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メタ解析、引用されても活かされず/BMJ

 メタ解析の結果が、その後の研究デザインに活かされているケースは比較的少ないことが明らかにされた。後続試験の7割以上がメタ解析について引用しているものの、試験デザインは引用のない試験と同様だったという。スイス・ジュネーブ大学病院のCeline Habre氏らが、プロポフォール注射の疼痛予防に関する無作為化試験について、2000年に発表されたメタ解析の前後の試験を対象に行った、システマティックレビューの結果、明らかにした。BMJ誌2014年8月26日号掲載の報告より。2013年1月までの無作為化試験を検証 Habre氏らは、Medline、Cochrane、Embaseなどのデータベースを用いて、2013年1月までに発表されたプロポフォール注射の疼痛予防に関する無作為化試験を検索し、システマティックレビューを行った。 2000年に発表された56件の無作為化試験(被験者総数6,264例)を対象に行ったメタ解析の、以前と以後の試験を比較し、同メタ解析の結果がその後の試験に影響を与えていたかどうかを分析した。 メタ解析以降の試験で、臨床的に適切なものは36%のみ メタ解析以後の試験数は136件(被験者総数:1万9,778例)だった。 分析の結果、適切な盲検化を行っていた試験の割合は、メタ解析以前が10.7%、以後が38.2%で、有意に増加していた(割合差:27.5%、95%信頼区間:16.0~39.0、p<0.001)。また、最も効果のある介入と比較した試験の割合は、12.5%から27.9%に増加していた(同:15.4%、4.0~26.9%、p=0.022)。小児患者を被験者に含んだ試験の割合は、12.5%に増えていたが、有意差はみられなかった(割合差:7.1%、95%CI:-1.0~15.2%、p=0.141)。毎年発表される試験数は有意に増大し(年間中央値12本vs. 2.5本、p<0.001)、減少の傾向はみられなかった。 メタ解析以後の試験のうち、同解析を引用していたのは72.8%(99件)だったが、その試験デザインは引用のない試験とで差はなかった。 また、最も効果のある介入との比較が行われており、小児患者を被験者に含んでいることで、より臨床的に適切であると考えられる試験は36.0%(49件)にとどまっていた。

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高所得国は心血管リスク高いが発症少ない/NEJM

 心血管リスクは、低所得国が最も低く高所得国が最も高いにもかかわらず、実際の心血管イベント発生率や致死率は、高所得国が最低で低所得国が最高であることが明らかになった。背景として、高所得国では予防的薬物治療や血行再建術の実施率が高いことがあることも判明したという。カナダ・ハミルトン総合病院のSalim Yusuf氏らが行った17ヵ国、約16万人を対象とした検討の結果、判明した。NEJM誌2014年8月28日号掲載の報告より。心血管イベントについて4.1年追跡 研究グループは、17ヵ国の都市部・農村部628ヵ所に住む合計15万6,424人の、心血管リスクを評価した。評価には、臨床試験なしでリスク因子を評価できる信頼性の高い「INTERHEART」リスクスコアを用いた。 調査対象とした17ヵ国のうち、高所得国は3ヵ国(カナダ、スウェーデン、アラブ首長国連邦)、中所得国は10ヵ国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、イラン、マレーシア、ポーランド、南アフリカ共和国、トルコ)、低所得国は4ヵ国(バングラデシュ、インド、パキスタン、ジンバブエ)だった。 心血管疾患の発症と死亡について、平均4.1年追跡した。イベント発生率、致死率ともに高所得国が最低 その結果、INTERHEARTリスクスコアの平均値が最も高かったのは高所得国で、最も低かったのは低所得国、中間が中所得国だった(p<0.001)。 一方、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全の主要心血管イベントの発生率についてみると、高所得国は3.99件/1,000人年で、中所得国の5.38件/1,000人年、低所得国の6.43件/1,000人年に比べ、有意に低かった(p<0.001)。 致死率についても、高所得国は6.5%で、中所得国15.9%、低所得国17.3%に比べ有意に低率だった(p=0.01)。 都市部と農村部の比較では、都市部に住民のほうがリスクは高かったものの、心血管イベント発生率は、農村部6.25件/1,000人年に対し都市部が4.83件/1,000人年であり、致死率は17.25%に対し13.52%と、いずれも都市部で低率だった(いずれもp<0.001)。 また、抗血小板薬やβ遮断薬といった予防的な薬の服用率と血行再建術の実施率が、高所得国が中所得国や低所得国に比べ有意に高かった(p<0.001)。

