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テーブル回診LIVE@神戸大学感染症内科 問題の本質を探究するカンファレンス (第1版)

カンファレンスの臨場感たっぷり。感染症医の考え方、対応が丸わかり神戸大学感染症内科で日々行われている「テ-ブル回診」を書籍化。前作「神戸大学感染症内科版TBL」と同じく、ライブ形式で収録いたしました。刻々と変化していく臨床現場で、プロはどのように思考過程でdecision makingをしていくのか、学生・研修医・フェロ-は何を学んでいくのか。診断のプロセス、議論のポイント、展開されていくロジック―「感染症診療とはなにか」を追体験できます。さらに付録として研修医へのレクチャ-、「病棟で困ったらシリーズ」も同時収載し、医局の教材としても使えます。感染症診療に携わる医師、医療従事者必読の1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。   テーブル回診LIVE@神戸大学感染症内科問題の本質を探究するカンファレンス (第1版) 定価 4,500円 + 税判型 A5判頁数 424頁発行 2015年4月著者 岩田 健太郎Amazonでご購入の場合はこちら

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作家の心意気【Dr. 中島の 新・徒然草】(064)

六十四の段 作家の心意気子供向け小説「宝島」は、ロバート・ルイス・スティーブンソンが妻の連れ子に空想の地図をつくって毎日一話ずつ語って聞かせた話が基になっているそうです1)。連れ子のためにお話を作って聞かせるとは、なんて優しい継父でしょうか。でも、ホントに親切だけで毎日のお話ができるとは私には到底思えません。私の想像するところはこうです。「自分の頭の中には面白い物語がいっぱい詰まっているはず。どうにかしてこれを引き出せないものだろうか」などと日夜悩んでいたスティーブンソンが、たまたま結婚したファニー・オズボーンの連れ子のロイド少年が冒険物語好きだったので、「しめしめ、親切な継父を装ってこの子にお話を聞かせてやれば、小説は書けるし、妻にも喜ばれるしで一石二鳥じゃわい」と思ったんじゃないでしょうか。さて、昨年出席した学会の文化講演の演者が作家の塩野七生氏でした。彼女は『ローマ人の物語』という著作のあるベストセラー作家で、普段はイタリアに住みながら著作活動を続けており、時々日本に帰ってくるそうです。有名なヒポクラテスの誓いに触れて、「まあ立派なところだけ抜き出してありますねえ。本当は省略されているところが面白いんですよ。『患者が生きているうち支払いをしてもらえ』とか」などとやって、聴衆は大爆笑でした。塩野氏はイタリア人医師と結婚して息子さんがおられるようですが、こんなことも言っておられました。「外国人がね、日本のことを深く知りたいと思ったら、日本の女性と結婚するのが手っ取り早いですよね。ま、そういうことです」ローマ帝国を理解するためだけにイタリア人と結婚したとでもいうのでしょうか! まさか。「あなたたちは、患者に好かれようなんてことは考える必要はありません。治療方針にあれこれ迷ったなどというのは、御自分の中のことだけにしておきなさい。『僕はこう治療すべきだと思う』 それで十分です」私もようやく最近になってそう思うようになりました。「古代ローマでは、子供や若い兵士は一生懸命治療していましたが、年寄りの死は運命だと思って、治療していませんでした。私も物を書くことができなくなったら、もう用済みです」「あと5年生きたい。そして素晴らしい男達を描ききって死にたいと思います」塩野七生氏といえば何となく難しいローマ史の専門家のような印象を持っていましたが、この人は歴史家ではなかったんですね。ローマ時代の英雄たちに自分のイメージする男性像を映し込んで語る作家、そういう人なのかもしれません。最後に1句書くために 亭主も子供も 利用せよ 1) 松岡正剛の千夜千冊 0155夜「ジーキル博士とハイド氏」

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市中肺炎へのβラクタム系抗菌薬、単独療法でも有効/NEJM

 成人市中肺炎疑い患者へのβラクタム系抗菌薬単独療法は、マクロライド系抗菌薬との併用療法やフルオロキノロン系抗菌薬単独療法に比べ、90日死亡率に関して非劣性であることが示された。オランダ・ユトレヒト大学メディカルセンターのDouwe F. Postma氏らが、3群で約2,300例の患者を対象に行った試験の結果、報告した。NEJM誌2015年4月2日号掲載の報告より。90日死亡率を非劣性マージン3%で検証 市中肺炎が疑われ入院した患者(ICU以外)に対する経験的抗菌薬治療の選択について、エビデンスが少ない。Postma氏らは、3つの経験的治療戦略について、クラスター無作為化クロスオーバー試験を行った。 βラクタム系抗菌薬単独療法、βラクタム系抗菌薬・マクロライド系抗菌薬併用療法、フルオロキノロン系抗菌薬単独療法を、それぞれ4ヵ月ごとに交代で実施し、90日死亡率を比較。両側90%信頼区間を用いて、非劣性マージンは3%としてβラクタム系抗菌薬単独療法の非劣性について検証した。90日死亡リスク、併用療法+1.9ポイント、フルオロキノロン単独療法は-0.6ポイント 被験者は、βラクタム戦略期間656例、βラクタム・マクロライド戦略期間739例、フルオロキノロン戦略期間888例で、各戦略の順守率はそれぞれ93.0%、88.0%、92.7%だった。被験者の年齢中央値は70歳だった。 結果、補正前90日死亡率は、それぞれ9.0%、11.1%、8.8%だった。 intention-to-treat分析の結果、死亡リスクはβラクタム戦略よりも、βラクタム・マクロライド戦略が1.9ポイント高く(90%信頼区間:-0.6~4.4%)、一方フルオロキノロン戦略は0.6ポイント低く(同:-2.8~1.9)、βラクタム戦略の非劣性が示された。 なお、入院期間の中央値はいずれの戦略でも6日で、経口投与開始までの期間の中央値は、フルオロキノロン戦略で3日、それ以外の戦略では4日だった。

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BRCA遺伝子、変異型・部位の違いで乳がん・卵巣がんリスク異なる/JAMA

 BRCA遺伝子の変異型とヌクレオチド配列部位によって、乳がんや卵巣がんリスクが異なることが明らかにされた。米国・ペンシルベニア大学のTimothy R. Rebbeck氏らが、33ヵ国のBRCA1/2変異を持つ女性について行った観察研究の結果、報告した。これまで同遺伝子キャリアに関するがんリスクについては、限定的であり、研究グループは大規模な検討を行い、特有のがんリスクの特定を試みた。今回の結果を踏まえて著者は、「確証が得られれば、BRCA1/2変異のキャリアに対してリスク評価とがん予防への意思決定に寄与する知見となるだろう」とまとめている。JAMA誌2015年4月7日号掲載の報告より。BRCA1変異の約2万人とBRCA2変異の約1万2,000人を追跡 33ヵ国55ヵ所の医療機関を通じて1937~2011年(中央値1999年)間の、BRCA1変異(1万9,581例)またはBRCA2変異(1万1,900例)を持つ女性を特定し、観察研究を行った。 BRCA1/2の変異型、機能、ヌクレオチド配列部位と、乳がん・卵巣がんリスクを分析した。 また、乳がんと卵巣がんの相対ハザード比(RHR)も算定した。RHRが1より大きい場合には、乳がんリスクの増大が、1より小さい場合には、卵巣がんリスクの増大が示唆されるとした。BRCA1/2ともに乳がんで3つの多発領域を特定 その結果、BRCA1変異キャリアの女性のうち、乳がんの診断を受けたのは9,052例(46%)、卵巣がんは2,317例(12%)、乳がんと卵巣がんは1,041人(5%)、がんとの診断を受けなかったのは7,171例(37%)だった。 BRCA2変異キャリアでは、それぞれ6,180例(52%)、682例(6%)、272例(2%)、4,766例(40%)だった。 BRCA1変異については、乳がんについて3ヵ所の多発領域が見つかり、RHRは1.34~1.46だった。卵巣がんの多発領域についても1ヵ所が見つかり、RHRは0.62だった。 BRCA2変異についても、乳がんについて3ヵ所の多発領域が見つかり、RHRは1.63~2.31だった。また、卵巣がんでも複数の多発領域が見つかり、RHRは0.51~0.57だった。 なお、乳がんの診断については両遺伝子キャリアとも、年齢が若いことと関連していた。

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パーキンソン病はスマホで検出可能

 パーキンソン病は専門医による診断が不可欠であるが、これまで専門医の診断をサポートする遠隔非侵襲的客観テストはほとんどなかった。そこで英国・アストン大学のS Arora氏らは、スマートフォンを用いたパーキンソン病診断の有用性についてパイロットスタディを行った。その結果、スマートフォンを用いてパーキンソン病の症状を評価することは可能であり、診断サポートツールとして潜在的な価値があることがわかった。Parkinsonism & Related Disorders誌オンライン版2015年3月7日号の掲載報告。 本試験の対象者は、パーキンソン病患者10例と対照群10例。被験者は統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)を含めたベースライン評価をクリニックで行い、声・姿勢・歩行・指タッピング・反応時間を測定するためのスマートフォンアプリが入ったアンドロイド携帯を支給された。 被験者はスマートフォンを自宅に持ち帰り、1日4回5つのタスクを1ヵ月間実施した。試験期間中、週に1回パーキンソン病の専門医による遠隔医療が行われ、固縮とバランス評価を除いたUPDRSが評価された。5つのタスクの記録について統計的分析を行い、1)パーキンソン病の有無が判別可能か、2)UPDRSの運動領域の変化を予測できるか、を検討した。 主な結果は以下のとおり。・20例の参加者は試験期間中(平均34.4日)、自宅や地域で1日平均2.7回テストを行った(遵守率68.9%)。・5つのタスクの解析結果は、パーキンソン病患者と対照群とで異なっていた。・パーキンソン病の検出感度は96.2%(標準偏差[SD]:2%)、特異度は96.9%(SD:1.9%)であった。・UPDRS(範囲:11~34)の運動領域の変化予測における平均誤差は1.26(SD:0.16)であった。

