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新型インフルエンザワクチンの安全性、市販後調査で確認:中国

中国・疾病管理予防センターのXiao-Feng Liang氏らは、2009年9月21日に優先すべき集団を対象に、新型インフルエンザ[インフルエンザA(H1N1)ウイルス]感染に対するワクチン(異なるメーカー10社から入手)接種が開始された予防接種プログラムの、安全性に関する評価を行った。結果、同プログラムにおいて有害事象例は観察されず、ギランバレー症候群のリスク増加のエビデンスも認められなかったと報告した。NEJM誌2011年2月17日号掲載より。接種後の有害事象発生率は90件/100万回研究グループは、インフルエンザA(H1N1)ワクチン接種後の有害事象を調査するため、受動的サーベイランス計画を作成し、医師または予防接種提供者に対し、ワクチン接種者数とすべての有害事象数を、地元の疾病管理予防センター(CDC)に報告するよう求めた。報告データは、オンラインで全国予防接種情報システム(National Immunization Information System)内の全国予防接種後有害事象追跡評価システム(National Adverse Event Following Immunization Surveillance System)に集められ、中国CDCにより検証・分析された。検証・分析されたデータは、2010年3月21日までに集まったものであった。結果、ワクチン接種は、2009年9月21日から2010年3月21日まで合計8,960万回行われ、ワクチン接種後の有害事象の発生は8,067例で、接種100万回当たり90.0件の発生率だった。年齢別有害事象発生率は、60歳以上の100万回当たり31.4件から、9歳以下の100万回当たり130.6件まで幅があった。ワクチンのメーカー別の発生率は、100万回当たり4.6~185.4回まで幅があった。懸念される重篤な有害事象は低率報告された8,067件の有害事象のうち、6,552件(81.2%、発生率は100万回接種当たり73.1件)はワクチン反応であることが確認された。また8,067件のうちの1,083件(13.4%、同100万回当たり12.1件)は、発生が稀で、より重篤なものであった。その大半(1,050件)は、アレルギー性反応だった。ギランバレー症候群は11例報告されたが、発生率は接種100万回当たり0.1件と低率で、中国における背景発生率より低かった。(朝田哲明:医療ライター)

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米国高齢者の退院後30日以内の再入院率、黒人患者は白人患者の1.13倍

高齢者の急性心筋梗塞、うっ血性心不全、肺炎による入院について、人種および病院間の退院後30日以内の再入院率を調べたところ、黒人は白人に比べ1.13倍に上り、また黒人患者の割合が高い病院の方が、そうでない病院よりも高率だったことが明らかになった。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院ヘルス政策マネジメント部門のKaren E. Joynt氏らが、米国の高齢者向け公的医療保険であるメディケアの出来高払い制プランに加入する、310万人以上のデータを分析し明らかにしたもので、JAMA誌2011年2月16日号で発表した。約4,300~4,600病院、316万件の退院について調査Joynt氏らは、人種間で再入院率の格差があるのかどうか、またそれが治療を受けている場所(病院特性)と関連するかどうかを目的に、メディケアデータの中から、2006~2008年にかけて、急性心筋梗塞、うっ血性心不全、肺炎のいずれかにより米国の病院に入院した人を対象に、退院後30日以内の再入院について調査を行った。調査の背景には、再入院率の人種間格差の実態と、人種が再入院率を減らす要因となるのかどうかを明らかにする目的があった。調査対象となった退院件数は316万3,011件、うち黒人患者は8.7%の27万6,681件、白人患者は91.3%の288万6,330件だった。調査が行われた病院数は、疾患により異なり、4,322~4,588ヵ所だった。各病院におけるメディケア加入の黒人患者の割合を調べ、同率が上位10%の病院を対象に「少数民族サービス提供病院」(マイノリティ病院)、それ以外を「非少数民族サービス提供病院」(非マイノリティ病院)と定義し分析した。マイノリティ病院の黒人患者、非マイノリティ病院の白人患者に比べリスクは1.35倍結果、3疾患による退院後30日以内の再入院率は、白人が22.6%に対し黒人は24.8%と、黒人患者の方が有意に高率だった(オッズ比:1.13、95%信頼区間:1.11~1.14、p<0.001)。病院別の分析では、マイノリティ病院が25.5%で、非マイノリティ病院22.0%に比べ、有意に高率だった(オッズ比:1.23、同:1.20~1.27、p<0.001)。急性心筋梗塞の退院後30日以内再入院率について詳しくみたところ、参考値とした「非マイノリティ病院での白人患者の同率」20.9%に対し、最も高率を示したのは「マイノリティ病院での黒人患者の同率」26.4%で、オッズ比は1.35(同:1.28~1.42、p<0.001)だった。一方で、「マイノリティ病院での白人患者の同率」は24.6%で、オッズ比は1.23(同:1.18~1.29、p<0.001)だった。また、「非マイノリティ病院での黒人患者の同率」は23.3%で、オッズ比は1.20(同:1.16~1.23、p

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小児入院の約3%が退院後1年以内に4回以上再入院、小児入院医療費の約23%に:米国

米国小児病院の入院患児の約3%が、退院後1年以内に4回以上の再入院を繰り返し、それにかかる医療費は小児入院医療費全体の約23%、入院件数にして約19%に上ることが明らかにされた。また再入院を繰り返す小児の大半は、同一器官系の問題によるものだったという。米国・ハーバード・メディカルスクールのボストン小児病院総合小児科のJay G. Berry氏らが、全米の小児病院に入院した32万児弱について行った、後ろ向きコホート試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年2月16日号で発表した。全米37の小児病院への入院患児を約5年間追跡Berry氏らは、2003年に全米37ヵ所の小児病院に入院した31万7,643児(入院件数:57万9,504件)について、2008年まで追跡した。主要評価項目は、追跡5年の間の、各365日以内での最大再入院回数。結果、退院後365日以内に1回以上の再入院をしたのは、全体の21.8%にあたる6万9,294児だった。退院後365日以内に4回以上の再入院を繰り返したのは、全体の2.9%にあたる9,237児で、退院から次の入院までの期間の中央値は、37日(四分位範囲:21~63)だった。これらの患児の入院件数は10万9,155件と、全体入院件数の18.8%を占めた。またこれらの患児の入院医療費については、追跡期間中の被験児全体にかかった入院医療費の23.2%(34億ドル)に上った。再入院件数増加につれ、複雑慢性症状の罹患率、技術的サポートは増加1年以内の再入院件数増加に伴い、神経節の障害など複雑な慢性症状の罹患率は増加する傾向がみられた。再入院回数0の22.3%(24万8,349児中5万5,382児)から再入院回数4回以上では89.0%(9,237児中8,225児)へと増加が認められた(p<0.001)。その他、消化や神経などに関する技術的サポートを要する患児の割合は、同5.3%から52.6%へ(p<0.001)、公的保険加入者の割合は、同40.9%から56.3%へ(p<0.001)へ、また非ヒスパニック・黒人患者児は、同21.8%から34.4%へ(p<0.001)増加する傾向が認められた。一方で、1年以内の再入院件数増加に伴い、喘息や蜂巣炎といった外来治療が可能な疾患による再入院率は、23.1%から14.0%へと減少する傾向がみられた(p<0.001)。1年以内に4回以上再入院した患児のうち、28.5%にあたる2,633児は、すべての入院が同じ器官系の問題によるものだった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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自動血圧測定でプライマリ・ケアにおける白衣高血圧が減少

