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CLEAN試験:血管内カテーテル挿入時の皮膚消毒はクロルヘキシジン・アルコール(解説:小金丸 博 氏)-440

 カテーテル関連血流感染症(CRBSI)はありふれた医療関連感染であり、死亡率も高いことが知られている。カテーテル挿入時の皮膚消毒は感染予防に重要であり、今までも適切な皮膚消毒薬について議論されてきた。米国疾病予防管理センター(CDC)は、カテーテル挿入時の皮膚消毒に、0.5%を超えるクロルヘキシジンを含むクロルヘキシジン・アルコールを推奨しているが、クロルヘキシジン・アルコールとポビドンヨード・アルコールをhead-to-headで比較した大規模試験は存在しなかった。 本研究は、血管内カテーテル挿入時の皮膚消毒薬として、2%クロルヘキシジン・70%イソプロピルアルコールと5%ポビドンヨード・69%エタノールの有効性を比較した、ランダム化比較試験である。両群をさらに消毒前の皮膚洗浄(scrubbing)の有無で1:1:1:1の4群に割り付けした(2×2要因デザイン)。動脈カテーテル、血液透析カテーテル、中心静脈カテーテルの留置が48時間以上必要な18歳以上の成人2,546例を対象とし、カテーテル関連感染症の発生率を主要評価項目とした。カテーテル関連感染症の定義は、菌血症を伴わないカテーテル関連敗血症、あるいはCRBSI(血液培養が陽性)とした。 カテーテル関連感染症の発生率は、クロルヘキシジン・アルコール群で0.28/1,000カテーテル日、ポビドンヨード・アルコール群で1.77/1,000カテーテル日であり、クロルヘキシジン・アルコール群が有意に低率だった(ハザード比:0.15、95%信頼区間:0.05~0.41、p=0.0002)。CRBSIの発生率もクロルヘキシジン・アルコール群で低率だった(0.28 vs.1.32/1,000カテーテル日)。消毒前の皮膚洗浄の有無では、カテーテル関連感染症、CRBSIの発生率に差はなかった。 また、全身性の有害事象は認めなかったが、クロルヘキシジン・アルコール群で重篤な皮膚反応を多く認めた(3% vs.1%)。 カテーテル挿入部位や手術部位など皮膚の消毒には、クロルヘキシジンの有効性が報告されてきており、本研究でもポビドンヨードと比較してクロルヘキシジンの有効性が示された。過去の研究では、カテーテルコロニゼーション(カテーテルへの菌の定着)を主要評価項目としているものが多く、もともとCRBSIの発生率が低い集団において、カテーテル関連感染症の発生率を大きく低下させることを示した意義は大きい。今後さらに、クロルヘキシジン・アルコールを皮膚消毒に使用する流れが加速するだろう。 現時点で、日本では2%クロルヘキシジン製剤が発売されておらず、使用することはできない。多くの施設では、CDCガイドラインで推奨されている「0.5%を超える濃度のクロルヘキシジン」という文言を参考に、1%クロルヘキシジン・アルコール製剤を使用していると思われる。今後も1%クロルヘキシジン・アルコールを使用するのであれば、1%製剤はポビドンヨードより有効なのか、2%クロルヘキシジン・アルコールと効果は同等なのか、有害事象の発生率に差はないのか、といった疑問を解決してくれるような研究が必要と考える。

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イングレスからイングリッシュへ【Dr. 中島の 新・徒然草】(091)

九十一の段 イングレスからイングリッシュへ今年の夏、頑張っていた陣取りスマホゲームのイングレスですが、なかなか続けられなくなってきました。時間がなくなったり肌寒い季節になったりしたからです。「だんだん飽きてきた」というのも少しはあるのかもしれません。最近はイングレスではなく、イングリッシュのほうにシフトしてきました。行き帰りの通勤電車で英語のポッドキャストやBBCのニュースを聞いています。3年間アメリカに住んでいたとはいえ、英語のほうはまだまだ修行中。実際のところ、字幕なしで洋画を理解することは難しく、アメリカ人同士の会話にはまったくついていけません。ということで、少しでもリスニング能力を向上すべく、ひたすら英語を聞いております。ずっと聞いていると、多少は理解ができるようになってきました。とくに固有名詞については、アクセントの位置が日本語と違ったり、はなはだしきは音からして違ったりすることがあります。たとえばアクセントの違いとして国名のアフガニスタンがあります。日本語ではフラットに発音しますが、英語ニュースを聞いていると「アフガーニスタン」と「ガー」にアクセントがくることがわかります。音そのものが違っている例としては、中国の習近平国家主席が良い例です。日本語読みではシュウキンペイですが、英語ニュースでは「シージンピン」となっています。この読み方ばかり聞いていると、ついつい普段の日本語会話でも「シージンピン」と言ってしまいそうになります。日本人にとっては聞き取りにくい音でも、パターンを覚えてしまえばそれなりに対応できるのかもしれません。「仮名魔神」としか聞こえない音がしばしばニュースに出てくるのですが、実は「you can imagine」の「can imagine」が「仮名魔神」と聞こえていたということが、後になってわかりました。同じように「『トゥーリ・ライオン』というのはどんなライオンじゃ」と思っていたら「to rely on」でした。情けないっす。しかしだんだん英語が聞き取れるようになると、英語ニュースならではの情報も入手できるようになってきました。ある日の出勤時、BBCニュースを聞いていると「TalkTalk」というIT企業がハッカー被害にあったということで大騒ぎになっていました。なんでも400万人もの顧客情報が流出したとやらで、キャスターもインタビューされている一般人も興奮しています。TalkTalk の女性 Chief Executive に至っては「何でこんなに発表が遅くなったんだ!」とか「お客さんが最大の被害者だ。どうするつもりなんだ」などとキャスターに責められており、いずこの国でも同じような光景が繰り広げられていました。イギリスでは大騒ぎになっているのに、日本語ニュースではまったくそのニュースを見つけることができません。どういうわけか、NHKでは英語ニュースでだけ言及されていました。不思議ですね。ともあれ、いろいろ工夫し甲斐のある通勤電車。また新たな進展がありましたら報告いたします。最後に1句イングレス 寒くなったら さようなら

