サイト内検索|page:1372

検索結果 合計:35150件 表示位置:27421 - 27440

27422.

Vol. 2 No. 4 オメガ3系多価不飽和脂肪酸製剤の臨床応用 そのエビデンスと各種ガイドラインにおける位置づけ

田中 知明 氏千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学 千葉大学医学部附属病院糖尿病・内分泌代謝内科はじめにグリーンランドや千葉県下でのエイコサペンタエン酸(EPA)の有効性を明らかにした疫学調査をきっかけに、わが国では魚油をエチルエステル化した高純度EPA製剤が開発され、1990年には「閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛および冷感の改善」、1994年には「高脂血症」に対する医療用医薬品として臨床の現場に登場した。さらに、欧州、米国などで「高トリグリセライド血症」の効能・効果を有する医薬品として承認されていた高濃度オメガ3製剤(主成分としてEPA・DHAを含有)も2013年に国内で承認され、日常臨床に広く普及しつつある。これらオメガ3製剤の臨床応用におけるエビデンスとしては、高純度EPA製剤の冠動脈疾患に対する発症予防効果を検証した日本人対象の大規模臨床試験JELIS1)に加えて、Circulation、Lancetに報告されたイタリアのGISSI-Prevenzione Trial、GISSI-HF Trialなど、多くのエビデンスが蓄積されている。そこで、本稿ではオメガ3系多価不飽和脂肪酸製剤の臨床応用の骨格となる重要な大規模臨床試験とそのメタ解析におけるエビデンスを解説し、EPA製剤の各種ガイドラインにおける位置づけについて概説する。EPA製剤が推奨される各種ガイドライン本邦においてEPAに関してその臨床的有用性が明記されている各ガイドラインについて、表にまとめる。これまでの大規模臨床試験のエビデンス基づき、現在では『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版』、『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)』、『心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)』、『脳卒中治療ガイドライン2009』の4種類のガイドラインに医療医薬品としての有用性が推奨グレードとともに記載されている。以下に具体的内容とエビデンスグレードを記す。『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版』の第7章「治療法 B 薬物療法におけるステートメント」として、「高リスクの高LDL-C(low density lipoprotein cholesterol)血症においては、スタチン投与に加えてEPAの投与を考慮する」とされている。推奨レベルIIa、エビデンスレベルAである。『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)』の「Ⅲ. 各疾患における抗凝固・抗血小板療法 11 心血管疾患高リスク症例の一次予防」においては、「高リスクの脂質異常症におけるエイコサペント酸エチル投与の考慮」が記載され、クラス1のエビデンスレベルとして推奨されている。『心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)』における「II. 薬物療法 3 脂質異常症改善薬」の項目では、「2. 高LDLコレステロール血症にはスタチンに加え高純度EPA製剤も考慮する」と記載され、エビデンスグレードはBである。『脳卒中治療ガイドライン2009』における「Ⅱ. 脳梗塞・TIA 4-1. 脳梗塞再発予防 (3)脂質異常症」の項目の中で、「3. 低用量スタチン系薬剤で脂質異常症を治療中の患者において、EPA製剤の併用が脳卒中再発予防に有用である」と記載されている。エビデンスグレードはBである。高濃度オメガ3製剤(EPA+DHA)に関しては、欧州(ノルウェー)では1994年に、アメリカでは2004年に使用されるようになっていたが、日本では2013年から使われるようになった。したがって、国内では高純度EPA製剤が主流であった過去の経緯から、各ガイドラインにおける記載は高純度EPA製剤のみなのが現状である。海外ガイドラインにおけるオメガ3系脂肪酸の臨床的位置づけとして、欧州・米国ではEPA・DHA製剤が中心であり、脂質異常症の管理および心不全の治療ガイドラインにおいて推奨されている(推奨レベルIIb、エビデンスレベルB)。今後、本邦においてもエビデンスのさらなる蓄積とガイドラインにおける位置づけが新たに追加されることが期待される。表 各種ガイドラインにおける脂質異常症治療薬の記載画像を拡大するJELISの概要と1次予防・2次予防サブ解析JELISは、日本人を対象に実臨床に近い条件の下で実施された前向き大規模臨床試験であり、各ガイドライン記載の根拠となる重要なエビデンスである1)。JELISは、日本人の脂質異常症患者(総コレステロール250mg/dl以上)において40~75歳の男性と、閉経後~75歳の女性18,645人(冠動脈疾患の1次予防14,981例、2次予防3,664例)を対象としている。プラバスタチン10mg/日またはシンバスタチン5mg/日を基本として、1.8gの高純度EPA製剤の投与群と非投与群を無作為に割り付けて、5年間の追跡調査し、主要冠動脈イベント(致死性心筋梗塞、非致死性心筋梗塞、心臓突然死、心血管再建術、新規狭心症の発症、不安定狭心症)について検討を行った試験である。その結果、主要冠動脈イベントを19%低下させ、EPA投与群では対象群に比べ虚血性心疾患の発症リスク比(95% CI)が0.81(0.68-0.96)であり、非致死性では0.81(0.68-0.96)と有意であった(本誌p.23図を参照)。興味深いことに、血清脂質変化を検討すると、EPA群と対象群においてLDLコレステロールの変化率に有意差を認めなかった。このことから、高純度EPA製剤の心血管イベント抑制効果は、LDLコレステロール値以外による機序が大きいと考えられている。<JELIS 1次予防サブ解析>冠動脈疾患の既往がない1次予防サブ解析(14,981例)では、主要冠動脈イベントの発生はEPA投与群で18%減少するものの、有意差を認めなかった。肥満・高TG (triglyceride)血症・低HDL(high density lipoprotein)血症・糖尿病・高血圧を、冠動脈イベントリスク因子としてそれらの重積と冠動脈イベント発生を検討した結果、対照群/EPA群の両者において発症率の上昇を認め、EPA群で抑制している傾向が見られた2)。また、登録時のTG値とHDL値の組み合わせで4群に分けて、冠動脈イベント発症リスクを比較検討した結果、高TG/低HDL-C血症群ではTG/HDL-C正常群に比較して、冠動脈イベント発生リスクはEPA投与群で53%もの低下を示し、高リスク群での抗動脈硬化作用による心血管イベントの発症抑制が期待されている1, 2)。<JELIS 2次予防サブ解析>冠動脈疾患の既往がある患者(3,664例)の2次予防サブ解析では、EPA投与群で23%のイベント発症抑制効果を認めた3)。インターベンション施行症例や心筋梗塞既往症例においても、EPA投与群でそれぞれ35%、27%のイベント発症の抑制を認めた3)。これらの結果は、高純度EPA製剤の投与はインターベンション施行例や心筋梗塞既往例の2次予防薬としての有用性を示している。血漿EPAとアラキドン酸(AA)の比の変化を観察すると、試験開始時に両群共にEPA/AA比は0.6であったのに対して、EPA投与群では1年後に1.3まで上昇していた3)。試験終了時のEPA/AA比と冠動脈イベント再発の関連性を解析した結果、EPA/AA比が高いほど、イベント発生の相対リスクが低下していることが明らかとなった。<JELIS脳卒中サブ解析>JELIS試験においては、2次評価項目として脳卒中(脳血栓、脳塞栓、判別不能の脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳出血、くも膜下出血)の発症が検討された。患者背景として、脳卒中の既往はEPA群で485例(5%)であり、対照群で457例(5%)に認められ、その内訳は閉塞性脳血管障害がそれぞれ74%、75%で、両群間に有意差を認めなかった4)。脳卒中の1次予防に関しては、対照群およびEPA投与群ともに、脳卒中発症頻度が低かったため、両群間に明らかな差を認めなかった。