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iPS研究の可能性、治療開発マップetc.~日本泌尿器科学会総会のハイライト

 来月4月24日より4日間、第102回日本泌尿器科学会総会(JUA)が開催されるにあたって、今月10日にプレスセミナーが開催され、学会長の筧 善行氏より企画の概要および見どころが紹介された。社会的視点から わが国の高齢化率は今後50年間で急激に増加する。泌尿器がんは高齢になるほど増加すること、排尿管理を必要とする高齢者が急増すること、医師自身の高齢化も進行することから、泌尿器科医療における役割分担が変わっていくことが予想される。今回、社会的視点からの企画として、以下の講演が予定されている。・高齢化社会における医療費増加抑制策としての個別化治療と日米の意識格差・米国医療の光と影「患者の権利」の視点から・待ったなしの医療制度改革、現状と展望若手医師の研究離れをどうにかしたい 近年、若手医師の専門医志向・研究離れが進んでいるため、研究の魅力にふれる機会として、以下の講演が企画されている。・科学嫌いが日本を滅ぼす:「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか?・尿路結石症研究の楽しさ、美しさを語る(仮題)・臨床研究の道標:7つのステップで学ぶ研究デザイン・がんの臨床研究:JCOGの歩みと今後の展望 さらに、泌尿器科領域へのiPS研究の可能性についての講演も企画されている。・iPS細胞から精子を作成・iPS細胞から腎臓細胞を作成・iPS細胞からがん細胞を殺すT細胞を作成各疾患の治療開発マップを作成 がん治療について、現在のがん治療は「治すこと」「救うこと」に重点が置かれているが、今後は「癒すこと」「やりすごすこと」「しのぐこと」「看取ること」が重要になってくる。泌尿器科学会では、泌尿器がんの治療開発マップを作成しており、今回の特別企画で、前立腺がん、尿路上皮がん、腎がん、精巣がんのマップについて報告される。このマップは、がんだけでなく、排尿障害、蓄尿障害についても企画されている。高度化・高品質化する手術に対して 現在、泌尿器がんの手術は高度化、高品質化しているが、その安全管理、危機管理について考える「泌尿器科手術の安全管理:情報の共有化を目指して」と題した特別企画が組まれている。香川といえば・・・ 今回の会長である筧氏が香川大学所属であることから、全国の泌尿器科医から各県1名ずつを公募し、うどん早食いグランプリ「U1グランプリ」が開催される。【第102回日本泌尿器科学会総会】■会期:2014年4月24日(木)~27日(日)■会場:神戸国際会議場、神戸国際展示場、神戸ポートアイランドホテル■会長:筧 善行氏(香川大学医学部泌尿器科 教授)■テーマ:’今日’を見つめ、’明日’を創る~良医は国を癒す~

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医師の社会人教育【Dr. 中島の 新・徒然草】(008)

八の段 医師の社会人教育私がこれまでに勤務した病院には、例外なく困った先生がいて、周囲がいろいろとカバーしなくてはなりませんでした。一般に社会人らしからぬ振る舞いとして、遅刻したり無断欠勤したりする感情的な言動で患者さんや周囲と揉め事を起こす書類を提出しないか、提出が遅れるなどが思いつきます。お辞儀の角度とか名刺の渡し方など、一般に言われるビジネスマナー以前の問題ですね。とはいえ、どの医療機関も忙しすぎて今さら社会人教育どころではないのも事実です。そこで考えたこと。とにかく原理原則だけを徹底し、良き社会人として振る舞ってもらいましょう。原則その1:他人に迷惑をかけない遅刻や書類不備は好ましからざることには違いありませんが、それによって不利益を被るのが本人だけなら、ある程度許容できます。でも、遅刻や書類不備で周囲に迷惑をかけてはなりません。このことさえ守れば、最低限のラインがキープできます。原則その2:迷惑をかけたときの振る舞いとはいえ、人間、生きているかぎり、誰かに迷惑をかけるのは避けられません。大切なことは、迷惑をかけてしまった人間に素直に謝ること、尻ぬぐいをしてくれた人に感謝の言葉を述べることではないかと思います。指摘されて逆ギレするようでは社会人として失格です。ということで、最低限の原理原則。これさえ守っていれば何とかなりそう。もちろん私自身も日々、心掛けるようにいたします。

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COPD増悪入院患者の約半数で無呼吸症候群

 COPD増悪入院患者では、一般集団や安定期COPD患者と比べて、睡眠時無呼吸症候群(OSA)の有病率が高いことが、チェコ共和国・St. Anne's大学病院のPavel Turcani氏らによる検討の結果、明らかにされた。COPDとOSAの併存は、オーバーラップ症候群として広く認識されている。しかし、安定期COPD患者のOSA有病率に関するエビデンスは限定的なものしかなく、COPD増悪入院患者のOSA有病率のデータはなかった。Biomedical Papers of the Medical Faculty of the University Palacky誌オンライン版2014年2月25日号の掲載報告。 先行研究において、COPD有病率はEUでは4~6%、米国成人集団では5%超と報告されており、またOSAについては一般集団で5~15%との報告がある。一方、COPDとOSAの併存については、最大29%との研究報告がある一方で、両者の結びつきを否定する報告もあった。 研究グループは、COPD増悪入院患者におけるOSA併存者の割合を明らかにすること、また、COPD被験者に認められるOSAの交絡因子を明らかにすることを目的に、2013年2月から5月の4ヵ月間に、St. Anne's大学病院の呼吸器科部門にCOPD増悪で入院した101例の患者を対象に検討を行った。 試験には79例の連続患者が登録され、そのうち35例にポリグラフィを実施。記述統計、マン-ホイットニー検定、クラスカル-ウォリス検定、スピアマン相関分析、フィッシャー検定にて結果を要約・評価した。 主な結果は以下のとおり。・ポリグラフィを実施した35例のうち、無呼吸低呼吸指数(AHI)5以上のOSAを有することが示唆されたのは18例(51.4%)であった。AHI 5~15が9例、同15超が9例であった。・AHIは睡眠障害の重症度分類指標であると同時に、「Mallampatiスコア分類」「いびき」「無呼吸」「冠動脈疾患」「糖尿病既往」「身長」「BMI」「頸囲」「ウエスト周囲径」「ヒップ周囲径」「エプワース眠気尺度」とそれぞれ有意な相関関係を示した。■「COPD増悪」関連記事COPD増悪抑制、3剤併用と2剤併用を比較/Lancet

