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保険適用の高血圧治療用アプリとは?【治療用アプリの処方の仕方】第1回

われわれ自治医科大学とCureAppは、高血圧症治療補助プログラム「CureApp HT 高血圧治療補助アプリ(以下、アプリ)」を開発し、成人の本態性高血圧症の治療補助の適応で2022年に保険適用されました。これは患者アプリと医師アプリで構成されています。患者アプリでは知識の習得、行動の実践、行動の習慣化などの生活習慣の修正支援が最大6ヵ月間行われます。医師アプリでは患者から提供された患者アプリのデータが表示され、診療時に医師がそれを用いて薬剤の調整や適切なアドバイスを行います。私はその際に、「次の1ヵ月はこれをやりましょう」「これを目標にしましょう」など、患者さんと一緒に約束ごとを決めています。臨床試験を始めるにあたって、アプリでどこまで人の行動や考えが変わるのか、という不安はありました。しかし、医師が診察するのは3ヵ月に1回程度で、診察時に行動や食事のことなどを一生懸命話しても、やはりその場で終わってしまいます。最近は多くの人がスマートフォンをずっと持ち歩いているので、自宅でもアプリを通じてずっと介入し続けることでどれくらい人の行動が変わるのだろう、というのを見てみたくて臨床試験を始めました。治療用アプリの特徴無料の健康アプリとは異なり、このアプリは医療用のアプリであり、ランダム化比較試験で降圧効果が認められています。指導内容は高血圧治療ガイドライン2019に準拠しており、患者さんにはまず減塩、体重管理、運動、睡眠、ストレスマネジメント、アルコール管理の6項目についてエビデンスのある教育を受けてもらい、自身の生活習慣を振り返ってもらいます。初めに正しい知識を身に付けてもらうことが大事で、「なぜ行動を変化させなければならないのか/なぜ血圧を管理しなければならないのか」を学習してから、具体的な課題をいくつかの項目の中から自分で選択して行動に移してもらいます。できるところから自分の意思で選択することが重要です。その行動をリアルな医師やアプリ内のバーチャルなキャラクターがレビューすることで、「自分でもできる」という自己効力感を高めつつ成功体験を積んでいってもらい、それを持続・定着させます。このように、このアプリは医師の役目を簡便化するものではなく、高血圧治療の質を変えるというものです。点の治療を線の治療へ6項目の教育の中枢を担うのは減塩です。減塩を行うことで血圧が下がるということは以前の臨床研究で確認しているのでわかっていました。また、栄養士さんによる減塩指導で塩分の摂取が少なくなって血圧が下がることも示されているため、医師が診察でちょこっと指導するよりもプロフェッショナルの指導が重要であるということもわかっていました。降圧のためには減塩指導の質を上げるか減塩指導の量を増やす必要がありますが、医師だけでは両方とも難しいのが現状です。アプリで日常生活にずっと介入し続けることで、「点の治療」を「線の治療」に置き換えるというのがコンセプトであり、アプリならではのメリットです。毎日アプリにアクセスして介入が行われることで、患者さんのやる気も継続します。患者さんへの説明方法アプリを導入した患者さんの反応は非常によいものでした。やり始めたらきちんと勉強もしていますし、毎回バーチャルキャラクターの反応があるので続けなくてはと思っているようです。患者さんの金銭的な負担もありますが、短期集中型のコースと説明しています。「最初に正しい知識をきちんと身につけて、正しい行動の仕方を身につけてください。これは一生ものですよ」と。習字も最初にきちんと習ったら、ずっときれいですよね。理想的な方法があるのでまず実践してみて、それから自分のやり方をアプリが提供してくれる中から見つけてください、という風に話をしています。次回は、臨床試験の結果や適する患者像についてお話しします。

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第113回 経鼻インフルワクチン「フルミスト」を使いますか?

フルミスト登場私は子供の頃、注射されるのが恐怖だったのですが、「全然怖くないやい!」と言いつつ強がっていました。インフルエンザワクチンは例外なく腕に注射されるため、とくに小さな子供ではなかなか大変なことがあります。さて、鼻に噴霧するタイプのインフルエンザワクチン「フルミスト®」が今年から使用されます。2003年にアメリカで、2011年にヨーロッパで認可されたもので、世界から10年以上遅れて日本でようやく認可されました。めっちゃ遅いやんけ!と思いましたが、しばらくH1N1株に対する有効性が疑問視されてきて、中央で揉まれていた時期があるようです。保存状態も含めていろいろと改善点が判明し、その後国際的にも推奨されたことが、承認の後押しとなっています。このフルミスト、針を刺さないため、「痛くない」というメリットが期待されています。対象年齢は?フルミストの対象年齢は、2歳以上19歳未満です。2歳未満の子供に対しては喘鳴のリスクが増加したという報告があり、使用が認められていません。また、国際的には49歳まで使用可能ですが、日本の薬事承認は上限19歳未満で、これも注意が必要です。要は、子供のためのワクチンなのですよ、これは。フルミストは、不活化ワクチンではなく、弱毒化したウイルスを使った「生ワクチン」なので、妊婦や免疫不全状態にある方には使用できません。もちろん、注射で用いられてきた従来の不活化ワクチンは、2歳未満でも妊婦でも接種可能です。フルミストの効果は?鼻粘膜の表面に直接免疫を成立させることから、高い感染防御効果が期待できます。とくに小さな子供に対しては、従来の注射不活化ワクチンと効果は同等で、感染の成立を約7割減らすとされています。また、重症化リスクを軽減する効果が示されています。「接種しても感染した」とおっしゃる人が一定割合いますが、全員に効果があるわけではなく、コミュニティ全体でリスクを低減する効果を期待して接種することになります。フルミストの注意点は?これも上述したように、2歳未満、妊婦、免疫不全のある人には使えないことです。需要が一番高い層には不適なので、従来の注射不活化ワクチンを使用ください。注意点としては、生ワクチンなので、経鼻接種後に鼻水や咳などの風邪症状がみられる場合があることです。そのため、喘息や鼻詰まりが強い子供では、接種を避けたほうがよいでしょう。副反応で風邪症状が出現した場合、生ワクチンなので接種から2週間程度、インフルエンザ抗原検査が「陽性」になってしまう可能性があります。この解釈には注意が必要でしょう。その他、卵アレルギーやゼラチンアレルギーのある人も避けたほうがよいとされています。費用が確定すれば、すぐにでも接種が始まるでしょうね。

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境界性パーソナリティ障害を合併した双極症患者における認知機能低下

 双極症は、重度の精神疾患であり、境界性パーソナリティ障害(BPD)を合併することが多く、これにより症状がより複雑化する。中国・河北医科大学のChao-Min Wang氏らは、双極症患者のBPD合併の有無による認知機能障害への影響を調査した。World Journal of Psychiatry誌2024年8月19日号の報告。 対象は、BPD合併双極症患者(BPD+BD群)80例およびBPDを合併していない双極症患者(BD群)80例、健康対照群80例。各群の認知機能の評価には、神経心理検査アーバンズ(RBANS)中国語版、ストループ検査(SCWT)、ウェクスラー式知能検査改訂版(WAIS-RC)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・BPD+BD群およびBP群のRBANS、SCWT、WAIS-RCは、対照群と比較し有意に低かった(p<0.05)。・BPD+BD群は、BP群と比較し、単一文字、単一色、二重文字、二重色のSCWT時間が有意に長く、RBANSの即時記憶、視覚的幅、言語機能次元、合計スコアのスコア低下が認められ、WAIS-RCの言語IQ、パフォーマンスIQ、全体IQのスコアも低かった(p<0.05)。・BPD+BD群は、BP群と比較し、SCWTにおける単一文字時間、単一色時間、二重文字時間、二重色時間が有意に長かった(p<0.05)。 著者らは、「BPDを合併した双極症患者は、合併していない患者と比較し、認知機能がより低下していた」と結論付けている。