実際、対照群における脳卒中累積発症率が5年間で1.3%ととても低値であったことが大きな要因と考えられている。また、JELIS以外に国内で施行された冠動脈疾患や脳卒中の既往のない高コレステロール患者を対象としたMEGA試験では、プラバスタチンの投与で有意に発症を抑制したことが報告されている。つまり、JELISにおけるスタチン投与の背景がすでに脳卒中発症をかなり予防していたことが推察され、EPAの有用性を否定するものではない結果といえよう。脳卒中既往歴のある2次予防については、EPA投与群において20%の有意な脳卒中発症抑制効果(発症リスク比0.80、95% CI:0.64-0.997)が認められた4)。この脳卒中発症抑制に関しては、number to treat(NNT=疫学の指標の1つで、エンドポイントに到達する患者を1人減らすために何人の患者の治療を必要とするかを表したもの)は27であった。興味深いことに、同時期に欧米で施行されたSPARCL試験5)では、アトルバスタチンの5年間の投与による脳卒中2次予防効果のNNTは46であり、高用量スタチンより優れた結果を示唆するものであった。単純比較はできないが、EPA製剤(スタチン併用)の脳卒中2次予防効果における臨床的有用性を示すと考えられている。登録時のHDL-C値と脳卒中発症の関係を解析した結果、対照群ではHDL-C値が低いことに相関して脳卒中再発率が有意に増加するが、EPA投与群ではHDL-C値と独立して脳卒中再発予防効果を認めた。また臨床的なポイントとして、JELISにおける脳卒中の疾患別検討では、EPA効果がより高い群として脳梗塞、特に脳血栓症の抑制が明らかであった。またEPA服薬良好群では、36%の顕著な再発低下(5年間のNNTは16)を示した6)。EPAの特徴の1つである血小板凝集抑制作用を介したアテローム血栓予防効果が大きな役割を果たしている可能性が高い。GISSI-Prevenzione Trial7)と海外のエビデンスイタリアで行われたGISSI-Prevenzione Trialは、急性心筋梗塞発症後3か月以内の高リスク患者11,324症例を対象とした2次予防試験であり、オメガ3系多価不飽和脂肪酸1g/日のカプセルと抗酸化作用を持つビタミンE 300mg/日を内服する群を、オメガ3系多価不飽和脂肪酸のみ内服する群、ビタミンEのみ内服する群、両方内服する群、両方内服しない群に分けて3.5年間介入し検討を行った試験である7)。その結果、オメガ3系多価不飽和脂肪酸を内服している群は対象群に比べ、全死亡の相対リスク(95% CI)が0.80(0.67-0.94)と低下を認め、特に突然死においては0.55(0.40-0.76)と大きく抑制され、突然死においては治療開始後早期の120日ですでに有意な相対リスクの低下(0.47(0.22-0.99)、p=0.048)が認められた(本誌p.24図を参照)7)。また、心不全患者を対象に行ったGISSI-HF Trialでも、オメガ3系多価不飽和脂肪酸の投与は、有意に心血管イベントの発症を抑制した8)。コホート試験である13試験を用いて、魚摂取・魚食頻度と冠動脈疾患による死亡率との関連について検討した結果(222,364症例のメタ解析)、魚摂取は冠動脈疾患による死亡率を有意に低下させることが明らかとなった9)。さらに、脂質低下療法に関する97ランダム化大規模臨床試験のメタ解析の結果から、スタチンとオメガ3系多価不飽和脂肪酸製剤は、心臓死および総死亡のイベントリスクを低下させることが示された10)。これらのエビデンスから、ハイリスクの脂質異常患者に対してスタチンにEPA製剤を加えることで、さらなる心血管イベント抑制効果が期待できると考えられる。おわりに高純度EPA製剤は、心血管イベントおよび脳血管イベントの1次予防・2次予防戦略を考えるうえで重要な薬剤であることはいうまでもない。大規模臨床試験のエビデンスをベースとした各ガイドラインを見てわかるように、脂質異常症のゴールデンスタンダードであるスタチンに加えて、EPA製剤の併用効果が証明され、臨床的意義づけが確立している。JELISによる日本人のエビデンスに裏づけされた内科的戦略の1つとして、心血管・脳血管イベントのハイリスク症例やスタチン投与による脂質管理下でもイベント発生を抑制できない症例に対して、積極的な使用が推奨される。またEPA・DHA製剤についても、ようやく国内で使用することができるようになった。日本人のエビデンスはまだ十分ではなく、ガイドラインにおける位置づけは現時点では明確ではないが、欧米におけるエビデンスと使用経験から本邦でも十分に期待できるものと思われる。EPA製剤との違いや臨床的使い分けなど、今後のさらなるエビデンスの蓄積が必要であろう。文献1)Yokoyama M et al. Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis. Lancet 2007; 369: 1090-1098.2)Saito Y et al. Effect of EPA on coronary artery disease in hypercholesterolemic patients with multiple risk factors: sub-analysis of primary prevention cases from the Japan EPA Lipid Intervention Study (JELIS). Atherosclerosis 2008; 200: 135-140.3)Matsuzaki M et al. Incremental effect of eicosapentaenoic acid on cardiovascular events in statin-treated patients with coronary artery disease. Circ J 2009; 73: 1283-1290.4)Tanaka K et al. Reduction in the recurrence of stroke by eicosapentaenoic acid for hypercholesterolemic patients : subanalysis of the JELIS trial. Stroke 2008; 39: 2052-2058.5)Amarenco P et al. High-dose atrovastatin after stroke or transient ischemic attack. N Engl J Med 2006; 355: 549-559.6)田中耕太郎ほか. 高コレステロール血症患者の脳卒中発症に対するEPAの効果-JELISサブ解析結果. 脳卒中2007; 29: 762-766.7)Marchioli R et al. Early protection against sudden death by n-3 polyunsaturated fatty acids after myocardial infarction: time-course analysis of the results of the Gruppo Italiano per lo Studio della Sopravvivenza nell'Infarto Miocardico (GISSI)-Prevenzione. Circulation 2002; 105: 1897-1903.8)Gissi HFI et al. Effect of n-3 polyunsaturated fatty acids in patients with chronic heart failure (the GISSI-HF trial): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet 2008; 372: 1223-1230.9)He K et al. Accumulated evidence on fish oil consumption and coronary heart disease mortality : a meta-analysis of cohort studies. Circulation 2004; 109: 2705-2711.10)Studer M et al. Effect of different antilipidemic agents and diets on mortality : a systematic review. Arch Intern Med 2005; 165: 725-730.

