アリロクマブ併用による長期のLDL-C改善効果/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2015/04/15

 

 米国・アイオワ大学のJennifer G Robinson氏らODYSSEY LONG TERM試験の研究グループは、心血管リスクの高い患者の治療において、新規LDLコレステロール(LDL-C)低下薬アリロクマブ(alirocumab、国内未承認)を最大耐用量のスタチンと併用すると、長期にわたりLDL-C値が有意に減少し、心血管イベントが抑制されることを確認した。アリロクマブは、前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に対するモノクローナル抗体であり、第II相試験では短期的投与(8~12週)により、スタチン治療を受けている患者のLDL-C値を40~70%減少させることが示されている。NEJM誌オンライン版2015年3月15日号掲載の報告より。

長期の上乗せ効果をプラセボ対照無作為化試験で評価
 ODYSSEY LONG TERM試験は、スタチン治療を受けている高リスク例に対するアリロクマブ追加の長期的な有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験(Sanofi社などの助成による)。対象は、年齢18歳以上、ヘテロ型家族性高コレステロール血症(FH)または冠動脈心疾患(CHD)、あるいはCHD相当のリスクを有し、LDL-C値≧70mg/dLであり、高用量または最大耐用量のスタチン治療を受けている患者であった。

 被験者は、アリロクマブ(150mg含有1mLシリンジで皮下投与)またはプラセボを2週ごとに投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けられ、78週の治療が行われた。主要有効性評価項目は、ベースラインから24週までのLDL-C値の変化率であった。

 27ヵ国320施設に2,341例が登録された。アリロクマブ群に1,553例、プラセボ群には788例が割り付けられ、それぞれ1,530例、780例が解析の対象となった。

LDL-C値が62%減少、重度の心血管有害事象は48%抑制
 全体の平均年齢は60歳、女性が37.8%で、CHDの既往歴は68.9%にみられ、ヘテロ型FHが17.7%含まれた。46.8%が高用量スタチンの投与を受け、28.1%はエゼチミブなどの他の脂質降下薬を併用していた。ベースラインの平均LDL-C値は122mg/dLであった。

 24週時のベースラインからのLDL-C値の平均変化率の両群間の差は-62%であり、アリロクマブ群で有意に減少した(48.3 vs. 118.9mg/dL、p<0.001)。ヘテロ型FHとそれ以外の患者の間に差はみられなかった。また、この治療効果は4週時には達成され、78週時(57.9 vs. 122.6mg/dL)も維持されていた。

 24週時のLDL-C<70mg/dLの達成率は、アリロクマブ群が79.3%、プラセボ群は8.0%であった(p<0.001)。また、LDL-C以外の脂質の24週時の変化率の差は、非HDL-Cが-52.3%、アポリポ蛋白Bが-54.0%、総コレステロールが-37.5%、リポ蛋白(a)が-25.6%、空腹時トリグリセライドが-17.3%とアリロクマブ群で有意に減少し、HDL-Cは4.6%、アポリポ蛋白A1は2.9%と有意に増加した(いずれもp<0.001)。

 重篤な有害事象は、アリロクマブ群が18.7%、プラセボ群は19.5%に発現し、有害事象による試験薬の中止はそれぞれ7.2%、5.8%に認められた。アリロクマブ群で頻度の高い有害事象として、注射部位反応(5.9 vs. 4.2%)、筋肉痛(5.4 vs. 2.9%、p=0.006)、神経認知障害(譫妄、認知/注意障害、認知症、健忘症など、1.2 vs. 0.5%)、眼イベント(視神経/網膜/角膜の障害、2.9 vs. 1.9%)がみられた。

 事後解析では、重度の心血管有害事象(CHDによる死亡、非致死的心筋梗塞、致死的/非致死的虚血性脳卒中、入院を要する不安定狭心症)の発現率はアリロクマブ群で有意に低かった(1.7 vs. 3.3%、ハザード比:0.52、95%信頼区間:0.31~0.90、p=0.02)。

 著者は、「これらの知見は、既報の他のPCSK9阻害薬(エボロクマブ)の臨床試験(N Engl J Med. 2014;370:1809-1819Circulation. 2014;129:234-243)の結果と類似する」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)

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コメンテーター : 平山 篤志( ひらやま あつし ) 氏

大阪複十字病院 内科

J-CLEAR評議員