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坐骨神経痛のリスク、喫煙で増大:メタ解析結果

 坐骨神経痛における喫煙の役割は明確ではない。フィンランド・Finnish Institute of Occupational HealthのRahman Shiri氏らは、腰部神経根痛および坐骨神経痛に対する喫煙の影響を評価する目的でメタ解析を行った。その結果、喫煙は腰部神経根痛および臨床的な坐骨神経痛のリスクを高めることが明らかとなった。また、禁煙によりそのリスクが低下することが示唆されたが、「禁煙してもリスクがゼロになることはない」と著者は指摘している。American Journal of Medicine誌オンライン版2015年9月21日号の掲載報告。 研究グループは、PubMed、Embase、Web of Science、Scopus、Google ScholarおよびResearchGateで1964年~2015年3月までの論文を検索し、ランダム効果メタ解析を行った。不均一性と出版バイアスを評価するとともに、研究デザイン、方法論的質および出版バイアスに関して感度分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・計28件(断面的研究7件・2万111例、症例対照研究8件・1万815例、コホート研究13件・44万3,199例)の研究が、メタ解析に組み込まれた。・現在喫煙者では、腰部神経根痛または臨床的な坐骨神経痛のリスクが増加した(統合調整オッズ比[OR]:1.46、95%信頼区間[CI]:1.30~1.64、n=45万9,023例)。・元喫煙者では、非喫煙者と比較してわずかにリスクが増加した(統合調整OR:1.15、95%CI:1.02~1.30、n=38万7,196例)。・現在喫煙者に関して、腰部神経根痛の統合調整オッズ比は1.64(95%CI:1.24~2.16、n=1万853例)、臨床的な坐骨神経痛1.35(95%CI:1.09~1.68、n=11万374例)、腰椎椎間板ヘルニアまたは坐骨神経痛による入院または手術1.45(95%CI:1.16~1.80、n=33万7,796例)であった。・同様に元喫煙者では、それぞれ1.57(95%CI:0.98~2.52)、1.09(95%CI:1.00~1.19)および1.10(95%CI:0.96~1.26)であった。・これらの関連は、男女間で差はなく、研究デザインから独立していた。・出版バイアスのエビデンスはなく、観察された関連は選択バイアス、検出バイアスまたは交絡因子に起因しなかった。

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教師のADHD児サポートプログラム、その評価は

 注意欠如・多動症(ADHD)の小学生を担当する教師のためのWebベースの介入について、利用可能性、満足度、有効性を評価するため、カナダ・ダルハウジー大学のPenny Corkum氏らは試験を行った。Journal of attention disorders誌オンライン版2015年9月11日号の報告。 小学校の担任教師58人は、ADHD小学生と共に無作為化対照試験に参加した。プログラムは、教室内でのADHD症状や障害を軽減するためのエビデンスに基づいた介入戦略を含む6つのセッションから構成された。教師は、ウェブ上で管理されている掲示板へのアクセスや ADHDコーチとのオンラインでのやり取りが可能だった。教師および保護者に、介入前、介入後(6週後)、6週間のフォローアップ後(12週後)にアンケートを行い、コンピュータを通じて収集した。 主な結果は以下のとおり。・ITT解析の結果、教師報告では、治療群においてADHDの中核症状や教師のサポートを有する障害について有意な改善が認められた。ただし、保護者報告では認められなかった。・教師の報告した利用可能性、および満足度は高いレベルであった。・WebベースのADHD介入は、学校でのADHD介入でよくみられる問題である治療利用や実用化の障壁を減少させる可能性がある。関連医療ニュース 2つのADHD治療薬、安全性の違いは 小児ADHD、食事パターンで予防可能か ADHD児に対するスポーツプログラムの評価は  担当者へのご意見箱はこちら

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糖尿病でのパクリタキセルDES vs.エベロリムスDES/NEJM

 糖尿病患者への経皮的冠動脈インターベンション(PCI)で、パクリタキセル溶出ステント(PDES)はエベロリムス溶出ステント(EDES)に対し、非劣性を示すことができなかったことを、インド・Fortis Escorts Heart InstituteのUpendra Kaul氏らが、1,830例の糖尿病患者を対象に行った試験の結果、報告した。1年後の標的血管不全発症率は、パクリタキセル群が5.6%に対し、エベロリムス群が2.9%と低率だったという。NEJM誌オンライン版2015年10月14日号掲載の報告より。心臓死、標的血管起因の心筋梗塞などで定義した標的血管不全発症率を比較 研究グループは、糖尿病で冠動脈疾患がありPCIを実施予定の1,830例を無作為に2群に分け、一方にはPDESを、もう一方にはEDESを留置した。 主要エンドポイントは、心臓死・標的血管起因の心筋梗塞・虚血による標的血管血行再建術のいずれかの発症で定義した標的血管不全だった。PDES群のEDES群に対する標的血管不全の相対リスク1.89 結果、1年時点の主要エンドポイント発生率は、PDES群が5.6%に対しEDES群が2.9%と、リスク差は2.7ポイント(95%信頼区間:0.8~4.5)、相対リスクは1.89(同:1.20~2.99)、非劣性p=0.38と、PDESのEDESに対する非劣性は示されなかった。 1年後の標的血管不全は、PDES群で有意に高率で(p=0.005)、自然発症心筋梗塞発症率もPDES群3.2%に対しEDES群1.2%(p=0.004)、ステント血栓症発症率はそれぞれ2.1%と0.4%(p=0.002)、標的血管血行再建術率は3.4%と1.2%(p=0.002)と、いずれもPDES群で高率だった。

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がん疑い患者、緊急紹介制度活用で死亡率低下/BMJ

 英国で、がんの疑いがある患者を緊急に専門医に紹介する制度「緊急紹介制度」(urgent referral pathway)を活用する一般診療所の患者は、あまり活用しない一般診療所の患者に比べ、がんの初診断・治療開始から4年以内の死亡率が低いことが明らかにされた。英国・ロンドン大学のHenrik Moller氏らが、コホート試験の結果、報告した。同緊急紹介制度は2000年代初めから始まったが、制度ががん患者の生存率に与えた影響については、これまで検討されていなかった。BMJ誌オンライン版2015年10月13日号掲載の報告。英国の3つのデータベースを用い、がん患者約22万人について検討 研究グループは、英国の「Cancer Waiting Times」「NHS Exeter」「National Cancer Register」の3つのデータベースを用いて、2009~13年にがんの診断を受けた人、または初回治療を開始した人21万5,284例を対象にコホート試験を行った。試験対象となった一般診療所は8,049ヵ所だった。 診察を受けた診療所が、緊急紹介制度を活用する傾向と、死亡率との関連を分析した。制度を活用しない診療所の患者、死亡のハザード比は1.07 4年間の追跡期間中に死亡した人は、9万1,620例だった。そのうち、診断を受けて1年以内の死亡は5万1,606例(56%)だった。 緊急紹介制度を利用する傾向を示す、標準化紹介率と検出率ともに、その傾向が強い診療所の患者は、傾向が強くない診療所の患者に比べ死亡率が低かった。標準化紹介率・検出率ともにそれぞれ、低率、中程度、高率と3群に分けた場合、両割合ともに高率だった診療所の患者数は全体の16%(3万4,758例)を占め、両率ともに中程度の群を基にした患者の死亡に関するハザード比は、0.96(95%信頼区間:0.94~0.99)だった。 一方、紹介制度の標準化紹介率・検出率どちらかが低率で、もう一方が高率ではない診療所の患者数は、全体の37%(7万9,416例)で、死亡に関するハザード比は1.07(同:1.05~1.08)だった。

