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感染症疑いICU患者の院内死亡予測能に優れる指標とは/JAMA

 集中治療室(ICU)に入室した感染症が疑われる成人患者について、院内死亡やICU入室(LOS)が3日以上などのアウトカムの識別能は、連続(敗血症関連)臓器不全評価(SOFA)スコアの2点以上増加の指標が、全身性炎症反応症候群(SIRS)基準スコア2以上や迅速SOFA(qSOFA)2点以上の指標に比べて、予後の正確さが有意に高いことが明らかになった。オーストラリア・アルフレッド病院のEamon P Raith氏らが、感染症によるICU入室患者18万4,875例を対象とした後ろ向きコホート解析により明らかにし、JAMA誌2017年1月17日号で発表した。ICU182ヵ所の感染症疑い入室患者について、AUROCで識別能を評価 研究グループは2000~15年に、オーストラリアとニュージーランドの182ヵ所のICUに、感染症の主診断で入室した患者18万4,875例を対象に、後ろ向きコホート試験を行った。入室24時間以内のSOFAスコアの2点以上増加、SIRS基準スコアが2以上、qSOFAスコアが2点以上の、アウトカムに対する識別能の優劣を検証した。識別能については、受信者動作特性曲線下面積(AUROC)で評価した。 主要評価項目は、院内死亡だった。副次的評価項目は、院内死亡または3日以上のICU入室の複合エンドポイントだった。院内死亡またはICU入室3日以上もSOFAが高い識別能 被験者の平均年齢は62.9歳(標準偏差:17.4)、女性被験者は8万2,540例(44.6%)で、最も多い診断名は細菌性肺炎で3万2,634例(17.7%)だった。 結果、院内死亡は3万4,578例(18.7%)で、同死亡または3日以上のICU入室は10万2,976例(55.7%)だった。SOFAスコアが2点以上増加した人の割合は90.1%、SIRS基準スコアが2以上は86.7%、qSOFAスコアが2点以上は54.4%だった。 院内死亡の識別能に関するAUROCは、SIRS基準が0.589、qSOFAスコアが0.607に対し、SOFAスコアは0.753と有意に高かった(p<0.001)。 院内死亡または3日以上のICU入室に関する識別能も、SIRS基準が0.609、qSOFAスコアが0.606に対し、SOFAスコアは0.736と有意に高かった(p<0.001)。 著者は、「結果は、ICU入室患者の死亡予測の有用性について、SIRS基準とqSOFAは限定的であることを示すものだった」と述べている。

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軟性S状結腸鏡検査、60歳以上の女性では効果なし?/BMJ

 軟性S状結腸鏡検査による大腸がんスクリーニングは、大腸がん発症リスクを男性では24%、女性では17%の減少効果があったものの、年齢別にみると60歳以上の女性については同スクリーニングによる大腸がん発症リスクの抑制効果は認められなかった。ノルウェー・Sorlandet Hospital KristiansandのOyvind Holme氏らが、被験者総数約29万例を対象に行ったプール解析で明らかにしたもので、BMJ誌2017年1月13日号で発表した。軟性S状結腸鏡検査スクリーニングは、無作為化試験で、大腸がんへの有用性が示されているが、年齢および性別にみたスクリーニング効果は不明であった。米国、イタリア、ノルウェーの無作為化試験をプール解析 研究グループは、3つの無作為化試験(米国のPLCO試験[Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian cancer screening trial]、イタリアのSCORE試験[Screening for Colon and Rectum trial]、ノルウェーのNORCCAP試験[Norwegian Colorectal Cancer Prevention trial])についてプール解析を行い、軟性S状結腸鏡検査による大腸がんスクリーニングについて、性別、年齢別の有効性を検証した。 被験者の年齢は、PLCO試験が55~74歳、SCORE試験が55~64歳、NORCCAP試験が50~64歳だった。各試験の介入群は、SCORE試験とNORCCAP試験では1回、PLCO試験では2回の軟性S状結腸鏡検査によるスクリーニングを受けた。対照群はいずれも0回だった。大腸がん死亡リスク、女性では60歳未満で低下 被験者総数28万7,928例を対象にプール解析を行った。被験者のうち、軟性S状結腸鏡検査によるスクリーニングを受けた人は11万5,139例、スクリーニングなしで通常のケアを受けた人は17万2,789例だった。追跡期間の中央値は、10.5~12.1年だった。 同スクリーニングにより、男性の大腸がんの相対リスクは、0.76(95%信頼区間:0.70~0.83)、女性は0.83(同:0.75~0.92)に減少した。男性については、60歳未満と60歳超では、スクリーニングの有効性に差は認められなかった。 一方女性では、60歳未満では同スクリーニングにより大腸がんの相対リスクは0.71(同:0.59~0.84)に減少したが、60歳以上については、同リスクの有意な減少は認められなかった(相対リスク:0.90、同:0.80~1.02)。また、大腸がん死亡率も、男性では年齢にかかわらず有意に減少し、女性では60歳未満において有意に減少した。 大腸がんの部位別にみると、遠位部の発症についてはスクリーニングの効果は男女で同程度であったが、近位部では性および年齢間に有意な交互作用が認められた(p=0.04)。 著者は、「スクリーニングの有益性は60歳以上女性では小さくまた統計的に有意ではなかった。同集団について、近位部腫瘍検出のより効果的なスクリーニング法を検討する必要がある」と述べている。

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歩くのが遅いと認知症リスク大

 歩行速度は、将来の認知症を予測する良い因子である。東京都健康長寿医療センター研究所の谷口 優氏らは、日本人高齢者の歩行性能軌道パターンを特定し、歩行性能が認知症と関連しているかを検討した。Journal of the American Medical Directors Association誌2017年2月号の報告。 2002~14年の日本における集団ベースフォローアップ観察プロスペクティブ研究として実施された。65~90歳の認知症でない高齢者1,686人(平均年齢:71.2歳[SD:5.6]、女性比:56.3%)を対象に、2002年6月~2014年7月まで毎年、老人保健調査を行った。追跡調査数の平均は3.9、総観察数は6,509件であった。歩行性能は、通常および最大速度での歩行速度と歩幅を測定することにより評価した。日本の公的介護保険制度のデータベースを調査したところ、2014年12月までに196人(11.6%)が認知症を発症していた。 主な結果は以下のとおり。・通常と最大速度での歩行速度と歩幅より高・中・低の3つの軌道パターンを特定した。これら歩行パターンは、男女間で同様に減少した。・重要な交絡因子で調整したのち、通常ベースの歩行速度と歩幅の低パターン群における認知症発症率は、それぞれ3.46(95%CI:1.88~6.40)、2.12(95%CI:1.29~3.49)倍であった。・最高速度ベースの歩行速度と歩幅の低パターン群における認知症発症率は、それぞれ2.05(95%CI:1.02~4.14)、2.80(95%CI:1.48~5.28)倍であった。 著者らは「歩行速度および歩幅の3つの主要パターンは、ベースラインのレベルにかかわらず、年齢関連変動を示す傾向があった。歩行速度および歩幅の低パターン高齢者は、認知症リスクが高いため、歩行能力改善のための介入が重要である」としている。関連医療ニュース 米国の認知症有病率が低下、その要因は 歩くスピードが遅くなると認知症のサイン 認知症者はどの程度活動性が落ちているか

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遠隔医療を活用した未熟児網膜症スクリーニング法4つを比較

 米国・ペンシルベニア大学のJaclyn Gurwin氏らは、急性期未熟児網膜症の遠隔評価法(Telemedicine Approaches to Evaluating Acute-Phase Retinopathy of Prematurity:e-ROP)研究における遠隔医療システムでの眼底所見分類と、フィラデルフィア小児病院未熟児網膜症(CHOP-ROP)出生後体重増加予測モデルを相乗的に使用し、重症ROP発症児を特定するROPスクリーニング段階的アプローチ法(tiered approach to retinopathy of prematurity screening:TARP)について検討した。その結果、TARPはほかの方法と比較して画像検査および眼科検査の回数減少と関連していることを明らかにした。著者は、「出生後成長モデルと遠隔医療システムを用いた段階的アプローチ法は、ROPに対する臨床介入の回数を減少できる可能性がある」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年1月5日号掲載の報告。 研究グループは、e-ROP研究(前向き研究)とPostnatal Growth and Retinopathy of Prematurity(G-ROP)研究(後ろ向きコホート研究)の両コホートを対象に、事後解析を行い、次の4つのROPスクリーニング法について評価した:ROUTINE(眼科医による診断検査)、CHOP-ROP(出生体重、在胎期間、体重増加量率より毎週リスクを算出し、閾値を超えたら診断検査)、e-ROP IMAGING(訓練された読影者(非医師)が専門医への紹介を要すると判断したら検査を開始)、TARP(CHOP-ROPの基準で画像検査を行い、専門医への紹介を要するROPの所見を認めたら眼科医が診断)。 e-ROP研究は、出生体重1,251g未満の早産児が対象で、2011年5月25日~2013年10月31日に登録された。G-ROP研究は、2006年1月1日~2011年12月31日に生まれROP検査を受けたすべての乳児が対象であった。 評価項目は、1型ROPの検出感度、画像検査を行った乳児数、撮像セッション数、眼科検査の回数、患者面接(撮像セッションと眼科検査)などであった。 主な結果は以下のとおり。・本研究には、ROPと診断された242例が組み込まれた(出生体重:中央値858g、範囲690~1,035g、在胎期間:中央値27週、範囲25~29週、性別:女児51%、男児49%)。・1型ROP(32例)の検出感度は、いずれのアプローチも100%(95%CI:89.3~100%)であった。・各スクリーニング法での検査例数と回数は以下のとおり。 ROUTINE:眼科検査242例・計877回 CHOP-ROP:眼科検査184例・計730回 e-ROP IMAGING:画像検査242例・撮像セッション計532回、眼科検査94例・計345回(患者面接877回) TARP:画像検査182例・撮像セッション計412回、眼科検査87例・計322回(患者面接734回)

