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mTOR阻害剤が腎細胞がんにもたらす可能性

2010年1月、mTOR阻害による抗悪性腫瘍剤としては日本初となる「エベロリムス(商品名:アフィニトール)」が承認を得た。ここでは、2月22日、アーバンネット大手町ビルにて開催された「mTOR阻害剤『アフィニトール』が腎細胞がん治療にもたらす可能性」と題するプレスセミナーをお届けする。帝京大学医学部泌尿器科学教室 主任教授 堀江重郎氏は、mTOR阻害剤の基礎から臨床治験まで広範にわたり講演した。<ノバルティス ファーマ株式会社主催> がん治療における新しい戦略無秩序な細胞増殖を繰り返すがんにおいて、その制御を失った細胞周期を停止させるのが従来の抗がん剤の作用機序であるが、さらに近年、がんそのものが自らを養う血管を新生させることから、そこをターゲットとする分子標的薬による治療が進んできている。そして新たにmTOR阻害剤など、無制限な細胞内の代謝もがん進行の要因となっている点に着目した治療戦略が、難治性がんへの福音となる可能性が強まってきた。mTORとは堀江氏はまず、mTORとその阻害剤について概説した。mTORとはマクロライド系抗生物質ラパマイシンの標的分子として同定されたセリン・スレオニンキナーゼであり、細胞の分裂や成長、生存における調節因子である。その重要性を示唆する事実として、酵母からヒトにいたるまで95%以上相同な蛋白であるため、mammalian Target Of Rapamycin(=mTOR)と総称される。正常細胞においては、栄養素や成長因子、エネルギーといった「エサ」があると活性化し、エサのない状況ではいわば冬眠状態となっている。栄養素やその他増殖促進経路からのシグナル伝達を制御する役割から、糖尿病や生活習慣病への関与も報告されている。一方、mTOR阻害剤のアフィニトールやラパマイシンは、タクロリムスと同様の機序で免疫抑制効果を持つ。分子生物学的には、細胞周期をG1期で停止させることや、低酸素誘導因子(HIF※)の安定化および転写活性を抑制することが示されている。多くのがんでmTORシグナル伝達経路が調節不全を起こして常に活性化しており、mTOR阻害剤の抗腫瘍効果が臨床レベルでも検討されている。(※HIF:mTOR活性化や低酸素によって細胞内に蓄積し、血管新生や解糖系代謝を亢進させる。)昨年Natureで発表され話題となった、興味深い知見がある。ラパマイシン適量をマウスに投与したところ、加齢期であっても寿命延長効果が見られた。これはカロリー制限したサルの方が長寿命であったデータと同等と考えられる、と堀江氏は語った。また、がん患者を高カロリー摂取群とカロリー制限群に分けたところ、制限群の方が長生きしたという結果が複数出ており、これまでは切り離して考えられていた「がん」と「体内環境」の密接な関連に関心が寄せられている。がん細胞の代謝にも影響するmTOR阻害剤は、この流れに合致する薬剤といえる。 腎細胞がんわが国における腎がんの9割は腎細胞がんであり、好発年齢は50歳以降、男女比は約2:1である。年間で発症数は1万人を超えて増加傾向にあるとされ、約7千人が死亡する。寒冷地方に多く発症し、ビタミンD欠乏との関連が指摘されている。遺伝性にフォン・ヒッペル・リンダウ(VHL)遺伝子が変異または欠失しているVHL症候群は120家系あり、遺伝性腎細胞がんを発症する割合は50%程度。根治的治療は手術で、StageⅣであってもなるべく切除した方が予後良好である。分子標的薬登場以前はサイトカイン療法しか薬物治療がなく、治療抵抗性のがんの一つである。 腎細胞がんとmTOR阻害剤堀江氏によると、腎細胞がん患者においてはmTORの上流蛋白Aktの過剰な活性化や、血中血管内皮増殖因子(VEGF)濃度の上昇が認められ、増殖シグナルが亢進している。加えて、mTORに至るシグナル経路を抑制する因子の変異・機能低下や、VHL遺伝子変異によるHIFの過剰産生が見られ、抑制シグナルの低下もある。正常ではVHLはがん抑制因子であってHIFを抑制しているが、腎がんの多くでは変異による不活化が起こっている。もともと腎臓は血管に富み、VHL変異で異常な血管が作られやすい。mTOR阻害剤は、このようにVHLが機能しない状況でもHIF合成を阻止する。また、VEGF-Aの産生も阻害し、結果として腫瘍細胞での血管新生を抑制する。このように、がん細胞の増殖抑制と血管新生阻害の抗腫瘍効果を併せ持つmTOR阻害剤のアフィニトールの、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤(スニチニブまたはソラフェニブ)が無効となった進行性腎細胞がんを対象として有効性および安全性について検討した臨床試験がRECORD-1である。患者をBSC+アフィニトール群とBSC群に無作為割付した結果、アフィニトール群で無増悪生存期間が有意に延長し、抗腫瘍効果も示された。副作用発現は、対象患者が比較的PSが良好というバイアスはあるが、高グレードがあまり多くない印象があるとのことである。注意すべきものとして、アジア人に多い間質性肺疾患、免疫抑制による感染症、インシュリン抵抗性となるための高血糖、糖尿病の発症・増悪などが挙げられた。mTOR阻害剤の間質性肺疾患については、副腎皮質ホルモン剤への反応性が高いことが報告されている。堀江氏は、がんへの本質的なアプローチといえるmTOR阻害剤、アフィニトールが承認され、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤投与後の進行性腎細胞がんの治療における期待が寄せられるとした。なおわが国では現在、乳がん、胃がん、悪性リンパ腫、膵内分泌腫瘍を対象とした、第Ⅲ相の国際共同治験に参加している。(ケアネット 板坂倫子)

