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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第21回

第21回:全般性不安障害とパニック障害のアプローチ監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 プライマリケアの場において、原因がはっきりしないさまざまな不安により日常生活に支障を生じている患者を診療する経験があるのではないかと思います。またとくに若い患者たちの中でみることの多いパニック障害もcommonな疾患の1つと思われ、その数は年々増加しているともいわれています。厚労省の調査1)では、何らかの不安障害を有するのは生涯有病率が9.2%であるとされ、全般性不安障害1.8%、パニック障害0.8%という内訳となっています。医療機関を受診する患者ではさらにこの割合が高くなっていると考えられ、臨床では避けて通れない問題となっています。全般性不安障害とパニック障害の正しい評価・アプローチを知ることで患者の不要な受診を減らすことができ、QOLを上げることにつながっていくと考えられます。 タイトル:成人における全般性不安障害とパニック発作の診断、マネジメントDiagnosis and management of generalized anxiety disorder and panic disorder in adults.以下、American Family Physician 2015年5月1日号2)より1. 典型的な病歴と診断基準全般性不安障害(generalized anxiety disorder:GAD)典型的には日常や日々の状況について過度な不安を示し、しばしば睡眠障害や落ち着かなさ、筋緊張、消化器症状、慢性頭痛のような身体症状と関係している。女性であること、未婚、低学歴、不健康であること、生活の中のストレスの存在がリスクと考えられる。発症の年齢の中央値は30歳である。「GAD-7 スコア」は診断ツールと重症度評価としては有用であり、スコアが10点以上の場合では診断における感度・特異度は高い。GAD-7スコアが高いほど、より機能障害と関連してくる。パニック障害(panic disorder:PD)明らかな誘因なく出現する、一時的な予期せぬパニック発作が特徴的である。急激で(典型的には約10分以内でピークに達する)猛烈な恐怖が起こり、少なくともDSM-5の診断基準における4つの身体的・精神的症状を伴うものと定義され、発作を避けるために不適合な方法で行動を変えていくことも診断基準となっている。パニック発作に随伴する最もよくみられる身体症状としては動悸がある。予期せぬ発作が診断の要項であるが、多くのPD患者は既知の誘因への反応が表れることで、パニック発作を予期する。鑑別診断と合併症内科的鑑別:甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、副甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患、不整脈や閉塞性肺疾患などの心肺疾患、側頭葉てんかんやTIA発作などの神経疾患その他の精神疾患:その他の不安障害、大うつ病性障害、双極性障害物質・薬剤:カフェイン、β2刺激薬、甲状腺ホルモン、鼻粘膜充血除去薬、薬物の離脱作用GADとPDは総じて気分障害、不安障害、または薬物使用などの少なくとも1つの他の精神的疾患を合併している。2. 治療患者教育・指導配慮のある深い傾聴が重要であり、患者教育自体がとくにPDにおいて不安症状を軽減する。また生活の中で症状増悪の誘因となりうるもの(カフェイン、アルコール、ニコチン、食事での誘因、ストレス)を除去し、睡眠の量・質を改善させ、身体的活動を促す。身体的活動は最大心拍数の60%~90%の運動を20分間、週に3回行うことやヨガが推奨される。薬物療法第1選択薬:GADとPDに対してSSRIは一般的に初期治療として考慮される。三環系抗うつ薬(TCA)もGADとPDの両者に対して有効である。PDの治療において、TCAはSSRIと同等の効果を発揮するが、TCAについては副作用(とくに心筋梗塞後や不整脈の既往の患者には致死性不整脈のリスクとなる)に注意を要する。デュロキセチン(商品名:サインバルタ)はGADに対してのみ効果が認められている。buspironeのようなazapirone系の薬剤はGADに対してはプラセボよりも効果があるが、PDには効果がない。bupropionはある患者には不安を惹起するかもしれないとするエビデンスがあり、うつ病の合併や季節性情動障害、禁煙の治療に用いるならば、注意深くモニターしなければならない。使用する薬剤の容量は漸増していかなければならない。通常、薬剤が作用するには時間がかかるため、最大用量に達するまでは少なくとも4週間は投与を続ける。症状改善がみられれば、12ヵ月間は使用すべきである。ベンゾジアゼピン系薬剤は不安の軽減には効果的だが、用量依存性に耐性や鎮静、混乱や死亡率と相関する。抗うつ薬と抗不安薬の併用は迅速に症状から回復してくれる可能性はあるが、長期的な予後は改善しない。高い依存性のリスクと副作用によってベンゾジアゼピンの使用が困難となっている。NICEガイドライン3)では危機的な症状がある間のみ短期間に限り使用を推奨している。中間型から長時間作用型のベンゾジアゼピン系薬剤はより乱用の可能性やリバウンドのリスクは少ない。第2選択薬:GADに対しての第2選択薬として、プレガバリン(商品名:リリカ)とクエチアピン(同:セロクエル)が挙げられるが、PDに対してはその効果が評価されていない。GADに対してプレガバリンはプラセボよりは効果が認められるが、ロラゼパム(同:ワイパックス)と同等の効果は示さない。クエチアピンはGADに対しては効果があるが、体重増加や糖尿病、脂質異常症を含む副作用に注意を要する。ヒドロキシジン(同:アタラックス)はGADの第2選択薬として考慮されるが、PDに対しては効果が低い。作用発現が早いため、速やかな症状改善が得られ、ベンゾジアゼピンが禁忌(薬物乱用の既往のある患者)のときに使用される。精神療法とリラクゼーション療法精神療法は認知行動療法(cognitive behavior therapy:CBT)や応用リラクゼーションのような多くの異なったアプローチがある。精神療法はGADとPDへの薬物療法と同等の効果があり、確立されたCBTの介入はプライマリケアの場では一貫した効果が立証されている。精神療法は効果を判定するには毎週少なくとも8週間は続けるべきである。一連の治療後に、リバウンド症状を認めるのは、精神療法のほうが薬物療法よりも頻度は低い。各人に合わせた治療が必要であり、薬物療法と精神療法を組み合わせることで2年間の再発率が減少する。3. 精神科医への紹介と予防GADとPD患者に対して治療に反応が乏しいとき、非典型的な病歴のもの、重大な精神科的疾患の併発が考慮される場合に、精神科医への紹介が適用となる。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 川上憲人ほか. こころの健康についての疫学調査に関する研究(平成16~18年度厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業). こころの健康についての疫学調査に関する研究,総合研究報告書). 2007. 2) Locke AB, et al. Am Fam Physician. 2015;91:617-624. 3) NICEガイドライン. イギリス国立医療技術評価機構(The National Institute for Health and Care Excellence:NICE).

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精神疾患患者の作業記憶低下機序が解明か

 米国・ピッツバーグ大学/奈良県立医科大学の紀本 創兵氏らは、統合失調症患者における作業記憶低下の分子メカニズムを明らかにするため、グルタミン酸シナプスによる神経伝達制御に関わる初期遺伝子の定量化を試みた。その結果、NARPのメッセンジャーRNA(mRNA)発現量が低下しており、これがパルブアルブミン介在ニューロンへの興奮性入力を低下させ、ガンマアミノ酪酸の合成低下を通して作業記憶低下につながっている可能性を示唆した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年6月3日号の掲載報告。 統合失調症において、作業記憶の欠損が背外側前頭前皮質におけるガンマ振動の発生異常を反映しているようである。ガンマ振動の発生には抑制性パルブアルブミン陽性介在ニューロンの興奮相を要する。このようにガンマ振動は、1つにはパルブアルブミン介在ニューロン上のグルタミン酸受容体シナプスの数に影響されるが、統合失調症におけるグルタミン酸受容体を介したパルブアルブミン介在ニューロンの興奮を制御する分子的要因に関しては、ほとんど知られていなかった。 研究グループは、統合失調症患者において、グルタミン酸シナプスによる神経伝達制御を担う初期遺伝子(NARP、ARC、SGK1)の定量化を行った。統合失調症、双極性障害、うつ病患者、そして十分にマッチさせた健常者(対照)より剖検脳標本(206例)を入手。定量PCR、in situハイブリダイゼーションまたはマイクロアレイ解析を用いて脳組織を検討し、灰白質と層の背外側前頭前皮質における転写レベル、および細胞分解レベルを測定した。検討は、2013年1月1日から2014年11月30日の期間に実施された。NARP、ARC、SGK1のmRNA発現量を統合失調症患者と対照者の標本において比較し、診断特異性は気分障害患者の標本におけるNARP mRNAレベルにより評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・定量PCRにより、対照群と比べて統合失調症患者の標本における。NARP mRNA発現量は25.6%と有意に低値であった(平均[SD]:0.036[0.018] vs 0.049[0.015]、F1,114=21.0、p<0.001)。・一方、ARC値(F1,112=0.93、p=0.34)およびSGK1値(F1,110=2.52、p=0.12)では、対照と統合失調症患者の間で有意な差はみられなかった。・これらの結果はin situハイブリダイゼーション(NARP;統合失調症患者vs.対照者:40.1%の低下、p=0.003)、およびマイクロアレイ解析(NARP;統合失調症患者vs.対照者:3層錐体細胞で12.2%の低下[p=0.11]、5層錐体細胞で14.6%の低下[p=0.001])により裏付けられた。・統合失調症患者の標本において、NARPとGAD67のmRNA値間に正の相関が認められ (r=0.55、p<0.001)、パルブアルブミン介在ニューロンにおけるGAD67 mRNA発現は活動性依存的であった。・またNARP mRNA値も、双極性障害患者の標本(-18.2%、F1,60 =11.39、p=0.001)、うつ病患者の標本(-21.7%;F1,30 = 5.36、p=0.03)において健常対照者に比べ低下しており、精神疾患患者の標本で顕著であった。・3つの診断群において、NARP mRNA値はソマトスタチンmRNAと正の相関を示し(すべてのr≧0.53、すべてのp≦0.02)、その発現は活動依存的であった。関連医療ニュース 統合失調症患者の認知機能に対するアリピプラゾール vs リスペリドン 統合失調症の認知機能改善に抗認知症薬は有用か 精神疾患患者の認知機能と炎症マーカーとの関連が明らかに  担当者へのご意見箱はこちら