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うつ病治療の助けとなるか、うつ病認知再評価ツール

 うつ病について、セルフガイドのWebベース介入は有望な結果を示すが、脱落率が高く、使用者との結び付きが低い。オンライン・ピア・サポート・ネットワークは、結び付きは強いが、さまざまな結果を示し、根拠に基づくコンテンツが不足している。米国・マサチューセッツ工科大学のRobert R Morris氏らは、Webベースのピア・ツー・ピアのうつ病認知再評価プラットホームを開発し、有効性の評価を行った。結果、同プラットホォームは、うつ病患者のうち、とくに自身で再評価テクニックを十分に活用できない人に有用であることが示されたという。検討の結果を踏まえて著者は、「さらなる研究を行い、長期的な有効性を調べ、また多様な集団が使用できるよう普遍化できないかを検討する必要がある」とまとめている。Journal of Medical Internet Researchオンライン版2015年3月号の掲載報告。 研究グループは、新たなWebベースのピア・ツー・ピア認知再評価プラットホームを開発し、評価を行った。プラットホームは根拠に基づくテクニックを促進するようデザインされおり、(1)プラットホームの反復使用により再評価が増え、うつ病が減る、(2)クラウドを通じた社会的相互関与が関わりを強化する、との仮説について検討した。 18~35歳の参加者をオンラインで集めて、治療群(「Panoply」、84例)またはアクティブ対照群[オンラインで筆記開示(express writing)を行う、82例]に無作為に割り付けた。いずれも、自動Webベースのプラットホームであった。参加者は、1週間に最低25分間、3週にわたってそれら割り当てられたプラットホームを使用するよう依頼された。いずれも、ストレスを感じていること、および状況について説明を送信することが必要だった。Panoply群の参加者は、送信後に(中央値9分後)、クラウドを介した再評価サポートを受けた。また、同群の参加者は、他の使用者によって提出されたストレスを感じている状況について、再評価の実践を行うこともできた。ベースラインと、3週時点でオンライン・アンケートを行い、抑うつ症状、再評価、固執思考について評価した。関わりの評価は、自己報告、セッション・データ、アクティブレベルにより行われた。 主な結果は以下のとおり。・Panoplyプラットホームの使用前と比べて使用後は、抑うつ(p=0.001)、再評価(p<0.001)、固執思考(p<0.001)が有意に改善した。・対照群も、抑うつ(p=0.02)、固執思考(p<0.001)は有意に改善したが、再評価は改善しなかった(p=0.45)。・介入後の、抑うつや固執思考の測定において、両群に有意な差はみられなかった。しかし、再評価スコアが、Panoply使用者は対照群と比較して有意に上昇した(p=0.02)。・また、治療の相互作用による群間の有意差も認められた。・うつ症状の高い人は、抑うつ(p=0.02)、固執思考(p=0.008)について、Panoply使用で、より大きなベネフィットを得たことが示された。・ベースラインで再評価の障害があった人は、抑うつ(p=0.002)、固執思考(p=0.002)について、Panoply使用で、より大きなベネフィットを得たことが示された。・対照の筆記開示ではみられなかったが、再評価の変化にはPanoplyの効果が介在し、これは抑うつ(ab=-1.04[SE 0.58]、95%信頼区間[CI]:-2.67~-0.12)、固執思考(同-1.02[0.61]、-2.88~-0.20)の両アウトカムにも影響を及ぼした。・試験からの脱落率は両群で同程度であった。一方で、Panoply群のほうが有意に使用頻度が高く(p<0.001)、使用者数も有意に多かった(p<0.001)。関連医療ニュース これからのうつ病治療はWebベース介入で変わるのか うつ病患者の疲労感を評価する新ツール スマホ版うつ病スクリーニングアプリの精度は  担当者へのご意見箱はこちら

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血栓吸引療法に何を求めるのか(解説:上田 恭敬 氏)-351

 本論文は、以前に行われた多施設、前向き、オープンラベル、無作為化比較対照試験のThrombus Aspiration in ST-Elevation Myocardial Infarction in Scandinavia (TASTE)trialの後に行われた、新たな多施設、前向き、オープンラベル、無作為化比較対照試験であるThe Trial of Routine Aspiration Thrombectomy with PCI versus PCI Alone in Patients with STEMI(TOTAL)trialの結果を報告したものである。 対象症例は発症12時間以内のST上昇型急性心筋梗塞であり、マニュアルによる血栓吸引療法の有効性を主要エンドポイントとして、180日以内の心血管死、心筋梗塞再発、心原性ショック、あるいはNYHA IV心不全の出現・増悪で評価し、安全性エンドポイントを30日以内の脳卒中で評価している。有効性の2次エンドポイントとして、ステント血栓症や標的血管血行再建を加えて評価しているが、いずれの有効性評価項目においても有意な差を認めなかった。しかし、脳卒中の発生が血栓吸引群で有意に多く、その差は6ヵ月後にさらに広がっていた。手技に関連したものとは考えられない長期にわたる脳卒中発生頻度の差が生じた理由については不明としている。有意差がついた項目として、70%未満の不完全ST-resolutionの頻度とDistal embolizationの頻度は、血栓吸引群で有意に低値となっていたが、これについて著者らは、臨床的な利益につながっていないとして、重要視することに否定的な意見を述べている。まず、血栓吸引療法にどのような効果を期待するかという点で、この試験には大きな問題があると考える。以前にも同様のコメントを記載したことがあるが「もともと血栓吸引療法をしない場合に、血栓の末梢塞栓やslow flow/ no flowが生じてSTの再上昇や梗塞サイズの増大を生じたと思われる症例はまれであり、さらにそれらを生じた症例中にはプラーク内容物の末梢塞栓が原因で、血栓吸引療法では予防できない症例も含まれていることを考慮すると、血栓吸引療法が単独で心機能保護に役立つ症例は非常にまれと思われ、死亡率低下にまで役立つ症例はさらにまれと思われる。ただし、末梢の血管構築がみえるようになることで、その後のPCI手技が容易になるために合併症が減るといった効果も、とくに未熟な術者に対しては期待される。さらに、特定のサブ集団では血栓吸引療法に有用性が示される可能性も残されていると考える。」。 ただし、特定の高リスク集団を対象としても、6ヵ月以内の死亡率を変えるような効果は期待できないだろう。実際、血栓の末梢塞栓やslow flow/ no flowが生じて、心エコー上明らかに心機能が低下する症例は認められるが、その影響としては、その後長期の間に心不全を生じる頻度が多くなることが想定される。もし、重度の労働に従事することが不可避な人であれば、心不全入院を繰り返して最終的には生命予後が短くなることが想定される。しかし、労作を制限して十分な薬物療法を受ければ一生日常生活には困らないかもしれない。  その程度の差を意味がないといえば、血栓吸引療法は不要といえるかもしれないが、左室駆出率で10~30%程度の差でも「よい方がいい」と考えれば、その効果を示すことは可能なように思われる。 残念ながら本試験では、心機能の指標に対する影響は示されていない。さらに、本試験では血栓吸引療法に起因するとは考えられない長期にわたる脳卒中発生頻度に有意な群間差を認めたことから、症例選択に何らかのバイアスが存在した可能性が大きく、その点においても結果をそのまま受け入れることはできない。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第19回

