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閉経後ホルモン補充療法の血管への影響、開始時期で異なる?/NEJM

 閉経後早期(6年以内)に開始した経口エストラジオール療法は、頸動脈内膜中膜肥厚(CIMT)で評価される無症候性アテローム性動脈硬化の進行抑制と関連していることが明らかにされた。ただし、閉経後早期あるいは閉経後10年以上経過して開始した場合のいずれにおいても、心臓CTで評価されるアテローム性動脈硬化に有意な影響は認められなかった。米国・南カリフォルニア大学のHoward N. Hodis氏らが、健康な閉経後女性を対象としたELITE(Early versus Late Intervention Trial with Estradiol)試験の結果、報告した。これまで多くの研究で、閉経後まもなく開始したエストロゲンを含むホルモン療法の心血管疾患に対するベネフィットが示唆されている。しかし、閉経後ホルモン療法の心血管系への影響は治療開始時期で異なるという仮説(タイミング仮説)について、これまで検証されていなかった。NEJM誌オンライン版2016年3月31日号掲載の報告。閉経後6年未満か10年以上に分け、CIMTの増加を評価 ELITE試験は、単独施設で行われた無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験である。対象は健康な閉経後女性643例で、閉経後6年未満(閉経後早期)と閉経後10年以上(閉経後後期)に層別し、エストラジオール群とプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 エストラジオール群では、17β-エストラジオール1mg/日を経口投与するとともに、子宮を有する女性にはプロゲステロン45mg膣ゲルを、1サイクル30日として10日間1日1回連日投与した。プラセボ群では、プラセボ経口投与ならびに、子宮を有する女性にはプラセボ膣ゲル投与を行った。 主要評価項目は、6ヵ月ごとに測定したCIMTの変化率で、副次評価項目は、治療終了時の冠動脈造影CTによる冠動脈アテローム性硬化の評価などであった。早期開始のエストラジオール群、同プラセボ群に比しCIMTの増加が有意に少ない 中央値5年後において、CIMT増加に対するエストラジオールの効果は、プロゲステロンの有無にかかわらず、閉経後早期開始群と閉経後後期開始群で異なった(交互作用のp=0.007)。 閉経後早期開始群のCIMT増加は、平均値でプラセボ群0.0078mm/年に対し、エストラジオール群は0.0044mm/年であった(p=0.008)。一方、閉経後後期開始群の増加は、両群間で有意差はみられなかった(それぞれ0.0088mm/年、0.0100mm/年、p=0.29)。 なお、冠動脈造影CTで評価した冠動脈石灰化、狭窄およびプラークは、閉経後早期開始群より閉経後後期開始群でスコアが有意に高かったが、エストラジオール群とプラセボ群とで有意差は認められなかった。 著者は研究の限界として、症例数や追跡調査期間が冠動脈評価項目の治療群間差を検出するのに不十分であったこと、ベースライン時の冠動脈画像を利用できず新たな冠動脈病変へのホルモン療法の影響は評価できなかったことなどを挙げている。

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ピオグリタゾンと膀胱がんリスク~約15万人のコホート研究/BMJ

 ピオグリタゾンの使用は膀胱がんのリスクを高め、使用期間や累積用量の増加に伴いリスクが増大することが、カナダ・ジューイッシュ総合病院のMarco Tuccori氏らの、約15万人を対象とした大規模コホート研究の結果、明らかにされた。また、同じチアゾリジン系(TZD)薬のロシグリタゾンでは関連が認められず、膀胱がんのリスク増大はピオグリタゾンに特有で、クラス効果ではないことが示唆されると結論している。ピオグリタゾンと膀胱がんとの関連については、多くの研究で矛盾する結果が報告されており、より長期間追跡する観察研究が求められていた。BMJ誌オンライン版2016年3月30日号掲載の報告。ピオグリタゾンと膀胱がん発症リスクとの関連を14万5,806例で追跡 研究グループは、英国プライマリケアの1,300万例以上の医療記録が含まれるデータベースClinical Practice Research Datalinkを用い、2000年1月1日~13年7月31日に非インスリン糖尿病治療薬による治療を新たに開始した2型糖尿病患者14万5,806例のデータを解析した(追跡調査期間は2014年7月31日まで)。 解析では、治療開始時にすでにがんが発症していた可能性、ピオグリタゾンによるがん発症までの時間を考慮し、初回処方1年後時点からを使用開始とみなし使用期間を算出。Cox比例ハザードモデルを用い、ピオグリタゾン使用の有無ならびに累積使用期間と累積使用量別に、膀胱がん発症の補正ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推算した(年齢、登録年、性別、アルコール関連障害、喫煙状況、BMI、HbA1c、がんの既往歴、膀胱炎や膀胱結石の有無、チャールソン併存疾患指数:CCI、糖尿病治療期間、蛋白尿の有無で補正)。 また、先行研究で膀胱がんのリスク増大とは関連がないとされるTZD薬であるロシグリタゾンでも、同様の解析を実施した。ピオグリタゾンの使用期間が長いほど膀胱がんリスクが増大 追跡調査期間平均4.7(SD 3.4)年、計68万9,616人年において、622例が新たに膀胱がんと診断された(粗発症率[/10万人年]90.2)。 他の糖尿病治療薬と比較し、ピオグリタゾンは膀胱がんのリスク増大と関連していた(粗発症率88.9 vs 121.0、補正後HR:1.63、95%CI:1.22~2.19)。一方、ロシグリタゾンでは膀胱がんのリスク増大との関連は認められなかった(粗発症率88.9 vs 86.2、補正HR:1.10、95%CI:0.83~1.47)。使用期間反応関係および用量反応関係は、ロシグリタゾンでは認められなかったが、ピオグリタゾンでは観察された(補正後HR:>2年:1.78、>2万8,000mg:1.70)。

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日本人の眼圧上昇、メタボ因子との関連は?

 日本人を対象とした眼圧上昇とメタボリックシンドローム因子の変化との関連について、山梨大学大学院 社会医学講座助教の横道洋司氏らが、同県住民の健康診断データを用いて分析を行った。その結果、眼圧上昇は、血清トリグリセライド値・血圧値・空腹時血漿中グルコース値(FPG)の長期的な悪化と関連しており、一方で、血清HDLコレステロール値の改善と関連していたと発表した。著者は、「結果については慎重な解釈が必要である」と述べ、「血清脂質と眼圧との関連についてはさらなる生理学的な検討が必要である」とまとめている。BMJ Open誌2016年3月24日号掲載の報告。 先行研究で、心血管リスク因子の眼圧への寄与について検討されてはいるが、高度な相関があるのかについては、心血管疾患の基礎を成す交絡因子によって明白ではない。そこで研究グループは、メタボリックシンドロームの因子に焦点を絞り、眼圧上昇に関与するのか、およびどの程度関与するのかを明らかにする後ろ向きコホート研究を行った。 1999年4月~2009年3月に、民間医療センターを受診し有料の健康診断を受診した県内住民のデータを集めて分析した。 主要評価項目は、眼圧変化が加齢やメタボリックシンドローム因子の変化によって上昇しているのかとした。分析はピアソン相関係数と混合効果モデルを用い、断面調査と縦断研究にて評価を行った。包含された被験者データは、断面調査(2008年4月~09年3月)2万7例、縦断研究(1999年4月~2009年3月に3~10回受診した被験者データを包含)1万5,747例であった。 主な結果は以下のとおり。・断面調査において、眼圧と年齢は負の関連が示された。一方で、腹囲、HDL-C値、トリグリセライド値、収縮期血圧値(SBP)、拡張期血圧値(DBP)、FPG値とは正の関連が示された。・縦断的多変量解析の結果、眼圧変化との関連が有意であったのは、男性(-0.12mmHg)、10歳の加齢(-0.59mmHg)、HDL-Cの1mmol/L上昇(+0.42mmHg)、トリグリセライドの1mmol/L上昇(+0.092mmHg)、SBPの10mmHg上昇(+0.090mmHg)、DBPの10mmHg上昇(+0.085mmHg)、FPGの1mmol/L上昇(+0.091mmHg)であった(いずれもp<0.0001)。