27423.

HPV16/18型ワクチン、感染歴ある成人にも有効/Lancet

 25歳以上の女性においても、ヒトパピローマウイルス(HPV)16/18型AS04アジュバントワクチンは、31/45型を含むHPV感染および子宮頸部病変に対し効果を発揮することが、オーストラリア・テレソン小児健康リサーチ研究所のS Rachel Skinner氏らが行ったVIVIANE試験で示された。HPV予防ワクチンの主な対象は思春期の少女であるが、すでにHPV 6/11/16/18型ワクチンは成人女性(24~45歳)にも有効との知見がある。発がん性のあるHPVは16/18/45/31/33型が約85%を占めるが、感染歴のある成人女性は新たなパートナーから以前とは異なる型のHPVに感染する可能性が高いという。Lancet誌オンライン版2014年9月2日号掲載の報告。感染/病変歴ありを含む集団の中間解析 VIVIANE試験は、成人女性に対するHPV 16/18型ワクチンの有効性、安全性、免疫原性の評価を行う進行中の多施設共同二重盲検無作為化対照比較第III相試験。今回、中間解析が行われた。 25歳以上の健常女性が、地域、年齢層、HPV DNA検査、細胞診などを考慮して、HPV 16/18型ワクチンを接種する群または対照群に無作為に割り付けられた。26~35歳と36~45歳が約45%ずつ、46歳以上が約10%となるように登録を行った。各年齢層に、15%を上限にHPV感染または病変の罹患歴のある女性を含めた。 主要評価項目は、6ヵ月時のHPV 16/18型感染または前がん病変(Grade 1以上の子宮頸部上皮内異形成:CIN 1+)に対するワクチンの効果とした。有効性の主要解析はaccording-to-protocol(ATP)集団(全3回のワクチン接種、ベースラインの細胞診でHPV陰性または軽度病変、HPV病変歴なし)で行い、副次解析にはワクチン効果の対象外の発がん性HPV型に対する効果を含めた。平均フォローアップ期間は全ワクチン集団が44.3ヵ月、ATP集団は40.3ヵ月であった。良好な交差防御的効果、Grade 3の注射部位疼痛14% 本試験には12ヵ国が参加した。2006年2月16日に患者登録を開始し、今回の解析の最終受診日は2010年12月10日であった。全ワクチン集団は5,752例(ワクチン群:2,881例、対照群:2,871例)で、そのうちATP集団は4,505例(2,264例、2,241例)であり、HPV感染/病変歴ありが705例(345例、360例)含まれた。 ATP集団全体における6ヵ月後のHPV 16/18型の持続感染またはCIN+の抑制率は81.1%(97.7%信頼区間[CI]:52.1~94.0%)であった。26~35歳では83.5%(同:45.0~96.8%)、36~45歳では77.2%(同:2.8~96.9%)であったが、45歳以上では感染例がなく評価不能であった。 ATP集団の6ヵ月後のHPV 16/18型による意義不明な異型扁平上皮細胞(ASC-US+)の抑制率も93.7%(97.7%CI:71.5~99.5%)と良好であった。また、交差防御的な効果として、HPV 31型(抑制率:79.1%、97.7%CI:27.6~95.9%)およびHPV 45型(同:76.9%、18.5~95.6%)に対する抑制作用が確認された。 全ワクチン集団における6ヵ月後のHPV 16/18型の持続感染またはCIN+の抑制率は43.9%(97.7%CI:23.9~59.0%)、HPV感染/病変歴ありの集団では49.9%(同:-0.3~76.2%)であった。 接種後7日間以内に、注射部位の特定有害事象がワクチン群の85%(2,443/2,881例)にみられ、対照群の67%(1,910/2,871例)に比べ頻度が高かった。このうちGrade 3(正常な身体活動が不能)の疼痛はそれぞれ14%(394例)、3%(88例)に発現した。 重篤な有害事象は、ワクチン群の10%(285/2,881例)、対照群の9%(267/2,871例)に認められ、このうちそれぞれ5例(<1%)、8例(<1%)がワクチン関連と考えられた。17例(ワクチン群:14例、対照群:3例)が死亡したが、ワクチン関連死はなかった。 著者は、「この中間解析の知見は、HPV感染歴のある女性を含む25歳以上の女性にも、本ワクチンはベネフィットをもたらす可能性があるとの見解を支持するもの」と指摘している。

27424.

新規アンドロゲン標的薬が無効なCRPCの予測因子/NEJM

 去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)患者の血中循環腫瘍細胞(CTC)におけるアンドロゲン受容体スプライスバリアント7のmRNA(AR-V7)は、CRPC治療薬エンザルタミドやアビラテロンに対する抵抗性獲得の原因である可能性が、米国ジョンズ・ホプキンス大学のEmmanuel S. Antonarakis氏らの検討で示された。両薬剤は、転移性CRPC(mCRPC)の治療にブレークスルーをもたらしたが、患者の約20~40%が反応せず、奏効例も最終的に抵抗性となる。抵抗性の原因として、アンドロゲン受容体のスプライスバリアントの可能性が指摘されており、AR-V7によってコードされるタンパク質は、両薬剤が標的とする受容体のリガンド結合領域を欠くが、リガンド非依存性の転写因子として構成的活性化の状態にあることが知られている。NEJM誌2014年9月11日号(オンライン版2014年9月3日号)掲載の報告。AR-V7の有無とPSA奏効率などの関連を評価 研究グループは、進行前立腺がん患者CTCのAR-V7と、エンザルタミドおよびアビラテロンに対する抵抗性獲得との関連を検証する試験を実施した。 エンザルタミドまたはアビラテロンのいずれかの治療を受けているmCRPC患者を前向きに登録し、定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法を用いてCTCのAR-V7の評価を行った。 AR-V7の状態(陽性、陰性)と前立腺特異抗原(PSA)奏効率(主要評価項目)、PSA無増悪生存期間(PSA-PFS)、臨床的または画像上のPFS、全生存期間(OS)との関連を解析した。PSA奏効は、4週以上持続するPSAのベースラインの50%以上の低下と定義した。治療抵抗性の予測因子となる可能性 2012年12月~2013年9月までに62例(エンザルタミド群:31例、アビラテロン群:31例)が登録された。ベースライン時のCTCサンプルでAR-V7が検出されたのは、エンザルタミド群が39%(12例)、アビラテロン群は19%(6例)であった。AR-V7が検出された18例では、全長アンドロゲン受容体mRNAの発現が有意に増加していた(p<0.001)。 エンザルタミド群では、AR-V7陽性例は陰性例に比べ、PSA奏効率が有意に低かった(0 vs. 53%、p=0.004)。また、PSA-PFS中央値(1.4 vs. 6.0ヵ月、p<0.001)、臨床的または画像上のPFS中央値(2.1 vs. 6.1ヵ月、p<0.001)、OS中央値(5.5ヵ月 vs. 未到達、p=0.002)が、いずれも有意に短かった。 アビラテロン群も同様に、AR-V7陽性例は陰性例に比し、PSA奏効率が有意に低く(0 vs. 68%、p=0.004)、PSA-PFS中央値(1.3 ヵ月 vs. 未到達、p<0.001)、臨床的または画像上のPFS中央値(2.3ヵ月 vs. 未到達、p<0.001)、OS中央値(10.6 ヵ月 vs. 未到達、p=0.006)が有意に短縮していた。 全長アンドロゲン受容体mRNAの発現レベルで補正後も、AR-V7の検出と治療抵抗性との関連は維持されており、AR-V7はこれら2つの薬剤に対するCRPCの治療抵抗性を予測するバイオマーカーとなる可能性があることが示唆された。 著者は、「これらの薬剤が無効な患者を事前に見つけ出し、他の有効な治療の選択が可能になる」とし、「これらの知見は、大規模な前向き試験でその妥当性を検証する必要がある」と指摘している。

27425.

高骨量と股関節OAは正の相関

 英国・ブリストル大学のS.A. Hardcastle氏らによる住民ベース研究の結果、高骨量(HBM)例で変形性股関節症(股関節OA)や骨棘症の有病率が有意に高いことが明らかにされた。これまで疫学研究において、骨密度(BMD)増大とOAの関連は示唆されていた。著者は「今回の所見はHBMとOAには正の関連性があり、HBMにおけるOAは肥大性表現型であることを示すものだ」とまとめている。Osteoarthritis and Cartilage誌2014年8月号(オンライン版2014年6月24日号)の掲載報告。 研究グループは、HBMの人では対照群と比べ股関節OAの有病率が高いかを調べるため、新たな質問アプローチを用いた本検討を行った。 BMD Zスコアで定義されたHBM症例を、英国での研究例から集め、一方でファミリー対照として、指数に影響がない関連症例を集めた。さらに、年齢で層別化されたランダム検体をChingford and Hertfordshireコホート研究の一般集団から選定して分析に含んだ。 骨盤X線像を、症例-対照について盲検化された観察者1人がプールし評価を行った。分析はロジスティック回帰法を用いて、年齢、性別、BMIで補正をして行われた。 主な結果は以下のとおり。・分析に含まれたのは、症例群が272人・HBM股関節530例、対照群が863人・1,702例であった。平均年齢は64.8歳、女性が84%であった。・X線画像診断(Croftスコアで3以上)によるOA有病率は、症例群20.0%、対照群13.6%で前者が有意に高かった(補正後オッズ比[OR]:1.52、1.09~2.11、p=0.013)。・骨棘症(OR:2.12、1.61~2.79、p<0.001)、軟骨下骨硬化(同:2.78、1.49~5.18、p=0.001)も症例群での有病率が有意に高値であった。・一方で、関節腔狭小化(JSN)有病率の差は有意ではなかった(OR:0.97、0.72~1.33、p=0.869)。

27426.

