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剤sunitinibに心毒性か

欧米では進行性腎と消化管間質腫瘍(GIST)の治療に用いられるチロシンキナーゼ阻害剤sunitinibに心毒性がある可能性が報告された。Harvard Medical School(アメリカ)のTammy F Chu氏らが75例をレトロスペクティブに解析した結果としてLancet誌12月15日号に掲載された。心筋傷害の確認は取れておらず同氏らはイマチニブ抵抗性の転移性GISTに対するsunitinib第I/II相試験に登録された97例における左室駆出率の変化をレトロスペクティブに調査した。全例、sunitinib開始2週間前までに他の抗剤は中止している。全例、左室駆出率(LVEF)は50%以上あり、心不全既往はなかった。4例は冠動脈疾患の既往があったが過去1年間は無症候だった。sunitinibは4週間服用、2週間休薬を1サイクルとし、承認用量の50mg/日ないしそれ以下が用いられた。中央値33.6週間の後、6例(8%)が慢性心不全を発症した。いずれもNYHA分類III度以上の重症心不全だった。また36例(28%)でLVEFが10%以上低下した。うち7例では15%以上のLVEF低下が認められた。また、35例(47%)が高血圧(150/100mmHg超)を発症していた。本試験では心筋傷害のマーカーとして血中トロポニンI濃度を観察しているが、心不全発症患者、あるいはLVEF患者のトロポニンI濃度の推移が示されていないため、sunitinibによる心機能低下の原因は今ひとつ明らかではない。sunitinib使用時には心機能と血圧を注意深くモニターするようChu氏らは注意を喚起している。(宇津貴史:医学レポーター)

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細菌性髄膜炎患者へのデキサメタゾン効果

 細菌性髄膜炎に対するデキサメタゾンの補助的投与が、成人に対して有効であるかどうかは明らかとなっていない。ベトナム・ホーチミン市にある国立熱帯病研究所病院Nguyen Thi Hoang Mai氏らの研究グループは、細菌性髄膜炎が疑われる14歳以上の患者435例を対象に、デキサメタゾンの無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。NEJM誌12月13日号より。死亡・障害リスクの低下はデキサメタゾンと無関係 研究はデキサメタゾンの投与によって、1ヵ月後の死亡リスク、6ヵ月後の死亡リスクまたは障害リスクが低下するかどうかを目的に行われた。 試験は、217例をデキサメタゾン投与群に、218例をプラセボ投与群に割り付けられ行われた。そのうち細菌性髄膜炎が確定できたのは300例(69.0%)で、123例(28.3%)が髄膜炎の可能性が高いと診断され、12例(2.8%)には他の診断が下された。 全例解析による結果、1ヵ月後の死亡リスク(相対リスク0.79、95%信頼区間:0.45~1.39)、6ヵ月後の死亡または障害リスク(同0.74、0.47~1.17)の有意な低下とデキサメタゾン投与とは関連していないことが示された。効果は微生物学的診断が確定した患者に限定される? しかし、細菌性髄膜炎確定群では、1ヵ月後の死亡リスク(同0.43、0.20~0.94)、6ヵ月後の死亡または障害リスク(同0.56、0.32~0.98)で有意な低下がみられた。これらの効果は、細菌性髄膜炎の可能性が高いと診断された群ではみられなかった。 多変量解析の結果、細菌性髄膜炎の可能性が高いとされた例におけるデキサメタゾン投与が、1ヵ月後の死亡リスク増加と有意に関連していることが示された。しかしこの所見について研究グループは、「投与群に結核性髄膜炎のケースが存在していた可能性も否定できない」としている。 以上から、デキサメタゾンが細菌性髄膜炎の疑われる少年以上全年齢層の予後を改善するわけではなく、有益効果は、事前に抗生物質投与を受けた患者を含め、微生物学的検査を経て診断が確定した患者に限定されるのではないかと結論づけている。■「デキサメタゾン」関連記事術前デキサメタゾン追加で術後24時間の嘔吐が低減/BMJ

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初のヒト顔面部分移植18ヵ月後のアウトカム

フランス・リヨン大学のJean-Michel Dubernard氏らは2005年11月27日、初めてとなるヒト顔面の部分同種移植術を女性患者に対して行った。患者は、同年3月28日に飼い犬に顔面を食いちぎられ、鼻、上下の口唇、頬、顎を失った38歳女性。レシピエントは脳死女性。その事実は2006年初頭にドナーも同席しての記者会見で公表され、世界中のマスメディアで報じられたのでご記憶の方もいるかもしれない。その移植後18ヵ月時点までの予後に関する報告がNEJM誌12月13日号に掲載された。皮膚感覚は術後6ヵ月、運動機能は10ヵ月で回復本ケースでは、術後免疫抑制治療はthymoglobulins、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、プレドニゾンの組み合わせで行われた。患者自身の造血幹細胞は術後4日目と11日目に注入。拒絶反応については、センチネル植皮片、顔面皮膚、口腔粘膜からの生検にて確認、機能回復の状況は、感覚・運動機能検査を毎月実施し評価された。また移植の前後には心理的サポートも提供されている。術後、軽い接触に対する感受性(定位モノフィラメント評価法を利用)と、温冷に対する感受性は移植後6ヵ月で標準状態に戻った。運動機能の回復はそれより遅れ、口を完全に閉じることができたのは10ヵ月後だった。移植顔面の機能・美容両面で満足移植された顔面に対する心理的受容は機能の向上に伴って進んだ。拒絶反応は移植後18日目と214日目に出現したが、やがて消失した。ただしイヌリンクリアランスの低下が認められたため、14ヵ月目に免疫抑制処方計画をタクロリムスからシロリムスに変更している。拒絶反応が繰り返し起こるのを予防するため、10ヵ月目に体外光化学療法が導入。それ以降、拒絶反応は起こっていない。初の部分顔面移植を受けたこの女性患者は、術後18ヵ月現在、機能面、美容面ともにおいて満足しているという。(朝田哲明:医療ライター)

