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高齢者の心電図異常、冠動脈性心疾患イベントリスクを40~50%増

高齢者の心電図異常は、その程度にかかわらず、冠動脈性心疾患イベント発生リスク増大と関連することが明らかにされた。軽度の場合は約1.4倍に、重度では約1.5倍に、それぞれ同リスクが増大するという。また、従来のリスク因子による予測モデルに、心電図異常の要素を盛り込むことで、同イベント発生に関する予測能が向上することも示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のReto Auer氏らが、高齢者2,000人超について約8年間追跡して明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月11日号で発表した。心血管疾患のない70~79歳、試験開始時と4年後に心電図測定研究グループは、「健康と加齢、身体計測スタディ」(Health, Aging, and Body Composition Study)の参加者の中から、基線で心血管疾患のない70~79歳2,192人を追跡し、心電図異常と冠動脈性心疾患イベントとの関連を検討した。追跡は、1997~1998年と2006~2007年との8年間にわたって行われた。試験開始時点と4年後に心電図測定を行い、ミネソタ分類により軽度・重度別に分け分析した。またCox比例ハザード回帰モデルを用いて、従来のリスク因子に心電図異常を追加することによる、冠動脈性心疾患イベントの予測能が改善するかどうかも検証した。試験開始時の心電図異常、冠動脈性心疾患イベントリスクを軽度で1.35倍、重度で1.51倍にその結果、試験開始時点で心電図異常が認められたのは、軽度が276人(13%)、重度が506人(23%)だった。追跡期間中、冠動脈性心疾患イベントが発生したのは、351人(冠動脈性心疾患死:96人、急性心筋梗塞:101人、狭心症または冠動脈血行再建術による入院:154人)だった。試験開始時点の心電図異常が軽度でも重度でも、従来のリスク因子補正後の冠動脈性心疾患イベントリスクの増大と関連しており、正常群の同イベント発生率が17.2/1,000人・年に対し、軽度異常群の同発生率は29.3/1,000人・年(ハザード比:1.35)、重度異常群の同発生率は31.6/1,000人・年(ハザード比:1.51)だった。また、従来のリスク因子に心電図異常を盛り込み、予測モデルをつくったところ、従来のリスク因子のみのモデルより、その予測能は向上することが認められた。試験開始4年時点で、新たに心電図異常が認められたのは208人、初回測定時に続き異常が認められたのは416人で、いずれの場合も、冠動脈性心疾患イベント発生リスクは増大した(それぞれ、ハザード比:2.01、同:1.66)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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ACC 2012 速報 自己骨髄単核球移植、虚血性心疾患例の心機能を改善せず:FOCUS-CCTRN試験

虚血性心不全〔左室機能障害〕に対する薬物治療の限界を受け、自己骨髄単核球(BMC)移植の有用性に期待が寄せられている。しかし残念ながら、Late Breaking Clinical Trialsセッションにて報告された第II相無作為化試験 "FOCUS-CCTRN" では、心内膜への投与による虚血改善、心機能改善のいずれも確認されなかった。ただし、有用性が期待できるサブグループも示唆されており、米国テキサス・ハート・インスティチュートのEmerson C Perin氏は、今後に期待するとの姿勢を示した。本試験の対象は、症候性の左室機能低下(左室駆出率≦45%〕を認める安定冠動脈疾患92例である。全例、最大用量での薬物治療を受けている。平均年齢は63歳、NYHA心不全分類II度とIII度が90%以上を占めた。CCS狭心症分類は、Class IIが分類者の40%強と最も多かった。これら92例は、BMC群(61例)とプラセボ群(31例)に無作為化され、二重盲検法にて6か月間追跡された。BMC群では、腸骨上縁から採取した骨髄を自動化されたプロセス(Sepax)で純化し、100×106を心内膜に注入した。注入箇所は15箇所。いずれも、電気機械的マッピング(NOGAシステム)を用いて、"viable"と判断された部位である。6か月後、3つ設定されていた一次評価項目──「左室収縮末期容積(LVESV)」、「心筋酸素消費量(MVO2)」と「心筋SPECT上虚血」──はいずれも、BMC群とプラセボ群の間に有意差を認めなかった。ただし、試験前から定められていたサブ解析から、BMCが有用であるサブグループが浮かび上がった。すなわち、血管内皮前駆細胞(Endothelial Colony Forming Cell)濃度が中央値よりも高い群において、MVO2の有意な改善が認められた。また後付け評価項目だが「左室駆出率(LVEF)」も、CD34陽性細胞、CD133陽性細胞の血中濃度と有意な正の相関を示した。いずれも、内皮前駆細胞のマーカーとなり得る細胞だという。このような患者ではBMC移植が有用な可能性があると、Perin氏は述べた。ただし、年齢の中央値である「62歳未満」でもEFは有意に改善していたため、年齢とこれら細胞数の相関が気になる。しかしその点に関するデータは、現時点では持ち合わせていないとのことだった。なお、パネルディスカッションでは、採取骨髄の自動純化プロセスに問題はなかったのかとの指摘もあった。本試験は、今後、より詳細なデータが報告される予定だという。

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ACC 2012 速報 CCTAを用いてACS鑑別改善:ROMICAT II

最終日のLate Breaking Clinical Trialsセッションでは、昨日のACRIN PA 4005試験に続き、急性冠症候群(ACS)鑑別におけるマルチスライス冠動脈CT造影(coronary CT angiography : CCTA)の有用性が示された。1,000例登録の無作為化試験 "ROMICAT II" である。CCTAを用いた結果、転帰を増悪させることなく、救急外来受診例の院内滞在時間は有意に短縮した。米国マサチューセッツ総合病院(MGH)のUdo Hoffmann氏が報告した。ROMICAT IIの対象は、ACRIN PA 4005と同じく「救急外来にて胸痛を訴え、ACSを確定も除外もできない」1,000例である。心電図上で虚血が確認された例、血中トロポニンT濃度上昇例、冠動脈疾患既往例などは除外されている。平均年齢は54歳、女性が45%強を占めた。これら1,000例は、501例がCCTA群に、499例が「通常診断」群に無作為化された。CCTA群では64列(以上)CCTAを施行、通常診断群ではストレステストなど、各施設が必要と判断した検査が行われた。ACSの有無は、参加施設が独自に判断する。なお参加9施設に、救急外来でCCTAをACS鑑別に用いた経験はない。CCTA読影者は本試験のために新たに教育を受けた。その結果、一次評価項目である「院内滞在時間」は。CCTA群:23.2時間、通常診断群:30.8時間と、CCTA群で有意(p=0.0002)に短縮していた。内訳を見ると、最終的にACSと診断された75例では両群間の滞在時間に有意差はなく、確定診断でACSが除外された例で著明に低値となっていた(CCTA群:17.2時間、通常診断群:27.2時間、p<0.0001)。背景には、CCTA群の46.7%が救急外来からそのまま帰宅したという事実がある(通常診断群:12.4%)。ちなみに、冠動脈造影を施行された患者は、CCTA群の12.0%、通常診断群の8.0%に過ぎなかった。さらに、CCTAによるACS除外の正確性も示唆された。全例の記録を研究グループが検証したところ、ACS偽陰性例は両群とも1例も認めなかった。また、診断後28日間の「死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、緊急血行再建術施行」の発生率は、CCTA群で0.4%、通常診断群で1.0%と、有意差はなかった。本試験は米国国立心肺血液研究所(NHLBI)により実施された。

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ポーランドのCHD死低下、リスク因子低減とEBMの寄与が大