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スタチンが静脈血栓塞栓症を予防~メタ解析

 静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症と肺塞栓症)に対するスタチンの予防効果が示唆されているが、明確なエビデンスはない。英国ブリストル大学のSetor K Kunutsor氏らは観察コホート研究と無作為化比較試験(RCT)の系統的レビューおよびメタ解析を行ったところ、静脈血栓塞栓症の1次予防にスタチンが有益であることが示唆された。また、スタチンによって効果に差があることも示された。Lancet Haematology誌オンライン版2017年1月12日号に掲載。 スタチンと静脈血栓塞栓症との関連を報告した研究について、MEDLINE、Embase、Web of Science、Cochrane Libraryのデータベース、2016年7月18日までに出版された研究の参考文献のマニュアル検索、研究者との電子メールのやりとりから特定した。スタチン使用と成人の静脈血栓塞栓症/深部静脈血栓症/肺塞栓症との関連を調べた観察コホート研究、スタチン治療の効果をプラセボ投与や無治療と比較し、静脈血栓塞栓症/深部静脈血栓症/肺塞栓症の転帰に関するデータを収集している介入試験を特定した。なお、スタチンの効果を他のスタチンや脂質低下薬と比較した試験は除外した。ランダム効果モデルを用いて試験特異的な相対リスク(RR)を統合し、研究レベルによってグループ分けした。 主な結果は以下のとおり。・13のコホート研究(314万8,259例)、スタチン治療をプラセボもしくは無治療と比較した23のRCT(11万8,464例)の36試験を適格とした。・観察研究において、スタチン使用群を不使用群と比較した場合の静脈血栓塞栓症の統合RRは0.75(95%CI:0.65~0.87、p<0.0001)で、この関連性は研究レベルによってグループ分けされた場合でも同様であった。・RCTにおいて、スタチン治療をプラセボもしくは無治療と比較した場合の静脈血栓塞栓症のRRは0.85(95%CI:0.73~0.99、p=0.038)であった。・サブグループ解析では、ロスバスタチンが他のスタチンと比べ静脈血栓塞栓症リスクが最も低く(RR:0.57、95%CI:0.42~0.75、p=0.015)、スタチンの効果がスタチンによって有意に異なることが示された。・肺塞栓症へのスタチンの効果についてはエビデンスが得られなかった。・深部静脈血栓症のエンドポイントのリスクは、スタチン使用が不使用に比べて有意に低下した(RR:0.77、95%CI:0.69~0.86、p<0.0001)。

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片頭痛患者は術後脳卒中リスクが高い/BMJ

 片頭痛歴のある患者は周術期虚血性脳卒中リスクと30日再入院率が高いことが、米国・マサチューセッツ総合病院のFanny P Timm氏らによる検討の結果、明らかにされた。著者は、「片頭痛は、評価すべき周術期虚血性脳卒中のリスクと考えるべきだろう」とまとめている。先行研究で、片頭痛は虚血性脳卒中のリスク因子であることが、とくにそのリスクは、前兆を伴う片頭痛を有する患者で増大することが報告されていた。BMJ誌2017年1月10日号掲載の報告。12万4,558例を対象に30日以内の発症と再入院率などを調査 研究グループは、片頭痛を有する患者で周術期虚血性脳卒中のリスクは増大するのか、またこのことが再入院率につながるのかを調べるため、2007年1月~2014年8月に、マサチューセッツ総合病院と2つの関連施設で手術を受けた12万4,558例を対象とした前向き病院レジストリ研究を行った。 主要アウトカムは、術後30日以内の周術期虚血性脳卒中の発症で、片頭痛ありの患者となしの患者について調べた。副次アウトカムは、術後30日以内の再入院とした。また、探索的アウトカムとして、退院後脳卒中、神経解剖学的な脳卒中部位なども評価した。片頭痛歴あり患者のリスクは1.75倍、前兆を伴う片頭痛患者では2.61倍 対象患者12万4,558例は、平均年齢52.6歳、女性は54.5%であった。 あらゆる片頭痛の診断歴のある患者は1万179例(8.2%)で、そのうち、前兆を伴う片頭痛を有する患者は1,278例(12.6%)、8,901例(87.4%)は前兆を伴わない片頭痛を有する患者であった。 術後30日以内の周術期虚血性脳卒中の発症は、771例(0.6%)であった。 片頭痛歴ありの患者は、なしの患者と比べて、周術期虚血性脳卒中のリスクが高いことが示された(補正後オッズ比[OR]:1.75、95%信頼区間[CI]:1.39~2.21)。また、同リスクは、前兆を伴う片頭痛患者のほうが(同:2.61、1.59~4.29)、伴わない患者(1.62、1.26~2.09)と比べて高かった。 周術期虚血性脳卒中の予測絶対リスクは、1,000手術患者当たり2.4(95%CI:2.1~2.8)で、あらゆる片頭痛歴患者1,000例当たりでは4.3(3.2~5.3)に増大し、前兆を伴わない片頭痛患者では同3.9(2.9~5.0)であるが、前兆を伴う片頭痛患者では6.3(3.2~9.5)に増大した。 片頭痛歴のある患者は、退院後30日以内の再入院率も高かった(補正後OR:1.31、1.22~1.41)。

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ペムブロリズマブ 肺がん1次治療の適応さらなる拡大へ:化学療法との併用で

 Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A. は2017年1月10日、FDA(米国食品医薬品局)がペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の生物学的製剤承認一部変更申請(sBLA)を受理したことを発表した。この申請は、同社の抗PD-1 抗体ペムブロリズマブと化学療法(ペメトレキセド+カルボプラチン)の併用を、PDーL1発現の有無にかかわらず(EGFRおよびALK変異のない)転移性・進行の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療とするというもの。 これはペムブロリズマブが他の治療法との併用で承認を目指す初めての申請となる。この申請では、ペムブロリズマブ200mg(固定容量)と、ペメトレキセド500mg/m2+カルボプラチンAUC5 の3週ごと4サイクルの併用についての迅速承認を求めている。申請の基礎となったKEYNOTE-021 part2 コホートGは、123例のEGFRおよびALK変異のない未治療の非扁平上皮NSCLCで、PDL1発現にかかわらない患者に対して行われた。 ペムブロリズマブは、PD-L1高発現(50%以上)で、EGFRおよびALK変異陰性のNSCLCの1次治療に承認されている。また、PD-L1発現1パーセント以下の場合、EGFRおよびALK変異陰性例では、プラチナを含む化学療法で病勢進行した患者に、EGFRおよびALK変異陽性例では、承認された各治療で病勢進行した患者での適応を有している。(ケアネット 細田 雅之)MERCK(米国)のニュースリリースはこちら関連情報ペムブロリズマブの追加が非小細胞肺がん1次治療の結果を改善:ESMOKEYNOTE-021試験(ClinicalTrials.gov)