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オピオイド服用中のBZD、過剰摂取死リスク増大/BMJ

 オピオイド鎮痛薬服用中のベンゾジアゼピン系薬投与は、過剰摂取による死亡リスクの増大と用量依存的に関連することが、米国・ブラウン大学のTae Woo Park氏らによる症例コホート研究の結果、報告された。また薬剤種別の検討において、クロナゼパムと比較してtemazepam(国内未承認)の同死亡リスクが低いことも明らかにされた。BMJ誌オンライン版2015年6月10日号掲載の報告より。米国退役軍人を対象に症例コホート研究 研究グループは、退役軍人健康管理局(VHA)2004~2009年のデータを基に、オピオイド鎮痛薬を服用する主として男性の米国退役軍人(VA)を対象に検討を行った。用量、種類、服用スケジュールなどでみたベンゾジアゼピン系薬処方パターンと、過剰摂取による死亡リスクとの関連を調べた。 対象は、オピオイド鎮痛薬服用者で過剰摂取により死亡した全VA(2,400例)と、無作為に抽出したVHAの医療サービスを利用しオピオイド鎮痛薬を投与されているVA(42万386例)であった。 主要評価項目は、あらゆる過剰摂取による死亡(意図的か否かを問わず)、または薬物中毒によるものか判断不能の死亡で、National Death Indexの死亡情報で確認した。過剰摂取死の約半数で同時服用、用量依存にリスク増大 試験期間中、オピオイド鎮痛薬を服用していたVAのうち27%(11万2,069/42万386例)が、ベンゾジアゼピン系薬も服用していた。 過剰摂取による死亡の約半数(1,185/2,400例)が、ベンゾジアゼピン系薬とオピオイドを同時に処方されていた間に発生したものであった。 過剰摂取による死亡リスクは、ベンゾジアゼピン系薬処方歴とともに増大した。補正後ハザード比(HR)は、非処方との比較で、以前の処方歴あり群で2.33(95%信頼区間[CI]:2.05~2.64)、現在処方されている群では3.86(同:3.49~4.26)であった。 また、過剰摂取による死亡リスクは、ベンゾジアゼピン薬の1日用量増加とともに増大した。1日用量が>0~10mgとの比較において、>10~20mgのHRは1.69、>20~30mgは2.34、>30~40mgは2.65、>40mgは3.06であった。 薬剤種別にみると、クロナゼパムとの比較において、temazepamの過剰摂取による死亡リスクが最も低かった(HR:0.63、95%CI:0.48~0.82)。 ベンゾジアゼピン系薬の投与スケジュールと過剰摂取による死亡リスクとの関係はみられなかった。

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中等度~重度の尋常性乾癬にトファシチニブが有望/Lancet

 中等度~重度の慢性尋常性乾癬に対し、トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ、慢性尋常性乾癬に対しては未承認)の10mg1日2回投与はエタネルセプト(50mgを週2回)に非劣性であり、プラセボより優れることが示された。フランス・サンルイ病院のHerve Bachelez氏らが第III相の無作為化非劣性試験の結果、報告した。トファシチニブは、経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬である。今回の検討では、トファシチニブの5mgまたは10mgの2種の用量について、高用量のエタネルセプトおよびプラセボとの比較が行われた。Lancet誌オンライン版2015年6月4日号掲載の報告より。トファシチニブの2用量について無作為化比較試験、vs.エタネルセプトおよびプラセボ 試験は、多施設共同ダブルダミーにて12週にわたって行われた。慢性尋常性乾癬を有する(12ヵ月以上)、全身療法または光線療法候補の成人患者で、PASIスコア12以上、PGAは中等度~重度であり、治療反応がなく禁忌があり、もしくは全身療法忍容性なしが1回以上あった患者を対象とした。被験者は米国とカナダを除く諸外国122の皮膚科センターから登録された。 適格患者は3対3対3対1の割合で、トファシチニブを約12時間ごとに1日2回5mgまたは10mg投与を受ける群、エタネルセプト50mg皮下注を3~4日間隔で週2回投与を受ける群、プラセボ投与を受ける群に無作為に割り付けられた。すべての患者および試験関係者は、治療割り付けを知らされなかった。 主要エンドポイントは2つで、12週時点でのPASIスコアのベースラインからの75%以上低下(PASI 75反応例)と、PGAスコアが0(寛解)または1(ほぼ寛解)の達成患者(PGA反応例)の割合とした。解析は無作為化を受けた患者および1回以上試験薬投与を受けた患者を含めて行われた。10mg1日2回群で非劣性示す、有害事象の発生は同程度 2010年11月29日~2012年9月13日に、適格患者1,106例が登録され、4つの治療群に無作為に割り付けられた。トファシチニブ 5mgを1日2回群330例、トファシチニブ 10mgを1日2回群332例、エタネルセプト50mg週2回群336例、プラセボ群108例であった。実際の治療を受けた患者は1,101例で、それぞれ329例、330例、335例、107例であった。 12週時点のPASI 75反応例の報告は、トファシチニブ 5mg群130/329例(39.5%)、トファシチニブ 10mg群210/330例(63.6%)、エタネルセプト群197/335例(58.8%)、プラセボ群6/107例(5.6%)であった。 PGA反応例は、トファシチニブ 5mg群155/329例(47.1%)、トファシチニブ 10mg群225/330例(68.2%)、エタネルセプト群222/335例(66.3%)、プラセボ群16/107例(15.0%)であった。 有害事象の発生割合は4群で同程度だった。重篤な有害事象は、トファシチニブ 5mg群は7/329例(2%)で、トファシチニブ 10mg群は5/330例(2%)、エタネルセプト群は7/335例(2%)、プラセボ群2/107例(2%)であった。 有害事象により割り付け治療を中止したのは、トファシチニブ 5mg群3/329例(1%)、トファシチニブ 10mg群10/330例(3%)、エタネルセプト群11/335例(3%)、プラセボ群4/107例(4%)であった。 以上を踏まえて著者は、「中等度~重度の慢性尋常性乾癬患者において、トファシチニブ 10mg1日2回投与は、エタネルセプト50mg週2回投与に対して非劣性であり、プレセボより優れていた。しかし、トファシチニブ 5mg1日2回投与は、エタネルセプト50mg週2回投与に対して非劣性を示さなかった。また、12週間の有害事象発生率は、トファシチニブとエタネルセプトで同程度であった」とまとめ、「今回の研究成果は、トファシチニブが将来的に、中等度~重度の慢性尋常性乾癬患者にとって簡便で忍容性のある治療オプションとして提供可能であることを示すものであった」と結んでいる。

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母親の高脂肪食、胎児の肺に悪影響

 母親の高脂肪食の摂取が胎児の肺の発育に悪影響を与える可能性があることを、米国・テキサス大学のReina Sarah Mayor氏らが報告した。American journal of physiology-Lung cellular and molecular physiology誌オンライン版2015年6月19日号の掲載報告。 母親の栄養が長期的な幼児の健康に影響することはわかっている。栄養が乏しいと胎盤の発育や胎児の成長にも影響し、心疾患、高血圧、喘息、2型糖尿病などの慢性疾患と深く関係する低体重での出生の原因となる。しかし、これまで母親の栄養と胎児の肺の成長の関係を明らかにした報告はほとんどなかった。研究の結果、母親が高脂肪食を摂取すると胎盤が炎症を起こし、胎盤の機能不全、胎児の発育不全、胎児の肺の発達を妨げることがわかった。とくに、出生前後の高脂肪食の摂取が肺胞の持続的な単純化を引き起こしていた。