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日本のTAVRのアウトカムは良好か?リアルワールドの結果示される

 2016年3月、日本循環器学会学術集会にて、慶應義塾大学循環器内科 林田健太郎氏が日本のTAVRの多施設レジストリ、OCEAN-TAVIの結果を発表した。 TAVRは2002年から臨床応用が始まり、現在では世界で20万人が治療を受けている。本邦では2013年に承認され、施行数も増加している。しかしながら、日本におけるリアルワールドの大規模なデータはない。そこで、本邦のTAVR症例の4割程度を占めるハイボリュームセンター8施設の前向き多施設レジストリデータを形成し、日本でのアウトカムを検討した。 対象患者は2013年10月~2015年7月までに8施設に登録された749名。使用デバイスはSapien XT。評価項目は手技成功率、30日死亡率、VARC2定義による合併症、30日死亡予測因子であった。 患者の平均年齢は84.3歳、70%が女性であった。平均BSA 1.4m2、Logistic Euroスコア17.0%、STSスコア8.1%であった。CKDが67.2%おり、CABGが7.9%に、PADが15.9%に施行されていた。施術はTFアプローチが8割、TAアプローチが2割であった。 結果、手技成功率は96.9%(TF97.4%、TA95.0%)。30日死亡率は2.0%(TF1.7%、TA3.5%)と、海外の成績に比べ良好であった。 虚血性脳卒中発現率は2.1%であった。また、PPM(prosthesis-patient mismatch)発生率は中等度と重度を合わせて6.8%であった。 30日死亡の予測因子は、男性、腎機能、STSスコア。 死亡率を年齢層別に解析すると、80歳未満4.3%、80歳以上90歳未満1.7%、90歳以上0.9%であった。死亡率が、年齢と共に下がっていること、90代の死亡率も極めて低いことが特徴的であった。

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特技と悲劇【Dr. 中島の 新・徒然草】(113)

百十三の段 特技と悲劇「中島先生は毎週ケアネットに書いておられて凄いですね」とよく感心されます。実際、書くということがあまり苦にならないのは確かで、この特技らしきものは、電子カルテ記載に大いに役立ちます。そもそも高齢の患者さんは順序立てて話をしてくれません。時系列は無茶苦茶、話題も飛びまくりで、こちらの質問に対してまったく関係のない答えが返ってくるのはいつもの事です。これをその場で整理編集しつつ、電子カルテに入力してみると、いかにも理路整然とした病歴が完成します。そして再診の時に「まず先日のカルテを確認しましょう」と言ってから前回の記載を読み上げると、「まさに私の言いたかった事だわ!」と、患者さんは大きく頷いてくれるのです。患者さんからみると、自分のうまく表現できないことをお医者さんが的確な言葉で表現してくれるので大満足。ところが、その喜びに比例して話のほうもどんどん長くなってしまいます。その結果、いつまで経っても外来が終わらず、昼食を摂れるのはいつのことやら。皮肉なことに「特技」がむしろ悲劇を招いてしまうわけですね。患者「今回の交通事故では裁判を考えて弁護士さんに頼んでいまして」中島「なるほど」患者「中島先生、弁護士さんと話をしてもらってもいいですか?」中島「いいですよ」患者「でも先生は忙しそうですし」中島「むしろ忙しいから弁護士さんと話がしたいんですよ(泣)」患者「なんでですか?」中島「弁護士さんとだったら話は1分で済むでしょ」患者「すみません、私の話が長いってことですよね」中島「よくおわかり……あ、いや、その」患者「でも中島先生はよく話を聞いてくれはるから」中島「いやいやいや、私も便秘とか、巻き爪とかですね。もう少し気持ちの余裕を持ってお聞きしたいのはヤマヤマなんですけど」患者「本当ですか?(喜)」巻き爪の話が始まっても、「これは何か交通事故に関係あるに違いない」と思って一生懸命にカルテに書いていたら、最後はウンコまで登場してきて仰天させられるわけですね。とにかく効率のいい外来診療を行うことは、私にとって永遠の課題です。最後に1句得意技 調子こいたら 悲劇待つ

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抗精神病薬の過量投与、昔と比べてどう変化しているか

 薬物過量投与による罹患率や死亡率は、この30年間減少している。これは、より安全性の高い薬剤が開発されたことで、過量投与のアウトカムが改善したことが背景にある。オーストラリア・Calvary Mater NewcastleのIngrid Berling氏らは、26年間における抗精神病薬の処方変更と過量投与の変化との関連を検討した。British journal of clinical pharmacology誌オンライン版2016年3月6日号の報告。 1987~2012年のすべての抗精神病薬中毒に関する発表を検討した。人口統計、摂取情報、臨床効果、合併症、治療のデータをプロスペクティブに収集した。オーストラリアにおける抗精神病薬の使用率は、1990~2011年の政府からの出版物から抽出し、ポストコードから過量投与情報とリンクした。 主な結果は以下のとおり。・過量投与は抗精神病薬3,180件、第1世代抗精神病薬1,235件、第2世代抗精神病薬1,695件、リチウム250件であった。・26年間で抗精神病薬の過量投与は1.8倍に増加し、第1世代抗精神病薬はピーク時の5分の1に減少したが(80件/年~/16件/年)、第2世代抗精神病薬は倍増しており(160件/年)、そのうちオランザピンとクエチアピンが78%を構成していた。・すべての抗精神病薬過量投与は、ICU平均在室時間18.6時間、ICU入院15.7%、人工呼吸10.4%、院内死亡0.13%であった。これは、第2世代抗精神病薬と比較し、第1世代抗精神病薬でも同様であった。・同期間において、抗精神病薬の処方は2.3倍増加していた。第1世代抗精神病薬の処方が減少している一方で、第2世代抗精神病薬は急激に上昇していた。主にオランザピン、クエチアピン、リスペリドン(79%)が上昇していた。 結果を踏まえ、著者らは「26年間にわたり、抗精神病薬処方の増加は抗精神病薬の過量投与の増加と関連していた。抗精神病薬の種類は変化しているが、罹患率や死亡率に変化はなく、抗精神病薬の過量投与による入院の割合は増加していた」とまとめている。関連医療ニュース 抗精神病薬のアジア実態調査:高用量投与は36% 統合失調症、維持期では用量調節すべきか:慶應義塾大 抗精神病薬の高用量投与で心血管イベントリスク上昇:横浜市立大

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PCI後1年超のDAPT継続期間を予測するモデル/JAMA

