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獨協医科大学 血液・腫瘍内科【大学医局紹介~がん診療編】

今井 陽一 氏(主任教授)遠矢 嵩 氏(准教授)中村 文美 氏(講師)吉原 さつき 氏(助教)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴獨協医科大学病院は圧倒的症例数と最新鋭の設備で北関東の医療をリードする特定機能病院です。血液・腫瘍内科は広範囲の医療圏から多くの血液疾患の患者さんにご来院いただき、白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫を中心とした造血器腫瘍から再生不良性貧血などの造血障害まで幅広く血液疾患の診断と治療にあたっています。患者さんお一人おひとりに寄り添いながら、キメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T細胞療法)などの最先端治療を積極的に導入するなど最適な血液診療の提供を心掛けています。とくに多発性骨髄腫はCAR-T細胞療法、二重特異性抗体療法を取り入れ最先端の治療を推進しています。臨床研究では、16施設の多施設共同前向き臨床研究を主導して、多発性骨髄腫の維持療法における遺伝子変異・免疫状態の変化を世界に先駆けて解明すべく取り組んでいます。基礎研究は、ゲノム・フローサイトメトリー解析、分子生物学、疾患モデルマウスを駆使して造血器腫瘍の病態解明を目指し、新規治療法の開発を目指しています。このように、私たちの教室は目の前の患者さんの癒しを第一に考えることを礎に、さまざまな形で血液診療の推進に貢献できる医療人の育成を目指しています。日光・那須の素晴らしい景観に囲まれた充実した環境で共に切磋琢磨する仲間をお待ちしております。力を入れている治療/研究テーマ当科では、急性白血病などの造血器腫瘍のほか、再生不良性貧血などの特発性造血障害も含めた幅広い血液疾患に対する診療を行っています。通常の化学療法に加えHLA半合致移植(ハプロ移植)を含む造血幹細胞移植も行い、2025年にはCAR-T細胞療法も開始し、豊富かつ多彩な臨床経験を積むことができます。また、近年は血液疾患診療を行うにも遺伝子変異の理解が必要です。当科では次世代シーケンスを用いた遺伝子変異解析も行っており、経験知と理論的理解の双方に基づいた診療を行っています。研究についても、基礎研究から臨床研究まで幅広く行っています。私個人としては造血器腫瘍の遺伝子変異と病態の関連性や、日和見ウイルス感染症にとくに注目して研究を行っています。学会参加に対する補助もあり、学会発表や論文執筆の機会も多いです。医学生/初期研修医へのメッセージ血液内科に多忙、激務といったイメージをお持ちの方もいるかもしれません。当院ではチーム診療を行っており休日は交代制で十分確保できますし、残業も少なく、無理なく持続可能な形で経験や実績を積むことができると思います。同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力北関東で高度な血液診療を提供できる施設は限られているため、遠方からも患者さんが来院されています。当院に対する期待と信頼を感じ、患者さんに希望を提供できるように、日々取り組んでいます。当科では症例報告や後方視的研究について学会発表をするだけではなく、多施設共同前向き研究の提案や参加をすることで、新たなエビデンスの確立にも貢献しています。基礎研究では、技術的なサポートが充実しているおかげで、診療と研究の両立が可能になっています。医局の雰囲気、魅力若手、ベテランを問わず、よりよい診療を提供するために、助け合っています。治療方針に悩む場合には、定時のカンファレンスだけでなく、随時、相談することが可能となっており、安心して診療ができます。週末・休日は当番制のため、プライベートとの両立が可能です。また、それぞれのキャリアプランに応じて、医局がサポートしてくれます。医学生/初期研修医へのメッセージ血液内科は新規薬剤や細胞療法の導入で、治療成績の向上を実感できるとてもやりがいのある科です。血液内科に興味のある先生方、一緒に頑張ってみませんか?これまでの経歴獨協医科大学病院で初期研修、国立病院機構栃木医療センターで内科専門医プログラムを修了し、2024年4月に獨協医科大学病院血液・腫瘍内科に入局しました。同医局を選んだ理由患者さんの診断から看取りまで伴走したいと思い、総合内科で学んでいましたが、より専門的な知識や技術があれば、治療や終末期といった患者さんの重要な意思決定により深く関われるのではないかと思いました。血液疾患は症状が多彩で診断の面白さがあり、急性期は集中治療の側面もあることから内科の醍醐味だと思いました。また、当医局では臨床医としてもきめ細やかな先生が研究にも従事しており、多面的に疾患や臨床を捉えている姿を見て、こういう医師になりたいと思いました。当院は県内外から多くの患者さんが集まるため血液疾患も多彩であり、他診療科との連携もしやすく、良い環境と考えました。現在学んでいること悪性リンパ腫や急性白血病の入院患者さんを担当し、化学療法について学んでいます。大学院進学予定であり、今は臨床研究の準備をしています。獨協医科大学 血液・腫瘍内科住所〒321-029 栃木県下都賀郡壬生町北小林880問い合わせ先ketsueki@dokkyomed.ac.jp医局ホームページ獨協医科大学 血液・腫瘍内科専門医取得実績のある学会日本内科学会(認定内科医・総合内科専門医)日本血液学会日本造血・免疫細胞療法学会日本輸血・細胞治療学会日本感染症学会日本臨床腫瘍学会研修プログラムの特徴(1)幅広い症例と専門的な指導急性白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など多様な疾患を経験でき、造血幹細胞移植やCAR-T細胞・二重特異性抗体療法など最先端の治療にも携わることができます。専門医の手厚い指導のもと、診断から治療まで実践的に学べる環境です。 (2)充実した設備と豊富な実践機会無菌室を備えた移植ユニットや最新の検査・治療設備を活用し、骨髄穿刺や腰椎穿刺などの基本手技から移植管理まで幅広く経験できます。学会発表や研究のサポートも整い、学術的な成長も後押しします。 (3)働きやすい環境とキャリア支援都市部の利便性を持ちながら、地方ならではの温かい雰囲気の中で研修でき、研修医一人ひとりに合った指導を受けられます。計画的なローテーションで血液内科の基礎をしっかり固め、専門医取得や大学院進学、海外研修など多様なキャリアを支援します。詳細はこちら

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平均4ヵ月の交際期間、見るべきポイントは?【アラサー女医の婚活カルテ】第10回