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FDAが承認したデバイスでは選択的報道があった!(解説:折笠 秀樹 氏)-372

 米国FDAが2000年から2010年の間に承認した循環器系デバイス(医療機器)として、106件の新規デバイスを研究対象とした。これらのデバイスに関係する臨床研究は、全部で177件あった。本調査によると、承認を得たデバイスのうち、49%しか論文になっていないことが判明した。また、論文になっていたとしても、承認時の解析対象・主要エンドポイントなどが変えられるといった不備が、相当みられると報告した。エンドポイントのすり替えなどは40%、主要結果を曲げて報告された例は34%にも及んでいた。 評価対象の臨床研究のうち、半分しか論文になっていないという事実だが、日本ではこの比ではないと思う。もっと低いとは思うが、そこに選択が入っている可能性は低いだろう。むしろ、論文化の作業が面倒なためかと思われる。一方、米国では論文は販売促進に利用されることが多く、良い結果の研究だけ論文にしようという力が働くのだろう。都合のよい研究は論文化し、そうでない研究は論文にしない、といったより分けがなされていることが想像される。 わが国でも、最近、誇大広告として指摘された例があったばかりである。それは、論文には書かれていないような図表が、医療関係者向け広告資材に載ったというものであった。今回は、広告を作る基である論文を作成する際に、何らかの結論のねじ曲げがあったということなので、先の例よりはたちが悪い。 われわれ医療消費者はどのように気を付ければよいだろうか? 企業スポンサーの臨床研究は、企業に有利になっているものだという前提で、結論をみることが必要かもしれない。もちろん、企業側にはこれまで以上に企業倫理の徹底を心掛けていただきたい。景品表示法という法律がある。これは誤報道には有用かもしれないが、選択的報道をこの法律で縛ることは難しい。やはり、基本であるヘルシンキ宣言36条、「研究者は、……研究の結果を一般的に公表する義務を有し……。否定的結果および結論に達しない結果も肯定的結果と同様に、……公表されなければならない。」に従うべきだろう。選択的報道はすべきではない。

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冷やすだけ、リスクは皆無【Dr. 中島の 新・徒然草】(073)

七十三の段 冷やすだけ、リスクは皆無先日、近所の眼科クリニックから右眼瞼下垂の患者さんが紹介されてきました。皆さん御存知のとおり、未破裂脳動脈瘤による動眼神経圧迫が眼瞼下垂を起こすことがあるからです。そこで、頭蓋内精査の依頼ということでした。この患者さんは80代の女性ですが、最近になって右の瞼が下がってきて、見えにくくて仕方ないのだそうです。患者「朝起きたときはちゃんと見えているんやけど」中島「ええ」患者「でも昼になってきたらだんだん右目が細くなってきて見えにくくなってくるんよ」中島「朝はエエけど、昼からアカンということですか?」患者「そうでんねん」日内変動があるというのは動眼神経の圧迫よりも、むしろ重症筋無力症のような印象があります。また、この方は瞳孔のサイズに左右差がありませんでした。一般に動脈瘤の圧迫による動眼神経麻痺は眼瞼下垂に先行して患側の瞳孔が開くことが多いとされています。瞳孔を収縮させる pupillomotor fiber が動眼神経の表面にあり、動脈瘤の圧迫によって先に麻痺して瞳孔が開くからです。でも瞳孔の左右差がないということは、ますます動脈瘤らしくありません。そこで、アイステストを行うことにしました。アイステストというのは、下垂している瞼の上を氷で冷やすと瞼が上がる、というものです。物理的冷却によってコリンエステラーゼを失活させ、アセチルコリンの働きをよくすることによって症状の軽減を図るものです。重症筋無力症に対する感度は80%程度です。早速、診察室の奥の冷蔵庫からアイスノンを持ってきて、患者さん自身に患側の瞼の上にあててもらいました。中島「1分ほどあててくださいね」患者「はい」中島「ではアイスノンを外して。どうですか?」患者「明るくなった!」中島「瞼が上がりましたよ」見事に右の瞼が上がりました。もちろんコリンエステラーゼの失活は一時的なものなので、数分後には元に戻ってしまいます。それでも重症筋無力症の疑いが強くなったのは確かです。後は念のために画像検査で動脈瘤の存在を否定しておいて神経内科に紹介するだけ。中島「これは重症筋無力症じゃないかな」患者「はあ?」中島「昔、萬屋錦之介がかかった病気ですよ」患者「ああ、そうですか!」中島「もうちょっと詳しく検査してからね、専門科に送りましょう」患者「お願いします」それにしても、面倒でリスクのあるテンシロン・テストや、結果が出るまで時間のかかる抗アセチルコリン受容体抗体検査に比べ、アイステストの安直かつ安全なこと! 私のような非専門医が外来で手っ取り早く重症筋無力症をスクリーニングするにはピッタリの検査です。読者の皆さんも、重症筋無力症を疑わせる眼瞼下垂に遭遇したら、是非アイステストを試してみて下さい。最後に1句冷やすだけ リスク皆無で 簡単だ

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携帯GPS機能で心肺蘇生実施率が向上/NEJM

 携帯電話使用者の位置情報を瞬時に特定する携帯電話位置情報システムを使って、救急通報があった院外心停止が疑われる患者の近くにいる心肺蘇生(CPR)訓練を受けたボランティア市民に連絡し、現場への急行を依頼することで、“居合わせた市民(バイスタンダー)によるCPR実施率”が有意に上昇したことが示された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のMattias Ringh氏らが、二重盲無作為化比較試験を行い明らかにした。バイスタンダーによるCPRは、院外心停止患者の生存率上昇と関連することが示されている。NEJM誌2015年6月11日号掲載の報告より。携帯電話位置情報システム活用し、患者から500m以内のボランティアに連絡 試験は2012年4月~2013年12月にかけて、ストックホルムで行われた。 研究グループは、救急通報を受け、対象患者に院外心停止の疑いがあった場合、携帯電話位置情報システムを使い、患者の500m以内に居合わせたCPR訓練を受けた市民ボランティアの位置を特定した。 そのうえで、介入群の患者に対しては該当するボランティアに連絡し、患者の元に急行するよう依頼した。一方で対照群の患者については、該当ボランティアに連絡をしなかった。 主要評価項目は、救急隊や消防隊、警察が到着する以前の、バイスタンダーによるCPR実施率とした。 CPR訓練を受けた市民ボランティアは、試験開始当初の登録人数は5,989人で、試験実施中に計9,828人に増えた。バイスタンダーCPR実施率、介入群で62% 試験期間中、携帯電話位置情報システム起動となった院外心停止は667件だった。介入群は46%(306例)、対照群は54%(361例)だった。 バイスタンダーによるCPR実施率は、介入群が62%(305例中188例)であった。一方、対照群は48%(360例中172例)で、介入群のほうが有意に高率だった(絶対差:14ポイント、95%信頼区間:6~21、p<0.001)。

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障害生存年数の増加、主な原因は腰痛とうつ/Lancet

 188ヵ国を対象とした世界の疾病負担研究(Global Burden of Disease Study)2013の結果、世界的に高齢者人口が増加しており、また高齢者ほど疾患や外傷の後遺症を持つ人の割合が増加していることが判明した。米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのTheo Vos氏らGlobal Burden of Disease Study 2013研究グループが、1990~2013年の188ヵ国の医療データをシステマティックに分析した結果、明らかになった。Lancet誌オンライン版2015年6月7日号掲載の報告より。301の疾患・外傷と2,337の後遺症について分析 世界疾病負担研究2013では、1990~2013年に188ヵ国を対象に、3万5,620のデータを基に、301の急性・慢性疾患や外傷と2,337の後遺症について、その発生率や罹患率、障害生存年数(YLD)などを分析した。 共存症シミュレーションにより、国や年、年齢、性別による後遺症数の予測を行った。 その結果、外傷や疾患の発生率・罹患率は高く、後遺症の認められない人の割合は低いことがわかった。共存症は年齢とともに、また1990~2013年にかけて増加していた。 急性後遺症(acute sequelae)の発生は、感染症と短期外傷によるものが大部分を占め、2013年には上気道感染症と下痢症が20億件に上った。さらに同年には、永久歯う蝕による歯の痛みの発生件数が2億件だった。 一方、慢性後遺症(chronic sequelae)の多くは非伝染病で、無症候性永久歯う蝕が24億件、緊張性頭痛が16億件だった。YLD要因の上位は腰痛と大うつ病性障害 YLDは男女ともに人口および加齢とともに増大し、1990年は5億3,760万年だったが2013年には7億6,480万年となっていた。一方で年齢調整罹患率は114.87/1,000人から110.31/1,000人とほとんど減少していなかった。 YLDの主な要因としては、全調査対象国で腰痛と大うつ病性障害が上位10位に入っていた。また、YLD率(各人の生存に占めるYLDの割合)増大の主な原因は、筋骨格系、精神および薬物乱用障害、神経障害、慢性呼吸器疾患だった。サハラ以南のアフリカではHIV/AIDSがYLD増加の顕著な要因だった。 また世界的に障害調整生存年数の占める割合は、1990年の21.1%から、2013年の31.2%に上昇していた。 著者はこれら結果について、「世界人口の高齢化とともに、疾患や外傷の後遺症を有する人が増えている。YLD率は死亡率よりもゆっくりとした上昇だが、健康システムにおいてはますます、非致死的疾患および外傷への注意が必要である。とくにサハラ以南アフリカ以外の地域では、疾病負担は非致死的疾患および外傷によるものへと移行しつつある」とまとめ、「これらの結果は、疫学的動向調査や各国間の差への理解を深めることで、今後の健康イニシアチブを導くものとなるだろう」と述べている。

