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乳がん遺伝子パネル検査の前向き研究、推奨治療到達率は?(REIWA study)/日本乳学会

 転移・再発乳がんにおけるがん遺伝子パネル検査の有用性を評価する前向き観察研究であるREIWA study(JBCRG C-07)の中間解析結果をもとに、乳がん治療におけるゲノム医療の現状や問題点、今後の展望を東北大学病院の多田 寛氏が第32回日本乳学会学術総会のシンポジウムで発表した。 標準治療が終了した進行・再発乳がん患者を対象に、2019年6月からがん遺伝子パネル検査が保険で利用できるようになった。本研究では、FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル(F1CDx)およびFoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル(F1LCDx)を行うことが決定したde novo StageIVまたは転移・再発乳がん患者を2020年1月~2023年7月に前向きに登録し、変異情報、変異にマッチした治療の情報、後治療、予後などの項目を現在も収集している。主要評価項目は遺伝子変異に対応する治療(推奨治療)が存在した集団における推奨治療が施行された割合、および推奨された治験や臨床試験に参加した割合であった。本シンポジウムでは、第2回の中間解析時点の結果やがんゲノム情報管理センター(C-CAT)の乳がん症例データをもとに、転移・再発乳がんに対するゲノム医療の現状と問題点、今後の展望についての考察が示された。 主な内容は以下のとおり。・解析対象は576例で、Luminalタイプが310例(53.8%)、HER2タイプが93例(16.1%)、トリプルネガティブタイプが173例(30.0%)であった。年齢中央値は56歳(50歳以上が70.1%)、再発は74.1%、再発後の治療レジメン数中央値は3レジメン、F1CDxが選択されたのは85.2%であった。F1LCDxが選択された群では50歳以上の割合が多く、再発後の治療レジメン数も多かった。・推奨治療が提示された割合は61.0%(350/574例)で、複数の推奨治療が提示されたのは23例であった。・全体において、推奨治療(主治医判定)が実際に施行されたのは18.1%(104/574例)であった。・HER2タイプに対する抗HER2療法など既知のものを除くと、治療到達率は13.8%(78/574例)であった。F1CDx群では14.1%(69/489例)、F1LCDx群では11.8%(10/85例)であった(p=0.543)。・主要評価項目である推奨治療が存在した集団における推奨治療が施行された割合は29.7%(104/350例)、推奨された治験や臨床試験に参加した割合は4.0%(14/350例)であった。・治験以外の推奨治療の内訳(n=79)は、免疫チェックポイント阻害薬が29.1%、mTOR阻害薬が21.6%、抗HER2療法が20.2%、PARP阻害薬が13.9%、NTRK阻害薬が5.1%、CDK4/6阻害薬が3.8%、SERDが2.5%、その他が2.5%であった。・F1LCDxを選択した理由(n=85)は、「組織の保存期間が長い」が49.4%、「生検による組織検体の採取が困難」が32.9%、「組織標本は得られたが解析が困難であった」が24.7%、「遺伝子変化の状態をよりよく理解することができる」が8.2%であった。・F1CDx/F1LCDx後の治療の選択理由は、「actionableな遺伝子変異がなく承認薬を施行した」が1stラインでは26%、2ndラインでは19.5%、「actionableな遺伝子変異があり対応する治療を施行した」が13.5%/4.3%、「actionableな遺伝子変異があり対応する治験・臨床試験に参加した」が1.9%/1%、「actionableな遺伝子変異があったが対応しない承認薬を施行した」が25.7%/20%であった。 多田氏は、C-CATについては、「遺伝子変異状況や推奨治療の予測にはC-CATのような大規模なデータベースが有用と考えられる。C-CATの乳がん症例における入力ベースの推奨治療到達率は9.7%であったが、推奨治療薬の薬剤名の未入力が多く、また標的治療に殺細胞性抗がん剤が入力されているなど、入力内容の不十分さが散見される」と見解を示した。 最後に、「REIWA studyは治療歴や予後情報などがクエリ作業のもとに正確に入力されており、転移・再発乳がんにおけるゲノム医療の貴重なデータとなる。今後、全生存期間や個々の標的治療の治療効果を含めた副次評価項目の解析を行い、がん遺伝子パネルの有用性を正確に評価していく」とまとめた。

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浸潤性子宮頸がん、HPV遺伝子型別の有病率を解明/Lancet

 ヒトパピローマウイルス(HPV)の遺伝子型別に浸潤性子宮頸がん(ICC)の有病率を把握することは、1次予防(すなわちワクチン接種)および2次予防(すなわちスクリーニング)のターゲットとすべきHPV遺伝子型を明らかにすることを可能とする。フランス・国際がん研究機関(IARC/WHO)のFeixue Wei氏らは、各HPV遺伝子型のICCとの因果関係を明らかにするために、世界レベル、地域レベルおよび各国レベルのHPV遺伝子型別の人口寄与割合(AF)をシステマティックレビューにより推定した。Lancet誌2024年8月3日号掲載の報告。HPV陽性ICCと正常子宮頸部細胞診の各HPV遺伝子型の有病率を比較 研究グループは、ICCまたは子宮頸部細胞診の正常例における各HPV遺伝子型の有病率を報告している試験を対象としたシステマティックレビューを行った。適格試験の特定には、文献言語に制限を設けず、「cervix」「HPV」を検索単語として用い、2024年2月29日までにPubMed、Embase、Scopus、Web of Scienceに登録された文献を検索した。 地域、文献発行年、HPVプライマー/検査で補正したロジスティック回帰モデルを用いて、HPV陽性ICCと子宮頸部細胞診の正常例の各HPV遺伝子型の有病率を比較し、オッズ比(OR)を推算した。 ORの95%信頼区間(CI)下限が1.0を超えるHPV遺伝子型をICCの原因であると判定。対応する地域の遺伝子型別のAFは、ICCにおける地域別HPV有病率に「1-(1/OR)」を乗じて算出し、計100%になるよう比例調整して推算した。世界的AFは、2022年の地域別ICC症例数(GLOBOCAN)で重み付けされた地域別AFから推算した。ICCの原因とみなされたHPV遺伝子型は17個、HPV16の世界的AFが最も高率 システマティックレビューにより、HPV陽性ICCの症例11万1,902例と子宮頸部細胞診の正常例275万5,734例を含む1,174試験を特定した。 ICCの原因とみなされたHPV遺伝子型は17個であり、ORの範囲は、HPV16の48.3(95%CI:45.7~50.9)からHPV51の1.4(1.2~1.7)までと広範囲にわたった。 世界的AFが最も高いのはHPV16で(61.7%)、以下HPV18(15.3%)、HPV45(4.8%)、HPV33(3.8%)、HPV58(3.5%)、HPV31(2.8%)、HPV52(2.8%)と続いた。その他の遺伝子型(HPV35、59、39、56、51、68、73、26、69、および82)の世界的AFは、合わせて5.3%であった。 HPV16と18、およびHPV16、18、31、33、45、52、58を合わせたAFは、アフリカで最も低く(それぞれ71.9%と92.1%)、中央・西・南アジアで最も高かった(それぞれ83.2%と95.9%)。HPV35はアフリカ(3.6%)で他の地域(0.6~1.6%)よりもAFが高かった。 結果を踏まえて著者は、「今回の研究は、HPVワクチン接種の影響を受ける前の、ICCにおけるHPV遺伝子型別のAFの世界的な実情を示すものとなった。これらのデータは、ICC負担を軽減するHPV遺伝子型特異的ワクチン接種戦略およびスクリーニング戦略に役立つ可能性がある」とまとめている。