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抗PD-1抗体は卵巣がんの新たな治療となるか

 卵巣がんは婦人科がん死亡の第1位であり、罹患率は8,000人/年、死亡者4,500人/年と年々増加している。2014年8月28日~30日、横浜市で開催された日本治療学会学術集会にて、京都大学医学部附属病院 産科婦人科の濱西 潤三氏は「抗PD-1抗体(ニボルマブ)を用いた卵巣がんに対する第II相医師主導治験」 と題し、自施設での臨床試験の結果を紹介した。 標準治療の第一選択薬はパクリタキセル+カルボプラチンであるが、この治療に抵抗性を持つと60%以上が再発し、5年生存率30%、10年生存率10%ときわめて予後が悪い。第二選択薬もあるものの、いずれも単独での奏効率は低い。そのため、新たな治療法が求められている。 2000年代に入り、“がん免疫逃避機構”学説が解明され、この機構を標的とする新しい免疫治療が、臨床に応用されるようになった。なかでも特徴的なのは、イムノチェックポイント経路ともいわれるPD-1(Programmed cell Death-1)/PD-L1(PD-1 Ligand1)経路である。免疫抑制補助シグナルPD-1/PD-L1経路をブロックすることで、T細胞の免疫抑制が解除され、T細胞が活性化し腫瘍の抑制が起こる。 このPD-1/PD-L1経路が卵巣がんでも関連しているのか、京都大学内で共同研究を行ったところ、卵巣がんの約70%に、PD-L1が高発現していることがわかった。また、この発現の強度が卵巣がんの独立予後不良因子であることも明らかになった。 そこで、抗PD-1抗体ニボルマブの第II相試験を医師主導で開始した。対象は、プラチナ抵抗性でタキサンを含む2レジメン以上の治療歴を有する上皮性卵巣がん。試験当時、ニボルマブの安全用量が決定していなかったため、1mg/kgの低用量コホートと3mg/kgの高用量コホートの2用量コホート(各10例ずつ計20例)を登録した。 これらの患者に、ニボルマブを2週ごとに最大1年間投与して評価した。主要エンドポイントは奏効率、副次エンドポイントは有害事象、無増悪生存期間、全生存期間、疾患制御率とした。被験者の平均年齢は62歳、ステージIII~IVが多く、先行レジメンは4レジメン以上が半数以上であった。 奏効率は17%(3/20例)。1mg/kg群では10例中1例PRが認められ、3mg/kg群では8例中2例にCRが認められた。3mg/kgのCR2例のうち1例は、卵巣がんの中でもとくに抗がん剤治療が奏効しにくい明細胞がんであったが、多発性の腹膜播種も完全に腫瘍が消失。もう1例も多発性骨盤内転移が消失した。また、CR例については長期間効果が持続する傾向にある。 全有害事象のうちグレード3が半数以上に認められたが、用量依存的ではなかった。免疫製剤に共通するものが多かったが、甲状腺の異常や不整脈、好中球減少を伴わないリンパ球減少など、特徴的なものも認められた。重篤な有害事象は2例に認められたが、いずれも改善している。 ニボルマブは卵巣がんに対する新たな治療法として期待できる。今後は、効果予測、有害事象のバイオマーカー、無効例や耐性例に対する対策、抗がん剤や分子標的薬などとの併用療法など、次相試験による検証が必要になってくるであろう。

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慢性蕁麻疹に対する抑肝散の期待

 抑肝散が慢性蕁麻疹を抑制させるメカニズムについての調査を、九州大学の山村 和彦氏らが行った。 7種の生薬からなる漢方薬の抑肝散は神経症や不眠、小児の夜泣きに用いられる漢方薬で、近年、認知症などの精神・神経領域でも応用されている。目的:治療抵抗性の慢性蕁麻疹への抑肝散薬効メカニズムを検討 抑肝散は、アトピー性皮膚炎様の皮膚病変を有するNC/Ngaマウスにおいて、増悪の抑制に有用との報告がある。著者らは、治療抵抗性の慢性蕁麻疹に対し、抗ヒスタミン薬と抑肝散の併用投与を行い、その有用性を認めていたが、メカニズムは不明であった。 そこで、肥満細胞での抑肝散の薬効メカニズムを検討するため、山村氏らはin vitroにおいてラット好塩基球白血病細胞(RBL-2H3細胞)を用いて調査した。方法:in vitroにおいて肥満細胞への薬効メカニズムを調査 脱顆粒の指標として、β-ヘキソサミニダーゼと細胞内カルシウム濃度を測定した。サイトカイン(TNF-α、IL-4)測定はELISA法で細胞培養培地を用いて行われた。 上記に加え、遺伝子転写および免疫組織学的解析により、ヒト皮膚微小血管内皮細胞における細胞接着分子(ICAM-1、VCAM-1、E-selectin)やサイトカイン(IL-8)発現に対する抑肝散の効果を検討した。結果:炎症性サイトカインの放出を抑制 抑肝散はβ-ヘキソサミニダーゼ分泌、細胞内カルシウムの濃度上昇、TNF-αおよびICAM-1産生を抑制した。 これらにより、抑肝散のいくつかの成分が重要なエフェクターとなっていることが示唆された。考察:肥満細胞に関連するアレルギー疾患に期待 蕁麻疹などの皮膚病変は、肥満細胞の脱顆粒によるヒスタミンを中心としたケミカルメディエーターと強く関連していることが知られている。 抑肝散は、脱顆粒やカルシウム濃度上昇といった肥満細胞の機能を抑制し、最終的には炎症性サイトカインの放出を抑制した。さらに、抑肝散はヒト皮膚微小血管内皮細胞のICAM-1の発現を抑制した。 これらの結果より、抑肝散は肥満細胞に関連するアレルギー疾患に有用である可能性が示唆される。