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「グリベック」6年間投与の最新データ発表、病期の進行は見られず

「グリベック」(一般名:メシル酸イマチニブ*) の最大の臨床試験であるIRIS (International Randomized Interferon versus ST1571)で得られた最新のデータによると、「グリベック」投与6年目においても病期の進行が見られないことが米国血液学会(ASH)の第49回年次大会で発表された。IRIS試験は、慢性期のPh+CMLと新たに診断された患者さん1,106名を対象に、16カ国177施設で行なわれたオープンラベル方式の第3相臨床試験。試験結果によると、2年間の治療を経た後の年次憎悪率は年々減少を続け、6年目では0%となった。また、「グリベック」による治療を受けた患者の6年目における全生存率は約88%だった。詳細はプレスリリースへhttp://www.novartis.co.jp/news/2007/pr20071220.html

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低所得高齢者へのケアマネジメント・モデルの有効性

低所得高齢者は複数の慢性疾患を有していながらも、ほとんどが標準的な治療さえも受けていない。インディアナ大学老年学研究センターのSteven R. Counsell氏らのグループは、プライマリ・ケアの質を高めるため、低所得高齢者に対するケアマネジメント・モデルの有効性を検証した。JAMA誌2007年12月12日号より。医師・看護師・ソーシャルワーカーが在宅ケア研究は、連邦政府が定める貧困ラインの200%未満の年収しかない65歳以上の951例を対象とした無作為化試験で、2002年1月から2004年8月にかけて実施された。プライマリ・ケア医は、在宅ケアによる介入群(474例)または地域保健センターでの通常ケア群(477例)のいずれかを担当するようランダムに割り当てられた。介入群は2年間、プライマリ・ケア医ならびに高齢者医療集学チームと連携したナースプラクティショナーおよびソーシャルワーカーから、一般的な老年期疾患に関する12のケア・プロトコルに従って在宅でのケアマネジメントを受けた。主要評価項目は、疾患非特異的な健康関連スケールであるSF-36の得点と、手段的日常生活動作と基本的日常生活動作(ADLs)の要約尺度、そして救急治療部(ED)への通院率、入院率とした。SF-36の4項目で有意に改善、およびハイリスク群の医療利用度が低下全例解析によれば、24ヵ月後には介入群に関しては通常ケア群と比較して8項目のSF-36スケールのうち4項目でかなり改善していることが明らかになった。その4項目は、全身の健康度(0.2対-2.3、P=0.045)、活力(2.6対-2.6、P<0.001)、社会生活機能(3.0対-2.3、P=0.008)、心の健康(3.6対-0.3、P=0.001)で、さらに精神面Mental Component Summaryの得点でも有意な改善がみられた(2.1対-0.3、P<0.001)。しかし、ADLsまたは死亡率に関するグループ差は見いだされなかった。1,000人当たりの2年累積ED通院率は介入群で低かったが(1,445[n=474]対1,748[n=477]、P=0.03)、1,000人当たり入院率に有意な差はなかった(700[n=474]対740[n=477]、P=0.66)。入院ハイリスクとあらかじめ定義されたグループ(介入群112例と通常ケア群114例)のED通院率と入院率は、2年目の介入群で低下していた(それぞれ848[n=106]対1,314[n=105]、P=0.03と396[n=106]対705[n=105]、P=0.03)。集中的な在宅ケアマネジメントはケアの質向上に結びつくとともに、ハイリスク群では救急医療の利用率を低下させたが、健康関連QOLの改善はまちまちで、身体機能アウトカムは群間の差はない。これらの結果から研究グループは、より目標を絞り込むことでプログラムの有効性が増すかどうか、また救急医療の利用率低下がプログラムコストを相殺するかどうかについて、さらなる研究が必要だとまとめた。(朝田哲明:医療ライター)