プライマリ・ケアにおける収縮期高血圧患者の血圧測定法として、現行の手動診察室血圧測定よりも、自動測定装置を用いた診察室測定の方が質や正確度が優れ、白衣高血圧が減少することが、カナダ・トロント大学のMartin G Myers氏らの検討で示された。日常診療で医療従事者が手動で行う血圧測定の正確度への関心が高まるに従い、自動測定装置による家庭や外来での血圧測定に対する信頼が増しているという。診察室での自動測定装置を用いた血圧測定を、患者が静かな部屋で落ち着いた状態で独りで行うことで、手動測定の欠点の多くが解消することが示唆されている。BMJ誌2011年2月12日(オンライン版2011年2月7日号)掲載の報告。診察室における手動と自動血圧測定を比較するクラスター無作為化試験研究グループは、手動による診察室血圧測定と、自動測定装置を用いた診察室血圧測定のgold standardとしての質と正確度を評価するクラスター無作為化対照比較試験を実施した。対象は、カナダ東部地域5都市の67施設において88名のプライマリ・ケア医の治療を受けている重篤な併存疾患のない収縮期高血圧患者555例。これらの患者が、診察室で手動で行う血圧測定を受ける群(対照群)あるいは診察室で自動測定装置による複数回の血圧測定を行う群(介入群)に無作為に割り付けられた。登録前に、全例において24時間自由行動下血圧測定を行い、覚醒時の平均血圧を算出した。登録前の最後のルーチンの手動診察室血圧値をカルテで確認し、両群の登録後の診察室血圧の測定値と比較し、さらに覚醒時血圧との比較を行った。主要評価項目は、(覚醒時血圧−自動診察室血圧)と(覚醒時血圧−手動診察室血圧)の収縮期血圧(SBP)の差とした。主要評価項目:−2.3 vs. −6.5mmHg(p=0.006)、自動測定の方が覚醒時SBPとの差が小さい31施設(252例)が対照群に、36施設(303例)が介入群に無作為に割り付けられ、それぞれ249例、299例が解析の対象となった。対照群では、登録前のルーチンの手動診察室血圧[149.9(SD 10.7)/81.8(SD 8.5)mmHg]が、登録後にはSBPが8.5mmHg、拡張期血圧(DBP)は1.6mmHg低下し[141.4(SD 14.6)/80.2(SD 9.5)mmHg]、いずれも有意差を認めた(p<0.001/p=0.01)。これに対し、介入群では登録の前後でSBPが13.9mmHg[149.5(SD 10.8)→135.6(SD 17.3)mmHg]、DBPが3.7mmHg[81.4(SD 8.3)→77.7(SD 10.9)mmHg]低下しており(p<0.001/p=0.02)、いずれも低下の程度が対照群に比べて大きかった。登録後の初回受診時における介入群の覚醒時自由行動下血圧と自動診察室血圧の差の平均値は、SBPが−2.3mmHg(95%信頼区間:−0.31~−4.3)、DBPは−3.3mmHg(同:−2.2~−4.4)、対照群における覚醒時血圧と手動診察室血圧の差はSBPが−6.5mmHg(同:−4.3~−8.6)、DBPは−4.3mmHg(同:−2.9~−5.8)であり、いずれも介入群の方が覚醒時血圧との差が小さく、SBPには有意差が認められた(p=0.006)。登録後の自動診察室血圧(SBP/DBP)と覚醒時血圧との群内相関(r=0.34/r=0.56)は、登録前の手動診察室血圧と覚醒時血圧の相関(r=0.10/r=0.40)よりも強く、その差はSBPが0.24(95%信頼区間:0.12~0.36)、DBPは0.16(同:0.07~0.25)であった(p<0.001/p<0.001)。自動診察室DBPと覚醒時血圧の群間相関(r=0.56)は、手動診察室DBPと覚醒時血圧の群間相関(r=0.30)よりも強く、その平均差は0.26(95%信頼区間:0.09~0.41)であった(p<0.001)。測定値の末尾数字を0に丸める選好によるバイアスは、実質的に自動診察室測定の方が小さかった。著者は、「プライマリ・ケアにおける収縮期高血圧患者の診察室血圧測定では、自動測定の導入により、現行の手動測定に比べ白衣高血圧が有意に減少した。自動測定の質および正確度を覚醒時自由行動下血圧との比較で評価したところ、手動測定よりも有意に優れていた」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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院外心肺蘇生におけるリアルタイム音声画像フィードバックシステムの有効性

院外心配蘇生(CPR)中のリアルタイム音声画像フィードバックシステムは、その手技をガイドラインにより即したものへと変化させることは認められたが、自己心拍再開やその他臨床転帰の改善には結びつかなかったという。米国・ピッツバーグ大学救急医学部のDavid Hostler氏らが、前向き集団無作為化試験を行った結果から報告した。BMJ誌2011年2月12日号(オンライン版2011年2月4日号)より。CPRの手技は改善されたが試験は、院外CPR中のリアルタイム音声画像フィードバックシステムを実行することによって、病院到着前に自己心拍再開する患者の比率が高まるかが検討された。Hostler氏らは、米国とカナダの蘇生転帰協会(Resuscitation Outcomes Consortium)に加入する3地域の救急医療サービスを対象に、モニター付き除細動器に取り付けられたリアルタイム音声画像フィードバックシステムを使ったCPRによる介入を行った。被験者は、救急隊員によって院外CPRが試みられた心停止患者1,586例で、フィードバックありが815例、なしは771例だった。ベースラインにおける患者および救急医療サービスの特徴に群間差はなかった。主要評価項目は、CPR後の病院到着前の自己心拍再開率とした。試験の結果、フィードバック中に救急隊員の14%がフィードバック音を消していることが示された。また、フィードバックなし群と比較して、フィードバックあり群の方が、心臓マッサージ継続時間が増加(64%対66%、群間補正後差:1.9、95%信頼区間:0.4~3.4)、圧迫の深さが増加(38mm対40mm、補正後差:1.6、95%信頼区間:0.5~2.7)、圧迫後の不完全リリースの減少(15%対10%、補正後差:-3.4、95%信頼区間:-5.2~-1.5)との関連が認められた。自己心拍再開率、生存退院率とも改善に結びつかずしかし、到着前自己心拍再開率は、フィードバックの有無における有意な差は認められなかった(45%対44%、補正後差:0.1%、95%信頼区間:-4.4%~4.6%)。同様に、病院到着時に脈拍あり(32%対32%、補正後差:-0.8、95%信頼区間:-4.9~3.4)、生存退院率(12%対11%、補正後差:-1.5、95%信頼区間:-3.9~0.9)退院時覚醒率(10%対10%、補正後差:-0.2、95%信頼区間:-2.5~2.1)においても有意差は認められなかった。

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平均BMI値は世界的に上昇傾向、肥満者は5億人以上に

1980年以降、平均BMIは世界的に増加傾向にあるが、その変動の傾向や直近の2008年の値には大きな差がみられることが、アメリカ・ハーバード大学公衆衛生大学院生物統計学科のMariel M Finucane氏らによる系統的な解析で明らかとなった。過体重は公衆衛生学上の重大な関心事だが、BMIの長期的な変動を世界規模で検討した解析はほとんどなく、直近の全国的な健康診断調査のデータに基づくものは皆無だという。Lancet誌2011年2月12日号(オンライン版2011年2月4日号)掲載の報告。1980~2008年の199の国と地域、910万人のデータを解析研究グループは、1980~2008年までの199の国と地域における20歳以上の成人の平均BMIの世界的な変動傾向を推定するために系統的な解析を行った。既報または未公開の健康診断や疫学試験を調査し、960ヵ国・年、910万人分のデータを収集した。ベイジアン階層モデルを用いて、年齢、国、年度別の平均BMIをそれぞれ男女別に推算し、各調査・試験が当該国の典型を示すものか地域限定的なものかを明らかにした。2008年の世界の肥満者:男性2億500万人、女性2億9,700万人1980~2008年の間に、最も多くの全国規模のデータを有していたのは日本であった(16の調査データ)。この間に、世界全体の男性の平均BMIは10年ごとに0.4kg/m2[95%不確かさ区間(uncertainty interval):0.2~0.6]増加し(真の増加となる事後確率:>0.999)、女性では0.5kg/m2(同:0.3~0.7)増加した(事後確率:>0.999)。国別の女性の平均BMIの変化は、有意差のない低下を示した19ヵ国から、10年ごとに2.0kg/m2増加(事後確率>0.99)したオセアニアの9ヵ国までの幅が認められた。男性では、8ヵ国を除く国々で平均BMIが上昇しており、オセアニアのナウルとクック諸島では10年ごとに2kg/m2以上の増加(事後確率>0.999)がみられた。2008年の平均BMIは男女ともにオセアニア諸国で最も高く、ナウルでは男性が33.9kg/m2(95%不確かさ区間:32.8~35.0)、女性は35.0kg/m2(同:33.6~36.3)に達していた。平均BMIが最も低かった国は、女性がバングラデシュの20.5kg/m2(同:19.8~21.3)、男性はコンゴの19.9kg/m2(同:18.2~21.5)であり、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国と東、南、東南アジアの数ヵ国は男女ともに21.5kg/m2未満であった。高所得国の中で最も平均BMIが高かったのは、男性がアメリカ、イギリス、オーストラリアの順で、女性はアメリカ、ニュージーランドの順であった。2008年に、過体重以上(BMI≧25kg/m2)の成人は世界で14億6,000万人(95%不確かさ区間:14億1,000~15億1,000万人)と推算され、そのうち男性の2億500万人(同:1億9,300万~2億1,700万人)、女性の2億9,700万人(同:2億8,000万~3億1,500万人)が肥満(BMI≧30kg/m2)と推定された。著者は、「1980年以降、平均BMIは世界的に増加していたが、変動の傾向および2008年の平均値は、国によって大きなばらつきがみられた」と結論し、「ほとんどの国では、BMIの増加の抑制や低下への転換を進めたり、代謝メディエーターを標的に高BMIの健康への影響を軽減する介入法や方策が必要である」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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収縮期血圧は世界的に微減するも、低~中所得国で高い傾向に