PIK3CA変異乳がんは抗HER2療法の効果低い

 乳がんではホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K) / AKT経路の異常はよくみられ、PIK3CAの変異が最も多い。ドイツ乳がんグループのSibylle Loibl氏らは、術前補助化学療法に加えてdualもしくはsingle 抗HER2療法を行ったHER2陽性乳がんにおいて、PIK3CA遺伝子型と病理学的完全寛解(pCR)率との関連を調査した。その結果、PIK3CA変異のあるHER2陽性乳がんでは、アントラサイクリン・タキサンの化学療法と抗HER2療法(dual抗HER2療法であっても)による術前補助化学療法後に、pCRを達成する可能性は低いことが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2014年9月8日号に掲載。 著者らは、術前補助化学療法の研究(GeparQuattro、GeparQuinto、GeparSixto)の参加者から得られた504の腫瘍サンプルのPIK3CA変異を評価した。すべてのHER2陽性患者はトラスツズマブかラパチニブもしくはその併用のいずれかと、アントラサイクリン・タキサンの化学療法の治療を受けた。PIK3CA変異は、20%以上の腫瘍細胞含有量のコア生検によるホルマリン固定パラフィン包埋組織で、エクソン9とエクソン20のサンガー法による配列決定を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・患者の21.4%にPIK3CA変異がみられた。・PIK3CA変異型では有意にpCR率が低かった(変異型19.4% vs 野生型32.8%、オッズ比[OR]:0.49、95%CI:0.29~0.83、p=0.008)。・ホルモン感受性(HR)陽性の291例において、pCR率はPIK3CA変異型で11.3%、野生型で27.5%であった(OR:0.34、95%CI:0.15~0.78、p=0.011)。・HR陰性の213例では、pCR率はPIK3CA変異型で30.4%、野生型で40.1%であった(OR:0.65、95%CI:0.32~1.32、p=0.233、相互作用検定p=0.292)。・多変量解析では、HR状況とPIK3CA状況は独立した予測因子であった。・PIK3CA変異のある患者において、ラパチニブ、トラスツズマブ、その併用によるpCR率はそれぞれ16.0%、24.3%、17.4%であった(p=0.654)。野生型の患者では、それぞれ、18.2%、33.0%、37.1%であった(p=0.017)。・無病生存期間および全生存期間は、PIK3CA変異型と野生型との間に統計学的有意差は認められなかった。

27427.

どの尺度が最適か、てんかん患者のうつ病検出

 てんかん患者のうつ病併発検出には、一般的なスクリーニングツールが用いられているが、現在使用されている尺度について、ゴールドスタンダードによる検証は行われていなかった。カナダ・カルガリー大学のKirsten M. Fiest氏らは、てんかん患者のうつ病併発を見つけるために一般的に用いられている3つのスクリーニング尺度について、検証と新たなカットポイント値の評価を行った。結果、感度が最も高かったのは、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)、特異度が最も高かったのはPatient Health Questionnaire(PHQ)-9であったことなどを報告した。Epilepsia誌オンライン版2014年8月28日号の掲載報告。 研究グループは、大都市のてんかん専門クリニックで300例を対象に、質問調査(社会人口統計、有害事象プロファイル)と、3つのうつ病スクリーニングツール(HADS、PHQ-9、PHQ-2)による評価を行った。うつ病評価のためのゴールドスタンダードの構造化臨床面接には、185例が参加。うつ病尺度の診断精度について、種々のスコアリングカット値とうつ病診断のゴールドスタンダードとを比較評価した。 主な結果は以下のとおり。・本集団におけるうつ病有病率は、ゴールドスタンダードでは14.6%であった。・最も感度が高かったのはHADSのカット値6による尺度であった(84.6%)。最も特異度が高かったのは、PHQ-9によるアルゴリズム評価においてであった。・全体的に、PHQ-9のカット値9と、HADSのカット値7が、感度と特異度のバランスが最も良かった(AUCはそれぞれ88%、90%)。・スクリーニング目的には、PHQ-9アルゴリズム評価が理想的である(特異度が最適)。一方で、症例を見つけるにはHADSのカット値6が最良であった(感度が最適)。・これらを踏まえて著者は、「適切な尺度のカット値は、試験目的と入手したリソースに基づき選ぶことが必要である」とまとめている。関連医療ニュース てんかん患者のうつ病有病率は高い てんかんを持つ人のうつ病発症を理解することが急務 うつ病診断は、DSM-5+リスク因子で精度向上  担当者へのご意見箱はこちら

27428.

診察室での血圧測定はもういらない?-高血圧診療は、自己測定と薬の自己調整の時代へ(解説:桑島 巌 氏)-240

わが国の高血圧診療は、家庭血圧計で測定した血圧値をもとに降圧薬の増減を判断することが一般的になってきた。診察室血圧値は白衣現象や仮面高血圧を見逃し、適切な血圧管理ができないからである。 さらに、家庭血圧は外来血圧測定に比べて、季節による血圧変化やストレスによる血圧変化を的確にとらえるのに優れている。そして、患者自身が医師による診療に先んじて、自分の普段の血圧値を知ることの利点はきわめて大きい。 したがって、血圧自己管理と降圧薬の自己調整によって、これまでよりも、きめ細かな血圧調整が可能となる。本論文は、まさにそのことを実証してみせたという点で、エポックメイキングの研究成果となろう。 本試験のプロトコールは、高リスクの高血圧症例で、家庭血圧目標を120/75mmHgと設定して降圧薬をあらかじめ決められた3ステップ法で増減してもらう群と、従来のように診察室血圧で血圧管理する群にランダム化して1年間追跡、1年後の診察室血圧を比較するというものである。一次エンドポイントは、1年後の診察室での両群の血圧値の差である。 その結果、ベースラインから1年後への収縮期/拡張期血圧低下は、介入(自己調整群)群のほうが通常診療群よりも9.2/3.4mmHgも大きかったというものである。介入群での1年後の家庭血圧平均値も128.2/73.8mmHgであり、通常診療群の137.8/76.3mmHgより明らかに低い。当然、自己管理群のほうが有意に多くの降圧薬を服用していた(2.22剤vs 1.73剤)にもかかわらず、有害事象には差がなく、安全に自己管理ができていたという。 しかし、本試験は、血圧が極端に高い症例や、起立性低血圧、認知症のある症例、降圧薬を3剤以上処方されている症例は除外されていることに注意が必要である。また、糖尿病、慢性腎臓病、心疾患などを合併する高リスク群が対象でありながら、降圧によるこれら合併症の悪化など、個々の症例で管理すべきことには触れられていない。さらに、家庭血圧が途中で下がりすぎた場合の対処などにも触れられていない。現実には、家庭血圧が極端に下がってきた場合には降圧薬を減らすように指示することはよくあるが、その点についての解析は述べられていない。 しかし、家庭血圧計が普及した今、高血圧診療のあり方を見直す重要なエビデンスではある。

27429.

