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VADT試験:厳格な血糖管理は2型糖尿病患者の心血管イベントの抑制に有用なのか(解説:吉岡 成人 氏)-374

厳格な血糖管理と血管障害の阻止 糖尿病の治療の目的は、血糖、血圧、血中脂質などの代謝指標を良好に管理することによって、糖尿病に特有な細小血管障害(網膜症、腎症、神経障害)および動脈硬化性疾患(冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患)の発症・進展を阻止し、糖尿病ではない人と同様な日常生活の質(QOL:quality of life)を維持して、充実した「健康寿命」を確保することである。この点に関し、1型糖尿病患者を対象としたDCCT試験(Diabetes Control and Complications Trial)、2型糖尿病を対象としたUKPDS試験(United Kingdom Prospective Diabetes Study)などの長期にわたる大規模前向き介入試験で、HbA1c 7.0%前後の厳格な血糖コントロールを目指すことで、細小血管障害のみならず、大血管障害の発症・進展が抑止されうることが示唆された。しかし、動脈硬化性疾患のリスクが集積した2型糖尿病患者にHbA1cの正常化を目指すことの臨床的意義を検証したACCORD試験 (Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes)、ADVANCE試験 (Action in Diabetes and Vascular Disease:Preterax and Diamicron Modified Release Controlled Evaluation )、VADT 試験(Veterans Affairs Diabetes Trial)では、数年間にわたって厳格な血糖管理を目指すことの有用性は確認できず、とくにACCORD試験では厳格な血糖管理を目指した群で死亡率が上昇するという予想外の結果が得られた。その理由として、厳格な血糖管理を目指すことで引き起こされる低血糖によって、炎症反応、好中球や血小板の活性化、凝固系の異常、心電図におけるQT間隔の延長と不整脈の惹起、血管内皮機能への影響などがあいまって心血管イベントに結び付く可能性が示唆された。観察期間も重要な要素 このようなランダム化試験(RCT)で問題になることの1つに観察期間がある。ほんのわずかの差であっても、長期間にわたって経過を観察することで、イベントの発症頻度に差が出てくるのではないかという考えである。 確かに、1型糖尿病患者を対象としたDCCT-EDIC試験(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications)であっても、2型糖尿病を対象としたUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)80試験でも、試験終了後10年を経過した時点で代謝指標に差がなくなったにもかかわらず、厳格な血糖管理を目指した群で、心血管イベントの発症が有意に少なく、病初期の厳格な血糖管理の影響が「metabolic memory」、「legacy effect」として、20年先に福音をもたらすことが確認されている。VADT試験終了後5年間の長期追跡 退役軍人の2型糖尿病患者、1,791例(男性が97%)を強化療法と標準療法の2群に分け、厳格な血糖管理を5.6年にわたって目指すことの有用性を検討したVADT試験では、虚血性心疾患や脳卒中などの心血管イベントに有意な差を示すことができなかった。そこで、その後通常の治療に移行し、1,391例の患者を対象として、中央値で9.8年間追跡した際の主要心血管イベント(心筋梗塞、狭心症、脳卒中、うっ血性心不全の新規発症または増悪、虚血性壊疽による下肢切断、心血管関連死)の初回発生までの期間を主要評価項目とし、心血管死亡率およびすべての死亡率を副次評価項目として再検討したのがこの論文である。 強化療法群と標準治療群のHbA1cの差は試験期間中で平均1.5%(中央値6.9% vs. 8.4%)だったが、試験終了1年時には平均0.5%(中央値7.8% vs.8.3%)に、2~3年時には0.2~0.3%にまで減少した。両群間で脂質や血圧に差はなかった。介入開始後9.8年時において、主要血管イベントの発症率は強化療法群で28.4%(892例中253例)、標準療法群では32.0%(899例中288例)で、強化療法群でリスクが減少しており(ハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.70~0.99、p=0.04)、絶対リスクでも1,000例/年当たり8.6イベント(116例/年当たり1イベント)の減少をしていた。しかし、Supplementary Appendixに添付されているデータでは心筋梗塞、脳卒中、心不全、壊疽による下肢切断のそれぞれの発生頻度には群間で有意な差はない。心血管死亡率(HR:0.88、95%CI:0.64~1.20、p=0.42)、全死因死亡(HR:1.05、95%CI:0.89~1.25、p=0.54)にも差は認められていない。 主要心血管イベントに包括される個々のイベントで発症頻度に差はなく、また、心血管死の頻度にも差はないものの、いくつかの項目をまとめてみると有意な差が生じている。このデータをもって、厳格な血糖管理群では長期間の観察によって心血管イベントが抑止しうると結論付けてよいのかどうか疑問が残る。統計学的に有意なことが必ずしも臨床的にも有意であるとは限らない。

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TECOS試験:DPP-4阻害薬は心血管イベントを抑止しうるか(解説:吉岡 成人 氏)-375

血糖管理と心血管イベント 2型糖尿病患者において、病初期から厳格な血糖管理を目指すことで心血管イベントや死亡のリスクを有意に低減できる可能性を示したUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)80試験は、legacy effectという言葉を生み出した1)。しかし、糖尿病の罹病期間が長く大血管障害のリスクが高い患者や、すでに大血管障害を引き起こした患者に厳格な血糖管理を試みた大規模臨床試験であるACCORD試験(Action to control Cardiovascular Risk in Diabetes)、ADVANCE試験(Action in Diabetes and Vascular Disease:Preterax and diamicron Modified Release Controlled Evaluation)、VADT試験(Veterans Affairs Diabetes Trial)では、厳格な血糖管理を目指すことの有用性は確認できず、とくに、ACCORD試験では低血糖による死亡率の上昇が大きな懸念として取り上げられた。メタアナリシスと臨床試験の乖離 このような背景の下、低血糖を引き起こさずに、良好な血糖管理を得ることができる薬剤としてDPP-4阻害薬が広く用いられるようになり、ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスからは心血管イベントを抑止する可能性が示唆された2)。しかし、DPP-4阻害薬であるサキサグリプチン、アログリプチンを使用した大規模臨床試験であるSAVOR(Saxagliptin Assessment of Vascular Outcomes Recorded in Patients with Diabetes Mellitus) TIMI 53試験、EXAMINE試験(Examination of Cardiovascular Outcomes with Alogliptin versus Standard of Care in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus and Acute Coronary Syndrome)では、心血管イベントに対する薬剤の安全性(非劣性)を確認することができたが、HbA1cがプラセボ群に比較して0.2~0.3%低下したことのメリットは証明されず、SAVOR-TIMI53試験では心不全による入院のリスクが27%ほど高まったという、理解に悩む結果のみが残された。2015年3月に発表されたEXAMINE試験の事後解析の結果では、複合評価項目(全死亡+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中+不安定狭心症による緊急血行再建術+心不全による入院)において、アログリプチン群とプラセボ群で差はなく、心不全による入院の発生率もアログリプチン群3.0%、プラセボ群2.9%(ハザード比[HR]1.07、95%信頼区間[CI]0.79~1.46、p=0.657)で差はなかったと報告されている。しかし、心不全の既往がない患者では、アログリプチン群で心不全による入院が有意に多かった(2.2% vs.1.3% p=0.026)ことが確認されている。期待されていたTECOS試験 このような背景を受けて、2015年6月8日、米国糖尿病学会でシタグリプチンを使用した臨床試験であるTECOS試験(The Trial to Evaluate Cardiovascular Outcomes after Treatment with Sitagliptin)のデータが公表され、即日、New England Journal of Medicine誌にオンライン版で掲載された。1万4,671例(シタグリプチン群7,332例、プラセボ群7,339例)の患者を対象とした、中央値で3.0年の観察期間に及ぶRCTであり、SAVOR-TIMI53試験、EXAMINE試験よりも観察期間が長く、多くの患者を対象とした試験であり、大きな期待を持って発表が待たれた試験である。 主要アウトカムは複合心血管イベントであり、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、不安定狭心症による入院のいずれかの発症と定義され、2次アウトカムとして主要アウトカムの構成要素、そのほかに急性膵炎、がんの発症などが包括された。血糖管理は試験開始後4ヵ月の時点で、シタグリプチン群においてHbA1cが0.4%低下しており、試験期間中に差は小さくなったものの有意な差が確認された。しかし、主要エンドポイント、心不全による入院、死亡についてはシタグリプチン群においてもプラセボ群においても差はなく、感染症、重症低血糖にも差はなかった。急性膵炎はシタグリプチン群で多い傾向を示したものの有意な差はなかった(p=0.07)。 HbA1cを0.2~0.4%低下させ、DPP-4阻害薬によって期待された心血管イベントの抑止効果は確認されなかった。3年という研究期間が短すぎるという考えもあるかもしれない。糖尿病患者において心血管イベントを抑止するために 血糖値の管理によって心血管イベントを抑制できるパワーと、スタチンによって脂質管理を向上させることで得られる心血管イベントの抑制には大きな差がある。「食後高血糖の管理によって血管イベントを抑止する」、「DPP-4阻害薬の使用によって心血管イベントを抑えることができる可能性がある」というのは、「商業主義に基づく医療」(commercial based medicine:CBM )の世界でのキャッチコピーである。糖尿病患者において心血管イベントを抑止するうえで重要なのは、血糖の厳格な管理ではなく、脂質や血圧などの標準的な心血管リスクの管理である3)という意見は傾聴に値するのではないかと思われる。

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シタグリプチン追加で重症心血管イベント増加せず/NEJM