ポーランドでは、2005年の冠動脈心疾患(CHD)による死亡数が1991年に比べて半減し、その要因は主要なリスク因子の低減とEBMの進展による治療法の進歩であることが、グダニスク医科大学のPiotr Bandosz氏らの検討で示された。ポーランドでは、1980年代にみられた若年層の心血管死の急増傾向が、市場経済導入後の1990年代初頭には急速に減少したという。社会経済的な変革によって、ライフスタイルの大きな変化や医療システムの実質的な改善がもたらされたと考えられる。BMJ誌2012年2月4日号(オンライン版2012年1月25日号)掲載の報告。CHD死低下の要因をモデル研究で評価研究グループは、1990年代初頭の政治的、社会的、経済的な変革を経たポーランドにおけるCHD死の急激な低下が、薬物療法や手術、心血管リスク因子の変化でどの程度説明が可能かを評価するために、モデルを用いた研究を行った。1991~2005年における25~74歳の地域住民を対象とし、解析には対照比較試験やメタ解析、全国調査、公式の統計解析などのデータを使用した。女性では血圧低下が、男性では喫煙率低下が良好な影響示すポーランドにおけるCHDによる死亡率は1991~2005年の間に半減し、2005年には25~74歳の集団のCHD死が2万6,200件減少した。このうち約91%(2万3,715件)が使用したモデルで説明可能だった。このCHD死低下の約37%は、心不全治療(12%)、急性冠症候群の初期治療(9%)、心筋梗塞や血行再建術後の2次予防治療(7%)、慢性狭心症治療(3%)、その他(6%)によるものであった。また、約54%はリスク因子の変化によるもので、総コレステロール値の低下(39%)と余暇の身体活動の増加(10%)が主であった。BMIや糖尿病の発症率は増加しており、死亡率には悪い影響を及ぼしていた(それぞれ-4%、-2%)。女性では、死亡率低下の約29%が血圧低下によるものであったが、男性の血圧は上昇しており、死亡率は増加していた(-8%)。男性では、観察された死亡率低下の約15%が喫煙率の低下に起因していたが、女性における喫煙の影響はわずかであった。著者は、「ポーランドでは、2005年のCHDによる死亡率が1991年に比べて半減し、その要因として主要なリスク因子の低減が半分以上を占め、約3分の1はEBMの進展による治療法の進歩に起因していた」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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CHDの診断能は、心血管MRがSPECTよりも良好

冠動脈心疾患(CHD)の診断では、マルチパラメトリックな心血管核磁気共鳴法(CMR)が、単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)に比べ高い正確度(accuracy)を有することが、英国・リーズ大学のJohn P Greenwood氏らが行ったCE-MARC試験で確認された。近年、CHD疑い患者における心筋梗塞の評価では、トレッドミル運動負荷試験に代わりSPECTが最も頻用されているが、診断正確度の報告にはばらつきがみられ、電離放射線曝露の問題もある。CMRは被曝がなく、高い空間分解能を持つほかに、1回の検査で複数の病理学的パラメータ(心機能、心筋血流、心筋生存能、冠動脈の解剖学的形態など)の評価が可能だという。Lancet誌2012年2月4日号(オンライン版2011年12月23日号)掲載の報告。CMRとSPECTの診断正確度を比較する前向き無作為化試験CE-MARC試験の研究グループは、CHD疑い患者において、X線冠動脈造影を標準対照としてマルチパラメトリックCMRプロトコールの診断正確度を評価し、CMRとSPECTを比較するプロスペクティブな無作為化試験を実施した。対象は、狭心症疑いおよび心血管リスク因子を1つ以上有する患者であり、CMR、SPECT、侵襲的なX線冠動脈造影が施行された。CMRは、安静時とアデノシン負荷時、シネ画像、ガドリニウム造影遅延画像、3次元冠動脈MRAを撮像した。アデノシン負荷時と安静時の心電図同期SPECTには99mTc tetrofosminを使用した。主要評価項目はCMRの診断正確度とした。感度と陰性予測値が有意に優れる2006年3月~2009年8月までに、イギリスの2施設から752例が登録され、39%がX線冠動脈造影でCHDと診断された。CMRの感度は86.5%、特異度は83.4%、陽性予測値は77.2%、陰性予測値は90.5%であった。これに対し、SPECTの感度は66.5%、特異度は82.6%、陽性予測値は71.4%、陰性予測値は79.1%であった。CMRはSPECTに比べ、感度および陰性予測値が有意に優れた(いずれもp<0.0001)が、特異度(p=0.916)と陽性予測値(p=0.061)に差は認めなかった。著者は、「CE-MARC試験は実臨床におけるCMRの評価に関する大規模な前向き試験であり、CMRによるCHDの高い診断正確度が示され、そのSPECTに対する優位性が確認された」と結論し、「CHDの研究では、今後、よりいっそう広範にCMRを使用すべきである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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聖路加GENERAL 【Dr.香坂の循環器内科】

第1回「階段がつらいのは歳のせい ? 」第2回「夜間の呼吸困難は花粉症のせい ? 」第3回「心雑音と言われたのですが元気なんです」第4回「ためらってはいけないCAB」 第1回「階段がつらいのは歳のせい ? 」地下鉄階段昇降時などに胸部圧迫感を感じるようになった50歳男性。他の領域の胸痛疾患に比べてリスクの高い場合が多い循環器疾患。まずは、この患者が循環器疾患かどうかを確かめることが重要です。胸痛の鑑別において大切なのは、1にも、2にも問診です。問診は、3つのポイントをおさえればOK。このような典型的な狭心症患者の他、顎が痛い、歯が痛いと訴えてくる患者さんも放散痛によるもので、実は心筋梗塞や狭心症だった、という非典型的な例もOPQRST3Aを使って解説していきます。また、胸痛においては、ACS(急性冠動脈症候群)という概念が重要になってきます。その診断方法についても詳しくお伝えします。第2回「夜間の呼吸困難は花粉症のせい ? 」数年前から動悸を自覚していた44歳の男性。夜間に呼吸困難が出るようになり、起き上がってもすぐには改善しなくなってしまいました。呼吸困難の原因はさまざまですが、起き上がっても改善しないなど心疾患が疑われます。特に、発作性夜間呼吸困難や起座呼吸は、心不全である確からしさが高い症状です。頚静脈、心音などの身体所見、X線、心エコーなどの画像診断、血液検査として有用性の高いBNPによって心不全であるかどうかを確認した結果、この男性は心不全であることがわかりました。そして、その原因については驚くべき事実が・・・。III音の聞き分け方、薬剤の使い方については「北風と太陽」を引用するなど、香坂先生ならではのユニークな講義が展開されます。第3回「心雑音と言われたのですが元気なんです」長い間微熱が続いたため、病院を訪れた62歳の男性。健診で「心雑音がある」と言われましたが、スポーツもこなし元気に過ごしていました。心雑音をみたときには、まず経過観察でよいものか、それともすぐに処置が必要なものかを見分ける必要があります。最強点がどこにあるのか、収縮期か拡張期か、収縮期であれば駆出性か逆流性かという鑑別が重要になります。この患者は2年後に症状が出始め、重症のMRと診断され、手術を受けることになりました。重症のMRは、10年以内に死亡、または手術を実施する確率が90%と高く、フォローが重要となります。ポイントは、重症度によってスパンを短くして、心不全症状やEFの低下がないかなどを慎重に観察することです。また、僧帽弁、大動脈弁治療に関して、最新の弁膜症手術も紹介していきます。第4回「ためらってはいけないCAB」最近動悸がするということで診療所を訪れた32歳男性。待合室で診察を待っている時、突然倒れて心肺停止状態になってしまいました。今まで心肺停止というと、まずA(気道確保)、続いてB(人工呼吸)の後、C(心臓マッサージ)という手順が常識でしたが、ACLSのプロトコル改訂により、ABCからCABと変わってきました。すなわち、なにはなくとも即座に心臓マッサージを!ということです。そこで、本来求められる心肺蘇生法に対し、病院外で行われるCPRの現状や、心臓マッサージの基本原理をしっかりと見直していきます。また、改訂で変更された薬剤、その効果や投与のタイミングについても具体的に紹介します。心肺蘇生後は患者の状態をよくみて判断していくことが重要となりますが、具体的に何をすべきか、また、突然死を防ぐための方法、心電図から突然死の確率が高い疾患の読み方についてもご紹介します。