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セクシュアルマイノリティーにおける皮膚がんと日焼けマシーン使用

 「セクシュアルマイノリティー(同性愛者や両性愛者)の男性は、異性愛者の男性に比べて日焼けマシーンをよく使用しており、また皮膚がんになる確率が高い」というデータが発表された。JAMA Dermatology誌オンライン版2015年10月7日号での報告。 本研究で、セクシュアルマイノリティーの男性は日焼けマシーンを使うことが多いことが明らかになった。研究者らは、「彼らに対して優先的に皮膚がんリスクを伝えることが予防につながるのではないか」とまとめている。 これまでに、日焼けと皮膚がんの関係については強く示唆されていたが、性的指向によって皮膚がんリスクが変わるかどうかは不明であった。本検討は、セクシュアルマイノリティーの男女が、異性愛者(ヘテロセクシュアル)の男女に比べて、皮膚がんリスクが高いかどうかを明らかにするために行われた。 カリフォルニア州と米国の特定組織に属さない市民集団から集められた18歳以上の男女19万人強のデータを対象に解析は実施された。 対象となったデータは2001年、2003年、2005年、2009年のCalifornia Health Interview Surveys(CHISs)と2013年のNational Health Interview Survey (NHIS)である。 研究対象には7万8,487人の異性愛者の男性と、3,083人のセクシュアルマイノリティーの男性、10万7,976人の異性愛者の女性、3,029人のセクシュアルマイノリティーの女性が含まれていた。著者らは、自己報告による皮膚がんの既往歴と12ヵ月間の日焼けマシーン使用歴を調査した。  主な結果は以下のとおり。・セクシュアルマイノリティーの男性は、異性愛者の男性に比べ皮膚がんリスクが高かった。(2001~05年のCHISsでの調整OR:1.56、95%CI:1.18~2.06、p<0.001)。(2013年のNHISでの調整OR:2.13、95%CI:1.14~3.96、p=0.02)。・セクシュアルマイノリティーの男性は、異性愛者の男性に比べ日焼けマシーンを使うことが多かった。(2009年のCHISsでの調整OR:5.80、95%CI:2.90~11.60、p<0.001)。(2013年のNHISでの調整OR:3.16、95%CI:1.77~5.64、p<0.001)。・セクシュアルマイノリティーの女性は、異性愛者の女性に比べ非黒色腫皮膚がんの報告は少なかった。(2001~05年のCHISsでの調整OR:0.56、95%CI:0.37~0.86、p=0.008)。・セクシュアルマイノリティーの女性は、異性愛者の女性に比べ日焼けマシーンを使うことが少なかった。(2009年のCHISsでの調整OR:0.43、95%CI:0.20~0.92、p=0.03)。(2013年のNHISでの調整OR:0.46、95%CI:0.26~0.81、p=0.007)。

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アルツハイマー病への薬物治療、開始時期による予後の差なし

 世界中で何百万人もの高齢者がアルツハイマー病(AD)で苦しんでいる。治療薬にはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とメマンチンがあるが、その臨床効果は限られており、早期に薬物療法を開始することが長期的に良好な予後につながるかどうかも不明である。そこで、中国・香港中文大学のKelvin K.F. Tsoi氏らは、AD患者に対する早期治療の有効性について、前向き無作為化比較試験のメタ解析を行った。その結果、約6ヵ月早くAD治療薬の投与を開始しても投与開始が遅れた場合と比較して、認知機能、身体機能、行動問題および臨床症状に有意差は認められなかった。この結果について著者らは、「追跡期間が2年未満の早期AD患者の割合が比較的高かったためと考えられる」と指摘したうえで、「長期に追跡した場合の有効性について、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2015年9月18日号の掲載報告。 研究グループは、OVIDデータベースを用いて2000年から2010年の間に発表された前向き無作為化比較試験を検索し、ADと診断された患者を早期投与開始群と投与開始遅延群(約6ヵ月間はプラセボを投与)に無作為化した試験を適格とした。主要評価項目は、認知機能(Alzheimer's Disease Assessment Scale-Cognitive Subscale:ADAS-cog)、身体機能(Alzheimer's Disease Cooperative Study Activities of Daily Living Inventory:ADCS-ADL)、問題行動(Neuropsychiatric Inventory:NPI)、および全般的な臨床症状(Clinician's Interview-Based Impression of Change plus Caregiver Input:CIBIC plus)、副次評価項目はあらゆる有害事象とした。 主な結果は以下のとおり。・10件の無作為化試験がメタ解析に組み込まれた(計3,092例、平均年齢75.8歳)。・主要評価項目に関して、早期投与開始群が投与開始遅延群と比較して、有意な効果が認められた項目はなかった。 認知機能;ADAS-cogの平均差(MD)=-0.49、95%信頼区間(CI):-1.67~0.69 身体機能;ADCS-ADLのMD=0.47、95% CI:-1.44~2.39 行動問題;NPIのMD=-0.26、95% CI:-2.70~2.18 臨床症状;CIBIC plusのMD=0.02、95% CI:-0.23~0.27・アセチルコリンエステラーゼ阻害薬で、最も頻度の高い有害事象は悪心であった。・メマンチンではプラセボと比べ、発現頻度の高い副作用はなかった。・両薬とも、早期投与開始群と投与開始遅延群の有害事象は同等であった。関連医療ニュース 抗認知症薬は何ヵ月効果が持続するか:国内長期大規模研究 認知症患者の精神症状に対し、抗不安薬の使用は有用か 早期アルツハイマー病診断に有用な方法は  担当者へのご意見箱はこちら

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生体吸収性マグネシウムスキャフォールドの有用性をヒトで確認/Lancet

