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足元の「冷え性」が関係する気温感受性高血圧

 「頭寒足熱」とは、古くから語られてきた健康法だが、この「足熱」の重要性を裏付ける研究が、先月、都内で開かれた日本心臓財団のメディアワークショップで紹介された。本稿では、ワークショップの演者で、室温の変化が血圧に与える影響を研究している苅尾 七臣氏(自治医科大学内科学講座 循環器内科学主任教授)の講演について取り上げる。脱衣所や浴室で倒れることも、高血圧を危険因子とする循環器疾患が冬に増加 苅尾氏が着目したのは、住宅内温熱環境と血圧についての相関関係である。近年、冬季に冷えた脱衣所や浴室で倒れるヒートショックが注目されている。事実、冬季は、脳卒中や心筋梗塞など、高血圧を主な危険因子とする循環器疾患による住宅内での死亡者数が、夏季の2倍に上るという。 これには、室温の急激な変化が影響を及ぼしていると考えられる。ただし、単に室温といっても、床面からの高さによってその数値は大きく異なる。とりわけ断熱性能が低い住宅では、暖房器具によって床上1.1mの室温を20℃に暖めても、足元付近(床上0.1mの高さ)では10℃程度と、倍近い温度の開きが出ることもあるという。足元の冷え性は「気温感受性高血圧」につながる危険性 これが身体にどのような影響を与えるのか。苅尾氏によると、足元付近の室温が10℃低下することにより、血圧は平均9mmHg上昇するという研究結果が示されている。つまり、室温を適温に設定していても、足元まで十分に暖められていなければ、それだけ末梢まで血液を送り出す心臓にかかる負荷は増大するということだ。さらに心血管イベントによる死亡は、血圧20/10mmHgの上昇で2倍ずつ増大するということが、過去の研究データから明らかになっている。これらに照らして考えてみても、寒暖差のギャップが身体に悪影響を及ぼすであろうということは明白だ。 苅尾氏は、こうした足元の冷え性など、気温に依存して血圧が変動する「気温感受性高血圧」について、「気温の変化は薬では抑えられない問題だが、高血圧症を引き起こす大きなトリガーになっていることに留意すべき」と強調。そのうえで、「部屋全体の温度管理よりも、足元を冷やさないための温度管理の工夫が重要」と述べた。 足元の冷え性のための住宅の断熱対策や室温管理などは、医療の範疇から外れているように思う向きもあろうが、家庭血圧をコントロールし、心血管イベントをいかに回避するかを考えるうえでは、非常に重要なポイントと言えるのではないだろうか。

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Lancet、NEJMなどで筆頭著者が女性である割合は?/BMJ

 インパクトファクターが高い総合医学雑誌の原著論文で筆頭著者が女性である割合は、20年前に比べ有意に増加したものの、近年その増加は横ばいで、逆に減少している雑誌もあるという。米・Baylor Scott & White HealthのGiovanni Filardo氏らが、高インパクトファクターの総合医学雑誌6誌を調査し、明らかにした。米国および英国の研究者に限定した先行研究2件で、1970年以降、女性筆頭著者の割合は増加しており、2004年で米国は29%、英国は37%と報告されていたが、医学雑誌間で比較した検討はこれまで行われていなかった。BMJ誌オンライン版2016年3月2日号掲載の報告。6誌の原著の女性筆頭著者の割合、20年の変化と雑誌間の差を評価 研究グループは、Annals of Internal Medicine、Archives of Internal Medicine、BMJ、JAMA、Lancet、NEJMの6誌を対象に、1994年2月~2014年6月の偶数月に発行された号(1ヵ月に複数号発行される場合は、2番目の発行号)の原著論文について、発行年月、筆頭著者の性別、総著者数、研究の種類、専門分野/テーマ、研究実施地域に関するデータを収集し、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて、女性筆頭著者の割合とその経時的変化および雑誌間差を評価した。女性筆頭著者の割合は全体で10%増加し2014年は37% 対象論文3,860本中、3,758本において筆頭著者の性別が特定でき、このうち1,273本、34%が女性筆頭著者であった。 多変量解析の結果、女性筆頭著者の割合は、6誌全体では1994年の27%から2014年は37%まで有意に増加した(p<0.001)。 ただし、雑誌別に検討すると、NEJMは女性筆頭著者が減少しており、異なる傾向がみられた。BMJも近年は女性筆頭著者の割合が減少しているが、もともと他誌よりその割合が高く(1994年で約40%)、調査期間全体で女性筆頭著者の割合が最も高かったのはBMJであった。6誌の全平均と比較し筆頭著者が女性である補正オッズ比は、NEJMが0.68(95%CI:0.53~0.89)で有意に低く、BMJは1.30(95%CI:1.01~1.66)で有意に高かった。 著者は、分類の誤り、あるいは研究の種類や規模等により出版が優先された可能性など、今回の検討の限界点を示したうえで、「高インパクトファクターの総合医学雑誌においていまだに女性筆頭著者が少ないことも、雑誌間で差がみられることも、非常に大きな問題である。女性が、将来の保健医療政策や臨床診療の標準化のエビデンス確立に貢献できるよう、この問題の根底にある原因を調査する必要がある」とまとめている。

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妊娠高血圧の心筋症リスク、周産期以降も長期に及ぶ/JAMA

