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クローン病〔CD : Crohn’s disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)は、クローン病(CD)と潰瘍性大腸炎の両疾患の総称である。CDは原因不明であるが、免疫異常などの関与が考えられる肉芽腫性炎症性疾患である。主として若年者に発症し、小腸・大腸を中心に浮腫や潰瘍を認め、 腸管狭窄や瘻孔など特徴的な病態が生じる。すでに18~19世紀に現在のCDに相当すると考えられる症例報告があり、その後1932年、米国・ニューヨークのMount Sinai HospitalのBurrill B. Crohn氏、Leon Ginzburg氏、Gordon D. Oppenheimer氏の3人が、終末回腸炎14例を“Regional Ileitis:A Pathologic and Clinical Entity”として発表した。現在では口腔から肛門までの消化管のあらゆる部位に起こりうることが判明している。消化管以外にも種々の合併症(腸管外合併症)を伴うため、全身性疾患としての対応が必要である。■ 疫学もともと白人やユダヤ人種に多いとされていたが、近年わが国をはじめとするアジア地域や南米などで患者が急増しグローバル化してきている。2023年に実施された全国疫学調査による推定患者数(軽症者を含む)はCD9万6,000人、令和5年度特定疾患医療受給者証所持者数は5万2,108人である。わが国および東アジアでは男性患者の割合が多く、欧米では男女差は認められない。発症年齢のピークは10代後半~20代とされている。日本人初発CD患者において小腸に病変を有するのは82.7%、狭窄や瘻孔を有しているのは36.5%、肛門病変を有しているのは48.9%と報告されている。■ 病因炎症性腸疾患の病態はまだ完全には解明されていないが、疾患関連遺伝子に代表される遺伝学的素因を背景に、食事や衛生環境などの環境因子の変化に伴う腸内微生物叢と宿主の免疫機構との間の恒常性維持の破綻により引き起こされる多因子疾患と考えられている。CDの腸管局所ではTNF-α、IL-23、IFN-γといった炎症性サイトカイン・ケモカインの過剰産生が起こっている。■ 症状臨床像は病変の部位や範囲により異なる。下痢や腹痛などの消化管症状と発熱や体重減少・栄養障害などの全身症状を認め、貧血、関節炎、虹彩炎、皮膚病変などの合併症に由来する症状も呈する。小児では成長障害で見つかることもある。病状が進行すれば腸管合併症(狭窄、瘻孔)を生じ、通過障害や皮膚瘻からの排膿などを来すことがある。また、肛門病変を合併すると排便時痛、排膿や圧痛を伴う肛門部の腫脹・発赤・結節を認める。■ 予後外科手術率でみると2000年以前は発症後10年間での手術率は46.5%であったのに対して2000年以後は26.2%と低下している。しかし、依然として手術率の高い疾患である。腸管切除の主たる理由は小腸狭窄である。また、CDによる大腸炎も潰瘍性大腸炎と同様に炎症性発がんのリスクとなる。その他、わが国では肛門管がん、痔瘻がん合併の報告が欧米と比較して多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は難治性炎症性腸管障害に対する調査研究班の診断基準(表)に基づく。CDの診断では鑑別診断として潰瘍性大腸炎、腸管ベーチェット病、感染性腸炎などの疾患を否定する必要がある。縦走潰瘍、敷石像といった特徴的所見を内視鏡検査あるいはX線造影検査で検出する(図1)。生検病理での非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の検出は特異的所見である。また、CT検査、MRI検査、腸管エコーは全層性炎症、瘻孔、腹腔内膿瘍、肛門病変の評価に有用である。表 クローン病診断基準診断の基準(1)主要所見A.縦走潰瘍B.敷石像C.非乾酪性類上皮細胞肉芽腫(2)副所見a.消化管の広範囲に認める不整形~類円形潰瘍またはアフタb.特徴的な肛門病変c.特徴的な胃・十二指腸病変確診例:[1]主要所見のAまたはBを有するもの。[2]主要所見のCと副所見のaまたはbを有するもの。[3]副所見のa、b、cすべてを有するもの。疑診例:[1]主要所見のCと副所見のcを有するもの。[2]主要所見のAまたはBを有するが潰瘍性大腸炎や腸管型ベーチェット病、単純性潰瘍、虚血性腸病変と鑑別ができないもの。[3]主要所見のCのみを有するもの。[4]副所見のいずれか2つまたは1つのみを有するもの。(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班). 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 令和7年度 改訂版. 2026;38.を一部改変)図1 クローン病の内視鏡像画像を拡大する3 治療 (治験中のものも含む)CDの治療では腸の炎症を抑えて症状を改善し、再燃や腸の合併症を防ぐことを目指す。栄養療法、薬物療法、手術療法を、病状に応じて組み合わせることが基本となる(図2~4)。発症から1.5年以内の早期に適切な生物学的製剤による疾患コントロールが長期予後改善に重要とされている。図2 令和7年度クローン病治療指針(内科)(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班). 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 令和7年度 改訂版. 2026;47.より出典)画像を拡大する図3 クローン病治療フローチャート(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班). 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 令和7年度 改訂版. 2026;48.より出典)画像を拡大する図4 クローン病肛門病変診療フローチャート(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班). 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 令和7年度 改訂版. 2026;49.より出典)画像を拡大する■栄養療法栄養状態を改善するとともに、腸への負担を軽くする治療。栄養剤を飲む「経腸栄養療法」が中心で、通常の食事と組み合わせる場合もある。病状が安定していれば、過度な食事制限は必要ない。炎症が強いときや腸が狭くなっているときは、脂肪や食物繊維を控えるなど、病状に合わせた調整が必要となる。■薬物療法腸の炎症を抑えるため、以下のような治療薬を使用する。5-ASA製剤副腎皮質ステロイド免疫調節薬生物学的製剤(抗TNF-α抗体、抗α4β7インテグリン抗体、抗IL-12/23p40抗体、抗IL-23p19抗体)JAK阻害薬ステロイドは炎症を速やかに抑えるが、長期使用には適さないため、症状が改善したら減量・中止する。中等症から重症では、生物学的製剤やJAK阻害薬の適応となる。症状の改善だけでなく、内視鏡検査などで腸の炎症を確認し、将来の狭窄や手術を防ぐことが重視されている。■血球成分除去療法(GMA)血液をいったん体外に取り出し、炎症に関係する白血球(顆粒球・単球)を吸着してから体内に戻す治療。他の治療と組み合わせる補助療法として行われることが多い。■手術療法消化管すべての部位が標的となり得るCDでは外科手術は根治治療とはならない。腸閉塞、狭窄、穿孔、膿瘍、瘻孔、大量出血などがある場合や、薬物療法で十分な効果が得られない場合には、手術が必要になることがある。手術は病変のある腸を切除する、狭くなった部分を広げるために行う。手術後も再発する可能性があるため、定期検査と薬物療法・栄養療法を続けることが大切である。■開発中の治療現在、炎症や腸の線維化に関係する「TL1A」を標的とした薬、免疫細胞が腸へ移動するのを抑える内服薬、腸内細菌を利用した治療などの研究が進められている。治験中に参加する場合は、担当医から詳しい説明を受ける必要がある。4 今後の展望近年、分子標的薬をはじめとする薬物療法の進歩により、CDの治療成績は大きく向上し、腸管切除を必要とする患者は減少している。その一方で、狭窄や瘻孔などの合併症がある場合には、適切な時期に手術を行うことが生活の質(QOL)の改善につながる。将来の腸管障害を防ぐためには、早期に正確な診断を行い、必要な治療を適切な時期に開始することが重要である。また、これまで治療が難しかった肛門病変や小腸病変に対しても、新しい治療薬の有効性が示されつつある。今後は、患者ごとに最適な薬を選ぶ「個別化医療」の発展が期待される。さらに、病気そのものの治療だけでなく、就学、就労、妊娠・出産などを支える社会的な支援体制の充実も重要である。5 主たる診療科消化器内科、消化器外科、肛門科(肛門病変)、小児科(小児発症の場合)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター クローン病(指定難病96) (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)一般社団法人 日本炎症性腸疾患学会(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報NPO法人 IBDネットワーク(患者とその家族および支援者の会) 1) 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班). 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針令和7年度 改訂版. 2026. 2) Tsutsui A, et al. J Gastroenterol. 2025;60):1513-1522. 3) Matsuoka K, et al. J Gastroenterol. 2022;57:867-878. 4) Tsai L, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2021;19:2031-2045. 公開履歴初回2026年9月10日