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施後1年超の2剤併用抗血小板療法(DAPT)の継続期間を明らかにする予測モデルが開発された。米国、ベスイスラエル・ディーコネス医療センターのRobert W. Yeh氏らが、1万1,648例を対象に行った無作為化試験「DAPT」試験の被験者データから開発した。PCI後のDAPTでは、虚血リスクは減少するが、出血リスクの増大が報告されている。今回開発したモデルは、検証試験の結果、それらを中程度の精度で予測できるものだったという。JAMA誌オンライン版2016年3月29日号掲載の報告より。 PCI後12~30ヵ月の虚血/出血リスク因子を抽出 研究グループは2009年8月~14年5月にかけて、11ヵ国で行われたDAPT試験の被験者1万1,648例のデータを基に、PCI後12ヵ月~30ヵ月の虚血リスクと出血リスクの予測因子を抽出し予測モデルを作成した。DAPT試験では被験者に対し、PCI後12ヵ月間、チエノピリジンとアスピリンによるDAPTを実施した後、被験者を無作為に2群に分け、一方にはチエノピリジンとアスピリンを、もう一方にはプラセボとアスピリンをそれぞれPCI後12~30ヵ月まで投与した。 予測モデルの検証については、ブースストラップ法によるコホート内検証と、2007~14年にかけて行われたPROTECT試験の被験者8,136例を対象にそれぞれ行った。 主要評価項目は、PCI後12~30ヵ月の虚血イベント(心筋梗塞とステント血栓症)と出血イベント(中程度~重度)だった。予測モデルのC統計量、虚血が0.70、出血が0.68 DAPT試験の被験者の平均年齢は61.3歳、女性は25.1%だった。そのうち、虚血イベントが認められたのは348例(3.0%)、出血イベントは215例(1.8%)だった。DAPT試験を基に検証した予測モデルのC統計量は、虚血と出血がそれぞれ0.70と0.68だった。 予測モデルでは、初診時の心筋梗塞、心筋梗歴またはPCI歴、糖尿病、ステント直径3mm未満、喫煙、パクリタキセル溶出ステントに各1ポイント、うっ血性心不全または低駆出分画率の病歴と静脈グラフトインターベンションが各2ポイント、65歳以上75歳未満が-1ポイント、75歳以上が-2ポイントとした。 そのうえで、合計スコアが2以上のグループ(5,917例)については、12~30ヵ月にアスピリンとプラセボを投与した群の虚血イベント発生率が5.7%だったのに対し、チエノピリジンとアスピリンによるDAPT群では、同発生率は2.7%と、有意に低率だった(リスク差:-3.0%、95%信頼区間:-4.1~-2.0、p<0.001)。 一方でスコアが2未満のグループ(5,731例)では、同発生率はプラセボ群が2.3%に対しDAPT群は1.7%と、有意差には至らなかった(p=0.07)。 逆に出血率については、高スコアグループではDAPT群で1.8%に対し、プラセボ群では1.4%と有意差はなく(p=0.26)、低スコアグループではそれぞれ3.0%と1.4%と、DAPT群で高率だった(p<0.001)。 PROTECT試験の被験者による検証では、虚血と出血に関する予測モデルのC統計量は、いずれも0.64だった。虚血イベントについては、高スコアグループが低スコアグループに比べリスクが大きかったが、出血リスクについて有意差はなかった。 これらの結果を踏まえて著者は、同予測モデルの予測精度は中程度であり、今後さらなる試験による検証が必要だとしている。

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糖尿病治療薬、効果の高い組み合わせは?/BMJ

 成人2型糖尿病患者に対し、メトホルミン単剤療法に比べ、メトホルミン+グリプチン、またはグリタゾンの2剤併用療法は、高血糖症リスクを2~4割低下すること、またグリタゾンもしくはグリプチンの単剤療法は、メトホルミン単剤療法に比べ、重度腎不全リスクが約2.6倍高いことなどが明らかにされた。英国・ノッティンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らが、約47万例の2型糖尿病患者を対象に行ったコホート試験の結果で、BMJ誌オンライン版2016年3月30日号で発表した。グリタゾンやグリプチンの臨床試験エビデンスの多くは、HbA1c値といった代替エンドポイントをベースとしたもので、合併症を減らすといった臨床的エンドポイントを評価するものではなかったという。研究グループは、2型糖尿病で長期間投薬治療を受ける大規模集団を対象に、臨床的アウトカムのリスクを定量化する検討を行った。英国1,200ヵ所以上のプライマリケア診療所で約47万例を追跡 2007年4月1日~15年1月31日の間に、英国プライマリケアのデータベース「QResearchデータベース」に参加する診療所1,243ヵ所を通じて、46万9,688例の2型糖尿病患者について前向きコホート試験を行った。被験者の年齢は25~84歳だった。 血糖降下薬(グリタゾン、グリプチン、メトホルミン、SU薬、インスリンその他)の単剤または組み合わせ投与と、切断術、失明、重度腎不全、高血糖症、低血糖症の初発診断記録との関連、および死亡、入院記録との関連を、潜在的交絡因子を補正後、Coxモデルを用いてハザード比(HR)を算出して調べた。単剤、2剤または3剤併用のメリット、リスクが明らかに 追跡期間中にグリタゾンの処方を受けたのは2万1,308例(4.5%)、グリプチンの処方を受けたのは3万2,533例(6.9%)だった。 グリタゾン使用は、非使用に比べ、失明リスクが約3割低かった(補正後ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.57~0.89、発症率:14.4件/1万人年)。一方で低血糖症リスクは約2割増大した(同:1.22、1.10~1.37、65.1件/1万人年)。 グリプチン使用では、低血糖症リスク低下との関連が認められた(同:0.86、0.77~0.96、45.8件/1万人年)。 一方で、被験者のうちグリタゾンやグリプチン単剤療法を行った割合は低かったものの、メトホルミン単剤療法に比べ、重度腎不全リスクは約2.6倍の増大がみられた(補正後HR:2.55、95%CI:1.13~5.74)。 併用に関しては、メトホルミン+グリプチン、またはメトホルミン+グリタゾンの2剤併用療法は、メトホルミン単剤療法に比べ、いずれも高血糖症リスクは低下した(それぞれの補正後HRは0.78と0.60)。 メトホルミン+SU薬+グリタゾンの3剤併用療法は、メトホルミン単剤療法に比べ、失明リスクを3割強減少した(同:0.67、同:0.48~0.94)。 メトホルミン+SU薬+グリタゾンまたはグリプチンの各3剤併用療法は、メトホルミン単剤療法に比べ、低血糖症リスクを5~6倍に増大したものの(それぞれ補正後HR:5.07、6.32)、同リスクはメトホルミン+SU薬の2剤併用療法と同程度だった(同:6.03)。

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慢性腰痛、うつ病合併で痛み増大

 神経障害性の腰痛にうつ病を合併している患者は、うつ病を合併していない患者よりも疼痛レベルが有意に高く、疼痛による障害の度合いが大きく、QOLも低いことが、東海大学の檜山 明彦氏らによる研究で明らかになった。これは、自己評価式抑うつ性尺度(SDS-Zung)およびPainDETECT日本語版(PDQ-J)を用いて、神経障害性の腰痛患者の抑うつ症状とQOLへの影響を評価した最初の研究である。European spine journal誌オンライン版2016年2月13日号の報告。 本研究の目的は、腰痛にうつ病を合併する患者、腰痛が神経障害性である患者の割合を調査し、彼らのQOLに与える影響を検討することであった。 2012年6月と13年12月の間に東海大学医学部付属病院を訪れた慢性腰痛患者650例のうち、腰痛とQOLについてのアンケートに回答した309例を対象に断面レトロスペクティブ研究を行った。アンケートには、SDS-Zung、PDQ-J、痛みの評価スケール(NRS)、QOL評価が用いられた。対象患者をSDS-Zungスコアに応じて2群に分け(スコア40未満:非うつ病群、スコア50以上:うつ病群)、両群を比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・うつ病群が63例(20.4%)、非うつ病群が125例(40.5%)であった。・平均PDQ-Jスコアは、非うつ病群よりも、うつ病群で高かった。・神経障害性疼痛は、うつ病群の17例(27%)、非うつ病群の11例(9%)で認められ、うつ病群で多かった。・腰痛患者のSDS-ZungスコアとPDQ-Jスコアは、有意に相関していた(r=0.261、p<0.001)。・NRSスコアは、非うつ病群よりもうつ病群で高かった。・QOLスコアは、非うつ病群よりもうつ病群で低かった。 抑うつ症状を合併する神経障害性の腰痛は、早期に発見し、早期から治療を行うことで、治療効果の改善が期待できる。しかし、多くの腰痛患者の痛みは複合しているため(神経障害性疼痛・侵害受容性疼痛・心因性疼痛)、数種類の薬剤を使う必要があり、マネジメントは複雑となる。さらに研究を重ねることで、痛みや機能障害の原因、痛みと抑うつ症状の合併例に対する治療の有効性を明らかにし、腰痛患者のQOL向上につなげることが大切であると考えられる。

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妊娠中のカフェイン摂りすぎが子供の体脂肪を増やす?