55)ご飯の量を意識させるアドバイスの方法【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者私、ご飯が大好きで、どのくらいにしておいたらいいですか?医師今、どのくらいですか?患者お茶碗に1杯ぐらいです。おかわりはしないようにしています。医師頑張っておられますね。それなら、だいたい150gぐらいじゃないでしょうか。患者外食すると、血糖が上がるんですが・・・医師確かに、外食ではご飯の量がわかりにくいですね。カレー皿の普通盛りなら、家で食べているごはんの倍、300gくらいありますね。患者外でカレーを食べると、血糖が上がるわけですね。医師それじゃ、丼物は何gくらいあると思いますか?患者500gくらいですか?医師どんぶり勘定ですね。丼物もカレー皿と同じくらいのご飯量になります。●ポイント普段のご飯量、外食時のご飯量などを確認することから食事療法を始めます●資料茶碗半分(80g)、茶碗8分目(120g)、茶碗1杯(150g)、茶碗1杯強(200g)、パックご飯(200g)カレー(チェーン店) 小盛り(200g)、普通盛り(300g)牛丼(チェーン店) 小盛(180g)、並盛(260g)、大盛り(320g)

27431.

新薬2剤が発売、去勢抵抗性前立腺がん治療の今後

 去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に対する新たな選択肢として、5月発売のエンザルタミド(商品名:イクスタンジ)に続き、今月、アビラテロン(同:ザイティガ)とカバジタキセル(同:ジェブタナ)が発売された。これら2剤の発売を機に、先日、それぞれのメディアセミナー(ザイティガ:ヤンセンファーマ株式会社・アストラゼネカ株式会社、ジェブタナ:サノフィ株式会社)が開催された。両セミナーで、近畿大学医学部泌尿器科教授 植村 天受氏が講演し、CRPCにおける治療の変化について解説した。CRPC治療におけるアビラテロンとカバジタキセルの位置付け 前立腺がんは男性ホルモン(アンドロゲン)により増殖するため、外科的去勢や薬物により男性ホルモンを抑制するホルモン療法が施行される。従来のホルモン療法によりアンドロゲン分泌が抑制されているにもかかわらず、病勢が進行する状態をCRPCと呼ぶ。 早期のCRPCでは、副腎由来のアンドロゲンや前立腺がん細胞自身で産生されるアンドロゲンにより腫瘍が増悪するため、さらにアンドロゲンを低下させることが重要となる。アビラテロンは、早期のCRPCに対して、精巣・副腎・前立腺がん組織のすべてでアンドロゲン合成を抑制することにより、予後の改善が期待される。 その一方で、CRPCにおける細胞増殖には、アンドロゲン依存性だけでなく、アンドロゲン非依存性の経路が存在するため、いずれホルモン療法によるアンドロゲン除去に抵抗性が生じてくる。そのような場合、化学療法であるドセタキセルが標準治療であるが、ドセタキセル後の治療選択肢として、カバジタキセルが承認された。患者さんによってアンドロゲン標的薬に抵抗性を示す場合もあるため、化学療法は重要な役割を持つ。各薬剤の副作用 アビラテロンについては、現在のところ、特異的な副作用はみられていない。 一方、カバジタキセルは、好中球減少や発熱性好中球減少が日本人で多く、骨髄抑制の対策が重要となる。植村氏は、自身の投与経験から、「G-CSF製剤を適切な時期に投与し、患者さんに生ものなどを食べないように指導するなど、マネジメントをしっかりすればこわい薬剤ではない」との見解を示した。今後のCRPC治療の流れ 現在、アビラテロンだけが化学療法未治療のCRPCにも使用できるが、エンザルタミドも同様に使えるようになる見通しである。植村氏は、それを前提としたうえで、今後のCRPC治療について、「まず、アビラテロンもしくはエンザルタミドを投与し、進行後にもう1つの薬剤を投与、さらに進行した場合にドセタキセル、次にカバジタキセルを投与という流れになるだろう」と述べた。なお、アビラテロンとエンザルタミドの使い分けについては、「現状ではどちらも同じ。副作用による使い分けもない」との見方を示した。 ドセタキセルからカバジタキセルにスイッチするタイミングについては、植村氏は「議論されている問題で、日本で治療経験を重ねることにより解明していく課題」と述べ、「もし、ドセタキセルによるしびれでADLが低下するような場合は、早めに切り替えてもいいのではないか」との考えを示した。

27432.

神経線維腫症1型の日本人臨床像

 東京慈恵会医科大学 皮膚科助教の谷戸 克己氏らは、日本人58例のモザイク神経線維腫症1型(NF1)の臨床像について調査した。NF1は同腫瘍抑制遺伝子変異が原因の常染色体優性の遺伝性疾患であり、時にモザイク形で現れることがある。体節に認められるNF1(Segmental NF1)は、一般にNF1突然変異の身体的モザイクとみなされており、モザイクNF1を有する患者は体節に限られるというNF1の典型的特性があることは知られていた。Journal of Dermatology誌2014年8月号(オンライン版2014年7月16日号)の掲載報告。 研究グループは、慈恵医大病院(2004~2007年)および同第3病院(2007~2011年)で認められたモザイクNF1患者58例の臨床上をレトロスペクティブに調べた。これまで身体的または生殖的モザイク型については検討されていなかった。  主な結果は以下のとおり。・患者58例は、女性42例、男性16例で、年齢は1~69歳、平均年齢は23.4歳であった。・患者は次の4群に分類された。(1)色素変化(カフェオレ斑、しみ)のみ(32例)、(2)神経線維種のみ(5例)、(3)神経線維種および色素変化(13例)、(4)弧発性の叢状神経線維腫(8例)。・病変部は多岐にわたった。・疼痛や圧痛を伴う叢状神経線維腫を呈した患者を除けば、大部分の患者で症状はみられなかった。・リッシュ結節はほとんどみられなかった。・特異的なNF1合併症(言語発達遅滞1例、骨異形成3例)がみられたのは、58例のうち4例(6.9%)であった。・2例の患者は、全身性NF1を有する小児を介して確認された。 以上を踏まえて著者は、「叢状神経線維腫患者を除けばモザイクNF1を有する患者は、疾患関連の合併症リスクは低かった。しかし、彼らの子供が全身性NF1を有するリスクがあることに注意を促す必要がある」とまとめている。

27433.