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診療科別2026年上半期注目論文5選(消化器内科編~消化管領域)

Darvadstrocel in Patients With Crohn’s Disease With Complex Perianal Fistulas: The ADMIRE CD II Phase 3 Randomized TrialColombel JF, et al. Gastroenterology. 2026;170:1562-1570.<ADMIRE CD II試験>:複雑痔瘻を有するクローン病患者に対するdarvadstrocel、24週時の痔瘻寛解率を低下させずランダム化盲検、プラセボ対照試験。本試験では、欧州の複雑痔瘻を有するクローン病患者において、24週痔瘻寛解率がdarvadstrocel群(同種脂肪組織由来間葉系幹細胞の局所投与)48.8%(138/283例)、プラセボ群46.3%(132/285例人)であり、有意な改善は認められませんでした(群間差:2.4%、95%信頼区間[CI]:-5.8~10.6、p=0.571)。クローン病複雑痔瘻に対する幹細胞治療の位置付けを再考させる重要な知見です。Zanidatamab with and without Tislelizumab in HER2-Positive Gastroesophageal CancerShitara K, et al. N Engl J Med. 2026;394:2002-2014.<HERIZON-GEA-01試験>:未治療のHER2陽性進行胃・食道胃接合部・食道腺がんへのzanidatamab併用、PFS延長ランダム化非盲検、実薬対照試験。本試験は、全世界のHER2陽性切除不能局所進行・再発・転移を有する胃・食道胃接合部・食道腺がん患者を対象に実施され、初回治療において、無増悪生存期間(PFS)中央値がzanidatamab併用群(zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法群[カペシタビン+オキサリプラチンまたはフルオロウラシル+シスプラチン]、zanidatamab+化学療法群)でともに12.4ヵ月、zanidatamab非併用群(トラスツズマブ+化学療法)8.1ヵ月でした(zanidatamab非併用群に対するハザード比[95%CI]:0.63[0.51~0.78]、0.65[0.52~0.81])。既存HER2抗体薬とは独立したHER2抗体薬の有効性を示した点で、臨床的意義が大きい結果です。Effect of a Computer-Aided Device for Detecting Gastric Neoplasms: A Multicenter, Randomized Controlled TrialDong Z, et al. Gastroenterology. 2026;170:1518-1532.<上部消化管内視鏡におけるAI支援システム>:胃腫瘍検出率の有意な改善は認められず多施設ランダム化比較試験。本試験では、中国の上部消化管内視鏡を受ける患者において、胃腫瘍検出率がAI支援内視鏡群1.42%(600/1万4,767例)、AI支援システム非使用群1.25%(185/1万4,747例)であり、有意差は認められませんでした(リスク比:1.13、95%CI:0.92~1.38、p=0.25)。上部消化管内視鏡AIの胃腫瘍検出支援としての位置付けを再考させる知見です。Vonoprazan-Tetracycline Dual Regimen as Rescue Therapy for Helicobacter pylori Infection: Randomized Controlled TrialGao W, et al. Gastroenterology. 2026;170:1473-1483.<pylori除菌不成功患者へのボノプラザン+テトラサイクリン>:ビスマス4剤治療群と比較して除菌率は非劣性非盲検ランダム化非劣性試験。中国のHelicobacter pylori除菌不成功患者において、除菌率が、ボノプラザン+テトラサイクリン治療群(14日間)90.6%(154/170例)、ビスマス4剤治療群(ランソプラゾール、ビスマス、テトラサイクリン、メトロニダゾール、14日間)89.3%(151/169例)でした(群間差1.2%、95%CI:-5.7~8.2、非劣性p=0.0003)。2次以降の除菌治療において、欧米の主要な除菌治療法であるビスマス4剤治療群に対する、ボノプラザンをベースとした除菌治療の非劣性が示された重要な試験です。Long-term effects of colonoscopy screening on colorectal cancer incidence and mortality: a multicountry, population-based randomised controlled trialKaminski MF, et al. Lancet. 2026;407:1787-1795.<NordICC試験>:55~64歳の一般住民に対する1回の大腸内視鏡、大腸がん死亡率の有意な減少効果を認めず多国間人口ベースランダム化比較試験。13年追跡時点で大腸がん死亡率が大腸内視鏡検査スクリーニング群0.41%(106/2万8,217人)、非スクリーニング群0.47%(236/5万6,366人)であり、死亡率の有意な減少は認められませんでした(群間差:-0.06、95%CI:-0.16~0.04)。一般集団検診における大腸内視鏡検査の有用性を再考させる重要な知見です。

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「トイレでのスマホ」が痔の悪化の一因に

 米国消化器病学会(AGA)は4月29日、現時点で推奨される痔の診断と治療に関するベストプラクティスを公表した。AGAは、痔の診断・治療は消化器内科医が積極的に担うべきだとした上で、症候性の痔に対する第一治療選択肢は、食生活を見直して便通を整え、スマートフォン(以下、スマホ)を見ながらトイレに長居する習慣を改めることだとしている。 最新の「米国人のための食事ガイドライン」では、毎食でのタンパク質摂取や全脂肪乳製品の摂取が重視されているが、消化器専門医らは、高タンパク食、特に赤肉中心の食事に偏るあまり、食物繊維の摂取がおろそかになる傾向を懸念している。肉には食物繊維が含まれていないため、このような食事では食物繊維が不足して便秘を招き、いきみによって痔の悪化を引き起こす可能性があるためだ。便通を整えるためには、十分な食物繊維の摂取が欠かせない。栄養学の専門家は、男性では1日38g、女性では25gの食物繊維の摂取を推奨している。しかし、多くの米国人は必要量の食物繊維を摂取できていないという。 食事と共に、トイレでの行動も重要である。現在、多くの成人がトイレを、メール確認やソーシャルメディア閲覧のための静かな空間として利用している。しかし、この「トイレスクロール」は痔の大きなリスク因子になるという。便座に長時間座ることで、肛門周囲の血管に圧がかかるためである。ガイドラインの筆頭著者である米ベイラー医科大学のWaqar Qureshi氏は、「トイレに座る時間は5分以内にすべきだ。5分以内に排便できない場合は、座り続けていきむのではなく、一度立ち上がり、後で再度試みるとよい」とNBCニュースに語った。同氏はさらに、足台を使ったり、本を積み重ねて足を高くしたりして、しゃがむ姿勢に近づけることで、いきみの軽減につながる可能性があると述べた。 治療法については、ヒドロコルチゾンなどの外用ステロイド薬や局所麻酔薬、血管作動薬などの外用薬は、症候性の痔の治療用に検討できるが、その有効性を裏付けるデータはほとんどないとされている。また、外用ステロイド薬は、長期間使用すると皮膚が薄くなる可能性があるため、一度に2週間以上使用するべきではないとしている。さらに、症状が持続する痔には、輪ゴムで痔核を縛る「ゴム輪結紮療法」や、熱や光を用いて組織を縮小させる凝固療法が必要になることもある。このほか、温水に座って患部を温める「座浴」も症状緩和法としてガイドラインに記載されているが、その有効性を支持するエビデンスは限定的である。 さらに、クローン病や潰瘍性大腸炎の活動期では、炎症が完全寛解するまで痔治療を延期すべきこと、妊娠中の痔は保存的治療が基本であり、侵襲的治療は原則として産後に検討するべきこと、新規患者では可能な限り肛門鏡検査を実施し、痔と類似症状を示す他疾患を除外した上で正確な診断を行う重要性も強調されている。

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ビタミンAはがんリスクを上げる?下げる?