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術後輸血戦略は制限的輸血が妥当

術後輸血戦略について、非制限的に行う輸血(自由輸血)が制限的輸血と比較して、術後の死亡率を低下したり回復を促進はしないことが、股関節手術を受けた心血管リスクの高い高齢患者を対象とした無作為化試験の結果、明らかにされた。また被験者の特性の一つでもあった心血管疾患の院内発生率も抑制できなかったことも示された。術後輸血については、ヘモグロビン閾値が論争の的となっている。そこで米国・ニュージャージー医科歯科大学のJeffrey L. Carson氏らは、より閾値の高い輸血者のほうが術後回復が促進されるかどうかについて検証した。NEJM誌2011年12月29日号(オンライン版2011年12月14日号)掲載報告より。術後患者をヘモグロビン閾値8g/dL未満と10g/dLに無作為に割り付け試験は2004年7月~2008年2月の間に、米国とカナダの47の医療機関で被験者を登録して行われた。被験者は、心血管疾患の既往歴またはリスク因子のいずれかを有し、股関節骨折で手術を受け、術後ヘモグロビン値が10g/dL未満の50歳以上の患者2,016例(平均年齢81.6歳、年齢範囲:51~103歳)であった。研究グループは被験者を無作為に、自由輸血戦略群(ヘモグロビン閾値10g/dL)または制限的輸血戦略群(貧血症状があるか医師の裁量でヘモグロビン閾値<8g/dL)に割り付け追跡した。主要転帰は、追跡調査60日後の死亡または人の介助を受けずには部屋の端から端まで歩くことができない(自由歩行不能)の割合とした。副次転帰は、院内心筋梗塞・院内不安定狭心症・すべての院内死亡の複合とした。輸血自由戦略群、いずれの指標も改善できず輸血赤血球単位の中央値は、自由輸血戦略群で2単位、制限的輸血戦略群は0単位であった。主要転帰の発生率は、自由戦略群35.2%、制限戦略群34.7%で、自由戦略群のオッズ比は1.01(95%信頼区間:0.84~1.22、P=0.90)、絶対リスク差は0.5ポイント(95%信頼区間:-3.7~4.7)だった。オッズ比は男女差が認められ(P=0.03)、男性(オッズ比:1.45)が女性(同:0.91)よりも有意であった。追跡調査60日後の死亡率は自由戦略群7.6%、制限戦略群6.6%で(絶対リスク差:1.0%、99%信頼区間:-1.9~4.0)だった。また、副次転帰の発生率は、自由戦略群4.3%、制限戦略群5.2%(絶対リスク差:-0.9%、99%信頼区間:-3.3~1.6)であった。その他の合併症の発生率は両群で同程度だった。結果を踏まえてCarson氏は、「我々の所見は、貧血症状がない場合やヘモグロビン値が8g/dL以下に減少していない場合、さらには心血管疾患やリスク因子を有する高齢患者では、術後患者での輸血は控えることが妥当なことを示唆する」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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動脈硬化性疾患の主な症状と危険因子は? 家族の「動脈硬化」に関する意識調査より

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカル カンパニーは12月27日、全国の20代から50代の男女800名を対象に行った「動脈硬化に関する意識」調査を2011年12月上旬に実施し、調査結果を発表した。調査は、国内に居住する男女800名(20~50代、各セグメント100名)を対象に、インターネット上で行われた。同社はこの調査結果から、動脈硬化についての認知度や理解度、また、家族の健康への関心度についてをまとめた。概要は以下の通り。狭心症や心筋梗塞などの動脈硬化性の心臓病がある場合、その他の血管にも動脈硬化が起こっている可能性があることを知っていると回答した人は約5割(55.4%)であった。また、全身の動脈硬化が重症化した場合の主な症状について調査したところ、サンプルにあげた「心筋梗塞」「脳梗塞」「足切断」「失明」「腎不全」「麻痺」「言語障害」に対する認知度は、「心筋梗塞」が92%と最も高く、続いて「脳梗塞」91%、「言語障害」65.6%となり、最も低い「足切断」でも42.9%の人が知っていると回答した。その一方で、代表的な動脈硬化性疾患について、その症状などについて調査したところ、どの疾患についても約8割が知らないと回答した。また、家族の動脈硬化性疾患の危険因子について調査したところ、父母、祖父母ともにあてはまるリスクの1位に「高血圧」が、3位に「糖尿病」があげられた。あてはまるリスクの2位は、父・祖父では「喫煙習慣があること」で、母では「肥満」であった。さらに祖母においては「過去に狭心症・心筋梗塞や脳卒中を起こしたこと」が2位となり、これは父母・祖父にあてはまるリスクの4位にもあがっていた。詳細はプレスリリースへhttp://www.jnj.co.jp/jjmkk/press/2011/1227/index.html

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無作為化試験の結果から個人の治療効果を予測し治療するほうが実質的ベネフィットが大きい

無作為化試験のデータを基にした個人の治療効果予測は可能であり、その効果予測に基づき個々人の治療を行うことは実質的なベネフィットをもたらすとの報告が、BMJ誌2011年10月22日号(オンライン版2011年10月3日号)で発表された。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのJohannes A N Dorresteijn氏らが、一例としてJUPITER試験[ロスバスタチン(商品名:クレストール)投与による心血管疾患予防に関する試験]のデータを基に、新たに開発した予測モデルなどを用いて治療効果を予測し、それに基づく治療を行った場合の実質的なベネフィットを評価した結果による。LDL3.4mmol/L未満、高感度CRP2.0mg/L以上の健康な人を対象に比較試験は、JUPITER試験の被験者で、LDL-C値が3.4mmol/L未満でCRP値が2.0mmol/L以上の、健康な男女1万7,802人を対象とした。被験者のロスバスタチンによる心血管疾患予防効果(心筋梗塞、脳卒中、動脈系血管再生、不安定狭心症による入院、心血管系が原因の死亡)について、フラミンガム・リスクスコア、レイノルド・リスクスコア、そして新たに開発した予測モデルの3通りの方法で予測し、比較した。各モデルの絶対リスク低下の中央値は3.9~4.4%ロスバスタチン治療による10年間の心血管疾患絶対リスク低下の中央値は、フラミンガム・リスクスコアで4.4%(四分位範囲:2.6~7.0)、レイノルド・リスクスコアで4.2%(同:2.5~7.1)、新たな予測モデルでは3.9%(同:2.5~6.1)だった。こうした予測に基づく個別治療は、全対象者について治療の是非を決めることよりも、治療によるネット効果は大きく、その場合の治療決定閾値は2~7%だった。10年間に1件の心血管疾患を予防するために必要な積極的に治療する件数(number willing to treat ;NWT)は15~50だった。(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)

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安定狭心症患者へのPCI前と退院時の至適薬物治療実施率、COURAGE試験発表後も微増にとどまる