第19回:アルツハイマー病の治療監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 認知症は世界的に増加しており、2010年の時点で3,560万人の患者数と推定され4秒に1人発症しています1)。 全国平均とほぼ同じ年齢・職業分布の母集団を対象にした久山町研究での病理学的評価では認知症の内訳は増加傾向2)で、医療機関を受診しアルツハイマー病と診断される方も増加傾向3)です。アルツハイマー病は進行性疾患で個人のADLを著しく損ないます。また介護負担/経済的負担などから、その影響は罹患個人に留まらず急速に高齢化が進むわが国にとっては重要な社会的問題でもあります。認知症治療薬として1999年ドネペジルが日本/米国のFDA(食品医薬品局)で認可され、2011年に日本でメマンチンが認可され日本で認知症の治療に大きな影響を与えました。 しかし上記薬物治療はアルツハイマー病の進行を抑制できず症状改善もわずかです。10年の慢性経過に患者/家族/医療者が付き合っていくことが必要な疾患だと考えられます。薬剤治療以外の自然経過に関する教育、終末期ケア計画の相談などが大変重要です。また薬剤使用開始検討時は家族/介護者を交えて、そのわずかな効果や副作用の情報提供を行い、患者希望を聞いたうえで決断をすることが望ましいです。臨床的に改善がなければ薬剤中止を検討することも必要だと考えられます。 以下、American Family Physician 2011年6月15日号4)よりアルツハイマー病は最も多いタイプの認知症で、アメリカでは85歳以上の人の半数程度が罹患している。進行性の記憶障害と認知機能低下がその特徴である。病態生理は複雑で複数の要因が関与している。病理学的特徴として、アミロイド斑の蓄積、軸索の不溶性異常タウ蛋白出現、コリン作動性ニューロンのシナプスでのアセチルコリンの減少が認められる。アルツハイマー病に証明された予防法はない。ささやかな将来性があると考えられる予防法として高血圧治療、ω-3脂肪酸補充、運動、思考/分析を必要とする作業への参加が挙げられる。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬が治療薬の第1選択である。軽症から中等症の患者さんに対してわずかな認知機能改善が証明され、多くのガイドラインで軽症から中等度の患者さんで処方が推奨されている。Cochrane reviewでは、軽~重症の患者に対してプラセボと比較して、ドネペジル/ガランタミン/リバスチグミンを6ヵ月~1年間使用し、軽度の認知機能/臨床尺度の改善(ADAS-cog:認知機能評価方法で-2.7点)が認められたが、臨床的に著明な認知機能の改善が認められたと判断するにはADAS-cogで7点の差が必要であり、その効果は疑問の余地がある。より長期使用における効果はさらなる研究が待たれる。各製品では効果に大きな差は認められていない。副作用は、多いものとして嘔気/嘔吐/下痢で、めまい/混乱/不整脈は比較的よくみられる。NMDA受容体拮抗薬は耐用性良好で、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬とあわせてよく処方されている。多くのガイドラインでも中等症から重症の患者さんで単独使用/アセチルコリンエステラーゼ阻害薬との併用が推奨されている。Cochrane reviewで中等度~重症患者に対して、6ヵ月以上のメマンチン20mg/日使用でわずかな認知機能改善(SIB:認知機能評価で3点)/わずかなADL改善(ADCS-ADLで1.3点)が認められた。また、軽度~中等度患者で認知機能はADAS-cogで1点改善で統計的に有意であった。臨床的に著明な認知機能の改善が認められたと判断するには、SIBで10点の差、ADCS-ADLでは5点の差が必要であり、こちらも効果は疑問が残る。メタアナリシスでは軽度患者に対しては無効であり、中等度患者には効果に一貫性がないと結論付けられた。軽度~中等度患者ですでにドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンを使用中の人にメマンチン20mg/日で24週間追加投与した群とプラセボを投与した群では、統計学的に有意な改善を認めなかった。高齢の認知症患者さんで非定型抗精神病薬の使用は行動上の症状を改善するが、死亡率増加と関連性がある。セレギリン、テストステロン、イチョウの治療効果に関しては相反するエビデンスが混在する結果となっている。ビタミンE、エストロゲン、NSAIDSは治療の利益に関するエビデンスはない。ケア方針で大事なことは、認知症に関する複数のガイドラインで共通して強調されているように、臨床経過の患者教育と家族への教育、早期の地域支援団体への紹介(地域包括支援センターなど)である。また、自動車運転や終末期ケアなどの法的問題を取り扱うことも大事である。薬物治療開始の相談時は、患者と介護者を含めた話し合いとすべきで、薬物使用によるわずかな利益、副作用、費用を相談すべきである。Mini Mental State Examinationなどで認知機能をモニタリングし最大限の薬物治療を行っても顕著な改善が認められないときは、医師は患者さん/家族との薬物治療継続中止の相談を検討すべきである。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Marc wartmann. Alzheimer’s Research & Therapy. 2012;4:40. 2) 本田 祐之, 岩城 徹. 病理学から見た認知症の原因疾患と疫学-久山町研究から-. 最新医学. 2013;68:754-760. 3) 厚生労働省. 精神疾患のデータ. 知ることから始めようみんなのメンタルヘルス総合サイト.(参照 2015.4.15) 4) Winslow BT, et.al. Am Fam Physician. 2011;83:1403-1412.

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【GET!ザ・トレンド】ステントで脳血栓を回収 脳血管内治療はここまで来た

脳血管内治療がさらに進歩している。今回は、同治療の第一人者である神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科部長 坂井 信幸氏に、その最新情報を聞いた。坂井氏によれば、脳動脈瘤や頸動脈などを含め脳血管内治療は、いまや年間2万件以上実施されているという。また、脳血管内治療専門医として認定された医師はおよそ950人だが、毎年100人程度増加しており、多くの医師が取り組み始めていることがわかる。脳血管内治療の進化脳の血管は細く屈曲蛇行し、なおかつデリケートで破れやすい。当然、挿入機器は細く柔らかく長いものになる。柔らかいものは押し込みにくいため、技術導入初期ではカテーテルの誘導そのものに苦労していたそうだ。その後の機器の開発は著しく、マイクロカテーテルは細く、滑りやすく、安全に脳血管に届くよう改良され、同時にガイドワイヤーなどの機器も大きく進化した。さらに、心臓などで用いられるステントも脳内に適用できるようになった。注目される局所線溶(再開通)療法この脳内ステントの登場により、さらに注目を浴びているのが局所線溶(再開通)療法だ。急性虚血性脳血管障害では、従来tPAで詰まった血栓を溶かすしか手段がなく、tPAの適応外症例や無効例には対応できなかった。tPAで対応できないこうした血栓を、血管内から挿入したワイヤー型やステント型のデバイスで回収し、再開通させるのが局所線溶(再開通)療法である。本邦では、中心循環系塞栓除去用カテーテル(Merciリトリーバー)が2010年に、ステント型血栓除去用カテーテル(Solitaire FR)が昨年(2014年)保険適用となっている。坂井氏の経験では、どちらも非常に速く血栓を確保し再開通できるという。この血管内カテーテル追加治療の有用性を確認すべく、いくつかの比較試験が最近行われている。まず昨年(2014年)12月にMR CLEAN1)試験が発表された。次いで本年(2015年)2月、ESCAPE2)、EXTEND-IA3)というSolitaire FRを用いた2つの無作為化比較試験の結果が発表された。ESCAPE試験においては、Solitaire FR追加群の機能的自立率はtPA単独群に比べ統計学的にも有意に改善(53%vs. 29%)。脳卒中による死亡率もtPA単独群に比べ2分の1近くとなり(10%vs. 19%)、統計学的にも有意に低減していた。(血管内治療の追加で脳梗塞の予後改善)。EXTEND-IA試験においては、tPA単独群に比べ機能的自立回復率が有意に改善(71% vs 40%)した。この両試験の結果は3月の日本脳卒中学会(STROKE2015)でも非常に大きな話題となったという。すべての適応患者に行われるべき局所線溶(再開通)療法これらの試験から局所線溶(再開通)療法の有用性が明らかとなった。可能な限り多くの適応患者にこの治療を受けてもらうため、日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会は3学会の合同で所定の適正使用指針を定め、脳血管内治療専門医および、それに準じる経験を有する医師に対しても広く情報提供している。とはいえ、tPA自体もすべての適応患者に用いられているわけではなく、おのずと次段階で用いられる局所線溶(再開通)療法を受けられる患者はさらに少なくなってしまうのが現状である。急性期の脳梗塞患者を診療する医師は、まずtPA適応患者を見極めて、必要であれば速やかに専門施設に送っていただきたいと坂井氏は述べる。機器の開発により、脳血管内治療の適応は今後ますます拡大していくと予想される。これらの疾患に関わるすべての医療者は、脳血管内治療の最新情報を収集し診療に実践していく必要があるだろう。脳血管障害の医療を担う若手医師へのメッセージ1)Berkhemer OA, et al. N Engl J Med. 2015;372:11-20.2)Goyal M, et al. N Engl J Med. 2015;372:1019-1030.3) Campbell BC, et al. N Engl J Med. 2015;372:1009-1018.

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第2版 レジデントのための やさしイイ呼吸器教室 -ベストティーチャーに教わる全27章

先生に教えてもらって、呼吸器科がもっと好きになりました!日々の講義や実習指導を行う中で見えてきた「みんながつまずくポイント」を、著者ならではのティーチングセンスでわかりやすく解説する本書。学会などで売上1位の好評書が早くもバージョンアップして登場です。大きく変わったところとしては、「画像診断」の章をより初心者向けに構成し直し、「間質性肺炎」の項目は最新の分類に書き改め、踏み込んだ事柄まで記載。「肺炎」の項目はすべてのガイドラインを盛り込んで大幅に加筆し、新たに「肺炎ガイドラインによるエンピリック治療」を独立させました。これから呼吸器内科をローテートする方はもちろん、呼吸器診療のエッセンスを身につけたい他科の先生方にもお勧めの1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。   第2版 レジデントのための やさしイイ呼吸器教室-ベストティーチャーに教わる全27章 定価 4,500円 + 税判型 B5変型判/2色刷頁数 512頁発行 2015年4月著者 長尾大志(滋賀医科大学呼吸器内科)Amazonでご購入の場合はこちら

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切除不能大腸がん、CAPOX-B後の維持療法でPFS延長/Lancet