 ビタミンA摂取とがんリスクの関連について、メタ解析では食事性ビタミンA摂取量が多いほど乳がんや卵巣がんの罹患率が低いと報告された一方、臨床試験ではビタミンAが肺がんや前立腺がんの死亡リスクを高めることが報告され、一貫していない。今回、病院ベースの症例対照研究の結果、食事性ビタミンA摂取量とがんリスクにU字型の関係がみられたことを、国際医療福祉大学の池田 俊也氏らが報告した。Nutrients誌2025年8月25日号に掲載。 本研究は、ベトナム科学技術省と日本政府の支援を受けて実施されたプロジェクトにおける症例対照研究で、参加者をベトナム・ハノイの主要な4つの大学病院で募集した。症例は新規がん患者で、食道がん(195例)、胃がん(1,182例)、結腸がん(567例)、直腸がん(482例)、肺がん(225例)、乳がん(281例)、その他のがん(826例)の3,758例、対照はがんを罹患していない患者で、外傷、尿路結石、胆石症、ヘルニア、多汗症、良性前立腺肥大症、痔核、甲状腺結節などの非がん性疾患のための手術で新規に入院した患者2,995例であった。食事性ビタミンA摂取量は半定量食物摂取頻度調査票を用いて調査した。ビタミンA摂取量とがんリスクとの関連は、オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出して評価した。制限付き3次スプライン曲線により、母集団のビタミンA摂取量の中央値(86.6μg/日)および平均値(108.4μg/日)に近い四分位である85.3~104.0μg/日が安全な範囲であると示唆され、この四分位を基準とした。 主な結果は以下のとおり。・ビタミンA摂取量とがん罹患率の間に、基準と比較してU字型の関連が認められた。・最低摂取量と最高摂取量の両方ががんリスク上昇と関連しており、OR(95%CI)値はそれぞれ1.98(1.57~2.49)と2.06(1.66~2.56)であった。・このU字型パターンは、性別、肥満度、喫煙の有無、飲酒の有無、血液型A型、食道がん、胃がん、乳がん、直腸がんで定義されたサブグループで一貫してみられたが、肺がんと結腸がんではみられなかった。

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温水洗浄便座を使用する?しない?その理由は/医師1,000人アンケート

 友人同士でも腹を割って話しにくいであろう話題の1つがトイレや排泄に関することではないだろうか。今回、CareNet.comでは医師のトイレ事情として、温水洗浄便座の使用有無や温水洗浄便座が影響する疾患の認知度などを探るべく、『温水洗浄便座の使用について』と題し、会員医師1,021人にアンケートを実施した。その結果、医師の温水洗浄便座の使用率は約8割で、年齢を重ねるほど使用率が高い傾向にあることが明らかになった。6割が自宅・外出先を問わず使用 まず、使用場所について聞いたところ、「自宅・外出先問わずどちらも使用する」は61%、「自宅では使用するが外出先では使用しない」が17%、「自宅では使用しないが外出先では使用する」が1%、「どちらも使用しない」が20%であった。また、年代別にみると50~60代の医師の使用率が高く、「自宅・外出先問わずどちらも使用する」との回答が7割超で、「自宅では使用するが外出先では使用しない」まで合わせると8割強にまでのぼり、温水洗浄便座が生活になくてはならないものになっているようだ。実際に温水洗浄便座の使用に対して以下のようなコメントが寄せられていた。・排便後の清拭習慣はなかなか変えられないため(50代、内科)・排便後の局所の清潔が保たれる。排便後の掻痒がない(50代、外科/乳腺外科)・排便の調子が使うほうが良い(50代、内科)・清潔保持のため(60代、循環器内科/心臓血管外科)・清潔な便座であれば外出時でも使用します(60代、内科)・森林資源の保全に間接的に寄与するかもしれない(60代、神経内科)・痔があるから(60代、消化器科)・外出先ではノズル洗浄をしてから使用する。ノロウイルス感染を危惧はするが、トイレットペーパーの使用回数を減らしたいため(60代、整形外科) 一方で、使用しないと回答した医師の意見には以下のようなものが挙げられた。・尿路感染症などが心配(30代、糖尿病・代謝・内分泌内科)・肛門環境が悪くなるから(40代、内科)・便がお尻に飛び散る気がして心配になるから(40代、腎臓内科)・清潔ではないから(50代、消化器科)・膣炎や膀胱炎のリスクがある(60代、内科)使用者は患者にも勧める?温水洗浄便座が便失禁につながる報告も 温水洗浄便座の使用自体は肛門疾患、とくに裂肛を有する場合に勧められる1)。では実際に、痔の症状を訴える患者に対して勧めるかを聞いたところ、「毎回勧めている」は12%、「症状(裂肛など)や併存疾患を考慮して勧めている」は34%と、約半数の医師が患者に勧めていた。興味深いことに、50代以上の医師で患者に勧めている傾向が大きいことから、自身が利用しその有用性を認めた上で患者に話している可能性が考えられる。 一方で、温水洗浄便座の使用によって引き起こされる疾患も存在し、その1つが便失禁である2,3)。これについての認知度を調査したところ、「知っている」と回答したのは15%で、「聞いたことはあるが詳細は知らない」まで含めると約半数の医師が便失禁リスクになることを認識していた。これに関して、消化器科医の回答割合も同等であり、専門・非専門を問わず詳細まで知っている医師は少ないようだ。なお、温水洗浄便座の頻回使用や長時間使用が肛門のかゆみを引き起こす『温水洗浄便座症候群』の原因にもなることから、TOTO社はウォシュレットの使用説明書4)において「約10~20秒を目安にご使用ください」と注意喚起している。 このほか、温水洗浄便座使用に対する患者へのアドバイス経験の有無、患者や自身のトイレに関するエピソードのアンケート結果を公開している。アンケートの詳細は以下にて公開中『温水洗浄便座、医師の利用率は?』

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必携 消化器・一般外科医のための外科解剖アトラス

良い手術を行うために必要な外科解剖をエキスパートが解説「手術」78巻4号(2024年3月臨時増刊号)ある疾患の手術に必要な外科解剖を熟知することは、執刀医たる者の責務である。しかも、外科解剖の正しい理解は刻々と変化するため、外科医はその生涯にわたり知識更新の義務を負う。本臨時増刊号特集では、消化器・一般外科医が扱うことの多い5領域(食道・胃、肝胆膵、大腸、肛門疾患・直腸脱、鼠径部・腹壁瘢痕ヘルニア)について、最新の外科解剖・局所解剖を詳細に解説。初学者からベテランまで幅広く活用できる内容とした。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する必携 消化器・一般外科医のための外科解剖アトラス定価8,860円(税込)判型B5判頁数368頁発行2024年3月企画石原 聡一郎ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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化膿性汗腺炎〔HS:Hidradenitis suppurativa〕