COURAGE試験では、安定狭心症患者に対する、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施前の至適薬物治療(OMT)の妥当性を示したが、同試験発表前後のPCI前・退院時のOMT実施率を比べた結果、微増にとどまっていたことが明らかになった。米国・コーネル大学Weill Cornell医学校のWilliam B. Borden氏らが、47万人弱の安定冠動脈疾患患者を対象に行った観察研究の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年5月11日号で発表した。被験者全体のPCI前OMT実施率は44.2%、退院時実施率は65.0%同研究グループは、2005年9月から2009年6月にかけて、PCIを実施した安定冠動脈疾患患者、46万7,211人について観察研究を行った。主要評価項目は、COURAGE(Clinical Outcomes Utilizing Revascularization and Aggressive Drug Evaluation)試験発表前後の、PCI前と退院時のOMT実施率だった。なおCOURAGE試験は、安定冠動脈疾患患者を対象に、OMTのみと、OMTとPCIの併用について、その臨床アウトカムを比較した無作為化試験。同試験の結果から、生存率や心筋梗塞発症率に両群で有意差が認められず、すなわちPCI前の積極的なOMTの妥当性が示されていた。今回のBorden氏らによる試験の結果、被験者全体でPCI前のOMT実施率は44.2%(95%信頼区間:44.1~44.4)、退院時のOMT実施率は65.0%(同:64.9~65.2)だった(p<0.001)。PCI前OMT実施率は1.2ポイント増、退院時実施率は2.5ポイント増COURAGE試験の前後で比較してみると、同試験発表前の被験者17万3,416人のうち、PCI前にOMTを実施していたのは7万5,381人(43.5%、同:43.2~43.7)だったのに対し、同試験発表後の被験者29万3,795人中では13万1,188人(44.7%、同:44.5~44.8)であり、1.2ポイント増だった(p<0.001)。またPCI後の退院時OMT実施率も、COURAGE試験前63.5%(同:63.3~63.7)に対し、同試験後は66.0%(同:65.8~66.1)で、2.5ポイント増(p<0.001)と変化は微増だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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非保護左冠動脈主幹部狭窄症患者に対するPCI vs. CABG

 韓国・峨山病院心臓研究所のSeung-Jung Park氏らによる、非保護左冠動脈主幹部狭窄症患者を対象とした無作為化試験の結果、シロリムス溶出ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の重大心臓・脳血管イベント発生に関して、冠動脈バイパス術(CABG)に対する非劣性が証明されたとの報告が発表された。ただし「設定した非劣性マージンが広く、臨床への指示的な結果とみなすことはできないものである」と補足している。本試験「PRECOMBAT」は、非保護左冠動脈主幹部狭窄症へのPCIが徐々に増えているが、CABGも治療の選択肢とみなされるのではないかとして行われた。NEJM誌2011年5月5日号(オンライン版2011年4月4日)掲載より。600例の被験者を無作為化、PCIの非劣性マージンは絶対差7ポイントと設定 PRECOMBAT試験は、韓国厚生省委託のもと13施設で行われた前向き非盲検無作為化試験。18歳以上の安定狭心症、不安定狭心症、無症候性心筋虚血または非ST上昇型心筋梗塞の診断を受け、新規に50%以上の非保護左冠動脈主幹部狭窄症が認められた患者が適格とされた。 2004年4月~2009年8月の間に登録された1,454例のうち600例の被験者が無作為に、シロリムス溶出ステントを用いたPCI群(300例)かCABG群(300例)に割り付けられた。 主要エンドポイントは、1年時点の重大有害心臓・脳血管イベントの複合(全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中と虚血性標的血管血行再建)とし、副次エンドポイントは、主要エンドポイント項目(死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合)とステント血栓症とした。 非劣性マージンは、1年時点の重大有害心臓・脳血管イベントのCABG群発生は13%とみなし絶対差7ポイントまでとした。 解析は、1年時点のイベント発生率が予想を下回ったので2年時点の比較も行われた。1年時点絶対差2.0ポイント、2年時点でもPCIの非劣性が認められたが…… 結果、主要エンドポイントは、PCI群26例(累積発生率8.7%)、CABG群(6.7%)でリスクの絶対差は2.0ポイント(95%信頼区間:-1.6~5.6、非劣性P=0.01)だった。 2年時点の主要エンドポイント発生は、PCI群36例(12.2%)、CABG群24例(8.1%)で、PCI群のハザード比は1.50(95%信頼区間:0.90~2.52、P=0.12)だった。また、2年時点の死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合発生は、PCI群13例(4.4%)、CABG群14例(4.7%)、PCI群のハザード比は0.92(95%信頼区間:0.43~1.96、P=0.83)であり、虚血性標的血管血行再建は、PCI群26例(9.0%)、CABG群12例(4.2%)、PCI群のハザード比2.18(95%信頼区間:1.10~4.32、P=0.02)だった。 Park氏は「PCIのCABGに対する非劣性が示された。しかし非劣性マージンが広く、臨床への指示的な結果とみなすことはできない」と結論している。

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准教授 長谷部光泉 先生「すべては病気という敵と闘うために 医師としての強い気持ちを育みたい」