アラサー内科医のこん野かつ美です☆前々回・前回は、結婚相談所(以下、相談所)でのお見合いで遭遇した、“クセ強め”なお相手たちとの面白エピソードをお届けしました。お楽しみいただけたでしょうか?今回は、相談所で「仮交際」や「真剣交際」をする際に気を付けると良いことを、筆者なりに分析してみました。それではどうぞ。相談所での交際期間は「平均4ヵ月」!相談所の婚活は「お見合い→仮交際(複数人との同時交際OK)→真剣交際(1対1での交際)→成婚(プロポーズ)」という流れで進みます(詳しくは第3回を参照)。大手連盟のIBJが発行した『2023年度版成婚白書』によると、同連盟での相談所婚活において、成婚者は男女とも平均交際期間「4ヵ月程度」という短期間で結婚までの意思決定をしており、これは一般的な平均交際期間「4.3年」のわずか12分の1だそうです1)。このようにきわめて短い交際期間の中で、自分とお相手の結婚観を擦り合わせて、「このお相手は自分に合うかどうか」を見定める必要があるわけです。私自身は、相談所での活動期間中、夫と出会うまでに5~6人ほどの方と交際しました。その経験を踏まえて、仮交際・真剣交際の間に確認しておくべきポイントをギュッとまとめてご紹介したいと思います。仮交際の間に確認すべきこと複数人との同時交際OKな「仮交際」から、1対1の「真剣交際」に進むということは、すなわち、真剣交際のお相手ただ1人を残して、ほかの候補者を“切り捨てる”ということです。お相手候補を一度切り捨ててしまったら、復縁は(絶対にできないわけではないものの)困難なので、これはそれなりにリスクを伴います。夫と出会う前、何人かのお相手から真剣交際の申し込みを頂いたのですが、その中に「僕はこん野さんと真剣交際に進みたいのですが、こん野さんのお返事を聞く前に、大切なお話があります」と、改まった様子で話してくださった方がいました。詳細は伏せますが、私はこの話を聞いたうえで、よく考えた末に真剣交際をお断りする決断をしました。結婚のご縁はなかったものの、デリケートな問題について話してくださったことに感謝していますし、きっと私のほかに素敵な方に巡り会われただろうと思います。お互いに貴重な時間と機会を無駄にしないために、将来の結婚生活に関わる事柄については、このように真剣交際に進む前のタイミングで申告・確認しておくことが必要でしょう(もちろん、お相手と一緒に過ごしていて楽しい、心地よい、ということは大前提です)。将来の結婚生活に関わる事柄というのは、具体的には、以下のようなことです。・子供を望むかどうか結婚を考えるうえで、家族計画のビジョンを共有することは欠かせません。双方が子供を望み、かつ双方が合意するならば、男女ともにこの段階でいわゆる「ブライダルチェック」を受けるのも1つの手です(これは真剣交際に進んだ後でもよいのかもしれませんが)。ただし、医師の皆さまならよくご存じのとおり、不妊の原因は多岐にわたるため、一般的なブライダルチェックの結果に問題がないからといって、必ず子供を授かるという保証はありません。それもあって、私も夫も検査を受けませんでした。また、ブライダルチェックを受けるのならば、仮に結果に問題があった場合はどうするのか(それでも交際継続するのか、別れるのか)という点は、検査を受ける“前に”2人でよく話し合っておく必要があると思います。なお、お見合いや初回デートのタイミングで、男性側から「子供は何人欲しいか」という話題を出されたことが何度かありました。あくまで私の個人的な考えですが、まだお互いのことをよく知らない段階で性交渉を連想させるような話をすることには、抵抗感を覚えました。避けて通ることのできない話題ではありますが、ある程度信頼関係を築いた後のほうが無難だと思います。・宗教的なことお相手本人が問題なかったとしても、家族が新興宗教などに入信しているような場合、将来的に大きな問題に発展する恐れがあります。・持病の有無・経済的な事情借金や奨学金返済義務の有無、貯金があるかどうかなどは、家庭を築いていくうえで重要な要素です。お相手の金銭感覚を推し量る指標にもなります。私の場合、夫と真剣交際に進む前にお互いの預金通帳を見せ合いました。真剣交際で確認すべきこと 前項に書いたような“条件的な部分”の擦り合わせができたら、真剣交際ではその方の“人間力”をより深く知ることが大切だというのが私の持論です。私が思うに、学歴や年収といった客観的な“スペック”の面では、そんじょそこらの男性(←失礼!)は女性医師にはなかなかかなわないでしょう。だからこそ、誤解を恐れずに言えば、学歴や年収が自分よりも“格下”のお相手と結婚したときに、長い結婚生活の中で、お相手のことを知らず知らずのうちに“見下してしまう”ことが起こりうるのではないか、と思います。これは双方にとってきわめて不幸なことです。そのため、私が婚活をしていたころは、お相手の「ここは尊敬できる/自分よりも優れている」という美点(つまり“人間力”)を見つけたい、と考えながら活動していました。たとえば家事能力が高い/やる気がある女性医師の“スペック”の高さに対して卑屈にならず、フラットに接してくれる(でも尊敬はしてくれる)波長がばっちり合う相手の立場に立ってものを考えられる(将来妊娠・出産する場合、女性の身体に掛かる負担をおもんぱかることができる)などです。余談ですが、夫の美点は「自分から“折れる”ことができる」ことです。結婚生活の中でぶつかったことは何度かあったものの、夫が声を荒げる場面をほとんど見たことがありません。私はまあまあ気が強いほうなのですが(婚活中は少し猫をかぶっていたかもしれません[笑])、夫と冷静に話し合いができるからこそ、相談所婚活の短い交際期間でも結婚に踏み切れましたし、今でも心地よい関係が続いているのだと思います。いかがでしたか?次回は、忙しい医師にとって悩みの種となる“婚活と仕事の両立”について、筆者なりのコツをご紹介したいと思います。お楽しみに。参考1)成婚白書/IBJ

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幼少期の好奇心が成人期のうつ病と強く関連

 うつ病は世界的な公衆衛生上の大きな問題であるが、これまでの研究で、幼少期の性格が成人期のうつ病に及ぼす影響については、ほとんど調査されていない。中国・吉林大学のChengbin Zheng氏らは、成人による自己評価の観点から、幼少期の好奇心が成人期のうつ病に及ぼす影響およびそのメカニズムの性差について調査した。Journal of Psychiatric Research誌2025年3月号の報告。 2020年の中国家庭追跡調査(China Family Panel Study)より抽出した成人1万7,162人のデータを用い、幼少期の好奇心、将来に対する自信、主観的な社会的地位、成人期のうつ病を評価した。PROCESS 4.1ソフトウエアプログラムを用いて、調整済み仲介モデルを分析した。 主な結果は以下のとおり。・幼少期の好奇心は、成人期のうつ病と強い関連が認められた。・男性では、将来に対する自信が、幼少期の好奇心と成人期のうつ病との関連を部分的に仲介していた。・女性では、将来に対する自信が、幼少期の好奇心と成人期のうつ病との関連を完全に仲介していた。・主観的な社会的地位は、将来に対する自信と成人期のうつ病との関連を緩和することが示唆された。 著者らは、「幼少期の好奇心は成人期のうつ病に対する保護因子であると考えられる。このプロセスにおいて将来に対する自信は重要な媒介因子の役割を担っており、その影響は男女間で異なることが示唆された。さらに、主観的な社会的地位が高い人と比べて、それが低い人では、将来に対する自信と成人期のうつ病との関連に及ぶ影響がより大きいことが明らかとなった」としている。

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CAR-T naive再発・難治性B細胞リンパ腫におけるエプコリタマブの有効性(EPCORE NHL-1)/日本臨床腫瘍学会

 抗CD3xCD20二重特異性抗体エプコリタマブは第II相EPCORE NHL-1試験で、再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫(R/R LBCL)患者に対する深く持続的な効果と管理可能な安全性を示している。同試験では、すでにCAR-T治療歴がある患者における有効性が示されている(全奏効割合[ORR]54%、完全奏効[CR]割合34%)。第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)では、CAR-T未使用(CAR-T naive)集団のサブ分析をミシガン大学のYasmin H. Karini氏が報告した。対象:2ライン以上の前治療歴を有するCD20陽性R/R LBCL 介入:エプコリタマブ48mg(28日サイクル)1~3サイクル毎週、4〜9サイクル 2週ごと、 10サイクル以降4週ごと進行(PD)まで投与評価項目:[主要評価項目]Lugano分類によるORR[副次評価項目]CR割合、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、最小残存疾患(MRD)陰性割合、安全性/忍容性 主な結果は以下のとおり。・CAR-T naive患者(n=96)の年齢中央値は69歳、3ライン以上の治療歴が52%を占めた。・追跡中央値37.3ヵ月での治療継続は96例中13例(14%)、治療中止は83例(86%)であった。治療中止理由は進行が54%、有害事象が23%を占めた。・ORRは61%、CR割合は45%であった。・全体のPFS中央値は4.3ヵ月、CR症例では33.3ヵ月であった。・全体のOS中央値は15.4ヵ月、CR症例は未到達であった。・MRD評価可能な患者74例中33例(45%)がMRD陰性であった。・治療中に発現した有害事象(TEAE)で頻度の高いものは、サイトカイン放出症候群(CRS)(60%)、下痢(24%)、発熱(23%)、疲労感(22%)、好中球減少(22%)、注射部位反応(21%)で、治療中止に至ったTEAEは23%であった。・CRSは56%がGrade1〜2であった。CRS発現日の中央値は20日、第1サイクルのDay15までに多くが発現していた。 エプコリタマブは、CAR-T naiveのR/R LBCL患者に対し深く、耐久性のある抗腫瘍効果と管理可能な安全性を示した。今回のサブ解析の結果を踏まえ、エプコリタマブはCAR-Tの前および後に安全かつ効果的に投与できると Karini氏は述べた。

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医学生/初期研修医時代に戻れるなら「直美」に進みたい?/医師1,000人アンケート