1 疾患概要■ 定義化膿性汗腺炎(Hidradenitis suppurativa:HS)は臀部、腋窩、外陰部、乳房下部などに有痛性の皮下結節、穿掘性の皮下瘻孔、瘢痕を形成する慢性の炎症を繰り返す慢性炎症性再発性の毛包の消耗性皮膚疾患で難治性疾患である。アポクリン腺が豊富に存在する部位に好発する。Acne inversa (反転型ざ瘡)とも呼ばれている。集簇性ざ瘡、膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎とともに毛包閉塞性疾患の1型と考えられている。従来からの臀部慢性膿皮症は化膿性汗腺炎に含まれる。■ 疫学発症頻度は報告者によってさまざまであるが、欧米では0.1~4%で平均約1%程度と考えられている。わが国では大規模調査が行われていないので、明らかではないが、日本皮膚科学会研修施設を対象とした調査で100例1)、300例2)の報告がある。性差については欧米からの報告では男女比が1:3で女性に多く3)、わが国では男女比が3:1で男性に多い1,2)。好発年齢は20~30歳代に発症し、平均年齢は海外で36.8歳、わが国では40.1歳である1)。発症から正しい診断に至るまでの罹病期間は約7年である1,2)。好発部位は臀部、外陰部、腋窩に多い。男性では肛囲、臀部に多く、女性では腋窩、外陰部に多い1,2)。■ 病因明らかな病因は不明であるが、遺伝、毛包の閉塞、嚢腫形成などの病変に炎症が加わって起こる再発性の慢性の自己免疫性炎症性疾患である。遺伝的因子について、海外では家族性の場合が多く、約30~40%に家族歴があるが3,4)、わが国では2~3%と海外に比べて、非常に低い1,2,4)。家族性HSの場合、γ-セクレターゼの欠損が関連していると考えられている3,4)。TNFα、IL-1β、IFN-γ、IL-12、IL-23、IL-36などのTh1細胞とIL-17を産生するTh17細胞が化膿性汗腺炎の病変部で発現し、これらのサイトカインが重要な役割を演じていることが明らかになってきている3,4)。二次的に細菌感染を合併することもある。悪化因子として喫煙、肥満、耐糖能異常、内分泌因子、感染、機械的刺激などが関連している1,2,3,4)。合併する疾患として、毛包閉塞性疾患である集簇性ざ瘡、膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎、毛巣洞がある1,4)。併存疾患として糖尿病、壊疽性膿皮症、自己炎症症候群、クローン病、外痔瘻、有棘細胞がんがある4)。■ 症状多くは単発性の疼痛を伴う深在性の皮下結節で始まる。皮下結節は増大、多発して、血性の排膿がみられる。皮疹は黒色面皰がかなり高率にみられる。排膿後は皮下瘻孔を形成し、慢性に再発、寛解を繰り返す。隣接する瘻孔は皮下で交通し、穿掘性の皮下瘻孔を形成し,瘻孔の開口部より滲出液、血性膿、粥状物質などを排出し、悪臭を伴う(図1)。排膿後は皮下瘻孔を形成し、慢性に再発、寛解を繰り返す。瘻孔が破裂し、真皮に角層などの異物が流出すると肉芽形成が起こり、肥厚性瘢痕、ケロイドを形成する(図1)。重症では蜂巣炎から敗血症を合併することもある。生活のQOLが著しく低下し、疼痛、うつ、性生活、Dermatology Life Quality Index(DLQI)も低下する。図1 化膿性汗腺炎の臨床所見画像を拡大する腋窩に皮下瘻孔、肥厚性瘢痕がみとめられる■ 分類重症度分類として、Hurleyのステージ分類が重症度の病期分類として最も用いられて3期に分類される。第I期 単発、あるいは多発する皮下膿瘍形成。皮下瘻孔、瘢痕はなし。第II期再発性の皮下膿瘍、皮下瘻孔、瘢痕。 単発あるいは多発性の孤立した複数の病巣。第III期広範なびまん性の交通した皮下瘻孔と皮下膿瘍。とされている。その他、修正Sartorius分類が用いられている。Sartoriusらは(1)罹患している解剖学的部位、(2)病巣の数とスコア、(3)2つの顕著な病巣間の最長距離、(4)すべての病巣は正常の皮膚から明確に離れているか否かという4項目について点数化する方法をHSの重症度として提唱している4)。治療の重症度スコアの評価指標として国際的HS重症度スコアリングシステム(IHS4)とHiSCR(Hidradenitis Suppurativa Clinical Response)がある。IHS4(International Hidradenitis Suppurativa Severity Score System)3)は炎症性結節、膿瘍、瘻孔・瘻管の数で評価される。中等度から重症の症例の鑑別、早期発見を可能にする。また、HiSCRと組み合わせて使いやすい。HiSCRは化膿性汗腺炎の薬物治療に対する“反応性”を数値化して指標で治療前後での12部位の炎症性結節、膿瘍、排膿性瘻孔の総数を比較する。HiSCRが達成されていれば、症状の進行が抑えられていると判定する。治療前の炎症性結節、膿瘍の合計が50%以上減少し、さらに膿瘍、排膿性瘻孔がそれぞれ増加していなければ、HiSCR達成となる。PGA(Physician Global Assessment)(医師総合評価)は薬物療法の臨床試験での効果判定に最も広く用いられている。■ 予後化膿性汗腺炎は慢性に経過し、治療に抵抗する疾患である。まれに有棘細胞がんを合併することもある。頻度は0.5~4.6%で男性に多く、臀部、会陰部の発症が多いとされている4)。化膿性汗腺炎の発症から平均25年を要するとされている4)。2 診断 (検査・鑑別診断を含む)■ 確定診断化膿性汗腺炎の確定診断には以下の3項目を満たす必要がある。1)皮膚深層に生じる有痛性結節、膿瘍、瘻孔、および瘢痕などの典型的皮疹がみとめられる。2)複数の解剖学的部位に1個以上の皮疹がみとめられる。好発部位は腋窩、鼠径、会陰、臀部、乳房下部と乳房間の間擦部である。3)慢性に経過し、再発を繰り返す。再発は半年に2回以上が目安である。病理組織所見病初期は毛包漏斗部の角化異常より角栓形成がみられる。その後、好中球を主体として毛包周囲の炎症性細胞浸潤が起きる。毛包漏斗部の皮下瘻孔は次第に深部に進展し、皮膚面と平行に走り、隣接する皮下瘻孔と交通し、穿掘性の皮下瘻孔を形成する(図2)。炎症細胞浸潤が広範囲に及び、瘻孔壁が破裂すると、角質、細菌などの内容物が真皮に漏出して、異物肉芽腫が形成される。ときに遷延性の皮下瘻孔より有棘細胞がんが生じることがあるので、注意を要する。図2 化膿性汗腺炎の病理組織学的所見画像を拡大する一部、上皮をともなう皮下瘻孔がみとめられる(文献5より引用)。■ 鑑別診断表皮嚢腫:通常、単発で皮下瘻孔を形成しない。せつ:毛包性の膿疱がみられ、周囲の発赤、腫脹をともなう。よう:毛包性の多発性の膿疱がみられ、巨大な発赤をともなう結節を呈する。蜂巣炎、皮下膿瘍:発赤、腫脹、熱感、圧痛、皮下硬結をともなう。毛巣洞: 臀裂部正中に好発し、皮下瘻孔がみられる。皮下血腫:斑状出血をみとめ、穿刺にて凝固塊の排出をみとめる。クローン病による皮膚症状:肛門周囲に皮膚潰瘍をみとめ、皮下瘻孔を形成し、肛門との交通があることがある。■ 問診で聞くべきこと家族歴、喫煙、肥満、糖尿病の有無。■ 必要な検査とその所見採血(赤血球数、白血球数、白血球の分画、CRP、血沈、ASOなど)、尿検査を行う。蜂巣炎の合併の有無に必要である。 皮膚生検  有棘細胞がんの有無の確認に重要である。細菌検査  好気、嫌気培養も行う。蜂巣炎を合併している場合、細菌の感受性を検査して、抗菌剤の投与を行う。超音波エコー病巣の罹患範囲を把握し、手術範囲の確定に有用である。3 治療病初期には外用、内服の薬物療法が試みられる。局所的に再発を繰り返す場合は外科的治療の適応となる。病変部が広範囲に及ぶ場合には薬物療法の単独、あるいは外科的療法との併用が適している。薬物療法としては抗菌剤、レチノイド、生物学的製剤があるが、わが国において生物学的製剤で化膿性汗腺炎に保険適用があるのはアダリムマブだけである4)。■ 具体的な治療法抗菌剤の内服、外用、あるいは外科的治療と併用される。抗菌剤の外用は軽症の場合に有効であることがある。クリンダマイシン、フシジンレオ酸が用いられている4)。抗菌剤の内服は細菌培養で好気性菌と嫌気性菌が検出される場合が多いのでセフェム系、ペネム系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系抗薗剤が用いられる。ステロイド局所注射:一時的な急性期の炎症を抑えるのに有効である。デ・ルーフィング(天蓋除去):皮下瘻孔の屋根を取り除くことも有効である。局所の切開、排膿、生理食塩水による洗浄、タンポンガーゼによるドレナージも一時的に有効な処置である。 生物学的製剤としてアダリムマブが有効である。適応として既存の治療が無効なHurley stageII、IIIが対象となる。外科的治療:外科的治療は特に重症例に強く推奨される治療法である。病巣の範囲を正確に把握し,切除範囲を決めることが 重要である。CO2レーザーによる治癒も軽症~中等症に対して有効である。広範囲切除はHurleyの第III期が適応となる。切除範囲は病変部だけの限局した切除は十分でなく、周囲の皮膚を含めた広範囲な切除が必要である。有棘細胞がんが合併した場合は外科的切除が最優先される。■ その他の補助療法1)対症療法疼痛に対して、消炎鎮痛剤などの投与を行う。重複感染の管理を行う。生活指導:喫煙者は悪化因子である喫煙をやめる。肥満については減量、糖尿病があれば、原疾患の治療を行う。深在性の皮下瘻孔があり、入浴で悪化する場合、入浴を避け、シャワーにする。2)その他、治療の詳細については文献(4)を参照されたい。4 今後の展望今後、治験中の薬剤としてインフリキシマブ、IL-17阻害薬, IL-23阻害薬などがある。5 主たる診療科皮膚科、形成外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)皮膚の遺伝関連性希少 難治性疾患群の網羅的研究班1)Kurokawa I, et al. J Dermatol. 2015;42:747-749. 2)Hayama K, et al. J Dermatol. 2020;47:743-748.3)Zouboulis CC, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2015;29:619-644.4)葉山惟大、ほか. 日皮会誌.2021;131;1-28.5)Plewig G, et al. Plewig and Kligman’s Acne and TRosacea. Springer.2019;pp.473.公開履歴初回2021年2月26日