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降圧薬の服用タイミング、5試験のメタ解析結果/ESC2024

 8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)のホットラインセッションで、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のRicky Turgeon氏が降圧薬の服用タイミングに関する試験のメタ解析結果を報告し、服用タイミングによって主要な心血管イベント、死亡の発生率や安全性に差はみられなかったことを明らかにした。 本研究では、すべての降圧薬の服用タイミング(夕あるいは朝の服用)を比較するすべてのランダム化並行群間比較試験(RCT)の系統的レビューおよびメタ解析を実施。収集基準は、心血管系アウトカムが1つ以上、追跡期間が500患者年以上、追跡期間中央値が12ヵ月以上で、Cochrane Risk of Bias Tool ver.2を使用して評価を行った。主要評価項目は、主要有害心血管イベント(MACE:全死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心不全増悪の複合)で、副次評価項目は、MACEのそれぞれの要因、全入院の原因、特定の安全なイベント(骨折、緑内障関連、認知機能の悪化)であった。 主な結果は以下のとおり。・4万6,606例を対象とした5件のRCTが解析対象となった(BedMed試験、BedMed-Frail試験、TIME試験、Hygia試験、MAPEC試験)。ただし、BedMed試験、BedMed-Frail試験、TIME試験は全体的にバイアスリスクが低いと判断された一方で、Hygia試験とMAPEC試験は、ランダム化プロセスに関してバイアスの懸念がいくつかみられた。・MACEの発生率は、5試験すべてにおいて夕方服用と朝方服用による影響を受けなかった(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.43~1.16)。・バイアスリスクによる感度分析の結果、バイアスが低いと判断された3つの試験では夕方服用と朝方服用のMACEのHRは0.94(95%CI:0.86~1.03)で、バイアスの懸念がある2つの試験のHRは0.43(95%CI:0.26~0.72)だった。・夕方服用と朝方服用による全死亡に差はみられなかった(HR:0.77、95%CI:0.51~1.16)。同様に、骨折、緑内障、認知機能に関するイベントなど、そのほかすべての副次評価項目においても、服用タイミングによる影響はみられなかった。 本結果から同氏は「本結果は夕方服用と朝方服用に違いがないという決定的な証拠を示す。また、患者は自分の都合に最適な時間に1日1回の降圧薬を服用できる」と結論付けた。

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腫瘍循環器におけるダルテパリン、デクスラゾキサンの適応外使用/腫瘍循環器学会

 がん関連の循環器合併症に臨床応用が望まれるダルテパリン、デクスラゾキサンの適応外使用について、また、アントラキノン心筋症に対する新たな予防薬について第7回日本腫瘍循環器学会学術集会で発表された。 同学会の保健委員会委員長であるJCHO星ヶ丘医療センターの保田知生氏は、ダルテパリン、デクスラゾキサンの申請活動状況を報告した。 がん関連静脈血栓塞栓症(CAVT)に対する第1選択薬は低分子ヘパリン(LMWH)である。2007年には、FDA(米国食品医薬品局)がLMWHの1つであるダルテパリンナトリウムにCAVTの再発抑制に対する効能・効果を追加承認している。 日本におけるダルテパリンの効能・効果は血液透析時の凝固防止と汎発性血管内血液凝固症(DIC)で、CAVTは保険適用ではない。日本腫瘍循環器学会は2020年3月、厚生労働省に適応外申請を行い、現在審議中である。ダルテパリンナトリウムのCAVT適応未承認は、グローバルでLMWHの次の治療薬として行われている直接経口抗凝固薬(DOAC)による予防の治験に日本が参加できないという影響も及ぼしているという。 鉄キレート剤であるデクスラゾキサンはアントラサイクリン系抗がん剤による心筋症発症抑制に唯一有用性が証明されている薬剤である。海外では、アントラサイクリン系抗がん剤の血管外漏出と共に心筋症予防でも承認されている。 一方、日本での効能・効果はアントラサイクリン系抗がん剤の血管外漏出であり、同剤による心筋症は保険適用ではない。日本腫瘍循環器学会は2021年5月、厚生労働省に適応外申請を行い、現在審議中である。一方、2023年2月にNHKがアントラサイクリン心筋症を取り上げた番組を報道し注目を浴びた。 デクスラゾキサンの申請活動が続く中、アントラサイクリン心筋症については、新たな可能性が示されている。九州大学病院の池田 昌隆氏は、アントラサイクリンによる心毒性抑制薬として、がんの診断で活用されている5-ALAの可能性を発表した。 池田氏は鉄の蓄積により心筋特異的に誘導される細胞死「フェロトーシス」がアントラサイクリン心筋症の原因の1つであることから、同症の予防標的としてフェロトーシスに注目。動物モデルでヘムの前駆体である5-ALAが、ドキソルビシンによる細胞死とLVEF低下抑制を示すことを明らかにした。現在、第I・II相試験を計画中だという。

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SB623、外傷性脳損傷による慢性期運動機能障害の第II相試験で良好な結果/サンバイオ

 サンバイオは2024年9月5日、2016~19年に実施した外傷性脳損傷に起因する慢性期運動機能障害を有する患者を対象に、ヒト(同種)骨髄由来加工間葉系幹細胞SB623の有効性および安全性を検討する第II相多施設共同無作為化二重盲検比較試験(STEMTRA試験)の48週(最終)までの結果がNeurology誌に掲載されたと発表した。 STEMTRA試験では、適格患者63例がSB623低用量群(2.5×106個群)、中用量群(5.0×106個群)、高用量群(10.0×106個群)および偽手術群に1:1:1:1で無作為化され、46例にSB623が投与され15例が対照群として偽手術を受けた。 主要評価項目である24週時点のFugl-Meyer Motor Scale(FMMS)のベースラインからの改善は、SB623移植後または偽手術実施後24週目に評価され、SB623投与群では偽手術を受けた対照群と比較して有意な改善が認められた(SB623投与群8.3点、対照群2.3点、p=0.04)。48週時点のFMMSのベースラインからの改善は、SB623投与群全体では偽手術を受けた対照群と比較して有意差が認められなかったものの、中用量群では、有意な改善が認められた(中用量群10.5点、対照群4.1点、p=0.02)。さらに、SB623投与群では48週時点のAction Research Arm Test(ARAT)、歩行速度、NeuroQOL上肢・下肢機能評価で運動機能および日常生活動作のベースラインからの改善がみられた。SB623の新たな安全性上の懸念は認められなかった。 SB623は、厚生労働省より再生医療等製品として「先駆け審査指定制度」の対象品目として指定され、日本では「アクーゴ脳内移植用注」として2024年7月に外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善治療薬の条件及び期限付き承認を得た。米国では、米国食品医薬品局(FDA)よりRMAT(Regenerative Medicine Advanced Therapy)指定を、欧州では欧州医薬品庁(EMA)より先端医療医薬品(ATMP)の指定を受けている。

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大腸がん術後合併症、電動自動吻合器の活用でリスク削減の可能性

