶反応の確率を反映する分子スコア(0.17 vs.0.77)、ドナー由来無細胞DNA値(0.31% vs.0.82%)も低かった。 52週時点で、felzartamabの効果が認められた9例のうち3例で抗体関連型拒絶反応の再発が報告された。分子活性とバイオマーカー値はベースラインレベルに上昇していた。

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マルチビタミンに寿命延長効果はある?

 米国では、成人の3人に1人が疾患予防を目的にマルチビタミンを摂取している。しかし、約40万人の成人を20年以上にわたって追跡調査した研究で、マルチビタミンの摂取が長生きに役立つというエビデンスは得られなかったことが報告された。米国立がん研究所(NCI)がん疫学・遺伝学部門のErikka Loftfield氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に6月26日掲載された。 毎日のマルチビタミンの摂取がもたらす有益性と有害性については明確になっていない。マルチビタミンの摂取と死亡との関連についての過去の研究では一貫した結果が得られていない上に、追跡期間も短かった。 Loftfield氏らは今回、長期にわたる毎日のマルチビタミンの摂取とあらゆる原因による死亡との関連を明らかにするために、米国の異なる地域で実施された3件の大規模前向きコホート研究のデータを分析した。これら3件の研究では、総計39万124人(年齢中央値61.5歳、男性55.4%)の調査参加者が、ベースライン時(1993〜2000年)と追跡調査時(1998〜2004年)にマルチビタミンの摂取についての調査を受け、さらにその後も追跡調査を受けていた(最長27年)。調査参加者は全てがんや慢性疾患の既往のない、健康な人だった。 研究期間中に16万4,762人が死亡していた。このうち、4万9,836人の死因はがん、3万5,060人の死因は心血管疾患であった。人種/民族、学歴、食事の質などで調整して解析した結果、マルチビタミンの毎日の摂取は追跡期間中の全死亡リスクの低下とは関連しておらず、逆に4%増加することが明らかになった(ハザード比1.04)。心疾患、がん、脳血管疾患による死亡リスクについてもハザード比は1.0に近かった。 こうした結果を受けてLoftfield氏らは、「主要な慢性疾患の既往歴がない健康な人において、マルチビタミンを毎日摂取することで寿命が延びることを裏付けるエビデンスは見つからなかった」と結論付けている。 研究グループは、「この研究で得られた新たな知見は、心血管疾患、がん、または死亡のリスク低減にマルチビタミン摂取は有益でないことを報告したいくつかの先行研究に続くものだ」と述べている。健康専門家から成る影響力のある独立した委員会である米国予防医療専門委員会(USPSTF)も2020年に、マルチビタミンが心臓病やがんを予防できるかどうかを判断するにはエビデンスが「不十分」であるとの見解を示している。 米国でのマルチビタミンの摂取は、1999年から2011年にかけて6%減少しているが、それでも「成人の3人に1人近くが、マルチビタミンを最近摂取したことを報告しており、依然として人気があることに変わりはない」と研究グループは述べている。 今回の研究では、マルチビタミンの全死亡リスクに対する効果は確認されなかったが、研究グループは、「マルチビタミンの日常的な摂取が、加齢に関連する他の健康上の転帰に関わっている可能性を排除することはできない」と強調している。

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運動が化学療法による末梢神経障害の回避に有効か

 化学療法を受ける患者の多くが発症する化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)の回避に運動が有効である可能性が、新たな研究で示唆された。この研究では、運動をしなかった患者でCIPNを発症した者は、運動をした患者の約2倍に上ることが示されたという。バーゼル大学(スイス)のFiona Streckmann氏らによるこの研究結果は、「JAMA Internal Medicine」に7月1日掲載された。 研究グループによると、化学療法を受ける患者の70〜90%は、痛みやバランス感覚の問題、しびれ、熱感、ピリピリ感やチクチク感などのCIPNの症状を訴え、半数の患者は、がんの治療後もこのような症状が持続するという。 今回の研究では、オキサリプラチン、またはビンカアルカロイド系抗悪性腫瘍薬による化学療法を受ける158人のがん患者(平均年齢49.1歳、男性58.9%)を対象にランダム化比較試験を実施し、感覚運動トレーニング(sensorimotor training;SMT)と全身振動刺激(whole-body vibration;WBV)トレーニングがCIPNの発症や症状の低減に有効であるかどうかが検討された。対象者は、SMTを受ける群(55人)、WBVトレーニングを受ける群(53人)、および、運動は行わずに通常のケアのみを受ける群(対照群、50人)にランダムに割り付けられた。介入群(SMT群とWBV群)は、1回当たり15〜30分間のトレーニングセッションを週に2回、化学療法が終了するまで受けた。 ITT解析の結果、CIPNの発症率は、対照群で70.6%であったのに対し、SMT群では30.0%、WBVトレーニング群では41.2%であり、対照群に比べて介入群では有意に低いことが明らかになった。この結果は、介入に75%を超えて参加した者のみを対象にしたPPS解析ではさらに顕著であった(対照群73.3%、SMT群28.6%、WBVトレーニング群37.5%)。また、2種類の介入のうち、より効果が高かったのはSMTで、SMT群では対照群よりも、開眼/閉眼で両足立ちでのバランスコントロール、片足立ち、振動感覚、触覚、下肢の筋力の改善、および痛みと熱感の軽減の程度が大きく、化学療法の投与量削減を受けた患者が少なく、死亡率も低かった。 Streckmann氏は、「CIPNは、患者に必要な化学療法サイクルの計画通りの実施不可や、化学療法に含まれる神経毒性薬剤の投与量の削減、治療の中止など、臨床治療に直接的な影響を与える」と話す。同氏によると、現時点でCIPNの予防や回復に有効な薬剤は見つかっていない。それにもかかわらず、米国の医師は毎年、CIPNの治療に患者1人当たり推定1万7,000ドル(1ドル160円換算で272万円)を費やしているという。同氏は、「これに対し、運動は効果的である上に安価だ」と述べる。 Streckmann氏らは、支持療法としてがん治療に運動を取り入れるためのガイドラインを病院向けに作成中であるとしている。また、ドイツとスイスの6つの小児病院で、化学療法を受けている小児の末梢神経障害に対する運動の予防効果を確かめる研究が進行中であるという。