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クレヨンしんちゃん【ユーモアのセンス】Part 1

今回のキーワード試し行為子育てタイプ社会的コミュニケーション障害回避性パーソナリティ障害社会的遊び進化心理学メラビアンの法則しんちゃんはなぜお尻を出すの?ユーモアのセンスみなさんは、「人を楽しませたい」または「子どもにコミュ力をつけたい」と思うことはありますか? その方がきっと人間関係がうまく行きそうだと思いますよね。今回は、ユーモアのセンスをテーマに、国民的人気アニメ番組の「クレヨンしんちゃん」を取り上げます。主人公は、野原家長男のしんちゃん。5歳児でありながら、しんちゃんのペースに母みさえや父ひろしを初め、周りが巻き込まれ、翻弄されます。このアニメは、2012年まで日本PTA協議会主催の「小中学生と親のテレビ番組に関する意識調査」の「子どもに見せたくない番組」アンケート(2013年に廃止)では毎年上位にランクインしていました。しかし、最近は育児書として良い意味で再注目されています。さらには、ユーモアのヒントもたくさん詰まっており、コミュニケーション能力を高めるモデルとしても参考になります。それでは、「クレヨンしんちゃん」を通して、コミュニケーション能力を高める親モデル、ユーモアを初めとする遊びの起源、明日から使えるユーモアのエッセンスについていっしょに考えていきましょう。なぜしんちゃんはお尻を出すの?-コミュニケーション能力を高めるしんちゃんは、人前でよく「お尻ぶりぶり」と言いながらお尻を出してふざけます。母みさえと父ひろしを呼び捨てにすることもあります。特にみさえには「お便秘みさえ」「バキュームかーちゃんみさえ号~」「ケツでか~」「ぶよぶよお腹~」などと言い、からかいます。このように、ふざけたり人をからかったりするのは下品で不真面目だという理由で、PTAの親たちは有害番組だと思ったのでしょう。確かに大人から見ればそうです。ただ、子どもにとっては、どうでしょうか? そもそもしんちゃんはなぜお尻を出すのでしょうか?それは、しんちゃんが、コミュニケーション能力を高めようとしているからです。言い換えれば、しんちゃんはお尻を出すとどうなるか相手と状況を見極めて試しています。それが結果的に、下品で不真面目なように見えてしまっているだけです。なぜなら、よくよく見ると、しんちゃんは、知らない人しかいない状況や好きな女性の前では、むしろ過剰な良い子を演じることで笑いを誘います。しんちゃんは、お尻を出すことは下品で良くないと重々分かっているのです。しんちゃんがお尻を出すのは、圧倒的にみさえがそばにいる時です。そして、みさえのリアクションを確認して、楽しんでいます。つまり、しんちゃんは、母親が嫌がることをわざとやっているのです。心理学的に言えば、愛着理論の試し行為に当たります。「構ってほしい」「それでも構ってもらえる」という信頼関係の確認です。このようなふざけ、からかい、いたずらなどは、信頼関係を深めるためのより高度な「挨拶」であると言えます。つまり、コミュニケーション能力とは、ふざける能力、遊び心でもあります。相手にふざけた後にその出方を見て、心の間合いを探っています。そして、いろいろな心の間合いがあることに気付きます。こうして相手や状況によって、その間合いを予測できるようになっていきます。ちょうど色々な動きを通して運動能力を高めるのと同じように、ふざけることも含めて色々なやり取りを通してコミュニケーション能力を高めています。また、ちょうど運動と同じように、コミュニケーションもすればするほど心地良いと感じるようになるでしょう。みなさんの中に、尻出しに対してもっと厳しくした方が良いという意見はありますでしょうか? 確かに、誰に対してもやっている場合は知的障害や自閉症スペクトラム障害の可能性を考え、対策が必要でしょう。また、女の子であれば、男の子に対してほど世の中の寛容さがないので、禁止するべきでしょう。一方、しんちゃんのように男の子でわざとやっている場合は、とても厳しくする必要はないです。ところで、しんちゃんは小学生になっても、お尻を出すでしょうか? その答えは、ノーです。しんちゃんの発達段階の幼児期はトイレットトレーニングの時期です。この時期は「お尻」「うんち」など排泄に関する下ネタをとても意識し、過剰に反応し、大好きになります。ところが、小学生の学童期に入ると、すでにトイレットトレーニングの課題は卒業しています。幅広い学習の機会が増え、表面的で具体的な発想から、より内面的で抽象的な発想をするようになります。よって、ふざけるにしても、見た目よりも中身に目が向き、より高度になっていきます。これが、ユーモアのセンスに発展していきます。逆に言えば、尻出しなどの単純なふざけによって、ユーモアのセンスの土台を作っているとも言えます。しんちゃんがお尻を出したらどうする?-コミュニケーション能力を高める親モデルしんちゃんのように、子どもがお尻を出すなどふざけたり、からかったりしたら、どうしましょうか? 子どものコミュニケーション能力を育むためには、実は親のコミュニケーション能力が問われてきます。その親モデルとして3つの要素があげられます。母みさえを初めとする周りのリアクションから考えてみましょう。(1)分かりやすいリアクション-社会性を育むまず、みさえは「こらっ、しんのすけ!」とムキになって怒ります。また、みさえのお決まりの「グリグリ」のお仕置きが登場することもあります。どこかコミカルです。そのわけは、気持ちをストレートに伝えて、リアクションがパターン化され分かりやすいからです。お仕置きについては、感情に任せた体罰ではなく、儀式化されたものです。コミュニケーションは、心の「プロレス」です。みさえはこの「プロレス技」を通して、実はやりとりを楽しんでいるようにも見えます。こうして、やって良いことと悪いことのルールが協調されることで、世の中で生きていくためのスキル、つまり社会性が子どもに育まれていきます。やがて、その成功体験の積み重ねによって、「自分ならできる」という自信が育まれます。(2)いつもは温かくて楽しい-共感性を育むみさえはしんちゃんによく爆発していますが、安心感があります。そのわけは、すぐに普段通りの温かくて楽しいお母さんに戻っていて、メリハリがあるからです。一方、しんちゃんがお風呂上がりに、いっしょにいた父ちゃんに下半身裸で「父ちゃん、ほら、ぞうさん」と言うと、父ちゃんは「ほ~らマンモス~」と悪ノリしています。その2人のやりとりを見たみさえは恥ずかしげに「おバカ親子」とツッコミを入れています。こうして、「たとえふざけても怒られるのはその時だけ」「怒られつつも楽しい」という共感性や安心感が子どもに育まれていきます。やがて、その信頼関係が強まることで、「どんな時も自分は大丈夫(大切にされている)」という自尊心が育まれます。(3)スキがある-積極性を育むみさえは、しんちゃんがこたつのテーブルを倒して滑り台にして遊んでいるのを叱ります。しかし、その後に、つい出来心で自分も滑って楽しんでしまいます。その様子をしんちゃんとひろしに冷たい目で見られ、「ハッ」と赤面します。このように、みさえはお間抜けキャラでスキがあります。おっちょこちょいで失敗もよくしています。怠け癖もあります。言い換えれば、みさえは決して完璧な母親(パーフェクトマザー)ではないです。とても人間味溢れる、ほど良いお母さんです(グッドイナッフマザー)。そして、ツッコミ甲斐があります。これは、自信につながります。また、お間抜けという失敗のモデルを見せているので、しんちゃんには「うまく行かなくても大丈夫」というメッセージが伝わります。これは、自尊心につながります。こうして、自信と自尊心を土台として、スキなどの何かおかしな点に気付いていく観察力やそれを指摘する行動力を伸ばすことで、積極性や創造性が子どもに育まれていきます。逆に言えば、子どもの積極性を高めるには、あえてスキをつくる、不真面目を演じる、つまり親のコミュニケーション能力として「ボケる」ことも重要になってきます。野原家、風間家、桜田家の子育てタイプの違いは?-グラフ1しんちゃんの通う幼稚園の仲良しのお友達でカザマくんとネネちゃんがいます。