 吻合部出血や縫合不全など、大腸がん術後の吻合に関する合併症は依然として深刻な問題となっている。大阪大学の三吉 範克氏・水元 理絵氏らは、単施設の後ろ向きコホート研究および同研究を含む2,700例以上を対象としたメタ解析を行い、吻合部合併症リスク削減のための電動自動吻合器(以下、電動吻合器)の有用性を検討した。Oncology Letters誌オンライン版2024年8月22日号掲載の報告より。 2018年1月~2022年12月までに大阪大学医学部附属病院で円形吻合器を用いた大腸がんの根治切除および吻合術を受けた患者を対象に、後ろ向きコホート研究が実施された。緊急手術、炎症性腸疾患を有する症例、およびほかのがんと同時手術の症例は除外され、主要評価項目は吻合部の合併症率であった。経験豊富な消化器外科医が電動吻合器(ECHELON CIRCULAR Powered Stapler)または手動吻合器(ETHICON Circular Stapler CDHまたはEEA Circular Stapler)を使用して手術を行い、術者によるバイアスは確認されなかった。すべてのデータは術後 30 日までの医療記録から収集された。 メタ解析では、同コホート研究のほか、大腸がん術後の円形吻合器の使用と吻合部の合併症が評価された研究(2023年10月20日にCochrane Central Register of Controlled TrialsおよびPubMedで検索)が対象とされた。 主な結果は以下のとおり。・後ろ向きコホート研究には414例(電動吻合器群:183例、手動吻合器群:231例)が含まれた。・縫合不全などの術後合併症は11件発生し、手動吻合器群:8件(3.5%)、自動吻合器群:3件(1.6%)であった。統計学的に有意な差は確認されなかったが、高齢患者に限定した場合、電動吻合器群と比較して手動吻合器群で術後合併症リスクの増加がみられた。・メタ解析には、今回の後ろ向きコホート研究のほか5件の論文が含まれ、全体で2,793例(手動吻合器群:2,030例、電動吻合器群:763例)が対象とされた。・メタ解析の結果、手動吻合器群では電動吻合器群と比較して吻合部の合併症リスクが有意に高いことが明らかとなった(オッズ比[ランダム効果モデル]:0.376、95%信頼区間:0.232〜0.610、p<0.0001)。 著者らは、研究間の患者背景の違いやすべて後ろ向きコホート研究であったことなどの本メタ解析の限界を挙げたうえで、電動吻合器が大腸がん手術患者の吻合部合併症リスク軽減に有用である可能性が示唆されたとしている。

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EGFR陽性NSCLC、amivantamab+lazertinibはOS・PFS2も改善か/WCLC2024

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療について、EGFRおよびMETを標的とする二重特異性抗体amivantamabと第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬lazertinibの併用療法は、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」において、オシメルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善したことが報告されている1)。米国・Henry Ford Cancer InstituteのShirish Gadgeel氏が、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)でMARIPOSA試験の最新の解析結果を発表した。本発表では、amivantamabとlazertinibの併用療法はPFS2(後治療開始後のPFS)、全生存期間(OS)を改善する傾向がみられた。また、効果は長期にわたって持続することが示唆された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性の進行・転移NSCLC患者・試験群1(ami+laz群):amivantamab(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の1サイクル目は週1回、2サイクル目以降は隔週)+lazertinib(240mg、1日1回) 429例・試験群2(laz群)lazertinib(240mg、1日1回) 216例・対照群(osi群):オシメルチニブ(80mg、1日1回) 429例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づくPFS(ami+laz群vs.osi群)[副次評価項目]OS、PFS2、頭蓋内PFSなど 今回の報告は事前に規定された中間解析ではないが、保健当局の要求により解析が実施され、ami+laz群とosi群における治療開始から中止までの期間(TTD)、後治療開始までの期間(TTST)、頭蓋内PFS、頭蓋内奏効率(ORR)、頭蓋内奏効期間(DOR)、PFS2、OSの比較結果が報告された。 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時点(2024年5月)における追跡期間中央値は31.1ヵ月であり、ami+laz群の44%(185/421例)、34%(145/428例)が割り付け治療を継続していた。・ami+laz群の155例、osi群の233例が病勢進行により治療を中止した。そのうち、それぞれ72%(111/155例)、74%(173/233例)が後治療を開始した。・TTD中央値は、ami+laz群26.3ヵ月、osi群22.6ヵ月であり、ami+laz群が長い傾向にあった(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.68~0.96、名目上のp=0.014)。・TTST中央値は、ami+laz群30.0ヵ月、osi群24.0ヵ月であり、ami+laz群が長い傾向にあった(HR:0.77、95%CI:0.65~0.93、名目上のp=0.005)。・頭蓋内PFS中央値は、ami+laz群24.9ヵ月、osi群22.2ヵ月であった(HR:0.82、95%CI:0.62~1.09、名目上のp=0.165)。・頭蓋内ORRは、ami+laz群77%、osi群77%であった。頭蓋内DOR中央値は、それぞれ未到達、24.4ヵ月であった。・PFS2中央値は、ami+laz群未到達、osi群32.4ヵ月であり、ami+laz群が良好な傾向にあった(HR:0.73、95%CI:0.59~0.91、名目上のp=0.004)。・OS中央値は、ami+laz群未到達、osi群37.3ヵ月であり、ami+laz群が良好な傾向にあった(HR:0.77、95%CI:0.61~0.96、名目上のp=0.019)。3年OS率は、それぞれ61%、53%であった。

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季節性インフル曝露後予防投与、ノイラミニダーゼ阻害薬以外の効果は?/Lancet

 重症化リスクの高い季節性インフルエンザウイルス曝露者に対し、ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルによる曝露後予防投与は、症候性季節性インフルエンザのリスクを低下させる可能性が示された。また、これらの抗ウイルス薬は、ヒトへの感染で重症化を引き起こす新型インフルエンザAウイルス曝露者に対しても、予防投与により人獣共通インフルエンザの発症リスクを軽減する可能性が示されたという。中国・重慶医科大学附属第二医院のYunli Zhao氏らがシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析の結果を報告した。抗ウイルス薬のノイラミニダーゼ阻害薬による曝露後予防投与は、インフルエンザの発症および症候性インフルエンザのリスクを低減することが可能だが、その他のクラスの抗ウイルス薬の有効性は不明のままであった。Lancet誌2024年8月24日号掲載の報告。6種の抗ウイルス薬についてシステマティックレビューとネットワークメタ解析 研究グループは、WHOインフルエンザガイドラインの更新サポートのために、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析により、抗ウイルス薬のインフルエンザ曝露後予防について評価した。 MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature、Global Health、Epistemonikos、ClinicalTrials.govを用いて、インフルエンザ予防における抗ウイルス薬の有効性と安全性を他の抗ウイルス薬、プラセボまたは標準治療と比較した、2023年9月20日までに公開された無作為化比較試験を系統的に検索。2人1組のレビュワーが独立して試験をレビューし、データを抽出、バイアスリスクを評価した。 ネットワークメタ解析は頻度論的(frequentist)ランダム効果モデルを用いて行い、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチを用いてエビデンスの確実性を評価した。 重視したアウトカムは、症候性または無症候性の感染、入院、全死因死亡、抗ウイルス薬に関連した有害事象、重篤な有害事象であった。 検索により公表論文1万1,845本を特定し、6種の抗ウイルス薬(ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビル、アマンタジン、リマンタジン)に関する33試験・被験者1万9,096例(平均年齢6.75~81.15歳)をシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析に組み入れた。ほとんどの試験でバイアスリスクは低いと評価された。ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは軽減効果がある可能性 ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは、重症化リスクの高い被験者において、季節性インフルエンザ曝露後、速やかに投与することで(例:48時間以内)症候性インフルエンザの発症を大幅に軽減する可能性が示唆された(ザナミビル[リスク比:0.35、95%信頼区間[CI]:0.25~0.50]、オセルタミビル[0.40、0.26~0.62]、ラニナミビル[0.43、0.30~0.63]、バロキサビル[0.43、0.23~0.79]、確実性は中程度)。これらの抗ウイルス薬は、重症化リスクの低い人では、季節性インフルエンザに曝露後、速やかに投与しても症候性インフルエンザの発症を大幅に軽減しない可能性が示唆された(確実性は中程度)。 また、ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは、感染したヒトの重症化と関連する新型インフルエンザAウイルス曝露後に、速やかに投与したときは、人獣共通インフルエンザの発症を大幅に軽減する可能性が示唆された(確実性は低度)。 オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビル、アマンタジンは、すべてのインフルエンザのリスクを低下させる可能性が示唆された(症候性および無症候性の感染:確実性は中程度)。 ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは、無症候性インフルエンザウイルスの感染または全死因死亡の予防に、ほとんどまたはまったく効果がない可能性が示唆された(確実性は高度または中程度)。 オセルタミビルは、入院への効果は、ほとんどまたはまったくない可能性が示唆された(確実性は中程度)。 6種の抗ウイルス薬はすべて、エビデンスの確実性は異なるが、薬剤関連の有害事象または重篤な有害事象の発現頻度を有意に増加させないことが示唆された。