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夜勤とギャンブル利用の関係

 日本人の労働者2万人以上を対象とした横断研究の結果、夜勤はギャンブルの利用と関連しており、夜勤のある人ほど、ギャンブルから生活や健康などの問題が発生する可能性が高いことが明らかとなった。慶應義塾大学 医学部衛生学公衆衛生学教室 HTA公的分析研究室の吉岡貴史氏らによる研究であり、「Addictive Behaviors」に5月23日掲載された。 夜勤を含むシフト勤務者の睡眠に関する問題は、「交代勤務睡眠障害」と呼ばれる。睡眠の質が悪いとアルコールや睡眠補助薬の多用につながる可能性があり、反対に、覚醒を維持するためにカフェインやタバコなどの物質を常用してしまうこともある。夜勤は物質使用障害と関連することが報告されていることから、同じく行動嗜癖の一つであるギャンブル障害とも関連する可能性がある。 そこで著者らは、「JASTIS研究」の2023年2月のインターネット調査データを用いて、夜勤の有無とギャンブルの関連について調査した。ギャンブルを利用している人には「PGSI」という自記式スクリーニングテストを用いて、仕事、経済状態、人間関係や心身の健康など、ギャンブルに関連した問題の有無・程度を評価し、27点中8点以上を「問題ギャンブリング」と定義した。 調査対象者2万1,134人(年齢範囲15~82歳、女性43.8%、夜勤者28.0%)のうち、ギャンブル利用者(1年以内にギャンブルを利用)は9,739人だった。 全対象者のうち、ギャンブル利用者の割合(2019年の国民生活基礎調査を用いた重み付け後割合)は、夜勤者が55.4%、非夜勤者が42.1%だった。人口統計学的因子や喫煙・飲酒習慣、精神疾患や心理的苦痛などの影響を調整した多変量ロジスティック回帰モデルで解析した結果、夜勤者はギャンブル利用と有意に関連していた(非夜勤者と比較したオッズ比1.39、95%信頼区間1.25~1.53)。 また、ギャンブル利用者のうち、問題ギャンブリングに該当した人の割合は、夜勤者が24.2%、非夜勤者が8.8%だった。問題ギャンブリングと夜勤の関係について、同様に解析を行った結果、夜勤は問題ギャンブリングと有意に関連していることが明らかとなった(同1.94、1.57~2.40)。 さらに、夜勤者のうち、シフトのローテーションの有無で分けて分析したところ、ローテーションのある人(同1.46、1.28~1.68)、ない人(同1.32、1.16~1.50)のどちらも、ギャンブル利用と有意に関連していた。一方で、問題ギャンブリングに関しては、ローテーションのある人(同2.84、2.23~3.63)でのみ有意な関連が認められ、ローテーションのない人(同1.07、0.79~1.45)では関連が認められなかった。 著者らは、今回の大規模調査により夜勤とギャンブル、問題ギャンブリングとの関連が示されたことの説明の一つとして、「交代勤務睡眠障害により、ギャンブル利用が促進されたり、ギャンブルがやめられなくなってしまう可能性がある」と述べている。また、今後、縦断的関連が検出できるように研究を継続していくとしている。

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マサチューセッツ総合病院に勤務開始、NEJMのEditorと交流【臨床留学通信 from Boston】第1回

マサチューセッツ総合病院に勤務開始、NEJMのEditorと交流米国の病院では7月から新年度です。7月1日が月曜日なのもあって、ボストン郊外に引っ越しして3日ほどで生活をセットアップし、新天地のハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院(MGH)で早速業務開始です。とはいっても、1日半ほどはオリエンテーションでした。ボストンのほうが住民に白人が多い印象ですが、とくに今までの施設で見たことがなかったAgainst Racism(人種差別反対)のコーナーがあり、ハーバードらしさを感じます。また、NEJMに毎週掲載される症例報告はMGHから提供されるのですが、そのEditorの先生に「何か面白い症例があったら教えてね」とオリエンテーションで説明がありました。興味深い症例があったら提示したいと思います。ただし、循環器は基本的に診断に難しい症例が少なく、難解なリウマチ系などの疾患がしばしばみられます。「Shout out Rheumatology(リウマチ学に敬意を表してください)」とも言われたので、リウマチ系の症例がよく提供されているのでしょう。NEJMの症例報告は、たとえばこちらから閲覧できます。Ganapathi L, et al. Case 20-2024: A 73-Year-Old Man with Recurrent Fever and Liver Lesions. N Engl J Med. 2024;390:2309-2319.鑑別診断から入り、最終的に病理がある症例が多く取り上げられるため、内科医の頭の体操にもってこいです。私は医学部6年生の時に内科に進むと決めてから、部活のテニスの合間など、英語の勉強も兼ねて読み始め、10年分ほどをその1年で読んでいました。また『Pocket Medicine』という本も内科医向けにMGHから出ていますが、文字どおりポケットにスッと入って、鑑別診断から最新治療まで、文献も含めてコンパクトにまとまっていておすすめです。私は研修医時代に、これで症例ごとに勉強していました。MGHでの具体的な業務内容は、次回以降に述べたいと思います。ColumnMGHの施設を紹介します。画像を拡大する現在のMGHの正面です。画像を拡大する1818年からあるMGHブルフィンチ棟です。画像を拡大する提供してもらった白衣です。白衣を着ると身が引き締まる思いですが、米国では約半数のスタッフは白衣をほとんど着ることはありません。スクラブのみ、または私服で仕事をしていることが多いです。しかし、なんとなくこの白衣は格好良いせいか、病院内で着ている人が多い印象です。今回から本連載のアイコンとなった金色のドームは、ボストンを象徴する建造物のマサチューセッツ州会議事堂です。MGHのブルフィンチ棟と同じ建築家のチャールズ・ブルフィンチによる設計で1798年に建設されました。

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7月17日 理学療法の日【今日は何の日?】

【7月17日 理学療法の日】〔由来〕昭和40年に理学療法士について定めた法律「理学療法士及び作業療法士法」が公布され、翌41年に第1回理学療法士国家試験が実施された。この試験に合格した110名の理学療法士によって結成されたのが「日本理学療法士協会」。この日を記念して同協会が制定し、この日の前後に全国で理学療法に関係する医療、介護のイベントが開催されている。関連コンテンツ任天堂リングフィットと理学療法の組み合わせが有効?【Dr.倉原の“おどろき”医学論文】過度の運動はいうほど有害ではなくむしろ寿命を延ばしうる【バイオの火曜日】転倒リスクが低減する運動は週何分?歩行を守るために気付いてほしい脚の異常/日本フットケア・足病医学会肩関節脱臼のリハビリテーション、理学療法は有効か?/BMJ

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名古屋大学医学部 化学療法学(附属病院化学療法部)【大学医局紹介~がん診療編】

安藤 雄一 氏(教授)満間 綾子 氏(病院講師)近藤 千晶 氏(病院助教)宮井 雄基 氏(医員)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴化学療法部では、腫瘍内科の診療とともに、外来化学療法室の運用、がんゲノム医療外来、診療科横断的なカンファレンスやコンサルテーション対応、化学療法レジメンの整備、緩和ケアチームの活動、がん診療連携拠点病院の事業、そしてがん薬物療法の実践的な教育などに取り組んでいます。いずれも日頃からの各診療科や部門との連携によって、初めて実践できるものです。専用病床では、新規抗がん薬の治験や稀ながんや重篤な合併症をもつ患者さんの診療を行っています。名大病院は「臨床研究中核病院」、「がんゲノム医療中核拠点病院」に選定されており、それらの関連事業においても化学療法部は重要な役割を果たしています。昨年度から開始されている文部科学省「次世代のがんプロフェッショナル養成プラン(がんプロ)」では、がん医療を担う大学院生や専門医療人材の養成に取り組んでいます。毎朝行われる多職種カンファレンス同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力外来化学療法室では、小児から高齢者まで外来で抗がん薬の点滴投与を受けるすべての患者さんに対応しています。殺細胞性抗がん薬はもちろん、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など臓器横断的に使用されるレジメンが増える中で、多彩な副作用をうまくコントロールすることが求められています。担当医だけでなく、今までがん医療と関連が少なかった分野の専門医や多職種との連携、地域との連携など院内外でのチーム医療が重要です。腫瘍内科学のオンザジョブトレーニングを通して科学的で適切ながん薬物療法を実践できる環境です。外来化学療法室での処置医局の雰囲気、魅力医局では大学院生から医員、教員まで、多様なバックグラウンドをお互いに尊重しながらそれぞれの特色を活かした診療や学術活動を行っています。今後のキャリアパスを考える上で、ロールモデルを見つけることもできますし、迷いが生じた時にはさまざまな経験に基づいたアドバイスを得ることが可能です。これまでの経歴大学卒業後、市中病院で初期研修を行いました。研修終了後の進路として腫瘍に加え、アレルギー、感染など多様な分野が含まれるという理由で呼吸器内科を選択しました。各分野の疾患の診療を通じて難治である進行肺がんの化学療法、中でも分子標的薬に興味を持ち、がん薬物療法専門医を取得するとともに、大学院で学びました。このような経歴もあって、現在はがん種横断的にがんゲノム医療に関わり、化学療法部での仕事・診療とともに名大病院のがん遺伝子パネル検査とエキスパートパネルの運営を行っています。今後のキャリアプランがんの性質を知り、がん患者さんの化学薬物療法の選択肢を広げるためのがんゲノム医療は、2019年の保険診療開始から常に状況が変化しています。がんゲノム医療を多くの患者さんに届け、また名大病院内や地域のがんゲノム医療の普及のための活動、研究を続けたいと考えています。これまでの経歴初期研修を終えたのち、大学院入学とともに入局しました。基礎と臨床の両方を学ぶため、横断的ながん薬物療法の臨床経験を積みながらがん薬物療法専門医を取得する一方で、腫瘍病理学でがんの間質に多く存在するがん関連線維芽細胞に注目し、これらが免疫治療の効果にどう影響するかについての基礎研究にも励んでいます。現在学んでいること治療法の最新動向の把握や有害事象への対応法だけでなく、腫瘍学以外の分野も含めて幅広い知識を日頃から学んでいます。最近は、定量的解析手法の習得に注力しています。具体的には、大規模オミクスデータを解析する手法や高度な統計手法を学び、実際に臨床データや実験データの高精度な解析に応用しています。今後のキャリアプラン海外留学など異なる文化圏での仕事や、他分野の研究者と接することで、視野を広げたいと考えています。この過程で目標が変わる可能性もありますが、現時点では、まだ治療法が少ない、あるいは治療薬開発への機運が乏しい、稀な悪性腫瘍の治療実績の改善に貢献できる医師・医学研究者となることを目指しています。名古屋大学医学部 化学療法学(附属病院化学療法部)住所〒466-8560 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65問い合わせ先chemo-sec@med.nagoya-u.ac.jp医局ホームページ名古屋大学医学部附属病院化学療法部専門医取得実績のある学会日本臨床腫瘍学会日本緩和医療学会日本人類遺伝学会日本内科学会 など研修プログラムの特徴(1)臓器横断的な臨床腫瘍学のトレーニングが可能(2)がん薬物療法学、緩和ケア、ゲノム医療、トランスレーショナルリサーチなど多様な領域の研修・研究が可能名古屋大学医学部附属病院化学療法部【動画】