 初期研修を終えてすぐ、保険診療を経験せずに自由診療である美容医療業界に直接進む「直美(ちょくび)」の医師が増えている。診療科の医師偏在や医局の人材獲得が課題となっているなか、保険診療の医師は「直美」をどのように考えているのかを調査するため、CareNet.comでは会員医師1,024人を対象に「直美」に関するアンケートを行った(実施:2025年2月12日)。年代が上がるほど問題と考える医師が多い Q1では、「直美」の増加を日本の医療における問題と考えているかどうかを聞いた(単一回答)。全体では、「非常に問題と考えている」が35.4%、「どちらかというと問題と考えている」が43.2%、「どちらかというと問題とは考えていない」が13.9%、「まったく問題とは考えていない」が7.5%であり、大多数の医師は問題と捉えていた。 年代別の「非常に/どちらかというと問題と考えている」および「どちらかというと/まったく問題とは考えていない」の割合は、20代が75.7%vs.24.4%、30代が78.4%vs.21.5%、40代が78.6%vs.21.4%、50代が80.3%vs.19.7%、60代以上が80.0%vs.20.0%であり、年代が上がるほどおおむね問題と捉える医師が多い傾向にあった。医療界の最大の課題は「給与が低い」 Q2では、「直美」の増加の背景にある医療界の課題としてとくに大きいものを選択式(3つまで)で聞いた。全体では「給与が低い」が最も多く、「労働時間が長い」「休みが取れない」「診療報酬制度の限界」「業務量が多い」「責任が重い」などと続いた。 若手医師では「給与が低い」「労働時間が長い」「休みが取れない」がとくに多かったが、ベテラン医師では「診療報酬制度の限界」「業務量が多い」「責任が重い」という回答も多くばらつきがみられた。なお、50代と60代以上では若手医師よりも「キャリア形成や人間関係が大変」の回答が目立ち、これまでのご苦労がうかがえた。若い世代ほど「直美に進みたい」が多い Q3では、もし医学生/初期研修医時代に戻れるなら「直美」に進みたいと思うかどうかを聞いた(単一回答)。全体では、「進みたい」が10.8%、「進みたくない」が89.2%と大差がついた。 年代別では、20代が18.4%vs.81.6%、30代が13.2%vs.86.8%、40代が10.7%vs.89.3%、50代が5.3%vs.94.7%、60代以上が6.8%vs.93.2%であり、Q1と同様に年代が上がるほど「直美」を懸念していることが示唆された。給料の良さvs.お金のためではない Q4.では上記Q3の理由をフリーコメントで聞いた。「直美」に進みたい派の意見で多かったのはやはり給料の良さなど圧倒的にお金に関するものであったが、進みたくない派の意見としても「医師を志したのはお金のためではない」「金銭だけではない」などお金への言及が多く、直美=高給という認識が根底にあることが浮き彫りになった。そのほかの進みたくない派の意見は、「理想とする医師像ではない」「患者さんの命を救いたい」「命に関わる診療科で働きたい」「国公立大学だったので多くの税金を使って医師にさせてもらったのに、その技術・知識をあまり社会に還元できない」など志の高いコメントが寄せられたほか、「美容医療の道に進むとしても、ある程度医療スキルを磨いてからのほうがよい」「研修医のときの知識だけでは不十分だと思う」など知識・経験不足を危惧するコメントや、「美容関係はレッドオーシャンで続けるのは難しい」「その先のキャリア形成が難しい」など美容業界に対する懸念も寄せられた。 Q5ではフリーコメントとして、「直美」に対するご意見やご感想、保険診療でこそ得られたご経験、若手医師へのアドバイスなどを聞いた。「直美」や美容業界に関するご意見(抜粋)・自分の好きな道に本気で取り組むことが一番大事。・直美だろうと保険診療だろうと、真剣に極めようと思うくらい頑張れば問題ないと思う。・美容に進むのはある程度皮膚科、形成外科領域を専門で研修してからに限るのがよいのではないか。・まずは基本的修練を積むべきで、形成外科的能力がないとリスク評価すら難しい。・自分がやりたいことに進むのが一番と思うが、若い時期、研修期間しか得られないことも多いのでいろいろ経験してから選択していくこともよいと思う。・美容に関する法改正や需要減などリスクも抱えていることを承知の上であれば問題ない。・直美を選択したら保険診療の医師に変更するのはかなり労力が必要と思う。・最初に苦労するのはどの仕事も同じ。まずは医師という仕事の奥深さを一度は知ってから将来を考えてもよい。・中高生の学習塾で成績の良い子には医学部受験を勧めて、塾の実績とするような社会状況も、動機付けがなされていない医学生を増やしている一因ではないかと思う。・美容外科でのトラブルの治療のために受診する人も多く、美容外科で最後まで責任を取って診るべき。・保険診療以外で生じた医療事故については保険制度を利用しないで対応してほしい。保険診療、制度に関するご意見(抜粋)・若いうちは専門の診療科について経験を積んだほうよいと思う。・ひとまずどんな患者でも診察できるというのは意外に大きい。・ある程度の臨床経験が医師としても人間としても成長させてくれると思う。・どの職種も修行している間は給与が低い。学びながら高給取りなんてありえない。卒後10年は給与低くても当然。卒後一桁は何もできないに等しい。・専門医取得までは低賃金、長時間労働、休日返上が必要となるが、取得したら見える景色が変わる。・人命救助の経験は代え難い。・保険診療点数の低さがそもそもの根源と思う。・直美が悪いのでなく、直美を選ぶ人が増えるくらい保険診療の先行きが暗いことが問題と感じる。・報酬と働き方を変えない限り、保険診療に従事する若手は少なくなる一方だと考える。・行きたければ自由にどうぞとは思うが、国の政策としてなんらかのペナルティーをもうけるべき。・地域枠の医師の直美が存在する件に関しては、約束が守れていないのではないかと考える。・美容外科は自由診療なので、医師の資格とは別の資格を創設すべき。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。「直美」の増加の背景にある医療界の課題は?/医師1,000人アンケート

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固形がん患者における初回治療時CGP検査実施の有用性(UPFRONT)/日本臨床腫瘍学会

 本邦における包括的ゲノムプロファイリング検査(CGP)は、「標準治療がない、または局所進行もしくは転移が認められ標準治療が終了となった(見込みを含む)」固形がん患者に対して生涯一度に限り保険適用となる。米国では、StageIII以上の固形がんでのFDA承認CGPに対し、治療ラインに制限なく全国的な保険償還がなされており、開発中の新薬や治験へのアクセスを考慮すると、早期に遺伝子情報を把握する意義は今後さらに増大すると考えられる。本邦の固形がん患者を対象に、コンパニオン診断薬(CDx)に加えて全身治療前にCGPを実施する実現性と有用性を評価することを目的に実施された、多施設共同単群非盲検医師主導臨床試験(NCCH1908、UPFRONT試験)の結果を、国立がん研究センター中央病院/慶應義塾大学の水野 孝昭氏が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。・対象:16歳以上の治癒切除不能または再発病変を有する非小細胞肺がん(EGFR、ALK、ROS1、BRAFのドライバー遺伝子変異なし)、トリプルネガティブ乳がん、胃がん、大腸がん、膵がん、胆道がん患者(前治療歴なし[術前術後補助化学療法は許容]、ECOG PS 0/1、CGP検査に提出可能な腫瘍検体・末梢血検体を有する)・組み入れ患者の治療の流れ:CGP(医療保険の先進医療特約または自費)→標準治療±分子標的治療(→[保険適用のCGP]→分子標的治療)※1・評価項目:[主要評価項目]actionableな遺伝子異常※2に対応する分子標的薬による治療を受ける患者の割合[重要な副次評価項目]全生存期間(OS)、actionableな遺伝子異常を有する患者の割合、actionableな遺伝子異常に対する標的治療における無増悪生存期間(PFS)など・追跡期間:24ヵ月(データカットオフ:2024年3月)※1:保険適用のCGPを受けるかどうかは任意で、本研究では規定なし※2:actionableな遺伝子異常=厚生労働省「第2回がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議(2019年3月8日)」で示された「資料3-4 治療効果に関するエビデンスレベル分類案」1)におけるエビデンスレベルD以上 主な結果は以下のとおり。・2020年6月~2022年3月に201例が登録され、192例がCGPを受けた。・201例の患者背景は、年齢中央値が62歳(範囲:19~83)、男性が54.2%、がん種は膵がん27.9%/大腸がん24.9%/非小細胞肺がん15.9%/胆道がん11.9%/胃がん8.5%/乳がん6.5%で、術後再発症例は32.8%であった。・最も多く検出された遺伝子異常はTP53(≧60%)で、KRAS(≧40%)、APC、SMAD4、ARID1A(いずれも≧10%)などが続いた。また、ERBB2、BRAF、EGFRなど薬剤に直結する遺伝子異常も、いずれも5%未満ではあるが検出された。・actionableな遺伝子異常(エビデンスレベルA~D)を有する患者は110例(57.3%)、治療候補薬の推奨あり(エビデンスレベルE以下も含む)の患者は142例(74.0%)であった。・actionableな遺伝子異常を有する患者の割合をがん種別にみると、膵がん67.9%/非小細胞肺がん65.6%/胆道がん62.5%/大腸がん48.0%/乳がん46.2%/胃がん35.3%であった。・actionableな遺伝子異常に対応する分子標的薬による治療を受けた患者は14例(7.3%)で、がん種ごとにみると非小細胞肺がん18.8%/膵がん8.9%/胆道がん4.2%/大腸がん4.0%、乳がんおよび大腸がんは0%であった。なお、14例中8例が治験的治療を受けた。・actionableな遺伝子異常に対する標的治療におけるPFS中央値は3.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:1.1~5.8)、奏効率(ORR)は28.6%であった。とくに非小細胞がん患者においてPFSが良好な傾向がみられ、6例中4例がPR(部分奏効)であった。・全体集団のOS中央値は24.3ヵ月(95%CI:20.2~30.9)であった。・治療候補薬の推奨があった患者における分子標的治療を受けなかった理由としては、標準治療中の状態悪化が57.0%を占め、32.8%が標準治療中であった。 水野氏は今回の結果について、初回全身治療時にCGPを受けた固形がん患者のうち、actionableな遺伝子異常に基づく分子標的治療を受けた患者の割合は7.3%であり、本研究実施期間中においては限定的であったが、ドライバー遺伝子陽性症例を除く非小細胞肺がん患者で比較的良好な結果が得られたことから、特定の背景を有する患者においてはCGP早期実施による利益が得られる可能性があるとまとめている。 講演後の質疑応答において、司会を務めた京都大学の武藤 学氏は、今回の7.3%という結果にはCGPをCDxとして使用したケースは含まれず、治験的治療やCDxがカバーできない治療に進んだ症例が該当するという点に注意が必要と指摘。そのうえで、今後は治験へのアクセスのしやすさの向上、継続した対象者への治験提案、治験の数を増やすなどの方策を練るべきではないかとした。 本試験に関しては、同時期に標準治療を受けた固形がん患者130例を登録した観察研究が並行して実施されており、今後対照群として比較解析を行うことが計画されている。また、本試験のサブスタディとして、CGPに対する十分な組織のない患者を対象としたUpfront Liquid study、費用対効果分析やQOL評価を行うためのアンケート調査も実施されている。