 妊娠高血圧症候群(Hypertensive disorder of pregnancy:HDP)を合併した妊婦は、合併しなかった妊婦と比べ、出産後5ヵ月以降に心筋症を発症するリスクが、わずかであるが統計学的に有意に高いことが示された。デンマーク・Statens Serum Institut社のIda Behrens氏らによる、デンマークの全国レジストリを用いたコホート研究の結果、明らかになった。これまでにHDP、とくに妊娠高血圧腎症の妊婦では、出産前1ヵ月~出産後5ヵ月以内の周産期心筋症のリスクが増加することが報告されていたが、HDPが出産後5ヵ月以降の心筋症とも関連するかどうかについては不明であった。JAMA誌オンライン版2016年3月8日号掲載の報告。約110万人のHDP合併有無と周産期(出産後5ヵ月)以降の心筋症発症を調査 研究グループは、患者登録(National Patient Register)データを用い、1978年~2012年に1回以上妊娠(生児出産または死産)した女性107万5,763人における心筋症発症率を、HDP合併の有無で比較した(追跡調査は2012年12月31日まで)。 HDPは、出産前1ヵ月から出産後7日までの間に診断された妊娠高血圧症、中等症の妊娠高血圧腎症、または重症妊娠高血圧腎症(子癇やHELLP症候群[溶血、肝酵素上昇、血小板減少]を含む)とし、主要評価項目は出産後5ヵ月以降34年7ヵ月時点までの心筋症であった。HDP合併で周産期以降の心筋症リスクが増加 107万5,763人において、基準を満たした妊娠は206万7,633例あり、うち7万6,108例がHDP合併例であった。追跡期間中、心筋症を発症した妊婦は1,577例(心筋症診断時の平均年齢48.5歳、多胎妊娠2.6%)で、うち169例(10.7%)がHDP合併妊婦であった。 正常血圧妊婦と比較し、HDP合併妊婦では心筋症の発症頻度が有意に増加した。 すなわち正常血圧妊婦では、観察1,821万1,603人年において心筋症イベント数は1,408例、発症頻度は7.7例/10万人年(95%信頼区間[CI]:7.3~8.2)であったが、重症妊娠高血圧腎症合併妊婦では17万3,062人年において、イベント数27例、発症頻度15.6例/10万人年(同:10.7~22.7)で、補正後ハザード比(HR)は2.20(95%CI:1.50~3.23)。中等症の妊娠高血圧腎症妊婦では69万7,447人年において102例、14.6例/10万人年(95%CI:12.0~17.8)、補正後HRは1.89(同:1.55~2.23)。妊娠高血圧症合併妊婦では21万3,197人年において40例、17.3例/10万人年(同:12.7~23.6)、補正後HRは2.06(同:1.50~2.82)であった。 これら心筋症発症頻度の増大は、「最後」の出産後5年以降で分析した場合も同様に認められた。 媒介分析の結果、HDPと周産期以降の心筋症との関連が、妊娠後の慢性高血圧症を介した間接的関連であることが示唆されたのは、約50%のみであった。 著者は、「今後さらなる研究で、この関連の因果関係を明らかにする必要がある」とまとめている。

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CREST試験:頸動脈狭窄症における頸動脈剥離術と頸動脈ステントの両治療群における長期追跡(解説:山本 康正 氏)-497

【目的】 症候性および無症候性頸動脈狭窄症例2,502例を、頸動脈ステントと頸動脈剥離術との2種類の治療に振り分け、4年間追跡したCREST(Carotid Revascularization Endarterectomy versus Stenting Trial)試験では、脳卒中、心筋梗塞、周術期の死亡、そして、病側の脳卒中発症を含めた1次複合エンドポイントについて差は認められなかった。そこで今回は、さらに10年に及ぶ追跡の結果を調べた。【方法】 試験は、117のセンターで477人の脳外科医と224人の血管内治療医により行われ、経過は6ヵ月ごとにチェックされた。症候性は、血管撮影で50%以上、超音波あるいはCTアンギオ・MRAで70%以上の狭窄を有する例とし、無症候性は、血管撮影で60%以上、超音波で70%以上、CTアンギオ・MRAで80%以上の狭窄を有する例とした。【結果】 追跡期間は平均7.4年であった。1次複合エンドポイントはステント群で11.8%、剥離術群で9.9%と両群で差を認めなかった。病側での脳卒中は83例に発症し、頸動脈ステント群は42症例(6.9%)、頸動脈剥離術群は41症例(5.6%)で差は認めなかった。また、より重症の脳卒中はステント群で12例、剥離術群で6例とステント群でやや多いが有意差はなかった。2次解析で周術期の脳卒中・死亡とその後の病側の脳卒中を対象とすると、37%ステント群で高かった(p=0.04)が、内訳は周術期のイベントで差がついていた。再狭窄や再開通療法はステント群で12.2%、剥離術群で9.7%であった。1次エンドポイントについて、年齢、性、症候性・無症候性、狭窄度を区別して検討しても差はなかった。【解説】 ステント群で周術期のイベントがやや多いが、全体として剥離術群に劣らない優良な成績が確認された。ステント群で、今後デバイスの改良により周術期のイベントをより減少させることが期待される。しかし、個々のケースでは、プラーク量が多く不安なプラークを有するような症例には、熟達した脳外科医による頸動脈剥離術を選択したい。ステントの進歩は喜ばしいが、そのことによって、頸動脈剥離術の手技の習得がおろそかにならないことを望みたい。

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医者は努力が足りない?【Dr. 中島の 新・徒然草】(110)

百十の段 医者は努力が足りない?タレントのテリー伊藤氏が、あるテレビ番組で「医者は遊んでて仕事ができるのか。テレビの演出家でも料理家でも、みんな努力してる。医者って、年をとっても試験がない。だから努力をしてないと思うよ」と言ったそうです。これに対して、番組内で医師の西川 史子氏や、奥仲 哲弥氏から「努力してる人もたくさんいる」と反論されると「そういう人もいるけど、患者の話を聞いて薬を出すだけの人もたくさんいる。こんな楽な仕事はない。どう向上心があるか、発表してほしい」と最後まで意見を変えなかったとか。面白いのは、テリー氏の発言がネットで炎上し、お前が医者になれよ医者は激務だし学生時代に苦労もしてるあまりにも短絡的。ひどいな。などなど、反論多数だったことです。もちろん、大半がろくでもない医者なのは確か医者なんて向上心がない人ばかりだよと少数ながら、テリー氏に賛成する意見もありました。で、努力が足りないといわれた側から、ちょっとだけツッコミを入れてみましょう。テリー氏の発言は、医者は年をとっても試験がないだから努力をしていないテレビの演出家でも料理家でも、みんな努力しているとなっています。ということは、テレビの演出家や料理家は年をとっても試験があるのでしょうか?なさそうな気がしますね。それとも「テレビ演出家や料理家は試験がなくても努力するけど、医者は試験がなければ努力をしない」ということでしょうか。もしそうなら「医者は試験がないから努力をしていない」という御自身の発言と矛盾してしまいます。困ったものです。さて、ネットで見た意見で「なるほど」と思ったのは、こういう尖ったコメントをしないと食べていけない職種なんだなあと…というものです。ここでいう「職種」というのはテリー氏の仕事のことです。つまり、テレビの世界で当たり前のことを言っていたらすぐに忘れ去られてしまうので、過激な発言で注目を集めなくてはならないわけです。まさしく「悪名は無名に勝る」という奴ですね。また、誰かを批判する場合、相手がお医者さんだと、間違っても刺されたり訴えられたりすることもないので、安心して悪口を言うことができます。テリー氏はそういう計算もしているのかもしれません。結局、テリー氏はドラマの悪役を演じている役者さんみたいなものなのでしょう。一般視聴者はともかく、我々はいちいち腹を立てたりせず、大人の対応を心掛けるべきかと思います。最後に1句ネットみて 膝打つ意見 探し出し

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オランザピン誘発性体重増加を事前に予測するには:新潟大学