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rosiglitazoneが心血管リスクの増加に関連

2型糖尿病の治療に用いられるインスリン抵抗性改善薬であるチアゾリジン系薬剤(TZDs)は、一方でうっ血性心不全、あるいは急性心筋梗塞のリスクとの関連が指摘される。本報告は、「コホートレベルで関連を調べた研究は少ない」としてTZDsとリスクの関連について後ろ向きコホート研究を行った、カナダ・オンタリオ州Institute for Clinical Evaluative Sciences のLorraine L. Lipscombe氏らによる研究報告。JAMA誌12月12日号掲載より。66歳以上16万の糖尿病患者コホートを解析TZDと他の経口血糖降下薬治療との比較で、うっ血性心不全との間の関連、急性心筋梗塞と死亡率を調査することを目的とする本研究は、カナダ・オンタリの保健データベースを利用し行われた。解析はネステッド・ケースコントロールにて実施。対象は2002年から2005年にかけて、少なくとも1つの経口血糖降下薬の投与を受けた66歳以上の糖尿病患者(N=159,026)で、2006年3月31日まで追跡した。主要評価項目は、うっ血性心不全による救急来院または入院、副次評価項目は急性心筋梗塞による救急来院と全原因死亡率とした。これらイベントのリスク因子を特定するため、TZDs(rosiglitazoneとピオグリタゾン)単独療法を受けた患者と、他の経口血糖降下薬の併用療法を受けた患者とを調整後に比較した。TZD単独療法は有意に心血管リスクを増加追跡期間中央値3.8年の間に12,491例(7.9%)がうっ血性心不全で病院を受診、12,578例(7.9%)が急性心筋梗塞、30,265例(19%)が死亡した。一般に行われるTZD単独療法は他の経口血糖降下薬併用療法(うっ血性心不全3,478例、急性心筋梗塞3,695例、死亡5,529例)と比較して、うっ血性心不全(78例、調整リスク比:1.60、 95%信頼区間:1.21-2.10、P<0.001)、急性心筋梗塞(65例、同1.40、1.05-1.6、P=0.02)、死亡(102例、同1.29、1.02-1.62、P=0.03)で、有意なリスク増大と関連していた。TZD使用に関連したうっ血性心不全、急性心筋梗塞ならびに死亡率のリスク増はrosiglitazoneだけにみられた。研究者らは、このコホート研究によって、高齢糖尿病患者に対する主にrosiglitazoneによるTZD療法は他の経口血糖降下薬併用療法と比較して、うっ血性心不全、急性心筋梗塞、死亡率のリスク増加と関連していたと結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

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新開発のクラミジア迅速検査により即日診断・治療が可能に

クラミジアの核酸増幅検査は、現在使用されている迅速検査よりも感度および特異度が優れるが、高価なため財源が限られた診療所は導入が困難だ。また、核酸増幅検査は結果が出るまでに1~2週間を要するため、治療の勧告やパートナーへの告知に支障が生じる。イギリス・ケンブリッジ大学診断法開発部門の研究グループは、医療財源が限定された状況を想定して非侵襲的な自己採取の膣スワブ標本を用いた新たなクラミジア迅速検査を開発した。 Diagnostics for the Real World(Europe) 社のLourdes Mahilum-Tapay氏らは、クラミジアの診断およびスクリーニングのツールとしての本法の有用性を評価し、BMJ誌12月8日号(オンライン版11月30日号)で報告した。迅速検査と2つの核酸増幅検査を比較若者の性の健康センター(施設1)、泌尿生殖器クリニック(施設2および3)に16~54歳の女性1,349人(施設1:663人、施設2:385人、施設3:301人)が登録された。試験期間は2005年11月~2006年3月。施設1では自己採取した膣スワブを2標本と初尿を提供してもらい、施設2、3では医師の採取による膣スワブ、自己採取膣スワブ、初尿および子宮頸管スワブの提供も受けた。クラミジア迅速検査と、polymerase chain reaction(PCR)アッセイおよびstrand displacement amplification(SDA)アッセイという2つの核酸増幅検査の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を比較した。また、迅速検査のvisual signalと病原体量の相関、膣スワブの自己採取を受容できるか否かについても評価した。持続感染や感染拡大のリスクを低下させうるPCR法によるクラミジア陽性率は、施設1が8.4%、施設2が9.4%、施設3が6.0%であった。PCR法との比較における迅速検査の感度は83.5%、特異度は98.9%、陽性的中率は86.7%、陰性的中率は98.6%であった。SDA法との比較における迅速検査の感度は81.6%、特異度は98.3%であった。これらの検出能には有意な差は認めなかった。自己採取膣スワブの病原体量はクラミジアプラスミド数換算で5.97×10の2乗~1.09×10の9乗であり、迅速検査のvisual signalと良好な相関を示した(r=0.6435、p<0.0001)。ほとんどの参加者(95.9%)が、膣スワブの自己採取について「快適」と回答した。Mahilum-Tapay氏は、「自己採取膣スワブによるクラミジア迅速検査は即日診断およびスクリーニングのツールとして有用」と結論、「30分以内に結果が得られるため即日治療や接触者の追跡が可能となり、持続感染や感染拡大のリスクを低下させうる。また、スクリーニングにおいて核酸増幅検査に代わる簡便かつ信頼性の高い検査法となる可能性がある」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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製薬会社スポンサー付きのメタ解析は解釈に疑問が

