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発作性夜間血色素尿症〔PNH : paroxysmal nocturnal Hemoglobinuria〕

発作性夜間血色素尿症のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 定義発作性夜間血色素尿症(発作性夜間ヘモグロビン尿症、paroxysmal nocturnal hemoglobinuria: PNH)は、血管内溶血を特徴とする後天性の血液疾患で、PIG-A遺伝子に変異を有する造血幹細胞がクローン性に増加するために発症する。■ 疫学欧米におけるPNHの発症頻度は100万人あたり15.9人とされているが、わが国では100万人あたり3.6人ときわめてまれである〔1998年(平成10年)度の厚生労働省の疫学調査研究班による〕。男女比はほぼ1:1で、わが国における診断時年齢は20~60代(平均年齢45.1歳)と、広く分布する。欧米例では血栓症の合併が多いのに対し、わが国では造血不全症状が主体になることが多い。■ 病因PIG-A遺伝子に変異があると、GPIアンカー型の膜蛋白の発現が低下する。補体制御蛋白CD55やCD59もGPIアンカー型膜蛋白であり、PIG-A遺伝子の変異があるとその発現が低下する。このように、PIG-A遺伝子変異のためにCD55やCD59の発現を欠失した血球をPNH型血球と呼ぶ。PNH型血球は補体に対する感受性が高まっており、血管内溶血を生じやすい。PNH型血球が選択されて増加する機序は完全には解明されていないが、まずPIG-A遺伝子変異の入った造血幹細胞が免疫学的な攻撃を免れて相対的に増加し、さらに何らかの別な遺伝子異常が加わってクローン性に増加するものと考えられている。■ 症状典型的には、血管内溶血による貧血と褐色尿(ヘモグロビン尿)が症状の主体となる。溶血性貧血に伴い、全身倦怠感、労作時の息切れ、黄疸がみられる。ウイルス感染などによって補体が活性化されると溶血発作が生じ、急激な貧血の進行をみる。溶血で生じたヘモグロビン尿は、腎障害を引き起こし、むくみなどが生じる。また、深部静脈血栓症や肺塞栓症などの血栓症をしばしば合併する。わが国のPNH患者は造血不全を合併する頻度が高く、貧血に加えて白血球や血小板数の減少がみられることがある(汎血球減少)。汎血球減少がみられる患者においては、感染症や出血のリスクも増加している。■ 分類1)臨床的PNH:溶血所見がみられるもの古典的PNH:末梢血のPNH型血球の比率が高く、溶血症状あるいは血栓症状が顕著。骨髄不全型PNH:骨髄が低形成で汎血球減少を呈する型。再生不良性貧血―PNH症候群とも呼ばれる。混合型PNH2)PNH型血球を有する骨髄不全症:明らかな溶血所見を欠くが、末梢血に少数のPNH型血球が検出され、再生不良性貧血あるいは骨髄異形成症候群の診断基準を満たすもの。PNH型血球陽性の骨髄不全症では、抗胸腺免疫グロブリンやシクロスポリンなどによる免疫抑制療法に反応して血球が増加することが多い。■ 予後わが国におけるPNH患者の診断後の平均生存期間は32.1年、50%生存期間も25.0年と長く、慢性の疾患といえる。この間、溶血発作を反復したり、造血不全、腎障害などが徐々に進行したりするため、QOLは必ずしもよくない。死亡原因としては出血、感染、血栓症が多く、骨髄異形成症候群などの造血器腫瘍への移行、腎障害、および血栓症が予後を大きく左右する。近年、中等症以上の患者に対して、補体C5に対するヒト化モノクローナル抗体のエクリズマブ(商品名:ソリリス)が積極的に用いられるようになった。こういった治療法の進歩によって、患者のQOLと生命予後の改善が期待されている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 主な検査と診断血液検査、尿検査によって血管内溶血の所見を確認する。貧血、網状赤血球数増加、血清LDH値上昇、血清間接ビリルビン値上昇、血清ハプトグロビン値低下、尿潜血(ヘモグロビン)反応陽性は、血管内溶血を疑う所見である。PNHの診断には、フローサイトメトリーを用いたPNH型血球(CD55、CD59を欠損する血球)の検出が不可欠である。古典的なHam試験と砂糖水試験は、最近ではフローサイトメトリーにとって代わられている。FLAER法を用いたフローサイトメトリーでは、非常に高感度にPNH型血球を定量できる(保険診療外)。さらに骨髄検査によって、PNH型血球陽性の造血不全症(再生不良性貧血や骨髄異形成症候群)との鑑別や、PNHの病型分類を行う。■ 重症度分類と指定難病特発性造血障害に関する調査研究班では、溶血所見に基づいた重症度分類を作成している。これによると、ヘモグロビン7g/dL未満または定期的な赤血球輸血を必要とする貧血か、あるいは血清LDHが正常上限の8~10倍程度の高度な溶血を認める場合を「重症」、ヘモグロビン10g/dL未満の貧血か、あるいは血清LDHが正常上限の4~5倍程度の中等度の溶血を認める場合を「中等症」とし、これに該当しない場合を「軽症」としている。ただし、血栓症の既往があれば、溶血の程度に関わらず「重症」とされる。平成27年1月から、PNHは「難病患者に対する医療等の法律」による指定難病となった。これにより、中等症以上の患者の医療費負担が大幅に軽減されるようになった。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)PNHの根治を目指す治療法は同種造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植)のみであるが、この治療法自体のリスクが大きいために、適応は若年で、かつ重症の骨髄不全症を伴う場合に限られる。さまざまな感染症が溶血発作の引き金になるため、日常生活では感染症の予防が重要である。溶血が長期にわたると、尿から鉄が失われるために鉄欠乏になったり、需要の増大のために葉酸欠乏になったりするので、血清フェリチン値や葉酸値をみながら鉄や葉酸の補充を検討する。溶血発作時には少量の副腎皮質ステロイドを用いることがあるが、糖尿病の発症や易感染性などの副作用のため、長期的な使用の有用性については意見が分かれる。貧血が高度の場合は赤血球輸血を行う。溶血により生じた遊離ヘモグロビンによる腎障害を防止するためには、輸液や利尿剤を用いるほか、高度の溶血発作時には人ハプトグロビン(商品名:ハプトグロビン)を投与することもある。血栓症の予防と治療には、ヘパリンやワーファリン製剤による抗血栓療法を行う。骨髄不全型PNHでは、蛋白同化ホルモンや免疫抑制剤が用いられる。最近、保険適用となったエクリズマブ(同:ソリリス)は、補体溶血を抑制することによって、貧血をはじめとするさまざまな臨床症状を劇的に改善する。この薬剤には血栓症の予防効果もみられる。重症例では積極的適応、中等症では相対的適応とされる。ただし、エクリズマブ治療導入の際には、点滴治療を定期的、継続的に行う必要があること、エクリズマブを中止する際には高度の溶血発作が生じうること、髄膜炎菌など一部の感染症に対する免疫能の低下が起こりうること、および高額な薬剤であることを十分に説明し、髄膜炎菌に対するワクチンの接種を行ってから開始する。エクリズマブ治療開始後に、LDHが低下したにもかかわらず貧血の改善が乏しい場合には、赤血球の膜上に蓄積した補体による血管外溶血あるいは骨髄不全の合併を考える。エクリズマブ治療には、PNHに合併した骨髄不全の改善効果は期待できない。PNH患者の妊娠に関しては、血栓症による流産のリスクが高く、また貧血もしばしば高度になる。平成26年度に、特発性造血障害調査に関する調査研究班および日本PNH研究会によって「妊娠ガイドライン」が作成された。このガイドラインでは、妊娠前の治療状況や血栓症の既往の有無によって、ヘパリンあるいはエクリズマブの使用が推奨されている。4 今後の展望病態面では、PNH型血球クローン増加の機序、血栓症がみられる機序などに関し、さらなる研究の進展が期待される。治療に関しては、エクリズマブの登場によってPNHの治療戦略が刷新された。今後、エクリズマブ不応例への対応や、血管外溶血が顕在化してくる症例に対する治療、妊娠管理などに関して、さらなる知見の集積と指針の充実が待たれる。現在、エクリズマブ以外にも補体系を標的とした新薬の開発が進んでおり、今後、PNH患者のQOLや予後のさらなる改善が期待される。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 発作性夜間ヘモグロビン尿症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)特発性造血障害調査に関する調査研究班(診療の参照ガイドがダウンロードできる)日本血液学会(血液専門医研修施設マップで紹介先の候補を検索できる)日本PNH研究会(患者向けと医療者向けのかなり詳しい情報)患者会情報NPO法人PNH倶楽部(PNH患者と家族の会)公開履歴初回2013年02月28日更新2015年10月13日