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SSRI依存による悪影響を検証

 セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)関連依存症の発生が増大しているが、その発生は低率だとみなされており、また多種薬剤依存症患者における実質的な影響は明らかになっていない。緊急救命部門に搬送された多種薬剤依存症患者を対象とした検討から、SRIの曝露が、セロトニン症候群および人工呼吸器装着のリスク増大と有意に関連していることが明らかにされた。フランス国立保健医学研究所(INSERM)のSebastien Beaune氏らが報告した。Basic & Clinical Pharmacology & Toxicology誌オンライン版2014年8月22日号の掲載報告。 研究グループは、SRI曝露の影響を評価するため、緊急救命部門に搬送された多種薬剤依存症患者を対象とする検討を行った。同患者のうち、依存薬剤に1種以上のSRIが含まれていた患者と、まったく含んでいなかった適合患者を特定し、年齢、性別、薬剤種類別、摂取用量別に比較した。セロトニン症候群の特色は、Sternbach's基準とHunter'sセロトニン毒性基準の診断基準を用いて、診療録から評価した。 主な結果は以下のとおり。・4年間で、SRI曝露患者148例と適合対照296例が含まれ比較が行われた。・主なSRIは、エスシタロプラム(22%)、ベンラファキシン(20%)、フルオキセチン(19%)、シタロプラム(15%)、パロキセチン(11%)であった。・セロトニン症候群と診断されていたのは1例であった。しかし診療録のレトロスペクティブな評価から、実際にはSRI曝露患者5例での発生が認められた。・また20例(14%)で、セロトニン症候群の基準が1つ以上認められた。・Sternbach's基準を用いた11例、Hunter'sセロトニン毒性基準を用いた9例のうち、少なくとも各2例の医療記録において欠落が認められた。・条件付きロジスティック回帰分析により、SRI曝露患者では、発作(p=0.04)、セロトニン症候群(Sternbach's基準ではp=0.01、Hunter'sセロトニン毒性基準ではp=0.004)の頻度が有意に高いことが示された。・ICUに入室せずとも、人工呼吸器装着の有意な増大がみられた(p=0.03)。・上記の結果を踏まえて著者は、「緊急救命部門に搬送された多種薬剤依存症の患者において、セロトニン症候群の診断は不十分なままであり、診断トレーニングを改善する正当な理由が示された」と提言している。■関連記事セロトニン症候群の発現メカニズムが判明小児の自殺企図リスク、SSRI/SNRI間で差はあるか救急搬送患者に対する抗精神病薬の使用状況はセロトニン症候群を起こしやすい薬剤は

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変形性膝関節症の痛み、男女差が明らかに

 米国・アイオワ大学のNatalie A Glass氏らは、変形性関節症(OA)およびそのハイリスク患者を対象とした多施設変形性関節症研究MOST(Multicenter Osteoarthritis Study)の解析から、Kellgren-Lawrence(KL)グレードに関係なく女性は男性より膝痛が強く、とくに膝蓋大腿OAで性差が大きいことを明らかにした。また、膝痛の性差には広範痛(widespread pain:WSP)が大きく影響しており、中枢性痛覚過敏の関与が示唆されたという。Osteoarthritis and Cartilage誌2014年8月号(オンライン版2014年7月4日号)の掲載報告。 研究グループは、X線学的変形性膝関節症(膝OA)が同等の場合、男性より女性のほうが膝痛の重症度が大きいかどうかを調べることを目的とした。 対象は、膝関節置換術または最近ステロイド注射を行っていない膝OA患者2,712例(60%が女性)であった。 一般化推定方程式を用い、年齢、鎮痛剤の使用、BMI、施設、併存疾患、うつ病スコア、教育、人種および広範痛(WSP)について調整後または未調整時の、疼痛強度(視覚アナログスケール[VAS]および西オンタリオ大学・マクマスター大学変形性関節症指数[WOMAC]による)の性差をKLグレードごとに評価した。 主な結果は以下のとおり。・VASスコアは、すべてのKLグレードで未調整時(効果量[d]=0.21~0.31、p<0.0001~0.0038)およびWSPを除く全共変量で調整後(d=0.16~0.22、p<0.0001~0.0472)も、女性が大きかった。・VASスコアの性差はWSPで調整すると減少したが、KLグレードが≦2(p=0.0015)および2(p=0.0200)で有意であった。・WSPなしと比較して有りの場合、全KLグレードで膝痛が有意に大きかった(d=0.32~0.52、p<0.0001~0.0008)。・VASスコアの性差は各KLグレードにおいて膝蓋大腿OA患者で大きく(d=0.45~0.62、p=0.0006~0.0030)、共変量で調整後も全KLグレードで有意差がみられた(d=0.31~0.57、p=0.0013~0.0361)。・WOMACによる評価でも結果は同様であった。

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高齢者に対する高用量インフルエンザワクチンの有効性(解説:小金丸 博 氏)-238

高齢者では若年成人と比較して、インフルエンザワクチン接種後に誘導される抗体価が低いと報告されている。そこで米国では、2009年に通常の4倍量の抗原を含む高用量インフルエンザワクチンが、65歳以上の高齢者を対象に認可された。高用量ワクチン接種により高い抗体価が得られることは報告されていたが、インフルエンザ様疾患の発症を減らすことができるかどうかはわかっていなかった。 本研究は、高用量インフルエンザワクチンの有効性を調べるために行った第IIIb-IV相多施設共同無作為化二重盲検実薬対照試験である。 米国とカナダの126施設で、2011~12年と2012~13年の北半球でのインフルエンザ流行期に実施された。65歳以上の成人3万1,989例を、高用量インフルエンザワクチン接種群(株あたりの赤血球凝集素:60μg)と標準量インフルエンザワクチン接種群(同15μg)に分けて、インフルエンザの発生数、重篤な有害事象の数、ワクチン接種後の抗体価などを検討した。ワクチン接種後に、あらかじめ規定しておいたインフルエンザ様症状が現れた患者を抽出し、培養あるいはPCR法を用いて確定診断した。 インフルエンザと確定診断されたのは、高用量接種群228例(1.4%)、標準量接種群301例(1.9%)だった(relative efficacy:24.2%、95%信頼区間:9.7~36.5%)。1回以上の重篤な有害事象の報告数は、高用量接種群1,323例(8.3%)、標準量接種群1,442例(9.0%)だった(relative risk:0.92、95%信頼区間:0.85~0.99)。 ただし、高用量接種群では重篤な有害事象として、外転神経麻痺、下痢による低容量性ショック、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)を1例ずつ認めた。ワクチン接種28日後の感染防御抗体保有率(HAI抗体価1:40以上)は、高用量接種群98.5%、標準量接種群93.7%と4.8ポイントの差(95%信頼区間:4.1~5.5ポイント)があり、過去の報告同様、高用量接種群で有意に高かった。 本研究では、65歳以上の高齢者において、高用量インフルエンザワクチンは標準量ワクチンより、インフルエンザの発症をより多く予防できる可能性が示された。高用量ワクチンに変更することで、標準量ワクチンを接種していた場合に発症するインフルエンザの約1/4を予防できると考察されている。 一般的に、高齢者におけるインフルエンザワクチンの発症予防効果は60%程度であり、高用量ワクチンを接種することで発症予防効果を高めることができる意義は大きいと考える。さらに、高用量インフルエンザワクチンには、インフルエンザによる入院や、肺炎などの合併症の予防効果も期待されている。本試験の結果を受けて、米国の予防接種諮問委員会(ACIP)の勧告がどう変わるか注目したい。 本邦では高用量インフルエンザワクチンは認可されておらず、一般診療で使用することは難しいのが現状である。国内で高用量インフルエンザワクチン導入の動きがあるかにも注目したい。