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高齢乳がん患者へのアベマシクリブ、リアルワールドでの治療実態/日本臨床腫瘍学会

 日本においてアベマシクリブによる治療を受けた、転移を有するHR+/HER2-乳がん患者の全体集団および高齢者集団(65歳以上)の患者特性、治療パターン、転帰をレトロスペクティブに解析した結果、両集団の治療開始から中止までの期間(TTD)や減量が必要となった割合は同等であり、高齢者でも適切な用量であればアベマシクリブによる治療は実施可能であることを、国立がん研究センター中央病院の下井 辰徳氏が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。 本調査では、メディカル・データ・ビジョンのデータベースの非識別化データを解析した。2018年11月~2023年5月に最初のCDK4/6阻害薬としてアベマシクリブ(+内分泌療法)を投与された転移を有するHR+/HER2-乳がん患者を同定した。全体集団および高齢者集団のTTDなどを、カプランマイヤー法を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。●最初のCDK4/6阻害薬としてアベマシクリブを投与された転移を有するHR+/HER2-乳がん患者3,669例のうち、1,681例(45.8%)が65歳以上であった。年齢中央値は全体集団63歳(範囲:21~97)、高齢者集団72歳(65~97)であった。骨・骨髄転移があったのは60.1%および56.3%、内臓転移があったのは54.9%および55.9%であった。高齢者集団では併存疾患を有している割合が高かった。●高齢者集団のアベマシクリブレジメンで最も多かったのはアベマシクリブ+フルベストラント(55.0%)で、アベマシクリブ+レトロゾール(31.9%)、アベマシクリブ+アナストロゾール(13.0%)と続き、全体集団と同等であった。●初回アベマシクリブ療法のTTD中央値は全体集団と高齢者集団で類似していた(以下、括弧内は95%信頼区間)。 ・全体集団 13.1ヵ月(12.5~14.0) ・高齢者集団 12.8ヵ月(11.4~13.6)●高齢者集団のうち、75歳以上の場合はTTDが短かった。 ・65~69歳 13.2ヵ月(11.4~15.3) ・70~74歳 13.2ヵ月(11.0~15.2) ・75歳以上 11.2ヵ月(9.8~13.0)●内臓転移がある場合もTTDが短かった。 ・内臓転移あり 11.5ヵ月(10.3~13.0) ・内臓転移なし 14.0ヵ月(12.2~15.4)●初回アベマシクリブ療法から最後の乳がん治療のTTDは、年齢にかかわらず同等であった。 ・全体集団 42.1ヵ月(40.5~45.7) ・高齢者集団 40.2ヵ月(37.0~44.0)●化学療法開始までの期間は、高齢者集団のほうが長かった。 ・全体集団 30.6ヵ月(28.8~33.1) ・高齢者集団 34.8ヵ月(30.2~39.5)●アベマシクリブの初回投与を承認用量(300mg/日)で実施していた割合は、全体集団79.3%、高齢者集団69.6%(65~69歳79.9%、70~74歳72.9%、75歳以上56.8%)であった。治療中に1段階以上減量したのは、全体集団55.7%、高齢者集団58.3%で、初回の減量までの期間は高齢者集団で短かった。

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口腔疾患、過去30年間の有病率と負荷の変化/Lancet

 世界保健機関(WHO)の「口腔保健に関する世界戦略および行動計画(Global Oral Health Action Plan)2023-2030」では、2030年までに口腔疾患の有病率を10%減らすという包括的な世界目標を設定している。この目標に向けた進捗状況をモニタリングするためには、口腔疾患の世界的な負荷に関する確実性の高い最新の情報が最も重要になる。英国・Royal London Dental HospitalのEduardo Bernabe氏らGBD 2021 Oral Disorders Collaboratorsは、1990~2021年の30年間の世界的な口腔疾患の負荷状況をシステマティック解析とメタ解析にて調べ、負荷状況の変化はわずかで、口腔疾患制御のための過去および現行の取り組みは成功しておらず、新たなアプローチが求められていることを示した。著者は、「多くの国が、口腔疾患の新たな症例の発生制御と口腔保健に対する膨大な満たされないニーズに取り組むという、2つの課題に直面している」と述べている。Lancet誌2025年3月15日号掲載の報告。未治療う蝕、歯周炎、口腔がんなどの1990~2021年の有病率、DALYsを推定 研究グループは、システマティック解析により、WHO規定の地域・国レベルにおける未治療う蝕、重度の歯周炎、無歯顎、その他の口腔疾患、口唇・口腔がんおよび口唇口蓋裂の、1990~2021年の有病率および障害調整生存年(DALYs)を推定した。 疫学調査、住民ベースのレジストリおよび人口動態統計からデータを抽出し、DisMod-MR 2.1(本報告がベースとしたGlobal Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study[GBD]解析用に開発されたベイズメタ回帰モデリングツール)を用いてモデル化し、口腔疾患の有病率、罹患率、寛解率および死亡率の推定値の一貫性を確保した。 推定DALYsは、早期死亡による損失生存年数(YLLs)と障害生存年数(YLDs)の合計とした。YLDsは、推定有病率、口腔疾患の後遺症(障害の程度)および後遺症の期間を乗算して推定した。すべての口腔疾患がYLDsに結びついたが、YLLにも結びついたのは口唇・口腔がんおよび口唇口蓋裂のみであった。95%不確実性区間(UI)は、事後分布の1,000描出値の25th~975thのメトリック範囲で生成した。変化はほとんどなし、最も高負荷は無歯顎、重度の歯周炎、口唇・口腔がん 2021年における主要口腔疾患(未治療う蝕、重度の歯周炎、無歯顎、その他の口腔疾患)の、世界統合の年齢標準化有病率は10万人当たり4万5,900(95%UI:4万2,300~4万9,800)で、世界で36億9,000万人(34億~40億)が罹患していた。 最も多くみられた口腔疾患は、未治療の永久歯う蝕(年齢標準化有病率は10万人当たり2万7,500[95%UI:2万4,000~3万2,000])と重度の歯周炎(1万2,500[1万500~1万4,500])であった。 無歯顎、重度の歯周炎、口唇・口腔がんは、DALYsと年齢標準化DALY比によって最も高負荷であることが明らかにされた。また、1990~2021年の傾向から、有病率と負荷の変化(上昇または低下)は比較的小さいことが明らかになった。 有病率とDALYsの上昇はすべての口腔疾患で認められたが、未治療の乳歯う蝕の有病率あるいはDALYsに変化が認められず、口唇口蓋裂はDALYsの-68.3%(95%UI:-79.3~-46.5)が認められた。また、未治療の永久歯う蝕と無歯顎の年齢標準化有病率およびDALYsはいずれも低下していたが、未治療の乳歯う蝕と重度の歯周炎はいずれも変化がみられなかった。口唇・口腔がんは、有病率は上昇したがDALYsは変化がみられず、口唇口蓋裂は、有病率は変化がみられなかったがDALYsは低下していた。 WHO地域別にみると、アフリカ地域と東地中海地域が、ほとんどの口腔疾患の有病率とDALYsの上昇が最も大きかった一方、欧州地域は上昇が最も小さいか変化なしであった。欧州地域は、未治療の乳歯う蝕(-9.88%[95%UI:-12.6~-6.71])と永久歯う蝕(-5.94%[-8.38~-3.62])の両方の年齢標準化有病率が低下した唯一の地域であった。 重度の歯周炎の有病率とDALYsは、アフリカ地域で低下した、無歯顎の有病率とDALYsは、アフリカ地域、南東アジア地域、西太平洋地域で低下した。さらに、口唇・口腔がんは、欧州地域と南北アメリカ地域ではDALYsが低下し、口唇口蓋裂のDALYsはすべての地域で低下していた。 著者は、「結果は、過去30年間の対策は不十分であり、住民の口腔保健にほとんど変化がなかったことを示すものであった。将来的に、大規模かつ影響力のある対策を講じない限り、この傾向は続くだろう」と述べている。