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抗精神病薬とアディポネクチン低下の関連明らかに

 統合失調症患者における第2世代抗精神病薬(SGA)服用と代謝異常との関連が、イタリア、ミラノ・ビコッカ大学のFrancesco Bartoli氏らによるメタ解析の結果、明らかにされた。所見を踏まえて著者らは、「SGAがアディポネクチンに影響するメカニズムは不明のままだが、心血管疾患ではアディポネクチン低下が関与しており、今回の所見は臨床的に重要な意味を持つ」と述べ、SGAのアディポネクチンへの長期的な影響を評価する経時的検討を行うべきと指摘している。Psychoneuroendocrinology誌2015年6月号の掲載報告。 統合失調症患者は一般集団と比べて、代謝異常の悪影響を受けやすく、そのリスクはSGAによって増大すると考えられている。血中アディポネクチン値の低下は、代謝異常に結び付く可能性があるが、統合失調症患者におけるエビデンス、とくにSGAの影響については結論が出ていない。研究グループは、システマティックレビューとメタ解析にて、統合失調症患者と健康対照の血中アディポネクチン値を比較し、統合失調症とSGAのアディポネクチンへの相対的影響を推算した。主要電子データベースで、2014年6月13日までに公表された観察研究を検索し、指数および対照群とのプール標準化平均差(SMD)を算出。サブ解析および付加的サブグループ分析を行い評価した。 主な結果は以下のとおり。・2,735例のデータ(統合失調症患者群1,013例、非患者群1,722例)を解析に組み込んだ。・統合失調症と、アディポネクチン低値との関連は認められなかった(SMD:-0.28、95%信頼区間[CI]:-0.59~0.04、p=0.09)。・しかし、SGAを服用している統合失調症患者は、対照群と比べて血中アディポネクチン値が有意に低かった(p=0.002)。薬物未使用/未治療の患者とでは有意差はなかった(p=0.52)。・単剤の抗精神病薬でみると、クロザピン(p<0.001)とオランザピン(p=0.04)の服用者は、対照群と比べてアディポネクチン低値との関連が有意であった。しかしリスペリドン服用者においては、関連が有意ではなかった(p=0.88)。関連医療ニュース 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学 オランザピンの代謝異常、アリピプラゾール切替で改善されるのか 日本人統合失調症患者の脂質プロファイルを検証!:新潟大学  担当者へのご意見箱はこちら

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CM「あたらしい英雄、はじまる。」【対人魅力(男性編)】