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統合失調症と双極性障害の違い、脳内の炎症/ストレスに派生

 統合失調症と双極性障害は、発症の前兆や生物学的側面にいくつかの共通した特徴を有している。また先行研究において、両疾患を有する患者の脳において、神経免疫とストレスのシグナル経路に異常が認められることが確認されている。しかし、これまで両者の関連性については明らかにされていなかった。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のS G Fillman氏らは、脳内のストレス反応により生じた変質と神経免疫/炎症状態が疾患を特徴づけていると仮定し検証を行った。Translational Psychiatry誌2014年2月25日号の掲載報告。 本検討では、次の3点を評価することが目的であった。(1)ストレスと炎症性システム応答の鍵となるメディエーターの変化の発生が、統合失調症と双極性障害患者のサブセットでどの程度共通しているかを調べること、(2)統合失調症と双極性障害の診断患者別に、前頭皮質における炎症およびストレスシグナルシステムについて分子病理学的に共有していた割合を調べること、(3)同様のサブセットにおけるその他の分子的変化の特徴を調べること。これらについてStanley Array Cohortを対象に、遺伝子発現を調べ評価した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者35例、双極性障害患者34例、対照被験者35例について評価した。・8つの炎症に関連する転写遺伝子を用いて調べた結果、統合失調症患者において、そのうちの1つであるSERPINA3発現の有意な増大がみられた(F(2,88)=4.137、p<0.05)。・また、以前に調査したことのある12の糖質コルチコイドレセプター(ストレス)シグナル経路転写遺伝子を用いて、被験者を2つの炎症/ストレス集団(高値群と低値群)に分類した。・その結果、高炎症/ストレス群(32例)は統合失調症患者が有意に多く(15例)、双極性障害患者が多い(11例)傾向が、対照群(6例)と比べて認められた。・また、同サブグループ患者において、ingenuity解析法により、マイクロアレイ評価による転写変化が高炎症/ストレス群と関連している可能性を調べた。その結果、免疫系、成長因子、シグナル抑制を含む遺伝子発現変化のネットワーク拡大、および細胞死がこれらのグループを特徴づけることが明らかになった。・以上を踏まえて著者は、「統合失調症と双極性障害におけるいくつかの異なる点は、一部の炎症性/ストレスの相互作用によるものであると説明できること、この生物学的サブタイプは、診断カテゴリーのDSM全体にわたっていることが、今回の検討によって示唆された」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症と双極性障害、脳の違いはどこか 統合失調症の認知機能改善に、神経ステロイド追加 双極性障害の診断、DSM-IV-TRでは不十分

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MMR生ワクチンは不活化混合ワクチンより全感染症入院を減少/JAMA

 麻疹・流行性耳下腺炎・風疹(MMR)生ワクチン接種は、最新のワクチンである不活化混合ワクチン(DTaP-IPV-Hib)接種と比べて、全感染症入院の減少と関連することが示された。デンマーク・Statens Serum Institute社のSigne Sphirup氏らがデンマークの小児コホートを対象とした分析の結果、報告した。これまで、低所得国において、生ワクチンMMR接種が麻疹以外の感染症死亡率を低下したことが報告されている。研究グループは、「そのような非特異的なワクチン効果が、高所得国における小児の健康についても重要な意味をもたらす可能性がある」として検討を行った。JAMA誌2014年2月26日号掲載の報告より。デンマーク小児集団についてDTaP-IPV-Hib接種との感染症入院発生率比を検討 生ワクチンMMR接種と感染症入院率減少との関連を調べる検討は、1997~2006年に生まれたデンマーク小児集団を対象とする住民ベースコホート研究にて、11ヵ月齢~2歳時までフォローアップ(最終2008年8月31日)して行われた。デンマーク全国レジスターに記録されているワクチン接種日、入院データを入手し分析に用いた。 主要評価項目は、MMRと最新のワクチンであるDTaP-IPV-Hibとの比較による、あらゆる感染症の入院発生率比(IRR)だった。また、MMR接種後のリスク、リスク差、感染症入院1例予防に必要なMMR接種例数(NNV)を算出した。 対象小児は計49万5,987人だった。MMR接種群、非接種群との発生率比は0.86~0.87 あらゆる感染症タイプで入院した小児は、50万9,427人年中5万6,889人だった(100人年当たり11.2例)。 推奨スケジュール(DTaP-IPV-Hibは3、5、12ヵ月齢時に3回、MMRは15ヵ月齢時に1回)どおりにワクチン接種を受けた小児は45万6,043人で、このうちDTaP-IPV-Hib 3回接種後にMMRを接種した群のほうが、DTaP-IPV-Hib 3回接種のみ群よりも、全感染症入院の発生率が低かった。発生率は100人年当たり8.9例vs. 12.4例、補正後IRRは0.86(95%信頼区間[CI]:0.84~0.88)だった。 接種スケジュールが前後していた小児(DTaP-IPV-Hib 2回後にMMR、MMR後にDTaP-IPV-Hib 3回)は1万9,219人いた。このうち、DTaP-IPV-Hib 2回接種後にMMRを接種した群は、MMR非接種(DTaP-IPV-Hib 2回のみ)群と比較して、全感染症入院の発生率は低かった(発生率9.9 vs. 15.1、補正後IRR:0.87、95%CI:0.80~0.95)。しかし、MMR後にDTaP-IPV-Hib 3回接種を受けた小児(1,981人)は、全感染症入院が有意に増大した(DTaP-IPV-Hib 2回後にMMR接種群と比較した補正後IRR:1.62、95%CI:1.28~2.05)。 16~24ヵ月齢での感染症入院のリスクは、MMR接種群は4.6%、同非接種群は5.1%だった。リスク差は、0.5ポイント(95%CI:0.4~0.6)、16ヵ月齢前におけるNNVは201例(95%CI:159~272)であった。 結果を踏まえて著者は、「デンマーク小児集団において、生ワクチンMMR接種は最新のワクチンDTaP-IPV-Hib接種と比べて、全感染症入院の減少と関連していた。他の高所得国集団でも同様の所見が認められるかを検討する必要がある」とまとめている。