世界全体の平均収縮期血圧(SBP)は1980年以降わずかに低下傾向にあるが、その変動には地域や国によって大きなばらつきがあり、近年は低~中所得国でSBPが高い傾向がみられることが、アメリカ・ハーバード大学公衆衛生大学院疫学科のGoodarz Danaei氏らによる系統的な解析で判明した。血圧が食事やライフスタイル、薬理学的決定因子に及ぼす影響を解明して介入の優先順位を決め、国の健康プログラムを評価するには血圧の変動に関するデータが不可欠だが、世界規模で実施された血圧の変動傾向に関する解析はほとんどないという。Lancet誌2011年2月12日号(オンライン版2011年2月4日号)掲載の報告。1980~2008年の199の国と地域、540万人のデータを解析研究グループは、1980~2008年までの199の国と地域における25歳以上の成人の平均SBPの変動傾向を推定するために系統的な解析を行った。既報または未公開の健康診断や疫学試験を調査し、786ヵ国・年、540万人分のデータを収集した。ベイジアン階層モデルを用いて、年齢、国、年度別の平均SBPをそれぞれ男女別に推算し、各調査・試験が当該国の典型を示すものか地域限定的なものかを明らかにした。2008年の世界の平均SBP:男性128.1mmHg、女性124.4mmHg2008年の世界全体の年齢調整平均SBPは、男性が128.1mmHg(95%不確かさ区間:126.7~129.4)、女性は124.4mmHg(同:123.0~125.9)であった。1980~2008年までの世界全体のSBPは、男性が10年ごとに0.8mmHg(同:−0.4~2.2)低下し(真の低下となる事後確率=0.90)、女性は1.0mmHg(同:−0.3~2.3)低下した(事後確率=0.93)。西ヨーロッパやオーストラリアでは女性のSBPが10年ごとに3.5mmHg以上低下していた(事後確率≧0.999)。男性のSBPは、北米の高所得国で10年ごとに2.8mmHg(95%不確かさ区間:1.3~4.5)低下し(事後確率>0.999)、次いで西ヨーロッパとオーストラリアで10年ごとに2.0mmHg以上低下していた(事後確率>0.98)。オセアニア、東アフリカ、南アジア、東南アジアでは男女ともに、また西アフリカでは女性のみSBPが上昇しており、男性は10年ごとに0.8~1.6mmHg(事後確率:0.72~0.91)、女性は10年ごとに1.0~2.7mmHg(事後確率:0.75~0.98)の上昇がみられた。女性のSBPが最も高かったのは東・西アフリカ諸国で、平均135mmHg以上であった。男性の場合はバルト海沿岸諸国と東・西アフリカ諸国でSBPが最高域にあり、平均値は138mmHg以上に達していた。西ヨーロッパ地域では、男女ともに高所得国でSBPが最も高かった。著者は、「平均して、世界全体のSBPは1980年以降わずかに低下していたが、その変動には地域や国によって大きなばらつきがみられた。最近の傾向としては、低~中所得国でSBPが高かった」と結論し、「低~中所得国をターゲットに地域住民ベースまたは個別化された有効な介入を行うべきである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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エベロリムス、進行性膵神経内分泌腫瘍患者の無増悪生存期間を延長

プラセボ対照の第3相国際共同二重盲検無作為化試験「RADIANT-3」の結果、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害薬であるエベロリムス(商品名:免疫抑制薬としてサーティカン、抗悪性腫瘍薬としてアフィニトール)は、進行性膵神経内分泌腫瘍患者の無増悪生存期間を有意に延長し、重篤な有害事象の発生率は低いことが示された。米国テキサス州立大学M.D.アンダーソンがんセンターのJames C. Yao氏ら試験グループが報告した。エベロリムスの進行性膵神経内分泌腫瘍についてはこれまで、二つの第2相試験で抗腫瘍活性が示されていた。NEJM誌2011年2月10日号掲載より。410例を1日1回エベロリムス10mg投与群もしくはプラセボに無作為化 試験は2007年7月~2009年5月の間、18ヵ国82施設から募った、過去12ヵ月以内に放射線学的進行が認められた低悪性度または中悪性度の膵神経内分泌腫瘍患者410例を、1日1回エベロリムス10mg(207例)またはプラセボ(203例)を投与する群に無作為に割り付け前向きに追跡した。両群とも治療継続のために最適な支持療法(BSC)が併用された。主要エンドポイントは、intention-to-treat解析による無増悪生存期間とした。試験中に放射線学的進行が認められた患者には治療割付を示すこととし、プラセボに割り付けられた患者にはオープンにエベロリムス投与の選択肢が示された。無増悪生存期間、エベロリムス群11.0ヵ月、プラセボ群4.6ヵ月 エベロリムス群の無増悪生存期間の中央値は11.0ヵ月、プラセボ群は4.6ヵ月だった。エベロリムス群の疾患進行または全死因死亡のハザード比は0.35(95%信頼区間:0.27~0.45、P

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市販の遺伝子検査が購入者に与える影響

消費者が直接購入できる、疾患リスクを評価する市販の全ゲノムプロファイリングをめぐって、米国Scripps Translational Science InstituteのCinnamon S. Bloss氏らが、購入使用者の心理面、行動面および臨床面に与える影響を調査した。市販全ゲノムプロファイリングの使用については論争の的となっており、消費者にもたらす影響はほとんど明らかになっていない。NEJM誌2011年2月10日号(オンライン版2011年1月12日号)掲載より。医療・技術関連会社勤務者対象にベースラインと追跡調査後の心理面などの変化を調査Bloss氏らは、Navigenics Health Compass(臨床上の妥当性、有用性は不明なNavigenics社が市販する検査ツールの一つ)を購入使用した人を対象に、リスクを精査した結果が、心理面、行動面ならびに臨床面に与える影響を調べた。被験者は、Health Compassを割引価格で購入した医療・技術関連会社の関係者を対象とした。検査後平均(±SD)5.6±2.4ヵ月後に、ベースラインと比較して、不安症状、脂肪摂取量、運動行動で変化したあらゆる点について報告してもらうこととし、また検査に起因するストレスや、検診の受診状況についても報告してもらった。登録された被験者3,639人のコホートのうち、追跡調査を完了したのは2,037人だった。主要解析の結果、ベースラインと追跡調査後で、不安症状(P=0.80)、脂肪摂取量(P=0.89)、運動行動(P=0.61)の変化に関して有意差は認められなかったが、副次解析において、検査に起因するストレスが、評価をしたすべての疾患の平均推定生涯リスクと相関していたことが判明した(β=0.117、P

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センチネルリンパ節転移の浸潤性乳がん、非腋窩郭清でも全生存は同等