 2型糖尿病患者の治療において、通常治療にDPP-4阻害薬シタグリプチン(商品名:ジャヌビア、グラクティブ)を併用しても、重症心血管イベントは増加しないことが、米国・デューク大学のJennifer B Green氏らが実施したTECOS試験で示された。多くの2型糖尿病治療薬が承認されているが、一部の薬剤で心血管系の長期的な安全性に関して疑問が生じているという。米国FDAや欧州医薬品庁(EMA)は、新薬に対し、血糖降下作用だけでなく臨床的に重要な心血管系の重篤な有害事象の発生率を上昇させないことを示すよう求めている。NEJM誌オンライン版2015年6月8日号掲載の報告より。上乗せの安全性の非劣性を検証 TECOS試験は、心血管疾患を併発した2型糖尿病患者における通常治療へのシタグリプチンの上乗せの長期的な安全性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化非劣性試験(Merck Sharp & Dohme社の助成による)。 対象は、年齢50歳以上、1~2剤の安定用量の経口血糖降下薬(メトホルミン、ピオグリタゾン、スルホニル尿素薬)またはインスリン製剤により糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が6.5~8.0%に保たれている患者とした。併存する心血管疾患は、重症冠動脈疾患、虚血性脳血管疾患、アテローム性末梢動脈硬化疾患とした。 被験者は、通常治療にシタグリプチン(100mg/日またはeGFR値が≧30、<50mL/分/1.73m2の場合は50mg/日)またはプラセボを併用する群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。血糖降下薬は、個々の患者が適切な目標血糖値を達成できるようオープンラベルでの投与が推奨された。 主要複合アウトカムは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症による入院とした。シタグリプチン群の両側検定による相対リスクのハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値が1.3を超えない場合に非劣性と判定した。主要複合アウトカム発生率:11.4 vs. 11.6% 2008年12月~2012年7月までに、38ヵ国673施設に1万4,671例(intention-to-treat[ITT]集団)が登録され、シタグリプチン群に7,332例、プラセボ群には7,339例が割り付けられた。ベースラインの平均HbA1c値は7.2±0.5%、2型糖尿病の平均罹病期間は11.6±8.1年であり、フォローアップ期間中央値は3.0年だった。 HbA1c値は、4ヵ月時にシタグリプチン群がプラセボ群よりも0.4%低くなったが、この差はその後の試験期間を通じて徐々に小さくなった。全体のシタグリプチン群の最小二乗平均差は-0.29%(95%信頼区間[CI]:-0.32~-0.27)であった。 主要複合アウトカムのイベント発生は、シタグリプチン群が839例(11.4%、4.06/100人年)、プラセボ群は851例(11.6%、4.17/100人年)であった。非劣性のper-protocol(PP)解析では、シタグリプチン群のプラセボ群に対する非劣性が確認され(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.88~1.09、p<0.001)、優越性に関するITT解析(0.98、0.89~1.08、p=0.65)では有意な差を認めなかった。 副次複合アウトカムである心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の発生も、PP解析で非劣性であり(HR:0.99、95%CI:0.89~1.11、p<0.001)、ITT解析では優越性を認めなかった(0.99、0.89~1.10、p=0.84)。また、ITT解析では、心不全による入院(1.00、0.83~1.20、p=0.98)、心不全による入院または心血管死(1.02、0.90~1.15、p=0.74)、全死因死亡(1.01、0.90~1.14、p=0.88)も、シタグリプチン群での発生が多いことはなかった。 一方、非心血管アウトカムでは、感染症、がん、腎不全、重症低血糖の発生率は両群間に差がなかった。急性膵炎の頻度はシタグリプチンで高かった(0.3 vs. 0.2%)が、有意な差はなかった(ITT解析:p=0.07、PP解析:p=0.12)。膵がんはシタグリプチン群で少なかった(0.1 vs. 0.2%)が、有意差は認めなかった(p=0.32、p=0.85)。 また、重篤な有害事象(消化器、筋骨格・結合組織、呼吸器など)の発生率には、両群間に臨床に関連する差はみられなかった。 著者は、「シタグリプチンは、心血管疾患のリスクが高い多彩な病態の2型糖尿病患者に対し、心血管合併症を増加させずに使用可能と考えられるが、これらの結果は、より長期の治療やより複雑な併存疾患を有する患者では、ベネフィットとともにリスクの可能性も排除できないことを示唆する」と指摘している。

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急性冠症候群へのスタチン+エゼチミブの有用性/NEJM

 急性冠症候群(ACS)の治療において、スタチンにエゼチミブを併用すると、LDLコレステロール(LDL-C)値のさらなる低下とともに心血管アウトカムが改善することが、米国・ハーバード大学医学大学院のChristopher P Cannon氏らが実施したIMPROVE-IT試験で示された。スタチンは、心血管疾患の有無にかかわらず、LDL-C値と心血管イベントのリスクの双方を低減するが、残存する再発リスクと高用量の安全性に鑑み、他の脂質降下薬との併用が検討されている。エゼチミブは、スタチンとの併用で、スタチン単独に比べLDL-C値をさらに23~24%低下させることが報告されていた。NEJM誌オンライン版2015年6月3日号掲載の報告。上乗せ効果をプラセボ対照無作為化試験で評価 IMPROVE-IT試験は、ACSに対するシンバスタチン+エゼチミブ併用療法の有用性を評価する二重盲検無作為化試験(Merck社の助成による)。対象は、年齢50歳以上、入院後10日以内のACS(ST上昇および非上昇心筋梗塞、高リスク不安定狭心症)で、脂質降下療法を受けている場合はLDL-C値が50~100mg/dL、受けていない場合は50~125mg/dLの患者であった。 被験者は、シンバスタチン(40mg/日)+エゼチミブ(10mg/日)またはシンバスタチン(40mg/日)+プラセボを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は、心血管死、非致死的心筋梗塞、再入院を要する不安定狭心症、冠動脈血行再建術(割り付け後30日以降)、非致死的脳卒中の複合エンドポイントとした。フォローアップ期間中央値は6年だった。 2005年10月26日~2010年7月8日までに、39ヵ国1,147施設に1万8,144例が登録され、併用群に9,077例、単剤群には9,067例が割り付けられた。全体の平均年齢は64歳、女性が24%で、糖尿病が27%にみられ、入院中に冠動脈造影が88%、PCIが70%に施行された。入院時の平均LDL-C値は、両群とも93.8mg/dLだった。LDL-C値が24%低下、心血管イベントのリスクが2.0%減少 治療1年時の平均LDL-C値は、併用群が53.2mg/dLであり、単剤群の69.9mg/dLに比べ有意に低下していた(p<0.001)。16.7mg/dLという両群の差は、エゼチミブの追加により、スタチン単剤に比べLDL-C値がさらに24%低下したことを示す。 治療1年時の総コレステロール、トリグリセライド、非HDLコレステロール、アポリポ蛋白B、高感度CRPの値はいずれも、単剤群に比べ併用群で有意に低かった。 治療7年時の主要評価項目のイベント発生率(Kaplan–Meier法)は、併用群が32.7%と、単剤群の34.7%に比べ有意に改善した(絶対リスク差:2.0%、ハザード比[HR]:0.936、95%信頼区間[CI]:0.89~0.99、p=0.016)。併用によるベネフィットは治療1年時には認められた。 3つの副次評価項目も併用群で有意に優れた(全死因死亡/重症冠動脈イベント/非致死的脳卒中:p=0.03、冠動脈心疾患死/非致死的心筋梗塞/30日以降の緊急冠動脈血行再建術:p=0.02、心血管死/非致死的心筋梗塞/不安定狭心症による入院/30日以降の全血行再建術/非致死的脳卒中:p=0.04)。 全死因死亡(p=0.78)、心血管死(p=1.00)には差がなかったが、心筋梗塞(p=0.002)、虚血性脳卒中(p=0.008)の発症率は併用群で有意に低かった。併用のベネフィットは、ほぼすべてのサブグループに一致して認められ、糖尿病および75歳以上の高齢患者でとくに顕著だった。 両群間(併用群 vs.単剤群)で、筋疾患(0.2 vs.0.1%)、胆嚢関連有害事象(3.1 vs.3.5%)、胆嚢摘出術(1.5 vs.1.5%)、ALT/AST正常上限値の3倍以上(2.5 vs.2.3%)、がんの新規発症/再発/増悪(10.2 vs.10.2%)、がん死(3.8 vs.3.6%)の頻度に差はなかった。有害事象による治療中止は、併用群が10.6%、単剤群は10.1%に認められた。 著者は、「LDL-C値を以前の目標値よりも低下させることで、さらなるベネフィットがもたらされると考えられる」としている。(菅野守:医学ライター)関連記事 IMPROVE-IT:ACS患者でのezetimibeによるLDL低下の有益性が示される

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結果が矛盾する論文をどう解釈すべきか【Dr.桑島が動画で解説】

プレゼント応募はこちら抽選の申し込みをする応募受付期間を終了いたしました。抽選で100名様に『脳・心・腎血管疾患クリニカル・トライアル Annual Overview 2015』を進呈!応募期間: 2015年4月24日~2015年5月25日 正午まで当選の通知方法 : プレゼントの発送をもって、当選のお知らせとさせていただきますプレゼント発送予定日 : 2015年6月上旬ごろ予定  3月4月に最も読まれたCLEAR!ジャーナル四天王 TOP51位)「エドキサバンは日本の薬なのに…」1~遺伝子型と抗血栓療法下の出血、血栓イベントの関係~:ENGAGE AF-TIMI 48試験(解説:後藤 信哉 氏)2位)DPP-4阻害薬の副作用としての心不全-アログリプチンは安全か…(解説:吉岡 成人 氏)3位)降圧は「The faster the better(速やかなほど、よし)」へ(解説:桑島 巌 氏)4位)ガイドラインでは薬物相互作用を強調すべき(解説:桑島 巌 氏)5位)COSIRA試験:血管を開けるのか?それとも、閉じるのか? 狭心症治療に新たな選択肢(解説:香坂 俊 氏)J-CLEARのメンバーが評論した論文を紹介したコーナー「CLEAR!ジャーナル四天王」最新記事一覧はこちらをクリック前回の動画はこちら第1回 Dr.桑島の動画でわかる「エビデンスの正しい解釈法」MRの話はどこまで信じていいのか・・・と感じた経験ありませんか?「適切なエンドポイントか」「実験の実施主体はどこか」など見極めるポイントをわかりやすく解説