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言ってませんか?夜中の慢性的な症状の訴えに「なんでこんな時間にわざわざ?」【もったいない患者対応】第10回

言ってませんか?夜中の慢性的な症状の訴えに「なんでこんな時間にわざわざ?」登場人物<今回の症例>50歳男性腰痛を主訴に、午前3時に救急外来を受診歩行は可能。痛みは1ヵ月前から持続している<さっそく、痛みの程度を聞き取ります>腰が痛いんです。いつからですか?1ヵ月前からです。1ヵ月前?それからいままで痛みが続いているんですね?そうです。それなら、なぜこんな遅い時間に来たんですか!?1ヵ月前からですよね?どうして日中の外来を受診しなかったんです?え、ダメですか?すみません…。【POINT】夜中3時の救急外来。診療する医師にとってはつらい時間帯です。このタイミングで、1ヵ月前から慢性的な腰痛が続いている患者さんがやってきました。疲れが溜まった唐廻先生は、思わず「なぜこんな遅い時間にわざわざ」と不快感を示してしまいます。確かに慢性的な腰痛なら、日中に時間をみつけて整形外科などの一般外来を受診してほしいところ。しかし、この言い方では痛い目にあうかもしれません。まずは「急激な変化があったのかも?」という姿勢で臨む救急外来の主な目的は、(1)応急処置、(2)緊急性の判断、(3)必要時の専門科医師への引き継ぎです。しかし、このことを十分に理解していない患者さんは多く、慢性的な症状で夜中に受診される方も多くいます。なかには「平日は仕事で忙しく、休日や夜間しか病院に来られないから」「日中は外来が混むが、救急外来なら早く診てもらえるから」といった理由で救急外来を受診する方がいるのも事実です。その一方で、慢性的な症状が続いているものの、「その日に限っていつもと違う症状に変化した」「これまでより強い痛みがあった」など、突然の症状の変化が理由で救急外来を受診しているケースもあります。つまり、慢性的な経過のなかで急性の変化が起きたため、わざわざ休日や夜間に受診したということです。この事実を見逃すと、重大な見落としにつながるリスクがあります。たとえば、今回の例では、慢性的な腰痛は筋骨格系の痛みで緊急性はなかったが、今回は痛みが急激に悪化したため受診し、検査をしたら痛みの原因は大動脈解離だったという事態も想定されるわけです。受診の“意図”を丁寧に聞き出そうそこで、なぜあえてこのタイミングを選んで受診したのかという意図を聞く必要があります。唐廻先生は「なぜこんな遅い時間に来たんですか!?」と不快感をあらわにしてしまいましたが、実際には「なぜこのタイミングで受診されたんですか?何か痛みに変化があったからでしょうか?」と、丁寧に聞くべきでしょう。ここで患者さんから「いや、平日は忙しくて来られないから、この時間に来たんだよ」と言われたなら、その時点で「救急外来の役割を誤解している」と気付けます。その場合は、救急外来の役割について、緊急性の高い疾患を除いては、応急処置など対症療法が基本となること精密検査の場ではなく、できる検査も限られるため、慢性的な症状の原因を明らかにするのは一般的には難しいこと専門科の医師が診療するわけではなく、平日の専門科の一般外来を受診するほうがメリットは大きいことを冷静に説明します。いずれにしても、慢性的な症状で救急外来を受診した患者さんには“受診の動機”を丁寧に問診することが大切です。これでワンランクアップ!腰が痛いんです。いつからですか?1ヵ月前からです。1ヵ月前?それからいままで痛みが続いているんですね?そうです。今日のこのタイミングを選んで救急に来られたのには何か理由がありますか?※1いつもと違う痛みがあるとか、今日に限って痛みが強いとか?※2※1:受診理由が重要なヒントになることも。※2:まずは「急な変化」を想定した選択肢を提示する。実は、1時間ほど前から普段とは違う強い痛みが始まりまして…。それでいま慌てて来たんです。

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第221回 名古屋第二日赤の研修医“誤診”報道に医療界が反発、日赤本社の医療事故に対する鈍感さ、隠蔽体質も影響か(後編)