1969年9月14日生まれ。博士(医学)、博士(工学)。1994年3月慶應義塾大学医学部医学科卒業後、同大学病院にて研修94年4月同大学大学院医学研究科博士課程。96年11月ハーバード大学医学部放射線科心臓血管造影およびIVR部門留学(~99年)。98年4月同大学医学部助手。04年4月同大学理工学部機械工学科・鈴木哲也研究室共同研究員および医療班チームリーダー。05年4月国家公務員共済組合連合会立川病院放射線科医長。08年4月東邦大学医療センター佐倉病院放射線科講師。09年8月同病院放射線科准教授。日本血管内治療学会評議員。日本IVR学会代議員、他。10年日本学術振興会 榊奨励賞受賞、第96回北米放射線学会Certificate of Merit受賞、他多数。低侵襲治療としてIVRカテーテル治療に大きな魅力を感じた放射線科領域を大別すると、X線検査、CT、MRI、核医学検査などに代表される放射線診断学とがん治療に代表される放射線治療学があります。CT、MRIなどが登場する前から存在した「血管造影法」は、私が専門とする放射線診断学の根幹です。血管のない臓器は存在しないため、古くから重要な診断法として発展してきました。しかしながら、CT、MRIなどの医療機器の技術革新によって血管造影の役割も変わってきました。皮膚に局所麻酔をしてほんの2㎜だけの傷をつけるだけで血管内に「カテーテル」と呼ばれる管を挿入し、臓器に直接アプローチできるので、たとえば循環器領域であれば心臓にアプローチして狭心症や心筋梗塞を治す。消化器領域では、肝臓がんであれば肝動脈塞栓術のように大腿動脈から患部のすぐそばまで細いカテーテルを挿入して抗がん剤を流して腫瘍を兵糧攻めにする。脳神経領域では、急性期の脳梗塞の血栓溶解療法や動脈瘤を詰めることもできます。また、下肢の動脈硬化の場合、風船付きカテーテルを挿入し直接狭くなった血管を広げ、歩けなかった患者さんが歩いて帰えれるようになる。CTやエコー、MRIなどの画像支援の下に血管内だけでなく臓器を直接穿刺して治療する。画像を使った血管内治療および血管以外の臓器などに対する、画像支援下の低侵襲治療、これが私の専門領域です。医学の世界に入った当初から、IVR(インターベンショナルラジオロジー)に興味があり魅力を感じていました。これからの治療は、身体に大きくメスを入れて手術するだけではなく、患者さんに優しい治療でありながら効果的な治療が求められています。カテーテルの技術にせよ、医療器具にせよ、どんどん進歩してくるであろうと考えました。その進歩と共に、カテーテル治療が今後の医療現場において主流になってくるのではないかとも考えていました。それは現実になってきていると確信しています。IVR治療で劇的に変わる患者さんのQOLIVRでできることは血管を開く、詰める、溶かす、生検のための組織を切除して取り出す、直接腫瘍を穿刺して治療する、簡単にいうとこれらが主な分野です。具体的には、動脈硬化で詰まった血管を開き、血栓で詰まった血管を溶かすことができる。体を大きく切開することなく組織を取り出し診断を確定する、ドレナージといって体内の深い部分の膿をCT・エコー・MRIで見ながら吸い取る。詰めるは塞栓術といって、肝臓がん治療の他、体の中で緊急出血した場合、血圧が低下し、身体を大きく開くことはできないので、救急治療として金属のコイルを詰めて止血し、一命を救うこともできます。今までは大きく開腹、開胸しなくてはならなかった手術が、IVR治療によって足の付け根や腕の部分を局所麻酔で2から3mm切開し、動脈や静脈にカテーテルを挿入して治すことができるようになっています。これにより患者さんの入院日数は劇的に短縮されました。局所麻酔のため危険性も減りますし、入院期間も短くなり、痛みが少ないなど多くのメリットがあります。心臓疾患の場合、以前ならば最低でも1から3ヵ月の入院を余儀なくされましたが、IVR治療では、長くて10日、われわれは3日から1週間入院を目安にしています。ただし、入院期間が短縮されたからといって、簡単な病気だったと勘違いはしないでほしい。血管内で手術は行われていますから、それなりのリスクがあることも十分知っておいてほしいと思います。患者さんにとって簡単そうに思えるIVR治療ですが、医師としては熟練した手技と全身疾患に対して知識や経験がないとできない分野です。実際に治療を行えるようになるまでには、綿密なトレーニングが必要です。東邦大学では後期研修医あるいは大学院生の1年目から血管内治療のトレーニングを本格的に重ねてもらいます。われわれの科では、画像診断もやりながら低侵襲の治療をする、研究にも取り組み積極的に国内外の学会で発表するという3本の柱を忘れることなく、必死で若手の医師が毎日を過ごしています。臨床医としての経験を活かした研究開発私がこの世界に入った時にはすでに、血管内治療のデバイスであるステントやバルーンの8割が輸入品でした。許認可の問題もあって、欧米の製品を平均2年遅れで買わなければいけない現状があります。その上、必ずしも日本人に適しているデバイスではありません。日本人にとって使いにくくて直してもらうにしても、製品ができあがってくるまでに1年、2年、3年かかる場合もあります。目の前の患者さんを治せるツールがあるのに、サイズが合わないだけで使えないという現実にジレンマを感じていました。私が慶應の研修医だった当時、恩師で、放射線医の第一人者であり、日本のIVRの父ともいえる平松京一教授(当時)の計らいで、医師になってから2年半後にハーバード大学で研鑚(けんさん)を積むようにと言われました。そこで約3年半、留学することになってしまいました。研修医が終わったばかりで、何の実力もないし、研究歴もなかった。渡米前には、多くの上司にも心配されました。ハーバード大学で最初の数ヵ月はお客さん扱いでしたし、もう帰国しようかとどまろうかと考えながら細々と実験を始めました。その実験データを基に数ヵ月後に書きあげたプロトコールが運良く認められて潤沢な公的研究費が与えられて、それをきっかけに状況が変わりました。そこのチームのチーフに任命され、血管の中の遺伝子治療研究が始まりました。詰まった心臓血管の中にステント(金属のメッシュ状の筒)を入れると、再狭窄が起こります。ステントは血流を劇的に改善しますが、血管を無理に開くため血管の内皮細胞や血管平滑筋細胞に傷がつきます。血管には破れると修復する作用があって、傷を修復する過程で、金属の周囲に血栓が付き、その刺激が過剰平滑筋細胞の増殖を促し、血管がまた詰まってしまうのです。それを治すために特殊なバルーンカテーテルというのを用いてそこから薬剤を出す。当時は、ステント留置後、20%から40%は半年後には詰まるといわれていました。確かに、血管内の遺伝子治療は実験的に成功し、米国IVR学会やNIHなどで受賞しました。けれども、やはり金属ステントそのものの留置が「諸刃の剣」だということに気づき、帰国後、材料工学の研究を独学で始めました。体になじみにくい金属が、長期的によい成績をだせるわけがないと考えたからです。しかしながら、金属の特性としてしなやかさや耐腐食性などを上回る素材はなかなかありません。それならば、既存のものにコーティングを施したらどうか、と考えました。ただし、コーティングするにしても体に害を及ぼすものでは当然使えません。行き着いたのがダイヤモンド系のコーティングでした。ダイヤモンドは、「物質の王様」といわれるだけあって、非常につるつるしているばかりではなく、耐摩耗性という特性があり、さらに炭素は身体を構成する成分の一つなので、人体に悪影響を及ぼしません。現在、主流となっている薬剤溶出性ステントから出てくる薬剤は薬効が強く正常の血管内皮細胞にダメージを与えるものが主流ですが、ダイヤモンドというのは化学的に安定しているばかりでなく、細胞に毒性を与えない特性を持っています。われわれは、さらにダイヤモンド系コーティングにフッ素を混在させることによって、血液の付着も防げることを初めて発見しました。つまり、フッ素を添加したDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)というコーティングは、血液をはじき付着を防ぐので、血栓ができにくい。さらに、血管内に残るのは炭素を主流とするダイヤモンド系素材なので、身体に悪いものではありません。これらの研究開発には、医学の知識だけではなく工学知識の力が不可欠でした。そこで、臨床医の立場で工学との通訳をしなければいけないと痛感しました。なぜならば、工学の思考と医学の研究者の思考回路はまったく違うからです。ですが、工学者も研究の応用の幅を広げたいと考えているし、医学者もテクノロジーを利用する考えが必要です。互いの歩み寄りを円滑にするために、私は医学部の栗林幸夫教授のご指導の下、医学博士を取得し、その後、工学部の鈴木哲也教授の下で工学博士を取得しました。これからも研究開発において、医工連携のための通訳になれたらと思いますし、私に続く若い医師や研究者を育成することに力を注いでいます。ゼロからのスタートに惹かれ挑戦慶應からこちらへ来たのは、ここはほぼゼロからということに興味を持ちました。現在の教室の寺田一志教授の誘いもあり、今までやってきたことをここで一度リセットして挑戦してみるのもいいだろうと考えました。慶應もいい環境ではありましたが、東邦大学の伝統と自由な気風、研究に対しても「自由にやれ」というムードがありました。特に、東邦佐倉病院では、他の臨床医の方々も、慶應から来た新参者にすごく親切にしてくれて、雰囲気もよかったし、全体的にやる気の気運が高まっている瞬間でした。今では県内でもトップクラスのIVR症例数を誇る施設になりつつありますが、こちらに来た当時はIVR治療もあまり積極的に行われていませんでした。それでも、循環器センターや消化器センターなど各診療科の多くの先生のご協力があって、現在にいたっています。これは、東邦大学の気風とセンター単位で行われるチーム医療にうまく融合した結果だと思います。前病院長の白井教授が臨床・研究に対する基礎を構築し、現在の田上病院長を中心にした執行部の積極的な支援の賜物だと思います。当院循環器センターの専門外来である「血管内治療・IVR外来」は、循環器内科医、心臓血管外科医、臨床検査医、放射線科医、心臓リハビリ医、形成外科医、糖尿病代謝内科医など本当の意味でのチーム医療ができるように構築してきました。カンファレンスの意思が医師同士の間で一貫しているというのは、患者さんにとっても安心できることだと思います。臨床としては主に肝臓がんや救急出血や動脈瘤などの塞栓術と下肢の閉塞性動脈硬化症(ASO: arteriosclerosis obliterans)に伴い、詰まってしまった血管の血管形成術がメインです。糖尿病や動脈硬化で足が壊死してしまうのを治療するのがメインです。私にとって医療器具の研究はライフワークですが、実は臨床が9割。この臨床の経験があるからこそ研究のテーマが明確に打ち出せるのだと思います。これからは教育にも力を注ぐ私がこれから望むものは、若い人の教育です。まだ私も若いですけど……(笑)。若い人を教育するということは、自分が教育されることでもあります。教えるというのは、教えられることでもあります。先入観のない眼で若い人と日本から何かを発信したい。座右の銘は「感謝して今日もニコニコ働きましょう」。決して一人で仕事をしているのではなく、周りのスタッフ、上司、親、自分の周りの人すべてが笑顔でいられる医療をやりたい。そのために臨床はもちろん、研究や医療器具の開発もしたい。若い医師には、どんどん広い世界を見て、自分のアイデンティティ、日本人であるとか医師になるという明確な自覚を持ってほしい。勇気を持って新しいことにもチャレンジしてほしい。それらを一緒にやっていきたい。だからうちの科では工学部との交流や留学なども積極的にプログラミングしています。若いうちから何でも経験させ、国際学会発表も全員が入局2年以内に経験するように指導しています。敵は病気なので、最高の技術、最高の人間性、患者さんを治したいという気持ちを強く身につけてほしいと考えています。是非、そんなピュアな高い志を持った若い先生と学閥や分野を越えて一緒に働きたいという希望を持っています。質問と回答を公開中!