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アリロクマブ併用による長期のLDL-C改善効果/NEJM

 米国・アイオワ大学のJennifer G Robinson氏らODYSSEY LONG TERM試験の研究グループは、心血管リスクの高い患者の治療において、新規LDLコレステロール(LDL-C)低下薬アリロクマブ(alirocumab、国内未承認)を最大耐用量のスタチンと併用すると、長期にわたりLDL-C値が有意に減少し、心血管イベントが抑制されることを確認した。アリロクマブは、前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に対するモノクローナル抗体であり、第II相試験では短期的投与(8~12週)により、スタチン治療を受けている患者のLDL-C値を40~70%減少させることが示されている。NEJM誌オンライン版2015年3月15日号掲載の報告より。長期の上乗せ効果をプラセボ対照無作為化試験で評価 ODYSSEY LONG TERM試験は、スタチン治療を受けている高リスク例に対するアリロクマブ追加の長期的な有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験(Sanofi社などの助成による)。対象は、年齢18歳以上、ヘテロ型家族性高コレステロール血症(FH)または冠動脈心疾患(CHD)、あるいはCHD相当のリスクを有し、LDL-C値≧70mg/dLであり、高用量または最大耐用量のスタチン治療を受けている患者であった。 被験者は、アリロクマブ(150mg含有1mLシリンジで皮下投与)またはプラセボを2週ごとに投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けられ、78週の治療が行われた。主要有効性評価項目は、ベースラインから24週までのLDL-C値の変化率であった。 27ヵ国320施設に2,341例が登録された。アリロクマブ群に1,553例、プラセボ群には788例が割り付けられ、それぞれ1,530例、780例が解析の対象となった。LDL-C値が62%減少、重度の心血管有害事象は48%抑制 全体の平均年齢は60歳、女性が37.8%で、CHDの既往歴は68.9%にみられ、ヘテロ型FHが17.7%含まれた。46.8%が高用量スタチンの投与を受け、28.1%はエゼチミブなどの他の脂質降下薬を併用していた。ベースラインの平均LDL-C値は122mg/dLであった。 24週時のベースラインからのLDL-C値の平均変化率の両群間の差は-62%であり、アリロクマブ群で有意に減少した(48.3 vs. 118.9mg/dL、p<0.001)。ヘテロ型FHとそれ以外の患者の間に差はみられなかった。また、この治療効果は4週時には達成され、78週時(57.9 vs. 122.6mg/dL)も維持されていた。 24週時のLDL-C<70mg/dLの達成率は、アリロクマブ群が79.3%、プラセボ群は8.0%であった(p<0.001)。また、LDL-C以外の脂質の24週時の変化率の差は、非HDL-Cが-52.3%、アポリポ蛋白Bが-54.0%、総コレステロールが-37.5%、リポ蛋白(a)が-25.6%、空腹時トリグリセライドが-17.3%とアリロクマブ群で有意に減少し、HDL-Cは4.6%、アポリポ蛋白A1は2.9%と有意に増加した(いずれもp<0.001)。 重篤な有害事象は、アリロクマブ群が18.7%、プラセボ群は19.5%に発現し、有害事象による試験薬の中止はそれぞれ7.2%、5.8%に認められた。アリロクマブ群で頻度の高い有害事象として、注射部位反応(5.9 vs. 4.2%)、筋肉痛(5.4 vs. 2.9%、p=0.006)、神経認知障害(譫妄、認知/注意障害、認知症、健忘症など、1.2 vs. 0.5%)、眼イベント(視神経/網膜/角膜の障害、2.9 vs. 1.9%)がみられた。 事後解析では、重度の心血管有害事象(CHDによる死亡、非致死的心筋梗塞、致死的/非致死的虚血性脳卒中、入院を要する不安定狭心症)の発現率はアリロクマブ群で有意に低かった(1.7 vs. 3.3%、ハザード比:0.52、95%信頼区間:0.31~0.90、p=0.02)。 著者は、「これらの知見は、既報の他のPCSK9阻害薬(エボロクマブ)の臨床試験(N Engl J Med. 2014;370:1809-1819、Circulation. 2014;129:234-243)の結果と類似する」と指摘している。

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DPP-4阻害薬の副作用としての心不全-アログリプチンは安全か…(解説:吉岡 成人 氏)-344

糖尿病患者の2人に1人はDPP-4阻害薬が処方されている 厚生労働省の発表によれば、日本人の糖尿病患者はおおよそ950万人ほどであり、そのうちの約70%の患者、665万人ほどが医療機関に通院していると推計されている。糖尿病の治療に使用される薬剤は、スルホニル尿素(SU)薬、ビグアナイド(BG)薬が治療の基本薬として考えられているが、SU薬では低血糖、BG薬では稀ではあるが、乳酸アシドーシスなど副作用があり、BG薬は75歳以上の高齢者、血清クレアチニンが1.20mg/dL以上の患者では新規に処方されることは推奨されず、造影剤を使用する際などにおける休薬など煩雑な注意が必要とされる。そのようななかで、単剤では低血糖を引き起こすことがなく、比較的安全で有用性が高いDPP-4阻害薬が広く使われており、日本では、350万人以上の患者に処方されていると推定されている。DPP-4阻害と心機能-基礎と臨床の乖離- DPP-4阻害薬は心機能を改善させる作用を持つGLP(glucagon like peptide)-1を増加させ、BNP(brain natriuretic peptide)の生理活性を増加させる可能性を持つ薬剤として、糖尿病患者における心血管イベントの抑止に有用ではないかと考えられてきた。また、慢性心不全の患者の3~4割は糖尿病を合併しており、糖尿病自体も慢性心不全のリスク因子として注目されている。心筋細胞において分泌されたproBNPは、NT-proBNPとBNP(1-32)にほぼ1:1の割合で切断される。DPP-4はBNP(1-32)をより生理活性が弱いBNP(3-32)に分解する作用があり、DPP-4を阻害することは、より生理活性が高いBNP(1-32)を増加させ、臓器保護や利尿作用という点でベネフィットになるのではないかと考えられていた。 しかし、DPP-4阻害薬であるサキサグリプチン、アログリプチンを使用した大規模臨床試験であるSAVOR-TIMI53、EXAMINEでは心血管イベントに対する薬剤の安全性(非劣性)を確認することができたが、心血管に有用性があると考えられたDPP-4阻害を使用し、HbA1cがプラセボ群に比較して0.2~0.3%低下したことのメリットは何も証明されず、SAVOR-TIMI53では心不全による入院のリスクが27%ほど高まったという理解に悩む結果のみが残された。いくつかの臨床試験のメタアナリシス1) でも、その懸念は払拭できなかった。アログリプチンはサキサグリプチンと違うのか 今回発表されたEXAMINEの事後解析の結果では、前回報告された主要複合評価項目(心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中)とは別に、探索的な複合評価項目(全死亡+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中+不安定狭心症による緊急血行再建術+心不全による入院)では、アログリプチン群とプラゼボ群で差はなく、心不全による入院の発生率も、アログリプチン群3.1%、プラセボ群2.9%(HR:1.07、95%信頼区間:0.79~1.46、p=0.657)で、差はなかったと報告されている。 SAVOR-TIMI53の対象となった患者よりも、心不全の発症リスクが高いと考えられる患者が多いEXAMINEで、なぜ心不全のリスクが上昇しないのか、主要複合評価項目を用いたエンドポイントを簡単には比較できないが、シタグリプチンを使用した臨床試験であるTECOS (The Trial to Evaluate Cardiovascular Outcomes after Treatment with Sitagliptin )のデータが待たれる。

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エボロクマブ追加でLDL-Cが長期に減少/NEJM

 脂質異常症の標準治療に新規のLDLコレステロール(LDL-C)低下薬であるエボロクマブ(承認申請中)を追加し約1年の治療を行うと、標準治療単独に比べLDL-C値が有意に減少し、心血管イベントが抑制されることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMarc S Sabatine氏らOSLER試験の研究グループの検討で明らかとなった。エボロクマブは、前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体であり、短期的な臨床試験でLDL-C値を約60%減少させることが確認されていた。NEJM誌オンライン版2015年3月15日号掲載の報告より。12件の親試験の第II、III相別の延長試験を統合解析 OSLER試験は、エボロクマブに関する12の親試験(parent study、第II相:5件[日本のYUKAWA-1試験を含む]、第III相:7件)を完遂した患者を対象とする延長試験であり、本薬の長期的な有用性の評価を目的に、OSLER-1試験(第II相試験)とOSLER-2試験(第III相試験)に分けて検討が行われた(Amgen社の助成による)。親試験には、脂質異常症治療薬未使用例、スタチン±エゼチミブ投与例、スタチン不耐容例、ヘテロ型家族性高コレステロール血症例などが含まれた。 被験者は、親試験での割り付けとは別に、標準治療+エボロクマブまたは標準治療のみを施行する群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。エボロクマブは、OSLER-1試験では2週ごとに140mgが皮下投与され、OSLER-2試験では2週ごと140mgと月1回420mgのいずれかを患者が選択した。 脂質値、安全性および事前に規定された探索的解析として心血管イベント(死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈血行再建術、脳卒中、一過性脳虚血発作、心不全)の評価を行い、2つの試験の統合解析を実施した。 2011年10月~2014年6月までに4,465例(OSLER-1試験:1,324例、OSLER-2試験:3,141例)が登録され、エボロクマブ群に2,976例(平均年齢57.8歳、男性50.1%、LDL-C中央値120mg/dL)、標準治療単独群には1,489例(58.2歳、51.4%、121mg/dL)が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は11.1ヵ月であった。LDL-C値が61%減少、心血管イベントは53%減少 12週時のLDL-C値は、エボロクマブ群が48mg/dLであり、標準治療単独群の120mg/dLと比較した減少率は61%であった(p<0.001)。OSLER-1とOSLER-2試験の間に減少率の差はなかった。また、このエボロクマブ群のLDL-C値の減少は48週まで持続した(24週の減少率:59%、36週:54%、48週:58%、いずれもp<0.001)。 12週時に、エボロクマブ群の90.2%がLDL-C値≦100mg/dLとなり、73.6%が≦70mg/dLを達成した。標準治療単独群はそれぞれ26.0%、3.8%だった。 12週時の非HDL-C、アポリポ蛋白B、総コレステロール、トリグリセライド、リポ蛋白(a)は、LDL-Cと同様にエボロクマブ群で有意に減少した(いずれもp<0.001)。また、HDL-Cとアポリポ蛋白A1は有意に増加した(いずれもp<0.001)。 有害事象はエボロクマブ群の69.2%、標準治療単独群の64.8%に認められ、重篤な有害事象はそれぞれ7.5%、7.5%に発現した。神経認知障害(せん妄、認知/注意障害、認知症、健忘症など)はエボロクマブ群で多くみられた(0.9 vs. 0.3%)が、治療期間中のLDL-C値とは関連がなかった。 エボロクマブによる治療中止は2.4%、注射部位反応は4.3%に認められ、そのほか関節痛や頭痛、四肢痛、疲労感が標準治療単独群よりも多くみられた。 1年時の心血管イベントの発症率は、エボロクマブ群が0.95%であり、標準治療単独群の2.18%に比し有意に低かった(ハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.28~0.78、p=0.003)。 著者は、「61%というLDL-C値の減少率は、既報の短期的な試験と一致しており、48週にわたる効果の持続はより小規模な試験(DESCARTES試験)の結果と一致した。他の脂質に対する効果にも既報との一貫性が認められた」としている。