単独の製薬会社と経済的つながりを持つメタ解析では、解析結果は影響を受けないが、結論はその会社に好ましい内容になる傾向があるという。スタンフォード大学のVeronica Yank氏らによる検討で、BMJ誌オンライン版11月16日付けで早期公開、本誌12月8日号で報告されている。単独スポンサー付きメタ解析では、結果と結論の不一致が37%にYank氏らは2004年12月までに出版された降圧薬臨床試験のメタ解析から、重複を除いた124解析を抽出した。40%にあたる49解析が単独の製薬会社から資金提供を受けていた。まず製薬会社に好ましい「解析結果」をもたらす要因を単変量解析で求めると、「試験の高品質」、「バラツキ検定の実行」、「感度解析の実行」が有意な因子であり、「単独製薬会社との経済的つながり」は有意な因子となっていなかった。製薬会社に好ましい「結論」をもたらす因子は、唯一「単独製薬会社との経済的つながり」だけが有意だった。事実、単独製薬会社と経済的つながりのあるメタ解析では、当該会社製品の有用性を示す結果が得られていたのは27解析(55%)だったにもかかわらず、45解析(92%)がその薬剤が有用であると結論しており、結果と結論の不一致が18解析(37%)に認められた。スポンサーなしの場合の不一致はゼロ一方、複数製薬会社と経済的につながりのあるメタ解析14件では不一致率21%、経済的つながりの明記されていない25試験では12%、製薬会社以外と経済的つながりを持つ36解析では、結果と結論の不一致は1つもなかった。Yank氏らは結果と結論が一致していないメタ解析を掲載した編集者とピアレビュアーを指摘している。「データの解釈に問題がある」のであれば、いわゆる「総説」さらに「ガイドライン」も同様の問題を内包している可能性がある。元New England Journal of Medicine編集長だったJerome P. Kassirer氏は著書「On The Take(買収の危機)」(Oxford Press、2005)において、具体的事例を挙げながら警告を発している。(宇津貴史:医学レポーター)

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新規CETP阻害薬は血圧を上昇させない?

コレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害薬はHDLを増加させるため、冠動脈イベント抑制作用が期待されていたが、torcetrapibを用いた大規模試験ILLUMINATEでは総死亡と心血管イベントリスクをプラセボに比べ有意に増加させていた。このtorcetrapib群におけるイベント増加の一因として血圧の上昇を指摘する声があったが、新規CETP阻害薬anacetrapibには血圧に対する悪影響はないかもしれない。Merck Research Laboratories(アメリカ)のRajesh Krishna氏らがLancet誌12月8日号で報告した。健常者に低脂肪食下で血圧評価本研究では自由行動下血圧(ABP)を用いて血圧への影響を検討した。45~75歳の健常者22名をanacetrapib 150mg/日群とプラセボ群に11例ずつ割り付け、服用開始10日後の24時間ABPを測定した。その後、最低14日間の無服薬期間経過後、プラセボ群とanacetrapib群を入れ替え、再び服用開始10日後に24時間ABPを測定した。試験期間中は低脂肪食が供された(理由不詳)。まず血圧日内変動だが、anacetrapib群とプラセボ群に大きな差はなかった。また24時間血圧の最小二乗平均値で比較すると、プラセボ群に比べanacetrapib群では0.60/0.47mmHgの上昇を認めたのみだった(有意差なし)。HDL-Cは用量依存性で有意に増加本論文にはもう1つ研究が収められている。こちらは脂質代謝異常例を対象とした用量発見試験であり、50例をプラセボ群とanacetrapib 10~300mg/日の4群にそれぞれ10例ずつ無作為割り付けた。服用開始28日後、anacetrapib群ではいずれもプラセボ群に比べHDLコレステロール(HDL-C)が有意に増加していた。HDL-C増加作用は用量依存性であり、300mg/日群で最も強力となっていた。torcetrapibとの違いは?本論文では脂質代謝異常例における血圧データは示されず、またtorcetrapibによる血圧上昇の一因とされた「血中アルドステロンの増加」の有無を見ていないのも残念だ。考察においてKrishna氏らはtorcetrapibとの違いを強調しているが、torcetrapibも162例を8週間追跡した第II相試験では明らかな血圧上昇は認められていない。さらなるデータを待ちたい。 (宇津貴史:医学レポーター)

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バクロフェンはアルコール性肝硬変患者の断酒推進に有効だ

アルコール性肝硬変患者の最も効果的な治療は「断酒」である。ここ数十年の間に、断酒や飲酒再発予防への作用効果が期待される薬がいくつか登場しているが、薬剤性肝障害などを引き起こす可能性が高いことから、薬理学的試験でアルコール性肝硬変患者の飲酒に関しては決まって対象外とされている。ローマ・カトリック大学内科のGiovanni Addolorato氏らは、γアミノ酪酸(GABA:脳や脊髄に存在するアミノ酸の一種で主要な神経伝達物質)受容体作用薬で、日本では抗痙縮薬として保険収載されているバクロフェンの、アルコール性肝硬変患者の断酒効果と安全性について臨床試験を行った。LANCET誌12月8日号より。低肝代謝に着目、プラセボ対照無作為化試験バクロフェンに着目した背景としてAddolorato氏らは、肝代謝が15%と低く大半が腎から排出される点、またアルコール依存症患者あるいは中枢神経疾患患者でいずれも副作用としての肝障害が報告されていないことを挙げている。治験は2003年10月~2006年11月の間にローマ・カトリック大学内科に紹介されてきたアルコール性肝硬変患者148例を対象に行われた。このうち84例を、経口バクロフェン投与群またはプラセボ投与群に無作為に割り付け、12週間投与が行われた。主要評価項目は、断酒を成し遂げ維持できている患者の比率。断酒できた患者総数と断酒継続期間の結果を、外来来診時に評価する方法で行われた。飲酒再発とは、最低1ヵ月の間に、1日4杯以上飲酒もしくは週に14杯以上飲酒した場合と定義された。断酒率71% vs 29%、継続期間は62.8日 vs 30.8日断酒を成し遂げ維持できていた患者は、バクロフェン投与群71%(30/42例)、プラセボ投与群は29%(12/42例)で、オッズ比は6.3(95%信頼区間:2.4-16.1、p=0.0001)。脱落者(治療打ち切り)数は、バクロフェン投与群14%(6/42例)に対しプラセボ投与群は31%(13/42例)だった(p=0.12)。断酒継続期間は、バクロフェン投与群の平均値は62.8日(SE 5.4)で、プラセボ投与群の30.8日(SE 5.5)に比べ約2倍だった(p=0.001)。肝性の副作用は記録されていない。以上からAddolorato氏らは、「バクロフェンは、アルコール性肝硬変患者の断酒推進に有効だ。薬剤として十分通用し、治療において重大な効果を発揮するだろう」と結論づけている。