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臓器不全の重篤患者、ICU治療にSGLT2阻害薬追加は有益か?/JAMA

 急性臓器不全を呈した重篤患者に対し、標準的なICU治療にSGLT-2阻害薬ダパグリフロジンを追加しても臨床アウトカムは改善しなかった。一方で、信頼区間(CI)値の範囲が広く、ダパグリフロジンに関連する有益性または有害性を排除できなかったという。ブラジル・Hospital Israelita Albert EinsteinのCaio A. M. Tavares氏らDEFENDER Investigatorsが多施設共同無作為化非盲検試験「DEFENDER試験」の結果を報告した。SGLT-2阻害薬は、糖尿病、心不全、慢性腎臓病(CKD)を有する患者のアウトカムを改善するが、臓器不全を呈した重篤患者のアウトカムへの効果は不明であった。JAMA誌2024年8月6日号掲載の報告。ダパグリフロジン10mg+標準ICU治療vs.標準ICU治療のみ DEFENDER試験は、ブラジルの22ヵ所のICUで行われた。2022年11月22日~2023年8月30日に、少なくとも1つ以上の臓器不全(呼吸器、心血管、腎臓)を呈した予定外のICU入室患者を登録し、2023年9月27日まで追跡調査した。 被験者は、ダパグリフロジン10mg+標準ICU治療を受ける群(ダパグリフロジン群)または標準ICU治療のみを受ける群(対照群)に無作為化され、最長14日間またはICU退室のいずれかの初発まで治療を受けた。 主要アウトカムは院内死亡率、腎代替療法の開始、および28日間のICU入室の階層的複合で、解析にはWin Ratio法(win比で評価)を用いた。 副次アウトカムは、主要アウトカムの各項目、臓器サポートを要さない日数、ICU入室期間、入院期間などで、ベイズ回帰モデルを用いて評価した。主要複合アウトカム、ダパグリフロジン群で有意に減少せず 507例が無作為化された(ダパグリフロジン群248例、対照群259例)。平均年齢は63.9歳(SD 15)、女性は46.9%。39.6%は感染症の疑いによるICU入室であった。ICU入室から無作為化までの期間中央値は1日(四分位範囲:0~1)。 最長14日間のダパグリフロジン10mgの使用は、主要複合アウトカムの発生を有意に減少しなかった。無作為化後28日間のダパグリフロジン群のwin比は1.01(95%CI:0.90~1.13、p=0.89)であった。 すべての副次アウトカムにおいて、ダパグリフロジンの有益性の確率が最も高かったのは、腎代替療法の使用に関するものであった。腎代替療法導入の報告は、ダパグリフロジン群27例(10.9%)、対照群39例(15.1%)であった(ダパグリフロジンの有益性の確率0.90)。

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マイコプラズマ肺炎が8年ぶりの高水準、上位は大阪・埼玉・佐賀/感染研

 国立感染症研究所が8月13日付で報告した2024年第31週(7月29日~8月4日)のIDWR速報データによると、マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数が過去5年間の同時期の平均よりかなり多い。第27週(7月1~7日)以降5週連続で増加、2016年以来8年ぶりの高い水準となっている。 全国の定点当たり報告数は0.95人で、都道府県別にみると上位10都府県は以下のとおり。 大阪府 3.89人 埼玉県 2.67人 佐賀県 2.50人 愛知県 2.20人 沖縄県 2.00人 香川県 2.00人 兵庫県 1.86人 福井県 1.83人 東京都 1.48人 京都府 1.43人

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都市居住者VS郊外居住者、より幸せなのはどちら?

 都市居住者は、都市以外の場所に住む人に比べて幸福度や経済的な満足度などが低い傾向にあることが、新たな研究で報告された。この研究では、人が最も幸せになれる「ゴルディロックスゾーン」は、都市と農村の間の郊外にあることが示されたという。アムステルダム大学(オランダ)アーバン・メンタルヘルス・センターの心理学者であるAdam Finnemann氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に7月19日掲載された。Finnemann氏は、「都市に隣接する郊外が、心理的満足度が最も高く、かつ平等性も高い」と述べている。 この研究では、UKバイオバンクから抽出した40〜70歳の成人15万6,000人のデータが分析された。研究グループは、最寄りの都市中心部からの距離だけでなく、その都市の人口密度も考慮して、対象者が都市、郊外、農村のいずれに住んでいるのかを評価した。このような指標を採用した理由についてFinnemann氏は、「同じ『都市から15km離れた場所』という条件でも、ロンドンの場合では都市化が進んでいるが、リーズの場合では農村が広がっているという違いがあるため」と説明している それぞれの居住環境により、平均的なウェルビーイング、社会的満足度、および経済的満足度がどのように異なるのかを検討した結果、都市に住む人は郊外や農村に住む人よりも所得は高いが、そのことが幸福度を高めているわけではないことが明らかになった。都市に住む人では、そのほかの環境に住む人に比べて、ウェルビーイング、社会的満足度、経済的満足度を測定する8つのドメイン(全般的な幸福度、人生の満足度、家族関係、友人関係、孤独感、所得、経済的満足度、仕事満足度)のうちの7つにおいて低スコアと関連することが示された。これらのスコアは都市居住者の中でも変動が大きく、裕福な人は経済的に困窮している人よりも都市での生活に対する満足度が高いなど、大きな不平等が生じており、とりわけ都市中心部でそれが顕著であることが示唆された。さらに、最も幸福度が高い(満足度が高く、スコアの変動が少ない)地域は郊外であることも判明した。 このような結果であるにもかかわらず、人々は都市に集まる一方である。本論文の背景情報によると、都市居住者の割合は、1910年代の10%から、2050年には68%になると予測されているという。 ただし、Finnemann氏は、「農村を離れたり、都市から郊外に移住したりすることで、より幸せになると保証されるわけではない」と言う。同氏は、「郊外という場所が最適な距離として示されたのは、幸福な人がその場所に移り住んでいるからであり、郊外という場所自体がその人の幸福を高めているわけではない可能性がある。したがって、われわれが得た知見は、郊外に引っ越せば誰もが心理的な恩恵を受けるということを意味するものではない」と話している。

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1型糖尿病の子どもたちは「糖尿病の苦痛」にさらされている