センチネルリンパ節転移が認められる浸潤性乳がんに対し、ランペクトミー後に腋窩郭清を実施しなくても、実施した場合に比べて全生存に関して非劣性であることが示された。米国Saint John’sヘルスセンターJohn Wayneがん研究所のArmando E. Giuliano氏らが、約900人について行った無作為化試験の結果から明らかにしたもので、JAMA誌2011年2月9日号で発表した。T1~T2の浸潤性乳がん患者を2群に分け、約6年追跡同研究グループは1999年5月~2004年12月にかけて、115ヵ所の医療機関を通じ、891人の乳がん患者を集め、第3相非劣性試験「ACOSOG(American College of Surgeons Oncology Group)Z0011」を実施した。被験者は女性で、T1~T2に分類される浸潤性乳がんで、触知可能なアデノパシーはなかった。またセンチネルリンパ節転移について、凍結切片、捺印細胞診またはヘマトキシリン・エオジン染色の永久標本により特定が行われ、1~2ヵ所が認められていた。被験者は全員、ランペクトミーと乳房全体への接線照射法を受けた。研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群には腋窩郭清を実施し(腋窩郭清群)、もう一方の群には実施しなかった(非腋窩郭清群)。腋窩郭清群には、10ヵ所以上のリンパ精検が行われた。全身投与療法の有無は、各主治医の裁量に一任された。主要エンドポイントは全生存とし、非腋窩郭清群の腋窩郭清群に対する非劣性マージンは、ハザード比1.3以下を示した場合とした。副次エンドポイントは、無病生存期間とした。なお本試験は、死亡500例後最終解析時の被験者登録数を1,900例とし開始されたが、予想されたよりも死亡率が低く早期に打ち切りとなった。5年生存率、5年無病生存期間ともに、両群で同等追跡期間の中央値は6.3年(最終追跡2010年3月4日)だった。無作為化追跡されたのは、腋窩郭清群445人、非腋窩郭清群446人だった。両群とも臨床所見や腫瘍の状態は同等だったが、切除したリンパ節数の中央値は、腋窩郭清群が17に対し、非腋窩郭清群は2だった。5年生存率は、腋窩郭清群が91.8%(95%信頼区間:89.1~94.5)に対し、非腋窩郭清群は92.5%(同:90.0~95.1)と、両群に有意差は認められなかった。また5年無病生存期間も、腋窩郭清群が82.2%(95%信頼区間:78.3~86.3)に対し、非腋窩郭清群は83.9%(同:80.2~87.9)と、両群で有意差は認められなかった。非腋窩郭清群の腋窩郭清群に対する全生存のハザード比は、補正前が0.79(90%信頼区間:0.56~1.11)、補正後が0.87(同:0.62~1.23)であり、非腋窩郭清群の非劣性が証明された。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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CABG直後のCK-MBやトロポニン上昇は中・長期死亡率を増大:大規模メタ解析より

冠動脈バイパス術(CABG)後24時間以内のクレアチンキナーゼMB(CK-MB)分画やトロポニン値の上昇は、中・長期死亡率増大の独立予測因子であることが明らかになった。CK-MB分画は最も強力な独立予測因子で、術後30日から1年後の死亡率は、正常値上限を超え5ポイント増加するごとに、死亡リスクは1.17倍程度増大するという。米国マウントサイナイ大学のMichael J. Domanski氏らが、1万9,000人弱対象の大規模メタ解析の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年2月9日号で発表した。30日・1年死亡率、CK-MB分画増加に伴い増大研究グループは、CABGについて行われた無作為化試験やレジストリ試験で、術後24時間以内に心臓マーカーの測定を行った7試験、追跡期間3ヵ月から5年にわたる、被験者合計1万8,908人の分析を行った。結果、死亡率はCK-MB分画増加に伴い単調に増大する傾向が認められた。具体的には、30日死亡率が、CK-MB分画0~1未満の群では、0.63%、1~2未満では0.86%、2~5未満0.95%、5~10未満では2.09%、10~20未満では2.78%、20~40未満・40以上では7.06%だった。CK-MB分画は、30日死亡率に関する最も強力な独立予測因子であり、試験開始時点でのその他のリスク因子について補正後も有意なままだった(x2=143、p<0.001)。正常値上限を超え5ポイント増加ごとのハザード比は1.12(95%信頼区間:1.10~1.14)であった。この傾向は、術後30日死亡率について最も強くみられたが、その後も術後1年まで継続した(x2=24、p

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教授 川合眞一先生「関節リウマチ治療にパラダイムシフトをもたらした生物学的製剤」

1977年慶應義塾大学医学部卒業。79年同大学内科リウマチ研究室。87年東京都立大塚病院リウマチ膠原病科医長。91年聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター講師。94年同助教授。99年同教授。2004年、東邦大学医学部付属大森病院膠原病科教授、09年同副医学部長。日本リウマチ学会理事、日本臨床薬理学会評議員前理事長、日本炎症・再生医学会理事、他。日進月歩の関節リウマチ研究関節リウマチは、滑膜が異常に増殖してパンヌスと呼ばれる塊ができます。パンヌスには、リンパ球T細胞やB細胞、マクロファージなどたくさんの細胞が集まって、炎症の元になる物質を作り出すという病態はわかっています。この炎症の元の代表的なものが、TNF-αを中心とした炎症性サイトカインです。この炎症性サイトカインを抑えることが、関節リウマチの治療に有効であり、ここ10年間で効果の高い治療薬が使えるようになり、早期に発見できれば格段に症状を抑えることができるようになりました。リウマチは中世から関節疾患として認識されています。長い歴史を持つ病気ですから、長期にわたり多くの学者によって研究されているにもかかわらず、いまだにその原因は解明されていません。診断基準にしても、これまでは1987年にアメリカで発表された分類基準でした。それが昨年、23年ぶりに米国リウマチ学会と欧州リウマチ連盟が共同で新しい診断基準を提唱しました。これによって、早期診断が可能となり、速やかに治療できるようになりました。この診断基準の一番のポイントは、早期から関節リウマチと診断してもよいところにあるのですが、他の膠原病ではないと否定しなければならないことが大前提です。そこで専門医の知識が必要となります。全身性エリテマトーデスにしても、強皮症にしても関節炎は主要な症状として現れますが、それ以外の疾患の特徴によって鑑別することが可能になります。特に初期症状は、関節リウマチとよく似ていることもあり、簡単に診断してしまい実はSLEであったとわかった場合、本来の疾患の治療が手遅れになり、結果的に、腎臓が悪くなったり肺が悪くなったりして臓器病変を引き起こしてしまう可能性があります。