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心房細動患者の死亡リスク、女性のほうが高い/BMJ

 心房細動患者において、女性は男性に比べて全死因死亡リスクが約1.1倍、心血管死リスクは1.9倍、いずれも大きいという。英国・オックスフォード大学のConnor A. Emdin氏らが、30件のコホート試験について行ったメタ解析の結果、明らかにした。これまでの研究結果から、心血管疾患リスクについては、そのリスク因子である糖尿病や喫煙などについて、男女差があることは知られていた。BMJ誌オンライン版2016年1月19日号掲載の報告。1966~2015年に発表の試験をメタ解析 研究グループは、MedlineとEmbase、および参照文献を用いて、1966~2015年に発表された試験結果についてシステマティック・レビューを行い、男女別の心房細動と全死因死亡率、心血管死亡率などとの関連を示したコホート試験を抽出した。 分析対象とした試験は、被験者の心房細動患者が50例以上、心房細動の認められない被験者も50例以上とした。 2人の独立レビュワーが試験特性、最大補正後の性特異的相対リスクを抽出。逆分散重み付けランダム効果モデルを用いたメタ解析を行い、性特異的相対リスクおよび率比をプール算出して評価した。脳卒中リスクは女性が男性の約2倍、心イベントは約1.6倍 レビューにて、30試験(被験者総数437万1,714例)を特定した。心房細動と全死因死亡リスクとの関連は女性のほうが男性よりも高く、相対リスク比は1.12(95%信頼区間[CI]:1.07~1.17)だった。 また、脳卒中に関する同比は1.99(同:1.46~2.71)、心血管死亡は1.93(同:1.44~2.60)、心イベントは1.55(同:1.15~2.08)、心不全は1.16(1.07~1.27)だった。これらの結果は感度分析でも、同様な結果が得られた。 結果を踏まえて研究グループは、こうしたリスクの男女差の要因について、さらなる研究が必要だと述べている。

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肥満は眼圧上昇の独立リスク因子

 眼圧上昇は緑内障の最も重要なリスク因子の1つであることが知られている。イスラエル・テルアビブ大学のEytan Cohen氏らは、約1万9,000例のデータを後ろ向きに解析し、男性および女性のいずれにおいても、肥満が眼圧上昇の独立したリスク因子であることを明らかにした。Journal of Glaucoma誌オンライン版2016年1月13日号の掲載報告。 研究グループは、男性および女性におけるBMIと眼圧との関連を評価する目的で、イスラエルのスクリーニングセンターから、年齢20~80歳の1万8,575人(平均年齢46±10歳、男性68%)のデータを収集し、後ろ向き横断研究を行った。 主な結果は以下のとおり。・男女ともに、BMIと眼圧の間には正の線形相関が認められた(それぞれr=0.166、p<0.0001およびr=0.202、p<0.0001)。・平均眼圧は、BMI25未満群の12.8mmHg(95%信頼区間[CI]:12.7~12.9mmHg)から、BMI 25~29.9群13.4mmHg(同:13.3~13.5mmHg)、BMI 30~35群13.9mmHg(同:13.8~14.0mmHg)、BMI35超群14.3mmHg(同:14.1~14.5mmHg)へ有意に増加した(p<0.0001)。・これらの差は、年齢、高血圧および糖尿病で補正後も有意なままであった(p<0.0001)。・同様の多変量調整を行った解析で、眼圧に対するBMIの影響度を表す係数因子は、男性で0.087(95%CI:0.076~0.098)(p<0.0001)、女性で0.070(同:0.058~0.082)(p<0.0001)であった。・BMIの10増加ごとに、眼圧は、男性で0.9mmHg、女性で0.7mmHgそれぞれ上昇した。・BMI正常者と比較しBMIが正常範囲外の人では、交絡因子補正後の眼圧が18mmHg以上となるリスクの増大がみられた(p<0.001)。

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Vol. 4 No. 2 実地臨床における抗血小板薬選択のポイント