 1型糖尿病の子どもは、いくつかのメンタルヘルス上の問題を抱えることが多いとする研究結果が報告された。英ケンブリッジ大学およびチェコ共和国国立精神保健研究所のTomas Formanek氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Mental Health」に7月17日掲載された。 報告された研究によると、1型糖尿病の子どもは糖尿病のない子どもに比べて、気分障害を発症する可能性が2倍以上高く、不安症に苦しむ可能性は50%高く、また摂食障害や睡眠障害などの行動上の問題が発生する可能性は4倍以上高いという。ただし、この研究結果は同時に、このようなメンタルヘルス疾患が、1型糖尿病という病態が原因で引き起こされるものではないことも示唆しており、「子どもたちが抱えるこのようなリスクは、むしろ慢性疾患を継続的に管理し続けることに伴う『糖尿病の苦痛』が原因のようだ」と、著者らは述べている。 1型糖尿病は、インスリンを生成している膵臓のβ細胞を免疫系が攻撃することで発症する。β細胞がダメージを受けると、インスリンを生成する能力が失われるため、生存のためにインスリン療法が必要となる。治療は生涯にわたり、日々、絶え間ない自己管理の負担に直面する。また、偏見や差別、自己効力感の低下、将来の合併症の不安、経済的な負担などによるストレスが生じやすく、これらを「糖尿病の苦痛(diabetes distress)」と呼ぶことがある。これまでにもこのような糖尿病の苦痛が、1型糖尿病の子どもたちのメンタルヘルス状態を悪化させたり、自己管理に悪影響を及ぼしたりする可能性が指摘されていた。 Formanek氏らの研究では、チェコ共和国の1型糖尿病の子どもたち4,500人以上の患者登録データが用いられた。データ解析の結果、1型糖尿病の子どもたちに見られるメンタルヘルス関連の問題は、この病気を発症後には常に食事の摂取量を判断したり、血糖値をチェックしたり、インスリンを注射したりしなければならないといった、生活に大きな変化を強いられることに起因するものである可能性が見いだされた。また、社交行事へ参加する機会が減ったり、ほかの子どもたちや教師、さらには家族からも孤立していると感じたりすることも少なくないという実態が明らかになった。 その影響もあって前述のように、1型糖尿病の子どもたちの間で、不安症や摂食障害、睡眠障害などが多く見られた。ただし、統合失調症などの精神疾患を発症するリスクは低く、同年代の子どもたちの約2分の1だった。 論文の上席著者であるケンブリッジ大学のBenjamin Perry氏は、「1型糖尿病患者は『糖尿病の苦痛』を経験しやすいことが知られている。その苦痛には、血糖値に対する極度のフラストレーションや孤立感なども含まれると考えられ、成人でも燃え尽き症候群や絶望感、あるいはコントロールの放棄につながる可能性がある。そのため、1型糖尿病の子どもたちが成人するまでの間に、メンタルヘルス上の問題が顕在化するリスクが高いとしても、不思議なことではない」と述べている。

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HPVワクチンの定期接種とキャッチアップ接種

HPVワクチン(子宮頸がん予防)の定期接種とキャッチアップ接種• 日本では2013年4⽉から、⼩学校6年⽣〜⾼校1年⽣を対象に、公費によるHPVワクチンの無料接種(定期接種)が実施されています• 上記のほか2025年3⽉まで、1997年4⽉2⽇〜2008年4⽉1⽇⽣まれの⽅を対象に、無料で接種できる「キャッチアップ接種」が実施されています• 現在定期接種の対象となっているHPVワクチンは3種類とも3回の接種完了までに6ヵ⽉かかるため、「キャッチアップ接種」の期限内にすべて終了させるためには、2024年9⽉末までに初回接種を行う必要があります<3種類のワクチンと接種タイミング(2025年3⽉までに終了させる場合)>2024年9⽉10⽉11⽉ ・・・・ 2025年3⽉3回目子宮頸がんの原因の50~70%を占めるHPV16/18型の感染を防ぐ3回目HPV16/18型に加え、尖圭コンジローマなどの原因となる6/11型の感染を防ぐ3回目さらに5つの型の感染を防ぎ、子宮頸がんの原因の80~90%を防ぐ2価ワクチン(サーバリックス)4価ワクチン(ガーダシル)1回目1回目2回目2回目9価ワクチン(シルガード9)1回目2回目出典:日本対がん協会「子宮頸がんの予防のために HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン」厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A」Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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お金持ちになるための最も効率の良い方法とは? 【医師のためのお金の話】第83回

お金持ちになりたい! 医師に限らず多くの人が、心の中のどこかでそう思っていることでしょう。お金持ちに興味がなくても、余裕がなくて汲々しているより経済的に余裕のあるほうが心地良いですね。しかし、周知のようにお金持ちになるのは簡単ではありません。かつての私はバカだったので、医師になれば自動的にお金持ちになれるものだと思っていました。ところが実際にはそうでないことは、皆さんご存じのとおりでしょう。もちろん、世間一般と比べて医師は高給の人が多いので、表面上は裕福な暮らし向きが可能です。しかし、見栄えが良くても、実際に経済的に余裕があるのかは別問題。月末の給料日が待ち遠しい人も珍しくないかもしれません。実は、お金持ちになる方法はシンプルです。お金持ちになる再現性のある方法は、たった3つしかありません。そして、どの方法を選択するのかによって、お金持ちになる大変さが違うとすればどうでしょうか。効率的にお金持ちになる方法を考えてみましょう。自力でお金持ちになる方法はたった3つしかない!日本のお金持ちで多いのは、膨大な資産を相続した人です。具体的には、都市部の不動産や先祖代々の会社などです。出自で人生が決まるとは羨ましいですね。しかし、あなたや私のような一般人が自力でお金持ちになるには、以下に挙げる3つの方法しかありません。高額の給料を稼ぐ起業する投資するいずれもハードルが低いとは言えませんが、「高額の給料を稼ぐ」は医師に最も馴染みがありそうです。かく言う私も、タネ銭を貯めるステージでは、当直をしまくって馬車馬のように働いていました。「起業する」は、医師であれば開業が一般的でしょう。昔と比べると難しくなりましたが、いまでも有効な方法であることは間違いありません。少しの勇気とやる気さえあれば、開業して軌道に乗せることは確実性の高い方法だと言えます。一方、「投資する」は幅広い概念です。数万円程度の株式投資から、数十億円レベルの不動産投資までさまざまです。医師の中で最もメジャーなのは、新NISAを利用しながらオルカンを数百万円程度購入する感じでしょうか。青天井を見込めるのは起業と投資だが…お金持ちになる3つの方法の中で、上限がないのは起業(開業)と投資でしょう。しかし、実際にはさまざまな制約があります。たとえば開業した場合にも、院長1人だけでは医業収入の上限が存在します。人の時間は有限なので仕方ないですね。一方、病院を開院したり、クリニックを多店舗展開したりする方法もありますが、規模が大きくなるとマネージメントに忙殺されます。もちろん事業規模が大きくなると、さまざまなリスクも増加します。何か問題が起こると個人の努力だけではカバーできなくなるからです。そう考えると投資は比較的コスパに優れるように思えます。しかし実際には投資は開業以上にリスクが高いです。株式投資で成功するには、比較的大きなタネ銭と天性の才能が必要です。不動産投資は金融面のリスクや独特のノウハウをマスターする必要があります。何よりも、現状は株式・不動産とも高値圏にあるので、新規参入には好ましい時期ではないかもしれません。オルカンを定期購入するのもアリですが、お金持ちになるころには人生が終わっていそう。老後のためだけの投資など、つまらないと思うのは私だけでしょうか。起業+投資がコスパ最強の資産形成手法!3つの方法のいずれも問題点がありますが、お金持ちになるには避けて通れません。それではコスパ良くお金持ちになる方法は何でしょうか。あくまで私見ですが、起業+投資のハイブリッドが最も効率的かつリスクを抑えてお金持ちになる方法だと考えています。起業(開業)して軌道に乗せても、収益を事業には再投資せず、投資に回す方法です。具体的に言うと、クリニックを多店舗展開したりM&Aで規模を拡大したりするよりも、収益で株式や不動産を購入する戦略です。医療業界では何をするにも医師免許が必要なので、あまり事業での規模拡大はメジャーではありません。しかし飲食業界など参入障壁の低い業界では、事業からの収益を再投資して規模を拡大させる方法が一般的です。具体的にはラーメンのチェーン店ですね。収益を再投資すると急激に成長するので創業者に膨大な利益をもたらしますが、社会情勢が変化するとあっという間に苦境に陥ります。そうなると時すでに遅しで、簡単に破綻してしまいます。医療業界は、事業への再投資が難しいことが幸いしているのかもしれません。私自身は開業していませんが、起業した複数の事業から上がってくる収益をせっせと株式や不動産に転換しています。仮に1つの事業がダメになっても、残りの事業や株式・不動産からの収益があるため、倒れる可能性は極めて低いです。このように一般人が、リスクを抑えながらコスパ良くお金持ちになる方法は、起業+投資のハイブリッドだと感じています。リスクを分散しながら、事業と投資など複数の方法で青天井を目指す…。いかがでしょうか?