 切除不能大腸がんの1次治療において、カペシタビン+オキサリプラチン+ベバシズマブ(CAPOX-B)による導入療法に加えカペシタビン+ベバシズマブによる維持療法を行うと予後が改善することが、オランダ・アムステルダム大学のLieke H J Simkens氏らオランダ大腸がん研究グループ(DCCG)が実施したCAIRO3試験で示された。切除不能大腸がんに対する化学療法薬の間欠投与は持続投与に比べて生存期間が劣らず、OPTIMOX1試験ではフルオロウラシル+ロイコボリンの継続投与下にオキサリプラチンを休薬し、病勢進行(PD)後に再投与しても生存期間は持続投与と同等であることが報告されている。一方、分子標的薬であるベバシズマブは、PD後も継続的に投与することで予後の改善をもたらすことが示唆されている。Lancet誌オンライン版2015年4月7日掲載の報告より。維持療法の意義を無作為化試験で評価 CAIRO3試験は、切除不能大腸がんに対する導入療法後のカペシタビン+ベバシズマブによる維持療法の意義を評価する非盲検無作為化第III相試験(DCCGの助成による)。対象は、年齢18歳以上、全身状態(WHO PS)が0/1の未治療の切除不能大腸がんで、CAPOX-B(1サイクル3週)を6サイクル施行後にRECIST判定基準で病勢安定(SD)以上と判定された患者であった。 被験者は、カペシタビン+ベバシズマブによる維持療法(1サイクル3週)または経過観察を行う群に1対1の割合で無作為に割り付けられ、9週ごとにCTによる病変の評価が行われた。病勢進行(PD)となった患者には、両群ともに2回目のPDとなるまでCAPOX-Bが再導入された。無作為割り付け時から初回PDまでの期間を初回無増悪生存期間(PFS1)、2回目のPDまでの期間をPFS2と定義した。主要評価項目はPFS2とし、副次評価項目はPFS1などであった。 2007年5月30日~2012年10月15日までにオランダの64施設に558例が登録され、維持療法群に279例が、経過観察群にも279例が割り付けられた。それぞれ279例、278例がITT解析の対象となった。フォローアップ期間中央値は48ヵ月であった。オキサリプラチン再導入率は47%、耐用性も良好、QOLは保持 PFS1は、維持療法群が8.5ヵ月であり、経過観察群の4.1ヵ月に比べ有意に延長した(層別化ハザード比[HR]:0.43、95%信頼区間[CI]:0.36~0.52、p<0.0001)。PFS1後に維持療法群の47%(132例)、経過観察群の60%(168例)がCAPOX-Bの再投与を受け、全身療法を受けなかったのはそれぞれ16%(45例)、11%(31例)であった。 PFS2も、維持療法群が11.7ヵ月と、経過観察群の8.5ヵ月に比し有意に延長した(層別化HR:0.67、95%CI:0.56~0.81、p<0.0001)。CAPOX-B中止の主な理由はPDまたは死亡(維持療法群:79%、経過観察群:67%)で、PFS1後の施行数中央値は両群とも6サイクルであった。また、再CAPOX-B療法の奏効率は維持療法群が0%、経過観察群は17%で、最良の効果がSDの患者の割合はそれぞれ69%、62%だった。 CAPOX-B以外の治療を受けた患者を含む全体の2回目のPDまでの期間は、維持療法群が13.5ヵ月、経過観察群は11.1ヵ月(層別化HR:0.68、95%CI:0.57~0.82、p<0.0001)と有意差がみられたが、全生存期間(OS)中央値はそれぞれ21.6ヵ月、18.1ヵ月(層別化HR:0.89、95%CI:0.73~1.07、p=0.22)であり、有意な差はなかった。 事前に規定されたサブグループ解析では、ほとんどのサブグループでPFS2、PFS1、全体の2回目のPDまでの期間が維持療法群で良好であった。割り付け前の導入CAPOX-B 6サイクルの奏効例(CR/PR)およびSD例のいずれにおいても、PFS2、OSは維持療法群で有意に優れた(それぞれ、p<0.0001、p=0.0002)。 維持療法は良好な耐用性を示したが、Grade 3/4の有害事象の発症率は維持療法群が60%であり、経過観察群の34%に比べ有意に高かった(p<0.0001)。維持療法群で頻度の高いGrade 3/4の有害事象として、手足症候群(23 vs. 0%、p<0.0001)、感覚性神経障害(10 vs. 5%、p=0.0501)、高血圧(24 vs. 18%、p=0.0582)が認められた。 QOLは維持療法中に増悪しなかったが、経過観察群でわずかに改善したため両群間に有意な差がみられたものの、その差は臨床的に意義があるとされる閾値を十分に下回っていた。 著者は、「CAPOX-B 6サイクルでSD以上が達成された患者に対するカペシタビン+ベバシズマブ維持療法は、切除不能大腸がんの1次治療における標準治療となる可能性がある」と結論付けている。

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肺炎球菌ワクチン 接種間隔はどのくらい?

 インフルエンザの時期が過ぎ、花粉症の季節となった。一般的に肺炎は冬に多いが、高齢者の肺炎リスクは年間を通じて高いため、引き続き注意が必要である。先日、本サイトに高齢者肺炎に関する記事を掲載したところ、大きな反響があった。 肺炎の原因である肺炎球菌感染症の予防には、ワクチン接種が有効である。昨年(2014年)10月より、従来使用されてきた23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)の65歳以上の成人を対象とした定期接種が開始となった。また、同年6月から13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)が、65歳以上の成人に適応拡大になった。そのため、2種類のワクチンをどのように使い分けるか、併用接種する場合はどのような接種間隔が適切かなどを判断していく必要が生じている。そこで、今回は肺炎球菌ワクチンの接種間隔にフォーカスして、基本的な考え方を紹介する。 PPSV23とPCV13の接種間隔に関する考え方は、以下のとおり(図)1)。(1)PPSV23単剤で使用する:5年以上間隔を空けて接種する(2)PPSV23とPCV13を併用する:  (I)PPSV23を先に接種し、その後PCV13を接種する場合:1年以上間隔を空けて接種する  (II)PCV13を先に接種し、その後PPSV23を接種する場合:6ヵ月~4年以内に接種する図画像を拡大する 肺炎球菌ワクチンの接種によってすべての肺炎を予防できるわけではないが、リスクを小さくすることができる。ワクチン接種対象者の年齢や基礎疾患、経済的な負担を考慮したうえで適切なワクチンを選択し、適正に使用していくことが求められる。【参考】1)日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討 WG 委員会/日本感染症学会ワクチン委員会・合同委員会.65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方.日本感染症学会(参照 2015.4.17)

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プロ野球投手の上肢血流量、シーズン中は顕著に低下?

 これまで、プロ野球選手における投球腕の血流量を調査した研究はなかった。米国・イリノイ州立大学のKevin Laudnerらは、超音波を用いた血流量の測定を行い、投手の肩外転時の上腕動脈血流量が、1年間で有意に減少することを示した。今回の結果について著者は、「プロ野球投手の上肢血流が、シーズン中に損なわれている可能性が示唆された」とまとめている。Journal of Shoulder and Elbow Surgery誌オンライン版2015年4月1日号の掲載報告。 本研究には、プロ野球の投手20人および野手16人が参加した。 2シーズン連続して、春季キャンプの第1日目に超音波を用いて投球腕の上腕動脈血流量を測定した。測定は、立位で試験腕(投球腕)を静止させた位置(肩外転約0度)と、肩を外転させ刺激が加わる位置で行った。 主な結果は以下のとおり。・投手では、静止位置における血流量は、初回測定時と1年後測定時とで変化はなかった。しかし、刺激位置では初回測定時に比べ1年後は有意に減少した(p=0.009)。・野手では、どちらの位置でも血流量に有意な変化はみられなかった。

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抗精神病薬間で虚血性脳卒中リスクに違いはあるか

 従来抗精神病薬(CAP)と非定型抗精神病薬(AAP)で、虚血性脳卒中のリスクに違いがあるのか。韓国医薬品安全性・リスク管理研究所のJu-Young Shin氏らは、高齢者を対象にCAPとAAPの虚血性脳卒中リスクを比較した。その結果、CAPであるクロルプロマジンおよびハロペリドールの虚血性脳卒中リスクが高いことが示された。CAPとAAPにおける虚血性脳卒中リスクの差に対する関心が高まっているが、今回示された結果を受けて著者は、「所見は、AAPに伴う重篤な有害事象を考慮してCAPを高齢者に処方する場合、とくに注意を払う必要性があることを示すものであった」とまとめている。PLoS Oneオンライン版2015年3月19日号の掲載報告。 本研究では、CAPまたはAAPを投与した高齢患者の虚血性脳卒中リスクを比較した。新規にCAP(ハロペリドールまたはクロルプロマジン)およびAAP(リスペリドン、クエチアピン、オランザピンのいずれか)を処方した高齢患者7万1,584例を対象とした後ろ向きコホート研究を実施した。健康保険審査評価院(HIRA)によるNational Claims Databaseにおいて2006年1月1日から2009年12月31日までのデータを使用した。虚血性脳卒中発症例を特定し(ICD-10, I63)、AAP、CAPそして各抗精神病薬のハザード比(HR)を、多変量Cox回帰モデルを用い、リスペリドンを基準として算出した。 主な結果は以下のとおり。・合計7万1,584例のうち、リスペリドンが2万4,668例、クエチアピンが1万5,860例、オランザピンが3,888例、ハロペリドールが1万9,564例、クロルプロマジンが7,604例に処方されていた。・クロルプロマジン処方例のリスクがかなり高く(HR:3.47、95%信頼区間[CI]:1.97~5.38)、次いで、ハロペリドール(同:2.43、1.18~3.14)、クエチアピン(1.23、0.78~2.12)、オランザピン(1.12、0.59~2.75)の順であった。・クロルプロマジンの150日以上の長期処方は、それ以下の短期間投与に比べリスクが高かった(HR:3.60、95%CI:1.83~6.02)。・クロルプロマジンおよびハロペリドール使用例は、リスペリドン使用例に比べ、虚血性脳卒中のリスクが大きかった。関連医療ニュース 認知症への抗精神病薬、用量依存的に死亡リスクが増加 認知症への抗精神病薬使用は心臓突然死リスクに影響するか 抗精神病薬は統合失調症患者の死亡率を上げているのか  担当者へのご意見箱はこちら