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薬剤溶出性ステントを用いたPCIとCABG、術後QOLはどちらが良好か

多枝血行再建術予定患者に対する、薬剤溶出性ステントを用いたPCIと冠動脈バイパス術(CABG)の、術後QOLを比較検討が、米国・ミズーリ大学カンザスシティー校Saint Luke's Mid America Heart InstituteのDavid J. Cohen氏らにより行われた。これまでの研究ではCABGが、バルーン血管形成術やベアメタルステントを用いたPCIと比較して、狭心症発作を大幅に軽減しQOLを改善することが示されているが、薬剤溶出性ステントを用いたPCIのQOLへの影響は明らかになっていなかった。NEJM誌2011年3月17日号より。1,800例をパクリタキセル溶出ステントを用いたPCIとCABGに無作為化検討は、パクリタキセル溶出ステントを用いたPCIとCABGのアウトカムを比較検討した大規模無作為化試験SYNTAX(Synergy between PCI with Taxus and Cardiac Surgery)のサブスタディとして行われた。SYNTAXでは、再血行再建を含む複合主要エンドポイント発生率ではCABG群の有意な低下が認められたが、不可逆的な転帰のみから成る複合エンドポイント発生率では両群に有意差は認められなかった。このことからCohen氏らは、血行再建術の選択には、狭心症発作の軽減を含むQOLが重要な指標になるとして、被験者の前向きQOLサブスタディを行った。被験者は、3枝病変または左冠動脈主幹部病変患者1,800例。パクリタキセル溶出ステントを用いたPCI群(903例)、もしくはCABG群(897例)に無作為化され、ベースライン時、1ヵ月後、6ヵ月後、12ヵ月後に、SAQ(シアトル狭心症質問票)と包括的QOL評価尺度であるSF-36を用いて健康関連QOLが評価された。主要エンドポイントは、SAQの狭心症発作頻度サブスケールスコア(0~100:スコアが高いほど健康状態は良好とされる)とした。狭心症発作頻度の軽減はCABGが大きいが、ベネフィットは小さいSAQとSF-36それぞれのサブスケールスコアは、両群ともベースライン時より6ヵ月後と12ヵ月後で有意に高かった。SAQの狭心症発作頻度サブスケールスコアは、CABGがPCI群より6ヵ月後と12ヵ月後により大きく増加した(それぞれP=0.04、P=0.03)。しかし群間差は小さく、両時点での治療効果の平均差はいずれも1.7ポイントだった。狭心症発作が起きなった患者の割合は、1ヵ月後と6ヵ月後では両群とも同程度だったが、12ヵ月後ではPCI群よりCABG群の方が高かった(76.3%対71.6%、P=0.05)。SAQとSF-36サブスケールのその他のスコアについては、主に1ヵ月後にPCI群が有意に高いスコアを示すものもみられたが、追跡期間全体を通しては有意差を示すものはなく両群で同程度であった。これらから研究グループは、「3枝病変または左冠動脈主幹部病変患者においては、CABGの方が6ヵ月後と12ヵ月後の狭心症発作の頻度はPCIと比べ大きく軽減したが、ベネフィットは小さかった」と結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

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【阪神淡路大震災の経験を東北関東大震災に活かす】災害時循環器リスク予防スコアの活用のお願い (自治医科大学内科学講座循環器内科学 苅尾七臣先生)

自治医科大学内科学講座循環器内科学 苅尾七臣先生に「東北関東大震災での災害時循環器リスク予防スコア」をご提供頂きました。以下、苅尾先生のメッセージです。この度の東北関東大震災ではこれまでにない甚大な被害が日々報告されておりますが、先生方、ご家族並びに周囲の方々が無事であることを心より願っております。栃木県の自治医科大学では直接的には大きな被害はありませんでしたが、発生後5日目までに、震災に関連した狭心症と心不全の増悪、車中泊での深部静脈血栓症に起因する肺塞栓症の各3名患者が入院されました。著者は、16年前に阪神淡路大震災が発生した当時、震源地である淡路島北淡町の国保診療所に赴任していました。その時の継続した医療と、地元の津名郡医師会事業として行った震災後の循環器疾患調査に基づき、今回、災害時の循環器リスク予防スコア(下記、文献「災害時循環器スコア.pdf」よりダウンロードできます)を作成しました。阪神淡路大震災に比較して、東北関東大震災では被害地域が広範囲に及び、物流がうまくゆかず、制限された避難所生活が長期化することが懸念されます。まだ、被害の全容がつかめていない状況ですが、今後、問題となってくるのが、心筋梗塞や脳卒中、突然死、大動脈解離、さらに肺塞栓症などストレスに関連した循環器疾患と感染症です。特にリスクスコア4点以上のリスクが高い被災者の方には、予防スコア6点以上を目指した徹底した循環器疾患の発症予防に向けて、個人ならびに避難所単位で、本スコアをご活用いただければと思います。まだまだ食糧、薬剤やマスクなど手に入らない状況が続いていると思いますので、今後の状況に応じて、可能な限りでお役立て頂ければ幸いです。 平成23年3月16日自治医科大学内科学講座循環器内科学苅尾 七臣

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ビタミンB類、ω-3脂肪酸は、心血管疾患を予防しない:SU. FOL. OM3試験