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脾腫の鑑別診断(1)[総論編]【1分間で学べる感染症】第9回

画像を拡大するTake home message脾腫の鑑別診断は「CHINA」で覚えよう。今回は、脾腫の鑑別診断について学んでいきましょう。脾腫を診るとき、皆さんは何を考えますか?鑑別診断は多岐にわたりますが、大まかな分類を覚えるのに「CHINA」という語呂合わせが有用です。この「CHINA」の語呂合わせを頭に入れながら、脾腫の病態生理学的な機序を理解すると、さらに覚えやすくなります。まず、うっ滞性の脾腫としては、脾静脈または門脈の閉塞や肝静脈の流出障害などにより門脈内の血流に対する抵抗が増大することによって生じる門脈圧亢進症が代表例です。また、がんの転移、骨髄性腫瘍などのように、脾臓環境に腫瘍細胞が侵入することによっても脾腫が引き起こされます。悪性リンパ腫のように、固有の免疫細胞自体が腫瘍を形成する場合もあります(感染性の鑑別診断に関しては次回説明します)。さらには、関節リウマチ、サルコイドーシスなどでは、免疫活動の増加とそれに続く過形成により脾腫を来します。感染性心内膜炎もこの免疫学的機序が知られています。これらのうち、とくに巨大な脾腫を来すものが「3M」と呼ばれ、Malaria:マラリアMyelofibrosis:骨髄線維症CML:慢性骨髄性白血病を指します。脾腫を来した患者を診る場合には、これらの大きなカテゴリーで鑑別を考えることにより、ほかの所見と組み合わせて診断に寄与することがあります。皆さんも「CHINA」という語呂合わせを覚えて、脾腫の病態生理学的な機序の理解に役立ててください。1)Aldulaimi S, et al. Am Fam Physician. 2021;104:271-276.

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第225回 徳田虎雄氏死去、地域医療にもたらしたインパクトとその功績を考える(後編)

徳田虎雄氏が作り上げた徳洲会、僻地医療、救急医療を半世紀にわたって展開こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、愛知県の実家にお施餓鬼のために帰省しました。92歳になった父親が一人暮らしをしているのですが、1週間ほど前に「運転免許の返上を決めた」と電話で話していたにもかかわらず、会ってみると「来年の車検までは乗る」というのでまた親子喧嘩に。挙句の果てに、「車を乗るのを止めたら、電動自転車を買おうと思っている」と言い出す始末。「90歳は自転車で転んで大腿骨を骨折すると、死期がぐっと早まるぞ」と脅したのですが、田舎の超高齢者の交通手段問題が解決する日は遠そうです。さて、今回も徳田 虎雄氏が作り上げた徳洲会が半世紀にわたって展開してきた離島をはじめとする僻地医療や、救急をはじめとする地域医療における功績について、私自身の取材経験(少々偏りはありますが)も踏まえ、考えてみたいと思います。早くから北米型ERを導入、日本の救急医療に与えたインパクト「生命だけは平等だ」をスローガンに、40年近くにわたって「年中無休・24時間オープン」の医療を全国展開してきた徳洲会。その特徴の1つは早くから北米型ER(救急外来)を導入したことでしょう。1970〜80年代、まだ日本の救急医療は増加する交通事故の外傷に対応することが第一の目的とされ、外傷三次救急以外の、内科系や小児の二次救急は整備途上でした。そんな中、徳田氏は、全国に北米型ERのある病院を展開しました。そのあたりの事情を薬師寺 泰匡氏(薬師寺慈恵病院院長、元岸和田徳洲会病院救急科医長)が日経メディカルの連載「だから救急はおもしろいんよ」の2018年1月18日付の記事で書いています。氏は「徳洲会が立ち上がった頃は、夜間休日の救急医療体制が整っておらず、患者はどこに行っていいのか、救急車も呼んでいいのかどうかという状況だったことがうかがえます」と振り返り、「徳田虎雄は、実際に米国留学などでかの地の救急医療に触れた医師を独自に集め、救急医療を担保するとともに、各地で米国式の研修医教育を広めていきました。現在のスーパーローテート方式が始まるずっと前から、独自に各科ローテート研修を行っており、僕自身もそうした歴史の恩恵にあずかりました」と記しています。同記事などによれば、日本において一次・二次・三次救急の整備が始まったのが1977年、消防法の改正によって救急隊の搬送業務の対象が小児科・内科系疾患を含む救急患者一般にまで拡大したのは1987年のことです。徳洲会の最初の病院、徳田病院(現在の松原徳洲会病院)の開設が1973年ですから、徳洲会の全国各地の病院は、日本の救急医療の先駆けとして機能し、その基礎を形作ったと言えるかもしれません。都市部の大病院で研修医を集めて、へき地・離島に期限付きで送る救急医療に加え、へき地医療と地域医療でもその貢献は小さくありません。徳田氏の故郷である鹿児島県の離島に赤字覚悟で複数の病院を開設、初期研修医や後期研修医を「へき地・離島研修」という独自のプログラムのもと一定期間派遣し、その地域の医療を支えたのです。医療機器が充実した都市部の大病院で研修しようというシステムは、人口減少や医師の働き方改革などを背景に、地方での医師不足が急速に進む今の日本でも参考になりそうです。地域医療展開の拠点と言われた野崎徳洲会病院徳洲会の病院は都市部の巨大病院ばかりではなく、地域の中小病院も数多くあります。1980年代後半~1990年代前半、そうした病院を取材すると、徳洲会の地域医療展開の拠点と言われた野崎徳洲会病院(大阪府大東市)でプライマリケア・地域医療を学んだ医師が少なからずいたことを覚えています。たとえば1990年代前半、北海道静内町(現在の新ひだか町)の静仁会・静内病院(現在の医療法人徳洲会 日高徳洲会病院)には、野崎徳洲会病院OBの院長がいました。彼は、野崎徳洲会病院で学んだプライマリケアを実践しながら、徳洲会が買収した老人病院を、救急から在宅まで、包括医療を提供する病院に作り変えようと奮闘していました。今で言う地域包括ケアです。介護保険ができる10年も前に、医療と介護を一体化した診療を行っていたわけです。東日本大震災で際立った徳洲会の活躍救急医療だけではなく、地域医療、家庭医療に力を入れる方針は徳洲会の中で脈々と受け継がれていったようです。2011年の東日本大震災の時、被災した気仙沼市立本吉病院(現在は本吉医院)に、不在となった院長の代わりに赴任したのは、徳洲会系(現在は医療法人徳洲会)の庄内余目病院の家庭医養成プログラムを修了した医師でした。この医師も「町民全体の家庭医を目指したい」と、通常の外来診療を済ませた後に積極的に訪問診療を行っていた姿を覚えています。東日本大震災の被災地ではまた、災害直後から徳洲会の災害派遣チーム・TMATの姿をあちらこちらで見かけました。その支援の規模は、民間病院チェーンの中では最大だったと聞いています。日本赤十字社や済生会の病院では起こり得なかったこと徳洲会は、その規模を生かすかたちで親族が経営するMS法人に莫大な利益を還流し、同時にまた、徳田氏や長男の選挙に大量の人員投入を行っていました。それは批判すべきことではありますが、徳洲会の救急医療や地域医療のノウハウが全国各地に広がっていったこと自体は評価されるべきことでしょう。強烈な個性とリーダーシップのあるオーナー理事長が率いる全国チェーンゆえに、いわゆる医療の”均てん化”が起こっていたわけです。同じ全国チェーンでも、地元大学医学部のジッツとしての役割が大きい日本赤十字社や済生会の病院では起こり得なかったことです。「社会福祉法人恩賜財団済生会などの公的病院を規模でも質でも凌駕したい」と現理事長徳洲会事件を契機として徳田家の支配から脱却した医療法人徳洲会は、「生命だけは平等だ」の理念はそのままに規模拡大を続けており、その経営は順調のようです。日経ヘルスケア2023年2月号掲載の記事、「創業50年を迎えた徳洲会の今(上)」で現理事長の東上 震一氏は「規模は一つの断面に過ぎないが、目標は100病院。1兆円の収益を上げて、社会福祉法人恩賜財団済生会などの公的病院を規模でも質でも凌駕したい」と今後の抱負を語っています。しかし一方で、カテーテル治療後に複数の患者が死亡するなど医療過誤が相次いだ神戸徳洲会病院に神戸市が医療法に基づく改善命令を出すなど、その医療の“質”に疑問が投げかけられる事態も生じています。オーナー経営ではなくなった巨大チェーンを、勤務医出身のサラリーマン経営者が統治していくのは並大抵のことではないはずです(内規で医療法人徳洲会の理事長は3期までと決まっているそうです)。神戸徳洲会病院で起こっていることが、統治・経営の綻びから来ているものでなければいいのですが…。徳田家の支配から離れて、徳田氏の理念や経営方針はいつまで引き継がれていくのか、これからの50年間に救急医療におけるパイオニアワークのような徳洲会らしい新たな功績は生まれるのか――。今後の動きにも注目したいと思います。