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米国で試行のメディカルホーム、その効果は?/JAMA

 米国では、チーム医療でより質の高いプライマリ・ケアを、効果的に実施することを目的とした「メディカルホーム」が試験的に行われている。米国・RAND CorporationのMark W. Friedberg氏らによる検討の結果、従来型のプライマリ・ケアに比べ、その効果は限定的であることが報告された。結果を踏まえて著者は、「メディカルホームの仕組みについて、改善する必要があるようだ」と述べている。JAMA誌2014年2月26日号で発表した。メディカルホームと従来型プライマリ・ケアの患者、それぞれ約6万人を比較 Friedberg氏らは、2008年6月~2011年5月にかけて、メディカルホームのパイロット試験「Southeastern Pennsylvania Chronic Care Initiative」に初期から参加する、32のプライマリ・ケア診療所の患者6万4,243人について検討を行った。保険請求データを基に、医療の質、医療サービスの利用率、医療費などを求め、対照群としてパイロット試験に非参加の29ヵ所のプライマリ・ケア診療所の患者5万5,959人と比較し、差分の差(difference-in-differences;DID)分析を行った。 パイロット試験に参加する診療所は、疾病登録と技術的協力を受け、全米品質保証委員会(NCQA)により患者中心のメディカルホームを達成したことに対するボーナスを得ることが可能であった。 主要アウトカムは、糖尿病、喘息、予防医療、入院率、救急室や外来の利用率、医療ケアの標準化コストに関する11項目の質評価に関する指標だった。メディカルホームで改善は11項目中1つのみ その結果、11項目のうち改善が認められたのは、糖尿病患者に対する腎障害スクリーニングの1項目についてのみであった。対照群では3年補正後実施率が71.7%だったのに対し、メディカルホーム群では82.7%と有意に改善した(p<0.001)。 その他の医療サービスの利用率やコストについて、メディカルホーム群は対照群に比べ、有意な改善が認められなかった。 なお3年間の試験期間中に、メディカルホームに参加した診療所は、プライマリ・ケア医1人当たり平均9万2,000ドルのボーナスを得た。 これらの結果を踏まえて著者は、「3年間についてみたメディカルホームは、入院、救急室、外来サービスの利用や総コストの低減に関連していなかった。メディカルホームの仕組みについて、さらなる改善の必要があるようだ」とまとめている。

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日循学術集会、見どころはココ!

 日本循環器学会学術集会の開催に先立ち、学会から「学術集会の見どころ」が永井良三会長(自治医科大学)および平田恭信事務局長(東京逓信病院)から発表された。 今回は、「情報爆発とネットワーク時代の循環器病学」をメインテーマとしており、大量の医療データの扱い方やデータ構築方法などが基礎・臨床の両面で話し合われるのに加え、地域医療と情報ネットワークについても改めて考える機会が作られる。また、昨今問題となっている臨床研究のあり方や利益相反についてのセッションも複数予定され、活発な議論が期待されている。 今回の学術集会も数多くの演題が予定されているが、演者からは、とくに興味深い/発表数の多い演題として下記が挙げられた。・循環器疾患関連ビックデータの扱い・構築・再生医療(血管新生、心筋再生、iPS細胞)・重症心不全例の治療(人工心臓、心臓移植)・弁膜症に対するTAVI・冠動脈疾患例に対する内科と外科のハイブリッド治療・心房細動例への抗凝固療法・難治性高血圧例に対する腎デナベーションの効果と懸念・心臓の分子生物学の第一人者であるChristian Seidman氏の講演・次世代シークエンサーによる遺伝子解析と医療への応用・日本の臨床研究のあり方・女性医師の循環器への参画・循環器疾患の医療費**********************************第78回日本循環器学会学術集会テーマ:情報爆発とネットワーク時代の循環器病学会期:2014年3月21日(金)~23日(日)会場:東京国際フォーラム等**********************************