小田倉 弘典 氏土橋内科医院はじめに臨床医が抗血小板薬を使用する機会は多い。実地医家が最低限知っておくべき薬理学的知識をおさえ、疾患ごとに、1次予防と脳心血管疾患慢性期の2次予防において、どの場面でどういった薬剤を選べばよいか、あくまで現場からの視点で概説する。抗血小板薬でおさえるべき薬理学的知識実地臨床における抗血小板薬の使い分けについて論じる前に、人の止血機構とそこに抗血小板薬がどう働くかについての理解が欠かせない。筆者は止血血栓が専門ではないが、近年抗血栓薬に注目が集まっていることから、プライマリ・ケア医としておおよそ以下のように止血機構を把握することにしている。ヒトの血管壁が傷害された場合、1次血栓(血小板血栓)→ 2次血栓(フィブリン血栓)が形成される1次血栓:血小板が活性化され凝集することで形成される2次血栓:活性化された血小板表面で凝固系カスケードが駆動し、フィブリンが生成され強固な2次血栓(フィブリン塊)が形成される動脈系の血栓(非心原性脳塞栓、急性冠症候群など)では血小板血栓の関与が大きく、抗血小板薬が有効である。静脈系および心房内の血栓(心房細動、深部静脈血栓症など)ではフィブリン血栓の関与が大きく、抗凝固薬が有効である血小板活性化には濃染顆粒から分泌されるトロンボキサンA2(TXA2)とアデノシン2リン酸(ADP)による2つの正のフィードバック回路が大きく関与するアスピリンは、アラキドン酸カスケードを開始させるシクロオキシゲナーゼ(COX)-1を阻害することで、TXA2を抑制し血小板の活性化を阻害するチエノピリジン系(クロピドグレル、チクロピジン)はADP受容体P2Y12の拮抗作用により血小板の活性化を阻害するシロスタゾールは、血小板の活性化を抑制するcAMPの代謝を阻害するホスホジエステラーゼ3を阻害することで血小板凝集を抑制する虚血性心疾患のエビデンス・ガイドライン1. 1次予防古くは、Physicians’ Health Study1)において、虚血性心疾患の既往のない人へのアスピリン投与は、心血管死は減少させないものの心筋梗塞発症はアスピリン群のほうが低かったため、処方の機運が高まった時期がある。しかし、日本人の2型糖尿病患者2,539人を対象としたJPAD試験2)において、アスピリン群は対照群に比べ1次評価項目(複合項目)を減らさなかった(5.4% vs. 6.7%)。2次評価項目(致死性心筋梗塞、致死性脳卒中)および65歳以上のサブグループ解析における1次評価項目においては、アスピリン群で有意に少なかった。日本循環器学会の『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)』においても、高リスクの脂質異常症におけるイコサペント酸エチル投与の考慮が推奨度クラスI、複数の冠危険因子をもつ高齢者に対するアスピリン投与がクラスIIとされているのみである。現時点では、虚血性心疾患を標的とした抗血小板薬の1次予防は有効性が確立されておらず、65歳以上の糖尿病患者で多数の冠危険因子を有する場合以外は、投与は控えるべきと考えられる。2. 2次予防(慢性期)2009年のATT4)によるメタ解析において、心筋梗塞(6試験)または脳卒中(10試験)の既往患者に対して、アスピリン投与群は対照群と比較して1次評価項目(心筋梗塞、脳卒中、血管死)を有意に低下させたが(6.7% vs. 8.2%、p<0.0001)、出血性合併症は増加させなかった。一方、脳心血管イベントの既往例19,815例を対象として、アスピリンとクロピドグレルを比較したCAPRIE試験5)においては、クロピドグレルはアスピリンに比較して心血管イベントの発生を有意に抑制した(5.3% vs. 5.8%、p=0.043)。一方、重篤な出血性イベントは、両群間で差はなかった。3. 冠動脈ステント治療後現在、日本循環器学会のガイドライン6)では、ベアメタルステント(BMS)植込み後は1か月、薬剤溶出性ステント(DES)植込み後は1年(可能であればそれ以上)のアスピリンとクロピドグレル併用療法(DAPT)が推奨されている(推奨クラスI、エビデンスレベルA)。ただし、いわゆる第二世代のDESでは遅発性血栓症リスクが低いため、DAPT期間の短縮を検証する大規模試験が現在進行中である。4. その他の抗血小板薬チエノピリジン系であるチクロピジンのアスピリンとの併用によるステント血栓予防効果は、確立したエビデンスがある。ただし、チクロピジンは肝障害や顆粒球減少などの副作用が多く、CLEAN試験7)の結果からも、アスピリンとの併用はクロピドグレルが第1選択と考えられる。プラスグレルは、クロピドグレル同様P2Y12受容体拮抗薬だが、クロピドグレルより効果発現が早く、CYP2C19の関与が少ないため、日本人に多いといわれている薬剤耐性に対しても有利と考えられている。今後の経験の蓄積が期待される。シロスタゾールは上記抗血小板薬に比べて抗血小板作用が弱いため、これらの薬剤が何らかの理由により使用困難な場合にその使用を考慮する。5. 抗凝固薬併用時2014年8月に、欧州心臓病学会(ESC)のワーキンググループから抗凝固薬併用時に関するコンセンサス文書が示され、注目されている8)。それによると、PCIを施行されたすべての抗凝固薬服用患者で、導入期には3剤併用(抗凝固薬+アスピリン+クロピドグレル)が推奨される。ただし、出血高リスク(HAS-BLEDスコア3点以上)かつ低ステント血栓リスク(CHA2DS2-VAScスコア1点以下)の場合はアスピリンが除かれる。その後3剤併用は、待機的PCIの場合、BMSは1か月間、新世代DESは6か月、急性冠症候群ではステントの種類を問わず6か月(ただし高出血リスクで新世代ステントの場合は1か月)を考慮するとされ、その後抗凝固薬+抗血小板薬1剤の維持期へと移行する。この際、抗血小板薬としてはアスピリンはステント血栓症や、心血管イベント率の点で抗血小板薬2剤よりも高率であることが知られているが9)、一方、アスピリンとクロピドグレルの直接比較はないため、個々の出血とステント血栓症リスクにより決めることが必要である。施行後12か月を経た場合の長期管理については、1つの抗血小板薬を中止することが、コンセンサスとして明記されている。ただしステント血栓症が致命的となるような左主幹部、びまん性冠動脈狭窄、ステント血栓症の既往や心血管イベントを繰り返す例では、抗凝固薬+抗血小板薬1剤を継続する必要がある。脳卒中(非心原性脳梗塞)のエビデンス・ガイドライン1. 1次予防脳梗塞の既往はないが、MRIで無症候性脳梗塞(特にラクナ梗塞)が見つかった場合、日本脳卒中学会の『脳卒中治療ガイドライン2009』10)においては、「無症候性ラクナ梗塞に対する抗血小板療法は慎重に行うべきである」として推奨度はグレードC1(行うことを考慮してもよいが、十分な科学的根拠がない)とされている。また最近の日本人高齢者約14,000人を対象としたJPPP試験11)では、心血管死+非致死的脳卒中+非致死的心筋梗塞の複合エンドポイントの5年発生率はアスピリン群、対照群で同等であった。脳卒中の1次予防に対する抗血小板薬の高度なエビデンスはまだなく、治療としては血圧をはじめとする全身的な動脈硬化予防をまず行うべきである。2. 2次予防『脳卒中治療ガイドライン2009』において、非心原性脳梗塞の再発予防にはアスピリン、クロピドグレルがグレードA、シロスタゾール、チクロピジンはグレードBの推奨度である。2014年米国心臓病協会(AHA)の虚血性脳卒中の治療指針12)では、非心原性脳梗塞、TIAに対しアスピリン(推奨度クラスI、エビデンスレベルA)、アスピリンと徐放性ジピリダモール併用(クラスI、レベルB、日本では未承認)、クロピドグレル(クラスIIa、レベルB)となっている。現時点ではアスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールの3剤のいずれかのうち、エビデンス、患者の好みと状況、医者の専門性を考慮して選択すべきと考えられる。エビデンスとしては、上記のCAPRIE試験において、脳梗塞、心筋梗塞、血管死の年間発症率は、クロピドグレル単独投与群(75mg/日)が、アスピリン単独投与群(325mg/日)より有意に少なかった。またCSPS試験13)では、シロスタゾール(200mg/日、2分服)はプラセボ群に比し有意な脳卒中の再発低減効果を有し(プラセボ群に比し41.7%低減)、層別解析では、ラクナ梗塞の再発予防に有効であった。日本で行われたCSPS214)ではアスピリンとシロスタゾールの比較が行われ、脳梗塞再発抑制効果は両者で同等であり、出血性合併症がシロスタゾールで少ないことが報告されている。副作用として、アスピリンによる消化管出血、クロピドグレルによる肝障害、シロスタゾールによる頭痛、頻脈はよく経験されるものであり、これらとコストなどを考えながら選択するのが適切と考える。末梢血管疾患のエビデンス・ガイドライン下肢虚血症状(間歇性跛行)の治療と併存するリスクの高い心血管イベント予防とに分けて考える。下肢虚血症状に対する効果のエビデンスとしてはシロスタゾールおよびヒスタミン拮抗薬があることから、本邦および米国のガイドラインでは、まずシロスタゾールが推奨されている15)。心血管イベントの予防については、上記記載を参照されたい。現時点における抗血小板薬の使い方の実際以上をまとめると、虚血性心疾患、脳卒中ともに、1次予防に有効であるというアスピリンのエビデンスは確立されておらず、現時点では慎重に考えるべきであろう。また、2次予防に関しては、冠動脈ステント治療後の一定期間はアスピリンとクロピドグレルが推奨されるが、ステント治療後以外の虚血性心疾患および非心原性脳塞栓では、抗血小板薬いずれか1剤の投与が推奨されている。その際、複合心血管イベントの抑制という点で、クロピドグレルあるいはシロスタゾールがアスピリンを上回り出血は増加させないとのエビデンスが報告されている。現時点では、状況に応じてクロピドグレルあるいはシロスタゾールの使用が、アスピリンに優先する状況が増えているかもしれない。一方、アスピリンは上記以外にも虚血性心疾患、非心原性脳塞栓の2次予防に関して豊富なエビデンスを有する。またコストを考えた場合、アスピリン100mg1日1回の場合、1か月の自己負担金は50.4円(3割負担)に対し、クロピドグレル75mg1日1回の場合は2,475円とかなり差がある(表)。また、各抗血小板薬の副作用として、アスピリンは消化管出血、クロピドグレルは肝障害、シロスタゾールは頭痛と頻脈に注意すべきである。一律な処方ではなく、症例ごとにエビデンス、副作用(出血)リスク、医師の経験、コストなどを考慮に入れた選択が適切と考えられる。さらに、抗血小板薬2剤併用をいつまでつづけるか、周術期の抗血小板薬の休薬をどうするかといった問題に関しては、専門医とプライマリ・ケア医との連携が不可欠である。こうした問題に遭遇した際に情報共有が円滑に進むように、日頃から良好な関係を保つことが大切であると考える。表 抗血小板薬のコスト画像を拡大する文献1)Steering Committee of the Physicians' Health Study Research Group. Final report on the aspirin component of the ongoing Physicians' Health Study. N Engl J Med 1989; 321: 129-135.2)Ogawa H et al. Low-dose aspirin for primary prevention of atherosclerotic events in patients with type 2 diabetes: a randomized controlled trial. JAMA 2008; 300: 2134-2141.3)日本循環器学会ほか. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン. 循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版).4)Antithrombotic Trialists' (ATT) Collaboration. Aspirin in the primary and secondary prevention of vascular disease: collaborative meta-analysis of individual participant data from randomised trials. Lancet 2009; 373: 1849-1860.5)CAPRIE Steering Committee: A randomised, blinded, trial of clopidogrel versus aspirin in patients at risk of ischaemic events (CAPRIE). Lancet 1996; 348: 1329-1339.6)日本循環器学会ほか. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン. 安定冠動脈疾患における待機的PCIのガイドライン(2011年改訂版).7)Isshiki T et al. Clopidogrel trial in patients with elective percutaneous coronary intervention for stable angina and old myocardial infarction (CLEAN). Int Heart J 2012; 53: 91-101.8)Lip GY et al. Management of antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients presenting with acute coronary syndrome and/or undergoing percutaneous coronary or valve interventions: a joint consensus document of the European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis, European Heart Rhythm Association (EHRA), European Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions (EAPCI) and European Association of Acute Cardiac Care (ACCA)endorsed by the Heart Rhythm Society (HRS) and Asia-Pacific Heart Rhythm Society (APHRS). Eur Heart J 2014; 35: 3155-3179.9)Karjalainen PP et al. Safety and efficacy of combined antiplatelet-warfarin therapy after coronary stenting. Eur Heart J 2007; 28: 726-732.10)篠原幸人ほか. 脳卒中治療ガイドライン2009. 協和企画, 東京, 2009.11)Ikeda Y et al. Low-dose aspirin for primary prevention of cardiovascular events in Japanese patients 60 years or older with atherosclerotic risk factors: a randomized clinical trial. JAMA 2014; 312: 2510-2520.12)Kernan WN et al. Guidelines for the prevention of stroke in patients with stroke and transient ischemic attack: a guideline for healthcare professionals from the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke 2014; 45: 2160-2236.13)Gotoh F et al. Cilostazol stroke prevention study: a placebo-controlled double-blind trial for secondary prevention of cerebral infarction. J Stroke Cerebrovasc Dis 2000; 9: 147-157.14)Shinohara Y et al. Cilostazol for prevention of secondary stroke (CSPS 2): an aspirin-controlled, double-blind, randomised non-inferiority trial. Lancet Neurol 2010; 9: 959-968.15)Rooke TW et al. 2011 ACCF/AHA Focused Update of the Guideline for the Management of Patients With Peripheral Artery Disease (updating the 2005 guideline): a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines. J Am Coll Cardiol 2011; 58: 2020-2045.