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日本人の子宮頸がんに対するペムブロリズマブ+同時化学放射線療法(KEYNOTE-A18)/日本婦人科腫瘍学会

 局所進行子宮頸がん(LACC)に対する同時化学放射線療法(CCRT)へのペムブロリズマブの上乗せは、日本人患者においてもグローバルと同様に無増悪生存期間(PFS)の改善傾向を示した。 1999年以降、LACCの標準治療は、化学療法と外部照射放射線治療(EBRT)の併用とその後の小線源療法へと続くCCRTである。現在、CCRTの効果をさらに高めるために免疫チェックポイント阻害薬の上乗せが検討されている。 KEYNOTE-A18試験(ENGOT-cx11/GOG-3047)は未治療の高リスクLACCにおいてペムブロリズマブ+CCRTとCCRT単独を比較した第III相試験である。グローバル集団の初回解析の結果ではCCRT単独に比べ、ペムブロリズマブ+CCRTがPFSを有意に改善している(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.55〜0.89、p=0.002)1)。第66回日本婦人科腫瘍学会学術講演会では、愛知県がんセンターの鈴木 史朗氏が同試験の日本人サブセットの結果を発表した。対象:FIGO2014 Stage IB2〜IIB(リンパ節転移陽性)またはStage III〜IVAの子宮頸がん(リンパ節転移問わず)試験薬群:CDDP(40mg/m2)毎週 5サイクル+EBRT+小線源療法+ペムブロリズマブ(200mg)3週ごと 5サイクル→ペムブロリズマブ(400mg)6週ごと 15サイクル(ペムブロリズマブ群)対照群:CDDP(40mg/m2)毎週 5サイクル+EBRT+小線源療法+プラセボ 3週ごと 5サイクル→プラセボ6週ごと 15サイクル(プラセボ群)評価盲目:[主要評価項目]治験責任医師・治験分担医師評価のPFSまたは全生存期間(OS)[副次評価項目]24ヵ月PFS、全奏効率、患者報告アウトカム、安全性 主な結果は以下のとおり。・グローバル1,060例中、日本人サブセットは90例(ペムブロリズマブ群42例、プラセボ群48例)であった。・日本人サブセットのPFS中央値は両群とも未到達(HR:0.60、95%CI:0.24〜1.52)、12ヵ月PFS率はペムブロリズマブ群81.8%、プラセボ群71.8%、24ヵ月PFS率はそれぞれ71.6%と評価不能であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)はペムブロリズマブ群の85.4%、プラセボ群の81.3%に発現した。治療関連死はみられなかった。・ペムブロリズマブ群で頻度の高いTRAEは下痢(80.5%)、悪心(80.5%)、好中球減少(63.4%)、貧血(61.0%)など。ペムブロリズマブ群で頻度の高い免疫関連有害事象は甲状腺機能低下(17.1%)、甲状腺機能亢進(9.8%)などであった。 KEYNOTE-A18試験における日本人サブセットの知見から、ペムブロリズマブ+CCRTは日本人の高リスクLACCに対する治療選択肢となり得るのではないか、と鈴木氏は述べた。

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日本の社会経済的指標と認知症リスク

 生涯にわたる社会経済的指標(Socioeconomic status:SES)の推移が、認知症の発症リスクと関連するかどうかを調査した、日本発の研究結果が発表された。大阪大学の坂庭 嶺人氏らによる本研究結果はJAMA Network Open誌2024年5月1日号に掲載された。 2010年8月~2016年12月に実施されたこの前向きコホート研究では、日本老年学的評価研究のデータを使用し、日本の31地域の65歳以上の参加者を対象とした。参加者は介護保険や医療福祉サービスを使用しておらず、認知症の診断を受けていない人とされ、自記式質問票で回答した。データ解析は2022年4月~2023年4月に実施された。SES値欠落者、追跡不能者、ベースラインから1年以内の認知症発症者は除外された。主なアウトカムは認知症発症リスクと、それに伴う生涯にわたる認知症のない期間の減少または増加だった。認知症の発症は介護保険のデータによって特定された。 主な結果は以下のとおり。・計9,186例(男性4,703例[51.2%])が対象となった。ベースライン時の平均年齢は74.2(SD 6.0)歳だった。・SESの推移は、上昇(upward)、安定上流(stable-high)、上位中流(upper-middle)、下位中流(lower-middle)、下降(downward)、安定下流(stable-low)の6つに分類された。・追跡期間中に800例の認知症が特定された。生活習慣、併存疾患、社会的要因など、多くの認知症リスク要因がSESの推移パターンと関連していた。・下位中流のSESと比較したとき、認知症リスクが最も低かったのは上昇(ハザード比[HR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.57~0.74)、次いで安定上流(HR:0.77、95%CI:0.69~0.86)であり、下降(HR:1.15、95%CI:1.09~1.23)、安定下流(HR:1.45、95%CI:1.31~1.61)ではリスクが上がった。上位中流への推移と認知症リスクとの関連は認められなかった。・生涯にわたる認知症のない年数は、SESの上昇への推移で最も増加した(例:65歳時点で1.8年[95%CI:1.4~2.2])。一方、75歳以上の生涯にわたる認知症のない年数は、SESの下降への推移で最も減少した(例:85歳時点で-1.4年[95%CI:-2.4~-0.4])。 研究者らは「この日本の高齢者のコホート研究では、SESの上昇と下降が生涯にわたる認知症リスクと認知症のない期間の長さと関連していることが判明した。この結果は、社会的流動性と健康寿命の関連を理解するのに役立つ可能性がある」としている。