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第23回 非専門医に求められる医療水準の範囲

■今回のテーマのポイント1.神経疾患で一番訴訟が多い疾患は脳梗塞であり、争点としては、治療の遅れおよび診断の遅れが多い2.非専門科に求められる医療水準は、専門科において求められる水準よりも低い3.ただ、非専門科においても一般医学書程度の知識は要求される事件の概要X(71歳、女性)は、高血圧症などにてY病院循環器科外来(A医師)を受診していました。また、平成20年11月に追突事故に遭い、同事故の影響で左手指にしびれがでたこと、そのためリハビリ中であることをA医師に伝えていました。平成21年3月3日午後9時頃、持ち帰り用の食品を受け取るため、自宅付近の居酒屋を訪れ、代金を支払おうと財布から硬貨を取り出そうとしたところ、左手から硬貨を落とし、それを拾おうとしてはまた落としてしまいました。居酒屋の経営者夫妻は、Xのその様子および、Xの顔面の片側が垂れ下がっていたのをみて、同店で以前、脳梗塞を発症した客の様子と似ていたことから、救急車を要請しました。居酒屋に到着した救急隊員は、Xの状況について、椅子に座っており、意識清明、顔色正常、呼吸正常であること、歩行不能であったが、他自覚症状もなく、四肢のしびれや麻痺もなく、頭痛、嘔気、めまいもないことから、TIA(一過性脳虚血発作)疑いとしてかかりつけのY病院に受け入れ依頼をしました。Y病院受診時のXは、意識清明で、血圧166/110、歩行障害はなく、腱反射、瞳孔反射ともに正常でした。当直のB医師(消化器外科医)は、当時、TIAには意識障害があると思っていたため、XはTIAではないと判断し、ちょうど翌日、A医師の外来受診予定であったことから、夜間で十分な検査ができないので、翌日検査を受けるように伝え、異常時は再診するように伝えた上、Xを帰宅させました。翌4日、A医師が診察したところ、バレー徴候もなく、フィンガー・トゥ・ノーズテストも異常所見はなく、また、心音、呼吸音に問題はなく、末梢浮腫も認めませんでした。脳梗塞の診断のため、頭部MRI、MRAおよびDWI(拡散強調画像)を施行しましたが、陳旧性脳梗塞を認めるものの、新鮮な脳血管障害は認められませんでした。A医師が現症状を尋ねたところ、Xは「どうもありません。」と答えたことから、前日に原告が小銭を取りこぼしたのは、平成20年11月の追突事故による左手指のしびれのためと考え、従前の処方のみで経過観察としました。ところが、Xは、3月18日早朝、自宅で倒れているところを家族に発見され、Z病院に救急搬送されたところ、脳梗塞と診断されました。Z病院にて治療およびリハビリテーションを行ったものの、Xには、中等度の感覚性失語、右片麻痺により、要介護3級の状態となりました。そこで、Xは、Y病院に対し、遅くとも3月4日の段階でTIAと診断し、抗凝固療法などを行うべきであったとして、約8,050万円の支払いを求める訴訟を提起しました。事件の判決■原告一部勝訴(440万円)被告は、当時の医療水準では、非専門医療機関、非専門医に対しては、適切な問診を行い、TIA又はその疑いがあることを診断する義務があるというレベルまでは要求できないと主張し、P医師(被告側鑑定医)は、おおむね以下の内容の意見を述べている。各ガイドラインは、専門医及び一般内科医用とされているが、まず専門医の脳卒中治療を標準化し、それから一般内科医へ広がっていくように期待されているものであり、非専門医は通常見ないものであり、本件当時は、上記ガイドライン2009は出ておらず、もし出ていたとしても、非専門医がこれを知らなくても全くおかしなことではない。平成23年3月に一般内科医を対象としたアンケートでも、上記ガイドラインを読んだのは4分の1以下というのが実情である。TIAは、非専門医に正確に理解されておらず、非専門医の「TIA疑い」と診断した患者の多くはTIAではなく、実際にTIAであったケースは1割以下である。今日においても、非専門医が、単なる失神をTIAだと誤解している例がある。TIAの定義や診断については、専門医の間でもコンセンサスは得られていない。TIAにおける脳梗塞発症リスクの指標にABCD2スコアがあるが、今日においても非専門医には浸透していない。そのため、本件当時、非専門医がこれを知らなくても全く不思議なことではなく、不勉強だということでもない。しかしながら、P医師の上記意見は、次のとおり、いずれも採用できない。前記認定の一般的知見は、ガイドライン2009を待つまでもなく、今日の診断指針、メルクマニュアル等の極めて一般的な文献に基づいて認定し得るものであって、ガイドラインに関するP医師の意見はその前提を欠くものである。また、医療水準は医師の注意義務の基準となるものであって、平均的医師が現に行っている医療慣行とは必ずしも一致するものではない(最高裁判所平成8年1月23日第三小法廷判決・民集50巻1号1頁参照)。一般的な医学書にはTIAに関する記載がある以上、その記載程度の知識は非専門医でも得ておくべきであるから、そのような知識の獲得を怠り、TIAに関する間違った認識の下に行った診療行為は、他にも、TIAである旨の誤診が多く見られたり、単なる失神をTIAだと誤解した例があったからといって正当化されるものではない。さらに、被告は、TIAの定義や診断については専門医の間でもコンセンサスが得られておらず、また、ABCD2スコアは非専門医には浸透していないともいうが、定義について、専門家の間に、異論があるとしても、前記認定の一般的知見に基づく定義等は、平成2年以来、一般的に承認されているものであり、前記認定を妨げるものではない。また、ABCD2スコアは、TIAから脳梗塞発症のリスクを予測するための指標であり、TIA又はその疑いがあるか否かの診断に影響するものではない。以上によれば、P医師の上記意見によっても、医療水準についての前記判断は左右されないというべきであり、このような見解に沿った被告の前記主張は採用できない。(*判決文中、下線は筆者による加筆)(福岡地判平成24年3月27日判時2157号68頁)ポイント解説■神経疾患の訴訟の現状今回は、神経疾患です。神経疾患で最も訴訟となっているのは脳梗塞です(表1)。脳梗塞に対し、近年、抗凝固療法(血栓溶解療法)が行われるようになったことから、診断・治療の遅れによって予後に大きな変化が生じうるようになりました。その結果、表2をみていただければわかるように、昨今、訴訟となる事例が増加しており、争点も診断の遅れ、治療の遅れが中心となっています。ただ、訴訟となり始めたのが最近であることからか、原告勝訴率は低く、今回紹介した事例においても、原告勝訴はしていますが、認容額は請求額の5.5%ほどであり、実質的には原告敗訴ともいえる内容となっています。医療の進歩により、訴訟が増加することは皮肉ではありますが、その一方で現在の裁判所は慎重な判断をしているといえそうです。■非専門科に求められる医療水準今回の事例で問題となったのは、非専門科の医師にどこまでの医療水準が求められるかという点です。夜間、患者を診察したのが消化器外科医(B医師)で、翌朝外来にて診察したのが循環器内科医(A医師)であり、両者とも神経内科を専門としていません。そして、ともにTIAに関する認識が乏しかったため、抗凝固療法を行わず、かといって神経内科を受診させることもしませんでした。民事医療訴訟における過失とは、第1回で解説したように、「人の生命及び健康を管理すべき業務(医業)に従事する者は、その業務の性質に照らし、危険防止のために実験上必要とされる最善の注意義務を要求されるのであるが(最判昭和36年2月16日民集15巻2号244頁)、具体的な個々の案件において、債務不履行又は不法行為をもって問われる医師の注意義務の基準となるべきものは、一般的には診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準である(最判昭和57年3月30日民集135号563頁)。そして、この臨床医学の実践における医療水準は、全国一律に絶対的な基準として考えるべきものではなく、診療に当たった当該医師の専門分野、所属する診療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮して決せられるべきものであるが(最判平成7年6月9日民集49巻6号1499頁)、医療水準は、医師の注意義務の基準(規範)となるものであるから、平均的医師が現に行っている医療慣行とは必ずしも一致するものではなく、医師が医療慣行に従った医療行為を行ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできない」(最判平成8年1月23日民集50巻1号1頁)を指します。したがって、非専門科に求められる医療水準は、「専門科に求められる医療水準よりは低いのですが、かといって平均的医師が行っている医療慣行と常に一致するわけではなく、より高い水準が求められることもある」ということになります。本件訴訟において、被告側は非専門科におけるTIAの認識、診断の難しさを主張しましたが、判決では、一般医学書に記載されている程度の疾患概念の理解については、非専門科にも求められるとしました。本判決およびその他の判例からみた非専門科に求められる具体的な医療水準としては、「最新のガイドラインの内容を熟知することまでは必要ないが、一般的な医学書程度の知識は非専門科でも得ておくべきである」とする傾向があります(図)。非専門科においてまで高度な医療水準が求められるとなると、救急医療の崩壊を導くことは、2000年代の苦い経験です。ただ、その一方で、非専門科とはいえ、プロフェッションである医師に対し、一定程度の水準は求められるのは当然といえます。常に刷新し続ける医療において、この微妙なさじ加減につき、個別具体的な事例を通じて司法と医療の相互理解を継続していくことが、何より肝要と思われます。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)最高裁判所平成8年1月23日第三小法廷判決・民集50巻1号1頁福岡地判平成24年3月27日判時2157号68頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。最判昭和36年2月16日民集15巻2号244頁最判昭和57年3月30日民集135号563頁最判平成7年6月9日民集49巻6号1499頁

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Dr.小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~

心房細動に関する重要な情報を厳選!簡潔!わかりやすい!執筆は、ブログ『心房細動な日々』で有名な小田倉弘典氏。最新文献の解説にとどまらず、「日本の臨床に与える影響」も掲載。  パパパッと!わかる。※著者COI : 内容に関連し、開示すべき利益相反関係にある企業などはありません(2013年4月以降)プロフィール※ブログ『心房細動な日々』:毎日心房細動の情報を更新!第101回~のコンテンツ一覧はこちら

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バルプロ酸の増毛効果を確認、AGA治療の選択肢に?