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事例74 四肢ギプス包帯の査定【斬らレセプト】

解説事例では、左前腕打撲で受診した患者に診療を加えたところ、左橈骨遠位端に骨折を認め、整復(骨折非観血的整復術)後にプラスチックギプスで前腕を固定した。固定をJ122 ギプス包帯「5」上肢で算定したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)を理由に、同包帯「3」半肢・前腕に減額査定となった。査定理由を探るため会計担当者に尋ねたところ、会計担当者からは、「カルテに前腕プラスチックギプスとあったから『上肢』で算定した」という。原因は会計担当者の勉強不足にあった。診療報酬上の「上肢」とは、肩関節から手先までの一肢を指し、肩関節を除くことと、「遠位端」は体幹から見て遠い部分を指し、「前腕遠位端」とは手首の近辺を指すことを会計担当者に伝えた。事例のギプスで固定すべき範囲は「半肢・前腕」であり、その区分で算定すべきであることも伝えた。さらに前腕骨折の場合、医学的に肘関節から上の部分もギプス固定が必要であれば、医学的に必要としたコメントが必要であることも伝えて、査定対策とした。

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片頭痛の頻度と強度、血清脂質と有意に相関

 片頭痛は心血管疾患、とくに脂質異常症のリスク増加と関連していることが報告されているが、これまで片頭痛の重症度と血清脂質との関係を調べた研究はなかった。イタリア・G.D'Annunzio UniversityのClaudio Tana氏らは、小規模な後ろ向き研究において、総コレステロールおよびLDL-コレステロール値が、片頭痛の頻度および強度と有意な正の関連があることを明らかにした。また、片頭痛予防薬による治療後に、これら血清脂質値が有意に減少していることを初めて明らかにした。著者は「本研究は予備的研究であり、今後は前向き比較試験によって確認されなければならない」とまとめている。Pain Practice誌2015年9月号(オンライン版2014年7月10日号)の掲載報告。片頭痛発作の頻度および強度とコレステロールには直接的な線形相関 研究グループは、片頭痛患者52例(前兆あり17例、前兆なし36例)を対象に、片頭痛予防薬による3ヵ月間の治療前後の、片頭痛重症度と血清脂質との関連について評価した。 コレステロールと片頭痛の関連についての主な研究結果は以下のとおり。・片頭痛発作が月8回以上の高頻度群(HF群)および強度が数値的評価スケール(NRS)で5以上の重度群(HI群)では、月8回未満の低頻度群(LF群)およびNRSが5未満の軽度群(LI群)と比較して、総コレステロールおよびLDL-コレステロールがいずれも有意に高値であった[総コレステロール:HF群 vs.LF群(p<0.0001)、HI群 vs.LI群(p<0.0001)/LDL-コレステロール:どちらもp<0.0001]。・治療による片頭痛発作の頻度および強度の有意な低下は、総コレステロールおよび LDL-コレステロールの有意な減少と関連していた(p<0.001)。・片頭痛発作の頻度および強度と、血清脂質との間には、直接的な線形相関が認められた(総コレステロールと頻度、総コレステロールと強度、LDL-コレステロールと頻度、およびLDL-コレステロールと強度との相関はいずれもp<0.0001)。・前兆の有無では、評価パラメータに差はなかった。

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正常眼圧緑内障の乳頭出血、血小板機能低下で発見されやすい?

 正常眼圧緑内障にみられる乳頭出血は、血小板機能の低下と関連していることが、韓国・成均館大学のSeong Hee Shim氏らの前向き横断研究によって明らかになった。著者は「乳頭出血を有する正常眼圧緑内障患者では、血小板凝集が遅れて出血が長引き吸収が遅延するため、乳頭出血が検出されやすい可能性がある」とまとめている。American Journal of Ophthalmology誌オンライン版2015年9月14日号の掲載報告。 研究グループは、正常眼圧緑内障と乳頭出血を有する患者(NTG・DH+群)120例、乳頭出血のない正常眼圧緑内障患者(NTG・DH-群)75例、および健常者(対照群)120例、合計315例を対象に、視野検査、カラー眼底写真撮影、光干渉断層計(OCT)検査を行うとともに、血小板機能アナライザー(PFA-100システム)を用いてコラーゲン/エピネフリン閉塞時間を測定した。 主な結果は以下のとおり。・コラーゲン/エピネフリン閉塞時間は、NTG・DH+群141.92±53.44秒、NTG・DH-群124.60±46.72秒、対照群114.84±34.84秒で、NTG・DH+群が他の群と比較して約14~24%長かった(一元配置分散分析、p<0.001)。・NTG・DH+群の活性化部分トロンボプラスチン時間も、対照群より長かった。・ステップワイズ多重ロジスティック回帰分析の結果、コラーゲン/エピネフリン閉塞時間の延長のみが独立して乳頭出血と関連していることが明らかとなった(年齢、性別、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、糖尿病、高血圧、低血圧、心疾患、甲状腺機能低下症、片頭痛、脳卒中、脂質異常症で調整したオッズ比=2.94、95%信頼区間:1.40~6.17)。・血小板機能を年齢別に3群で比較したときも同様の傾向が観察された。

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統合失調症患者の運動増進、どうしたら上手くいくか

 統合失調症患者において、定期的な運動は身体的にも精神的にも良い影響を与える。しかし、先行研究における参加者の少なさや高い脱落率から示されるように、認識力、理解力、情動、意志力の障害が運動を計画および実行を困難にしている。ドイツ・コンスタンツ大学のPascal Sailer氏らは、心理対比と実行意図(Mental Contrasting and Implementation Intentions:MCII)という手法が、統合失調症患者の運動増進に有用なのかを評価するため、パイロット無作為化比較試験を実施した。その結果、MCII法は、自主性重視の環境でも患者の“運動する”という意図した行動の実現に役立つことが認められた。BMC Psychiatry誌オンライン版2015年9月3日号の掲載報告。 本研究は、統合失調症スペクトラム障害患者の治療を専門に行う2施設の中の3つの専門病棟(高度に構造化された治療プログラムを行う病棟が1つ、自主性や自己決定を重視した治療プログラムを行う病棟が2つ)において行われた。対象は、統合失調症スペクトラム障害群と診断された入院患者36例[平均年齢30.89(標準偏差11.41)歳、うち女性11例]で、MCII群と対照群の2群に無作為化された。対照群は、身体活動に関する参考テキストを読んだ後、ジョギングプログラムに参加するために目標を決め書き留めた。MCII群は、対照群と同じ参考テキストを読んだ後、MCII法を実行した。試験期間は4週間であった。 主な結果は以下のとおり。・自主性重視環境の場合、対照群と比較してMCII群において、グループで行うジョギングプログラムへの参加や持続性が増加したが、高度構造化環境の場合は2群間に差は認められなかった(おそらく天井効果による)。・これらの結果は、試験開始前のベックうつ病調査票(BDI)スコア、国際標準身体活動質問票(IPAQ)スコア、体重(BMI)、年齢および教育に関する両群の差を調整した場合でも、変わらなかった。・試験期間中、ジョギングプログラムへの取り組みに関するスコアやジョギングプログラム以外の身体活動(IPAQスコア)は安定していたのに対し、うつ(BDIスコア)や陰性症状(PANSSスコア)は減少した。・MCII群の間で試験前後の変化は認められなかった。関連医療ニュース 統合失調症への集団精神療法、効果はどの程度か 認知症への運動療法、効果はあるのか うつ病治療、行動療法の意義はどの程度か:京都大学  担当者へのご意見箱はこちら

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治療抵抗性高血圧、スピロノラクトン追加が有効/Lancet