 虚血性心疾患や虚血性脳卒中の既往歴を有する患者における心血管疾患の予防では、ビタミンB類やオメガ(ω)-3脂肪酸を含むサプリメントのルーチンな使用は推奨されないことが、フランス・パリ第13大学衛生医学研究所(INSERM)のPilar Galan氏らが実施した「SU. FOL. OM3」試験で示された。心血管疾患の発症は、ビタミンB類(葉酸、ビタミンB6)やω-3多価不飽和脂肪酸の摂取あるいはその血漿濃度と逆相関を示すことが観察試験で報告されている。しかし、無作為化試験ではビタミンB類の血管疾患に対する有意な作用は確認できず、ω-3多価不飽和脂肪酸の臨床試験では相反する結果が得られているという。BMJ誌2011年1月1日号(オンライン版2010年11月29日号)掲載の報告。サプリメント摂取による2次予防効果を評価するプラセボ対照試験 研究グループは、虚血性心疾患あるいは虚血性脳卒中の既往歴を有する患者に対するサプリメントとしてのビタミンB類およびω-3脂肪酸の、心血管イベント予防効果を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った。 フランスの257施設417名の循環器、神経科などの医師のネットワークを介して、45~80歳の心筋梗塞、不安定狭心症、虚血性脳卒中の既往歴を有する患者2,501例が登録された。 これらの患者が、5-メチルテトラヒドロ葉酸(560μg)、ビタミンB6(3mg)、ビタミンB12(20μg)を含むサプリメントを毎日摂取する群(622例)、ω-3脂肪酸(600mg中にエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸を2対1の割合で含有)を含むサプリメントを毎日摂取する群(633例)、双方を摂取する群(620例)、プラセボ群(626例)に無作為に割り付けられた。 摂取期間中央値は4.7年であった。主要評価項目は主な心血管イベントであり、非致死的心筋梗塞、脳卒中、心血管疾患による死亡の複合エンドポイントと定義した。いずれのサプリも、主要評価項目にプラセボ群との差を認めず ビタミンB類群は、血漿ホモシステイン濃度がプラセボ群に比べ19%低下したが、重篤な血管イベントの発症頻度には差を認めなかった(ハザード比:0.90、95%信頼区間:0.66~1.23、p=0.50)。 ω-3脂肪酸群は、血漿ω-3脂肪酸濃度がプラセボ群に比し37%増加したが、重篤な血管イベントの発症頻度は同等であった(ハザード比:1.08、95%信頼区間:0.79~1.47、p=0.64)。 著者は、「虚血性心疾患や虚血性脳卒中の既往歴を有する患者の心血管疾患の予防において、ビタミンB類やω-3脂肪酸を含むサプリメントのルーチンな使用は推奨されない」と結論し、「特に、初回イベントの急性期が経過した後にサプリメントを開始する際、これらは使用すべきでない」としている。

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動脈硬化は心臓・頭以外にも起きるが、認知度は低い

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカル カンパニーは12月27日、同社が行った「動脈硬化に関する意識」調査結果を発表した。この調査は2010年12月上旬、国内に居住する40~70歳代の男女800名に対してインターネット上で行われたもの。動脈硬化の危険因子有無について聞いたところ、「高血圧」が30.4%と最も多く、続いて「肥満」(24.1%)「脂質異常症」(18.1%)「喫煙習慣がある」(15.6%)「糖尿病」(11.8%)「過去に狭心症・心筋梗塞や脳卒中を起こした」(5.4%)の順となり、一つでも持っている人は64.5%にのぼった。この結果は、3人に2人が動脈硬化の危険因子を持っているということを示している。性別年代別で見た場合には、60代以上の男性においては8割が動脈硬化の危険因子を持っていることもわかった。動脈硬化が起きる部位として知っているものについて聞いたところ、「心臓」(86.9%)「頭」(77.6%)という回答が多かったのに対し、「足」(32.1%)「首」(29.8%)「腹部」(17.1%)「腎臓」(8.9%)は昨年の調査結果同様、わずか約3割程度にとどまった。また、動脈硬化が起きる部位によっては5年後の生存率ががんより低いことを知っていると回答した人は15.1%で、動脈硬化の危険因子を持つ人においても、認知度はわずか16.7%であった。同社は、「全身に起きる動脈硬化は、部位によっては症状が出にくい場合もあり、発見や遅れによりQOL(Quality Of Life)の低下や生命予後を悪化させるケースがあります」と述べている。詳細はプレスリリースへhttp://www.jnj.co.jp/jjmkk/press/2010/1227/index.html

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文化の異なる国家間にみる飲酒パターンと虚血性心疾患リスクの違い

生活習慣が対照的な北アイルランドとフランス2ヵ国の50代男性の、飲酒パターンが虚血性心疾患に及ぼす影響を調査した結果、毎日決まって中等量(平均アルコール消費量32.8g、参考値:ビール中瓶20g http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-001.html)の飲酒を習慣とするフランス男性の虚血性心疾患リスクは低く、一方、1日の平均アルコール消費量、飲酒者割合ともフランスより低かったものの不節制飲酒(毎週1日以上50g以上消費)が多くみられた北アイルランド・ベルファストに住む男性の同リスクは高いことが明らかにされた。フランス・トゥールーズ医科大学校疫学部門/INSERM U558のJean-Bernard Ruidavets氏らの報告による。BMJ誌2010年11月27日号(オンライン版2010年11月23日号)掲載より。生活習慣、虚血性心疾患発病率が対照的と知られるフランスと北アイルランドで評価飲酒パターンと虚血性心疾患との関連については、相関、逆相関ともに報告があり、またワイン、ビール、蒸留酒といった酒類別に言及したものもあるが、生活習慣や酒癖が対照的と知られる国と国との比較を検討したものはほとんどないという。そこでRuidavets氏らは、虚血性心疾患の発病率が対照的である両国(フランスは低く、北アイルランドは高い)における関連について、「PRIME(Prospective Epidemiological Study of Myocardial Infarction)」試験のコホートデータを解析し評価した。評価は、週のアルコール消費、不節制飲酒(週1日以上50g以上アルコール消費)の発生率、定期飲酒(毎週1日以上、1回のアルコール消費は50g未満)の発生率、アルコール摂取量、飲酒頻度、酒の種類について包括的に行われた。コホートは10年追跡され、その間に起きたすべての冠動脈イベントが前向きに記録され、Cox比例ハザード回帰分析法により、基線における被験者の特徴と、心筋梗塞または冠動脈死(hard冠動脈イベントと規定)との関連、および狭心症イベントとの関連が評価された。hard冠動脈イベント発生、1,000人年あたり北アイルランド5.63、フランス2.78解析されたコホートは、1991~1994年に、北アイルランド(ベルファスト)の1施設から2,405例、フランス(リール、ストラスブール、トゥールーズ)の3施設から7,373例、いずれも50~59歳の虚血性心疾患を有していない被験者、計9,778例だった。1週間に1日以上飲酒をする人は、ベルファストでは1,456例(60.5%)、フランスは6,679例(90.6%)だった。 そのうち、毎日飲むと回答した人は、ベルファストでは12%(173/1,456例)だったが、フランスでは75%(5,008/6,679例)だった。平均アルコール消費量は、ベルファストは22.1g/日、フランスは32.8g/日だった。不節制飲酒者の割合は、ベルファスト9.4%(227/2,405例)に対して、フランス0.5%(33/7,373例)だった。追跡期間10年の間に、虚血性心疾患イベントはコホート全体(9,778例)で683例(7.0%)が記録された。内訳は、hard冠動脈イベント322例(3.3%)、狭心症イベント361例(3.7%)だった。hard冠動脈イベントの年間発生率は、1,000人年あたり、ベルファストでは5.63(95%信頼区間:4.69~6.69)、フランスでは2.78(同:2.41~3.20)だった。多変量(代表的な心血管リスク因子、登録施設)調整後の、定期飲酒者との比較によるhard冠動脈イベントのハザード比は、不節制飲酒者1.97(95%信頼区間:1.21~3.22)、非飲酒者2.03(同:1.41~2.94)、元飲酒者1.57(同:1.11~2.21)だった。ベルファストとフランスとの比較によるhard冠動脈イベントのハザード比は、補正前は1.76(同:1.37~2.67)、飲酒パターンとワイン飲酒で補正後は1.09(同:0.79~1.50)だった。なおワイン飲酒者だけの解析では両国とも、hard冠動脈イベントリスクは低かった。(朝田哲明:医療ライター)

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HDL-C低値は、心血管疾患の治療ターゲットか?:JUPITER試験サブ解析

