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抗がん薬副作用マネジメントの進展

 2015年12月10日都内にて、「抗がん薬副作用マネジメントの進展」と題するセミナーが開かれた(主催:アストラゼネカ株式会社)。演者である久保田 馨氏(日本医科大学附属病院 がん診療センター部長)は、抗がん薬の副作用対策を中心に講演。患者さんの負担を考えながら予防・対処する大切さを語った。 以下、セミナーの内容を記載する。【はじめに】 本セミナーでは「細胞障害性抗がん薬」の副作用のうち、好中球減少症とシスプラチン投与時の対処、さらに「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」の副作用対策について述べる。【安易な予防的G-CSF投与は避けるべき】 「細胞障害性抗がん薬」で、注意すべき副作用に「発熱性好中球減少症」がある。この対処としては、以下の3点が推奨される。・リスクファクターの検討・単剤での有効性が確認されている薬剤の選択・発熱性好中球減少20%以上のレジメンでのG-CSF予防投与 ただし、最後の予防的G-CSF投与には注意が必要だ。過去、臨床では好中球減少が認められれば、発熱がない場合であってもG-CSF投与が行われてきた。 たとえば、発熱性好中球減少時の抗菌薬投与には、明らかな生存率改善のエビデンスがある。しかし、G-CSF投与を抗菌薬と同様に考えてはいけない。低リスク例へのG-CSF予防投与はエビデンスがなく、現状のガイドラインを鑑みても適切ではない。薬剤追加は、場合によってはがん患者のQOLを低くすることもある。それを上回るメリットがない限り、医療者は慎重になるべきである。【つらい悪心/嘔吐には適切な制吐薬を】 抗がん剤による悪心・嘔吐は患者にとって、最もつらい症状と言われており、QOL悪化につながる。実際、「がん化学療法で患者が最も嫌う副作用2005」の調査結果1)によると、コントロール不良の悪心/嘔吐(CINV)は死亡と同程度の位置付けであった。とくに、シスプラチンは催吐性リスクが高く、悪心・嘔吐の予防のために、適切な制吐薬を使用すべきである。2013 ASCO総会において発表されたTRIPLE試験では、パロノセトロンが遅発期において有意に悪心・嘔吐を抑制したことが示されている。高度催吐性化学療法時には、パロノセトロン+デキサメタゾン+アプレピタントの併用で悪心・嘔吐を予防することを推奨したい。【短時間輸液療法への期待】 患者さんは1回当たりの治療時間が長引くことを嫌がる。シスプラチン投与では輸液や利尿薬を使用し腎障害の軽減を図るわけだが、投与前後の輸液投与に4時間以上、薬剤の点滴に2時間以上かかるため、トータルで10時間以上かかってしまう。単純に尿量を確保する目的での大量補液は、外来治療が進む昨今の状況には合わず、そこまでして投与しても、Grade2以上の血清クレアチニン上昇は2割程度報告されていた2)。 そこで、マグネシウム補充がシスプラチン起因性腎障害抑制につながるとの報告3)を基に、久保田氏の所属施設を中心にマグネシウム補充を取り入れた形で短時間輸液療法を行うこととした。トータル3時間半の投与法で検討した結果、97.8%の患者でGrad2以上の腎障害の出現はなかった4)。 このように、現時点でもがん患者のQOL向上を目指す治療方法は研究され、実施されつつある。【分子標的薬、免疫CP阻害薬の副作用対策】 「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」の副作用は、「細胞障害性抗がん薬」の副作用とは位置付けが異なる。 分子標的薬の副作用は、その標的を持つ正常細胞に限定して現れる。たとえば、抗EGFR抗体薬やEGFRチロシンキナーゼ阻害薬による皮膚症状などが代表的だ。この対策として、久保田氏の所属施設では、医療者用のスキンケア指導パンフレットを作成し活用している。保湿剤の一覧や塗布法、爪の切り方、入院・外来時スキンケア指導フローなどを共有することで、適切な対処につながる。 また、重大な副作用として「間質性肺炎」も注意が必要だ。投与4週以内の発症が多いので、患者さんには「発熱」「空咳」「息切れ」が出たら必ず来院するよう伝えることが大切だ。 最近登場した免疫チェックポイント阻害薬の副作用は、体内の多岐にわたる場所で起こる可能性がある。下垂体機能低下などホルモン異常による倦怠感なども、見逃さないよう注意が必要である。これまでの薬と異なり、投与10ヵ月後など有害事象がかなり遅れて発現するケースも報告されている。多くが外来で投与されることから、患者や家族へ事前説明をしっかりと行うことを意識していただきたい。【まとめ】 抗がん薬治療では副作用マネジメントが重要となる。薬剤の作用機序や薬物動態を正しく理解することは、副作用の適切な対処につながる。医療者側は、ぜひ正しい知識を持って、患者さんのために積極的な副作用対策を行っていただきたい。

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医療関係者向けLINE公式アカウントから情報提供を開始:アストラゼネカ

 アストラゼネカ株式会社(本社:大阪府大阪市北区、代表取締役社長:ガブリエル・ベルチ、以下、アストラゼネカ)は、LINE株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長 CEO: 出澤剛、以下、LINE)が提供するコミュニケーションアプリ「LINE」の公式アカウントを開設し、医療関係者を対象に同社サイト「MediChannel」の登録会員に対する利便性を向上させた情報配信サービスを2015年12月25 日より提供開始した。日本において、医療関係者向けにLINE公式アカウントを開設し情報提供をするのは、アストラゼネカが初めて。 本サービス導入により、登録会員には以下の点で利便性が向上するという。トーク機能でより早く簡単に情報を受け取れる LINEにより、登録会員は新着コンテンツ情報、医療関係者向けセミナーやイベントの開催情報、製品に関する新着 Q&A などに関するお知らせやニュースを、自身のモバイル機器で受け取ることができる。自分のニーズに合った情報を受け取れる MediChannel には従来から、会員のコンテンツ利用状況などの解析に基づいたパーソナライズ化機能があったが、LINE導入によって今後さらに充実したメッセージのセグメント化が可能になるため、登録会員は自身の専門領域や所属組織による興味や関心により合致した情報を入手できるようになる。 利用には MediChannel へ登録。会員登録後、LINEアプリをダウンロードし、MediChannel 登録データの連携許諾を承認する手続きが必要となる。キャンペーンページはこちら