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第54回 いきみ過ぎや長時間のトイレは痔の悪化要因です【使える!服薬指導箋】

第54回 いきみ過ぎや長時間のトイレは痔の悪化要因です1)C W GRAHAM-STEWART. Dis Colon Rectum . Sep-Oct 1963;6:333-44.2)B D Hancock. Gut . 1977 Aug;18:651-655.3)Thomson JPS, et al. Coloproctology and the Pelvic floor. 2nd ed. Oxford. Butterworth-Heinemann. 1992:373-393.

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“肛門疾患”丸わかり-内科医にも役立つガイドライン発刊

 肛門疾患と聞くと、多くの方はまず“痔”を想像されるのではないだろうか。医師に相談しにくい病気の1つだが、非専門医の方々は相談を受けたことがあるだろうか? 2020年1月、日本大腸肛門病学会は『肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版』を発刊。これは2014年に策定された診療ガイドラインの改訂版で、既存の肛門部の三大疾患(痔核・痔瘻・裂肛)とは別に直腸脱の項が追加された。今回、本ガイドラインの作成委員長を務めた山名 哲郎氏(JCHO 東京山手メディカルセンター副院長)から活用ポイントについて聞いた。非専門医でも使いやすい1冊、専門医には直腸脱診療の理解を 現在、肛門疾患治療は保存治療適応例や高齢化に伴う肛門疾患の増加に伴い、プライマリケア医の協力が必要不可欠である。しかし、日本大腸肛門病学会会員の診療科内訳を見ると、大腸外科70%、肛門科15%、消化器内科15%、その他(病理科、放射線科など)少数と、内科診療を担う医師会員が非常に少ない。 このような現状を踏まえ、ガイドラインを作成するにあたり、山名氏は「CQ(Clinical Question)は専門医向けに設定、総論はプライマリケア医による診断や保存的治療の推進を念頭に置いた」という。スコープ作成は『Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017』などを参考に進められ、重要臨床課題をもとに痔核、痔瘻、裂肛、直腸脱においてCQ3~5項目を決定、などを配慮した。また、総論には現時点でガイドライン作成委員会が提唱するフローチャートが図式化されており、どのタイミングでどのCQを確認するべきかがひと目でわかる仕組みになっている。 プライマリケア医、専門医それぞれに注目してもらいたい項目は以下のように分類されている。<プライマリケア医向け>・総論:疫学、病因、臨床所見、診断、治療などがコンパクトにまとめられている。・症例写真:各CQページ掲載。これにより鑑別診断が容易となる。<専門医向け>・CQ:専門医向けの診断アルゴリズムや新たな術式、乳児痔瘻やクローン病の痔瘻への対応方法について記載・直腸脱の項:日本の場合、高齢者の手術リスクを不安視し、経腹手術を避ける傾向がある。しかし、患者側の因子と直腸脱の病態による因子を考慮して術式を決定することが望ましいことから、術式決定のフローチャートの活用を求める。保存治療、まずは2~4週間を目処に 肛門疾患治療において、専門医への紹介や治療変更のタイミングに関する診療アルゴリズムは存在しない。だが、プライマリケア医でも本ガイドラインを活用することで患者の初期診療は可能であり、同氏は「たとえば、痔核や直腸脱の鑑別自体は難しくない。症例写真や臨床所見の項を活用することで診断は可能」とコメントした。保存治療の際の処方薬剤には、内服薬(鎮痛薬、痔核治療剤)や外用薬(坐薬、軟膏など)がある。専門医への紹介のタイミングについてはガイドラインに明記されていないが、「まずは2~4週間継続し、それでも症状が改善しなければ専門医への紹介が望ましい」と述べ、漫然と同じ治療を継続しないよう求めた。 このほか、専門医や専門病院への紹介パターンについて、同氏は患者紹介事例として3つを例示。同氏は独自の見解であると断りながら、1)プライマリケア医からの保存治療無効例の紹介、2)手術を実施しない施設の専門医からの紹介、3)手術実施施設からのハイリスク症例の紹介を挙げた。「とくに3つ目の場合、循環器疾患を併存している患者などでは抗凝固薬の服用が術前の服薬中止や術後出血のリスクとなるため、全身管理が可能な病院での手術が必要」と話した。高齢者にも手術を否定しない 専門医向けに追加された直腸脱については、「高齢者では手術リスクを考慮した結果、手術を推奨しない方針を選んでしまう医師がいる。しかしそれでは患者さんのQOLは改善されないため手術は必要である」と話した。高齢者にも適した術式を選択すれば、リスクを回避できることから、「とくに高齢者の治療を選択する際には、本ガイドラインのフローチャートを参照し、侵襲の少ない腹腔鏡下手術を視野に入れて治療方針を決めて欲しい」と述べた。 最後に同氏は「肛門疾患は、羞恥心ゆえにガイドライン作成に患者さんを取り込むのが難しい。本ガイドラインでは患者さんの声としてはパブリックコメントをもらう形式に留まったが、次の改訂版ではガイドライン作成委員のメンバーとして介入してもらいたい」と、次回改訂時への思いを語った。 なお、日本大腸肛門学会が作成するもう1つのガイドライン、「便失禁診療ガイドライン2017年版」の改訂版は2022年に発刊予定である。