 第2世代の薬剤溶出生体吸収性金属スキャフォールド(DREAMS 2G)は、冠動脈デノボ病変の治療デバイスとして施行可能であり、良好な安全性と性能を有することが、ドイツLukaskrankenhaus GmbHのMichael Haude氏らが実施したBIOSOLVE-II試験で示された。生体吸収性スキャフォールドは、従来の非吸収性の金属ベース薬剤溶出ステントの限界の克服を目的にデザインされ、現時点で市販されているのはポリマースキャフォールドのみである。これに代わるデバイスとして、金属スキャフォールドの開発が進められており、第1世代のマグネシウムスキャフォールドは、安全性は良好であるものの、性能が従来の薬剤溶出ステントに及ばないことが報告されている。Lancet誌オンライン版2015年10月12日号掲載の報告。狭心症、無症候性虚血に対する有用性をヒトで初めて検証 BIOSOLVE-II試験は、症候性の冠動脈デノボ病変における第2世代のシロリムス溶出生体吸収性マグネシウムスキャフォールドであるDREAMS 2Gの安全性と性能をヒトで初めて検証する多施設共同非無作為化試験(Biotronik AG社の助成による)。 対象は、年齢19~79歳の安定狭心症、不安定狭心症、無症候性虚血で、対照血管径が2.2~3.7mm、最大2個のデノボ病変(病変長21mm以下、狭窄率50~99%)を有する患者であった。 フォローアップは、デバイス留置後1、6、12、24、36ヵ月に行われ、6ヵ月時には冠動脈造影が実施された。一部の患者では、血管内超音波、光干渉断層法、血管運動(vasomotion)の評価も行われた。全例に、6ヵ月以上の抗血小板薬の2剤併用治療が推奨された。 主要評価項目は、6ヵ月時のセグメント内の晩期損失内腔径とした。副次評価項目は、標的病変不全(心臓死、標的血管の心筋梗塞、CABG、標的病変の血行再建術)およびスキャフォールド血栓症であった。 2013年10月8日~2015年5月22日までに、8ヵ国(ベルギー、ブラジル、デンマーク、ドイツ、シンガポール、スペイン、スイス、オランダ)の13のPCI施設に123例(冠動脈標的病変123個)が登録された。晩期損失内腔径が改善、スキャフォールド血栓症は認めず ベースラインの背景因子は、平均年齢65.2±10.3歳、男性が63%で、対照血管径は2.68±0.40mm、病変長は12.61±4.53mmであった。標的血管は、左前下行枝が38%、左回旋枝が24%、右冠動脈が37%だった。 3例がフォローアップできず、そのうち2例はデバイスの留置が不能であった。 6ヵ月時の平均セグメント内晩期損失内腔径は0.27±0.37mmであり、スキャフォールド内晩期損失内腔径は0.44±0.36mmであった。血管運動の評価が行われた25例中20例(80%)で、有意な血管の収縮(p=0.014)および拡張(p<0.001)が確認された。 血管内超音波では、スキャフォールド領域は留置直後が6.24±1.15mm2で、6ヵ月時も6.21±1.22mm2に保持されており(平均差:-0.03mm2、95%信頼区間[CI]:-0.29~0.23、p=0.803)、新生内皮過形成領域は小さかった(0.08±0.09mm2)。また、光干渉断層法では、冠動脈内に腫瘤性病変は認めなかった。 6ヵ月時に標的病変不全が4例(3%)に認められ、心臓死が1例、標的血管の心筋梗塞が1例、標的病変の血行再建術が2例であった。スキャフォールド血栓症はみられなかった。 著者は、「先行デバイス(DREAMS 1G)に比べ晩期損失内腔径が改善し、良好な安全性プロファイルは保持されていた」とまとめ、「閉塞性冠動脈疾患の治療において、DREAMS 2Gは現行の生体吸収性ポリマースキャフォールドに代わる選択肢となる可能性がある」と指摘している。

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ぶどう膜炎に対する眼内インプラントの効果は?

 中間部、後部および全ぶどう膜炎に対するフルオシノロンアセトニド(FA)眼内インプラントと全身性ステロイド療法の有用性を比較した、米国・ペンシルバニア大学のJohn H. Kempen氏らによるMulticenter Uveitis Steroid Treatment(MUST)試験の4.5年の追跡調査において、視覚機能および黄斑浮腫に対する改善効果は両群で類似しておりどちらも良好であることが示された。結果を踏まえて研究グループは、「費用対効果と副作用を考慮すると、全身療法は多くの両側性ぶどう膜炎患者に対する初回治療として適応があるだろう。しかし、片側性ぶどう膜炎患者や全身療法ができないまたは無効の患者に対しては、眼内インプラントは適切な治療選択肢である」と報告をまとめている。Ophthalmology誌2015年10月号(オンライン版2015年8月20日号)の掲載報告。 研究グループは、中間部、後部および全ぶどう膜炎患者255例を対象としたMUST試験において、無作為化後54ヵ月までの延長追跡調査を行った。 主要評価項目は、最高矯正視力(BCVA)、視野平均偏差(MD)、ぶどう膜炎の活動性、および黄斑浮腫の有無であった。 主な結果は以下のとおり。・ぶどう膜炎眼の視覚機能の改善推移は、ベースラインから54ヵ月後まで両群で類似しており、中等度の改善が認められた。・54ヵ月時におけるBCVAの平均改善は、FA眼内インプラント群2.4文字、全身療法群3.1文字であった。患者の多くはベースラインの視力が優れており、改善に限りがあった。・MD値は、両群とも追跡調査期間48ヵ月全体を通してベースライン値が維持されていた。・炎症の抑制については、すべての評価時点でFA眼内インプラント群が優れていた(p<0.016)。しかし、全身療法群もほとんどの眼で炎症は大きく改善していた。・黄斑浮腫は、無作為化後最初の6ヵ月以内ではFA眼内インプラント群で有意な改善がみられたが、全身療法群でも経時的に改善し、36ヵ月以降は同等となった(48ヵ月時p=0.41)。