 オランザピン(OLZ)による治療は、体重増加の高リスクと関連しており、糖脂質代謝異常を引き起こす可能性もある。そのため、OLZ関連の体重増加の機序を解明する必要があるが、まだ十分にわかっていない。近年、レプチンやアディポネクチンなどのアディポサイトカインや、エネルギー恒常性に重要な役割を果たす腫瘍壊死因子(TNF)-αが、体重増加のバイオマーカーとして考えられている。新潟大学の常山 暢人氏らは、レプチン、アディポネクチン、TNF-αのベースライン血漿中濃度がOLZ治療による体重増加を予測するかを検討した。PLoS One誌2016年3月1日号の報告。 対象は、薬物療法未実施または他の抗精神病薬で単剤治療をしていた外来統合失調症患者31例(男性12例、女性19例、28.8±10.2歳)。BMIとレプチン、アディポネクチン、TNF-αの血漿中濃度を調べた。すべての患者には、最大1年間のOLZ単剤治療を開始または切り替えにて実施した。エンドポイントとしてBMIを測定した。 主な結果は以下のとおり。・OLZ治療後の、BMIの平均変化量は2.1±2.7であった。・BMIは、ベースラインからエンドポイントまでのBMI変化量は、女性患者におけるベースラインのレプチン濃度と負の相関が認められた(r=-0.514、p=0.024)。しかし、男性患者では認められなかった。・ベースラインのアディポネクチン、TNF-α濃度は、BMI変化との相関は認められなかった。 著者らは「ベースラインの血漿レプチン濃度は、女性統合失調症患者におけるOLZ治療後の体重増加に影響を及ぼす」とまとめている。関連医療ニュース オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学 オランザピンの代謝異常、アリピプラゾール切替で改善されるのか 抗精神病薬誘発性の体重増加に関連するオレキシン受容体

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重度喘息へのICS/LABAは安全かつ適正か?/NEJM

 持続性喘息の患者に対し、吸入ステロイド薬(ICS)フルチカゾンと長時間作用性β2刺激薬(LABA)サルメテロールの併用投与は、フルチカゾン単独投与に比べ、死亡や気管内挿管などの重度喘息イベントのリスクを増大しないことが示された。米国グラクソ・スミスクライン社のDavid A. Stempel氏らが、1万1,679例を対象に無作為化試験を行った結果、明らかにされた。増悪リスクは、併用投与群が単独投与群に比べ約2割低かったという。喘息治療における安全かつ適正なLABAの使用については、広く議論されている。先行する2つの大規模臨床試験では、重篤な喘息関連イベントリスクがLABAと関連している可能性が報告されていた。NEJM誌オンライン版2016年3月6日号掲載の報告より。26週間投与し、安全性、有効性を比較 研究グループは、12歳以上の持続性喘息患者1万1,679例を対象に、多施設共同無作為化二重盲検試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方の群にはフルチカゾン+サルメテロールを(サルメテロール・フルチカゾン群)、もう一方にはフルチカゾンのみを(フルチカゾン単独群)、それぞれ26週間にわたり投与し、サルメテロール・フルチカゾンのフルチカゾン単独に対する非劣性を検証した。 被験者は、試験開始前1年以内に喘息の増悪が認められたが、直前1ヵ月間には認められなかった者を適格とした。また、これまでに生死に関わるほど重篤な喘息発作や、不安定喘息が認められた人は、被験者から除外された。 主要安全性評価項目は、死亡、気管内挿管、入院を要した初回重篤喘息イベント。主要有効性評価項目は、初回喘息増悪とした。1回以上の喘息増悪、フルチカゾン単独群10%に対しサルメテロール併用群8% 重度喘息イベントが認められたのは、被験者全体で67例(74件)だった。そのうち、サルメテロール・フルチカゾン群は34例(36件)、フルチカゾン単独群は33例(38件)と両群で同等であり、サルメテロール・フルチカゾンの安全性に関する非劣性が示された(ハザード比:1.03、95%信頼区間[CI]:0.64~1.66、p=0.003)。 喘息関連死はなく、喘息による気管内挿管を行ったのは、フルチカゾン単独群の2例のみだった。重度喘息増悪の発症リスクは、サルメテロール・フルチカゾン群がフルチカゾン単独群より21%低かった(ハザード比:0.79、同:0.70~0.89)。1回以上の喘息増悪が認められたのは、フルチカゾン単独群597/5,845例(10%)だったのに対し、サルメテロール・フルチカゾン群は480/5,834例(8%)だった(p<0.001)。

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巨細胞性動脈炎の寛解導入にトシリズマブは有効/Lancet

 巨細胞性動脈炎(GCA)患者に対し、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体トシリズマブと経口プレドニゾロンの併用投与は、経口プレドニゾロン単独投与に比べ、完全寛解率や、長期無再発生存率も高いことが示された。スイス・ベルン大学のPeter M. Villiger氏らが、巨細胞性動脈炎患者30例を対象に行った初となる無作為化試験の結果で、Lancet誌オンライン版2016年3月4日号で発表された。巨細胞性動脈炎に対し、糖質コルチコイド治療はゴールドスタンダードで重篤な血管合併症を防ぐが、罹患・死亡率が高い。トシリズマブは、巨細胞性動脈炎の寛解導入・維持に用いられていることから、研究グループは、新規および再発患者に対するトシリズマブの安全性と有効性を確認するため今回の検討を行った。投与後12週の完全寛解率を比較 検討は第II相プラセボ対照無作為化二重盲検試験で、2012年3月3日~14年9月9日の間、ベルン大学病院単施設で、米国リウマチ学会1990年版基準を満たした巨細胞性動脈炎の新規または再発診断を受けた50歳以上の患者30例を対象に行われた。 研究グループは被験者を無作為に2対1の割合で2群に分け、一方にはトシリズマブを(8mg/kg、20例)、もう一方にはプラセボを(10例)、4週に1回、52週(13回)にわたり静脈内投与した。なお、両群に経口プレドニゾロン(1mg/kg/日で開始し、徐々に0mgまで減量)が投与された。 主要評価項目は、12週目のプレドニゾロン投与量0.1mg/kg/日時点で、完全寛解が認められた患者の割合だった。12週時点で完全寛解はトシリズマブ併用群85%、プラセボ群40%と有意な差 被験者のうち巨細胞性動脈炎の新規発症者は、トシリズマブ+プレドニゾロン群16例(80%)、プラセボ+プレドニゾロン群7例(70%)だった。 結果、12週時点で完全寛解が認められたのは、プラセボ群4例(40%)に対し、トシリズマブ併用群は17例(85%)と有意に高率だった(リスク差:45%、95%信頼区間[CI]:11~79、p=0.0301)。52週時点の無再発生存率は、プラセボ群2例(20%)に対し、トシリズマブ併用群17例(85%)だった(リスク差:65%、95%CI:36~94、p=0.0010)。 プレドニゾロン中止までの平均生存期間は、トシリズマブ併用群(38週)がプラセボ群(50週)より短く(両群差:12週、95%CI:7~17、p<0.0001)、そのため52週間のプレドニゾロン累積投与量は、プラセボ群110mg/kgに対し、トシリズマブ群は43mg/kgと有意な少量投与に結び付いた(p=0.0005)。 重篤有害事象の報告は、プラセボ群5例(50%)、トシリズマブ群7例(35%)だった。