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venlafaxineは、うつ病患者の心臓突然死リスクを増大させない

 venlafaxineは他の一般的な抗うつ薬に比べ、うつ病や不安障害患者の心臓突然死のリスクを増大させないことが、カナダMcGill大学疫学・生物統計学科のCarlos Martinez氏らの調査で明らかとなった。イギリスでは、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であるvenlafaxineは、他の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)に比べ致死的な過剰摂取率が高いことが報告され、患者の背景因子(自殺リスクが高い患者など)、venlafaxine固有の毒性、催不整脈作用などの原因が指摘されている。治療量のvenlafaxineが心臓突然死や致死的な不整脈のリスクを増大させる可能性については、これまで検討されていなかったという。BMJ誌2010年2月13日号(オンライン版2010年2月5日号)掲載の報告。Venlafaxineと他の一般的な抗うつ薬の心臓突然死リスクを評価 研究グループは、venlafaxineが他の一般的な抗うつ薬に比べ心臓突然死あるいは重症左室不整脈のリスクを増大させる可能性について評価する、地域住民ベースのコホート内症例対照研究を実施した。 イギリスの一般医の診療情報が記録されたGeneral Practice Research Databaseを用い、1995年1月以降に新規にvenlafaxine、fluoxetine、citalopram、ドスレピン(商品名:プロチアデン)の使用を開始した18~89歳のうつ病あるいは不安障害の患者を対象とした。 フォローアップは2005年2月あるいは心臓突然死や瀕死の病態(診療記録で非致死的な急性左室頻脈や突然死が心臓に起因することを確認)、急性の虚血性心イベントによる院外死を発現するまで行った。個々の患者に対し、年齢、性別、暦時間、適応で調整した対照を30人ずつ選択した。venlafaxine群の心臓突然死リスクは他の抗うつ薬と同等 20万7,384人が登録され、平均3.3年のフォローアップが行われた。心臓突然死あるいは瀕死の病態は568人(急性左室頻脈27人、心臓突然死236人、虚血性心イベントによる院外死305人)に認め、背景因子をマッチさせた対照は1万4,812人であった。 心臓突然死、瀕死の病態の内訳は、venlafaxine群18人(3.2%)、fluoxetine群63人(11.1%)、citalopram群39人(6.9%)、ドスレピン群35人(6.2%)であった。venlafaxineに関連した心臓突然死、瀕死の病態の補正オッズ比は、fluoxetineとの比較では0.66(95%信頼区間:0.38~1.14)、citalopramとの比較では0.89(同:0.50~1.60)、ドスレピンに対しては0.83(同:0.46~1.52)であった。 このように、venlafaxineによる心臓突然死、瀕死の病態の頻度は他の抗うつ薬3剤と有意な差はなく、むしろ低い傾向がみられたことから、著者は「venlafaxineは、うつ病や不安障害患者の心臓突然死リスクを過度に増大させることはない」と結論している。なお、venlafaxineは一般的なSSRIに比べ好ましくない有害事象の頻度が高く治療中止例が多いことを示唆するデータがあるため注意を要するという。

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タモキシフェン治療中の高齢乳がん患者、パロキセチン併用で乳がん死が増大

タモキシフェン(TAM)治療中の乳がん女性にパロキセチン(商品名:パキシル)を併用投与すると、乳がん死のリスクが増大することが、カナダSunnybrook医療センターのCatherine M Kelly氏らが実施したコホート研究で示された。乳がんの内分泌療法の標準治療薬であるTAMは、チトクロームp450 2D6(CYP2D6)によって活性代謝産物であるエンドキシフェンに変換されるプロドラッグである。TAM投与を受けている乳がん女性にはパロキセチンなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が広く用いられているが、SSRIはCYP2D6を阻害するためエンドキシフェンの産生が低下してTAMの効果が減弱する可能性が指摘されていた。BMJ誌2010年2月13日号(オンライン版2010年2月8日号)掲載の報告。TAM+SSRI併用乳がん患者の治療終了後の乳がん死を、併用期間の長さ別に解析研究グループは、SSRIがCYP2D6を介する生物活性を阻害することでTAMの効果を減弱する可能性について検討するために、地域住民ベースのコホート研究を行った。対象は、1993~2005年までにオンタリオ州に居住した66歳以上のTAM治療を受けている乳がん女性で、SSRI[パロキセチン、fluoxetine、sertaline、フルボキサミン(商品名:デプロメール、ルボックス)、citalopram、venlafaxine)]を1剤併用投与された患者であった。TAM治療完遂後の乳がんによる死亡リスクを、TAM治療期間中のSSRI併用期間の長さで分類して解析を行った。 パロキセチン併用期間が長くなるにしたがって乳がん死亡率が有意に増大TAMとSSRIを併用投与された乳がん患者2,430例のうち、平均フォローアップ期間2.38年の時点で374例(15.4%)が乳がんが原因で死亡した。年齢、TAM投与期間、他の交絡因子で補正後のTAM+パロキセチン(不可逆的なCYP2D6阻害薬)群の乳がん死亡率は、パロキセチン併用期間が長くなるにしたがって有意に増大した(TAM治療期間におけるパロキセチン併用期間の割合が25%の患者の乳がん死亡率:24%、併用期間割合50%の患者:54%、併用期間割合75%の患者:91%、p<0.05)。これに対し、他のSSRIではこのような乳がん死リスクの増大は認めなかった。パロキセチン群の併用期間の割合の中央値は41%であった。この場合、TAM投与終了後5年以内に、19.7例に1例がパロキセチンの影響によって乳がんで死亡すると推算された。併用期間がさらに長くなれば、乳がん死リスクも増大すると予測される。著者は、「TAM治療中の乳がん患者にパロキセチンを使用すると乳がん死リスクが増大する。この知見は、パロキセチンは乳がん患者におけるTAMのベネフィットを損なうという仮説を支持するものである」と結論し、「TAMの代謝活性におけるCYP2D6の重要性が改めて示された。TAMは年齢を問わずホルモン受容体陽性乳がん女性の重要な治療薬であり、TAM治療中の乳がん患者に抗うつ薬を併用する場合は、CYP2D6への作用の少ない薬剤を選択すべきである」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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花粉症者の8割が仕事や婚活に影響を及ぼすと回答 つぶやく時に使う言葉はダントツ「鼻」!

グラクソ・スミスクライン株式会社は22日、同社が運営するウェブサイト「コンタック総合研究所(http://contac.jp/soken/)」において「花粉症に関する意識調査」を発表した。調査は、2010年1月に全国の20~39歳の、春に花粉症になった経験のある会社員・公務員・自由業の男女620人を対象にインターネットで実施された。その結果、8割以上の人が、花粉症が仕事や婚活に影響を及ぼすと回答した。一番多かったのは、仕事に影響する症状についてで、「鼻水・鼻づまり」(34.2%)によって「仕事の最中に何度も鼻をかむため、時間のロスになったり、集中力がかなり途切れたりしてしまう(男性/27歳)」など、仕事全般、特に取引先との折衝や接客などに影響が出るという結果が得られた。集中力については、多くが仕事に影響する理由として挙げており、「集中力がなくなり、3秒に1回出るくしゃみに仕事を続けるのが難しくなり早退した(女性/36歳)」や「何事にも集中できない。精神的に情緒不安定になる(男性/35歳)」など、業務に影響を及ぼすケースも回答にみられたという。婚活については、女性は肌荒れや化粧崩れが影響を及ぼすと答えた人が多い一方、男性でも「コンタクトができない(31歳)」、「異性に鼻水などにみっともない姿を見られたくない為積極的になれない(26歳)」など、外見のイメージダウンを懸念して、積極性を失っている人が多く、さらには「春は結婚式をあげたくない!(女性/33歳)」と断言する回答もあった。また、「花粉症の時の自分の気分を、140文字以内でつぶやくとしたらどのようになりますか?」という質問に対し、最も多く使用されたワードは「鼻」(205名)であった。「目と鼻を取って水洗いしたい(会社員/女性24歳)」「鼻がつまってつらい 鼻さえつまらなきゃ花粉症でもいい(会社員/女性29歳)」など花粉症の発症時には「鼻」に関する悩みが多いことが読み取れる。「目」も121名と多く、「目がかゆいのにパソコン仕事などしないで、沖縄など南の島へ行ってのんびりしたい(会社員/女性38歳)」など何とかしたいと感じている人が多くいるようだ。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2010_01/P1000615.html