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積木崩し真相

今回のキーワード非行(素行障害)安全基地承認進化心理学あまのじゃく(受動攻撃性)ヤンキー「あの人はなんでいつもあまのじゃくなの?」皆さんは、職場で「あの人はなんであの人はいつもあまのじゃくなの?」と困ったことはありませんか? 世の中には、むやみに反対する人が必ずいます。本来は、このような反抗の心理は、特に思春期(反抗期)に高まり、成人すると目立たなくなります。小児科や小児精神科では、両親からの思春期相談として、その接し方の相談がなされることもよくあります。なぜ反抗するのか? そもそもなぜ反抗は「ある」のか? 今回は、反抗の心理の過剰な状態である非行(素行障害)をテーマに、反抗を進化心理学な視点からとらえ直します。また、反抗の文化としての「ヤンキー」も掘り下げます。そして、反抗的な人への接し方を探っていきます。今回、取り上げるのは、2005年に放映されたドラマ「積木くずし真相」です。これは1980年代に放映された「積木くずし」のその後の真相を盛り込んだリバイバルです。当時、社会問題になっていた「家庭内暴力」や「シンナー中毒」によって、家族という「積木」が音を立てて崩れていくさまが生々しく描かれています。そして、登場人物たちが再び家族の「積木」を積み上げていこうとする姿勢に私たちは心を動かされます。原作は娘との実体験を父親が書いたもので、ドラマはその原作に脚色を加えたフィクションになっています。「積木」はどう崩れたのか?―「うっせんだよ!」主人公の朋美は中学1年生。それまで母親の言うことをよく聞く素直で明るい良い子でした。しかし、不良グループから暴行を受けたことをきっかけに、彼女は様子が変わっていくのです。朋美の初めての朝帰りのシーン。「眠い、私もう寝るよ」と言い部屋にこもろうとする朋美に、母親はあわてて「第一、あなた学校じゃない!」「ママ、怒ってるんですからね。(部屋のドアを)開けなさい!」と強く言い続けます。すると、朋美は「うっせんだよ!」と叫びます。通常の思春期の反抗は、挨拶や返事をしないなど親を無視するレベルです。しかし、朋美はそのレベルを遥かに超えてしまいました。その後に、威圧的な風貌、不登校、家出、家庭内暴力、暴走族への参加、万引き、シンナー乱用などあらゆる非行にのめり込んでいきます(素行障害)。そんな朋美の豹変ぶりに、両親は訳が分からず、うろたえ怖じ気付くばかりです。「積木」はなぜ崩れ続けたのか?―「いじり過ぎましたね」朋美の非行はなぜエスカレートしたのでしょうか? いくつかのシーンから読み解いていきましょう。夜遊びをして繁華街にいる朋美を父親は無理やり家に連れ帰ります。朋美は「近藤(友人)、1人で家に帰れたかなあ」「あの子、一銭も持ってないんだよ」と友達を気遣います。しかし、父親は「夜にあんなとこをふらついているようなやつは友達でも何でもない」「おまえにはね、もっとふさわしい友達がいるはずだろう?」「おまえはね、あんな子とは違うんだよ」と説教をします。実際に、父親はその直前にその友達宅まで行って、その友達の母親に「お宅の娘がうちの朋美をたぶらかしている」と抗議していました。母親は「パパはね、(役者業で)テレビにも出てるし、みんなに知られている有名人なの」「あなたが変なことしたら、パパは仕事を続けられなくなるのよ」「そしたら私たちだって生活できなくなるじゃない」「それぐらい分かるでしょ?」とたしなめます。しかし、言い合いになり、最後に父親は朋美に平手打ちをします。ここから読み取れるのは、子どもが選んだ友人が認められていない、親が体裁や都合ばかり気にしている、親が暴力で子どもをコントロールしようとしていることです。つまり、親が先回りして子どもの考えや行動を認めないことです(過干渉による承認の欠如)。思春期になって、親が子どもの自己(アイデンティティ)を認めないと、子どもは精神的に不安定になりやすくなります。その1つの反応として、反抗がほどほどではなく、過剰になるのです。最終的に、警視庁の専門家に全てを打ち明けますが、その時、専門家から最初に一言「いじり過ぎましたね」と言われてしまいます。「積木」はそもそもなぜ崩れたのか?―「産みたくないのに産んだんですから」朋美の幼少期のシーンを見てみましょう。朋美は体が弱く、入退院を繰り返していたため、両親と離れていた時間がかなりありました。朋美は、何本も爪楊枝が刺されたぬいぐるみを持って、「点滴ごっこ」と主治医の先生に言います。親との愛着形成の不足(反応性愛着障害)から共感性がうまく育まれていない可能性がほのめかされています。父親は、仕事の役者業に打ち込み、巡業で家を空けていることが多く、子育てへの介入はあまりありません。一方、母親は、自分自身が病弱なのに加えて、子育ての負担から気持ちに余裕がなくなり、夫に「あなたはものだけ与えて、たまにいい顔すればいいから楽よね」と当たり散らしています。そして、「産みたくないのに産んだんですから」と幼い朋美の前で言い放ってしまいます。また、先ほどの夜遊び後のシーンで、朋美が友達の家族を擁護すると、父親は「そんなに近藤(友達)がいいんなら、あのうちの子になりゃいいだろ!」と突き放しています。これらから読み取れるのは、幼少期の入退院の繰り返しによる情緒の不安定さ(ホスピタリズム)のリスク、父親の不在による母親の心理的な負担、両親が言い争いをして子どもが板挟みになっている(ダブルバインド)、自分は大切にされていない感覚(自己否定)、従わなければ愛されないという恐怖(条件付きの愛情)です。つまり、子どもに家族という心のよりどころがないことです(安全基地の欠如)。幼少期は、そんな親の気を引くために、必死で「良い子」を演じます。しかし、思春期は、親から心理的距離を取り、自分の考えで自分の行動を決める心理が高まります。この時期に、この心のよりどころがないと、子どもは精神的に不安定になりやすくなります。「良い子」の反動として、反抗がほどほどではなく過剰になる、つまりあえて「悪い子」になるのです。非行の心理とは?―(1)「今が良ければ良い」朋美の非行のきっかけとなった不良グループから暴行を受けた直後のシーンを見てみましょう。身も心もボロボロになって帰ると、家には誰もいません。もともと父親は巡業でほとんど家にいないのですが、その時、母親も「たまにはママも息抜きに出かけてきます」という書き置きを残していなかったのです。この時、朋美は「(暴行を受けたことを)言わない。絶対言わない」と心に誓います。後に、朋美は唯一心を開ける主治医の先生に「私が一番いてほしい時にいつもいなかった」と打ち明け、暴行の真相を告白します。さらに、「(暴行の真相を)パパとママが知ったらまたケンカになって、私のせいで離婚しちゃうかもしれない」「全部私のせいだ」「だからこのことは絶対に言っちゃいけないと思った」「一生誰にも言わずにいようって心に決めたの」「私はこのままでもいいと思った」「世間にもパパやママにも誤解されたままでもいいと思った」と打ち明けます。そして、笑顔で「大丈夫だよ先生。私は大丈夫」と言うのです。ここから読み取れるのは、常に緊張状態にある両親を離婚させない「良い子」として、自分がスケープゴート(生け贄)となっていることです。もともと自分は大切にされていないと思う心理(自己否定)から、「自分を大切にしない」(自己評価の低下)つまり「自分はどうなっても良い」「失うものは何もない」という心理(自己破壊性)や「今が良ければ良い」という心理(刹那主義)が高まっています。これが、非行の心理の根っこにあるものです。非行の心理は、よりどころがない満たされない心を手っ取り早く何かで満たすことです。朋美は、暴走族のような悪い仲間との絆やシンナーによる酔いで心を満たそうとしています。一般的な非行でも、特に女子は、心を満たすために、自分を安売りする援助交際や、気晴らしのための自傷行為(過量服薬・リストカットなど)をあまりためらわずにやってしまいます。非行の心理とは?―(2)「一人前(大人)に早くなりたい」朋美は、家出を繰り返し、派手な特攻服を着て暴走族に参加します。朋美の部屋は、たまり場となり、仲間たちとシンナーを吸い、我が物顔でやりたい放題をしています。原作では「ハンパ(中途半端)はしたくない」と言っています。ここから読み取れるのは、心のよりどころとして当てにできない家族に早く見切りを付けて、「ハンパ」ではない自分、つまり「一人前(大人)に早くなりたい」という心理が高まっています。その手段として、普通の子にはマネできない「すごいこと」をやってのけようとします。望ましいのは、学業やスポーツに打ち込むことです。しかし、それには努力と時間が相当にかかります。ですので、手っ取り早い「すごいこと」に飛び付きやすくなります。例えば、それは、派手な格好、飲酒、喫煙、セックスなどの大人の真似事です(逸脱行動)。さらには、薬物の乱用、バイクや車での暴走、万引きなどやってはいけないことです(反社会的行動)。彼らにとっては、悪いこと(非行)をあえてできる自分を周りに示すこと、そして見捨てられても大丈夫な自分を演出ことに意味があるのです。つまり、彼らは「普通の子」という型にはめられようとされればされるほど反発(反抗)するというわけです。家族の力とは? ―家族機能―表1これまで、朋美がなぜ非行に走ったのかを読み解いてきました。ここで、非行(素行障害)を防ぐためには何が大事なのかを大きく2つに分けて整理してみましょう。それは、「母性」と「父性」という家族の力です(家族機能)「母性」とは、無償の愛を注ぎ(無条件の愛情)、心のよりどころ(安全基地)となることです。