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第46回 「飲むだけで痩せる」時代の到来か? ついに登場した経口薬、その驚きの効果と意外な「落とし穴」

肥満症治療における「決定的瞬間」がついに訪れた、と言っても言い過ぎではないのかもしれません。 2026年1月、米国において、肥満症治療薬として初めてとなる経口薬のGLP-1受容体作動薬が広く利用可能になりました。これまで「ウゴービ(Wegovy)(一般名:セマグルチド)」として知られていた薬は、週に1回の自己注射が必要でしたが、この新薬の登場によって、注射針への恐怖心や手間から治療を躊躇していた人に、新たな扉が開かれたと言えるでしょう。 しかし、単に「注射が飲み薬に変わっただけ」と考えるのは早計かもしれません。臨床試験のデータを紐解くと、確かな効果の一方で、日常生活で守らなければならない「非常にシビアなルール」が存在することも見えてきました。注射と変わらぬ実力 まず、最も気になる「痩せる効果」について見ていきましょう。FDA(米国食品医薬品局)の承認の根拠となった第III相臨床試験1)の結果は、非常に有望なものでした。 64週間にわたる試験で、この経口薬を服用した肥満または過体重の参加者は、平均して体重を約14%減らすことに成功しました。これに対し、偽薬(プラセボ)を服用したグループの体重減少率は約2%にとどまりました。 既存の注射版ウゴービ(2.4mg)の効果が、68週間で約15%の減量であったことと比較すると、飲み薬になってもその効果はほぼ同等であることがわかります2)。 薬のポテンシャルとしては、注射か飲み薬かで効果に大きな差はないと考えてよさそうです。効果を引き出すための「厳格すぎる」朝の儀式 しかし、ここで注意が必要なのが、この飲み薬には注射薬にはない、服用上の大きな制約があるという点です。 注射薬との最大の違いは、その吸収効率にあります。注射薬は皮下脂肪に直接注入されるため効率よく体内に吸収されますが、飲み薬は消化管を通って吸収されなければなりません。そのため、注射薬よりもはるかに多い量の薬剤が必要となります。実際、注射薬の維持用量が週1回2.4mgであるのに対し、飲み薬は最大で1日25mgと、桁違いの量を毎日服用することになります。 そして、この吸収を最大限に高めるために、患者には以下のような「厳格な服用ルール」が課されます1)。 朝一番の空腹時に服用する 112g(約4オンス)以下の水で飲み込む 服用後、少なくとも30分間は食事、飲み物、他の薬を一切口にしない これらを守らなければ、吸収される薬の量が減ってしまうというわけです。朝起きてすぐにコーヒーを飲みたい人や、慌ただしい朝を過ごす人にとって、「起床後30分間の完全な絶飲食」を毎日続けることは、想像以上に高いハードルになるかもしれません。 一方、注射薬であれば、週に1回、自分の好きなタイミングで打つだけで済みます。専門家たちが懸念しているのは、臨床試験のような管理された環境ではなく、実際の生活の中で、どれだけの人がこの厳格なルールを完璧に守り続けられるかという点です。コストとライフスタイル、どちらを選ぶ? それでも、飲み薬には大きなメリットがあります。それは「針への恐怖」からの解放と「コスト」です。 注射針が怖い、あるいは自分で注射をすることに抵抗がある人にとって、飲み薬は非常に魅力的な代替手段となります。また、製造コストの面でもメリットがあります。錠剤は注射のペンに比べて安価に製造でき、大量生産も容易であるため、昨今問題となっているGLP-1薬の供給不足を緩和する可能性があります。 価格面でも変化が見られます。ノボ ノルディスク社の広報担当者によると、自己負担の場合、飲み薬の月額費用は149ドルから299ドル程度になるとされています。これは、最近値下げされた注射薬の月額349ドルと比較しても安価です3)。 とくに2026年に入り、多くの保険会社が減量目的のGLP-1注射薬に対する補償を削減・制限している現状を考えると、患者によっては、飲み薬が唯一の利用可能な選択肢となるケースも出てくるでしょう。未来への第一歩としての「飲み薬」 結局のところ、注射を選ぶか飲み薬を選ぶかは、個人のライフスタイルや好み、そして懐事情に委ねられることになるでしょう。 柔軟性を重視するなら週1回の注射が適しているかもしれませんし、毎朝のルーチンをきっちり守れる人であれば、安価で痛みのない飲み薬の方が管理しやすいと感じるかもしれません。 すでに注射薬を使用している人でも、最終投与から1週間空ければ、飲み薬への切り替えが可能とされています。ただし、高用量への急な切り替えは胃腸障害などの副作用リスクを伴うため、医師の指導の下で慎重に行う必要があります。 今回のウゴービ経口薬の承認は、あくまで始まりに過ぎません。現在、競合のイーライリリー社も、食事や水の制限がない経口GLP-1薬の開発を進めています。 肥満症治療は今まさに、より多くの人々にとってアクセスしやすく、続けやすいものへと進化しようとしています。今回のニュースが、その大きな一歩であることは間違いないでしょう。 参考文献 1) Wharton S, et al. Oral Semaglutide at a Dose of 25 mg in Adults with Overweight or Obesity. N Engl J Med. 2025;393:1077-1087. 2) Wilding JPH, et al. Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity. N Engl J Med. 2021;384:989-1002. 3) Schweitzer K. What to Know About the Wegovy Pill for Obesity. JAMA. 2026 Jan 16. [Epub ahead of print]

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うつ病か?せん妄か?うつ病の過剰診断の現状

 精神科以外の臨床医によるうつ病とせん妄の誤診は一般的である。うつ病の過剰診断は、正常な情緒反応へのスティグマやせん妄への対応遅延につながる可能性がある。米国・クリーブランド・クリニックのMolly Howland氏らは、精神科以外の医療サービスとコンサルテーション・リエゾン精神科(CLP)サービスとの間における診断の一致率を調査するため、多施設におけるレトロスペクティブカルテレビューを実施した。Journal of Psychosomatic Research誌2026年2月号の報告。 クリーブランド・クリニックの2施設における入院患者を対象に、うつ病およびせん妄の紹介について調査した。紹介理由とCLPサービスの診断の一致率を評価した。従属変数として、うつ病の過剰診断、うつ病と誤診されたせん妄を、独立変数として、チームの主要専門分野、人口統計学的、臨床的変数を用いて、多変量ロジスティック回帰モデルを実施した。 主な結果は以下のとおり。・診断一致率は、せん妄で88%、厳密なうつ病診断で67%、広義のうつ病診断で80%であった。・CLP精神医学的診断を受けなかったうつ病で紹介された患者のうち、適応障害が49%、不安症/強迫症が18%、せん妄が16%、神経認知障害が4%で診断された。・高齢、過去の精神医学的診断は、うつ病の過剰診断の可能性を低下させた。・向精神薬の使用は、せん妄がうつ病と誤診される可能性を高めた。 著者らは「プライマリケアでは、うつ病が過剰診断されており、せん妄はより正確に診断されていた。しかし、代替診断のほとんどが不安症/強迫症であったことを考えると、プライマリケアは心理的苦痛の特定に長けているように思われ、これは精神科医によるスティグマ解消の啓発や教育活動に関連している可能性がある。プライマリケアでは、過去の精神疾患診断をうつ病のリスク因子として認識し、高齢者の症状にも配慮していたが、過去の向精神薬の使用はバイアスをもたらす可能性が示唆された。直接的な知識や態度の評価を含む、さらなる研究が今後求められる」としている。

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喘息への活用に期待、『アレルゲン免疫療法の手引き2025』