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54)勘違い食事のメニューへのアドバイス【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者夕食には気をつけているつもりですが、なかなかやせません。医師そうですか。この2つのメニューを比較してもらえますか? どちらがヘルシーだと思いますか?患者メニューAですか?医師じつはメニューB(680kcal)に比べると、メニューA(1,284kcal)は、ほぼ2倍のカロリーがあります。患者そんなに違うんですか?医師じつは、健康に良いといわれている食品には、カロリーの高いものが多く、それを摂り過ぎるとカロリーオーバーになってしまうのです。患者つまり、健康に良いと思って摂っていたのが、逆効果だったんですね。●ポイントメニューを比較することで、患者さんの食事療法の勘違いに気づいてもらえます

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事例19 網赤血球数(レチクロ)検査の査定【斬らレセプト】

解説網赤血球数が、A事由(医学的に適応と認められないもの)を理由に査定となった。A事由の多くは行った診療に対する病名が、レセプトに表示されていない、いわゆる「病名漏れ」を意味する。事例は膀胱炎にて初診来院の患者である。生化学的検査、血液形態・機能検査の網赤血球数と末梢血液一般検査が行われている。生化学的検査の項目選択は、初診時のスクリーニング的に行われたものとして、特に問題はない。網赤血球数と末梢血液一般検査を見てみる。診療報酬点数表の末梢血液一般検査の項には、赤血球数、白血球数、血色素測定(Hb)ヘマトクリット値(Ht)、血小板数の全部または一部を行った場合に算定するとある。したがって、網赤血球数と末梢血液一般検査の併算定は、網赤血球数と赤血球数の比率を見て、貧血の原因を鑑別する検査が行われたものと推測できる。しかしながら病名欄には、「貧血」があることを確定する病名がない。よって、検査を行う根拠がなく、適応と認められないとA査定されたものである。網赤血球は、「レチクロ」と称してよく行われる検査であるが、病名不足を理由に査定が多い検査でもあることにも留意が必要である。

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事例20 HBs抗体の査定【斬らレセプト】

解説事例では、B型慢性肝炎で治療継続フォロー中の患者に実施した肝炎ウィルス検査4項目が、A事由(医学的に適応と認められないもの)を理由に3項目へ査定となった。不適当とされた項目はHBs抗体であった。HBs抗体は、主にB型急性肝炎の治癒判定やウィルス性肝炎の既往歴検索に有用な検査とされている。事例でも、現状の判定に有用だと思われるために実施されていた。しかし、治療継続フォロー中の事例で、HBs抗原検査でB型肝炎ウイルスの有無が把握できれば、HBs抗体を検査する必要はなく、過剰検査とみなされる。また、一度陽性になると体内に抗体が長期間にわたり存在して陽性反応が続くという性質上、肝炎の鑑別診断、B型肝炎の経過観察には適さないとされている。今回はこちらを理由に、「傷病名から見て算定は不適当」と判断されたものであろう。同様の理由で、輸血歴や垂直感染の恐れのない小児へのHBs抗体の実施も、査定対象とされているので留意されたい。

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福島原発事故は甲状腺がんを増加させたか?

 東日本大震災による東京電力福島原発事故で大量の放射性物質が放出された。事故はチェルノブイリと同じレベル7に評価されたが、環境中に放出された放射性物質の量は7分の1程度、小児甲状腺がん発症の可能性は少ないと考えられている。しかし、住民の不安は解消されていない。 2014年8月28日~30日、横浜市で開催された日本治療学会学術集会にて、福島県立医科大学医学部 甲状腺内分泌学講座 鈴木 眞一氏は、「県民健康調査データに見る甲状腺超音波検査と放射線被ばくについて」と題し、福島県における小児甲状腺がん発症の現状調査の結果を紹介した。 住民の不安を解消するためには、まず現在の甲状腺がん発症状態を把握することが重要である。そこで、福島県民健康管理調査の詳細調査の1つとして、事故当時18歳以下の全県民36万人に対する甲状腺検査が、事故7ヵ月後の2011年10月9日より実施されている。 検査は一次検査と二次検査からなる。 一次検査は超音波検査により嚢胞、結節をスクリーニングすることが目的であり、二次検査は一次検査でB判定以上の住民を精査することが目的である。一次検査の判定基準は、A:正常範囲と思われるもの(A1:嚢胞や結節を認めない、A2:5.0mm以下の結節 or/and 20.0mm以下の嚢胞)B:5.1mm以上の結節 or/and 20.0mm以上の嚢胞C:ただちに二次検査が必要と思われるものである。 A判定であれば2年後の検診となり、B判定以上では二次検査に進み、高精度超音波検査などを行い診断基準を用いて判断される。 2014年6月30日現在、調査対象36万7,707人の80.5%に当たる、29万6,026人が一次検査を受診している。 結果、A1判定が51.5%、A2が47.7%、Bが0.8%であり、Cは1人のみであった。A2は大半が20mm以下の嚢胞であり、Bはほとんどが結節であった。 二次検査は、2012年3月~2014年6月までに1,951人が受診した。結果、B判定からA判定にダウンステージした例が34%、細胞診不要となった例が40%、細胞診実施例が26%であった。細胞診実施例のうち104人が悪性ないしは悪性疑いという結果となった。平均年齢は17.1歳(震災当時14.8歳)、男女比36:68、平均腫瘍径14.3㎜であった。58人の手術例中、乳頭がん55人、低分化がん2人、良性結節1人であった。 また、これら悪性ないし悪性疑い例の実効線量の状況をみると、最大が2.2mSvで67.4%が1mSv以下であった。 甲状腺がんは原発事故後の影響で起こったのか?今回の先行調査の結果からは、地域差が認められていない、発症年齢の分布が非被曝群と変わらない、従来本邦で報告されている腫瘍径よりも小さい、チェルノブイリで認められた乳頭がん亜型は認められていない、などが明らかとなった。 これらのことから、現時点で発見されている甲状腺がんは、超音波による高精度の検診の影響で、より早期に発見された可能性が高く、放射線被曝の影響とは考えにくいという。今後はこの先行調査を甲状腺がん頻度のベースラインとして、引き続き見守っていくことが重要である。