山開き直後の富士山で遭難死が相次ぐこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。7月10日に山開きした富士山で遭難死が相次いでいます。各紙報道によれば、7月14日までに4人の死亡が確認されています。疲労死、滑落死など死因はさまざまですが、日頃登山をしない人は3,000メートル級の山を少し舐めているような気がします。体力が若者ほどなく、高度順応力が低下している中高年の遭難はこれからも増えそうです。山では100メートル標高が上がるごとに0.6度気温が下がります。仮に標高0メートルの海岸部の気温が30度だとすると、3,776メートルの富士山山頂付近の気温は7~8度です。天候が悪く風も強ければ、体感気温は0度近くになるでしょう。もはや冬山です。そう考えると、ご来光を目的に気温が下がる夜や深夜に登ること自体が大きなリスクです。そもそも3,000メートルを超える北アルプスなどでは、深夜に登る人はほぼいません。これから富士山を目指そうという方は、天気が良い日に昼間の日帰り登山をお勧めします。山梨県側からの吉田ルートは登山規制が始まったとはいえ激混みなので、静岡県側からの富士宮ルートが最短でいいかもしれません。大体の所要時間は頂上往復で9時間前後。朝イチに登山口を出発すれば、夕方前には下山が可能です。医療メディアに「研修医は悪くない」といった論調の記事や、組織体制の不備を指摘する記事さて、今回は前回に引き続き、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院(以下、名古屋第二日赤)が先月公表した、研修医がからんだ医療事故を取り上げます。腹痛などを訴えて名古屋第二日赤に来院した男子高校生(当時16)について、SMA症候群を研修医が急性胃腸炎と“誤診”して治療が遅れるとともに、高度脱水への対応も不十分で心停止に至り死亡した事件について、前回は同病院が公開した公表用資料1)を基に経緯を概説しました。そして、病院の記者会見直後、全国紙などで「研修医が誤診」といった見出しの報道が行われたことを巡り、日経メディカルなど一部医療メディアにおいて「研修医は悪くない」といった論調の記事や、病院の組織体制の不備を指摘する記事が掲載され、医療界で少なからぬ反発が起きていると書きました。そうした反発や批判は概ね納得できるものです。公表が事故から1年後であったことや、遺族コメントを病院が代読するという異常さなどからも、事故直後から遺族と名古屋第二日赤とのあいだで厳しいやりとりがあったと想像されます。名古屋第二日赤という一病院で起きた事故ではありますが、日本赤十字社本社自体の医療事故に対する鈍感さ、隠蔽体質、事なかれ主義もその背景にありそうです。マスコミに対して公表された資料の“おそまつさ”からも、それを感じます。「公表用資料」の中の事案の検証結果が時系列で、“誤診”が冒頭に私は、「公表用資料」の中の事案の検証結果(いわゆる「どの段階でミスがあったのか」のまとめ)が時系列になっている点がまず気になりました。具体的には、次の5つが問題点として挙げられています(資料の詳細な記述は割愛)。1)CT画像の評価が不十分で、急性胃拡張に対する減圧治療ができていなかった。2)脱水症の評価が不十分で、治療の開始に遅れが生じていた。3)救急外来において研修医が診療する場面での報告・相談体制に不備があった。4)職員間において患者さんの情報を正確に共有できていなかった。5)患者さんの容態変化時に、院内で定められた緊急体制が活用されなかった。1)で研修医の「CT画像の評価が不十分」と書き、さらに「上級医に相談するべき画像所見でしたが相談していませんでした」と続きます。これでは、その後に過誤のその他の原因が記述されたとしても「評価が不十分」、すなわち「誤診」が一番の原因だ、と読む側(マスコミなど)が解釈してしまう危険があります。こうした事故報告書では、往々にして発生したことを時系列に書きますが、「検証結果」も時系列に記述してしまっては、患者が死に至った真の原因が明確にならず、覆われてしまいます。加えて、資料全般に渡って「臨床上のミス」と「組織体制上の問題点」が同列に記述されている点も気になりました。「研修医が上級医に相談する体制になっていなかった」ことや、「入院後のスタッフ間の情報共有の不備」などは、明らかに病院の組織体制上の問題であり、今回の事故の最大の原因とも考えられます。しかし、検証結果ではそうした問題点が、「誤診」や「鎮痛剤倍量投与」「心電図モニター未装着」といった「臨床上のミス」と同列に記述されています。その結果、臨床上のミスの根本原因とも考えられる組織体制上の問題点への切り込みが弱く、責任の所在も曖昧になっています。「かもしれません」という文章でお茶を濁し、「体制や組織風土が根本的な問題だった」と断言もせずその曖昧さは、「事案の検証結果」の後に記された「当院の問題として表出したこと」の以下の記述からもうかがえます。――当院は高度急性期病院として、どのような病気にも24時間365日絶え間なく応えることを使命としており、業務の繁忙や切迫感が常態化している背景があります。そのような業務環境のなかで、疾患の重症度、緊急性を優先して患者さんを診てしまう傾向があったのかもしれません。忙しさを理由に、患者さんに対しての職員の思いやりや丁寧さが欠けていたのかもしれません。今回の事例には、病院全体の体制や組織風土が根本的な問題ではないかと考えています。――事故から1年以上経っているにもかかわらず、「かもしれません」という文章でお茶を濁し、「病院全体の体制や組織風土が根本的な問題だった」と断言できていないのです。患者が死亡に至った原因を真剣に検証したのかどうか、疑問に感じます。「『なぜこの事例で記者会見を開いたのか』と正直、疑問を持ちました」と医療訴訟専門弁護士そんな風に考えていたら、「研修医は悪くない」という論陣を張った日経メディカルに興味深い記事が掲載されていました。7月2日付の「インタビュー 医療事故公表のあり方を考えるマスコミの目線が“研修医誤診”に向いてしまった原因は」というタイトルの記事です。同記事は医療機関側の弁護士として医療訴訟に携わってきた仁邦法律事務所所長の桑原博道氏にインタビューしたものですが、なんと桑原氏はその中で「最初に、メディアの報道と公開されている調査報告書を読んだとき、『なぜこの事例で記者会見を開いたのか』と正直、疑問を持ちました」と話しているのです。桑原氏は「過誤があると思われる事例でも、あるいは、医療事故調査・支援センターに報告されるような事例でも、多くの場合、記者会見は開かれていません。私の経験でも、記者会見を開くのはデメリットがそれなりにあることから、『それでも会見が必要だ』と感じる事案はほとんどない印象です」と語るとともに、「記者会見は、病院が世間に発したいメッセージとして、目的や信念を持って行うべきものであり、一般論として言えば、ご家族などから求められたから行うというものではありません。また、医療事故調査制度の対象事案だから行うというものでもありません」と、名古屋第二日赤の記者会見について、病院側に行うに足る明確な目的があったのかどうかに疑問を呈しています。さらに、先述した「公表用資料」の中の事案の検証結果の記載の順番について桑原氏も問題があったと指摘しています。加えて、「研修医は上級医に相談すべきだった」といった個人の責任を追及するような記述についても問題があるとしています。同記事2)は、医療事故が起きたときの記者会見開催の是非や、事故報告書の記載の仕方などについてわかりやすくまとめられており、医療関係者には参考になるでしょう。京都第一赤十字病院の度重なる過誤で明らかとなった日赤の隠蔽体質前回、「日本赤十字社が、医療事故や医療過誤に対して鈍感であり、隠蔽体質も有していることは、この連載の『第199回 脳神経外科の度重なる医療過誤を黙殺してきた京都第一赤十字病院、背後にまたまたあの医大の影(前編)』、『第200回 同(後編)』で詳しく書きました」と記しましたが、この点を簡単におさらいしておきます。京都市は今年1月、患者に対する手術の説明や診療記録の取り扱いが不適切だったとして京都第一赤十字病院に対し、改善を求める行政指導を行いました。不適切とされた事例はいずれも同病院の脳神経外科で確認されたものでした。2020年に行われた脳腫瘍の手術では、その後、予定外の再手術となった理由について、患者や家族に説明した記録が見つかりませんでした。さらに同年、手術後に死亡した別の患者の死亡診断書には「手術なし」と、事実と異なる記載をしていました。また、2021年には、研修医の医療処置を受けた患者が死亡していますが、遺族には処置を施した説明をしていませんでした。こうした事例の中には、病院の医療安全管理委員会に適切に報告されず、事後の検証も十分行われていなかったケースもありました。以上の3件のほか、2019~21年に手術後などに9人が死亡し、ほかにも3人の患者で不適切な対応があったとの情報が2023年、公益通報によって市に寄せられていました。実はこの公益通報が行われる3年も前に、脳神経外科で事故が多発していることを、当時、同病院に勤務していた医師が日本赤十字社本社に伝えていました。「月刊Hanada」(飛鳥新社)の2023年11月号の記事、「京都府立医大の深い闇 正常脳を誤って摘出 第一日赤脳外科部長が謝罪」によれば、「A医師と部下である第一脳神経外科副部長(注:事故が頻発していたのは第二脳神経外科)のB医師は11月19日、連名で日赤本社の医療事故担当の医療事業推進本部長宛てに嘆願書を提出。医療事故防止措置と医師の再教育の必要性、関係者の処分を求めた。すると11月11日、日赤本社の部長は電話でこう告げたという。『(中略)日赤本社で医療事故調査委員会を立ち上げるので待ってほしい』。ところが、本社は結局、調査委員会を立ち上げず、事故の当事者である第一日赤に丸投げし、第一日赤内部に院内事故調査委員会を立ち上げて処理するように命じた」。その結果、一連の事故は表沙汰にならず、死亡した患者遺族にも真実は伝えられず、事故を起こした医師たちに処分も下されず、3年後の公益通報まで日赤本社、第一日赤は事故を隠蔽し続けることになったわけです。多発する傘下の病院の医療事故に対して日赤本社は何かアクションを起こしたのか?日本赤十字社の各病院は、地域の基幹病院であり、地元の大学医学部の主要なジッツ(関連病院)となっています。各病院で起こった医療事故への対応が個々の病院に任されること自体はとくに不自然ではありません。ただ、病院自体が隠蔽しようしている事案について、現場からの通報を無視し、対応をその病院に丸投げする、というのは異常としか言いようがありません。事故を起こされた患者や家族は二の次に、日赤という組織や病院、あるいは医師を派遣する大学医局をまず守ろう、という姿勢は決して許されるものではないでしょう。今回の名古屋第二日赤の事故と、京都第一日赤の事故との間にはとくに関連性は見出だせません。しかし、昨年5月に名古屋第二日赤の事故が起こり、今年の6月17日に記者会見が開かれるまでのあいだに、京都市による京都第一日赤への立ち入り検査、行政指導が行われています。次々と明らかになる傘下の病院の医療事故に対して、日本赤十字社本社は組織として何かアクションを起こしたのでしょうか。少なくとも記者会見や公表用資料の内容からはまったく感じ取れません。日本赤十字社の闇は深そうです。参考1)SMA症候群を適切に治療できなかったことにより死亡に至らせた事例について/日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院2)マスコミの目線が“研修医誤診”に向いてしまった原因は/日経メディカル