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急性期脳梗塞、抗凝固薬または抗血小板薬の補助療法は有益か/NEJM

 発症後3時間以内に静脈内血栓溶解療法を受けた急性期脳梗塞患者において、アルガトロバン(抗凝固薬)またはeptifibatide(抗血小板薬)の静脈内投与による補助療法は、脳梗塞後の障害を減少させず、死亡の増加と関連することが、米国・セントルイス・ワシントン大学のOpeolu Adeoye氏らが行った第III相無作為化試験の結果で示された。静脈内血栓溶解療法は急性期脳梗塞の標準治療であるが、アルガトロバンまたはeptifibatideと併用した場合の有効性と安全性は不明であった。NEJM誌2024年9月5日号掲載の報告。アルガトロバン、eptifibatideまたはプラセボを投与し有効性と安全性を評価 米国57施設で3群アダプティブ単盲検無作為化試験を実施した。発症後3時間以内に静脈内血栓溶解療法を受けた急性期脳梗塞患者を、血栓溶解療法開始後75分以内に、アルガトロバンを静脈内投与する群(アルガトロバン群)、eptifibatideを静脈内投与する群(eptifibatide群)またはプラセボを静脈内投与する群(プラセボ群)に割り付けた。 主要有効性アウトカムは、90日時点の効用値で重み付けした修正Rankinスケール(UW-mRS)スコア(範囲:0~10、高スコアほど良好なアウトカムを示す)で、中央判定により評価した。 主要安全性アウトカムは、無作為化後36時間以内の症候性頭蓋内出血とした。アウトカム改善は認められず、死亡率が高い 合計514例が無作為化された(アルガトロバン群59例、eptifibatide群227例、プラセボ群228例)。すべての患者が静脈内血栓溶解療法を受け(アルテプラーゼ投与70%、tenecteplase投与30%)、225例(44%)が血管内血栓除去術を受けた。 90日時点のUW-mRSスコア(平均値±SD)は、アルガトロバン群5.2±3.7、eptifibatide群6.3±3.2、プラセボ群6.8±3.0であった。 アルガトロバンがプラセボよりも良好である事後確率は0.002(UW-mRSスコアの事後平均群間差:-1.51±0.51)であり、eptifibatideがプラセボよりも良好である事後確率は0.041(-0.50±0.29)であった。 症候性頭蓋内出血の発生率は、3群で同程度であった(アルガトロバン群4%、eptifibatide群3%、プラセボ群2%)。90日時点の死亡率は、プラセボ群(8%)と比較しアルガトロバン群(24%)およびeptifibatide群(12%)で高率であった。

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医師はなぜ自ら死ぬのか(解説:岡村毅氏)

 医師の自殺率は高いとされてきた。本論文は1960年から2024年に出版されたすべての論文を対象にしたシステマティックレビューとメタ解析であり、現時点での包括的な情報と言っていいだろう。ちなみに英語とドイツ語以外は、翻訳ソフトであるDeepLを用いて評価しているのが現代的だ。男性医師では時代と共に自殺率は低下してきていることが示されたが、女性医師においてはむしろ増加している。 いくつかの視点で論じてみよう。 自殺の関連要因はさまざまであるが、この論文1)では以下のように分けている。第一に精神疾患(うつ病や統合失調症)、第二に身体疾患、第三に当たり前だが自殺関連行動(過去の自殺企図歴など)、第四に人口社会学的要因(借金、学歴、信仰、仕事のストレスなど)、そしてその他として犯罪歴、幼少期の逆境、火器が身近にあるなどを挙げている。医師といっても多様だとは思うが、身体疾患、貧困、借金、火器などが一般人口より多いとは思えないので、やはり仕事のストレスやうつ病が関与するのかもしれない。 自殺は、近年は「絶望死」の1つとして捉えられることもある。「絶望死」とは自殺、薬物の過剰摂取、そしてアルコール性肝疾患を指す。米国の労働者階級の白人においてこれらの絶望死が増えていることが指摘され2,3)、トランプ現象との関連も語られている。これを医師の自殺と結び付けるのは飛躍かもしれないが、激しい競争と格差が「絶望死」とつながっているとしたら、医師の世界の激しい競争が関係しているのかもしれない。 仕事のストレスといえば、患者や家族からの過大な要求などは増えているとされている(いわゆるモンスターペイシェント)。一方で、たとえば私が某下町の救命救急センターで研修を受けていた2000年代初頭は、日・当・日直で36時間稼働して12時間休むのを3回(つまり6日稼働し、その間に3晩休める)して、初めて休日になるというありさまだった。あらゆる仕事は尊く大変だが、医師は命が関わる局面が多く、休みたいなどと言うと人間性を疑われることが多いのはつらい。これを米国の友人に言うとドン引きされるので、日本が異常なのだろう。とはいえ、このような身体的なストレスは確かに減ってきた。 この論文の対象外であるが、新型コロナウイルスパンデミックのような社会現象も関連するだろう。新型コロナの患者に接している医療従事者の子供が保育園で差別されるといった事象や、国民の生命を守るためにマスコミに姿を曝した専門家に対する誹謗中傷4)などである。 ではなぜ女性で増えているのか。本論文ではまったく明らかになっていないが、これまでの研究を総合して、問題の在りかを明らかにし、これからの研究の道標にするというのがこの研究の意義である。