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アトピーの重症度・慢性度に関わるタンパク質

 横浜市立大学皮膚科学のK. Kou氏、教授・相原道子氏らは、アトピー性皮膚炎(AD)患者におけるペリオスチン値と疾患重症度および慢性度との関連を調べた。結果、ペリオスチンがADの重症度と慢性度に重大な役割を果たす可能性があることを明らかにした。British Journal of Dermatology誌2014年8月号(オンライン版2014年8月5日号)の掲載報告。 ペリオスチンは、Th2型サイトカインにより誘発される細胞外タンパク質である。最近の知見において、ADの重症度と慢性度に重大な役割を果たす可能性が示されていた。研究グループは、成人AD患者における臨床表現型と血清ペリオスチン値が関連しているかを調べた。 ELISA法でAD成人257例と、疾患対照群として尋常性乾癬(PV)患者66例、および健康対照25例の血清ペリオスチン値を調べた。 血清ペリオスチン値について、臨床特性およびTARC、LDH、好酸球数、総IgE値など検査値特性の両者で分析した。また、免疫組織化学的分析で、ペリオスチンの発現とADのさまざまな臨床表現型との関連を評価。血清ペリオスチン値における治療効果についても評価した。 主な結果は以下のとおり。・血清ペリオスチン値は、PV患者および健常対照よりもAD患者で、有意に高かった。・ペリオスチン値は、IgE値を除き、重症度、TARC値、LDH値、好酸球数と明らかな関連が認められた。・内因性AD患者と比較し、外因性AD患者において、より高値の血清ペリオスチン値が観察された。・重症度との正の相関性は、内因性AD患者でみられなかった。・ペリオスチンの発現は、紅皮症、苔蘚化、より小範囲では、うろこ状の紅斑を有したAD患者ほど強く検出された。・血清ペリオスチンの連続測定により、AD治療後のペリオスチン値は低下することが示された。

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今後、精神科医療でも配合剤は増えるのか

 精神科における薬物療法では、併用療法が多く用いられているにもかかわらず、配合剤は一般的に利用されていない。スタッフォードシャー大学のSaeed Farooq氏らは、臨床での配合剤の使用および有効性のエビデンスを検討した。Journal of psychopharmacology誌オンライン版2014年8月22日号の報告。 主要なデータベースの系統的な検索から、9つの二重盲検ランダム化比較試験を抽出した。これらの試験より、単一製剤と配合剤を比較した15の結果が得られた(プラセボ比較を含む)。これらの試験における全症例数は2,827例であった(配合剤群:976例、比較群:1851例)。2試験を除き、用いられた配合剤は1種類であった(オランザピンとフルオキセチン[OFC])。 主な結果は以下のとおり。・すべての配合剤による治療は、単剤治療よりも優れていた。うつ症状改善の標準化平均差(SMD)は-0.29 [CI:-0.43~-0.14]であった(p<0.001)。・サブグループ解析では、双極性うつ病に対しOFC配合剤は単剤治療よりも優れていた(SMD:-0.32 [CI:-0.45~-0.19] 、p<0.001)。また、治療抵抗性うつ病でも同様であった(SMD:-0.29 [CI:-0.49~-0.08]、p<0.005)。・しかし、境界性パーソナリティ障害や大うつ病性障害では有意差は認められなかった。 配合剤は有効性および治療アドヒアランスの向上において、重要なメリットをもたらすことが示唆された。しかし、精神医学においては固定用量配合剤の研究開発には制限がかかると考えられる。関連医療ニュース SSRI+非定型抗精神病薬の併用、抗うつ作用増強の可能性が示唆 難治性うつ病にアリピプラゾールはどの程度有用か 抗うつ薬+アリピプラゾール、長期忍容性は  担当者へのご意見箱はこちら

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高血圧治療は個々のリスク因子合併を考慮した“トータルバスキュラーマネージメント”が重要(解説:桑島 巌 氏)-237