 スピロノラクトン(商品名:アルダクトンAほか)は、通常の降圧治療を受けている治療抵抗性高血圧患者への追加薬剤として高い効果を発揮することが、英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのBryan Williams氏らが実施したPATHWAY-2試験で確認された。国際的なガイドラインでは、3つの推奨降圧薬(ACE阻害薬/ARB、カルシウム拮抗薬、サイアザイド系利尿薬)の最大耐用量による治療でも、目標血圧でコントロールができない場合を治療抵抗性高血圧と定義している。スピロノラクトンは治療抵抗性高血圧に有効であることが、メタ解析で示唆されているが、既存のエビデンスの質は低いとされ、他の降圧薬と比較した試験はこれまでなかったという。Lancet誌オンライン版2015年9月20日号掲載の報告。3剤とプラセボを切り換えて上乗せするクロスオーバー試験 PATHWAY-2試験は、「治療抵抗性高血圧の多くは過度のナトリウム貯留によって引き起こされ、それゆえスピロノラクトンは利尿薬以外の薬剤を追加するよりも降圧に有効である」との仮説を検証する二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験(英国心臓財団/国立衛生研究所の助成による)。 対象は、年齢18~79歳、最大耐用量の3剤併用療法(ACE阻害薬/ARB+カルシウム拮抗薬+サイアザイド系利尿薬)を3ヵ月以上継続しても、座位収縮期血圧≧140mmHg(糖尿病罹患者は≧135mmHg)、家庭収縮期血圧(4日で18回測定)≧130mmHgの患者とした。 これらの患者は、ベースライン時に投与されていた降圧薬に加え、スピロノラクトン(25~50mg)、ビソプロロール(5~10mg)、放出調節型ドキサゾシン(4~8mg)、プラセボの1日1回経口投与を、クロスオーバーデザインであらかじめ決められた順に施行する群に無作為に割り付けられた。 各薬剤は12週ずつ投与。低用量を6週間投与し、倍量に増量してさらに6週間投与した。耐用不能な患者は次の薬剤に移行した。ウォッシュアウト期間は設けず、試験期間はプラセボ導入期間を含め1年であった。 階層的主要評価項目として、スピロノラクトンとプラセボ間の平均家庭収縮期血圧の差を評価し、有意差がある場合はスピロノラクトンと他の2剤の投与期を合わせた家庭収縮期血圧の差を、次いでスピロノラクトンと他の個々の2剤との家庭収縮期血圧の差の評価を行った。 2009年5月15日~14年7月8日の間に、英国12ヵ所の2次医療機関および2つのプライマリケア施設で335例が登録。ベースラインの平均年齢は61.4±9.6歳、男性が69%で、家庭血圧は収縮期が147.6±13.2mmHg、拡張期が84.2±10.9mmHg、心拍数は73.3±9.9拍/分、診察室血圧はそれぞれ157.0±14.3mmHg、90.0±1.5mmHg、心拍数は77.2±12.2拍/分であった。すべての比較で良好な降圧効果、高用量で効果が高い フォローアップ不能であった21例を除く314例をintention-to-treat集団とした。285例がスピロノラクトン、282例がドキサゾシン、285例がビソプロロール、274例がプラセボの投与を受け、全治療を完遂したのは230例だった。 スピロノラクトンは、平均家庭収縮期血圧をプラセボよりもさらに8.70mmHg(95%信頼区間[CI]:7.69~9.72、p<0.0001)低下させ、有意差が認められた。 また、スピロノラクトンによる家庭収縮期血圧の降圧効果は、ドキサゾシンとビソプロロール投与期よりも4.26mmHg(95%CI:3.38~5.13、p<0.0001)大きかった。個々の薬剤との比較では、スピロノラクトンはドキサゾシンよりも4.03mmHg(同:3.02~5.04、p<0.0001)、ビソプロロールよりも4.48mmHg(同:3.46~5.50、p<0.0001)有意に低下させた。 スピロノラクトンの降圧効果は、前投与薬の種類にかかわらず、低用量よりも高用量でさらに3.86mmHg(p<0.0001)大きかった。また、全体で、219例(68.9%)が目標血圧(家庭収縮期血圧<135mmHg)を達成した。 最も有効な4th-lineの薬剤を予測するために、血漿レニン値と家庭収縮期血圧低下の関連を評価したところ、ベースラインの血漿レニン値にかかわらずスピロノラクトンの降圧効果が最も優れ、レニン値が低いほど個々の患者における降圧効果が優れる可能性が高い(逆相関)ことが示された。 スピロノラクトンによる有害事象の発現率は19%で、重篤な有害事象は2%に認められた。有害事象による治療中止は1%にみられたが、腎機能障害、高カリウム血症、女性化乳房による治療中止の頻度は他の薬剤やプラセボとの間に差はなかった。6例(2%)で、血清カリウム値が6.0mmol/Lを超えた(最大値は6.5mmol/L)が、いずれも1回のみであった。 著者は、「血漿レニン値とスピロノラクトンの降圧効果の逆相関の関係は、治療抵抗性高血圧の発症におけるナトリウム貯留の関与を示唆する」と指摘し、「本試験の知見は、今後、世界的にガイドラインの改訂や実地臨床に影響を及ぼすと考えられる」としている。

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非扁平上皮NSCLCの2次治療、ニボルマブがOS延長/NEJM

 プラチナ製剤ベースの化学療法を行っても病勢が進行した非扁平上皮非小細胞肺がん(NSQ-NSCLC)の治療において、ニボルマブはドセタキセルに比べ、全生存期間(OS)を有意に延長することが、米国・フォックスチェイスがんセンターのHossein Borghaei氏らが行ったCheckMate 057試験で示された。NSCLCの2次治療では、新規薬剤であるペメトレキセドやエルロチニブは、標準治療薬であるドセタキセルよりも副作用プロファイルが良好だがOSの優越性は確認されていない。一方、完全ヒト型IgG4 PD-1免疫チェックポイント阻害抗体であるニボルマブは、第I相試験でNSCLCの全サブタイプで持続的な抗腫瘍効果と有望なOSが確認され、多くの前治療歴のある進行NSQ-NSCLCでは奏効率17.6%、1年OS 42%、3年OS 16%、1年無増悪生存率(PFS)18%と良好な成績が報告されている。NEJM誌オンライン版2015年9月27日号掲載の報告。2次治療での有用性を582例の無作為化試験で評価 CheckMate 057試験は、NSQ-NSCLCの2次治療におけるニボルマブの有用性を評価する国際的な非盲検無作為化第III相試験(Bristol-Myers Squibb社の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、全身状態が良好(ECOG PS 0~1)で、プラチナ製剤ベースの2剤併用レジメンによる1次治療中または治療終了後に再発または病勢が進行したStage IIIB/IVのNSQ-NSCLC患者とした。 被験者は、ニボルマブ3mg/kgを2週ごとに静脈内投与する群またはドセタキセル75mg/m2を3週ごとに静脈内投与する群に無作為に割り付けられた。治療は、病勢進行または毒性による治療中止となるまで継続された。 主要評価項目はOSとし、副次的評価項目には担当医評価で確定された客観的奏効率、PFS、PD-1発現レベルによる有効性などが含まれた。 2012年11月~13年12月までに582例が登録され、ニボルマブ群に292例、ドセタキセル群には290例が割り付けられ、それぞれ287例、268例が治療を受けた。 全体の年齢中央値は62歳、男性が55%で、PS 1が69%、Stage IVが92%、喫煙者/元喫煙者が79%であり、前治療の最良の効果は完全奏効(CR)/部分奏効(PR)が24%、安定(SD)が34%、進行(PD)が39%であった。死亡リスクが27%低下、奏効期間が約1年延長 最短のフォローアップ期間が13.2ヵ月の時点におけるOS中央値は、ニボルマブ群が12.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.7~15.0)と、ドセタキセル群の9.4ヵ月(95%CI:8.1~10.7)に比べ有意に延長した(死亡のハザード比[HR]:0.73、96%CI:0.59~0.89、p=0.002)。 1年OSはニボルマブ群が51%(95%CI:45~56)、ドセタキセル群は39%(同:33~45)だった。ほとんどの事前に規定されたサブグループで、ニボルマブ群のOS中央値が良好であった。 客観的奏効率は、ニボルマブ群が19%(CR 4例、PR 52例)であり、ドセタキセル群の12%(1例、35例)よりも有意に優れた(オッズ比[OR]:1.7、95%CI:1.1~2.6、p=0.02)。奏効までの期間中央値はそれぞれ2.1ヵ月、2.6ヵ月、奏効期間中央値は17.2ヵ月、5.6ヵ月であった。 PFS中央値(2.3 vs. 4.2ヵ月、p=0.39)はニボルマブ群のほうが短かったが、1年PFS(19 vs. 8%)はニボルマブ群が良好だった。 ニボルマブ群は、事前に規定された腫瘍細胞膜上のPD-1リガンド(PD-L1)の発現レベル(≧1%、≧5%、≧10%)のいずれにおいても、すべてのエンドポイントがドセタキセル群よりも優れていた。 治療関連有害事象の発現率は、ニボルマブ群が69%、ドセタキセル群は88%、重篤な有害事象の発現率はそれぞれ10%、54%であり、ニボルマブ群で頻度が低かった。ニボルマブ群で頻度の高い有害事象として、疲労(16%)、悪心(12%)、食欲減退(10%)、無力症(10%)がみられ、ドセタキセル群では好中球減少(31%)、疲労(29%)、悪心(26%)、脱毛(25%)の頻度が高かった。 著者は、「PD-L1の発現していない患者では両群間にOSの差を認めなかったが、安全性プロファイルや奏効の持続期間がニボルマブ群で良好であったことから、PD-L1発現の有無にかかわらず、ニボルマブは治療選択肢となる可能性がある」と指摘している。

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111)逆転の発想で指導する認知症予防法【高血圧患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 患者先生、最近物忘れが多くて、認知症にならないかと心配で……。 医師なるほど。食事の面では認知症にならないために、どんなことに気を配っておられますか? 患者魚がいいっていうんで、なるべく魚にしようと思っているんですが、なかなか摂れないので、サプリメントを飲んだり、ココナッツオイルがいいっていうんで、買おうかと思ったら売ってなくって……。 医師なるほど。高齢になると食が細くなり、栄養不足になりがちです。魚、野菜、果物など栄養が不足し、体重が減る傾向にあります。ところが、中年では……。 患者中年では? 医師栄養不足よりも過剰摂取が問題となります。甘いものなど高カロリーの食品、菓子パンなど飽和脂肪酸の多いものによる肥満、特に内臓脂肪の蓄積は、認知症のリスクとなります。 患者なるほど。摂りすぎもよくないですね。これから気をつけます(納得した顔)。●ポイント食べるのではなく、摂り過ぎないことでの認知症予防をわかりやすく説明します 1) Witte AV, et al. Proc Natl Acad Sci U S A.2009;106:1255-1260.