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こんなにある子供の便秘サイン

 2018年3月18日、EAファーマ株式会社は、「大人が知らない『子供の慢性便秘症』の実態と世界標準へと歩み出した最新治療~便秘難民ゼロを目指して~」をテーマに、都内でプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、子供が抱える「言うに言えない便秘の悩み」に大人がどう気付き、診療へ導くのか解説された。子供の5人に1人は便秘 セミナーでは、十河 剛氏(済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科)を講師に迎え、小児の便秘症について詳しくレクチャーを行った。 はじめに横浜市鶴見区で行われた調査報告を紹介。 3~8歳の子供3,595人に食事と排便に関するアンケート調査を行ったところ、718人(約20%)に慢性便秘症(ROMEIII診断基準による)がみられたという(全国平均では約15%)。とくに便秘の子供では、「便を我慢する姿勢や過度の自発的便の貯留の既往」「痛みを伴う便通の既往」「少なくとも週1回の便失禁」が散見されると報告した1)。 子供の便秘に関しては保護者の関心も高い一方で、しつけや教育の問題とされたり、周囲に相談できる人がいなかったり、かかりつけの医師に相談しても対症的な治療だけだったりと不安を訴える。また、子供たちは、友達から「臭い」と言われたり、恥ずかしくて言えなかったりと自尊心が傷つき行き場のない子供を診療で救う必要性があると同氏は問題を指摘する。気付きたい「便秘症」の症状 「便秘」について、その定義、診療はどのようにされるべきか。「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」(2014年)によれば、「便秘とは、便が滞った、または便がでにくい状態」と定義され、とくに小児では、排便時に肛門が痛く泣いたり、いきんでも排便ができない状態がみられる。ただ注意すべきは、「便秘」の認識は、個々人で異なるため排便の回数などで判断せず、同時に家族の状況も確認した方がよいと語る。 そして、便秘の症状として「腹痛、裂肛、直腸脱、便失禁、肛門周囲の付着便や皮膚びらん、嘔吐・嘔気、胃食道逆流・げっぷ・口臭、集中力低下、夜尿・遺尿」があり、いかに医療者が気付き、診療介入できるかが重要だと指摘する。 具体的に10歳・女児の症例を紹介。この症例では、「口臭、げっぷ、嘔吐、排便時間30分超」の症状がみられ、他科診療の折に同氏の診療科を受診、便秘症の診療にいたったという。X線検査では、直腸に便塞栓が観察され、大腸に大量の便が貯留していた。慢性便秘症と胃食道逆流症の診断後、プロトンポンプ阻害薬とポリエチレングリコール(PEG)製剤で治療を開始。19日後には、排便時間が10分以内になり、当初の症状も消失したという。 小児の便秘症を疑うポイントとして、前記便秘症状の中でも触れているが、溜まった便で膀胱が圧迫されることによる夜尿やおもらしが多く、便塞栓のために液便による便漏れやこれらに伴う肛門部のびらんなどがみられ、診断の手助けになると語った。小児にも適用できるようになったPEG製剤 小児が便秘症を発症しやすい時期として、「食事の移行期(離乳食から普通食など)」「トイレットトレーニング」「通学の開始」の3期があり、排便への恐れが子供にできないように、環境を整えることも重要と指摘する。 また、便秘症の「便塞栓」について詳説し、本症を疑うポイントとして、「少量の硬い便」「肛門周囲や下着への便の付着」「便がでにくいのに下痢便」「1週間近く排便がない」などが見られたら治療介入し、便秘症の悪循環を断ち切る必要があると強調する。 便秘症治療の三大原則としては、「便塞栓があればその除去の後で、薬剤、食事、生活習慣改善などの治療を行う」「外したフタ(便塞栓)は外したままにする」「便を我慢せず出しきる習慣を身に付ける」ことを説明。とくに排便習慣については、直腸の排便へのセンサーを正常化させることが大事で、また、排便の姿勢についても、自然に排便できるように洋式便座では踏み台などの設置も効果的という。 そして、これら治療を補助するために治療薬があり、「浣腸だけでなく新しい経口治療薬も小児には適用できるようになった」と説明する。現在、わが国では、乳児・幼児に対してラクツロース、酸化マグネシウムなどの浸透圧性下剤、グリセリン、ビサコジルなどの刺激性下剤が便秘に多用されている。また、2018年11月からようやくわが国でもPEG製剤(商品名:モビコール)が、2歳以上の小児に使用できるようになったこともあり、便秘薬の選択肢は増えつつあるという(参考までに、海外では便塞栓除去に浣腸だけでなく経口治療薬も選択肢に入っており、イギリスではPEG製剤が第一選択薬となっている2))。 臨床上、成人の便秘症は治療に難渋することがあるが、子供の便秘症では薬剤療法が奏功することもあり、早く介入することが重要と語る。治療の目標は、便秘ではない状態の維持であり、そのためには3~4年近く必要という。 最後に同氏は、子供のトイレ指導のコツについて、「25%できたら褒める」「小さいことから少しずつ」「できた行動に着目する」「具体的な指示をする」「一度に一つだけ指示をする」などを挙げ、「便秘難民がゼロ」になることを期待すると講演を締めた。■参考EAファーマ株式会社 イーベンnavi

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CAD-Man試験:冠動脈CT(CTCA)は虚血性心疾患診療適正化のゲートキーパーになれるか?(解説:中野 明彦 氏)-614

【はじめに】 CTCAは冠動脈狭窄の評価に加え、positive remodelingに隠されたプラークの検出(内腔のみを判定する冠動脈造影[CAG]では冠動脈硬化症の重症度が過小評価になってしまう)、胸痛を呈する非冠動脈疾患(肺梗塞・大動脈解離・心膜炎・肺炎胸膜炎・食道裂肛ヘルニアなど)の鑑別を非侵襲的に行える利点を有する。有意狭窄判定の感度・特異度は報告によりばらつきがあるが、陰性適中率については100%近い精度を示し虚血性心疾患のルールアウトに有用というのが共通認識となっている。これらの利点により、CTCAはすでに日本の津々浦々の循環器専門病院やクリニックで導入されているが、臨床現場でどう使っていくかについてのスタンスは施設ごとにまちまちであり、これからの課題と考えられる。 その指標となる本邦での直近の指針「冠動脈病変の非侵襲的診断法に関するガイドライン(JCS 2009)1)」を整理してみると、以下のようになる。(UAP;不安定狭心症、NSTEMI;非 ST上昇型急性心筋梗塞、STEMI;ST上昇型急性心筋梗塞) *:安定狭心症のリスク層別化は検査前有病予測を意味し、胸痛の性状や臨床所見から推測する急性冠症候群の短期リスク評価とは異なる。胸痛の特徴(1.胸骨後部に手のひらで押されたような圧迫感,重苦しさ、2.労作に伴って出現、3.安静により治まる)を満たす項目数により典型的狭心症・非典型的狭心症・非狭心症性胸痛に分類し、年齢・性別を加味して層別化するが、非典型的狭心症の大半と非狭心症性胸痛で男性(>40歳)/高齢女性(>60歳)が中リスク群に分類される2)。検査前有病予測ではDuke clinical score2)がよく知られている。 【CAD-Man試験について】 ドイツから報告された CAD-Man(Coronary Artery Disease Management)試験は、特定のクリニカルシナリオ(30歳以上の非典型的狭心症および非狭心症性胸痛;2つ以上の負荷試験陽性例を除く)を対象としたCTCAとCAGとの無作為比較試験である。中リスクが多い対象群であり、上記「IIa 安定狭心症」に重なる。 詳細は、別項(本ページ上部:オリジナルニュース)に譲るが、要約すると、CTCAを選択しても放射線被曝量・3年間の心血管イベントの発生頻度は変わらず、QOL(入院期間・満足度)が高かった。CTCA群で最終診断ツールであるCAGが実施された割合は14%であり、当然のことながらその正診率(75%)は高く、CAG群の5倍だった。さらに、一連の検査・治療による大合併症(1次エンドポイント)は不変、小合併症は有意に抑制された。 わずか329例、single centerでの研究がBMJ誌に掲載されたことに驚かされたが、これまでCTCAとCAGとの直接比較が少なかったことや、特定のシナリオを設定しその有用性を示した点が評価されたのだろう。 本研究への疑問点・課題をいくつか提示しておきたい。 まずは、有病率の低さ(CTCA群11%、CAG群15%)である。トロポニンI/T値や心電図変化を対象外とせず、したがって急性冠症候群(UAP/NSTEMI)を許容する一方、全症例の平均年齢は60歳、半数が女性で糖尿病合併率は20%未満、虚血性心疾患の既往症例は除外された。さらに非典型的狭心症も半数以下だったことから、実際にはCTCA・CAGの適応とならない低リスク群が多数含まれていたと推察される。Duke clinical scoreから34.3%と予測した筆者らにとっても誤算だったであろうが、対象症例の有病率の低さは、検査に伴う合併症や長期予後の点に関してCTCA群に有利に働いた可能性があるし、被曝の観点からも問題である。 次に、血行再建術適応基準が示されていない点が挙げられる。CTCA群のみMRIでの当該領域心筋バイアビリティー≧50%が次のステップ(CAG)に進む条件となっているが、血行再建術の適応はCAG所見のみで決定されている。負荷試験の洗礼を受けない対象症例達は生理的・機能的評価なしに解剖学的要件のみで“虚血”と判断されたことになり、一部overindicationになっている可能性がある。 さらに、研究施設の日常臨床の延長線上で行われた本研究では、CTCAはすべて入院下で施行された。この点は、外来で施行されることが多い本邦の現状とは異なる。同様の試験を日本で行えば、入院期間やコスト面で、CTCA群での有効性にさらなる上積みが期待される。【冠動脈診療の適正化とCTCA】 高齢化社会の到来や天井知らずに膨らみ続ける医療経済的観点から、諸外国では医療の標準化・適正化(appropriateness)が叫ばれて久しい。虚血性心疾患診療の分野でも、治療のみならず診断の段階から appropriateness criteriaが提示されている3)。翻って、日本はどうだろうか。循環器疾患診療実態調査報告書(2015年度実施・公表) 4)から2010年と2014年のデータを比較すると、CTCAが34.6万件から42.4万件へと増加しているのに対し、CAGはいずれも49.8万件であった。待機的PCI数やCABG数があまり変化していないことを考え合わせれば、CTCAを有効かつ適正には活用できていないことになる。 CAD-Man試験は、CTCAが“不要な”CAGを減少させる可能性を示し、また反面教師として、 症例選択の重要性も示唆した。一方、血行再建症例の適応基準が課題として残っている。 多少横道にそれるが、新時代を切り開く技術としてFFRCTが注目されている。FFRCT法は CTCAのボリュームデータを使い、数値流体力学に基づいて血行動態をシミュレーションし FFRを推定する方法で、解剖学的判定と生理的・機能的評価を非侵襲的に行うことができる理想的なモダリティーである。実臨床に普及するには多くのハードルがあるが、昨年Duke大学から報告された「FFRCT版CAD-Man試験」ともいうべきPLATFORM試験5)6)では、臨床転帰を変えることなくCAGの正診率向上やコスト低減・QOL改善効果が示された。  日本でもappropriatenessの議論が始まっていると聞くが、CAD-Man試験が示したように現在のCTCAにはまだまだ課題が多い。適切な症例選択とFFRCT、これが融合すればCTCAが真のゲートキーパーとなる、と確信する。参考文献1)循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007―2008年度合同研究班報告)―冠動脈病変の非侵襲的診断法に関するガイドライン(PDF)2)Pryor DB, et al. Ann Intern Med. 1993;118:81-90.3)Hendel RC, et al. J Am Coll Cardiol. 2006;48:1475-1497.4)循環器疾患診療実態調査報告書 (2015年度実施・公表)(PDF)5)Douglas PS, et al. Eur Heart J. 2015;36:3359-3367.6)Douglas PS, et al. J Am Coll Cardiol. 2016;68:435-445.