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ulipristal acetate、無防備な性交後の緊急避妊に高い効果

ulipristal acetateは不用意な性交後の緊急避妊薬として5日間まで有効であり、その効果はレボノルゲストレル(商品名:Norlevo)よりも優れることが、イギリス・ロジアン国民保険サービス(NHS)のAnna F Glasier氏らが実施した無作為化試験とメタ解析で示された。現在、緊急避妊薬は世界140ヵ国以上で用いられ、そのうち約50ヵ国では医師の処方箋なしで使用可能であり、先進国のほとんどで認知されているという。現在の標準薬であるレボノルゲストレルは性交後72時間以内に投与する必要があり、時間の経過とともに効果が減弱し、排卵前でなければ十分な効果は期待できないため、より有効な薬剤の開発が望まれていた。Lancet誌2010年2月13日号(オンライン版2010年1月29日号)掲載の報告。緊急避妊薬投与後の妊娠率を評価する非劣性試験研究グループは、緊急避妊薬としてのulipristal acetateの効果と安全性をレボノルゲストレルと比較する多施設共同無作為化非劣性試験を行った。イギリス、アイルランド、アメリカの35の家族計画クリニックに、無防備な性交後5日以内の月経周期が正常な女性2,221人が登録され、ulipristal acetate 30mgを経口投与する群(1,104人)あるいはレボノルゲストレル1.5mgを経口投与する群(1,117人)に無作為に割り付けられた。被験者には割り付け情報は知らされなかったが、医師にはマスクされなかった。予測される次回月経日後5~7日間までフォローアップを行った。主要評価項目は、無防備な性交後72時間以内に緊急避妊薬の投与を受けた女性の妊娠率とした。メタ解析で、妊娠率が有意に32%低減有効性の評価は1,696人(ulipristal acetate群844人、レボノルゲストレル群852人)で可能であった。妊娠率は、レボノルゲストレル群の2.6%(22/852人)に比べ、ulipristal acetate群は1.8%(15/844人)と32%低減した(オッズ比:0.68)。性交後72~120時間に緊急避妊薬の投与を受けた203人のうち3人が妊娠したが、いずれもレボノルゲストレル群の女性であった。最も高頻度にみられた有害事象は頭痛であった(ulipristal acetate群19.3%、レボノルゲストレル群18.9%)。薬剤に起因する可能性がある重篤な有害事象として、ulipristal acetate群でめまいが1人に、レボノルゲストレル群では奇胎妊娠が1人に認められた。メタ解析(性交後72時間以内)を行ったところ、妊娠率はレボノルゲストレル群の2.2%(35/1,625人)に対し、ulipristal acetate群は1.4%(22/1,617人)と有意に避妊効果が高かった(オッズ比:0.58、p=0.046)。著者は、「ulipristal acetateは不用意な性交後5日まで使用可能であり、女性や医療者にとって有効な緊急避妊薬の選択肢である」と結論し、「ulipristal acetateは安全性のデータが十分に集積されるまでは容易に入手できないため、性交後72時間以上が経過した妊娠リスクの高い女性に限定して使用される可能性がある。しかし、72時間以内の場合にレボノルゲストレルなどの薬剤を用いれば、多くの女性は自分の月経周期を明確に把握していないため避妊できず混乱が起きる可能性がある。課題は残るものの、5日以内であればulipristal acetateを使用すべきと考えられる」と考察する。(菅野守:医学ライター)

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早期乳がん診療にMRIを導入しても、再手術率は改善しない:COMICE試験

早期原発性乳がんの診療にMRI検査を導入しても、再手術率は低減しないことが、イギリスHull王立病院MR研究センターのLindsay Turnbull氏らによる無作為化試験(COMICE試験)で明らかとなった。イギリスでは、早期乳がんの治療において、腫瘍の不完全切除による再手術率を10%以下にすることを目標に種々のアプローチが行われている。MRIは乳がんの診断率を向上させ、再手術率を低減する可能性が指摘されていた。Lancet誌2010年2月13日号掲載の報告。トリプルアセスメント+MRIとトリプルアセスメント単独を比較COMICE試験の研究グループは、原発性乳がん女性に対するコントラスト増強MRIの臨床的効果を評価するオープンラベル無作為化対照比較試験を実施した。対象は、トリプルアセスメント(視診/触診、X線マンモグラフィ/超音波、穿刺吸引細胞診/コア生検)施行後に乳腺部分切除術が計画され、生検で原発性乳がんが証明されている18歳以上の女性であった。イギリスの45施設に1,623例が登録され、トリプルアセスメントにMRIを追加する群(816例)あるいはトリプルアセスメントのみの群(807例)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、割り付け後6ヵ月以内の再手術の施行率、もしくは初回手術時の病理検査で切除術は回避可能との評価とした。再手術率:19% vs. 19%再手術率は、MRI追加群が19%(153/816例)、MRI非追加群も19%(156/807例)であり、両群で同等であった(オッズ比:0.96、p=0.77)。著者は、「早期の原発性乳がんの診診療にMRIを追加しても、再手術率は低減しない」と結論し、「高価な検査法であるMRIが不要なことが確認されたため、医療資源の観点から国民保険サービス(NHS)にはベネフィットがもたらされる。NHSの利便性の改善に役立つ可能性がある」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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小児用肺炎球菌ワクチン「プレベナー」2月24日発売

ワイス株式会社は、昨年10月16日に製造販売承認を受けた7価肺炎球菌結合型ワクチン「プレベナー」(製品名:プレベナー水性懸濁皮下注)を2月24日から発売したと発表した。プレベナーは、肺炎球菌による細菌性髄膜炎、菌血症などの侵襲性感染症を予防する国内初の小児用肺炎球菌結合型ワクチン。接種対象は、生後2カ月齢から9歳以下の小児。現在101の国・地域で承認されている。●詳細はプレスリリースへhttp://www.wyeth.jp/news/2010/0223.asp