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細菌性膣症、男性パートナーの治療で再発予防/NEJM

 細菌性膣症は生殖可能年齢の女性の約3分の1に認められ、再発は一般的である。細菌性膣症の原因菌のパートナー間での感染エビデンスは、半面で男性パートナーへの治療が治癒を高めることも示唆することから、オーストラリア・モナシュ大学のLenka A. Vodstrcil氏らStepUp Teamは、一夫一婦関係にあるカップルを対象とした非盲検無作為化比較試験を行い、細菌性膣症の女性への治療に加えて、男性パートナーに対して経口および局所抗菌薬治療を行うことにより、12週間以内の細菌性膣症の再発率が標準治療と比べて低下したことを報告した。NEJM誌2025年3月6日号掲載の報告。一夫一婦関係のカップルをパートナー治療群または女性のみ治療群に無作為化 試験は2019年4月~2023年11月に、オーストラリアの3州で展開する2つの性の健康サービス(sexual health services)および3つの家族計画サービス(family-planning services)の施設で行われた。 一夫一婦関係にあるカップルを1対1の割合でパートナー治療群(女性とその男性パートナーに治療)または対照群(女性のみに治療)に無作為に割り付けた。パートナー治療群では、女性は初回治療として推奨される抗菌薬の投与を受け、男性パートナーは経口および局所の抗菌薬治療(メトロニダゾール400mg錠の投与および2%クリンダマイシン クリームの陰茎皮膚への塗布、いずれも1日2回を7日間)を受けた。対照群では、基材を問わずクリーム塗布による陰茎部の細菌叢構成の変化への懸念から、女性にのみ初回抗菌薬治療を行った。再発の絶対リスク差、パートナー治療群が-2.6例/人年で有意差 81組のカップルがパートナー治療群に、83組のカップルが対照群に無作為化された。 試験はデータおよび安全性モニタリング委員会の判断によって、150組が12週の追跡調査完了後に、女性のみの治療が女性および男性パートナー両者への治療に対して劣性であったため中止された。 修正ITT集団において、12週間以内の細菌性腟症の再発はパートナー治療群の女性で24/69例(35%、再発率1.6例/人年[95%信頼区間[CI]:1.1~2.4])、対照群の女性で43/68例(63%、4.2例/人年[3.2~5.7])であった。再発の絶対リスク差は-2.6例/人年(95%CI:-4.0~-1.2)であった(p<0.001)。 治療を受けた男性における有害事象は、悪心、頭痛、金属味などが報告された。

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慢性リンパ性白血病、原発性マクログロブリン血症およびリンパ形質細胞リンパ腫に対してザヌブルチニブ発売/BeiGene Japan

 BeiGene Japanは、2025年3月19日、未治療および再発・難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)、未治療および再発・難治性の原発性マクログロブリン血症およびリンパ形質細胞リンパ腫に対して、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬ザヌブルチニブ(商品名:ブルキンザ)を発売したと発表した。 本剤は、未治療の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)患者を対象としたSEQUOIA試験、再発・難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)患者を対象としたALPINE試験、未治療および再発・難治性の原発性マクログロブリン血症およびリンパ形質細胞リンパ腫患者を対象としたASPEN試験の3つの主要な第III相試験に基づき、2024年12月27日に承認されている。 本剤の世界的な臨床開発プログラムには、30の国と地域で35以上の試験に登録された約6千例の患者が含まれており、70の国と地域で承認され、10万例以上が治療を受けているという。<製品概要>販売名:ブルキンザカプセル80mg一般名:ザヌブルチニブ効能・効果:慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)、原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫用法・用量:通常、成人にはザヌブルチニブとして1回160mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。承認日:2024年12月27日発売年月日:2025年3月19 日薬価:6,636.10円製造販売元:BeiGene Japan合同会社

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第3回 加速する高齢化と揺らぐ老年医療──迫り来る「専門医不足」の波

近年、こちらアメリカでも高齢化が急速に進んでおり、2020年の65歳以上の人口は5,580万人(総人口の16.8%)でしたが、2050年までにおよそ8,200万人(22.8%)に達すると予測されています1)。こうした状況下で注目されるのが、高齢者の医療を専門とする「老年医学」の医師不足です。今回はそんな問題を取り上げた記事をご紹介します。アメリカが直面する深刻な高齢化の現実Business Insiderの記事によれば、老年医学を専門とする医師の数は、2000年代初頭では1万人に上ったのが、今では約7,400人にまで減少しているといいます2)。その一方、今後の需要を考えれば、3万人が必要になると推定されており、現在の医療システムはすでに歪みを来し始めています。多くの病院や診療所が、限られたマンパワーの中で数多くの高齢患者を抱え、予約待ちリストが数ヵ月単位で埋まってしまうところも珍しくありません。著者の私自身、そうした現場で働いていて、身近に感じている問題ですが、このような事態は、老年医療現場の負担を今後もますます増大させ、ケアの質低下を招きかねない大きな課題となっています。敬遠される老年医学の専門性と複雑さ老年医学の道を選ぶ医師が減っている背景には、複雑な高齢者医療の現場があると考えられます。高齢者は複数の慢性疾患を同時に抱えることが多く、服薬管理だけでも薬が20種類近くに及ぶケースもあるため、医師には高い総合診療能力が求められます。にもかかわらず、報酬水準や社会的評価の面で老年医学は決して高待遇とはいえず、若い医師は循環器内科や腫瘍内科など、より専門性が高く高収入が見込まれる分野に進む傾向があります。さらに、高齢者医療を敬遠する理由として、現場での負担感や繁忙度の高さを挙げる声も少なくありません。実際、多くの医療現場でマンパワーやベッド数が圧迫され、介護施設ではスタッフ不足による新規入所者の受け入れ制限も行われている状況が報告されています。日本はさらに深刻この話題は、当然日本にとっても対岸の火事ではありません。現状の医療システムで十分高齢者医療は成立していると思われる方も少なくないかもしれませんが、本当に最適な医療が行われているのかには疑問が残ります。日本における高齢者人口は2024年時点で約3,625万人(総人口の29.3%)に上り、日本は主要国で最も高齢化率が高い国です3)。また、今後も高齢化率の上昇は続く見通しで、2040年には高齢化率34.8%と推計されています 。日本の高齢者人口は今後数十年にわたり高水準を維持し、総人口に占める割合も3人に1人から、将来的には2人に1人近くになると見込まれています。そんな中、老年科専門医の数が少ないことは、日本では話題にもあまり上らない課題です。国内の老年科専門医の数は1,800人前後です。この数字は、小児科専門医(約1万6,000人)の1割にも満たず、日本の医師全体(約34万人)からみるとごくわずかです4)。拡大する高齢者人口の規模に対して老年科専門医の数は非常に少なく、地域によっては老年医学を専門とする医師がほとんどいない状況も指摘されています。これからの高齢社会を支えるために老年医学の専門家が不足している現状は、患者だけでなく社会全体にとっても看過できません。寿命が延びるほど、転倒予防から認知症ケアまで多面的なサポートが必要になり、そうした問題に対処する十分なスキルを持つ医師や看護師、また介護スタッフなどとの連携がますます重要になります。記事でも示されているように、対策として研修プログラムの拡充や魅力的な給与体系の再検討、医療補助スタッフの育成支援などが鍵となりますが、今のところ劇的な打開策は見えていません。こうしたギャップを埋め、高齢者一人ひとりに適切な医療を提供するためには、日米両国ともに、老年科専門医の育成では足りず、医療従事者全体で高齢者医療に対応できる体制を整えていく必要があるでしょう。そのためには、医療系学生のうちからそうした学びを深めることができる仕組みこそが大切ではないかと感じています。参考文献・参考サイト1)United States Census Bureau. 2023 Population Projections for the Nation by Age, Sex, Race, Hispanic Origin and Nativity. 2023 Nov 9.2)Sor J. America's aging population faces a growing shortage of geriatric care. Business Insider. 2025 Mar 9.3)総務省統計局. 統計からみた我が国の高齢者. 2024年9月15日.4)Arai H, Chen LK. Aging populations and perspectives of geriatric medicine in Japan. Glob Health Med. 2024;6:1-5.