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家族性大腸腺腫症〔FAP : familial adenomatous polyposis〕

1 疾患概要■ 概念・定義家族性大腸腺腫症(FAP)は、APC遺伝子の生殖細胞系列変異を原因として、大腸の多発性腺腫を主徴とする常染色体性優性遺伝性の一種のがん症候群である。■ 疫学FAPの発生頻度は、欧米では出生10,000~20,000人に1人と推定されている。日本においては17,400人に1人と推測されており、世界的にあまり差がない。■ 病因APC遺伝子の生殖細胞系列の変異が原因ではあるが、腺腫はAPC遺伝子の機能喪失、すなわちもう一方のAPC遺伝子の体細胞変異(結果的に両方の遺伝子の異常:細胞単位では劣性発現といえる)によって引き起こされる。APC遺伝子は、その機能としてはいわゆる腫瘍抑制遺伝子ともいえる。APC遺伝子の実際の機能あるいは大腸がんに至る遺伝子変異の詳細は不明である。■ 症状下痢、下血(排便時出血)、腹痛、貧血が主な症状である。このような症状が若年に起こるために、胃腸虚弱ないし痔核からの出血だろうと考えられて、大腸がんの危険性が見過ごされやすい。FAPあるいは大腸がんの家族歴があればより注意が必要である。■ 分類大腸腺腫数で分類するのが一般的である(表1)。大腸腺腫数の計測は困難であるが、おおよその数で分類されている。腺腫数はAPC遺伝子変異部位と関連するといわれる。傾向として腺腫数が多いほど発症年齢が若く、また大腸がんが発生しやすい。画像を拡大する100個未満の多発性ポリープを「oligo-polyposis」ということがある。また、大腸ポリポーシスにデスモイドあるいは外骨腫を合併する症例を「ガードナー症候群」ということがあるが、FAPの一部と考えられている。■ 予後大腸がんをはじめ、ほかの消化管がん、デスモイド腫瘍、そのほかのがんを早期に制御、治療できれば予後は良好である。主として大腸がんおよびほかの消化管がんのコントロールが重要である。ただしそれを生涯にわたって行わなければならない点で、患者の負担が大きく、その難しさがある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査1)最も有力な検査は、病理組織学的検査を伴う大腸内視鏡検査(図1)である。注腸造影検査によって大腸内のポリープの分布の様子が観察される。大腸にびまん性のポリポーシスを認め、それが腺腫である場合はFAPである可能性が強い。画像を拡大する2)上部消化管検査は必須である。(1)胃内視鏡検査:胃底腺ポリポーシス、腺腫およびがんの鑑別をして対応する。(2)十二指腸内視鏡検査:スピゲルマンによるおおよその病期分類を行い対応する(表2)。画像を拡大する(3)小腸検査:大腸手術後状態で、(大腸がんより小腸がんが先に出ることは少ない)腹痛などがあれば小腸検査が望ましい。バリウム造影、カプセル内視鏡がスクリーニングとして行われる。3)随伴病変(その他のがんを含む)の検査(1)先天性網膜色素上皮肥大(図2):視力には影響ない。補助診断として用いられる。画像を拡大する(2)潜在骨腫または外骨腫(図3):共に治療の必要はない。補助診断として用いられる。画像を拡大する(3)デスモイド腫瘍(図4):過去にデスモイド既往がある場合、または家系内にデスモイド患者が出た場合は、よりデスモイド腫瘍が発生しやすいといわれている。画像を拡大する(4)甲状腺がん:若年女性に多い。乳頭がんであるが、そのなかに特徴的な組織像を示すことがある。治療成績は通常の乳頭がんと同様で良好である。触診ないしエコー検査を行う。(5)卵巣がん、子宮がん: 35歳以上では定期検査を勧めるべきである。■ 鑑別診断1)ポリープ数が少ない状態のFAP(attenuated FAP:AFAP)APC遺伝子変異はあるが、ポリープ数が100個に満たない(oligo-polyposisの状態)。2)MUTYH関連ポリポーシス(MAP)DNA酸化障害の修復に関わるMUTYH遺伝子変異の異常によって発生する大腸腺腫症。ポリープ数は少ない場合が多いが、まれに1,000個近くのこともある。常染色体劣性遺伝性である。3)ポリメラーゼ校正遺伝子関連ポリポーシス(PPAP)ポリープ数は多くて数個~数十個。形質発現はAFAP、MAPないしリンチ候群に類似すると思われるが、さらに症例の集積と検討が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)FAPにおいては予後の項で述べたように、がん発生について生涯にわたり注意が必要である。各臓器の良性腫瘍の病期は発がんの危険性と相関するため、病期を維持ないし低減できればがん発生を抑えられる可能性がある。筆者はこれを「病期低減戦略(stage reduction strategy)」ないし「病期低減治療(stage reduction treatment)」と位置づけている。これはFAPのすべてに通ずる。■ 原則1)早期診断これにより病期を低いところでみつけることができる。2)病期低減治療大腸腺腫、十二指腸(乳頭部)腺腫、デスモイド腫瘍に当てはまるそれぞれ異なった病期に対して、それを維持ないし低減する方法が取られることになる。それは利益と損失を考慮して判断される。■ 大腸1)内視鏡治療今後の発展によって病期低減治療法の中心になる可能性がある。ポリープ数が比較的少ない状況で適応になる。また、5mm以下の小さいポリープは、早期にがん化するとは考えられず、必ずしも切除する必要はない。2)化学・薬物治療現在実用的ではない。3)手術治療次の3つの方法が一般的である。(1)大腸全摘・回腸瘻造設術:大腸に関しては最も根治的。生活の質も悪くはない。(2)結腸全摘・回腸直腸吻合術:病期低減治療である。直腸ポリープが少ない必要がある。直腸は最もがんが発生する危険性が高い。(3)大腸全摘・J型回腸嚢肛門管吻合術:上記2つの利点を取ったものである。ただし手術が複雑。良好な排便機能が得られるかどうか、不安定である。直腸がんの危険はかなり低減するが、肛門に近い直腸粘膜が残るため、理論上ゼロとはならない。時間と共にJ嚢内に腺腫が高率に発生することもわかっており、術後の内視鏡検査は引き続き必要である。■ 十二指腸、乳頭部腺腫経過観察、および病期が上がった場合に、それに応じて病期を下げる手段としては、(1)内視鏡的切除、(2)十二指腸切開局所切除、(3)膵温存十二指腸切除、(4)膵頭十二指腸切除などが選択される。■ デスモイド腫瘍悪性ではないが、浸潤性に発達しやすい線維腫症といえる状態で治療にやや難渋する。デスモイドの出やすい状況(診断の項を参照)であれば、内視鏡治療を優先して手術をなるべく遅くする。大腸切除術後の約8%に発生する。発生部位は腹腔内(後腹膜、腸間膜)および腹壁手術瘢痕部に発生する。死亡率は10%以下と考えられる。病期分類および治療の指針としてChurchによる分類がある(表3)。画像を拡大する4 今後の展望1)病期低減治療法として、内視鏡的ポリープ切除の効果について多施設研究が始まっている。まだ標準的治療法ではない。2)大腸癌研究会家族性大腸癌委員会において、いくつかの研究プロジェクトが計画施行されつつある。3)十二指腸腺腫:膵温存十二指腸切除術など、病期に応じた治療法が検討されつつある。5 主たる診療科消化器内科および消化器外科が主たる診療科となり、病態に応じて、婦人科、内分泌外科などに相談する。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報国際消化管遺伝性腫瘍学会InSiGHT(医療従事者向けの英文サイト:ここからの情報は世界標準となる)大腸癌研究会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:日本の活動の現況がわかる)患者会情報ハーモニー・ライフ:関東の患者会(患者、患者家族向けの情報:ニュースレターほか、種々の情報が得られる)ハーモニー・ライン:関西の患者会(患者、患者家族向けの情報:疾患に関する冊子などが得られる)デスモイド基金(アメリカの患者支援組織、英文サイト)1)大腸癌研究会編. 遺伝性大腸癌診療ガイドライン2012年版.金原出版;2012.2)大腸癌研究会編. 大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版.大腸癌研究会;2014.3)岩間毅夫.日内会誌.2007;96:207-212.4)岩間毅夫.日本大腸肛門病会誌.2004;57:859-863.公開履歴初回2013年10月24日更新2016年02月23日