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抗うつ薬と認知行動療法は大した差がない、が意味するもの(解説:岡村 毅 氏)-464

 大うつ病の外来患者の初期治療における、第2世代抗うつ薬と認知行動療法を比較した。メタアナリシスを行い、両者に有意差がないと報告している。臨床的にも妥当な結果と思われる。 当サイトをご覧の皆さまにおかれてはありえないと思うが、すわ薬物療法よりも認知行動療法が素晴らしい、など早とちりする向きも多いので一応解説したい。 著者らも書いているが、この結果は米国等のガイドライン(初期治療ではこれらは両方とも推奨される)をなぞるものであり、なんら斬新ではない。臨床家なら誰もが知っている当たり前のことを当たり前に示したという点で、優れた論文である。 過去の認知行動療法の優位性を示す論文は、「本物の」(とその論文の著者が認める)認知行動療法のみが組み込まれるなど、公平とは言い難かったが、本論文は淡々と比較した。 では、今日外来受診した患者さん(Aさん)に、どう治療しようが結果は変わらないのだろうか? そんなことはあるまい。外来で薬物療法、環境調整、精神療法をどの順番で組み合わせて治療するかは臨床知である。制止が強い場合は薬物がよく効くだろうし、ケースワークだけで必要かつ十分なケースもあろう、あるいは本人の認知が歪んでいることもあろう。また、言うまでもないが、入院が必要な重症・切迫したケースでは薬物治療が重要である。 著者らは、患者さんがさまざまな治療選択肢を持つことが治療成績を伸ばすし、また精神疾患に対する偏見も減らし、より早く援助希求ができるだろうと最後に書いている。まさに大人の論文であった…。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第26回

第26回:胃食道逆流症~診断に内視鏡検査は必要?~監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 日常よく遭遇する胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease;以下GERD)ですが、とくに、少し前から始まったCMの影響もあり、相談に来られる方がいらっしゃいます。今まで私は漫然とプロトンポンプ阻害薬 (Proton Pump Inhibitor;以下PPI)を処方することが多かったのですが、この論文を読んで手術の適応はどうか、バレット食道はどうマネジメントするかなど、深い知識を得ることができました。 以下、American Family Phisician 2015年5月15日号1) より(要約)どのPPIも有効である。びらん性GERDに関しては、esomeprazoleがやや差がある。症状がない場合、内視鏡による診断は必要ないが、50歳以上で5年以上GERDの症状がある患者に対しては、バレット食道のスクリーニングをするために内視鏡を施行すべきである。どのPPIも有効であるが、1つのメタアナリシスによると、esomeprazole(商品名:ネキシウム)が他のPPIに比べびらん性(erosive)GERDに対して有効であった(NNT25)。PPIに反応しない場合は、1日1回を2回にしたり、別のPPIに変更することもある。内服のタイミングは食事の30~60分前に行うことを勧める。GERD自体に内視鏡的な診断は必ずしも必要ない。アラームサイン(体重減少、貧血、出血、閉塞、嚥下障害、内服にもかかわらず症状の持続)がある場合や50歳以上は、内視鏡的な診断を考慮すべきである。アラームサインがなければ、胸やけ、逆流症状のみで診断して良い(もし問診に妥当性を持たせたければGastroesophageal Reflux Disease Questionnaire、Danish prediction scoreがある)。その後、4~8週間のPPIをトライして改善を認めなければ内視鏡を考慮してもよい。慢性の逆流性食道炎を持つ方の10%にバレット食道が存在すると言われている。ただし、それらが食道がんに発展する割合は低い(年率0.12~0.33%)。ある観察研究によると、バレット食道のスクリーニングは生存率の向上に寄与しなかったとされる。バレット食道のリスクファクターとしては、タバコ(オッズ比[OR] 51.4)、肥満(BMI ≧30、OR 34.4)、家族歴、severeな食道炎の既往が挙げられる。PPIが使用できない方、最大量のPPIでも改善しない方に関しては手術が考慮される。3年以上胸やけが続く患者においては、手術のほうが費用対効果が高く、高いQOLが得られる。手術がバレット食道を改善するかはわかっていない。GERDの患者にルーチンにピロリの検査を勧めるのは、十分なエビデンスがない。あるメタアナリシスにおいても、GERD症状の改善はピロリ除菌後も認めなかった。逆に、別のメタアナリシスでは、胃潰瘍の除菌後にびらん性GERDが有意に増加したという報告もある(OR 2.04、CI:1.08~3.85)。PPIの長期連用は、低マグネシウム血症(OR 3.79)、大腿骨頸部骨折、クロストリジウム・ディフィシル感染症、ビタミンB12欠乏症、市中肺炎のリスクになりうる。最近は薬剤起因性腸炎のリスクになりうるとして話題になっている。PPIは適切な診断の下、最小限の期間、最小限の用量で治療を行うべきである。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) William D, et al. Am Fam Physician. 2015;91:692-697