うつになったら、休むべきか働き続けるべきか

 うつ病を有する就業者について、疾病休業(absenteeism)と継続出勤による労働遂行能力低下(presenteeism)のコストおよび健康アウトカムについて比較した結果、サービス利用費を除くと両者間に有意な差はみられなかったことが示された。ただし、仕事によっては有意性に違いがみられた。オーストラリア・タスマニア大学のFiona Cocker氏らが、マルコフモデルを使用したコホート・シミュレーションの結果、報告した。うつ病で働き続けていてもメンタルヘルス改善は可能だが、集中力の低下や疲労感、仕事中のパフォーマンス低下によるリスクおよびコストをもたらす。しかし、出勤についてエビデンスに基づく推奨はなく、出勤が個人と事業者にもたらす有益性に関するデータは不足していた。PLoS One誌オンライン版2014年9月2日号の掲載報告。 検討では、大うつ病が報告されているオーストラリア人労働者において、一時的な休業vs. 働き続けることのコストと健康アウトカムを比較した。状態変化マルコフモデルを用いたコホート・シミュレーションで、生涯大うつ病を報告した仮定的労働者コホートについて、質の高い疫学データソースおよび既存の臨床論文から見込まれた過去1年と過去5年の間の健康状態の変化をシミュレートした。モデルアウトカムは、健康サービス、雇用に関するコスト、質を調整した生存年(QALY)で、疾病休業者と継続出勤者について算出して比較を行った。また、職業(ブルーカラーvs. ホワイトカラー)で層別化した検討も行った。 主な結果は以下のとおり。・うつ病の従業員当たりでみた1年間と5年間の平均コストは、疾病休業者のほうが継続出勤者よりも高額だった。たとえば5年間の平均コストは、疾病休業者が4万2,573ドル、継続出勤者は3万7,791ドルであった。・しかしながら、信頼区間の重複により、有意差は認められなかった。・雇用関連コスト(生産時間の喪失、離職者)、抗うつ薬コストおよびサービス利用コストは、疾病休業者と継続出勤者とも、ホワイトカラーで有意に高かった。・疾病休業者と継続出勤者との健康アウトカムの差は、ホワイトカラーにおいてのみみられた。・以上を踏まえて著者は、「今回の所見は、仕事に特異的なコストについて初となるエビデンスであった。これを用いて臨床医、従業員、事業者は、うつ病に関連した出勤のマネジメントを検証することが可能である。また、本所見は、従業員に働き続けることを奨励する根拠ともなるだろう」とまとめている。関連医療ニュース 職場のメンタルヘルス、効果的な方法は:旭川医大 仕事のストレスが大きいほど、うつ病発症リスクは高い:獨協医科大学 うつ病の寛解、5つの症状で予測可能:慶應義塾大学  担当者へのご意見箱はこちら

27434.

PCI前の血栓吸引、1年死亡率も改善せず/NEJM

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)前の冠動脈内血栓吸引療法は、PCI単独に比べ1年後の全死因死亡を改善しないことが、スウェーデン・ウプサラ大学のBo Lagerqvist氏らが行ったTASTE試験で示された。急性STEMIの多くは冠動脈内の血栓形成に起因し、血栓の重症度や血流量低下、心筋灌流障害は、不良な臨床アウトカム(心筋梗塞の再発、ステント血栓症、死亡など)の重要な予測因子とされる。プライマリPCI前の血栓吸引療法の有用性が示唆されているが、短期的な死亡率の改善効果は確立されていない。NEJM誌オンライン版2014年9月1日号掲載の報告。主要評価項目(30日時点)に差はないことは確認済み、1年後について解析 TASTE試験は、STEMI患者に対する血栓吸引療法+プライマリPCIとPCI単独の有用性を前向きに評価する多施設共同非盲検無作為化対照比較試験。 すでに、30日時の全死因死亡(主要評価項目、p=0.63)やステント血栓症(p=0.06)、心筋梗塞の再発による再入院(p=0.09)は、PCI前に血栓吸引療法を施行するほうが減少するものの、有意な差はないことが確認されており、研究グループは今回、1年後のこれらの臨床アウトカムの解析を行った。 本試験には3ヵ国31のPCI施設(スウェーデン29、アイスランド1、デンマーク1)が参加した。解析には、2つのレジストリ(SCAAR、SWEDEHEART)に登録された7,244例の患者データを用いた。主要サブグループでも同様の結果 ベースラインの平均年齢は血栓吸引療法群(3,621例)が66.5歳、PCI単独群(3,623例)は65.9歳で、男性がそれぞれ75.1%、74.6%であった。 1年時の全死因死亡率は、血栓吸引療法群が5.3%(191例)、PCI単独群は5.6%(202例)であり、両群間に差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.78~1.15、p=0.57)。 心筋梗塞による再入院率は、それぞれ2.7%、2.7%(HR:0.97、95%CI: 0.73~1.28、p=0.81)、ステント血栓症の発症率は0.7%、0.9%(HR:0.84、95%CI:0.50~1.40、p=0.51)であり、いずれも有意な差はみられなかった。 全死因死亡、心筋梗塞による再入院、ステント血栓症の複合エンドポイントの発生率は、血栓吸引療法群が8.0%、PCI単独群は8.5%であった(HR:0.94、95%CI:0.80~1.11、p=0.48)。 冠動脈血栓のGradeやPCI前の冠血流量など、すべての主要なサブグループにおいても、結果は同様であった。 著者は、「この全国的な試験には、PCIが予定されているSTEMI患者の大部分が登録されており、したがって今回の結果はこの地域のPCI施行STEMI患者集団を正確に代表するものと考えられる」としている。

27435.

各種ダイエット法の減量効果/JAMA

 アトキンス式(Atkins、低炭水化物[糖質制限]食)やオーニッシュ式(Ornish、低脂肪食)など固有の名称が付されたダイエット法は、実際に良好な減量効果をもたらしていることが、カナダ・トロント大学のBradley C Johnston氏らの調査で示された。個々のダイエット法の優位性については種々の主張があり、どの方法が優れるかは明らかではなかったが、今回の解析では、どれも大きな差はないことが確認された。JAMA誌2014年9月3日号掲載の報告。3クラス、11種のダイエット法のネットワークメタ解析 研究グループは、ダイエット食のクラス別(低炭水化物食、中等量主要栄養素食、低脂肪食)および個々のダイエット法別の減量アウトカムを評価するメタ解析を実施した。対象は、過体重および肥満者(BMI≧25)の無作為化試験とした。 6つの医学関連データベースを検索して選出された文献から、2名のレビュワーが別個にデータを抽出した。相対的な減量効果を推定するために、ベイズ的枠組みを用いたネットワークメタ解析を行った。主要評価項目は、6ヵ月および12ヵ月時の非ダイエット群との比較における体重減少とした。 ダイエット食のクラスは摂取エネルギーに占める主要栄養素の割合で定義し、低炭水化物食は炭水化物が≦40%、タンパク質が約30%、脂質が30~55%、中等量主要栄養素食はそれぞれ約55~60%、約15%、21~30%、低脂肪食は約60%、約10~15%、≦20%とした。解析には11種のダイエット法が含まれた。低炭水化物・低脂肪食は半年で約8kg減量 48件の無作為化試験(論文59本)に参加した過体重~肥満の7,286例が解析の対象となった。全体の年齢中央値は45.7歳、体重中央値は94.1kg、BMI中央値は33.7、ダイエット食による介入期間中央値は24週であった。 6ヵ月時には、すべてのクラスのダイエット法が非ダイエット群に比べ有意に良好な減量効果を達成し、12ヵ月時も有意差は維持されたが、6ヵ月時に比べ効果は1~2kg低下した。また、6ヵ月時は低炭水化物食の減量効果が相対的に大きかったが、低脂肪食との間には明確な差はなく、12ヵ月時には低脂肪食のほうがむしろ減量効果が大きかった。 すなわち、ダイエットを行わなかった群に比べ低炭水化物食の群は、6ヵ月時に中央値で8.73kg(95%確信区間[credible interval:CI]:7.27~10.20kg)、12ヵ月時には7.25kg(同:5.33~9.25kg)の減量が達成され、低脂肪食ではそれぞれ7.99kg(同:6.01~9.92kg)、7.27kg(同:5.26~9.34kg)の体重減少が得られた。中等量主要栄養素食の減量効果は6ヵ月時が6.78kg(同:5.50~8.05)、12ヵ月時は5.70kg(同:4.14~7.35kg)だった。 一方、個々のダイエット法の減量効果の差は小さかった。たとえば、低炭水化物食を用いるアトキンス式は、同じ低炭水化物食のゾーン(Zone)式よりも6ヵ月時の減量効果が大きかったが、その差は1.71kgだった。 行動支援(カウンセリングなど)により、6ヵ月時には3.23kg(95%CI:2.23~4.23kg)と有意な減量効果が得られたが、12ヵ月時には1.08kg(同:-1.82~3.96kg)と有意差は消失した。また、運動(ジョギングなど)の減量効果は6ヵ月時には0.64kg(同:-0.35~1.66kg)と有意ではなかったが、12ヵ月時には2.13kg(同:0.43~3.85kg)と有意な改善が達成された。 著者は、「低炭水化物食と低脂質食による減量効果は1年にわたり良好で、行動支援や運動はその効果を増強する」とまとめ、「ダイエット法の違いは大きな問題ではなく、理想的には個々人が最も実行しやすく、長期に継続可能な方法を選ぶことが重要である」と指摘している。

27436.