30631.

日本初の注意欠陥/多動性障害(AD/HD)治療薬「コンサータ錠」発売

12月19日、ヤンセンファーマ株式会社(東京都千代田区)は、小児期における注意欠陥/多動性障害(以下AD/HD)を適応症とする中枢神経刺激剤「コンサータ錠」(一般名:塩酸メチルフェニデート)を発売した。コンサータ錠に関しては、承認時に厚生労働大臣の承認条件及び同日付課長通知によって、適正使用を図るための流通管理等を義務付けられている。そのため、「コンサータ錠適正流通管理委員会」による「コンサータ錠適正流通管理基準」の策定と、同基準に基づく流通管理の履行開始を受けての発売となる。詳細はプレスリリースへhttp://www.janssen.co.jp/inforest/public/home?paf_gear_id=2100029&paf_gm=content&paf_dm=full&vid=v11&cid=cnt44824

30632.

肺動脈性肺高血圧症治療薬「ケアロードLA錠」発売

12月19日、東レ株式会社とアステラス製薬株式会社は、経ロプロスクサイクリン(PGI2)誘導体徐放性製剤「ケアロードLA錠」(一般名:ベラプロストナトリウム)を発売した。同剤の適応症である「肺動脈性肺高血圧症」は、心臓から肺に血液を送る血管(肺動脈)の末梢の小動脈の内腔がせまくなって血液がとおりにくくなり、肺動脈の血圧(肺動脈圧)が高くなる疾患。「ケアロードLA錠」は内服可能なプロスクサイクリン(PGI2)誘導体製剤として世界初の徐放性製剤となる。詳しくはプレスリリースへ(PDF)http://www.astellas.com/jp/company/news/2007/pdf/071218.pdf

30633.

小児期の高BMIは成人期の虚血性心疾患リスクを増加

小児肥満症の蔓延は世界中で驚くべき早さで進行している。そうした中で、虚血性心疾患(CHD)の危険因子が肥満児においてすでに同定可能となっているが、小児期の過体重が成人期のCHDに及ぼす長期的影響の重要性についてはまだ明らかにされていない。その点について予防医学研究所(デンマーク・コペンハーゲン)のJennifer L. Baker氏らのグループが調査を行った。NEJM誌12月6日号より。小児期BMIと成人期虚血性心疾患の関連を27万余調査研究グループは、小児期(7~13歳)の肥満度指数BMIと成人期(25歳以上)のCHDとの関連を、出生時体重で補正した場合としない場合とについて調査した。対象は、出生児の身長および体重データが入手できたデンマークの小児276,835例。CHDイベントは全国登録データとの照合によって確認し、コックス回帰分析によって解析された。女児より男児で強く相関506万3,622人年のフォローアップ期間中、小児期BMIデータが入手できた男性10,235例と女性4,318例は、成人してからCHDの診断を受けたかCHDで死亡していた。成人期のCHDイベントのリスクは、非致死的イベント、致死的イベントにかかわらず、男児は7~13歳、女児は10~13歳時のBMIと正の相関を示した。関連は各年齢層において線形を示し、リスクはBMIの分布全体で増大していた。さらに、リスクは小児の年齢が上がるほど増大した。出生時体重で補正したところ、その結果はさらに強化された。これらから研究グループは、小児期の高BMIは成人期のCHDリスクの増加と関連していると結論。さらにこの関連は女児より男児で強く、男女とも加齢に伴い増大する傾向があったことも報告されている。最後に、「世界中で小児肥満が増えていることは、将来的にCHDリスクを持つ成人の数が世界規模で増すことを意味するものだ」とも述べている。(朝田哲明:医療ライター)

30634.