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循環器内科 米国臨床留学記 第4回

第4回:大学病院、退役軍人病院、プライベート病院特徴のあるローテーション先の病院米国には、大きく分けて3つの病院があります。多くの大学のプログラムは、University Hospital (大学病院)に加えて、VA(退役軍人)病院、場合によってプライベート病院をローテートします。University Hospital (大学病院)University Hospitalは、メインの研修先となります。最先端の治療が行われるため、自然と重症患者が集まります。University Hospitalはフェローやレジデントが主戦力ですから、われわれがいないと仕事が先に進みません。近年、レジデントは労働時間の制限(週80時間労働)、Caps制度(受け持てる患者の数が決まっている)があります。結果的に、そのしわ寄せがフェローに来ます。先月はCCU(冠動脈疾患ケアユニット、重症の心疾患を扱う集中治療室)でしたが、レジデントより遅くまで病院にいることも多かったです。私のプログラムではCCUをローテートする月の平日は毎晩オンコールでERや院内からの循環器コンサルトが頻回にかかってきます。病院のカルテに家からアクセスできるため、心電図の確認のコールが頻回にかかってきます。夜中にST上昇心筋梗塞が来たら、心電図を確認した上でカテ室を起動させなければなりません。その他、緊急心エコーなどのオーダーもあります。そのため、4時間以上連続して寝られることはありませんでした。University Hospitalとしても酷使しても給料を増やさなくて良くて、かつ労働時間の制限がないフェローは使い勝手が良いのです。University Hospitalでは、医師の給料はプライベートホスピタルと比べると安いので、大学で働くことを希望する人は教育をしたい、もしくは研究をしたい人が中心となります。University of Californiaでは、すべての職員の給料が公開されています。循環器フェロー卒業直後の給料は、25万ドル程度です。EP(不整脈)や冠動脈インターベンションの教授のトップクラスは50万ドル以上にもなります。Veterans Affairs Hospital(VA: 退役軍人病院)VA(退役軍人)病院は、多くのUniversity Hospitalのプログラムとつながっており、ローテーションすることが義務付けられています(写真:ロングビーチVA病院)。全米のレジデントの約30%がVAをローテートし、ローテートしたフェローやレジデントの給料の一部はVAの財源から補われます。ロングビーチVA病院安価で医療を受けられると聞くと聞こえがいいが、VAはさまざまな問題を抱えている。VAで働くと、アメリカという国が、いかにインセンティブで動いているかを強く感じる。VA病院には、働いた人にしかわからない特別な雰囲気があります。基本的に米国というのは、能力や成果に応じて給料が決められる出来高制や年棒制で医師の給料が決まっており、これが労働意欲につながっています。VA病院はsocialized medicineです。つまり、政府によって運営され、患者は退役軍人です。彼らの多くはVA病院に来るしか選択肢がありません。病院からすれば、頑張らなくたって患者は来ますし、医師やスタッフの給料も固定されていますから、頑張って働く必要はありません。できることなら患者を減らして、早く帰りたいと思っている人がほとんどです。公的サービスが優れている日本なら、これでもみんな一生懸命働くでしょう。私は全米の3つのVA病院で働きましたが、共通して医療従事者の労働意欲は低く、VA病院はうまく機能しているとは思えなかったです。実際2014年にVA病院の医療が大きな問題となりました。多くの患者が何ヵ月にもわたって、外来の予約待ちで適切な診察を受けられず、診察を待っている間にがん患者が死亡するという問題が生じました。これに基づくさまざまな問題は、エリック・シンセキという日系の退役軍人長官の辞任につながりました。循環器領域でいうと、冠動脈カテーテルなら1日3件、アブレーションでも1日1件など、他の病院では考えられないような手技件数です。医師でさえも、外来の患者や心エコーの件数を減らすために、心エコーや外来のコンサルトのスクリーニングをすることが仕事になっている上司までいます。金曜日は15時を過ぎると、人はまばらになり、何も機能しなくなります。労働時間が短く、負荷も少ない割に、福利厚生は充実しているので、QOL重視の人にとっては最高の環境です。医師でいえば、60歳を超え、引退を控えた人、研究に時間を割きたいような人、急かされて手技などをやりたくない人が集まってきます。さらに一度、この生ぬるい環境に慣れると、なかなか他の病院では働けなくなります。周りの若手医師で、将来VA病院で働きたいと思っている人はいません。患者は退役軍人の人たちで、ざっくばらんに言えば、いいおじさんたちといった感じの人が多く、付き合いやすい人たちばかりです。しかしながら、経済的に貧しい人が多く、ホームレスの患者もたくさんいます。よく知られていることですが、退役した後は仕事に就けず、またベトナム、韓国、イラクなどで覚えた麻薬などを止められず、薬物やアルコール依存、PTSDなどに悩まされます(イラク、アフガニスタンからの帰還兵の10%が薬物やアルコール依存症との報告があります)。犯罪率も高いようで、死刑囚の10%が退役軍人という報告もあります。悲しいことに、アメリカの街角で「退役軍人です、お金を恵んでください」と書かれたプラカードを持っている人をよく見かけます。幸い、ホームレスでも退役運人である限り、医療は無料で受けられますので、外来にこういった方がたくさんいらっしゃいます。研究もVA病院では盛んに行われます。退役軍人の人は、VA病院にしかかからないためフォローがしやすいこと、また、退役軍人の方はいい人が多く、医師が研究を勧めると文句も言わず応じてくれる人が多いように感じます。無料で医療を受けているという引け目があるのかもしれません。研究に対価が払われることなどもあります。私も何度か目のあたりにしましたが、他の病院や日本では少しありえない実験的な研究が行われているのも事実です。VA病院からいい論文が出るのは、こういった側面があると思われます。実際、VA病院の医療の質に疑問を抱いている人も多く、退役軍人でお金を持っている患者はVA病院にかからないという方もいます。プライベートホスピタルプライベートホスピタルは当然ですが、収益第一です。収益につながらないようなことはしません。循環器の冠動脈インターベンショニストやEP(不整脈)の医師の仕事は、カテ室に空きがないようにどんどん手技を行うことです。1日に行う手技の数が、大学と比べても断然に多くなりますし、プライベートの循環器医師は、手技も比較的早い人が多いです。逆に言うと、1つの症例で粘ったりすると、他のスケジュールに支障が出るため、あきらめが早いほうがいい場合もあります。心房細動のアブレーションで肺静脈隔離という手技を行いますが、大学病院であるUC San Diegoにいた頃は、完全に隔離できるまで、上司が粘り、手技が大幅に遅れることがよくありました。患者さんのことを考えて粘ってやっているわけですが、プライベートホスピタルでは、そういうわけにはいきません。結果として、Cryoballoonといったような、時間短縮につながるデバイスが使用される傾向にあります。また、プライベートホスピタルでは、フェローやレジデントがいない環境に慣れているため、カテーテル手技後の止血や簡単なオーダーなどは看護師やNP(ナースプラクティショナー)がやってくれます。医師は、手技のリポートを作り、次の患者に備えます。収益を上げるべく、医師には医師だけができる仕事に専念させます。General Cardiologist(一般循環器専門医)も、コンサルトをどんどん見ることが自分や病院の収益につながります。出来高制ですからUniversity Hospitalでは怒られてしまいそうな、くだらないコンサルトでもお金になるため、喜んで引き受けてくれます。NPが一緒にラウンドし、雑用は彼らがこなし、医師は患者を見て、せっせとノートを作ります。教育面では、仕事のペースが落ちるためレジデントやフェローと関わるのを避ける人も結構います。悲しいですが、リサーチが病院の収益に結び付かないと判断されると、リサーチはもちろん行われません。中規模のプライベートホスピタルではリサーチをほとんどやっていないところが多いです。ファンディングを持っていて、研究を積極的に行うような大規模な病院もありますが、医師が臨床の時間を割かなくても良いように、リサーチのナースなどが積極的に関与し、サポート体制が充実しています。プライベートホスピタルにおける医師への待遇は、大学やVAと比べて格段に良いです。駐車場は無料で、食事、飲み物、スナック類も食べ放題なところが結構あります。給料も大学より、だいぶ良く、卒後すぐの循環器医師でもCaliforniaで30万ドル、以前住んでいたOhio州では40万ドルから50万ドルにもなります。プライベートホスピタルでは、トップクラスのインターベンショニストになると100万ドル以上稼ぐこともあります。このように、異なった種類の病院をローテートすることで、どういった病院が自分に合っているかをフェローの間に考えられるという側面もあります。