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テクノロジーを用いた不眠症治療、改善の余地あり

 不眠の訴えを軽減する一助として、複数のテクノロジーが提案されている。ユーザーの視点からみたこれらテクノロジーの評価は、治療アドヒアランスと関連する背景因子の知見を提供しうる。オランダ・デルフト工科大学のCorine Horsch氏らは、テクノロジーを用いた不眠症治療のアドヒアランスの状況を、メタ解析により調べた。その結果、アドヒアランス率は50%程度で改善の余地は大きいことが示唆されたが、不眠症患者自身は十分なアドヒアランスを保っていると考えており、いわゆる“アドヒアランスバイアス”が存在することを報告した。Journal of Medical Internet Research誌オンライン版2015年9月4日号の掲載報告。 研究グループは、テクノロジーを用いた不眠症治療のアドヒアランスの状況を把握し、アドヒアランス強化戦略を適用することにより、アドヒアランス率改善の確固たるベースを作ることを目的として、以下の3つの方法で検討を行った。(1)テクノロジーを用いた不眠症治療のアドヒアランス率を、メタ解析の実施により調べた。テクノロジーを用いた不眠症治療に関する複数のデータベースを照会し、適格基準および除外基準を評価した後、18件の試験のデータを収集して平均アドヒアランス率を算出した。(2)睡眠サポートテクノロジーに関する15件の半構造化インタビューを行い、アドヒアランスの状況を把握した。(3)アドヒアランス率をサポート可能なバーチャル睡眠指導の活用に関する複数のシナリオを作成。積極的ユーザー(15例)、睡眠専門医(7例)、コーチ(9例)をそれぞれ構成員に含む6つのフォーカスグループで、シナリオについてディスカッションを行った。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析の結果、テクノロジーを用いた睡眠治療の平均治療アドヒアランスは約52%(95%信頼区間[CI]:43~61%)であった。・この結果は、治療エクササイズの半分が遂行されていないことを示し、この分野においてアドヒアランス改善の余地が大きいことを示唆するものであった。・一方で、介入群ユーザーは、自分たちが利用するテクノロジー睡眠治療を十分に活用できていると信じている傾向がみられた。・また、介入群ユーザーは、治療アドヒアランスは個人の意欲(意志力など)に依存すると述べていた。・同様の傾向は、フォーカスグループの参加者でも認められ、彼らは、アドヒアランス強化戦略よりも個人の意欲のほうが、より効果が大きいと見なしていた。・不眠症介入のアドヒアランス率に大きな改善の余地があることが示唆されたが、ユーザーらはアドヒアランス戦略が問題であると考えていない可能性があり、彼らは意志の力が効果的なアドヒアランス戦略だと信じていた。・バーチャル指導は、こうした“アドヒアランスバイアス”に対処可能であり、ユーザーに対してリマインダー、褒め言葉、コミュニティづくりなどのアドヒアランス強化戦略を受け入れることを説得すべきである、と著者はまとめている。関連医療ニュース 音楽療法が不眠症に有用 不眠の薬物療法を減らすには 2つの新規不眠症治療薬、効果の違いは  担当者へのご意見箱はこちら

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中高年高血圧症例では足関節上腕血圧比測定を考慮する必要はあるか?(解説:冨山 博史 氏)-429

概要とコメント 本研究は、英国において1990年から2013年までプライマリケアで電子媒体に登録された、30~90歳の成人422万例の医療記録データを、前向き研究(平均観察期間7年)として解析した。前向き研究開始時に、末梢動脈疾患(PAD)非合併例は420万4,190例であり、PAD合併例は1万8,296例であった。前者では、経過中に4万4,239例(1.1%)でPADを発症し、収縮期血圧20mmHg上昇に伴い、PAD発症リスクは63%高まることが示された。 これまで血圧とPADの関係は、断面研究で検討した報告が多く1)、大規模な前向き研究が少ないため、PAD発症に対する血圧上昇のリスクとしての重要性は十分明らかでなかった。422万例を対象とした本前向き研究にて、血圧上昇がPAD発症の独立したリスクであることが示された。高血圧のPAD発症リスクとしての重要性を示す結果である。 一方、PAD合併例(1万8,296例)では、7年の経過観察中に7,760例(42.5%)で心血管イベント発症を認めた。その内訳では、従来の冠動脈疾患、脳卒中に加え、慢性腎臓病(24.4%)、心不全(14.7%)、心房細動(13.2%)の発症が多いことが新たに示された。PADでは、わが国の検討も含め20~40%の症例に腎動脈狭窄を合併することが報告されている2)。今後、こうした腎動脈狭窄のCKD発症への影響を検証する必要がある。また、PADでは血管床全体が硬化しており、中心血行動態異常が生じていると推察される。中心血行動態異常は心不全発症のリスクであり3)、今後、PADで心不全が発症する機序を明確にする必要がある。研究成果の臨床応用と限界 2007年に発表されたTASC IIでは、PAD発症リスクとしての高血圧の相対危険度(オッズ比:1.5~2)は、DM/喫煙(オッズ比:3前後)より弱いと述べている4)。本研究における重要な知見は、血圧上昇に伴うPAD発症のハザード比は70歳以上では1.4であるのに対し、40~69歳では1.8前後と上昇することである。さらに、本研究ではオッズ比は算出していないが、考察においてサブグループ解析の結果より、収縮期血圧20mmHg上昇によるPAD発症のリスクは、喫煙と同等と推察している。 一般に、PAD合併を考慮する(足関節上腕血圧比測定を考慮する)症例として、70歳以上、50~69歳でかつ喫煙または糖尿病を合併する症例が挙げられる4)。2013年、日本循環器学会「血管機能の非侵襲的評価法に関するガイドライン」では、高血圧症例において足関節上腕血圧比測定を考慮する症例として、65歳以上、またはJSH2009脳心血管リスク層別化で高リスクの症例を推奨している5)。しかし、最近のガイドラインを踏まえても6)、どのような病態の高血圧症例で足関節上腕血圧比測定を考慮すべきか、十分に明確ではなかった。本研究の結果は、50~69歳で未治療高血圧例および血圧コントロール不良の症例においてもPAD合併を考慮し、適切な問診、下肢動脈触診を実施し、可能であれば足関節上腕血圧比を測定することの有用性を示唆する。 TASC IIでは、PAD症例は40~50%に冠動脈疾患、20~40%に脳卒中を合併すると報告している4)。本研究では7年の経過観察中に1万8,296例中3,415例(19%)で冠動脈疾患、脳卒中または心不全の発症を認めた。本結果は、PAD診断時にほかの心血管疾患合併のない症例でも、慎重な経過観察が重要であることを支持する。 本研究の限界として以下が挙げられる。 (1)PADの診断は間欠跛行で実施されているが、無症候性PAD(足関節上腕血圧比0.90未満だが無症状)の頻度は間欠跛行を有する症例の3~4倍とされる。近年、わが国を中心に、オシロメトリック法を用いて足関節上腕血圧比が簡便に測定されるようになり、無症候性PADを診断する機会が多くなってきた7)。本研究の結果をこうした無症候性PADに応用できるかは不明であり、また、疾患診断が電子記録媒体での評価であることも研究の限界である。 (2)本研究では、収縮期血圧・拡張期血圧上昇とPAD発症の関連は、正常血圧域から認められた。本研究の著者らは、血圧低下がPAD発症を予防すると推論を述べている。しかし、研究対象症例で降圧薬服用は観察開始時9.9%、終了時28.7%であり、積極的な血圧治療がPAD発症予防に有用であるかは検証できない。参考文献はこちら1)Meijer WT, et al. Arch Intern Med. 2000;160:2934-2938.2)Endo M, et al. Hypertens Res. 2010;33:911-915.3)Chirinos JA, et al. J Am Coll Cardiol. 2012;60:2170-2177.4)Norgren L, et al. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2007;33 Suppl 1:S1-75.5)日本循環器学会ほか.循環器病の診断と治療に関するガイドライン2013(2011-2012年度合同研究班報告)血管機能の非侵襲的評価法に関するガイドライン(JCS 2013).6)Vlachopoulos C, et al. Atherosclerosis. 2015;241:507-532.7)Koji Y, et al. Am J Cardiol. 2004;94:868-872.