この「母性」による見守りよって、子どもの「愛されたい」という心理(愛情欲求)が満たされ、そこから「自分は大切にされている」という共感性や信頼感が育まれ、「自分を大切にする」という自尊心が高まります。そして、相手を信じ頼ろうとする信頼感や相手を大切にしようという他者への尊敬が高まります。逆に言えば、心のよりどころ(安全基地)がないと、共感性や信頼感が充分に育まれず(反応性愛着障害)、人間不信に陥りやすくなります。朋美にも、幼少期の入退院から情緒の不安定さ(ホスピタリズム)による共感性の危うさがありました。「父性」とは、社会の一員として認めていくことです(承認)。この「父性」による幼少期のしつけ(ほめ叱り)によって、子どもの「期待に応えたい」という心理(承認欲求)が満たされ、ルールの学習や攻撃性のコントロールが高まります(規範意識)。こうして、自分は期待に応えているという自信や自尊心が高まります。しかし、親が叱ってばかり(厳格)の場合、子どもは叱られる不安におびえて、自信や自尊心は高まりません。逆に親がほめてばかり(溺愛)やほめも叱りもしない(放任)という場合、ルールの学習や攻撃性のコントロールができにくくなります(規範意識の欠如)。表1 家族機能 「母性」「父性」特徴安全基地(見守り)しつけ(ほめる+叱る)子ども愛されたい(愛情欲求)→自分は大切にされている(共感性、信頼感)→自分を大切にする(自尊心)期待に応えたい(承認欲求)→ルールの学習や攻撃性のコントロール(規範意識)→自分は期待に応えている(自信、自尊心)→相手を信じ頼る(信頼感)、相手に期待する→相手を大切にする(他者尊敬)非行(素行障害)の危険因子―表2一般的な非行(素行障害)の原因をまとめましたが、ここでさらに広げて、非行の危険因子を、個体因子(生物学的因子)と環境因子に整理してみましょう。個体因子(生物学的因子)としては、衝動性(ADHD) 、共感性の欠如(広汎性発達障害)、知的能力の制限(知的障害)などが挙げられます。特に、これらの個体因子は、これだけでは非行(素行障害)を引き起こしにくく、環境因子と絡み合うことで非行のリスクを高めます。環境因子としては、非行の原因でもすでに触れました。それは、心のよりどころ(安全基地)がないこと、子どもの考えや行動が尊重(承認)されないこと、つまり家族の力がうまく発揮されていない状況と言えます(機能不全家族)。また、原作では、「殴られるくらいなら、殴る方の仲間に入ってやれと思って先輩の仲間に近づいた」と朋美が友達に話しています。ここからも分かりますが、不良グループに繰り返し暴行を受けるという体験や親から虐げられる体験(虐待)は、不適切なモデルを学習しやすくなります(モデリング)。さらに、父親が「積木くずし」を出版したことで、朋美は「積木の子」というレッテルを張られ、普通の就労が難しくなり、悪の道から抜けられなくなっていきます(ラベリング)。表2 非行の危険因子個体因子(生物学的因子)環境因子衝動性(ADHD)共感性の欠如(広汎性発達障害)知的能力の制限(知的障害)機能不全家族承認の欠如→規範意識の欠如安全基地の欠如(反応性愛着障害)モデリングラベリング「積木」はどうやって元に戻すのか? ―家族機能の回復絶望的になった両親は、ついに警視庁の専門家に相談をします。そこで、専門家の先生から5つの約束事とシンナーを現場で見つけた時の対応が提案されます。親の方から話し合いをしない。子どもから話してきたら愛情を持って、相づちを打つだけ。親の意見は言わない。交換条件を出さない。相手の条件も受け入れない。他人を巻き込まない。どんなに悪い友達でも、その友達や親に抗議をしたり電話をかけない。日常の挨拶は、子どもがするしないにかかわらず、「おはよう」「おかえり」「おやすみなさい」などは親の方からきちんとする。子どもが応じなくても、叱ったり小言を言ったりしない。友達からの電話連絡は、内容のいかんにかかわらず、事務的に正確に本人に伝える。シンナーを吸っている現場を見つけたら取り上げる。ただし絶対に怒らない。その提案は自分たちがやってきたこととは真逆であることに両親は気付き、打ちのめされます。両親が戸惑っていると、専門家の先生はさらに付け加えます。「親が怒ってシンナー止められるんだったら、シンナー吸ってる子なんかいません」「あれは本人が止めようと思わない限り、絶対に止められないんです」「もし万が一のことがあればそれがお子さんの寿命です」と。これらの提案から読み取れることは、2つです。1つは、本人を叱ったり小言を言ったりせずにそばで見守ることで、本人が大切にされていること、家族が一番安心で安全な場所であることを示すことです(安全基地)。例えば、朋美の初めての朝帰りのシーンを振り返ってみましょう。母親は学校に行けと焦って連呼していました。しかし、そうではなく、一呼吸入れてどっしり構えて「とても心配しているよ」「あなたは大事なんだから」と伝えることです。実際に母親は、朋美の成人後に「ママの子どもに産まれてきてくれてありがとう」と言っています。もう1つは、本人を一人の大人、個人として認め、本人の生活スタイルを本人の自由にさせ、責任感を持たせることです(承認)。本人の世界(自己)を尊重(承認)すると同時に、シンナー乱用、暴力、万引きなどの絶対にやってはならないことについては、感情的にならず、社会のルールにのっとって接することです。警察への通報もためらわないことです。こうして、本人がルールを守ることで本人をさらに認めていくことです(承認)。もちろん死んでしまったらそれがその子の寿命とする割り切り方は、そんなに簡単にはできるものではないでしょう。しかし、そうしなければならないくらいに、この家族の関係(家族機能)は追い詰められていたのです。さらに、ストーリーの後半で描かれていることとして、親が何かに一生懸命に取り組んで生き生きと楽しんでいる背中を見せることです(モデリング)。朋美は、成人後に「積木くずしの娘なんてどこも雇ってくれないわよ」「積木くずしを逆手に取って恥さらして生きていくしかしょうがない」と父親に言います。父親も、世間のバッシングから職を失いかけていました。しかし、父親の幼馴染みから「稲ちゃん(父親)が立ち直れば朋美ちゃんも絶対に立ち直れる」と励まされたことで、父親は立ち直り、役者業に励みます。そして、朋美もその姿を見て立ち直るのです。親が言葉であれこれ言うのではなく、実際に良いお手本(モデル)をやって見せ続けていることが、悪いお手本に子どもの目を向けさせにくくなるのです。表3 非行の心理の特徴とその対応 刹那主義逸脱行動の演出特徴もともと自分は大切にされていない(自己否定)→自分を大切にしない(自己評価の低下)→自分はどうなっても良い(自己破壊性)→今が良ければ良い(刹那主義)家族が心のよりどころとして当てにできない(信頼感の欠如)→家族に見切りを付ける→一人前(大人)に早くなりたい→その手段として普通の子にはできないすごいことをやる→見捨てられても大丈夫な自分を演出する対応見守ることで、本人が大切にされていること、家族が一番安心で安全な場所であることを示す(安全基地)本人を一人の大人、個人として認め、自由と責任感を持たせる(承認)親が何かに一生懸命に取り組んで生き生きと楽しんでいる背中を見せる(モデリング)反抗はなぜ「ある」のか?これまで、「なぜ反抗するのか?」という反抗のメカニズムを解き明かしてきました。それでは、そもそもなぜ反抗は「ある」のでしょうか?その答えを進化心理学的に考えれば、反抗は、親から独り立ちするために必要な心理だからです。反抗は大人になるための証とも言えます。本来、多くの動物は、生まれ出たらすぐに独りで生きていきます。ところが、人間は、養育の期間(幼少期)が圧倒的に長く、その期間に親に従順であることで生存率が高まります。そして、脳の発達が90%を超える8~10歳頃から少しずつ親に反抗していくことで、独り立ちして繁殖率を高めます。逆に言えば、反抗の心理がなければ、いつまでも親から離れていかなくなり、子孫を残せないということになります。子孫を残せない種は存在しないです。思春期の反抗とは、もともとあるものです。視点を変えれば、反抗とは、子どもが親の言う通りにならなくなったことを好ましく思わない親側の発想と言えます。本来は、ほどほどの反抗で収まるはずです。しかし、これまで触れてきた原因や危険因子によって反抗の心理が過剰になると、親だけでなく学校を含む世の中(社会)に対してまで反抗的になり、非行に走るのです(素行障害)。反抗的な人とは?―二面性―表4本来は、実際に大人(20歳)になったら、反抗の心理は低まります。なぜなら、社会的な責任がもう反抗して自分が大人であることをアピールしなくても大人になってしまっているからです。しかし、大人になっても反抗の心理が残り、行動パターンとなっている場合があります。それは、不平不満を言い続けるあまのじゃくように消極的(受動的)な反抗(攻撃)を繰り返す性格です(受動攻撃性)。これは、さきほど触れた安心感(安全基地)や自尊心(承認)が充分に満たされていないため、相手(社会)への敬意が払えず、自分が損をすることに敏感になっているためです。ただ、あまのじゃくは裏を返せば、問題意識が高いとも言えます。つまり、反抗の心理には、マイナス面だけでなく、プラス面として見ることもできるということです。特に、プラス面として、旧来の価値観(安全基地)では満たされないために、見切りを付け、新しい価値観(安全基地)を探索しようとする心理とも言えます。また、反抗の行動パターンが、法律に触れるレベルで固定化する場合もあります。