 妊娠中のカフェイン摂取と低体重児出産との関連性は以前から指摘されており、出生時の低体重は、後の体脂肪分布とインスリン抵抗性に悪影響を与えることが示唆されている。これを踏まえ、オランダ・エラスムス医療センターのEllis Voerman氏らは、母親の妊娠中のカフェイン摂取と、その子供の初期生育、就学年齢時の体脂肪分布との関連性を調査した。その結果、妊娠中のカフェイン多量摂取は、子供の成長パターンや後の体脂肪分布へ悪影響を及ぼす可能性が示唆されたという。Obesity (Silver Spring)誌オンライン版2016年3月26日号掲載の報告。 本研究は人口ベースの出生コホートで、7,857人の母親とその子供が対象となった。母親の妊娠中のカフェイン摂取量については、アンケート調査によって評価を行った。また、子供の出生時からの成長特性、6歳時点での体脂肪とインスリン値を測定した。 結果は以下のとおり。・妊娠中の1日当たりのカフェイン摂取量が2単位未満(1単位=コーヒー1杯に含まれるカフェイン量90mgに相当)の母親の子供に比べて、6単位以上の母親の子供では、出生時の体重が低く、出生時から6歳までの体重増加が大きく、6ヵ月から6歳までのBMIが高い傾向にあった。・(妊娠中の1日当たりのカフェイン摂取量が)4~5.9単位および6単位以上の母親の子供は共に、幼児期のBMIと総体脂肪量がより高い傾向にあった。・(妊娠中の1日当たりのカフェイン摂取量が)6単位以上の母親の子供は、アンドロイド/ガイノイド脂肪量比がより高かった。

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フィーバー國松の不明熱コンサルト

第1回 循環器内科「パパッとエコーでわからないもの」 第2回 消化器内科「内視鏡、やってみたけど」 第3回 呼吸器内科「肺は大丈夫だけど、苦しい」 第4回 腎臓内科「腎臓がやられているというだけで…」 第5回 血液内科「骨髄検査は正常です」 第6回 神経内科「答えは脳ではない」 第7回 膠原病内科「それでもスティル病とは言えない」 第8回 感染症内科「ほかに何があるでしょうか?」 循環器、消化器、呼吸器…どんな臓器の専門医でも日々の専門診療のなかでなかなか原因が突き止められない「熱」に直面することがあります。そんな専門医が抱える不明熱を「熱」のスペシャリスト・フィーバー國松が徹底分析。各科で遭遇しやすいキホンの熱から、検査ではわからない困った熱まで、それらの鑑別方法、対処法を詳しく解説します。 国立国際医療研究センター病院で不明熱外来を担う講師は、院内外の各科からさまざまな不明熱のコンサルトを受け、日々、その発熱の原因究明に挑んでいます。本DVDで取り上げるのは、循環器、消化器、呼吸器、腎臓、血液、神経、膠原病、感染症の8領域。「熱」に自信を持って立ち向かえる!発熱診療の強力な手がかりをお届けします!第1回 循環器内科「パパッとエコーでわからないもの」第1回は循環器内科編。循環器内科でみられるキホンの不明熱、検査ですぐにはわからない困った不明熱を解説します。「循環器疾患で来たはずなのに発熱が続いている…」「救命後に下がらない熱…」特に入院中の患者によくみられる不明熱のさまざまな可能性と、原因究明のためのアプローチを、熱のスペシャリスト・國松淳和氏がご紹介します。第2回 消化器内科「内視鏡、やってみたけど」第2回は消化器内科編。自己免疫疾患から機能性疾患まで、幅広くさまざまな疾患を扱う消化器内科医が、しばしば遭遇する不明熱について解説します。内視鏡や生検では診断のつかない、困った熱の原因を探るためのヒントを紹介します。10歳代から20年以上続く発熱と腹痛の原因疾患とは…!?第3回 呼吸器内科「肺は大丈夫だけど、苦しい」第3回は呼吸器内科編。不明熱のコンサルトを受けることも多い呼吸器内科医が、本当に困る不明熱について解説します。呼吸器という限られた臓器のなかで感染症から、まれな悪性疾患まで、さまざまな疾患の可能性がありうる領域です。特に混乱しやすいのが、原因が呼吸器疾患でなかった場合…肺炎と肺炎随伴胸水と考えていた患者が、実は横隔膜下膿瘍だったなど。見落としがちな疾患をリストアップして紹介します。第4回 腎臓内科「腎臓がやられているというだけで…」第4回は腎臓内科編。腎臓内科で不明熱に遭遇した場合、熱源が疑えても「造影剤を使用しにくい」「試験的な投薬をしにくい」という問題があります。腎機能障害患者の不明熱に対して想起すべき鑑別疾患、絶対に行うべき検査について解説します。また、長期透析という特別な背景を持つ患者の不明熱については、どうアプローチすべきなのか!? 國松氏がコンサルトを受けた実際の症例も紹介。 第5回 血液内科「骨髄検査は正常です」第5回は血液内科編。「不明熱と血球減少」は臨床内科医にとって鬼門!そのため血球減少の相談が血液内科の先生に集中しがちです。そんな他科からのコンサルトや、基礎疾患のわからない外来患者を効率よく診断するために、血球減少を来すキホンの疾患リスト、ウイルス性疾患の鑑別点を紹介します。抗体検査はもちろん必要ですが、時として素早い臨床診断も重要です。第6回 神経内科「答えは脳ではない」第6回は神経内科編。”Help me! Help me!” は神経内科医が押さえておきたい熱が出る12病態の頭文字!病態ごとに想起すべき疾患名をリストアップして解説します。また、「循環器内科のまれで重篤な疾患」と勘違いされがちな感染性心内膜炎(IE)についてもレクチャー。心原性脳塞栓症の患者が来たら、まずはIEのハイリスク群からチェックしましょう!よくある疾患でも、その裏に隠れている疾患を見逃さないための注意が必要です。第7回 膠原病内科「それでもスティル病とは言えない」第7回は膠原病科編。発熱のコンサルトに慣れている膠原病科の先生は、その原因疾患が膠原病であれば困ることはありません。困るのはやはり、最大かつ永遠の好敵手であるリンパ腫!SLEや成人スティル病など、臨床診断を行う膠原病科医にとって、病理組織検査でなければ診断できないものこそ難問です。そんな膠原病科の不明熱について、熱のスペシャリスト國松淳和先生が、症例診断も交えて解説します。第8回 感染症内科「ほかに何があるでしょうか?」日頃から不明熱の精査に慣れている感染症内科の先生方が困るのは、感染症を検討し尽くしても診断のつかない不明熱!皮疹、高サイトカイン、菌血症様という代表的な症候から臨床診断するコツや、不明熱精査と同時に始める「不明熱治療」という考え方と方法について解説します。症例検討は、ほぼ無症候で40度以上の発熱を2年間も繰り返す12歳女児。その最終診断とは?