 韓国・ソウル大学校医科大学のSeong Jin Jo氏らは無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行い、バルプロ酸の局所投与(スプレータイプ)の有意な増毛効果を確認し、男性型脱毛症(AGA)の選択肢となりうることを報告した。有害事象も認められたが、プラセボとの有意差はみられず、なかには心室頻拍を呈した被験者もいたが試験薬との関連は認められなかったという。Journal of Dermatology誌オンライン版2014年2月18日号の掲載報告。 抗てんかん薬として広く用いられているバルプロ酸は、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3βを阻害し、Wnt/β-カテニン経路を起動する作用を有する。研究グループは、この作用機序が毛髪の発育サイクルおよび成長期への誘導と関連していることに着目し、AGA治療におけるバルプロ酸(VPA)スプレー投与の有効性を評価する検討を行った。 中等度のAGA男性患者を被験者に、VPAスプレー(バルプロ酸ナトリウム8.3%含有)またはプラセボスプレーを24週間にわたり投与し比較した。主要有効性エンドポイントは、フォトトリコグラム分析評価による毛髪数の変化であった。 主な結果は以下のとおり。・中等度AGA男性患者40例が登録され、27例が良好なコンプライアンスでプロトコルを完了した。・VPA群(15例)とプラセボ群(12例)には、ベースライン時の年齢、脱毛症罹病期間、総毛髪数に統計的有意差はなかった。・結果、総毛髪数の変化は、VPA群がプラセボ群よりも有意に大きかった(p=0.047)。・有害事象は両群においてみられた。大半は軽度で自然治癒し、発現率は同程度であった(p=0.72)。・VPA群で心室頻拍を呈した被験者がいたが、VPAスプレーに関連したものとは思われなかった。・以上を踏まえて著者は、「VPAの局所投与は、われわれの被験者の総毛髪数を増加させた。したがってAGA治療の選択肢となりうるものである」とまとめている。

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震災と精神症状、求められる「レジリエンス」の改善

 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の生存者は、仮設住宅への避難を余儀なくされた。活水女子大学の久木原 博子氏らは、避難住民の心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病の有病率や健康状態とレジリエンス(回復力)に関して、社会・人口統計学的要因を調査した。Psychiatry and clinical neurosciences誌オンライン版2014年1月21日号の報告。 対象は福島県広野町の避難住民241人(男性:女性=125:116)。コナー・デビッドソン・レジリエンス尺度、Zungの自己評価式抑うつ尺度(SDS)、出来事インパクト・スケール改訂版(IES-R)、人口統計アンケートを実施した。 主な結果は以下のとおり。・すべての対象者のうち、53.5%はPTSDの関連症状を呈し、33.2%は臨床的なPTSD症状を示した。・さらに、66.8%はうつ病の症状が認められた。うつ症状の程度は軽症33.2%、中等症19.1%、重症14.5%であった。・レジリエンス(回復力)は、うつ病やPTSD、全体的な健康状態に対する有意な緩衝要因であった。・また、雇用状態、食生活・運動習慣や飲酒習慣はレジリエンスの予測要因であった。 本結果より、著者らは「避難住民はうつ病やPTSDの症状を呈することが多かった。しかし、このような事態に耐えることができた方も存在し、レジリエンスが重要な緩衝要因であると考えられる。そのため、レジリエンスの改善を目指し、雇用機会の提供や健康的なライフスタイルを奨励することが重要である」と述べている。関連医療ニュース 少し歩くだけでもうつ病は予防できる 1日1杯のワインがうつ病を予防 東日本大震災から1年;新たな地域連携をめざして“第27回日本老年精神医学会”

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前立腺がん、全摘vs.放射線療法/BMJ

 非転移性の前立腺がんについて、根治的前立腺摘除術を受けた患者のほうが放射線療法を受けた患者よりも長期の生存アウトカムは良好であることが示された。スウェーデン・カロリンスカ大学病院のPrasanna Sooriakumaran氏らが、同国で行われた15年間の観察研究に基づき報告した。結果を踏まえて著者は、「より若く、併存疾患が少なく、中程度~重度リスクの局所前立腺がんを有する患者では、全摘のほうがより大きな恩恵を受けると思われる」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年2月27日号掲載の報告より。1996~2010年に全摘または放射線療法を受けた3万4,515例の死亡アウトカムを評価 前立腺がん患者における全摘または放射線療法後のアウトカムを比較した高度なエビデンスは不足しており、これまでの観察研究データの多くは正確性に欠け、追跡調査を十分に行った完全な記録データがなく、有効性の比較検討はバイアスがあることを前提としたものであった。 今回、研究グループは1996~2010年に、プライマリで全摘を受けたスウェーデンの男性2万1,533例と、同放射線療法を受けた1万2,982例の計3万4,515例を対象とする観察研究を行った。 被験者を、リスク(低、中、高、転移性)、年齢、Charlson併存疾患指数によって分類し評価した。主要評価項目は、前立腺がんまたは他の要因による累積死亡率であった。放射線療法vs. 全摘の競合リスク回帰ハザード比を補正前、および傾向スコアと伝統的(多変量)因子で補正後、ならびに傾向スコア適合後に算出し評価した。また、感度解析も行った。若く、併存疾患が少なく中程度~重度リスクの患者は全摘によるベネフィットが明白 結果、前立腺がん死亡の全死亡に占める割合は、全摘群、放射線療法群のいずれも、リスク群の増大とともに上昇することがみてとれた。 非転移性の前立腺がん患者においては、放射線療法群の粗死亡率が全摘群よりも有意に高率であった(補正後部分分布ハザード比:3.09、95%信頼区間[CI]:2.69~3.56)。傾向スコアと多変量補正後、部分分布ハザード比が低下したが、全摘を支持するものであった。それぞれの補正後ハザード比は1.76(95%CI:1.49~2.08)、1.77(同:1.49~2.09)だった。 サブグループ解析の結果、より若く、前立腺がんリスク中等度~重度でより健康状態が良好な男性において、全摘から受ける恩恵がより明白であった。 こうした主要な所見は、感度解析でも変わらず確認された。