生物学的製剤によって改善された患者さんのQOLメトトレキサートと生物学的製剤の併用によって飛躍的に治療は進歩しましたが、関節リウマチ全体でみると、3割の人には効きません。また、効果があった7割の中でも、その効果はまちまちで、劇的に効いて完治に近い状態の人もいれば、現状維持にとどまっている人など結果に幅があります。もちろん、今まで大きな効果を得る治療法がなかったのですから、それに比べれば改善されましたが、今までが悪すぎたからともいえる結果なのです。それでも、患者さんのQOLは飛躍的に改善されています。数十年前は、関節リウマチに罹患することによって、職業を持つ若い女性が痛みによって仕事ができなくなり、既婚者であれば主婦としての仕事がままならなくなり場合によっては離婚につながることもありました。しかし、今は仕事上何の制約もなく働くことができ、結婚し出産して一般的な生活をおくれる人が増えました。QOLの視点から考えると、やはり画期的な治療ができているといえるのではないかと思います。ただ、薬価が高いという問題は残っています。メトトレキサートの場合は、妊娠を考えたら計画的に投薬をストップしなくてはいけませんが、生物学的製剤、一部の抗リウマチ薬や免疫抑制剤については妊婦への処方もリスクが高くないとの報告もあります。ただし、まだデータが不十分なので、現状では妊娠したら薬は中断しています。もしも妊娠中に痛みがひどくなった場合はステロイドホルモンを使い、出産後、抗リウマチ薬に戻します。このように、妊娠を恐れることなく治療できるようになったのは女性の患者さんにとって朗報だと思います。関節リウマチの場合、人によっては妊娠すると一時的に痛みが治まることがあるのですが、分娩後には症状が悪化することがあるので、元の治療に戻すことが必要です。関節リウマチの治療薬は、ここ数十年で飛躍的に進歩していて、種類も多くそれぞれの特徴も複雑になってきているので、専門医でなければ適切な治療は難しいと思います。だからこそ疑わしいと思ったら専門医に相談してほしいのです。滑膜組織の炎症機序を探る関節リウマチは滑膜細胞が増殖することが問題で、その増殖した滑膜細胞から様々な炎症関連物質が分泌され、炎症の悪循環を作ります。糖代謝の領域ではよいとされるアディポネクチンという脂肪細胞が分泌するサイトカインを使ってみたら、炎症を悪化させてしまいました。これは東邦大学の我々のグループが見つけた結果なのですが、当大学の発表から少し遅れてドイツからも報告されました。アディポネクチンは一方では糖代謝をよくする動脈硬化についてはよいファクターであるのに、局所では炎症を悪化させるという二面性があり、これらの詳細な機序を明らかにするのが現在の研究テーマの一つです。早期発見で3ヵ月以内に抗リウマチ薬を投与リウマチと診断されたら3ヵ月を待たず、すぐに抗リウマチ薬を使うのは大原則となっています。これは大切なポイントで難しいところもあります。元は抗がん薬として使われていたメトトレキサートが週1日少量をリウマチの患者さんに使うと、症状が改善されるということがわかり、アメリカでは1988年、日本では1999年にリウマチの治療薬として認められました。さらに2000年代になって生物学的製剤ができ、リウマチ治療においてパラダイムシフトをもたらしたのです。関節リウマチによる変形は、炎症が続いて初めて変形していくわけで、炎症の初期段階で発見してそれを抑えることができれば、高い率で制することができます。しかし、中にはどうしても抑えることができない患者さんのケースもありますので、さらなる薬の研究、開発が待たれるところです。現在でも治療に難渋している率は2割から3割なのですが、7割から8割の患者さんは薬の進歩や治療でコントロールできています。関節リウマチは長期にわたる病気なので、すでに関節破壊が始まってしまった患者さんに関しては進行させない。早期に発見された患者さんの現状維持はもちろん、それ以上進行させない。すでに進行してしまっていても、関節破壊を起こさせないことが重要です。関節が痛くなったその時が発症と考えていいのですが、ただの痛みか関節リウマチなのかわからない期間はあります。痛みを重視するよりは、関節が腫れ始めて慢性的(数週間)に続いたら疑うべきです。以前は多関節に症状があることが基準となっていましたが、今は一関節でも慢性的な関節腫脹がみられ、リウマトイド因子が陽性であったり、抗CCPが陽性であるなどの検査値の異常を考慮した上で、関節リウマチと診断されるようになりました。昔よりもより早期に診断して、治療介入する方向になっています。ですが、患者さん自身がいつから腫れ始めたのかよくわかっていない場合もあります。とにかく関節が慢性的に腫脹していたら、専門医に診てもらうことをお勧めします。専門医ではなく整骨院で治療を始めて、痛みが治まらないので総合病院へ行ったが関節リウマチとは診断されず、治療が遅れてしまったというケースは、少なくありません。リウマトイド因子が陽性でないからリウマチじゃない、といわれることも多いのです。実は、このリウマトイド因子は関節リウマチ患者の7から8割しか陽性反応がでません。陰性反応だったあとの2から3割の人はリウマトイド因子は陰性なのに関節リウマチなのです。つまり、検査の数字だけに頼っていては、正確な判断は難しいといわざるを得ません。坑CCP抗体は関節リウマチには出ますが、全身性エリテマトーデスには出ないという特異性は確かにありますが、この検査ですら2から3割の人は陰性です。つまり、検査数値の結果が100%ではないことを念頭におかなければならないのです。医学生のみなさんへ関節リウマチは未知の病気ですので、やらなければいけない研究課題は山積しています。東邦医大大森病院では医師2名にスタッフ1名でのスタートでしたが、現在は12名に増えました。免疫疾患、慢性疾患なので、一般には循環器、消化器のような急変する病気ではありませんが、慢性的な病気の患者さんを長期にわたって管理して、病気をコントロールしていくというのは、医者の醍醐味でもあり使命でもあると思います。そのためには知識がなければ管理できませんし、世界の文献を調べて研究し自分なりに解釈して治療を行うというステップが必要なのです。それとともに、病気の原因を究明するための基礎研究もでき、臨床研究もできる。患者さんにも協力していただいて研究していくのは、今後のリウマチ治療研究において意味のあることです。学生にとっては治療も研究も両方を体験できる科であると思います。東邦大学はそこに力を注いでいます。私が当大学に来たのもそこが一番の理由で、臨床に携わりながら研究をし、多くの学生に教えていきたいと考えたからです。そして、立派なリウマチ専門医を育てたいと希望しています。私の教育方針としては、実際に患者さんを診てもらうようにしています。たとえば強皮症の場合、写真では見たことがあるかもしれませんが、実際に診て触ったことがなければ正確な鑑別診断はできません。臨床の所見をとることが、目で見て触ってというクラシカルな行為が、関節リウマチの診断に最も重要なことなのです。これは臨床の現場で教えないとなかなか伝わりません。研修の段階で一番重視している教育の一つです。また、鑑別診断では、総合的な視点が重要です。膠原病は様々な症状を引き起こします。関節だけでなく、心臓も肺も悪くなって皮膚病変もあった場合、科学技術や検査結果にのみ頼るのではなく"診る""触る"などの最も初歩的でクラシカルな診断力が必要とされます。診察所見を大事にする。これが臨床医の本流だと考えています。質問と回答を公開中!