今回のキーワード心の進化(進化心理学)楽しませ上手(ドパミン)頼られ上手(ノルアドレナリン)聞き上手(セロトニン)同調演技性パーソナリティ自己愛性パーソナリティ「なんで彼はいつもモテるの?」皆さんは、友人や職場の人で「なんで彼はいつもモテるの?」とうらやましく思ったことはありませんか? 世の中には、異性からも同性からもモテる魅力的な人がいます。魅力的である方が、デートのチャンスが増えますし、仕事もやりやすいです。特に精神科や心療内科では、患者がほど良く主治医に好感を持つことで、治療がうまくいくと言われています(陽性転移)。モテる人とモテない人の違いは何でしょうか? 今回は、男性の対人魅力をテーマに、心の進化(進化心理学)の視点からとらえ直します。恋人や夫としての男性の魅力だけでなく、職場の上司や部下としての男性の人間的な魅力にも迫っていきたいと思います。その魅力とは、もちろん見た目や経済力を挙げる方もいるでしょう。しかし、実は、それ以上に大事なことが3つあります。そのヒントが、あるCMにあります。それは、現在ヒットを飛ばしシリーズ化されているauのCM「あたらしい英雄、はじまる。」です。身近な携帯電話のCMに登場するキャラクターは、世の女性からも男性からも好感を持たれる魅力が詰まっているとも言えます。なぜなら、その魅力が直接シェア拡大につながるのですから。今回は、このCMに登場する桃太郎の松田翔太さん、浦島太郎の桐谷健太さん、金太郎の濱田岳さんから、男性の3つの魅力についていっしょに考えていきましょう。楽しませ上手1つ目の魅力は、桃太郎の松田翔太さんにあります。まずは、以下の動画サイトを見てみましょう。画面をクリックしてください。桃太郎は、桃から生まれた時の音を「パッカーン」と言い、それを浦島太郎と金太郎がおもしろがります。桃太郎は求められると繰り返します。話しがうまく、サービス精神旺盛です。3人のリーダー的存在でもあります。1つ目の魅力は、楽しませ上手です。この魅力を発揮するために、男性の方は次のクイズに挑戦しましょう。Q1. 出会いの場でどう振る舞う?A. 自分の良さを知ってもらうために、まず自分のことを話す。B. 相手の話に聞き入り、自分の話はしない。C. 相手の話や興味に合わせて、自分のことを話す。Aは、相手の話を聞き出しておらず、相手といっしょに楽しむ共通の話題が出にくく、話が一方的になっています。Bは、逆に聞くことに徹しています。良さそうにも思えますが、相手がよほどのおしゃべりでなければ、そのうちに会話が続かなくなります。Cは、相手がどんな人かを知ろうとする姿勢があり、さらに相手に合わせていっしょに会話を楽しもうとする姿勢が見受けられます。大事なのは、自分のことを話すこと(自己開示)は、し過ぎず、し足りず、相手に合わせて楽しむことです。よって、答えはCです。Q2. 出会いの場で年齢を聞かれた時にどう答える?A. 「○歳(実年齢)です」と真面目に答える。B. 「いきなり年齢を聞くのは失礼」とはっきり言う。C. 「何歳でしょうねえ」と微笑む。D. 「逆に何歳だと思います?」と切り返す。E. 「17歳です。(間を置いて)気持ちは」と極端に若い年齢をふざけて言う。AとBは、真面目な対応で、会話がはずみません。Cは、年齢を言いたくないことをほのめかしていることは伝わりますが、楽しくはありません。Dは、質問返しで、会話の広がりが期待できます。ただし、この切り返しは使い古されてきています。Eは、相手を楽しませようとするメッセージは伝わります。ウケないならそれはそれで良いという強いハートで臨むことが大切です。なぜなら笑いは伝わらなかったとしても、笑いを届けたいという一生懸命さや誠実さは確実に伝わっています。相手も興味や好意があるからこそ年齢を聞いているわけで、きっと相手から暖かいツッコミやノリツッコミが返って来ることでしょう。大事なのは、いかに会話を楽しめるか、いかに女性に楽しくていっしょにいたいと思わせるかということです。Q3. 彼女が初めて自分の家に来た時に彼女が油断して音を立てておならしてしまったらどうリアクションする?A. 「ところでさあ」と話題を変える。B. 「おならするなよ」とツッコミを入れる。C. 「おならはしょうがないよね」と真面目に言う。D. 「お腹、大丈夫?」と心配する。E. 「おれも同時におならしちゃった」とふざける。F. 「自分の方が大きなおならが出せるよ」と笑顔で言う。Aの気付かないふりは、親密な関係の相手ではないなら有効です。しかし、恋人関係にある場合は、白々しくなってしまい、逆にさらに気まずくなる危険があります。Bの直接的なツッコミは、長い付き合いで関係性が安定しているなら有効です。しかし、付き合い始めの場合は、きつく聞こえてしまう危険があります。そもそも彼女は意図しておならをしたわけではないからです。Cのそのまま受け止めるのは、悪くはないですが、良くもないです。Dの深刻に受け止めるのは、彼女を心配している点は良いですが、大げさで滑稽になってしまい、さらに彼女を恥ずかしい思いにさせてしまう危険があります。EやFは、自分もおならをするので同類だというメッセージを笑いに込めて伝えています。彼女の恥ずかしさは、その笑いで吹き飛ばされており、とても好感が持たれます。大事なのは、いかに彼女の恥ずかしい気持ちを和らげることができるか、いかに楽しい状況に変えることができるかということです。おなら1つへのリアクションで、2人の距離が縮まるか離れるかが分かれてきます。楽しませ上手が考えることは、「自分が彼女をどう思うか」ではなく、「彼女が自分をどう思うか」「彼女が自分にどう思われたいか」ということです。察する賢さ、読める賢さです。そのためには彼女(もっと言えば女性)は何が好きで何が嫌いかを徹底的に知っておく必要があります。なぜ楽しませ上手はモテるのか?そもそも女性は、楽しませ上手な男性を本能的に選ぶ傾向があります。これを心の進化(進化心理学)の歴史からひも解いてみましょう。私たち人間の体は環境に適応するために進化してきました。同じように、私たち人間の心も進化してきました。その適応してきた環境とは、狩猟採集生活を営んでいた原始の時代です。その始まりは、チンパンジーと共通の祖先から私たちの祖先が二足歩行をして分かれていった700万年前です。農耕牧畜から始まる現代の文明社会は、たかだか1万数千年の歴史であり、進化が追い着くにはあまりにも短いと言えます。つまり、進化心理学的に考えると、私たちの心の原型は、まさにこの原始の時代に形作られました。原始の時代、人間は、二足歩行が可能になったことで、手が自由になり、より食料を運ぶことができるようになりました。そこで、男性(父親)は日々食糧を確保し、女性(母親)は日々子育てをするというふうに、性別で役割を分担して、家族集団で共同生活を行いました。そして、この生活スタイルをとった種がより生き残りました。生き残った子孫が現在の私たちです。つまり、私たちは男性も女性も、いっしょに助け合って生きていこうとする協力的な異性を魅力的に感じる好み(嗜好性)が進化しているということです(性選択)。そして、女性から男性を見定める目安(形質)の1つが楽しませること、つまりお笑い(ユーモア)なのです。そのユーモアのセンスが存分に発揮される現代の職業は何でしょうか? それは、お笑い芸人です。お笑い芸人が女性にモテるのも納得がいきます。実際にユーモアのある男性はより魅力的であるという心理実験の結果が出ています。また、女性を楽しませる延長として、あえてお願いごとをするという方法があります。例えば、男性が、自分はファッションのセンスに自信がないからいっしょに服を見つけてほしいと女性にお願いするのです。特にしっかり者の女性は自分が役に立てる喜びを感じるので、効果的です。楽しませ上手すぎると? ―表1それでは、楽しませ上手であればあるほど良いのでしょうか? そうとも言えないです。相手(周り)に合わせる心理は、協調性や共感性がある反面、度がすぎると、空気ばかり読むイエスマンとなり、相手(周り)に流されやすくなってしまいます(同調)。また、ノリが良く、ほめ上手で、演出がうまい反面、度がすぎると、表裏が激しく嘘つきになり媚びてばかりで薄っぺらく中身がなくなってしまいます(演技性パーソナリティ)。また、楽しませ上手だけであれば良いのでしょうか? そうとも言えないです。楽しませ上手は、女性を楽しくさせますが、それはあくまで最初に有効なだけです。表面的で中身がなければ、魅力は維持できません。それでは、その中身とは何でしょうか? その男性を魅力的にさせ続けるために必要な要素が、あと2つあります。表1 楽しませ上手の二面性マイナス面プラス面イエスマン相手(周り)に流されやすい協調性共感性嘘つき、媚びる薄っぺらい、中身がないノリが良い、ほめ上手演出がうまい頼られ上手2つ目の魅力は、浦島太郎の桐谷健太さんにあります。まずは、以下の動画サイトを見てみましょう。画面をクリックしてください。桃太郎の話に感動して泣き出す金太郎に、浦島太郎は「泣くな、金ちゃん!強い男になるんでしょ!」と励まします。また、別バージョンでは、「えっ、泣くほど」と強いツッコミを入れています。シリーズ全体を通して、浦島太郎は、天然ボケ(こだわり)もありつつ、グイグイ引っ張る力強いイメージがあります。2つ目の魅力は、頼られ上手です。この魅力を発揮するために、男性の方は次のクイズに挑戦しましょう。Q4. デートで食事が終わる頃、彼女が自分の分は払うと言っている。あなたはどうする?A. 彼女の言う通りにする。B. 割り勘にする。C. 自分が払うと言う。D. 「今回は自分が払い、次回は倍返しね」とふざけて言う。E. すでに支払いを済ませている。ポイントは、彼女の建て前と本音を読み取ることです。デートはビジネスのミーティングではありません。デートは目的ではなく手段です。デートという手段を通して、あなたはどういう目的があるかということです。その目的とは、あなたにとって彼女は大切であるということを伝えることです。AとBは、本音は払ってほしいという彼女の気持ちを読み取れていないです。Cは良いです。ただ、ひねりがないです。Dは、ひねりも加わり、楽しませ上手でもあります。次回のデートにつながりやすくなります。Eはクールで、これも良いです。ベストは、Dのやり取りをした後、実はEという流れです。大事なのは、お金の損得ではなく、「大事にされている」「頼っても良い」と彼女に思わせることです。Q5. 彼女が友達とトラブルになって困っていると言っている。あなたはどうする?A. 個人的な問題なので立ち入らない。B. 話を聞くことに徹する。C. 「いっしょに付いていこうか」と提案する。ポイントは、味方になって彼女を守りたいというメッセージを伝えることです。Aは、及び腰、逃げ腰です。Bは、味方ではあるのですが、頼りなさそうです。Cは、積極的であり頼もしいです。大事なのは、いざと言う時に頼りになるかということです。頼られ上手が考えることは、「自分が彼女に何をしてあげたいか」ではなく、「彼女が自分に何をしてもらいたいか」ということです。そのためにはどんな助けをすれば彼女(もっと言えば女性)が喜ぶか安心するかを徹底的に知っておく必要があります。なぜ頼られ上手はモテるのか?そもそも女性は、頼られ上手な男性を本能的に選ぶ傾向があります。