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学士号取得看護師60%で看護体制6対1なら院内死亡約30%減/Lancet

 コストカット目的での看護スタッフ減員は、患者アウトカムに悪影響をもたらす一方で、学士号取得の看護師配置を手厚くすると院内死亡は減少するという研究報告が発表された。米国・ペンシルベニア大学看護学部のLinda H Aiken氏らが、ヨーロッパ9ヵ国で行った後ろ向き観察研究の結果、明らかにした。病院の支出リスクを最小とするための厳格な尺度とヘルスケアシステムの再構築は、患者アウトカムに悪影響を与えることが示唆されている。Aiken氏らは、患者対看護職員比率(看護体制)、および看護師の教育レベルを調べ、院内死亡率との関連について調べた。Lancet誌オンライン版2014年2月26日号掲載の報告より。ヨーロッパ9ヵ国300病院のデータをもとに看護師配置と看護体制について分析 本検討は、病院運営上の最も大きなコスト要素の1つである看護師に関する、意思決定のための情報提供を目的としたRN4CAST研究の一貫として行われた。RN4CASTには12ヵ国が資金提供・参加するが、今回の検討では、同様の患者退院データを有する9ヵ国(ベルギー、英国、フィンランド、アイルランド、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイス)300病院における、2009~2010年のデータを入手して検討が行われた。 検討では、同一手術を受けた50歳以上の患者42万2,730例の退院データを入手し、診療データを標準プロトコル(ICD-9または10に準拠)でコード化し、年齢、性別、入院タイプ、43のダミー変数で分類した手術タイプ、17のダミー変数で分類した入院時の併存疾患などのリスク調整尺度を用いて、30日院内死亡率を評価した。 一方、2万6,516例の看護師にサーベイを行い、看護職員配置と教育レベルを調べた。 一般化推定方程式を用いて、入院30日間の術後患者の死亡に影響を与えた看護職員要因について、その他の病院特性および患者特性での補正前および補正後の評価を行った。担当患者が1人減れば、または学士号取得看護師が10%増えるごとに院内死亡率は7%低下 結果、看護職員の作業負荷が患者1人分増大するにつき、入院患者の30日院内死亡率は7%上昇することが示された(オッズ比:1.068、95%信頼区間[CI]:1.031~1.106)。 一方で、学士号取得看護師が10%増えると院内死亡率は7%低下することが示された(同:0.929、0.886~0.973)。 これらの関連は、看護職員の60%が学士号取得者で看護体制6対1の病院は、同看護職員が30%で看護体制8対1の病院と比べて、院内死亡が約30%低いことを意味するものであった。

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統合失調症の陰性症状軽減へ新たな選択肢となりうるか

 最近発症の統合失調症または統合失調感情障害で、とくに気分安定薬を併用していないい患者において、神経ステロイドのプレグネノロンを追加投与することで陰性症状の重症度が軽減することが、イスラエル・Sha'ar Menashe Mental Health CenterのMichael S. Ritsner氏らによる二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果、示された。最近発症の統合失調症または統合失調感情障害の治療は、抗精神病薬への反応が不十分なことが多いが、今回の結果について著者は、「さらなる検討の根拠となるものだ」と述べている。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2014年2月18日号の掲載報告。 試験は、2008~2010年に2施設において行われた。DSM-IVの統合失調症または統合失調感情障害(SZ/SA)の診断基準を満たし、抗精神病薬に対する反応が低かった入院・外来患者60例を対象とし、無作為にプレグネノロン(50mg/日)またはプラセボの追加投与を受ける群に割り付けて8週間の治療を行い評価した。主要評価項目は、陽性・陰性症状尺度および陰性症状評価スコアであった。副次評価項目は、機能的評価や副作用などであった。線形混合モデルで分析した。 主な結果は以下のとおり。・参加は60例のうち52例(86.7%)が、試験を完了した。・プラセボ群と比較して、プレグネノロン追加群は、陽性・陰性症状尺度の陰性症状スコアが有意に低下した。エフェクトサイズは中程度であった(d=0.79)。・有意な改善は、気分安定薬の治療を受けなかった患者でプレグネノロン治療の6~8週においてみられた(arms×visit×気分安定薬、p=0.010)。・同様に陰性症状評価スコアも、とくに感情鈍麻、意欲消失、快感消失の領域スコアについて、プレグネノロン追加群はプラセボ群と比較して有意に低下した(d=0.57)。・その他の症状や、機能および副作用は、プレグネノロン追加投与による有意な影響はみられなかった。・抗精神病薬、ベンゾジアゼピン系および性別とプレグネノロン追加との関連はみられなかった。・プレグネノロンの忍容性は良好であった。関連医療ニュース 統合失調症の陰性症状に対し、抗うつ薬の有用性は示されるのか 統合失調症の陰性症状に、抗酸化物質N-アセチルシステインは有効か 統合失調症の認知機能改善に、神経ステロイド追加