 アレルギー性鼻炎は、スギやヒノキを原因とする季節性アレルギー性鼻炎と、ダニなどが原因の通年性アレルギー性鼻炎に大別される。本邦では2014年頃からアレルゲン免疫療法(以下、AIT)の手軽な手法である舌下免疫療法(以下、SLIT)が臨床導入されたが、近年のエビデンス蓄積により、ダニアレルゲンによって症状が出現しているアトピー型喘息へのダニSLITの有効性が示されているという。2025年6月には日本アレルギー学会より『アレルゲン免疫療法の手引き2025』が発刊され、最新の知見に基づき、治療の意義や位置付けが刷新されたことから、今回、本書の作成委員長を務めた永田 真氏(埼玉医科大学呼吸器内科 教授/埼玉医科大学病院アレルギーセンター センター長)にAITの基礎と推奨される患者像などについて話を聞いた。アレルゲン免疫療法の意義  以前に日本では“減感作療法”とも呼ばれたAITは、「アレルギー疾患の病因アレルゲンを投与していくことにより、アレルゲンに曝露された場合に引き起こされる関連症状を緩和する治療」と定義付けられ、アレルギー疾患の根本的な体質改善を期待できる唯一の治療法である。本邦オリジナルの手法である皮下免疫療法(SCIT)は諸外国と比べ格段に普及が遅れていた。しかし2014年に舌下免疫療法(SLIT)が承認され、スギ花粉症を中心にその普及が始まった。 『アレルゲン免疫療法の手引き』の2022年版*からの主な改訂ポイントについて、永田氏は「『喘息予防・管理ガイドライン 2024』および『鼻アレルギー診療ガイドライン 2024年版』との整合性を図り、最新の臨床知見を反映した。とくにこれまでの理念を覆す免疫病態や、またAITの新規の効果が近年明らかになってきたため、新たに判明した作用をブラッシュアップしている。たとえば、ダニSLITが喘息患者の呼吸機能を改善させ長期的に維持させ得ることや、重症患者(喘息併存)への生物学的製剤(抗IgE抗体オマリズマブや抗IL-4受容体α鎖抗体デュピルマブなど)との併用効果に関するエビデンスなどを盛り込んだ。さらに、現段階での適応拡大はないが、アトピー性皮膚炎に対しても部分的に効果があることも報告されている。さらに、スギアレルゲンによる治療がヒノキアレルギーに対しても一定の効果を示す可能性が指摘されている」など、治療標的の広がりについても言及した。また、医療経済的な観点として、AITによる医療費抑制効果が確認されていることにも触れた。*2013年に「スギ」「ダニ」別の指針として発刊されていた前身の出版物を統合・刷新したもの AITの機序についてはいわゆる脱感作現象の寄与は極めて限られ、したがって“減感作療法”という呼称は科学的に誤っている。実際には生体にとって有益な免疫応答を能動的に誘導することの寄与が大きいと判明している。同氏は喘息患者において、「AITが気道上皮細胞のインターフェロン産生能力を高め、ウイルス感染に対する抵抗性を増強する作用が報告されている。これは、感染を契機とした増悪を抑制する効果を意味する」と、その免疫学的メリットを強調した。小児期からの介入と喘息発症予防 AITの適応は、IgE依存性アレルギーであることが正確に診断されたダニアレルギーまたはスギ花粉症患者で、とくに重要なことは全身的・包括的な効果を期待して行われる点である。施行にあたっては、「アレルゲン免疫療法に精通した医師」が条件であり、とくにSCITは効果が高いものの、アナフィラキシーあるいは喘息増悪(発作)などに対する迅速な対応が可能な施設においてのみ実施される。 AITの普及状況について、「成人のスギ花粉症治療でのSLITの応用が活発な一方、通年性鼻炎や喘息に影響をもたらすダニアレルギーへの介入は欧米に比べ依然として不十分」と同氏は指摘した。とくに小児においては、小児喘息の多くが難治化のリスクを抱える中、AITの追加が予後改善に寄与することが確認され、『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023』にも5歳以上に対するダニ免疫療法の重要性が示されている。「小児期からの介入は、将来的な喘息の新規発症を予防し、すでに発症済みの小児喘息の改善も期待することができる」と同氏はコメントした。 アレルギー性鼻炎の鑑別疾患としては、非アレルギー性・非感染性の鼻粘膜過敏症(血管運動性鼻炎や好酸球増多性鼻炎、また鼻かぜ[急性鼻炎]など)が挙げられる。このほかの注意点として、同氏は「海外では喘息でダニSLITが適応となる一方で、日本の場合には“適応がない”点は留意したいが、日本人の約8割の喘息患者はアレルギー性鼻炎も併発している」と喘息患者は治療対象となる場合が多い点を指摘した。<処方医が診療時に注意するべきポイント>・リスク管理:アナフィラキシーリスク評価と迅速な対応ができること・禁忌/慎重投与:「自己免疫疾患の合併や既往、または濃厚な家族歴を有する」「%FEV1(1秒量)が70%未満、または不安定な喘息患者」「全身性ステロイド薬の連用や抗がん剤の使用」に関する状況確認・SLITに関する歯科連携: 腔内の傷や炎症、抜歯などの予定は吸収率や局所反応に影響するため、休薬を含めた指導を実施・環境整備:ダニアレルギーの場合、ダニの繁殖を防ぐため、床のフローリング化やこまめな清掃など、また喘息ではとくに完全禁煙を指導治療中断後の再開は?ほかのアレルゲンへの適応は? AITの治療期間について、世界保健機関(WHO)は3~5年を推奨しているが、さらなる長期継続も許容される。患者が中断してしまった場合やいったん中止後に再発した場合の再開基準について、永田氏は次のような見解(私見)を述べた。「スギSLITの場合、投与開始から3年が経過していれば、免疫寛容の誘導が進んでいる時期。一時的に中断しても2年は効果が持続すると判明しているが、中止後の再発に伴う再開に際しては『改めて最低3年』を目標に仕切り直すことを推奨する。」 なお、ほかのアレルゲンへのAITの展開については、ハチ毒でのSCIT、食物アレルゲンでの経口免疫療法、一部の薬剤(NSAIDs、抗酸菌薬など)に対する脱感作療法が存在する。ピーナッツなどの食物アレルギーに対する経口・経皮免疫療法は研究が進んでいるが、現時点で本邦での承認予定はない。そのため、最新の手引きではこれらについての詳細な解説は見送られている。

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LDHでHFrEFの予後予測?

 乳酸脱水素酵素(LDH)は、肝臓をはじめ、心臓、肺などほぼ全身の組織に細胞質酵素として存在する。これまで循環器領域では心筋梗塞の指標として用いられているが、このほど、LDHの上昇が心不全(HF)の予後予測に重要であることが明らかになった。英国・心臓財団グラスゴー心血管研究センターの小野 亮平氏らがGALACTIC-HF試験対象者を解析した結果、LDHの上昇が左室駆出率の低下した心不全 (HFrEF)の臨床アウトカムの上昇と独立して関連性を示したという。 JACC:Heart Failure誌オンライン版 2026年1月15 日号掲載の報告。 研究者らは、細胞障害の非特異的な指標であるLDH とHFrEFの臨床的特徴などを評価するため、GALACTIC-HF試験*データを用い、LDHと臨床アウトカムの関係を解析した。主要評価項目は初回心不全イベントの発生または心血管死。予後予測モデルPREDICT-HFにLDHを追加した場合のリスクモデル精度は、C統計量、統合判別改善度(IDI)、純再分類改善度(NRI)を用いて算出した。また、LDH高値は250U/L超と定義した。*HFrEF患者における選択的心筋ミオシン活性化薬omecamtiv mecarbiの有効性・安全性を評価する国際第III相二重盲検ランダム化プラセボ対照多施設共同試験 主な結果は以下のとおり。・GALACTIC-HF試験の8,179例(外来患者6,138例を含む)のベースラインのLDHデータを用いた。・対象者の主な組み入れ基準は、(1)左室駆出率35%以下、(2)NYHA心機能分類II~IV、(3)利尿ペプチド(NT-proBNPなど)のレベル上昇、(4)1年以内の入院または緊急受診を伴うHFを経験した入院患者/外来患者であった。・本対象者のLDH高値例は、女性が多く、重症HFであった。また、血清クレアチニン、肝酵素、クレアチンキナーゼ、NT-proBNP、高感度トロポニンIの上昇も認められた。・対象者を四分位群に分類したところ、血清LDHの中央値は第1四分位群(Q1)155U/L、第2四分位群(Q2)183U/L、第3四分位群(Q3)207U/L、第4四分位群(Q4)253U/Lであった。・主要評価項目のハザード比(HR)について、LDHが最も低いQ1と比較すると、Q2はHR1.15(95%信頼区間[CI]:1.02~1.31)、Q3はHR1.39(95%CI:1.23~1.58)、Q4はHR1.84(95%CI:1.62~2.08)であった。・ほかの予後変数などの調整後もLDHの上昇は臨床アウトカムの悪化と独立して関連していた。・ベースラインのLDHをPREDICT-HFモデルに追加すると、3つの指標(C統計量、IDI、およびNRI)全体における主要評価項目の予測精度が改善された。

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HER2+早期乳がん、術前化学療法によるcCRの予測因子を同定