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教授 川合眞一先生の答え

関節リウマチの診断基準現場では忠実に7項目のうち4項目以上の診断基準を満たせば診断されているのでしょうか?だとしたら3項目、2項目が陽性の患者にはどのように対応しておられるのでしょう?たとえばリウマトイド因子のみが高値の患者が診断されないとしたら、本来の早期発見の意味から解離してはいきませんか?Webでも紹介させていただいたように、関節リウマチ(RA)のお馴染の7項目の1987年の分類基準は、23年ぶりに改訂されました[Arthritis Rheum. 2010;62:2569-81、「今日の治療薬2011」(南江堂)の抗リウマチ薬の解説部分(p.298)に私が紹介しています]。その新分類基準の目的は、より早期の患者をRAと診断しようとするものですが、それでもご指摘のように点数が足りずにRAに分類できないということはあり得ます。しかし、ご理解いただきたいのは、これらは分類基準であって診断基準ではないことです。即ち、臨床研究を前提として一定の所見を持つ患者群を選び出すのが分類基準の本来の目的ですので、ある専門家が分類基準に当てはまらない例をRAと診断することを否定するものでは決してありません。ということで、実際にはかなり稀なことではありますが、私も分類基準を満足しない例をRAと診断することもございます。分類基準を満たさない患者にRA治療を行うか行わないかは患者によって異なりますが、一方でRAと診断しても治療を要さない例もある訳で、診断と治療とは別の問題です。なお、ご指摘のようなリウマトイド因子(RF)のみが高力価陽性という所見だけでしたら、私はRAと診断することはありません。RFは元々特異性が低い検査ですので、関節症状が全くなければ、むしろ他の自己免疫疾患や肝疾患などを考えた方が良いかもしれません。もちろん、健常者でもRF陽性の患者は将来的にRAなどの自己免疫疾患を発症する確率は若干高いという報告はありますので、他疾患も否定できるようなら、将来RAなどを発症する可能性はRF陰性の方よりは若干高いというご説明だけはしています。避難所での関節痛対処(関節リウマチの見分け方)について避難所を回っています。避難所では高齢者は座りっぱなしなので、関節痛を起こしています。単なる関節痛の方が多いとは思いますが、念のため、関節リウマチも念頭にいれて疑ってかかりたいです。自分で調べればよい話ですが、少し余裕がありません。なんかしらのチェックリストがあるとありがたいです。ご教示宜しくお願いします。高齢者に最も多い関節疾患は変形性関節症ですが、もちろん関節症状を訴える患者に関節リウマチ(RA)が含まれているかもしれません。しかしそういった場合には、通常、既にRAと診断された方が多いと思いますので、患者の訴え(既往歴)を聞くのが最も良い方法と思います。避難所で初発例に遭遇する可能性もないとは言えませんが、その場合は極めて早期の発症例ですので、診断はしばしば困難なことがあります。その場合は、チェックリストというよりは、前のご質問にお応えしたようにRA分類基準などを参考に診断することになります。前述しましたように「今日の治療薬2011」(南江堂)のp.298に紹介しております。薬がない関節リウマチ患者の応急対応について現在、薬剤を取り寄せてはいますが、薬が不足しています。薬がないからあきらめろとは言えません。薬がくるまでの間にできることはあるのでしょうか?私はリウマチ専門外です。アドバイスいただけると幸いです。関節症状が非常に強いときには原則として関節局所の安静を取る必要があります。ただし、あまり長く(数日間でも)極端な安静が続きますと筋力が低下し、動きが悪くなります。当然、長期的には関節可動域が減少してしまいます。そのため、痛い中でも若干は動かして関節可動域を保つことが必要ですが、その場合は「翌日痛みが増すようなら動かし過ぎ」という判断が宜しいように思います。なお、最近のRA治療は抗リウマチ薬が中心ではありますが、適切な効果・副作用モニタリングができる環境がなければ、投与はし難い薬です。薬がなければ仕方がないですが、ステロイドやNSAIDが手に入るようになりましたら、低用量のステロイド(プレドニゾロンでなるべく5 mg/日以下が望ましい)やNSAID(消化管潰瘍の既往がある方や高齢者ではプロトンポンプ阻害薬などを併用)で当面の痛みのコントロールをする方が安全かもしれません。もちろん、その後十分な環境が整えば、抗リウマチ薬を併用してステロイドとNSAIDは減量・中止を目指すことになります。皮膚科との連携私は大学病院で皮膚科医をしています。皮膚科でも膠原病の患者さんを診察することが多いです。膠原病は全身症状を合併することが多いため、治療はほぼ膠原病内科医にお任せしているのが現状です。皮膚科医として治療に参画できないのが非常にジレンマで、膠原病内科を勉強するために国内留学も考えたぐらいでした。膠原病内科医が皮膚科医に求める要素を教えてください。同じ疾患を違う専門家が診るのは非常に大事で、内科医の視点と皮膚科医の視点とは違うことがあります。例えば、臓器障害があるような例ではご指摘のように治療は内科が担当するかもしれませんが、皮膚科医の視点は内科医にとって非常に参考になりますので、病理所見も含めた皮膚所見のプロの視点を内科医にご教示いただければと存じます。もちろん、皮膚科の先生の内科での研修は膠原病内科の立場からは大歓迎です。併用についてメトトレキサート 使用時のステロイド NSAIDの併用について教えてください。メトトレキサート(MTX)は関節リウマチ(RA)の基本的な治療薬ですので、ステロイドやNSAIDと併用される可能性は高いと思います。まず、ステロイドとは直接の薬物相互作用は知られていませんが、共に免疫抑制作用がありますので、両者の併用は単独よりは感染症が増加する可能性が考えられます。ただ、実際には大きな問題は生じません。一方、NSAIDとMTXの併用は、特にMTXの高用量を使用する治療では相互作用が指摘されています。NSAIDは腎血流量を減少させますので、両者の併用によりMTXの腎排泄が遅れ、血中濃度が高くなって骨髄抑制などの副作用を合併しやすくなるからです。ただ、RAにおけるMTX療法は週1-2日だけ、しかも少量投与です。その用法・用量範囲内では、仮にNSAID常用量を連日投与したとしても、明らかなMTXの副作用増加はみられないとされています。そうではありますが、NSAIDは既にRA治療に必須の治療薬ではなく、症状の緩和にのみ使われる対症療法薬という概念になっています。仮にMTXで十分な効果が得られた場合、最初に減量・中止すべきはNSAIDであると考えて治療に当たるべきと思います。若年性関節リウマチと成長痛との見分け方について町医者をやっている者です。専門は内科医ですが、小さな町なので幅広い症状をみています。特に中学生ですが、「成長痛」を訴えてくることが多々あります。昨年、少し様子がおかしい子がいたので、県立病院のリウマチ専門医を紹介して診てもらったところ、若年性関節リウマチと診断されました。それ以来、関節痛を訴えてくる中学生には、念のため、朝のこわばりはないか?聞くようにはしていますが、他に診察時に気をつけてみておいた方が良いことはありますでしょうか?ご教示お願いします。若年性関節リウマチ(JRA)は、最近ではより広い概念である若年性特発性関節炎(JIA)と呼ばれるようになりました。JIAは臨床所見でいくつかの群に分類され、治療法や予後などが異なっています。成長痛などと異なる診察時の特徴は、やはり明らかな関節腫脹が数週間持続することでしょう。中には発熱などの全身症状の強く出る患児もいます。血液検査をすれば、赤沈値や血清CRP濃度の増加などの全身性炎症所見がみられます。それらの所見からJIAが疑われたら、早い時期に先生がされたようにご専門の小児科医に紹介されるのが宜しいかと存じます。なお、リウマトイド因子は陰性であることが多いのですが、陽性の患児もいますので、JIAか否かの診断には役立ちません。関節リウマチの治療とリハビリについて関節リウマチの治療とリハビリについて教えてください。症状によって個人差はあるかと思いますが、一般的に「週に何回くらい診察があるのか?」「週に何回くらいリハビリを行うのか?」を知りたいと思っております。基本的な質問で恐縮ですが、最近田舎でクリニックを始めたばかりなので……。患者に聞かれて困っています。(ずっと大学にいました。一歩外に出ると専門外は何も分からないことに今更気づきました。。お恥ずかしい限りです。)メトトレキサート(MTX)などの抗リウマチ薬を開始する場合は、私はまず2~4週毎の受診を患者に勧めます。もちろん、次の診察日前に何か副作用が疑われる症状を自覚したら、必ず予約外でも受診するようにも説明しています。その後症状が安定し、治療薬も変える必要がなくなったら、症状や薬によって若干違いますが1~3か月毎に診察しています。来院時には必ず採血や検尿で副作用や効果をモニタリングすることが重要で、我々の病院では診察前の採血および検尿結果をチェックしながら診察し、診察所見と検査結果に問題ないようなら治療を継続するようにしています。クリニックなどで当日の検査結果が得られない場合は診察のみで方針を決定するしかありませんが、その場合でも検査会社から例えば翌日検査結果が送られてきたら、なるべく早く内容をチェックし、好中球減少や肝機能障害などを調べる必要があります。心配な結果があれば患者に電話などで連絡し、臨時の受診をお勧めするなどの対策を取った方が安全です。リハビリについては決まった方法はありません。一般には自宅でのリウマチ体操をお勧めしていますが、Webなどで参照できますのでご確認ください。ここでは、公益財団法人日本リウマチ財団のホームページ (http://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/taisou/taisou.html) を紹介いたします。もちろん専用のリハビリ施設をお持ちでリハビリ指導を積極的にされている施設もあり、そこでは症状に応じて週1~5回の外来指導が行われていることが多いと思います。さらに、入院でリハビリ治療を積極的に行っている病院もございます。 早期リウマチのMMP-3抗CCP抗体、CARF高値でMMP-3正常の早期リウマチではまだ関節滑膜の変化が少ない時期と考えてよろしいでしょうか。血液検査値だけでは関節滑膜の状態を判断することはできません。まずは、早期でも変化があることがあるのでレントゲン検査で骨・軟骨変化を診るのが基本と思います。さらに最近では超音波、ときにMRIなどで形態的な変化を診ることにより、総合して滑膜や骨・軟骨の変化を診断すべきと思います。早期リウマチの治療若い女性(22歳)、朝のこわばり(これは1時間以上)、両手指の第2,3PIPに痛みあります。検査は抗CCP抗体陽性、MMP-3やCRPは軽度上昇。最初に行う治療を教えてください。まず関節症状が痛みだけではなく腫れがあるかどうかを診察で確認します。ご質問には罹病期間の記載がありませんが、症状が1週間以内でしたら、私ならNSAIDを投与して経過をみます。明らかな腫れが2週間以上続いているようでしたら、重症度にもよりますが、サラゾスルファピリジン(SASP)を試みることもあります。関節腫脹や疼痛がかなり強いようでしたら最初からメトトレキサート(MTX)を始めることもありますが、妊娠を希望されている方には使えませんので、特に22歳という若い患者ではその点は十分に聞く必要があります。なお、MTXの胎児毒性は妊娠前に3か月の休薬をすることで回避できると言われています。仮に、MTX治療を開始後に患者が妊娠を希望されたら、MTXを中止してもその後3か月は避妊するように指導します。総括RA治療薬は最近の進歩が著しいので、治療に困ったらなるべく早く専門医に相談された方が良いように思います。また、RAと鑑別すべき類縁疾患は少なくありません。その意味では、診断に迷う患者についても、早い時期に専門医に相談されることをお勧めします。教授 川合眞一先生「関節リウマチ治療にパラダイムシフトをもたらした生物学的製剤」

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院外心肺停止のバイスタンダー心肺蘇生、人工呼吸併用の従来法で良好なアウトカム