HDLコレステロール(HDL-C)値の測定は、初回心血管疾患のリスクの評価には有用だが、HDL-C値はスタチン治療でLDL-Cが著明に低下した患者の残存血管リスクの予測因子ではないことが、アメリカ・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M Ridker氏らが行ったJUPITER試験のサブ解析で明らかとなった。HDL-C値は心血管イベントの発症と逆相関を示す。スタチンは心血管疾患の治療薬として確立されているが、スタチン治療を行ってもなお残存する血管リスクはHDL-C値が低いことである程度説明でき、HDL-Cの不足は治療ターゲットとなる可能性が指摘されている。Lancet誌2010年7月31日号(オンライン版2010年7月22日号)掲載の報告。JUPITER試験のエンドポイントを、HDL-C値の四分位に分けて解析研究グループは、高用量スタチン治療でLDL-C値が著明に低下した患者においても、HDL-C値と心血管イベントの発症とは逆相関の関係を示すかについて解析を行った。JUPITER試験の対象は心血管疾患の既往歴のない非糖尿病の成人で、ベースライン時のLDL-C値<3.37mmol/L、高感度C反応性蛋白(hs-CRP)値≧2mg/Lの者であった。これらの参加者が、ロスバスタチン20mg/日を投与する群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられた。今回の解析では、対象をHDL-C値とアポリポ蛋白A1値の四分位に分けて、JUPITER試験の主要評価項目である非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建術、心血管死について評価した。ロスバスタチン群では、HDL-C値と血管リスクは関連しない17,802例を対象とした主解析では、エンドポイントの発現率はロスバスタチン群がプラセボ群に比べ44%低下した(p<0.0001)。プラセボ群[8,901例(50%)、治療時のLDL-C中央値2.80mmol/L]では、HDL-C値と血管リスクはベースライン時(四分位の最低値群に対する最高値群のハザード比:0.54、95%信頼区間:0.35~0.83、p=0.0039)および治療時(同:0.55、同:0.35~0.87、p=0.0047)ともに有意な逆相関を示した。これに対し、ロスバスタチン群[8,900例(50%)、治療時のLDL-C中央値1.42mmol/L]では、HDL-C値と血管リスクはベースライン時(四分位の最低値群に対する最高値群のハザード比:1.12、95%信頼区間:0.62~2.03、p=0.82)および治療時(同:1.03、同:0.57~1.87、p=0.97)ともに有意な関連はなかった。アポリポ蛋白A1値は、プラセボ群ではエンドポイントの発現率と強い相関を示したのに対し、ロスバスタチン群では関連はほとんど認めなかった。著者は、「HDL-C値の測定は初回心血管疾患のリスクの評価には有用であるが、HDL-C値はスタチン治療でLDL-Cが著明に低下した患者の残存血管リスクの予測因子ではない」と結論したうえで、「現在までのところ、この仮説を支持する有望なデータはないが、コレステリルエステル転送蛋白(CETP)阻害薬などには可能性が残っているため、無作為化試験で検証する必要があるだろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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高尿酸血症治療薬アロプリノール、慢性安定狭心症患者の運動能を改善

痛風・高尿酸血症の治療薬として用いられているアロプリノール(商品名:ザイロリックなど)の高用量投与により、慢性安定狭心症患者の運動能が有意に改善することが、イギリスDundee大学Ninewells病院のAwsan Noman氏らが行った無作為化試験で明らかとなった。実験的な研究では、キサンチンオキシダーゼ阻害薬は1回拍出量当たりの心筋酸素消費量を低下させることが示されている。このような作用がヒトでも起きるとすれば、アロプリノールなどこのクラスのキサンチンオキシダーゼ阻害薬が狭心症患者における心筋虚血の新たな治療薬となる可能性があるという。Lancet誌2010年6月19日号(オンライン版2010年6月8日号)掲載の報告。高用量アロプリノールの運動能改善効果を評価する二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験研究グループは、高用量アロプリノールによる慢性安定狭心症患者の運動能の延長効果について検討する二重盲検プラセボ対照クロスオーバー無作為化試験を行った。イギリスの1病院と2診療所に、血管造影にて冠動脈疾患を認め、運動負荷試験で冠動脈の狭窄が確認された18~85歳の慢性安定狭心症患者(2ヵ月以上が経過)65例が登録された。これらの患者が、アロプリノール600mg/日を投与する群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられ、6週間の治療ののち治療法のクロスオーバーが行われた。主要評価項目はST低下までの時間とし、副次評価項目は総運動時間および胸痛発現までの時間とした。ST低下までの時間が43秒、総運動時間が58秒、胸痛発現までの時間は38秒有意に延長クロスオーバー前の6週間の治療においては、アロプリノール群に割り付けられた31例のうち28例が、プラセボ群の34例のうち32例が評価可能であった。クロスオーバー後の治療では、60例全例で評価が可能であった。ST低下までの時間の中央値は、アロプリノール群がベースラインの232秒から6週後には298秒にまで延長したのに対し、プラセボ群の延長は249秒までであり、有意な差が認められた(p=0.0002)。両群間の絶対差は43秒(95%信頼区間:31~58秒)であった。総運動時間の中央値は、アロプリノール群がベースラインの301秒から393秒にまで延長したのに対し、プラセボ群の延長は307秒までであり、有意な差を認めた(p=0.0003)。両群間の絶対差は58秒であった(95%信頼区間:45~77秒)。胸痛発現までの時間の中央値は、アロプリノール群が234秒から304秒へ、プラセボ群は272秒まで延長し、やはり有意な差が確認された(p=0.001)。両群間の絶対差は38秒であった(95%信頼区間:17~55秒)。治療に関連した有害事象は両群ともにみられなかった。著者は、「アロプリノールは、狭心症患者の運動能の改善薬として有用であり、安価で耐用性にも優れ高い安全性を有する可能性が示唆された」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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QRISKスコアはFraminghamよりも、心血管ハイリスク患者の特定に優れる

心血管疾患10年リスクを予測するものとして英国ノッティンガム大学のQRESEARCH研究グループによって開発されたQRISKスコアのパフォーマンス検証試験が、英国オックスフォード大学Wolfso校医学統計センターのGary S Collins氏らにより行われた。検証されたスコアは最新のQRISK2で、英国政府機関NICEが推奨するFramingham方式との比較、およびQRISK1との比較が行われた。BMJ誌2010年6月5日号(オンライン版2010年5月13日号)掲載より。住民158万人、心血管イベント7万例超のデータを用い各スコアの識別、検定力を検証試験は、英国の開業医365人からの診療データが集約されるTHIN(The Health Improvement Network)データベースを活用して行われた。158万人分の患者データ(1993年1月1日~2008年6月20日)のうち、心血管イベント例は、35~74歳(940万人・年)で7万1,465例あった。主要評価項目は、開業医で記録された最初の心血管疾患(心筋梗塞、狭心症、冠動脈心疾患、脳卒中、一過性虚血性脳卒中)の診断記録とされた。QRISK2とQRISK1との間のパフォーマンスの違いはあまりなしQRISK2は、NICEのFramingham方式が示した心血管疾患10年リスクの予測を改善したことが認められた。識別および検定統計は、QRISK2の方がより良好だった。なお、QRISK2とQRISK1との間のパフォーマンスの違いはあまりなかった。具体的に、QRISK2が示した10年リスクは男性33%、女性40%。これに対しNICEのFramingham方式は、29%、34%だった。QRISK1は、32%、38%だった。男性ハイリスク群の心血管イベント発生率は、QRISK2では1000人・年につき27.8件(95%信頼区間:27.4~28.2)だったが、NICEのFramingham方式は21.9件(21.6~22.2)だった。QRISK1は24.8件(22.8~26.9)。女性ハイリスク群の同発生率は、QRISK2は24.3件(23.8~24.9)、NICEのFramingham方式は20.6件(20.1~21.0)、QRISK1は21.8件(18.9~24.6)。Collins氏は、「QRISK2は、NICEのFramingham方式より、英国の心血管疾患ハイリスク群をより正確に特定することができる」と結論している。

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