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早死にを招く、小児期の心血管リスク因子

糖尿病の早期発症が死亡率を高めること、成人期における心血管リスク因子と寿命との関連性は明らかだが、小児期における心血管リスク因子が寿命に影響を及ぼすメカニズムはほとんどわかっていない。米国NIHのPaul W. Franks氏ら研究グループは、その関連性を明らかにすることは、小児期の心血管リスク因子が与える人的・経済的損失を予測可能とし、健康状態を改善し早世率(本論では55歳未満での死亡と定義)を低下させるための介入が可能になるとし、40年にわたる追跡調査を行った。その結果が、NEJM誌2010年2月11日号で発表されている。アメリカ先住民4,857例の早世例をリスク因子ごとに評価研究グループは、1945~1984年の間に生まれた非糖尿病のアメリカ先住民4,857例の小児コホート(平均年齢11.3歳)について、BMI、耐糖能、血圧、コレステロールの各値を調査し(計12,659回)、早世の予測因子となるかどうかを評価した。各リスク因子は性、年齢で標準化され、比例ハザードモデルを用いて、55歳未満で死亡するまでの期間との関連が判定された。モデルは、基線での年齢、性、出生コホート(アメリカ先住民の系統としてピマ族かトホノ・オオダム族か)によって補正された。肥満は2倍、耐糖能異常は1.73倍、高血圧は1.5倍、早世率を高める追跡期間中央値23.9年間で、内因性死亡は166例(コホートの3.4%)あった。内因性死亡率について、BMI値が最高四分位群の小児は、同最低四分位群の2倍以上だった(出現率比:2.30、95%信頼区間:1.46~3.62)。耐糖能異常では、最高四分位群の死亡率が、最低四分位群より73%高かった(同:1.73、1.09~2.74)。一方、内因性または外因性の死亡率と、小児期コレステロール値、収縮期・拡張期血圧値との間には有意な関連性はみられなかった。ただし、小児期高血圧は内因性による早世と有意な関連が認められた(同:1.57、CI 1.10~2.24)。研究グループは、「この集団において、小児期の肥満、耐糖能異常、高血圧は内因性による早世率の上昇と強く関連していた。対照的に、小児期高コレステロール血症は内因性による早世の主要な予測因子ではなかった」とまとめている。(医療ライター:武藤まき)

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乳房温存手術後の放射線療法、3週間法でも5週間の標準照射法と有効性劣らず

乳房温存手術後の胸部放射線療法は乳がん死亡率を低下することが最新のメタ解析によっても示されているが、北米の乳がん女性の最大30%が、治療回数が多いことや費用を理由に放射線療法を受けていない。そこでカナダ・マクマスター大学JuravinskiがんセンターTimothy J. Whelan氏は、生物学的モデルで有効性が示された少分割・短期間照射に関して、無作為化試験を実施した。2002年の追跡5年時点の検討で、その有効性(再発率・美容的アウトカム)が示されたが、放射線の毒性は1回当たりの照射線量が多いほど時間とともに増大するという懸念がある。本論はその懸念に応える追跡期間中央値12年の段階で行われた、10年時点の結果を検討した報告。NEJM誌2010年2月11日号に掲載された。被験者1,234例を標準照射群と少分割照射群に無作為化し追跡Whelan氏らは、至適な照射スケジュールを明らかにするため、胸部全体への照射を3週間スケジュールで行う方法と、5週間スケジュールで行う方法との有効性を検討した。被験者は、浸潤性乳がんで乳房温存術を受けた、切除断端部クリア、腋窩リンパ節陰性の1,234例。1993年4月~1996年9月の間に、対照群(標準線量50.0 Gyを25分割で35日間かけて照射、612例)と少分割照射群(42.5 Gyを16分割で22日間かけて照射、622例)に無作為化され追跡された。10年時点、再発リスク、美容的アウトカムともに標準法に劣らず追跡10年時点の局所再発リスクは、対照群6.7%だったのに対して、少分割照射群は6.2%だった(絶対差:0.5ポイント、95%信頼区間:-2.5~3.5)。美容的アウトカムは、良好(good)もしくは優良(excellent)が対照群では71.3%、少分割照射群では69.8%だった(同:1.5ポイント、-6.9~9.8)。Whelan氏は、「少分割照射療法は標準照射療法と比べて、10年時点でも劣らないことが認められた」と結論している。(医療ライター:武藤まき)

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妊婦の年齢、拡張期血圧、喫煙などが、妊娠第一期の胎児の発育遅延に関連

妊婦の年齢や拡張期血圧、喫煙などが、妊娠第一期の胎児の発育遅延に関連していることが明らかにされた。同時期の胎児の発育遅延は、早産や低出生体重、2歳までの発育促進の遅滞などとも関連していたという。オランダ・エラスムス医療センターのDennis O. Mook-Kanamori氏らの研究グループ「Generation R Study Group」が、1,600人超の母親とその子供について調べたもので、JAMA誌2010年2月10日号で発表した。喫煙者・葉酸非摂取の妊婦と、非喫煙者・葉酸摂取では胎児頭臀長の差は3.84mm研究グループは、オランダ・ロッテルダムを起点に被験者を登録した前向きコホート試験を行った。試験には、2001~2005年にかけて、妊娠期間が明確な1,631人の妊婦が登録され、妊娠10週0日目と13週6日目に、それぞれ超音波検査で胎児頭臀長の測定が行われた。その結果、妊婦の年齢が高い方が、妊娠第一期の胎児頭臀長が長く、1歳上がる毎に0.79mm増加した。また、拡張期血圧やヘマトクリット値が高いほど、胎児頭臀長は短かった(拡張期血圧は1標準偏差値増す毎に、-0.40mm、ヘマトクリット値は同-0.52mm)。妊婦が喫煙者で葉酸を摂取していない場合には、喫煙をせず適切な葉酸摂取をしていた妊婦と比べ、同期の胎児頭臀長は3.84mm短かった。妊娠第一期に発育遅延があると、早産リスクは2.1倍、低出生時体重リスクは2.4倍に妊娠第一期に胎児の発育が正常だった群と発育遅延がみられた群では、妊娠期間37週未満での早産の発生率はそれぞれ4.0%と7.2%(補正後オッズ比:2.12、95%信頼区間:1.24~3.61)、出生時体重が2,500g未満だった割合は3.5%と7.5%(同:2.42、1.41~4.16)、妊娠期間に比べ小さく生まれた割合は4.0%と10.6%(同:2.64、1.64~4.25)と、いずれも有意差があった。また、妊娠第一期の胎児頭臀長が短いほど、生後2年までの発育促進がみられた(標準偏差スコア2歳につき0.139増大)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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認知症施設入所者、急性期入院時の経管栄養率は営利・大病院・末期ほど高い