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第33回 熱中症、初動が大事!【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)重症度を的確に見積もろう!2)深部体温を測定しよう!3)Active coolingを実践しよう!【症例】70歳代・男性畑で倒れているところを発見され救急要請。救急隊到着時、以下のようなバイタルサインであり、熱中症が疑われ当院へ搬送された。●来院時のバイタルサイン意識30/JCS血圧126/54mmHg脈拍128回/分呼吸24回/分SpO294%(RA)体温40.8℃既往歴不明内服薬不明熱中症の現状毎日のようにニュースで、気温の上昇に伴い、熱中症に注意するように報じられています。実際、昨年と比較しても熱中症の件数は増加し、8月は毎週約7,000~9,000人もの方が全国で救急搬送されているのです1)。7月と比較するとピークは過ぎ、減少傾向にあるもののまだまだ注意が必要です。スポーツ中の学生など成人症例も多いですが、重症度が高く致死的となり得る症例の多くは、本症例のような高齢者の熱中症です。屋外だけでなく自宅内など屋内でも発症し、とくに意識障害や40℃を超える高体温の場合には早急な対応が必要となります。2023年の全国の熱中症搬送患者は9万人以上、死亡者数も1,000人を超えています。まだまだ暑い日は続きますので気を抜かず、熱中症の初期対応の基本的事項を整理しておきましょう。熱中症の重症度熱中症のガイドラインが2015年以来9年ぶりにアップデートされました2)。変更点はいくつか存在しますが、とくに以下の点は重要であり頭に入れておきましょう。IV度の導入2015年に発表された『熱中症診療ガイドライン2015』では、熱中症の重症度分類は3段階に分かれていました(Cf. 第4回 覚えておきたい熱中症の基本事項)。しかし、III度には、軽度の意識障害(JCS2、3など)から多臓器不全を来している症例まで含まれるような幅広い定義となっていたが故に、介入を迅速に行う必要がある重篤な症例において、適切な介入がなされていなかった可能性が示唆されました。そこで、新たにIV度が導入され、早急に治療介入が必要な症例が明確にされました。IV度は「深部体温40.0℃以上かつGCS≦8」と定義され、III度(2024)はIV度に該当しないIII度(2015)となりました(表)。表 熱中症の重症度分類(IV度、qIV度の導入)quick IV度(qIV度)IV度か否かを判断するためには、深部体温の測定が必要です。測定は非常に重要であり、可能であれば行うべきですが、測定できない場面もあるでしょう。その際には、表面体温40℃以上、または皮膚に明らかな熱感があるかを意識しましょう。そのような患者が重度の意識障害(GCS≦8もしくはJCS≧100)を伴っている場合には、速やかな対応が求められます(表)。敗血症におけるSOFA score、quick SOFAのようなイメージですね。Active coolingとは重症度の高い熱中症においては、“active cooling”の早期開始が必要です。Active coolingとは、何らかの方法で、熱中症患者の身体を冷却することを指しますが、冷蔵庫に保管していた輸液製剤を投与することや、エアコンの活用、日陰の涼しい部屋で休憩するなどはpassive coolingに該当し、active coolingではありませんので、これらを実施して安心してはいけません。効果の高い方法として、“cold-water immersion”が挙げられ、これは冷水などを利用し深部体温を下げる方法です。冷たいプールにつかるようなイメージです。深部体温が40℃を超えるような状態が続くと、予後は悪くなりますので、39℃前後までは速やかに下げることが大切です3,4)。さいごに毎年のように熱中症に注意するよう報道されるものの、暑い環境を避けてばかりはお勧めできません。熱中症が今年だけの問題であればよいですが、間違いなく来年以降もますます熱中症は問題となるでしょう。暑熱順化(熱ストレスに繰り返し曝露されることで熱耐性を向上させる生理的適応をもたらす過程)を意識し、耐え得る身体作りもしていかないといけません。1)熱中症情報. 救急搬送状況. 令和6年の情報(2024年8月閲覧)2)日本救急医学会. 熱中症診療ガイドライン20243)Ito C, et al. Acute Med Surg. 2021;8:e635.4)Tishukaj F, et al. J Emerg Med. 2024 May 3.[Epub ahead of print]

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わからないことがあったら?【もったいない患者対応】第13回

わからないことがあったら?登場人物<今回の症例>40代男性夕食後から両下肢にかゆみを伴う膨疹が出現し、救急外来を受診<診察により、アレルギーが疑われました>これはアレルギーの症状かもしれませんね。何かのアレルギーはお持ちですか?いえ、とくにないんですよ。夕食に何か原因があるんでしょうか。原因がはっきりしないこともよくありますからね。では、抗ヒスタミン薬のアレグラという薬を出しますので、これで様子を見てみましょう。ありがとうございます。…あ、そういえば、今朝風邪をひいて近くのクリニックに行ったらフェキソフェナジンという薬を処方されたんですけど、一緒に飲んでも大丈夫ですよね?えーっと…大丈夫ですよ!(フェキソフェナジンってなんだっけな? とりあえず知っているふりして後で調べよう)そうなんですね。安心しました。~患者が診察室を出て行った後で~(フェキソフェナジンってアレグラと同じ薬じゃないか!説明しないと…!)○○さん、すみません、フェキソフェナジンはアレグラと同じ薬でした。一緒に飲むと用量が多くなりすぎてしまいます。え!? さっき先生「大丈夫」って言いましたよね? どういうことですか!?【POINT】患者さんの口から聞いたことのない薬の名前が登場し、思わず面食らってしまった唐廻先生。患者さんからの信頼を失いたくない、という思いから、思わず知ったかぶりをしてしまいました。しかし、後から調べてミスを犯していたことに気づき、慌てて診察室を出て患者さんに説明しに行きます。その説明に、怪訝そうにする患者さん。かえって信頼を損ねてしまいました。では、どうすればよかったのでしょうか?わからないことがあるのは当たり前近年、医療は多様化しています。薬の種類は増え、同じ疾患であっても、その治療法は多岐にわたります。経験豊富なベテラン医師でも、自分の専門分野以外の知識まですべて暗記できている人はいないでしょう。たとえ専門分野であっても、患者さんに正確な情報を提供するために、自分の記憶に頼らず成書やガイドラインなどを参照したほうがよいケースもあります。専門家に求められるのは、すべての知識を頭に入れておくことではありません。求められるのは、必要な知識がどこに書いてあるかを知っていること必要な知識を適切なタイミングでスムーズに取り出せるよう準備していることです。患者さんからの質問に対し、知識不足で答えられないことは必ずしも恥ずべきことではありません。しかし、確かに患者さんのなかには「有能な医師ならなんでも知っていて当然だ」と思っている人もいるでしょう。唐廻先生も、薬の名前を知らないことを患者さんに悟られたくないという思いで、知ったかぶりをしてしまいました。では、わからないことがあるときは、どうすればいいでしょうか?その場で調べても信用は落ちないわからないときは、素直にわからないことを認める。これが大前提です。唐廻先生のように、知ったかぶりをしたせいで後から間違いがみつかったとなると、余計に状況は悪化するからです。しかし、単に知識不足を告白するだけでは、患者さんから「頼りにならない」と思われる危険性もあります。そこで、「すべての知識を暗記しているわけではないが、すぐに答えを提供できるので患者さんに不利益はない」ということを知らせる必要があります。まず今回のようなケースでは、「私も聞いたことがないので少し調べますね」と言って手元の成書を参照し、あるいは患者さんにその成書を見せ、「ここに○○と書いてありますね。ということは△△です」と伝えるのがよいでしょう。スマートフォンやタブレットなどで検索したいなら、「少し調べてみますね」と言って患者さんに画面を見せ、「ここに、こう書いてありますね」と一緒に確認するのも1つの手です。ただし、高齢者のなかにはスマホでの情報検索に対して良いイメージをもっていない人もいます。その場合は成書など紙の本をきちんと使用している姿を見せるほうが無難でしょう。誠実に対応することが1番大切とはいえ、患者さんに知識不足を知られてしまうことは抵抗がある、と感じる人もいると思います。そんなときは、「最近は新しい薬があまりにも増えているので、私たちみんな結構苦労してるんですよ」と顔をしかめ、あえて患者さんに本音を吐露してもいいでしょう。それが事実なのですから、知ったかぶりをするよりよほど素直で良い印象を与えられるはずです。薬以外でも、聞いたことのない治療法などの医療情報があれば、このようにその場で誠実に対応すればいいでしょう。参照する可能性のある成書やガイドラインなどを外来診察室に持ち込んでおき、スムーズに情報提供できるよう準備しておくことも大切です。これでワンランクアップ!では、アレルギーに効くアレグラという薬を出しておきますね。ありがとうございます。…あ、そういえば、今朝風邪をひいて近くのクリニックに行ったらフェキソフェナジンという薬を処方されたんですけど、一緒に飲んでも大丈夫ですよね?フェキソフェナジン…ですか。それはどんな薬でしたかね。最近ジェネリックを飲まれる患者さんも多くて薬の名前が覚えきれなくて…※1。すみません、調べるので少しお待ちくださいね※2。(「薬の事典」を見せて)※3これを見ると、フェキソフェナジンはアレグラと同じ薬ですね。重複して飲むわけにはいかないので、別の方法を考えましょう。※1:知らないことは素直に認めてしまおう。※2:わからない、記憶が曖昧などの場合は目の前で調べる。※3:一緒に確認すると納得してもらいやすい。そうなんですね。相談してよかったです。