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高用量のドネペジル徐放性製剤、日本人に対する評価は

 ドネペジルは、軽度、中等度、高度のアルツハイマー病(AD)に対する治療薬として確立している。国際的研究では、認知機能において、ドネペジル徐放性製剤(SR)23mg/日はドネペジル即放性製剤(IR)10mg/日を上回る優れた有効性が実証されているが、中等度から高度ADにおける全般的機能についてはわかっていない。認知症介護研究・研修東京センターの本間 昭氏らは、日本人高度ADにおいて、ドネペジルSR23mg/日の効果が、同IR10mg/日を上回るかの検討を行った。Journal of Alzheimer's disease誌オンライン版2016年3月11日号の報告。 本研究は、多施設無作為化二重盲検並行群間試験にて実施された。日本人高度AD外来患者を対象に、IR10mg/日継続群とSR23mg/日切り替え群とに無作為に割り付け、24週投与した。評価項目は、Severe Impairment Battery(SIB)、臨床面接による認知症変化印象尺度(Clinician's Interview-Based Impression of Change plus Caregiver Input:CIBIC-plus)と安全性とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、IR10mg/日継続群(166例)とSR23mg/日切り替え群(185例)に割り付けられた。・SR23mg/日切り替え群は、IR10mg/日継続群と比較し、SIB(LSMD:0.0、95%CI:-1.7~1.8、p=0.981)またはCIBIC-plus(LSMD:0.2、95%CI:0.0~0.4、p=0.080)において有意な差は認められなかった。・SR23mg/日切り替え群における一般的な有害事象は、食欲不振、嘔吐、下痢、挫傷であった。安全性所見については、ドネペジルにおける既知の安全性プロファイルと共通だった。 著者らは「日本人高度AD患者において、SR23mg/日への切り替えは、IR10mg/日継続と比較し、有効性評価項目で優れているとは言えなかった。日本では、高度AD患者に対し、10mg/日が承認されていることを考慮すると、現在の知見は、日本人の同患者に対しては10mg/日が最適な用量であることを示唆している」としている。関連医療ニュース 高度アルツハイマー病へのドネペジル投与は続けたほうがよいのか ドネペジル+メマンチン、アルツハイマー病への効果はどの程度? 中等度~高度のアルツハイマー型認知症に対するドネペジル+メマンチンの有効性/安全性の検討

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膝・股関節炎の治療薬、8製剤23種を比較/Lancet

 膝関節炎および股関節炎の管理では、用量にかかわらずパラセタモール(日本ではアセトアミノフェン)に治療上の役割はなく、現時点では疼痛緩和と機能改善の両面でジクロフェナク150mg/日が最も有効とのネットワークメタ解析の結果を、スイス・ベルン大学のBruno R da Costa氏らがLancet誌2016年3月17日号で報告した。関節炎による疼痛に非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を処方する際、医師は多くの種類の製剤とさまざまな用量に直面することとなり、臨床的な意思決定上の課題となっている。また、NSAIDによる初回治療は薬剤の変更や投与中止で特徴づけられるが、これが不適切な疼痛管理の原因となっている可能性があるという。これまでの系統的レビューは、個々のNSAIDの疼痛緩和という限られた効果をプラセボと比較した試験を対象としているが、ネットワークメタ解析では直接的および間接的なエビデンスを統合することで、個々の製剤のさまざまな用量での効果の評価が可能とされる。約5万8,000例で、8製剤、23種の介入の効果を比較 研究グループは、膝・股関節炎による疼痛の治療において、NSAID、パラセタモール、プラセボを比較した試験を対象にネットワークメタ解析を行った(スイス国立科学財団などの助成による)。 Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)を検索して、1980年1月1日~2015年2月24日までに公表された臨床試験(各群に100例以上を登録)の論文を選出し、関連論文の文献リストにも当たった。 効果量(effect size:ES)の解析には、ベイズ統計のランダム効果モデルを用い、複数の薬剤の比較を行った。事前に規定された主要評価項目は疼痛であり、副次評価項目は身体機能とした。 74件の無作為化試験に参加した5万8,556例が解析の対象となった。7つのNSAID(ロフェコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、ジクロフェナク、セレコキシブ、ナプロキセン、イブプロフェン)とパラセタモール、プラセボの合計23種の1日用量について評価を行った。中等度~最大用量の間欠的短期投与が好ましい 用量にかかわらず、すべての製剤でプラセボに比し疼痛症状の推定値が改善された。 以下の6つの処方で、臨床的に意義のある最小疼痛緩和効果(ES:-0.37)の達成を支持する統計学的に十分なエビデンスが得られた(プラセボとの差が、事前に規定された閾値である-0.37か、それを下回る可能性が95%以上ある)。ジクロフェナク150mg/日、エトリコキシブ30mg/日、同60mg/日、同90mg/日、ロフェコキシブ25mg/日、同50mg/日。 承認を得ている最大1日用量では、ジクロフェナク150mg/日(ES:-0.57、95%信用区間[credibility interval:CrI]:-0.69~-0.46)およびエトリコキシブ60mg/日(ES:-0.58、95%CrI:-0.73~-0.43)が最良の介入となる可能性が最も高く、いずれも臨床的に意義のある最小変化量に達する可能性は100%であった。 どの製剤も用量が多くなるに従って治療効果が高くなったが、検定でリニアな用量反応に有意差を認めたのは、セレコキシブ(p=0.030)、ジクロフェナク(p=0.031)、ナプロキセン(p=0.026)だけであった。また、治療期間によって治療効果が変化するとのエビデンスは確認されなかった。 モデル適合度は疼痛、身体機能とも良好(good)で、試験間の異質性(heterogeneity)や非一貫性(inconsistency)はすべての解析において低い(low)と判定された。また、すべての試験が、患者の盲検化に関するバイアスのリスクは低いとされた。さらに、効果の推定値は、2つの統計モデルを追加した感度分析を行っても変化しなかった。 著者は、「すべてのNSAIDには消化管や心血管への有害作用があるため、製剤のタイプや用量は、本研究で示した個々の製剤の短期~中期の鎮痛効果に基づいて選択すべきである。また、必要とされる用量の中等度~最大の用量を短期間投与し、これを間欠的に繰り返す投与法が、固定用量の長期投与よりも好ましいと考えられる」と指摘している。