 その場に居合わせた者(バイスタンダー)が行う人工呼吸+胸骨圧迫による心肺蘇生(CPR)は、胸骨圧迫単独によるCPRに比べて良好なアウトカムをもたらすことが、奈良県立医科大学健康政策医学講座の小川俊夫氏らが行った観察試験で示された。バイスタンダーによる救急救命処置としては、現在、胸骨圧迫単独によるCPRが唯一の方法として普及しているが、院外心肺停止患者では従来のマウス・トゥ・マウスによる人工呼吸と胸骨圧迫を併用するCPRとの効果の差は明確でないという。BMJ誌2011年2月5日号(オンライン版2011年1月27日号)掲載の報告。約4万例を対象とした日本の全国的な観察試験  研究グループは、院外心肺停止患者に対する胸骨圧迫単独によるCPRと、従来のマウス・トゥ・マウスによる人工呼吸+胸骨圧迫によるCPRの有用性を比較する日本全国規模の地域住民ベースの観察試験を実施した。2005年1月~2007年12月までに院外で倒れ、適格基準を満たした患者10万1,781例のうち、バイスタンダーCPRが施行されなかった患者(5万6,851例)などを除く4万35例が解析の対象となった。胸骨圧迫単独群に2万707例が、人工呼吸+胸骨圧迫群には1万9,328例が割り付けられ、救急車で病院に搬送された。 主要評価項目は、より良好なアウトカムの関連因子としての1ヵ月生存率および良好な神経機能(正常な脳機能あるいは中等度の脳機能障害)を保持した1ヵ月生存率であった。1ヵ月生存率:8.7%vs. 10.3%、神経機能保持1ヵ月生存率:4.6%vs. 5.6% 人工呼吸+胸骨圧迫群は胸骨圧迫単独群に比べ、1ヵ月生存率(8.7%vs. 10.3%、調整オッズ比:1.17、95%信頼区間:1.06~1.29、p=0.002)および良好な神経機能を保持した1ヵ月生存率(4.6%vs. 5.6%、同:1.17、同:1.01~1.35、p=0.037)がいずれも有意に優れていた。 両群ともに、良好な神経機能を保持した1ヵ月生存率は高齢になるほど低下し、CPR開始の遅れが10分までの間は時間の経過とともに低下した。心停止の原因が心臓以外の場合、人工呼吸+胸骨圧迫群における良好な神経機能を保持した1ヵ月生存率は、より若年の患者で有意に大きく(p=0.025)、CPR開始時間が遅くなるほど有意に上昇(p=0.015)した。心停止の原因が心臓の患者では、両群間でCPR開始時間によるベネフィットの差は認めなかった(p=0.369)。 著者は、「従来の人工呼吸+胸骨圧迫によるCPRは、院外心肺停止のうち、心臓以外の原因で心停止を来した若年患者およびCPR開始が遅れた患者において、胸骨圧迫単独によるCPRに比べて良好なアウトカムをもたらした」と結論している。

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心房細動患者のリスク層別化にはCHA2DS2-VAScスコアの方が優れる

心房細動患者のリスク層別化に、CHA2DS2-VAScスコアがCHADS2スコアよりも優れることが報告された。デンマーク・コペンハーゲン大学Gentofte病院循環器部門のJonas Bjerring Olesen氏らが、デンマーク国内登録心房細動患者データをベースにコホート研究を行った結果による。CHADS2スコアは脳卒中リスクの層別化に最もよく用いられてきたが、その限界も指摘され、2006年以降のACC・AHA・ESC各ガイドラインでは、その他リスク因子を加味することが示され、その後エビデンスが蓄積しCHA2DS2-VAScスコアとして示されるようになっていたという。BMJ誌2011年2月5日号(オンライン版2011年1月31日号)掲載の報告より。7万3,538例を対象に、CHADS2とCHA2DS2-VAScの血栓塞栓症の予測能を評価研究グループは、CHADS2スコアのリスク因子(うっ血性心不全、高血圧、≧75歳、糖尿病、脳卒中既往)と、CHA2DS2-VAScスコアのリスク因子(CHADS2因子に加えて、血管系疾患、65~74歳、性別、また75歳以上で脳卒中既往の場合はリスクの重みづけを倍加する)を評価し、いずれが血栓塞栓症の予測能に優れるシェーマかを検証することを目的とした。対象とした被験者は、1997~2006年にデンマーク国内データベースに登録された、ビタミンK拮抗薬を服用していなかった心房細動患者で、非弁膜症性心房細動患者12万1,280例のうち、適格であった7万3,538例(60.6%)を対象に検証を行った。主要評価項目は、脳卒中と血栓塞栓症であった。10年追跡時点のC統計量、CHADS2スコア0.812、CHA2DS2-VAScスコア0.888低リスク群(スコア0)における1年追跡時点での血栓塞栓症発生率は100人・年当たり、CHADS2では1.67(95%信頼区間:1.47~1.89)であったのに対し、CHA2DS2-VAScでは0.78(同:0.58~1.04)であった。中等度リスク群(スコア1)においては、同CHADS2スコアでは4.75(95%信頼区間:4.45~5.07)であったのに対し、CHA2DS2-VAScスコアでは2.01(同:1.70~2.36)だった。これら発生率について示されたパターンは5年、10年追跡時点でも同様の結果が示された。また高リスク群はいずれのスコアも同じように、低・中等度リスク群よりも著しく高率な血栓塞栓症の発生を示した。血栓塞栓症の発生率は、スコアを構成しているリスク因子に依り、また両スコアとも血栓塞栓症イベントの既往に関連するリスクは過小に評価することが認められたという。低・中・高の各リスク群に層別化された患者の10年追跡時点でのC統計量は、CHADS2スコアが0.812(95%信頼区間:0.796~0.827)であったのに対し、CHA2DS2-VAScスコアは0.888(同:0.875~0.900)であった。

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「iNPH診療による介護費用削減の研究」結果発表

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカル カンパニーは8日、洛和会音羽病院正常圧水頭症センター所長 石川正恒氏と共同で『特発性正常圧水頭症(iNPH)』(以下、iNPH)診療における介護保険の削減額を試算したところ、対象患者100名の介護保険の利用額が支給限度額であった場合、削減額は1億4,762万円となり、有病率で試算すると5年間で約4,576億円削減の可能性を見込めることがわかったと報告した。iNPHは、頭蓋内に過剰に髄液がたまり、脳が圧迫を受けて歩行障害・認知症・尿失禁など様々な症状が出る病気だが、手術で改善する疾患として近年注目を浴びている。また、高齢者認知症の5%~10%がiNPHに関与し、少なくとも31万人が罹患の可能性があるとされている(同社、2009年8 月の「iNPH有病率に関する分析調査」による)。同社では、iNPH疾患の早期診断と治療が、患者や介護者の方々のQOL(Quality of Life)と負担軽減になるばかりでなく、経済的にも大きく寄与すると考え、今回の調査を実施したという。今回の調査は、前方視的多施設共同研究(SINPHONI:Study of Idiopathic Normal-Pressure Hydrocephalus On Neurological Improvement)の対象患者100名について、治療による介護度の改善によって5年間で介護保険費用をいくら削減することが可能かを試算したもの。iNPH診療後のモディファイド・ランキン・スケール(mRS)と要介護度区分を相関させ、iNPH診療における改善度による介護保険削減額を算出した結果、対象患者が介護保険支給限度額を利用した場合に治療費用を含めても5年間でおよそ4,576億2,200万円の削減が可能と推測することができたとのこと。また、介護保険の認定率が16%、受給率が82.3%、利用率が48%として、現時点で実質約300億円規模の介護保険の削減が可能であると予測するという。詳細はこちらへhttp://www.jnj.co.jp/jjmkk/press/2011/0208/index.html

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漢方の活用法をわかりやすく!「漢方体験.com」がオープン

イスクラ産業株式会社は15日、漢方を利用した人の漢方体験レビューが閲覧できるサイト「漢方体験.com(かんぽうたいけんドットコム)」(http://www.kanpo-taiken.com)のベータ版をオープンしたと発表した。漢方体験.comでは、新商品レビューなどを紹介する一般的な商品レビューサイトとは異なり、「冷え」「生理の悩み」など、8つのカテゴリー別に検索し、体験をユーザーの皆様同士で共有できる。 たとえば「冷えの症状」と言っても、その原因は、体質、生活習慣、そして季節や気候など、様々な要因が影響している場合も多く、個々に合った薬や生活面の改善点も様々である。同サイト上では、そういった十人十色な漢方体験をユーザーから投稿してもらい、今まで漢方になじみのない人にも、漢方についての情報や、漢方を活用した体のケア方法などの情報収集に役立ててもらえるサイトを目指すとのこと。さらに、実際に薬局・薬店でカウンセリングを希望する人のための店舗検索や、初めての人にもイメージがわきやすい動画付き店舗情報の他、同社のマスコット「ニーハオ・シンシン」がつぶやくツイッターとも連動し、よりリアルタイムな情報も発信している。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://prtimes.jp/data/corp/2886/fc3ace52e5ad0c7b4acee9ad511358c6.pdf