「過去の投影」による「未来予測」の限界(解説:後藤 信哉 氏)-239

英国は医療情報のデータベース化が進んでいる。診療の結果の多くはデジタル化され、コンピューターによる解析可能な形式にある。日本でも同じ会社の電子カルテシステムを使用している開業医が500人ほど集まってデータベースを作る気になれば英国以上の物を容易に作成できると思う。 診療データベースから患者を同定する情報を抜いて解析の専門医に送れば、あとは送られた数値から法則性を見出すのが解析家の仕事である。簡便には出血、死亡、心筋梗塞などの重篤なイベントを起こした症例と起こしていない症例では、何が異なるかを見分ければよい。 本研究では重篤な出血の発症に寄与した因子を取り出してQBleedというスコアを作った。スコアの作成化プロセスはほぼ自動化できる。QBleedを用いて将来の患者における出血イベントリスクの予測を目指すのであるが、最大の問題は「過去」のデータベースを用いて「未来」のイベント予測を試みる方法論にある。 日本も電子カルテを用いた診療は広く普及しているので、昨年の1年の間に「頭蓋内出血」という病名が新規に発症した症例と非発症例の年齢、性別、血圧、薬剤使用実態、各種血液検査項目の差異を計算することは容易と考える。QBleedは英国人のscoreであるが、日本のデータベースはより日本人に向いているであろう。 診療情報のデータベース化、過去の経験の数値データベース化、過去の数値に基づいた未来予測はチャレンジングな科学ではなくて、適度な能力のプログラマーのルーチン業務にできると思う。

27437.

乳がん、新たな抗HER2療法にさらなる期待

 乳がんの抗HER2療法はトラスツズマブの登場後、飛躍的な進化を遂げているが、さらに新たな展開が期待できそうである。2014年8月28日~30日、横浜市で開催された日本治療学会学術集会にて、米国スタンフォード大学のMark D.Pegram氏が「New paradigms in the treatment of HER2+ BC」と題し、抗HER2療法の3つの新しいアプローチについて紹介した。Fc最適化抗体(Fc engineered antibody): MGAH22(Margetuximab) Fc最適化抗体は、抗体のFc領域を修飾することでADCC(Antibody-Dependent-Cellular-Cytotoxicity:抗体依存性細胞傷害)活性を強固にしており、乳がんや胃がん、大腸がんなど多がん種で研究が進んでいる。 ヒトエフェクター細胞の存在下、乳がんおよび大腸がん細胞へのADCC活性をみた前臨床試験では、Fc最適化抗体はwild typeの抗体に比べ高い細胞毒性を示した。これは、Fcγレセプター結合親和性の程度にかかわらず、同じ傾向であった。 また、乳がんをはじめとした低HER2 発現(1+2+)腫瘍での試験においても、Fc最適化抗体はwild typeの抗体に比べ高いADCC活性を示した。 in vivo試験は、異種移植モデルを用い低HER2発現(2+)腫瘍で行われた。wild typeの抗体(トラスツズマブ)は高用量であってもわずかな効果しか示さなかったのに対して、MGAH22はより強固な腫瘍縮小効果を示した。 第I相試験の結果はASCO 2014で発表された。高度な治療歴を有する患者、さまざまなHER2感受性の患者が含まれるなかで、MGAH22は乳がんをはじめ大腸がん、胃・食道がんなど多くのがんで効果(PR)を示している。MGAH22の有害事象は、インフュージョンリアクションが最も多かった。いずれの副作用も軽度から中等度であった。 MGAH22はすでに第II相試験も進行中である。この試験はIHC 2+(またはHER-Mark Intermediate)、FISH陰性といった低HER2発現例を対象とし、2段階で行われる。今年中に第1段階を終了し、第2段階への結論を出す予定。幅広いがん種への効果、HER2低発現例への効果などは、今後の抗HER2抗体療法の応用範囲を広げられる可能性を示唆する。抗CD137作動性抗体 CD137はヒトのNK細胞に表出しており、HER2陽性乳がん細胞にトラスツズマブが結合することで高発現する。 抗CD137作動性抗体は、CD137を刺激し標的腫瘍に対するNK細胞の攻撃を促しADCCを増強する。 NK細胞存在下で抗CD137作動性抗体およびトラスツズマブを投与しADCC(Antibody-Dependent-Cellular-Cytotoxicity:抗体依存性細胞傷害)活性をみたin vitro試験では、抗CD137作動性抗体とトラスツズマブの併用群は、トラスツズマブ単独群に比べ有意にADCCを増強させることが示されている。 乳がん細胞の異種移植モデルを用いたin vitro実験では、HER2陽性腫瘍において抗CD137作動性抗体とトラスツズマブの併用群は、トラスツズマブ単独群に比べ有意に腫瘍増殖を抑制した。この薬剤については、来年の臨床試験の開始を目指すという。抗CD47抗体 正常細胞は表面にCD47を提示している。CD47はマクロファージのSIRPα(阻害受容体シグナル制御蛋白α)と結合し、マクロファージに対する抗貪食シグナルを引き出す。これによって、正常細胞はマクロファージの貪食機能を回避している。 がん細胞はある種の蛋白を生成し、貪食作用促進(Pro-phagocytic)シグナルを出しマクロファージの注意を引く。しかし、同時にCD47を大量に発現することで、CD47/SIRPα結合が優勢となり貪食が回避される。 抗CD47抗体を加えるとCD47/SIRPα結合が阻害される。正常細胞では貪食促進シグナルが出ていないので何も起こらないが、腫瘍では貪食作用促進(Pro-phagocytic)シグナルが正体を現す。これにより、マクロファージのがん細胞貪食を促し抗腫瘍効果を発揮する。ヒト化抗CD47抗体であるHu5F9-G4はヒトIgGの骨格を持ち、CD47への高い結合親和性を有する。 乳がんの異種移植モデルを用いたin vivo試験では、抗CD抗体が腫瘍成長を阻害することが示されている。この観察試験は、乳がん以外のがん種でも行われている。 また、抗腫瘍抗体との相乗効果をみた試験も行われている。未治療のHER2陽性乳がん異種移植モデルにおいて、Hu5F9-G4とトラスツズマブを投与して腫瘍成長を評価した結果、Hu5F9-G4単独群、トラスツズマブ単独群とも効果は認められるが、両者の併用投与ではそれら単独群に比べ著明に腫瘍成長を阻害した。この試験は、リンパ腫のリツキシマブ、大腸がんのセツキシマブ、パニツムマブでも行われる。Hu5F9-G4については第I相用量決定試験がごく最近始まっている。

27438.

乾癬で痛みを感じる患者の実態は?