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ゲーム療法は統合失調症患者の認知機能改善に有効か

 統合失調症患者における認知機能は、機能的アウトカムや日常生活機能の低下の主な原因であり、治療対象として有望である。近年、精神疾患の治療において、さまざまな認知機能領域をターゲットとしたデジタル介入(ゲームベースの介入など)の使用が増加しつつある。そして、統合失調症患者に対するゲームベースのデジタル介入は、治療価値があるとの見解が示唆されている。中国・首都師範大学のJunkai Wang氏らは、統合失調症患者の認知機能をターゲットとした新たなオンライントレーニングプログラム(Komori Life)の利用可能性と初期の有効性を評価した。Translational Psychiatry誌2024年7月16日号の報告。 統合失調症入院患者を対象に、ゲーム介入群(セッション完了:40例)または通常療法群(セッション完了:40例)のいずれかにランダムに割り付け、20回のセッションを実施した。すべての患者に対し、登録時および介入完了後に認知機能、臨床症状の評価を行った。また、健康対照群32例を含むすべての対象に対し、感情情報への注意バイアスを評価するためアイトラッキングを用いた。 主な結果は以下のとおり。・ゲーム介入群および通常療法群において、認知機能または臨床症状の評価で差は認められなかった。・ゲーム介入後も、認知機能または臨床症状のスコアに群×時間の相互関係は認められなかった。・アイトラッキングについては、ベースライン時の注意維持に関して、ゲーム介入群および通常療法群は、健康対照群と比較し、脅威刺激に対する注意力の増加が認められた。・ゲーム介入群は、通常療法群と比較し、介入後の脅威場面への注意バイアスが大幅に改善した(脅威刺激への総持続時間の割合、総注視の割合が減少)。・ゲーム介入の有効性が、認知機能改善と関連しており、脅威への注意維持の向上が認知パフォーマンスの低下と関連していることが部分的に示唆された。 著者らは「本研究は、統合失調症患者の認知機能改善に対する遠隔オンライン認知機能トレーニングプログラムの利用可能性および有効性に関する初めてのエビデンスである。本介入は、既存の精神科治療の補完療法として機能する可能性がある」としている。

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活動制限の有病率に、性差や国の経済水準による差はあるか/Lancet

 活動制限(activity limitation)の世界的な有病率は、男性よりも女性で、高所得国よりも低所得国や中所得国で大幅に高く、歩行補助具や視覚補助具、聴覚補助具の使用率のかなりの低さも手伝ってこの傾向は顕著であるため、活動制限の影響を軽減するための公衆衛生キャンペーンの焦点となりうる重要な課題であることが、カナダ・マクマスター大学のRaed A. Joundi氏らが実施した「PURE研究」で示された。研究の詳細は、Lancet誌2024年8月10日号に掲載された。25ヵ国の35~70歳を対象とする前向きコホート研究 PURE研究は、活動制限の有病率と補助具の使用、および活動制限と有害なアウトカムとの関連の定量化を目的とする前向きコホート研究で、経済水準の異なる25ヵ国の個人データの解析を行った(カナダ・Population Health Research Instituteなどの助成を受けた)。 現在の住居に今後4年以上住む予定の35~70歳の17万5,660例を対象とし、活動制限に関する質問票への回答を求めた。追跡調査は3年に1回、電話または対面で行うこととした。 活動制限の調査は、7つの制限(歩行、把持[指で物をつかんだり扱うこと]、屈伸[かがんで床から物を拾う]、近くを見る、遠くを見る、話す、聞く)と補助具の使用(歩行、視力、補聴器)の自己報告による困難に関する質問で構成された。屈伸困難が最も多く、近くを見るや歩行の制限も高頻度 2001年1月~2019年5月に、17万5,584例が活動制限質問票の少なくとも1つの質問に回答した(平均年齢50.6歳[SD 9.8]、女性10万3,625例[59%])。すべての質問に回答した集団の平均追跡期間は10.7年(SD 4.4)だった。 最も高頻度に自己報告された活動制限は屈伸(2万3,921/17万5,515例[13.6%])であり、次いで、近くを見る(2万2,532/16万7,801例[13.4%])、歩行(2万2,805/17万5,554例[13.0%])、把持(1万6,851/17万5,584例[9.6%])、遠くを見る(1万3,222例/17万5,437例[7.5%])、聞く(9,205/16万7,710例[5.5%])、話すまたは理解してもらう(3,094/17万5,474例[1.8%])の順であった。これらの制限の有病率は、年齢が高いほど、また女性で高かった。 年齢と性別で標準化した活動制限の有病率は、聴覚を除き、低所得国と中所得国で高く、社会経済的因子で補正しても一貫して同様の所見が認められた。また、歩行補助具、視覚補助具、聴覚補助具の使用は、低所得国と中所得国で少なく、とくに女性で使用率が低かった。低所得国では視覚制限が多く、眼鏡使用率が低い 近くを見ることの制限の有病率は、低所得国では高所得国の約4倍(6,257/3万7,926例[16.5%]vs.717/1万8,039例[4.0%])で、遠くを見ることの制限の有病率は約5倍(4,003/3万7,923例[10.6%]vs.391/1万8,038例[2.2%])であったが、眼鏡使用の割合は低所得国(30.9%)と中所得国(30.3%)で高所得国(71.1%)の半分にも満たなかった。 歩行制限は、全死因死亡率と最も強く関連し(補正後ハザード比[aHR]:1.32、95%信頼区間[CI]:1.25~1.39)、他の臨床イベント(心血管疾患死、非心血管疾患死、心血管疾患、非致死的心血管疾患、心筋梗塞、肺炎、転倒)とも強い関連を示した。これ以外の顕著な関連として、遠くを見ることの制限と非心血管疾患死(1.12、1.03~1.21)、把持の制限と心血管疾患(1.15、1.05~1.26)、屈伸の制限と転倒(1.11、1.03~1.21)、話すことの制限と脳卒中(1.44、1.18~1.75)などを認めた。 著者は、「とくに低所得国と女性に重点を置いて、世界的に活動制限を予防し、その影響を軽減する必要がある」「世界の60歳以上の高齢者人口の3分の2は低・中所得国であるため、活動制限の大きな負担とこれに関連する結果を軽減するための公衆衛生戦略が求められる」としている。

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シェーグレン症候群、抗CD40抗体iscalimabが有望/Lancet