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これからの医療制度の在り方を探る

 3月12日都内において、第6回医療法学シンポジウム(主催:医療法学研究会)が「少子高齢化社会を乗り越える医療制度の実現に向けて」をテーマに開催された。シンポジウムでは、さまざまな分野のエキスパートが、将来の医療制度の在り方について議論した。これからの医療制度、健康政策の在り方 「2035のビジョンがなぜ必要か」をテーマに渋谷 健司氏(東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授)が、先ごろ提言書としてまとめられた「保健医療2035」の概要を説明した。 「保健医療2035」は、わが国の社会保障制度を長期的な視点で見直し、現行制度の持続、維持を超えて、社会システムとしての保健医療を再構築することを目的に、研究者、臨床医、民間など多彩な委員が集まり、まとめあげられたものである。 最終目標は「世界最高水準の健康、医療が享受でき、安心、満足、納得を得ることができる持続可能な保健医療システムを構築することで、世界の繁栄にも貢献する」としている。この基本理念として、「公正・公平、自律連帯、日本と世界の繁栄と共生をはかる」を定め、施策実現のために厚生労働省内にプロジェクト推進本部が設置された。「今後、この提言書をベースにさらに社会的な議論を深め、実行性のあるものとしていく」と語った。健康日本21で目指す社会 「健康日本21 エビデンスに基づいた医療政策決定」をテーマに、羽鳥 裕氏(日本医師会常任理事、稲門医師会会長)が、日本医師会の推進するこれからの健康社会へ取り組みについて説明した。 厚生労働省が実施した「(第1次)健康日本21」は、目標到達度約6割で終了した。現在、第2次(2013年開始)が進行中である。そして、10年後に目指す姿として子供も成人も希望が持てる社会、高齢者が生きがいを持てる社会、健康格差の縮小する社会などが謳われている。現在、65歳以上の高齢者が国民総医療費の55.5%を享受する中で、持続可能な制度を探るため、どのような負担配分がよいか議論が必要だと問題を提起した。 健康面では国民の3大リスクとして、喫煙、高血圧、運動不足が示されている。これらは、国民各自で改善できるリスクであり、今後これらリスクを減らす取り組みが必要であるという。 そうした環境の中で医師会では、(1)かかりつけ医機能の推進(地域の医師が地域医療を底上げするシステム)と(2)日医健診標準フォーマットの導入(蓄積されたデータを地域医療などで役立てるもの)で地域・職域への支援を行うことにより、超少子高齢化社会の日本の医療システムモデルを作っていくと説明した。高齢化社会を悩ます認知症 「認知症患者ケアと終末期の実際」をテーマに、灰田 宗孝氏(東海大学理事、東海大学医療技術短期大学学長、稲門医師会副会長)が講演を行った。 講演では、主に「高齢者の認知症」を取り上げ、その診療のポイントから家族、社会に与える問題を概説した。 認知症は、日常使わなくなった機能から病的に衰える疾患であり、進展すると日常の機能も障害される。そのため1日でも早く進展を止めることが重要である。現在、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の2疾患の治療薬に保険適用が認められている。認知症では、病中期から患者の看護や介護で多大な負担が生じるため、早期に診断し治療を開始することにより、進行を遅らせ少しでも良い状態を持続させることで、患者のみならず患者家族、社会的負担をいかに軽減させるかが重要だと語る。「今では成年後見制度などの種々のサポート制度もあるため、積極的な診療とともに活用してほしい」とレクチャーを終えた。社会保障と医療について議論の整理を 「医療経済学と向き合う」をテーマに、中田 善規氏(帝京大学大学院公衆衛生学研究科 教授)が、経済的な側面から医療について講演を行った。 はじめに医療保険・年金は福祉(公的扶助)ではないという結論を示し、論点を整理した。医療保険や年金は、必ず出資者がいて、その集めた出資金(掛け金)に応じて、適正配分されるものであるため、社会的に騒がれているような財政に関する諸問題と混同してはいけないという。 (民間も含めて)医療保険は、将来起こるかもしれない不安へのリスクヘッジであり、これは国民健康保険も同様である。相互扶助や隣人愛、救貧ではないため保険料を納めていない人は何も享受できない(これは年金制度も同様)。そのため、掛け金が出資される限り、本来的に制度は維持できると説明した。ただ、保険・年金に公的扶助の機能を持たせると非効率的になる。社会保障と社会保険はきちんと分けて議論されるべきであり、貧困者には保険・年金ではなく、公的扶助の面を充実させるべきであると問題を提起した。高齢者をめぐる法的問題 「医療法学における視点」として大磯 義一郎氏(浜松医科大学法学教授、日本医科大学 医療管理学客員教授、帝京大学医療情報システム研究センター客員教授、稲門医師会理事)が、高齢者にまつわる法的問題をレクチャーした。 終末期に関連する問題として「安楽死」と「尊厳死」がある。とくに尊厳死については、現在拠るべき法律がないため、司法も判断に苦慮している。これは司法ではなく、立法論の問題であり、現在も模索されているという。また、最近増加している高齢者虐待をはじめとする「高齢者(とくに認知症患者)を取り巻く諸問題」にも言及し、高齢者への虐待は年々報告数が増加し、介護疲れなどの理由が多く介護側の疲弊がみられると述べ、その防止の対策も待たれると指摘した。 次に高齢者の徘徊などにより起こった事件・事故の責任について、本年3月1日に最高裁判所で出された認知症患者の事故に関する損賠賠償請求事件の判例を例に挙げ説明を行った。民法上、認知症患者は責任無能力者とみなされ、事件・事故の賠償責任は負わないとされているが、その法定監督義務者は賠償責任を負う可能性があることを指摘。最高裁判所の見解では、「日常の看護などの態様を公平の見地から判断して決める」としているが、この判断が、今後介護などの萎縮につながらないよう制度や仕組み作りをする必要があると語った。また、個人レベルでは、徘徊保険などに任意加入することで、個人の賠償責任を回避することができる(これは認知症患者を預かる施設なども同様)と対応策を提案した。今後、個人や特定施設だけに過度な責任が押し付けられないよう、責任負担の公平化、手続きの明確化や任意保険加入の推進、未加入者へのサポートなど総合的な施策が求められると問題点を指摘した。終末期の現場から 「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の実践 静岡県西部の現在と未来」をテーマに井上 真智子氏(浜松医科大学地域家庭医療学講座特任教授)が、終末期の話題を提供した。 ACPとは、「いかに慢性期の高齢者の看取りを行うか」というもので、現在静岡県西部地域で行われている。あるアンケートによれば、「死」について考えることは約7割が賛成している一方で、準備をしている人は少なく、半数が終末期ケアの希望を配偶者に話していないという(英国 Dying Matters調べ)。そのため、家族、友人、主治医などに終末期の医療や介護ケアについて事前に話し合っておくことは重要である。 実際、自宅での看取り事例を示しつつ、「死の直前に病院から在宅に移行する患者も多い。できれば患者の事前指示書を家族に伝え知らせておくことが大事で、指示書は患者と定期的に見直すことも相互理解につながる」と運用のポイントを語った。 ACPの活動が、人生の最終段階における医療の在り方に与える影響は、これから検証が必要となるが、明らかに看取り後の患者家族の満足度は高くなっているという。「今後は、ACPの実践をチームスタッフと地域住民が共同して、さらに推進することを目指す」とレクチャーを結んだ。 最後に演者全員が登壇し、これからの高齢者医療と医療制度をテーマにパネルディスカッションが行われ、「保健医療2035」、「健康日本21」を基に、高齢化社会で必要な論点の整理(終末期の在り方、認知症への対応、医療者の労働環境、医療経済)などが話し合われた。

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3枝病変でのPCI対CABG、年齢・性別の影響は

 3枝冠動脈病変患者において、冠動脈バイパス術(CABG)に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の相対死亡リスクは、年齢との間に有意な関連が認められ、74歳以上では超過、74歳未満ではニュートラルであったことを小倉記念病院の山地 杏平氏らが報告した。実臨床では、PCIとCABGの選択において性別も考慮すべき重要事項であるが、本検討では相対死亡リスクに性特異的な差は認められなかったという。Circulation誌オンライン版2016年3月23日号に掲載。 今回の研究集団は、多施設CREDO-Kyotoレジストリの登録患者2万5,816例(コホート1:9,877例、コホート2:1万5,939例)のうち、3枝病変患者5,651例(男性3,998例/女性1,653例、PCI 3,165例/CABG 2,486例)。年齢の三分位数に応じて、65歳以下(1,972例)、66~73歳(1,820例)、74歳以上(1,859例)の3群に分けた。 主な結果は以下のとおり。・CABGに対するPCIの調整過剰相対死亡リスクは、74歳以上で有意であった(HR:1.40、95%CI:1.10~1.79、p=0.006)。一方、65歳以下(HR:1.05、95%CI:0.73~1.53、p=0.78)および66~73歳(HR:1.03、95%CI:0.78~1.36、p=0.85)ではニュートラルであった(交互作用のp=0.003)。・CABGに対するPCIの過剰相対死亡リスクは、男性で有意であり(HR:1.24、95%CI:1.03~1.50、p=0.02)、女性では有意傾向がみられた(HR:1.34、95%CI:0.98~1.84、p=0.07)。・CABGに対するPCIの相対的死亡リスクと性別との間に、有意な交互作用は認められなかった(交互作用のp=0.40)。

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診療の現場における安全な処方に必要なものは何か…(解説:吉岡 成人 氏)-512