ここから、しんちゃんの野原家、カザマくんの風間家、ネネちゃんの桜田家のそれぞれの子育てタイプを整理して、コミュニケーション能力に影響を与える要素を探ってみましょう。なぜなら、コミュニケーション能力は、家庭内での親との人間関係を基礎として、家庭外での幼稚園・保育園の先生や友達、近所の人たちとの人間関係に応用されていくからです。子育て(家族機能)を国家になぞらえて、さきほどに紹介したルールの学習である社会性を縦軸の厳しさ(父性)、共感性を横軸の優しさ(母性)として、模式的にグラフ化してみましょう。子育ては、4つのタイプに分けられます。これは、カリフォルニア大学バークレー校の研究者ダイアナ・バウムリンド氏の子育てモデルを参考にしています。(1)しんちゃんの野原家-民主国家型まず、しんちゃんの野原家は、厳しさと優しさのバランスがとれています。自分の主張をしつつ、相手の主張も配慮して、お互いの折り合いを見つけるという意味で、民主国家型です。この心理は、社会性、共感性、積極性の全てがあります。自信と自尊心の両方が安定しているため、「おらならできるし、できない時もおらは大丈夫」という発想になります。この子育てタイプのプラス面は、ユーモアを初めとするコミュニケーション能力が育まれます。一方、マイナス面としては、厳しさと優しさのバランスを意識する労力を初めとして親もコミュニケーション能力を高める努力が必要になります。(2)カザマくんの風間家-独裁国家型次に、カザマくんの風間家は、優しさよりも厳しさに偏っています。将来エリートになるために、すでに幼稚園児にして塾通いをして、家でも勉強ばかりです。カザマくん自身もエリート然として振る舞っています。しかし、ママの顔色をうかがい、実はかなりのマザコンです。風間家の子育ては、有無を言わさず決められたことをやらされるいう意味で、独裁国家型です。この心理は、社会性が高すぎて、共感性が足りなくなり、結果的に積極性が不安定になります。自信は安定していますが自尊心が安定していないため、「ボクならできるけど、それでもボクはだめだ」という発想になります。一見、エリートになるために、小さい時から努力させることは良いことのように思えます。この子育てタイプのプラス面は、実際にエリートになる可能性があることです。さらに、子どもの能力が高ければ、親の「独裁」を乗り越えて、「革命」を起こし、世の中を動かす大物になるでしょう。一方、マイナス面としては、2つの危うさがあります。a. ユーモアがよく分からない1つは、ユーモアがよく分からないことです。小学生までは親の言いつけを守って、必死にがんばるでしょう。優等生で良い子です。しかし、中学生になったらどうなるでしょうか?中学生以降の思春期は、自分で自分の行動を決めるアイデンティティ(自我)の確立の時期です。この時、友達は、小学生のように周りから配慮されてできるわけでないです。友達は自分からつくる必要があります。この時に求められる能力は、相手の気持ちを察すること、相手との上手な間合いを取ること、そして、相手を楽しませることです(共感性)。つまり、どれだけ勉強をやってきたかの学力ではなく、どれだけおふざけをやってきたかのコミュニケーション能力が重要になってきます。逆に言えば、勉強ができても、ユーモアがよく分からなければ友達をつくるのに苦労します。そして、遊び心が足りない生真面目で退屈な大人になってしまい、人間関係で苦労するでしょう。その状況が深刻な場合は、社会的コミュニケーション障害と呼ばれます。この心理は、真面目になるという社会性はありますが、あえて不真面目をいっしょに楽しむという共感性が足りないです。b. 受け身になるもう1つは、受け身になることです。本来、中学生以降の思春期は、自分で自分の行動を決め、失敗も含めてその結果を受け入れる時期です。それは、自分で選んだ道だと納得し、これからも自分はどうしたいかという自分の生き方を見つけることです(積極性)。しかし、もともと親の「独裁」によって、自分で決めるという自由が極端に抑えられていれば、いざ自分で自分の行動を決めようにも、どうして良いか分からなくなります。決められたレールに乗ってきたので、レールがないと動けない、進めないのです。また、小学校まではうまく行かなくても親が決めたことなので自分のせいにはならなかったのに、自分で決めてしまうと自分のせいになってしまいます。つまり、失敗の責任を負うことに慣れていないのです。よって、すぐに正解を求めようとしたり、マニュアルを重視するようになります。このような完璧への執着は、裏を返せば失敗への恐怖、「失敗恐怖症」です。大人になって、仕事をする時も指示待ち人間になるでしょう。また、恋愛においても臆病になるでしょう。その状況が極端な場合は、回避性パーソナリティ障害と呼ばれます。この心理は、言われたらやるという社会性はありますが、自分からやるという積極性が足りないです。また、失敗の責任を負うことに慣れていないので、実際にうまく行かないことが起きたときは、「親のせいだ」「社会のせいだ」「病気のせいだ」という発想に陥りやすくなります。「自分のせいでもある」という自分の責任として真っ正面から向き合うこと(直面化)に耐えられず、誰かのせい、何かのせいにしようとする責任転嫁の心理が働きやすくなります(認知的不協和)。(3)ネネちゃんの桜田家-ユートピア型最後に、ネネちゃんの桜田家は、厳しさよりも自由さ(優しさ)に偏っています。ネネちゃんは、ウサギのぬいぐるみを懐に忍ばせ、嫌なことがあるとそれを殴ってストレスを発散させています。そして、実は、ママも同じことをしていて、ネネちゃんはママのまねをしています。女の子がぬいぐるみを殴るという行為を母親が黙認しています。むしろ逆に、母親がその悪いお手本を示しています。それをたしなめる父親はいません。また、より健康的なストレス発散の対処法(コーピングスキル)の提案もありません。このように、桜田家の子育ては、自由気ままにすることが許される甘やかしという意味で、ユートピア型です。この心理は、社会性が足りず、共感性が高いので、結果的に積極性が不安定になります。自信は安定していないですが自尊心が安定しているため、「私はできないけど、それでも私は大丈夫」という発想になります。この子育てタイプのプラス面は、自由で独創的な発想を育むことです。しんちゃんたちが巻き込まれるネネちゃんの「リアルおままごと」は、結末が必ず離婚か実家に帰る設定になっており、独特でリアリティがあります。一方、マイナス面は、自由さの裏返しで、出しゃばりで身勝手になってしまうことです。ネネちゃんは、しんちゃんから「他人の心は読めるのに、場の空気は読めない」と言われています。残念ながら、大人の世界にユートピアは存在しません。よって、大人になっても、その状況が極端な場合は、自己愛性パーソナリティ障害と呼ばれます。この心理は、自由にする積極性はありますが、相手の自由も尊重するという社会性が足りないです。また、大人になっても衝動性のコントロールが困難な場合は、アルコール、ギャンブル、人間関係の巻き込まれ(共依存)などの嗜癖性障害のリスクが高まります。例えば、アルコール依存症の人の典型的なセリフとして、「(断酒はできないけど)自分はまだ大丈夫」という否認の心理です。この心理は、甘えるという共感性はありますが、甘えすぎないという社会性が足りないです。(4)該当なし-無法地帯型おまけとして、当てはまるしんちゃんのお友達はいませんが、厳しさも優しさもない家庭だと、どうなるでしょうか? 親が多忙であったり、子育てに無関心であったりして、子どもに衣食住の必要最低限のものは与えますが、それ以外は関わらない状況です。これは、ネグレクト(育児放棄)に当たり、もはや国家の形をなしていないという意味で、無法地帯型です。この心理は、社会性と共感性が足りず、積極性も不安定になります。自信も自尊心も安定していないため、「自分はできないし、できる時も自分はだめだ(どうもこうもならない)」という発想になります。この子育てのプラス面は、特にないです。一方、マイナス面としては、知的発達や愛着の問題から、非行(素行障害)に走りやすくなりなす。大人なれば、反社会性パーソナリティ障害のリスクが高まります。次のページへ >>