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SCOT-HEART試験:冠動脈疾患による狭心症が疑われる症例への冠動脈CT検査(解説:近森 大志郎 氏)-342

 冠動脈CT(CTCA)は外来で非侵襲的に実施できることから、本検査の日常臨床への広がりに伴い、虚血性心疾患が疑われる患者に対する、より良い診断アプローチの中心となることが期待されている。スコットランドの12の胸痛クリニックを中心としたSCOT-HEART試験の研究者たちは、有症状で狭心症が疑われる4,146例を対象にして、クリニックでの初期診療の後に無作為に2群(通常診療群 対 通常診療+CTCA群)に割り付けた。試験のエンドポイントは、冠動脈疾患による狭心症の診断についての確実性という、かなり主観性の強い評価項目である。しかも、Yes、Probable、Unlikely、No、と定義された診断の確実性について、初期診察時の確実性が6週後にどのように修正されたかという医師の認識に関する評価である。 対象症例の平均年齢は57歳で、男性が57%と多く、高血圧34%、糖尿病11%、脂質異常症53%、喫煙53%という冠危険因子の頻度であった。なお、症状として胸痛を訴えてはいるが、狭心症としては非典型的胸痛、あるいは非狭心症と判断された症例が65%と高率である。対象群の85%で運動負荷心電図が実施されて、62%が正常、15%が異常の結果を示した。この初期検査結果に基づき、主治医は診断の確実性を4つのカテゴリー(Yes 7%、Probable 29%、Unlikely 51%、No 13%)に判断した。そして、必要に応じて、負荷心エコー(31%)・核医学検査(9%)・侵襲的冠動脈造影(12%)の診断計画を立案した。この後、CTCA群では3つの画像センターでCT検査を実施している。 6週間後にこれらのデータを主治医が再評価して診断の確実性を見直したところ、CTCA群において冠動脈疾患による狭心症の診断頻度は変化しなかったが、確実性については相対リスク1.79と増加を認めた。すなわち、通常診療群では6週間で1%しか診断が変わらなかったのに対して、CTCA群では23%で診断が修正されたことになる。この結果、CTCA群では121例で機能的検査の予定がキャンセルされ、29例での侵襲的冠動脈造影もキャンセルされた。これに対して、94例の新たな冠動脈造影が予定された。さらに、1.7年の経過観察中に有意差はないものの、CTCA群では通常診療群と比較して相対的に38%の心事故低下を認めた。 本研究は、クリニックを中心とした実地診療に携わる医師が画像センターとタイアップすることによって、冠動脈疾患による狭心症の診断精度とマネジメントを向上できることを示した興味深い研究である。しかしながら、スコットランドという特定の地域の医療事情も無視することはできない。一般に英国の通常の医療は無償である一方、救急救命を除く医療へのアクセスが悪いことはよく知られている。受診までに長期の待ち期間を必要とするのである。初診から6週間経過しても、次の検査が実施されていないことは日本では稀であろう。多分、重症例では冠インターベンション治療も終了しているのではないか? このように考えると、CTCAの役割は画像診断としての科学的側面だけではなく、それが活かされるか否かについては、それぞれの地域における医療制度の適合性も無視することはできないと思う。

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ニーズいろいろ【Dr. 中島の 新・徒然草】(062)

六十二の段 ニーズいろいろ先日、初診でお見えになった患者さん。やけにいろいろな訴えのある60代の女性です。 患者 「頭が痛いし」 中島 「頭が痛いわけですね」 患者 「心臓も心配だし」 中島 「思いあたるフシが?」 患者 「以前に狭心症やってんですよ」 中島 「なるほど」 患者 「最近目が見えにくくなってきて」 中島 「目が見えない・・・わけですか」 ふと思いついて尋ねてみました。 中島 「お仕事は何をやっているんですか?」 患者 「テレアポですよ、お墓の」 中島 「電話でお墓を売っているってことですか」 患者 「そう。その前は会社経営を25年やってましてね」 中島 「そうなんですか」 患者 「若いときにずっと営業でトップだったもんですから、最後に自分の納得のいくものを売りたいと思って、会社を畳んだんですよ」 わかるようなわからないような理屈です。 中島 「その『納得のいくもの』がお墓というわけですか」 患者 「そうなんです」 ここで何となく、この人のニーズが掴めました。 中島 「つまり、いろいろと体に不調があるので、それらを全部すっきりさせて、『安心してお墓に入りたい』と。そういうことですか?」 患者 「そう! そうなのよ」 中島 「『安心してお墓に入る』って、考えれば考えるほど理解しがたいセリフですね」 患者 「そうね(笑)」 中島 「でも、何となくその気持ちはわかりますよ」 患者 「わかってくれます?」 中島 「納得して死にたいってことでしょ?」 患者 「そう・・・かもしれませんね。それで私、お墓を売っているのかな」 理屈ではわからないことでも、感覚的には「安心してお墓に入りたい」という気持ちは理解できるような気がします。 中島 「わかりました。まず脳に関係したことを調べましょう。その後、必要に応じて循環器内科や眼科にも紹介しますので、不安を1つずつ消していきましょう」 患者 「ぜひお願いします」 ということで、お互いのペースに合わせてゆっくり診療を進めていくことになりました。それにしても世の中には色んなニーズがあるものです。最後に1句目標は お墓に行くぞ 安らかに

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狭心症疑い、CT冠動脈造影で診断確度アップ/Lancet

 冠動脈性心疾患(CHD)で狭心症が疑われた患者に対し、コンピュータ断層撮影を用いた冠動脈造影(CTCA)を実施することで、診断確度が増大することが示された。CTCAにより介入ターゲットが明確になり、有意差は示されなかったが将来的な心筋梗塞リスクを低下可能であることが示されたという。英国・ボーダーズ総合病院のDavid Newby氏らSCOT-HEART研究グループが、4,146例を対象に行った無作為化試験の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2015年3月15日号掲載の報告より。4,146例を無作為に2群に分け、一方には標準ケア+CTCAを実施 試験は、2010年11月~2014年9月にかけて、スコットランドの12ヵ所の心臓・胸痛クリニックから、冠動脈性心疾患(CHD)により狭心症が疑われ紹介された18~75歳の患者4,146例を対象に行われた。 被験者を無作為に2群に分け、一方には標準的ケアに加えCTCAを行い、もう一方の群には標準ケアのみを行った(各群2,073例)。 主要評価項目は、6週間後の狭心症の診断確度だった。狭心症の診断確度はCTCA群で約1.8倍に 被験者のうち、ベースラインで臨床的にCHDの診断を受けていたのは47%、CHDによる狭心症の診断を受けたのは36%だった。 6週間後、CTCA群でCHDの診断に再分類されたのは27%(558例)、CHDによる狭心症の診断に再分類されたのは23%(481例)だった。 CTCA+標準ケアは、標準ケアのみに比べ、6週間時点におけるCHD診断確度を約2.6倍(相対リスク:2.56、95%信頼区間:2.33~2.79、p<0.0001)増大し、診断頻度もわずかだが増大した(同:1.09、同:1.02~1.17、p=0.0172)。また、主要評価項目のCHDによる狭心症については、診断確度は増加し(同:1.79、同:1.62~1.96、p<0.0001)、診断頻度は同等だった(同:0.93、同:0.85~1.02、p=0.1289)。 これら診断確度や頻度の変化は、予定されていた検査法の変更(CTCA群15% vs. 標準ケアのみ群1%、p<0.0001)や、治療の変更(同23% vs. 5%、p<0.0001)と関連していた。しかし、6週時点の症状の重症度やその後の胸痛による入院への影響はみられなかった。 1.7年後、標準ケアのみ群の致死的・非致死的心筋梗塞の発生は42例だったのに対し、CTCA群は26例で、有意差は示されなかったが同リスクの抑制が認められた。(ハザード比:0.62、同:0.38~1.01、p=0.0527)。

272.