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第2世代抗うつ薬と認知行動療法、アウトカムは同等/BMJ

 大うつ病性障害の初期治療において、第2世代抗うつ薬投与および認知行動療法(CBT)の治療効果や有害作用は同等であることを、米国・ノースカロライナ大学のHalle R. Amick氏らが、システマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。すでに第2世代抗うつ薬およびCBTの、大うつ病性障害における効果および有害性は実証されている。しかし、プライマリケア医からは、最適な治療オプションを選択できるよう質の高い治療比較のエビデンスを求める声が寄せられていた。BMJ誌オンライン版2015年12月8日号掲載の報告。1990~2015年の試験結果を再調査 研究グループは、Medline、Embase、Cochrane Libraryなどを基に、1990年1月~2015年1月に発表された、大うつ病に対する第2世代抗うつ薬やCBTに関する試験結果について、システマティックレビューを行った。質的評価およびランダム効果モデルや固定効果モデルを用いたメタ解析で両治療について検討した。 検索により、第2世代抗うつ薬とCBTに関する無作為化比較試験11件(報告論文14本)、被験者総数1,511例のデータを得た。そのうち、抗うつ薬単独治療とCBTを比較した試験が10件、抗うつ薬単独療法と抗うつ薬+CBTの併用療法を比較した試験が3件あった。治療反応率、寛解率、試験中止率にいずれも有意差なし メタ解析の結果、第2世代抗うつ薬とCBTでは、治療反応率(リスク比[RR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.77~1.07)や寛解率(同:0.98、0.73~1.32)について、いずれも有意差は認められなかった。また、17項目うつ病用ハミルトン評価尺度による評価でも、両群間の有意差はみられなかった(加重平均較差:-0.38、95%CI:-2.87~2.10)。 同様に、試験中止率(RR:0.90、95%CI:0.49~1.65)や、治療効果が上がらないことによる治療中止率(同:0.40、0.05~2.91)も、両群間の有意差は示されなかった。 有害作用による治療中止率は、第2世代抗うつ病薬でCBTより高率だったものの、有意差は認められなかった(RR:3.29、95%CI:0.42~25.72)。 なお、その他のアウトカムについてはエビデンス不足で検討できなかったという。また示された結果についても著者は、エビデンスが低く解釈は慎重にすべきだとしている。

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経鼻インフルエンザワクチン、卵アレルギー児も接種可?/BMJ

 卵アレルギーのある未成年者(2~18歳)を対象に、卵成分を含む弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)の安全性について検討した結果、卵アレルギーのある児でLAIVによる全身性アレルギー反応が起きるリスクは低く、またコントロール良好な喘息児への同接種について忍容性が認められるとの見解が示された。英国インペリアル・カレッジ・ロンドンPaul J Turner氏らが国内30施設778例を対象とした非盲検第IV相介入試験の結果、報告した。英国では小児予防ワクチンスケジュールに経鼻LAIVが導入されたが、卵アレルギーは頻度が高く、就学前児童では2~6%に及ぶとされる。卵アレルギーや喘息を有する未成年者へのLAIV接種に関する安全性データは限定的で、ガイドラインの中には、喘息持ちの5歳未満児でのLAIV接種は避けるよう勧告するものもあった。BMJ誌オンライン版2015年12月8日号掲載の報告。卵アレルギーのある中央値5.3歳779例について検証 試験は2014年9月~2015年2月のインフルエンザシーズンに行われた。英国30施設で卵アレルギーのある2~18歳の779例(年齢中央値5.3歳、65.2%が男子)を集め、LAIVを接種した。被験者のうち270例(34.7%)は卵アナフィラキシー歴があり、157例(20.1%)は呼吸器系/心血管系の症状を経験したことがあった。また、445例(57.1%)が、医師による喘息または反復性喘鳴との診断歴があった。 被験者は、ワクチン接種後少なくとも30分間観察され、72時間後に電話でフォローアップを受けた。喘息/反復性喘鳴歴のある児はさらに4週間後にもフォローアップを受けた。 主要評価項目は、卵アレルギーのある未成年者へのワクチン接種後2時間以内の有害事象の発生率とした。また、副次アウトカムとして、LAIV接種後72時間までの後発症状の発生率(非アレルギー関連含む)、喘息/反復性喘鳴のある児の喘息コントロールスコアの接種前と接種1ヵ月後の変化などを評価した。全身性アレルギー反応は報告なし 結果、全身性アレルギー反応は報告されなかった(95%信頼区間[CI]上限値は全集団で0.47%、卵アナフィラキシーがあった児で1.36%)。9例が軽度の症状を報告したが、局所的なIgE型アレルギー反応であった。 ワクチン接種の後発症状と思われる報告は221例であった。72時間以内の下気道症状の報告は62例(8.1%、全集団の95%CI:6.3~10.3%)であった(29例は両親が喘鳴と報告)。 入院となった被験者はいなかった。また、4週時点までに、喘息コントロールテストの評価に基づく下気道症状の増大はみられなかった。 今回の試験について著者は、「被験者が2次、3次の医療センターからも参加しており、専門的評価を必要とする、より重症のアレルギーを有していた被験者もいたことを考慮すべき」と指摘したうえで、「卵アレルギーを有する未成年者において、LAIVによる全身性アレルギー反応を引き起こすリスクは低い。また喘息/反復性喘鳴のコントロール良好な未成年者において、忍容性は良好のようである」とまとめている。