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EMPA-REG OUTCOME試験:それでも安易な処方は禁物(解説:桑島 巌 氏)-428

 この結果をみて真っ先に連想したのは、高血圧治療薬で、利尿薬がCa拮抗薬、ACE阻害薬、α遮断薬などよりも優れた心血管合併症予防効果を証明したALLHAT試験である。利尿作用が心不全悪化を防いだために全体を有利に導き、心疾患合併症例における利尿薬の強さをみせた試験であった。 EMPA-REG試験でも、利尿作用を有するSGLT2阻害薬が虚血性心疾患で心機能が低下した症例での心不全死を抑制したと考えやすい。しかし、心血管死の内訳をみると必ずしもそうではないようである。心不全の悪化による死亡は10%前後にすぎず、心臓突然死や心原性ショックも広い意味での心不全死と捉えると40%を占めることになり、本剤の利尿作用の貢献も考えられる。しかし、「その他の心血管死」とはどのような内容なのかが明らかでない限り、エンパグリフロジンがどのような機序で心血管死を減らしたのかを推定するのは難しい。 しかし、本試験で重要なことは、致死的、非致死的を含めた心筋梗塞と脳卒中発症はいずれも抑制されていないことである。不安定狭心症は急性心筋梗塞と同等の病態であり、なぜこれを3エンドポイントから外したか不明だが、これを加えた4エンドポイントとすると有意性は消失する。したがって、本試験はSGLT2阻害薬の優位性を証明できなかったという解釈もできる。本試験の対象は、すでに高度な冠動脈疾患、脳血管障害、ASOを有していて循環器専門医に治療を受けているような糖尿病患者であり、実質的には2次予防効果を検証した試験での結果である。試験開始時に、すでにACE阻害薬/ARBが80%、β遮断薬が65%、利尿薬が43%、Ca拮抗薬が33%に処方されている。糖尿病治療にしてもメトホルミンが74%、インスリン治療が48%、SU薬も42%が処方されており、さらにスタチン薬81%、アスピリンが82%にも処方されており、かつ高度肥満という、専門病院レベルの合併症を持つ高度な治療抵抗性の患者を対象にしている。 このことから、一般診療で診る、単に高血圧や高脂血症などを合併した糖尿病症例に対する有用性が示されたわけではない。 本試験における、エンパグリフロジンの主要エンドポイント抑制効果は、利尿作用に加えて、HbA1cを平均7.5~8.1%に下げた血糖降下作用、そして体重減少、血圧降下利尿作用というSGLT2阻害薬が有する薬理学的な利点が、肥満を伴う超高リスク糖尿病例で理想的に反映された結果として、心血管死を予防したと考えるほうが自然であろうと考える。臨床試験という究極の適正使用だからこそ、本剤の特性がメリットに作用したのであろう。 本試験を日常診療に活用する点で注意しておくことは、1.本試験はすでに冠動脈疾患、脳血管障害の既往があり、近々心不全や突然死が発症する可能性が高い、きわめて超高リスクの糖尿病例を対象としており、診療所やクリニックでは診療する一般の糖尿病患者とは異なる点。2.本試験の結果は、臨床試験という究極の適正使用の診療下で行われた結果である点。3.心筋梗塞、脳卒中の再発予防には効果がなく、不安定狭心症を主要エンドポイントに追加すると有意性は消失してしまう点。したがって、従来の糖尿病治療薬同様、血糖降下治療に大血管疾患の発症予防効果は期待できないという結果を皮肉にも支持する結果となっている。 本試験が、高度の心血管合併症をすでに有している肥満の治療抵抗性の糖尿病症例の治療にとって、福音となるエビデンスであることは否定しないが、この結果を十分に批判的吟味することなく、一般臨床医に喧伝されることは大きな危険性をはらんでいるといえよう。本薬の基本的な抗糖尿病効果は利尿という点にあり、とくに口渇を訴えにくい高齢者では、脱水という重大な副作用と表裏一体であることは常に念頭に置くべきである。企業の節度ある適正な広報を願うばかりである。関連コメントEMPA-REG OUTCOME試験の概要とその結果が投げかけるもの(解説:吉岡 成人 氏)リンゴのもたらした福音~EMPA-REG OUTCOME試験~(解説:住谷 哲 氏)EMPA-REG OUTCOME試験:SGLT2阻害薬はこれまでの糖尿病治療薬と何が違うのか?(解説:小川 大輔 氏)

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わかる統計教室 第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比 セクション3

インデックスページへ戻る第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比セクション3 オッズ比の使い道セクション1 セクション2※「■オッズ比で何がわかるのか」の内容を一部加筆・修正いたしました(2015年10月16日)。セクション2では、オッズ比でよく誤解される使い方やオッズ比の解釈を学習しました。読者の皆さんの中には、オッズ比の使い道があまりないのではないか、と考えてしまう方もいるかもしれません。確かにリスク比に比べ、オッズ比は理解しにくいのですが、実際には臨床研究でよくみられます。それでは、事例に沿って説明をしていきましょう。■オッズ比で何がわかるのか不整脈になる要因はいろいろありますが、ここでは仮に、喫煙の有無、飲酒の有無、性別、年代を取り上げ、どの要因が不整脈の有無に影響を及ぼしているかを調べることにします。表8は、それぞれの要因についての分割表、リスク比、オッズ比を示したものです。最初にリスクの差を求めてみましょう。喫煙の有無は80%-30%により50%、飲酒の有無は26.7%、性別は3.3%、年代は22.2%です。そして、その差が大きい要因ほど、不整脈の影響要因といえるわけです。次に、リスク比の順位はどうなっているでしょうか? 値が高い順からみてみましょう。喫煙の有無が2.67で1位、飲酒の有無が1.67 で2位、年代が1.33で3位、性別が1.07 で4位となります。では、オッズ比の順位はどうなっているでしょう? 1位は喫煙の有無、2位は年代、3位は飲酒の有無、4位は性別です。リスク比の順位とオッズ比の順位は一致していません。リスク比の値が大きければ、オッズ比の値も大きくなるという傾向はありますが、大小関係の順位は必ずしも一致しません。つまり、不整脈に影響を及ぼす要因の順序を付ける場合、オッズ比の順位の適用は好ましくありません。ただし、リスク比、オッズ比どちらも値が大きいほど不整脈の影響要因といえるので、順位付けが必要でない場合、リスク比、オッズ比、どちらを用いても構いません。リスク比のほうが使いやすいので、リスク比で解析することが多いのですが、臨床研究ではオッズ比を用いる人のほうが多いように思います。それは、影響要因であるかがわかれば目的を達成できるからでしょう。リスク比とオッズ比について、一度、今までの内容をまとめてみましょう。不整脈の影響要因であるかは、リスク比やとオッズ比の値の大小で把握できる。リスク比とオッズ比の順位は必ずしも一致しない。複数の影響要因があり、要因間の順位を把握する目的であれば、リスク比を使いオッズ比は使わない。リスクの倍率を比較したい場合はリスク比を適用する。表8の1番上の喫煙の有無と不整脈の有無の関係性について、オッズ比で解析した場合、オッズ比の値から「喫煙者が不整脈となるリスクは、非喫煙者に比べ9.33倍である」といってはいけない。これらを一言でまとめると、「オッズ比は、影響要因であるかを把握するだけで、複数要因の順位付けやリスクの倍率の把握には適用できない」ということになります。■理解しづらい「逆相関」を理解しやすくする方法下記の表9の分割表のリスク比、オッズ比をみてみましょう。表8との違いがおわかりになるでしょうか?表9は、喫煙と非喫煙のデータを入れ替えて表にしたものです。飲酒と非飲酒、男性と女性、60代と50代も同様です。表9の一番上の表について、どのように解釈できるのか説明していきましょう。リスクは、喫煙者のほうが非喫煙者に比べて小さくなっています。喫煙者が不整脈になるリスクは30%で、非喫煙者のリスクは80%なので、喫煙者のほうが50%リスクが低い。リスク比が0.38(30%÷80%)ということから、喫煙者が不整脈となるリスクは、非喫煙者に比べ0.38倍となります。表8は「喫煙者は非喫煙者に比べ、不整脈になりやすいという事例」でした。表9は、「(実際にはあり得ないですが)喫煙者は非喫煙者に比べ、不整脈になりにくいという事例」となります。喫煙と不整脈の関連性をみると、表8は「喫煙あり→不整脈あり」、「喫煙なし→不整脈なし」と通常考えられる関連ですが、表9では「喫煙あり→不整脈なし」、「喫煙なし→不整脈あり」という、通常ではあり得ない関連となってしまうのです。前者(表8)の関連を正の相関、後者(表9)を逆相関といいます。これらの表からわかるように、リスク比、オッズ比どちらも、正の相関の場合は1より大きく、逆相関の場合は1より小さくなっています。ここまでのところをまとめてみましょう。リスク比、オッズ比ともに値が1より大きくなるほど、喫煙者は非喫煙者に比べ、不整脈になる傾向が高まるといえます。このような関連性を「正の相関関係がある」といいます。リスク比、オッズ比とも値が1より小さくなるほど、喫煙者は非喫煙者に比べ、不整脈にならないという傾向が高まるといえます。このような関連性を「逆相関」といいます。つまり、表8の場合、リスク比は2.67>1で正の相関、すなわち、喫煙する人ほど不整脈になりやすい。表9の場合、リスク比は0.38<1で逆相関、すなわち、喫煙する人ほど不整脈になりにくい、ということになります。さて、理解はできたものの、リスク比が0.38倍というのが何か気になる、わかりにくいという方もいらっしゃるのではないでしょうか? 一般にはあり得ない表9の一番上の表の喫煙と非喫煙の位置を入れ替えた表10を作り、リスク比を計算してみましょう。このように、リスク比は1を上回りました。リスク比を解釈するとどうなるでしょうか? 非喫煙者は喫煙者に比べ2.67倍、不整脈になるといえます。表9の解釈、つまり「喫煙者は非喫煙者に比べ0.38倍、不整脈になる」と同じことになりますが、表10の表現のほうがわかりやすくなりますね。リスク比が1を下回った場合は、このような対応をお勧めいたします。次回は、なぜオッズ比が臨床研究で使われるのかを学びます。■今回のポイント1)オッズ比は、影響要因であるかを把握することでのみ活用できる!2)オッズ比は、複数要因の順位付けやリスクの倍率把握には適用できない!インデックスページへ戻る

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第8回 底力をつけるにはやはりコレ!英語力を磨くには?