冠動脈疾患の検出、CT血管造影 vs.機能的検査/NEJM

 冠動脈疾患(CAD)が疑われる症状を有する患者への非侵襲的検査について、CT血管造影(CTA)と機能的検査(運動負荷心電図、運動/薬剤負荷心筋シンチ、負荷心エコー)を比較した結果、追跡期間中央値2年間の患者の臨床的アウトカムに違いはみられないことが示された。米国・デューク大学のPamela S. Douglas氏らが無作為化試験の結果、報告した。CADの示唆的な症状は多くの患者でみられ、診断検査が行われる頻度は高いが、治療ガイドのための無作為化試験のデータは限定的であった。NEJM誌オンライン版2015年3月14日号掲載の報告より。CTA群vs.機能的検査群の無作為化試験でアウトカムを評価 試験は、症候性の患者1万3例を、CTAを行う群または機能的検査を行う群に無作為に割り付けて行われた。 主要エンドポイントは死亡・心筋梗塞・不安定狭心症による入院または検査に関連した重大合併症の複合とした。副次エンドポイントは、閉塞性CADを認めなかった侵襲性心臓カテーテルの施行、累積放射線曝露量などであった。 患者の平均年齢は60.8±8.3歳、52.7%が女性、87.7%は胸痛または運動性呼吸困難を有していた。検査前閉塞性CADの平均尤度は、53.3±21.4%であった。CTA群のほうが心カテ施行が多く、放射線曝露も多い 追跡期間中央値25ヵ月の間、主要エンドポイントの発生は、CTA群164/4,996例(3.3%)、機能的検査群151/5,007例のうちの151(3.0%)であった(補正ハザード比:1.04、95%信頼区間[CI]:0.83~1.29、p=0.75)。 CTA群は機能的検査群と比べて、無作為化後90日間で心カテを受けた患者が多かった(12.2% vs. 8.1%)。閉塞性CADのない心カテ施行は有意に少なかった(3.4% vs. 4.3%、p=0.02)。 また、患者当たりの累積放射線曝露の中央値は、CTA群が機能的検査群よりも低かった(10.0mSv vs. 11.3mSv)。しかし、機能的検査群では患者の32.6%が非曝露で、全体的な曝露量はCTA群が有意に多かった(平均12.0mSv vs. 10.1mSv、p<0.001)。

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PROMISE試験:冠動脈疾患に対する解剖的評価と機能評価検査の予後比較(解説:近森 大志郎 氏)-328

 安定した胸部症状を主訴とする患者に対する診断アプローチとして、まず非侵襲的検査によって冠動脈疾患を鑑別することが重要である。従来は運動負荷心電図が日常診療で用いられてきたが、その後、負荷心筋シンチグラフィ(SPECT)検査、負荷心エコー図検査が臨床に応用され、近年では冠動脈CT(CTCA)も広く実施されるようになっている。しかしながら、これらの検査の中でいずれを用いればよいか、という検査アプローチを実証する大規模臨床試験は実施されてはいなかった。 今回、San Diegoで開催された米国心臓病学会(ACC.15)のLate-Breaking Clinical Trialsの先頭を切って、上記に関するPROMISE試験が報告され、同時にNew England Journal of Medicine誌の電子版に掲載された。なお、ACCで発表される大規模臨床試験の質の高さには定評があり、NEJM誌に掲載される比率では同じ循環器分野のAHA、ESCを凌いでいる。 Duke大学のPamela Douglas氏らは、従来の生理機能を評価する運動負荷心電図・負荷心筋SPECT・負荷心エコー図に対して、冠動脈の解剖学的評価法であるCTCAの有効性を比較するために、有症状で冠動脈疾患が疑われる10,003例を無作為に2群(CTCA群対機能評価群)に割り付けた。試験のエンドポイントは従来のほとんどの研究で用いられた冠動脈疾患の診断精度ではなく、全死亡・心筋梗塞・不安定狭心症による入院・検査による重大合併症からなる、複合エンドポイントとしての心血管事故が設定されている。対象症例の平均年齢は61歳で、女性が52~53%と多く、高血圧65%、糖尿病21%、脂質異常症67%という冠危険因子の頻度であった。なお、症状として胸痛を訴えてはいるが、狭心症としては非典型的胸痛が78%と高率であることは銘記すべきであろう。 実際に機能評価群で実施された非侵襲的検査については、負荷心筋SPECT検査67.5%、負荷心エコー図22.4%、運動負荷心電図10.2%、と核医学検査の比率が高かった。また、負荷心電図以外での負荷方法については、薬剤負荷が29.4%と低率であった。そして、これらの検査法に基づいて冠動脈疾患が陽性と診断されたのは、CTCA群で10.7%、生理機能評価群では11.7%であった。3ヵ月以内に侵襲的心臓カテーテル検査が実施されたのはCTCA群で12.2%、生理機能検査群では8.1%であった。この中で、有意狭窄病変を認めなかったのはCTCA群で27.9%、生理機能検査群で52.5%であったため、全体からの比率では3.4%対4.3%となりCTCA群で偽陽性率が低いといえる(p=0.02)。なお、3ヵ月以内に冠血行再建術が実施されたのはCTCA群で6.2%と、生理機能検査群の3.2%よりも有意に高率であった(p<0.001)。 1次エンドポイントである予後に影響する内科的治療ついては、β遮断薬が25%の症例で使用されており、RAS系阻害薬・スタチン・アスピリンについても各々約45%の症例で投与されていた。そして、中央値25ヵ月の経過観察中の心血管事故発生率についてはCTCA群で3.3%、生理機能評価群では3.0%と有意差を認めなかった。 本研究は循環器疾患の治療法ではなく、冠動脈疾患に対する検査アプローチが予後に及ぼす影響から検査法の妥当性を評価するという、従来の臨床試験ではあまり用いられていない斬新な研究デザインを用いている。そして、1万例に及ぶ大規模な臨床試験データを収集することによって、日常臨床に直結する重要な結果を示したという意味で特筆に値する。 しかしながら、基本的にはnegative dataである研究結果の受け止め方については、同じDuke大学の研究チームでも異なっていた。ACCの発表に際してDouglas氏は、PROMISE試験の結果に基づき、狭心症が疑われる患者に対して、CTCAはクラスIの適応となるようにガイドラインが修正されるエビデンスであることを主張していた。これに対して、PROMISE試験の経済的評価を発表したDaniel Mark氏は、イギリスの伝説である「アーサー王物語」を引き合いに出して、CTCAは長年探し求めていたHoly Grail(聖杯)ではなかった、と落胆を隠さなかった。 循環器の臨床において、対象とする患者の冠動脈病変の情報があれば、最適な医療が実施できるという考え方は根強い。しかし、PROMISE試験が準備された時期には、狭心症の生理機能として重要な心筋虚血が、予後改善の指標として重要であることを実証したFAME試験が報告されている。その後、FAME 2試験においても同様の結果が報告されている。さらに、重症心筋虚血患者に対する介入治療の有無により予後の改善が実証されるか否かについて、ISCHEMIA試験という大規模試験が進行中である。今後はこれらの大規模試験の結果を評価することによって、冠動脈疾患の治療目標は「解剖か、虚血か」という議論に決着がつくかもしれない。それまでは、日常臨床において狭心症が疑われる患者に対しては、まず本試験の対象群の特徴を十分に把握したうえで、CTCAあるいは生理機能検査を実施する必要があると思われる。

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COSIRA試験:血管を開けるのか?それとも、閉じるのか? 狭心症治療に新たな選択肢(解説:香坂 俊 氏)-326

 狭心症の患者さんといえば、冠動脈の狭窄を探す。そして、・見つかれば、開ける・開けられなければ、バイパスする・症状が残っても、それは「狭心症ではないので大丈夫です」の三段論法で対応されてきた(注.極論です)。ここに今回新たに・症状が残ったら、「血管を閉じる」 という選択肢が提示された。読み違いではなく、本当に閉じるのである。 ただし、冠動脈ではなく冠「静脈」、つまり血管系の出口のほうを狭くして、相対的に動脈の虚血領域の血流を増やそうという試みである。これが今回NEJM誌に発表されたCOSIRA試験であるが、すでに「血行再建の適応とならない」難治性狭心症患者104例(シンチで虚血あり、ほとんどの方にバイパスの既往)に対して、砂時計のような形の冠静脈洞径縮小デバイスをランダム化し植え込んだところ、症状改善に有効性を発揮したとされている。 具体的には、この縮小デバイスを留置した患者群のほうが、ブラインドされたSham群(カテーテル手技は行ったがデバイス留置は行っていない)よりも6ヵ月後のQOLスコアが改善した、という結果が得られたというものである。 デバイスの形状は中央部が3mm程度だが、両端が8~12mm程度に広がり3~6ヵ月程度でメッシュ部が血栓化する。留置の手技には9Fのシースを使い、2例を除きすべての症例に留置が可能であったという高い成功率も目を引く。臨床の現場に出てくるまでにはまだ長期的な成績が必要となるが、今後狭心症に対する新たな治療選択肢として注目されている。(おまけ) 個人的に、この試験の意味することとしてもう1つ大きなポイントがあるように思われる。それは、 狭心症は冠動脈を開けるだけでは解決しないということである。 周知のとおり、安定狭心症に対するステントやバルーンの効果は限定的で、COURAGE試験などでは、むしろ随伴する至適薬物療法の重要性が強調されている。このCOSIRA試験でも、そうした目に見えない部分に対する介入の重要性を再確認させられた結果であるように感じた。

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アログリプチン、心不全リスク増大せず:EXAMINE試験の事後解析結果/Lancet