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ハミガキ頻度が糖尿病・脂質異常症の有病率と関連

 生活習慣を考慮して、歯磨きの頻度の低さは、糖尿病や脂質異常症の高い有病率と関連することが、虎の門病院の桑原 政成氏らの研究で明らかになった。歯磨き習慣は、口腔衛生の改善だけでなく、全身性疾患の予防のために有益であると考えられる。BMJ Open誌2016年1月14日号の報告。 本研究は、心血管疾患のリスク因子である高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、慢性腎臓病と歯磨きとの関連を明確にすることを目的に、聖路加国際病院予防医学センターで2004年1月から10年6月まで実施された大規模、単一施設、横断研究である。 対象は、健康診断を受けた8万5,866人(男性:49.0%、平均47.0±11.5歳)。「毎食後」、「少なくとも1日1回」、「1日1回未満」の3群の基準に従って歯磨き習慣を調べた。歯磨き頻度ごとのオッズ比は、二項ロジスティック回帰を用い、年齢、性別、BMI、生活習慣、喫煙、飲酒、歩行時間、睡眠時間で調整後、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、慢性腎臓病の有病率から算出した。 主な結果は以下のとおり。・各心血管疾患リスク因子の有病率は以下であった(毎食後群、少なくとも1日1回群、1日1回未満群)。高血圧症  (13.3%、17.9%、31.0%)糖尿病   (3.1%、5.3%、17.4%)脂質異常症 (29.0%、42.1%、60.3%)高尿酸血症 (8.6%、17.5%、27.2%)慢性腎臓病 (3.8%、3.1%、8.3%)・「1日1回未満群」は、「毎食後群」よりも糖尿病(オッズ比:2.03、95%CI:1.29~3.21)および脂質異常症(オッズ比:1.50、95%CI:1.06~2.14)の有病率が有意に高かった。高血圧症、高尿酸血症、慢性腎臓病の有病率は、歯磨き頻度によって有意な差を認めなかった。

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ラタノプロスト、先発品 vs.後発品の比較経済分析

 米国・テキサス大学健康科学センターのJoanna H. Queen氏らは、ラタノプロストのブランド製剤とジェネリック製剤について比較経済分析を行った。その結果、患者にとって重要な要素である年間費用とボトル当たりの滴数は、製造業者によって有意に異なることを明らかにした。著者は、「医師はこれらの差を認識することで、患者によりよい助言ができるだろう」とまとめている。American Journal of Ophthalmology誌2016年3月号(オンライン版2015年11月18日号)の掲載報告。 研究グループは、4地域で利用されているラタノプロスト製剤を対象に、各製剤10ボトルについて滴数/ボトル、およびボトルに実際に充填されている容量を測定し、年間費用(平均卸値を使用)、使用日数/ボトル、滴数/mL、使用ボトル数/年を算出した。 主な結果は以下のとおり。・ブランド製剤(商品名:キサラタン、ファイザー社)は、容量が最も大きかった(p<0.001)。・年間費用は、ブランド製剤が1,198ドルで最も高かった。一方、Akorn社のジェネリック製剤は184ドル、ボシュロム社のジェネリック製剤は201ドルと安かった。・ファイザー社とボシュロム社の製剤は、Akorn社およびサンド社の製剤に比べて滴数/ボトルが多く、統計学的に有意差が認められた(それぞれ87.3および88.7vs. 77.6および76.6、p<0.001)。ただし、滴数/ボトルの標準偏差に統計学的な有意差は認められなかった。

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結局、喘息に対するICS/LABAは安全なのか?(解説:倉原 優 氏)-496

 現在、喘息に保険適用のあるLABA(長時間作用性β2刺激薬)の吸入薬は、サルメテロール(商品名:セレベント)1剤のみである。ほかのLABAはCOPDに対して用いられる。いずれのLABAについても、喘息に対して単独で使用することは勧められない。これは、LABAの使用によって喘息の死亡リスクが上昇したとするメタアナリシスと、FDAのアラートに基づく1)2)。そのため、「喘息にLABAはダメなんだ」と、世界中の呼吸器内科医にインプリンティングされてしまった。 しかし、喘息界でICS/LABA(吸入ステロイド・長時間作用性β2刺激薬合剤)の合剤が台頭し、吸入薬にLABAが含まれていても安全に使用できることがわかった。毒性の上乗せはほとんど観察されなかったのである。むしろ、ICS単剤と比べて、臨床アウトカムは非常によかった。 「LABA単独はNG、ICS/LABAの合剤はOK」。こうした考えが、現在の喘息治療の主流であろう。ICS/LABAが本当に安全かどうかしっかり確かめましょう、というのがこの試験の目的である。 この研究は、フルチカゾン+サルメテロールの併用治療、あるいはフルチカゾン単独治療のいずれかに割り付けたランダム化比較試験である。プライマリ安全性エンドポイントは、初回の重篤な喘息関連イベントとされた。1万例以上の患者が登録され、併用群の重篤な喘息関連イベントのハザード比は当該非劣性基準を満たした。つまり、ICS/LABAの併用は、ICS単剤と比較して懸念しなくてよいということである。また、重度の喘息発作のリスクは単独群よりも併用群で低かった。 非劣性マージンが本当に妥当なラインかどうか溜飲が下がらない気持ちもあったが、少なくともICS/LABAを使用することで明らかな悪影響はないだろう、と結論付けられた。現在の喘息治療で、治療ステップ2以上、とりわけ3以上のケースではICS/LABAは不可欠である。高用量ICSを長期に投与していると、どうしても合併症の懸念が生じる。日本では、ICS/LABAはあまり懸念されずに処方されている現状があるが、慎重な見方をしていた欧米の呼吸器内科医にとっては、ICS/LABAの処方を増やすきっかけになることだろう。

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クロザピン誘発性副作用のリスク遺伝子同定:藤田保健衛生大学