米国ナーシングホーム入所の重度認知障害者が、急性期病院に入院した際に経管栄養を導入される頻度は、営利病院、病床数が多い病院ほど高く、また死亡前6ヵ月以内にICUを利用した人で高率であることが明らかになった。重度認知障害者に対する経管栄養のベネフィットに関しては議論が分かれている。一方で、ナーシングホームで経管栄養を受けている人の、およそ3分の2が急性期病院に入院した際に導入されている。米国ブラウン大学Warren Alpert校高齢者ヘルスケア研究センターのJoan M. Teno氏らは、導入傾向を明らかにしようと調査を行った。JAMA誌2010年2月10日号より。入院中の経管栄養導入率は毎年減少研究グループは、2000~2007年にかけて、米国のナーシングホーム居住の重度認知障害者16万3,022人について調査を行った。被験者の入院回数は、合わせて28万869件、入院先の急性期病院の数は2797カ所だった。入院中の経管栄養導入率は、入院100件当たり0~38.9件と幅があり、平均値は同6.5件、中央値は5.3件だった。また、平均導入率は、2000年の7.9/入院100件から、2007年の6.2/入院100件へと徐々に減少していた。導入率は営利病院が公立病院の約1.3倍、310床超の病院が101床未満の約1.5倍入院中の経管栄養導入率は、公立病院が入院100件中5.5件に対し営利病院は同8.5件と、高率だった(補正後オッズ比:1.33、95%信頼区間:1.21~1.46)。また、病床数が101床未満の病院では同4.3件だったのに対し、310床超では同8.0件と高かった(同:1.48、1.35~1.63)。さらに病院で死亡した人のうち、死亡前6ヵ月に集中治療室(ICU)を利用した人が多い病院の方が、導入率も高かった。同割合が最も低い10分位範囲の群では、導入率は入院100件中2.9件だったのに対し、最も高い10分位範囲の群では、同10.1件だった(同:2.60、2.20~3.06)。患者属性で補正した後も、こうした傾向には有意差がみられた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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社会経済的格差が、国民のがん治療格差をもたらしている:英国

英国で2000年に公表された「NHS Cancer Plan」は、英国社会全体の、がん治療アウトカムの向上と健康格差を是正するため、医療サービスへのアクセスの平等を図ることを目的に作成されたものである。ロンドン大学校疫学・公衆衛生部門のRosalind Raine氏らのグループは、その導入効果を評価するため、がん患者の救急入院と選択的入院、大腸がん、乳がん、肺がんの外科手術の種類が、社会経済的要因、年齢、性別、入院年によってどのように変動したかを調査した。BMJ誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月14日号)より。衰退が進む地域の女性、高齢者ほどがん救急入院率が高い研究グループは、1999年4月1日から2006年3月31日までの病院症例統計(HES)の患者個人データを基に、反復横断研究を行った。症例対象は大腸がん、乳がん、肺がんの診断で入院治療を受けた50歳以上の患者56万4,821例。主要評価項目は、救急入院した患者の比率と、推奨手術治療を受けた患者の割合とした。結果、がん救急入院率が、社会経済的に衰退傾向が進む地域の住民、女性、高齢者で高い傾向にあることが明らかになった。たとえば乳がんに関する救急入院率は、地域衰退指数(Index of Multiple Deprivation、5段階評価)が最低の地域(衰退が進んでいない地域)と最高地域(衰退が進む地域)との補正オッズ比が、0.63(95%信頼区間:0.60~0.66)だった。また肺がんに関する救急入院率で、50~59歳群と比べて80~89歳群の補正オッズ比は3.13(同:2.93~3.34)に上った。この年齢層による差異は、年々改善している傾向はみられたが、衰退が進む地域の患者については、改善傾向はみられなかった。衰退が進む地域の患者ほど、がん推奨手術を受けていないさらに、衰退指数が高い地域の患者ほど、大腸がん、乳がん、肺がんで推奨される手術を受けていないことが認められた。またその傾向が、改善してきている傾向は認められなかった。たとえば、大腸がんで前方切除術を受けていた割合は、衰退指数が最低地域では75.5%(4,497/5,959例)だったのに対し、最高地域では67.4%(3,529/5,237例)で、オッズ比1.34(95%信頼区間:1.22~1.47)の差があった。乳がんで乳房温存手術を受けていた割合は、衰退指数が最低地域では63.7%(18,445/28,960例)だったのに対し、最高地域では54.0%(11,256/20,849例)で、オッズ比は1.21(同:1.16~1.26)だった。また男性は女性と比べて前方切除術や肺がん切除術を受けている割合が低く、高年齢層ほど乳房温存手術と肺がん切除を受けている割合が低かった。たとえば、肺がん切除の場合、50~59歳群と比べて80~89歳群の補正オッズ比は、0.52(95%CI 0.46~0.59)。これらから研究グループは、「NHS Cancer Plan実行にもかかわらず、国民の医療サービスへのアクセスおよびケア供給いずれにも、社会経済的要因がいまだに強い影響をおよぼしている」と報告をまとめている。

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利尿薬ベースの降圧療法、セカンドライン選択は?:住民ベースの症例対照研究

米国ワシントン大学心血管ヘルス研究ユニットのInbal Boger-Megiddo氏らは、利尿薬を第一選択薬とし降圧療法を受けている高血圧患者の、併用療法移行時の選択薬は、β遮断薬、Ca拮抗薬、RA系阻害薬いずれが至適かを明らかにするため、心筋梗塞および脳卒中の発生率を主要評価項目に、住民ベースの症例対照研究を行った。結果、Ca拮抗薬追加群の心筋梗塞発生リスクが、他の2群よりも高いことが明らかになったという。BMJ誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月25日号)より。症例群353例、対照群952例で検討研究グループは本研究を実施した背景について、「ALLHAT試験で、低用量利尿薬が第一選択薬としてCa拮抗薬やRA系阻害薬よりも優れていることが示唆され、そのエビデンスを踏まえたガイドラインが米英で作成されている。一方で、降圧療法を受ける高血圧患者の半数は併用療法を要する。だが利尿薬ベースの患者の心血管疾患予防を見据えたセカンドラインの選択薬はどれが至適か明らかになっておらず、米国NHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)は、試験実施の勧告を出しているが、いまだ実施されていない」と述べている。試験は、ワシントン州シアトル市に拠点を置くヘルスケアシステム「Group Health Cooperative」の加入者データから、症例群353例、対照群952例の被験者を選定し行われた。症例群は、30~79歳の降圧療法を受けていた高血圧患者で、1989~2005年に致死性または非致死性の初回の心筋梗塞か脳卒中を発症したと診断記録があった人だった。対照群は、降圧療法を受けていた高血圧患者が無作為にGroup Health Cooperative加入者から選ばれた。なお、心不全、冠動脈疾患、糖尿病、慢性腎不全患者は除外された。+Ca拮抗薬は心筋梗塞リスクを増大する結果、心筋梗塞リスクについて、利尿薬+Ca拮抗薬群が、+RA系阻害薬群、+β遮断薬群よりも高いことが認められた。+β遮断薬群を基準とした、+Ca拮抗薬群の心筋梗塞リスクの補正後(年齢、性、服薬期間、喫煙、飲酒)オッズ比は、1.98(95%信頼区間:1.37~2.87)だった。脳卒中リスクについては、増大は認められず、オッズ比は1.02(同:0.63~1.64)だった。一方、+RA系阻害薬群の心筋梗塞および脳卒中リスクは、ともに有意ではなかったものの低く、心筋梗塞リスクの同オッズ比は0.76(同:0.52~1.11)、脳卒中は0.71(同:0.46~1.10)だった。研究グループは結果を踏まえ、「低リスクの高血圧患者を対象とした本試験で、セカンドラインにCa拮抗薬を選択することは、他の薬剤を選択するよりも心筋梗塞リスクが高いことが明らかになった。この結果はNIHCE(National Institute for Health and Clinical Excellence)ガイドラインを支持するもので、米国NHLBIが勧告する大規模試験を行うべきであろう」とまとめている。