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重要性を増すゲノム診療科、その将来ビジョン/日本動脈硬化学会

 2023年に議員立法として成立した“良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律”、通称「ゲノム医療推進法」。詳細についての議論はこれから進んでいく模様だが、循環器領域においては、2022年度の診療報酬改定により動脈硬化に関連する難病への遺伝学的検査の対象疾患が拡大され、4疾患(家族性高コレステロール血症、原発性高カイロミクロン血症、無βリポタンパク血症、家族性低βリポタンパク血症1[ホモ接合体])の遺伝学的検査を含む複数の脂質異常症疾患が保険適用された。 そこで今回、厚生労働省のゲノム医療推進法基本計画ワーキンググループ委員である吉田 雅幸氏(東京医科歯科大学遺伝子診療科 科長/日本動脈硬化学会副理事長)が『我が国におけるゲノム医療と動脈硬化性疾患の遺伝子診断』と題し、遺伝子診断で直面する課題や将来展望について、プレスセミナーで話をした(主催:日本動脈硬化学会)。遺伝診断の将来ビジョン もしも、自分の家族が遺伝性大腸がんや遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)、希少な遺伝性疾患に罹患したら、ご自身の遺伝子検査をどの施設で受けられるかご存じだろうか。あるいは患者から遺伝子検査の相談を受けたら、紹介先などを即答できるだろうか-。一般的に遺伝性疾患の多くは原因不明で、仮に遺伝子疾患が疑われても患者はどこの病院や診療科へ受診するのが適切なのかわからないことが多い。吉田氏は「ゲノム医療の現場で生じている診断・治療に至る長い道のり“Diagnostic Odessey”に多くの時間を費やすのは、原因不明な希少疾患や未診断疾患で苦しむ患者やその家族。そのうえ、患者側が遺伝子診断の可能な施設を見つける手立てもない」と述べ、遺伝専門医にすぐにたどり着けない現状が希少疾患や難病などの早期診断・治療の足かせになっているとして問題提起した。 現在、政府が主導となりゲノム医療等実現推進協議会からタスクフォースを設置し、オールジャパン体制の下でゲノム医療の社会実装のために10万人の全ゲノムを解析して医療へ応用させることを目的とした「全ゲノム解析等実行計画2022」プロジェクトが進められている。策定計画によると、“全ゲノム解析等を実施し、解析結果の日常診療への導入による患者への還元をはじめ、質の高い情報基盤を構築することで、がん・難病などの克服に繋げていくこと”が狙いである。その一方で、100万人規模のゲノム解析研究を目指す英国などの諸外国と水準をそろえていくこと、ゲノム医療の社会実装には、患者・市民参画(Patient and Public Involvement:PPI)や倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues:ELSI)の推進も併せて望まれるため、法令上の措置を含めた具体的な方策が必要とされている。患者-医療者双方のため、遺伝子検査の実績を可視化させよう このプロジェクトを実装していくためには、国民のゲノム医療へのアクセス確保が急務とされることから、同氏は「▽ゲノム医療の標榜診療科の制定、▽ゲノム医療関連人材の育成、▽患者・市民のゲノム医療・研究への参画」の3つを挙げた。たとえば、昨今の診療報酬点数表に収載されている遺伝性疾患数は、約10年前と比較し191疾患と大幅に増加しているにもかかわらず、ゲノム診療科を標榜する施設の開示がなされていない。同氏は「診療実績を可視化させることでその実績が院内でも周知され、診療科間の連携強化につながる。また、現在では診療報酬の請求からDPCへ反映されるため、そうなればNDB(National Database)におけるゲノム医療の利活用促進にもつながる」と強調した。また、日本動脈硬化学会のホームページに掲載されている『家族性高コレステロール血症(FH)の紹介可能な施設等一覧』では、FHに限られるが、遺伝学的検査の実施有無に関して近隣施設を検索することが可能であるため、「患者に外部施設を紹介する際などに参考になる」ことを説明した。  なお、同氏の所属施設である東京医科歯科大学の場合、遺伝子診療科において内科各科、小児科、外科、腫瘍センター、女性診療科、泌尿器科、耳鼻科が連携を取り、“横串”を通す診療各科横断的な遺伝子診療を実施している。遺伝専門医や認定カウンセラー不足、他県や他施設で補い合う ゲノム医療では、リスクなどがわかるように説明する必要があるため、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラー(非医師)による説明が欠かせない。ところが、前者は総医師数(医療施設従事者数:約31万人)のわずか0.53%(1,894人、2024年2月時点)、カウンセラーに至っては389人、5県で不在、9県で1人ずつしか在籍していないという。「このような人材不足をカバーするために、他県や関連病院との連携もさることながら、オンライン診療を駆使していく予定」と説明し、「将来的な治療との結びつきのためにも遺伝子解析は必要。循環器領域でいうPCSK9の遺伝子変異解析がそれにあたるが、エクソソーム解析(全ゲノムの5%)自体が砂金を探すようなプロジェクトとも言えるため、遺伝性疾患に対する治療薬の開発、遺伝学的検査の保険収載が進みつつあるなか、標榜診療科の策定や人材育成が必要となるだろう」とまとめた。

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スパイロなしでも胸部X線画像で呼吸機能が予測可能!?