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家庭の味が認知症ケアには必要

 伝統的な食品は、帰属感、アイデンティティ、伝統の感情を強め、認知症患者の文化的アンデンティティやQOLの保持や強化に役立っている。味覚は、生理学的というよりも文化的なものである。食習慣は、人生の早い段階で確立され、その変更は難しい場合がある。また、なじみのない料理は、失望や裏切られたような気持ち、愛されていない感覚につながる可能性がある。ノルウェー・Lovisenberg diakonale hogskoleのIngrid Hanssen氏らは、施設に入居する認知症患者に対する伝統的な食品の意味について検討を行った。Journal of clinical nursing誌オンライン版2016年1月11日号の報告。 使用した3つの研究は定性的なデザインであった。認知症ケアを経験した家族や看護師へのより綿密なインタビューは、南アフリカ、エスニックノルウェー人、ノルウェーのサーミ人で行われた。文字説明によるContent-focused分析は、思考、感情、文化的意味を説明するために使用された。 主な結果は以下のとおり。・伝統的な食品は、帰属感や喜びを生み出した。・なじみのある味や匂いは、患者の楽しい思い出を呼び起こし、幸福感やアイデンティティ、帰属感を後押しし、普段話せなかった人にも発言をもたらした。・認知症者の子供のころから覚えている料理を提供することは、維持、文化的アイデンティティの強化、喜びの醸成、患者の帰属感向上、尊重や配慮されることに役立つ。・さらに伝統的な食品は、患者の食欲、栄養摂取、QOLを向上させる。・特別養護老人ホームで伝統的な食品を提供するためには、追加の計画やリソース、伝統的な知識、クリエイティビティ、患者の個人的な好みを知ることが必要である。関連医療ニュース 認知症に対する回想法、そのメリットは 日本人の認知症リスクに関連する食習慣とは? アルツハイマー病、進行前の早期発見が可能となるか

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心不全への遺伝子治療、AAV1/SERCA2aは予後を改善するか/Lancet

 アデノ随伴ウイルス1(AAV1)をベクターとして筋小胞体/小胞体Ca2+-ATPase(SERCA2a)を導入する遺伝子治療(AAV1/SERCA2a)は、試験用量では心不全患者の予後を改善しないことが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のBarry Greenberg氏らが行ったCUPID 2試験で示された。SERCA2aは、心臓拡張期にサイトゾル由来のCa2+を筋小胞体内へ輸送することで心筋細胞の収縮と弛緩を調整している。心不全患者はSERCA2a活性が不足しており、遺伝子導入によってこの異常を是正することで心機能が改善する可能性が示唆されている。Lancet誌オンライン版2016年1月20日号掲載の報告。250例を登録した無作為化第IIb相試験 CUPID 2試験は、左室駆出率が低下した心不全患者に対して、AAV1/SERCA2aによる遺伝子導入治療の臨床的な有効性と安全性を評価する、多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化第IIb相試験(Celladon Corporation社の助成による)。 対象は、年齢18~80歳、虚血性または非虚血性の心筋症に起因する安定期慢性心不全(NYHA心機能分類:II~IV)で、左室駆出率≦0.35、最適な薬物療法を安定的に30日以上受けていた高リスクの外来患者であった。 被験者は、AAV1/SERCA2aのデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)耐性粒子(1×1013)を冠動脈内に1回、経皮的に注入する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。国および6分間歩行距離で層別化した。 主要評価項目は再発イベント(心不全関連の入院、心不全の増悪に対する外来治療)、副次評価項目は末期イベント(全死因死亡、心臓移植、機械的循環補助デバイスの恒久的な装着)の発生までの期間とした。 2012年7月9日~14年2月5日に、米国、欧州、イスラエルの67施設に250例が登録され、AAV1/SERCA2a群に123例、プラセボ群には127例が割り付けられた。243例(97%、AAV1/SERCA2a群:122例、プラセボ群:121例)が、修正ITT解析の対象となった。試験用量では効果なし、増量が必要か? 平均年齢はAAV1/SERCA2a群が60.3(±9.77)歳、プラセボ群は58.4(±12.26)歳で、女性はそれぞれ17%、20%であった。全体で、冠動脈疾患患者が56%、虚血性の心不全患者が約半数含まれた。 フォローアップ期間中央値17.5ヵ月の時点における再発イベント発生率は、AAV1/SERCA2a群が62.8/100人年、プラセボ群は73.9/100人年であり、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.53~1.65、p=0.81)。 末期イベント発生率にも有意差はみられず(21.7 vs.16.7/100人年、HR:1.27、95%CI:0.72~2.24、p=0.41)、全死因死亡も改善されなかった(HR:1.31、95%CI:0.73~2.36、p=0.37)。 死亡は、AAV1/SERCA2a群が25例(21%)、プラセボ群は20例(16%)で、このうち心血管死がそれぞれ22例、18例だった。 事後解析として、AAV1/SERCA2aの有効性が示されたCUPID 1試験(用量設定試験 、23例)との違いを検討したところ、導入効率に影響を及ぼす可能性のある中空ウイルスカプシド(empty viral capsid、蛋白カプシドのみを含み単鎖DNAは含まない)の含有率に差があることがわかった(CUPID 1試験:85%、CUPID 2試験:25%)。 著者は、「CUPID 1試験の有望な結果にもかかわらず、試験用量のAAV1/SERCA2aでは、左室駆出率が低下した心不全患者の臨床経過は改善しなかった」とまとめ、「増量により中空ウイルスカプシド数を増やした試験を行う十分な根拠があるが、心不全以外の患者を含めるなど試験デザインを見直す必要もあるだろう」と指摘している。