 2型糖尿病で直近に急性冠症候群(ACS)を発症した患者について、DPP-4阻害薬アログリプチン(商品名:ネシーナ)は心不全リスクを増大しないことが示された。フランス・ロレーヌ大学のFaiez Zannad氏らがEXAMINE試験の事後解析を行い明らかにした。同試験では、2型糖尿病で直近にACSを発症した患者の主要有害心血管イベント(MACE)について、アログリプチンがプラセボに対して非劣性であることが示された。しかし、他のDPP-4阻害薬試験で院内心不全の過剰な発生に対する懸念が報告され、研究グループは本検討を行った。Lancet誌オンライン版2015年3月9日号掲載の報告より。EXAMINE試験を事後解析して心不全リスクを評価 EXAMINEは、2009年10月~2013年3月に49ヵ国898施設から被験者を登録して行われた多施設共同無作為化二重盲検試験であった。被験者は、2型糖尿病と直近15~90日以内にACSイベントを経験した患者で、糖尿病と心血管疾患予防のためアログリプチンまたはプラセボ+標準治療に無作為に割り付けられた。 事前規定の探索的拡張MACEエンドポイントは、全死因死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症による緊急血行再建術、および心不全による入院であった。 事後解析では、心血管死亡と心不全入院について、試験開始時の心不全歴および脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値により評価した。また、試験開始~6ヵ月時のN末端プロBNP(NT-pro-BNP)値の変化についても評価した。アログリプチンの心血管死亡と心不全入院の複合イベント発生はプラセボと同等 5,380例の患者が、アログリプチン群(2,701例)またはプラセボ群(2,679例)に割り付けられた。追跡期間は中央値533日(IQR:280~751日)であった。 探索的拡張MACEエンドポイントの発生は、アログリプチン群433例(16.0%)、プラセボ群441例(16.5%)の患者に認められた(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.86~1.12)。 初発の心不全入院の発生は、アログリプチン群とプラセボ群それぞれ85例(3.1%)、79例(2.9%)であった(HR:1.07、95%CI:0.79~1.46)。 事後解析の結果、心血管死亡および心不全入院の複合イベントへのアログリプチンの影響は認められず(HR:1.00、95%CI:0.82~1.21)、結果についてベースライン時のBNP値による違いはみられなかった。NT-pro-BNP値の変化は、両群とも有意かつ同等に減少した。

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事例43 アスピリン/ランソプラゾール(商品名: タケルダ)配合錠の査定【斬らレセプト】

解説事例では、不安定狭心症で通院中の患者に、アスピリンにランソプラゾールが配合されたタケルダ®を投与したところA事由(医学的に適応と認められないもの)を理由に査定となった。同剤の剤添付文書の「効能または効果」を見てみると、「次の疾患または術後における血栓・塞栓形成の抑制(胃潰瘍または十二指腸潰瘍の既往がある患者に限る)に適用がある」として、狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)、心筋梗塞、虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作[TIA]、脳梗塞)、冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後が、対象疾患として掲げられている。同剤投与の前提条件には「胃潰瘍または十二指腸潰瘍の既往」があることが、定められているのである。事例では、レセプト上からは既往の有無の判断がつかないことから、査定となったものと推測できる。対応として、投与対象者は胃潰瘍もしくは十二指腸潰瘍の既往のある患者に限定し、レセプトに「胃潰瘍もしくは十二指腸潰瘍の既往あり」のコメント記入を行っていただくよう医師にお願いした。なお、アスピリン薬とランソプラゾール薬の併用投与の場合の取り扱いも同様である。支払基金などでは、この取り扱いに対して、当分の間は返戻対応を行うとされているようであるが、査定となった事例も確認している。

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新開発の血管デバイス、難治性狭心症に有効/NEJM

 開発中の冠静脈洞径縮小デバイス(coronary-sinus reducing device)は、血行再建が適応外の難治性狭心症患者の症状およびQOLを有意に改善することが、ベルギー・Ziekenhuis Netwerk AntwerpenのStefan Verheye氏らが行ったCOSIRA試験で示された。血行再建が適応とならない冠動脈疾患患者の多くは、標準的薬物療法を行っても難治性狭心症を来す。このような患者は世界的に増加しており、新たな治療選択肢が求められている。本デバイスは、15例の非無作為化試験ですべてのクラスの難治性狭心症に対する効果が確認され、全デバイスが3年後も開存し、移動もしておらず、また最近の21例の試験では症状および虚血の改善が報告されている。NEJM誌2015年2月5日号掲載の報告。径縮小デバイスの効果を無作為化第II相試験で評価 冠静脈洞径縮小デバイスは、バルーンカテーテルに装着されたステンレス製のメッシュ状デバイスで、拡張すると中央部が細い砂時計様の形状を呈する。冠静脈洞に留置すると、局所的な血管壁の肥厚性反応が誘導されてメッシュ孔が塞がれ、限局的に血管腔が狭くなり、内圧が上昇して虚血心筋に血液が再供給されるという。 COSIRA試験は、難治性狭心症に対する本デバイスの安全性と有効性を評価する多施設共同二重盲検無作為化擬似対照比較第II相試験(Neovasc社の助成による)。対象は、年齢18歳以上、カナダ心臓血管学会(CCS)分類のクラスIII/IV度の狭心症と心筋梗塞を有し、薬物療法を30日以上行っても症状がコントロールできない患者であった。CCSクラスはI~IV度に分けられ、クラスが高いほど狭心症による身体活動性の制限が大きい。 被験者は、本デバイスを留置する群または擬似的処置を行う群(対照群)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、6ヵ月時にCCS狭心症分類で2度以上の改善を達成した患者の割合とした。分類クラス2度以上の改善率が約2.4倍に 2010年4月~2013年4月に104例が登録され、デバイス群に52例、対照群にも52例が割り付けられた。全体の平均年齢は67.8歳(35~87歳)、男性が81%で、リスク因子や併存疾患の有病率が高かった。デバイス群の2例で、デバイスが冠静脈弁を通過できず留置できなかった。 6ヵ月時のCCS狭心症クラス2度以上の改善率は、デバイス群が35%(18/52例)であり、対照群の15%(8/52例)に比べ有意に優れていた(p=0.02)。1度以上の改善も、デバイス群が71%(37/52例)と対照群の42%(22/52例)に比し有意に良好であった(p=0.003)。 狭心症関連QOL(シアトル狭心症質問票:0~100点、点数が高いほど症状が少なく健康状態が良好)は、デバイス群が17.6点改善し、対照群の7.6点よりも優れていた(p=0.048)。狭心症の安定性(p=0.16)や狭心症の頻度(p=0.44)は両群間に差はみられなかった。 運動負荷試験では、平均運動時間がデバイス群で59秒(13%)、対照群で4秒(1%)延長したが、この差は有意ではなかった(p=0.07)。ドブタミン負荷心エコー検査で評価した壁運動指数の改善率は、デバイス群が14%、対照群は8%であり、有意な差は認めなかった(p=0.20)。 周術期にデバイス群の1例に心筋梗塞が認められた。他の周術期の重篤な有害事象として、デバイス群で不安定狭心症とクローン病のフレアが、対照群では不安性狭心症と上腹部痛が1例ずつ認められた。1つ以上の有害事象を発症した患者は、デバイス群が64%、対照群は69%であり(p=0.68)、デバイス群で76件、対照群では93件の有害事象が報告された。 6ヵ月時には、デバイス群で1例が心筋梗塞を発症し、対照群では1例が死亡、3例が心筋梗塞を発症した。重篤な有害事象は試験期間中に34件(デバイス群:10件、対照群:24件)発現した。CT血管造影を受けた36例にデバイスの移動や閉塞は認めなかった。 著者は、「デバイスによる虚血の改善のベネフィットを運動負荷試験や壁運動指数で評価するには、より大規模な試験を行う必要がある。第III相試験を行う場合は、MRIやPETなど、より正確に虚血を評価できるツールを用いるのがよいだろう」と指摘している。

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Vol. 3 No. 1 血糖をコントロールすることは、本当に心血管イベント抑制につながるのか? ~ DPP-4阻害薬の大規模臨床試験の結果を踏まえて~