それは、反社会的行動を繰り返す犯罪者の性格です(反社会性パーソナリティ障害)。彼らは、不良グループ→暴走族→暴力団や犯罪集団などの反社会的勢力というアウトローな道を歩み続けます。これも、さきほど触れた共感性や信頼感が充分に育まれていないため、相手(社会)を大切に思えず、自分が損をしないために相手(社会)を利用しようとするためです(搾取性)。表4 反抗の心理の二面性マイナス面プラス面あまのじゃく、へそ曲がり、ひねくれクレーマー、言いがかり、揚げ足取り斜に構え、皮肉屋、辛辣、毒舌反逆児高い問題意識、観察眼反骨精神、革新、改革、革命パラダイムメーカー、パイオニアハングリー精神ヤンキーとは? ―文化としての反抗さきほど反抗の心理で触れました一人前に見せるために「すごいこと」をする文化があります。それが、ヤンキー文化です。ヤンキーとは、もともとはアメリカ人(yankee)の金髪などの格好を真似た不良に由来するという説があります。さらに遡れば、伝統的な農村にあった年齢階梯制の「若い衆」に由来します。それが、戦後の都市化によってヤンキー文化として形を変えていったのです。それでは、このヤンキー文化を、彼らが好きな言葉である「舐めんな」「気合い」「絆」の3つから解き明かしてみましょう。そして、その二面性を考えてみましょう(表5)。(1)「舐めんな」―強さへの葛藤1 つ目は「舐めんな」です。これは、相手に舐められない、つまり「すごい」と思われるために、周りを威嚇する強そうな格好や行動をすることです。そのためには、普通の人とは違ったことをする必要があります。それが、彼らの独特のファッションやキャラクターを生み出しています。例えば、ファッションとしてはリーゼント、サングラス、改造学生服、特攻服、革ジャン、改造車(いわゆるヤン車)などです。これらの光るもの(発光性)や尖っているもの(屹立性)は、とにかく目立ち、人目を引くことに意味があります。その一方で、やり過ぎにより、悪趣味(バッドセンス)になっているとも言えます。また、キャラクターとしては、オラオラ系、ちょいワル、ツヨメなどです。日頃から周りに威圧的な態度を取り、トラブルになった時は、睨んで威嚇して「かかって来いよ」と挑発します。ただし、彼らは、実際に相手がかかって来て殴り合いになることを望んではいません。あくまで彼らの目的(心理)は、法に触れないぎりぎりを渡り歩いて「ワルっぽさ」や「ヤバそうな雰囲気」を「武勇伝」として周りに誇示することです。なぜなら、本当のワル(犯罪者)になることは周りから蔑まれるのを彼らは知っているからです。そもそもなぜ彼らはそこまで強がるのでしょうか? それは、彼らに強さへの憧れ(葛藤)があるからです。そして、この心理は、さきほど述べた非行の危険因子によって強まります。進化心理学的に考えれば、野性的な強さの誇示は、彼らの本能的な生存戦略であり繁殖戦略であると言えます。これは、ちょうどクジャクの羽がきれいな理由に通じるものがあります。他の同性よりも目立って強そうに見えることは、同性への牽制と異性へのセックスアピールとなり、生存率や繁殖率を高めるからです。(2)「気合い」―承認への葛藤2つ目は「気合い」です。これは、「すごいこと」をしようとするための意気込みです。例えば、「ビッグになる」「グレートになる」「成り上がり」「パナイ(半端じゃない)」という言い回しです。ただし、これらの言葉には、意気込みはとても感じられるのですが、具体的ではなく、中身が見えません。実は、彼らにとって中身や結果はそれほど重要ではないのです。その裏付けとして、彼らが「すごいこと」を意気込みつつ、同時に「ありのまま」「本音でぶつかる」という言葉も好きだと言うことです。彼らは現状肯定的で迎合的でもあるということが読み取れます。そもそも本当にビッグになる人は、揺るがないビジョン(中身)を持って、本音と建て前をうまく使い分けて出世して、世の中を変えていく人です。つまり、ヤンキーの彼らにとっては、「何を(what)やっているか」ではなく「どう(how)やっているか」、つまり普通ではない生き方という美学が大切なのです。そもそもなぜ彼らはそこまで意気込むのでしょうか? ほどほどではだめなんでしょうか? それは、彼らに「すごいこと」をして認められること(承認)への憧れ(葛藤)があるからです。さきほどの非行の心理でも触れましたが、期待に応えたいという心理(承認欲求)が幼少期に十分に満たされてこなかったという現実があります。そこから、「すごいこと」をして周りを見返したい、つまり期待に応えたいという心理(承認欲求)が人一倍強いのです。(3)「絆」―安全基地への葛藤3つ目は、「絆」です。これは、家族や仲間との結び付きを過剰に意識することです。本来、思春期は、親から離れて、同性同年代の仲間(ギャング)をつくる時期(ギャングエイジ)です。そこで、自分と相手(社会)との距離感を探っていきます(アイデンティティの確立)。そして、成人期には、反抗の心理が低まり、親とほどほどの良い関係が再び築かれていきます。ところが、反抗の心理が強い場合、思春期に親や世の中(社会)に過剰に反抗します。その間、仲間との結び付きを強めます。そして、成人期になると、親との関係は両極端のパターンに分かれます。一方はそのまま親と絶縁するパターン。もう一方は、過剰に親思いになるパターンです。そのまま絶縁するパターンは分かりやすいですが、逆になぜ彼らは過剰に親思いになるのでしょうか? なぜほどほどに親思いにならないのでしょうか? それは、彼らに心のよりどころ(安全基地)への憧れ(葛藤)があるからです。さきほどの非行の心理でも触れましたが、愛されたいという心理(愛情欲求)が幼少期に十分に満たされてこなかったという現実があります。自分の味方がほしいという心理が人一倍強いのです。その憧れ(葛藤)が、反抗の心理が低まる成人期には、大きな揺り戻しとなり高まるのです。また、この揺り戻しにより、世の中(社会)に対しては、逆に伝統的な保守派になります。実際に、成人したヤンキーの彼らは、地元愛や愛国心が強い人が多いです。これは、さきほど触れた彼らの現状肯定的で迎合的な態度につながります。心のよりどころへの執着が、親から地元、国家へと広がっていることが分かります。さらに、心のよりどころは、動物や子どもに向けられやすいです。例えば、ヤンキーは猫に優しくします。その姿を見ると私たちはそのギャップに驚き、心温まるかもしれません。しかし、よくよく考えると、ヤンキーだからこそ猫に優しいという可能性も考えられます。その理由は、複雑な家庭環境で生き抜いてきた彼らの心の底には大人の人間への不信感があるからです。一方、子どもや動物は、無邪気で純粋なため、安心して接することができるからです。ヤンキーは、人間関係に葛藤があるからこそ、人が好きです。人助け(絆)が好きです。ヤンキー文化は、モノ(二次元)が好きないわゆる「オタク文化」とは対照的であると言えます。オタクが頭でっかちなのに対して、ヤンキーは「心でっかち」と言えそうです。ヤンキー上がりの人が、一見意外な介護士や看護師などの対人援助職に就くことが多いのも納得がいきます。進化心理学的に考えれば、心のよりどころへの憧れから、早く結婚し早く子どもをつくり新しい自分の家族をつくることは彼らの繁殖戦略と言えます。実際には、結婚が長続きしないカップルが多いのも現実ですが、その機能不全家族で育つ彼らの子どもが再び同じ心理を持つことで、世代間連鎖していくことも考えられます。さらに、仲間(集団)を大切にして仲間(集団)のために一生懸命になる心理は、保守派として世の中(社会)の安定に大きく貢献している点で集団の文化として生存戦略が高いとも言えます。表5 ヤンキー文化の二面性 マイナス面プラス面強さへの葛藤悪趣味目立つ承認への葛藤中身が薄い美学安全基地への葛藤親との葛藤家族愛、地元愛反抗的な人にどう接するか?以上の反抗の心理を踏まえて、反抗的な人、例えばあまのじゃく(受動攻撃性)やヤンキーにどう接するかを考えてみましょう。私たちは、ついその人の言動そのものに目が行きがちです。しかし、そもそも反抗的な人がなぜあまのじゃくやヤンキーなのかを理解していると、より良いコミュニケーションが見えてきます。例えば、その人が部下なら、単純にその人の反抗的な態度を叱って力で抑えてもその人はあまり変わらないでしょう。むしろ、逆です。まずは、叱る前に、些細なことでも何でも良いので、その人をほめ続け、部下として信頼して認めていることを伝えることです。もちろんその人は表面的には素直には受け取らないかもしれませんが、確実にその人の職場での安心感や自尊心は満たされるでしょう。すると、以前よりも不平不満を言うことが減り、改善点を指摘された時の受け入れが良くなることが期待されます。極端な言い方をすれば、コミュニケーションのコツとしては、ほめたいからほめるのではなく、叱る(のを受け入れてもらう)ためにほめるのです。例えて言うなら、叱るという高い買い物をするために、ほめるという貯金をコツコツするということです。このように、反抗の心理をより良く知ることで、私たちが苦手としがちなあまのじゃくやヤンキーな人ともより良いコミュニケーションができるのではないでしょうか? さらには、私たちの中のあまのじゃくっぽさやヤンキーっぽさに気付き、自分を俯瞰(ふかん)して見ることでより良いコミュニケーションができるのではないでしょうか?1)穂積隆信:積木くずし、角川文庫、19822)小栗正幸:行為障害と非行のことがわかる本、講談社、20113)五十嵐太郎:ヤンキー文化論序説、河出書房新書、20094)斎藤環:世界が土曜の夜の夢なら、角川書店、20125)斎藤環:ヤンキー化する日本、角川書店、2014