日本動脈硬化学会によるガイドラインでは、高脂血症の薬物治療開始基準を一律に決定するのではなく、性、年齢、血圧、糖尿病の有無など血管系リスク層別化を考慮した治療目標を設定すべきことが示されている。これは、これまでのメタ解析で、血管合併症のリスクの高い症例ほど薬物治療による絶対的リスク減少が大きいことが明らかになっているからである。 同じような考えが高血圧治療においてもいえることを実証したのが、このメタ解析である。 BPLTTCは、高血圧・高脂血症治療に関して、世界で最も信頼性の高いメタ解析を発表しているグループである。メタ解析で採用された臨床試験は、いずれも試験開始前に一次エンドポイント、二次エンドポイント、試験方法、症例数、解析方法など詳細に登録を行ったもののみを対象としており、そのエビデンスレベルは非常に高いことで知られている。 今回の報告は、高血圧治療効果についても、心血管合併症予防効果を絶対的リスク減少でみた場合、リスク因子を多く有している症例ほど有効性が大きいことを示している。 治療による有用性は相対的リスク減少で表される場合があるが、これはしばしば効果を誇大に表現することになる。たとえば、リスクの少ない症例100を対象とした場合、治療群の発症は1例、プラセボ群では2例とすると相対的リスク減少は50%(なんと半減!)になるが、絶対的リスク減少は100人中1例に過ぎない。NNT100、つまり100人治療してやっと1例の発症を予防できることになる。治療効果は絶対的リスク減少、あるいはNNT(Number Needed to Treat)で表すのが本当である。 本研究は11の臨床研究に参加した約5万2千例の対象症例を、プラセボ群のデータから予測された数式を用いて、11%未満の低リスク群、11~15%の軽度リスク群、15~21%の中等度リスク群、21%以上の高リスク群の4群に層別した。高リスク群は当然、喫煙率、心血管疾患既往、糖尿病、収縮期血圧のいずれもが他の群より高い。 その結果、5年間の心血管合併症発症は、相対的リスク減少でみた場合には4群間で差はなく、治療の有効性はどの群でも同じようにみえる。しかし、絶対的リスク減少でみると、高リスク群が最も高血圧治療薬による効果が大きく、ついで中等度、軽度、低リスクの順になっている。 この結果は、高血圧治療の開始基準あるいは降圧目標値の設定においても、血圧以外のリスク因子にも配慮した“トータルバスキュラーマネージメント”の考え方が重要であることを示している。当然ながら、高齢者はさまざまなリスク因子を併せもつ症例が多いことから、高リスク症例が多い。したがって、高齢者ほど厳格な高血圧治療が必要であることを意味しているのである。

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アルツハイマーの早期発見が可能となるか

 アルツハイマー病(AD)は最も一般的な神経変性疾患で、認知症の主因である。灰白質病変に加えて白質の変化が、疾患発生における重要な病理学的特徴として認識されている。ADの病因として白質異常の重要性に対する認識は高まっているものの、白質変性の原因は依然として不明であった。米国コロンビア大学のLyndsey E Collins-Praino氏らは、AD剖検例の白質中可溶性Aβ濃度をコントロールと比較し、ADの病因としての白質変性の原因を検討した。その結果、AD患者では白質中の可溶性Aβ-42濃度およびAβ-40濃度がコントロールと比べ高値であり、白質Aβペプチドが灰白質の原線維アミロイド病変とは独立して蓄積することを報告した。この所見から著者は、「灰白質萎縮に先立つ白質変性がADの早期のマーカーとなる可能性がある。また、白質減少を引き起こすメカニズムとリスクファクターを把握できれば、ハイリスク例の特定と疾患形成過程における早期介入に役立つであろう」とまとめている。Acta Neuropathologica Communications誌オンライン版2014年8月17日号の掲載報告。 研究グループは、複数の研究から、Wallerian様変性が白質変性の源であることが指摘されている一方、最初に生じる白質病変の少なくとも一部は、Aβペプチドが局所に及ぼす毒性を含む他のメカニズムに起因することも指摘していることを踏まえ、AD患者(12例)とコントロール(10例)の白質中可溶性Aβ濃度を比較検討した。 ADおよびコントロールの剖検例の脳の前頭前野(Brodmann領域9)と中心後回(Brodmann領域1、2および3)から新鮮凍結白質サンプルを採取し、ELISA法により可溶性Aβ-42およびAβ40濃度を測定。総皮質由来神経変性プラークの重症度を中前頭回、上側頭回、中心前野、下頭頂、海馬(CA1)、海馬支脚、嗅内皮質、内側嗅領皮質、下側頭回、扁桃体、基底前脳の各皮質領域において個別に評価した。 主な結果は以下のとおり。・AD患者のサンプルはコントロールと比較して、白質中の可溶性Aβ-42およびAβ-40濃度のいずれも高かった。・両群とも、Aβ-40濃度は白質の領域による差はみられなかったが、Aβ-42濃度は中心後回に比べ前頭前野領域で高かった。・総皮質由来神経変性プラークの重症度を統計学的に調整した後も、可溶性Aβ-42およびAβ-40の群間差は維持され、白質Aβペプチドが灰白質の原線維アミロイド病変とは独立して蓄積し、単に全体のアミロイド量を反映しているわけではないことが示唆された。・これらの結果から、ADにおける白質変性の発生メカニズムの解明につながることが示唆された。関連医療ニュース アルツハイマー病とレビー小体型認知症、共通のバイオマーカー Aβ沈着は認知機能にどのような影響を与えるか たった2つの質問で認知症ルールアウトが可能  担当者へのご意見箱はこちら