 乾癬で痛みのある人の割合と特徴が、イタリア・フェデリコ2世大学のCataldo Patruno氏らにより報告された。また、それらの患者の病変皮膚において、IL-33の発現が確認された。 本調査の結果を踏まえ「尋常性乾癬のコントロールにおいては、皮膚の痛みの症状を考慮すべきである」と述べている。目的:乾癬による痛みのある人の割合と発現要因の解明 乾癬による痛みの発現率や、その発現要因はこれまで不明であった。そこで、尋常性乾癬の臨床的重症度別にみた痛みの主観的/客観的評価を比較し、乾癬と痛みの発現に関与するIL-33の役割を検討した。方法:主観的/客観的評価とIL-33発現を検討痛みの主観的/客観的評価●対象:尋常性乾癬患者163例(男性98例、女性65例、年齢18~81歳)●臨床的評価:患者自身の全般評価、臨床医による全般評価(PGA)、疼痛閾値を測定するための圧痛計測定と触覚/熱感受性試験IL-33遺伝子発現●対象:患者皮膚(in vivo、12例)およびex vivoの痛覚モデル●刺激条件:ドデシル硫酸ナトリウム結果:病変部では痛みを感じやすく、IL-33も発現●被験者の43.6%が前週の皮膚の痛みを報告●痛み:かゆみ、不快感、痛み、過敏性、熱感/灼熱感、圧痛、痙攣が多い●疼痛閾値:PGAと痛みの強度が大きくなるほど低下●触覚/熱感受性の感度:病変部はそれ以外の部分よりも低い●IL-33発現:患者が痛みを申告する病変部の皮膚およびex vivoモデルで増加

27439.

蚊に刺されないことが最大の予防

 9月11日(木)、都内にて「蚊でうつる感染症~都心のデングを考える」と題し、国立国際医療研究センターメディアセミナーが開催された。今回のセミナーでは、「蚊」にフォーカスを当て、昨今問題となっているデング熱の診療や、蚊が媒介する感染症であるマラリアや日本脳炎などについてミニレクチャーが行われた。■例年100例は報告されるデング熱 はじめに「デング熱について」と題し、怱那 賢志氏(国立国際医療研究センター/国際感染症センター)が、その概要と診療・予防について説明した。 デング熱ウイルスは血清型で4つに分類され、ヤブカであるネッタイシマカとヒトスジシマカの媒介により感染する。前者はわが国に生息していないが、後者は東北地方北部まで生息域を広げており、今後も感染拡大が懸念される。毎年わが国では100例程度の感染が報告されているが、今回の流行はそれが例年になく拡大したものであり、これまでハワイや台湾でも類似の事例が観察されているとのことである。■診断は「時・場所・人」に着目 デング熱の症状としては、高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、下痢、嘔気・嘔吐などが挙げられる。重篤な合併症はないものの、高熱のため倦怠感が強く入院するケースが多いのが特徴である。 本症では皮疹なども見られるが、これは熱が下がる頃に見られ、病初期には観察されないことが多いとのこと。検査所見では、白血球、血小板減少が特異的に観察されるが、初診時には目立たないことが多く、CRPはあまり上昇しない。 確定診断については、時系列に3段階の検査があり、発症初期(1~5日目)では遺伝子検査、解熱前後期(4日目~)ではIgM抗体検査、回復期(7日目~)ではIgG抗体検査により診断がなされる。診断のポイントとしては、病状の精査のほか、とくに蚊に刺された「時・場所・人」に注目して診断することが大切だという。■虫よけで感染防止 治療は、有効な薬剤がないために支持療法が中心となる。とくに血圧、脈圧の低下時は輸液をしっかりと行い、出血症状や重症化のサインを見逃さないようにすることが重要。また、解熱前後の期間(発症から4~7日)は、とくに重症化する危険があるために、慎重な経過観察を行う必要がある。 デング熱予防対策としては、「防蚊対策」をしっかりすることが大切で、蚊に刺されないために、「肌の露出の少ない服装での外出」、「2時間おきに虫よけスプレーを使用する」、「窓を開けて寝ない」など日常生活で簡単にできるアドバイスを伝え、レクチャーを終えた。■ワクチンで予防できる熱帯の感染症 引き続き、怱那氏より「蚊が媒介する感染症」として「マラリア」「日本脳炎」「黄熱」の各疾患の概要が述べられた。 とくにマラリアは、アフリカなどへの渡航の際に注意を要する疾患であり、潜伏期間が長いのが特徴。渡航者には事前に予防内服薬を服用するよう勧めたほか、医療者に対しては診療に際して「マラリア診断・治療アルゴリズム 第3.1版」などを参考にしてほしいと述べた。 また、「日本脳炎」はわが国で予防接種の空白期があることから、この期間のキャッチアップを含めた対策を、「黄熱」は感染の可能性のある地域・国へ渡航する予定があればワクチン接種が入国の条件となっている場合もあるため、事前の接種を念頭に置いてほしいとレクチャーを終了した。デング熱、患者さんに聞かれたら・・・MDQA特別編 デング熱の疑いでどこまで検査するか【緊急Q&A】〔9/19まで募集〕

27440.

強迫的行動の抑制にセロトニン5-HT2Aが重要

 スケジュール誘発性多飲(SIP:Schedule-induced polydipsia)は、ラットの強迫的行動を研究するために確立されたモデルである。セロトニン作動薬は、SIPにおける強迫的な多飲を効果的に減少させる。また、SIPにより選別された強迫性多飲が高度なラットでは、セロトニン作動性の脳活性に違いがみられる。しかし、SIPの強迫的行動を調節する、特異的なセロトニン作動性受容体は依然不明である。スペイン・アルメリア大学のSilvia Victoria Navarro氏らは、ラットのSIPモデルを用い、強迫性SIP行動におけるセロトニン2AまたはC(5-HT2A/C)受容体の役割について検討を行った。その結果、セロトニン5-HT2A受容体活性化が強迫性多飲を減少させることを報告した。Psychopharmacology誌オンライン版2014年8月26日号の掲載報告。 本研究では、SIPの強迫的行動におけるセロトニン2AまたはC(5-HT2A/C)受容体の機能的役割について検討を行った。SIPにおいて多飲レベルが低いラット(LD)と高いラット(HD)を選んだ。選択的セロトニン再取り込み阻害薬のシタロプラム、選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬のアトモキセチン、セロトニン5-HT2A/C受容体アゴニストのDOI hydrochloride((±)-2,5-dimethoxy-4-iodoamphetamine)、セロトニン5-HT2C受容体アンタゴニストのSB242084、セロトニン5-HT2A受容体アンタゴニストのケタンセリンおよびM100907を全身投与し、SIPに及ぼす影響を評価した。続いて、SB242084、ケタンセリンおよびM100907事前投与後のDOIの効果を検討した。 主な結果は以下のとおり。・シタロプラムとDOIは、SIPにおけるLDラットに比べHDラットにおいて強迫性多飲をより減少させた。・ これに対し、SB242084はLDラットに比べHDラットにおいて強迫性多飲をより増加させた。・アトモキセチン、ケタンセリンおよびM100907はSIPに影響を及ぼさなかった。・HDラットにおけるDOIによる飲水の減少は、ケタンセリンとM100907により阻害されたが、SB242084によっては阻害されなかった。 ・SIPにおいてはノルアドレナリン性のメカニズムよりもセロトニン作動性5-HT2A/C受容体が関与しており、セロトニン5-HT2Aの“治療的”活性がHDラットにおける強迫性多飲行動の抑制に有用であることが示された。・これらを踏まえ、著者は「脆弱性を表わす新たなマーカーとともに、神経精神病集団の強迫的行動に対する治療可能性に関する新たな知見を提供するもの」としている。関連医療ニュース SSRIで著効しない強迫性障害、次の一手は 難治性の強迫性障害治療「アリピプラゾール併用療法」 各抗うつ薬のセロトニン再取り込み阻害作用の違いは:京都大学  担当者へのご意見箱はこちら

検索結果 合計:35150件 表示位置:27421 - 27440