これも先ほどの心の進化(進化心理学)から考えてみましょう。原始の時代、女性(母親)は、自分とその子どもたちに食糧を調達する男性(父親)を頼りました。そうする男性をより受け入れました。その子孫が現在の女性たちです。つまり、女性は、自分が頼れる男性を魅力的に感じる好み(嗜好性)が進化しているということです(性選択)。そして、その目安(形質)が頼もしさなのです。その頼もしさが存分に発揮される職業は何でしょうか? それは、アスリートです。アスリートは、誰(何)かと戦っています。その姿は、原始の時代、より多くの獲物を仕留め、猛獣や他の部族からの襲撃に立ち向かう男性に重なります。たくましい肉体美は、原始の時代から体力のある強い男の身体的特徴です。また、敵の裏をかく賢さや強気な性格は、「心の体力」(レジリエンス)のある強い男の心理的特徴です。アスリートが女性にモテるのも納得がいきます。広げて考えれば、経済力もまた頼もしさの目安と言えます。頼られ上手すぎると? ―表2それでは、頼られ上手であればあるほど良いのでしょうか? 頼られ上手だけであれば良いのでしょうか? そうとも言えないです。頼もしさの心理(能力)は、「おれに任せろ」というどっしりした安定感や強い芯(リーダーシップ)がある反面、度がすぎると独りよがり(独善)で一方的(断定)になり、女性の主体性(自己)を奪ってしまいます(自己愛パーソナリティ)。例えば、オラオラ系やモラハラ男です。例えば、先ほどのクイズで、出会いの場で一方的に自分の話をする(Q1のA)、年齢を聞かれたりおならをされたりして緊張が漂う場面で真面目に対応する(Q2のAとB、Q3のB)などは、頼られ上手の要素はありますが、その状況では正解ではないです。また、頼られ上手は、実は男性ホルモンの多さを表しています。つまり、頼られ上手の度がすぎると、浮気性が高まります。それでは、女性の主体性を尊重するにはどうすれば良いでしょうか? そのために必要なことがあと1つあります。表2 頼られ上手の二面性マイナス面プラス面独善断定浮気性安心感リーダーシップ聞き上手3つ目の魅力は、金太郎の濱田岳さんにあります。まずは、以下の動画サイトを見てみましょう。画面をクリックしてください。金太郎は、自分の話でありながら、桃太郎と浦島太郎から意見を引き出し、「ですよね~」と合いの手を入れます。CMのシリーズ全体を通して、金太郎は桃太郎と浦島太郎より一歩引いた立ち位置です。また、さきほどの動画で、金太郎は、桃太郎がキジの家族一人一人にきび団子を分け与えている良い話を聞いて、「家族一人一人・・・」と感動して泣き出していました。相手の話に聞き入り、とても共感的です。3つ目の魅力は、聞き上手です。この魅力を発揮するために、男性の方は次のクイズに挑戦しましょう。Q6. 彼女の母親が緊急入院した。落ち込んでいる彼女にどう声をかける?A. 「もっと大変な人もいるよ」「元気出して」と励ます。B. 「今、何かしたいことある?」と聞き出す。C. 「自分が落ち込んだ時は・・・」と自分の話を聞かせる。D. 「今つらいんだね」と共感する。ポイントは、人生にはどうしようもないことがあること、自分が頼りにならないことがあることを理解していることです。そして、それでも彼女の味方として寄り添うことです。Aは、頼られ上手としてついつい言いそうになります。他人と比べて大したことないと決め付けています(標準化)。しかし、彼女にとっては一大事です。また、彼女なりにすでに元気を出そうとしてがんばっているかもしれません。そんな時に、さらに元気を出せと励ますのは、彼女を追い込むだけになるリスクがあります。医療においては、うつ状態の人に叱咤激励は禁忌です。Bは、楽しませ上手として良さそうです。しかし、この状況では、彼女は落ち込んでいて何もしたくない可能性が高く、愚問です。Cは、彼女に話を聞く心の余裕はない可能性が高く、逆効果です。Dは、共感することで彼女の気持ちに寄り添っています。彼女は、あなたが自分の味方であることを再確認します。大事なのは、彼があなたに心を預けたくなるかということです。Q7. 今日、彼女が仕事でミスをした。八つ当たりする彼女にどう返す?A. 「八つ当たりするなよ」とたしなめる。B. 「ごめん」と言ってとりあえず謝る。C. 「仕事大変だったんだね」と優しく言う。Aは、正論です。しかし、結果的には冷たく彼女を突き放しています。Bは、場合によっては必要ですが、彼女の本心は謝罪を求めているわけではないです。Cは、八つ当たりしているかどうかは置いといて、まず彼女の気持ちを受け止めています。大事なのは、弱っている時、人は感じやすくなるということを理解していることです。そして、繰り返しですが、それでも彼女の味方として寄り添うことです。それには、男の器の大きさが求められます。Q8. あなたの仕事が多忙になり、彼女といっしょにいる時間が減っている。思い詰めた彼女は「仕事と私、どっちが大事なの?」と不安そうに迫ってきた。まず、彼女にどう答える?A. 「今は仕事が大事な時である」と強く説得する。B. 「仕事を減らして会う時間を増やす」と固く約束する。C. 「どうしてそう思うの?」と優しく尋ねる。Aの説得を試みるのは、頼られ上手にありがちです。しかし、彼女の不安な気持ちを受け止めていないです。Bは、彼女の気持ちを汲んで満たそうとしており、一見良さそうです。しかし、果たして仕事を減らすことを彼女は本当に望んでいるのでしょうか? Cは、彼女の気持ちを引き出しています。これが、まずするべきことです。大事なのは、まず彼女の気持ちを受け止めること、彼女の真意は何かに耳を傾ける態度を示すことです。聞き上手が考えることは、「彼女が弱っている時に、自分は彼女に何をして何をしないか」ということです。そのためには彼女(もっと言えば女性)はどうすれば安らぐかを徹底的に知っておく必要があります。なぜ聞き上手はモテるのか?そもそも女性は、聞き上手な男性を本能的に選ぶ傾向があります。これも先ほどの心の進化(進化心理学)から考えてみましょう。原始の時代、子育ては、女性(母親)が主にしていましたが、男性(父親)も助けていました。このように子育てに協力的な男性を女性はより選びました。その子孫が現在の女性たちです。つまり、女性は、子ども(=弱者=弱っている時(退行)の自分)に優しい男性を魅力的に感じる好み(嗜好性)が進化しているということです(性選択)。例えば、イクメンの芸能人の人気は、女性に揺るぎないです。そして、その目安(形質)が話をよく聞くことなのです。なぜなら、話をよく聞く人(グッドリスナー)=理解者=味方になるからです。ちなみに、話をよく聞くための相づちのコツがあります。それは、相手の言葉を繰り返すこと(オウム返し)、言い換えること、まとめること、そして汲み取ること(共感)です。さらに、時々ツッコミを入れれば、楽しませ上手にもなるでしょう。この話をよく聞くことが存分に発揮される職業は何でしょうか? それは、ホストです。ホストクラブに女性がハマるのも納得がいきます。彼らは、女性の話をよく聞きます。聞き上手すぎると? ―表3それでは、聞き上手であればあるほど良いのでしょうか? 聞き上手だけであれば良いのでしょうか? そうとも言えないです。話をよく聞く心理(能力)は、安心感や安全感をもたらしてくれる反面、そればかりだと刺激がなく退屈で、頼りなくなってしまいます。例えば、先ほどのクイズで、出会いの場で話を聞くことに徹する(Q1のB)、自分の年齢を明かさずに微笑むのみ(Q2のC)、彼女のおならを心配する(Q3のD)、トラブルの時に話を聞くことに徹する(Q5のB)などは、聞き上手の要素はありますが、その状況では正解ではないです。また、さきほどの金太郎は、自分にメジャーな話がないと嘆くと、「新しい話を作ろう」と桃太郎と浦島太郎に言い出され、「こんなまさかりなんてやめちゃってさ」と、鉞(まさかり)を囲炉裏の中に入れられてしまい、いじられキャラになっています。表3 聞き上手の二面性マイナス面プラス面刺激がない、退屈頼りないいじられやすい安心感安全感男性の対人魅力とは? ―バランスとギアチェンジこれまで、恋人や夫としての男性の魅力(対人魅力)の要素が、楽しませ上手、頼られ上手、聞き上手であることを明らかにしてきました。それぞれの上手は、脳内の3つの代表的な神経伝達物質に重なります。お笑い(ユーモア)は楽しさであるドパミン、頼もしさは強さであるノルアドレナリン、そして話をよく聞くことは優しさであるセロトニンです。これらの心理(神経伝達物質)がバランス良く、そしてタイミング良く発揮されていることが心の健康として、そして対人魅力として望ましいと言えます。つまり、ここで大事なことが2つ分かります。1つは、どの上手を高めるかだけでなく、どの上手が足りないかを知ることです。つまり、どの上手でもあるバランスです。そしてもう1つは、自分がどの上手になりたいかではなく、その時の彼女(相手)がどの上手になってほしいかを見極める賢さを持つことです。つまり、どの上手にもなるギアチェンジです。なお、この男性の対人魅力の要素である楽しませ上手(ドパミン)、頼られ上手(ノルアドレナリン)、聞き上手(セロトニン)は、前回にご紹介しました女性の対人魅力の要素である甘え美人(ドパミン)、気配り美人(ノルアドレナリン)、癒し美人(セロトニン)とお互いに影響をし合って進化してきたと言えます(共進化)。職場に生かす対人魅力とは? ―表4さらには、職場の上司や部下としての男性の人間的な魅力も、3つの上手のバランスとギアチェンジからヒントが得られます。例えば男性の上司の場合、勤務時間中は部下たちに指示を的確に出して、リーダーシップを発揮し、部下の失敗を積極的にフォローして、いざと言う時は、自分が責任を取ります(頼られ上手)。一方、休み時間は部下と打ち解けてふざけます(楽しませ上手)。そして、部下が仕事で疲れ切っている時は必ずねぎらい、相談事にはよく耳を傾けます(聞き上手)。また、部下にダメ出しをする時は、自分のタイミングではなく、部下が受け入れられるタイミングを見計らいます。これは、さきほどのクイズで、彼女が弱っている時の対応(Q7)にも通じるもので、人は弱っている時はひがみっぽくなり、指示や忠告を素直に受け入れにくい心理があるからです。つまり、弱っている時のダメ出しは、効果があまり期待できないどころか逆効果になる可能性を理解していることです。このように、男性の対人魅力をより良く知ることは、男性の人間的な魅力を発揮することにもつながります。さらには、男性だけでなく、女性もその心理を知ることで、お互いのより良いコミュニケーションにつながっていくのではないでしょうか?表4 職場に生かす3つの上手 例頼られ上手勤務時間中は部下たちに指示を的確に出して、リーダーシップを発揮する部下の失敗を積極的にフォローして、いざと言う時は、自分が責任を取る楽しませ上手休み時間は部下と打ち解けてふざける聞き上手部下が仕事に疲れ切っている時は必ずねぎらい、相談事にはよく耳を傾ける部下にダメ出しをする時は、自分のタイミングではなく、部下が受け入れられるタイミングを見計らう1)ジャレド・ダイアモンド:人間の性はなぜ奇妙に進化したのか?、草思社、20132)井村裕夫:進化医学、羊土社、20133)山岸俊男監修:社会心理学、新星出版社、2011