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耐性克服に再生検を!~肺がん治療~

 2016年1月21日都内にて、「肺がん治療におけるアンメットメディカルニーズ」と題するセミナーが開かれた(主催:アストラゼネカ株式会社)。演者である中川 和彦氏(近畿大学医学部内科学腫瘍内科 教授)は、第3世代EGFR-TKIの登場に伴う再生検の重要性に触れ、「耐性変異を調べることが、最終的に患者さんの利益につながる」と述べた。 以下、セミナーの内容を記載する。適切なバイオマーカーによる患者選択を 肺がん治療は劇的な進歩を遂げているが、依然アンメットニーズは高い。だからこそ、「希望の光」となるのが臨床試験だ。肺がん治療に影響を与えた代表的試験として、ゲフィチニブのIPASS試験1)がある。EGFR遺伝子変異の有無による効果の違いを実証した本試験は、適切なバイオマーカーで患者選択を行う有用性をわれわれに教えた。 しかし、ゲフィチニブ等のEGFR-TKIが著効した症例も1年~1年半以内に再発が認められる。この「耐性獲得」は深刻なアンメットニーズである。T790M変異の確認に不可欠な再生検 EGFR-TKI耐性患者の約6割がT790M変異を有する2)。今後、T790M変異を標的とした、第3世代EGFR-TKIが市場に登場すれば、同時にEGFR-TKI耐性獲得時の再生検も重要性が増すことになる。T790M変異を確認するには再生検は不可欠だ。 しかし、気管支内視鏡検査をはじめとした検体採取は患者負担が大きい、また脳転移や骨転移での再発例では困難、との指摘もある。そこで現在、血液検体からT790Mを測定する検査の開発が進められている。血液検体、その後に組織診断という流れを作るべく、臨床試験が進行中であり、今後に期待したい。2度目の遺伝子検査が、患者さんのメリットに EGFRに限らず、肺がんのドライバー遺伝子は多岐にわたる。ALK、ROS1、RET、BRAF等があり、それぞれを標的とした新薬が開発段階にある。もはや問題となる遺伝子を探索し、適切な薬を選択する時代である。当然、薬剤費や手間の問題が浮上するが、たとえば、近畿大学ではDNAとRNAを一度に抽出し、遺伝子変異を探索している。 今後、第3世代EGFR-TKIを始めとする各種新薬の登場に伴い、再生検の重要性は増すだろう。再生検で耐性変異を調べることは、最終的に患者さんの利益につながると期待している。

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卵アレルギーと弱毒生インフルエンザワクチン(解説:小金丸 博 氏)-475

 インフルエンザワクチンの製造には、インフルエンザウイルスを鶏卵に接種し培養する工程があるため、ワクチンにはオバルブミンなど卵の成分が含まれる。そのため、卵アレルギーのある人にインフルエンザワクチンを接種すると、重大な副反応が起こる可能性があると広く認識されている。近年、オバルブミン含有量の少ない不活化インフルエンザワクチンは、卵アレルギーのある患者に安全に接種できるとの報告があるが、経鼻的に投与される弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)の安全性に関しては、十分なデータがなかった。 本研究は、卵アレルギーのある若年者(2~18歳)に対するLAIVの安全性を評価するために行った多施設前向きコホート研究である。卵アレルギーと診断されたことのある779例に対してLAIVを投与し、ワクチン接種後2時間以内の有害事象の発生率(プライマリアウトカム)や、1ヵ月後の喘息コントロールスコアの変化などを調査した。試験には卵アナフィラキシー歴がある児が270例(34.7%)、喘息または反復性喘鳴と診断されたことがある児が445例(57.1%)含まれていた。卵アナフィラキシーで侵襲的な呼吸器管理が必要となったことがある児や、重症喘息の児は試験から除外された。 結果、ワクチン接種後2時間以内の全身性アレルギー反応は1例も報告されなかった(95%信頼区間上限値は全集団で0.47%、卵アナフィラキシー歴があった児で1.36%)。9例で軽度のアレルギー症状(鼻炎、局所の蕁麻疹、口腔咽頭の掻痒)を認めた。ワクチン接種後2~72時間に221例の副反応が報告され、62例が下気道症状を呈した。入院が必要となった児はいなかった。また、ワクチン接種1ヵ月後の喘息コントロールテストに有意な変化はみられなかった。 本研究では、卵アレルギー歴がある児でも安全にLAIVを接種できる可能性が示された。試験にはアナフィラキシー歴や喘息を持つ児が数多く含まれており、貴重な報告と考える。アレルギー反応(とくにアナフィラキシー)はとても怖い副反応である。医療従事者にとって、卵アレルギーのある人にインフルエンザワクチンを接種することは勇気が必要なことと思われるが、本試験の結果をみる限り、アレルギー反応を怖がり過ぎているのかもしれない。アナフィラキシーが起こるのを予測することは難しいので、ワクチンを接種する医療機関では、アナフィラキシーが起こったときに対応できるように十分準備しておくことが重要である。 本研究で用いられた経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは、2~49歳を対象に欧米で使用されている。不活化ワクチンと比較し発病防止効果が期待できること、非侵襲的であることから、本邦での導入が待たれる。

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ウィルソン病〔Wilson disease〕

1 疾患概要■ 定義肝臓およびさまざまな臓器に銅が蓄積し、臓器障害を来す常染色体劣性遺伝性の先天性銅代謝異常症である。■ 疫学わが国での発症頻度は約3万5千人に1人、保因者は約120人に1人とされている。■ 病因・病態本症は、銅輸送ATPase(ATP7B)の遺伝子異常症で、ATP7Bが機能しないために発症する。ATP7B遺伝子の変異は症例によりさまざまで、300以上の変異が報告されている。正常では、ATP7Bは肝細胞から血液および胆汁への銅分泌を司どっており、血液中への銅分泌のほとんどは、セルロプラスミンとして分泌されている。ATP7Bが機能しない本症では、肝臓に銅が蓄積し、肝障害を来す。同時に血清セルロプラスミンおよび血清銅値が低下する。さらに肝臓に蓄積した銅は、オーバーフローし、血液中に出てセルロプラスミン非結合銅(アルブミンやアミノ酸に結合しており、一般に「フリー銅」といわれている)として増加し、増加したフリー銅が脳、腎臓などに蓄積し、臓器障害を来すとされている(図1)。画像を拡大する■ 症状・分類5歳以上のすべての年齢で発症する。40~50歳で発症する例もある。神経型は肝型に比較して、発症年齢は遅く、発症は8歳以上である。ウィルソン病は、症状・所見により、肝型(肝障害のみ)、肝神経型(肝機能異常と神経障害)、神経型(肝機能は異常がなく、神経・精神症状のみ)、溶血発作型、その他に分類される。本症での肝障害は非常に多彩で、たまたま行った検査で血清トランスアミナーゼ(ALT、AST)高値により発見される例(発症前)から、慢性肝炎、急性肝炎、劇症型肝炎、肝硬変などで発症する例がある。神経症状の特徴はパーキンソン病様である。神経型でも肝臓に銅は蓄積しているが、一般肝機能検査値としては異常がみられないだけである。肝機能異常が認められなくても、表1の神経・精神症状の患者では、本症の鑑別のために血清セルロプラスミンと銅を調べるべきである。画像を拡大する神経・精神症状は多彩で、しばしば診断が遅れる。本症患者で当初はパーキンソン病、うつ病、総合失調症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、パラノイア症候群(偏執病)などと誤診されていた例が報告されている。表1の「その他の症状」が初発症状を示す患者もいる。したがって、表1の症状・所見の患者で原因不明の場合は、本症を鑑別する必要がある。■ 予後本症に対する治療を行わないと、病状は進行する。肝型では、肝硬変、肝不全になり致命的になる。肝細胞がんを発症することもある。神経型では病状が進行してから治療を開始した場合、治療効果は非常に悪く、神経症状の改善がみられない場合もある。また、改善も非常に緩慢であることが多い。劇症型肝炎や溶血発作型では、迅速に対応しなければ致命的になる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断に有効な検査を表2に示す。また、診断のフローチャートを図2に示す。表2の補足に示すように、診断が困難な場合がある。現在、遺伝子診断はオーファンネットジャパンに相談すれば実施してくれる。画像を拡大する症状から本症を鑑別する場合、まずは血清セルロプラスミンと銅を測定する。さらに尿中銅排泄量およびペニシラミン負荷試験で診断基準を満たせば、本症と診断できる。遺伝子変異が同定されれば確定診断できるが、臨床症状・検査所見で本症と診断できる患者でも変異が同定されない場合がある。確定診断に最も有効な検査は肝銅濃度高値である。しかし、劇症肝不全で肝細胞が著しく壊死している場合は、銅濃度は高くならないことがある。患者が診断されたら、家族検索を行い、発症前の患者を診断することも必要である。鑑別診断としては、肝型では、慢性肝炎、急性肝炎、劇症型肝炎、肝硬変、自己免疫性肝炎などが挙げられる。神経型はパーキンソン病、うつ病、総合失調症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、パラノイア症候群(偏執病)などである。また、関節症状では関節リウマチ、心筋肥大では心筋症、血尿が初発症状では腎炎との鑑別が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症の治療薬として、キレート薬(トリエンチン、ペニシラミン)、亜鉛製剤がある(表3)。また、治療の時期により初期治療と維持治療に分けて考える。初期治療は、治療開始後数ヵ月で体内に蓄積した銅を排泄する時期でキレート薬を使用し、その後は維持治療として銅が蓄積しないように行う治療で、亜鉛製剤のみでよいとされている。画像を拡大する肝型では、トリエンチンまたはペニシラミンで開始する。神経型では、キレート薬、とくにペニシラミンは使用初期に神経症状を悪化させる率が高い。したがって神経型では、亜鉛製剤またはトリエンチンで治療を行うのが望ましい。ウィルソン病は、早期に診断し治療を開始することが重要である。とくに神経型では、症状が進行すると予後は不良である。早期に治療を開始すれば、症状は消失し、通常生活が可能である。しかし、怠薬し、急激な症状悪化を来す例が問題になっている。治療中は怠薬しないように支援することも大切である。劇症型肝炎、溶血発作型では、肝移植が適応になる。2010年現在、わが国での本症患者の肝移植数は累計で109例である。肝移植後は、本症の治療は不要である。発症前患者でも治療を行う。患者が妊娠した場合も治療は継続する。亜鉛製剤で治療を行っている場合は、妊娠前と同量または75mg/日にする。キレート薬の場合は、妊娠後期には、妊娠前の50~75%に減量する。4 今後の展望1)本症は症状が多彩であるために、しばしば誤診されていたり、診断までに年月がかかる例がある。発症前にマススクリーニングで、スクリーニングされる方法の開発と体制が構築されることが望まれる。2)神経型では、キレート薬治療で治療初期に症状が悪化する例が多い。神経型本症患者の神経症状の悪化を来さないテトラチオモリブデートが、米国で治験をされているが、まだ承認されていない。3)欧米では、本症の診断治療ガイドラインが発表されている。わが国では、2015年に「ウィルソン病診療指針」が発表された。5 主たる診療科小児科、神経内科、消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)患者会情報ウィルソン病友の会1)Roberts EA, et al. Hepatology. 2008; 47: 2089-2111.2)Kodama H, et al. Brain & Development.2011; 33: 243-251.3)European Association for the Study of the Liver. J Hepatology. 2012; 56: 671-685.4)Kodama H, et al. Current Drug Metabolism.2012; 13: 237-250.5)日本小児栄養消化器肝臓学会、他. 小児の栄養消化器肝臓病診療ガイドライン・指針.診断と治療社;2015.p.122-180.公開履歴初回2013年05月30日更新2016年02月02日