 シェーグレン症候群の治療において、プラセボと比較して抗CD40モノクローナル抗体iscalimabは、疾患活動性に関して有意な用量反応関係を示し、忍容性も良好であることが、英国・University Hospitals Birmingham NHS Foundation TrustのBenjamin A. Fisher氏らが実施した「TWINSS試験」で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2024年8月10日号で報告された。2つのコホートの無作為化プラセボ対照第IIb相試験 TWINSS試験は、23ヵ国71施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第IIb相試験であり、2019年10月~2022年2月に参加者のスクリーニングを行った(Novartis Pharmaの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、米国リウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ学会(EULAR)の2016年のシェーグレン症候群診断基準を満たす患者273例を登録した。 このうち用量設定を行うコホート1には、ESSDAI(EULAR Sjogren's Syndrome Disease Activity Index)スコアが5点以上、ESSPRI(EULAR Sjogren's Syndrome Patient Reported Index)スコアが5点以上の患者173例を登録し、iscalimab 150mgを皮下投与する群に44例、同300mg群に43例、同600mg群に43例、プラセボ群に43例を無作為に割り付けた。各群の年齢中央値の範囲は52.0~56.0歳、女性の割合の範囲は93~95%であった。 また、概念実証を行うコホート2には、ESSDAIスコアが5点未満、ESSPRI(乾燥症状または疲労)スコアが5点以上で、日常生活へのドライアイの影響スコアが30点以上の患者100例を登録し、iscalimab 600mgまたはプラセボを皮下投与する群に50例ずつ割り付けた。各群の年齢中央値の範囲は49.0~55.5歳、女性の割合の範囲は96~100%だった。 主要エンドポイントは、コホート1がベースラインから24週目までのESSDAIの変化に基づきiscalimabの用量反応関係を示すこと、コホート2が24週目のESSPRIの変化に関してiscalimab 600mgの効果を評価することであった。150mg群と600mg群で、ESSDAIスコアが有意に改善 コホート1では、4つのモデルのうち1つ(Linlogモデル)においてプラセボで補正したESSDAIのベースラインからの変化が、多重比較法(MCP)で有意な用量反応関係を示した(片側p=0.0041)。 また、ESSDAIスコアはiscalimabの3つの用量群ともベースラインから24週目まで経時的に低下し、150mg群と600mg群では有意な改善を認めた。プラセボで補正した最小二乗平均差は、150mg群-3.0(95%信頼区間[CI]:-4.9~-1.1、p=0.0025)、600mg群-2.9(-4.9~-1.0、p=0.0037)であった。ESSPRIの総スコアも改善傾向 コホート2では、ESSPRIの総スコアがiscalimab 600mg群で改善する傾向がみられた(プラセボで補正した最小二乗平均のベースラインからの変化:-0.57点、95%CI:-1.30~0.15、p=0.12)。ESSPRIの下位尺度の解析では、iscalimab 600mgによるESSPRI改善の主な因子は、乾燥症状(最小二乗平均差:-1.0点、95%CI:-1.8~-0.2、p=0.016)および疲労(-0.8点、-1.7~0.1、p=0.067)であった。 重篤な有害事象は、コホート1で9例(プラセボ群1例[2%]、iscalimab 150mg群1例[2%]、同300mg群3例[7%]、同600mg群4例[9%])、コホート2で4例(各群2例[4%]ずつ)発現した。有害事象による投与中止は、コホート1で8例(プラセボ群1例[2%]、iscalimab 150mg群1例[2%]、同300mg群1例[2%]、同600mg群5例[11%])、コホート2で4例(プラセボ群 3例[6%]、iscalimab 600mg群1例[2%])でみられた。 著者は、「抗CD40標的療法は、シェーグレン症候群の主な症状(乾燥、疲労)および全身症状の治療に有効である可能性が示唆される」としている。

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大腸内視鏡検査の陰性後の検査間隔は長くできる

 大腸がんの家族歴がなく、最初の大腸内視鏡検査で陰性所見が得られた人では、大腸内視鏡検査の実施間隔を長くすることは安全であり、不必要な大腸内視鏡検査を回避できるようだという研究結果が、「JAMA Oncology」に5月2日掲載された。 ドイツがん研究センター(ドイツ)のQunfeng Liang氏らは、最初の大腸内視鏡検査で大腸がんの陰性所見が得られた場合、何年後に2回目の大腸内視鏡検査を実施できるかを評価した。検査陰性(曝露)群には、大腸がんの家族歴がなく、1990年から2016年の間に45~69歳で最初の大腸内視鏡検査を受け、大腸がんの陰性所見が得られた人11万74人が含まれた。対照群は、曝露群と性別や誕生年、基準年齢が一致し、追跡期間中に大腸内視鏡検査を受けなかった、または大腸内視鏡検査を受けて大腸がんの診断に至った人198万1,332人が含まれた。 最初の大腸内視鏡検査で大腸がんの陰性所見が得られた人を、最長29年間追跡した結果、大腸がんの発症が484件、大腸がん特異的死亡が112件認められた。15年間の大腸がんリスクおよび大腸がん特異的死亡リスクは、曝露群ではマッチさせた対照群より有意に低かった。最初の大腸内視鏡検査で陰性所見が得られてから15年後の10年標準化罹患比(SIR)は0.72、10年標準化死亡比(SMR)は0.55であった。大腸内視鏡検査の実施間隔を10年から15年へと延長すると、1,000人当たり2件の大腸がん診断を早期発見できず、1件の大腸がん特異的死亡を防げない可能性があり、一方で1,000件の大腸内視鏡検査を回避できる可能性が示された。 著者らは「大腸内視鏡検査の実施間隔を長くすることは、不必要な侵襲的検査を避ける上で有益な可能性がある」と述べている。

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QT延長症候群患者の高強度の運動は心停止のきっかけにはならず

 不整脈の一種であるQT延長症候群(LQTS)の患者が高強度の運動をしたとしても、それによって突然死や心停止のリスクがさらに上昇することはなく、安全であることが米イェール大学医学部心臓病学教授のRachel Lampert氏らによる研究から明らかになった。詳細は、「Circulation」に7月25日掲載された。Lampert氏らは、「適切な治療を受けていたLQTS患者では、高強度の運動をしていた人と、中強度の運動をしていた人や座位時間の長い人のいずれにおいても、不整脈イベントの発生は少ないことが示された」と結論付けている。 米クリーブランド・クリニックの情報によると、LQTSは心拍のリズムを正常に保つための電気的なプロセスに遅れが生じる病態で、それにより、危険性の高い不整脈が引き起こされる可能性がある。LQTSの多くは遺伝性であり、疾患をコントロールするための治療法には薬物療法のほか、植え込み型デバイスの留置、手術などがある。 Lampert氏らによると、LQTSは約2,500人中1人に発生する疾患で、最も高頻度に検出される遺伝性の心臓の電気的異常であることが、ある欧州の研究によって明らかにされているという。また、複数の先行研究で、高強度の運動がLQTS患者の心停止を誘発する可能性のあることが示唆されている。しかし、これらの研究は、そのような心イベントの発生後にLQTSと診断された患者を主な対象としていた。 では、すでにLQTSがあることが判明していて、それに対する適切な治療を受けている患者の場合はどうなのだろうか? この疑問に対する答えを明らかにするため、Lampert氏らは5カ国の37カ所の医療機関でLQTSと診断された患者1,413人の転帰を3年間にわたって追跡した。 対象者の年齢は8~60歳で、LQTSの原因となる遺伝子を保有していることが明らかになっているか、心電図検査でLQTSのあることが判明しているかのいずれかであり、研究実施時点で、全対象者が薬物療法か除細動器などの植え込み型デバイスによる適切な治療を受けていた。このうち約半数以上(52%)はランニングなどの高強度の運動を行っていたが(高強度運動群)、残りの人は中強度の運動(ウォーキングや庭仕事などの活動)を行っているか、ほとんど座位で過ごしている人で、非高強度運動群とされた。 3年間に及ぶ追跡の結果、高強度運動群と非高強度運動群の間で、突然死、突然の心停止、不規則な心拍を原因とする失神、植え込み型除細動器による治療が必要と判断されるほど困難な状態の不整脈、の4つの心臓の問題の発生率について、統計学的な有意差は認められなかった。全般的な心イベントの発生率は高強度運動群で2.6%、非高強度運動群で2.7%といずれも低かった。この研究を通じて心臓突然死に至ったのは、31歳の女性ただ1人だった。この女性は、後に別の深刻な心臓症候群を持っていることが判明しており、また亡くなる前に「意図的に治療を無効化」していたという。さらに、対象者のうち116人は「競技アスリート」であったが、これらの人の心イベント発生率も極めて低かったとLampert氏らは説明している。 こうした結果を受けてLampert氏らは、適切な治療が行われていればLQTSは激しい運動の障壁にはならないとの考えを示している。その上で、LQTSの患者がスポーツや激しいワークアウトに取り組むべきかどうかの判断は、医師のみで行うのではなく、そのような活動の必要性に関して患者と医師の間での「共同意思決定(Shared Decision Making:SDM)」を通じて行われるべきであると付け加えている。