英語のロジックを身に付ける第1回では「英語に惑わされるな」「メッセージを伝えることが大切」と力説した。しかし、もちろん英語が大切でないはずはない。英語プレゼン力を底上げしたいなら、英語力を磨いて損はない。画像を拡大するでは、どこに力点を置くのか? リスニング? スピーキング? どれも大切だが、あえて何が一番大切かと聞かれれば、私は「英語のロジック」と答えることにしている。要はイイタイコトを最初に言う癖をつけるということだ。日本語は「起承転結」のロジックだ。多くの日本人には、この奥ゆかしい伝統が染みついている。しかし、この奥ゆかしさは英語プレゼンでは邪魔になる。起承~くらいで「コイツ、何言ってんの?」と思われてしまう。英語のロジックは「結論・理由・転・結」だから、みんな最初に結論が出てくると期待している。それが来ないと「???」となってしまうのだ。英語のロジックを身に付けるには、意識して訓練するしかない。普段の日本語の会話やメールでも、とにかく結論を最初に述べる癖をつけることだ。さらに、本格的にこの「結・理由・転・結」の論理展開を強化したければ、TOEFLのエッセイを書く練習がお勧めである。練習問題のたくさん載った参考図書が多く出回っている。これをしっかり訓練すると骨太な英語ロジック力が身に付くし、それは英会話、簡潔明瞭な質疑応答や論文執筆にも大いに役に立つこと請け合いである。英語のロジックでは最初に結論を述べることでゴールを示す。そして、どうやってそのゴールにたどりつくかを説明し、最後にもう一度念を押す。もう気が付いたかもしれないが、考え方は、8回にわたってお送りしてきた今シリーズに一貫して流れている。1枚のスライドも、プレゼン全体も1つのゴール=イイタイコトにベクトルを合わせる。7行ルール(第2回)も究極的にはそのためにある。イイタイコトに始まりイイタイコトに終わるのだ。英語上達に最も重要な3つのこと「英語のロジック」を身に付ける以外にも、やることはたくさんある。発音やリスニングにもコツはあるし、単語力も増やしたい。基本的には1つのこと(たとえば単語の勉強)だけをやるのではなく、読んだり、聞いたり、話したり、書いたり、いろいろやりながら全体として英語力アップを図るのがいい。画像を拡大するそうしたこともすべて含めてだが、英語上達に最も重要なことは結局、継続することに尽きると思っている。英語の学習法に関してさまざまな意見や説があり、それに振り回されがちだし、それが業界では商売のネタになっている感もある。焦る気持ちが、もっといい方法はないか? と浮気心をくすぐるかもしれない。だが、お金をかけていろいろなことに手を出している人には、半年以上、毎日英語を勉強したことがありますか? と問いたい。何だかんだ言っても、とにかく継続すること―これほど効果が確実な英語上達法はほかにないのではないだろうか。8回にわたって英語プレゼンの上達法を述べてきましたが、いかがでしたか? 皆さんの英語プレゼン、そして将来に少しでも役立てば幸いです。もっと詳しく知りたい方は、CareNeTVの同名のプログラム、そして拙書『流れがわかる英語プレゼンテーションHow To』(メディカルレビュー社)をご参照ください。講師紹介

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循環器内科 米国臨床留学記 第2回

第2回:日米における循環器専門医トレーニング 臨床と研究の両方において、日本の循環器医師のレベルは非常に高いと米国でも認識されていますので、お前はわざわざ米国でなんのためにトレーニングを繰り返しているんだといつも聞かれます。答えにはいつも困っています。日本の循環器の先生はどこの病院に行っても、遅くまで残業し、臨床や研究に励んでいました。そういった姿を見て、自分の中でも循環器医の心構えが育ったと思います。このように、日本の循環器は現状のトレーニングでも優れた医師が輩出されているわけですが、問題点がないわけではないと思います。今回は、日米の長所、短所を比較しながら、これからの専門医教育の課題を考えてみました。日本の循環器専門医教育の長所誰でも循環器医になれる! 日本の医者には、職業選択の自由があります。つまり、循環器を含め、どの医者もなりたい専門医になれる。他の国と比べても、これは非常に恵まれている点だと思います。米国に来て、循環器医になりたくても諦めている人などを見ると、本当に幸せなことだと痛感します。専門医の意義 米国>日本 日本では循環器専門医を取得した瞬間、一人前と見なされるというわけではありませんから、専門医を取ったからといって、医局を辞めて独立をする人は少ないでしょう。また、開業医においても、循環器専門医がなくても、循環器と標榜できるのが現状で、専門医を持つことの意義が低いような気がします。徒弟制度 徒弟制度には、修業年限はありません。師匠が少しずつフェードアウトし、気がつけば1人で手技をさせてもらっている。逆に言えば、何年経とうが、師匠が認めない限り、一人前とは認められない。人によって成長のスピードが違うことを考えると、何年間で一人前になると決められ、フェローシップ終了後に独立を義務付けられる米国の制度のほうがおかしいようにも思います。市中病院:インターベンションなどの臨床トレーニングのスピードが早い 一概に、日本の循環器専門医トレーニングと言っても、市中病院と大学病院で大きく異なると思います。研修医の頃、私の中で、循環器=インターベンションのイメージがありました。 実際、日本の市中病院では冠動脈造影、PCI(経皮的冠動脈インターベンション)に重きが置かれる傾向があると思います。多くの市中病院では若手に積極的にカテをさせて、5年目ぐらいには基本的なPCIを行えるようになることが多いと思います。また、緊急カテーテルのオンコールを5~6人の循環器医でうまく回すためには、早く一人前になってもらわないと困るという実情もあると思います。若い医師もPCIなどの経験が積める病院に集まる傾向があるようです。慶応大学の香坂先生らの報告(Am J Cardiol.2014;114:629-634.)によると、卒後10年以内の若い循環器医のトレーニングに対する満足度は、冠動脈造影、PCI、エコーなどの症例数と大きく関係することが示されています。大学病院系列:豊富で幅広い症例・専門家による指導 逆に、大学病院や国立循環器病研究センター病院(国循)などでPCIを5年目がメインで行うというのは少し難しいと思いますが、大学病院や国循のような大きな施設には市中病院にない大きなメリットがあります。 医師6-7年目を過ごした国立循環器病センター研究病院(NCVC)東京都済生会中央病院、NCVCというタイプの異なる二つの病院で、素晴らしい指導医や仲間に出会え、有意義な研修を送ることができました。 第一に、肺高血圧、重症心不全、遺伝性疾患などのまれな症例を診る機会もあり、幅広いトレーニングが期待できます。また、各サブスペシャルティの専門家から直接指導を受けられます。実際、私も不整脈に関する知識や手技をもっと重点的に修練したいと感じ、国循に移動しました。その国循で、レジデント達∗が心エコーやリハビリなどに関して、手厚い指導をトップクラスの先生から受けているのを見て、うらやましく感じたのを覚えています。 ∗国循では循環器の基礎的な訓練を3年間で受けます。初期研修を終えた、3年目以降で応募でき、レジデントといいます。立場的には米国で言うフェローに当たると思います。研究の機会 大学や国循では、基礎研究、臨床研究のチャンスもあります。各専門分野の指導者もおり、循環器学会やAHA、ACC、ESCなどの国際学会での発表や一流雑誌への掲載といった可能性もあり、研究者として大きく羽ばたけるチャンスがあります。日本の循環器専門医教育の問題点曖昧な施設基準・膨大な研修施設 日本には循環器フェローシッププログラムというものは存在しませんが、専門医となるには3年間以上認定施設でトレーニングを受ける必要があります。表1)に日本の専門医施設の基準を示しました。2名以上で指導が十分な体制とあります。何をもって十分とするのかそもそも曖昧です。日本循環器学会のホームページによると日本全国で1,000近くの循環器研修施設がありますが、人口が倍以上の米国で180しかないことを考えると、いかに日本の認定施設が米国に比して多いかがわかります。これだけあると、すべての施設で十分な教育ができているかは疑問の余地があります。研修施設に名乗りを上げないと、若い医師が獲得できないという事情もあると思います。Common diseaseへの偏り 一部の有名な市中病院を除くと、市中病院では、冠動脈疾患、不整脈、心不全、末梢血管、心エコー、リハビリテーションなどの循環器のサブスペシャルティの専門医を揃えることは難しく、結果として、循環器のcommon diseaseである冠動脈疾患や心不全に偏ったトレーニングにならざるを得ない側面もあると思います。さまざまな症例を経験することも大切です。市中病院から国循などに来ると、3年間のトレーニングで見たことがないような症例に出くわします。たとえ、将来的にその疾患を自ら治療する機会がないとしても、一度の経験がその後の臨床の助けになることがあります。ほぼ義務化された研究・大学院 大学にも問題点はあります。先ほど挙げましたが、手技などのトレーニングは大学自体で数多くこなすのは難しそうです。恵まれた医局に所属していれば、関連病院でその点は十分に挽回できるでしょう。また、医局では研究や博士号の取得はほぼ義務化されています。これはメリットでもありますが、臨床で研鑽を積みたい人にとっては、4年間の大学院生活はデメリットにもなりえます。米国のフェローシップの長所指導者の数の保障 米国ではプログラムディレクターに加えて、3人以上のKey Clinical Facultyが必要、つまり最低でも4人の指導教官が必要ということになります2)。また、フェロー3人に対して2人のKey Clinical Facultyが義務付けられているので、実際、University hospitalなどの施設では10人以上の指導教官がいることがほとんどです。手厚い教育・確保された症例数 先ほど述べましたように、米国には、180しか循環器フェローシッププログラムがなく、毎年850人しか循環器フェローになれません。そうすることで全米のCardiologistの数をコントロールしています。狭き門ですが、一度入ると手厚い教育が保障されます。どちらかというと、米国のフェローシップは日本の大学や国循のような特徴を有していると思いますが、それに加えて、経験症例数が確保されており、雑用が少なく、トレーニングに集中できる環境が整っています。米国のフェローシップの問題点狭き門=Cardiologistになれない? 第1回でお話ししましたが、循環器フェローシップは狭き門であり、Cardiologistになれない可能性があります。外国人は半分以下、米国人でも85%ほどしかCardiologistになれません。10年以上かけて苦労して内科医になったうえで、やりたいことができないのは、ある意味悲惨です。段階を超えて、次のトレーニングへ進めない サブスペシャルティがあることから、いくら優秀でも循環器フェローシップ中は基本的には高度なPCIやアブレーションのトレーニングを開始することはできません。トレーニングが終わったら一人前 フェローシップを卒業した瞬間、どんなに手技が下手でも、一人前と見なされます。同じ病院の先輩も含めて、もはや、誰も助けてくれません。インターベンションやEP(不整脈)のフェローを卒業したものの、就職先で使い物にならず、クビになるという話はよくあります。日本が取り入れたほうが良いと思われる点 現状でも、日本の循環器医は世界のトップクラスであり、結果としては問題ないのかもしれませんが、私の経験を基に、以下の点を今後の日本の循環器専門医トレーニングが検討すべき課題として挙げました。経験症例数の保障 冠動脈造影や心エコーの能力は症例数で決まるものではありませんが、専門医教育を評価するうえで、トレーニング中にどのくらいの症例が経験できるかは最低限保証されるべきだと思います。また、選ぶ側は症例数を基にどこのプログラムで研修を行うかを決める指標ともなります。学年当たりのフェローの数の明確化 症例数を保証するなら、おのずとフェローの数も明確にしなければならないと思います。同じ学年のフェローが増え過ぎると当然、症例数も減ります。ただ、無制限に人を受け入れなければいけない日本の医局制度と相いれるかは微妙なところです。フェローによるプラグラムの評価 フェローによるプログラムの評価は必須です。ただ、医局に所属している医局員が自分の医局のプログラムを批評するようなことは、日本では難しいのかもしれません。公的な機関による積極的なプログラムへの評価・指導 公的な機関がフェローの意見を聞き、教育体制が不十分なプログラムの指導や廃止をすることも必要です。終わりに 医局制度との絡みなど難しい問題はありますが、米国の良いところのみを参考にして、日本の良さを残した、日本独自の優れた専門医教育が発展してほしいと思います。 次回も、もう少し具体的にアメリカのトレーニングについて触れたいと思います。 参考文献 1) 日本循環器学会.日本循環器学会認定循環器専門医制度規則.日本循環器学会ホームページ.(参照 2015-09-21). 2) ACGME. ACGME Program Requirements for Graduate Medical Education in Cardiovascular Disease (Internal Medicine). Accreditation Council for Graduate Medical Education. (accessed 2008-08-25).