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待望の刊行 「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」

 2015年12月17日都内(大手町)にて、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」についてのプレスセミナーが開催された(主催:一般社団法人 日本老年医学会)。 冒頭に、楽木 宏実 氏(日本老年医学会 理事長)は、「高齢化が進む今、小児科などの一部を除くほとんどの診療科において対象患者の大半が高齢者となっている一方、老年医学を知らない医師も多いのが現状」と述べた。 日本老年医学会は、これまで加齢や高齢者そのものを対象に医学・医療を研究し、その実践を医療界・社会に還元してきたが、今後も継続して超高齢化の波に対して適切な方向性や具体的な方策を示していく方針だ。今回、発刊となった「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」はその役割の一端を担う存在といえよう。 続いて、日本老年医学会の副理事長で本ガイドラインの作成WGの委員長、秋下 雅弘氏がガイドラインの内容について解説した。 本ガイドライン作成の背景として、以下の4点が挙げられる。すなわち「1.とくに要介護高齢者や後期高齢者のエビデンスが不十分である」、「2.専門領域以外の多疾患と多彩な病像、障害への対処が必要となってきている」、「3.医原性疾患が多く、過大または過小医療への懸念がある」、「4.急性期~慢性期病院、クリニック、介護施設、在宅医療など、医療現場が多様化しているといった高齢者に対する医療提供の難しさ」である。 秋下氏は、なかでも留意すべき点は高齢者の薬物有害事象と強調した。実際、高齢者の緊急入院の3~6%は薬剤が原因といわれており、とくに後期高齢者では15%を超えるという。これには以下の3つの要因が考えられている。1.疾患上の要因複数の疾患を有することによる多剤服用2.機能上の要因・臓器予備能の低下による過量投与・認知機能、視力・聴力の低下によるアドヒアランス低下・誤服用、症状発現の遅れ3.社会的要因・過少医療による投与中断 高齢者では、薬物吸収は変化しないが、分布、代謝、排泄の機能は低下するため、少量投与から開始し、長期的には減量も考慮する必要がある。東京大学医学部附属病院老年病科の研究によると、6剤以上を併用すると薬物有害事象の頻度は有意に高かったという。しかしながら、単純に薬剤の数を減らすのではなく、個々の患者の病態と生活機能、生活環境、意思、嗜好などを考慮し、優先順位をつける必要がある。 今回のガイドラインでは、高齢者の処方適正化スクリーニングツールとして、「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」、「開始を考慮するべき薬物のリスト」が掲載されているのも大きな特徴である。本ツールは、75歳以上および75歳未満でもフレイル~要介護状態の高齢者で、1ヵ月以上の長期投与が必要となる患者を対象としており、利用対象は非専門領域の薬物療法を行う実地医家である。しかしながら、本リストに掲載されている薬剤であっても、すぐに中止するのではなく、同ガイドラインにある使用フローチャートにより判断することが望まれる。 今後、日本老年医学会は研修会、Web配信、学会英文誌への掲載、一般向けパンフレットの作成など、さまざまな啓発活動を進めていく予定である。本ガイドラインは今後もアップデートが行われる予定であり、最終的にはイベントとコストの関係を評価する必要があるだろう、と秋下氏は述べた。※本ガイドラインは12月22日(火)、メジカルビュー社より刊行された。

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2015年最後の新・徒然草【Dr. 中島の 新・徒然草】(099)

九十九の段 2015年最後の新・徒然草早いもので、今回が2015年最後の「新・徒然草」になってしまいました。例年、この時期には年賀状を書いたり、大掃除をしたりでバタバタせざるをえません。病院でも診療の合間に外来や病棟の拭き掃除などが行われ、嫌でも年末を感じさせられます。さて、今年から私は郵便局の年賀状印刷サービスを利用しています。これは年賀状の絵柄と自分の住所・氏名をデザインし、宛名作成ソフトで作った住所録を加工して渡しておけば、3営業日以降に宛先の入った年賀状が手元に届くというものです。お蔭で、11月中には年賀状を出す準備ができてしまいました。実際には年賀状受け付けは12月15日になるので、しばらくは投函を待たなくてはなりません。それにしても、これまでは12月23日の天皇誕生日に年賀状作成にかかれば早い方、大抵は年末年始の休みに入ってから大慌てで作っていたので、えらい違いです。また大掃除のほうも、今年はほとんどしなくてよくなりました。というのは、この1~2年ほど、何でも捨てる人間になってしまったので、自宅でも職場でもモノが極端に減ったからです。モノが少ないとあっという間に掃除が終わるので、特に大掃除などは必要なくなります。せいぜい普段は触らない窓ガラスを磨くくらいでしょうか。年賀状や掃除は早々に済むとはいえ、各種書類仕事は山積みです。こればかりは順に片付けるのみ。「どんな書類仕事でも最後には終わる」と自分に言い聞かせ、無念無想の境地でひたすらやり続けるしかありません。このあたり、「どんなに長い手術も最後には終わる」とか、「どんなに長い外来診療も最後には終わる」と似ていますね。年が明けたら、確定申告のことを考えなくてはなりません。例年、申告が3月15日の締切ギリギリになってしまっていましたが、今年の分からは早々に提出しようと考えています。ということで、いろいろなことのあった2015年でしたが、読者の皆さん、ぜひ良いお年をお迎え下さい。今年最後の1句年賀状 書かぬままでも 年明けるちょっとネガティブ過ぎたかも。もう1句大掃除 余裕で済ませて 茶を1杯