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心筋を凍死させる 心房細動治療の新たな選択肢

 日本メドトロニック株式会社は2015年10月23日、薬剤抵抗性を有する再発性症候性の発作性心房細動治療を目的とした「Arctic Front Advance冷凍アブレーションカテーテル(以下、Arctic Front Advance)」の発売開始を記念し、プレスセミナー「心房細動におけるアブレーション技術の最前線」を開催した。そのセミナーの中で、日本不整脈心電学会理事長 奥村 謙氏は「心房細動治療最前線と冷凍アブレーションへの期待」と題する講演を行った。  従来のカテーテルアブレーションは、心房細動の異常な信号の発生部位である肺静脈入口部を点状・線状に高周波電流で焼灼することにより、電気回路を遮断していた(肺静脈隔離術)。Arctic Front Advanceは液化窒素ガスを利用したバルーン形状のカテーテルを用い、標的となる肺静脈を円周状に冷却、いわば、ターゲットとなる心筋を“凍死させる”ことで、肺静脈隔離を一括に行う。この新たな技術により、手術時間の短縮や血栓形成、結合組織の傷害などの合併症の軽減につながると期待される。 米国での臨床試験の結果、不整脈非再発率は高周波アブレーションと同等であり、手術時間は約190分と高周波アブレーション(約280分)に比べ有意に短かった。また、本邦で行われたCRYO-JAPAN試験では、急性期肺静脈隔離成功率99.8%、手術時間187分、6ヵ月後の心房細動非再発率89%という結果であった。 Arctic Front Advanceは優先審査の対象となり2014年2月に薬事承認を受け、同年7月に保険償還。その後、PMSを経て本年(2015年)10月5日より全国発売が開始された。適応は、薬剤抵抗性かつ再発性症候性の発作性心房細動。使用には、心房細動に対する経皮的カテーテル心筋焼灼術を年間30症例以上実施している不整脈専門医研修施設であること、所定の研修を修了した常勤の医師が1名以上配置されていること、亜酸化窒素ガスを排気する設備があることなど、「経皮的カテーテル心筋冷凍焼灼術に関する施設基準及び資格要件」を満たしていることが必要。 高齢化が進んだ本邦において、潜在患者を含め心房細動患者は多い。心房細動による心原性脳梗塞は非常に重篤な病態を示すことが多く、発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションの件数は増加していくと予測される。今後は、長期有効性の確認とともに、左心房、肺静脈の形状などさまざまな条件を評価しながら、新たな選択肢としてArctic Front Advanceの適応を決めていくことになるだろうと、奥村氏は述べた。日本メドトロニックのプレスリリースはこちら。

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高齢者における誤嚥性肺炎のリスク因子が明らかに

 高齢者における誤嚥性肺炎と関連するリスク因子は、喀痰吸引、嚥下機能の低下、脱水、認知症であることが、筑波大学の間辺 利江氏らによる研究で明らかになった。これらの結果は、繰り返す誤嚥性肺炎を予防するための臨床管理の改善に役立てられると考えられる。PLoS One誌オンライン版2015年10月7日号の報告。誤嚥性肺炎のリスク因子を高齢者9,930人を対象に調査 誤嚥性肺炎は、高齢者において市中肺炎や医療関連肺炎よりも多く、日本人の主な死因の1つである。しかし、高齢者が誤嚥性肺炎を発症するリスク因子については、十分に評価されていない。そこで著者らは、日本の高齢者における誤嚥性肺炎のリスク因子を調査するため、高齢者医療センターや介護施設の全国調査データを用いて観察研究を行った。 対象は、高齢者9,930人(中央値86歳、女性76%)。過去3ヵ月間以内に誤嚥性肺炎に罹患した群と罹患していない群の2群に分け、人口統計学的データ、臨床状態、ADL、主疾患について比較した。 誤嚥性肺炎のリスク因子研究の主な結果は以下のとおり。・最近3ヵ月以内に誤嚥性肺炎群に罹患したのは、259人(全体の2.6%)であった。・単変量解析の結果、誤嚥性肺炎のリスク因子であることが示されたのは以下のとおり。喀痰吸引(OR 17.25、95%CI:13.16~22.62、p<0.001)毎日の酸素療法(OR 8.29、95%CI:4.39~15.65)要食事介助(OR 8.10、95%CI:6.27~10.48、p<0.001)尿道カテーテル(OR 4.08、95%CI:2.81~5.91、p<0.001)より高齢であることが誤嚥性肺炎のリスク因子であることは、示されなかった。・多重ロジスティック回帰分析の結果、傾向調整(各258例)後の誤嚥性肺炎と関連するリスク因子は以下のとおり。喀痰吸引(OR 3.276、95%CI:1.910~5.619)過去3ヵ月の嚥下機能低下(OR 3.584、95%CI:1.948~6.952)脱水(OR 8.019、95%CI:2.720~23.643)認知症(OR 1.618、95%CI:1.031~2.539)