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ACE阻害薬を超える心不全治療薬/NEJM

 新規開発中のLCZ696は、ACE阻害薬エナラプリル(商品名:レニベースほか)よりも、駆出率低下の心不全を有する患者の死亡および入院リスクの抑制に優れることが示された。英国・グラスゴー大学のJohn J.V. McMurray氏らPARADIGM-HF研究グループが二重盲検無作為化試験の結果、報告した。LCZ696は、新規クラスのアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI:ネプリライシン阻害薬sacubitril[AHU377]とARBバルサルタンからなる)で、高血圧症および駆出率保持の心不全を有する患者を対象とした小規模試験において、ARB単剤よりも血行動態および神経ホルモンに関する効果が大きかったことが示されていた。NEJM誌オンライン版2014年8月30日号掲載の報告より。LCZ696 vs. エナラプリル 本検討では、駆出率が低下した心不全患者に対するLCZ696 vs. エナラプリルの有効性、安全性が比較された。先行研究では、これらの患者についてエナラプリルの改善効果が示されていた。 試験は、18歳以上、NYHA心機能分類II、III、IV、駆出率40%未満などを有する心不全患者を適格とし、推奨されている治療に加えて、LCZ696(1日2回200mg)またはエナラプリル(1日2回10mg)を受けるよう無作為に割り付けて行われた。 主要アウトカムは、心血管系による死亡または心不全による入院の複合とした。同時に、試験は心血管系による死亡率の両群差が検出できるようデザインされていた。 2009年12月8日~2012年11月23日の間に、47ヵ国1,043施設から、LCZ696群に4,187例、エナラプリル群に4,212例の計8,442例が無作為に割り付けられた。被験者の平均年齢は両群とも63.8歳、女性の割合は21.0%と22.6%など特性バランスは取れていた。また大半の患者が慢性心不全の推奨治療薬を服用していた(例:ACE阻害薬服用78.0%と77.5%など)。 なお本試験は、LCZ696の圧倒的な有益性が認められたため、追跡期間中央値27ヵ月で事前規定に従い早期に中断された。死亡・心不全入院の複合、LCZ696群が有意に優れる 試験中断終了時点における主要アウトカムの発生は、LCZ696群914例(21.8%)、エナラプリル群1,117例(26.5%)で認められた。LCZ696群のハザード比(HR)は0.80、95%信頼区間[CI]は0.73~0.87であった(p<0.001)。 全死因死亡は、LCZ696群711例(17.0%)、エナラプリル群835例(19.8%)であった(HR:0.84、95%CI:0.76~0.93、p<0.001)。これらの患者のうち心血管系が原因の死亡は、それぞれ558例(13.3%)、693例(16.5%)だった(同:0.80、0.71~0.89、p<0.001)。 また、エナラプリルと比較してLCZ696は、心不全による入院リスクを21%抑制し(p<0.001)、心不全の症状および運動制限も緩和したことが認められた(p=0.001)。 LCZ696群の患者のほうが、エナラプリル群の患者よりも降圧効果が大きく、血管浮腫は非重篤である割合が高く、また腎機能障害、高カリウム血症、咳の症状がみられる患者の割合が低かった。

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大腸がん死亡率、切除腺腫のリスクで差/NEJM

 大腸腺腫切除後の大腸がん長期死亡率について、一般集団と比較して、切除した腺腫が低リスクであった患者では低下がみられた一方、高リスクであった患者は高かったことが明らかにされた。ノルウェー・オスロ大学のMagnus Lphiberg氏らが1,273例を中央値7.7年間追跡し報告した。腺腫切除後には大腸内視鏡によるサーベイランスが広く推奨されているが、同患者における大腸がん死亡についてはこれまでほとんど報告されていなかった。NEJM誌2014年8月28日号掲載の報告より。ノルウェー1993~2007年に腺腫切除を受けた患者を追跡評価 研究グループは、ノルウェーのがんレジストリと死亡発生レジストリのデータを集約し、1993~2007年に大腸腺腫切除を受けた患者の大腸がん死亡率を、2011年まで追跡し推算した。また一般集団との比較で発生率ベースの標準化死亡比(SMR)も算出し検討した。 ノルウェーのガイドラインでは、腺腫が高リスク(高悪性度異形成腺腫、絨毛腺腫、10mm以上の腺腫)の患者は10年後に、また腺腫が3個以上あった患者は5年後に大腸内視鏡検査を受けることが推奨されている。低リスク腺腫の患者についてはサーベイランスは推奨されていない。 本研究では、レジストリデータから正確なポリープサイズと数は入手できなかった。高リスク腺腫は、多発性腺腫、絨毛腺腫、高悪性度異形成腺腫と定義して検討が行われた。一般集団と比較し、高リスク腺腫切除患者は上昇、低リスク腺腫切除患者は低下 研究グループが特定した、大腸腺腫切除患者は4万826例であった。 これら患者のうち、追跡期間中央値7.7年(最長19.0年)の間に、1,273例の患者が大腸がんと診断されていた。 大腸がん死亡は、一般集団398例に対し、検討群では383例が観察され、SMRは0.96(95%信頼区間[CI]:0.87~1.06)だった。 大腸がん死亡率は、高リスク腺腫切除患者群では上昇が(209例vs. 242例、SMR:1.16、95%CI:1.02~1.31)、一方、低リスク腺腫切除患者群では低下がみられた(189例vs. 141例、SMR:0.75、95%CI:0.63~0.88)。

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エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