喘息患者がディーゼル車から受ける呼吸器への影響

車の排気ガスによる大気汚染は重篤な健康被害をもたらす。そのリスクは呼吸器疾患を有する人にとってはより高まる可能性があることから、英国立心臓肺研究所(NHLI)のJames McCreanor氏らは、喘息患者を対象に、都市沿道での短期曝露でディーゼル車からどれぐらいの影響を受けるのかを調査した。NEJM誌12月6日号掲載報告から。喘息患者60人を市街地の大通り・公園内で2時間ずつ曝露比較調査は、軽度あるいは中等度の喘息成人患者60人に、ロンドン市街のオックスフォード通りを2時間歩いてもらい、別の機会に同じくロンドン市街にある公園ハイドパークを2時間歩いてもらい、それぞれ詳細なリアルタイム曝露(生理学的・免疫学的)を測定するという方法で行われた。その結果、参加者がハイドパークでよりオックスフォード通りで、2.5μm以下の微粒子(1μm=1000分の1ミリ)、超微細粒子、元素状炭素(エレメンタルカーボン;煤)、二酸化窒素の有意な高度曝露があったことが示された。肺・呼吸器機能低下は超微細粒子とエレメンタルカーボンで最もよく相関オックスフォード通りを2時間歩くことは、無症候性だが1秒量(FEV1)と努力肺活量(FVC)の低下を招いた。FEV1低下は最大6.1%、FVC低下は最大5.4%。それぞれの値はハイドパークでの曝露後は1.9%、1.6%で、オックスフォード通りでの低下が有意に大きい。好中球炎症を示すバイオマーカー(喀痰ミエロペルオキシダーゼ)は、ハイドパーク曝露後4.24ng/mL上昇、これに対しオックスフォード通り曝露後は24.5ng/mL(P=0.05)上昇を示した。気道の酸性化(pH減少)もみられ、ハイドパーク曝露後の最大減少は0.04%、オックスフォード通り曝露後は1.9%に上っていた(P=0.003)。これらの変化と最もよく相関していたのは、超微細粒子とエレメンタルカーボンだった。なお曝露による影響は、軽度の喘息被験者より中等度の喘息被験者のほうが大きかった。McCreanor氏らは、「我々の観察結果は、喘息患者の肺機能とディーゼル車曝露との関連についての疫学的エビデンスを実証し説明するものとなった」と結論づけている。

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急性副鼻腔炎には抗生剤、点鼻用ステロイドいずれも無効

急性副鼻腔炎はよくある臨床テーマで、抗生剤の投与に落ち着くのが一般的だが、その是非をめぐっては議論の余地が残っている。局所ステロイドのような抗炎症薬は有効性が期待されるものの、調査研究が十分に行われてはいないからで、英国サウサンプトン大学のIan G. Williamson氏らの研究グループが、急性副鼻腔炎に対するアモキシシリンとブデソニド(点鼻用)の有効性に関する臨床試験を行った。JAMA誌2007年12月5日号より。2剤を単独・併用の4群に無作為割り付けこの試験は、240例の成人患者(16歳以上)を対象とする二重盲検無作為化プラセボ対照試験。2001年11月から2005年11月までの間に58の家庭診療所(74人の家庭医)から、再発性でない急性副鼻腔炎患者(片側性の化膿性鼻漏、片側性の局所疼痛、両側性の化膿性鼻漏、鼻腔膿のうち2つ以上の診断を持つ)が集められ、抗生剤と点鼻用ステロイド、プラセボ抗生剤と経鼻ステロイド、抗生剤とプラセボ点鼻用ステロイド、プラセボ抗生剤とプラセボ点鼻用ステロイドの4つの投与群にランダムに割り付けられた。投与は、アモキシシリン500mgを1日3回7日間、ブデソニド200μg を1日1回10日間が繰り返された。主要評価項目は、症状経過、治癒に要した期間、症状の重症度を比較因子として10日目の治癒程度で比較した。抗生剤も点鼻用ステロイドも急性副鼻腔炎治療の有効性認められず症状が10日以上持続している患者の割合は、アモキシシリン投与群29%(100例中29例)、非アモキシシリン投与群33.6%(107例中36例)だった。補正オッズ比は0.99(95%信頼区間:0.57-1.73)。点鼻用ブデソニドについてもほぼ同様の結果で、投与群31.4%(102例中32例)、非ブデソニド投与群31.4%(105例中33例)で、補正オッズ比0.93(同0.54-1.62)だった。 二次解析の結果から、点鼻用ステロイドが有効なのはべースラインより症状が軽い患者であることが示唆された。これらから研究グループは、抗生剤も点鼻用ステロイドも、単独か併用かを問わず、日常診療における急性副鼻腔炎の治療には有効でないと結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

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心肺フィットネスは高齢者の死亡予測因子

身体活動および有酸素能力のレベルは年齢と共に減少し、一方で肥満症の有病率は年齢と共に増大する傾向がある。それにもかかわらず高齢者の心肺フィットネスおよび肥満と、死亡との関連についてはこれまで十分に調査検討されていない。そこで、サウスカロライナ大学アーノルド公衆衛生学校(アメリカ)運動科学部門のXuemei Sui氏らが調査を行い報告した。JAMA誌12月5日号より。60歳以上2,603人の心肺フィットネス、肥満と死亡との関連を調査研究対象は、1979~2001年の間に基線健康診査を受けエアロビクスセンター縦断研究に登録された60歳以上の2,603人。平均年齢64.4歳(SD 4.8)、女性が19.8%を占める。心肺フィットネスの評価は最大運動負荷試験にて行い、性特異的分布による最低5分位を低心肺フィットネスと定義した。肥満症の評価はBMI、腹囲、体脂肪率で行い、臨床ガイドラインに従ってグループ分けされた。主要評価項目は、2003年12月31日までの全死亡。死亡率は低心肺フィットネス群32.6、高心肺フィットネス群8.1平均追跡期間12年、31,236人年のうち死亡数は450人だった。1,000人年の死亡率(年齢、性、検査年補正後)は、BMI 18.5~24.9群、25.0~29.9群、30.0~34.9群、35.0以上群でそれぞれ13.9、13.3、18.3、31.8であった(P=0.01)。正常腹囲群では13.3、高腹囲群(女性88 cm以上、男性102 cm以上)では18.2(いずれもP=0.004)、標準体脂肪率群では13.7、高体脂肪率群(女性30%以上、男性25%以上)では14.6(いずれもP=0.51)だった。心肺フィットネスでは5分位増加ごとに32.6、16.6、12.8、12.3、8.1(P