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コリンエステラーゼ阻害薬の副作用、全世界の報告を分析

 アルツハイマー病(AD)に対してコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)が臨床使用できるようになって以来、AD患者におけるChEIの副作用スペクトラムを評価する世界的な医薬品安全性監視(ファーマコビジランス)研究は実施されていない。カナダ・ラバル大学のEdeltraut Kroger氏らは、WHO国際医薬品モニタリングプログラムのデータベース(VigiBase)を用い、16年にわたるADにおけるChEI関連副作用を分析した。その結果、精神神経系障害の副作用が最も多いこと、心血管系障害の副作用の重要性が過小評価されていた可能性があることなどを示した。結果を踏まえ、著者らは「患者のフレイルや高頻度の併用薬使用によっては、ChEIの投与を開始する前に副作用について注意が必要である」とまとめている。Annals of Pharmacotherapy誌2015年11月号(オンライン版2015年8月31日号)掲載報告。コリンエステラーゼ阻害薬関連副作用を抽出して分析 研究グループは、1998年~2013年の間に5大陸からVigiBaseへ報告されたすべてのChEI(ドネペジル、リバスチミン、ガランタミン)関連副作用を抽出し、全般的な副作用、重篤な副作用、重篤でない副作用に関して分析した。 主な結果は以下のとおり。・58ヵ国から合計1万8,955件(副作用件数4万3,753件)の報告があった(女性60.1%、平均年齢77.4±9.1歳)。・欧州(47.6%)と北米(40.4%)からの報告が多くを占めた。・ほとんどの報告に、リバスチグミンとドネペジルが含まれていた(それぞれ41.4%)。・副作用は精神神経系障害(31.4%)が最も多く、胃腸障害(15.9%)、全身障害(11.9%)、心血管障害(11.7%)が続いた。・2006~13年の報告は、重篤でない副作用よりも重篤な副作用が多かった。重篤な副作用は精神神経系障害(34.0%)が最も多く、全身障害(14.0%)、心血管系障害(12.1%)、胃腸障害(11.6%)であった。・投薬過誤は重症例の2.0%で報告された。・死亡例は全体の2.3%であった。関連医療ニュース 抗認知症薬は何ヵ月効果が持続するか:国内長期大規模研究 認知症治療、薬物療法にどの程度期待してよいのか 抗認知症薬4剤のメタ解析結果:AChE阻害薬は、重症認知症に対し有用か?

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重症肺気腫に気管支バルブ治療は有用か/NEJM

 気管支バルブ治療が葉間側副換気がない重症肺気腫患者の、肺機能および運動耐容能を有意に改善したことが、オランダ・フローニンゲン大学のKarin Klooster氏らによる無作為化試験の結果、報告された。一方向性の気管支バルブを用いた気管支鏡下肺容量減少療法は、重症肺気腫患者の治療として有望視されているが、これまでに報告された有益性はわずかなものであった。一方で先行研究において、葉間側副換気がない患者における有益性の可能性が示唆されており、研究グループはその仮説について検証した。NEJM誌2015年12月10日号掲載の報告。葉間側副換気がない重症肺気腫患者を対象に、標準内科治療と比較 試験は、葉間側副換気がない重症肺気腫患者を、気管支鏡下で行う気管支バルブ治療(EBV)群または継続的標準内科治療(対照)群に無作為に割り付けて行った。 主要アウトカムは、1秒量(FEV1)、努力肺活量(FVC)、6分間歩行距離の、ベースラインから6ヵ月時点までの変化であった。 試験には患者84例が参加。そのうち側副換気が認められた13例と、気管支バルブが肺葉に未到達であった3例の計16例を除外し、68例についてintention-to-treat解析にて評価した。同被験者(EBV群34例、対照群34例)は、年齢59±9歳、女性が46例。ベースラインにおけるFEV1は予測値の29±7%、FVCは同77±18%、6分間歩行距離は374±86mであった。6ヵ月時点でFEV1、FVC、6分間歩行距離の有意な増大を確認 解析の結果、ベースラインから6ヵ月時点の変化について、EBV群が対照群よりも有意に大きな改善が認められた。EBV群が対照群よりも、FEV1は140mL(95%信頼区間[CI]:55~225)、FVCは347mL(同:107~588)、6分間歩行距離は74m(同:47~100)、それぞれ増大が認められた(すべての比較のp<0.01)。 6ヵ月間に報告された重篤有害事象は、対照群5例、EBV群は23例であった(p<0.001)。また、EBV群で1例の死亡が報告。EBV群における重篤な治療関連有害事象は、気胸(18%)、バルブの置換(12%)または除去(15%)を要したイベントなどであった。

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高齢者のSU薬とワルファリンの併用、低血糖リスク増大/BMJ