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クレヨンしんちゃん【ユーモアのセンス】Part 2

なぜ遊びは「ある」の?―進化心理学しんちゃんがするようなふざけ、からかい、いたずらなどは、社会的遊びと言えます。これまで、「なぜ遊びをするのか?」について考えてきました。その1つの答えは、コミュニケーション能力を高めるためでした。それでは、そもそもなぜ遊びは「ある」のでしょうか? その答えを、進化心理学的に考えてみましょう。実は、私たち人間だけでなく、犬やねずみなど多くの哺乳類も社会的遊びをしています。例えば、ネズミ同士が上になったり下になったりする戦いごっこ(プレイ・ファイティング)、犬が頭を下げてお尻を上げて尻尾を振る挨拶遊び(プレイ・バウ)などです。そして、哺乳類の中で私たちヒトは、さらに高度なコミュニケーションの心理を進化させました。それが、社会脳です。これは、先ほど説明した社会性、共感性、積極性を主に含んでいます。太古の昔から、そうする種、そうしたいと思う種が生き残り、子孫を残しました。その子孫が現在の私たちです。逆に、そうではない種は、子孫を残さないわけですから、理屈の上ではこの世にほぼ存在しないと言えます。つまり、「なぜ遊びは『ある』の?」という問への答えは、進化心理学的に言えば、生きるためそして子孫を残すため、つまり生存と生殖に必要だからです。だからこそ、運動と同じように、コミュニケーションもすればするほど心地良いと感じ、その能力が高まっていくのです。社会的遊び、習い事、娯楽の違いは? ―表4現代の文明社会では、社会的遊びに取って代わって、習い事や娯楽に占める割合が増えてきています。この3つの違いを比較して、その本質を探り、私たちに必要なものは何か考えてみましょう。(1)社会的遊びしんちゃんが母みさえとのやりとりを楽しんでいるように、社会的遊びの特徴は、新奇希求性です。これは、新しいことや変わったことを求める心理です。そうすること自体に楽しさを見いだし、夢中になります(内発的動機付け)。逆に言えば、目的はなく、偶発性に富んだ生身の体験で、シリアスではないので余裕があります。うまく行くことが前提ではないので、冒険をして、失敗を繰り返すことができます。プラス面は、チャレンジ精神のエネルギー源になり(積極性)、コミュニケーションのルールを自分で学び(社会性)、応用するようになることです(創造性)。一方、マイナス面は、この心理を育むには時間と親や周りの配慮が必要になることです。(2)習い事カザマくんが塾で勉強をけなげにがんばっているように、習い事の特徴は、緊張感です。特定の能力を習得するために、必死になります(外発的動機付け)。はっきりとした目的があり、その目的を達成するという必然性に縛られた仮想的な体験で、シリアスで余裕があまりないです。うまく行くことが前提なので、冒険はできず、失敗は恐怖になりえます。もちろん子どもの能力がもともと高い場合、その緊張感に勝って楽しさを見いだすでしょう。しかし、子どもの能力が高くない場合は、習い事が増えれば増えるほど、難易度が高くなればなるほど、そして子どもの能力が低ければ低いほど、こなすことに追われたり、失敗による恐怖体験を繰り返すので、そうすること自体に楽しさを見いだしにくくなります。また、親が監視してプレッシャーを与えると、緊張感はますます高まります。習い事のプラス面は、習得した特定の能力を社会生活に生かしたり、生活を豊かにすることができます。例えば、勉強したことが学歴や資格となれば、職業的に役立ちます。また、スポーツや楽器演奏はそれ自体が楽しみとなります。一方、マイナス面は、主に3つあります。1つ目は、子どもの能力が低い場合、結果的に、習得しようとする能力が身に付かないばかりか別の能力が中途半端になる危うさです。顔や体格、身体能力と同じように、知的能力や言語能力についても、親の能力が子どもに一定の割合で遺伝することが分かっています。よって、例えば、親がもともと外国語を話さなかったり、母語の語彙力が多くない場合、子どもをバイリンガルにしようと早期の英語教育をしても、言語の許容能力の限界から、母語の習得も外国語の習得も中途半端になり、どちらも平均的な語彙力が身に付かない危うさがあります。また、フラッシュカードなど記憶力を高めるトレーニングばかりしても、実生活で生かされる場面が限られていれば、能力の維持が難しいという現実があります。そればかりか、知的能力のバランスが記憶力重視(システム化)に傾いてしまうので、共感性などのコミュニケーション能力の発達が中途半端になる危うさもあります。これは、先ほど説明した、ユーモアがよく分からないという心理につながっていきます。2つ目は、習い事は、社会的遊びと違って、目的や手段などの枠組みがあらかじめ決まっているため、積極性や創造性が高まりにくいことです。さらに、その時間が費やされた分、積極性や創造性を育む社会的遊びの時間が削られていくことです。例えば、幼児期の早期英才教育やお受験で週7回の習い事があったり、思春期に親が部活や恋愛を禁止する状況です。ものごとの知識としては知っているけど、生々しい体験としては分からなくなります。分かったつもりになってしまい、頭でっかちです。これは、先ほど説明した受け身の心理につながっていきます。大人になっても、とりあえずやってみようという冒険心が足りなくなります。そのため、コミュニケーション能力を高めようとしても、マニュアル本やオウム返しのなどのトレーニングに頼ってばかりになってしまいます。本や習い事で得たせっかくの知識を生かして、とりあえず職場で雑談したり合コンに行くなど実際の生身の体験を積み重ねることにためらいがちになります。また、コミュニケーションの手段としても、ライン、メール、スカイプなど情報が限られていて、いつでも相手をシャットアウトできる枠組みのあるツールや関係性に頼りがちになります。実際に会ってざっくばらんに話すことが苦手になってしまいます。3つ目は、無理強いすると、体を壊すのと同じように、緊張感や心の余裕のなさの心理的ストレスから心を壊す危うさもあります。心理実験で、もともと解決できない問題を解かされ続けた学生は、その後に簡単な問題を与えられても、無力感を持ち、学力が下がったという結果があります(学習性無力感)。このように、人は、達成しきれないことが繰り返されると、長期的にやる気をなくしてしまいます。これは、昨今の社会問題であるひきこもりにつながる心理です。よって、習い事における親の役目の大事なことは、親は単なる監督ではなく、いっしょにやって楽しむチームメイトにもなることです。例えば、あえてすぐに正解を教えず、いっしょに「なんでだろう?」と考えて、わくわくすることです。さらには、親がわざと間違えるくらいの構えが良いでしょう。また、親が本人に同じ目線でかかわり、限界を見極め、無理強いをさせないことです。例えば、習い事の更新の期間を設け、本人に続けたいか決めさせることです。また、本人が辞めたいと言っている時は、そのわけを話し合い、親が「あともう1か月続けてみるのは?」などの提案をしたとしても、最終的には本人の意思を尊重することです。そして、「どっちにしてもあなたは大丈夫」と保証して、自尊心を保つことです。本来、習い事は、社会的遊びの延長でした。学校(school)や学者(scholar)などの語源は、ギリシア語の「スコレー(scholē)」」です。これは、暇、余暇という意味で、その心の余裕から、思索や問答などの自発的で主体的な活動を指しています。ここから、ギリシア哲学が発展しました。しかし、現代の「スコレー」は、高度に構造化され、競争原理が働き、心の余裕があまりないようになってしまっています。(3)娯楽ネネちゃんが時々ウサギのぬいぐるみを殴っているように、娯楽の特徴は、ストレスを発散させる嗜癖性(しへきせい)です。嗜癖とは、すっきりするためについやってしまう心理です。英語では、アディクション(addiction)、中毒に当たります。娯楽も、社会的遊びと同じように、そうすること自体に楽しさや快感があります。しかも、自分気ままに一方的にできるので、全くシリアスではなく、心にとても余裕があります。ただし、その分、相手の気持ちを察したりして苦労することが求められないので、より良いコミュニケーションのための積極性や創造性は高まりません。また、成功体験を積み重ねているわけではないので、失敗への恐怖が克服されるわけでもないです。娯楽のプラス面は、ストレス発散です。一方、マイナス面は、2つあります。1つ目は、ストレス発散の裏返しで、嗜癖性、つまり刺激が強すぎて病みつきになり、のめり込む危うさがあることです。例えば、アルコールやタバコなどの嗜好品が分かりやすいです。さらに、より一般的には、テレビ、映画、テレビゲーム、インターネット、スマホです。これらは、映像、音声、情報の刺激がとても強い代表格です。進化心理学的に考えれば、原始の時代、このような情報や体験の入手には、調べたり人に聞いたり実際に行ったりして時間と労力がとてもかかるものでした。これらのコストをかけても生存や生殖に有利になるからこそ、脳が心地良いと感じるように進化したのでした。しかし、現代の文明社会では、あまりにも手軽に情報を入手でき、しかも疑似体験までできてしまいます。そうなると、脳は、ますますその刺激を求めるようになるわけです。特に幼少期の脳の発達は、外界からの影響を受けやすいので、刺激が強いとその分、のめり込みやすさ(嗜癖性)が強まりやすいです。よって、テレビを初めとする情報機器について、特に乳幼児には厳しく制限をすることが望ましいです。実際に、アメリカ小児科学会(AAP)は、2歳までの子どものテレビ視聴は奨励していないとの見解を示しています。これは、アメリカでディズニーが販売した赤ちゃん向け知育DVDの「ベイビーアインシュタイン」を見た赤ちゃんは、見ていない赤ちゃんよりも、語彙力が少ないという研究結果が出てしまい、返金騒動に発展したことを受けています。さらに、もともと行動の自由気ままさや人間関係での身勝手さが相まってしまうと、アルコールやドラッグなどの依存症になりやすい大人になります(クロスアディクション)。これは、先ほど説明した、出しゃばりで身勝手な心理につながっていきます。2つ目は、娯楽に時間が費やされた分、社会的遊びの時間が削られ、社会性や創造性が高まりにくくなることです。これは、先ほど説明した出しゃばり身勝手の心理につながっていきます。一見、オンラインソーシャルゲームやロールプレイングゲームは、協力したり想像して選択するルールがあるため、コミュニケーション能力を高めるのではないかと思われます。しかし、実際は、あくまでゲームです。ゲームは売れるために作られています。より多く売れるように、利用者に都合が良い刺激が過剰に仕組まれています。逆に、現実世界の厳しさを学べるような利用者に都合の悪い刺激のあるゲームは、楽しくないので、売れません。よって、娯楽における親の役目の大事なことは、娯楽に対する子どものセルフコントロールを支えることです。例えば、テレビやインターネットは2時間までのご褒美として、どの番組を見るかはチケット制にして選ばせることです。そして、「あなたならできる」と刺激して、セルフコントロールする自信を引き出すことです。本来、娯楽も、社会的遊びの延長でした。娯楽(recreation)の語源は、「再び(re)+創造(creation)」です。これは、気晴らし、元気回復という意味で、もともと創造性があることを示唆しています。それは、お祭りのように年に数回と限られていたからです。しかし、現代は、刺激の強いものが身の回りにあふれ、昔と比べると、毎日がお祭りです。つまり、現代の「再び創造(レクリエーション)」は、いつも「創造」の状態で、創造力が麻痺してしまっており、逆に創造性が失われてしまっています。これからの教育とは? ―詰め込み教育、ゆとり教育、そしてアクティブラーニングへこれまで考えてきた社会的遊び、習い事、娯楽の本質は、ちょうどそれぞれの時代の学校の3つの教育方針にも当てはまります。時代の流れの順に、それぞれの特徴を考えてみましょう。(1)詰め込み教育まずは、習い事が当てはまる詰め込み教育です。これは、まさにひたすら知識を詰め込む教育です。18世紀後半の産業革命以降、特に日本だと19世紀後半の文明開化以降、世の中に求められたのは、一定の知識、忍耐力、正確さ、そして従順さなどの画一的な労働力でした。そのために必要だったのが、画一的な教育です。それが、詰め込み教育だったのです。この教育は、戦後から60年代の高度成長期を支える大きな役割を果たしました。しかし、90年代以降、バブル崩壊による年功序列制度と終身雇用制度の破綻によって、行き詰まっています。そのわけは、もはや苦労して勉強してもあまり報われなくなったからでした。(2)ゆとり教育次に、娯楽が当てはまるゆとり教育です。これは、ゆったりとした時間を確保する教育です。詰め込み教育によって、競争意識が過剰に働くようになりました。そして、落ちこぼれや非行が問題化しました。その反省として、90年代以降、横並び意識を重視した教育方針のもと、学習時間を減らし、自由時間を増やしたのでした。しかし、ゆとり教育の問題点は、その自由時間の使い方です。子どもは、社会的遊びをしないで、当時に普及したテレビゲームや漫画などの娯楽を楽しんでいるだけだったのです。(3)アクティブラーニング最後に、社会的遊びが当てはまるアクティブラーニングです。これは、積極的に学ぶ動機付けをする教育です。詰め込み教育による受け身の心理や、ゆとり教育による自由気ままさや横並びの心理から、不登校やいじめの問題が深刻化していきました。その反省として、2014年から、積極性を重視した教育方針が打ち出されたのです。これは、授業スタイルが、従来の一方的な一斉指示による教師中心から、双方向のグループワークによる生徒中心にシフトしています。従来は、授業で内容を理解して、復習として宿題をするスタイルでした。一方、アクティブラーニングでは、予習で大まかな内容をあらかじめ理解して、授業で他の生徒たちと協力して問題に取り組み、復習を兼ねた振り返りを最後にします。よって、宿題はないです(反転授業)。そのため、アクティブラーニングでは、あえて説明を減らし、目標を示して質問を増やします。自由な発想を引き出すため、生徒がしゃべること、立ち歩くことが勧められます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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クレヨンしんちゃん【ユーモアのセンス】Part 3