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トラネキサム酸による産後の致命的な出血予防効果は大出血診断前でも有効―IPD meta-analysis(解説:前田裕斗氏)

 トラネキサム酸(TXA)は線溶系を抑制する薬剤であり、出血量の減少や止血効果が期待される。既存研究において「臨床的に診断された産後出血」に対するTXA投与で死亡率を減らす効果を示しており、WHOも出血発生後の使用を推奨している。しかし「出血が起こる前からの予防投与」に関しては、十分に結論が得られていなかった。本研究は、トラネキサム酸の死亡または重大な外科的介入を要する産後大出血に対する予防効果をみた無作為化比較試験(RCT)のメタアナリシスである。 本研究の手法であるindividual patient data(IPD) meta-analysisとは、要するに公表されている集計データ(治療群と対照群の平均値・標準偏差・サンプルサイズなど)をまとめたものではなく、各研究に参加した個々の被験者の生データ(個人レベルのデータ)を収集し、それらを統合して解析を行う手法である。これにより、より精度の高い解析を行うことができる。さらにTXA vs.プラセボの効果をみたRCTのみを組み入れることで、より質の高い研究となっている。 主な結果として、TXA群はプラセボ群と比べて、致命的な出血発生率が有意に減少(オッズ比:0.77、95%信頼区間:0.63~0.93)し、分娩様式や貧血の有無、投与タイミング(産後出血の診断前後)による有意な治療効果の差はみられなかった。また、血栓性の合併症について2群で有意差は認められなかった。この結果は全妊婦にTXAの予防投与を行うことで致命的な出血を予防できる可能性を示唆しているが、出血の発生頻度が低いことを考えると、必ずしも費用対効果や副作用の点で優れているとは限らず、今後どんな群にTXAを投与するのが適切かの検討が必要である。 臨床現場への適応については、有害事象に乏しいこともあり、今後日本でも出血ハイリスク群に対して臍帯クランプをした時点から落とし始める施設が増えるかもしれない。一方、本研究で組み入れられたRCTは、ほとんどが低中所得国で行われたものであることを考えると、日本で同様の結果が得られるかどうかは議論の余地があり、今後日本で蓄積されたデータの解析が待たれるだろう。

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ランダム化試験より個別最適化医療の論理が必要?(解説:後藤信哉氏)

 心房細動の脳梗塞予防には抗凝固薬が広く使用されるようになった。しかし、脳内出血の既往のある症例に抗凝固薬を使用するのは躊躇する。本研究は過去に頭蓋内出血の既往のある症例を対象として、心房細動症例における抗凝固薬介入の有効性と安全性の検証を目指した。319例をDOAC群と抗凝固薬なし群に割り付けて中央値1.4年観察したところ、DOAC群の虚血性脳卒中は0.83(95%信頼区間[CI]:0.14~2.57)/100人年、抗凝固薬なし群では8.60(同:5.43~12.80)/100人年と差がついた。 しかし、頭蓋内出血イベントはDOAC群が5.00(95%CI:2.68~8.39)/人年、抗凝固薬なし群では0.82(同:0.14~2.53)/人年であった。 ランダム化比較試験としては事前に設定した有効性、安全性エンドポイントに対する仮説検証が目標となるが、臨床家は結果に基づいて実臨床における治療選択を考える。「頭蓋内出血の既往のある心房細動」でもDOACで虚血性脳卒中リスクを低減できるが、頭蓋内出血リスクは増える。未来に虚血性脳卒中リスクの高い個別症例を選別してDOACをのませる、などの個別最適化医療への方向転換が必要である。

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春分、そして明るい話【Dr. 中島の 新・徒然草】(572)

五百七十二の段 春分、そして明るい話読者の皆さん、今日は春分です。小学校の頃、われわれは「春分は昼と夜の長さが同じ」と習いました。しかし、実際には昼のほうが夜よりも少し長いのです。というのも、日の出の時刻は「太陽の上辺が見えた瞬間」と定義されており、太陽の中心が地平線と一致する時刻ではありません。日の入りの時刻も同様に「太陽の上辺が見えなくなる瞬間」と定義されています。よって春分の日に太陽の光が地表を照らすのは12時間以上。さらに、地平線近くの太陽光は空気の影響で少し屈折するそうです。これは「スネルの法則」と呼ばれています。そのため、本来は地平線の下にある太陽が見えるのです。この日の出・日の入りの定義とスネルの法則により、厳密には春分の日は昼の方が夜よりも長くなります。このことを本で読んで「なるほど」と感心した中島少年は、小学校の授業で担任教師が「春分の日は昼と夜の長さが同じです」と言った瞬間、勢いよく手を挙げて「先生、春分の日は昼の方が夜よりも長いです!」と発言し、ずいぶん周囲の顰蹙を買ってしまいました。きっと少なからぬ数の読者が同じような経験をしたことと思います。あの時、どう言えば波風が立たなかったのでしょうか。今でも答えは見つかっていません。実際、国立天文台によれば、今年の大阪での春分の日の出は6時2分、日の入りは18時10分で、やはり昼のほうが長くなっています。ちなみに、春分は英語でvernal equinoxまたはspring equinox、秋分はautumnal equinoxなのだそうです。そもそもequi- は「等しい」を意味する接頭辞で、equator(赤道)、equilibrium(均衡)、equity(公平、公正)などに使われています。一方、noxは「夜」を意味し、nocturnal(夜行性の)、noxious(有害な:「夜の闇のように危険なもの」)、night(夜)などの語源となっています。つまり、equinoxには「等しい夜」という意味が含まれているわけですね。ずいぶん前置きが長くなってしまいました。今回は頭部外傷後の高次脳機能障害を抱える患者さん2人の、ちょっと明るい話をお伝えしたいと思います。お1人目は定年退職直後の男性。この方は大手建築会社に勤務していましたが、交通事故で頭部外傷を負い、高次脳機能障害になってしまいました。主な障害は「感情的になりやすい」こと。ハローワークなどで仕事を探し、役所の建築・土木部門に採用されるものの、長続きしませんでした。最初は「こんな専門家が来てくれるなんて助かります」と役所にも喜ばれるのですが、職場の同僚の不出来に我慢ができず、つい大きな声を出してしまうことがたびたびあったそうです。再診のたびに「職場で大切なのはハイパフォーマンスよりも人間関係ですよ」とアドバイスしてきましたが、この患者さんはなかなか実行できませんでした。ところが、今回ついに「来年度も引き続き働いてもらえませんか」と言われたそうです。現在の職場は健康・福祉部門。専門外の仕事なので、周囲に教えてもらいながら取り組まなくてはならず、自然に腰が低くなったことが良い結果を生んだようです。「これからもお願いします」と言われて、すごく嬉しかったと仰っていました。もう1人は30歳前後の男性。この方も交通事故による頭部外傷で高次脳機能障害になってしまいました。結婚したばかりで、家を建てて張り切っていた矢先の事故だったそうです。性格が変わってしまい、些細なことでカッとするようになったため、奥さんにとっては「どこに地雷があるかわからない」状態だったのでしょう。結局、離婚ということになってしまいました。せっかく建てた広い家に独り取り残され、寂しい日々を送っていたそうです。ところが、ついに結婚相談所を利用して再婚することができました。再婚相手には自分の障害についてきちんと説明したそうです。こちらもめでたい話ですね。とはいえ、高次脳機能障害を他人に理解してもらうのは簡単なことではありません。中島「機会があったら、奥さんも一緒に外来に来てください」患者「ぜひ、そうさせていただきます」中島「私のほうからも、ご本人の障害について説明しましょう」新しい奥さんが障害を理解したとしても、実際の結婚生活を送るに当たっては、さまざまな困難が待ち受けていることでしょう。そのサポートをするのも、医師としての役割の一つ。お2人が明るく、楽しく、前向きに生きていけるよう応援したいと思います。ということで、今回は明るい出来事を聞かせてもらい、こちらまで嬉しくなったというお話でした。最後に1句春分が 明るい話 連れてきた