 高齢者のワルファリンとスルホニル尿素薬(SU薬)の同時服用は、SU薬単独服用時に比べ、低血糖による病院救急部門受診・入院リスクを約1.2倍に増大することが、また、転倒リスクも約1.5倍に増大することが明らかにされた。米国・南カリフォルニア大学のJohn A. Romley氏らが、65歳以上のメディケア出来高払いプラン加入者の保険請求データを基に後ろ向きコホート試験を行った結果、示されたという。著者は、「結果は、これら薬物間の重大な相互作用の可能性を示唆するものだ」と指摘している。BMJ誌オンライン版2015年12月7日号掲載の報告。2006~11年の保険請求データを基に併用群 vs.SU薬単独群を分析 研究グループは、メディケア出来高払いプラン加入者の20%に相当する保険請求データを基に、SU薬(glipizideまたはグリメピリド)服用高齢者において、ワルファリンの併用が、低血糖などによる病院救急部門受診または入院リスク増大と関連するのかを調べた。被験者は、2006~11年にSU薬を処方されていた46万5,918例。そのうちワルファリンを処方されていたのは、7万1,895例(15.4%)だった。 主要評価項目は、ワルファリンとSU薬を同時処方されていた四半期(併用群)と、SU薬のみ処方されていた四半期(単独群)とで比較した、低血糖による病院救急部門受診または入院の発生率だった。多変量ロジスティック回帰法にて各被験者特性を補正し分析した。併用群で低血糖1.22倍、転倒1.47倍、精神状態関連1.22倍 結果、低血糖による病院救急部門受診または入院の発生は、併用群1,903件/393万8,939人・四半期、単独群は294件/41万6,479人・四半期で、併用群が有意に高率だった(補正後オッズ比[OR]:1.22、95%信頼区間[CI]:1.05~1.42)。 その中でも同時服用による低血糖発症リスクは、ワルファリンを初めて服用する人や、65~74歳の人で高かった。 また、ワルファリンとSU薬の同時服用時は、転倒(補正後OR:1.47、95%CI:1.41~1.54)や変性意識状態・精神状態関連(同:1.22、1.16~1.29)の病院救急部門受診や入院リスクについても、SU薬単独服用時に比べて有意に高率だった。なお、結果について著者は、ワルファリン使用と重症低血糖の関連については交絡因子の存在が否定できないこと、また今回の所見をもって高齢者全般について言えるものではないとしている。

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血栓吸引療法に引導は渡ったか?TOTAL試験1年追跡(解説:香坂 俊 氏)-463

このところ血栓吸引療法の旗色がよろしくない。 (1)急性心筋梗塞では冠動脈内でプラークが破裂し、血栓を形成する (2)その血栓はバルーンやステントを行う前に吸引しておいたほうが良さそうだ (3)実際、小規模のランダム化試験ではうまくいった(TAPAS試験)この三段論法で、とくに日本のカテーテルインターベンション(PCI)の現場では広く行われてきた。自分たちでもKiCSという関東一円の多施設共同PCIレジストリで集計してみたところ、ST上昇心筋梗塞症例に対するPCIの実に65.4%で血栓吸引が行われていた1)。ただ、2年ほど前にヨーロッパよりレジストリベースのRCT(レジストリに登録するとほぼ自動的にランダム化される)であるTASTE試験(北欧諸国)の結果が公表され、30日でまったく予後に差が認められなかった2)。これに続き、国際共同TOTAL試験(全世界20ヵ国)でも180日予後に差が認められず3)、これはにっちもさっちもいかないというところで、今回発表されたのが最後のTOTAL試験の長期フォロー結果(1年間)である。実は、TASTE試験やTOTAL試験の短期の結果をみたときに、遠位塞栓やST偏位など、血栓吸引で「改善した」というSurrogate項目(代理項目:メインの試験のターゲットではなかったが、臨床的に有用と考えられる項目)もあるにはあった。よって、長い期間追跡すれば血栓吸引の良さが検出されるのではないかと期待されたのであるが、その結果は下図のとおりであった。これほど見事に一致したカプランマイヤー曲線はそうみることはできない。ハザード比[HR] 1.00というのもドンピシャリである。この結果を踏まえて思うことは、この試験のinvestigatorたちがきわめて見事にランダム化を成し遂げたということであり、そのうえでやはり血栓吸引には明確な予後改善効果は認められない、ということである。論文の中には種々のサブグループ解析の結果も記載されているが、これも見事にハザード比1.0を軸にトーテムポールを形成している(下図)。図 サブグループ解析のForest Plot。赤線部がハザード比1.0を軸とした「トーテムポール」であり、とくに血栓吸引療法が有効性を示したサブグループがないことを示している。 これを踏まえてどう考えるか? ルーチンの血栓吸引療法の使用には引導が何重にも渡されており、自分としては現状の使用は少し行き過ぎているのではないかと思う。循環器内科ではしばしば病気が「見え過ぎる」ために、医師が手を出し過ぎてしまうことが起こる(アレとか、コレとか)。血栓吸引も、これは吸い出しておいたほうが良いだろうと現場判断で動くこともあるだろうが、65%の使用率というのは高い。自分たちの解析でも、STEMIよりもNSTEMI(非ST上昇心筋梗塞)、NSTEMIよりもUA(不安定狭心症)で血栓吸引の成績は(さらに)悪く、根本的に見直さなければならない時期に来ているように思える。