 初期薬物療法後に臨床的完全奏効(cCR)が得られたHER2陽性早期乳がんにおける非切除療法の有用性を検証することを目的としたJCOG1806試験において、探索的解析としてcCR率と予測因子を検討した。その結果、HER2陽性早期乳がんの57.6%で初期薬物療法後にcCRが得られ、予測因子としてER陰性、IHCスコア3+、高い組織学的グレードが同定された。広島大学の重松 英朗氏らが、International Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年1月22日号で報告した。 本試験は単群検証的試験で、HER2陽性はIHCスコア3+またはISH増幅あり、cCRは触診、造影MRI、超音波検査で検出可能な病変が認められない状態と定義した。多変量ロジスティック回帰分析を用いてcCRの予測因子を同定した。 主な結果は以下のとおり。・cCR率は57.6%(196例/340例、95%信頼区間[CI]:52.2~63.0)であった。・ER陽性度が高い腫瘍(10%以上)は、ER陰性腫瘍と比較してcCR率が有意に低かった(オッズ比[OR]:0.41、95%CI:0.20~0.81)。・IHCスコア3+の乳がんは、IHCスコア1+/2+よりもcCR率が高かった(OR:2.19、95%CI:1.01~4.74)。・組織学的グレード1の乳がんと比較して、グレード2(OR:2.92、95%CI:1.07~7.93)およびグレード3(OR:4.90、95%CI:1.76~13.7)でcCRのオッズが高かった。・非cCRで手術を受けた患者において22.2%がypT0と診断された。

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急性筋骨格系損傷の小児、イブプロフェン単独療法vs.併用療法/JAMA

 非観血的急性筋骨格系損傷の小児(6~17歳)において、薬剤投与60分後の疼痛スコアは、イブプロフェン+アセトアミノフェン併用投与またはイブプロフェン+ヒドロモルフォン併用投与を行っても、イブプロフェン単独投与と比較して有意な改善は認められず、副作用の発現割合はヒドロモルフォン併用投与で約4倍高かった。カナダ・アルバータ大学のSamina Ali氏らが、カナダの3次医療施設6施設の小児救急部門で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Non-Steroidal or Opioid Analgesia Use for Children With Musculoskeletal Injuries:No OUCH試験」の結果を報告した。イブプロフェンは、筋骨格痛に対する第1選択薬であるが、小児の3例に2例がイブプロフェン単独では十分な疼痛緩和が得られず、中等度から重度の筋骨格痛に対する鎮痛薬の追加併用の有効性は不明であった。JAMA誌オンライン版2026年1月8日号掲載の報告。オピオイド併用の3群比較試験と、非オピオイド併用の2群比較の2試験を実施 No OUCH試験は、オピオイド試験と非オピオイド試験の2試験で構成され、保護者および患者がいずれに参加するかを決定できる治療選好を考慮した補完的試験デザインで実施された。 対象は6~17歳の小児で、発症後24時間以内の急性筋骨格系損傷(明らかな変形や神経血管障害を伴わない)を呈し、verbal numerical rating scale(vNRS)による疼痛スコアが10点満点中5点以上の患者とした。 研究グループは、適格患者を、オピオイド試験では(1)イブプロフェン+ヒドロモルフォン群、(2)イブプロフェン+アセトアミノフェン群、(3)イブプロフェン単独群のいずれかに、非オピオイド試験では(1)イブプロフェン+アセトアミノフェン群、または(2)イブプロフェン単独群のいずれかに無作為に割り付け、それぞれ単回経口投与した。 両試験とも、イブプロフェンは10mg/kg(最大600mg)、アセトアミノフェンは15mg/kg(最大1,000mg)、ヒドロモルフォンは0.05mg/kg(最大5mg)を投与した。 有効性の主要アウトカムは、投与後60分時点の自己申告によるvNRS疼痛スコア(スコア範囲:0[無痛]~10[最悪の痛み]、臨床的意義のある最小群間差:1.5[SD 2.7])、安全性の主要アウトカムは、治療関連有害事象の発現割合であった。平均疼痛スコアは3群間で有意差なし 2019年4月~2023年3月に8,098例がスクリーニングされ、適格患者699例が無作為化された(オピオイド試験249例[イブプロフェン+ヒドロモルフォン群110例、イブプロフェン+アセトアミノフェン群70例、イブプロフェン単独群69例]、非オピオイド試験450例[イブプロフェン+アセトアミノフェン群225例、イブプロフェン単独群225例])。2試験の患者の平均(SD)年齢は11.5(3.5)歳、47.4%が女性で、登録時の平均(SD)vNRSスコアは6.4(1.8)であった。 有効性の解析対象集団653例において、投与60分後の平均(SD)vNRSスコアはイブプロフェン+ヒドロモルフォン群4.8(2.6)、イブプロフェン+アセトアミノフェン群4.6(2.4)、イブプロフェン単独群4.6(2.3)であった(p=0.78)。 治療関連有害事象の発現割合は、イブプロフェン+ヒドロモルフォン群で28.2%と、イブプロフェン+アセトアミノフェン群6.1%、イブプロフェン単独群5.8%と比較して高かった。重篤な有害事象は報告されなかった。

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コロナ禍で新規診断が増えた疾患・減った疾患/BMJ

 英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMark D. Russell氏らによる、OpenSAFELY-TPPを用いたコホート研究の結果、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降、うつ病、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、乾癬、骨粗鬆症の新規診断は予測値を下回ったのに対し、慢性腎臓病は2022年以降に診断数が急増し、サブグループ解析ではとくに認知症に関して民族および社会経済的状況により新規診断数の回復パターンに差があることが示された。著者は、「本研究は、日常診療で収集される医療データを用いた疾病疫学のほぼリアルタイムのモニタリングの可能性を示すとともに、症例発見の改善や医療の不平等を検討するための戦略立案に寄与する」とまとめている。BMJ誌2026年1月21日号掲載の報告。イングランドの約3千万例対象、COVID-19パンデミック前後の慢性疾患の新規診断と有病率を解析 研究グループは、2016年4月1日~2024年11月30日に、OpenSAFELY-TPPプラットフォームにデータを提供している一般診療所に登録され、かつ診療所に対して直接の医療に関与しない組織への個人データの共有を希望しない旨の登録をしていない患者2,999万5,025例を対象として、19の慢性疾患について年齢・性別標準化発症(新規診断)率および有病率の経時推移を検討した。 19の慢性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、冠動脈心疾患、慢性腎臓病(ステージ3~5)、セリアック病、COPD、クローン病、認知症、うつ病、2型糖尿病、てんかん、心不全、多発性硬化症、骨粗鬆症、リウマチ性多発筋痛症、乾癬、関節リウマチ、脳卒中/一過性脳虚血発作、潰瘍性大腸炎。 COVID-19パンデミックが、これら慢性疾患の診断に与えた影響を評価する目的で、パンデミック前のパターンから予測された期待診断率に基づく季節変動自己回帰和分移動平均(seasonal autoregressive integrated moving average:SARIMA)モデルを用い、パンデミック発生後の予測診断率と実際の観察診断率の差を比較した。パンデミック初年度に新規診断が急減、4年後もうつ病などは減少したまま パンデミック発生後の新規診断率はパンデミック前と比較し、初年度(2020年3月~2021年2月)に19疾患のすべてで急減した。ただし、その後の回復傾向は疾患ごとに異なった。 2024年11月時点でも、いくつかの疾患では新規診断数が予測値を下回っており、とくにうつ病(予測より-73万4,800件[-27.7%]、95%予測区間[PI]:-76万6,400~-70万3,100)で減少幅が最も大きく、喘息(-15万2,900件[-16.4%]、95%PI:-16万8,300~-13万7,500)、COPD(-9万100件[-15.8%]、-9万8,900~-8万1,400)、乾癬(-5万4,700件[-17.1%]、-5万9,200~-5万100)、骨粗鬆症(-5万4,100件[-11.5%]、-6万1,100~-4万7,100)も大きく減少した。 一方、慢性腎臓病の診断数は、パンデミック初期に減少したものの、2022年以降はパンデミック前の水準を上回る増加を示した(予測より35万9,000件[34.8%、95%PI:33万3,500~38万4,500]増加)。 人種および社会経済的状況で層別化したサブグループ解析の結果、パンデミック初期の減少後、白人および社会経済的困窮度が低い地域では、認知症の診断率がパンデミック前の水準を上回って増加したが、他の人種および困窮度が高い地域では増加しなかった。