薬剤をより安全に処方すること 外科医が行う手術、内科医が行う外科的なインターベンションと並んで、抗菌薬や抗がん化学療法薬などに代表される薬物治療は、内科医にとって重要な治療のツールである。臨床の現場では、作用と副作用というアンビバレンスを勘案して、慎重に処方を行うことが望まれる。一方、忙しさに紛れ、薬物の相互作用にうっかり気付かずに、副作用のリスクを高めてしまう処方が行われることもまれではない。 本論文は、スコットランドにおけるプライマリケアの診療現場で、一定の割合で副作用を引き起こす可能性のある高リスク薬の処方を、どのような臨床介入によって適正化しうるかについて検討した成績を示した論文である。教育と情報そして金銭的なインセンティブ 高リスク薬として、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、抗血小板薬を取り上げ、慢性腎臓病患者(CKD≧ステージ3)や、利尿薬とACE阻害薬ないしはARBを併用している患者にNSAIDsを処方した場合、胃粘膜保護薬を併用せずにNSAIDsと抗凝固薬の併用を行った場合を高リスク処方と判定し、介入によって処方行動が変容するか否かを検討している。 教育、金銭的インセンティブ、患者情報の提供という3つの介入が実施されている。まずは、薬剤師がクリニックを訪問し1時間にわたって知識の共有と確認を行い、続いて、参加登録時に350ポンド(600USドル)、高リスク薬を処方した患者の病歴を確認した際には患者1人当たり15ポンド(25USドル)のインセンティブを支払い、さらに、プライマリケア医が診療している患者の中から、病歴の確認が必要な患者を抽出し、「フラグ」を付けてアラートを行い、医師が対象薬となっている高リスク薬剤の投与を中止するか、副作用を予防する薬剤を追加処方した際に「フラグ」が消えるというシステムを構築し、医師が容易に診療内容をネット上でID、パスワードを用いて確認することができるようにするという、3つの介入を実施している。高リスク処方の減少と副作用による入院が減少 Stepped wedge designという、試験開始の時期をずらしながら順番に介入を行うという方法で介入試験を行った、33ヵ所の診療現場における3万3,000例以上の患者の結果が解析されている。 高リスク処方の割合は、3.7%(2万9,537例中1,102例)から2.2%(3万187例中674例)に有意に低下し(オッズ比0.623、95%信頼区間:0.57~0.86、p<0.001)、消化性潰瘍や消化管出血による入院も1万人年当たり55.7件から37.0件に有意に減少。心不全による入院も1万人年当たり707.7件から513.5件に有意に減少したが、急性腎不全による入院に変化はなかった(1万人年当たり101.9件から86.0件、オッズ比0.84、95%信頼区間:0.68~1.09、p=0.19)。高リスク処方の減少に何が有効だったのか それでは、知識の提供、金銭的インセンティブ、高リスク処方に注意を喚起するシステムのうち、何が最も有用であったのか…。それについては、この論文からは読み取ることができない。どのような知識を持っていても、忙しい診療の現場では、ついうっかり…という処方ミスが起こる可能性はきわめて大きい。しかし、処方を実施した後にレビューするシステムがあったとしても、習慣としてそれにアクセスするには動機(きっかけ)が必要であろう。そのために、世俗的ではあるが、少額ではあっても金銭的インセンティブが有用なのかもしれない。 処方の適正化はきわめて重要なことであり、予想しうる副作用を阻止するためのフェイルセイフ機構を構築することは喫緊の課題ともいえる。しかし、その方策をどのようにすべきか…。ひとつの回答が示されたが、この回答をどのように臨床の現場で応用していくのかは簡単ではなさそうである。関連コメント高リスク処方回避の具体的方策が必要(解説:木村 健二郎 氏)診療所における高リスク処方を減らすための方策が立証された(解説:折笠 秀樹 氏)ステップウェッジ法による危険な処方を減らす多角的介入の効果測定(解説:名郷 直樹 氏)「処方箋を書く」医師の行為は「将棋」か「チェス」か?(解説:後藤 信哉 氏)

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膵・胆管合流異常〔pancreaticobiliary maljunction〕