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治療抵抗性統合失調症へ進展する重要な要因とは:千葉県精神科医療C

 統合失調症における予後不良には、さまざまな要因が関連することが知られているが、それらの相互作用は不明である。ドパミン過感受性精神病(DSP)は、長期的な薬物療法に関連した臨床概念であり、治療抵抗性統合失調症(TRS)へ進展する重要な要因の1つといわれている。千葉県精神科医療センターの山中 浩嗣氏らは、TRS進行へのDSPの影響を検討した。Schizophrenia research誌オンライン版2016年1月13日号の報告。 レトロスペクティブ調査と直接インタビューにより、患者265例をTRS群と非TRS群のいずれかに分類した。DSPエピソードの有無を含む予後に関連する主要な要因を抽出し、それぞれの要因を両群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・未治療期間を除く全パラメータは、非TRS群と比較しTRS群で有意に悪化した。・とくに、TRS群は非TRS群よりもDSPエピソードの割合が有意に高かった。・回帰分析により、DSPはTRSの進展に重要な役割を果たすことが裏付けられた。・さらに、欠損症候群はTRSの診断サブカテゴリーであることが示唆された。 結果を踏まえ、著者らは「予後不良の重要な予測因子が確認され、これはTRSの進展に何らかの形で影響を及ぼすことが示唆された。薬物治療中のDSPエピソードの発生は、治療不応性を促進することが示唆された」としている。関連医療ニュース 難治例へのクロザピン vs 多剤併用 治療抵抗性統合失調症女性、エストラジオールで症状改善 統合失調症治療、ドパミン調節の概念が変わる

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術後補助化学療法が有効なStageII大腸がんのバイオマーカー/NEJM

 StageII大腸がんのうち、腫瘍細胞にcaudal-type homeobox transcription factor 2(CDX2)の発現がみられない患者は再発リスクが高く、術後補助化学療法からベネフィットを得る可能性が高いことが、米国・コロンビア大学のPiero Dalerba氏らの検討で明らかとなった。高リスクStageII大腸がんの同定は、術後補助化学療法を要する患者の選択において重要とされる。マイクロアレイによる幹細胞や前駆細胞由来の多遺伝子発現解析が期待されているが、臨床での使用は困難だという。NEJM誌2016年1月21日号掲載の報告。臨床で使用可能なバイオマーカーを探索、検証 研究グループは、臨床で使用できるStageII/III大腸がんの予後を予測するバイオマーカーを確立するための検討を行った(National Comprehensive Cancer Networkなどの助成による)。 新たなバイオインフォマティクスのアプローチを用いて、遺伝子発現アレイで結腸上皮の分化のバイオマーカーを探索し、臨床での診断検査に使用可能かを基準に、候補遺伝子を順位付けした。 独立のレトロスペクティブなStageII/III大腸がん患者コホートのサブグループ解析を行い、最上位の候補遺伝子と無病生存(DFS、転移・再発のない生存)および術後補助療法のベネフィットとの関連を検証した。陰性例は再発リスクが高く、補助化学療法の効果が高い スクリーニング検査では、転写因子CDX2が最上位であった。2,115の腫瘍検体のうち87検体(4.1%)ではCDX2の発現を認めなかった。 探索データセットは466例で、そのうちCDX2陰性大腸がんが32例(6.9%)、陽性大腸がんは434例(93.1%)であった。5年DFS率は、陰性例が41%であり、陽性例の74%に比べ有意に不良であった(p<0.001)。このうち病理所見のある216例で多変量解析を行ったところ、CDX2陰性例は陽性よりも再発リスクが有意に高かった(再発のハザード比[HR]:3.44、95%信頼区間[CI]:1.60~7.38、p=0.002)。 検証データセットは314例で、CDX2蛋白陰性大腸がんが38例(12.1%)、陽性大腸がん患者は276例(87.9%)であった。5年DFS率は、陰性例が48%と、陽性例の71%に比し有意に不良であり(p<0.001)、全生存率にも有意差がみられた(33 vs. 59%、p<0.001)。多変量解析では、陰性例は陽性例よりも再発リスクが有意に高かった(HR:2.42、95%CI:1.36~4.29、p=0.003)。 この2つのサブグループのいずれにおいても、これらの知見は患者の年齢、性別、腫瘍のStageやGradeとは独立していた。 StageII大腸がん患者に限定した5年DFS率の解析を行ったところ、探索データセットではCDX2陰性例(15例)が49%と、陽性例(191例)の87%に比べ有意に低く(p=0.003)、検証データセットでは陰性例(15例)が51%であり、陽性例(106例)の80%に比し有意に低値であった(p=0.004)。 全患者コホートの統合データベースの解析では、5年DFS率はCDX2陰性StageII大腸がんで補助化学療法を受けた23例が91%と、補助化学療法を受けなかった25例の56%よりも高値を示した(p=0.006)。 著者は「CDX2発現の欠損により、術後補助化学療法からベネフィットが得られると考えられる高リスクのStageII大腸がん患者のサブグループが同定された」とまとめ、「通常は手術のみとされるStageII大腸がんのうち、CDX2陰性例には術後補助化学療法が治療選択肢となる可能性がある。本試験は探索的でレトロスペクティブな検討であるため、さらなる検証を要する」と指摘している。

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アピキサバンのVTE再発予防 効果と安全性に加え利便性に期待