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鼠径ヘルニアの手術中に心肺停止を来して死亡したケース

小児科最終判決判例時報 1656号117-129頁概要両側鼠径ヘルニアと診断された1歳11ヵ月の男児。きちんとした術前検査が行われないまま、GOF全身麻酔下の両側ヘルニア手術が行われた。ところが、手術開始から48分後に呼吸停止・心拍停止状態となり、ただちに手術を中止して救急蘇生が行われたが、結局心肺は再開せずに死亡確認となった。裁判では、術前検査を行わずに手術に踏み切った無謀さと、記録の改竄が争点となった。詳細な経過患者情報1歳11ヵ月の男児経過1985年7月15日両側鼠径部の硬結を主訴に外科開業医を受診し、鼠径ヘルニアと診断された1歳11ヵ月の男児。その後硬結の増大がみられたため、根治手術を勧められた。1986年4月12日09:20母親に付き添われて入院。術前検査(心電図、一般採血など)は患者が泣いて嫌がったため省略した。13:00前投薬として硫酸アトロピンを筋注。13:30マスクによるGOF麻酔(笑気、酸素、フローセン)開始。この時看護師はみぞおちあたりが呼吸するたびに陥没するような状態になるのを認めた。麻酔担当医は心電図モニターで脈拍数を確認し、左前胸部に絆創膏で固定した聴診器で心音を聞き、マスクを保持している手で頸動脈の脈拍をはかることにより麻酔管理を行った。14:00まず右側の鼠径ヘルニア手術を開始、この時の脈拍104。ヘルニア嚢の壁は肥厚が著しく、周囲と強固に癒着していた。メス操作と同時に患者の体動がみられたため、フローセン濃度を2%→2.5%に変更(その後血圧がやや低下気味となったため、フローセン濃度を2%に下げた)。14:14脈拍180まで上昇。14:20脈拍120まで低下。14:41脈拍80まで低下。14:0014:0214:0314:14脈拍10412516018014:2014:3014:4114:48脈拍1209680014:48右側の鼠径ヘルニア手術完了後、左側の手術を開始してまもなく、麻酔医は無呼吸・心停止が生じたことに気付き、手術が中止された。ただちに気管内挿管、酸素増量(4L)心臓マッサージ、アドレナリン(商品名:ボスミン)、炭酸水素ナトリウム(同:メイロン)、塩化カルシウム、ヒドロコルチゾン(同:ソル・コーテフ)などを投与したところ、一時的に心室細動がみられた(当時この病院には除細動器は配備されていなかった)が、結局蘇生することはできず、死亡確認となった。当事者の主張患者側(原告)の主張1.心停止の原因舌根沈下を原因とする気道狭窄による換気不全から酸欠状態が生じ、さらに麻酔薬の過剰投与が加わって呼吸抑制を助長させ、心筋機能の抑制が相まって心停止となった2.問診および術前検査義務全身麻酔を施行するに当たっては、患者の問診、バイタルサイン、心電図検査、電解質などの血液検査を行うべきであるのに、体温と体重を計ったのみで問診や術前検査を一切行わなかった3.救命措置心停止の危険がある麻酔手術を実施する医療施設でありながら除細動器を備えていないのは、明らかな過失である4.記録の改竄麻酔記録、看護記録、手術記録などは、手術の際に作成されたものではなく、それとはまったく別のものに書き換えられたものである病院側(被告)の主張1.心停止の原因何らかの心機能異常があった可能性はあるが、解剖していないため解明不可能である。担当医師は何度も解剖を勧めたが家族に拒否されたため、突発的変化の原因の解明ができなかった2.問診および術前検査義務外来で問診を含めた診察をして、理学的所見や全身状態から全身麻酔による手術について問題のないことを確認していた。念のため術前から心電図検査をしようとしたが、患者が泣いて興奮し協力が得られなかったため実施できなかった。電解質検査は当日では間に合わないので行わなかったが、それまでの診察の間に検査を実施しなければならないと思わせる所見や経過はなかった3.救命措置除細動器が配備されていなかったためにカウンターショックの蘇生術を行えなかったが、当院程度の診療所に除細動器の配備を求めるのは無理である4.記録の改竄麻酔記録、看護記録、手術記録などが改竄された事実はない。看護記録、麻酔記録とでは脈拍や血圧の数値に食い違いが多々あるが、そのような食い違いがそのままになっているということは記録に作為が加えられていないことを示すものであり、責任を逃れる目的で改竄が行われたというのであればそのような食い違いが一致するように改竄されるはずである裁判所の判断1. 心停止の原因心停止の原因は、麻酔薬の過剰投与による低酸素症、ないし換気不全による不整脈による可能性が高い。そして、術中の脈拍が80にまで低下した14:41頃までには、循環系の異常を疑いそのまま放置すれば心停止に至ることもあり得ることを予見するべきであった。2. 問診および術前検査義務本件のような幼児に、手術を行う際に通常行われるべき一般検査、心臓、肺そのほかの検査も行わないで手術を施すというのは、無謀な感を否めない。採血は泣いて嫌がる状態にあって危険だとするが、手術日前にこれらの諸検査を試みた形跡はない。3. 救命措置全身麻酔下の手術を行う診療所に除細動器を配備することのぜひについては、裁判所の判断を提示せず。4. 記録の改竄当時勤務していた元看護師の証言などから判断して、看護記録は担当医師の主導により手術の際に作成されていた看護記録とは別に作成されたものである。麻酔記録もまた、手術の際に作成されたものとは別に作成されたものと疑われる。原告側合計6,038万円の請求に対し、5,907万円の判決考察本件の最大の問題点は、鼠径ヘルニアというどちらかというと軽症の病気を治療する際に、採血やバイタルサイン測定といった基本的な術前診察を怠ったことと、事態の重大さに後から気付いて看護記録や麻酔記録を改竄したという、医療従事者としては恥ずべき行為をしたことにあると思います。経過をご覧になってほとんどの先生方がお気づきになったかと思いますが、いくら術前の診察で元気そうにみえた幼児であっても、全身麻酔下の手術を行う以上きちんとした診察をしなければならないのはいうまでもありません。担当医師は、患者が泣き騒いだため心電図検査を施行することができなかったとか、自院では血液検査ができず結果がすぐにわからないことを理由としてあえて術前の血液検査をしなかったと主張しましたが、そのような言い訳が通用しないのは明白であると思います。しかも、乳幼児のヘルニア手術でマスク麻酔とするのは、経験のある麻酔科医が担当し、かつ術者が一人前で手術が短時間で終了するケースが望ましいとされています。また、年齢が低い場合や両側手術の場合には気管内挿管の適応となります(小児外科.1999;31:13-16.)。したがって、両側のヘルニア手術でしかも麻酔科専門医が担当していない本件でマスク麻酔を用いたのは、杜撰な術前・術中管理といわれても抗弁の余地はないと思います。おそらく、「なあんだ、ヘルニアのケースか」という安易な気持ちで手術に臨んだのではないでしょうか。そのような認識の甘さがあったために「本件のような幼児に、手術を行う際に通常行われるべき一般検査、心臓、肺そのほかの検査も行わないで手術を施すというのは、無謀な感を否めない」とまで判決文に記載されました。しかも、医療過誤として問われることを危惧したためか、事後処理としてカルテを改竄したのは裁判官の心証を著しく悪くし、ほぼ患者側の要求通りの判決額へと至りました。裁判の中では、担当医師が改竄を指示した様子が次のように記載されています。「本件手術日の後日、担当医師らは手術時の経過、処置について確認、整理をする目的で婦長らを院長室に呼び、担当医師がすでに看護記録用紙に記載していた部分を除く空白部分の処置、経過について尋ね、空白部分を埋める形で看護記録のメモを作成した。そして、そのメモをもとに実際に手術時に作成されていた看護記録とは別の看護記録が作成された」という事実認定を行っています。そのなかでも、事件後当該病院を辞職した担当看護師が改竄目的の看護記録の空欄部分を埋めるように婦長から指示された時に、「偽証するんですね」と述べたことを裁判で証言したため、もはや記録の改竄は動かし難い事実として認定されました。同様にカルテの改竄が問題となったケースとして、「喘息様気管支炎と診断した乳児が自宅で急死したケース」がありますが、今回のように公的文書と同じ扱いを受けるカルテを改竄したりすると、それだけでも医療機関の信用を大きく失い、訴訟の場では著しく不利な立場に立たされることを肝に銘じておかなければなりません。なお本件では裁判所の判断の通り、おそらく麻酔中の管理が悪かったために低酸素状態となり、ついには心停止を来した可能性が高いと思われます。ただし、もし病理解剖が行われたとしたら病院側の主張のように先天性心疾患などの別の原因がみつかったかもしれません。病理解剖を行わなかった理由として、「何度も勧めたが家族が拒否した」としていますが、本件のように死因が不詳のケースで家族から解剖の同意が得られないような場合には、「異状死体」として警察官による行政検視、さらには行政解剖を行うという道もあります。われわれ医師の感覚として、警察署に届け出るという行為自体が医療過誤を認めることにつながるのではないかという懸念があるとは思いますが、数々の紛争事案をみる限り、担当医師の立場で医療過誤ではないことを証明するには病理解剖が最大の根拠となります。したがって、「自分の医療行為は間違っていないのに、その結果が悪かった」というケースでは、紛争に巻き込まれることも考えてぜひとも病理解剖をするべきであると思います。小児科