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常染色体優性多発性嚢胞腎〔ADPKD : autosomal dominant polycystic kidney disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義PKD1またはPKD2遺伝子の変異により、両側の腎臓に多数の嚢胞が発生・増大する疾患。■ 診断基準ADPKD診断基準(厚生労働省進行性腎障害調査研究班「常染色体優性多発性嚢胞腎ガイドライン(第2版)」)1)家族内発生が確認されている場合(1)超音波断層像で両腎に各々3個以上確認されているもの(2)CT、MRIでは、両腎に嚢胞が各々5個以上確認されているもの2)家族内発生が確認されていない場合(1)15歳以下では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々3個以上嚢胞が確認され、以下の疾患が除外される場合(2)16歳以上では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々5個以上嚢胞が確認され、以下の疾患が除外される場合※除外すべき疾患多発性単純性腎嚢胞(multiple simple renal cyst)腎尿細管性アシドーシス(renal tubular acidosis)多嚢胞腎(multicystic kidney 〔多嚢胞性異形成腎 multicystic dysplastic kidney〕)多房性腎嚢胞(multilocular cysts of the kidney)髄質嚢胞性疾患(medullary cystic disease of the kidney〔若年性ネフロン癆 juvenile nephronophthisis〕)多嚢胞化萎縮腎(後天性嚢胞性腎疾患)(acquired cystic disease of the kidney)常染色体劣性多発性嚢胞腎(autosomal recessive polycystic kidney disease)【Ravineの診断基準】(表)(家族歴がある場合の画像診断基準)画像を拡大する■ 疫学一般人口中に占める多発性嚢胞腎患者数(有病率)は、病院受診者数を基に調査した結果では一般人口3,000~7,000人に1人である。病院患者数に占める多発性嚢胞腎患者数は3,500~5,000人に1人、病院での剖検結果では被剖検患者約400人に1人である。メイヨー病院があるオルムステッド郡(米国)で1年間に新たに診断された患者数(発症率)は、一般人口1,000~1,250人あたり1人である。調査方法、調査年代、調査場所などにより、結果に差異が認められる。今後、治療薬が利用可能になると受療する患者数が増加し、有病率も増える可能性がある。■ 病因(図を参照)画像を拡大するPKD1またはPKD2遺伝子の変異による。PKD1は16p13.3、PKD2は4q21-23に位置する。PKD1とPKD2の遺伝子産物 polycystin 1(PC 1)とPC2はtransient receptor potential channel for polycystin(TRPP)subfamilyで、Caチャネルである。PC1とPC2は腎臓、肝臓、膵臓、乳腺の管上皮細胞、平滑筋と血管内皮細胞、脳の星状細胞に存在する。PCは腎臓上皮細胞、血管内皮細胞、胆管細胞などの繊毛に存在する。尿細管腔の内側に存在する繊毛は、尿細管液の流れに反応して屈曲する。屈曲によるshear stressはPCや繊毛機能に関係する蛋白を活性化し、細胞外と小胞体からCaイオンを細胞質内へ流入させ、細胞質内Ca濃度を高める。繊毛機能に関係する蛋白をコードする遺伝子異常が嚢胞性腎疾患をもたらすことが明らかとなり、繊毛疾患(ciliopathy)として概括されている。PKD細胞ではPC機能異常により、尿細管上皮細胞のCa濃度は低値である。細胞内Ca濃度が低下すると、cyclicAMP(cAMP)分解酵素(PDE)活性が低下し、またcAMPを産生するadenyl cyclase(AC)活性が高まり、細胞内cAMP濃度が高まる。その結果、cAMP依存性protein kinase A(PKA)機能が高まり、種々のシグナル経路(EGF/EGFR、Wnt、Raf/MEK/ERK、JAK/STAT、mTORなど)が活性化され細胞増殖が起きる。繊毛は細胞極性(尿細管構造形成)に関与しており、細胞極性機能を失った細胞増殖が起きる結果、嚢胞が形成される。また、PKAはcystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)を刺激し、嚢胞内へのCl分泌を高める。腎尿細管(集合管)に存在するバソプレシン(AVP)V2受容体は、AVPの作用を受け、ACおよびcAMP、PKAを介して水透過性を高める。この過程でcAMPは嚢胞を増大させる。ソマトスタチンはACを抑制するので、治療薬として期待される。■ 症状多くの患者は30~40代までは無症状で経過する。1)腎機能低下腎機能の低下と総腎容積は相関し、総腎容積が3,000mLを超えると腎不全になる確率が高い。しかし、3,000mLを超えない場合でも腎不全になる場合もある。腎不全による症状(疲労、貧血、食欲低下、皮膚搔痒など)は、他疾患による腎不全症状と同じである。透析導入平均年齢は55歳位であったが、最近では60歳近くになっている。患者全体では70歳で約50%が終末期腎不全になる。2)高血圧血管内皮機能の異常により高血圧を来すと考えられ、腎機能が低下する以前から発症する。60~80%の患者が高血圧に罹患している。高血圧になっている患者では腎臓腫大と腎機能低下の進行が速い。3)圧迫症状腎臓や肝臓の嚢胞(60~80%の患者に嚢胞肝が併存)が腫大するにつれて、腹部膨満感、少し食べるとお腹が張る、前屈が困難になる、背腰部痛、腹部痛などの圧迫症状が出現する。腎嚢胞は平均年5~6%の割合で増大するので、加齢とともに症状は進行する。4)脳血管障害脳出血、くも膜下出血、脳梗塞の発症頻度が高い。脳出血の原因として高血圧がある。脳動脈瘤の発生頻度(約8%)は一般より高い。5)血尿・尿路感染症血管の構築異常により血管が裂け、嚢胞内に出血し、疼痛を引き起こす。出血巣と尿路が交通すると血尿になる。また、変形した尿路のために尿路感染症を起こしやすい。嚢胞感染が起きると抗菌薬が嚢胞内に移行しにくいので難治性になることがある。6)その他尿路結石、鼠径ヘルニア、大腸憩室、心臓弁膜機能異常などの頻度が高い。■ 分類遺伝子の変異部位に応じて、PKD1とPKD2に分かれる。約85%はPKD1である。PKD1の方が症状は強く、腎不全になる平均年齢も若い。■ 予後生命予後に関するデータはない。腎機能に関しては症状の項参照。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断基準に準ずる。家族歴と画像検査(超音波、CT、MRIなど)で比較的正確に診断できるが、中には診断に迷う症例もあり、遺伝子診断が有用な場合もある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)トルバプタン(商品名: サムスカ)による治療AVP V2受容体拮抗薬トルバプタンは、ナトリウム利尿をあまり伴わない水利尿作用があり、低ナトリウム血症、体液貯留の治療薬として開発され、わが国では、2010年に心不全による体液貯留、2013年に肝硬変による体液貯留への治療薬として承認を受けている。2003年にモザバプタン(トルバプタンの前段階の薬)が、多発性嚢胞腎モデル動物に有効であると発表され、2007年から多発性嚢胞腎患者1,445名を対象として、トルバプタンの有効性と安全性を検討する国際共同治験が行われた。腎臓容積増大速度を約50%、腎機能低下速度を約30%緩和する結果が2012年秋に発表され、わが国において2014年3月に多発性嚢胞腎治療薬として承認され、臨床使用が始まっている。わが国での投薬適応基準は、総腎容積≧750mL、総腎容積増大速度≧年5%、eGFR≧15 mL/min/1.73m2などである。服用開始時には入院が必要で、その後月1回の血液検査で肝機能(5%程度に肝機能障害が発生する)、血清Na値(飲水不足で高Na血症になる)、尿酸値(上昇する)などのモニターが必要である。また、トルバプタンの処方医はWeb講習を受講し、登録する必要がある。2)高血圧の治療ARBが第1選択薬として推奨される。標準的降圧目標(120/70~130/80)とより低い降圧目標(95/60~110/75)との2群を5年間追跡したところ、より低い降圧群での総腎容積増大速度が低かったことが報告されているので、可能なら収縮期血圧を110未満にコントロールすることが望ましい。3)Na摂取制限Na摂取と腎嚢胞増大速度は相関するので、Na摂取は制限したほうがよい。4)飲水動物実験では飲水によって嚢胞の増大抑制効果が認められているが、人で飲水を奨励した結果では、逆に嚢胞増大速度とeGFR低下速度が増大したことが報告されている。水道水では、消毒用塩素の副産物ジクロロ酢酸に嚢胞増大作用があることが報告されている。多発性嚢胞腎患者では、腎機能が低下するにしたがい血清浸透圧とAVPが高くなることが報告されている。人における飲水効果には疑問があるが、脱水によるAVP上昇は避けるべきである。5)カフェインや抗うつ薬カフェインはPDEを抑制しcAMP濃度を上昇させ、嚢胞増大を促進する可能性がある。SSRI、三環系抗うつ薬などはAVPの放出を促進するため、多発性嚢胞腎では嚢胞増大を促進することが考えられる。6)開発中の薬剤(1)トルバプタン〔AVP V2受容体阻害薬〕は、大規模な臨床試験で腎嚢胞増大と腎機能悪化を抑制する効果が示され1)、わが国では2014年3月、カナダ、ヨーロッパでは2015年3月に認可が下りている。(2)ソマトスタチンアナログは小規模な臨床試験で肝臓と腎臓の嚢胞増大に有効と報告されているが、当局への申請を目的とする大規模な臨床試験は行われていない。(3)mTOR阻害薬であるシロリムスとエベロリムスの臨床試験が行われたが、副作用が強く臨床効果が認められなかった。7)腎動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization: TAE)腎動脈を塞栓し、腎臓を縮小させることで症状の緩和をもたらす。すでに透析が導入され、尿量が1日500mL以下の患者が対象となる。8)腹腔鏡下腎嚢胞開創術、腎摘除術抗菌薬抵抗性または反復感染の原因になっている嚢胞が特定される場合、あるいは数個の嚢胞が特別に大きくなり圧迫症状が強い場合、腹腔鏡下に特定の嚢胞を開窓する手術が適応となる。出血が強い場合や、反復する嚢胞感染がある場合、患者に腎機能の予後をよく説明したうえで同意を前提として腎摘除術(腹腔鏡下腎摘除術も行われる)が選択肢となる。4 今後の展望1)最近の研究では、総腎容積増大速度が5%/年以下でも、腎不全に進行することが示されている。トルバプタン適応基準となった総腎容積増大速度≧5%/年の基準では、これら腎不全に進行する患者を除外することになる。2)トルバプタンの作用として利尿作用があるが、利尿作用を少なくする薬剤が望まれる。3)多発性嚢胞腎の進展機序は、cAMP-PKAを介する経路のみではないので、cAMP-PKA非依存性経路を抑制する薬剤開発が望まれる。4)肝臓嚢胞に有効なソマトスタチンアナログの臨床開発が望まれる。5 主たる診療科腎臓内科、泌尿器科、脳動脈瘤があれば脳外科(多発性嚢胞腎に関心の高い医師の存在)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報多発性嚢胞腎啓発ウエブサイト(杏林大学多発性嚢胞腎研究講座)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 多発性嚢胞腎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)常染色体多発性嚢胞腎(順天堂大学医学部泌尿器科)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)ADPKD.JP (~多発性嚢胞腎についてよくわかるサイト~/大塚製薬株式会社)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報PKDの会(患者と患者家族の会)1)Torres VE,et al.N Engl J Med.2012;367:2407-2418.2)東原英二 編著.多発性嚢胞腎~進化する治療最前線~.医薬ジャーナル;2015.3)Irazabal MV, et al. J Am Soc Nephrol.2015;26:160-172.公開履歴初回2013年04月18日更新2015年10月27日