 ブリストル・マイヤーズ株式会社とファイザー株式会社は2016年1月27日、プレスセミナー「静脈血栓塞栓症(VTE)治療の変遷と最新動向」を開催した。その中で、中村真潮氏(三重大学 客員教授、村瀬病院 副院長/肺塞栓・静脈血栓センター長)は下記のように述べた。 本邦における静脈血栓塞栓症(以下、VTE)は増加しており、今後もさらに増加すると予測される。しかしながら、VTEの認知度は欧米に比較して低い。さらに診断の難易度が高いこともあり、診断率も低い。 VTE治療の基本は薬物療法である。従来の標準療法は、迅速に効果を発揮する未分画へパリンを発症後から投与し、5日目からワルファリンを追加、その後ワルファリンの単独治療に移行する。しかし、薬物療法を行っても、VTEの再発は経時的に一定に起こる、とくに急性期の発現は顕著であり、それには急性期に投与する未分画ヘパリンのコントロールの難しさが一因となっている可能性もある。一方、ワルファリンの抗血栓効果は高く、投与を中止するとVTEの発症率は上昇する。長期間継続したいが、その場合、出血合併症が問題となっている。とくにアジア人の脳出血の発生率は高い。そのため、投与期間は個々の患者状態で判断しているのが現状である。このように課題が残る中、導入がシンプルで、出血が少なく長期間使える薬剤の登場が望まれてきた。 近年、NOAC(非ビタミンK阻害経口抗凝固薬)によるVTE2次予防のエビデンスが集積され、保険適応も追加されてきた。FXa阻害薬であるアピキサバン(商品名:エリキュース)も2015年12月、「静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症)の治療および再発抑制」の適応が追加承認された。 アピキサバンのVTEに対する効果と安全性は、海外第III相試験「AMPLIFY」で確認されている。AMPLIFYは急性症候性VTE患者を対象に、アピキサバン単独投与群と低分子ヘパリン/ワルファリン投与群を比較した試験である。主要有効性評価項目である、症候性VTE再発またはVTE関連死については、低分子ヘパリン/ワルファリン投与群に対して非劣性を示し(2.3%対2.7%、HR:0.84、95%CI:0.60~1.18)、主要安全性評価項目である大出血発現率については、優越性を示している(0.6%対1.8%、HR:0.31、95%CI:0.17~0.55)。また、本邦で行われたAMPLIFY-J試験においても、例数は少ないながらも、主要評価項目である大出血または臨床的に重篤な非大出血発現率は、未分画ヘパリン/ワルファリン投与群と比較して少ないという結果が出ている。 中村氏はまとめとして、アピキサバンはVTE治療において、標準療法と同等の効果を示し、出血に関する安全性を向上させた。また、内服のみで治療できることから、外来症例や軽症例についても介入しやすくなるであろう、と述べた。

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寝たきり高齢者、おむつ内の皮膚pHと細菌数は相関

 失禁によって引き起こされる皮膚損傷の機序は、さまざまな実験的研究から提示されているが、長期臥床者で失禁に起因する皮膚特性を検討した研究は非常に限られている。花王株式会社 生物科学研究所の藤村 努氏らは、寝たきり高齢者、健常高齢者および壮年者とで失禁による皮膚特性の変化を比較検討し、その違いを明らかにした。著者らは、「今回検討したパラメータが、失禁に起因するおむつ皮膚炎を防ぐための新しいおむつの開発に適していることが示された」とまとめている。International Journal of Dermatology誌オンライン版2015年12月29日号の掲載報告。 研究グループは、寝たきりの失禁を伴う高齢者35例(平均83.5±9.7歳)、失禁のない健常高齢者41例(75.9±5.6歳)および壮年者20例(41.3±2.8歳)を対象に、前腕および臀部の皮膚pH、皮膚水分量、経皮水分蒸散量および細菌数について測定した。 主な結果は以下のとおり。・臀部の皮膚水分量および経皮水分蒸散量は、失禁高齢者と健常高齢者とで有意な差が認められた。・臀部の皮膚pHおよび細菌数についても、同様の結果が観察された。・前腕では、これらのパラメータについて有意差は認められなかった。・臀部の皮膚pHを除き、排尿の有無で有意差はなかった。・失禁を伴う高齢者において臀部の皮膚pHと細菌数に有意な相関が認められたが、それ以外は観察されなかった。

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ジカウイルス感染症に気を付けろッ! その2【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第17回となる今回は、前回に引き続きジカウイルス感染症についてです。さて、前回はジカウイルス感染症が世界的に拡大していること、そして妊婦の感染と胎児の小頭症発症との関係が示唆されていることについてお話いたしました。今回はジカウイルス感染症の臨床像、鑑別診断、治療や予防についてお話したいと思います。ざっくり言うと「ジカウイルス感染症=劣化版デング熱」ジカウイルス感染症の臨床像ですが、簡単に言うと「劣化版デング熱」です。デング熱といえばフラビウイルス科デングウイルスによる、発熱、頭痛、関節痛・筋肉痛、皮疹を呈する蚊媒介性感染症ですが、ジカウイルスもフラビウイルス科に属することもあり、デング熱に臨床像が似ています。しかし、デング熱ほど症状は激しくありません。発熱はみられますが、デング熱ほど高熱にはならず37℃程度の微熱にとどまり、頭痛や関節痛・筋肉痛もデング熱のように、のたうちまわるほど強いことはまれとされます。つまり、劣化版デング熱なのであります。皮疹もデング熱によく似た紅斑がみられます(図1)が、デング熱が発症から5~7日くらい経って解熱する頃に皮疹が出ることが多いのに対して、ジカウイルス感染症ではもう少し早く、発症から数日くらいで出現することが多いとされます。また、ジカウイルス感染症では眼球結膜充血(図2)が現れる頻度が高いといわれています1)。ジカウイルス感染症の感染者の大半は予後良好であり、これまでのところジカウイルス感染症による死亡者は報告されていません。しかし、合併症としてジカウイルス感染症罹患後にギラン・バレー症候群を発症した患者が報告されています。頻度については不明ですが、2013年に大流行したフランス領ポリネシアでは42人、現在流行中のブラジルでは121人がジカウイルス感染症罹患後にギラン・バレー症候群を発症しています。画像を拡大する画像を拡大する疑ったら即、鑑別診断ジカウイルス感染症の鑑別診断ですが、ジカウイルス感染症が劣化版デング熱であるということを考えると、自ずと鑑別診断はデング熱や、これまたデング熱に似た蚊媒介性感染症であるチクングニア熱が挙がります。この3疾患は非常によく似た臨床像を呈しますが、微妙に違う点もあります(表)。しかし、このような細かい違いに臨床医はこだわる必要はありませんッ!(私はこだわりますけど)。要するに、前回も言いましたが、デング熱を疑ったときにはチクングニア熱とジカウイルス感染症も必ず鑑別診断に挙げるということが大事なのですッ! その他、代表的な輸入感染症であるマラリア、腸チフス、レプトスピラ症、リケッチア症なども鑑別診断となります。画像を拡大する治療は対症療法、予防は防蚊対策ジカウイルス感染症に特異的な治療は今のところありません。発熱や頭痛などに対して対症療法を行うことになります。予防についても、ジカウイルス感染症のワクチンはまだありません。防蚊対策が最大の予防、ということになります。防蚊対策については、デング熱の回をご参考ください。ヒトスジシマカが媒介するということから、ジカウイルス感染症もデング熱やチクングニア熱と同様に、日本国内で流行する可能性のある疾患です。海外で感染したジカウイルス感染症患者が日本国内でヒトスジシマカに吸血されると国内の蚊がジカウイルスを持つようになり、流行が広がる可能性があります。これを防ぐためには、(1)渡航者への防蚊対策の啓発、(2)ジカウイルス感染症患者の早期診断と速やかな防蚊対策の指導、(3)ベクターコントロール、の3つが重要です。われわれ臨床医にできることはとくに(1)と(2)ですね。日本でジカウイルス感染症が流行して、小頭症が増加…という悪夢を現実にしないために、ジカウイルス感染症の国内侵入を防ぎましょう!※本文中の「ジカ熱」の表記を「ジカウイルス感染症」に変更いたしました。1)Duffy MR, et al. N Engl J Med.2009;360:2536-2543.2)Shinohara K, et al. J Travel Med.2016;23.pii:tav011.3)Kutsuna S, et al. Euro Surveill.2014;19.pii:20683.4)Ioos S, et al.Med Mal Infect.2014;44:302-307.