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事例49 ファムシクロビル(商品名: ファムビル)錠の査定【斬らレセプト】

解説事例では、口唇ヘルペスの患者にファムシクロビル(ファムビル®)錠250mgを6錠投与したところ、B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)にて減額査定となった。各地でよく見られる査定内容でもある。調べたところ、「早く治したいという患者の希望を医師が汲み取り、倍量投与した」とあったが、レセプトに注記は無かった。医師も添付文書を確認して、単純疱疹に対して投与の場合は、通常、成人には1回250mgを1日3回経口、帯状疱疹に対する投与の場合は、通常、成人には1回500mgを1日3回経口であることを理解していた。そして、同じ薬剤で処方量によって適応病名が異なる場合でも、裁量権は認められると解釈していた。しかし、レセプトでは、請求根拠として病名が鍵であり最重要視されていることを伝え、基本量以上の投与が医学的に必要であった場合には、その旨が伝わるような病名もしくはコメントを記載して、審査の判断を仰ぐことをお願いした。医師と相談したところ、事例の場合は医学的な必要性に乏しい過量投与であったために再審査請求は行っていない。

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心臓手術の輸血、赤血球保存期間の違いで転帰は?/NEJM

 輸血用赤血球の保存期間と多臓器機能障害スコア(MODS)変化に、関連はないことが示された。米国・ミネソタ大学フェアビューメディカルセンターのM.E. Steiner氏らが、12歳以上の高難度の心臓手術を受ける患者を対象に行った多施設共同無作為化試験の結果、報告した。10日以下vs. 21日以上を検討したが差はみられなかったという。これまで一部の観察研究で、保存期間が2~3週を超えると、ときに致死的となる重大な有害転帰と関連するとの報告があった。NEJM誌2015年4月9日号掲載の報告より。多施設共同無作為化試験で10日以下vs. 21日以上を検証 研究グループは、心臓手術を受ける患者はとくに、輸血による有害な影響を受けやすい可能性があるとして、高難度の心臓手術を受ける12歳以上の、赤血球の輸血が見込まれる患者を対象に検討を行った。 被験者は、2010~2014年に米国内33病院から集められ、保存期間が10日以下(短期保存群)または21日以上(長期保存群)の白血球除去赤血球の輸血(術中・術後すべて)を受けるよう無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、術後7日、または死亡、退院までの期間における、MODSの術前スコアから複合スコアの最高値への変化である。MODSはスコア範囲0~24、スコアが高いほど臓器機能障害が重度であることを示す。MODS変化、7日および28日死亡率とも有意差なし 1,481例が無作為化を受け、輸血を受けた1,098例(短期保存群538例、長期保存群560例)について分析した。両群のベースラインの特性は似通っていた。年齢中央値は72歳(範囲:14~93歳)、男性が43%、ベースラインの平均MODSは0.7ポイントであった。 結果、各群が受けた輸血赤血球の保存期間中央値は、短期保存群7日、長期保存群28日であった。その間のMODSの変化は、短期保存群8.5ポイント、長期保存群8.7ポイントで、有意差はみられなかった(差の95%信頼区間[CI]:-0.6~0.3、p=0.44)。 また、7日死亡率はそれぞれ2.8%、2.0%(p=0.43)、28日死亡率は4.4%、5.3%(p=0.57)でいずれも有意差はみられなかった。 有害イベントの発生も、高ビリルビン血症の頻度が長期保存群でより高かったことを除き、両群間で有意差は示されなかった。

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フィナステリドの安全性には要注意?

 男性型脱毛症に対してフィナステリドによる治療は安全であることが2件のメタ解析において示されたが、安全性に関する報告の質は評価されていなかった。米国・ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のSteven M. Belknap氏らはレビューを行い、男性型脱毛症に関するフィナステリドの臨床成績から得られた安全性に関する情報は非常に限られており、質が低く、系統的な偏りがみられることを報告した。著者は、「男性型脱毛症の日常診療でフィナステリドを処方された男性の多くは、FDAが男性型脱毛症の適応症を承認する根拠となったピボタル試験では除外基準に該当すると思われる。発表された臨床試験成績では、男性型脱毛症の治療におけるフィナステリドの安全性プロファイルを確立するには情報が不十分である」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2015年4月1日号の掲載報告。 研究グループは、MEDLINE、ClinicalTrials.govおよび大学病院の臨床データリポジトリをデータソースとして、男性型脱毛症に対するフィナステリドの臨床試験について安全性に関する報告を評価した。 試験ごとに、有害事象に関する報告の質を評価するとともに、治療群およびプラセボ群における有害事象の発現例数と種類、安全性評価期間および盲検化の適切性を評価した。 データの抽出は2人の研究者が独立して行ったうえでコンセンサスを取った。安全性に関する報告の質は、「十分」「部分的」「不十分」「有害事象に関する記載なし」で判定し、バイアスはハザード比のファンネルプロットを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・34試験が解析に組み込まれた。安全性に関する報告が「十分」と判定されたものはなく、19試験が「部分的」、12試験が「不十分」、3試験は「有害事象に関する記載なし」だった。・ファンネルプロットは非対称性で、性機能/生殖有害事象に関するオッズ比が低い試験が多かった。このことは、性機能/生殖有害事象の発現が過小評価されていることを示唆している。・盲検化の適切性を評価した報告はなかった。18試験(53%)が利害関係を開示しており、19試験(56%)は製薬メーカーから資金の提供を受けていた。・34試験中26試験(76%)は、安全性の評価期間が1年以下であった。・臨床データリポジトリにおいて、男性型脱毛症の治療にフィナステリド(1.25mg/日以下)が用いられていた5,704例中、ピボタル試験の選択基準を満たすのはわずか31%で、33%はフィナステリドを1年以上服用していた。

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武田薬品が京大iPS研と連携 山中氏が総指揮

 武田薬品工業(本社:大阪市中央区)は4月17日、京都大学iPS研究所(以下、CiRA)とiPS細胞技術の臨床応用に向けた共同研究に関する契約を締結したと発表した。同日開催された記者会見には京都大学iPS細胞研究所の山中 伸弥所長、武田薬品のクリストフ・ウェバー社長兼CEOら主要関係者が出席した。 提携はT-CiRA(Takeda-CiRA Joint Program for iPS Cell Applications)と名付けられ、iPS細胞技術を用いた創薬研究や細胞治療に関する複数プロジェクトが実施される。 iPS細胞の発見者でCiRA所長である山中 伸弥氏が本プロジェクトを指揮、武田薬品は同社湘南研究所内の研究施設を提供する。研究人員は武田薬品およびCiRAから計100名以上が従事する見込み。武田薬品は10年間で200億円の提携費用を提供する。 今回の連携についてウェバー氏は、「今回の連携は従来にない初めての試みであり、さまざまな課題があるが、まったく新しい創薬の可能性に向けて努力していく」と述べた。 米国ではベンチャー企業が再生医療など大学発の技術の事業化に大きな役割を果たしているものの、本邦ではベンチャーの参入は容易ではなく大きなギャップが存在していた。山中氏は、「今回の提携は、その障害を飛び越えた大規模なアカデミアと大企業の直接連携である。また、今後はiPS細胞によるヒトでの疾患モデル開発および薬剤の効果・安全性の評価が可能となり、動物実験からヒトでの試験という従来の医薬品開発の手順も変化していく可能性がある」と述べた。

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うつ病と双極性障害を見分けるポイントは

 大うつ病性障害(MDD)と双極性障害(BP)の鑑別は、患者の予後や治療において重要な意味を持っている。これまでの研究で、これら2つの疾患で異なる臨床的特徴が同定されているが、不均一性および再現性の欠如により限定的であった。米国・ジョンズホプキンス大学のA K Leonpacher氏らは、再現性を持つ大規模サンプルを用い、MDDとBPを鑑別するために、うつ関連の特徴の特定を試みた。Psychological medicine誌オンライン版2015年4月8日号の報告。 研究グループは、MDDおよびBPを有する患者データを適宜、収集・確認するために大規模なデータを用い、1,228例(BP-I:386例、BP-II:158例、MDD:684例)の被験者からなる初期開示データセットから、診断カテゴリー間で試験するためのうつ関連の臨床的特徴を34件選択した。ROC分析により、BPに関連付けられる有意な特徴を1,000例のBP-Iケースと1,000例のMDDケースの独立したサンプルを用いて検証した。 主な結果は以下のとおり。・MDDと比較して、BP-Iとの有意な相関が認められたのは以下の7つの特徴であった。 ■妄想 ■精神運動遅滞 ■無能力 ■混合症状の多さ ■エピソード数の多さ ■エピソード期間の短さ ■うつ病治療後の躁経験歴・これら7つの要因を含むモデルのROC解析では、独立したデータセットにおいて、BP-IとMDDを識別する有意なエビデンスが示された(曲線下面積:0.83)。・混合症状数と抗うつ薬投与後の躁気分の2つの特徴のみにおいて、MDDに対しBP-IIとの関連が認められた。・これらの要素は、新たな診断バイオマーカーの評価におけるベースラインの項目として組み込まれるべきである。関連医療ニュース うつ病から双極性障害へ転換するリスク因子は 双極性障害の症状把握へ、初の質問票が登場 双極性障害ラピッドサイクラーの特徴は  担当者へのご意見箱はこちら

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