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心血管デバイスの承認申請書と公表論文を比較/BMJ

 米国・マサチューセッツ総合病院のLee Chang氏らは、最近承認されたハイリスク医療機器の心血管デバイスについて、米国FDAに報告された臨床試験の特徴および安全性、有効性に関する結果を調べ、ピアレビュー論文の同報告と比較した。その結果、臨床試験が未発表であるものが多く、発表されたものについても、試験集団、主要エンドポイントや試験結果が、FDAに提出されたデータとはかなり異なる可能性があることを報告した。これまでに、新規上市の医薬品については、臨床試験データにバイアスをかけた論文の発表が報告されている。医療機器については、臨床試験がどれほど選択的に報告されているのか明らかになっていなかった。BMJ誌オンライン版2015年6月10日号掲載の報告。FDA文書と刊行論文の内容を比較 研究グループは、一般公開されているFDAデータベースを検索し、2000年1月1日~2010年12月31日に上市されたすべての心血管デバイスについて調べた。市販前承認文書にリストアップされている各試験について、Medlineを用いて該当する刊行論文を検索し評価した。 主要評価項目は、FDA文書および刊行論文における臨床試験の特徴、主要エンドポイント、安全性および有効性の結果とした。主要エンドポイントの結果、同一35%、かなり異なる11% 検索対象期間中にFDAから市販前承認を受けた心血管デバイスは106個あった。 これらデバイスのFDA市販前承認申請書に含まれていた試験は177件、そのうち2013年1月1日時点で発表されていたのは86件(49%)であった。この86件において報告されていた心血管デバイスは60個であった。FDA承認からピアレビュー誌発表までの平均期間は6.5ヵ月(範囲:-4.8年~7.5年)であり、86件のうち22件(26%)において、試験登録被験者数がFDAサマリーと刊行論文で異なっていた。 また、FDA文書では152の主要エンドポイントが特定できたが、刊行論文ではそのうち3つが副次評価項目に分類(labeled)されており、未分類(unlabeled)43(28%)、不明(not found)が15(10%)あった。 主要エンドポイントの結果は、同一(identical)であったものが69(35%)、同程度(similar)が35(23%)で、かなり異なる17(11%)、比較不可31(20%)であった。

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かかりつけ機能を基に薬局を地域の健康窓口へ

 6月18日、厚生労働省は第2回健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会(座長:昭和薬科大学 学長 西島 正弘氏)を開催した。この検討会は、昨年6月に閣議決定された日本再興戦略の「薬局・薬剤師を活用したセルフメディケーションの推進」を受けて、健康情報拠点としてふさわしい薬局の定義・名称、基準の策定、公表の仕組みを検討することを目的としている。第2回検討会では主に定義に関する話し合いが行われた。 まず厚労省より、「健康情報拠点薬局(仮称)」とは「かかりつけ薬局」としての機能を備えたうえで、予防や健康づくりなどに貢献する「健康サポート機能」を持つ薬局である、というイメージが提示された1)。さらに、健康情報拠点薬局(仮称)が持つべき「健康サポート機能」の1つとして、病気でない人も含めて地域住民が気軽に相談に立ち寄れる、ファーストアクセスの窓口としての役割を想定しており、薬局ですべてを完結させるわけではなく、薬局が必要に応じて医療機関や行政につなぐ役割を担うとした。 意見交換では、日本医師会常任理事の羽鳥 裕氏は「『かかりつけ薬局』ではなく『かかりつけ薬剤師』を目指すべきではないか。薬局は医療提供施設になったのだから薬剤師にその覚悟を持ってほしい」と述べた。これに対し、厚労省は「指摘はもっともなことで、薬剤師は患者と顔の見える関係を目指すべきであり、次回以降基準の1つとして設けることを検討していきたい」と応えた。 一方、日本保険薬局協会常務理事の二塚 安子氏からは「厚労省から提示された『患者のための薬局ビジョン』において『門前薬局からかかりつけ薬局へ』とされているが、『門前イコール悪い』という考え方は払拭したい。立地が医療機関の近隣だとしても、相談応需機能を果たしている薬局もあるため、『すべての薬局にかかりつけ機能を』というのが適切ではないか」という、表現の変更を求める意見が出された。 また、「健康情報拠点」という名称が、各医療圏に1つ設置される健康情報の中心としてさまざまな専門職種を統括するプラットフォームであるかのような誤解を招く、という意見が複数の構成員から指摘され、議論の混乱を避けるためにも、早急に適切な名称を検討していくよう要請された。羽鳥氏の「ファーストアクセスがかかりつけ医であることも十分ありうる」という意見に対しては二塚氏より、「病気になった場合はもちろん医療機関を受診するが、健康な人がアクセスできるのが薬局である」と説明がなされた。また、現状として相談応需の役割を果たしている薬局とそうでない薬局の差があるため、どのように実現していくか検討が必要であることや、OTC医薬品も含めた一元管理が重要であることが確認された。 次回開催は7月2日の予定で、基準を中心に議論し、必要に応じて定義の見直しも行っていくとした。【参考】1)厚生労働省. 第2回健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会 (参照 2015. 6.19)

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統合失調症への集団精神療法、効果はどの程度か

 統合失調症に対してさまざまな集団精神療法が行われているが、その効果についてはほとんどわかっていない。英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のStavros Orfanos氏らは、集団精神療法の効果を評価するとともに、“集団効果”が治療強度、診断の均一性および治療方針と関連があるかどうかを検討する目的で、システマティックレビューを行った。その結果、統合失調症の治療において集団精神療法は陰性症状や社会的機能を改善しうることが認められ、その効果はさまざまな集団療法でみられ非特異的であることが示唆された。著者らは「将来的には集団療法の有効性のメカニズムを明らかにし、治療効果を最大化する方法を検討すべきである」とまとめている。Psychother Psychosom誌2015年6月号の掲載報告。 研究グループは、統合失調症患者を対象とした集団精神療法の無作為化比較試験について系統的に検索し、評価項目である症状スコアについてランダム効果モデルを用いたメタ解析を行い、集団精神療法群と通常治療群または偽集団療法群を比較するとともに、社会的機能については所見をまとめ、集団特性に関してメタ回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・34件の無作為化比較試験が本レビューに組み込まれた。・陰性症状の改善は、通常治療と比較した場合のみ集団精神療法が有意に優れていた(標準化平均差[SMD]=-0.37、95%信頼区間:-0.60~-0.14;p<0.01、I2=59.8%)。・大多数の研究において、通常治療と比較した場合の治療成果として、社会的機能の改善が報告されていた。・陰性症状に対する“集団効果”は、“治療強度”と正の関連を示した(β=0.32、標準誤差=0.121、p<0.05)。関連医療ニュース 統合失調症への支持療法と標準的ケア、その差は 統合失調症の社会参加に影響する症状は何か てんかん患者への精神療法、その効果は  担当者へのご意見箱はこちら

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脊椎圧迫骨折治療に有望な、新たな椎体形成術

 Kivaシステムは、椎体内にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を素材としたデバイスを埋め込み、その中に骨セメントを充填する椎体形成術(Vertebral Augmentation)である。米国・ウィスコンシン医科大学のSean M Tutton氏らは、安全性、有効性について、有痛性の骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折患者を対象に多施設無作為化比較試験KAST研究を行った。その結果、主要評価項目である疼痛改善、機能の維持・改善および安全性の複合エンドポイントに関してKivaシステムのバルーン椎体形成術(BKP)に対する非劣性が確認されたことを報告した。副次的評価項目においてもKivaシステムで良好な結果が得られたという。Spine誌2015年6月15日号(オンライン版2015年5月27日号)の掲載報告。 試験は、有痛性の骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折(1~2椎体)を有する患者300例で、Kiva群(153例)とBKP群(147例)に無作為化して単盲検下にて手術を行い、12ヵ月間追跡した。 主要評価項目は、12ヵ月後における疼痛減少(視覚アナログスケール[VAS]による)、機能の維持または改善(オスウェストリー障害指数[ODI]による)、およびデバイスに関連した重篤な有害事象の複合エンドポイントであった。 主な結果は以下のとおり。・VASスコアはKiva群で70.8ポイント、BKP群で71.8ポイント改善した。・ODIはそれぞれ38.1ポイントおよび42.2ポイント改善した。・デバイスに関連した重篤な有害事象は認められなかった。・主要評価項目においてKivaのBKPに対する非劣性が示された。・副次的評価項目では、骨セメントの使用量および漏出に関してKivaの優位性が認められた。

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事例58 内視鏡でのプロポフォールの査定【斬らレセプト】