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化膿性関節炎と関節液の細胞数【1分間で学べる感染症】第11回

画像を拡大するTake home message化膿性関節炎を疑った際の関節液の細胞数について理解しよう。今回は化膿性関節炎と関節液の細胞数との関連について学んでいきましょう。関節痛を来した患者さんを診る場合に、問診や身体所見を一通り行った後に関節穿刺を実施することが多いと思います。それでは、細胞数(白血球数)がどれくらい上昇していれば、化膿性関節炎をより疑うことができるのでしょうか。細胞数が多ければ多いほどより強く化膿性関節炎を示唆する、ということは皆さんの想像のとおりです。しかし、実際に化膿性関節炎の関節穿刺液の細胞数の診断のための明確な定義はなく、報告によってばらつきがあるのが現状です。よく用いられるデータとしては、JAMA誌に掲載された2007年の研究が有名です(図)。具体的には、関節液の白血球数が2万5,000~5万/μLで陽性尤度比は2.9、5万~10万/μLで陽性尤度比は7.7、10万/μL以上で陽性尤度比は28まで増加する、と報告されています。一方で、中には細胞数が少ないにもかかわらず培養が陽性となる場合、また逆に細胞数が多いにもかかわらず非感染性の原因である場合もあるため、ほかの所見と併せて総合的な判断が必要です。しかし、化膿性関節炎と関節液の細胞数の大まかな相関関係を理解しておくことが、診断には有用です。皆さんも化膿性関節炎を疑った際の関節液の細胞数の増加と陽性尤度比を念頭に置き、その後の診断と治療を進められるようにしましょう。1)Margaretten ME, et al. JAMA. 2007;297:1478-1488.

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第229回 武見厚労相最後の大仕事か?「医師偏在是正に向けた総合的な対策」の議論本格化

付け焼き刃的な視察をして、できるかどうかわからない“約束手形”を切る総裁選、代表戦候補者たちこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。メディアは、自民党総裁選、立憲民主党代表戦のニュースでもちきりです。それにしても、裁選選、代表戦が近づくと候補者の政治家たちが農業や子育て、あるいは医療の現場などにいそいそと出かけていって(なぜか葛飾柴又に行った人もいました)、付け焼き刃的な視察をして、できるかどうかわからない“約束手形”をぽんぽん切るのはどうなんでしょう。日頃からいかに現場を見ていないかがわかってしまいます。また、多くの候補者たちが相変わらず「地方創生」を掲げていますが、本当にできると思っているのでしょうか?立候補後に誰かに御膳立てをしてもらって視察するのではなく、一人で東北や山陰の地方都市にでも何日か旅行してから「地方創生」を語ってもらいたいと思います。また、人口減少が進み、経済も縮小均衡に向かう中、誰も国会議員の定員削減を言い出さないのも身勝手過ぎます。彼らは日本の将来を心配しているのではなく、自分の議員としての将来(と自分の党の議席数)だけを心配しているように感じます。ということで、今回は自民党総裁選後に総選挙となり内閣も変わるだろうということで、おそらくこれが最後の大仕事になるとみられる、武見 敬三厚生労働大臣の医師偏在対策について書いてみたいと思います。厚労省の「医師偏在対策推進本部」が初会合特定の地域や美容外科など特定診療科への医師の偏在是正に向けて、厚生労働省は9月5日、「医師偏在対策推進本部」の初会合を開きました。本部長を務める武見厚労相は冒頭に「急激な人口構造の変化や医師の高齢化が進むことを考えると、医師の偏在対策は早急に取り組まなければならない課題だ。厚労省の関連部局が一丸となり、具体的な検討を加速させていく」と述べ、医師養成課程での取り組み、外来医師多数区域における規制的手法など複数の手法、管理者要件の拡大、経済的インセンティブなどについて検討し、総合的な対策パッケージを2024年末までに策定する考えを改めて示しました。「医師の偏在を規制によってきちんと管理していくことを我が国もやらなければならない」と語っていた武見厚労相医師の偏在問題を巡っては、武見厚労相になってからその検討が加速・本格化したことは事実です。その議論の実質的な幕開けは4月7日にNHKで放送された「日曜討論」でした。「医療」がテーマのこの会で武見厚労相は、医師の偏在対策について「今まで、入学試験に地域枠を設けるなど色んな試行錯誤をしてきたがまだまだ偏在を解消できない。ここまで来ると、地域において医師の数の割り当てを、本気で考えなければならない時代となった。したがって、医師の偏在を規制によってきちんと管理していくことを我が国もやらなければならない段階に入ってきた」と述べました。厚労大臣から発せられた「規制」という言葉にメディアも反応、この発言は朝日新聞デジタルや日本経済新聞でも報道されました(「第208回 『地域ごとの医師の数の割り当てを、本気で考えなければならない時代に入ってきた』と武見厚労大臣、地域偏在、診療科偏在の解消に向け抜本策の検討スタート」参照)。厚労省内にも波紋を広げた武見氏のこの発言を反映する形で、政府が6月に閣議決定した「骨太方針2024」では、総合的な対策パッケージを24年末までに策定する方針が打ち出されました(「第218回 2040年に向けさまざまな改革が本格始動、『骨太の方針2024』から見えてくる医療提供体制の近未来像」参照)。厚労省「近未来健康活躍社会戦略」で医師偏在対策の骨子案示されるそして8月30日に厚労省が公表した「近未来健康活躍社会戦略」では、その対策パッケージの骨子案が示されました1)。「近未来健康活躍社会戦略」は、「少子高齢化・人口減少、デジタル化、グローバル化という大変革時代の渦中にあり、国民皆保険の持続可能性を確保しつつ、未来に向けて、イノベーションと社会のダイナミズムを医療・介護分野に取り込み、人生100年時代を健康で有意義な生活を送りながら活躍できる社会(健康活躍社会)の実現が待ったなしの課題」との観点から、厚労省が今後推進していく近未来の政策方針をまとめたもので、「医療・介護DXの更なる推進」、「後発医薬品の安定供給等を実現する産業構造改革」、「イノベーションを健康づくり・医療・介護に活かす環境整備」など9つの政策方針(戦略)の1つに、「医師偏在是正に向けた総合的な対策」が盛り込まれました。そこで示された総合的なパッケージの骨子案は下図に示すように、(1)医師確保計画の深化、(2)医師の確保・育成、(3)実効的な医師配置――の3本柱となっており、大きく規制的手法(医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の大幅な拡大、外来医師多数区域の都道府県知事の権限強化、保険医制度における取扱いなど)と、経済的インセンティブ(地域医療介護総合確保基金等による重点的な支援区域の医療機関や処遇改善など)の両輪で進めていく考えが示されました。画像を拡大する規制的手法については、開業医が多い地域での新規開業を抑えるための方策が検討されます。具体的には都道府県知事が開業予定者に対し地域で不足している医療(在宅医療など)の提供を法的に強制できるようにする、美容医療分野への若手医師流出を防ぐために保険医療機関指定の要件に一定期間の保険医としての実績を求める、などの規制が案として挙がっています。社会保障審議会医療部会においても「骨子案」についての議論「医師偏在対策推進本部」において厚労省が「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージの骨子案」の骨子案と「主な論点」を提示したのに続いて、同じ9月5日には社会保障審議会医療部会においても「骨子案」についての議論が行われました。9月7日付のエムスリーの報道によれば、「『若手医師の配置で何とかしようというのはもはや限界』との指摘が出て、40歳以上など中堅医師を医師少数県に派遣するなどの施策を求める声が相次いだ」とのことです。また、「主な論点」に示された、地域医療支援病院の管理者の資格を得るのに医師少数区域等で6ヵ月以上勤務経験を求めるという現行ルールの対象病院を広げる案については、「院長のなり手を探すのに非常に苦労している。逆のインセンティブになりかねない」といった声も挙がったとのことです。どの国会議員よりも医療現場を見てきたはずの武見厚労相に期待議論は始まったばかりですが、なかなか前途は多難のようです。最終的にどんな総合的な対策パッケージができあがるかは不透明ですが、“言い出しっぺ”の武見厚労相に残された時間はあとわずかです。岸田首相に半ば論功行賞的に厚労相に据えてもらった(「第179回 驚きの新閣僚人事、武見厚労相は日医には大きな誤算?“ケンカ太郎”の息子が日医とケンカをする日」参照)と言われる武見厚労相の再任はおそらくないからです。3期25年間も日本医師会長を務めた父親、武見 太郎氏は、政府や厚生省の官僚に対する強い対決姿勢から“ケンカ太郎”とも呼ばれました。就任会見で、「医療関係団体の代弁者ではない」と言い切った武見厚労相は、それこそ付け焼き刃ではなく、どの国会議員よりも医療現場を見てきたはずです。最後の大仕事として、10年、20年先にも通用する医師偏在対策の道筋を付けて、大臣職を全うしていただきたいと思います。参考1)近未来健康活躍社会戦略/厚生労働省