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頭部外傷は自殺企図リスクを高める

 頭部への強い打撃は、自殺リスクを大幅に高める可能性のあることが、新たな研究で示唆された。頭部外傷を経験した人は、経験していない人に比べて自殺企図を抱くリスクが21%高いことが明らかになったという。英バーミンガム大学疫学およびリアルワールドエビデンス分野のNicola Adderley氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」1月27日号に掲載された。 論文の責任著者であるAdderley氏は、「この研究結果は、頭部外傷の影響が身体的な症状や後遺症にとどまらないことを示している。頭部外傷は、心理面にも深刻な影響を及ぼす可能性があるのだ。患者の転帰を改善し、安全を確保するためには、精神疾患の既往にかかわらず、最近、頭部外傷を負った全ての人に対し、自殺リスクの評価を検討すべきだ」とニュースリリースの中で述べている。 この研究では、英国の入院データおよび死亡統計データとリンクさせたプライマリケアの20年に及ぶデータを用いて、頭部外傷歴のある患者とない患者との間で、自殺企図(自殺による死亡も含む)リスクや自殺企図および自殺による死亡のリスク因子を比較した。頭部外傷歴のある患者38万9,523人に対し、年齢、性別、居住地域を一致させた頭部外傷歴のない患者を1人につき4人選定し(計148万9,675人)、解析に含めた。 対象者のうち、頭部外傷歴のある患者では5,107件(1,000人年当たり2.4件)、ない患者では9,815件(同1.6件)に自殺企図の記録が残されており、頭部外傷歴のある患者では自殺企図のリスクが21%高いことが示された(ハザード比1.21、95%信頼区間1.17〜1.25)。特に自殺企図のリスクが高かった因子は、頭部外傷後12カ月以内、社会的剥奪の程度の高さ、精神疾患の既往であった。12カ月を過ぎるとリスクは時間とともに低下したが、それでも頭部外傷歴のない人と比べると依然として高い状態が続いていた。一方、自殺による死亡のリスクについては、頭部外傷歴のある患者で有意な上昇は認められなかった。このことから、頭部外傷は致死的ではない自殺企図の増加に関与している可能性が示唆された。 研究グループは、「本研究結果は、全体的には、頭部外傷歴のある患者では回復期において、より多くの精神的支援を必要としていることを示唆している」と述べている。論文の上席著者である英バーミンガム大学疫学分野のNeil Thomas氏は、「これらの結果は、臨床実践と医療政策の双方に重要な示唆を与えるものであり、的を絞ったメンタルヘルスおよびウェルビーイング支援が急務であることを浮き彫りにしている。特に、精神疾患の既往に関係なく、頭部外傷後最初の12カ月間を中心に、自殺リスクを評価し、予防戦略を立てる方法の開発とその検証を進めるべきである」とニュースリリースで述べている。 なお、本論文の付随論評では、頭部外傷と自殺リスクの関連には、情動調整や意思決定に重要な脳構造の損傷が関与している可能性が指摘されている。これらの領域の損傷は、衝動性や抑制の欠如、判断力の低下を引き起こし、自傷行為のハードルを下げる可能性があるという。

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edaravone dexborneol、急性期脳梗塞患者の機能アウトカムを改善か(解説:内山真一郎氏)

 edaravone dexborneolは、中国で開発されたエダラボンとdexborneolの合剤であり、日本で使用されている注射薬のエダラボンと異なり、舌下錠であり、エダラボンの抗酸化作用とdexborneolの抗炎症作用を併せ持つことから、エダラボンの単剤よりも多面的な神経保護効果が期待されている。前回行われたTASTE試験では、再灌流療法を受けていない急性虚血性脳卒中患者においてedaravone dexborneolはエダラボンを上回る転帰改善効果が報告されている。 今回のTASTE-2試験では、発症後24時間以内の症例において再灌流療法前にedaravone dexborneol(4対1の割合)またはプラセボを静脈内投与し、その後10~14日間投与して90日後の転帰を改変ランキンスケール(mRS)で評価したところ、mRS 0~2の転帰良好例はプラセボと有意差がなかったが、重症度(NIHSS)と虚血病巣の広がり(ASPECTS)にミスマッチがあった症例に限定すると、転帰良好例は実薬群で有意に多かった。今後、この薬剤が世界標準の治療薬として認められるには、中国外での臨床試験により有効性を検証する必要がある。エダラボンは日本で開発された薬剤であり、日本で脳梗塞急性期治療薬として広く用いられているが、今のところ、日本では本薬剤の臨床試験は計画されていないようである。

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ボリコナゾールによる副作用(視覚・神経学的副作用)【1分間で学べる感染症】第38回

画像を拡大するTake home messageボリコナゾールは、視覚・中枢神経系に特徴的な副作用を生じることがあり、治療前に患者へ十分な説明を行うことが重要。ボリコナゾールは、侵襲性アスペルギルス症などに対する第1選択薬として使用され、アゾール系抗真菌薬の中でもとくに重要な薬剤です。一方で、ほかの抗真菌薬と比較して中枢神経系および視覚に関連した副作用の頻度が高く、患者のQOLや服薬継続に影響を及ぼす可能性があります。ボリコナゾールによる代表的な4つの神経・眼科的副作用について、機序、発症時期、予後・回復の観点から整理します。1.視覚障害(Visual disturbance)霧視、視神経炎、色覚異常、結膜炎、強膜炎など、さまざまな視覚異常が報告されています。これは網膜の桿体・錐体系への作用が関与しているとされており、静注投与時に多くみられるとされています。通常は投与開始から数日以内に急速に出現し、中止後24時間~2週間以内に自然軽快することが多いため、多くは可逆的とされています。2.視覚的幻覚(Visual hallucination)とくに静注投与時に多くみられ、高い中枢神経系濃度が原因とされています。発症は非常に急速で、投与開始後24時間以内に出現することがあり、幻視の内容はさまざまですが、強い不安を伴うことも多いため開始前には十分な説明が必要です。多くは5日以内に自然軽快し、中止によって可逆的とされています。3.末梢神経障害(Peripheral neuropathy)ボリコナゾールによる遅発性の感覚優位の軸索性神経障害が知られており、1ヵ月以上の慢性投与後に発症することがあります。症状は四肢のしびれが主ですが、進行性で不可逆的なこともありうるため、定期的な神経学的モニタリングが求められます。重篤な機能障害を残す可能性があるため、早期発見・中止が重要です。4.脳症(Encephalopathy)幻覚や錯乱、意識変容、せん妄などを伴う中枢神経系毒性の1つです。これも中枢神経への高濃度移行が関与しているとされており、投与開始から約1週間(中央値9日)で発症すると報告されています。ただし、中止後2~5日で改善する例が多く、予後は良好です。ボリコナゾールは、非常に有用な抗真菌薬である一方で、視覚・神経系への副作用が比較的高い頻度で発現します。患者に不安を与えることが多いため、これらの副作用について事前に説明し、神経学的評価や視覚症状の定期的なチェックを行うことが重要です。1)Baxter CG, et al. J Antimicrob Chemother. 2011;66:2136-2139.2)Zonios DI, et al. Clin Infect Dis. 2008;47:e7-e10.3)Pascual A, et al. Clin Infect Dis. 2008;46:201-211.