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事例76 PSA F/T比の査定【斬らレセプト】

解説事例では、他院の健康診断にてPSA要再検査を指摘され、本院を受診した患者に施行した「遊離型PSA比(PSA F/T比)」が、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)にて査定となった。同検査の算定留意事項には、「診療及び他の検査(前立腺特異抗原(PSA)等)の結果から前立腺の患者であることが強く疑われる者に対して行った場合に限り算定する」とある。カルテには、同検査の指示に併せて「他院測定PSA○○、前立腺がんを強く疑う」と記載があった。算定要件からは外れていない。レセプトの記載をみると、同検査のみの算定だけがあって、同検査の必要性が読み取れない内容であった。このような必要性が読み取れないレセプトの査定を防ぐためには、医学的に必要としたことが読み取れる表現を加える必要がある。「他院検査結果から要再検として来院、検査名:○○、値:○○、○○疾患が強く疑われた」など算定要件を満たしていることを、あらかじめコメントしておくことが必須なのである。

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食道がんと糖尿病の関連、肥満には依存しない?

 食道および胃噴門部腺がんは糖尿病と関連しており、この関連性は肥満とは独立している可能性があることを、米国セントラル・テキサス退役軍人ヘルスケアシステムのJ.L.Dixon氏らが明らかにした。Diseases of the Esophagus誌オンライン版2015年10月12日号の掲載報告。 過去30年間、米国では食道腺がん(EAC)の発症率が、ほかのどのがんよりも急速に増加しており、同様に、肥満や糖尿病の有病率も急激に増加している。そこで著者らは、肥満や糖尿病とEACの潜在的な関連性について検討を行った。 2005~09年度の管理データベースをレトロスペクティブに照合することによって、2つのコホートを同定した。遠位食道および胃噴門部腺がんの患者をがんコホートと定義し、胃食道逆流症(GERD)患者(噴門形成術の処置コードを伴う診断)を対照コホートとした。人口統計学的データや、肥満、糖尿病、脂質異常症、アルコール乱用、ニコチン依存の診断を含む患者データを分析し、ロジスティック回帰モデルにより、EAC発症の危険因子を同定した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、噴門形成術を受けたGERD患者1,132例、もしくはEAC患者1,704例のいずれかであった(計2,836例)。・肥満者の割合は対照コホートでわずかに高かった。一方、糖尿病の割合は、がんコホートのほうが高かった(30.8% vs.14.8%、カイ二乗:94.5、p<0.0001)。・併存疾患やライフスタイル因子を調節したロジスティック回帰分析の結果、糖尿病の診断は、GERDではなく、食道がんと有意に関連していた(OR:2.2、95%信頼区間[CI]:1.7~2.8)。・ニコチン依存もまたEACの危険因子として同定された(OR:1.7、95%CI:1.4~2.0)。

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TG値1,000mg/dL以上を示す患者の臨床的特徴

 金沢大学附属病院で過去10年間に1,000mg/dL以上の高トリグリセリド(TG)値を示した215例の調査によると、全体の7.9%に冠動脈疾患の既往、5.6%に膵炎の既往があり、55.3%に脂肪肝が認められたことがわかった。また、多くが何らかの2次的要因によるTG上昇であることがわかった。深刻な高TG血症は、さまざまな状況により引き起こされる可能性があるため、潜在的な2次的要因を探ることの重要性が示唆された。Journal of clinical lipidology誌7・8月号掲載、金沢大学附属病院 多田 隼人氏らの報告。 日本人において1,000mg/dL以上の高TG値を示す患者の臨床的特徴についてのデータは少ない。 そこで著者らは、2004年4月~2014年3月までに金沢大学附属病院において、何らかの理由で血清TG値を測定された日本人7万368例のうち、空腹時血清TG値が1,000mg/dL以上を示した例の冠動脈疾患の存在、膵炎の既往、脂肪肝の存在、高TG値の潜在的要因について調査した。 主な結果は以下のとおり。・空腹時血清TG値が1,000mg/dL以上を示したのは215例(0.31%)であった(平均年齢46歳、男性170例、平均BMI 25kg/m2)。・WHOの表現型分類(フレドリクソン分類)では、I型4例(1.9%)、IV型97例(45.1%)、V型114例(53.0%)であった。・116例(54.0%)がアルコールを摂取しており、58例(27.0%)がエタノール換算60g/日以上の大量摂取をしていた。・糖尿病は64例(29.8%)に認められた。・一過性の重症高TG血症を59例(27.4%)に認めた。原因は副腎皮質ホルモン投与(19例)、抗うつ薬投与(18例)、急性リンパ性白血病の治療としてL-アスパラギナーゼおよびステロイド投与(15例)、乳がんのホルモン補充療法(9例)、βブロッカー投与(5例)、甲状腺機能低下症(4例)、妊娠(4例)、汎下垂体機能低下症(2例)であった。・脂肪肝は119例(55.3%)に認められた。・膵炎の既往は12例(5.6%)、冠動脈疾患の既往は17例(7.9%)に認められた。