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せん妄に対する薬物治療、日本の専門家はどう考えているか

 せん妄に対する薬物治療に関して、どの薬剤を第1選択とすべきかについて専門家のコンセンサスはほとんど得られていない。医療経済研究機構の奥村 泰之氏らは、レイティングベースのコンジョイント分析を用いて、臨床的特徴が多岐にわたるせん妄の第1選択薬(経口薬および注射薬)に関して、専門家の意見を評価するため検討を行った。International psychogeriatrics誌オンライン版2016年1月18日号の報告。 著者らは、横断的研究を実施した。日本総合病院精神医学会が認定するすべての一般病院連携精神医学専門医/指導医にアンケートを郵送した。 主な結果は以下のとおり。・136名(回答率:27.5%)の専門家の回答によると、68%以上の専門家が、過活動型(hyperactive)せん妄に対しリスペリドンまたはクエチアピンの経口投与を推奨すると回答した(ただし、糖尿病と腎機能障害の合併例を除く)。・静脈ラインが確保されている場合には、67%以上の専門家が、過活動型せん妄に対しハロペリドールの静脈内投与を推奨した。・活動低下型(hypoactive)せん妄治療においては、半分以上の専門家が推奨する薬剤がなかった。 著者らは、「決定的な治療トライアルが存在しない中で、第1選択薬に関して合意できる部分とコンセンサスが欠如している部分の両方が存在する。ルーチンに情報収集する努力が必要であり、これにより実臨床における種々薬剤の有効性や安全性の比較が可能になると考えられる」とまとめている。関連医療ニュース せん妄治療への抗精神病薬投与のメタ解析:藤田保健衛生大 せん妄患者への抗精神病薬、その安全性は せん妄管理における各抗精神病薬の違いは

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下痢型過敏性腸症候群、新規オピオイド受容体作動薬が有効/NEJM

 下痢型過敏性腸症候群(IBS)に対し、新規経口薬eluxadolineは男女を問わず下痢症状を軽減し新たな治療薬となりうることが、Anthony J. Lembo氏らによる2件の第III相試験(多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験)の結果、示された。100mgの1日2回投与で6ヵ月間の持続効果が確認された。eluxadolineは混合型オピオイド作用(μ/κオピオイド受容体アゴニストとδオピオイド受容体アンタゴニスト)を有する製剤。対プラセボの100mg、200mg用量(いずれも1日2回)の検討が行われた第II相試験では、200mg用量の効果に優位性はなく、むしろ有害事象が多かったことから、第III相試験では75mg、100mg用量について対プラセボの有効性(26週)、安全性(52週)を評価した。NEJM誌2016年1月21日号掲載の報告。eluxadoline75mgまたは100mg/1日2回とプラセボを比較 試験は2,427例の下痢型IBS成人患者を、eluxadoline(75mgまたは100mg)またはプラセボを1日2回投与する群に無作為に割り付けて、26週間(IBS-3002試験)または52週間(IBS-3001試験)の治療を行った。 主要エンドポイントは、腹痛の軽減(ベースライン平均スコアより30%以上軽減)、便性状の改善(便性状スコアが5未満)の両効果が同一日に確認された患者(レスポンスあり)の割合とした。レスポンスありの定義は、初期12週間(米国FDA規定のエンドポイント)、26週間(欧州医薬品庁[EMA]エンドポイント)のそれぞれの評価期間中50%以上(最低60日、110日)効果ありの記録日があった患者とした。12週間評価、26週間評価とも100mg群の効果が優れる 第1~12週では、eluxadoline(75mgまたは100mg)群のほうがプラセボ群よりも、主要エンドポイントを達成した患者の割合が多かった。IBS-3001試験被験者ではプラセボ群17.1%に対し、75mg群23.9%(p=0.01)、100mg群25.1%(p=0.004)。IBS-3002試験被験者ではプラセボ群16.2%に対し、75mg群28.9%(p<0.001)、100mg群29.6%(p<0.001)であった。 第1~26週の評価については、IBS-3001試験被験者ではプラセボ群19.0%に対し、75mg群23.4%(p=0.11)、100mg群29.3%(p<0.001)。IBS-3002試験被験者ではプラセボ群20.2%に対し、75mg群30.4%(p=0.001)、100mg群32.7%(p<0.001)であった。 安全性の評価(IBS-3002試験とIBS-3001試験の両被験者データ)では、プラセボ群と比較して75mg/100mg群で最も多く共通してみられた有害事象は、悪心(5.1% vs.8.1%/7.5%)、便秘(2.5% vs.7.4%/8.6%)、腹痛(4.1% vs.5.8%/7.2%)であった。膵炎の発症は、安全性評価集団(1,666例)中5例(0.3%)であった(75mg群2例、100mg群3例)であった。

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クラリスロマイシンと心血管リスク/BMJ

 抗菌薬クラリスロマイシンの使用は、心筋梗塞、不整脈および心臓死リスクの有意な増大と関連していることが、中国・香港大学のAngel Y S Wong氏らが行った住民ベース試験の結果、示された。ただしその関連は短期的なもので、長期的な関連は観察されなかったという。先行疫学研究で、クラリスロマイシンが重篤な心血管アウトカムのリスク増加と関連していることが示唆されていたが、リスクが短期的なものか長期にわたるのか不明であった。BMJ誌オンライン2016年1月14日号掲載の報告。香港住民対象にクラリスロマイシン使用と心血管アウトカムの関連を調査 研究グループは、住民ベース試験でクラリスロマイシン使用と心血管アウトカムとの関連を調べるため、香港で2005~09年にクラリスロマイシンとアモキシシリン投与を受けた18歳以上成人の心血管アウトカムを比較した。 5歳単位の年齢群、性別、使用暦年をベースに各クラリスロマイシン使用者1例に対し、1または2例のアモキシシリン使用者を適合。クラリスロマイシン使用者10万8,988例とアモキシシリン使用者21万7,793例を含むコホート解析を行った。また、自己対照ケースシリーズおよび症例クロスオーバー分析には、ヘリコバクターピロリ(H.pylori)除菌治療でクラリスロマイシン投与を受けた患者も含んだ。 主要アウトカムは、心筋梗塞。副次アウトカムは、全死因死亡、心臓死、非心臓死、不整脈、脳卒中などであった。治療開始後1~14日のみリスク増大、脳卒中のリスク増大はみられず 抗菌薬治療開始後14日間(現在使用群)の心筋梗塞の発症は、クラリスロマイシン使用者132例(1,000人年当たり44.4例)、アモキシシリン使用者149例(同19.2例)で、クラリスロマイシン使用者の率比は2.72(95%信頼区間[CI]:2.15~3.44)、傾向スコア補正後率比は3.66(同:2.82~4.76)であった。 しかし、リスクの増大は長期的には観察されず、傾向スコア補正後率比は、抗菌薬治療開始後15~30日1.06(95%CI:0.44~2.60)、31~90日1.10、91~365日0.90、366~730日1.17、731~1,095日1.01であった。 副次アウトカムについても同様の結果がみられ、クラリスロマイシンの現在使用群のみで、リスクが増大した(不整脈発症の傾向スコア補正後率比2.22、全死因死亡1.97、心臓死1.67、非心臓死2.10)。ただし、脳卒中だけは増大はみられなかった(同率比1.11、95%CI:0.80~1.54)。 また自己対照ケースシリーズ分析で、H.pylori除菌治療でのクラリスロマイシン使用と心血管イベントが関連していることが確認された(14日間のイベント発生率比は、心筋梗塞3.38、不整脈5.07)。そのリスクは治療終了後(15~30日の心筋梗塞0.78、不整脈0.00)は、治療前レベルに戻った(治療前14日間の心筋梗塞0.81、不整脈2.45)。 症例クロスオーバー分析でも、同様のリスク増大が確認された。 クラリスロマイシン現在使用のアモキシシリン現在使用に対する補正後絶対リスク差は、心筋梗塞イベントについては1,000患者につき1.90例(95%CI:1.30~2.68)であった。 著者は、「心筋梗塞、心臓死の絶対リスクは、75歳超で高血圧や糖尿病を有する患者で高いとみられており、これら高リスク患者では抗菌薬の選択に注意を払わなければならない」と述べている。