しんちゃんから学ぶユーモアのコツここから、すでにユーモアの「エリート」のしんちゃんから学ぶユーモアのコツを3つに整理してみましょう。どれも明日からすぐに使える基本モデルです(表2)。(1)わざと大げさしんちゃんが父ひろしといっしょに竹馬をつくるシーン。父が「まず竹を切る。そこをしっかり押さえてくれ」と言うと、「オラ切りたい。オラ切りたい」「オラに切らせないと親子の縁切るぞ」と騒ぎます。また、しんちゃんがお茶の葉を入れようとして、筒ごとひっくり返してしまいます。険しい表情の母みさえに、しんちゃんは「お茶ちゃが飛び降り自殺した・・・」と神妙な顔をします。1つ目は、このようにわざと大げさにする、誇張です。これには、さらに3つの要素があります。a. 見た目1つ目は、表情と身振りなどの見た目です(非言語的コミュニケーション)。相手と接する時に、表情を豊かにして、手を広げるなど身振り手振りを大きくすると、エネルギッシュで存在感が増します。イメージとしては、オーバーリアクションなアメリカ人で、落ち着きがないくらいを心がけると良いでしょう。b. 口調2つ目は、声の大きさや速さなど口調です(準言語的コミュニケーション)。声は大きく、早さに緩急付けると、エネルギッシュで存在感が増します。例えば、以下のように促音(小さい「っ」)や擬音、さらにはその合わせワザを意識して使うことです。促音・にほん→にっぽん ・とても→とっても ・めちゃ→めっちゃ擬音+促音・ドキドキ→ドッキドキ ・ボコボコ→ボッコボコ ・サクサク→サックサクまた、「よっ!ニッポンイチ!」「待ってましたっ!」などの掛け声、いわゆるガヤは、中身はほとんどないですが、口調によっては、場の空気を盛り上げるために、重要な役割があります。c. 発言内容3つ目は、発言内容そのものです(言語的コミュニケーション)。極端に言いすぎてしまうことで、おかしさが生まれると同時に、エネルギッシュで存在感が増します。例えば、以下のように、あえて大げさに言っていることが分かりやすいことです。暑い→雪男が来たら即死よ会議がうまくまとまった時→やっぱ私は宇宙一のリーダーだわ繰り返しのミスを指摘する→もう何回言わせる?これで3億回目よ!失敗が続く→一緒にお祓いに行こうか?しどろもどろ→朝からお酒飲んでない?以上の3つの要素の中で、1番重要なのは3つ目の言葉の内容そのものと思われがちです。しかし、実際は、見た目55%、口調38%、発言そのもの7%の順に重要なのです。これは、メラビアンの法則と呼ばれています(表1)。つまり、相手を楽しませるには、まず雰囲気作りが大事だということです。つまり、大げさな見た目と口調でウォーミングアップをしておいて、大げさなことを言う雰囲気をつくることです。ちなみに、メラビアンの法則の根拠を進化心理学的に考えることができます。それは、私たちの祖先が言葉を使う言語的コミュニケーションを始めたのは、喉の構造が進化したごく最近の20万年前です。一方、表情、身振り手振り、態度などの非言語的コミュニケーションは、すでに社会脳が進化した300万年前からです。つまり、非言語的コミュニケーションの方が圧倒的に、進化の歴史が長く、それだけ影響力が大きいと言えます。(2)わざとぼかす母みさえが風邪気味の時、しんちゃんは「母ちゃん、顔が悪いぞ」と真剣に心配します。すると、「『顔色が』でしょ!!」「ツッコませないでよ。熱があるんだから」とリアクションします。また、休日、寝ている父ひろしに、遊んでほしいしんちゃんが「父ちゃん」「ひらめ・くつでしょ」と尋ねます。すると父が「まあな」と言いつつ「たい・くつだろ」とツッコミます。2つ目は、このようにわざとぼかす、ほのめかしです。これは、ストレートに言うと角が立つ言葉をあえてぼかして伝え、相手に察するよう仕向けることです。みなさんの中には、そんなにすぐに発想できないとみなさんは思うでしょうか? まずは、ほのめかしの言い回しのストックをたくさんため込みましょう。それを状況に応じてアレンジするのです。これは、ほのめかしの引き出しとも言えます。これには、さらに3つの要素があります。a. 遠回し1つ目は、遠回しです。例えば、以下のように、状況を違った側面から指摘することです。(仕事中に寝てしまっている人に対して)寝ないで!→お疲れでいらっしゃいますね。(会議中におしゃべりしている人たちに)静かに!→何か良い意見がありそうですか?(会議中にノートに落書きをしている人に)落書きしないで!→絵、うまいですね。b. 特徴例え2つ目は、特徴例えです。これは、比較的に簡単です。普段から心の中で、相手のニックネームを付けるように心がけましょう。以下の例を参考にしてください。明るい→満開の桜みたい香水が強い→大人の雰囲気が溢れ出ているさわやか→洗い立てのふかふかのタオル頼りになる→お腹が痛い時の正露丸記憶力が良い→この病棟のスーパーコンピューターc. 状況例え3つ目は、状況例えです。これは、特徴例えの応用になります。以下の例を参考にしてみましょう。出してくれたお茶がおいしい→もしかして・・・そこに千利休、いる?遅い→雨の日の宅配ピザみたいに待ち遠しいな正座して足がしびれる→生まれたての子羊ね歯に詰まったネギ→歯茎からネギ生えてます。そろそろ収穫の時期かあ鼻毛→ゴキブリの足出てません?飼ってました?怒りで我を忘れた→一瞬、信長が乗り移ったわ(3)わざとはっきりさきほどのしんちゃんがお茶の葉をこぼしたシーンの後に、母みさえが「そうか~ママにお茶を入れてくれようとしたのか・・・ありがとう」とフォローします。すると、しんちゃんは「そうだぞ、えっへん」と偉そうにします。そしてみさえは「いばるなフフ」と微笑みます。また、しんちゃんが好意を寄せるななこちゃんから「しんちゃん、お手伝いしてえらーい」と褒められると、しんちゃんは「いえ、当然のことですから」と好青年ぶります。そして、みさえから「こーゆーことか」とツッコミが入るのです。3つ目は、このようにわざとはっきり、同感、共感です。これは、当たり前で分かりやすい気持ちを共有する言葉かけをすることで緊張を和らげることです。これには、さらに3つの要素があります。a. 本音1つ目は、本音です。周り(相手)との緊張感を俯瞰してストレートに言い当ててほっとさせることです。これには、皮肉や嫌味にならないように注意する必要があります。会議でみんなが沈黙する→換気扇の音ってけっこう良い音ね上司にゴマをすった時→私、好かれたいんです飲み会の座敷で靴を脱いだ時に靴下に穴が空いているのを自覚→はっ!靴下に穴が空いてる!恥ずかしい~b. ナンセンス2つ目は、ナンセンスです。これは、その言葉通り、無意味さのことで、ダジャレ、オヤジギャグ、一発ギャグを指します。これらは、一見、ただの幼稚な言葉遊びのように思われ、多くの人、特に女性からは敬遠されるかもしれません。しかし、ここで大事なことは、これらは単にウケを狙っていないということです。その目的は、相手にガクッと拍子抜けさせる脱力です。そして、そこから場の空気を和ませる共感につなげる意図があるのです。この発想に立てば、ナンセンスも決してくだらないものと決め付けることはできないでしょう。さらには、おもしろくないと思われても、自分から笑うという誘い笑いも効果的です。強いハートで身を削ってオヤジギャクを連発する姿に、周りはいずれ心を打たれるでしょう。特に流行り言葉は効果的です。逆に、あえて死語を使うのも効果的です。「コピーはA4で良いですか?」という質問に→ええよん。会議前の自己紹介で→○○さんだゾ!朝の挨拶に→おはヨーグルトc. お約束3つ目はお約束です。これは、決まり切った言い回しのやり取りをすることです。一種のじゃれ合いです。これも特に流行り言葉は効果的です。明日も来てくれるかな→いいとも~もう待たなくて良いですか?→ちょっと待って、ちょっと待って、おにいさん!大丈夫ですかね?→安心してください。準備してますよ。未来の賢さとは?20世紀の人間の賢さは、記憶力や情報処理能力が大きな割合を占めていました。しかし、21世紀の現在は、記憶をそんなにしなくても、手軽にスマホで検索して、知識を得ることができるようになりました。また、すでに単純作業は機械化されていますし、さらに、より複雑な情報処理が必要な作業も、近い将来に人口知能がやるでしょう。つまり、これからの時代に求められるのは、記憶や情報処理などの知識のコレクションではないです。すでにコレクションされた知識をどう使いこなすかというマネージメントです。例えば、それは、積極性、創造性、そしてコミュニケーション能力を生かして、遊び心を持って、生き生きとして周りを楽しませることです。その大切さを理解した時、私たちは、クレヨンしんちゃんから、より多くのことを学ぶことができるのではないでしょうか?<< 前のページへ1)クレヨンしんちゃん大全、20112)徳田克己:育児の教科書「クレヨンしんちゃん」、福村出版、20113)汐見稔幸:子育てにとても大切な27のヒント、クレヨンしんちゃん親子学、双葉社、20064)トレーシー・カチロー:最高の子育てベスト55、ダイヤモンド社、20165)雨宮俊彦:笑いとユーモアの心理学、ミネルヴァ出版、2016