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GLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」、いよいよ治療の選択肢に

 2010年1月20日、国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ(一般名:リラグルチド)」が承認された。ここでは、2月16日に大手町サンケイプラザ(東京都千代田区)にて開催された糖尿病プレスセミナー「国内初のGLP-1受容体作動薬 ビクトーザ承認取得-2型糖尿病治療のパラダイムシフト」(演者:東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 教授 門脇 孝氏)<ノボ ノルディスクファーマ株式会社主催>について報告する。糖尿病患者は十分コントロールされていない わが国の糖尿病患者は、この50年で38倍も増加しており、その原因として考えられるのが、近年の食生活の変化や運動不足である。糖尿病治療では、血糖、体重、血圧、脂質を総合的にコントロールし、合併症の発症・進展を防ぎ、健康な人と変わらない日常生活の質を維持し、寿命を確保することを目標としている(日本糖尿病学会編. 糖尿病治療ガイド2008-2009)。しかし、実際には、腎症や虚血性心疾患、脳梗塞などにより、糖尿病患者の平均寿命は、男性で約10年、女性で約14年短いことが報告されている。 そして、血糖コントロールの評価として、HbA1c値 6.5%未満、空腹時血糖値139mg/dL未満、大血管障害の独立した危険因子である食後2時間血糖値180mg/dL未満が「良」とされているが、門脇氏は「現状では、十分コントロールされているとはいえない」と述べた。早期から、低血糖を起こさずに厳格な血糖コントロールを UKPDS80で早期治療による「Legacy Effect(遺産効果)」が示されたこと、UKPDS、ACCORD、VADTなど、5つの大規模試験のメタ解析でも、厳格な血糖コントロールにより、心血管イベントリスクの減少が示されたことを報告し、門脇氏は「大血管障害の発症・進展を阻止するためには、やはり早期から厳格な血糖コントロールを行うべき」と強調した。そして、強化療法群による死亡率増加のために中止されたACCORD試験に対して、その原因の一つが低血糖であると考察した上で、「できるだけ低血糖を起こさずに、厳格に血糖コントロールすることが重要」と述べた。 また、自身が中心となって現在進められている「J-DOIT3(2型糖尿病患者を対象とした血管合併症抑制のための強化療法と従来療法のランダム化比較試験)」を紹介し、できるだけ低血糖を起こさず、厳格な血糖コントロールを行うために、チアゾリジン薬をベースにしていると述べた。 さらに、中止されたACCORD試験では、強化療法群で著明な体重増加を認めていることから、体重増加をきたさずに血糖コントロールを行うことも重要であると述べた。国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」 2010年1月20日に承認された国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」は、1日1回投与のGLP-1誘導体。GLP-1は、消化管ホルモンであるインクレチンの1つであり、栄養素が消化吸収されると消化管から分泌され、膵β細胞のGLP-1受容体に結合して、インスリンを分泌させる。しかし、血中で酵素(DPP-4)により分解されてしまうため、分解されないようにしたものがGLP-1誘導体である。GLP-1は、グルコース濃度に依存して分泌されるため、GLP-1誘導体は、単独で低血糖を起こしにくい。 門脇氏は、その血糖降下作用について、HbA1cの目標達成率が高いことを報告、欧米人と異なり、インスリン分泌の少ない日本人の2型糖尿病の病態に適しており、少量で優れた効果が得られることを示した。 また、食欲抑制作用があると述べ、実際に、体重増加がない、あるいは肥満では体重が減少することを報告した。 糖尿病患者の膵β細胞の機能は、発症した時点で、すでに健康な人の半分以下になっている。たとえ治療を行っても、膵β細胞の機能低下を阻止することは困難で、罹病期間が長くなると、インスリン治療を行わなければならない患者が多くなる。GLP-1誘導体は、動物で膵β細胞の機能を改善させることが報告されていることから、門脇氏は、「GLP-1誘導体は、膵β細胞機能の改善により、糖尿病の進行を阻止する可能性がある」と述べた。発症早期からの処方を 門脇氏は、いくつかの臨床試験の結果を紹介した上で、ビクトーザの有用性として、■血糖降下作用に優れる■低血糖が少ない■体重増加がない(時に体重減少)■膵β細胞保護により、糖尿病の進行を阻止する可能性があるなどを挙げ、糖尿病発症早期から適応できるとの見解を示した。そして、具体的には、臨床試験の結果から、HbA1c 7.5%以下であれば単独で、8.0%以下であれば、現在保険適応とされているSU薬との併用で十分な効果が得られるだろうと述べた。 主な副作用として、消化器症状(悪心、腹痛、下痢、嘔吐)があるが、少量から開始し、漸増していくことで、軽減できる。長期的な安全性としては、動物実験で甲状腺腫瘍が見られているが、臨床データでは報告されていないと述べた。また、膵炎については、糖尿病では、非糖尿病に比べて多く認められるが、ビクトーザでの有意な増加の報告はないと述べた。 さらに、これまでの糖尿病治療薬は、使用されるようになってから、作用機序が明らかになっていたが、GLP-1誘導体は、「GLP-1受容体への作用」という作用機序が明確であることから、この点も安全性の観点から重要であると述べた。しかし、長期的な安全性については、今後も検討していく必要があるとした。