1 疾患概要■ 概念・定義膵・胆管合流異常(合流異常)は、解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天性の形成異常と定義される。東洋人種で頻度が高く、女性に多い。合流異常の発生論には諸説があり合意は得られていないが、胎生早期における胆管下部と腹側膵の導管系の合流の異常が大きな影響を及ぼすと考えられている。合流異常は、総胆管の拡張を伴う拡張型(多くは先天性胆道拡張症)と、総胆管の拡張を伴わない胆管非拡張型合流異常に二分される。先天性胆道拡張症は、胆道系が限局性に拡張した先天性の胆道形成異常で、戸谷分類では5つの型に分類されてきた(図1)。しかし、狭義の先天性胆道拡張症として、先天性胆道拡張症は総胆管を含む肝外胆管が限局性に拡張する先天性の形成異常で、膵・胆管合流異常を合併するものと2015年に定義された。戸谷分類では、肝外胆管の嚢腫状拡張を呈するIa型、円筒状拡張を呈するIc型と肝内・肝外胆管とも拡張を認めるIV-A型で表現される。画像を拡大する■ 病態と合併症1)病態正常の十二指腸主乳頭部には、乳頭部括約筋(oddi括約筋)が存在し、胆管末端部から膵胆管の合流部を取り囲んで胆汁の流れを調節し、同時に膵液の逆流を防止している。これに対し、合流異常ではその括約筋が膵管と胆管合流後の共通管を取り囲むため、括約筋の作用が合流部に及ばないので、膵液と胆汁の相互混入(逆流)が起こり、膵胆道系に胆道がんや膵炎などの合併症を生じる。通常、膵管内圧は胆管内圧より高いので、合流異常では膵液が胆道系に容易に逆流する(膵液胆道逆流現象)。ただし、胆道内圧上昇時などでは、胆汁の膵管内への逆流も起こりうる(胆汁膵管逆流現象)(図2)。画像を拡大する2)合併症:胆道がん合流異常では高率に胆道がんを合併する。圧勾配により長い共通管を介して胆道内に逆流した膵液と胆汁の混和液がうっ滞して、慢性炎症に伴う胆道の粘膜上皮障害と修復が繰り返され最終的にがん化する。全国集計では、成人の先天性胆道拡張症で22%、胆管非拡張型合流異常で42%に胆道がんの合併が認められた。その局在の割合は先天性胆道拡張症において胆嚢がん62%、胆管がん32%で、胆管非拡張型合流異常においては胆嚢がんが88%と高率であった。胆管非拡張型合流異常の肝外胆管は、胆汁うっ滞がないため、傷害作用を受けにくいと考えられている。合流異常に合併した胆嚢がん例を、合流異常を合併しない通常の胆嚢がん例と比較検討すると、ともに女性に好発するが、合流異常合併例では診断時の年齢が約15歳若く、重複がんが多く、胆石の保有率が低率である。3)合併症:膵炎先天性胆道拡張症では、高率に急性膵炎を合併する。臨床的に一過性のものや、軽症で再発性のものが多い。合流異常の慢性膵炎合併率は、全国集計では3%である。合流異常に合併する慢性膵炎は若年症例が多く、カルシウムを主成分とする膵石ではなくX線透過性のタンパク質を主成分とする非陽性結石を認めることが多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)膵・胆管合流異常の診断基準2013(表)によって診断する。表 膵・胆管合流異常の診断基準2013日本膵・胆管合流異常研究会日本膵・胆管合流異常研究会診断基準検討委員会(定義)膵・胆管合流異常とは、解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天性の形成異常をいう。(病態)膵・胆管合流異常では、機能的に十二指腸乳頭部括約筋(Oddi筋)の作用が膵胆管合流部に及ばないため、膵液と胆汁の相互逆流が起こり、胆汁や膵液の流出障害や胆道など胆道ないし膵にいろいろな病態を引き起こす。(診断基準)膵・胆管合流異常の診断は、画像または解剖学的検索によって行われ、以下のいずれかを満たせばよい。1. 画像診断1)直接胆道造影(ERCP、経皮経肝胆道造影、術中胆道造影など)またはMRCPや3D-DIC-CT像などで、膵管と胆管が異常に長い共通管をもって合流するか、異常な形で合流することを確認する。ただし、共通管が比較的短い例では、直接胆道造影で乳頭部括約筋作用が膵胆管合流部に及ばないことを確認する必要がある。2)EUSまたはmultidetector-row CT(MD-CT)のmulti-planar reconstruction(MPR)像などで、膵管と胆管が十二指腸壁外で合流することを確認する。2. 解剖学的診断手術または剖検などで、膵胆管合流部が十二指腸壁外に存在するか、または膵管と胆管が異常な形で合流することを確認する。(補助診断)つぎのような所見は、膵・胆管合流異常の存在を強く示唆しており、有力な補助診断となる。1. 高アミラーゼ胆汁開腹直後または内視鏡的あるいは経皮的に採取した胆管内または胆嚢内の胆汁中膵酵素が異常高値を示す。しかし、膵・胆管合流異常例でも血清濃度に近い例や、それ以下の低値例も少なからずある。また、膵胆管合流部に乳頭部括約筋作用が及ぶ例でも、胆汁中膵酵素が異常高値を呈し、膵・胆管合流異常と類似する病態を呈する例もある。2. 肝外胆管拡張膵・胆管合流異常には、胆管に拡張を認める例(先天性胆道拡張症)と胆管に拡張を認めない例(胆管非拡張型)がある。肝外胆管に嚢胞状、紡錘状、円筒状などの拡張がみられるときには、膵・胆管合流異常の詳細な検索が必要である。なお、胆管拡張の診断は、年齢に相当する総胆管径の基準値を参考にする。日本膵・胆管合流異常研究会診断基準検討委員会神澤 輝実(東京都立駒込病院内科、委員長)、安藤 久實(愛知県心身障害者コロニー)、濵田 吉則(関西医科大学附属枚方病院小児外科)、藤井 秀樹(山梨大学第一外科)、越永 従道(日本大学小児外科)、漆原 直人(静岡県立こども病院小児外科)、糸井 隆夫(東京医科大学消化器内科)■ 画像診断1)直接胆道造影[内視鏡的逆行性膵胆管造影:ERCP(図3、4)、経皮経肝胆道造影、術中胆道造影など]またはMR胆管膵管撮影(MRCP)や3D-DIC-CT像(図5)などで、膵管と胆管が異常に長い共通管をもって合流するか、異常な形で合流することを確認することより合流異常と診断できる。MRCPは、小児例の診断や拾い上げ診断に有用であるが、共通管の短い例や複雑な合流様式を示す例では直接胆道造影による確定診断が必要となる。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する2)超音波内視鏡(EUS)またはmultidetector-row CT(MD-CT)のmulti-planar reconstruction(MPR)像などで、膵管と胆管が十二指腸壁外で合流することを確認できた場合、合流異常と診断できる。しかし、非典型例ではやはりERCPによる確定診断が必要である。■ 解剖学的診断手術または剖検などで、膵胆管合流部が十二指腸壁外に存在するか、または膵管と胆管が異常な形で合流することを確認する。■ 補助診断次のような所見は、膵・胆管合流異常の存在を強く示唆しており、有力な補助診断となる。1)高アミラーゼ胆汁膵管内圧は通常胆管内圧より高いので、合流異常では膵液が胆管内へ容易に逆流する。したがって胆汁中のアミラーゼ値の上昇は、膵液胆道逆流現象の有力な診断証拠となる。合流異常では胆汁中アミラーゼ値が10,000IU/L以上の異常高値を示すことが多い。しかし、合流異常でも胆汁中アミラーゼ値が高値を示さない例もある。一方、乳頭部括約筋作用が膵胆管合流部まで及んでいても、比較的長い共通管を有する症例(膵胆管高位合流)では、胆汁中膵酵素が異常高値を呈し、合流異常と類似する病態を呈することがある。胆汁中アミラーゼ値の上昇だけで合流異常とは診断できないが、その異常高値は合流異常を強く示唆する所見である。2)肝外胆管拡張肝外胆管に嚢胞状、紡錘状、円筒状などの拡張がみられるときには、先天性胆道拡張症の存在が疑われ、合流異常の詳細な検索が必要である。従来、胆管拡張の診断においては、総胆管径の基準値を15歳以上で10mmにすることが多かったが、小児・成人とも胆管径は年齢とともに大きくなるので、年齢に相当する総胆管径の基準値を参考にすることが推奨される。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)合流異常では高率に胆道がんを合併することより、合流異常と診断されれば、胆道がんの合併がなくても、予防的に胆道切除術の適応となる。先天性胆道拡張症では、膵液と胆汁の相互逆流を遮断する分流術(肝外胆道切除術と胆道再建)が基本術式として行われている。しかし、胆管非拡張型合流異常では、高率に胆嚢がんを合併するが胆管がんの合併はきわめてまれであるので、胆嚢摘出術のみでよいとする施設と、先天性胆道拡張例と同様に肝外胆道切除術と胆道再建が必要であると考える施設があり、意見の一致をみていない。4 今後の展望胆管非拡張型合流異常では、予防的胆嚢摘出のみで経過を観察するのか、肝外胆管切除も行うべきなのか議論の最中であり、長期経過を調べて結論を出していく必要がある。そのためには、胆管非拡張型合流異常の診断をより明確にする必要がある。肝外胆管の拡張基準として、年齢別の総胆管径の基準値の策定が行われたが、胆管非拡張型合流異常の診断には単に総胆管径のみでなく形態も考慮するべきだとの意見も少なくない。また、症状の出にくい胆管非拡張型合流異常は、合併した胆嚢がんによる黄疸などの症状を契機に診断されることが多い。合流異常では胆嚢粘膜の過形成を呈することが多いので、検診の超音波(US)で胆嚢粘膜(胆嚢壁内側の低エコー層)の肥厚を認めた場合にMRCPなどを行って、発がん前に胆管非拡張型合流異常を拾い上げることができる。胆管非拡張型合流異常の早期診断の体系を確立し、普及させる必要がある。先天性胆道拡張症の分流術後の長期経過において、重篤な合併症が出現する例があるので、長期予後を明らかにして治療法の妥当性について検証する必要がある。5 主たる診療科消化器内科、消化器外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本膵・胆管合流異常研究会(医療従事者向けのまとまった情報)1)日本膵・胆道合流異常研究会、日本膵・胆管合流異常研究会診断基準検討委員会. 胆道.2013;27:785-787.2)日本膵・胆管合流異常研究会、日本胆道学会編. 膵・胆管合流異常診療ガイドライン. 医学図書出版;2012.3)日本膵・胆道合流異常研究会、日本膵・胆管合流異常研究会診断基準検討委員会. 胆道.2015;29:870-873.公開履歴初回2014年04月22日更新2016年04月05日

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統合失調症患者の再発リスクを低下させるためには

 統合失調症患者でも抗精神病薬の効果が続く長時間作用型治療(LAT)による治療を行っているにもかかわらず、再発することが少なくない。米国・セントルイス大学のLarry Alphs氏らは、LATによりアドヒアランスが確保されているにもかかわらず再発する要因を検討した。International clinical psychopharmacology誌オンライン版2016年3月11日号の報告。 著者らは、安定期統合失調症または統合失調感情障害患者323例に対し、リスペリドン長時間作用型注射剤を1年間使用した研究の事後分析を行った。対象患者は、抗精神病薬の経口剤を中止し、52週間のリスペリドン長時間作用型注射剤50mg(163例)または25mg(161例)の隔週投与に割り付けられた。再発の要因の推定にはCox比例ハザード回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・323例中59例(18.3%)は、持続的なLATにもかかわらず12ヵ月間で再発が認められた。・再発リスクと関連した要因は、罹病期間(年6%増加、p=0.0003)と調査国(カナダ対米国で4.7倍リスク増加、p=0.0008)であった。・罹病期間を、5年以下、6~10年、10年超で分類した場合、10年超対5年以下で再発リスクが最も高かった(4.4倍リスク増加、p=0.0181)。 著者らは「罹病期間が長い慢性化した患者では、アドヒアランスを維持したにもかかわらず再発リスクが高いため、早期の介入が必要である」としている。関連医療ニュース 統合失調症の再発予防プログラムを日本人で検証:千葉大学 統合失調症“再発”の危険因子は 統合失調症再発予防、遠隔医療に改善の余地あり

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