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アナストロゾールの乳がん予防試験(コメンテーター:勝俣 範之 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(182)より-

ハイリスク乳がんの予防研究は世界的にはかなり進んでいて、SERMによるメタアナリシスについては、2013年に発表されている(Cuzick J et al. Lancet. 2013; 381: 1827-1834.)。乳がん予防にSERMは有効か? 今回の結果は、乳がんのハイリスクである閉経女性に対するアナストロゾール乳がん予防研究である。アナストロゾールは閉経後乳がん治療に使うホルモン療法であるアロマターゼ阻害薬に属する。アロマターゼ阻害薬の乳がん予防研究は、すでに一つ報告されている(Goss PE et al. N Engl J Med. 2011; 364: 2381-2391.)。MAP3 trialと呼ばれるこの試験は、米国で行われた研究であるが、4,560例のハイリスク閉経女性を対象にして、プラセボと、アロマターゼ阻害薬のエクセメスタン内服をランダムに割り付けた。その結果、エクセメスタン群が、浸潤性乳がんの発症を有意に予防した(0.19% vs. 0.55%; ハザード比 0.35; 95%CI, 0.18 to 0.70; p=0.002)というものであった。 今回の発表(IBIS-II)はMAP3研究に続くものである。欧州18ヵ国が参加しており、MAP3との違いは、アナストロゾールを使用している点である。MAP3の結果と比較すると、IBIS-IIの方が、ハザード比 0.47, 95%CI 0.32-0.68であり、MAP3に比べるとやや劣る。有害事象に関しては、関節痛・筋肉痛などの症状がIBIS-IIの方がやや多い(64%)ことである。 とはいえ、アロマターゼ阻害薬による乳がん予防効果は、SERMによるハザード比 0.58, 0.51-0.66よりも大きい結果であることは注目に値することである。米国臨床腫瘍学会(ASCO)では、エクセメスタンの乳がん予防を推奨している(Visvanathan K et al. J Clin Oncol. 2013; 31: 2942-2962.)。 わが国では、SERMやホルモン療法による乳がんの予防に関しては、学会でもほとんど議論されていない。わが国の乳がん罹患率は年々増加傾向であるため、日本でも議論が高まることを期待したい。勝俣 範之先生のブログはこちら

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COPD患者の鉄欠乏症治療 呼吸困難改善の可能性

 COPD患者の鉄欠乏症を赤血球造血刺激因子製剤(ESA製剤)と鉄静注で治療をすることで、貧血が改善するだけでなく、呼吸困難も改善する可能性があることを、イスラエル・テルアビブソラスキー医療センターのDonald S Silverberg氏らが報告した。COPD患者における鉄欠乏症は一般的だが、そのほとんどが見過ごされ、治療がなされていなかったことにも言及している。BMC pulmonary medicine誌オンライン版2014年2月24日の掲載報告。 本研究の目的は、「(ⅰ)COPD増悪で入院した患者の鉄欠乏症・貧血の有病率とその治療について検討すること」、および「(ⅱ)外来を訪れたCOPDと慢性腎臓病を有する貧血患者に対して、ESA製剤や鉄静注による貧血治療の前後での、血液学的効果や呼吸困難の程度を検討すること」である。 具体的には、「(ⅰ)鉄欠乏症や貧血の有病率とその治療を調べるため、COPDの急性増悪を起こしたすべての患者の病院記録を調べ」、「(ⅱ)貧血を来したCOPDの外来患者12例に対して、週1回、5週にわたり、ESA製剤と鉄静注の併用療法を実施した。1週間後、視覚的アナログスケールにより、血液学的効果と呼吸困難の重症度を検討する」といった方法で検討した。 主な結果は以下のとおり。(ⅰ)・COPDの急性増悪で入院した107例のうち、入院中に貧血がみられたのは、47例(43.9%)であった。・貧血がみられなかった60例のうちの2例(3.3%)、および貧血のあった患者(47例)のうち18例(38.3%)について血清鉄とトランスフェリン飽和度、血清フェリチンが測定されていた。・18例すべての患者が鉄欠乏症であったが、入院前後および入院中も鉄剤の経口投与および静注は行われていなかった。(ⅱ)・外来患者の介入研究では、12例の外来貧血患者のうち、11例(91.7%)で、鉄欠乏症が認められた。・ヘモグロビン、ヘマトクリット、視覚的アナログスケールの値は、ESA製剤と鉄静注の併用療法を行った患者で有意に増加していた。・ヘモグロビン増加と視覚的アナログスケール改善、およびヘマトクリット増加と視覚的アナログスケール改善との間には、著明な相関関係がみられた(それぞれ、rs=0.71、p=0.009 / rs=0.8、p=0.0014)。

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