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COPDの予後に対する医師の悲観的な予測が、必要な入院治療を損なう

イギリスでは毎年約3万人がCOPDで死亡している。COPDの増悪には人工呼吸器が有用だが、挿管にはICUへの入院を要する。一方、医師はICUに入院したCOPD患者の予後を必要以上に悲観的に予測する傾向にあることが示されている。入院は医師の予後診断によって決まるため、入院すべき患者が挿管のためのICU入院を否認されている可能性がある。 Northern General Hospital(イギリス、シェフィールド)のMartin J. Wildman氏らは、COPDの重篤な急性増悪に対する医師の予後診断と、実際の生存アウトカムを比較するプロスペクティブなコホート研究を行った。BMJ誌11月1日付オンライン版、12月1日付本誌掲載の報告。ICU退室時、退院時、180日後の生存を予測対象はCOPD、喘息、COPD/喘息併存の増悪による息切れ、呼吸不全、精神状態の変化がみられる45歳以上の患者とした。2002年3月~2003年9月の間に92のICUおよび3つの呼吸器高度治療室(RHDU)に入院した832例が試験に登録された。医師は入院時に、当該患者のICU/RHDU退室時、病院退院時、入院から180日後の生存について尋ねられた。180日後の生存はGPを通じて確認し、国立統計局を通じて確定した。予測180日生存率は49%、実際は62.1%実際の退室時生存率は80.9%、退院時生存率は70.2%であった。入院から180日後に517例が生存しており、生存率は62.1%であったのに対し、医師による平均予測180日生存率は49%であった。予後の良好度を5段階に分けた場合に、最も不良な予後が予測された患者群の予測180日生存率は10%であったが、実際の生存率は40%であった。10段階に分けた場合に最も予後が不良とされた患者群では、医師の予測生存率は3%にすぎなかったが、実際の生存率は36%であった。試験に参加したICU/RHDUと参加しなかったICU/RHDUの設備は同等であり、同一施設で試験に登録された患者と登録されなかった患者の背景に差はなかった。イギリスの悲観主義的な文化的背景が影響かWildman氏は、「COPD患者、喘息患者の挿管のためのICU入院は、医師の予後診断によって決まるため、入院していれば生存が可能であった症例が根拠のない悲観的な予後予測が原因で入院を否認されている可能性がある」と結論している。また、同氏は「イギリスの悲観主義的な文化が、COPD患者のトリアージにおける医師の意思決定(decision making)をゆがめている可能性がある」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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「スパイ事件だから私は大丈夫」リトビネンコ事件後の健康リスク意識

2006年11月にロンドン中心部で発生したポロニウム-210(210Po)によるリトビネンコ氏毒殺事件後、ロンドン市民の毒物曝露リスクへの関心は低かったという。この事実は、公衆衛生にかかわる事故発生の最中に、一般市民にそのリスクの詳細を包括的かつ効果的に伝えることの重要性を改めて浮き彫りにした。 King’s College London(ロンドン大学)精神科のG. James Rubin氏らは、当該事件後に健康リスクに関する一般市民の意識調査を実施、公衆衛生学的な情報伝達(public health communications)の評価を行った。BMJ誌11月1日付オンライン版、12月1日付本誌掲載の報告から。健康リスクを意識した市民は11.7%にすぎないロンドン市民1,000人を対象に横断的調査を行い、毒物曝露の可能性があった86人に質的インタビュー(qualitative interview)を実施した。210Po事件後、個々人が自らの健康リスクをどう認識したかを調査し、質的インタビューでは情報ニーズをどの程度重視しているかを解析した。横断的調査で、「自分の健康が危険にさらされている」と認識していたのは117人(11.7%)であった。健康リスクを意識した主な予測因子は、「これはスパイ事件ではなくテロリズムだ」という思いこみであった(オッズ比:2.7)。これは、テロリズムのターゲットが一個人ではなく広く公衆一般だからであり(オッズ比:5.9)、汚染地区にいなかった人々の認識に影響を及ぼしていた(オッズ比:3.2)。包括的で詳細な曝露リスク情報へのアクセスが重要質的インタビューを受けた者は全般に、得られた情報には満足していたが、個人的な曝露のリスク、尿検査の結果、事件が健康に及ぼす影響についてもっと多くの情報を望んでいた。Rubin氏は、「2006年、ロンドンで起きた210Po事件後のロンドン市民の健康リスクへの関心は低かったが、これは汚染がスパイ活動に関連したものでターゲットは公衆一般ではなく、曝露されなかった市民にリスクはないと認識したためだ」と結論している。また、「将来、起きるであろう事故の際は、曝露のリスクに関する包括的で詳細な情報への自在なアクセスを保障することが重要だ」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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コレステロール低値の脳卒中死リスクは必ずしも低くない