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ADHD治療薬は将来のうつ病発症に影響するか

 注意欠如・多動症(ADHD)は、うつ病を含む精神疾患を高率に合併するといわれている。しかし、ADHD治療薬がうつ病リスクの増減と関連するかは不明である。スウェーデン・カロリンスカ研究所のZheng Chang氏らは、ADHD治療薬の投与とうつ病との関連を検討した。Biological psychiatry誌2016年12月15日号の報告。 対象は、1960~98年にスウェーデンで生まれ、ADHDの診断を受けた患者3万8,752例。ADHD治療薬の処方、うつ病および他の精神疾患の診断、集団ベースのレジスタから得た人口統計学的要因に関するデータを入手した。ADHD治療薬の投与とうつ病との関連は、Cox比例ハザード回帰分析を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・人口統計学的および臨床的交絡因子で調整後、ADHD治療薬の投与は、うつ病の長期リスク(3年後)低下との関連が認められた(HR:0.58、95%CI:0.51~0.67)。・ADHD治療薬の投与期間が長いほど、うつ病リスクは低かった。・また、ADHD治療薬の投与は、うつ病合併率の低下と関連しており、未投与患者と比較し、うつ病発症率が20%低下していた(HR:0.80、95%CI:0.70~0.92)。 著者らは「ADHD治療薬の投与は、その後のうつ病リスクを増加させないことが示唆された。むしろ、ADHD治療薬の投与は、その後のうつ病合併率の低下と関連していた」としている。関連医療ニュース ADHD発症や重症度にビタミン摂取が関連 成人ADHD、世界の調査結果発表 2つのADHD治療薬、安全性の違いは

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ハイリスクな僧帽弁逆流症に対するTMVR―その有効性と安全性

 症候性の僧帽弁逆流症(MR)は罹患率および死亡率が高い。外科的な修復および弁置換術で改善が期待できるにもかかわらず、多くのMR患者は外科手術を受けていない。カテーテルを用いた僧帽弁置換術(Transcatheter mitral valve replacement:TMVR)は、重症のMR患者に対して選択肢となりうると考えられている。St.Vincent’s Hospital(シドニー、オーストラリア)のDavid W.M.Muller氏らによる本研究は、開心術がハイリスクと考えられる自己弁のMR患者に対して、TMVRが有効かつ安全であるかを評価する目的で行われた。Journal of the American College of Cardiology誌2016年12月号の掲載。全身麻酔下での左側胸アプローチ、小開胸、心尖部アプローチ 患者はオーストラリア、米国、ノルウェーの8つの施設で登録された。全身麻酔下での左側胸アプローチで、小開胸後、カテーテルを用いて自己拡張型の僧帽弁デバイスが心尖部から植込まれた。前向きレジストリによる、短期および30日のアウトカムが調査された。人工僧帽弁に使用されたTendyne僧帽弁システムは、ニチノール(ニッケル・チタン形状記憶合金)で作成された自己拡張型僧帽弁である。植込みの成功率は93.3% 重症度III~IVのMRを有する患者30例(平均年齢:75.6±9.2歳、25例が男性)がTMVRを受けた。MRの原因は二次性(23例)、一次性(3例)、そして両方の混合型(4例)であった。STS-PROM(米国胸部外科学会死亡リスク予測因子)のスコアは、7.3±5.7%であった。デバイスの植込みは28例(93.3%)で成功した。急性期の死亡、脳梗塞、心筋梗塞は認められなかった。TMVRから13日後、院内肺炎により1例が死亡した。また、フォローアップ中に1例で人工弁の血栓症が認められたが、ワルファリンによる抗凝固で消失した。30日後の時点の経胸壁エコーにおいて、TMVRによって人工弁が植込まれた27例の内、I度の中心性MRが1例で認められたが、残りの26例においては、残存MRは認められなかった。左室の拡張末期容積係数(90.1±28.2 mL/m2ベースラインvs.72.1±19.3 mL/m2フォローアップ、p= 0.0012)および左室収縮末期容積係数は減少した(48.4±19.7 mL/m2 vs.43.1±16.2 mL/m2、p=0.18)。75%の患者は軽症もしくは無症候にまで改善 フォローアップの時点で、75%の患者は軽度の症状もしくは無症状と報告した(NYHA分類 I度またはII度)。30日間における心臓血管に伴う死亡、脳梗塞および植込み弁の異常がなく、植込みが成功した患者は86.6%であった。 登録された患者において、TMVRは症状を伴った自己弁のMRの患者に対して有効かつ安全であった。著者らは僧帽弁のためにデザインされた人工弁を用いたTMVRのさらなる評価が必要であるが、この侵襲的手技によって、ハイリスクな僧帽弁逆流症患者の満たされていないニーズが改善される可能性がある、と結論付けている。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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治療耐性転移性乳がんの遺伝子変異、原発腫瘍と異なる

 Dana-Faber Cancer Instituteの大規模腫瘍組織分析によれば、初発部位を超えて広がる薬剤耐性のER陽性乳がんでは、原発腫瘍と異なる遺伝子変異を有することが明らかになった。新たな薬剤標的の探索と、転移がんの治療を受ける患者に影響を与えるこの結果は、昨年(2016年)のサン・アントニオ乳がんシンポジウムで発表された。 本研究では、130例のER陽性転移性乳がんの腫瘍サンプルと、34例の治療前の原発腫瘍サンプルが分析された。研究者らは、これらの乳がんサンプルに対し、全エクソームとトランスクリプトームの大規模な並列シーケンスを行った。 全エクソームシークエンスの結果、転移腫瘍のサンプルではESR1、ERBB2、PIK3CA、PTEN、RB1、AKT1の遺伝子の変異が多いことが示された。Dana-Faber Cancer Instituteのニュースリリースはこちら

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減塩政策、世界中で高い費用対効果/BMJ

 政府が基準を設けて推奨する減塩加工食品生産と、国民への減塩喚起キャンペーンを組み合わせた自主的取り組みを促す減塩政策(soft regulation policy)は、世界中で高度な費用対効果をもたらしていることが示された。米国・スタンフォード大学のMichael Webb氏らが、183ヵ国の政策と費用対効果を定量化し明らかにした。BMJ誌2017年1月10日号掲載の報告。183ヵ国のsoft regulation policyの取り組みを評価 世界各国のsoft regulation policyは、成功したとされる近年の英国のプログラムをモデルとしている。各国の取り組みの減塩目標にはばらつきがあり、評価に当たっては、10年間に達成されたナトリウム摂取量減少10%、30%、0.5g/日、1.5g/日などさまざまなシナリオを包含して分析した。 183ヵ国のナトリウム摂取量、血圧値、血圧へのナトリウムの影響、心血管疾患への血圧の影響、2010年の心血管疾患率を、それぞれ年齢および性別で特徴付けた。国別のsodium reduction policyの費用は、World Health Organization Noncommunicable Disease Costing Toolで推算し、国別の死亡・障害調整生存年数(DALY)を比較リスク評価法でモデル化した。今回、研究グループは、プログラム費用のみを評価し、イベント予防による医療費削減は評価に組み込まなかった。 主要評価項目は、費用対効果比で、10年間のDALY当たりの費用を国際的な通貨ドルで換算して評価した。99.6%の国が高度な費用対効果を享受 世界中で、10年間でナトリウム摂取量の10%減少が、心血管疾患関連の約580万DALYs/年を回避すると見積もられた。 10年間の介入の1人当たりの人口加重平均で求めた費用は1.13ドルであり、人口加重平均で求めた費用対効果比は、約204ドル/DALYであった。 世界の9地域のうち、減塩の費用対効果が最も優れていたのは南アジア地域で推算116ドル/DALYであった。人口の多い上位30ヵ国では、ウズベキスタン(26.08ドル/DALY)とミャンマー(33.30ドル/DALY)が優れていた。 費用対効果が低かったのは、オーストラリア/ニュージーランドで880ドル/DALY、0.02×GDP/人であった。しかし、費用対効果の介入の標準閾値(<3.0×GDP/人)よりはかなり良好で、高度な費用対効果(<1.0×GDP/人)であった。 今回評価を行った各国生存成人の大半(96.0%)が、また、99.6%の国が、<1.0×GDP/人の費用対効果比を有していた。

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わかる統計教室 第4回 ギモンを解決!一問一答 質問6(続き)