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その2)【なんで生徒も先生も楽しくなさそうなの?なんで先生はそこまでしてしまうの?】Part 1

今回のキーワード不安受け身アイデンティティ勤勉性べき思考学習性無力感不登校教師のメンタルダウン皆さんが小学生だった時、学校は楽しかったですか? 皆さんに小学生のお子さんがいるなら、お子さんは学校に楽しく行っているでしょうか?前回(その1)、ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」のいくつかのシーンを通して、日本の学校教育の良さが、ルールを守る規律、周りに合わせる協調性、努力する忍耐力であることがわかりました。一方で、その裏返しでもある危うさは、周りと同じことをやらせすぎる同調圧力、言いなりにさせるモラルハラスメント、吊し上げをするスケープゴートであることがわかりました。今回(その2)、引き続きこの映画のいくつかのシーンを通して、そこまでされてしまった生徒たちの心理、そこまでしてしまう教師たちの心理に迫ります。なお、この映画はドキュメンタリーであり、実在する人物が登場していますが、この記事で教師個人を批判する意図はまったくありません。あくまでその教師たちすら巻き込む文化としての日本の学校教育の危うさを指摘しています。そこまでされると生徒たちはどうなってしまうの?放送係の6年生の男子と女子が、卒業式を間近にして、放送室でおしゃべりをしています。彼女から「卒業、嬉しい?」と聞かれると、彼は「悲しいと寂しい」と答えます。さらに彼女から「もっといろんなことに責任を持たなきゃいけない? 大人になるって感じちゃう?」と核心を突かれると、「感じちゃうから嫌だ。子供のままでいたい」と正直に答えていました。決して楽しみにはしていないようです。彼のなかにはどんな心理があるのでしょうか?ここで、大きく2つ挙げてみましょう。(1)楽しめない―不安になりやすい彼らは「責任」という言葉を意識していました。この映画に登場する先生たちもたびたび使っていました。つまり、責任という名の、やらなければならないことやダメ出しをされることが先々にどんどん増えていくとプレッシャーを感じ、萎縮してしまっています。不安そうで、決して楽しみにはしていません。1つ目の心理は、楽しむことができず、不安になりやすいことです。この原因として、もともと不安になりやすい気質(遺伝)が考えられますが、それと同じかそれ以上に校則や役割があまりにも多すぎる学校環境が考えられます。その1でもご説明しましたが、そんな学校環境のなかでの生徒同士の同調圧力によって自分らしさ(アイデンティティ)が削がれていくために、自分はこうなりたいというワクワクした将来像が見えてこず、漠然とした不安があるだけなのでした。心理学では、これをべき思考と呼んでいます。こうであるべき、こうでなければならないという規律や役割などの多数派(主流秩序)が求める価値観にとらわれてしまうということです。また、先生たちは、頑張ればできると思い込んでいるため、「責任」という言葉を通して「頑張ること」を最優先にしていることも要因です。逆に、できていても頑張っていなければ、認めようとしません。また、楽しめているかどうかにについてはいっさい触れられず、むしろ最初から楽しもうとすると頑張っていないと見なされ、「不真面目だ」という圧までかけられます。楽しむことができるのは、頑張って何かができたあとだけのようです。確かに、その1でも登場した1年生の女子のように、頑張ればある程度できるようになります。しかし、不安のなりやすさと同じように、頑張るという忍耐力(パーソナリティ)やできるという認知能力にも、遺伝的な違いがグラデーションのようにあります。たとえば、頑張って伸びる人と潰れる人、走って速い人と遅い人がいるのと同じです。さらに言えば、楽しんで伸びる人と伸び悩む人もいます。つまり、生徒の個性(遺伝)によって頑張ることと楽しむことのバランスを取り、何よりも生徒を不安にさせなくする必要があります。先生たちが遺伝についての知見を先入観なく受け入れることができていない時点で、やはり時代遅れになっています。なお、認知能力(知能)とパーソナリティへの遺伝、家庭環境、学校環境(家庭外環境)のそれぞれの影響の度合いについては、関連記事1の後半以降をご覧ください。次のページへ >>

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その2)【なんで生徒も先生も楽しくなさそうなの?なんで先生はそこまでしてしまうの?】Part 2

(2)選べない―受け身になりやすい彼は、「子供のままでいたい」と言っていました。一方で、6年生の教室で先生が「中学校に言ったら提出物が多くなる。このまま(提出物を忘れる状態)じゃかなり危険だぞ」と忠告していました。確かにその通りです。しかし、そんな脅し文句ばかり言われていると、彼のように、早く大人になって好きなことをしたい、つまり自分の生き方を選びたいという期待や夢が膨らみません。2つ目の心理は、選ぶことができず、受け身になりやすいことです。この原因として、もともと受け身になりやすい気質(遺伝)が考えられますが、それと同じかそれ以上に校則や役割があまりにも多すぎる学校環境が考えられます。その1でもご説明しましたが、そんな学校環境のなかでの教師たちによるモラルハラスメントによって自主性(勤勉性)が育まれないために、自分からこうしたいというエネルギーが沸いてこず、ただ指示待ち人間になっているだけなのでした。心理学で、これは学習性無力感と呼ばれています。できないことを繰り返し強いられることによって、自分はできない(無力である)と学習してしまうのです。また、「責任」という言葉が便利に使われて、「やるべきこと」が限りなく多いことも要因です。逆に、やりたいことを選び、やりたくないことを選ばないという選択の自由がほとんどなく、自由にしようとすると先生の言うことを聞いていないと見なされ、「偉そうだ」という圧までかけられます。確かに、給食当番と掃除当番は、日々の社会的な活動として意味づければ「やるべきこと」でしょう。そして、学校の勉強ももちろん「やるべきこと」です。しかし、運動会、卒業式などの行事の練習を生徒全員が揃って数週間前からすることは、どうでしょうか? ある先生は「運動会の表現を通して、殻を破ってほしい」と言い、運動会の練習を必死に取り組む理由を力説していました。しかし、それは参加するという選択を自らしてこそです。強制されている限り、そうなる根拠はありません。つまり、実はこのような行事を強いるのには合理的な理由がなく、決して「やるべきこと」ではありません。また、先ほど触れたように認知能力には個人差(遺伝的な違い)があるのに、授業内容はすべて画一的で詰め込まれています。レベル分けもほとんどされていないので、自分のレベルに合わない授業を選ばない(自分のレベルに合う授業を選ぶ)という選択肢がないです。あえて選ばないとしたら、すべてを選ばない、つまり不登校の一択しかありません。よくよく考えると、本来の責任の意味は、自分が自由に選んだものに対して負うものです。自由と責任はセットです。つまり、最初の時点で選ばない権利(拒否権)があるはずです。自分で納得して選ぶからこそ、その行動への責任感が芽生えます。しかし、学校で使われる「責任」の多くは、一方的に押し付けられたタスクであり、選ばない権利がありません。しかも、その1でもご説明した通り、その多くが合理的な理由がないものです。つまり、学校で使われる「責任」の正体とは、生徒にとって「責任」という名の衣をかぶった「強制労働」であり、生徒を「奴隷」として逃がさないための都合の良い美辞麗句であったことがわかります。そんななかで、この真実にいち早く敏感に気付いて逃げ出した生徒が、不登校と呼ばれるのです。そしてそんな生徒たちは、学校には絶対に行きたがらないのに、学習塾や習いごとには抵抗なく行くのです。つまり、不登校の原因は、生徒だけでなく、このような学校の時代遅れのやり方にもあったというわけです。これが、不登校が増え続ける最大の原因でしょう。なお、不登校の心理の詳細については、関連記事2をご覧ください。そもそも責任とは、大人になるにつれて自由とセットでだんだんと増えていくものです。なぜなら、大人になる(自立)とは、自分の行動を自分で決めて、自由に生きていくことだからです。そこには、楽しみがあり喜びがあります。その自由に対して責任があるのです。つまり、小学生の時からむやみに、しかも一方的に押し付つけるものではないです。そんなことをしてしまったら、自分が自由に選んで責任を取るという大人になるための練習ができなくなります。なお、実際に、国際比較において、日本人は最も不安になりやすく、最も受け身になりやすい国民性であることがわかっています。この詳細については、関連記事3のページの後半をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その2)【なんで生徒も先生も楽しくなさそうなの?なんで先生はそこまでしてしまうの?】Part 3