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小児の熱傷【すぐに使える小児診療のヒント】第10回

小児の熱傷子供の成長は喜ばしいものですが、その一方で成長に伴ってこれまで想像もしていなかった事故が起こり得ます。熱傷は家庭内での日常的な事故として発生することが多く、「一瞬の不注意」が重症化につながることも少なくありません。小児は成人と比較して皮膚が薄く、体表面積当たりの熱吸収量が大きいため、同じ条件でもより深く、より広範囲の熱傷となることがあり、注意が必要です。症例11ヵ月、女児。カップラーメンの熱湯が顔面にかかり、熱傷を負ったため受診した。父が自宅のテーブルの上に作りかけで置いていたカップラーメンを、一瞬目を離した隙に児が触ってこぼしてしまったとのこと。顔面にII度熱傷、肩、腕にもI度熱傷あり。熱傷の評価熱傷の評価に関しては成人と大きくは変わりません。熱傷とは、「高熱(加熱液体・気体・固体、火炎など)、低温(液体・気体・固体など)、化学物質、電流などが皮膚に接触し生じる外傷」であり、温度と接触時間で深達度が規定され、その深達度とその範囲によってどの程度全身に影響を与えるのかが決まります。温度 × 接触時間 = 深達度深達度 × 熱傷面積 = 重症度(1)深達度I度熱傷:表皮のみ。発赤・疼痛あり、水疱なしII度熱傷:真皮に及ぶ。水疱形成、強い疼痛浅達性:自然上皮化が期待できる深達性:瘢痕形成のリスクありIII度熱傷:全層壊死。白色~黒色、疼痛に乏しい※急性期には深達度が過小評価される可能性があり、繰り返し評価が必要画像を拡大する画像を拡大する(2)熱傷面積熱傷面積の算出には、成人では「9の法則」を用いることが多いですが、全身に占める頭部や躯幹の割合が大きい乳幼児においては不正確です。簡易的には、下記に示すように「5の法則」や「手掌法」を用いて算出します。<5の法則>画像を拡大する<手掌法>患者手掌が体表面積の1%熱傷面積を算出する際に小範囲の面積を加算算出するのに用いる(3)重症度判定とアルゴリズム下記アルゴリズムは、小児の熱傷において全身管理と局所治療の優先順位を整理することを目的としています。II度15%未満、III度2%未満は軽症に分類され、局所治療を基本とします。それ以上の場合は中等症/重症に分類され、気道・顔面・手足などの部位の熱傷、電撃傷などでは全身管理を優先し、経過に応じて手術も含めた治療選択を行います。画像を拡大する<熱傷診療ガイドラインを参考に作成>熱傷の初期治療軽症および中等症の熱傷の場合、火傷の直後に冷却すると創傷治癒が向上します。可能であれば20分間冷却することが推奨されます。感染管理としては、水洗浄、受傷状況と汚染の程度によって破傷風トキソイド接種(参考:小児の創傷処置)を考慮します。受傷初期の熱傷に対して、創部感染予防目的に抗菌薬の予防的全身投与を画一的に行うことは勧められていません。明らかな汚染創であったり、易感染宿主状態の患者であったりする場合に考慮します。急性期の熱傷では、I~III度熱傷が混在していることも多く、正確な深達度評価は難しいとされています。まずは洗浄して、油脂性基材軟膏(ワセリン、プロペト、アズノールなど)で湿潤療法を行うことが基本です。虐待の可能性を考える乳幼児の熱傷では、常に虐待の可能性を念頭に置いて診療にあたる必要があります。身体的虐待の約9%に熱傷が含まれるとの報告もあり、決してまれな所見ではありません。虐待による熱傷を見逃さないためには、受傷時の状況を詳細に問診すること、全身をくまなく診察すること、そして受傷部位だけでなく熱傷痕そのものの特徴に注目することが重要です。事故による乳幼児の熱傷では、手掌や前腕などの上半身に受傷していることが多い傾向があります。一方で、虐待による熱傷には、以下のような特徴がみられます。臀部、大腿内側、腋窩、腹部など、通常は露出していない部位に生じている円形で境界が明瞭なタバコ熱傷など、熱源を推定しやすい形状を呈する熱傷の深達度が均一で、健常皮膚との境界がはっきりしている熱源が飛び散ることによる不規則な熱傷(splash burn)を伴わないこうした「事故らしさ」「虐待らしさ」をあらかじめ知っておくことが、違和感に気づき、見逃さない診療につながります。事故予防の観点から熱傷は、実は家庭内での事故のうち多くの割合を占めています。とくに、0~1歳児に多く、発生場所としては居室と台所で約8割を占めるといわれています。その原因で最も多いのが、味噌汁や麺類、シチューなどの調理食品で、次いでストーブ、電気ケトルなどが挙げられます。まさに今回の症例のように「カップラーメンの待ち時間で子供がやけどしてしまった」といったエピソードは、日常診療の中でもよく経験します。問診例テーブルの上に置いていたカップラーメンをひっくり返して被ってしまいました。そうだったのですね。テーブルのどのあたりに置いていましたか?端の方に置いてしまっていました。最近つかまり立ちをするようになったのですが、まだ届かないだろうと気を抜いていました。事故予防は、保護者が気をつけることだけで成り立つものではありません。電気ケトルの転倒による熱傷事故が多く報告されたことを受けて、転倒してもお湯がこぼれにくい設計の商品が開発されるなど、社会全体でもさまざまな工夫が進められています。ぜひ日本小児科学会のホームページに掲載されているInjury Alertも参考にしていただければと思います。保護者との関わり熱傷の正確な評価や適切な処置はもちろん重要ですが、同時に、保護者に対して事故予防について話をすることも欠かせないポイントです。二度と同じ事故を繰り返さないためには、「喉元過ぎて熱さを忘れない」うちに、受診のタイミングで具体的に伝えることが、最も効果的であると感じています。問診例(続き)お父さんの近くやテーブルの中央など、手の届かない場所に置く工夫が必要かもしれませんね。お子さんは日々成長するので、『まだ大丈夫』と思っていても思いもよらなかったような事故が起こることがあります。そうしたことを前提に対策していくことが大切ですね。一緒に考えていきましょう。こども家庭庁のホームページに掲載されている「こどもの事故防止ハンドブック」は、PDFを無料でダウンロードできるため、外来で保護者に紹介する資料としても有用です。また、今回の症例のように顔面に熱傷を負った場合には、外見の変化に対する心のケアも重要になります。たとえ最終的に治癒が見込まれるものであっても、顔面の皮膚がただれ、痛々しい状態になっているわが子の姿を目の前にすると、保護者は少なからずショックを受け、自身や配偶者を責めてしまうことも少なくありません。「お子さんの状態を良くしたい」という気持ちは、保護者も医療者も同じです。その思いを共有し、寄り添う姿勢を言葉にしながら、身体面だけでなく精神面にも配慮して関わることが大切だと考えています。参考資料 1) 日本皮膚科学会:熱傷診療ガイドライン第3版 2) 日本小児科学会:虐待による熱傷の所見 3) 日本小児科学会:I Injury Alert(傷害速報) 4) こども家庭庁:こどもの事故防止ハンドブック

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第300回 東大皮膚科教授、高級クラブやソープランドで約30回、約180万円の接待受け収賄で逮捕、国際卓越研究大学の認定に黄信号