坂口 一彦 氏神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科はじめに国際糖尿病連合のDiabetes Atlas第6版(2013年)1)によれば、世界の糖尿病患者数は3億8,200万人と推定され、そのうちの1億3,800万人が日本を含む西太平洋地区に存在するとされている。世界で糖尿病が理由で亡くなっている人が6秒に1人存在することになり、経済的損失は5,480億ドルにも達するとされている。患者数の増加は2035年には5億9,200万人に達すると予測され、人類にとっての脅威という表現も決して誇張ではない。糖尿病患者は心血管イベントを発生しやすい高リスク集団であることは以前より報告が多く、本邦においても1996年から国内の専門施設に通院する糖尿病患者2,033名を登録して開始されたJapan Diabetes Complications Study(JDCS)の9年次報告2)では、虚血性心疾患の発症率が9.6人/年(男性11.2人/年、女性7.9人/年)と著明に上昇し、脳血管疾患の7.6人/年(男性8.5人/年、女性6.6人/年)を上回っている。それでは、糖尿病患者の血糖をコントロールすることで心血管イベントの抑制につながるのだろうか?糖尿病は何のために治療するのか?という根源的な問題ともいえるこの点について、本稿ではこれまでのエビデンスに基づいて述べる。厳格な血糖コントロールとは何を意味するか?糖尿病の合併症のうち、網膜症・腎症・神経障害など細小血管合併症の発症は、平均血糖の上昇を意味するHbA1cとの間に強い関係があり、さらに1990年代〜2000年に行われたDCCT3)やUKPDS4)などの介入試験において、HbA1cを低下させることで発症・進展阻止が得られることが明らかとなった(図1)。一方で、虚血性心疾患に代表される大血管合併症の発症は、糖尿病患者の血圧や脂質への介入により抑制されることが確認できたが、HbA1cの低下と心血管イベント発症抑制との関連については、それら初期の介入試験では有意な関係を認めることができなかった。2000年代に入りACCORD5)、ADVANCE6)、VADT7)という3つの大規模臨床試験が相次いで発表された。いずれもHbA1cを十分に下げても主要心血管イベントの抑制効果を認めることができず、ACCORD試験に至ってはむしろ強化療法群で死亡率が上昇したという結果で多くの議論を呼ぶこととなった。図1 大規模臨床試験が明らかにした厳格な血糖コントロールがもたらすもの画像を拡大するこれらの試験が私たちに教えたことは、(1)HbA1cの低下は血糖の正常化と同義語ではない、すなわち低血糖を伴わず、血糖変動の小さい日々の血糖状態の結果としての質のよいHbA1cの改善が求められること、(2)年齢、罹病期間、合併症など背景要因を考慮せず一律な治療目標を設定することには問題があること、(3)罹病期間が長い患者に対する治療には限界があり、特に短期間での急速なHbA1cの低下は好ましくないこと、また治療開始の時期がその後の合併症や生命予後に大きく関わることから、糖尿病の発症早期からの治療介入が好ましいこと、などである。その結果、糖尿病の診療は下記のように変化が起きつつある。(1)低血糖の際に交感神経の活性化や凝固系亢進、炎症マーカーの亢進などを介して不整脈や虚血を誘発することが考えられ、低血糖に関する注意が従来以上に強調されることとなった。最近、経口糖尿病治療薬としてDPP-4阻害薬が登場し、現在本邦でも広く使用されているが、これは単独使用では低血糖を起こすことが基本的にはないためと思われる。(2)ADA/ EASDのガイドラインに患者中心アプローチの必要性があらためて記載され、患者ごとの治療目標を設定することが推奨されるようになった8)。(3)その後、厳格な血糖管理の影響は、特に大血管合併症や生命予後に関しては年余を経てからmetabolic memory効果9)やlegacy effect10)が現れることが初期の介入試験の延長試験の結果から明らかとなり、やはり早期からの治療介入の重要性が強調されることとなった。食後高血糖への介入の意義HbA1cがまだ上昇していない境界型のレベルから動脈硬化が進行し、心血管イベントを起こしやすいことはよく知られている。DECODE試験やDECODA試験、本邦におけるFunagata試験が示したことは、経口ブドウ糖負荷試験の空腹時血糖よりも負荷後2時間の血糖値のほうが総死亡や心血管イベントの発症とよく相関するという結果であった。食後高血糖が動脈硬化を促進するメカニズムとして、臍帯血管内皮細胞を正常糖濃度、持続的高濃度、24時間ごとに正常濃度・高濃度を繰り返すという3条件で培養した際、血糖変動を繰り返した細胞で最も多くのアポトーシスを認めたというin vitroの報告や、2型糖尿病患者における血糖変動指標であるMAGEと尿中の酸化ストレスマーカーが相関することなどから、食後高血糖は酸化ストレスや血管内皮障害を介し、大血管合併症につながりうると推測されている。国際糖尿病連合が発行している『食後血糖値の管理に関するガイドライン』では「食後高血糖は有害で、対策を講じる必要がある」とされている。それでは、食後高血糖に介入した臨床試験は期待どおりの結果であったであろうか?STOP-NIDDM試験(Study to prevent Non-Insulin-Dependent Diabetes Mellitus)11)IGT患者1,429名に対して、α-グルコシダーゼ阻害薬であるアカルボースで介入することで2型糖尿病の発症を予防することができるかどうかを1次エンドポイントにしたRCTである。試験期間は3.3年であった。その結果、糖尿病発症は有意に予防でき(ハザード比0.75、p=0.0015)、さらに2次エンドポイントの1つとして検証された心血管イベントの発症も有意に抑制されることが報告された(ハザード比0.51、p=0.03)。しかしアカルボース群は脱落者が比較的多く、得られた結果も1次エンドポイントではないことに注意したい。NAVIGATOR試験(The Nateglinide and Valsartan in Impaired Glucose Tolerance Outcome Research)12)IGT患者9,306名を対象として、血糖介入にはグリニド薬であるナテグリニドを、血圧介入にはARBであるバルサルタンを用いて、2×2のfactorialデザインで実施されたRCTである。1次エンドポイントは糖尿病の発症と心血管イベントの発症で、観察期間の中央値は5年間であった。結果としてナテグリニド群はプラセボ群に比し、糖尿病の発症(プラセボに対するハザード比1.07、p=0.05)、心血管イベントの発症(プラセボに対するハザード比0.94、p=0.43)といずれも予防効果を証明できなかった。本試験ではナテグリニド群において低血糖を増加させていたことや、投薬量が不足していた可能性などの問題が指摘されている。HEART2D試験(Hyperglycemia and Its Effect After Acute Myocardial Infarction on Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus)13)急性心筋梗塞後21日以内の2型糖尿病患者1,115名を対象に、超速効型インスリンを1日3回毎食前に使用して食後血糖を低下させた治療群と、基礎インスリンを使用して空腹時血糖を低下させた治療群を比較したRCTである。平均963日のフォローアップで、同様にHbA1cが低下し、日内の血糖パターンにも変化がついたにもかかわらず、主要心血管イベントの発症には両群で有意差がつかなかった。このように、食後の高血糖が有害であるということを示唆するデータやそれを裏づける基礎的データはあるものの、血糖変動を厳格に管理することで本当に糖尿病患者の心血管イベントが減るのかということに関しては、未だ明らかではないことがわかる。DPP-4阻害薬を使用した大規模臨床試験インクレチン関連薬の登場は、糖尿病治療にパラダイムシフトを起こしたとまでいわれ、低血糖や体重増加が少ないというメリットがあるうえに、日内の血糖変動も小さく、真の意味で厳格な血糖コントロールを目指せる薬剤と期待され広く臨床使用されるようになった。加えてインクレチン関連薬には、血糖コントロール改善効果以外に、臓器保護効果やβ細胞の保護効果を示唆するデータが培養細胞や動物実験において出されつつある。最近、DPP-4阻害薬を用い、心血管イベントを1次エンドポイントとした2つのRCTが発表されたので、次にこれらの試験について述べる。試験が行われた背景ロシグリタゾンは本邦では未発売のPPAR-γ活性化薬の1つである。血糖降下作用に加え、抗炎症作用・臓器保護作用などの報告が多く、大血管イベント抑制効果も期待されていたが、2007年にそれまでの臨床試験の結果を解析すると、逆に急性心筋梗塞が対照群に比べて1.43倍、心血管死亡が1.64倍増加しているという衝撃的な報告がなされた14)。2008年、アメリカ食品医薬品局(FDA)はこれらの報告を受け、新規の糖尿病治療薬については心血管イベントリスクの安全性を証明することを義務づけた。ここで述べる2つのRCTは、このFDAの要請に応えるべく行われた。したがって、プラセボ薬に比し、心血管イベントの発生が非劣性であることを1次エンドポイントとしてデザインされたRCTであり、実薬による介入が対照群に比し優れているかどうかを検証するこれまで述べてきた他の試験とは性質が異なる。EXAMINE試験(Examination of Cardiovascular Outcome with Alogliptin)15)(表1)急性冠動脈症候群を発症した2型糖尿病患者5,380名を、アログリプチン群とプラセボ群に無作為に割り付け、観察期間中央値18か月として、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の発症リスクを比較したものである。結果として、プラセボに対する非劣性は証明されたが(プラセボに対するハザード比0.96、p<0.001 for noninferiority)、優越性は証明されなかった。表1 EXAMINE試験とSAVOR-TIMI 53試験の概略画像を拡大するSAVOR-TIMI53試験(Saxagliptin and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus)16)(表1)心血管イベントの既往またはリスクを有する2型糖尿病患者16,492名を無作為にサキサグリプチン群とプラセボ群に割り付け、観察期間を中央値2.1年、主要評価項目を心血管死、心筋梗塞、脳卒中発症の複合エンドポイントとして比較したものである。結果として、プラセボに対する非劣性は証明されたが(プラセボに対するハザード比0.89、p<0.001 for noninferiority)、優越性は証明されなかった(p=0.99 for superiority)。本試験の対象は高リスクで罹病期間の長い中高年者であり、ACCORD試験の対象者に似ていることと介入期間の短さを考えると、介入終了時点でイベント発生の抑制効果が認められないことにそれほどの違和感はない。加えてACCORD試験ほど急速にHbA1cは下がっていない(むしろ介入終了時のプラセボとのHbA1cの差は全区間を通じて有意であったとはいえ、介入終了時点で7.7% vs. 7.9%と極めて小さな差であった)、主要評価項目のイベントを増やすことがなかったという意味では所定の結果は得られたといえる。しかし、解析の中で次の点が明らかになった。単剤で使用される限り低血糖のリスクは少ないDPP-4阻害薬であるが、併用薬を含む本試験においてはサキサグリプチン群のほうが有意に低血糖が多かった。また2次複合エンドポイント(1次複合エンドポイントの項目に加えて狭心症・心不全・血行再建術による入院を含めたもの)も両群で有意差はつかなかったが、その中の1項目である心不全による入院は、サキサグリプチン群がプラセボ群に比してハザード比1.19(p=0.007)と有意に増える結果となった。おわりにこのように、現時点では既述のように発症から比較的早い段階から介入することで、後年の心血管イベントや死亡を減らせることは証明されているものの、発症から年余を経た糖尿病患者に対する介入試験で、1次エンドポイントとしての心血管イベントを抑制することを証明した臨床試験は存在しない。DPP-4阻害薬を用いた2つの臨床試験は、優越性の証明が主目的ではなかったものの、心不全による入院の増加の可能性を示唆するものであった(IDF2013では、EXAMINE試験において心不全は増加傾向で、SAVOR-TIMI53試験とEXAMINE試験の2つの試験のメタ解析の結果でも有意に心不全が増えると報告された)。今後、DPP-4阻害薬を用いた大規模臨床試験の結果が明らかにされる予定であり(表2)、この点も興味が持たれる。表2 DPP-4阻害薬は糖尿病患者の予後を変えることができるか?現在進行中の心血管イベントを1次エンドポイントとした大規模臨床試験画像を拡大する文献1)http://www.idf.org/diabetesatlas2)曽根博仁. JDCS 平成21年度総括研究報告書.3)The DCCT Research Group. The effect of intensive treatment of diabetes on the development and progression of long-term complications in insulin-dependent diabetes mellitus. N Engl J Med 1993; 329: 977-986.4)Stratton IM et al. Association of glycaemia with macrovascular and microvascular complications of type 2 diabetes (UKPDS 35): prospective observational study. BMJ 2000; 321: 405-412.5)ACCORD Study Group. Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes. N Engl J Med 2008; 358: 2545-2559.6)ADVANCE Collaborative Group. Intensive blood glucose control and vascular outcomes in patients with type 2 diabetes. N Engl J Med 2008; 358: 2560-2572.7)VADT Investigators. Glucose control and vascular complications in veterans with type 2 diabetes. N Engl J Med 2009; 360: 129-139.8)Inzucchi SE et al. Management of hyperglycemia in type 2 diabetes: A patient-centered approach. Diabetes Care 2012; 35: 1364-1379.9)DCCT/EDIC Study Research Group. Intensive diabetes treatment and cardiovascular disease in patients with type 1 diabetes. N Engl J Med 2005; 353: 2643-2653.10)Holman RR et al. 10-year follow-up of intensive glucose control in type 2 diabetes. N Engl J Med 2008; 359: 1577-1589.11)STOP-NIDDM Trail Research Group. Acarbose for prevention of type2 diabetes mellitus: the STOPNIDDM randomized trial. Lancet 2002; 359: 2072-2077.12)The NAVIGATOR Study Group. Effect of nateglinide on the incidence of diabetes and cardiovascular events. N Engl J Med 2010; 362: 1463-1476.13)Raz I et al. Effects of prandial versus fasting glycemia on cardiovascular outcomes in type 2 diabetes: the HEART2D trial. Diabetes Care 2009; 32: 381-386.14)Nissen SE and Wolski K. Effect of rosiglitazone on the risk of myocardial infarction and death from cardiovascular causes. N Engl J Med 2007; 356: 2457-2471.15)White WB et al. Alogliptin after acute coronary syndrome in patients with type 2 diabetes. N Engl J Med 2013; 369: 1327-1335.16)Scirica BM et al. Saxagliptin and cardiovascular outcomes in patients with type 2 diabetes mellitus. N Engl J Med 2013; 369: 1317-1326.