 クロザピン誘発性無顆粒球症・顆粒球減少症(CIA・CIG;CIAG)は、クロザピン治療を受ける統合失調症患者の生命に影響を与える問題である。藤田保健衛生大学の齊藤 竹生氏らは、CIAGの遺伝的要因を調査するため、日本人のCIAG患者50人と正常対照者2,905人について、全ゲノム関連解析を行った。Biological psychiatry誌オンライン版2016年2月11日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・ヒト白血球抗原(HLA)領域との有意な関連を同定した。そのため、HLA遺伝子の型ごとに検討を行った。・CIAGとHLA-B*59:01型との有意な関連が認められた(p=3.81×10-8、OR:10.7)。そして、独立したクロザピン耐性対照群との比較により、この関連が確認された(n=380、p=2.97×10-5、OR:6.3)。・クロザピン誘発性無顆粒球症のOR(9.3~15.8)は、顆粒球減少症(OR:4.4~7.4)の約2倍であったことから、顆粒球減少症患者群は、潜在的な無顆粒球症患者群と非無顆粒球症患者群からなる混合集団であるというモデルを想定した。・この仮説よりに、顆粒球減少症患者の中に、どの程度、非無顆粒球症患者が存在するかを推計でき、その非リスク対立遺伝子の陽性予測値を推定することができる。・この仮説モデルの結果から、(1)顆粒球減少症患者の約50%が非無顆粒球症患者である、(2)HLA-B*59:01型を保有しない顆粒球減少症患者の約60%が非無顆粒球症患者であり、無顆粒球症に進展しないということが推定された。 著者らは、「日本人において、HLA-B*59:01型はクロザピン誘発性無顆粒球症・顆粒球減少症の危険因子であるとこが示唆された」とし、「このモデルが正しいならば、顆粒球減少症患者群においても、一部の患者に対しては、クロザピンの再投与が絶対的な禁忌ではないことが示唆された」とまとめている。関連医療ニュース 治療抵抗性統合失調症は、クロザピンに期待するしかないのか クロザピン誘発性好中球減少症、アデニン併用で減少:桶狭間病院 難治例へのクロザピン vs 多剤併用

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フルオロキノロンは重篤不整脈リスクを増大しない/BMJ

 経口フルオロキノロン系薬の服用は、重篤な不整脈リスクを増大しない。これまでとは異なる所見が得られたことを、スウェーデン・ルンド大学のMalin Inghammar氏らがコホート研究の結果、報告した。デンマークとスウェーデンの2国住民を対象に、経口フルオロキノロン治療の関与を、不整脈誘発作用のないペニシリンV使用との比較で調べた結果、明らかになったものだという。BMJ誌オンライン版2016年2月26日号掲載の報告。デンマーク、スウェーデン一般成人を対象に分析 試験は、デンマーク(1997~2011年)、スウェーデン(2006~13年)の2国の40~79歳の住民を対象に、レジスターデータから処方、重篤不整脈の発症、患者特性を集めて分析した。 1対1の適合傾向スコア分析法で、フルオロキノロン系薬投与90万9,656例、ペニシリンV投与90万9,656例を包含して分析した。フルオロキノロン系薬の内訳は、シプロフロキサシン82.6%、ノルフロキサシン12.1%、オフロキサシン3.2%、モキシフロキサシン1.2%とその他フルオロキノロン系薬0.9%であった。 主要アウトカムは、重篤不整脈(致死的および非致死的)リスクで、フルオロキノロン系薬群とペニシリンV群を比較し評価した。着目したリスク期間は、現在服用(治療0~7日)であった。 サブグループ解析では、国、性別、年齢、心血管疾患歴あり、トルサードドポアント(TdP)リスク増大作用のある薬物併用、フルオロキノロン系薬の種別、不整脈リスクスコアなどで評価を行った。ペニシリンV群との比較で発症率比0.85 追跡期間中、重篤不整脈の発症は429例報告され、そのうち現在服用例は144例であった。66例がフルオロキノロン系薬群(発症率:3.4/1,000人年)、78例がペニシリンV群(同4.0)であり、率比は0.85(95%信頼区間[CI]:0.61~1.18)であった。 ペニシリンV群と比較した、フルオロキノロン系薬群の絶対リスク差は、100万投与当たり-13(95%CI:-35~16)例であった。 フルオロキノロン系薬の種別解析などあらゆるサブグループで、フルオロキノロン系薬治療群における重篤不整脈リスクの、統計的に有意な増大は認められなかった。 著者は、「以前の報告に反して、経口フルオロキノロン系薬治療は、デンマークおよびスウェーデンの一般成人集団において、重篤不整脈リスクとの関連はみられなかった。試験の統計的検出力は、相対リスクおよび絶対リスクのわずかな上昇もルールアウト可能なものであった」と述べている。ただし、使用されているフルオロキノロン系薬の内訳をみたときに、シプロフロキサシンが8割強を占めていたことに触れ、重篤不整脈リスクに対する差がクラス内にないとは言い切れないとしている。

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ほろ酔い状態は人を魅力的にする

 適度な飲酒は、素面のときよりも他人を魅力的に感じることができるだけでなく、他人から見ても魅力的にうつることが、英国・ブリストル大学のJana Van Den Abbeele氏らによる研究で明らかになった。この研究結果により、飲酒と冒険的な性行動が関連する理由が説明できるかもしれない。Alcohol and alcoholism誌オンライン版2015年5月号の掲載報告。 飲酒は、冒険的な性行動と関連することが知られている。しかし、この関連は複雑かつ双方向である可能性がある。そのため著者らは、飲酒した人が素面のときよりも魅力的であると評価されるかどうかを検討した。 参加者は、ブリストル大学の学生40人(男性20人、女性20人;18~30歳)。(1)素面の状態、(2)0.4g/kgのアルコールを飲んだ後(体重70kgの人がアルコール度数14%のワイン250mLを飲むのに相当)、(3)さらに0.4 g/kgのアルコールを飲んだ後(計0.8g/kg)の計3回、顔写真を撮影した。撮影した3枚の写真を異性の参加者に提示し、魅力度を評価した。 主な結果は以下のとおり。・0.4g/kgのアルコールを飲んだ人の写真は、素面のときの写真よりも魅力的であると評価された。・0.8g/kgのアルコールを飲んだ人の写真は、素面のときの写真よりも魅力的であるとは評価されなかった。

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18日より、日本循環器学会学術集会が仙台で開催

 第80回日本循環器学会学術集会(JCS2016)が2016年3月18日(金)~20日(日)、宮城県仙台市で開催される(会長:東北大学循環器内科学教授 下川 宏明氏)。3日間を通して、約2万人の参加を見込んでおり、循環器系学術集会としては欧州心臓病学会(ESC)に次いで、世界第2位の規模になる。17ヵ国、66人の海外からの招待演者らによる発表や、米国心臓病学会/心臓協会(ACC/AHA)、ESCなどとのジョイントシンポジウム7セッションをはじめとする、計3,294演題、815人の座長による発表が予定されている。 開催に先立ち今月10日に都内で開かれたプレスカンファレンスで、下川氏は「本学術集会は2つの意味で節目である」と述べた。1つは、同学術集会第80回目としての節目であり、これを記念してプログラムには日本発の循環器研究に関する発表や、今後20年の循環器学の展望を見据えた特別企画が盛り込まれていることを説明した。その1つである会長特別企画「日本循環器学会80年の歩み」には、聖路加国際病院名誉院長の日野原 重明氏や歴代理事長らが登壇する。 また、もう1つの節目は震災から5年という点であり、東日本大震災と医療に関する展示なども多数企画されている。この企画展示には、同時期に被災地訪問を計画されている天皇皇后両陛下も訪問される予定とのことだ。そのほか、注目のプログラムの1つとして、世界のトップジャーナル6誌(NEJM、EHJ、Circulation、JACC、ATVB、Circ J) の編集長が一堂に会するセッションも開催される。