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生体吸収性スキャフォールド、ABSORB IIIの結果/NEJM

 エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド(BVS)の有用性を検討した大規模な多施設共同無作為化試験の結果が報告された。非複雑性閉塞性冠動脈疾患(CAD)患者2,008例を対象に、エベロリムス溶出コバルトクロム合金ステントと比較した試験ABSORB IIIの結果、1年時点の標的病変不全の発生に関する非劣性が確認された。米国・クリーブランドクリニックのStephen G. Ellis氏らが報告した。金属製の薬剤溶出ステント埋設したCAD患者においては、有害事象として遅発性の標的病変不全が報告されている。金属製のステントフレームが血管壁に存在し続けることが関連している可能性があり、長期転帰を改善するためBVSが開発された。NEJM誌オンライン版2015年10月12日号掲載の報告。薬剤溶出金属ステントと安全性、有効性を比較 ABSORB III試験は、多施設共同単盲検実治療対照試験で、CAD患者に対するBVS(Absorb)の安全性と有効性を、薬剤溶出ステント(Xience)との比較において検討した。2013年3月19日~14年4月3日に、米国とオーストラリア202施設で1万3,789例について適格性の評価を行い、193施設2,008例の安定または不安定狭心症患者を、2対1の割合で無作為に2群に割り付けた(Absorb群1,322例、Xience群686例)。 主要エンドポイントは、1年時点の標的病変不全(心臓死、標的血管領域の心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建)で、非劣性と優越性の両者を評価した。1年時点の標的病変不全発生について非劣性を確認 1年時点の評価対象者は、1,989例(99.1%)であった。両群の入院中または30日時点での抗血小板薬2剤併用療法の使用について有意な差はなかった。1年時点では、Xience群と比べてAbsorb群は、クロピドグレルの使用頻度は低く、プラスグレルの使用頻度が高かった。 結果、主要エンドポイントの発生は、Absorb群7.8%、Xience群6.1%であった(両群差:1.7ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.5~3.9、非劣性p=0.007、優越性p=0.16)。 項目別にみると、心臓死Absorb群0.6%、Xience群0.1%(それぞれp=0.29)、標的血管心筋梗塞6.0%、4.6%(それぞれp=0.18)、虚血による標的病変血行再建3.0%、2.5%(それぞれp=0.50)であった。 1年間のデバイス血栓症の発生は、Absorb群1.5%、Xience群0.7%であった(p=0.13)。

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糖尿病のロードレーサーたちが魅せた勇姿

 世界初のオール糖尿病のプロサイクリングチームが、日本の舞台で勇姿を魅せた。 アジアにおける最大規模のレース「2015ジャパンカップサイクルロードレース」が10月18日、宇都宮市で開催された。本大会で注目を集めたのは、全員が1型糖尿病を持つプロサイクリングチーム「チーム ノボ ノルディスク」の健闘であった。チームは昨年に続き、大会2度目の出場を果たしている。 出場者73人中、メンバーのハビエル・メヒヤス選手(スペイン)は18日のロードレースで15位。シャルル・プラネ選手(フランス)は、若手(U23)の中で3位であった。また、前日の17日に行われた「2015 ジャパンカップクリテリウム」でアンドレア・ペロン選手(イタリア)が10位、と好成績を収めている。 レース後、「チーム ノボ ノルディスク」のメンバー5人は、ノボ ノルディスク ファーマのブースでサイン会を行い、約 50人のファンと交流した。ブースには1型糖尿病の少年とその家族も訪れた。将来、チームメンバーとなる夢を追いかけている少年は、「チーム ノボ ノルディスク」からプレゼントされたジャージにサインをもらい、笑顔でメンバーと写真撮影を行った。 「チーム ノボ ノルディスク」はメンバー全員が1型糖尿病患者から成る世界初のアマチュアチームとして2006年にアメリカで設立された。2008年に「チームタイプ1」としてUCIコンチネンタルチーム、2011年にはプロコンチネンタルチームに登録。2012年にノボ ノルディスク社とスポンサー契約している。 1型糖尿病を持っていても、スポーツの才能を活かし、夢を実現させている彼らに、勇気をもらう人は少なくないはずだ。チーム ノボ ノルディスク 公式サイト(英語)チーム ノボ ノルディスク 日本語紹介サイト関連プレスリリースはこちら

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ラピッドサイクラー双極性障害、抗うつ薬は中止すべきか

 急速交代型(rapid-cycling:RC)双極性障害における抗うつ薬の使用は論争の的となっているが、米国・ルイビル大学のRif S. El-Mallakh氏らは、このトピックについて初となる無作為化試験を行った。その結果、アプリオリな分析で、良好な抗うつ薬反応と気分安定薬の使用にもかかわらず、RCにおいて抗うつ薬使用を継続することは、中断した場合と比べて、維持アウトカムの悪化、とくに抑うつ罹患と関連することが明らかにされた。Journal of Affective Disorders誌2015年9月15日号の掲載報告。 検討は、Systematic Treatment Enhancement Program for Bipolar Disorder(STEP-BD)試験の一部として行われた。急性大うつ病エピソードの最初の反応後、抗うつ薬治療継続群と中断群に無作為に割り付けた患者68例について、STEP-BD試験のアプリオリな副次アウトカムであった反応予測としてのRCを分析した。アウトカムは、エピソードの時間割合および総エピソード数を評価した。なお全患者が、標準的な気分安定薬を服用していた。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬継続群において、RC患者は非RC患者と比べて、総気分エピソード/年は268%超(3.14/1.17)、うつ病エピソード/年は293%超(1.29/0.44)経験した。・RC群 vs.非RC群のうつ病エピソード/年の平均差(SE)は0.85±0.37であった(df=28、p=0.03)。・また、抗うつ薬継続群において、RC患者は非RC患者よりも寛解期が28.8%(95%信頼区間:9.9~46.5)短かった(p=0.04)。・RC群と非RC群のこうした差は、抗うつ薬中断群ではみられなかった。・サブグループ解析では、維持期の抗うつ薬治療で層別化した場合にのみ同様の結果がみられた。ただし、サンプルサイズに限界はあった。関連医療ニュース 双極性障害ラピッドサイクラーの特徴は 双極性障害に抗うつ薬は使うべきでないのか 双極性障害への非定型抗精神病薬、選択基準は

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