 スパイロメトリーなどを用いた呼吸機能検査は、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患の管理に不可欠な検査である。しかし、高齢者や小児などでは正確な評価が困難な場合がある。また、新型コロナウイルス感染症流行時には、感染リスクを考慮して実施が控えられるなど、実施が制限される場合もある。そこで、植田 大樹氏(大阪公立大学大学院医学研究科人工知能学 准教授)らの研究グループは、14万枚超の胸部X線画像をAIモデルの訓練・検証に使用して、胸部X線画像から呼吸機能を推定するAIモデルを開発した。その結果、本AIモデルによる呼吸機能の推定値は、実際の呼吸機能検査の測定値と非常に高い一致率を示した。本研究結果は、Lancet Digital Health誌オンライン版2024年7月8日号で報告された。 本研究では、2003~21年の期間に収集した胸部X線画像14万1,734枚を用いて、3施設でAIモデルの訓練・内部検証を実施し、2施設で外部検証を実施した。外部検証では、努力性肺活量(FVC)と1秒量(FEV1)について、AIモデルの推定値とスパイロメトリーによる呼吸機能検査の実測値を比較した。 主な結果は以下のとおり。・外部検証の2施設におけるFVCについて、AIモデルによる推定値と実測値には強い相関があり(それぞれr=0.91、0.90)、誤差は小さかった(いずれの施設も平均絶対誤差[MAE]=0.31L)。・同様に、FEV1についても推定値と実測値には強い相関があり(いずれの施設もr=0.91)、誤差は小さかった(それぞれMAE=0.28L、0.25L)。・予測値に対するFVC(%FVC)80%未満、予測値に対するFEV1(%FEV1)80%未満、1秒率(FEV1/FVC)70%未満についても、AIモデルは高い予測能を示した。それぞれに関する2施設のROC曲線のAUCは以下のとおり。 %FVC 80%未満:それぞれ0.88、0.85 %FEV1 80%未満:いずれの施設も0.87 FEV1/FVC 70%未満:それぞれ0.83、0.87 著者らは、本研究結果について「本研究で開発したAIモデルは、胸部X線画像から呼吸機能を高精度に推定できる可能性を世界で初めて示した。本AIモデルは、呼吸機能検査の実施が困難な患者に対し、呼吸機能評価の選択肢を増やすことが期待される。今後は、異なる集団や環境下での性能を確認するとともに、実際の診療で使用した際の効果や影響を慎重に見極めていく必要がある」とまとめた。

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食道がんの術前化学療法前のZn濃度、早期再発に影響

 国立がん研究センター中央病院の久保 祐人氏らは、術前化学療法を受ける食道がん患者において、術前の血清亜鉛(Zn)低値が食道がんの早期再発に悪影響を及ぼすことを明らかにし、術前にZnが欠乏している食道がん患者にはZn補給を行う必要があることを示唆した。Annals of Gastroenterological Surgery誌2024年7月号掲載の報告。 本研究では、2017年8月~2021年2月に術前化学療法後に完全切除(R0切除)が施行された食道がん患者185例を対象に、術前の血清Zn値と臨床転帰の関係を遡及調査した。 主な結果は以下のとおり・対象患者は術前の血清Zn濃度の平均に基づき、低Zn群(64μg/dL未満)と高Zn群(64μg/dL以上)に分けられた。・低Zn群では全生存期間(OS)が有意に短く、低Zn群と高Zn群の2年OS率は76.2% vs.83.3%(p=0.044)だった。・ノンレスポンダー(Grade1a以下)の低Znは、無再発生存期間(RFS)の短縮と有意に関連し、低Zn群と高Zn群の術後2年RFS率は39.6% vs.64.1%(p=0.032)であった。・多変量解析の結果、術前栄養指標のうちBMIと血清Zn濃度の低さが、ノンレスポンダーのRFS悪化の独立した危険因子であることが明らかになった。・レスポンダーと比較し、ノンレスポンダーには男性とパフォーマンスステータス1以上が有意に多く、レスポンダーでは血清Zn濃度に差はなかった。 研究者らは「術前血清Zn濃度は食道がん手術後の早期再発の予測マーカーとして役立つ可能性がある」としている。

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低脂肪食がうつ病リスクに及ぼす影響〜メタ解析

 低脂肪食がうつ病リスクに及ぼす影響を調査するため、イラン・Shahid Sadoughi University of Medical SciencesのSepideh Soltani氏らは、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Nutrition Reviews誌オンライン版2024年6月19日号の報告。 2023年6月7日までに公表されたRCTをPubMed、ISI Web of Science、Scopus、CENTRALデータベースより検索し、低脂肪食(脂肪摂取量がエネルギー摂取量の30%以下)がうつ病スコアに及ぼす影響を調査した試験を特定した。低脂肪食がうつ病リスクに及ぼす影響のプールされた効果(Hedges g)を推定するため、ランダム効果メタ解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・10件のRCT(5万846例)を分析に含めた。・低脂肪食と通常食との比較において、うつ病スコアに有意な違いは認められなかった(Hedges g=−0.11[95%信頼区間[CI]:−0.25〜0.03]、p=0.12、I2=70.7%[95%CI:44〜85])。・タンパク質含有量が摂取カロリーの15〜20%の場合、低脂肪食(5件、Hedges g=−0.21[95%CI:−0.24〜−0.01]、p=0.04、I2=0%)と通常食(3件、Hedges g=−0.28[95%CI:−0.51〜−0.05]、p=0.01、I2=0%)のいずれにおいても、有意な改善が認められた。・感度分析では、ベースラインでうつ病でない患者において、低脂肪食介入後にうつ病スコアの改善が認められた。 著者らは、「メンタルヘルスが良好な参加者を対象とした研究において、低脂肪食はうつ病スコアに対し、わずかに有益である可能性が示唆された。うつ病スコアの改善には、食事中の脂肪量を調整するよりも、タンパク質を十分に摂取したほうがよいと考えられるが、この効果が長期間持続するかは不明である」としている。

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進行期古典的ホジキンリンパ腫の1次治療、BrECADDが有効/Lancet

 進行期の古典的ホジキンリンパ腫の成人患者に対する1次治療において、ブレオマイシン+エトポシド+ドキソルビシン+シクロホスファミド+ビンクリスチン+プロカルバジン+prednisone(eBEACOPP)療法と比較して、2サイクル施行後のPET所見に基づくbrentuximab vedotin+エトポシド+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ダカルバジン+デキサメタゾン(BrECADD)療法は、忍容性が高く、無増悪生存(PFS)率を有意に改善することが、ドイツ・ケルン大学のPeter Borchmann氏らAustralasian Leukaemia and Lymphoma Groupが実施した「HD21試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年7月3日号に掲載された。9ヵ国233施設の無作為化第III相試験 HD21試験は、欧州7ヵ国とオーストラリア、ニュージーランドの合計9ヵ国233施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2016年7月~2020年8月に患者を登録した(Takeda Oncologyの助成を受けた)。 新規に診断された進行期の古典的ホジキンリンパ腫(Ann Arbor病期分類のStageIII/IV、B症状を呈するStageII、リスク因子として大きな縦隔病変および節外病変のいずれか、または両方を有する)で、60歳以下の成人患者1,482例(ITT集団)を登録し、BrECADD群に742例、eBEACOPP群に740例を無作為に割り付けた。 両群とも試験薬を21日間隔で投与した。2サイクル(PET-2)および最終サイクルの終了後にPETまたはCTによる奏効の評価を行い、PET-2の所見に基づきその後のサイクル数を決定した。 主要評価項目は、(1)担当医評価による忍容性(投与開始から終了後30日までの治療関連疾患の発生)、および(2)有効性(PFS)に関するBrECADD群のeBEACOPP群に対する非劣性とし、非劣性マージンを6%に設定した。治療関連疾患は、有害事象共通用語規準(CTCAE)のGrade3/4の急性非血液学的臓器毒性、およびGrade4の急性血液毒性と定義した。PFSの優越性を確認 ベースラインの全体の年齢中央値は31歳(四分位範囲[IQR]:24~42)、644例(44%)が女性で、1,352例(91%)が白人であった。 1つ以上の治療関連疾患が発生した患者は、eBEACOPP群が732例中430例(59%)であったのに対し、BrECADD群では738例中312例(42%)と有意に少なかった(相対リスク:0.72、95%信頼区間[CI]:0.65~0.80、p<0.0001)。 PFSの中間解析で、BrECADD群の非劣性が確認されたため優越性の検定を行った。追跡期間中央値48ヵ月の時点における4年PFS率は、eBEACOPP群が90.9%(95%CI:88.7~93.1)であったのと比較して、BrECADD群は94.3%(92.6~96.1)と有意に良好だった(ハザード比[HR]:0.66、95%CI:0.45~0.97、p=0.035)。 また、4年全生存率は、BrECADD群が98.6%(95%CI:97.7~99.5)、eBEACOPP群は98.2%(97.2~99.3)であった。血液学的治療関連疾患が有意に少ない 血液学的治療関連疾患は、eBEACOPP群では732例中382例(52%)で発現したのに対し、BrECADD群では738例中231例(31%)と有意に少なかった(p<0.0001)。これは、赤血球輸血(52% vs.24%)および血小板輸血(34% vs.17%)がBrECADD群で少なかったことに反映されている。Grade3以上の感染症の発生(19% vs.20%)は両群で同程度であった。 ホジキンリンパ腫による死亡は、BrECADD群で3例、eBEACOPP群で1例に認めた。治療関連死はeBEACOPP群で3例にみられた。また、2次がんは、BrECADD群で742例中19例(3%)、eBEACOPP群で740例中13例(2%)に発生した。 著者は、「この第III相試験の結果に基づき、BrECADDは新規に診断された進行期古典的ホジキンリンパ腫の成人患者に対する標準的な治療選択肢となることが期待される」としている。