 9月3日(水)、都内にて「西アフリカのエボラ出血熱ウイルス流行と国際社会の課題」と題し、国立国際医療研究センターメディアセミナーが開催された。今回のセミナーでは、実際に現地リベリアで患者の診療や医療従事者への指導を担当した医師も講演し、最新の情報が伝えられた。※画像は、出国時の体温検査(画像提供:国立国際医療研究センター 加藤 康幸氏)対応は1類感染症の疾患 「日本の医療機関における備え、感染対策の基礎」と題し、堀 成美氏(国立国際医療研究センター)が、わが国の感染症対策の概要について説明を行った。 エボラ出血熱は、感染症法上1類感染症として取り扱われており、特定の医療機関で診療を行うこと、また、現在、患者発生に備えて、厚生労働省検疫所や自治体と共同して感染症患者の移送などの訓練を行っていると述べた。ワクチン開発の現状 次に、「ワクチン、治療の現状と課題」をテーマに西條 政幸氏(国立感染症研究所)が、現在のワクチン開発の状況を説明した。 本格的なワクチン開発は、1995年のエボラ出血熱アウトブレイクより行われた。当初は、同疾患に罹患し回復した患者の血液輸血という、中和抗体投与療法から開始された。現在、ウイルス増殖を抑制する抗ウイルス薬T-705と中和活性を有する抗体製剤であるZMappが開発され、サルやマウスによる治験が行われている。 T-705は早い段階の投与で効果を発揮し、マウスについて感染6日後の投与では死亡例がなかったのに対し、8日後の投与では約半数が死亡する結果であったという。また、ZMappは、サルについて感染5日後に投与した群はすべて回復が認められたのに対し、コントロール群では8日以内にすべて死亡したことが報告された。 西條氏はワクチンの特徴として、感染を予防するものではなく、あくまで体内でのウイルス増殖を抑え、重症化を防ぐために使用されるものであることを強調した。 今後のワクチン使用の問題点としては、ヒトへの有効性のほか、安全性、情報開示などさまざまなことが挙げられると提起した。 また最後に、西アフリカの感染拡大について触れ、「ウイルスそのものに変化は見られないものの、感染拡大の阻止には苦慮している。拡大の阻止には、さらなる住民への教育、広報、医療機関への資材の提供などが期待される」と説明した。疾患への知識不足がさらなる感染を招く 続いて、「リベリアにおけるエボラ対策支援活動から」をテーマに、実際にリベリアで活動した加藤 康幸氏(国立国際医療研究センター)が最新情報を紹介した。 リベリアは、乾季のある熱帯雨林気候に属し、人口約420万人。今回の感染拡大は内戦後、国連による平和維持状態が続いている中で起こったものである。 エボラ出血熱は、現在5種類が特定されており、今回の流行はその中でも最強のザイール型と呼ばれているもの。首都を含む広範囲の感染拡大は、新興感染症では世界が初めて経験する事態で、WHO予測では2万人の感染者が予想されているという。 WHOによればエボラ出血熱は、人-人感染でうつり、2~21日で症状を発現、生存率は47%という特徴をもつ。そして、加藤氏によれば、現地では看護をする患者家族や医療スタッフへの感染例が多いとのことである。 典型症状は、出血よりも発熱、下痢と嘔吐であり、現地では、マラリアが通年で流行していることもあり、初期診断時に発熱症状の患者の鑑別診断に苦慮しているとのこと。確定診断は、PCR法による診断が行われ、現地では疑い例の段階で治療・隔離ユニットに収容される。 流行を抑えるためには、隔離と検疫が重要で、現地でも対策が取られているが、医療システムが崩壊していることもあり、順調には進んでいない。そんな中で、さまざまな国、機関の支援により医療の再構築がなされており、今回の支援活動では、感染防止の教育、発熱外来の設置、治療ユニットの設置などが行われた。 現地では、患者の1割が医療従事者であることから、医療従事者の感染防護としては、ガウンなどを重層する国境なき医師団の対策を採用している。また、始業時の体温チェック、バディ体制での病室入室時の防護服チェックなど、万全の態勢を期して臨んでいることなどが紹介された。 治療に関しては、エンピリック治療として抗マラリア薬や抗菌薬の投与が、支持療法として点滴、輸血などが行われている。さらに、疾患啓発や感染防止教育のために、回復患者が医療機関を巡回する取り組みが行われているそうである。 今後の課題として、エボラ出血熱について現地住民への理解の促進、現地の医療システムの復旧、政府などへの信頼性の回復、孤立化による物資不足の解消などが待たれる、と講演を終えた。詳しくは次のサイトをご参照ください。 国立感染症研究所 エボラ出血熱  厚生労働省 感染症法に基づく医師の届け出のお願い

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慢性心不全治療のパラダイムシフト:ACE阻害薬はもはや標準薬ではない!(解説:平山 篤志 氏)-236

慢性心不全患者では、代償機転としてレニン・アンジオテンシン(RA)系が活性化され血管収縮による後負荷や水分貯留による前負荷が増加している。一方で、Na利尿ペプチド、アドレノメジュリンなどのペプチドがネプリライシンにより分解され、その血管拡張作用が減弱し、後負荷増加となる。このような代償機転の持続が慢性心不全の悪化につながることから、RA系阻害に加え、ネプリライシン阻害が心不全の予後改善につながると期待された。 しかし、動物実験では有効性が示されたものの、臨床試験では、ネプリライシン阻害薬とACE阻害薬との併用で重篤な血管性浮腫が多発したため、開発が中止された。この欠点をなくした薬剤が、ARB(今、話題となっているバルサルタン)とネプリライシン阻害薬との合剤であるLCZ696であり、少数例の臨床試験ではあったが、高血圧と心不全の治療薬としての有効性が確認された。 今回の欧州心臓病学会で、このLCZ696とエナラプリルを、収縮機能の低下した慢性心不全患者を対象として予後改善効果を比較したPARADIGM-HFが発表された。 結果は驚くべきものであった。LCZ696が心不全による入院を有意に抑制しただけでなく、心血管死亡をも有意に減少させた。β遮断薬が90%以上、ミネラルコルチコイド受容体阻害薬が50%以上という、標準治療が行われている対象で、基本薬であるACE阻害薬よりLCZ696が有意に死亡率を低下させたのである。副作用としても、LCZ696は血管性浮腫の発生もエナラプリルと同等で、血清K値の上昇、腎機能の悪化も少なかった。低血圧の頻度は多かったものの、中止に至る症例はエナラプリルと同等であった。これまで標準薬であったACE阻害薬は、過去になりつつあることを示したのである。 これまでの臨床試験の結果として確立した標準治療が行われるようになった時代に、多くの新薬での臨床試験が期待外れの結果であることから、これ以上の予後改善は困難と、医療関係者は無気力になりつつある。しかし、この試験は標準薬のパラダイムシフトを示しただけでなく、無気力になりつつあるわれわれに、予後改善に努めるべきであるという勇気を与えた試験でもあった。

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