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人工呼吸器装着の重症疾患患者、非鎮静で非装着日数が増加

人工呼吸器装着中の重症疾患患者では、毎日中断しながら鎮静を継続する方法よりも鎮静を行わない方法が、非装着日数を増加させることが、デンマークOdense大学病院麻酔科・集中治療医学のThomas Strøm氏らが実施した無作為化試験で示された。人工呼吸器装着重症疾患患者の標準治療では、通常、持続的な鎮静が行われる。最近は毎日中断しながら鎮静を継続する方法の有用性も示されているが、Odense大学病院の集中治療室(ICU)では非鎮静のプロトコールが標準だという。Lancet誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月29日号)掲載の報告。非鎮静群と中断的鎮静群の非装着日数を比較する単施設無作為化試験研究グループは、人工呼吸器装着期間は毎日中断しながら鎮静を継続する方法よりも鎮静を行わない方法で短縮できることを検証するために、単施設における無作為化試験を実施した。24時間以上の人工呼吸器の装着を要すると考えられる成人重症疾患患者140例が登録され、非鎮静群(70例)あるいは毎日中断しながら鎮静[プロポフォール(商品名:ディプリバンなど)20mg/mLを48時間、以後ミダゾラム(同:ドルミカムなど)1mg/mL]を続ける群(70例)に無作為に割り付けられた。両群ともモルヒネ(2.5あるいは5mg)がボーラス投与された。主要評価項目は人工呼吸器装着後28日までの非装着日数とし、入院~28日までのICU収容日数および入院~90日までの入院日数も記録した。28日までの非装着日数:13.8日 vs. 9.6日48時間以内に死亡あるいは人工呼吸器が抜管された27例が試験から除外された。平均人工呼吸器非装着日数は、非鎮静群(55例)が13.8日と中断的鎮静群(58例)の9.6日に比べ有意に増加した(平均差:4.2日、p=0.0191)。非鎮静群は、ICU在室日数(ハザード比:1.86、p=0.0316)および30日までの入院日数(同:3.57、p=0.0039)がともに、中断的鎮静群よりも有意に短かった。事故による抜管、CTやMRIによる脳検査を要する症例、人工呼吸器関連の肺炎はみられなかった。激越型せん妄の頻度は、非鎮静群が20%(11/55例)と中断的鎮静群の7%(4/58例)に比べ有意に高かった(p=0.0400)。著者は、「人工呼吸器装着重症疾患患者では、毎日中断しながら鎮静を行うよりも鎮静を行わない方法が非装着日数を増加させる」と結論し、「この効果の他施設における再現性を検証するために多施設共同試験を実施すべき」としている。(菅野守:医学ライター)

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帝王切開は医学的適応がある場合に限定して施行すべき

妊産婦および新生児の周産期アウトカムを改善するには、帝王切開は医学的適応がある場合に限って施行すべきであることが、タイKaen大学産婦人科のPisake Lumbiganon氏らがWHOの世界調査として実施した出産法と妊娠アウトカムに関する研究で明らかとなった。近年、帝王切開施行率が世界的に上昇しており、その妥当性について議論が起きているという。不必要な帝王切開の実施は、産科領域におけるエビデンスと実臨床のミスマッチの古典的な実例とされ、その議論を通じて実臨床における必然的な帰結を変更する試みの複雑さに注目が集まっている。Lancet誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月12日号)掲載の報告。日本を含むアジア9ヵ国が参加研究グループは、WHOの世界調査の一環として、2004~2005年にアフリカとラテンアメリカで、2007~2008年にはアジアにおいて、個々の出産法の施行率を推算し、出産法と妊産婦、新生児の予後の関連を検討した。アジアの調査には9ヵ国(カンボジア、中国、インド、日本、ネパール、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム)が参加した。各国の首都と2つの地域あるいは行政区が無作為に選ばれた。施設の詳細と産科治療のリソースのデータを集め、妊婦の診療記録を収集して産科および周産期イベントのデータを解析した。帝王切開で妊産婦、新生児の周産期リスクが増加登録された122施設から11万2,152件の出産が報告され、そのうち10万9,101件(97%)のデータが得られ、10万7,950件が解析可能であった。帝王切開は分娩前と分娩中、医学的適応の有無で4群に分け、経膣分娩は自然分娩(対照)と手術分娩の2群に分けて解析した。全体の帝王切開の施行率は27.3%(2万9,428件)、経膣分娩率は72.7%(7万8,522件)であった。経膣分娩のうち、自然分娩が69.5%(7万5,057件)、手術分娩は3.2%(3,465件)であった。妊産婦の周産期リスクを妊産婦死亡/罹病インデックス(妊産婦死亡、集中治療室入院、輸血、子宮摘出術、内腸骨動脈結紮術のうち一つ以上)で解析したところ、経膣自然分娩に比べ他の5群はいずれもリスクが高かった(補正ハザード比:経膣手術分娩2.1、分娩前非適応帝王切開2.7、分娩前適応帝王切開10.6、分娩中非適応帝王切開14.2、分娩中適応帝王切開14.5)。骨盤位(逆子)の周産期アウトカムは、分娩前帝王切開(補正ハザード比:0.2)、分娩中帝王切開(同:0.3)ともに改善されたが、7日以上の新生児集中治療室(NICU)入室リスクは分娩前帝王切開(同:2.0)、分娩中帝王切開(同:2.1)ともに高かった。著者は、「妊産婦および新生児の周産期アウトカムを改善するには、帝王切開は医学的適応がある場合に限って施行すべき」と結論し、「帝王切開による出産を計画している妊婦と医療者は、可能性のあるリスクについて十分に話し合ったうえで決定すべき」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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多発性硬化症に対する経口fingolimod、2年間の有効性確認

多発性硬化症の治療薬として開発中の、経口fingolimod(FTY720、フィンゴリモド;スフィンゴシン1リン酸受容体調節薬)は、リンパ節からのリンパ球放出を抑制する作用が特徴の免疫抑制薬である。これまで第II相、第III相(12ヵ月間)臨床試験の結果、プラセボまたはインターフェロンβ-1a筋注と比べて、多発性硬化症の再発率およびMRI評価のエンドポイントを有意に改善することが明らかになった。本稿は、スイス・バーゼル大学病院Ludwig Kappos氏らFREEDOMS治験グループによる、24ヵ月間の第III相プラセボ対照二重盲検無作為化試験の報告で、NEJM誌2010年2月4日号(オンライン版2010年1月20日号)に掲載された。再発寛解型多発性硬化症患者1,033例を対象に治験グループは、障害のEDSSスケール(Expanded Disability Status Scale、0~10の範囲で、スコアが高いほど障害の程度が高い)スコアが0~5.5で、過去1年間に1回以上の再発または過去2年間に2回以上再発したことがある18~55歳の再発寛解型多発性硬化症患者1,272例を登録、24ヵ月間にわたって二重盲検無作為化試験を行った。被験者は経口fingolimodまたはプラセボを1日1回、0.5mgまたは1.25mg投与された。エンドポイントは、年間の再発率(主要エンドポイント)と障害進行までの期間(副次エンドポイント)とした。被験者のうち試験を完了したのは、計1,033例(81.2%)だった。0.5mg、1.25mg用量とも24ヵ月間の再発率、障害進行リスクを有意に低下主要エンドポイントの年間再発率は、fingolimod 0.5mg投与群が0.18、fingolimod 1.25mg投与群が0.16に対し、プラセボ投与群は0.40だった(投与群対プラセボはいずれもP