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tisotumab vedotin、再発子宮頸がんの2次・3次治療に有効/NEJM

 再発子宮頸がんの2次または3次治療において、化学療法と比較してtisotumab vedotin(組織因子を標的とするモノクローナル抗体と微小管阻害薬モノメチルアウリスタチンEの抗体薬物複合体)は、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、新たな安全性シグナルの発現はないことが、ベルギー・Universitaire Ziekenhuizen LeuvenのIgnace Vergote氏らが実施した「innovaTV 301/ENGOT-cx12/GOG-3057試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年7月4日号で報告された。27ヵ国168施設の無作為化第III相試験 本研究は、日本を含む27ヵ国168施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、前治療後に病勢が進行した再発子宮頸がん患者におけるtisotumab vedotinの有効性と安全性の評価を目的に行われた(GenmabとSeagenの助成を受けた)。 再発または転移を有する子宮頸がんと診断され、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)performance-statusのスコアが0または1の患者502例(年齢中央値50歳[範囲:26~80]、前治療ライン数は1が61.4%、2が38.4%)を登録した。 tisotumab vedotin単剤(2.0mg/kg体重、3週ごと)の静脈内投与を受ける群に253例、担当医が選択した化学療法(トポテカン、ビノレルビン、ゲムシタビン、イリノテカン、ペメトレキセドのいずれか)を受ける群に249例を無作為に割り付けた。奏効率も有意に優れる 前治療薬として、全体の63.9%がベバシズマブの投与を、27.5%が抗PD-1または抗PD-L1抗体製剤の投与を受けていた。 主要評価項目であるOS中央値は、化学療法群が9.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.9~10.7)であったのに対し、tisotumab vedotin群は11.5ヵ月(9.8~14.9)と有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.70、95%CI:0.54~0.89、両側p=0.004)。 12ヵ月時のOS率は、tisotumab vedotin群が48.7%(95%CI:41.0~55.8)、化学療法群は35.3%(28.0~42.7)であった。 PFS中央値は、化学療法群が2.9ヵ月(95%CI:2.6~3.1)であったのに比べ、tisotumab vedotin群は4.2ヵ月(4.0~4.4)と有意に優れた(HR:0.67、95%CI:0.54~0.82、両側p<0.001)。 また、確定された奏効の割合は、化学療法群の5.2%と比較して、tisotumab vedotin群は17.8%と有意に高率だった(オッズ比:4.0、95%CI:2.1~7.6、両側p<0.001)。毒性による投与中止は14.8% 初回投与の1日目から最終投与後30日までに有害事象が1件以上発現した患者の割合は、tisotumab vedotin群が98.4%、化学療法群は99.2%であり、Grade3以上の有害事象は、それぞれ52.0%および62.3%で発現した。tisotumab vedotin群では、14.8%の患者が毒性により投与を中止した。 とくに注目すべき有害事象では、眼イベントがtisotumab vedotin群で52.8%、化学療法群で6.3%に発現し、このうちGrade3以上はそれぞれ4.0%および0%であった。また、末梢神経障害イベントはそれぞれ38.4%および4.2%、Grade3以上は5.6%および0.4%に、出血イベントは42.0%および14.2%、Grade3以上は2.4%および2.9%に発現した。 著者は、「これらのデータを総合すると、tisotumab vedotinは、再発子宮頸がん患者の治療において化学療法よりも優先される2次または3次治療の選択肢となる可能性が示唆される」としている。

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新型コロナの抗原検査は発症から2日目以降に実施すべき

 今や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やインフルエンザなどの迅速抗原検査はすっかり普及した感があるが、検査は、症状が現れてからすぐに行うべきなのだろうか。この疑問の答えとなる研究成果を、米コロラド大学ボルダー校(UCB)コンピューターサイエンス学部のCasey Middleton氏とDaniel Larremore氏が「Science Advances」に6月14日報告した。それは、検査を実施すべき時期はウイルスの種類により異なるというものだ。つまり、インフルエンザやRSウイルスの場合には発症後すぐに検査を実施すべきだが、新型コロナウイルスの場合には、発症後すぐではウイルスが検出されにくく、2日以上経過してから検査を実施するのが最適であることが明らかになったという。 Middleton氏らは、呼吸器感染症の迅速抗原検査がコミュニティー内での感染拡大に与える影響を検討するために、患者の行動(検査を受けるかどうかや隔離期間など)やオミクロン株も含めたウイルスの特性、その他の因子を統合した確率モデルを開発した。このモデルを用いて検討した結果、新型コロナウイルスの場合、発症後すぐに迅速抗原検査でテストした際の偽陰性率は最大で92%に達するが、発症から2日後の検査だと70%にまで低下すると予測された。発症から3日後だとさらに低下し、感染者の3分の1を検出できる可能性が示唆された。 この結果について研究グループは、「すでにほとんどの人が新型コロナウイルスへの曝露歴を有しているため、免疫系はウイルスに曝露するとすぐに反応できる準備ができている。そのため、最初に現れる症状は、ウイルスではなく免疫反応によるものだと考えられる。また、新型コロナウイルスの変異株は、ある程度の免疫力を持つ人に感染した場合には、オリジナル株よりも増殖スピードが遅い」と説明している。 一方、RSウイルスとインフルエンザウイルスに関しては、ウイルスの増殖スピードが非常に速いため、症状の出現後すぐに検査を実施するのがベストであることが示唆された。 Larremore氏は、最近では新型コロナウイルス、A型およびB型インフルエンザウイルス、およびRSウイルスへの感染の有無を1つの検査で同時に調べることができる「オールインワンテスト」が売り出されるようになり、また、薬局や診察室でも複数のウイルスを一度に調べるコンボテストが行われていることを踏まえ、「これは悩ましい問題だ。発症後すぐの検査だと、インフルエンザウイルスとRSウイルスについてはある程度のことが明らかになるが、新型コロナウイルスについては時期尚早だろう。だが、発症から数日後では、新型コロナウイルスの検査には最適のタイミングだが、インフルエンザウイルスとRSウイルスの検査には遅過ぎる」と話す。 また、Larremore氏は、「新型コロナウイルスの抗原検査の場合、疑陰性率が高過ぎると思うかもしれないが、抗原検査はウイルス量が多く、周囲の人にうつす可能性のある人を検出する目的で作られたものだ」と指摘。その上で、「感染者の3分の1しか検出できなくても、最も感染力の強い3分の1を診断できれば、感染を大幅に減らすことができる」と説明している。 一方、Middleton氏は、最近、米疾病対策センター(CDC)が検査と予防のガイドラインを、「仕事や社会に復帰しても安全かどうかを判断する前に、もう一度、検査をするべき」という内容に改訂したことについて、「より理にかなった内容になった」との見方を示す。同氏は、「以前の方針の『発症後5日間の隔離』は、ほとんどのケースで必要以上に長かったと思う」と話している。