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漫然使用のツロブテロールテープの処方意図を探って中止を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第61回

 今回は、長期使用されていたLABA貼付薬について疑問を抱き、スタッフ間の情報共有および医療連携を通じて中止を提案した事例を紹介します。患者さんが使用している薬剤の服用理由や開始の経緯が不明瞭な場合、改めて確認することが重要です。そうすることで、思わぬ漫然使用が明らかになることがあります。患者情報80歳、男性(施設入居)基礎疾患アルツハイマー型認知症、高血圧、前立腺肥大症、糖尿病介護度要介護2服薬管理施設職員が管理処方内容1.アムロジピン錠2.5mg 1錠 分1 朝食後2.ジスチグミン錠0.5mg 1錠 分1 朝食後3.タムスロシン錠0.2mg 1錠 分1 朝食後4.ダパグリフロジン錠10mg 1錠 分1 朝食後5.テネリグリプチン錠20mg 1錠 分1 朝食後6.メマンチン錠20mg 1錠 分1 夕食後7.レンボレキサント錠5mg 1錠 分1 就寝前8.ツロブテロールテープ2mg 1枚 14時貼付本症例のポイントこの患者さんは、約3ヵ月前に施設に入居しました。薬剤の自己管理能力が乏しく、投薬や管理は施設職員が行っていました。嚥下機能に問題はなく、食事量もムラがなかったため、経口血糖降下薬のシックデイに関する懸念もない状況でした。2週間に1回の施設訪問の際に服用状況のモニタリングを実施したところ、ツロブテロールテープの使用に疑問を感じました。ツロブテロールテープは、気管支喘息や急性・慢性気管支炎、肺気腫を適応疾患1)としていますが、この患者さんにはこれらの既往がなく、夜間の咳や呼吸困難感などの症状も認められませんでした。そこで、初回介入した担当薬剤師の記録を確認したところ、施設入居前にCOVID-19関連肺炎で入院していたことが判明しました。COVID-19関連肺炎の急性期症状緩和のために処方されたツロブテロールテープが、退院後も漫然と継続されていた可能性があります。現状の呼吸機能や自覚症状から治療負担を検討し、テープの中止を提案することにしました。医師への相談と経過医師の訪問診療に同席し、ツロブテロールテープが3ヵ月間使用されていることを伝え、気管支疾患の既往や症状緩和の目的があるかどうかを確認しました。医師からも該当疾患がないことを聴取し、やはりCOVID-19関連肺炎の急性期治療の一環として使用されていたと推察されました。長期的なLABA貼付薬の使用は適切ではないという医師の判断により、当日の昼からテープが中止となりました。介護士には意図を説明するとともに、念のため昼夜の症状モニタリングを依頼しました。その後、夜間の呼吸困難感や咳症状は現れずに1週間が経過しました。長期的な観察でも気道症状の変化はなく、ツロブテロールテープの完全中止に成功しました。1)ホクナリンテープ添付文書

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アスピリンによる大腸がん予防効果、肥満・喫煙者に恩恵大

 アスピリンに大腸がんの予防効果があることが過去に報告されているが、新たなデータによると、アスピリンは不健康な生活習慣を持つ人、とくに肥満や喫煙者で予防効果が高いことが示唆されたという。米国・マサチューセッツ総合病院のDaniel R. Sikavi氏らによる本研究は、JAMA Oncology誌オンライン版2024年8月1日号に掲載された。 研究者らは、看護師健康調査(1980~2018年)に参加した女性6万3,957例と、医療専門家追跡調査(1986~2018年)に参加した男性4万3,698例の長期追跡データを用いた前向きコホート研究を実施した。定期的なアスピリンの使用(標準的な325mg錠を2錠/週以上)を分析、BMI、アルコール摂取量、身体活動、食事、喫煙に基づいて参加者の生活習慣スコア(0~5)を計算し、スコアが高いほど健康的なライフスタイルと定義した。主要評価項目は10年間の大腸がん累積発生率、アスピリン使用に関連した絶対リスク減少(ARR)、治療必要数などだった。データ解析は2021年10月1日~2023年5月22日に行った。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の参加者の平均年齢は49.4(SD 9.0)歳であった。303万8,215人年の追跡期間中に2,544例の大腸がん発症があった。・10年間の大腸がん累積発症率は、アスピリンを定期的に使用している人は1.98%(95%信頼区間[CI]:1.44~2.51)であったのに対し、非使用者は2.95%(95%CI:2.31~3.58)であり、ARRは0.97%だった。・アスピリン使用に関連した10年間のARRは、最も不健康な生活習慣スコアの人で最大(スコア0~1のARR:1.28%)となり、生活習慣スコアが健康的になるにつれ減少した(スコア4~5のARR:0.11%)(p<0.001)。・10年間のアスピリンに関連した治療必要数は、生活習慣スコア0〜1では78人、スコア2では164人、スコア3では154人、スコア4〜5では909人であった。・健康的な生活習慣スコアの要素の中で、BMIが高いことと喫煙は、アスピリンの使用による大腸がんリスクの大幅な低下と相関していた。 研究者らは「これらの結果は、アスピリンによるがん予防にとってより好ましいプロファイルを持つ可能性のある個人を特定するために、ライフスタイルのリスク要因を使用することを支持するものだ」としている。