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新システム人工膵臓、長期使用の有用性を確認/NEJM

 クローズドループシステムの人工膵臓の、長期使用の有用性が報告された。1型糖尿病患者を対象とした検討で、これまでのセンサー併用型ポンプ療法と比較して血糖コントロールを改善し、低血糖の発生は低く、成人被験者では血糖値の低下に結びついたという。英国・ケンブリッジ大学のHood Thabit氏らが、小児・青年25例と成人33例を対象とした12週間使用について検討を行い報告した。在宅療法としてのクローズドループシステムの人工膵臓の長期使用の可能性、安全性および有効性については、これまで確認されていなかった。NEJM誌オンライン版2015年9月17日号掲載の報告。1型糖尿病、成人33例と小児・青年25例を対象に12週間使用を評価 試験は、被験者が自宅で自由に生活している状況下で、クローズドループインスリン投与法とセンサー併用型ポンプ療法を比較して行われた。 検討は、2件の多施設無作為化対照試験にて実施され、被験者は58例(小児・青年25例、成人33例)であった。 クローズドループシステムは、成人被験者には昼夜にわたって、小児・若年者被験者には夜間に使用。クローズドシステムを12週間使用し、センサー併用型ポンプ療法(対照)を同一期間使用し評価した。 主要エンドポイントは、成人被験者については血糖値が70~180mg/dL、小児・青年については同70~145mg/dLであった時間割合とした。目標血糖値達成時間割合が11.0ポイント有意に増大 成人被験者において、目標血糖値達成の時間割合は、クローズドループシステム群67.7±10.6%、対照群56.8±14.2%で、クローズドループシステム群のほうが11.0ポイント(95%信頼区間[CI]:8.1~13.8)有意に増大した(p<0.001)。 また、平均血糖値は、クローズドループシステム群のほうが有意に低かった(差:11mg/dL、95%CI:6~17、p<0.001)。同様に、血糖値63mg/dL未満期間に関する曲線下面積(AUC)(39%低減、95%CI:24~51、p<0.001)、平均HbA1c値(差:0.3%、0.1~0.5、p=0.002)も有意に低かった。 小児・青年被験者では、目標夜間血糖値達成割合は、クローズドループシステム群が24.7ポイント(95%CI:20.6~28.7)有意に多かった(p<0.001)。 また、平均夜間血糖値は、29mg/dL(同:20~39)有意に低く(p<0.001)、昼夜血糖値63mg/dL未満期間に関するAUCは42%有意に低かった(95%CI:4~65、p=0.03)。 重度低血糖の報告は、クローズドループシステム群で3件発生した。1件は成人で、バッテリーの低下によるものであった。小児・青年群の報告例2件は第三者の支援を必要としたが入院とはならなかった。

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携帯メッセージでの生活習慣支援、LDL-C値改善に有効/JAMA

 冠動脈疾患患者に対し、携帯電話を活用した生活習慣に焦点を合わせたテキストメッセージサービス介入で、大半のLDL-C値が改善し、その他の心血管疾患リスク因子も大きく改善したことが報告された。オーストラリア・シドニー大学のClara K. Chow氏らが通常ケア介入と比較した無作為化試験Tobacco, Exercise and Diet Messages(TEXT ME)の結果、報告した。ただし、示された結果について著者は、「改善効果の期間や、臨床的アウトカムに結び付くのかどうかはなお不明である」と述べ、さらなる検討の必要性を指摘している。JAMA誌2015年9月22/29日号掲載の報告より。週4通6ヵ月の介入群 vs.通常ケア群の無作為化試験で評価 研究グループは、心血管リスク因子に関するテキストメッセージを携帯電話で送るという方法で、生活習慣に焦点を合わせた半カスタマイズ化された支援プログラムの効果を調べた。 試験は、オーストラリア、シドニーの3次機能病院1施設で2011年9月~13年11月に、単盲検並行群比較にて、710例を対象に行われた。被験者の平均年齢は58(SD 9.2)歳、男性82%、現在喫煙者が53%を占め、冠動脈性心疾患(CHD)を有していた(心筋梗塞既往または血管造影でCHD確認)。 被験者は、介入群(352例)と通常ケア群(358例)に無作為に割り付けられ、介入群には、通常ケアと、毎週4つのテキストメッセージが6ヵ月間送付された。テキストメッセージの内容は、生活習慣を変えるためのアドバイス、動機付けとなるリマインダー、支援を提供するものであった。 メッセージの送付はコンピュータシステムで自動化されていたが、対象被験者のベースライン特性(喫煙状況など)に合わせて選択して送られるようになっていた(双方向システムではない)。 主要エンドポイントは、6ヵ月時点のLDL-C値とした。副次エンドポイントは、収縮期血圧、BMI、身体活動度(MET)、喫煙状況などだった。介入群のLDL-C値5mg/dL有意に低下 結果、6ヵ月時点のLDL-C値は、介入群79mg/dL、通常ケア群84mg/dLで、介入群の有意が低下が認められた(差:5mg/dL、95%信頼区間[CI]:0~9、p=0.04)。 収縮期血圧は、128.2mmHg vs.135.8mmHg(差:7.6mmHg、95%CI:5.4~9.8、p<0.001)、BMIは29.0 vs.30.3(同:1.3、0.9~1.6、p<0.001)、METは936.1分/週 vs.642.7(同:293.4、102.0~484.8、p=0.003)、非喫煙者率は26.0%(88/339例) vs.42.9%(152/354例)(リスク比:0.61、95%CI:0.48~0.76、p<0.001)と、いずれも介入群が有意に低かった。 また、被験者の報告で、大半が、テキストメッセージが有用(91%)であり、わかりやすい(97%)と回答し、また送付頻度についても適切(86%)と回答していた。