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多発性硬化症に対する経口クラドリビン、2年間の有効性確認

日本では白血病の抗がん剤としてのみ承認されている免疫抑制薬クラドリビン(商品名:ロイスタチン)は、リンパ球サブタイプを選択的に標的とする特徴を有する。ロンドン大学クイーンズ・メアリー校のGavin Giovannoni氏ら「CLARITY」研究グループは、再発寛解型多発性硬化症患者への有効性を評価する、第III相試験である短期コース経口療法の96週間(24ヵ月間)の結果を報告した。NEJM誌2010年2月4日号より。再発寛解型多発性硬化症患者1,326例を対象に研究グループは、障害のEDSSスケール(Expanded Disability Status Scale、0~10の範囲で、スコアが高いほど障害の程度が高い)スコアが5.5以下で、過去1年間に1回以上の再発を経験した再発寛解型多発性硬化症患者1,326例を対象に無作為化試験を行った。被験者は、経口クラドリビンを累積投与量で3.5mg/kg体重投与される群、同5.25mg/kg体重投与される群、またはプラセボを投与される群に1:1:1となるよう割り付けられた。試験期間96週のうち、最初の48週での投薬は4コース(クラドリビン3.5mg/kg群は2コース+プラセボ2コース)行われた(投薬日数計8~20日間/年)。その後の48週以降に2コース(48週時点と52週時点)投与が各群に行われた(プラセボ群にはプラセボ投与、他の2群にはクラドリビン投与)。主要エンドポイントは、96週時点での再発率とした。試験を完了したのは1,184例(89.3%)、解析はintention-to-treatにて行われた。3.5mg群、5.25mg群とも再発率・障害進行とも有意に低下、ただし有害事象も高頻度クラドリビン投与群はいずれの用量群も、年間再発率がプラセボ群より有意に低下した。それぞれ3.5mg群0.14、5.25mg群0.15、プラセボ群0.33だった(両比較ともP

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敗血症ヒドロコルチゾン療法患者への強化インスリン療法、フルドロコルチゾン

敗血症性ショックを起こした患者に行われるヒドロコルチゾン投与(コルチコステロイド療法)に関して、強化インスリン療法を行っても従来インスリン療法の場合と比べて、院内死亡率に有意差はないことが明らかになった。また、フルドロコルチゾン(商品名:フロリネフ)を追加投与しても、同死亡率に有意差はなかった。フランスVersailles大学のDjillali AnnaneらCOIITSS(Corticosteroids and Intensive Insulin Therapy for Septic Shock)研究グループが、約500人の敗血症患者を対象に、無作為化試験によって明らかにしたもので、JAMA誌2010年1月27日号で発表している。敗血症性ショック患者へのコルチコステロイド療法は、高血糖を誘発する可能性が指摘されており、また同療法でフルドロコルチゾンを追加投与するベネフィットは明らかになっていなかった。SOFAスコア8以上の敗血症患者509人を無作為化研究グループは、2006年1月~2009年1月にかけて、フランス11ヵ所の集中治療室(ICU)で、敗血症患者509人について多施設共同2×2無作為化試験を行った。被験者は、重症度評価基準のSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコアで8以上だった。被験者は、(1)ヒドロコルチゾン投与+強化インスリン療法群、(2)ヒドロコルチゾン投与+強化インスリン療法群+フルドロコルチゾン投与群、(3)ヒドロコルチゾン投与+従来インスリン療法群、(4)ヒドロコルチゾン投与+従来インスリン療法群+フルドロコルチゾン投与群に割り付けられた。ヒドロコルチゾンは50mgを6時間毎にボーラス投与にて、フルドロコルチゾンは1日1回50μg経口投与にて、それぞれ7日間行われた。インスリン療法の違い、フルドロコルチゾンの有無いずれも、死亡率に有意差なし院内死亡率は、強化インスリン群が45.9%、従来インスリン群が42.9%だった(相対リスク:1.07、95%信頼区間:0.88~1.30、p=0.50)。重度低血糖(40mg/dL未満)がみられたのは、強化インスリン群の方が従来インスリン群より有意に多く、患者1人当たり平均頻度の差は0.15(95%信頼区間:0.02~0.28、p=0.003)だった。また、フルドロコルチゾン投与群の退院時死亡率は42.9%、同非投与群は45.8%で、有意差はみられなかった(相対リスク:0.94、同:0.77~1.14、p=0.50)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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CKDの転帰、糸球体濾過量が同レベルなら、蛋白尿が多い群で増悪

慢性腎不全(CKD)患者、糸球体濾過量(GFR)が同レベルなら、蛋白尿濃度が高い患者の方が、死亡や心筋梗塞のリスクが増大するようだ。カナダCalgary大学内科Brenda R. Hemmelgarn氏らが、92万人以上について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年2月3日号で発表した。92万人超を中央値35ヵ月で追跡同研究グループは、2002~2007年にかけて、カナダのアルバータ州で血清クレアチニン値を1回以上測定した人で、登録時に腎臓移植を必要としなかった、92万985人の成人について調査を行った。蛋白尿については、試験紙法とアルブミン・クレアチニン比(ACR)による測定を行った。追跡期間の中央値は、35ヵ月。被験者の89.1%が、GFR値が60mL/min/1.73m(2)以上だった。GFR量が多く高濃度の蛋白尿群の死亡率は、正常値群の2倍以上結果、蛋白尿が高濃度(試験紙法によるもの)で、GFR値が60mL/min/1.73 m(2)以上の群の補正後死亡率は、7.2/千人・年だった。これに対し、蛋白尿正常でGFR値が45~59.9mL/min/1.73m(2)の群では、2.9/千人・年で、2倍以上に上ることが認められた(率比:2.5、95%信頼区間:2.3~2.7)。蛋白尿をACRで測定した場合も、それぞれの群の補正後死亡率は、15.9/千人・年と7.0/千人・年と、率比は2.3(同:2.0~2.6)だった。また、心筋梗塞による入院や末期腎疾患、血清クレアチニン値の倍増といったイベントリスクについても、両群を比較した際、同様の傾向がみられた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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