消費税減税、自民党議員の中にも反対多数こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週末、とある医療・介護関係者向けのセミナーに参加し、いくつかの興味深い話を聞きました。1つは東北地方の病院長の話です。患者数減少などのため病床数を削減、診療科目も制限する中、地元の大学医学部からの医師派遣の申し出も断るようになった、とその病院長は話していました。医師の賃金に加え、交通費等も加えると1日当たり10万円近くとなり、年間では馬鹿にならない金額になるため、経費削減目的でもあるとのことです。地方では医師不足が叫ばれていますが、病床削減や再編・統合が今まで以上に進めば、医師のポストのみならず、派遣医の需要自体も減っていくことになります。近い将来、東北地方のみならず全国で、医局のジッツだけではなく大学の若手医師のバイト先も減りそうです。もう1つは、自民党の参議院議員(医系議員)の話です。高市 早苗総理大臣は衆議院解散の意向を発表した1月19日、「軽減税率が適用されている飲食料品については、2年間に限り消費税の対象としない」との方針を打ち出しました。しかし、この議員は、消費税減税について、減税分の財源の目処が立っていないことや、社会保障費への影響が大きいことなどを理由に「反対」の姿勢を明確に示していました。自民党内でも消費税減税に反対する声は多そうです。消費税減税について高市氏は「私自身の悲願」と語っていましたが、自民党の公約の記述には「財源やスケジュールの在り方など、実現に向けた検討を加速します」と書いてあるだけです。「検討を加速」は典型的な“霞ヶ関文学”で「何もしないという意味」と解釈するメディアもあります。衆院選で仮に与党が勝利したとしても、消費税減税の行方は当面は不透明、場合によっては実現しない可能性もありそうです。ほかの医師の逮捕が相次いでも「自分は大丈夫」と堂々と賄賂を受け取る医師たちところで、本連載も今回で無事300回を迎えることになりました。ちょうど新型コロナ感染症のパンデミックが本格化し始めた2020年4月1日に「第1回 医療関係者が医療関係者を『バイ菌』扱いしちゃダメだろ」でスタートした本連載、「無事」とはいうものの少々書き過ぎた回もあり、幾度かは“クレーム”や“反論”対応することもありました。幸いいずれもボヤ程度で済み、連載をなんとか続けてこられました。担当編集者と、鷹揚な読者の皆さまのおかげと言えます。深く感謝申し上げます。本連載でとくに多く取り上げて来たのは医師や医療機関が起こした不祥事です。中でも「第25回 三重大病院の不正請求、お騒がせ医局は再び崩壊か?」を皮切りに、幾度も取り上げた三重大臨床麻酔部の元教授が起こした贈収賄事件は、裁判の資料を入手するために三重の津地裁を訪れたりもしており、印象に残る事件です。医学部教授が自らの地位を利用して製薬会社や医療機器メーカーから現金を受け取っていたこの事件(裁判は最高裁まで行き、昨年有罪が確定)ですが、こうした他大学や病院の医師が逮捕される事件が相次いでも、「自分がやっていることは大丈夫」と堂々と賄賂を受け取る医師がいなくならないのはとても不思議です。先週末の1月24日にも、東京大学大学院医学系研究科のS教授(62、専門は皮膚科学)が収賄容疑で逮捕されました。東大は昨年11月にも整形外科医が逮捕されています。世の中は「また東大かよ」とあきれているに違いありません。「第298回 東大、国際卓越研究大学にまたまた選ばれず継続審査へ、その“敗因”はどこに?」でも書いたように、東大は国際卓越研究大学の選定において、2025年11月にも医学部の准教授が収賄容疑で立件されるなど不祥事が相次いだことで、大学トップを含む責任体制の構築が必要とされました。最長1年間審査は継続されますが、有識者会議は「継続審査中に、法人としてのガバナンスに関わる新たな不祥事が生じたと判断された場合、審査を打ち切る」としており、いよいよ「東大アウト」の宣告がなされることになるかもしれません。接待の自主規制ルールもなく、これ幸いと“金づる”のようにたかったか1月25日付の日本経済新聞等の報道によれば、S容疑者は2023年3月~2024年8月、研究相手の一般社団法人・日本化粧品協会(文京区)の代表理事の男(52)から銀座の高級クラブや吉原のソープランド(一部報道によれば1人約8万円)で約30回にわたり、計約180万円相当の接待を受けた疑いがあるとのことです。大麻に含まれる物質の効果について共同研究をする「臨床カンナビノイド学講座」の設置や研究の実施にあたって便宜を図った謝礼の趣旨だったとしています。S容疑者の部下だった同研究科の元特任准教授の男(46)についても、代表理事から約190万円相当の接待を受けた疑いがあるとして、警視庁は1月26日、書類送検しました。一方、警視庁は同日、接待をした代表理事も書類送検しました。なお、接待の総額は「10万円超のスーツケース含め、2人合わせて少なくとも490万円相当に上る」(1月26日付のNHKニュース)との報道もあります。前述の三重大臨床麻酔部事件や、「第291回 東大病院の整形外科医、収賄の疑いで逮捕 『国際卓越研究大学』の認定にも影響か?」で書いた東大病院の整形外科医の事件もそうですが、国立大学法人の職員らは、収賄罪の対象になる「みなし公務員」に当たります。それにしても、収賄の内容が「高級クラブやソープランドで約30回、計約180万円相当」という点は相当情けないですね。現在、製薬企業における医療従事者(医師など)への接待・飲食提供は、日本製薬工業協会の自主規制により、厳格に制限されています。かつての多くの不祥事を受けての対応です。そのため、医学部教授になったからといって、製薬企業から過剰な接待を受けることはほとんどないと言っていいでしょう。今回の日本化粧品協会は日本製薬工業協会に加盟しておらず、おそらく接待の自主規制ルールもないため、そこに目を付けたS教授らが、これ幸いと“金づる”のようにたかった、というのがことの真相ではないでしょうか。また、医薬品よりも化粧品を下に見る姿勢もあったかもしれません。2025年5月にはS容疑者らや東京大学を相手取り計4,200万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴1月25日付の朝日新聞等の報道によれば、共同研究は2023年4月に「臨床カンナビノイド学講座」を設置してスタート、S容疑者と元特任准教授はこの講座の運営のほか、研究内容の選定や研究の実施の権限があったとのことです。しかし、日本化粧品協会と代表理事の間で金銭トラブルが起き、講座は2025年3月に廃止されました。日本化粧品協会などは講座が突然廃止されたことなどから、2025年5月にS容疑者らや東京大学を相手取って、計4,200万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴、訴状で協会側は、S容疑者から高額な接待を強要され、研究も一方的に中止されたと主張していました。この協会とS容疑者とのトラブルについては、週刊文春が2025年3月に「東大皮膚科カリスマ教授が求めた1,500万円“違法エロ接待”」と題する記事で、すでに報じています。週刊文春はさらに5月11日に文春オンラインで配信した「《1,500万円“違法エロ接待”》東大医学部カリスマ教授が収賄容疑で逮捕、銀座クラブ接待写真を入手 共同研究者が実名で告発していた…『Tバック写真』と『証拠音声』も独占公開」と題する記事で、銀座のクラブや接待による熱海旅行の写真などとともに、恐喝まがいの金銭要求や、接待のおねだりぶりを詳細に報じています。同記事は「東大の倫理規程違反はもとより、国立大の教授はみなし公務員であるため『贈収賄』など法律違反にあたる可能性もある」と書いていますが、実際に警視庁が捜査に着手、今回の逮捕に至ったわけです。今回の逮捕を受けて東大の藤井 輝夫学長は1月25日、「度重なる教員の逮捕は痛恨の極みであり、言語道断で、遺憾であると言わざるを得ない。この事態を極めて重いものと受け止め、厳正に対処する」とのコメントを出しています。逮捕されるまで教授の地位を与えてきた体制こそガバナンス欠如の典型S教授の逮捕で私が驚いたのは、昨年トラブルが発覚し、事態が損害賠償事件にまで発展、贈収賄事件になる可能性が当初からあったにもかかわらず、S教授は教授のまま、さしたる処分も受けずにいたことです。日本化粧品協会が損害賠償を求める訴えを起こした後の昨年6月、東京大学は「社会連携講座等検証・改革委員会」を設置し、制度の検証を進めました。そして、10月には「民間企業等から資金等を受け入れて行う研究・教育における制度の改革策」を公表、その中で「一部教職員の倫理意識が欠如し、事案を未然に防げなかった」などとしていました。しかし、その倫理意識が欠如した教授を辞めさせることもせず(あるいはできず)、逮捕されるまで教授の地位を与えてきたのです。こうした体制こそがガバナンス欠如と言えるでしょう。1月26日付の日本経済新聞は「東大の卓越大認定 瀬戸際」と題する記事で、「容疑者の逮捕は審査結果の公表後だが、事案自体は25年に浮上しており有識者会議も把握していたとみられる。文科省幹部は『逮捕をもって直ちに審査打ち切りになる可能性は低い』とみる。ただ、東大が瀬戸際に立たされている状況に変わりはない」と書いています。組織の巨大さゆえ、医学部の不祥事は医学部任せで、大学全体としてガバナンスが効かない組織体制であることが問題視されています。東大は今春までに一連の不祥事を受けた再発防止策やガバナンス改革案をまとめる予定とのことですが、単なる「案」ではなく、実現性、実効性のある改革案であるかどうかが問われることになるでしょう。

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保険薬局の倒産が過去最多を記録【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第164回

保険薬局に求められるサービスの内容はこの20年で大きく変化しました。処方箋をさばいて調剤すればよいという時代から、在宅や地域医療、お薬を渡した後のケアまで行う時代になっています。薬局や薬剤師には変化し続けることが求められており、薬局を取り巻く環境は年々厳しくなっていると感じます。中小企業にとってはその変化に対応することは簡単ではなく、その厳しさの結果でしょうか、2025年の保険薬局の倒産が過去最多を記録したようです。2025年に倒産した「調剤薬局」は、38件(前年比35.7%増)と大幅に増加し、過去最多を更新した。これまで最多だった前年の28件をさらに10件上回り、2年連続で過去最多を更新した。 負債総額は44億8,400万円(同68.3%減)で、前年から約7割減少した。これは、負債10億円以上が1件(前年3件)にとどまる一方で、負債1億円未満の小規模倒産が29件(前年比81.2%増)と大幅に増加、全体の8割近く(76.3%)を占めたため。(2026年1月11日付 東京商工リサーチ)昨年から倒産が10件増えたとのことです。保険薬局は6万件を超えたといわれていますので、過去最多といっても誤差の範囲とも思えますが、昨年より多かったというのは事実で、また2年連続で最多を更新しているという流れは気になるところです。どんな薬局が? と思うのは当然のことで、以下の原因別と資本金別の説明を見てみると、原因としては「販売不振」が最多なので、単純に利益が出なかったということでしょう。また資本金別では、大きな企業というよりは小規模の法人が多かったということが推測できます。原因別:「販売不振」が最多の25件(前年比127.2%増、構成比65.7%)で、前年(11件)の2倍以上に増加。次いで、他社倒産の余波が7件発生した。資本金別:「1百万円以上5百万円未満」が21件(前年比40.0%増、構成比55.2%)で最多。以下、「1百万円未満」と「個人企業他」が各5件、「5百万円以上1千万円未満」が4件の順。「では大手企業の薬局のほうが安全なのね」と思いがちですが、大手は大手なりに大変で、大手企業を中心に再編の動きが活発化しているのはご存じのとおりかと思います。2025年8月にアインホールディングスがさくら薬局の経営会社を買収したことは記憶に新しいでしょう。また、大手が中小を買収するという流れも顕在化しています。薬剤師不足も重なって、保険薬局を取り巻く事業環境は大きな転換点を迎えているのかもしれません。現在議論されている2026年度の調剤報酬改定では、人材不足や材料費の高騰など、社会全体を取り巻く状況についても議論されています。薬局特有の問題に関してはいわゆる「門前薬局」のあり方や地域偏在の解消が大きなテーマとなっており、今後は小規模の保険薬局の乱立が抑制される可能性もあるともいわれています。薬局が何をもって選ばれていくのか、そして薬局の数はやはり多いのかなど、調剤報酬改定の議論も併せて様子を見ていきたいと思います。