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CRP濃度は、スタチンの血管ベネフィットに影響しない:HPS試験サブ解析

ベースラインのC反応性蛋白(CRP)濃度はシンバスタチン(商品名:リポバスなど)治療の血管ベネフィットに影響を及ぼさないことが、Heart Protection Study(HPS)の研究グループが行ったサブグループ解析で示された。CRP濃度に基づく炎症状態はスタチン治療の血管保護効果に影響を及ぼすことが示唆されている。特に、CRP濃度が高い患者はスタチンのベネフィットがより高く、CRPとLDLコレステロール値がいずれも低値の場合は、スタチンは無効との見解もあるという。Lancet誌2011年2月5日号(オンライン版2011年1月28日号)掲載の報告。約2万人をCRP濃度で6群に分類HPS試験は、血管イベントの発生リスクが高い患者に対するスタチン治療の有用性を評価するプラセボ対照無作為化試験。今回、研究グループは、スタチン治療の効果はベースラインのCRP濃度によって異なるとの仮説を検証するサブグループ解析を行った。1994~1997年までにイギリスの69施設から冠動脈疾患、冠動脈以外の血管の閉塞性疾患、糖尿病、降圧薬治療の既往歴のある40~80歳の2万536人が登録され、平均5年間シンバスタチン40mg/日を投与する群(1万269例)あるいはプラセボ群(1万267例)に無作為に割り付けられた。患者は、ベースラインのCRP濃度によって6つの群(<1.25、1.25~1.99、2.00~2.99、3.00~4.99、5.00~7.99、≧8.00mg/L)に分類された。主要評価項目は、重篤な血管イベント(冠動脈死、心筋梗塞、脳卒中、血行再建術の複合エンドポイント)であった。CRP濃度が最低のグループでもスタチン群が有意に良好無作為割り付け後の重篤な血管イベントの発生率は、シンバスタチン群が19.8%(2,033例)と、プラセボ群の25.2%(2,585例)に比べ相対的に24%(95%信頼区間:19~28)低下した。ベースラインのCRP濃度に比例して複合エンドポイントおよび個々の構成因子の低下率が変化するとのエビデンスは得られなかった(傾向検定:p=0.41)。ベースラインのCRP濃度が<1.25mg/Lの患者においても、重篤な血管イベントはシンバスタチン群[14.1%(239例)]がプラセボ群[19.4%(329例)]よりも有意に29%(99%信頼区間:12~43、p<0.0001)低下した。ベースラインのLDLコレステロール値とCRP濃度の高低の組み合わせで定義された4つのサブグループ間で、相対リスク低下率の不均一性に有意な差を認めなかった(p=0.72)。特に、低LDLコレステロール値/低CRP濃度のグループでは、シンバスタチン群[15.6%(295例)]がプラセボ群[20.9%(400例)]に比べ有意に27%(99%信頼区間:11~40、p<0.0001)低下した。著者は、「この大規模無作為化試験のエビデンスは、ベースラインのCRP濃度がスタチン治療による血管ベネフィットに実質的な影響を及ぼすとの仮説を支持しない」と結論し、「この知見は他のスタチンにも広範に一般化可能と推察される」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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変異型クロイツフェルト・ヤコブ病診断、有望な血液検査法を開発

 変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の診断のための血液検査法が、イギリス・ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン神経学研究所のJulie Ann Edgeworth氏らによって開発され、今回、その有用性が確認された。vCJDは牛海綿状脳症様プリオンの曝露に起因する致死的な神経変性疾患で、プリオン感染後は長期の臨床的に無症状な潜伏期間がある。無症候性のプリオン感染者数は把握されておらず、輸血、血液製剤、臓器や組織の移植片、汚染された医療機器を介する他者への感染リスクが懸念されている。Lancet誌2011年2月5日号(オンライン版2011年2月3日号)掲載の報告。正常対照100人を含む190人の血液サンプルを分析 研究グループは、vCJDプリオン感染を検出する血液検査法を開発し、その感度および特異度を確認するための検討を行った。 190人の血液サンプル(vCJD 21例、散発性CJD 27例、他の神経疾患42例、正常対照100人)のパネルを用いて、内因性vCJDの検出の感度および特異度を分析した。 血液サンプルは盲検化されて個々に番号が付され、2回ずつの検査が行われた。2回の検査ともに反応がみられたサンプルのみを陽性とした。感度:71.4%、特異度:100% 10(−10)に希釈された内因性vCJDプリオン感染脳の化学発光シグナルの平均値が1.3×10(5)[SD 1.1×10(4)]であったのに対し、10(−6)希釈正常脳は9.9×10(4)[SD 4.5×10(3)]であり、両者は明確に識別が可能であった(p<0.0001)。 15サンプルが陽性と判定された。そのすべてがvCJD例のサンプルであり、本検査法の感度は71.4%(95%信頼区間:47.8~88.7)、特異度は100%(同:97.8~100)であった。 著者は、「本法は、症状のみられる患者のvCJD診断における血液検査のプロトタイプであり、無症候性のvCJDプリオン感染の大規模なスクリーニング法の開発につながる可能性がある」と結論している。

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乳がん患者のセンチネルリンパ節における潜在性転移の有無と臨床転帰との関連

潜在性リンパ節転移が、乳がん患者の再発あるいは生存期間の重要な予後因子であることは、後ろ向き研究や観察研究で示唆されているが、これまで、センチネルリンパ節における潜在性転移と臨床転帰の関連について、前向きに検討した無作為化試験のデータはなかった。米国バーモント医科大学のDonald L. Weaver氏らは、5,611例の乳がん女性を、センチネルリンパ節生検+腋窩郭清群と、センチネルリンパ節生検単独群に無作為に割り付け全生存率などに関する両群の同等性を検証した試験「NSABP試験B-32」のコホート解析を行い、潜在性転移の臨床的重要性について評価を行った。NEJM誌2011年2月3日号(オンライン版2011年1月19日号)掲載より。センチネルリンパ節生検陰性例の潜在性転移例は15.9%試験では、各群に割り付けられた被験者のうち、初回検査で病理学的にセンチネルリンパ節陰性と判定された被験者3,989例(71.1%)は、センチネルリンパ節のパラフィン包埋組織ブロックを中央に集約し、組織ブロックのより深部の潜在性転移の有無についての追加的評価が行われた。組織ブロックが入手できたのは3,887 例。組織上の十分に距離を置いた2ヵ所で、サイトケラチンのルーチン染色と免疫組織化学染色の両方が行われた。これら追加的評価の所見は、治療を担当する医師には知らされなかった。そのため臨床的治療の決定に追加的評価の結果は用いられていない。なお本試験では、後ろ向き試験における重大な限界要因である最大径2mm超のマクロ転移例について、初回検査時にすべて検出されるようになっていた。解析の結果、生検で陰性と判定された両群計3,887例のうち、潜在性転移は15.9%(95%信頼区間:14.7~17.1)で検出された。Log-rank検定の結果、潜在性転移が検出された患者と検出されなかった患者との間で、全生存期間(P=0.03)、無病生存期間(P=0.02)、無遠隔転移期間(P=0.04)のいずれにおいても有意差が示された。補正ハザード比は、死亡1.40(95%信頼区間:1.05~1.86)、全転帰イベント1.31(同:1.07~1.60)、遠隔転移1.30(同:1.02~1.66)だった。 陰性例への追加的評価による、転移検出例と非検出例との5年全生存率の差はわずか一方で、Kaplan-Meier推定値で算出した5年全生存率は、潜在性転移が検出された患者は94.6%、検出されなかった患者は95.8%だった。研究グループは、「潜在性転移は、センチネルリンパ節陰性患者の独立予後因子ではある。しかしながら5年時点の転帰の差は1.2ポイントとわずかだった。センチネルリンパ節生検陰性の乳がん患者に対する、免疫組織化学的分析などの追加的評価は臨床的ベネフィットが示されなかった」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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