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知ってますか? HeLa細胞、感動の1冊を通じて研究倫理を考える【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第74回

「誠に申し訳ございませんでした」一列に並んだ皆が頭を下げます。フラッシュが一斉にたかれ、シャッター音が鳴り続けます。5秒ほどたったでしょうか。一斉に頭をゆっくりと上げます。謝罪会見の冒頭です。社会の注目が集まります。謝罪側は、企業のこともあれば、行政組織のこともあれば、大学である場合もあります。大学では、しばしば研究不正が指摘され、そのたびに謝罪会見が行われます。研究活動の不正行為文部科学省のガイドラインで定義は、捏造(Fabrication)・改ざん(Falsification)・盗用(Plagiarism)の3つを特定不正行為としています1)。これらの研究内容の不正だけでなく、研究費の不正使用が問題となる場合もあります。倫理指針を逸脱した研究活動が問題となる場合もあります。倫理が重要視されるのは、「臨床研究においては、被験者の福利に対する配慮が科学的及び社会的利益よりも優先されなければならない」という臨床研究の根本的規範があるからです。医の倫理の起源は、紀元前4世紀から伝わる「ヒポクラテスの誓い」であるそうですが、これは医師が医療行為を行う際の倫理であって、研究の倫理について議論されだしたのは、ずいぶんと時間を経た後のようです。研究者の倫理が論じられる契機としては、ジェンナーによる種痘や、パスツールによる狂犬病ワクチンなどの、開発の過程での人体実験的な側面が有名で、ご存じの方も多いと思います。研究倫理に関する原則は、過去の不適切な人体実験に対応するために作られてきたともいえます。HeLa細胞の医学研究への貢献HeLa(ヒーラ)細胞という名前の細胞をご存じでしょうか。世界中の研究者に用いられ、さまざまな医学研究に寄与し続けてきた細胞です。HeLa細胞はヒト子宮頸がん由来です。不死化しており無制限に細胞分裂を繰り返す能力を持っています。細胞ががん化するのは、遺伝子に突然変異が積み重なり、細胞が不死化することが原因です。正常の細胞は自己が生まれた組織の中で、必要な役割を担って何回か分裂したあと自然に死んでいきます。この不死化したHeLa細胞は、世界中の研究者の元に届けられました。ポリオワクチンの開発に大きく寄与しました。大量培養されたHeLa細胞に、ポリオウイルスを感染させてワクチンの安全性や効果を確認したのです。がんの研究はもちろんのこと、ウイルス感染や、原爆の被爆者への影響などの研究にも貢献しました。体外受精、クローン作成、遺伝子マッピングなどの生命科学の進歩を導きました。HeLa細胞を用いた学術論文は6万本以上といわれます。その過程で生物学的な研究材料を販売するビッグビジネスを創出し、数百万ドル規模の利益をもたらしました。HeLa細胞が問いかける研究倫理ヘンリエッタ・ラックスさんを称える像(バージニア州ロアノーク)HeLa細胞の名前の由来は、その細胞を採取されたヘンリエッタ・ラックス(Henrietta Lacks)さんの名前の頭文字に由来します。貧しいアフリカ系アメリカ人女性が、子宮頸がんで米国・メリーランド州のジョンズ・ホプキンス病院の人種隔離病棟に入院し、1951年に亡くなりました。問題は、その細胞の採取が本人や家族の同意を得ることなく無断で行われたことです。その家族は採取された細胞がもたらした利益とは無縁でした。彼女の夫や子供は、研究者たちが同意なしに調査しようとしたことを契機に、ヘンリエッタ・ラックスさんの身体に由来する細胞が生き続けていることを知ります。研究倫理という問題について、HeLa細胞とその科学への貢献、その家族の経験を通じて見事に描いた作品があります。レベッカ・スクルート著の『The Immortal Life of Henrietta Lacks』です。邦訳は『不死細胞ヒーラ ヘンリエッタ・ラックスの永遠なる人生』(中里 京子訳、講談社)です。文庫本として『ヒーラ細胞の数奇な運命 医学の革命と忘れ去られた黒人女性』(中里 京子訳、河出文庫)もあります。難しい学術書ではなく、感動的な人間関係を見事に描いた文学作品というべきでしょう。ストーリーの背景に、インフォームドコンセント・人種差別・科学の進歩・研究倫理という問題を織り込んでいます。タイトルに「不死:immortal」とありますが、細胞が不死化するだけでなく、永遠の家族愛が不死化していることを感じます。幼少期に母を亡くした子供たちが、知らない場所で、命を紡ぎ続けた母であるHeLa細胞と出会うシーンは涙を誘います。今年の夏も暑い毎日が続くようです。「暑い」を超えて「熱い」という気温です。寝苦しい夜となります。そんな時には、エアコンを一晩中駆動させて、読書に耽ってみてはいかがでしょうか。中高生のご子息のいる皆さまには、夏休みの宿題になっている読書感想文の素材の1冊としてもお薦めします。読書が苦手という皆さまには、映画化されていることもお伝えしましょう。書籍と同タイトルの作品を日本語字幕でPrime Videoでも視聴できます。これもお薦めです。参考文献・参考サイト1)文部科学省:研究活動の不正行為等の定義

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英語で「追加質問」は?【1分★医療英語】第139回

第139回 英語で「追加質問」は?《例文》医師AThank you for your question. Are there any other questions about my presentation?(ご質問ありがとうございます。ほかに質問はありますか?)医師BYes, I have a follow-up question about this.(はい、これに関する追加質問があります)《解説》医療の場面に限らずとも、会話の中で質問をすることは多いですよね。そんなときに使える便利な表現があります。“follow-up question”で「追加質問」という意味を伝えることができます。たとえば、患者さんへ治療の説明をするとき。患者さんから質問が出てそれに医療者が答えた後にも、患者さんから“May I ask you a follow-up question?”(追加で質問してもいいですか?)と聞かれるかもしれません。ほかにも、医療者間でのプレゼンやカンファレンスで出た質問内容に関連し、自分も追加で質問したいときには、“I have a follow-up question.”(追加質問があります)と言うと自然に話をつなげることができます。日本語でも「フォローアップ」という言葉は使いますが、医療の現場においては「再診」や「検査結果の確認」の意味に限定して使用されることが多いのではないでしょうか。英語でも“follow-up visit”(再診)という使い方はありますが、上述のようにさらに広義の「追加」という意味全般に使うことができます。“follow-up”は1単語の名詞・形容詞として使いますが、“follow up”と間のハイフンが消えると動詞としても使えます。“Please follow up on the test result.”(この検査結果に関してフォローアップ[後日確認]しておいてください)といった感じで使われます。講師紹介

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