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日本人既婚男性の性機能が顕著に低下~30年前と比較

 本邦の男性不妊を対象とした研究では、勃起機能不全による不妊の増加が報告されている1)。そこで、佐藤 嘉一氏(三樹会泌尿器科病院)らの研究グループは、日本人男性を対象として1991年2)と2023年3)に実施された調査のデータを用いて、性機能、性交頻度の変化を検討した。その結果、2023年調査では、1991年調査と比較して既婚男性の勃起硬度、早朝勃起の頻度、性交頻度が低下していることが示された。とくに若年・中年層での性機能の低下が顕著であった。本研究結果はInternational Journal of Urology誌2026年1月号で報告された。 研究グループは、日本性機能学会が2023年に実施した全国調査(性機能障害全国実態調査:2023年調査)と、札幌医科大学泌尿器科が1991年に実施した調査(1991年調査)のデータを比較した。1991年調査は既婚男性を対象としていたことから、2023年調査のデータからは、既婚男性3,795人(20~79歳)を抽出した。1991年調査のデータからは、勃起硬度(3,886人)、早朝勃起の頻度(7,517人)、性交頻度(8,893人)の回答を用いた。両調査の質問項目を標準化し、勃起硬度(Erection Hardness Score:EHS、グレード0~4、低いほど重症)、早朝勃起の頻度(まったく自覚しない、週1回未満、週1回、週に2~3回、毎日)、性交頻度(まったくなし/定期的な行為なし、月1回未満、月1~2回、週1回、週2回、週3回以上)について、年代別に比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・陰茎の硬さが挿入に不十分とされるEHSグレード2以下の割合は、1991年調査と比較して、2023年調査が75~79歳を除くすべての年代で有意に高かった。・早朝勃起がまったくないと回答した割合は、1991年調査と比較して、2023年調査がすべての年代で有意に高かった。・性交頻度が月1回未満(セックスレスの定義の1つ)の割合は、1991年調査と比較して、2023年調査が20代を除くすべての年代で有意に高かった。 本研究結果について、著者らは「過去30年間で日本人既婚男性の性機能が顕著に低下しており、とくに若年・中年層での低下が大きかった」と結論付けている。

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睡眠障害やうつ病は急性冠症候群リスクと関連するか?~メタ解析

 精神疾患と急性冠症候群との関連を評価したシステマティックレビューおよびメタ解析により、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、不安障害、睡眠障害、うつ病が急性冠症候群のリスク増加と関連し、PTSDと睡眠障害は睡眠の質が心血管疾患アウトカムに潜在的に関与する可能性があることが、カナダ・カルガリー大学のArnav Gupta氏らによって示された。JAMA Psychiatry誌オンライン版2026年1月14日号掲載の報告。 これまでの研究により、精神疾患は従来の心血管リスク因子と関連し、それらを介して急性冠症候群のリスクを高める可能性が示唆されているが、精神疾患ごとのリスクについては十分明らかにはなっていなかった。そこで研究グループは、精神疾患のない患者と比較して、精神疾患を有する患者における急性冠症候群との関連性を評価するためにシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。MEDLINE、EmbaseおよびPubMedを用いて、精神疾患と急性冠症候群との関連性を調査した観察研究またはランダム化試験を抽出した。データはランダム効果メタ解析で統合した。 主な結果は以下のとおり。●25件の研究が包含基準を満たした。参加者は2,204万8,504例で、年齢中央値は48.0歳、男性は1,301万9,897例(59.1%)であった。●PTSD、不安障害、睡眠障害、うつ病は急性冠症候群のリスク増加と関連していた。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 ・PTSD HR:2.73、95%CI:1.94~3.84、p<0.001、エビデンスの確実性:中  ・不安障害 HR:1.63、95%CI:1.40~1.89、p<0.001、エビデンスの確実性:低 ・睡眠障害 HR:1.60、95%CI:1.22~2.10、p<0.001、エビデンスの確実性:低 ・うつ病 HR:1.40、95%CI:1.11~1.78、p=0.01、エビデンスの確実性:非常に低●双極症および精神病性障害は、急性冠症候群のリスク増加との有意な関連は認められなかった。 ・双極症 HR:1.48、95%CI:0.47~4.61、p=0.28、エビデンスの確実性:非常に低 ・精神病性障害 HR:0.97、95%CI:0.01~178.30、p=0.06、エビデンスの確実性:非常に低 研究グループは「本システマティックレビューとメタ解析の結果は、うつ病、不安障害、PTSD、睡眠障害が急性冠症候群のリスク増加と関連していることを示唆している。とくに、PTSDと睡眠障害は急性冠症候群の重要なリスク因子として浮上し、睡眠の質が心血管疾患のアウトカムに潜在的に関与する可能性がある」とまとめた。

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出産年齢が高いほど子供のアレルギーリスクが低い~日本の全国調査

 高齢出産は遺伝的およびエピジェネティックな変化と関連しているものの、小児アレルギーリスクとの関連は不明である。今回、国立成育医療研究センターの山本 貴和子氏らが3万4,942組の母子を対象としたコホート研究で調査したところ、出産時の年齢が高い母親の子供は、幼児期の食物アレルギー、喘鳴、ハウスダスト感作のオッズが低く、高齢出産が幼児期のアレルギー疾患を防御する可能性があることが示唆された。JAMA Network Open誌2026年1月2日号に掲載。 本研究は、全国における集団ベースの多施設共同前向き出生コホート研究で、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータを用いた。2011年1月~2014年3月に日本国内の15センターで参加者を登録し、1歳、2歳、4歳時に追跡調査データを収集した。本解析は親の年齢とアレルギーに関するデータを有する単胎出生児を対象とし、2024年7月8日~2025年2月4日に実施した。ハウスダスト感作はサブコホートで評価した。主要評価項目は、1歳、2歳、4歳における医師診断による食物アレルギー、喘鳴、喘息、湿疹、副次評価項目は、2歳および4歳におけるハウスダスト感作であった。調整オッズ比(OR)は欠損値の多重代入後、多変量ロジスティック回帰を用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・3万4,942組の母子が対象となり、登録時の母親の平均年齢は31.0歳(標準偏差:4.7)、1万7,892人の母親(51.2%)にアレルギー歴があった。・1歳時の食物アレルギー有病率は6.6%(95%信頼区間[CI]:6.4~6.9)で、母親の年齢とともに減少した。・出産時の母親の年齢が25~29歳の子供と比較して、35~39歳で出産した子供(OR:0.79、95%CI:0.70~0.90)および40歳以上で出産した子供(OR:0.59、95%CI:0.44~0.79)のほうが食物アレルギーのオッズが低かった。・両親共に35歳以上で生まれた子供は、4歳時に喘鳴を呈するオッズが低かった(OR:0.89、95%CI:0.82~0.95)。・ハウスダスト感作について、2歳児1,991人と4歳児1,840人を評価した結果、出産時の母親の年齢が高いほどオッズが低かった(30~34歳で出産した子供のOR:0.76、95%CI:0.59~0.98、35~39歳で出産した子供のOR:0.68、95%CI:0.50~0.91)。

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アルコールは認知症を予防するのか?~メタ解析

 アルコール摂取と認知症リスクとの関連を明らかにするため、中国・黒龍江中医薬大学附属第一医院のRen Zhang氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Internal Medicine Journal誌オンライン版2025年12月10日号の報告。 2024年7月22日までに公表された研究をPubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceのデータベースより網羅的に検索した。対象研究は、アルコール摂取と認知症リスクとの関連を評価した研究とした。研究の質の評価には、ニューカッスル・オタワ尺度(NOS)を用いた。アルコール摂取と認知症リスクの関連性は、相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を用いて評価した。アルコール摂取量、地域、年齢に基づいてサブグループ解析を実施した。すべての統計解析は、Stata 15.0を用いて行った。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析では、アルコール摂取とすべての原因による認知症(ACD)リスク、アルツハイマー病(AD)リスク、血管性認知症(VD)リスク、その他の認知症リスクとの間に有意な関連は認められなかった。【ACD】RR:1.03、95%CI:0.84~1.27【AD】RR:0.97、95%CI:0.86~1.08【VD】RR:1.09、95%CI:0.95~1.26【その他の認知症】RR:0.62、95%CI:0.33~1.15・飲酒量別のサブグループ解析では、軽度から中程度の飲酒は、ACD(RR:0.88、95%CI:0.81~0.96)およびAD(RR:0.88、95%CI:0.79~0.97)のリスク低下と関連していた。・しかし、多量の飲酒は、すべての認知症タイプのリスク増加と有意な関連が認められた。【ACD】RR:1.18、95%CI:1.02~1.36【AD】RR:1.29、95%CI:1.21~1.36【VD】RR:1.25、95%CI:1.11~1.40・さらにサブグループ解析を行った結果、軽度から中程度の飲酒による認知症予防効果は、欧州および60~69歳の年齢層でより強いことが示唆された。 著者らは「軽度から中程度の飲酒は認知症を予防することが示唆された。しかし、大量飲酒やアルコール使用障害は認知症のリスクを高める可能性がある」と結論付けている。

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年齢調整Dダイマーカットオフ値、下肢DVTの除外診断に有効/JAMA