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2024年12月期第2四半期 決算説明

2024年12月期第2四半期業績について  :代表取締役社長 CEO 藤井勝博新中期経営“ビジョン2026”の進捗について:代表取締役社長 CEO 藤井勝博※IRページは こちら からお戻りいただけます※タイトルを選ぶとお好きなチャプターからご覧いただけます。※IRページは こちら からお戻りいただけます.banAdGroup{display:none;}.bottomNotice{display:none;}

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潰瘍性大腸炎の寛解導入および維持療法におけるリサンキズマブの有用性 (解説:上村直実氏)

 潰瘍性大腸炎(UC)の治療は、生物学的生物学的製剤や低分子化合物の出現により大きく変化している。わが国では、既存治療である5-ASA製剤、ステロイド、アザチオプリン、6-MP等に対して効果不十分または不耐容となったUC患者には、インフリキシマブやアダリムマブなどの抗TNF阻害薬、インターロイキン(IL)阻害薬のウステキヌマブやミリキズマブ、インテグリン拮抗薬であるベドリズマブ、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のトファシチニブやフィルゴチニブなどの使用が推奨されている(『潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和5年度改訂版(令和6年3月31日)』厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和5年度 総括・分担研究報告書)。しかしながら、中等度以上の活動性を有するUC症例の中には新たな薬剤でも十分な効果が得られない患者や副作用により治療が中断される患者が少なくなく、新たな作用機序を有する治療薬が次々と開発されている。 今回、日本人を含む中等度から重度のUC患者を対象としたUCの寛解導入および寛解維持に対する新たなIL阻害薬であるリサンキズマブの有効性と安全性を検証した国際共同試験の結果が2024年7月22日号のJAMA誌に掲載された。なお、わが国の保険診療現場ではIL阻害薬としてIL-12とIL-23に共通するp40サブユニットを標的とするウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)とIL-23に特有のp19サブユニットを標的とするミリキズマブ(同:オンボー)が使用されている。 リサンキズマブ(同:スキリージ)はIL-23p19サブユニットを選択的に標的としてIL-23受容体を介したシグナル伝達を阻害するモノクローナル抗体であり、わが国でクローン病、尋常性乾癬、乾癬性関節炎の治療薬として、すでに薬事承認および保険適用を有している。今回は、中等度以上のUCに対する寛解導入および寛解維持目的とした治療薬として2024年6月に薬事承認を取得している。なお、リサンキズマブはウステキヌマブと同じIL-12ファミリーに属する炎症性サイトカインを標的とするが、IL-23のp19サブユニットに対してのみ特異的に結合して大腸粘膜の炎症を抑えることから感染症や悪性腫瘍の発生リスクを軽減する可能性が期待されている。 今回も昨年承認されたミリキズマブと同様、国際共同治験の成績がトップジャーナルに掲載される前に薬事承認されていることは驚きであるが、今後は国際共同治験の結果がジャーナルに掲載される前に保険適用の承認を取得する薬剤が増加するものと思われる。 一方、難治性のUCに対する薬物療法に関する臨床現場からの要望としては、既存の薬物治療に抵抗性を示す患者を対象として、プラセボを対照とした臨床試験の結果から次々に市販されている生物学的製剤それぞれの役割と具体的な使用方法に関するガイドラインの改訂が必要と思われる。

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クローン病に対するリサンキズマブとウステキヌマブの直接比較(解説:上村直実氏)

 完全治癒が見込めないクローン病(CD)に対する治療方針は、病気の活動性をコントロールして患者の寛解状態をできるだけ長く維持し、日常生活のQOLに影響する狭窄や瘻孔形成などの合併症の予防や治療が重要である。薬物治療に関しては、アミノサリチル酸塩(5-ASA)、免疫調整薬、ステロイドなどを用いた従来の治療法が無効な場合、ステロイド長期使用の副事象を考慮して、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブなど腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬が使用されることが多くなっている。しかし、中等症以上の活動性を有するCD症例の中には、抗TNF療法の効果が得られない患者、時間の経過とともに効果が消失する患者、あるいは副作用により治療が中断される患者が少なくなく、新たな作用機序を有する薬剤の追加が求められた結果、活動性とくに中等症から重症のクローン病に対しては、インターロイキン(IL)阻害薬(ウステキヌマブ、リサンキズマブなど)や抗インテグリン抗体薬(ベドリズマブ)などの生物学的製剤が使用されることが多くなっている。 新たに開発された生物学的製剤の有用性と安全性を検証するための臨床試験は薬事承認を目的としたものが多く、既存の治療において有効性に乏しい患者を対象としたプラセボ対照の無作為化比較試験(RCT)が常套手段となっており、実際の診療現場で治療方針に迷うことのある生物学的製剤同士を直接比較した検討は見当たらない。しかし、臨床現場での意思決定には先進的治療法の直接比較試験のデータがきわめて有意義である。 以前行われた唯一の直接比較試験として、中等症〜重症活動期のCD患者を対象として抗TNF薬のアダリムマブとIL阻害薬であるウステキヌマブ単剤療法の有効性を検討した結果、臨床的寛解率および種々の副次的評価項目(内視鏡的有効性、入院の低下率、ステロイドフリー率、腸管切除の減少率など、長期的な予後の改善に強く関連する項目)および安全性について両群間に有意な差は認められなかった(Sands BE, et al. Lancet. 2022;399:2200-2211.)。今回は、抗TNF療法が奏効しなかった中等症から重症の患者を対象として、IL阻害薬のリサンキズマブ(商品名:スキリージ)とウステキヌマブ(同:ステラーラ)の有用性と安全性を直接比較したオープンラベルの国際共同試験「SEQUENCE試験」の結果が2024年7月のNEJM誌に掲載された。24週目の臨床的寛解率は両群間に差がなかったが、48週目の内視鏡的寛解率はリサンキズマブ群が有意な優越性を示した結果であった。 オープンラベルでプラセボのない実薬同士の直接的な比較試験であり、成績には種々のバイアスが生ずると思われるが、診療の現場では個々の患者に対してどの薬剤が最適なのかに迷う機会が少なくなく、本試験のような高い有用性を有する薬剤同士の比較試験結果は診療現場にとって重要と思われる。今後、日本でも同様の精度の高いガチンコ勝負とともに、患者背景の違いにより薬剤の選択方法を示唆するような臨床研究を期待したい。

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