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てんかん発作を8分前に予知する技術を開発

 いつ起こるかわからない「てんかん発作」を心拍数の変動から予知する仕組みが開発された。熊本大学の山川 俊貴氏は、京都大学の藤原 幸一氏、東京医科歯科大学の宮島 美穂氏らとの共同研究で、脳の病気であるてんかんの発作を、脳波ではなく心電図を基に算出した「心拍変動」から高精度で予知することに成功した。本研究は、日常的に身につけることが可能(ウェアラブル)なてんかん発作予知システムの開発のため行われた。本研究結果により、発作によるけがや事故を防ぎ、患者さんが安心して暮らすことのできる社会の実現につながると期待が寄せられている。IEEE transactions on bio-medical engineering誌2015年12月24日号の掲載報告。  心拍数を用いたてんかん発作の予知においては、これまで変動解析手法による分析方法が用いられていたが、平常時と発作前の差がわかりにくい、個人差が大きいといった理由から、実用化は困難と考えられていた。 そこで研究グループは、多変量統計的プロセス管理(MultivariateStatistical Process Control:MSPC)という工学的手法で心拍数の揺らぎを解析した。対象としたのはビデオ脳波モニタリングのために入院した患者14例で、心電図データをMSPCによって解析した。 主な結果は以下のとおり。・91%の精度で発作を予知することが可能であることが示された(偽陽性頻度は1時間に0.7回)。・また、発作が起こる約8分前(494±262秒[平均±SD]前)に予知することが可能であることがわかった。 本研究の結果について、研究グループは「わかりやすく、偽陽性が少ないことから、高精度なてんかん発作の予知が可能であることが証明された」と結論付け、心臓のそばに取り付けるウェアラブル予知デバイスの開発を進めることにしている。 熊本大学プレスリリースはこちら(PDF)。

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DPP-4阻害薬と心不全による入院に関連はあるのか?(解説:小川 大輔 氏)-494

 2型糖尿病の治療において、DPP-4阻害薬は海外では第1選択薬のメトホルミンに次ぐ第2選択薬の1つという位置付けであるが、わが国では最も広く使用されている糖尿病治療薬である。DPP-4阻害薬が汎用される理由は、使い勝手が良く低血糖を起こしにくいためと考えられる。 一方で、DPP-4阻害薬は免疫系に対する影響や、膵炎・膵臓がんに対するリスク、心不全に対するリスクが以前より懸念されている。最近BMJ誌に、インクレチン関連薬と膵臓がんに関するレビュー1)と、DPP-4阻害薬と心不全に関するレビューが同時に掲載された2)。それぞれ、ジャーナル四天王の2016年3月2日公開の記事(インクレチン製剤で膵がんリスクは増大するか)および2016年2月26日公開の記事(DPP-4阻害薬は心不全入院リスクを高める可能性)に、要旨が掲載されているので参照されたい。 今回、中国の研究者らは、2型糖尿病患者におけるDPP-4阻害薬の使用による心不全リスクの増大について、無作為化比較試験(RCT)および観察研究のシステマティックレビューとメタ解析を行い報告した。心不全については、RCTと観察研究のいずれの解析においても、DPP-4阻害薬群と対照群との間で心不全のリスクに有意差は認められなかった。一方、心不全による入院に関しては、RCT・観察研究ともDPP-4阻害薬群で対照群よりリスクが増加することが示唆された。 この論文では、とくに心血管疾患のリスクを有する2型糖尿病患者においてはDPP-4阻害薬の使用により、心不全そのもののリスクは増えないものの、心不全による“入院”のリスクが若干増大する可能性がある、と指摘している。しかし、この結論をそのまま受け入れることは難しい。なぜなら、著者らが本文中に記載しているとおり、RCT・観察研究の追跡期間が約1~2年と短く、また解析対象とした研究のエビデンスの質が、すべてにおいて高いとはいえないためである。 それ以前に、心不全は増えないが心不全による“入院”が増えるとは、一体何を意味するのか? 心不全が増えなければ、それによる入院も増えるはずがないのではないだろうか。結局、「DPP-4阻害薬の使用により、心不全のリスクも心不全による入院のリスクも増加するかどうかは不明である」というのがこのレビューの結論であろう。

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また新たに創薬のターゲットにされる脂質異常症関連遺伝子(解説:興梠 貴英 氏)-495

 2013年11月に発表されたAHA(米国心臓協会)の脂質異常症治療に関するガイドラインでは、動脈硬化性心血管疾患の発症リスクを有意に減少させるのはスタチンのみである、と結論付けている。その後、IMPROVE-IT試験でエゼチミブのスタチンへの上乗せ効果が認められたこともあり、臨床現場でも脂質異常症治療として、まずLDL-C低下が治療の第1選択肢となっている。しかし、LDL-Cを十分に下げても必ずしもイベント発症を完全に予防できるわけではなく、残存リスク低減のための新しい脂質異常症治療がいまだに求められており、たとえばAPOC3やLPAをターゲットにしたアンチセンス療法の治験が進みつつある。 Dewey氏らは、LPLを阻害することで中性脂肪濃度を上昇させる作用があるANGPTL4に機能喪失型の変異があるときにTG濃度が下がることを、4万2,930人を対象にエクソームシーケンスを行うことで調べ、さらに心血管系リスクも低下することを示した。また、この研究ではANGPTL4を低下させる抗体医薬をマウスおよびサルに対して投与し、TG濃度が下がることを確認している。 一方で、Angptl4のノックアウトマウスではTG濃度は下がるものの、高脂肪食を与えた場合には、小腸由来のリンパ管や腸間膜リンパ節に乳糜腹水を伴う脂肪肉芽腫様の炎症を起こし、寿命が短くなることが報告されており1)、本研究においても抗体医薬投与を受け、高脂肪食を与えられたマウスにおいて、脂肪を蓄積したツートン型巨細胞および腸管リンパ節の腫脹を認めている。 さらに、サルでもメスにおいてのみではあるが、腸管リンパ節に脂肪の蓄積を認めている。ANGPTL4に機能喪失型の変異を有する被験者のカルテ調査をした限りでは、腹部その他のリンパ関連疾患は見つからなかった、ということであるが、今後薬剤の開発が進んでいく中では、同様の副作用が出現しないか注目する必要があるだろう。 また、ターゲット遺伝子や蛋白の発現量を下げるための手法として、アンチセンスや抗体医薬は比較的開発しやすいのかもしれないが、脂質異常症があったからといって、ただちに生命の危機につながるわけではなく、逆に、薬物によって減らせるリスクがさほど大きくないことを考えた場合、高価になりがちな治療法が現実に用いられるようになるのかはやや疑問である。LPAのようにそれ自身に酵素活性などなく、遺伝子発現を抑えるしかない場合はともかく、それ以外の場合は将来的には(発見されれば、という条件付きではあるが)低分子薬が本命となるのではないか、と考えられる。