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転移性メラノーマにニボルマブ・イピリムマブ併用療法をFDAが承認

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社(NYSE:BMY/本社:米国・ニューヨーク/CEO:ジョバンニ・カフォリオ)は2015年10月1日、米国食品医薬品局(FDA)が、BRAF V600 野生型の切除不能または転移性の悪性黒色腫患者を対象とした、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)とイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法を承認したと発表した。 今回の承認は、未治療の切除不能または転移性の悪性黒色腫患者において、オプジーボとヤーボイの併用療法を評価したCheckMate069試験のデータに基づいている。ニボルマブ・イピリムマブ併用群が有意に優れた結果 CheckMate 069試験は、未治療の切除不能または転移性悪性黒色腫の患者140名を登録した第Ⅱ相二重盲検無作為化試験で、BRAF 野生型とBRAF 変異陽性の双方の悪性黒色腫患者が含まれた。試験の主要評価項目は、BRAF野生型患者における奏効率(ORR)。追加的な有効性評価項目はBRAF V600野生型悪性黒色腫患者における医師評価による奏効期間とPFSであった。無作為化はBRAFの変異状態による層別化をもとに行われた。ニボルマブ・イピリムマブ併用群には、併用フェーズで、ニボルマブ1mg/kgとイピリムマブ3mg/kgを3週間に1回4サイクル実施した後、単剤フェーズで、ニボルマブ3mg/kgを隔週で投与した。一方、ヤーボイ単剤群には、ニボルマブ3mg/kgとプラセボを3週間に1回4サイクル投与した。BRAF野生型悪性黒色腫患者(109 名)において、併用群の奏効率は60%(95%信頼区間:48-71, p

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日本初のバルーン型「Arctic Front Advance 冷凍アブレーションカテーテル」発売

 日本メドトロニック株式会社は10月5日、不整脈の一種である薬剤抵抗性を有する再発性症候性の発作性心房細動を目的とした冷凍アブレーションカテーテル「Arctic Front Advance 冷凍アブレーションカテーテル(以下、Arctic Front Advance)」を、全国で発売開始した。バルーン型、冷凍方式のアブレーションカテーテルは日本国内で初となる。 冷凍アブレーションシステムを用いたバルーン形状のアブレーションカテーテルArctic Front Advanceにより、肺静脈を閉塞しながら円周状に冷凍焼灼を行うことで、心房細動を引き起こす不要な電気刺激の回路を遮断する経皮的カテーテル心筋冷凍焼灼術(冷凍アブレーション)治療が可能になる。 心房細動は肺静脈内からの異常な電気信号が原因であることが多く、治療法としては根治を目的とした、肺静脈入口部に電気的な絶縁部(隔離)を形成する心筋焼灼術が知られる。既存のアブレーションは高周波電流で点状あるいは線状で心筋を焼灼することで不要な電気刺激の回路を遮断しているのに対し、Arctic Front Advanceを用いた冷凍アブレーションはバルーンの形状のアブレーションカテーテルにより円周状に焼灼し遮断できるため、手技時間の短縮が期待されるという。 また、従来の高周波電流を用いた焼灼術と比較し、血栓形成リスクの低さや結合組織(コラーゲンなど)の温存など合併症発生の軽減につながることが期待されている。そして、亜酸化窒素ガスによる冷却を利用した治療法であるため、肺静脈周囲の組織とバルーンが固着することにより、カテーテルを安定的に保持することが可能になった。 なお、Arctic Front Advanceの導入には、日本不整脈心電学会のウェブサイトに掲載されている「経皮的カテーテル心筋冷凍焼灼術に関する施設基準」を満たす必要がある。日本メドトロニック株式会社のプレスリリースはこちら。(PDF)

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甘くみていませんか、RSウイルス感染症

 10月1日、都内においてアッヴィ合同会社は、RSウイルス感染症に関するプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、小保内 俊雅氏(多摩北部医療センター 小児科部長)が「秋から冬に流行る呼吸器感染症 侮れないRSウイルス~突然死を含む重症例の観点から~」と題し、最新のRSウイルス感染症の動向や臨床知見と小児の突然死を絡め、解説が行われた。注意するのは小児だけでない 秋から冬に流行するRSウイルス(以下「RSV」と略す)は、新生児期から感染が始まり、2歳を迎えるまでにほとんどのヒトが感染するウイルスである。これは、生涯にわたり感染を繰り返し、麻疹のように免疫を獲得することはない。症状としては、鼻みず、咳、喉の痛み、発熱などの感冒様症状のほか、重症化すると喘鳴、肩呼吸、乳児では哺乳ができないなどの症状が出現し、肺炎、細気管支炎などを引き起こすこともある。成人では鼻風邪のような症状であり、乳幼児では多量の鼻みずと喘鳴などが診断の目安となる。インフルエンザと同じように迅速診断キットがあり、これで簡易診断ができる(ただし成人には保険適用がない。小児のみ保険適用)。治療は対症療法のみとなる。 「乳幼児」(なかでも早産児、慢性肺疾患、先天性心疾患の児)、「褥婦」、「65歳以上の高齢者」では、時に重症化することがあるので注意を要する。とくに褥婦は、容易に感染しやすく、感染に気付かないまま病院の新生児室などを訪れることで、感染拡大を起こす例が散見される。また、高齢者では、施設内での集団感染で重篤化した事例も報告されているので、感染防止対策が必要とされる。約7割の親はRSV感染症を知らないと回答 次にアッヴィ社が行った「RSV感染症と保育施設利用に関する意識調査」に触れ、一般的な本症の認知度、理解度を説明した。アンケート調査は、2歳以下の乳幼児を保育施設に預ける両親1,030名(男:515名、女:515名)にインターネットを使用し、本年7月に行われたものである。 アンケートによると66.8%の親が「RSV感染症がどのような病気か知らない」と回答し、重症化のリスクを知っている親はわずか17.3%だった。また、56.9%の親が子供に病気の疑いがあっても保育施設を利用していることが明らかとなった。なお、子供が病気の際に必要なサポートとしては、「職場の理解」という回答が一番多く、母親の回答では「父親の協力」を求めるものも多かった。 今後、院内保育の充実や本症へのさらなる啓発の必要性が示された結果となった。怖い乳幼児のRSV感染症 小児集中治療室(PICU)に入院する、呼吸器感染症の主要原因トップが「RSV感染症」であるという。主症状としては、呼吸不全(喘鳴を伴う下気道感染)、中枢神経系の異常(痙攣、脳炎)、心筋炎、無呼吸発作(生後3ヵ月未満で起こる)が認められる。これに伴い、乳幼児の突然死がみられることから、小保内氏が月別のRSVの流行期と突然死の発生状況を調査したところ、相関することが明らかとなった。また、RSV感染に続発する突然死として、その機序は無呼吸ではなく、致死的不整脈であること、症状の重症度とは相関せず突然死が発生すること、SIDSの好発年齢(1歳以上)を超えても発生することが報告された。知らないことが最大の脅威 RSV感染症は、生涯にわたり感染する。よって、誰でも、いつでも感染源になる危険性を知っておく必要がある。当初は弱い症状であっても、急変することも多く、軽く考えずに軽い風邪と思い込んで子供を保育園などに通園させないほうがよいとされる。また、突然死は、危機的症状と相関しないので、病初期から注意が必要となる。 RSV感染症の予防としては、手洗い、うがいの励行であり、とくに大人の子供への咳エチケットは徹底する必要がある、また、流行期には、人混みへの不要不急の外出を避けるなどの配慮も必要となる。これら感染予防を充実することで、大人が子供を守らなければならない。その他、ハイリスクの乳幼児(たとえば1歳未満の早産や2歳未満の免疫不全など)には、重症化を防ぐ抗体としてパリビズマブ(商品名:シナジス)がある。これは、小児にしか保険適用が認められておらず、接種要件も厳格となっているので、日常診療での説明の際は注意が必要となる。 最後に、「RSV感染症は単なる鼻風邪ではなく、実は怖い病気であると、よく理解することが重要であり、予防と感染拡大防止の知識の普及と啓発が今後も期待される」とレクチャーを終えた。 「RS ウイルス感染症と保育施設利用に関する意識調査」は、こちら。

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