観察研究のメタ解析としては最も信頼性の高いProspective Studies Collaboration(PSC)が、血清脂質と心血管系イベントに関する解析をLancet誌12月1日号で公表した。虚血性心疾患死のリスクは予想通り、血清総コレステロール(TC)低値例で年齢を問わず低かった。一方、脳卒中死では、TC高値がリスクとなっていたのは、相対的若年者と収縮期血圧がほぼ正常である場合のみだった。約90万例、1千万例・年のデータを解析解析対象となったのは、観察開始時に心血管系疾患の既往がなかった40~89歳の89万2,337人。前向きコホート研究61件のデータが集められた。わが国からのデータも含まれているが、主として欧米人の成績である。また一般的なメタ解析と異なり、PSC解析では原則として、オリジナルデータが入手可能だった。1,160万人・年のサンプル(平均追跡期間13年)中、55,262例が血管系イベントで死亡していた。内訳は「虚血性心疾患死」が33,744例、「脳卒中死」11,663例、「その他の血管死」が9,855例である。虚血性心疾患リスクはTC低値に従い減少性別、年齢と参加した試験で補正後、血清脂質と死亡リスクの関係を検討すると、以下が明らかになった。まず虚血性心疾患死のリスクだが、リスク対数値とTC値の間に正の相関を認めた。年齢の高低、性別を問わず、TC値が37.8mg/dL(1mmol/L)低いと虚血性心疾患死のリスクも有意に低かったが、相対リスクの減少率は若年者で顕著であり、高齢になるに従ってTC低値による相対リスク減少率は小さくなっていた。また、このTC低値における虚血性心疾患リスクの減少は、収縮期血圧の高低、喫煙習慣の有無、BMIの高低を問わず認められた。脳卒中リスクは血圧145mmHg以上では有意に大きい一方、脳卒中死リスク(対数値)とTC値は、40~59歳で弱い正の相関が認められるのみで、それより高齢では相関していなかった。試験開始時の収縮期血圧別に検討すると、「145mmHg未満」ではTC値が37.8mg/dL低値であれば脳卒中死リスクは有意に低くなっていたが、「145mmHg以上」であった場合、リスクは逆に有意に大きくなっていた。この脳卒中と総コレステロールの関係については、更に検討する必要があると著者らは記している。なお本コホートにおける「非血管系死亡」は42,865例。TCが37.8mg/dL低値だとリスクは相対的に10%有意に増加していた(95%信頼区間:1.08~1.11)。この結果を著者らは、TCを低下させる基礎疾患などによりリスクが増加した結果であろうと記している。TC値と総死亡の関係は示されていないが、TC低値は「虚血性心疾患死」のリスクは低いが、血圧コントロール不良例では「脳卒中」抑制に注力が必要であり、また一般的にTC低値例では続発性の低コレステロール血症を除外する重要性が示された。 (宇津貴史:医学レポーター)

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イタリア北東部におけるチクングニアウイルス集団感染報告

チクングニアウイルスはヤブ蚊類(Aedes spp)の媒介によってヒトに感染する。1953年、タンザニアで単離されたのち、散発的な感染例や集団感染がアフリカ諸国、インド亜大陸、東南アジアから報告されている。数年前に西インド洋域のアフリカの島々など広範な地域で流行して以来、温帯地域の先進諸国からの旅行者が感染して帰国する例が多発している。日本では、昨年12月、一時帰国中のスリランカ在住の30歳代の日本人女性の感染が判明、国内で確認された初めての感染例とされる。 イタリア高等厚生研究所のG. Rezza氏らは、イタリア北東部地域で発生したヒトスジシマカ(Aedes Albopictus)の媒介によると思われる集団感染について報告した。Lancet誌12月1日号から。原因不明の発熱性疾患が集団発生イタリア北東部の隣接する2つの村で原因不明の発熱性疾患が集団発生したため、感染源および伝搬様式を確定するための調査が行われ、積極的疫学調査(active surveillance system)が実施された。症状の定義は発熱および関節痛の発現とした。血液サンプルはPCR法で解析し、病原体を同定するための血清学的検査を実施した。現地で捕獲された蚊もPCRで検査し、チクングニアウイルスの系統発生解析を行った。病態はほぼ全例がごく軽度ヒトおよび蚊のサンプルの解析から、チクングニアウイルスの集団感染が判明した。2007年7月4日~9月27日までに205例を確認した。感染源は村のひとつに在住する親戚を訪問中に症状の発現をみたインド人男性と推定された。系統発生解析では、イタリアでみつかったウイルス株とインド洋の島々での集団発生時に同定された株が類似することが示された。病態はほぼ全例がごく軽度で、死亡例は1例のみであった。研究グループは、「今回の非熱帯地域におけるチクングニアウイルスの集団感染は予測不能な面がある」としたうえで、「グローバリゼーションの時代においては、未経験の感染症の脅威に対する備えと対応策が重要」と警告している。(菅野 守:医学ライター)

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