インデックスページへ戻る第4回 ギモンを解決!一問一答質問6(続き) 比較する群が3つ以上ある場合の母平均の差の検定方法は?(その2)質問6(その1)前回の質問6(その1)で多重比較法について解説してきましたが、読者の皆さまから説明が難しいとのお声をいただきました。もう少しわかりやすく、「なぜ多重比較法が必要なのか?」を解説いたします。X・Y・Zと3つの群があり、それぞれの平均値を比較するという場合、XとYの間にしか関心がないのであれば、多重比較を行う必要はありません。XとYのみのt検定を行えば良いのです。しかし、XやYのデータを、何らかの形でZとも関連させた結論を導き出したい場合は、Zとの関係によって「X=Yであるか否か」の判断は変わる場合があります。つまり、XとYのt検定を行うだけでは、不適切になる可能性があります。つまり、Zというデータの存在が、XやYの確率分布に影響を与える関係にある(そういう関係になるような結論・考察を行いたい)場合に、多重比較法が必要になるということです。言い方を変えれば、Zというデータがあり、その存在を知っていたとしても、Zのデータの内容に関心がなく、それをXYと関連付けて結論・考察をしないのであれば、分析上も多重比較法など用いなくてよいわけです。少し前回の復習を補足させていただきました。では、今回の解説に入ります。前回は「3集団以上の場合は、従来の母平均の差の検定を使用してはいけない理由」、「多重比較法における有意水準の公式」について解説しました。今回は例題を提示し、その例題を解いていくことで、多重比較法についての理解を深めていきたいと思います。■多重比較法の公式に基づいて計算してみよう●解答1)各製品において母集団のデータが、正規分布に従っているかどうかを調べます。正規分布に従っている場合多重比較法が適用できます。正規分布に従わないことがはっきりわかっている場合ここで学んだ多重比較法は適用できません。その場合は、ノンパラメトリック検定(クラスカル・ウォリス検定)という手順で検定を行い、その結果から水準間の相互を判断します。正規分布に従っているかどうかあいまいな場合一般的には、ある統計手法が仮定している条件を満たしていないときにも、ほぼ妥当な結果を与えるとき、頑健(robust)である(頑健性を持つ)といいます。とくに、検定において、(1)母集団が正規分布である、(2)母分散が等しいという条件が満たされていなければなりませんが、(1)が満たされないときでも結論の正しさがあまり損なわなければ頑健性があると判断し、多重比較法を実行します。このデータでは、正規分布に従っていると仮定し、多重比較法を適用します。2)各集団の分散が等しいかどうかを調べます。【調べ方→バートレットの検定(等分散性の検定)】分散が等しい場合バートレットの検定で判定マークが[ ]の場合、多重比較法が適用できます。分散が等しくない場合バートレットの検定で判定マークが[**][*]の場合、多重比較法は適用できません。その場合は、ノンパラメトリック検定⇒クラスカル・ウォリス検定⇒ノンパラメトリック多重比較法という手順で検定を行い、その結果から水準間の相互を判断します。ここでは、表1のデータでバートレットの検定を行います。表1 バートレット検定判定マーク[ ]より3製品の分散は等しいことがわかりました。よって、多重比較法が適用できます。3)表2、3のデータのように各製品の平均値を算出し、3製品の評価平均得点に差があるかどうかを分散分析一元配置法で調べます。表2 平均値表表3 分散分析表差がある場合判定が[*]により、3製品の評価平均点に差がある(有意である)といえます。よって、多重比較法が適用できます。差がない場合判定が[ ]の場合、水準間で差がない(有意でない)ということなので、多重比較法は適用できません。4)3製品の平均得点に差が認められたので、どの製品相互間に差があるかを多重比較法で調べます。●誤差(Ve)再掲 表3 分散分析表上記表3の誤差  2.86●統計量●有意差判定統計量Tと棄却限界値 t(n-k,α´/2)の値を比較し、有意差判定を行います。製品X:製品YT = 2.32 < 3.13  XとYは差があるといえない。製品X:製品ZT = 2.32 < 3.13  XとZは差があるといえない。製品Y:製品ZT = 4.35 > 3.13  YとZは差があるといえる。●有意確率(p値)p値から有意差判定を行うこともできます。t分布のtに対するp値(下図の斜線部)を、Excel関数を使って計算します。例題は、差があるかないかを調べるので、定数は「2」を指定。製品X:製品Y= TDIST( 2.32 , 7 , 2)  → p = 0.0531製品X:製品Z= TDIST( 2.32 , 7 , 2)  → p = 0.0531製品Y:製品Z= TDIST( 4.35 , 7 , 2)  → p = 0.0034求められたp値と棄却限界値α´を比較し、有意差判定を行います。5)例題の結論製品X:製品Y p=0.0531 > 有意水準0.0167 [ ]より、XとYとは有意でない(差があるといえない⇒差がない)製品X:製品Z p=0.0531 > 有意水準0.0167 [ ]より、XとZとは有意でない(差があるといえない⇒差がない)製品Y:製品Z p=0.0033 < 有意水準0.0167 [*]より、YとZとは有意である(差があるといえる⇒差がある)母集団が正規分布に従うかどうかを確認するには、シャピロ・ウィルク検定と適合度の検定の2つがよく用いられます。今回のポイント1)各群における母集団データが、正規分布に従っているかどうかを調べる!2)各集団の母分散が等しいかどうかを調べる!3)各集団の平均値を算出し、各集団の平均値に差があるかないかを調べる!4)多重比較法を用いて、各集団相互間に差があるかないかを調べる!インデックスページへ戻る

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151)毎日の果物摂取の適量を簡単に測る【脂質異常症患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話医師将来の健康のことを考えると果物は、毎日、食べておきたいですね。患者量はどのくらい食べたらいいですか?医師ちょっとこぶしを握ってみてください。患者こうですか?(握りこぶしをつくる)医師そうです。このくらいの大きさの果物が目安になります。患者なるほど。大きな握りこぶしの人は、たくさん食べることができますね。医師ハハハ。確かに、そうですね。1日に200gを目安に、食べる習慣をつけてみてください。患者ミカンなら2個くらい。リンゴなら半分ですね。よくわかりました(納得した顔)。●ポイント果物の適切な摂取量を、身近なものを目安に具体的に説明します1) Li M, Fan Y, et al. BMJ Open. 2014;4:e005497.

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第34回

第34回:脳転移、せん妄…緩和ケアの話キーワード脳転移せん妄LancetJAMA Intern MedMulvenna P, et al. Dexamethasone and supportive care with or without whole brain radiotherapy in treating patients with non-small cell lung cancer with brain metastases unsuitable for resection or stereotactic radiotherapy (QUARTZ): results from a phase 3, non-inferiority, randomised trial. Lancet. 2016; 388: 2004-2014. Agar MR, et al. Efficacy of Oral Risperidone, Haloperidol, or Placebo for Symptoms of Delirium Among Patients in Palliative Care: A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2016 Dec 5. [Epub ahead of print]

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統合失調症患者の再入院、ベンゾジアゼピンの影響を検証:東医大

 ベンゾジアゼピン(BZP)の高用量投与は、統合失調症患者の認知機能およびQOLに悪影響を及ぼすことが報告されている。しかし、統合失調症の臨床経過におけるBZPの効果は明らかになっていない。東京医科大学の瀧田 千歌氏らは、BZPと統合失調症患者の再入院との関連についてレトロスペクティブ研究を行った。Neuropsychiatric disease and treatment誌2016年12月15日号の報告。 対象は、2009年1月~2012年2月に東京医科大学病院から退院した統合失調症患者のうち、退院後2年以上治療を継続した108例。臨床的特徴、BZPおよび抗精神病薬などの処方量、退院時の機能の全体的評価(Global Assessment of Functioning:GAF)スコアを調査した。主要アウトカムは、何らかの理由による中止とした。 主な結果は以下のとおり。・2年間の研究期間中に44例(40.7%)が再入院した。・Cox比例ハザードモデルによる多変量解析では、教育歴の低さ(HR:2.43、p=0.032)、統合失調症発症年齢の低さ(HR:2.10、p=0.021)、ジアゼパム換算投与量の高さ(HR:6.53、p=0.011)が、退院後の再入院期間と有意に関連していた。 著者らは「統合失調症患者に対する退院時のBZP高用量投与は、再入院までの期間を短縮する可能性がある」としている。関連医療ニュース 不適切なベンゾジアゼピン処方、どうやって検出する 統合失調症の再入院、剤形の違いで差はあるのか 統合失調症の再入院、救急受診を減らすには

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肝性脳症に抗菌薬?新たな治療戦略

 40~50万程度いると推定される肝硬変患者、その合併症の1つである肝性脳症の治療に進歩がみられている。あすか製薬主催のプレスセミナー「知られざる肝性脳症の病態と最新治療」にて2017年1月18日、大阪市立大学 肝胆膵病態内科学 河田則文氏が新たな肝性脳症治療についての講演を行った。 肝性脳症の初期症状として、人格や行動の微妙な変化、判断力低下、睡眠パターンの乱れ、認知症、うつ病などの精神症状が現れる。初期では患者に自覚症状がないこともあり、家族もほとんど気付かない。その後、羽ばたき振戦、見当識障害、肝性口臭などの特徴的な症状が出て徐々に悪化し、最終的に昏睡に陥り寝たきり状態となる。 肝性脳症は、血中のアンモニアが高くなることで引き起こされると考えられている。アンモニアは食物を腸内細菌が代謝する過程で産生される。肝硬変になると、肝臓機能が低下しアンモニア解毒能が下がる、門脈―大循環シャントのためアンモニアが直接体循環内に入る、などが誘因となり高アンモニア血症から脳症を惹起すると考えられている。 肝性脳症の治療では、腸管内pHの低下や排便促進などによりアンモニア産生・吸収を抑制する合成二糖類、筋肉でのアミノ酸代謝を促進する分岐鎖アミノ酸製剤(以下、BCAA)、尿素回路を活性化させるカルニチン製剤などが用いられていた。そこに、腸内細菌に対し抗菌作用を示す難吸収性抗菌薬リファキシミン(商品名:リフキシマ)が登場した。リファキシミンは、BCAAや合成二糖類など既存の治療法で十分な効果が認められなかった場合に、治療効果を向上させるために用いられる。 リファキシミンは、腸内細菌叢におけるアンモニア酸性菌として報告されている菌群に対し抗菌活性を示すと共に、そのほとんどが体で吸収されず、消化管細菌叢に移行するという特徴を有する。二重盲検試験の結果、リファキシミン群の血中アンモニアレベルはプラセボ群に比べ有意に低下し(p=0.008)、肝性脳症の点数であるPSEインデックスもプラセボに比べ、有意に低下することが明らかとなった(p=0.0103)。また、肝性脳症による入院までの期間も、プラセボに比べ有意に延長した(p=0.01)。さらに、肝硬変患者の生存率も、プラセボに比べ有意に延長した(p=0.012)。 肝硬変が完治できない現在、肝性脳症も完治することはできない。しかし、難吸収性抗菌薬という新たな選択肢が加わった今、非代償性あっても代償性に近い時期であれば、高アンモニア血症の改善やアルブミン改善など治療を組み合わせることで代償性に戻る患者もいるという。症状が軽微な初期の段階から、肝臓専門医と他診療科医が連携し、肝性脳症の早期発見が進むことを期待したい。

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