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ADHD発症にトリプトファンが関連か

 ノルウェー・ベルゲン大学のTore Ivar Malmei Aarsland氏らは、成人の注意欠如・多動症(ADHD)とトリプトファンおよびその代謝物の血清中濃度との関連を検討した。その結果、トリプトファン、キヌレン酸、キサンツレン酸、3-ヒドロキシアントラニル酸などの血清中濃度低値、およびコチニンの血清中濃度高値がADHDと有意に関連していたことを報告した。必須アミノ酸のトリプトファンは、主にキヌレニン経路によって異化される。一方で、慢性炎症状態およびうつ病や統合失調症などいくつかの神経精神障害において、循環血中キヌレニン濃度に変化が認められるとの報告があり、また候補遺伝子研究により、キヌレニン異化に関連する遺伝子とADHDとの関連が示唆されていた。さらに、ADHD患者はうつ病や不安をしばしば併存していることが報告されており、研究グループは、ノルウェーの成人ADHD患者および成人対照における血清キヌレニン濃度を検討した。Behavioral and Brain Functions誌2015年11月号の掲載報告。 成人ADHD患者133例と成人対照131例(18~40歳)において、トリプトファンおよび7種類のトリプトファン代謝物であるキヌレニン、キヌレン酸、アントラニル酸、3-ヒドロキシキヌレニン、キサンツレン酸、3-ヒドロキシアントラニル酸、キノリン酸の血清中濃度を比較した。リボフラビン(ビタミンB2)、総ビタミンB6およびニコチン代謝物コチニンについても測定した。質量分析法により血清サンプルを分析。患者および対照は、併存疾患と過去(幼少期)および現在のADHD症状について、Wender Utah Rating Scale(WURS)およびAdult ADHD Self-report Scale(ASRS)を用いて報告した。各代謝物の血清濃度別に、ADHD診断に対するオッズ比をロジスティック回帰により算出。さらに、スピアマン相関分析を用いて、トリプトファンおよびキヌレニンの血清中濃度とADHD症状スコアとの関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・トリプトファン(オッズ比:0.61、95%信頼区間:0.45~0.83)、キヌレン酸(0.73、0.53~0.99)、キサンツレン酸(0.65、0.48~0.89)、3-ヒドロキシアントラニル酸(0.63、0.46~0.85)の血清中低濃度、およびコチニン(7.17、4.37~12.58)の血清中高濃度は、いずれもADHDと有意に関連していた。・トリプトファン濃度で補正後、3-ヒドロキシアントラニル酸とコチニンのみ有意な関連がみられた。・喫煙と年齢で補正すると、トリプトファンおよびキヌレニンの低濃度は、総ASRSスコア高値および総WURSスコア高値と関連していた。・以上より、成人ADHD患者と成人対照とでは、トリプトファンおよびキヌレニンの血清中濃度に違いがある可能性が示唆された。・本知見においてADHDにおける慢性免疫活性は示されていないが、ADHDの発症機序および血清中濃度の相違による臨床的意義について、さらに探索を進めるべきと思われた。関連医療ニュース 9割の成人ADHD、小児期の病歴とは無関係 成人ADHDをどう見極める 2つのADHD治療薬、安全性の違いは

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「怠薬防止」に統合失調症治療のカギあり

 「統合失調症のリカバリー実現に向けた有力な治療選択肢」というテーマで、大塚製薬株式会社主催のプレスセミナーが2015年12月9日に開催された。統合失調症患者は社会コミュニティに参加できないことも多く、患者は苦しみを抱えている。患者のQOLを向上し、健常人と変わりない生活を続けてもらう、いわゆる「リカバリー」を実現するためには、どのような点が重要となるのだろうか。統合失調症治療のゴールは「リカバリー」 昨年5月、アメリカ精神医学会から「Schizophrenia:time to commit to policy change」という宣言が出された。そのなかで、統合失調症治療は「リカバリー」を目指すことが重要だということが示された。 リカバリーは「症状を回復させ、健常者とほぼ変わらない生活を維持すること」を指し、統合失調症治療の目指すべきゴールとして最近用いられている概念である。統合失調症は、考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続く疾患で、その症状が原因で学校・会社を辞めるケースも多く、患者は日常生活・社会生活に大きな支障を抱えている。そのため治療においては健常者とほぼ変わらない生活を維持すること、つまり「リカバリー」を目指すことが重要である。「怠薬」がリカバリーを困難にする原因 一方で、リカバリーは非常に難しいといわれている。初めて治療を開始する統合失調症患者118例の追跡調査では、5年間の累積リカバリー到達率はわずか13.7%ときわめて低かった。1) リカバリーを目指すうえで重要となるのが「再発させない」ことだ。再発を起こす要因にはさまざまなものが挙げられるが、なかでも大きな原因となっているのが「怠薬」である。実際、「服薬を中断すると再発リスクは約5倍になる」と示唆されている。2)怠薬に関しては、「服薬アドヒアランスは1ヵ月で20%悪化、その後経時的に悪化する」「患者の約半数がときどき服薬するのを忘れる」などのデータが報告されている。3,4) しかし、患者の服薬アドヒアランスを確認することは難しい。服薬モニタリングシステムを用いた研究では、服薬アドヒアランス不良の患者は57%であったのに対し、医師が服薬アドヒアランス不良を把握していた患者の割合は7%であった。5)「怠薬」させないポイントとは? では「怠薬」を防ぐにはどうしたらよいか。セミナーで講演した、藤田保健衛生大学医学部 精神神経科学講座 教授 岩田 仲生氏は、「服薬アドヒアランスが良好でないのであれば他の許容可能な薬剤を考慮することも必要であり、その選択肢の1つとして持続性注射剤(LAI)が挙げられる」と語る。 注射剤のLAIは4週間に1度の来院で投薬が済むため、患者にとって大きなメリットとなる。患者アンケートではLAIを「ぜひ試したい」「試しても良い」が41%となっており、その一番の理由が「4週間に1回の通院が楽」であった。6) またLAIは再発のリスクを抑制したというデータも得られている。7) しかし、LAIは日本ではあまり使用されない傾向にある。LAIが広まらない一番の原因としては、「患者がLAIを知らない」「医師がLAIでの成功体験が少ない」ことがあると岩田氏は話す。患者におけるLAIの浸透、そして医師にもLAIをもっと理解してもらうことが、今後のLAIの課題といえる。 統合失調症患者をリカバリーまで到達させるためには「服薬アドヒアランスの向上」が大きなカギを握っている。そのためには、患者の訴えに耳を傾け、患者の希望やライフスタイルに合わせて処方をカスタマイズすることが非常に重要である。■参考1)Robinson DG, et al. Am J Psychiatry. 2004; 161: 473-479.2)Robinson D, et al. Arch Gen Psychiatry. 1999; 56: 241-247.3)趙 岳人, 岩田仲生ほか. 臨床精神薬理. 2011; 14(9).4)Dibonaventura M, et al. BMC Psychiatry. 2012; 12: 20.5)Byerly MJ, et al. Psychiatr Serv. 2007; 58: 844-847.6)西尾洋平, 亀井浩行:アリピプラゾール持続性注射剤発売時の患者アンケートより7)Hogarty GE, et al. Arch Gen Psychiatry. 1979; 36: 1283-1294.

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