解説事例では、大腸内視鏡時に使用した全身麻酔導入薬のプロポフォールが、静脈麻酔手技料とともにA事由(医学的に適応と認められないもの)で査定となった。医師からは、「腸管内視鏡時のプロポフォール使用は、学会などでは鎮静と鎮痛が適度に得られて、内視鏡実施時の安全に寄与するとの報告が複数あるのに、なぜ査定となったのか」と問い合せがあった。プロポフォールの添付文書によると「全身麻酔の導入及び維持」と「集中治療における人工呼吸中の鎮静」の適応を持つ静脈投与麻酔薬とあった。医師から見せていただいた文献には、プロポフォールは体内からの消失が速やかなため、投与終了後の覚醒が早いなどの特長があり、世界では消化器内視鏡実施時の鎮静薬としても広く使われていることが記載されていた。しかし、添付文書にはこの適応が記載されていない。よって、内視鏡時の鎮静・鎮痛には適用がないとしてA査定となったものであろう。学会などでは一般的であって、良い成績を収めていても、添付文書に適応がない場合は査定対象となるのである。

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プレスリリースはFDA非承認内容を適切に報じているか/BMJ

 臨床試験のスポンサー(製薬会社)は、米国FDAが薬剤の市販申請を承認しない理由を伝える審査完了報告通知(complete response letter:CRL)の内容の多くを、プレスリリースには反映していないことが、FDA公衆衛生戦略解析事務局のPeter Lurie氏らの検討で明らかとなった。FDAは、規制機関がスポンサーからの市販申請を承認しないと決定した場合に、その理由をCRLでスポンサーに伝える。スポンサーは、CRLの内容を含むプレスリリースを公表してよいが、必須ではない。一方、これらのプレスリリースは、FDAの決定および非承認の論拠に関する公開された唯一の情報源となることが多いという。BMJ誌オンライン版2015年6月10日号掲載の報告。7ドメインに関するステートメントの一致を評価 研究グループは、FDAが非承認の理由を記載してスポンサーに送付した非公開のCRLと、これを基にスポンサーが報道機関向けに公表したプレスリリースの内容を比較する横断的研究を実施した。 2008年8月11日~13年6月27日の間に、FDA医薬品評価研究センター(CDER)が発行した61通のCRLと関連プレスリリースに含まれる個々のステートメントを、7つのドメイン(64のサブドメイン)に分類し、両者の一致を評価した。 ステートメントとは、特定の不備に関する記述であり、7つのドメインは、「一般事項」「有効性」「安全性」「臨床薬理学」「非臨床的研究」「化学的性質・製造過程・製品管理」「用法表示」であった。プレスリリースのステートメントが、CRLのステートメントと同じ問題を扱っている場合に「一致」と判定した。 CRLの内訳は、新薬が79%(48通)、生物学的製剤が21%(13通)であり、希少疾病用薬(オーファンドラッグ)が28%(17通)、優先審査対象薬が20%(12通)、画期的医薬品(ファーストインクラス)が33%(20通)含まれた。非公表率18%、完全一致は2通、ステートメント一致率14% CRLの48%(29通)が、安全性および有効性の双方の不備を指摘しており、双方ともに不備がないとしたのは13%(8通)だけであった。 CRLの18%(11通)についてはプレスリリースが発行されておらず(非公表)、21%(13通)のCRLのプレスリリースはCRLのステートメントとまったく一致しなかった。そのほか、ステートメント一致率1~25%が39%(24通)、26~50%が11%(7通)、51~99%が7%(4通)で、完全に一致したのは2通のみだった。 61通のCRLから687件のステートメントが同定された。1通当たりのステートメント件数中央値(範囲)は8件(1~38)であった。最もステートメントの多いドメインは有効性(191件)で、次いで安全性(150件)であり、2つを合わせると全ステートメントの約半数を占めた。 687件のCRLステートメントのうち、プレスリリースと一致したのは93件(14%)であり、残りの594件(84%)はプレスリリースでは除外されていた。一致したステートメントのうち有効性に関するものが16%(30件)で、安全性は15%(22件)だった。 安全性または有効性に関して新たな臨床試験を求めたCRLが32通あり、この事実に触れたプレスリリースは59%(19報)であった。また、7通のCRLが、治療を受けた参加者の死亡率が高いことを指摘していたが、この事実に言及したプレスリリースは1報だけだった。 著者は、「FDAは一般に、CRLで複数の非承認の理由を挙げており、そのほとんどは安全性もしくは有効性の不備に関するものであった。多くの場合、プレスリリースそのものが発行されておらず、公表された場合でも、CRLのステートメントの多くが除外されていた」とまとめ、「プレスリリースは、CRLに含まれる詳細な情報の代替手段としては不完全である」と結論付けている。

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抗真菌活性を有する新たなピーナッツアレルゲンを同定

 ピーナッツは、最も危険な食物アレルギーの原因の1つで、未知のアレルゲンが親油性マトリックスの中にまだ隠されている。ピーナッツアレルギー患者がアレルギーを起こすリスクを推定し診断法を改善するためには、こうしたアレルゲンを発見する必要がある。ドイツ・ボルステル研究所のArnd Petersen氏らは、この問題に取り組み、新しいピーナッツアレルゲン(Ara h 12およびAra h 13)として、とくに重度ピーナッツアレルギー患者のIgEと反応するディフェンシンを同定した。このディフェンシンは、抗細菌活性ではなく抗真菌活性を有することが明らかとなった。Journal of Allergy and Clinical Immunology誌オンライン版2015年5月30日号の掲載報告。 研究グループは、ローストしたピーナッツの親油性抽出物から2次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)ならびにクロマトグラフィー法を用いて低分子量成分を分離するとともに、ピーナッツアレルギー患者の血清を用いてSDS-PAGEおよび免疫ブロット法を行い、アレルゲンタンパク質を検出した。 タンパク質シークエンシング、相同性検索および質量分析によりアレルゲンを同定し、好塩基球活性化試験を用いてアレルギー誘発性を、各種細菌および真菌の阻害試験により抗菌活性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・クロロホルム/メタノールで抽出後、疎水性クロマトグラフィーの流出液中に12、11および10kDaのIgE反応性タンパク質が検出された。・検出されたタンパク質は、ピーナッツアレルギー患者の好塩基球を活性化した。・EST(expressed sequence tag)データベースを用いて検索した結果、アレルゲンはピーナッツ-ディフェンシンと同定され、質量分析にて確認された。・ピーナッツ-ディフェンシンは、クラドスポリウム属およびアルテルナリア属の糸状菌株に対して阻害活性を示したが、抗細菌活性はなかった。

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雌との遭遇意欲低下、うつモデルマウス:大阪大学

 大阪大学の吾郷 由希夫氏らは、うつ病を含む精神障害の重要な指標である意欲低下を評価する新たな手段として、雄マウスの雌マウスとの遭遇テストを検討した。その結果、雄マウスのうつ病モデルでは雌マウスとの遭遇を好む傾向が低下すること、この低下はフルボキサミンなどで軽減されることを報告し、本手法が雄マウスの意欲の評価に有用である可能性を報告した。International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2015年5月29日号の掲載報告。 意欲低下は、うつ病を含む精神障害の重要な指標である。研究グループは、マウスにおける報酬探索(reward-seeking)行動の新しい評価法である、雌との遭遇テスト(encounter test)について検討を行った。試験装置はパーテーションで区切られた3つのオープンな部屋で構成され、実験動物は1つの部屋から別の部屋に自由に行き来できるようにした。1匹の試験用の雄マウスはこの装置に前もって慣らしておき、その後、雌マウスと雄マウスを1匹ずつそれぞれ、左と右の部屋に設置した網の箱に入れた。雄のテストマウスが雌のあるいは雄のエリアで費やす時間は10分間とした。 主な結果は以下のとおり。・テストを実施した6系統のマウスすべてにおいて、雌との遭遇を有意に好むという結果を示した。・この嗜好傾向は、生後7~30週のマウスに認められた。・装置に慣らされていた雄のテストマウスのこの傾向は、去勢により阻害された。・また、後から侵入した雌マウスの月経周期のフェーズに影響されることはなかった。・この傾向は単独飼育、コルチコステロン投与、リポ多糖投与マウスを含む、うつ病モデルのマウスにおいて低下した。・示された意欲の低下は、単独飼育およびリポ多糖投与マウスではフルボキサミンの投与により軽減し、コルチコステロン投与マウスでは代謝型グルタミン酸受容体2/3アンタゴニストのLY341495投与により改善した。・雄でなく雌マウスとの遭遇により、雄のテストマウスの側坐核シェル部でのc-Fos発現が増加した。・さらに、この嗜好傾向と、遭遇により誘発されるc-Fos発現増加はどちらもドーパミンD1およびD2受容体アンタゴニストにより遮断された。・以上のように、成熟雄マウスの意欲は、雌との遭遇を定量化することで容易に評価できることが示された。関連医療ニュース うつ病のリスク遺伝子判明:藤田保健衛生大 NIRS、抗うつ効果の予測マーカーとなりうるか:昭和大 学歴とうつ病の関連は、遺伝か、環境か  担当者へのご意見箱はこちら

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