 年齢調整Dダイマーカットオフ値(50歳以上の患者では年齢×10μg/L)は、肺塞栓症(PE)が疑われる患者ではDダイマーの診断的有用性を安全性を損なわずに高めるが、下肢深部静脈血栓症(DVT)が疑われる患者に外挿可能かは確立されていない。カナダ・Ottawa Health Research InstituteのGregoire Le Gal氏らは「ADJUST-DVT試験」において、年齢調整Dダイマーカットオフ値は、安全性を低下することなくDVTを除外して診断効率を向上し、不必要な画像検査を低減する可能性があることを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年1月5日号に掲載された。4ヵ国の前向き診断管理アウトカム研究 ADJUST-DVT試験は、4ヵ国(ベルギー、カナダ、フランス、スイス)の27の病院で実施された前向き診断管理アウトカム研究(Swiss National Research Foundationなどの助成を受けた)。 2015年1月~2022年10月に患者を登録した。参加施設の救急診療部を受診し、臨床的に下肢のDVTが疑われた患者3,205例(年齢中央値59歳、女性1,737例[54%])を対象とした。 これらの患者を、Wellsスコアを用いた検査前の臨床的確率、高感度Dダイマー検査、下肢圧迫超音波検査に基づく段階的診断戦略により評価した。DVTが除外された患者は、3ヵ月間の追跡調査を受けた。 主要アウトカムは、従来のカットオフ値(500μg/L)と年齢調整カットオフ値の間のDダイマー値に基づきDVTを除外された患者における、追跡期間中に判定された症候性静脈血栓塞栓症(VTE:下肢DVTまたはPE、あるいはこれら両方)イベントの発生率(失敗率)とした。DVTを除外できる患者が7.4%増加 DVTの臨床的確率が高くない(non-high)、または可能性が低い(unlikely)と判定された2,169例のうち、531例(24.5%、95%信頼区間[CI]:22.7~26.4)はDダイマー値が500μg/L未満であり、161例(7.4%、95%CI:6.4~8.6)は500μg/Lと年齢調整カットオフ値の間であった。 したがって、従来のカットオフ値から年齢調整カットオフ値への転換により、Dダイマー陰性の割合は7.4%(95%CI:6.4~8.6)の絶対的増加を示し、23.3%(95%CI:20.3~26.6)の相対的増加がもたらされた。 初回受診時の遠位型または近位型DVTの有病率は21.8%であった。追跡期間中のVTEイベント発現例はない Dダイマー値が従来のカットオフ値(500μg/L)以上で、年齢調整カットオフ値未満の161例では、追跡期間中にVTEイベントが発現した失敗例(主要アウトカム)を認めなかった(0%、95%CI:0~2.3)。 年齢別のサブグループ解析では、Dダイマー値が500μg/L未満の患者の割合は、18~49歳では59.6%であったが、加齢とともに低下し、75歳以上ではわずか8.7%であった。これに対し、年齢調整カットオフ値を使用すると、75歳以上のDダイマー陰性の割合は26.1%(95%CI:22.0~30.8)に上昇した。 著者は、「高齢者のDダイマー検査の診断的有用性が一般人口と同等レベルに達した。これは、臨床現場では重要な意味を持つ。より多くの患者が画像検査なしで退院可能となり、救急診療部の滞在時間が短縮され、不必要な経験的抗凝固療法が回避される。重要な点は、これらの利点が診断の安全性を損なわずに達成されたことである」「留意点として、これらの結果は、他の血栓症の部位やタイプ(例:上皮、脳、内臓、生殖器の血栓症)には外挿できないことが挙げられる」としている。

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新たなリスクスコアで膵臓がんの再発リスクを予測

 新たに開発された複合リスクスコアが、再発しやすい膵臓がんサバイバーの予測に役立つことが、新たな研究で示唆された。このスコアは、膵臓の腫瘍を外科的に切除され、かつリンパ節転移のない患者に対するフォローアップ医療をより適切に管理するのに役立つ可能性がある。米シダーズ・サイナイ医療センターのCristina Ferrone氏らによるこの研究結果は、「JAMA Surgery」に12月17日掲載された。 Ferrone氏は、「これまでは見逃されがちだった再発リスクの高い患者を特定できる方法が、今や手に入った。これにより、この患者集団に対するケアのあり方を実質的な形で変えることができる」と述べている。 このスコアは、比較的まれで、一般に進行が緩やかな膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine tumors)の患者を対象としている。局所性膵神経内分泌腫瘍では、リンパ節転移が膵切除後の再発を強く予測する因子とされているが、実際には、多くの患者がリンパ節転移のない状態で再発する。そこで研究グループは、リンパ節転移のない膵神経内分泌腫瘍患者770人(平均年齢58.7歳、男性52.6%)を対象に、再発と生存のリスクを予測するツールを開発し、その性能を検証した。 対象患者の10.6%(82人)において、手術から中央値32.4カ月後に、主に肝臓にがんの再発が認められた。多変量解析により、再発と独立して関連する因子として、1)男性(オッズ比2.21)、2)腫瘍サイズが3cm以上(同2.64)、3)世界保健機関(WHO)分類でグレード2以上(同3.70)、4)血管またはリンパ管浸潤(同3.84)、の4つが同定された。Ferrone氏らは、これらの因子を基に、13点満点で再発リスクを評価できるリスクスコアを構築し、内部コホートおよび外部コホートで検証した。その結果、判別能(AUC)はそれぞれ83%、95%と高値を示した。このリスクスコアに基づき、対象を低リスク・中リスク・高リスク群に層別化したところ、リスクが高いほど再発率も上昇し、各群間で有意な差が認められた。 以上のことからFerrone氏は、「現行のガイドラインでは、『一律対応』のアプローチが取られているが、本研究から、全ての患者に同じ強度のサーベイランスが必要なわけではないことが明らかになった。この結果は、現行診療における重要なギャップを埋めるものであり、今後、適切に管理された個別化医療かつ費用対効果の高いケアを実現するためのガイドライン改訂に影響を与えることが期待される」と述べている。

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指先からの採血による血液検査でアルツハイマー病の兆候を正確に評価

 指先から採取した血液を郵送して行う血液検査によって、アルツハイマー病に関連するマーカーを正確に検出できることが、新たな研究で示された。これによって脳の変性疾患であるアルツハイマー病の診断や研究がより容易になる可能性があるという。米バナー・ヘルス、フルイド・バイオマーカー・プログラムのシニアディレクターであるNicholas Ashton氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に1月5日掲載された。 この検査は、指先に針を刺して少量の血液を採取するフィンガー・プリック・テストと呼ばれるもので、リン酸化タウタンパク質(p-tau217)やグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)の血中濃度を正確に測定できるという。これらはいずれもアルツハイマー病に関連する脳損傷の指標である。p-tau217は、アルツハイマー病に特徴的なタウ病理を反映するリン酸化タウタンパク質の一種、GFAPは、中枢神経系の支持細胞であるアストロサイトに由来し、脳損傷や神経疾患の指標となるタンパク質、NfLは脳神経細胞軸索に由来し、神経細胞の損傷や神経変性を反映するタンパク質である。 Ashton氏らは、7つのコホートに属する337人を対象に、指先から採取した少量の血液をカード上で乾燥させたサンプルの解析を行い、そのうちの304人については静脈血漿サンプルを用いた測定結果と比較した。その結果、指先採血サンプル中のp-tau217値は静脈血漿サンプル中のp-tau217値と強く相関し、疾患重症度の進行や脳脊髄液バイオマーカー陽性を良好に反映していた。また、GFAPおよびNfLについても、指先採血サンプルと静脈血漿サンプルの測定値との間に強い相関が認められた。 Ashton氏らは、この簡便な検査法によって遠隔地からも研究に参加できるようになり、大規模なアルツハイマー病研究を実施しやすくなる可能性があるとの期待を示している。同氏らは、この検査が一般の患者に対して臨床で使用できるようになるのは、まだ何年も先のことではあるが、現時点でも、アルツハイマー病研究を加速させる一助になる可能性はあると話している。Ashton氏は、「最終的にわれわれは、症状が現れる前段階でアルツハイマー病を治療する方向へと移行しつつある。この流れが続くのであれば、定期的に医療機関を受診しない適格者を特定するための革新的な方法が必要になるだろう。今回の研究は、その方向性における一つのアプローチを示すものであり、さらなる検証が必要だ」とニュースリリースの中で述べている。 共著者の1人である英エクセター大学のAnne Corbett氏は、「私にとっても最も楽しみなのは、この技術によってバイオマーカー研究の民主化が可能になることだ。誰でも、どこにいても、脳疾患の解明に貢献できる未来に向かって、われわれは進んでいる。これは単なる技術的な進歩ではなく、神経科学研究のあり方を変えるパラダイムシフトである」とニュースリリースの中で話している。 研究グループによると、この方法はパーキンソン病や多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脳損傷などアルツハイマー病以外の脳疾患に関する研究にも役立つ可能性があるという。

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