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女性は幸せでも長生きできない?―Million Women Studyの結果が警告するもの―(解説:加藤 恵理 氏)-473

 幸福であること、または不幸であることは死亡率に直接的影響を与えない、という結果がLancet誌に掲載された1)。この論文の共著者であるオックスフォード大学のRichard Peto氏は、今までも生物統計学のあり方についてさまざまな切り口で論じてきた。そのなかでも有名なのは、ISIS-2のサブ解析、通称Gemini and Libraだろう。全体では明らかに有効であったアスピリン治療が、12星座別に解析すると、双子座(Gemini)と天秤座 (Libra)の患者グループでは有効でなかった、という結果をLancet誌に発表したのだ2)。もちろん、Peto氏は本気で星座ごとにアスピリン治療の有効性が違うと信じていたわけではなく、サブグループ解析を繰り返せば、偶然に誤差を招く可能性(play of chance)があることを統計学的に証明し、当時のサブグループ解析を重要視する風潮を警告したのである。 それから17年経て、オックスフォードグループは同じくLancet誌で、統計学的手法の違いによりいかに異なる解析結果が出るか、ということを証明してみせた。今回著者たちが挑んだのは、幸福度と死亡率、という興味深いが難しいテーマである。幸せであると、免疫および代謝を活発化させ寿命が延びる、という仮説に対して、英国の全国調査Million Women Studyのデータを解析、検証した。 Million Women Studyは、1996年から2001年の間、50~69歳の英国女性約130万人を登録し、女性の健康について調べた国家事業である。参加者には、登録から3年経過した時点で、健康状態、生活様式などを含むベースラインの質問票が送付され、約10年の間追跡された3)。今回の解析では、逆因果関係の可能性を排除するため、悪性腫瘍、心疾患、脳卒中、COPDの既往を有する女性は除外し、約72万人を解析対象としている。解析の結果、ベースライン時における健康状態(自己評価)と幸福度(不幸)には強い相関が認められた(Oradj:0.298、99%CI:0.293~0.303) 。しかし、幸福度(不幸)を年齢、健康状態、高血圧・糖尿病・喘息・関節炎・うつ状態・不安神経症の治療、社会的因子、生活様式因子で補正すると、幸福度と総死亡率の相関性は失われた(RRadj:1.02、95%CI:0.98~1.05)。したがって、筆者らは、“不健康は不幸の原因となる可能性はあるが、幸福度は総死亡率には直接的な影響はない”と結論付けている。 この研究論文の強みはなんといっても、約70万人の10年間ものデータという、とてつもなく膨大な情報量であろう。また、筆者らがさまざまな交絡因子を考慮し、洗練された解析を行っていることも評価できる。一方で、limitationも多い。なによりも、当スタディの対象者は、National Breast Cancer Screening Programに訪れた50~69歳の英国女性、という特定のグループでしかない。したがって、同研究の結果は今までの仮説を否定するものでも肯定するものでもなく、男性、異なる年齢層の女性、異なる人種を対象にしても同様の結果が出て、初めて重みを持つ。 しかし、おそらく筆者らはこのようなlimitationも重々承知だったと考えられる。Million Women Studyは、女性のさまざまな健康問題について解明することを目的としたものではあるが、質問票の内容、順番などから、幸福度と死亡率の相関関係の究明を想定してつくられたものではないことが容易にうかがえる。この論文は、統計学的pitfallを証明するためのツールであり、いわば、第2のGemini and Libraといえるだろう。 Evidence based medicineの提唱により、多くの論文が世に出回るようになったが、一流雑誌といわれる医学雑誌にでさえ、バイアスや交絡因子が適切に処理されていない、または意図的に操作されているものを見受ける。また、昨今、有用なデータはオープン化し共有していくべき、という動きが盛んだ。これは新たな可能性を生む反面、正しい解析知識がなければ、偽の情報に操られてしまう危険性をはらむ。 Million Womenの長寿のカギを握るもの ──それは幸か不幸ではなく、正しい解析知識とデータを正しく読む力、ということをこの研究論文を通じて伝えたかったのではないだろうか。参考文献はこちら1)Liu B, et al. Lancet. 2015 Dec 9.[Epub ahead of print]2)ISIS-2 Collaborative Group. Lancet. 1988;2:349-360.3)The Million Women Study: Million Women Study.http://www.millionwomenstudy.org/introduction/ (Accessed 2016-01-28).

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収縮能が保たれた心不全(HFpEP)には生活習慣への介入が有効(解説:佐田 政隆 氏)-474

 心不全症状が認められるものの、左室収縮能が保持された心不全(heart failure with preserved ejection fraction:HFpEF)が、循環器診療において、現在非常に問題になっている。HFpEFは、心不全患者の約半数を占め、その予後は不良といわれている。 左室収縮能が低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction:HFrEF)に対しては、レニン・アンジオテンシン系阻害薬やβブロッカー、利尿薬が有効であることが確立している。HFpEFに対しても、これらの薬物を用いて大規模臨床研究がいくつも行われてきたが、有効性を示すエビデンスは得られていない。 一方、肥満や過体重が血管内皮機能を障害し、心不全のリスクとなることは以前から示唆されていた。しかし、減量がはたして心不全に有効であるかは、ほとんど臨床試験が行われておらず、心不全に関するガイドラインでも、ダイエットや運動といった生活習慣への介入は、HFpEFに対しては強く勧められてはいなかった。 本論文において、Wake Forest大学のグループは、60歳以上でBMIが30以上のHFpEF患者100例を、カロリー制限する群(n=24)、有酸素運動する群(n=26)、カロリー制限しかつ有酸素運動する群(n=25)、何も介入しないコントロール群(n=25)に分けた。 運動群では、運動処方に従い1時間の運動を監視下で週3回行った。カロリー制限群では、管理栄養士が考案した低カロリー食を3食食べた。体重は、20週間の治療介入で、有酸素運動群で4kg(3%)、カロリー制限群で7kg(7%)、両方を行う群で11kg(10%)、コントロール群で1kg(1%)減少した。主要評価項目である最大酸素摂取量は、運動群で1.2mL/kg/分、カロリー制限群で1.3mL/kg/分、両方行う群で2.5mL/kg/分、有意に増加した。 各種循環器疾患に対して、心臓リハビリテーションが予後を改善することが知られている。今まで有効な治療法がないとされてきたHFpEFに対しても、カロリー制限と有酸素運動が良いというエビデンスが、本研究によって得ることができた。 循環器疾患を持った患者には、生活習慣病に対して各種薬剤が大量に処方されることが往々にしてあるが、食事、運動など生活習慣への介入は基本である。しかし、食事療法、運動療法の大切さを患者に話してもなかなか実行が難しいことを経験する。本研究では専門家が指導することで、運動、ダイエットとも脱落例が少なく、88~100%と高い割合で介入を成功させている。 本研究で得られたエビデンスに基づき、食事、運動に介入して生活習慣を改善させるため、患者教育、支援の体制作りが重要になってくると思われる。

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子供は親の喫煙習慣を真似る

子供は親のマネをする?! 両親に喫煙者がいると、子供の喫煙率が高くなることが知られています。 子供は親の言うことを聞くよりも親の行動をマネします。両親の喫煙が子供の喫煙に与える影響(高校生男子 2,012名)倍3過去また 2は現喫煙リ 1スク-父親の喫煙によりリスクは1.7倍父母の喫煙によりリスクは3倍-父(ー)母(ー)父(+)母(ー)父(ー)母(+)父(+)母(+)両親の喫煙の有無Ozawa M, et al.Asian Pac J Cancer Prev.2008;9:239-245.お子さんに自分と同じ苦しみを与えないためにも、タバコのない生活を!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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セクション5 フィジカルのアウトカムとは? -GRADE system-

セクション5 フィジカルのアウトカムとは? -GRADE system-講師 片岡 裕貴氏(兵庫県立尼崎総合医療センター 呼吸器内科/臨床研究推進ユニット)第5弾は、最近ガイドラインなどでよく見かける「GRADE」についてお届けします。ややこしくて、わかりにくいこの内容をやさしく解きほぐしながら解説。最終的に覚えるのは、「犬の散歩をしている女性」のイメージだけ! その心は? レクチャーで、ぜひお確かめください。

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