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LancetとNEJM、同じデータで割れる解釈; Door-to-Balloon はどこへ向かうか?(解説:香坂 俊 氏)-300

 Door-to-Balloon Time(DTB)に関する議論が脚光を浴びている。医学界で最も権威が高い2誌(NEJMとLancet)がDTBに関する解析結果を掲載し、しかもその指し示す方向が正反対だったのである。さらに驚くべきことに、この2つの解析は同じデータセットから抽出されたものであった。大いなる矛盾ともいえるこの結果をどう解釈していくべきなのか、順番にみていきたい。循環器内科を専門とされない先生方へ  DTBはST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)の患者さんが救急外来のドアを開けてから(Door)、緊急カテで冠動脈インターベンションを受ける(Balloon)までの時間のことを指します。2000年頃よりこのDTBが短ければ短いほどSTEMI患者さんの予後がよいことがわかってきたので、欧米では2005年頃から大規模なキャンペーンが行われました。その結果、2010年頃にはDTB 90分以下という基準を90%の症例で達成するに至り(90/90)、わが国でも遅ればせながら2014年の診療報酬改定にDTBが考慮されるようになりました※。 ただし、最近はDTBが重視されるあまり「行き過ぎ」の声もあり(例:患者さんを一切トイレに行かせなかったり、当直の循環器医を強制的にカテ室に待機させるなど)、あまりに数値優先の現場に反省を促す声も上がっています。※2014年の点数制では、同じSTEMI患者に緊急カテ(ステント留置)を行っても、DTBが90分以下ならば34,380点、これを満たさなければ「不安定狭心症」扱いで24,380点となります。 まず、NEJM側(2013年9月5日号)に掲載された解析1)の要旨は以下の通りである。●2005年から2009年の間に米国で施行された9万6,738例のSTEMI患者が対象となった(515施設からのデータ[NCDR CathPCIレジストリ]、緊急カテの後インターベンションを施行された症例のみ)。●転送症例やDTBが3時間以上かかっている症例は除外。●2005年から2009年までの間に平均DTBは83分から67分に短縮された。●がしかし、その期間の重症度補正された院内死亡率(5.0 vs. 4.7%、p=0.34)に有意差は認められなかった。この結果を受けて、「DTBにもはや意味はなくなった」だとか、「60分でもまだ長すぎる」などという議論が巻き起こり、さらにDTBを医療の質の指標として用いることにも疑問が呈された。 そして、今回Lancet側(オンライン版2014年11月19日号)に掲載された解析2)は以下の通りである。●2005年から2011年の間に米国で施行された15万116例のSTEMI患者が対象となった(423施設からのデータ[NCDR CathPCIレジストリ]、緊急カテの後インターベンションを施行された症例のみ)。●転送症例やDTBが3時間以上、そして15分以下、さらにデータが信頼できない施設の症例は除外。●2005年から2011年までの間に平均DTBは86分から63分に短縮された。●その期間の重症度補正された死亡率は上昇していた(5.0 vs. 4.7%、p=0.34)。●がしかし、DTBが短縮されるごとに死亡のリスクは下降傾向にあり(10分短縮されるごとに約10%院内死亡率が低下)、このトレンドは2005年から2011年の間すべての期間に共通して認められた。 いかがだろうか? Lancet側の論文の著者たちは論文の結語で「緊急カテに回ってくるSTEMI患者の重症度がここ数年で上がってきていて、全体の死亡率は上昇している。しかし、DTBを短縮するごとに予後が改善するトレンドに変更はない」と書いており、個人的にもこの結論は妥当なものと思う。むしろNEJM側の解析が「粗すぎた」のではないか? そうしたところは解析症例を抽出する際の除外基準の緩さにも現れている(Lancet側のほうが除外基準が厳しい;上記赤字部分参照されたい)。 この2つの研究からの“Take Home Message”は以下の2点に集約される。1)“Devil is in the details”。たいていの論文の最も大切な情報はMethodsにひっそりと隠されている。2)大規模データベース研究では重症度補正やサブグループ化など重層的に解析が行われるが、すべて同じ方向を指し示しているか確認する必要がある。これらは後ろ向き解析の宿命のようなもので、逆に前向きのランダム化研究などではこうした複雑な方法論の読み込みは必要ない。ランダム化が適正に行われていれば2群の比較だけに注目すればよく、統計的な補正は補助的な役割に留まるからである。ただし、本当にその論文に準じて自分の診療(practice pattern)を変更しようとするのならば、どのような研究でもMethodsを読み込むことを推奨したい。 最後に、蛇足かもしれないが、日本からもDTBに関する有力な論文が発表されていることを付記したい3)※※。主要なメッセージとしては、DTBの予後改善効果は非常に短い経過(発症2時間以内)で救急外来にやってきたSTEMI患者に限定される、というものだが、この研究では院内死亡率だけでなく長期的な予後も追っており、丁寧に多方面からデータを示している。このあたりのことが現場感覚からいくと存外真実に近いのではないかと思われるが、今後も欧米からのマスデータ、日本からのきめ細かいデータの双方から報告が期待される。※※塩見 紘樹、中川 義久、木村 剛ら(京都大学)によるCREDO-Kyotoコホートの解析。

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糖尿病患者へのルーチンCCTA、CADリスク低下せず/JAMA

 冠動脈疾患(CAD)について症状のない糖尿病患者(1型または2型)への、冠動脈CT血管造影(CCTA)によるルーチンのCADスクリーニングに疑問を呈する所見が報告された。スクリーニング実施群の全死亡や非致死的心筋梗塞発生などが、標準的な糖尿病治療群と比べて有意な減少に結び付かなかったという。米国・Intermountain Medical Center Heart InstituteのJoseph B. Muhlestein氏らが行った無作為化試験FACTOR-64の結果、示された。CADは糖尿病患者において心血管イベント発生や死亡の重大要因であるが、心筋梗塞や冠動脈系による死亡の前に症状がみられない頻度が高い。JAMA誌オンライン版2014年11月17日号掲載の報告。無症候性CADのDM患者900例、CCTAスクリーニング群vs.ガイドライン治療群 FACTOR-64は、罹病期間最低3年または5年以上(性別、年齢により異なる)で無症候性CADの1型または2型糖尿病患者900例について行われた無作為化臨床試験である。被験者は、1つのヘルスシステム(ユタ州のIntermountain Healthcare)傘下の45のクリニックおよび開業医を介して登録された。 登録は、1コーディネーティングセンターで行われ、被験者はCCTAによるCADスクリーニングを受ける群(452例)と、米国ガイドラインに基づく至適糖尿病治療を受ける群(対照群448例、目標:血糖値<7.0%、LDL-C値<100mg/dL、収縮期血圧<130mmHg)に無作為に割り付けられた。 CCTA割り付け群へのCCTAは全例、コーディネーティングセンターで実施。所見に基づき、標準的治療または強化治療(目標:血糖値<6.0%、LDL-C値<70mg/dL、HDL-C値:女性>50mg/dL/男性>40mg/dL、トリグリセライド値<150mg/dL、収縮期血圧<120mmHg)を行うこと、もしくは侵襲的冠動脈造影(ICA)と強化治療を行うことが推奨された。 2007年7月~2013年5月に登録が行われ、2014年8月までフォローアップが行われた。 主要アウトカムは、全死因死亡・非致死的MI・不安定狭心症で入院の複合。副次アウトカムは、虚血性の重大有害心血管イベント(CAD死、非致死的MI、不安定狭心症の各項目)であった。追跡4年、全死因死亡・非致死的MI・不安定狭心症入院の発生率に有意差なし 平均追跡期間4.0(SD 1.7)年時点で、主要アウトカムの発生率について、CCTA群と対照群で有意な差はみられなかった(6.2%[28件]vs. 7.6%[34件]、ハザード比:0.80、95%信頼区間[CI]:0.49~1.32、p=0.38)。 副次エンドポイントの複合発生率についても、両群間で有意な差はみられなかった(4.4%[20件]vs. 3.8%[17件]、ハザード比:1.15、95%CI:0.60~2.19、p=0.68)。 これらを踏まえて著者は、「無症候性CADの1型または2型糖尿病患者について、CCTAによるCADスクリーニングは、追跡4年時点の評価で、全死因死亡・非致死的MI・入院を要する不安定狭心症の複合発生率の低下に結び付かなかった。今回の所見は、こうしたハイリスク患者におけるルーチンのCCTAスクリーニングを支持しないものであった」とまとめている。

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