なんで教師はそこまでしてしまうの?生徒たちの心理は、楽しむことができずに不安になりやすい、選ぶことができずに受け身になりやすいということがわかりました。それでは、なぜ先生たちはそこまでしてしまうのでしょうか?ある先生が本音を打ち明けます。「ちょっと油断すると大変で、日々戦いですね。自由と制限のバランスって。平均台の上を歩いてるような。すごいバランスの上で仕事やってるなって思うんです」と。どうやら先生たちも生徒たちをもっと自由にさせてあげたいようですが、なかなかできないようです。なぜでしょうか?ここから、その事情を大きく2つ挙げてみましょう。(1)やることが多すぎる―実は教師も不安で楽しめない給食のシーン。黒板前のモニターの大画面に残り時間がデジタルでカウントダウンされ、0になったらタイマーが鳴っていました。その間、生徒たちは、コロナ禍でもあるため、黙々と食べていました。まるで、オリンピックのタイムトライアルです。時間に追われており、あまりおいしく食べられそうにないです。ここにも厳しい規律があると思いつつ、先生がそこまでするのは、次にやることが決まっているという現実にも気付きます。1つ目の事情は、教師はやることが多すぎることです。実は、生徒たちだけでなく、その生徒たちの相手をする先生たちも、学習指導要領とその学校の習わしという厳しい規律に縛られています。それをこなせないということは、教師失格を意味します。つまり、生徒だけでなく、実は教師も「自分らしさ」を発揮できずに不安になりやすく、教えることを純粋に楽しめない職場環境に身を置いていたのでした。実際に映画では、自分にも厳しくてつらそうにしている先生はいても、楽しそうにしている先生は見つけられませんでした。そんな先生たちを間近に見ている生徒たちが、楽しくできるわけがありません。そして、そんなふうにしかならないなら、早く大人になりたいと思うわけがありません。(2)やることを変えられない―実は教師も受け身で選べないある先生は、生徒たちを体育館に集めて、「自分の殻を破る」ことについて熱弁していました。なんと、わざわざセラミックの大きな殻を用意して、自ら自分の頭に当てて割るパフォーマンスまでしていました。そのせいで、おでこから少し血が出てしまい、生徒たちは大騒ぎします。このパフォーマンスの狙いは、実は「殻を破る」ことを伝える以上に、このパフォーマンスを通して、生徒たちが盛り上がり、気持ちが1つになること(同調)でしょう。ここにも熱血(熱血風?)という同調圧力があることが確認できるわけですが、彼がそこまでするのは、このパフォーマンスをはじめ同調圧力、モラルハラスメント、スケープゴートを利用しないと、生徒に「やるべきこと」をやらせられないという現実にも気付きます。つまり、先生たち自身もどうしようもなく、最初の先生が言っていた「ちょっと油断すると大変」なのでした。2つ目の事情は、教師はやることを変えられないことです。生徒にとって負担である学校行事は、実は同じかそれ以上に先生たちにとっても負担です。あるシーンでは、先生たちだけで、運動会のかけっこの順位付けとその後の誘導の練習までもしていました。しかし、だからと言って、「そこまでやらなくてもいいこと」として、行事内容を簡素化しようにも、他の学校ではやっているのに自分たちの学校だけ変えるわけにはいかないという先生たち同士の同調圧力が働いています。職員室のシーンで、副校長は「鎌倉幕府は、外(敵)からは守れたけど、内(味方同士の不満)から壊れた」「副校長はボロ雑巾ですから、何でも言ってください」と受容的に話していました。しかし、いくら個別に不満を受け止めても、管理職の立場で行事内容を簡素化する決断は、「自分たちだけ楽してる」と対外的に思われたくないので、避けたいでしょう。それでも主張する教師がいるなら、その人は周りから「他の先生方は頑張っているのに(自分は頑張っていない)」などと言われ、仲間外れ(スケープゴート)にされるでしょう。それを見越して誰も言い出せないという空気もありそうです。また、生徒たちがついてこなかったり学級崩壊しようものなら、その先生は指導力がなく、頑張っていないとみなされます。実際に、先ほど頭から少し出血した先生は、せっかく「自分らしく」体を張ったのに、そのあとに生徒たちが興奮して騒いでいて困ったと別の先生から細かく指摘され、謝るはめになっていました。先ほどの「自由と制限」の「日々戦い」は、生徒たちだけでなく、先生たちも直面していることがわかります。生徒を自由にさせてしまっては先生にそのツケが回ってくる、そして先生を自由にさせてしまっては他の先生にそのツケが回ってくるという理屈です。つまり、実は教師も「主体性」を発揮できずに受け身になりやすく、教育を変えるという選択ができない職場環境に身を置いているのでした。そんななかで、あえて状況を変えるとしたら、それは教師を辞めることです。生徒が不登校になるのと構図は同じです。実際に、教師のメンタルダウンによる休職率がいかに高いかはすでに社会問題になっています。そして、そんな状況が見透かされ、ますます教師になりたいと思う人が減っています。そんな先生たちを間近に見ている生徒たちが、自分の行動を自分で選んでいけると思うわけがありません。そして、そんなふうにしかならないなら、早く大人になりたいと思うわけがありません。それでは、どうすればいいのでしょうか?(次回に続く)<< 前のページへ■関連記事ドラマ「ドラゴン桜」(中編)【実は幻だったの!? じゃあ何が問題?(教育格差)】Part 1映画「かがみの孤城」(その1)【結局なんで学校に行けないの?(不登校の心理)】Part 1苦情殺到!桃太郎(後編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 1

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強迫症併存の双極症I型に対するLAI抗精神病薬補助療法の有用性

 双極症と強迫症は、併存することが多く、このような場合の治療には、大きな課題がある。双極症における強迫症の併存は、自殺リスクの増加や機能障害などの重篤な臨床的特徴と関連している。強迫症には選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が有効であるが、双極症の躁症状への転換リスクを増加させる可能性がある。アリピプラゾール月1回製剤やパリペリドン月1回製剤などの長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の使用は、双極症治療における有病な代替治療として期待されるが、強迫症併存の双極症に対する有効性および安全性は、十分に研究されていない。イタリア・Asl Napoli 1 CentroのVassilis Martiadis氏らは、強迫症併存の双極症に対するLAI抗精神病薬の有効性および忍容性を評価するため、本研究を実施した。Journal of Clinical Medicine誌2025年2月2日号の報告。 対象は、強迫症併存の双極症患者27例。気分安定薬(リチウムまたはバルプロ酸)と併用してLAI抗精神病薬による治療を行った。臨床的および精神病理学的評価は、ベースラインおよび定期的に実施し、評価尺度にはYale-Brown強迫尺度(Y-BOCS)、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)を用いた。安全性および忍容性の評価には、UKU副作用評価尺度を用いた。 主な結果は以下のとおり。・LAI抗精神病薬治療は、躁病エピソードを引き起こすことなく、強迫症の症状や気分安定に対する有意な改善が認められた。・アリピプラゾールLAIは、パリペリドンLAIと比較し、体重増加に対する忍容性が良好であった。・アリピプラゾールLAIとパリペリドンLAIとの間に、全体的な有効性の有意な差は認められなかった。 著者らは「強迫症併存の双極症に対するLAI抗精神病薬の補助療法は、効果的かつ忍容性の良好な治療選択肢である可能性が示唆された。このような患者に対する治療戦略を改善するためにも、さらなる研究が求められる」と結論付けている。

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HR+/HER2-乳がんへのダトポタマブ デルクステカンを発売/第一三共

 第一三共は、化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんの治療薬である抗TROP-2抗体薬物複合体ダトポタマブ デルクステカン(商品名:ダトロウェイ)について、2025年3月19日に薬価収載され、同日より発売したことを発表した。 本剤は、TROP-2に対するヒト化モノクローナル抗体とトポイソメラーゼI阻害作用を有するカンプトテシン誘導体を、リンカーを介して結合させた抗体薬物複合体である。化学療法の前治療歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または転移を有する乳がん患者を対象とした第III相TROPION-Breast01試験において、本剤投与群では医師選択化学療法投与群よりも有意に無増悪生存期間が延長し、かつGrade3以上の治療関連有害事象は半数以下であったことが示された。なお、アジア人サブグループ解析においても、全体集団と同様の結果が得られている。<製品概要>販売名:ダトロウェイ点滴静注用100mg一般名:ダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)効能又は効果:化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳用法及び用量:通常、成人にはダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回6mg/kgを90分かけて3週間間隔で点滴静注する。初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。なお、患者の状態により適宜減量する。製造販売承認日:2024年12月27日薬価基準収載日および発売日:2025年3月19日薬価:100mg 1瓶 311,990円製造販売元:第一三共株式会社

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