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尿素サイクル異常症〔UCD : urea cycle disorders〕

1 疾患概要■ 概念・定義尿素サイクル異常症(urea cycle disorders:UCD)とは、尿素サイクル(尿素合成経路)を構成する代謝酵素に先天的な異常があり高アンモニア血症を来す疾患を指す。N-アセチルグルタミン酸合成酵素欠損症、カルバミルリン酸合成酵素欠損症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、シトルリン血症I型、アルギニノコハク酸尿症、高アルギニン血症(アルギナーゼ欠損症)、高アンモニア高オルニチン高ホモシトルリン尿(HHH)症候群、リジン尿性蛋白不耐症、シトリン異常症、オルニチンアミノ基転移酵素欠損症(脳回転状脈絡膜網膜萎縮症)が含まれる。■ 疫学UCDは、希少難病である先天代謝異常症のなかで最も頻度が高い疾患のひとつであり、尿素サイクル異常症に属する各疾患合わせて、約8,000人に1人の発生頻度と推定されている。家族解析やスクリーニング検査などで発見された「発症前型」、新生児早期に激しい高アンモニア血症を呈する「新生児期発症型」、乳児期以降に神経症状が現れ、徐々に、もしくは感染や飢餓などを契機に、高アンモニア血症と症状の悪化がみられる「遅発型」に分類される。■ 病因尿素サイクルは、5つの触媒酵素(CPSI、OTC、ASS、ASL、ARG)、補酵素(NAGS)、そして少なくとも2つの輸送タンパクから構成される(図1)。UCDはこの尿素サイクルを構成する各酵素の欠損もしくは活性低下により引き起こされる。CPSI:カルバミルリン酸合成酵素IOTC:オルニチントランスカルバミラーゼASS:アルギニノコハク酸合成酵素ASL:アルギニノコハク酸分解酵素ARG:アルギナーゼ補助因子NAGS:N-アセチルグルタミン酸合成酵素ORNT1:オルニチンアミノ基転移酵素CPSI欠損症・ASS欠損症・ASL欠損症・NAGS欠損症・ARG欠損症は、常染色体劣性遺伝の形式をとる。OTC欠損症はX連鎖遺伝の形式をとる。画像を拡大する■ 症状疾患の重症度は、サイクル内における欠損した酵素の種類、および残存酵素活性の程度に依存する。一般的には、酵素活性がゼロに近づくほど、かつ尿素サイクルの上流に位置する酵素ほど症状が強く、早期に発症すると考えられている。新生児期発症型では、出生直後は明らかな症状を示さず、典型的には異化が進む新生児早期に授乳量が増えて、タンパク負荷がかかることで高アンモニア血症が助長されることで発症する。典型的な症状は、活力低下、傾眠傾向、嘔気、嘔吐、体温低下を示し、適切に治療が開始されない場合は、痙攣、意識障害、昏睡を来す。神経症状は、高アンモニア血症による神経障害および脳浮腫の結果として発症し、神経学的後遺症をいかに予防するかが重要な課題となっている。遅発型は、酵素活性がある程度残存している症例である。生涯において、感染症や激しい運動などの異化ストレスによって高アンモニア血症を繰り返す。高アンモニア血症の程度が軽い場合は、繰り返す嘔吐や異常行動などを契機に発見されることもある。睡眠障害や妄想、幻覚症状や精神障害も起こりうる。障害性脳波(徐波)パターンも、高アンモニア血症においてみられることがあり、MRIによりこの疾患に共通の脳萎縮が確認されることもある。■ 予後新生児透析技術の進歩および小児肝臓移植技術の進歩により、UCDの救命率・生存率共に改善している(図2)。それに伴い長期的な合併症(神経学的合併症)の予防および改善が重要な課題となっている。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)UCDの診断は、臨床的、生化学的、分子遺伝学的検査に基づいて行われる(図3)。血中アンモニア濃度が新生児は120μmol/L(200μg/dL)、乳児期以降は60μmol/L(100 μg/dL)を超え、アニオンギャップおよび血清グルコース濃度が正常値である場合、UCDの存在を強く疑う。血漿アミノ酸定量分析が尿素サイクル異常の鑑別診断に用いられる。血漿アルギニン濃度はアルギナーゼ欠損症を除くすべてのUCDで減少し、一方、アルギナーゼ欠損症においては5~7倍の上昇を示す。血漿シトルリン濃度は、シトルリンが尿素サイクル上流部の酵素(OTC・CPSI)反応による生成物であり、また下流部の酵素(ASS・ASL・ARG)反応に対する基質であることから、上流の尿素サイクル異常と下流の尿素サイクル異常との鑑別に用いられる。尿中オロト酸測定は、CPSI欠損症・NAGS欠損症とOTC欠損症との判別に用いられる。肝生検が行われる場合もある。日本国内の尿素サイクル関連酵素の遺伝子解析は、研究レベルで実施可能である。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)確定診断後の治療は、それぞれのUCDの治療指針に従い治療を行う。各専門書もしくはガイドライン(EUおよび米国におけるガイドライン)が、インターネットで利用できる。日本国内では、先天代謝異常学会を中心として尿素サイクル異常症の診療ガイドラインが作られて閲覧可能である。専門医との連携は不可欠であるが、急性発作時には搬送困難な場合も多く、状態が安定しないうちには患児を移動せずに、専門医と連絡を取り合って、安定するまで拠点となる病院で治療に当たることが望ましい場合もある。■急性期の治療は、以下のものが主柱となる。1)血漿アンモニア濃度の迅速な降下を目的にした透析療法血漿アンモニア濃度を早急に下降させる最善策は透析であり、血流量を速くするほどクリアランスはより早くに改善される。透析方法は罹患者の病状と利用可能な機材による。具体的には、血液濾過(動脈‐静脈、静脈‐静脈のどちらも)、血液透析、腹膜透析、連続ドレナージ腹膜透析が挙げられる。新生児に対しては、持続的血液濾過透析(CHDF)が用いられることが多い。2)余剰窒素を迂回代謝経路により排出させる薬物治療法アンモニア生成の阻害は、L-アルギニン塩酸塩と窒素除去剤(フェニル酪酸ナトリウムと安息香酸ナトリウム)の静脈内投与により行われる。負荷投与後に維持投与を行い、初期は静脈内投与により行い、病状の安定に伴い経口投与へ移行する(投与量は各専門書を参照のこと)。フェニル酪酸ナトリウム(商品名:ブフェニール)は、2013年1月に処方可能となった。投与量は添付文書よりも少ない量から開始することが多い(上記、国内ガイドライン参照)。3)食物中に含まれる余剰窒素の除去特殊ミルクが、恩賜財団母子愛育会の特殊ミルク事務局から無償提供されている。申請が必要である。4)急性期の患者に対してカロリーは炭水化物と脂質を用いる。10%以上のグルコースと脂肪乳剤の静脈内投与、もしくはタンパク質を含まないタンパク質除去ミルク(S-23ミルク:特殊ミルク事務局より提供)の経鼻経管投与を行う。5)罹患者において、非経口投与から経腸的投与への移行はできるだけ早期に行うほうがよいと考えられている。6)24~48時間を超える完全タンパク質除去管理は、必須アミノ酸の不足により異化を誘導するため推奨されていない。7)神経学的障害のリスクの軽減循環血漿量の維持、血圧の維持は必須である。ただし、水分の過剰投与は脳浮腫を助長するため昇圧薬を適切に併用する。心昇圧薬は、投与期間と神経学的症状の軽減度には相関が認められている。※その他マンニトールは、尿素サイクル異常症に伴う高アンモニア血症に関連した脳浮腫の治療には効果がないと考えられている。■慢性期の管理1)初期症状の防止異化作用を防ぐことは、高アンモニア血症の再発を防ぐ重要な管理ポイントとなる。タンパク質を制限した特殊ミルク治療が行われる。必要ならば胃瘻造設術を行い経鼻胃チューブにより食物を与える。2)二次感染の防止家庭では呼吸器感染症と消化器感染症のリスクをできるだけ下げる努力を行う。よって通常の年齢でのワクチン接種は必須である。マルチビタミンとフッ化物の補給解熱薬の適正使用(アセトアミノフェンに比べ、イブプロフェンが望ましいとの報告もある)大きな骨折後や外傷による体内での過度の出血、出産、ステロイド投与を契機に高アンモニア血症が誘発された報告があり、注意が必要である。3)定期診察UCDの治療経験がある代謝専門医によるフォローが必須である。血液透析ならびに肝臓移植のバックアップが可能な施設での管理が望ましい。罹患者年齢と症状の程度によって、来院回数と調査の頻度を決定する。4)回避すべき物質と環境バルプロ酸(同:デパケンほか)長期にわたる空腹や飢餓ステロイドの静注タンパク質やアミノ酸の大量摂取5)研究中の治療法肝臓細胞移植治療が米国とヨーロッパで現在臨床試験中である。:国内では成育医療センターが、わが国第1例目の肝臓細胞移植を実施した。肝幹細胞移植治療がベルギーおよび米国で臨床試験中である。:国内導入が検討されている。6)肝臓移植肝臓移植の適応疾患が含まれており、生命予後を改善している(図4)。画像を拡大する4 今後の展望UCDに関しては、長い間アルギニン(商品名:アルギUほか)以外の治療薬は保険適用外であり自費購入により治療が行われてきた。2013年に入り、新たにフェニル酪酸ナトリウム(同:ブフェニール)が使用可能となり、治療の幅が広がった。また、海外では適用があり、国内での適用が得られていないそのほかの薬剤についても、日本先天代謝異常学会が中心となり、早期保険適用のための働きかけを行っている。このような薬物治療により、アンモニアの是正および高アンモニア血症の治療成績はある程度改善するものと考えられる。さらに、小児への肝臓移植技術は世界的にも高いレベルに達しており、長期合併症を軽減した手技・免疫抑制薬の開発、管理方法の改善が行われている。また、肝臓移植と内科治療の中間の治療として、細胞移植治療が海外で臨床試験中である。細胞移植治療を内科治療に併用することで、コントロールの改善が報告されている。5 主たる診療科小児科(代謝科)各地域に専門家がいる病院がある。日本先天代謝異常学会ホームページよりお問い合わせいただきたい。学会事務局のメールアドレスは、JSIMD@kumamoto-u.ac.jpとなる。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本先天代謝異常学会(医療従事者向けのまとまった情報)尿素サイクル異常症の診療ガイドライン(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国尿素サイクル異常症患者と家族の会日本先天代謝異常学会 先天代謝異常症患者登録制度『JaSMIn & MC-Bank』公開履歴初回2013年12月05日更新2016年03月15日