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肛門症状は言いづらい

 約6分の5の患者が肛門症状を隠しており、肛門医の役割が非常に重要であることが、フランス・ビシャ=クロード・ベルナール病院のLaurent Abramowitz 氏らによって明らかとなった。 また著者らは、肛門に症状を持っているが未診断の患者の多くには、おそらくさまざまな要因が含まれているのだろう、として、それらの因子を明らかにし、肛門疾患の診断・治療の環境改善を図るためにもさらなる研究が必要だと述べている。The European journal of general practice誌2014年12月号掲載の報告。背景  患者は、なかなか肛門症状について話さないため、肛門機能障害の診断が遅れ、健康に悪影響を来す。また、診断の遅れに寄与する因子に関する疫学的な知見は乏しいため、一般医学における重大な問題になりつつある。 そこで著者らは、肛門機能障害の患者が自然発生的に診断される数と患者にアンケートを取った後に診断される数を評価することによって、肛門機能障害における家庭医の役割を評価した。方法  39人の一般開業医が、前向きに2.5日間の間に診療したすべての患者に対してアンケートを実施した。結果 ●計1,079人が研究に参加した。●621人(58%)が女性で、458人(42%)が男性であり、年齢中央値は54歳だった。●22人(2%)の患者は、肛門症状を主訴に来院した。●その後のアンケートによって、新たに肛門症状が認められたのは153人(14%)だった。●症状は、出血(32%)、疼痛(31%)、肛門の痒み(22%)、腫脹(22%)、滲出(14%)および肛門分泌物(14%)として報告された。●医師の診断は、痔、裂肛、肛門分泌物、肛門皮膚疾患および肛門機能障害であった。●患者の35%は、アンケートのみを用いて診断されていた。●便失禁は、専門医への紹介に関連する唯一の因子であった(オッズ比=5、 95%信頼区間:1.4~17.8)。

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聖路加GENERAL 【がん検診】

第1回「どのがん検診を受けるべき?」第2回「がんを疑う症候」 第1回「どのがん検診を受けるべき?」がん検診編では、癌の検診の是非について様々な角度から検討していきます。厚生労働省の推奨項目として、胃癌検診、肺癌検診、大腸癌検診があげられていますが、その根拠となった日本のデータはランダム化比較試験に基づくものでなく、さまざまなバイアスが指摘され、信頼性が疑問視されています。一方、米国のUSPSTF は多数のランダム化比較試験に基づいたエビデンスレベルの高いデータですが、果たしてそのデータをそのまま日本で当てはめられるのでしょうか。さらに胃癌や肺癌の検査は欧米では有用性が認められず、あまり行われていません。CT で癌の診断率は向上するものの擬陽性の率がかなり高く、最終的に患者のメリットになっているのかは疑問が残るというわけです。この見識をどう捉えたらいいのか。逆に、近年増加傾向にある大腸癌の検診については、欧米において有用性に関する明確なエビデンスが認められていますが、日本では全例に内視鏡検査を行うべきとされています。大腸癌の検診で便潜血が陰性だった場合、除外して大丈夫なのか、どのようなケースで除外できないのか、最終的にどのような精査を行うべきなのかを考えていきます。X 線検査による発がんは日本が最も多いという報告(Lancet) もあり、それでもメリットがデメリットを上回っているのかを考えましょう。その他、乳癌、子宮癌、前立腺癌についても取り上げます。第2回「がんを疑う症候」癌の早期発見のために最も重要なことは日常診療で症候を見逃さないことです。たとえば、あるケースでは痔核のある患者が軟便時に出血していて、適切に出血をスクリーニングしていれば癌を発見できた可能性は高かったにも関わらず見逃したために訴訟になり、敗訴しました。またあるスタディによると、外来フォローの中から一定数の癌患者が確実に見つかっているといいます。今回は、癌の早期発見のための症候の見極め方を伝授します。まず癌が症候を起こす10 の機序、そして癌を疑う4つの主要症候と7つの準主要症候について解説します。不明熱、寝汗、腰痛…など、7つの準主要症候のなかにはすぐには癌に結びつかないものもあり、目から鱗の情報が満載です。

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ドベシル酸カルシウムに、糖尿病による黄斑浮腫の抑制効果はない:CALDIRET試験

ドベシル酸カルシウムは、糖尿病患者において臨床的に有意な黄斑浮腫(clinically significant macular oedema; CSME)の発症リスクを低減させないことが、ドイツLudwig-Maximilians大学眼科のChristos Haritoglou氏らが実施した多施設共同試験(CALDIRET試験)で明らかとなった。糖尿病性網膜症は労働年齢人口の最も重要な失明原因であり、レーザー治療などの有効な治療法があるにもかかわらず1型糖尿病患者の約90%が網膜症や黄斑浮腫で失明している。静脈治療薬であるドベシル酸カルシウムは慢性静脈不全や痔核などの血管疾患に有効で、現在60ヵ国以上で処方されているという。Lancet誌2009年4月18日号掲載の報告。網膜症を伴う2型糖尿病を対象とするプラセボ対照無作為化試験研究グループは、糖尿病性黄斑浮腫の発現に対するドベシル酸カルシウムの効果を評価するために、11ヵ国40施設の参加のもとに多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験を実施した。成人発症の2型糖尿病の外来患者で、軽度~中等度の非増殖性の糖尿病性網膜症を伴うものを登録し、ドベシル酸カルシウム(1,500mg/日)あるいはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。主要評価項目は5年のフォローアップ期間中のCSME発症とし、早期に脱落した場合は打ち切り例(censored case)とした。CSMEの推定5年累積発症率に有意差なし635例が登録され、プラセボ群に311例が、ドベシル酸カルシウム群には324例が割り付けられた。CSMEを発症した症例は、プラセボ群が69例であったのに対しドベシル酸カルシウム群は86例であり、打ち切り例を考慮するとCSMEの推定5年累積発症率はプラセボ群が28%、ドベシル酸カルシウム群は35%であり、有意差は認めなかったもののむしろ治療薬群で高かった(p=0.0844)。有害事象の頻度は、プラセボ群29%(90例)、ドベシル酸カルシウム群24%(78例)であり、両群間に差はなかった。薬剤に関連した合併症は認めなかった。プラセボ群で8例(3%)が、ドベシル酸カルシウム群では9例(3%)が死亡した。著者は、「ドベシル酸カルシウムは2型糖尿病患者においてCSMEの発症リスクを低減させない」と結論したうえで、「今後、検討に値するサブグループを同定するために事後解析を実施したところ、血管疾患のリスク因子を有する女性でドベシル酸カルシウムのベネフィットが高い可能性が示唆されたが、これはあくまで推測の域を出ない」としている。(菅野守:医学ライター)

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