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医師の燃え尽き症候群と関連する覚醒度~日本全国調査

 日本の医師の約40%は年間960時間以上の残業を報告しており、10%は1,860時間を超えている。2024年、医師の健康を守るため、年間の残業時間に上限が設定された。順天堂大学の和田 裕雄氏らは、長時間労働医師の働き方改革に関する全国横断調査において、自己報告による睡眠時間と、メンタルヘルスおよび客観的覚醒度との関連を調査した。Journal of Sleep Research誌オンライン版2024年8月12日号の報告。 調査に協力した医師は、毎日の睡眠時間、燃え尽き症候群(Abbreviated Maslach Burnout Inventory:マスラック・バーンアウト尺度簡易版)、うつ病(CES-D:うつ病自己評価尺度)、交通事故に関して自己報告を行った。覚醒度は、精神運動覚醒度検査短縮版を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・調査の依頼をした2万382人のうち1,226人の医師が、調査および精神運動覚醒度検査を完了した。・毎日の睡眠時間は、週の労働時間と逆相関が認められた(β=-5.4、95%信頼区間[CI]:-6.8~-4.0、p<0.0001)。・1日当たりの睡眠時間6時間未満および8時間以上は、精神運動覚醒度検査短縮版の反応遅延と関連が認められた(調整済みp<0.05)。・1週当たりの労働時間が10時間増加するごとに、燃え尽き症候群の重症度(0.40ポイント、95%CI:0.08~0.72)および交通事故の報告率(1.7%、95%CI:0.1~3.3)が増加した。・覚醒度の低下(精神運動覚醒度検査短縮版での間違いの増加)は、うつ病(β=0.23ポイント、95%CI:0.14~0.31、p<0.0001)および燃え尽き症候群(β=0.25ポイント、95%CI:0.13~0.36、p<0.0001)の症状悪化と関連が認められた。 結果について著者らは、「覚醒状態を維持するためには十分な睡眠が重要であることを強調し、日本の医師のメンタルヘルスを守るため勤務時間を制限することを支持するものである」とし、「精神運動覚醒度検査短縮版の成績は、メンタルヘルスの有用な指標となる可能性がある」とまとめている。

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生殖補助医療で生まれた子供のがんリスクは?

 体外受精をはじめとする生殖補助医療によって生まれる子供の数は年々増え続け、日本では2021年に約7万人、出生児全体の約11.6人に1人となっている。一方で、小児がんは小児における主要な死因の1つであり、生殖補助医療に使用される治療法はエピジェネティックな障害や関連する先天奇形の可能性があるため、小児がんリスク因子の可能性が指摘されている。フランス医薬品・保健製品安全庁のPaula Rios氏らは生殖補助医療後に出生した小児と自然妊娠で出生した小児を比較し、全がんおよびがん種別にリスクを評価した。JAMA Network Open誌2024年5月2日号掲載の報告。 本コホート研究は、フランス全国母子登録(EPI-MERES)のデータを使い、2010~21年にフランスで出生した全出生児を対象とした(2022年6月30日まで追跡調査)。データ解析は2021年12月1日~2023年6月30日に行われた。生殖補助医療の新鮮胚移植(ET)、凍結融解胚移植(FET)、人工授精(AI)を対象とした。 主な結果は以下のとおり。・この研究には852万6,303例の小児が含まれ、平均年齢6.4(SD 3.4)歳、男児51.2%、96.4%が単胎、12.1%が出生時に在胎週数に対して小さめの体重、3.1%が先天性異常を持っていた。・このうち生殖補助医療後に出生した小児は26万236例(3.1%)で、内訳はETが13万3,965例(1.6%)、FETが6万6,165例(0.8%)、AIが6万106例(0.7%)であった。・中央値6.7(四分位範囲:3.7~9.6)年の追跡期間中に計9,256例のがん患者が確認され、うちETが165例、FETが57例、AIが70例だった。・自然妊娠で出生した小児と比べた全がんリスクは、ET(ハザード比[HR]:1.12、95%信頼区間[CI]:0.96~1.31)、FET(HR:1.02、95%CI:0.78~1.32)、AI(HR:1.09、95%CI:0.86~1.38)のいずれも有意差は認められなかった。・一方で、急性リンパ性白血病のリスクは、自然妊娠で出生した小児と比較して、FET後に出生した小児で高かった(20例、HR:1.61、95%CI:1.04~2.50、リスク差[RD]:100万人年当たり23.2)。・さらに、2010~15年に出生した小児では、自然妊娠で出生した小児と比較して、ET後に出生した小児で白血病のリスクが高かった(45例、HR:1.42、95%CI:1.06~1.92、RD:100万人年当たり19.7)。 研究者らは「このコホート研究は、ETまたはFET後に出生した小児は、自然妊娠した小児と比較して白血病のリスクが高いことを示唆している。限られた症例数ではあるが、生殖補助医療の利用が増加し続けていることから、このリスクを今後も監視していく必要がある」としている。

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大手術の周術期管理、ACE阻害薬やARBは継続していい?/ESC2024

 周術期管理における薬剤の継続・中止戦略は不明なことが多く、レニン-アンジオテンシン系阻害薬(RASI:ACE阻害薬またはARB)もその1つである。RASI継続が術中の血圧低下、術後の心血管イベントや急性腎障害につながる可能性もあるが、Stop-or-Not Trialのメンバーの1人である米国・カルフォルニア大学サンフランシスコ校のMatthieu Legrand氏は、心臓以外の大手術を受けた患者において、術前のRASI継続が中止と比較して術後合併症の発生率の高さに関連しないことを示唆した。この報告は8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)のホットラインセッションで報告され、同時にJAMA誌オンライン版2024年8月30日号に掲載された。 研究者らは、心臓以外の大手術前でのRASIの継続あるいは中止が、術後28日時点での合併症の減少につながるかどうかを評価するため、フランスの病院40施設において、2018年1月~2023年4月にRASIによる治療を3ヵ月以上受け、心臓以外の大手術を受ける予定の患者を対象にランダム化比較試験を実施した。 対象患者は、手術当日までRASIの使用を継続する群(n=1,107)と手術48時間前にRASIの使用を中止する群(最終服用は手術3日前、n=1,115)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は術後28日以内の全死亡と主な術後合併症の複合。副次評価項目は術中の血圧低下、急性腎障害、術後臓器不全、術後28日間の入院期間とICU滞在期間。 主な結果は以下のとおり。・対象患者2,222例は平均年齢±SDが67±10歳、男性が65%だった。また、患者全体の 98%が高血圧症、9%が慢性腎臓病、8%が糖尿病、4%が心不全の治療を受けており、ベースライン時点での降圧薬治療の内訳はACE阻害薬が46%、ARBが54%であった。・全死亡および主な術後合併症の発生率は、RASI中止群で22%(1,115例中245例)、RASI継続群で22%(1,107例中247例)であった(リスク比[RR]:1.02、95%信頼区間[CI]:0.87~1.19、p=0.85)。・術中の血圧低下は、RASI中止群の41%に発生し、RASI継続群の54%に発生した(RR:1.31、95%CI:1.19~1.44)。・平均動脈圧が60mmHg未満の持続時間中央値(四分位範囲)は、中止群で6分(4~12)、継続群で9分(5~16)だった(平均差:3.7分、95%CI:1.4~6.0)。・試験結果において、そのほかの差はみられなかった。

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