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アリピプラゾール持続性注射剤を使いこなすために

 アリピプラゾール持続性注射剤(ALAI)が臨床使用可能となった。オーストラリア・モナッシュ大学のNicholas A Keks氏らは、ALAIの使用を決定する際の臨床医を支援するため本研究を行った。Australasian psychiatry誌オンライン版2016年2月23日号の報告。 主なまとめは以下のとおり。・アリピプラゾールは、過鎮静を起こしにくく、代謝プロファイルも比較的良好であり、プロラクチンを低下または上昇させない特長を有するドパミンパーシャルアゴニストである。・アリピプラゾールは10年以上使用されており、統合失調症治療に有用な選択肢として、多くの臨床医に認識されている。・ALAIは、水溶性結晶アリピプラゾール懸濁液で、初回筋肉内注射後、定常状態に達するまで5~7日間を要する薬剤である。・毎月注射を行うことで、4ヵ月で定常状態に達する。・研究では、ALAIは、アリピプラゾール応答患者に有効であることが実証されている。・ALAIは、一般的に忍容性が良好だが、経口投与よりも錐体外路系の副作用を起こしやすい傾向がある。・ALAIは、他の持続性注射剤との比較は行われていない。・推奨される開始用量は400mgだが、大幅な個人差による用量設定が必要な可能性がある。・各患者における至適用量の最適化は、最高の有効性と忍容性のために必要である。・ALAIは、現時点では、持続性注射剤が必要なアリピプラゾール応答患者に適切である。・しかし、臨床医は、とくに他の持続性注射剤で体重増加や高プロラクチン血症が問題となる患者に投与する可能性がある。関連医療ニュース アリピプラゾール持続性注射剤の評価は:東京女子医大 アリピプラゾール注射剤、維持療法の効果は 2つの月1回抗精神病薬持効性注射剤、有用性の違いは

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